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これがなぜLancet に!?(解説:桑島 巌 氏)-242

ACCORD試験は、心血管リスクを有する2型糖尿病患者に対しHbA1cを指標として、7.0~7.9%の標準的な血糖コントロール群と<6.0%の厳格な血糖管理群のどちらが心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)を抑制するのかを検討したランダム化試験である。 本試験は厳格血糖コントロール群で死亡が多く発生したために、試験は開始後3.7年で中止となった。中止時点で厳格コントロール群では二次エンドポイントである非致死的心筋梗塞の発症は有意に少なかったにもかかわらず、全死亡および心血管死亡が有意に多かったのである。 厳格な血糖コントロール群でなぜ死亡が多かったのか、理由はいまだ明らかではないが、厳格コントロール群でロシグリタゾンやインスリン使用が多かったことなどが低血糖や心不全死を招いたということも理由の1つとして挙げられている。この論文以降糖尿病専門家は、厳格な血糖管理に対して慎重になってきたという経緯がある。 本論文はACCORD試験を中止後、厳格コントロール例を全員標準血糖コントロールにスイッチして、さらに1.2年間追跡した結果である。その結果、延長期間を含めても試験中止時と同様に心筋梗塞発症、不安定狭心症、冠血行再建術はいずれも厳格血糖コントロール群に有意に少なかったという。 しかし本試験は事前に設定されていたプロトコルではなく、後付け解析である点に問題がある。 あえて解釈するならば、厳格に血糖をコントロールすると、「死亡しない限りは、心筋梗塞は予防できます」あるいは「死亡する可能性は高いけれど心筋梗塞は予防できます」という奇妙な話になってしまい、臨床にとってはほとんど参考にならない。 本論文がなぜLancetに掲載されたのかが疑問に残る。少なくともACCORD試験の死亡が多かった理由がきちんと解明してから発表すべき論文である。

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スルホニル尿素(SU)薬は過去の薬か?(解説:住谷 哲 氏)-243

2型糖尿病(T2DM)患者の全死因死亡を減らすことが明らかにされているのは現時点においてはメトホルミンのみである1)。したがってほとんどのガイドラインではメトホルミンが第一選択薬とされている。しかしT2DMは進行性の疾患であるため、多くの患者は治療の継続とともに他の薬剤の追加投与を必要とする。本論文はメトホルミンの次の一手としてのインスリンとスルホニル尿素(SU)薬が予後に及ぼす影響を比較検討したものであり、興味深い。 試験デザインは最近よく用いられる、薬剤処方データベース研究であり、交絡因子の影響は傾向スコアマッチング法を用いて補正されている。 著者らはインスリン投与群がSU薬投与群に比較して良好な予後をもたらすと仮定したが、結果はそれに反してインスリン投与群で全死因死亡が増加していた。この結果からメトホルミンに追加する薬剤としてはインスリンに比較してSU薬が優れている、と単純に考えてよいだろうか? 日常臨床では注射薬であるインスリンを導入するのは容易ではない。ではインスリン投与群となった2,436人の患者はなぜインスリンが選択されたのだろうか。これはこの種の試験デザインで常に問題となる「処方理由による交絡 confounding by indication」であるが、少し考えてみよう。 SU薬ではなくインスリンが選択される場合として、SU薬が適切でない病態、たとえば肝硬変や腎不全の合併がある。しかしこれらの病態はメトホルミンの禁忌に該当するので、すでにメトホルミンが投与されている患者群においては考えにくい。次に考えられるのは血糖コントロールが極めて不良な場合である。これはSU薬投与群またはインスリン投与群のHbA1cの中央値がそれぞれ7.6%、8.5%であることから、可能性は十分ありそうである。傾向スコアマッチング法による補正では当然HbA1cも補正されているので解釈としては問題なさそうであるが、論文著者らもDiscussionで述べているように、HbA1cのみでは表されない糖尿病としての重症度(disease severity)が適切に補正されていない可能性が十分ある。つまりインスリンが選択された患者群は、はじめからイベントを起こしやすい予後不良群であったことになる。 やはり治療法の優劣を判断するには、ランダム化比較試験の結果を参考にする必要がある。SU薬とインスリンとの優劣を比較した試験としてはUKPDS332) があり、早期インスリン導入の従来療法に対する優越性を検討した試験としてはORIGIN3) がある。UKPDS33では、食事療法群、SU薬投与群、インスリン投与群(すでにBasal-bolus療法が用いられている)が比較されたが、その結果は1)SU薬とインスリンはイベント発症予防効果において同等である、2)膵β細胞機能の低下速度は、食事療法群、SU群、インスリン投与群において差はない、というものであった。つまり「早期インスリン導入による膵β細胞機能の温存」は幻想にすぎないことが明らかにされている。ORIGINでは、prediabetesを含む糖尿病患者においてグラルギンを用いた厳格血糖管理のイベント抑制効果を検討したが、グラルギン投与によるイベント抑制効果は認められなかった。 それではメトホルミンの次にはどの薬剤を選択すればよいのだろうか?インスリンおよびSU薬は糖尿病関連合併症を減らすことがUKPDS33で明らかにされているので、メトホルミンへの追加薬剤としていずれかを選択することは十分に合理的である。これまでのすべての報告はインスリン投与により、SU薬に比較して低血糖が増加することを示している。低血糖を回避して血糖を管理することの重要性が次第に明らかになりつつあることから、SU薬が使用できる状況であえてインスリン投与を選択する必要はないと考えられる。早期インスリン導入による膵β細胞保護作用を主張する一部の議論もあるが、その根拠はUKPDS33で明確に否定されている。膵β細胞機能を維持するために重要なのは良好な血糖コントロールを持続することであり、インスリンを投与することではない。インスリンは必要なときに、必要最少量を投与することがコツである。この点で英国のNICEのガイドライン4) では、インスリン投与はメトホルミンおよびSU薬の併用にてコントロール不良であるときに開始すべし、と明確に記載されている。

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糖尿病患者のCOPD増悪、ステロイドで血糖値は?

 COPD増悪を起こした2型糖尿病患者にステロイドを投与しても、血糖値の有意な上昇は認められなかったことを、イスラエル・Nazareth病院のGeorge Habib氏らが明らかにした。Respiratory Medicine誌2014年8月22日号の掲載報告。 ステロイドの投与によって、血糖値の上昇が起こることは知られている。しかし、これまで、COPD増悪を起こした2型糖尿病患者のHbA1cに対するステロイドの影響を検討した研究はなかった。 本研究ではCOPD増悪により入院した2型糖尿病患者をグループ1、対照群として増悪以外の理由で入院したCOPDを有する2型糖尿病患者(年齢・性別により調整)をグループ2とした。両グループとも入院時とその3ヵ月後にHbA1cを評価し、人口統計学的および臨床検査項目の変化、ステロイド総投与量を検討した。 両グループのパラメーターの比較には、Mann-WhitneyのU検定と、カイ二乗検定/Fisherの正確確率検定を用い、入院時と3ヵ月後のHbA1cの比較には、Wilcoxonの符号順位検定を用いた。また、多変量線形回帰分析により、グループ1におけるHbA1cの変化の予測因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・グループ1は23例、グループ2は21例であり、全44例中39例が男性であった。・平均年齢は66.2±8.2歳で、両グループとも糖尿病の治療が強化されていた。・グループ1ではHbA1cに有意な変化は認められなかったが(p=0.416)、グループ2では有意な減少が認められた(p=0.032)。・ステロイド総投与量は、グループ1におけるHbA1c増加の予測因子であった(p=0.026)。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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Vol. 2 No. 4 オメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用 そのエビデンスと各種ガイドラインにおける位置づけ

田中 知明 氏千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学 千葉大学医学部附属病院糖尿病・内分泌代謝内科はじめにグリーンランドや千葉県下でのエイコサペンタエン酸(EPA)の有効性を明らかにした疫学調査をきっかけに、わが国では魚油をエチルエステル化した高純度EPA製剤が開発され、1990年には「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛および冷感の改善」、1994年には「高脂血症」に対する医療用医薬品として臨床の現場に登場した。さらに、欧州、米国などで「高トリグリセライド血症」の効能・効果を有する医薬品として承認されていた高濃度オメガ3製剤(主成分としてEPA・DHAを含有)も2013年に国内で承認され、日常臨床に広く普及しつつある。これらオメガ3製剤の臨床応用におけるエビデンスとしては、高純度EPA製剤の冠動脈疾患に対する発症予防効果を検証した日本人対象の大規模臨床試験JELIS1)に加えて、Circulation、Lancetに報告されたイタリアのGISSI-Prevenzione Trial、GISSI-HF Trialなど、多くのエビデンスが蓄積されている。そこで、本稿ではオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用の骨格となる重要な大規模臨床試験とそのメタ解析におけるエビデンスを解説し、EPA製剤の各種ガイドラインにおける位置づけについて概説する。EPA製剤が推奨される各種ガイドライン本邦においてEPAに関してその臨床的有用性が明記されている各ガイドラインについて、表にまとめる。これまでの大規模臨床試験のエビデンス基づき、現在では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』、『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』、『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』、『脳卒中治療ガイドライン2009』の4種類のガイドラインに医療医薬品としての有用性が推奨グレードとともに記載されている。以下に具体的内容とエビデンスグレードを記す。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』の第7章「治療法 B 薬物療法におけるステートメント」として、「高リスクの高LDL-C(low density lipoprotein cholesterol)血症においては、スタチン投与に加えてEPAの投与を考慮する」とされている。推奨レベルIIa、エビデンスレベルAである。『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』の「Ⅲ. 各疾患における抗凝固・抗血小板療法 11 心血管疾患高リスク症例の一次予防」においては、「高リスクの脂質異常症におけるエイコサペント酸エチル投与の考慮」が記載され、クラス1のエビデンスレベルとして推奨されている。『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』における「II. 薬物療法 3 脂質異常症改善薬」の項目では、「2. 高LDLコレステロール血症にはスタチンに加え高純度EPA製剤も考慮する」と記載され、エビデンスグレードはBである。『脳卒中治療ガイドライン2009』における「Ⅱ. 脳梗塞・TIA 4-1. 脳梗塞再発予防 (3)脂質異常症」の項目の中で、「3. 低用量スタチン系薬剤で脂質異常症を治療中の患者において、EPA製剤の併用が脳卒中再発予防に有用である」と記載されている。エビデンスグレードはBである。高濃度オメガ3製剤(EPA+DHA)に関しては、欧州(ノルウェー)では1994年に、アメリカでは2004年に使用されるようになっていたが、日本では2013年から使われるようになった。したがって、国内では高純度EPA製剤が主流であった過去の経緯から、各ガイドラインにおける記載は高純度EPA製剤のみなのが現状である。海外ガイドラインにおけるオメガ3系脂肪酸の臨床的位置づけとして、欧州・米国ではEPA・DHA製剤が中心であり、脂質異常症の管理および心不全の治療ガイドラインにおいて推奨されている(推奨レベルIIb、エビデンスレベルB)。今後、本邦においてもエビデンスのさらなる蓄積とガイドラインにおける位置づけが新たに追加されることが期待される。表 各種ガイドラインにおける脂質異常症治療薬の記載画像を拡大するJELISの概要と1次予防・2次予防サブ解析JELISは、日本人を対象に実臨床に近い条件の下で実施された前向き大規模臨床試験であり、各ガイドライン記載の根拠となる重要なエビデンスである1)。JELISは、日本人の脂質異常症患者(総コレステロール250mg/dl以上)において40~75歳の男性と、閉経後~75歳の女性18,645人(冠動脈疾患の1次予防14,981例、2次予防3,664例)を対象としている。プラバスタチン10mg/日またはシンバスタチン5mg/日を基本として、1.8gの高純度EPA製剤の投与群と非投与群を無作為に割り付けて、5年間の追跡調査し、主要冠動脈イベント(致死性心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、心臓突然死、心血管再建術、新規狭心症の発症、不安定狭心症)について検討を行った試験である。その結果、主要冠動脈イベントを19%低下させ、EPA投与群では対象群に比べ虚血性心疾患の発症リスク比(95% CI)が0.81(0.68-0.96)であり、非致死性では0.81(0.68-0.96)と有意であった(本誌p.23図を参照)。興味深いことに、血清脂質変化を検討すると、EPA群と対象群においてLDLコレステロールの変化率に有意差を認めなかった。このことから、高純度EPA製剤の心血管イベント抑制効果は、LDLコレステロール値以外による機序が大きいと考えられている。<JELIS 1次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がない1次予防サブ解析(14,981例)では、主要冠動脈イベントの発生はEPA投与群で18%減少するものの、有意差を認めなかった。肥満・高TG (triglyceride)血症・低HDL(high density lipoprotein)血症・糖尿病・高血圧を、冠動脈イベントリスク因子としてそれらの重積と冠動脈イベント発生を検討した結果、対照群/EPA群の両者において発症率の上昇を認め、EPA群で抑制している傾向が見られた2)。また、登録時のTG値とHDL値の組み合わせで4群に分けて、冠動脈イベント発症リスクを比較検討した結果、高TG/低HDL-C血症群ではTG/HDL-C正常群に比較して、冠動脈イベント発生リスクはEPA投与群で53%もの低下を示し、高リスク群での抗動脈硬化作用による心血管イベントの発症抑制が期待されている1, 2)。<JELIS 2次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がある患者(3,664例)の2次予防サブ解析では、EPA投与群で23%のイベント発症抑制効果を認めた3)。インターベンション施行症例や心筋梗塞既往症例においても、EPA投与群でそれぞれ35%、27%のイベント発症の抑制を認めた3)。これらの結果は、高純度EPA製剤の投与はインターベンション施行例や心筋梗塞既往例の2次予防薬としての有用性を示している。血漿EPAとアラキドン酸(AA)の比の変化を観察すると、試験開始時に両群共にEPA/AA比は0.6であったのに対して、EPA投与群では1年後に1.3まで上昇していた3)。試験終了時のEPA/AA比と冠動脈イベント再発の関連性を解析した結果、EPA/AA比が高いほど、イベント発生の相対リスクが低下していることが明らかとなった。<JELIS脳卒中サブ解析>JELIS試験においては、2次評価項目として脳卒中(脳血栓、脳塞栓、判別不能の脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳出血、くも膜下出血)の発症が検討された。患者背景として、脳卒中の既往はEPA群で485例(5%)であり、対照群で457例(5%)に認められ、その内訳は閉塞性脳血管障害がそれぞれ74%、75%で、両群間に有意差を認めなかった4)。脳卒中の1次予防に関しては、対照群およびEPA投与群ともに、脳卒中発症頻度が低かったため、両群間に明らかな差を認めなかった。実際、対照群における脳卒中累積発症率が5年間で1.3%ととても低値であったことが大きな要因と考えられている。また、JELIS以外に国内で施行された冠動脈疾患や脳卒中の既往のない高コレステロール患者を対象としたMEGA試験では、プラバスタチンの投与で有意に発症を抑制したことが報告されている。つまり、JELISにおけるスタチン投与の背景がすでに脳卒中発症をかなり予防していたことが推察され、EPAの有用性を否定するものではない結果といえよう。脳卒中既往歴のある2次予防については、EPA投与群において20%の有意な脳卒中発症抑制効果(発症リスク比0.80、95% CI:0.64-0.997)が認められた4)。この脳卒中発症抑制に関しては、number to treat(NNT=疫学の指標の1つで、エンドポイントに到達する患者を1人減らすために何人の患者の治療を必要とするかを表したもの)は27であった。興味深いことに、同時期に欧米で施行されたSPARCL試験5)では、アトルバスタチンの5年間の投与による脳卒中2次予防効果のNNTは46であり、高用量スタチンより優れた結果を示唆するものであった。単純比較はできないが、EPA製剤(スタチン併用)の脳卒中2次予防効果における臨床的有用性を示すと考えられている。登録時のHDL-C値と脳卒中発症の関係を解析した結果、対照群ではHDL-C値が低いことに相関して脳卒中再発率が有意に増加するが、EPA投与群ではHDL-C値と独立して脳卒中再発予防効果を認めた。また臨床的なポイントとして、JELISにおける脳卒中の疾患別検討では、EPA効果がより高い群として脳梗塞、特に脳血栓症の抑制が明らかであった。またEPA服薬良好群では、36%の顕著な再発低下(5年間のNNTは16)を示した6)。EPAの特徴の1つである血小板凝集抑制作用を介したアテローム血栓予防効果が大きな役割を果たしている可能性が高い。GISSI-Prevenzione Trial7)と海外のエビデンスイタリアで行われたGISSI-Prevenzione Trialは、急性心筋梗塞発症後3か月以内の高リスク患者11,324症例を対象とした2次予防試験であり、オメガ3系多価不飽和脂肪酸1g/日のカプセルと抗酸化作用を持つビタミンE 300mg/日を内服する群を、オメガ3系多価不飽和脂肪酸のみ内服する群、ビタミンEのみ内服する群、両方内服する群、両方内服しない群に分けて3.5年間介入し検討を行った試験である7)。その結果、オメガ3系多価不飽和脂肪酸を内服している群は対象群に比べ、全死亡の相対リスク(95% CI)が0.80(0.67-0.94)と低下を認め、特に突然死においては0.55(0.40-0.76)と大きく抑制され、突然死においては治療開始後早期の120日ですでに有意な相対リスクの低下(0.47(0.22-0.99)、p=0.048)が認められた(本誌p.24図を参照)7)。また、心不全患者を対象に行ったGISSI-HF Trialでも、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の投与は、有意に心血管イベントの発症を抑制した8)。コホート試験である13試験を用いて、魚摂取・魚食頻度と冠動脈疾患による死亡率との関連について検討した結果(222,364症例のメタ解析)、魚摂取は冠動脈疾患による死亡率を有意に低下させることが明らかとなった9)。さらに、脂質低下療法に関する97ランダム化大規模臨床試験のメタ解析の結果から、スタチンとオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤は、心臓死および総死亡のイベントリスクを低下させることが示された10)。これらのエビデンスから、ハイリスクの脂質異常患者に対してスタチンにEPA製剤を加えることで、さらなる心血管イベント抑制効果が期待できると考えられる。おわりに高純度EPA製剤は、心血管イベントおよび脳血管イベントの1次予防・2次予防戦略を考えるうえで重要な薬剤であることはいうまでもない。大規模臨床試験のエビデンスをベースとした各ガイドラインを見てわかるように、脂質異常症のゴールデンスタンダードであるスタチンに加えて、EPA製剤の併用効果が証明され、臨床的意義づけが確立している。JELISによる日本人のエビデンスに裏づけされた内科的戦略の1つとして、心血管・脳血管イベントのハイリスク症例やスタチン投与による脂質管理下でもイベント発生を抑制できない症例に対して、積極的な使用が推奨される。またEPA・DHA製剤についても、ようやく国内で使用することができるようになった。日本人のエビデンスはまだ十分ではなく、ガイドラインにおける位置づけは現時点では明確ではないが、欧米におけるエビデンスと使用経験から本邦でも十分に期待できるものと思われる。EPA製剤との違いや臨床的使い分けなど、今後のさらなるエビデンスの蓄積が必要であろう。文献1)Yokoyama M et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet 2007; 369: 1090-1098.2)Saito Y et al. Effect of EPA on coronary artery disease in hypercholesterolemic patients with multiple risk factors: sub-analysis of primary prevention cases from the Japan EPA Lipid Intervention Study (JELIS). Atherosclerosis 2008; 200: 135-140.3)Matsuzaki M et al. Incremental effect of eicosapentaenoic acid on cardiovascular events in statin-treated patients with coronary artery disease. Circ J 2009; 73: 1283-1290.4)Tanaka K et al. Reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic acid for hypercholesterolemic patients : subanalysis of the JELIS trial. Stroke 2008; 39: 2052-2058.5)Amarenco P et al. High-dose atrovastatin after stroke or transient ischemic attack. N Engl J Med 2006; 355: 549-559.6)田中耕太郎ほか. 高コレステロール血症患者の脳卒中発症に対するEPAの効果-JELISサブ解析結果. 脳卒中2007; 29: 762-766.7)Marchioli R et al. Early protection against sudden death by n-3 polyunsaturated fatty acids after myocardial infarction: time-course analysis of the results of the Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell'Infarto Miocardico (GISSI)-Prevenzione. Circulation 2002; 105: 1897-1903.8)Gissi HFI et al. Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 2008; 372: 1223-1230.9)He K et al. Accumulated evidence on fish oil consumption and coronary heart disease mortality : a meta-analysis of cohort studies. Circulation 2004; 109: 2705-2711.10)Studer M et al. Effect of different antilipidemic agents and diets on mortality : a systematic review. Arch Intern Med 2005; 165: 725-730.

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診察室での血圧測定はもういらない?-高血圧診療は、自己測定と薬の自己調整の時代へ(解説:桑島 巌 氏)-240

わが国の高血圧診療は、家庭血圧計で測定した血圧値をもとに降圧薬の増減を判断することが一般的になってきた。診察室血圧値は白衣現象や仮面高血圧を見逃し、適切な血圧管理ができないからである。 さらに、家庭血圧は外来血圧測定に比べて、季節による血圧変化やストレスによる血圧変化を的確にとらえるのに優れている。そして、患者自身が医師による診療に先んじて、自分の普段の血圧値を知ることの利点はきわめて大きい。 したがって、血圧自己管理と降圧薬の自己調整によって、これまでよりも、きめ細かな血圧調整が可能となる。本論文は、まさにそのことを実証してみせたという点で、エポックメイキングの研究成果となろう。 本試験のプロトコールは、高リスクの高血圧症例で、家庭血圧目標を120/75mmHgと設定して降圧薬をあらかじめ決められた3ステップ法で増減してもらう群と、従来のように診察室血圧で血圧管理する群にランダム化して1年間追跡、1年後の診察室血圧を比較するというものである。一次エンドポイントは、1年後の診察室での両群の血圧値の差である。 その結果、ベースラインから1年後への収縮期/拡張期血圧低下は、介入(自己調整群)群のほうが通常診療群よりも9.2/3.4mmHgも大きかったというものである。介入群での1年後の家庭血圧平均値も128.2/73.8mmHgであり、通常診療群の137.8/76.3mmHgより明らかに低い。当然、自己管理群のほうが有意に多くの降圧薬を服用していた(2.22剤vs 1.73剤)にもかかわらず、有害事象には差がなく、安全に自己管理ができていたという。 しかし、本試験は、血圧が極端に高い症例や、起立性低血圧、認知症のある症例、降圧薬を3剤以上処方されている症例は除外されていることに注意が必要である。また、糖尿病、慢性腎臓病、心疾患などを合併する高リスク群が対象でありながら、降圧によるこれら合併症の悪化など、個々の症例で管理すべきことには触れられていない。さらに、家庭血圧が途中で下がりすぎた場合の対処などにも触れられていない。現実には、家庭血圧が極端に下がってきた場合には降圧薬を減らすように指示することはよくあるが、その点についての解析は述べられていない。 しかし、家庭血圧計が普及した今、高血圧診療のあり方を見直す重要なエビデンスではある。

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55)ご飯の量を意識させるアドバイスの方法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者私、ご飯が大好きで、どのくらいにしておいたらいいですか?医師今、どのくらいですか?患者お茶碗に1杯ぐらいです。おかわりはしないようにしています。医師頑張っておられますね。それなら、だいたい150gぐらいじゃないでしょうか。患者外食すると、血糖が上がるんですが・・・医師確かに、外食ではご飯の量がわかりにくいですね。カレー皿の普通盛りなら、家で食べているごはんの倍、300gくらいありますね。患者外でカレーを食べると、血糖が上がるわけですね。医師それじゃ、丼物は何gくらいあると思いますか?患者500gくらいですか?医師どんぶり勘定ですね。丼物もカレー皿と同じくらいのご飯量になります。●ポイント普段のご飯量、外食時のご飯量などを確認することから食事療法を始めます●資料茶碗半分(80g)、茶碗8分目(120g)、茶碗1杯(150g)、茶碗1杯強(200g)、パックご飯(200g)カレー(チェーン店) 小盛り(200g)、普通盛り(300g)牛丼(チェーン店) 小盛(180g)、並盛(260g)、大盛り(320g)

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各種ダイエット法の減量効果/JAMA

 アトキンス式(Atkins、低炭水化物[糖質制限]食)やオーニッシュ式(Ornish、低脂肪食)など固有の名称が付されたダイエット法は、実際に良好な減量効果をもたらしていることが、カナダ・トロント大学のBradley C Johnston氏らの調査で示された。個々のダイエット法の優位性については種々の主張があり、どの方法が優れるかは明らかではなかったが、今回の解析では、どれも大きな差はないことが確認された。JAMA誌2014年9月3日号掲載の報告。3クラス、11種のダイエット法のネットワークメタ解析 研究グループは、ダイエット食のクラス別(低炭水化物食、中等量主要栄養素食、低脂肪食)および個々のダイエット法別の減量アウトカムを評価するメタ解析を実施した。対象は、過体重および肥満者(BMI≧25)の無作為化試験とした。 6つの医学関連データベースを検索して選出された文献から、2名のレビュワーが別個にデータを抽出した。相対的な減量効果を推定するために、ベイズ的枠組みを用いたネットワークメタ解析を行った。主要評価項目は、6ヵ月および12ヵ月時の非ダイエット群との比較における体重減少とした。 ダイエット食のクラスは摂取エネルギーに占める主要栄養素の割合で定義し、低炭水化物食は炭水化物が≦40%、タンパク質が約30%、脂質が30~55%、中等量主要栄養素食はそれぞれ約55~60%、約15%、21~30%、低脂肪食は約60%、約10~15%、≦20%とした。解析には11種のダイエット法が含まれた。低炭水化物・低脂肪食は半年で約8kg減量 48件の無作為化試験(論文59本)に参加した過体重~肥満の7,286例が解析の対象となった。全体の年齢中央値は45.7歳、体重中央値は94.1kg、BMI中央値は33.7、ダイエット食による介入期間中央値は24週であった。 6ヵ月時には、すべてのクラスのダイエット法が非ダイエット群に比べ有意に良好な減量効果を達成し、12ヵ月時も有意差は維持されたが、6ヵ月時に比べ効果は1~2kg低下した。また、6ヵ月時は低炭水化物食の減量効果が相対的に大きかったが、低脂肪食との間には明確な差はなく、12ヵ月時には低脂肪食のほうがむしろ減量効果が大きかった。 すなわち、ダイエットを行わなかった群に比べ低炭水化物食の群は、6ヵ月時に中央値で8.73kg(95%確信区間[credible interval:CI]:7.27~10.20kg)、12ヵ月時には7.25kg(同:5.33~9.25kg)の減量が達成され、低脂肪食ではそれぞれ7.99kg(同:6.01~9.92kg)、7.27kg(同:5.26~9.34kg)の体重減少が得られた。中等量主要栄養素食の減量効果は6ヵ月時が6.78kg(同:5.50~8.05)、12ヵ月時は5.70kg(同:4.14~7.35kg)だった。 一方、個々のダイエット法の減量効果の差は小さかった。たとえば、低炭水化物食を用いるアトキンス式は、同じ低炭水化物食のゾーン(Zone)式よりも6ヵ月時の減量効果が大きかったが、その差は1.71kgだった。 行動支援(カウンセリングなど)により、6ヵ月時には3.23kg(95%CI:2.23~4.23kg)と有意な減量効果が得られたが、12ヵ月時には1.08kg(同:-1.82~3.96kg)と有意差は消失した。また、運動(ジョギングなど)の減量効果は6ヵ月時には0.64kg(同:-0.35~1.66kg)と有意ではなかったが、12ヵ月時には2.13kg(同:0.43~3.85kg)と有意な改善が達成された。 著者は、「低炭水化物食と低脂質食による減量効果は1年にわたり良好で、行動支援や運動はその効果を増強する」とまとめ、「ダイエット法の違いは大きな問題ではなく、理想的には個々人が最も実行しやすく、長期に継続可能な方法を選ぶことが重要である」と指摘している。

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Dr.林の笑劇的救急問答10 【電解質異常編】

第1回 高カリウム血症「意識障害の60歳男性」 第2回 低カリウム血症「下痢と脱水の70歳女性」 第3回 低Na血症&高Na血症「痙攣を起こした35歳男性」 第4回 高Ca血症&低Ca血症「怒ったり眠ったりの55歳女性」 すっかりお馴染みのDr.林による救急シリーズ。 第10シーズン上巻は「電解質異常編」。「何かヘンなんです!」と診察に訪れた患者。さてどうしますか?電解質は測定してみないとなかなか異常に気づかないものですが、怖い病態もあるので、疑ってかかるようにしましょう。カリウム、ナトリウム、カルシウムの異常を取り上げ、診察、検査、診断とその処置・治療をわかりやすく、しかも徹底的に解説!研修医・講師らが演じる爆笑症例ドラマにもヒントがぎっしり!笑いながら重要なポイントを学んでください。第1回 高カリウム血症 「意識障害の60歳男性」 テーマは最も見逃したくない電解質異常-高カリウム血症です。心電図でテントTがあれば高カリウム血症を疑うことも難しくはありませんが、何となく奇妙な波形を見た時にも疑いましょう。気づかないと、あっという間に悪くなり、命取りになりかねません。Case1:60歳男性 徐脈、血圧低下で意識障害。現病歴は慢性腎不全。心電図を読んだオタク研修医は、自信がないながらも心室性の不整脈と判断し、リドカインで治療を進めようとする。第2回 低カリウム血症 「下痢と脱水の70歳女性」 低カリウム血症の症状は、脱力や不整脈など多岐にわたり、かつ非特異的なので、疑ってかからないとなかなか見つけることができません。あとは、その原因を突き止めること。原因によってカリウムの補正方法が異なるのでしっかりと把握しておきましょう。Case2:70歳女性 前日より下痢が続き、とうとう力が入らなくなり歩けなくなったと来院。指導医Dr.林のフォローのおかげで低K血症だと診断し、カリウムの補正をする研修医・・・。そこに死神が現れる!!第3回 低Na血症&高Na血症 「痙攣を起こした35歳男性」 意外にスルーされがちなナトリウム異常ですが、時には緊急に補正しなくてはならない症例もあります。また、逆に急いで補正してしまうと、浸透圧性脱髄症候群を起こしてしまうことも!補正の仕方をしっかりマスターしましょう。Case3:35歳男性、痙攣による意識障害で救急搬送。頭部CT検査、神経所見、共に異常なし。意識が回復した患者は「水を飲まないと腎臓が溶ける病気」と主張し、水道へ走る。水中毒の可能性に気づいた研修医は、水制限を提案するが・・・。第4回 高Ca血症&低Ca血症 「怒ったり眠ったりの55歳女性」カルシウムの異常を見つけても放っていませんか?中にはに緊急に対応しなければならない場合もあります。高カルシウム血症の治療の第1選択は「生理食塩水」。ハイカラな薬を使うよりも、まず、脱水の補正から行いましょう。Case4:55歳女性。突然怒り出したかと思えば、またすぐに眠ってしまったりを繰り返している。糖尿病の既往あり。最近肺の影を指摘され、精査予定。意識障害の原因もわからずどう対処すべきか悩んだ研修医。Dr.林は、患者に肺腫瘍があることを指摘し、血液検査項目の追加を指示。

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食事内容で気をつけさせること

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師 Aさんは炭水化物が好きな方ですか?患者 はい。大好きです。医師 そうですか。ごはんやパン、麺類は炭水化物ですから食べ過ぎると血糖が異常に上がります。ラーメンに半チャーハンと餃子など炭水化物の重ね食いは要注意ですね。患者 たまに、それをやっちゃうんですよね。医師 そうですか。上手に炭水化物とつきあってみてください。そういった炭水化物が好きな人にいい薬がありますよ。患者 それはどんな薬ですか?画 いわみせいじ医師 炭水化物の吸収を遅らせる薬です。腸で炭水化物の吸収を遅らせることで、食事の後の血糖の上昇を防ぎます。患者 私にピッタリの薬ですね。医師 ただし、炭水化物をよく食べる人は、この薬だけで処理しきれないこともあるのでお腹がはったり、おならが出やすくなったりなど、副作用が出る人もいます。患者 なるほど。薬を飲んでいるからといって、炭水化物を食べ過ぎてはいけないわけですね。ポイント患者さんの好みを聞いて、それに合わせた薬を選択し、副作用の説明とともに食事指導ができるといいですねCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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血糖値を下げる食事指導

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 何を食べたら血糖値が下がりますか。医師 いいものがありますよ。(前置きする)患者 それは何ですか?医師 食物繊維がたっぷり入っている野菜です。患者 そういえば、野菜はあまり食べていませんね。医師 それもご飯など炭水化物より先に野菜を食べる習慣をつけると、その食物繊維の効果で食後の血糖上昇を防ぐことができます。画 いわみせいじ患者 ご飯ではなくて、野菜から先に食べるんですね。医師 そうです。食べる順番を変えるわけです。患者 なるほど。食べる野菜は何でもいいですか?医師 そうですね。キャベツ、キュウリ、トマト、モヤシなど何でもいいですよ。ただし、ポテトサラダは糖質が多く、血糖が上がるから気をつけてくださいね。患者 はい。わかりました。ポイントシンプルな食事指導の方が、患者さんの実行率が高まりますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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糖尿病とがんの関係とは

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 糖尿病になると、がんになりやすいって聞いたんですけど、本当ですか?医師 それは本当ですよ。患者 えっ、やっぱりそうなんですか。(少し心配そうな顔)医師 とくに、膵臓がん、肝臓がん、大腸がんになりやすいそうです。患者 それは怖いですね。医師 糖尿病の合併症だけではなく、がんも予防ができたらいいですね。患者 どうしたらいいですか?画 いわみせいじ医師 じつは糖尿病合併症とがんの予防は同時にできますよ。患者 具体的にはどうしたらいいですか?医師 まずは禁煙、次に運動、3番目がたっぷり野菜を食べることです。患者 なるほど。頑張ってやってみます。(嬉しそうな顔)ポイント合併症とがんの予防が同時行えるよう指導すると効果的Copyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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糖尿病と認知症の関係とは

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 知り合いが認知症になってしまって、私も糖尿病を持っているし、認知症が心配です。医師 誰もが認知症にはなりたくないですよね。糖尿病の人はそうでない人に比べて認知症に2倍くらいなりやすいそうですよ。患者 えっ、そんなになりやすいんですか!(やや驚きの声)医師 そうです。とくに、血糖コントロールが悪い人、メタボな人、バランスの悪い食事をしている人、運動不足な人がなりやすいそうですよ。画 いわみせいじ患者 それ、すべて私に当てはまります。認知症になるとどんな症状が出てきますか?医師 何に対しても興味がなくなったり、食べ過ぎたり、昼寝をよくするようになって、ひどくなると尿もれをよくする人もいます。患者 そうですか。昼寝しすぎて、夜よく眠れないこともあるんです。これから気をつけます。ポイント無関心、過食、昼寝、尿失禁など認知症の特徴を上手に説明することで理解が深まりますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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運動はできる時に、できるだけ

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 先生から、1日に30分は運動しなさいといわれたんですけど、なかなか運動する時間がとれなくて・・・医師 それならいい方法がありますよ!患者 それは何ですか?(興味津々)医師 細切れに運動するんです。患者 細切れに運動する?医師 そうです。軽く汗をかく程度の運動時間が、トータルで30分になればいいんです。10分を3回とか、15分を2回とかでもOKです。画 いわみせいじ患者 なるほど。20分以上運動しないと、効果がないのかと思っていました。医師 そんなことはありませんよ。歩数でいうと1,000歩で10分になりますから、朝、昼、夕など空いた時間をみつけて運動してみてください。患者 はい。わかりました。ポイント1回30分ではなく、細切れ運動でも効果がありますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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【GET!ザ・トレンド】糖尿病専門医からがんを診療する医師へのメッセージ

はじめに糖尿病に伴うがんリスクには、糖尿病治療薬も関与している可能性がある。本稿では、糖尿病治療薬に関するエビデンスとその解釈上の注意点、および日常診療に携わる医師への提言を述べる。糖尿病治療薬とがんリスク特定の糖尿病治療薬が、がん罹患リスクに影響を及ぼすか否かについての現時点でのエビデンスは限定的であり、治療法の選択に関しては、添付文書などに示されている使用上の注意に従ったうえで、良好な血糖コントロールによるベネフィットを優先した治療1)が望ましい。以下に、治療薬ごとにリスクを述べる。1)メトホルミン筆者らが行ったメタアナリシスでは、メトホルミン服用患者は非服用患者に比べてがんの発症リスクが0.67倍と有意に低下していた(図)2)。がん死リスクもほぼ同等であった。さらに臓器別には、大腸がん約30%、肺がん約30%、肝臓がんに関しては約80%と有意な低下を認めた。ただし、糖尿病で有意に増加するといわれている膵臓がんなどにおいては、リスク比の変化は有意ではなかった。図を拡大するメトホルミンは、AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)を介して主に肝臓に作用して、血糖降下を発揮する。最近判明してきたことだが、このAMPKという物質は、下流にあるmTORというがん関連因子を抑制することで発がんを抑えるのではないか、という研究が進んでいる。実際に日本人の非糖尿病を対象としたランダム化比較試験(RCT)においても、メトホルミン投与群では非投与群に比べて、大腸がんの内視鏡的マーカーの有意な低下を認めた。ただし、短期間の研究なので、長期的な予後までは判明していない。まだまだ研究段階ではあるが、このようにメトホルミンは、がんの発症を抑える可能性があるということで着目されている。ただし、観察研究が主体なのでバイアスに留意すべきである。 筆者らのメタアナリシスに含まれているRCTや、時間関連バイアス調整後の観察研究3)やRCT(短期間も含む)のみの他のメタアナリシス4)では、結果はニュートラルであった。2)インスリン/スルホニル尿素(SU)薬/グリニド薬理論上は、高インスリン血症によりがんリスクが高まることが懸念される。3~4年ほど前、インスリン投与により乳がんのリスクが有意に増加するという報告が続いた。しかし、これらの報告は研究デザイン上の問題やバイアスが大きく、妥当性は低い(表1)。実際、その後行われた1万2千人余りのランダム化研究などの分析によると、インスリン投与群とインスリン非投与群では、がん全般の発症率およびがんによる死亡リスクともに有意な増減を認めておらず、現時点ではインスリンによるがんリスクの上昇の可能性はほぼ否定されている。表1を拡大する血中インスリン濃度を高めるSU薬も、メタアナリシスでまったくのリスク増減を認めていない。また、グリニド薬に関しては、アジア人の報告ではがん全般リスクはやや上昇するという報告があったが、こちらの疫学研究は非常にバイアスの強い報告なので、まだまだデータとしては限定的である。3)ピオグリタゾン膀胱がんのリスクが上昇するというニュースで、近年話題となった。アメリカの報告では、がん全般としては有意な増減を認めていない。ただし、日本、アメリカ、ヨーロッパの報告を見ると、ピオグリタゾンにより膀胱がんリスクが1.4~2倍あまりも有意に上昇する可能性が示唆されている。実際、フランス・ドイツでは処方禁止、インドでは第1選択薬としての処方は禁止となっている。まだまだ研究段階で最終的な結論は出ていないが、このような現状を踏まえ、添付文書の注意書き(表2)に従ったうえで投与することが必要である。表2を拡大する4)α-グルコシダーゼ阻害薬アメリカの副作用登録では、膀胱がんのリスクが有意に増加するということが報告されている。しかし、台湾の疫学研究では、膀胱がんの有意なリスク増減は認めていない。いずれも非常に限定的でバイアスの強いデータであり、まだまだ最終結論は出ていない。5)DPP-4阻害薬/GLP-1アナログDPP-4阻害薬のメタアナリシスでは、がんリスクの有意な増減はまったく認めていない5)。ただし、含まれている研究は非常に追跡期間の短いものばかりなので、臨床的にあまり価値がないエビデンスである。その後発表されたRCT 2件では有意なリスクの増加を認めていないので、がんのリスクに対する安全性も比較的確保されたものと思われる。6)SGLT2阻害薬今年、わが国でも承認されたこの薬物は、腎臓でのブドウ糖吸収を抑制することで血糖値を下げ、さらに体重も低下する報告がある。まだまだ新薬として登場して間もないものでデータも非常に限定的であるため、長期的なリスクは未知数である。糖尿病患者のがん検診糖尿病ではがんのリスクが高まる可能性が示唆されているため、日常診療において糖尿病患者に対しては、性別・年齢に応じて臨床的に有効ながん検診(表3)を受診するよう推奨し、「一病息災」を目指すことが重要である。がん検診は、がん発見が正確で確実であること、受診率が高いこと、受診の結果予後が改善することを満たして初めて有効性を持つ。日本のがん検診の多くは有効性が実証されておらず、過剰診断と過剰治療によるリスクも小さくはないことに留意する。さらに、無症状でも急激に血糖コントロールが悪化した場合には、がんが潜在している可能性があるため、がん精査を考慮する必要がある。表3を拡大する文献1)国立国際医療研究センター病院.糖尿病標準診療マニュアル(一般診療所・クリニック向け).http://ncgm-dm.jp/center/diabetes_treatment_manual.pdf(参照 2014.8.22)2)Noto H, et al. PLoS One. 2012; 7: e33411.3)Suissa S, et al. Diabetes Care. 2012; 35: 2665-2673.4)Stevens RJ, et al. Diabetologia. 2012; 55: 2593-2603.5)Monami M, et al. Curr Med Res Opin. 2011; 27: 57-64.6)厚生労働省. がん検診について. http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_kenshin01.pdf(参照2014.8.22)

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食べる速さはメタボと関連~日本の横断的研究

 国立国際医療研究センターの長濱 さつ絵氏らは、日本人における食べる速度とメタボリックシンドロームとの関連性を横断的研究で調査した。その結果、食べる速度がメタボリックシンドロームと関連し、この関連は主に、食べる速度による体重の違いで説明されることが示唆された。著者らは「食べる速度を遅くすることで肥満やメタボリックシンドロームを予防できるかどうか、さらなる研究が必要」としている。BMJ Open誌2014年9月5日号に掲載。 著者らは、2011年に国内の健康管理センターの健康診断を受け、冠動脈心疾患や脳卒中の既往がない5万6,865人(男性4万1,820人、女性1万5,045人)について、食べる速度(自己申告による)とメタボリックシンドロームおよびその要素について調査した。なお、メタボリックシンドロームは、国際糖尿病連合および米国心臓協会/米国国立心肺血液研究所の共同暫定声明に基づいて定義した。 主な結果は以下のとおり。・多重ロジスティック回帰モデルでは、食べる速度はメタボリックシンドロームと有意な正相関を示した。・男性における多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は、食べる速度が「遅い」「普通」「速い」の順に、0.70(0.62~0.79)、1.00(基準)、1.61(1.53~1.70)であった(傾向のp<0.001)。女性では、0.74(0.60~0.91)、1.00(基準)、1.27(1.13~1.43)であった(傾向のp<0.001)。・メタボリックシンドロームの要素のうち、腹部肥満が食べる速度と最も強い関連を示した。・食べる速度とメタボリックシンドロームおよびその要素との関連性は、BMIによる調整後に大きく減衰した。しかし、「遅い」と高血圧(男女とも)および高血糖(男性)での低オッズ、「速い」と脂質異常(男性)での高オッズとの関連については、統計的に有意なままであった。

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降圧薬投与量の自己調整の有用性/JAMA

 心血管疾患高リスクの高血圧患者の血圧管理について、家庭血圧(自己モニタリング)と降圧薬の自己調整投与を組み合わせた管理は、外来受診時に血圧を測定し医師が投薬を調整する通常ケアによる管理と比較した結果、12ヵ月時点の収縮期血圧は前者のほうが低下したことが示された。英国・オックスフォード大学のRichard J. McManus氏らが行った無作為化試験TASMIN-SRの結果、報告された。これまでに同自己管理手法の有用性は報告されていたが、高リスク患者を対象としたデータは報告されていなかった。JAMA誌2014年8月27日号掲載の報告より。家庭血圧+降圧薬自己調整vs. 通常ケア管理について無作為化試験 試験は2011年3月~2013年1月に非盲検にて、プライマリ・ケアを受けている英国内59施設、552例の患者を対象に行われた。被験者は35歳以上で、脳卒中、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎臓病の病歴があり、試験ベースライン時の血圧値が130/80mmHg以上であった。 介入群(276例)には、自己モニタリングと降圧薬自己調整投与を組み合わせた血圧管理を行い、試験期間中の目標血圧値は、外来受診時130/80mmHg、家庭血圧は120/75mmHgとした。対照群には、健康管理担当医(health care clinician)による定期的な血圧測定と必要に応じた降圧薬の調整という通常ケアを行った。 主要アウトカムは、12ヵ月時点の受診時の介入群と対照群の収縮期血圧値の差とした。12ヵ月時点の収縮期血圧、自己管理群のほうが9.2mmHg低い 主要アウトカムのデータは、450例(81%)について入手できた。 ベースライン時の平均血圧値は、介入群(220例)143.1/80.5mmHg、対照群(230例)143.6/79.5mmHgであった。12ヵ月時点では、それぞれ128.2/73.8mmHg、137.8/76.3mmHgであり、ベースライン時から低下した血圧値の両群差は、収縮期血圧が9.2mmHg(95%信頼区間[CI]:5.7~12.7mmHg)、拡張期血圧が3.4mmHg(95%CI:1.8~5.0mmHg)だった。 データを入手できなかった全被験者についての分析でも、同様の結果が得られた。すなわち、ベースライン時の平均血圧値は、介入群(276例)143.5/80.2mmHg、対照群(276例)144.2/79.9mmHg、12ヵ月時点ではそれぞれ128.6/73.6mmHg、138.2/76.4mmHgであり、両群差は収縮期血圧が8.8 mmHg(95%CI:4.9~12.7mmHg)、拡張期血圧が3.1mmHg(95%CI:0.7~5.5mmHg)だった。 すべてのサブグループ比較においても同様の結果が得られ、過剰な有害事象もみられなかった。

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54)勘違い食事のメニューへのアドバイス【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者夕食には気をつけているつもりですが、なかなかやせません。医師そうですか。この2つのメニューを比較してもらえますか? どちらがヘルシーだと思いますか?患者メニューAですか?医師じつはメニューB(680kcal)に比べると、メニューA(1,284kcal)は、ほぼ2倍のカロリーがあります。患者そんなに違うんですか?医師じつは、健康に良いといわれている食品には、カロリーの高いものが多く、それを摂り過ぎるとカロリーオーバーになってしまうのです。患者つまり、健康に良いと思って摂っていたのが、逆効果だったんですね。●ポイントメニューを比較することで、患者さんの食事療法の勘違いに気づいてもらえます

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高血圧治療は個々のリスク因子合併を考慮した“トータルバスキュラーマネージメント”が重要(解説:桑島 巌 氏)-237

日本動脈硬化学会によるガイドラインでは、高脂血症の薬物治療開始基準を一律に決定するのではなく、性、年齢、血圧、糖尿病の有無など血管系リスク層別化を考慮した治療目標を設定すべきことが示されている。これは、これまでのメタ解析で、血管合併症のリスクの高い症例ほど薬物治療による絶対的リスク減少が大きいことが明らかになっているからである。 同じような考えが高血圧治療においてもいえることを実証したのが、このメタ解析である。 BPLTTCは、高血圧・高脂血症治療に関して、世界で最も信頼性の高いメタ解析を発表しているグループである。メタ解析で採用された臨床試験は、いずれも試験開始前に一次エンドポイント、二次エンドポイント、試験方法、症例数、解析方法など詳細に登録を行ったもののみを対象としており、そのエビデンスレベルは非常に高いことで知られている。 今回の報告は、高血圧治療効果についても、心血管合併症予防効果を絶対的リスク減少でみた場合、リスク因子を多く有している症例ほど有効性が大きいことを示している。 治療による有用性は相対的リスク減少で表される場合があるが、これはしばしば効果を誇大に表現することになる。たとえば、リスクの少ない症例100を対象とした場合、治療群の発症は1例、プラセボ群では2例とすると相対的リスク減少は50%(なんと半減!)になるが、絶対的リスク減少は100人中1例に過ぎない。NNT100、つまり100人治療してやっと1例の発症を予防できることになる。治療効果は絶対的リスク減少、あるいはNNT(Number Needed to Treat)で表すのが本当である。 本研究は11の臨床研究に参加した約5万2千例の対象症例を、プラセボ群のデータから予測された数式を用いて、11%未満の低リスク群、11~15%の軽度リスク群、15~21%の中等度リスク群、21%以上の高リスク群の4群に層別した。高リスク群は当然、喫煙率、心血管疾患既往、糖尿病、収縮期血圧のいずれもが他の群より高い。 その結果、5年間の心血管合併症発症は、相対的リスク減少でみた場合には4群間で差はなく、治療の有効性はどの群でも同じようにみえる。しかし、絶対的リスク減少でみると、高リスク群が最も高血圧治療薬による効果が大きく、ついで中等度、軽度、低リスクの順になっている。 この結果は、高血圧治療の開始基準あるいは降圧目標値の設定においても、血圧以外のリスク因子にも配慮した“トータルバスキュラーマネージメント”の考え方が重要であることを示している。当然ながら、高齢者はさまざまなリスク因子を併せもつ症例が多いことから、高リスク症例が多い。したがって、高齢者ほど厳格な高血圧治療が必要であることを意味しているのである。

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【GET!ザ・トレンド】糖尿病とがんに関する総説

はじめに糖尿病により発がんおよびがん死のリスクが増加する可能性が、近年注目されている1)。また、糖尿病を有する患者ががんになると、生命予後、術後予後が不良であることが報告されている。本稿では両者の関連についてレビューする。糖尿病とがんの関連性糖尿病とがんは、食事、運動不足、喫煙、飲酒など、さまざまな生活要因を介して相互関連している(図1)が、さらに治療薬の関与も示唆されてきている。図1を拡大する糖尿病患者が世界的に急増していることから、糖尿病の予防だけでなく、がん予防対策、がん検診の有効性、さらには糖尿病治療薬に関する研究と診療での認識が重要となってきた。糖尿病では、心血管疾患による死亡が増加するが、がん死の多いわが国では、糖尿病においてもがんは死亡の主因である。そこで、日本でも、日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で国民および医療者に対するステートメントを発表している2)(表)。表を拡大する参考を拡大する疫学的エビデンス筆者らが行ったメタアナリシスによると、糖尿病患者は非糖尿病患者に比べて、がんを発症するリスクが約1.2倍と有意に高値であった3)(図2)。図2を拡大するまた、この数値はがんによる死亡リスクについてもほぼ同様3)で、国内外で認められている。さらに、人種間、男女間の比較においても、いずれも糖尿病患者でよりがんのリスクが上昇する傾向を認め、さらにアジア人は非アジア人よりも上昇率が高いことが判明した4)。日本人においては、臓器別でみると、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんの有意なリスク上昇と関連していた2)。糖尿病による発がん機序糖尿病とがんの関連性には、高インスリン血症、高血糖、肥満、炎症、糖尿病治療薬などさまざまな因子が複雑に関与している2)(図3)。図3を拡大する1)高インスリン血症2型糖尿病は、インスリン抵抗性と代償性高インスリン血症を特徴とする。さらに2型糖尿病患者では、肥満や運動不足が多く、高インスリン血症がさらに進行する。インスリンは、insulin-like growth factor-1(IGF-1)受容体を介してがんを誘発することが想定されおり、動物実験で証明されている。一方ヒトでは、1型糖尿病のがんリスクは2型糖尿病より低いものの、一般人との比較では結論に達していない。 なお、糖尿病患者での前立腺がんのリスクが低値であることには、以下の機序が想定されている。糖尿病患者では、性ホルモン結合グロブリンが低値であり、さらにインスリン抵抗性によりテストステロン産生が低下するためにテストステロン低下症が少なくない。 前立腺がんは、テストステロン依存性であるため、糖尿病患者では前立腺がんのリスクが低下する。ただし人種差があるため、日本人を含むアジア人ではこの傾向を認めていない(図2)。2)高血糖2型糖尿病のがん細胞増殖や転移は、高血糖で促進されることが報告されている。また、血糖値とがんリスクには正の相関があることも報告されている。さらに高血糖は、酸化ストレスを高め、それが発がんの第1段階であるDNA損傷を引き起こすことも提唱されている。インスリン分泌不全が2型糖尿病の特徴とされる日本人・韓国人でも私たちの分析でがんリスクの増加を認めたことは、この仮説に合致し、近年発表された前向き研究統合解析でも血糖値とがん死リスクの正の相関傾向が示されている5)。疫学データの限界疫学データではバイアスが少なからず伴い、計算で完全に調整することはできない。とくに、糖尿病の診断は自己申告であることが多いこと、糖尿病患者は通院しているためにがんを発見しやすいなどにより妥当性が低下する。糖尿病に伴うがんリスクは、過大評価されている可能性があり、若干割り引いて解釈することも重要である。参考文献1)Noto H, et al. J Diabetes Investig. 2013; 4: 225-232.2)糖尿病と癌に関する委員会. 糖尿病. 2013; 56: 374-390.3)Noto H, et al. Endocr Pract. 2011; 17: 616-628.4)Noto H, et al. J Diabetes Investig. 2012; 3: 24-33.5)Seshasai SR, et al. N Engl J Med.2011; 364: 829-841.

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ピロリ感染と糖尿病、胃がん発症に相乗効果

 Helicobacter pylori(以下、HP)感染は胃がんの最も強力な危険因子と認められている。しかし、HP感染者の9割以上は胃がんを発症しないことから、HP感染下に胃がん発症リスクを増大させる他の要因があることが考えられる。久山町研究での検討結果から、その要因の1つに糖代謝異常が示唆されることを、第52回日本癌治療学会学術総会(2014年8月28日~30日、横浜市)にて、九州大学大学院医学研究院環境医学分野の池田 文恵氏が紹介した。 わが国において、胃がんは年齢調整死亡率が低下しているとはいえ、罹患率で見れば男性で1位、女性で2位と、いまだに発症頻度の高いがんである(注:結腸がんと直腸がんを併せて大腸がんとした場合、女性では大腸がんが2位、胃がんは3位)。それゆえ、リスクファクターを明らかにして予防につなげることは重要である。 HP感染は胃がんの危険因子であり、久山町研究においても、HP抗体陽性者は陰性者に比べて、胃がん罹患率が男女とも約2倍と有意に高い。また、HP感染の疑いが強い住民(HP抗体陽性かつペプシノゲン法陽性)における20年間の胃がんの累積罹患率は7.4%と高い。  しかし、この結果はまた、HP感染者の9割以上は胃がんに罹患していないということを示す。池田氏は、HP感染は胃がん発症の十分条件ではなく、他の要因が重なることで発症リスクが増大するのではないかと考察し、その要因の1つとして糖代謝異常について検討した。 わが国では糖尿病患者が急増しており、久山町の男女においても、糖代謝異常(空腹時血糖異常、耐糖能異常、糖尿病)が増加してきている。わが国のプール解析では、大腸がん、肝臓がん、すい臓がんでは糖尿病との関連が報告されているが、胃がんとの関連は明確ではない。国内外の他のコホート研究でも関連性の結果は分かれている。 久山町の疫学調査データにおける検討では、40歳以上の住民2,466人を空腹時血糖レベルで3群(94mg/dL以下、95~104mg/dL、105mg/dL以上)に分け、胃がん発症ハザード比をみたところ、空腹時血糖と胃がん発症との関連が認められた。さらに、HP抗体の有無別にその関連を検討したところ、HP抗体陽性者は空腹時血糖と胃がん発症との間に関連が認められたが、HP抗体陰性者では同関連は認められなかった。 また池田氏は、慢性的な高血糖が胃がん発症に与える影響を調べるため、40歳以上の住民2,603人をHbA1cレベルで4群(JDS値:4.9%以下、5.0~5.9%、6.0~6.9%、7.0%以上)に分け14年間追跡した。その結果、HbA1c 5.0~5.9%群に比べ、6.0~6.9%、7.0%以上の群で胃がん発症のハザード比が有意に上昇し、HbA1cにおいても胃がん発症との関連が認められた。さらに、対象者をHbA1cレベル(6.0%未満もしくはそれ以上)とHP抗体の有無で4群に層別し、胃がん発症のハザード比を検討したところ、HbA1c高値かつHP抗体陽性群で、相乗的に胃がん発症のリスクが上昇することが示された。 これらの結果から、池田氏は「比較的低いレベルの血糖上昇から胃がん発症のリスクが上昇する可能性があること、また、HP感染に慢性的な高血糖が加わることで、胃がん発症リスクがさらに上昇することが示唆される」と述べ、「HP感染および高血糖・糖尿病は胃がんの危険因子の1つであり、両者の間に相乗効果があることが示唆される」とまとめた。

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