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日本と米国における認知症ケア選択~横断的観察研究

 日本では、認知症者ができるだけ長く社会に関わっていけるようにするため、国策として「dementia-friendly initiative」を導入した。しかし、家族の介護負担を軽減するために特別養護老人ホームへの入所を選択する人もいる。政策を決定するうえで、介護する場所に対する中年の好みを理解し、それに影響を及ぼす要因を特定することは、「dementia-friendly initiative」の促進に役立つ。東京都医学総合研究所の中西 三春氏らは、認知症を発症した際の、日本と米国の中年におけるケアの好みについて調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年7月7日号の報告。 40~70歳の日本人104人、日系米国人93人、非アジア系米国人104人の合計301人を対象に、インターネットアンケート調査を行い、横断的観察研究を実施した。対象者は、ケアや管理が必要な認知症を発症したという仮定の状況に基づき、アンケートに回答した。 主な結果は以下のとおり。・対象者のケアの好みは、特別養護老人ホームでのケア(29.9%)、専門家によるケア(19.6%)、家族によるケア(17.6%)、病院でのケア(11.3%)の順であった。・日本人は、日系および非アジア系米国人と比較し、専門家による在宅ケアを好む傾向が有意に低かった(調整オッズ比:0.28、95%信頼区間:0.10~0.75)。・ケアの好みにおける民族間の違いは観察されなかった。 著者らは「日本人中年の専門家による在宅ケアへのニーズの低さは、日本特有の長期および認知症介護システムに影響されている可能性がある。政策を決定する際には、認知症者の家族にとってより利用しやすい専門家による在宅ケアサービスを検討すべきである」としている。

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重症妊娠高血圧、経口薬ではニフェジピンがより効果大か/Lancet

 医療資源が乏しい環境下の重症高血圧症の妊婦について、基準値への降圧を図る経口薬治療の効果を検証した結果、ニフェジピン、メチルドパ、ラベタロールのいずれもが現実的な初回選択肢であることが示された。3薬間の比較では、ニフェジピンの降圧達成率がより高かったという。米国・ワシントン大学のThomas Easterling氏らが、これまで検討されていなかった3種の経口降圧薬の有効性と安全性を直接比較する多施設共同非盲検無作為化比較試験を行い、Lancet誌オンライン版2019年8月1日号で発表した。高血圧症は妊婦における最も頻度の高い内科的疾患であり、重症例では広く母体のリスク低下のための治療が推奨される。急性期治療としては一般に静脈投与や胎児モニタリングが有効だが、医療従事者が多忙であったり医療資源が限られている環境下では、それらの治療は困難であることから研究グループは本検討を行った。妊娠28週以上の重症高血圧症にニフェジピン・ラベタロール・メチルドパ投与 試験はインド・ナーグプールの公立病院2ヵ所で、妊娠28週以上、収縮期血圧値が160mmHg以上または拡張期血圧値が110mmHg以上の重症高血圧症で、薬による血圧コントロールを必要とし、経口薬服用が可能な18歳以上の女性を対象に行われた。 被験者を無作為に3群に分け、ニフェジピン10mg、ラベタロール200mg(いずれも高血圧が持続する場合は投与量を3倍まで毎時増加)、メチルドパ1,000mg(1回投与、増量なし)をそれぞれ行った。試験群における増量プロトコールが異なるため、被験者、試験研究者および治療担当者のマスキングはできなかった。 主要アウトカムは、有害アウトカムを伴わない6時間以内の血圧コントロール(収縮期血圧120~150mmHg/拡張期血圧70~100mmHg)だった。重症の妊娠高血圧の血圧コントロール率、ニフェジピン群が84%で最も高率 2015年4月1日~2017年8月21日に2,307例の女性をスクリーニングした。うち1,413例(61%)を、不適格、試験参加を拒否、子癇前症、活性分娩、あるいはそれらを複合的に有するなどの理由で除外した。また、ニフェジピン群11例(4%)、ラベタロール群10例(3%)、メチルドパ群11例(4%)が治療不適(血圧測定が1回のみであったため)、または治療が中断となった(分娩または転院などのため)。 重症の妊娠高血圧症894例(39%)が無作為化を受け、ITT解析の対象に包含された。ニフェジピン群は298例(33%)、ラベタロール群は295例(33%)、メチルドパ群は301例(33%)だった。 主要アウトカムの発生は、メチルドパ群が230例(76%)に対しニフェジピン群が249例(84%)と、有意に高率だった(p=0.03)。一方で、ニフェジピン群vs.ラベタロール群(228例[77%]、p=0.05)、ラベタロール群vs.メチルドパ群(p=0.80)では、いずれも有意差はなかった。 重症有害事象の発生は7例(出生児の1%)だった。ラベタロール群の妊婦1例(<1%)が分娩時発作を、6例(1%)は死産であった(ニフェジピン群1例[<1%]、ラベタロール群2例[1%]、メチルドバ群3例[1%])。1件以上の有害事象を有した出生例はなかった。

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認知症リスクに50歳での心血管健康度が関連/BMJ

 中年期に推奨される心血管健康スコア「ライフ シンプル7」の順守が、晩年における認知症リスク低下と関連していることが明らかにされた。「ライフ シンプル7」では、生活習慣や血糖値、血圧など7つの項目をスコア化し心血管リスクの指標としている。フランス・パリ大学のSeverine Sabia氏らが、約8,000例を約25年間追跡した、前向きコホート試験により明らかにし、BMJ誌2019年8月7日号で発表した。心血管健康スコアの値で3つに分類 研究グループは、ロンドンの公務員を対象に行われたWhitehall II試験(1985~88年に登録)の参加者で、50歳時点における心血管健康スコアのデータがあった7,899例を対象に前向き試験を行った。 心血管健康スコアは、4つの行動指標(喫煙、食事、身体活動、BMI)と3つの生物学的指標(空腹時血糖、血中コレステロール、血圧)を3ポイント尺度(0、1、2)でコード化し、7つの指標(スコア範囲:0~14)の合計から心血管健康が低い(0~6)、中程度(7~11)、最適(12~14)に分類した。 主要評価項目は、2017年までの認知症の発症、入院、精神医療サービスの利用、死亡であった。心血管健康スコア1ポイント増加で認知症リスク1割低減 追跡期間中央値24.7年の間に、347例の認知症が記録された。 心血管健康が低い群における認知症罹患率3.2/1,000人年(95%信頼区間[CI]:2.5~4.0)に対して、中程度群の同罹患率の絶対率差は-1.5/1,000人年(同:-2.3~-0.7)で、最適群の絶対率差は-1.9/1,000人年(同:-2.8~-1.1)だった。 心血管健康スコアの高値は、認知症リスク低下と関連が認められた(心血管健康スコア1ポイント増加当たりのハザード比[HR]:0.89[95%CI:0.85~0.95])。同様の関連は、行動および生物学的サブスケールにおいても認められた(それぞれHR:0.87[95%CI:0.81~0.93]、0.91[0.83~1.00])。 追跡期間中に心血管疾患を発症しなかった人についても、50歳時点での同スコアと認知症リスクとの関連について、同様の傾向が認められた(心血管健康スコア1ポイント増加当たりの認知症HR:0.89[0.84~0.95])。

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T790M陽性肺がんのオシメルチニブ治療、日本の実臨床データ/日本臨床腫瘍学会

 EGFR T790M変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブの市販後調査の一環として行われた全例調査の最終結果を、神奈川県立がんセンター加藤晃史氏らが第17回日本臨床腫瘍学会学術集会で発表。3,000例を超えるわが国のT790M変異NSCLCに対するオシメルチニブ治療の実臨床データが示された。 対象は2次治療以降にオシメルチニブの治療を受けた切除不能・再発EGFR T790M変異NSCLC患者。予定のサンプルサイズは3,000例、追跡期間は12ヵ月であった。また、医薬品リスク管理計画による安全性検討事項として、間質性肺疾患(ILD)関連イベント、QT間隔延長、肝障害、血液毒性などが評価された。 主な結果は以下のとおり。・2016年3月28日~2018年8月31日に3,629例が登録された。・全Gradeの副作用現率は58.1%(安全性解析対象3,578例中2,079例)、頻度の高い項目は下痢(10.9%)、爪囲炎(10.3%)、皮疹(8.5%)などであった。・安全性検討事項では、ILDの発症は全Gradeで6.8%(Grade3以上2.9%)、QT延長は全Gradeで1.3%(Grade3以上0.1%)、肝疾患は全Gradeで5.9%(Grade3以上1.0%)、血液毒性は全Gradeで11.4%(Grade3以上2.9%)などであった。・奏効率69.9%、病勢コントロール率は86.7%であった(CR:119例、PR:2,373例、SD:598例)。・無増悪生存期間(PFS)中央値は12.3ヵ月、12ヵ月PFS率は53.2%であった。・年齢(75歳未満、75歳以上)、PS(1~2、3~4)、EGFR遺伝子変異(Exon19 del、L858R)、脳転移(無、無症候性、症候)、胸水の有無によらず有効性が確認された。 ILD発症後のオシメルチニブの投与実態※・ILDの発症は245例、そのうちオシメルチニブの再投与を受けた39例中37例が回復(初回ILDの転帰)。・上記39例中ILDの再発は7例、そのうちオシメルチニブの再々投与を受けた3例中3例とも回復(2回目のILD)。 加藤氏らは、この全例調査の結果は、EGFR T790M変異陽性NSCLC患者に対するオシメルチニブの確立した評価を支持するものであったと結論付けた。※間質性肺疾患の異常が認められた場合は投与を中止するよう、添付文書で定められている。

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治療で血漿中HIVさえ抑えればコンドームだって不要(解説:岡慎一氏)-1097

 U=U(undetectable equals untransmittable)を科学的に証明した論文である。 ずっと昔は、HIV感染者は、性行為をしてはいけない雰囲気があった(実際には、黙ってしていた)。治療が良くなり感染リスクが下がっても、万が一のため、コンドームはしよう、というsafer sexキャンペーンが長らく行われていた(いや、今も多くの国と地域でそう思われている)。HIV感染者からすると、いつまで経っても、性行為に関する制限から逃れられることができず、抑うつ気分が長年にわたり続いてきた。近医に行っても、告知しないといけないという思いはあるが、告知すると診療拒否に遭ったりしていた。やむなく、無告知での治療を受けざるを得なかったが罪悪感にさいなまれていた。この差別感は、非常に大きく、しかも生涯続くのである。このため、うつ状態からメンタルヘルスの異常を来し、自殺するようなケースも増えつつある。近年、死亡原因の最も重要な因子は、エイズからメンタルヘルス関連に移りつつある。 HIVに感染しても死ぬことはなくなったが、なんとなくまだ心の内面では気持ちの悪さが残っている。これは、今度は自分が病気をうつしてしまうかもしれないという不安から、無意識に自分自身に制限をかけているからである。これらのすべての制限を取り払ってくれるのがこの論文の結果である。治療で血漿中のHIVさえ抑えればコンドームですら不要である。仕事も性行為も、日常生活に制限をかける必要がないのである。 世界では、この論文を契機に予防対策が大きく変わっていくであろう。コンドームキャンペーン(制限)ではなく、検査の拡大による早期診断、早期治療こそが予防の王道である。インパクトのある論文である。

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万引き家族(後編)【親が万引きするなら子どももするの?(犯罪心理)】Part 1

今回のキーワード行動遺伝学差別ラベリング理論不平等ストレングスモデルペアレントトレーニング社会的絆理論「不都合な真実」「万引き」は遺伝するの? ―遺伝率「万引き」(反社会的行動)の起源が進化心理学的にわかりました。それでは、「万引き」は遺伝するのでしょうか? その答えを、行動遺伝学的に考えてみましょう。双生児研究において、反社会的行動の一致率は二卵生双生児が50%程度であるのに対して、一卵生双生児は80%へと高率になることが分かっています。ここから、遺伝、家庭環境、家庭外環境の影響の強さの相対的な比率が算出されます。なお、厳密には男女差、年齢差、研究機関の差がありますが、わかりやすくするために、青年期の平均男女のおおむねの数値として示します。(1)遺伝-約60%1つ目として、遺伝の影響(遺伝率)は約60%と算出されます。音楽やスポーツの遺伝率は、80%を超えています。つまり、反社会的行動は、音楽やスポーツほどではないにしても「ネガティブな才能」と言えそうです。遺伝の要素は、先ほどご紹介した抽象的思考の困難さのほかに、共感性欠如、衝動性などが指摘されています。よって、たとえば、万引きを共にしている治と信代の間に、もしも子どもが生まれたとしたら、その子どもが万引きをする可能性は、音楽やスポーツほどではないにしても、一定の可能性があると言えます。(2)家庭環境-約20%2つ目として、家庭環境(共有環境)の影響は約20%と算出されます。なお、養子研究において、犯罪率(反社会的行動)が最大になるのは、実親が犯罪歴(反社会的行動)を持たない子どもよりも持つ子どもが、そして犯罪歴(反社会的行動)を持たない養親よりも持つ養親に育てられた時であることが分かっています。これは、遺伝と環境の相互作用と呼ばれます(G/E相関)。家庭環境の要素は、主に、先ほどご紹介した反社会的行動モデルです。よって、たとえば、先ほどの治と信代の間に生まれた子どもが、一般家庭(反社会的モデルではない家庭)に養子として出されたら、その子どもが万引きをする可能性は低くなると言えます。ちなみに、「祥太」という名は、治の本名である「勝太」から名付けられており、治なりの思いがありました。そんな治と信代という家庭環境の影響があっても、祥太が万引きをしなくなったのは、祥太にはもともと遺伝の影響が少なかったからであると説明できます。なお、実は、家庭環境の影響が一定数あるのは、反社会的行動のほかに、アルコール、タバコ、ドラッグなどの依存症(嗜癖)と語学力です。つまり、幼少期から家庭内で良くも悪くもお手本(モデル)として見てしまうことは、本人の好き嫌い、善し悪しの価値観に影響を与えているようです(家族文化)。逆に言えば、「見ていなければ、ならない、やらない」とも言えるでしょう。(3)家庭外環境-約20%3つ目として、家庭外環境(非共有環境)の影響は約20%と算出されます。家庭外環境の要素は、遺伝と家庭環境を除いた残りの要素になります。これは、友人関係をはじめとして、学校、職場、近所との人間関係、そして結婚相手と築く家族関係などの社会的な環境です。ここで、家庭内環境と家庭外環境を合わせた環境を「水やり」に例えてみましょう。すると、遺伝は「種」です。つまり、「種」に「水やり」をして初めて、ある特定の心理の「芽」が出たり、実際の行動という「花」を咲かせます。たとえば、祥太は、学校に行かせてもらえず、近所付き合いもないという点で、家庭外環境の影響がほとんど0というきわめて特殊な状況でした。祥太にとって初めての家庭外環境の影響が、万引きした駄菓子屋のおじいさんの「妹にはさせるなよ」という一言なのでした。ただ、祥太には、それで十分だったのです。その瞬間に、罪悪感(社会性)の「芽」が出たのです。そして、万引き(反社会性)の「芽」はしぼんでいったのでした。なぜ「万引き」の遺伝は「なかったこと」にしたいの?「万引き」(反社会的行動)が一定の確率で遺伝することがわかりました。ただ、この事実を知らされて不快に思っている人もいるでしょう。この事実を伝えている私自身も、居心地の悪い思いです。できることなら、「なかったこと」にしたいです。それでは、あえて考えてみましょう。なぜ「なかったこと」にしたいのでしょうか? その心理を主に3つ掘り下げてみましょう。(1)差別になると思うから-私たちはもともと「善」である-信頼感先ほど、治と信代の間に生まれた子どもが万引きをするのは、一定の可能性があると説明しました。つまり、その子どもは、万引きを実際にする前から、万引きをする可能性があると指摘することになります。これは、「犯罪者の子ども」という烙印です。1つ目の心理は、犯罪と遺伝の関係を受け入れると差別になると思うからです。確かに、犯罪という「悪の遺伝子」があるとしたら、社会全体で排除しようとする流れになる危うさがあります。それは、かつての「優生思想」につながります。逆に言えば、差別になってはいけないという思いには、私たちはもともと「善」であるという信頼感が根底にあります。信頼感は、原始の時代に進化した社会脳の基盤であることをすでにご説明しました。これは、「生まれながらの犯罪者はいない」という信念です。犯罪が遺伝するとなると、その信念が揺らいでしまうからです。また、犯罪をすると決めつける、レッテル貼りをすることで、犯罪を誘発するという実際的な問題もあります(ラベリング理論)。(2)不平等になると思うから-私たちはもともと「同じ」である-公平感信代を取り調べる女性刑事は、じゅりを誘拐した理由について「あなたが産めなくてつらいのは分かるけどね」「(子持ちが)うらやましかった?」と尋ね、挑発しながらも理解しようとしています。2つ目の心理は、犯罪と遺伝の関係を受け入れると不平等になると思うからです。確かに、反社会的行動が生まれながらにある程度決まっているとしたら、あまりにも残酷です。それは、性格、知能、精神障害などについても言えるでしょう。逆に言えば、不平等になってはいけないという思いには、私たちは、たとえ見た目は違っても、見えない心についてはもともと「同じ」であるという公平感が根底にあります。公平感も、原始の時代に進化した社会脳です。これは、「心は空白の石版である」という信念です。犯罪が遺伝するとなると、その信念が揺らいでしまうからです。(3)懲らしめられなくなると思うから-私たちはもともと「意思」がある-責任感治を取り調べる刑事は、祥太に万引きを教えた理由について「ほかに教えられることが何にもないんです」という治の開き直ったような返答を聞き、怒りを抑えきれません。3つ目の心理は、犯罪と遺伝の関係を受け入れると懲らしめられなくなると思うからです。確かに、犯罪が遺伝子によって突き動かされたとしたら、本人の責任をどこまで問えるのかという懲罰の正当性が曖昧になります。逆に言えば、懲らしめられなくなってはいけない、懲らしめたいという思いには、私たちはもともと「意思」がある、つまり「行動には責任が伴う」という責任感が根底にあります。責任能力は、懲罰において必須事項です。これは、「懲らしめられると思うと罪を犯さない」「懲らしめれば心を入れ替える」という信念です。これは先ほどにご説明した通り、懲罰によって犯罪が抑止され更生されるという考え方です。犯罪が遺伝するとなると、その信念が揺らいでしまうからです。次のページへ >>

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万引き家族(後編)【親が万引きするなら子どももするの?(犯罪心理)】Part 2

万引きをしないためにはどうすれば良いの?「万引き」(反社会的行動)の遺伝を「なかったこと」にしたいのは、差別になる、不平等になる、懲らしめられなくなるという私たちの思いがあることがわかりました。そして、その思いの根底にあるのは、私たちはもともと「善」であり、「同じ」であり、「意思」があるという心理でした。ただし、これらの心理は、原始の時代の村で進化してきたものです。その村は、血縁関係でつながり、共通点が多く、お互いのことをよく知っていて、助け合って、信頼できる平等社会です。一方、現代の国家ではどうでしょうか? 多様化して共通点が少なく、お互いのことをよく知らず、直接助け合っておらず、信頼できるかわからない格差社会です。私たちの心はほとんど原始の時代のままなのに、現代の社会構造(環境)があまりにも変わってしまっています。「万引き」(反社会的行動)の「芽」がより出やすくなっているように思えます。だからこそ、私は、犯罪と遺伝の関係という「不都合な真実」を伝える必要があると思います。そして、その「真実」を踏まえてこその対策があると思います。それでは、万引きをしないためにはどうすれば良いでしょうか? 遺伝、家庭環境、家庭外環境にわけてそれぞれ考えてみましょう。(1)遺伝-本人の特性を強みとして生かす-ストレングスモデル家族団らんのシーンで、亜紀の気に入っている客が無口だったと聞いた信代は「あー男は無口なくらいがちょうどいいよ。おしゃべりはダメ」と言って、遠くから治を箸で指し、からかいます。すると、治は、「何?おれのこと呼んだ?」とツッコミを入れて、祥太とじゅりに手品を披露します。ここで分かるのは、治の良さは、おしゃべりでノリが良いこと、観察力があり器用であることです。これは、万引きの手際の良さから言うまでもありません。その後、信代が罪をすべてかぶったため、治は、罰を逃れました。しかし、定職に就くこともなく、一人暮らしをしているようです。治は、これで良いのでしょうか?1つ目の対策は、もともとの本人の特性を強みとして生かすことです(ストレングスモデル)。治は、抽象的思考が苦手なため、相手の指示の意図や段取りがわからないです。よって、建築作業員や事務員などは向いていないと言えます。また、飽きっぽさから、信代がやっていたようなクリーニング工場での単純機械作業も向いていないでしょう。向いているのは、単純な接客など、対人的でその場のやり取りに限定した仕事でしょう。もちろん、知的障害が判明すれば、障害者枠就労も現実的でしょう。もちろん、治に反省を促すことはできます。しかし、すでに説明した通り、抽象的思考が苦手なため、その反省は表面的で一時的でしょう。そもそも治には前科があるということが後に判明します。このように、ポイントは、犯罪歴があり再犯リスクのある個人に対して、懲らしめとして社会から疎外して、ひたすら反省を促すのではありません(ソーシャルエクスクルージョン)。一定の制限は設けつつも、むしろ社会復帰をするリハビリテーションを促すことです(ソーシャルインクルージョン)。行動遺伝学的に言えば、反社会性の「芽」が出てしまっていても、対極の社会性の「芽」には「水やり」をし続けることです。それは、社会への信頼と誇りを育むことです。これをしないと、結局、反社会性の「芽」が出たままで、行動化という「花」をまた勝手に咲かせるかもしれません。つまり、反社会性の「芽」が出てしまっている人にこそ、社会から疎外して放置するのではなく、またその「花」を咲かせないような予防介入をすることが重要になります(個別的予防介入)。そもそも、「万引き」(反社会的行動)をする人たちだけが、その「種」を持っているわけではありません。私たち一人一人の心の中にも、量の差はあれ、その「種」を持っており、あるきっかけで「芽」が出てくるかもしれません。そう考えると、犯罪と遺伝の関係を受け入れても、差別になるという発想は出てこないでしょう。つまり、私たちは、もともと「善」でも「悪」でもないと冷静に理解する必要があります。(2)家庭環境-親が子育てを勉強する-ペアレントトレーニング信代がじゅりに洋服を買ってあげようとした時、じゅりから「叩かない?」「あとで、叩かない?」と繰り返し確認されます。その瞬間、信代は、じゅりの母親が毎回服を買った後に叩いていたことを確信し、「大丈夫、叩いたりしないよ」と優しく言います。じゅりの母親もまた夫からDVを受けており、じゅりの家庭では暴力がコミュニケーションの1つの形になっています。じゅりの母親は、体罰をしつけの一環としており、虐待の自覚がないようです。2つ目の対策は、親が子育てを勉強することです。かつて大家族で、見守ってくれる周りの目がたくさんありました。そして、教えてくれる先輩の親がいました。しかし、現在は、核家族化が進んでおり、見守る目はあまりなく、ママ友はいたとしても、家に一緒にいて教えてくれたり、助けてくれる先輩ママはなかなかいません。すると、子育てが独りよがりになってしまいます。それが、じゅりの家庭の暴力、治と信代の家庭の万引きです。このような反社会的モデルにならないという子育てのやり方をまず親が勉強する社会的な仕組み作りが必要です。たとえば、自閉症やADHDをはじめとする発達障害で、療育に並んで早期に行われる親への心理教育(ペアレント・トレーニング)と同じです。行動遺伝学的に言えば、反社会性の「種」を多く持っている可能性がある子どもにこそ、社会性の「種」への「水やり」を丁寧にする必要があることをまずその親が自覚することが重要になります(選択的予防介入)。そもそも、「万引き」(反社会性)に限らず、私たちは、それぞれ違う「種」を持っています。生まれながらにして、私たちは、心も体も「不平等」です。ただし、生まれてから、教育や福祉によって、将来的になるべく不平等にならないような社会の仕組み作りをすることはできます。そう考えると、犯罪と遺伝の関係を受け入れても、不平等になるという発想は出てこないでしょう。つまり、私たちは、もともと「同じ」ではないと冷静に理解する必要があります。(3)家庭外環境-社会とのつながりを持つ-社会的絆理論刑事は、祥太から「学校って、家で勉強できない子が行くんじゃないの?」と聞かれて、「家だけじゃできない勉強もあるんだ」「(友達との)出会いとか」と答えています。その後、祥太は「国語のテストで8位になった」と喜ぶシーンもあります。祥太の人生が、大きく開けてきています。3つ目は、社会とのつながりを持つことです(社会的絆理論)。祥太にとって、その初めての「出会い」は、駄菓子屋のおじいさんでした。さらに、学校に行くというかかわり(インボルブメント)や勉強や部活動をがんばるという目標(コミットメント)です。さらに、マクロな視点で考えてみましょう。初枝は訪問に来た民生委員を追い払っていました。このように、治、信代、初枝は、こそこそと暮らし、孤立していました。そこには、行き詰まり感も描かれています。つながりの希薄さは、ちょうど非正規雇用、非婚、ひきこもりなどの昨今の社会問題にもつながります。そうではなくて、役所をはじめ、周りに相談し、福祉サービスを受けることです。たとえば、初枝は、治と信代と世帯分離をすれば、持ち家があっても生活保護の受給が可能になります。治は、就労支援や障害者枠雇用が可能になります。信代は、ハローワークを介して再就職が可能になります。このような社会とのつながりや援助によって格差が減ることで、彼らの社会への復讐心は減っていくでしょう。行動遺伝学的に言えば、反社会性の「種」があっても、「芽」が出ていても、「花」が咲かないように、その「水やり」をしない取り組みを社会全体ですることが重要になります(全体的予防介入)。そもそも、「万引き」(反社会性)に限らず、「種」から「芽」が出て、「花」が咲くかどうかは、それまでの「水やり」の加減次第です。そういう意味では、私たちたちの行動は、遺伝だけでなく、やはり環境によっても決まっていると言えます。ある行動に対しての「意思」は、私たちが思っている以上に、周りによって揺れているのかもしれないと思えてきます。つまり、「万引き」(反社会的行動)は、他人事ではないということです。原始の時代は、その極限状況から、「万引き」をした人の排除という手段しか残されていなかったわけです。排除すれば、死んでしまう可能性が高いため、再犯リスクはほぼ0です。しかし、現代は違います。「万引き」をした人は生き続けると同時に、彼らの教育や福祉にコストをかける社会の余裕があります。懲らしめることが全てではないです。そう考えると、犯罪と遺伝の関係を受け入れても、懲らしめられなくなるという単純な発想は出てこないでしょう。つまり、私たちの「意思」は、思っているよりも流されやすいと冷静に理解する必要があります。「本当の社会」とは?刑事が祥太に「本当の家族だったらそういうことしないでしょ」と言うシーンがありました。祥太をはっとさせると同時に、私たちをもはっとさせるインパクトのあるセリフです。同じように考えれば、「本当の社会」だったら、どうでしょうか? その「不都合な真実」と向き合うでしょう。なぜなら、その社会は、本当に「万引き」(反社会的行動)が減ってほしいと願うからです。そして、より良い社会になってほしいと願うからです。これは、すでに行われている犯罪加害者の教育政策や福祉政策を支持するものです。犯罪に対して厳しい目で見たり、排除したくなる気持ちは、私たちの心の中に、もちろんあります。ただし、同時に私たちが、その「不都合な真実」に向き合った時、そして、排除することが次の犯罪を誘発するという逆説に気付いた時、その逆説を踏まえた対策を理解することができるでしょう。その時、「不都合な真実」は「都合がつけられる事実」であったと納得できるのではないでしょうか?■関連記事ムーンライト【マイノリティ差別の解消には?】積木崩し真相アイアムサム【知能】告白【いじめ(同調)】Part 1■参考スライド【パーソナリティ障害】2019年1)万引き家族:是枝裕和、宝島社文庫、20192)犯罪心理学 犯罪の原因をどこに求めるのか:大淵憲一、培風館、20063)遺伝マインド:安藤寿康、有斐閣Insight、20114)言ってはいけない:橘玲、新潮新書、2016<< 前のページへ

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ホテルの「クラブフロア」を使ってみよう!【医師のためのお金の話】第23回

ホテルの「クラブフロア」を使ってみよう!今日は資産形成から少し離れ、「ホテルライフ」についてお話をしたいと思います。私は2008年ごろからホテルの「クラブフロア」に好んで宿泊するようになりました。クラブフロアとは、一般の客室よりワンランク上のサービスが用意されている特別フロアのことです。私がクラブフロアの存在を知ったのは、書店で見掛けた書籍だったと思います。一般の宿泊客は入ることが許されない特別階と紹介されていました。ちょっと怖いイメージですよね。私でもクラブフロアに宿泊できるのかな?と、やや気後れしながら予約したのですが、一度宿泊するとあまりの居心地の良さに、すっかりクラブフロアのファンになってしまいました。クラブフロアのメリットとはクラブフロアを併設しているホテルのほとんどは、五つ星の高級ホテルです。五つ星ホテルは全体が豪華なのですが、中でもクラブフロアは特別階に存在し、一般の方はもちろん、通常の宿泊客も出入りすることができません。クラブフロアに宿泊すると下記のような特典を受けられます(ホテルによって違いがあります)。ジムやプールが無料クラブフロアでチェックイン・チェックアウトできる駐車場が無料クラブラウンジを利用できるクラブフロアに宿泊するメリットとして、多くのホテルが併設しているジムやプールを無料で利用できることが挙げられます(一般の宿泊客は有料のことが多いです)。私はクラブフロアに宿泊するときには基本は水着持参です。チェックインやチェックアウトをクラブフロアの専用レセプションでできるのも大きなメリットです。大きな荷物を持ちながら行列することなく、ウェルカムドリンクを飲みながらゆったりチェックインするのは、とても心地の良い経験です。そして、都心立地の五つ星ホテルでは駐車場料金がばかにならないことが多いですが、クラブフロア宿泊客は無料もしくは割引料金が適用されます。このように数々の特典があるのですが、クラブフロアに宿泊する最大の目的はクラブラウンジだと言っても過言ではありません。クラブラウンジの多くは、各種おつまみや軽食、そして夕方以降はアルコールを無料で楽しめるのです。クラブラウンジはホテルの高層階に位置することが多く、素晴らしい眺望をさかなにお酒を飲むのは最高のぜいたくです。ティータイムにチェックインしておいしいケーキを頂き、その後はプールで少し泳ぎ、乾いた喉をカクテルタイムにビールで潤します。夜が更けてナイトキャップの時間になるとカクテルを楽しんで一日を終える、といったクラブラウンジを中心としたぜいたくな時間を味わえます。印象に残るクラブフロア「お気に入りのクラブフロア」として、首都圏で初めに思い浮かぶのは、ホテルニューオータニの「エグゼクティブハウス 禅」です。こちらは1日6回のフードプレゼンテーション(フードの入れ替え)があり、ティータイムの時間からシャンパンが頂けます。ここはピエール・エルメ・パリのクロワッサンが有名ですが、他のフードもとてもおいしいのです。関西圏では、ザ・リッツ・カールトン大阪のクラブフロアが一押しです。最近では大阪のキタエリアにはリッツに比肩するホテルが続々と誕生していますが、ホスピタリティではリッツに一日の長があります。ただ、宿泊客の層が独特なので、私レベルでは少々肩身の狭い思いをしたこともあります。最後に福岡ですが、やはりグランドハイアット福岡です。キャナルシティ博多内にあって中洲にも近く、博多のすべてを満喫できます。首都圏や関西圏と比べて宿泊料金が手頃なのもうれしい点です。福岡の学会時などにお勧めのホテル&クラブフロアだと思います。クラブフロアのウマい利用法このような特典があるからには、宿泊料金はさぞ高額なのだろうと思われるかもしれませんが、実際にはそれほどではありません。エリアや時期にもよりますが、1室3万円台から宿泊できるホテルもあります。私は2008年から10年ほどの間に、日本全国のいろいろなホテルのクラブフロアに泊まりました。その経験から、クラブフロアの質が高いのは関西圏と福岡、一方で首都圏と東海エリアはサービスの質がイマイチでした。もちろん、各ホテルの差が大きいので首都圏のホテルがすべてだめと言っているわけではありませんが、傾向としては西高東低、という印象です。さて、クラブフロアにはどのような目的で宿泊するのが良いのでしょうか? 私は、観光ではなくホテルステイそのものを楽しむことをお薦めします。クラブラウンジをベースにして、プールなどで遊んでいると、あっという間に時間が過ぎます。リラックスできるので創作活動にももってこいです。それでは、宿泊する時期はどうでしょうか? 私のお薦めは、ゴールデンウイーク、お盆、年末年始などです。もちろん、宿泊料金はそれなりに高くはなりますが、極端に上がるわけではありません。とくに期間の長いゴールデンウイーク中にはよく「穴場の日」があります。クラブフロアを併設している五つ星ホテルは大都市圏に存在することが多いため、長期休暇中は下手なリゾート地に行くよりも空いている印象です。ゴールデン&シルバーウイークやお盆のように、どこに行っても混んでいる時期は、郊外ではなく都心のクラブフロアでゆっくり過ごすのがいいかもしれません。クラブフロア利用時の注意点一方、クラブフロアを利用するうえでの注意点もお話しします。ホテルは旅館業法で厳密に定員が決められています。子連れの場合、子供が12歳以下であれば1つの部屋に2名まで添い寝が可能であるケースが多いです。4人家族であっても子供が小さいうちは、クラブフロアに安く宿泊することが可能です。しかし、クラブラウンジは大人の空間であり、小さな子供が騒ぐことはご法度です。このため、実質的には小さな子供連れでクラブフロアを100%堪能することは難しいでしょう。また逆に子供が大きくなってくると、定員の関係で宿泊費がかさみ、宿泊しづらくなります。クラブフロアを楽しむには、独身もしくは子供がいない時期に利用するのが理想ではないでしょうか。海外旅行時にもクラブフロアの宿泊を検討したことがありますが、実際に利用したのは数回です。理由は、海外旅行では観光メインになるため、クラブフロアでゆっくりくつろいでいる時間がないからです。ビーチリゾートであっても、昼間はプールサイドやビーチで過ごすことが多く、夜は地元のおいしいレストランへ繰り出すので、クラブラウンジを利用する暇がありません。このような理由から、ホテルライフを楽しんで心身ともにリラックスしたいときにこそ、クラブフロアに宿泊することをお勧めします。

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ASCO2019レポート 消化器がん(肝胆膵)

レポーター紹介ASCO会場のメインの通りに掲げられたテーマ2019年度のASCOが、2019年5月31日~6月4日の5日間、今年もシカゴのマコーミックプレイスにて開催された。毎年同じ開催場所である。今年のテーマは「Caring for Every Patient, Learning from Every Patient」で、患者のためのケア、患者から学ぶことを重要視した学会であった。そして、今年の肝胆膵領域の発表はOral presentationも多く、Plenary sessionで採択された演題もあり、非常に興味深い発表が多かった年で、いわゆる豊作の年となった。膵がんPOLO試験今回のASCOで、肝胆膵領域の最も注目すべき演題は、膵がんに対するPARP阻害薬であるオラパリブのPOLO試験であろう。生殖細胞系(Germline)BRCA1またはBRCA2の変異を有する転移性膵がん患者に対して、1次治療としてプラチナ製剤を含む化学療法を16週以上行い、抗腫瘍効果でCR、PRまたはSDが得られ、増悪を認めていない患者を、オラパリブ300mgを1日2回内服する群と、プラセボを内服する群に3:2にランダムに割り付けて、がんの増悪または忍容できない有害事象を認めるまで治療を継続した。主要評価項目は、RECIST v1.1での中央判定による無増悪生存期間であった。オラパリブ群に92例、プラセボ群に62例がランダム割り付けされた。主要評価項目である無増悪生存期間(中央値)はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月で、ハザード比は0.53(95%信頼区間[CI]:0.35~0.82)であり、有意に良好な結果(p=0.0038)が示された。生存期間はまだ十分に経過観察しえた結果ではないが、中央値でオラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月であり、ハザード比も0.91(95%CI:0.56~1.46)と有意な差は認めなかった(p=0.68)。有意差を認めなかった理由として、プラセボ群の後治療でPARP阻害薬を投与された患者が14.5%存在するなどの後治療の影響や十分な経過観察ができていないことが指摘されていた。有害事象は、疲労、悪心、下痢、腹痛、貧血、食欲低下などで、Grade 3以上の有害事象は貧血と疲労であり、忍容性は良好と判断された。また、プラチナ製剤に特有の末梢神経障害はあまり認めないことが、プラチナ製剤投与後の維持療法として使用するうえで好ましい点のように思われた。今後、BRCA1または2の遺伝子変異を有する膵がん患者には、まずプラチナ製剤を含むレジメン、たとえば、FOLFIRINOXやゲムシタビン+シスプラチンなどによる治療を開始し、4ヵ月以降でSD以上の抗腫瘍効果が得られていたら、維持療法としてオラパリブを投与することが標準治療になるものと思われる。本試験の結果は、日本では明日からの診療につながる話ではないが、その体制整備をしておく必要がある。まず、germline BRCA1/2を調べることから始まる。初回治療開始前にgermline BRCA1/2の変異の有無を調べてから結果が戻ってくるまでの時間を考慮すると、診断の早い段階で同意を取ったうえで、採血の検査をオーダーする必要がある。また、生殖細胞系変異を見つけることは、すなわち遺伝カウンセリングの体制整備が重要になる。日本は本試験に参加しておらず、われわれ肝胆膵領域の臨床腫瘍医にPARP阻害薬の経験が乏しいことが問題点であり、十分にPARP阻害薬のマネジメントに精通しておく必要がある。また、germline BRCA1/2の変異は膵がん患者の4~7%と言われており、プラチナ製剤とオラパリブが有効な対象はまだまだ限られた対象であることも理解しておくことが必要である。Plenary sessionの会場の光景:全部でモニターが12台、演者がかなり遠くに見える。このASCOのPlenary sessionは何千人入るかわからないほどの巨大な会場で行われた。今回も、巨大なモニターが会場内に12台設置され、椅子も所狭しと並んで、聴衆が間を開けることなくぎっしり座っていた。そこに、Prof Kindlerのゆっくりと丁寧な言葉で発表が進んだ。そんな巨大な会場で発表が行われている最中に、メールの配信で、New England Journal of MedicineからPOLO試験の論文掲載の案内が届き、まさに学会と論文の同時発表であり、ここまでタイムリーな対応に驚きを隠せない状況であった。発表が終わってからは拍手喝采が鳴りやまず、まさに圧巻で、一見の価値のある光景であった。APACT試験膵がんにおけるもうひとつの注目演題は、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の補助化学療法であるAPACT試験である。膵がん切除後の補助療法としては、日本ではS-1による補助療法が主流であるが、海外ではゲムシタビンが汎用され、近年、ゲムシタビン+カペシタビンやmodified FOLFIRINOXなども使用されている。進行膵がんにおいて、ゲムシタビン+ナブパクリタキセルの高い有効性が示されていることから、膵がん切除後の補助療法としても期待され、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法とゲムシタビン単独療法を比較した第III相試験が計画された。R0または1の切除後の膵がん患者をゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法とゲムシタビン単独療法に1:1にランダムに割り付けて行われた。主要評価項目は無病生存期間、副次評価項目は全生存期間、安全性であった。全世界から866例が登録され、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法に432例、ゲムシタビン単独療法に434例がランダムに割り付けされた。主要評価項目である中央判定による無病生存期間(中央値)は、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群が19.4ヵ月、ゲムシタビン単独群が18.8ヵ月であり、ハザード比0.88(95%CI:0.729~1.063)、p=0.1824と有意差が示されなかった。しかし、担当医判断の無病生存期間(中央値)で、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群が19.4ヵ月、ゲムシタビン単独群が16.6ヵ月であり、ハザード比0.82(95%CI:0.694~0.965)、p=0.0168と有意差が示された。また、副次評価項目である全生存期間(中央値)もゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群が40.5ヵ月、ゲムシタビン単独群が36.2ヵ月であり、ハザード比0.82(95%CI:0.680~0.996)、p=0.045と有意差が示された。ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の安全性はこれまでの報告と違いはなかった。本試験はプラセボコントロールの試験ではないため、中央判定の無病生存期間が主要評価項目に用いられたが、膵がん切除後の再発判定は非常に難しく、担当医は全身状態や腫瘍マーカーなどから総合的に判断できるため、中央判定よりも担当医のほうが早期に再発を指摘しえたのかもしれない。プラセボコントロールで、担当医判断の無病生存期間が主要評価項目であったら、Positiveな結果であっただけに非常に惜しい試験である。肝細胞がん肝細胞がんにおいて注目された演題は、肝切除とラジオ波焼灼術(RFA)を比較したSURF試験、ソラフェニブに不応/不耐の肝細胞がんに対する2次治療としてペムブロリズマブとプラセボを比較したKEYNOTE-240試験である。ともに有意な結果は示されなかったが、日常診療に大きなインパクトを与える試験であった。また、進行がんに対する有望な薬物療法として、ニボルマブ+イピリムマブの併用療法の結果が報告された。SURF試験3cm、3個以下の小肝細胞がんに対して、肝切除とRFAのどちらが良いかは長年のClinical questionであった。これまでも4試験ほど、ランダム化比較試験の結果が報告されているが、切除が良好という結果や両者変わりないという結果など、一定の見解は得られていない。今回、日本から301例という症例数も多く、質も良好な試験の結果が報告された。初回の肝細胞がんで腫瘍径3cm以下、腫瘍数3個以下で、Child-Pugh 7点以下の20~79歳までの患者600例を目標に肝切除とRFAにランダムに割り付けた比較試験が行われた。主要評価項目は無再発生存期間、全生存期間であり、RFAに比べて肝切除の優越性を検証する試験デザインであった。2009年4月より登録を開始したが、2016年2月の段階で300例しか登録ができておらず、データモニタリング委員会から中止勧告が出され、登録は中止となった。最終的には、切除群150例、RFA群151例が適格で、解析対象となった。両群の患者背景に有意差は認めなかった。無再発生存期間(中央値)は、肝切除群2.98年、RFA群2.76年、ハザード比0.96(95%CI:0.72~1.28)で、p=0.793であり、肝切除の優位性は示されなかった。また、両群ともに死亡例は認めなかったが、入院期間や治療時間はRFA群が有意に良好であった。3cm以下の小肝細胞がんに対して、肝切除とRFAの無再発生存期間はほぼ同等であったと結論された。この発表のDiscussantは、これまでにランダム化比較試験が5試験行われたが、3cm以下、単発の腫瘍に関しては、ほぼRFAの非劣性が示されたと考えてよいだろうと。3cm以上や多発する場合には肝切除が選択肢になるであろうと。そして、患者登録も困難になることから、今後、同様のランダム化比較試験を行うべきではないだろうとまとめていた。長年、論争になっていた肝切除とRFAの比較にひとつの区切りがつけられたように思われた。KEYNOTE-240ソラフェニブ不応/不耐の肝細胞がん患者に対するペムブロリズマブとプラセボを比較した第III相試験の結果が報告された。肝細胞がんに対して初めての免疫チェックポイント阻害薬の第III相試験の結果であり、非常に注目された。対象は、ソラフェニブに不応/不耐の肝細胞がん患者で、Child-Pugh Aで測定可能病変を諭旨、門脈本幹腫瘍栓のない患者で、ペムブロリズマブ200mg/回を3週ごとの投与とプラセボに2:1に割り付けて投与する第III相試験である。主要評価項目は全生存期間と無増悪生存期間の2つであり、全生存期間はp値が0.0174未満で有意に、無増悪生存期間はp値が0.0020で有意になる設定であり、通常のp値が0.05未満よりは厳しい設定であった。ペムブロリズマブ群に278例、プラセボ群に135例が登録された。主要評価項目の全生存期間(中央値)は、ペムブロリズマブ群で10.6ヵ月、プラセボ群で10.6ヵ月、ハザード比は0.781(95%CI:0.611~0.998)で、p値は0.0238と当初設定した0.0174を下回らず、有意な結果は得られなかった。また、無増悪生存期間(中央値)は、ペムブロリズマブ群で3.0ヵ月、プラセボ群で2.8ヵ月、ハザード比は0.718(95%CI:0.570~0.904)で、p値は0.0022と当初設定した0.0020を下回らず、こちらも有意な結果は得られなかった。奏効割合はペムブロリズマブ群で18.3%、プラセボ群で4.4%であり、第II相試験(KEYNOTE-224)と同様に有意差が認められ(p=0.0007)、奏効期間(中央値)も13.8ヵ月とともに良好であった。有害事象はこれまでの報告と同様であった。本療法の後治療として、プラセボ群で47.4%と非常に高率で、抗PD-1/PD-L1抗体による治療が10.4%も含まれていた。本試験は、統計学的に有意差がついていそうな試験結果であったが、主要評価項目は達成しておらずNegativeな結果となった。この発表のDiscussantは、試験としてはNegativeであったが、マルチキナーゼ阻害薬に忍容性がないような患者に、2次治療の日常診療で抗PD-1抗体を継続することは問題ないであろうとコメントしており、有効性は評価していた。今後、中国を中心に行っているペムブロリズマブとプラセボの比較試験(KEYNOTE-394)の結果も参考にして、今後の本薬剤の承認までの方向性を検討することが必要であろうと結論づけた。また、今後の開発の方向性として、VEGF阻害薬との併用療法であるベバシズマブ+アテゾリズマブ、レンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法も期待されており、定位放射線やRadioembolization、肝動脈化学塞栓療法との併用療法の可能性なども示唆していた。会場入り口の階段にはWelcomeの文字がこの結果を受けて、1次治療としてのニボルマブとソラフェニブを比較した第III相試験の結果が期待されたが、2019年6月24日に本第III相試験も主要評価項目を達成しなかったことがプレスリリースされ、残念ながら免疫チェックポイント阻害薬単剤の結果は肝細胞がんにおいては厳しいものとなった。CheckMate-040ソラフェニブに不応/不耐の肝細胞がん患者を対象として、ニボルマブとイピリムマブの推奨投与量を決定する第I/II相試験が発表された。A群はニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを3週ごとに4回投与後、ニボルマブ240mg/bodyの固定用量にて2週ごとの投与を継続し、B群はニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを3週ごとに4回投与後、ニボルマブ240mg/bodyの固定用量にて2週ごとの投与を継続、C群はニボルマブ3mg/kgにて2週ごと、イピリムマブ1mg/kgにて6週ごとに投与を継続した。どの群もがんの増悪または忍容できない有害事象が出現するまで、投与を継続した。奏効割合はA群32%、B群31%、C群31%であり差は認めなかったが、生存期間(中央値)は、A群22.8ヵ月、B群12.5ヵ月、C群12.7ヵ月と、A群で良好であった。主な有害事象は、掻痒、皮疹、下痢、AST上昇などであり、免疫関連有害事象は、皮疹、肝障害、副腎不全、下痢、肺炎などであった。A群の有害事象はやや高率に認めていたが、忍容性は十分と判断され、A群(ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg)が推奨投与量と考えられた。ソラフェニブに不応/不耐の患者に対する良好な治療レジメンの登場により、今後、本レジメンの開発の動向が気になるところである。胆道がん胆道がんにおいて最も注目された演題は、ゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法の2次治療として、mFOLFOXと症状コントロールのみを比較したABC-06試験である。この結果は、長らく胆道がんにおける2次治療は確立していなかったのだが、mFOLFOXが2次治療の標準治療として確立することになった。ABC-06対象は、GC療法後に増悪を認めた進行胆道がん患者で、増悪を認めてから6週以内でPSが0または1で、臓器機能が保たれている患者を、A群:積極的な症状コントロールを行う群とB群:積極的な症状コントロールに加えて、mFOLFOXを行う群にランダム割り付けされた。主要評価項目は全生存期間であり、層別化因子は、1次治療のGC療法のプラチナ感受性があったかどうか、アルブミンが35g/L以上か未満か、局所進行か転移性か、であった。主要評価項目である全生存期間において、B群:mFOLFOX群は有意に良好な生存期間を示した(生存期間中央値、6ヵ月と12ヵ月生存割合:A群 5.3ヵ月、35.5%、11.4%、B群 6.2ヵ月、50.6%、25.9%、ハザード比0.69、95%CI:0.50~0.97、p=0.031)。1次治療のGC療法のプラチナ感受性別に検討したサブグループ解析では、プラチナ製剤に感受性がある群のみならず、プラチナ抵抗性のグループでも有意な差が認められ、プラチナ感受性にかかわらず、mFOLFOXは有用であることも示された。mFOLFOXの奏効割合は5%、病勢制御割合は33%、無増悪生存期間(中央値)は4.0ヵ月であった。また、主なGrade 3以上の有害事象は疲労、好中球減少、感染症などであり、忍容性は良好と判断された。GC療法後の2次治療として初めて延命効果を示した治療法であり、今後、標準治療として位置付けられることになるであろうと結論づけられた。Discussantも治療効果が高いわけではないが、新しい標準治療になるであろうと結論づけている。ただし、胆道がんではさまざまな治験や臨床試験が進行中である。1次治療として、化学療法+/-免疫チェックポイント阻害薬の併用療法や、GCにナブパクリタキセルの併用療法、mFOLFIRINOX療法などの3剤併用療法の開発が進行中であり、また、IDH1やFGFR、homologous Recombination Deficiencyなど遺伝子異常に基づいた分子標的治療薬の開発などが進行中であり、これらの動向にも注目する必要がある。まとめASCO2019では、膵がんに対してのゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法が補助療法としてはNegativeな結果であったが、PARP阻害薬が登場した。肝細胞がんでは、ペムブロリズマブの残念な結果が報告されたが、ニボルマブ+イピリムマブにおいて有望な結果が報告され、期待されている。また、切除とRFAは同等の治療成績であることが明らかになり、よりRFAが選択されるようになるかもしれない。そして、胆道がんではmFOLFOXが2次治療における標準治療として位置付けられており、日本もmFOLFOXを承認してもらうような準備が必要である。そのほかにも有望な治療法の開発が進行中であり、肝胆膵領域の化学療法の開発も活気づいており、海外に遅れをとらないように開発を進めていく必要がある。

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第1回 噂の狭間研至とは何者か?【噂の狭研ラヂオ】

動画解説業界きってのオピニオンリーダーである狭間研至先生。第1回は、薬局に生まれ医師となり、そして再び薬局経営に戻ってきた経緯を語ります。中学時代に薬学部から医学部へ舵をきった理由、手術室から再び薬局に戻ってきた目的とは?噂の狭研の原点が今、明らかに。

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夜間頻尿が転倒や骨折に及ぼす影響

 夜間頻尿はさまざまな併存疾患と関連しているが、転倒や骨折への影響はわかっていない。今回、フィンランド・Paijat-Hame Central HospitalのJori S. Pesonen氏らが系統的レビューおよびメタ解析を行った結果、夜間頻尿により転倒リスクが約1.2倍、骨折リスクが約1.3倍に増加することが示唆された。The Journal of Urology誌オンライン版2019年7月26日号に掲載。 本研究では、PubMed、Scopus、CINAHL、主要な泌尿器関連学会の抄録を2018年12月31日まで検索し、転倒および骨折の調整相対リスクについてランダム効果メタ解析を実施した。転倒および骨折の予後因子と原因となる因子としての夜間頻尿のエビデンスの質をGRADEアプローチにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・5,230件の潜在的な報告のうち、観察縦断研究9件が夜間頻尿と転倒または骨折との関連に関するデータであった(転倒4件、骨折4件、両方1件)。・統合推定値によると、夜間頻尿と転倒の関連のリスク比は1.20(95%CI:1.05~1.37、I2=51.7%、高齢者における年次リスク差7.5%)、夜間頻尿と骨折の関連のリスク比は1.32(95%CI:0.99~1.76、I2=57.5%、年次リスク差1.2%)であった。・サブグループ解析では、年齢、性別、経過観察時間、夜間頻尿の定義、バイアスリスクにより、影響に対する有意な変化は認められなかった。・夜間頻尿のエビデンスの質の評価は、予後因子としては転倒は中程度、骨折は低く、転倒/骨折の原因としてはどちらも非常に低かった。

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皮膚がん、PD-1阻害薬治療後の予後予測因子が判明

 PD-1阻害における制御性T細胞(Tregs)の役割とその免疫抑制のメカニズムは完全には解明されていないが、皮膚がんに対する免疫チェックポイント阻害薬治療と、臨床的アウトカムの関連についての研究が進んでいる。今回、予備的エビデンスとして、PD-1阻害薬による治療導入後の血中PD-1+ Tregsの急速な低減は、メラノーマの進行およびメラノーマ特異的死亡(MSD)のリスク低下と関連していることが示された。ドイツ・ルール大学ボーフムのT. Gambichler氏らによる検討の結果で、「末梢血でこうしたPD-1+ Tregsの低減がみられない患者は、免疫チェックポイント阻害薬に対する反応が認められず、アウトカムは不良という特徴が認められた」とまとめている。The British Journal of Dermatology誌オンライン版2019年7月30日号掲載の報告。 研究グループは、ニボルマブまたはペムブロリズマブの治療を受けるメラノーマ患者のサブ集団で、フローサイトメトリーを用いて血中のTregサブポピュレーションを調べ、その所見と臨床的アウトカムとの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・CD4+CD25++CD127-PD-1+リンパ球(PD-1+ Tregs)の発現頻度は、免疫療法の初回サイクル後に有意に減少した(23% vs.8.6%、p=0.043)。・初回治療後にPD-1+ Tregsの有意な減少を認められず死亡した患者と比較して、無増悪生存(PFS、p=0.022)、MSD(p=0.0038)に関する臨床的アウトカムは良好であった。・初回治療後の末梢血中PD-1+ Tregsの有意な減少について多変量解析したところ、より良好なPFSやMSDに関する有意な予測因子であることが示された(それぞれp=0.04、p=0.017)。・興味深い所見として、免疫関連の有害事象の発生についても、MSDリスク低下の独立予測因子であることが示された(p=0.047、オッズ比:0.064、95%信頼区間[CI]:0.0042~0.97)。

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急性期PE、年間症例数が多い病院で死亡率低下/BMJ

 急性症候性肺塞栓症患者では、本症の年間症例数が多い病院(high volume hospitals)へ入院することで、症例数が少ない病院に比べ、30日時の本症に関連する死亡率が低下することが、スペイン・Ramon y Cajal Institute for Health Research(IRYCIS)のDavid Jimenez氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年7月29日号に掲載された。hospital volumeは、内科的/外科的疾患のアウトカムの決定要因として確立されている。一方、急性肺塞栓症発症後の生存に、hospital volumeが関連するかは知られていないという。16ヵ国353病院が参加したコホート研究 研究グループは、急性症候性肺塞栓症でマネジメントを受けた経験(病院の症例数を反映)と死亡率との関連を評価する目的で、人口ベースのコホート研究を実施した(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、16ヵ国の353病院が参加するRegistro Informatizado de la Enfermedad TromboEmbolica(RIETE)レジストリの、2001年1月1日~2018年8月31日のデータを用いた。対象は、急性症候性肺塞栓症の診断が確定した患者3万9,257例であった。 病院は、hospital volume(RIETE参加期間中の平均年間症例数)で4群に分けられた(Q1:症例数<15例/年[253施設、8,596例、平均年齢65.6歳、男性47.1%]、Q2:15~25例/年[52施設、8,130例、67.2歳、46.2%]、Q3:>25~40例/年[28施設、9,750例、68.0歳、47.1%]、Q4:>40例/年[20施設、12,781例、67.7歳、46.7%])。 主要アウトカムは、診断から30日以内の肺塞栓症関連死とした。30日肺塞栓症関連死亡率は、Q4群がQ1群より44%低い hospital volumeは施設によって1~112例の幅があり、中央値は7例(IQR:4~16)であった。hospital volumeが高い施設は低い施設に比べ、患者の年齢が高く、併存疾患(がん、慢性肺疾患、うっ血性心不全、最近の出血)が多い傾向がみられた。 30日時のコホート全体の全死因死亡率は5.4%(2,139/3万9,257例)、肺塞栓症関連死亡率は1.7%(668/3万9,257例)であった。hospital volumeを連続変数(1~112例)として解析したところ、30日肺塞栓症関連死の補正後オッズは、hospital volumeが高くなるにしたがって直線的に低下した(線形傾向:p=0.04)。 hospital volumeと肺塞栓症関連死には、有意な逆相関の関連が認められた。すなわち、30日時の肺塞栓症関連死は、Q1群の施設と比較して、Q2群は34%(補正後リスク:1.5% vs.2.3%、補正後オッズ比[OR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.43~1.01、p=0.06)低く、Q3群は39%(1.4% vs.2.3%、0.61、0.38~0.99、p=0.05)、Q4群は44%(1.3% vs.2.3%、0.56、0.33~0.95、p=0.03)低かった。 30日時の全死因死亡率は、Q4群とQ1群に差は認めなかった(補正リスク:5.2% vs.6.4%、補正後OR:0.78、95%CI:0.50~1.22、p=0.28)。また、Q4群とQ1群で、生存例における非致死的な静脈血栓塞栓症の再発(OR:0.76、95%CI:0.49~1.19)および非致死的な大出血(1.07、0.77~1.47)には、ほとんど差はなかった。 著者は、「(1)hospital volumeの低い病院における臨床医の臨床的専門性を改善する戦略の開発、(2)厳選された高リスク患者のサブグループのトリアージと搬送、(3)集学的なpulmonary embolism response teams(PERTs)が、患者アウトカムの改善をもたらすかを評価するために、新たな研究を要する」としている。

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70歳以下のCLLの1次治療、イブルチニブ+リツキシマブ併用が有効/NEJM

 70歳以下の未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療において、イブルチニブ+リツキシマブ併用レジメンは標準的な化学免疫療法レジメンと比較して、無増悪生存(PFS)と全生存(OS)がいずれも有意に優れることが、米国・スタンフォード大学のTait D. Shanafelt氏らが行ったE1912試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年8月1日号に掲載された。70歳以下の未治療CLL患者の標準的な1次治療は、フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブによる化学免疫療法とされ、とくに免疫グロブリン重鎖可変領域(IGHV)の変異を有する患者で高い効果が確認されているが、重度の骨髄抑制や、わずかながら骨髄異形成のリスクがあるほか、T細胞免疫抑制による日和見感染などの感染性合併症を含む毒性の問題がある。ブルトン型チロシンキナーゼの不可逆的阻害薬であるイブルチニブは、第III相試験において、フレイルが進行したため積極的な治療を行えない未治療CLL患者でPFSとOSの改善が報告されているが、70歳以下の患者の1次治療のデータは少ないという。米国の無作為化第III相試験の中間解析の結果を報告 本研究は、米国で実施された多施設共同非盲検無作為化第III相試験であり、2014年3月~2016年6月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]とPharmacyclicsの助成による)。 対象は、年齢70歳以下の未治療のCLLまたは小リンパ球性リンパ腫(SLL)の患者であり、17p13欠失を有する患者はフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブへの反応が低いため除外された。 被験者は、イブルチニブを単独で1サイクル投与後にイブルチニブ+リツキシマブを6サイクル投与し、その後はイブルチニブを病勢進行まで投与する群、またはフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブによる化学免疫療法を6サイクル施行する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントはPFSであり、副次エンドポイントはOSとした。この論文では、予定されていた中間解析の結果が報告された。病勢進行/死亡リスクが65%、死亡リスクが83%低減 529例が無作為化の対象となり、イブルチニブ+リツキシマブ群に354例、化学免疫療法群には175例が割り付けられた。全体の平均年齢は56.7±7.4歳、女性が32.7%で、IGHV変異陽性例は28.9%であった。19例がプロトコールで規定された治療を開始しなかった。 追跡期間中央値33.6ヵ月の時点で、3年PFS率はイブルチニブ+リツキシマブ群が89.4%(95%信頼区間[CI]:86.0~93.0)と、化学免疫療法群の72.9%(65.3~81.3)に比べ有意に優れ(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.35、95%CI:0.22~0.56、p<0.001)、プロトコールで規定された中間解析の有効性の閾値を満たした。 3年OS率も、イブルチニブ+リツキシマブ群が化学免疫療法群よりも良好であった(98.8% vs.91.5%、死亡のHR:0.17、95%CI:0.05~0.54、p<0.001)。 PFSの事前に規定されたサブグループ解析では、11q22.3欠失例を含め、すべてのサブグループでイブルチニブ+リツキシマブ群が良好であった。また、IGHV変異陰性例では、3年PFS率はイブルチニブ+リツキシマブ群が化学免疫療法よりも良好であったが(90.7% vs.62.5%、病勢進行または死亡のHR:0.26、95%CI:0.14~0.50)、IGHV変異陽性例では有意な差はなかった(87.7% vs.88.0%、0.44、0.14~1.36)。 一方、完全奏効の割合(17.2% vs.30.3%)および12サイクル時の微小残存病変(MRD)陰性の割合(8.3% vs.59.2%)は、イブルチニブ+リツキシマブ群のほうが低かった。 Grade3以上の有害事象(試験薬に起因しないものも含む)の頻度は両群でほぼ同等で、イブルチニブ+リツキシマブ群が352例中282例(80.1%)、化学免疫療法群は158例中126例(79.7%)に認められた。 Grade3以上の好中球減少(90例[25.6%]vs.71例[44.9%]、p<0.001)および感染性合併症(37例[10.5%]vs.32例[20.3%]、p=0.005)は、イブルチニブ+リツキシマブ群のほうが頻度は低かったが、Grade3以上の高血圧の頻度は高かった(66例[18.8%]vs.13例[8.2%]、p=0.002)。イブルチニブ+リツキシマブ群では、Grade3以上の心毒性が23例(6.5%)(心房細動/粗動13件、心臓性胸痛3件、上室頻拍2件、非致死的心不全2件、心膜液2件、洞徐脈1件、心室頻拍1件、非致死的心停止1件、心筋梗塞1件)に認められた。 著者は、「イブルチニブ治療の無期限の使用は、高額な費用および長期的な毒性作用の可能性と関連しており、薬剤耐性につながるクローン選択(clonal selection)のリスクを高める可能性もある」と指摘している。

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オシメルチニブ、EGFR陽性肺がんのOS改善(FLAURA)/AstraZeneca

 AstraZenecaは2019年8月9日、局所進行または転移のあるEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の未治療患者を対象としたオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の第III相無作為化二重盲検多施設試験FLAURA試験において、全生存率(OS)が有意に改善したことを発表した。 第III相FLAURA試験の副次評価項目であるOSにおいて、オシメルチニブはエルロチニブまたはゲフィチニブと比較して、統計学的有意かつ臨床的に意味のある改善を示した。 FLAURA試験は2017年7月に無増悪生存期間(PFS)を統計的有意かつ臨床的に意味のある改善を示し、主要評価項目を達成した。オシメルチニブの安全性と忍容性は、従来のプロファイルと一致していた。 AstraZenecaは、プレスリリースの中で、FLAURA試験でのOSの結果は、今後の医学学会で発表する予定としている。

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クエチアピン徐放製剤とオランザピンの日本人双極性うつ病に対する有効性の違い

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、日本人双極性うつ病患者におけるクエチアピン徐放製剤300mg/日(QUEXR300)とオランザピン5~20mg/日(OLZ)との有効性および安全性の違いについて、比較検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年7月8日号の報告。クエチアピンとオランザピンの双極性うつ病患者への有効性に有意差なし 日本におけるQUEXR300とOLZの第III相臨床試験のデータを用いて、ベイズ分析を行った。アウトカムは、寛解率(主要)、奏効率、Montgomery Asbergうつ病評価尺度および17項目のハミルトンうつ病評価尺度スコアの改善、中止率、有害事象発生率とした。連続データと二値データについて、標準化平均差(SMD)、リスク比(RR)、95%信頼区間(CI)をそれぞれ算出した。 クエチアピン徐放製剤とオランザピンの日本人双極性うつ病患者における有効性の違いを比較した主な結果は以下のとおり。・有効性に関して、QUEXR300とOLZでは有意な差は認められなかった。・安全性に関しては以下のとおりであった。 ●QUEXR300はOLZよりも、傾眠の発生率が高かった(RR:5.517、95%CI:1.563~19.787)。 ●OLZはQUEXR300よりも、体重増加が重度で(SMD:-0.488、95%CI:-0.881~-0.089)、血中プロラクチン濃度が高かった(SMD:-0.642、95%CI:-1.073~-0.213)。 ●OLZはQUEXR300よりも、HDLコレステロールレベルの減少がより大きかった(SMD:-0.408、95%CI:-0.785~-0.030)。 著者らは「両剤の有効性に違いは認められなかったが、OLZはメタボリックシンドロームのリスクを、QUEXR300は傾眠リスクを上昇させた。本結果を確認するためには、日本人双極性うつ病患者に対する両剤の直接比較試験が必要である」としている。

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大手製薬企業のデータ共有方針の水準はきわめて高かった(解説:折笠秀樹氏)-1096

 臨床研究の事前登録はかなり浸透してきた。WHOがまず20項目を示し、WHO-ICTRP version 1.3.1で4項目が追加された。それは、倫理審査状況、研究完了時期、結果の要旨、個別データの共有方針の4項目である。メタアナリシスが数多く実施されるようになり、個別データを入手し、統合解析をするようになってきた。そこで、研究者間でのデータの共有が広まってきたと思われる。 データ共有の方針は世の流れもあり、原則共有を可能とする臨床研究が多数になってきたようだ。本論文では、データ共有方針の温度差を明確にするため得点化を試みた。それをデータ共有得点と名付け、次の5項目で定義した。事前登録の徹底度、解析可能なデータセットおよびプロトコル・統計解析計画書・コード化の書類・研究結果要旨の提供度、データ提供依頼方法の明瞭度、毎年の依頼受理件数・提供/拒絶件数の提示、データ提供期限(FDA承認から6ヵ月以内/研究終了から18ヵ月以内)の明示、この5項目を0~100点に得点化した。 対象となったのは、2015年に米国FDAから新規医薬品の承認を受けた大手製薬企業、12社であった。興味深かったのは、12社の実名が出ていたこと、さらに企業ごとの得点が明示されていたことだった。この手の調査では実名を伏せたり、平均を取ったデータしか示さないことが多いが、ここではまさに個別データが示されていたことに驚いた。日本企業は残念ながら含まれていなかった。 結果だが、2社を除いて、データ共有得点は総じて高かった(57~100点)。フィードバックの結果で1社は改善したので、12社のうち1社(Valeantというカナダの製薬会社)だけ得点がきわめて低かった(14点)。5項目の中で満足率が低かったのはデータ提供期限の明示で、12社中3社だけしか満たしていなかった。

19000.

下垂体性成長ホルモン分泌亢進症〔pituitary hypersecretion of growth hormone〕

1 疾患概要■ 概念・定義下垂体性成長ホルモン(GH:growth hormone)分泌亢進症とは、GHとその仲介ホルモンであるインスリン様成長因子(IGF:insulin-like growth factor)-Iの過剰により特有の外観(顔貌や体型など)、種々の代謝合併症を来す疾患である。■ 疫学欧米の疫学調査では人口10万人あたり3~13人の罹患率とされているが、実際には診断されていない潜在的な症例がこれより多く存在する可能性が指摘されている1)。男女差はなく、幅広い年代にみられるが40~50歳代に多い。■ 病因本症の病因の97%以上はGH産生下垂体腺腫による。ごくまれに異所性GH産生腫瘍(膵がんなど)によるGH分泌過剰、異所性成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)産生腫瘍(気管支や膵臓の神経内分泌腫瘍など)により下垂体過形成を介してGH分泌亢進症を生じる病態がある。■ 症状わが国の診断の手引き2)では下垂体性巨人症、先端巨大症について以下の症候が挙げられている。症状は緩徐に進行するため本人も自覚していない場合があり、診断確定までに約10年経過することもある1)。1)下垂体性巨人症主症候:著明な身長の増加(最終身長は男子185cm以上、女子175cm以上)2)先端巨大症主症候:手足の容積の増大、先端巨大症様顔貌(眉弓部の膨隆、鼻・口唇の肥大、下顎の突出など)、巨大舌副症候:発汗過多、頭痛、視野障害(下垂体腺腫が視交叉を圧排すると両耳側半盲を来す)、女性における月経異常、睡眠時無呼吸症候群、耐糖能異常、高血圧、咬合不全、変形性関節症,手根管症候群■ 分類1)GH過剰が発症した時期による分類骨端線が閉鎖する以前に発症し、著明な高身長を呈するものを下垂体性巨人症(gigantism)、骨端線閉鎖後に発症するものを先端巨大症(acromegaly)という。2)厚生労働省による指定難病としての重症度分類以下に示す項目のうち最も重症度の高い項目を疾患の重症度とする。(1)軽症:血清GH濃度1ng/mL未満、血清IGF-1濃度SDスコア+2.5未満治療中の合併症がある。(2)中等症:血清GH濃度1ng/mL以上2.5ng/mL未満、血清IGF-1濃度SDスコア+2.5以上臨床的活動性(頭痛、発汗過多、感覚異常、関節痛のうち、2つ以上の臨床症状)を認める。(3)重症:血清GH濃度2.5ng/mL以上、血清IGF-1濃度SDスコア+2.5以上臨床的活動性および合併症の進行を認める。■ 予後手術で寛解した場合や薬物療法で良好なコントロール(血中IGF-Iの正常化)が得られた場合の生命予後は一般人と変わらない。しかし、長期にわたってGH過剰が続いた場合は、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを併発し、心血管系合併症により生命予後は悪化する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)先端巨大症では、主症候(手足の容積の増大、先端巨大症様顔貌、巨大舌)のいずれかに加え、検査所見にて血中GHの過剰(経口75gブドウ糖投与で血中GHが正常(4 今後の展望前述のように内視鏡下での手術が主流となっている。近年の光学機器の進歩は目覚ましく、そのような背景からこれらの手術にも4K、8Kシステムなどが導入されつつある。今後も画質の向上が期待でき、手術成績も良くなる可能性が期待される。難治症例についてはソマトスタチン誘導体、ドパミン作動薬、GH受容体拮抗薬など複数の薬剤を組み合わせる治療も試みられている。5 主たる診療科内分泌代謝内科、脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報下垂体患者の会(患者とその家族および支援者の会)1)Zahr R, et al. Eur Endocrinol. 2018;14:57–61.2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班 編集. 間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成30年度改訂版). 日本内分泌学会雑誌. 2019;95:1-60.公開履歴初回2019年8月13日

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