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第40回 降圧薬は就寝時服用でより心血管イベントリスクを低減の報告【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 痒みなどのアレルギー症状や喘息発作、片頭痛発作など、特定の時間に症状が出やすい疾患では、日内リズムや薬物の時間薬理学的特徴に応じて薬剤の服用タイミングが設定されることがあります。血圧にも日内変動がありますが、こうした時間治療(chronotherapy)は高血圧に対しても有用なのでしょうか。今回は、降圧薬の服用タイミングと心血管イベントについて検討したHygia Chronotherapy Trial1)を紹介します。対象は、スペイン在住の18歳以上の白人で、普段は日中に活動して夜間は就寝し、1剤以上の降圧薬を服用している高血圧患者1万9,084例(男性1万614例、女性約8,470例、平均年齢60.5歳)です。夜勤のある人やほかの人種では結果が変わるかもしれない点には注意が必要です。降圧薬を就寝時に服用する群9,552例、起床時に服用する群9,532例に分け、中央値6.3年追跡しています。ランダム化の方法は厳密には本文からは読み取れませんが、結果的に振り分けられたベースラインでの群間の特徴は似通っているため、おおむね平等な比較とみてよいかと思います。試験期間を通して定期的な血圧測定を行い、さらに年に1回は2日間にわたり携帯型の自動血圧計を装着して、自由行動下の24時間血圧も測定しています。服用薬の内訳は、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、β遮断薬、利尿薬で、評価者のみを盲検化するPROBE(Prospective Randomised Open Blinded-Endpoint)法を用いて評価しています。アウトカムは、主要なCVDイベント(CVDによる死亡、心筋梗塞、冠動脈再建術、心不全、脳卒中)の発生でした。医師と患者のいずれも治療内容を知っているためバイアスは避けられませんが、実臨床に近いセッティングともいえるでしょう。判断に揺らぎが出やすいアウトカムだと評価者の判断が影響を受けかねませんが、心筋梗塞や死亡など明確な場合は問題になりづらいと思われます。結果としては、追跡調査期間中に、1,752例で主要なCVDイベントがあり、就寝時服薬群の起床時服薬群と比較してのハザード比は次のとおりでした。 心血管イベントの複合エンドポイント 0.55(95%信頼区間[CI]: 0.50-0.61) 心血管死亡 0.44(95%CI:0.34~0.56) 心筋梗塞 0.66(95%CI:0.52~0.84) 冠動脈再建術 0.60(95%CI:0.47~0.75) 心不全 0.58(95%CI:0.49~0.70) 脳卒中 0.51(95%CI:0.41~0.63)降圧薬を起床時に服用した群と比べて、就寝時に服用した群では、心血管死亡リスクは56%、心筋梗塞リスクは34%、血行再建術の施行リスクは40%、心不全リスクは42%、脳卒中リスクは49%、これらのイベントを併せた複合アウトカムの発症リスクは45%と、それぞれ有意に低いという結果でした。これらの結果は、性別や年齢、糖尿病や腎臓病といったリスク因子の有無にかかわらず一貫しています。就寝時服薬群は24時間血圧で夜間の血圧が低下本文では著者らは相対ハザード比のみを報告し、絶対リスク減少率(ARR)や必要治療数(NNT)を報告していませんでしたが、批判を受けたためコメント欄に補足する形で各アウトカムのARRとNNTを追記しています。それによると、全CVDイベントは起床時服用群で1,566、就寝時服用群で888、ARRは 7.08(95%CI:6.13~8.02)、NNTは14.13(95%CI:12.46~16.30)でした。24時間血圧の測定値からも、就寝時服用群では睡眠中の血圧値が有意に低いこともわかっており、心筋梗塞や脳卒中のリスク因子である夜間高血圧の改善が結果に寄与したのではないかと仮説が述べられています。現時点では高血圧症診療ガイドラインに服用タイミングについて明確な言及はありませんが、就寝時の処方が増えてもおかしくない結果ではないでしょうか。もちろん、夜間の血圧が昼間に比べ20%以上低くなるようなextreme-dipper型などでは注意が必要です。利尿薬を夜に服用することを避けたいという患者さんもいれば、一部のCa拮抗薬は朝食後服用となっているものもあります。そうした個別の事情を踏まえつつ、用法提案の1つの選択肢として覚えておいて損はないかと思います。1)Hermida RC, et al. Eur Heart J. 2019; ehz754.

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統合失調症と気分障害の入院患者における代謝障害の相違点

 生活習慣病と密接に関連している心血管疾患は、精神疾患患者の主な死因の1つである。統合失調症と気分障害では、症状や治療薬が異なり、代謝障害にも違いがあると考えられる。国立国際医療研究センター 国府台病院の鵜重 順康氏らは、日本における統合失調症患者と気分障害患者の生活習慣病の違いについて調査を行った。Annals of General Psychiatry誌2020年9月22日号の報告。統合失調症と気分障害の入院患者は症候性脳梗塞や脳梗塞の割合が増加 本研究は、2015~17年に実施した横断的研究である。対象は、国立国際医療研究センター 国府台病院 精神科の日本人入院患者189例(統合失調症群:144例、気分障害群:45例)。対象患者の身体疾患、グルコースと脂質の代謝状態、推算糸球体濾過量(eGFR)、脳MRIを調査した。統合失調症群と気分障害群のデータを比較するため、共分散分析またはロジスティック回帰分析を用いた。対象患者と標準対照者の数値を比較するため、厚生労働省「国民健康・栄養調査報告2015」のデータを基準値として使用した。 統合失調症と気分障害の入院患者の身体疾患などを調査した主な結果は以下のとおり。・年齢で調整した後、気分障害群のeGFRと喫煙率は、統合失調症群よりも有意に低かった。・統合失調症群と気分障害群は、標準対照者と比較し、無症候性脳梗塞と脳梗塞の割合が有意に高かった。・統合失調症の入院患者は、標準対照者の基準値と比較し、糖尿病、低HDLコレステロール血症、メタボリックシンドロームの有病率および喫煙率が有意に高かった。・気分障害群は、標準対照者と比較し、低HDLコレステロール血症の有病率が有意に高かった。・統合失調症群と女性の気分障害群は、標準対照者と比較し、空腹時血糖とHbA1cが有意に高かった。・女性の気分障害群は、標準対照者と比較し、eGFR(60mL/分未満)の有意な低下が認められた。 著者らは「統合失調症患者および気分障害患者では、グルコースや脂質の異常を伴い、無症候性脳梗塞や脳梗塞の割合が増加していた。気分障害患者では、統合失調症患者よりも、eGFRと喫煙率が有意に低かった」としている。

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カナグリフロジンと下肢切断リスク(解説:住谷哲氏)-1303

 最新のADA/EASD高血糖管理ガイドラインにおいて、SGLT2阻害薬は心不全またはCKDが問題となる2型糖尿病患者に対して、HbA1cの個別目標値とは切り離してメトホルミンに追加すべき薬剤と位置付けられている。糖尿病ケトアシドーシス、性器感染症の増加はすべてのSGLT2阻害薬に共通の有害事象であるが、下肢切断リスクの増加はカナグリフロジンに特異的と考えられている。これは、これまで報告されたエンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、ertugliflozinのCVOTのなかで、唯一下肢切断リスクの増加がカナグリフロジンのCANVAS programで報告されたことによる。しかしその後に報告されたカナグリフロジンのCREDENCEでは下肢切断リスクの増加は認められなかった。つまり本当にカナグリフロジン特異的に下肢切断リスクが増加するか否かについては、はっきりしていない。 カナグリフロジンの使用が多い米国で、カナグリフロジンまたはGLP-1受容体作動薬のいずれかが新たに投与された患者における下肢切断リスクを比較検討したのが本論文である。対照としてGLP-1受容体作動薬が選択されたのは、ほぼ同程度のASCVDリスクを有する患者に両薬剤のいずれかが選択されることが多いことによる。さらに、下肢切断リスクは高齢患者、ASCVD既往のある患者のリスクが高いことが知られているので、この両因子で層別した解析を実施した。結果として、カナグリフロジン投与により下肢切断リスクが増加するのは、ASCVD既往のある65歳以上の高齢者に限定されており、そのNNTは556人/0.5年であった。 実臨床では今回明らかにされた「ASCVD既往を有する65歳以上の高リスク患者」に対してSGLT2阻害薬を選択することが多い。その際はカナグリフロジンではなくほかのSGLT2阻害薬を投与すればよいのだろうか? カナグリフロジンの使用がほとんどない北欧からの報告(対象患者における投与薬剤の比率はダパグリフロジン61%、エンパグリフロジン38%、カナグリフロジン1%)では、本論文と同様にGLP-1受容体作動薬を対照として、ダパグリフロジン、エンパグリフロジンともに下肢切断リスクの増加を認めている1)。さらに複数あるSGLT2阻害薬のなかで、カナグリフロジンのみが下肢切断リスクを増加させるメカニズムとしていくつかの仮説が提唱されているが、はたしてそれが正しいのか否かは明らかでない。筆者はSGLT2阻害薬による下肢切断リスクの増加は、存在するとしてもおそらくclass effectだろうと考えている。CREDENCEの結果に基づくと、ESKDへの移行阻止のNNTは43人/2.5年である。したがって、ここでも個別の患者のrisk-benefitを慎重に考慮したうえで、EBMのStep4「情報の患者への適用」を悩みながら実践することが求められる。

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レムデシビル、COVID-19入院患者の回復期間を5日以上短縮/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のJohn H. Beigel氏らは、「ACTT-1試験」において、レムデシビルはプラセボに比べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の回復までの期間を有意に短縮することを示し、NEJM誌オンライン版2020年10月8日号で報告した(10月9日に更新)。COVID-19の治療では、いくつかの既存の薬剤の評価が行われているが、有効性が確認された抗ウイルス薬はないという。10ヵ国1,062例のプラセボ対照無作為化試験 研究グループは、COVID-19入院患者の治療におけるレムデシビルの臨床的な安全性と有効性を評価する目的で、日本を含む10ヵ国が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を行った(米国NIAIDなどの助成による)。 2020年2月21~4月19日の期間に、COVID-19感染が確定され、下気道感染症の証拠がある成人の入院患者1,062例が登録され、レムデシビル(541例)またはプラセボ(521例)を投与する群に無作為に割り付けられた。レムデシビルは、1日目に負荷投与量200mgを静脈内投与され、2日目から10日目または退院か死亡まで維持投与量として100mgを1日1回投与された。 主要アウトカムは、登録から28日以内における回復までの期間とした。回復は、退院または入院の理由が感染管理のみ、あるいはその他の非医学的事由の場合と定義された。回復までの期間中央値:10日vs.15日 全体の患者の平均年齢は58.9±15.0歳で、64.4%が男性であった。79.8%が北米、15.3%が欧州、4.9%がアジアの患者であった。登録時に、ほとんどの患者が1つ(25.9%)または2つ以上(54.5%)の併存疾患を有しており、高血圧が50.2%と最も多く、肥満が44.8%、2型糖尿病が30.3%であった。症状発現から無作為割り付けまでの期間中央値は9日(IQR:6~12)で、957例(90.1%)が重症COVID-19感染患者だった。 回復までの期間中央値は、レムデシビル群が10日(95%信頼区間[CI]:9~11)、プラセボ群は15日(13~18)であり、レムデシビル群で有意に短かった(回復の率比:1.29、1.12~1.49、log-rank検定のp<0.001)。重症例における回復までの期間中央値は、レムデシビル群が11日、プラセボ群は18日であった(1.31、1.12~1.52)。また、ベースライン時に機械的換気または体外式膜型人工肺(ECMO)を導入されていた患者の回復の率比は0.98(0.70~1.36)だった。 8つのカテゴリーから成る順序尺度による比例オッズモデルを用いた解析では、15日の時点で臨床的改善が達成される確率は、レムデシビル群がプラセボ群よりも高かった(実際の疾患重症度で補正後のオッズ比[OR]:1.5、95%CI:1.2~1.9)。 Kaplan-Meier法による推定死亡率は、15日時がレムデシビル群6.7%、プラセボ群11.9%(ハザード比[HR]:0.55、95%CI:0.36~0.83)、29日時はそれぞれ11.4%および15.2%(0.73、0.52~1.03)であった。 重篤な有害事象は、レムデシビル群が532例中131例(24.6%)、プラセボ群は516例中163例(31.6%)で報告された。治療関連死は認められなかった。全体で頻度の高い非重篤な有害事象として、糸球体濾過量低下、ヘモグロビン低下、リンパ球数低下、呼吸不全、貧血などがみられ、発生率は両群でほぼ同等であった。 著者は、「米国食品医薬品局(FDA)は、レムデシビルの初期結果を考慮して、2020年5月1日、COVID-19感染が疑われる、または確定した成人および小児の入院患者において、レムデシビルの緊急時使用許可(EUA)を発出(8月28日に修正)したが、レムデシビルを使用しても死亡率は高いことから、抗ウイルス薬単独では十分な効果は得られないと考えられる」と指摘し、「患者アウトカムを改善するには、さまざまな薬剤との併用療法が必要であり、現在、レムデシビルと免疫調節薬(例:JAK阻害薬バリシチニブ[ACTT-2試験]、インターフェロンβ-1a[ACTT-3試験])との併用が検討されている」としている。

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第46回 祝2周年!心電図クイズで腕試し(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第46回:祝2周年!心電図クイズで腕試し(前編)この“Dr.ヒロのドキドキ心電図”の開始は2018年8月末。ということは…2020年9月で連載丸2年を迎えました! パチパチパチ(笑)。“サスティナブル”は昨今よく用いられるキーワードですが、環境保全も経済も「持続する・させる」は容易ではありません。ボクにとっての連載もまさにそうでありました。さまざまな障壁や困難に直面し、もうダメだと諦めそうになったことが一度ならずありました。それでも続けてこれたのは、ひとえに、読者の皆さま、そしてやはり心電図や不整脈の持つ尽きせぬ魅力のおかげかと思っています。話のネタはまだまだありますが、ひとまず2年の“区切り”としてクイズを出そうかと思います。では、どうぞ!症例提示150歳、男性。健診にて来院。交通事故による骨折以外には特別な既往もなし。内服薬もなし。草野球チームに所属している。以下に心電図を示す(図1)*。*:クイズの性格上、自動診断結果の一部を非表示にしている。(図1)健康診断の心電図画像を拡大する【問題1】 心拍数に関して、最も近いものを選べ。1)32/分2)42/分3)52/分4)62/分5)72/分解答はこちら2)解説はこちら1問目はジャブで始めましょう。“ドキ心”読者なら、どんな心電図を見ても心拍数を自分で計算できるはず。単純にQRS個数をカウントする“検脈法”、あるいは「QRS-T」を一塊で認識し、欠如した部分があるときは「0.5個」とする“新・検脈法”のいずれでもOKです。Dr.ヒロの系統的判読法の最初は『レーサーが…』ですが、この“レーサー(R3)”部分、「R-R間隔:整」「心拍数:50~100/分」「洞調律(イチニエフの法則)」のいずれか1つでも満たさない場合は、10秒間でQRS波をカウントすると良いでしょう。かなりの徐脈が予想されますから、端から端まで数えて、“検脈法”ならシンプルに7×6/分です。“新・検脈法”の場合は肢誘導の最後と胸部誘導の最初が「0.5個」ですから、結局、(肢3.5+胸3.5)×6/分となり、どちらの方法で求めても「42/分」と求まりますね。こうした徐脈の時には“新・検脈法”が有利と述べましたが、今回は“同点引き分け”でしたね(笑)参考レクチャー:第3回、第29回【問題2】基本調律に関して正しいものをすべて選べ。1)異所性心房調律2)洞徐脈3)洞不整脈4)徐脈性心房細動5)ペースメーカ調律解答はこちら2)、3)解説はこちら2問目は“レーサー・チェック”からの出題です。心拍数は約40/分で、QRS波の手前にはコンスタントにP波があって、I/II/aVF/V4~V6で陽性(上向き)、aVRで陰性(下向き)ですから、立派な“洞調律”と考えれば、めでたく「洞徐脈」の診断ができるでしょう。でも、油断してそれで終わるのはいけません。R-R間隔はどうでしょうか? 整ですか?…「No」ですよね。肢誘導の最後などは、ずいぶんとR-R間隔が空いているように見えます。これでは単純な「洞徐脈」で説明がつきませんよ。全体を見渡し、R-R間隔が一番短いところと一番長いところとを比べて、3目盛り(ミリ[mm])以上*1違ったら、その時は「洞不整脈」と診断できます。ですから、2)だけでなく、忘れずに3)も選んでくださいね。「洞調律」は徐脈になるほどR-R間隔に“ゆらぎ”、すなわち洞不整が起こりやすい傾向にあるようです。「洞不整脈」には、小児や若年者で多く見られる「呼吸性洞不整脈」と、そのほか高齢者や薬物の影響などで認められる「非呼吸性~」もあります。呼吸サイクルとの関連性を見るのであれば、10秒と言わずにもう少し長く観察する必要があるでしょうか。*1:3目盛り(mm)は0.12秒(120ミリ秒[ms])に相当する。0.16秒(160ミリ秒[ms])以上とする基準もある。参考レクチャー:第2回【問題3】この心電図所見は「左室肥大」と言えるか?解答はこちら言えない解説はこちら『左室肥大』に関しては、第38回、第39回のレクチャーで扱いました。そこで強調したことの一つは、側壁誘導を中心に、ただ単にQRS波の増高(increased QRS voltage)を「左室肥大」と言うなかれということ。よく“ハイ・ボル”(high voltage)と言ってしまうアレです。これは、正式には「(左室)高電位」と表現すべき所見でした。「高電位」の基準に関しては、「そこのライオン」でも「こなれた男女3L」でも「浪費エステ」いずれでもかまいません。あるいは、ボクがとくにお薦めする“ブイシゴロ密集法”でもいいんです。ただ、「左室肥大」かどうかは、プラスαが大事で、典型的な「ストレイン・パターン」(ventricular strain)の有無と、加えて“補助所見”として「左房拡大」、「左軸偏位」や、やや謎の表現「intrinsicoid deflection」の遅れなどをいくつ満たすかで、どれくらい疑わしいか付記すれば良いのでした。基本、「左室肥大」かどうかは、“合わせ技”と言える所見の個数で決まるというわけです。 あ、項目自体は『浪費エステはポイント制 高いスタート 前半はジックリ』(図2)でしたね(笑)。Dr.ヒロ独自のモノですが、第39回でご紹介したフローチャート(図2)もまあまあの出来ではありますので、もう一度見直してみてください。■Romhilt-Estesポイントスコア“覚え書き”■(1):Romhilt-Estes(2):左室高電位(3):ST-T変化(4):QRS波の前半成分“もたつき”[+幅](5):軸偏位[左軸](6):心房負荷[左房拡大]心電図(図1)では、側壁誘導などに有意なST-T変化も見られず、電気軸も正常(推定値:+60~+70°)、V1にやや深いP波はあっても、IIのほうで幅が狭く(むしろ「右房拡大」的な様相)、QRS前半成分の“もたつき”もありませんから、単なる「左室高電位(差)」と言えるでしょう。若い人だとこの判断に微妙な時もありますが、これくらいの年齢の男性なら胸を張って波高異常を指摘して良いです。(図2)左室肥大の心電図診断フローチャート[再掲]画像を拡大する参考レクチャー:第38回、第39回症例提示275歳、男性。約3年前に急性冠症候群に対して冠動脈インターベンション(PCI)が施行され、3ヵ月前に発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションを受けた。脳梗塞既往(右不全麻痺)あり、高血圧症、糖尿病などで投薬中。血圧112/74mmHg、脈拍119/分・不整。定期診察で来院した際の心電図を示す(図3)。患者コメント:「自転車で20分かけて来ました。ちょっと食欲がないくらいかな。ほかはあまり変わりませんね」(図3)定期外来時の心電図画像を拡大する【問題4】基本調律に関して正しいものを選べ。1)異所性心房調律(心房頻拍)2)洞頻脈3)洞不整脈4)心房細動5)心房粗動解答はこちら 2)解説はこちら正常な基本調律は何かと言えば「洞調律」なので、心電図を見たら、 “レギュラー度”の高い部分を見つけることから始めます。ときどき認めるいびつなQRS波は「期外収縮」なので、それ以外の部分に着目しましょう。この心電図(図2)では、“P-QRS”のセットは互いの距離感も含めて一定のようです。あとは…そう、“イチニエフの法則”ですね。これもバッチリ満たします。「洞調律」とわかったら、次の4つのどれかを考えましょう。■おさらい~4つの「洞調律」■(1)洞徐脈 (2)洞頻脈 (3)(いわゆる)洞調律 (4)洞不整脈鑑別ポイントは、もちろん「R-R間隔」と「心拍数」で、いずれも“レーサー・チェック”で確認するものです。期外収縮以外のR-R間隔はおおむね整、かつ3マス(太枠)未満なので、「洞頻脈」と診断できます。ちなみに、具体的な心拍数は、Dr.ヒロ流“はさみうち等分足し引き法”なら、胸部誘導2~4拍の“2拍”で見れば「108/分」くらいとなります。参考レクチャー:第3回【問題5】このような周期的な心収縮様式の表現として、最も適切なものはどれか選べ。1)心房二段脈2)心房三段脈3)心室二段脈4)心室三段脈5)心室四段脈解答はこちら 5)解説はこちらこれはオマケ問題です。この「~段脈」という表現は、絶対に必要な心電図診断ではありません。ボクなりの表現を使えば心臓の“従順さ”を示す特徴的な振舞いの一つです。 “しゃっくり”が起きると、定期的に起きてなかなか止まらないですよね。同様に、いったん期外収縮が生じると心臓はなるべくそのサイクルを維持しようと振る舞うことが多いんです。先頭の「心房」か「心室」かは、心房期外収縮(PAC)か心室期外収縮(PVC)かで決めれば良く、『線香とカタチと法被(はっぴ)が大事よね』を思い出してください。“お祭りガール”のイラストでしたね(図4)。これを踏まえると、今回はPVCでいいですよね。(図4)期外収縮のポイント[再掲]画像を拡大する残りの「~段脈」の部分に関しては、「~拍ごと」とほぼ同義でした。より本質的には、(洞収縮も含めて)全部で~個の心拍たちが“チーム”(セット)を形成するという意味でした。今回は「四段脈」で、英語表記は“quadrigeminy”となります。文献的な裏付けがあるわけではないのですが、「心房細動」を有していて、とくに本症例のようにカテーテルアブレーションを受けた一部の例でPVCが目立ってくる方が多い印象があります(皆さんの感覚ではいかがですか?)。参考レクチャー:第16回、第21回【問題6】そのほかの心電図所見として正しいものをすべて選べ。1)QRS電気軸:+60°2)ST上昇3)異常Q波4)左房拡大5)反時計回転解答はこちら1)解説はこちらこの心電図(図3)は波形異常に関しても賑やかです。QRS電気軸に関しては、肢誘導に着目し、とくにaVL誘導がほぼ“(上下)トントン”ですから、I誘導QRS波の向きと合わせて「+60°」と数値で言える能力は大事です(トントン法)。2)の「ST上昇」は有意なものはなく、むしろII、III、aVF、V4~V6で「ST低下」が目立ちます。今アクティブかは別として、病歴的にも虚血性心疾患の存在を念頭に置くべき心電図ではあります(問診をしっかりとる必要があります!)。3)「異常Q波」については、はじめにV1~V3、続いてaVRを除く「それ以外」の誘導順に見ていきますが、今回は1つもありません。「心房拡大」は右房と左房の2つ。主にII(III、aVF)とV1誘導でP波形に着目するのでした。注目は「左房拡大」のほうではなく、下壁誘導でP波がホッソリ尖鋭化―そう、「右房拡大」ですが、あいにく基準(2.5mm以上)には足りないので、これもNOです。最後に「回転」については、胸部誘導のR波に関してです。V4~V6誘導あたりでS波が深く、「時計回転」風に見えるのはPVC波形です。洞収縮のQRS波形では、R波の増高は調子良く、R/S比の逆転もV3~V4誘導の間で起きており、これも正常です。もちろん、5)「反時計回転」ではありません。参考レクチャー:第9回、第29回さて、今回の2症例はどうだったでしょうか。レクチャーで扱った事項がちょくちょく登場したはずです。できなかった箇所については、参考レクチャーで振り返りをしてみてくださいね。では、また次回!【古都のこと~無鄰菴~】さて、今回は素敵なカフェ「無鄰菴」(むりんあん)をご紹介しましょう。「鄰」という字は「隣」と“左右逆”ですが、同じ意味です。ですから、「隣の無い庵(いおり)」という意味で、“名付け親”は山縣 有朋(やまがた ありとも)*1です。無鄰菴は山縣の別荘で、場所的には南禅寺、平安神宮のすぐ近くです。先日、在任期間が歴代最長と報道された安倍 晋三氏は2006~07年、2012~20年の計2回総理大臣を務めましたが、山縣も時を隔てて2度の内閣総理大臣を経験しています。いわば、明治日本の方向性が決められた*2この無鄰菴ですから、もちろんただのカフェ*3ではないんです。山縣が七代目小川 治兵衛に作庭を命じた“近代日本庭園の傑作”と評されるステキなお庭があるんです(名勝指定:1951年[昭和26年])。どこが素晴らしいか、素人のボクが“付け焼き刃”的に述べる必要はないでしょう。是非、直接ご覧あれ。東山をバックに母屋から眺める庭園には、近代日本の歩んだ“歴史”が染み込んでいます。もちろん、抹茶や茶菓子もアルコールもいただけますから、相当にオシャレな休憩場所と言えるでしょう。*1:山縣有朋には東京にも素敵な庭のあるお屋敷を有していた。それは、現在はフォーシーズンズホテルとなっている「椿山荘」である。*2:1903年(明治36年)、日露開戦へ向けて、山縣、伊藤 博文、小村 寿太郎、桂 太郎ら四者が協議した。現在も残る明治風の洋館2階でイス四脚とテーブルが見学可能。*3:1941年(昭和16年)、京都市が山縣家より譲り受け、現在は植彌加藤造園が委託管理しており、業務の一環としてカフェ運営が行われている。

1967.

血漿ACE2濃度上昇が心血管イベントリスク増大と関連/Lancet

 血漿アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)濃度の上昇は主要な心血管イベントのリスク増大と関連することが、カナダ・マックマスター大学のSukrit Narula氏らによる「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究」において示された。ACE2は、レニン-アンジオテンシン系ホルモンカスケードの内因性の拮抗的調節因子であり、循環血中のACE2活性と濃度の上昇は、さまざまな心血管疾患を持つ患者の予後不良マーカーとなる可能性が示唆されていた。Lancet誌2020年10月3日号掲載の報告。5大陸14ヵ国のデータを用いたケースコホート研究 研究グループは、血漿ACE2濃度と、死亡および心血管疾患イベントのリスクとの関連を検証する目的で、PURE研究のデータを用いてケースコホート研究を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。 PURE研究の参加者のうち、5大陸(アフリカ、アジア、欧州、北米、南米)の14ヵ国のデータを用いた。血漿ACE2濃度を測定し、血漿ACE2値の潜在的な決定因子とともに、ACE2と心血管疾患イベントの関連を評価した。 2005年1月~2006年12月の期間にPURE研究に登録された集団のうち、1万753人が解析に含まれた。フォローアップ期間中央値は9.42年(IQR:8.74~10.48)であった。男性、東アジア、高BMIで高値、死亡の最も優れた予測因子の可能性 相対的重要度の最も高い血漿ACE2値の決定因子は性別で、次いで地理的家系、BMI、糖尿病、年齢、収縮期血圧、喫煙、LDLコレステロール値の順であった。男性は女性よりも血漿ACE2値が高く、血漿ACE2濃度は地理的家系によって大きく異なっていた(南アジアが最も低く、東アジアが最も高い)。高BMI、糖尿病、高齢、高血圧、高LDLコレステロール、喫煙は、すべて血漿ACE2値の上昇と関連していた。 臨床的リスク因子と血漿ACE2値の関連の因果関係を検討したところ、遺伝学的に高BMIと2型糖尿病は血漿ACE2の高値と関連したが、高LDLコレステロール、高収縮期血圧、喫煙には関連を認めなかった。 血漿ACE2濃度の上昇は、死亡リスクの増加と関連し(1SD増加ごとのハザード比[HR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.29~1.43)、同様の関連が心血管死(1.40、1.27~1.54)および非心血管死(1.34、1.27~1.43)にも認められた。 また、血漿ACE2濃度は、初発の心不全(1SD増加ごとのHR:1.27、95%CI:1.10~1.46)、心筋梗塞(1.23、1.13~1.33)、脳卒中(1.21、1.10~1.32)、糖尿病(1.44、1.36~1.52)と関連し、これらの結果には年齢、性別、家系、従来の心臓リスク因子とは独立の関係が認められた。脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を加えて補正しても、新規心不全イベントを除き、ACE2値と臨床的エンドポイント(死亡を含む)との独立の関係には頑健性が保持されていた。 ACE2と臨床的リスク因子(糖尿病、BMI、喫煙、非HDLコレステロール、収縮期血圧)の死亡や心血管疾患への影響を解析(臨床的リスク因子、年齢、性別、家系で補正)したところ、ACE2は全死亡(p<0.0001)、心血管死(p<0.0001)、非心血管死(p<0.0001)の最も優れた予測因子であり、心筋梗塞(p<0.0001)では喫煙、糖尿病に次ぐ3番目(非HDLコレステロールとほぼ同等)、心不全(p=0.0032)および脳卒中(p=0.0010)では収縮期血圧、糖尿病に次ぐ3番目に強固な予測因子であった。 著者は、「このようなレニン-アンジオテンシン系の影響を理解して調節することで、心血管疾患の発生を抑制する新たなアプローチがもたらされる可能性がある」としている。

1968.

経口DPP-1阻害薬による気管支拡張症の増悪抑制について(解説:小林英夫氏)-1298

 本論文は気管支拡張症への経口DPP-1(dipeptidyl peptidase 1)阻害薬であるbrensocatib投与により、喀痰中好中球エラスターゼ活性のベースライン低下や臨床アウトカム(増悪)改善が得られたとする第II相試験結果である。DPP-4阻害薬なら糖尿病治療薬として市販されており耳なじみもあろうが、DPP-1阻害薬となると情報が少ないのではないだろうか。詳細説明は割愛するが、好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼ活性に関与する酵素(DPP-1)を阻害することで、喀痰中の酵素量や活性を低下させえるとのことである。いずれにしろ今後の第III相試験結果を待ちたい。 さて、なぜに昔の疾患と思われている気管支拡張症の検討なのであろうか。まず、気管支拡張症とは疾患名としてよりも、気管支が拡張しているという形態診断名であり、1980年代まではいまや消滅した気管支造影検査によって診断されていた。現在は高分解能CTによって気管支径が併走する肺動脈径の100%以上に拡大しているときに診断される。原因としては、先天性、肺疾患罹患後、免疫不全、アレルギー性疾患などと多岐にわたるが、原因不明(特発性)が最多とされる。気管支拡張症が一時期忘れられていた理由の一部として、筆者はびまん性汎細気管支炎(DPB)へのマクロライド療法の関与を想定する。DPBでは中葉・舌区を中心に気管支拡張合併が通常であり、さらに1980年代にはびまん性気管支拡張の大半はDPB由来ではないかとの本邦論文も発表されている。そのDPBは日本発のマクロライド療法により著減し、最近では希少疾患になろうとしていることから、気管支拡張症も追随して減少したのではと思っていた。 ところが近年、軽症例を含めると、想像以上に多数の潜在症例が埋もれているのではないかと欧米から報告され、気管支拡張症の国際的ガイドラインが刊行されている(Polverino E, et al. Eur Respir J. 2007;50:1700629.)。加えてmicrobiome(体内常在細菌叢とその遺伝情報)が多彩な慢性炎症性疾患の成立に関与しているのではないかという世界的関心の中、気管支拡張症も気道に存在するmicrobiomeが要因の1つではないかと推定されている。健康人の気道からは細菌は検出されないと教えられた世代にとって驚きの知見である。加えて、急増する非結核性抗酸菌症や、関節リウマチなどの免疫性炎症性疾患による気管支拡張症も呼吸器領域では注目の病態である。日本での罹患頻度の統計はないが、関節リウマチを母集団とすると30%もの合併があるという報告も見られ、新たな方法論の発展により気管支拡張症が見直されつつある。

1969.

医療のイノベーション、ヘルスケアベンチャー大賞で体感しよう!

 昨年盛況に終わり、今年2回目を迎える『ヘルスケアベンチャー大賞』(主催:日本抗加齢協会、共催:日本抗加齢医学会)。この最終審査が10月26日(月)に開催される。 ヘルスケアベンチャー大賞は、アンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を拓き、社会課題の解決につなげていく試みとして、日本抗加齢医学会のイノベーション委員会発足後、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げた。ベンチャー企業や個人のアイデアによるビジネスプランを書類審査、1次審査、最終審査の3段階で評価し表彰する。 今年は新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、これまでの日常は非日常となりニューノーマルを余儀なくされている。そんな状況下、ヘルスケア分野でイノベーションを起こそうと多くの起業家や学生が応募した。今回はその中から選出されたファイナリスト8組のユニークなビジネスモデルのプレゼンテーションを聴講できるまたとない機会である。気になる方は参加登録をしてみてはいかがだろうか。第2回ヘルスケアベンチャー大賞 ファイナリスト決定 最終審査【日時】2020年10月26日(月)15~17時【参加方法】WEB開催 (最終審査会参加登録はこちら)【ファイナリスト】<企業5社>合同会社アントラクト:StA2BLEによる転倒リスク評価と機能回復訓練事業株式会社OUI:Smart Eye Cameraを使用した白内障診断AIの開発株式会社Surfs Med:変形性膝関節症に対する次世代インプラントの開発歯っぴー株式会社:テクノロジーで普及を拡張させる口腔ケア事業株式会社レストアビジョン:視覚再生遺伝子治療薬開発<個人3名>佐藤 拓己氏(東京工科大学):寿司を食べながらケトン体を高く保つ方法松本 成史氏(旭川医科大学):メンズヘルス指標に有効な新規「勃起力」計測装置の開発松本 佳津氏(愛知淑徳大学):長寿高齢社会を前提とした真に豊かな住空間をインテリアから考え、活用できる具体的な指標を作成する

1970.

第11回日本製薬医学会年次大会開催のご案内(現地/web併催)

 一般財団法人日本製薬医学会は、2020年10月30日(金)、31日(土)に東京・日本橋ライフサイエンスビルでの開催を予定していた『第11回日本製薬医学会年次大会』を現地開催及びWeb開催の併催へと変更した。Webで参加する場合、参加登録者は会期中に全セッションを随時視聴可能である。また、後日、全参加者を対象としたWeb配信も予定されている[2020年11月14日(土)~11月23日(月)]。 開催概要は以下のとおり。【日時】2020年10月30日(金)~31日(土)【参加条件】登録方法:オンライン参加登録(10月31日まで。10月19日17時までは早期割引あり)参加費:ホームページ参照【テーマ】”産官患民学”連携による製薬医学の推進〜より良い医薬品を"1日も早く"患者さんとそのご家族にお届けするために〜【大会長】小居 秀紀氏(国立精神・神経医療研究センター)【大会概要】学会初日に開催される招待講演は、「医療イノベーションの推進に向けたPMDAの取組み」として、PMDA理事長の藤原 康弘氏に講演いただく。基調講演は、昨今ますます注目が高まっている疾患レジストリに関連し、「精神疾患領域における“産官患民学”連携~精神疾患レジストリ~」として、国立精神・神経医療研究センター病院長の中込 和幸氏にお願いしている。そのほか、シンポジウムでは、コロナ禍でのMA/MSL活動、医療現場と産学の協働に関するセッションや次世代医療基盤法とリアルワールドデータなどに着目した、最新の製薬医学に関連するセッションを皆さまへお届けする。【招待講演】10月30日(金) 13時10分~14時10分テーマ:医療イノベーションの推進に向けたPMDAの取組み座長:岩本 和也氏(日本製薬医学会 理事長)演者:藤原 康弘氏(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構[PMDA]理事長)【基調講演】10月31日(土) 11時30分~12時30分テーマ:精神疾患領域における“産官患民学”連携~精神疾患レジストリ~座長:小居 秀紀氏(第11回日本製薬医学会年次大会 大会長/国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター 情報管理・解析部長)演者:中込 和幸氏(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院長/理事)概略はこちら【お問い合わせ】一般財団法人日本製薬医学会 事務局〒108-0023 東京都港区芝浦4-15-33 芝浦清水ビル 株式会社 マディア 内E-mail:zymukyoku@japhmed.org

1971.

不規則な月経周期、早期死亡リスクを増大/BMJ

 18~22歳、29~46歳時の月経周期の乱れ(不規則でサイクル期間が長い)は、70歳未満の早期死亡リスクの増大と関連することが明らかにされた。同関連は喫煙女性で、わずかだが強いことも示されたという。米国・ハーバード大学医学大学院のYi-Xin Wang氏らが、同国の看護師を対象とした前向きコホート試験「Nurses’ Health Study(NHS、看護師健康調査)II」の被験者約8万例を対象に行った大規模試験で明らかにした。不規則で長期の月経周期は、生殖年齢の女性においてよくみられ、主要な慢性疾患リスクの上昇と関連していることが知られている。一方でそのエビデンスは脆弱であった。BMJ誌2020年9月30日号掲載の報告。14~17歳、18~22歳、29~46歳時の月経期間・規則性と早期死亡の関連を検証 研究グループは、一生涯を通じた不規則で長期間の月経周期が、全死因死亡と関連しているかどうか、また、特定の早期(70歳未満)死亡を引き起こすかどうかを評価する検討を行った。 1993~2017年にNHS IIに参加し、心血管疾患、がん、糖尿病の既往がなく、14~17歳、18~22歳、29~46歳時の月経期間とその周期の規則性に関する情報を得られた女性7万9,505例を対象とした。 全死因死亡と特定の早期(70歳未満)死亡の発生について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算して評価した。18~22歳、29~46歳時の月経不規則群、規則群に比べ早期死亡リスクは約1.4倍 追跡期間24年間に発生した早期死亡は1,975例で、死因はがんが894例、心血管疾患が172例だった。 同一年齢範囲群において、常に月経周期が不規則だった女性(月経不規則群)の追跡期間中の死亡率は、月経周期がきわめて規則的だった女性(月経規則群)に比べ高かった。1,000人年当たりの補正前死亡率は、14~17歳時の月経規則群1.05、同月経不規則群1.23であり、18~22歳時の月経規則群1.00、同月経不規則群1.37、29~46歳時の月経規則群1.00、同月経不規則群1.68だった。 追跡期間中の早期死亡に関する多変量補正後HRは、14~17歳時の月経不規則群vs.同月経規則群で1.18(95%CI:1.02~1.37)、18~22歳時の月経不規則群vs.同月経規則群では1.37(1.09~1.73)、29~46歳時の月経不規則群vs.同月経規則群では1.39(1.14~1.70)だった。 これらの関連性は、心血管疾患による早期死亡で最も強かった。長期で不規則な月経周期と早期死亡リスク増大の関連性は、現喫煙者でわずかだが強く認められた。

1972.

糖尿病併存のCOVID-19治療、入院時のシタグリプチン投与が有用

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を巡っては、高血圧症や糖尿病などの併存疾患を有する患者で転帰不良となることがこれまでの研究で明らかになっており、併存疾患に応じた治療を模索する必要がある。イタリア・パヴィア大学のSebastiano Bruno Solerte氏らは、COVID-19治療のために入院した2型糖尿病患者を対象に、標準治療(インスリンなど)にDPP-4阻害薬シタグリプチンを追加したケースと、標準治療のみのコントロールを比較する多施設後ろ向きケースコントロール研究を行った。その結果、シタグリプチン追加群で死亡率の低下と臨床転帰の改善がみられた。Diabetes Care誌オンライン版2020年9月2日号に掲載。 本研究では、2020年3月1日~4月30日、北イタリアの複数の医療機関においてCOVID-19治療のために入院した、連続した2型糖尿病患者338例について、標準治療にシタグリプチンを追加した169例(シタグリプチン追加群)を、年齢・性別をマッチさせた169例(標準治療群)と比較した。主要評価項目は退院、死亡、臨床転帰の改善(7段階の評価スケールで、2ポイント以上の増加と定義)とした。 その結果、シタグリプチン追加群では、標準治療群に比べ死亡率の低下(18% vs.37%、ハザード比:0.44、95%信頼区間:0.29~0.66、p=0.0001)、臨床転帰の改善(60% vs.38%、p=0.0001)および退院者数の増加(120例 vs.89例、p=0.0008)がみられた。 著者らは、本研究で入院時のシタグリプチン治療が死亡率低下および臨床転帰の改善に寄与することが示されたが、進行中のランダム化プラセボ対照試験においてさらなる検証が必要であるとしている。

1973.

メタボ健診の保健指導に心血管リスク低減効果なし~見直しが必要(解説:桑島巖氏)-1295

オリジナルニュースメタボ健診による特定保健指導に心血管リスク軽減効果なし(2020/10/13掲載) 特定健康診査とその結果に基づく特定保健指導は2008年(平成20年)から始まった全国規模の保健事業で、一般的にはメタボ健診と呼ばれているものである。メタボ健診では腹囲とBMIを測定するほか、血圧、HbA1c、LDLコレステロール値などを測定して、その結果により医師や保健師による指導を行うというシステムである。 そもそもの発端は、1989年に米国のKaplanによって提唱された概念で、上半身肥満・糖代謝異常・高中性脂肪血症・高血圧の4つが重なると心筋梗塞に罹患しやすいことから、「死の四重奏(Deadly Quartet)」と呼ばれていたものである。日本でいうメタボリック(メタボ)では、それらの上流に内臓脂肪蓄積を置いているのが、米国の死の四重奏と異なり、わが国では内臓脂肪症候群と呼ぶ場合もある。そこで日本の特定健康診査では腹囲を測定することに重点を置いているのが特徴であり、医療機関では腹部CTも測定するところもある。 しかし、そもそも米国の肥満と日本人の肥満はレベルが違い過ぎて、日本人への腹囲に重点を置く健康審査に、疑問を呈する声は少なくなかった。デンマークで約1万2,000人を対象として、健診を受けた群と受けなかった群を10数年間追跡した研究では、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の発生や死亡率に両群で差がないという結果が発表された。 今回、京都大学の福間教授らによって行われた約7万5,000人を対象とした追跡調査の結果では、保健指導を受けた群では体重、BMIは1年後わずかに減少したものの3、4年後には元に戻っていた。さらに血圧、糖尿病、抗コレステロール血症に関しては、1年後も、3、4年後も改善効果は認められないという結果であった。 効果が乏しかった理由の1つとして、保健指導の対象となっていても実際に指導を受けた人は16%にすぎないことが関係している可能性もあるが、実際に受けた人だけを対象として解析を行ってもやはり心血管リスク低減効果はみられなかったという。保健指導を受けるべき人が受けていないという現実も重要である。 この制度には年間160億円の費用がかかっており、費用に見合った健康に関する有益性が見いだせないからには、その制度そのものの見直しが必要であると研究主任の福間教授は述べている。

1974.

アンチエイジングのためのHealthy Statement作成が始動/日本抗加齢医学会

 近年、EBM普及推進事業Mindsの掲げるガイドライン作成マニュアルが普及したこともあり、各学会でガイドラインの改訂が活発化している。さまざまな専門分野の医師が集結する抗加齢医学においても同様であるが、病気を防ぐための未病段階の研究が多いこの分野において、ガイドライン作成は非常にハードルが高い。Healthy Statement-ガイドライン作成の第一歩 そこで、日本抗加齢医学会は第20回総会を迎える節目の今年、ワーキング・グループを設立し、今後のガイドライン作成、臨床への活用を目的にコンセンサス・レポートとしてHealthy Statement(以下、ステートメント)の作成を始めた。ステートメントの現況は、9月25日(金)~27日(日)に開催された第20回日本抗加齢医学会の会長特別プログラム1「Healthy Agingのための学会ステートメント(ガイドライン)作成に向けて」にて報告された。 ステートメントは健康寿命の延伸に関して科学的なエビデンスが蓄積されつつある4つの分野(食事、運動、サプリメント、性ホルモン)が検討されており、今回、新村 健氏(兵庫医科大学内科学総合診療科)、宮本 健史氏(熊本大学整形外科学講座)、阿部 康ニ氏(岡山大学脳神経内科学)、堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学/日本抗加齢医学会理事長)らが、各部門の作成状況を発表した。各分野、抗加齢に特化したデータ抽出進む 『食事・カロリー制限とアンチエイジング』について講演した新村氏は、「抗加齢医学の領域において、食事療法・カロリー制限に関するエビデンスは十分と言えず、ガイドライン・診療の手引きを作成するだけの材料が揃っていないのが現状」とし、「食事療法の選択としては日本人での実行性と重要性を重視し、健常者または重篤な疾患を持たない者を対象者に想定している」と述べた。さらに今後の方針として「1つの食事療法に対して、複数のアウトカムから評価し、アンチエイジング医学の多様性を意識する」と話した。 『運動・エクササイズとアンチエイジング』については宮本氏がコメント。「運動介入と高齢者の骨密度、認知症や寿命延伸に関するデータをまとめ、CQを作成した。とくに運動介入は高齢者の骨密度の軽度の増加、認知症予防に強く推奨される。また要介護化の予防に中等度、寿命・健康寿命の延伸には弱く推奨される」など話した。 『サプリメント・機能性表示WGからの報告』について阿部氏が講演。「本ワーキング・グループは感覚器、歯科、循環器、消化器/免疫、皮膚科、脳神経の6領域において活動を行っている。サプリメントは分類上では機能性表示食品に該当するが、医薬品のように観察研究や介入研究が多くデータが豊富に揃っていた。評価文、根拠文献、評価上の要点、エビデンスグレードの各案が出揃い、完成近い品目もある」と解説した。このほか、アルツハイマー病治療において、アミロイドβの根本治療が全滅している現在、サプリメント活用のメリットにも言及した。 『テストステロン(男性ホルモン)』については堀江氏が既存のエビデンスとして、テストステロン低値の人の早逝、内蔵脂肪との関連、そのほか低テストステロンが惹起する身体機能の低下や合併症について説明。「テストステロンはメタボリックシンドローム、耐糖能異常、うつ病、フレイルなどの疾患との関連において十分なエビデンスが存在する。これらのデータを踏まえ、テストステロンは未病のための明日の健康指標になる。さらには、社会参画や運動量など人生のハツラツ度に影響するホルモンであることから、今日の健康指標にもつながる」とし、「今後、性ホルモン分野としてエストロゲン、テストステロンの両方について報告していく」と締めくくった。抗加齢医学の目標、ステートメント完成は2021年を目処 講演後、大会長の南野氏は「抗加齢医学は集団も然り、研究疾患もヘテロである。このヘテロジェナイティを認識したうえで、足りないエビデンスをわれわれで補うことが最終目標である」と述べた。これに堀江氏は「われわれは疾患ではなく、疾患に至る前段階を捉えて研究を行っている。診療ガイドラインの疾患アウトカムと異なるエビデンスが必要であり、それゆえ研究対象も従来の研究とは異なる。たとえば、高齢者の認知機能ではなく40歳くらいの若年者の機能探索がその1つである」と補足し、今後の抗加齢医学会の進むべき道について強調した。Healthy Statementは来年6月頃までにまとめられ、2021年の本学術集会にて発表される予定である。 なお、本講演は10月8日(木)~21日(水)の期間限定でケアネットYouTubeにて配信している。

1975.

メタボ健診の特定保健指導に心血管リスク低減効果なし

 京都大学の福間 真悟氏らの疫学研究により、わが国の特定健康診査(メタボ健診)を受けた勤労世代の男性において、特定保健指導によって体重は1年後にわずかに減少したが、血圧、HbA1c、LDLコレステロールなどの心血管リスク因子改善が認められなかったという結果が発表された。著者らは「特定健康診査の費用が高額(年間約160億円)であることを考慮し、そのシステムを再評価する必要がある」としている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2020年10月5日号掲載の報告。特定保健指導を受けた人に血圧などの心血管リスクの軽減効果なし 著者らは、2013年に健診後、1年以上追跡できた40~74歳の男性約7万4,693人を1~4年間追跡した。腹囲85cm以上、高血圧、糖尿病などの心血管リスク因子を1つ以上有している人では、特定保健指導を受けることが必要とされていた。統計方法は、回帰不連続デザイン(regression discontinuity design:RDD)で実施された。RDDとは、ある連続変数(ここでは腹囲)の値が特定の値より高いか低いかで介入群(ここでは特定保健指導)に割り付けることにより、介入の効果を推定する方法である。本研究では、腹囲85cm以上か否かで分け、特定保健指導の効果におけるその後の腹囲、体重、BMIへの影響のほか、血圧、血糖値(HbA1c)やLDLコレステロールへの影響についても検討した。特定保健指導の内容は、トレーニングを受けた指導員による運動・食事の指導で、必要に応じて医療機関受診などの指導を受けることになっていた。なお、介入群と非介入群についてintention-to-treat解析を行ったが、実際に指導を受けた人は介入群の15.9%にすぎず、指導を受けた人についてtreatment-on-the treated(ToT)解析により検討した。 メタボ検診後の特定保健指導の効果を検証した主な結果は以下のとおり。・対象者の平均年齢は52.1歳、ベースラインでの平均腹囲は86.3cm(腹囲が閾値の-6~0cmの群では82.2cm、0~6cmの群では87.7cm)であった。・腹囲が閾値(85cm)より大きく特定保健指導を受ける群において、腹囲は1年後に-0.34 cm(p=0.02)、体重-0.29kg(p=0.005)、BMIは-0.10(p=0.008)とわずかではあるが減少した。しかし3、4年後には、有意差は消失し効果がみられなかった。・心血管リスクに関して、収縮期血圧、拡張期血圧、HbA1c、LDLコレステロールのいずれも1~4年間で改善が認められなかった。・実際に特定保健指導を受けた人のみで検討したToT解析では、1年後に体重は-1.56kg(p=0.02)、BMIは-0.61(p=0.01)と、いずれもわずかな減少がみられたが、血圧などの心血管リスクの軽減はみられなかった。専門家はこう見る:CLEAR!ジャーナル四天王メタボ健診の保健指導に心血管リスク低減効果なし~見直しが必要(解説:桑島 巖 氏)-1296 コメンテーター :桑島 巖( くわじま いわお ) 氏東京都健康長寿医療センター顧問J-CLEAR理事長

1976.

ダパグリフロジン、CKDの転帰を改善/NEJM

 慢性腎臓病(CKD)患者では、糖尿病の有無にかかわらず、SGLT2阻害薬ダパグリフロジンはプラセボと比較して、推算糸球体濾過量(GFR)の持続的な50%以上の低下や末期腎不全、腎臓または心血管系の原因による死亡の複合の発生リスクを有意に低下させることが、オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J L Heerspink氏らが行った「DAPA-CKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月24日号に掲載された。CKD患者は、腎臓や心血管系の有害な転帰のリスクが高いとされる。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病患者の大規模臨床試験において、糖化ヘモグロビンを低下させるとともに、腎臓や心血管系の転帰に良好な効果をもたらすと報告されている。一方、CKD患者における糖尿病の有無別のダパグリフロジンの有効性は知られていないという。DAPA-CKD試験には21ヵ国386施設が参加 DAPA-CKD試験は、CKD患者における2型糖尿病の有無別のダパグリフロジンの有効性と安全性を評価する目的の二重盲検プラセボ対照無作為化臨床試験(AstraZenecaの助成による)。21ヵ国386施設が参加し、2017年2月~2018年10月の期間(中国の一部の参加者は2020年3月まで)に無作為割り付けが行われた。 対象は、推算GFRが25~75mL/分/1.73m2体表面積で、尿中アルブミン/クレアチニン比(アルブミンはミリグラム[mg]、クレアチニンはグラム[g]で測定)が200~5,000のCKD患者であった。被験者は、ダパグリフロジン(10mg、1日1回)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、推算GFRの持続的な50%以上の低下、末期腎不全、腎臓または心血管系の原因による死亡の複合とした。 本DAPA-CKD試験は、2020年4月3日、独立データ監視委員会の提言に基づき、有効中止となった。DAPA-CKD試験の主要評価項目はダパグリフロジン群で良好 DAPA-CKD試験には4,304例が登録され、ダパグリフロジンとプラセボの両群に2,152例ずつが割り付けられた。全体の平均年齢(±SD)は61.8±12.1歳、1,425例(33.1%)が女性であった。ベースラインの平均推算GFRは43.1±12.4mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比中央値は949であり、2,906例(67.5%)が2型糖尿病の診断を受けていた。 フォローアップ期間中央値2.4年(IQR:2.0~2.7)の時点で、主要評価項目のイベントは、ダパグリフロジン群が2,152例中197例(9.2%)で、プラセボ群は2,152例中312例(14.5%)で発生した(ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.51~0.72、p<0.001、主要評価項目の1件のイベントの予防に要する治療数:19件、95%CI:15~27)。また、主要評価項目の個々の構成要素はいずれも、ダパグリフロジン群で良好だった。 DAPA-CKD試験の副次評価項目である推算GFRの持続的な50%以上の低下、末期腎不全、腎臓が原因の死亡の複合のHRは0.56(95%CI:0.45~0.68、p<0.001)、心血管系の原因による死亡または心不全による入院のHRは0.71(0.55~0.92、p=0.009)であった。また、ダパグリフロジン群で101例(4.7%)、プラセボ群で146例(6.8%)が死亡した(HR:0.69、95%CI:0.53~0.88、p=0.004)。 ダパグリフロジン群では、主要評価項目のイベント発現のHRは、2型糖尿病患者が0.64(95%CI:0.52~0.79)、非2型糖尿病患者は0.50(0.35~0.72)であり、いずれもプラセボ群と比較して良好で、2型糖尿病の有無で効果に差はなかった。 有害事象および重篤な有害事象の発生率は、全般に両群でほぼ同等であった。糖尿病性ケトアシドーシスは、ダパグリフロジン群では報告がなく、プラセボ群は2例に認められた。2型糖尿病のない患者では、糖尿病性ケトアシドーシスや重度低血糖はみられなかった。 著者は、「SGLT2阻害薬の腎保護作用は、2型糖尿病を伴わないCKD(ACE阻害薬が、腎不全の予防効果が示されている唯一の薬物療法である患者)という幅広い患者集団にまで拡大されることが確認され、ダパグリフロジンの有益な安全性プロファイルが確かめられた」としている。

1977.

Dr.水谷の妊娠・授乳中の処方コンサルト

第1回 【妊娠中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗インフルエンザ薬第2回 【妊娠中】抗てんかん薬・抗うつ薬・麻酔薬第3回 【妊娠中】β刺激薬・チアマゾール・レボチロキシン第4回 【妊娠中】経口血糖降下薬・ワルファリン・制酸薬第5回 【妊娠中】抗リウマチ薬・抗アレルギー薬・タクロリムス外用薬第6回 【妊娠中】漢方薬・CT,MRI検査・悪性疾患の治療方針第7回 【授乳中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗ウイルス薬第8回 【授乳中】抗てんかん薬・向精神薬・全身麻酔第9回 【授乳中】胃腸薬・降圧薬・抗アレルギー薬第10回 【授乳中】ステロイド・乳腺炎への対処・造影検査後の授乳再開 臨床では妊娠中・授乳中であっても薬が必要な場面は多いもの。ですが、薬剤の添付文書を見ると妊婦や授乳婦への処方は禁忌や注意ばかり。必要な治療を行うために、何なら使ってもいいのでしょうか?臨床医アンケートで集めた実際の症例をベースとした30のQ&Aで、妊娠中・授乳中の処方の疑問を解決します。産科医・総合診療医の水谷先生が、実臨床で使える、薬剤選択の基準の考え方、そして実際の処方案を提示します。第1回 【妊娠中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗インフルエンザ薬臨床医アンケートで集めた妊婦・授乳婦への処方の疑問を症例ベースで解説・解決していきます。初回は、妊娠中の解熱鎮痛薬、抗菌薬、抗インフルエンザ薬の選択についてです。明日から使える内容をぜひチェックしてください。第2回 【妊娠中】抗てんかん薬・抗うつ薬・麻酔薬妊娠を機に服薬を自己中断してしまう患者は少なくありません。そして症状の悪化とともに受診することはよくあります。今回は抗てんかん薬、抗うつ薬の自己中断症例から妊娠中の薬剤選択について解説します。緊急手術時に必須の麻酔薬の処方についても必見です。第3回 【妊娠中】β刺激薬・チアマゾール・レボチロキシン喘息は妊娠によって症状の軽快・不変・増悪いずれの経過もとりえます。悪化した場合にβ刺激薬やステロイド吸入など一般的な処方が可能のか?甲状腺関連の疾患では妊娠の希望に応じて、バセドウ病患者はチアマゾールを継続していいのか?橋本病ではレボチロキシンを変更すべきなのか?といった実臨床で遭遇する疑問を解決します。第4回 【妊娠中】経口血糖降下薬・ワルファリン・制酸薬今回のクエスチョンは弁置換術既往の妊婦の抗凝固薬選択。ワルファリンからヘパリンへの変更は適切なのでしょうか?降圧薬の選択では妊娠週数に応じて使用可能な薬剤が変わる点を必ず押さえましょう!そのほか、妊娠中の内視鏡検査の可否とその判断、2型糖尿病の薬剤選択についても取り上げます。2型糖尿病管理は、薬剤選択とともに血糖管理目標についてもチェックしてください。第5回 【妊娠中】抗リウマチ薬・抗アレルギー薬・タクロリムス外用薬膠原病があっても妊娠を継続するにはどのような薬剤選択が必要なのでしょうか?メトトレキサートや抗リウマチ薬の処方変更について解説します。花粉症症状に対する抗アレルギー薬処方、アトピー性皮膚炎へのタクロリムス外用薬の継続可否など、臨床で頻用される薬剤についての解説もお見逃しなく。第6回 【妊娠中】漢方薬・CT,MRI検査・悪性疾患の治療方針妊娠中に漢方薬を希望する患者は多いですが、どういうときに漢方薬を使用すべきなのでしょうか?上気道炎事例を入り口に、妊婦のよくある症状に対する漢方薬の処方について解説します。CTやMRIの適応判断に必要な放射線量や妊娠週数に応じたリスクを押さえ、がん治療については永久不妊リスクのある治療をチェックしておきましょう。第7回 【授乳中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗ウイルス薬今回から授乳中の処方に関する質問を取り上げます。授乳中処方のポイントはRID(相対的乳児投与量)とM/P比(母乳/母体濃度比)。この2つの概念を理解して乳児への影響を適切に検討できるようになりましょう。今回取り上げるのは、解熱鎮痛薬、抗菌薬、抗インフルエンザ薬といった日常診療に必要不可欠な薬剤。インフルエンザについては、推奨される薬剤はもちろん、家庭内での感染予防に対する考え方なども必見です。第8回 【授乳中】抗てんかん薬・向精神薬・全身麻酔ほとんどの母親は服薬中も授乳継続を希望します。多くの薬剤は添付文書上で授乳中止が推奨されていますが、実は授乳を中断しなくてはならないケースはあまり多くありません。育児疲労が増悪因子になりやすい、てんかんや精神疾患について取り上げ、こうした場合の対応を解説します。治療と母乳育児を継続するための、薬剤以外のサポートについても押さえておきましょう。第9回 【授乳中】胃腸薬・降圧薬・抗アレルギー薬授乳中の処方で気を付けるべきは、薬剤の児への移行だけではありません。見落としがちなのが、乳汁分泌の促進・抑制をする薬剤があるということ。症例ベースのQ&Aで、胃腸薬、降圧薬、抗アレルギー薬など日ごろよく処方する薬の注意点を解説していきます。OTC薬で気を付けるべき薬剤やピロリ菌除菌の可否なども押さえておきましょう。第10回 【授乳中】ステロイド・乳腺炎への対処・造影検査後の授乳再開ステロイド全身投与で議論になるのは児の副腎抑制と授乳間隔。どちらも闇雲に恐れる必要はありません。乳腺炎については、投与可能な薬剤だけでなく再発を予防するための知識を押さえておきましょう。造影剤使用後の授乳再開については日米での見解の違いを臨床に活かすための知識を伝授します。

1978.

1日1杯以上の飲酒が糖尿病患者の高血圧リスクと関連?

 これまで、2型糖尿病患者における飲酒と高血圧の関連は、十分に研究されていない。今回、米国・ウェイクフォレスト大学のJonathan J. Mayl氏らのデータ分析で、2型糖尿病患者では、適度な飲酒でも高血圧リスクに関連する可能性が示された。JAHA誌オンライン版2020年9月9日号での報告。 本研究は、成人の2型糖尿病患者を対象に心血管疾患(CVD)を軽減するための介入を比較したランダム化試験(ACCORD試験)の参加者1万200人(平均年齢約63歳)のデータを利用した。参加者は、軽度の飲酒(1~7杯/週)、中程度の飲酒(8~14杯/週)、重度の飲酒(15杯以上/週)の3群に分類された。なお、“1杯”の定義は12オンスのビール、6オンスのワインまたは1.5オンスのリキュールとした。 血圧については、ACC/AHA2017高血圧ガイドラインに従って、正常(収縮期血圧[SBP]120mmHg未満かつ拡張期血圧[DBP]80mmHg未満)、血圧上昇(SBP:120~129mmHgかつDBP:80mmHg未満)、ステージ1高血圧(SBP:130~139mmHgまたはDBP:80~89mmHg)、ステージ2高血圧(SBP:140mmHg以上またはDBP:90mmHg以上)に分類された。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、人種、BMI、CVDの既往、現在・過去の喫煙状態、2型糖尿病の罹患年数を考慮した多変量ロジスティック回帰モデルでは、軽度の飲酒と血圧上昇または高血圧との間に関連は見られなかった。・中程度の飲酒では、血圧上昇(オッズ比[OR]:1.79、95%CI:1.04~3.11、p=0.03)、ステージ1高血圧(OR:1.66、95%CI:1.05~2.60、p=0.03)およびステージ2高血圧(OR:1.62、95%CI:1.03~2.54、p=0.03)と関連していた。・重度の飲酒では、血圧上昇(OR:1.91、95%CI:1.17~3.12、p=0.01)、ステージ1高血圧(OR:2.49、95%CI:1.03~6.17、p=0.03)およびステージ2高血圧(OR:3.04、95%CI:1.28~7.22、p=0.01)と関連していた。 著者らは「2型糖尿病患者は心血管リスクがとくに高いため、飲酒と高血圧の関係を理解することが非常に重要だ。週に7杯以上の飲酒は、2型糖尿病患者の高血圧に関連している可能性がある」と結論している。

1979.

「ウテメリン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第20回

第20回 「ウテメリン」の名称の由来は?販売名ウテメリン錠®5mg※注射剤は錠剤のインタビューフォームと異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください一般名(和名[命名法])リトドリン塩酸塩(JAN)効能又は効果切迫流・早産用法及び用量通常、1回1錠(リトドリン塩酸塩として5mg)を1日3回食後経口投与する。なお、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.強度の子宮出血、子かん、前期破水例のうち子宮内感染を合併する症例、常位胎盤早期はく離、子宮内胎児死亡、その他妊娠の継続が危険と判断される患者[妊娠継続が危険と判断される。]2.重篤な甲状腺機能亢進症の患者[症状が増悪するおそれがある。]3.重篤な高血圧症の患者[過度の昇圧が起こるおそれがある。]4.重篤な心疾患の患者[心拍数増加等により症状が増悪するおそれがある。]5.重篤な糖尿病の患者[過度の血糖上昇が起こるおそれがある。また、糖尿病性ケトアシドーシスがあらわれることもある。]6.重篤な肺高血圧症の患者[肺水腫が起こるおそれがある。]7.妊娠16週未満の妊婦8.本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者※本内容は2020年10月7日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2016年2月(改訂第5版)医薬品インタビューフォーム「ウテメリン®錠5mg」2)キッセイ薬品:製品情報

1980.

臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン【「実践的」臨床研究入門】第1回

学会抄録締切前に良くある? 風景指導医Aそろそろ〇〇学会の抄録締切だね。外来の慢性腎臓病患者さんに対する食事療法のデータも集まってきたし、何か演題出せないかな。専攻医Bデータ・セットはもうあるのですか?指導医Aうん、このUSBに途中までは入力してあるから、足りないところは補って統計解析してみてよ。専攻医Bところで、何について統計解析すれば良いのですか?指導医Aそうだなぁ。あまりよく考えてないけれど、“食事療法と患者予後”みたいな感じでどうかな。それで、どうにか有意差出してみてよ。よろしくね!専攻医Bわかりました、やってみます…(病棟業務で忙しいのに…泣)学会抄録締切直前になると、日本全国の病棟や医局でこのような風景がよくみられるのではないでしょうか。 この架空のシナリオに登場した指導医A先生の発言には、丸投げ感満載の若干パワハラ(アカハラ?)チックな面は置いておくとしても、キチンとした臨床研究を実践するうえで、いくつかの問題点があります。クリニカル・クエスチョンとリサーチ・クエスチョンクリニカル・クエスチョン(CQ)とは臨床現場で日々生じる「漠然とした臨床上の疑問」です。指導医A先生は「“食事療法と患者予後”みたいな感じ」と言っているので、“食事療法と患者予後”について何かCQを持っているのかもしれません。たとえば、「食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は本当に改善するのだろうか」というような。リサーチ・クエスチョン(RQ)はこの「漠然とした臨床上の疑問」であるCQを「具体的で明確な研究課題」に落とし込んだものです。別の言い方をすれば、RQとは「臨床研究で明らかにしたい臨床上の疑問を、具体的かつ明確に示した短い文」です。典型的なRQは「ある疾患を有する患者にAという治療を行った場合と、行わなかった場合を比較して生命予後に違いがあるだろうか?」というような疑問文の形をとることが多いです。また、RQは以下の4つの要素によって構成されることが一般的です。Patients(対象)Exposure(曝露要因)もしくはIntervention(介入)Comparison(比較対照)Outcome(アウトカム)これらの4つの要素は頭文字を並べてPECOまたはPICOと呼ばれます。このPE(I)COは「漠然とした臨床上の疑問」であるCQを「具体的で明確な研究課題」であるRQに「流し込む」際の、代表的な「鋳型」になります。また、この「鋳型」は臨床研究立案だけでなく臨床研究論文を読み解く際にも有用なツールとなりますので、PE(I)COの要素を意識しながら論文を読んでいただくと良いと思います。臨床上の疑問の定式化:PE(I)CO 指導医A先生の「“食事療法と患者予後”みたいな感じ」のままでは箸にも棒にもかかりません。この発言を忖度して、前述のとおり推察して考えた仮のCQを「食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか」、としたとします。このCQをもとに、丸投げされてかわいそうな専攻医B先生の身になって、まずはざっくりとRQの典型的な「鋳型」であるPE(I)COへ「流し込む」ことを考えてみましょう。この手順を「臨床上の疑問の定式化」とも言います。CQ:食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:慢性腎臓病患者 E:食事療法の遵守C:食事療法の非遵守O:腎予後このように、ざっくりとしたRQ(PECO)を立てたあとは、PECOそれぞれの要素を具体的かつ明確なカタチに磨き上げる必要があります。次回は、RQをブラッシュアップする過程について解説します。1)福原俊一. 臨床研究の道標 第2版. 健康医療評価研究機構;2017.2)木原雅子ほか訳. 医学的研究のデザイン 第4版. メディカル・サイエンス・インターナショナル;2014.3)矢野 栄二ほか訳. ロスマンの疫学 第2版. 篠原出版新社;2013.4)中村 好一. 基礎から学ぶ楽しい疫学 第4版. 医学書院;2020.

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