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第14回 新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?

<先週の動き>1.新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?2.新型コロナウイルス感染症対策分科会、専門家会議副座長の尾身茂氏が分科会長に3.相次ぐオンライン診療の初診での恒久化を求める声4.医療機関のインターネット広告違反、美容・歯科で数多く5.医師少数区域経験認定医師の広告が許可へ1.新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?6月26日、厚生労働省より2020年4月までの人口動態統計が発表された。これによると、今年4月の死亡者数は11万3,362人で前年度4月の11万2,939人と比べると423人・0.4%の増加だった。今年1~4月の累積死亡者数を前年同時期と比較すると、1万444人・2.1%の減少となり、コロナウイルス感染拡大に伴う超過死亡は、欧米と比較してほぼなかったと考えられる。海外、とくに欧米においてはコロナウイルス感染拡大による超過死亡が報告されているが、我が国ではPCRの実施体制の不備が懸念されていたものの、幸いにも超過死亡が記録されることはなく、第1波の感染拡大が収束した。今後、第2波の襲来や冬場のインフルエンザウイルスの流行期での感染拡大が懸念されるだけに早期の感染防御やPCRの検査体制拡充が求められる。(参考)人口動態統計速報Excess Deaths Associated with COVID-19(CDC)2.新型コロナウイルス感染症対策分科会、専門家会議副座長の尾身茂氏が分科会長に政府は、7月3日の新型コロナウイルス感染症対策本部(持ち回り形式で開催)において、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の廃止を決定し、新たに特別措置法に基づいて「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を設置することを正式決定した。この初会合は7月6日に開かれることとなっており、構成員は18人、医師や保健所の代表、全国知事会、メディアの代表などが含まれ、専門家会議で副座長を努めた尾身 茂・地域医療機能推進機構理事長がトップを務める。初回は、東京都を中心とした感染状況や PCR検査の拡充、感染者データの取り扱いなどが取り上げられる予定。(参考)政府のコロナ対策分科会メンバー一覧 経済学者や知事、マスコミも産経新聞3.相次ぐオンライン診療の初診での恒久化を求める声7月2日に開催された第8回規制改革推進会議にて、「規制改革推進に関する答申」が取りまとめられ、デジタル分野の規制改革の提言を提出された。答申案では、新型コロナウイルスの感染拡大の中、新しい生活様式への転換が求められるため、デジタル技術を徹底的に活用できるよう規制改革を行う必要があるとしたうえでデジタル時代の規制・制度のあり方や書面・押印・対面規制の見直しを求めている。医療・介護分野では、初診も含めたオンライン診療の全面解禁やスイッチOTC化の促進に向けた推進体制の充実、介護アウトカムを活用した科学的介護の推進を求めており、今後、議論を重ねていく見込み。また、同日、自民党の行政改革推進本部(塩崎 恭久本部長)が首相官邸を訪れ、菅 義偉官房長官にデジタル分野の規制改革の提言を提出した。デジタル規制改革を求める中で、オンライン診療及び遠隔教育についての効果検証を行い、恒久化していくことが求められる。(参考)第8回規制改革推進会議 規制改革推進に関する答申自民党 行政改革推進本部 デジタル規制改革ワーキンググループ4.医療機関のインターネット広告違反、美容・歯科で数多く7月2日に開かれた「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、厚生労働省は医療機関のホームページに起因する美容医療サービスに関する消費者トラブルが発生し続けているのに対して2017年から行っているネットパトロールの結果を報告した。この中で、1万300サイトについて通報受付を受け、1,253施設の974サイトが審査対象となり、919サイトを運営する医療機関に対して、通知を行い、717サイトが改善したことを報告された。さらに、2018年6月の改正医療法施行後の医療法における広告規制の改正施行後の現状を踏まえ、全国一律の基準で運用できるよう監視指導体制の強化が必要としている。(参考)医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会5.医師少数区域経験認定医師の広告が許可へ7月2日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、医師偏在対策の一環として「医師少数区域等で一定期間勤務した医師」を厚生労働大臣が認定し、認定された医師である旨を広告することを可能とする、医療広告ガイドライン指針の追記について合意した。これは今年の4月1日から施行された改正医療法・医師法に伴う関係政令等の整備の一環で、地域の医師偏在の解消を目指して、医師少数区域(人口10万対医師数に地域住民や医師の年齢構成などを加味した新たな指標を用いて、医師配置が下位3分の1となる地域)等での勤務にインセンティブを付与し、医師偏在の解消を狙うもの。若手医師の場合、4月1日以降に初期臨床研修を開始した医師が対象となり、総合的な診療能力の獲得のために地域医療への参画が求められるなど、即効性は期待できない。一方、医師免許を取得から9年以上経過した医師については、断続する勤務合計が180日に達すれば条件を満たすため、医師偏在解消のきっかけとなることが期待される。(参考)医療法及び医師法の一部を改正する法律の施行について(通知)

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『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』~気鋭の医師が提唱する未病の新たな概念

 医学書の範疇に収まらないユニークな著書を数多く持つ國松 淳和氏(医療法人社団永生会南多摩病院 総合内科・膠原病内科)の最新作は『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』。6月下旬に行われた出版記念セミナーにおいて、國松氏がコロナ禍の中で本書の執筆に至った経緯や読者に伝えたいポイントについて語った。 本の主題となる「シャムズ(CIAMS: COVID-19/Coronavirus-induced altered mental status)」は國松氏の造語。新型コロナウイルス感染症の流行下にあって、コロナに感染していないのに、不安から実際に体調を崩したり、他者に攻撃的になったりといったマイナスの変化が生じている人が増えたことに気づいた氏が、そうした状況と人を総称するために名付けたという。「よく間違われるのですが、シャムズは医学用語でも病名でもなく、概念に近いもの。『あれ、この人いつもと何か違うな』と周囲の人が気づくものであり、病気ではないので医師が診る必要も医療機関に行く必要もない」と國松氏は解説する。 コロナにまつわる不安が精神的加重となり、心身に変化が起きている状態がシャムズであり、その対応法は「周囲の人が気づき、話しかけること」に集約される、という。普段通りの何気ない会話が不安を取り除き、本来のその人に戻る手助けとなる。「シャムズが疑われる人だけでなく、周囲の人に誰かれ構わず話しかけてみて欲しい。そもそも職場にも家庭にも雑談が足りなさ過ぎる」(國松氏)。さらに、自己のメンテナンスとしてテレビからの過剰な情報を遮断し、ラジオや音楽を聴くことを推奨する。「シャムズは病気ではないものの、放置しておくと精神疾患、とくに重いうつと自殺につながる可能性がある。多くの人にこの概念を知ってもらい、他者への目配りと自分のケアをはじめてもらえたら」と國松氏は語る。 本書は、一般向けに平易にまとめられているが、最前線で新型コロナの対応にあたる医療者も読者として想定されており、診療現場と自らのケアの両面で役立つ内容が含まれている。章末には「医療従事者のみなさんへ」として、シャムズについて医学的な理解を助けるための章も付加されている。『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』(國松 淳和、金原出版、2020年6月)セミナーのご案内 ケアネットでは、7月8日(水)に國松氏と札幌厚生病院病理診断科の市原 真氏の対談をライブストリーミング配信します。◆Dr.國松とDr.ヤンデルの『また来たくなる外来』トーク◆ 配信日:7月8日(水)20~21時 (事前申し込み不要・どなたでも視聴いただけます) ※7月9~15日までCareNeTVにて無料配信予定 詳細はこちら 過去の配信 Dr.國松とDr.ヤンデルの大真面目コロナトーク(会員登録不要・無料公開中)

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COVID-19と熱中症予防の両立にむけて/厚生労働省

 厚生労働省は、「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめ、ホームページで公開した。今回発表された熱中症予防行動のポイントでは、「マスクの着用・温度調節・暑さ対策・健康管理」の4つの点について詳しく言及し、新しい生活様式下の今夏の過ごし方を提言している。「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント(以下抜粋)(1)マスクの着用について マスクは飛沫の拡散予防に有効で、基本的な感染対策として着用をお願いしている。しかし、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクをはずすようにする。 マスクを着用する場合、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくても、こまめに水分補給を心がける。また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要。(2)エアコンの使用について 熱中症予防のためにはエアコンの活用が有効。ただし、新型コロナウイルス対策のためには、冷房時でも窓開放や換気扇によって換気を行う必要がある。換気により室内温度が高くなりがちなので、エアコンの温度設定を下げるなどの調整も必要。(3)涼しい場所への移動について 少しでも体調に異変を感じたら、速やかに涼しい場所に移動することが、熱中症予防に有効。一方で、人数制限などにより屋内店舗などにすぐに入ることができない場合、屋外でも日陰や風通しの良い場所に移動する。(4)日頃の健康管理について 毎朝定時の体温測定、健康チェックは、熱中症予防にも有効。平熱を知っておくことで、発熱に早く気付くことができる。日頃の健康管理の充実のほか、体調が悪いと感じたときは、無理せず自宅で静養する。

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メニューへのカロリー表示が健康や経済にメリット、AHAニュース

 飲食店のメニューにカロリー表示を求める現行の連邦法は、健康的な食事の選択を促し、心血管疾患や糖尿病の患者数の減少に寄与する可能性があるとする研究結果が報告された。このモデリング研究では、人々が飲食店の栄養表示を考慮して注文することによって、2018年から2023年までに心血管疾患を1万4,698件(このうち心血管疾患による死亡は1,575件)、2型糖尿病を2万1,522件回避できると推定された。結果の詳細は米国心臓協会(AHA)が発行する「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」6月4日オンライン版に発表された。 米食品医薬品局(FDA)は2018年5月、20店舗以上の飲食店チェーンを対象に、メニューやメニューボードへのカロリー表示を義務付けた。ただし、現在は、FDAは4月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態が収束するまでの一時的な措置として、カロリー表示についての柔軟な対応を認めている。 論文の著者の一人で、米タフツ大学フリードマン栄養科学政策大学院のDariush Mozaffarian氏は「米国では、40年以上にわたり、国民の代謝系の健康問題が増大していたが、そこに感染症の問題も加わることになり、徐々に広がるパンデミックと急速に広がるパンデミックが重なった状況に直面している」と説明。その上で、「COVID-19によって、米国民が健康的な食品を確実に摂取できるようにすることの重要性が浮き彫りになった」と指摘している。 Mozaffarian氏によると、食事の影響を受けやすい糖尿病や高血圧、肥満などはCOVID-19の重症化リスクを高め、入院リスクも上昇させるとされている。 Mozaffarian氏らは今回、連邦政府が35~80歳の男女を対象に実施した健康と栄養に関する調査の食事摂取データを用いて、コンピューターの予測モデルに基づく研究を実施。その結果、メニューへのカロリー表示を受けて消費者が生涯にわたって低カロリーの食事を選ぶようになることで、肥満が減少し、医療費は104億ドル(約1兆1150億円)、また生産性の低下や家族による介護などのインフォーマルケアに伴う「社会的費用」も127億ドル(約1兆3600億円)削減されると推定された。さらに、生涯にわたって低カロリーの食事を選択する習慣が根付くことで、心血管疾患は13万5,781件(このうち死亡例は2万7,646件)、2型糖尿病は9万9,736件、回避できると推定された。 この研究論文の筆頭著者の一人である同大学のJunxiu Liu氏は、「飲食店が、低カロリー食を提供したり、一人前の量を減らすなどしてもっとメニューを刷新すれば、医療費や健康の面で得られる恩恵の大きさは、消費者の選択の変化だけに基づいた場合の2倍になり得る」と述べている。また、この法律は特に、ヒスパニック系や黒人、学歴が低い人や低所得者、肥満者といった特定の集団に大きな健康上の利益をもたらし、健康格差の縮小にも寄与する可能性があると指摘している。 今回の研究には関与していない米ノースウェスタン大学のNorrina Bai Allen氏は、現在カロリー表示を求める規制で一時的な緩和措置がとられていることに一定の理解を示しながらも、Mozaffarian氏らが報告した推計値を見ると、カロリー表示の義務化は有望であるとして、できるだけ早く、カロリー表示を再び義務付けるようにしてほしいと主張している。そして、「COVID-19を含めて理由が何であれ、対策が遅れれば心血管疾患による疾病負担は増大することになる。消費者が簡単に全てのカロリーに関する情報を得ることができ、それに基づいた意思決定を行える世界が理想だといえる」と話している。[2020年6月4日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.

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第13回 自由診療の抗体検査がもたらす市民の勘違い

本連載もようやく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から離れつつあったが、ちょっと再び戻らせてもらう。なぜかというと、最近、SNS上や報道で目にする抗体検査について不安を覚えるようになったからだ。自治体などが今後の対策のための疫学調査として抗体検査を行うことは何ら問題ないと考えている。しかし、企業が従業員に対して一斉実施したり、市中の医療機関が自由診療で抗体検査を行ったりすることに現時点では何ら意義を感じないからだ。そもそも抗体検査の結果が分かった時に人間はどんな反応を示すだろうか? まず、陰性だった場合は、「感染してなかった」と思いほっとする人、「まだ感染していないのか」とやや不安になる人の2つに分かれるだろう。だが、この陰性という結果が無駄な安心を与えてしまう事例も既に明らかになっている。6月10日に判明した名古屋市での女性の感染例だ。この女性は発熱の症状を訴え、COVID-19の抗体検査を受け陰性と判明した。その翌日は勤務先を休んだものの、解熱したとして翌々日から3日間勤務に復帰。その後、味覚・嗅覚の異常を訴え、最終的に抗体検査から1週間後にPCR検査で感染の事実が判明している。要は抗体検査で陰性の発熱だったのでCOVID-19ではないと勘違いしてしまった事例である。では陽性だったらどうだろう? そもそも市中の医療機関の自由診療でCOVID-19の抗体検査を受けに行く人の多くは、前述の名古屋の事例のような現在進行形の類似症状のあるケースよりも過去に類似の症状を経験したか、単に興味本位という人だろう。そうした人が陽性と分かったら、最初は驚き、思い当たる感染時期がないか振り返るに違いない。ただ、入院も必要もなく軽症あるいは無症状で済んだことに加え、抗体があるという事実から安心しきってしまう人がほとんどではないだろうか。ところがこの安心はかなり的外れである可能性が浮上している。新型コロナの抗体価は持続しにくい?先ごろ、nature medicineに発表された中国の重慶医科大学の研究グループによるCOVID-19感染者の血中抗体価を追跡した研究結果が明らかになった。それによると感染者の退院8週間後のCOVID-19特異的IgG抗体は、無症候者の93.3%、有症状者の96.8%で減少し、抗体減少率の中央値は無症候者で71.1%、有症状者で76.2%。また、中和抗体量は無症候者の81.1%、有症状者の62.2%で減少し、抗体減少率の中央値は無症候者で8.3%、有症状者で11.7%だった。この事実からすれば、抗体検査で陽性であっても長期的な「免疫パスポート」にはならない可能性が高いことになる。しかも、現時点では特異的な治療薬、ワクチンも存在しないという現実。つまるところ、抗体検査を受けた人は結果が陰性であれ、陽性であれ、今後注意すべきことは変わらないということである。にもかかわらず最近では大都市圏のクリニックを中心にこのCOVID-19の抗体検査を行う医療機関が増えている。少なくとも通常よりもややお金がかかる自由診療で検査を受けようとする人の心中は「何らかの安心を得たい」ことがほとんどだろう。しかし、医学的に見て何らかの安心が得られる状況ではないのは既に書いたとおりだ。逆にこうした医療機関には、自由診療で抗体検査を行うことで患者側にどんなメリットがあるのか、と問いたい。むしろ一時的かつ張りボテの安心感を与えることで、その後の感染リスクを高める害のほうが多いのではないかと考える。少なくとも私のオツムではどうしてもこの検査にメリットについて明快な答えを提示できないのである。

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次亜塩素酸水は物品消毒に有効、空間噴霧は勧められない

 6月26日、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が実施した新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価を踏まえ、経済産業省、厚生労働省、消費者庁が合同で、消毒・除菌方法に関する情報を取りまとめた。次亜塩素酸水は、物品における新型コロナウイルスの消毒に対して、一定条件下での有効性を報告した一方、手指消毒や空間噴霧の有効性・安全性は評価されておらず、まわりに人がいる中での空間噴霧はお勧めできないと注意喚起している。有効塩素濃度35ppm以上の次亜塩素酸水が物品消毒に有効 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、アルコール消毒液が手に入りにくい状況が続いたことを受け、家庭や職場でアルコール以外による物品の消毒の選択肢を増やすため、経済産業省の要請を受けたNITEが消毒方法の有効性評価を進めていた。 新型コロナウイルスに対する消毒方法として新しく有効と判断されたのは、界面活性剤の純石けん分(脂肪酸カリウム 0.24%以上/脂肪酸ナトリウム 0.22%以上)と、有効塩素濃度35ppm以上の次亜塩素酸水(電解型/非電解型)。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かす場合は、有効塩素濃度100ppm以上で有効とされる。 なお、検証結果を踏まえ、次亜塩素酸水の利用に当たっては(1)汚れ(手垢、油脂など)をあらかじめ除去すること、(2)対象物に対して十分な量を使用することなどの注意が必要だ。次亜塩素酸水の空間噴霧は勧められない 経済産業省の取りまとめサイトでは、新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌方法についてまとめた以下のポスターが公開されている。・次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)など既存の消毒・除菌方法について・界面活性剤の使い方について・次亜塩素酸水の使い方について なお、次亜塩素酸水に関しては、製造・販売事業者向けにも、有効性・使い方・販売方法などについてのお知らせが出されている。これによると、次亜塩素酸水の手指などへの影響、空間噴霧の有効性・安全性は評価されておらず、利用する際の注意として「塩素に過敏な方は使用を控えるべきこと」、「飲み込んだり、吸い込んだりしないよう注意すること」、「次亜塩素酸水を、まわりに人がいる中で空間噴霧することはお勧めできないこと」が明記されている。 これ以外にも、次亜塩素酸ナトリウムとは異なることや、酸性の製品と混ぜると塩素ガスが発生して危険であることなど、適切な表示をするよう呼び掛けられている。国民一人ひとりが目的にあった製品を正しく選び、正しい方法で使用するために、情報の周知が重要だ。

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COVID-19入院患者にバリシチニブ治験へ/リリー

 米国・イーライリリー・アンド・カンパニーは、成人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者を対象に、インサイト(Incyte)社からライセンス供与されている経口JAK1/JAK2阻害剤バリシチニブの有効性および安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験に、最初の患者が組み入れられたことを6月15日に発表した。試験の概要 本試験には400人の患者が組み入れられ、米国、欧州およびラテンアメリカで実施される予定。なお、患者はSARS-CoV-2感染により入院し、試験組み入れ時に、少なくとも1種類の炎症マーカーの上昇があるが侵襲的機械換気(気管挿管による人工呼吸)を必要としない患者が対象となる。 本臨床試験の主要評価項目は、プラセボ投与群(基礎療法のみ)との比較における、バリシチニブ4mg 1日1回投与群(基礎療法と併用)の投与開始から28日目までに死亡もしくは非侵襲的換気/高流量酸素または侵襲的機械換気(気管挿管による人工呼吸)を必要とした患者割合。本試験で患者は14日間または退院するまでバリシチニブまたはプラセボの投与を受ける。重要な副次的評価項目としては、治験薬投与後28日目までの期間における、複数の異なる時点で臨床的改善を示した患者割合、回復までの期間、入院期間、人工呼吸器を使用しない日数および死亡率が含まれる。 本試験の意義について、COVID-19では、疾患重症度は高度の炎症と関連している可能性があり、バリシチニブはJAK1およびJAK2を阻害することで、この感染症の合併症と関連するサイトカインストームを軽減する可能性があるという仮説が立てられている。また、バリシチニブは、ウイルスの増殖を促進する宿主細胞由来タンパク質を阻害し、感染細胞内のウイルス増殖を抑制する役割を担っている可能性があるという。 同社では、「この無作為化比較試験は、バリシチニブのCOVID-19治療薬としての可能性を解明する重要な一歩」と位置付けている。バリシチニブは関節リウマチ治療薬としてわが国で適応 バリシチニブ(商品名:オルミエント)は、中等度から高度疾患活動性の成人関節リウマチの治療薬として70ヵ国で承認され、使用されている。わが国では「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を適応症として承認されている1日1回経口投与のJAK阻害剤。

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COVID-19、がん患者の全死亡率への影響/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者のデータが不足している中、米国・Advanced Cancer Research GroupのNicole M. Kuderer氏らによる検討で、COVID-19に罹患したがん患者の30日全死因死亡率は高く、一般的なリスク因子(年齢、男性、喫煙歴など)、およびがん患者に特異な因子(ECOG PS、活動性など)との関連性が明らかにされた。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる長期追跡を行い、がん患者の転帰へのCOVID-19の影響を、特異的がん治療の継続可能性も含めて、明らかにする必要がある」とまとめている。Lancet誌2020年6月20日号掲載の報告。米国・カナダ・スペインの患者について分析 研究グループは、COVID-19罹患のがん患者コホートの転帰を特徴付け、死亡および疾患重症化の潜在的予測因子を特定するコホート研究を行った。 COVID-19 and Cancer Consortium(CCC19)データベースから、SARS-CoV-2感染確定例で、活動性がんおよびがん既往歴のある18歳以上の米国・カナダ・スペインの匿名化患者データを集めて分析した。各患者のデータは、2020年3月17日~4月16日の間にベースラインデータが入力され、フォローアップデータは5月7日まで入力されていた。 収集・分析したのは、ベースラインの臨床状態、治療歴、がんの診断・治療、COVID-19の経過。主要エンドポイントは、COVID-19診断後30日間の全死因死亡とした。 転帰と潜在予後変数の関連性を、年齢、性別、喫煙状態、肥満について補正後のロジスティック回帰分析を用いて評価した。人種、肥満、がん種、がん治療、直近手術は死亡と関連せず 試験期間中にCCC19データベースには1,035件の記録が入力され、解析の適格基準を満たした患者928例について分析した。被験者の年齢中央値は66歳(IQR:57~76)、279例(30%)が75歳以上で、男性患者は468例(50%)であった。 最も一般的にみられた悪性腫瘍は、乳がん(191例[21%])および前立腺がん(152例[16%])。366例(39%)の患者が抗がん剤の治療中で、396例(43%)が活動性(測定可能)がん患者であった。 2020年5月7日の解析時点で、死亡は121例(13%)であった。年齢等補正後ロジスティック回帰分析の結果、30日死亡増大の関連独立因子は、加齢(10歳増につき、年齢等補正後オッズ比[OR]:1.84、95%信頼区間[CI]:1.53~2.21)、男性(1.63、1.07~2.48)、喫煙状態(元喫煙者vs.非喫煙者の同1.60、1.03~2.47)、併存疾患数(2 vs.なしの同4.50、1.33~15.28)、ECOG PS 2以上(2 vs.0または1の同3.89、2.11~7.18)、活動性がん(進行vs.寛解の同:5.20、2.77~9.77)、アジスロマイシン+ヒドロキシクロロキン投与(vs.非投与の同:2.93、1.79~4.79、適応症による交絡は除外できなかった)であった。 また、米国北東部の住民と比較して、カナダの住民(年齢等補正後OR:0.24、95%CI:0.07~0.84)、米国中西部の住民(0.50、0.28~0.90)の30日全死因死亡率は低かった。人種・民族、肥満状態、がんのタイプ、抗がん剤治療のタイプ、直近の手術について死亡との関連は認められなかった。

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新型コロナウイルスの感染伝播防止に有効な対策(解説:小金丸博氏)-1252

 COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は人と人との密な接触で広がっていく。本稿執筆時点では、有効性が示された治療薬や予防ワクチンはなく、感染拡大をいかにして防止するかは重要なテーマである。今回、COVID-19、SARS、MERSの原因ウイルスの伝播防止に、身体的距離、マスクの着用、眼の防護が有効な対策となりうることを示したシステマティックレビューとメタ解析がLancet誌オンライン版より報告された。これまでのメタ解析は、季節性インフルエンザなどの呼吸器系ウイルスに関するランダム化試験や不正確なデータを基にし、医療施設内での予防効果に焦点を合わせたものであったが、本論文ではSARS-CoV-2を含むコロナウイルスのデータに絞り、医療施設内のみでなく市中での感染予防効果に関するデータを含んでいることが特徴である。 結果の概要は以下のとおりであった。身体的距離 人と人との距離が1m未満と1m以上を比較した場合、感染伝播するリスクはそれぞれ12.8%と2.6%であり、距離を1m以上とることで感染リスクは大幅に低下した(群間リスク差:-10.2%、調整オッズ比:0.18)。この感染予防効果はマスクの着用の有無にかかわらず認め、距離が1m離れるごとに2.02倍に増大した。マスクの着用 マスクを着用しない場合と着用する場合を比較した場合、感染伝播するリスクはそれぞれ17.4%と3.1%であり、マスクを着用することで感染リスクは大幅に低下した(群間リスク差:-14.3%、調整オッズ比:0.15)。N95マスクや同等の効果が期待できる類似のマスクは、サージカルマスクと比較して、強い感染防止効果を認めた。N95マスクの感染予防効果に関しては、医療施設内での評価を検討した論文のみ用いられた。マスク着用による感染伝播を防止する効果は、とくに医療施設内での使用で強い効果を示した。眼の防護 眼を防護しない場合と防護する場合を比較した場合、感染伝播するリスクはそれぞれ16.0%と5.5%であり、ゴーグルなどで眼を防護することで感染リスクは大幅に低下した(群間リスク差:-10.6%、非補正相対危険度:0.34)。眼の防護の感染予防効果を評価するために13本の論文が用いられたが、COVID-19に関する論文は1本のみであった。 新型コロナウイルスの流行がいつまで続くかわからない現状において、感染リスクを減らすために人と人との距離を最低1m(できれば2m以上)とることやマスク着用の根拠になりうる研究結果である。本論文で有効性を認めた対策に手指衛生などの対策を追加することで、さらなるウイルス伝播防止効果を期待できると考える。今回のメタ解析にはランダム化比較試験は一つも含まれておらず、より強固なエビデンスを得るためにはさらなる研究が待たれる。

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第13回 ワクチン治験の対象に医療従事者は妥当?大阪ワクチン報道で考えたこと

DNAワクチンの治験始動こんにちは。 医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。5月25日に国の緊急事態宣言が全面解除されたのに次いで、6月11日には都の「東京アラート」が解除されました。それから約3週間、東京ディズニーランドの再開も決まり、皆さん、あちこちに繰り出すようになってきました。東京で感染者数が漸増しているのは気になりますが、かく言う私も久しぶりにテントを担いで、昔の山仲間とともに奥多摩の石尾根を登ってきました。こういうときは、日頃からテント山行をしていると、山小屋の密も避けられていいものです。ちなみに今回は全員1人用テント持参、テントの外で食事を作り、宴会もテント外で行いました。もっとも深夜から土砂降りで、翌朝、濡れたテントを畳み、カッパを着て即下山しました。濡れ鼠にはなりましたが、初夏の山を堪能してきました。さて、今回気になったのは、ケアネットでも報道されていたアンジェスのワクチンの治験のニュースです。6月20日のケアネットでは、「待ち望まれる国産の新型コロナワクチン実現に王手か―。大阪府は6月17日の記者会見で、大阪大学などと共に産官学連携で開発に取り組んできた、新型コロナウイルスの予防ワクチンの治験を6月30日に開始することを明らかにした。新型コロナウイルスを巡っては、世界規模で予防ワクチンの開発が進行中であり、1日も早い実現が待たれる状況だが、ヒトへの投与が実施されるのは国内初となるという」と書いています。その後アンジェスは、6月25日に同社が大阪大学などと共同開発している新型コロナウイルス感染症に対するDNAプラスミドベースのワクチンについて、大阪市立大学医学部附属病院の治験審査委員会が第I/II相臨床試験の実施を承認し、同病院と治験契約を締結したと発表しました。第I/II相臨床試験は、同ワクチンの安全性と免疫原性を評価するもので、実施期間は、2020年6月末から2021年7月末の予定だそうです。”前のめり”の吉村知事この大阪のワクチンに関する一連の報道を読んで、心がざわつくことが2点ほどありました。1つは大阪市大の倫理委員会が承認する前に、大阪府の吉村 洋文知事がその内容や日程、実用化のめどなどを記者会見で公表してしまったことです。17日の記者会見で吉村知事は、「なんとか国産のワクチンを開発し、日本における新型コロナウイルスとの闘いを大きく反転攻勢させていきたい。30日は人への投与を実施することになるが、これを皮切りに大阪で実現させたい」と熱く語っていました。通常、治験は実施される医療機関で承認を受けた後、日程などの計画が公表されます。承認もされていない段階での吉村知事の”前のめり”過ぎる姿勢や発言に24日の毎日新聞は「日程発表が審査に先行する異例の展開に市大関係者から『医療でなく政治の話になっているのではないか』と不安の声が上がる」と報道しています。臨床試験は純粋に医学の問題であり、それに1人の政治家が私見を述べたり、過度な期待をかけたりすることはあってはならないでしょう。しかも、第I/II相臨床試験という、まだモノになるかどうかも全くわからない段階での吉村知事の発言は、プロ野球の春のキャンプで「今年のタイガースは違うぞ!」と書く在阪スポーツ紙のようなものです。また、4月前半、安倍 晋三首相が「アビガン、アビガン」と言っていたことも思い出させます。4月7日、緊急事態宣言を発令した日に開いた記者会見で安倍首相は、富士フイルム富山化学のアビガン錠について、「観察研究の仕組みのもと、希望する患者への使用をできる限り拡大する」との考えを示しました。本来、アビガンの適応外使用は、臨床研究法に定められた特定臨床研究に該当しますが、アビガンなどの投与を通常の診療行為と解釈、観察研究という”甘い”扱いとしたわけです。結果、並行して行われていた臨床研究での患者数は集まらず、結果データも集まらずで、アビガンの臨床試験は遅れに遅れています。この遅れ、安倍首相の”前のめり”が招いた結果と言えなくもないでしょう。同じようなことが、大阪のワクチンでも起こらないことを願うばかりです。医療従事者はADEのリスク高い?もう1つざわついたのは、当初、治験の対象者が「市大病院の医療従事者20~30人」と報道されていたことです。一部には「研修医から選ぶらしい」との噂も流れていました。ワクチンは、そもそも非常にセンシティブな薬です。すでに承認され、市販されているワクチンですら重大な副反応が皆無とは言い切れません。さらに、新型コロナウイルスのワクチン開発では、ADE(Antibody Dependent Enhancement:抗体依存性感染増強)発生の危険性も指摘されています。そう考えると、治験の対象者に医療従事者、それも研修医を選ぶというのは妥当なのでしょうか?ADEとは、ワクチン接種後に、実際のウイルスに自然感染すると、通常よりもウイルスを取り込みやすくなる現象のことです。ワクチン接種などで中途半端な免疫応答が誘導された場合に起こる、と考えられています。2016年にフィリピンにおいて、フランス・サノフィ社が開発していたデング熱ワクチン接種後に数十人の小児が死亡する、という事故が起こり、ADEはその原因の1つとして知られています。WHOも新型コロナウイルスに関する研究開発のロードマップを示した資料において、「感染増強の可能性の評価が重要」と指摘しています。医療従事者は新型コロナウイルスに感染する可能性が一般の人より高いことを考えると、仮に臨床試験で仮に中途半端な免疫しか獲得できなかった場合、ADEを起こす危険性が高いかもしれません。なお、その後、アンジェスの治験の対象者については、「大阪市大の医療従事者に限っているわけではない」と報道も出て、真相はうかがい知れません。とは言え、病院内での立場や発言力が弱い研修医等の医療従事者に半強制的に治験参加を呼びかけたりしていないか、少々気になります。開発競争だけでなく政治や報道も加熱気味ところで、アンジェスが開発するDNAワクチンは、大量生産が可能というメリットの一方で、中和抗体の発現効率が低く、アジュバントなどで増強する必要があると言われています(アンジェスの治験でも免疫原性を高めるためアジュバントを添加するとのこと)。また、人体用に承認されたDNAワクチンはまだ世界に1つもありません(ウマ用、イヌ用、ニワトリ用などはあるようです)。6月27日の朝日新聞は新型コロナワクチンの開発について「国内外で競争が激しくなる中、実用化の見通しが立つ前から量産体制を確立しようとする異例の動き」が出てきたとして、「培養タンク争奪戦」が始まっていると報道しています。また、同日の日本経済新聞は「英製薬大手アストラゼネカの日本法人は26日、英オックスフォード大と開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、日本への供給に向けて日本政府と協議を進めることで合意したと発表した」と報じました。新型コロナウイルスのワクチンを巡っては、開発競争だけでなく、政治家やマスコミ報道も少々加熱気味のようです。ただし相手はまだまだ未知な点が多いウイルスです。さらに、どんなワクチンも常に副反応と隣り合わせであり、日本のワクチン行政には苦い歴史もあります。”前のめり”や”期待”より、安全性、有効性を優先した開発を進めてもらいたいものです。

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フレイルの健診に有用なテキスト公開/国立長寿医療研究センター

 2020年6月、健康長寿教室テキスト第2版が国立長寿医療研究センターの老年学・社会科学研究センターのホームページ上に公開された。これは同施設のフレイル予防医学研究室(室長:佐竹 昭介氏)が手がけたもので、2014年に初版が発刊、6年ぶりの改訂となる。 健康長寿教室テキストは介護予防に役立てるためのパンフレットで、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)に関する基本的概念に加え、実践編として「お口の体操」「運動」「フレイルや低栄養を予防するための食事の工夫やレシピ」などが掲載されている。このほかにも、最新の話題として、新型コロナなどによる外出制限時の対策にも応用できる内容が紹介されている。なお、健康長寿教室テキストは無料でダウンロードして使えるため、後期高齢者健康診査(いわゆるフレイルの健診)、スタッフ研修、敬老会の資料としても有用である。 健康長寿教室テキストの改訂にあたり荒井 秀典氏(国立長寿医療研究センター理事長)は、「当センターのみならず、国内外で明らかになった成果を取り入れ、お口の健康に関する内容を充実するとともに、よりわかりやすく健康的な食事のレシピや最新版の運動プログラムを含めた内容に一新した。高齢者では多くの病気を合併することが多いが、病気の適切な診断と治療を行うことはもとより、加齢とともに心身が衰えてくる『フレイル』の予防を行うことで、真の健康寿命の延伸をめざした全人的医療を行っている。病気の治療はどの医療機関でもできるが、本テキストに載っているようなフレイル予防を実践しているところはまだまだ少ないのが現状」とし、また、「新型コロナウイルス感染症の影響で外出を控えるようになり、地域での活動も制限され、『生活不活発』による身体機能の低下も懸念されている。本テキストをさまざまな現場で活用することにより、フレイルにならずにいつまでも元気で長生きしていただけることを祈念している」と述べている。<健康長寿教室テキスト目次>◆知識向上編第1章 健康寿命とフレイル第2章 フレイルに関連する状態◆実践編第3章 フレイルを予防するお口のお手入れ第4章 フレイルを予防する栄養第5章 フレイルを予防する運動第6章 フレイルを予防する生活第7章 老いと上手に付き合うために

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マスクの再利用、消毒後のウイルス遮断効果は?

 これまでの研究では、N95マスクを再利用するさまざまな滅菌方法の評価試験やN95マスクとサージカルマスクの比較試験などが行われてきた。しかし、現時点でKN95マスクやサージカルマスクの滅菌後のろ過効率の影響を調べた研究は乏しい。米国・オクラホマ大学のChangjie Cai氏らはKN95マスクとサージカルマスクが再利用可能かどうかを明らかにするための研究を実施。 その結果、滅菌プロセスが各マスクのろ過効率に影響を与えることが示唆された。ただし、研究者らは試験時の制限(マスクメーカーの種類が少ない、各マスクと条件のサンプルサイズが小さい、評価した滅菌技術が2つしかないなど)や1回より多く滅菌した場合にマスク劣化の可能性もあるため、これらを踏まえたさらなる調査が必要としている。2020年6月15日JAMA Network Open誌のリサーチレターに報告した。 本研究は、2020年3月25日~4月7日に3種類のマスク(N95マスク[モデル1860:3M社]、KN95マスク[Civilian Antivirus:Qingdao Sophti Health Technology社]、サージカルマスク[モデル1541:Dukal社])のろ過効率について調査を行った。すべてのマスクは38°C、相対湿度100%のインキュベーターで12時間前処理された。滅菌処理にはプラズマ状態の過酸化水素(H2O2)と二酸化塩素(ClO2)を使用し、各マスクのろ過効率と減圧についての平均値±SDが算出された。 主な結果は以下のとおり。・ろ過効率と減圧による滅菌効果を調べた結果、各未処理マスクの平均ろ過効率±SDはN95マスク群が97.3±0.4%、KN95マスク群が96.7±1.0%、サージカルマスク群が95.1±1.6%だった。・H2O2滅菌後のろ過効率は、N95マスク群が96.6±1.0%、KN95マスク群が97.1±2.4%、サージカルマスク群が91.6±1.0%で、N95マスク群とKN95マスク群は95%以上のろ過効率を維持したが、サージカルマスク群の効率は低下した。・ClO2滅菌後のろ過効率は、N95マスク群が95.1±1.6%、KN95マスク群が76.2±2.7%、サージカルマスク群が77.9±3.4%だった。・H2O2滅菌では、各マスク群全体のろ過効率の影響はわずかであったが、一方でClO2滅菌では、KN95マスク群とサージカルマスク群のろ過効率が著しく低下した。 圧力変化はすべて許容範囲内だった。・エアロゾルのサイズごと(16.8~514nm)に、ろ過効率による滅菌効果を調べた結果、サイズ別濾過効率はすべての未処理マスクで95%以上だった。・約300nm(0.3μm)の粒子において、ClO2滅菌後のN95マスク群の平均ろ過効率±SDは86.2±6.8%に低下したが、全体的なろ過効率は約95%に保たれていた。ただし、KN95マスク群では40.8±5.9%に、サージカルマスク群では47.1±14.4%に低下した。

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日医会長に中川俊男氏が初当選、新執行部体制へ

 任期満了に伴う日本医師会の会長選挙が6月27日行われ、副会長の中川 俊男氏(69歳)が、現職で5期目を目指す横倉 義武氏(75歳)を接戦の末おさえ、初めての当選を果たした。中川氏は、これまで日本医師会の常任理事2期、副会長を5期に渡って務めたほか、社保審や中医協の委員などを歴任。会長選には、初めての立候補だったが、14大都市医師会をはじめ多くの都道府県医師会会長の推薦を手堅く集め、17票の僅差ながら現職候補を破る結果となった。 日本医師会会長選挙は371人の代議員による投票で行われた。開票結果は以下の通り。・中川 俊男氏:191票(当選)・横倉 義武氏:174票その他、無効票:2票、白票:4票 副会長および常任理事は、以下の通り(立候補者数と定数が同一のため、いずれも信任投票)。【副会長】猪口 雄二氏、松原 謙二氏、今村 聡氏【常任理事】江澤 和彦氏、長島 公之氏、松本 吉郎氏、羽鳥 裕氏、城守 国斗氏、釜萢 敏氏、渡辺 弘司氏、神村 裕子氏、宮川 政昭氏、橋本 省氏 中川氏は、今回の選挙時において、新型コロナウイルス感染症対策として、専門組織の強化や日本版CDC創設への働きかけを行うことを提言。地域医療を支える医業経営基盤の安定化策としては、診療報酬の構造的問題の見直しおよびあるべき診療報酬体系の提言、日医内に医療機関経営支援のための組織創設、控除対象外消費税を巡る医療機関ごとの補填のバラツキ解消などを掲げていた。

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新型コロナウイルス感染症の重症化リスク解析について(解説:小林英夫氏)-1249

 新型コロナウイルス感染症はWHOによるICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂)ではCOVID-19とコードされ、その和訳は「コロナウイルス感染症2019」とする案、つまり「新型」が付記されない方向で厚労省にて現在審議中とのことである。 さて、日本と欧米や東アジア間ではCOVID-19への対応状況が異なるが、死亡者数・感染者数に明らかな差異が報告されている。その差異の理由はいかなるものかを解明していくことは今後の必須テーマで、京都大学の山中 伸弥教授はこの因子にファクターXと名付けている。現状では実態不明のファクターXであるが誰にでも予想できる要素として、人種別の遺伝的要素、ウイルス遺伝子変異、などは当然の候補となろう。そこで本論文では重症化、呼吸不全化のリスクについてゲノムワイド関連解析を行っている。その方向性は適正であろう。本論文の和訳は別途本サイトで掲載されるが、血液型によるリスク差に関する結果の一部だけを切り取ってマスメディアが過剰に喧伝しそうで気掛かりである。本論文はあくまでイタリアとスペインというラテン系民族が対象であり、日本人に該当するかどうかは未定である。もちろん、感染症に対して遺伝的素因・体質的素因が関与することは予想される事項であり、本邦でも罹患リスクや重症化リスクへのゲノム解析への取り組みに期待したい。 筆者はウイルス学や感染制御が本業ではないが、連日のようにCOVID-19関連論文が発表されるのを目にする。ただ、情報の迅速性を優先するためであったのだろうが、Lancet、NEJMといった一流ジャーナルにおいてさえ論文の掲載撤回というあまり経験のない事態も生じている。研究に迅速性が望まれている現状であるから、論文の解釈には常時以上の慎重さをもって読み込みたい。

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第13回 医療・介護従事者へのコロナ慰労金、8月下旬にも交付か

<先週の動き>1.医療・介護従事者へのコロナ慰労金、8月下旬にも交付か2.日本医師会会長選、横倉氏5選ならず中川俊男氏が選出3.死因究明の推進のため、新たに死因究明等推進本部が始動4.医療費の自己負担増、全世代型社会保障検討会議の中間報告では見送り5.人口減社会への対応を呼びかける答申、地方制度調査会が提出1.医療・介護従事者へのコロナ慰労金、8月下旬にも交付か第二次補正予算に組み込まれた「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」について、医療・介護従事者とその事業者に対する慰労金の支払いスケジュールなどが明らかになった。厚生労働省は、16日に各都道府県への事務連絡を行っており、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)実施要綱」、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)交付要綱」などに基づいて、7月17日までに追加交付申請を求めている。医療機関などに対する感染拡大防止の支援金と共に、8月下旬の交付を目指す。各医療機関の担当者は、医療保険、介護保険それぞれについて、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の交付要綱を確認する必要がある。なお、今回の慰労金は個人に対する交付であり、6月30日までの間に「10日以上」勤務した場合、雇用形態にかかわらず、申請時点で在職中でなくても給付対象となる。(参考)新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の追加交付申請等について(同)新型コロナで医療者に慰労金、誰がいくらもらえるの?(看護roo!)医療者ら向け慰労金の交付、「8月下旬ごろから」で調整 厚労省(MEDIFAXweb)2.日本医師会会長選、横倉氏5選ならず中川俊男氏が選出任期満了に伴う日本医師会会長選挙が、27日に文京区の日医会館で行われた。今回は、現職の横倉 義武会長と中川 俊男副会長の一騎打ちとなり、投票の結果、中川氏が191票、横倉氏が174票で、中川氏が初当選として会長に選出された。任期は2年。副会長は、立候補者数が定数と同一のため信任投票となり、猪口 雄二氏、松原 謙二氏、今村 聡氏が信任された。(参考)第147回日本医師会定例代議員会 選挙結果報告(日本医師会)3.死因究明の推進のため、新たに死因究明等推進本部が始動厚労省は26日、死因究明等推進本部を設置し、議事内容などを公表した。これは、2019年6月に衆議院本会議で可決・成立した「死因究明等推進基本法」の公布(本年4月1日)を受けたもの。加藤厚労大臣を本部長とする死因究明等推進本部では、来年の春ごろまでに議論を進め、死因究明等推進計画が閣議決定される見通し。(参考)第1回 死因究明等推進本部(厚労省)新たに始まる死因究明制度:死因究明等推進基本法について(新潟市医師会)死因究明等推進計画案、検討会設置し作成へ 厚労省、推進本部初会合の議事内容など公表(CBnewsマネジメント)4.医療費の自己負担増、全世代型社会保障検討会議の中間報告では見送り全世代型社会保障検討会議は、25日、感染症対策の視点も含めた持続可能な医療提供体制の整備を盛り込んだ「第2次中間報告」をまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大に当たって、高市 早苗総務相から「公立病院が新型コロナ感染患者の受け入れで大きな役割を果たしていた」と意見が出され、地域医療構想の実現に当たってもこの視点を盛り込む必要性を求める意見が出た。75歳以上の医療費負担を原則1割から2割に引き上げる所得水準については結論を先送り、2020年末の最終報告で取りまとめることとした。また、新型コロナ感染拡大防止対策として、オンラインによる診療や面会など非接触サービスの提供を促進するため、医療機関や介護施設にタブレットやWi-Fiなどの導入支援の強化も打ち出されている。(参考)全世代型社会保障検討会議 第2次中間報告(案)(首相官邸)5.人口減社会への対応を呼びかける答申、地方制度調査会が提出26日、総務省の第32次地方制度調査会から、「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」が安倍総理大臣に提出された。地方制度調査会は、これまで2年間にわたって審議を行ってきた。高齢者人口がピークを迎える2040年頃までに顕在化するさまざまな課題に対応する観点から、必要な地方行政体制のあり方について、人口構造、インフラ・空間、技術・社会などに分けて整理を行っている。医療については、地域の医療提供体制の確保や、困難に直面している人に対する生活支援などの社会機能の維持が必要である。住民の安心できる暮らしや地域の経済活動を支えるために、自治体が判断を主体的に行い、新しい技術の活用や地域の自治体との連携、ほかの地方公共団体、国と協力して対応することが求められている。(参考)2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申(案)(総務省)

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ドイツとポーランド【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第12回

以前このエッセイで書かせてもらいましたが、私が今住んでいるのはグライフスヴァルトと言って、ドイツの北西の隅っこにあたる街になります。こんな感じのところです(地図の青点)。実はポーランドまでの距離が近く、生活圏内となっています。たとえば、住んでるところからシュチェチン(ポーランド)まで約180km、車で2時間くらいです。ドイツでは、日曜日は飲食を除くほとんどのお店がお休みになるのですが、ポーランドではわりと開いている店が多いので、買い忘れがあったりしたらポーランドの街まで買い出しにいったりします。ただ、残念ながらユーロが使えないのでカードしか使えない買い物になりますが…。これはワルシャワです。街中でも森がたくさんあって、空がだだっ広かった印象です。ポーランド人は、ショパンが大の自慢で、コペルニクスがちょっと自慢。「キュリー夫人(現地では“マリクリ”って言うみたいです)はどう?」とポーランドの友人に聞いたのですが、「彼女はパリの人だから」とそっけない感じでした(実際、キュリー夫人のお墓はパリにあります)。見つけた元素に“ポロニウム”なんて名前を付けるくらい祖国愛が強かったのに…片思いだったみたいです。実はショパンもパリで亡くなって、遺体はパリにあります。しかし、「心臓だけでも祖国に帰してくれ」と本人の強い希望があったため、今もとある教会の柱に心臓だけ保管されています(写真の柱)。こういうところが、ポーランド人に愛されている秘訣なんだろうな~。話がそれてしまいましたが、そもそも国境があってないようなEUでは、国境を越えて生活圏が広がっていることは珍しくありません。とくに私のように、「国の端っこ」に住んでいるならなおさらです。ところが…ポーランドに入った途端に、ドイツ語が通じなくなります。いや、もちろん外国にいくわけですから、ある意味それは当然のことではあるのですが…。隣国なのになんで?国境に接している街なのですが、街に入った瞬間から、全然コミュニケーションが取れなくなります。道を通行人に尋ねても、看板を見ても、ドイツ語だけではどうにもならなくなってしまいます。さらにお店にいくと、「メニューくれ」くらいは理解してもらえるのですが、あとはさっぱりです。ポーランドと反対側のフランスとドイツの国境の街にいったときは、もう少しドイツ語で通じたのですが…。今回、新型コロナウイルス感染の拡大を受けて、ドイツとポーランド間の国境も閉鎖されました。それもかなり早い段階で。ちょっと好奇心で国境付近まで車でいってみたのですが、グラサンにサブマシンガンを持った警察? 軍隊? の人が立っていて、Uターンするように指示されました。とてもじゃないけど、写真が撮れるような雰囲気ではなかったです。ポーランドは歴史上のアレやコレやがあって、ちょっとドイツに対して複雑な思いがあるのはご存知の通りです。また、ロシアからも厳しい仕打ちを受けたこともあって、ロシアも嫌いらしいです。その結果、現在はわりと親米的な政策が行われているとのことです。ドイツでは店の数が少ない(少なくともうちの街にはない)スタバやケンタッキーなどのアメリカ発祥のファストフード店も、ポーランドにいけばあちらこちらで見かけることができます。ああ、早く国境閉鎖、解除されないかな…。

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生活習慣病患者の2割が通院せず自粛/血糖トレンド委員会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、生活習慣病患者の多くが外出を自粛したことに伴い、医療機関への通院を控えた事例が散見される。では、実際どの程度の通院などの自粛がされていたのだろう。 血糖コントロールの重要性、および「血糖トレンド」の概念とその活用方法について、医学的、学術的および患者視点でわかりやすく正確な情報発信を行うこと目的とした委員会である「血糖トレンド委員会」(代表世話人: 西村 理明氏[東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授])は、生活習慣病患者にCOVID-19がどのような影響を与えたのかを分析するため調査を実施し、今回その結果を発表した。●調査概要・調査期間 2020年6月8日(月)・9日(火)・調査方法 インターネット調査・調査対象 生活習慣病患者309名(内訳:高血圧103名、2型糖尿病103名、高脂血症103名)・実施機関 株式会社マクロミル主な調査結果・定期的な通院を必要とする生活習慣病患者の20.4%がコロナ感染予防を理由に通院を自粛。患者の44.9%は今後の通院もいまだに不安。・外出自粛で変わった生活習慣。58.6%の患者が体調管理への意識が向上。・生活習慣病患者の49.8%が自己管理ツールに関心。60代でも7%がツールを利用、49%が関心あり。個々のアンケート調査の内容 「COVID-19の流行が始まってから、普段の通院回数に変化はありましたか」の問いに、「変わらない」(78.6%)、「減った/通院していない」(20.4%)、「増えた」(1.0%)の回答結果だった。また、「減った/通院しなかった理由」(n=63)では、複数回答で「新型コロナ感染予防のため」(77.8%)、「自主的に外出自粛をしていたため」(30.2%)の順で多かった。 「緊急事態宣言が解除されてからの通院状況について」では、「不安はなく、通院を再開した」(33.7%)、「不安はあったが、通院を再開した」(30.4%)の順で多かった。 「オンライン診療に関心があるか」では、「関心はあるが、受診したくない」(38.8%)、「関心があり、受診したい」(30.7%)、「関心がない」(28.5%)の順で多かった。 「自粛期間中、普段よりも自身の体調管理を意識したか」では、「意識をしていた」(58.6%)、「特に意識していない」(41.4%)とセルフメディケーションの意識が向上していた。 最後に「自身の健康管理をサポートしてくれるツールに興味があるか」という問いには、「興味がある」(49.8%)、「興味がない」(41.7%)、「すでに活用している」(8.4%)の回答結果で、とくに60歳以上の回答割合もほぼ同様で、スマートフォンの普及も向上し、今後活用されていく可能性が示唆された。 今回、調査を行った同委員会では、「今回の調査で、糖尿病をはじめとする生活習慣病の患者たちがコロナ感染への不安を抱えながらも、コロナ禍において前向きに体調管理に取り組んでいたことが明らかとなった」と結果を分析している。

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