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経口C型肝炎薬による治療の注意点【ママに聞いてみよう(5)】

ママに聞いてみよう(5)経口C型肝炎薬による治療の注意点講師:堀 美智子氏 / 医薬情報研究所 (株)エス・アイ・シー取締役、日本女性薬局経営者の会 会長動画解説C型肝炎治療の中心となってきた経口の直接作用型抗ウイルス薬。高い有効性の半面、費用やこれまでの薬にはみられなかった重大な副作用や相互作用など、注意すべき点がたくさんあります。服薬指導のポイントをしっかり頭に入れておきましょう。

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第51回 コロナ感染で懸念される男性特有の症状と影響

コロナ流行下にもかかわらず、海外では、感染対策を無視した野外パーティー(違法レイブ)が報道されている。若者を中心としたパーティだが、若年者であっても感染し、重症化しうることも自明である。また、感染時には無症状や軽症であっても、後遺症が残るケースも相当数報告されている。英国の大規模コホート研究では、男性が症例の60%を占め、性別が危険因子の1つであることが報告されている中、後遺症の1つとして、無精子症など生殖機能への影響が注目されている。「結婚相手として、新型コロナ感染の有無が気になる」と言う女性の声も聞いた。新型コロナ感染後の全身に及ぶ後遺症、精巣への影響もイタリアの研究チームが2020年7月にJAMA誌に発表した報告によると、調査した感染者143例のうち87.4%が、新型コロナから回復した後(発症から平均2ヵ月後)も、何らかの症状を訴えていた。倦怠感や呼吸苦の症状が続いているケースが多かったが、味覚障害や筋肉痛などさまざまな症状が見られた。32%で1〜2つ、55%で3つ以上の症状が見られ、44%がQOLの低下を自覚していた。中国で2020年6月に報告された新型コロナ患者の死亡剖検結果(91例)によると、ウイルスはほぼ全身に広がり、全身の臓器に変化が生じていることがわかったという。この結果を基に、新型コロナ後遺症を12に分類、最初に挙げたのが妊孕性への影響だった。精巣においてさまざまな程度の生殖細胞の減少と障害を起こしていたと報告。精巣は新型コロナウイルスの受容体であるACE2を多量に発現しており、感染により精子生成とアンドロゲン合成に影響を及ぼす可能性が推測されると指摘した。精子生成の障害は男性の生殖機能に影響を与える可能性があり、重度の場合は男性不妊につながる。また、アンドロゲンの欠乏は男性の第2次性徴や性機能に影響を与え、QOLを低下させる。ドイツの研究チームが2021年1月に発表した報告では、新型コロナに感染した男性84例と、同年代の健康な男性105例の精液を60日間わたって10日ごとに分析したところ、感染者は健康人と比較して、精子に悪影響を及ぼす炎症と酸化ストレスを示す数値が著しく高かった。ただし、英国の専門家らは、男性の生殖機能に影響を及ぼす「決定的な証拠」はまだ見つかっていないとし、「男性は過度に警戒すべきではない」との見方を示した。新型コロナウイルスは性行為でも感染する?また、精液から新型コロナウイルスが検出されたという報告がある。エボラ出血熱やジカウイルス感染症が性行為で感染することから、新型コロナも性感染症となる可能性が懸念されている。中国では河南省の市立病院で2020年5月、新型コロナ感染症と診断された男性38人(急性期15例、回復期23例)のうち、PCR検査で6例(15.8%、急性期4例、回復期2例)の精液からウイルスが見つかったという報告があった。現時点では、精液中にウイルスが見つかったにすぎない。専門家によると、性感染症と判断するには(1)性行為によって間違いなく感染したと考えられる事例が存在すること(2)精液から生きたウイルスが分離されることが必要だという。(2)については、ウイルス培養できることがわかれば、性行為によって感染する可能性が出てくるからだという。コロナ禍で「精子に良くない生活習慣」が増加精子に良くないのはウイルスだけではない。スマホでできる精子セルフチェックサービス「Seem」を運営するリクルートライフスタイルが、2020年12月に行った「精子に関する知識の実態把握調査」で明らかになったのは、コロナ禍においては、膝上PC作業や公共交通機関を避けるための自転車の使用など、陰嚢が圧迫されたり温度上昇しやすくなったりする状況が増えた上、精神的なストレスや、不規則な生活に伴う肥満など「精子に良くない生活習慣」が増えていることである。コロナ後遺症に、長期に渡る心身へのストレスと、新型コロナ出現後の日常は、これまでに経験したことのない不安や懸念が少なくない。感染対策は言うまでもなく、生活習慣の改善によって予防できることは自身で心掛け、安全な性行動に留意することが、アフターコロナを生きる男性諸氏にはとくに求められている。

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コロナ流行下で小児のライノウイルス感染リスクが2倍超

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が1年以上続き、マスクや手洗いなどのコロナ感染予防はいまや一般常識レベルに浸透している。この対策はCOVID-19のみならず、あらゆる感染症予防に有用と考えられる。東京大学の河岡 義裕氏(医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野教授)は、共同研究グループと共にCOVID-19流行下の呼吸器感染症ウイルス検出状況を調査したところ、全年齢層においてインフルエンザをはじめとする代表的な呼吸器感染症ウイルスの検出率は低下していた一方、10歳未満の小児では、風邪を引き起こすライノウイルスの検出率が著しく上昇していたことを発見した。研究結果は、Influenza and Other Respiratory Viruses誌オンライン版2021年3月15日号に掲載された。ライノウイルス検出率はCOVID-19流行期に著しく上昇 本研究では、COVID-19流行前後における呼吸器感染症ウイルスの検出状況を比較するため、2018年1月~2020年9月の期間、横浜市で2,244例の呼吸器疾患患者(COVID-19患者を除く)から採取された呼吸器検体(鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、鼻汁、唾液、気管吸引液、喀痰)を解析し、代表的な呼吸器感染症ウイルス(インフルエンザウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルスA/B、エコーウイルス、エンテロウイルス、ヒトコロナウイルス229E/HKU1/NL63/OC43、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス1/2/3/4、パレコウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ボカウイルス、パルボウイルスB19、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス)の検出を行った。 COVID-19流行前後におけるインフルエンザウイルスやライノウイルスなど呼吸器感染症ウイルスの検出状況を比較した主な結果は以下のとおり。・2,244例の内訳は、男性1,197例(53.3%)、女性1,044例(46.5%)、性別不明3例(0.1%)。年齢分布は、10歳未満1,119例(49.9%)、10歳以上1,105例(49.2%)、不明20例(0.9%)。・全検体のうち、最も多く検出されたのはインフルエンザウイルス(592例)で、次いでライノウイルス(155例)だった。475例からは、その他の呼吸器感染症ウイルスが検出された。・インフルエンザウイルスやその他の呼吸器感染症ウイルスの検出率は、全年齢層でCOVID-19流行後に低下していた。対照的に、ライノウイルス検出率はCOVID-19流行期に著しく上昇し、例年の2倍以上だった。 本研究では、インフルエンザ症例数の増加期にはライノウイルス感染数が減少しており、インフルエンザウイルスがライノウイルスに何らかの干渉作用がある可能性が示唆された。著者らは、SARS-CoV-2出現後、感染対策が奏功し市中のインフルエンザ感染者が減少したことが、10歳未満の小児におけるライノウイルス感染増加と関連しているのではないかと指摘している。ライノウイルスは、コロナウイルスやインフルエンザウイルスと異なり、ノンエンベロープウイルスであるため、アルコール消毒よりも石鹸と水を使った手洗いが有効だという。

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ワクチン接種2回目で多い副反応疑い、主な症状と発症時期は?/厚労省

 厚生労働省は3月26日、医療機関や製造販売業者からの副反応疑い報告状況、国内アナフィラキシー発生状況などについての検討会*を開催し、「新型コロナワクチン投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」の中間報告などを行った。それによるとファイザー製の新型コロナウイルスワクチンを接種した場合、発熱、倦怠感、頭痛などの副反応が2回目に多くみられた。また、いずれの症状も接種当日~翌日に出現している場合が多かった。 報告によると、発熱の場合“1回目接種後の発熱(37.5℃以上)は3.3%であったのに対し、2回目は35.6%と高率だった。発熱する場合は翌日が多く、接種3日目には解熱した”とあり、また接種部位の疼痛は“1回目、2回目いずれでも90%超で、接種翌日が最も頻度が高く、接種3日後には軽快した”という。調査概要と結果詳細 この調査は伊藤 澄信氏(順天堂大学医学部臨床研究・治験センター)らによるワクチン接種者を対象とした前向き観察研究で、治験と同様の方法で1~2万人の安全性情報を収集し、厚労省の専門家会議を通じて国民に安全性情報を発信することを目的としている。 2月14日に特例承認となったファイザー製の新型コロナワクチン「コミナティ筋注」を2月17日から先行接種対象者に接種開始。2月25日に被接種者登録が終了、1万9,808例が1回目を接種しコホート調査に登録され、2回目接種者は1万7,579例だった。接種者の職種は医師17%、看護師47%、その他医療従事者36%(薬剤師・臨床検査技師・放射線技師は各3%、理学療法士2%ほか)。年代は20代:21%、30代:24%、40代:25%、50代:21%、60代以上:8.7%で、男性34%、女性66%だった。治療中疾患は高血圧が最も多く、次いで脂質異常症、糖尿病、気管支喘息の順に多かった。 症状の出現について、接種後8日目以降に回収した1回目接種1万9,035例(全体の96.1%) および2回目接種3,933例の健康観察日誌から調べた結果、1回目に比べると2回目接種では接種翌日に頭痛(約40%)、全身倦怠感(約60%)を自覚した。また、接種部位の疼痛については1回目、2回目ともに接種翌日時点で約90%の接種者が記録しており、これは2009年のH1N1pdmインフルエンザワクチンNHO 2万人調査での疼痛出現の割合(43.8%)と比較しても、頻度が明らかに高いことが示された。 主な症状と発症率は以下のとおり(1回目/2回目)。発熱(37.5℃以上):3.3%/35.6%発熱(38℃以上):0.9%/19.1%接種部位反応:92.9%/93.0%発赤:13.9%/16.0%疼痛:92.3%/91.9%腫脹:12.5%/16.9%硬結:10.6%/9.9%熱感:12.8%/16.6%かゆみ:7.9%/10.4%倦怠感:23.2%/67.3%頭痛:21.2%/49.0%*:第54回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、第14回薬事食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会合同開催(ケアネット 土井 舞子)患者説明用スライドはこちら『新型コロナワクチン副反応疑い症状』

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ICU入室COVID-19へのエノキサパリン、中等量vs.標準量/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対し、予防的抗凝固療法としてエノキサパリンの中等量(1mg/kg/日、クレアチニン・クリアランス値により調整)の投与は同標準量(40mg/日)の投与と比べ、30日以内静脈または動脈血栓症・体外式膜型人工肺(ECMO)の使用・死亡の複合アウトカムについて、有意差は認められなかった。イラン・Iran University of Medical SciencesのParham Sadeghipour氏ら「INSPIRATION無作為化試験」研究グループが約600例の患者を対象に行った試験結果を報告した。COVID-19重症患者において、血栓性イベントの報告頻度は高い。抗血栓予防療法の強度を高めることに関するデータは限定的であり、今回の検討が行われた。研究グループは、「結果は、ICU入室COVID-19患者に対して非選択的に中等量の予防的抗凝固療法をルーチン投与することを支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2021年3月18日号掲載の報告。イラン10ヵ所の医療センターで試験 研究グループはイランの大学医療センター10施設を通じて、ICUに入室したCOVID-19患者を対象に、2×2要因デザインを用いて多施設共同無作為化試験を行った。 本試験で被験者は、エノキサパリン中等量(体重120kg未満でクレアチニン・クリアランス値30mL/分超に対し、1mg/kg/日)または同標準量(40mg/日)による予防的抗凝固療法と、スタチンまたはプラセボ(第2の仮説、本論では結果報告なし)を、それぞれ投与(両群の投与量について、体重とクレアチニン・クリアランス値に応じて調整)。割り付け治療は、30日間のフォローアップ完遂まで行うよう計画された。 被験者の募集期間は2020年7月29日~11月19日で、主要アウトカムの30日間フォローアップの最終日は2020年12月19日だった。 有効性の主要アウトカムは、30日以内の静脈または動脈血栓症・ECMOの使用・死亡の複合だった。試験の適格基準を満たし割り付け試験薬を1回以上投与された被験者を対象に分析を行った。 事前に規定した安全性に関するアウトカムは、BARCによる大出血(タイプ3または5)の非劣性評価(非劣性マージン:オッズ比[OR]1.8)、重症血小板減少症(血小板数:20×103/μL未満)などだった。大出血発生率も非劣性示せず 600例が無作為化を受け、主要解析には562例(93.7%)が含まれた(年齢中央値62歳[範囲:50~71]、女性は237例[42.2%])。 主要有効性アウトカムの発生は、中等量群126例(45.7%)、標準量群126例(44.1%)だった(絶対リスク差:1.5%[95%信頼区間[CI]:-6.6~9.8、OR:1.06[95%CI:0.76~1.48]、p=0.70)。 大出血の発生は、中等量群7例(2.5%)、標準量群4例(1.4%)で、ORは1.83(片側97.5%CI:0.00~5.93)と非劣性は示されなかった(非劣性のp>0.99)。重症血小板減少症の発生は、中等量群でのみ6例(2.2%)で認められた(6 vs.0、リスク差:2.2%[95%CI:0.4~3.8]、p=0.01)。

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第51回 「コロナワクチン、選べるようにする!」、ワクチン担当大臣補佐官発言のおそまつ

「会場を選べば打つワクチンを選ぶことができる」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は所用があって中央道を使って長野県に住む大学の先輩宅に行ってきました。先輩はリタイア後、別荘地で暮らしているのですが、最近ワクチン接種を巡って不穏な動きがあると話していました。不穏な動きとは、知人の女性が属する地域のあるグループが「ワクチンは危険だから接種はやめましょう」という運動をしている、というのです。「とくに新聞も読んでないようだし、NHKニュースもちゃんと観ていない人たちで、インターネットで探した情報だけで理論武装しているんだよね。高齢者が多い地方だからこそ、ワクチン接種は必要なのに…」と、先輩は渋い表情でボヤいていました。さて、そんな話を聞いた翌28日の朝、友人宅でぼんやりテレビを見ていたら、興味深い放送がありました。フジテレビの番組「日曜報道 THE PRIME」に出演した小林 史明ワクチン担当大臣補佐官が、国民がどの種類のワクチンを接種するか自ら選択できるようにする、という考えを示したのです。小林氏は「接種会場ごとに打つワクチン(の種類)を決めていく。それは公表されるので、会場を選べば打つワクチンを選ぶことができる」と説明。接種に関し「自身の理解や判断、事情で打ちたくない、打たないという判断をされる方もいると思う。そういう判断ができるような情報をしっかり提供して、選べる環境を作っていきたい」と語っていました。この発言を聞いて、「おいおい、こいつ大丈夫かよ」と思わず声が出てしまいました。まだまだ不透明なワクチン確保新型コロナウイルスワクチンについて、いよいよ高齢者の接種が4月12日から始まりますが、一般向け接種のスケジュールはまだ示されていません。日本政府は、米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発したmRNAワクチンを年内に1億4,400万回分(7,720万人分)の供給を受ける契約を結んでいるほか、英アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン 1億2,000万回分(6,000万人分、今年初頭から)、米モデルナ社のmRNAワクチン5,000万回分(2,500万人分、今年上半期と第3四半期の二期に分けて)の供給契約を結んでいます。ただ、これらはあくまで契約上の数字であり、確実に確保できるかどうかはわかりません。たとえば、先行して承認されたファイザーのワクチンは、6月までに約5,000万人分(1億回分)を輸入することが決まっています。しかし、欧州連合(EU)の輸出管理強化が長引いており、必要量の確保には不確定要素が残っています。アストラゼネカのワクチンは2月5日に承認申請。モデルナのワクチンも、日本での供給を請け負う武田薬品工業が3月5日に申請しています。いずれも順調にいけば5月にも承認される見込みですが、これもあくまでも順調にいけば、の話です。河野 太郎ワクチン担当大臣、「完全に勇み足」と撤回そんな中の「ワクチンは選べるようにする」発言。政府は高齢者と先月17日に始まった医療従事者の接種まではファイザー製のみを使うとしているため、小林氏の言う「選べる」のが仮に実現するとしたら、一般接種での運用、ということになるでしょう。……とここまで書いたら、この発言を撤回する旨のニュースが飛び込んできました。小林氏のボスにあたる河野 太郎ワクチン担当大臣が3月30日午前の記者会見で、新型コロナウイルスワクチン接種をめぐり、希望するワクチンを選択できるとした小林氏の28日の発言について「完全に勇み足だ。撤回しておわびする」と述べたのです。産経新聞等の報道によれば、河野大臣は「ワクチンを接種するかどうかを選択できるが、現在ワクチンはファイザー1社しか承認されていない」と説明。今後、英アストラゼネカ社、米モデルナ社の承認が予定されているとしつつも、「それをどのような形で接種していくか戦略を検討しているところで、まだ何も決まっていない」と語ったとのことです。また、河野大臣は加藤 勝信官房長官が3月29日の記者会見で国民が希望するワクチンを選択できるかどうかについて慎重に検討する考えを示したことに対して、「まだ何も決めてない。複数が流通することも決まってない」と述べたとのことです。各市町村に3種類の接種場所は非現実政府は1会場で使用するワクチンは1種類とする方針なので、仮に小林氏の発言を実行するとすれば、各市町村にファイザー製、アストラゼネカ製、モデルナ製の3種類のワクチンを配り、3種類の接種場所を用意させるということになりますが、どう考えてもそんな煩雑なオペレーションが可能とは思えず、小林氏は何を根拠に「選べるようにする」と語ったかは不明です。ちなみに、厚生労働省サイトの「新型コロナワクチンについてのQ&A」1)には「接種するワクチンは選べますか」という「Q」がありますが、その「A」は曖昧で、「接種を受ける時期に供給されているワクチンを接種することになります。また、複数のワクチンが供給されている場合も、2回目の接種では、1回目に接種したワクチンを同じ種類のワクチンを接種する必要があります」と書かれているのみです。「ワクチンを選びたい人」は7割超ただ、「ワクチンを選びたい」というニーズは高いようです。フジテレビの「日曜報道 THE PRIME」でも視聴者投票約2万7,000人の調査結果で74%が「ワクチンの種類を選べるなら選択したい」と回答した、と伝えていました。「日経メディカル」が昨年12月に医師6,830人に調査した結果でも、医師の55%が「選べた方がよい」と回答。この調査では製薬・バイオ業界の関係者50人にも聞いていますが、業界関係者の78%が「選べた方がよい」と回答していました。とは言え、一般の人がさまざまな報道や情報を基に、有効性や副反応のデータを勘案し、自らワクチンを選ぶことができるのでしょうか。また、選択(人気)に大きな偏りが出て、使われないワクチンが大量に出てしまったらどうするのでしょう。国際社会の中で、先進国と途上国との間のワクチン格差が問題になっている現状では、未使用廃棄は許されるものではありません。接種を行う人材さえ確保できていない市町村も仮に選べるようにする場合、最大の懸念は、市町村側の負担です。複数のワクチンが国内で使用できるようになれば、それぞれのワクチンの特性に応じた管理や接種体制が必要になります。そこまでの対応ができる市町村はごく少数に留まるでしょう。厚生労働省が3月19日に公表した調査結果によれば、65歳以上の高齢者対象の新型コロナウイルスワクチン接種について、約2割の市区町村で「接種を担う医師を全く確保できていない」ことがわかっています。接種を行う人材さえ確保できていないのに、その接種をワクチンの種類に合わせ3パターンで運用するというのは、どう考えても現実的ではなかったのです。この「ワクチンを選べるようにする」発言。河野大臣の右腕として抜擢された小林氏(まだ37歳、NTTドコモ出身)の単なるテレビ用リップサービスであった可能性が高そうです。河野大臣からも相当お灸をすえられたことでしょう。それにしても、そんな軽はずみな発言をする人物を大臣補佐官に任命せざるを得ない自民党の人材不足に、「おいおい、この国大丈夫かよ…」と改めてつぶやいた、花見日和の日の午後でした。参考1)新型コロナワクチンについてのQ&A/厚生労働省

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国内の新型コロナ変異株、9割超が英国株/厚労省

 厚生労働省は、3月23日時点で確認された国内の新型コロナウイルスの変異株の累計感染者数は549例で、空港検疫で報告された100例を合わせて649例に上ると発表した。前週から164例の増加となる。緊急事態宣言が全都道府県で解除され、日々の新型コロナ感染者数および重症者数は早くも増加傾向を示している。来月から新年度がスタートし、さらに人の動きが活発化することは必至で、感染動向を注視する必要がある。 厚労省によると、国内で確認された変異株549例は、26都道府県から報告されたもの。このうち最も確認数が多かったのは兵庫県161例(前週比で+67)で、大阪府105例(+33)、埼玉県58例(+1)、新潟県32例(±0)、神奈川県30例(+2)などが続く。 変異株の内訳は、英国株501例(前週比で+127)、南アフリカ株13例(+5)、ブラジル株35例(+18)となっている。26都道府県のうち、23都道府県は英国株のみ、あるいは英国株が多数を占めているが、千葉県(18/20例)および山梨県(2/2例)はブラジル株のみ、あるいはブラジル株が多数を占めている。岐阜県(9/9例)で確認されたのは、すべて南アフリカ株だった。このほか、確定には至っていないものの、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)で把握した変異株PCR陽性者数は、累計で792例(速報値)となっている。

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新型コロナ、高齢者は再感染しやすい可能性/Lancet

 デンマークでは2020年2月~12月の期間に、毎週平均で国民の約10%がPCR検査を受けており、全体の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の再感染防御率は80%を超えたものの、65歳以上では50%未満と低く、これら高齢の既感染者へのワクチン接種が重要であることが、同国Statens Serum InstitutのChristian Holm Hansen氏らの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年3月17日号に掲載された。SARS-CoV-2への感染が、その後の再感染をどの程度まで防御するかはよくわかっていない。2020年、デンマークでは、大規模な無料PCR検査戦略の一環として、約400万人(人口の69%)が1,060万件の検査を受けたという。再感染防御効果を評価する観察研究 研究グループは2020年の全国的なPCR検査データを用いて、SARS-CoV-2への再感染に対する防御効果を評価する目的で、観察研究を実施した(特定の研究助成は受けていない)。 デンマーク微生物学データベース(Danish Microbiology Database)から2020年の個人レベルのデータを収集し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の第2波期間中(2020年9月1日~12月31日)の感染率を、第1波期間中(同年3月~5月)のPCR検査の陽性率および陰性率と比較した。主解析では、第1波と第2波の間に初めて検査で陽性となった集団や、第2波の前に死亡した集団は除外された。 また、代替的解析の手法を用いて、第2波だけでなく流行期全体を通じた再感染率の検討を実施。日付に関係なく、3ヵ月以上前に感染が確定された集団と確定されていない集団で、年間を通じた感染率を比較した。また、この代替コホート解析では、年齢層別、性別、感染後の経過期間別の違いを評価した。 潜在的な交絡因子を補正した率比(RR)を算出し、再感染防御率を1-補正後RRの式で推定した。性別、感染後の経過期間別の再感染防御率に差はない デンマークにおけるSARS-CoV-2のPCR検査の施行能力は、2月の最初の検査から年末にかけて、2020年を通じて急速に向上し、毎週平均、人口の約10%が検査を受けた。感染流行が急増した第1波期間中(6月以前)に、53万3,381人がPCR検査を受け、そのうち1万1,727人(2.20%)が陽性で、第2波の時期まで追跡された52万5,339人のうち、第1波期間中に陽性だったのは1万1,068人(2.11%)であった。 第1波期間中のPCR検査陽性者のうち、72人(0.65%、95%信頼区間[CI]:0.51~0.82)が第2波期間中に再び陽性であったのに対し、第1波で陰性の51万4,271人のうち、第2波で陽性となったのは1万6,819人(3.27%、3.22~3.32)で、補正後RRは0.195(95%CI:0.155~0.246)であり、感染後の推定再感染防御率は80.5%(95%CI:75.4~84.5)であった。代替コホート解析では、初回感染から90日以降の再感染防御率は、ほぼ同様の結果であった(補正後RR:0.212[95%CI:0.179~0.251]、再感染防御率:78.8%[95%CI:74.9~82.1])。 また、代替コホート解析では、年齢65歳以上の再感染防御率は47.1%(95%CI:24.7~62.8)と、他の年齢層(0~34歳82.7%、35~49歳80.1%、50~64歳81.3%)に比べて低かった(p<0.0001)。一方、性別(男性78.4%[95%CI:72.1~83.2]vs.女性79.1%[73.9~83.3])および感染後の経過期間別(3~6ヵ月79.3% vs.≧7ヵ月77.7%)の再感染防御率には有意な差はなかった。 著者は、「これらの知見は、人口のどの層にワクチンを接種すべきかの判断に有益な可能性があり、とくに自然の防御能が低下している高齢の人々においては、既感染者への接種を提唱するものである」としている。

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第53回 Pfizerワクチン接種者に待望の胚中心が認められた

Pfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b2が引き出す新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体免疫はどうやら長続きすることを示す確かで息長い胚中心(germinal center)反応がマウスに続いて待望のヒト試験でも認められました1,2)。リンパ節に形成される胚中心は長く備わる抗体生成B細胞を生み出します。胚中心の暗領域(dark zone)ではそれぞれ独自の抗体を備えたB細胞が数多く作られ、明領域(light zone)で教官役のT細胞と手合わせして目当てのタンパク質の認識性能が検査されます。不合格のB細胞は暗領域に戻されて洗練されるか消され、合格したB細胞は不死化してメモリーB細胞かプラズマ細胞になって抗体が担う防御効果を数年あるいは長ければ何十年も発揮し続けます。胚中心反応はPfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種2回を済ませた12人のリンパ節検体の観察で明らかになりました。細針吸引で採取したリンパ節検体にはSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合する胚中心B細胞が1回目接種の後に12人全員に認められました2)。2回目の接種後に胚中心B細胞の割合は上昇し、ほとんどの人で少なくとも7週間後まで高い水準を保ち、メモリーB細胞やプラズマ細胞の順調な生成が伺われました。胚中心反応が長いほど抗体生成B細胞はより徹底的な訓練を受けることができ、メモリーB細胞やプラズマ細胞へとより分化することができます。去年12月にImmunity誌に発表された報告3)によるとマウスへのSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の胚中心反応はタンパク質ワクチンを上回ります。非mRNAワクチンのヒトでの胚中心反応はまだ不明ですが、現状ではmRNAワクチンにどうやら分があるようです。mRNAワクチンに分がありそうなことは他にもあります。たとえば、Pfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種者のリンパ節のスパイクタンパク質標的形質芽細胞の多くは血中を巡るIgG抗体を作るものでしたが、意外にも、大抵は感染した鼻や腸などの粘膜組織で作られるIgA抗体を作る形質芽細胞もかなり存在しました2)。それらIgA生成細胞は先立つ季節性コロナウイルスの上気道感染で備わったIgA生成メモリーB細胞を起源とするのかもしれません。mRNAワクチンが引き出すIgA生成細胞の効果がどれほどのものかはこれから調べる必要がありますが、おそらくはIgG抗体を上回る働きを担う粘膜組織に出向いて感染防御機能を担うのでしょう1)。また、興味深いことにスパイクタンパク質を標的とする胚中心B細胞のいくつかはSARS-CoV-2以外の風邪原因コロナウイルス(季節性ベータコロナウイルスOC43やHKU1)のスパイクタンパク質に反応しました2)。mRNAワクチンは新顔を生み出すだけでなく先立つ感染で備わった古参のメモリーB細胞を胚中心で再び訓練するように仕向ける働きもあるようです。mRNAワクチンがまさに期待通りの効果を担うことを示した今回の結果はどのコロナウイルスも抑制する抗体や防御するワクチンを見つける取り組みを助けるだろうとワシントン大学の免疫学者Ali Ellebedy氏は言っています1)。今回の研究を率いた同氏等はインフルエンザワクチン接種後の胚中心反応を数年前から調べ始めてその成果、血球凝集素に結合する胚中心B細胞の発見を天下の科学誌Natureに昨夏に報告4)しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種が始まる頃にはそれらではどうかを調べる準備ができていました1)。参考1)Pfizer Vaccine Induces Immune Structures Key to Lasting Immunity / TheScientist2)SARS-CoV-2 mRNA vaccines induce a robust germinal centre reaction in humans. Research Square. 09 Mar, 20213)Lederer K,et al, Immunity.2020 Dec 15;53:1281-1295.e5.4)Turner JS, Nature. 2020 Oct;586:127-132.

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新型コロナのPCR、鼻咽頭スワブ陰性も結膜で陽性

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はさまざまな体液などを介して感染するが、人間の涙液内のウイルスの存在に関する情報は不十分である。イタリア・インサブリア大学のClaudio Azzolini氏らが横断研究を行った結果、結膜スワブで陽性を示し鼻咽頭スワブで陰性を示す可能性があることから、結膜スワブの使用は診断・検査の補足になることを明らかにした。ただし、研究者らは「感染力までは決定づけられなかった」としている。JAMA Ophthalmolmology誌オンライン版2021年3月4日号掲載の報告。 研究者らは結膜スワブ検査利用への可能性と適用性を評価することを目的に、2020年4月9日~5月5日の期間、所属先のAzienda Socio-Sanitaria Territoriale (ASST)Sette-Laghi Hospitalの集中治療室にて、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rRT-PCR)法を用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の結膜と鼻咽頭におけるSARS-CoV-2の割合を調査した。また、それを基にウイルスの存在に付随する臨床状態の関連性について調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象者はCOVID-19で入院した91例と無症状の健康ボランティア17例を含む合計108例で、平均年齢±SDは58.7±14.2歳、女性55例、男性53例だった。・COVID-19にて入院した91例に対し鼻咽頭スワブを実施したところ58例が陽性(63.7%、95%信頼区間[CI]:53.0~73.6%)だった。また、COVID-19診断と臨床症状からの経過時間による結膜スワブ陽性者数に差は見られなかった。・一方、91例に結膜スワブを実施したところ、52例の眼表面にSARS-CoV-2が検出された(57.1%、95%CI:46.3~67.5%)。ただし、両眼からの平均ウイルス量に大きなばらつきがあった(中央値[範囲]:284コピー/μL[29~4万5,000])。・結膜スワブからウイルスが検出された入院患者52例のうち31例は両目から検出された。・健康ボランティアの結膜スワブ検査は全員が陰性だった。・患者サブセット41例に対し、結膜スワブと鼻咽頭スワブ検査の両検査を2日以内に実施した場合、両方で陽性だったのは63.0%(95%CI:41.0~81.0%)だった。・この41例のうち7例は両検査とも陰性だった。一方、10例は鼻咽頭スワブの結果は陰性だったものの、結膜スワブの結果が陽性だった(平均ウイルス量[範囲]:881.7コピー/μL[29~6,900])。・結膜スワブ陽性の52例のウイルス量中央値は25〜75パーセンタイルで、ウイルス量中央値は、1週目で1,120コピー/μL、2週目で303コピー/μL、3週目で424コピー/μL、4週目で295コピー/μLだった。・今回の研究ではウイルス検出と併存疾患との間に関連は見られなかった。結膜スワブ陽性患者のほうが陰性患者よりも、少なくとも片眼の徴候または表面炎症の有病率がわずかに高かった。

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新型コロナ学級内クラスターの発生はわずか、スイス/BMJ

 2020年8月から再開されたスイスの初等~中等学校では、いくつかの予防措置が講じられたことで、地域社会の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の伝播が中等度~高度で全体的な血清有病率が上昇した時期にあっても、血清陽性の子供の小規模感染者集団が発生した学級はごくわずかであったことが、同国・チューリヒ大学のAgne Ulyte氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、BMJ誌2021年3月17日号に掲載された。SARS-CoV-2感染症の伝播における児童生徒の役割には議論の余地があるが、現に学校での感染爆発は起きており、子供の血清有病率は成人と同程度の可能性がある。児童生徒におけるSARS-CoV-2感染の伝播とその影響を理解することは、適切な緩和策の実施のために重要とされる。チューリヒ州の6~16歳の前向きコホート研究 研究グループは、2020年6月~11月の期間に、スイス・チューリヒ州において、SARS-CoV-2の血清有病率の長期的な変動を調査し、学級内で血清陽性となった子供たちにおける小規模感染者集団の発生状況を明らかにする目的で、前向きコホート研究を行った(Swiss School of Public Health[SSPH+]の調達資金などから助成を受けた)。 スイスは、2020年秋に欧州で発生した最大規模の第2波SARS-CoV-2パンデミックの一角を占めた。この時期に学校を再開したことで、中等度~高度な曝露環境となったため、SARS-CoV-2感染の調査が実施された。 地区ごとに無作為に選ばれた学校および学級の子供たちが、SARS-CoV-2の血清検査を受けるよう要請された。保護者は、社会人口統計学的な質問と健康に関する質問に答えた。検査では、SARS-CoV-2の4つの標的(受容体結合ドメイン、スパイクタンパク質S1とS2、ヌクレオカプシドタンパク質N)に対する免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA)を解析した。 要請を受けた156校のうち55校が調査に参加し、この中から275の学級(6~16歳)が無作為に選ばれた。参加者数は、2020年6月~7月(夏期)が2,603人、同年10月~11月(晩秋期)が2,552人であった。 主要アウトカムは、2020年6月~7月と10月~11月のSARS-CoV-2血清検査、学級内の小規模感染者集団、子供の症状とされた。血清有病率の解析にはベイズロジスティック回帰法が用いられた。陽性者の40%が陰性化、陽性者3人以上は7学級(5%)のみ 血清検査の陽性者は、夏期は検査を受けた2,496人中74人であったが、晩秋期には2,503人中173人に増加した。SARS-CoV-2の血清有病率は、夏期が2.4%(95%信用区間[CrI]:1.4~3.6)で、夏期に陽性でなかった子供における晩秋期の新規陽性率は4.5%(3.2~6.0)であり、血清陽性の子供の割合は7.8%(6.2~9.5)であった。 地区ごとの血清有病率にはばらつきがあり、晩秋期は1.7~15.0%の幅が認められた。低学年(6~9歳)、中学年(9~13歳)、高学年(12~16歳)で、夏期陽性者と晩秋期新規陽性者を併せた割合に差はなかった(それぞれ8.5%、8.0%、6.4%)。また、性別の違いで血清有病率に差はなかった。 夏期と晩秋期の両方で血清検査を受けた2,223人のうち、夏期に陽性の70人のうち28人(40%)が晩秋期には陰性化し、夏期に陰性の2,153人のうち109人(5%)が陽性化した。 症状は、血清陰性者の22%(420/1,923人)および夏期以降の新規陽性者の29%(29/101人)にみられた。血清陽性者で頻度の高い症状は、頭痛(13.9%)、鼻水/鼻詰まり(11.9%)、咽喉炎(11.9%)、疲労(8.9%)であった。また、SARS-CoV-2感染症の診断を受けた子供の血清陽性者に対する比は、2020年1月~11月の期間が1対13で、2020年7月~11月の期間は1対8だった。 少なくとも1人の子供が新規に血清陽性となったのは、55の学校中47校、275の学級中90学級であった。生徒の参加率が高かった130の学級のうち、血清陽性者が発生しなかったのは73学級(56%)、陽性者1~2人は50学級(38%)で、3人以上の陽性者が発生したのは7学級(5%)だった。 著者は、「SARS-CoV-2の新たな変異株や、地域社会での感染レベルの活発な変動が起きた場合に、これらの知見も変化するかに関しては、確実なことはいえない」としている。

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第48回 GWまでに第3波の2倍も想定、病床確保計画の見直しへ/厚労省

<先週の動き>1.GWまでに第3波の2倍も想定、病床確保計画の見直しへ/厚労省2.オンライン資格確認システム、全額補助申請は今月まで3.DPC病院、稼働率80%以上を維持も予定外の再入院率は変化なし4.12日から始まる高齢者ワクチン、一部自治体では同時に一般人への接種も5.看護師の離職率、職員11.5%新卒8.6%と昨年比0.8%上昇6.死因究明等推進のために「死因究明等推進計画」の策定へ1.GWまでに第3波の2倍も想定、病床確保計画の見直しへ/厚労省田村厚生労働大臣は、23日の記者会見で、緊急事態宣言の解除後も新型コロナウイルス感染の再拡大が危惧されており、病床確保など一般医療と両立しつつ、「緊急対応策」を講じる準備が必要との考えを示した。厚労省は、都道府県に対して、5月までに最大患者数が今冬の2倍程度になる事態も想定した新たな感染者受け入れ計画を策定するよう通知を発する予定。全国自治体病院協議会の小熊会長は、「都道府県などと連携して病床の確保に努めるが、一般医療機能の逼迫にもつながりかねない」と懸念を25日の定例記者会見で明らかにしている。(参考)コロナ病床の確保計画、都道府県に見直し求める 厚労省(朝日新聞)さらなるコロナ病床確保に努めるが「一般医療機能の逼迫」懸念、重点医療機関等は2020年度黒字の可能性も―全自病・小熊会長(Gem Med)田村大臣会見概要 2021年3月23日(厚労省)資料 緊急事態宣言解除後の新型コロナウイルス感染症への対応(新型コロナウイルス感染症対策本部)2.オンライン資格確認システム、全額補助申請は今月まで厚生労働省は、26日に開催された社会保障審議会・医療保険部会において、健康保険証の代わりにマイナンバーカードを用いたオンライン資格確認システムの運用開始を、半年間先送りにすることを決定した。これまでの試験運用において、健康保険組合が管理する情報が一部で不正確だったため、3月末の予定を延期し、当面は試行運用を続け、今年10月の本格運用を目指す。なお、医療機関などが今月末までに申し込めば、カードリーダーなどのシステム改修費について国費で全額補助されるが、4月以降の補助は減額される。21日時点での申し込み数は、病院で約5,000(60.4%)、薬局で約4万(66.5%)と報告されている。(参考)保険証利用の本格運用先送り マイナカード、トラブルで―厚労省(時事ドットコム)厚労省 オンライン資格確認の本格導入を「遅くとも10月まで」に延期 プレ運用は継続(ミクスOnline)資料 オンライン資格確認等システムについて(厚労省)3.DPC病院、稼働率80%以上を維持も予定外の再入院率は変化なし中央社会保険医療協議会・総会が24日に開催され、2019年度DPC導入の影響評価に係る「退院患者調査」の結果が報告された。平均在院日数は、大学病院本院で12.21日、DPC特定病院群、DPC標準病院群ではそれぞれ34日、11.76日といずれも過去5年で最短となっている。一方、病床利用率は、大学病院本院群82.3%、DPC特定病院群85.9%、DPC標準病院群81.0%といずれも80%以上を維持したが、DPC準備病院や出来高病院ではそれぞれ78.7%、75.5%と低迷している状況がうかがえる。また、計画外の再入院率ではいずれの病院群でも、3~4%と過去5年間で大きな変動はなく、在院日数短縮による影響は認められていない。(参考)資料 2019年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告(厚労省)病床利用率80%超の高水準を継続、DPC病院 中医協、平均在院日数の短縮続き(CBnewsマネジメント)4.来月開始の高齢者ワクチン、一部自治体では同時に一般人への接種も河野 太郎ワクチン担当相は、26日の記者会見において、4月12日に始まる高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種について、欧州の承認が前提となるが、GW明けの5月中旬に約490万人分を配送することを明らかにし、5月9日までに配送する330万人分と合わせ、計820万人分が各自治体に届くため、高齢者向けの接種が大型連休後に拡大することを発表した。また、1バイアルで6回分が接種できる特殊な注射器が使用可能となるのは5月中と明らかにした。なお、人口1,000人以下の一部の自治体や離島では、高齢者と同時に一般の人にも接種が行われる見通しを示した。(参考)注射器を“切り替え” 高齢者もワクチン1瓶で6回接種へ(TBS NEWS)ワクチン接種 人口少ない自治体など 高齢者に合わせ一般の人も(NHK)資料 高齢者向け接種を実施するための新型コロナワクチン等の配分について(厚労省 事務連絡令和3年3月26日)5.看護師の離職率、職員11.5%新卒8.6%と昨年比0.8%上昇日本看護協会が行った「2020年病院看護実態調査」の結果、昨年度、全国の医療機関に勤める看護職員の離職率は11.5%、新卒採用された看護師の離職率は8.6%と、それぞれ前年度より0.8%上昇したことをプレスリリースで明らかにした。また、今回初めて採用の困難さが報告されている看護補助者の採用・離職の状況などについて調査したところ、「研修の充実」「意見を吸い上げ」など採用・定着のための取り組みを行っているにもかかわらず、離職率は29.9%と著しく高いことが明らかとなった。今年春以降のワクチン接種に向けて、自治体では医師のほか看護人材の採用難に直面していることが報道でも明らかとなっており、医療現場のみならず介護サービスでも看護スタッフの採用などに影響が出そうだ。(参考)ニュースリリース「2020年 病院看護実態調査」結果(日本看護協会)看護職員の離職率増加 新型コロナ感染拡大が影響か(NHK)ワクチン集団接種、7割の自治体はぶっつけ本番? 2割は看護師確保見通せず 厚労省全市区町村調査(東京新聞)6.人材育成・設備強化など「死因究明等推進計画」の策定へ厚労省の死因究明等推進本部は、24日に「死因究明等推進計画検討会報告書」を発表した。わが国の制度は諸外国に比較すると十分ではないことや、犯罪行為により死亡したものを病死と判断する事例から死因究明体制の強化が求められてきたことを踏まえ、2020年7月から議論を重ねてきた内容を取りまとめたもの。施策として、死因究明等に係る人材の育成、教育および研究拠点、専門的な機関の全国的な整備などを求めている。この報告書をもとに、死因究明等推進本部では「死因究明等推進計画案」を決定し、政府に「死因究明等推進計画」の策定を働きかけることとなった。なお、都道府県ごとの大学の法医学教室における人員数を見ると、常勤医師数は全国で152人だが、中には常勤医師数1人のみで大学院生もいない大学もあるなど、法医学等死因究明に係る教育や研究拠点の整備に今後も国による支援が必要と考えられる。(参考)死因究明等推進計画検討会報告書の公表について(厚労省)資料 「死因究明等推進計画検討会報告書」(同)資料 「死因究明等の推進に関する参考資料」(同)

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特発性門脈圧亢進症〔IPH:Idiopathic portal hypertension〕

1 疾患概要■ 概念・定義特発性門脈圧亢進症(idiopathic portal hypertension:IPH)とは、肝硬変、肝外門脈閉塞、肝静脈閉塞、およびその他の原因となるべき疾患を認めずに門脈圧亢進症を呈するもので、肝内末梢門脈枝の閉塞、狭窄により門脈圧亢進症に至る症候群をいう。なお、門脈圧亢進症とは門脈系の血行動態の変化により、門脈圧(正常値100~150mmH2O)が常に200mmH2O(14.7mmHg)以上に上昇した状態である。■ 疫学IPHは比較的まれな疾患で、年間受療患者数(2004年)は640~1,070人と推定され、人口100万人当たり7.3人の有病率と推定されている(2005年全国疫学調査)。男女比は約1:2.7と女性に多く、発症のピークは40~50歳代で平均年齢は49歳である。欧米より日本にやや多い傾向があり、また都会より農村に多い傾向がある。■ 病因本症の病因はいまだ不明であるが、肝内末梢門脈血栓説、脾原説、自己免疫異常説などがある。中年女性に多発し、血清学的検査で自己免疫疾患と類似した特徴が認められ、自己免疫疾患を合併する頻度も高いことからその病因として自己免疫異常、特にT細胞の自己認識機構に問題があると考えられている。■ 症状重症度に応じ食道胃静脈瘤、門脈圧亢進症性胃腸症、腹水、肝性脳症、汎血球減少、脾腫、貧血、肝機能障害などの症候、つまり門脈圧亢進症の症状を呈す。通常、肝硬変に至ることはなく、肝細胞がんの母地にはならない。■ 予後IPH患者の予後は静脈瘤(出血)のコントロールによって規定され、コントロール良好ならば肝がんの発生や肝不全死はほとんどなく、5年および10年累積生存率は80~90%と極めて良好である。また、長期観察例での肝実質の変化は少なく、肝機能異常も軽度である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ IPH診断のガイドラインIPHの診断基準は、厚生労働省特定疾患:門脈血行異常症調査研究班の定めた「門脈血行異常症ガイドライン2018年改訂版」1)のIPH診断のガイドラインに則る。1)一般検査所見(1)血液検査 1つ以上の血球成分の減少を示し、特に血小板数減少は顕著である。(2)肝機能検査正常または軽度異常が多い。(3)内視鏡検査食道胃静脈瘤を認めることが多い。門脈圧亢進症性胃腸症や十二指腸、胆管周囲、下部消化管などにいわゆる異所性静脈瘤を認めることもある。2)画像検査所見(1)超音波、CT、MRI、腹腔鏡検査a)巨脾を認めることが多い。b)肝臓は病期の進行とともに、辺縁萎縮と代償性中心性腫大となる。c)肝臓の表面は平滑なことが多いが、全体に波打ち状(大きな隆起と陥凹)を呈するときもある。d)結節性再生性過形成や限局性結節性過形成などの肝内結節を認めることがある。e)脾動静脈は著明に拡張している。f)著しい門脈・脾静脈血流量の増加を認める。g)二次的に門脈に血栓を認めることがある。(2)上腸間膜動脈造影門脈相ないし経皮経肝門脈造影肝内末梢門脈枝の走行異常、分岐異常を認め、その造影能は不良で、時に門脈血栓を認めることがある。(3)肝静脈造影しばしば肝静脈枝相互間吻合と「しだれ柳様」所見を認める。閉塞肝静脈圧は正常または軽度上昇にとどまる。(4)Scintiphotosplenoportography (SSP)SSPは経皮的に脾臓より放射性物質を注入し、その動態で最も生理的に近い脾静 脈血行動態のdynamic imageが得られるだけではなく、そのデータ処理にてさまざまな情報が得られる検査法である。SSPにより門脈血に占める脾静脈血の割合を求めると、正常では18.6%、慢性肝炎では48.0%、肝硬変では47.8%、IPHでは73.8%であった2)。つまりIPHでは、脾静脈血流が著明に増加している。3)病理検査所見(1)肝臓の肉眼所見時に萎縮を認める。表面平滑な場合、波打ち状や凹凸不整を示す場合、変形を示す場合がある。割面は被膜下の実質の脱落をしばしば認める。門脈に二次性の血栓を認める例がある。また、過形成結節を認める症例がある。肝硬変の所見はない。(2)肝臓の組織所見肝内末梢門脈枝の潰れ・狭小化、肝内門脈枝の硬化症および側副血行路を呈する例が多い。門脈域の緻密な線維化を認め、しばしば円形の線維性拡大を呈する。肝細胞の過形成像がみられ結節状過形成を呈することがあるが、周囲に線維化はなく、肝硬変の再生結節とは異なる。(3)脾臓の肉眼所見著しい腫大を認める。(4)脾臓の組織所見赤脾髄における脾洞(静脈洞)の増生、細網線維や膠原線維の増加、脾柱におけるGamna-Gandy結節を認める。本症は症候群であり、また病期により病態が異なることから、一般検査所見、画像検査所見、病理検査所見によって総合的に診断されるべきである。確定診断は肝臓の病理組織学的所見の合致が望ましい。除外疾患は肝硬変症、肝外門脈閉塞症、バッド・キアリ症候群、血液疾患、寄生虫疾患、肉芽腫性肝疾患、先天性肝線維症、慢性ウイルス性肝炎、非硬変期の原発性胆汁性胆管炎などが挙げられる。■ 重症度分類「門脈血行異常症ガイドライン2018年改訂版」1)ではIPHの重症度分類も定められている。重症度I  診断可能だが、所見は認めない。重症度II 所見は認めるものの、治療を要しない。重症度III所見を認め、治療を要する。重症度IV身体活動が制限され、介護も含めた治療を要する。重症度V 肝不全ないし消化管出血を認め、集中治療を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療適応IPHの治療対象は、門脈圧亢進症に伴う食道胃静脈瘤、脾機能亢進に伴う汎血球滅少症、脾腫である。治療法としては、食道胃静脈瘤症例では内視鏡的治療、塞栓術、手術療法など、内科的治療が難しい脾腫・脾機能亢進症例では塞栓術または手術療法を施行する。■ 食道静脈瘤1)食道静脈瘤破裂では輸血、輸液などで循環動態を安定させながら、内視鏡的静脈瘤結紮術(または内視鏡的硬化療法)にて一時止血を行う。内視鏡的治療が施行できない場合や止血困難な場合はバルーンタンポナーデ法を施行し、それでも止血できない場合は緊急手術も考慮する。2)一時止血が得られた症例では、全身状態改善後、内視鏡的治療や待期手術を考慮する。3)未出血の症例(予防例)では、「門脈圧亢進症取扱い規約【第3版】」3)に従って静脈瘤所見を判定し、F2、3またはRC陽性の場合、内視鏡的治療や手術を考慮する。4)手術療法としては、選択的シャント手術として選択的遠位脾腎静脈吻合術(DSRS)や、直達手術として下部食道離断+脾摘+下部食道・胃上部血行郭清を加えた食道離断術または内視鏡的治療と併用して脾摘術+下部食道・胃上部の血行郭清(ハッサブ手術)を行う。■ 胃静脈瘤1)食道静脈瘤と連続して存在する噴門部静脈瘤に対しては食道静脈瘤の治療に準じて対処する。2)孤立性胃静脈瘤破裂例では輸血、輸液などで循環動態を安定させながら、内視鏡的硬化療法にて一時止血を行う。内視鏡的治療が施行できない場合や止血困難な場合はバルーンタンポナーデ法を施行し、それでも止血できない場合はバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:B-RTO)などの塞栓術や緊急手術も検討する。 3)一時止血が得られた症例では、全身状態改善後、内視鏡的治療追加やB-RTO などの塞栓術、待期手術(DSRSやハッサブ手術)を検討する。4)未出血症例(予防例)では、胃内視鏡所見を参考にして内視鏡的治療、塞栓術、手術(DSRSやハッサブ手術)を検討する。■ 脾腫、脾機能亢進症巨脾に合併する症状(疼痛、圧迫)が著しい場合および脾機能亢進症(汎血球減少)による高度の血球減少(血小板5×104以下、白血球3,000以下、赤血球300×104以下のいずれか1項目)で出血傾向を認める場合は部分的脾動脈塞栓術(PSE)または脾摘術を検討する。PSEは施行後に血小板数は12~24時間後に上昇し始め、ピークは1~2週間後である。2ヵ月後に安定し、長期的には前値の平均2倍を維持する。4 今後の展望IPHの原因はいまだ解明されていない。しかし、静脈瘤のコントロールが良好ならば、予後は良好であるため静脈瘤のコントロールが重要である。予後が良いため長期的に効果が持続する手術療法が施行されている。近年、低侵襲手術として腹腔鏡下手術が行われており、食道胃静脈瘤に対する手術も腹腔鏡下手術が中心となっていくであろう。5 主たる診療科消化器外科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病センター 特発性門脈亢進症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 門脈血行異常症ガイドライン 2018年改訂版. 2018.2)吉田寛. 日消誌. 1991;88:2763-2770.3)日本門脈圧亢進症学会. 門脈圧亢進症取扱い規約 第3版. 金原出版.2013.公開履歴初回2021年03月29日

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新型コロナ、4ヵ月後も7割に胸部CT異常/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による長期的な後遺症の詳細は知られていない。フランス・パリ・サクレー大学のLuc Morin氏らCOMEBAC試験の研究グループは、COVID-19で入院した患者の、退院4ヵ月後の健康状態を調査した。その結果、約半数が少なくとも1つの、COVID-19罹患前にはなかった新たな症状(疲労、認知症状、呼吸困難など)を訴え、勧奨を受けて外来を受診した患者の約6割に胸部CTで肺の異常所見(多くはわずかなすりガラス状陰影)が、約2割に線維化病変が認められるなどの実態が明らかとなった。JAMA誌オンライン版2021年3月17日号掲載の報告。フランスの単一施設の前向きコホート研究 本研究は、2020年3月1日~5月29日の期間にCOVID-19でパリ・サクレー大学病院(Bicetre病院)に入院し、その後退院した成人患者を対象とする前向きコホート研究である(フランスAssistance Publique-Hopitaux de Paris[AP-HP]の助成による)。 患者が退院後3~4ヵ月の時点(同年7月15日~9月18日)で、電話による診察が行われた。関連症状が持続している患者や、集中治療室(ICU)に入室していた患者は、外来を受診して追加の健康評価を受けるよう勧められた。 電話では、Q3PC認知スクリーニング質問票と症状チェックリストを用いて、呼吸器、認知機能、機能的症状などの評価が行われた。外来受診患者には、肺機能検査、肺CT検査、心理測定/認知検査(36-Item Short-Form Health Survey[SF-36]、20-item Multidimensional Fatigue Inventory[MFI-20]を含む)が施行され、元ICU入室患者や症状が持続している患者には心エコー図検査が実施された。元ICU入室患者の23%で不安、18%でうつ状態、7%で心的外傷後症状 478例(平均年齢61[SD 16]歳、女性201例[42%])が電話による診察を受け、このうち177例(37%、平均年齢56.9[13.2]歳、女性68例[38.4%])が外来を受診した。478例中142例が元ICU入室患者で、このうち外来を受診したのは97例だった。 電話診察では、244例(51%)が、COVID-19罹患前にはなくCOVID-19で入院中に新たに発症し、この電話診察時まで持続する症状が1つ以上あると申告した。症状は、疲労(31%)、呼吸困難(16%)、持続性の知覚障害(12%)、ベースラインから5%以上の体重減少(9%)などであった。また、21%に認知症状がみられ、Q3PC質問票による認知検査で18%が記憶障害と判定された。 MFI-20(145例)の意欲低下スコア(1[最良]~5[最悪]点)中央値は4.5点(IQR:3.0~5.0)、精神的疲労感スコア(1[最良]~5[最悪]点)中央値は3.7点(3.0~4.5)であった。また、SF-36(130例)の下位尺度である「身体的理由による活動の一部制限」のスコア(100[最良]~0[最悪]点)中央値は25点(25.0~75.0)だった。 外来受診では、肺CT検査で63%(108/171例)に異常が認められ、42%(72/170例)はわずかなすりガラス状陰影であった。線維化病変は19%(33/171例)にみられ、1例を除き、病変の範囲は肺実質の25%未満であった。急性呼吸促迫症候群(ARDS)と診断された49例のうち19例(39%)に線維化病変が認められた。 元ICU入室患者(94例)では、23%(22例)に不安、18%(17例)にうつ状態、7%(7例)に心的外傷後症状がみられた。元ICU入室患者(83例)の10%(8例)が、左室駆出率50%未満であった。また、新規慢性腎臓病が元ICU入室患者の2例で発生した。 血清検査では97%(172/177例)が抗SARS-CoV-2抗体陽性であった。この172例中3例は、RT-PCR法でSARS-CoV-2陽性となったことが一度もなかったが、臨床所見とCT所見によりCOVID-19と診断されていた。 著者は、「コホートに対照群はおらずCOVID-19罹患前の評価が行われていないことから、本調査で得られた知見は限定的なものとなる。より長期のアウトカムや、これらの知見が疾患との関連を反映しているかを解明するには、さらなる研究を要する」としている。

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AZ製コロナワクチン、米国第III相試験の主要解析で安全性・有効性を確認

 アストラゼネカ英国本社は3月25日発信のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンAZD1222の米国における第III相試験の主要解析において、安全性と有効性が確認されたと発表した。事前に規定された統計解析計画では、中間解析で少なくとも75例、主要解析で少なくとも150例の判定症例が必要であったが、両解析におけるワクチンの有効性は一致しており、結果に齟齬はなかった。 AZD1222を巡っては、日本を含む各国で臨床試験が進行中。このうち米国第III相試験(D8110C00001)は、健康な、もしくは医学的に安定した慢性疾患を有し、SARS-CoV-2やCOVID-19曝露のリスクが高い18歳以上の成人3万2,449 例の被験者を対象に、米国、ペルー、チリの88の治験施設で実施。本主要解析には、全被験者のうち190例の症候性COVID-19症例が含まれており、中間解析から49例増加していた。被験者はワクチン群とプラセボ群に2:1で無作為に割り付けられた。本試験の主要評価項目である症候性COVID-19 発症予防に対するワクチンの有効性は、4週間隔で2回接種後、15日以降において76%(信頼区間[CI]:68%~82%)だった。 また、すべての年齢集団における結果も同程度で、65歳以上におけるワクチンの有効性は85%(CI:8%~95%)だった。副次評価項目である重症・致死性な疾患、および入院予防に対する有効性は100%であった。本主要解析において、8例のCOVID-19重症化が見られたが、いずれもプラセボ群だった。ワクチンの忍容性は良好で、安全性上の懸念は特定されなかった。 アストラゼネカは、本主要解析を基に、今後数週間のうちに米国食品医薬品局(FDA)に対し、COVID-19 ワクチンとしての緊急使用許可申請を行う。

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BNT162b2(コミナティ筋注)のReal-World Settingにおける有効性と免疫回避変異ウイルスの発生など今後の課題(解説:山口佳寿博氏)-1367

 2021年3月20日現在、Pfizer社のBNT162b2ワクチンは米国FDA、欧州連合(EU)医薬品庁(EU-EMA)の製造承認に加えWHOによる使用正当性の承認(validation)を得ており、スイス、ニュージーランド、バーレーン、サウジアラビア、ブラジルの5ヵ国で完全使用が、英国、米国など37ヵ国(EUを含む)で緊急使用が承認されている(The New York Times 3/20, 2021)。本邦においても、2021年2月14日、厚生労働省は本ワクチンを特例承認し、2月中旬より医療従事者に対する接種が開始されている。BNT162b2の接種は人口923万人の小国イスラエルにおいて最も速く積極的に推し進められ、2020年12月20日から2021年2月6日までの間に60歳以上の高齢者の90%が1回目のワクチン接種を、80%が2回目のワクチン接種を終了した(Rossman H, et al. medRxiv. 2021;2021.02.08.21251325.)。本論評で取り上げた論文は、2020年12月20日から2021年2月1日までの間にワクチンを接種したイスラエルの成人596,681人と同数の非接種成人(対照)を対象としてワクチンの効果を検証したもので(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 24. [Epub ahead of print])、対象者数はイスラエル総人口の13%に相当する大規模解析である。この場合、知っておかなければならない事実として、当時のイスラエルに蔓延していたウイルスはD614G株から英国株に移行しつつあった時期であり、データ集積の最終時点では英国株が80%を占めるようになっていたことである。南アフリカ株、ブラジル株は検出されていなかった。すなわち、本研究はD614G株と英国株が混在する状況下でのBNT162b2の効果を検証したものと考えなければならない。 この1年間における新型コロナウイルスの変遷に関する詳細は他紙に譲るが(山口. 日本医事新報 5053:32-38, 2021)、2020年9月ごろまでは武漢原株から変異したD614G株が世界を席巻していた。9月以降、D614G株にさらなる変異が加わったN501Y株(英国株:B.1.1.7、南アフリカ株:B.1.351、ブラジル株:P.1)が世界の各地で検出されるようになった。とくに、12月以降はN501Y株の占める割合が上昇している。これら新たな3種類の変異株の中で南アフリカ株、ブラジル株は免疫回避変異を有し、武漢原株のS蛋白に関する遺伝子情報から作成された現行ワクチンの中和反応を著明に抑制する。一方、英国株は免疫回避変異を有さず、現行ワクチンの効果を有意に抑制することはない。世界各国で承認されつつある現行ワクチンの第III相試験は、2020年の夏から秋にかけて施行されたものであり、その時点で流布していた主たるウイルスはD614G株であった。すなわち、現行ワクチンの第III相試験はD614G株に対する効果を検証したものであることを忘れてはならない。 本研究にあっては、BNT162b2の第III相試験(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.)の場合と異なり、発症予防効果(有症状で鼻咽頭液のPCR陽性者に対する予防効果)だけではなく感染予防効果(症状の有無にかかわらずPCR陽性者に対する予防効果)、重症化予防効果、入院予防効果、死亡予防効果を解析している。2回目のワクチンは95%の対象において1回目のワクチンより24日以内に接種された。ワクチン2回接種の効果は、第III相試験の場合と同様に2回目のワクチン接種後7日以上経過した時点で判定され、発症予防効率:94%、症状の有無にかかわらない全体的感染予防効率:92%、重症化予防効率:92%、入院予防効率:87%であった。発症予防効率を見る限り、第III相試験において得られた値(95%)と確実に一致、他の指標においても90%内外の予防効果を示しておりBNT162b2の高い臨床的有用性を示している。さらに、本研究の結果は、BNT162b2がD614G株だけではなく英国株に対しても有効な抑制作用を発揮することを示唆している。同様の結果は、アデノウイルス(Ad)をベクターするPfizer社のChAdOx1、Johnson & Johnson社のAd26.COV2.Sにおいても確認されている(Fontanet A, et al. Lancet. 2021; 397:952-954.)。これら2種類のAdワクチンは、D614G株、英国株に対しては有効な発症予防効果を示したが南アフリカ株に対する発症予防効果は明確に抑制されていた。 本研究にあって特記すべき事項は、BNT162b2の1回接種による効果が検証されていることである。1回接種の効果を1回目のワクチン接種後21~27日の期間で判定すると、発症予防効率:66%、症状の有無にかかわらない全体的感染予防効率:60%、重症化予防効率:80%、入院予防効率:78%、死亡予防効率:84%であった。発症予防効率を見る限り、単回接種のAdワクチンとして米国FDA、EU-EMA、WHOの承認を受けているJohnson & Johnson社のAd26.COV2.Sの発症予防効果(66%)と同等である。すなわち、RNAワクチンであるBNT162b2も2回接種ではなく単回接種でも十分なる臨床的有効性を発揮するものと思慮され、パンデミックのワクチン不足が深刻なときにはワクチン接種計画を練り直し単回のBNT162b2接種を推し進めることも間違いではないはずである。 BNT162b2を中心としたワクチン接種が世界レベルで推し進められた場合、D614G株に対するワクチン疑似感染による集団免疫を獲得する地域/国が増加する(おそらく英国株に対しても集団免疫が確立されるものと予測される)。あるウイルスに対する集団免疫はその集団に属する人の40%以上が自然あるいは疑似感染した場合に確立される(山口. 日本医事新報 5026:26-31, 2020)。D614G株、英国株に対する集団免疫が確立されると、南アフリカ株、ブラジル株と同等、あるいは、それ以上の集団免疫を無効にする強力な免疫回避変異が形成される可能性がある。これは、ウイルスの環境適応であり、強固な集団免疫形成下でも自らの生存を維持するためのウイルスの自然発生的進化である。以上の内容を、ブラジル株、南アフリカ株の発生をもとに考えてみよう。ブラジルの大都市マナウスでは昨年の5月に感染ピークを有するD614G株に起因する重篤な1次波を経験した。その結果、住民の70%以上がD614G株に感染し、この地域においてD614G株に対して完全な集団免疫が確立された。マナウスでは、夏から秋にかけて感染増大もなく新型コロナはD614G株に対する集団免疫の結果として終息したと考えられた。しかしながら、2020年12月より再発を含むコロナ感染/入院患者数が急増しD614G株ではない新たな株による感染が強く疑われた。遺伝子検査の結果、新規変異株であるブラジル株が蔓延していることが判明した。ブラジル株は外来のウイルスではなくブラジル国内で自然発生した変異株である。ブラジル株には、免疫回避変異を認め、D614G株の自然/疑似感染に対して強い抵抗性を示す複数の変異が同定された。南アフリカにおいてもD614G株による重篤な1次波を経験した地域(東ケープタウン州)で免疫回避変異を有する新規の南アフリカ株(外来ではなく南アフリカ国内で発生)が検出され、12月初旬には南アフリカ全土において南アフリカ株がウイルスのほぼ100%を占めるようになった。以上のブラジル、南アフリカでの免疫回避変異を有するウイルスと同等の新規変異株がワクチン疑似感染によるD614G株に対する集団免疫が確立されてから数ヵ月前後で本邦でも発生する可能性がある。それ故、現行のワクチン接種をコロナ感染症制御の最終段階と考えるのではなく、それ以降の免疫回避変異を有する変異ウイルスの推移を十分なる警戒心を持って見守る必要があることを強調したい。

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第50回 宮城の新型コロナ急増と4つの原因

新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)の感染者急増に伴い、1都3県に対して発出されていた新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言が3月21日一杯で解除された。これにより2ヵ月半ぶりに日本国内に緊急事態宣言対象地域は無くなったことになる。しかし、すでに各地で感染は拡大傾向を示している。その中でも顕著なのが宮城県。3月24日時点で直近1週間の人口10万人あたりの感染者数は33.30人。以下順に沖縄県の23.19人、東京都の15.57人、山形県の12.80人、大阪府の12.21人、千葉県の11.46人、埼玉県の10.60人となり、以下は10人未満になる。ちなみに一桁台の筆頭は北海道の8.72人である。私は宮城県出身で中高時代は仙台市で過ごし、今も両親は現地に住んでいる。しかも、実は約2週間前は仙台市に滞在していた。これは10年の節目を迎えた東日本大震災の取材と今年2月13日に福島県沖を震源として発生したマグニチュード7.3の地震で、実家が震度6弱の揺れに襲われ、家財の一部などが破損したことなどから実家の様子を見に行ったからである。しかし、なぜ宮城県でこれほど感染者が増加したのかという思いもある。そもそも総人口約230万人、県庁所在地の仙台市が人口約110万人という宮城県では2020年中の1日当たりの最大感染者報告数は12月26日の56人。その直前の12月中は1日当たり40人台後半の感染者が報告されていたことが多く、宮城県と仙台市はすでに12月23日、東北最大の歓楽街と言われる仙台市青葉区国分町周辺の飲食店に対し、12月28日~今年1月11日までの15日間、午後10時までの営業時間短縮を要請した。この時短要請地域はほぼ正方形で450m×400mという極めて限定したものだったが、ここに約2400店舗の飲食店があると言われている。私はちょうど年末年始も仙台にいたが、この政策は国分町で営業する地元飲食店関係者にはすこぶる不評だった。というのも、この時短要請地域からわずか徒歩10分程度で、JR仙台駅周辺に行け、そこは時短要請対象外。しかも、仙台駅周辺は東京資本の飲食店などが多く、地元飲食店経営者からすれば「みすみすヨソ者に儲けさせている」との不満が出てきてしまうのだ。もっともこの時短要請は期限間近で地域限定のまま14日間延長され、さらに延長期限直前には市全域を対象として追加で14日間延長、2月8日で解除となった。解除直前の宮城県全体での1日当たりの平均感染者報告数は一桁となり、確かに一定程度の効果があったと考えられる。ところが月末の2月27日には1日の感染者報告数が19人となり、これ以降次第に右肩上がりで感染者が増加し始めた。月末から上がり始めたということは、その感染の機会はおおむねの潜伏期間5~7日を考えれば、2月14日(日曜日)の週からということになる。ところが単純に考えると、それでは辻褄が合わない。というのも、前述の福島沖での地震の結果、東北新幹線は栃木県の那須塩原駅から岩手県の盛岡駅の区間は2月13日~23日まで完全に運休してしまったからだ。もっとも首都圏から宮城県への抜け道はほかにもあった。太平洋沿岸を走る常磐線で運行していた特急ひたちと、この事態に応じて全日空と日本航空が臨時で運行した羽田-仙台便の空路、さらには仙台に向かう高速バスである。もっとも代替手段があるとはいえメインである「早い・安い」の東北新幹線が運休した影響は大きかったはずで、データはないもののこの期間に本来想定された人の移動は、一定程度減少したはずである。なのになぜ感染者が増えてしまったのか? 実はその一端はすでに報道されている。そしてこれについて取材に応えているのは、ほとんどが厚生労働省のクラスター班でも活躍する東北大学大学院歯学研究科の小坂 健(おさか けん)教授である。代表的な記事は地元紙河北新報の「宮城でコロナなぜ拡大? 専門家『多様な要因が複合的に作用』」だ。ここから抜粋すると、その原因は以下のようになる。(1)大学入試による受験者の移動(2)福島県沖地震の復旧や被害査定の関係者の県外からの来訪(3)飲食業支援策「Go To Eat」のプレミアム付き食事券の再販売(4)東日本大震災関連行事の参加者・取材者の流入ちなみにこの箇条書きは上から順に時系列となっている。(1)だが、宮城県は国公立大学より一足早く入試が始まる私立大学が12校あり、その入試は概ね2月上旬、合格発表が2月中旬である。実はこの点に着目すると、やや興味深い相関が見える。宮城県にある私立大学で最も学生数が多く、偏差値も高いのが東北学院大学である。ちなみにその学生数は1万1,000人弱で、東北を代表する旧帝国大学の総合大学、東北大学よりも学生数は若干多い。ちなみに同大学は宮城県出身が受験者・最終入学者の半数以上を占めるが、他の東北5県からの受験者・最終入学者も合計3割強となる。そして前述のような時短要請のため宮城県は2月上旬から中旬にかけて感染者数が減少していたが、実はデータを見るとこの時期、他の東北5県は感染者報告数が一時的に軽い山、すなわち増加傾向にあった。ここでは東北学院大学を代表例としたが、宮城県内の私立大学の受験者・最終入学者の出身県などは、おおむね他の大学も似たような傾向がある。その意味では現在の宮城県の第4波ともいえる感染者増加のベースにあったのは私立大学受験者の移動とも考えられる。そこにきて次なるインパクトとして(2)~(4)があり、さらに(3)~(4)の間に(1)のうち国公立大学入試が行われている。正直、これらの要因どれ一つとっても、その動きの背後に「悪意」はまったくない。今回の新型コロナパンデミックを機に頻用されるようになった「不要不急」という言葉を使うならば、それに該当する筆頭は(3)(4)、とりわけ(3)となるかもしれない。もっとも生き物としてのヒトの生業として食は必要であり、なによりヒトはコミュニケーションをする生き物であることを考えれば、私は(3)ですら「不要不急」という言葉を当てはめたくない。今回の宮城県のケースは、誰もほぼ悪意のない活動の結果、ヒトの移動と接触が一次的に増加・蓄積することで感染の急拡大を招くという、ヒトの急所を突くこのウイルスのいやらしさを改めて思い知らされる。そして今、次なる歓迎できない動きが見え始めている。それは宮城県と隣接する山形県での感染者急増である。もともと宮城県の県庁所在地である仙台は俗に「東北の首都」とも言われ(もっとも仙台人と言ってもよい私のような人間がこの言葉を使うと他の東北5県の人たちからは嫌な顔をされるのだが)、周辺各県との人の往来は多い。とりわけ山形市や福島市、岩手県南部の一関市などの住民は、仙台市まで電車・新幹線、あるいは車で最大所要時間1時間程度ということも手伝って、買いものなどで気軽に仙台を訪れる。つまり宮城県の感染者急増が山形市の感染者急増を招いていると言え、同じことは東北の他の地域でも十分起こり得る。こうした嫌な感染急増モデルは、名古屋市を中心とする東海地域、金沢市を中心とする北陸地域、福岡市を中心とする九州北部地域など、「地域首都」とそれを取り巻く経済圏という類似した構造を持つ地域にとっても対岸の火事ではない。まして感染者が下げ止まらず、やや「投げやり的」とも言える緊急事態宣言解除に至った首都圏は、最も感染再急増の危険にさらされている。このように宮城県の事例を眺めるにつけ、相当気を引き締めないと首都圏は休む間もなく第4波にのまれるのではないかとの懸念を改めて強くしている。

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サスティナブルな医療の一歩へ~新たな知識を何でものみこもう

『何でものみこむアンチエイジング』をテーマに掲げ、第21回日本抗加齢医学会総会が2021年6月25日(金)~27日(日)に国立京都国際会館で開催される。この一風変わったテーマの真意を大会長である内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授)に聞くとともに、大会長一押しのシンポジウムについてインタビューした。何でも“のみこむ”ことがイノベーションの起爆剤今回の学会テーマを「何でものみこむ」にした理由は、飲食に限らず、多彩な学術情報を嫌わずに何でも受け入れ、その中から科学的基盤に基づいて新たなイノベーションを創造してほしいという意味を込めたからです。私自身の経験として、腸内細菌叢の研究をのみこんで消化してみようと思い立ったのは今から約5年前のこと。その当時、腸内細菌叢に関する遺伝子解析が可能になったり世間で腸内フローラに関する話題が沸騰したりと、“腸内細菌叢”が研究分野として脚光を浴びる大きなチャンスでした。また、消化器科専門医として食事で健康を維持することを大事にしていた私は、腸内環境と疾患の関連性にも惹きつけられていました。たとえば、多発性硬化症とクローン病は病態発症に縁もゆかりもないですが、それらの患者さんにおいて腸内細菌叢が類似していた症例に遭遇し、これは私に大きな影響を与えました。そして、この研究をさらに深く追求したその先に抗加齢医学があり、現在に至っているわけです。“身体にいい”は科学的にも良い?医学の枠を越えたシンポジウム今回、大会長を務めるにあたり、何でも嫌わず自身のものにするという観点で企画立てました。参加者に新たな知見を吸収・消化して各々の研究分野に役立ててほしいという思いを込め、抗加齢医学会に属していない方も演者にお招きしています。企画に注力した会長特別企画では、『機能性食品や機能性を有する農林水産物の今!(仮題)』と題し農業由来のアンチエイジング研究について発表していただきます。たとえば、「身体に良い」と言われる農林水産物は本当に身体に良いのかどうかを科学的に分析した例など、いわゆる“国プロ”(公的研究開発プロジェクト)を多数推進してきた農研機構の山本 万里氏らを招聘し“農林水産物をいかに社会実装していくか”というポイントでお話いただく予定です。抗加齢の意識がSDGsを導く手立てに抗加齢医学の根本は「何を食べるか」から始まり、持続性のある発展を目指すためには食物に関する研究が不可欠であると私は考えています。抗加齢医学は今、エピジェネティクスの影響を受け、人生100年時代を超え“人生120年続く時代”が囁かれているんですが、これは老化の時計を進めない、むしろ逆戻りさせるための老化メカニズム研究が目まぐるしく発展している成果とも言えます。しかし、医学が発展しているからといって「60歳になったから」とか「老化を感じるから」とその時だけ抗加齢を意識するのは見当違いなんです。人間は母体にいる時からさまざまな栄養や環境の変化を受け、生まれてきます。とくに腸内細菌叢は出産時の母体の体調が大きく影響しますし、そこを基盤に未来の食事摂取状態や環境変化にさらされていくのです。そのため、社会的な視点で注目されているSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の概念は抗加齢医学にも非常に通じるところがあります。ぜひ、このような視点や感覚を本総会やこの会長特別企画で学んでもらいたいと考えています。このほかにも発がんリスク因子や免疫老化・細胞老化、コロナ関連、食物繊維に関する研究報告など多数の演題をご用意しています。新型コロナ感染対策に配慮し会場とWebを併用したハイブリッド形式で開催いたしますので、多くの皆さまのご参加をお待ちしております。

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HIV-1への広域中和抗体VRC01、感染予防効果は?/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)CD4結合部位を標的とする広域中和抗体(bnAb)の「VRC01」は、プラセボと比較してあらゆるHIV-1感染の予防効果はみられなかったが、VRC01感受性HIV-1分離株の解析から、bnAbによる予防は効果的であるとの概念は実証されたという。米国・Fred Hutchinson Cancer Research CenterのLawrence Corey氏らが、VRC01のHIV-1感染予防効果を検証した多施設共同無作為化二重盲検比較試験「HVTN 704/HPTN 085試験」および「HVTN 703/HPTN 081試験」の結果を報告した。bnAbによりHIV-1感染を予防できるかどうかは、これまで知られていなかった。NEJM誌2021年3月18日号掲載の報告。VRC01の2用量の有効性をプラセボと比較 「HVTN 704/HPTN 085試験」は、北米南米および欧州においてリスクを有するシスジェンダー男性およびトランスジェンダーを対象に、「HVTN 703/HPTN 081試験」は、サハラ以南のアフリカにおけるリスクを有する女性を対象としてそれぞれ行われた。 研究グループは、対象者をVRC01の10mg/kg群(低用量群)、30mg/kg群(高用量群)またはプラセボ群に無作為に割り付け、それぞれ8週ごとに計10回点滴投与し、4週ごとにHIV-1検査を実施した。また、TZM-blアッセイ法を用いて、得られた臨床分離株のVRC01 80%阻害濃度(IC80)を評価した。 2016年4月6日~2018年10月5日に、「HVTN 704/HPTN 085試験」に計2,699例が登録された。また、2016年5月17日~2018年9月20日に、「HVTN 703/HPTN 081試験」に計1,924例が登録された。VRC01はHIV-1感染全体として予防効果はないが、感受性株には有効 有害事象は、各試験内の治療群間で発現件数や重症度は類似していた。 HIV-1感染は、HVTN 704/HPTN 085試験(2,699例)において低用量群で32例、高用量群で28例、プラセボ群で38例が発生し、HVTN 703/HPTN 081試験(1,924例)においてはそれぞれ28例、19例、29例が発生した。HVTN 704/HPTN 085試験におけるHIV-1感染発生率(100人年当たり)は、VRC01統合群2.35、プラセボ群2.98であった(推定予防効果:26.6%、95%信頼区間[CI]:-11.7~51.8、p=0.15)。HVTN 703/HPTN 081試験においては、VRC01統合群2.49、プラセボ群3.10であった(8.8%、-45.1~42.6、p=0.70)。 事前に規定した両試験の統合解析の結果、VRC01感受性分離株(IC80<1μg/mL)による感染発生率(100人年当たり)は、VRC01群0.20、プラセボ群0.86であった(推定予防効果:75.4%、95%CI:45.5~88.9)。 感受性分離株に対する予防効果は、VRC01の各用量ならびに各試験で類似していたが、VRC01は他のHIV-1分離株の感染の予防効果は認められなかった。

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J&Jの新型コロナワクチン、単回接種で速やかな免疫応答を誘導/JAMA

 Janssen Pharmaceuticalsが開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規ワクチン候補「Ad26.COV2.S」について、第I相試験の一部として米国マサチューセッツ州ボストンの単施設で実施された無作為化二重盲検比較試験において、Ad26.COV2.Sの単回接種により速やかに結合抗体および中和抗体が産生されるとともに、細胞性免疫応答が誘導されることが示された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのKathryn E. Stephenson氏らが報告した。COVID-19パンデミックのコントロールには、安全で有効なワクチンの開発と導入が必要とされている。JAMA誌オンライン版2021年3月11日号掲載の報告。25例で、ワクチン2用量の免疫原性をプラセボと比較 研究グループは、Ad26.COV2.Sワクチンのヒトにおける免疫原性(SARS-CoV-2スパイク特異的液性および細胞性免疫応答の動態、強さ、表現型など)を評価する目的で、2020年7月29日~8月7日の期間に25例を登録し、Ad26.COV2.Sをウイルス粒子量5×1010/mL(低用量)、同1×1011/mL(高用量)、またはプラセボを、1回または2回(56日間隔)筋肉内投与する群に無作為に割り付けた。 液性免疫応答として接種後複数時点でのスパイク結合抗体および中和抗体、細胞性免疫応答としてT細胞反応(ELISPOTおよび細胞内サイトカイン染色法)を評価した。 本論では、中間解析として71日目までの追跡調査(2020年10月3日時点)に関する結果が報告されている。持続性に関する追跡調査は2年間継続される。単回接種後、結合抗体および中和抗体の速やかな産生と細胞性免疫応答が誘導 全25例(年齢中央値42歳[範囲:22~52]、女性52%、男性44%、区別なし4%)が71日時点の中間解析評価を受けた。 初回接種後8日までに、結合抗体はワクチン接種者の90%に、中和抗体は25%で検出された。57日目までに、両抗体は単回接種者の100%で検出された。 ワクチン接種者において、71日時点のスパイク特異的結合抗体の幾何平均抗体価は2,432~5,729、中和抗体の幾何平均抗体価は242~449であった。また、さまざまな抗体のサブクラス、Fc受容体結合能、抗ウイルス機能が誘発されたこと、CD4+およびCD8+ T細胞応答が誘導されたことも確認された。 現在、Ad26.COV2.Sの有効性を評価するため、2件の第III相試験が進行中である。

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