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医者にかかる10箇条に見る新たな医師と患者の関わり方

 インフォームド・コンセント(IC)の場において、医師の努力もさることながら患者にも自発性を促す必要がある。ではどのような方法が有力なのだろうかー。3月12日に開催された「カルテコいきいきPHRウェブセミナー」にて、山口 育子氏(NPO法人ささえあい医療人権センター[COML]理事長)が『新・医者にかかる10箇条』について解説し、病院受診する患者が持つべき心構えや責任について語った(主催:メディカル・データ・ビジョン[MDV])。医者にかかる10箇条で山口育子氏が挙げた項目 『新・医者にかかる10箇条』発刊の基盤は1998年に発表された小冊子『医者に聞こう10箇条』の作成にまで遡る。当時、厚生労働省はインフォームド・コンセントを普及させるため“患者から医師への質問内容・方法に関する研究”研究班を発足。医療者の立場、患者の立場の双方が集まり、本書にまとめ上げる予定だった。ところが、患者の状況や場面(初診か再診、薬のことか手術のことか など)によって患者の聞きたい内容はさまざまで、山口氏は「10個に絞り込むことに苦慮した」と当時を振り返った。そこで、研究班メンバーは患者の聞きたいことを想定するのではなく、“心構えであれば10にまとめることができるのでは”と着想を変え、作成されるに至った。 そしてリニューアルを迎えた『新・医者にかかる10箇条』は項目ごとにイラスト解説されており、巻末には実践編として、検査・治療・くすり・入院など具体的な質問内容33項目が収載されている。現在は同氏が理事長を務めるCOMLが『新・医者にかかる10箇条』発刊に関わり、厚生労働省経由で4万冊が無料配布された。あまりの人気ぶりに3ヵ月で在庫が底をついてしまったという。そこで、COLMが独自で『新・医者にかかる10箇条』の配布を開始し、現時点で延べ21万人が手にとっている。<新・医者にかかる10箇条> 1. 伝えたいことはメモして準備 2. 対話の始まりはあいさつから 3. よりよい関係づくりはあなたにも責任が 4. 自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報 5. これからの見通しを聞きましょう 6. その後の変化も伝える努力を 7. 大事なことはメモをとって確認 8. 納得できないときは何度でも質問を 9. 医療にも不確実なことや限界がある 10. 治療方法を決めるのはあなたです 医者にかかる10箇条のなかでも同氏は4項目(3、4、9、10)を挙げ、「医療者や相談者も人間であるため、相談する際の責任は自分にもあることを理解してもらうことが大切。また、自覚症状は患者しか知り得ないこと。これを医師が当てたら占いの館のよう」と話し、「どんなことができるか、どこまで回復することができるのかと考えることが大切」と述べた。また、「“患者は病院を修理工場と間違えている”とお話しされた医師がいた。実際、病気になる前の状態より良くすることはできない。“私のこの病気は医療の力でどこまで回復することができますか”という視点が、冷静に医療を受けることに繋がる」と持論を述べた。 治療選択肢が増えた今も、医師からみて最適な治療法ばかりではない。甲乙つけ難い選択肢がある一方で、生活や仕事、考え方、その人の基準によって選択が変わってくる。患者も治療を選択できる時代としつつ、「ただし、一人で悩まない。かかりつけ医、相談できる機関や周囲の人を見つけておくことが重要」と締めくくった。 このほか、MDVがカルテコ利用者に対して実施した“パーソナルヘルスレコード(PHR)をどのように活用しているか”に関するアンケートの結果を紹介。このアンケートは1月27日~2月8日までの13日間、同社が開発したPHRのカルテコ利用者を対象にWebで実施、110人から回答を得た。その結果、血液検査などの結果の確認(25.5%)が最も多く、健康診断結果の確認(12.7%)、検査画像の確認(11.8%)と続いた。カルテコ利用者はPHRを自身の病気・健康管理に生かしていることに加え、診察を受けた後に医師の説明や治療内容への理解を深めたり、家族やほかの医師に情報共有したりするために活用しているという。

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サスティナブルな医療の一歩へ~新たな知識を何でものみこもう

『何でものみこむアンチエイジング』をテーマに掲げ、第21回日本抗加齢医学会総会が2021年6月25日(金)~27日(日)に国立京都国際会館で開催される。この一風変わったテーマの真意を大会長である内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授)に聞くとともに、大会長一押しのシンポジウムについてインタビューした。何でも“のみこむ”ことがイノベーションの起爆剤今回の学会テーマを「何でものみこむ」にした理由は、飲食に限らず、多彩な学術情報を嫌わずに何でも受け入れ、その中から科学的基盤に基づいて新たなイノベーションを創造してほしいという意味を込めたからです。私自身の経験として、腸内細菌叢の研究をのみこんで消化してみようと思い立ったのは今から約5年前のこと。その当時、腸内細菌叢に関する遺伝子解析が可能になったり世間で腸内フローラに関する話題が沸騰したりと、“腸内細菌叢”が研究分野として脚光を浴びる大きなチャンスでした。また、消化器科専門医として食事で健康を維持することを大事にしていた私は、腸内環境と疾患の関連性にも惹きつけられていました。たとえば、多発性硬化症とクローン病は病態発症に縁もゆかりもないですが、それらの患者さんにおいて腸内細菌叢が類似していた症例に遭遇し、これは私に大きな影響を与えました。そして、この研究をさらに深く追求したその先に抗加齢医学があり、現在に至っているわけです。“身体にいい”は科学的にも良い?医学の枠を越えたシンポジウム今回、大会長を務めるにあたり、何でも嫌わず自身のものにするという観点で企画立てました。参加者に新たな知見を吸収・消化して各々の研究分野に役立ててほしいという思いを込め、抗加齢医学会に属していない方も演者にお招きしています。企画に注力した会長特別企画では、『機能性食品や機能性を有する農林水産物の今!(仮題)』と題し農業由来のアンチエイジング研究について発表していただきます。たとえば、「身体に良い」と言われる農林水産物は本当に身体に良いのかどうかを科学的に分析した例など、いわゆる“国プロ”(公的研究開発プロジェクト)を多数推進してきた農研機構の山本 万里氏らを招聘し“農林水産物をいかに社会実装していくか”というポイントでお話いただく予定です。抗加齢の意識がSDGsを導く手立てに抗加齢医学の根本は「何を食べるか」から始まり、持続性のある発展を目指すためには食物に関する研究が不可欠であると私は考えています。抗加齢医学は今、エピジェネティクスの影響を受け、人生100年時代を超え“人生120年続く時代”が囁かれているんですが、これは老化の時計を進めない、むしろ逆戻りさせるための老化メカニズム研究が目まぐるしく発展している成果とも言えます。しかし、医学が発展しているからといって「60歳になったから」とか「老化を感じるから」とその時だけ抗加齢を意識するのは見当違いなんです。人間は母体にいる時からさまざまな栄養や環境の変化を受け、生まれてきます。とくに腸内細菌叢は出産時の母体の体調が大きく影響しますし、そこを基盤に未来の食事摂取状態や環境変化にさらされていくのです。そのため、社会的な視点で注目されているSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の概念は抗加齢医学にも非常に通じるところがあります。ぜひ、このような視点や感覚を本総会やこの会長特別企画で学んでもらいたいと考えています。このほかにも発がんリスク因子や免疫老化・細胞老化、コロナ関連、食物繊維に関する研究報告など多数の演題をご用意しています。新型コロナ感染対策に配慮し会場とWebを併用したハイブリッド形式で開催いたしますので、多くの皆さまのご参加をお待ちしております。

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過体重・肥満におけるGLP-1受容体作動薬注射製剤の体重減少効果(解説:小川大輔氏)-1365

 肥満症の治療において食事療法と運動療法は重要であるが、実際には適切なカロリー摂取と適度な運動を実践し継続することは難しい。現在、肥満症の薬物療法として日本で認められている薬剤としてはマジンドールがあるが、BMI 35以上の高度肥満症に対象が限られており、投与期間も3ヵ月までと制限があるため実際にはほとんど使用されていない。また胃バイパス術という選択肢もあるが、外科療法ということもありハードルが高い。 過体重または肥満の成人に対し、食事療法と強化行動療法を行ったうえでGLP-1受容体作動薬セマグルチド2.4mgの週1回皮下投与により、プラセボと比較し有意な体重減少効果が示された(セマグルチド群-16.0%、プラセボ群-5.7%、p<0.001)1)。また有害事象としては消化器症状が最も多く認められた(セマグルチド群82.8%、プラセボ群63.2%)。本試験のポイントは、対象が肥満(BMIが30以上)、あるいは過体重(BMIが27以上)かつ体重関連の併存疾患(脂質異常症、高血圧症、SASなど)が1つ以上ある方となっており、糖尿病がないという点である。セマグルチドの臨床試験(STEP試験)は5つの試験で構成されており2)、本試験はその1つ(STEP 3)である。ちなみにSTEP 2で過体重・肥満の2型糖尿病成人患者を対象とした試験が行われている3)。 今回の試験により、ようやく過体重・肥満の有望な治療薬が出現したと思いたいところであるが、以下に述べる2つの理由によりこの結果をリアルワールドに当てはめることができない。 1つ目は、セマグルチド投与に加えて、栄養士による低カロリーの食事療法や厳格な行動療法のカウンセリングを68週間の投与期間中30回も併用することにより、16%の体重減少効果を認めたという点である。本試験のように、およそ毎月2回栄養士によるカウンセリングを継続して実施することは通常の診療では難しい。実臨床ではよくある食事・運動療法が不十分の状況で、セマグルチド投与によりどの程度の体重減少を認めるかは不明である。 2つ目は、日本ではセマグルチド2.4mgの注射製剤はまだないからである。2020年から2型糖尿病の治療薬としてセマグルチド1.0mgは使用できるようになってはいるが、保険適用はあくまでも2型糖尿病であり、本試験の対象のような非糖尿病の肥満者は適応外となる。もし日本人を対象としたセマグルチドの試験で安全性や有効性が認められれば、非糖尿病の過体重・肥満の治療の選択肢となる可能性があるだろう。

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マスクと認知症【コロナ時代の認知症診療】第1回

診察室でまずマスクをはずす患者さん、背後にある特有の事情新型コロナウイルス感染症(以下:コロナと略)の問題は、高齢者全般に関わるものである。けれども認知症の高齢者には特有の問題がある。それはテレビなどの報道を見てこれが恐ろしい感染症だとその瞬間は分かっても、コロナ禍全体が把握できないことである。致死性が高い感染症と言われても、自分を守る、咳エチケットを守るといった現実的な行動がとれない。たとえばマスクをすぐに外してしまう、人前で咳をしても平気である。筆者がよく経験するのは、診察室に入って着席するなり「(先生の前で)失礼ですから」、とマスクを外す人である。家族が大慌てで、「だめだめ、今はマスクをしないのが失礼なの」などと言ってもキョトンとするか、逆に何が悪いのだ、という表情を浮かべるかのいずれかである。時には、「マスクをして喋ると苦しいから、ここでは外させていただく」と述べる患者さんもいる。また素手でどこでも触ってしまう。ご家族からいくら注意されても改めることは難しい。また失敗しても沁みない。あるいは強制と受けとめ怒りを炸裂させてしまうこともある。このように指摘されて、そのときはそうかなと思っても、それが覚えられず古いルールに固執してしまうのは認知症の主症状の一つかもしれない。それだけに感染症予防の基本理解が簡単ではない、まして対応策は容易でない。数字が示す認知症患者の新型コロナ感染リスクの高さところで2021年になって認知症患者のコロナ感染に関する実証的な報告がなされたが、ここでマスク問題に言及がなされている。以下に概要を説明する。アメリカの成人6,190万人のデータから、認知症患者が新型コロナウイルスに感染するリスクは一般集団より高く(オッズ比:2.0)、認知症性疾患の中でも脳血管性認知症の患者のオッズ比が3.17と最も高かった。さらに認知症ではない感染者と比べて、入院率は3倍弱、死亡率4倍とも報告されている。こうした背景に何があるかが重要である。まず認知症が、マスクを着用したり、人と距離を保ったり、手を頻繁に洗ったりする能力を妨げている可能性が指摘されている。また心血管疾患や糖尿病、肥満、高血圧症などの疾患は、認知症と新型コロナウイルスの両方に共通するリスク要因であり、それが転帰不良を招いているとも考えられている。さらにクラスターという観点からは、認知症患者の多くが長期療養施設に滞在している点も注目されている。というのは長期療養施設における新型コロナウイルス死亡者数は、米国全体の死亡者のほぼ半数を占めているのである。いずれもこの1年あまり見聞きしてきたことがなるほどと数字として納得できる。さて、何と声をかけるのが有効か?さてそこでどう対応するか? が問題だ。たとえば、外出に際してご家族がマスクを装着させた上で、マスクをつけた周囲の人々を指して「怖いばい菌にやられないよう、今は誰でもやるの」などとうまく常識として諭すご家族がある。要は、個人に対する否定や命令でなく「今時はこうするものよ」という一般化した言い方が望ましいことにある。またそうしてもらったら「さすが! 今風がわかっている」といった誉め言葉がさらなる効果をもたらすだろう。もっとも忘れてしまうのが認知症だから、この諭しと褒めは繰り返す必要があるだろう。マスクに限らず、感染から自身や社会を守る自粛とは、結局は行動制限だから認知症の当事者にとっては息が詰まり、愉快なものでない。そこで、ご家族には、気分転換を計画的にはかることが大切になる。たとえば、人のいない早朝や夕方の時間帯に公園に出かける、女性なら開店間もないデパートを歩いてみるのもいい。また休日、人の少ない時間帯に電車に乗り1時間以内の小旅行をしてみるのも面白い。さらにはお孫さんとお子さん、それに老夫婦が庭園に集って季節の美しさを楽しみながらのお弁当会も良さそうだ。月に1度の通院は電車利用をやめて、家族数人のドライブにすることが、まさに望外の喜びになることもある。以上はすべて私の周囲の方々の経験だが、このような非日常的な活動は、たとえ認知症があっても、多くの人が小さな生きがいを楽しめ、効果的な息抜きになる。参考文献・参考情報1)Wang Q, et al. et al.Alzheimer’s Dement 2021 Feb 9. [Epub ahead of print]

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妊娠糖尿病スクリーニング、1段階法 vs.2段階法/NEJM

 妊娠糖尿病のユニバーサルスクリーニングでは、推奨されている2つの方法のうち、1段階法は2段階法と比較して妊娠糖尿病の診断の割合が約2倍に高くなるが、周産期合併症と母体合併症に関連する主要アウトカムのリスクには、両スクリーニング法に有意な差はないことが、米国・カイザーパーマネンテ・ノースウェストのTeresa A. Hillier氏らが実施した「ScreenR2GDM試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年3月11日号で報告された。妊娠糖尿病は頻度の高い疾患であり、母体と周産期の有害なアウトカムのリスクが増大する。米国では、妊娠女性に妊娠24~28週時の妊娠糖尿病ユニバーサルスクリーニングが推奨されているが、2つの推奨スクリーニング法のどちらを使用すべきかに関して専門家の合意は得られていないという。米国の2施設の実践的無作為化試験 本研究は、米国のカイザーパーマネンテ・ノースウェストとカイザーパーマネンテ・ハワイで行われた実践的な無作為化直接比較試験であり、2014年6月~2017年12月の期間に患者登録が行われ、新生児の出生(2018年)までアウトカムのデータが収集された(米国ユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健人間発達研究所[NICHD]の助成による)。 対象は、2つの参加施設を受診したすべての妊娠女性であった。被験者は、1段階スクリーニング法または2段階スクリーニング法を受ける群に無作為に割り付けられた。 1段階スクリーニング法では、ブドウ糖負荷試験が行われ、空腹時にブドウ糖75gを経口投与後に血糖値が測定された。2段階スクリーニング法では、GCT(glucose challenge test)として非空腹時にブドウ糖50gを経口投与後に血糖値が測定され、陽性の場合は、引き続きブドウ糖負荷試験として空腹時にブドウ糖100gを経口投与後に血糖値が測定された。 主要アウトカムは、妊娠糖尿病の診断、在胎不当過大児(在胎期間の標準出生時体重の>90パーセンタイル)、周産期の複合アウトカム(死産、新生児死亡、肩甲難産、骨折、分娩外傷に関連する腕または手の神経麻痺)、妊娠高血圧症または妊娠高血圧腎症、初回帝王切開の5つであった。副次アウトカムや安全性アウトカムにも差はない 合計2万3,792例の女性が妊娠糖尿病の2つのスクリーニング法に無作為化された(試験中に複数回妊娠した女性は、1種類以上のスクリーニング法に割り付けられた可能性がある)。1段階群が1万1,922例(平均母体年齢[±SD]29.4±5.5歳)、2段階群は1万1,870例(29.3±5.5歳)であった。割り付けられたスクリーニング法を実際に受けた妊婦の割合は、1段階群が66%と、2段階群の92%に比べて低かった。 妊娠糖尿病の診断を受けた女性の割合は、1段階群が16.5%、2段階群は8.5%であった(未補正相対リスク[RR]:1.94、97.5%信頼区間[CI]:1.79~2.11)。 intention-to-treat解析による他の主要アウトカムの発生率はいずれも、両群間に有意な差は認められなかった。すなわち、在胎不当過大児は1段階群8.9%、2段階群9.2%(補正前RR:0.95、97.5%CI:0.87~1.05)、周産期の複合アウトカムはそれぞれ3.1%および3.0%(1.04、0.88~1.23)、妊娠高血圧症/妊娠高血圧腎症は13.6%および13.5%(1.00、0.93~1.08)、初回帝王切開は24.0%および24.6%(0.98、0.93~1.02)であった。 妊娠糖尿病で補正後の解析、および妊娠糖尿病、事前に規定された他の共変量、スクリーニングの順守状況で補正後の解析でも、妊娠糖尿病の診断を除き、いずれの主要アウトカムにも有意な差はなかった。また、逆確率重み付け(inverse probability weighting)を行ったintention-to-treat解析でも、結果はほとんど変わらなかった。 副次アウトカム(巨大児[出生時体重>4,000g]、在胎不当過小児[在胎期間の標準出生時体重の≦10パーセンタイル]、インスリンや経口血糖降下薬による治療を要する妊娠糖尿病など)の多く、および周産期複合アウトカムの個々の構成要素、安全性アウトカム(新生児敗血症、新生児集中治療室への入室、早産など)についても、両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「1段階スクリーニング法では順守率が低かったが、この違いを考慮した解析でも、結果はほぼ同様であった」とまとめ、「実践的な試験の性質として、医療従事者は割り付けられたスクリーニング法や診断結果を知りうるため、これがいくつかのアウトカムに影響を及ぼした可能性は排除できない」と指摘している。

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心血管リスク因子のないSTEMIは死亡リスクが高い/Lancet

 標準的な心血管リスク因子(SMuRFs:高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙)のないST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者は、少なくとも1つのSMuRFsを有する患者と比較して全死因死亡のリスクが有意に高く、とくに女性で顕著である。オーストラリア・Royal North Shore HospitalのGemma A. Figtree氏らが、スウェーデンの心疾患登録研究であるSWEDEHEART研究を用いた後ろ向き解析結果を報告した。心血管疾患の予防戦略はSMuRFsを標的とすることが重要であるが、SMuRFsのない心筋梗塞はまれではなく、SMuRFsを有していない患者の転帰についてはよく知られていなかった。著者は、「早期死亡リスクの上昇は、ガイドラインで示された治療を追加することで弱まる。今回得られた所見は、ベースラインでのリスク因子や性別にかかわらず、心筋梗塞発症直後のエビデンスに基づいた薬物療法の必要性を強調するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年3月9日号掲載の報告。STEMI患者約6万2千例を対象にSMuRFsの有無別で死亡率を解析 研究グループはSWEDEHEART研究のデータを用い、SMuRFsの有無にかかわらずSTEMI成人患者の臨床特性と転帰について、全体および性別ごとに解析した。冠動脈疾患の既往歴がある患者は除外された。 主要評価項目は、STEMI発症後30日以内の全死因死亡、副次評価項目は30日以内の心血管死、心不全および心筋梗塞であった。各評価項目は、退院まで、ならびに12年間の追跡終了時まで調査。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて院内死亡率を比較し、Cox比例ハザードモデルおよびカプランマイヤー法により長期転帰を比較した。 解析対象は、2005年1月1日~2018年5月25日の期間に登録されたSTEMI患者6万2,048例であった。このうち、診断を要するSMuRFsを認めなかったのは9,228例(14.9%)で、年齢中央値はSMuRFsあり群68歳(四分位範囲:59~78)、SMuRFsなし群69歳(60~78)であった。SMuRFsなしで30日死亡リスクは約1.5倍、とくに女性は一貫して死亡率が高い SMuRFsなし群はあり群と比較して、経皮的冠動脈インターベンション実施率は類似していたが(71.8% vs.71.3%)、退院時におけるスタチン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬の投与率は有意に低かった。 発症後30日以内の全死因死亡リスクは、SMuRFsなし群で有意に高かった(ハザード比:1.47、95%信頼区間[CI]:1.37~1.57、p<0.0001)。30日以内の全死因死亡率が最も高かったのはSMuRFsがない女性(17.6%、381/2,164例)で、次いでSMuRFsあり女性(11.1%、2,032/1万8,220例)、SMuRFsなし男性(9.3%、660/7,064例)、SMuRFsあり男性(6.1%、2,117/3万4,600例)の順であった。 SMuRFsなし群における30日以内の全死因死亡リスクの上昇は、年齢、性別、左室駆出率、クレアチニン、血圧で補正後も有意であったが、退院時の薬物療法(ACEI/ARB、β遮断薬、スタチン)を組み込んだ場合は減弱した。 さらに、SMuRFsなし群はあり群と比較して、院内の全死因死亡率が有意に高かった(9.6% vs.6.5%、p<0.0001)。30日時点の心筋梗塞および心不全は、SMuRFsなし群で低かった。全死因死亡率は、男性では8年強、女性では追跡終了時である12年後まで、SMuRFsなし群が一貫して高いままであった。

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DPP-4阻害薬は新たな免疫抑制薬となり得るか?(解説:住谷哲氏)-1362

 筆者は内分泌代謝疾患を専門としているので、骨髄破壊的同種骨髄幹細胞移植(allo-HSCT)に伴う急性移植片体宿主病(GVHD)に関する知識は少ない。したがって本論文の結果の重要性を評価するのは適任ではないが、36例を対象とした第II相非ランダム化試験でNEJMに掲載されたことから、その結果が臨床的に大きなインパクトを有することは理解できる。 シタグリプチンをはじめとしたDPP-4阻害薬の適応は全世界的に2型糖尿病のみである。したがって本試験はdrug repositioning(drug repurposingとも呼ばれる)の1つと考えられる。ペプチド分解酵素であるDPP-4はT細胞表面に発現するCD26と同一分子であり、インクレチンであるGLP-1は生体内に多数存在するDPP-4の基質の1つに過ぎない。CD26はT細胞活性化における共刺激分子costimulatory moleculeである。動物実験でCD26の発現低下によりGVHDの抑制が可能であることが知られており、それに基づいて著者らは今回の試験を計画した。免疫抑制薬であるタクロリムスとシロリムスの併用に加えて、移植前日から移植後14日にわたってシタグリプチン1,200mg/日を投与した。その結果は、主要評価項目である移植後100日までのGrade II~IVのGVHDの発生率は5%であり、これまで報告されている発生率26~47%と比較して大きく低下していた。しかし本試験はいわばproof of conceptの段階であり、その有効性は今後実施される第III相ランダム化比較試験の結果を待つ必要がある。 血糖降下薬の観点から、本試験の結果をどう考えればよいだろうか? 1つは1,200mg(血糖降下薬としての最大投与量の12倍)2週間投与しても低血糖の発症はなかったと記載があることから、シタグリプチン(おそらく他のDPP-4阻害薬も)が単剤で低血糖を発症するリスクはほとんどないこと再確認されたことだろう。しかし筆者が重要と考えるのは、投与量の問題もあるが、DPP-4阻害薬に免疫抑制作用のあることが示された点である。DPP-4阻害薬の投与が水疱性類天疱瘡の発症と関連することが報告されているが、RS3PE、関節リウマチ、SLEなどの自己免疫疾患が増加するかについては種々の報告があり一定しない。一方で、台湾のナショナルデータベースを用いた研究ではDPP-4阻害薬の投与により自己免疫疾患の発症頻度がむしろ低下することが報告されている1)。2型糖尿病の病態、さらに合併症とされる動脈硬化性心血管病、がん、認知症、心不全の発症にも慢性炎症が関与していることが次第に明らかになりつつある。遠くない将来に、糖尿病治療における免疫抑制薬としてDPP-4阻害薬が注目される日が来るかもしれない。

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肥満2型DMへのセマグルチド、68週後の体重減少は約10%/Lancet

 過体重/肥満の2型糖尿病成人患者において、GLP-1アナログ製剤のセマグルチド2.4mg週1回投与は臨床的に意義のある体重減少を達成し、プラセボに対する優越性が示された。英国・レスター大学のMelanie Davies氏らが、体重管理を目的としたセマグルチド2.4mg週1回皮下投与の有効性と安全性を同1.0mg(糖尿病治療として承認された投与量)およびプラセボと比較する、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「Semaglutide Treatment Effect in People With Obesity 2:STEP 2試験」の結果を報告した。2型糖尿病患者において、セマグルチド1.0mg投与は体重減少効果があることが示されており、体重管理のための高用量2.4mg投与の有効性が検討されていた。Lancet誌オンライン版2021年3月2日号掲載の報告。セマグルチド2.4mg週1回皮下投与による体重減少をプラセボと比較 研究グループは、12ヵ国(欧州、北米、南米、中東、南アフリカおよびアジア)のクリニック149施設において、スクリーニングの半年以上前に2型糖尿病と診断され、BMI≧27かつ糖化ヘモグロビン値7~10%の成人患者を登録し、セマグルチド(週1回皮下投与)2.4mg群、同1.0mg群またはプラセボ群に、血糖降下薬および糖化ヘモグロビン値で層別し1対1対1の割合で無作為に割り付けた。いずれも生活習慣の改善介入とともに68週間投与した。 主要評価項目は、セマグルチド2.4mg群とプラセボ群との比較における68週時の体重変化率および5%以上減量の達成率で、intention-to-treat解析で評価した。安全性の解析対象集団は、治験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者とした。セマグルチド2.4mg群の約70%が体重5%以上減少を達成 2018年6月4日~11月14日の期間に、1,595例がスクリーニングされ、そのうち1,210例がセマグルチド2.4mg群(404例)、同1.0mg群(403例)、およびプラセボ群(403例)に無作為に割り付けられ、intention-to-treat解析に組み込まれた。 ベースラインから68週時までの平均体重変化率推定値は、セマグルチド2.4mg群-9.6%(標準誤差0.4)vs.プラセボ群-3.4%(同0.4)であった。プラセボ群と比較したセマグルチド2.4mg群の治療群間差推定値は、-6.2ポイント(95%信頼区間[CI]:-7.3~-5.2、p<0.0001)であった。 68週時点で、セマグルチド2.4mg群はプラセボ群と比較し、5%以上の減量を達成した患者の割合が高かった(68.8%[267/388例]vs.28.5%[107/376例]、オッズ比:4.88、95%CI:3.58~6.64、p<0.0001)。 有害事象は、セマグルチド2.4mg群(87.6%)および同1.0mg群(81.8%)で、プラセボ群(76.9%)より高頻度にみられた。消化管系の有害事象は、ほとんどが軽度~中等度であり、発現頻度はセマグルチド2.4mg群256/403例(63.5%)、同1.0mg群231/402例(57.5%)、プラセボ群138/402例(34.3%)であった。

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筋症状によるスタチン中止、関連性を見いだせず/BMJ

 スタチン投与時の重症筋症状の既往があり投与を中止した集団に、アトルバスタチン20mgを投与しても、プラセボと比較して筋症状への影響は認められず、試験終了者の約3分の2がスタチンの再開を希望したとの調査結果が、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のEmily Herrett氏らが実施した「StatinWISE試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年2月24日号で報告された。スタチンと、まれだが重度な筋肉の有害事象との因果関係はよく知られている一方で、筋肉のこわばり、筋痛、筋力低下などの重度ではない筋症状に及ぼすスタチンの影響は不明だという。また、非盲検下の観察研究の結果が広く知られるようになったため、多くの患者が筋症状の原因はスタチンと考えて治療を中止し、結果として心血管疾患による合併症や死亡が増加しているとされる。英国のプライマリケア施設の無作為化プラセボ対照n-of-1試験 研究グループは、スタチン投与時の筋症状の既往歴を持つ集団において、スタチンが筋症状に及ぼす影響を評価する目的で、2016年12月~2018年4月の期間にイングランドとウェールズの50のプライマリケア施設において無作為化プラセボ対照n-of-1試験を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術計画などの助成による)。 筋症状のためスタチン投与を中止または中止を考慮中の200例が対象となった。試験期間は1年で、参加者は6回の二重盲検下の投与期間(各2ヵ月)に無作為に割り付けられた。6回の投与期間のうち3回はアトルバスタチン20mgが、残りの3回はプラセボが投与された。最初の2回の投与期間は、1回がスタチン、もう1回はプラセボが投与され、3回連続して同じ薬剤の投与期間に割り付けられないようにした。 参加者は、各投与期間の終了時に、視覚アナログ尺度(0~10点。0点:筋症状なし、5点:中等度筋症状、10点:最も重度と考えられる筋症状)で筋症状の評価を行った。主解析では、スタチン投与期とプラセボ投与期の症状スコアを比較した。中止理由のうち筋症状は少ない 200例の参加者の平均年齢は69.1(SD 9.5)歳、115例(58%)が男性で、140例(70%)は心血管疾患の既往歴を有していた。総コレステロール値中央値は5.3mmol/L(IQR:4.4~6.2)だった。151例(76%)が、スタチン投与期とプラセボ投与期のそれぞれ少なくとも1回の症状スコアを提供し、主解析の対象となった。 主解析には、392回のスタチン投与期の2,638件のデータと、383回のプラセボ投与期の2,576件のデータが含まれた。視覚アナログ尺度による平均筋症状スコアは、スタチン投与期がプラセボ投与期よりも低く(1.68[SD 2.57]点vs.1.85[2.74]点)、両群間に有意な差は認められなかった(平均群間差:-0.11、95%信頼区間[CI]:-0.36~0.14、p=0.40)。 スタチンが筋症状の発現に影響を及ぼすとのエビデンスは得られず(オッズ比[OR]:1.11、99%CI:0.62~1.99)、筋症状は他の原因に起因しないとのエビデンスもなかった(1.22、0.77~1.94)。一般活動性、気分、歩行能力、日常的な作業、他者との関係、睡眠、生活の楽しみについても、両投与期で筋症状の影響に差はなかった。 試験終了から3ヵ月後の調査では、試験終了者の88%(99/113例)が「試験は有益だった」と回答し、66%(74/113例)は「スタチン投与をすでに再開または再開の予定」と報告した。また、プラセボ投与期よりもスタチン投与期で平均筋症状スコアが1単位以上高く、スタチンが筋症状の原因の可能性があると知らされた17例(15%)のうち、9例(53%)はスタチンを再開する予定とし、スタチンが原因の可能性はないと知らされた96例のうち65例(68%)が再開予定と回答した。 80例が投与を中止し、このうちスタチン投与期が34例(43%)、プラセボ投与期は39例(49%)であった。中止の理由のうち筋症状は少なく、忍容できない筋症状で投与を中止した参加者は、スタチン投与期が18例(9%)、プラセボ投与期は13例(7%)であった。試験期間中に13件の重篤な有害事象が報告されたが、試験薬に起因するものはなかった。 著者は、「n-of-1試験は、集団レベルで薬剤効果の評価が可能で、個々の治療の指針を示すことができる」とし、「今後は、他の種類のスタチンや高用量スタチン、一過性の有害作用を伴う他の薬剤のn-of-1試験に重点的に取り組むことが考えられる」としている。

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第45回 接種後アナフィラキシー例はすべて女性、欧米の先行報告と合致

<先週の動き>1.接種後アナフィラキシーはすべて女性、欧米の先行報告と合致2.ワクチン供給不足で4月の高齢者優先接種は計画見直しか?3.救急車の出動件数が各地で減少、受診控えに注意4.旭川医大・学長への解任請求、第三者調査委員会設置へ5.糖尿病患者が減少、健康日本21の効果?NDB分析で明らかに/日医総研1.接種後アナフィラキシー例はすべて女性、欧米の先行報告と合致厚生労働省は、新型コロナワクチン接種の開始後に発生した副反応疑い報告について、情報公開を行っている。事例一覧によると、3月5日から8日にかけて、20~50代の女性8例でアナフィラキシーと疑われる症状が発生し、いずれも処置によって改善したことが明らかになっている。これに対し、森尾 友宏氏(厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会長)は、「すべての症例が女性であることは、欧米での先行報告と合致している。4万6,000人接種の時点では、欧米の報告に比して頻度が高い印象であるが、事例の蓄積で日本におけるアナフィラキシーの頻度を明らかにし、発症者の背景などについて解析することが重要になる」などとコメントしている。これらの事例と、先月26日に接種を受けた3日後にくも膜下出血による死亡が報告された60代女性について、今後さらに情報を収集した上で、次回の審議会にて、ワクチンとの因果関係や接種後の対応方法などが検討・評価される見込み。画像を拡大する(参考)資料 新型コロナワクチン接種後にアナフィラキシーとして報告された事例の一覧(令和3年2月17日から令和3年3月8日までの報告分)(厚労省)新型コロナワクチンの接種後のアナフィラキシーとして報告された事例について(1例目)(同)国内2例目、ワクチン接種の20代女性にアナフィラキシー(読売新聞)ワクチン接種で3例目のアナフィラキシー…30代女性に息苦しさ・のど違和感(同)2.ワクチン供給不十分で4月の高齢者優先接種は計画見直しか?高齢者向けの新型コロナワクチン優先接種は4月以降に開始されることになっていたが、供給量が不十分となる見通しで、実施計画見直しの報道が相次いでいる。厚労省によると、高齢者向けのワクチン供給は4月1週目に100箱(各都道府県2箱、東京・神奈川・大阪は4箱)、2週目と3週目は500箱(各都道府県10箱、東京・神奈川・大阪は20箱)、4週目には1,741箱(すべての市区町村に1箱)と徐々に拡大され、6月末までに高齢者約3,600万人分(2回接種)を配布できる見込みで、接種体制の拡充が急がれる。現在行われている医療従事者の接種分については、5月前半までに約480万人に2回分の配布を完了する予定。なお、現時点で国内承認されているのは、米・ファイザーと独・ビオンテックのワクチンのみだが、すでに米・モデルナと英・アストラゼネカの2製品も厚労省に承認申請しており、早ければ5月に承認される見込み。(参考)ファイザー社の新型コロナワクチンの供給の見通し(厚労省)資料 新型コロナワクチン配送スケジュール(令和3年3月5日時点)(同)今知りたい新型コロナワクチン接種 さまざまな疑問にできる限り答えます(東京新聞)3.救急車の出動件数が各地で減少、受診控えに注意2020年の救急車の出動件数は、各地で前年に比べ減少の報告がされている。新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言による外出自粛による交通事故の減少などが要因とみられるが、「受診控え」による影響の可能性もあり、専門家は注意喚起している。また、神奈川循環器救急研究会によれば、昨年1~3月と4~12月までの期間で、患者が病院に到着してから手術までにかかった時間を調べた結果、3月までは中央値64分だったのに対し、4月以降は中央値72分と延長傾向だったという。同研究会は、現場は感染対策と緊急対応のせめぎ合いであることから、「(救急車の)受け入れ準備などには一定の時間がかかるので、心筋梗塞などが疑われるときはなるべく早く受診してほしい」と呼び掛けている。(参考)救急車の出動、一転減少 昨年、コロナ下で受診控えか「体の異変迷わず通報を」(日本経済新聞)宮崎県内救急出動9年ぶり減 20年、コロナ外出自粛影響か(Yahoo!ニュース)心筋梗塞 病院到着から手術までの時間延びる傾向に コロナ影響(NHK)4.旭川医大・学長への解任請求、第三者調査委員会設置へ大学病院でのコロナ患者受け入れを進言した病院長を解任した国立旭川医科大学において、同大の教授らが設立した「旭川医科大学の正常化を求める会」による学長の解任請求が、2月24日、同大学の学長選考会議に提出された。これを受け、同大学の学長先行会議が3月5日に開催され、審議を開始することが明らかになった。また、審議を公平なものとするため、3月末までに第三者による調査委員会も設置することが決定された。同大学の学長を巡っては、昨年11月に学内の会議において、新型コロナウイルス感染のクラスターが発生した病院について不適切な発言を行い、さらに感染患者の受け入れを進言した当時の病院長を解任したことにより、学長の職務停止の要請を全教職員の過半数が署名し、同大学の学長選考会議に要請されるなどが繰り返し報道されていた。同大学の元病院長については、復帰を求める1万5,000人の署名が3月3日に大学側に提出されており、地域医療の最後の砦となる大学病院をめぐって、住民も強い関心を持っているのがうかがえる。(参考)学長の辞職・解任を求める署名活動にご協力下さい(旭川医科大学の正常化を求める会)旭川医大 学長解任、適否審査 選考会議、教授ら署名受け/北海道(毎日新聞)5.糖尿病患者が減少、健康日本21の効果?NDB分析で明らかに/日医総研日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が、糖尿病や脳梗塞の治療状況などについて、NDBデータを用いた解析結果をワーキングペーパーにまとめた。これによると、糖尿病の治療を受けている患者数は2010年に比べて、2016年は減少傾向であることが明らかとなった。また、人工透析に至った症例の割合もいずれの年齢階級においても減少しており、厚労省の健康日本21による糖尿病重症化予防への取り組みが、効果を上げていることがうかがえる。40〜64歳の糖尿病患者の場合、脳梗塞のリスク比は11倍以上、急性心筋梗塞のリスク比は13倍以上であり、働く世代における糖尿病コントロールの重要性を示している。また、脳梗塞の治療状況における2010年と2016年の比較では、経皮的選択的脳血栓・塞栓溶解術や経皮的脳血栓回収術といった急性期脳梗塞治療の割合が増加しており、都道府県間の均てん化が進んでいる。(参考)日医総研ワーキングペーパー No.451(日医総研)糖尿病治療患者の人工透析割合が大幅減少、0.88% 日医総研がNDBデータ解析、脳梗塞・認知症リスクは高い(CBnewsマネジメント)

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認知症リスクの人種差~メタ解析

 世界の認知症患者数は、約5,000万人といわれている。高血圧や糖尿病などの認知症のリスク因子は、黒人、アジア人、その他の少数民族においても一般的に認められるが、認知症のケア、診断、治療においては、人種間で不平等なこともある。そこで、英国・London School of Hygiene & Tropical MedicineのSuhail Ismail Shiekh氏らは、認知症の発生率や有病率に関する民族的な差異について、調査を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2021年1月30日号の報告。 2019年9月1日に、人種、認知症、発生率、有病率の検索ワードを用いて、7つのデータベースより検索した。18歳以上の成人を対象とし、2つ以上の人種の年齢を考慮した後、認知症の発生率または有病率を比較した人口ベースの研究を抽出した。適切な人種間の比較を行うため、メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・コホート研究12件、横断研究7件をメタ解析に含めた。・米国での研究が13件、英国、シンガポール、中国の新疆ウイグル自治区での研究が各2件であった。・黒人と白人を比較した4件の研究では、認知症発生率のプールされたリスク比は、1.33(95%CI:1.07~1.65、I2:58.0%)であった。・アジア人と白人を比較した研究では、認知症発生率のプールされたリスク比は、0.86(95%CI:0.728~1.01、I2:43.9%)であった。・ラテン系と白人では、認知症発生率に差は認められなかった。 著者らは「認知症リスクに、人種的な違いがあることが示唆された。これらの違いの要因を明らかにすることは、認知症の予防や治療に役立つ可能性がある」としている。

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高GI食、心血管疾患・死亡リスク増大と関連/NEJM

 低・中所得国を含む5大陸で実施された前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究」の結果、グリセミック指数(GI)が高い食事は、心血管疾患および死亡のリスクを増大することが明らかとなった。カナダ・トロント大学のDavid J.A. Jenkins氏らが報告した。GIと心血管疾患の関連性に関するデータのほとんどは、高所得国である西洋諸国の集団から得られたものであり、低・中所得国である非西洋諸国からの情報は少ない。このギャップを埋めるため、地理的に多様な大規模集団のデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2021年2月24日号掲載の報告。PURE研究の20ヵ国約14万人について解析 研究グループは、GIと心血管疾患および全死因死亡との関連を評価する目的で、PURE研究から高所得国4ヵ国(カナダ、スウェーデン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)、中所得国11ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、パレスチナ領土、ポーランド、南アフリカ共和国、トルコ)、および低所得国5ヵ国(バングラデシュ、インド、パキスタン、タンザニア、ジンバブエ)のデータを分析評価した。 解析には、35~70歳の13万7,851人が含まれた。追跡期間の中央値は9.5年。 各国で検証済みの食物摂取頻度調査票を用いて食事摂取量を算出し、7つに分類された炭水化物食品(豆類、でんぷん質食品、野菜、果物、果実飲料、乳製品、砂糖入り飲料)の摂取量に基づいて、GIおよびグリセミック負荷(GL)を推定した。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、心不全)または全死因死亡の複合エンドポイントで、GIおよびGLとの関連について多変量Cox frailtyモデルを用いてハザード比(HR)を算出し評価した。心血管疾患の既往にかかわらず、高GIで心血管イベント/死亡リスクが増大 主要評価項目の解析対象は11万9,572人であった。このうち、追跡期間中に、複合エンドポイントが1万4,075人に発生した。死亡が8,780人(心血管死3,229人、非心血管死5,551人)で、8,252人に1つ以上の主要心血管イベントが認められた。 GIを五分位で分類し、年齢、性別等複数要因について調整後、GIが最も高い群(Q5:中央値91、IQR:90~91)は、最も低い群(Q1:中央値76、IQR:74~78)と比較して、ベースラインでの心血管疾患の既往の有無にかかわらず複合エンドポイントのリスクが高かった(既往ありのHR:1.51[95%CI:1.25~1.82]、既往なしのHR:1.21[95%CI:1.11~1.34])。高GIは、複合エンドポイントのうち心血管死のリスク増大とも関連していた。 GLに関しては、心血管疾患の既往ありではGIの結果と類似していたが(HR:1.34、95%CI:1.08~1.67)、既往なしでは有意な関連はみられなかった(HR:1.02、95%CI:0.91~1.13)。

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過体重・肥満へのセマグルチド、68週後の体重減16%/JAMA

 非糖尿病の過体重または肥満の成人に対し、食事療法と強化行動療法に加えたセマグルチド2.4mgの週1回皮下投与は、プラセボ投与に比べ、長期68週間の統計学的に有意な体重減少をもたらしたことが示された。セマグルチド群では、68週後に体重5%以上減少の達成が9割近くに上り、また体重変化の平均値は-16.0%だった。米国・ペンシルベニア大学のThomas A. Wadden氏らが、611例を対象とした第III相無作為化二重盲検並行群間試験の結果をJAMA誌オンライン版2021年2月24日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「今回示された効果の持続性を評価するため、さらなる研究を行う必要がある」とまとめている。薬物療法と、栄養士との対面カウンセリング30回の強化行動療法を併用 研究グループは2018年8月~2020年4月にかけて、米国41ヵ所の施設を通じ、非糖尿病で過体重(BMI 27以上)+1つ以上の併存疾患または肥満(BMI 30以上)の18歳以上、611例を対象に、68週間の無作為化比較試験を行った。 被験者を無作為に2対1の2群に分け、セマグルチド2.4mg(407例)またはプラセボ(204例)をそれぞれ週1回皮下投与した。両群に対し、試験開始後8週間にわたる低カロリー食事療法と、68週間にわたる強化行動療法(栄養士との対面カウンセリング30回など)を行った。 主要エンドポイントは2つで、ベースラインから68週までの体重の変化と体重5%以上減少の達成率だった。副次エンドポイントは、ベースライン体重からの10%以上または15%以上減少の達成率などだった。セマグルチド群の約56%が体重15%以上減少を達成 被験者611例の平均年齢は46歳(SD 13)、495例(81.0%)が女性、平均体重105.8kg(SD 22.9)、平均BMI 38.0(SD 6.7)だった。試験を完遂したのは567例(92.8%)、試験終了時に505例(82.7%)が治療を受けていた。 68週時点で、ベースラインからの推定平均体重変化は、セマグルチド群-16.0%、プラセボ群-5.7%だった(群間差:-10.3ポイント、95%信頼区間[CI]:-12.0~-8.6、p<0.001)。 体重5%以上減少の達成率は、セマグルチド群がプラセボ群と比べて有意に高かった(86.6% vs.47.6%、p<0.001)。体重10%以上減少、15%以上減少の達成率も、それぞれ75.3% vs.27.0%、55.8% vs.13.2%と、いずれもセマグルチド群で有意に高率だった(いずれもp<0.001)。 胃腸系の有害イベントの発現頻度が、プラセボ群(63.2%)に対しセマグルチド群(82.8%)で高率だった。有害イベントによる治療中断はセマグルチド群3.4%、プラセボ群0%だった。

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047)フットケアを怠ると? 足裏に潜む魔物【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第47回 フットケアを怠ると? 足裏に潜む魔物ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆今回は、足底のタコ・ウオノメ(胼胝・鶏眼)について。皮膚科では、胼胝・鶏眼処置、いわゆるウオノメ削りは、よくある処置の1つです。剃刀やコーンカッターなどを用いて、足の裏で硬く、ときには芯になっている角質を削り取るというもの。だいたい1~2ヵ月に一度のペースで通われている患者さんが多い印象です。そんなに珍しい処置ではないものの、たかがウオノメ…と油断していると、皮膚の下にとんでもないモノが隠れていることがあります。そう、鶏眼下の皮膚潰瘍。とくに足底の感覚が鈍くなっている糖尿病患者さんに多いです。過去に、「最近、足の裏が痛くて…」と訴える患者さんの足底を診てみたら、鶏眼を中心にした水疱形成がみられ、表面の水疱蓋を除去してみると、不整形に連なった潰瘍が現れて…、しかもちょっと離れた潰瘍とつながっていた、というようなケースもありました。潰瘍まではいかなくとも、鶏眼の下で水疱になっているケースは珍しくありません。また、同様の訴えの患者さんで、足底の鶏眼がいかにもな感じに腫脹していたため、盛り上がっている角質を切開したら、中から小さな肉芽様の結節が現れた、というケースもありました。その時は血管拡張性肉芽腫などを考えて、経過を見ることにしましたが、隠れているのは潰瘍だけではないのだな~と認識をあらためた一件でした。足底に潜む魔物にご注意を? たかがウオノメ、されどウオノメ。痛みや腫れを伴う足の皮膚トラブルは、ぜひ皮膚科にご紹介ください!それでは、また~!

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古くて新しい低糖質食は2型糖尿病治療の救世主になれるのか!(解説:島田俊夫氏)-1359

 今回取り上げるBMJ誌に2021年1月13日に掲載されたGoldenberg JZらの論文は、2型糖尿病患者への低/超低糖質食が糖尿病寛解に及ぼす効果と安全性に関して、出版済みおよび未出版のランダム化比較試験データを可能な限り利用し、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した結果報告であり、時宜にかなっている。温故知新の低糖質食 2型糖尿病に対して待望のヒト由来インスリンが治療に導入後、すでに長い年月が経過している。だが、正直言って期待されたような成果が出ているとは言い難い状況にある。インスリンが発見される以前に、2型糖尿病の治療食として“低糖質食”が使用されていた経緯がある1)。温故知新の教えのごとく、近頃、低糖質食が見直されている。糖質が体に合わない患者に糖質を全エネルギーの50~60%も摂ることを勧めることは、普通に考えれば論理性を欠いているように思える。栄養バランスの許す限り、低糖質食で治療することは古くて新しい2型糖尿病治療へのリバイバル治療になる。本論文はこのような観点からも、多くの読者に多大なインパクトを与えるのではないか。低糖質食は、ブームになっているが専門家にはいまひとつ人気がない。 その理由は、十分なエビデンスを検証できるだけの、良質な低糖質食に関するエビデンスを欠いていることが大きい。今回の論文の準備段階での苦労からも、十分な量と質が担保されたデータ確保が難しかったと推察する。悪戦苦闘の末、メタ解析、システマティックレビューにこぎ着けた印象を抱く。要約と糖質制限食への環境整備 本論文の結論を手短に言えば、1日130g未満の低糖質食を少なくとも6ヵ月間遵守できれば、大きな有害事象なく糖尿病の寛解を達成できる。今回のデータは研究期間が短い点に限界があることを念頭に置いたうえで、とりあえず低糖質食での治療が完遂できれば、糖尿病は寛解することを確認できたことに意味がある。もちろん、低糖質食をさらに厳しくやれば(1日50g未満)改善効果が消失し、悪玉コレステロールの上昇を認めている。その理由は超低糖質食の遵守破綻によると考えられており、成功するためには糖質制限を遵守完遂することが治療成功の必要条件になる。低糖質食は生涯を通して行う必要があるため、社会環境の整備も完遂のために急務と考えるが、現在すでにその環境が整いつつある。これまでの治療に対する問題点と、これからの食事療法と非依存薬物の併用療法への期待 インスリン抵抗性の改善なくして、インスリンによる治療の前途は必ずしも明るくはない(発がん、動脈硬化、易感染性の発生)。比較的新しい経口糖尿病薬SGLT2阻害剤は、インスリン濃度を上げず血糖を下げる薬として新しい切り口の経口糖尿病治療薬であり、単独での血糖降下作用は弱いが、低糖質食とのコラボでのより良い成果に期待する。 長期にわたる低糖質食の確実な予後改善効果の証明が待たれるところである。12ヵ月を過ぎると有効性が消失するとのメタ解析結果も出ており2)、一時的効果はあるが、永続的効果は目下、証明されていると言い切れない状況である。 低糖質食は、インスリンを上げない薬物治療との併用で手詰まり状態になっている2型糖尿病治療に、風穴を開けることができるのではと密かに思っている。

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日本人男性の2型糖尿病はミトコンドリア多型と関連?/順天堂大学

 日本人は、欧米人ほど肥満度が高くないにもかかわらず2型糖尿病になりやすいことが知られているが、その理由はいまだよくわかっていない。今回、順天堂大学の膳法 浩史氏、福 典之氏ら、および佐賀大学と南カリフォルニア大学などの国際共同研究グループが、大規模コホート調査分析により、日本人男性の2型糖尿病発症に関連するミトコンドリア遺伝子多型を発見した。Aging誌オンライン版2021年1月19日号での報告。 本研究では、日本の多施設共同コホート(J-MICC)佐賀研究、米国の多人種コホート(MEC)研究(日系人を対象)、東北メディカル・メガバンク計画(TMM)コホートの計2万6,994人を対象に、それぞれのコホートにおける日本人に特異的なミトコンドリア遺伝子多型(m.1382A>C)と2型糖尿病の発症率の関連を調査した。メタ分析は、2型糖尿病の発症に関連する年齢とBMIによって調整されたオッズ比を使用して実行された。 主な結果は以下のとおり。・J-MICC佐賀研究からは男性4,963例と女性6,889例、MEC研究からは男性1,810例と女性1,577例、TMM研究からは男性4,471例と女性7,817例が抽出された。・メタ分析において、m.1382A>C多型を持つ男性では2型糖尿病の有病率が有意に増加したが(オッズ比[OR]:1.34、95%CI:1.14~1.54、p<0.01)、女性では増加しなかった。・MEC研究で、男性におけるC型キャリアは、A型キャリアと比較して2型糖尿病有病率が高かった(OR:1.48、95%CI:1.01~2.15、p=0.04)。・J-MICC佐賀研究で、加速度計に基づく日常活動の測定から、運動量がミトコンドリア多型キャリアの糖尿病リスクに寄与するかを調べた結果、m.1382A>C多型のC型を持つ男性は、身体活動状態に関係なく2型糖尿病のリスクが高い傾向を示した(C型13.1% vs.A型10.8%、p=0.196)。・ただし、中程度~激しい強度の身体活動が測定されたC型を持つ男性では、2型糖尿病の有病率が上がらなかった(OR:0.98、95%CI:0.956~0.998、p=0.035)。よって、C型キャリアであっても、運動頻度が高い場合は2型糖尿病の発症リスクをキャンセルできる可能性が示唆された。 著者らは、「本研究により、日本人が糖尿病になりやすい一因を説明できる可能性がある。今後、個人の遺伝的体質にあわせた糖尿病の予防や運動療法、新規治療薬の開発につながることが期待できる」と結論している。

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妊娠28週時の母親の心血管状態が子供の心血管リスクと関連/JAMA

 妊娠28週時の母親の良好な心血管系の健康状態(CVH)は、その子供の10~14歳時のCVHが良好であることと関連することが、米国・ノースウェスタン大学のAmanda M. Perak氏らが実施した「HAPO Follow-Up試験」で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2021年2月16日号で報告された。妊娠は、母親のCVHを最適化し、子供の生涯にわたるCVHに影響を及ぼす重要な機会とされる。また、母体の劣悪な健康状態への胎内曝露は、たとえば心臓代謝調節遺伝子のエピジェネティックな修飾を介して、子供に継続的に心血管疾患(CVD)のリスクが高い状態をもたらす可能性があるという。9地域2,302組の母子のコホート研究 研究グループは、妊娠中の母親のCVHと子供のCVHの関連を評価する目的で、国際的なコホート研究を行った(米国ユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健発達研究所[NICHD]などの助成による)。 Hyperglycemia and Adverse Pregnancy Outcome(HAPO)試験(2000年7月~2006年4月)と、HAPO Follow-Up試験(2013年2月~2016年12月)のデータを使用した。解析には、補助的なCVH研究として、HAPO Follow-Up試験の参加者の48%に相当する2,302組の母子が含まれた。 参加者は、米国(ベルフラワー、シカゴ、クリーブランド)、バルバドス(ブリッジタウン)、英国(マンチェスター、ベルファスト)、中国(香港)、タイ(バンコク)、カナダ(トロント)の9地域で登録された。 妊娠28週時の母親のCVHが、5つの評価基準(BMI、血圧、総コレステロール値、血糖値、喫煙)に基づいて評価された。個々の評価基準は、妊娠ガイドラインを用いて、「良好」「中間的」「不良」の3つに分類された。総CVHスコアは、「すべて良好」「中間的が1つ以上で不良がない」「不良が1つ」「不良が2つ以上」の4つに分類された。 主要アウトカムは、子供の10~14歳時のCVHとし、4つの評価基準(BMI、血圧、総コレステロール値、血糖値)で評価された。総CVHスコアは、母親と同様に分類された。母親のCVH分類の悪化とともに、子供の「すべて良好」の割合が低下 2,302組の母子の平均年齢は、母親が29.6(SD 2.7)歳、子供は11.3(1.1)歳であった。妊娠期間中の母親の平均CVHスコアは10点満点の8.6(1.4)点で、32.8%が「すべて良好」であったのに対し、6.0%は「不良が2つ以上」であった。子供の平均CVHスコアは8点満点の6.8(1.3)点で、37.3%が「すべて良好」、4.5%が「不良が2つ以上」だった。 母親のCVH分類が悪化するに従って、子供のCVH分類が「すべて良好」の割合が低くなった。すなわち、母親が「すべて良好」の子供が「すべて良好」の割合は42.2%であったが、母親が「不良が2つ以上」の子供が「すべて良好」の割合は30.7%に低下した。また、母親が「すべて良好」の子供が「不良が1つ」の割合は18.4%で、母親が「不良が2つ以上」の場合に子供が「不良が1つ」の割合は30.7%に増加し、母親が「すべて良好」の子供が「不良が2つ以上」の割合は2.6%で、母親が「不良が2つ以上」になると子供が「不良が2つ以上」の割合は10.2%に増加した。 補正済みのモデルでは、母親のCVH分類が「すべて良好」と比較して悪化するほど、子供のCVH分類が「不良が1つ」「不良が2つ以上」となる相対リスクが高かった。すなわち、母親のCVH分類が「すべて良好」の場合に比べ、母親が「不良が1つ」の子供が「不良が1つ」の相対リスクは1.66、母親が「不良が2つ以上」の子供が「不良が1つ」の相対リスクは2.02であり、母親が「不良が1つ」の子供が「不良が2つ以上」の相対リスクは3.32、母親が「不良が2つ以上」の子供が「不良が2つ以上」の相対リスクは7.82だった(これらの相対リスクはいずれも包括検定でp<0.001)。 一方、明確な出生因子(妊娠高血圧腎症など)で追加補正を行っても、これらの有意な関連は十分には説明できなかった。たとえば、拡大された出生因子で補正後の、母親の「不良が2つ以上」と子供の「不良が2つ以上」の関連の相対リスクは6.23(95%信頼区間[CI]:3.03~12.82)だった。 著者は、「われわれの知る限り、これは母親の妊娠中のCVHとその後の子供のCVHの関連を評価した初めての研究である」としている。

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死亡例の約2割がCOVID-19、アフリカ・ザンビアの首都調査/BMJ

 アフリカでは、南アフリカ共和国を除き、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染範囲や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響についてほとんど知られていない。米国・ボストン大学公衆衛生大学院のLawrence Mwananyanda氏らは、ザンビア共和国のルサカ市でCOVID-19の死亡への影響についてサーベイランス研究を行った。その結果、予想に反して、同市の約3.5ヵ月間の死者の約2割がCOVID-19で、COVID-19が確認された死亡例の年齢中央値は48歳、66%が20~59歳であることなどが明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2021年2月17日号に掲載された。アフリカは、COVID-19のデータがないため、COVID-19はアフリカを飛び越えて伝播し、影響はほとんどないとの言説が広く醸成されている。これは、「エビデンスはない」が、「非存在のエビデンス」として広範な誤解を招く好例とも考えられている。アフリカの都市部での系統的死後サーベイランス研究 研究グループは、アフリカの都市部におけるCOVID-19の死亡への影響を直接的に評価する目的で、プロスペクティブな系統的死後サーベイランス研究を行った(Bill & Melinda Gates財団の助成による)。 対象は、ザンビアで最大規模の3次病院であるルサカ市のUniversity Teaching Hospital(UTH、他施設からの紹介を含め市の80%以上の死亡を登録)の死体安置所で、死後48時間以内に登録された全年齢層の死亡例であった。 死後の鼻咽頭拭い液を用いて、定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でSARS-CoV-2の検査を行った。死亡例は、COVID-19の状況、死亡場所(施設[UTH] vs.市中[UTH以外でのすべての死亡で、他施設からUTHへの紹介を含む])、年齢、性別、リスク因子としての基礎疾患で層別化された。 2020年6月15日~9月30日の期間に死亡した372例が試験に登録された。PCR検査の結果は364例(97.8%)で得られ、施設が96例(26.4%)、市中が268例(73.6%)であった。患者がまれではなく、検査が少ないから過少報告に SARS-CoV-2は、PCR法の推奨サイクル閾値(CT値)である<40サイクルによる測定では15.9%(58/364例)で検出された。CT値を40~45サイクルに拡張すると、さらに12例でSARS-CoV-2が同定され、死亡例の陽性率は19.2%(70/364例)となった。このうち69%(48/70例)が男性だった。 SARS-CoV-2陽性死亡例の死亡時年齢中央値は48歳(IQR:36~72)で、このうち市中死の患者は47歳(34~72)、施設死の患者は55歳(38~73)だった。COVID-19が確認された死亡例の割合は年齢が高くなるに従って上昇したが、76%(53例)は60歳未満であり、このうち46例(66%)は20~59歳だった。 COVID-19が確認された死亡例の多くは市中死(73%[51/70例])であり、このうち死亡前にSARS-CoV-2の検査を受けた患者はいなかった。施設死(27%[19/70例])では、死亡前にSARS-CoV-2検査を受けていたのは6例のみだった。 COVID-19が確認された死亡例の症状に関するデータは70例中52例で得られ、このうち44例(63%)でCOVID-19に典型的な症状(咳、発熱、息切れ)が認められたが、死亡前にSARS-CoV-2検査を受けていたのは5例のみだった。 19歳未満では、7例(10%)でCOVID-19が確認され、このうち死亡前に検査を受けたのは1例のみであった。年齢別の内訳は、1歳未満が3例で、3歳、13歳、16歳が1例ずつ(いずれも市中死)であり、1歳の1例のみが施設死だった。 COVID-19死亡例で最も頻度の高い合併症は、結核(22例[31%])、高血圧(19例[27%])、HIV/AIDS(16例[23%])、アルコール乱用(12例[17%])、糖尿病(9例[13%])であった。 著者は、「COVID-19が確認された死亡例のほとんどは、検査能力のない市中死であったが、施設死であっても、COVID-19の典型的な症状を呈しているにもかかわらず、死亡前に検査を受けた患者はほとんどいなかった。したがって、COVID-19患者がまれだったためではなく、検査がまれにしか行われなかったことが原因で、COVID-19の報告が過少であったと考えられる」とまとめ、「これらのデータが一般化可能であるとすると、アフリカにおけるCOVID-19の影響はかなり過小評価されていることになる」と指摘している。

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