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第6回 ARDS合併COVID-19患者、間葉系幹細胞治療で8割が生存

JCRファーマ社の急性移植片対宿主病(急性GvHD)治療薬・テムセルHS注の技術を提供したオーストラリア拠点のMesoblast社が開発している間葉系幹細胞(MSC)治療薬remestemcel-Lが、米国・ニューヨーク市の緊急事態を斟酌して新型コロナウイルス感染(COVID-19)患者に使用され、有望なことに急性呼吸窮迫症候群(ARDS)合併患者12例中10例(83%)が生存し続けました1)。肺に水が溜まって重度の酸素欠乏をもたらすARDSに陥ると人工呼吸器が必要ですが、12例中9例(75%)はおよそ10日(中央値)ほどで人工呼吸器を無事外すことができました。4月初め、米国FDAはCOVID-19によるARDS患者へのremestemcel-Lの試験実施や試験に参加できない患者に同剤を広く使うことを許可しています2)。その認可を受け、Mesoblast社はニューヨーク市での治療成績を参考にして準備を進め、中等~重度ARDSを患う人工呼吸器使用COVID-19患者を対象にしたプラセボ対照第II/III相試験を早速始めています3)。免疫調節作用があると考えられている多能性細胞・間葉系幹細胞(MSC)のCOVID-19患者への投与は中国でも試みられており、3月中旬にAging and Disease誌に掲載されたプラセボ対照試験では、重度COVID-19患者7例全員がMSC投与で回復したと報告されています4,5)。一方、プラセボ群の3例のうち1例は安定状態を維持したものの1例は死亡し、1例は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に陥りました。ただし、悪化したそれら2例はMSC投与群の最高齢の患者よりおよそ10歳歳上でした。年齢とCOVID-19患者の死亡率はおそらく密接に関連することが知られており、年齢差が結果に影響したとするアイルランド大学Daniel O’Toole氏の指摘を、科学ニュースThe Scientistは紹介しています6)。65歳の重症COVID-19女性患者1例に臍帯MSCを投与した症例報告もあります7)。査読前論文登録サイトChinaXivに2月末に掲載されたその報告によると、女性の状態は改善しましたが、女性の臨床検査値の多くはMSC開始前に改善していて説得力に欠ける、とアラバマ大学のサイトカインストーム(cytokine storm)研究家のRandy Cron氏は言っています。ニューヨーク市でMesoblast社開発品が使われた患者数は以前のそれらの報告に比べて多く、有望そうですが、治療効果の確立には何はともあれ無作為化試験が必要です。Mesoblast社もそれは十分承知のようで、先月末に早速始まったプラセボ対照無作為化試験でremestemcel-LがARDS合併COVID-19患者の生存を延長するかどうかの白黒をきっちりつける(rigorously confirm)つもりです1)。試験は米国立衛生研究所(NIH)が助成するCardiothoracic Surgical Trials Network(CTSN)と協力して進められ、ARDS合併のCOVID-19患者最大300例が参加します。ARDSの引き金となるサイトカインストームを鎮めることを目指すMSCのCOVID-19試験は20以上もClinicalTrials.govに登録されており、remestemcel-LをはじめとするMSC治療がCOVID-19に有効かどうかはそう時を待たず判明しそうです。また、本連載第1回で紹介した、ARDS合併のCOVID-19患者へのt-PA投与試験は米国で予定通り患者組み入れがスタートしています8)。参考1)83% Survival in COVID-19 Patients with Moderate/Severe Acute Respiratory Distress Syndrome Treated in New York with Mesoblast’s Cell Therapy Remestemcel-L / GlobeNewswire2)FDA CLEARS INVESTIGATIONAL NEW DRUG APPLICATION FOR MESOBLAST TO USE REMESTEMCEL-L IN PATIENTS WITH ACUTE RESPIRATORY DISTRESS SYNDROME CAUSED BY COVID-193)Phase 2/3 Randomized Controlled Trial of Remestemcel-L in 300 Patients With COVID-19 Acute Respiratory Distress Syndrome Begins Enrollment4)Leng Z ,et al. Aging Dis. 2020 Mar 9;11:216-228.5)Can cell therapies halt cytokine storm in severe COVID-19 patients? / Science6)Are Mesenchymal Stem Cells a Promising Treatment for COVID-19? / TheScientist7)Clinical remission of a critically ill COVID-19 patient treated by human umbilical cord. ChinaXiv. 2020-02-278)Old Drug, New Treatment? /Harvard Medical School

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COVID-19転帰予測、入院時のDダイマー測定が有用

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の管理を改善するために、臨床転帰の早期かつ効果的な予測因子が求められている。中国・武漢亜洲心臓病医院のLitao Zhang氏らは、COVID-19患者の入院時のDダイマーが2.0μg/mL超(fourfold increase)という指標が院内死亡率の予測に効果的であり、患者管理の改善における早期かつ有用なマーカーとなる可能性を示した。Journal of Thrombosis and Haemostasis誌オンライン版4月19日号掲載の報告。 研究者らはCOVID-19患者の死亡率をDダイマーの上昇で予測できるかどうかを評価するため、2020年1月12日~ 3月15日に武漢亜洲心臓病医院へ入院していた患者の情報を用いて解析を行った。最適なカットオフ値をROC曲線で設定するため入院時のDダイマーと死亡イベントを収集し、カットオフ値から被験者を2グループに分類した。次に、Dダイマーの予測値を評価するため2グループ間の院内死亡率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・研究には334例が登録された。・院内死亡率を予測するDダイマーの最適カットオフ値は2.0μg/mL、感度は92.3%、特異度は83.3%だった。・入院時、Dダイマーが2.0μg/mL以上の患者は67例、2.0μg/mL未満の患者は267例だった。・入院中に13例が死亡し、Dダイマーが2.0μg/mL以上の患者は、2μg/mL未満の患者より死亡率が高かった(12例/67例vs.1例/267例、p

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VICTORIA試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1223

 第69回米国心臓病学会年次学術集会は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け開催は見送られたが、心不全増悪の既往を有する心不全患者5,050例を対象として、可溶型グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬の効果をプラセボ群と比較したVICTORIA試験の結果は2020年3月28日にWEB上で公開され、同日、New Engl J Med誌に掲載となった1)。結論として、左室駆出率(LVEF)が45%未満の症候性慢性心不全において、ガイドラインに準じた治療にsGC刺激薬であるvericiguat(1日1回、10mgまで増量)を追加投与することで、心血管死ならびに心不全入院からなる複合エンドポイントを10%有意に減少させることが明らかになった(35.5% vs.38.5%、ハザード比[HR]0.90、95%信頼区間[CI]0.82~0.98、p=0.02)。ただし、心血管死単独、心不全入院単独では2群間に有意差を認めなかった。全死亡と心不全入院を合わせた複合エンドポイントは、1次エンドポイントと同様にvericiguat群でプラセボ群に比較し、有意に低率であった(HR:0.90、95%CI:0.83~0.98、p=0.02)。また、同薬剤の治療効果は、併用する心不全治療薬に関係なく、一貫して認められ、治験開始時のN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値が比較的低値の患者集団においてより有効であった。症候性低血圧や失神などの有害事象に有意差は認めず、従来の治療を行いつつも入院加療あるいは心不全増悪を来した症例に対して、良好な予後改善効果をもたらす新規治療薬として着目されるに至った。また、1件の主要アウトカムイベントを予防するために1年間の治療が必要な症例数(NNT:number needed to treat)は約24例であった。 心不全治療薬の中でも、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)であるsacubitril-バルサルタンは、sGC刺激薬と同様に膜結合型グアニル酸シクラーゼ(pGC)の活性化を介して細胞内のcGMPを増加させる薬剤であるが、同薬剤を併用している群においても有効性が示された意義は大きい。LVEFの低下した心不全(HFrEF)における一酸化窒素(NO)の利用能障害の存在は古くからいわれているが2-4)、あらためてNO-sGC-sGMP経路の重要性が示唆されたといえる。 心不全におけるNO利用能障害には、酸化ストレスなどによる血管内皮機能障害が関与しており、HFrEFの併存症として頻度の高い冠動脈疾患、高血圧、慢性腎臓病などでも血管内皮機能障害を認めることから5)、結果として血管拡張反応を減弱させ、前・後負荷を増大させることにより心不全を悪化させる要因となる。また、肺高血圧を合併した心不全においては、肺動脈における血管内皮機能障害も生じ6)、心不全の増悪因子になるほか、骨格筋における血管内皮機能障害は運動耐容能低下にも関与する7)。sGC刺激薬によるcGMP増加は、こうした全身における内皮機能障害を代償するとともに、心筋においては虚血の改善と同時に心筋細胞内のcGMP産生を増加させることで、プロテインキナーゼG(PKG)の活性化を介して心筋の拡張能を改善し、左室充満圧の上昇を抑制する可能性も考えられる。 VICTORIA試験では、治験開始時のNT-proBNP値が2,816pg/mlであり、最近行われたARNIを用いたPARADIGM-HF試験やSGLT2阻害薬を用いたDAPA-HF試験9)におけるNT-proBNP値の1,608pg/ml、1,437pg/mlに比べ高値であったが、sGC刺激薬の効果は、NT-proBNP値が低値であった全体の4分の3の患者集団で認められていた。したがって、1次エンドポイントの抑制効果がこれらの試験よりも低かった原因として、より重症の症例がエントリーされていた可能性があり、sGC刺激薬の効果を得るには、NT-proBNP値が著明に上昇し重症心不全に至る前の段階で追加投与すべきと考えられる。VICTORIA試験では、アジア人の登録が全体の22.4%を占めており、10mgに対するアドヒアランスも89%と良好であったことより、いずれ本邦においても入退院を繰り返す心不全症例に対して積極的な使用が推奨されるものと考えられる。引用文献1)Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 28. [Epub ahead of print]2)Kubo SH, et al. Circulation. 1991;84:1589-1596.3)Ramsey MW, et al. Circulation. 1995;92:3212-3219.4)Katz SD, et al. Circulation. 2005;111:310-314.5)Zuchi C, et al. Heart Fail Rev. 2020;25:21-30.6)Elkayam U, et al. J Card Fail. 2002;8:15-20.7)Carbone S, et al. Current Prob Cardiol. 2019:100417.8)McMurray JJV, et al. N Engl J Med. 2014;371:993-1004.9)McMurray JJV, et al. N Engl J Med. 2019;381:1995-2008.

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第40回 コロナ禍を吹っ飛ばせ!腕試し心電図クイズvol.1【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第40回:コロナ禍を吹っ飛ばせ!腕試し心電図クイズvol.1皆さん、いかがお過ごしでしょうか。せっかくのゴールデンウイークだけでなく、医療情勢まで逼迫させる新型コロナウイルスを本当に憎らしく思います。診療の場ではいつも以上に緊張を強いられる毎日かと思いますが、そんな時こそ息抜きで心電図クイズにチャレンジしてみませんか? 2019年も好評を博したこの企画。連載も気づけば40回目に突入し、レクチャーも進み扱える内容も増えました。おもしろくもためになる―そんな問題をDr.ヒロが厳選いたしました。さぁ、チャレンジしてみましょう!症例提示60歳、男性。就寝時の息苦しさ、咳嗽、両下腿の圧痕性浮腫を主訴に来院。うっ血性心不全の診断で入院となった。体温36.6℃、血圧143/104mmHg、脈拍84/分・不整、酸素飽和度95%(室内気)。来院時の心電図を以下に示す(図1)。(図1)来院時の心電図画像を拡大する【問題1】QRS電気軸に関して正しいものを選べ。また、電気軸の推定値はいくらか。1)不定軸2)正常軸3)右軸偏位4)左軸偏位5)高度の軸偏位(北西軸)解答はこちら2)QRS電気軸:+30°(トントン法で算出)解説はこちら電気軸の定性的な判定はQRS波の「向き」に注目します。IとII、そしてaVFのいずれの誘導でも上向きですから、立派な「正常軸」と判定できます。“ドキ心”読者なら、定量的な評価もしたくなるはず(笑)。そういう時には“トントン法”の出番ですね。肢誘導を上から見渡し、IIIでR波(高さ)≒S波(深さ)、つまりここが“トントン・ポイント”だとわかったらあと一息。肢誘導界の円座標を思い浮かべ、III(+120°)に直交し、Iが上向きとなる方角を選べば「+30°」が正解です(ちなみに自動診断では「+27°」となっていました)。参考レクチャー:第8回、第9回【問題2】心電図所見に関して正しいものをすべて選べ。1)心房期外収縮2)心室期外収縮3)高電位(差)4)低電位(差)5)右房拡大6)左房拡大7)完全右脚ブロック8)完全左脚ブロック9)盆状ST低下10)ストレイン型ST-T変化解答はこちら 1)、3)、6)、10)※6)は選択しなくても正解とする。解説はこちらこれはDr.ヒロ推しの系統的判読そのものです。R-R間隔はおおむね整ですが、肢誘導も胸部誘導も5拍目で崩れています。これはタイミング的に「期外収縮」でいいですね。先行P波があり(図2)、QRS波形もそれ以外の洞収縮とほぼ同じですから、シンプルに「心房期外収縮」(PAC)と考えましょう。(図2)II誘導を抜粋画像を拡大する「低電位(差)」は該当しません。「高電位(差)」については、レクチャーで紹介した語呂合わせ“そこのライオン”(Sokolow-Lyon)などを参考にしてもいいですし(S-L index:76mm)、ボク流の“(ブイ)シゴロ密集法”でもバッチリ陽性となるはずです。「心房拡大」に関しては、右房はありません。左房に関しては、V1誘導のP波を見て、後半の陰性成分が幅、深さともに1mm以上あるので、疑っても結構です。ただ、個人的にはII誘導で幅広く“2コブ”のP波でない場合には「左房拡大」とは診断しないことにしています。ST変化に関しては、これぞ“ザ・ストレイン”です。“寝そべった2の字”でイメージするDr.ヒロ's Tips、全国の皆さんに普及するといいなぁ。参考レクチャー:第1回、第38回【問題3】V6誘導のみの拡大波形の一部を示す(図3)。VAT(ventricular activation time)、R(-wave)peak timeとして正しいものを1つ選べ。1)40ms2)70ms3)100ms4)180ms5)1040ms(図3)V6誘導の拡大波形画像を拡大する解答はこちら2)解説はこちら今回の例は「(左室)高電位(差)」と典型的な「ST-T変化」(ストレイン型)があるので、「左室肥大」(LVH)の診断でほぼ間違いないでしょう。肥大した左室興奮の“もたつき”を表現したものが“(delayed) intrinsicoid deflection”でしたが、これよりも“VAT”ないし“R(-wave)peak time”のほうがわかりやすい表現だと思います。これはQRS波の「はじまり」からピーク(頂点)までの時間を測れば良く、「VAT(R[-wave]peak time)≧50ms(0.05秒)」はLVH診断の参考になるのでした。(図3)では、ソフトの都合で“頂上”(ピーク)がうまく確認できませんが、QRS波の「はじまり」が太線上に載っている3拍目に着目し、1mm(40ms)以上は確実でQRS幅が100msですから、選択肢2の「70ms」を選べば正解です(ボクの計測では68msとなりました)。ちなみに、4)はPR時間、5)はR-R間隔の数値です。参考レクチャー:第38回、第39回症例提示284歳、女性。アルツハイマー型認知症。転倒により受傷、右寛骨臼骨折の診断で入院となった。入院時心電図を以下に示す(図4)。(図4)入院時の心電図画像を拡大する【問題4】次の(ア)~(カ)の適切なものを選べ。ただし、(イ)と(ウ)は適切な数字を答えよ。R-R間隔は( ア:整・不整 )で、肢誘導の( イ )拍目と胸部誘導の( ウ )拍目は期外収縮である。期外収縮のQRS波は洞収縮と( エ:同じ、異なる )形状で、先行P波を( オ:認める、認めない )。休止期[回復周期]は( カ:代償性、非代償性 )である。解答はこちら(ア)不整、(イ)4、(ウ)5、(エ)同じ、(オ)認める、(カ)代償性解説はこちら本問は「期外収縮」の理解度を確認するための問題です。見慣れてくると、R-R間隔が整な部分“以外”がむしろpop-outして見えてくるのではないでしょうか? その気で眺めると、肢誘導なら4拍目、胸部誘導は5拍目が「期外収縮」です。「期外収縮」と言えば、“線香とカタチと法被(はっぴ)が大事よね”でしたね。“カタチ”はほかの洞収縮とのQRS波形との比較(相同性)ですし、“法被”部分は幅と(先行)P波です。今回、QRS波は洞収縮に似て幅も正常(narrow)、先行P波はQRS波からかなり近い部分にあるようです。最後に回復周期(休止期)が代償性か否かに関してですが、簡易には期外収縮を挟むR-R間隔、より正確にはP-P間隔を調べ、洞調律のP-P間隔(洞周期)のピッタリ2倍なら代償性で(ニバイニバーイの法則)、それより短ければ非代償性と考えましょう。以下の図5はII誘導だけを抽出し、期外収縮前後のP-P間隔を洞周期(P-P)と比べてみました。(図5)入院時の心電図画像を拡大する期外収縮のP波を「P'(P4)」としますと、次拍までの「P'-P5」(X:休止期)は洞周期(S)よりも長く、連結期「P3-P'」(Y)との和である期外収縮前後のP-P間隔(P3-P5)は洞周期のほぼ2倍となっていることがわかります。(図5)に示したようにキャリパーを登場させましょう。この休止期は「代償性」のようです。参考レクチャー:第21回【問題5】心電図診断として正しいものはどれか。1)心房細動2)心房期外収縮3)(房室)接合部期外収縮4)心室期外収縮5)心室副収縮解答はこちら 3)解説はこちら前問の検討事項を参考にします。1)は論外ですし、QRS波形と洞収縮の類似性から「上室性」と呼ばれる2)か3)の二択になります。P波が先行しているので、あまり深いことを考えなければ「心房期外収縮」(PAC)の2)を選ぶでしょう。ただ、ここは慎重に考えてください。前問の最後に注目すると、“上品な”心室期外収縮(PVC)とは違って、PACは洞結節をリセットするため、休止期は「非代償性」になることが多いのでした。ただ、今回は「代償性」の休止期、レクチャーでは正式には扱いませんでしたが、こういう期外収縮は「(房室)接合部」を起源とする“ premature (AV-)junctional contraction”、略して「PJC/JPC」と呼ばれます。今回はP波が先行していましたが、JPCの場合、P波が「ある」場合もQRS波との位置関係はさまざまで、「手前」「内部(埋もれて見えない)」「後方」の3パターンがあります。常に休止期の代償性に注意を払っておくことも重要ですが、P波が先行していても、(とくにPR(Q)間隔が短めの場合)JPCの可能性を考慮するようにしましょう。5)は特殊な心室期外収縮ですが、ひとまず忘れて良いでしょう。参考レクチャー:第21回、第23回【問題6】心電図(図3)の肢誘導のラダーグラムを描け。解答はこちら図6を参照。解説はこちらついに出ました、ラダーグラムの問題。これも期外収縮をサカナに熱く語りました。前問で「接合部期外収縮」(PJC)であることがわかったので、それを描くだけです。洞収縮での描き方は正式版、簡易版ともにレクチャーしました。JPCは中段の「A-V」エリアから出現し(図6)の★マーク、これはP'(P4)波、そして4拍目のQRS波より先行するはずであり、左方に描きましょう。そこから心房側には逆行してP'波を形成し(ピンク線+赤線)、心室側には順行性に進んでQRS波を作ります(緑線+青線)。これで見事にPJCラダーグラムの完成です!(図6)肢誘導のラダーグラム画像を拡大する参考レクチャー:第22回、第23回、第26回症例提示389歳、男性。COPD以外に複数の心疾患の既往あり。数日前から微熱あり、食事摂取量と会話量が減少していた。呼吸苦に加えて幻覚症状も出現し始めたため家族に連れられ受診。肺炎の診断で入院となった。体温37.3℃、血圧94/42mmHg、脈拍75/分・不整、酸素飽和度は酸素3L/分(鼻カニューレ)吸入により74%から93%に上昇した。入院時心電図を示す(図7)。(図7)入院時の心電図画像を拡大する【問題7】調律診断として正しいものを選べ。また、心拍数はいくらか。1)洞不整脈2)洞頻脈3)心房粗動4)心房細動5)発作性上室性頻拍解答はこちら4)105/分(新・検脈法)解説はこちら調律と言ったら、まず“レーサー・チェック”ですね。R-R間隔の絶対不整、明らかな洞性P波は確認できず、速迫傾向もありますから、「心房細動」(AF)と診断できるでしょう。本例では、“テッパン”のV1誘導も含めて「f(細動)波」が確認しづらい心電図だと思います。心拍数に関しては、Dr.ヒロの独壇場でございます(笑)。連載の初期に登場させた“検脈法”でもいいですが(QRS波19個なので19×6=114/分となる)、両端の“ちぎれた”QRS波を「0.5個」とカウントする“新・検脈法”を用いると自動診断の数値に近づくことが多いです。肢誘導の右端、胸部誘導には両端に“ちぎれQRS波”があるので、8+0.5(肢誘導)+8+0.5✕2(胸部誘導)と数えれば「105/分」と求まるでしょう。ちなみに、隠した自動診断値は「101/分」でした。いずれにしても「頻脈性」あるいは「速い心室応答を伴う」AFと言えますね。参考レクチャー:第3回、第4回、第7回、第29回【問題8】心電図診断として正しいものをすべて選べ。1)不完全右脚ブロック2)完全右脚ブロック3)左脚前枝ブロック4)左脚後枝ブロック5)完全左脚ブロック解答はこちら2)、3)解説はこちらQRS幅はワイド(120ms以上)ですから「心室内伝導障害」として、普通は左右の「脚ブロック」を思い浮かべてください。V1波形はやや非典型ですが、V6の幅広く目立つS波(スラー)に注目すれば「完全右脚ブロック」と診断することができます。さらにもう一つ。右脚ブロックと診断したら、続いてQRS電気軸も必ず見るクセをつけることが大切です。肢誘導でQRS波はI:上向き、aVF(かつII):下向きですから、バリバリの「左軸偏位」です。具体的な数値で言うと“トントン・ポイント”が、「I」と「-aVR」の中間ないし後者寄りになりますから、「-75°」前後と「高度の左軸偏位」です。II・III・aVFで「rS型」、aVLで「qR型」とくれば、そう「左脚前枝ブロック」(LAFB)です。このように右脚に加えて、左脚分枝の一方(大半が前枝)がブロックされたものを「2枝ブロック」(bifascicular block)と呼びます。【参考レクチャー】:第8回、第9回、第32回、第37回【問題9】心電図からは心筋梗塞の既往が疑われるが、傷害部位として正しいものをすべて選べ。1)右室2)心室中隔3)左室下壁4)左室後壁5)左室前壁解答はこちら2)、5)解説はこちら「陳旧性心筋梗塞」は「異常Q波」を“名残り”として部位推定するのが心電図の世界の基本です。「異常Q波」の存在を気づきにくくする「(完全)右脚ブロック」の“魔力”についてはレクチャーで述べましたが、これもそんな一例です。V1~V3では“any Q”で常に異常でしたね。一つお隣に目をやればV4も陰性波からはじまっています。V1~V4を「前壁誘導」と言いますが、V1には前側の「心室中隔」(前壁中隔)の意味を持つので、2)と5)を正解とします。勘の鋭い人は『aVLにもQ波があるじゃん』と思うかもしれませんね。たしかにその通り。前壁中隔梗塞の責任結果はほぼ左前下行枝(LAD)ですが、その分枝である対角枝の灌流域である「高位側壁」をaVLが担当誘導と考えるとそうかもしれません。ただ、「左脚前枝ブロック」の場合には必ずしもそうとは言えず、あえて選択肢から「左室側壁」を除きました。参考レクチャー:第17回、第32回【古都のこと~清水寺の舞台】京都を代表する寺院と言ったら、やっぱりキヨミズさんだなぁ…そう思います。清水寺(東山区)、山号は音羽山。「古都のこと」40回目でようやく“真打ち”を取り上げるのは、そう、今年(2020年)の2月末に約3年にもおよぶ本堂の檜皮屋根葺き替え工事*1が完了したからです。ほぼ1年半ぶり、本堂への入口*2がオープンする早朝6時に“一番乗り”を目指しました。高校の修学旅行で来たはずだったのですが、京都に住み始めた頃、本堂を通り過ぎ、阿弥陀堂*3に隣接する奥の院が「舞台」なのだと誤解していたかつての自分を恥ずかしく思います(笑)。長らく紫がかったこげ茶色のシートに覆われていましたが、今は何も隠すところのない本堂、そして前面に張り出す新緑に浮かぶ「舞台」*4からは京都の街を一望できます。早朝に清水にお参りすることのメリットは、非常に多くの人が溢れる日中とは異なり、静かでそして深い新鮮な空気をたくさん吸うことができる点だと思います。突然に現れ、人々の何気ない日常を奪った新型コロナウイルスという“目に見えぬ敵”は医療現場でも猛威を振るっています。これに打ち勝つためには、“清水の舞台から飛び降りる”くらいの強い決意で日々の診療に臨むことが必要なのだと思います。*1:『平成の大修理』*2:轟門(中門)。重要文化財。*3:「日本最初常行念仏道場」とされる。*4:1633年(寛永10年)に再建された“檜舞台”は崖下の礎石から13mの高さである。音羽山の急峻な崖の上に木材を格子状に組むことでお互いが支え合う「懸造り(かけづくり)」と呼ばれる日本古来の伝統工法で耐震構造を実現している。実は“下からの眺め”もまた絶景な寺である。この「舞台」は、御本尊(千手観音菩薩)に芸能を奉納する場所としての意義がある。

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第6回 COVID-19パンデミックと“テレリハ”?【今さら聞けない心リハ】

第6回 COVID-19パンデミックと“テレリハ”?今回のポイント新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐため、全国の病院では外来の心リハを休止せざるを得ない状況となっている心リハは運動療法だけではなく疾患管理プログラムとしての役割を担っているため、外来の心リハ休止により心疾患の再発悪化の増加が懸念される外来の心リハ休止の悪影響を最小限に抑えるためには、どのような対応が求められるか、外来再開時には何に注意すべきか現在、新型コロナウイルス感染拡大は全世界に及んでおり、その収束の見通しは立っていません。日本では都市部を中心として感染者が急増しており、政府は4月7日に東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発出しました。4月17日には全国都道府県に緊急事態宣言の対象が拡大。それとともに、これまでの宣言の対象であった7都府県に京都を含む6つの道府県を加えた13都道府県については、とくに重点的に感染拡大防止の取り組みを進めていくべき「特定警戒都道府県」と位置付けられました。筆者の勤務する京都大学医学部附属病院(京大病院)でも、新型コロナウイルス感染症対策として外来の心リハを4月9日より中止しています。心リハは心筋梗塞や心不全などの心疾患患者にとってとても大切な治療であることをこれまでの連載で語ってきました。今回は、『緊急事態とは言っても、心疾患患者にとって重要な心リハを中止しても大丈夫?』という疑問を持つ読者の皆様とともに、国内外の心リハの状況と対策について考えてみたいと思います。心リハ学会の指針は?4月20日に日本心臓リハビリテーション学会より、“COVID19 に対する心臓リハビリテーション指針”が公開されました。要点は以下の3つです。1)入院中の心リハは自粛せず、適切に導入・継続する2)外来の心リハは中止し、自宅での在宅リハを推奨する3)運動処方目的の心肺運動負荷試験(CPX)は実施しない補足事項として、入院患者に心リハを行う場合も、手指消毒・マスク装着・密集を避ける(患者間は2mの距離を設ける)などの感染対策を徹底する、感染患者の新規発生がみられない地域では外来の心リハ実施も許容される、と書かれています。ただし、こちらの指針が作成されたのは緊急事態宣言の対象が全国に拡大されるより前の4月13日のことであり、現時点では全国の施設での外来心リハ実施は中止することが妥当と考えられます。ヨーロッパ・アメリカでは?世界保健機構(WHO)の発表によると、4月22日時点の新型コロナウイルスの感染者数は日本では1万1,118例です。一方、ヨーロッパでは118万7,184例、アメリカでは89万3,119例と桁違いに多く、まさに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにあることがわかります。心リハの先進国でもあるヨーロッパ・アメリカですが、COVID-19パンデミックで心リハはどうなっているのでしょうか。ヨーロッパ心臓病学会(ESC)の推奨ヨーロッパ心臓病学会(ESC)は4月8日に‘Recommendations on how to provide cardiac rehabilitation activities during the COVID-19 pandemic’を公開しています。ここでは、COVID-19パンデミックにより各国での心リハの実施に障害が生じていることを述べたうえで、以下、10の推奨が示されています。1)COVID-19パンデミックの状況を定期的に確認する2)COVID-19患者を扱える準備をする3)COVID-19パンデミックが心疾患患者に与える結果について系統的に検討する4)現状で提供できる最大限の心リハを実施する5)患者の要望に対して個別の病状に配慮したうえで応じられるよう準備する6)なんらかの症状がでた際には、必要な医療を後回しにせず適切な支援を受けられるように患者に指導する7)偽情報に惑わされない8)包括的心リハのすべての要素を含む電話での遠隔リハ(telerehabilitation programmes:テレリハプログラム)を実施する9)医療および地域連携による患者の心理サポートを行う10)施設における心リハ再開の準備をする施設の状況によっては、通常通りの心リハ運営が難しくなっている場合もあります。COVID-19患者対応でスタッフが配置転換となり、心リハを完全に閉じている施設もあります。ESCは施設の状況に応じた推奨を示しています。心リハを閉じている施設に対しては、残っているスタッフまたは配置転換となったスタッフ間で連携し、COVID-19が心疾患に与える影響についての情報共有や遠隔リハの開始について検討することが推奨されています。心リハの運営ができている施設には、入院患者と回復期の外来患者は、手指消毒・マスク装着・密集を避けるなどの感染対策を実施したうえで行うこと、ただし回復期または維持期の外来患者については可能であれば対面ではなく、電話やメール、アプリなどを活用した遠隔リハ(患者評価と指導)を行うことが推奨されています。米国のほうはCOVID-19パンデミック下の心リハについてESCほどまとまったものはありませんが、AACVPR(American Association of Cardiovascular and Pulmonary Rehabilitation)が3月13日に公表した‘AACVPR Statement on COVID-19’には、各施設の方針に従って心リハを実施すること、外来の心リハが実施できない患者には有効な在宅運動指導を検討することが書かれています。米国ではCOVID-19パンデミック以前の昨年7月に“在宅心リハについてのステートメント”が公表されています。テレリハ、具体的にどうする?では、テレリハ、“電話やメール、アプリなどを活用した遠隔リハ”は、どのように実践すればいいでしょうか。言うは易し、行うは難し、ですね。患者さんに心リハスタッフが電話して、『運動しましょうね』と言えばそれだけでいいのでしょうか。心疾患患者さんには、運動をするにあたってメディカルチェックが必要です。テレリハであっても、そのプロセスは省けません。さらに、テレリハを行うにあたって、スタッフ間での対応も統一する必要があります。電話での患者情報聴取は何を聞けばよいか、もし患者が症状の悪化を訴えたら、どの程度で受診を促すべきなのか…。当院では、複数のメディカルスタッフが心リハに携わっています。そこで今回、心リハのメディカルスタッフで協働して「テレリハプログラム」を作成し、4月9日より運用を開始しました。(表)京大病院で活用している、テレリハ問診チェックリストPDFで拡大するこれはESCの‘Recommendations on how to provide cardiac rehabilitation activities during the COVID-19 pandemic’の公開を知る前に作成したものでしたが、ESCの推奨8)の“包括的心リハの全ての要素を含む電話でのテレリハプログラム(telerehabilitation programmes)”にほぼ相当する内容になっているようです。心リハを専門にする医療者の考えることは、日本もヨーロッパも同じようなレベルにあるということでしょうか。運動の内容についても、具体的な指導が必要です。「一人で運動してください」と言われても、どうしたらいいのか、患者の立場だったら困りますよね。単に歩けばそれでいいのでしょうか。外出を控えることが一人一人の国民に求められている現状で、どこを歩けばいいのか、街中に住んでいる患者さんには難しい問題です。具体的な運動内容を患者さんに提供するために、当科のホームページに当院の心リハで実施している体操プログラムを公開しました。外来の心リハ患者さんでインターネットアクセスが可能な方には活用していただくようお伝えしています。COVID-19パンデミックは心リハイノベーションをもたらすか?緊急事態宣言により、さまざまな企業・病院で、テレワークなどの新しい働き方が整備されました。大学での会議や授業もWebが導入されるなど、教育にも新しい仕組みが導入されています。これまで、1~2時間の会議のために京都から東京まで出張することが多かった私も、往復の交通に要する時間や費用など、無駄を省けたことにはメリットを感じています。通常の外来でも電話診療が本格的に始まりました。遠方から検査がない日に薬の処方目的に来院されていた患者さんにとっては、かなりメリットが大きいようです。心リハでも、今回を機に遠隔リハ体制が整えば、外来の心リハの一部はテレリハに移行できる可能性があります。しかし、現在のテレリハは医療者の無償奉仕に依存しており、テレリハの普及には診療報酬制度の見直しなども必要そうです。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>今回はDr.小笹とともに当科で活躍する、鷲田 幸一氏(京大病院 慢性心不全看護認定看護師)のこぼれ話を紹介します。「テレリハを開始して」私が実際に患者さんにお電話をして感じたのは、「多くの患者さん・ご家族は先の見えない現状に不安を抱いていること」、また外出自粛などにより、身体活動度が減少するだけでなく「social distance(社会的距離)を超えて、social isolation(社会的孤立)に陥っていること」でした。これらは、とくに独居の高齢者には大きな問題のように思います。ESCの推奨9)にあるように、心理面での支援も医療者として非常に重要だと感じています。疾患管理をするための形式的な問診だけではなく、患者さん・ご家族を気遣いながらコミュニケーションを取り、不安を増大させることなく日常の生活(食事・睡眠)を続けているかを確認する。そして、その中で、疾患管理としてのモニタリングや、適切な食事・活動についてのアドバイスを行う必要があるのだと思っています。今後、多くの病院で同様の取り組みが拡がり、自宅で孤立している患者さんの疾患・生活・心理面で支援拡大を願います。

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CMV抗体陰性肝移植のCMV感染症予防、先制治療は有効か/JAMA

 サイトメガロウイルス(CMV)抗体陽性ドナーから肝臓の移植を受けるCMV抗体陰性レシピエントでは、先制治療は抗ウイルス薬予防投与に比べ、1年後のCMV感染症(CMV disease)の予防効果が優れることが、米国・ピッツバーグ大学のNina Singh氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年4月14日号に掲載された。CMV抗体陽性ドナーから肝臓の移植を受ける高リスクのCMV抗体陰性レシピエントにおいては、抗ウイルス薬の予防投与によるCMV予防戦略は、予防投与後の遅発CMV感染症の発生率が高いとされる。代替アプローチとして先制治療(サーベイランス検査で検出された無症候性のCMV血症への抗ウイルス薬治療の開始)が行われているが、これらを直接比較した研究はないという。米国の6施設が参加した無作為化試験 本研究は、CMV感染症の予防において、バルガンシクロビルを用いた先制治療と予防治療の効果を比較する無作為化臨床試験であり、2012年10月~2017年6月の期間に、米国の6つの移植施設で患者登録が行われた(米国国立アレルギー・感染症研究所[NIAID]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、初回の同所性肝移植(死体肝または生体肝)が予定され、ドナーがCMV抗体陽性のCMV抗体陰性レシピエントであった。被験者は、先制治療または抗ウイルス薬予防投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 先制治療群では、高感度リアルタイム血漿CMVポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いて、100日間に週1回のCMV血症の検査を行い、CMV血症が検出された場合にバルガンシクロビル900mgの1日2回経口投与を開始し、1週間間隔での2回の検査が連続で陰性となるまで継続した。一方、予防投与群では、バルガンシクロビル900mgの1日1回経口投与が、100日間行われた。 主要アウトカムは、12ヵ月後のCMV感染症(CMV症候群[CMV血症、臨床所見・検査所見]または標的器官CMV感染症)の発生とした。副次アウトカムには、遅発CMV感染症(移植後100日~12ヵ月に発生)、急性同種移植片拒絶反応(生検で確定)、日和見感染、移植片機能喪失、12ヵ月時の全死因死亡、好中球減少(末梢血好中球絶対数<500/μL)などが含まれた。CMV感染症:9% vs.19%、遅発CMV感染症:6% vs.17% 205例(平均年齢55歳、女性62例[30%])が無作為化の対象となり、全例が試験を完遂した。先制治療群が100例、抗ウイルス薬予防投与群は105例だった。 CMV感染症の発生率は、先制治療群が予防投与群に比べ有意に低かった(9%[9/100例]vs.19%[20/105例]、群間差:10%、95%信頼区間[CI]:0.5~19.6、p=0.04)。また、遅発CMV感染症も先制治療群で有意に少なかった(6%[6/100例]vs.17%[18/105例]、11%、2.4~19.9、p=0.01)。 一方、同種移植片拒絶反応(先制治療群28% vs.予防投与群25%、群間差:3%、95%CI:-9~15)、日和見感染(25% vs.27%、2%、-14~10)、移植片機能喪失(2% vs.2%、<1%、-4~4)、好中球減少(13% vs.10%、3%、-5~12)には、有意な差は認められなかった。 また、全死因死亡にも、両群間に有意な差はなかった(先制治療群15% vs.予防投与群19%、群間差:4%、95%CI:-14~6)。 プロトコールで規定された有害事象は、先制治療群が2例(2%)で発現したが(心膜液貯留1例、腎臓結石1例)、予防投与群ではみられなかった。 著者は、「これらの知見の再現性を確認し、長期アウトカムを評価するための研究が必要である」としている。

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「8週間以上の自粛は耐えられる」約4割/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症の拡大について、一般市民の意識の実態を知る目的に、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、4月20日に2回目の「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」を行った(1回目は3月20日に実施)。 アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員で20~79歳の300人を対象に調査を実施したもの。 同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。●調査概要 形式:WEBアンケート方式 期日:2020年4月20日 対象:セルフ型アンケートツール“freeasy”の登録者300人(20歳以上)■アンケート結果の概要・新型コロナウイルス拡大について、約9割の人が「怖い」と思っている(前回より約22%増加)・新型コロナウイルス予防対策の実施は84.7%で、前回より約26%増加・新型コロナウィルスに感染しない自信はあるかは、「ない」38.0%が「ある」14.3%を上回った・新型コロナウィルスの正しい情報を取得できているは56.3%で、約4割は取得できていない・新型コロナウィルス情報の入手経路は、「TVなどのニュース」が89.7%で最も多い結果・新型コロナウィルスの拡大は、収入面に不安を与えているが57%(前回より約14%増加)・予防対策の1位は「手洗い」、2位は「マスク着用」、3位は「不要な外出を控える」(前回より20%以上増加した予防対策は3密に関する内容)・この状態にどの程度耐えられるかは、「あと8週間以上」が33.7%で最多■アンケート結果の詳細  質問1の「新型コロナウイルス拡大について、どう思いますか」では、「怖い」(92.0%)、「それ以外」(8.0%)の回答結果であり、前回よりも約22%も「怖い」が増加した。 質問2の「新型コロナウイルス予防対策を実施してますか」では、「実施している」(84.7%)、「どちらでもない」(8.3%)、「実施していない」(7.0%)の回答結果だった。前回よりも「実施している」が約26%増加したが、20・30代の約25%が「どちらでもない/実施していない」と回答するなど予防への意識の低さがうかがわれた。 質問3の「新型コロナウイルス感染症予防策として行っていることはなんですか(複数回答)」では、「手洗い」(91.3%)、「マスク着用」(76.7%)、「不要な外出を控える」(69.7%)、「人混みを避ける・時差通勤」、「集会・イベントなどに参加しない」、「うがい」などの順で多かった。とくに「不要な外出を控える」に関しては、70・80代の7割以上が控えている一方で、60代以下では約6割台と自粛浸透の低さが目立った。 質問4の「新型コロナウイルス感染症に感染しない自信はありますか」では、「自信がある」(14.3%)、「どちらでもない」(47.0%)、「自信がない」(38.0%)の回答だった。また、わずかながら「すでに陽性と診断」が0.7%存在していた。 質問5の「新型コロナウイルス感染症の正しい情報を取得できているか」では、「取得できている」(56.3%)、「どちらともいえない」(36.0%)、「取得できていない」(7.7%)だった。とくに40・50代で情報の取得がうまくできていない結果だった。 質問6の「新型コロナウイルス感染症の情報をどのような経路で入手していますか(複数回答)」では、「TVなどのニュース」(89.7%)、「ネットのニュース」(57.3%)、「TVなどのワイドショー」(48.7%)の順で多く、かかりつけのクリニックなどの医療者からは3.0%、保健所からは2.0%と医療機関からの情報取得は前回同様に少なかった。 質問7の「新型コロナウイルス感染症の拡大は、あなた自身の収入面に不安を与えていますか」では、「不安である」(57.0%)、「どちらとも言えない」(26.0%)、「不安でない」(17.0%)の回答で、半数近くは不安を抱えているという回答だった。前回と比較して「不安である」の回答が約14%増加した。 質問8の「あなたは、あとどの程度、この状態に耐えられることができますか」では、「もう限界」(8.7%)、「あと1週間」(6.7%)、「あと2~3週間」(27.3%)、「あと4~5週間」(18.7%)、「あと6~7週間」(5.0%)、「あと8週間以上」(33.7%)という回答だった。「あと8週間以上」という回答が1番多く、長期的な自粛への対応ができていることをうかがわせた。

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RA系阻害薬、COVID-19の重症度に関連みられず/JAMA Cardiol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院中、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を服用している高血圧患者が、COVID-19の重症度や死亡リスクを上昇したかどうかを中国・武漢市の華中科技大学のJuyi Li氏らが検討した。その結果、これらのRA系阻害薬の服用はCOVID-19の重症度や死亡率と関連しないことが示唆された。JAMA Cardiology誌オンライン版2020年4月23日号に掲載。 本研究では、2020年1月15日~3月15日に武漢中央病院に入院したCOVID-19患者1,178例を後ろ向きに調査した。COVID-19はRT-PCR検査で確認し、すべての患者の疫学、臨床、放射線、検査、薬物療法のデータを分析した。ACEI/ARBを服用している高血圧患者の割合を、COVID-19重症者と非重症者、および生存者と死亡者の間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・1,178例の平均年齢は55.5歳(四分位範囲:38~67歳)で、男性が545例(46.3%)だった。・入院中の全死亡率は11.0%だった。・高血圧患者は362例(30.7%)、平均年歳は66.0歳(四分位範囲:59~73歳)、男性が189例(52.2%)で、115例(31.8%)がACEI/ARBを服用していた。・高血圧患者の入院中の死亡率は 21.3%だった。・ACEI/ARBを服用していた高血圧患者の割合は、COVID-19重症者と非重症者の間で差はなく(32.9% vs.30.7%、p=0.65)、死亡者と生存者の間でも差はなかった(27.3% vs.33.0%、p=0.34)。・ACEI服用患者とARB服用患者のデータの分析でも同様の結果が観察された。

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新型コロナウイルスあれこれ(7)【Dr. 中島の 新・徒然草】(321)

三百二十一の段 新型コロナウイルスあれこれ(7)読者の皆様、いかがお過ごしでしょうか?パンデミックであっても在宅勤務のできない我々医療従事者は、いつも通りの出勤ですね。私は、患者数、手術件数、会議、何もかも減ったので自分の時間が増えました。でも、物事が手につかないというか落ち着かないというか。経験のない疲れ方を毎日感じています。海外では、睡眠中に変な夢を見る人が増えたというニュースがありました。ツイッターでも#lockdowndreamというハシュタグで、人々が自分の見た夢を語り合っています。皆さん、色々な形でストレスを抱えているのでしょう。さて、4月9日に紹介したYouTubeの動画「ほんまに聞いてほしい マジでコロナを舐めたらアカン」のその後がアップされました。今度は「みなさんおはようございます」というタイトルです。ニューヨークのハーレムに住む日本人女性、ちずさんは、皆で協力しながら何とか生きているとのこと。でも、エクアドル出身ニューヨーク在住のマリアからは、親戚や友達合わせて17人が新型コロナで亡くなったと聞かされたそうです。人にもよるのでしょうが、やはり彼の地では大変な状況が続いています。最近のニュースとしては、パチンコ店関連のものが目を引きました。休業要請に応じない店舗の名前を大阪府が公表したところ、かえってそれらの店に客が殺到したという話。確かに、私の患者さんの中にもパチンコ依存やゲーム中毒の人がおられるので、なるほどと思います。ただ、ゲーム中毒の患者さんは部屋に引きこもっているので、コロナに関しては人畜無害。でもパチンコは、典型的な3密状態なので、コロナの流行に拍車をかける可能性があります。パチンコ騒ぎが今後どうなっていくのか、成り行きを見守りましょう。ということで最後に1句夜寝たら コロナが悪夢を 連れてくる

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第5回 コロナ対応で見えてきた政治家の実力

新型コロナウイルスへの対応が、政治家の実力や真価を浮き彫りにしている。北海道の鈴木 直道知事(39歳)や大阪府の吉村 洋文知事(44歳)、千葉市の熊谷 俊人市長(42歳)ら若手首長の行動力や情報発信力は際立っている。一方、ベテラン首長の行動力や知恵のなさ、国会議員に至っては金銭欲と自己顕示欲が露呈した。混沌としている状況下、今こそ政治力が必要なのに、若手首長のリーダーシップに頼らざるを得ないのが日本の現状だ。国会議員は、給与に当たる歳費を5月から1年間、2割削減されることになった。“年収”に相当する約1,552万円が、削減後は約1,240万円となるが、市民感覚からすれば十分高給だ。その上、領収書不要で「第2の給与」と呼ばれる文書通信交通滞在費約1,200万円、期末手当約640万円、立法事務費約780万円を合わせると、年トータルの支給額は約3,860万円となる。歳費の2割削減など痛くも痒くもないだろう。普段、安倍政権を批判することで存在感を発揮している野党から、文書通信交通滞在費返上の声でも聞きたいものだ。自治体に目を向けると、東京・神奈川・埼玉が事業者に休業を要請する中、千葉県は一貫して慎重な姿勢を示していたが、都内から茨城県のパチンコ店などに人が移動する状況が指摘されると、森田 健作知事(70歳)は、遅まきながら休業要請に一転。幕張メッセ(千葉市)を中等症の患者1,000人を受け入れる臨時医療施設として整備することを決めたのも、自民党県連の申し入れに押されてのことだった。また、新型コロナに感染、軽症ということで自宅待機していた男性2人が死亡した埼玉県では、大野 元裕知事(56歳)が「病床不足のため自宅待機もやむを得なかった」と釈明、今後は、軽症者・無症状者については原則ホテルでの療養に切り替える方針を明らかにした。埼玉県は長年、医師不足に悩んでいる。10万人当たりの医師数が全国で最も少ない中で、新型コロナに対する効率的な医療対応をするための策が必要だ。県はさいたまスーパーアリーナの施設管理者で運営会社の筆頭株主として、幕張メッセのように同アリーナを臨時医療施設として活用することを検討してはどうか。スーパーや商店街の「3密」状態が問題化している東京都では、小池 百合子知事(67歳)は混雑緩和策として当初、「名前のイニシャルや生まれ月などで時間帯を分ける」など非現実的な案を検討していた。例えばロンドンのスーパーのように、1人が出たら1人を入れる入店制限をしたり、店内各所に2m間隔のラインを引いて、客にソーシャルディスタンスを意識してもらったり、植木鉢を置くなどして脇道を塞ぎ店内を一方通行にして客同士の接触を防いだりするなど、具体的な行動を店と都民に要請したほうが実効性を持つのではないか。休業要請にもかかわらず、パチンコ店の営業続行が話題になっている。見せしめ的に店名公表をするのではなく、理由を聞き取りするなど対話の機会をつくったり、休業の見返りに駐車場に検査テントを設置させてもらい、利用料を払ったりするなどメリットを与えてはどうだろう。ただただ「3密を守れ」「外出自粛」「休業しろ」と指示するだけでは、人は簡単に行動変容できない。自治体の首長は、せめて防災行政無線放送などで住民や事業者のこれまでの努力を慰労してみてはどうか。リーダーシップをとっている若手首長は、市民目線でのコミュニケーションが上手だ。また、増産しても不足しているマスクは、薬局やドラッグストアにはほとんどなく、なぜか宝石店やCDショップ、洋服店など、普段はマスクなど扱うことがないような店先に並んでいる。本当に必要としている医療現場では、マスクをはじめあらゆる衛生資材が払底し、使いまわしや代替品を余儀なくされている状況下であるのに、政治家は何をしているのか。このいびつな状況に対して直ちに手を打つべきだ。それができないなら、無駄にマスクを消費せず、口を噤んでstay homeでよろしい。

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始まった感染症予防連携プロジェクト/日本感染症学会・日本環境感染学会

 新型コロナウイルス感染症の流行により、麻疹や風疹の被害が置き去りにされている中で、日本感染症学会(理事長:舘田 一博氏)と日本環境感染学会(理事長:吉田 正樹氏)は、国際的な同一目的で集合した多人数の集団(マスギャザリング)に向けて注意すべき感染症について理解を広げるWEBサイト「FUSEGU ふせぐ2020」をオープンした。 これは感染症対策に取り組む医学会、企業・団体が連携し、マスギャザリングでリスクが高まる感染症の理解向上と、必要な予防手段の普及を目標に感染症予防連携プロジェクトとして推進しているものである。 同サイトでは、マスギャザリングと感染症をテーマに、「学ぶ」「触れる」「防ぐ」の3 つの視点から情報をまとめている。理解を深めたい感染症として、第1弾は「麻疹」「風疹」「侵襲性髄膜炎菌感染症」を取り上げ、感染経路や予防手段などを紹介している。 具体的には「学ぶ」では対象感染症の症状や特徴、感染拡大の歴史などを紹介し、「触れる」ではアンケート調査、感染症カレッジ、市民公開講座などの情報発信を予定している。「防ぐ」では手指衛生、マスク、ワクチンなどの予防方法が記載されている。とくにワクチンでは、“what(ワクチンの目的)、who(接種すべき人)、when(いつ接種するか)、where(接種できる場所)”と分類されイラストとともにわかりやすく説明されている。 今後は市民を対象とした意識調査やイベントなど、感染症予防啓発のため実施するプログラムの詳細についても順次公開予定としている。

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医師500人の本音、新型コロナのリスク対価はいくらが妥当?

 先日、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の重症化や、ほかの患者及び医療従事者への感染拡大を防ぐための管理評価を診療報酬に盛り込み、医療者の処遇改善に切り込んだ。しかし、直接的な処遇改善ではないため、現時点で医療者の士気向上や離職食い止め策には至っていない。 そんな中、大阪府や埼玉県などでは新型コロナ業務に従事した医療従事者には1日あたり4,000円の手当支給を検討している。また、勤務医の労働組合である全国医師ユニオンは、2020年4月16日、医師及び医療従事者の命と健康を守る支援を徹底すること求め、厚生労働省に対しCOVID-19への対応に関する要望書を提出。これにはCOVID-19患者に対応する医師への危険手当の支払いに関する内容が盛り込まれている。 しかし、現金給付である手当については医療者の中でも賛否両論があり、手当支給よりも防護服などの医療材料の調達に国や自治体予算を活用して欲しいという声もある。そこで、ケアネットでは医師の本音を探るべく、新型コロナ対応における現金給付の必要性とその理由について、会員医師約500名にアンケートを実施した。その結果、約9割の医師が現金給付を希望していることが明らかになった。また、1ヵ月あたりの支給希望額についても回答を得た。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。 新型コロナの「危険手当」、医師の本音は?/緊急アンケート

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HPVワクチン+検診で子宮頸がん撲滅可能−日本はまず積極的勧奨中止以前の接種率回復を(解説:前田裕斗氏)-1222

 子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって生じることがわかっている、いわば「感染症」の1つである。2018年のデータによれば全世界で約57万件の新規発生と約31万人の死亡が報告されており、女性において4番目に頻度の多いがんである。この子宮頸がんを予防するうえで最も効果的なのがHPVワクチンだ。当初はがんを起こしやすいHPV16、18を対象とした2価ワクチンのみであったが、現在では9価のワクチンが開発され、海外では主に使用されている。ワクチンの効果は高く、接種率の高い国ではワクチンの対応する型のHPVを73~85%、がんに進展しうる子宮頸部の異形成(中等度以上)を41~57%減少させたと報告されている。 今回の論文では数理モデルを用いて、どのような閾値をもって根絶と定義するか、根絶に至るのはいつなのか、どのくらいの死が避けられるのか、そして最も効果的でコスト面に優れた戦略はどのようなものかについて検討している。モデルの詳しい内容はさておき結果を把握することが大事だ。詳細は別記事に譲るが、重要な結果として、根絶の定義を新規発症が1年当たり4例/10万人未満とした場合、HPVワクチンの女性への投与のみでは中低所得国の約60%のみが達成できるのに対し、生涯に1回の検診を加えれば約96%、2回の検診を加えればほぼすべての国で子宮頸がんの根絶が可能であるということが挙げられる。また、HPVワクチンのみで根絶不可能な国は年齢調整した新規発症が1年当たり25例/10万人以上であった。こうした新規発症が多い国では、90%以上の接種率でないと根絶は難しいと本文中で述べられている。 日本では子宮頸がんの年齢調整罹患率は14.7例/10万人で、先進国の中では高いほうである。また、その推移は横ばいで、減少傾向にない。HPVワクチンの接種率についてはご存じのとおり副反応報道による積極的勧奨中止から1%未満にまで落ち込み、これからの回復が期待される。検診率は約42%であり、こちらもWHOが示す目標である70%以上(35、45歳で1回ずつ)には達していない。では、日本ではどの程度のワクチン接種率・検診率を目指せばよいだろうか。2020年2月にLancet Global Healthで報告された論文では、日本におけるHPVワクチンの接種率が、副反応報道による積極的勧奨中止以前の接種率である70%に速やかに回復し、検診率も最低1回を70%、2回を40%の人口が受けることで接種率の減少による2万4,600~2万7,300例の発生および5,000~5,700例の死亡のうち、1万4,800~1万6,200例の発生および3,000~3,400例の死亡を防ぐことができると報告されている。この報告からも示唆されるように、まずは積極的勧奨中止以前の水準へ回復するだけでも効果を期待できる。これからの接種率上昇に期待したい。

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第5回 里帰り出産妊婦に立ちはだかる現代の“関所”

破水した妊婦を県立病院が受け入れ拒否こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件について、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、まもなくゴールデンウィークですが、4月20日、日本山岳・スポーツクライミング協会など山岳関係の4団体は、新型コロナウイルス感染防止のため登山の自粛を求める、「スポーツ愛好者の皆様へ」という声明を出しました。私も恒例の春山登山はあきらめることにしました…。さらに、南アルプスについては山梨県が、北アルプスについては岐阜県が、登山自粛の要請や「遭難したら、救助にいつもより時間がかかる」と呼びかけるに至っています。また、都道府県をまたいでの移動も自粛の方向性が強まっています。江戸時代のように県と県の間に“関所”ができそうな勢いです。さて、そんな中、今週気になったのは、首都圏から岩手県内に帰省した妊婦が破水して救急搬送されたにもかかわらず、2つの県立病院に帰省して間もないことを理由に受け入れを拒否された、というニュースです。第1報は4月22日のNHKニュースでした。報道によれば、受け入れを断ったのは、一関市にある県立磐井病院と北上市にある県立中部病院です。詳細は以下です。4月17日朝、首都圏から帰省していた妊婦が破水し、磐井病院(一関市)に電話で相談。しかし、「感染対策が整っていない」として受け入れを断られました。ここで県の周産期コーディネーターが仲介し、中部病院にも受け入れを打診しましたが、同様の理由で断られたとのことです。最終的に、実家から盛岡市内の病院に救急搬送され、PCR検査で陰性が確認された後、深夜に帝王切開で無事出産した、というのです。「帰省分娩の予約をされた皆さまも、お住いの地域での出産を」と学会これはとても悩ましいニュースです。岩手県は、全国で唯一、新型コロナウイルスの感染者が確認されていない都道府県です(4月27日現在)。水際対策を徹底させたい達増拓也知事は3月30日、感染が拡大している東京、神奈川、埼玉の1都2県から来県する人に対し、到着してから2週間程度は不要不急の外出を控えるよう求めていました。その後、4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大されると都道府県をまたいだ不要不急の移動の自粛を要請しています。里帰り出産を巡っては、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が「移動する方がリスクになりかねない」として、急な帰省を控えるよう全国の妊婦に呼びかけました(4月7日)。これに呼応するように、地方の病院では里帰り出産の受け入れ中止を決定するところが増えてました。「移動するリスク」というよりは、首都圏等から感染した妊婦やその家族が来院することの院内感染リスクを勘案した呼びかけであったことは確かです。16日の緊急事態宣言の拡大を受け、同学会・同医会は21日に改めて、「帰省分娩の予約をすでにされた皆さまもぜひ、予約されている施設とご相談の上、状況によっては現在お住いの地域での出産をご考慮いただきたく存じます」とのメッセージを発信しています。岩手における県立病院の産婦人科部長や院長の「受け入れ拒否」の判断は、こうした行政や学会の動きに素直に従ったまでなのでしょう。しかし、破水した妊婦を受け入れない、という選択が、最悪の場合、どんな状況を招くかを想像しなかったのでしょうか。その点がまず、気になります。岩手は県立病院が多く、各地域の急性期医療の拠点は県立病院が担っていることを考えると、その足並みが揃っていない点も心配になります。なお、その後、県立病院を統括する県医療局は対応の見直しに乗り出し、2病院では手術室に陰圧装置を設置するなど受け入れ態勢の整備を進めている、とのことです。自宅での「オンライン出産」が増える?この一件は「里帰り出産」のケースですが、学会と医会の呼びかけを契機に、新型コロナ感染症の患者が多い首都圏や大都市では、数多くの「出産難民」が生まれてしまっているようです。里帰り出産を予定していた地方の病院から受け入れを拒否され、かたや首都圏で通っていた産婦人科や近隣病院はすでに出産の予約で一杯と「出産する病院が見つからない!」という人が増えているわけです。地方の病院から受け入れを拒否は、妊婦にとってはまさに“関所”です。直近の報道では、東京や埼玉の産婦人科医会が受け入れ可能な病院の調査を行い、「出産難民」解消に向けて動き出しているようですが、出産を控えた妊婦の不安は尽きないでしょう。もはや感染の有無は関係なく、首都圏から地方への「移動」そのものがリスクとして捉えられてしまうのですから…。それは登山も里帰り出産も同じです。最近オンライン取材をしたある在宅専門医は「入院中の安定した高齢者の中に『病院は怖い』と、退院して在宅医療に切り替える人が出ている」と話していました。体制の整備や自宅の準備はあるにせよ、近い将来、オンライン診療(観察)しながらの自宅出産、いわゆる「オンライン出産」が増えてくるかもしれません。

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細菌感染の可能性が低い炎症でのリンデロン-VG軟膏の変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第19回

 今回は、湿疹や皮膚炎で頻用されているベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩軟膏(商品名:リンデロン-VG軟膏)についてです。細菌感染の可能性が低くても処方される「ステロイドあるある」ともいえる乱用に対して、薬剤師として行った介入を紹介します。患者情報70歳、男性(グループホーム入居、要介護2)基礎疾患:高血圧、心不全、陳旧性心筋梗塞訪問診療の間隔:2週間に1回処方内容1.アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1朝食後2.ラベプラゾール錠10mg 1錠 分1 朝食後3.フロセミド錠40mg 1錠 分1 朝食後4.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後5.カルベジロール錠2.5mg 1錠 分1 朝食後6.ニコランジル錠5mg 3錠 分3 朝昼夕食後7.オルメサルタン錠40mg 1錠 夕食後8.ヘパリン類似物質油性クリーム 50g 1日2回 全身に塗布本症例のポイント訪問診療の同行時に、上記患者さんの下腿の皮膚に赤みがあり、痒そうなので、以前処方されたリンデロン-VG軟膏を使ってもよいかという質問を施設スタッフより受けました。医師の診察では、心不全もあるのでうっ滞性皮膚炎の可能性があり、炎症を引かせるためにもリンデロン-VG軟膏でよいだろうという判断でした。リンデロン-VG軟膏は、外用ステロイドであるベタメタゾン吉草酸エステルとアミノグリコシド系抗菌薬であるゲンタマイシンの配合外用薬です。ゲンタマイシンは、表在性の細菌性皮膚感染症の主要な起炎菌であるブドウ球菌や化膿性連鎖球菌に有効ですので、その抗菌作用とベタメタゾンのStrongという使いやすいステロイド作用ランクから皮膚科領域では大変頻用されています。しかし、長期的かつ広範囲の使用によって、耐性菌の出現やゲンタマイシンそのものによる接触性皮膚炎のリスク、さらには腎障害や難聴の副作用も懸念されています。そこで処方内容への介入を行うこととしました。<抗菌外用薬による接触性皮膚炎>アミノグリコシド系抗菌薬は基本構造骨格が類似しており、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、フラジオマイシンで交叉反応による接触性皮膚炎が生じやすい。とくにフラジオマイシンで高率に生じると報告されている。処方提案と経過まず、医師にゲンタマイシンによる上記の弊害を紹介し、細菌感染の可能性が低いのであれば、抗菌薬が配合されているリンデロン-VGではなく外用ステロイド単剤で治療するのはどうか提案しました。なお、その際に医師がステロイド単剤のリンデロン-V軟膏やリンデロン-DP軟膏を認識していなかったことがわかりました。さらに、炎症の強さから外用ステロイドとしての作用強度がワンランク上のVery Strongが望ましいと感じましたが、リンデロン-DP軟膏だと患者さんや施設、および薬局での取り違えの可能性もあったことから、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏(商品名:アンテベート軟膏)を提案しました。その結果、今回は細菌感染の可能性が低いことからベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏がよいだろうと変更の承認を得ることができました。治療を開始して4日目には皮膚の発赤と掻痒感は改善し、既処方薬のヘパリン類似物質油性クリームのみの治療へ戻すこととなりました。Sugiura M. Environmental Dermatology. 2000;7:186-194.

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新型コロナの「危険手当」、医師の本音は?/緊急アンケート

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医療は崩壊寸前である。そんな折、日本唯一の全国的な勤務医の労働組合である全国医師ユニオンは、2020年4月16日、厚生労働省に対し新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対応する医師への危険手当の支払いを要望。今後、国や勤務施設から手当が支給される可能性を踏まえ、ケアネットでは新型コロナ対応における現金給付の必要性とその理由について、会員医師約500名にアンケートを行った。全体の約90%が危険手当「必要」と回答Q1では危険手当として現金給付の要否を聞いた。その結果、全体で88%の医師が危険手当を「必要」と回答。年齢別では、20代:100%、30代:93.2%、40代:89.8%、50代:82.3%、60代:89.0 %、70代:100% となった。また、診療科別の結果は以下(図2)のとおりであった。(図1)画像を拡大する(図2)

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初診でもオンライン診療が可能に 薬局の課題は「なりすまし」をいかに防ぐか【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第46回

なかなか終わりが見えない新型コロナウイルス感染ですが、皆さんの薬局では何か影響はありましたでしょうか。日本保険薬局協会(NPhA)が実施したアンケートでは、会員企業のうち約60%が新型コロナウイルス感染拡大防止のためのオンライン診療に基づく処方箋を応需している一方で、約80%が「薬局の利用者が減っている」と回答するなど、患者さんの薬局利用や医療の流れが変わりつつあることがうかがえます。4月7日に緊急事態宣言が一部の地域に出され、その後その範囲が拡大されましたので、実際に来局される患者さんはさらに減って、オンライン診療・服薬指導が増えているのではないかと想像します。オンライン服薬指導は新型コロナウイルス感染拡大防止のために、2月28日の厚生労働省の事務連絡によって可能になりました。その後、4月10日にはさらに「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(いわゆる「0410通知」)が発出され、より具体的になりました。2月28日の事務連絡は廃止され、初診でもオンライン診療が可能になったことが一番の変化です。この通知では、オンライン診療・服薬指導の方法や処方箋のやり取り、医薬品の送付方法、患者のなりすまし防止措置など、具体的な事項が記載されています。「0410通知」の薬局における主な対応は以下のとおりです。初診で医師が患者の基礎疾患を把握できない場合は、処方日数は7日間が上限で、麻薬や向精神薬、抗がん剤などは調剤してはならない。患者がオンライン服薬指導を希望する場合は、備考欄に「0410対応」と記載した処方箋情報がFAXなどで保険薬局に送付される。保険薬局は送られてきた処方箋情報をもとに調剤し、その処方箋情報は後日入手した処方箋原本とともに保管する。患者のなりすまし防止のため、保険証の画像や口頭によって本人確認を行う。オンライン服薬指導が可能かどうかを薬剤師が判断し、対面での服薬指導が必要と判断した場合は対面を促すことができる。その場合の対応は薬剤師法の調剤応需義務に違反するものではない。調剤した薬剤は品質が保持され、確実に授与できる方法で患者へ配送し、実際に患者が授与したことを電話などで確認する。この通知を読んでオンライン服薬指導の具体的な運用を考えたときに、意外と患者のなりすましや虚偽申告が可能なのではないかと思ってしまいました。もちろん、初診で医師が基礎疾患を把握できない場合は、「処方日数は7日間まで」「麻薬や向精神薬、抗がん剤などは処方してはならない」とするなどの詐欺や悪用を阻止する対策はとられています。しかし、顔が見える通信手段ではなく普通の電話での処方も可能ですし、何度も通院している患者さんになりすました場合は上記から外れます。薬局でも本人確認のチェック項目を設け、患者さんと話をして感じ取った情報を薬歴に残すべきだと感じました。なお、そのような疑わしい事例があった場合は、都道府県に報告することが求められています。また、通知には記載されていませんが、偽造処方箋についても同様に注意が必要です。つい最近まで「オンライン診療って結局進まないよねー」なんて言っていたのが嘘のように、劇的に医療を取り巻く環境が変化しつつあります。現時点では新型コロナウイルス感染に対する特例ですが、オンラインで診察を受け、オンラインで服薬指導も受け、郵送で医薬品を受け取る…といういわゆるオンライン診療を経験した患者さんが増えていくのは間違いありません。少なくとも、この通知は「原則3ヵ月ごとに検証を行う」ことが明記されていますので、7月くらいまではこの通知が有効であると考えて、腰を据えて薬局内の手順を考えたほうがよさそうです。

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コロナパンデミックの第1波は収束へ-ドイツ・コロナ情勢-【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第8回

3月中旬よりドイツでは、さまざまな日常生活の制限がかけられました。国境は封鎖されて、スーパー以外のお店は全部閉まり、家族以外の人間と集まることすら禁止されてしまいました。1つのカートにつき、スーパーに入ることができるのは1人だけになりました。ソーシャルディスタンスの徹底も指示されています。職場である病院でも家族の面会は禁止、定期手術は中止、コロナウイルス感染者のために病棟を1つ空にして、朝のカンファレンスも中止になって…。とにかく非日常なことばかりが続く1ヵ月でした。たまに感染病棟で処置をすることもあります。感染への完全防護の状態で行うのですが、それでもやっぱり緊張しますし、処置に入る直前は自分の家族の顔が脳裏をよぎったりしました。あと、ドイツでは本当にたくさんのPCR検査が行われています。入院前に1度スクリーニング、結果が出るまでは専用の待機病棟で結果が出るまで待機。そして、転院前にもチェック。熱が出たらとりあえず1回はチェック。といった具合で、感染者をしっかり割り出し、ゾーニングすることが徹底されています。4月15日にメルケル首相が会見で、「まずは接触制限から徐々に緩和していく」と言う方針が伝えられました。ドイツでは現在もまだ日に2,000〜3,000人程度の新規感染者が出ていますが、(ピーク時は6,000人を超えていました)感染からの回復者数増加のスピードがそれを上回りました。基本再生産数(1人の患者が感染させる平均人数)は3から0.7まで下がったそうです。この1ヵ月間のドイツで暮らす市民の我慢が結果を出した、と言えると思います。赤は「今感染している患者数」で、緑は「感染から回復した患者数」です。下の黒は「感染での死者数」となります。緑が急激に増えてきていて、赤はほぼ一定(やや減少?)であることがわかります。ただ今後の規制緩和で、この基本再生産数が仮に1.3まで上がると、7月にはドイツのICUのベッドが足りなくなるそうです。報道を見る限りでは、緊張感が持続している中での規制緩和と言った印象です。今後、段階的に規制を解除していく上で、恐らくやって来るであろう第2波をどのように凌いでいくのか、病院側もまだ模索している状態です。そのため、コロナ禍のために延期されている手術のリストも、かなり膨れ上がって来ています。ストレスフルな毎日先日、待機中に急変を起こされ、搬送された方が救命できずに亡くなりました。しばらくの間、誰も声も出せずに黙り込んでいました。たとえ待機手術の患者さんであったとしても、心臓外科の手術が延期されることは患者さんにとってリスクでしかないことは重々承知してはいたつもりでしたが…。この患者さんは「運が悪かった」で済ませていいものなのか、やるせない気持ちになります。本当にグッタリした気分です。また、週明けには、待機手術を再開するかどうか、教授からの通達がある予定です(現在はまだ行わない予定になっています)。上層部にとっても、非常にストレスの伴う判断が求められています。苦しい時間がまだまだ続きそうですが、目の前のことを粛々とこなすことで毎日を過ごしています。早く感染が収束することを心から祈っています。

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第5回 COVID-19ワクチン候補の1つ、初めてサルで感染を予防

中国・北京拠点のバイオテック企業Sinovac Biotech社の、mRNAでもプラスミドDNAでもウイルスベクターでもない昔かたぎのローテク不活化ワクチンが、数ある開発品の中で初めて動物・アカゲザルの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染を防ぎました1,2)。8匹のサルにまずワクチンが3回投与され、気管に通した管からその3週間後に肺にSARS-CoV-2を入れて様子を見たところ、どのサルもウイルスに屈しませんでした。とくに高用量(6µg)投与群の反応は良好で、ウイルスを肺に入れてから7日時点で、肺や喉からウイルスは検出されませんでした。低用量(3µg)群ではウイルスが検出されたものの、対照群の4匹のサルに比べてウイルス量はほぼ完全に(95%)抑制されていました。安全性も良好であり、サルの体調・血液/生化学指標・組織解析で懸念は示唆されませんでした。また、低用量投与群の中和抗体価は比較的低かったにもかかわらず、抗体を介した感染促進副作用・ADE(antibody-dependent enhancement of infection)はどのワクチン接種サルにも認められませんでした。Sinovac社の海外部門リーダーMeng Weining氏は、今回の結果を受けて同ワクチンがヒトにも効くに違いないと確信していると述べており、すでに同社は中国江蘇省でプラセボ対照二重盲検第I/II相試験を開始しています3)。4月20日時点での登録情報によると、試験には18~59歳の健康な成人744人が参加し、不活化SARS-CoV-2ワクチン高用量、低用量、プラセボのいずれかが2週間あるいは4週間の間をおいて2回投与されます4)。Sinovac社は実績があるワクチンメーカーであり、手足口病、A/B型肝炎、インフルエンザに対する不活化ワクチンを販売しています。ただし、Weining氏によると作製できるワクチンは多く見積もっても約1億投与分であり、もし臨床試験で効果や安全性が確認されてCOVID-19ワクチンを作るなら他のメーカーの助けが必要かもしれません。世界保健機関(WHO)によると、4月26日時点で7つのCOVID-19ワクチンが臨床試験段階に至っており、さらに82候補の前臨床開発が進行中です5)。それらのワクチンのほとんどは目新しい人工遺伝子技術に基づいており、Sinovac社のような昔ながらの不活化技術頼りのワクチンは5つのみです。現在の流行のさなかで何よりも大事なのは、技術がどうあれ安全で有効なワクチンをできるだけ早く完成させることだと、Weining氏はScience誌に話しています。参考1)Rapid development of an inactivated vaccine for SARS-CoV-2.bioRxiv. April 19, 20202)COVID-19 vaccine protects monkeys from new coronavirus, Chinese biotech reports / Science3)Sinovac Announces Commencement of Phase I Human Clinical Trial for Vaccine Candidate Against COVID-19 / Sinovac Biotech4)Safety and Immunogenicity Study of 2019-nCoV Vaccine (Inactivated) for Prophylaxis SARS CoV-2 Infection (COVID-19) (ClinicalTrials.gov)5)DRAFT landscape of COVID-19 candidate vaccines – 26 April 2020

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COVID-19の実効再生産数は公衆衛生介入で抑制か/JAMA

 中国・湖北省武漢市のCOVID-19集団発生(outbreak)では、都市封鎖(city lockdown)や社会的距離(social distancing)、自宅隔離、集約化された検疫・治療、医療資源の拡充など一連の多面的な公衆衛生的介入により、初発の確定症例や実効再生産数(2次感染の指標)が経時的に抑制されたことが、中国・華中科技大学のAn Pan氏らの調査で示された。COVID-19の世界的な大流行(pandemic)では、さまざまな公衆衛生的介入が行われているが、これによって集団発生状況が改善されたか明確ではないという。JAMA誌オンライン版2020年4月10日号掲載の報告。3万例以上で、公衆衛生的介入が及ぼした影響を評価 研究グループは、武漢市のCOVID-19集団発生において、公衆衛生的介入と疫学的特徴の関連を評価する目的で、5つの時期に分けたコホート研究を実施した(中国・主要大学基礎研究基金などの助成による)。 市の法定伝染病報告システムを使用し、2019年12月8日~2020年3月8日に、検査によりCOVID-19と確定された3万2,583例のデータを抽出した。データには、患者の年齢、性別、居住地区、職業、発病日(患者の自己申告による発熱、咳、その他の呼吸器症状が発現した日)、確定日(生体試料からSARS-CoV-2を検出した日)、重症度(軽度、中等度、重度、重篤)などが含まれた。 COVID-19の確定は、鼻腔および咽頭のスワブ検体を用い、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)または次世代シークエンシング法でSARS-CoV-2ウイルス陽性の場合と定義した。 公衆衛生的介入(防疫線、交通規制、社会的距離、自宅隔離、集約化検疫、全例症状調査など)が、新型コロナウイルスの感染に及ぼした影響を評価した。イベントや介入で5つの時期に分類、2次感染の指標も評価 春運期間の開始(2020年1月10日)、武漢市防疫線の開始(1月23日)、4つのカテゴリー(確定症例、推定症例、発熱・呼吸器症状患者、濃厚接触者)に分けて集約化された治療・検疫戦略の開始(2月2日)、全例症状調査の開始(2月17日)を起点として、以下の5つの時期に分類し、年齢別、性別、市内地区別の新型コロナウイルスの感染率を算出した。 I期(初期の非強力介入期、2019年12月8日~2020年1月9日、33日間、確定症例数550例)、II期(春節による大移動期、1月10日~22日、13日間、5,091例)、III期(都市封鎖/交通規制/自宅検疫期、1月23日~2月1日、10日間、1万3,880例)、IV期(集約化検疫・治療/医療資源拡充期、2月2日~16日、15日間、9,972例)、V期(集約化検疫/全例症状調査期、2月17日~3月8日、21日間、3,090例)。 また、各時期のSARS-CoV-2の実効再生産数(2次感染の指標。集団のある時刻における、典型的な初発患者が生み出した2次感染者数の平均値)も推算した。発症から確定までの期間は徐々に短縮 3万2,583例の年齢中央値は56.7歳(範囲:0~103、四分位範囲:43.4~66.8)、女性が1万6,817例(51.6%)で、40~79歳が2万4,203例(74.3%)であった。 多くの患者は1月20日~2月6日の期間に発症し、2月1日にこの日だけの感染者数の急上昇が認められた。発症から確定までの期間は、初期には実質的な遅延が認められたが、この遅延は経時的に短縮した(I~V期の発症から確定までの期間中央値の推移:26、15、10、6、3日)。 集団発生は、武漢市の都市部で始まり、5つの時期を通じて郊外および農村部へと徐々に拡大した。確定症例の割合は、地区によって大きく異なり、感染率は都市部が最も高かった。III期にピーク、医療従事者感染率はPPE普及後に低下 1日の確定症例数の割合は、I期の100万人当たり2.0件(95%信頼区間[CI]:1.8~2.1)から、II期には45.9件(44.6~47.1)へと上昇し、III期には162.6件(159.9~165.3)とピークに達したが、その後、IV期には77.9件(76.3~79.4)、V期には17.2件(16.6~17.8)へと低下した。また、全期を通じて、女性の感染率がわずかに高かった(100万人当たり43.7件/日vs.39.4件/日)。 一方、医療従事者の確定症例(1,496例)の割合は4.6%であった(I期3.8%、II期8.7%、III期5.5%、IV期3.0%、V期1.8%)。全期を通じて、100万人当たりの1日の確定症例の割合は、医療従事者が130.5件(95%CI:123.9~137.2)と、一般人口の41.5件(41.0~41.9)に比べて高かった。医療従事者の感染率はIII期にピーク(617.4件[576.3~658.4]/日/100万人)に達したが、包括的な個人用保護具(PPE)が広く使用可能となったIV期(159.5件[141.4~177.6])およびV期(21.8件[16.1~27.4])には低下した。 20歳以上では、1日の確定症例の割合はIII期にピークに達し、それ以降は低下したのに対し、小児や青少年(20歳未満)はその後も増加し続け、とくに1歳未満の増加が顕著であった。1歳未満の1日の確定症例の割合は100万人当たり7.9件(5.8~10.0)で、20歳未満の他の年齢層は2.0~5.4件だった。高齢者ほど重症化リスク高い、実効再生産数は介入後低下 重症度別の解析では、重度/重篤症例の割合は、I期の53.1%から、II期35.1%、III期23.5%、IV期15.9%、V期10.3%へと低下した(I期との比較でいずれも有意差あり)。 また、重症化のリスクは年齢が高くなるに従って増加した。20~39歳の重度/重篤症例の割合12.1%と比較して、80歳以上は41.3%(リスク比[RR]:3.61、95%CI:3.31~3.95)、60~79歳は29.6%(2.33、2.16~2.52)、40~59歳は17.4%(1.41、1.30~1.53)であったのに対し、20歳未満は4.1%(0.47、0.31~0.70)であった(いずれもp<0.001)。 一方、実効再生産数は、1月26日以前は3.0以上で著しく上下動し、1月24日にピーク値の3.82に達し、以降は下降に転じた。2月6日には1.0未満に低下し、3月1日以降は0.3未満に抑制された。 著者は、「これらの知見は、COVID-19の世界的な大流行との闘いにおいて、他の国や地域の公衆衛生上の施策に有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

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