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体形とうつ病発症リスクとの関連

 肥満はうつ病と関連しているといわれている。肥満の一般的な指標としてBMIが用いられるが、BMIは身長と体重を組み合わせた指標である。そのため、体の寸法やサイズのどの部分が最も関連しているかはよくわかっていない。米国・トゥルーマン州立大学のJeffrey R. Vittengl氏は、体形とうつ病との関連について検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2019年3月5日号の報告。 妊娠していない20歳以上の成人2万3,739例を対象に、2007~16年の国民健康栄養調査のデータより分析を行った。年齢、性別、民族性、社会経済的地位でコントロールしたうえで、抑うつ症状と体形変数との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・身長ではなく、体重とBMIが抑うつ症状の予測因子であった。・比較的高い体重またはBMIを有する成人(女性の上位約30~40%、男性の上位約10%)は、性別内において実質的に抑うつ症状(d≧0.20)の有症率が高かった。・女性(BMI≧30)および男性(BMI≧36)におけるうつ症状の増加を予測するBMIの範囲は、それぞれ標準的な過体重や肥満の定義よりも高かった。 著者らは「本研究は、横断的観察研究であり、体重とうつ病との潜在的な因果関係を明らかにするためには、今後縦断的および実験的な研究が必要である。また、他の体形変数もうつ病を予測する可能性がある」としながらも「抑うつ症状の予測因子である体重に関して、BMIのような身長により調整されていない体重に重点を置いた評価が、うつ病の予防や治療を改善するかどうかを確認する必要がある」としている。■関連記事抗うつ薬誘発性体重増加のレビュー、その結果はセロトニンの役割、摂食障害や肥満治療への期待肥満と認知症リスク

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日本抗加齢医学会がウェブマガジン創刊

 一般社団法人 日本抗加齢医学会(理事長:堀江 重郎)は、「学術総会の発表内容」や「学会誌コンテンツ」、同学会の特徴である8つの専門領域分科会(日本抗加齢医学会の専門分科会:眼抗加齢医学研究会、抗加齢歯科医学研究会、見た目のアンチエイジング研究会、抗加齢ウィメンズヘルス研究会、抗加齢内分泌研究会、泌尿器抗加齢医学研究会、脳心血管抗加齢研究会、運動器抗加齢研究会)で話題となっているトピックスを広く発信することを目的に4月1日(月)にウェブマガジンを創刊した。 日本抗加齢医学会のウェブマガジン名は『ACTION!』(www.anti-aging.gr.jp/action)。 日本抗加齢医学会のウェブマガジンは、誰でも上記のページにアクセスすることで、閲覧することができる。主に日本抗加齢医学会の学会員のみで共有されていた情報を発信 日本抗加齢医学会は「人がハツラツと生きることで、進化し続けられる社会を作りたい。そのために、今、動き出そう」という思いを込め創刊に至ったとその動機を語る。医療従事者だけでなく、サイトに訪れたすべての方のお役に立てるよう、今後も情報を発信するとしている。 ウェブマガジンの特徴としては、次の内容などが公開されている。・日本抗加齢医学会の学術総会の発表内容や学会誌コンテンツなど、これまで主に学会員のみで共有されていた抗加齢医学に関する情報を発信・日本抗加齢医学会の学会認定医や指導士といった資格がもたらす、医療現場へのメリットを当該資格保持者の「声」として紹介・自らの人生でアンチエイジングを実践する日本抗加齢医学会の学会員のエピソードをコラム形式で紹介

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卵の摂取量増加で、心血管疾患発症や死亡が増加?/JAMA

 米国成人において、食事性コレステロールまたは卵の摂取量増加は、用量反応的に心血管疾患(CVD)発症および全死因死亡リスクの上昇と有意に関連していることが確認された。米国・ノースウェスタン大学のVictor W. Zhong氏らが、Lifetime Risk Pooling Projectの6つのコホートデータを用いた解析結果を報告した。コレステロールは、ヒトの食事における一般的な栄養素で、卵は食事性コレステロールの重要な源であるが、食事性コレステロール/卵の摂取量がCVDおよび死亡と関連しているかどうかについては、なお議論が続いている。著者は今回の結果について、「食事ガイドラインの作成・改訂の際に考慮されるべきである」とまとめている。JAMA誌2019年3月19日号掲載の報告。食事性コレステロール/卵の摂取量とCVD発症/死亡リスクの関連を評価 研究グループは、1985年3月25日~2016年8月31日の期間に収集された、米国の6つの前向きコホート研究における参加者個々のデータを統合した。自己報告の食事摂取に関するデータは、標準的プロトコルを用いて調整し、食事性コレステロール(mg/日)または卵の摂取量(個/日)を算出した。 主要評価項目は、人口統計学的、社会経済的および行動的要因を調整した、CVD発症(致死的/非致死的冠動脈心疾患・脳卒中・心不全・他のCVD死亡の複合)と全死因死亡に関する全追跡調査期間にわたるハザード比(HR)および絶対リスク差(ARD)で、コホートで層別化した原因別ハザードモデルおよび標準比例ハザードモデルを用いて解析した。卵の摂取量が半分増加した場合でも有意な関連 本解析には合計2万9,615例が組み込まれ、平均[±SD]年齢はベースライン時51.6±13.5歳、1万3,299例(44.9%)が男性で、9,204例(31.1%)が黒人であった。 追跡期間中央値17.5年(四分位範囲:13.0~21.7、最大31.1)において、CVDイベント発症が5,400例、全死因死亡が6,132例認められた。 1日当たりの食事性コレステロール摂取量が300mg増加した場合、CVD発症(補正後HR:1.17[95%信頼区間[CI]:1.09~1.26]、補正後ARD:3.24%[95%CI:1.39~5.08])および全死因死亡(補正後HR:1.18[95%CI:1.10~1.26]、補正後ARD:4.43%[95%CI:2.51~6.36])のリスク上昇と有意な関連が認められた。 1日当たりの卵の摂取量が半分(2分の1個、卵1個を3~4回/週または3~4個/週)増加した場合でも、同様に有意な関連が認められた(CVD発症の補正後HR:1.06[95%CI:1.03~1.10]、補正後ARD:1.11%[95%CI:0.32~1.89]、全死因死亡の補正後HR:1.08[95%CI:1.04~1.11]、補正後ARD:1.93%[95%CI:1.10~2.76])。ただし、食事性コレステロール摂取量を補正後は、卵の摂取量とCVD発症(補正後HR:0.99[95%CI:0.93~1.05]、補正後ARD:-0.47%[95%CI:-1.83~0.88])および全死因死亡(補正後HR:1.03[95%CI:0.97~1.09]、補正後ARD:0.71%[95%CI:-0.85~2.28])との間に、有意な関連は確認されなかった。 著者は研究の限界として、食事摂取に関するデータが自己報告であること、全コホートが異なる食事評価法を使用していたこと、観察研究のため因果関係については立証できないことなどを挙げている。

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日本人の食事摂取基準2020年版、フレイルが追加/厚労省

 2019年3月22日、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の報告書とりまとめを了承した。昨年4月より策定検討会にて議論が重ねられた今回の食事摂取基準は、2020年~2024年までの使用が予定されている。策定検討会の構成員には、日本糖尿病学会の理事を務める宇都宮 一典氏や日本腎臓学会理事長の柏原 直樹氏らが含まれている。日本人の食事摂取基準(2020年版)の主な改定ポイントは? 日本人の食事摂取基準(2020年版)の改定では、2015年版をベースとしつつ、『社会生活を営むために必要な機能の維持および向上』を策定方針とし、これまでの生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病)の重症化予防に加え、高齢者の低栄養・フレイル防止を視野に入れて検討がなされた。主な改定点として、・高齢者を65~74歳、75歳以上の2つに区分・生活習慣病における発症予防の観点からナトリウムの目標量引き下げ・重症化予防を目的としてナトリウム量やコレステロール量を新たに記載・フレイル予防の観点から高齢者のタンパク質の目標量を見直しなどが挙げられる。日本人の食事摂取基準(2020年版)、まずは総論を読むべし 報告書やガイドラインなどを活用する際には、まず、総論にしっかり目を通してから、各論や数値を理解することが求められる。しかし、メディアなどは総論を理解しないまま数値のみを抜粋して取り上げ、問題となることがしばしばあるという。これに対し、策定検討会のメンバーらは「各分野のポイントが総論だけに記載されていると、それが読まれずに数値のみが独り歩きし、歪んだ情報が流布されるのではないか」と懸念。これを受け、日本人の食事摂取基準(2020年版)の総論には、“同じ指標であっても、栄養素の間でその設定方法および活用方法が異なる場合があるので注意を要する”と記載し、総論以外にも各項目の目標量などがどのように概算されたのかがわかるように『各論』を設ける。メンバーらは「各指標の定義や注意点はすべて総論で述べられているため、これらを熟知したうえで各論を理解し、活用することが重要である」と、活用方法を強調した。 以下に日本人の食事摂取基準(2020年版)の各論で取り上げられる具体的な内容を抜粋する。タンパク質:高齢者におけるフレイルの発症予防を目的とした量を算定することは難しいため、少なくとも推奨量以上とし、高齢者については摂取実態とタンパク質の栄養素としての重要性を鑑みて、ほかの年齢区分よりも引き上げた。また、耐容上限量は、最も関連が深いと考えられる腎機能への影響を考慮すべきではあるが、基準を設定し得る明確な根拠となる報告が十分ではないことから、設定しなかった。脂質:コレステロールは、体内でも合成される。そのために目標量を設定することは難しいが、脂質異常症および循環器疾患予防の観点から過剰摂取とならないように算定が必要である。一方、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい。炭水化物:炭水化物の目標量は、炭水化物(とくに糖質)がエネルギー源として重要な役割を担っていることから、アルコールを含む合計量として、タンパク質および脂質の残余として目標量(範囲)を設定した。ただし、食物繊維の摂取量が少なくならないように、炭水化物の質に留意が必要である。脂溶性ビタミン:ビタミンDは、多くの日本人で欠乏または不足している可能性があるが、摂取量の日間変動が非常に大きく、摂取量の約8割が魚介類に由来し、日照でも産生されるという点で、必要量を算出するのが難しい。このため、ビタミンDの必要量として、アメリカ・カナダの食事摂取基準で示されている推奨量から日照による産生量を差し引いた上で、摂取実態を踏まえた目安量を設定した。ビタミンDは日照により産生されるため、フレイル予防を図る者を含めて全年齢区分を通じて可能な範囲内での適度な日照を心がけるとともに、ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要である。日本人の食事摂取基準(2020年版)改定の後には高齢化問題が深刻さを増す 日本では、2020年の栄養サミット(東京)開催を皮切りに、第22回国際栄養学会議(東京)や第8回アジア栄養士会議(横浜)などの国際的な栄養学会の開催が控えている。また、日本人の食事摂取基準(2020年版)改定の後には団塊世代が75歳以上になるなど、高齢化問題が深刻さを増していく。 このような背景を踏まえながら1年間にも及ぶ検討を振り返り、佐々木 敏氏(ワーキンググループ長、東京大学大学院医学系研究科教授)は、「理解なくして活用なし。つまり、どう活用するかではなく、どう理解するかのための普及教育が大事。食事摂取基準ばかりがほかの食事のガイドラインよりエビデンスレベルが上がると、使いづらくなるのではないか。そうならないためにも、ほかのレベルを上げて食事摂取基準との繋がり・連携を強化するのが次のステージ」とコメントした。また、摂取基準の利用拡大を求めた意見もみられ、「もっと疾患を広げるべき。次回の改定では、心不全やCOPDも栄養が大事な要素なので入れていったほうがいい。今回の改定では悪性腫瘍が入っていないが、がんとともに長生きする時代なので、実際の現場に合わせると病気を抱えている方を栄養の面でサポートすることも重要(名古屋大学大学院医学系研究科教授 葛谷 雅文氏)」、「保健指導の対象となる高血糖の方と糖尿病患者の食事療法のギャップが、少し埋まるのではと期待している。若年女性のやせ、骨粗鬆症も栄養が非常に影響する疾患なので、次の版では目を向けていけるといい(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲氏)」、など、期待や2025年以降の改定に対して思いを寄せた。座長の伊藤 貞嘉氏(東北大学大学院医学系研究科教授)は、「構成員のアクティブな発言によって良い会・良いものができた」と、安堵の表情を浮かべた。 なお、厚労省による報告書(案)については3月末、パブリックコメントは2019年度早期に公表を予定している。

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偽性副甲状腺機能低下症〔PHP:pseudohypoparathyroidism〕

1 疾患概要■ 概念・定義副甲状腺ホルモン(PTH)に対する不応性のために、低カルシウム血症、高リン血症などの副甲状腺機能低下症と同様な症状を呈する疾患である。血中PTH濃度は異常高値となる。ホルモン受容機構を構成するオルブライト遺伝性骨ジストロフィー(Albright’s hereditary osteodystrophy:AHO)と呼ばれる症候を合併する病型をIa型、合併しないものをIb型と呼ぶ。■ 疫学わが国における本症の患者数は約400人と推計されている。性差はない。■ 病因PTH受容体はG蛋白カップリング型受容体である。その細胞内シグナルはα、β、γのサブユニットから構成されるGsタンパク質を介して、アデニル酸シクラーゼの活性化によりサイクリックAMP(cAMP)を生成する系に伝えられる。偽性副甲状腺機能低下症のPTH不応性の原因はGsαタンパク質の機能低下である。Gsαタンパク質の発現は組織特異的インプリンティングを受けており、腎近位尿細管、下垂体、甲状腺、性腺などでは母由来アレル優位となっている。一方、骨、脂肪組織を含む他の大部分の組織では、父由来アレルと母由来アレルから同量のGsαタンパク質が産生される。Gsαタンパク質はGNAS遺伝子によってコードされている。組織特異的インプリンティングの維持にはGNAS遺伝子の転写調節領域のCpGメチル化状態が重要であり、アレルの親由来によってその状態が異なっていることが知られている。Ia型は、母由来のGNAS遺伝子アレルに変異が生じて正常なタンパク質が産生されない場合に起こる、常染色体顕性の母系遺伝である。すなわち、PTHの主たる標的組織である腎近位尿細管では、母由来の変異が主に発現するためにPTH不応となって低カルシウム血症、高リン血症を呈している。同様に、母由来アレル優位である甲状腺、下垂体、性腺においても甲状腺刺激ホルモン(TSH)不応による原発性甲状腺機能低下症、ゴナドトロピン不応による原発性性腺機能障害、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)不応による成長ホルモン分泌不全などが発症することがある。AHOは骨や脂肪組織などの非インプリンティング組織の異常であるが、正常Gsαタンパク質発現量の半減(ハプロ不全)によるものと考えられる。実際、父由来のGNAS遺伝子アレル変異の場合、血清カルシウム濃度は正常であるが、AHOを呈し、偽性偽性副甲状腺機能低下症と呼ばれている。Ib型では、組織特異的インプリンティングに重要なGNAS遺伝子の転写調節領域のメチル化状態における異常(エピジェネティック変異)が関連している。母由来アレルにこの異常が生じると、インプリンティング組織ではGsαタンパク質発現が減少するが、非インプリンティング組織ではこの影響を受けないので、AHOを合併しない。■ 症状1)低カルシウム血症に伴う症状口周囲や手足のしびれ、テタニー、痙攣、意識障害を呈することがある。これらの症状は、小児期以降から成人期に出現することが多く、Ib型の主訴として受診することが多い。2)AHOIa型では、低身長、円形顔貌、肥満、短指趾症、軟部組織の異所性骨化、歯牙低形成、知的障害を特徴とするAHOを認める症例が多く、診断のきっかけになる。3)他のホルモン異常TSH不応性は最も多く認められるホルモン異常で、Ia型の80~90%、Ib型の約40%にみられる。先天性甲状腺機能低下症として、偽性副甲状腺機能低下症より先に診断されることがある。ゴナドトロピン不応性による月経異常、不妊症、GHRH不応性による成長ホルモン分泌不全を呈することがある。以上のホルモン異常は、Ia型での報告が多いが、Ib型でも認められる。■ 予後基本的に低カルシウム血症の治療は、生涯、活性型ビタミンD製剤の服用を必要とする。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)本症は指定難病に認定されており、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「ホルモン受容機構異常に関する調査研究」班によって作成された診断基準と重症度分類(表)が使用されている。表 診断基準と重症度分類A.症状1.口周囲や手足などのしびれ、錯感覚2.テタニー3.全身痙攣B.検査所見1.低カルシウム血症、正または高リン血症2.eGFR 30mL/min/1.73m2以上3.Intact PTH 30pg/mL以上C.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。ビタミンD欠乏症*血清25水酸化ビタミンD(25[OH]D)が15ng/mL以上であってもBの検査所見であること。25(OH)Dが15ng/mL未満の場合には、ビタミンDの補充などによりビタミンDを充足させた後に再検査を行う。D.遺伝学的検査1.GNAS遺伝子の変異2.GNAS遺伝子の転写調節領域のDNAメチル化異常<診断のカテゴリー>Definite:Aのうち1項目以上+Bのすべてを満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外し、Dのいずれかを満たすもの。Probable:Aのうち1項目以上+Bのすべてを満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの。Possible:Aのうち1項目以上+Bのすべてを満たすもの。<重症度分類>下記を用いて重症を対象とする。重症:PTH抵抗性による低カルシウム血症に対して薬物療法を必要とすることに加え、異所性皮下骨化、短指趾症、知能障害により日常生活に制約があるもの。中等症:PTH抵抗性による低カルシウム血症に対して薬物療法を必要とするもの。軽症:とくに治療を必要としないもの。※診断基準および重症度分類の適応における留意事項1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見などに関して、診断基準上に特段の規定がない合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状などであって、確認可能なものに限る)。2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6ヵ月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。3.なお、症状の程度が上記の重症度分類などで一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。原発性副甲状腺機能低下症との鑑別が必要な場合や、ビタミンD欠乏症との鑑別が困難な場合にはEllsworth-Howard試験を行う。同試験はPTHに対する腎の反応性(尿中リン酸増加反応とcAMP増加反応)を指標にするものである。尿中cAMP増加反応が正常にもかかわらず尿中リン酸増加反応の低下がある場合、Gタンパク質より下流のシグナル伝達障害に起因するII型偽性副甲状腺機能低下症とする考えがあるが、ビタミンD欠乏症、尿細管障害でも同様の所見がみられるため論議のあるところである。Ia型でAHOを欠いたり、Ib型でもAHOを認めたりする症例があるので、臨床像のみから分子遺伝的異常を断定することは困難である。遺伝学的検査は、指定難病の認定に必須ではないが、両者の分子生物学的診断にはきわめて有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法低カルシウム血症に対しては、Ca補充と活性型ビタミンD製剤投与を行う。血清カルシウム正常化と高カルシウム尿症を来さないようにする。TSH不応性による甲状腺機能低下症を合併する場合には甲状腺ホルモン薬の補充療法、ゴナドトロピン不応症には性ホルモン補充療法、GHRH不応性による成長ホルモン分泌不全を合併する場合には成長ホルモン投与を行う。■ 手術療法異所性皮下骨化は運動制限、生活制限の原因となる場合、外科的切除の適応になることがあるが、同一部位に再発することもある。4 今後の展望臨床的にも分子遺伝学的にも大変興味深い疾患である。インプリンティングの組織特異性を規定する因子、機序は不明である。また、GNAS遺伝子メチル化異常を来す孤発例のエピジェネティック変異の大部分は原因が不明である。さらに、II型の実態は不明で概念的なものにとどまっている。以上の課題に関して、今後の研究の進展が期待される。5 主たる診療科小児科、内分泌内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 偽性副甲状腺機能低下症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)皆川真規. 最新医学. 2016;71:1930-1935.2)佐野伸一朗. 医学のあゆみ. 2017;263:307-312.公開履歴初回2019年3月26日

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心血管イベント抑制を確認、ACLY遺伝子変異/NEJM

 ATPクエン酸塩リアーゼ阻害薬やHMGCR阻害薬(スタチン)と似たような作用を持つ遺伝子変異が確認された。同様の作用メカニズムで血漿LDLコレステロール値を下げると考えられ、心血管疾患のリスクに対しても同様の影響を示すという。英国・ケンブリッジ大学のBrian A. Ference氏らが、メンデルランダム化解析により明らかにした。ATPクエン酸塩リアーゼは、スタチンがターゲットとする3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMGCR)のコレステロール生合成経路の上流に存在する酵素であるが、ATPクエン酸塩リアーゼの遺伝子阻害が有害転帰と関係するのかは不明であった。また、LDLコレステロール値の1単位低下当たりの影響がHMGCRの遺伝子阻害と同様であるのかも明らかになっていなかった。NEJM誌2019年3月14日号掲載の報告。ACLYスコアとHMGCRスコアを作成し、心血管イベントやがんとの関連を評価 研究グループは、ATPクエン酸塩リアーゼ阻害薬とHMGCR阻害薬(スタチン)の作用を模倣する操作変数として、ATPクエン酸塩リアーゼをコードする遺伝子(ACLY)における遺伝子変異と、HMGCRにおける遺伝子変異からなる遺伝子スコアをそれぞれ作成した。 作成したACLYスコアおよびHMGCRスコアと、血漿脂質値、リポ蛋白値との関連を比較し、また、心血管イベントリスクやがんリスクとの関連についても比較した。心血管イベントリスクへの影響は同様 解析には、総計65万4,783例の被験者データが包含された。そのうち10万5,429例が主要心血管イベントを発症した被験者であった。 ACLYスコアとHMGCRスコアは、血漿脂質値およびリポ蛋白値の変化のパターンとの関連が同様であった。また、LDLコレステロール値の10mg/dL低下における心血管イベントリスクへの影響も同様であった。心血管イベントのオッズ比(OR)は、ACLYスコアが0.823(95%信頼区間[CI]:0.78~0.87、p=4.0×10-14)、HMGCRスコアは0.836(95%CI:0.81~0.87、p=3.9×10-19)であった。 ATPクエン酸塩リアーゼおよびHMGCRの生涯性遺伝子阻害はともに、がんリスク増大との関連はみられなかった。

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診療科別、サービス残業の実情

 ケアネットでは2019年3月、会員医師約1,000人を対象に「医師の働き方改革」に関するアンケートを実施した。前編では、医師たちの時間外労働の現状と規制への賛成・反対意見について結果を報告している。今回は、支払いのない時間外勤務“サービス残業”の実態について、アンケート結果を発表する。内科系でも「長時間ある」という回答が多い診療科も “サービス残業”だと感じている時間数について尋ねたところ、“なし”と答えた医師は21.2%。50%以上の医師が毎週少なくとも6時間以上のサービス残業はあると感じており、19.5%は週20時間以上がサービス残業になっていると回答した。 また診療科別にこの結果をみたところ、それぞれ異なる分布がみられた。週20時間以上と答えた医師が最も多かったのは脳神経外科(33.3%)で、総合診療科(30.8%)、糖尿病・代謝・内分泌科(28.6%)と続いている。“なし”と答えた医師が最も多かったのは眼科(52.9%)。次いで、精神科(38.3%)、産婦人科(37.5%)という結果となった。産婦人科は一方で、週20時間以上と回答した医師も比較的多い(20.8%)。なぜ“サービス”になっているのか サービス残業になっている理由についてたずねたところ、最も多かったのは「慣例的に申告しない、あるいは申告しづらい雰囲気があるため」という回答。また、自由記述では労働時間管理自体が機能していないと考えられる回答も散見された。長く続いてきた“当たり前”という雰囲気があることや、どんな時間外勤務に申告や支払いが必要かという取り決めが整理・周知されていないことなどが推察される。 年代別・病床数別の回答や、自由記述で挙げられた具体的な理由など、詳細なデータはCareNet.comに掲載中。■関連記事申告や支払いなしの残業ゼロへ、労務管理の徹底求める~働き方改革残業年960時間、特例2,000時間の中身とは~厚労省から水準案宿日直や自己研鑽はどう扱う?~医師の働き方改革「働き方改革」は医師を救う?勤務医1,000人のホンネと実情

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サービス残業はどのくらい? 医師1,000人に聞きました

働き方改革が推進されることで、労働時間管理が行われるようになり、時間外割増賃金もきちんと支払われるようになる―。厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」では、改革による勤務医の働き方の変化の1つとして上記を提示しています。現状、先生方が「サービス残業だ」と感じている時間はどのくらいあるのでしょうか。ケアネットでは、CareNet.com会員医師約1,000人に、その実情をお聞きしました。時間外労働規制への意見についてまとめた結果は前編にて公開中です。結果概要約20%の医師が“サービス残業”週20時間以上と回答「週何時間程度が“サービス残業になっている”と感じているか」という問いに対し、最も多い20時間以上と回答したのは19.5%。1日の法定労働時間が8時間であることを考えると、週に2日分以上がサービス残業だと感じているという過酷な現状がうかがえる。画像を拡大するさらに、現在の時間外労働時間数別にその結果をみると、年1,860時間を超える医師の71.2%が、週20時間以上がサービス残業になっていると回答している。画像を拡大する年代、勤務先の病床数や診療科別にみると…?年代別にみると、やはり20~30代の若い世代でより長い傾向がみられ、20代では「サービス残業はない」と回答した医師は4.5%に留まっている。病床数別では、200床以上で長く、逆に「ない」と答えた割合は0床が最も多かった(43.2%)。しかしどの規模の病院でも、それぞれ一定数サービス残業が「ない」医師も、「長時間ある」医師もいる状況がうかがえる結果となった。画像を拡大する画像を拡大する診療科別では、サービス残業が「ない」と答えた医師は、眼科(52.9%)、精神科(38.3%)、産婦人科(37.5%)などで多かった。一方で、「週20時間以上」と答えた医師は、脳神経外科(33.3%)で最も多く、総合診療科(30.8%)、糖尿病・代謝・内分泌科(28.6%)と続いている。サービス残業になっている時間が週5時間以下(49.3%)と、6時間以上(50.7%)で区切ると、眼科、精神科、皮膚科などでサービス残業がない・あるいは少ないと答えた医師が多く、臨床研修医、血液内科、糖尿病・代謝・内分泌内科などでサービス残業が多いと答えた医師が多かった(図は週5時間以下/6時間以上で区切り、降順)。画像を拡大する最も多い理由は“慣例・雰囲気”「サービス残業となっている理由」については、50.8%が「慣例的に申告しない、あるいは申告しづらい雰囲気があるため」と回答。27.5%は「裁量労働制、あるいは年棒制のため」と回答し、「申告したが、認められなかったため」と答えた医師も7.8%であった。「その他」の自由記述では、「管理職のため」という回答のほか、「大学病院のため勉強とみなされる」「研究・教育のため(臨床業務でないから)」といった自己研鑽との線引きの問題が散見された。また、そもそも「勤務時間が決められていない。時間外は手術以外支払いがない」「申告の仕方を聞いたことがなく、申告する制度があるかどうかもわからない」といった労働時間管理そのものが機能していないと考えられる回答や、「時間外勤務の申告に上限がある」「申告しても圧縮される」「研修医には時間外が付かない仕組みになっている」など、理不尽に申告を制限されてしまうような状況がうかがわれる回答もみられた。画像を拡大する設問詳細※Q1~Q5の結果については、前編に掲載中。Q1.勤務先の病院についてお教えください一次救急医療機関(軽症・帰宅可能患者対応、休日夜間急患センター)二次救急医療機関(中等症~重症・一般病棟入院患者対応、当番制)三次救急医療機関(重症~危篤・ICU入院患者対応、救命救急センター)それ以外Q2.時間外労働時間について、検討会で示されている下記枠組みのうち、先生はどちらにあてはまりますか※1日8時間・週40時間(=5日)勤務を基準として、当直を含む時間外労働時間の合計としてあてはまるものを選択ください月45時間未満・年360時間以下(≒週7時間)月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)上記を超えるQ3.時間外上限規制について現状提案されている、原則「月45時間・年360時間」、臨時的な必要がある場合に「月100時間未満・年960時間以下」、特例として指定された医療機関(および一定期間集中的な技能習得が必要な医師)では「月100時間未満・年1,860時間以下」に、賛成ですか?反対ですか?賛成どちらかといえば賛成どちらかといえば反対反対Q4.Q3の回答について理由をお教えください(自由記述)Q5.上記には「アルバイトの勤務時間も含まれる」ことを知っていましたか?知っていた知らなかったQ6.現状、週何時間程度が“サービス残業になっている”と感じていますか?なし1~5時間6~10時間11~20時間20時間以上Q7.Q6でサービス残業となっている理由をお教えください申告したが、認められなかったため慣例的に申告しない、あるいは申告しづらい雰囲気があるため裁量労働制、あるいは年棒制のためその他(自由記述)画像を拡大する

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スタチン治療とうつ病リスク

 スタチン治療によるうつ病発症リスクへの影響は、よくわかっていない。デンマーク・オーフス大学のOle Kohler-Forsberg氏らは、20年間のフォローアップを行ったコホート研究におけるスタチン治療とうつ病との関連を評価した。Journal of Affective Disorders誌2019年3月1日号の報告。 1920~83年に生まれたデンマーク人を対象に、1996~2013年のスタチン治療患者(スタチン群)を特定した。いくつかの潜在的な交絡因子を考慮し、年齢、性別、傾向スコアに基づきスタチン群に非スタチン群をマッチさせた。スタチン治療と抗うつ薬処方、他の薬剤処方、精神科病院でのうつ病診断、心血管死亡率、全死因死亡率との関連を調査するため、Cox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・スタチン群19万3,977例および非スタチン群19万3,977例を対象に、262万1,282人年フォローアップを行った。・スタチン使用と関連していた項目は以下のとおり。●抗うつ薬使用リスクの増加(ハザードレート比[HRR]:1.33、95%信頼区間[CI]:1.31~1.36)●他の薬剤使用リスクの増加(HRR:1.33、95%CI:1.31~1.35)●うつ病診断率の増加(HRR:1.22、95%CI:1.12~1.32)●抗うつ薬使用で調整していない場合におけるうつ病診断率の増加(HRR:1.07、95%CI:0.99~1.15)●心血管死亡率の減少(HRR:0.92、95%CI:0.87~0.97)●全死因死亡率の減少(HRR:0.90、95%CI:0.88~0.92) 著者らは「スタチン治療と抗うつ薬使用との関連性は非特異的であり、他の薬剤と同様であった。また、スタチン使用とうつ病診断との関連は、残余交絡、バイアスまたはスタチン治療による医師の診断頻度により影響を受けることが示唆された」としている。■関連記事うつ病や自殺と脂質レベルとの関連スタチンと認知症・軽度認知障害リスクに関するメタ解析非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か

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スタチン長期投与患者でbempedoic acidが有益/NEJM

 TPクエン酸リアーゼ阻害薬bempedoic acid(ベンペド酸)の安全性/有効性を評価した、52週間の無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「CLEAR Harmony試験」の結果が、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKausik K. Ray氏らにより発表された。最大耐用量のスタチンへのベンペド酸の追加により、プラセボと比較して有害事象の発現が増加することなく、LDLコレステロール値が有意に低下したという。これまで短期試験では、ベンペド酸によりLDLコレステロール値が低下することが示唆されていたが、ガイドラインで推奨されるスタチン療法を長期にわたって受けている高コレステロール血症患者への、ベンペド酸投与の安全性と有効性に関するデータは限られていた。NEJM誌2019年3月14日号掲載の報告。スタチン療法中の患者にベンペド酸を追加、長期安全性/有効性を評価 CLEAR Harmony試験は、2016年1月18日~2018年2月21日に、5ヵ国114施設において実施された。 対象は、アテローム動脈硬化性心血管疾患またはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症、あるいはその両方を有する患者で、最大耐用量のスタチン療法±脂質低下療法を受けているがLDLコレステロール値が70mg/dL以上の患者を適格とし、ベンペド酸群とプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けた。最大耐用量スタチン療法は、患者が継続できた最大強度のスタチンレジメンとし、担当医が判定した。 主要評価項目は安全性とし、主要副次評価項目(主要有効性評価項目)は、52週間試験における12週時のLDLコレステロール値の変化率とした。安全性の解析には記述統計を用い、有効性は共分散分析(ANCOVA)を用いて解析した。ベンペド酸の上乗せは有効で、安全性プロファイルも良好 2,230例が登録され、そのうち1,488例がベンペド酸群、742例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。ベースラインの平均(±SD)LDLコレステロール値は、103.2±29.4mg/dLであった。 介入期間中における有害事象発現率は、ベンペド酸群78.5%(1,167/1,487例)プラセボ群78.7%(584/742例)、重篤な有害事象発現率はそれぞれ14.5%、14.0%で、いずれも両群で大きな差はなかった。しかし、投与中止に至った有害事象の発現率は、ベンペド酸群がプラセボ群よりも高く(10.9% vs.7.1%)、痛風の発現率もベンペド酸群が高値であった(1.2% vs.0.3%)。 12週時点で、ベンペド酸群は、平均LDLコレステロール値が19.2mg/dL低下し、ベースラインからの変化率は-16.5%であった。プラセボ群のベースラインからの変化率との差は-18.1ポイント(95%信頼区間[CI]:-20.0~-16.1)で、有意差が認められた(p<0.001)。安全性および有効性のアウトカムは、併用していたスタチン療法の強度にかかわらず一貫していた。

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すぐに「忘れた」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第27回

■外来NGワード「忘れないようにしなさい!」(具体的な方法を提示しない)「認知症でもないのに、なぜ覚えていないんですか!」(病気を引き合いに責める)「どこかにメモを書いておきなさい!」(指導後のフォローがない)■解説 認知症でもないのに、外来で何度説明しても、言ったことを忘れてしまう患者さんがいます。せっかく定期的に通院していても、指導内容をすぐ忘れてしまうようでは患者さんのためにもなりません。「記憶のモダリティ効果」というのをご存じでしょうか。これは、新しい情報が視覚的に提示されるか、聴覚的に提示されるか、それとも両方かによって、記憶の保持に差異がみられるというものです。記憶に残る割合は、たとえば、患者さんに文章などを渡して文字を“読む”なら10%、療養指導などの説明を“聞く”なら20%、スライドなどの文字と絵を“見る”なら30%、糖尿病教室やテレビなどで絵や動画を“見ながら聞く”なら50%が目安といわれています。さらに記憶に残るのは、患者さん自身に発声してもらうこと、書いてもらうことです。「糖尿病連携手帳」などに、医師や看護師がHbA1c値を記入するより、患者さん自身に記入してもらったほうが認知度が高いと思いませんか? 運動療法などは、実際にその場で練習・体験してもらうのも良い方法です。そして、何より一番良い方法は、聞いた内容を人に伝えることです。患者さんが、指導内容を人に教えたくなるようなひと言を添えてみましょう。患者さんの記憶に残るような療養指導を心掛けたいものですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師“糖尿病連携手帳”はお持ちですか?患者ああ、持っています。(かばんから取り出す)医師ここに、HbA1cという項目がありますね。患者はい、これですね。医師この検査値は、過去1~2ヵ月間の平均血糖値を反映しています。別名、「隠れ食いがバレる検査」とも言われています。患者えっ、どういうことですか?医師採血がある外来受診の直前に焦って、食事を控えたり、運動したりして血糖値を下げようとしますよね? ところが、その日の血糖値は下がっても、過去の血糖値を示すHbA1c値は下がらないので、それまでサボったり、間食をしていたりしたのかも、ということがわかってしまうんです。患者そうなんですか。知らなかったです…。医師そのことを知らずに、バレていないと思っている患者さんも多いですよ。患者先生、私のHbA1cはどのくらいですか?医師前回と同じで、7.5%です。合併症を予防するための目標値は7%未満なので、あと少し頑張らないとですね。患者ふむ…(手帳に書き込む)、わかりました。糖尿病の友達にも、このことを教えておきます!■医師へのお勧めの言葉「HbA1c値は、別名、隠れ食いがバレる検査なんて言われています」「そのことを知らない患者さんも多いですよ」

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展望とトピックス-第83回日本循環器学会学術集会

 第83回日本循環器学会学術集会(JCS2019)が2019年3月29~31日の3日間、横浜市にて開催される(会長:東京大学大学院医学系研究科循環器内科 小室 一成氏)。今年のテーマは、「循環器病学Renaissance-未来医療への処方箋-」。循環器に関わるさまざまな問題解決のための戦略と、これからの方向性を示すことを目的としている。海外応募含む2,194題が採択、JCSによる新しい取り組みとは? 世界の死亡率1位は、“がん”ではない-心筋梗塞なのである。現在、日本における主要死因別死亡数の1位はがんであるが、高齢化に伴い後期高齢者の循環器疾患による死亡者数は増え続け、がんを凌ぐ勢いである。そのような状況を踏まえ、2018年末には「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立し、今後、わが国の循環器診療・研究は大きく変わっていくことが予想される。 現在、日本循環器学会は「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」「脳卒中・循環器病対策基本法」「国際化」の3つの事業を軸に学会開催や専門医の育成などを行っているが、学会の国際化、2020年のAPSC(アジア太平洋心臓病学会)、2021年のWCC(世界心臓病学会)との合同開催を見越して、海外から座長や演者の誘致、性別、国籍などを問わない学会への参加などのダイバーシティ推進にも力を注いでいる。 そうした中、今回の取り組みとして、アジアの参加者も国の代表者として競うことができる「ドクターJCSアジアチャンピオンシップ」、ポスター発表の中から優秀な演題が採択される「ベストポスターセッション」、アプリのツイート機能を用いて演者への意見や質問を受け付けるなど、多彩な企画が盛り込まれている。JCSお薦めのセッション3選◆ガイドライン 2018年に改訂されたガイドラインは計7種。1)急性冠症候群ガイドライン、2)慢性冠動脈疾患診療ガイドライン、3)冠動脈血行再建ガイドライン、4)心筋症診療ガイドライン、5)不整脈非薬物治療ガイドライン、6)心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン、7)先天性並びに小児期心疾患ガイドラインの改訂におけるポイント解説が各セッションで行われる。また、ガイドラインの利用方法が学べる、「症例から学ぶガイドラインセミナー」も開催される予定だ。◆不整脈 突然死の原因とされる先天性QT延長症候群やブルガタ症候群は特定の遺伝子変異が原因とされる遺伝性不整脈の1つである。これらに関する遺伝子検査による予後予測、そのメリットについて報告が予定されている。◆心不全 『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です』-2017年10月に一般にも発信しやすい定義が公開。高齢化が進む日本では、終末期心不全における地域を巻き込んだ緩和ケア対策が必要となることから、2021年より『心不全療養指導士』の認定制度がスタートする。対象職種は看護師、保健師、薬剤師など。これを踏まえ、「チームで取り組む循環器症状の緩和ケア」と題し、日本緩和医療学会とのジョイントシンポジウムが開催される。また、2017年10月に発足した日本腫瘍循環器学会が取り組む化学療法関連心機能障害などについて、「Onco-Cardiologyの最前線」にて発表が予定されている。 新たな取り組みが盛り込まれた今大会の会長を務める小室氏は、「循環器疾患は、ほかの疾患に比べて患者会が少ない。学会が主導となって患者との距離を縮め、要望などを聞きながら密接な関係を築いていきたい」と、これまでの学会の伝統を継承しつつも新しい世界を創造していくことに意気込んだ。■参考日本循環器学会:第83回日本循環器学会学術集会■関連記事心不全を予防するために何をすべきか/日本循環器学会

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絶食治療患者の消化吸収力と血糖管理/糖尿病学の進歩

 2019年3月1~2日に開催された第53回糖尿病学の進歩において、瓜田 純久氏(東邦大学総合診療・救急医学講座)が「絶食治療を要する疾患で救急搬送された糖尿病患者の臨床経過と栄養管理」について講演し、絶食治療による消化吸収とそれに付随する血糖値変動について講演した(特別企画1:低栄養リスクのある糖尿病患者の栄養サポートと栄養管理)。救急搬送される糖尿病患者の栄養状態とは? 慢性的な栄養不足は、栄養障害によるランゲルハンス島細胞の栄養不良、β細胞量と機能の低下などを引き起こす。そして、救急搬送される患者の多くには、β細胞機能不全を招くほどの急性の負荷が生じている。このような状況下での低栄養を防ぐため、瓜田氏は同施設における2005年7月からの1,531名のカルテを用いて、糖尿病患者の急性疾患時の栄養状態をケトアシドーシス以外の観点から解析した。 まず、救急搬送された患者の糖尿病の有無と絶食期間を調べるために、入院後3日以上の絶食が必要な症例を抽出、HbA1cで区分したところ、HbA1cが6%より高い患者の割合は4割程度であった。また、高齢糖尿病入院患者の栄養状態をMNA-SF1)(簡易栄養状態評価表)で評価したスペインの研究2)によると、入院患者の54%に低栄養または低栄養の恐れがあったという。これらのことから、急性疾患によって搬送される糖尿病患者は、意外と栄養状態が悪いということが明らかになった。栄養障害の原因を探る方法 同施設で入院後3日以上の絶食が必要な症例は、肺炎、急性腸炎、憩室炎、イレウス、消化管出血、虫垂炎、尿路感染症などが全体の45%を占め、同氏が担当する症例には、糖尿病患者の血糖コントロールを悪化させるような急性疾患が多く含まれている。そこで、同氏らは、栄養障害がみられる全患者に対して「食事摂取状況の写真撮影とRapid turnover protein(RTP:レチノール結合タンパク)によるタンパク漏出測定による診断」を実施し、栄養障害の早期発見に努めている。 タンパク質の合成障害や摂取不足がある状態では、半減期(Alb:20日、Tf:7~10、Pre Alb:3~4日、RTP:半日)が短い成分ほど大きく低下するが補いやすい。この性質を活かし、栄養障害がタンパク合成能、摂取不足どちらに起因しているものかをRTPで判断する。たとえば、1900kcalの食事をしっかり食べているにもかかわらずAlb値が下がる糖尿病患者に対し、この検査を実施すると合成障害とわかり、「糖尿病患者のタンパク合成能は落ちていない」と判断することができるという。ただし、下痢、体重減少、貧血、腹部膨満感、浮腫、無力脱力感などがある場合は、まずは、消化管検査や心電図を含む主要な検査を実施して評価を行うことが望ましく、それらに異常がない場合は、開腹などの既往歴や吸収障害を惹起する薬剤(ステロイド、刺激性下剤、酸分泌抑制薬など)の服用を確認してから、低栄養と断定する」と、栄養評価時の注意ポイントを示した。食事を再開した時の消化吸収力と血糖コントロール 絶食治療後の明確な食事再開基準はなく、患者の意思に委ねられている。同氏は、この問題を解決する方法として“呼気中水素総排出量”の算出が有用と考えている。これは炭水化物の消化吸収を表す指標で、絶食期間中は低値を示す。実際に、同氏の解析したデータでも食事再開時は消化吸収の効率が低下していることが明らかとなり、「糖尿病患者の血糖値に“食べた物がすべて反映されている”という考えを間引かなければならない」とし、「たった1日の絶食が消化吸収阻害に影響を及ぼしている」と、絶食におけるリスクを示した。 最後に同氏は「絶食治療により、消化吸収は大きく変化する。絶食治療は必要であるが、血糖、栄養、消化吸収を同時に評価する必要性がある」と締めくくった。■参考1)Nestle Nutrition Institute:MNA-SF2)Sanz Paris A,et al. Nutr Hosp. 2013;28:592-599.

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国内で開発された新規末梢性神経障害性疼痛治療薬「タリージェ錠2.5mg/5mg/10mg/15mg」【下平博士のDIノート】第21回

国内で開発された新規末梢性神経障害性疼痛治療薬「タリージェ錠2.5mg/5mg/10mg/15mg」今回は、「ミロガバリンベシル酸塩錠(商品名:タリージェ錠2.5mg/5mg/10mg/15mg)」を紹介します。本剤は、α2δサブユニットに強力かつ特異的に結合してカルシウムイオンの流入を抑制することで、興奮性神経伝達物質の過剰放出を抑制し、痛みを和らげることが期待されています。<効能・効果>本剤は、末梢性神経障害性疼痛の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年4月15日より販売されました。※2022年3月、添付文書改訂による「中枢性神経障害性疼痛」の効能追加に伴い、適応は「神経障害性疼痛」となりました。<用法・用量>通常、成人にはミロガバリンとして初期用量1回5mgを1日2回経口投与し、その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔を空けて漸増します。維持用量は、年齢・症状により1回10~15mgの範囲で適宜増減します。なお、腎機能障害患者に投与する場合は、投与量および投与間隔の調節が必要です。<副作用>日本を含むアジアで実施された臨床試験において、糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者を対象とした854例中267例(31.3%)、帯状疱疹後神経痛患者を対象とした553例中241例(43.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、傾眠(12.5%/19.9%)、浮動性めまい(9.0%/11.8%)、体重増加(3.2%/6.7%)などでした(承認時)。なお、弱視、視覚異常、霧視、複視などの眼障害が現れることがあるため注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.過敏になっている神経を鎮めることで、しびれ、電気が流れているような痛み、焼けるような痛みなど、末梢神経障害による痛みを和らげます。2.服用中は、めまい、強い眠気、意識消失などが現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。3.本剤の服用を長く続けたり量を増やしたりすることで、体重が増加することがあります。実際に体重が増加し始めた場合はご相談ください。4.この薬を突然中止すると、不眠、吐き気、頭痛、下痢、食欲低下などの症状が現れることがあります。自己判断で減らしたりやめたりしないでください。5.本剤を服用中に飲酒をした場合、注意力、平衡機能の低下を強める恐れがあるので注意してください。<Shimo's eyes>神経障害性疼痛は、『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン(改訂第2版)』で「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛」とされ、神経の損傷部位によって“末梢性”と“中枢性”に分類されます。本剤の作用機序は既存薬のプレガバリンと同様ですが、神経障害性疼痛全般に使用できるプレガバリンとは異なり、本剤の適応は「末梢性神経障害性疼痛」に限られています。末梢性神経障害性疼痛の代表例としては、坐骨神経痛、帯状疱疹後神経痛、糖尿病の合併症による神経障害性疼痛(痛み・しびれ)、抗がん剤の副作用による神経障害性疼痛などがあります。本剤は低用量から開始して、有効性や安全性を確認しながら維持量に漸増します。腎機能障害のある患者さんや高齢者では副作用が発現しやすいため、慎重に症状や副作用を聞き取りましょう。とくに高齢者ではめまいなどの副作用が生じると、転倒による骨折などを起こす恐れがあるため、細やかな投与量の調節が必要です。神経障害性疼痛は罹病期間が長引きがちで、さらに不安や睡眠障害を引き起こすこともあり、患者さんのQOLに与える影響は甚大です。末梢神経障害性疼痛の治療選択肢が増え、痛みに悩む患者さんの生活に改善がもたらされるのは喜ばしいことです。なお、2019年1月時点において、海外で承認されている国および地域はありませんので、副作用に関しては継続的な情報収集が必要です。※2022年3月、添付文書の改訂情報を基に一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 タリージェ錠2.5mg/タリージェ錠5mg/タリージェ錠10mg/タリージェ錠15mg

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第15回 アナタの心電図は“男女”どっち?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第15回:アナタの心電図は“男女”どっち?皆さんは心電図に「性差」があるのをご存知ですか? 男性と女性では、波形にいくつかの違いがあるのです。今回は、それを見極めるために、ST部分の“男女差”についてDr.ヒロが解説します。症例提示81歳、男性。糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群(CPAP治療中)で通院中。以前から徐脈を指摘されており、不定期にめまいを認める。以下に定期外来での心電図を示す(図1)。(図1)定期外来時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図(図1)の所見として誤っているものはどれか。1)洞(性)徐脈2)時計回転3)ST低下4)右軸偏位5)陰性T波解答はこちら4)解説はこちらいつ・どんな時でも系統的な判読が大事です(第1回)。1)○:“レーサー(R3)・チェック”をしましょう。R-R間隔は整、心拍数は42/分(検脈法:10秒)です。遅くてもP波はコンスタントで、向きも“イチニエフの法則”を満たします。「めまい」は徐脈に関連した症状かもしれず、精査対象となる可能性があります。2)○:「回転」は移行帯の異常です。胸部誘導の上からR波(上向き)とS波(下向き)のバランスを見ていきます。「R>S」となるのがV5とV6誘導の間であり、「時計回転」の診断でOKです。3)○:ST偏位は、J点に着目して、基線(T-Pライン)からのズレを見るのでした(第14回)。V5、V6誘導で「ST低下」があります(水平型)。4)×:I誘導:上向き、aVF(またはII)誘導:下向きは「左軸偏位」でしたね(第8回)。具体的な数値は、“トントン法Neo”を利用すると「-40°」です(トントン・ポイントは-aVRとIIの間で後者寄りです)。5)○:T波の「向き」を“スタート”の“ト”でチェックします。aVR誘導以外は上向きなのが基本です。全体をくまなく見渡して、aVL、V5、V6誘導で「陰性T波」を指摘して下さい。問題を続けましょう。次が今回の本題、男女に特徴的なST部分の“型”に関する問いです。【問題2】この高齢男性のST部分は男性型か、女性型か述べよ。解答はこちら女性型解説はこちら「ST部分」には、明確な性差が存在します。つまり男女で波形が異なる訳です。ただし、生物学的な“男・女”と100%完全には一致しません。前回扱った若年男性の心電図は、「男性型」の典型で、V1~V4誘導の“猛々しい”「ST上昇」が特徴です(この所見は女性では珍しい)。ただ、加齢と共に低下傾向を示し、高齢になると「女性型」を示すこともまれではありません。このST部分の性差について理解しておきましょう。皆さんは、心電図波形に「性差」があるって知っていましたか?…実際、男性か女性かまで意識して心電図を読んでいる方は、あまり多くないのではと推察します。しかし、純然たる“違い”があることが古くから知られており、とりわけ「ST部分」に現れやすいとされています*1。はじめに言っておくと、今回の話もあくまでも“雑談”です。細部まで逐一暗記しようとせず、『ふーん、そうなのかぁ』程度に思ってもらえば大丈夫。注目するのはV1~V4(前胸部)誘導のJ点とST角度(ST angle)の2点。「J点」はQRS波の“おわり”で、いわゆる“変曲点”です(第14回)。もう一つの「ST角度」という名前は聞き慣れないかもしれないので、図2で説明しましょう。(図2)J点とST角度の関係画像を拡大する男女別のST部分の差を3つに分類したSurawicz先生によると、J点を認識し、そこを通り基線に平行な線Aを引きます。次に、J点と点B(J点から60ms[1.5mm]先のST部分で“ST60”と称される)を結ぶ線がなす角度(図中のC)を表します。ST部分の“傾き”と理解すれば良いでしょう。では、この2つを用いてST部分を1)女性型(F型)、2)男性型(M型)、3)不定型(I型)の3つに分類する方法*2を紹介します(図3)。(図3)J点・ST角度によるST型分類画像を拡大するまずは、V1~V4誘導でJ点レベルが最高となる誘導に注目します。V1~V4誘導のいずれでもJ点が「0.1mV」、つまり、基線からの上昇が1mm未満なのが「F型」(ST角度は不問)です。今回の心電図(図1)も、これに相当します。残る2つ(M型、I型)では、4誘導のどこかで1mm以上のST上昇(J点)があるわけですが、今度は「ST角度」も見渡してみて下さい。角度が一番キツい(最大となる)誘導で、その角度が20°以上だったら「M型」、それ未満なら「I型」とします。具体的な数値は忘れてかまいませんが、若年男性ほど角度が急峻、つまり「M型」となる傾向なんです。ボクの経験上、ST角度はおおむねT波高が一番のところで最大となるため、ざっと見てJ点が1mm以上であれば、T波が最も高くツンと立った誘導を使ってST角度を調べるスタンスでOKです。『そんなこと言われても、どれを選ぶか悩むよなぁ~』というアナタ!…ならエイヤッとV2誘導の“一択”でJ点レベルとST角度を調べる感じで大丈夫かも(前回学んだように、多くのケースでJ点(ST)レベルが最大となりますから)。性別によってST部分に差があって、こうやって見るんだと知ってもらえたらボク的には十分。あくまでも厳格な心電図診断というよりは、“趣味”の世界みたいなものなので、がんじがらめにならずに楽しみましょう!この分類法のルールさえわかったら、皆さんも心電図を見て、どの型になるか言えますでしょ? 上記で説明したそれぞれのST型を以下に示したので、作図法も確認してみて下さい(図4)。I型とM型ではいずれもV3誘導でT波高が最大に見えるため、そこにフォーカスしてST角度を測りました。(図4)SurawiczらによるST型の3区分を作図画像を拡大するさて、現実にはどの型が多いのでしょうか?…Circulationという有名誌に前述のSurawicz先生が年齢・性別ごとの違いを報告しているので、そのグラフを以下に示します(図5)。(図5)性別・年齢によるSTパターン画像を拡大するまず、女性のほうはシンプル。全年代にわたって8割方がF型です。残り2割、成人の場合ではM型とI型が半分ずつ占めています。一方の男性はどうでしょう? 思春期以降、40歳くらいまではM型ないしI型で9割近くを占め、“若さ”の象徴的な「ST上昇」が目立ちます。ただ、よーく見ると、成人以降、M型は徐々に減り、代わりにF型がぐんぐん増えてきます(I型は1~2割のままほぼ一定)。50歳前後でF型はM型を凌駕し、最終的に今回の症例のような高齢男性では、7割がF型となる様子が読み取れます。心電図が年をとった結果、生物学的には男性でも、心電図は“女性”…そんなことが珍しくないというワケ。この“理由”はと言えば、皆さんお察しの通り「性ホルモン」の影響が強いようです。“力こぶ”を連想させるST-T部分はテストステロンの影響を受けるため、加齢によって“更年期”を迎え、最終的には枯渇してゆく…。そんな様子には、はかなさすら漂います…。ですから、STEMI(ST上昇型急性心筋梗塞)の診断を考えた場合、F型が増加するのは嬉しいです(つくづく、うまくできてるなぁと思います)。でも、高齢でも2~3割の男性はM型ないしI型ですから、注意が必要ですね。最後に、こうしたST型の分類は、あくまでも正常QRS-T波形を想定したもので、脚ブロックや心室肥大などのいわゆる「二次性ST変化」をきたす波形には適用できないので、ご注意あれ!今回は、あまり真面目に語られることのない、性別による心電図波形の違いについて扱いました。やや雑学的はハナシですが、ボクが医学生の頃、友達と面白いなぁと話した日々を懐かしく思いました。Take-home MessageJ点(STレベル)とST角度には性差が現れやすい(3つの区分あり)男性に特徴的な加齢に伴うST型の変化を知っておこう1)Bidoggia H, et al. Am Heart J. 2000;140:430–436.2)Surawicz B, et al. J Am Coll Cardiol. 2002;40:1870–1876.【古都のこと~南禅寺水路閣】時は明治、東京遷都で意気消沈した京都リバイバルのカギであった琵琶湖疎水事業。施工責任者は田邉朔郎(さくろう)。史上初ジャパン・オリジナルの大規模土木建設の重積が、大卒間もない一青年*の肩にいかほどに感じられたか…。南禅寺(左京区)の敷地内に同居する水路閣もその一部。赤レンガ・花崗岩によるモダンな風貌、アーチ型橋脚の見事な曲線美に圧倒されました。老朽化が叫ばれていますが、130年たった今でも文明開化当時の“勢い”が感じられるボクのお気に入りスポットです。*:後に東京・京都帝国大学の教授となった

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加齢で脆くなる運動器、血管の抗加齢

 2月18日、日本抗加齢医学会(理事長:堀江 重郎)はメディアセミナーを都内で開催した。今回で4回目を迎える本セミナーでは、泌尿器、内分泌、運動器、脳血管の領域から抗加齢の研究者が登壇し、最新の知見を解説した。年をとったら骨密度測定でロコモの予防 「知っておきたい運動器にかかわる抗加齢王道のポイント」をテーマに運動器について、石橋 英明氏(伊奈病院整形外科)が説明を行った。 厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2016)によると、65歳以上の高齢者で介護が必要となる原因は、骨折・転倒によるものが約12%、また全体で関節疾患も含めると約5分の1が運動器疾患に関係するという。とくに、高齢者で問題となるのは、気付きにくい錐体(圧迫)骨折であり、外来でのFOSTAスコアを実施した結果「25歳時から4cm以上も身長が低下した人では、注意を払う必要がある」と指摘した。また、「骨粗鬆症治療薬のアレンドロン酸、リセドロン酸、デノスマブによる大腿骨近位部骨折の予防効果も、近年報告されていることから、積極的な治療介入が望ましい」と同氏は語る。 そして、「50代以降で骨の検査をしたことがない人」「体重が少ない人」など6つの条件に当てはまる人には、「骨粗鬆症の早期発見のためにも、骨密度検査を受けさせたほうがよい」と提案する。また、筋力は「加齢、疾患、不動、低栄養」を原因に減少し、40歳以降では1年間に0.5~1%減少すると、筋力低下についても注意喚起。この状態が続けばサルコぺニアに進展する恐れがあり、予防のため週2~3回の適度な運動とタンパク質などの必須栄養の摂取を推奨した。 そのほかロコモティブシンドローム防止のため日本整形外科学会が推奨するロコモーショントレーニング(スクワット、片脚立ち運動など)は、運動機能の維持・改善になり、実際に石橋氏らの研究(伊奈STUDY)1)でも、運動機能の向上、転倒防止に効果があったことを報告し、レクチャーを終えた。血管からみた認知症予防の最前線 同学会の専門分科会である脳血管抗加齢研究会から森下 竜一氏(同会世話人代表、大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学寄付講座 教授)が、「血管からみるアンチエイジング」をテーマに、血管の抗加齢や認知症診断の最新研究について説明した。 はじめに最近のトピックスである食後高脂血症(食後中性脂肪血症)について触れ、多くの人々が6時間後に中性脂肪がピークとなるため1日の大部分を食後状態で過ごす中で、食後の中性脂肪値を抑制することが重要だと指摘する。実際、食後高脂血症は動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスク因子となる研究報告2)もある。また、即席めんやファストフードに多く含まれる酸化コレステロールについて、これらはとくに肥満者や糖尿病患者には酸化コレステロールの血中濃度を上昇させ、動脈硬化に拍車をかけると警鐘を鳴らしたほか、食事後の短時間にだけ、人知れず血糖値が急上昇し、やがてまた正常値に戻る「血糖値スパイク」にも言及。こうした急激な血糖値の変動が高インスリン血症をまねき、過剰なインスリン放出が認知症の原因とされるアミロイドβを蓄積させると指摘する。 そして、認知症については、軽度認知障害(MCI)の段階で発見、早期治療介入により予防する重要性を強調した。その一方で、認知症の評価法について現在使用されている簡易認知機能検査(MMSE)、アルツハイマー病評価スケール(ADAS)などでは、検査に時間要すだけでなく、被験者の心理的ストレス、検査者の習熟度のばらつきなどが問題であり、スクリーニングレベルで使用できる簡便性がないと指摘する。そこで、森下氏らは、被験者の目線を赤外線で追うGazefinder(JCVKENWOOD社)を使用した視線検出技術を利用する簡易認知機能評価法の研究を実施しているという。最後に同氏は「今までの認知症の評価法のデメリットを克服できる評価法を作り、疾患の早期発見・予防に努めたい」と展望を述べ、講演を終えた。■参考文献1)新井智之、ほか. 第2回日本予防理学療法学会学術集会.2015.2) Iso H, et al. Am J Epidemiol. 2001;153:490-499.■参考脳心血管抗加齢研究会日本抗加齢医学会

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糖尿病患者の身体活動継続に行動介入は有効か/JAMA

 2型糖尿病患者において、行動介入戦略は、標準ケアと比較し身体活動の持続的な増加と座位時間の減少をもたらすことが示された。イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学のStefano Balducci氏らが、ローマの糖尿病クリニック3施設で実施した無作為化非盲検試験(評価者盲検優越性試験「Italian Diabetes and Exercise Study 2:IDES_2」)の結果を報告した。身体活動/座位行動の変化が、2型糖尿病患者で長期的に持続されうるかは不明であった。JAMA誌2019年3月5日号掲載の報告。行動介入群と標準ケア群で、身体活動と座位時間を比較 研究グループは、行動介入戦略により身体活動の増加が持続し座位時間が減少するかを検証する目的で、2012年10月~2014年2月に、あまり運動をせずいつも座ってばかりの生活をしている2型糖尿病患者300例を、行動介入群または標準ケア群に、施設、年齢および糖尿病治療で層別化して1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ3年間治療した(追跡調査期間2017年2月まで)。 全例に対して、米国糖尿病学会ガイドラインの推奨に準じたケアを行うとともに、行動介入群(150例)では、3年間毎年、糖尿病専門医による個別の理論的なカウンセリングを1回と認定運動療法士による個別の理論的・実践的カウンセリングを隔週8回実施した。標準ケア群(150例)は、一般医の推奨(日常の身体活動を増やし座位時間を減らすこと)のみとした。 複合主要評価項目は、身体活動量、軽強度ならびに中~強強度の身体活動時間、座位時間とし、加速度計によって測定した。行動介入により、持続的な身体活動の増加と座位時間の減少を確認 無作為化された300例(平均[±SD]年齢61.6±8.5歳、女性116例[38.7%])のうち、267例(行動介入群133例、標準ケア群134例)が試験を完遂した。追跡期間中央値は3年であった。 行動介入群と標準ケア群でそれぞれ、身体活動量(代謝当量[MET]、時間/週)は13.8 vs.10.5 MET(両群差:3.3、95%信頼区間[CI]:2.2~4.4、p<0.001)、1日の中~強強度の身体活動時間は18.9 vs.12.5分/日(6.4、5.0~7.8、p<0.001)、軽強度の身体活動時間は4.6 vs.3.8時間/日(0.8、0.5~1.1、p<0.001)、座位時間は10.9 vs.11.7時間/日(-0.8、-1.0~-0.5、p<0.001)であった。 両群の有意差は試験期間中持続していたが、1日の中~強強度の身体活動時間については、両群の差が6.5分/日から3年目には3.6分/日に低下した。セッション外での有害事象は、行動介入群で41例、標準ケア群で59例確認された。行動介入群におけるセッション中の有害事象は30件報告され、大半は一般的な筋骨格系の外傷/不快感と軽度の低血糖であった。 著者は、研究の限界として、食事に関する情報が解析データに含まれていないこと、加速度計の使用が標準ケア群での身体活動を増進する可能性があることなどを挙げたうえで、「今回の結果を一般化し臨床現場で介入を実施するには、さらなる検証が必要である」とまとめている。

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インスリンアナログとヒトインスリンのどちらを使用すべきか?(解説:住谷哲氏)-1016

 はじめに、わが国におけるインスリン製剤の薬価を見てみよう。すべて2018年におけるプレフィルドタイプのキット製剤(300単位/本、メーカー名は省略)の薬価である。インスリンアナログは、ノボラピッド注1,925円、ヒューマログ注1,470円、アピドラ注2,173円(以上、超速効型)、トレシーバ注2,502円、ランタス注1,936円、インスリングラルギンBS注1,481円、レベミル注2,493円(以上、持効型)。ヒトインスリンは、ノボリンR注1,855円、ヒューマリンR注1,590円(以上、速効型)、ノボリンN注1,902円、ヒューマリンN注1,659円(以上、中間型)。つまり、わが国でインスリン頻回注射療法(MDI)を最も安く実施するための選択肢は、インスリンアナログのインスリングラルギンBS注とヒューマログ注の組み合わせになる。さらにわが国においてはインスリンアナログとヒトインスリンの薬価差はそれほどなく、ヒューマログ注とヒューマリンR注のようにインスリンアナログのほうが低薬価の場合もある。したがって、本論文における医療費削減に関する検討はわが国には適用できない。それに対して米国では、インスリンアナログはヒトインスリンに比較してきわめて高価であり(本論文によると米国では10倍の差のある場合もあるらしい)、インスリンアナログをヒトインスリンに変更することでどれくらい医療費が削減できるかを検討した本論文が意味を持つことになる。 医療費削減は重大な問題であるが、医療費を削減した結果、臨床的アウトカムが悪化すれば本末転倒である。そこで本論文ではインスリンアナログからヒトインスリンに変更後におけるHbA1c、重症低血糖および重症高血糖の頻度を検討している。HbA1cはヒトインスリンに変更後0.14%(95%CI:0.05~0.23、p=0.003)増加したが、これは臨床的にはほとんど意味のない変化と見なしてよい。重症低血糖および重症高血糖の頻度にも変更前後で有意な差は認められなかった。つまりヒトインスリンへの変更によって、臨床的アウトカムの悪化なしに医療費の削減が可能であることが示されたことになる。 確かに、インスリンアナログがヒトインスリンに比較して臨床的アウトカムを改善するエビデンスは現時点で存在しない。RCTにおいては、インスリンアナログであるグラルギンはヒトインスリンであるNPHに比較して夜間低血糖を有意に減少させた1)。しかしreal-worldにおいては、NPHとインスリンアナログとを比較するとHbA1c、重症低血糖による救急外来受診または入院の頻度には差がなかったとする報告もある2)。さらに、持効型インスリンアナログ間の比較であるDEVOTEでは、デグルデクはグラルギンに比較して有意に夜間低血糖を減少させたが、両群における3-point MACEには有意な差がなかった3)。 インスリンアナログはヒトインスリンと比較して優れている、と考えている医療従事者は多い。しかし上述したように、インスリンアナログを使用することで低血糖の頻度が減る可能性はあるが、心血管イベントなどの臨床的アウトカムを改善するエビデンスはない。したがってヒトインスリンで十分であるが、米国とは異なりインスリンアナログが安価に使用できるわが国においては、あえてヒトインスリンに固執する必要性もないと思われる。

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