サイト内検索|page:99

検索結果 合計:2862件 表示位置:1961 - 1980

1961.

「二次性進行型」多発性硬化症患者における身体機能障害の進行抑制に朗報(解説:森本悟氏)-837

 多発性硬化症(MS)患者の約85%が再発寛解型であり、その約25%が10年以内に、約75%以上が30年後には二次性進行型MS(secondary progressive multiple sclerosis、以下SPMS)に移行する1,2)。また、早期からの軸索障害を反映してか、比較的障害度の低い早期(EDSSスコア3程度)から障害の慢性的な進行は始まっているとされる3)。SPMSにおいては、古典的かつ優れた治療薬であるインターフェロンβ(IFNβ)製剤について、再発の重畳やガドリニウム造影病巣を伴ったりする場合でのみ有効性が期待されているが、身体機能障害の進行抑制に対して確実に有効といえる薬剤が乏しいのが現状である4)。 当該試験で使用されたSiponimod(BAF312)は、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体の特定サブタイプの選択的アゴニストであり、BAF312はリンパ球上のS1Pのサブ受容体であるS1P1に結合することで、リンパ球がMS患者の中枢神経系に移行することを阻止する5,6)。これにより、BAF312の抗炎症作用が生じると考えられている。また、同クラスの既存薬であるFingolimodと比較し、S1P1およびS1P5への選択的親和性を有し、とくにS1P3の活性化に起因する徐脈や血管収縮といった副作用が少ないとされる。また、半減期が短いことも、副作用の軽減に寄与する可能性がある7)。 当該試験は、31ヵ国、292施設、合計1,651人のSPMS患者を対象としたこれまでにない大規模臨床試験であり、登録患者のEDSSの中央値が6点と、比較的症状の重い(歩行時補助具使用レベル相当)患者を対象としている。 結果として、「再発の有無を問わず」、SPMSにおける身体機能障害の進行リスク低下効果(3-month CDPおよび6-month CDPを指標)が示された。さらには、年間の再発、脳萎縮、およびT2強調像による高信号病変容積の増加を有意に抑制した。また、Fingolimodで問題となっている徐脈などの心臓への初回投与効果については、漸増投与法を導入することで緩和された。 これらの結果は、これまでにSPMSにおける身体機能障害進行抑止の明確なエビデンスを有する薬剤に乏しかった中で、Siponimodが非常に有望な治療薬となりうる可能性を示した。■参考文献1)Multiple Sclerosis International Federation. Atlas of MS 2013. 2017.2)Tremlett H, et al. Mult Scler. 2008;14:314-324.3)Kremenchutzky M, et al. Brain 2006;129:584-594.4)Kappos L, et al. Neurology. 2004;63:1779-1787.5)Brinkmann V, et al. Nat Rev Drug Discov. 2010;9:883-897.6)Chun J, et al. Clin Neuropharmacol. 2010;33:91-101.7)Gergely P, et al. Br J Pharmacol. 2012;167:1035-1047.

1962.

認知症発症に対するアルコール使用障害の影響に関するコホート研究

 認知症は、60歳以上の5~7%に影響を及ぼす一般的な症状であり、世界的に60歳以上の人々にとって主要な障害の原因となっている。フランス・国立保健医学研究所(INSERM)のMichael Schwarzinger氏らは、若年性認知症(65歳未満)に焦点を当て、アルコール使用障害と認知症リスクとの関連について検討を行った。The Lancet Public health誌2018年3月号の報告。 2008~13年のフランス都市部における20歳以上の成人入院患者を対象とした、退院コホート研究を分析した。主要曝露はアルコール使用障害、主要アウトカムは認知症とした。いずれもICD-10(国際疾病分類第10版)診断コードで定義した。若年性認知症は、2008~13年における一般的な症例より研究を行った。認知症発症に対するアルコール使用障害および他の危険因子との関連性は、2008~10年に認知症の記録がなく2011~13年に入院した患者において、多変量Coxモデルを用いて分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2008~13年に退院した3,162万4,156例のうち110万9,343例が認知症と診断され、分析に含まれた。・若年性認知症者5万7,353例(5.2%)のうち大部分は、アルコール関連疾患がある(2万2,338例、38.9%)、またはアルコール使用障害の診断が追加されたケース(1万115例、17.6%)であった。・アルコール使用障害は、認知症発症の最も強い修正可能なリスクファクターであり、調整ハザード比(aHR)は、女性で3.34(95%CI:3.28~3.41)、男性で3.36(95%CI:3.31~3.41)であった。・認知症症例の定義(アルツハイマー病を含む)または高齢の研究対象集団における感度分析で、アルコール使用障害は、男女ともに認知症発症と関連したままであった(aHR:1.7超)。・アルコール使用障害は、認知症発症の他のすべてのリスクファクターと有意な関連が認められた(すべてp<0.0001)。 著者らは「アルコール使用障害は、すべてのタイプの認知症、とくに若年性認知症発症の主要なリスクファクターであった。そのため、重度の飲酒をスクリーニングすることは、定期的な医療の一部であり、必要に応じて介入や治療を行うべきである。さらに、一般住民の重度の飲酒を減らすためにも、他のアルコール政策を考慮する必要がある」としている。■関連記事うつ病とアルコールとの関係:2014年英国調査よりお酒はうつ病リスク増加にも関連日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学

1963.

スペインにおける妊娠中の抗てんかん薬使用に関する比較研究

 妊娠中の抗てんかん薬処方パターンは、変化してきているが、スペインでどの程度の変化が起こっているかは、よくわかっていない。妊娠中の発作をコントロールするための新薬の有効性は重要であり、長年にもわたり医師がこれらの新薬を使ってきたことによって、その処方パターンは変化している可能性がある。スペイン・Hospital Mutua de TerrassaのM. Martinez Ferri氏らは、これらの疑問を評価するため、12年にわたって収集したスペインEURAPレジストリの結果を報告した。Neurologia誌2018年3月号の報告。 インフォームドコンセントに署名した後、患者はレジストリに登録され、妊娠初期、妊娠第2期、第3期の終わり、出産後、出産1年後に評価が行われた。抗てんかん薬、てんかんの種類、妊娠1期当たりおよび妊娠期間中全体での発作頻度、妊娠中の発作のない頻度、先天性奇形の頻度について分析を行った。2001年6月~2007年10月(前期)と2008年1月~2015年5月(後期)のデータの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・前期より304報、後期より127報の単剤療法の文献について比較を行った。・カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールの使用が減少し、レベチラセタムの使用が明らかに増加した。また、バルプロ酸の使用がわずかに減少し、ラモトリギンおよびoxcarbazepineの使用がわずかに増加した。・カルバマゼピンおよびバルプロ酸で治療したてんかんの種類に変化は認められなかったが、後期においてラモトリギンで治療した全般てんかん症例は少なかった。・この傾向は、発作頻度の有意な変化とは関連が認められず、妊娠第3期における新規発作に対するより良いコントロールと関連が認められた。・発作コントロールに関して、レベチラセタムは、カルバマゼピンやバルプロ酸と同等であり、ラモトリギンよりも有効であった。・全般てんかんは、レベチラセタムで治療された症例の64%を占めていた。 著者らは「スペインにおける妊娠中の抗てんかん薬処方パターンは変化しており、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールの使用が減少していた。全般てんかんに対するラモトリギン使用が少ないため、この変化はてんかんの種類の影響を受けている。レベチラセタムは、古典的な抗てんかん薬と同様の発作コントロールを示し、ラモトリギンよりも効果的かつ良好であった」としている。■関連記事妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全「妊娠、抗てんかん薬」検索結果は患者に役立つか?新規抗てんかん薬の催奇形性リスクは

1964.

授乳中の抗てんかん薬使用に関する母親への情報提供

 さまざまな抗てんかん薬の母乳中への移行、それによる乳児に対する影響についての情報は限られている。これらの問題が明らかとなっていないため、抗てんかん薬服用中の患者には母乳による育児を推奨することができない。スイス・ローザンヌ大学のM. Crettenand氏らは、授乳中の抗てんかん薬に関する利用可能なデータを包括的にレビューし、これらの情報を添付文書(SmPC)に記載されている内容と比較し、母乳育児中の女性にこれらの薬剤を使用するための推奨を提供するため、検討を行った。Der Nervenarzt誌オンライン版2018年2月27日号の報告。 23種類の抗てんかん薬の母乳育児データに関するシステマティックレビューを行った。授乳適合性スコアを作成し、検証を行った。システマティックレビューに基づく推定スコアは、添付文書に記載された推奨に基づく推定スコアとの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・授乳中における15種類の抗てんかん薬の投与および安全性に関するデータを含む75報を特定した。・レビューおよび添付文書に基づくスコア値の比較では、一致率が非常に低かった(重み付けκ係数:0.08)。・授乳中の抗てんかん薬として、適していると考えられる薬剤は以下5種類。 フェノバルビタール、プリミドン、カルバマゼピン、バルプロ酸、レベチラセタム・母乳育児中に、乳児の副作用を慎重に観察することができれば、推奨可能である薬剤は以下10種類。 フェニトイン、エトスクシミド、クロナゼパム、オクスカルバゼピン、ビガバトリン、トピラマート、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリギン、ゾニサミド・母乳育児によるリスクを適切に評価するためのデータが不十分なため、原則として推奨されないが、ケースバイケースで注意深く評価する必要がある薬剤は以下8種類。 mesuximide、クロバザム、ルフィナミド、felbamate、ラコサミド、スルチアム、ペランパネル、retigabine 著者らは「実際には、母乳育児を希望する抗てんかん薬治療を受けている母親ごとにリスクとベネフィットを分析し、患者と話し合う際には、個別のリスク要因を適切に考慮する必要がある」としている。■関連記事授乳中の気分安定薬は中止すべきか「妊娠、抗てんかん薬」検索結果は患者に役立つか?授乳中の抗精神病薬使用、適切な安全性評価が必要

1965.

日本人アルツハイマー病に対するメマンチンのメタ解析

 第一三共株式会社のKaoru Okuizumi氏らは、アルツハイマー病(AD)患者に対する臨床的に有用な薬物治療を明らかにするため、臨床的悪化を評価するレスポンダー解析を用いて評価を行った。Expert opinion on pharmacotherapy誌オンライン版2018年3月6日号の報告。 本研究は、2つの24週間多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照研究のメタ解析として実施した。対象は、中等度~重度の日本人AD患者633例(メマンチン[20mg/日]群318例、プラセボ群315例)。 主な結果は以下のとおり。・メマンチン群とプラセボ群を比較した臨床的悪化の減少に対する全体的なオッズ比(OR)は、それぞれの総合評価尺度において統計学的に有意であった。 ◆重度認知症患者向けの認知機能評価尺度日本語版(Severe Impairment Battery:SIB-J)OR:0.52、95%CI:0.37~0.73、p=0.0001 ◆アルツハイマー病行動病理学尺度(Behavioral Pathology in AD Rating Scale: BEHAVE-AD)  OR:0.53、95%CI:0.37~0.75、p=0.0003 ◆SIB-Jと臨床面接による認知症変化印象尺度日本語版(Clinician's Interview-Based Impression of Change:CIBIC-plus-J)  OR:0.53、95%CI:0.37~0.77、p=0.0009・メマンチン群は、プラセボ群と比較し、SIB-J、BEHAVE-AD、CIBIC-plus-Jを組み合わせた評価尺度において、3重の悪化リスクの有意な減少が認められた(OR:0.38、95%CI:0.22~0.65、p=0.0003)。 著者らは「メマンチンは、AD患者の認知障害だけでなく、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を含むより広範な症状に対する治療選択肢でもある」としている。■関連記事中等度~高度AD患者にメマンチンは本当に有効か?―メタ解析結果より―ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度認知症患者の興奮症状に対するメマンチンの効果を検討

1966.

脳卒中再発予防に望ましいLDL-C値は? J-STARS事後解析

 脳卒中の再発を予防するために望ましいLDLコレステロール値を調べるために、J-STARS研究(Japan Statin Treatment Against Recurrent Stroke、脳血管疾患の再発に対するスタチンの予防効果に関する研究、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験)の事後解析が実施された。その結果、スタチン使用について調整後、無作為化後のLDLコレステロールが80~100mg/dLの群で、脳卒中および一過性虚血発作の複合リスクが低いことが示された。Stroke誌オンライン版2018年3月6日号に掲載。 本解析では、被験者(n=1,578)を無作為化後最終観察までのLDLコレステロールの平均値で20mg/dLごとにグループ分けした。ベースライン時LDLコレステロール、ベースライン時BMI、高血圧、糖尿病、スタチン使用について調整し、調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を各グループについて分析した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化後最終観察までのLDLコレステロールは、プラバスタチン群で104.1±19.3 mg/dL、対照群で126.1±20.6mg/dLであった。・脳卒中および一過性脳虚血発作、全血管イベントの調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが80~100mg/dLのグループで低かった(傾向のpはそれぞれ0.23、0.25)。・アテローム血栓性梗塞に対する調整HRは、ベースライン時LDLコレステロール値を調整後、スタチン使用により有意に減少した(HR:0.39、95%CI:0.19~0.83)。・アテローム血栓性梗塞、頭蓋内出血の調整HRは、無作為化後LDL-コレステロール値によるサブグループ間で類似していた(傾向のpはそれぞれ0.50、0.37)。・ラクナ梗塞の調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが100~120mg/dLのグループで低かった(HR:0.45、95%CI:0.20~0.99、傾向のp=0.41)。

1967.

心房細動と認知症リスク~1万3千人を20年追跡

 これまでに心房細動(AF)と認知機能低下および認知症との関連が報告されている。しかし、これらの研究は追跡期間が限られ、ほとんどが白人や選択された集団に基づいており、また認知機能の減衰を考慮していなかった。今回、ミネソタ大学のLin Y. Chen氏らは、ARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)研究において、認知機能の20年間の変化(減衰を考慮)および認知症発症との関連を評価した。その結果、虚血性脳卒中と関係なく、AFが認知機能のより大きな低下や認知症リスクの増加と関連することが示された。Journal of the American Heart Association誌2018年3月7日号に掲載。 本研究(ARIC-NCS:ARIC Neurocognitive Study)は、1万2,515人の参加者(1990~92年における平均年齢:56.9歳[SD:5.7歳]、女性56%、黒人24%)の1990~92年から2011~13年までのデータを分析。AF発症は心電図検査と退院コードで確認した。認知テストは、1990~92年、1996~98年、2011~13年に実施し、認知症発症は臨床医の判断とした。AFと認知テストにおけるZ scoreの変化および認知症発症との時間依存性の関連について、一般化推定方程式(GEE)とCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・20年間に2,106人がAFを発症し、1,157人が認知症を発症した。・虚血性脳卒中などの心血管リスク因子を調整後、global cognitive Z scoreの20年にわたる低下の平均は、AFがない参加者よりAFのある参加者のほうが大きく、0.115 (95%CI:0.014~0.215)であった。MICE(連鎖方程式による多変量補定)により減弱を調整すると、関連はさらに強くなった。・さらに、虚血性脳卒中を含む心血管リスク因子について調整すると、AF発症は認知症リスクの増加と関連していた(ハザード比:1.23、95%CI:1.04~1.45)。 著者らは、「認知機能低下は認知症の前段階であるため、この結果から、AF患者の認知機能低下を遅らせ、認知症を予防するAFの治療法を調べるために、さらなる調査が推進される」としている。

1968.

ミトコンドリア病〔mitochondrial disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称である。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられる。■ 疫学ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されている1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されている。■ 病因ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つオルガネラであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っている。しかし、このmtDNAにコードされているのは13種類の呼吸鎖サブユニットのみであり、これ以外はすべて核DNA(nDNA)にコードされている。ミトコンドリアに局在する呼吸鎖複合体は、電子伝達系酵素IからIV(電子伝達系酵素)とATPase(複合体V)を指し、複合体IIを除き、mtDNAとnDNAの共同支配である。これらタンパク複合体サブユニットの構造遺伝子以外に、その発現調節に関わる多くの核の因子(アッセンブリー、発現、安定化、転送、ヘム形成、コエンザイムQ10生合成関連)が明らかになってきた。また、ミトコンドリアの形態形成機構が明らかになり、関連するヒトの病気が見つかってきた。ミトコンドリア呼吸鎖と酵素欠損に関連したミトコンドリア病の原因を、ミトコンドリアDNA遺伝子異常(図1)、核DNA遺伝子異常(図2)に分けて示す。図1 ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病で報告された遺伝子異常画像を拡大する図2 ミトコンドリア病で報告された核DNAの遺伝子異常画像を拡大する■ 症状本症では、あらゆる遺伝様式、症状、罹患臓器・組織、重症度の組み合わせも取り得る点を認識することが重要である(図3)。エネルギーをたくさん必要とする臓器の症状が出やすい。しかし、本症は多臓器症状が出ることもあれば、単独の臓器障害の場合もあり、しかも、その程度が軽症から重症まで症例ごとに症状が異なる点が、本症の診断を難しくしている。画像を拡大する■ 分類表にミトコンドリア病の分類を示す。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれている。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されている。表 ミトコンドリア病の分類I 臨床病型による分類1.MELAS:mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes2.CPEO/KSS:chronic progressive external ophthalmoplegia / Kearns Sayre syndrome3.Leigh脳症   MILS:maternally inherited Leigh syndrome   核遺伝子異常によるLeigh脳症4.MERRF:myoclonus epilepsy with ragged-red fibers5.NARP:Neurogenic atrophy with retinitis pigmentosa6.Leber遺伝性視神経萎縮症7.MNGIE:mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy syndrome8.Pearson骨髄膵症候群9.MLASA:mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia10.ミトコンドリアミオパチー11.先天性高乳酸血症12.母系遺伝を示す糖尿病13.Wolfram症候群(DiDmoad症候群)14.autosomal dominant optic atrophy15.Charcot-Marie-Tooth type 2A16.Barth症候群 II 生化学的分類1.基質の転送障害1)carnitine palmitoyltransferase I、II欠損症2)全身型カルニチン欠乏症3)organic cation transporter2欠損症4)carnitine acylcarnitine translocase欠損症5)DDP1欠損症2.基質の利用障害1)ピルビン酸代謝   Pyruvate carboxylase欠損症   PDHC欠損症2)脂肪酸β酸化障害3)TCAサイクル関連代謝   succinate dehydrogenase欠損症   fumarase欠損症   α−ketoglutarate dehydrogenase欠損症4)酸化的リン酸化共役の異常   Luft病5)電子伝達系酵素の異常   複合体I欠損症   複合体II欠損症   複合体III欠損症   複合体IV欠損症   複合体V欠損症   複数の複合体欠損症6)核酸代謝7)ATP転送8)フリーラジカルのスカベンジャー9)栄養不良による補酵素の欠乏10)薬物・毒物による中毒III 遺伝子異常による分類1.mtDNAの異常1)量的異常(mtDNA欠乏)   薬剤性(抗ウイルス剤による2次的減少)   γDNApolymerase阻害   核酸合成障害   遺伝性(以下の項目参照)2)質的異常   単一欠失/重複   多重欠失(以下の項目参照)   ミトコンドリアリボソームRNAの点変異   ミトコンドリア転移RNAの点変異   ミトコンドリアタンパクコード領域の点変異2.核DNAの異常1)酵素タンパクの構成遺伝子の変異   電子伝達系酵素サブユニットの核の遺伝子変異2)分子集合に影響を与える遺伝子の異常   (SCO1、SCO2、COX10、COX15、B17.2L、BSL1L、Surf1、LRPPRC、ATPAF2など)3)ミトコンドリアへの転送に関わる遺伝子の異常   (DDP1、OCTN2、CPT I、 CPT II、Acyl CoA synthetase)4)mtDNAの維持・複製に関わる遺伝子の異常   (TP、dGK、POLG、ANT1、C10ORF2、ECGF1、TK2、SUCLA2など)5)mitochondrial fusion に関わる遺伝子の異常   (OPA1、MFN2)6)ミトコンドリアタンパク合成   (EFG1)7)鉄恒常性   (FRDA、ABC7)8)分子シャペロン   (SPG7)9)ミトコンドリアの保全   (OPA1、MFN2、G4.5、RMRP)10)ミトコンドリアでの代謝酵素欠損   (PDHA1、ETHE1)■ 予後臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しない。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡している。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡している。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られている。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)従来、用いられてきた診断までの方法を図4に示す。臨床症状からどの病気にも当てはまらない場合は、必ずミトコンドリア病もその鑑別に挙げることが大切である。代謝性アシドーシスも本症でよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑う。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できる。頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となる。頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられる。MELASでは、異常画像は血管支配領域に合致せず、時間的・空間的に出現・消失を繰り返す。脳卒中様発作のオンセットの判断は、DWI・ADC・T2所見を比較することで推測できる。MRSでの乳酸の解析は、高乳酸髄液症の程度および病巣判断に有用である。また、脳血流を定量的に判定できるSPM-SPECT解析は、機能的脳画像として病巣診断、血管性認知症、脳血流の不均衡分布の判断に有用である。画像を拡大する■ 筋生検最も診断に有用な特殊検査は、筋生検である。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となる。■ 生化学的検査生検筋、生検肝、もしくは培養皮膚線維芽細胞からミトコンドリアを分離して、酸素消費速度や呼吸鎖活性、blue-native gelによる呼吸鎖酵素タンパクの質および量の推定を行い、生化学的に呼吸鎖異常を検証する。場合によっては、組織内のカルニチン、コエンザイムQ10、脂肪酸の組成分析の必要性も出てくる。大切なことは、ミトコンドリア機能のどの部分の、質的もしくは量的異常かを同定することである。この作業の精度により、その後の遺伝子解析手法への最短の道筋が立てられる。■ 遺伝子検査ミトコンドリア病の遺伝子検索は、mtDNAの検索に加えて新たに判明したnDNAの検索も行わなければいけない。疾患頻度の多いmtDNAの異常症の検出には、体細胞の分布から考え、非侵襲的検査法としては、尿細管剥奪上皮を用いた変異解析が最も有用である。尿での変異率は、骨格筋や心筋、神経組織との相関が非常に高い。一方、ほかの得られやすい臓器としては、血液(白血球)、毛根、爪、口腔内上皮細胞なども有用であるが、尿細管剥奪上皮と比較すると変異率として最大30~40%ほどの低下がみられる。mtDNAの異常症を疑った場合、生涯を通じて再生できない臓器もしくは罹患臓器由来の検体を、遺伝子検査の基本とすることが望ましい。■ 乳酸・ピルビン酸、バイオマーカー(GDF15)の測定従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきた。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多い。さらに、乳幼児期の採血では、採血時の駆血操作で2次的に高乳酸値を呈することもあり(採血条件に由来する高乳酸血症)、その場合は、高アラニン血症の有無で高乳酸血症の存在を鑑別しなければならない。そこで、最近見いだされ、その有用性が検証されたバイオマーカーが「GDF15」である。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられている3)。最新の診断アルゴリズムを図5に示す4)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用である。さらに、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高い。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しない。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されている。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備している。4 今後の展望創薬事業として、MELASに対するタウリン療法、Leigh脳症に対する5-ALAおよびEPI-743の臨床試験が終了しており、現在、MELAS/MELA Leigh脳症に対するピルビン酸療法が臨床試験中である。また、創薬シーズとして5-MAやTUDCAなどの候補薬も存在しており、今後有効性を検証するための臨床試験が組まれる予定である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾患情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:障害者手帳[肢体不自由、聴覚、視覚、心臓、腎臓、精神]、介護申請など)患者会情報日本ミトコンドリア学会ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:ドクター相談室、患者家族の交流の場・談話室など)ミトコンドリア病患者・家族の会(MCM家族の会)(ミトコンドリア病患者とその家族および支援者の会)1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.公開履歴初回2018年3月13日

1969.

歯の残存数と認知症リスクに関するメタ解析

 高齢期の歯の損失は、認知症の発症率を高める可能性があることが示唆されている。韓国・SMG-SNU Boramae Medical CenterのBumjo Oh氏らは、高齢期の歯の残存数と認知症発症との関連について、現在のエビデンスからシステマティックレビューを行った。BMC geriatrics誌2018年2月17日号の報告。 2017年3月25日までに公表された文献を、複数の科学的論文データベースより、関連パラメータを用いて検索を行った。高齢期における認知症発症と歯の残存数に関して報告された複数のコホート研究における観察期間の範囲は、2.4~32年であった。高齢期における歯の残存数の多さと認知症リスク低下が関連しているかについて、ランダム効果のプールされたオッズ比[OR]と95%信頼区間[CI]を推定した。異質性は、I2を用いて測定した。GRADEシステムを用いて、全体的なエビデンスの質を評価した。 主な結果は以下のとおり。・文献検索では、最初に419報の論文が抽出され、最終的には11件の研究(試験開始時年齢:52~75歳、2万8,894例)が分析に含まれた。・歯の残存数が多い群では、少ない群と比較し、認知症リスクの約50%低下と関連が認められた(OR:0.483、95%CI:0.315~0.740、p<0.001、I2:92.421%)。・しかし、全体的なエビデンスの質は非常に低いと評価された。 著者らは「限られた科学的エビデンスではあるものの、現在のメタ解析では、高齢期において歯の残存数が多いほど、認知症発症リスクが低いこととの関連が示唆された」としている。■関連記事「歯は大切に」認知症発症にも影響:久山町研究高齢者に不向きな抗うつ薬の使用とその後の認知症リスクとの関連統合失調症患者の口腔ケア、その重要性は:東医大

1970.

早期の認知症発見とコンピュータ使用との関連性の検証

 高齢者が多様なコンピュータを使用する動作から、認知機能に問題がないか、または認知機能低下の初期段階にあるか判断することはできるか、そしてこれらの動作が認知機能低下と関連しているかについて、英国・マンチェスター大学のG. Stringer氏らが調査を行った。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2018年2月9日号の報告。 認知機能低下の高齢者(認知機能低下群)20例および健常な高齢者(対照群)24例を対象に、認識および機能できる力、一連の半構造化コンピュータタスクの評価を行った。コンピュータの使用動作は、別注のソフトウェアで受動的に収集した。 主な結果は以下のとおり。・認知機能低下群のコンピュータ使用動作のプロファイルは、より頻繁な一時的停止、タイピングの遅さ、マウスクリックの多さについて、対照群と比較し、有意な違いが認められた。・これらの動作は、認識および機能できる力(とくに記憶関連)の評価で、有意な関連が認められた。 著者らは「コンピュータの使用動作を目立たないように調査することは、臨床現場以外での神経変性の早期発見の可能性を表している。それは、長期的なアウトカムを改善するためのタイムリーな治療介入を可能とする」としている。■関連記事脳トレーニングで認知症予防、認知機能低下リスクが20~30%減どのくらい前から認知症発症は予測可能か軽度認知障害、5年後の認知症発症率は

1971.

小児てんかんに対するレベチラセタムとフェノバルビタールの有効性比較

 新規にてんかんを発症した小児の半数以上は、既知の脳波・臨床症候群に適合しない非症候性てんかんの脳波および臨床的特徴を有する。レベチラセタムおよびフェノバルビタールは、小児のてんかんに対し最も一般的に処方される薬剤ではあるが、これらの有効性の比較についてはよくわかっていない。米国・ワイルコーネル大学のZachary M. Grinspan氏らは、小児の非症候性てんかんに対するレベチラセタムとフェノバルビタールの有効性の比較を行った。JAMA pediatrics誌オンライン版2018年2月12日号の報告。 本研究は、2012年3月~2015年4月に実施されたプロスペクティブ多施設共同観察コホート研究である小児てんかん研究(Early Life Epilepsy Study)である。対象は、米国メディカルセンター17施設において、生後1ヵ月から1歳までに初めて無熱性発作を経験した非症候性てんかんの小児。初回発作から1年以内に初回単剤療法としてレベチラセタムまたはフェノバルビタールを使用した。2値アウトカムは、6ヵ月における単剤療法からの離脱とした(他の抗てんかん薬が処方されず、治療開始から3ヵ月以内に発作が認められないと定義)。アウトカムは、人口統計、てんかんの特徴、神経系の病歴、傾向スコア加重を用いた観察可能な選択バイアス、一般化された推定式を用いた中心内相関(within-center correlation)にて調整された。 主な結果は以下のとおり。・対象患者155例(女児:81例、男児:74例)の年齢中央値は4.7ヵ月(四分位範囲:3.0~7.1ヵ月)であった。・レベチラセタム治療患者(レベチラセタム群)117例、フェノバルビタール治療患者(フェノバルビタール群)38例であった。・レベチラセタム群の初回発作時の年齢中央値は、5.2ヵ月(四分位範囲:3.5~8.2ヵ月)であり、フェノバルビタール群の3.0ヵ月(四分位範囲:2.0~4.4ヵ月)より高かった(p<0.001)。・その他においては、両群に有意な差が認められなかった。・単剤療法からの離脱は、フェノバルビタール群(6例、15.8%)と比較し、レベチラセタム群(47例、40.2%)の方が多かった(p=0.01)。・レベチラセタム群のフェノバルビタール群に対する優位性は、共変量、観察可能な選択バイアス、中心内相関で調整した後も持続していた(オッズ比:4.2[95%CI:1.1~16]、NNT:3.5[95%CI:1.7~60])。 著者らは「レベチラセタムは、小児の非症候性てんかんに対する最初の単剤療法として、フェノバルビタールと比較し、優れた有効性を示す。100人の小児にフェノバルビタール治療の代わりにレベチラセタム治療を実施した場合、単独療法からの離脱は、この研究の推定値16例から44例に増加すると考えられる。これらの知見を確認するためには、無作為化臨床試験が必要である」としている。■関連記事抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証小児外傷後てんかんの予防にレベチラセタムは有用難治性てんかんに対するレベチラセタムの評価:群馬大

1972.

アイザックス症候群〔Isaacs syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義アイザックス症候群は、1961年にIsaacsが、後天性に全身の筋硬直と筋電図で持続する運動単位電位の自発放電を特徴とする2例を報告したのが最初である1)。その病態機序は末梢神経の過剰興奮であり、その病態は自己抗体による自己免疫性疾患である。症状が筋疾患であるミオトニア症候群に似ているが、病変部位が末梢神経であるため、後天性ニューロミオトニア(acquired neuromyotonia)とも呼ばれている2)。■ 疫学詳細な疫学の報告はない。海外では発症年齢の多くが40歳半ば、男女比は2:1で男性に多く、診断までに3~4年を要している2)。わが国での1次調査では、全国に100例前後の患者がいると思われる。■ 病因病態である末梢神経の過剰興奮を引き起こす病因は、末梢神経の電位依存性Kチャネル(VGKC)および、VGKCに関連する蛋白に対する自己抗体であることが明らかになっている1,3)。VGKCは、末梢神経の脱分極後に再分極を起こし、膜の興奮性を安定させるイオンチャネルであり、その障害で興奮性が増加して症状を引き起こす。末梢神経には血液神経関門があり、通常血中の自己抗体は軸索のVGKCにはアクセスできないが、末梢神経の神経根および最末梢の神経終末では血液神経関門が脆弱であり、このような部位が標的となっていると考えられる4,5)。以上のように、概念的にはランバート・イートン症候群などのように免疫介在性チャネロパチーの1つといえる。■ 症状臨床的には全身の末梢運動神経の過剰興奮により、広汎に有痛性筋けいれん・筋硬直と筋のぴくつき(fasciculation)や筋の波打つような不随意運動(myokymia)などを主徴とし、全例で認められる。また、ニューロミオトニア(繰り返す把握運動後の弛緩障害[grip myotonia]はあるが、叩打ミオトニア[percussion myotonia]がない)は、本症に比較的特異な症状で約1/3に認められる2,4)。筋けいれん、筋硬直は睡眠時も起こり、運動負荷、寒冷、虚血で増強する。持続性の筋けいれんは筋肥大を来すことがある。そのほか、発汗過多、下痢、皮膚色調の変化、原因不明の高体温などの自律神経症状を30~50%の症例で伴う4)。約半数の症例で異常感覚や複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome)に類似の疼痛などの感覚障害を伴うことがまれではなく、当初は筋けいれんに伴うものと考えられていたが、筋けいれんの発症前に感覚異常で発症する症例の報告もあり、現在は感覚異常とくに疼痛も重要な症状の1つと考えられている6)。そのほか、Hartら2)によると約1/4の症例で何らかの中枢神経症状を有している。末梢運動神経の症状である筋けいれん・筋硬直やニューロミオトニアと記銘力障害、不眠、睡眠障害、幻覚などの大脳辺縁系症状や多彩な自律神経症状を伴うMorvan症候群が知られていたが、この疾患でアイザックス症候群と共通の抗VGKC抗体がその原因であることが明らかになっている3)。■ 分類臨床的にニューロミオトニアを呈する疾患には、先天性と後天性があり、さらに後天性の原因にもさまざまなものがある7)。この中で自己抗体が関与する後天性かつ免疫介在性のニューロミオトニアには、全身性にみられるアイザックス症候群のほかに、主に下肢に限局するcramp-fasciculation syndrome、中枢神経症状を伴うMorvan症候群などがある。■ 予後自然寛解はまれであり、多くは症状が緩徐に進行し、全身の筋硬直、歩行困難などでADLが障害される。注意すべきは、本症は傍腫瘍性症候群の一面も持っており、胸腺腫や肺がんの合併が報告されている8)。しかし、これらの腫瘍の外科的切除による症状の改善は一定ではない。通常は後療法として、免疫療法や対症療法が必要な場合がある。一方、このような悪性腫瘍の合併が明らかではない場合も、4年後にがん病変が発見された症例の報告もあり、十分な経過観察が必要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は上記の特徴的な症状と、以下の検査所見でなされる。末梢神経の過剰興奮性の有無を診断するには、神経生理学的検査が必要である。針筋電図でmyokymic dischargesが特徴的であり、安静時や弱収縮時に同じ運動単位電位の反復発火(doublet、multiplet)としてみられる。発火頻度が高くなるとneuromyotonic dischargesがみられることもある1,4,7)。体幹などの深部筋では筋電図によるこれらの異常放電を捉えることは困難であるが、そのような場合には超音波検査で筋の不随意運動を観察して診断する。特異度の高い検査は血清中の抗VGKC関連抗体であり、臨床症状と本抗体が陽性であれば診断はほぼ確定する。当初VGKC自体に対する抗体そのものがアイザックス症候群の病因と考えられていたが、その陽性率は50%以下であった。その後の研究でVGKCはいくつかの分子と複合体を形成し、抗体が認識しているのはVGKC以外の分子が主であることが明らかとなった2)。これらの分子の中で最も頻度の高いものは、contactin-associated protein2(Caspr2)とleucine-rich glioma-inactivated protein1(Lgi1)である2,9)。Lgi1の発現は末梢では少ないので、アイザックス症候群ではCaspr2に対する抗体が主となる。しかし、これらの自己抗体の陽性率も必ずしも高くない。なお、抗VGKC抗体は低力価の場合は臨床症状との関連でその意味を考える必要がある。また、抗VGKC抗体は鹿児島大学神経病講座で測定しているが、Caspr2に対する抗体は、わが国ではルーチンに測定しているところはなく、診断には臨床症状と筋電図を用いることが多い。そのほかに自己免疫疾患としての側面から、重症筋無力症、胸腺腫、橋本病などさまざまな自己免疫疾患を合併する。とくに重症筋無力症との合併が多い。抗VGKC抗体以外の自己抗体として抗アセチルコリン受容体抗体(抗AChR抗体)、抗核抗体、抗GAD抗体の陽性率が高い。また、自己免疫疾患であるからには免疫療法で症状の改善をみることも重要であり、これらの点を考慮して次表のような診断基準が出されている。表 アイザックス症候群の診断基準A.主要症状・所見1.ニューロミオトニア(末梢神経由来のミオトニア現象で、臨床的には把握ミオトニアはあるが、叩打ミオトニアを認めないもの)、睡眠時も持続する四肢・躯幹の持続性筋けいれんまたは筋硬直(必須)2.myokymic discharges、neuromyotonic dischargesなど筋電図で末梢神経の過剰興奮を示す所見3.抗VGKC複合体抗体が陽性(72pM以上)4.ステロイド療法やそのほかの免疫療法、血漿交換などで症状の軽減が認められるB.支持症状・所見1.発汗過多2.四肢の痛み・異常感覚3.胸腺腫の存在4.皮膚色調の変化5.そのほかの自己抗体の存在(抗アセチルコリン受容体抗体、抗核抗体、抗甲状腺抗体)C.鑑別診断以下の疾患を鑑別するスティッフパーソン症候群や筋原性のミオトニア症候群、糖原病V型(McArdle病)などを筋電図で除外する<診断のカテゴリー>Definite:Aのうちすべてを満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したものProbable:Aのうち1に加えて、そのほか2項目以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したものPossible:Aのうち1を満たし、Bのうち1項目以上<診断のポイント>自己免疫的機序で、末梢神経の過剰興奮による運動単位電位(MUP)の自動反復発火が起こり、持続性筋収縮に起因する筋けいれんや筋硬直が起こる。末梢神経起源なので叩打ミオトニアは生じないが、把握ミオトニア様にみえる手指の開排制限は起こりうる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)アイザックス症候群の治療の主体は、日常生活にさほど影響がないほどの軽症であれば、末梢神経の過剰興奮性を抑制する薬剤(カルバマゼピン[商品名:テグレトール]、フェニトイン[同:アレビアチン、ヒダントール]、ラモトリギン[同:ラミクタール]、バルプロ酸ナトリウム[同:デパケン]、ガバペンチン[同:ガバペン]など)による対症療法が原則である。この中でAhmedら7)はカルバマゼピンを第1選択としている。症状が強くなるに従い、1種類の薬剤でのコントロールが困難なことが多く、血中濃度や副作用に注意しつつ、数種類の抗てんかん薬を用いることが多い。さらに症状が重篤であり、これらの対症療法が無効な症例、激しい有痛性筋けいれんなどにより日常生活に重大な支障が起こる症例では、血漿浄化療法、免疫グロブリン療法、プレドニゾロン(同:プレドニゾロン、プレドニン)などの免疫療法が試みられる。とくに抗体強陽性例では、免疫吸着療法を含む血漿浄化療法が有効であるとの報告が多く、治療で臨床症状の改善とともに筋電図上の異常放電の減少や抗VGKC抗体の抗体価の低下がみられる7)。経験的には血漿浄化療法の効果は重症筋無力症ほど急速にはみられず、1~2週間程経って徐々に効果がみられることが多く、十分な経過観察が必要である。免疫グロブリン大量療法には有効・無効の両者の報告がある。また、プレドニゾロン単独での効果は明らかではないが、メチルプレドニゾロン(同:メドロール)によるパルス療法が有効な場合もある。しかし、いずれの免疫療法を行った場合も、抗てんかん薬などの併用が必要である。4 今後の展望まずは、簡便で高感度な抗VGKC抗体およびその関連分子(Caspr2)に対する抗体の測定法の確立である。また、VGKC、Caspr2以外のVGKC関連蛋白などの抗原検索も必要である。治療としては、より簡便で副作用の少ない免疫療法の開発が必要であるが、症例数が少ないために有効な治療法の評価ができにくいことが問題である。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が2015年1月1日に施行された。これにより指定難病が一気に拡大され、アイザックス症候群も同年7月に指定された。現在では、重症例は医療費補助の対象となっている。診療、研究に関する情報難病情報センター アイザックス症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)鹿児島大学神経病講座 抗VGKC複合体抗体の測定(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報りんごの会(アイザックス症候群患者とその家族の会)1)Arimura K, et al. Muscle Nerve.2002;11:S55-58.2)Hart IK, et al. Brain.2002;125:1887-1895.3)Irani SR, et al. Brain.2010;133:2734-2748.4)Arimura K, et al. Brain Nerve.2010;62:401-410.5)Arimura K, et al. Clin Neurophysiol.2005;116:1835-1839.6)Klein CJ, et al. JAMA Neurol.2013;70:229-234.7)Ahmed A, et al. Muscle Nerve.2015;52:5-12.8)Tan KM, et al. Neurology.2008;70:1883-1890.9)Watanabe O. Brain Nerve.2013;65:401-411.公開履歴初回2018年02月27日

1973.

てんかん患者の傷害・事故リスクに関するコホート研究

 てんかんの診断を新規に受けた患者における、合併症関連の傷害・事故リスクについて、スウェーデン・カロリンスカ研究所のBenno Mahler氏らが検討を行った。Neurology誌オンライン版2018年1月31日号の報告。 対象はストックホルム北部のてんかん患者で、2001年9月~2008年8月に非誘発性発作を起こした2,130例。すべてのてんかん患者につき、集水域の人口から性別および包含年に一致した8個体をランダムに抽出し、対照群(16,992例)とした。傷害・事故の発生は、スウェーデン患者レジストリおよび死亡原因レジストリの2013年12月までのデータより収集した。また、これらのレジストリから、併存疾患(脳腫瘍、脳卒中、精神医学的疾患、糖尿病など)に関する情報も収集した。 主な結果は以下のとおり。・傷害・事故は、てんかん患者1,033例、対照群6,202例において認められた(HR:1.71、95%CI:1.60~1.83)。・てんかんの診断から最初の2年間におけるリスクが高かった。・性別および教育状況は、ハザード比に有意な影響を及ぼさなかった。・そのリスクは、小児では正常であったが、成人では増加した。・溺水、中毒、服薬による有害事象、重篤な外傷性脳損傷で、ハザード比が最も高かった。・併存疾患のない対照群と比較したハザード比は、併存疾患のないてんかん患者1.17(95%CI:1.07~1.28)、併存疾患のある対照群4.52(95%CI:4.18~4.88)、併存疾患のあるてんかん患者7.15(95%CI:6.49~7.87)であった。 著者らは「新規てんかん患者において、傷害・事故リスクに関するカウンセリングを行う際には、併存疾患の有無を考慮する必要がある。てんかん診断から最初の2年間のリスクが最も高いため、早期の情報提供が重要である」としている。■関連記事てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきかADHDの小児および青年における意図しない怪我のリスクとADHD薬の影響

1974.

MG治療の新たなる幕開け

 2018年2月16日、都内にて「全身型重症筋無力症の治療課題と今後の展望」と題するセミナーが開かれた(主催:アレクシオンファーマ合同会社)。 セミナーでは、指定難病である重症筋無力症(MG:Myasthenia Gravis)の治療課題と、昨年12月に全身型重症筋無力症の適応が追加された新薬エクリズマブ(商品名:ソリリス)の可能性について、医師と患者それぞれの立場から語られた。演者の1人である村井 弘之氏(国際医療福祉大学 医学部 神経内科学 主任教授)は、「従来薬とは異なる作用機序を持つソリリスは、難治性MGの強力な次の一手になりうる」と、新薬への期待を述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。プライマリケア医も診察する可能性のある難病 MGは指定難病で、本邦における患者数は約22,000人と推定される。眼瞼下垂、複視、筋力低下が主な症状で、易疲労性、日内変動を特徴とする。具体的には、夕方になると瞼が下がる(眼瞼下垂)、水を飲むとむせやすい(嚥下障害)、布団を持ち上げられない(筋力低下)、といった形で症状が現れる。しかし、これらの症状には波があり、疲れによる一過性のものと思われることも多い。それ故、患者が最初に来院するのも眼科や耳鼻咽喉科、内科などであり、MGを専門的に診療している神経内科に至るまでに複数の診療科を巡ることも多い。 このようにMGは、プライマリケア医も診察する可能性のある難病といえる。MGは寛解が得られにくい疾患 現在、このMGの治療では、高用量経口ステロイド剤の普及により死亡率は著しく減少している。しかし、寛解レベルに至る患者の割合は低く、MGは寛解が得られにくい疾患とされている。 「全国筋無力症友の会」の事務局長である北村 正樹氏は、会員へのアンケート調査で、障害者手帳の取得状況が2006年と比較して2016年では減少している一方、重度等級(1・2級)の割合は増加していることを紹介。こうした症状管理が困難な難治性MG患者は、全身型MG患者の10~15%、約900人前後に存在し、新たな治療が望まれていた。難治性MG治療における新たな一手 こうした中、新たな治療薬として登場したのが、ソリリスだ。ソリリスは昨年12月、全身型重症筋無力症の適応が新たに追加された。ソリリスは補体活性化を抑制する薬剤だ。MGの機序として、神経筋接合部の補体活性化による運動終板の破壊が示唆されているが、ソリリスは、ヒト補体タンパクC5に結合し、補体の活性化を抑制することで、運動終板の破壊に歯止めをかける。実際、第III相臨床試験「REGAIN試験」において、ソリリスによるMG-ADL総スコアの早期かつ持続的な改善が示されている。髄膜炎菌感染症のリスクもあるため適正使用が求められるが、ソリリスの登場で難治性MG患者のQOL向上が期待される。MG患者の抱える悩み MG患者はその症状に波があることから、周囲の理解や就労の困難といった社会的不利益を被っており、4分の1が失職を経験しているといったデータもあるという。 MGの患者で、『I’m“MG”~重症筋無力症とほほ日記~』(三輪書店. 2007)の著者でもある渡部 寿賀子氏は、MGのつらさは、その症状に加え「見た目でのわかりにくさ」にあると述べた。一見健康な人と変わらなくても、職場では頻繁な休憩が必要で役割を果たせず離職に追い込まれ、「社会の中で自分の居場所がない」と感じた経験を紹介した。女性の場合は、発症時期が20~40代と若いため、高用量経口ステロイド剤による妊娠・出産への影響や合併症の不安も付きまとう。長期・慢性疾患の患者にとって、「病と共に過ごす人生」は退院後のほうが長い。同氏は、「新薬承認のニュースは心に明かりがともるようなニュースだ」と述べた。 本講演は、「難病が難病でなくなる日が来ることを期待したい」という渡部氏の言葉で締めくくられた。

1975.

チカグレロル、心筋梗塞発症から1年以上の多枝病変のイベントを減少

 アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ)は2018年2月7日、第III相PEGASUS-TIMI54試験の新たなサブ解析結果を発表した。心筋梗塞の既往があり、さらに2本以上の多枝病変(以下、MVD)を有する患者において、チカグレロル(商品名:ブリリンタ)60mgと低用量アスピリンの併用療法により、MACE(心血管死、心筋梗塞あるいは脳梗塞からなる複合リスク)リスクが19%(HR:0.81、95%CI:0.7~0.95)、冠動脈疾患死のリスクが36%(HR:0.64、95%CI:0.45~0.89)低減した。 この既定のサブ解析はJournal of the American College of Cardiologyに掲載された。MVDは、初回の心筋梗塞発症時に2本以上の冠動脈に50%を超える異常狭窄が存在する病態と定義された。本試験に参加した患者2万1,162例の59.4%(1万2,558例)がMVDを呈していたことから、本結果は、イベント発症から12ヵ月後以降も、抗血小板治療を続けることで、心筋梗塞の既往歴がある高リスク患者集団にベネフィットをもたらす可能性が示すものとしている。 重大な出血事象については、アスピリン単剤治療と比較して、チカグレロル・アスピリン併用療法で多かったが、これはPEGASUS-TIMI 54試験で確認された結果全体と一貫していた。また、頭蓋内出血あるいは致死的出血リスクの増大はなかった。

1976.

てんかん診断後の自動車運転再開に関する研究

 てんかん診断1年以内に自動車の運転を再開する頻度とその予測因子について、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のYing Xu氏らが検討を行った。Epilepsia誌オンライン版2018年1月16日号の報告。 本研究は、オーストラリア・シドニーにおけるすべての新規てんかん発症患者を対象とした、プロスペクティブ多施設共同コミュニティワイド研究SEISMIC(the Sydney Epilepsy Incidence Study to Measure Illness Consequences)として実施された。てんかんと診断されベースラインに登録された後、できるだけ早い段階で、人口学的特性、社会経済的状況、臨床的特徴、運転状態を収集した。12ヵ月のフォローアップ時における運転再開の予測因子は、多変量ロジスティック回帰を用いて検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・てんかん診断前に運転実績を報告していた成人(18歳以上)対象者は、181例(76%)であった。そのうち12ヵ月の運転状態に関する情報を提供した152例中、118例(78%)が運転を再開していた。・運転再開(C統計値:0.79)と関連が認められたのは、職場または教育の場で運転するため(OR:4.70、95%CI:1.87~11.86)、再発発作なし(OR:5.15、95%CI:2.07~12.82)、抗てんかん薬単独または抗てんかん薬治療なし(OR:4.54、95%CI:1.45~14.22)であった。・再発発作患者の半数以上が、フォローアップ期間中に運転を再開していた。 著者らは「てんかん診断後の自動車運転の早期再開は、仕事や社会的な要求および発作のコントロール状況と関連が認められたが、再発発作を有する多くの患者が運転を続けていた。てんかん患者に対し運転制限対策を実施し、別の交通手段を提供するための、さらなる努力が求められる」としている。■関連記事てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか認知症ドライバーの運転停止を促すためには車両運転事故、とくに注意すべき薬剤は

1977.

抗CCR4抗体モガムリズマブ、HTLV-1関連脊髄症に光/NEJM

 ヒト化抗CCR4モノクローナル抗体モガムリズマブは、ステロイド維持療法の効果不十分なヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連脊髄症(HAM)(正式な疾患名の表記は、HAM/TSP[HTLV-1-associated myelopathy/Tropical spastic paraparesis、HTLV-1関連脊髄症/熱帯性痙性対麻痺])患者において、末梢血中のHTLV-1感染細胞数と髄液炎症マーカーを減少させることが認められた。主な副作用は皮疹で、忍容性も良好であった。聖マリアンナ医科大学の佐藤 知雄氏らが、身体機能を著しく損なう神経炎症性疾患であるHAMに対する、モガムリズマブの安全性および有効性を検討した医師主導の第I/IIa相試験の結果を報告した。NEJM誌2018年2月8日号掲載の報告。医師主導第I/IIa相試験でモガムリズマブの安全性と有効性を評価 HTLV-1は、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)やHAMの原因となるウイルスで、HAM患者では、主にCCR4陽性のHTLV-1感染T細胞が異常細胞に変化し、脊髄内で慢性的な炎症を引き起こす。これまで、HAM患者から得た末梢血単核細胞を用いた前臨床試験で、モガムリズマブがHTLV-1感染細胞数と炎症性サイトカインの両方を減少することが示されていた。 研究グループは、2013年11月~2015年1月に、HAMに対するモガムリズマブの安全性、薬物動態および有効性を評価する目的で、第I/IIa相試験を実施した。 対象は、3ヵ月以上の経口プレドニゾロン投与が無効のHAM患者であった。第I相用量漸増試験(3+3デザイン)において、モガムリズマブの5用量(0.003mg/kg、0.01mg/kg、0.03mg/kg、0.1mg/kgまたは0.3mg/kg)を各3例に段階的に単回投与(点滴静注)し、85日間観察した。計21例が投与を受けた。第IIa相試験には、第I相試験を完遂した19例を組み込み、第I相試験と同じ用量を投与した。0.003mg/kg、0.01mg/kgまたは0.03mg/kg投与群には8週ごと、0.1mg/kgまたは0.3mg/kg投与群には12週ごとに投与し、24週間観察した。忍容性は良好、血中HTLV-1感染細胞数と髄液中炎症マーカーが減少 モガムリズマブは、最大投与量0.3mg/kgまでの忍容性が確認された。最も頻度が高かった副作用は、Grade1/2の皮疹(発現率48%)、リンパ球減少および白血球減少(いずれも33%)であった。 末梢血単核細胞中のHTLV-1感染細胞数の減少(15日目に64.9%減少、95%信頼区間[CI]:51.7~78.1)、ならびに脳脊髄液中の炎症マーカーの減少(29日目にCXCL10濃度が37.3%減少[95%CI:24.8~49.8]、ネオプテリン濃度が21.0%減少[95%CI:10.7~31.4])が認められた。その効果は用量依存的で、第IIa相試験においても反復投与により試験終了まで維持された。また、下肢の痙性は79%の患者で改善し、運動障害の改善も32%で確認されている。

1978.

PPIと認知機能低下は関連するのか~デンマークの大規模研究

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用と認知症の関連における研究は、相反する結果が報告されている。今回、南デンマーク大学のMette Wod氏らが、デンマークにおける2つの大規模な集団ベースの双生児研究で検討したところ、PPI使用と認知機能低下には関連が認められなかった。Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2018年1月29日号に掲載。 本研究は前向き研究で、46~67歳の中年の研究(Middle Aged Danish Twin study、2,346例、認知機能評価を10年実施)および高齢者の研究(Longitudinal Study of Aging Danish Twins、2,475例、認知機能評価を2年実施)からデータを収集した。著者らは、全国処方登録のデータを使用し、調査登録前の2年間および追跡期間中のPPIの累積使用量を、規定された1日投与量(defined daily dose:DDD)で定量した。多変量線形回帰モデルを用いて、PPI累積使用量、ベースライン時の認知機能総合スコア、追跡期間中のスコア低下の関連について調べた。 主な結果は以下のとおり。・中年での研究では、調査登録前にPPIを使用している群でベースライン時の平均認知機能スコアがやや低かった。・中年での研究では、PPI高使用者(400DDD以上)における調整スコアは、非使用者より低かった(PPI高使用者の平均粗スコア:43.4±13.1、非使用者の平均粗スコア:46.8±10.2、調整差:0.69ポイント、95%CI:-4.98~3.61)。・高齢者の双生児の縦断研究では、PPI高使用者は、非使用者よりも調整スコアが高かった(PPI高使用者の平均粗スコア:35.2±10.8、非使用者の平均粗スコア:36.2±11.1、調整差:0.95ポイント、95%CI:-1.88~3.79)。・認知機能低下については、高齢者の縦断研究では、ベースライン時と追跡期間のスコアの調整平均差は、PPI高使用者のほうが非使用者より低かった(PPI高使用者の平均粗スコア:ベースライン時36.6±10.1/追跡期間34.3±12.3、非使用者の平均粗スコア:ベースライン時38.1±10.5/追跡期間37.6±11.3、調整差:1.22ポイント、95%CI:-3.73~1.29)。・中年での研究では、PPI使用の最も多い群(1,600DDD以上)は、非使用者よりも認知機能低下が若干少なかった(PPI高使用者の平均粗スコア:ベースライン時43.4±10.1/追跡期間時41.3±9.7、非使用者の平均粗スコア:ベースライン時49.1±10.2/追跡期間時46.3±9.9、調整差:0.94ポイント、95%CI:-1.63~3.50)。・PPI使用者と非使用者のスコアの差は有意ではなかった。

1979.

てんかんと献血に関する世界の方針

 てんかんは、発作を特徴とする神経障害である。てんかん患者は多くの場合、献血対象者から一時的または永久に除外される。ベルギー赤十字のA. Kellens氏らは、現在適用されている献血方針をより把握するために、世界の血液事業について調査を行った。Vox sanguinis誌オンライン版2018年1月4日号の報告。 世界各国の血液事業担当者46名を対象に、オンラインQuestbackツールを使用したWebベースのアンケートを行った。アンケートは、9つの質問で構成されていた。 主な結果は以下のとおり。・5大陸26ヵ国から27名の担当者が、この調査に参加した。・現在の献血方針は、「一時的な除外を永久に受け入れる」から「永久に除外」の範囲であった。・これらの異なる方針の合理性は、多様であった。・血液事業の大多数(59.3%)は、その方針として一時的な除外を適用しており、献血を行う際には、てんかん患者が投薬を受けていないまたは発作を起こしていないようにする必要があるが、その期間に関しては言及されていない。・献血中のてんかん患者の有害事象に関するデータは、収集できなかった。 著者らは「この調査結果より、世界中で適用されている献血方針には、大きな差異があることを示している。その理由の1つとして、科学的根拠の不足が考えられる。そのため、てんかん患者の献血に関するドナーとレシピエントの潜在的なリスクについて、さらに研究することが最も重要である。これが、エビデンスベースの方針決定の基礎となり、より安全で効果的な輸血プログラムにつながる」としている。■関連記事てんかん重積状態に対するアプローチはてんかん再発リスクと初回発作後消失期間医学の進歩はてんかん発症を予防できるようになったのか

1980.

片頭痛は脳出血や心房細動とも関連/BMJ

 片頭痛は、虚血性脳卒中や心筋梗塞との関連が知られている。デンマーク・オーフス大学病院のKasper Adelborg氏らは、一般集団ベースのコホート研究を行い、片頭痛は出血性脳卒中や静脈血栓塞栓症、心房細動/粗動とも関連することを示した。BMJ誌2018年1月31日号掲載の報告。片頭痛患者と一般集団で心血管疾患リスクを比較 研究グループは、片頭痛患者と一般集団において、7つの心血管疾患のリスクを比較する全国的な一般集団ベースのコホート研究を実施した(オーフス大学などの助成による)。 1995~2013年に、デンマーク全国患者登録(DNPR)に記録された片頭痛患者5万1,032例と、年齢、性別、暦年をマッチさせた一般集団51万320例が解析の対象となった。主要評価項目は、Cox回帰分析に基づく、併存疾患としての心血管アウトカムの補正後ハザード比(HR)とした。 片頭痛群の診断時の年齢中央値は35歳(IQR:22~47)であり、全体の71%が女性であった。片頭痛群は、わずかに心血管疾患リスク因子や併存疾患が多かった。 解析の結果、ほとんどのアウトカムの絶対リスクは、フォローアップ期間を通じて、片頭痛群が一般集団に比べて高かった。脳卒中は片頭痛診断後早期のリスクが高い フォローアップ期間19年時における心筋梗塞の累積発生件数(1,000人当たり)は、片頭痛群が25件、一般集団は17件であり、虚血性脳卒中はそれぞれ45件、25件、出血性脳卒中は11件、6件、末梢動脈疾患は13件、11件、静脈血栓塞栓症は27件、18件、心房細動/粗動は47件、34件、心不全は19件、18件であった。 これらの発生率に対応して、片頭痛群は一般集団に比べ、心筋梗塞(補正後HR:1.49、95%信頼区間[CI]:1.36~1.64)、虚血性脳卒中(2.26、2.11~2.41)のリスクが有意に高く、さらに出血性脳卒中(1.94、1.68~2.23)、静脈血栓塞栓症(1.59、1.45~1.74)、心房細動/粗動(1.25、1.16~1.36)とも有意な関連を示した。一方、末梢動脈疾患(補正後HR:1.12、95%CI:0.96~1.30)と心不全(1.04、0.93~1.16)には、片頭痛との意味のある関連を認めなかった。 心不全を除く6つの心血管疾患は、いずれも片頭痛診断後1年以内の補正後HRが高い傾向がみられ、とくに脳卒中は、診断後1年以内の補正後HRが、全フォローアップ期間(0~19年)に比べて高く(虚血性脳卒中の補正後HR:8.37 vs.2.26、出血性脳卒中の補正後HR:7.89 vs.1.94)、診断後早期の発症に注意を要することが示唆された。 静脈血栓塞栓症と心不全を除く5つの心血管疾患については、前兆のある片頭痛群は前兆のない群に比べ補正後HRが高かった。また、前兆のある片頭痛群は、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、静脈血栓塞栓症の長期リスクとの関連が認められた。 片頭痛と心血管疾患の関連は、女性が男性よりもやや強かったが、男女とも長期に持続しており、全般に加齢に伴って減弱した。また、予想どおり、若年層ではすべての心血管疾患の絶対リスクが低かった。さらに、喫煙とBMIを加えて補正しても、片頭痛と心血管疾患の関連は保持されていた。 著者は、「これらの知見は、男女ともに、片頭痛はほとんどの心血管疾患の強力かつ持続的なリスク因子であることを示唆する」と結論している。

検索結果 合計:2862件 表示位置:1961 - 1980