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FDA、AD型認知症に伴う行動障害へのブレクスピプラゾールを承認/大塚

 大塚製薬とH.ルンドベックA/Sは5月11日、同社の抗精神病薬ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ)のアルツハイマー(AD)型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の治療における効能追加の承認を米国食品医薬品局(FDA)より取得したことを発表した。今回の承認により、本剤は米国において本適応を有する初めての抗精神病薬となる。なお本剤について、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)による優先審査が認められていた。 ブレクスピプラゾールは、2015年にFDAが「成人の大うつ病補助療法」および「成人の統合失調症」の2つの効能で承認し、現在、統合失調症治療薬として約60の国と地域で使用されている。 AD型認知症を有する患者の約半数で、介護者に対する暴言、暴力、錯乱などの行動障害が認められている。行動障害を含む認知症に関連する症状は、介護者の負担を重くし、患者自身や家族、介護者の生活の質を低下させるとともに、患者が家族と同居できず介護施設へ入居せざるを得ない要因となっている。 今回の承認は、AD型認知症の可能性があると診断され、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが5~22点であり、薬物療法を必要とする行動障害のある51~90歳の患者が対象となった「331-12-283試験」と「331-14-213試験」の2つの第III相臨床試験において、良好な結果が得られたことに基づいている。 331-12-283試験では、主要評価項目であるCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)総スコアのベースラインから12週目までの平均変化量において、ブレクスピプラゾール2mg/日投与群は、プラセボ投与群に対して統計学的に有意な改善を示した(p<0.05)。 331-14-213試験では、本剤2mg/日および3mg/日投与群は、主要評価項目であるCMAI総スコアのベースラインから12週目までの平均変化量において、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な改善を示した(p<0.05)。 本剤の忍容性は全般的に良好であり、投与中止の発生率は低く、ほかの適応症でみられた既知の安全性プロファイルと同様であった。 AD型認知症に伴う行動障害の治療における本剤の開始用量は、1日1回0.5mgを1~7日目に服用することが推奨される。8~14日目までは1日1回1mg、15日目では1日1回2mgに増量する。推奨される目標用量は1日1回2mgである。臨床効果および忍容性に基づいて、少なくとも14日後に1日1回3mgの最大推奨用量まで増量することができる。 本剤の最も一般的な副作用は、頭痛、めまい、尿路感染、鼻咽頭炎、睡眠障害(傾眠・不眠)である。本剤は、同クラスの抗精神病薬と同様に、抗精神病薬による治療を受けた認知症関連の精神症を有する高齢患者の死亡リスクが高いことについて黒枠警告される。

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認知機能低下の早期発見にアイトラッキングはどの程度有用か

 アルツハイマー病(AD)患者では初期段階から、眼球運動に反映されるように、視空間処理障害が認められる。杏林大学の徳重 真一氏らは、ビジュアルタスク実行中の視線動向パターンを評価することで、認知機能低下の早期発見に役立つかを調査した。その結果、いくつかのタスクを組み合わせて視空間処理能力を可視化することで、高感度かつ特異的に認知機能の低下を早期に検出し、その後の進行の評価に役立つ可能性があることを報告した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年3月21日号の報告。 AD患者16例(平均年齢:79.1±7.9歳、ミニメンタルステート検査[MMSE]平均スコア:17.7±5.3)および健康対照者16例(平均年齢:79.4±4.6歳、MMSE平均スコア:26.9±2.4)を対象とし、視覚記憶タスク、視覚探索タスクの評価を行った。video-oculographyを用いて衝動性眼球運動(saccade)パラメータ、視線動向パターン、タスク遂行中の瞳孔サイズの変化を記録し、AD患者と健康対照者で比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・視覚記憶タスクでは、AD患者は健康対照者と比較し、固定対象領域における記憶数の有意な減少が認められた。・視覚探索タスクでは、AD患者はpop out taskではなくserial search taskでターゲットを検出する際に、有意に長い時間と衝動性眼球運動数の増加が認められた。・両タスクともに、両群間での衝動性眼球運動の頻度と振幅に有意な差は認められなかった。・serial search task実行中の瞳孔サイズの変調は、AD患者で減少した。・視覚記憶タスクおよびserial search taskは、AD患者を高感度で鑑別可能であり、瞳孔サイズの変調や衝動性眼球運動は、高い特異性をもって認知機能低下から正常認知機能を確認するうえで効果的であった。

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第162回 Lillyのアルツハイマー病治療抗体も第III相試験成功 / 英国成人の5人に1人が音嫌悪症

Lillyの抗Aβ抗体もアルツハイマー病患者の認知や所作の衰えを抑制Eli Lilly and Company(以下、Lilly)の抗アミロイドβ(Aβ)抗体donanemabもエーザイのlecanemabと同様に初期アルツハイマー病患者対象の第III相試験で成功を収め、認知や身のこなしの指標であるiADRSの悪化をプラセボに比べて遅らせました1)。今回の発表ではiADRSを含む各転帰の経過のプラセボとの相対的な比較結果がひとまず示され、詳しい結果は再来月7月の学会Alzheimer's Association International Conferenceで報告される見込みです。donanemab投与群の各転帰の絶対的経過や同剤の効果がアルツハイマー病患者自身やその家族が察知できるほどのものであったかどうか2)はその学会報告を受けて検討されるでしょう。安全性はどうだったかというと、発作や出血へと至りうるアミロイド関連画像病変(amyloid-related imaging abnormalities:ARIA)の懸念が専門家の間で取り沙汰されているようです。ARIAの一種である一過性の脳浮腫(ARIA-E)はdonanemab治療群のほうがプラセボ群より4倍ほど多く、それぞれ24%と6.1%に認められました。小出血や血鉄素沈着を特徴とするARIA-Hも同様にdonanemab群で多く、プラセボ群では13.6%だったのがその2~3倍多い約3例に1例(31.4%)に認められました。LillyによるとARIAのほとんどは軽~中等度で、治療によって解消するか安定化しました。ただし、重度のARIAが1.6%に生じ、うち2例はそのために死亡しました。また、別の1例が重度ARIAの後に亡くなっています。認知症治療を研究する英国の精神科医Robert Howard氏はARIAを重くみており、donanemabはエーザイのlecanemabと同じぐらい危険なようだ(Looks as dangerous as lecanemab)とTwitterに投稿しています3)。lecanemabの試験に携わったソルボンヌ大学の神経科医Nicolas Villain氏の懸念はさらに大きいようで、donanemabのほうがより有害かもしれないと心配しています4)。そのような心配の声が上がる一方で、いわゆるアミロイド仮説を支持する科学者の多くはAβがアルツハイマー病の少なくとも有意な要因であることがdonanemabの今回の第III相試験でさらに確実になったとみるでしょう4)。たとえ害を差し引いた価値がいまひとつだったとしてもアミロイド蓄積を除去あるいは防ぐより有効で安全な手段の発案へと通じると期待できます。英国成人の5人に1人が不快な音をやり過ごせない音嫌悪症英国成人の約5人に1人(18%)は他の人がくちゃくちゃ言わせて物を食べたり鼻をすすったりするなどして生じる特定の不快な音をやり過ごせずに苦しむ音嫌悪症と推定されました5)。不快な音への一般的な反応は「いらつき」ですが、音嫌悪症の人は不快な音の出どころから離れられないと行き詰まってどうしようもなくなって何も手につかなくなります。また、音に過敏すぎることは自分に非があるとして自分を責めます6)。5人に1人もが音嫌悪症と推定されたにもかかわらず、そうと自覚していた人はほとんどおらずたった2.3%のみでした。不快な音で行き詰まってしまう音嫌悪症の人をそれが自分だけではないと今回の結果は安心させるに違いありません7)。音嫌悪症がよくある現象であることを今回の結果は示しました。音嫌悪症がどれほどひどいと体に差し障るかや治療が必要になるかなどを今後の研究で調べる必要があります。参考1)Lilly's Donanemab Significantly Slowed Cognitive and Functional Decline in Phase 3 Study of Early Alzheimer's Disease / PRNewswire2)Alzheimer’s drug donanemab: what promising trial means for treatments / Nature3)Robert Howard氏Twitter投稿4)‘It’s not a miracle drug’: Eli Lilly’s antibody slows Alzheimer’s disease but safety issues linger / Science5)Vitoratou S, et al. PLoS One. March 22, 2023. [Epub ahead of print]6)About a Fifth of Us Are Hypersensitive to Sounds / MedScape7)Nearly one in five UK adults may have misophonia, experiencing significant negative responses to sounds / Eurekalert

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夢で記憶が定着、レム睡眠とノンレム睡眠はどちらが重要?

 脳は睡眠中に記憶の整理などを行っていることが、近年明らかになっている。また、睡眠中には起床時の記憶が夢に登場することがあるため、夢が記憶の定着に関連しているのではないかといわれている。そこで、米国・ファーマン大学のLauren Hudachek氏らは、学習課題に関連する夢と睡眠後の記憶との関連について、システマティックレビューおよび16試験のメタ解析を実施し、夢と記憶の間には関連があることが明らかになった。また、記憶はレム睡眠よりもノンレム睡眠との関連が大きいことも示唆された。Sleep誌オンライン版2023年4月14日号の報告。 Pubmed、PsycInfo、Google Scholarより、「睡眠前に学習課題を実施し、睡眠後の記憶を検討した研究」「睡眠後の記憶向上と、夢に学習課題の内容がどの程度組み込まれているかを関連付けた研究」を検索した。その結果、16試験(効果数:45)が抽出された。これらについてメタ解析を実施し、学習課題に関係する夢と記憶の向上との関連を検討した。また、睡眠の種類(レム睡眠、ノンレム睡眠)、記憶の種類(陳述記憶[イメージや言語として想起でき、内容を陳述できる記憶]、手続き記憶[技能・習慣などの記憶]、空間記憶[空間や場所に関する認知記憶])別のサブグループ解析を実施した。関連の強さは標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を推定して評価した。 主な結果は以下のとおり。・学習課題に関連する夢と記憶について、有意かつ強い関連が認められた(SMD=0.51、95%CI:0.28~0.74、p<0.001)。・睡眠ポリグラフ検査を用いてレム睡眠中の夢(効果数:12)、ノンレム睡眠中の夢(効果数:10)と記憶の関連を検討した研究について解析した結果、ノンレム睡眠中の夢は記憶と有意な関連が認められたが(SMD=0.75、95%CI:0.23~1.28、p=0.010)、レム睡眠中の夢は記憶と有意な関連は認められなかった(SMD=0.32、95%CI:-0.09~0.74、p=0.116)。・記憶の種類(陳述記憶、手続き記憶、空間記憶)にかかわらず、学習課題に関連する夢と記憶について、有意な関連が認められた(いずれもp<0.05)。 著者らは「本研究により、学習課題に関する夢を見ることが記憶の増強と関連することが示され、夢の内容が記憶の定着の指標となる可能性が示唆された。さらに、夢と記憶の関係は、ノンレム睡眠のほうがレム睡眠と比較して強い可能性も示唆された」とまとめた。

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CGRPモノクローナル抗体に反応しやすい日本人片頭痛患者の特徴

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチドモノクローナル抗体(CGRPmAb)は、頭痛障害が従来の予防的治療オプションに奏効しない片頭痛患者にとって有用な薬剤であると考えられる。しかし、日本国内におけるCGRPmAbの使用実績は2年と短く、治療反応が得られやすい患者とそうでない患者を治療前に判別することは困難である。慶應義塾大学の井原 慶子氏らは、CGRPmAbに奏効した日本人片頭痛患者の臨床的特徴を明らかにするため、リアルワールドデータに基づいた検討を行った。その結果、年齢が高く、過去の予防薬治療失敗の合計回数が少なく、免疫リウマチ性疾患の病歴のない片頭痛患者は、CGRPmAbに対する良好な治療反応が期待できることが示唆された。The Journal of Headache and Pain誌2023年3月9日号の報告。 対象は、2021年8月12日~2022年8月31日に慶應義塾大学病院を受診し、3種類のCGRPmAb(エレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブ)のいずれかを3ヵ月以上処方された日本人片頭痛患者。痛みの質、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、過去の予防薬治療失敗の回数など、対象患者の基本的な片頭痛の特徴を収集した。治療反応者の定義は、治療3ヵ月後にMMDが50%以上低下した患者とした。治療反応者と非反応者におけるベースライン時の片頭痛の特徴を比較し、ロジスティック回帰分析を用いて、統計学的な有意差を検証した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象の患者数は、合計101例(ガルカネズマブ:57例、フレマネズマブ:31例、エレヌマブ:13例)であった。・治療3ヵ月後の治療反応者は55例(54%)であった。・治療反応者と非反応者を比較すると、治療反応者は非反応者よりも年齢が有意に高く(p=0.003)、MHD(p=0.027)および過去の予防薬治療失敗の合計回数(p=0.040)が有意に少なかった。・日本人片頭痛患者におけるCGRPmAb治療反応の正の予測因子は年齢であり、負の予測因子は過去の予防薬治療失敗の合計回数、免疫リウマチ性疾患の病歴であった。

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1

今回のキーワード感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)運動性言語(前頭葉のブローカー野)ミラーリング前適応失語症「言語遺伝子」(FOXP2遺伝子)発達性言語障害声認識(声紋)NHKの「おかあさんといっしょ」は、誰もが知っている幼児向けの音楽番組ですよね。子供は、テレビの前で、出演しているお友達たちと一緒に歌って踊りながら楽しく言葉を覚えています。どうやら歌と言葉は密接に結びついているようです。今回は、このテレビ番組をヒントに、発語(発声学習)のメカニズムを解き明かし、その起源に迫ります。どうやって言葉が出てくるの?最初に出てくる言葉(初語)は、1歳前後で、だいたい「まんま」「ぱっぱ」などです。「まんま」のように「ご飯食べたい」や「ママ来て」というさまざまな意味を持つ初語は、文としても成り立つため、一語文とも呼ばれます。そして、2歳で「でんしゃ、きた」「パパ、かいしゃ」などの二語文になっていきます。そして、4歳までには日常的な話し言葉(三語文)になっていきます。それでは、どうやって言葉が出てくるのでしょうか? ここから、発語(発声学習)のメカニズムを2つに分けて考えてみましょう。(1)発音を聞き分ける1つ目のメカニズムは、母音と子音のそれぞれの発音(音素)を聞き分けることです。このプロセスは、ちょうど1歳の初語が出てくるまで行われます。逆に、1歳以降は新しい発音の自然な学習が難しくなります。たとえば、日本語にない英語のLとRの発音は、その学習を1歳以降にしても、自然な聞き分けが難しくなります1)。逆に言えば、1歳になるまでの赤ちゃんは、英語のLとRを潜在的に聞き分ける能力を持っていると言えます。つまり、音素を聞き分ける能力の臨界期は1歳までということになります。臨界期があるのは、1歳以降は、1つ1つの音素を聞き分けるのではなく、すでに学習した音素の連続したかたまり(言葉)を聞き取ることに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからであると考えられます。脳科学的に言えば、これらは感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)の発達です。(2)発音をまねる2つ目のメカニズムは、発音(音素)をまねることです。その前段階が喃語(乳児が発する意味のない声)です。そして、1歳前後になると発音しやすい音素から試すようになります。それが「ま」や「ぱ」なのです。初語が「ママ」であるのは、ママがママと呼ばせようとしたからというよりも、赤ちゃんが発音しやすいからでしょう。実際に、ほとんど言語の幼児語としての親の呼び名は「ママ」「パパ」のように呼びやすいものです。日本語の古語でも、母(はは)は「ぱぱ」「ふぁふぁ」、父(ちち)は「てて」「てぃてぃ」です2)。呼びやすさの観点から、昔の日本人はママを「ぱぱ」と呼んでいたのは納得できます。また、「ママ」のように音素を2回繰り返すのは、その方が赤ちゃんにとってインパクトがあり、また「て・に・を・は」などの機能語と区別できて、学習しやすいからであると考えられます。だからこそ、「手」「目」ではなく「おてて」「おめめ」なのです。よって、幼児期は「ないないするよ」「バイバイね」などの幼児語を周りが好んで使う方が、言葉の学習は進むでしょう。さらには、赤ちゃんが言った言葉を親などが繰り返すこと(ミラーリング)で、赤ちゃんの発音にフィードバックが働きます。こうして、言葉の発音を学んでいくのです。まさに、「学ぶ」の語源の「まねぶ」に通じます。なお、ミラーリングの詳細については、関連記事1をご覧ください。1歳以降は、音素の連続したかたまり(言葉)を聞き取るだけでなく、それを発することに脳がエネルギーを注ぐようになります。脳科学的に言えば、これは運動性言語(前頭葉のブローカー野)の発達です。こうして、音素を次々と切り替え素早く並べて、言葉にすることができるようになっていくのです。歌と言葉の関係は?「おかあさんといっしょ」では、「みんな~おっどろ~!」とリズムで呼びかけたり、歌のリズムに合わせてしりとりや言葉遊びをしています。このように、とくに発声学習の観点では、歌と言葉は切っても切り離せないようです。それは、なぜでしょうか?この答えは、進化の歴史から、発語は、歌の発声が進化の土台(前適応)になっていると考えられているからです3)。前適応とは、ある機能が進化の過程で別の機能に転用されている場合、もとの機能を指す用語です。たとえば、揚力を生み出す鳥の羽の前適応は、もともと羽毛による保温であったと考えられています3)。また、コイがほかの魚と違って高い音を聞き取ることができるのは、浮くための浮袋が内耳とつながるよう進化したからでした。つまり、コイの聴覚の前適応は浮袋による浮上だったと考えられています。同じように、歌うこと(発声)がまず先にあって、その後に話すこと(発語)が生まれたと考えられます。実際に、脳血管障害による失語症では、話せなくなったけど歌えるという場合があります。これは、言語の領域が左脳で優位であるのに対して、歌唱の領域は右脳を含め広範囲だからです。つまり、脳の機能としても、話すこと(発語)は、歌うこと(発声)をベースとしていることがわかります。このことからも、失語症へのリハビリとして、歌うことが注目されています4)。また、このことから、外国語を話せるようになるためには、まずその外国語の歌を歌うと学習の効果が上がりそうです。なお、歌の起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 2

いつ言葉は生まれたの?発語(発声学習)のメカニズムは、発音(音素)を聞き分ける、発音(音素)をまねることであることがわかりました。そして、進化の歴史上、発語は歌うことの後に生まれたことがわかりました。それでは、いつ言葉は生まれたのでしょうか?その答えは、約20万年前(厳密には20万年前から約15万年前までの間)と考えられています。この根拠は、主に3つあります5)。(1)現生人類が誕生した時期1つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生した時期です。遺跡の発掘調査から、現代人と解剖学的にほぼ同じ骨格のサピエンスの化石で最も古い年代は約20万年前であることが定説となっています。なお、モロッコで出土した初期サピエンスの化石の年代が約30万年前であることが2017年に判明しましたが、頭蓋骨の形状が現生サピエンスとはやや異なっていた点で、言葉を持たなかったと推測されています。(2)現生人類がアフリカ内で拡散し始めた時期2つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカ内で拡散し始めた時期です。古代ゲノム学の研究から、サピエンスが誕生地の東アフリカからアフリカの各地に拡散したなかで最も古い時期が、サピエンスの誕生と同じ時期の20万年前であることがわかっています。また、アフリカ内での人種分岐は14万年前~13万年前であることがわかっています。言葉の出現が、高度な道具の発明を可能にして拡散を促進した可能性が示唆されます。逆に、拡散が始まった時点で、まだ言葉(言語併合)が生まれていなかったとしたら、そのまま言葉を持たない文化の部族や人種が存在してもいいことになります。しかし、そのような部族は現存していません。もちろん、そんな部族はすでに絶滅した可能性も考えられます。(3)現生人類に「言語遺伝子」があること3つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)に「言語遺伝子」(FOXP2遺伝子)があることです。実際の臨床では、この遺伝子の変異によって発達性言語障害を引き起こすことがわかっています。これは、全般的な知的能力に問題はないのに、言語能力に限って著しい困難があることです。なお、古代ゲノム学の研究によって、約4万年前までサピエンスと共存していたネアンデルタール人とデニソワ人(この2つの人類亜種の共通の祖先は約80万年前にサピエンスと分岐)も、このFOXP2遺伝子を持っていることが判明し、言葉を話していた可能性が考えられていました。しかし、転写因子の結合に影響を与える置換が違うことが指摘されたことで、この遺伝子の発現の調節がうまくいかず、やはり言葉を話せなかったと推定されるに至っています。彼らは、言葉が生まれなかったことで、高度な道具を発明することができず、約7.5万年前に主たる出アフリカによって急激に増えたサピエンスとの生存競争に負けた(多少の異種交配はありつつも)と考えられています。ちなみに、「言語遺伝子」(FOXP2)の突然変異は、約6千万年前からの哺乳類の進化の過程で3回、そのうち2回は人類が誕生してからであることがわかっています6)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 3

どうやって言葉は生まれたの?言葉が生まれた時期が、約20万年前(~約15万年前)であることがわかりました。それでは、どうやって言葉は生まれたのでしょうか? ここから、発語(発声学習)が生まれた要因を主に2つに分けて迫ってみましょう。なお、厳密に言えば、言葉は、発語、象徴、統語の主に3つの機能があります。今回は、発語にフォーカスしています。(1)うまい歌声を出す人類が歌うようになってから、歌の良し悪しによって結婚相手に選ばれるかが決まったのでしょう。つまり、より良い歌声を持つ人が選ばれ子孫を残すという淘汰圧がかかりました。こうして、喉・口・舌などの声道(発声器官)の構造が進化しました。さらに、この進化に連動して、それらを司る脳内の運動性言語(前頭葉のブローカー野)が進化しました。1つ目の発語が生まれた要因は、うまい歌声を出すことです。これが結果的に、小鳥のさえずりのように、多様な音素の発声をもたらしたのです。まず、舌や唇の位置取りによって子音が生まれたのでしょう。さらに、声道内の2つの違う音(周波数)の共鳴ができるようになって母音(共鳴音)が生まれたのでしょう。これらの子音と母音の組み合わせが、発語の起源なのです。また、人類は、共鳴音をより安定させるため、つまりより美しい歌声を出すために、進化の過程で声帯にある声帯膜と声帯嚢を消失させたと考えられています7)。これらは、チンパンジーなどの類人猿には存在する器官です。これらが存在することで、声帯の振動が不規則になり、彼らは逆にガラガラ声やかすれ声などのより「汚い」唸り声を大音量で出して、天敵や恋敵を威圧することができます。つまり、類人猿は安定しないけれど大音量の音源(声帯)で声を出すのに対して、人類は大音量ではないけれど安定した音源(声帯)で声を出すように進化したのでした。そもそも、人類は集団で天敵に対抗するようになったため、個人で大声や唸り声を出す必要がなくなっていたのでした。なお、発声学習が人間よりも進化している動物は、オウムやインコなどです。これらの喉には、鳴管という発声器官があり、人間の言葉(音素)をまねて自由自在に「オウム返し」をすることができます。この声まねは、天敵から身を守る擬態の一種と考えられています。(2)うまい歌声を聞き分ける歌う人類が増えるということは、当然ながらその歌を聞き取れる人類も増えます。ということは、歌の良し悪しがわかる人がより良い歌声を持つ人を結婚相手に選ぶでしょう。つまり、「良い声」を聞き分ける「良い耳」を持つ人が子孫を残すという淘汰圧がかかりました(共進化)。共進化とは、1つの機能(生物学的要因)が別の機能に影響を及ぼして共に進化していくことです。こうして、耳(聴覚器官)の構造が進化しました。この進化に連動して、それらを司る脳内の感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)が進化しました。2つ目の発語が生まれた要因は、うまい歌声を聞き分けることです。これが結果的に、多様な発音(音素)の識別をもたらしたのです。さらには、声の主を聞き分けることも進化したでしょう。これは、単に声の高さ(音高)によって男性か女性か子供かを聞き分けるだけでなく、母音の発音(共鳴音の音素)によって特定の誰かを聞き分けることです。なぜなら、集団生活をするなか、夜中や洞窟の中などの暗闇で頼りになったのは、顔や姿ではなく、単なる唸り声(音高)でもなく、かけ声(共鳴音の音素)だったと考えられるからです。これが、声認識(声紋)の起源です。たとえば、歌詞のないハミングよりも歌詞のある歌のほうが、声当ての正答率は明らかに高いでしょう。後編では、発声学習のメカニズムと起源を踏まえて、音感について掘り下げます。そして、より良い音楽教育、そしてより良い幼児教育を考えます。1)「言語の獲得・進化・変化」P86、P198:遊佐典昭、開拓社、20182)「昔の人は「はは(母)」をどう発音したか?」:2015年3)「こころと言葉」P30:長谷川寿一、東京大学出版会、20084)「歌うことは脳卒中後の失語症からの回復に役立つ可能性」:ケアネットHealthDay news、20235)「言語の獲得・進化・変化」P188、P189、P199:遊佐典昭、開拓社、20186)『「つながり」の進化生物学』P95:岡ノ谷一夫、朝日出版社、20137)「特集 鳴く動物 話すヒト」P34:日経サイエンス2023年1月号、日経サイエンス社<< 前のページへ■関連記事アンパンマン【その顔はおっぱい?】映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 1

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5月4日 ゴーシェ病の日【今日は何の日?】

【5月4日 ゴーシェ病の日】〔由来〕非常にまれな疾患であるゴーシェ病を、多くの人に知ってもらうことを目的に同疾患の啓発活動や患者の早期の診療への活動を行っている「日本ゴーシェ病の会」が制定。同会の活動開始日(2015年)と「ゴ(5)ーシ(4)ェ」と読む語呂合わせからこの日になった。関連コンテンツゴーシェ病【ダイジェスト版】ゴーシェ病【希少疾病ライブラリ】早期診断が重症化を遅らせるゴーシェ病

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女性の認知症、出産回数・初産年齢との関連は弱い

 出産回数の多さや初産の年齢の高さが女性の認知症リスクと関連しているとされ、妊娠に伴う生理学的な変化への曝露と説明されてきた。しかし、社会経済学的およびライフスタイルの要因が関連しているとも考えられ、男性でも同様のパターンがみられる可能性がある。デンマーク・Statens Serum InstitutのSaima Basit氏らは、女性の出産回数の多さや初産の年齢の高さと認知症リスクとの関連性について、男女両方に当てはまるかを検討した。その結果、子供の数や親になる年齢と認知症リスクとの関連性が男女間で同様であることから、社会経済学的およびライフスタイルの要因が認知症リスクと関連している可能性が示唆された。BMC Neurology誌2023年3月1日号の報告。 対象は、1994~2017年にデンマークで40歳以上であった女性(222万2,638人)および男性(214万1,002人)。Cox回帰を用いて、子供の数および初産の年齢と認知症リスクとの関連を男女別に評価した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中の認知症発症は女性8万1,413人、男性5万3,568人、診断時の年齢中央値は女性83.3歳、男性80.3歳であった。・子供が2人以上の家庭は、子供1人の家庭と比較し、男女ともに全体的な認知症リスクがわずかに低かった(ハザード比[HR]範囲:0.82~0.91、p difference men vs.women=0.07)。・子供がいない場合の全体的な認知症リスクとの関連性は、男性と女性で統計学的な差が認められたが、その違いはわずかであった(男性のHR:1.04[95%CI:1.01~1.06]、女性のHR:0.99[95%CI:0.97~1.01]、p=0.002)。・親になる年齢と全体的な認知症リスクとの関連性も男女間で類似していたが、40歳以上の高齢での初産の場合は例外的であった(男性のHR:1.00[95%CI:0.96~1.05]、女性のHR:0.92[95%CI:0.86~0.98]、p=0.01)。・認知症のサブタイプと発症時期によるサブグループ解析では、いくつかの例外を除き、パターンおよび効果の大きさ(effect magnitude)は、男女間で同様であった。・通常の妊娠による生理学的な変化よりも、ライフスタイルや社会経済学的な要因が認知症リスクと関連している可能性が高いことが示唆された。

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ミトコンドリアはアルツハイマー病の予防や治療の新たな扉を開くか

 アルツハイマー病リスクが高い人の特定は、予後や早期介入に重要である。縦断的な疫学研究では、脳の不均一性と加齢による認知機能低下が観察されている。また、脳の回復力は、予想以上の認知機能として説明されてきた。この「回復力(resilience)」の構造は遺伝的要因や年齢などの個人的特性と相関することが示唆されている。さらに、アルツハイマー病の病因とミトコンドリアの関連がこれまでのエビデンスで確認されているが、遺伝学的指標(とくにミトコンドリア関連遺伝子座)を通じて脳の回復力を評価することは難しかった。 中国・華中農業大学のXuan Xu氏らは、多遺伝子リスクスコア(PRS)により個人の脳の回復力レベルは特徴付けられるか、ミトコンドリア関連遺伝子座がPRSのパフォーマンスを改善し、アルツハイマー病の予防や診断において信頼性の高い指標となりうるかを調査した。その結果、脳の回復力を特徴付けるPRSの能力が確認され、さらに、いくつかのミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むことで、脳の回復力の評価におけるPRSのパフォーマンスが向上する可能性が示唆された。Journal of Advanced Research誌オンライン版2023年3月14日号の報告。 探索サンプル1,550件および独立した検証サンプル2,090件を用いて、生物学的および統計学的側面からミトコンドリア関連遺伝子座を含む9種のPRSを構築し、それらをゲノムワイド関連解析(GWAS)から得られた既知のアルツハイマー病リスク遺伝子座と組み合わせた。個人の脳の回復力レベルは、8つの病理学的特徴を用いた線形回帰モデルにより包括的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・PRSは、脳の回復力レベルを特徴付けることが確認された(ピアソン相関検定:Pmin=7.96×10-9)。・少数のミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むと、PRSモデルのパフォーマンスを効率的に改善できることが示唆された(P値改善範囲:1.41×10-3~6.09×10-6)。・いくつかのミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むことで、脳の回復力を評価する際のPRSパフォーマンスが有意に向上する可能性が示唆された。・脳の回復力に重要な役割を果たしている可能性があるミトコンドリアを標的にすることにより、アルツハイマー病の予防や治療の新たな可能性につながることが示唆された。

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ビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

 ビタミンD活性代謝物は、神経免疫調節や神経保護特性を有する。しかし、ヒドロキシビタミンDの血清レベルの低さと認知症リスク上昇の潜在的な関連については、いまだ議論の的である。イスラエル・ヘブライ大学のDavid Kiderman氏らは、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の血清レベルの異なるカットオフ値において、ビタミンD欠乏症と認知症との関連を調査した。その結果、不十分なビタミンDレベルは認知症との関連が認められ、ビタミンDが不足または欠乏している患者においては、より若年で認知症と診断される可能性が示唆された。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2023年3月8日号の報告。 イスラエル最大の医療保険組織Clalit Health Services(CHS)のデータベースより、患者データを収集した。各被験者について、調査期間中(2002~19年)の利用可能なすべての25(OH)D値を取得した。認知症の発症率は、25(OH)Dレベルの異なるカットオフ値で比較した。 主な結果は以下のとおり。・本コホート研究の対象は、患者4,278例(女性:2,454例[57%])であった。・フォローアップ開始時の平均年齢は、53±17歳であった。・17年間のフォローアップ期間中に認知症と診断された患者は133例(3%)であった。・完全に調整された多変量解析では、血清25(OH)Dの平均値が75nmol/L未満(ビタミンD欠乏)の患者は、同75nmol/L以上(基準値)の患者と比較し、認知症リスクが約2倍高かった(オッズ比:1.8、95%信頼区間:1.0~3.2)。・ビタミンDの欠乏(77 vs.81、p=0.05)および不足(77 vs.81、p=0.05)が認められる患者は、基準値の患者と比較し、より若年で認知症と診断された。

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大気汚染と認知症リスク (解説:岡村毅氏)

 黄砂の飛来がニュースになっているが、タイムリーに大気汚染が認知症発症とも関連するかもしれないという報告だ。喫煙等と比べると認知症発症に与える影響は小さいが、何せ逃げることができないリスクなので、人々への影響は大きい。 なお本論文では主にPM2.5を扱っているが、これは大気中に浮遊している直径2.5μm以下の小さな粒子を指し、化石燃料をはじめとする工業活動で排出されるものである。黄砂とは中国やモンゴルの乾燥域から偏西風に乗って飛んでくる砂塵であり、その大きさは4μm程度であるからほとんどがPM2.5ではない。 長期的にはPM2.5も黄砂も中国では減少傾向にあることも押さえておこう。一方でPM2.5は地球全体では工業化と共に増えている。 本研究は、これまでの大気汚染と認知症発症の報告のメタアナリシスであり、関連があると結論している。2μg/m3増加当たりのハザード比は全体では1.04(95% CI:0.99~1.09)と一見とても小さい。 しかし環境汚染と健康の研究では大体これくらいである。大気汚染による心血管疾患等で世界では年間700万人近くが死亡しているという報告もある1)。そして、その多くは発展途上国である。 とはいえ、このような研究ではバイアスの問題が難しい。そもそも認知症の診断技術は一貫して上がっており、診断は増えている。また大気汚染区域に住む人は貧困や学歴資本の少ない人が多い可能性があり(日本ではそのような可能性があるのかどうかは知らない)、これら自体が認知症発症リスクである。この論文はバイアスを厳密に評価したところも特徴である。 また認知症発症についても、個別に確認しているもの(Active Case Ascertainment)もあれば、保険データなどを使っているもの(Passive Case Ascertainment)もある。前者は信頼性が高いが、nは少なくなるし、後者はnが大きいが、やや雑なデータと言えよう。筆者によると前者のハザード比である1.42(95%Cl:1.00~2.02)が信頼できるのではと言っている。 いずれにせよ、結論としては、大気汚染は認知症発症とも関連する可能性が高そうである。きれいな空気が頭にも体にもよいというのは、われわれの直感とも一致する。 最後は精神科的な意見で終わっておこう。認知症リスクも増えるのだからクリーンエネルギーにしないといけません、と安易に言ってしまうと、「だからどうした」「それは意識高い系のたわごとだ」「フェイクニュースだ」「自分は石炭産業で食ってるんだ」「先進国はさんざん好き放題やってきて、いまになって上から目線だ」といった反論が来そうである。科学とは別の次元の二項対立は避けつつも、こうやって科学論文にすることに大きな意味がある。残念ながら人々が豊かな生活を夢見て行う古典的工業活動が大気汚染を起こし、大気汚染によってさまざまな病気(呼吸器系や心血管系)が増えているうえに、認知症までも増えるという事実を静かに噛みしめたい。

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特殊詐欺とヒトの心理【外来で役立つ!認知症Topics】第4回

先日、弁護士たちと飲み会をした。その席で、お互いに関係しそうな今日の話題「特殊詐欺」に話が及んだ。「特殊詐欺は不安をあおる心理学作戦に立つ犯行だ。うまくいけば、犯人には濡れ手に粟ながら、このような作戦にはオリジナリティがいる。それだけにネタは限られ、簡単ではない。しかも募集によって、初めて会った悪者同士がチームプレーをせねばならない。それだけに連携ミスにつながりやすい。だから、この種の特殊詐欺から、今流行りの単純な強盗へとシフトする悪者グループが生まれる」とある弁護士が言った。これを受け、私はやられてしまう被害者の心理背景を考えてみた。古典的な詐欺と新手の詐欺の違いとは?オレオレ詐欺などの古典的な特殊詐欺の幕開けは、驚愕とともに恐れや不安といった被害者の基本情緒が揺り動かされることにある。オレオレに限らず、始まりは預貯金、キャッシュカード、架空料金請求など、どれにも共通だろう。逆に、新手とされる国際ロマンス詐欺は恋愛にもうけ話がミックスした、いかにもおいしそうな騙しのストーリー展開である。同じく新手とされる高級ブランド詐欺や海外投資の詐欺は、「この儲け話には特殊な背景があるから確度が高い」と騙す。また以前からあるのだが、コロナ禍で有名になったものに還付金詐欺がある。これらはどれも時宜を得た話題に儲けを結びつけた話を、いわば理論武装してヒトの欲を誘う。ヒトの情緒形成の初期に芽生える「快」・「不快」さてこれらに共通する心理学的要因を考えてみた。ブリッジェス(K. M. B. Bridges)という学者が提唱した情緒の分化樹形図という有名な説がある。その説では、生まれ、成長していく過程において、情緒はより高度なものへと分化していくと考える。2歳までに基本的な情緒の細分化がみられ、5歳頃には成人と同等の情緒が形成される。具体的には、新生児期の情緒は「興奮」のみだが、その後「快」・「不快」という2大情緒に分化する。そして生後数ヵ月で「不快」から恐れや怒りが分化してくる。すなわち、恐れは「不快」の大本からでた最初期の枝である。そしてこれは本来、危機回避のためにヒトに備わっている本能的な感情だと言われる。一方で「快」からは、早々に得意とか愛情が分化してくる。つまりこれらは、「快」の大本から出た初めの枝である。図1 情緒の分化樹形図画像を拡大する老化しようと認知機能が衰えようと、最初期にできたものは頑強で最後まで残ることは、情緒に限らずヒトの機能の多くに共通である。つまりオレオレ詐欺系は、「不快」から分化してヒトに根本的で強い「恐れ」に対する強烈なパンチから始まる。これはある意味わかりやすい。逆に新手のもうけ話は、「快」から早々に分化した得意とか愛情という、これも根強い原始情緒に結び付いている。たとえば、国際ロマンス詐欺は「快」が分化した愛情を突くものだろう。また高級ブランド詐欺や海外投資の詐欺などは「快」から分化した「得意」の情緒を満たしてくれるものかもしれない。「欲」と「孤独感」という弱点を突く詐欺ところでヒトには52種類の感情があるとされるが、何故かその中に「欲」がない。たとえば愛情や金銭に絡めて「…が欲しい」という情や心の方向性が「欲」だろう。心理学とは無縁そうだが、井原 西鶴は代表作『好色一代男』において「人間は、欲に手足の付いたる物ぞかし」と述べている。確かに、欲はこうした詐欺を考える上でも不可欠な視点である。要するに、オレオレ系に対しては、家族の安全や財産等を失いたくないという守りの欲が働く。また新手詐欺系では、もてる、儲かるなど、「もっともっと」の欲が刺激される。さて高齢者の心理特性の一つは孤独感だと思う。この孤独感は不安や恐れと強く結び付いているだろう。それだけにこの不安や恐れにいきなりパンチが当てられると、大概の高齢者は平常心を失うだろう。また、一見裏腹に見えるかもしれないが、新手詐欺もこの孤独感とのリンクがありそうだ。というのは、愛情や得意というのは、孤独下にあれば、一番得難いものだろう。新手詐欺は、そこに餌を垂らす犯罪だと考えれば、これもまた高打率のだましにつながるのだろう。特殊詐欺の被害者の9割弱が高齢者だとされる。これは認知機能低下の故ではないだろう。むしろこの孤独感が大きな原因だと考える。一方、少なくとも私の経験では、認知症の人はこうした特殊詐欺には引っかからない。というのは、犯人が繰り出す手口は、当事者にとっては難しすぎて、とても彼らの指示に従うことはできないだろう。実際のところ、やられてしまうのは、電話勧誘販売や家庭訪販(自宅を訪問して、商品やサービスなどを勧める商法)とかテレビショッピングという古典的で単純なものである。私が経験した限りでは、こうした状況で気安くサインをしたり、電話で注文したりすることでやられてしまうのである。

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片頭痛予防、日本人患者と医師の好みは?

 現在、日本における片頭痛の予防には、自己注射可能なカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体(mAb)のオートインジェクター(AI)製剤、非CGRPの経口剤などが利用可能である。米国・EvideraのJaein Seo氏らは、CGRP mAbのAI製剤と非CGRPの経口剤に対する日本人患者および医師の好みを調査し、両者にとってのAI製剤の相対的な重要性の違いを測定しようと試みた。その結果、多くの片頭痛患者および医師は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好むことが確認された。本結果から著者らは、日本人医師が片頭痛の予防治療を勧める際には、患者の好みを考慮する必要性が示唆されるとしている。Neurology and Therapy誌2023年4月号の報告。 反復性(EM)または慢性(CM)の片頭痛を有する日本人の成人患者および片頭痛を治療する医師を対象に、オンラインによる離散選択実験(DCE)を実施し、自己注射可能なCGRP mAbのAI製剤と非CGRP経口剤の2つについて好ましい仮説的な治療法を選択するよう依頼した。治療法は7つの治療属性で記述され、質問ごとに属性レベルは異なっていた。CGRP mAbの治療プロファイルの相対帰属重要度(RAI)スコアおよび予測選択確率(PCP)を推定するため、ランダム定数ロジットモデルを用いてDCEデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛を有する601人(EMの割合:79.2%、女性の割合:60.1%、平均年齢:40.3歳)および医師219人(平均勤続年数:18.3年)がDCEを完了した。・患者の約半数(50.5%)がCGRP mAbのAI製剤を支持しており、他の患者は同製剤に懐疑的(20.2%)または嫌悪感(29.3%)を示していた。・患者が最も重視した項目は、針の除去(RAI:33.8%)、注射時間の短縮(同:32.1%)、オートインジェクターの形状および皮膚圧迫の必要性(同:23.2%)であった。・多くの医師(87.8%)は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好んでいた。・医師が最も重視した項目は、投与頻度の少なさ(RAI:32.7%)、注射時間の短縮(同:30.4%)、冷蔵庫外での保管期間の延長(同:20.3%)であった。・治療プロファイルは、ガルカネズマブ(PCP:42.8%)が、エレヌマブ(同:28.4%)およびフレマネズマブ(同:28.8%)より、患者に選択される可能性が高かったが、医師の評価では3製剤のプロファイルのPCPは同程度であった。

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第159回 アルツハイマー病行動障害の初の承認薬誕生近し?/コロナ肺炎患者への欧米認可薬の効果示せず

アルツハイマー型認知症の難儀な振る舞いの初の承認薬誕生が近づいているアルツハイマー型認知症患者の半数近い約45%、多ければ60%にも生じうる厄介な行動障害であるアジテーション(過剰行動、暴言、暴力など)の治療薬が米国・FDAの審査を順調に進んでいます。大塚製薬がデンマークを本拠とするLundbeck社と開発した抗精神病薬ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ)は昨夏2022年6月に速報された第III相試験結果でアルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(agitation associated with Alzheimer’s dementia、以下:AAD)を抑制する効果を示し1)、今年初めにその効能追加の承認申請がFDAに優先審査扱いで受理されました2)。アジテーションは誰もが生まれつき持つ感情や振る舞いが過度になることや場違いに現れてしまうことであり、多動や言動・振る舞いが攻撃的になることを特徴とします。アジテーションは患者本人の生きやすさを大いに妨げるのみならずその親しい人々をも困らせます。第III相試験では徘徊、怒鳴る、叩く、そわそわしているなどの29のアジテーション症状の頻度がプラセボと比較してどれだけ減ったかがCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)という採点法によって調べられました。29のアジテーション症状それぞれの点数は1~7点で、点数が大きいほど悪く、症状がない(Never)場合が1点で、1時間に繰り返し認められる場合(Several times an hour)は最大の7点となります。試験にはAAD患者345例が参加し、ブレクスピプラゾール投与群の12週時点のCMAI総点がプラセボ群に比べて5点ほど多く低下し、統計学的な有意差を示しました(22.6点低下 vs.17.3点低下)3)。同試験結果をもとに承認申請されたその用途での米国審査は順調に進んでおり、先週14日に開催された専門家検討会では同剤が有益な患者が判明しているとの肯定的判断が得られています4)。FDAの審査官も肯定的で、同剤の効果はかなり確からしいとの見解を検討会の資料に記しています5)。AADを治療するFDA承認薬はありません。ブレクスピプラゾールのその用途のFDA審査結果は間もなく来月5月10日までに判明します。首尾よく承認に至れば、同剤はFDAが承認した初めてのAAD治療薬の座につくことになります。その承認は歴史的価値に加えて経済的価値もどうやら大きく、その効能追加で同剤の最大年間売り上げが5億ドル増えるとアナリストは予想しています6)。重症コロナ肺炎患者へのIL-1拮抗薬anakinraの効果示せずスペインでの非盲検の無作為化第II/III相試験でIL-1受容体拮抗薬anakinraが重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎患者の人工呼吸管理への移行を防ぐことができませんでした7)。ANA-COVID-GEASという名称の同試験は炎症指標の値が高い(hyperinflammation)の重症コロナ肺炎患者を募り、179例がanakinraといつもの治療(標準治療)または標準治療のみの群に割り振られました。プラセボ対照試験ではありません。主要転帰は15日間を人工呼吸なしで過ごせた患者の割合で、解析対象の161例のうちanakinra使用群では77%、標準治療のみの群では85.9%でした。すなわちanakinraなしのほうがその割合はむしろ高く、人工呼吸の出番を減らすanakinraの効果は残念ながら認められませんでした。侵襲性の人工呼吸を要した患者の割合、集中治療室(ICU)を要した患者の割合、ICU滞在期間にも有意差はありませんでした。それに死亡率にも差はなく、28日間の生存率はanakinra使用群と標準治療のみの群とも93%ほどでした。試験の最大の欠点は非盲検であることで、他に使われた治療薬の差などが結果に影響した恐れがあります。同試験の結果はanakinraが有効だった二重盲検のプラセボ対照第III相試験(SAVE-MORE)の結果と対照的です。欧州は600例近くが参加したそのSAVE-MORE試験結果に基づいてコロナ肺炎患者へのanakinraの使用を2021年12月に承認しています8)。SAVE-MORE試験は重度呼吸不全か死亡に至りやすいことと関連する可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(suPAR)上昇(6ng/mL以上)患者を対象としました。今回発表されたスペインでの試験結果と異なり、SAVE-MORE試験では重症呼吸不全への進展か死亡がanakinra使用群ではプラセボ群に比べて少なく済みました(20.7% vs.31.7%)9)。また、生存の改善も認められ、anakinraは28日間の死亡率をプラセボ群の半分以下に抑えました(3.2% vs.6.9%)。SAVE-MORE試験の被験者選定基準にならい、欧州はsuPARが6ng/mL以上の酸素投与コロナ肺炎患者への同剤使用を認めています10)。米国もsuPARが上昇しているコロナ肺炎患者への同剤使用を取り急ぎ認可しています11)。参考1)Otsuka Pharmaceutical and Lundbeck Announce Positive Results Showing Reduced Agitation in Patients with Alzheimer’s Dementia Treated with Brexpiprazole / BusinessWire 2)Otsuka and Lundbeck Announce FDA Acceptance and Priority Review of sNDA for Brexpiprazole for the Treatment of Agitation Associated With Alzheimer’s Dementia / BusinessWire3)Otsuka Pharmaceutical and Lundbeck present positive results showing reduced agitation in patients with Alzheimer’s dementia treated with brexpiprazole at the 2022 Alzheimer's Association International Conference / BusinessWire4)Otsuka and Lundbeck Issue Statement on U.S. Food and Drug Administration (FDA) Advisory Committee Meeting on REXULTI® (brexpiprazole) for the Treatment of Agitation Associated with Alzheimer’s Dementia / BusinessWire5)FDA Briefing Document6)Otsuka, Lundbeck head into key FDA panel meeting with agency support for their Rexulti application / FiercePharma7)Fanlo P, et al. JAMA Netw Open. 2023;6:e237243.8)COVID-19 treatments: authorised / EMA9)Kyriazopoulou E, et al. Nature Medicine. 2021;27:1752-1760.10)Kineret / EMA11)Kineret® authorised for emergency use by FDA for the treatment of COVID-19 related pneumonia / PRNewswire

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肺機能と認知症リスク~43万人超のコホート研究

 脳の認知的な健康に、肺機能が他の因子と独立して影響を及ぼすかはよくわかっていない。中国・青島大学のYa-Hui Ma氏らは、肺機能と脳の認知的な健康の縦断的な関連性を評価し、根底にある生物学的および脳の構造的なメカニズムを明らかにしようと試みた。その結果、認知症発症の生涯リスクに対する個々の肺機能の影響が確認され、著者らは、「最適な肺機能の維持は、健康的な加齢や認知症予防に有用である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌2023年3月号の報告。 UK Biobankのデータより、肺機能検査を実施した非認知症の43万1,834人を対象に、人口ベースのコホート研究を実施した。肺機能低下の認知症発症リスクを推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。炎症マーカー、酸素運搬指数、代謝物、脳の構造によって引き起こされる根本的なメカニズムの調査には媒介分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・373万6,181人年のフォローアップ期間中(平均:8.65年)に、すべての原因による認知症は5,622人(1.30%)であった(アルツハイマー型認知症:2,511人、血管性認知症:1,308人)。・単位時間当たりの肺機能測定値の低下は、すべての原因による認知症リスクの増加と関連が認められた。 【1秒量(努力肺活量の1秒量)】ハザード比[HR]:1.24、95%信頼区間[CI]:1.14~1.34、p=1.10×10-07 【努力肺活量】HR:1.16、95%CI:1.08~1.24、p=2.04×10-05 【最大呼気流量】HR:1.0013、95%CI:1.0010~1.0017、p=2.73×10-13・肺機能の低下は、アルツハイマー型認知症および血管性認知症のリスクにおいても、同様の推定ハザード比を示した。・根底にある生物学的メカニズムとして、炎症マーカー、酸素運搬指数、特定の代謝産物は、認知症リスクに対する肺機能の影響を媒介する因子であった。・認知症で主に影響を受ける脳の灰白質および白質のパターンは、肺機能により大きな変化が認められた。・最適な肺機能を維持することは、健康的な加齢や認知症予防に役立つ可能性が示唆された。

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PM2.5曝露で認知症リスク増加の可能性~メタ解析/BMJ

 直径2.5ミクロン未満の微小粒子状物質(PM2.5)への曝露が認知症リスクの増加と関連する可能性があり、ややデータが少ないものの二酸化窒素と窒素酸化物への曝露にも同様の可能性があることが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のElissa H. Wilker氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年4月5日号に掲載された。認知症リスクと大気汚染物質の関連をメタ解析で評価 研究グループは、認知症リスクにおける大気汚染物質の役割の調査を目的に、文献の系統的レビューとメタ解析を行った(Harvard Chan National Institute of Environmental Health Sciences Center for Environmental Healthなどの助成を受けた)。 成人(年齢18歳以上)を対象に長期の追跡調査を行い、1年以上の曝露を平均化し、環境汚染物質と臨床的な認知症の関連を報告した研究を対象とした。 2人の研究者が別個に、所定のデータ抽出書式を用いてデータを抽出し、Risk of Bias In Non-randomised Studies of Exposures(ROBINS-E)の方法を用いてバイアスリスクを評価。結果に影響を与える可能性がある試験因子による違いが考慮された。オゾンには関連がない 2,080件の記録から51件の研究が適格基準を満たし、メタ解析には16件が含まれた。積極的症例確認を行った研究が9件、受動的症例確認を行った研究が7件で、それぞれ4件および7件はバイアスリスクが高いと判定された。 PM2.5については、14件の研究がメタ解析の対象となった。PM2.5の曝露量2μg/m3当たりの認知症のハザード比(HR)は1.04(95%信頼区間[CI]:0.99~1.09)であった。積極的症例確認を行った7件の研究では、HRは1.42(1.00~2.02)であり、受動的症例確認を行った7件の研究では、HRは1.03(0.98~1.07)だった。 また、二酸化窒素10μg/m3当たりのHRは1.02(95%CI:0.98~1.06)(9研究)、窒素酸化物10μg/m3当たりのHRは1.05(0.98~1.13)(5研究)であった。 一方、オゾン5μg/m3当たりのHRは1.00(95%CI:0.98~1.05)(4研究)であり、認知症との明確な関連は認めなかった。 著者は、「本研究におけるメタ解析によるハザード比には限界があり、解釈には注意が必要である」とし、「今回示された知見は、PM2.5やその他の大気汚染物質への曝露を制限することの公衆衛生上の重要性を支持し、疾病負担の評価や施策の審議を行う際に、環境汚染物質の認知症への影響に関する最良の推定値を提供するものである」と述べている。

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片頭痛患者の血清尿酸値は痛みの強さに影響しているのか

 プリン体の最終代謝産物である尿酸は、抗酸化物質として作用し、酸化ストレスと関連している。血清尿酸(SUA)は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症などの神経変性疾患の病因と関連している可能性が報告されている。しかし、片頭痛とSUAレベルとの関連を評価した研究は、これまでほとんどなかった。トルコ・Istanbul Basaksehir Cam ve Sakura City HospitalのYavuz Altunkaynak氏らは、片頭痛患者の痛みの特徴とSUAレベルとの関係を調査し、頭痛発作中および頭痛がない期間における片頭痛患者のSUAレベルを対照群と比較検討した。その結果、片頭痛患者の発作中と発作がない期間のSUAレベルの差は、痛みの強さと正の相関を示していることが報告された。Medicine誌2023年2月3日号の報告。 片頭痛患者78例、病院職員よりランダムに抽出した健康な対照群78例を対象に、プロスペクティブ横断研究を実施した。頭痛の特徴(発作持続時間、痛みの強さ、頻度)および社会人口統計学的特徴を収集した。片頭痛患者では頭痛発作中および頭痛がない期間の2回、対照群では1回、SUAレベルを測定した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者における頭痛がない期間のSUAレベルは対照群より高かったが、その差は統計学的に有意ではなかった。・頭痛発作中および頭痛がない期間のSUAレベルの変化に、性差は認められなかった。・年齢、片頭痛の持続時間、頻度、間隔と痛みの強さの関連を調査したところ、女性の片頭痛患者においてSUAレベルの差は痛みの強さと弱い相関が認められ(p<0.05、R>0.250)、男性の片頭痛患者では中程度の相関が認められた(p<0.05、R>0.516)。・頭痛がない期間と比較した頭痛発作中のSUAレベルの差に痛みの強さとの正の相関が認められたことから、SUAはその抗酸化作用により片頭痛に関与している可能性が示唆された。

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花より団子【Dr. 中島の 新・徒然草】(472)

四百七十二の段 花より団子新年度、新メンバー!どこでもそうでしょうが、ウチもようやく軌道に乗った感じです。さて、先日のこと。いきなり私を訪ねて、めまいの新患がやって来ました。残念ながら午後から出張があり診察したのはほかの先生。翌日にカルテで確認してみると、入院になっていました。30代の女性ですが、「髄液漏出症疑い」となっています。訪室してご本人にお話を伺うことに……中島「なんで私だったんですか?」患者「友達が同じような症状で、以前に中島先生に診てもらったって」その友達は半年ほど前に私が診て、髄液漏出症と診断していたみたいです。患者「彼女とそっくりだったんですよ、頭痛が」寝ていると1/10程度の頭痛が、起き上がると10/10になるそうです。病室でもベッドの上に座ったら頭が痛くなり、10秒もしたら寝てしまいました。まさしく髄液漏出症の症状です。患者「何でこんなことになってしまったんでしょうか?」以下、私なりの説明をしました。エビデンスはまったくなく、自分の経験と想像をもとにしたものです。が、まあ聞いてやってください。まず原因です。これはまさしく脳脊髄液、いわゆる髄液が漏れることによって起こります。私が思うに、漏れる場所は頚椎神経根のroot sleeveではないかと。そもそもroot sleeve(神経根の袖)というのも変な名称です。でも、その由来を知ると、これほどピッタリの呼び方もありません。長袖のワイシャツを着た人間を想像してみましょう。人間の胴体が脊髄そのものです。左右にのびた上肢が神経根。ワイシャツが脊髄を包む硬膜。そしてワイシャツと人間の間に水が貯まっていると想像してください。その水が硬膜と脊髄の間にある髄液です。で、長袖のワイシャツの袖口のボタンを留めていると水は漏れません。が、ボタンが留まっていないと袖口から水が漏れます。これが髄液漏出症の本態ではないでしょうか。私の勝手な想像ですが。髄液が漏れるメカニズムの次は、頭が痛くなるメカニズムです。これは金魚鉢の水の中に脳が浮かんでいると想像してください。金魚鉢の水が減ると、浮かんでいた脳が下に引っ張られて頭が痛くなるわけです。だから立つと頭痛がして、寝ると楽になる。そして朝は調子いいのに、昼から頭痛がひどくなるわけです。これが髄液漏出症による頭痛の正体ですね。じゃあ、何がキッカケで髄液がroot sleeveから漏れるのか?まず、まったくキッカケのない特発性のものもあります。が、よくよく聞くと、いろいろとキッカケらしいものがあったりするわけです。追突事故を食らった、遊園地でジェットコースターに乗った、手を勢いよく引っ張られた、重い荷物を持った、等々。頚を捻ったり手を引っ張られたりすることが、神経根に影響するのではないでしょうか。とくに追突事故の場合は、受傷後1ヵ月ほどで頭痛が出てきます。なので、事故との因果関係の有無で揉めがちです。これら頚の運動のほかに、急に痩せて髄液漏出症になった人も見たことがあります。神経根周囲の脂肪が減ってシールされなくなるのかもしれません。謎ですね。話をこの患者さんに戻します。中島「何か原因について思い当たることはありませんかね?」患者「いや、普通の社会人ですから、何もありませんよ」中島「たとえば、普段やりなれないスポーツをしたとか」患者「数日前にバレーボールをしたけど、そんなに真剣ではなかったです」久しぶりのバレーボールですか!この方にとっては真剣でなくても、結構激しい内容だったようです。中島「普段曲げない方向に頚を曲げたりしたのが原因かもしれませんね」患者「そう言われれば、そんな気もします」次に診断です。造影MRIとかRIシンチとかの画像診断もありますが、私はほとんどやっていません。やるのは交通事故で証拠を示す必要がある時くらいです。いつも病歴と身体所見だけで診断しています。立位や座位で頭痛が悪化し臥位で改善する、という病歴が典型的です。そのほか、湯船に浸かると頭痛が悪化する、という患者さんもいました。身体所見では以下のうちのいくつかをチェックしています。頚部の静脈を軽く圧迫するクエッケンシュテット試験で頭痛が改善する。上肢を指先に向かって引っ張る(下制)と、頭痛が悪化する。上肢を指先から肩に向かって押す(下制の逆運動)と、頭痛が改善する。上肢を挙上すると、頭痛が改善する。下制するとroot sleeveが開いて髄液が漏出するのかもしれません。挙上は下制の逆にあたる動きなので、髄液漏出が改善するのでしょうか。この患者さんの場合は、これら身体所見もピッタリ当てはまりました。なので、髄液漏出症で間違いないことと思います。最後に治療です。私の経験では30人中29人くらいは3ヵ月以内に自然に治りました。残る1人は難治性なので、ブラッドパッチをしている施設に紹介しています。自然に治るとはいえ、少しでも早く良くなりたいというのが人情です。私がお勧めしているのは、なるべくゴロゴロして暮らすというもの。ちょっと調子がいいからといって、散歩したらまた悪化します。家事は全部誰かに頼むこと。この患者さんの場合は、ご実家でゴロゴロすることに決めたようです。それと、痩せると発症するので、太ると早く治る気がします。root sleeve周辺の脂肪が増えて、シール効果が上がるのかもしれません。というわけで、半年前のカルテを確認してみました。この方のお友達にも、私は「よく食べるように」とアドバイスをしていたようです。でも、自分ではまったく記憶に残っていません。最近はいろいろと忘れてしまうことが多いですけど、ちょっと情けないですね。最後に1句漏れた水 花より団子で 治療する

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