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糖尿病性神経障害性疼痛、併用薬による効果の違いは?/Lancet

 糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)に対する鎮痛効果は、アミトリプチリン+プレガバリン、プレガバリン+アミトリプチリン、デュロキセチン+プレガバリンで同等であり、単剤療法で効果不十分な場合に必要に応じて併用療法を行うことで、良好な忍容性と優れた鎮痛効果が得られることが、英国・シェフィールド大学のSolomon Tesfaye氏らが英国の13施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検クロスオーバー試験「OPTION-DM試験」の結果、示された。DPNPに対しては、多くのガイドラインで初期治療としてアミトリプチリン、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチンが推奨されているが、最適な薬剤あるいは併用すべきかについての比較検討はほとんど行われていなかった。OPTION-DM試験は、DPNP患者を対象とした過去最大かつ最長の直接比較のクロスオーバー試験であった。Lancet誌2022年8月27日号掲載の報告。DPNP患者140例を対象に、DN4の7日間平均疼痛スコアを評価 OPTION-DM試験の対象は、改訂トロント臨床神経障害スコア(mTCNS)が5以上の遠位対称性多発神経障害、および神経障害性疼痛4項目質問票(DN4)で7日間の1日平均疼痛(NRS)スコア(範囲0~10)が4以上の神経障害性疼痛を3ヵ月以上有する18歳以上のDPNP患者である。施設で層別化したブロックサイズ6または12の置換ブロック法を用い、アミトリプチリン+プレガバリン(A-P)、プレガバリン+アミトリプチリン(P-A)、デュロキセチン+プレガバリン(D-P)の3つの治療法を各16週間、次の順序で投与する6通りの投与群に、1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。A-P→D-P→P-A、A-P→P-A→D-P、D-P→A-P→P-A、D-P→P-A→A-P、P-A→D-P→A-P、P-A→A-P→D-P。 3つの治療法はいずれも、第1治療期6週間、第2治療期10週間から成り、第1治療期は単剤療法(A-PではA、D-PではD、P-AではP)を行い、6週後に7日間平均NRSスコアが3未満の奏効例は第2治療期も単剤療法を継続し、非奏効例では第2治療期に併用療法を行った。各治療期は最初の2週間を用量漸増期として、アミトリプチリン25mg/日、デュロキセチン30mg/日、プレガバリン150mg/日から投与を開始し、1日最大耐量(アミトリプチリン75mg/日、デュロキセチン120mg/日、プレガバリン600mg/日)に向けて用量を漸増した。 主要評価項目は、各治療法の最終週(16週時)に測定された7日間平均NRSスコアの治療群間差であった。 2017年11月14日~2019年7月29日に252例がスクリーニングされ、140例が6通りの治療順に無作為に割り付けられた。3つの治療法(A-P、P-A、D-P)で有効性に差はなし 無作為化された140例中、130例がいずれかの治療法を開始し(84例が少なくとも2つの治療法を完遂)、主要評価項目の解析対象となった。 16週時の7日間平均NRSスコア(平均±SD)はいずれも治療法も3.3±1.8であり、ベースライン(130例全体で6.6±1.5)から減少した。各治療法の平均差は、D-P vs.A-Pで-0.1(98.3%信頼区間[CI]:-0.5~0.3)、P-A vs.A-Pで-0.1(-0.5~0.3)、P-A vs.D-Pで0.0(-0.4~0.4)で、有意差は認められなかった。併用療法を受けた患者では、平均NRSスコアの減少が単剤療法を継続した患者より大きかった(1.0±1.3 vs.0.2±1.5)。 有害事象は、3つの治療法を比較すると(A-P vs.D-P vs.P-A)、P-Aではめまい(12% vs.16% vs.24%、p=0.036)、D-Pでは悪心(5% vs.23% vs.7%、p=0.0011)、A-Pでは口渇(32% vs.8% vs.17%、p=0.0003)の発現率が有意に高かった。

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第7波のコロナ重症化リスク因子/COVID-19対策アドバイザリーボード

 8月13日に開催された厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「第7波における新型コロナウイルス感染症 重症化リスク因子について(速報)」が報告された。 本報告は、蒲川 由郷氏(新潟大学大学院医学総合研究科 十日町いきいきエイジング講座 特任教授)らのグループが、2022年7月1日~31日までに新潟県内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断・届け出された3万6,937件を対象に調査したもの。 その結果、重症化のリスク因子として70代以上の高齢者、ワクチンの未接種、慢性呼吸器疾患、(非透析の)慢性腎臓病、男性、やせ体形につき、統計学的な有意差があった。第7波3万6,937件の新潟のCOVID-19患者を解析【調査概要】対象など: 2022年7月1日〜31日までに新潟県内でCOVID-19と診断届出された3万6,937件(重症度などの最終確認日は8月10日)。調査方法:陽性判明時点で収集可能な患者背景から、年齢・性別・ワクチン接種の有無などの患者基礎情報と高血圧・糖尿病・慢性腎臓病などの基礎疾患情報の項目を同時に投入し、多重ロジスティック回帰分析を実施。重症化リスク因子のオッズ比を算出。【結果】(1)年代別・3万6,937例中、103例が中等症II以上だった(中等症・重症化率 0.3%)。・中等症II以上103例のうち、施設入所者は41例(約40%)で、80代以上は41例中35例。・年代が高くなるほど、重症化のオッズ比は高い傾向にあり、30代と比較して、70代以上のオッズ比が63〜283と高い値。(2)性別・ワクチン接種・女性よりも男性が重症化リスクが高い(オッズ比2.67)。・ワクチン接種(2回以上)をしていると、重症化リスクが低くなる(オッズ比:2回で0.27、3回で0.2、4回で0.25)。(3)肥満・肥満(BMI 25以上)は有意差があるとはいえなかった(オッズ比:BMI 25~30未満で1.6、30以上で1.55)。・やせ型(BMI 18.5未満)のオッズ比は2.05と高い値だった。これは、やせの高齢者(いわゆるフレイル)が中等症IIとなる割合が大きいためと考えられる。(4)基礎疾患(オッズ比2以上のみ記載)・慢性呼吸器疾患(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息などを含む)のオッズ比は2.84・慢性腎臓病の非透析のオッズ比は3.42、透析のオッズ比は2.67・持続陽圧呼吸療法(CPAP)使用のオッズ比は2.47・悪性腫瘍のオッズ比は2.24高齢者では肥満よりもやせ型の感染者に注意【追加解析】 2022年1~6月(第6波:6万4,000件)と2022年7月(第7波:3万6,937件)を追加解析(合計:10万937件)。・第6波と第7波での中等症II以上の割合の比較では、第6波の中等症I以下は99.5%、中等症II以上は0.5%だったのに対し、第7波での中等症I以下は99.7%、中等症II以上は0.3%と減少した。・第7波では少数だが10歳未満でも中等症II以上の患者が発生している(第6波ではみられていない)。【解析のまとめ】・中等症II以上のリスクは第6波と比べて第7波で低下。・80代以上でも、中等症II以上は2.3〜5.8%程度。・第7波の中等症II以上は、年齢中央値は83歳、4割が施設入所者。・ワクチン未接種は重症化リスクを上昇させる。中等症II以上の患者のうち、ワクチン未接種は約20%(ワクチン未接種者割合は5〜11歳67.9%、65歳以上4.4%)。・中等症IIのリスク上昇には、基礎疾患のほとんどは明確な寄与がなく、有意な差があったのは、(1)高齢(70、80代以上で高い)(2)ワクチン未接種(3)慢性呼吸器疾患*(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息を含む)(4)非透析の慢性腎臓病(5)男性(6)やせ(BMI<18.5:高齢者のフレイルなど)であった。 また、第7波では小児の中等症II以上もみられており、注視が必要(小児へのワクチン接種が重要)。と同時にワクチン未接種者へのワクチン接種が重要である。*慢性呼吸器疾患ではもともと酸素飽和度が低い状態の方もおり、解釈に留意を要する。

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アドヒアランス改善による意識障害が生じたため薬剤を徹底見直し【うまくいく!処方提案プラクティス】第50回

 今回は、服薬アドヒアランスが改善したら治療効果が過剰に現れて意識障害を起こした事例を紹介します。薬剤師のさまざまな工夫や手法によってアドヒアランスが改善することは喜ばしいことですが、急激な変化が生じることもあるため、あらかじめ変化を予測して治療計画を立てておくことが重要です。患者情報88歳、男性(自宅で妻と2人暮らし)基礎疾患陳旧性脳梗塞(発症様式不明)、認知症、糖尿病、高血圧症 服薬管理妻身体所見身長161.5cm、体重54.7kg介入前の検査所見HbA1c 7.0、HDL 47mg/dL、LDL 83mg/dL、AST 19、ALT 23、Scr 1.03mg/dL、推算CCr 38.5mL/min処方内容1.チクロピジン錠100mg 2錠 分2 朝夕食後2.アログリプチン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.カンデサルタン錠12mg 1錠 分1 昼食後4.ニフェジピン徐放(24時間持続)錠20mg 2錠 分2 朝夕食後5.グリメピリド錠1mg 1錠 分1 朝食後6.ボグリボースOD錠0.2mg 3錠 分3 毎食直前本症例のポイントこの患者さんの服薬管理は奥様が行っていましたが、PTPシートのままの管理で、かつ、服薬タイミングが複数回あることから飲み忘れが多かったため、訪問医の紹介で薬局が在宅訪問することになりました。訪問介入前の血圧は140〜160/80〜100と高めを推移していました。初回訪問時に飲み忘れや残薬を確認したところ、食直前や昼・夜の薬がとくに服用できておらず、少なくとも3ヵ月分の余剰があることがわかりました。そこで、奥様と医師に一包化管理の承認を取り、その日から始めることになりました。訪問介入開始後のフォローアップでは、血圧が110~120/60~70、心拍数が70台となりました。しかし、1ヵ月が経過したころに奥様より「夫の話のつじつまが合わない。そわそわしていて顔色も悪い。食事は元気がないこともあって、これまでの30~40%程度しか食べない。昼以降はうとうと寝ていることが多い。最近怒りっぽくなって常にイライラしている」と相談がありました。その日のバイタルを確認すると、血圧が170/100と高く、心拍数も95と頻脈になっていました。上腕は汗ばんでいて、衣服も汗で湿っているような感じがしました。また、最近になって便秘が出現し、お腹が張って不機嫌なのではないかという話も聴取しました。これらの追加情報から、下記のことを考察しました。(1)低血糖出現の可能性症状やその発現タイミングから、服薬アドヒアランスが改善して、これまで飲めていなかった薬の治療効果よりも副作用が強く現れたのではないかと考えました。一番懸念したことは、元々腎機能も悪く、HbA1cが高齢者の目標値の下限である7.01)であったことから、SU薬のグリメピリド錠が過度に作用して低血糖に陥っている可能性です。低血糖によるカテコラミン分泌上昇から、頻呼吸はないものの血圧上昇や頻脈、焦燥感、興奮、日中活動低下(ブドウ糖低下)に至っている恐れもあります2)。(2)食事量低下とボグリボースによる便秘発現の可能性便秘の発現については、低血糖によって食事量が低下したことで腸管蠕動が低下した可能性と、α-グルコシダーゼ阻害薬のボグリボース錠の服薬徹底により代表的な副作用でもある便秘が生じた可能性を考えました。(3)現状の服薬管理に合わせた薬剤の選定・見直しの必要性一包化管理を開始してから服薬アドヒアランスが安定しているため、服薬タイミングをシンプルに整理して、治療負担となっている薬剤の中止・減量を提案する必要があると考えました。とくに1日3回の食直前薬であるボグリボース錠は本人の服薬負担だけでなく、奥様の介護負担増加にも繋ります。血圧推移も安定してきたことから、降圧薬を減らすことも可能と考えました。処方提案と経過医師に電話で状況を報告したところ、臨時往診することになりました。診療中に医師より「低血糖症状が出現しているため治療薬を調整しようと思うが、考えがあれば教えてください」と聞かれたため、上記1~2より、グリメピリド錠は低血糖を起こしてることから中止、また便秘に影響している懸念からボグリボース錠の中止も提案しました。医師からは、今回採血もしているので次回の訪問診療まで経口血糖降下薬はすべて中止する旨の返答がありました。また、今回のことをきっかけにチクロピジン錠はクロピドグレル錠50mg 1錠 朝食後に変更となりました。昼のカンデサルタン錠は中止となり、ニフェジピン24時間持続徐放錠は40mg 1錠 朝食後に変更となりました。1週間後のフォローアップでは、食事量は50%程度であるものの活気が出てきていて、血圧は120~130/70~80台で推移していました。血色不良やイライラしていた様子、日中の傾眠もなく、デイサービスの利用ができるところまで回復しました。臨時往診時の採血結果では、HbA1cは5.5、空腹時血糖は60台まで低下していましたが、その後のHbA1cは6.0台で留まっており、経口血糖降下薬は再開せずに生活しています。1)日本糖尿病学会編著. 糖尿病治療ガイド2022-2023.文光堂;2018.2)岸田直樹著・監修. 薬学管理に活かす臨床推論.日経BP;2019.

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妊娠糖尿病の診断基準、低vs.高血糖値でLGA児リスクの差は?/NEJM

 妊娠糖尿病の診断基準として低めの血糖値を用いても、高めの血糖値を用いた場合と比較し、在胎不当過大(LGA)児を出産するリスクは低下しないことを、ニュージーランド・オークランド大学のCaroline A. Crowther氏らが無作為化試験「Gestational Diabetes Mellitus Trial of Diagnostic Detection Thresholds:GEMS試験」の結果、報告した。妊娠糖尿病の治療は母子の健康を改善するが、その診断基準ははっきりしないままであった。NEJM誌2022年8月18日号掲載の報告。妊婦を低め/高めの基準値群に無作為化し、LGA児出生を比較 研究グループは、2015年4月~2020年8月の期間に、妊娠24~32週の妊婦を、妊娠糖尿病の診断基準として低めの血糖値を用いる群(低基準値群、2,022例)と高めの血糖値を用いる群(高基準値群、2,039例)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 低基準値群は、75g経口ブドウ糖負荷検査(OGTT)において、(1)空腹時血糖値≧92mg/dL(5.1mmol/L)、(2)1時間値≧180mg/dL(10.0mmol/L)、(3)2時間値≧153mg/dL(8.5mmol/L)のいずれかを満たした場合、高基準値群は、(1)空腹時血糖値≧99mg/dL(5.5mmol/L)、(2)2時間値≧162mg/dL(9.0mmol/L)のいずれかを満たした場合とした。 主要評価項目は、LGA児(出生時体重がFenton-WHO成長曲線の>90パーセンタイルと定義)の出生、副次評価項目は母子の健康状態などであった。低基準値群で妊娠糖尿病の診断・治療は高頻度も、LGA児出生は高基準値群と同等 妊娠糖尿病と診断された妊婦は、低基準値群で2,022例中310例(15.3%)、高基準値群で2,039例中124例(6.1%)であった。出生後、退院時まで追跡調査が完了した新生児は、低基準値群で2,019例、高基準値群で2,031例であり、このうちLGA児はそれぞれ178例(8.8%)および181例(8.9%)であった(補正後相対リスク:0.98、95%信頼区間[CI]:0.80~1.19、p=0.82)。 分娩誘発、医療サービスの利用、薬剤の使用、および新生児低血糖は、高基準値群と比較して低基準値群で高頻度であったが、その他の副次評価項目の結果は両群で類似しており、有害事象について実質的な群間差は確認されなかった。 75gOGTTの検査値が、低基準値と高基準値の間に位置していた妊婦のうち、妊娠糖尿病の治療を受けた195例は、治療を受けなかった178例と比較し、LGA児が少ないなど母子の健康への有益性が認められた。

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入院中の不穏の原因はNOMI?致死率50%超の恐るべき疾患【知って得する!?医療略語】第18回

第18回 入院中の不穏の原因はNOMI?致死率50%超の恐るべき疾患血管に閉塞病変がなくても腸管虚血が起きることがあるのですか?腸間膜血管の攣縮が原因と推測されている、非閉塞性腸管虚血(NOMI)があります。NOMIは疑わないと診断できない疾患です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】NOMI【日本語】非閉塞性腸管虚血【英字】non-occlusive mesenteric ischemia【分野】消化器【診療科】消化器内科・消化器外科【関連】腸管虚血実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。入院患者さんの急変原因は多々ありますが、急変疾患の1つに非閉塞性腸管虚血(NOMI:non-occlusive mesenteric ischemia)があります。今では教科書にもNOMIの記載を見かけるようになりましたが、私が初めてNOMIの患者を経験した当時は、まだNOMIは教科書にも記載されておらず、私が最初の症例を経験した時点では曖昧な知識しかありませんでした。NOMIの致死率は56~79%と非常に高く、私が経験した3例はすべて院内発症で2例は救命困難でしたが、救命成功例を振り返ると、やはり早期診断と迅速な治療方針の決定が重要な疾患だと考えます。しかし、NOMIは疑わないと診断することが難しいとされ、その発症しやすい患者の背景まで知っておく必要があります。NOMIとはNOMIは腸管虚血の1つで、腸間膜血管主幹部に器質的な閉塞を伴わずに非連続性の腸管血流障害を来たす疾患です。本邦の報告では腸管虚血の15~27%がNOMIであると報告されています。病態は腸間膜収縮、腸間膜血管攣縮、それに続発する末梢腸間膜動脈枝の攣縮により、腸管虚血を来し、そして腸管壊死に至る疾患です。NOMIのリスク因子として以下のようなものが挙げられており、血管内の低灌流が交感神経に反応し、血管攣縮を来し腸管虚血を来すとされています。心疾患(心不全)維持透析高齢糖尿病脱水周術期低拍出量症候群長時間の体外循環膵炎ショック不整脈熱傷出血薬剤(カテコラミン、利尿薬、ジギタリス)の使用NOMIの臨床像について、発症早期は特異的な臨床徴候が認められない例が多いと指摘されています。NOMI発症例の20~30%は腹痛の訴えさえないそうで、私の自験例3例も腹痛の訴えはなく、スタッフからの「不穏になっている」との連絡が発見のきっかけでした。ただ、病室にかけつけたときは呼吸が促拍し、苦悶様の表情で腹部をさすっていたのを今でも記憶しています。自験例3例に共通していたのは、脳卒中急性期治療中の高齢者での発症で、経口摂取を開始して間もない、いずれも食後1~3時間後の発症という共通点がありました。このため脳卒中に伴う高カテコラミン状態が、交感神経優位状態を招き、腸管血管の攣縮を招きやすい状態であった可能性は十分に考えられます。NOMIについて特筆したいのは、病態悪化の速さです。それゆえ、診断に戸惑う時間的猶予はなく、NOMIの臨床像や疑うべき画像所見を知っておかなければ、あっという間に腸管壊死からショックに至ります。ただし、NOMIを保存的に治療しようとすれば、塩酸パパベリンのような強力な血管拡張薬を使用することになりますが、持続静注すると全身の血圧低下を招くため、持続動注する必要あります。このため、腹部血管造影が出来る体制が必要となります。さらに腸管壊死を来す際には、外科手術の選択も視野に入りますが、NOMIが高齢者に発症しやすく、仮に手術できたとしても、広範な腸管切除が余儀なくされ、術後に人工肛門管理となる可能性が高く、術後のQOLの課題もあるため、基礎疾患のある高齢者には外科的介入のハードルは高いと考えます。また手術できても縫合不全の確率が高く、手術や麻酔自体で循環動態を悪化させるリスクもあります。一方で、非常に早期に診断できれば、救命できる例もあります。もし、NOMIを未経験の方については、腹部X線、腹部CT所見も含め、症例報告をご覧になると良いかもしれません。1)日本腹部救急医学会プロジェクト委員会NOMIワーキンググループ. 日腹部救急医会誌. 2015;35:177-185.2)日本循環器学会:2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン3)新関 浩人ほか. 日本大腸肛門病会誌. 2004;57:71-75.

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第123回  高血圧治療用アプリ保険適用、中医協委員は健康アプリとの線引きの曖昧さやフォローアップの必要性を指摘

日本で2番目に承認されたDTxこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末から月曜にかけては、甲子園の高校野球観戦三昧でした。夏の全国高校野球選手権大会の決勝は仙台育英高校が下関国際高校に勝ち、優勝旗が初めて「白河の関超え」(東北勢の初優勝)をすることになりました。仙台育英は夏の大会決勝進出3度目にしての悲願達成です。個人的に記憶に鮮明なのは、大越 基投手が仙台育英のエースだった1989年の決勝です。大越投手は一人で全6試合を投げ抜き、帝京(東東京)との決勝は延長10回、0-2で敗れました。その大越投手、ダイエー・ホークス(当時)引退後は大学に入学し直して教員の資格を取り、現在は下関国際高校の地元でもある山口県下関市の早鞆(はやとも)高校野球部監督を務めています(2012年に春の選抜大会出場)。大越氏は決勝当日、8月22日の朝日新聞朝刊の「エール 東北人+山口の監督として」に登場、「OB、東北人としては育英を応援したいけど、山口県の監督としては下関に深紅の大優勝旗が来てほしい」と語っていました。同じ山口県内のライバル校を倒し、東北勢の長年の呪縛も解いた母校・仙台育英高校の優勝に、大越氏もほっと胸をなでおろしているのではないでしょうか。さて、今回は8月3日、中央社会保険医療協議会総会で医療機器として保険適用が決まったCureApp社の「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」について書いてみたいと思います。日本で2番目に承認されたこのデジタル治療薬(Digital Therapeutics:DTx)に対し、中医協委員から使用実態についてのフォローアップの必要性を指摘されるなど、厳しい意見も多数出されました。月1回830点、6ヵ月を限度に算定中医協総会は8月3日、CureApp社の「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」について保険適用を了承しました。診療報酬上は特定保険医療材料としては設定せず、新規技術料で評価されます。同社のニコチン依存症治療アプリも同様の区分で承認されており、これに準じた扱いです。具体的には、同アプリを使用して高血圧症に関する総合的な指導および治療管理を行った場合、アプリによる治療開始時に「禁煙治療補助システム指導管理加算」を準用する形で、140点を1回に限り算定します。また、同アプリを使用して高血圧症に関する総合的な指導および治療管理を行った場合に「血糖自己測定器加算の4(月60回以上測定する場合)」を準用し、月1回に限り830点を算定します。830点の算定については、初回の使用日の月から6ヵ月を限度としており、加えて前回算定日から、平均して7日間のうち5日以上、アプリに血圧値が入力されている場合にのみ算定できるとしています。なお、アプリの使用に当たっては、関連学会の策定するガイドラインおよび適正使用指針の順守を求めています。830点6ヵ月は患者側にとってはなかなか高い点数ですが、皆さんどう思われるでしょう? 6ヵ月間のアプリ使用料は3割負担で約1万5,000円となります。一般的なゲーム課金と比べると、少々高い印象です。同アプリは9月には保険収載される見通しです。中医協の資料によれば、推定適用患者数(ピーク時)は約824万人、このうち市場規模予測(ピーク時)として同アプリの使用患者数は約7万人と見積もられています。国はDTxなどプログラム医療機器の普及・定着に前のめり「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」は、同社が自治医科大学の研究グループと共同開発した治療用アプリで、患者がスマートフォンなどを用いて使用するものです。患者がIoT血圧計で測定した家庭血圧や、生活習慣のログを日々記録すると、アプリはこれらのデータを基に、患者ごとに個別化された治療ガイダンスとして、食事、運動、睡眠などに関する情報を表示します。これにより患者の行動変容を促すことで降圧効果が得られるとしています。同アプリについては、本連載でも、2022年4月26日に薬事承認された直後に「第109回 高血圧治療用アプリの薬事承認取得で考えた、『デジタル薬』が効く人・効かない人の微妙な線引き(前編)」、「第110回 同(後編)」と2回に渡り取り上げ、国がDTxをはじめとするプログラム医療機器(SaMD)の普及・定着に相当前のめりになっている状況や、DTxの臨床試験の不可解さについて書きました。「アプリのアドバイスになかなか従わない人に果たして効果があるか」前編では、同アプリが薬事承認の了承に当たって、「承認後1年経過するごとに、市販後の有効性に関する情報を収集し、有効性が維持されていることを医薬品医療機器総合機構(PMDA)宛てに報告すること」という条件が付けられたことを紹介、「こうしたスマホアプリに順応して素直に行動を変えられる人ならよいが、頑固でアプリのアドバイスになかなか従わない人に果たして効果があるのだろうか」という素朴な疑問を投げかけました。続く後編では、「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の臨床試験の結果を読み解き、「主要評価項目であるABPM (24時間自由行動下血圧測定)による24時間のSBP(収縮期血圧)が、高血圧治療ガイドラインに準拠した生活習慣の修正に同アプリを併用した『介入群』と、同ガイドラインに準拠した生活習慣の修正を指導するのみの『対照群』を比較評価した結果、『介入群』の方が有意な改善を示した、とのことですが、『有意な改善』とは言っても、血圧の変化量の群間差は-2.4[-4.5〜-0.3]で、素人目には劇的というほどではありませんでした」と書きました。さらに、PMDAが公開した「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の審議結果報告書には臨床試験の対象患者について、「20歳以上65歳未満の降圧薬による内服治療を受けていないI度又はII度の本態性高血圧患者のうち、 食事・運動療法等の生活習慣の修正を行うことで降圧効果を十分に期待できると判断された患者を対象」と記載されているものの、「『降圧効果を十分に期待できる』をどう判断したかについては書かれていない」と指摘しました。また、DTxの成功例として知られる米Welldoc社の糖尿病治療用アプリ「BlueStar」も、相当厳格な対象患者絞り込みによって、有意差のある結果を出していたらしいことにも言及。DTxの開発は国内外で、糖尿病、うつ病、不眠症、アルコール依存症とさまざまな領域で活発化しているものの、大日本住友製薬など、開発に頓挫したケースもあることを紹介しました。中医協、支払側・診療側双方の委員から厳しい指摘この連載で書いたような、DTxの治療効果への疑問や、臨床試験での対象患者選びがブラックボックス化していることなどは、中医協委員も感じていたのかもしれません。総会では中医協委員から厳しい意見が出されました。日経メディカルやミクスオンラインなどの報道によれば、同アプリの保険適用に当たっては、支払側委員から「ニコチン依存症の治療用アプリとは異なり、(高血圧症治療補助アプリ)は健康アプリに近い印象があり、同様のアプリが今後登場してきた際には判断が難しくなるのではないか」、「通常の生活習慣指導と比較したアプリの効果についてはエビデンスがあるものの、他の健康アプリとの比較は行われていない」など、一般向けの健康アプリとの線引きの曖昧さが指摘されました。一方、診療側委員からは、「次回改定時には前例にとらわれず、専門組織からの意見などを受けて、本製品の評価について見直しを行うことも検討する必要がある。一定期間の使用を踏まえたアウトカム評価を導入することも必要ではないか」と使用実態についてのフォローアップが求められました。サワイ、CureAppが開発する肝炎治療用アプリの販売権を獲得健康アプリとの線引きの曖昧さの指摘や、フォローアップをしっかり行うようにとの要請など、なかなかに厳しい船出と言えます。しかし、DTxはこれからも次々と上市される見込みです。後発医薬品大手のサワイグループホールディングスは(サワイGHD)8月2日、CureAppが開発する肝炎の治療用アプリの販売権を獲得したと発表しました。契約一時金に加え、臨床試験の進展に応じCureAppに最大105億円を支払うとのことです。この治療用アプリは肝臓に炎症を引き起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を治療対象にしたものです。医師の代わりに患者に食生活の見直しや運動などを促し、生活習慣の改善をめざすとしています。「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」と同様、医師が患者に処方して使うDTxです。CureAppと東京大学医学部附属病院が共同で2016年10月より単施設における臨床研究を開始、2018年4月からは多施設共同臨床研究を実施し、認知行動療法に基づいた本アプリによる明確な体重減少ならびに肝線維化の改善効果が認められたとしています。今後、これまでの試験データを基に、第III相臨床試験に進む予定とのことです。第III相臨床試験はCureAppとサワイGHDが共同して行い、上市後の販売や営業活動はサワイGHDが担うとしています。NASHの患者は国内に200万人程度、その予備軍は推定1,000万人程度いるとされ、病気が進行すると肝硬変や肝がんを引きおこすおそれがあります。確立された薬物療法がなく、運動療法や食事療法などの生活改善が中心になっており、その一翼を同アプリが担うとしています。ただ、認知行動療法で体重減少を目指す点は理解できますが、その療法と肝線維化との関連性がどうなっているのか、プレスリリースや報道などでは今ひとつわかりません。それこそ、普通の一般向け減量アプリとの差別化はどうなるのでしょう。第III相臨床試験では、そのあたりもきちんと実証し、公表して欲しいと思います。

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低血圧+低BMI+非HDL-C低値で認知症リスク4倍

 低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値の3要素が組み合わさるほど認知症リスクが増大することを、オランダ・ラドバウド大学医療センターのMelina Ghe den Brok氏らが報告した。低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値はそれぞれ認知症のリスク因子として知られているが、これらが相加的なリスク因子であるかどうかは不明であった。Neurology誌オンライン版2022年8月2日号掲載。低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値は認知症リスクが大幅に高い 本調査は、認知症予防を目的とした介入試験であるPrevention of Dementia by Intensive Vascular Care(preDIVA)試験の拡張フォローアップの事後解析として行われた。対象は、オランダの総合診療施設に登録されている70~78歳の非認知症の地域住民であった。ベースラインの低収縮期血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値と認知症発症の関連性を、Cox回帰分析を用いて評価した。 低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値と認知症発症の関連性を分析した主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.3年(四分位範囲[IQR]:7.0~10.9年)の間で、2,789例中308例(11.0%)が認知症を発症し、793例(28.4%)が死亡した。・低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値の各リスク因子の最低五分位の人では、認知症の発症リスクが高かった。・リスク因子を有さない人と比較して、リスク因子を1つのみ有する人の調整ハザード比(aHR)は1.18(95%信頼区間[CI]:0.93~1.51)、2つ有する人のaHRは1.28(95%CI:0.85~1.93)、3つすべて有する人のaHRは4.02(95%CI:2.04~7.93)であった。・これらの結果は、リスク因子の特定の組み合わせによるものではなかった。 著者らは、「3つのリスク因子を有する人では、認知症の発症リスクは大幅に高かった。これは、個々のリスク因子の独立した影響ではなく、複数のリスク因子が包括的に関与する現象の可能性がある」と述べている。

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この患者紹介は常識?非常識?【紹介状の傾向と対策】第1回

より良い患者紹介とは―患者紹介を深く考える現代医療は1つの医療機関のみで完結することがほとんどありません。患者を高次医療機関に紹介することもあれば、逆紹介されることもあります。また、院内でも他科に診療を依頼することもあれば、されることもあります。皆さまもご経験のとおり、臨床現場では、紹介状のやり取りを筆頭に、患者紹介に関する困り事やストレスを感じる場面は少なくありません。また、大学で私たちが受けた医学教育には、患者紹介のエチケットやマナー、診療情報提供書(以下、紹介状)の書き方などの実務的な講義はありませんでした。私が知る限り、患者紹介に関するルールやガイドラインも存在しません。そのためか、紹介状の質は非常に不均一だと感じています。しかし、患者紹介の仕方をルールやガイドラインで縛ることは、業務の柔軟性を損ないかねません。出来る限り、現場医師の自主努力に任されるのが理想だと考えていますが、最低限の患者紹介のエチケット・マナーに対し共通の認識を持つべきではないでしょうか。医師の7割が不満を抱えている、その理由は…本連載では患者紹介に関する医師同士のやり取り、診療科間の患者紹介をより円滑にするための方法を模索します。筆者が考える良い患者紹介とは、「最低限、紹介先の医師を困らせない」ことだと考えています。医師同士のやり取りの不調和は、最終的に患者さんの不利益につながります。そのためこの連載では患者を紹介するにあたり「すべきこと」「すべきでないこと」「留意すべきこと」をご提案していきたいと思います。第1回はその前段階として、勤務医、開業医の双方が各診療科の立場で何に困り、何にストレスを感じているか、現状を共有します。2022年2月にケアネットが「紹介状で困っていること」についてアンケートを実施しました。このアンケートには多くのフリーコメントが寄せられたので、その一部のコメントを見てみましょう。 「勤務医が感じる開業医への不満」併存疾患が多い患者は内科に丸投げ紹介先の診療科が不適切時間外・休日前の夕方ギリギリの紹介開業医の診療時間が過ぎると問い合わせても電話に出ない患者の言いなりで紹介してくる紹介についての患者説明と同意が不十分名刺に依頼を書く前医と患者間に生じたトラブルの情報を伝えない悪い情報を伏せている培養検体を取らず抗菌薬を開始してから患者を送ってくる処方理由が不明で問い合わせても不明のまま「開業医の勤務医への不満」必要な情報が記載されていない当該臓器以外の情報がない診断結果が分からない返信が遅い画像・採血データが添付されていない何も解決なく返される紹介の意図が不明患者への説明と紹介状の内容が食い違う抗血小板薬の継続期間の指示がない添付された画像を読み出せない<アンケート概要>内容  紹介状のやり取りで開業医/勤務医それぞれが困っていること、良かったと感じたことを調査実施日 2022年2月24日(木)調査方法インターネット対象  30代以上の会員医師 1,000人(開業医:500人、勤務医:500人)次回、具体的にどのような患者紹介をすればよいか、どのように紹介状を記載していけばよいか、考えていきたいと思います。

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脳卒中、55歳未満の発症増大/JAMA

 脳卒中罹患者が、55歳未満で有意に増大している一方、55歳以上では減少している。英国・オックスフォード大学のLinxin Li氏らが、イングランド・オックスフォードシャー州の住民について2002~10年vs.2010~18年の脳卒中罹患率を比較した検討の結果を報告した。他の主要血管イベントには同様の違いはみられず、著者は「脳卒中について示されたこの差の原因を明らかにする、さらなる検討が必要である」と述べている。先行研究で55歳未満の脳卒中罹患率が上昇していることが報告されていたが、多くが対象を限定した試験で、住民ベースのより多くの試験によるエビデンスが求められていた。JAMA誌2022年8月9日号掲載の報告。英国住民9万4,567人の罹患率、2002~10年vs.2010~18年を比較 研究グループは、若年者vs.高齢者の脳卒中およびその他の主要血管イベント罹患率の、経時的変化を明らかにする前向き住民ベース試験を、2002年4月~2018年3月にイングランド・オックスフォードシャー州の平均流域住民9万4,567人を対象に行った。 暦時間、発症前の血管リスク因子、職業を調べ、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、その他の主要血管イベント(心筋梗塞、心臓突然死、末梢血管イベント)の罹患率の変化を、年齢、性別、精密検査による診断、病因、重症度で層別化し評価した。IRRは55歳未満1.67、55歳以上0.85 合計2,429例(平均年齢73.6[SD 14.4]歳、女性51.3%)の脳卒中が確認された。 2002~10年から2010~18年に、脳卒中罹患率は、55歳未満の被験者では有意に上昇していた(罹患率比[IRR]:1.67、95%信頼区間[CI]:1.31~2.14)一方、55歳以上の被験者では有意に低下していた(IRR:0.85、95%CI:0.78~0.92、群間差のp<0.001)。 55歳未満群の罹患率の有意な上昇は、年齢、脳卒中重症度、病理学的サブタイプ、調査の変更とは関係していなかった。同様の発生の傾向はTIAについても認められたが(IRR:1.87、95%CI:1.36~2.57)、心筋梗塞やその他の主要血管イベントでは認められなかった(IRR:0.73、95%CI:0.58~0.93)。 55歳未満群のTIAおよび脳卒中の罹患には、糖尿病(リスク比[RR]:3.47、95%CI:2.54~4.74)、高血圧症(2.52、2.04~3.12)、現在喫煙(2.38、1.92~2.94)、肥満(1.36、1.07~1.72)と有意に関連していた。2002~10年から2010~18年にかけての罹患率の有意な上昇は、これらリスク因子のない被験者にも認められた。 上昇が最も大きかったのは、専門職/管理職(IRR:2.52、95%CI:1.75~3.62)であり、最も小さかったのは、部分的に熟練を要する/熟練を要しない職種(1.17、0.79~1.74)であった。 既知の血管リスク因子を有していない55歳未満群のTIAおよび脳卒中罹患率は、時間の経過とともに顕著に上昇していた(45例[30.4%]vs.115例[42.4%]、絶対群間差:12.0%、95%CI:2.6~21.5)。とくに、潜在性イベント(cryptogenic events)を有する患者で有意に増大していた(10例[18.5%]vs.63例[49.2%]、絶対群間差:30.7%、95%CI:17.2~44.2、p<0.001、異質性のp=0.002)。

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診療科別、専門医の平均取得数は?/1,000人アンケート

 2018年からスタートした新専門医制度は、昨年初の機構認定の専門医が誕生し、新制度への移行が進む予定となっている。一方、サブスぺ領域の認定や、学会認定の専門医との位置付けなど、課題も多く指摘されている。CareNet.comの20~50代の会員医師1,000人を対象に、現在の専門医取得状況や今後の取得・更新意向について聞いた(2022年7月28日実施)。専門医の取得数が多い傾向がみられた診療科は? 全体で、専門医取得数を2つ以上と回答した医師は51%だった。少数派ではあったが、1.7%の医師が6つ以上と回答した。年代別にみると、30代では2つ以上と回答したのが42.3%だったのに対し、40代では62.5%まで増加、40代と50代はほぼ横ばいだった。 診療科別にみた専門医取得数の平均値(中央値)は以下のとおり。消化器は外科・内科ともに専門医取得数が多かったほか、神経内科や腎臓内科も高い傾向がみられた。一方、精神科や皮膚科では少ない傾向がみられた。消化器外科[n=24]:3.4(3)神経内科[n=26] :3.0(3)消化器内科[n=58]:3.0(3)腎臓内科[n=25]:2.9(3)感染症内科[n=4]:2.8(3)腫瘍科[n=10]:2.7(2.5)外科[n=33]:2.7(2)脳神経外科[n=25]:2.6(3)循環器内科[n=59]:2.5(2)糖尿病・代謝・内分泌内科[n=31]:2.4(2)呼吸器内科[n=34]:2.2(2)心臓血管外科[n=11]:2.1(2)救急科[n=10]:1.9(2)整形外科[n=55]:1.9(2)産婦人科[n=18]:1.9(2)形成外科[n=11]:1.8(1)内科[n=183]:1.7(2)血液内科[n=8]:1.6(2)小児科[n=45]:1.6(2)呼吸器外科[n=4]:1.5(1.5)リハビリテーション科[n=12]:1.5(1)放射線科[n=27]:1.5(1)総合診療科[n=15]:1.5(1)病理診断科[n=9] :1.4(2)耳鼻咽喉科[n=15]:1.3(1)泌尿器科[n=20] :1.3(1)その他[n=21]:1.2(1)麻酔科[n=27] :1.1(1)眼科[n=16]:1.0(1)膠原病・リウマチ科[n=7]:1.0(1)皮膚科[n=22] :0.8(1)精神科[n=76] :0.8(1)臨床研修医[n=59]:0.3(0)58%の医師が持っている専門医をすべて更新予定と回答 現在持っている専門医資格について聞いた質問では、認定内科医が24.5%と最も多く、総合内科専門医(18.8%)、外科専門医(8.4%)が続いた。新専門医制度の基本19領域と認定内科医、総合内科専門医以外の資格(“その他”として自由回答)を持つと回答した医師も14.4%おり、各学会認定の多様な専門医資格を取得している状況がわかる。 今後の更新予定については、現在持っている専門医資格について、58.6%の医師が「資格をすべて更新予定」と回答。「一部は更新しない予定」は3.0%、「すべてを更新しない予定」は1.1%に留まった。専門医取得による給与・待遇の向上があったと回答したのは14% 専門医を取得することによるメリットについては、「知識向上やスキルアップができた」が39.6%と最も多く、「開業時に役立った(15.8%)」「他の医師・スタッフから信頼が得られた(14.6%)」という回答が続いた。「給与や待遇が向上した」と回答したのは14.1%だった。 一方のデメリットについては、「受験料、更新料、学会参加などで費用がかかる」が36.3%と最も多く、「学会での単位取得など、時間的な負担が大きい(31.3%)」「評価システムへの登録等、手続きが煩雑(15.7%)」といった時間・手間等の負担を挙げる声が多く上がった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。会員医師の専門医取得状況は―医師1,000人に聞きました

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1日1回投与に改良した高純度EPA製剤「エパデールEMカプセル2g」【下平博士のDIノート】第104回

1日1回投与に改良した高純度EPA製剤「エパデールEMカプセル2g」今回は、高純度EPA製剤「イコサペント酸エチルカプセル2g(商品名:エパデールEMカプセル2g、製造販売元:持田製薬)」を紹介します。本剤は、既存のエパデールカプセルおよびエパデールS(以下、既存薬)の消化管吸収を高めて1日1回投与にした薬剤であり、トリグリセリド(TG)高値を示す脂質異常症患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、高脂血症の適応で、2022年6月20日に承認されました。なお、既存薬は「高脂血症」と「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛および冷感の改善」の適応を有していますが、本剤の適応は「高脂血症」のみです。<用法・用量>イコサペント酸エチルとして、通常、成人には1回2gを1日1回、食直後に経口投与します。TG高値の程度により、1回4gを1日1回まで増量することができます。本剤は抗血小板作用を有するため、抗凝固薬や血小板凝集を抑制する薬剤との併用により、相加的に出血傾向が増大するため注意が必要です。<安全性>国内第III相試験において、副作用の発現頻度は本剤2g/日群で9.8%(6/61例)、本剤4g/日群で8.2%(5/61例)でした。2%以上に認められた副作用は、本剤2g/日群で下痢3.3%(2/61例)、本剤4g/日群で軟便3.3%(2/61例)でした。重大な副作用として、肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、肝臓における過剰な中性脂肪の合成を抑制するとともに、余分な中性脂肪の代謝を促進することで、脂質異常症を改善します。脂質異常を改善することで、動脈硬化性疾患の進行を抑えることが期待できます。2.血が止まりにくくなることがあるので、手術や抜歯の予定がある場合は事前に相談してください。3.空腹時の服用では薬剤の吸収が低下するため、食後すぐに服用してください。4.軟カプセルの中には魚の臭いがする油状の成分が入っているため、噛まずに服用してください。5.脂質異常症の治療の基本は、食事・運動・禁煙などの生活習慣の改善です。本剤の服用中も継続して行うことが大切です。<Shimo's eyes>エパデールEMカプセルは、既存のEPA製剤であるエパデールカプセル、小型軟カプセルのエパデールSを消化管で吸収されやすくした高純度改良版です。既存薬は1日2回または3回の服用が必要ですが、本剤は1日1回の単回投与です。エパデールSと同様にアルミスティック包装となっています。既存薬からの切り替えの場合、既存薬1.8g(エパデールS900を1日2回)が、本剤2g 1日1回に相当するように開発されています。エパデールEMカプセル2gの薬価は113.00円、エパデールS900の薬価は62.7円/包(2包で125.4円)、エパデールS600の薬価は46.5円/包(3包で139.5円)ですので、1日薬価の負担は本剤のほうが少なくなっています。なお、本剤の粒子径(約6mm)は、既存薬のエパデールS(約4mm)と比較してやや大きくなっています。EPAの成分は脂肪酸であり、胆汁の主成分である胆汁酸がないと吸収が低下しますが、本剤は体内で脂質成分が界面活性剤と自己乳化することで吸収性が向上し、1日1回投与が可能になりました。本剤は既存薬に比べて食事の影響を受けにくい製剤ですが、食直後の服用でより吸収が高まるため、本剤も食直後の服用となっています。生活習慣病患者はしばしばアドヒアランスの不良が問題となりますが、本剤は1日1回の単回投与であるため、アドヒアランスの向上が期待できます。とくに併用される機会の多いHMG-CoA還元酵素阻害薬の主な用法が1日1回であることからも、本剤のニーズは高いと考えられ、TG高値を示す脂質異常症患者の選択肢を増やす薬剤として意義があるでしょう。

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幼児のいる親はコロナ重症化リスクが低い~300万人超の分析

 米国・Kaiser Permanente Northern California(KPNC)のMatthew D. Solomon氏らが、幼児と接する機会の有無が、成人のCOVID-19重症化リスクに影響するかどうかを、300万人超の大規模なリアルワールドデータで調査した。その結果、家に0~5歳の幼児がいる成人では、家に幼児がいない成人に比べて重症化率が有意に低いことが報告された。これまで、小児では、過去のSARS-CoV-2以外のコロナウイルスへの曝露による交差免疫が、COVID-19の重症化予防に寄与している可能性が示唆されている。そこで、5歳未満の幼児のいる成人ではウイルスへの曝露機会が増加することから、成人のSARS-CoV-2以外のコロナウイルスへの交差免疫の有無を小児との接触と推定して、コロナ重症化リスクを評価することにした。Proc Natl Acad Sci USA誌2022年8月16日号に掲載。幼児のいる成人に比べコロナによる入院率が子供不在群は有意に高かった 本調査の対象は、2019年2月1日~2021年1月31日にKPNCデータベースに登録されていて、2020年2月1日時点で18歳以上の成人312万6,427人。家に0~5歳(最年少の子の年齢)の幼児がいる成人(27万4,316人)を研究群とし、対照群を6~11歳の子供がいる成人(21万1,736人)、12~18歳の子供がいる成人(25万7,762人)、家に子供のいない成人(238万2,613人)とした。研究群と3つの対照群をそれぞれ1:1に割り付け、年齢・糖尿病や高血圧の有無・BMIなどのCOVID-19重症化リスク因子で調整した。主要評価項目は、PCR検査によるSARS-CoV-2感染の確認、COVID-19による入院、COVID-19によるICU利用で、フォローアップは2020年2月1日~2021年1月31日まで行われた。 幼児のいる成人のコロナ重症化リスクを評価した主な結果は以下のとおり。・各群の子供の年齢が上がるほど、成人の平均年齢は上昇し(幼児群:36.2歳、6~11歳群:41.4歳、12~18歳群:44.6歳、子供不在群:50.8歳)、高血圧と糖尿病の有病率も上昇した。BMIは各群で同程度であった。・コロナ重症化リスク因子による傾向分析において、幼児群に比べ、6~11歳群および12~18歳群のSARS-CoV-2感染率は高かった(6~11歳群の発生率比[IRR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.05~1.12、p<0.0001、12~18歳群のIRR:1.09、95%CI:1.05~1.13、p<0.0001)。一方、SARS-CoV-2陽性者の入院率およびCOVID-19によるICU利用率に有意差は認められなかった。・幼児群に比べ、子供不在群のSARS-CoV-2感染率は低かった(IRR:0.85、95%CI:0.83~0.87、p<0.0001)。一方、SARS-CoV-2陽性者の入院率およびICU利用率は有意に高かった(入院率のIRR:1.49、95%CI:1.29~1.73、p<0.0001、ICU利用率のIRR:1.76、95%CI:1.19~2.58、p=0.0043)。 Solomon氏らは、本調査の結果により、SARS-CoV-2以外のコロナウイルス曝露による交差免疫は、COVID-19の重症化を抑制する可能性があるとまとめている。

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統合失調症患者の肥満治療~システマティックレビュー

 統合失調症の病態および抗精神病薬の使用は、臨床的に有意な体重増加や、それに伴う死亡リスクの増加と関連している。FDA、EMA、MHRAなどから承認されている減量薬が利用可能であるにもかかわらず、現在の精神医学ガイドラインでは適応外の代替が推奨されており、これは肥満に関する精神医学以外のガイドラインの内容とも異なっている。英国・Royal Oldham HospitalのKenn Lee氏らは、統合失調症および精神病における抗精神病薬誘発性の体重増加および肥満の治療に対する、承認済み減量薬の有効性の評価を行った。その結果、いくつかの承認済み減量薬のうち、リラグルチドのエビデンスが最も強力であることが示唆された。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2022年7月14日号の報告。 ヒトを対象に、抗精神病薬誘発性の体重増加および肥満の治療に対する承認済み減量薬の有効性を評価した研究を、Medline、EMBASE、PsycINFO、Cochrane Libraryのデータベースより検索した。 主な結果は以下のとおり。・3件のRCT(リラグルチド:2件、naltrexone-bupropion配合剤:1件)、未公表の非盲検試験1件(naltrexone-bupropion配合剤)、観察研究7件(リラグルチド:5件、セマグルチド:1件、複数の減量薬:1件)が特定された。・リラグルチドはメタ解析において、体重、BMI、胴囲、HbA1c、コレステロール、LDLの有意な改善が認められた。・naltrexone-bupropion配合剤のエビデンスに一貫性は認められず、setmelanotideおよび神経刺激薬の詳細な研究は行われていなかった。

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スタチン服用の日本人患者で発がんリスクが有意に低下

 スタチン製剤の服用によって、日本人の脂質異常症患者の発がんリスクが低下したことが報告された。東京理科大学の前田絢子氏らが、保険請求データを用いた大規模な人口ベースの後ろ向きコホート研究を行い、スタチン製剤と日本人患者における発がんリスクの関係を調査した。近年の調査において、スタチン製剤が特定のがんの発生率を低下させる可能性が示唆されている。しかし、臨床試験では明らかにされておらず、日本人患者での調査も限定的であった。Cancer prevention research誌オンライン版2022年8月2日掲載。スタチンの発がんリスク低下はとくに消化器がんで顕著 本調査の対象は、2006~2015年に脂質異常症と新たに診断された患者。日本の保険請求データを用い、期間中にスタチン製剤を服用開始した群(服用群)と、年齢・性別・診断年に応じて無作為に抽出した非服用群を比較した。解析対象は各群23,746例で平均追跡期間は約2年、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。 スタチン製剤と日本人脂質異常患者における発がんリスクの関係を調査した主な結果は以下のとおり。・スタチン服用群では、非服用群と比較して、有意に発がんリスクが低下した(調整ハザード比[aHR]:0.85、95%CI:0.72~0.97)。・サブグループ解析において、スタチン服用群の発がんリスクの低下は、とくに消化器がんで顕著であった(aHR:0.79、95%CI:0.63~0.99)

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DPP-4阻害薬は胆嚢炎発症リスクを増加させる(解説:住谷哲氏)

 DPP-4阻害薬は低血糖を生じにくい安全な血糖降下薬として多くの患者に処方されている。しかしこれまでにDPP-4阻害薬投与と、心不全1)、水疱性類天疱瘡2)、急性膵炎3)、重症関節痛4)との関連が示唆されてきた。とりわけ初回治療薬として処方される血糖降下薬の約70%がDPP-4阻害薬とされるわが国では5)、まれな副作用についても注意が必要である。 GLP-1が胆嚢のmotilityに影響することは以前から知られており、血中GLP-1濃度を上昇させるDPP-4阻害薬が胆道・胆嚢疾患の発症リスクを増大させるのではないかとの懸念は以前からあった。GLP-1受容体作動薬であるリラグルチドが胆嚢・胆道疾患の発症と関連することはすでに報告されていたが、DPP-4阻害薬について報告がなかった。そこで著者らは、これまでに報告された82のRCTの結果を用いて、DPP-4阻害薬と胆道・胆嚢疾患発症との関連を検討した。 その結果は、胆嚢炎、胆石症、胆道疾患の複合アウトカムである胆嚢・胆道疾患の発症リスク増加(オッズ比[OR]:1.22[95%信頼区間[CI]:1.04~1.43])が認められた。さらに、複合アウトカム構成項目のなかで有意なリスク増加を認めたのは胆嚢炎のみであり(OR:1.43[1.14~1.79])、胆石症と胆道疾患には有意なリスク増加を認めなかった。 胆嚢炎の絶対リスク増加は15/1万人年であり、著者らはそのリスク増加は微小ではあるが、DPP-4阻害薬のもたらすベネフィットとのバランスの下で投与が判断されるべきである、とコメントしている。現在わが国でDPP-4阻害薬が投与されている2型糖尿病患者が何人かは正確には不明であるが、仮に800万人の患者の50%にDPP-4阻害薬が投与されていると仮定すると、年間に800万×0.5×15/1万=6,000となり、年間6,000人の胆嚢炎患者がDPP-4阻害薬投与により余分に発生している計算になる。 DPP-4阻害薬が心血管イベントリスクを増加しない安全な薬剤であることは複数のCVOTで証明されている。しかし発売後10年以上が経過した今日、諸外国と比較して多数の2型糖尿病患者にDPP-4阻害薬が投与されているわが国においては、DPP-4阻害薬のもたらすリスクとベネフィットとを考え直す時期に来ているのではないだろうか。

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英語で「…と診断されたことはありますか?」は?【1分★医療英語】第40回

第40回 英語で「…と診断されたことはありますか?」は?Have you ever been diagnosed with diabetes?(糖尿病と診断されたことはありますか?)No, but last year, I was told I had pre-diabetes.(いいえ、でも去年、糖尿病予備軍と言われました)《例文1》I was diagnosed with lung cancer 3 years ago.(私は3年前に肺がんと診断されました)《例文2》Have you ever been told that you have diabetes?(糖尿病と言われたことがありますか?)《解説》「診断」という名詞は“diagnosis”、「診断する」という動詞は“diagnose”です。「diagnose 人 with~」で、「人を~という病気と診断する」という意味になり、“Have you ever been diagnosed with~?”で「~と診断されたことはありますか?」と聞くことができます。特定の既往歴があるかどうかを聞く場合の他の表現として、“Have you ever been told that you have~?”(~と言われたことがありますか)や、さらにシンプルに“Do you have~?”(~がありますか)といった表現もあります。また、関連する用語として「鑑別診断」は“differential diagnosis”、「前糖尿病」や「糖尿病予備軍」は“prediabetes” “borderline diabetes”と表現することを覚えておくと役立ちます。講師紹介

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全粒粉穀物がもたらす身体への効果/日本糖尿病学会

 5月12日~14日まで神戸市で「第65回 日本糖尿病学会年次学術集会」(会長:小川 渉氏[神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「知の輝きと技の高みへ」をテーマに開催された。 本稿では「シンポジウム 糖尿病食事療法研究の最前線」より「穀物由来の食物繊維の生活習慣病予防効果」(青江 誠一郎氏 [大妻女子大学家政学部食物学科])をお届けする。全粒穀物の摂取のススメ 食物繊維の摂取量と糖尿病などの生活習慣病の発症には負の相関関係があることは知られているが、どういった穀物の摂取が勧められるのであろうか。 穀物は主食であり、コントロールしやすい食物である。とくに日本人の食物繊維摂取量は、米・小麦からの摂取量が多いが、近年の低炭水化物ダイエットの影響で穀物からの食物繊維摂取量は減っている。また、糖尿病で血糖値上昇を抑制させる食品は、多くのメタアナリシスより野菜や果物ではなく、穀物だとわかっている1)。 そこで、青江氏らは、どのような穀物、とくに全粒小麦と大麦の摂取が生活習慣病予防に効果をもたらすかどうか検討を行った。その結果、小麦全粒粉パンの摂取は小麦粉パンと比較し、食後血糖値の上昇を抑制する効果を確認したほか、小麦全粒粉配合パンの摂取は内臓脂肪の面積を有意に抑制した(小麦全粒粉配合パン:-4.0cm2、小麦粉パン:+2.9cm2)。 後段の研究では、日本人でBMIが23以上の男女50人の健常人を対象に、小麦全粒粉配合パン(食物繊維11.1g/日)と小麦粉ロールパン(食物繊維3.4g/日)の12週間に及ぶ摂取の比較で行われた(プラセボ対照無作為化二重盲検試験)。 これら結果の考察として、「食物繊維の多い小麦全粒粉配合パンでは胃内の滞留時間が長いため食後血糖値の上昇が抑えられること、長期の摂取によりアラビノキシランの大腸内発酵による短鎖脂肪酸が糖代謝、脂質代謝に影響すること」と同氏は説明した2)。内臓脂肪を減らす食材 次に、大麦ごはんと大麦配合パンの摂取が食後血糖に及ぼす影響について報告した。もち性大麦の配合割合をごはんとパンで30~100%に変えて調査したところ、βグルカン量に依存して食後血糖値の上昇を抑制したという。この効果の仮説として、胃内での滞留時間の延長、糖質の消化吸収の阻害・遅延、未消化糖質の消化管下部への移送(GLP-1分泌促進)、腸内発酵を受ける(短鎖脂肪酸の産生/GLP-1分泌促進)という過程を経てなされると説明した3)。 また、もち性大麦ごはんの摂取では、被験者(内臓脂肪面積100m2以上の男女)の内臓脂肪面積だけでなく、体重、BMI、腹囲を有意に低下させたが、皮下脂肪には効果が弱かったという。 最後に大麦の「セカンドミール効果」(ファーストミール[最初にとった食事]が、セカンドミール[次の食事]の後の血糖値にも影響を及ぼすというもの)について触れ、大麦に含まれるβ-グルカンは、消化管内で粘性を増すことにより糖質および脂質の消化吸収を抑制することで、食後血糖値の上昇および内臓脂肪蓄積を抑制する。また、大腸内発酵による短鎖脂肪酸が、セカンドミール効果や内臓脂肪蓄積抑制効果に関与することが呼気水素ガス検査や血清GLP-1濃度の上昇などから示唆されると説明した。 以上からまとめとして、大麦の生活習慣病予防について、食後血糖上昇抑制効果、長期摂取による糖代謝改善、セカンドミール効果があることを示すとともに、課題と展望として「日本標準食品成分表の改訂に伴う食物繊維の目標量の増量の検討」、「全粒穀物の質のエビデンスの不足」、「全粒穀物を摂取した場合と抽出物を摂取した場合の研究結果の区別」の3点を示し、講演を終えた。

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コロナワクチン、医師はいくらまで払う?/1,000人アンケート

 第7波の到来により、医療者へもコロナワクチン4回目接種が始まった。6月にCareNet.comが会員医師に行った『ワクチン4回目接種、あなたは受けたい?/会員医師1,000人アンケート』の結果によると、回答者の7割が接種したいと回答していた(対象となったらすぐに接種したい:33%、対象となったら時期をみて接種したい:36%)。コロナワクチンがいくらなら妥当かを調査 ところで、コロナワクチン接種は現時点では全額公費負担(厚生労働大臣の指示に基づき国の負担により実施することを踏まえ、全国統一の単価で接種1回あたり2,070円[消費税については、定期接種の予防接種と同様の取り扱い。ワクチン代はワクチンを国が確保し供給するため含まれていない1)])であり、自分の懐が痛むことはない。だが、将来的に新型コロナワクチン接種が定着した場合は自己負担になる可能性が高く、もしも費用負担が発生したら、医師も接種を控えたいと考えるのだろうか。さらには、ほかのワクチンとの兼ね合いを考慮した適正価格や、患者負担の許容範囲はいくらが妥当と捉えているのだろうかー。 そこで、今回『コロナワクチンが自己負担になったら、いくらなら妥当?』と題し、会員医師1,000人を対象に、以下の項目について調査を実施した。・コロナワクチンが自己負担/保険診療になった場合、受けたいか否か・コロナワクチン1回あたりの自己負担額とその理由・自身の患者がコロナワクチン接種を受ける場合、1回あたりいくらまでなら受けるか・コロナワクチンは、将来的に年に何回接種することになるか(予想回数)コロナワクチン自己負担…接種したい医師が減少 Q1「コロナワクチンが自己負担もしくは保険診療になった場合、受けたいと思いますか?」では、受けたいと回答したのは60%と、4回目接種希望者アンケートと回答者が異なるものの、自己負担に抵抗を感じている医師が一定数いることが明らかになった。なかでも、“受けたくない”との回答が最多だったのは30代で、わからないとの回答者も合算すると48%と約半数にのぼった。コロナワクチンを受けるなら中央値は2,500円 続いて、Q2「ご自身がコロナワクチン接種を受ける場合、自己負担がいくらまでなら受けたいと思いますか?(1回あたりの金額)」では、Q1の受けたくない・わからないの回答者も含むため、0円(33%)の回答者が最も多かった。次に3,000~4,000円未満(26%)、5,000円以上(15%)と続いた。0円(無料)を希望したのは20~40代が多く、その理由として以下のようなコメントがあった。・効果が限定的だから(20代、糖尿病・内分泌内科)・副反応がきついため(30代、消化器科)・基礎疾患のある者が受ければよい(30代、外科)・4回目以降のデータがまだ不完全(40代、呼吸器科)・コロナワクチンの効果と副反応のバランスに疑問があるため(40代、放射線科)なかには「お金をもらっても受けたくないです(30代、精神科)」と言う声も。年齢層が低いほど副反応が出やすいため、20~40代では上記のような意見が多くみられた。コロナワクチン、いくらまでなら患者は受けるか Q4「ご自身の患者さんがコロナワクチン接種を受ける場合、いくらまでなら受けると思いますか?(1回あたりの金額)」では、3,000~4,000円未満(30%)との回答者が最も多く、中央値は3,000円だった。インフルエンザワクチンの場合、全国平均は3,500円との試算があり、それに準ずる金額にすることで、多くの患者さんに打ってもらいたいと考える傾向にあった。コロナワクチン接種回数、医師の観測的希望は1~2回 ウイルス変異によるコロナワクチンの効果などにはまだまだ未知なる点が多いため、観測的希望に過ぎないが、将来の接種回数を現時点の印象から伺ったところ、「2回」が41%と最も多かった。 オミクロン株亜種であるBA.4および BA.5が猛威を振るい、これまで接種したコロナワクチンの有効性を疑問視する声もあるため、本結果ではワクチンの継続接種に難色を示す方もいた。だが、ファイザー社やモデルナ社(オミクロン株に対する2価追加接種ワクチン候補mRNA-1273.214)のオミクロン株対応ワクチンが今秋にも導入されると言われており、コロナワクチンの将来性に期待したい。アンケートの詳細は以下のページで公開中。『コロナワクチンが自己負担になったら、いくらなら妥当?』<アンケート概要>目的:新型コロナワクチンに自己負担が発生した場合、これまで通りに接種を希望するかどうかなどを調査するため。対象:ケアネット会員医師1,000人調査日:2022年7月15日方法:インターネット

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コロナ禍で医療資源確保のために国民へのお願い/4学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の流行拡大が深刻な様相を呈している。発熱外来には連日長蛇の受診者がならび診療予約の電話が鳴りやまない。また、救急搬送は大都市圏で稼働率9割を超え、受け入れ先医療機関の不足や長い待機時間などが大きな問題となっている。 こうした事態を鑑み、日本感染症学会(理事長:四柳 宏)、日本救急医学会(代表理事:坂本 哲也)、日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)、日本臨床救急医学会(代表理事:溝端 康光)の4学会は連名で「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」を8月2日に急遽発表した。 声明では、COVID-19に罹患したと思われる際の個々人の行動について、軽症で重篤化リスクのない人については、自宅療養を勧めるとともに、救急車を利用する際の指針について示している。COVID-19かなと思ったら?【声明の4つのポイント】1)症状が軽い*場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、あわてて検査や受診をする必要はありません。自宅療養を続けられます。この場合、新型コロナウイルス専用の特別な治療は行いません。医療機関での治療は、つらい発熱や痛みを和らげる薬が中心になり、こうした薬は薬局などで購入できます。限りある医療資源を有効活用するためにも、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診することは避けてください。 *症状が軽いとは「飲んだり食べたりできる、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い」2)症状が重い**場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続く場合、65歳以上の方や65歳未満でも基礎疾患がある方、妊娠中、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があります。早めにかかりつけ医に相談してください。高熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようでしたら、かかりつけ医や近隣の医療機関へ必ず相談、受診(オンライン診療を含む)してください。 **症状が重いとは「水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしてもおさまらない」3)救急車を呼ぶ必要がある症状は、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがあります。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわないでください。4)救急車の利用の目安については「救急車利用リーフレット(高齢者版、成人版、子供版)」をご活用ください。 判断に迷う場合には、普段からの体調を把握しているかかりつけ医への相談、各種相談窓口(行政などが設置している発熱相談窓口や♯7119などの救急安心センター・救急相談センター、♯8000)などの活用をしてください。7項目で診療集中の弊害を説明 上記の診療を受ける、救急車を利用する前のポイントを踏まえ、解説として7項目のCOVID-19のとくにオミクロン株に関する疾患情報やリスクの高い場合の対応を記している。以下に抜粋して示す。【オミクロン株にかかったときの自然経過】・オミクロン株への曝露があってから平均3日で急性期症状(発熱・喉の痛み・鼻水・咳・全身のだるさ)が出現するが、そのほとんどが2~4日で軽くなること。・COVID-19の検査を受けることは大切だが、検査を受けることができなくてもあわてないで療養(自宅での静養)することが大切。・重症化する人の割合は数千人に1人程度と推定(厚生労働省資料より)。【COVID-19を疑う症状が出た場合】・COVID-19の症状(発熱・のどの痛み・鼻水・咳・全身のだるさなど)が出た場合は、まず仕事や学校を休んで外出を避け、自宅療養を始める。【症状が軽く65歳未満で基礎疾患がない場合、妊娠中でない場合】・症状が軽く(飲んだり食べたりできて、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い)、基礎疾患がない場合や妊娠がない場合は、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診をする必要はない。・COVID-19専用の特別な治療は行わない。つらい発熱や痛みを和らげる薬(アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬)が治療の中心で、このような薬は薬局など(ドラッグストアやインターネット販売も含む)で購入できる。・限りある医療資源を有効活用するためにも、検査を目的とした医療機関の受診は避ける。・市販の医療用抗原検査キットを使い、症状が出た翌日以降に自分で検査することもできるが、症状が出た当日に検査をすると新型コロナウイルスに感染しているのに陰性になる可能性が高いため、翌日以降の検査をお勧めする。【症状が重い、発熱が4日以上、65歳以上、基礎疾患がある場合、妊娠中の場合】・症状が重い(水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしても治まらない)場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続いている場合は、医療機関への受診(オンライン診療を含む)が必要。・たとえ症状が軽くても、65歳以上の方、基礎疾患がある方や妊娠中の方、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があるので、早めにかかりつけ医に相談。・熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようだったら、かかりつけ医や近隣の医療機関に必ず相談、受診(オンライン診療を含む)。・次の主な重症化のリスク因子がある方は受診が必要。〔主な重症化のリスク因子〕65歳以上の高齢者/悪性腫瘍(がん)/慢性呼吸器疾患(COPDなど)/慢性腎臓病/糖尿病/高血圧/脂質異常症/心臓や血管の病気/脳梗塞や脳出血など脳血管の病気/高度肥満(BMIが30以上)/喫煙(ヘビースモーカーの場合)/固形臓器移植後の免疫不全/妊娠後期/免疫抑制・調整薬の使用/HIV感染症(参考:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第8.0版を改変)【医療機関への受診について】・医療機関に受診が必要な場合は、通常診療中の時間帯(平日の日中など)に、かかりつけ医や近所の医療機関に電話相談してから受診。【救急車の利用の目安について】・COVID-19により救急車を呼ぶ必要がある症状としては、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがある。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわない。 以上、国民向けの内容であるが、外来診療などの際に患者さんにお伝えすることで、現在の診療への集中化の緩和につながればと期待する。

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