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なぜ必要? 4番目のIFNフリーC肝治療薬の価値とは

 インターフェロン(IFN)フリーのジェノタイプ1型C型肝炎治療薬として、これまでにダクラタスビル/アスナプレビル(商品名:ダクルインザ/スンベプラ)、ソホスブビル/レジパスビル(同:ハーボニー)、オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル(同:ヴィキラックス)の3つが発売されている。そこに、今年3月の申請から半年後の9月に承認されたエルバスビル/グラゾプレビル(同:エレルサ/グラジナ)が、11月18日に発売された。治療効果の高い薬剤があるなかで、新薬が発売される価値はどこにあるのか。11月29日、MSD株式会社主催の発売メディアセミナーにて、熊田 博光氏(虎の門病院分院長)がその価値について、今後の治療戦略とともに紹介した。患者背景によらず一貫した有効性 エレルサ/グラジナは、国内第III相試験において、SVR12(投与終了後12週時点のウイルス持続陰性化)率が慢性肝炎患者で96.5%、代償性肝硬変患者で97.1%と高いことが認められている。また、サブグループ解析では、前治療歴、性別、IL28Bの遺伝子型、ジェノタイプ(1a、1b)、耐性変異の有無にかかわらず、一貫した有効性が認められており、慢性腎臓病合併患者、HIV合併患者においても、海外第III相試験で95%以上のSVR12率を示している。IFNフリー治療薬4剤の効果を比較 しかしながら、すでにIFNフリー治療薬が3剤ある状況で、新薬が発売される価値はあるのかという疑問に、熊田氏はまず4剤の効果を治験成績と市販後成績で比較した。 薬剤耐性(NS5A)なしの症例では、治験時の各薬剤の効果(SVR24率)は、ダクルインザ/スンベプラが91.3%、ハーボニーが100%、ヴィキラックスが98.6%、エレルサ/グラジナが98.9%であり、実臨床である虎の門病院での市販後成績でも、ダクルインザ/スンベプラが94.0%、ハーボニーが98.2%、ヴィキラックスが97.7%(SVR12率)と、どの薬剤も良好であった。 一方、薬剤耐性(NS5A)保有例の治験時の成績は、ダクルインザ/スンベプラが38%、ハーボニーが100%、ヴィキラックスが83%、エレルサ/グラジナが93.2%であり、虎の門病院の市販後成績では、ダクルインザ/スンベプラが63.7%、ハーボニーが89.6%、ヴィキラックスが80.0%(SVR12率)であった。熊田氏は、「治験時の100%よりは低いがハーボニーが3剤の中では良好であるのは確かであり、実際に使用している患者も多い」と述べた。副作用はそれぞれ異なる 次に、熊田氏は虎の門病院での症例の有害事象の集計から、各薬剤の副作用の特徴と注意点について説明した。 最初に発売されたダクルインザ/スンベプラは、ALT上昇と発熱が多く、風邪のような症状が多いのが特徴という。 ハーボニーは、ALT上昇は少ないが、心臓・腎臓への影響があるため、高血圧・糖尿病・高齢者への投与には十分注意する必要があり、熊田氏は「これがエレルサ/グラジナが発売される価値があることにつながる」と指摘した。 ヴィキラックスは、心臓系の副作用はないが、腎障害やビリルビンの上昇がみられるのが特徴である。また、Ca拮抗薬併用患者で死亡例が出ているため、高血圧症合併例では必ず他の降圧薬に変更することが必要という。 発売されたばかりのエレルサ/グラジナについては、今後、症例数が増えてくれば他の副作用が発現するかもしれないが、現在のところ、ALT上昇と下痢が多く、脳出血や心筋梗塞などの重篤な副作用がないのが特徴、と熊田氏は述べた。 このように、各薬剤の副作用の特徴は大きく異なるため、合併症による薬剤選択が必要となってくる。今後の薬剤選択 熊田氏は、各種治療薬の薬剤耐性の有無別の治療効果と腎臓・心臓・肝臓への影響をまとめ、「エレルサ/グラジナは、耐性変異の有無にかかわらず、ハーボニーと同等の高い治療効果を示すが、ハーボニーで注意すべき腎臓や心臓への影響が少なく、ここに新しい薬剤が発売される価値がある」と述べた。 また、今後の虎の門病院におけるジェノタイプ1型C型肝炎の薬剤選択について、「耐性変異なし、心臓・腎臓の合併症なし」の患者にはハーボニーまたはヴィキラックスまたはエレルサ/グラジナ、「NS5A耐性変異あり」の患者にはハーボニーまたはエレルサ/グラジナ、「腎障害」のある患者にはヴィキラックスまたはエレルサ/グラジナ(透析症例はダクルインザ/スンベプラ)という方針を紹介した。さらに、「NS5A耐性変異あり」の患者には、「これまではハーボニー以外に選択肢がなかったが、今後はエレルサ/グラジナが使用できるようになる。とくに心臓の合併症がある場合には安全かもしれない」と期待を示した。

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冬こそ気を付けたい食中毒

冬こそ気を付けたい食中毒下の表のように、実は冬は食中毒の季節です。食中毒の原因となる細菌ウイルスの増殖を防ぎましょう。■食中毒予防の三原則・付けない! …調理時の手、調理器具の洗浄と食材の取り扱いに注意・増やさない!…細菌が好む保存環境を避ける。冷蔵・冷凍で菌の増殖を防ぐ。とくに暖房のきいた部屋は注意・やっつける!…食材を十分過熱して細菌ウイルスを確実に死滅させる●平成26年月別食中毒発生状況食中毒認知数(件)食中毒患者数(人)1506,0001004,000502,000001月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月厚生労働省ホームページ 食中毒 食中毒事件一覧速報http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.htmlCopyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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クランベリーカプセルで高齢女性の細菌尿と膿尿を予防できるか?(解説:小金丸 博 氏)-613

 尿路感染症(UTI)は介護施設における代表的な感染症であり、UTIを繰り返す高齢者は多い。そのUTIの非抗菌的な予防法として期待されているのがクランベリーである。クランベリーに含まれるプロアントシアニジンには、大腸菌が尿路上皮に接着するのを阻害する働きが示されており、クランベリージュースがUTIの予防法として数多く検討されてきたが、有効性に関するエビデンスは一致していなかった。クランベリージュースの有効性が得られなかった研究では、その理由として、ジュースでは飲みにくくアドヒアランスが不良となり、十分量のプロアントシアニジンを摂取できなかったことが挙げられた。 本研究は、介護施設に入所している65歳以上の高齢女性を対象に、クランベリーカプセルによる細菌尿+膿尿の発症予防効果を検討した二重盲検プラセボ対象ランダム化比較試験である。観察期間1年間での細菌尿+膿尿の発生率は、クランベリー投与群で25.5%、プラセボ投与群で29.5%であり、欠損データや背景因子を補正した後の解析では両群間で有意差は認めなかった(29.1% vs.29.0%、95%信頼区間:0.61~1.66、p=0.98)。また、セカンダリアウトカムである症候性UTIの発生数、死亡数、入院数、耐性菌による細菌尿、抗菌薬使用日数などにも差を認めなかった。 本研究では、介護施設に入所している高齢女性に対してクランベリーカプセルを投与しても、細菌尿、膿尿の発生を予防することができなかった。高齢女性に一律に投与しても十分な予防効果は期待できないのかもしれない。本研究では、尿道カテーテル留置者は対象から除外されているが、過去には、長期尿道カテーテル留置、糖尿病、UTIの既往といったUTIのハイリスク患者に対するクランベリーカプセルの有効性を示した報告もあり、クランベリーカプセルが有効な患者背景が今後同定される可能性は残されている。 本研究でクランベリーカプセルの有効性を示せなかった理由の1つに、ジュースでは得られるハイドレーション効果がカプセルでは得られないことが挙げられている。クランベリーカプセルを用いた研究では十分な飲水量を設定することで、予防効果が上がる可能性はあると考える。

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HIV母子感染予防への抗レトロウイルス療法の有用性/NEJM

 妊娠期間中の抗レトロウイルス療法(ART)は、ジドブジン単独療法と比較してHIVの母子感染率を有意に低下させたが、母親と新生児の有害転帰リスクの増加も認められた。米国・ジョンズ・ホプキンス大学医学部のMary G. Fowler氏らが、無症候性HIV感染妊婦を対象としたThe Promoting Maternal and Infant Survival Everywhere (PROMISE)試験の結果、報告した。ARTはHIV母子感染の予防に有効であるが、妊娠の転帰に悪影響を及ぼすことが示された研究も散見される。CD4高値のHIV感染妊婦における、ジドブジン+ネビラピン単回投与とARTの、母子感染予防効果と安全性を比較した無作為化試験は十分ではない。NEJM誌オンライン版2016年11月3日号掲載の報告。約3,400例の無症候性HIV感染妊婦で、母子感染率と母子の安全性を評価 PROMISE試験は、7ヵ国14施設において、CD4高値の無症候性HIV感染妊婦を対象に妊娠期間中のARTの有効性と安全性を検討した無作為化非盲検比較試験である。 研究グループは、妊娠14週超でCD4数350/mm3以上のHIV感染妊婦3,490例(登録時妊娠期間中央値26週[四分位範囲:21~30]、CD4数中央値530/mm3)を、ジドブジン+ネビラピン単回投与+出産後テノホビル・エムトリシタビン1~2週間投与群(ジドブジン単独療法群)、ジドブジン+ラミブジン+ロピナビル・リトナビル投与群(ジドブジン併用ART群)、テノホビル+エムトリシタビン+ロピナビル・リトナビル投与群(テノホビル併用ART群)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、生後1週時の新生児HIV感染および母子の安全性とし、intention-to-treat解析を実施した。ART群で有意に低下するも、低出生体重児や早産が増加 新生児HIV感染率は、ART群(両ART群の併合)でジドブジン単独療法群より有意に低下した(0.5% vs.1.8%、絶対差:-1.3ポイント、反復信頼区間:-2.1~-0.4)。 一方、母親における有害事象(Grade2~4)の発現率は、ジドブジン単独療法群よりジドブジン併用ART群で有意に高かった(17.3% vs. 21.1%、p=0.008)。また、Grade2~4の血液検査異常値の発現率は、ジドブジン単独療法群よりテノホビル併用ART群で高かった(0.8% vs.2.9%、p=0.03)。血液検査値異常の有害事象に関して、両ART群に有意差は認められなかった(p>0.99)。 出生時体重が2,500g未満の新生児の割合は、ジドブジン単独療法群と比較し、ジドブジン併用ART群(12.0% vs.23.0%、p<0.001)ならびにテノホビル併用ART群(8.9% vs.16.9%、p=0.004)で多く、妊娠37週未満の早産の割合もジドブジン単独療法群と比較し、ジドブジン併用ART群で多かった(13.1% vs.20.5%、p<0.001)。テノホビル併用ART群は、ジドブジン併用ART群と比較して妊娠34週未満の超早産率(6.0% vs.2.6%、p=0.04)、ならびに早期新生児死亡率(4.4% vs. 0.6%、p=0.001)が高かったが、ジドブジン単独療法群とは差はなかった(それぞれp=0.10、p=0.43)。 HIV非感染生存率は、ジドブジン併用ART群の新生児が最も高かった。 なお、WHOが推奨するART(テノホビル+エムトリシタビン+エファビレンツ)が本試験のレジメンより有害事象が少ないかどうかの評価はできていないことを、著者は研究の限界として挙げている。

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HIVの広域中和抗体VRC01のウイルス抑制効果/NEJM

 HIV患者に対し、HIV CD4結合部位を標的にする広域中和抗体(bNAb)「VRC01」を、抗レトロウイルス療法(ART)の中断前後に投与し受動免疫を試みた結果、中断後の血清ウイルスが再び増殖する(viral rebound)までの経過時間をわずかだが遅らせることができるが、その効果は8週時までは継続しないことが示された。米国・ペンシルベニア大学のKatharine J. Bar氏らが、患者24例を対象に2つの試験を行い明らかにした。HIVの中和抗体の発見は、HIV感染症の予防および治療における受動免疫戦略を可能とするものである。研究グループは、VRC01が安全にウイルス・リバウンドを防止または遅延できるかを調べた。NEJM誌オンライン版2016年11月9日号掲載の報告。VRC01の安全性や抗ウイルス活性などを検証 研究グループは、HIV患者24例を対象に、2つの非盲検試験「A5340」と「NIH 15-I-0140」を行った。ARTを計画的に中断し、その前後にVRC01を投与して、投与の安全性、副作用、薬物動態特性、抗ウイルス活性について検証した。ART中断4週間時点でのウイルス抑制率は有意に高率 結果、ウイルスのリバウンドは、血清VRC01濃度が50μg/mL超でも発生が認められた。ART中断からリバウンドまでの経過時間の中央値は、A5340群が4週間、NIH群が5.6週間だった。 両試験の被験者は、従来療法対照群に比べ、ART中断4週間時点でのウイルス抑制率が高かった。A5340試験では、VRC01群38% vs.対照群13%(フィッシャー正確両側検定のp=0.04)、NIH試験では80% vs.13%(同p<0.001)だった。しかし、その後ART中断8週間時点の評価では、A5340試験、NIH試験共に対照群との有意差は認められなかった。 ART実施前、ART中断前後のウイルス集団分析では、VRC01がウイルスのリバウンドを抑制し、ウイルス再発を抑制し、既存または新たな中和抵抗性ウイルス抗体の選別を促したことがわかった。 なお、被験者のうち1人が、アルコール関連の重篤な有害事象を発症したが、著者は被験者が少数であり、安全性の懸念をVRC01による受動免疫と関連づけることはできないとしている。

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クランベリーカプセルは尿路感染症予防に有効か/JAMA

 介護施設に入所している高齢女性において、1年間にわたりクランベリーカプセルを投与したが、プラセボと比較して細菌尿+膿尿の件数に有意差は認められなかった。米国・エール大学医学大学院のManisha Juthani-Mehta氏らが、クランベリーカプセル内服の細菌尿+膿尿に対する有効性を評価する目的で行った無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、報告した。細菌尿+膿尿は介護施設の高齢女性に多く、クランベリーカプセルはこうした尿路感染症(UTI)に対する非抗菌的な予防法として知られているが、その根拠には議論の余地があった。JAMA誌2016年11月8日号掲載の報告。185例に1年間投与、細菌尿+膿尿の頻度をプラセボと比較 研究グループは、2012年8月24日~2015年10月26日に、コネチカット州ニューヘイブンの50マイル(80km)圏内にある介護施設21施設において、長期入所中の65歳以上の女性185例(ベースライン時での細菌尿+膿尿の有無は問わない)を、治療群とプラセボ群に無作為割り付けし比較した。 治療群(92例)は、1カプセル当たり活性成分プロアントシアニジン36mgを含むクランベリーカプセル2個(合計72mg、クランベリージュース20オンスに相当)を、プラセボ群(93例)はプラセボ2個を1日1回内服した。 主要評価項目は、細菌尿(1~2種類の微生物が尿培養で105コロニー形成単位[CFU]/mL以上)+膿尿(尿中白血球陽性)とし、2ヵ月ごとに1年間評価した。副次評価項目は、症候性UTI、全死因死亡数、総入院数、多剤耐性菌(MRSA、VRE、多剤耐性グラム陰性桿菌)の分離数、UTI疑いに対する抗菌薬使用、すべての抗菌薬使用とした。 無作為化された185例(平均年齢86.4歳[SD 8.2]、白人90.3%、ベースラインで細菌尿+膿尿あり31.4%)のうち、147例が試験を完遂し、服薬アドヒアランスは80.1%であった。細菌尿+膿尿の頻度は両群で有意差を認めず 未調整前の解析において、計6回の尿検査で得られた全検体における細菌尿+膿尿の割合は、治療群25.5%(95%信頼区間[CI]:18.6~33.9)、プラセボ群29.5%(同:22.2~37.9)であった。一般化推定方式モデルによる補正後の解析では、両群間に有意差は認められなかった(それぞれ29.1% vs.29.0%、オッズ比[OR]:1.01、95%CI:0.61~1.66、p=0.98)。 症候性UTI発症数(治療群10件 vs.プラセボ群12件)、死亡率(それぞれ17例 vs.16例、100人年当たり20.4例 vs.19.1例、死亡率比[RR]:1.07、95%CI:0.54~2.12)、入院数(33件 vs.50件、100人年当たり39.7件 vs.59.6件、RR:0.67、95%CI:0.32~1.40)、多剤耐性グラム陰性桿菌関連細菌尿(9件 vs.24件、100人年当たり10.8件 vs.28.6件、RR:0.38、95%CI:0.10~1.46)、UTI疑いに対する抗菌薬使用(抗菌薬使用日数692 vs.909日、8.3 vs.10.8日/人年、RR:0.77、95%CI:0.44~1.33)、およびすべての抗菌薬使用(抗菌薬使用日数1,415 vs.1,883日、17.0 vs.22.4日/人年、RR:0.76、95%CI:0.46~1.25)で、有意差は確認されなかった。 著者は研究の限界として、試験登録時の細菌尿+膿尿の有無を制限していなかったことなどを挙げている。

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小児のワクチン接種、非特異的な免疫学的効果はあるか/BMJ

 小児へのワクチン予防接種の一部の試験では、非特異的な免疫学的効果を示唆する免疫反応の傾向やパターンが認められるものの、試験デザインの異質性のため臨床的に意味があるとは結論できないとの検討結果が、英国・オックスフォード大学のRama Kandasamy氏らによりBMJ誌2016年10月13日号で報告された。観察研究では、ワクチン予防接種による、全死因死亡への非特異的な効果の発現が示唆されているが、その免疫学的な因果関係の機序は明らかにされていない。非特異的な免疫学的効果を系統的にレビュー 研究グループは、小児へのワクチン定期接種(BCG、MMR[ムンプス、麻疹、風疹]、ジフテリア、百日咳、破傷風)による非特異的な免疫学的効果を同定し、その特徴を検討するために、文献の系統的なレビューを行った(WHOの助成による)。 1947~2014年1月までに医学データベース(Embase、PubMed、Cochrane library、Trip)に登録された文献(無作為化対照比較試験、コホート試験、症例対照研究)を検索した。 小児への標準的なワクチン予防接種の非特異的な免疫学的効果を報告した試験を対象とし、遺伝子組み換えワクチンやワクチン特異的アウトカムのみを報告した試験は除外した。異質性のためメタ解析は不可能 77件の試験が適格基準を満たした。37試験(48%)がBCGを使用しており、47試験(61%)が小児のみを対象としていた。ワクチン接種後1~12ヵ月の間に、最終的なアウトカムの評価が行われたのは54試験(70%)だった。 バイアスのリスクが高い試験が含まれ、すべての評価基準が低リスクと判定された試験は1つもなかった。全部で143項目の免疫学的変数が報告されており、きわめて多くの組み合わせが生成されるため、メタ解析は不可能であった。 最も多く報告されていた免疫学的変数はIFN-γであった。BCG接種を非接種と比較した試験では、接種群でin vitroにおけるIFN-γの産生が増加する傾向が認められた。 また、BCG接種により、カンジダ・アルビカンス、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌、リポ多糖類、B型肝炎由来の微生物抗原によるin vitro刺激に反応して、IFN-γ値が上昇することも確認された。 さらに、ジフテリア-破傷風(DT)およびジフテリア-破傷風-百日咳(DTP)のワクチン接種により、異種抗原に対する免疫原性の増大が認められた。すなわち、DTにより単純ヘルペスウイルスおよびポリオ抗体価が上昇し、DTPでは肺炎球菌血清型14およびポリオ中和反応の抗体が増加していた。 著者は、「非特異的な免疫学的効果の論文は、試験デザインに異質性がみられたため従来のメタ解析は行えず、質の低いエビデンスしか得られなかった」としている。

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感染症診療とダニワールド[Enfectionシリーズ] Kindle版

新しい電子書籍シリーズの第1弾は「ダニ」!感染症診療に関する電子書籍シリーズ ”Enfection”。 その第1弾では「ダニ」を取り上げています。そして、「ダニ」といえば、『新興再興感染症に気を付けろッ!』で連載中の忽那賢志氏(国際医療センター)の存在を取り上げないわけにはいきません。ダニやダニに起因する感染症研究に邁進する、忽那氏の豊富な知見をここに結集いたしました。日常診療でももちろんお役に立ちます。主な内容は次の通りです。1.若者よダニを狩れ!2.日本のリケッチア感染症―ツツガムシ病と日本紅斑熱3.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)―新しいマダニ媒介性ウイルス感染症が日本にもあった!4.ボレリア感染症―ライム病と回帰熱/5.アナプラズマ症―診断法の確立と実態解明を急げ!付.マダニ地図2016画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。   感染症診療とダニワールド定価 1,000円(税込)判型 kindle版頁数 66頁(※紙の本に換算した場合)発行 2016年10月編集 笠原敬(奈良県立医科大学 感染症センター)   忽那賢志(国立国際医療研究センター病院         国際感染症センター)

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ニボルマブ、既治療・再発頭頸部扁平上皮がんのOS延長/NEJM

 プラチナ製剤ベースの化学療法施行後に再発した頭頸部扁平上皮がんの治療において、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブは標準治療に比べ、全生存(OS)期間を有意に延長することが、米国・ピッツバーグ大学医療センターのRobert L Ferris氏らが行ったCheckMate 141試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年10月9日号に掲載された。頭頸部扁平上皮がんの原発または再発病変に対し、プラチナ製剤ベースの化学療法施行後6ヵ月以内に病勢が進行した症例の、OS期間中央値は6ヵ月に満たないが、これらの患者のOS期間を延長する治療選択肢はない。頭頸部扁平上皮がんの転移・再発病変は、T細胞抑制性の免疫チェックポイント受容体であるプログラム死1(PD-1)のリガンド(PD-L1、PD-L2)の発現によって部分的に誘導される免疫回避により、促進されることが知られている。標準的な単剤療法と比較する無作為化第III相試験 CheckMate 141は、プラチナ製剤不応の頭頸部扁平上皮がんにおいて、ニボルマブと標準治療を比較する非盲検無作為化第III相試験(Bristol-Myers Squibb社の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、組織学的に口腔、咽頭、喉頭の扁平上皮がんが確証され、プラチナ製剤ベースの化学療法施行後6ヵ月以内に病勢進行または再発した患者であった。 被験者は、ニボルマブ(3mg/kg、2週ごと)を投与する群または標準的な単剤療法(メトトレキサート、ドセタキセル、セツキシマブのいずれか1剤)を行う群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目はOSであり、副次評価項目には無増悪生存(PFS)、客観的奏効率、安全性、患者報告QOLが含まれた。 2014年6月~2015年8月に、日本人を含む361例が登録され、ニボルマブ群に240例、標準治療群には121例が割り付けられた。OSが30%改善、1年OS率は2倍以上、有害事象、QOLも良好 全体の年齢中央値は60歳(範囲:28~83)、男性が83.1%を占め、腫瘍部位は口腔が48.5%、咽頭が35.5%、喉頭が13.6%、その他が2.5%であった。喫煙者(79.6 vs.70.2%、p=0.047)がニボルマブで有意に多かったが、これ以外の背景因子に有意な差はなかった。 全体の91.4%が放射線療法を受けていた。前治療レジメン数は、1が45.4%、2が34.6%、3以上が19.9%であった。約4分の1が、p16(ヒトパピローマウイルスの代替マーカー)陽性だった。 フォローアップ期間中央値5.1ヵ月におけるOS期間中央値は、ニボルマブ群が7.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.5~9.1)と、標準治療群の5.1ヵ月(95%CI:4.0~6.0)に比べ有意に長く、死亡リスクが30%低減した(ハザード比[HR]:0.70、97.73%CI:0.51~0.96、p=0.01)。推定1年OS率は、ニボルマブ群が標準治療群の2倍以上に達した(36.0 vs.16.6%)。 PFS期間中央値は、ニボルマブ群が2.0ヵ月、標準治療群は2.3ヵ月であり、両群に差を認めなかった(HR:0.89、95%CI:0.70~1.13、p=0.32)。一方、推定6ヵ月PFS率はニボルマブ群が高い傾向がみられた(19.7 vs.9.9%)。 腫瘍縮小効果はニボルマブ群が完全奏効(CR)6例、部分奏効(PR)26例で、客観的奏効率は13.3%であった。標準治療群はCR 1例、PR 6例で、客観的奏効率は5.8%だった。 Grade 3/4の治療関連有害事象は、ニボルマブ群が13.1%、標準治療群は35.1%に発現した。ニボルマブ群で頻度の高い全Gradeの有害事象は、疲労(14.0%)、悪心(8.5%)、皮疹(7.6%)、食欲減退(7.2%)、そう痒(7.2%)の順であった。 皮膚関連(15.7 vs.12.6%、主に皮疹)および内分泌系(7.6 vs.0.9%、主に甲状腺機能低下症)の有害事象は、ニボルマブ群のほうが頻度が高かった。ニボルマブ群では、肺臓炎が2.1%に発現し、治療関連死は2例(肺臓炎、高カルシウム血症)認められた。 15週時のEORTC QLQ-C30の身体機能、役割機能、社会的機能、QLQ-H&N35の疼痛、感覚異常、社会的接触障害は、ニボルマブ群がいずれも安定していたのに対し、標準治療は増悪しており、すべての項目で有意な差が認められた。 著者は、「探索的バイオマーカー解析では、PD-L1の発現状況、p16陽性/陰性にかかわらず、OS期間中央値はニボルマブ群が明らかに長かった」としている。

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世界の平均寿命、35年で約10年延長:GBD2015/Lancet

 1980年から35年間に、世界の年齢別死亡率は着実に改善し、この進展パターンは過去10年間持続しており、多くの国では当初の予測よりも迅速であったが、期待余命が短縮し、いくつかの死因の年齢標準化死亡率が上昇した国もあることが、米国・ワシントン大学のChristopher J L Murray氏らが実施したGlobal Burden of Disease Study 2015(GBD 2015)で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2016年10月8日号に掲載された。生存期間を改善し、寿命を延長するには、その時々の地域の死亡率や傾向に関する頑健なエビデンスが求められる。GBD 2015は、195の国と領地における1980~2015年の全死因死亡および249項目の原因別死亡を包括的に評価する世界的な調査である。新たな解析法による検討、GATHERに準拠 研究グループは、GBD 2013およびGBD 2010のために開発された解析法の改良版を用いて、年齢、性、地理、年代別の全死因死亡率を推算した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成による)。 GBD 2015では、エボラウイルス病を含む8つの死因が新たに加えられた。ほとんどの死因の予測値を生成するCause of Death Ensemble Model(CODEm)のほか、6つのモデリング法を用いて、原因別死亡率の評価を行った。 「保健推計報告の正確性、透明性のためのガイドライン(Guidelines for Accurate and Transparent Health Estimates Reporting; GATHER)」に準拠し、データ源とともに、解析過程の各段階を記述した。出生時期待余命が61.7歳から71.8歳へ、死亡数が増加し年齢標準化死亡率は低下 世界的な出生時の期待余命(寿命)は、1980年の61.7歳から、2015年には71.8歳に延長した。サハラ以南のアフリカ諸国では、2005年から2015年に期待余命が大幅に延長した国があり、HIV/AIDSによる大規模な生命の喪失の時代からの回復が認められた。 同時に、とくに戦争や対人暴力により死亡率が上昇した国など、期待余命が停滞または短縮した地域も多かった。シリアでは、2005年から2015年に期待余命が11.3年短縮し、62.6歳にまで低下した。 2005年から2015年に、全死亡数は4%増加したが、年齢標準化死亡率は17.0%低下しており、この間の人口増加と年齢構成の転換が示された。この結果は、全死亡数が14.1%増加したのに対し年齢標準化死亡率が13.1%低下した非感染性疾患(NCD)と類似していた。このパターンは、いくつかのがん種、虚血性心疾患、肝硬変、アルツハイマー病、その他の認知症にみられた。 これに対し、感染性疾患、妊産婦、新生児、栄養障害による全死亡数および年齢標準化死亡率は、いずれも2005年から2015年に有意に低下しており、その主な要因はHIV/AIDS(年齢標準化死亡率の低下率:42.1%)、マラリア(同:43.1%)、早産による新生児合併症(同:29.8%)、妊産婦の疾患(同:29.1%)による死亡率の低下であった。また、外傷による年齢標準化死亡率は、この間に有意に低下したが、例外として、とくに中東地域では対人暴力や戦争による外傷で多くの人命が失われた。 2015年における5歳以下の下痢による死亡の主な原因はロタウイルス性腸炎であり、下気道感染症による死亡の主原因は肺炎球菌性肺炎であったが、病原体別死亡率は地域によってばらつきがみられた。 全体として、人口増加、高齢化、年齢標準化死亡率の変化の影響は、死因ごとに実質的に異なっていた。SDIによるYLLの予測値と実測値 原因別死亡率と社会人口学的指標(SDI:学歴、出生率、1人当たりの所得に基づくサマリー指標)の関連の解析では、SDIの上昇にともなって、死因や年齢の構成が規則的に変化することが示された。 若年死亡率(損失生存年数[YLL]の指標)の国別のパターンには、SDIのみに基づくYLLの予測値との間にずれがあり、国や地域によって高度に不均一なパターンが明確に認められた。ほとんどの地域では、YLL増加の主要な原因は虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病であったが、多くの場合、地域内のSDIに基づくYLLの実測値と予測値の比には、顕著な不一致が認められた。 サハラ以南のアフリカのすべての国では、感染性疾患、妊産婦、新生児、栄養障害がほとんどのYLLの原因であり、依然としてマラリアやHIV/AIDSが早期死亡の主要原因の国では、YLLの実測値が予測値をはるかに超えていた。 著者は、「年齢標準化死亡率は改善したが、人口増加や高齢化が進んだため、多くの国でNCDによる死亡数が増加しており、これが保健システムへの需要の増加を招いている」とまとめ、「これらの知見は、SDIに基づく死亡のパターンを、より深く研究するための参考になるだろう」としている。

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子宮頸がん検診の間隔、5年以上でも安全か/BMJ

 ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性女性では、子宮頸がんおよびGrade 3以上の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3+)の長期的なリスクはきわめて低いが、陽性女性ではCIN3+の長期的リスクがかなり高いことが、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのMaaike G Dijkstra氏らが進めるPOBASCAM試験で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2016年10月4日号に掲載された。HPV検査およびHPV検査+細胞診の組み合わせによる子宮頸がん検診は、細胞診のみの検診よりも早期に、Grade 3のCINを検出することが示されているが、5年以上の間隔を置いた検診の安全性のエビデンスは不十分とされる。オランダでは、2017年に、HPVベースの検診プログラムにおける40歳以上のHPV陰性女性のHPVの検診間隔が、5年から10年に延長される予定だという。5年以上の検査間隔の早期リスクを無作為化コホート試験で評価 POBASCAMは、オランダのHPVベースの子宮頸がん検診プログラムの検診間隔を5年以上に延長した場合の早期リスクを評価する地域住民ベースの無作為化コホート試験(オランダ保健研究開発機構の助成による)。研究グループは、今回、14年の長期フォローアップの結果を報告した。 本試験には、1999年1月~2002年9月に、HPV検査陰性または細胞診陰性、あるいは双方とも陰性の29~61歳の女性4万3,339例が登録された。これらの女性が、子宮頸がん検診としてHPV検査と細胞診の双方を行う群(介入群)または細胞診のみを行う群(対照群)に無作為に割り付けられた。5年ごとに3回の検診が実施された。 主要評価項目は、CIN3+の累積発生率であった。HPV陽性女性については、細胞診陰性、16/18型HPV陰性、リピート細胞診陰性の場合に、CIN3+の発生率が低下するかについて検討した。陰性女性のCIN3+リスクは、40歳以上のほうが低い 介入群のHPV陰性女性では、3回の検診後の子宮頸がんの累積発生率は0.09%、CIN3+の累積発生率は0.56%であった。対照群の細胞診陰性女性における2回の検診後の子宮頸がんの累積発生率は0.09%、CIN3+の累積発生率は0.69%であり、いずれも両群で同様の結果であった。 また、子宮頸がんのリスク比は0.97(95%信頼区間[CI]:0.41~2.31、p=0.95)、CIN3+のリスク比は0.82(95%CI:0.62~1.09、p=0.17)であった。 これらは、HPV検査陰性の場合、細胞診陰性に比べ、子宮頸がんのリスクが低い期間が長いことを示唆する。 HPV陰性女性では、40歳以上が40歳未満に比べCIN3+の発生率が72.2%(95%CI:61.6~79.9%、p<0.001)低く、有意差が認められた。子宮頸がんの発生率と年齢には、有意な関連はみられなかった。 一方、HPV陽性女性のCIN3+の発生率はかなり高く、HPV検査陽性で細胞診陰性、16/18型HPV陰性、リピート細胞診陰性の女性におけるCIN3+の発生率は、HPV検査陰性女性の10.4倍(95%CI:5.9~18.4)に達した。 著者は、「これらの知見は、HPV検査陰性の40歳以上の女性における検診間隔の10年への延長を正当化すると考えられる。HPV陽性で、細胞診トリアージ陰性の女性では、CIN3+の長期的なリスクが高く、検診期間の延長は支持されない」とまとめている。

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Dr.加藤の「これだけ眼科」

第1回 「眼底所見」はこれだけ 第2回 「糖尿病網膜症」はこれだけ 第3回 「緑内障」はこれだけ 第4回 「白内障」はこれだけ 第5回 「加齢黄斑変性」はこれだけ 第6回 「結膜炎」はこれだけ 第7回 「眼科コモンディジーズ」はこれだけ プライマリケア診療で眼科疾患と出会う機会は意外と多いもの。しかしながら、プライマリケア医が眼科診療を学習する機会はほとんどないのが現状です。このDVDでは、「これだけ知っておけば非眼科医として適切な眼科診療ができる」実践的な眼科診療のポイントをまとめました。日常診療でとくに重要な疾患を取り上げ、それぞれ紹介していきます。講師は、プライマリケア医への眼科教育に積極的に取り組む、京都府立医科大学眼科学教室/京都大学医学教育推進センターの加藤浩晃先生です。第1回「眼底所見」はこれだけ Dr.加藤のこれだけ眼科、第1回は先生方からリクエストの多い眼底所見について取り上げます。前半は最近の眼底検査機器とその特徴、後半は眼底所見のポイントについて糖尿病や高血圧などの内科疾患も含めて紹介します。眼底所見、これだけ知っておけば非専門医の標準レベル突破。第2回「糖尿病網膜症」はこれだけ 糖尿病患者の約2割が罹患しているといわれる糖尿病網膜症。緑内障に次いで失明原因の第2位です。糖尿病網膜症は糖尿病罹患5~10年で発症率が高まると言われていますが、中期以上に進行しないと自覚症状が現れない、厄介な合併症です。番組では、網膜症の進行度、症状と所見などの基本知識。発症予防のための血糖管理、眼科受診の間隔などの実践的知識を紹介します。糖尿病網膜症、これだけ知っておけば非専門医の標準レベル突破。第3回「緑内障」はこれだけ高齢疾患である緑内障。先生の患者さんにも大勢いらっしゃるのではないでしょうか?緑内障は症状が現れるころには、すでに中期以降に進行しているため、プライマリケア医による早期発見・治療はとても重要です。番組では、緑内障の眼底所見、頭痛や悪心嘔吐など身体症状を呈する緑内障発作の初期対応、また、抗コリン薬など緑内障禁忌薬が使える患者の見分け方などについてわかりやすく紹介します。緑内障、これだけ知っておけば非専門医の標準レベル突破。第4回「白内障」はこれだけ 高齢化とともに増加する白内障。患者さんから白内障について質問されることもあるのではないでしょうか?白内障は眼科の代表的疾患ですが、加齢だけでなく、糖尿病、ステロイドが原因となることもあります。また、転倒リスクや死亡率も上昇するとも相関するなど眼科以外の診療科とも関連の深い疾患です。番組では、白内障の初期サイン、眼底所見の特徴、また、眼科医がどのような検査治療を行っているかをわかりやすく紹介します。白内障、これだけ知っておけば患者さんに質問されても大丈夫です。第5回「加齢黄斑変性」はこれだけ 加齢黄斑変性は文字どおり加齢に伴い発症し、視野中心部の歪みを特徴する疾患です。有病率は50歳以上の80人に1人。失明原因の第4位と高齢者のQOLを著しく害する疾患です。しかしながら、病識が少ないため老化による視力低下として見過ごされることも少なくありません。番組では、加齢黄斑変性のサイン、眼科医が行う検査や治療などについてわかりやすく紹介します。加齢黄斑変性、これだけ知っておけば非専門医の標準レベル突破。第6回「結膜炎」はこれだけ 結膜炎は白目(結膜)に炎症が生じる非常にコモンな眼科疾患です。また、プライマリケア医でも十分治療できる疾患だと言われています。番組では結膜炎の3つのタイプ、ウイルス性、アレルギー性、細菌性の特徴と簡単な見分け方、さらに目の充血と出血の違いも紹介します。結膜炎、これだけ知っておけば非専門医の標準レベル突破。第7回「眼科コモンディジーズ」はこれだけ 前眼部で診察できる眼科コモンディジーズについて取り上げます。非眼科医が出会う眼科疾患の80%以上はまぶた、角膜、結膜、水晶体などの前眼部疾患です。この番組では、上眼瞼の翻転、フルオレセイン染色などプライマリケアでできる前眼部診察や、麦粒腫、ドライアイなど代表的な前眼部疾患診療のポイントについてわかりやすく紹介します。前眼部病変、これだけ知っておけば非専門医の標準レベル突破。

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70歳以上高齢者に対する帯状疱疹サブユニットワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-596

 帯状疱疹の罹患率や、その合併症である帯状疱疹後神経痛の発生率は、年齢とともに増加することが知られている。帯状疱疹を発症した場合、抗ウイルス薬の投与によって罹病期間を短縮することはできるが、帯状疱疹後神経痛の減少効果は示されておらず、ワクチンによる予防効果が期待されてきた。日本や米国では、50歳以上の成人に対して帯状疱疹の予防に生ワクチンが認可されているが、帯状疱疹の予防効果は50%程度とそれほど高くなく、さらに年齢とともに有効性が低下することが指摘されていた。  2015年に、組み換え水痘帯状疱疹ウイルス糖蛋白EとAS01Bアジュバントを組み合わせた帯状疱疹サブユニットワクチン(HZ/su)の有効性が報告された。この試験は、50歳以上を対象としたもの(ZOE-50)であったが、今回は70歳以上の高齢者に対象を限定して、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛へのサブユニットワクチンの有効性を検証するために、プラセボ対照ランダム化比較試験(ZOE-70)が行われた。ZOE-50と足し合わせた解析では、帯状疱疹に対する有効性が91.3%(95%信頼区間:86.8~94.5、p<0.001)、帯状疱疹後神経痛に対する有効性が88.8%(同:68.7~97.1、p<0.001)であり、プラセボと比較して高い有効性が示された。また、70~79歳と80歳以上の2群で有効性は同等であり、高齢者では有効性が低下した生ワクチンとは対照的な結果であった。 有効性、有害事象のデータを見る限り、非常に有望なワクチンと思われる。一般的に生ワクチンは免疫不全者では使用できず、高齢者に対しては不活化ワクチンのほうが安全に接種できる。安全性のさらなる確認は必要であるが、サブユニットワクチンの認可、導入が待たれる。 多くのワクチンでみられるように、帯状疱疹サブユニットワクチンの効果も経年的に減弱する傾向があるようである。今後は、どのくらいの期間ワクチンの効果が持続するのか、追加接種の必要性などについても検証する必要があると考える。

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帯状疱疹の新規ワクチンの有効性、70歳以上では9割/NEJM

 組換え水痘帯状疱疹ウイルス糖蛋白EとAS01Bアジュバントを組み合わせた帯状疱疹サブユニットワクチン(HZ/su)の70歳以上高齢者に対する予防効果について、帯状疱疹の有効性は約91%、帯状疱疹後神経痛に対する有効性は約89%であることが示された。オーストラリア・シドニー大学のA.L.Cunningham氏らが、約1万4,000例を対象に行った第III相のプラセボ対照無作為化比較試験「ZOE-70」の結果で、NEJM誌2016年9月15日号で発表した。すでに、50歳以上を対象にHZ/suの有効性について検証した「ZOE-50」試験では、帯状疱疹リスクがプラセボに比べ97.2%減少したことが示されていた。ワクチンを2ヵ月間隔で2回投与 研究グループは18ヵ国で集めた70歳以上の成人1万3,900例を無作為に2群に分け、一方にはHZ/suを、もう一方にはプラセボを、2ヵ月間隔で2回、筋肉投与した。 すでに実施済みのZOE-50試験と、今回の試験を合わせて、70歳以上への帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛へのワクチンの有効性について検証を行った。ワクチン有効性、帯状疱疹は91.3%、帯状疱疹後神経痛は88.8% ZOE-70被験者の平均年齢は75.6歳だった。 追跡期間中央値3.7年の期間中、帯状疱疹を発症したのは、プラセボ群223例だったのに対し、HZ/su群は23例と大幅に減少した(発症率はそれぞれ、9.2/1,000人年、0.9/1,000人年)。 帯状疱疹に対するワクチンの有効率は89.8%(95%信頼区間:84.2~93.7、p<0.001)で、70~79歳では90.0%、80歳以上では89.1%で、高年齢でも有効性は同等だった。 ZOE-50の70歳以上の被験者とZOE-70の被験者の計1万6,596例についてプール解析をしたところ、帯状疱疹に対するワクチン有効率は91.3%(同:86.8~94.5、p<0.001)、帯状疱疹後神経痛への有効率は88.8%(同:68.7~97.1、p<0.001)だった。 なお、接種後7日以内の自発的ではない注射部位や全身反応の報告は、HZ/su群(79.0%)のほうがプラセボ群(29.5%)よりも高率だった。一方で、重篤有害事象や免疫が介在していると考えられる疾患、死亡については、両群で同等だった。

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亜急性硬化性全脳炎〔SSPE : subacute sclerosing panencephalitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis: SSPE)は、1934年Dawsonにより急速進行する脳炎として初めて報告された。この疾患は、麻疹に感染してから数年の潜伏期間を経て発症する。発病後は数ヵ月から数年の経過(亜急性)で神経症状が進行し、病巣の性状はグリオーシス(硬化)であり、全脳を侵すことにより、亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる。このように潜伏期間が長く、緩徐に進行するウイルス感染を遅発性ウイルス感染と呼び、ほかにはJCウイルスによる進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy: PML)が知られている。根本的治療法は確立されておらず、現在でも予後不良の疾患である。■ 疫学わが国での発症者は、麻疹ワクチンが普及する以前は年間10~15人程度であったが、麻疹ワクチン普及後は減少し、現在は年間5~10人程度となっている。男女比は2 : 1でやや男性に多く、潜伏期間、症状の発症とも女性と比較すると長く、遅くなっている。SSPEの発症年齢は平均12歳で、20代をピークに10~30歳代で96%を占める。麻疹ワクチンによるSSPEの発症は認められておらず、SSPE発症には直接的な麻疹ウイルス(MV)感染が必要であるため、発症予防には麻疹への感染予防が重要であるが、わが国では他の先進国に比べて麻疹ワクチンの接種率が低く、接種率向上が必要である。■ 病因SSPEの発症のメカニズムは現在まで十分には判明していないが、発症に関与する要因として、ウイルス側のものと宿主側のものが考えられている。1)ウイルス側の要因MVの変異株(SSPEウイルスと呼ぶ)が、中枢神経に持続感染することで起こる。SSPEウイルスは野生のMVと比較すると、M遺伝子やF遺伝子の変異が生じている。M遺伝子は、ウイルス粒子形成とカプシドからの粒子の遊離に重要なMタンパク質をコードし、Mタンパク質機能不全のため、SSPEウイルスは、感染性ウイルス粒子を産生できない。そのため隣接する細胞同士を融合させながら、感染を拡大していく。F遺伝子は、エンベロープ融合に関与するFタンパク質をコードし、一般にはSSPEウイルスはFタンパク質の膜融合が亢進しており、神経親和性が高くなっている。2)宿主側の要因幼少期にMV初感染を受けると免疫系や中枢神経系が十分に発達していないため、MVの脳内での持続感染が起こりやすく、SSPE発症リスクが上がる。ほかにSSPE発症に関わる遺伝的要因として、これまでにIL-4遺伝子多型とMxA遺伝子多型が報告されている。IL-4は、ヘルパーT細胞のTh1/Th2バランスをTh2(抗体産生)側に傾けるサイトカインで、SSPE患者ではIL-4産生が多いタイプの遺伝子多型を持つことが多いために、IL-4産生が亢進してTh2側に傾き、細胞傷害性T細胞の活性が抑えられて、MVの持続感染が起こりやすくなっていると考えられている。また、SSPE患者はインターフェロンによって誘導され、細胞内でのウイルス増殖を抑える機能を持つ、MxAの産生が多くなる遺伝子多型を持つことも知られている。MxA産生が多いと、中枢神経系のMV増殖が抑制され、MVに感染した神経細胞が免疫系から認識されにくくなり、中枢神経系での持続感染が起こりやすくなると考えられている。■ 症状と特徴初発症状として、学校の成績低下、記憶力低下、行動の異常、性格の変化があり、その後、歩行障害、ミオクローヌス、痙攣、自律神経症状、筋固縮を来し、最終的には無言・無動となり、死に至ることが多い。これらの症状の分類には、Jabbourが提唱した臨床病期分類が一般的に用いられる。■ Jabbourの分類第1期精神神経症状性格変化(無関心、反抗的)、学力低下、行動異常など第2期痙攣および運動徴候痙攣のタイプは全身強直発作、失神発作、複雑部分発作など運動徴候として運動機能低下、不随意運動(SSPEに特徴的な四肢の屈曲や進展を反復するミオクローヌス)第3期昏睡に至る意識障害の進行、筋緊張の亢進、球症状の出現による経口摂取困難、自律神経症状など第4期無言無動、ミオクローヌス消失全経過は通常数年だが、数ヵ月以内に死に至る急性型(約10%)、数年以上の経過を示す慢性型(約10%)がある。■ 予後SSPE症例は、無治療の場合は約80%が亜急性の経過をたどり、約1~3年の経過で第1期から第4期の順に進行し死亡する。約10%は発症後急速に進行し、3ヵ月以内に死亡する。また、残り約10%の進行は緩徐で、約4年以上生存する。無治療で寛解する症例や、寛解と増悪を繰り返す症例も報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、臨床症状を軸に血液、髄液、脳波、画像検査を統合して行う。■ 特徴的な検査所見1)麻疹抗体価血清および髄液の麻疹抗体価が上昇する。髄液麻疹抗体価の上昇はSSPEに特異的であり、検出されれば診断的意義が高い。SSPE患者の抗体価は異常高値が特徴とされたが、最近では、軽度上昇にとどまる症例も多く、注意が必要である。また、抗体価の推移と臨床経過は必ずしも一致しない。2)髄液検査多くの場合は細胞数・糖・蛋白とも正常だが、細胞数・蛋白が軽度上昇することもある。また、髄液IgGおよびIgG indexの上昇も認める。3)脳波検査Jabbour2期から3期にかけて、左右同期性または非同期性で3~20秒間隔で出現する周期性同期性高振幅徐波をほとんどの症例で認めるが、Jabbour4期になると消失する(図)。画像を拡大する4)画像検査MRIは、疾患の推移を評価するのに有用である。画像変化は臨床病期とは一致せず、主に罹患期間に依存する。病初期のMRI所見では、正常または後頭葉の皮質・皮質下に非対称なT2強調画像での高信号の病変を認める。病期の進行とともに脳萎縮が進行し、側脳室周囲に対称性の白質病変が出現・拡大する。5)病理病理所見の特徴は、灰白質と白質の両方が障害される全脳炎であることと、線維性グリオーシスにより硬化性変化を示すことである。組織学的には、軟膜と血管周囲の炎症細胞浸潤、グリア細胞の増生、ニューロンの脱落および神経原線維変化の形成、脱髄などの所見がみられる。炎症所見は、発症からの経過が長いほど乏しくなる。麻疹ウイルス感染に関連した所見として、核内および細胞質の封入体を認める。■ 鑑別診断SSPEは急速に進行する認知症、ミオクローヌス、痙攣などを来す疾患の一部であり、ADEM(acute disseminated encephalomyelitis)、亜急性および慢性脳炎、脳腫瘍、多発性硬化症、代謝性白質脳症、進行性ミオクローヌスてんかんなどが鑑別に挙がる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ イノシンプラノベクスイノシンプラノベクス(商品名: イソプリノシン)は、抗ウイルス作用と免疫賦活作用を併せ持つ薬剤で、保険適用薬として認可されている。通常50~100mg/kg/日を3~4回に分割し、経口的に投与する。これにより生存期間の延長が得られるとされている。副作用として、血中および尿中の尿酸値の上昇(18.8%)があり、注意を要する。■ インターフェロン(IFN)インターフェロンは、ウイルス増殖阻害作用を持つ薬剤であり、IFNα、IFNγともに保険適用薬として認可されている。イノシンプラノベクスとの併用により有効であったとの報告例を多数認める。通常100~300万単位を週1~3回、脳室内に直接投与する。副作用として一過性の発熱をほぼ全例で認める。頻度は低いが、アレルギー反応を来す症例も認める。イノシンプラノベクス経口投与とIFN髄腔内または脳室内投与を併用するのが一般的で、有効性は言われているものの進行を阻止した例はまれであり、治療効果として不十分と考えられている。■ リバビリン近年、研究的治療(保険適用外)として、リバビリンの髄腔内または脳室内投与療法が試みられている。リバビリンは、広い抗ウイルススペクトラムを有する薬剤であり、麻疹(SSPE)ウイルスに対しても優れた抗ウイルス効果を示す。直接脳室内に投与することで、髄液中のリバビリン濃度はウイルス増殖を完全に抑制する濃度に維持され、重篤な副作用を認めず、少数例ではあるが臨床的有効性が報告されている。しかし、病初期(Jabbour2期)に投与した症例においては、臨床症状に明らかな改善を認めたとする報告が多く、病期の進行した症例(Jabbour3期)では改善効果に乏しかったとする報告が多い。以上のことから、リバビリン療法は、リバビリンがウイルスの増殖を抑制して病期の進行を抑制する治療法であり、進行した神経障害を改善させるものではないと考えられている。■ 対症療法上記の治療のほかには対症療法として、ミオクローヌスのコントロールや呼吸管理、血圧コントロールなどの対症療法を行っていく必要がある。4 今後の展望SSPEの重症度の評価として、新たにトリプトファン代謝の主要経路であるキヌレニン経路の代謝産物の髄液中濃度について検討されている。SSPE群では対象例と比較し、髄液中のキノリン酸濃度が有意に高値であり、病期の進行とともに増加が認められている。代謝産物であるキノリン酸の増加はキヌレニン経路の活性化が示唆され、その活性化はSSPEにおける変異型麻疹ウイルスの持続感染に関与している可能性がある。さらにキノリン酸は NMDA型グルタミン酸受容体アゴニストとして興奮性神経毒性を持つため、SSPEにおける神経症状との関係が示唆されている。また、前述したが、研究的治療としてリバビリン髄腔内または脳室内投与が有望である可能性が考えられている。具体的な投与方法として、リバビリン1mg/kg/回、1日2回、5日間投与から開始し、1回量、投与回数を調整し、髄液リバビリン濃度を目標濃度(50~200μg/mL)にする。投与量が決定したら、5日間投与・9日間休薬を12クール(6ヵ月)継続するものとなっている。効果としては、国内で詳細に調査された9例において、治療前後の臨床スコアの平均は前が52.9、後が51.0であり、治療前後で有意差は認めなかった。しかし、イノシンプラノベクスとIFNの併用療法を施行された48症例では治療前後の臨床スコアは前が54.3、後が61.1と悪化を認めており、リバビリン脳室内投与群のほうが優る結果となっている。しかしSSPEは、症例により異なる経過をたどり、その経過も長いため、多数例の調査を行ったうえでの慎重な判断が必要である。5 主たる診療科神経内科および小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 亜急性硬化性全脳炎(一般利用者向けと医療従事者むけのまとまった情報)プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究班(医療従事者向けの情報)患者会情報SSPE青空の会(SSPE患者とその家族の会)1)厚生労働省難治性疾患克服研究事業 プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班. 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)診療ガイドライン(案)2)平成27年度(2015年度)プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班 総括研究報告書3)Gutierrez J, et al. Dev Med Child Neurol.2010;52:901-907.公開履歴初回2014年05月19日更新2016年09月20日

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可愛い孫は、肺炎を持ってくる

孫の世話に疲れる高齢者 大都市の待機児童の問題にみられるように、保育園や幼稚園に入所できず、祖父母に子供を預ける共働き世帯も多い。また、地方では、2世帯同居が珍しくなく、日中、孫の育児を祖父母がみるという家庭も多い。そんななか、預かった孫の世話に追われ、体力的にも精神的にも疲れてしまう「孫疲れ」という現象が、最近顕在化しているという。晩婚化のため祖父母が高齢化し、体力的に衰えてきているところに、孫の育児をすることで、身体が追いついていかないことが原因ともいわれている。家庭内で感染する感染症 そして、孫に疲れた高齢者に家庭内、とくに孫から祖父母へうつる感染症が問題となっている。子供は、よく感染症を外からもらってくる。風邪、インフルエンザをはじめとして、アデノウイルス、ノロウイルス、帯状疱疹など種々の細菌ウイルスが子供への感染をきっかけに家庭内に持ち込まれ、両親、兄弟、祖父母へと感染を拡大させる。 日頃孫の面倒をみていない祖父母でも、お盆や年末、大型連休などの帰省シーズンに帰ってきた孫との接触で感染することも十分考えられ、連休明けに高齢者の風邪や肺炎患者が外来で増えているなと感じている医療者も多いのではないだろうか1)。ワクチンで予防できる肺炎 なかでも高齢者が、注意しなくてはいけないのが「肺炎」である。肺炎は、厚生労働省の「人口動態統計(2013年)」によれば、がん、心疾患についで死亡原因の第3位であり、近年も徐々に上昇しつつある。また、肺炎による死亡者の96.8%を65歳以上の高齢者が占めることから肺炎にかからない対策が望まれる。 日常生活でできる肺炎予防としては、口腔・上下気道のクリーニング、嚥下障害・誤嚥の予防、栄養の保持、加湿器使用などでの環境整備、ワクチン接種が推奨されている。とくにワクチン接種については、高齢者の市中肺炎の原因菌の約4分の1が肺炎球菌と報告2)されていることから、2014年よりわが国の施策として、高齢者を対象に肺炎球菌ワクチンが定期接種となり、実施されている。 定期接種では、65歳以上の高齢者に23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(商品名:ニューモバックスNP)の接種が行われ、平成30年度まで経過措置として65歳から5歳刻みで区切った年齢の該当者に接種が行われる。定期接種の注意点と効果を上げるコツ 定期接種の際に気を付けたいことは、経過措置の期間中に接種年齢に該当する高齢者が接種を受けなかった場合、以後は補助が受けられず自己負担となってしまうことである(自治体によっては、独自の補助などもある)。また、過去にこのワクチンの任意接種を受けた人も、定期接種の対象からは外れてしまうので注意が必要となる。 そして、ワクチンの効果は約5年とされ、以後は継続して任意で接種を受けることが望ましいとされている。 このほか高齢者においては肺炎球菌ワクチンだけでなく、同時にインフルエンザワクチンも接種することで、発症リスクを減らすことが期待できるとされる3,4)。低年齢の子供へのインフルエンザワクチンの接種により、高齢者のインフルエンザ感染が減少したという報告5)と同様に肺炎球菌ワクチンでも同じような報告6)があり、今後のワクチン接種の展開が期待されている。 普段からの孫との同居や預かり、連休の帰省時の接触など、年間を通じて何かと幼い子供と接する機会の多い高齢者が、健康寿命を長く保つためにも、高齢者と子供が同時にワクチンを接種するなどの医療政策の推進が、現在求められている。 この秋から冬の流行シーズンを控え、今から万全の対策が望まれる。(ケアネット 稲川 進)参考文献 1)Walter ND, et al. N Engl J Med. 2009;361:2584-2585. 2)日本呼吸器学会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 2007;15. 3)Maruyama T, et al. BMJ. 2010;340:c1004. 4)Kawakami K, et al. Vaccine. 2010;28:7063-7069. 5)Reichert TA, et al. N Engl J Med. 2001;344:889-896. 6)Pilishvili T, et al. J Infect Dis. 2010;201:32-41.参考サイト ケアネット・ドットコム 特集 肺炎 厚生労働省 肺炎球菌感染症(高齢者):定期接種のお知らせ 肺炎予防.JP

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ジカウイルスと関節拘縮の関連が明らかに/BMJ

 先天性ジカ症候群(Congenital Zika syndrome)として関節拘縮症の詳細な特徴が明らかにされ、同症候群を先天性感染症と関節拘縮症の鑑別診断に加えるべきとする見解を、ブラジル・Barao de Lucena HospitalのVanessa van der Linden氏らが、後ろ向きケースシリーズ研究の結果、報告した。最近まで、先天性ウイルス感染症と関節拘縮の関連報告はなかったが、ブラジルでのジカウイルスと関連した小頭症のアウトブレイク以後、両者の関連を示唆する2件の報告が発表されたが、詳細については述べられていなかった。BMJ誌2016年8月9日号掲載の報告。7例について後ろ向きケースシリーズで詳細所見を検証 研究グループは、ジカウイルスによると思われる先天性感染症に関連した関節拘縮症を有する小児のシリーズ症例について、臨床的、放射線学的および筋電図検査による特色を明らかにする検討を行った。ブラジル・ペルナンブーコ州のAssociation for Assistance of Disabled Childrenにて、ブラジル国内で小頭症が流行していた期間中に、関節拘縮症を有し先天性ジカウイルス感染症が疑われる診断例7例について調べた。 主な臨床的、放射線学的および筋電図検査の所見と、臨床的所見とプライマリな神経学的異常の所見との関連性を評価した。先天性感染症と関節拘縮症に特徴的な所見 全7例における脳画像は、先天性感染症と関節拘縮症に特徴的なものであった。2例については、脳脊髄検査でジカウイルスのIgM陽性が認められた。 関節拘縮は、腕部と脚部に認められたのが6例(86%)、脚部のみが1例(14%)であった。 また、全7例で、股関節部に両側性の脱臼が放射線学的に認められた。3例(43%)では外反膝に関連した膝蓋骨亜脱臼がみられ、そのうち2例(29%)は両側性であった。 関節部の高解像度超音波検査は全7例に行われたが、異常を示す所見は認められなかった。 針筋電図(単極)検査では、運動単位のリモデリングのわずかなサインと漸減パターンが示された。 脳CTおよびMRIは5例に行われ、残る2例は脳CTのみが行われた。結果、全例に、皮質形成の発達異常、皮質と皮質下白質(とくに皮質との境界面)の大部分で石灰化がみられ、脳容積の減少、脳室拡大、脳幹と小脳の形成異常がみられた。4例の脊椎MRI所見では、脊髄の顕著な菲薄化と前根の減少がみられた。 著者はこれらの所見を踏まえて、先天性感染症と関節拘縮症の鑑別診断に、先天性ジカ症候群を加えるべきとしている。また、「関節拘縮は関節部の異常とは関連していなかったが、神経に起因するものと思われ、中心および末梢運動神経が慢性的に関与し、子宮内での固定された姿勢の結果として奇形に結び付いていると思われた」と述べている。最後に、神経生理学的観察に基づき2つの考えられるメカニズムとして、末梢および中心運動神経の関与または血管障害に関連した神経細胞の向性(tropism)を提示した。

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ダニ媒介脳炎で国内初めての死者

 北海道は、8月15日に道内の40代男性が「ダニ媒介脳炎」で死亡したと発表した。男性は、7月中旬ごろに道内の草むらでダニに咬まれて発症。発熱や筋肉痛、意識障害、痙攣などの症状を示し、13日に亡くなった。なお、男性には海外渡航歴はなかったという。 ダニ媒介脳炎は、日本脳炎と同じフラビウイルスに属するダニ媒介性の脳炎ウイルスが引き起こす感染症で、わが国では1993年に同じく道内の上磯町で1例の感染が報告されている。 本症は、ダニ刺咬後7~14日の潜伏期を経て、発熱、頭痛、倦怠感、関節痛といった非特異的な症状で発症し(第1相)、いったん症状が消失後、第2相として発熱と神経学的症状が出現する。この神経学的症状は髄膜炎から脳炎までさまざまであり、救命できても麻痺などの後遺症を残すこともある。 現在、有効な治療薬はなく、支持療法が主体となる。そのためダニに刺咬されない予防が重要となる。 予防策としては、流行地域などの病原体の存在が知られている地域で、マダニの生息域に入る際は、肌の露出の少ない服装とはき物で防御する必要がある。また、DEETを含む忌避剤の塗布も有効とのことである。海外ではワクチンの開発がされているが、国内では未承認となっている。(ケアネット)関連リンク新興再興感染症に気を付けろッ! 第12回 ダニ媒介性脳炎に気を付けろッ!厚生労働省 ダニ媒介脳炎について

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イワケンの「極論で語る感染症内科」講義

第1回 なぜ極論が必要なのか? 第2回 あなたはなぜその抗菌薬を出すのか 第3回 その非劣性試験は何のためか 第4回 急性咽頭炎の診療戦略のシナリオを変えろ! 第5回 肺炎・髄膜炎 その抗菌薬で本当にいいのか? 第6回 CRPは何のために測るのか 第7回 急性細菌性腸炎 菌を殺すことで患者は治るのか第8回 ピロリ菌は除菌すべきか第9回 カテ感染 院内感染を許容するな 第10回 インフルエンザ 検査と薬の必要性を考えろ 第11回 HIV/AIDS 医療者が知っておくべきHIV/AIDS診療の今 きょく ろん 【極論】1.極端な議論。また,そのような議論をすること。極言。2.つきつめたところまで論ずること。           大辞林第3版(三省堂)イワケンこと岩田健太郎氏が感染症内科・抗菌薬について極論で語ります。「この疾患にはこの抗菌薬」とガイドラインどおりに安易に選択していませんか?それぞれ異なった背景を持つ患者にルーチンの抗菌薬というのは存在するはずがありません。抗菌薬が持つ特性や副作用のリスクなどを突き詰めて考え、相対比較をしながら目の前の患者に最適なものを特定することこそが、抗菌薬を選択するということ。イワケン節でその思考法をたたきこんでいきます。※本DVDの内容は、丸善出版で人気の「極論で語る」シリーズの講義版です。 書籍「極論で語る感染症内科」は2016年1月丸善出版より刊行されています。  http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/book_data/search/9784621089781.html第1回 なぜ極論が必要なのか? 抗菌薬選択、感染症治療に関してなぜ“極論”が必要なのかをイワケンが語ります。これまでの感染症の診断・治療の問題点を指摘しながら、どういう方向に向かっていかなければならないのか、何をすればよいのかを示していきます。“感染症とはなにか”が理解できる内容です。第2回 あなたはなぜその抗菌薬を出すのか抗菌薬を処方するとき、何を基準に選択していますか?ほとんどの場合において「スペクトラム」を基準にしていることが多いのではないでしょうか?否。本当にそれでいいのでしょうか。移行性、時間依存性、濃度依存性などの抗菌薬が持つ特性や副作用のリスクなどを突き詰めて考え、、相対比較をしながら最適なものを特定することこそが、抗菌薬を選択するということ。イワケン節でその思考法をたたきこみます。第3回 その非劣性試験は何のためか近年耳にする機会が増えている「非劣性試験」。既存薬よりも新薬の効果のほうが劣っていないことを示す試験で、新薬が主要な治療効果以外に何らかの点で優れているということを前提としてが実施するものである。本来患者の恩恵のために行われるべきこの試験が価値をもたらすことは当然ある。しかしながら、臨床的には意味の小さいいわゆる「me too drug」を増やす道具になりかねないということも、また事実である。この試験のあり方にイワケンが警鐘を鳴らす。第4回 急性咽頭炎の診療戦略のシナリオを変えろ!いよいよ疾患の診療戦略に入っていきます。まずは誰もが診たことのある急性咽頭炎。急性咽頭炎の診療において、溶連菌迅速検査の結果が陽性の場合は、抗菌薬(ペニシリン系)を投与を使用し、陰性の場合は、伝染性単核球症などとして、抗菌薬を使用しないという治療戦略が一般的。しかし、細菌性の急性咽頭炎の原因菌は「溶連菌」だけではなかった!つまり、検査が陰性であっても、抗菌薬が必要な場合もある!ではそれをどのように見つけ、診断し、治療するのか?イワケンが明確にお答えします。第5回 肺炎・髄膜炎 その抗菌薬で本当にいいのか?今回は、肺炎と髄膜炎の診療戦略について見ていきます。風邪と肺炎の見極めはどうするか?グラム染色と尿中抗原検査、その有用性は?また、髄膜炎のセクションでは、抗菌薬の選択についてイワケンが一刀両断。細菌性髄膜炎の治療に推奨されているカルバペネム。この薬が第1選択となったその理由を知っていますか?そこに矛盾はないでしょうか?ガイドライン通りに安易に選択していると、痛い目を見るかもしれません。番組最後には耐性菌についても言及していきます。第6回 CRPは何のために測るのか炎症の指標であるCRPと白血球は感染症診療において多用されている。多くの医療者は感染症を診るときに、白血球とCRPしか見ていない。CRPが高いと感染症と判断し、ある数値を超えると一律入院と決めている医療機関もある。しかし、それで本当に感染症の評価ができていると言えるのだろうか。実例を挙げながらCRP測定の意義を問う。第7回 急性細菌性腸炎 菌を殺すことで患者は治るのか細菌性腸炎の主な原因菌は「カンピロバクター」。カンピロバクターはマクロライドに感受性がある。しかし、臨床医として、安易にマクロライドを処方する判断をすべきではない。抗菌薬で下痢の原因菌を殺し、その抗菌薬で下痢を起こす・・・。その治療法は正しいといえるのか?イワケン自身がカンピロバクター腸炎に罹患したときの経験を含めて解説します。第8回 ピロリ菌は除菌すべきか世の中は「ピロリ菌がいれば、とりあえず除菌」といった圧力が強い。ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんなど多様な疾患の原因となる菌であるからだ。一方で、ピロリ菌は病気から身を守ってくれている存在でもあるのだ。そのピロリ菌をやみくもに除菌することの是非を、イワケンの深い思考力で論じる。第9回 カテ感染 院内感染を許容するなカテーテルを抜去して解熱、改善すればカテ感染(CRBSI:catheter-related blood stream infection)と定義する日本のガイドライン。また、カテ感染はカテーテルの感染であると勘違いされている。そんな間違いだらけの日本のカテ感染の診療に、イワケンが切り込む。限りなくゼロにできるカテ感染(CRBSI)。感染が起こることを許容すべきではない。第10回 インフルエンザ 検査と薬の必要性を考えろインフルエンザの診療において迅速キットを使って診断、そして、陽性であれば抗インフルエンザ薬。そんなルーチン化した診療にイワケンが待ったをかける。今一度検査と抗インフルエンザ薬の必要性と意義を考えてみるべきではないだろうか。また、イワケンの治療戦略の1つである、「漢方薬」についても解説する。第11回 HIV/AIDS 医療者が知っておくべきHIV/AIDS診療の今HIV/AIDSの診療は劇的に進化し、薬を飲み続けてさえいれば天寿をまっとうすることも可能となった。そのため、HIV/AIDS診療を専門としない医師であっても、そのほかの病気や、妊娠・出産などのライフイベントで、HIV感染者を診療する機会が増えてきているはず。その患者が受診したとき、あなたはどう対応するのか。そう、医療者として、“患者差別”は許されない!普段通りの診療をすればいいのだ。しかしながら、薬の相互作用や患者心理など、気をつけるべきことを知っておく必要はある。その点を中心に解説する。

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早期抗レトロウイルス療法によるカップルのHIV-1伝播予防、5年超の効果/NEJM

 性的パートナーの一方でHIV-1感染陽性が認められた場合、すみやかに抗レトロウイルス療法(ART)が行われるようになったのは、HIV-1血清陽性・陰性者カップル間での伝播予防について検討したHPTN(HIV Prevention Trials Network)052試験の中間報告で、96%超の伝播予防効果が報告されたことによる(追跡期間中央値1.7年、2011年5月発表)。同研究について、追跡5年超の解析結果が、米国・ノースカロライナ大学のM.S. Cohen氏らによって発表された。早期治療群のカップル間伝播の低減効果が持続していることが確認されたという。NEJM誌オンライン版2016年7月18日号掲載の報告。1,763組をART早期治療群と待機的治療群に割り付け追跡 HPTN052試験は9ヵ国(米国、ブラジル、インド、タイほかアフリカ5ヵ国)13都市で、一方のパートナーがHIV感染陽性のカップル1,763組を集めて行われた。被験者をARTの早期治療群(886組)または待機的治療群(877組)に無作為に割り付けて検討。早期治療群は登録後すぐに治療を開始し(登録時の患者のCD4+細胞は350~550個/mm3)、待機的治療群はCD4+細胞が連続250個/mm3以下もしくはAIDS疾患定義に基づく発症が認められた場合に治療を開始した。 試験の主要エンドポイントは、陰性パートナーにおける、カップル間の伝播を示すHIV-1感染の診断で、intention-to-treat解析で評価した。5年超時点も早期ART群の伝播抑制効果は97% 追跡期間中央値は早期ART群、待機的ART群ともに5.5年。解析には1万31人年、8,509組が組み込まれた。 試験期間中、78組のHIV-1感染が観察された(年間発症率:0.9%、95%信頼区間[CI]:0.7~1.1)。72組(92%)についてウイルス学的関連を調べた結果、カップル間伝播が確認されたのは46組(早期ART群3組、待機的ART群43組、発生率0.5%、95%CI:0.4~0.7)、26組は伝播が確認されなかった(同:14組、12組、0.3%、0.2~0.4)。 早期ARTは待機的ARTよりも、カップル間伝播のリスクが93%低かった(ハザード比:0.07、95%CI:0.02~0.22)。なお、カップル間伝播は、陽性パートナーがARTによってウイルス抑制効果が認められている間は観察されなかった。

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