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B群髄膜炎菌ワクチン、淋菌感染症を予防せず/NEJM

 淋菌感染症リスクが高い男性間性交渉者(MSM)において、B群髄膜炎菌ワクチン(4CMenB)はプラセボと比較して、淋菌感染症の発生率の低下をもたらさなかった。オーストラリア・Griffith UniversityのKate L. Seib氏らGoGoVax Study Teamが、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。現状、淋菌感染症の予防として承認されているワクチンはない。淋菌と髄膜炎菌は近縁な細菌であり、観察研究において、4CMenBが淋菌感染症のリスクを低下させる可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2026年7月8日号掲載の報告。淋菌感染症または梅毒既往のMSMを対象に、4CMenB vs.プラセボ 本試験の対象は、HIV陰性でHIV曝露前予防(PrEP)を受けている、またはHIV陽性の年齢18~50歳のMSMで、直近18ヵ月以内に淋菌感染症または梅毒の診断記録があることを適格条件とした。 研究グループは対象者を、4CMenBまたはプラセボ(生理食塩水)を受けるよう1対1の割合で無作為に割り付け、3ヵ月の間隔を空けて2回の筋肉内投与を行った。無作為化は、Webベースシステムを用い、試験施設ごとに層別化した順列ブロック法にて実施した。 四半期ごと2年間にわたり、泌尿生殖器、肛門直腸、中咽頭から採取した検体を用いた核酸増幅検査で淋菌を含む性感染症のスクリーニングを実施した。 主要アウトカムは、ワクチンまたはプラセボ投与後の初発の淋菌感染症とした。解析は、per-protocol集団(4CMenBまたはプラセボを受け、2回投与後、予定されていたスクリーニングを少なくとも2回受け、有効性の評価に関する除外基準をいずれも満たさなかった参加者)で評価した。淋菌感染症の発生率比は1.01 2021年7月~2023年5月に、654例が無作為化され、587例が主要解析の対象に含まれた(4CMenB群296例、プラセボ群291例)。ベースラインの患者特性は両群で類似しており、平均年齢は34.2歳、HIV陽性者は9.5%、淋菌感染症の診断既往者は89.6%であり、61.4%(データが入手できた565例のうち347例)が直近6ヵ月に10人超と性交渉を持っていた。 淋菌感染症の発生率は100人年当たり、4CMenB群48.1件(296例において160件)、プラセボ群47.8件(291例において155件)であり(発生率比:1.01、95%信頼区間[CI]:0.80~1.26、p=0.97)、ワクチンの有効率([1-発生率比]×100で算出)は-0.5%(95%CI:-26.2~19.9、p=0.97)であった。 ワクチン有効率は、症候性感染症に対しては5.5%(95%CI:-56.0~42.8)、無症候性感染症は-6.4%(95%CI:-47.5~23.2)であり、部位別では、泌尿生殖器に対しては-20.0%(95%CI:-90.2~23.9)、肛門直腸は-1.2%(95%CI:-33.0~23.0)、中咽頭は2.6%(95%CI:-27.7~25.7)であった。 重篤な有害事象は、4CMenB群の4.7%、プラセボ群の2.8%で発現した(p=0.20)。

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加糖飲料の摂取は肝細胞がん・肝内胆管がんのリスク増加と関連

 11件の長期追跡研究に参加した150万人以上の成人の食事データを解析した研究で、加糖飲料の日常的な摂取は肝細胞がん(HCC)および肝内胆管がん(ICC)のリスク増加と関連することが示された。米国立がん研究所(NCI)のCody Watling氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月10日掲載された。 肝がんは世界で3番目に多いがん死亡の原因である。肝がんの主な組織型で最も多いのはHCCで、肝がん全体の75〜85%を占めている。研究の背景情報によると、HCCの主なリスク因子には、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)の慢性感染、過度の飲酒、喫煙、アフラトキシン類汚染食品の摂取、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、糖尿病、肥満などの代謝性疾患が含まれるが、HCCの35%は既知のリスク因子では説明できないという。肝臓は主要な代謝器官であり、解毒において重要な役割を果たしていることから、食事などの外因性因子による影響を受けやすいと考えられる。 こうした点を踏まえて今回の研究では、がん発症を長期追跡した11件の前向きコホート研究のデータを用いて、人工甘味料入り飲料(ASB)および加糖飲料(SSB)の摂取と、肝がん全体、HCCおよびICCの発症リスクとの関連を検討した。ASBにはダイエットソーダやダイエットコーラ、その他の低カロリー甘味飲料が含まれた。一方、SSBにはコーラ、炭酸飲料、カフェインレス炭酸飲料、ジュース類などが含まれた。 11件のコホート研究のうち、10件は米国のコホート、残る1件はヨーロッパのコホートを対象としたもので、いずれの研究参加者もベースライン時点でがんの既往がなかった。研究参加者は1980~2009年に各コホート研究へ登録され、その後、2000~2019年まで追跡された。追跡期間中央値は11.4~31.4年で、参加者の総計は151万8,411人(平均年齢57.8歳、女性58.2%)に上った。 追跡期間中央値17.8年の間に、2,811人(HCC:1,699人、ICC:444人)が肝がんを発症した。解析の結果、ASBの摂取量が1日1杯増加しても肝がん全体、HCCおよびICCの有意なリスク増加は認められなかった。また、SSB摂取量が1日1杯増加しても肝がん全体のリスクとの関連は認められなかったが、HCC(ハザード比1.10、95%信頼区間1.03~1.18)およびICC(同1.15、1.00~1.32)のリスク増加と関連していた。糖尿病の有無による有意な効果修飾は認められなかった。 ただし研究グループは、この結果はSSBが肝がんの原因であることを証明するものではないと強調している。それでもなお、SSBの摂取が長期的な健康リスクと関連するというこれまでの証拠を補強するものだとの見方を示している。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療薬への期待/中外

 中外製薬は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する国内初の再生医療等製品として、デランジストロゲン モキセパルボベク(商品名:エレビジス点滴静注)を2026年2月20日に発売した。この発売によせて、本剤の概要や治療における臨床的位置付けなどについて、発売後の適正使用推進体制の説明と合わせてメディアセミナーを開催した。 DMDは、筋肉に関わるタンパク質のジストロフィン産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症する希少遺伝性疾患。幼少期に発症し、徐々に筋力が低下していくことで日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期からの適切な治療介入が求められる。未治療だと呼吸不全などを起こし、生命予後に影響する。 デランジストロゲン モキセパルボベクは、短縮型ジストロフィンの発現を介してDMDの原因に働きかけるようデザインされた薬剤である。2025年5月13日に条件及び期限付承認を取得し、2026年2月20日に薬価収載・販売された。筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐ治療薬 はじめに同社からデランジストロゲン モキセパルボベクの製品説明が行われた。本薬剤の構造は、機能的な短縮型ジストロフィンであるデランジストロゲン モキセパルボベク マイクロジストロフィン(以下「マイクロジストロフィン」)をコードする遺伝子を含む非複製型の遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであり、骨格筋および心筋での発現を最適化するα-ミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーター/エンハンサーにより制御する。 本薬剤の作用機序としては、搭載されたマイクロジストロフィン遺伝子が骨格筋および心筋で発現すると考えられる。また、マイクロジストロフィンが筋細胞で発現することで、筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐと考えられている。本薬剤はすでに薬価収載・販売されているものの、条件及び期限付承認であり、第III相試験が現在行われている。生命予後が40歳に届くのが難しい希少疾病 「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の疾患と治療、遺伝子治療の診療体制、適正使用と臨床的位置づけについて」をテーマに小牧 宏文氏(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター センター長)が疾患概要について、講演を行った。 DMDは、ジストロフィンの欠損などにより筋肉が壊れやすく、かつ不可逆的な変性により、筋肉の再生ができない疾患。2~4歳ごろに症状が現れ始め、自然歴では5歳ごろをピークに運動能力が低下、ガワーズ徴候などがみられ、10歳前後に歩行能喪失となり車椅子が必要になる。未治療では呼吸器筋や心筋に影響があり、生命予後は10代とされる。現在でも、患者の生命予後はいまだ30歳前後を超える程度であり、根本治療が求められている。ただ、近年では、専門の医療施設で30代後半まで生命予後が延長しており、最近は大学生も多くなったほか、就労している患者もいる。 治療は、プロアクティブかつ包括的な多職種連携の診療が集学的治療(ベース治療)として確立され、患者の社会参加や就労・就学の実現に向けて治療が行われている。具体的には、呼吸管理として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の適切な導入と定期的モニタリング、呼吸リハビリテーションがなされ、身体機能管理として関節可動域訓練、姿勢管理、拘縮などの予防が行われている。薬物療法としてはステロイド投与による歩行可能期間の延長、全身管理としてACE阻害薬などを用いた心機能ケア、栄養指導、嚥下機能評価などが行われている。 とくに薬物治療について、2026年6月現在でステロイド、ビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)、そして、デランジストロゲン モキセパルボベクを用いることができる。デランジストロゲン モキセパルボベクのような遺伝子治療が求められる医学的背景として、病状管理の継続を前提としつつ、「根本原因(ジストロフィン欠損)へと直接アプローチする次世代治療の導入が臨床現場における長年の課題であった」と小牧氏は説明した。投与前、投与後でも適切なフォローが必要なデランジストロゲン モキセパルボベク デランジストロゲン モキセパルボベクによる治療の流れとしては、投与前のスクリーニングにおいて、抗AAVrh74抗体が陰性であることの確認に加え、禁忌となる特定の遺伝子変異(エクソン8および/または9の欠失)の除外が行われる。さらに、免疫抑制および有害事象予防を目的に、本薬剤の投与前よりプレドニゾロンの投与が開始される。投与後は免疫介在性筋炎などのモニタリングのために、投与後3ヵ月は継続的な血液検査が行われる。投与後は免疫抑制作用があるので基本は自宅療養となる。 本薬剤の承認のために国際共同第III相臨床試験EMBARK試験パート1が行われた。遺伝子変異が確認された4~7歳の歩行可能な男児125例を対象に、安全性と有効性を評価した国際共同第III相ランダム化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験。主要評価項目はノース・スター歩行能力評価(NSAA)総スコアのベースラインから52週までの変化量、主な運動機能に関連する副次評価項目は、床からの立ち上がり時間(TTR)、10m歩行/走行(10MWR)を評価した。 その結果、高いほど良好を示すNSAAによる総スコアについて、52週時点でデランジストロゲン モキセパルボベク群は2.57ポイントの向上だったのに対し、プラセボ群は1.92ポイントの向上だった(群間差:0.65、p=0.24)。また、副次評価項目であるTTR時間のベースラインから52週までの変化量では、デランジストロゲン モキセパルボベク群が-0.27秒、プラセボ群が0.37秒、群間差は-0.64秒だった(p=0.0025[名目上のp値])。 本剤では厳格な適格性確認とモニタリングが求められる継続的な管理が必要とされる。とくに投与後約90日間は肝酵素、心筋逸脱酵素、血小板などを週1回程度測定し、異常検知時はBRIDGE-NMD(神経筋疾患遺伝子治療安全性最適化ネットワーク)と即時連携がされる。その理由として、米国で非歩行患者への投与で急性肝不全が発生し、その後死亡した症例の報告があったためとされる。 わが国では、安全対策の強化として全国の患者、全国の医師と日本小児神経学会などに所属する医師をつなぎ、専門的な助言や情報提供・相談、患者への適正な治療の提供ができる体制を「Eコンサルテーション」として構築している。 今後は、レジストリを活用した長期的なエビデンス構築とともに、免疫介在性反応、海外の重篤な有害事象を集め、施設要件と適応の厳格化、BRIDGE-NMDによる全例事前評価、投与後の集中モニタリングなどを通じて、安全性リスクに対して構造的に対応する。 最後に小牧氏は、「固有のリスクを客観的に評価し、個人の経験則ではなく、国レベルの構造的なインフラによって安全性を管理する体制が稼働している。非常に今回良かった点としては、産官学連携がうまくいっていることであり、今後もしっかり安全性を重視しながら、この体制を維持していきたい」と抱負を述べ、講演を終えた。

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診療科別2026年上半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Nerandomilast in progressive pulmonary fibrosis: data from the whole follow-up period of the FIBRONEER-ILD trialWijsenbeek MS, et al. Eur Respir J. 2026 Mar 26. [Epub ahead of print].<FIBRONEER-ILD試験>:ネランドミラストはPPFの臨床的イベントと死亡リスクを低減進行性肺線維症(PPF)を対象としたFIBRONEER-ILD試験の全追跡期間データです。ネランドミラストは、52週時のFVC低下抑制に加え、ILD急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡を含む臨床的に重要なイベントのリスクを低減しました。とくに死亡リスクは両用量でプラセボより低く(ハザード比[HR]:0.51)、有害事象による中止もプラセボと同程度でした。PPFに対する新たな抗線維化治療として、今後の実臨床での位置付けが注目されます。Survival with Osimertinib plus Chemotherapy in EGFR-Mutated Advanced NSCLCJanne PA, et al. N Engl J Med. 2026;394:27-38.<FLAURA2試験>:オシメルチニブと化学療法併用はEGFR変異陽性進行NSCLCのOSを延長EGFR exon 19 deletionまたはL858R変異陽性の未治療進行非扁平上皮NSCLCを対象とした、FLAURA2試験の全生存期間最終解析です。オシメルチニブにプラチナ製剤+ペメトレキセドを併用すると、オシメルチニブ単剤に比べてOS中央値は47.5ヵ月vs.37.6ヵ月に延長しました(HR:0.77)。一方、Grade3以上の有害事象は70%vs.34%と多く、初回治療から併用する患者を慎重に選ぶ必要があります。Amikacin liposome inhalation suspension in newly diagnosed Mycobacterium avium complex lung disease (ARISE): a 6-month double-blind, active comparator trialDaley CL, et al. Ann Am Thorac Soc. 2026;23:536-547. <ARISE試験>:新規診断MAC症へのALIS追加で培養陰性化率が改善新規または再発の非空洞型MAC肺疾患患者を対象に、リポソーム化アミカシン吸入懸濁液(ALIS)の初期治療での有効性を評価した二重盲検実薬対照試験です。アジスロマイシン、エタンブトールにALISを追加した群では、6ヵ月目までの培養陰性化率が80.6%(対照群63.9%)、7ヵ月目までが78.8%(47.1%)と良好でした。QOL-B respiratory domainの改善も示されており、難治例だけでなく初期治療からALISを導入する意義を考えるうえで注目されます。Associations between antibiotic use and outcomes in patients hospitalized with community-acquired pneumonia and positive respiratory viral assaysBiebelberg B, et al. Clin Infect Dis. 2026;82:630-638.<ウイルス陽性市中肺炎>:短期抗菌薬と標準期間で臨床転帰は同等呼吸器ウイルス検査陽性の市中肺炎入院患者を対象に、抗菌薬0~2日と5~7日投与を傾向スコア重み付けで比較した後ろ向き研究です。調整後、入院期間、48時間後のICU入室、院内死亡率、30日間の非入院日はいずれも同等でした。細菌性肺炎が明らかでないウイルス陽性市中肺炎では、抗菌薬を漫然と継続しない判断を後押しするデータです。Oral corticosteroid reduction and discontinuation in adults with corticosteroid-dependent, severe, uncontrolled asthma treated with tezepelumab (WAYFINDER): a multicentre, single-arm, phase 3b trialJackson DJ, et al. Lancet Respir Med. 2026;14:129-140.<WAYFINDER試験>:テゼペルマブは重症喘息の維持OCS減量を後押しOCS依存性の重症非コントロール喘息成人を対象に、テゼペルマブ210mgを4週ごとに投与した第IIIb相単群試験です。52週時点で約90%が喘息コントロールを保ったまま維持OCSを5mg/日以下に減量し、50.3%が完全中止に到達しました。表現型にかかわらずOCS負担を減らせる可能性を示し、実臨床でのステロイド離脱戦略に重要な示唆を与えます。

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PPI、P-CABなどに「低マグネシウム血症」の重大な副作用追加/厚労省

 2026年7月14日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、PPIやP-CABなどの消化性潰瘍治療薬の「重大な副作用」および「重要な基本的注意」の項に、「低マグネシウム血症」に関する注意が追加された。  各製剤における低マグネシウム血症関連事象を評価した結果、PPI含有製剤と低マグネシウム血症との因果関係が否定できない症例*1が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。ただし、PPI単剤で因果関係の否定できない症例が複数確認できるため、一部のパック剤および配合剤*2についての集積状況は未確認であるという。*1:医薬品医療機器総合機構(PMDA)副作用等報告データベースに登録され、MedDRA PT「低マグネシウム血症、血中マグネシウム減少、マグネシウム欠乏」で当局報告された症例のうち、CTCAE(ver.6.0)におけるGrade3以上の症例かつPPI中止後に複数点での血中マグネシウム値が測定されている症例を抽出したもの。*2:アスピリン・ランソプラゾール配合剤、アスピリン・ボノプラザンフマル酸塩配合剤、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール 改訂内容は以下のとおり。【重要な基本的注意】 プロトンポンプインヒビター等の長期投与により低マグネシウム血症があらわれることがあるので、本剤を長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測定すること。 【重大な副作用】 低マグネシウム血症:プロトンポンプインヒビターの長期投与により、QT延長、痙攣、しびれ等を伴う低マグネシウム血症があらわれることがある。また、低マグネシウム血症に起因した低カルシウム血症、低カリウム血症等の電解質異常を伴う場合がある。これらの電解質異常が疑われる症状があらわれた場合には、血中マグネシウム濃度の測定を行い、異常が認められた場合は、マグネシウムの補充等の適切な処置を行うこと。 <医療用医薬品> ・オメプラゾール(商品名:オメプラール錠ほか) ・オメプラゾールナトリウム(オメプラゾール注射用20mg「日医工」ほか) ・ラベプラゾールナトリウム(パリエット錠ほか) ・ランソプラゾール(経口/注射、タケプロンほか)・エソメプラゾールマグネシウム水和物(ネキシウムほか)・ボノプラザンフマル酸塩(タケキャブほか) ・アスピリン・ボノプラザンフマル酸塩(キャブピリン配合錠)・アスピリン・ランソプラゾール(タケルダ配合錠)・ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン(ボノサップパック) ・ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール(ボノピオンパック)OTCの胃腸薬にも「相談すること」として追加 また、一般用医薬品で要指導医薬品として販売されているオメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウム含有製剤についても「相談すること」の項に改訂がなされた。服用後に副作用として、「吐き気、嘔吐、食欲不振、体がだるい、顔や手足の筋肉がぴくつく、一時的にボーっとする、意識の低下、手足の筋肉が硬直しガクガクと震える、しびれ、めまい、動悸、気を失う等があらわれる」可能性が追記され、症状があらわれた場合は直ちに医師の診療を受けるよう注意が追加された。 その他の医薬品における重大な副作用等の追加  また、同日付で以下の薬剤等についても改訂が行われたほか、インスリン アスパルト(フィアスプ注)においては、「37℃を超える高温下でのゲル化によるインスリンポンプ内部の閉塞(重篤な高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスの発現リスク)」に関する記載が「重要な基本的注意」に追加となった。<重大な副作用などが追加された製剤>・免疫チェックポイント9成分*3:血管炎・グセルクマブ(トレムフィア):肝機能障害・ドキソルビシン塩酸塩(リポソーム製剤、ドキシル):腎臓限局型血栓性微小血管症・イキサゾミブクエン酸エステル(ニンラーロ):血栓性微小血管症・カルボプラチン(カルボプラチン点滴静注液50mg「NK」):抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)・組換えRSウイルスワクチン(アブリスボ):ギラン・バレー症候群・抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(サイモグロブリン):血栓性微小血管症*3:アテゾリズマブ、アベルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ*4、レチファンリマブ)*4:血栓性微小血管症も追加

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重症感染症患者の遠隔モニタリング、自宅で過ごす日数は改善せず

 ウェアラブル機器やスマートフォンによる通信技術の進歩により、病院では患者を早期退院させ、自宅療養中の状態を遠隔モニタリングする取り組みが進められている。このアプローチは、例えば心不全など一部の疾患では有効性が示されている。しかし、新たな研究で、敗血症や下気道感染症などに対して遠隔モニタリングを行っても、患者が自宅で過ごす日数が増えることはなく、高齢患者ではむしろ日数が減る可能性が示唆された。米ピッツバーグ大学集中治療医学分野教授のSachin Yende氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月11日掲載された。 研究の背景情報によると、米国では毎年300万人を超える患者が、インフルエンザや敗血症、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの重篤な感染症で入院している。また、敗血症や下気道感染症から回復した患者では、その後1年以内の死亡率が約40%に達し、再入院の60%超は感染症の再発や心疾患・肺疾患の悪化によるものとされる。 研究グループによると、米国のメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は、医療へのアクセス向上と医療費削減の両立を目指す戦略として遠隔モニタリングを推進している。その結果、2019年から2022年にかけて、メディケア受給者における遠隔モニタリングの利用は10倍に増加した。Yende氏はニュースリリースで、「医療機関、保険会社、政策立案者はいずれも再入院の減少を望んでいるし、多くの患者も安全に自宅で回復することを希望している。遠隔モニタリングはその解決策として期待されており、CMSによる保険償還の対象にもなっているため利用が拡大している。しかし、一部の疾患を除けば、遠隔モニタリングが再入院の減少につながることを示す質の高いデータは極めて乏しい」と指摘する。 今回の研究では、19施設で敗血症または下気道感染症の治療を受けた21歳以上の患者1,286人(年齢中央値63歳、女性51.7%)を対象に、遠隔モニタリングの有効性を検証した。主要評価項目は、退院後90日間の自宅滞在日数であった。患者は、遠隔モニタリングを受ける群(887人)と通常のケアを受ける対照群(399人)にランダムに割り付けられた。遠隔モニタリングは質問票を用いた介入であり、質問票の強度(低強度〔短い〕/高強度〔長い〕)と、対応体制(通常のナースチームによる標準対応/多職種による強化対応)を組み合わせた4種類の介入が用いられた。 その結果、遠隔モニタリング群では対照群と比較して、退院後90日間の自宅滞在日数に改善は認められなかった。また、再入院率についても有意な改善は認められなかった。一方、65歳以上の患者では、遠隔モニタリング群では対照群と比較して自宅滞在日数が少ないことが示された。 研究グループは、「これらの結果は、CMSが再入院抑制における遠隔モニタリングの役割を再評価する必要があることを示唆している。また、重篤な感染症後の急性期後のケアでは、患者ごとの状況に応じた遠隔モニタリングを行うことの重要性を示している」と述べている。 さらに研究グループは、「今回の結果は、遠隔モニタリングを医療システム全体へ導入・拡大することの難しさを浮き彫りにしている。また、重篤な疾患から回復中の患者は、薬物治療やフォローアップ受診の予約、持続する症状への対応など複雑なケアを必要としており、そのような患者に遠隔モニタリングを適用することの課題を示してもいる」と結論付けている。

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第321回 糖尿病予防ワクチンの開発支援は患者の寄付、国はどう見る?

INDEX患者団体から大学への寄付IDDMの原因と研究背景佐賀大学での研究成果と日本IDDMネットワークの思い患者が身銭を切る現実、医療者は、政府はどう感じるか患者団体から大学への寄付世の中とはまだまだ知らないことにあふれている。最近、そう思わされることがあった。それはネットで流れてきた「糖尿病予防ワクチン開発へ1,000万円助成 佐賀大学が2029年完成目指し研究」というニュースだ。関係者には申し訳ないが、最初はネットニュースなどでありがちなin vitroのデータを基に「〇〇が××に効く」的に大げさに報じられたレベルのニュースかと思ったが、よく記事を読み、その内容を調べてみると、なかなかに面白い。糖尿病専門医ならばもはや周知のことなのかもしれないが、私自身は初耳だった。ニュースの概略は、1型糖尿病(IDDM)の発症に関与する可能性があるウイルスの感染を予防するワクチン研究に取り組んでいる佐賀大学の研究に対し、IDDMの患者団体である認定NPO法人・日本IDDMネットワークが1,000万円の研究助成金を提供したというものだ。患者団体が研究機関や研究者を支援するために、寄付を行うことは日本でも珍しいとまでは言えないが、私が知る範囲では、寄付金額は高くとも百万円単位。ちなみに寄付文化が日本より盛んな欧米などでは、患者団体が億単位の研究助成金を提供することもある。その意味では今回のケースは珍しい部類に入るだろう。IDDMの原因と研究背景さてIDDMとウイルス感染との関連だが、その端緒は半世紀以上前の1969年、英国からの研究報告1)である。余談ながら、同年は私が生まれた年である。この研究は、0~19歳のIDDMの新規発症が夏から秋・冬にかけて増加し、10月頃に緩やかなピークを迎えた後、翌夏にかけて減少していくパターンを示し、四半期単位でみると、統計学的に有意な変動があったというもの。研究者側は発症に季節性がある疾患は感染症に起因することが多いとの仮説に基づき、IDDM新規発症数の季節変動・年次推移と当時の英国公衆衛生研究所(現・英国健康安全保障庁)のウイルスの流行データを調べ、コクサッキーB群ウイルス(B1〜B5型)のB4型ウイルスの流行と若年のIDDMの年間新規発症数との間に有意な正の相関が認められたと報告した。もっともこの時点で論文に記述された結論は「私たちは、今回の結果が感染症と若年性糖尿病との関連性を示すさらなる証拠を提供するものであると結論付けるが、これらの知見の病因論的な(因果関係における)重要性については、いまだ不確実なままである」というものだった。そして同じ研究者が1973年に発表した研究2)はさらに一歩進んでおり、IDDM新規発症患者と非糖尿病かつ直近でウイルス感染症に罹患歴がない対照群との比較で、IDDM患者ではコクサッキーB4型ウイルスに対する中和抗体値が有意に高いと報告した。この件がより確信度が高くなったのは、さらに6年後の1979年に米国からもたらされた報告である。これは糖尿病性ケトアシドーシスで亡くなった10歳男児の膵臓ホモジネートを培養細胞に接種したところ、細胞へのウイルス感染が確認され、解析結果からそのウイルスがコクサッキーB4型ウイルスだと判明したとの症例報告である。コクサッキーB4型ウイルスが膵臓に感染している事実が判明したということだ。これが1症例の報告にもかかわらず、NEJM誌に掲載された3)という事実からも、その衝撃度は当時としても相当なものだったことが窺い知れる。その後、小児を対象にした複数の前向きコホート研究からコクサッキーB群ウイルスによる感染が、IDDMの発症に関与する自己抗体の陽性化に先行して起こることも確認された。後に、とくに発症への関与度が強いのは「コクサッキーB1型ウイルス」であることも判明している。佐賀大学での研究成果と日本IDDMネットワークの思いこうしたさまざまな研究から、現在推定されているコクサッキーB群ウイルスによるIDDM発症の機序は、ヒトに感染したコクサッキーB群ウイルスが膵β細胞に感染・増殖すると、β細胞で炎症が起き、β細胞のタンパク質が免疫細胞に提示され、自己反応性T細胞が活性化することで自己免疫反応が慢性化して発症に至るというものである。もっとも、現状でもコクサッキーB群ウイルスは、IDDMの原因と証明されたわけではなく、有力な環境因子ということでコンセンサスを得ている。そこで、今回の本丸である「日本IDDMネットワークが研究助成金を提供した研究」だが、佐賀大学医学部肝臓・糖尿病・内分泌内科特任教授(九州大学名誉教授)の永淵 正法氏らが取り組んでいるものである。永淵氏らは、ヒトのコクサッキーB群ウイルスが感染できる特殊な遺伝子改変マウスの作製に成功した。また、前述のようにコクサッキーB群ウイルスは、あくまで有力な環境因子という位置付けだが、永淵氏らはコクサッキーB群ウイルス感染でIDDMを発症しやすいのは、ウイルス感染時に感染拡大を食い止めるインターフェロンにかかわるインターフェロン受容体関連シグナル伝達分子のチロシンキナーゼ2遺伝子(TYK2)に変異がある場合であることを突き止めている。今後はコクサッキーB群ウイルス内でさらに糖尿病発症に関与度が高いウイルスの特定やワクチンデザインと動物実験での効果検証を経て臨床試験開始を目指しているという。そしてさらに驚いたのが、日本IDDMネットワークがこの研究に助成したのは、これが9回目で、提供した研究助成金は累計1億770万円。それほどまでに患者の期待は高いということだ。患者が身銭を切る現実、医療者は、政府はどう感じるか今回、この件で私がふと思い出したのが、記者になりたての1990年代後半、ある新聞で読んだ海外の糖尿病患者団体トップのインタビューである。記事でこのトップが語っていた「私たちが本当に望んでいるのは、良好なコントロールが得られることではなく治癒」という言葉に私は相当な衝撃を受けた。当時の私は、周囲の人間より医学知識が増えていたがゆえに、どこか得意になっていたところがある。たとえば、医学的な知識に乏しい人々が「〇〇の水を飲んだら、がんが消えたらしい」という話などをしていると、「がんが水ごときで治るはずはないだろう」と得意げに反論していた。当時、同じようなケースを糖尿病患者で目の当たりにしていれば、「糖尿病は一生治らないよ」と上から目線で話していたに違いない。前述の糖尿病患者団体トップの記事はそんな自分の慢心に冷や水を浴びせたものだった。たとえ医学的に不可能と言われようと、患者とは常に治癒を願うもの。以来、それを前提にどう報じるかが自分のミッションだと考えてきた。しかしだ、冒頭の書き出しを読めばわかる通り、私は再びそのことを忘れかけていたようである。そのうえであえて不遜な物言いをすれば、これは医療者にも少なからず共通することとは言えないだろうか?一方、今回の件を通じてもう1つ考えさせられたのは、一日千秋の思いで、より良い治療を待つ患者が身銭を切って研究者を支える現実である。本来これは公がやるべきことではないだろうか? 幸い(?)にも首相の高市 早苗氏は「責任ある積極財政」「先端技術を花開かせる成長投資を大胆かつ戦略的に進める」「攻めの予防医療」などを政権公約に掲げている。この言葉通りなら、ぜひとも全国津々浦々で行われている今回のような地道な研究にも目を向け、支援をしてもらいたいものである。参考1)Gamble DR, et al. Br Med J. 1969;3:631-633.2)Gamble DR, et al. Br Med J. 1973;4:260-262.3)Yoon JW, et al. N Engl J Med. 1979;300:1173-1179.

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日本初のMASH治療薬、MASLD/MASH診療は新たな局面に/ノボ

 代謝機能障害関連脂肪肝疾患(MASLD)および代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の診療は、近年病名変更や非侵襲的診断法(NIT)の進歩によって様変わりした。一方で、肝線維化の進展を抑制する薬物療法は長らく存在せず、生活習慣改善が治療の中心であった。そのような中、2026年6月、すでに肥満症治療薬として広く用いられているGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:ウゴービ)が、日本で初めてMASHを適応症とする追加承認を取得し、国内のMASLD/MASH診療は新たな局面を迎えた。 ノボ ノルディスク ファーマは6月30日にプレスセミナーを開催し、国際医療福祉大学 消化器内科統括教授の中島 淳氏が「日本初MASH治療薬がもたらす未来」をテーマに講演を行った。同氏は「これまでMASH患者が肝硬変や肝細胞がんへ進展していくのをみているしかなかったが、ようやく治療薬を手にすることができた」と述べた。「脂肪量」ではなく「線維化」が予後を決める MASLDは、かつてNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれていた疾患概念で、2023年に国際的なコンセンサスを得て名称が変更された。現在では代謝異常を背景とする脂肪性肝疾患として位置付けられ、その中で肝炎を伴う病態がMASHと定義されている。 日本ではMASLD患者は約2,500万例に達すると推定され、MASH患者も100万例規模に上ると考えられている。健康診断データでは脂肪肝の有病率は25.8%と4人に1人を超え、さらに進行線維化が疑われる症例も約1%存在するなど、肝疾患の中で患者数が最も多い疾患となっている。 MASLDは自覚症状に乏しい「サイレントキラー」である。線維化はF0からF4(肝硬変)へと数十年かけて進行するが、その速度は線維化の進展とともに加速する。F0~F1から肝硬変までは30年以上を要する一方、F2では約20年、F3では約6年で肝硬変に至るとされる。さらに肝硬変へ進展すると肝細胞がんや非代償性肝硬変のリスクが急激に高まる。 中島氏は、「疾患が悪化するかは脂肪肝であること自体ではなく、線維化がどこまで進んでいるかによるところが大きい」と説明した。実際、約9,700例を20年間追跡した解析では、脂肪量や炎症よりも線維化の有無が無イベント生存期間を最も強く規定する因子であることが示されている。 また、日本人MASLD患者を対象としたCLIONE試験では、線維化ステージの進展に伴い全死亡、肝関連イベント、肝細胞がんの発症率が段階的に上昇することも報告されている。死亡原因は肝疾患だけでなく、心血管疾患や他臓器がんも多く認められ、MASLDが全身性疾患であることも改めて示されている。診療のカギはF2以上のハイリスク患者をいかに拾い上げるか 一方で、近年は診断法も大きく進歩した。従来の肝生検に代わり、FIB-4 indexやM2BPGi、ELFスコアなどの血液バイオマーカーに加え、VCTE(FibroScan)やMRエラストグラフィなど非侵襲的検査が普及している。 2026年4月に改訂された「MASLD診療ガイドライン」では、FIB-4 indexを用いた1次リスク評価を起点とし、中間・高リスク例ではエラストグラフィや線維化マーカーを組み合わせて評価する診療アルゴリズムが推奨された。中島氏は、「最も重要なのはF2以上の患者を早期に見つけることであり、かかりつけ医と肝臓専門医との連携が不可欠になる」と述べた。 さらに同氏は、近年の肝細胞がんの原因も大きく変化していると指摘した。C型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬の普及によりC型肝炎由来の肝細胞がんは減少した一方、MASLD/MASH由来の肝細胞がんは増加を続けている。「都市部では肝切除症例の大部分がMASLD由来となっている」と述べ、今後の肝臓診療ではMASLD対策が重要課題になるとの認識を示した。ESSENCE試験で2つの主要評価項目を達成 今回の適応追加の根拠となったのは、F2またはF3線維化を有するMASH患者800例(日本人116例を含む)を対象とした国際共同第III相ESSENCE試験である。 被験者は標準治療+セマグルチド2.4mgまたはプラセボに2対1で無作為化され、72週時点で肝生検による組織学的評価が行われた。主要評価項目は、「線維化悪化を伴わないMASH消失」と「MASH悪化を伴わない線維化改善」の2項目であった。 その結果、「線維化悪化を伴わないMASH消失」はセマグルチド群62.9%、プラセボ群34.3%で達成され、「MASH悪化を伴わない線維化改善」もそれぞれ36.8%、22.4%となり、いずれも統計学的有意差を示した。 また、副次評価項目ではALT、AST、γ-GTPの改善に加え、CAPによる肝脂肪量、VCTEによる肝硬度、線維化関連バイオマーカーの改善も確認された。組織学的にも脂肪化や炎症、肝細胞風船様変性の改善が認められ、線維化改善を示唆する結果となった。 安全性については、新たな重大な懸念は認められなかったものの、悪心、下痢、便秘などGLP-1受容体作動薬に特徴的な消化器症状はプラセボ群より高頻度で認められた。実臨床では漸増投与や副作用マネジメントが重要となる。早期診断・早期介入の時代へ 中島氏は、「これまでは薬がなかったため、糖尿病医やかかりつけ医から専門医へ紹介されない患者も多く、腹水や巨大肝がんを契機に初めて紹介されるケースも少なくなかった」と振り返る。その上で、「今後はF2~F3の段階で患者を拾い上げ、治療介入することで、肝硬変や肝細胞がんへの進展を防げる可能性がある」と述べ、今回の適応追加を「MASLD/MASH診療におけるゲームチェンジャー」と位置付けた。 薬物療法の選択肢が加わったことで、MASLD診療は「経過観察」から「積極的治療」へと大きく転換しつつある。今後はFIB-4 indexをはじめとする非侵襲的評価を活用したハイリスク患者の早期抽出と、適切な専門医紹介、薬物療法を含めた包括的な管理体制の構築が、国内のMASH診療における重要な課題となりそうだ。【最適使用推進ガイドライン抜粋】・適応:「肝硬変を伴わないMASH。ただし、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る」→肝線維化ステージがF2又はF3に線維化が進行した患者であることを、生検によって確認すること。なお、「肝生検ガイダンス」(日本肝臓学会編)19の禁忌の項を参考に、生検の実施が適切ではないと判断された場合には、非侵襲的検査(NIT)に基づき判定すること。・用法及び用量:成人には0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射。その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。・施設要件:消化器内科、肝臓内科、内科のいずれかを標榜している保険医療機関・医師要件: MASH又はNASHの診療を5年以上行っていること

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再発・難治性B細胞NHL、CAR-T細胞療法の10年追跡結果/NEJM

 再発または難治性のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)患者において、チサゲンレクルユーセルの単回投与により、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者では約3分の1、濾胞性リンパ腫(FL)患者では約半数が、10年に及ぶ寛解(リンパ腫無再発生存)を得たという。米国・ペンシルベニア大学のMarco Ruella氏らが、同大学で実施した第II相試験の10年追跡調査の結果を報告した。抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、再発・難治性B細胞NHLに対する標準治療であるが、長期アウトカムや治癒の可能性は依然として不明であった。NEJM誌2026年6月25日号掲載の報告。チサゲンレクルユーセル投与の患者38例を10年追跡 研究グループは、CD19を標的とし、4-1BB共刺激ドメインを有するキメラ抗原受容体を発現する自家T細胞であるCTL019(現在のチサゲンレクルユーセル)の投与を受けた、再発または難治性のB細胞NHL患者について、10年の長期アウトカムを評価した。 49例が登録され、このうち38例(LBCL患者24例、FL患者14例)がチサゲンレクルユーセルの投与を受け、長期有効性および安全性の評価対象となった。 評価項目のリンパ腫無再発生存期間は、チサゲンレクルユーセル注入からリンパ腫の再発またはリンパ腫関連死亡までの期間と定義した。非再発死亡および2次原発がんの発生率は、Aalen-Johansen法を用いて推定した。 本研究は2014年1月~2019年9月に実施され、長期追跡調査のデータカットオフ日は2025年10月1日であった。10年リンパ腫無再発生存率はLBCL32%、FL47%、奏効例の半数以上は奏効が持続 追跡期間中央値10.1年(範囲:7.9~11.5)の時点で、患者の約3分の1が寛解を維持しており、LBCLでは5.4年を超えて、FLでは2.7年を超えての再発は認められなかった。 10年リンパ腫無再発生存率は、LBCL患者で32%(95%信頼区間[CI]:14~51)、FL患者で47%(95%CI:20~71)であった。 全死因死亡を含めた10年無増悪生存率は、LBCL患者で17%(95%CI:5~34)、FL患者で29%(95%CI:9~52)、10年全生存率はそれぞれ17%(95%CI:5~34)および50%(95%CI:23~72)と推定された。 奏効例における10年時点での奏効持続率は、全患者では57%(95%CI:35~74)、 LBCL患者で54%(95%CI:25~77)、FL患者で60%(95%CI:25~83)であった。 長期的な造血機能の回復を評価したところ、慢性貧血または血小板減少は認められず、38例中36例で好中球数の回復が安定しており、2例(5%)でGrade2または3の好中球減少症が持続していた。 9例に2次原発がんが発生し(10年累積発生率21%)、2次がん診断までの期間の中央値は4.7年(範囲:0.7~10.8)であった。 非再発関連死の10年累積発生率は18%(新型コロナウイルス感染症関連死を除外した場合は14%)であった。 CAR導入遺伝子の持続性が、長期的な奏効に関連していると考えられた。長期奏効例の44%において、B細胞無形成が持続していた。

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革新的B型肝炎治療薬bepirovirsenの第III相試験結果―bepirovirsenはB型肝炎の臨床的治癒を促進する(解説:相澤良夫氏)

 B型肝炎治療は核酸アナログ製剤の登場を契機に驚異的な進歩を遂げ、血中HBV-DNAは著減し肝炎の活動性はほぼ完全に制御される時代となっている。しかしながら、ひとたび肝臓に感染したB型肝炎ウイルスは肝細胞核内に潜伏し、この潜在化したHBV-DNAを完全に排除することは現在のところ不可能とされている。 したがって、B型肝炎の最終的な治療目標は臨床的な治癒(機能的治癒:すなわち血中HBV-DNAの陰性化とHBs抗原の消失)を達成することである。しかし、現行の核酸アナログ製剤の治療ではHBs抗原の減少はきわめて遅々としたもので、インターフェロン治療を組み合わせても臨床的治癒の達成は困難である。そのため、臨床的治癒という最終目標達成には事実上核酸アナログ製剤を半永久的に服用する必要があった。 この終わりの見えない治療に終止符を打つ可能性のあるbepirovirsenは、従来の核酸アナログ製剤が逆転写酵素によるHBV-DNAの伸長反応を阻害して治療効果を発揮するのとは異なり、HBVのRNAに結合してその作用を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオシドの注射薬で、核酸アナログ製剤との併用によりわずか6ヵ月の治療で約1/5の症例に臨床的治癒がもたらされることが示された。また、核酸アナログ製剤単独治療とは異なりbepirovirsen上乗せ治療終了後に核酸アナログを中止してもHBVが再燃する確率はきわめて低いという優れた薬理効果が認められている。 bepirovirsen上乗せ治療には、現在の終わりが見えない核酸アナログ単独治療に比べて驚くべき治療効果がみられることから医療経費の面からも利点があり、わが国においては先駆的医薬品に指定され世界に先駆けて保険適用に向けた優先審査が行われている。そのため、本年度の秋ごろには保険適用が認可され広く使用可能になるものと考えられている。 ただし、bepirovirsenは毎週筋注する必要があり局所反応やALT上昇などの有害事象にも注意を要することから、従来の核酸アナログ治療と同様に肝臓専門医の管理の下で慎重に治療する必要があると考えられる。 bepirovirsenはB型肝炎治療の最終目標とされている臨床的治癒の達成が期待できる画期的な治療薬であり、わが国では保険適用に向けた優先審査が進んでいる。保険適用が認められれば世界に先駆けて大規模な治療経験が集積され、本薬の真価を正しく評価した臨床情報が、わが国から発信されることが期待される。

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PPI中止後のGERD再燃、プロバイオティクスが抑制

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)にプロバイオティクスを併用することで、胃食道逆流症(GERD)患者におけるPPI中止後の症状再燃が抑制され、その効果が腸内細菌叢および代謝物のリモデリングを介して維持される可能性が報告された。中国・南昌大学のLi Yingmeng氏らによる研究成果はmSystems誌オンライン版2026年1月29日号に掲載された。 GERDに対する標準治療であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)は高い有効性の一方、長期使用による腸内細菌叢の乱れや中止後の症状再燃が課題となっている。研究者らは、多菌種プロバイオティクス製剤をPPIに併用することで、PPI中止後も症状改善効果が持続するかを検証した無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。 本試験には18~65歳のGERD患者120例が登録された。全例がPPI(ラベプラゾール)20mg/日を8週間投与され、介入群(64例)は3菌株から成るプロバイオティクス製剤を、対照群(56例)はプラセボを併用した。その後、PPIは中止し、さらに4週間プロバイオティクスまたはプラセボのみを継続した。主要評価項目は胃食道逆流症(Reflux Disease Questionnaire:RDQ)スコアの変化、副次評価項目には消化器疾患症状尺度(GSRS)、内視鏡的治癒率、腸内細菌叢解析が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・8週間のPPI併用期間では、両群ともRDQスコアは改善したが、群間差は認められなかった。一方で便秘スコアや下痢スコアはプロバイオティクス群で有意に改善した。・PPI中止後4週間の経過では、プロバイオティクス群では改善が維持されたのに対し、プラセボ群では症状が再燃した。中止後4週間のRDQスコアはプロバイオティクス群5.67±4.59、プラセボ群8.93±7.10で、プロバイオティクス群が有意に良好であった(p=0.017)。RDQスコアに加え、GSRSの逆流症状サブスコアも有意に改善した。・内視鏡評価を受けた27例では、治癒率はプロバイオティクス群36.8%でプラセボ群と比べて12.5%と高かったものの、有意差には至らなかった(p=0.365)。・安全性では重篤な有害事象の増加は認められず、検査値異常もみられなかった。・腸内細菌叢解析では、全体の細菌叢多様性に大きな変化は認められなかったものの、Bifidobacterium animalisやLactiplantibacillus plantarumなどの有益菌が増加し、Bacteroides uniformisなど症状悪化との関連が示唆される菌種は減少した。 著者らは、PPI中止後にみられる症状再燃はGERD診療上の重要な課題である一方、本研究ではプロバイオティクス併用により症状改善が維持され、腸内細菌叢と代謝物のリモデリングがその背景にある可能性を示したとしている。ただし、対象が中国人に限られること、食道炎に対する内視鏡評価例が少数であったことなどから、他地域での再現性や長期予後を検証するためのさらなる研究が必要だとしている。

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第326回 GLP-1放出を促す食品添加物を欧州が許可

GLP-1などの食欲/摂食抑制ホルモンの放出を促す食品添加物を欧州連合(EU)が承認しました1-3)。食べても安全と判断されて承認されたのは、英国の研究チームが考案した食物繊維の類いのイヌリン-プロピオン酸エステル(IPE)です。EUの新規食品一覧(list of novel food)に加わり、販売できるようになりました。IPEは大腸の細菌の発酵作用で生じる短鎖脂肪酸(SCFA)のプロピオン酸と主に果糖でできた天然ポリマーのイヌリンのエステル結合で作られます。イヌリンは多くの植物に含まれ、サプリメントとして広く使用されてもいます。食物繊維を多くとることは体重が増えにくいことと関連します。食物繊維の多くは小腸では消化されず、大腸の細菌がそれらを発酵してSCFAを生み出します。SCFAは遊離脂肪酸受容体(FFAR)を活性化し、大腸のL細胞からのGLP-1ともう1つの食欲抑制ホルモンであるペプチドYY(PYY)の放出を促します。加えて、SCFAは脂肪細胞からのレプチン放出も後押しします。レプチンもGLP-1やPYYと同様に食欲抑制を担います。マウスでの検討でSCFAの1つのプロピオン酸が多いことと体脂肪量が少ないことの関連が示されています4)。プロピオン酸は細菌代謝/発酵の最終産物でほかのSCFAに変わってしまうことがなく、FFARのエネルギー消費促進や抗肥満作用に関わるFFAR受容体の1つのGPR41にSCFAの中で最も親和性が高いことがマウスでの検討で示されています5)。実際、プロピオン酸の投与はマウスのエネルギー消費を促進しました。ゆえに大腸のプロピオン酸を増やすことは食欲制御手段となりそうですが、単にプロピオン酸を摂取しただけではその効果は得られそうにありません。というのもSCFAは大腸のL細胞に届く前に小腸にやすやすと吸収されてしまうからです。そこで考案されたのがプロピオン酸と食物繊維のイヌリンを繋いだIPEです。IPEのプロピオン酸の大部分は大腸の細菌がイヌリン部分を発酵することで放出されます。その仕組みによりプロピオン酸を大腸に限って供給できるというわけです。40~65歳の過体重の60例の無作為化試験でIPEの目当ての効果が示されています。1日当たり10gのIPE摂取が血中のGLP-1やPYYを増やし、少食にし、体重増加を抑えました6)。ベースラインに比べて5%以上の体重増加は6ヵ月のIPE投与では一例もいませんでしたが(0/25例)、ただのイヌリン投与では2割弱の17%(4/24例)にみられました。より若い20~40歳の過体重の270例が参加した別の無作為化試験では、IPE摂取とただのイヌリン摂取の1年間の体重増加にあいにく有意差はありませんでしたが、IPE群では除脂肪体重が若干増えていました7)。中高齢者と若者の効果の違いは新たに取り組むべき課題であり、除脂肪体重を増やす効果はさらなる検討の価値があるだろうと臨床試験を担った英国のグラスゴー大学のDouglas Morrison氏は言っています8)。今のところIPEの製造は試行段階で1度に作れるのは数百kgほどです。研究チームが立ち上げたSatisfed社がIPEの開発を手掛けており2,9)、企業と提携して数千トン単位でIPEが製造できるようにすることを目指しています。Morrison氏とその同僚のImperial College LondonのGary Frost氏は、IPE入りのスムージー、シリアル、パンなどの食品の発売に向けて企業に話を持ちかけています。IPE入りの食品が間違いなく向こう1年以内にEUの市場にお目見えするだろうとMorrison氏は言っています3)。 参考 1) Commission Implementing Regulation (EU) 2026/1219 of 9 June 2026 authorising the placing on the market of inulin-propionate ester as a novel food and amending Implementing Regulation (EU) 2017/2470 / European Union 2) Special food additive that helps prevent weight gain is approved / University of Glasgow 3) A type of fibre that stimulates GLP-1 release approved for use in food / NewScientist 4) Ridaura VR, et al. Science. 2013;341:1241214. 5) Kimura I, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2011;108:8030-8035. 6) Chambers ES, et al. Gut. 2015;64:1744-1754. 7) Pugh JE, et al. EClinicalMedicine. 2024;76:102844. 8) New study questions effectiveness of novel ingredient for preventing weight gain / Imperial College London 9) Imperial opens for business with investors from across the UK and Europe

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尿検査で自閉症をスクリーニングできる可能性

 簡単な尿検査によって、自閉症スペクトラム症(ASD)の可能性が高い子どもを早期にスクリーニングできる可能性があることが、新たな研究で示された。研究グループは、「ASD児の腸内細菌叢に認められる特徴が、ASD児と定型発達児の識別に役立つ可能性がある」と述べている。米アリゾナ州立大学(ASU)Biodesign Center for Health Through Microbiomes工学教授James Adams氏らによるこの研究の詳細は、「Molecular Psychiatry」に5月26日掲載された。 過去の多くの研究において、一部のASD児では、p-クレゾール硫酸やインドキシル硫酸といった微生物由来代謝物(MDM)の尿中濃度が異常に高いことが確認されている。Adams氏らは、これらのMDMが脳腸相関を介して神経発達に影響を及ぼす可能性があり、また特徴的な腸内細菌叢のバランスの乱れ(ディスバイオシス)が多くのASD児に認められるのではないかという仮説を立てた。 この仮説を検証するために、今回の研究では、まず2~11歳のASD児52人と定型発達児47人(対照群)を対象に、尿中のMDM濃度を半定量的に解析した。その結果、90%のASD児において、少なくとも1種類のMDMの濃度が対照群で測定された最高値を上回っており、中には100~1,000倍もの高値を示すものも確認された。平均すると、ASD児では対照群の最高値を上回るMDMが3.3種類認められた。高値を示した代謝物には、フェニルアラニンやトリプトファンの代謝に関連する化合物が含まれていた。また、酵母や真菌の腸内活動と関連する化合物も確認された。 次に研究グループは、半定量解析で評価した17種類のMDMを用いて、対照群での最高値を上回るMDMが1種類でも存在する場合にASDスクリーニング陽性と判定する尿中スクリーニングシステム(MDM system)を構築した。その結果、ASD識別の感度が90%、特異度が100%であった。さらに、定量解析に基づく評価でも同様の傾向が確認され、感度78%、特異度100%であった。論文の筆頭著者であるASU Biodesign Center for Health Through MicrobiomesのChristina Flynn氏は、「この検査によって、ASDと診断されるリスクが高い子どもを特定できる可能性がある。また、すでに診断を受けた子どもについても、その子に合った治療方針を考えることで、より良い人生を送る支援につなげることができるだろう」とニュースリリースの中で述べている。 現在のASDの検査は子どもの行動観察に基づき行われるため、家族が子どもの診断結果を知るまで長期間を要する場合が多い。しかし、できるだけ早期に診断されることで、保護者はより早く適切な支援を開始できると研究グループは指摘する。 自身もASD児の親であるFlynn氏は、「この疾患に対するスティグマや恥の意識が少しでも軽減されることを願っている。診断をためらうのは、親が『自分は親として不十分だ』と感じたり、周囲から批判されていると感じたりすることが原因である場合もある。だが、実際はそうではない。尿検査でASDをスクリーニングできる可能性が示されたということは、ASDが生物学的な基盤を持つ状態であることを示唆している。このことによって、治療を受けることや早期に治療を開始することに対する親のためらいがなくなることを願っている」と話している。 ただし、研究グループは、この尿検査の有効性を確認するため、さらなる研究が必要であるとの見解を示している。

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SCORPIO-PEP試験:エンシトレルビルはCOVID-19家族内発症を予防できるか(解説:小金丸博氏)

 NEJM誌2026年5月14日・21日合併号に掲載されたSCORPIO-PEP試験は、エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)をCOVID-19患者の同居家族に対して曝露後予防に用いた第III相試験である。主要評価項目である「症候性COVID-19発症」は、エンシトレルビル群2.9%、プラセボ群9.0%で、リスク比0.33と有意な抑制効果を示した。絶対リスク減少は約6%であり、NNT(治療必要数)は17と計算される。家庭内感染という高曝露環境を考慮すると、かなり良好な成績といえる。 本試験の強みは、二重盲検ランダム化比較試験であること、多国籍試験であること、さらにオミクロン株流行期に実施された点にある。参加者の大多数が既感染あるいはワクチン接種由来の抗体を保有しており、現在の実臨床に近い集団で有効性が示された意義は大きい。また、有害事象発現率はプラセボ群と同等であり、安全性に関しても大きな問題を認めなかった。 一方で、臨床実装に向けては慎重な解釈も必要である。本試験のエンドポイントは「感染予防」ではなく「症候性COVID-19発症予防」であり、無症候感染自体は一定数認められている。つまり、ウイルス伝播抑制効果を直接証明した試験ではない。また、観察期間は10日間が中心であり、long COVIDの抑制や入院予防への寄与は評価されていない。 さらに重要なのは、ベースラインのイベント発生率が比較的低い点である。プラセボ群でも発症率は9%にとどまり、オミクロン株流行期以降の免疫保有集団においては、家庭内曝露があっても発症する者は限られる。このため、接触者全員への一律予防投与は費用対効果に乏しい可能性がある。真に恩恵を受けるのは、高齢者、免疫不全者、重症化リスクを持つ家族を抱える世帯などに限られるかもしれない。 耐性変異の問題も未解決である。論文中では明確な耐性伝播は確認されなかったが、3CLプロテアーゼ阻害薬は理論上耐性化リスクを抱える。とくに軽症例や予防投与への広範な使用は、選択圧を高める可能性がある。COVID-19が季節性感染症化しつつある現状では、抗ウイルス薬をどこまで「予防」に用いるべきかという抗菌薬適正使用に近い視点が必要になる。 本試験は「COVID-19家庭内曝露後の予防」という新しい戦略の有効性を示した点で画期的である。ただし、その適応は接触者への一律投与ではなく、高リスク接触者へのターゲット使用として考えるべきであり、長期アウトカム、耐性化、費用対効果を含めた今後の検討が不可欠である。

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7月6日 ワクチンの日【今日は何の日?】

【7月6日 ワクチンの日】〔由来〕1885年の今日、細菌学者のルイ・パスツール(フランス)が開発した狂犬病ワクチンが、少年に接種されたことを記念し、ワクチンの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に日本ベクトン・ディッキンソンが制定。関連コンテンツ今、知っておきたいワクチンの話麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合生ワクチン「ミムリット皮下注用」【最新!DI情報】ワクチン接種率向上のための介入、有効な要素は?/BMJ新規インフルワクチンの第III相試験、mRNA-1010 vs.従来型ワクチン/NEJM市中肺炎で検出された肺炎球菌、ワクチンカバー率は?/感染症学会・化学療法学会

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加工食品の保存料は心疾患リスクを高める?

 出来合いの食品や冷凍食品は購入後も比較的長く保存できるという利便性がある一方、心血管疾患リスクを高める可能性もあることが示された。ソルボンヌ・パリ・ノール大学(フランス)およびパリ・シテ大学(フランス)のAnais HasenbÖhler氏らによるこの研究の詳細は、「European Heart Journal」に5月20日掲載された。 工場で製造される加工食品には、さまざまな保存料が添加されている。HasenbÖhler氏は、「実験的な研究では、一部の保存料が心血管の健康に有害な影響を与える可能性が示唆されている。しかし、こうした成分が人間に与える影響について、これまで十分なエビデンスはなかった。われわれの知る限りでは、これほど幅広い種類の保存料と心血管の健康との関連について調べた研究は、今回が初めてだ」と述べている。 この研究では、フランスの11万2,395人の成人(平均年齢42.8歳、女性78.7%)を対象に、24時間食事記録法を用い、摂取した食事内容を中央値7.9年にわたり追跡調査した。記録された食品に含まれている保存料の種類や量をデータベースや実験分析で評価し、保存料の累積摂取量の経時的変化と健康アウトカムとの関連を解析した。 その結果、いくつかの一般的な保存料が、高血圧や心血管疾患の発症率上昇に関連することが示された。具体的には、カビや細菌の繁殖を防ぐために使用される、抗酸化作用を持たない保存料の摂取量が最も多かった群では、最も少なかった群に比べて高血圧の発症リスクが29%、心血管疾患の発症リスクが16%高かった。また、食品の変色防止などに用いられる抗酸化性保存料の摂取量が多かった群は、高血圧の発症リスクが22%高かった。さらに、高血圧に関連する8種類の保存料も特定された。その中には亜硝酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、クエン酸などが含まれていた。一方、アスコルビン酸については、心血管疾患の発症リスク上昇との関連が認められた。 この研究結果について、研究論文の上席著者であるソルボンヌ・パリ・ノール大学のMathilde Touvier氏は、米食品医薬品局(FDA)や欧州食品安全機関(EFSA)などの機関が保存料のリスクとベネフィットの再評価を行う必要性を示していると指摘している。同氏は、「再評価の結果が出るまでは、加工されていない食品および加工度の低い食品を優先的に摂取し、不必要な保存料を含む超加工食品はなるべく避けるべきとする現行の推奨を支持する研究結果だといえる。医師やその他の医療専門職は、こうした推奨について一般の人に説明する上で、重要な役割を担っている」とニュースリリースの中で述べている

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帯状疱疹、感染部位も認知症リスクに影響する可能性/日本皮膚科学会

 近年、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の罹患が認知症の発症リスクを上昇させる可能性や、帯状疱疹ワクチンの接種がそのリスクを低減させる可能性を示す研究が相次いで報告されている。下畑 享良氏(岐阜大学)らは、「VZVの罹患は認知症の危険因子か?」という臨床疑問を検討することを目的に、21論文を対象としてスコーピングレビューを実施1)。このレビューからみえてきたVZV罹患と認知症発症の関連や、ワクチンが及ぼす影響などについて、最新の研究結果も踏まえて下畑氏が第125回日本皮膚科学会総会で講演した。システマティックレビューではVZV罹患との関連を肯定・否定する報告が混在 下畑氏はまず、スコーピングレビューの対象論文に含まれた3編のシステマティックレビュー/メタ解析の結果について解説した。 1つ目の論文(対象9研究)では、VZV罹患は認知症発症のリスク因子であり、ハザード比(HR)は1.11であることが示された。さらに、VZV罹患後に抗ウイルス薬を使用した場合、発症リスクはHR:0.84となり、16%のリスク抑制効果が認められた。 2つ目の論文(対象6研究)は、帯状疱疹ワクチン接種歴が認知症発症率に与える影響を検討したものであり、ワクチン接種歴は認知症のオッズ低下と関連し、統合オッズ比は0.76であった。 一方、3つ目の論文(対象9研究)では、全体としてVZV罹患と認知症発症に関連は認められず(HR:0.99、p=0.89)、アルツハイマー病のバイオマーカー(アミロイドβなど)との関連性も確認されなかった。しかし、「眼部帯状疱疹」の罹患に関しては認知症と強く関連する(HR:6.26)ことが示されており、感染部位によるリスクの違いが注目される。 ただし、これらの研究はいずれも無作為化比較試験ではなく前向き試験は1つのみであることから、現状のエビデンスには限界があることも示されている。個々の検討から背景因子を探る システマティックレビュー/メタ解析以外の研究についてみると、VZV罹患と認知症発症率について検討した研究は12研究存在した。うちVZV罹患が認知症発症率を増加させるとしたのは6研究、増加させないとしたのは3研究、またVZV罹患が認知症発症率を低下させるとしたものも3研究存在した。下畑氏は、この背景にワクチンの公的補助の有無がある可能性を指摘し、VZV罹患が認知症の危険因子とはならなかった研究の実施国は公的補助があり、ワクチン接種率の高い国が多く、対象者の抗ウイルス薬の処方率が高い傾向があったことを指摘した。 ワクチン接種歴と認知症発症率について検討した6研究では、接種したワクチンの種類によらず、いずれも、VZVワクチン接種歴が認知症または認知機能障害の少なさと関連することを示した。 帯状疱疹発症後の抗ウイルス薬使用と認知症発症率の関係については、検討した4研究のうち3研究で、抗ウイルス薬の使用は認知症発症率を低下させると報告している。 VZVの感染部位に注目した研究では、VZV罹患後1年以内の認知症発症率は全体では増加しなかったが、脳神経感染がある場合にはHR:1.83、中枢神経感染ではHR:6.83というデータが報告されている。また、別の研究でも、皮膚に限局した感染者と比較して、眼部感染、中枢神経感染、複雑性感染者の場合ではいずれも認知症発症リスクが有意に上昇してHR:1.28~1.44と報告されている。一方で、1つの研究では、眼部感染でも認知症発症率の増加を認めなかった。基礎研究でみえてきたメカニズムとは VZV感染はどのようなメカニズムで認知機能に影響を及ぼすのだろうか。VZV罹患に伴う認知症発症の病態について検討した研究は3つあり、単純ヘルペスウイルス(HSV)やVZVに感染した患者の脳脊髄液を調べると、VZV感染が潜伏HSV-1の再活性化を誘発し、アルツハイマー病様変化や神経炎症につながる可能性を示す仮説が提唱されている。さらに、リン酸化タウやミクログリアの活性化マーカーであるTREM2の上昇など、ウイルス感染を契機として脳内にアルツハイマー病に似た変化が惹起されることが示されている。 VZV罹患によるHSV-1再活性化が認知症発症の原因である可能性を検討した研究では、VZV単独の感染ではアミロイドβやリン酸化タウの蓄積は生じないが、あらかじめHSVに感染させて抗ウイルス薬で静止化させた後にVZV感染させると、HSV-1が再活性化し、結果としてアミロイドβやタウの蓄積が確認されるという。現在、VZV感染が潜伏しているHSV-1の再活性化を誘発し、それがアルツハイマー病様変化やミクログリアの活性化をもたらして認知症につながるという仮説が有力視されている。 また、水痘に罹患しやすい遺伝的要因(7つのSNP)を持つ人は認知症リスクが上昇するという報告もあり、遺伝的背景とウイルス感染の複雑な交絡も示唆される。帯状疱疹ワクチンによる認知症リスクの低減効果:最新の大規模コホート研究 ワクチンの認知症予防効果に関する大規模な疫学データが、相次いで発表されている。生年月日によるワクチン制度の適用の違いを利用し、カナダで行われた自然実験研究では、生ワクチン接種による認知症発症の減少効果が確認された2)。また、米国で約33万人を対象とした組換えワクチンの大規模コホート研究では、未接種群と比較して2回接種群で認知症発症ハザードが51%低く、強い関連が示された3)。 これらの報告を総合すると、複数回のワクチン接種で最大の効果が得られること、効果は年齢や人種間で一貫しているものの、女性においてより強い効果が得られる傾向がみられるという。一方で、生ワクチンの効果は時間の経過とともに減弱する可能性も指摘されている。VZVは皮膚症状だけでなく神経症状の有無にも着目を 下畑氏は講演の結びとして、「VZVは皮膚だけで完結するウイルスではなく、皮膚に現れた神経感染症と捉えてもよいのかもしれない。高齢者や免疫不全者、反復例においては、皮疹や疼痛だけでなく、頭痛、髄膜刺激徴候、片麻痺、構音障害、ふらつきといった神経症状の有無にも注意を払い、これらを認めた場合はぜひ脳神経内科へコンサルトしていただきたい」とした。 帯状疱疹ワクチンの接種による認知症発症リスクの低減については、今後のさらなる臨床研究とエビデンスの蓄積が期待される。

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ほこりの中にウイルス流行の手がかり

 ほこりには、オフィスや学校などの建物の中で流行しているウイルスに関する手がかりが含まれていることが、米オハイオ州立大学環境保健科学准教授のKaren Dannemiller氏らによる研究で明らかになった。Dannemiller氏は、「こうした研究は、懸念されるさまざまな問題について幅広い種類の建物をモニタリングする上で有用だ」とニュースリリースの中で述べている。詳細は、「Building and Environment」に5月15日掲載された。 排水などの廃棄物は、地域社会におけるウイルス拡散を追跡するために以前から利用されてきた。今回の研究によると、どこにでもあるほこりから採取した試料が、将来的には特定の場所において同様の役割を果たす可能性があるという。Dannemiller氏は、「本研究は、さまざまな感染症を建物レベルで監視する上で、技術をどう活用できるのかを理解するための第一歩となるものだ。最終的には、より適切な予防措置を講じることや、より的確な資源の配分を行うことにつながる」と述べている。 Dannemiller氏らは今回、学校、大学の学生寮、オフィスなど27カ所からほこりの試料を採取した。次に、全ゲノムを対象としたハイブリッドキャプチャー法による次世代シーケンス解析を行い、その結果を約200種類の病原体の遺伝子配列データベースと照合した。これにより、ウイルスが分解された後も環境中に残存する可能性のあるRNA分子などを特定した。 その結果、ほこりの試料から新型コロナウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)など54種類のウイルス由来の遺伝子断片(以下、ウイルス断片)が検出された。 本研究では、検出されたウイルス断片の感染性については調べていないものの、研究グループは、ほこりの中に残ったウイルス断片が実際に感染力を持っている可能性は低いとしている。しかし、そうしたウイルス断片の有無を調べることで、特定の傾向が明らかになることがある。例えば、小児の感染症との関連が知られている3種類のウイルスは、主に成人が利用する環境と比べて、子どもが利用する環境で有意に多く検出された。また、この研究では、収集された全試料の85%から一般的な風邪の原因となるライノウイルスが検出された。 Dannemiller氏は、「地域社会における感染症を追跡するさまざまな方法を理解することは極めて重要だ。大規模なレベルで感染症のクラスターを追跡する下水モニタリングと同様に、より小規模な集団に対して同様の効果をもたらす中間的なツールをわれわれは開発した」と説明している。 Dannemiller氏はまた、今回の研究は「画期的な取り組み」だったとしている。それは、これまでにも科学者らがほこりの中のウイルスを遺伝子レベルで追跡したことはあったものの、「その範囲はかなり限定的であり、ウイルスを追跡するサーベイランスのツールとして提案されたことはなかった」からだ。 現時点では、ウイルス検査に用いる標準的なほこりの採取技術はまだ確立されていない。研究グループは次の段階の研究で、今回使用した技術がより広範囲の環境に適用できるかどうかを検証する予定だという。  なお、本研究は米空軍研究所(AFRL)、米国立衛生研究所(NIH)、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の支援を受けて実施された。

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美容目的でのチルゼパチド使用に伴う正常血糖ケトアシドーシス

 糖尿病や肥満のない若年女性が、美容目的でチルゼパチドを使用した後、正常血糖ケトアシドーシスを来したという症例報告がなされた。監物 諒相氏、沖田 朋憲氏(大阪けいさつ病院)らが、JCEM Case Reports誌2026年4月8日号で報告した。監物氏、沖田氏らは、チルゼパチド使用後の食欲低下や重度の消化器症状に伴う急性のカロリー不足が、ケトアシドーシス発症に関与した可能性を指摘し、美容目的の適応外使用に注意を促している。2回目投与後に悪心・嘔吐・下痢が発現 症例は20代の日本人女性。糖尿病、飲酒歴、糖質制限食の実施はなかった。身長156cm、体重58.9kg、BMI 24.2kg/m2であった。美容目的の体重減少を目的に、美容クリニックを通じてチルゼパチドを使用し、継続的な医学的管理を受けないまま、チルゼパチド2.5mgを週1回、計2回自己投与した。 初回投与後から食欲低下と摂食量低下を認め、2回目投与後に強い悪心、嘔吐、下痢が発現した。症状は4日間持続し、近医でブドウ糖含有輸液を受けた後、大阪けいさつ病院へ搬送された。来院時の体重は53.8kg、BMI 22.1kg/m2であり、約10日間で約5kg減少していた。身体所見では蒼白、疲労感に加え、発熱(38.4℃)を認めた。pH正常でもアニオンギャップ開大 入院時検査では、pH 7.41、HCO3- 17.7mmol/L、アニオンギャップ25.9mmol/L、β-ヒドロキシ酪酸5.5mmol/L、アセト酢酸1.4mmol/L、血糖196mg/dL、HbA1c 5.5%であった。pHは正常範囲内であったが、HCO3-低下、アニオンギャップ開大、ケトン体著明高値といった所見から、高アニオンギャップ性代謝性アシドーシスと判断され、嘔吐に伴う代謝性アルカローシスの合併も示唆された。 血糖値は196mg/dLと軽度高値を示したが、正常血糖ケトアシドーシスの血糖基準である250mg/dL以下であった。インフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルス抗原検査は陰性で、画像検査や血液・尿・便の細菌学的検査でも明確な感染は同定されなかった。以上から、チルゼパチド使用と時間的に関連した正常血糖ケトアシドーシスと判断された。輸液とインスリンで速やかに改善 治療として、生理食塩水による補液の後、ブドウ糖含有輸液、電解質補正、持続静注インスリンが行われた。インスリン投与は24時間継続され、入院翌日には代謝性アシドーシスが改善し、血清ケトン体も速やかに基準範囲内まで低下した。一方、悪心・嘔吐はしばらく持続した。輸液は5日間継続され、入院4日目に通常食を再開、入院6日目に薬剤なしで退院した。 退院2週間後の外来では、消化器症状の再燃はなく、食欲も回復していた。75g経口ブドウ糖負荷試験では、空腹時血糖88mg/dL、120分値101mg/dLであり、耐糖能は正常であった。このため、搬送時の軽度高血糖は、身体ストレスや搬送前のブドウ糖含有輸液の影響と考えられた。急性のカロリー不足が誘因か 著者らは、本症例の病態について、チルゼパチドによる食欲低下と重度の消化器症状により急性の異化状態が生じたことが関与している可能性を指摘した。加えて、発熱や生理的ストレス、脱水、急激な体重減少、さらにGIP受容体作動を介した脂質代謝への影響が、ケトーシスを増幅した可能性もあると考察している。 本症例報告について、筆頭著者および共同著者である監物氏、沖田氏にコメントを求めたところ、以下の回答が得られた。【監物氏・沖田氏のコメント】 本症例は1例の症例報告であり、チルゼパチド使用との因果関係を直接証明するものではありません。一方で、チルゼパチド使用中に強い消化器症状や摂食低下が持続する場合には、正常血糖ケトアシドーシスを念頭にケトン体やアニオンギャップも確認する必要があることを示唆しています。 チルゼパチドは適正使用下では重要な治療薬ですが、美容・痩身目的での安易な使用は重篤な健康被害につながる可能性があります。本報告が、チルゼパチドの適正使用の推進と、重篤な有害事象の早期発見・早期対応に役立つことを期待しています。

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【GET!ザ・トレンド】Less is More?β-ラクタマーゼ阻害薬nacubactamが拓くAMR治療の展望

薬剤耐性菌(AMR)は公衆衛生における世界的な社会課題である。なかでもカルバペネム系抗菌薬に耐性を示すカルバペネム耐性腸内細菌細菌(CRE)はWHOの細菌優先病原体リストにおいて、クリティカル(最重要)に分類されている。そのCREに対し、Meiji Seikaファルマは新規β-ラクタマーゼ阻害薬nacubactam(OP0595)を承認申請中である。CRE感染症に対する同剤の特徴と効果、さらに新規抗菌薬開発の課題について、同社研究開発本部の加藤誠司氏らに話を聞いた。喫緊の課題カルバペネム耐性腸内細菌細菌(CRE)AMRついての世界的な調査報告書であるJim O'Neill氏による耐性菌レポートによれば、新規抗菌薬の研究開発等の対策を講じなければ2050年までに年間1,000万人がAMRにより死亡すると報告されている。これを受け、WHOが薬剤耐性に関するグローバル・アクションプランを策定し、それを基に日本を含む世界各国がそれぞれの国の課題に応じたアクションプランを策定し取り組んでいる。抗菌薬に耐性を示す代表的な機序としてβ-ラクタム系抗菌薬の分解酵素であるβ-ラクタマーゼがある。カルバペネマーゼはβ-ラクタマーゼの1種で、その名のとおりカルバペネム系抗菌薬を分解する酵素である。カルバペネム系抗菌薬は重症感染症治療に使用される。最後の砦であるカルバペネム系抗菌薬を無効化するカルバペネマーゼ産生菌による感染症は、患者の重篤化、入院長期化、さらに死亡率の増加を招く。そのためCRE感染は5類感染症として全例報告が義務付けられるなど、日本でも喫緊の課題とされている。nacubactamによるβラクタマーゼへの阻害活性と、エンハンサー効果nacubactamは、Meiji Seikaファルマが自社で創出した新規β-ラクタマーゼ阻害薬である。2025年12月にカルバペネム系薬に耐性のグラム陰性菌による感染症治療薬として国内承認申請された。同剤はβ-ラクタム薬(セフェピム[CFPM]またはアズトレオナム[AZT])との併用で、CREに対するβ-ラクタム薬の分解を阻害するだけでなく、併用するβ-ラクタム薬の抗菌活性を増強させるという従来のβ-ラクタマーゼ阻害薬にはない特性を持っている。具体的には、nacubactamはPBP2の阻害作用を有する。一方、CFPMやAZTといったβ-ラクタム系抗菌薬はPBP3を阻害する。つまり、CFPMおよびAZTとnacubactamの併用により、PBP2とPBP3双方を阻害して抗菌活性・殺菌作用を増強することが可能となる(エンハンサー効果)。β-ラクタマーゼ阻害薬を単味製剤として開発していることも大きな意味を持つ。単味製剤のメリットとして既存抗菌薬との組み合わせ次第で将来出現する細菌にも柔軟に対応できる可能性がある。また、既存の抗菌薬と組み合わせて耐性菌に対応できるため、従来の配合剤のようにそれぞれのβ-ラクタム薬との配合剤を新薬として医療機関で保管する必要がなくなり、薬剤数抑制の観点からもメリットが生まれると考えられる。β-ラクタマーゼはAmbler分類でクラスAからDに分かれている。国や地域によって優勢なクラスや型が異なり、それに応じて有効な薬剤も変わる。画像を拡大するなかでもクラスBに有効な薬剤は限られており、その対策には課題が残る。最新報告によれば、国内のCREは約1,000例で、大部分はクラスBのIMP型だ。また、近年はクラスBのNDM型も増加傾向にある。厚生労働省によるカルバペネム低感受性腸内細菌細菌株の感性率を見ると、セフェピムおよびnacubactamとの併用(以下、CFPM/NAC)はクラスA、C、Dのβラクタマーゼに高い感性率を示す。また、アズトレオナムおよびnacubactamとの併用(以下、AZT/NAC)はA、C以外にもクラスB(IMP型、NDM型とも)にも高い感性率を示すことが明らかになっている。画像を拡大する2つの第III相国際共同試験nacubactamの臨床開発では、欧州・日本を含むアジアで2つのグローバル第III相臨床試験(Integral-1、Integral-2)が実施された。Integral-1試験は、カルバペネム感受性の複雑性尿路感染症または急性単純性腎盂腎炎患者を対象に、CFPM/NACおよびAZT/NACをカルバペネム系抗菌薬であるイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)と比較した二重盲検比較試験である※。IPM/CSに対する主要評価項目(投与終了7日後の総合臨床効果)において、AZT/NACは非劣性を、CFPM/NACは非劣性かつ優越性を証明した。結果は米国の感染症の学会であるIDWeek2025で反響を呼びThe Lancet Infectious Diseases誌による学会のハイライトにも取りあげられ、試験の内容はThe Lancet2026年5月16日号に掲載された。※通常の成人で、セフェピム2g+nacubactam1g、アズトレオナム2g+nacubactam1gまたはIPM1g /CS1g (いずれも1日3回静注)を投与もう1つの第III相試験であるIntegral-2試験は、CRE感染症患者を対象とした試験である。欧州臨床微生物学感染症学会議(ESCMID Global2026)では口頭演題に採択され発表に至っている。ESCMID Global 2026では、nacubactamに関する10演題が発表され、いずれも活発な議論が展開されたという。同剤に対する世界的な注目度の高さが窺える。新たなスタイルで行われたnacubactamの開発新規抗菌薬の開発にはさまざまな困難が伴う。感染症は被験者数が限られているため、臨床開発において症例を集積するには多くの国・施設の協力が不可欠だ。その分、開発コストは莫大になる。一方で、適正使用により患者数が限定されるなか、安定供給のための製造コストも増加しており経済合理性の欠如から、大手製薬メーカーが抗菌薬開発から撤退する負のサイクルに陥っている。nacubactamの開発に当たってはAMEDによる医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)の支援を得ている※。この研究課題では、第I相試験の薬物動態(PK/PD)からシミュレーションした用法用量を、第II相を介さずに第III相試験で検証している。結果は評価項目を達成し、第II相試験を省略して開発することが可能となった。困難な状況の中で「プロジェクトメンバー全員が、CREによる感染症に苦しむ患者さん全員を救うという思いでnacubactamの開発にあたっている」と加藤氏は述べる。※CiCLE研究開発課題「非臨床PK/PD理論を活用した新規β-ラクタマーゼ阻害剤(OP0595)の単味製剤の研究開発」プル型インセンティブの拡大が抗菌薬開発の鍵を握る新規抗菌薬の開発にあたっては、承認取得後の課題も深刻だ。上市後の適正使用を徹底すると使用症例数は絞られ、販売額は縮小する。加藤氏によれば、新薬の上市まで至った会社も事業が維持できず倒産する事例も少なくない。新規抗菌薬の開発を支える仕組みとして、研究開発費を支援するプッシュ型インセンティブと、承認・発売後の採算性を維持・向上させるプル型インセンティブ制度がある。国内ではプル型インセンティブとして抗菌薬確保支援事業が設けられているが、その予算枠では安定供給に資する製造コストを維持するのに課題もあり、今後の抗菌薬開発においてはプル型インセンティブの拡充がより重要になっていくと考えられる。Meiji Seikaファルマとしても、製薬協と連携しながらプル型インセンティブの拡大に向け、国への働きかけを続けている。nacubactamは新たなβ-ラクタマーゼ阻害薬として、β-ラクタム薬との併用で従来にはない強力な抗菌活性を発揮する。また、単味製剤の利点を生かし、新たな組み合わせを開発することで将来的に新たな耐性菌に備えることができる可能性を持つ。第一歩としてCREという最重要耐性菌に立ち向かうnacubactamに注目したい。 参考 1) O'Neill J, Review on Antimicrobial Resistance. Tackling Drug-Resistant Infections Globally: Final Report and Recommendations. Wellcome Trust and HM Government 2) 厚生労働省 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書(サマリ版) 3) 国立健康危機管理研究機構(JIHS)国際感染症センターカルバペネム耐性腸内細菌細菌(CRE)感染症に関する一般的事項 4) 国際健康危機管理研究機構(JIHS)カルバペネム耐性腸内細菌細菌(CRE)感染症, 2024年現在 5) Takahashi S, et al. Lancet.2026;407:1929-1940.

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