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PPARγアゴニスト、神経障害疼痛の鎮痛作用あり

 米国・ケンタッキー大学のRyan B Griggs氏らは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)アゴニストの反復投与により脊髄後角におけるグリア活性化が変化し、神経障害性疼痛様反応が減少することを明らかにした。PPARγは核内受容体であることから、遺伝子発現の持続性変化が疼痛減少に関与すると考えられているが、著者らはこれまでに、PPARγアゴニストであるピオグリタゾンの単回髄腔内注入が、ゲノム機構で必要とされる時間よりも短時間の30分以内に痛覚過敏を減少させることを示していた。今回の報告について著者らは、「脊髄性PPARγの活性化が標準的なゲノム活性から独立して神経障害性疼痛を急速に減少させることを示した最初の報告」と述べたうえで、「ピオグリタゾンは、1つにはアストロサイト活性化の減少によって、また、PPARγのゲノム性および非ゲノム性作用の両方を介して、神経障害性疼痛を速やかに阻害する」と結論付けた。Pain誌2015年3月号の掲載報告。 研究グループは、PPARγ活性化の迅速な抗痛覚過敏作用を検討する目的で、坐骨神経部分損傷ラットにピオグリタゾンを投与し痛覚過敏を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ピオグリタゾンは、投与5分以内に痛覚過敏を抑制した。・ピオグリタゾンの腹腔内または髄腔内投与による抗痛覚過敏作用は、PPARγアンタゴニストであるGW9662の全身投与または髄腔内投与によって阻害された。・ピオグリタゾンとタンパク質合成阻害剤であるアニソマイシンを同時に髄腔内投与し7.5分間隔で評価した結果、投与初期はピオグリタゾンの抗痛覚過敏作用に変化はなかったが、後に減少した。・坐骨神経部分損傷によって誘発されたGFAP発現の増加を、ピオグリタゾンは投与後60分以内に抑制した。

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慢性腰痛は神経障害性疼痛の有無で治療薬を使い分け

 慢性腰痛の治療にプレガバリン(商品名:リリカ)やオピオイドが用いられることがあるが、これまで両者の有効性を比較した研究はない。独立行政法人 国立長寿医療研究センター 整形外科脊椎外科医長の酒井 義人氏らは高齢患者において検討し、全体の有効率に差はないものの神経障害性疼痛や下肢症状の有無で、効果に違いがみられることを示した。著者は、「鎮痛か日常生活動作(ADL)の改善かなど、治療の主たる目的を明確にしておくことが大切」とまとめている。European Spine Journal誌オンライン版2015年2月15日号の掲載報告。 対象は65歳以上の慢性腰痛で治療を継続している患者65例で、プレガバリン投与期とオピオイド投与期を実施し、いずれも4週間投与した後、疼痛およびADLについて視覚アナログスケール(VAS)、日本整形外科学会腰痛治療判定基準(JOAスコア)、ローランド・モリス障害質問票(RDQ)、簡易版マックギル疼痛質問票(SF-MPQ)、EuroQOL-5D、高齢者用うつ尺度(GDS)を用い評価した。また、神経障害性疼痛スクリーニング質問票も神経障害性疼痛の評価に用いた。 主な結果は以下のとおり。・有効率は、プレガバリン73.3%、オピオイド83.3%で、有意差は認められなかった。・効果発現までの平均日数は、プレガバリン10.2日、オピオイド6.1日で、有意差はなかった。・プレガバリンは神経障害性疼痛、オピオイドは非神経障害性疼痛を伴う腰痛患者で、より有効であった。・ADLの改善は、プレガバリンよりオピオイドで大きかった。・プレガバリンは下肢症状を有する腰痛患者、オピオイドは下肢症状を有さない腰痛患者で、より効果的であった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第17回

第17回:慢性腰痛に対してのオピオイド~短期間は有効だが、長期間投与の効果と安全性ははっきりしない監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 慢性腰痛は、外来で多い訴えの1つです。慢性腰痛を持つ患者さんが疼痛コントロールに苦しんで受診されることが多く、総合診療外来医師、整形外科医師が治療に難渋していることも多いです。 2011年4月にトラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン合剤)が承認されてから、NSAIDsで対応困難なケースなどに対して、わが国でもオピオイドの使用が以前よりも身近なものになってきています。また、他のオピオイド内服もしくは、パッチ剤(フェンタニル剤)を貼付されているケースも散見します。 オピオイドは疼痛コントロールに有効といわれますが、便秘や嘔気といった副作用などに悩み、長期に投与してよいものかと考えることがたびたびあります。長期使用の安全性は明らかになっておらず1), 2)、個人的には慎重に使用したいと考えます。日本では、慢性腰痛に対して、日本ペインクリニック学会が作成した神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン3)もあり、参考になると思います。 以下、American Family Physician 2014年8月15日号1)、The Cochrane database of systematic reviewsオンライン版 2013年8月27日版2)よりオピオイドは、慢性腰痛の治療に有効か?randomized controlled trialsのMeta-analysis 慢性腰痛には、オピオイドが短期間の疼痛の緩和と機能改善に多少有効であると一般的に考えられている。しかしながら、長期間のオピオイド使用でのデータは、ほとんど存在していない。長期間のオピオイド使用については、議論の分かれるところである。医師は、患者に疼痛の緩和を求められるが、長期間のオピオイドを使う際には投薬調節と安全性への配慮も求められる。トラマドールとプラセボを比較した5つの研究には、方法論的なバイアスがあったが、概して患者はプラセボより多くの痛みが減り、機能的なアウトカムもより改善することを示した。痛みの改善はSMD(標準化平均差)、-0.55( 95% CI -0.66~-0.44、low quality evidence)、機能の改善は SMD、-0.18( 95% CI -0.29~-0.07、moderate quality evidence)であった。2つの研究では、経皮ブプレノルフィンとプラセボを比較した。ブプレノルフィンの2つの研究では、エビデンスレベルは低く、プラセボより痛みが減るが、機能は改善しないことが判明した。痛みの改善はSMD、-2.47( 95% CI -2.69~-2.25、very low quality evidence)、機能の改善はSMD、-0.14( 95% CI -0.53~0.25、very low quality evidence) であった。5つの強オピオイドの研究では、痛みが減り、機能改善することが判明した。痛みの改善はSMD、-0.43( 95% CI -0.52~-0.33、moderate quality evidence)機能の改善はSMD、-0.26(95% CI -0.37~-0.15、moderate quality evidence)であった。いずれのトライアルも研究の質は低~中等度で、中断率が高く、観察期間が短く、機能改善の定義が限定されている。オピオイドの長期使用に関するトライアルは、さまざまなリスクを総合的に評価するなど慎重に行うべきである。慢性腰痛に対するオピオイドの長期間の効果と安全性を示しうるRCTはない。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) HENRY C. BARRY. Am Fam Physician. 2014; 90: 259B-C. 2) Chaparro LE, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 8: CD004959. 3) 日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン作成ワーキンググループ 編. 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン. 真興交易医書出版部. 2011. 

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疼痛を伴うMSにデュロキセチンが有効

 米国・コロラド大学ヘルスサイエンスセンターのTimothy L. Vollmer氏らは、神経障害性疼痛をしばしば有する多発性硬化症(NP-MS)患者における疼痛処置としてのデュロキセチン(商品名:サインバルタ)の有効性と忍容性を評価する無作為化二重盲検試験を行った。その結果、NP-MS患者に対してデュロキセチンは有効であることを報告した。安全性プロファイルも他の患者集団で報告されたものと一致していた。NP-MS患者へのデュロキセチン治療は適応承認されていない。Pain Practice誌2014年11月号の掲載報告。 検討は、239例のNP-MS患者を対象に行われた。まず、被験者を、デュロキセチン60mg/日投与群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付け、1日1回投与の6週間にわたる急性期治療フェーズの検討を行った(デュロキセチン投与群は30mgを1週間、60mgを5週間投与された)。その後、12週間の非盲検延長フェーズ(デュロキセチン30~120mg/日投与)の検討を行った。 被験者は、無作為化以前に、MSを有して1年以上、1日の平均疼痛(API)評価スコアが4以上の日が7日間のうち4日以上あった。なお患者の毎日のAPI評価は、電子日記において11ポイント制(0[疼痛なし]~10[最大級の痛み])で行われた。 主要有効性評価は週ごとのAPI評価の変化で、ミックスモデル反復測定分析により分析が行われた。治療完了や治療中断理由、治療関連有害事象の発生は、Fisher's 正確確率検定で比較した。 主な結果は以下のとおり。・デュロキセチン群は118例、プラセボ群は121例であった。・6週時点で、デュロキセチン群の患者はプラセボ群の患者と比較して、API評価における統計的改善が有意に大きかった(-1.83 vs. -1.07、p=0.001)。・治療完了について、群間で有意な差は認められなかった。・有害事象による中断は、デュロキセチン群がプラセボ群よりも統計的に有意に多かった(13.6% vs. 4.1%、p=0.012)。・食欲減退の報告頻度が、デュロキセチン治療患者で有意に高かった(5.9% vs. 0%、p=0.007)。

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女性の痛みを理解する

 2014年10月28日、ファイザー株式会社、エーザイ株式会社 プレスセミナー「性差と痛み」にて、順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 井関 雅子氏が「女性に多い痛みとその最新治療動向」について紹介した。女性は長年にわたり痛みの問題を抱える 日本の平均寿命は世界的にみても長く、女性は世界第一位である。しかし、平均寿命と健康寿命の差をみると、女性は12.4年と、男性(男性は9.02年)以上に長い。 一方、日本の慢性疼痛は26.4%、2,700万人と多い。とくに女性は月経痛をはじめリウマチ、変形性関節症など生涯を通して、さまざまな疼痛疾患を経験する。上記の健康寿命との差からみても、女性は長期間痛みの問題を抱えて生きていることになる。知られていない女性の痛み 女性に多い痛みとして、井関氏は頭痛、手根管症候群、乳房切除後疼痛症候群、線維筋痛症を紹介した。 頭痛、なかでも女性の片頭痛の有病率は12.9%と高い。男性(3.6%)の3.6倍である。それにも関わらず、医療機関未受診の女性は69.4%と多い。 手根管症候群は何らかの原因で正中神経が圧迫されることで発症する。患者は圧倒的に女性に多く、欧州の統計では男性の3~10倍である。初期には痛みやだるさなどを訴えるが、進行すると筋力の低下から筋委縮にいたることもあり放置は危険である。 乳房切除後疼痛症候群では、手術側の乳房や腋下、上腕内側に神経障害性疼痛特有のアロディニア(異痛症)*が見られる。デンマークの調査では、乳癌手術後5~7年後に痛みを訴えた患者は37%。本邦でも術後8年以上経過した患者の21%が乳房切除後疼痛症候群と思われる慢性疼痛を訴えている。しかしながら、乳房切除後疼痛症候群に対する医師の認識は低いという。神経障害性疼痛薬での治療が可能であるにも関わらず、患者の65%が治療を諦めているという実態を紹介した。 井関氏は、女性は生涯を通し痛みに悩む機会が多いこと、痛みには種類があり種類に応じた治療法があるため早期の専門家の診断および適切な治療が求められること、また、長引く痛みは完治しなくても改善を目指す治療を行うことを強調した。*アロディニア:通常では疼痛をもたらさない微小刺激が、すべて疼痛としてとても痛く認識される感覚異常

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中国、日本は他国より疼痛有病率・治療率が低い

 米国・Kantar Healthが実施したNational Health and Wellness Survey(NHWS)によると、新興国と先進国のいずれにおいても、疼痛はQOLや機能、活動、労働生産性などすべての健康状態の評価項目に影響していることが明らかになった。また、新興国の中国、先進国の日本はともに、他の国よりも疼痛有病率と治療率が低いことも報告された。同社のAmir Goren氏は報告で、「今回の結果は世界における疼痛の疾病負荷を幅広く理解する助けになる」とまとめている。Pain Medicine誌オンライン版2014年9月12日号の掲載報告。 2011~2012年に実施されたNHWSのデータを用い、疼痛(神経障害性疼痛、線維筋痛、腰痛、手術痛、関節炎疼痛)の有無別に社会人口統計学的特性、QOL、労働生産性、活動機能障害および医療財源の使用について解析し、新興国(ブラジル、中国、ロシア)と先進国(EU、日本、米国)とで比較した。 主な結果は以下のとおり。・疼痛有無の回答は、先進国では、疼痛なし12万8,821例、疼痛あり2万9,848例、新興国では、疼痛なし3万7,244例、疼痛あり4,789例であった。・疼痛有病率および治療率は、中国がそれぞれ6.2%および28.3%、日本が4.4%および26.3%で、他の国々(≧14.3%および35.8%)と比べて低かった。・疼痛は先進国および新興国のいずれにおいても、QOLの重大な障害、生産性および医療財源使用と関連していた。・先進国では生産性と身体的な健康状態、新興国では精神的健康状態と医療財源使用に対する影響がより大きかった。

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スタチンと神経障害性疼痛の関係は?

 神経障害性疼痛は体性感覚神経系の障害に起因しているが、最近、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の関与が注目されている。インド・パンジャブ大学のShrutya Bhalla氏らは、スタチンと神経障害性疼痛に関する研究についてレビューを行い、臨床研究と基礎研究で相反する作用が報告されていることを示した。すなわち、興味深いことにスタチンには神経障害性疼痛の誘起と緩和という2つの役割があるという。著者らはその背後にあるメカニズムを説明し、2つの役割を理解するためにはさらなる研究が必要であるとまとめている。Journal of Pain誌オンライン版2014年7月30日号の掲載報告。 スタチンは、HMG-CoA還元酵素を阻害することによりコレステロール生合成における律速段階を阻害する。最近の研究では、スタチンがコレステロール低下作用に加え多面的な効果(pleiotropic action)を有することが示されていた。 研究グループは、神経障害性疼痛に対するスタチンの作用に関する研究をレビューした。 主な所見は以下のとおり。・基礎研究では、スタチンが神経障害の動物モデルにおいて神経障害性疼痛を減弱させることが示唆されている。・そのメカニズムとしては、抗炎症作用、抗酸化作用および神経調節作用などコレステロール非依存性作用が考えられている。・臨床研究では、スタチンの投与によって神経障害性疼痛が引き起こされることが示唆されており、コレステロール低下作用が神経障害性疼痛の誘因となる可能性が考えられた。

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新規開発のEMA401、帯状疱疹後神経痛に有望/Lancet

 新規の神経障害性疼痛治療薬として開発中のアンジオテンシンIIタイプ2型受容体(AT2R)拮抗薬EMA401は、帯状疱疹後神経痛(PHN)の疼痛改善に有望であることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAndrew S C Rice氏らによる第2相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。1日2回100mgの経口投与による28日間の試験終了時点で、プラセボと比較してPHNの有意な緩和が認められ、忍容性も良好であった。PHNおよび一般的な神経障害性疼痛に対する既存治療は、効果がわずかで好ましくない副作用がある。AT2Rは、神経障害性疼痛の新しいターゲットで、EMA401はこのAT2Rに高い選択性を有するという。Lancet誌オンライン版2014年2月5日号掲載の報告より。6ヵ国29施設でPHN患者183例を対象に第2相無作為化試験 試験は、PHNを有する患者において、EMA401の治療薬としての可能性を評価することを目的とし、6ヵ国29施設の多施設共同にて、22~89歳で6ヵ月以上のPHNを有する患者を登録して行われた。 183例の患者を無作為に、EMA401(1日2回100mg)かプラセボを投与する群に割り付け、28日間治療を行った(EMA401群92例、プラセボ群91例)。患者と各試験サイトのスタッフは割り付け情報は知らされなかった。 EMA401の有効性、安全性、薬物動態を評価。主要有効性エンドポイントは、ベースライン時と投薬最終週(22~28日)との間の、平均疼痛強度[11ポイントの数値的評価スケール(NRS)で測定]の変化であった。プラセボ群と比べて疼痛スコア変化が有意に低下 結果、EMA401群はプラセボ群と比べて、同変化値が有意に低かった。平均疼痛スコアの低下は-2.29[SD 1.75] vs. -1.60 [1.66]、最小二乗平均値補正後の両群差は-0.69[SE 0.25](95%信頼区間[CI]:-1.19~-0.20、p=0.0066)だった。 EMA401に関連した重篤な有害事象は、発生がみられなかった。治療関連の有害事象はEMA401群で32例の患者が56件報告、プラセボ群でも29例の患者が45件報告した。

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複合性局所疼痛症候群に対するTNF-α阻害薬の効果

 複合性局所疼痛症候群(CRPS)には、TNF-αなどの炎症性サイトカインが関与していると考えられることから、TNF-α阻害薬の治療効果が期待されている。オランダ・エラスムス大学医療センターのMaaike Dirckx氏らは、インフリキシマブ(商品名:レミケード)による無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。試験は、統計学的な検出に必要な症例数に達する前に試験が中止されたものの、当初からTNF-α濃度が高い患者ではインフリキシマブ投与による効果がみられる傾向が示唆されたという。Pain Practice誌2013年11月(オンライン版2013年5月22日)の掲載報告。 研究グループは、局所炎症による臨床症状がインフリキシマブ全身投与後に減少するかどうかを確認することを目的とした。 対象はCRPS患者13例で、インフリキシマブ5mg/kg群(6例)またはプラセボ群(7例)に無作為化し、0、2および6週に投与した。 局所炎症による臨床症状をimpairment level sumscore(ISS)で評価するとともに、誘発された水疱液中のメディエーター濃度およびQOLについても調べた。 主な結果は以下のとおり。・インフリキシマブ群とプラセボ群との間で、ISS合計スコアに有意な変化はなかった。・サイトカイン濃度も両群で差は認められなかったが、プラセボ群に比べインフリキシマブ群でTNF-αの減少が大きい傾向がみられた。・プラセボ群と比較しインフリキシマブ群で、EuroQolサブスケールの健康状態が有意に低下した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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国際疼痛学会が神経障害性疼痛に対する侵襲的治療について新しい勧告を発表

 神経障害性疼痛は、薬物療法あるいは非侵襲的治療に不応性のことが多い。国際疼痛学会の神経障害性疼痛部会は、神経障害性疼痛の侵襲的治療に関するシステマティックレビュー、臨床試験および既存のガイドラインを評価し、勧告を発表した。同部会を代表し米国・ロチェスター大学のRobert H. Dworkin氏らは、今後の研究の優先事項としてはさまざまな侵襲的および非侵襲的治療の無作為臨床試験、長期研究および直接比較試験が挙げられる、とまとめている。PAIN誌2013年11月(オンライン版2013年6月7日)。 以下の末梢性および中枢性神経障害性疼痛患者における神経ブロック、脊髄電気刺激(SCS)、髄腔内薬物投与および脳神経外科的治療に関するエビデンスがまとめられた。・帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛(PHN)・有痛性糖尿病性およびほかの末梢神経障害・脊髄損傷後神経障害性疼痛、脳卒中後の中枢性疼痛・神経根障害および腰椎術後疼痛症候群(FBSS)・複合性局所疼痛症候群(CRPS)・三叉神経痛と末梢神経障害 主な勧告内容は以下のとおり。・質の高い臨床試験が不足しているため、強い推奨を行うことはできない。・有効性と安全性の程度を含むエビデンスの量および一貫性に基づき、以下の4治療を「弱い推奨」とする。 1)帯状疱疹に対する硬膜外注射 2)神経根障害に対するステロイド注射 3)FBSSに対するSCS 4)CRPSタイプ1に対するSCS・PHNに対する交感神経ブロック、神経根障害に対する高周波療法の使用は推奨しない。・これらの侵襲的治療は、可能な限り無作為化臨床試験の一部として行うか、または登録研究に記録するかのどちらかでなければならない。 ~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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慢性非がん性疼痛の突出痛にフェンタニル口腔粘膜吸収剤は有用

 慢性非がん性疼痛の突出痛(BTP)に対し、フェンタニル口腔粘膜吸収剤(以下フェンタニル、国内ではがん性疼痛のみ適応)はオキシコドン速放製剤と比較して、鎮痛効果の発現が速やかで機能状態改善効果も優れ、患者の満足度も良好であることが示された。米国・CRI LifetreeのLynn R. Webster氏らが、無作為化二重盲検クロスオーバー試験において明らかにした。Pain Medicine誌2013年9月号(オンライン版2013年7月15日)の掲載報告。 本研究には、米国の42施設が参加した。対象は慢性非がん性疼痛を有しBTPを認めるオピオイド耐性患者213例であった。 非盲検の用量設定期において、フェンタニルに次いでオキシコドン速放製剤(IR)の順に投与する群、またはオキシコドンIRに次いでフェンタニルの順に投与する群に無作為に割り付け、BTPに対し有害事象を伴うことなく十分な鎮痛効果が得られる単回投与量を、両薬剤について設定した。その後、同様に再割り付けを行い二重盲検治療期としてBTPに対する治療効果を検討し(BTP 10エピソードで薬剤切替え)、引き続き12週間の非盲検の延長試験を行った。 疼痛強度は0~10までの数値的評価スケールを用いて評価するとともに、機能状態および患者満足度等を質問票にて評価した。  主な結果は以下のとおり。・213例中、149例が非盲検用量設定期を終え、131例が二重盲検治療期を、112例が非盲検延長試験期を完了した。・主要評価項目である二重盲検治療期における投与前および投与15分後の疼痛強度の差は、オキシコドンIR群(0.76±1.13)に比べフェンタニル群(0.88±1.20)が有意に大きかった(p<0.001)。・二重盲検治療期を完了した患者において、フェンタニルが好ましいと回答した患者は47%、オキシコドンIRは35%であった。・非盲検延長試験終了時(最終来院日)の機能改善ならびに満足度に関する評価は、患者および臨床医いずれも短時間作用型オピオイドに比べフェンタニルが一貫して高かった(p<0.05)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?

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成人の慢性疼痛患者 6人に1人は小児期から

 小児期の慢性疼痛は成人期になっても続く場合があることが、米国・ミシガン大学のAfton L. Hassett氏らのアンケート調査で確認された。成人の慢性疼痛患者の6人に1人は小児期または青年期に慢性疼痛の既往があり、こうした患者の多くは広範痛で、神経障害を来しており、精神疾患や身体機能悪化を伴う傾向にあったという。Journal of Pain誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告。 疼痛のため大学病院の疼痛専門クリニックを新たに受診した、成人患者1,045例(平均年齢49.5±15.4歳)を対象に、自己評価質問票を用い疼痛の特性を小児期も含めて調査した。 主な結果は以下のとおり。・成人慢性疼痛患者の約17%(176例)が小児期(または青年期)に慢性疼痛の既往があり、そのうち約80%の患者は小児期の疼痛が現在まで続いていた。・小児期慢性疼痛の既往を有する患者は、68%が女性で、85%は広範痛を有していた。・同患者は小児期慢性疼痛の既往がない患者に比べ、線維筋痛症のリスクが約3倍(オッズ比[OR]:2.94、95%信頼区間[CI]:2.04~4.23)であり、慢性疼痛の家族歴がある場合のリスクは約2倍(同:2.03、1.39~2.96)、精神疾患を有する近親者がいる場合のリスクは約3倍(同:2.85、1.97~4.11)であった。・小児期慢性疼痛の既往を有する患者は既往がない患者に比べ、疼痛に関して神経障害性疼痛をうかがわせる表現を用い(OR:1.82、95%CI:1.26~2.64)、やや身体機能状態が悪く(p=0.002)、不安が増加していた(OR:1.77、95%CI:1.24~2.52)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?

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ミノサイクリン、腰椎ヘルニア術後疼痛を改善せず

 腰椎椎間板切除の周術期におけるミノサイクリン(商品名:ミノマイシン)8日間投与の術後疼痛の軽減効果について検討したフランス・INSERMのValeria Martinez氏らによる無作為化二重盲検比較試験の結果、有効性は認められなかったことが報告された。ミノサイクリンは、慢性疼痛の主な発症機序である中枢性感作に関与するミクログリアの活性化を強く阻害することから、腰椎椎間板切除後の持続性疼痛を軽減することが期待されていた。Pain誌2013年8月号(オンライン版2013年3月27日号)の掲載報告。 対象は、腰椎椎間板切除術実施予定患者100例で、プラセボ群とミノサイクリン群に無作為に割り付け、ミノサイクリン群には同薬剤100mgを1日2回、手術前夜から8日間経口投与した。 主要評価項目は、ベースライン時から3ヵ月後における下肢安静時疼痛強度の変化であった。副次的評価項目は、同じく3ヵ月後における動作時疼痛強度、持続痛と慢性神経障害性疼痛の頻度、安静時および動作時の腰痛強度、神経障害性疼痛重症度(NPSI)スコア、簡易疼痛質問票(BPI)スコアおよびローランド・モリス障害質問票(RMDQ)スコアの変化であった。 主な結果は以下のとおり。・下肢疼痛強度の減少は、プラセボ群とミノサイクリン群とで同程度であった(安静時:-1.7±1.6 vs. -2.3±2.4、動作時:-2.5±2.1 vs. -3.4±2.9)。・神経障害性疼痛の頻度、強度および機能スコアは、プラセボ群とミノサイクリン群とで差はなかった。・探索的分析の結果、ミノサイクリンはベースライン時において主に深部自発痛を有する患者に対しては有効である可能性が示唆された。■関連記事無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?ミノサイクリンの投与は統合失調症に本当に有用か:藤田保健衛生大学

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有痛性の糖尿病性神経障害の医療費低減の鍵はプレガバリンと服薬アドヒアランスの向上

 有痛性糖尿病性末梢神経障害(pDPN)の治療において、高齢で服薬アドヒアランスが高く維持されている患者の場合で医療コストを比較した結果、プレガバリン(商品名:リリカ)の服用患者で総医療費が低いことが明らかになった。米国・ファイザー社のMargarita Udall氏らが、保険データベースのデータを用いて、デュロキセチン(同:サインバルタ)、ガバペンチン(同:ガバペン)、アミトリプチリン(同:トリプタノールほか)服用と比較解析した結果で、同患者で薬剤経済学的なメリットを得るには、プレガバリンと服薬アドヒアランスの向上が鍵となることが示唆されたとまとめている。Pain Practice誌7月号(オンライン版2012年11月14日)の掲載報告。 保険請求データベースMarketScanを用い、2008年にプレガバリン、デュロキセチン、ガバペンチンまたはアミトリプチリンが処方され、処方開始日から60日以内に1回以上pDPN診断の請求があり、処方開始日の前後各1年連続して保険に加入していた患者を特定し、傾向スコアがマッチした患者群を解析対象とした。 解析対象は、プレガバリンが処方された987例のうち、デュロキセチンとの比較が349例、同様にガバペンチンが987例、アミトリプチリンが276例であった。 平均治療日数カバー比率(PDC)が80%以上および65歳以上の患者について、処方開始日前後の医療費の変化を比較した。 主な結果は以下のとおり。・全体コホートでみた処方前後の総医療費の変化は、同程度であった。  プレガバリンvs. デュロキセチン:3,272ドルvs. 2,290ドル(p=0.5280)  プレガバリンvs. アミトリプチリン:3,687ドルvs. 5,498ドル(p=0.5863)  プレガバリンvs. ガバペンチン:3,869ドルvs. 4,106ドル(p=0.8303)・しかし、高PDCおよび高齢の患者集団における処方前後の総医療費の変化は、プレガバリンが他の群と比較していずれも有意に低かった(p<0.001)。  プレガバリンvs. デュロキセチン:3,573ドルvs. 8,288ドル  プレガバリンvs. アミトリプチリン:2,285ドルvs. 6,160ドル  プレガバリンvs. ガバペンチン:1,423ドルvs 3,167ドル~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

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外傷後の神経痛に対する新規ケモカイン受容体2拮抗薬AZD2423

 新しいケモカイン受容体(CCR2)拮抗薬 AZD2423の、外傷後神経痛に対する有効性および安全性をプラセボと比較検討した多施設共同無作為化二重盲検試験の結果が、スウェーデン・アストラゼネカ社のJarkko Kalliomaki氏らにより発表された。 AZD2423は、安全性および忍容性に問題は無く、神経障害性疼痛評価質問票(NPSI)による評価で特定の疼痛に対する効果が示唆されたことなどが報告された。PAIN誌2013年5月号(オンライン版2013年2月13日号)の掲載報告。 対象は外傷後の神経痛患者133例で、AZD2423 20mg群、150mg群またはプラセボ群に無作為化された。いずれも治験薬を28日間経口投与した。 主要評価項目は、試験終了時におけるベースライン時からの平均疼痛スコア(それぞれ投与の最終5日間ならびに投与開始前5日間の平均値)の変化量であった。疼痛スコアは、0~10までの数値的評価スケールを用いた。 副次的有効性評価項目は、NPSI、疼痛スコア最悪値、患者による全般的印象(PGI)の変化)、睡眠や日常活動に及ぼす影響とした。 主な結果は以下のとおり。・平均疼痛スコアの変化について、投与群間の有意差は認められなかった(AZD2423 20mg群:-1.54、AZD2423 150mg群:-1.53、プラセボ群:-1.44)。・しかしプラセボ群と比較してAZD2423 150mg投与群は、NPSI総スコア、ならびに発作痛および感覚異常に関するNPSIサブスコアが大きく減少する傾向がみられた。・その他の副次的有効性評価項目について投与群間で差はみられなかった。・AZD2423両群の有害事象の頻度と種類はプラセボ群と類似していた。・ケモカインリガンド2血漿中濃度の増加および単球の減少(AZD2423 150mg投与群で-30%)がみられ、AZD2423投与量とCCR2との相互作用が示唆された。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる

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「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?

天候の影響を受けやすい痛みとは天気の変わり目に痛みを訴える慢性疼痛患者は多い。痛みの程度で台風の発生や進路まで正確に予測する方もいる。天候と痛みとの関連についての統計的なデータはあまりない。テルモ株式会社が慢性疾患患者と一般人を対象に行った「健康と気候に関するアンケート調査(2004年)」では、天候や季節の変化による体調への影響を経験している人は73%いた。とくにリウマチ患者は86%が天候の変化による関節の痛みを経験している。また、愛知医科大学医学部・学際的痛みセンターが主体となって行った「尾張旭市大規模住民アンケート調査(2011年)」では、慢性疼痛を持つ人の25%が天候悪化によって痛みが強くなると回答した。欧米には、一つひとつの気象要素について統計的手法を用いて痛みとの相関を解析した研究がいくつかある。これらの研究で痛みの増悪因子とされたのは、気圧、湿度、温度の変化、降雨、雷、風である。フェーン現象でアルプスから熱風が下りてくると片頭痛が増えるという報告もある。「天気痛」の代表的な疾患は関節リウマチ、変形性関節症、線維筋痛症、片頭痛などである。上半身の痛みを訴える例が多いのが1つの特徴である。また、一人の患者さんに腰痛、膝痛、片頭痛、肩こりがあった場合、片頭痛、肩こりは天候の影響を受けるが、腰痛、膝痛は影響を受けない。また、筋肉とか関節の深部の痛みは影響を受けるが、皮膚の表面の痛みは影響を受けない、というように、影響される部位に偏りがみられることも多い。低気圧曝露試験による「天気痛」の再現愛知医科大学医学部・学際的痛みセンターで私は「天気痛外来」を開設している。当外来の受診患者に協力いただき、名古屋大学環境医学研究所で気圧と痛みの関係を調べる臨床試験を行った。大気圧からマイナス40hPa(ヘクトパスカル)の減圧環境に被験者を曝露することでどの程度の痛みが発生するかを、Pain-Vision(ニプロ製)で痛みの程度を数値化し測定した。図1の被験者は、示指の挫滅損傷後に損傷部位の疼痛、アロディニア、右上肢の深部痛としびれを訴える患者さんである。気圧を変えないで行った試験では痛みの強さに変化はみられないが、気圧を下げたとたんに痛みが増強し、元の大気圧に戻すと痛みは減弱した。図1画像を拡大する10名ほどの慢性疼痛患者にこの低気圧曝露試験を行ったが、どの被験者にも低気圧での疼痛増強現象が生じた。気圧が元に戻ったところで痛みの程度が回復する人もいれば、そのまま痛みの増強が継続してしまう人もいる。気圧の低さよりも気圧の変化による影響が大きいのではないかと推察できた。そこで、低気圧による疼痛悪化の現象が動物実験で再現できるかどうかも検証した。神経障害性疼痛モデルとして、坐骨骨神経損傷モデルと脊髄神経結紮モデルを用いた。この2種類のモデルは、疼痛が生じると痛覚過敏やアロディニアなどの疼痛行動を起こす。気圧を変動させながら疼痛行動の指標を測定したところ、坐骨神経損傷モデルでは10hPa以上の気圧低下を10hPa/時間以上の速度で行うと痛覚過敏とアロディニアの増強がみられた。脊髄神経結紮モデルでは5hPa以上、5hPa/時間以上でみられた。大型低気圧が通過する際にみられる気圧変化と同様のレベルである。ラット以外に、マウスならびにモルモットでも同様の傾向を示した。慢性疼痛と自律神経の関係気圧の低下によって慢性疼痛が増悪するメカニズムは何であろうか。慢性疼痛には交感神経が関与する「交感神経依存性疼痛」が多く含まれている。そのため、多くの患者さんはストレスが強まると痛みが増強するのである。気温、気圧、湿度などの変化は人間や動物にとってストレスになり、交感神経を興奮させることで慢性疼痛が悪化するのではないか。気圧や温度を下げると血圧や心拍数が上がり、ノルアドレナリンの分泌量も増え、交感神経が興奮することをいくつかの動物実験で確認した(図2)。その結果、交感神経を切り取ったラットで行った低気圧曝露試験では、疼痛行動の増強はみられなかった。図2画像を拡大する気圧を下げると、慢性疼痛患者では一般人より敏感に心拍数が上がる。慢性疼痛患者は自律神経、とくに交感神経が過敏になっていることが考えられる。もともと動物は気圧を感じる能力を持っているのだろう。野鳥は天気が悪くなる前に巣に帰る。そうした能力は動物には本能的行動として残っているが、人間にはなくなってしまった。しかし、慢性疼痛をきっかけとしてその本能が芽を出すとも考えられる。気圧低下時に慢性疼痛が増強するためには、生体内に気圧の変化を検出するセンサーの存在が不可欠である。センサーがどこにあるか動物で探索したが、いくつかの証拠から内耳にある可能性が高いと思われた。これについても、動物実験を行い、内耳破壊ラットでは低気圧による疼痛行動は生じないことを確認した。図3画像を拡大するなぜ「天気痛」は上半身に発生しやすいか。交通外傷によるムチ打ち損傷など首を痛めた患者さんで片頭痛、めまい、立ちくらみなどの症状を持っている場合は、天気による痛みの増強を訴える傾向が高い。首に走っている交感神経が、外傷などで傷ついたことが、天気痛の引き金になっているのではないかと推察できる。「天気痛」を訴える患者さんへのアプローチ患者さんが天候による痛みの悪化について訴えると、医師は非科学的だと軽く扱いがちだが、季節や天気の変化で症状を悪化する病態が実際に存在することを認識してほしい。その患者さんにとって、天気は非常に大きなリスクファクターなのである。天気を変えることはできないが、医師が受け止めて共感するだけでも、患者さんの痛みの程度はずいぶん違ってくるはずである。自律神経に対する介入が効果的である場合もある。本人に自律神経が乱れていることを自覚してもらう。起床と就寝のリズムを整え、昼間は日光を浴び、なるべくストレスがかからない生活をしてもらう。必要であれば漢方薬などの自律神経調整剤を服用してもらう。実際にこのような対処で気象痛がだんだん軽くなり、「最近は天気のことが気にならなくなりました」と言ってくる患者さんもしばしばみられるのである。また、患者さんに「痛み日記」を書いてもらうことも有効である。1日のうちで痛みの最も強いときと最も弱いときをVASスコアで記載してもらう。同時に天気の変化もつけてもらう。月に1回、その日記を見ながら医師と患者さんが話し合うことは、天気と痛みの関係を見直す作業として大変有用である。

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神経障害性疼痛は過少治療もしくは未治療である可能性が高い

 神経障害性疼痛の有病率は、痛みの特徴から神経障害性疼痛の可能性を判断するスクリーニングツールを用いた研究によって推定されているが、激しいあるいは長期にわたる神経障害性疼痛を経験している患者の割合や標準治療に抵抗性の難治性疼痛患者の割合は知られていない。英国・ダンディー大学のNicola Torrance氏らは、地域の家庭医に登録している患者を対象にアンケート調査を行い、慢性疼痛を有する患者は非常に多く、難治性の神経障害性疼痛はまれであるものの、神経障害性疼痛は過少治療もしくは未治療である可能性が高いことを明らかにした。Pain誌2013年5月号(オンライン版2013年1月23日)の掲載報告。 本研究は、難治性疼痛患者における神経障害性疼痛の割合を推定し、臨床および人口統計学的特徴との関連を定量化することが目的であった。 英国5地域の一般診療所計10施設から、無作為に選択した成人患者1万例を対象に自己記入式質問票を送付した。質問内容は、慢性疼痛の同定や重症度に関する質問、痛みの原因、SF-12、EQ-5D、S-LANSS(Self-administered Leeds Assessment of Neuropathic Signs and Symptoms)、PSEQ(Pain Self-Efficacy Questionnaire)、薬物治療および医療の利用についてなどであった。 さらに、国際的な専門家のデルファイ調査によって確認されている特徴にしたがって“難治性”神経障害性疼痛の存在と特徴を調べ、これらのデータを組み合わせた。また、難治性の基準を組み入れ、神経障害性の特徴の有無による慢性疼痛のカテゴリ分類を行った。 主な結果は以下のとおり。・4,451例から回答があった(回答率47%)。・「神経障害性疼痛の特徴を有する慢性疼痛(S-LANSS陽性)」に該当した患者は399例(回答者の8.9%)で、そのうち215人(S-LANSS陽性者の53.9%)は「S-LANSS陽性+関連した既往歴あり(神経障害性疼痛の可能性が高い)」であった。・98例(慢性疼痛があると回答した患者の4.5%)は、1剤以上の神経障害性疼痛治療薬を服薬していた(神経障害性疼痛の治療を受けていると考えられる)。 ・難治性患者の大部分は、身体的健康および精神的健康が著しく不良で、痛みに対する自己効力感が低く、痛みの程度が強く、痛みに関連した障害が強く、さらに医療の利用が多かった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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人工股関節全置換術後の脚長差を防ぐ新しい方法

 人工股関節全置換術において、脚長差などの合併症は機能障害と患者の不満の重大な原因となる。術中の下肢長測定にはいくつかの方法があるが、多くは侵襲的であり、そうでないものはあまり正確ではない。米国・ミシガン大学のJoseph D. Maratt氏らは、非侵襲的で術中に迅速かつ正確に下肢長を測定し術後の脚長差を防ぐことができる、新しいツールを開発した。「この方法は関節形成術を行う整形外科医にとって、正確な脚長補正を確実にするための付加的ツールとなる」とまとめている。Orthopedics誌2013年4月1日号の掲載報告。 本論文は、新しい術中の脚長測定法を紹介したものである。 この方法は、術中および術前計画において大転子近位部に近い大腿骨軸に垂直な線を正確に再現することに基づいており、使用器具の軽微な改良を必要としている。 主な方法は以下のとおり。・ヘッドにガイドプレート設置用の細い溝を機械加工した。その溝は、ハイオフセットであるネックアングル127°のセキュアフィットプラスステム(Stryker Orthopaedics社)を用いる場合はネックの軸から37°となるように、標準オフセットであるネックアングル132°のセキュアフィットステム(Stryker Orthopaedics社)を用いる場合はネックの軸から42°となるようにした。・ブローチをしっかりと固定したら、ネック、溝加工したヘッド、およびガイドプレートを取り付け、ガイドプレートと大転子近位端までの距離を術前計画測定値と比較しステム位置を決定する。・この方法を使用した初回人工股関節置換術施行例の連続31例について、後ろ向きにX線像を分析したところ、術後の脚長差は平均2.18±6.08mmであった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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高齢者では喫煙が慢性疼痛を増悪させている可能性がある

 スウェーデン・ルンド大学のUlf Jakobsson氏らによる横断研究の結果、65歳以上の高齢者では喫煙が慢性疼痛の強さと関連していることが明らかになった。著者は、喫煙をやめさせるための介入が、高齢者の疼痛を緩和する一つの方法となるかもしれないとまとめている。Pain Practice誌オンライン版2013年4月12日号の掲載報告。 2011年に、スウェーデン在住の65歳以上の高齢者2,000人を無作為に抽出し、人口統計学的データ、生活状況、タバコ(喫煙用タバコまたは湿性嗅ぎタバコ)の使用、主観的健康、慢性疼痛(疼痛の強さ、持続期間、疼痛の場所)について郵送によるアンケート調査を行った。 慢性疼痛は、3ヵ月以上持続する痛みと定義した。  主な結果は以下のとおり。・1,141人から回答を得た(回答率57%、65~103歳、女性53.6%)。このうち38.5%が慢性疼痛を有しており、喫煙者は9%であった。 ・喫煙者のうち47.6%が慢性疼痛を有していた。 ・喫煙者は非喫煙者と比較して、慢性疼痛の強度は有意に高かったが、有病率はそうではなかった。 ・サブグループ解析において、女性は喫煙者と非喫煙者との間に疼痛強度と有病率のいずれも有意差を認めたが、男性は疼痛強度のみであった。 ・湿性嗅ぎタバコと疼痛には関連はなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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中高年の初回肩関節脱臼、救急外来で徒手整復後の上腕骨大結節骨折の発生頻度

 先行研究において、肩関節脱臼の整復操作に伴う医原性上腕骨頸部骨折の症例報告がなされている。英国・王立バークシャー病院のAtoun Ehud氏らはその有病率を調べることを目的とした後ろ向きコホート研究を行った。その結果、40歳以上の初回肩関節前方脱臼患者において、上腕骨大結節骨折の合併率は21%で、これらの患者における徒手整復時の医原性上腕骨頸部骨折の発生頻度は26%と高率であることを明らかにした。Journal of Orthopaedic Trauma誌2013年4月号の掲載報告。 本研究の目的は、40歳以上の初回肩関節前方脱臼患者における徒手整復後の医原性上腕骨頚部骨折の有病率を調査することであった。 対象は40歳以上の初回肩関節前方脱臼患者92例(平均66.6歳)で、救急外来で救急医療医により、意識下鎮静のもと徒手整復が行われた。  骨折の有無はX線写真にて確認し、医原性骨折は整復後のX線写真にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・92例中19例(20.7%)は、最初のX線写真において上腕骨大結節骨折を合併していると診断された。・整復後のX線写真において、5例(5.4%)が整復後上腕骨頸部骨折と診断された。この5例は全例、最初のX線写真において上腕骨大結節骨折を認めた。 ・最初のX線写真における上腕骨大結節骨折所見と医原性上腕骨頸部骨折の発生には、有意な関連性が認められた(p<0.0001)。・医原性上腕骨頸部骨折患者の予後は不良であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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