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第19回 COVID-19流行の拡大は小児ではなく無防備な大人が招いている?

5歳未満の幼い小児の上気道の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNA量が成人をおよそ10~100倍上回ることを示した試験結果が先週木曜日(7月30日)にJAMA Pediatrics誌に掲載されました1)。試験ではSARS-CoV-2(COVID-19)の感染しやすさは調べられていませんが、著者は幼い小児が一般集団でのCOVID-19流行に加担しうるとの懸念を示しています。しかしその懸念とは対照的に、韓国での最近の試験によると、10~19歳は成人と同様に家族に感染を広げましたが、9歳以下の幼い小児から家族への感染はよりわずかでした2)。他の報告を見ても、バーモント大学の小児感染症医師Benjamin Lee氏とWilliam Raszka氏が先月中旬のPediatrics誌3)で主張している通り、小児から他人にCOVID-19を感染させることは稀なようです。スウェーデンの16歳未満のCOVID-19感染者39人を調べたところ、感染が家族の誰よりも早かった小児はわずか3人(8%;3/39人)のみで小児から家族への感染はほとんどなかったことが示唆されました4)。小児は感染源とはいえず、感染を大人に広げるのではなく大人からより感染していたようです3)。COVID-19で入院した小児10人を調べた中国での試験では、子供から感染したと思われるのは1人のみで残りの9人は大人から感染したものでした5)。フランスでの試験では9歳のCOVID-19男児が接触したクラスメート80人超が調査され、その誰も感染しませんでした6)。オーストラリアのニューサウスウェールズ州でSARS-CoV-2に感染した学生9人と大人(職員)9人に密に接した生徒735人と大人128人を調べたところ感染は2人のみでした7)。そのどちらも大人ではなく生徒であり、1人は低学年生(primary school)で大人から感染し、もう1人は高学年生(high school)で他の学友から感染したと推定されました。それらの報告の通り、小児は恐らく感染し難く滅多に他者に感染させないことを示すデータがこれまでの半年で集まっており、感染食い止め手段を講じずに集う大人こそ流行の拡大を招いているのであって小児はCOVID-19流行の主要な媒介者ではないと上述のRaszka氏は言っています8)。参考1)Heald-Sargent TA, et al. JAMA Pediatr. 2020 July 30. [Epub ahead of print]2)Contact Tracing during Coronavirus Disease Outbreak, South Korea, 20203)Lee B, et al. Pediatrics. 2020 May 26:e2020004879. [Epub ahead of print]4)COVID-19 in Children and the Dynamics of Infection in Families5)Cai J,et al.Clin Infect Dis. 2020 Feb 28. [Epub ahead of print]6)Danis K,et al. Clin Infect Dis. 2020 Jul 28;71:825-832.7)COVID-19 in schools – the experience in NSW8)Kids Rarely Transmit Covid-19, Say UVM Docs in Top Journal / University of Vermont

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第18回 医師の勤務実態調査、上位10%の時間外労働時間は年間1,824時間

<先週の動き>1.医師の勤務実態調査、上位10%の時間外労働時間は年間1,824時間2.データヘルス改革、2年間で保健医療情報データの利活用を集中的に推進3.新出生前診断、学会認定なしの半数が美容系クリニック4.「医療的ケア児等医療情報共有システムMEIS(メイス)」が本格的に運用開始5.今年4月までの新型コロナ感染による超過死亡への影響1.医師の勤務実態調査、上位10%の時間外労働時間は年間1,824時間厚生労働省の医政局医師等医療従事者の働き方改革推進室は、7月31日、「令和元年 医師の勤務実態調査」および「医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査」の結果を公表した。「医師の勤務実態調査」は、前回(2016年度)と同様、病院勤務医の長時間労働の実態を把握することが主たる目的で行われ、3,967施設(20.8%)から回答が回収され、医師からのWEB回答を含め、2万382人からの回答が得られた。週4日以上働いている病院勤務医を対象に、兼業先の労働時間も含めたデータ調査が行われた。今回、宿日直許可を取得した医療機関に勤務する医師において、宿日直中の待機時間を労働時間から除外しているが、上位10%の時間外労働時間は、前回の年間1,860時間と比較して若干改善傾向が見られるものの、年間1,824時間と、長時間労働の実態が明らかとなった。また「医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査」は、2024年4月に時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されることを見据えて、(1)大学医局から関連病院への医師派遣などに影響があるか、(2)副業・兼業に該当する関連病院における勤務に影響があるかなど、働き方改革による地域医療提供体制への影響について調査したもの。地方大学と都市部に近い大学の消化器内科・消化器外科・産科婦人科、救急科・循環器内科など、計6診療科の協力を得て調査を行い、さらに調査結果をもとに、各大学の医局教授や医局長、大学病院の管理者、当該大学が所在する都道府県庁の医療行政担当者などにヒアリングが実施された。大学病院で働く医師の時間外・休日労働時間が960時間/年以内であっても、兼務先の労働時間を通算すると960時間/年を超過する医師が多く、勤務医の外勤によって維持されていた地域病院の医療体制が危惧される。(参考)「令和元年 医師の勤務実態調査」及び「医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査」の結果の公表について(厚労省)2.データヘルス改革、2年間で保健医療情報データの利活用を集中的に推進厚労省は、7月30日、第7回データヘルス改革推進本部を開催した。中では、オンライン資格確認システムやマイナンバーなどを活用しつつ、2021年に必要な法制上の対応などを行った上で、2022年度中に運用開始を目指し、「新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プランについて」が議論された。これまで、健康保険データや特定健診データの利活用のために、情報基盤整備を進めてきたが、今後2年間に改革をさらに進め、電子処方箋の仕組み構築のほか、患者の同意のもと、全国の医療機関が患者の医療情報を確認できるようにし、さらに患者が自身の保健医療情報を活用できる仕組みを整備し、順次、運用していくこととなる。(参考)第7回データヘルス改革推進本部 資料(厚労省)マイナンバーカード起点に医療機関と個人が医療情報を確認へ、厚労省が今後2年で(日経クロステック)3.新出生前診断、学会認定なしの半数が美容系クリニック厚労省は、母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)の調査等に関するワーキンググループを7月22日に開催した。学会の認定を受けないまま検査を行っている54施設のうち、半数が美容系クリニックであったという結果をまとめた。2013年から始まった新生出生前診断は、学会認定を受けた大学病院など全国109施設で実施が認められているが、学会のルールに従わず、無認定のまま検査を行う施設が増加しており、問題となっている。中には年齢要件を設けず、性別判定など学会の指針では認められていない検査を提供するところもあった。このような実態から、出席した委員は「母体や胎児について詳しく知らない人が検査を提供しているのは問題」と指摘した。今回の調査結果を踏まえ、新出生前診断については何らかの形で対応がまとめられるだろう。(参考)母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)の調査等に関するワーキンググループ(第4回)の資料について(厚労省)4.「医療的ケア児等医療情報共有システムMEIS(メイス)」が本格的に運用開始厚労省は、7月29日に、「医療的ケア児等医療情報共有システム(MEIS)」の本格運用を開始した。医療的ケア児らが旅行などで出掛ける場合、児童らに関する主治医情報や常用薬などの基本情報を登録し、救急サマリーを作成しておくことで、救急時や災害時などに迅速な情報共有が可能になる仕組み。本システムは5月より試験運用を行なっており、6月末時点では、医療的ケア児137人、医師118人が登録しているが、全国には医療的ケア児は約2万人いるとされている。本システムの利用に当たっては、利用者による申し込み申請の際に主治医の登録が必要だが、複数の利用者(患者)を受け持つ医師は、事前に「ご利用申込書(主治医用)」を用いて登録し、医師IDをあらかじめ取得することで、その後の手続きを簡略化することが可能となっている。(参考)医療的ケア児等医療情報共有システム(MEIS)について(厚労省)5.今年4月までの新型コロナ感染による超過死亡への影響厚労省の「新型コロナウイルス感染症等の感染症サーベイランス体制の抜本的拡充に向けた人材育成と感染症疫学的手法の開発研究」研究班(代表研究者:鈴木 基氏/国立感染症研究所感染症疫学センター長)は、7月31日に、新型コロナウイルスによる影響を推計するために行われた「超過死亡」の結果について、発表した。超過死亡は、今年の死者数が過去の平均的な水準をどれだけ上回っているかを示すものであり、調査班では米疾病対策センターと欧州死亡率モニターの計算モデルを使い、2012~19年の死者数に基づき予測した平均的な死者数(統計学的に不確かな数は除く)を、20年の死者数から差し引いて解析した。その結果、今年1~4月にかけて、東京など5都県で合計138例の超過死亡があったと推計された。鈴木氏は、今回の結果について「見落としは多くはない」とした。一方、厚労省が7月28日に発表した人口動態推計統計速報では、同時期における新型コロナ以外を原因とする(交通事故、自殺、インフルエンザなどによる)死亡が前年までと比べて減少しており、上記の超過死亡を相殺する可能性もあるが、現時点では、日本の人口動態に大きな影響が出るほどではないとされている。(参考)我が国における超過死亡の推定(国立感染症研究所)人口動態統計速報(令和2年5月分)(厚労省)

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COVID-19流行下の熱中症対応の手引き/日本感染症学会・日本救急医学会・日本臨床救急

 本格的な夏を迎え、熱中症による搬送数も増えている臨床現場では、今までの夏とは異なり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染防止に配慮した対応に迫られている。 先般、日本感染症学会・日本救急医学会・日本臨床救急医学会・日本呼吸器学会の4学会はワーキンググループを構成し、6月1日付けで「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」を発表した。そして、今回この提言の追補版として、国内外の論文2,736件の情報を抽出し、臨床現場で活用可能な「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き(医療従事者向け)」を作成し、公開を開始した。 本手引は、6つのクリニカルクエスチョンに対し、詳細に解説を加える体裁で書かれ、今後も4学会では情報収集とアップデートを行うとしている。クリニカルクエスチョン一覧・予防(マスク・エアコン) Q 熱中症を予防する上でのマスク着用の注意点は何か?A マスクを着用する際は、長期間(1時間以上)の運動を避けることが望ましい。Q COVID-19の予防で「密閉」空間にしないようにしながら、熱中症を予防するためには、どのようにエアコンを用いるべきか?A 換気により室内温度が高くなるため、エアコンの温度設定を下げるなどの調整を行い、熱中症対策とCOVID-19対策を両立することが望ましい。・診断(臨床症状・血液検査・CT 検査)Q 熱中症とCOVID-19は臨床症状から鑑別できるか?A 呼吸器症状や嗅覚障害・味覚障害を認める場合はCOVID-19を疑う根拠になるが、臨床症状のみから熱中症とCOVID-19を鑑別することは困難である。Q 血液検査は熱中症とCOVID-19の鑑別に有用か?A 両者の鑑別に有用な血液検査の検査項目はない。Q 高体温、意識障害で熱中症を疑う患者の CT 検査はCOVID-19の鑑別診断に有用か?A 確定診断のための有用性は低いが、除外診断に一定の役割を果たしうるため、とくにCOVID-19を疑う患者においては、スクリーニング検査として実施することが望ましい。・治療(冷却法) Q 従来同様、蒸散冷却法(evaporative plus convective cooling)を用いて、患者を冷却してよいか?A 蒸散冷却法は原則使用せず、各施設での使用経験や準備の状況に応じて、蒸散冷却法の代替となる冷却法を選択するのが望ましい。

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再発・難治性多発性骨髄腫、KdD療法でPFS改善/Lancet

 再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、プロテアソーム阻害薬カルフィルゾミブ+デキサメタゾン+抗CD38モノクローナル抗体製剤ダラツムマブ(KdD)による3剤併用療法は、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)に比べ、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、ベネフィット・リスクのプロファイルも良好であることが、ギリシャ・アテネ大学のMeletios Dimopoulos氏らが実施した「CANDOR試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年7月18日号に掲載された。新規に診断された多発性骨髄腫の治療では、レナリドミド+ボルテゾミブにより生存期間が改善されているが、多くの患者は病勢の進行または毒性により治療中止に至るため、再発・難治性多発性骨髄腫における新たな治療法の必要性が高まっている。カルフィルゾミブ+ダラツムマブは、第I相試験(MMY1001試験)において再発・難治性多発性骨髄腫に対する実質的な有効性と忍容可能な安全性が報告されている。ダラツムマブ併用の有用性を評価する無作為化第III相試験 研究グループは、再発・難治性多発性骨髄腫の治療におけるKdDとKdの有効性と安全性を比較する目的で、非盲検無作為化第III相試験を行った(Amgenの助成による)。 対象は、北米、欧州、オーストラリア、アジアの102施設から登録された1~3レジメンの前治療を受けた再発・難治性多発性骨髄腫患者であった。被験者は、KdDまたはKdによる治療を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、intention to treat集団におけるPFSであった。1年後のCRかつMRD陰性の割合:13% vs.1% 2017年6月13日~2018年6月25日の期間に466例が登録され、KdD群に312例(年齢中央値64.0歳、女性43%)、Kd群には154例(64.5歳、41%)が割り付けられた。前治療ライン数中央値は両群とも2.0で、2ライン以上の患者の割合は両群とも54%であった。KdD群で、造血幹細胞移植歴(63% vs.49%)のある患者が多く、75歳以上(9% vs.14%)の患者が少なかった。 全体の42%がレナリドミドを含むレジメン、90%はボルテゾミブを含むレジメンの投与歴があり、33%がレナリドミド抵抗性、29%はボルテゾミブ抵抗性だった。 フォローアップ期間中央値が約17ヵ月の時点でのPFS期間中央値は、KdD群が未到達、Kd群は15.8ヵ月であり、KdD群で有意に延長していた(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.46~0.85、p=0.0027)。18ヵ月PFS率は、KdD群が62%、Kd群は43%だった。事前に規定されたすべてのサブグループで一貫して、KdD群においてPFSのベネフィットが認められた。 全奏効割合は、KdD群が84%と、Kd群の75%に比べ有意に高く(オッズ比[OR]:1.925、95%CI:1.2~3.1、p=0.0080)、非常によい部分奏効(VGPR)以上の達成割合はそれぞれ69%および49%であり、完全奏効(CR)の達成割合は29%および10%であった。また、12ヵ月時の微小残存病変(MRD)陰性割合は、KdD群が18%、Kd群は4%であり(5.8、2.4~14.0、p<0.0001)、12ヵ月時のCR+MRD陰性の割合は、それぞれ13%および1%(11.3、2.7~47.5、p<0.0001)だった。 全生存(OS)期間中央値は、両群とも未到達であり、18ヵ月OS率は、KdD群が80%、Kd群は74%だった。治療期間中央値は、KdD群が70.1週と、Kd群の40.3週に比べ長かった。 Grade3以上の有害事象は、KdD群が82%、Kd群は74%で発現し、重篤な有害事象はそれぞれ56%および46%にみられた。全Gradeの有害事象で、KdD群で頻度の高いものとして、血小板減少症(37% vs.29%)、下痢(31% vs.14%)、上気道感染症(29% vs.23%)、疲労感(24% vs.18%)が認められた。 Grade3以上の注目すべき有害事象として、気道感染症(KdD群29% vs.Kd群16%)、心不全(4% vs.8%)、急性腎不全(3% vs.7%)、虚血性心疾患(3% vs.3%)、ウイルス感染症(6% vs.2%)などが認められた。治療中止の原因となった有害事象は、KdD群が22%、Kd群は25%にみられた。 著者は、「カルフィルゾミブ+デキサメタゾン+ダラツムマブによる3剤併用療法は、レナリドミド曝露歴のある患者やレナリドミド抵抗性の患者を含め、再発・難治性多発性骨髄腫の治療における有効かつ忍容可能な新たな治療選択肢として検討を進める必要がある」としている。

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第17回 寄り添うほど医療者のメンタルにのしかかる患者の死、安楽死なら堪えられるか?

新型コロナウイルス感染症のパンデミック後、国内の医療界ではこの話題を吹き飛ばすほどインパクトのあるニュースはほとんどなかったように個人的には感じている。しかし、7月の連休中に表面化した京都での筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に関する嘱託殺人事件は別格だ。言葉を換えれば、「安楽死」「尊厳死」となるが、現在まだ事件の詳細が明らかになっていないなかでこの事件の是非について言及する気はない。その意味では、これまでこの種の問題について自分が抱えているモヤモヤを少し文字にしてみたいと思う。事件が起きた京都の地元紙・京都新聞の報道によると、今回の「被害者」である女性のALS患者さんは、かなり前から主治医に栄養摂取中止による安楽死を申し出ていたという。そしてこの記事では、医療従事者側はこれまで彼女の療養のために保険医療の枠を超えた対応をしていたことも語られている。主治医が記事内で語っているように彼女自身は治療や安楽死・尊厳死に関して相当勉強し、安楽死願望も一時的な気の迷いではないことは今も残された本人のTwitterアカウントからも読み取れる(敢えてどのアカウントかは示さない)。安楽死を望む姿勢はTwitterアカウント開設時の2018年春からほぼ一貫しているものの、それでもなお、彼女の感情の起伏の激しさは外形的にも明らかである。その中で私が気になったのは以下のツイートだ。「緩和ケアと安楽死が同一線上に議論されることに疑問を感じる。緩和ケアとは身体的苦痛を和らげるものであり安楽死は精神的苦痛を取り除くことも担う。私のように耐え難い身体的痛みは無くとも総合的QOLが極端に低いと感じる患者のために緩和ケアが充実してれば安楽死は不要だとは思えない」本来、緩和ケアとは精神的苦痛を取り除くための行為も含まれる。しかし、彼女はそう思っていない。これは彼女に提供されているケアがまったくメンタルのケアに踏み込んでいないか、メンタルへのケアが彼女の要望に達していないかいずれかだとは思うが、そのことを持って彼女に接してきたケア関係者を一方的に責めるつもりはない(もっとも残された彼女の最後のツイートは担当ヘルパーの心無い言動への不満ではあるが)。むしろ前述の記事内にある主治医の証言を基にすれば、保険診療の枠を超えて彼女に尽くしても彼女が望む精神的苦痛を取り除くには及ばなかったという誰も責任を問えないミスマッチのように感じる。教科書的に考えるならば、そうしたミスマッチを最小化するためにこそ「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)を行おう」ということになるのだろう。ただ、患者を中心とするこの種の安楽死・尊厳死、終末期の緩和ケア、人生会議(ACP)の議論の中で私がいつも欠けていると感じていることがある。それはそこにかかわる医療従事者をいかにケアするかである。戦場ジャーナリストの経験が教えてくれたことやや話がそれるかもしれないが、私自身は1990年代半ばからフリーとして独立後の2010年頃まで海外の紛争地取材も行う、いわゆる「戦場ジャーナリスト」だった。今は一時そちらを休業しているが、戦場ジャーナリストとしてテレビで有名になった渡部 陽一氏も良く知っている(彼にまつわる裏話もあるが、ここでは控えておく)。戦場を取材していると言うと、今も昔も奇異な目で見られ、だいたい第一声で問われるのが「怖くないんですか?」である。もちろん怖いが、現場をこの目で確かめたい意思のほうがやや勝っているというのが正確な答えだ。そして次に多い問いは「人がバタバタ死ぬ現場によく平気で行けますね」というもの。「自分は叔母の死に立ち会った経験があり、その経験が強烈過ぎて、あなたのように人の死が起こる現場に進んで立っていること自体信じられない」と言われたことさえある。これに対しては次のように答えている。「私だって身内の死は堪えますよ。でも冷酷と言われるかもしれないですけど、戦場で目にする死は『現象』として捉えてます」もっともこれでこちらが言わんとすることをほぼ理解をしてくれる人は少ない。なので追加でこのように説明すると大方の人は納得してくれる。「事件や事故での人が亡くなったニュースを見聞きした際、自分の現在や過去の経験に重なる場合を除けば、気の毒に思ったり、気分が多少落ち込んだりすることはあっても精神をかき乱されるまでのことは少ないですよね。人は『身内の死』と『第三者の死』を自動的に切り分けているんですよ。私が戦場で死を見聞きする際も同じで、自動的に『第三者の死』=『現象』で整理しているのだと思います」要は人の死は、「一人称の死=自分の死」「二人称の死=身内・友人の死」「三人称の死=第三者の死」に分けられ、同じ死であっても「二人称の死」と「三人称の死」との間には接した時の心理的ダメージに大きな差があるということだ。人の死は日常的でもあり、非日常的でもあるが、とりわけ「三人称の死」については、日常生活の延長上の出来事の一部として捉えようとする「正常性バイアス」が働き、その結果、多くの人は比較的冷静に受け止めていると言える。これは人の死に接することが多い医療従事者でも共通する心理ではないだろうか。医療従事者-患者が二人称になるリスク今後、ACPや安楽死・尊厳死にかかわる議論がより進展し、そこに医療従事者が積極的にかかわるようになれば、当然ながら患者と医療従事者の関係は密になり、医療従事者にとってはこれまで「三人称」で整理していた関係の一部は「二人称」になってしまう。二人称と化した患者の生死にかかわること、さらにその死に立ち会う、あるいは一歩進んで安楽死・尊厳死という形で死への介添えをすることになるとしたら、その心理的なダメージは従来のレベルでは済まなくなるはずである。ここで非常に極端な例えで気を悪くする人もいるかもしれないが、日本の刑事罰で極刑の死刑について触れておきたい。なおその是非についてはここでは棚上げさせてもらいたい。日本の死刑は絞首刑で死刑囚の首に縊死(いし)用のロープを装着し、足元の床板が外れる形で執行される。床板外しは別室でのボタン操作で行われるが、このボタンは3個あるいは5個用意され、3人あるいは5人の刑務官が一斉同時に押す。これは刑務官の心理的負担を軽減するため、どのボタンで死刑が執行されたかを敢えてわからないようにする措置である。繰り返しになるが死刑の是非はさておき、被告人が死刑となる刑事事件はその事件概要を聞いてすら、身の毛もよだつような犯行が多い。そうした事件の被告人に対してでも、人を死に至らしめる刑を執行する側に最低限の心理的対処はしているのである。これからACP、さらには安楽死・尊厳死のより進化した議論を行うというならば、そこに向き合う医療従事者への心理的ケア体制の確立についてもより厳格な議論が必要ではないだろうか? 「患者中心」「患者の尊厳」のみを錦の御旗にして医療従事者へのケアを置き去りにして突き進むことは、ひいては医療従事者のこうした終末期医療、患者の命の尊厳に対する姿勢を及び腰にさせてしまう可能性がある。結果としてもし安楽死・尊厳死が法制化されたとしても、それを担当する医療従事者が実質不在になり、患者の希望はかなえられないという皮肉を生む危険性を内包していると個人的には思っている。

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新型コロナ抗原検査の同一検体でインフルの同定も可能に/富士レビオ

 2020年7月27日、富士レビオ株式会社(代表取締役社長:藤田 健、本社:東京都新宿区)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原の迅速診断キット「エスプライン(R) SARS-CoV-2」で用いる検体処理液が、インフルエンザウイルス抗原の迅速診断キット「エスプライン インフルエンザ A&B-N」においても使用できることを確認したと発表した。「エスプライン(R) SARS-CoV-2」の検体処理液、インフルエンザ抗原検査にも可 これまで、インフルエンザ流行時の新型コロナウイルスとの鑑別対応が不安視されているが、本キットにより、新型コロナウイルス抗原およびインフルエンザウイルス抗原の2 検査を同一の鼻咽頭拭い液検体で行うことが可能となった。また、検体採取が1回で済むことから、検体採取時の患者への負担軽減および医療者の感染リスク低減にも寄与できる。 既に販売済みの製品においても、「エスプライン SARS-CoV-2」の検体処理液により、同一検体から新型コロナウイルス抗原およびインフルエンザウイルス抗原の検査を行うことができる。 ただし、現時点では富士レビオのホームページ の製品概要 エスプライン(R)SARS-CoV-2 よくあるご質問内において、「インフルエンザA&B-Nの検体処理液と共用できますか?」の回答が「含まれる成分が異なるため使用出来ません。本製品専用の検体処理液をご使用ください」となっているため、注意が必要である。検査キットの特徴 このエスプラインシリーズの特徴は、特別な検査機器を要さず、簡便かつ短時間で検出結果が得られる点である。本キットは酵素免疫測定法とイムノクロマトグラフィー技術を組み合わせた迅速診断キットで、採取した検体中に含まれるウイルス抗原を検出する。

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中国の新型コロナワクチン、第II相試験で抗体陽転率96%以上/Lancet

 中国で開発されている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の、遺伝子組み換えアデノウイルス5型(Ad5)ベクター化ワクチンは、ウイルス粒子5×1010/mLの単回筋肉内投与により有意な免疫反応を誘導し、安全性は良好であることが示された。中国・江蘇省疾病管理予防センターのFeng-Cai Zhu氏らが行った第II相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。著者は、「結果は健康成人対象の第III相試験で、ウイルス粒子5×1010/mLのAd5ベクター化COVID-19ワクチンの有効性を検証することを支持するものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。中国のコロナワクチンの2つの用量とプラセボを比較 研究グループは、中国・武漢市の単一施設において、HIV陰性で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染歴がない18歳以上の健康成人を、ウイルス粒子が1×1011/mL群、5×1010/mL群、またはプラセボ群のいずれかに、2対1対1の割合で無作為に割り付け(ブロックサイズ4)、単回筋肉内注射した。被験者、治験責任医師および検査室のスタッフは、割り付けに関して盲検化された。 免疫原性の主要評価項目は、投与後28日時点の受容体結合ドメイン(RBD)特異的ELISA抗体価ならびに中和抗体価の幾何平均値(GMT)とした。安全性の主要評価項目は、投与後14日以内の有害事象であった。いずれも少なくとも1回の投与を受けたすべての被験者を解析対象とした。1×1011/mLと5×1010/mLで、抗体陽転率96%と97%、重度有害事象9%と1% 2020年4月11日~16日の期間に603例がスクリーニングされ、適格基準を満たした508例(男性50%、平均[±SD]年齢39.7±12.5歳)が、無作為に割り付けられた(1×1011/mL群253例、5×1010/mL群129例、プラセボ群126例)。 中国で開発されているコロナワクチンの1×1011/mL群および5×1010/mL群では、28日時点のRBD特異的ELISA抗体のピークはそれぞれ656.5(95%信頼区間[CI]:575.2~749.2)および571.0(467.6~697.3)、抗体陽転率は96%(93~98)および97%(92~99)であった。いずれも、生SARS-CoV-2に対する有意な中和抗体反応が誘導され、GMTは1×1011/mL群で19.5(16.8~22.7)、5×1010/mL群で18.3(14.4~23.3)であった。 コロナワクチン投与後の特異的インターフェロンγ酵素結合免疫スポットアッセイ反応は、1×1011/mL群で253例中227例(90%、95%CI:85~93)、5×1010/mL群で129例中113例(88%、81~92)に確認された。 非自発報告による有害事象は1×1011/mL群で253例中183例(72%)、5×1010/mL群で129例中96例(74%)、重度の有害事象はそれぞれ24例(9%)および1例(1%)報告された。重篤な有害事象は確認されなかった。

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第17回 ウルムチ“ロックダウン”、搭乗前PCR検査義務化に見る中国的コロナ対策

日本では、外出自粛の緩和だ、Go Toキャンペーンだと言っているうちに、再び新型コロナウイルス感染患者が急増し、第2波の到来を予感させる状況となっている。一方、新型コロナの発生地である中国では、感染抑制に成功し、2020年4月~6月の国内総生産(GDP)は前年同期比で3.2%増加。世界では感染者や死亡者が増え、経済も低迷する中、一人勝ちの様相だ。しかし、国土が広大なだけに、感染者も各地に拡散。「一帯一路」経済圏構想の西部における拠点で、新彊ウイグル自治区の区都・ウルムチ市では、事実上ロックダウン(都市封鎖)される事態に陥っている。中国では、新型コロナの“震源地”となった湖北省武漢のロックダウンを4月8日に解除して以降、大都市では北京市・上海市、北京市の近隣では河北省・内モンゴル自治区、北朝鮮国境沿いでは吉林省・遼寧省、沿海部では福建省・広東省、内陸部では四川省などで感染者が見つかった。感染者数はいずれも1桁から2桁台で、どの都市もロックダウンには至っていない。一方、ウルムチ市では7月半ばから感染者が急増。市当局は「戦時状態に入った」とし、17人の新規患者が出た7月17日24時をもって、市民の行動や交通機関の運行を制限、400万人都市を事実上ロックダウンすると共に、全市民を対象にPCR検査を始めた。7月26日現在、同自治区における治療中の患者は178人、うちウルムチ市内の患者が176人とほとんどを占めている。ほぼ同様の人口を持つ日本の横浜市(約380万人)の新型コロナ感染者数は910人(27日現在)。横浜と比較すると、ウルムチ市のロックダウンは過剰反応にも思える。中央アジアやその先の欧州に向け、人と物が流れていく一帯一路の拠点都市であるため、再び震源地の汚名を被らぬようにした万全の措置なのか。また、中国当局は7月20日、中国に乗り入れる航空便の乗客に対し、搭乗日の5日以内に、中国の在外公館が指定・認可する機関でPCR検査を受け、陰性であることを証明することを求める公告を、中国民用航空局・税関総局・外務省の連名で発表した。取材したアメリカ滞在中の中国人留学生によると、症状がないとPCR検査を受けられない州が多く、病院は新型コロナ感染の危険性が高いので、「わざわざ検査を受けに行きたくない」「受けても5日以内に検査結果が出ない」などと留学生の間からぼやきの声があがっているという。航空機の減便でチケットの入手が困難な上、チケット代が10倍以上も高騰している中、やっと高額なチケットを手に入れた在米中国人達は「中国当局は国内の安全を守るためにわれわれを切り捨てた」と嘆いているようだ。新型コロナの感染防止には、人の移動を制限することが最も簡単で即効性があると中国政府は考えているようだが、やり方が強権的なのがいかにもかの国らしい。

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COVID-19、学校・職場閉鎖などの介入の効果は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への介入としての身体的距離(フィジカルディスタンス)の確保は、COVID-19の発生を13%抑制し、移動制限(封鎖)は実施時期が早いほうが抑制効果は大きいことが、英国・オックスフォード大学のNazrul Islam氏らが世界149ヵ国を対象に実施した自然実験で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2020年7月15日号に掲載された。COVID-19に有効な治療レジメンやワクチンのエビデンスがない中で、感染を最小化するための最も実践的な介入として、身体的距離の確保が推奨されてきた。この推奨の目標には、公衆衛生や保健サービスにおけるCOVID-19による負担の軽減や、この疾患の予防と管理のための時間の確保も含まれている。これらの介入の有効性に関するこれまでのエビデンスは、主にモデル化研究に基づいており、実地の患者集団レベルの有効性のデータは世界的に少ないという。分割時系列解析による自然実験の結果をメタ解析で統合 研究グループは、身体的距離の確保とCOVID-19の世界的な発生の関連を評価する目的で、国別に分割時系列解析による自然実験を行い、得られた結果をメタ解析で統合した(筆頭著者は、オックスフォード大学ナフィールド公衆衛生学科[NDPH]から給与の支援を受けた)。 解析には、欧州疾病予防管理センターから毎日報告されるCOVID-19患者のデータと、オックスフォードCOVID-19政策反応追跡(Oxford COVID-19 Government Response Tracker)からの身体的距離の確保に関するデータを用いた。対象は、2020年1月1日~5月30日の期間に、5つの身体的距離の確保(学校閉鎖、職場閉鎖、公共交通機関閉鎖、大勢の集まりや公的行事の規制、移動制限[封鎖])のうち1つ以上を、少なくとも7日間実施し、30例以上のCOVID-19患者が発生した国であった。 主要アウトカムは、身体的距離の確保による介入の導入前後のCOVID-19発生率比(IRR)とし、5月30日または介入後30日目のいずれか先に到達した日のデータを用いて推定した。IRRは、変量効果によるメタ解析を用いてすべての国のデータを統合した。公共交通機関閉鎖を除く4つと、5つ全部で抑制効果に差はない 149ヵ国が1つ以上の身体的距離確保による介入を行っていた。学校閉鎖のみのベラルーシと、学校閉鎖と大勢の集まりの規制のみのタンザニアを除く国が、3つ以上の介入を実施していた。5つ全部を実施したのが118ヵ国、4つが25ヵ国(日本は公共交通機関閉鎖以外の4つを実施)、3つが4ヵ国で行われていた。 身体的距離確保の実施により、COVID-19の発生が全体で平均13%低下した(IRR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.85~0.89、p<0.001、149ヵ国)。日本は、4つの介入の実施によりCOVID-19の発生が6%抑制された(0.94、0.90~0.99)。 介入前と比較したCOVID-19発生の低下率は、5つの身体的距離確保を実施した国(統合IRR:0.87、95%CI:0.85~0.90、118ヵ国)と、4つを実施した国(0.85、0.82~0.89、25ヵ国)で類似していた。3つを実施した国(0.88、0.77~1.00)では、COVID-19発生率の変化が小さかったが、適用されたのは4ヵ国のみだった。 学校閉鎖、職場閉鎖、大勢の集まりの規制、移動制限が実施された場合のCOVID-19発生の低下(統合IRR:0.87、95%CI:0.84~0.91、32ヵ国)は、これに公共交通機関閉鎖を加えて5つすべての介入を行った場合(0.85、0.82~0.88、72ヵ国)とほぼ同等で、付加的な抑制効果は得られなかった。また、学校閉鎖、職場閉鎖、大勢の集まりの規制が実施された場合のCOVID-19発生の抑制効果もほぼ同様であった(0.85、0.81~0.89、11ヵ国)。 介入の順序に関しては、移動制限を早期に実施した場合(統合IRR:0.86、95%CI:0.84~0.89、105ヵ国)のほうが、他の身体的距離確保による介入後に遅れて移動制限を行った場合(0.90、0.87~0.94、41ヵ国)に比べ、COVID-19発生の抑制効果が大きかった。 著者は、「これらの知見は、各国が現在または将来、COVID-19の流行が押し寄せた場合に、身体的距離を確保するための措置の発令やその解除に備える際の、施策決定に役立つ可能性がある」としている。

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英国の新型コロナワクチン、第I/II相試験で有望な結果/Lancet

 英国で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白を発現する、チンパンジー・アデノウイルスベクター型ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)の第I/II相臨床試験の結果が発表された。安全性プロファイルは許容可能で、ブースター投与後の抗体反応の増加も確認されたという。英国・オックスフォード大学のPedro M. Folegatti氏らによる検討で、著者は「今回の試験結果は液性免疫と細胞性免疫の両者の誘導を示すもので、この候補ワクチンの第III相試験における大規模評価の進行を支持するものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。被験者のうち10例に2回投与 研究グループは英国5ヵ所のセンターにて、検査でSARS-CoV-2感染歴がなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)様症状がみられない健康な18~55歳を対象に単盲検無作為化比較試験を行い、ChAdOx1 nCoV-19の安全性と有効性を検証した。 被験者を無作為に1対1の割合で2群に分け、一方にはChAdOx1 nCoV-19(5×1010ウイルス粒子)を、もう一方には髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)を、それぞれ単回筋肉内投与した。 なお、5ヵ所のセンターのうち2ヵ所についてはプロトコールを修正し、予防的パラセタモールの事前投与を認めた。また、被験者の10例は、非無作為化非盲検下で割り付け、ChAdOx1 nCoV-19を初回投与28日後にブースター投与を行う2回投与群とした。 ベースラインと28日後の時点で、液性免疫応答について、標準総IgG酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)(三量体・SARS-CoV-2スパイク蛋白を測定)、マルチプレックスアッセイ、3つのSARS-CoV-2中和アッセイ(50%プラーク減少中和力価[PRNT50]、マイクロ中和力価[MNA50、MNA80、MNA90]、Marburg VN)、偽ウイルス中和アッセイを用いて評価した。また、細胞性免疫応答については、体外Enzyme-Linked ImmunoSpot(ELISpot)アッセイで測定した。 主要アウトカムは有効性と安全性の2つで、有効性はウイルス学的に確認された症候性COVID-19の症例数で評価し、安全性は重篤な有害イベントの発生数で評価した。安全性は、ワクチン投与後28日間にわたって評価した。中和抗体反応、2回投与後全員に 2020年4月23日~5月21日の間に、1,077例が登録され、ChAdOx1 nCoV-19群に543例、MenACWY群に534例が割り付けられた。このうち10例がブースター投与群に登録された。 ChAdOx1 nCoV-19に関連した重篤有害事象の発生はなかった。一方、疼痛、発熱感、悪寒、筋肉痛、頭痛、倦怠感といった局所・全身性反応は、ChAdOx1 nCoV-19群でより多く発生した(すべてのp<0.05)。また、それらの多くはパラセタモールの使用によって低下することが確認された。 ChAdOx1 nCoV-19群では、14日目にスパイク特異的T細胞反応がピークに達した(中央値:スポット形成細胞数856個/末梢血単核球100万個、IQR:493~1,802、43例)。抗スパイクIgG応答は28日目まで上昇し(中央値:157ELISA単位[EU]、96~317、127例)、その値はブースター投与後に上昇した(639EU、360~792、10例)。 SARS-CoV-2に対する中和抗体反応は、単回投与後にMNA80測定で32/35例(91%)、PRNT50測定では35例全員(100%)で検出された。ブースター投与後、全員に中和活性が認められた(42日目:MNA80測定で9/9例、56日目:Marburg VN測定で10/10例)。中和抗体反応は、ELISAで測定した抗体価と強い相関があることが確認された(Marburg VN測定でR2=0.67、p<0.001)。

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水痘、帯状疱疹ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第2回

今回は、ワクチンで予防できる疾患、VPD(vaccine preventable disease)の第2回のテーマとして、「水痘(水ぼうそう)と帯状疱疹」を取り上げる。医療者の多くにとって、水痘と帯状疱疹は気にも留めないようなありふれた疾患かもしれない。しかし、水痘は、時に重症化し、しかも空気感染によって容易に伝播する。成人、中でも妊婦にとっては最も避けたい感染症の1つである。また、同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって発症する帯状疱疹は、神経痛によりQOLを大きく低下させてしまう。このような水痘・帯状疱疹を予防するには、ワクチンが有効かつ重要である。現在、VZVに対してわが国で使用できるワクチンは2種類ある。従来の水痘生ワクチンと、2020年1月に発売された、帯状疱疹予防に特化した不活化ワクチンである。本稿では、水痘と帯状疱疹の特徴と疫学、そしてワクチンの活用法と注意点について取り上げたい。水痘、帯状疱疹の概要1)水痘(1)水痘の概要感染経路:空気感染、飛沫感染潜伏期:約14日間周囲に感染させうる期間:水疱が痂疲化するまで感染力(R0:基本再生産数):8-101)学校保健法:第2種(出席停止期間:すべての発しんがかさぶたになるまで)感染症法:5類(入院例に限る)注)R0(基本再生産数):集団にいるすべての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、1人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表す。つまり、数が多い方が感染力は強いということになる。(2)水痘の臨床症状全身性の水疱性発疹と発熱を来たし、多くは軽症で自然に軽快する。しかし成人では、肺炎などの皮膚外病変により重症化しやすく、成人の死亡率は小児の約8倍にもなる2)。成人の中でも最もハイリスクなのは、妊婦である。妊娠第1・2三半期の初感染では先天性水痘症候群(胎児水痘症候群)のリスクとなり、妊娠第3三半期の初感染では10~20%で水痘肺炎を併発し、時に致死的となる3)。さらに分娩5日前から48時間後では重篤な新生児水痘を生じうる3)。そのため、水痘未感染の妊婦への感染予防は、極めて重要である。しかしながら、水痘は感染が広がりやすく、1人の感染者から平均8~10人に感染させうる。家庭や職場での空気感染対策は困難であり、ワクチン接種は重要な感染予防策である。(3)水痘の疫学水痘の罹患率は、ワクチンの定期接種化により激減している(図)。ワクチンギャップや、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)への曝露機会の減少により、水痘の抗体を獲得しないまま成人する層が一定数いると思われる。現在、水痘の報告者数のほとんどは小児だが、今後は成人の水痘例が増加するかもしれない。図 水痘の年間患者数の推移画像を拡大する2)帯状疱疹について(1)帯状疱疹の概要と臨床症状感染経路:接触感染、空気感染周囲に感染させうる期間:皮疹が痂疲化するまでVZVは水痘罹患後に仙髄・腰髄の後根神経節に潜伏感染し、宿主の加齢や免疫力低下に伴う細胞性免疫の低下により再活性化し、帯状疱疹を起こす。発症すると皮膚分節に沿ったチクチクとした痛みに続いて、水疱を伴う皮疹を生じる。多くの場合は片側性であるが、免疫抑制者では全身に広がる汎発性帯状疱疹となりうる。皮疹は7~15日前後で痂疲化し、感染性がなくなる。合併症としては帯状疱疹後神経痛(Post herpetic neuralgia:PNH)が最も多く、ほかにラムゼイ・ハント症候群、脊髄炎、遅発性の脳梗塞などがある。(2)帯状疱疹の疫学帯状疱疹は、約3人に1人が一生のうちに1度以上経験するとされる5)。小豆島における50歳以上の成人を対象とした前向きコホートによると、帯状疱疹の罹患率は4~10人/1,000人年、PHNは2.1/1,000人で、いずれも年齢が上がるにつれて罹患率も上がる6)。帯状疱疹の罹患率は、水痘ワクチン導入後に増えており7,8)、水痘の流行規模の縮小により、自然感染によるブースターの機会が減ったことが原因ではないかと考えられている。実際に、水痘を発症した小児と暮らす成人では、10~20年後に帯状疱疹が発症するリスクは約30%減ると報告されている9)。ワクチンの概要(効果、副反応)と接種スケジュール水痘の予防には水痘生ワクチンが、帯状疱疹の予防には、水痘生ワクチンと帯状疱疹不活化ワクチンの2種類が使用される。1)水痘の予防(表1)画像を拡大する(1)効果発症予防効果は、1回接種で約80%、2回接種で93%である。重症化は、1回接種で約99%、2回接種で100%予防する1)。(2)副反応ワクチン接種により一般的な副反応のほか、水痘ワクチンに特異的な副反応としては、接種後1~3週間後に発熱、3~5%に水痘様発疹がみられることがある。(3)禁忌妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往のある人(4)注意事項生ワクチン接種後は、2ヵ月間は妊娠を避ける。2)帯状疱疹の予防2種類のワクチンを使用することができる(表2)。発症予防効果は不活化ワクチンでより高い。費用が高額であること、副作用が多いことを許容できるならば、不活化ワクチンを活用したい。画像を拡大する以下、不活化ワクチンについて述べる。(1)効果帯状疱疹の発症予防効果は、水痘生ワクチンより不活化ワクチンで高いことが知られている。不活化ワクチン2回接種による帯状疱疹の発症予防効果は50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%、帯状疱疹後神経痛は50歳以上で100%、70歳以上で85.5%である10)。一方の水痘生ワクチンでは、50歳以上における帯状疱疹発症抑制率は51%、帯状疱疹後神経痛の減少率は66%である 。ただし、いずれも免疫原性の持続が証明されているのは10年未満11,12)であり、今後は追加接種などが議論になる。(2)副作用不活化ワクチンの方が、生ワクチンよりも副作用の頻度が高い。生ワクチンの臨床試験の結果では、局所性(注射部位)の副反応が80.8%に認められ、主なものは疼痛(78.0%)、発赤(38.1%)、腫脹(25.9%)であった。全身性の副反応は64.8%に認められ、主なものは筋肉痛(40.0%)、疲労(38.9%)、頭痛(32.6%)であった。他のワクチンに比較して局所性副反応の頻度は高いが、いずれも3日前後で消失することがわかっている10)。(3)禁忌両者とも、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往のある人。水痘生ワクチンでは妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人。(4)対象対象は慢性疾患をもつ50歳以上の成人で、とくに慢性腎不全、糖尿病、関節リウマチ、慢性呼吸器疾患をもつ人に推奨される13)。日常診療で役立つ接種ポイント1)妊娠を希望する女性に対する、水痘ワクチン先に述べたように、妊婦の水痘は重症化のリスクが高い。妊娠中の水痘は何としても防ぎたい。水痘の罹患歴がなく、かつ水痘ワクチンの接種歴のない女性が妊娠を希望する際には、プレコンセプションケアの1つとして水痘ワクチンを接種しておきたい。また、接種後2ヵ月間は妊娠を避けるように伝える必要もある。2)50歳以上に対する帯状疱疹予防のワクチン水痘の罹患歴がある50歳以上の成人には、帯状疱疹不活化ワクチンの2回接種もしくは水痘ワクチンの1回接種を勧めたい(免疫抑制者など生ワクチンが禁忌とされる場合には、帯状疱疹不活化ワクチンを選択する)。帯状疱疹は高齢者ほどリスクが高く、帯状疱疹後神経痛を発症すると著明にQOLが低下する。なお、帯状疱疹は約6.4%に再発が認められる14)ため、帯状疱疹の罹患歴がある場合の再発予防としても有効である。今後の課題・展望小児における水痘ワクチンの定期接種化により、水痘の発症者は今後も減り続けるだろう。一方で、水痘の罹患歴のある者のブースター機会も減るため、今後しばらく帯状疱疹の罹患率は上昇することが予測される。水痘はR0が8-101)と非常に感染力が強く、ワクチン接種による予防が重要である。妊婦の水痘を予防し、帯状疱疹後神経痛を予防するために、妊娠を希望する女性、また、50歳以上の高齢者へのワクチン接種を忘れないようにしたい。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト国立成育医療センター プレコンセプションケアセンター1)水痘ワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版)国立感染症研究所.2)Meyer PA, et al. J Infect Dis. 2000;182:383-390.3)日本産婦人科学会、日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン-産科編2017.p.374-376.4)Morino S, et al. Vaccine. 2018;36:5977-5982.5)Schmader K, et al. Ann Intern Med. 2018;169:ITC19-ITC31.6)Takao Y et al. J Epidemiol. 2015;25:617-625.7)病原微生物検出情報(IASR).2018;39.p.139-141.8)Leung J,et al. Clin Infect Dis. 2011;52:332-340.9)Forbes H, et al. BMJ. 2020;368:l6987.10)帯状疱疹ワクチンファクトシート(平成29年2月10日版)国立感染症研究所.11)Cook SJ, et al. Clin Ther. 2015;37:2388-2397.12)Shwartz TF, et al. Hum Vaccin Immunother. 2018 ;14:1370-1377.13)David K Kim DK,et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2019;68:115-118.14)Shiraki K, et al. Open Forum Infect Dis. 2017;4:ofx007.講師紹介

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COVID-19流行下における緩和ケア、各施設の苦闘と工夫

 日本がんサポーティブケア学会、日本サイコオンコロジー学会、日本緩和医療学会は8月9~10日にオンライン形式で合同学術集会を予定している。これに先立って、7月上旬に特別企画として「COVID19と緩和ケア・支持療法・心のケア」と題するオンラインセミナーが行われた。3学会から立場の異なるメンバーが集まり、COVID-19が緩和ケアに与える影響とその対処法について、それぞれの経験を語り合った。COVID-19が緩和ケアにどのような影響を与えたかアンケートを分析【司会】・里見 絵理子氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科科長)・林 ゑり子氏(藤沢湘南台病院 がん看護専門看護師)【登壇者】・廣橋 猛氏(永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長)・柏木 秀行氏(飯塚病院 連携医療・緩和ケア科部長)・秋月 伸哉氏(がん・感染症センター駒込病院 精神腫瘍科科長)・渡邊 清高氏(帝京大学医学部内科学 腫瘍内科准教授) 冒頭に、日本緩和医療学会COVID-19関連特別ワーキンググループらが5月上旬に行った「新型コロナウイルス感染症に対する対応に関するアンケート」の結果1)が共有された。これはCOVID-19が、全国の専門緩和ケアサービスにどのような影響を与えたかを調べる目的で実施されたもので、654件の回答のうち重複を除く598件を分析対象とした。 専門的緩和ケアの提供形態別に「A:ホスピス・緩和ケア病棟(PCU)のみ/109施設」「B:緩和ケアチーム(PCT)のみ/303施設」「C:PCUとPCTの両方/186施設」に分類したうえで、「A+C:緩和ケア病棟群/295施設」「B+C:緩和ケアチーム群/489施設」に分けて分析が行われた。これは全国の緩和ケア病棟の約70%、緩和ケアチームの約50%を占めるという。 緩和ケア病棟群では、「新型コロナウイルス感染症の流行後、緩和ケア病棟の患者受け入れ方針に変化があった」と回答した施設が55%(161施設)あり、うち22施設では緩和ケア病棟がCOVID-19患者用の専門病棟に変更されていた。 続いて、「新型コロナウイルス感染症の流行後、緩和ケア病棟での面会制限はあるか」という質問に対して、緩和ケア病棟群の98%にあたる289施設が「ある」と回答。ここでは、予測される患者の予後によって段階的な対応をする施設が多く、末期近いことが予測される患者には面会制限を緩めるケースが多かった。 面会制限を行っているあいだ、面会以外でのコミュニケーション支援をはかる医療機関もあり、「テレビ電話などでのコミュニケーション支援」が55%と最も多く、「Wi-Fi使用可」が15%、「院内にPC・タブレットを用意」が6%と続いた(複数回答可)。ただ、「とくに何もしていない」という回答が87%と大きな割合を占めており、支援にあたって設備や人員確保の難しさも見える結果となっている。COVID-19感染対策下の面会のため緩和ケア病棟にタブレット 続けて、アンケートの結果も踏まえつつ、登壇者が自施設でのこれまでの対策と現況について情報をシェアした。―COVID-19に対する自施設の対応は? 渡邊氏「流行が懸念される早めの時期から、院内・診療科・部門ごとに感染対策を立て、実行した。通常診療に対しても感染予防策を取り、がん患者さんに対しては個別にリスクの評価を行った上で、治療継続、手術予定の延期、経口の抗がん剤やホルモン薬の使用等の検討を行っている。感染流行の長期化を踏まえ、息の長い対策にしていくことが肝要だ」 秋月氏「患者と同時にスタッフのケアが必要だと考えた。COVID-19感染症病棟のスタッフが孤立しないようリエゾンチームとして感染症病棟を巡回するだけでなく、緩和ケアチームなどを含む院内組織を立ち上げ、院内向けの情報発信にも力を入れた」 廣橋氏「3月に院内でのCOVID-19感染が発生し、これまでに200名以上の感染者を出してしまった。緩和ケア病棟も閉鎖を余儀なくされていたが、5月下旬から診療を再開した。緩和ケアのカギとなる多職種チームの活動も制限せざるを得ず忸怩たる思いだが、現状では感染防止を最優先せざるを得ない状況が続いている」―緩和ケアで重要となる、在宅医療など他施設との連携はどうしていたか? 柏木氏「これまで、電話とFAXと対面で行っていた医療連携だが、対面が使えなくなり、手間がかかるようになったことは事実だ」 廣橋氏「確かに大変にはなったが、以前から『顔の見える連携』をしてきたことが生きている。緩和ケア病棟の事前面談をオンラインで行う試みも開始した」 林氏「対面の機会が限られ、退院前のカンファレンスや家族への介護指導ができないことは痛い。その患者様の安楽な移動方法や介助方法、人工肛門やいろいろな装具を直接見て頂く機会が少ないため、電話で時間をかけてイメージできるまで説明したり、訪問看護に助けて頂いたりするなど、できることを工夫しながら行っている」―患者・スタッフの心のケアをどう行っていたか? 秋月氏「強い呼吸困難を経験した感染患者は、症状が収まってからも強い恐怖感を訴えるケースがある。また、家族や同僚を感染させてしまった、という自責の念に捉われる方もいた。また、異なる視点として、高齢者施設内のクラスターにおいては認知症患者がいる。そうした方はゾーニングを理解できず歩き回ったり、家族と会えずにパニックになったりなど、異なるケアが必要となった」 柏木氏「軽症でホテルに隔離されている患者に対応したが、特殊な環境下で不安を抱える方が多かった。入院されていればすぐに対応できるのだが、やりとりは電話に限られており、診療には限界があった」 秋月氏「スタッフに関しては、感染患者に直接対応しているか、そうでないかで置かれた状況が大きく異なる。直接対応するスタッフは自分や家族への感染リスクに不安を持っており、急ごしらえの対応チームでコミュニケーションミスも起きやすい。直接対応していないスタッフは、対応チームに人員を割かれており、情報のシェアがないと不満がたまりやすい。ストレスチェックやアンケートだけでは現場の実態が把握できないため、『対応策をヒアリングする』と言って個別面接を行った。『声を上げれば、何らかのフィードバックがある』とスタッフに感じてもらえる仕組みづくりが大切だ」―家族へのケア、面会制限はどのように行ったか? 廣橋氏「COVID-19感染対策下におけるご家族との関わりにおいては、日本緩和医療学会の普及啓発ワーキンググループで作成した『感染症対策下における入院患者さんのご家族向けリーフレット』を役立ててもらいたい。面会制限中は、家族に写真やメッセージを持ってきてもらったり、スマートフォンやタブレットのビデオ通話を使った面会を支援したりなど、少しでもコミュニケーションがとれるように工夫している。私を中心に行ったクラウドファンディングでは多くの支援が集まり、今後は希望する緩和ケア病棟にタブレット配置などの環境整備をしていくことができそうだ」 各施設でスタッフ間や患者と家族のコミュニケーション支援においてIT機器やオンラインを使った各種の試みが行われていることが共有され、「今後に活かしていきたい」という声が上がっていた。本セミナーの動画は、合同学術集会の開催時に、参加者に対して公開される予定となっている。

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9価HPVワクチンの製造販売承認を取得/MSD

 わが国では、子宮頸がんに毎年約10,000人の女性が新規罹患し、約2,800人が亡くなっている。とくに子宮頸がんは発症年齢が出産や働き盛りの年齢と重なることもあり、治療によって命を取りとめても女性の人生に大きな影響を及ぼすことが多い疾患であり、本症の予防ではワクチンの接種と定期的な検診が重要となる。 そんな予防の切り札となるワクチンにつきMSD株式会社は、7月21日、ヒトパピローマウイルス(HPV)の9つの型に対応した組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン[酵母由来](商品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ)の製造販売承認を取得したことを発表した。子宮頸がんに対するHPV型のカバー率は約90% 本ワクチンは、9歳以上の女性を対象に、HPV6、11、16、18、31、33、45、52および58型の感染に起因する子宮頸がん(扁平上皮細胞がんおよび腺がん)およびその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1、2および3、並びに上皮内腺がん(AIS))、外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2および3、並びに腟上皮内腫瘍(VaIN)1、2および3、尖圭コンジローマの予防を効能・効果としている。 対応している型は、従来の4価HPVワクチンが対応している4つのHPV型(6、11、16、18型)に加え、新たに5つのHPV型(31、33、45、52、58型)のVLP(Virus Like Particle;ウイルス様粒子)を含んでいる。これら9つのHPV型のうち、HPV16、18、31、33、45、52、58型の7つの型は、子宮頸がん、外陰がん、腟がんなどの原因となることが知られている。 子宮頸がんに対するHPV型のカバー率は、HPV16、18型を含む4価HPVワクチンが約65%であるのに対し、本ワクチンでは約90%となる。また、HPV6、11型は、尖圭コンジローマの原因の約90%を占めている。 同社では、「今回の承認は、日本の子宮頸がん予防において新たな道を切り開くものであり、公衆衛生の前進に大きく寄与すると考えている。今後も人々の生命を救い、生活を改善する革新的なワクチンと医薬品の開発に全力で取り組んでいく」と展望を寄せている。シルガード9製品概要製品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ一般名:組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)効能・効果:ヒトパピローマウイルス6、11、16、18、31、33、45、52および58型の感染に起因する以下の疾患の予防・子宮頸がん(扁平上皮細胞がんおよび腺がん)およびその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1、2および3、並びに上皮内腺がん(AIS))・外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2および3、並びに腟上皮内腫瘍(VaIN)1、2および3・尖圭コンジローマ用法・用量:9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射する。通常、2回目は初回接種の2ヵ月後、3回目は6ヵ月後に同様の用法で接種する。承認取得日:2020年7月21日製造販売:MSD株式会社なお、薬価・発売日は未定。

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医師の2020年夏季ボーナス支給、新型コロナの影響は?

 6~7月と言えば、業務に追われるもボーナス支給日を心待ちに日々励んでいる人が多い時期。ところが今年は新型コロナウイルスの影響で状況は一変。外来患者減などが医療施設の経営に大打撃を与え、医療者の給与や将来設計もが脅かされる事態に発展している。 この状況を受け、ケアネットでは7月9日(木)~15日(水)、会員医師1,014名に「夏季ボーナスの支給状況などに関するアンケート」を実施。その結果、全回答者のうち14.6%は本来支給されるはずの夏季ボーナスが不支給または未定であり、支給された方でも25%は例年より減額されていたことが明らかになった。 本アンケートでは30代以上の医師(勤務医、開業医問わず)を対象とし、新型コロナ対応への危険手当の支給有無や夏季ボーナス支給状況を調査。集計結果を年代や病床数、診療科で比較した。ボーナス減の影響を強く受けていた診療科は主に、内科、循環器内科、整形外科、呼吸器内科で、支給状況を病床別でみると、支給されなかった・未定の割合は0床(16%)、1~19床(6%)、20~99床(20%)、100~199床(18%)、200床以上(13%)だった。 今回、ボーナスが支給された医師の中でも「冬季は不支給になりそう」などの懸念を抱いており、不支給だった医師には「ボーナス以前に月給が大幅に減った」 というコメントも。このほか、「異動予定が消滅」「賞与、昇給の取り消し」など自身のキャリアプランに影響した例もあった。 アンケート結果はこちら

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新型コロナウイルス診療の手引きをアップデート/厚生労働省

 7月17日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、全国の関係機関ならびに医療機関に向けに作成する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」を改訂し、2.2版として発表した。  3月17日に第1版が発行されたこの手引きは、5月18日に第2版が発行され、その後も毎月1回のペースで改訂されている。今回の改訂における主なポイントは以下のとおり。・国内データ:直近まで更新・診断:遺伝子増幅検査(LAMP法・PCR法)の解説を追加・診断:抗原定量検査の解説を追加・届出:新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(MIS-G)の解説を追加・重症度分類:重症化マーカーとしてKL-6上昇を追加・薬物療法:承認された薬物療法としてデキサメタゾンを追加・薬物療法:ファビピラビル(商品名:アビガン)に関する臨床試験の経過を追加・環境整備:次亜塩素酸水を使用する場合の注意点を追加・退院基準:抗原定量検査の項目を追加

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新型コロナ重症例、デキサメタゾンで28日死亡率が低下/NEJM

 英国・RECOVERY試験共同研究グループのPeter Horby氏らは 、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者のうち、侵襲的人工呼吸器または酸素吸入を使用した患者に対するデキサメタゾンの投与が28日死亡率を低下させることを明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年7月17日号に掲載報告。なお、この論文は、7月17日に改訂された厚生労働省が発刊する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第2.2版」の“日本国内で承認されている医薬品”のデキサメタゾン投与の参考文献である。 この研究では、2020年3月19日~6月8日の期間にCOVID-19入院患者へのデキサメタゾン投与における有用性を把握するため、非盲検試験が行われた。対象者をデキサメタゾン投与群と通常ケア群にランダムに割り当て28日死亡率を評価し、人工呼吸器管理や酸素吸入の有無によるデキサメタゾン投与の有用性を検証した。デキサメタゾン群には1日1回6 mgを最大10日間、経口または点滴静注で投与した。通常ケア群には、日常臨床でデキサメタゾンを使用している患者が8%含まれていた。薬物療法として、アジスロマイシンは両群で使用(デキサメタゾン群:24% vs.通常ケア群:25%)、そのほか通常ケア群ではヒドロキシクロロキン、ロピナビル・リトナビル、IL-6アンタゴニストなどが投与された。また、レムデシビルは2020年5月26日より使用可能となり一部の症例で投与された。 主な結果は以下のとおり。・全参加者11,303例のうち、他の治療を受けるなどの理由で4,878例が除外された。残り6,425例をデキサメタゾン投与群2,104例(平均年齢±SD:66.9±15.4歳)と通常ケア群4,321例(平均年齢±SD:65.8±15.8歳)に割り付けた。・6,425例の呼吸器補助別の割り付けは、侵襲的人工呼吸器管理が1,007例、酸素吸入が3,883例、呼吸器補助なしは1,535例だった。・28日死亡率は、デキサメタゾン群が482例(22.9%)、通常ケア群は1,110例(25.7%)で、デキサメタゾン群で有意に低下した(Rate Ratio[率比]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.75〜0.93、p<0.001)。・呼吸器補助レベルを考慮した場合、侵襲的人工呼吸器管理の患者において絶対的・相対的ベネフィットが示される傾向で、デキサメタゾン群は通常ケア群より死亡発生率が低く(29.3% vs.41.4%、率比:0.64、95%CI:0.51~0.81)、酸素吸入群においても同様だった(23.3% vs.26.2%、率比:0.82、95%CI:0.72~0.94)。しかし、呼吸器補助を受けていない患者において、デキサメタゾンの効果は明らかではなかった(17.8% vs.14.%、率比:1.19、95%CI:0.91~1.55)。・副次評価項目として、デキサメタゾン群は通常ケア群より入院期間が短く(平均入院日数:12日 vs.13日)、28日以内の退院の可能性が高かった(率比:1.10、95%CI:1.03~1.17)。この最大因子は侵襲的人工呼吸器管理だった。・呼吸器補助を受けていない患者において、副次評価項目である侵襲的人工呼吸器管理や死亡の複合は通常ケア群よりデキサメタゾン群で低かった(率比:0.92、95%CI:0.84~1.01)。

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再来年から?電子処方箋の導入で薬局業務はどう変わるか【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第51回

2020年6月に内閣府で2020年第9回経済財政諮問会議が開催され、「データヘルスの集中改革プラン」が報告されました。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた“新たな日常”に対応するもので、今後の数年で医療情報のデジタル化、一元化が加速しそうです。厚生労働省は7月9日、社会保障審議会医療保険部会に、マイナンバーカードを利用した「電子処方箋の仕組みの実現に向けた今後の進め方」を示した。現在、紙で発行している処方箋を電子化し、医療機関が登録した処方情報を薬局が取得するというもの。22年夏ごろまでに仕組みを構築する。(2020年7月10日付 RISFAX)この発表は、2023年度に電子処方箋のシステムの運用を開始する予定だったものを、1年ほど前倒しして運用を行うとしたものです。2022年の夏って、あと2年しかありません。しかし、電子処方箋ってなに? 患者さんが来たらどうしたいいの? と困惑されている方も少なくないのではないかと思います。おおまかな電子処方箋対応のフローは下記のとおりです。1.医師は処方箋管理システムにアクセスして処方データを登録する。処方データへのアクセスコード(QRコード)を印字した紙または電子データを患者に渡す。2.患者は薬局でアクセスコードを提示する。3.薬剤師は、本人確認を行ったうえで薬局システムから処方データを参照し、必要に応じて処方内容の照会などを実施したうえで調剤を行う。調剤後は調剤データを登録する。2018年から2019年にかけて電子処方箋運用の実証事業が行われ、その結果である「電子処方箋の本格運用に向けた実証事業一式」最終成果報告が発表されています。この実証事業に参加した医療機関と薬局へのヒアリング結果として、以下のような感想が挙げられています(抜粋、一部改変)。電子処方箋だけでは診療の質には意味をなさないが、PHR(生涯型健康医療情報電子記録)が診療の質を上げると考えている。電子処方箋はその足掛かり。(医療機関)比較的近い薬局が対応してもらえないと実際には発行しづらい。あえて対面で診た患者さんに電子処方箋を出す理由はなさそうと感じた。(医療機関)在宅ではメリットがあるかもしれない。現在はFAXでもらっておいて、患者宅まで薬を届け、その際に処方箋の原本を回収している。(薬局)今回の実証事業の症例では、疑義照会の事例がなく比較的簡単な操作だったが、疑義照会などが起こった際の操作に関しては不安が残る。(薬局)導入にはさまざまな課題がありますが、紙の処方箋の内容をレセプトシステムに入力する手間が省けたり、病名などの患者情報と紐付けやすくなったりするなどのメリットはあるように思います。とくに、在宅やオンライン診療との相性が良さそうです。マイナンバーカードが医療情報の一元化のカギに電子処方箋の導入だけでなく、全国の医療機関などで医療情報を確認できる仕組みの拡大や、患者自身が保健医療情報を活用できる仕組みの拡大も同様に協議されており、同時期に始まる予定です。これらの医療情報の一元管理によるメリットとして、以下のようなものが挙げられています。かかりつけの医療機関が被災した際であっても、別の医療機関が患者の情報を確認し、必要な治療を継続することができる。意識障害のある患者の薬剤情報などを確認することで、より適切で迅速な検査、診断、治療などを実施することができる。複数医療機関を受診する患者の情報を集約して把握することができる。重複投薬などを削減できる。すごい!という感嘆の言葉しか出ません。医療情報の一元管理は国レベルでの調整が必要で、電子処方箋よりもはるかにハードルが高いため、わずか2年後に運用できるとは思い難いですが、夢のような世界ですね。これらのベースとなるのが、マイナンバーカードの活用で、マイナンバーカードを2021年3月から保険証として利用するということを総務省や内閣府が中心となって推進しています。また、生活保護の医療扶助で用いる医療券や調剤券をマイナンバーカードへ置き換える検討に着手し、2023年度からの本格運用が予定されています。しかし、マイナンバーカードの普及率は10%台を推移していて、普及しているとは言えない状況です。マイナポイントのキャンペーンでどのくらいマイナンバーカードの普及率が上がるのか、今後もマイナンバーカードの普及と電子処方箋導入の動きを見守っていきたいと思います。

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第18回 待望のプラセボ対照無作為化試験でCOVID-19にインターフェロンが有効

中国武漢での非無作為化試験1)や香港での無作為化試験2)等で示唆されていたインターフェロン1型(1型IFN)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療効果が小規模ながら待望のプラセボ対照無作為化試験で裏付けられました3,4)。先週月曜日(20日)の速報によると、英国のバイオテクノロジー企業Synairgen社の1型IFN(インターフェロンβ)吸入薬SNG001を使用したCOVID-19入院患者が重体になる割合はプラセボに比べて79%低く、回復した患者の割合はプラセボを2倍以上上回りました。わずか100人ほどの試験は小規模過ぎて決定的な結果とはいい難いと用心する向きもありますが、SNG001は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)食い止めに大いに貢献する吸入薬となりうると試験を率いた英国・サウサンプトン大学の呼吸器科医Tom Wilkinson教授は言っています5)。Synairgen社を率いるCEO・Richard Marsden氏にとっても試験結果は朗報であり、COVID-19入院患者が酸素投与から人工呼吸へと悪化するのをSNG001が大幅に減らしたことを喜びました。投資家も試験結果を歓迎し、Synairgen社の株価は試験発表前には36ポンドだったのが一時は236ポンドへと実に6倍以上上昇しました。この記事を書いている時点でも200ポンド近くを保っています。Synairgen社は入院以外でのSNG001使用も視野に入れており、COVID-19発症から3日までの患者に自宅でSNG001を吸入してもらう初期治療の試験をサウサンプトン大学と協力してすでに英国で始めています6)。米国では1型IFNではなく3型IFN(Peginterferon Lambda-1a)を感染初期の患者に皮下注射する試験がスタンフォード大学によって実施されています7)。インターフェロンは感染の初期治療のみならず予防効果もあるかもしれません。中国・湖北省の病院での試験の結果、インターフェロンを毎日4回点鼻投与した医療従事者2,415人全員がその投与の間(28日間)COVID-19を発症せずに済みました8)。インターフェロンはウイルスの細胞侵入に対してすぐさま強烈な攻撃を仕掛ける引き金の役割を担います。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はどうやらインターフェロンを抑制して複製し、組織を傷める炎症をはびこらせます4,9)。ただしSARS-CoV-2がインターフェロン活性を促すという報告10)や1型IFN反応が重度COVID-19の炎症悪化の首謀因子らしいとする報告11)もあり、インターフェロンは場合によっては逆にCOVID-19に加担する恐れがあります。米国立衛生研究所(NIH)のガイドライン12)では、重度や瀕死のCOVID-19患者へのインターフェロンは臨床試験以外では使うべきでないとされています。2003年に流行したSARS-CoV-2近縁種SARS-CoVや中東で依然として蔓延するMERS-CoVに感染したマウスへのインターフェロン早期投与の効果も確認されており13,14)、どの抗ウイルス薬も感染初期か場合によっては感染前に投与すべきと考えるのが普通だとNIHの研究者Ludmila Prokunina-Olsson氏は言っています15)。参考1)Zhou Q, et al. Front Immunol. 2020 May 15;11:1061.2)Hung IF, et al. Lancet. 2020 May 30;395:1695-1704.3)Synairgen announces positive results from trial of SNG001 in hospitalised COVID-19 patients / GlobeNewswire 4)Can boosting interferons, the body’s frontline virus fighters, beat COVID-19? / Science 5)Inhaled drug prevents COVID-19 patients getting worse in Southampton trial 6)People with early COVID-19 symptoms sought for at home treatment trial 7)OVID-Lambda試験(Clinical Trials.gov)8)An experimental trial of recombinant human interferon alpha nasal drops to prevent coronavirus disease 2019 in medical staff in an epidemic area. medRxiv. May 07, 2020 9)Hadjadj J, et al. Science. 2020 Jul 13:eabc6027.10)Zhuo Zhou, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2020 Jun 10;27(6):883-890.11)Lee JS, et al. Sci Immunol. 2020 Jul 10;5:eabd1554.12)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Treatment Guidelines,NIH 13)Channappanavar R, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2016 Feb 10;19:181-93. 14)Channappanavar R, et al. J Clin Invest. 2019 Jul 29;129:3625-3639.15)Seeking an Early COVID-19 Drug, Researchers Look to Interferons / TheScientist

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マスク着用で医療者のCOVID-19抑制効果が明らかに/JAMA

 マサチューセッツ州最大の医療システムで12の病院と75,000人超の従業員を抱えるMass General Brigham(MGB)は、2020年3月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、医療従事者(HCW:health care workers )のCOVID-19の前兆に対する体系的な検査やサージカルマスクを着用した全HCWと患者に対してユニバーサルマスキングを含む多面的な感染対策の研究を実施した。その結果、MGBでのHCWのマスク着用習慣がHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性率の有意な低下に関連していたと示唆された。また、患者-HCWおよびHCW同士の感染率低下に寄与する可能性も明らかになった。JAMA誌2020年7月14日号リサーチレターでの報告。 研究者らはマスク着用の病院方針とHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率との関連性を評価するため、2020年3月1日~4月30日の期間にPCR検査を受けた患者に対して直接的または間接的ケアを行ったHCWを特定した。 1)HCWのユニバーサルマスキング実施前期間(2020年3月1〜24日)2)患者のユニバーサルマスキング実施移行期間(2020年3月25日〜4月5日)と症状発現が認められた際の追加期間(2020年4月6〜10日)3)ユニバーサルマスキング介入期間(2020年4月11〜30日) 陽性率は全HCWの最初の検査結果での陽性を分子とし、検査2回目以降での陽性は除外した。分母には検査を一度も行っていないHCWとその日に検査を行ったHCWが含まれた。解析には重み付き非線形回帰分析を使用した。 主な結果は以下のとおり。・HCW:9,850人のうち、1,271人(12.9%)がSARS-CoV-2陽性だった。・陽性者の年齢中央値は39歳、73%は女性だった。また、陽性者の職種内訳は、医師・研修医(7.4%)、看護師・医師助手(26.5%)、医療技術者・看護助手(17.8%)、その他(48.3%)だった。・介入前のSARS-CoV-2陽性率は、0%から21.32%と指数関数的に増加し、加重平均は1日あたり1.16%増加、倍加時間( Doubling Time) は3.6日だった(95%信頼区間[CI]:3.0~4.5)。 ・介入期間中の陽性率は14.65%から11.46%に直線的に減少し、加重平均は1日あたり0.49%減少した。また、 slope の傾きは1.65%変化し(95%CI:1.13~2.15%、p<0.001 )、介入前と比較して、1日あたり大きく減少した。

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