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1型糖尿病でのSGLT2阻害薬使用の注意

 2019年7月25日、日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、2014年に策定され、過去3度のアップデートを行っている「SGLT2阻害薬適正使用に関するRecommendation」のアップデート版を公開した。現在、同学会のホームページ上で公開され、学会員などへの周知が図られている。 SGLT2阻害薬は、現在6成分7製剤が臨床使用され、なかには1型糖尿病患者でインスリン製剤との併用療法としての適応を取得した製剤もある。しかし、ケトアシドーシスのリスクの増加が報告され、海外では、SGLT2阻害薬の成人1型糖尿病への適応が慎重にされていることもあり、1型糖尿病患者への使用に際し、十分な注意と対策が必要であるとしている。そのため、同学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」では、「これらの情報をさらに広く共有することにより、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されるよう、Recommendationをアップデートする」と今回の目的を述べている。また、今回のアップデートでは、今までに副作用情報や高齢者の特定使用成績調査の結果を踏まえた、使用上での重要な注意点についても追加されている。 委員会では、「本薬剤は適応やエビデンスを十分に考慮した上で、添付文書に示されている安全性情報に十分な注意を払い、また本Recommendationを十分に踏まえて、適正使用されるべきである」としている。 今回のアップデートは次の通り。1型糖尿病患者の治療の態様に注意を向ける “Recommendation”では、次の3点のアップデートが行われた。1.1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。6.全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis:正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者では、インスリンポンプ使用者やインスリンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきである。7.本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を行うこと。1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬併用時のインスリン減量法が詳細に 副作用の事例と対策では、主に追加記載として以下のアップデートが行われた。・重症低血糖 1型糖尿病患者では、インスリンの過度の減量によりケトアシドーシスリスクが高まる可能性に留意し、慎重に減量する(方法については下記参照)。[方法]1-a 血糖コントロール良好(HbA1c<7.5%)な場合、開始時に基礎および追加インスリンを10~20%前後を目安に減量することを検討する。1-b 血糖コントロール良好でない(HbA1c≧7.5%)場合、服薬開始時の基礎および追加インスリンは減量しないかあるいはわずかな減量にとどめる。2-a 経過中、血糖コントロールが改善し低血糖が顕在化した場合は、血糖自己測定や持続血糖モニタリングの結果に応じ、患者自身で責任インスリン量をすみやかに減量できるよう指導する。2-b ただし、上記の場合でも患者にはインスリンを極端に減量することは控えるよう指導する。特に基礎インスリンの減量は治療前の20%を越えることは避け、慎重に減量すべきである。・ケトアシドーシス 1型糖尿病ではインスリンポンプ使用者のポンプトラブルや予測低血糖マネージメント(PLGM)機能による基礎インスリンの中断が原因として重要であり注意を要する。臨床試験の報告では、アルコール多飲者、感染症や脱水など、女性、非肥満・やせ(BMI

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DPP-4阻害薬関連の心血管リスクを他剤と比較~日本人コホート

 わが国の糖尿病患者270万人のコホート研究で、DPP-4阻害薬の単剤治療に関連した、入院を要する心筋梗塞および心不全のリスクは、ビグアナイド(BG)より高く、スルホニル尿素(SU)より低く、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)と同等であったことを、医薬品医療機器総合機構の駒嶺 真希氏らが報告した。Pharmacoepidemiology and Drug Safety氏オンライン版2019年7月23日号に掲載。 本研究は、国内の糖尿病患者271万6,000例による全国規模のコホート研究で、2010年4月1日~2014年10月31日に新たに糖尿病治療薬単剤で治療された患者が対象。DPP-4阻害薬投与に関連した入院を要する心筋梗塞、心不全、脳卒中の発生を、BG、SU、α-GIと比較した。Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(aHR)を推定し、傾向スコアによる標準化により交絡を調整した。 主な結果は以下のとおり。・各薬剤の使用患者は、DPP-4阻害薬110万5,103例、BG 27万8,280例、SU 27万3,449例、α-GI 21万7,026例を同定した。・DPP-4阻害薬使用者の心筋梗塞および心不全リスクは、BG使用者より有意に高かった(心筋梗塞のaHR:1.48[95%CI:1.20~1.82]、心不全のaHR:1.46[同:1.31~1.62])が、SU使用者より有意に低かった(心筋梗塞のaHR:0.84[同:0.72~0.98]、心不全のaHR:0.86[同:0.81~0.92])。・DPP-4阻害薬使用者の心筋梗塞リスクはα-GI使用者と同様だった(aHR:0.98[95%CI:0.82~1.17])が、心不全リスクはわずかに高かった(aHR:1.12[同:1.04~1.21])。

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第1回 今さら聞けない心臓リハビリ【今さら聞けない心リハ】

第1回 今さら聞けない心リハケアネット読者の皆さん、「心臓リハビリテーション」についてどの程度ご存じでしょうか? 「心臓リハビリ」「心リハ」「Cardiac rehabilitation」、これらはすべて同じことを意味しています。日本では「心大血管疾患リハビリテーション料」という名称で、保険適用されています。『何それ、聞いたことないよ』『心臓病は自分の専門分野と違う』『循環器領域の患者を診ることなんてない』というあなた。実は、心臓リハビリテーション(以下、心リハ)の知識はご自身の健康管理上でもなくてはならないものなのです。そんな方にこそ、心リハを知ってもらいたく、この連載を執筆することになりました。医療に携わるケアネット読者の皆さんなら、生活習慣病の予防・治療に運動や食事が重要ということはすでにご存じと思います。運動不足や不健康な食習慣により、高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病が生じやすくなることは、もはや“日本人の常識”と言えるでしょう。でも、具体的にどんな運動をどれくらいすればいいのか? 何をどのように食べればいいのか? となると、途端に答えられなくなる人が多いようです。生活習慣病、そしてその先にある心血管疾患に対して、健康を維持するための具体的な運動療法・食事療法を提案し、継続的に実践することをサポートする医学的介入…それが心リハです。生活習慣病をまだ発症していない、「未病」の段階から予防のための運動習慣・食習慣を実践することも、広い意味では心リハと呼べます。いかがでしょう、心リハを知りたい気持ちになっていただけましたか?~運動は医師自身にも必要~早く知りたい!手短に!というあなたのために、まずは運動の極意をお伝えしましょう。健康な方でも、生活習慣病や心血管疾患をすでに発症している方でも基本は同じ。キーワードは、『1日20~60分間の有酸素運動』です。有酸素運動=ジョギングではありません。有酸素運動とは、好気的代謝によりゆっくりとエネルギー(ATP)を消費する、長時間続けて行う運動です。好気的代謝の能力には個人差がありますので、有酸素運動と一口に言っても、一人ひとりで適切な強度が異なります。ゆっくり1時間歩くこと(時速2~3km程度)は、多くの方にとって有酸素運動ですが、若い人では強度が弱すぎて運動の効果がなかなかでません。一方で、ジョギング(時速5~6km程度)は、運動習慣を持たない中高年にとって無酸素運動となり持続することができません。では、あなたにとってのベストな有酸素運動とは、どのような運動でしょう?~ベストな運動強度の調べ方~心リハでは、患者さん一人ひとりにとって最適な運動強度を決定するために、心肺運動負荷試験(CPET:Cardiopulmonary exercise testing[CPX])という検査を行います。写真は当院でのCPXの様子です(図1)。(図1)心肺運動負荷試験[CPX]の実施風景画像を拡大する心肺~と呼ばれるのは、通常の運動負荷試験のように運動中の心電図・血圧を評価するだけではなく、口と鼻をすっぽりと覆うマスクを装着して、運動中の酸素摂取量・二酸化炭素排出量・換気量を測定するためです。運動の強度(自転車エルゴメータの仕事量[ワット数]、またはトレッドミルでの歩行速度・傾斜角度)を徐々に増加させたときに、ある強度以上で酸素換気当量(換気量/酸素摂取量)・呼吸商(二酸化炭素排出量/酸素摂取量)が急激に増加し始めます。この強度が嫌気性代謝閾値(AT:Anaerobic Threshold)であり、嫌気性代謝が始まる点です。最も効果的な有酸素運動は、ATの時点より少しだけ強度の低い運動、ということになります。AT未満の運動は、心血管疾患においても交感神経の活性化による過度の血圧上昇や不整脈を生じにくく、安全に実施しやすいため、心リハでの運動指導に用いられています。実際に運動する際は、検査で求められたAT時点の心拍数を維持することを目標に20分間以上の運動を行うようにします。有酸素運動は代謝・自律神経系の異常や血管内皮機能を改善し、さらには心血管疾患の増悪による入院率低下と生命予後の改善が数々の臨床試験で示されており、心血管疾患の治療手段の一つとして「運動療法」と呼ばれています。~自分の有酸素運動レベルを知っておく~あなたも、CPXを受けてご自身の有酸素運動レベルを知ってみたくありませんか? 「心臓ドック」の一環としてCPXの様子を行っている施設もあるみたいです。でも、なかなか検査を受けに行く時間をとれませんよね。大丈夫、特別な心血管疾患のない方であれば、AT時点の心拍数を以下の式で推定することができます。運動時の至適心拍数=安静時心拍数+0.6×(予測最大心拍数-安静時心拍数)1)一般的に、「予測最大心拍数=220-年齢」で推定できるので、たとえば、40歳で安静時心拍数が80bpmという場合、AT時点の心拍数=80*+0.6×(220-40**-80*)=80+0.6×100=140bpm*:安静時心拍数、**:予測最大心拍数と計算され、心拍数が140bpmとなるような早さで20~60分間歩く、もしくはジョギングする、というのが“ちょうどいい運動”ということになります。~心電図モニターの装着が鍵~病院で行う心リハでは、心拍計だけではなく心電図モニターを装着してもらい、心拍数のほかに不整脈も確認しながら運動を行います。頻発性の期外収縮や心房細動を有する患者などでは、通常の心拍計では正確に心拍数を評価しにくいため、心電図モニタリングが有用です。心リハの保険適用期間は5ヵ月間を基本としており、心リハ開始から5ヵ月が経過し病状が安定している患者では、病院での心電図モニター監視下での運動療法は終了し、一般のスポーツ施設や自宅などで運動療法を継続してもらうことになります。病状がまだ安定していないと考えられる場合は、期間を延長して病院での運動療法を継続します。Take home messageいかがでしたか? 今回は心リハでの運動療法と健常人が生活習慣病・心血管疾患を予防するための運動強度の決定法を中心にご紹介しました。ご自身の健康のためにも、ぜひ有酸素運動を始めてみてください。1日20~60分、と書きましたが、まずは10分でも大丈夫です。とにかく、始めることが大切。厚生労働省も『健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)』で、「+10(プラス・テン)から始めよう!」(今より10分多くからだを動かすだけで、健康寿命を伸ばせます)とうたっています。勇気を出して、まずは一歩を踏み出すことが大切ですよ。次回は、心リハの対象・プログラムの内容について具体的にお話しします。ご期待ください。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>ケアネット読者の心リハ認知度は?2010年に行われた一般健常人5,716名を対象とした心臓リハビリの認知度に関するインターネット調査では、心臓リハビリという言葉やその内容を「知っている」と回答した人はわずか7%で、「知らない」、「聞いたことはあるが内容は知らない」と答えた人が合わせて93%であったと報告されています2)。では、ケアネット読者の心リハ認知度はどうなのでしょう。実は、この連載を開始するに当たり、2019年4月、ケアネット読者(内科医102名)に任意のアンケート調査を行いました(図2)。「心リハという言葉を知らない」と答えた医師は7%とさすがに少なかったものの、「心リハという言葉は知っているが治療内容については知らない」と答えた医師は54%でした。日本はフィットネス後進国とも言われていますが、このような状況では、日本の内科医は患者の健康はおろか、自らの健康を守ることも難しいのではないかと考えられます。医療の進歩により、生活習慣病・心血管疾患を発症しても“長生き”は当たり前になった昨今ですが、運動習慣なくして“元気に長生き”はできません! 向学心旺盛なケアネット読者の皆さんには、この連載を通じて、ぜひとも心リハの基礎知識を身に付けていただきたいと願っています。(図2)ケアネット企画・心リハについての認知度調査1)JCS Joint Working Group. Circ J. 2014;78:2022-2093.2)後藤葉一. 日本冠疾患学会雑誌. 2015;21:58-66.

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ウェルナー症候群〔WS:Werner syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ウェルナー症候群(Werner syndrome:WS)とは、1904年にドイツの眼科医オットー・ウェルナー(Otto Werner)が、「強皮症を伴う白内障症例(U[ウムラウト]ber Kataract in Verbindung mit Sklerodermie:Cataract in combination with scleroderma)」として初めて報告した常染色体劣性の遺伝性疾患である。思春期以降に、白髪や脱毛、白内障など、実年齢に比べて“老化が促進された”ようにみえる諸症状を呈することから、代表的な「早老症候群(早老症)」の1つに数えられている。■ 疫学第8染色体短腕上に存在するRecQ型のDNAヘリカーゼ(WRN)遺伝子のホモ接合体変異が原因と考えられる。これまで全世界で80種類以上の変異が同定されているが、わが国ではc.3139-1G>C(通称4型)、c.1105C>T(6型)、c3446delA(1型)の3大変異が症例の90%以上を占める。一方、この遺伝子変異が、本疾患に特徴的な早老症状、糖尿病、悪性腫瘍などをもたらす機序の詳細は未解明である。■ 病因希少な常染色体劣性遺伝病だが、日本、次いでイタリアのサルデーニャ島(Sardegna)に際立って症例が多いとされる。1997年に松本らは、全世界1,300例の患者のうち800例以上が日本人であったと報告している。症状を示さないWRN遺伝子変異のヘテロ接合体(保因者)は、日本国内の100~150例に1例程度存在し、WS患者総数は約2,000例以上と推定されるが、その多くは見過ごされていると考えられる。かつては血族結婚に起因する症例がほとんどとされたが、最近では両親に血縁関係を認めない患者が増え、患者は国内全域に存在する。遺伝的にも複合ヘテロ接合体(compound heterozygote)の増加が確認されている。■ 症状思春期以降、白髪・脱毛などの毛髪変化、両側性白内障、高調性の嗄声、アキレス腱に代表される軟部組織の石灰化、四肢末梢の皮膚萎縮や角化と難治性潰瘍、高インスリン血症と内臓脂肪蓄積を伴う耐糖能障害、脂質異常症、骨粗鬆症、原発性の性腺機能低下症などが出現し進行する。患者は低身長の場合が多く、四肢の骨格筋など軟部組織の萎縮を伴い、中年期以降にはほぼ全症例がサルコペニアを示す。しばしば、粥状動脈硬化や悪性腫瘍を合併する。内臓脂肪の蓄積を伴うメタボリックシンドローム様の病態や高LDLコレステロール(LDL-C)血症が動脈硬化の促進に寄与すると考えられている。また、間葉系腫瘍の合併が多く、悪性黒色腫、骨肉腫や骨髄異形成症候群に代表される造血器腫瘍、髄膜腫などを好発する。上皮性腫瘍としては、甲状腺がんや膀胱がん、乳がんなどがみられる。■ 分類WRN遺伝子の変異部位が異なっても、臨床症状に違いはないと考えられている。一方、WSに類似の症状を呈しながらWRN遺伝子に変異を認めない症例の報告も散見され、非典型的ウェルナー症候群(atypical Werner syndrome:AWS)と呼ばれることがある。AWSの中には、LMNA遺伝子(若年性早老症の1つハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候の原因遺伝子)の変異が同定された症例もあるが、WSに比べてより若年で発症し、症状の進行も早いことが多いとされる。■ 予後死亡の二大原因は動脈硬化性疾患と悪性腫瘍であり、長らく平均死亡年齢が40歳代半ばとされてきた。しかし、近年、国内外の報告から寿命が5~10年延長していることが示唆され、現在では60歳を超えて生活する患者も少なくない。一方、足部の皮膚潰瘍は難治性であり、疼痛や時に骨髄炎を伴う。下肢の切断を必要とすることも少なくなく、患者のADLやQOLを損なう主要因となる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)WSの診断基準を表1に示す。早老症候はさまざまだが、客観的な指標として、40歳までに両側性白内障を生じ、X線検査でアキレス腱踵骨付着部に分節型の石灰化(図)を認める場合は、臨床的にほぼWSと診断できる。診断確定のための遺伝子検査を希望される場合は、千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学へご照会いただきたい。なお、本疾患は、難病医療法下の指定難病であり、表2に示す重症度分類が3度または「mRS、食事・栄養、呼吸の各評価スケールを用いて、いずれかが3度以上」または「機能的評価としてBarthel Index 85点以下」の場合に重症と判定し、医療費の助成を受けることができる。表1 ウェルナー症候群の診断基準画像を拡大する図 ウェルナー症候群のアキレス腱にみられる特徴的な石灰化像 画像を拡大する分節型石灰化(左):アキレス腱の踵骨付着部から近位側へ向かい、矢印のように“飛び石状”の石灰化がみられる。火焔様石灰化(右):分節型石灰化の進展した形と考えられる(矢印)。表2 ウェルナー症候群の重症度分類 画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法WSそのものの病態に対する根本的治療法は未開発である。糖尿病は約6割の症例に見られ、高度なインスリン抵抗性を伴いやすい。通常、チアゾリジン誘導体が著効を呈する。これに対してインスリン単独投与の場合は、数十単位を要することも少なくない。ただし、チアゾリジン誘導体は、骨粗鬆症や肥満を助長する可能性を否定できないため、長期的かつ客観的な観察結果の蓄積が望まれる。近年、メトホルミンやDPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の有効性を示唆する報告が増え、合併症予防や長期予後に対する知見の集積が期待される。高LDL-C血症に対しては、非WS患者と同様にスタチンが有効である。四肢の皮膚潰瘍に対しては、皮膚科的な保存的治療を第一とする。各種の外用薬やドレッシング剤に加え、陰圧閉鎖療法が有効な症例もみられる。感染を伴う場合は、耐性菌の出現に注意を払い、起炎菌の同定と当該菌に絞った抗菌薬の投与を心掛ける。足部の保護と免荷により皮膚潰瘍の発生や重症化を予防する目的で、テーラーメイドの靴型装具の着用も有用である。■ 手術療法白内障は手術を必要とし、非WS患者と同様に奏功する。40歳までにみられる白内障症例を診た場合、一度は、鑑別診断としてWSを想起して欲しい。四肢の皮膚潰瘍は難治性であり、しばしば外科的デブリードマンを必要とする。また、保存的治療で改善がみられない場合は、形成外科医との連携により、人工真皮貼付や他部位からの皮弁形成など外科的治療を考慮する。四肢末梢とは異なり、通常、体幹部の皮膚創傷治癒能はWSにおいても損なわれていない。したがって、甲状腺がんや胸腹部の悪性腫瘍に対する手術適応は、 非WS患者と同様に考えてよい。4 今後の展望2009年以降、厚生労働科学研究費補助金の支援によって研究班が組織され、全国調査やエビデンス収集、診断基準や診療ガイドラインの作成や改訂と普及啓発活動、そして新規治療法開発への取り組みが行われている(難治性疾患政策研究事業「早老症の医療水準やQOL向上をめざす集学的研究」)。また、日本医療研究開発機構(AMED)の助成により、難治性疾患実用化研究事業「早老症ウェルナー症候群の全国調査と症例登録システム構築によるエビデンスの創生」が開始され、詳細な症例情報の登録と自然歴を明らかにするための世界初の縦断的調査が行われている。一方、WSにはノックアウトマウスに代表される好適な動物モデルが存在せず、病態解明研究における障壁となっていた。現在、AMEDの支援により、再生医療実現拠点ネットワークプログラム「早老症疾患特異的iPS細胞を用いた老化促進メカニズムの解明を目指す研究」が推進され、新たに樹立された患者末梢血由来iPS細胞に基づく病因解明と創薬へ向けての取り組みが進んでいる。なお、先述の全国調査によると、わが国におけるWSの診断時年齢は平均41.5歳だが、病歴に基づいて推定された“発症”年齢は平均26歳であった。これは患者が、発症後15年を経て、初めてWSと診断される実態を示している。事実、30歳前後で白内障手術を受けた際にWSと診断された症例は皆無であった。本疾患の周知と早期発見、早期からの適切な管理開始は、患者の長期予後を改善するために必要不可欠な今後の重要課題と考えられる。5 主たる診療科内科、皮膚科、形成外科、眼科(白内障)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学 ウェルナー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ウェルナー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)米国ワシントン州立大学:ウェルナー症候群国際レジストリー(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報ウェルナー症候群患者家族の会(患者とその家族および支援者の会)1)Epstein CJ, et al. Medicine. 1966;45:177-221.2)Matsumoto T, et al. Hum Genet. 1997;100:123-130.3)Yokote K, et al. Hum Mutat. 2017;38:7-15.4)Takemoto M, et al. Geriatr Gerontol Int. 2013;13:475-481.5)ウェルナー症候群の診断・診療ガイドライン2012年版(2019年中に改訂の予定)公開履歴初回2019年7月23日

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砂糖入り飲料、がんのリスク増大/BMJ

 砂糖入り飲料の消費は、全がんおよび乳がんのリスクを増加させ、100%果物ジュースも全がんのリスクと関連することが、フランス・パリ第13大学のEloi Chazelas氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年7月10日号に掲載された。砂糖入り飲料の消費は最近10年で世界的に増加しているという。砂糖入り飲料と肥満リスクには明確な関連が認められ、肥満は多くのがんの強力なリスク因子とされる。10万人以上の住民を対象とするフランスのコホート研究 研究グループは、100%果物ジュースを含む砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料と、がんのリスクとの関連の評価を目的とする住民ベースの前向きコホート研究を行った(フランス保健省などの助成による)。 解析には、フランスで2009年にWebベースで登録が開始されたNutriNet-Santeコホートの2018年までのデータ(10万1,257例)を用いた。 砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料の消費の評価には、3,300項目の食品および飲料に関して、参加者の日常的な消費状況が記録されるようデザインされた反復的24時間食事記録法を用いた。飲料のタイプごとに、男女別の消費量をそれぞれ4段階に分けて解析した。 主要アウトカムは、飲料の消費と全がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんの関連とした。競合リスクを考慮し、多変量で補正したFineとGrayのハザードモデルを用いて評価を行い、部分分布のハザード比(HR)を算出した。がん予防における修正可能なリスク因子である可能性 10万1,257例(平均年齢42.2[SD 14.4]歳)のうち、女性が7万9,724例(78.7%)を占め、男性は2万1,533例(21.3%)であった。飲料のタイプ別の割合は、砂糖入り飲料(100%果物ジュースを除く)が36%、100%果物ジュースが45%で、人工甘味料入り飲料は19%だった。 追跡期間中央値5.1年(49万3,884人年)の間に、2,193例が初発のがんを発症した。内訳は、乳がんが693例(閉経前283例、閉経後410例)、前立腺がんが291例、大腸がんは166例で、診断時の平均年齢は58.5±12.0歳だった。 砂糖入り飲料の消費は、全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.18、95%信頼区間[CI]:1.10~1.27、p<0.001)および乳がん(1.22、1.07~1.39、p=0.004)のリスクと有意な関連が認められた。乳がんは、閉経前(p=0.02)が閉経後(p=0.07)よりも関連性が明確であったが、砂糖入り飲料の消費量中央値は、閉経期(88.2mL/日)のほうが閉経前(43.2mL/日)に比べ多かった。 砂糖入り飲料の消費は、前立腺がんおよび大腸がんとは関連がなかった。また、肺がんにも関連は認めなかったが(p=0.1)、統計学的検出力がきわめて低かった。 人工甘味料入り飲料の消費は、がんのリスクとは関連しなかったが、全サンプルに占める消費の割合が相対的に低かったことから、統計学的検出力が不十分であった可能性がある。 サブ解析では、100%果物ジュースの消費は全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.12、95%CI:1.03~1.23、p=0.007)のリスクと有意な関連を示した。 著者は、「これらの結果は、他の大規模な前向き研究で再現性を検証する必要がある」とし、「欧米諸国で広く消費されている砂糖入り飲料は、がん予防における修正可能なリスク因子である可能性が示唆される」と指摘している。

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抗炎症効果が期待できる高齢者に適した食事療法とは?

 血糖値低下や体重減少を目的とした食事療法は数多い。その中で、最近注目を集めているトピックスが「抗炎症」。慢性炎症は生活習慣病などにつながる可能性があり、炎症を引き起こす栄養素を避け、炎症を抑える(抗炎症)作用を持つ栄養素を取る、という考え方だ。 2019年6月に行われた第19回日本抗加齢医学会総会において「抗炎症Diet」と題するシンポジウムが行われ、抗炎症作用を踏まえた食事療法として、山田 悟氏(北里大学北里研究所病院糖尿病センター センター長)が糖質制限食、古家 大祐氏(金沢医科大学医学部 教授)が低タンパク食を、最新の研究結果と共に紹介した。糖質制限の抗炎症作用は検証できる段階にはない 山田氏は、現時点で推奨すべきは糖質制限食という考えを示した。 その理由として、・カロリー制限食は、継続がきわめて困難かつ有効性がない(2型糖尿病発症予防のための介入試験[J-DOIT3]1)において調整後に全死因死亡や主要心血管イベントの発生率を有意に低下させることが実証されたが、介入から3年後には強化治療群・通常治療群ともにBMIが増加していた)。また、フレイルやサルコペニアにつながるリスクがある・タンパク制限食もフレイルやサルコペニアのリスクがあり、とくに筋肉の落ちやすい高齢者には不適という点を挙げた。 糖質制限食は、糖尿病患者の血糖値改善効果の研究ですでに多くのエビデンスがあり、これらの無作為化比較試験をメタ解析した9件の研究においても、血糖(HbA1c)・体重・脂質すべての数値がほかの食事療法より改善した、という結果を紹介した。一方、これらのメタ解析においてLDL-C値は全般的に改善効果が低く、極端な糖質制限はコレステロール値に悪影響を与える可能性があることに注意が必要とした。そして、注目の抗炎症作用については、糖質制限食とCRP値との関連を調べた研究が数件あるものの明確な結果は得られず、期待は持てるもののまだ検証できる段階にはない、と述べた。いわゆる地中海食に腎保護作用と抗加齢につながる可能性 続いて、古家氏が低タンパク食とメタボリックヘルスとの関連を調査した結果を発表した。ショウジョウバエを使ってカロリーと寿命の関係をみた過去の研究2)では、タンパク質制限は、カロリー制限と同等の延命効果が認められた。これを踏まえ、2型糖尿病モデルラットを使い、低タンパク食と腎障害・メタボリックヘルス改善との関連についての調査を実施。24週齢で腎障害が出ているラットを通常食群(タンパク質23.84%、脂質18.80%、炭水化物59.36%、エネルギー3.55kcal/g)と低タンパク食群(タンパク質5.77%、脂質16.48%、炭水化物77.75%、エネルギー3.54kcal/g)に割り付け、20週間の介入後に各数値の変化をみた。 結果として、低タンパク食群は血糖(HbA1c)・脂質が低下し、コレステロール値では有意差はなかったものの低下した。古家氏は「低タンパク食には腎保護効果とメタボリックヘルスの改善に関連が強く、寿命延伸につながる期待がもてる」と述べた。 また、低タンパク食は長期効果を疑問視する声やフレイルやサルコペニアを招くリスクが指摘されていることから、低タンパク食の量とともに「質」についても検討を行った。赤肉を多く取ると末期腎不全・腎死のリスクが高まり、赤肉をほかのタンパク質(鶏肉・魚・卵・豆類など)に換えることでリスクが減ったことから、「赤肉を減らし、魚や植物性タンパク質を多く取る、いわゆる地中海食が腎保護作用と抗加齢につながる可能性がある」とまとめた。■「卵コレステロール」関連記事特売卵のコレステロール量は?/日本動脈硬化学会

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遺伝的素因と環境の相互作用で、BMIが著しく上昇/BMJ

 ノルウェーでは、高BMIの遺伝的素因と、肥満の原因となる環境との相互作用によって、1980年代半ば~2000年代半ばにかけて、BMIの高度な上昇がもたらされたことが、ノルウェー科学技術大学のMaria Brandkvist氏らによる縦断的調査で示された。多遺伝子研究などにより、肥満の発症における遺伝子と環境との相互作用が示唆されているが、これらの研究は年齢幅が狭い、追跡期間が短い、BMIが自己申告などの限界があるという。BMJ誌2019年7月3日号掲載の報告。約6万7,000例の地域住民を対象とする縦断研究 研究グループは、ノルウェーにおけるBMIの変動の過程を調査し、肥満の原因となる環境がBMIに及ぼす特異的な影響を遺伝素因に基づいて評価する目的で、縦断研究を行った(Norwegian Research Councilなどの助成による)。 同国ヌール・トロンデラーグ県の13~80歳の一般住民を対象とする縦断研究(HUNT研究)の参加者11万8,959人のうち、6万7,305人において遺伝素因とBMIの関連の解析を行った。 対象は、高BMIへの遺伝的感受性が最も高い群から最も低い群に、等しいサイズで5つの集団に分けられた。データセットの完全性が最も高かった25~55歳の成人について解析を行った。遺伝素因の違いでBMIにも差があり、徐々に拡大 ノルウェーでは、1980年代半ば~1990年代半ばにかけて肥満が増加し、1970年以降に生まれた年齢の高いコホートと比較して、すでに若年成人のBMIがかなり高かった。 遺伝的感受性が最も高い集団と最も低い集団では、どの10年単位の年代でも全年齢層でBMIに差があり、この差は1960年代~2000年代にかけて徐々に大きくなった。 たとえば、35歳の男性では、1960年代に遺伝素因が最も大きかった集団は最も小さかった集団に比べ、BMIが1.20(95%信頼区間[CI]:1.03~1.37)高かったのに対し、2000年代にはこの差は2.09(1.90~2.27)へと拡大した。また、同年齢の女性にも同様の傾向が認められ、BMIの差は1960年代の1.77(1.56~1.97)から2000年代には2.58(2.36~2.80)へと大きくなった。 これらの知見は、遺伝素因を有する集団は高BMIのリスクが高いことを示すものである。また、遺伝素因と肥満の原因となる環境との相互作用により、1980年代半ば~2000年代半ばに観察された、より高いBMIがもたらされたことを示すエビデンスである。その一方で、BMIは遺伝素因のある集団と素因のない集団の双方で増加しており、これは環境が高BMIの主要な寄与因子であることを示唆する。 著者は、「より効果的な肥満予防戦略が確立されれば、集団全体に利益がもたらされ、それは肥満の遺伝素因を有する集団で、とくに有益であることが証明される可能性がある」としている。

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食事と2型DMの関連、質の高いエビデンスは少ない/BMJ

 食事と2型糖尿病の関連は広範に研究されてきたが、多くの評価項目に関して質の高いエビデンスは少なく、より包括的な検討を要することが、ドイツ・ハインリッヒ・ハイネ大学のManuela Neuenschwander氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年7月3日号に掲載された。2型糖尿病による多大な世界的健康負担や医療費を考慮すると、食事との関連に関する膨大な研究から得られた知見は重要である。その一方で、これらの関連の強度や精確度、潜在的なバイアスの影響を明確化する必要があるという。153評価項目に関する53件のメタ解析のアンブレラレビュー 研究グループは、食事と2型糖尿病の発生の関連に関するエビデンスを要約し、これらの関連の強度と妥当性を評価する目的で、前向き観察研究を対象とした既報の系統的レビューとメタ解析について、アンブレラレビューを行った(ドイツ連邦保健省などの助成による)。 2018年8月の時点で、医学関連データベースに登録された論文を検索した。2型糖尿病の発生と、食事行動または食事の質の指標、食品群または単一の食品、飲料、アルコール飲料、あるいは主要栄養素や微量栄養素との関連に関する要約リスク推定値の報告が含まれる系統的レビューとメタ解析を対象とした。 2型糖尿病の発生との関連に関する153の評価項目の調整済み要約ハザード比(HR)を報告した53件のメタ解析が選出された。研究方法の質が「高い」は75%、エビデンスの質が「高い」は7項目のみ 153項目の内訳は、食事行動または食事の質の指標との関連が12、食品群または単一の食品との関連が56で、飲料が10、アルコール飲料が12、主要栄養素が32、微量栄養素は31であった。 研究の方法の質は、「高い」と判定された項目が115(75%)、「中等度」が35(23%)、「低い」は3(2%)だった。 食事行動または食事の質の指標と、微量栄養素に関する項目には、エビデンスの質が「高い」と判定されたものはなかった。エビデンスの質が「高い」と判定されたのは、以下の7項目(食品群または単一の食品に関する項目が4、飲料、アルコール飲料、主要栄養素がそれぞれ1)であった。 2型糖尿病の発生との逆相関に関して、エビデンスの質が「高い」と判定されたのは、全粒穀物(摂取量1日30g増加の調整済み要約HR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.82~0.93)および穀類の食物繊維(1日10g増加、0.75、0.65~0.86)のほか、中等度のアルコール摂取(1日12~24g[1日0gとの比較]、0.75、0.67~0.83)であった。 また、2型糖尿病の発生の増加に関して、エビデンスの質が「高い」と判定されたのは、赤肉(red meat)(摂取量1日100g増加の調整済み要約HR:1.17、95%CI:1.08~1.26)、加工肉(1日50g増加、1.37、1.22~1.54)、ベーコン(1日2枚ごと、2.07、1.40~3.05)、砂糖入り飲料(1日1サービング増加、1.26、1.11~1.43)であった。 著者は、「メタ解析の方法の質は高かったが、エビデンスの質が高い評価項目は限られていた」とまとめ、「今後の研究では、高度な妥当性を有する食事データを入手し、エビデンスの質が低かった食事曝露や特定の食品群に重点的に取り組む必要がある。また、選択的出版バイアスを回避するために、調査が行われていない食事曝露などのデータを含む、より包括的な解析の報告が望まれる」としている。

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新型タバコも禁煙外来でやめられる?【新型タバコの基礎知識】第4回

第4回 新型タバコも禁煙外来でやめられる?Key Points加熱式タバコをやめるために禁煙外来・禁煙治療を受けることは可能。CO測定値を記録する欄に、「加熱式タバコ使用中」などと記録しておけばよい。喫煙指数(=喫煙本数×喫煙年数)については、加熱式タバコの本数を紙巻タバコと同等に扱ってもよいと考えられる。新型タバコの登場によって、禁煙外来の現場でも混乱が起きているようです。禁煙外来では、受診者における前日から当日の喫煙状況を反映する指標として、「呼気一酸化炭素濃度検査」が実施されています。紙巻タバコに含まれる代表的な有害物質の1つが、一酸化炭素(CO)です。一酸化炭素は赤血球のヘモグロビンと結合し、CO-Hb(一酸化炭素ヘモグロビン)となります。酸素もヘモグロビンと結合して全身に運ばれますが、一酸化炭素は酸素よりもヘモグロビンと結合しやすく、一酸化炭素があるとヘモグロビンと酸素の結合が妨げられ、酸欠状態が生じます。喫煙により息切れや虚血性心疾患が生じる原因の1つが、一酸化炭素なのです。ハンディタイプの測定器を使えば、簡単に呼気一酸化炭素濃度を測定でき、結果が即座に表示画面に数字で示されるので、禁煙の動機付けに役立ちます。また、呼気一酸化炭素濃度は半減期が3~5 時間と短く、禁煙後すぐに正常値に戻るので、禁煙を維持する励みとしても用いることができます。しかし、加熱式タバコを吸っているケースでは、呼気一酸化炭素濃度を測定してもその数値は上がりません。そのため、加熱式タバコを吸っている場合には、禁煙外来で禁煙治療を受けることができないとの誤解をしている医療者が多くいるようなのです。しかし、それは誤解です。加熱式タバコを吸っている場合に、加熱式タバコをやめるために禁煙治療を受けることは可能です。禁煙外来における保険診療は、ニコチン依存症に対する治療(ニコチン依存症管理料)です。加熱式タバコにも紙巻タバコとほぼ同等のニコチンが含まれており(第3回参照)、加熱式タバコを吸っている者もニコチン依存症であり、保険適用とすることが可能です。一酸化炭素測定値を記録する欄には、「加熱式タバコ使用中」などと記録しておけばOKです。保険適用の条件に、「呼気一酸化炭素濃度の数値が高いこと」は含まれませんのでご心配なく。また、喫煙指数(=喫煙本数×喫煙年数)については、加熱式タバコの本数を紙巻タバコの本数と同等に扱ってもよいものと考えられます(図)。ただしプルーム・テックの場合には、カプセルの個数を記録しておくとよいでしょう。JTはプルーム・テック用のタバコカプセル5個をタバコ20本相当としていますが、まだこれに関してのコンセンサスは得られていません。画像を拡大する保険適用上は問題がないとしても、喫煙量や喫煙状況を客観的に確認する方法として、加熱式タバコの場合には呼気一酸化炭素濃度検査が有効にはたらかないという問題が存在します。今後、呼気一酸化炭素濃度検査の代わりに、喫煙もしくは禁煙していることを確認するための簡便な方法を模索していく取り組みを進めていきたいと考えています。第5回は、「加熱式タバコから有害物質は出ない?」です。

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ピロリ除菌、親が失敗なら子の失敗リスク高い

 クラリスロマイシン(CAM)耐性Helicobacter pylori(H. pylori)とCYP2C19多型は、何世代にもわたって受け継がれる可能性があり、H. pylori除菌失敗の危険因子として知られている。しかし、親がCAM3剤併用療法による除菌失敗歴を有する患者における失敗リスクを評価した研究はなかった。今回、出口 尚人氏(京都大学/武田薬品工業)らの横断研究により、CAM3剤併用療法での親の除菌失敗歴が子孫の除菌失敗の危険因子であることが示された。Journal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2019年7月1日号に掲載。 本研究は、被保険者310万人の大規模な診療報酬請求データベースを使用。2005年1月~2018年2月に、1次除菌のCAM3剤併用療法の記録と親の記録の両方を有する404例を同定した。父親または母親のCAM3剤併用療法の失敗を、親のCAM3剤併用療法の失敗歴とした。オッズ比は、年齢・性別・真性糖尿病・消化性潰瘍で調整したロジスティック回帰モデルを用いて推定した。 その結果、CAM3剤併用療法の除菌失敗率は22.5%(91/404)であった。単変量解析では、オッズ比が1.90(95%信頼区間:1.10~3.29)、多変量解析ではオッズ比1.93(同:1.10~3.39)であり、親のCAM3剤併用療法の失敗歴は子孫のCAM3剤併用療法の失敗に関連していた。

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177)診察室で15秒!超簡単な体力測定法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用:片脚立ちで何秒立てる?説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話医師最近、自分の体力についてどう思いますか?患者運動不足で、だんだん体力が落ちてきている気がします。医師そうですか。それでは、簡単にできる体力テストをしてみましょう。患者どうすればいいですか?医師目を開けたまま、片脚で立ってください。何秒間立っていることができるでしょうか。…さっそくやってみましょう。ハイ、スタート!患者……(開眼片脚立ちにチャレンジ)。あー、もうだめです。医師13秒間でしたね。患者それってどうなんですか?医師15秒未満だったので、転倒リスクが高い運動器不安定症が疑われます。患者えっ、そうですか…。そう言えば、最近つまずきやすいかもしれません。医師そうでしたか。転倒は入院や寝たきりにつながるので、もう少し体力をつけたほうがよさそうですね。転倒を予防できるいい運動がありますよ!患者どんな運動ですか? 教えてください!(興味津々)医師それは…。(転倒予防の話に展開)※診察室では、ケガのリスクなどに十分注意して実施してください。●ポイント体力低下は転倒リスクにつながるので、運動の必要性を意識してもらいます。参考公益社団法人 日本整形外科学会 運動器不安定症【訂正のお知らせ】「閉眼」⇒「開眼」に訂正いたしました(2019年7月16日)。

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終末期がん患者、併発疾患への薬物療法の実態

 終末期緩和ケアを受けているがん患者において、併発している疾患への薬物療法はどうなっているのか。フランス・Lucien Neuwirth Cancer InstituteのAlexis Vallard氏らは、前向き観察コホート研究を行い、緩和ケア施設に入院した終末期がん患者に対する非抗がん剤治療が、一般的に行われていることを明らかにした。著者は「それらの治療の有益性については疑問である」とまとめている。Oncology誌オンライン版2019年6月20日号掲載の報告。 研究グループは、緩和ケア施設のがん患者に対する抗がん剤治療および非抗がん剤治療の実態と、非抗がん剤治療を中止するか否かの医療上の決定に至る要因を明らかにする目的で調査を行った。 2010~11年に緩和ケア施設に入院したがん患者1,091例のデータを前向きに収集し、解析した。 主な結果は以下のとおり。・緩和ケア施設入院後の全生存期間中央値は、15日であった。・緩和ケア施設入院後、4.5%の患者を除き、最初の24時間以内に特定の抗がん剤治療は中止されていた。・非抗がん剤治療については、患者が死亡するまで、強オピオイド(74%)、副腎皮質ステロイド(51%)、および抗うつ薬(21.8%)について十分に投与が続けられていた。・抗潰瘍薬(63.4%)、抗菌薬(25.7%)、血栓症予防療法(21.8%)、糖尿病治療薬(7.6%)、輸血(4%)もしばしば、継続して処方されていた。・多変量解析の結果、ECOG PS 4は、モルヒネについては継続の独立した予測因子であり、副腎皮質ステロイド、プロトンポンプ阻害薬、糖尿病治療薬、予防的抗凝固療法については中止の独立した予測因子であった。・感染症症状はパラセタモール継続の、麻痺および触知可能ながん腫瘤は副腎皮質ステロイド中止の、脳転移は抗潰瘍薬中止の、出血は予防的抗凝固療法中止の、それぞれ独立した予測因子であった。

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前立腺がんのアンドロゲン除去療法と認知症~15万例の解析

 アンドロゲンの低下は、除脂肪体重の減少や糖尿病、心血管疾患、うつ病など、アルツハイマー病や認知症の危険因子を増大させる可能性がある。前立腺がんにおけるアンドロゲン除去療法(ADT)は認知機能に影響するのだろうか。今回、米国ペンシルバニア大学のRavishankar Jayadevappa氏らが、15万例超の高齢前立腺がん患者のデータを分析したところ、アンドロゲン除去療法を受けた後少なくとも10年間は、アルツハイマー病や認知症の診断と関連することが示された。JAMA Network Open誌2019年7月3日号に掲載。アンドロゲン除去療法の曝露:非曝露で認知症は21.6%:15.8% 本研究は、米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)-Medicare Linked Databaseを用いた後ろ向きコホート研究で、1996~2003年に新たに前立腺がんと診断された65歳以上の男性29万5,733例のうち、研究基準を満たした15万4,089例が対象。分析は2018年11月1日~2018年12月31日に行われた。著者らは、前立腺がんの診断から2年以内にアンドロゲン除去療法を受けた患者を同定し、生存期間分析でアンドロゲン除去療法曝露と追跡期間におけるアルツハイマー病または認知症の診断との関連を検討した。 アンドロゲン除去療法と認知症の関連についての主な研究結果は以下のとおり。・15万4,089例のうち、前立腺がん診断の2年以内に6万2,330例(平均年齢:76.0[SD:6.0]歳)がアンドロゲン除去療法を受け、9万1,759例(平均年齢:74.3歳[SD:6.0])がアンドロゲン除去療法を受けていなかった。平均追跡期間は8.3年(SD:4.7)であった。・アンドロゲン除去療法曝露はアンドロゲン除去療法非曝露と比較して、アルツハイマー病(13.1% vs.9.4%、差:3.7%、95%CI:3.3~3.9%、p<0.001、ハザード比[HR]:1.14、95%CI:1.10~1.18)と認知症(21.6% vs.15.8%、差:5.8%、95%CI:5.4~6.2%、p<0.001、HR:1.20、95%CI:1.17~1.24)の診断と関連していた。・NNT(number needed to harm)は、アルツハイマー病で18例(95%CI:17~19)、認知症で10例(95%CI:9.5~11)であった。

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2型DM、食事の脂肪の質が死亡リスクと関連/BMJ

 2型糖尿病患者において、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取量増加は炭水化物または飽和脂肪酸の摂取と比較して、全死亡および心血管死の低下と関連していることが認められた。中国・浙江大学のJingjing Jiao氏らが、米国のNurses' Health StudyおよびHealth Professionals Follow-up Studyのデータを解析して明らかにした。著者は、「結果は、2型糖尿病患者の心血管死および全死亡の予防に、食事中の脂肪の質が重要な役割を果たすことを強調するものである」とまとめている。糖尿病患者の食事ガイドラインでは、良好な健康を維持するためにトランス脂肪の摂取を減らし、飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換えることを推奨しているが、これは一般集団での検討結果に基づいたもので、糖尿病患者における特定の食事中の脂肪と全死亡および心血管死との関連性についてはほとんど知られていなかった。BMJ誌2019年7月2日号掲載の報告。米国の2つの大規模コホートから2型糖尿病患者約1万1千例を解析 研究グループは、2型糖尿病患者における食事中の脂肪と心血管死および全死亡との関連を評価する目的で、米国のNurses' Health Study(1980~2014年)およびHealth Professionals Follow-up Study(1986~2014年)の2型糖尿病患者1万1,264例について解析した。 参加者は、食事中の脂肪の摂取について、食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)を用いた2~4年ごとの調査を受けていた。 主要評価項目は、追跡期間中の全死亡と心血管死である。Cox比例ハザードモデルを用い、食事中の脂肪の摂取量と主要評価項目との関連について解析した。PUFA、n-3系PUFA、リノール酸の高摂取は低摂取より心血管死が2~3割低下 追跡期間中、死亡は2,502例(うち心血管死646例)が確認された。多変量解析の結果、PUFAの摂取は全炭水化物と比較し心血管死のリスク低下と関連していた。摂取量の第1四分位と比較した第4四分位のハザード比(HR)は、PUFAで0.76(95%信頼区間[CI]:0.58~0.99、傾向のp=0.03)、海産物由来のn-3系PUFAで0.69(95%CI:0.52~0.90、p=0.007)、α-リノレン酸で1.13(95%CI:0.85~1.51)、リノール酸で0.75(95%CI:0.56~1.01)であった。全死亡についても、PUFA、n-3系PUFA、リノール酸で同様の関連が確認されたが、植物性ではなく動物性の一価不飽和脂肪酸は全死亡のリスク増加と関連していた。 飽和脂肪酸からのエネルギーの2%を、総PUFAまたはリノール酸からの同等のカロリーに置き換えると、13%(HR:0.87、95%CI:0.77~0.99)、15%(HR:0.85、95%CI:0.73~0.99)、それぞれ心血管死のリスクが低下した。また、飽和脂肪酸からのエネルギーの2%を総PUFAに置き換えると、全死亡のリスクが12%低下した(HR:0.88、95%CI:0.83~0.94)。 なお著者は、血糖コントロールや糖尿病の重症度は評価されていないこと、食事や生活習慣の要因が自己報告であること、残余交絡の可能性などを研究の限界として挙げている。

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持続する疲労感は成長ホルモン不全症(AGHD)のせい?

 ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は、都内で成人の成長ホルモン分泌不全症(AGHD)に関するプレスセミナーを開催した。 セミナーでは「成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)とは」をテーマに、亀田 亘氏(山形大学医学部付属病院 第三内科 糖尿病・代謝・内分泌内科)を講師に迎え、なかなか診療まで結びつかない本症に関し、症状、診断と治療、患者へのフォローなどが紹介された。成長ホルモンが不足するとAGHDを来す 成長ホルモン(以下「GH」と略す)は下垂体で作られ、20歳くらいまで多く分泌され、それ以降は低下する。そして、下垂体で作られたGHは、静脈血に乗って、さまざまな標的器官に運ばれ、次のように作用する。・脳:思考力、意欲、記憶力を高める作用・軟骨・骨:正常な軟骨・骨の成長と強固な骨構造、骨量を維持する作用・心・骨格筋:心筋の強度・機能を高め、心臓の駆出機能を維持する作用・免疫系:免疫機能を亢進する作用・脂肪組織:脂肪代謝を促す作用・肝臓:糖新生作用の促進、IGF-1産生を促す作用・腎臓:水、電解質の調節作用・生殖器系:精巣・卵巣の正常な成長・発達を促進し、生殖機能を維持する作用 GHが不足するとAGHDを来し、亢進すると先端巨人症などの疾患を来すためにGHはバランスよく分泌される必要がある。AGHDは疲労感、集中力の低下などの日常の症状から疑う AGHDの主な症状として(詳細は『成人成長ホルモン分泌不全症の診断と治療の手引き(平成24年度改訂)』を参考)、疲労感、集中力の低下、うつ状態、皮膚の乾燥、体型の変化、骨量の低下、サルコペニア、脳腫瘍の合併などがある(小児発症では成長障害を来す)。 そして、AGHDの原因としては、脳の腫瘍や頭部外傷、中枢神経の感染症が考えられ、腫瘍によるものが多いという。 AGHD診断では、先述の臨床所見のほか、インスリン、アルギニン、L-DOPAなどの負荷によるGH分泌刺激試験の結果と合わせて診断されるほか、同時に重症度も判定される。 AGHD治療では、ソマトロピン(商品名:ノルディトロピンほか)などGH補充療法が行われている。わが国では、1975年から成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療にGH補充療法が開始され、1998年にコンセンサスガイドラインができたことで世界的な治療へと拡大した。AGHDには 2006年から適応となり、現在もさまざまなGH関連疾患への適応が続いている。 患者フォローについては、AGHDは指定難病に指定され、医療費のサポートなどが受けられるほか、成長科学協会などの研究団体、下垂体患者の会などの患者会があり、疾患・治療に関する情報の提供・啓発などが行われている。

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ステント留置後のDAPT投与期間、1ヵ月は12ヵ月より有効?/JAMA

 STOPDAPT試験(2016年)により、コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)留置術後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を3ヵ月で終了するアプローチの安全性が確認されている。京都大学の渡部 宏俊氏らSTOPDAPT-2試験の研究グループは、今回、DAPT投与期間をさらに短縮して1ヵ月とし、その後クロピドグレル単剤投与に切り換える治療法について検討し、この超短期的DAPTは、主要な心血管イベント/出血イベントの抑制効果に関して、DAPTを12ヵ月投与する標準治療に対し非劣性で、優越性も有することが示された。JAMA誌2019年6月25日号掲載の報告。日本の90施設で1ヵ月DAPT群と12ヵ月DAPT群に無作為に割り付け 本研究は、日本の90施設が参加した多施設共同非盲検無作為化試験であり、2015年12月~2017年12月の期間に患者登録が行われ、2019年1月に最後の1年フォローアップを終了した(Abbott Vascularの助成による)。 対象は、CoCr-EES留置術による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者であった。経口抗凝固薬を要する患者や、頭蓋内出血の既往を有する患者は除外された。 被験者は、術後にアスピリン+P2Y12阻害薬(クロピドグレルまたはプラスグレル)によるDAPTを1ヵ月行い、その後はクロピドグレル単剤に切り換える群(1ヵ月DAPT群)、または術後にアスピリン+P2Y12阻害薬によるDAPTを1ヵ月行い、その後はアスピリンとクロピドグレルによるDAPTを12ヵ月時まで継続する群(12ヵ月DAPT群)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、12ヵ月時の心血管死、心筋梗塞、虚血性または出血性脳卒中、ステント血栓症(definite)、TIMI出血基準の大出血または小出血の複合であり、相対的非劣性マージンは50%とした。1ヵ月DAPT群が心血管イベントを増加させずに出血イベントを抑制 3,009例(intention-to-treat集団)が登録され、2,974例(99%)が試験を完遂した。1ヵ月DAPT群に1,500例、12ヵ月DAPT群には1,509例が割り付けられた。全体の平均年齢は68.6歳、男性が78%で、糖尿病が39%、安定冠動脈疾患が62%、急性冠症候群が38%に認められた。多くが、血栓リスクおよび出血リスクが低~中等度の患者であった。 主要エンドポイントの発生率は、1ヵ月DAPT群が2.36%、12ヵ月DAPT群は3.70%であった(絶対差:-1.34%、95%信頼区間[CI]:-2.57~-0.11、ハザード比[HR]:0.64、95%CI:0.42~0.98)。非劣性の判定基準が満たされ(p<0.001)、優越性にも有意差が認められた(p=0.04)。 心血管イベントの副次エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、虚血性または出血性脳卒中、ステント血栓症[definite])の発生率は、1ヵ月DAPT群が1.96%、12ヵ月DAPT群は2.51%であった(絶対差:-0.55%、95%CI:-1.62~0.52、HR:0.79、95%CI:0.49~1.29)。非劣性の判定基準は満たした(p=0.005)が、優越性は認めなかった(p=0.34)。 また、出血イベントの副次エンドポイント(TIMI出血基準の大出血または小出血)の発生率は、1ヵ月DAPT群が0.41%、12ヵ月DAPT群は1.54%であり(絶対差:-1.13%、95%CI:-1.84~-0.42、HR:0.26、95%CI:0.11~0.64)、1ヵ月DAPT群の優越性が確認された(p=0.004)。 著者は、「これらの知見により、薬剤溶出ステント留置術後に、DAPTを1ヵ月行った後クロピドグレル単剤投与を行うレジメンは、DAPTを12ヵ月継続する標準治療よりも高い有益性をもたらすことが示唆される」とまとめ、「このレジメンの有益性は、心血管イベントを増加させずに出血イベントを抑制することでもたらされたため、出血リスクが高くない患者でも治療選択肢となる可能性がある。また、虚血リスクが低~中等度の患者が多かったことから、虚血リスクの高い患者において、さらなる検討を要する」と指摘している。

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