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jmedmook104 プライマリ・ケアのギモンに応える 感染症Q&A

現場で生まれた数々の疑問に専門医が応えます!2019年から続く日本プライマリ・ケア連合学会と日本感染症学会のジョイントシンポジウム「感染症専門医はプライマリ・ケア医からの疑問に応えられるのか?」で熱く交わされた質疑応答をもとに、感染症診療に有用なQ&Aをピックアップ。「外来でグラム染色をすべきか」「風邪なのに抗菌薬を欲しがる患者さんにどう対応すべきか」「感受性のない抗菌薬が効いてしまう理由」など、プライマリ・ケアの現場で直面する答えの出ない疑問についてエキスパートが明快に解説します。専門性と総合性の融合、多職種連携の重要性にも光を当てた本書は、地域で感染症診療に携わる医師はもちろん、看護師、薬剤師、介護職の皆さまにもおすすめの一冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するjmedmook104 プライマリ・ケアのギモンに応える 感染症Q&A定価4,400円(税込)判型B5判頁数130頁発行2026年6月監修日本プライマリ・ケア連合学会感染症委員会/日本感染症学会学際化・国際化委員会ご購入はこちらご購入はこちら

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第319回 終息見えぬエボラ・ブンディブギョ株、ワクチンと治療薬の開発状況

INDEXヒトに感染するエボラウイルスとその特徴ワクチン候補は2つ治療薬候補は4つ以前、本連載でもお伝えしたコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)を中心とするエボラウイルスのアウトブレイクにおいて、その後も事態は悪化の一途をたどっている。最新の世界保健機関(WHO)の発表によると、6月24日現在、コンゴでは確定報告が累計1,094例、うち277例が死亡。隣国ウガンダでは6月18日現在、確定報告が19例、うち死亡2例のほか、死亡に至った疑い症例1例が報告されている。ウガンダでは、6月5日以降、新たな症例は報告されておらず、確定症例中14例がコンゴからの輸入例、残りが接触者や医療者の2次感染と分類されている。ウガンダでの感染は終息しつつあると言えそうだ。問題はコンゴのほうである。6月13日以降、新たに220例の確定症例(うち死亡96例)が報告され、WHOは「検査と診断能力の拡大により、以前に収集された検体の検査が可能になったことが一因」としているものの、終息の兆しは見えていない。現在のコンゴ国内での感染報告地域は、ウガンダ国境に接する東部のイツリ州が91.1%。これ以外は同州の南に接する北キブ州、さらにその南の南キブ州に分布している。WHOも発表の中で「複雑な人道危機と紛争の影響を受けた環境下で発生」と評しているように、以前の連載でも触れた紛争による政情不安定さがアウトブレイクの終息を阻んでいる。さらに悩ましいのは今回のアウトブレイクの原因が、エボラウイルスの中のブンディブギョ株である点だ。ヒトに感染するエボラウイルスとその特徴エボラウイルス(正確にはフィロウイルス科エボラウイルス属に分類されるウイルス)は6種類が確認されており、ヒトで感染が報告されているのは、アフリカのシエラレオネでコウモリから分離されたボンバリ株を除く5種類(スーダン株、ザイール株、タイフォレスト株、ブンディブギョ株、レストン株)である。5種類のうち、1994年にコートジボワールで確認されたタイフォレスト株の感染報告1)は、同地でチンパンジーの解剖に当たっていたスイス人の1例のみで、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、咳で発症し、その後、腹痛、下痢、嘔吐、発疹を認めたものの、スイスへ搬送後に回復し、後遺症もなく退院している。また、1989年に米国・バージニア州レストンの動物飼育施設でフィリピン産のサルを感染源として初めて確認されたレストン株は、これまで100例超の感染事例が報告されているものの、いずれも抗体陽性が確認されただけで発症者の報告はない。感染したヒトで発症し、かつ致死的な病態をもたらすのが残るザイール株、スーダン株、ブンディブギョ株だが、過去の感染確定報告累計はザイール株が数万例、スーダン株が数千例の規模であるのに対し、ブンディブギョ株は今回のアウトブレイク以前の確定例は200例未満であるため、結果としてワクチンや治療法の開発が最も立ち遅れている。前出の「悩ましい」とはこのことを意味する。その意味では、現在のワクチンと治療薬の開発状況は気になるところ。そこでこの現状を可能な限りまとめてみた。ワクチン候補は2つまずワクチンだが、WHOとGaviワクチンアライアンス(Gavi, the Vaccine Alliance)などが中心となって進めている提言で、ワクチン候補として最も有望視されているのが、国際エイズワクチンイニシアティブが開発を主導している「rVSV-Bundibugyo」。これはすでにザイール株向けに米国・メルク社が製造・販売しているエボラウイルスワクチン「rVSV-ZEBOV(商品名:Ervebo)」と同じプラットフォームを利用したワクチン候補である。Erveboは主にウシ、ウマ、ブタなどの家畜に感染するものの、ヒトでの病原性は低い水疱性口内炎ウイルスを改変したベクターに、ザイール株の表面にある糖タンパク質の遺伝子を挿入したウイルスベクターワクチンである。一方のrVSV-Bundibugyoは、挿入する遺伝子をブンディブギョ株の糖タンパク質の遺伝子に置換している。動物実験レベルだが、Erveboのプラットフォームにザイール株、タイフォレスト株の糖タンパク質の遺伝子を挿入したものを接種したサルにブンディブギョ株を曝露させて交叉防御を検討した研究2)では、今のところ良好な結果が得られている。また、テキサス大学のグループが行ったブンディブギョ株曝露後のサルへのrVSV-Bundibugyoの接種に関する研究3)でも有意な生存効果が認められている。このワクチン候補に関しては、2026年中に第I相臨床試験が開始される見込みだという。もう1つの候補がオックスフォード大学とインド血清研究所が共同開発している「ChAdOx1-Bundibugyo」。これはすでに多くの医療者の中で記憶の彼方に過ぎ去ったかもしれない、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するアストラゼネカ社製のワクチン「バキスゼブリア」のブンディブギョ株版である。バキスゼブリアのサルアデノウイルスベクターにブンディブギョ株の糖タンパク質の遺伝子を挿入したウイルスベクターワクチンである。現在は前臨床データを収集中だという。さらに、同様に新型コロナに対するmRNAワクチンで名を馳せた米国・モデルナ社がブンディブギョ株対応のmRNAワクチンを開発中である。治療薬候補は4つ一方、治療薬についても現在開発が模索されている。最有力視されているのが米国・マップ・バイオファーマシューティカルの抗体カクテル「MBP134」である。エボラウイルス感染症から回復したヒトのメモリーB細胞に由来する数百種類の抗体をスクリーニングして得られた2種類のヒトモノクローナル抗体「ADI-15878」と「ADI-23774」を利用したものだ。ADI-15878はエボラ属ウイルス全体でほぼ共通しているfusion machinery(膜融合機構)を認識する抗体であるため、理論上はウイルス株に依存しない効果が期待できるとみられている。また、ADI-23774もウイルス株に依存しない糖タンパク質結合能を有するが、元となったモノクローナル抗体のスーダン株への結合能がやや低かったため、この部分に改良を加えている。2つの作用ポイントを持つため、ウイルスの変異にも対応でき、より有効性が高いと期待される。動物実験の結果4)では、ザイール株、スーダン株、ブンディブギョ株をそれぞれ曝露させたフェレットに対し、曝露から3~4日後に3日おきに2回投与し、いずれのウイルス株でも投与群のフェレットは全例生存したのに対し、コントロール群では全例死亡した。サルの実験では感染後7日目の単回筋肉注射を行い、生存率は投与群が83%、コントロール群が0%だった。また、米国・ヴァンダービルト・ワクチンセンターのグループが報告5)したブンディブギョ株感染からの生存者のメモリーB細胞に由来する遺伝子組み換えヒトモノクローナル抗体「mAb BDBV289-N」も抗体療法の候補となっている。サルによる実験結果では、ブンディブギョ株曝露後8、11日目の投与により、15日目までにウイルスRNA量は急速に減少。21日目には接種されたすべてのサルの血中でウイルスが検出限界以下となり、死亡例は認められなかった(未治療のコントロール群の致死率は40%)。さらに抗ウイルス薬として候補薬に挙げられているのが、RNAウイルスに対して抗ウイルス効果がある2種類の治療薬(候補)である。1つはすでに新型コロナの治療薬として知られるレムデシビルである。同薬が新型コロナ治療薬として注目される前の2016年に「Nature」に公表された論文6)では、ザイール株を使ったサルでの実験でウイルス曝露直後、2日後、3日後に2種類の投与量で1日1回12日間筋肉注射した各群のサルは全例生存していたのに対し、無治療のコントロール群では全例が死亡したと報告されている。現在、前出の抗体カクテル「MBP134」との併用の臨床試験が計画中と一部では報じられている。もう1つ抗ウイルス薬候補として注目されているのが、米国・ギリアド・サイエンシズが新型コロナやRSウイルス感染症に対して臨床試験中の経口抗ウイルス薬のobeldesivirである。ザイール株を使ったサルでの実験では、ウイルス曝露24時間後から10日間の連日経口投与を行った結果、投与されたサルでの生存率は80~100%に対し、コントロール群では全例死亡した。決して面白半分で見ているわけではないが、この中からどのワクチン・治療薬候補が抜け出すかは、今後の新興感染症対策を占ううえでは注目に値すると考えている。参考1)Formenty P, et al. J Infect Dis. 1999;179 Suppl 1:S48-53.2)Falzarano D, et al. J infect Dis. 2011;204 Suppl 3:S1082-1089.3)Woolsey C, et al. J Infect Dis. 2023;228(Suppl 7):S712-S720.4)Bornholdt ZA, et al. Cell Host Microbe. 2019;25:49-58.e5.5)Gilchuk P, et al. J Infect Dis. 2018;218(suppl_5):S565-S573.6)Warren TK, et al. Nature. 2016;531:381-385.

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病名や薬物治療手順を一部変更、「蕁麻疹診療ガイドライン」改訂/日本皮膚科学会

 国際ガイドラインの改訂や病態解明の進展、新たな生物学的製剤の登場などを背景に、8年ぶりの改訂版となる「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」が2026年4月に公開された。病型分類および病名の一部変更や治療アルゴリズムのアップデートが行われた今回の改訂について、ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福永 淳氏(大阪医科薬科大学)が第125回日本皮膚科学会総会で講演した。慢性蕁麻疹→慢性特発性蕁麻疹、アスピリン蕁麻疹→NSAID誘発蕁麻疹へ 蕁麻疹の病型について、特発性の蕁麻疹、刺激誘発型の蕁麻疹、血管性浮腫、蕁麻疹関連疾患という4つの大分類に変更はないが、その下の分類や病名がいくつか変更された。まず、特発性の蕁麻疹は「急性特発性蕁麻疹(発症後6週間以内)」と「慢性特発性蕁麻疹(発症後6週間超)」に、“特発性”という言葉を加える形に病名が変更された。 刺激誘発型の蕁麻疹は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーがアレルギー性蕁麻疹の一部であるという考え方に基づき、別分類されていた2018年版から、アレルギー性の蕁麻疹(食物依存性運動誘発アナフィラキシーを含む)という表記に変更された。またアスピリン蕁麻疹は、アスピリンでのみ生じるという誤解を生む可能性があることから、NSAID誘発蕁麻疹と改めた。 血管性浮腫に関しては、「マスト細胞起因性」および「非マスト細胞起因性」という中分類を新たに設け、非マスト細胞起因性の病型の1つとして「メディエーター不明の血管性浮腫」が追加された。 さらに、病態に関する記述も最新の知見をもとに大きくアップデートされた。その中で最大の特徴といえるのが、すべての文言において「肥満細胞」という名称を削除し、「マスト細胞」に統一した点である。「脂肪細胞(肥満に関わる細胞)」と混同することを避けるための配慮であり、疾患の正しい理解を促進する狙いがあるという。日本独自の疫学データを追加、慢性特発性蕁麻疹患者のボリュームゾーンは40〜50代 これまでの日本のガイドラインでは、蕁麻疹に関する詳細な疫学データが不足していたが、今回の改訂では新たに医療情報データベースなどを用いた研究結果が追加された。日本人の慢性特発性蕁麻疹の推定有病率は1.2〜1.6%であり、全国でおよそ200万人の患者が存在すると推測される。新規発症率はおよそ0.7〜0.8%である。 福永氏は、「慢性特発性蕁麻疹の有病率はヨーロッパ諸国と比較して、東アジアでより高い傾向がある。年齢分布を見ると、実は0〜9歳の小児期に新規発症の大きなピークが存在する。しかし、この年代の多くは自然治癒に向かうため、実際に医療機関で継続的な治療を要する患者のボリュームゾーンは40~50代となる。また、男女比は2対3で女性に多いことも明らかになった」と語った。網羅的検査の実施は推奨されない 検査に関しては、2018年版から「原因検索のための網羅的な検査」を推奨しない方向性であることに変更はないが、今回その姿勢をより明確に打ち出している。I型アレルギーの検査実施については、1型アレルギーが疑われる詳細な問診・病歴がある場合にのみ、疑わしい抗原に対して個別の検査を選択的に行うべきとされた(CQ1)。急性特発性蕁麻疹(CQ2)および慢性特発性蕁麻疹(CQ3)に対する検査についても、全例でルーチンに実施する必要はないとしたうえで、推奨文では以下のように記載された。急性特発性蕁麻疹:発熱などの全身症状を伴い,細菌ウイルスの感染が疑われる場合には血算・血清・生化学検査などの一般的な検査を行ってもよい慢性特発性蕁麻疹:非定型的な症例、難治性の症例などで、背景因子、合併症の存在が疑われる場合は抗ヒスタミン薬やオマリズマブの反応性を予測できる可能性があり、それらに応じた検査(血清総IgE値,甲状腺自己抗体,CRPの測定)を行ってもよいPROMs活用を推奨し、治療の第1目標を変更 今回のガイドライン策定委員会で全員一致で推奨に強い合意が得られたのが、UAS7(Urticaria Activity Score over 7 days)や、UCT(Urticaria Control Test)などの患者報告アウトカム尺度(PROMs:Patient-Reported Outcomes Measures)を用いた疾患コントロール状態の客観的評価である。治療の第1目標は、2018年版での「治療により症状が現れない状態」から「治療により生活に支障がない状態」と変更された。またその目安をUCTのスコアで表しており、第1目標(治療により生活に支障がない状態)がUCT12点以上、第2目標(治療により症状が現れない状態)がUCT16点と明記された。福永氏は、「日常診療のアセスメントの際には、ぜひUCTを活用して客観的な評価を行っていただきたい」と呼びかけた。薬物治療はStep 2にオマリズマブまたはデュピルマブ、ステロイドは「急性増悪時のみ」 治療手順については、急性と慢性でアルゴリズムが明確に分けられた。急性は主に救急外来などでの短期間の対応を想定している。薬物治療手順は、慢性特発性蕁麻疹について以下が示された。Step 1:第2世代抗ヒスタミン薬Step 2:Step1に追加してオマリズマブまたはデュピルマブStep 3:Step1に追加してシクロスポリンまたは試行的治療 2018年版でStep 2とされていたH2-拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、トラネキサム酸については、国際ガイドラインやエビデンスレベルの低さなどを背景に、Step1の補助的治療としての位置付けに変更された。 また、Step 3に含まれていた副腎皮質ステロイドに関しては、「急性増悪時のみ」とされて、プレドニゾロン換算量0.2mg/kg/日未満で2週間以内の使用に限定することが明記された。

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メル・ギブソン氏の発言後、イベルメクチンの併用処方が倍増

 俳優のメル・ギブソン(Mel Gibson)氏が、著名なポッドキャストで抗寄生虫薬イベルメクチンを「がんに有効な適応外治療」として宣伝して以降、同薬を含む併用処方数が倍増したことが、新たな研究で報告された。2025年1月、ギブソン氏はジョー・ローガン(Joe Rogan)氏のポッドキャスト番組「The Joe Rogan Experience」で、ステージ4のがんに罹患していた3人の友人が、イベルメクチンとフェンベンダゾールの併用療法により回復したと語った。フェンベンダゾールは、動物用としてのみ承認されている駆虫薬である。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医学部のKatherine Kahn氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に5月12日掲載された。 研究グループによれば、イベルメクチンや、フェンベンダゾールのようなベンゾイミダゾール系駆虫薬は、実験室レベルや動物実験では抗がん作用を示しているものの、人間のがん治療において安全性や有効性を示す臨床試験は存在しない。Kahn氏は、「たとえ馴染みのある人や影響力のある人から発信されたものであっても、広く共有されている健康情報が全て正確とは限らない。効果が証明されていない治療法の使用は、実際にリスクを伴う。特に、有効性が確認されている治療の開始が遅れてしまう場合にはなおさらだ。医師や医療機関は、患者が情報を正しく理解し、適切な判断を下せるよう支援する重要な役割を担っている」とニュースリリースで述べている。 イベルメクチンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に注目を集め、一部のインフルエンサーがCOVID-19の治療薬として宣伝した。しかし、こうした主張が裏付けられたことはなく、米国立衛生研究所(NIH)もCOVID-19に対する使用を推奨していない。 今回の研究でKahn氏らは、2018年1月1日~2025年7月31日の間に米国の67の医療機関で診療を受けた6837万3,949人の患者の電子カルテデータを用いて、18~90歳の患者に処方されたイベルメクチンとベンゾイミダゾール系駆虫薬の併用処方を特定した。併用処方は、同じ日にイベルメクチンとベンゾイミダゾール系駆虫薬(アルベンダゾール、フェンベンダゾール、メベンダゾール、およびチアベンダゾール)がそれぞれ1回以上処方された場合と定義し、月単位で1,000人当たりの併用処方率を算出した。 その結果、イベルメクチンとベンゾイミダゾール系駆虫薬の併用処方率は、2024年1月1日~2024年7月31日と比べて、ギブソン氏の発言後に当たる2025年1月1日~2025年7月31日には約2倍に上昇していた(率比1.97)。がん患者では、この併用処方率の上昇がさらに大きく、2.5倍以上に達していた(同2.63)。この傾向は、女性より男性(女性:同1.93、男性:同2.79)、また、65歳以上と比べて18~64歳(65歳以上:同1.61、18~64歳:同2.68)で、より明確であった。地域別では、米国南部での増加が特に顕著で、併用処方率は約3.9倍に上昇していた(同3.91)。 論文の上席著者であるUCLA医学部のJohn Mafi氏は、「私はプライマリ・ケア医として、全ての人が、より長く健康に生きることに役立つことが示されている治療を受ける機会を持ってほしいと思っている。たった1本のポッドキャストをきっかけに、有効性が証明されていないがん治療の処方が2倍以上に増えたこと、それが特に男性や米国南部で顕著だったことは、患者が実証済みの治療を回避したり後回しにしたりして、有効性が確認されていない治療法に頼っている可能性を示しており、懸念される」と語った。 研究グループは、「本研究結果は、不確かな医療情報が、特に有名人によって広められた場合、どれほど急速に拡散するかを示している」と指摘している。論文の筆頭著者である米バージニア工科大学のMichelle Rockwell氏は、「われわれは普段、エビデンスをいかに効率よく医療現場へ普及させるかに注目している。しかしこの結果は、別の力が極めて短期間のうちに医療行動に影響を与え得ることを改めて示した。医療システムの課題は、患者に適切なタイミングで迅速かつ信頼できる情報を届ける方法を見つけることだ」とニュースリリースで述べている。

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複合がん免疫療法の近未来/日本臨床腫瘍学会

 がん免疫療法は、複数の免疫療法を組み合わせることで治療効果を最大化する新たなフェーズへと進展しつつある。2026年3月26~28日に開催された第23回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「複合がん免疫療法の近未来」をテーマとしたシンポジウムが企画され、次世代の治療戦略が議論された。腫瘍免疫の理解が深化する中で、がん免疫応答の多面的なメカニズムを考慮した新たな複合がん免疫療法の確立が期待される。持続型T細胞免疫システムとCD4陽性T細胞療法 冒頭、各務 博氏(埼玉医科大学国際医療センター)は、近年のがん免疫療法の進歩を背景に、免疫応答をいかに持続させるかが重要な課題となっていることを指摘した。そのうえで、腫瘍微小環境内に形成される三次リンパ様構造(TLS)を基盤とした持続型T細胞免疫システムと、CD4陽性T細胞を活用した新たな治療戦略について講演した。 TLSは腫瘍局所に形成されるリンパ組織様構造で、抗原特異的T細胞の増殖や機能維持を担う場として機能する。ここでは、前駆疲弊CD8陽性T細胞(Tpex)が中心的役割を果たしている。TpexはPD-1を発現しつつも自己複製能を保持し、抗原特異的T細胞を継続的に供給する貯蔵プールとして働く。PD-1阻害薬の投与によりTpexが増殖し、抗腫瘍効果を引き起こすことが知られている。 さらに、Tpexの維持には特定のCD4陽性T細胞群が関与することが明らかとなっている。Tpexと連動して長期的な免疫応答を維持する重要な細胞集団であるTh7Rは、Tpexと類似した遺伝子発現を示し、腫瘍内で近接して分布する。解析の結果、Th7RとTpexの細胞数は相関しており、CD4陽性T細胞がTpexの形成および維持に寄与する可能性が示唆されている。 モデルマウスを使用した研究では、Th7Rを投与することで腫瘍内のTpexが増加し、抗腫瘍効果の増強が確認された。また、PD-1やCTLA-4阻害薬との併用により、その効果が持続することも示された。これは、Tpex/Th7R相互作用の維持を目的とした細胞療法として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療の有望な戦略となる可能性を示唆している。 臨床的にもCD4陽性T細胞の存在は予後と関連し、PD-1阻害薬による治療前後で血中のTh7Rが減少していない患者さんで5年生存例が多いことが報告されている。一方で、これらの細胞が減少すると再発や死亡につながる可能性がある。このため、CD4陽性T細胞を継続的に補充する細胞療法により、腫瘍微小循環を維持し、免疫応答を長期にわたって持続させる治療戦略が重要であると各務氏は指摘する。 総じて、腫瘍微小循環にはTLS・Tpex/Th7R相互作用に代表される持続型抗腫瘍細胞メカニズムが存在し、持続的ながん免疫の基盤となっている。腫瘍微小循環を維持する細胞療法の併用は、今後のICI治療の発展において重要な方向性になることが期待されている。ICIとADC併用療法の現状と展望 続いて、清水 俊雄氏(関西医科大学附属病院 新薬開発科)はICIと抗体薬物複合体(ADC)の併用療法について、その作用機序、臨床的課題、今後の展望などについて概説した。 ADCは、標的に特異的に結合する抗体、細胞障害作用を担うペイロード、そして両者を連結するリンカーの3要素から構成される。これら各要素の設計は、有効性と安全性を大きく左右する。とくにリンカーの安定性や薬物抗体比(DAR)は体内動態(PK/PD)や毒性に強く影響する。また、ペイロードの疎水性や膜透過性は、腫瘍細胞内での作用に加え、周囲細胞へも影響する重要な因子である。 臨床的課題としては、標的抗原を発現する正常組織にも作用するオンターゲット毒性と、非特異的にほかの組織へ影響を及ぼすオフターゲット毒性が挙げられる。さらに、ADCは体内で単一の形態として存在するわけではなく、完全体、ペイロードが解離した抗体、遊離ペイロードなど複数の分子種が時間とともに変動する。このような動的な分布が薬効と毒性のバランスを規定するため、PK/PDの理解と最適化が重要となる。 免疫学的観点では、ADCによる腫瘍細胞障害は腫瘍抗原の放出を促し、免疫応答を活性化する。これにより樹状細胞およびT細胞が活性化され、腫瘍細胞では主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子やPD-L1の発現が増加する。その結果、CD8陽性T細胞の腫瘍への浸潤が促進される。このような背景から、ICIとの併用による相乗的な抗腫瘍効果が期待されており、ADCとPD-1阻害薬の併用による有望な臨床試験の成績が報告されている。 一方で、併用療法の最適化にはいくつかの重要な課題がある。具体的には、標的抗原発現の維持、毒性の重複回避、ならびにADCの非特異的取り込みの抑制が挙げられる。さらに近年では、二重特異性抗体や二重ペイロードの導入、腫瘍特異的に活性化される設計、免疫刺激型ペイロードの活用など、機能を拡張した次世代ADCの開発が進んでいる。これらの新規ADCはまだ早期開発段階にあるものの、バイオマーカーの確立と臨床的有用性の検証が進めば、より精緻な個別化治療の実現が期待される。 最後に清水氏は、ADCとICIの併用療法は大きな可能性を有する一方で、その成功には分子設計、薬物動態、免疫学的作用、臨床戦略を統合的に理解することが不可欠となることを強調した。加えて、適切な薬剤選択や投与タイミングの最適化、さらには構造の改良による安全性と有効性の向上が、今後の治療成績を左右すると締めくくった。肺がん領域における二重特異性抗体の最前線 ICIの登場により、肺がん、とくに非小細胞肺がんの治療成績は大きく向上した。しかし、すべての患者さんに十分な効果が得られるわけではなく、新たな治療戦略の開発が求められている。こうした中で、最近は二重特異性抗体が注目されている。吉田 達哉氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科/先端医療科)は、肺がん領域における二重特異性抗体の臨床的展開について、最近の動向を報告した。 二重特異性抗体は、異なる2つの分子を同時に標的とすることを特徴とし、デュアルチェックポイント阻害型とT細胞誘導型(T細胞エンゲージャー)とに大きく分類される。前者は複数の免疫抑制シグナルを同時に阻害することで免疫応答を増強し、後者は腫瘍抗原とT細胞上の分子を橋渡ししてT細胞を直接腫瘍へ誘導・活性化する。造血器腫瘍ではT細胞エンゲージャーの成功例が多く報告されている一方、固形腫瘍である肺がんでは、これらを単独あるいはICIと組み合わせて用いる戦略が活発に検討されている。 肺がん領域では、特定のドライバー変異に関連する受容体を同時に標的とするアプローチや、腫瘍特異的抗原とT細胞を結び付けるT細胞エンゲージャーが臨床開発の段階から実臨床へと移行しつつある。前者は分子標的薬との併用により生存期間の延長が示唆され、後者は小細胞肺がんにおいて化学療法との併用で良好な治療成績が報告されており、新たな標準治療となる可能性がある。 一方で、患者選択の指標として用いられてきたPD-L1発現のみでは、ICIによる治療効果を十分に予測することが難しく、腫瘍変異量、抗原提示細胞や制御性T細胞の分布など、免疫微小環境をより詳細に解析する必要がある。こうした多面的なバイオマーカーの開発が、今後の個別化医療の鍵を握ると吉田氏は指摘する。 また、二重特異性T細胞エンゲージャーは腫瘍内の局所的なT細胞浸潤と免疫チェックポイント分子の発現を誘導し、ICI併用の有効性を示唆する一方で、抗原喪失などの免疫逃避が課題となる。 現在、T細胞エンゲージャーとICIの併用を検証する後期臨床試験が進行中であり、最適な併用方法や投与タイミングの確立が期待されているという。肺がん治療は、免疫療法のさらなる進展により新たな段階へと移行しつつあると、吉田氏は講演をまとめた。ICIとネオ抗原ワクチンの併用療法 近年、感染症領域におけるmRNAワクチンの成功を契機として、個別化がんワクチンの開発が大きく加速している。北野 滋久氏(がん研究会有明病院 先端医療開発科/がん免疫治療開発部)は、免疫学の観点からICIとネオ抗原ワクチンとの併用療法について概説した。 従来のがん抗原は自己由来成分に近く、十分な免疫応答を誘導できないことが多く、ワクチン療法としての成功例は限られてきた。これに対し、ネオ抗原は腫瘍細胞に特異的に生じた遺伝子変異に由来する新規タンパク質断片であり、後天的に獲得されるため免疫寛容の影響を受けにくく、高い免疫原性を持つ可能性がある。 ネオ抗原は、がん細胞内で産生された変異タンパク質が分解され、ヒト白血球抗原(HLA)に提示されることでT細胞に認識される。主にクラスIではCD8陽性T細胞、クラスIIではCD4陽性T細胞を活性化する。この過程には個人ごとのHLA型や遺伝子変異の違いが大きく影響するため、治療には患者さんごとの個別化が不可欠となる。近年では、DNAおよびRNAのシーケンシングと計算アルゴリズムを組み合わせることで、有望なネオ抗原候補を予測する技術が進歩し、個別化ワクチン開発が現実味を帯びてきた。 ワクチンにはペプチド、mRNA、DNA、ウイルスベクターなど多様な種類があり、とくにmRNAワクチンは柔軟性と開発の速さから注目されている。早期臨床試験ではネオ抗原特異的な免疫応答が確認され、ICIとの併用により抗腫瘍効果の向上が期待される。免疫応答は主にCD8陽性T細胞が担い、CD4陽性T細胞も補助的に関与する。安全性については、腫瘍特異的標的であるため理論上重篤な副作用はほとんどないと考えられる。 さらに、従来は注目されていなかったイントロンを含む非コード領域(いわゆるダークゲノム)や、スプライシング異常に由来するネオ抗原の存在も明らかになりつつあり、抗原候補の幅が大きく広がっている。全ゲノム解析を活用することで、これまで見逃されていた免疫標的の同定が進み、新たな治療戦略につながる可能性がある。 北野氏は、こうした科学的進展に加え、産学連携や国家レベルの研究基盤整備も進展しており、個別化ネオ抗原ワクチンと免疫療法の統合的アプローチは、がん治療の新たな柱として実用化に向けた期待が高まっていることを強調した。

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慢性B型肝炎、bepirovirsen追加で機能的治癒の達成割合改善/NEJM

 慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染患者の治療において、標準治療であるヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ(NA)療法へのbepirovirsenの追加はプラセボの追加と比較して、機能的治癒の達成割合が有意に高く、その一方でGrade3のALT値上昇の頻度が高いことが、中国・南方医科大学のJinlin Hou氏らによるB-Well 1・2試験の結果で示された。bepirovirsenは、すべてのHBVの転写産物を標的とする非結合型アンチセンス オリゴヌクレオチドであり、HBV RNAおよびB型肝炎表面抗原(HBsAg)の量を減少させるとともに、免疫細胞の活性化をもたらすとされる。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年5月28日号に掲載された。29ヵ国で実施した2つの無作為化プラセボ対照比較試験 B-Well 1試験およびB-Well 2試験は、日本を含む29ヵ国で実施した同一デザインの二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2022年12月~2025年5月に参加者を登録した(GSKの助成を受けた)。 対象は、スクリーニング前の少なくとも6ヵ月間にわたり安定したNA療法を受けており、HBsAg値100~3,000 IU/mL、HBV DNA値90 IU/mL未満で、ALT値が正常上限値の2倍以下の非肝硬変性慢性HBV感染の成人患者とした。 被験者を、bepirovirsen(300mg、週1回)を皮下投与する群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付け、24週間投与した。全例が、基礎治療として安定したNA療法を受け(24~48週目はNA療法単独期間)、48週時に中止基準を満たした例はNA療法を中止し、これを満たさない例は継続した。 主要アウトカムは、72週時の機能的治癒(HBV RNAが定量下限値[LLOQ:20 IU/mL未満または検出不能]を下回り、かつHBsAgが検出不能[定性的検査で0.05 IU/mL未満])とした。2試験の機能的治癒の達成割合、bepirovirsen群19~20%vs.プラセボ群0% 2試験の合計で1,838例を登録し、bepirovirsen群に1,224例(B-Well 1試験653例、B-Well 2試験571例)、プラセボ群に614例(同328例、286例)を割り付けた。ベースラインにおけるこれら4つの群の平均(±SD)年齢の範囲は48.7(±10.4)~50.2(±11.8)歳、男性の割合の範囲は69~73%、アジア系の割合の範囲は67~70%であった。 48週時にB-Well 1試験のbepirovirsen群の24%およびB-Well 2試験の同群の24%がNA療法を中止したが、両試験のプラセボ群でNA療法を中止した患者はいなかった。 ベースラインでHBsAg値3,000 IU/mL以下であった患者における72週時の機能的治癒の達成割合は、B-Well 1試験では、プラセボ群が0%(0/328例)であったのに対し、bepirovirsen群は20%(127/650例)であり(共通リスク群間差:17.5%ポイント、95%信頼区間[CI]:14.6~20.3、p<0.001)、B-Well 2試験では、プラセボ群の0%(0/286例)に対し、bepirovirsen群は19%(106/570例)(同13.3%ポイント、10.4~16.1、p<0.001)と、いずれもbepirovirsen群で有意に高かった。 また、主な副次アウトカムであるベースラインHBsAg値1,000 IU/mL以下の患者における72週時の機能的治癒の達成割合についても、B-Well 1試験では、プラセボ群が0%(0/214例)であったのに対し、bepirovirsen群は25%(105/426例)であり(リスク群間差:24.6%ポイント、95%CI:20.8~29.0、p<0.001)、B-Well 2試験では、プラセボ群の0%(0/179例)に対し、bepirovirsen群は28%(95/342例)(同27.8%ポイント、95%CI:23.3~32.8、p<0.001)と、いずれもbepirovirsen群で有意に良好だった。16%で、投与期間中のGrade3以上の有害事象 72週の時点の統合解析では、bepirovirsen群の91%、プラセボ群の73%で有害事象が発現し、重篤な有害事象はそれぞれ7%および4%で報告された。1~24週の投与期間中にbepirovirsen群で発現した有害事象のほとんどが「とくに注目すべき有害事象」で、このうち注射部位反応の頻度が最も高かった(53%)。 投与期間中のGrade3以上の有害事象は、bepirovirsen群の16%、プラセボ群の3%に認めた。bepirovirsen群で最も頻度が高かったGrade3の有害事象はALT値の上昇(6%)であった。同群で恒久的投与中止に至った有害事象は3%にみられ、bepirovirsenとの関連がない死亡が2例で発生した。薬剤誘発性肝障害の基準を満たした患者はいなかった。一過性のALT値上昇は、治療反応のマーカーと認識 著者は、「これらの知見は、24週という一定期間のbepirovirsen治療が、機能的治癒の達成に有効であり、標準治療としての継続的なNA療法に新たな有益性を付加することを示すもの」としている。 また、「bepirovirsenの投与開始後にみられる一過性のALT値上昇は、HBsAg値の低下と関連しており、bepirovirsenに対する治療反応のマーカーとして認識されている」「検査値の異常を定期的にモニタリングし、bepirovirsenの投与を一時的に中断することは、臨床的に意義のある有害事象の発現を抑制するために有効な戦略であり、恒久的な投与中止に至ったイベントは少なかった」と指摘している。

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リウマチ性多発筋痛症、セクキヌマブが有用/NEJM

 再発したリウマチ性多発筋痛症の患者において、完全ヒト型モノクローナル抗体のセクキヌマブと24週間のグルココルチコイド漸減療法の併用療法は、グルココルチコイド漸減療法単独と比較し、完全寛解を達成した患者の割合が高く、累積グルココルチコイド投与量も少ないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJohn H. Stone氏らREPLENISH Investigatorsが28ヵ国148施設で実施した第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「REPLENISH試験」の結果で示された。リウマチ性多発筋痛症は、肩や股関節の痛みとこわばりを特徴とする炎症性疾患で、グルココルチコイドが第1選択薬であるが、再発やグルココルチコイド関連の副作用がよくみられるため、有効な代替治療薬の必要性が高まっていた。NEJM誌オンライン版2026年6月3日号掲載の報告。セクキヌマブ2用量とグルココルチコイド漸減の併用療法の有効性と安全性を評価 研究グループは、リウマチ性多発筋痛症と診断され、ベースライン前12週以内にグルココルチコイド漸減中でprednisoneまたはprednisone換算5mg/日以上を投与中に少なくとも1回再発した50歳以上の患者を、セクキヌマブ300mg群(SEC-300群)、セクキヌマブ150mg群(SEC-150群)、またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け52週間投与した。全例に24週間のprednisone漸減療法を行った。 主要アウトカムは、52週時の持続的寛解を達成した患者の割合であった。持続的寛解は、12週目に寛解を達成し52週目まで寛解(リウマチ性多発筋痛症に起因するエスケープ治療またはレスキュー治療を必要とする徴候または症状の再発がなく、かつエスケープ治療またはレスキュー治療を必要とする巨細胞性動脈炎の新規診断がない)が持続した状態と定義した。副次アウトカムは年間累積グルココルチコイド投与量などで、安全性についても評価した。52週時の持続的寛解率、セクキヌマブ300mg群41.2%、150mg群40.6%、プラセボ群20.4% 2023年3月~2024年7月にスクリーニングを受けた474例中、381例が無作為化された(各群127例)。 52週時の持続的寛解率は、SEC-300群41.2%(95%信頼区間[CI]:32.8~49.7)、SEC-150群40.6%(95%CI:32.2~49.0)、プラセボ群20.4%(95%CI:13.6~27.2)であった(各セクキヌマブ群とプラセボ群との比較でp<0.001)。 52週時の補正後年間累積グルココルチコイド投与量の平均値は、プラセボ群2,093.0mgに対し、SEC-300群1,603.7mg(プラセボ群との平均差:-489.4mg、95%CI:-734.47~-244.25、p<0.001)、SEC-150群1,683.2mg(プラセボ群との平均差:-409.9mg、95%CI:-661.8~-157.9、p=0.002)であった。 有害事象の発現割合は、SEC-300群91.3%(115/126例)、SEC-150群88.1%(111/126例)、プラセボ群89.8%(114/127例)で、重篤な有害事象はそれぞれ13.5%、15.9%、14.2%に認められた。鼻咽頭炎、過敏症反応、尿路感染、真菌感染および背部痛は、プラセボ群よりセクキヌマブ群で発現割合が高かった。

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麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合生ワクチン「ミムリット皮下注用」【最新!DI情報】第65回

麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合生ワクチン「ミムリット皮下注用」今回は、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(商品名:ミムリット皮下注用、製造販売元:第一三共)」を紹介します。乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチンに、おたふくかぜワクチンを混合することで、接種回数が減少して非接種者の負担軽減につながることが期待されています。<効能・効果>麻しん、おたふくかぜおよび風しんの予防の適応で、2026年5月11日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>本剤を添付の溶剤(日本薬局方注射用水)0.7mLで溶解し、その0.5mLを1回皮下に注射します。生後12月以上の者であれば性、年齢に関係なく接種できます。接種年齢は、学会などの最新の情報を考慮して総合的に判断します。<安全性>重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー、免疫性血小板減少症、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、脳炎・脳症、けいれん(熱性けいれんを含む)、無菌性髄膜炎、難聴、精巣炎、急性膵炎(いずれも頻度不明)があります。その他の副反応として、発熱(33.6%)、注射部位の紅斑(22.5%)、腫脹、疼痛(いずれも注射部位、5%以上)、内出血、硬結(いずれも注射部位)、嘔吐、湿疹、発疹、上咽頭炎(いずれも0.5~5%未満)、注射部位のそう痒感、下痢、鼻漏、上気道の炎症、紅斑、丘疹、斑状丘疹状皮疹、蕁麻疹(いずれも0.5%未満)があります。<患者さんへの指導例> 1.このワクチンは、麻しん、おたふくかぜ、風しんの混合ワクチンです。麻しんウイルスとムンプスウイルス、風しんウイルスを弱毒化した生ワクチンで、接種後に体の中でワクチンウイルスが増え、それぞれの抗体ができます。 2.生後12月以上の者であれば性別、年齢に関係なく接種できます。 3.ワクチン接種に伴う副反応として、接種部位が接種直後から数日中に赤くなる、硬くなる、腫れることがありますが、通常、一過性で消失します。 4.妊婦は接種できません。 5.妊娠可能な女性は、あらかじめ約1ヵ月間避妊した後に接種します。また、ワクチン接種後約2ヵ月間は妊娠しないように注意してください。 <ここがポイント!>麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる感染症で、「はしか」とも呼ばれています。感染後、10〜12日の潜伏期間を経て、38℃前後の発熱、発疹、咳、鼻汁などの症状が現れます。重症化した場合には、肺炎や脳炎を引き起こすこともあります。流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスによって引き起こされる感染症で、「おたふくかぜ」とも呼ばれています。感染後、2〜3週間の潜伏期間を経て、片側または両側の耳下腺部に炎症や疼痛が生じ、発熱、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。通常は1~2週間で軽快しますが、合併症として無菌性髄膜炎、精巣炎、卵巣炎、膵炎、難聴などを引き起こすことがあります。とくに難聴は高度となることが多く、発症すると不可逆的な聴覚障害が残ることがあります。従来はまれな合併症とされていましたが、近年では0.1〜0.25%程度の発症率という報告があります。風しんは、風しんウイルスによって引き起こされる感染症です。感染後、2~3週間の潜伏期間を経て、発熱、発疹、リンパ節の腫れなどの症状が現れます。風しんに対する免疫力が不十分な妊婦が感染すると、出生児に心疾患、白内障、感音性難聴、精神運動発達遅延などの先天性異常が認められることがあります。妊娠中は弱毒生ワクチンを接種できないため、抗体を持たない、あるいは抗体価の低い妊婦は、風しん流行時における感染に十分注意することが重要です。ミムリットは、麻しん/おたふくかぜ/風しん(measles/mumps/rubella:MMR)ワクチンであり、麻しん、おたふくかぜおよび風しんの各原因ウイルスを弱毒化した生ウイルスを含む3種混合ワクチンです。本邦では、1989年から4年間にわたってMMRワクチンが小児の予防接種に使用されていましたが、当時のおたふくかぜワクチンの副反応として発熱、嘔吐、けいれんなどを伴う無菌性髄膜炎が高頻度に発生し、大きな社会問題となりました。そのため、MMRワクチンは使用が中止され、以降は麻しんおよび風しんの予防には単独ワクチンまたはMRワクチンの定期接種が、おたふくかぜの予防には単独ワクチンの任意接種が行われてきました。しかし、その結果、国内のおたふくかぜワクチンの接種率は30〜40%程度にとどまり、数年ごとにおたふくかぜの流行が繰り返されてきました。こうした状況を受け、2013年12月に厚生労働省から一般社団法人日本ワクチン産業協会に対して安全性の高いMMRワクチンの開発要請が出されました(健感発1216第1号)。さらに2018年5月には、予防接種推進専門協議会から「おたふくかぜワクチンの定期接種化に関する要望」が厚生労働省健康局(現健康・生活衛生局)に提出されました。このような背景から、MMRワクチンの開発が進められ、弱毒生麻しんウイルス(AIK-C株)、弱毒生風しんウイルス(高橋株)および弱毒生ムンプスウイルス(RIT4385株)を混合した本剤が承認されました。なお、RIT4385株は、無菌性髄膜炎の発現頻度が低いムンプスウイルス株として、海外では小児の定期接種に用いられるMMRワクチンに広く使用されています。 日本人健康小児を対象とした国内第III相臨床試験(VN0102-A-J301試験)において、主要評価項目である治験薬接種42日後の麻しんウイルスに対する抗体保有率は、本剤群99.8%(95%信頼区間[CI]:98.7~100.0)および対照群100.0%(95%CI:99.1~100.0)で、群間差は−0.2%(95%CI:−1.3~0.7)でした。また、風しんウイルスに対する抗体保有率は、本剤群99.5%(95%CI:98.3~99.9)および対照群99.5%(95%CI:98.3~99.9)で、群間差は0.0%(95%CI:−1.3~1.3)でした。麻しんウイルスおよび風しんウイルスに対する抗体保有率は、群間差の95%CIの下限値(いずれも−1.3%)が非劣性マージンである−10%を上回ったことから、本剤の対照薬に対する非劣性が検証されました。一方、ムンプスウイルス(Genotype D)に対する抗体保有率は、本剤群80.6%(95%CI:76.5~84.4)および対照群88.1%(95%CI:84.6~91.0)で、群間差は−7.5%(95%CI:−12.5~−1.9)でした。群間差の95%CIの下限値(−12.5%)が非劣性マージンである−10%を下回ったことから、本剤の対照薬に対する非劣性は検証されませんでした。しかしながら、本剤のムンプスウイルスに対する抗体保有率は80.6%であり、おたふくかぜの発症予防効果が確認されている海外MMRワクチンの試験成績と比較しても遜色のない結果でした。また、J302試験(低力価および高力価製剤の国内第III相臨床試験)およびJ303試験(ワクチンを1回接種したことが明らかな小児を対象とした国内第III相臨床試験)におけるムンプスウイルスに対する抗体保有率はいずれもおおむね95%以上でした。

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第323回 眼の細胞を若返らせる遺伝子治療が初の患者投与に漕ぎ着けた

眼の細胞を若返らせてより働けるようにする遺伝子治療が、第I相試験で被験者に初めて投与されました1,2)。組織を不調にしてやがて個体の死をもたらす老化の原因の一端は、ゲノムのDNA修飾(エピゲノム)の乱れが蓄積して、組織の機能や再生能が低下していくことにあるとみられています。その名のとおりメチル基がDNAに付加されることで生じるDNAメチル化はエピゲノムの主だった変化の1つで、細胞がそれぞれの個性に応じた遺伝子一揃いを発現できるようにする役割を担っています。胚発達期に確立するDNAメチル化のおかげで多様な細胞が生み出されます。そのような若かりし頃のDNAメチル化の特徴は年を経るごとに失われ、発現すべき遺伝子が沈黙したり逆に不必要な遺伝子が発現したりするなどの混乱(noise)が蓄積して細胞の機能を損なわせ、やがては組織の機能や再生能の衰えなどの生物学的老化を招くようです。生物学的老化の指標としてDNAメチル化特徴の変遷が用いられますが、はたして若かりし頃のDNAメチル化特徴を取り戻すことは可能でしょうか? 可能だとして、それが組織の機能改善をもたらすでしょうか?ハーバード大学医学部教授のDavid Sinclair氏らの2020年のNature誌報告3)によると、どうやらどちらも可能なようです。ノーベル賞科学者の山中 伸弥氏の成果にちなんで山中因子と呼ばれる転写因子4つが、エピゲノムを初期化して原始の胚のときの状態に逆戻りさせることが知られています。山中因子はいわば若返り因子でもありますが、マウスでの検討で腫瘍を生じさせる懸念が示唆されています4)。また、細胞の個性(identity)を完全に消し去ってしまいます5)。そこでSinclair氏らのチームは腫瘍促進や細胞個性消失の懸念を払拭するべく、山中因子からc-Mycを差し引いた残りの3つの転写因子のOct4、Sox2、Klf4を使ってDNAメチル化を若返らせる手段を生み出しました。その3つはそれぞれの頭文字をとってOSKと呼ばれます。アデノ随伴ウイルス(AAV)を運搬役としてOSK遺伝子をマウスの視神経の網膜神経節細胞(RGC)に届けたところ、DNAメチル化や遺伝子転写特徴が若い頃のようになり、損傷後の軸索再生が促進しました。また、治療効果もあり、緑内障や老齢マウスの視力が回復しました。その結果から哺乳類の組織は若い頃のエピゲノム情報を残しており、組織機能の改善や再生の促進のために必要とあらば引き出せると示唆されました。今回第I相試験で初めて患者に投与された遺伝子治療はER-100と呼ばれ、ほかでもないSinclair氏らが設立した米国・ボストン拠点のバイオテクノロジー企業Life Biosciencesによって開発されています。マウスでの検討と同様に、ER-100はAAVに託してOSK遺伝子をRGCに届けてよい塩梅に発現させることを目指します。眼と脳を繋ぐRGCはそもそも再生できず、ゆえにRGCが傷むと永続的な視力障害に陥ります。ER-100が生み出すOSKはRGCを再生させてその機能が回復するようにします。第I相試験でER-100はRGCが傷つくことを特徴とする開放隅角緑内障患者の片眼に注射され、安全性や許容のほど、それに視力も検査されます。開放隅角緑内障と同様にRGC損傷を特徴とする非動脈炎性虚血性視神経症患者もやがて試験に参加する見込みです2)。試験には多ければ18例が参加します6)。 参考 1) Life Biosciences Announces First Patient Dosed in Phase 1 Trial of ER-100 for Optic Neuropathies / GLOBE NEWSWIRE 2) World-first: therapy to make cells young again trialled in a person / Nature 3) Lu Y, et al. Nature. 2020;588:124-129. 4) Abad M, et al. Nature. 2013;502:340-345. 5) Scientists Reverse Age-Related Vision Loss, Eye Damage from Glaucoma in Mice / Harvard Medical School 6) Evaluating ER-100 for Safety in People With Glaucoma or Non-Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy(Optic Nerve Conditions) / NCT07290244

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抗菌薬使用とセリアック病発症に因果関係は認められず

 抗菌薬の使用はセリアック病(CD)の発症と関連付けられてきたが、新たな研究で、この因果関係を支持するエビデンスは認められないことが示された。CD患者では、CDではないきょうだいや一般集団と比較して抗菌薬使用のオッズが高かったものの、腸粘膜が正常な人では、そのオッズはさらに高かったという。ヨーテボリ大学(スウェーデン)のMaria Ulnes氏らによるこの研究は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に4月27日掲載された。 Ulnes氏は、「CDと抗菌薬使用との間に因果関係は認められなかった。抗菌薬の適正使用が重要であることに変わりはないが、CD発症を恐れて抗菌薬の使用を避ける理由はない」と述べている。 CDは、小麦・大麦・ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する自己免疫反応によって腹痛や下痢などの症状が引き起こされる自己免疫疾患である。小腸粘膜に慢性的な炎症が生じ、栄養吸収不良を来すことを特徴とする。 今回の研究では、生検によりCDが確認された患者2万7,789人、非CDの一般集団13万3,451人、CD患者のきょうだい3万3,112人を対象に、抗菌薬使用とCDとの関連を検討した。さらに、二次解析として、生検で組織学的に正常な小腸粘膜と判定された22万5,548人と、その対照となる一般集団108万9,796人との比較も行った。 その結果、抗菌薬の使用歴を有する割合は、CD群で69%、一般集団で63%であり、CD群では抗菌薬使用のオッズが高いことが示された(調整オッズ比〔aOR〕1.24、95%信頼区間〔CI〕1.21~1.28)。この関連は、抗菌薬の使用回数が多いほど強くなり、未使用と比べて1~2回の使用でaORは1.21(95%信頼区間1.17~1.25)、3回以上で1.35(同1.30~1.41)であった。さらに、きょうだい同士の比較でも、この関連が認められた(aOR 1.29、95%信頼区間1.24~1.35)。しかし二次解析では、腸粘膜が組織学的に正常な人でも抗菌薬使用との強い関連が見られ、その関連はCD患者よりも強かった(同1.50、1.48~1.51)。このことから、抗菌薬使用がCDの原因ではない可能性が示唆された。 Ulnes氏は、「CDは抗菌薬使用の結果だと考えられがちだが、その関連は、実際にはもっと複雑だ。感染症への感受性や食習慣などが腸内細菌叢に影響を与え、それがCDの発症に関与している可能性が考えられる。この場合、抗菌薬の適切な使用自体がリスクになるとは考えられないだろう」と述べている。

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HSV脳炎後の自己免疫性脳炎に注意、2026年GLでフロー新設/日本神経学会

 2026年3月、『細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014』と『単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017』を統合した『細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026』(日本神経学会・日本神経感染症学会監修、南江堂)が発刊された1)。 5月20~23日に開催された第67回日本神経学会学術大会の生涯教育セミナーにおいて、本ガイドライン作成委員会委員長を務めた中嶋 秀人氏(日本大学医学部内科学系神経内科学分野 主任教授)が「細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026の改訂のポイント」と題して講演を行った。講演レポートとして、「細菌性髄膜炎」を取り上げた前編に続き、後編では「単純ヘルペス脳炎」、そしてガイドライン外の重要なトピックである「水痘・帯状疱疹ウイルス中枢神経感染症」について紹介する。【単純ヘルペス脳炎】初期治療の迅速性と診断のゴールドスタンダード 単純ヘルペス脳炎(HSE)も細菌性髄膜炎と同様に「Time is Brain」の疾患である。発熱・意識障害・けいれんでHSEを疑ったら検査結果を待たず、受診から6時間以内にアシクロビル(ACV)投与を開始するのが望ましい。診断のゴールドスタンダードは髄液HSV PCRであり、高感度PCR(リアルタイムPCR)とFilmArray髄膜炎・脳炎パネルは、いずれも実臨床で有用である。FilmArrayは迅速診断に有用だが、検出感度はリアルタイムPCRより劣る可能性がある。なお発症72時間以内はウイルス量が少なく、4〜24%で偽陰性となりうるため、臨床的に強く疑われる場合は治療を中断せず、3〜7日後に再検する。治療はACV 10 mg/kg/回を8時間ごとに点滴静注し、髄液中HSV-DNAが高感度PCRで2回連続して陰性化するまで継続する(免疫正常例14〜21日間、免疫不全例21日間以上が目安)。HSEと自己免疫性辺縁系脳炎の鑑別 HSEは自己免疫性辺縁系脳炎(ALE)と類似の画像を示すため、初期の鑑別が課題となる。鑑別には実臨床で即座に使えるMRIの3基準が有用で、(1)拡散強調画像(DWI)での拡散制限、(2)側頭葉外(島回・前頭葉眼窩面)への病変進展、(3)ガドリニウム造影効果、のいずれも認めない(3基準すべて陰性)場合、感度95%・特異度100%でHSEを否定し、ALEを支持できる。HSE後自己免疫性脳炎(AE post-HSE) HSE後自己免疫性脳炎(AE post-HSE)は、HSE発症後2週〜3ヵ月に患者の7〜27%で発症し、HSEの治療後に症状の動揺・再燃として顕在化するため注意を要する。ウイルスの再活性化ではなく、ウイルス感染を引き金とした免疫介在性の病態であり、検出される自己抗体は抗NMDA受容体抗体が64〜70%と最多で、約3割は既知抗体陰性(未知の神経表面抗体)である。ガイドラインにはAE post-HSEのフローチャートが新設された。HSE治療後に症状の動揺・新規出現・再発がみられた場合は、まず速やかにACVを再開し、髄液HSV-DNAの高感度PCRを再検する。陰性でAEが疑われれば神経表面抗体スクリーニングを実施し、初期免疫療法(ステロイドパルス[IVMP]・IVIg・血液浄化療法)へ移行する。臨床像は年齢で異なり、乳幼児(4歳以下)では舞踏アテトーゼやジスキネジア、4歳以上の小児・成人では急性発症の異常言動・精神症状・認知機能低下が前景に立つ。HSEの後遺症とサポート HSEは適切なACV治療を行っても予後は楽観できず、生存者の18〜45%に高度な後遺症が残る。その内訳は記憶障害が34〜69%と最多で、次いで人格障害・失語・てんかん・見当識障害・嗅覚障害などがみられる。これらはQOLに甚大な影響を与えるため、認知療法・行動療法・理学療法・作業療法・言語療法を含む多角的なリハビリテーションの継続が望まれる。臨床で急増する水痘・帯状疱疹ウイルス中枢神経感染症(ガイドライン外) 本講演では、神経領域で重要性が増している新たなトピックとして、ガイドライン外である水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)中枢神経感染症についても中嶋氏が補足した。VZV感染は高齢化と免疫抑制薬の普及を背景に実臨床で急増しており、中嶋氏らの自施設における10年間(2013~22年)の解析では、成人の無菌性髄膜炎のうちVZVが約30%を占め、原因が判明した症例の中で最多であった。 診断上のピットフォールとして、VZV中枢神経感染症の約13%は特徴的な皮疹を伴わない(無疹性帯状疱疹、zoster sine herpete)。皮疹がなくとも、激しい頭痛・発熱や神経痛様疼痛があれば躊躇なく髄液PCR(VZV-DNA)を行う必要がある。また70歳以上ではVZV脳炎が増加する一方、50歳以上では頭痛・項部硬直が乏しく診断が遅れやすい。さらにVZVは血管壁に感染して炎症・血管リモデリングを起こすと考えられ、感染後数ヵ月は脳卒中リスクが上昇する。とくに眼部帯状疱疹ではそのリスクが高く(メタ解析でRR 1.91)、発症後6ヵ月間は脳血管イベントを監視する必要がある。すべての臨床医へ:「疑ったらまず治療」―予後を握る初期対応 細菌性髄膜炎、単純ヘルペス脳炎、そしてVZV中枢神経感染症は、いずれも早期診断・早期治療が転帰を決定するTime is Brainの疾患である。中嶋氏は本ガイドラインについて、「これらの疾患を専門とする医師だけでなく、プライマリケアや救急などを担当する多くの医師も鍵を握っています。『疑ったら、検査結果を待たずにまず治療を始める』―細菌性髄膜炎は1時間以内、単純ヘルペス脳炎は6時間以内、という大原則を心に留めていただければと思います。新しい診断ツールや知見を柔軟に活用しつつ、迷ったときに頼れる身近な一冊として、日常診療のそばに置いていただけたら幸いです」と展望を述べた。

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米国、麻疹排除国の地位を失う瀬戸際に

 米国が麻疹(はしか)排除国としての地位喪失に急速に向かっていることが、新たな研究で示された。米国は2000年に麻疹排除の達成を宣言したが、同年に米疾病対策センター(CDC)が設定した麻疹排除状態の維持の7つの指標のうち4項目を満たせていない状況にあるという。この研究は米ボストン小児病院の小児科医で博士研究員のAnne Bischops氏らのグループによるもので、詳細は、「The Lancet」に5月2日掲載された。Bischops氏は、「米国が2026年中に麻疹排除国の地位を失う可能性は極めて高いと考えられる」と結論付けている。 世界保健機関(WHO)によると、重症の麻疹感染は命に関わる肺炎や脳炎を引き起こす可能性がある。また、視力や聴力に長期的な障害が残ることもある。論文の上席著者であるボストン小児病院のMaimuna Majumder氏は、「麻疹は回復したとしても、生涯にわたる問題が残る可能性がある。特に1歳未満の乳児は重篤な合併症のリスクが極めて高い。この流行で感染した子どもが受ける真の影響は何年も経過してから初めて明るみに出るかもしれない」とニュースリリースで述べている。  本研究の背景情報によると、米国で最近相次いでいるアウトブレイクは2025年1月にテキサス州から始まり、その後45州に広がった。研究グループは今回、現在の米国の状況を、CDCの国家予防接種プログラムが定めた、麻疹排除状態が維持されているかを評価する7指標と照らし合わせた。その結果、7項目のうち4項目が既に排除維持の基準を満たしていないことが明らかになった。・麻疹罹患率が低い:患者数は人口1000万人当たり1例未満米国では2026年初頭の時点で人口1,000万人当たり93.2例が報告されている・麻疹症例の大多数を国外から持ち込まれた症例が占めている2025年初頭以降、国外由来の症例は全体の6~7%に過ぎず、大半は国内感染例であった。・アウトブレイクの発生数が少なく(中央値が年間4件以内)規模が小さい(1回のアウトブレイクの症例数が中央値6例)米国では2025年には48件のアウトブレイクが発生し、2,000例超の感染例が報告された。今年もすでに19件のアウトブレイクが発生し、1,600例超の感染例が報告されている。・伝播レベルが低い:1人の感染者が平均して1人未満に感染させる2025年初頭以降の期間の75%以上でこの基準を超えていた。 また、残る3つについても悪化傾向が認められた。・感染源不明症例が4週連続で発生していない2025年1月の最初の感染例以降、米国では4週連続で症例報告がなかった期間は一度もなく、また全体の90%が国内感染例だった。・ワクチン接種による集団免疫集団免疫の達成には95%の人々が2回の麻疹ワクチン接種を受ける必要があるが、2024~2025年度の米国の幼稚園児の平均接種率は92.5%、6~59歳における麻疹抗体保有率(2017~2020年)は95.7%だった。・国内に定着して持続的に感染を広げている麻疹ウイルス株がない大多数の症例でウイルスの遺伝子型が同一であり、多くが同一配列を有していることから、同じ系統のウイルスが国内で伝播している可能性が示唆されている。 この研究結果は、今後開催予定の汎米保健機関(PAHO)の感染症専門家委員会にも影響を及ぼす可能性がある。同委員会は11月の会議で米国の麻疹排除国としての地位の再評価を予定している。なお、研究グループによると、カナダは2025年11月に麻疹排除国の地位を失っている。 「こうした流れを食い止めるには、ワクチン接種の取り組みを強化し、接種免除率を低下させ、現在も広がりつつある地域内感染を断ち切ることが不可欠だ」と研究グループは主張している。

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iPS細胞由来の人工心筋移植、心不全治療に有望/NEJM

 生物学的心室補助組織(BioVAT)は、同種の人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の心筋細胞と間質細胞から成る人工心筋の移植片であり、心不全および左室駆出率(LVEF)が低下した患者における心筋再筋肉化を目的とする。ドイツ・University Medical Center GottingenのWolfram-Hubertus Zimmermann氏らBioVAT-HF Investigatorsは「BioVAT-HF研究」において、BioVAT移植は3ヵ月の時点で有意な標的壁厚の増加とLVEFの上昇をもたらし、健康状態も有意に改善したと報告した。研究の成果は、NEJM誌2026年5月28日号に掲載された。ドイツの第I/II相研究 研究グループは、心不全患者における外科的なBioVAT移植による組織工学的な心臓修復法の安全性と有効性の評価を目的に、ドイツの2施設で非盲検第I/II相研究を実施した(German Center for Cardiovascular ResearchおよびRepaironの助成を受けた)。今回は、事前に規定された3ヵ月時の中間解析の結果を公表した。 対象は、LVEF 35%以下の症候性心不全で、少なくとも1つの左室セグメントに壁運動の低下または異常を認め、ガイドラインに基づく薬物療法に抵抗性の年齢18~80歳の患者であった。 被験者は、5、10、20単位の人工心筋から成るBioVAT移植片による治療を受けた。全例に免疫抑制療法を行った。3例が死亡、移植とは関連なし 26例(平均年齢59[SD 10]歳、男性23例[88%]、平均罹患期間4.6年[範囲:0.4~16])を登録し、20例がBioVAT移植による治療を受けた。 移植を受けた全患者で有害事象が発現した。196件の有害事象のうち57件が重篤な有害事象であった。3例(5件)で心室性頻拍を認めたが、いずれもBioVAT移植とは関連がない可能性が高かった。また、心室細動が発生した患者はいなかった。 研究期間中に3例が死亡し(血管麻痺を伴う全身性炎症反応症候群[SIRS]、新型コロナウイルス感染症、大動脈解離)、いずれもBioVAT移植とは関連がないと判定された。また、1例が心臓移植を受けた。 4例で免疫抑制療法が中止された。中止理由は、植込み型左室補助人工心臓(LVAD)の装着が2例、腎不全が1例、尿路上皮がんが1例であった。3つの主要エンドポイントが改善 BioVATの安全な最大用量(人工心筋20単位)による治療を受けた16例のうち、12例が事前に規定された中間解析のための3ヵ月間の追跡調査を完了した。 3つの有効性の主要エンドポイントは、以下のとおり3ヵ月の時点でいずれも有意に改善した(事前に規定された両側有意水準p<0.10を満たした場合に有意差ありと判定)。 標的壁厚の最小二乗平均の値は4.5mm(90%信頼区間[CI]:3.7~5.4、p<0.001)増加し、LVEFは3.9%ポイント(0.9~6.8、p=0.04)上昇した。また、カンザスシティ心筋症質問票の全体の要約スコア(KCCQ-OSS:0~100点、高点数ほど健康状態が良好)は6.7点(1.0~12.5、p=0.06)上昇した。 著者は、「これらの知見を確定するには、より長期の追跡調査とさらなる臨床評価が必要である」としている。 また、「概念的には、BioVAT移植による、収縮力が低下した領域への収縮性心筋の追加は、収縮機能と拡張機能の両方をサポートする可能性があり、またラプラスの法則により標的壁厚の増加は壁応力を低下させると考えられる。これらの効果が、左室のリモデリングの逆転に寄与する可能性がある」と考察している。

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細菌性髄膜炎・HSV脳炎GL改訂、経験的治療の薬剤選択を見直し/日本神経学会

 2026年3月、『細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014』と『単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017』を統合した『細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026』(日本神経学会・日本神経感染症学会監修、南江堂)が発刊された1)。今回の改訂では、ワクチン定期接種化による起炎菌の変遷、薬剤耐性菌の動向、FilmArray髄膜炎・脳炎パネルに代表される遺伝子検査の普及などを反映し、初期治療から退院後のフォローアップに至る一連の流れが大幅に刷新されている。 5月20~23日に開催された第67回日本神経学会学術大会の生涯教育セミナーにおいて、本ガイドライン作成委員会委員長を務めた中嶋 秀人氏(日本大学医学部内科学系神経内科学分野 主任教授)が「細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026の改訂のポイント」と題して講演を行った。講演レポートとして、前編では「細菌性髄膜炎」、後編では「単純ヘルペス脳炎」について、2回にわたって紹介する。ガイドライン改訂の主なポイント【細菌性髄膜炎】初期の経験的治療(エンピリックセラピー)のレジメン変更と迅速性 今回の改訂では、経験的治療の薬剤選択が見直された。髄液由来肺炎球菌では第3世代セフェム耐性率・メロペネム(MEPM)耐性率がともに上昇傾向にあり、2023年のJANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)データではMEPM耐性率が18.2%に上昇している。一方でバンコマイシン(VCM)は感性を維持している。そのため、第3世代セフェム(セフォタキシム[CTX]/セフトリアキソン[CTRX])またはMEPMのいずれを用いる場合もVCMを併用することが推奨され、年齢・免疫状態に応じた迅速な薬剤選択が求められる。年齢・免疫状態別のレジメン例・免疫正常(16〜49歳):肺炎球菌(60%以上)、髄膜炎菌 第3世代セフェム(CTXまたはCTRX)+VCM MEPM+VCM ・免疫正常(50歳以上):肺炎球菌が最多。リスクの高まるリステリア菌をカバーするためABPCを追加 アンピシリン(ABPC)+第3世代セフェム(CTXまたはCTRX)+VCM MEPM+VCM ・慢性消耗疾患・免疫不全:肺炎球菌・リステリア菌に加え、グラム陰性桿菌(GNR)やMRSAも考慮 ABPC+セフタジジム(CAZ)+VCM MEPM+VCM ・頭部外傷後・外科手術後:ブドウ球菌に加え、緑膿菌を含むGNRを考慮 MEPM+VCM CAZ+VCMTime is Brainの原則 細菌性髄膜炎は「Time is Brain」の病態であり、病院到着から1時間以内の抗菌薬投与開始を目標とする。頭部CTや腰椎穿刺によって投与が遅れる場合は、検査の完了を待たずに抗菌薬を先行投与する。なお、古典的三徴(発熱・項部硬直・意識障害)が揃う例は成人全体でも33%にすぎず、とくに高齢者では発熱が目立たないことや、意識障害が認知症・せん妄と誤認されやすいことから、厳重な警戒を要する。デキサメタゾン併用による炎症反応の抑制 炎症抑制による予後改善のため、すべての成人患者にデキサメタゾンの併用(最初の抗菌薬投与の前または同時開始、4日間)が推奨される。死亡率・神経学的後遺症・聴力障害の減少が期待できる。ただし、起炎菌が肺炎球菌・インフルエンザ菌以外なら中止し、とくにリステリアが起炎菌として判明した場合は死亡率悪化のエビデンスがあるため直ちに中止する。診断技術のアップデート:FilmArray髄膜炎・脳炎パネル 約1時間で主要病原体14種を同定できるマルチプレックスPCR遺伝子検査「FilmArray髄膜炎・脳炎パネル」が2022年10月に保険収載され、診断フローに位置づけられた。従来は培養検査やグラム染色の結果判明まで数日を要していたが、本検査による迅速な病原体同定は、経験的に開始したアシクロビル(ACV)の投与期間短縮など医療資源の適正使用に寄与する。起炎菌・感受性が判明した後は、速やかに狭域スペクトラムの抗菌薬へ変更する(De-escalation)。FilmArray検査のピットフォール 一方で、FilmArray検査には実臨床上の限界(ピットフォール)があり、結果は臨床症状・髄液所見と合わせて総合的に判断する必要がある。細菌性髄膜炎では、本検査で薬剤感受性(耐性菌の有無)が判別できないため、培養検査・グラム染色を省略せず必ず並行して実施しなければならない。また、結核菌はパネルに含まれず、院内感染や基礎疾患を有する例、脳外科術後の髄膜炎例には不向きである点にも注意を要する。抗補体薬を使用する患者への対応 重症筋無力症や視神経脊髄炎スペクトラム障害など神経疾患への抗補体薬(C5阻害薬:エクリズマブ、ラブリズマブ、ジルコプランなど)の適応拡大を反映し、抗補体薬使用患者への対応が新設された。抗補体薬使用患者では侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)のリスクが1,000〜2,000倍に上昇し、劇症型を呈しうる。本邦のIMD致命率は10〜12%と高く、発症から24〜48時間で致命的合併症を来しうるため、予防と早期対応がきわめて重要である。投与開始の2週間前までに4価髄膜炎菌ワクチン(販売名:メンクアッドフィ)を接種する(B群髄膜炎菌は本ワクチンの対象外で、B群ワクチンは国内未承認)。発熱時には髄膜炎症状がなくてもIMDを念頭に血液培養2セットを採取し、結果を待たずに第3世代セフェム(CTRXなど)を直ちに開始する。(後編「単純ヘルペス脳炎」に続く)

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腎細胞がん1次治療、ミヤBM併用でICIの有効性高まる可能性/ASCO2026

 転移を有する腎細胞がん(mRCC)の1次治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を含むレジメンに生菌製剤であるCBM588(ミヤBM)を追加することで、臨床的活性が高まる可能性が示唆された。さらに、便のメタゲノム解析により、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)を有する患者においてCBM588追加の恩恵がより大きいことが明らかになった。米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのRahul Winayak氏が、2つの第I相無作為化比較試験(NCT038291111)、NCT051225462))の統合解析結果を米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)で報告した。・対象:未治療のmRCC患者・試験群(CBM588群):標準治療(ニボルマブ+イピリムマブまたはニボルマブ+カボザンチニブ)+CBM588 39例・対照群:標準治療のみ 20例・評価方法および評価項目:メタゲノム ショットガン・シーケンス(全ゲノムシーケンス)データを用いて、TOPOSCOREとS-SCOREを算出。SIG1+(特定の細菌叢の異常[ディスバイオシス]がみられる)vs.SIG2+(腸内細菌叢が正常)について解析を実施。無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)などを比較した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は、年齢中央値がCBM588群67歳vs.対照群61.5歳、淡明細胞型腎細胞がんが89.7%vs.85.0%、IMDC分類中/高リスクが76.9%vs.82.4%、転移部位として最も多かったのは肺で74.4%vs.65.0%であった。・ORRはCBM588群69.2%vs.対照群20.0%(p=0.001)、DCRは79.5%vs.45.0%(p=0.0095)であった。・コホート全体におけるPFS中央値は、CBM588群32.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~未到達)vs.対照群3.7ヵ月(95%CI:2.6~17.0)であり、CBM588の追加により進行リスクが有意に低下した(調整ハザード比[aHR]:0.31、95%CI:0.16~0.62、p=0.001)。・SIG1+の患者におけるPFS中央値は、CBM588群24.9ヵ月vs.対照群2.8ヵ月と、CBM588追加による顕著なPFSの改善が認められた(aHR:0.17、95%CI:0.05~0.54、p=0.003)。・一方で、SIG2+の患者におけるPFS中央値は、CBM588群32.0ヵ月vs.対照群10.9ヵ月であり、CBM588追加による統計学的に有意な改善は認められなかった(aHR:0.58、95%CI:0.19~1.73、p=0.328)。・Grade3~4の有害事象はCBM588群56.4%vs.対照群50.0%で発現した。Grade3~4の下痢は10.3%vs.5.0%であったが、全体としてCBM588追加による新たな安全性上の懸念は認められなかった。 Winayak氏は、「mRCCの1次治療において、ICIレジメンにCBM588を追加することで臨床成績が改善し、新たな安全性上の懸念も認められなかった。とくにディスバイオシスを有する患者(SIG1+)でCBM588の恩恵がより大きいことが示唆された」とまとめた。現在、mRCCにおけるCBM588の臨床的活性を評価する第III相無作為化比較試験(SWOG BIOFRONT試験3))が進行中である。

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食道がんに腫瘍溶解ウイルス「テロメライシン」承認、CRT不適患者の新たな選択肢に/オンコリスバイオファーマ

 岡山大学発の創薬ベンチャー・オンコリスバイオファーマは6月8日、同社の開発した腫瘍溶解ウイルス製剤テロメライシン注(一般名:スラタデノツレブ)が、厚生労働省の製造販売の承認を受けたことを発表した。適応は「根治切除および化学放射線療法の適応とならない食道がん」。「条件及び期限付承認」ではなく通常承認となり、再生医療等製品としては異例のケースとなった。 テロメライシンは、テロメラーゼ活性を利用してがん細胞内で選択的に増殖するよう設計された5型アデノウイルス製剤。hTERTプロモーター制御下でウイルス複製関連遺伝子を発現し、正常細胞では増殖せず、がん細胞のみで複製・細胞破壊を引き起こす。岡山大学の藤原 俊義教授らが基礎研究を主導し、長年にわたり臨床開発が進められてきた。 今回の承認の根拠となったのは、国内17施設で行われた第II相OBP101JP試験。手術および化学放射線療法(CRT)不適のStageII~III食道がん患者を対象に、テロメライシン腫瘍内投与と放射線療法(RT)の併用を評価した。登録37例中、約76%が80歳以上で、ほぼ全例が扁平上皮がんだった。18ヵ月時点の局所完全奏効率は50.0%で、事前設定閾値を上回った。18ヵ月全生存率は56.6%、がん特異的生存率は70.1%で、RTを上回る可能性が示唆された。有害事象はリンパ球減少や発熱が中心で、多くは管理可能だった。テロメライシンはPMDAの「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されており、本結果をもって昨年末に承認申請が行われていた。 食道がんでは免疫療法の導入が進む一方、高齢者や併存疾患を有する患者では標準治療が困難なケースも多く、テロメライシンは新たな選択肢として期待される。今後、薬価収載を経て上市される見通しで、市販後には全例調査が予定されている。

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インフルワクチンによるアルツハイマー病リスク低下、高用量ワクチンでより有効

 高用量のインフルエンザワクチンは、高齢者におけるアルツハイマー病のリスクを低下させる可能性があるとする研究結果が報告された。高用量ワクチンを接種した高齢者は、標準用量ワクチン接種者と比べ、アルツハイマー病リスクが有意に低かったという。米国でのアルツハイマー病の患者数は2025年時点で700万人以上に上り、2050年までにこの2倍以上に増加すると予測されている。米テキサス大学ヒューストン健康科学センターの神経学教授であるPaul Schulz氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月1日掲載された。 この高用量ワクチンは、標準用量の約4倍のインフルエンザウイルス抗原を含んでいる。これまでの研究でも、インフルエンザワクチンの接種は未接種と比べてアルツハイマー病リスクを約40%低下させることが示されていたが、本研究では、高用量ワクチン接種者では、標準用量接種者と比べてアルツハイマー病リスクが有意に低いことが示された。ただし、この高用量ワクチンの存在は、医療従事者を含め、まだ広く知られていないとSchulz氏は指摘している。同氏は、「医師である自分ですら、高用量ワクチンの存在を知らなかったことに驚いた」とニュースリリースで述べている。 今回の研究では、高用量不活化インフルエンザワクチンを接種した12万775人の高齢者(平均年齢74.4歳、女性57.3%)と、標準用量不活化インフルエンザワクチンを接種した高齢者4万4,022人(平均年齢73.0歳、女性56.4%)を対象に、アルツハイマー病リスクを比較した。解析は、初回の接種群に基づいてその後の接種状況にかかわらず追跡するITT解析と、追跡中に他のインフルエンザワクチンを接種した場合に打ち切るPP解析の両方で行われた。 その結果、高用量ワクチン接種群では標準用量接種群と比べて、PP解析では接種後1~25カ月、ITT解析では接種後1~28カ月においてアルツハイマー病リスクが有意に低いことが示された。25カ月時点では、PP解析では185人、ITT解析では270人に高用量ワクチンを接種するとアルツハイマー病の発症が1人減ると推定された。また、このリスク低下は女性でより長期間にわたり認められ、PP解析では1~13カ月、ITT解析では1~17カ月にわたり有意差が認められた。一方、男性では、ITT解析で17~24カ月においてのみ有意差が認められ、PP解析ではいずれの期間でも有意差は認められなかった。 Schulz氏は、「本研究で、高用量ワクチンを接種した65歳以上の人を探し始め、最終的には数千人規模のデータを集めて、高用量と標準用量の接種効果を比較することができた。当然のことながらアルツハイマー病は加齢とともにリスクが高まるため、高齢者は検証に適しており、両者の違いを評価できた」と述べている。 ただし、この研究では、なぜインフルエンザワクチンがアルツハイマー病のリスク低下に寄与するのかは解明されておらず、因果関係を直接示すものではない。研究グループは、ワクチンがなぜアルツハイマー病の予防に効果があるのか、またなぜ高用量の方がより有効なのかを明らかにするために、さらなる研究が必要だとしている。

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第298回 医学部地域枠「9年勤務」の運用緩和へ、留学・子育てに配慮/厚労省

<先週の動き> 1.医学部地域枠「9年勤務」の運用緩和へ、留学・子育てに配慮/厚労省 2.「やせ薬」目的で拡散するマンジャロ、個人売買の監視強化/厚労省 3.外来医師過多区域で新規開業対応を強化、9医療圏を候補に提示/厚労省 4.出生率1.14で過去最低、周産期・小児医療の集約化議論へ/厚労省 5.外科医への退職強要で大津市民病院側に100万円支払い命令/大津地裁 6.私物PCとクラウド利用に警鐘、患者情報1,365件漏えいの可能性/藤田医大 1.医学部地域枠「9年勤務」の運用緩和へ、留学・子育てに配慮/厚労省厚生労働省は、医学部入試の「地域枠」について、卒業後に特定地域で原則9年以上勤務する現在の運用を見直す検討に入った。地域枠は、一般入試とは別に定員を設け、奨学金の貸与と引き換えに、卒後一定期間、都道府県知事が指定する医療機関などで勤務する仕組み。2025年度は医学部定員9,393人のうち1,847人と約2割をこの地域枠の学生が占めた。医師偏在対策の柱の1つだが、若手医師の20~30歳代は、専門医取得、海外留学、結婚・出産・育児、家族介護などの時期と重なる。10~18年度に地域枠で入学した4,917人のうち、入学時の条件を満たさなかった人は301人。その理由としては「個人的な理由」が最多だった。厚労省は有識者検討会で議論を進め、留学や専門医資格取得のための猶予期間、一時中断の柔軟化などを検討し、年内の取りまとめを目指す。地域枠をめぐっては、都道府県ごとの運用差も課題となっている。育児休業による中断は全都道府県で認められている一方で、留学は35、介護は31都道府県にとどまる。高知大学のように、臨床研修後の残り7年間を15年間のうちに終えればよいとする柔軟な制度や、自治医科大学のように卒業生同士の結婚に配慮し、一定条件で配偶者の出身都道府県勤務を認める例もある。山梨県では、県内勤務を条件に修学資金返還を免除する制度について、条件を満たさない場合に最大約842万円を求める違約金条項を廃止する方針が示された。同条項をめぐっては、消費者機構日本が差し止めを求め、甲府地裁が今年1月に「平均的な損害を超え不当」として差し止めを命じていた。県は控訴していたが、制度を見直し、県による面接、在学中の地域医療実習、勤務年数に応じた段階的な返還免除、貸与額の引き上げなどを導入する。地域医療を支える制度の実効性を保ちつつ、18歳時点の選択で30代までのキャリアを過度に拘束しない制度設計が問われている。 参考 1) 医師の「地域枠9年」緩和 厚労省検討 医学部入試 留学・子育てに配慮(日経新聞) 2) 山梨県 医師確保のための「地域枠」制度 違約金条項を廃止へ(NHK) 3) 山梨県が医学部の修学資金制度を見直し、「違約金」を廃止(朝日新聞) 4) 山梨、医師修学資金貸与の違約金を廃止 裁判踏まえ見直し(毎日新聞) 2.「やせ薬」目的で拡散するマンジャロ、個人売買の監視強化/厚労省糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)をダイエット目的で使用したり、SNSで個人間売買したりする動きが広がっているとして、厚生労働省が注意喚起と監視を強化する。上野 賢一郎厚生労働大臣は6月5日の閣議後の会見で、「マンジャロを個人間で売買することは違法」と明言。都道府県など関係機関と連携し、SNSを含むネットパトロールを強化し、法違反には厳正に対処する考えを示した。マンジャロは米・イーライリリーが開発したGIP/GLP-1受容体作動薬で、国内では2型糖尿病において効能・効果で承認され、医師の処方のもとで使用されている。その一方で、食欲を抑える作用が注目され、美容・ダイエット目的での使用を勧めるSNS投稿や美容クリニックの広告が拡散している。上野厚労相は「糖尿病治療以外で使用した場合の安全性、有効性は確認されていない。思わぬ副作用につながる可能性も否定できない」と述べ、適正使用を呼びかけた。6月2日には、大阪府警がマンジャロをSNS経由で無許可販売したなどとして、大阪府・奈良県の20~30代の男女3人を医薬品医療機器法(薬機法)違反の疑いで書類送検した。薬機法は、許可を受けていない者が業として医薬品を販売することを禁じており、違反すれば3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となる。処方箋医薬品であるマンジャロは、許可業者であっても処方箋なしには販売できない。また、販売目的で保管する「貯蔵」も処罰対象となり得る。購入しただけの人を直接処罰する規定はないとされるが、余った薬を友人に有償で譲ったり、SNSで転売したりすれば無許可販売に問われる可能性がある。さらに、正規ルート外で入手した医薬品は偽造品や不適切な温度管理のリスクがあり、重い副作用が出ても医薬品副作用被害救済制度の対象外となる。医療者には、マンジャロが単なる「やせ薬」ではなく糖尿病治療薬であることを患者に説明し、安易な個人売買や自己判断での使用を避けるよう啓発する姿勢が求められる。 参考 1) マンジャロ個人間売買、厚労相「法違反は厳正に対処」 注意喚起強化(朝日新聞) 2) 糖尿病治療薬「マンジャロ」上野厚労相が適正な使用を呼びかけ(NHK) 3) 厚労相「法違反、厳正に対処」 マンジャロ個人売買の横行受け(毎日新聞) 4) 「やせ薬」危険な個人売買 糖尿病薬「マンジャロ」取引横行 許可なくSNSで販売疑い異例の立件(同) 5) マンジャロ無許可販売で書類送検、買う側には「罰則なし」? それでも弁護士が購入を勧めないワケ(弁護士ドットコム) 3.外来医師過多区域で新規開業対応を強化、9医療圏を候補に提示/厚労省厚生労働省は、2027年度から始まる第8次医療計画後期に向け、「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」を都道府県に通知した。今回の見直しは、都市部など診療所医師が集中する地域で新規開業への対応を強める一方で、医師不足地域では診療所の承継・開業支援を進めるもので、外来医療における偏在策が具体化しつつある。ガイドラインでは、外来医師偏在指標と可住地面積当たり診療所数を基に、とくに外来医師が多い「外来医師過多区域」の候補として、東京・区中央部、区西部、区西南部、区南部、区西北部、京都・乙訓、大阪市、福岡・糸島、神戸の9つの2次医療圏を提示した。外来医師過多区域では、無床診療所の新規開設希望者に対し、原則として開設6ヵ月前までの事前届出を求める。届出では、夜間・休日の初期救急、在宅医療、発熱外来、学校医・予防接種、警察医会への協力など、地域で不足する医療機能を担う意向の有無や内容を示す必要がある。要請や勧告に従わない場合には、内容の公表に加え、保険医療機関の指定期間を通常より短縮する対応も想定される。その一方で、制度は一律の開業抑制ではない。親の死亡に伴う急な診療所承継や、自治体の求めに応じて地域外来医療を担う場合などは、事前届出の猶予・免除の対象となり得る。また、診療所の全医師が育児や介護で夜間・休日対応ができない場合など、地域で不足する医療機能を担えない「やむを得ない事情」も例示された。医師不足地域では、国と都道府県による診療所の承継・開業支援が始まっている。2024年度補正予算で102億円、2026年度当初予算で20億円が措置され、施設整備、医療機器購入、職員給与や材料費などの運営経費を支援する。青森県では県内全6つの2次医療圏を重点医師偏在対策支援区域に定め、2025年度に19診療所が交付対象となった。承継10施設、新規開業9施設で、内科に加え産科や小児科の開業も含まれた。県内診療所数の減少幅は緩やかになっており、県や医師会からは支援事業を評価する声が出ている。外来医療の偏在対策は、開業の自由と地域に必要な医療機能の確保をどう両立させるかが焦点となる。都市部では新規開業医に地域で不足する医療機能への協力を求め、医師不足地域では経済的支援で承継・開業を後押しする「要請と支援」の両輪が動き出した。今後は、地域医療構想、かかりつけ医機能報告、外来機能報告のデータを活用しつつ、長期的な財源確保と、地域ごとの実効性ある協議が問われる。 参考 1) 外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン~第8次(後期)~」について(厚労省) 2) 開業規制の医師過多区域、5都府県の9圏域候補 国がガイドラインで示す(CB news) 3) 第8次後期外来医療計画のGLを通知、外来医師過多区域の取り組みを記載-厚労省(日本医事新報) 4) 第8次後期の外来計画でGL 過多区域の「特例」示す(MEDIFAX) 5) 重点区域の診療所支援、偏在是正に一定の効果 「長期的な財源確保」を(同) 4.出生率1.14で過去最低、周産期・小児医療の集約化議論へ/厚労省厚生労働省が公表した2025年人口動態統計(概数)で、わが国の出生数は前年比1万4,937人減の67万1,236人となり、10年連続で過去最少を更新した。合計特殊出生率は1.14で、3年連続の過去最低となった。出生数の減少率は2.2%と、近年の5%台からは縮小したが、死亡数158万9,489人との差である自然減は91万8,253人に達し、19年連続の人口減少となった。婚姻件数は48万9,119組で2年連続増加したが、この10年では14万組余り減っており、少子化の基調は変わっていない。都道府県別の出生率は、沖縄1.52、宮崎1.46、福井1.45が高く、東京0.96、北海道・宮城1.00と低かった。関東以北で低く、西日本で高い「西高東低」の傾向がみられた。この背景には、所得・雇用の不安定さ、出会いの少なさ、子育て費用、仕事と育児の両立困難、固定的な性別役割分担意識の地域差など、複数の要因が絡むとされる。政府は児童手当の拡充、子供誰でも通園制度、育児休業給付の充実、出産費用無償化などを進めるが、尾崎 正直官房副長官は「少子化に歯止めがかかっていない」との認識を示している。医療現場への影響はすでに顕在化している。国内の分娩取扱施設は2006年の3,098施設から2025年には1,856施設へ約4割減少し、診療所は初めて1,000施設を下回った。埼玉県本庄市では地域最後の分娩施設が少子化による経営難などを理由に分娩を休止し、妊婦健診は地域診療所、分娩は近隣施設で担うセミオープン型へ移行した。小児医療でも、低出生体重児や小児外科症例の減少により、NICU・GCUの空床、専門医・指導医育成の症例確保、こども病院の赤字が課題となっている。NICUは出生1万人当たり46.2床と、かつての整備目標を大きく上回る一方で、GCUの病床利用率が50%未満の地域周産期母子医療センターも多い。第9次医療計画に向けて、国は周産期・小児医療の病床数見直し、集約化、都道府県を越えた広域連携の検討を始める。少子化は単なる人口政策ではなく、分娩、小児救急、NICU、小児外科、思春期医療まで含む医療提供体制の再編問題である。安全性を維持しながら、患者・家族の移動負担や地域アクセスをどう支えるかが、今後の医療政策の焦点となる。 参考 1) 人口動態統計月報(概数)(令和7(2025)年12月分(年計を含む))(厚労省) 2) 13県で出生率上昇も…少子化に歯止めかからず 対策の拡充不可避 令和7年人口動態統計(産経新聞) 3) 出生率1・14、過去最低を更新 出生数は最少の67万人 令和7年人口動態統計(同) 4) 閉じる分娩施設、減る小児の症例数 世界最高水準を誇る医療の未来は(朝日新聞) 5) 少子化で経営成り立たず 地域最後のお産休止、空床増えるこども病院(同) 6) 去年の出生数67万人 過去最少 少子化対策ポイントは(NHK) 5.外科医への退職強要で大津市民病院側に100万円支払い命令/大津地裁大津市立大津市民病院に勤務していた外科医3人が、業績不振を理由に退職を強要され、パワーハラスメントを受けたとして、病院を運営する地方独立行政法人や前理事長、前院長に慰謝料や未払い退職金など計約2,900万円の支払いを求めた訴訟で、大津地裁は6月5日、原告のうち1人に対する退職強要を認め、病院側に慰謝料100万円の支払いを命じた。パワハラについては3人とも認めず、残る2人への退職強要も否定した。判決によると、前理事長らは2021年4~9月、外科などの業績不振を理由に「改善の兆しが見えないということで決断せざるを得ない」などと発言。同年9月の面談では、元副院長に対し、「外科の医師には退職してもらい、別の大学のチームに来てもらうよう頼む」趣旨の発言をした。田野倉 真也裁判官は、外科の経営低迷が元副院長らの責任とは認められないにもかかわらず、退職を求めた言動は「社会通念上相当と認められる退職勧奨の範囲を超えた」と判断。自由な退職意思の形成を妨げる退職強要に当たるとして、精神的苦痛と退職を余儀なくされたことへの慰謝料を認めた。その一方で、残る2人の医師については、問題となった面談に出席しておらず、前理事長らの意向を元副院長から伝えられたに過ぎないとして、退職を強要されたとは評価できないとした。また、原告側が主張したパワハラについても、3人いずれについても認定しなかった。前理事長が元副院長に対して名誉毀損を理由に550万円を求めた反訴も棄却された。今回の判決は、病院経営の改善や診療科再編を理由とする人事対応であっても、特定医師に退職を既定方針として繰り返し伝える行為は、適法な退職勧奨の範囲を超え得ることを示した。医師不足や経営悪化を背景に診療体制の見直しを迫られる医療機関では、業績評価の根拠、面談記録、本人の自由意思の確保、配置転換や業務改善の選択肢提示など、手続きの透明性が一層問われる。 参考 1) 大津市民病院の損賠訴訟 退職強要認め100万円支払命令 地裁判決(産経新聞) 2) 「退職の決定」何度も通知するパワハラ…市立病院側に医師1人に100万円の支払い命じる判決(読売新聞) 3) 大津市民病院の前理事長ら、医師に退職強要 100万円の損害賠償支払い命令、大津地裁(中日新聞) 6.私物PCとクラウド利用に警鐘、患者情報1,365件漏えいの可能性/藤田医大藤田医科大学病院は、6月3日に看護師の私物パソコン(PC)に保存されていた患者情報1,365件が外部に漏えいした可能性があると発表した。対象は、末期腎不全、腹膜透析、腎代替療法指導を受けた一部患者で、氏名、性別、生年月日、患者ID、病名、転帰、入退院日、検査データなどが含まれる。現時点で不正利用は確認されていないが、病院は対象患者への謝罪と経過報告、相談窓口の設置、全職員研修、個人情報の取扱実態調査を進める。今回の事案で注目すべきは、病院本体の電子カルテが直接侵害されたのではなく、職員が規定に反して患者情報を私物PCに保存し、自宅でサポート詐欺型の不正侵入を受けた点である。看護師は学会発表資料の作成などを目的に、2020年ごろからクラウドを介して患者情報を私物PCと共有していた。5月25日、自宅でウェブサイトを閲覧中に偽の警告画面が表示され、表示された連絡先やURLに応じた結果、第三者による遠隔操作を受けたとみられる。その後、ウイルス駆除名目の金銭請求、身に覚えのないクレジット請求、携帯電話アカウント変更通知などがあり、専門業者からサポート詐欺と情報漏えいの可能性を指摘された。医療機関のサイバー対策は、ランサムウェア対策のみを想定すれば足りる段階ではなくなっている。偽警告、遠隔操作、クラウド同期、私物端末、学会・研究用データの持ち出しが組み合わされば、重大な個人情報漏えいにつながる。とくに、匿名化が不十分な症例リストや検査データ、紹介状、退院サマリーを、発表準備や在宅作業のために個人端末へ移す運用は、診療所でも起こり得る。厚生労働省は5月29日に開かれた「医療等情報利活用ワーキンググループ」で示した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版(案)」は、病院だけでなく、一般診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業者も対象とする。医療情報を保存するシステムに限らず、医療情報を扱う情報システム全般が対象であり、私物PCやクラウド利用も管理外ではなくなっている。さらに令和8年度版チェックリスト案では、二要素認証、パスワード要件、端末・サーバ・ネットワーク機器の台帳管理、アクセス権限管理、USBなど外部記録媒体の制限、不要ソフトの停止、インシデント時の連絡体制、サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)の策定が重視されている。まず、クリニックなどでも「患者情報をどの端末、クラウド、USB、メールに置いているか」を確認し、私物PC端末への保存禁止、学会・研究用データの匿名化手順、クラウド共有の承認制、偽警告が出た際に電話しない・URLを開かないなどのセキュリティ教育が必要となる。サイバー対策はもはや医療情報システム部門だけの課題ではなく、診療情報の持ち出しルールと緊急時対応を明文化するなど、医療機関の経営者にとって重要な課題になっている。 参考 1) 個人情報漏洩に関するご報告とお詫び(藤田医科大病院) 2) 第32回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省) 3) 患者情報1,365件漏えいか 藤田医科大病院 相談窓口設置へ(読売新聞) 4) 藤田医科大病院で1,300件超の患者情報漏えい 私物PCでサポート詐欺被害(CB news) 5) 藤田医大病院 私用パソコンに保存 患者の個人情報流出か(NHK)

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未就学児の急性喘鳴へのアジスロマイシン、症状改善せず/NEJM

 救急外来を受診した中等度~重度の急性喘鳴を呈する未就学児において、アジスロマイシンはプラセボと比較して喘鳴関連症状を改善しなかった。米国・アリゾナ大学のKurt R. Denninghoff氏らPECARN AZ-SWED Trial Study Groupが、米国のPediatric Emergency Care Applied Research Network(PECARN)に加盟している小児救急外来8施設で実施した無作為化プラセボ対照試験「Azithromycin Therapy in Preschoolers with a Severe Wheezing Episode Diagnosed at the Emergency Department trial:AZ-SWED試験」の結果を報告した。喘鳴を伴う疾患は未就学児の入院の主な原因であり、また、抗菌薬による治療がしばしば行われている。観察研究では、喘鳴を繰り返す小児では喘鳴のない小児と比較し、鼻咽頭検体から3種類の病原性細菌(肺炎連鎖球菌、モラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌)が高頻度に分離されることが示されていた。NEJM誌オンライン版2026年5月18日号掲載の報告。喘鳴で救急外来を受診した未就学児をアジスロマイシン群とプラセボ群に無作為化 研究グループは、救急外来を受診した中等度~重度の呼気性喘鳴(小児呼吸器評価尺度[Pediatric Respiratory Assessment Measure:PRAM]スコア4以上[スコア範囲:0~12、高スコアほど喘鳴が重度])の月齢18~59ヵ月児を、アジスロマイシン群またはプラセボ群に無作為に割り付け、1回12mg/kgを盲検下で1日1回5日間投与した。 主要アウトカムは、無作為化後5日間の幼児喘息発作日誌「Asthma Flare-up Diary for Young Children(ADYC)」スコアの合計スコアであった。ADYCは、17の質問(各質問のスコアは1~7で評価、高得点ほど喘鳴関連症状が重度であることを示す)から成り、1日のADYCスコアは、各質問の平均スコアとして算出。主要アウトカムとしたADYC合計スコアはその5日分の合計スコアで、想定されるスコア範囲は5~35であった。 副次アウトカムは、救急外来滞在時間、入院期間、および72時間以内の再受診(救急外来再受診または入院)とした。 投与前に病原性細菌が検出された患者については、無作為化後5~8日および14~21日の間に追跡調査を行い、細菌の有無と抗菌薬耐性を検査した。 有効性は、3種の病原性細菌検査で少なくとも1種について陽性であった患者(陽性コホート)と陰性であった患者(陰性コホート)で別々に評価した。喘鳴関連症状に関するADYCスコア、アジスロマイシン群9.59 vs.プラセボ群9.72 2021年9月~2024年12月に840例が登録され無作為化された。このうち、521例(62.0%)が病原性細菌陽性、312例(37.1%)が陰性、7例(0.8%)は不明であった。 事前に計画された中間解析の結果に基づき、データ安全性監視委員会は無益性のため本試験を中止した。 5日間のADYC合計スコアは、陽性コホートおよび陰性コホートのいずれにおいても、アジスロマイシン群とプラセボ群で有意差は認められなかった。ADYC合計スコアの中央値は陽性コホートでそれぞれ、9.59(四分位範囲[IQR]:7.29~12.60)vs.9.72(7.66~12.17)(p=0.70)、および陰性コホートで9.30(IQR:6.97~11.62)vs.9.10(7.19~11.45)(p=0.69)であった。 陽性コホートでは、細菌消失率はアジスロマイシン群で58.7%、プラセボ群で11.4%であった。 副次アウトカムも両コホートにおいて両群で類似しており、細菌耐性や有害事象の発現率も同様であった。

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バージンオリーブオイルが脳に良い可能性とその理由

 バージンオリーブオイル(VOO)は、腸や脳に良い影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。一方、一般的により安価で販売されている精製オリーブオイルには、そのような効果が認められないという。ルビーラ・イ・ビルジーリ大学(スペイン)のJiaqi Ni氏らの研究によるもので、詳細は「Microbiome」に1月24日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「全てのオリーブオイルが認知機能に良い影響を与えるわけではない」と述べている。 Ni氏らは、55~75歳で過体重・肥満およびメタボリックシンドロームを有する656人(平均年齢65.0±4.9歳、女性47.9%)の食生活を調査して2年間追跡。ベースライン時と追跡調査時に神経心理学的検査を行い、ベースライン時の食事調査や便検体を用いた腸内細菌叢の検査結果との関連を検討した。食事調査の項目には、オリーブオイルのタイプ別摂取量も含まれていた。 解析の結果、VOOを習慣的に摂取していた人は、追跡期間中に認知機能の維持との関連や、腸内細菌叢の多様性の高さが認められたが、精製オリーブオイルを摂取していた人ではそのような変化は認められなかった。なお、腸内細菌叢の多様性の高さは、腸の健康状態および代謝が良好であることを示唆している。 研究チームでは、VOO摂取によるそれらの変化に、Adlercreutzia属という特定の腸内細菌が関係している可能性を見いだした。Adlercreutziaは、VOO摂取と認知機能の変化との関連を媒介している可能性が示唆された。つまりVOOの脳への有益な影響の一部は、腸内細菌叢を変化させることによるものであると考えられた。 では、なぜVOOは精製オリーブオイルよりも、好ましい影響を及ぼすのだろうか? それは両者の製造方法の違いにあると言える。VOOは、有益な成分を保持できるような機械的手法で製造される。一方、精製オリーブオイルは、不純物を取り除く、保存期間を延ばす、安定した風味を出すといった意図で加工が加えられる。それらの処理によって、オリーブオイルに含まれている、抗酸化物質、ポリフェノール、ビタミンなどの体に良い成分が減ってしまう。 論文の上席著者である同大学のJordi Salas-Salvadó氏は、「今回の研究は、摂取する脂質の『質』が『量』と同じくらい重要であるという考え方を裏付けるものだ。VOOは心臓を保護するだけでなく、加齢に伴う脳機能の低下を防ぐのにも役立つ」と総括。また、「これらの効果をもたらす腸内細菌を特定することが、認知機能を維持するための新たな栄養戦略を確立することにつながる可能性がある」と付け加えている。

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