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重度のBPSDに対する抗精神病薬の投与量の軌跡

 抗精神病薬は、認知症の行動・心理症状(BPSD)に対し、適応外で使用されることが多いが、これら薬剤の重要な副作用は懸念となる。杏林大学の多田 照生氏らは、重度のBPSDを有する認知症入院患者における抗精神病薬の長期使用状況、時間の経過とともに使用状況がどのように変化するかを調査した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2024年6月25日号の報告。 2012年10月〜2021年9月の山梨県・日下部記念病院のカルテデータをレトロスペクティブにレビューした。この研究では、認知症診断後、BPSDのために入院し、入院3ヵ月時点で抗精神病薬を使用していた患者を対象とした。抗精神病薬の投与量は、クロルプロマジン等価換算に基づき高用量群(300mg/日以上)、中用量群(100〜300mg/日)、低用量群(100mg/日未満)に分類し、入院15ヵ月までフォローアップを行った。3〜6ヵ月目における投与量の減量と関連する因子を特定するため、二項ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は188例、平均年齢は81.2歳、アルツハイマー型認知症の割合は67%であった。・3ヵ月時点での抗精神病薬の投与量は、高用量群15.4%、中用量群44.1%、低用量群40.4%であった。・平均投与量は3ヵ月目で最高に達し、その後は時間の経過とともに減少していた。・12ヵ月目までにすべての群において、20〜30%の患者は、抗精神病薬の使用が中止されていた。・投与量減少に対する重要な因子は、最初の投与量が高い(オッズ比[OR]:1.003、95%信頼区間[CI]:1.001〜1.006、p=0.01)、男性(OR:2.481、95%CI:1.251〜4.918、p=0.009)であった。 著者らは「重度のBPSDを有する認知症入院患者における抗精神病薬の投与量の軌跡は、これまで報告されていなかった。今回の研究により、脆弱な患者群に対する長期薬物療法のマネジメントにおいて、個別化した治療戦略の必要性が明らかとなった」としている。

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第225回 新しい帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下が関連

新しい帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下が関連米国の20万例強の記録を英国オックスフォード大学の研究者らが解析したところ、2017年から同国で使用されるようになった新しい組み換え帯状疱疹ワクチンであるシングリックス接種と認知症を生じ難いことが関連しました1-3)。2006年から使われ始めて7年ほど前まで最も一般的だった別の帯状疱疹ワクチンZostavaxは生きた弱毒化ウイルスを成分とします。何を隠そうZostavaxも認知症が生じ難くなることとの関連が先立つ試験で示されています。しかし今回の新たな結果によると、認知症発現を遅らせるか、ともすると防ぎうるシングリックスの効果はZostavaxに比べて高いようです。帯状疱疹は高齢者の多くに生じる深刻な疾患の1つです。ストレスや化学療法などの免疫を弱らす事態に乗じて体内に潜む水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することを原因とし、痛い皮疹を引き起こし、2次感染や傷跡を残すことがあります。帯状疱疹は加齢につれて生じ易くなることから、高齢者へのそのワクチン接種が必要とされています。米国では50歳、英国では65歳での帯状疱疹ワクチン接種が推奨されています。米国を含む多くの国で帯状疱疹ワクチンは代替わりしてより有効なシングリックスが使われるようになっており、Zostavaxは使われなくなっています。シングリックスは組み換えワクチンであり、病原体のDNAのごく一部を細胞に挿入して作られるタンパク質を成分とします。それらタンパク質が体内で感染予防に必要な免疫反応を引き出します。米国では2017年後半からシングリックスがZostavaxの代わりに使われるようになりました。オックスフォード大学のMaxime Taquet氏らは、その区切り以降にシングリックスを接種した人とそれ以前にZostavaxを接種した人の認知症の生じ易さを比較しました。選ばれた人の数はどちらも10万例強で、平均年齢は71歳です。6年間の経過を追ったところ、シングリックス接種群の認知症の発症率はZostavax接種群に比べて17%低いことが示されました。また、帯状疱疹以外のワクチン(インフルエンザワクチンと3種混合ワクチン)接種群と比べてもシングリックス接種群の認知症発症率は2~3割ほど低く済んでいました。帯状疱疹ワクチンと認知症が生じ難くなることを関連付ける仕組みは不明で、今後調べる必要があります。もしかしたら帯状疱疹の原因ウイルスが認知症を生じ易くし、帯状疱疹ワクチンはそれらウイルスを阻止することで認知症をより生じ難くするのかもしれません2)。または、ワクチン自体が脳に有益な効果をもたらしている可能性もあります。ところで認知症発症率低下との関連は帯状疱疹以外のワクチンでも示されています。結核の予防や膀胱がん治療に使われるBCGワクチンはその1つで、認知症の発症リスクの45%低下との関連が昨年発表されたメタ解析で確認されています4)。BCGワクチンといえば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防効果がかつて期待されましたが、プラセボ対照無作為化試験でその効果を示すことができませんでした5)。残念な結果になったとはいえBCGワクチンのCOVID-19予防効果は最終的に無作為化試験で検証されました。その試験と同様のシングリックスの認知症予防効果を検証する大規模無作為化試験の構想を今回の結果は促すだろうとTaquet氏らは論文に記しています。参考1)Taquet M, et al. Nat Med. 2024 Jul 25. [Epub ahead of print]2)New shingles vaccine could reduce risk of dementia / University of Oxford 3)Evidence mounts that shingles vaccines protect against dementia / NewScientist4)Han C, et al. Front Aging Neurosci. 2023;15:1243588. 5)Pittet LF, et al. N Engl J Med. 2023;388:1582-1596.

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いびきと認知症リスクとの関連

 年齢とともに増加するいびきと認知症リスクとの関連は、議論の的になっている。英国・オックスフォード大学のYaqing Gao氏らは、いびきと認知症リスクとの関連について観察的および因果関係の調査を実施し、この関連に対するBMIの影響を評価した。Sleep誌オンライン版2024年6月29日号の報告。 ベースライン時、認知症でなかった参加者45万1,250人のデータを用いて、自己申告によるいびきと認知症発症との関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。いびきとアルツハイマー病(AD)との因果関係の調査には、双方向2サンプルメンデルランダム化(MR)分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値13.6年の間に認知症を発症したのは、8,325例。・いびきは、すべての原因による認知症(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.89〜0.98)およびAD(HR:0.91、95%CI:0.84〜0.97)のリスク低下との関連が認められた。・BMIで調整するとこの関連性はわずかに弱まり、高齢者、APOE ε4対立遺伝子保有者、フォローアップ期間が短い人では関連性が強くなった。・MR分析では、いびきのADに対する因果関係は認められなかったが、ADに対する遺伝的因子がいびきリスク低下と関連していることが示唆された。・多変量MR分析では、ADがいびきに及ぼす影響は、主にBMIによるものであることが示唆された。 著者らは「いびきと認知症リスク低下との関連は、逆因果関係から生じている可能性があり、ADに対する遺伝的因子がいびきリスク低下と関連していることが示唆された。これは、前駆期アルツハイマー病(prodromal AD)における体重減少により引き起こされる可能性がある。高齢者におけるいびきの減少や体重減少は、認知症リスクの潜在的な初期の指標として、より一層注意を払う必要がある」としている。

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認知症予防に有効な“4種の運動”の組み合わせ【外来で役立つ!認知症Topics】第19回

認知症に限らず、運動が心身の健康に良いとすることに反対する者はいないだろうと思っていた。ところが運動は良くないと言った人がいる。それは自動車王と言われるフォード自動車の創立者ヘンリー・フォードだ。彼は「君が健康なら運動する必要はない。君が病気なら運動などをしてはいけない」という有名な台詞を残している。さて1999年に、アーサー・F・クレーマーという学者が、Nature誌に1ページの記事で「早歩きのような有酸素運動が脳の健康に良い」という研究報告をした1)。これを端緒に、最近まで認知症予防の運動といえば有酸素運動という時代になった。ところが近年、米国スポーツ医学会からこれに関するパラダイムシフトがあった。それによれば、高齢者において有酸素運動のみではなく、レジスタンス運動(筋トレ)、また片足立ちのようなバランス運動の3つをやってこそ、運動の効果が生まれるとされる2)。レジスタンス運動といえば筋力をアップ、またバランス運動は認知機能への効果もさることながら高齢者に多い転倒予防にはとても大切だろう。また私自身はデュアルタスク運動も欠かせないと思う。エビデンスが確立した有酸素運動まず有酸素運動による前頭葉が関わる認知機能への効果は、この20年余りになされた多くの臨床研究から確立したものと考えていいだろう。レジスタンス運動は遂行機能に効果的レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動。たとえばスクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操など。10~15回程度の回数を反復し、それを1~3セット無理のない範囲(2~3日に1回程度)で行うことが勧められる。というのは、これは標的筋肉に負荷を集中する運動なので、その筋肉に疲労が残るだけに、十分な回復期間が必要になるわけだ。その効果は筋力・筋の持久力アップから体幹支持筋強化まで及ぶ。また、メタアナリシスから認知機能、とくに遂行機能への効果があると報告されている3)。注意すべきは循環器系への配慮。有酸素運動では動脈硬化度が一時的に低下するのに対し、レジスタンス運動の後では動脈硬化度が60分間にわたって増加する。レジスタンス運動中の一過性の循環器応答として、血圧の著しい上昇が古くから知られている。バランス運動は転倒予防にも静岡社会健康医学大学院大学の田原 康玄氏らの研究によれば、片足で20秒以上体のバランスを保てない人は、それができる人に比べて大脳の小血管の傷害の危険性が高く、認知機能が低下しているという4)。田原氏は、片足立ちのバランスが悪い人は、これが大脳疾患や認知機能の低下を示唆しているものとして注意を払うべきだと言う。この研究参加者は、841人の女性と546人の男性(平均年齢67歳)。参加者は片足立ちの測定と共に大脳のMRIを撮像し、大脳の小血管の状態が調べられた。その結果、20秒以上片足立ちできない人は大脳の小血管傷害(ラクナ梗塞や微小血管からの出血)が多くみられた。この結果から、「加齢に伴い増加する微小血管の傷害は動脈の可塑性を阻害するため、脳血流に悪影響を及ぼす」と考えられている。それはさておき、高齢者の転倒による大腿骨頸部骨折の重要性は深く広まった。その予防法として、ヒッププロテクターは一時世界的に注目され、わが国では柔道の受け身が注目されたこともある。しかし、決め手となる予防法はまだないようだ。その点、バランス運動は決め手にならないまでも、転倒を減らしてくれるものと期待される。デュアルタスク運動で脳を活性化さて近年、臨床研究の蓄積からデュアルタスク運動が、認知機能が健全な人はもちろん、認知症予備軍の軽度認知障害(MCI)の人や認知症の人にも有効とされる。その効果として、認知機能の改善のみならず運動、日常生活動作、QOLの改善まで報告されている。認知への効果からみると、デュアルタスクをやる時に生じる「まごつき」がポイントだろう。「まごつき」とは、思うように指示を実行できない自分への気づきからくる「おかしい、こんなはずでは、…エエィ!」という焦りだろう。そこでトライアルを繰り返し、ようやく「やった!!」に至るまでに繰り返す心の状態が「まごつき」だ。この「まごつき」こそ、これまでは使われていなかった神経細胞や神経回路を新たに活性化させることが期待できる。デュアルタスクに際しては、まず課題に示された運動を真似しようと企画(計画)し、また、自分が動作にした時「これで本当にいいのか?」と管理・制御するはずだ。ここまでのプロセスには「作動記憶」が関与する。ここまでの過程で要となるのは注意の分割だ。さらにこうした課題を正しくやり続けるには、集中・注意の持続が欠かせない。以上の働きでは、前頭葉付近の構造、とくに背側前運動野や頭頂間溝などが重要とされる。前頭葉は脳の司令部ともいわれるが、これは側頭葉や頭頂葉など他の重要な働きをする脳部位に指令を出してくれる場所という意味だ。米国スポーツ学会の高齢者向けの運動ガイドライン2)では、有酸素運動、レジスタンス運動、バランス運動の3つに、デュアルタスクあるいは太極拳まで加えた多種類の運動をバランス良くやることで、体力・知力の維持・増強のみならず、転倒事故の予防にもつながる可能性を強調している。参考1)Kramer AF, et al. Ageing, fitness and neurocognitive function. Nature. 1999 Jul 29;400(6743):418-419.2)2018 Physical Activity Guidelines Advisory Committee. 2018 Physical Activity Guidelines Advisory Committee Scientific Report. Washington, DC: U.S. Department of Health and Human Services, 2018.3)Landrigan JF, et al. Lifting cognition: a meta-analysis of effects of resistance exercise on cognition. Psychol Res. 2020 Jul;84(5):1167-1183.4)Tabara Y, et al. Association of postural instability with asymptomatic cerebrovascular damage and cognitive decline: the Japan Shimanami health promoting program study. Stroke. 2015 Jan;46(1):16-22.

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ベンゾジアゼピン系薬剤は認知症リスクを上げるか

 ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が認知症リスクを増加させる可能性は低いが、脳の構造に長期にわたってかすかな影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で報告された。認知機能の正常なオランダの成人5,400人以上を対象にしたこの研究では、同薬剤の使用と認知症リスクの増加との間に関連性は認められなかったという。研究グループは、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用による認知症リスクの増加を報告した過去の2件のメタアナリシスとは逆の結果であると述べている。エラスムス大学医療センター(オランダ)のFrank Wolters氏らによるこの研究の詳細は、「BMC Medicine」に7月2日掲載された。 ベンゾジアゼピン系薬剤は、脳の活動を抑制する神経伝達物質GABAの放出を促進して神経系の活動を低下させる薬剤で、催眠作用、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用を有する。今回の研究では、オランダの成人5,443人(平均年齢70.6歳、女性57.4%)を対象に、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が認知機能にもたらす長期的な影響について検討した。Wolters氏らは、1991年からベースライン(2005〜2008年)までの調剤薬に関する記録を調べ、また、処方されたベンゾジアゼピン系薬剤が抗不安薬であるか鎮静催眠薬であるのかも確認した。さらに、脳MRI検査を繰り返し受けていた4,836人を対象に、神経変性マーカーとベンゾジアゼピン系薬剤の使用との関連も検討した。 5,443人のうち2,697人(49.5%)が、ベースライン以前の15年間のいずれかの時点でベンゾジアゼピン系薬剤を使用していた(1,263人〔46.8%〕は抗不安薬、530人〔19.7%〕は鎮静催眠薬、904人〔33.5%〕はその両方を使用)。平均11.2年に及ぶ追跡期間中に726人(13.3%)が認知症を発症していた。 解析の結果、累積用量にかかわりなく、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用により、使用しない場合と比べて認知症の発症リスクは有意に増加しないことが示された(ハザード比1.06、95%信頼区間0.90〜1.25)。種類別に見ると、同リスクは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の使用の方がベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬の使用よりも幾分か高かったが、いずれも統計学的に有意ではなかった(抗不安薬:同1.17、0.96〜1.41、鎮静催眠薬:同0.92、0.70〜1.21)。 一方、脳MRI画像の検討からは、ベンゾジアゼピン系薬剤の現在の使用は、横断的には海馬、扁桃体、視床の体積の減少(萎縮)、縦断的には海馬の加速度的な萎縮、および海馬ほどではないが扁桃体の萎縮と有意に関連することが示された。 こうした結果を受けてWolters氏らは、「これらの結果は、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期処方に注意を促す現在のガイドラインを支持するものだ」と結論付けている。 研究グループは、「ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が脳の健康に及ぼす潜在的影響について調査するためには、さらなる研究が必要だ」と話している。

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枕とふらつき【Dr. 中島の 新・徒然草】(539)

五百三十九の段 枕とふらつきついに大阪でも梅雨明け宣言が出ました。2024年の梅雨明けは7月21日で例年より2日遅いそうです。梅雨入りが例年より15日遅かったので、梅雨自体の期間は13日短かったということになりましょうか。この計算で合ってますかね?さて、灼熱の炎天下。総合診療科を受診した男性は40歳前後。主訴はふらつきで、かれこれ1年くらい症状があるそうです。この方が言うには、立っているとふらつきが強く、座ると少しマシ、寝るとほぼ感じないとのことでした。また自転車に乗っている時にはあまり感じないけれども、USJのミニオン・ハチャメチャ・ライドに乗った時に一番ふらつきが強かったとのこと。奥さんと小学生の子供さんはケロッとしていたのに、ご本人にとってはこれ以上ないくらい目が回って気分が悪くなったのだそうです。ふらつきについては、これまでたくさんの医療機関を回り、複数回の頭部MRIを撮影したけど、とくに問題はなかったとのこと。持参された他院の頭部MRIを私が見ても、とくに異常はなさそうでした。一般的に私の考えるふらつきというのは、脳に入力される複数の情報の統合がうまくいっていない状況ではないかと思います。これらを箇条書きにすると以下のとおり。目から入る視覚情報三半規管から入る頭の向きの情報手足や背中から入る深部知覚の情報これらの情報が、脳の中で矛盾なく統合された状態の時に、人間はふらつきを感じないわけです。ところが閉眼によって視覚情報が遮断されたり、三半規管の不具合があったり、頚椎症などのために手足からの深部知覚がうまく脳に伝わらなかったりすると、ふらつきを感じてしまいます。また脳自体の問題で、情報の統合がうまくいかないということもあるでしょう。で、いろいろな身体所見から「ひょっとして頚椎に問題があるのかも?」と思った私は、全脊椎MRIを撮影することにしました。しかし頚椎は軽いヘルニアがある程度でした。また胸腰椎もとくに問題はありません。一方、この患者さん。私の初回と2回目の診察の間に、ご自分で探し出した整体に行っておられたのです。果たして整体の効果やいかに?患者さんに尋ねてみた結果は予想外のものでした。整体では背骨を触って「頚椎と腰椎の前弯が消失していますね」と言われたのだそうです。実際、全脊椎MRIではストレートネックになっており、腰椎もストレート気味でした。これがふらつきの原因かもしれない、と思った患者さんは頚の下に枕を入れて寝るようにしたそうです。それまでは枕をせずに寝ていたのだとか。枕を使うと、ふらつきが随分マシになったそうです。一体、そういうことがあるのか?私自身はあまり経験がないのでネットで調べてみました。確かに「ストレートネックは頭痛やめまいの原因になる」といった記載が数多くみられます。その多くは整形外科というよりも、整骨院のホームページになるのですが。原因やメカニズムが何であれ、治ったらOKです。整体でどのような施術をするのか、そしてその結果はどうなのか。虚心坦懐にフォローしてみようと思います。最後に1句梅雨明けて 枕をしたら 快調だ

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“記憶のための薬”で治療してほしい【こんなときどうする?高齢者診療】第3回

老年医学の型「5つのM」で診察をするときに、「認知機能」は1つ目のMとして重要な項目です。皆さんもこんなケースに出合っていませんか?80歳男性。他院で軽度認知機能障害(MCI)と診断されている。2年前に受けた画像検査で「全体的な脳萎縮と脳室周囲白質に中等度の高信号」が認められている。日常生活動作(IADL)のうち、とくに金銭や自分の内服薬をマネジメントすることがより困難になり、妻とともにサービス付き高齢者住宅への転居を検討中。持病は高血圧、高脂血症。“記憶のための薬”で治療できるか知りたいと来院。認知機能に関して、治療薬に期待する患者や家族は少なくありません。患者の疑問に答える前に、軽度認知機能障害と認知症の違いを押さえておきましょう。軽度認知障害:約10%が認知症に移行軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment)は、以前と比べて認知機能の低下がある状態を指します。具体的には、本人・家族から認知機能低下の訴えがあるものの、日常生活機能はほぼ正常で、ADLは自立しており、認知症ではないものとされています。1)MCIの段階から認知機能の維持や回復が見込める場合もありますが、1年の間にMCI患者の約10%、10人に1人は認知機能障害が進行し、認知症に移行する2)ことは疫学的に重要な視点です。認知症:進行性かつ不可逆。いずれ死に至る病認知症の診断基準はDSM-5に譲り3)、認知症患者を診るときに役立つ3つの特徴を押さえておきましょう。まず、認知症は物忘れとイコールではありません。記憶障害のみならず、注意、言語、時間や空間の認知、他人の感情を察知する能力など多岐にわたる認知機能に障害が出現します。2つ目に、認知症は進行性です。“子どもの成長の逆回し”と捉えるとわかりやすいでしょう。子どもは成長とともに日常生活の中で1人でできることが増えていきますが、認知症ではできないことが増えていきます。誰かのためにしていた仕事や家事、次に金銭や薬の管理といった日々の活動、続いて入浴や衣服の着脱など自分の身の回りのことと、サポートが必要となることが増えていき、最終的には食事を口に運ぶことや、嚥下や排泄などの生きるために最低限必要なことが、1人でできなくなっていくプロセスです。3つ目に、認知症は不可逆でいずれ死に至る病です。現在のところ薬剤や非薬剤的な介入で認知機能障害の進行を緩徐にすることはできても、根本的に認知症を治すことはできません。薬の効果は限定的。ではどうするか?薬を使うかどうかに関わらず、老年医学の型「5つのM」を用いて、現状を俯瞰してみましょう。Matters Most(本人が困っていること、大切にしていること、心配なことなど)に注目し、詳しく話を聞いてみることがよいきっかけになります。薬への期待以上によい介入をするためには、患者が何に困っているか、何が心配なのかなどの解像度を上げることが重要です。そのヒントは、認知症は「認知機能が働きにくくなったために生活上の問題が生じ、暮らしにくくなっている状態」4)と捉えることです。この表現の引用元である「認知症世界の歩き方」は医学書ではありませんが、認知症患者がどのような生活をしているか具体的にわかりやすく描かれています。私自身も読んでみて、患者の生活をより想像しやすくなり、診療・ケアがしやすくなるヒントがたくさんちりばめられていた、おすすめの一冊です。認知症、MCIいずれであっても、 “暮らしにくくなっていること”に注目すると、その原因や本人と家族が困っていることを想像しやすくなります。ここをスタート地点に介入やサポートの方法を探ると、薬剤投与以外にできることが見えやすくなります。このようなケースでも5つのMを活用してみてください!おすすめ図書認知症世界の歩き方 筧裕介 ライツ社.2021参考1)厚生労働省.生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット.2)M Bruscoli, et al. Int Psychogeriatr. 2004 Jun;16(2):129-140.3)American Psychiatric Association. Diagnosticand statistical manual of mental disorders, Fifth Editon.DSM-5 Arlington, VA. American Psychiatric Association. 20134)筧裕介.認知症世界の歩き方.ライツ社.2021

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線維筋痛症、治療用スマホアプリで症状改善/Lancet

 線維筋痛症の成人患者の管理において、スマートフォンアプリを用いて毎日の症状を追跡するアクティブコントロール群と比較して、アプリを用いたアクセプタンス・コミットメント療法(ACT)によるセルフガイド型のデジタル行動療法は、患者評価による症状の改善度が優れ、デバイス関連の安全性に関するイベントは発生しないことが、米国・Gendreau ConsultingのR. Michael Gendreau氏らが実施した「PROSPER-FM試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月8日号で報告された。 PROSPER-FM試験は、米国の25の地域施設が参加した第III相無作為化対照比較試験であり、2022年2月~2023年2月に患者のスクリーニングを行った(Swing Therapeuticsの助成を受けた)。 年齢22~75歳、初発の線維筋痛症と診断された患者275例(女性257例[93%]、白人229例[83%])を登録した。スマートフォン用の治療アプリ(Stanza)を用いたデジタルACT群に140例(年齢中央値49.0歳[四分位範囲[IQR]:40.5~59.0])、症状追跡アプリと、健康関連および線維筋痛症関連の教育資料へのアクセスを提供するアクティブコントロール群に135例(同49.0歳[41.0~57.0])を割り付けた。治療割り付け情報は、統計解析の担当者を除き、マスクされなかった。 主要エンドポイントは、12週の時点における症状の変化に対する患者の全般的印象度(patient global impression of change:PGIC)の改善とし、ITT解析を行った。PGICは、患者の自己評価に基づく治療の全般的な有益性の尺度であり、7つのカテゴリ(著しく改善、かなり改善、最小限の改善、変化なし、最小限の悪化、かなり悪化、著しく悪化)から患者が選択した。「最小限の改善」以上:70.6% vs.22.2%、「かなり改善」以上:25.9% vs.4.5% 12週の時点で、PGICの「最小限の改善」以上を達成した患者の割合(主解析)は、アクティブコントロール群が22.2%(30/135例)であったのに対し、デジタルACT群は70.6%(99/140例)と有意に良好であった(群間差:48.4%、95%信頼区間[CI]:37.9~58.9、p<0.0001)。 また、同時点におけるPGICの「かなり改善」以上の患者の割合は、アクティブコントロール群の4.5%(6/135例)と比較して、デジタルACT群は25.9%(36/140例)であり、有意に優れた(群間差:21.4%、95%CI:13.0~29.8、p<0.0001)。 改訂版Fibromyalgia Impact Questionnaire(FIQ)のベースラインから12週までの総スコアの変化(最小二乗平均)は、アクティブコントロール群が-2.2点であったのに対し、デジタルACT群は-10.3点と改善度が有意に高かった(群間差:-8.0点、95%CI:-10.98~-5.10、p<0.0001)。デバイス関連の有害事象の報告はない デバイス関連の有害事象は、両群とも報告がなかった。最も頻度の高い有害事象は、感染症および寄生虫症(デジタルACT群28%、アクティブコントロール群25%)であり、次いで精神障害関連イベント(14% vs.14%)だった。 全体的な患者満足度は、デジタルACT群が80%、アクティブコントロール群は85%であり、それぞれ80%および79%が当該アプリを再度使用すると回答した。 著者は、「線維筋痛症に対するデジタルACTによる介入は、安全かつ有効な治療選択肢であり、ガイドラインで推奨される行動療法を受ける際の実質的な障壁に対処可能と考えられる」としている。

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医師がAIでChatGPTのほかに利用しているのは/医師1,000人アンケート

 2022年11月の対話型AI「ChatGPT」の公開を皮切りに、さまざまな生成AIサービスがリリース&アップデートされ、活用が進んでいる。論文検索や翻訳、スライド作成など、医師の仕事にも活用の可能性が広がる中、CareNet.comでは会員医師1,026人を対象に、生成AIの現在の使用状況についてアンケートを実施した(2024年6月25日実施)。AIを「現在使用している」と回答した医師は約2割 AIの現在の使用状況について聞いた結果、「現在使用している」と回答したのは21%。AIの「使用経験はあるが、現在は使用していない」が22%、「過去、現在ともに使用していない」が57%であった。年代別にみると、AIを「現在使用している」と回答した医師の割合は20代・30代では28~29%だったのに対し、40代では19.8%、50代では15.2%と年代が高くなるごとに減少した。 診療科別にみると、AIを「現在使用している」と回答した医師の割合は救急科(50.0%)、総合診療科(36.4%)、神経内科・血液内科・リハビリテーション科(いずれも33.3%)で高かったのに対し、腎臓内科(3.2%)、耳鼻咽喉科(7.1%)、産婦人科(11.1%)などでは低い傾向がみられた。医師がAIを使用していない理由で最も多かったのは? AIを「現在使用していない」と回答した医師に対し、その理由を聞いたところ、「使いこなすのが難しそう/難しいと感じた」が44.5%と最も多く、「習得に時間がかかりそう/かかると感じた」が28.0%、「必要性を感じない」が25.2%と続いた。 「現在使用している」と回答した医師に対し、AIを実際どんな作業に活用しているかについて聞いたところ、「論文検索・データベース化」が45.8%と約半数を占め、「論文要約」(44.4%)、「翻訳」(36.0%)、「文章校正」(31.3%)、「抄録・論文の文案作成」(22.9%)と続き、その他の自由記述欄では「アイデア出し」や「シフト表作成」なども挙がった。 一方で「現在使用していない」と回答した医師にAIをどんな作業に活用したいかについて聞いた結果、「論文検索・データベース化」(11.9%)、「論文要約」(11.6%)、「翻訳」(10.8%)、「文章校正」(7.1%)と現在使用している医師と同様の傾向がみられたが、その次に多かったのは「スライド作成」(5.9%)であった。医師が実際に使用しているAIサービスは? 「現在使用している」と回答した医師に対し、実際使用しているAIサービスを聞いたところ、「ChatGPT」は87.4%とほとんどの医師が使用しており、「Microsoft Copilot」(18.2%)、「Claude」(12.1%)、「Gemini」(11.7%)、「Perplexity」(8.4%)と続いた。「LUMIERE」、「Runway」、「Midjourney」、「Stable diffusion」などの動画・画像生成系AIは医師の使用者が少なかった。 「現在使用していない」と回答した医師に使用したいAIサービスを聞いた結果、同じく「ChatGPT」が56.0%と最も多く、「Microsoft Copilot」(6.5%)、「Gemini」(5.0%)、「Claude」(4.6%)とおおよその傾向は現在使っている医師と同様であったが、「使ってみたいサービスはとくにない」との回答も37.8%みられた。AIの有料版は使用していない医師が6割、一方で月額1万円以上との回答も AIを「現在使用している」と回答した医師に対し有料版使用の有無を聞いたところ、64.2%が「有料版は使用していない」と回答した一方、月額3,000円未満を支払っていると回答したのは15.1%、3,000円以上5,000円未満が14.2%、5,000円以上1万円未満が4.7%、1万円以上が1.9%だった。 アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。「生成AI、いま実際どのくらい使っていますか?」 医師1,000人に聞きました

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アルツハイマー型認知症のアジテーションに対する新たな選択肢〜マウスモデル評価

 ブレクスピプラゾールは、アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)に対し米国食品医薬品局(FDA)で初めて承認された治療薬である。アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの発生頻度は高く、患者および介護者にとって大きな負担となる。ブレクスピプラゾールの有効性、安全性、忍容性は、臨床試験により実証されている。大塚製薬のNaoki Amada氏らは、動物実験におけるブレクスピプラゾールのアジテーション緩和作用の結果を報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年6月25日号の報告。 2つのアルツハイマー型認知症マウスモデルを用いて、ブレクスピプラゾールの効果を検討した。攻撃性試験であるレジデント・イントルーダーテストでは、5〜6ヵ月齢のTg2576マウスを用いて、テストの1時間前に溶媒またはブレクスピプラゾール(0.01または0.03mg/kg)の経口投与を行った。自発運動活性測定試験では、6ヵ月齢のAPPSL-Tgマウスを用いて、測定開始前日の夕方に溶媒またはブレクスピプラゾール(0.01または0.03mg/kg)を経口投与し、3日間測定した。 主な結果は以下のとおり。・レジデント・イントルーダーテストでは、Tg2576マウスは、非Tgマウスと比較し、攻撃回数が有意に多く、初回攻撃までの期間がより短かった。・Tgマウスでは、ブレクスピプラゾール(0.03mg/kg)投与により、初回攻撃までの期間が有意に延長し、攻撃回数の減少傾向が認められた。・6ヵ月齢以上のAPPSL-Tgマウスと非Tgマウスをフェーズ(フェーズI:ツァイトゲーバー時間[ZT]12〜16、フェーズII:ZT16〜20、フェーズIII:ZT20〜24)ごとに比較したところ、APPSL-Tgマウスは、フェーズIIおよびフェーズIIIでの運動量が有意に高く、アルツハイマー型認知症における午後遅くにみられるアジテーションの臨床観察と相関していた。・ブレクスピプラゾール(0.01または0.03mg/kg)投与により、APPSL-TgマウスのフェーズIIIでの過剰な運度の有意な減少が認められた。 著者らは「Tgマウスにおける攻撃行動の抑制、夜間の過剰な運度の減少は、ブレクスピプラゾールの臨床試験で実証されているように、アルツハイマー型認知症のアジテーションに対する治療効果を示唆するものである」としている。

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パーキンソン病の構音障害、音声治療LSVT LOUDが有効/BMJ

 パーキンソン病患者の構音障害の治療において、Lee Silverman音声治療(Lee Silverman voice treatment:LSVT)は、国民保健サービスの言語聴覚療法(NHS SLT)を行う場合やSLTを行わない場合(非介入)と比較して、構音障害の影響の軽減に有効であり、またNHS SLTは非介入と比較して有益性はないことが、英国・ノッティンガム大学のCatherine M. Sackley氏らPD COMM collaborative groupが実施した「PD COMM試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年7月10日号に掲載された。英国41施設の無作為化対照比較試験 PD COMM試験は、英国の41施設で実施した実践的な非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年9月~2020年3月に参加者を募集した(英国国立衛生保健研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。 特発性のパーキンソン病と診断され、発話または発声の問題を有する患者388例を登録した。LSVT LOUDを受ける群に130例(平均年齢69.9歳、女性30%)、NHS SLTを受ける群に129例(69.7歳、22%)、SLTを行わない非介入群(対照群)に129例(70.2歳、26%)を無作為に割り付けた。 LSVT LOUDは、対面または遠隔で行う50分のセッションで構成され、週4回、4週間行い、自宅での練習は、治療日は1日1回、5~10分まで、非治療日は1日2回、15分までとした。NHS SLTの施行時間は、患者の必要に応じて担当のセラピストが決定し、練習も許容された。 主要アウトカムは、無作為化から3ヵ月の時点での自己申告によるvoice handicap index(VHI)の総スコアとし、ITT解析を行った。VHIは、患者報告によるコミュニケーションの困難さの影響を評価する尺度であり、0~120点(点数が低いほど状態が良好)でスコア化した。VHIの感情、機能、身体的側面でも同様の結果 VHI総スコアの平均値は、LSVT LOUD群がベースラインの44.6点から3ヵ月後には35.0点に、NHS SLT群は46.2点から44.4点に、対照群は44.3点から40.5点に低下した。 対照群に比べLSVT LOUD群は改善度が有意に良好で(補正後群間差:-8.0点、99%信頼区間[CI]:-13.3~-2.6、p<0.001)、NHS SLT群との比較でもLSVT LOUD群の改善度は有意に優れた(-9.6点、-14.9~-4.4、p<0.001)。 一方、NHS SLT群と対照群の間には有意差を認めなかった(補正後群間差:1.7点、99%CI:-3.8~7.1、p=0.43)。 VHIのサブスケールである感情的側面(LSVT LOUD群vs.対照群[p<0.001]、LSVT LOUD群vs.NHS SLT群[p<0.001]、NHS SLT群vs.対照群[p=0.78])、機能的側面(それぞれp<0.001、p<0.001、p=0.97)、身体的側面(p=0.04、p=0.003、p=0.38)についても、同様の結果が得られた。有害事象(主に声のかすれ)はLSVT LOUD群で多い 有害事象は、LSVT LOUD群で36例(28%)に93件、NHS SLT群で16例(12%)に46件発生し、対照群では発現しなかった。有害事象の大部分は声のかすれであり、NHS SLT群(45件)に比べLSVT LOUD群(80件)で多かった。重篤な有害事象の報告はなかった。 著者は、「本試験の結果は、臨床的意思決定の指針となるエビデンスをもたらし、パーキンソン病患者における言語聴覚療法のリソースの使用を最適化する必要性を強調するものである」「本試験の知見はまた、言語聴覚療法の提供が介護者に及ぼす影響についても詳しく検討するよう促すものであり、介護者を含むさらなる研究が、パーキンソン病患者に対する今後の言語聴覚療法によるケアを最適化する可能性がある」としている。

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事例004 在宅用膀胱留置カテーテルの査定【斬らレセプト シーズン4】

解説定期的に訪問診療を行っている寝たきりの患者です。訪問診療時に排尿困難を訴えていたため導尿を行い、家族に膀胱留置用カテーテルの扱い方を指導しました。患者自らが導尿を実施できないため「C109 在宅寝たきり患者処置指導管理料」(以下「同管理料」)を選択して算定しています。訪問診療時に使用した医療材料は、膀胱留置に使用した1本と、次回の訪問診療までに最低限必要と思われる6本を加えた計7本です。「C163 特殊カテーテル加算」の要件を満たさないことから在宅材料として出来高算定しました。この在宅材料がD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)で査定となりました。査定事由を確認するため、同指導料ならびに在宅材料の算定要件を再確認してみました。特段の査定理由をみつけることができませんでした。返戻や査定の過去のファイルを見返しましたところ、以前に類似した事例の返戻があったことをみつけました。返戻理由には「膀胱留置用ディスポーザブルカテーテルを使用する場合には、排尿困難な状態を有する病名が必要となります」とありました。レセプトの傷病名を再確認しました。「脳出血術後左片麻痺」のみの表示です。この病名の示す身体状況の範囲は広く、確実に排尿困難な状態にあることを表してはいません。過去事例と同じ事由にて査定となったことが推測できます。医師には、膀胱留置用カテーテルを算定する場合、必ず「排尿困難」がわかる病名を付けていただくようにお願いしました。レセプトチェックシステムにおいてもチェックがかかるように改修して査定対策としています。

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口臭と認知症との関連〜11年間の国内フォローアップ調査

 社会的交流の頻度が低いと潜在的な認知症リスクが増加する。口臭はアルツハイマー病を含む認知症リスクを増加させる可能性がある。東京医科歯科大学のDuc Sy Minh Ho氏らは、口臭と認知症との関連を調査した。Journal of Alzheimer's Disease Reports誌2024年5月17日号の報告。 秋田県・横手市のJPHCプロスペクティブ研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)を用いて、検討を行った。対象は、2005年5月〜2006年1月に歯科検診および自己申告調査を行った56〜75歳の1,493人。認知症発症のフォローアップ調査は、2006〜16年の介護保険データを用いて行った。口臭のレベルに応じて、口臭なし群、軽度の口臭群、重度の口臭群に分類した。口臭が認知症に及ぼすハザード比を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。感度分析には、逆確率重み付けCoxモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は65.6±5.8歳、女性の割合は53.6%であった。・フォローアップ調査終了時の認知症発症率は全体で6.4%(96例)、重度の口臭群で20.7%であった。・フォローアップ調査(1万5,274.133人年)を通じて、1,000人年当たりの認知症の平均発症率は6.29であった。・最も発症率が高かった群は、重度の口臭群であった(1,000人年当たり22.4)。・交絡因子で調整したのち、重度の口臭群は、口臭なし群と比較し、認知症発症の危険性が3.8倍(95%信頼区間[CI]:1.5〜9.4)増加した。・逆確率重み付けCoxモデルでは、調整済み限界ハザード比が4.4(95%CI:1.2〜16.4)であり、同様の傾向が確認された。 著者らは「より大規模なサンプルサイズによる検討が必要とされるものの、本研究において、口臭と認知症発症との有意な関連性が認められた」としている。

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片頭痛の予防薬は薬物乱用頭痛も減らす?

 慢性片頭痛に苦しんでいる人は、鎮痛薬を飲み過ぎると薬物乱用頭痛に襲われるという悪循環に陥ることがある。こうした中、片頭痛の予防薬として広く使用されているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬のatogepant(商品名Qulipta、日本国内未承認)が、薬物乱用頭痛の回避にも役立つ可能性のあることが、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のPeter Goadsby氏らの研究で示された。CGRPは、片頭痛を誘発するタンパク質の1つである。この研究の詳細は、「Neurology」に6月26日掲載された。 慢性片頭痛とは、頭痛が月に15日以上の頻度で起こり、そのうち8日以上が片頭痛の診断基準を満たしている状態と定義されている。今回の研究には、755人の慢性片頭痛患者が参加した。参加者の平均的な1カ月当たりの片頭痛の日数は18.6~19.2日、頭痛薬の使用日数は14.5~15.5日だった。また、頭痛薬の使用歴について報告があった参加者の3分の2に当たる500人(66.2%)が頭痛薬の使用過多の基準を満たしていた。この基準は、頭痛薬の種類がアスピリンやアセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の場合は月に15日以上、トリプタン製剤やエルゴタミン製剤の場合は月に10日以上、複数の頭痛薬を併用した場合は月に10日以上使用した場合と定義された。 参加者は12週間にわたって、1)atogepant 30mgを1日2回、2)atogepant 60mgを1日1回、3)プラセボを摂取する群のいずれかにランダムに割り付けられた。 その結果、頭痛薬使用過多の基準を満たしていた患者のうち、プラセボを使用していた群と比べてatogepant 30mg群では1カ月当たりの片頭痛日数が約3日少なく(最小二乗平均の差−2.7日)、頭痛日数も約3日少なかった(同−2.8)。また、atogepant 60mg群では、プラセボ群と比べて片頭痛日数が約2日少なく(同−1.9)、頭痛日数も約2日少なかった(同−2.1)。Goadsby氏らによると、頭痛薬使用過多の基準を満たしていなかった研究参加者においても、同様の結果が示されたという。 さらに、頭痛薬使用過多の基準を満たしていた患者のうち、1カ月当たりの片頭痛の平均日数が50%以上減少した患者の割合は、プラセボ群の24.9%に対してatogepant 30mg群では44.7%、atogepant 60mg群では41.8%であることも示された。このほか、頭痛薬使用過多の基準を満たした患者の割合も、atogepant 30mg群では61.9%、atogepant 60mg群では52.1%減少したのに対し、プラセボ群では38.3%の減少にとどまっていた。 Goadsby氏は、「片頭痛持ちの人は、衰弱性の症状となることの多い頭痛を抑えるために鎮痛薬を多用する傾向がある。しかし、薬の使い過ぎは薬物乱用頭痛と呼ばれる頭痛を引き起こす可能性があるため、予防的な治療が必要だ」と言う。そして、「この結果に基づけば、atogepantによる治療は頭痛薬の使用量を減らし、薬物乱用頭痛の発生リスクを低下させ得ると考えられる。このことは、片頭痛を抱える人の生活の質(QOL)の向上をもたらす可能性がある」と「Neurology」のニュースリリースの中で述べている。ただし、今後、atogepantの有効性と安全性を評価するためのさらなる研究が必要である。 またGoadsby氏らは、今回の研究の限界として、頭痛や頭痛薬使用の状況が研究参加者の自己報告に基づいているため、報告が正確でない可能性も考えられることを挙げている。なお、この研究はatogepantを製造しているAbbVie社の資金提供により実施された。

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日本における頭痛障害、片頭痛の有病率調査の正確性は

 疫学データを収集するために実施されるアンケート調査は、誤分類を起こす可能性がある。大阪・富永病院の竹島 多賀夫氏らは、頭痛に関するアンケートを分析し、どの質問が片頭痛以外の分類につながっているかを評価した。BMC Neurology誌2024年5月25日号の報告。 19〜74歳の個人医療請求データと組み合わせた匿名調査をDeSCヘルスケアより入手し、一次性頭痛障害(片頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛、その他の頭痛障害)の患者割合を調査した。片頭痛を判定する6つの基準を用いて、その他の頭痛障害を有する人が、アンケートにどのように回答したかを調査した。 主な結果は以下のとおり。・回答者2万1,480人のうち、頭痛があると回答した人は7,331人(34.0%)であった。・片頭痛が691人(3.2%)、緊張型頭痛が1,441人(6.7%)、群発性頭痛が21人(0.1%)、その他の頭痛障害が5,208人(24.2%)であると回答した。・その他の頭痛障害を有する人を分析すると、上位3つの基準は、頭痛関連症状+疼痛部位(7.3%)、頭痛関連症状+日常生活における頭痛重症度の変化(6.4%)、頭痛関連症状+疼痛部位+日常生活における頭痛重症度の変化(8.8%)であった。・頭痛関連症状は、肩こり(13.6%)、首こり(9.4%)、悪心・嘔吐(8.7%)、光恐怖症(3.3%)、音恐怖症(2.5%)であった。 著者らは、「質問票で診断された片頭痛の有病率は、予想よりもはるかに低く、その他の頭痛障害の有病率は、予想よりも高かった。これは、誤分類によるものであり、問診で明らかになるはずの片頭痛の特徴のいくつかをアンケートで特定できていなかったことが原因であると考えられる。そのため、アンケートは慎重に設計する必要があり、医師は患者との半構造化面接を行う際の質問の仕方や記録方法について教育を受ける必要があり、これを実践することで、光恐怖症や音恐怖症などの症状についてもより正確な情報が得られる可能性がある」としている。

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特定の前立腺肥大症治療薬がレビー小体型認知症の予防に有効か

 特定の前立腺肥大症治療薬が、レビー小体型認知症のリスク低下に役立つ可能性のあることが新たな研究で示唆された。米アイオワ大学内科学分野のJacob Simmering氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に6月19日掲載された。Simmering氏は、「レビー小体型認知症は、神経変性により生じる認知症としてはアルツハイマー病に次いで多いが、現時点では予防や治療のための薬剤がないため、今回の結果には心が躍った。既存の薬剤がこの衰弱性疾患の予防に有効であることが確認されれば、その影響を大幅に軽減できる可能性がある」と同大学のニュースリリースで述べている。 米国立老化研究所(NIA)によれば、米国でのレビー小体型認知症の患者数は100万人以上に上るという。レビー小体型認知症は、高度にリン酸化したα-シヌクレインと呼ばれるタンパク質が脳の神経細胞に凝集・沈着して形成されるレビー小体が原因で発症するとされている。レビー小体型認知症では、思考力や記憶力、運動機能が障害されるほか、幻視が生じる可能性もあり、実際に、80%以上の患者では実在しないものが見えるという。 前立腺肥大症の治療では、排尿障害を改善する治療薬として、前立腺と膀胱の筋肉を弛緩させる作用のあるα1受容体遮断薬のテラゾシン、ドキサゾシン、アルフゾシンが用いられている。研究グループによると、これらの薬剤にはまた、脳細胞のエネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)の産生に重要な酵素を活性化する作用もあり、過去の研究では、パーキンソン病においてこれらの薬剤が神経保護作用を有する可能性が示唆されているという。今回の研究では、パーキンソン病と密接に関連するレビー小体型認知症でもα1受容体遮断薬が同様の効果を示すのかが検討された。 Simmering氏らは、Merative Marketscanデータベースから、テラゾシン、ドキサゾシン、アルフゾシンのいずれかを使用している男性12万6,313人と、ATP産生を増大させない別の2種類の前立腺肥大症治療薬、すなわちα1受容体遮断薬のタムスロシンと5α-還元酵素阻害薬(5ARI)を使用している男性を抽出し(タムスロシン:24万2,716人、5ARI:13万872人)、レビー小体型認知症の発症リスクを比較した。 その結果、テラゾシン、ドキサゾシン、アルフゾシンのいずれかを使用している男性でのレビー小体型認知症の発症リスクは、タムスロシンを使用している男性よりも40%(ハザード比0.60、95%信頼区間0.50〜0.71)、5ARIを使用している男性よりも27%(同0.73、0.57〜0.93)低いことが明らかになった。 こうした結果を受けてSimmering氏は、「テラゾシン、ドキサゾシン、アルフゾシンの使用とレビー小体型認知症の発症リスク低下との関連を明らかにするためには、さらなる研究で長期にわたって追跡する必要がある。それでも、これらの薬剤が、高齢化に伴い多くの人が罹患する可能性のあるレビー小体型認知症に対して予防効果を持つことは期待しても良いように思う」と述べている。 研究グループは、本研究には男性しか参加していないことに触れ、「この結果が女性にも当てはまるのかどうかは不明だ」としている。NIAによると、レビー小体型認知症は女性よりも男性の方が罹患率がわずかに高いという。また、レビー小体型認知症は診断が難しいため、本研究では、全てのレビー小体型認知症の発症者が対象に含まれていなかった可能性があることにも言及している。

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自宅の改造が脳卒中患者の自立を助け生存率を高める

 シャワーを浴びる、階段を上るなどの日常的な動作は、脳卒中発症後に後遺症の残った人にとっては危険を伴い得る。しかし、階段に手すりを設置したり、つまずき防止のためにスロープを設置したりといった安全対策を講じることで、多くの人が自立した生活を送れるようになり、早期死亡リスクを低下させられることが新たな研究で確認された。米ワシントン大学公衆衛生研究所のSusan Stark氏らによるこの研究結果は、「Archives of Physical Medicine and Rehabilitation」に5月18日掲載された。 脳卒中患者の8人に1人は退院後1年以内に死亡する。Stark氏は、「脳卒中患者にとって、数週間の入院中のリハビリを経て自宅に戻る移行期は重要だ。自宅の環境は、設備が整った施設とは違って、困難に満ちた場所に見えるだろう」と話す。脳卒中後には筋肉が衰えているため、例えば、洗濯かごからシャツを取り出すなどの簡単な作業にも労力を要する。また、バランス感覚に障害が生じていれば、トイレの使用が困難になり、階段の上り下りは障害物コースのように感じられるかもしれない。このような困難があると、友人や隣人とも疎遠になりがちになり、それが今度は抑うつの原因となる。 Stark氏らは今回の研究で、脳卒中後の患者のコミュニティーへの参加移行プログラム(Community Participation Transition after Stroke;COMPASS)の安全性と有効性を検討した。COMPASSでは、作業療法士が脳卒中患者の自宅を訪問し、高さの低いトイレや手すりのない階段など、自宅の中で患者にとって障害となるものを探し出し、患者の個々のニーズに対応して改造する。また、利用しやすい交通手段を見つけるなど、問題を解決する方法を患者に教えたりもする。 対象者は、入院中にリハビリを受け、退院後は自宅で自立した生活を送ることになっていた50歳以上の脳卒中患者183人。これらの患者は、自宅の改造と作業療法士によりセルフマネジメントの訓練を自宅で4回受ける介入群(85人)と、脳卒中に関する教育を自宅で4回受ける対照群(98人)にランダムに割り付けられた。 その結果、研究期間中に対照群では10人が死亡したのに対し、介入群で死亡した人はいなかったことが明らかになった。また、高度看護施設に入居した対象者の数も、対照群での19人に対し介入群では8人と少なかった。 2021年に脳卒中を発症したDonna Jonesさんは、本研究への参加を通してバランス感覚を取り戻し、自立した生活を送るための新たなスキルを学んだ。また、自宅の改造により、自立した生活を送ることに対する自信を得たという。Jonesさんは、「改造された浴室は、自分の人生が正しい方向に向かっているという希望を与えてくれる。私に授けられた実用的なツールとサービスは、私の新たな人生の基盤になっている。私はこれまでとは違う人生を歩んでいて、それをとても気に入っている」と話す。 Stark氏は、「もっと多くの人を対象にこの介入の効果を検証する必要があり、保険会社を納得させるためには、住宅の改造に関連するコストと改造により節約されるコストを明確にしなければならない。現状では、このコストをカバーできる制度はない」と話す。同氏はさらに、「このプログラムを実施するための最大の障壁は、住宅改造費用を保険会社に払い戻させることだ。500ドル(1ドル160円換算で8万円)の住宅改造で病院や高度看護施設を利用せずに済むのなら、私には何の問題もないように思われる」と付け加えている。

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早期アルツハイマー病におけるレカネマブの安全性〜第III相試験

 アルツハイマー病(AD)は、世界における医療制度、患者、家族に多大な負担を強いる高齢化に伴う主要な健康問題である。早期ADに対しFDAが承認しているアミロイドベータ(Aβ)標的抗体であるレカネマブは、可溶性Aβ凝集体に高い親和性を示す薬剤である。一方、可溶性Aβ凝集体は、単量体や不溶性フィブリルよりも神経毒性が高いことが示唆されている。レカネマブは、複数の臨床試験において、忍容性が良好であると報告されているが、プラセボと比較し、アミロイド関連画像異常(ARIA)および注射部位反応の発生リスクが高いことが問題となる。米国・コロンビア大学のLawrence S. Honig氏らは、早期アルツハイマー病におけるレカネマブの安全性について、第III相試験であるClarity AD試験の結果を報告した。Alzheimer's Research & Therapy誌2024年5月10日号の報告。 Clarity AD試験は、早期AD患者を対象に18ヵ月のレカネマブ治療の有効性、安全性を評価した多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間試験(コア試験)であり、非盲検延長試験(OLE試験)が実施された。対象患者は、レカネマブ群(レカネマブ10mg/kg隔週投与)またはプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられた。安全性の評価には、バイタルサイン、身体検査、有害事象、臨床検査パラメータ、12誘導心電図モニタリングを含めた。ARIAの発生は、研究全体を通じMRIにより局所と中央の両方でモニタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、コア試験参加者1,795例およびレカネマブを1回以上投与した1,612例(コア試験+OLE試験)。・Clarity AD試験では、おおむね忍容性が良好であり、コア試験におけるレカネマブ関連の死亡例はなかった。・OLE試験の死亡例は9例であり、そのうち4例は試験治療に関連する可能性があると判断された。・コア試験+OLE試験における死亡例は24例であり、そのうち脳出血(ICH)は3例であった。コア試験ではプラセボ群で1例、OLE試験ではレカネマブ群で2例(組織プラスミノーゲン活性因子:1例、抗凝固療法中:1例)のICHが認められた。・コア試験+OLE試験において、レカネマブ群で最も多く認められた有害事象は、注射部位反応(24.5%)であり、次いでヘモジデリン沈着を伴うARIA脳微小出血(16.0%)、COVID-19(14.7%)、浮腫を伴うARIA(ARIA-E:13.6%)、頭痛(10.3%)であった。・ARIA-EおよびARIA-Hは、主にレントゲン画像で軽度〜中程度であった。・ARIA-Eは、一般的に治療後3〜6ヵ月以内で発生し、ApoE e4キャリア(16.8%)でより多く、ApoE e4ホモ接合(34.5%)で最も多かった。 著者らは「レカネマブは、一般的に忍容性が良好であるが、有害事象では注射部位反応、ARIA-H、ARIA-Eが認められた。臨床医、参加者、介護者は、最適なケアを行うためにも、これらのイベントに対するモニタリングやマネジメントについて、より理解する必要がある」としている。

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網膜症は認知症リスクと関連

 福岡県久山町の地域住民を対象とする久山町研究の結果が新たに発表され、網膜症のある人は、網膜症のない人と比べて認知症の発症リスクが高いことが明らかとなった。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治氏らと同大学眼科分野の園田康平氏らの共同研究グループによる研究成果であり、「Scientific Reports」に5月26日掲載された。 網膜症は糖尿病や高血圧などの特定の原因に限らず、網膜の微小血管瘤、微小血管の出血、滲出などと関連しており、眼底検査で確認することができる。また、網膜と脳は、解剖学や発生学などの観点から類似している。これまでの研究で、網膜の微小血管異常と認知症との関連が示唆されているものの、追跡調査の成績を用いて縦断的にそれらの関係を検討した研究は限られ、その結果は一貫していなかった。 そこで著者らは、網膜症と認知症の発症リスクとの関連を調べるために、2007-2008年に久山町の生活習慣病健診を受診した60歳以上の地域住民のうち、認知症がなく、眼底検査のデータが得られた1,709人を対象として認知症の発症の有無を前向きに追跡した(追跡期間:中央値10.2年、四分位範囲9.3~10.4年)。網膜症の有無は、眼底写真を用いて複数の眼科専門医が診断した。認知症の発症リスクの算出にはCox比例ハザードモデルを用い、多変量解析により年齢と性別の影響や臨床背景の違いを統計学的に調整した。 その結果、追跡開始時に網膜症のあった人は174人(平均年齢71.8±7.5歳、男性47.7%)、網膜症のなかった人は1,535人(同71.3±7.6歳、42.9%)であった。網膜症のある人はない人と比べ、BMIが高く、血圧が高く、糖尿病の人が多く、脳卒中の既往のある人の割合が高かった一方、総コレステロール値は低いなどの特徴があった。 10年間の追跡期間中に374人(男性136人、女性238人)が認知症を発症した。認知症の累積発症率は、網膜症のある人の方が網膜症のない人と比べて有意に高かった。網膜症のある人では、ない人に比べ認知症の発症リスク(年齢調整後)は1.56倍(95%信頼区間1.15~2.11)有意に高いことが明らかとなった。さらに、影響を及ぼし得る他の臨床背景(教育レベル、収縮期血圧、降圧薬の使用、糖尿病、総コレステロール値、BMI、脳卒中の既往、喫煙、飲酒、運動習慣)の違いを多変量解析にて調整しても、同様の結果が得られた(発症リスク1.64倍〔95%信頼区間1.19~2.25〕)。 また、高血圧と糖尿病は網膜症のリスク因子であることから、高血圧または糖尿病の有無で分けて検討した。網膜症に高血圧または糖尿病を合併した人では、網膜症がなく高血圧も糖尿病もない人に比べ、認知症の発症リスク(多変量調整後)は1.72倍(95%信頼区間1.18~2.51)有意に高かった。さらに、網膜症があるが高血圧も糖尿病もない人の認知症の発症リスクも2.44倍(同1.17~5.09)有意に高いことが明らかとなった。 著者らは、今回の研究の結論として、「日本人の一般高齢者集団の前向き縦断的データを解析した結果、網膜症は、認知症の発症と有意に関連していた」としている。また、「眼底検査により網膜の微小血管の徴候を非侵襲的かつ簡便に可視化することができ、高リスク者の同定に有用であることが示唆された」と述べている。

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もし過去に戻れたらどの診療科を選ぶ?後輩には勧める?/医師1,000人アンケート

 厚生労働省が2024年3月19日に公表した「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果では、全国の医師数は34万3,275人で、前回調査(2020年)と比べて1.1%増加した。本調査では、前回調査時と比べて美容外科、アレルギー科、産科、形成外科などの診療科で医師数の増加がみられた。一方、気管食道外科、小児外科、外科、心療内科、耳鼻咽喉科などの診療科では医師数の減少がみられた(詳細は関連記事参照)。この結果には、ワークライフバランスや年収、やりがい、キャリアなどを含めた診療科への満足度が影響している可能性も考えられる。そこで、CareNet.comでは40~50代の医師1,005人を対象に、診療科への満足度に関するアンケートを実施した(2024年5月24~31日実施)。本アンケートでは、現在の診療科にどれだけ満足しているか、もし医学生や研修医に戻れるとしたらどの診療科を選ぶか、自身の診療科を医学生や自分の子供などに勧めるかを聞いた。医師の約4分の3が現在の診療科に満足 現在の専門の診療科について満足度を聞いたところ、「非常に満足」が20.7%、「満足」が54.4%であった。これらを合わせると約4分の3(75.1%)が満足していた。一方、「非常に不満」は0.7%、「不満」は3.5%であり、現在の診療科への不満を有している医師は少ないことが明らかになった。これらの結果について、診療科別に大きな違いはみられなかった。診療科を選び直せても現在の診療科を選ぶのは63.1%、人気は内科 次に、「もし医学生や研修医に戻れるとしたらどの診療科を選ぶか」を聞いた。その結果、「現在の診療科を選ぶ」と回答したのは63.1%であった。この割合は、皮膚科(76.3%)、救命救急科(73.5%)、精神科/心療内科(69.8%)、産婦人科(67.7%)、外科(67.7%)などで高かった。 また、「現在の診療科以外」を選択した371人について集計した結果、内科(12.9%)、皮膚科(7.3%)、放射線科(5.4%)、外科(5.1%)、美容外科(5.1%)が人気であった。医師は選ばないとの回答も2.7%あった。主な理由は以下のとおり。【内科を選んだ理由】・いろいろな症例がみられる(40代、精神科/心療内科)・手術はしたくない(50代、循環器内科)・開業を目指す(50代、腎臓内科)・自分の健康に寄与するから(40代、小児科)【皮膚科を選んだ理由】・目に見えて効果がわかるから(40代、神経内科)・開業もしやすい。ランニングコストが少ない(40代、腎臓内科)・美容皮膚科に携わりたいから(40代、整形外科)【放射線科を選んだ理由】・放射線治療がますます進歩すると考えているから(50代、脳神経外科)・主治医にならないから(40代、救命救急科)・若いころに戻るならば、リモート診療、AIの発達に向けて動いてみたいと思えたから(40代、精神科/心療内科)【外科を選んだ理由】・なり手が少なく社会的な意義が高そう(40代、糖尿病・代謝・内分泌科)・将来AIの台頭で、機械では代用できない技術が重宝されると思うため(40代、放射線科)・外科に憧れがある(40代、消化器内科)【美容外科/美容皮膚科を選んだ理由】・健康な方をより元気にする科であるため(40代、総合診療科)・保険診療はもう嫌(40代、内科)・お金と時間がありそうなイメージ(40代、脳神経外科)・美容に興味があるから(50代、精神科/心療内科)自身の診療科を勧めるのは26.6%、勧めないのは18.3% また、「医学生や自分の子供などに自身の診療科を勧めるか」を尋ねた。その結果、「強く勧める」が7.4%、「勧める」が19.2%であり、合わせて約4分の1(26.6%)が自身の診療科を勧めるという結果であった。一方、「強く勧めない」は5.3%、「勧めない」は13.0%であり、合わせて約5分の1(18.3%)は自身の診療科を勧めないという結果であった。 この結果を診療科別にみると、自身の診療科を勧める(「強く勧める」と「勧める」の合算)と回答したのは、内科系が31.9%と多い傾向にあり、外科系(23.9%)、産婦人科・小児科・救命救急科(21.9%)は少ない傾向にあった。外科系の診療科のなかでも、脳神経外科(6.3%)、外科(12.9%)、消化器外科(15.2%)などで少ない傾向にあった。 勧めない(「強く勧めない」と「勧めない」の合算)と回答したのは、内科系が13.4%と少ない傾向にあり、外科系(22.3%)、産婦人科・小児科・救命救急科(23.1%)は多い傾向にあった。こちらも外科系のなかで、脳神経外科(34.4%)、消化器外科(27.3%)、外科(22.6%)が多い傾向にあった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。現在の診療科の満足度は?過去に戻れるならどの診療科を選ぶ?/医師1,000人アンケート

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