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CAD患者のLDL-C 50~70mg/dL目標の治療 、高強度スタチンに非劣性/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)患者の治療において、LDLコレステロール(LDL-C)の目標値を50~70mg/dLとする目標達成に向けた治療(treat-to-target)は高強度スタチン療法に対し、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合に関して非劣性であり、これら4つの構成要素の個々の発生率には差がないことが、韓国・延世大学のSung-Jin Hong氏らが実施したLODESTAR試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年3月6日号に掲載された。韓国の無作為化非劣性試験 LODESTAR試験は、韓国の12施設が参加した医師主導の非盲検無作為化非劣性試験であり、2016年9月~2019年11月の期間に患者の登録が行われた(Samjin Pharmaceuticalなどの助成を受けた)。 CAD(安定虚血性心疾患または急性冠症候群[不安定狭心症、急性心筋梗塞])患者が、LDL-C値50~70mg/dLを目標とするtreat-to-target治療を受ける群、またはロスバスタチン20mgあるいはアトルバスタチン40mgによる高強度スタチン療法を受ける群に、無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合であり、非劣性マージンは3.0%とされた。treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンス 4,400例(平均年齢65.1[SD 9.9]歳、女性27.9%)が登録され、2つの群に2,200例ずつが割り付けられた。4,341例(98.7%)が3年の追跡を完了した。ベースラインの平均LDL-C値は、treat-to-target群が86(SD 33)mg/dL、高強度スタチン群は87(SD 31)mg/dLであった。 高強度スタチン療法は、treat-to-target群では1年目に患者の53%、2年目に55%、3年目に56%が受けており、高強度スタチン群ではそれぞれ93%、91%、89%が受けていた。 試験期間中の平均LDL-C値は、treat-to-target群が69.1(SD 17.8)mg/dL、高強度スタチン群は68.4(SD 20.1)mg/dLであり、両群間に有意な差はなかった(p=0.21)。 3年時の主要エンドポイントの発生率は、treat-to-target群が8.1%(177例)、高強度スタチン群は8.7%(190例)で、絶対群間差は-0.6%(片側97.5%信頼区間[CI]:-∞~1.1)であり、treat-to-target群の高強度スタチン群に対する非劣性が示された。 死亡(treat-to-target群2.5% vs.高強度スタチン群2.5%、絶対群間差:<0.1%[95%CI:-0.9~0.9]、p=0.99)、心筋梗塞(1.6% vs.1.2%、0.4[-0.3~1.1]、p=0.23)、脳卒中(0.8% vs.1.3%、-0.5[-1.1~0.1]、p=0.13)、冠動脈血行再建術(5.2% vs.5.3%、-0.1[-1.4~1.2]、p=0.89)の発生率は、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 著者は、「これらの知見は、スタチン治療における薬物反応の個人差を考慮した個別化治療を可能にする、treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンスをもたらすものである」としている。

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第155回 コロナ罹患後症状をメトホルミンが予防 / コロナで父親の顔がわからなくなった女性

long COVIDを糖尿病治療薬メトホルミンが予防昔ながらの糖尿病治療薬メトホルミンの新型コロナウイルス感染症罹患後症状(long COVID)予防効果が米国の無作為化試験で認められ1)、「画期的(breakthrough)」と評するに値する結果だと有力研究者が称賛しています2)。COVID-OUTと呼ばれる同試験では駆虫薬として知られるイベルメクチンとうつ病治療に使われるフルボキサミンも検討されましたが、どちらもメトホルミンのようなlong COVID予防効果はありませんでした。COVID-OUT試験は2020年の暮れ(12月30日)に始まり、被験者はメトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン、プラセボのいずれかに割り振られました。被験者、医師、その他の試験従事者がその割り振りを知らない盲検状態で実施されました。また、被験者をどこかに出向かせることがなく、試験従事者と直接の接触がない分散化(decentralized)方式の試験でもあります。募ったのは肥満か太り過ぎで年齢が30~85歳、コロナ発症から7日未満、検査でコロナ感染が判明してから3日以内の患者です。箱に入った服用薬一揃いは試験参加決定の当日または翌日に被験者に届けられ、結果的に試験参加同意から最初の服用までは平均して1日とかかりませんでした。メトホルミンの服用日数は14日間で、用量は最初の日は500mg、2~5日目は500mgを1日に2回、6~14日目は朝と晩にそれぞれ500mgと1,000mgです。メトホルミン投与群とプラセボ群合わせて1,125例がlong COVIDの検討に協力することを了承し、1ヵ月に1回連絡を取ってlong COVIDの診断があったかどうかが300日間追跡されました。その結果、およそ12例に1例ほどの8.4%がその診断に至っていました。肝心のメトホルミン投与群のlong COVID発生率はどうかというと約6%であり、プラセボ群の約11%に比べて40%ほど少なく済んでいました。発症からより日が浅いうちからのメトホルミン開始はさらに有効で、発症から4日未満で開始した人のlong COVID発現率は約5%、4日以上経ってから開始した人では約7%でした。上述のとおりイベルメクチンやフルボキサミンのlong COVID予防効果は残念ながら認められませんでした。COVID-OUT試験のlong COVID結果報告はまだプレプリントであり、The Lancet on SSRNに提出されて審査段階にあります。メトホルミンの効果はlong COVIDの枠にとどまらずコロナ感染の重症化予防も担いうることが他でもないCOVID-OUT試験で示されています。その結果はすでに査読が済んで昨夏2022年8月にNEJM誌に掲載されており、第一の目的である低酸素血症、救急科(ED)受診、入院、死亡の予防効果は認められなかったものの、メトホルミン投与群のED受診、入院、死亡は有望なことにプラセボ群より42%少なくて済みました3)。さらに試験を続ける必要はあるものの、値頃で取り立てるほど副作用がないことを踏まえるにメトホルミンが用を成すことは今や確からしいことをCOVID-OUT試験結果は示していると米国屈指の研究所Scripps Research Translational Instituteの所長Eric Topol氏は述べています2)。Topol氏はbreakthroughという表現を安易に使いませんが、安価で安全なメトホルミンのCOVID-OUT試験での目を見張る効果はその表現に見合うものだと讃えています。メトホルミンの効果を重要と考えているのはTopol氏だけでなく、たとえばハーバード大学病院(Brigham and Women's Hospital)の救急科医師Jeremy Faust氏もその1人であり、「コロナ感染が判明したらすぐにメトホルミン服用を開始する必要があるかと肥満か太り過ぎの患者に尋ねられたら、COVID-OUT試験結果を根拠にして “必要がある”と少なくとも大抵は答える」と自身の情報配信に記しています4)。コロナ感染で顔がわからなくなってしまうことがあるコロナ感染で匂いや味がわからなくなることがあるのはよく知られていますが、顔が区別できなくなる相貌失認(prosopagnosia)が生じることもあるようです。神経系や振る舞いの研究結果を掲載している医学誌Cortexに相貌失認になってしまった28歳のコロナ感染女性Annie氏の様子や検査結果などをまとめた報告が掲載されました5,6)。Annie氏は2020年3月にコロナ感染し、その翌月4月中ごろまでには在宅で働けるほどに回復しました。コロナ感染してから最初に家族と過ごした同年6月に彼女は父親が誰かわからず、見た目で叔父と区別することができませんでした。そのときの様子をAnnie氏は「誰か知らない顔の人から父親の声がした(My dad's voice came out of a stranger's face)」と説明しています。相貌失認に加えて行きつけのスーパーまでの道で迷うことや駐車場で自分の車の場所が分からなくなるという方向音痴のような位置把握障害(navigational impairment)もAnnie氏に生じました。また、long COVIDの主症状として知られる疲労や集中困難などにも見舞われました。Annie氏のような症状はどうやら珍しくないようで、long COVID患者54例に当たってみたところ多くが視覚認識や位置把握の衰えを申告しました。脳損傷後に認められる障害に似た神経精神の不調がコロナ感染で生じうるようだと著者は言っています。参考1)Outpatient Treatment of COVID-19 and the Development of Long COVID Over 10 Months: A Multi-Center, Quadruple-Blind, Parallel Group Randomized Phase 3 Trial. The Lancet on SSRN :Received 6 Mar 2023.2)'Breakthrough' Study: Diabetes Drug Helps Prevent Long COVID / WebMD3)Carolyn T, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.4)Metformin found to reduce Long Covid in clinical trial. Jeremy Faust氏の配信5)Kieseler ML, et al. Cortex. 9 March 2023. [Epub ahead of print]6)Study Says Long COVID May Cause Face Blindness / MedScape

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3月20日 未病の日【今日は何の日?】

【3月20日 未病の日】〔由来〕季節の変わり目の3月20日は体調を崩しやすく、「未(3)病(20)」と読む語呂合わせにもなっていることから、日頃の生活習慣に目を向けてもらいたいとの願いにより、株式会社ブルックスホールディングスが2017年に制定。関連コンテンツ生活習慣の改善(1)禁煙【一目でわかる診療ビフォーアフター】生活習慣の改善(2)飲酒1【一目でわかる診療ビフォーアフター】低血糖予防の簡単なルールを患者さんに!【患者指導画集 Part2】認知症発症を抑える食材、新たな候補はビフィズス菌?内視鏡での大腸がん検診、がんリスクを減らせるか/NEJM

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スタチン治療患者の将来リスク予測、CRP vs.LDL-C/Lancet

 スタチン療法を受ける患者において、高感度C反応性蛋白(CRP)で評価した炎症のほうがLDLコレステロール(LDL-C)値で評価したコレステロールよりも、将来の心血管イベントおよび死亡リスクの予測因子として強力であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M. Ridker氏らが行った、3つの無作為化試験の統合解析の結果、示された。著者は、「示されたデータは、スタチン療法以外の補助療法の選択を暗示するものであり、アテローム性疾患のリスク軽減のために、積極的な脂質低下療法と炎症抑制治療の併用が必要である可能性を示唆するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年3月6日号掲載の報告。3つの国際無作為化試験データを統合解析 研究グループは、炎症と高脂質血症はアテローム性動脈硬化の原因となるが、スタチン療法を受けていると将来の心血管イベントリスクに対する両因子の相対的な寄与が変化する可能性があり、補助的な心血管治療の選択について影響を与えるとして今回の検討を行った。スタチン治療を受ける患者の主要有害心血管イベント、心血管死、全死因死亡のリスクの決定因子として、高感度CRPとLDL-Cの相対的な重要性を評価した。 アテローム性疾患を有する/高リスクでスタチン療法を受ける患者が参加する、3つの国際的な無作為化試験「PROMINENT試験」「REDUCE-IT試験」「STRENGTH試験」のデータを統合解析した。 ベースラインの高感度CRP(残留炎症リスクのバイオマーカー)の上昇と同LDL-C(残留コレステロールリスクのバイオマーカー)の上昇の四分位値を、将来の主要有害心血管イベント、心血管死、全死因死亡の予測因子として評価。年齢、性別、BMI、喫煙状況、血圧、心血管疾患の既往、無作為化された割り付け治療群で補正した分析で、高感度CRPとLDL-Cの四分位数にわたって、心血管イベントと死亡のハザード比(HR)を算出した。炎症は将来リスクを有意に予測、コレステロールの予測は中立もしくは弱い 統合解析には患者3万1,245例が包含された(PROMINENT試験9,988例、REDUCE-IT試験8,179例、STRENGTH試験1万3,078例)。 ベースラインの高感度CRPとLDL-Cについて観察された範囲、および各バイオマーカーとその後の心血管イベント発生率との関係は、3つの試験でほぼ同一であった。 残留炎症リスクは、主要有害心血管イベントの発生(高感度CRPの四分位最高位vs.最小位の補正後HR:1.31、95%信頼区間[CI]:1.20~1.43、p<0.0001)、心血管死(2.68、2.22~3.23、p<0.0001)、全死因死亡(2.42、2.12~2.77、p<0.0001)のいずれとも有意に関連していた。 対照的に、残留コレステロールリスクの関連は、主要有害心血管イベントについては中立的なものであったが(LDL-Cの四分位最高位vs.最小位の補正後HR:1.07、95%CI:0.98~1.17、p=0.11)、心血管死(1.27、1.07~1.50、p=0.0086)と全死因死亡(1.16、1.03~1.32、p=0.025)については弱かった。

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「キムチ好き」の体重がどうなるかを調べた韓国の大規模研究【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第230回

「キムチ好き」の体重がどうなるかを調べた韓国の大規模研究イラストACより使用私は京都府にある有名キムチ店のキムチを取り寄せるほど、キムチが好きです。キムチを食べると、基本的にご飯が進むので、結果的に米の食べ過ぎで太ってしまうのではないかという懸念があります。Tan L, et al.Effect of kimchi intake on body weight of general community dwellers: a prospective cohort study.Food Funct. 2023 Feb 21;14(4):2162-2171.この研究は、キムチ摂取と体重の関連性を調べた疫学研究です。ベースラインのBMIが25kg/m2以上の肥満の参加者2万66人を対象に、前向きリスク評価分析を実施しました。まず、相関をみると、キムチ摂取量が少ない群と比較して、キムチ摂取量が多い群ではBMIの増加が少ないことが示されました(男性β=0.169、95%信頼区間[CI]:0.025~0.313、女性β=0.140、95%CI:0.046~0.236)。また、リスク評価分析では、中程度のキムチ消費は、男性において正常体重と関連することが示されました(ハザード比:1.28、95%CI:1.06~1.54)。キムチは辛いので、なんとなく代謝が良くなって痩せそう、というイメージがありますが、当たらずも遠からずといったところでしょうか。過去の研究でも、キムチは体重だけでなく、脂肪の蓄積や体内の炎症をも抑える働きがあるのではないかとされています1)。キムチにはLactobacillusが豊富に含まれていますが、これがコレステロールの上昇を抑えるという働きもあります2,3)。スゴイぜ、キムチ!キムチ摂取者の体重増加は抑制できるかもしれませんが、冒頭で述べたように、ご飯が進んでしまうと元も子もないので注意が必要です。1)Kim N, et al. Kimchi intake alleviates obesity-induced neuroinflammation by modulating the gut-brain axis. Food Res Int. 2022 Aug;158:111533.2)Heo W, et al. Lactobacillus plantarum LRCC 5273 isolated from Kimchi ameliorates diet-induced hypercholesterolemia in C57BL/6 mice. Biosci Biotechnol Biochem. 2018 Nov;82(11):1964-1972.

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老けやすいのはどんな人?老化の原因をランキング

 生物学的な老化の速度は、遺伝、環境、生活習慣などによって変化するといわれている。近年、DNAのメチル化に基づく生物学的老化の評価指標(GrimAge、PhenoAgeなど)が開発されているが、これらと老化の危険因子との関連の強さなどは明らかになっていない。そこで、上海交通大学のLijie Kong氏らは、メンデルランダム化解析を行い、修正可能な代謝関連因子(ウエスト周囲径、体脂肪率、CRP値など)、生活習慣(喫煙、アルコール摂取、昼寝など)、社会経済的因子(教育、収入)と生物学的老化の評価指標との関連を調べた。本調査結果は、The Journals of Gerontology:Series A誌オンライン版2023年3月4日号に掲載された。老けやすい人の特徴は「肥満・喫煙・低学歴」 本研究グループは、修正可能な因子と老化の速度との関連を調べるため、メンデルランダム化解析を行った。修正可能な19個の代謝関連因子(BMI、ウエスト周囲径、体脂肪率、小児期の肥満、2型糖尿病、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、中性脂肪値、収縮期血圧、拡張期血圧、CRP値)、生活習慣(喫煙、アルコール摂取、コーヒー摂取、昼寝、睡眠時間、中・高強度の身体活動)、社会経済的因子(教育、収入)に関連する遺伝子変異について、欧州の最大100万人を対象としたゲノムワイド関連研究(GWAS)から抽出した。これらの遺伝子変異とGrimAgeおよびPhenoAgeとの関連は、欧州の28コホート、3万4,710人を対象に解析した。関連の大きさを調べるため、回帰係数(β)±標準誤差(SE)を求めた。なお、GrimAgeとPhenoAgeはいずれも生物学的老化の評価指標であるが、GrimAgeのほうが、死亡率との関連が強いことが知られている。 生物学的老化の評価指標であるGrimAge、PhenoAgeの変化に有意な関連のあった因子を以下に示す。【GrimAgeに基づく老化の加速・減速関連因子】〈老化を加速(β±SE[年])〉1位:喫煙、1.299±0.1072位:アルコール摂取増加、0.899±0.3613位:ウエスト周囲径増加、0.815±0.1844位:昼寝、0.805±0.3555位:体脂肪率増加、0.748±0.1206位:BMI上昇、0.592±0.0797位:CRP値上昇、0.345±0.0738位:中性脂肪値上昇、0.249±0.0919位:小児期の肥満、0.200±0.07510位:2型糖尿病、0.095±0.041<老化を減速(β±SE[年])>1位:教育年数が長い、-1.143±0.1212位:世帯収入が高い、-0.774±0.263【PhenoAgeに基づく老化の加速・減速関連因子】〈老化を加速(β±SE[年])〉1位:体脂肪率増加、0.850±0.2692位:ウエスト周囲径増加、0.711±0.1523位:BMI上昇、0.586±0.1024位:喫煙、0.519±0.1425位:CRP値上昇、0.349±0.0956位:小児期の肥満、0.229±0.0957位:2型糖尿病、0.125±0.051<老化を減速(β±SE[年])>1位:教育年数が長い、-0.718±0.151 著者らは、「本研究により、老化の危険因子と老化の速度に関する定量的なエビデンスが得られ、肥満に関する指標、喫煙、低学歴が老化へ大きな影響を及ぼすことが示された。この結果は、生物学的老化の速度を遅らせ、健康長寿を促進するために役立つだろう」とまとめた。

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花粉症患者はコロナによる嗅覚・味覚障害が悪化しやすい

 花粉症患者では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染時の嗅覚・味覚障害のリスクが高く、その回復も遅いことが、中国・西安交通大学のJingguo Chen氏らの調査によって明らかになった。Laryngoscope investigative otolaryngology誌2023年2月号掲載の報告。花粉症患者は味覚・嗅覚障害がコロナで悪化した割合が高かった 急な嗅覚障害や味覚障害の発現は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予測因子と考えられている。しかし、慢性副鼻腔炎や喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎などを有する患者では、新型コロナウイルスに感染する前にすでに併存疾患の影響によって嗅覚障害や味覚障害が生じている可能性があり、それらによる評価が効果的ではないことがある。そのため、研究グループは、呼吸器疾患のあるCOVID-19患者の嗅覚・味覚と併存疾患の関連を調査することにした。 研究は、「化学感覚研究のための国際コンソーシアム(Global Consortium for Chemosensory Research:GCCR)」のアンケートデータを用いて行われた。対象者は、新型コロナウイルス感染前と感染後の嗅覚・味覚の程度と、感染前6ヵ月の併存疾患の状態を自己評価した。併存疾患(高血圧、季節性アレルギー/花粉症、肺疾患、副鼻腔炎、糖尿病、神経疾患)によって層別化し、線線形混合モデルを用いて評価した。 最終解析には、呼吸器疾患のある2万6,468例(女性1万8,429例[69.87%]、20~60歳が90%)が組み込まれた。 花粉症などによる併存疾患の有無とコロナ感染後の嗅覚・味覚障害の程度を評価した主な結果は以下のとおり。・最終解析に組み込まれた2万6,468例のうち、花粉症などの併存疾患があるのは1万6,016例、併存疾患がないのは1万452例であった。・年齢、性別、地域を調整した多変量回帰分析の結果、高血圧、肺疾患、副鼻腔疾患、神経疾患の併存疾患がある新型コロナウイルス感染症患者では、嗅覚・味覚障害が悪化した割合が高かった(いずれもp<0.05)が、それらの回復に明らかな差はみられなかった。・季節性アレルギー/花粉症を有する新型コロナウイルス感染症患者では、味覚・嗅覚障害が悪化した割合が高く、回復も遅かった(いずれもp<0.001)。・糖尿病では、味覚・嗅覚障害の悪化にも回復にも明らかな関連はみられなかった。

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スタチン不耐患者、bempedoic acidがCVリスクに有効か/NEJM

 スタチンの服用が困難なスタチン不耐(statin-intolerant)患者において、ATPクエン酸リアーゼ阻害薬ベンペド酸(bempedoic acid)はプラセボと比較し、LDLコレステロール値を低下し、主要有害心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠動脈血行再建)のリスクを低下することが示された。一方でベンペド酸投与により、脳卒中、心血管死、全死因死亡のそれぞれのリスクは低減せず、また痛風や胆石症発生リスクはやや増大した。米国・クリーブランドクリニックのSteven E. Nissen氏らによる二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で、NEJM誌オンライン版2023年3月4日号で発表された。ベンペド酸は、LDL値を低下し筋肉関連の有害事象の発生リスクは低いが、心血管アウトカムへの影響は明らかになっていなかった。“スタチン不耐”でCVD、または高リスクの患者を対象に試験 研究グループは、容認できない副作用のためにスタチン服用ができない、または困難な患者(スタチン不耐患者)で、心血管疾患が認められるか、または同リスクの高い患者1万3,970例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方(6,992例)にはベンペド酸180mgを、もう一方(6,978例)にはプラセボを、それぞれ経口投与した。 主要エンドポイントは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠動脈血行再建の4つのうちのいずれかの発生と定義した主要有害心血管イベントだった。心筋梗塞、冠動脈血行再建の発生率、ベンペド酸で各2割程度減少 追跡期間中央値は40.6ヵ月。ベースラインのLDLコレステロール値は、両群共に139.0mg/dLであり、6ヵ月後の低下幅は、ベンペド酸群がプラセボ群より29.2mg/dL大きく、減少率の群間差は21.1ポイントだった。 主要エンドポイントの発生率は、ベンペド酸群(11.7%)がプラセボ群(13.3%)より有意に低かった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.79~0.96、p=0.004)。 心血管死、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞の複合発生率は、8.2% vs.9.5%(HR:0.85、95%CI:0.76~0.96、p=0.006)、また心筋梗塞(致死的・非致死的)の発生率は3.7% vs.4.8%(0.77、0.66~0.91、p=0.002)、冠動脈血行再建の発生率は6.2% vs.7.6%(0.81、0.72~0.92、p=0.001)で、ベンペド酸群がプラセボ群より有意に低かった。 一方でベンペド酸は、脳卒中(致死的・非致死的)、心血管死、全死因死亡への有意な影響はみられなかった。さらに、痛風(ベンペド酸群3.1% vs.プラセボ群2.1%)、胆石症(2.2% vs.1.2%)の発生率はベンペド酸群で高く、同様に血清クレアチニン値、尿酸値、肝酵素値もベンペド酸群でわずかだが上昇が認められた。

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日本人の認知症リスクに対する喫煙、肥満、高血圧、糖尿病の影響

 心血管リスク因子が認知症発症に及ぼす年齢や性別の影響は、十分に評価されていない。大阪大学の田中 麻理氏らは、喫煙、肥満、高血圧、糖尿病が認知症リスクに及ぼす影響を調査した。その結果、認知症を予防するためには、男性では喫煙、高血圧、女性では喫煙、高血圧、糖尿病の心血管リスク因子のマネジメントが必要となる可能性が示唆された。Environmental Health and Preventive Medicine誌2023年号の報告。 対象は、ベースライン時(2008~13年)に認知症を発症していない40~74歳の日本人2万5,029人(男性:1万134人、女性:1万4,895人)。ベースライン時の喫煙(喫煙歴または現在の喫煙状況)、肥満(過体重:BMI 25kg/m2以上、肥満:BMI 30kg/m2以上)、高血圧(SBP140mmHg以上、DBP90mmHg以上または降圧薬使用)、糖尿病(空腹時血糖126mg/dL以上、非空腹時血糖200mg/dL以上、HbA1c[NGSP値]6.5%以上または血糖降下薬使用)の状況を評価した。認知機能障害は、介護保険総合データベースに基づき要介護1以上および認知症高齢者の日常生活自立度IIa以上と定義した。心血管リスク因子に応じた認知症予防のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、Cox比例回帰モデルを用いて推定し、集団寄与危険割合(PAF)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値9.1年の間に認知症を発症した人は、1,322例(男性:606例、女性:716例)であった。・現在の喫煙および高血圧は、男女ともに認知機能障害の高リスクと関連していたが、過体重または肥満は男女ともに認知機能障害のリスクと関連が認められなかった。・糖尿病は、女性のみで認知機能障害の高リスクと関連していた(p for sex interaction=0.04)。・有意なPAFは、男性では喫煙(13%)、高血圧(14%)、女性では喫煙(3%)、高血圧(12%)、糖尿病(5%)であった。・有意なリスク因子の合計PAFは、男性で28%、女性で20%であった。・年齢層別化による解析では、男性では中年期(40~64歳)の高血圧、女性では老年期(65~74歳)の糖尿病は、認知機能障害のリスク増加と関連していた。

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冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン、11年ぶりに改訂/日本循環器学会

 『2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン』が第87回日本循環器学会年次集会の開催に合わせ発刊され、委員会セッション(ガイドライン部会)において、藤吉 朗氏(和歌山県立医科大学医学部衛生学講座 教授)が各章の改訂点や課題について発表した。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは全5章構成 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会をはじめとする全11学会の協力のもと、これまでの『虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)』を引き継ぐ形で作成された。今回の改訂では、一次予防の特徴を踏まえ「冠動脈疾患とその危険因子(高血圧、脂質、糖尿病など)の診療に関わるすべての医療者をはじめ、産業分野や地域保健の担当者も使用することを想定して作成された。また、2019年以降に策定された各参加学会のガイドライン内容も冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインと整合性のある形で盛り込み、「一般的知識の記述は最小限に、具体的な推奨事項をコンパクトに提供することを目指した」と藤吉氏は解説した。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは全5章で構成され、とくに第2章の高血圧や脂質異常などに関する内容、第3章の高齢者、女性、CKD(慢性腎臓病)などを中心に改訂している。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン全5章のなかで変更点をピックアップしたものを以下に示す。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン第2章の改訂点<高血圧>・『高血圧治療ガイドライン2019』(日本高血圧学会)に準拠。・血圧の診断については、SBP/DBP(拡張期/収縮期血圧)130~139/80~89mmHg群から循環器疾患リスクが上昇してくるため、その名称を従来の「正常高値血圧」から「高値血圧」とした。また、診察室血圧と家庭血圧の間に差がある場合、家庭血圧による診断を優先する。・降圧目標について、75歳以上の高齢者は原則140/90mmHg未満とするが、高齢者でも厳格降圧(130/80mmHg未満)の適応となる併存疾患を有しており、かつ厳格降圧の忍容性ありと判断されれば過降圧に注意しながら130/80mmHg未満を目指すことが記されている。・降圧薬の脳心血管病抑制効果の大部分は、薬剤の特異性よりも降圧の度合いによって規定されている。その点を前提に、降圧薬治療の進め方に関する図を掲載した(p.22 図4)。<脂質異常>・脂質異常は『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』(日本動脈硬化学会)に準拠し、危険因子の包括的評価(p.26 図5)にて、治療方針を決定する(p.23 表8)。・治療すべき脂質の優先順位を明確化した(1:LDL-C、2:non-HDL-C、3:TG/HDL-C)。<糖尿病・肥満>・糖尿病の診断早期から適切な血糖管理・治療が重要で、その理由は、糖尿病診断前のHbA1cが上昇していない耐糖能異常の段階から冠動脈疾患(CAD)リスクが上昇するため。・2型糖尿病の血糖降下薬の特徴が表で明記されている(p.31 表13)。・糖尿病患者においてCADの一次予防を目的としてアスピリンなどの抗血小板薬をルーチンで使用することを推奨しない、とした。これは近年のエビデンスを踏まえた判断であり、以前のガイドラインとは若干異なっている。<運動・身体活動>・運動強度・量を説明するため、身体活動の単位である「METs(メッツ)」や、主観的運動強度の指標である「Borg指数」に関する図表(p.42 表16、図6)を掲載し、日常診療での具体的指標を示した。<喫煙・環境要因、CAD発症時対処に関する患者教育・市民啓発、高尿酸血症とCAD>・禁煙に関する新たなエビデンスを記載し、新型タバコについても触れている。・寒冷や暑熱などの急激な温度変化がCAD誘発リスクを高めること、大気汚染からの防御などに触れている。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン第3章の改訂点・本章はポリファーマシー、フレイル、認知症、エンドオブライフに注目して作成されている。<高齢者>・75歳までは活発な高齢者が増加傾向である。また年齢で一括りにすると個人差が大きいため、個別評価の方法について冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインに記載した。<女性>・CADリスクの危険因子は男性と同じだが、女性の喫煙者は男性喫煙者に比してその相対リスクが高くなる傾向がある。また、脂質異常症と更年期障害を同時に有する女性に対しては、禁忌・慎重投与に該当しないことを確認したうえでホルモン補充療法を考慮する、とした。<慢性腎臓病(CKD)>・高中性脂肪(高TG)血症を有するCKDに対する注意喚起として、フィブラート系薬剤は、高度腎機能障害を伴う場合には、ペマフィブラート(肝臓代謝)は慎重投与、それ以外のフィブラート系は禁忌であることが記載された。 このほか、冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインで推奨した危険因子の包括的管理に関連し、第2章では包括的管理や予測モデルについて、また第4章にはリスク予測からみた潜在性動脈硬化指標に関する記載を加えた。第5章「市民・患者への情報提供」では市民への急性心筋梗塞発症時の対応や、心肺蘇生法・AEDなどについて触れている。 最後に同氏は「将来的には患者プロファイルを入力することで、必要な情報がすぐに算出・表示できるようなアプリを多忙な臨床医のために作成していけたら」と今後の展望を述べた。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインの全文は日本循環器学会のホームページでPDFとして公開している。詳細はそちらを参照いただきたい。

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第138回 新型コロナ5類移行後、医療費は原則自己負担/政府

<先週の動き>1.新型コロナ5類移行後、医療費は原則自己負担/政府2.新型コロナ病床確保の補助金半減、9月末まで継続/厚労省3.コロナワクチン接種後死亡症例、「因果関係は否定できない」と認定/厚労省4.第8次医療計画へ新興感染症対策を追加、大筋で合意/厚労省5.アレルギー情報、薬剤禁忌などカルテ情報の共有へ/厚労省6.介護保険料の負担金額、4月以降 過去最高に/厚労省1.新型コロナ5類移行後、医療費は原則自己負担/政府政府は3月10日に新型コロナウイルス感染症対策本部を持ち回りで開催し、5月8日新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5類に変更するのに合わせ、医療提供体制および公費支援の見直しを行うと発表した。従来行ってきた行政による入院措置や限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による通常の対応に移行するのに合わせ、医療費については原則自己負担を求め、高額な医薬品代は公費支援を9月末まで継続する。外来診療については、新型コロナ罹患や疑いのみを理由とする診療拒否は「正当な事由」に該当しないとし、現在、新型コロナ患者を診療している約4.2万の医療機関を、季節性インフルエンザを対応している最大6.4万の医療機関まで拡充するとした。(参考)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について(厚労省)加藤大臣会見概要[新型コロナウイルス感染症対策本部後](同)コロナ5類移行後、原則自己負担 病院名公表は継続、政府決定(共同通信)政府 コロナ5類移行後 最大6万4000の医療機関で受け入れ目指す(NHK)コロナ5類移行 医療費負担が増える? 受診できる医療機関はQ&A(同)2.新型コロナ病床確保の補助金半減、9月末まで継続/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類引き下げに伴い、医療提供体制を正常化するため、コロナ患者の受け入れ医療機関に対して払ってきた「病床確保料」を半減させる方針を、3月10日に加藤厚生労働大臣の記者会見で明らかにした。また、受け入れ病院はこれまで約3,000の医療機関だったが、5月以降は約8,200の全病院での対応を目指す。このため急性期病棟以外での要介護者の受入れを評価するなど受入れを推進する。(参考)コロナ病床確保料半減へ 5類移行で厚労省、9月末まで(日経新聞)コロナ病床の補助金半減 通常医療と両立目指す(東京新聞)診療報酬のコロナ特例、5月8日に見直し 24年度からウィズコロナの報酬体系へ(CB news)3.コロナワクチン接種後死亡症例、「因果関係は否定できない」と認定/厚労省厚生労働省は、3月10日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と、薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開催した。この中で、昨年11月初旬に、ファイザー社のオミクロン株対応ワクチンの接種を受け、同日中に死亡した症例についても検討が行われた。症例は接種5分後に体調悪化を発言し、15分後に呼吸停止、心肺蘇生を行ったが、アドレナリン注射は静脈ルートからの注射を指示されるも静脈ルートがなく、医療機関へ搬送したが、接種開始後1時間40分余りで死亡した。委員会は発生した患者とワクチンの因果関係については「ワクチン接種と死亡との直接的因果関係は否定できない」とした。(参考)第92回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第27回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料(厚労省)コロナワクチン接種後42歳女性死亡「因果関係否定できない」 初認定(産経新聞)コロナワクチン接種後の死亡で初の認定「因果関係否定できず」(NHK)コロナワクチン接種後に死亡、因果関係「否定できず」 初めて評価(朝日新聞)42歳女性の接種後死亡「因果関係否定できず」…コロナワクチンで初の判定(読売新聞)4.第8次医療計画へ新興感染症対策を追加、大筋で合意/厚労省厚生労働省は、3月9日に「第23回第8次医療計画に関する検討会」を開催し、2024年度から始まる第8次医療計画に新たに「新興感染症発生・まん延時の医療」について盛り込む方向性を大筋で合意した。これまで医療計画には、5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)、5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)」を二次医療圏ごとに定めてきたが、次なる新興感染症の発生・蔓延に備えて、医療計画の中に「新興感染症対策」を位置付けて整備を進める。この中で、新興感染症の発生時には、まず特定感染症指定医療機関・第1種感染症指定医療機関・第2種感染症指定医療機関(345病院)が中心となって対応し、流行の場合は特別協定を締結した医療機関が対応する。さらにその後、公立・公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院に対応を拡大し、最終的には「入院医療を担当する」などの協定を結んだ医療機関など全体で対応することとし、平時から医療機関と自治体で締結することを求めた。厚生労働省は、今年5月には指針・関連通知を示したいとしている。(参考)第23回第8次医療計画等に関する検討会(厚労省)意見のとりまとめ(新興感染症発生・まん延時における医療)(同)医療計画での新興感染症対策、取りまとめ大筋了承 厚労省検討会、5月ごろに計画作成指針(CB news)新興感染症への医療計画での対応方針固まる!感染症の流行度合に応じ「段階的」な対応体制を平時から固めておく!?第8次医療計画検討会(Gem Med)5.アレルギー情報、薬剤禁忌などカルテ情報の共有へ/厚労省厚生労働省は、3月9日「第7回 健康・医療・介護情報利活用検討会医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」を開催し、新たに立ち上げる電子カルテ情報交換サービス(仮称)において、診療情報提供書や退院時サマリーを電子的に紹介先病院と共有・送付する仕組みや、患者のアレルギー情報、薬剤禁忌、検査値などの電子カルテ情報を患者自身や全国の医療機関で確認できる仕組みを可能とする方向性について討議し、大枠で合意した。ただ、電子カルテはベンダーごとに規格が異なり、早期に体制を整えるために、国が標準規格を策定する必要があるなどさらに検討が必要だが、厚生労働省は2023年度から社会保険診療報酬支払基金でシステム構築を進めたいとしている。(参考)第7回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ資料(厚労省)医療のデジタル化、現状は? マイナ保険証の活用が鍵(日経新聞)医療機関・患者自身で「電子カルテ情報」を共有する仕組みの大枠決定、2023年度からシステム構築開始-医療情報ネットワーク基盤WG(1)(Gem Med)6.介護保険料の負担金額、4月以降 過去最高に/厚労省厚生労働省は、現役世代が支払う介護保険料(第2号保険料)が今年の4月以降で、現在より100円余り増加し、平均6,200円余りと過去最高となると推計を発表した。介護保険制度は2000年に発足し、40歳以上で介護認定を受けた被保険者の介護サービス利用の場合、9割まで給付する内容となっている。令和4年度の介護給付費は予算ベースで12.3兆円となっており、財源の半分は加入者からの保険料が50%、残りは公費(国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%)からとなっている。発足当初、第2号保険料は2,075円だったが、今回の厚生労働省の推計によれば、平均で1月あたり6,216円と発足時の3倍となり現役世代の負担が増加している。同省では、団塊の世代が後期高齢者になるのを前に、高齢者の負担能力に応じた負担の見直しや、高齢者が支払う介護保険料の見直しを検討し、今年の夏までに結論を出すことにしている。(参考)令和5年度 介護納付金の算定について(厚労省)現役世代が支払う介護保険料 4月以降 過去最高に 厚労省推計(NHK)2023年4月から「介護保険料」改定で6,216円に。40歳~65歳未満「現役世代」の負担は重く(LIMO)

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事例019 突合点検で判明した報酬調整について【斬らレセプト シーズン3】

解説今回は、まれな査定を見過ごすところだったと他院から教えていただいた事例です。調剤薬局の請求誤りが医療機関の誤りではないかとして「突合点検結果連絡書(兼 処方箋内容不一致連絡書)」(以下「連絡書」)が届いたという事例です。「連絡書」は、「院外処方箋を調剤した調剤レセプトと医療機関レセプトを突き合わせて差異が認められる場合に、医療機関の責であれば次月の診療報酬から相殺しますよ」という連絡です。事例では、何らかの事情で調剤薬局側から過剰投与量の請求が行われていました。審査の結果として適正量まで査定となったものです。これが医療機関の責ではないかとの問合せでした。「連絡書」が届いたときには、「また傷病名漏れで相殺か」と考えられていたようです。数日後に改めて見返すと、院外処方箋と一致していないことがわかり、慌てて不一致の連絡手続きが行われたそうです。支払基金では不一致の連絡を受理すると、調剤した保険薬局から当該処方箋を取り寄せ再度の突合点検を行い審査されます。この手続きは、「連絡書」を受け取った月の18日(休日の場合は翌営業日)までに、「連絡書」の「請求内容」欄に記載された該当医薬品に「〇」印を付け、「処方箋内容不一致連絡書」として所轄の支払基金に郵送しなければなりません。期日までに不一致の連絡が支払基金に到着しないと、次月の診療報酬から査定額が相殺されてしまいます。「連絡書」は交付した院外処方箋にかかる調剤報酬の査定を連絡していただけるものです。無用な報酬相殺を避けるためにも、必ず当院の責の有無を点検することが必要です。

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動脈硬化は睡眠が不規則な人ほど発症する可能性が高かった

 睡眠不足や不規則な睡眠というのは心血管疾患や2型糖尿病などの発症に関連しているが、アテローム性動脈硬化との関連性についてはあまり知られていない。そこで、米国・ヴァンダービルト大学のKelsie M. Full氏らは睡眠時間や就寝タイミングとアテローム性動脈硬化との関連性を調査し、45歳以上の場合に睡眠不足や不規則な睡眠であるとアテローム性動脈硬化の発症リスクを高めることを示唆した。Journal of the American Heart Association誌2023年2月21日号掲載の報告。動脈硬化と睡眠時間や睡眠の規則性との関連性を横断的に調査 本研究はコミュニティベースの多民族研究(MESA:Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)で、睡眠時間や睡眠の規則性について、アクティグラフィ※(活動量測定検査)を7日間手首に装着した記録を評価し、無症候性のアテローム性動脈硬化との関連性を横断的に調査した。※腕時計型の加速度センサーで、腕や足首に装着することで活動/休止リズムサイクルを記録するもの。睡眠/覚醒アルゴリズムを記録できる。 本研究では、2010~13年に記録された2,032例(平均年齢±標準偏差[SD]:68.6±9.2歳[範囲:45~84歳]、女性:53.6%)のデータを用いた。評価項目に用いたマーカーは、冠動脈カルシウム、頸動脈プラークの有無、頸動脈内膜-中膜の厚さ、および足首-上腕指数であった。睡眠の規則性は睡眠時間と就寝タイミングで、個々の7日分のSDを定量化した。解析には相対リスク回帰モデルを使用し、有病率と95%信頼区間[CI]を計算した。なお、解析モデルは人口統計、心血管疾患の危険因子、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、睡眠時間、中途覚醒など、睡眠特性に合わせ客観的に評価・調整した。 動脈硬化と睡眠時間や睡眠の規則性との関連性を横断的に調査した主な結果は以下のとおり。・全体として、7日間を通してさまざまな睡眠を取った(たとえば、ある夜は睡眠時間が短く、ある夜は睡眠時間が長かった)参加者は、毎晩ほぼ同じ睡眠時間だった参加者よりも、アテローム性動脈硬化を発症する可能性が高かった。・参加者の約38%では睡眠時間が90分以上変化し、18%では120分以上も変化していた。・睡眠が不規則な人の特徴は、白人以外の人種では「現喫煙者の可能性が高い」「平均年収が低い」「勤務がシフト制もしくは無職の可能性が高い」「BMIが高い」傾向であった。・調整後、より規則的な睡眠時間(SD≦60分)の参加者と比較したところ、睡眠時間の不規則性が大きい(SD>120分)参加者は、冠動脈カルシウム負荷が高く(SD>300、有病率:1.33、95%[CI]:1.03~1.71) 、足首上腕指数が異常値であった(SD<0.9、有病率:1.75、95%[CI]:1.03~2.95)。・より規則的な就寝タイミングの参加者(SD≦30分)と比較したところ、就寝時間が不規則な参加者(SD>90分)は、冠動脈のカルシウム負荷が高い可能性が強かった (有病率:1.39、95%[CI]:1.07~1.82)。・関連性は、心血管疾患の危険因子、平均睡眠時間、閉塞性睡眠時無呼吸、中途覚醒を調整後も持続した。・睡眠の不規則性、とくに睡眠時間の長さのばらつきは、アテローム性動脈硬化のいくつかの無症候性マーカーと関連していた。

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腎結石再発予防にヒドロクロロチアジドは有効か?/NEJM

 再発リスクの高い腎結石患者において、ヒドロクロロチアジド(1日1回12.5mg、25mg、50mgいずれかの用量)の投与を受けた患者とプラセボの投与を受けた患者との間で、再発率に実質的な違いはみられないことが、スイス・ベルン大学のNasser A. Dhayat氏らの検討で示された。腎結石は、腎臓に影響する最もよくみられる疾患で再発のリスクが高いという特徴がある。腎結石再発にはサイアザイド系利尿薬が広く使用されているが、プラセボと比較した有効性に関するデータは限られており、用量反応データも限定的であった。NEJM誌2023年3月2日号掲載の報告。プラセボ対照無作為化試験で、ヒドロクロロチアジドの用量反応効果を評価 研究グループは、腎結石再発予防に関するヒドロクロロチアジドの用量範囲の評価を目的に、二重盲検無作為化プラセボ対照試験「NOSTONE試験」を行った。再発性カルシウム含有腎結石患者を、ヒドロクロロチアジドを12.5mg、25mgまたは50mgのいずれかの用量で1日1回投与する群とプラセボを1日1回投与する群に無作為に割り付け追跡調査した。 試験の主要目的は、主要エンドポイント(腎結石の症状を有する再発または放射線学的再発)への用量反応効果を調べることであった。放射線学的再発は、画像診断で新たな結石を認めた場合またはベースラインの画像診断で観察された結石の増大と定義した。安全性も評価された。最大用量50mg群でも対プラセボ率比0.92 患者416例が無作為化を受け、中央値2.9年間追跡された。 主要エンドポイントの発生は、プラセボ群60/102例(59%)、ヒドロクロロチアジド12.5mg群62/105例(59%)で、対プラセボ率比は1.33(95%信頼区間[CI]:0.92~1.93)、同25mg群61/108例(56%)、率比1.24(95%CI:0.86~1.79)、同50mg群49/101例(49%)、率比0.92(0.63~1.36)であった。 ヒドロクロロチアジドの用量と、主要エンドポイントのイベント発生との間に関連は認められなかった(p=0.66)。 プラセボの投与を受けた患者よりもヒドロクロロチアジドの投与を受けた患者で、低カリウム血症、痛風、新規発症の糖尿病、皮膚アレルギー、ベースライン値の150%を超える血漿クレアチニン値の報告がより多かった。

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ドキュメンタリー「WHOLE」(前編)【なんで自分の足を切り落としたいの!?(身体完全性違和)】Part 2

関連する症状は?身体完全性違和の特徴は、体の一部分(ほとんど左足)に違和感がある、命の危険を冒してでもそれをなくしたいと思う、それがなくなったら満足することであるとわかりました。また、ドキュメンタリーに登場する人たちが全員男性であったため、男性に起こりやすい可能性も考えられます。ただし、これまでほとんど知られてこなかった「病気」であり、発症頻度はとても低いと思われます。それでは、この原因は何でしょうか? この謎を解き明かすために、身体完全性違和と関連する症状(状態)を5つ挙げてみましょう。(1)感覚麻痺1つ目は、感覚麻痺です。これは、手足の感覚がしびれたり鈍くなることです。感覚中枢(頭頂葉の体性感覚野)または末梢神経などが障害されることで起こります。また、心理的なストレスや暗示(催眠)による感覚中枢の一時的な機能低下(ローカルスリープ)によって起こることもあります。これは、変換症(転換性障害)と呼ばれています。感覚麻痺と身体完全性違和は、感覚異常がある点では同じですが、感覚麻痺はその体の一部分をなくしたいとまでは思わない点で違います。なお、ローカルスリープの詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)幻肢2つ目は、幻肢です。これは、存在しない手足が存在しているように感じることです。さらに、存在しない手足の痛みを感じるなら、幻肢痛と呼ばれます。事故や糖尿病性壊疽などによる四肢切断や先天性四肢欠損などによって、もともと末梢神経が障害されている(存在しない)場合、多くはただ手足の感覚がないだけです。しかし、「ないはずのものがある」と感じるということは、実は体の存在を認識する脳の機能(ボディイメージ)が備わっていることが考えられます。そして、幻肢ではこの機能が誤作動を起こしていることが考えられます。実際に、この「体の地図」(ボディイメージ)と実際の体の感覚や動きを統合する脳内のネットワークがあることがわかっています。この記事では、これを「身体認識ネットワーク」と名付けます。幻肢と身体完全性違和は、感覚異常がある点では同じですが、幻肢が「ないはずのものがある」と感じるのに対して、身体完全性違和は「あるはずのものがない(いらない)」と感じる点で違います。(3)ラバーハンド錯覚3つ目は、ラバーハンド錯覚です。これは、次のような実験で判明しています。まず、ゴム製の手(ラバーハンド)を被験者の手のように目の前で見えるようにして、自分の手は横に置いて衝立で見えなくします。そして、ゴム製の手と自分の手の両方が絵筆でなでられることで、被験者にゴム製の手が自分の手であると認識させます。すると、その後にゴム製の手だけをなでても、被験者は自分の手がなでられていると実際に感じて(錯覚して)しまうのです。このメカニズムは、幻肢と同じように身体認識ネットワークの誤作動が考えられています。なお、ラバーハンド錯覚の実験の詳細については、動画をご覧ください。(4)気付き亢進4つ目は、気付き亢進です。これは、体の触れ方や歩き方などの手足の身体感覚が研ぎ澄まされている(注意が向きすぎている)ことです。「身体過剰認識」とも言い換えられ、身体認識ネットワークの機能亢進が考えられます。これは、統合失調症の初期症状で見られます。なお、このメカニズムは、心理療法のマインドフルネスにも通じます。この詳細については、関連記事3をご覧ください。(5)身体失認5つ目は、身体失認です。これは、体の一部分が自分のものと認識できなくなることです。感覚中枢の障害に加えて、身体認識ネットワークの機能低下が考えられます。たとえば、片側の大脳半球(主に右半球)が機能低下することで反対側(左側)の手足の運動麻痺や感覚麻痺が起きる場合、さらにその部位を自分の体の一部分と認識できなくなることです。麻痺している部分自体を認識できないので、麻痺していないと言い張ることもあります。これは、病態失認と呼ばれています。身体失認が軽度の場合、その部位の手足の身体感覚に注意が向かなくなり(無視するようになり)、その半側でぶつかったり転びやすくなります。これは、半側空間無視と呼ばれています。身体失認と身体完全性違和は、「自分のものではない」と訴える点では同じですが、身体失認がその体の部分を認識できないのに対して、身体完全性違和は認識できている点で違います。ちなみに、視覚中枢(後頭葉)と一緒に身体認識ネットワークの機能低下が起きれば、目が見えないのに目が見えると言い張ります(皮質盲)。また、聴覚中枢(側頭葉)と一緒に起きれば、聞こえないのに聞こえると言い張ります(皮質聾)。これらも身体失認であり、病態失認です。原因は何なの?関連する症状との違いを踏まえて、身体完全性違和の原因は何でしょうか? その答えは、先ほどの身体認識ネットワークのみの機能低下であることが考えられます。感覚中枢も末梢神経も正常であるため、身体感覚はあるのに身体認識ができず、結果的にその体の一部分を「自分のものではない」(異物)として認識してしまうのです。もしも先ほどの身体失認の場合であれば、身体感覚もなく身体認識もできず、「自分のものではない」(何もない)と認識してしまいます。実際の画像検査の研究では、身体完全性違和の人の脳内の右上頭頂小葉は、健常の人よりも厚みがなく働き方が違っていることが確認されています2)。そこは、身体認識ネットワークの1つと考えられています。身体認識ネットワークがもともと右脳にあるからこそ、ドキュメンタリーで登場する人たちが違和感を訴える体の部分のほとんどが、右脳が支配する反対側の左側なのでしょう。また、だからこそ、身体失認も体の部分の左側が多いのでしょう。また、身体完全性違和の人の違和感のある体の部分への皮膚コンダクタンス反応(SCR)は、違和感のない体の部分の2~3倍の反応があったことが確認されています2)。だからこそ、その部分をわざわざ切り落としたいと思うのでしょう。ちなみに、もしも身体認識ネットワークの機能低下が体の一部分ではなく、全身で起きたらどうなるでしょうか? 軽度の場合は、「自分の体が自分のものではないように感じる」という離人感(離人症の一症状)が出てくるでしょう。重度の場合は、「自分の体が死んでいる(存在しない)」と思い込むコタール症候群(うつ病の虚無妄想)が出てくるでしょう。なお、身体完全性違和は体の部分についての身体認識に異常がありますが、「自分のものではない」体の部分を自分が持っているという自己認識には異常はありません。もしも自己認識も機能低下している場合は、自分のこととして認識できなくなるので、切断を希望しなくなるでしょう。この自己認識の中枢は右前頭葉であることがわかっており、身体認識ネットワークと同じ右脳であることはとても興味深いです。おそらく、左脳が言語の優位半球であるため、脳の側性化としてそのバランスをとって、右脳は認識の優位半球となったことが考えられます。ただし、あくまで右脳が優位に働いているだけで、左脳も「劣位」ながら働いているでしょう。また、これはあくまで世の中に右利きの人が多いからです。左利きの人の場合は逆になるでしょう。実際に、身体完全性違和によって切断を希望する体の部分が右足や両足である人も少ないながらいます。なお、残念ながら、彼らの利き手がどちらかまでは報告されていません。自己認識の詳細については、関連記事4をご覧ください。また、先ほど紹介した気付き亢進については、この症状により切断を希望する人がいる可能性は考えられます。ただし、その大本の原因が統合失調症であるため、やがて自己認識も障害され(亢進して)、さらに幻覚や妄想などの症状も出てきて、切断するという単純な解決を求められなくなります。なお、統合失調症の自殺者の中には、この気付き亢進がきっかけになっている人がいる可能性は考えられます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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3月9日 世界腎臓デー【今日は何の日?】

【3月9日 世界腎臓デー】〔由来〕腎臓病の早期発見と治療の重要性を啓発する取組として、国際腎臓学会などにより2006年から、3月第2木曜日を「世界腎臓デー」と定め、毎年、世界各地で腎臓病に関する啓発に向けてイベントが開催されている。関連コンテンツCKDで使うSGLT2阻害薬のポイント【診療よろず相談TV】CKD(慢性腎臓病)の定義【患者説明用スライド】Albってなあに?【患者説明用スライド】CKDを抑制、植物油よりも魚油/BMJSGLT2阻害薬は非糖尿病CKDにおいてもなぜ腎イベントを軽減するか?(解説:栗山 哲 氏)-1614

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エリスリトールが血栓、主要心血管イベントの発生リスクと関連

 人工甘味料は砂糖の代用として広く使用されているが、人工甘味料の摂取が2型糖尿病や心血管疾患と関連するという報告もある。米国・クリーブランドクリニック・ラーナー研究所のMarco Witkowski氏らは、アンターゲットメタボロミクス研究において、糖アルコールに分類される甘味料エリスリトール(多くの果物や野菜に少量含まれる)が3年間の主要心血管イベント(MACE:死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の発生と関連していることを発見し、その後の米国および欧州の2つのコホートを用いた研究でも、その関連は再現された。また、エリスリトールはin vitroにおいて血小板反応性を亢進し、in vivoにおいて血栓形成を促進することを明らかにした。健康成人にエリスリトールを摂取させたところ、血小板反応性の亢進および血栓形成の促進についての閾値を大きく超える血漿中エリスリトール濃度の上昇が引き起こされた。Nature Medicine誌オンライン版2023年2月27日号の報告。エリスリトールへの曝露で血栓形成リスクが高まる可能性のある期間が持続 米国において、心臓カテーテル検査を受けた患者1,157例を対象として、アンターゲットメタボロミクスにより3年間のMACE発生と関連のある物質を検討し、エリスリトールが同定された。その結果を受けて、米国において同様に2,149例(上記の1,157例とは重複しない)を対象に、血清中エリスリトール濃度で四分位に分類し、3年間のMACE発生との関係を検討した。また、欧州において慢性冠症候群の疑いで待機的冠動脈造影検査を受けた833例を対象に、血清中エリスリトール濃度で四分位に分類し、3年間のMACE発生との関係を検討した。さらに、米国の18歳以上の健康成人8人を対象に、エリスリトール30g(市販の人工甘味料入り飲料1缶、ケトアイス1パイントなどに相当)入りの飲料を摂取させ、血漿中のエリスリトール濃度を7日間測定した。 エリスリトールの血小板への作用を検討するため、健康成人の多血小板血漿(PRP)を用いて血小板凝集反応とエリスリトール濃度の関係を検討した。また、血小板を分離し、エリスリトールの血小板機能への影響も検討した。エリスリトールの血栓形成への影響は、ヒト全血における血小板の接着、頸動脈損傷モデルマウスにおける血栓形成率および血流停止までの時間により評価した。 エリスリトールと主要心血管イベントや血栓形成との関連を研究した主な結果は以下のとおり。・アンターゲットメタボロミクス研究において、血清中エリスリトール濃度第4四分位群は第1四分位群と比べて有意にMACE発生リスクが高く(調整ハザード比[aHR]:2.95、95%信頼区間[CI]:1.70~5.12、p<0.001)、MACE関連候補分子の中で非常に上位に位置していた。・米国および欧州のコホート研究においても、血清中エリスリトール濃度第4四分位群は第1四分位群と比べて有意にMACE発生リスクが高く、aHR(95%CI)はそれぞれ1.80(1.18~2.77)、2.21(1.20~4.07)であった(それぞれp=0.007、p=0.010)。・エリスリトール濃度とMACE発生リスクの関連は、米国および欧州のコホート研究において男女問わず観察され、年齢(70歳以上/未満)、高血圧の有無、eGFR(60mL/min/1.73m2以上/未満)などのサブグループ解析においても同様であった。・ADPまたはTRAP6存在下で、エリスリトールは用量依存的にPRPにおける血小板凝集反応を増加させ、トロンビン(0.02U/mL)曝露後の血小板の細胞内Ca2+濃度を増加させた。また、ADP(2μM)存在下の血小板において、エリスリトールは用量依存的にP-セレクチンの発現およびGP IIb/IIIaの活性化を増加させた(いずれもin vitro)。・ヒト全血においてエリスリトールは血小板の接着を増加させ(in vitro)、頸動脈損傷モデルマウスにおいて血栓形成率を上昇、血流停止までの時間を短縮させた(in vivo)。・健康成人にエリスリトールを摂取させた研究では、摂取後数時間は血漿中濃度がベースライン(中央値3.84μM)より千倍以上高い状態(30分後の中央値5.85mM)が続き、血小板反応性の亢進および血栓形成の促進についての閾値を大きく超えていた。すべての被験者において、ベースラインからの増加は2日以上継続した。 本論文の著者らは、「エリスリトールおよび人工甘味料の長期的な安全性を評価する試験が必要であることが示唆された。エリスリトールへの曝露後、血栓形成のリスクが高まる可能性のある期間が持続することが示され、これは心血管疾患の発症リスクの高い患者(糖尿病、肥満、CVDの既往、腎機能障害を有する患者)における懸念事項である」とまとめた。

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日本人における砂糖と大腸がんリスクの関連は?

 日本の中年成人における砂糖摂取量と大腸がんリスクとの関連を大規模コホート研究のJPHC研究で検討した結果、明らかな関連はみられないものの、総摂取量が多い女性で直腸がんリスクが増加する可能性が否定できなかった。国立がん研究センターの金原 理恵子氏らの報告がCancer Science誌オンライン版2023年2月27日号に掲載された。 砂糖の摂取量が大腸がんリスクに及ぼす影響は定まっていない。アジア人が摂取する砂糖の原料は欧米人とは異なり、アジア人集団における砂糖の総摂取量および特定の種類の摂取量における前向きコホート研究はほとんどない。本研究では、1995~99年に質問票に回答した45~74歳の参加者(男性4万2,405人、女性4万8,600人)を対象に、2013年12月まで追跡調査を行った。147項目の食物摂取頻度調査票を用いて砂糖の総摂取量、果糖の総摂取量、特定の種類の糖類摂取量を推定し、五分位(Q1~Q5)に分けた。潜在的交絡因子で補正したCox比例ハザード回帰モデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、9万1,005人中2,118人(男性1,226人、女性892人)に大腸がんが確認された。・すべてのタイプの砂糖の摂取量と大腸がんリスク増加との間に明確な関連はみられなかった。・腫瘍の部位別に解析したところ、女性では砂糖の総摂取量と直腸がんとの間に正の相関が認められたが(Q5に対するQ1のHR:1.75、95%CI:1.07~2.87、線形傾向のp=0.03)、男性では有意な傾向は認められなかった。

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