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痙攣性発声障害〔SD:Spasmodic dysphonia〕

1 疾患概要■ 概念・定義痙攣性発声障害は、発声器官に器質的異常や運動麻痺を認めない機能性発声障害の1つで、発声時に喉頭筋の不随意的、断続的な収縮により音声障害を来す疾患である。1871年にTraubeが“spastic dysphonia”として初めて報告した。1968年にAronsonらが内転型と外転型の2つの病型に分類して“spasmodic dysphonia”という名称を提唱し、それ以降その名称が用いられている。発声時の声帯筋の筋緊張に関わるフィードバック機構の異常による喉頭の局所性ジストニア(focal dystonia)と考えられている。■ 病因痙攣性発声障害では約12%の患者でジストニアの家族歴がみられ、少なくとも一部の例では遺伝的要因が関与すると考えられている1)。ジストニア関連遺伝子のうちGNAL遺伝子変異の関与が指摘され、GNAL遺伝子変異を認めた例ではfunctional MRIにより前頭頭頂葉皮質の活動が亢進し、小脳の活動が低下していることが示されている。本症の病因は十分には解明されていないが、大脳白質における神経細胞の解剖学的異常、発声に関わる感覚-運動ネットワーク障害、中枢の神経伝達物質であるドーパミンやGABAの代謝異常などの関与が推測されている1)。■ 病型および症状本症は大きく内転型と外転型に分けられる。内転型では発声時に声帯が内転して声門が過閉鎖されることで発声中の呼気流が遮断され、発声時に断続的な声の途切れ、声の詰まり、努力性発声などを呈する。一方、外転型は発声時に声帯が外転して声門が開大することで、断続的な気息性嗄声、声の抜けなどの症状を呈する。いずれの病型においても、スムーズな会話が障害され日常生活上、大きな支障が生じる。■ 疫学筆者らが2013年に行った全国疫学調査などによると、病型別では内転型が90~95%と大部分を占め、男女比は約1:4で女性に多く、年齢は20および30歳代が約60%を占める2)。また、有病率は3.5~7.0人/10万人で、いわゆる希少疾病である。海外と比較するとわが国では女性の比率が高く、発症年齢は低い傾向にある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)数年前まで、国内外を通じて本症の明確な診断基準はなかったが、厚生労働省研究班により2017年に診断基準と重症度分類が作成された。診断基準は必須条件、主要症状、参考となる所見、発声時の所見、治療反応性からなる(表1)3)。主な鑑別疾患は、音声振戦症、過緊張性発声、心因性発声障害、吃音がある。表1 痙攣性発声障害の診断基準(概要)画像を拡大する重症度分類はまず主観的重症度と客観的重症度に分けて評価する(表2)。主観的重症度は、音声障害の自覚度評価法であるVoice Handicap Indexと社会的・心理的支障度(声の障害により社会生活にどの程度の支障があるか)をそれぞれ点数化する。客観的重症度は規定文朗読や自由会話を検者が聞きとって、声の異常度を点数評価する。そして、両者の点数の組み合わせから、疾患の総合的重症度を決定する(表3)3)。表2 主観的および客観的重症度基準画像を拡大する表3 痙攣性発声障害の総合的重症度分類3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 保存的治療1)音声治療内転型痙攣性発声障害は発声時に声門が過閉鎖することによる音声障害であることから、発声時の喉頭筋の緊張を軽減させることで、症状を軽減できる場合がある。具体的な手技として、発声と呼吸のパターンを整えて楽な発声を誘導する腹式発声、喉頭筋の過緊張を軽減するための喉頭リラクゼーション法、高音での発声などがある。ただし、いずれも根本治療ではなく音声治療のみでの効果は限定的である。2)ボツリヌストキシン治療ボツリヌストキシンを喉頭筋に注入することで、筋の異常収縮を抑えて音声症状を改善させる治療法である。侵襲性が少なく奏効率が高いことから、米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の「嗄声の診療ガイドライン」、わが国における「ジストニア診療ガイドライン」や「音声障害診療ガイドライン」において、本症に対する標準治療と位置付けられている。通常、内転型では輪状甲状間膜経由で甲状披裂筋に、外転型では輪状軟骨外側からのルートで後輪状披裂筋に、筋電図モニター下に投与する(図1)。治療効果は注入の1、2日後より現れ、平均15週間程度持続する。治療に伴う副作用としては、一過性の気息性嗄声や液体嚥下時のむせがある。国内では2018年にA型ボツリヌストキシン(商品名:ボトックス)の適用承認が得られた4)。先進国ではオーストラリアに次いで2ヵ国目である。図1 ボツリヌストキシン治療内転型では輪状甲状間膜経由で、外転型では輪状軟骨外側からのルートでそれぞれ標的筋に投与する。■ 外科的治療内転型痙攣性発声障害に対しては、以下に示す外科的治療があり、近年、適用症例が増えつつある。一方、外転型に対しては有効性が確立された外科的治療はない。1)甲状披裂筋切除術全身麻酔下に経口的に喉頭へアプローチし、声帯上面に切開を加えて責任筋である甲状披裂筋を両側性に鉗除する。手術手技が比較的簡単で皮膚切開を要しないという利点があるが、術後に気息性嗄声がみられる短所がある。2)選択的反回神経内転筋枝切断-再支配手術反回神経の内転筋枝を一旦切断したのちに再支配させる選択的反回神経内転筋枝切断-再支配手術(selective laryngeal adductor denervation-reinnervation surgery)が米国を中心に行われている。手技がやや煩雑でやはり術後に嗄声を来すことが多く、わが国ではあまり行われていない。3)甲状軟骨形成術2型局所麻酔下に甲状軟骨上に皮膚切開を置き、甲状軟骨を正中で縦切開して離断する。離断した軟骨を左右に開大することで、声帯前方を拡げて声帯の過閉鎖が起こらないようにする(図2)。術直後より音声が改善し、長期的にも安定した治療効果が得られることから5)、わが国を中心に手術例が増加しつつある。図2 内転型痙攣性発声障害に対する甲状軟骨形成術2型の模式図甲状軟骨を正中で切開し左右に開大してチタンブリッジにより固定することで、声帯内転による声門の過閉鎖を防止する。4 今後の展望近年の国内外における研究により、本症の病態は明らかになりつつある。また、治療においてもボツリヌストキシン治療や外科的治療の有効性が普及してきた。一方、本症に対する根治的治療法はまだない。発声に関わる中枢へのアプローチによる根治的治療法開発も進められており、今後のさらなる研究の発展が期待される。また、患者は耳鼻咽喉科のみならず、脳神経内科、脳神経外科、心療内科、精神科などさまざまな診療科を受診することが考えられる。本症の認知度はまだ十分とは言えず、早期診断や適切な治療に向けて、これらの診療科の医師や国民に対する啓発活動も望まれる。5 主たる診療科耳鼻咽喉科、脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診断・治療に関する情報日本音声言語医学会ホームページ(痙攣性発声障害の診断基準および重症度分類、ボツリヌストキシン治療実施可能施設一覧を掲載)患者会情報SDCP発声障害患者会(痙攣性発声障害を含む発声障害患者さんの交流と情報交換)1)兵頭政光. Clinical Neuroscience. 2020;38:1122-1124.2)Hyodo M, et al. Auris Nasus Larynx. 2021;48:179-184.3)鈴木則宏ほか編. Annual Review 神経 2020. 中外医学社;2020:229-235.4)Hyodo M, et al. Eur J Neurol. 2021;28:1548-1556.5)Sanuki T, et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 2017;157: 80-84.公開履歴初回2022年2月21日

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片頭痛に対するアルコール、コーヒー、喫煙の影響

 アルコール、コーヒーの摂取および喫煙が片頭痛の発症リスク因子であるかを評価するため、スウェーデン・カロリンスカ研究所のShuai Yuan氏らは、メンデルランダム化研究を実施した。Pain誌2022年2月1日号の報告。 大規模ゲノムワイド関連解析におけるP<5×10-8の潜在的なリスク因子に関連する独立した一塩基多型を操作変数として用いた。選択した一塩基多型と片頭痛との関連についてのサマリーレベルのデータを、FinnGenコンソーシアム(片頭痛患者:6,687例、対照群:14万4,780例)およびUKバイオバンク研究(片頭痛患者:1,072例、対照群:36万122例)のデータより抽出した。FinnGenおよびUKバイオバンクのコホートより得られた推定値は、固定効果メタ解析を用いて組み合わせた。 主な結果は以下のとおり。・遺伝的に予測されたアルコール摂取、コーヒー摂取、喫煙開始との関連性を示すエビデンスが認められた。【アルコール摂取】オッズ比(OR):0.54/1週間当たりの対数変換アルコール飲料のSD増加、95%信頼区間[CI]:0.35~0.82、p=0.004【コーヒー摂取】OR:0.56/コーヒー摂取量50%増加、95%CI:0.45~0.70、p<0.001【喫煙開始】OR:1.15/喫煙開始の1SD増加、95%CI:1.01~1.31、p=0.038・多変数メンデルランダム化解析での相互調整を含む感度分析においても、これらの関連性は変わらなかった。・メンデルの逆ランダム化解析では、片頭痛に対する遺伝的な影響は、アルコール摂取と逆相関が認められたが、コーヒー摂取および喫煙開始との関連は認められなかった。 著者らは「片頭痛に対する適度なコーヒー摂取の保護的影響と喫煙の有害な影響を示唆する遺伝的証拠が発見された。アルコール摂取と片頭痛リスクとの逆相関は、因果関係の逆転が影響している可能性がある」としている。

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小声の患者さん、実は“ふるえ”が潜んでる!?【Dr.山中の攻める!問診3step】第11回

第11回 小声の患者さん、実は“ふるえ”が潜んでる!?―Key Point―安静時の振戦はパーキンソン病でみられる両上肢を前方に挙上するときに観察される姿勢時振戦は本態性振戦で起こる治療可能なふるえを見逃さない症例:75歳 男性主訴)右手がふるえる現病歴)3年前から両手のふるえを自覚するようになった。1年前から次第に手のふるえがひどくなっている。2週間前、役所で書類にサインを求められたが、手がふるえて字がうまく書けなかった。既往歴)高血圧症薬剤歴)アムロジピン生活歴)焼酎1合を週に2回、喫煙なし身体所見)体温:36.7℃ 血圧:128/62mmHg 脈拍:86回/分 呼吸回数:16回/分 SpO2:96%(室内気)安静時振戦なし。両上肢を前方に挙上させると両手に振戦を認める。自分の名前を書かせると、右手に振戦が出現し字が大きく乱れる。経過)パーキンソン症候群を疑う症状と身体所見なし。本体性振戦と診断しプロプラノロールを処方した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!病的振戦では本態性振戦が最も多く、次にパーキンソン病が多い書字やコップを使用して飲水する時に起こる運動時振戦は、日常生活に支障をきたすリチウム、バルプロ酸Na、テオフィリン、カフェイン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などは薬剤性振戦を起こす1)【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】振戦を分類する2)(1)安静時振戦安静時にみられる。左右差が見られることが多い。動作により振戦は消失する。姿勢保持後、10秒くらいして振戦が再出現することがある(re-emergent tremor)。暗算負荷などの精神的緊張で増悪する。パーキンソン病、パーキンソン症候群が代表疾患(2)動作時振戦(a)姿勢時振戦両上肢を前方に挙上するときに観察される。重力に抗した姿勢で出現しやすい。代表疾患は本態性振戦、生理的振戦、甲状腺機能亢進症で、薬剤性やアルコール離脱などが原因で生じることもある。(b)運動時振戦書字やコップで水を飲む時に起こる。日常生活に支障をきたす。本態性振戦、小脳疾患、脳血管障害で起こる(c)企図振戦 目標に近づくほど振戦が増大する。小脳障害、多発性硬化症、ウィルソン病でみられる*本態性振戦とパーキンソン病の患者ビデオ(Stanford Medicine 25)【STEP3-1】本態性振戦とパーキンソン病の特徴的症状があるかを確かめる2)病的な振戦では本態性振戦(有病率:2.5~10%)とパーキンソン病(有病率:0.1%)が多い。画像を拡大するパーキンソン病の安静時振戦は逆N字型(またはN字型)に進行する。たとえば、右手→右足→左手→左足(下図参照)(図)パーキンソン病では無動、固縮(歯車現象、鉛管様固縮)を認める。非運動症状(レム睡眠行動異常、うつ症状、嗅覚低下、倦怠感、起立性低血圧)がある3)本態性振戦は小脳失調を合併することがある本態性振戦からパーキンソン病に進展するケースもある【STEP3-2】ほかの鑑別診断を考える徐々に発症するときは生理的振戦、本態性振戦を考える●生理的振戦緊張すると姿勢時振戦を起こす。低振幅、高振動数。カフェイン、β刺激薬で悪化●ジストニア特定の姿勢や動作で誘発される。書痙●心因性振戦突然発症する。気をそらせると消失●二次性振戦甲状腺機能亢進症、低血糖、尿毒症、薬剤(リチウム、バルプロ酸Na、テオフィリン、カフェイン、SSRI)、中毒(マンガン、鉛、水銀)●アルコールやベンゾジアゼピンの離脱症状としても振戦が起こる【治療】ストレスを軽減させる生活指導振戦のため書字が困難なら、できるだけ太いペンを使用する本態性振戦にはアロチノロール、プロプラノロール(商品名:インデラル)、プリミドンを処方するパーキンソン病には抗コリン薬が有効なことがあるが、幻覚や認知機能障害が出現する場合があるMRガイド下集束超音波治療(FUS)<参考文献>1)Elias WJ, et al. JAMA. 2014;311:948-954. 2)望月秀樹. 日本内科学会雑誌. 2017;107: 464-468.3)Kalia LV, et al. Lancet. 2015;386:896-912.

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多疾患罹患、中年期の発症で認知症リスク増加 /BMJ

 多疾患罹患(multimorbidity)は、高年期よりも中年期の発症で認知症との関連が強く、併存する慢性疾患の数が多いほど認知症のリスクが高くなることが、フランス・パリ大学のCeline Ben Hassen氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年2月2日号で報告された。Whitehall II研究のデータを用いた前向きコホート研究 研究グループは、中年期および高年期の多疾患罹患と、認知症の新規発症との関連を評価する目的で、前向きコホート研究を実施した(米国国立老化研究所[NIA]などの助成を受けた)。 解析には、進行中のWhitehall II研究のデータが用いられた。Whitehall II研究には、ベースライン時(1985~88年)に35~55歳のロンドン市の公務員が登録され、約4~5年ごとにフォローアップの調査が行われている。 主要アウトカムは、1985~2019年におけるフォローアップ時の新規発症の認知症とされた。原因別Cox比例ハザード回帰を用い、死亡の競合リスクを考慮したうえで、全体、55歳、60歳、65歳、70歳の時点での多疾患罹患とその後の認知症との関連が評価された。55歳時の多疾患罹患で、認知症リスクが2.44倍に 1万95例が解析に含まれた。多疾患罹患(13の慢性疾患のうち2つ以上)の有病率は、55歳時が6.6%(655/9,937例)、70歳時は31.7%(2,464/7,783例)であった。フォローアップ期間中央値31.7年の時点で、639例(平均年齢49.9[SD 4.9]歳、男性58.5%)が新規の認知症に罹患した。 認知症罹患者で最も頻度の高い慢性疾患は高血圧症(77.9%)で、次いで冠動脈疾患(27.7%)、抑うつ(27.2%)、糖尿病(24.7%)の順であった。がんを除く12の慢性疾患は、認知症罹患と関連が認められた。 社会人口学的因子と健康行動(喫煙、身体活動、飲酒、果物/野菜摂取)で補正すると、慢性疾患がないまたは1つの集団と比較して、55歳時の多疾患罹患はその後の認知症のリスクと関連が認められた(1,000人年当たりの罹患率の差:1.56、95%信頼区間[CI]:0.62~2.77、ハザード比[HR]:2.44、95%CI:1.82~3.26)。 この関連性は、多疾患罹患の発症年齢が高くなるに従って徐々に弱くなった。たとえば、55歳以前に多疾患罹患を発症した場合は、65歳時の1,000人年当たりの認知症罹患率の、慢性疾患がないまたは1つの集団との差は3.86(95%CI:1.80~6.52)であった(HR:2.46、95%CI:1.80~3.36)のに対し、60~65歳時に発症した場合は、65歳時の1,000人年当たりの認知症罹患率の同差は1.85(95%CI:0.64~3.39)であった(HR:1.51、1.16~1.97)。 70歳時の多疾患罹患の状態の解析では、多疾患罹患の発症年齢が5歳若くなるごとに、認知症リスクは18%ずつ高くなった(HR:1.18、95%CI:1.04~1.34)。 また、55歳時に3つ以上の慢性疾患を有する多疾患罹患の場合は、1,000人年当たりの認知症罹患率の、慢性疾患がないまたは1つの集団との差は5.22(95%CI:1.14~11.95)であった(HR:4.96、95%CI:2.54~9.67)。一方で70歳時の同様の解析では、1,000人年当たりの認知症罹患率の同差は4.49(95%CI:2.33~7.19)であり(HR:1.65、95%CI:1.25~2.18)、多疾患罹患の発症年齢が高くなるに従って関連性が徐々に弱くなった。 著者は、「多疾患罹患は発症年齢の若年化が進んでいるため、初発の慢性疾患を有する集団における多疾患罹患の予防が重要である」としている。

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日本食スコアと認知症、腸内細菌との関連

 これまでの研究では、腸内細菌叢や微生物代謝産物と認知機能低下との関連が示唆されている。しかし、この関連に対する食事パターンの影響は十分に調査されていない。国立長寿医療研究センターの佐治 直樹氏らは、日本食の順守や腸内細菌叢と認知機能低下との関連を評価した。さらに、日本食事スコアの3タイプ(JDI9[米、味噌、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶、牛肉・豚肉、コーヒー]、JDI12[JDI9+大豆・大豆製品、果物、きのこ]、rJDI12[JDI12改訂版のJDI])について評価し、認知機能や腸内細菌叢と関連性を調査した。Nutrition誌2022年2月号の報告。 病院ベースのプロスペクティブコホート研究より抽出したデータを用いて、横断的サブ解析を実施した。対象者の人口統計学的特性、食事パターン、リスク因子、認知機能、脳画像、腸内細菌叢、微生物代謝産物について評価を行った。これまでの研究に基づき、JDI9、JDI12、rJDI12を定義した。JDIスコア、認知機能、腸内細菌叢、微生物代謝産物との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象者85例(女性の割合:61%、平均年齢:74.6±7.4歳)のデータを分析した。・非認知症患者は、認知症患者と比較し、JDI12の魚介類(64.5% vs.39.1%、p=0.048)、きのこ(61.3% vs.30.4%、p=0.015)、大豆・大豆製品(62.9% vs.30.4%、p=0.013)、コーヒー(71.0% vs.43.5%、p=0.024)を摂取する割合が高かった。・認知症患者は、非認知症患者よりもJDIスコア(中央値)が低かった。【JDI9】認知症患者5 vs.非認知症患者7(p=0.049)【JDI12】認知症患者7 vs.非認知症患者8(p=0.017)【rJDI12】認知症患者7 vs.非認知症患者9(p=0.006) 著者らは「伝統的な日本食を順守すると、認知機能低下を予防できることが示唆された。これは、腸内微生物の代謝産物の濃度の低さと関連している傾向があることが明らかとなった」としている。

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認知症・老衰の患者さんに、病状経過を説明するなら…【非専門医のための緩和ケアTips】第21回

第21回 認知症・老衰の患者さんに、病状経過を説明するなら…身体機能の変化を時間軸で示す「病みの軌跡」というグラフ、これまでがん患者・臓器障害患者向けをご紹介してきました。今回の質問は、認知症や老衰の方の経過に関連したものです。どのようなポイントを意識して診療するとよいのでしょうか。ここでも「病みの軌跡」が使えます。今日の質問かかりつけの患者さん。認知症が進行し、外来通院が家族の負担となってきたため、今後は訪問診療で関わることになりました。介護負担も大きく、そのうち寝たきりになりそうです。終末期について、本人・ご家族とどう話し合えばよいのでしょうか?高齢化が進む中、認知症患者も増えています。厚生労働省の人口動態統計(2020年)によれば、老衰は主要死因の第3位です。脳血管障害と肺炎を追い抜いて3位になったのは2018年のことでした。こうした背景から、認知症・老衰の臨床像とケアについて、どんな立場の医療者も基本を理解しておきたいところです。認知症・老衰の身体機能の変化を時間軸で示した、「病みの軌跡」は下のようなパターンとなります。この軌跡から読み取れるのは、「身体機能がふらつきながら、緩徐に低下していく」ことです。私は、終末期までの経過予測が一番難しいのがこのパターンだと感じています。悪性疾患の場合には「5年生存率」など統計学的な指標があり、心不全などの臓器障害の場合には心機能などの客観的指標が参考になります。しかし、認知症が進行して老衰となった高齢者には予後予測に役立つ明確な指標がなく、かつ本人が自分の体調の変化を説明できないケースも多くなります。「食事量が減ったなあ」とか「寝ている時間が長くなってきましたね」といったように医療者と家族が様子を見ながら、そろそろお別れが近いかなと思った段階で話し合いを続けるしかありません。そして、それから何年も同じような状態が続くこともあれば、予想外に早いタイミングで亡くなることもあります。この臨床像の高齢者の多くは、身体機能や認知機能の低下とともに、通院が困難になっていきます。今回のご質問のように早めに訪問診療を提案したり、紹介したりすることも大切です。予測の難しい「病みの軌跡」に対し、医療者には何が求められるのでしょうか。一概には言えませんが、まずは「不確実で個別性の高い経過となる」ことを、家族を含めた関係者で共有することが大切です。そして、注意してほしいポイントも共有します。たとえば、「食事量が低下した場合、体力の低下につながるかもしれませんので、教えてください」といった具合です。高齢者の場合、医療者・家族だけでなく、介護職をはじめとしたさまざまな方が関わるケア提供体制をつくることが大切です。立場の異なる方との話し合いに、ぜひ「病みの軌跡」を活用してください。今回のTips今回のTips認知症・老衰の「病みの軌跡」は、経過予測が難しい。その難しさを関係者と共有しつつ、定期的な評価を繰り返すことが重要です。1)Murray SA, et al. BMJ. 2005;330:1007-1011.

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近年増加傾向?過灌流症候群(HPS)【知って得する!?医療略語】第5回

第5回 近年増加傾向?過灌流症候群(HPS)頸動脈ステント留置をした患者さんが、頭痛や痙攣を起こすことがあると聞きました。本当ですか?そう、本当なんです。脳動脈バイパス術や頸動脈狭窄治療後に脳血流が増加し、脳血流の過灌流状態を来たし、神経症状を呈することがあります。この病態を過灌流症候群(HPS)と言います。近年は「CHS:Cerebral hyperperfusion syndrome」とも表現されます。もう少し詳細を見ていきましょう。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】HPS【日本語】過灌流症候群【英字】cerebral hyperperfusion syndrome【分野】脳神経【診療科】脳神経外科・脳神経内科【関連】頸動脈内膜剥離術(CEA:endarterectomy)頸動脈ステント留置術(CAS:carotid artery stenting)過灌流症候群(HPS:hyper-perfusion syndrome)過灌流現象(HPP:hyper-perfusion phenomenon)過灌流現象(CHP:cerebral hyper-perfusion phenomenon)実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。脳血管の血行再建術後の過灌流は、「脳組織の需要をはるかに超えた脳血流の急激な増加」と定義され、神経症状を呈する病態は過灌流症候群(HPS:hyperperfusion syndrome)と呼ばれます。これまで1980年代以降、脳動脈バイパス術や頸動脈内膜剥離術(CEA)に伴うHPSが報告され、近年は頸動脈ステント留置(CAS)に伴うHPSが報告されています。過灌流症候群の臨床像は、頭痛、顔面痛や眼球痛、意識障害、痙攣、大脳半球局所症状と多岐に及びます。さらに頭蓋内出血を来たす症例も報告されています。HPSは脳神経領域を専門とする先生方には、周知の内容かもしれません。しかし、近年は頸動脈ステント留置(CAS)の普及に伴う遅発性HPSの報告があり、患者がCAS治療を受けて退院した後にHPSを発症するケースが報告されています。この場合、救急医や当直医がHPS患者の初期対応をする可能性があり、HPSの疾患概念は脳神経領域以外の医師も知っておく必要があります。頸動脈狭窄治療後にそれほど時間が経過していない患者が、神経症状を呈して受診した場合、HPSも鑑別に想起いただければと考えます。なお、近年はHPSがCHS(Cerebral hyperperfusion syndrome)へ表現が変わりつつあるのでご留意ください。1)Omura K, et al. Stroke. 2020;42:84-88.2)Shindo K, et al. Surg Cereb Stroke. 2021;49:111-118.3)Ogasawara A, et al. J Neurosurg. 2008;17:596-600.

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ブレークスルー感染、女性・30歳以上で起こりやすい?

 ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のJing Sun氏らが新型コロナワクチン接種後のブレークスルー感染*の発生率と発生率比(IRR)を特定することを目的とし、後ろ向きコホート研究を実施。その結果、患者の免疫状態に関係なく、完全ワクチン接種がブレークスルー感染のリスク低下と関連していることが示唆された。また、ブレークスルー感染が女性や30歳以上で起こりやすい可能性も明らかになった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2021年12月28日号掲載の報告。*本研究ではブレークスルー感染を、ワクチン接種の14日目以降に発症した新型コロナウイルス感染症と定義しており、2回目完了後の発症としていない。 本研究は、全米の新型コロナに関する臨床データを一元化しているNational COVID Cohort Collaborative(N3C)1)のデータに基づいて分析した。2020年12月10日~2021年9月16日の期間に新型コロナワクチンを1回以上接種した症例がサンプルに含まれた。また、ワクチン接種、新型コロナの診断、免疫機能障害の診断(HIV感染、多発性硬化症、関節リウマチ、固形臓器移植、骨髄移植)、そのほかの併存疾患、人口統計データを検証するにあたり、N3C Data Enclaveを介した。 この研究ではFDAが認可した3つの新型コロナワクチン(ファイザー製[BNT162b2]、モデルナ製[mRNA-1273]、J&J製[JNJ-784336725])と、そのほかのワクチン(アストラゼネカ製など)接種者が含まれた。また、完全ワクチン接種というのは、mRNAワクチンとそのほかのワクチン接種の場合は2回接種、J&J製の場合は1回接種と定義。部分ワクチン接種というのは、mRNAワクチンやそのほかのワクチンを1回のみ接種と定義付けた。2回接種または1回のみ接種後のリスクは、ポアソン回帰を使用して免疫機能障害の有無にかかわらず評価された。 主な結果は以下のとおり。・N3Cのサンプルには計66万4,722例が含まれていた。・患者の年齢中央値(IQR)は51歳(34~66)で、そのうち女性は37万8,307(56.9%)と半数以上を占めていた。・全体として、新型コロナのブレークスルー感染の発生率は、完全ワクチン接種者で1,000人月あたり5.0だった。しかし、デルタ変異株が主要株になった後は高かった(2021年6月20日以前と以降の1,000人月あたりの発生率は、2.2(95%信頼区間[CI]:2.2~2.2)vs. 7.3(95%CI:7.3~7.4)だった。・部分ワクチン接種者と比較し完全ワクチン接種者では、ブレークスルー感染のリスクが28%減少した(調整済みIRR [AIRR]:0.72、95%CI:0.68~0.76)。・完全ワクチン接種後にブレークスルー感染した人は、高齢者や女性が多かった。また、HIV感染者(AIRR:1.33、95%CI:1.18~1.49)、関節リウマチ(AIRR:1.20、95%CI:1.09~1.32)、および固形臓器移植を受けた者(AIRR:2.16、95%CI:1.96~2.38)では、ブレークスルー感染の発生率が高かった。・具体的には、ブレークスルー感染リスクは18〜29歳と比較して30歳以上で30〜40%増加した。・ブレークスルー感染リスクは併存疾患の数が増えるにつれて増加したが、このリスクは免疫機能障害の状態に関連しており、とりわけそれによってAIRRが弱められた。 免疫機能障害のある人は完全ワクチン接種しても、そのような状態ではない人よりもブレークスルー感染リスクはかなり高かったことを受け、研究者らは「免疫機能障害のある人は、ワクチン接種を完遂してもマスク着用やワクチンの代替となるような戦略(例:追加接種や免疫原性試験)が推奨される」としている。

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抗CGRP抗体中止後の頭痛や健康関連QOLに対する影響

 抗CGRP(受容体)モノクローナル抗体による片頭痛治療は、患者の健康関連QOLに良い影響を及ぼす。ドイツの治療ガイドラインでは、抗CGRP抗体による治療に奏効後、6~12ヵ月間で治療を中止することが推奨されている。ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のMaria Terhart氏らは、抗CGRP抗体治療中止後3ヵ月間における頭痛特有の一般的な健康関連QOLを評価した。The Journal of Headache and Pain誌2021年12月31日号の報告。 8~12ヵ月間の抗CGRP抗体治療後、予定された治療中止をこれから行う片頭痛患者を対象としたプロスペクティブ縦断的コホート研究を実施した。健康関連QOLの評価は、最後の抗CGRP抗体治療実施時(V1)、8週間後(V2)、16週間後(V3)に行った。頭痛特有の健康関連QOLの評価には、頭痛インパクトテスト(Headache Impact Test-6:HIT-6)を用いた。一般的な健康関連QOLの評価には、EuroQol-5-Dimension-5-Level(ED-5D-5L)およびPCS-12、MCS-12で構成されたSF-12を用いて評価した。3つの評価時点でのアンケート合計スコアの比較には、ノンパラメトリック手法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は61例(抗CGRP受容体抗体[エレヌマブ]:29例、抗CGRP抗体[ガルカネズマブまたはフレマネズマブ]:32例)。・HIT-6合計スコアは、V1で59.69±6.90であったが、V3で3.69±6.21増加しており(p<0.001)、患者の生活に対する頭痛の影響が大きいことが示唆された。・平均ED-5D-5L合計スコアは、V1の0.85±0.17からV3の-0.07±0.18へ減少していた(p=0.013)。・SF-12の精神的(MCS-12)および物理的(PCS-12)コンポーネントスコアは、治療中止中に有意な悪化が認められた。V1からV3への変化は、MCS-12スコアで-2.73±9.04減少(p=0.003)、PCS-12スコアで-4.04±7.90減少(p=0.013)であった。・すべての質問票のスコアに変化が認められたが、MCS-12ではV2ですでに有意な差が認められた。 著者らは「抗CGRP抗体治療中止により、片頭痛患者の頭痛への影響と健康関連QOLの有意な低下が認められた。これらの悪化は、各質問票における最低限の臨床的な影響を上回っており、臨床的な影響が表れていると見なすことができる。抗CGRP抗体の治療中止を行った際には、健康関連QOLをモニタリングすることで、予防治療の再開を決断しやすくなる可能性がある」としている。

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治療抵抗性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性~年齢や性別の影響

 片頭痛の有病率は、年齢や性別により異なり、成人初期および中年の女性でとくに高いが、男性やすべての年齢の成人においても片頭痛の問題を抱えている人は少なくない。そのため、性別や年齢を超えた片頭痛予防薬の有用性を理解することは重要である。既存の片頭痛予防の2~4つのクラスを用いた治療が奏効しなかった反復性および慢性片頭痛成人患者を対象としたランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験である第IIIb相FOCUS試験において、ヒト化モノクローナル抗体フレマネズマブの安全性、有効性は明らかとなった。オランダ・エラスムス大学ロッテルダムのAntoinette MaassenVanDenBrink氏らは、FOCUS試験参加者を年齢および性別でサブグループ化し、フレマネズマブの有効性を評価した。The Journal of Headache and Pain誌2021年12月18日号の報告。 FOCUS試験では、既存の片頭痛予防の2~4つのクラスを用いた治療が奏効しなかった慢性片頭痛または反復性片頭痛患者をフレマネズマブ四半期ごと投与群、フレマネズマブ月1回投与群、プラセボ群に1:1:1でランダムに割り付け、12週間の二重盲検治療を実施した。本事後分析では、年齢(18~45歳および45歳超)および性別のサブグループにおけるFOCUS試験の主要エンドポイントである1ヵ月当たりの片頭痛日数およびその他の副次的エンドポイント、探索的有効性のアウトカムのベースラインからの変化について評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、修正されたITT集団(1回以上の治験薬投与および主要評価項目の有効性評価をベースライン後10日以上で行った患者)837例(18~45歳:373例、45歳超:464例、男性:138例、女性:699例)。・12週間後の1ヵ月当たりの片頭痛日数は、年齢、性別に関係なく一貫した減少が認められた(各々対プラセボ群:p<0.001)。【年齢:18~45歳】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与群:-4.1日●フレマネズマブ月1回投与群:-4.7日●プラセボ群:-0.9日【年齢:45歳超】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与群:-3.6日●フレマネズマブ月1回投与群:-3.7日●プラセボ群:-0.3日【性別:男性】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与群:-4.1日●フレマネズマブ月1回投与群:-4.6日●プラセボ群:-0.3日【性別:女性】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与群:-3.6日●フレマネズマブ月1回投与群:-3.9日●プラセボ群:-0.6日・各サブグループにおいて、フレマネズマブの使用により、1ヵ月当たりの中等度以上の片頭痛日数の減少、1ヵ月当たり急性片頭痛薬の使用日数の減少、片頭痛障害評価(MIDAS)スコアの改善が認められた。 著者らは「年齢や性別とは無関係に、治療抵抗性片頭痛に対するフレマネズマブ治療の有効性が確認された」としている。

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痙攣を伴わないてんかん重積―NCSE【知って得する!?医療略語】第4回

第4回 痙攣を伴わないてんかん重積―NCSEてんかん重積状態を表す表現の1つに、「NCSE」があると聞きました。どういう病態ですか、教えて下さい!NCSEは「nonconvulsive status epilepticus」から生まれた略語で「非痙攣性てんかん重積状態」を意味します。てんかん重積というと、全身痙攣が持続するイメージが強いですが、意識障害のみのてんかん重積がNCSEです。原因不明の意識障害では、NCSEの可能性をしっかり鑑別しましょうね。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】NCSE【日本語】非痙攣性てんかん重積状態【英字】nonconvulsive status epilepticus【分野】脳神経【診療科】脳神経外科【関連】痙攣性てんかん重積状態 (CSE:convulsive status epilepticus)、全身痙攣重積状態(GCSE:generalized convulsive status epilepticus)実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。意識障害の鑑別にAIUEOTIPSが有名となり、意識障害の鑑別に「E:epilepsy(てんかん)を想定することは浸透していると思います。しかし、あえて、いま一度、NCSEを取り上げるのは、NCSEが高齢者に発症しやすいため、神経内科や救急に携わる医師だけではなく、高齢者診療に関わる医療者の皆さまと、「“意識障害のみ”のてんかん重積発作」が存在することを改めて共有したかったからです。てんかん重積状態と言えば、痙攣発作を伴う意識障害のイメージが先行しがちです。しかし、全身性の痙攣を伴なわず、意識障害しか症状を呈さない非痙攣性てんかん重積状態(NCSE:nonconvulsive epilepticus)が存在します。このため「てんかん=痙攣する」という疾患イメージに縛られてしまうと、NCSEを見落とし、診断と治療が遅れてしまう可能性があります。2008年に吉村 元氏らは94例のてんかん重積患者(15歳以上)の検討を行いました。その報告によれば、てんかん重積の25.5%がNCSEでした。さらに、入院後に痙攣性てんかん重積状態(CSE:convulsive status epileptics)からNCSEに移行した8例を加えると34%がNCSEでした。この知見を踏まえると、痙攣性てんかん重積の治療において留意したいのは「痙攣の停止=てんかん発作の終了」ではないことです。痙攣は止まっても脳の中ではてんかん波が持続し、NCSEに移行している可能性があります。上述の報告によれば、原因不明の意識障害の患者さんには、繰り返し脳波検査を施行しており、積極的かつ繰り返しの脳波検査の必要性がうかがえます。さらに、同報告では予後に関する調査もされており、多変量解析の結果、NCSEが独立した予後不良因子であることも指摘されています。2016年には貴島 晴彦氏らがNCSEの病態と治療について総説をまとめており、その中でNCSEの症状の多彩性と原因疾患の幅広さが述べられています。また、同論文ではNCSE診断におけるビデオ脳波持続モニタリングの有効性に触れています。成人発症てんかん重積は60歳以上に多く、高齢者人口の増加に伴い、その発症頻度の増加が予測されています。高齢者の原因不明の意識障害では、NCSEをしっかり鑑別に想起し、早期診断・治療の観点から、積極的な脳波検査と原因疾患の検索が必要と考えます。1)吉村 元ほか.臨床神経. 2008;48:242-248.2)貴島 晴彦ほか. 脳神経外科ジャーナル. 2016;25:229-235.3)松島 一士ほか. 日本神経救急学会雑誌. 2015;27:53-55.

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軽度アルツハイマー病患者の安全運転に対するメマンチンの影響

 米国・フロリダアトランティック大学のPeter J. Holland氏らは、軽度アルツハイマー病患者の安全運転能力の維持に対するメマンチンの潜在的な有効性を評価するために、プラセボ対照二重盲検比較試験の実現可能性を判断する目的でパイロット研究を実施した。Canadian Geriatrics Journal誌2021年12月1日号の報告。 スクリーニング基準を満たした60歳以上の軽度アルツハイマー病患者43例を対象に、メマンチン群22例と対照群21例にランダム化を行った。運転能力の評価には、標準化された路上運転免許試験を用いた。アウトカムは、6、12ヵ月時点の運転能力と12ヵ月間の路上試験完了率とした。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月間の路上試験完了率は、メマンチン群59%(13例)、対照群52%(11例)であった(p=0.66)。・安全運転能力が維持されていたのは、メマンチン群では13例すべて、対照群では8例(73%)であった(p=0.040、OR=4.45)。 著者らは「本結果は、軽度アルツハイマー病患者の運転能力維持に対するメマンチンの有効性を評価するうえで、厳格なマルチサイト臨床試験を設計するためのフレームワークとなりうる」としている。

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