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DPP-4阻害薬の心血管安全性はSU薬と同等(解説:吉岡成人氏)-1146

 DPP-4阻害薬であるリナグリプチンの心血管アウトカムに関する試験として、プラセボを対照として非劣性を示したCARMELINA(Cardiovascular and Renal Microvascular Outcome Study With Linagliptin)試験の結果がすでに報告されている(Rosenstock J, et al. JAMA. 2019;321:69-79.)。今回、SU薬であるグリメピリドを対照として心血管アウトカムについて検証したCAROLINA(Cardiovascular Outcome Study of Linagliptin Versus Glimepiride in Patients With Type 2 Diabetes)試験の結果が、JAMA誌に掲載された(Rosenstock J, et al. JAMA. 2019 Sep 19. [Epub ahead of print])。 心血管疾患の既往ないしは心血管リスクを有する2型糖尿病で、未治療ないしはメトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬のいずれかまたは併用で治療されているHbA1c 6.5~7.5%の患者を対象としている。リナグリプチン投与群とグリメピリド投与群をランダムに割り付け、3ポイントMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初発までの期間を主要評価項目として、中央値で6.3年間にわたって追跡したものである。 3ポイントMACEはリナグリプチン群、グリメピリド群ともに2.1/100人・年で、グリメピリドに対するリナグリプチンの非劣性が示されたものの、優越性は認められなかった。全死亡、非心血管死のリスクに対しても両群で差はなかった。試験期間を通じて、脂質プロフィールや血圧に差はなく、低血糖の発現頻度はリナグリプチン群2.3/100人・年、グリメピリド群11.1/100人・年であり、リナグリプチン群で有意に少なかった(HR:0.23、95%信頼区間:0.21~0.26)。第三者の助けが必要な重症低血糖はグリメピリド群で0.5/100人・年、リナグリプチン群で0.1/100人・年であった。 罹病期間6.3年(中央値)、メトホルミンが83%に投与されている2型糖尿病患者で、心血管疾患のリスク軽減のためにアスピリン50%、スタチン64%、RA系阻害薬75%、降圧薬88%と比較的十分な薬物治療が行われている場合には、DPP-4阻害薬を投与してもグリメピリドに勝る心血管安全性が示されなかったことが確認された。 日本においてDPP-4阻害薬は糖尿病患者の半数以上に広く用いられており、インクレチンを介した心血管保護作用も期待されている。しかし、スタチンやRA系阻害薬など心血管疾患のリスクを軽減することが十分に立証された薬剤で治療されている患者にとって、相加的な心血管保護作用を示すかどうか、慎重に見極めなくてはいけない。

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低用量コルヒチン、心筋梗塞後の虚血性心血管イベントを抑制/NEJM

 低用量コルヒチンは、心筋梗塞患者における虚血性心血管イベントのリスクをプラセボに比べ有意に低減することが、カナダ・モントリオール心臓研究所のJean-Claude Tardif氏らが行ったCOLCOT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号に掲載された。炎症は、アテローム性動脈硬化およびその合併症において重要な役割を担うことを示す実験的および臨床的なエビデンスがある。コルヒチンは、イヌサフランから抽出された抗炎症作用を有する経口薬で、痛風や家族性地中海熱、心膜炎の治療に使用されている。発症後30日以内の心筋梗塞の無作為化試験 本研究は、12ヵ国167施設が参加した医師主導の二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2015年12月~2018年8月の期間に患者登録が行われた(カナダ・ケベック州政府などの助成による)。 対象は、登録前の30日以内に心筋梗塞を発症し、経皮的血行再建術を受け、強化スタチン治療を含む国のガイドラインに準拠した治療を受けている成人患者であった。 被験者は、低用量コルヒチン(0.5mg、1日1回)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 有効性の主要エンドポイントは、心血管死、心停止からの蘇生、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の原因となった狭心症による緊急入院の複合とした。主要複合エンドポイント:5.5% vs.7.1% 4,745例が登録され、コルヒチン群に2,366例、プラセボ群には2,379例が割り付けられた。追跡期間中央値は22.6ヵ月だった。 ベースラインの全体の心筋梗塞発症後平均期間は13.5日、平均年齢は60.6歳、女性が19.2%であった。また、20.2%が糖尿病を有し、93.0%が心筋梗塞に対し経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けており、98.8%がアスピリン、97.9%が他の抗血小板薬、99.0%がスタチンの投与を受けていた。 主要複合エンドポイントの発生率は、コルヒチン群が5.5%と、プラセボ群の7.1%に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.61~0.96、p=0.02、log-rank検定)。 主要複合エンドポイントの構成要素のうち、心血管死(コルヒチン群0.8% vs.プラセボ群1.0%、HR:0.84、95%CI:0.46~1.52)、心停止後の蘇生(0.2% vs.0.3%、0.83、0.25~2.73)、心筋梗塞(3.8% vs.4.1%、0.91、0.68~1.21)の発生率には両群間に有意な差は認められなかったが、脳卒中(0.2% vs.0.8%、0.26、0.10~0.70)と血行再建術の原因となった狭心症による緊急入院(1.1% vs.2.1%、0.50、0.31~0.81)の発生率はコルヒチン群で有意に低かった。 副次複合エンドポイント(心血管死、心停止後の蘇生、心筋梗塞、脳卒中)(コルヒチン群4.7% vs.プラセボ群5.5%、HR:0.85、95%CI:0.66~1.10)および有効性の探索的エンドポイントである死亡(1.8% vs.1.8%、0.98、0.64~1.49)、深部静脈血栓症/肺塞栓症(0.4% vs.0.3%、1.43、0.54~3.75)、心房細動(1.5% vs.1.7%、0.93、0.59~1.46)の発生率には、両群間に有意な差はみられなかった。 治療薬関連の有害事象は、コルヒチン群が16.0%、プラセボ群は15.8%で認められた。重篤な有害事象はそれぞれ16.4%、17.2%でみられた。消化器イベントの頻度が高く(コルヒチン群17.5%、プラセボ群17.6%)、そのうち下痢がコルヒチン群で9.7%、プラセボ群で8.9%(p=0.35)、悪心がそれぞれ1.8%、1.0%(p=0.02)で発現した。 著者は、「主要複合エンドポイントの改善は、主に脳卒中と血行再建術の原因となった狭心症による緊急入院の発生率の低下によってもたらされた」としている。

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新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(2)【新型タバコの基礎知識】第13回

第13回 新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(2)Key Pointsなぜ新型タバコに関心を持ったのか、その背景にある事情を尊重する。多くの人は、自分および他人へのタバコの害に配慮して、アイコスなど加熱式タバコを使うようになっている。新型タバコにより害を軽減することができるとの科学的根拠は得られていない。いま一度、すべてのタバコをやめるという選択肢を提示したい。タバコを吸いにくい場所で吸うために、新型タバコに替えようとしている人もいる。その場合には、新型タバコのせいで、ニコチン依存症から逃れることがより困難になることを伝える。禁煙支援の現場でも新型タバコが問題になっています。世の中では新型タバコを吸っている人が急増しているわけですが、新型タバコに関してそれぞれの診療の場にノウハウがあるわけでもなく、どのように対応すればよいのか混乱が起きている状況です。「加熱式タバコを吸おうかと考えている人へ伝えたい、伝えてほしいこと」を書かせてもらう前に、人々がどういう理由で新型タバコを使うようになっているのかについて先にお伝えしたいと思います。インターネット調査*1を実施して、どんな理由で加熱式タバコを使っているのかについて調べました。質問文と選択肢は次の通りです:「あなたが、加熱式タバコを使用した理由として次の1~9は、あてはまりますか。それぞれについてお答えください。1.家族・親戚が使っているから2.友人・知人が使っているから3.加熱式タバコで仲間とコミュニケーションをとるため4.ほかのタバコよりも害が少ないと思ったから5.加熱式タバコのデザインや機能がよかったから6.禁煙するため7.タバコの煙で他人に迷惑をかけるのを避けるため8.ほかのタバコが吸えない場所で吸うため9.喫煙本数を減らすため選択肢1.あてはまる2.ややあてはまる3.あまりあてはまらない4.あてはまらない※1~9のそれぞれの項目について「あてはまる」もしくは「ややあてはまる」と回答した場合に、その理由で加熱式タバコを使っていると判定した。調査結果を集計したのが下記の表です。2018年の調査時に加熱式タバコを吸っていた680人のうち、60.6%の412人が加熱式タバコを使用した理由として「ほかのタバコよりも害が少ないと思ったから」と回答していました。これが最も多い理由でした。次に多かった理由は「タバコの煙で他人に迷惑をかけるのを避けるため」であり、その次に多い理由が「友人・知人が使っているから」でした。多くの人は、自分および他人へのタバコの害に配慮して、アイコスなど加熱式タバコを使うようになっていると分かりました。一方で、30%程度の人は「ほかのタバコが吸えない場所で吸うため」と答えていました。それぞれの人が新型タバコを使っている理由というのは非常に重要な情報であり、各個人における新型タバコへの対処方法をどうするのがよいかという、これからお伝えする話と密接に関連しています。*1:このインターネット調査は、通称JASTIS研究と呼ばれる2015年から毎年およそ1万人を対象として実施されている追跡調査です。加熱式タバコの使用状況を世界で初めて報告した研究など、新型タバコに関する最新の研究成果がこの研究プロジェクトから発信されています。参考文献:Tabuchi T, et al. J Epidemiol. 2019 Nov 5;29:444-450.画像を拡大する加熱式タバコを吸おうかと考えている人へ伝えたいこと、伝えてほしいことまず聴いてみてほしいのは、なぜ新型タバコを吸おうと思っているか、です。「あなたが新型タバコに関心を持っていることを、まずは尊重したいと思っている」ということを伝え、その関心の背景にある事情をちゃんと聴きたいと伝えます。タバコを吸っている人が新型タバコに関心を持つ理由は、上述したように主に2つあります。1つは、自分の健康被害やほかの人への受動喫煙の害に配慮して、禁煙する代わりに加熱式タバコに替えるという理由です。非常に多くの人がこういった理由で加熱式タバコにスイッチしていっています。私は、自分やほかの人へのタバコの害に配慮しようとしてくれていることを尊重したいと考えています。まずは、タバコの害を理解していただき、ありがとうございます、と伝えたい。しかし、実際にスイッチする前に考えてほしいことがあります。スイッチする代わりに、完全にタバコをやめることはできないでしょうか。紙巻タバコをせっかくやめるのですから、すべてのタバコをやめてしまって、禁煙のすばらしいメリットを享受してほしいです。さらに、スイッチする理由としてあげた目的がスイッチすることで本当に達成できるかどうかが分かっていません。新型タバコを吸う人での健康被害は紙巻タバコによる害と変わらない可能性があると考えています(第7回参照)。未知の健康リスクもあります(第6回参照)。そして新型タバコを吸ったら、紙巻タバコをやめることができるかどうかも、まだ分かっていません(第10回参照)。新型タバコに替えることで、受動喫煙を減らすことはある程度できるかもしれません(第8回参照)。タバコを吸っている人が新型タバコに関心を持つもう1つの理由は、タバコを吸いにくい環境も増えてきたため、吸いにくい場所でも吸えるように新型タバコに替えようというものです。この理由で新型タバコを吸おうとしている人は、より多くの機会に吸うことができるようになり、結果的に新型タバコのせいで、ニコチン依存症から逃れることがより困難になってしまいます。世の中にはニコチンの害はたいしたことないと伝える人もいますが、ニコチンは幸せを感じる大切な感覚を奪っていることを知ってほしいです(第9回参照)。また、この2つめの理由で新型タバコを吸おうとしている人には、紙巻タバコもやめるということについていま一度考えてみてほしいと思っています。当然のことですが、本人がやめる気になれなければ、禁煙はできません。いつかタバコをやめたいと思ってもらえるように、タバコ問題に関する本人の理解や環境の整備が進むよう、少しずつでも支援していくことが大切だと感じています。さらにタバコが値上げされたり、職場や家庭が禁煙化されるなどタバコを取り巻く環境を変えることができれば、タバコをやめる動機にしていくことができるかもしれません。第14回は、「新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(3)」です。

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赤肉摂取減らしても心血管代謝・がん死亡に効果なし?

 赤肉の摂取量を減らした場合、臨床的に重篤なアウトカムに効果があるかどうかを検討した無作為化研究はほとんどない。今回、カナダ・McMaster大学のDena Zeraatkar氏らの無作為化研究の系統的レビューから、エビデンスの確実性は低いが、赤肉を制限した食事が主な心血管代謝アウトカムとがん死亡および発症に対して、ほとんどまたはまったく影響しない可能性が示唆された。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2019年10月1日号に掲載。 EMBASE、CENTRAL、CINAHL、Web of Science、ProQuestを開始から2018年7月まで、MEDLINEを開始から2019年4月まで、言語の制限なしで検索し、赤肉または加工肉の多い食事と少ない食事(6ヵ月以上、週に1サービング以上の差)による無作為化比較研究を特定した。2人のレビューアーが独立してデータを抽出し、バイアスリスクとエビデンスの確実性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした12試験のうち、4万8,835人の女性を登録したWomen's Health Initiative(WHI)Dietary Modification Trialから、赤肉または加工肉が少ない食事が全死亡(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.95〜1.03])、心血管死亡(HR:0.98、95%CI:0.91〜1.06)、心血管疾患発症(HR:0.99、95%CI:0.94〜1.05)について、ほとんどまたはまったく影響しない可能性があるという、最も信頼できるエビデンスが得られた(エビデンスの確実性は「low」)。・さらに上記の研究から、赤肉または加工肉が少ない食事はがん死亡(HR:0.95、95%CI:0.89〜1.01)、大腸がん発症(HR:1.04、95%CI:0.90〜1.20)および乳がん発症(HR:0.97、95%CI: 0.90〜1.04)を含むがん発症にほとんどまたはまったく影響しないというエビデンスも得られた(エビデンスの確実性は「low」から「very low」)

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新規作用機序のimeglimin、インスリン併用下の有効性・安全性

 2型糖尿病の新規治療薬候補として期待されるimegliminは、ミトコンドリアの機能障害改善という新しいメカニズムを持つ。現在、本剤の開発を手掛けるフランスのバイオ医薬品企業Poxel SA(以下、Poxel社)は、大日本住友製薬と共同で、日本人1,100例以上を対象とした3つの第III相臨床試験で構成される「TIMES試験」(Trials of IMeglimin for Efficacy and Safety)を実施中だ。 2019年11月26日、Poxel社は、TIMES3試験における、非盲検下36週間継続投与試験の結果を公表した。 TIMES3試験は、インスリン製剤を使用しても効果不十分な日本人2型糖尿病患者を対象に、imeglimin 1,000mgを1日2回およびインスリン製剤の併用療法による有効性および安全性を検討する16週間のプラセボ対照二重盲検無作為化試験と、それに続く36週間の非盲検・継続投与試験である。主要評価項目は、HbA1cのベースラインからの変化量。 前半の、imeglimin群とプラセボ群で比較した16週間のHbA1c変化量は、統計学的な有意差を示したことがすでに報告されている(‐0.60%、p<0.0001)。今回新たに報告された内容は、後半の36週継続投与試験について。 主な結果は以下のとおり。・前半の16週から継続して、imegliminおよびインスリンを計52週間併用した群におけるHbA1cの変化量は、ベースラインから‐0.64%だった。・前半の16週はプラセボを服用し、その後imegliminおよびインスリンを36週間併用した群では‐0.54%だった。・imegliminの安全性および忍容性は、52週間全体を通して良好だった。・最初の16週間で、imeglimin群において発現した有害事象は、プラセボ群と類似しており、36週間継続投与試験における安全性および忍容性プロファイルも、それらの結果と一貫していた。 Poxel社は、近日中にTIMES3試験の全データを関係学会で発表する。現在継続中のTIMES2試験(日本人2型糖尿病患者を対象としたimeglimin単剤療法および他の経口血糖降下剤との併用療法による長期安全性および有効性を検討する52週間、非盲検並行群間比較の第III相臨床試験)の結果は、2019年末に判明する予定だ。

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2型DMの腎機能維持、ビタミンDとオメガ3脂肪酸の効果は?/JAMA

 2型糖尿病患者において、ビタミンD3あるいはオメガ3脂肪酸の補給は、プラセボと比較し、5年時の推定糸球体濾過量(eGFR)のベースラインからの変化に有意差は認められないことが示された。米国・ワシントン大学のIan H. de Boer氏らが、「Vitamin D and Omega-3 Trial:VITAL試験」の補助的研究として実施した2×2要因デザイン無作為化臨床試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「腎機能維持のためのビタミンDまたはオメガ3脂肪酸サプリメントの使用は支持されないことが示された」と述べている。慢性腎臓病(CKD)は2型糖尿病でよくみられる合併症で、末期腎不全につながり心血管高リスクと関連があるが、2型糖尿病でCKDを予防できる治療はほとんどないとされている。JAMA誌オンライン版2019年11月19日号掲載の報告。約1,300例で、ビタミンD3とオメガ3脂肪酸の有効性をeGFRの変化で評価 研究グループは、2011年11月~2014年3月の期間に全米50州から募集した2型糖尿病患者1,312例を、ビタミンD3(2,000 IU/日)+オメガ3脂肪酸(エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸:1g/日)群370例、ビタミンD3(+プラセボ)群333例、オメガ3脂肪酸(+プラセボ)群289例、プラセボ群320例のいずれかに無作為に割り付け、5年間毎日投与した。 主要評価項目は、血清クレアチニンとシスタチンCから算出したeGFRのベースラインから5年時までの変化とした。5年後のeGFR変化量、プラセボと有意差なし 無作為化された1,312例(平均年齢67.6歳、女性46%)のうち、934例(71%)が試験を完遂した。ベースラインのeGFRは85.8(SD 22.1)mL/分/1.73m2であった。 5年時におけるeGFRのベースラインからの平均変化は、ビタミンD3群で-12.3mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:-13.4~-11.2)、対するプラセボ群で-13.1mL/分/1.73m2(95%CI:-14.2~-11.9)(群間差:0.9mL/分/1.73m2、95%CI:-0.7~2.5)であった。同様に、オメガ3脂肪酸群で-12.2mL/分/1.73m2(95%CI:-13.3~-11.1)、プラセボ群で-13.1mL/分/1.73m2(95%CI:-14.2~-12.0)(群間差:0.9mL/分/1.73m2、95%CI:-0.7~2.6)であり、2つの介入に有意な相互作用は確認されなかった。 有害事象は、腎結石が58例(ビタミンD3群32例、プラセボ群26例)、消化管出血が45例(オメガ3脂肪酸群28例、プラセボ群17例)発生した。

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メトホルミンとDPP-4阻害薬との早期併用療法の有効性は実証されたか?(解説:住谷哲氏)-1144

 2型糖尿病患者には程度の差はあるがインスリン抵抗性とインスリン分泌不全の両者が存在する。したがって病態生理学的にはその両者に早期から介入する薬物療法が、その一方だけに介入する薬物療法よりも血糖管理においてより有効であることは理解しやすい。血糖降下薬の有効性を評価する指標はいくつもあるが、どれだけ長期間にわたってHbA1cを<7.0%に維持可能であるかを示すdurabilityもその1つである。インスリン抵抗性改善薬であるメトホルミンとインスリン分泌不全改善薬のDPP-4阻害薬であるビルダグリプチンを診断直後から併用することが(early combination therapy:早期併用療法)、メトホルミン単剤で治療を開始して血糖コントロールが維持できなければビルダグリプチンを併用する段階的治療(sequential metformin monotherapy:段階的治療)に比較してdurabilityを延長できるか否かを検討したのが本試験である。 本試験は試験デザインが複雑で、かつ治療失敗treatment failureという見慣れないエンドポイントが設定されているので論文を一読するだけでは内容を容易に理解しがたい。試験に組み込まれたのは2型糖尿病診断後2年以内、未治療(メトホルミン使用4週間以内は許容されている)、HbA1c 6.5~7.5%の初回治療患者である。3週間のrun-in期間でメトホルミンを1,500mgまで増量を試みて、メトホルミン1,000mg以上服用できた患者のみ無作為化された。つまり本試験は最初から併用療法で治療を開始するinitial combination therapyではない。2,001例の患者が早期併用療法群(メトホルミン1,000mg+ビルダグリプチン50mg x 2)と段階的治療(メトホルミン1,000mg+プラセボ x 2)の2群に1対1に振り分けられた。すべての患者で無作為化後の4週間にメトホルミンは2,000mgまで増量が試みられた。患者は13週ごとに受診したが、HbA1c 7.0%以上が連続した2回の受診で認められた場合にその時点で治療失敗と定義された。主要評価項目は1回目の治療失敗までの時間(period 1)とした。2回目の治療失敗までの時間(period 2)は副次評価項目とされた。段階的治療は1回目の治療失敗後にメトホルミン+ビルダグリプチンの併用療法に移行した。つまりperiod 2の治療法は両群で同一となっている。試験観察期間が予定より短くなることの多いevent-driven型の心血管アウトカム試験とは異なり、すべての患者は無作為化後5年にわたり観察された。 試験開始5年後の主要評価項目のイベント発生率は段階的治療が62.1%、早期併用療法が43.6%であった。別の表現にすると50%の患者が1回目の治療失敗に至るまでの時間(median observed time to treatment failure)が段階的治療では36.1ヵ月、早期併用療法では61.9ヵ月(これはカプランマイヤー曲線からの推定値である)、つまり早期併用療法において段階的治療に比較してdurabilityが約2年延長したことになる。副次評価項目のイベント発生率は本文に記載がないが、Figure 3Bのグラフから読み取ると多く見積もって段階的治療が45%、早期併用療法が35%であった。 以上の結果をどのように解釈したら良いのだろうか? period 1で検討されたdurabilityは早期併用療法で約2年延長することが証明された。しかし段階的治療のイベント発生率は62.1%であり、約40%の患者はメトホルミン単剤のみで5年間HbA1c<7.0%を維持できたことになる。さらに実臨床でより重要なのは、治療失敗する前から併用する早期併用療法と、メトホルミン単剤で開始して治療失敗した後に併用する段階的治療とを比較した副次評価項目である。その差はわずかに10%であり、単純にいえば90%の患者はどちらの治療法でも結果は同じだったことになる。しかしこの点についても解釈に注意が必要である。実臨床で併用療法に移行する、言い換えればメトホルミンに他の血糖降下薬を追加するのは容易でないのに対して、本試験では1回目の治療失敗患者はすべて併用療法に移行している点である。したがってリアルワールドにおける両群の差が10%以上になる可能性は十分にある。 2型糖尿病治療においてもclinical inertiaの重要性が強調されている。しかしあらゆる治療にはbenefitとharmがある。天秤の皿の一方に載せるのがclinical inertiaとすればもう一方の皿に載せるべきはovertreatmentであろう。もしすべての患者に早期併用療法を実施したとすると、本試験の結果によればその中の約40%の患者は不要な治療、すなわちovertreatmentを受けたことになる。本試験はclinical inertiaとovertreatmentとのバランスの重要性をVERIFYした試験といっても良いだろう。(12月2日 一部記事内容を修正いたしました)

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全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019、本邦で初めて発刊

 2019年10月、日本初の『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』が発刊された。全身性エリテマトーデス(SLE)はさまざまな全身性疾患を伴うため、治療の標準化が困難であったことからガイドラインの作成着手までに時間を要してきた。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019は専門医を対象とし、SLEの臨床的多様性に対応する総合的なガイドラインとして作成されている。 サノフィ株式会社は2019年10月30日、メディアラウンドテーブル「本邦初の全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン発行~SLE診療の現在 医師と患者の立場から~」を開催。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン統括委員会の委員長を務めた渥美 達也氏(北海道大学大学院医学研究院免疫・代謝内科学教室 教授)が「SLE診療の標準化~全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン~」について講演した。会の後半では患者代表の後藤 眞理子氏(全国膠原病友の会神奈川県支部 支部長)を交えてトークセッションが行われた。臨床的多様性が強い疾患、全身性エリテマトーデスの治療目標 高血圧症は血圧を下げる、糖尿病は血糖値を下げるなど治療目的が非常に明確である。一方、全身性エリテマトーデスは多様な臓器病変を呈する症候群であることから、症状の出方や治療ゴールが個々によって異なり、ガイドラインの作成自体が困難を極めていた。また、これまでの治療では全身性エリテマトーデスの非可逆的な臓器病変やグルココルチコイドの長期大量投与に伴う合併症によって患者の生活の質の低下が問題になっていた。このことから渥美氏はガイドライン作成の前提条件について「“SLEの社会的寛解の維持”を治療目標に設定」とコメント。加えて、「患者さんにとって、生活活動を維持してもらうことが重要。とくに若年女性の労働生産性を落とさず家庭への生活ウェイトも置けるよう、患者の多様性を考慮したモニタリング項目が記載されている」とも説明した。 この“社会的寛解の維持“という定義については、「子供の運動会に参加するなど、自分の生活目標が達成されること。総合指標やそれぞれの臓器についての寛解を評価することが目的」と渥美氏は語った。全身性エリテマトーデス診療ガイドラインの日本と海外の違いは? 米国や欧州では2012年頃から全身性エリテマトーデスの臓器病変からループス腎炎を切り出したガイドラインなどが発刊され、日常臨床に用いられてきた。2018年には英国リウマチ学会がガイドラインを発刊、症状の時期や重症度が表で示されており利便性がある。その反面で「NHS(National Health Service:国営医療サービス)のためのガイドラインであるため、作成目的が医療費の償還である」と、海外ガイドラインの怖い側面について指摘した。 日本の全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019はこれとは異なり、さまざまな医療に対応でき、世界で1つの全身性エリテマトーデス診療アルゴリズムが盛り込まれている点が特徴的である。このアルゴリズムには二次療法の記載がなく、初回療法で寛解に入らない場合は三次治療に進む。これについて同氏は「初回療法はエビデンスがあるのに対し、二次治療としてのエビデンスが少ないため」とコメントした。このほか、推奨の強さは3段階に設定、重症度分類は英国GLに準じ、 軽症・中等症・重症に区分される。さらに、システマティックレビュー(腎炎、神経精神病変、皮膚病変、血液病変)またはナラティブレビューに基づく推奨文とその合意度も参照可能である。 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019の制作は厚生労働省の自己免疫研究班SLE分科会と日本リウマチ学会による共同作業で、日本臨床免疫学会、日本腎臓学会、日本小児リウマチ学会、日本皮膚科学会の協力を得ている。全身性エリテマトーデス診療ガイドラインでは治療ゴールを明確にした 続いて、渥美氏と後藤氏によるトークセッションが行われた。後藤氏は「全身性エリテマトーデスの症状なのか薬の副作用なのか言葉にしがたい症状が生じた時、それらを医師にうまく伝えられないのは辛い。たとえば、倦怠感という概念の受け捉え方は患者も医師も人それぞれ。なので医師に具体的な表現を求める」と、症状の言語化できない問題について訴えた。これに対し、渥美氏は「寛解後の特有症状である倦怠感には医学的改善方法がないため、医師は“そうですか”と受け流すような返答になってしまう。医師は活動性指標の1つとして患者の訴えをきちんと評価すべき」と回答した。また、「薬剤の追加がネックで症状変化を医師に伝えないこともある」との後藤氏のコメントに対して、渥美氏は「どんな治療を行い、どんな治療目標とするのか。これを話せる医師が現時点では少ないため、今回のガイドラインではそのゴールを明確にした」と答えた。 最後に後藤氏は「GLが作成されたことによって全国どこでも標準的な治療が受けられるのは嬉しい。これによって患者会のメンバーの人生が広がればと感じた」と喜びを漏らした。渥美氏は「SLEの病態は例外が多いため、改善しなかった場合の対応策の盛り込み、まれな症状に対するエビデンス構築などが必要」と、今後の課題を語った。

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脊髄小脳変性症〔SCD : spinocerebellar degeneration〕

1 疾患概要■ 概念・定義脊髄小脳変性症は、大きく遺伝性のものと非遺伝性のものに分けられる。非遺伝性のものの半分以上は多系統萎縮症であり、多系統萎縮症では小脳症状に加えてパーキンソン症状(体の固さなど)や自律神経症状(立ちくらみ、排尿障害など)を伴う特徴がある。また、脊髄小脳変性症のうち、遺伝性のものは約3分の1を占め、その中のほとんどは常染色体優性(顕性)遺伝性の病気であり、その多くはSCA1、SCA2などのSCA(脊髄小脳失調症)という記号に番号をつけた名前で表される。SCA3型は、別名「Machado-Joseph病(MJD)」と呼ばれ、頻度も高い。常染色体性劣性(潜性)遺伝形式の脊髄小脳変性症は、頻度的には1.8%とまれであるにもかかわらず、数多くの病型がある。近年、それらの原因遺伝子の同定や病態の解明も進んできており、疾患への理解が深まってきている。多系統萎縮症は一般的に重い病状を呈し、進行がはっきりとわかるが、遺伝性の中には進行がきわめてゆっくりのものも多く、ひとまとめに疾患の重症度を論じることは困難である。一方で、脊髄小脳変性症には痙性対麻痺(主に遺伝性のもの)も含まれる。痙性対麻痺は、錐体路がさまざまな原因で変性し、強い下肢の突っ張りにより、下肢の運動障害を呈する疾患の総称で、家族性のものはSPG(spastic paraplegia)と名付けられ、わが国では遺伝性ではSPG4が最も多いことがわかっている。本症も小脳失調症と同様に、最終的には原因別に100種類以上に分けられると推定されている。細かな病型分類はNeuromuscular Disease CenterのWebサイトにて確認ができる。■ 症状小脳失調は、脊髄小脳変性症の基本的な特徴で、最も出やすい症状は歩行失調、バランス障害で、初期には片足立ち、継ぎ足での歩行が困難になる。Wide based gaitとよばれる足を開いて歩行するような歩行もみられやすい。そのほか、眼球運動のスムーズさが損なわれ、注視方向性の眼振、構音障害、上肢の巧緻運動の低下なども見られる。純粋に小脳失調であれば筋力の低下は見られないが、最も多い多系統萎縮症では、筋力低下が認められる。これは、錐体路および錐体外路障害の影響と考えられる。痙性対麻痺は、両側の錐体路障害により下肢に強い痙性を認め、下肢が突っ張った状態となり、足の曲げにくさから足が運びにくくなり、はさみ歩行と呼ばれる足の外側を擦るような歩行を呈する。進行すると筋力低下を伴い、杖での歩行、車いすになる場合もある。脊髄が炎症や腫瘍などにより傷害される疾患では、排尿障害や便秘などの自律神経症状を合併することが多いが、本症では合併が無いことが多い。以下、本稿では次に小脳失調症を中心に記載する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 鑑別診断小脳失調症については、治療可能なものを調べる必要がある。治療可能なものとして、橋本脳症が多く混ざっていることがわかってきており、甲状腺機能が正常かどうかにかかわらず、抗TPO抗体、抗TG抗体陽性例の測定が必要である。陽性時には、診断的治療としてステロイドパルス療法などの免疫療法の反応性を確認する必要がある。ステロイド治療に反応すれば橋本脳症とするのが妥当であろう。その他にもグルテン失調症などの免疫治療に反応する小脳失調症も存在する。また、抗GAD抗体陽性の小脳失調症も知られており、測定する価値はある。悪性腫瘍に伴うものも想定されるが、実際に悪性腫瘍の関連で起こることはまれで、腫瘍が見つからないことが多い。亜急性の経過で重篤なもの、オプソクローヌスやミオクローヌスを伴う場合には、腫瘍関連の自己抗体が関連していると推定され、悪性腫瘍の合併率は格段に上がる。男性では肺がん、精巣腫瘍、悪性リンパ腫、女性では乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの探索が必要である。ミトコンドリア病(脳筋症)の場合も多々あり、小脳失調に加えて筋障害による筋力低下や糖尿病の合併などミトコンドリア病らしさがあれば、血清、髄液の乳酸、ピルビン酸値測定、MRS(MRスペクトロスコピー)、筋生検、遺伝子検査などを行うことで診断が可能である。劣性遺伝性の疾患の中に、ビタミンE単独欠乏性運動失調症(ataxia with vitamin E deficiency : AVED)という病気があり、本症は、わが国でも見られる治療可能な小脳変性症として重要である。本症は、ビタミンE転送蛋白(α-tocopherol transfer protein)という遺伝子の異常で引き起こされ、ビタミンEの補充により改善が見られる。一方、アルコール多飲が見られる場合には、中止により改善が確認できる場合も多い。フェニトインなど薬剤の確認も必要である。おおよそ小脳失調症の3分の1は多系統萎縮症である。まれに家族例が報告されているが孤発例がほとんどである。通常40代以降に、小脳失調で発症することが多く、初発時にもMRIで小脳萎縮や脳血流シンチグラフィー(IMP-SPECT)で小脳の血流低下を認める。進行とともに自律神経症状の合併、頭部MRIで橋、延髄上部にT2強調画像でhot cross bun signと呼ばれる十字の高信号や橋の萎縮像が見られる。SCAの中ではSCA2に類似の所見が見られることがあるが、この所見があれば、通常多系統萎縮症と診断できる。さらに、小脳失調症の3分の1は遺伝性のものであるため、遺伝子診断なしで小脳失調症の鑑別を行うことは難しい。遺伝性小脳失調症の95%以上は常染色体性優性遺伝形式で、その80%以上は遺伝子診断が可能である。疾患遺伝子頻度には地域差が大きいが、わが国で比較的多く見られるものは、SCA1、 SCA2、 SCA3(MJD)、SCA6、 SCA31であり、トリプレットリピートの延長などの検査で、それぞれの疾患の遺伝子診断が可能である。常染色体劣性遺伝性の小脳失調症は、小脳失調だけではなく、他の症状を合併している病型がほとんどである。その中には、末梢神経障害(ニューロパチー)、知的機能障害、てんかん、筋障害、視力障害、網膜異常、眼球運動障害、不随意運動、皮膚異常などさまざまな症候があり、小脳失調以上に身体的影響が大きい症候も存在する。この中でも先天性や乳幼児期の発症の疾患の多くは、知能障害を伴うことが多く、重度の障害を持つことが多い。小脳失調が主体に出て日常生活に支障が出る疾患として、アプラタキシン欠損症(EAOH/AOA1)、 セナタキシン欠損症(SCAR1/AOA2)、ビタミンE単独欠乏性運動失調症(AVED)、シャルルヴォア・サグネ型痙性失調症(ARSACS)、軸索型末梢神経障害を伴う小脳失調症(SCAN1)、 フリードライヒ失調症(FRDA)などがある。このうちEAOH/AOA1、SCAR1/AOA2、 AVED、ARSACSについては、わが国でも見られる。遺伝性も確認できず、原因の確認ができないものは皮質小脳萎縮症(cortical cerebellar atrophy: CCA)と呼ばれる。CCAは、比較的ゆっくり進行する小脳失調症として知られており、小脳失調症の10~30%の頻度を占めるが、その病理所見の詳細は不明で、実際にどのような疾患であるかは不明である。本症はまれな遺伝子異常のSCA、多系統萎縮症の初期、橋本脳症などの免疫疾患、ミトコンドリア病などさまざまな疾患が混ざっていると推定される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)小脳失調症の治療は、正確な原因診断に関わっている。上記の橋本脳症、GAD抗体小脳失調、そのほかグルテン失調症など他の自己抗体の関与が推定される疾患もあり、原因不明であれば、一度はステロイドパルスをすることも検討すべきであろう。ミトコンドリア病では、有効性は確認されていないがCoQ10、L-アルギニンなども治療薬の候補に挙がる。ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、脳卒中様発作症候群(MELAS)においてはタウリンの保険適用も認められ、その治療に準じて、治療することで奏功できる例もあると思われる。小脳失調に対しては、保険診療では、タルチレリン(商品名: セレジスト)の投与により、運動失調の治療を試みる。また、集中的なリハビリテーションの有効性も確認されている。多系統萎縮症の感受性遺伝子の1つにCoQ2の異常が報告され、その機序から推定される治療の臨床試験が進行中である。次に考えられる処方例を示す。■ SCDの薬物療法(保険適用)1) 小脳失調(1) プロチレリン(商品名:ヒルトニン)処方例ヒルトニン®(0.5mg) 1A~4A 筋肉内注射生理食塩水(100mL) 1V 点滴静注2週間連続投与のあと、2週間休薬 または 週3回隔日投与のどちらか。2mg投与群において、14日間連続投与後の評価において、とくに構音障害にて、改善を認める。1年後の累積悪化曲線では、プラセボ群と有意差を認めず。(2) タルチレリン(同:セレジスト)処方例セレジスト®(5mg)2T 分2 朝・夕食後10mg投与群において、全般改善度・運動失調検査概括改善度で改善を認める。28週後までに構音障害、注視眼振、上肢機能などの改善を認める。1年後の累積悪化曲線では、プラセボ群と有意差を認めず。(3) タンドスピロン(同:セディール)処方例セディール®(5~20mg)3T 分3 朝・昼・夕食後タンドスピロンとして、15~60mg/日有効の症例報告もあるが、無効の報告もあり。重篤な副作用がなく、不安神経症の治療としても導入しやすい。2) 自律神経症状起立性低血圧(orthostatic hypotension)※水分・塩分摂取の増加を図ることが第一である。夜間頭部挙上や弾性ストッキングの使用も勧められる。処方例(1) フルドロコルチゾン(同:フロリネフ)〔0.1mg〕 0.2~1T 分1 朝食後(2) ミドドリン(同:メトリジン)〔2mg〕 2~4T 分3 毎食後(二重盲検試験で確認)(3) ドロキシドパ(同:ドプス)〔100mg〕 3~6T 分3 毎食後(4) ピリドスチグミン(同:メスチノン)〔60mg〕 1T/日■ 外科的治療髄腔内バクロフェン投与療法(ITB療法)痙性対麻痺患者の難治性の症例には、検討される。筋力低下の少ない例では、歩行の改善が見られやすい。4 今後の展望多系統萎縮症においてもCoQ2の異常が報告されたことは述べたが、CoQ2に異常がない多系統萎縮症の例のほうが多数であり、そのメカニズムの解析が待たれる。遺伝性小脳失調症については、その原因の80%近くがリピートの延長であるが、それ以外のミスセンス変異などシークエンス配列異常も多数報告されており、正確な診断には次世代シークエンス法を用いたターゲットリシークエンス、または、エクソーム解析により、原因が同定されるであろう。治療については、抗トリプレットリピートまたはポリグルタミンに対する治療研究が積極的に行われ、治療薬スクリーニングが継続して行われる。また、近年のアンチセンスオリゴによる遺伝子治療も治験が行われるなど、遺伝性のものについても治療の期待が膨らんでいる。そのほか、iPS細胞の小脳への移植治療などについてはすぐには困難であるが、先行して行われるパーキンソン病治療の進展を見なければならない。患者iPS細胞を用いた病態解析や治療薬のスクリーニングも大規模に行われるようになるであろう。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 脊髄小脳変性症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Neuromuscular Disease Center(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会(患者、患者家族向けの情報)1)水澤英洋監修. 月刊「難病と在宅ケア」編集部編. 脊髄小脳変性症のすべて. 日本プランニングセンター;2006.2)Multiple-System Atrophy Research Collaboration. N Engl J Med. 2013; 369: 233-244.公開履歴初回2014年07月23日更新2019年11月27日

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NASHに有効? resmetiromが肝脂肪量を減少/Lancet

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療において、resmetirom(MGL-3196)はプラセボに比べ、肝臓の脂肪量を相対的に減少させることが、米国・Pinnacle Clinical ResearchのStephen A. Harrison氏らが行ったMGL-3196-05試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年11月11日号に掲載された。NASHは、肝臓の脂肪化、炎症、肝細胞障害、進行性の肝線維化で特徴付けられる。resmetiromは、肝臓に直接作用し、経口投与で活性化する甲状腺ホルモン受容体β活性化薬であり、肝臓の脂肪代謝を促進し、脂肪毒性を低減することでNASHが改善するよう設計されているという。resmetiromによる肝脂肪量の低下効果を評価する無作為化第II相試験 本研究は、resmetiromによる肝脂肪量の低下効果を評価する36週の二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、2016年10月19日~2017年7月28日の期間に、米国の18施設で患者の割付が行われた(Madrigal Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、生検でNASH(線維化:stage 1~3)が確認され、MRIプロトン密度脂肪画分測定法(MRI-PDFF)で、肝臓に10%以上の脂肪化を認めた患者であった。 被験者は、resmetirom(80mg)またはプラセボを1日1回経口投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。12週と36週時に肝臓の脂肪の測定が行われ、36週時には2回目の肝生検が実施された。 主要エンドポイントは、ベースラインと12週時にMRI-PDFFを受けた患者におけるMRI-PDFFで評価した肝臓の脂肪量の相対的な変化とした。resmetirom群は36週時の肝脂肪量、脂質、肝酵素、種々のマーカーも改善 125例が登録され、resmetirom群に84例(平均年齢51.8[SD 10.4]歳)、プラセボ群には41例(47.3[11.7])が割り付けられた。12週時のMRI-PDFFは、resmetirom群が78例、プラセボ群は38例で行われ、36週時の肝生検はそれぞれ74例および34例で実施された。 ベースラインの人口統計学的因子は両群間で類似していたが、resmetirom群で女性(resmetirom群55%、プラセボ群41%)と糖尿病(43%、32%)の割合が高かった。平均BMIはresmetirom群が35.8(SD 6.2)、プラセボ群は33.6(5.8)で、全体の79%が30以上であった。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)活動性スコア(NAS)の平均は、それぞれ4.9および4.8で、全体の45%が線維化stage 2/3だった。 ベースラインと比較して、12週時の相対的な肝脂肪量は、resmetirom群(78例)で32.9%減少し、プラセボ群(38例)の10.4%の減少に比べ、有意な低下効果が認められた(最小二乗平均差:-22.5%、95%信頼区間[CI]:-32.9~-12.2、p<0.0001)。また、36週時の相対的肝脂肪量も、resmetirom群(74例)では37.3%低下しており、プラセボ群(34例)の8.9%低下に比し、有意な低下効果が確認された(-28.4%、-41.3~-15.4、p<0.0001)。 肝臓の脂肪量が相対的に30%以上減少した患者の割合は、12週時がresmetirom群60.3%、プラセボ群は18.4%(p<0.0001)、36週時はそれぞれ67.6%、29.4%(p=0.0006)であり、いずれもresmetirom群で高かった。 また、resmetirom群はプラセボ群に比べ、LDLコレステロール(LDL-C、p<0.0001)、リポ蛋白(a)(ベースライン時に>10nmol/Lの患者、p=0.0009)、アポリポ蛋白B(ベースライン時にLDL-C≧100mg/dLの患者、p<0.0001)、トリグリセライド(p<0.0001)、アポリポ蛋白CIII(p<0.0001)が、いずれも有意に低下した。 アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)、ベースライン時にALTが上昇していた患者(男性>45 IU/L、女性>30 IU/L)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、いずれも12週時には有意な変化を認めなかったが、36週時にはすべてresmetirom群で有意に低下した(それぞれ、p=0.0019、p=0.0035、p=0.0016)。 線維化のマーカーである強化肝線維症(enhanced liver fibrosis)(p=0.017)とN末端III型コラーゲンプロペプチド(PRO-C3)(p=0.0027)は、12週および36週時にresmetirom群で有意に低下した。肝細胞アポトーシスのマーカーであるサイトケラチン-18は、36週時には有意に低下し(p=0.0035)、肝臓の健全性と関連するアディポネクチンは上昇(p=0.0003)、肝臓の炎症のマーカーである逆位トリヨードサイロニンは低下した(p<0.0001)。 治療関連有害事象は、resmetirom群が86.9%、プラセボ群は68%で認められたが、多くは軽度~中等度であった。薬剤関連の重篤な有害事象はみられなかった。resmetirom群で最も頻度の高い有害事象は下痢(ベースライン~12週時:33%、12~36週時:4%)および悪心(14%、6%)であった。 著者は、「これらの知見は、現在進行中のstage F2~F3の線維症を有するNASH患者を対象とした第III相試験(MAESTRO-NASH試験)に、理論的根拠をもたらした」としている。

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第15回 高齢糖尿病患者の高血圧、どこまで厳格に管理する?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第15回 高齢糖尿病患者の高血圧、どこまで厳格に管理する?Q1 やや高め?厳密?高齢糖尿病患者での降圧目標の目安日本高血圧学会は、5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を2019年4月に発表しました1)。その中で後期高齢者(75歳以上)の降圧目標は、従来の150/90mmHg未満から140/90mmHg未満に引き下げられています。また、忍容性があれば個人の症状や検査所見の変化に注意しながら、最終的には130/80mmHg未満を目標に治療することを求めています。さまざまな介入試験のメタ解析の評価・検討が行われた結果、高齢者においても高血圧治療によって心血管イベントや脳卒中イベントリスクが有意に低くなり、予後の改善が見込めると示唆されたためです。一方、糖尿病合併患者や蛋白尿陽性の慢性腎臓病(CKD)患者の降圧目標は、従来の130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)に据え置かれました。血圧が140/90mmHg以上を示した場合には、ただちに降圧薬を開始するとなっています(図)。欧米のガイドラインでは、糖尿病を合併した患者の場合、降圧目標は「140/80mmHg未満」や「140/85mmHg未満」と、比較的緩やかに設定されています2,3)。しかし日本では厳格な管理目標を維持することになりました。その理由の1つは、ACCORD-BP試験において厳格降圧群(目標収縮期血圧120mmHg未満)では通常降圧群(140mmHg未満)に比べて脳卒中が41%有意に減少したと報告されたためです4)。日本では欧米と比較して脳卒中の発症率が高いことから、脳卒中の発症予防に重きを置いた降圧目標を設定すべきと考えられ、「130/80mmHg未満」とされたのです。なお、JSH2019で設定された降圧目標は年齢と合併症に基づいて決められているため、降圧目標の設定基準を複数持つ状態が生じます。たとえば、75歳以上の高齢糖尿病患者の場合、糖尿病患者としてみると130/80mmHg未満ですが、後期高齢者としてみると140/90mmHg未満となり、2つの降圧目標が出来てしまいます。このように年齢と合併症の存在によって降圧目標が異なる場合、忍容性があれば130/80mmHg未満を目指すとされました。ただし高齢者では極端な降圧により臓器への血流障害を来す可能性も危惧されます。そのため、まずは140/90mmHgを目指し、達成できればその後緩徐に130/80mmHg未満を目指していけば良いと思われます。Q2 目標値にいかないことが多い・・・強化のタイミングや注意点は?糖尿病に合併した高血圧の降圧療法での第一選択は、微量アルブミン尿またはタンパク尿がある場合にはARBやACE阻害薬を考慮し、それ以外ではARB、ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬、少量のサイアザイド系利尿薬が推奨されています5)。高齢糖尿病患者さんでは腎機能障害を呈していることが多く、ARBやACE阻害薬のみでは十分な降圧効果が得られないこともあります。Ca拮抗薬や利尿薬等を併用したり用量を増加したりして血圧をコントロールします。この場合、多剤併用に至り、服薬管理が困難になることもありますので、薬物療法の単純化を行う必要があります。薬物療法の単純化には、1)1日1回の薬剤に変更して服薬回数を減らす2)薬剤を一包化して服薬を単純化する3)服薬管理の比較的簡単な合剤を使用して調整するなどの対策も有効です。高血圧症の多くは自覚症状がないため、治療に積極的になれないことが服薬管理困難の一因と思われます。ただし、高血圧を有する糖尿病患者では動脈硬化が進行しやすくなります。UKPDSの結果では、糖尿病患者において通常の血圧コントロール(154/87mmHg以下を目標)を行った群と、厳格な血圧コントロール(144/82mmHg以下を目標)を行った群で比較すると、厳格な血圧コントロールを行った群の方が糖尿病合併症発症リスクの有意な減少を認めました6)。患者さんは「透析はしたくない」等、腎障害に対して危機感を抱く方が多いため、腎機能を保持するには血圧コントロールが重要であることを説明すると、服薬に理解を示される場合が多いです。高齢糖尿病患者さんでは、神経障害の進行に伴い起立性低血圧を来すことも珍しくありません。そのため、家庭での収縮期血圧は少なくとも100mmHg以上を維持している方が安全でしょう。さらに、めまいやふらつきの訴えが増える場合には、降圧薬の減量や中止にて対応した方がADLやQOLを維持できると考えられます。起立性低血圧について、患者さんや家族、介護スタッフには、「悪性の病態ではないこと」「注意によって予防可能であること」「転倒打撲のリスクの方が問題であること」を説明し、急激な体位変換や頭位変換を避けるよう指導します。排便後は深呼吸後に立ち上がること、めまいが強い場合には一度仰臥位に戻り、状態が安定してから緩徐に起き上がることなどを実行すると、起立性低血圧に伴う転倒予防に役立ちます。また、状態の改善には血糖コントロールが重要であることも理解していただくと良いでしょう。病態の原因について説明を行い、具体的な対策を指導することで、恐怖感が軽減され、適切に対応できるようになります。高血圧を合併する高齢糖尿病患者さんに食事療法を行う際は、厳格な塩分制限による食欲低下や低栄養に注意が必要です。そのため、まずは「現在の摂取量の8割程度の摂取にとどめる」といった実行可能な塩分制限から開始することが重要です。Q3 80代や90代の超高齢者でも同じように管理しますか?SPRINTのサブ解析では、75歳以上の高齢者において、収縮期血圧の目標を120mmHg未満とした方が、心血管疾患の発症率が低いことが示されました。また、フレイルの程度に関わらず積極的降圧治療が予後を改善させるとも報告しています7)。この研究では非糖尿病患者を対象としていますが、80代や90代の超高齢糖尿病患者においても、降圧が予後改善につながる可能性があります。ただし、寝たきりなど身体能力の極めて低下した高血圧患者に対しては、降圧療法による予後改善効果は示されておらず、逆に予後が悪化することも懸念されています。高度の認知症や身体機能低下を来している場合には、従来通り個別判断での対応が望ましいと考えられます。とくに新規に降圧薬を開始する場合には、通常の半量程度から開始し、数ヵ月かけて徐々に降圧を図るなど、柔軟性のある対応で臨むことが良いと思われます。高齢糖尿病患者では、降圧薬増量による他臓器への影響や経済的負担増も考慮する必要があります。家族や介護スタッフの協力が得られればより良い調整が期待できますが、難しい場合には服薬アドヒアランスを考慮し、一包化や合剤の使用も検討が必要です。認知症が強い場合には、薬剤師と連携を取り、服薬カレンダーの設置や服薬支援のロボットを導入することなども効果的です。しかし、90歳以上の超高齢糖尿病患者さんでもADLが自立しており、元気な方も増えています。加齢と共に個人差は大きくなるため、あまり年齢にこだわる必要はないと考えられます。JSH 2019でも、提示した降圧目標はすべての患者における降圧目標ということではないと強調されていました。ガイドラインや最近の大規模試験の結果などを参考にしながら、個別に降圧目標を設定し対応することが重要です。1)日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版;2019.2)American Diabetes Association. Standards of medical care in diabetes—2013. Diabetes Care. 2013;36: S11-66.3)Mancia G, et al.The Task Force for the management of arterial hypertension of the European Society of Hypertension(ESH) and of the European. 2013 ESH/ESC Guidelines for the management of arterial hypertension Society of Cardiology (ESC). J Hypertens. 2013;31:1281-1357.4)Cushman WC, et al. N Eng J Med. 2010;362:1575-1585.5)日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂,245-260, 2019.6)Tight blood pressure control and risk of macrovascular and microvascular complications in type 2 diabetes: UKPDS 38. UK prospective diabetes study group.BMJ.1998;317: 703-713.7)Williamson JD, et al. JAMA.315: 2673-2682, 2016.

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C型肝炎ウイルスの薬剤耐性変異、世界規模で検証

 直接作用型抗ウイルス治療薬(DAA)の登場により、C型肝炎の治療は大幅に改善された。しかしその治療奏効率は、C型肝炎ウイルス(HCV)の薬剤耐性変異により低下する可能性がある。現在、DAAにはNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、NS5A阻害薬、NS5Bポリメラーゼ阻害薬があり、それぞれグレカプレビル、ピブレンタスビル、ソホスブビルなどが臨床で使用されている。今回、それらに対する耐性変異について、世界的状況を中国・復旦大学のZhenqiu Liu氏らがメタ解析により検討した。その結果、114個の耐性変異を同定し、頻度や種類は日本、米国、ドイツ、タイ、英国で多いことを示した。Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2019年11月1日号掲載の報告。 DAAの耐性変異に関連した文献を検索し、32ヵ国の計50件を選択した。最終的に49,744例のHCV感染患者をメタ解析に組み込み、変異部位と頻度を検討した。変異の世界的な分布は、Los Alamos HCV 配列データベースに登録された12,612例のサンプルより検討した。薬剤の50%効果濃度(EC50)が野生型の2倍以上となる変異を、耐性変異と定義した。DAA投与後に出現した変異は解析から除外した。 メタ解析より、56個のアミノ酸変異と114個の点変異を同定した。HCVの遺伝子型別に見ると、変異の頻度はジェノタイプ6型で最も高かった。変異の種類別に見ると、とくにジェノタイプ1a型のQ80KやY93Tで頻度が高かった。ジェノタイプ1a型のQ80K多型は、DAA治療によるウイルス学的著効(SVR)率を大幅に低下させたことが報告されている。 次に地域ごとの耐性変異の頻度は、NS3/4Aではブラジル(25.0%、95%CI:11.2~36.3%)、ベトナム、ロシアで高かった。NS5Aではポルトガル(33.3%、95%CI:16.9~55.3%)、ロシア(25.0%、95%CI:6.3~62.2%)で高かった。NS5Bでは台湾(34.3%、95%CI:14.9~60.9%)、オーストラリア(28.2%、95%CI:17.3~42.6%)で高かった。また耐性変異ウイルスの種類は日本で最も多く、タイ、米国、ドイツ、英国と続いた。 研究グループは、とくに耐性変異の頻度が高い地域のHCV感染患者では、DAA治療を開始する前に変異の検査を実施するべきだと述べている。

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最大量スタチンへの上乗せ、ベンペド酸が有効か/JAMA

 最大耐用量のスタチン治療を受ける心血管疾患リスクの高い患者において、ベンペド酸(bempedoic acid)の上乗せ投与はプラセボと比較して、12週間にわたりLDLコレステロール(LDL-C)値を有意に低下したことが示された。米国・ワシントン大学セントルイス校のAnne C. Goldberg氏らによる第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CLEAR Wisdom試験」の結果で、著者は「さらなる検討を行い、永続性、臨床的効果、長期の安全性について評価する必要がある」とまとめている。JAMA誌2019年11月12日号掲載の報告。耐用量スタチン治療もLDL-C値70mg/dL以上の患者を対象に無作為化 試験は2016年11月~2018年9月に、北米、欧州の91医療施設で行われた(最終データのフォローアップは2018年9月22日)。対象患者は、アテローム硬化性心血管疾患および/またはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症を有し、最大耐用量のスタチン治療を受けているがLDL-C値70mg/dL以上の計779例であった。 被験者を無作為に2対1の割合で割り付け、一方にはベンペド酸180mgを(522例)、もう一方にはプラセボを(257例)、それぞれ1日1回52週間投与した。 主要エンドポイントは、12週時点で評価したベースラインからのLDL-C値のパーセント変化であった。副次評価項目は、脂質、リポ蛋白、バイオマーカーなどの変化値であった。12週時点のLDL-C値変化率、ベンペド酸群-15.1% vs.プラセボ群2.4% 無作為化を受けた779例(平均年齢64.3歳、女性283例[36.3%])のうち、740例(95.0%)が試験を完遂した。ベースラインの平均LDL-C値は120.4(SD 37.9)mg/dLであった。 12週時点でベンペド酸群のLDL-C値はプラセボ群よりも、有意に低かった(-15.1% vs.2.4%、群間差:-17.4%[95%信頼区間[CI]:-21.0~-13.9]、p<0.001)。12週時点のプラセボ群と比較したベンペド酸群の有意な低下は、非HDLコレステロール値(-10.8% vs.2.3%、-13.0%[-16.3~-9.8]、p<0.001)、総コレステロール値(-9.9% vs.1.3%、-11.2%[-13.6~-8.8]、p<0.001)、アポリポ蛋白B値(-9.3% vs.3.7%、-13.0%[-16.1~-9.9]、p<0.001)、高感度CRP値(中央値で-18.7% vs.-9.4%、群間差:-8.7%[漸近信頼限界値:-17.2~-0.4]、p=0.04)でも認められた。 頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎(ベンペド酸群5.2% vs.プラセボ群5.1%)、尿路感染症(5.0% vs.1.9%)、高尿酸血症(4.2% vs.1.9%)などであった。

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181)食べ過ぎちゃいけない、オカシイお菓子【糖尿病患者指導画集】

患者さん用:食べ過ぎちゃいけない、オカシイお菓子説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話医師お変わりはないですか?患者はい、元気です。ところで、検査結果はどうでしたか? 気になっていて…。医師…血糖値と中性脂肪が、前回よりも増えていますね。患者えぇ、そうなんですか?医師何が原因かなぁ。オカシイなぁ…。(首をかしげる)患者…やっぱり、お菓子が原因ですか?医師お菓子を食べ過ぎると、血糖と中性脂肪は上がりますね。患者そうですよね。医師ご飯を減らしていても、お菓子はそのままという人がよくいらっしゃいます。患者それ、私です! お菓子の食べ過ぎには気を付けます。(納得した顔)●ポイント語感が近い言葉を使って、「お菓子」に意識を向け、食べ過ぎに気付いてもらいます。

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「代謝的に健康な肥満者」の特徴と予想されるリスク

 「代謝的に健康な肥満者」については不明な点が多く、意見が分かれている。今回、スウェーデン・スコーネ大学のJohan Korduner氏らが調査したところ、「代謝的に健康な肥満者」は「代謝的に不健康な肥満者」に比べて身体活動度が高く、脂質および血糖プロファイルが良好で、約20年の追跡調査での全死亡および心血管(CV)リスクが低かった。また、非肥満者と比べると全死亡およびCVリスクに有意差がみられなかった。Obesity Research & Clinical Practice誌オンライン版2019年11月8日号に掲載。 本研究は、スウェーデンのMalmo diet cancer study(2万8,403人)の参加者から選択した肥満者3,812人の横断分析。ベースライン前に身体的疾患のための入院記録がない肥満者(1,182人)を「代謝的に健康な肥満者」(metabolically healthy obesity:MHO)、1回以上入院したことのある肥満者(2,630人)を「代謝的に不健康な肥満者」(metabolically unhealthy obesity:MUO)として比較し、さらに非肥満者(non-obese cohort control:NOC、2万4,591人)と比較した。また、全死亡リスク、CVリスクも予測した。 主な結果は以下のとおり。・MHOはMUOと比較して、座りがちな生活様式の割合が有意に低く(p=0.009)、HbA1c(p=0.012)、空腹時血糖(p=0.001)、トリグリセライド(p=0.011)も有意に低かった。・Cox回帰分析(追跡期間:20±6年)の結果、MHOはMUOと比較して全死亡リスク(p=0.001)、CVリスク(p=0.001)とも有意に低かった。・MHOとNOCとを比較すると、全死亡リスクもCVリスクも有意な差はなかった。

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コマーシャルペーパーといわれても致し方がないのではないか(解説:野間重孝氏)-1136

 チカグレロルとプラスグレルは、世界の薬剤市場でクロピドグレルの後継を巡って、いわばライバル薬品として扱われているといってよい。両剤ともに作用の発現が早く、また投与中止後、薬効の消失が速やかであることが期待できるという点で共通している。しかしプラスグレルはいわゆるチエノピリジン系に属し、そのものは活性を有しないのに対し、チカグレロルはそのものが活性を持つという点が大きく異なる。ただし、プラスグレルはクロピドグレルと異なり、複数のCYPにより代謝されるため、チカグレロルに劣らない速度で活性を発揮することが可能になっている。 チカグレロルの有用性を検討した主な試験は2つあり、1つがPLATO試験(2009年)、もう1つがPEGASUS試験(PEGASUS-TIMI 54、2015年)である。これらの試験により、出血性合併症がやや多いものの、心血管イベントの発症抑制のためのDAPTの構成薬品として有用なだけでなく、クロピドグレルよりも成績が良いことが示された。しかしこれらの試験では日本人を中心とする東洋人の参加が少なかったことを受け、PHILO試験(2015年)が日本、台湾、韓国の急性冠症候群(ACS)患者を対象として施行された。いわばブリッジ試験であったが、この試験は規模が十分でないとされたものの、結果においてクロピドグレルに対する優位性を示すことができない一方で、それまでも問題視されていた出血イベントが増加してしまった。このことから、同剤はわが国でもPCI後の抗血小板剤として2016年9月に認可されたものの、「アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る」というただし書きが付けられてしまった。 プラスグレルとの直接比較はPRAGUE-18試験(2016年)で行われたが、この試験は安全性を確かめることに重点が置かれていたことから、両剤の優劣を確かめることなく、一応の安全性が確認された段階で早期中止になってしまった。この後両者の直接比較は行われていなかったが、Schupke Sらが本年に発表したISAR-REACT 5試験で、両者でACSに対する効果に差がないにもかかわらず、以前から問題にされていた出血性イベントにはっきり差があることが示された。このCLEAR!ジャーナル四天王でも東海大学の後藤 信哉氏が同研究の論文評で、「日本の宇部興産と第一三共が開発したプラスグレルこそがクロピドグレルの後継となれるポテンシャルのあった薬なのかもしれない。いいものを持ちながら戦略性にて欧米に負ける日本の現状の問題を提起する試験であった」と、強い調子で書かれた気持ちがよくわかる。つまり世界的な薬剤シェアでは、プラスグレルはクロピドグレルの後継を巡ってチカグレロルに負け越しているのが現状なのである(ちなみに現在でもシェアトップはクロピドグレル)。 本試験は6ヵ月以上の血糖降下薬の投与を受けた2型糖尿病を持つ安定冠動脈疾患患者から、PCI・冠動脈バイパスの既往の有無、冠動脈造影で50%以上の狭窄を指摘されているかのいずれかの因子を持つ患者を選び、これをアスピリン+プラセボ群とアスピリン+チカグレロル群に無作為に分け、中央値で3.3年間フォローし、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントの発生率をintention to treat解析により検討したものである。結果はチカグレロル群がプラセボ群に比し有意に良好であったが、出血性イベントではチカグレロル群で有意に多かった。 本研究はAstraZeneca社の助成によって行われたとあるが、一体何の目的で行われたものなのか疑問である。プラセボを相手に行えば、差が出ることも、出血性合併症が多いことも、上記のPEGASUS試験ですでにわかっていたことではないのか。著者らは「大出血の発生率は有意に高かったが、致死的出血および頭蓋内出血では有意差がなかった」というが、一体何が言いたいのだろうか。大出血で有意差が出ればそれで十分ではないか。 さらに事前に規定された探索的エンドポイントである総合的臨床ベネフィットにおいて有意に優れていたものの、非PCI群では差が出なかったというが、これも糖尿病患者の冠動脈内に治療のためとはいえ異物を残すわけだから、PCIを振り分け因子として振り分ければ当たり前なのではないかと考えられる。つまり第1に、糖尿病は当然のように心血管イベントの危険因子である。第2に、PCIや冠動脈バイパスなどのインターベンションの成績は非糖尿病患者に比べて糖尿病患者では劣る。そして第3として、その心血管イベントの予防に対してDAPTは有効である。以上、考えていただければ容易におわかりいただけるように、本研究はチカグレロルの特別の優位性を示す研究とはいえない。なお蛇足ながら付け加えさせていただくと、糖尿病は薬物療法に対して種々の影響を持ちそうに思われるだろうが、少なくともDAPTの長期vs.短期の検討を行う際に糖尿病の存在は独立した影響因子にはならないことが現在では定説になっている(Gargiulo G, et al. BMJ. 2016;355:i5483.)。 以上、糖尿病という因子を持ち込むことによっていかにも説得力を持つように見せているが、本試験は要するにSAPT vs.DAPTの試験にすぎない。企業助成によるコマーシャルペーパーといわれても致し方がないのではないかと思う。

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新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(1)【新型タバコの基礎知識】第12回

第12回 新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(1)Key Points第一に伝えたいことは、タバコを吸っている人が1番のタバコの被害者だということ。タバコ問題を正しく伝え、自主的な禁煙を促すことがポイント。タバコ問題の新たな局面、新型タバコ時代を迎えた日本において、タバコ問題および新型タバコ問題とどう向き合い、従来からのタバコおよび新型タバコを吸っている患者にどう対処していけばよいのか? 皆さんとともに考えていきたいと思っています。まず、どうやったら禁煙支援がうまくいくのか、について簡単に話しておきたいと思います*1。禁煙を成功させる秘訣の1つは、“急がば回れ”のようですが、タバコ問題に関するしっかりとした理解を進めることだと思います。喫煙者がタバコ産業から搾取されている実態や、タバコがいかに残酷な製品かを知ってもらうことが禁煙につながり、喫煙の再開防止に役立ちます。ポスターの掲示やチラシの配布など(図)簡単にできることからでも取り組んでいただければと思います。画像を拡大する科学的根拠に基づき推奨される禁煙方法はさまざまありますが、代表的な方法は(1)禁煙外来を受診して禁煙治療薬の処方を受ける(2)禁煙外来もしくは薬局等で得たニコチンパッチやニコチンガムを使うの2つです。しかし、多くの喫煙者は禁煙を勧める本*2を読むなどして自力で止めることができています。本からタバコ問題に関する情報が得られ、それを知ることにより禁煙することの重要性がよりよく理解できるようになります。*1:なぜ禁煙支援が必要なのかについては日本における健康増進計画、健康日本21等にも理由が明記されており、本稿では触れていません。詳しくはこれらをご参照ください。*2:川井治之『頑張らずにスッパリやめられる禁煙』サンマーク出版、磯村毅『「吸いたい気持ち」がスッキリ消える リセット禁煙』PHP文庫、アレン・カー『禁煙セラピー』KKロングセラーズ社、など紙巻タバコを吸っている人へ伝えたいこと、伝えてほしいこと新型タバコの話題の前に、紙巻タバコを吸っている人全員に伝えたいことがあります。タバコを吸っている人に第一に伝えたいことは、タバコを吸っている人が1番のタバコの被害者だということです。タバコを吸っている人は、当然ですが、悪者ではありません。むしろ、タバコを吸っている魅力的な人が沢山います*3。タバコを吸っているという理由で、頭ごなしに否定するようなことは、もちろん良い結果にはつながりません。タバコを吸っているのは、好奇心が旺盛な証拠かもしれない。もしかしたら、反骨精神のためかもしれない。反骨精神があったり、好奇心旺盛であったりしたが故に、たまたまタバコを吸うという方向に興味が向き、ニコチン依存症になって、やめられなくなった。よくある話です。そんな魅力的な人がずっとタバコを吸っていたら、タバコのせいで寿命がおおよそ5~15 年短くなり、男性であれば50 代後半~60 代という年齢で亡くなってしまう可能性が高くなります。タバコを吸っていると何歳で死ぬのか、これまでの研究のデータから分かっている通りに、若くして亡くなってしまうことが多いのです。たとえば、2012年に、とても魅力的な歌舞伎役者の十八代目中村勘三郎さんが57歳で亡くなられたことは本当に残念な出来事です。原因は食道がんでした。しかし、それは意外な出来事ではありませんでした。タバコもお酒も豪快だったとのことですから、中村さんが50代後半で亡くなってしまったことは、まさしくデータの通りともいえるのです。魅力的な人が早くに亡くなってしまうのは本当につらいことです。長く生きて活躍し続けてほしい、だからこそ絶対に禁煙してほしいと願っています*4。できるだけ早くにやめた方がいいのですが、何歳からでも禁煙すれば、良い効果があると分かっています。“自主的に”禁煙できるよう促すには?今タバコを吸っている人は、自身の意志により吸っているのでしょうか? ほとんどの人がそうだと思っているかもしれません。しかし、実はニコチン依存症のためにそう思い込まされていると分かっています。タバコには大きな害があります。タバコを吸っていると病気になって早くに死亡する可能性が高くなります。タバコは人をニコチン依存症にして、その他のことから本来得られるはずの幸せを奪っているのです(第9回参照)。このように禁煙してほしいと伝えたとしても、必ずしも禁煙してくれるわけではないと理解しています。「勉強しなさい」と子どもに怒鳴っても、子どもは勉強するようになってくれないのと同じです。どんなことでも自分からやる気にならなければ、何かを成し遂げることはできないのです。タバコを吸い続けるということは、タバコ会社に搾取され続けるということです。タバコ会社の役員は巨額の報酬を得て、自分はタバコを吸わず、社会的に不利な状況な人がタバコを吸うように仕向けている、というのはとても有名な話です。英BBC放送のドキュメンタリーによると、1980年代初め、米国のタバコ会社はある有名人を広告のイメージキャラクターにしました。彼がタバコを吸っていると、タバコ会社の幹部が「何だ、君、タバコなんて吸うのか」と言います。「吸わないんですか」と聞くと、幹部は「冗談じゃない」と首を振り、「“喫煙権”なんざ、ガキや貧乏人、黒人やバカにくれてやるよ」と言い放った後、「1日当たり数千人の子どもを喫煙に引きずり込むことが君の仕事だ。肺がんで死ぬ喫煙者の欠員補充だ。中学生ぐらいを狙え」と語ったというのです。本当にひどい話です。タバコ会社は表向きは子どもにタバコを売らないとしながら、子どもに喫煙させることを仕事にしているのです。なお、タバコ会社の子ども向け喫煙防止キャンペーンは、ほとんど効果がないということが分かっています。ぜひ、タバコ問題について詳しく知って、禁煙の動機にしてほしいと思います。*3:当然ですが、タバコを吸っていない魅力的な人も沢山います。*4:もちろん禁煙するとともに、多量飲酒も控えてほしいです。補足コラム:週末禁煙法と医療者にできる励まし禁煙外来に行ける人には是非行ってほしいのですが、タバコをやめる方法は禁煙外来だけではありません。実際に禁煙した方の約80%は、自力でやめることができた人です。禁煙外来には行けない場合や行けない事情がある場合もあるでしょう。自力で禁煙するというのもいい方法だと思います。次のようなタイミングに禁煙を始めるといいかもしれません。人によって、ちょうどいいタイミングがあると思います。たとえば、金曜の夕方に仕事を終え、土日に家族と一緒に過ごして月曜の朝まで禁煙すれば、ほぼ3 日間はタバコをやめられます。3 日間禁煙すれば、平均的にはニコチンの離脱症状もおさまる頃です。そのままずっとやめてみるよう勧めてみてください。それで、いつの間にかやめられたという人が結構います。タバコを吸いたくなったら、水を飲んだり、ガムをかんだり、走ったり、うまく紛らわせられるといいですね。もちろん、禁煙が1回でうまくいくとは限りません。金曜夜からの禁煙に毎週チャレンジしてもらってもいいと思います。いつか禁煙に成功できると思います。もっと極端なことをいえば、毎日、朝起きたときには、もうすでに7~8時間は禁煙に成功しています。当たり前ですが、人間の体はタバコを吸わなくても大丈夫なようにできています。毎日でも禁煙にチャレンジしてほしいと思っています。毎週でも毎日でも、失敗を恐れず、何度でもチャレンジしてほしいです。1回で禁煙できなかったとしても、それは意志が弱いからではありません。タバコ会社によって意図的に誘導されたニコチン依存の結果なのです。タバコ製品そのものが悪いのであって、喫煙者は被害者です。何度でも禁煙にチャレンジすれば、いつか必ず禁煙できます。いろいろな方法で禁煙すればいいのです。1回や2回禁煙に失敗しても、10 回、20 回とチャレンジして、最終的に禁煙できたら必ずいいことがあると励まし続けていただきたいと思います。第13回は、「新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと(2)」です。

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利益相反の開示は論文査読に影響するのか/BMJ

 現行の倫理規定では、すべての科学論文について利益相反(conflicts of interest:COI)の開示が求められているが、米国・ハーバード・ビジネス・スクールのLeslie K. John氏らによる無作為化試験の結果、論文の査読にCOI開示は影響しないことが示された。著者は、「査読者が出版を評価する論文のあらゆる質の評価に、COI開示が影響していることを確認できなかった」としている。科学雑誌やアカデミックな倫理基準において、査読者、エディターおよび読者が、可能性があるバイアスを検出・補正できるように、著者に対してCOI開示が命じられている。しかし、これまでその行為が目的を達しているかを確認する検討は行われていなかったという。BMJ誌2019年11月6日号掲載の報告。Annals of Emergency Medicineの論文レビュープロセスで無作為化試験 研究グループは、医学専門誌において、査読者に対する著者のCOI開示の影響を評価するため、Annals of Emergency Medicineの論文レビュープロセスにて無作為化試験を行った。 2014年6月2日~2018年1月23日に、論文を評価するレビュワーを2群に無作為に割り付け、論文を評価する前に、一方には著者による完全なInternational Committee of Medical Journal Editors(ICMJE)のCOI開示文書を提供し(介入群)、もう一方には提供しなかった(対照群)。両群のレビュワーは、通常どおり8つの質の格付けで論文を評価。その後に、反事実的スコア(counterfactual score)―もしCOI開示を受けていたら与えたと考えるスコアについてサーベイを受けた。介入群のレビュワーには、どのようにスコアを付けたのか、開示を受けていなかったら与えたであろうスコアを思い出してもらった。また、レビュワーのCOI開示に対する姿勢および人口統計学的特性の評価も行った。 主要評価項目は、レビュワーがレビューの提出時に論文に割り当てた全体的な質(Annals of Emergency Medicineでの出版についての全体的な好ましさ)のスコア(1~5段階で評価)。副次評価項目は、レビュワーが7つの特定の質の評価で与えたスコアと、フォローアップサーベイで示された反事実的スコアであった。 試験期間中にレビューを行ったレビュワーは838人、論文は1,480本であった。開示の有無による論文の質の評価への影響見られず 1,480本のうち525本(35%)が、COIがあることを報告していた(955本[65%]はないことを報告)。525本のうち、資金提供が商業者であると報告していたのは115本(22%)、非営利組織は118本(23%)、政府140本(27%)、大学41本(8%)などであった。研究グループは、レビュワー838人による3,041例のレビューを入手。各論文は平均2.1例(SD 0.9)のレビューを受けていた。人口統計学的特性が入手できたレビュワーは、介入群361人、対照群368人で、男性がそれぞれ76%、75%、平均年齢45.74歳、45.72歳などであった。 解析の結果、著者のCOI開示の提供は、レビュワーによる論文の質の評価に影響を及ぼさないことが示された。全論文における質の評価の平均スコア(SD)は5段階評価で、対照群2.70(1.11)、介入群は2.74(1.13)であった(平均群間差:0.04、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.14)。COIがあったと報告していた論文においてさえも、対照群2.85(1.12)、介入群2.96(1.16)であった(平均群間差:0.11、95%CI:-0.05~0.26)。同様に、その他7つの質の評価においても、COI開示の影響はみられなかった。 レビュワーは、COIを重要であると認識しており、それらが開示された場合は、評価を修正する可能性があると考えていた。しかしながら、反事実的スコア(平均2.69)と実際のスコア(同2.67)に差はみられなかった(平均群間差:0.02、95%CI:0.01~0.02)。利益相反があると報告していた場合でも、資金提供元のタイプ(政府、非営利会社など)による影響の違いはみられなかった。

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今シーズンのインフルエンザ診療の動向は?

結果概要ここ数年、過去最大規模の流行を繰り返すインフルエンザだが、今年は早くも流行が始まっている。現場での診療方針はどのような傾向にあるのだろうか。ケアネットでは先月、会員医師を対象に「今シーズンのインフルエンザ診療について」のアンケートを行い、325人から回答を得た。アンケートでは、早期流行の実感、迅速診断キットの使用頻度、抗インフルエンザウイルス薬の処方頻度、外来での抗インフル薬の選択について答えていただいた。主な結果は、以下のとおり。6割超の医師が、インフルエンザの早期流行を実感している約8割の医師が、迅速診断キットと抗インフル薬をほぼ全例に使用最も処方頻度が高い抗インフル薬はオセルタミビル、次いでザナミビル集計結果の詳細と、寄せられたご意見を以下にまとめた。62%の医師が、早期流行を実感している厚生労働省により、例年より早期の流行開始が報告されたが、実臨床ではどう感じているのだろうか。アンケート回答の結果を見ると、62%の医師がインフルエンザの早期流行を「実感している」と答えた。早期流行は、臨床現場の感覚ともおおむね一致していることが示された。迅速診断キットはほぼ全例に使用されるが、「不要」という意見も「外来でのインフルエンザ診断に、どのくらい迅速診断キットを使用しますか」という設問に対しては、「インフルエンザが疑われる患者のほぼ全員に使用する」と答えた医師が78%に上った。次いで、「ほかの重篤疾患との鑑別など、必要性が高い場合のみ使用する」(13%)、「患者から希望があった場合のみ使用する」(7%)、という結果だった。迅速診断キットについて、日本医師会は「検査は必ずしも全例に実施する必要はない」との見解1)を示しているが、現場に広く受け入れられるには時間がかかりそうだ。インフルエンザのほぼ全例に抗インフル薬が処方次に、「抗インフル薬の外来処方についてお聞かせください」という問いに対し、77%の医師が「発症後48時間以内と想定される患者のほとんどに、抗インフル薬を処方する」と答えた。「高リスク患者には抗インフル薬を処方するが、低リスク患者にはなるべく処方しない」は17%、「抗インフル薬は基本的に処方しない」は5%だった。オセルタミビルの次に多いのはザナミビル薬剤選択に関しては、オセルタミビル(商品名:タミフル)が最も多く61%、次いでザナミビル(同:リレンザ)22%、ラニナミビル(同:イナビル)7%、バロキサビル(同:ゾフルーザ)6%、ペラミビル(同:ラピアクタ)1%という回答結果となった。「処方しない」と答えた医師は3%に留まった。2018年に10代への使用制限が解除され、経口投与かつ剤形選択ができるオセルタミビルを第1候補とする医師が多いと考えられる。高リスク患者にはペラミビル、インフル疑い・48時間経過例には麻黄湯かさらに、「前問で選択した薬剤以外の抗インフル薬を処方するのは、どのような場合ですか?」という記述形式の設問に対しては、「年齢(小児・高齢者など)」、「経口/吸入の可否」、「予防投与の場合」、「妊娠の有無」、「患者アドヒアランス」、「アレルギーや副作用などの既往歴」、「患者負担(経済面)」など、患者の希望や状況によって、処方を調整しているという声が多数寄せられた。また、入院症例や重症例などの高リスク群には、ペラミビルを処方するという意見が多かった。このほか、アンケートの選択肢にはなかったが、麻黄湯を積極的に使うという意見も見られた。全身状態が安定している人や理解がしっかりしている人には説明後、麻黄湯を処方することがある。(小児科・40代・岡山県)症状が強い症例には麻黄湯を併用している。周囲の発生状況を確認している。(内科・50代・高知県)偽陰性を疑う場合は麻黄湯を使う。(内科・50代・京都府)48時間以上経過した場合は麻黄湯を選択する。(循環器内科・60代・埼玉県)耐性ウイルスや、全例における薬物治療に対する懸念の声も最後に、日頃のインフルエンザ診療で取り組んでいる工夫や、困っている点について尋ねたところ、さまざまな意見が寄せられたので、その中から一部を抜粋して紹介する。診療での工夫に関しては、30~40代の医師による意見が目立った。不要な抗インフル薬の処方は減らすよう、心掛けている。(呼吸器内科・30代・大分県)小児症例では危険度が高いと判断し、小児科に受診を勧めている。(内科・40代・大阪府)今年は院内発生があり、感染拡大予防に努めている。(消化器内科・30代・広島県)一方、困っている点に関しては、耐性ウイルスを気にする声が多かった。12歳以下の小児ではザナミビル吸入やオセルタミビルを投与する方針である。(循環器内科・60代・福岡県)耐性ウイルスが疑われ、いったん解熱した患者が再発熱した場合の対応に困る。(消化器内科・50代・愛知県)耐性を気にするが、どちらかというと皆さんが苦しいのを少しでも和らげたいと思うので、効果が出るものを処方したい。(内科・50代・長野県)さらに、抗インフル薬を使用した薬物治療については、疑問の声も挙がった。本当に全症例に抗インフル薬が必要か疑問に思っている。対症療法の方が免疫獲得できていいような気もする。(その他・50代・静岡県)軽症インフルエンザの扱いには疑問を感じることもある。(放射線科・40代・京都府)インフルエンザ診療における情報は、治療薬の選択肢が増えたり、使用上の注意が改訂されたりと、シーズンを問わず更新されている。今年の流行ピークが訪れる前に、最新の情報を確認して、万全の体制で臨みたいところだ。アンケート概要タイトル今シーズンのインフルエンザ診療についてお聞かせください実施日2019年10月28~11月3日調査方法インターネット対象ケアネット会員医師(有効回答数:325人)【分類詳細】内科系:内科、神経内科、循環器内科、消化器内科、血液内科、呼吸器内科、糖尿病・代謝・内分泌内科、腎臓内科、感染症内科、心療内科、総合診療科外科系:外科、整形外科、消化器外科、形成外科、脳神経外科、心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺外科その他:小児科、精神科、放射線科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、眼科、皮膚科、産婦人科、泌尿器科、麻酔科、救急科、腫瘍科、臨床研修医アンケート調査にご協力いただき、ありがとうございました。参考1)インフルエンザ診療で不要なこと:医師会の見解今季インフルエンザ治療のポイントとは?東京都でインフルエンザ流行開始、昨年比で3ヵ月早くゾフルーザに低感受性の変異株に関する調査結果ゾフルーザに「使用上の注意」の改訂指示

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治療抵抗性うつ病におけるMetS有病率~FACE-DR研究

 フランス・ソルボンヌ大学のOphelia Godin氏らは、フランス人の治療抵抗性うつ病(TRD)患者のコホートにおけるメタボリックシンドローム(MetS)有病率を推定し、社会人口統計学的、臨床的および治療に関連する因子との相関について検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2019年10月15日号の報告。 対象は、2012~18年に中等度~重度(MADRSスコア20以上)のうつ病エピソード(DSM-IV基準)を有し、ステージII以上の治療抵抗性(Thase and Rush基準)が認められたTRD患者205例。社会人口統計学的および臨床的特徴、ライフスタイルの情報、治療および併存疾患に関する情報を収集し、血液サンプルも採取した。MetSは、国際糖尿病連合(IDF)基準に従って定義した。 主な結果は以下のとおり。・MetS基準を満たしていたTRD患者は、全体の38%であった。・MetSの頻度は、40歳以上の患者において女性(35.2%)よりも男性(46.3%)で高かった(p=0.0427)。・糖尿病のマネジメントは良好であったが、高血圧または脂質異常症の治療を受けていた患者は3分の1未満であった。・多変量解析では、血清CRPレベルの異常は、他の潜在的な交絡因子とは独立して、MetSリスクを3倍増加させることが示唆された(95%CI:1.5~5.2)。 著者らは「TRD患者では、他の精神疾患患者よりもMetS有病率が高く、十分な治療が行われていない可能性がある。TRD患者の心血管疾患を予防するために、MetSの診断および治療をシステマティックに行う必要がある。本調査結果は、精神科医とプライマリケア医との連携を強化し、統合ケアの必要性を示唆している」としている。

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