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音羽幼女殺害事件【なぜママ友の子どもを殺したの?人ごとじゃないわけは?】Part 2

動機は執着?(1)弁護側の主張動機の解明には、Mさんがもともとどういう人なのかをもっと詳しく知る必要があります。そのため、心理カウンセラーが弁護側の証人となりました。以下がその心理分析です。a. 良い子になりきるMさんは、ある田舎町の農家の大家族の長女として生まれ育ちました。その家族構成は、両親、妹、父方の祖父に加えて、その祖父の後妻の祖母(Mさんにとっては義理の祖母)、その子ども2人(Mさんにとっては叔父と叔母)でした。義理の祖母が家計の権限を握っていたことに加えて、父と叔父のどちらが跡取りになるかの問題で、家の中はもともと緊張感がありました。Mさんは、子どもながらに、争いごとに巻き込まれないために、そしてあら探しをされないために、常に礼儀正しく勉強のできる「良い子」になりきりました。小学生の時は、祖父や義理の祖母が近所の人に両親の悪口を言っていると、自発的にその内容をすべてメモして、両親に渡していました。中学生になると、学級委員も務める優等生で、担任教師との交換ノートには、教師が不在の教室で騒ぐ男子生徒のリストを密告していました。ところが、その担任教師は、そのノートを見ながら、その男子生徒たちに厳しく注意をするというミスをしてしまいます。Mさんは、男子生徒たちから「格好をつけて告げ口した」と非難されます。そのことで、「良い生徒」としての自信を失い、人目をますます気にするようになりました。Mさんは、「全然関係のない人たちのいるところに行きたい」という気持ちから、高校は、遠方の高校にわざわざ遠距離通学をしていました。その後、他県の短大の看護科に進学し、アパート暮らしを始めました。そして、その頃、摂食障害が始まります。拒食と過食によって10kgの体重の増減がありました。短大卒業後は、出身県に戻ってその大学病院に就職しましたが、「いつも頭の中が食べ物のことでいっぱい」との理由で、1ヵ月で退職しました。その後は、実家で引きこもり、過食が多くなり、体重は20kg増加しました。父親への暴言や暴力もありました。引きこもりの1年後には、風邪薬の過量服薬による自殺企図をしました。幸いにも、これが契機となって、食事コントロールの意識が高まっていきました。引きこもりから2年近く経った22歳の時、総合病院に再就職しました。看護カルテを丁寧に書き、休日は精神障害者の共同作業所でボランティアをするなど、「良い看護師」に徹していました。また、当時から仏教サークルにも通っていました。しかし、同僚から過食嘔吐のやり方をたまたま聞いてしまったことで、自己誘発性嘔吐を覚えてしまい、摂食障害は悪化しました。そして、再就職から6年後の28歳の時、睡眠薬の過量服薬による2度目の自殺企図をしました。その後、Mさんが仏教セミナーで知り合った僧侶に自己啓発セミナーの勧誘をしたことで、その男性と親しくなり、29歳の時、看護師を辞めて、結婚し、上京しました。そして、夫が勤務する寺で、パート勤務を始めました。30歳の時に、長男が生まれました。忙しさとあいまって、生活環境が変わったことで、いつの間にか過食嘔吐をしなくなり、摂食障害は回復していきました。b. 良いママ友になりきるしかし、夫(副住職)とその上司(住職)の関係が悪いことを知り、関係を取り持つために、寺の仕事を積極的に行い、体調不良でも休まず、「良い副住職夫人」になりきりました。Wさんと出会ってからは、実は基本的に彼女に気を遣い、彼女のやり方に合わせていました。Mさんは「良いママ友」にもなりきりました。また、Mさんは、子どもが「良い子」にしていない時には、とくにWさんの前で手を上げていました。その後、Mさんは、Wさんとの関係がだんだんと煮詰まっていく中、「MさんがWさんと仲違いした」とほかのママ友から思われたくないために、距離は取ろうとしませんでした。事件の8ヵ月前に、Wさんにひな人形を見せたのも、Mさんなりに仲直りができないかと模索した結果だったのでした。つまり、「良い園ママ」にもなりきろうとしていました。当然ながら、その努力がMさんをますます苦しめます。当時、Mさんは夫に転居や転園の相談をしています。しかし、夫が職場から遠くなる点や、子どもが幼稚園に馴染んでいる点で、現実的ではないと夫に諭されます。Mさんは、それ以上は訴えなかったのでした。その後、Mさんは、近所のWさんのマンションの自転車置き場に行き、Wさんの自転車があるか確認するようになりました。事件の2、3ヵ月前には、Mさんは子ども2人を自転車に乗せて、あちこちの公園に行き、「なんでこんなことをするのか自分でもおかしい」と思いつつ、Wさんの居場所を探し回ることが10回以上あったと述べています。その結果、Wさんに鉢合わせることもありました。事件の1ヵ月前には、Mさんは夫に「私が犯罪者になったらどうする?」と漏らします。しかし、それ以上、話そうとせず、会話はうやむやになりました。Mさんは「良い妻」にもなりきろうと無理をしていたのでした。そして、事件は起きたのでした。裁判でMさんは、「ただとにかくWさんがいなくなればいい」「Wさんを苦しめるのが目的ではない」「Hちゃんを殺しても、Wさんがいなくなるわけではないということは、当たり前なのだけれども、そのとき私の頭の中では、ごちゃごちゃになってわけが分からなくなっていた」と述べています。(2)弁護側の最終弁論の要旨MさんはWさんのことに頭をめぐらせ、強迫観念にさいなまれ続けていた。動機の形成に、摂食障害に発する強迫性障害という病的な心理が大きな影響を及ぼしている。Mさんではなく、Hちゃんを殺害したのは、八つ当たり(置き換え)の心理機制が働いていた。Mさんは、病的な心理の自覚がなかった。犯行直前には、子ども2人の入園・入学の準備のストレスが加わり、抑うつ状態に陥り、突発的に犯行に至った。恨みや妬みが直接的な動機ではない。(3)精神医学的な考察a. 摂食障害Mさんは、複雑な家庭環境によって、心休まる居場所(安全基地)がなかったことが想像できます。その生い立ちが、他人に対して弱みを見せられず(自尊心の低さ)、他人と親しくなるのが苦手な性格の一因になった可能性があります(親密性の低さ)。一方で、規範意識が強く、周りの目(主流秩序)を気にして、がんばりすぎる性格の一因になった可能性もあります(過剰適応)。Mさんが看護師という職業を選んだのは、単純に患者を助けたいという思いよりも、弱い立場の患者なら比較的に安心して接することができるという思いがあったでしょう。なお、低い自尊心と過剰適応は、摂食障害を発症する根っこのパーソナリティとして典型的です。「良い子」を演じるために自分の思い通りに生きていないのですが、唯一思い通りになるのが体重だと知り、体重を減らせることで、コントロール感を得ようとするのです。さらには、「良いダイエット実践者」であると思い込んでしまうのです。ただし、摂食障害は、5年前から回復しており、事件との直接的な関係はないと言えます。b. 支配観念心理分析には、明らかな誤りもあります。MさんがWさんのことに常に頭を巡らすという執着は、強迫観念ではなく、支配観念です。強迫観念は、不潔さや不完全さなどの抽象的なことへの了解不能な心の囚われです。一方、支配観念は、特定の個人や出来事などの具体的なことへの了解可能な心の囚われです。Mさんが頭を巡らすのは、Wさんという特定の個人に限定されており、その主な内容は恨みや妬みという了解可能なものです。これはまさに支配観念です。よって、強迫性障害とは診断できないです。そもそも当時の診断基準(ICD-10、DSM-IV)に照らし合わせても、まったく当てはまりません。また、「抑うつ状態」とも言えないです。その根拠は、殺害から死体遺棄までの流れが、あまりにも手際良いからです。また、翌日には長男の小学校受験の手続きをしているからです。抑うつ状態であれば、誰にも悟れられずに死体遺棄まですることも、日常生活を維持することも難しいでしょう。なお、心理分析をした心理カウンセラーは、当時メディアに出ている著名人であり、「母親の心理にくわしい」との理由で証人になりました。ただし、臨床心理士(1988年から認定開始)ではないです。無資格の自称「心理カウンセラー」が世間に注目される事件の裁判で、精神障害の診断まで下してしまうところに、時代性を感じます。c. 強迫性パーソナリティ障害Mさんは、その生真面目さ(完璧主義)、我慢強さ(過剰適応)、堅苦しさ(親密性の低さ)から、強迫性パーソナリティ障害と診断できるでしょう。ただし、これは強迫性障害とは違い、あくまで性格の偏りを説明したものにすぎません。よって、パーソナリティ障害と診断されたからと言って、量刑に影響を与えることはないです。Mさんの強迫性パーソナリティ障害による問題点は、その生真面目さから「良い子」「良い生徒」「良い看護師」「良い妻」「良い夫人」「良いママ友」「良い園ママ」になりきろうとして無理をしている点です。実際に、その破綻が、進学や就職で各地を転々とする結果を招いています。また、摂食障害の発症、引きこもり、父親への暴言・暴力、自殺未遂を招いています。また、その頑固さから、Mさんは、弁護人の質問に対して「(人付き合いが)下手だとは思いません。わりあい誰とでも上手に付き合えるほうだと思います」と言い切っています。「(Wさんの家がうらやましいと思ったことは)まったくありません」と完全否定しています。最後は、本人なりの「良い被告」になりきっていたのかもしれないです。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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音羽幼女殺害事件【なぜママ友の子どもを殺したの?人ごとじゃないわけは?】Part 3

動機は懲らしめ?(1)判決検察側は、有期刑の最長の18年を求刑しました。一審の判決で、Mさんは懲役14年となりました。そして、検察側が控訴した控訴審の判決で、懲役15年が確定しました。量刑の判断において、自首をした点や、犯行の事実関係を隠すことなく述べた点が酌量すべき情状とされました。一方、控訴審の判決で量刑が重くなった主な理由として、犯行の悪質性と被害者感情を重視した点が挙げられています。(2)精神医学的な考察a. なんで執着したの?-ストーカーの心理公判中には、Mさんは、犯行動機については多くを語らないわりに、Wさんとの関係については饒舌に語っていました。それが、Wさんを悪く言っている態度となり、裁判官への心証が悪くなっていました。本来、情状酌量のために反省の態度を見せたいと思えば、Wさんのことは悪く言わないのが得策と判断します。それができないのは、もちろんMさんの強迫性パーソナリティ障害による頑固さや不器用さによるところがあります。そして、それ以上に、先ほどご説明した支配観念という執着によるところがあると考えられます。Mさんは、出会った当初のWさんへの印象を「初めて心を許せる相手」と述べていました。しかし、よくよく考えると、この発言は、20歳代前半まで若者の発想です。当時30歳を過ぎている点、仕事をしてきた点、結婚をしている点、子どもがいる点で、それなりに人生経験を積んでいるはずの女性が、この発言をするのはかなり短絡的でナイーブです。支配観念は、恨みや妬みだけでなく、恋愛感情や友愛感情も含まれます。つまり、Mさんは出会った時点で、恋愛感情と同じような執着のスイッチが入ってしまったと考えられます。関係がぎくしゃくしている中、Mさんが唐突にWさんを呼び出し、ひな人形を見せたのは、Mさんなりに何とか仲を取り戻したかった、彼女なりの友愛感情であったとも考えられます。Mさんの根っこの心理は、「こんなにあなたのことを気にかけているのに」「親友だと思っていたのに」という思いです。それなのに、「ほかのママ友と仲良くしている」「私の気持ちを分かってくれない」という愛憎入り混じる感情になっていたことが考えられます。これは、典型的なストーカーの心理です。Mさんの心理は、男女間の恋愛感情ではなく、ママ友間の友愛感情ですが、根っこの心理は同じです。MさんがWさんの居場所を探し回ったのは、元恋人を執拗に追い回すのと同じストーカー行為です。ストーカー行為の最悪の結果は、「自分がこんなに愛しているのに分かってくれない」と訴え、ストーカー殺人に至ることです。Mさんは、もともとWさんへの友愛感情が強かったと考えれば、それが裏切られたという恨みの気持ちから、殺意が芽生えたと想像するのは容易でしょう。判決文では、その心理を「自分本位な考え方に取りつかれたまま認識、判断、行動したものであって」「被告が一方的に反感や敵の感情を増殖・肥大させていった」と表現しています。なお、「こんなにしてあげてるのに」という一方的な思いは、子ども虐待、患者虐待、高齢者虐待にも通じる心理です。b. なんで距離をとれなかったの?-同調の心理判決文には、「Wさんに対する感情が殺意の念が浮かぶまで高まっていったという事態の深刻さについて、真剣に自省すれば、多様な対処手段がありえたにもかかわらず、結局は成り行きに任せ」と書かれています。確かに、夫は「幼稚園のお母さんたちとは、さっぱりした付き合いをすればいい」「だらだら遊んでないで、とっとと帰ってくればいい」と助言していました。しかし、公判で、Mさんは「正論ですけど、それができないから悩んでいるのを、分かってほしかった」と述べています。どういうことでしょうか?その理由は、主に3つあります。1つ目は、先ほどご説明した「良い園ママ」になりきろうとするMさんの生真面目さ(強迫性パーソナリティ障害)による同調の心理です。2つ目は、単独行動をしてはいけないというママ友同士の暗黙のルールによる同調圧力です。ママ友付き合いは、子育ての大変さを共感し合い、勇気付け合うというプラス面があります。一方で、夫が助言する「さっぱりした付き合い」をすれば、自分だけでなく、子どもまで仲間外れにされる恐怖があります。そういう意味では、子どもは「人質」とよく言われます。また、お受験や習い事などの情報を得ることもできなくなります。当時は、今と違ってインターネットがまだ普及していなかった事情もあります。これは、独特のママ友文化です。この詳細については、末尾の関連記事1をご参照ください。3つ目は、同調圧力を高める幼稚園のルールです。通わせていた幼稚園は、毎日の送迎をはじめとして親が参加する日課やイベントがとても多い特徴がありました。これは、親同士が親密になり、家族ぐるみで子どもの社会的な体験を豊かにするメリットはあります。一方で、そのデメリットは、Mさんのように一度仲違いしてしまっても、何かと顔を合わせて関わらなければならず、お互いの距離が取れなくなる危うさです。これは、独特の幼稚園文化です。この詳細についても、末尾の関連記事1をご参照ください。Mさんは、執着の自覚がありました。ストーカーは、自覚があるなら、自省して相手から離れようとします。ストーカーされる人も近付かないようにするでしょう。しかし、どうしても顔を合わせなければならないという独特のママ友文化や幼稚園文化の中、Mさんに残された選択肢は、引っ越しだけだったのでした。 c. なんでHちゃんを殺したの?-懲らしめの心理一審に続いて控訴審でも、「当初Wさんに向いていた殺意は、実行可能性がないとの理由から被害者(Hちゃん)に転化した」点を認定しています。端的に言うと、Wさんを殺せないから、代わりにHちゃんを殺したというのです。検察側も弁護側も、この点については認識が同じでした。一方で、控訴審の判決では、Mさんの「恨みを晴らす気持ちのほうが大きかったと思います」との供述を取り上げています。ただし、それでも「Wさんに死よりもつらい苦痛を与える気持ちがあったとは供述しておらず」と書かれています。また、「相手の大切なものを壊してしまえという感覚はなかった旨供述している」という点を取り上げています。そして、「被害者(Hちゃん)が殺害されれば、当然ながら、その結果からして母親(Wさん)が非常に悲嘆にくれることは明らかではあるものの、被告人(Mさん)が当初よりそれを意図して本件犯行を行ったものであるとは、上記のとおりこれを認めることはできない」と結論付けています。また、「競争心(妬み)が存在していたことを強調するのには疑問がある」として、妬みは犯行の主な動機として認めていないです。つまり、控訴審では、動機が恨みであると明確にしつつも、Wさんを悲嘆させる意図(動機)については認めませんでした。恨みはあるけど、懲らしめるつもりはなく、でも代わりに子どもを殺したということになります。この点は、精神医学的に考えれば疑問が残ります。その理由は主に3つあります。1つ目は、恨みと懲らしめの心理はつながっているからです。逆に言えば、懲らしめたいと思わない恨みの心理は、臨床的にほかに例が見当たりません。なお、懲らしめるという制裁の心理の詳細については、末尾の関連記事2をご参照ください。Wさんを懲らしめたいからこそ、計画的だったと考えられます。確かに、Hちゃんの殺害にあたっては、偶発的な要素が大きいです。しかし、Mさんは公判で「この時は、私が(Hちゃんを)連れ出せる条件がすべて揃っていました」と述べています。また、殺害から死体遺棄までの手際が良すぎます。やはり、最初からHちゃんの殺害と死体遺棄を計画していたことが示唆されます。また、Mさんが母親に打ち明けたのは、自首するためではなく、秘密を共有して味方になってもらうためでした。それを端的に表してるのが、母親から自首を勧められた時に、「私は35年間生きて、土壇場で裏切られた」と電話越しに泣き叫んだことです。この言葉に、Mさんの罪悪感は読み取れません。Mさんのシナリオは、Mさんなりの「被害者感情」による「正義」のもと、母親が味方になり、事件をやり過ごすことだったでしょう。そして、Hちゃんが行方不明になったことでWさんが悲嘆にくれるのを見届けることだったでしょう。2つ目は、悲嘆させて恨みを晴らすという「正義」があるからこそHちゃんを殺せるということです。もともと規範意識が強いMさんなら、動機としてなおさら理解できます。裏を返せば、「正義」がないのに、一介の二児のママが他人の幼児を殺す例はほぼないと言えるでしょう。なお、弁護側の心理カウンセラーから、八つ当たり(置き換え)の心理の説明がされていました。どうやら、裁判官はこれを採用したようです。しかし、これは無意識に働くレベルの心理です。殺人の計画は、無意識では不可能です。古今東西から、近親者や関係者を代わりに殺す例は、敵討ちや見せしめなどの意図がもともとあります。ちなみに、一介のママが自分自身の子どもを殺す例ならあります。それは、無理心中(拡大自殺)です。これは、集団主義による母子の一体化の強い日本でとくに見られます。3つ目は、悲嘆させてこそWさんがいなくなることです。ただHちゃんがいなくなっても、上の子同士は年長組でまだ幼稚園に通っています。悲嘆を想定していれば、Wさんは送り迎えに来なくなるので、顔を合わせることはなくなります。また、たとえWさんが来たとしても、悲嘆にくれたWさんなので、Mさんはその優越感から顔を合わせても良いと思えるでしょう。逆に言えば、Wさんの悲嘆を想定していなければ、MさんとWさんは顔を合わせることは続くわけですので、矛盾します。当時の検察側が、以上のような主張をした記録は見当たりませんでした。裁判官は、Mさんの言うことをそのまま受け止めたようです。結局のところ、懲らしめの心理は、Mさんにしか分からないです。もしかしたら、Mさん自身も「良い被告」になりきって、その心理を自覚しきれていなかったかもしれないです。究極的には、裁判官は、被告が懲らしめの動機を否定し続ける限りはその動機について認めることはできず、犯行の形式で量刑を評価するしかないのでしょう。 この事件の教訓は?Mさんの犯行の動機は、ストーカーの心理をもとに、同調の心理に追い詰められ、懲らしめの心理が決定打となったことが分かりました。それにしても、これらの1つ1つは、ママ友付き合いにおいては、決して珍しくない心理です。つまり、ママ友付き合いには、殺意を抱くほどの恐ろしいリスクがあることに気付かされます。もちろん犯行は明らかにMさん(個人因子)の責任です。しかし、Mさんを駆り立てた状況(環境因子)を見過ごすことはできません。それは、同調の心理を高めるママ友文化と幼稚園文化です。ここから、そのリスクをそれぞれ「ブラックママ」「ブラック幼稚園」と名付け、表1に具体的にまとめてみましょう。ちなみに、ママ友文化の危うさは、人間関係でトラブルを起こしやすい「フレネミー」の心理にもつながります。「フレネミー」の詳細については、関連記事3をご参照ください。 私たちの中の小さな「Mさん」この事件が決して人ごとではない点として、Mさんが良妻賢母を目指していたことにも注目する必要があります。子どものためにと良妻賢母になりきる危うさは、体裁を取りつくろう余りに、中身がなくなり、自分自身が何をしたいのか、何を目指してるかのかが分からなくなってしまうことでしょう。私たちの中にこの小さな「Mさん」がいることを自覚したとき、私たちの生き方、親としてのあり方を考え直す良いチャンスになるのではないでしょうか?<< 前のページへ■関連記事マザーゲーム(前編)【ママ友付き合い、なんで息苦しいの?(「女心」の二面性)】Part 1苦情殺到!桃太郎(前編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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セルメ税制の延長・拡大でスイッチOTC化は増える?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第55回

セルフメディケーション税制は、スイッチOTC医薬品を購入した際に、その購入費用が所得控除できる制度で、5年間の特例として2017年に始まりました。あまり盛り上がることもなく若干忘れられつつある気がしますが、このセルフメディケーション税制が延長・拡大しそうです。厚生労働省は21年度税制改正要望をまとめた。(中略)セルフメディケーション税制は、2017年~2021年の5年間に限って適用が認められている。厚労省は「インセンティブ効果の維持・強化が重要で、政策効果の検証を引き続き実施することが必要」とし、「2022年から5年間の延長」(2026年まで)を求める。対象品目については既存制度の対象である「スイッチOTC薬」に加えて、「非スイッチOTC薬のうち、治療・療養に使用されるものも対象とする」ことを要望する。(RISFAX 2020年9月25日)期間の延長だけではなく、対象となる医薬品の拡大や所得税控除額上限の引き上げなども要望しています。昨年の調査では、セルフメディケーション税制の認知度は71.3%と高いものの、利用意向は11.0%と低調でしたが、これが実現するとずいぶん使いやすくなりそうです。また、5月には、内閣府の規制改革推進会議において、「一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大に向けた意見」が示され、スイッチOTC医薬品の開発や普及のための取り組みを求めるなど、セルフメディケーションに関する議論が活発化しています。スイッチOTCについてはもはや説明するまでもありませんが、医療用医薬品として用いられている成分を一般用医薬品へ転用することです。スイッチOTC化する成分については、以前は日本薬学会が候補成分を選定し、日本医学会などの関係医学会に意見を聞いたうえで了承していましたが、2015年6月の閣議決定を受けて、関連学会や団体、消費者などから候補成分の要望を受け付けて、医学・薬学の専門家などで構成される評価検討会議が議論、承認するという新しいスキームができました。この新しいスキームでは消費者の意見も反映されるため脚光を浴びました。しかし、実際に新しいスキームによって発売されたスイッチOTC医薬品は「フルコナゾール点鼻薬」の1成分のみです。この新しいスキームなるものは、スイッチOTC化を推進するどころか、結果的にスイッチOTC化をせき止めてしまったと言っても過言ではないかもしれません。この問題に着目した規制改革推進会議は、スイッチOTC化を推進するだけでなく、評価検討会議の役割の見直しなどセルフメディケーション全体を促進する仕組みを再構築する旨の意見を提出しています。セルフメディケーションの推進はもはや国策ですので、おそらく今後はスイッチOTC化が進むと想像できます。コロナもセルフメディケーションを推進国の政策とは別に、セルフメディケーションが進む要因として新型コロナウイルス感染症の流行も考えられます。医療機関への受診が抑制されたこともあり、軽い症状の場合は自宅での療養を選択する患者さんが多くなってきました。思ってもみなかったセルフメディケーションへの追い風で、受診しなくても購入可能なOTC医薬品の利用がさらに進むのではないかと思っています。これらの変化が実際にセルフメディケーションにどう影響するのか、そして販売する薬剤師の役割がどう変わるのか、引き続きウオッチしていきたいと思います。

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第29回 新型コロナウイルスはタンパク質生成3工程をどれも妨げてインターフェロンを抑え込む

ヒト細胞がウイルスの侵入を察知するとタンパク質生成の3工程―切り貼り(スプライシング)で成熟したmRNAの核外移行、リボソームでの成熟mRNA翻訳によるタンパク質製造、シグナル認識粒子(SRP)の働きによる細胞膜へのタンパク質誘導が稼働し、感染抑制と加勢要請の伝令役を担うタンパク質・インターフェロンが細胞外へと放たれます1)。とにかくインターフェロンが嫌いらしい新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はそれら3工程のどれも妨害する手立てを備えていることが先週8日にCell誌に掲載されたカリフォルニア工科大学(Caltech)Mitchell Guttman教授率いるチームの研究で明らかになりました1,2)。SARS-CoV-2が作るタンパク質はおよそ30種あり、Guttman教授のチームはそれらとヒト培養細胞の分子との相互作用を調べました。その結果、ウイルスタンパク質NSP16は3工程の最初の段階・mRNAスプライシングを妨害し、別のウイルスタンパク質NSP1はリボソームを目詰まりさせて第2工程のmRNA翻訳を妨害すると分かりました。それらの妨害をかいくぐってヒトタンパク質が作られたとしてもさらに2つのウイルスタンパク質NSP8とNSP9が行く手を阻みます。NSP8とNSP9はSRPの一部・7SL RNAに結合して細胞膜へのヒトタンパク質輸送を妨げます。そして、それら3工程の妨害はどれもウイルス感染へのインターフェロン反応を抑制すると分かりました。重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のインターフェロン応答は鈍いことが知られています1)。それに、1型インターフェロン伝達の不具合はCOVID-19の重症化に寄与するらしく、その感染予防にわれわれの体はどうやら他のウイルス感染予防に比べて1型インターフェロンをより頼りとしているようです3)。今回の研究でインターフェロン妨害の担い手が判明したことを受け、インターフェロン反応を底上げする治療薬が開発できそうです。たとえばリボソームRNAを標的とする低分子薬は多く存在し、ウイルスタンパク質NSP1とリボソームの18S rRNAの相互作用を阻害してCOVID-19防御を手助けする薬の開発が期待できます。また、SARS-CoV-2はなんと小賢しいことにNSP1による翻訳阻害がヒトmRNAにだけ及んで自前のウイルスmRNAには及ばないようにする通行手形のような仕組みを備えることも今回の研究で判明していますが、その仕組みを担うウイルスmRNA領域・SL1に結合してウイルスタンパク質生成を遮断する低分子薬の開発も可能でしょう。参考1)How SARS-CoV-2 Disables the Human Cellular Alarm System / Caltech (California Institute of Technology) 2)Abhik K, et al. Cell. 2020 October 08. [Epub ahead of print] 3)Hidden immune weakness found in 14% of gravely ill COVID-19 patients / Science

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FDA、悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ/イピリムマブの1次治療を承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年10月3日、切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の成人患者の1次治療に、ニボルマブとイピリムマブの併用を承認した。適応症はニボルマブ360mg 3週間ごとイピリムマブ1mg/kg 6週間ごと投与。 今回の承認は、切除不能MPM患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用と、シスプラチンまたはカルボプラチンとペメトレキセドの標準併用化学療法を評価した無作為化非盲検試験第III相CheckMate743試験の中間解析の結果に基づくもの。 世界肺学会(WCLC2020)で発表された結果によると、ニボルマブ・イピリムマブの全生存期間(OS)の中央値18.1ヵ月に対し、化学療法は14.1ヵ月であった(HR:0.74、96.6%CI:0.60~0.91、p=0.002)。 盲検化独立中央評価委員会(BICR)によるPFS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ6.8ヵ月に対し、化学療法で7.2ヵ月であった(HR、1.00; 95%CI、0.82-1.21)。2年PFSは、ニボルマブ・イピリムマブ16%に対し、化学療法7%であった。

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内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性/日本感染症学会

 2020年8月に現地とオンラインのハイブリッド方式で開催された日本感染症学会学術講演会において、名古屋大学医学部附属病院の手塚 宜行氏(中央感染制御部)が「内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性」とのテーマで発表を行った。 手塚氏によると、小児感染症が成人と異なる事項は、以下の4点に集約される。1)年齢(月齢)によってかかる病気が変わる2)ウイルス感染症が多い 3)検体採取が困難なケースが多い4)病勢の進行が速い さらに小児感染症を診るときのチェックリストとして使う「R(A)IMS」という概念を紹介。これは以下の4つの視点から診療するという考え方だ。・R(Risk):基礎疾患の有無・I(Infected organ):感染臓器・M(Microbiology):原因微生物・S(Severity):重症度年齢月齢による違いは非常に大きい 小児感染症のリスク判断基準において、基礎疾患の有無が重要となるのは成人と同様だが、小児特有なのが月齢年齢差による違いだ。例として1998~2007年の米国コホート研究による細菌性髄膜炎の起炎菌についての研究では、新生児ではGBS(B群溶血性連鎖球菌)が多いが、1~3カ月児では腸内細菌科細菌が増え、3カ月~3歳児では肺炎球菌の割合が高くなり、3歳~10歳児以上では大半が肺炎球菌になるなど、年齢に応じて起炎菌の発生頻度が劇的に変化することを紹介した。また、「1年に2回以上肺炎にかかる」「気管支拡張症を発症する」など10のワーニングサインにあてはまるときは、原発性免疫不全症が隠れている可能性があるため、注意して診察する必要がある。本人からの病歴聴取が困難なケースも 感染臓器については、病歴聴取と身体診察から推定する流れは成人と変わらないものの、本人から病歴聴取できないことが多い点、家族や保育園からの感染が多くSick contactの把握が非常に重要となる点が成人と異なり、母子手帳から予防接種歴や育児環境情報を把握することが肝要とした。身体診察においても本人が症状を訴えられないことが多いため、保護者の協力を得ることが大切となり、小児に特徴的な部位である大泉門・小泉門などから重要な所見が得られることも多いという。 さらに、小児で見つけにくい感染臓器としては、尿路感染症、固形臓器の膿瘍(急性巣状性細菌性腎炎など)、関節炎・骨髄炎(とくに乳児)、髄膜炎・脳膿瘍(とくに新生児・乳児)、副鼻腔炎、潜在性菌血症などがあり、こうした疾患は兆候から見つけることは難しく、「見つけに行く」姿勢で診察することが重要とした。中でも潜在性菌血症は成人ではほぼ見られないが、結合型ワクチン導入前は、生後3~36カ月の小児における局所的異常のない原因不明の39度以上の発熱がある症例の約3~5%に認められており、無治療の場合は髄膜炎に至る可能性もある。ワクチン導入後の症例数は減っているものの、可能性は頭に入れておくべきという。ウイルス由来が大半だが、注意すべき細菌も 小児疾患はウイルス由来が多いが、日本がほかの先進国に比べてワクチン導入が遅れるという、いわゆる「ワクチンギャップ」は解消されつつあり、多くの小児感染症がワクチンによって感染・重症化予防できることが実証されつつある。小児感染症で注意すべき細菌は多くはないが、肺炎球菌とインフルエンザ菌は成人と比べて想定頻度が極めて高く、百日咳菌は新生児・乳児において重症化し、致死的な場合もあるので注意が必要だという。一方、クロストリディオイデス・ディフィシル菌は、小児の場合には保菌しても発症しないことが多く、多くの場合検査も不要だ。重症化はバイタルサインよりも「見た目」重視で 重症度に関しては、小児のバイタルサインは月齢年齢での変化が大きく、正常値の幅も大きいため、外観や皮膚の色、呼吸といった「見た目」を重視すべきという。 手塚氏は「感染症診療の原則である『感染臓器・原因微生物・抗菌薬をセットで考える』ことは小児でも成人でも同じ。あとはここで紹介した小児特有の事項さえ抑えておけば、内科の先生でも問題なく診察できるはず」とまとめた。

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双極性うつ病に対するルラシドンの有用性~他の非定型抗精神病薬との比較

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性うつ病に対するルラシドン(LUR)の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビュー、変量効果モデル、日本での第III相試験のネットワークメタ解析を実施し、オランザピン(OLZ)やクエチアピン徐放製剤(QUE-XR)との比較検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年9月9日号の報告。 本研究には、双極性うつ病患者を対象とした日本での二重盲検ランダム化プラセボ対照第III相試験のデータを含めた。主要アウトカムは治療反応率、副次的アウトカムは寛解率、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの改善、治療中止率、個々の有害事象発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・3件の研究(1,223例)を分析した。・LURとOLZの奏効率は、プラセボよりも優れていたが、QUE-XRは差が認められなかった。 ●LUR:リスク比(RR)=0.78、95%CI:0.66~0.92 ●OLZ:RR=0.84、95%CI:0.71~0.99 ●QUE-XR:RR=0.87、95%CI:0.73~1.03・寛解率は、LUR、OLZ、QUE-XRともに、プラセボよりも優れていた。 ●LUR:RR=0.90、95%CI:0.83~0.98 ●OLZ:RR=0.87、95%CI:0.77~0.99 ●QUE-XR:RR=0.84、95%CI:0.73~0.98・MADRS合計スコアも、各抗精神病薬ともに、プラセボよりも優れていた。・中止率は、各抗精神病薬とプラセボとの間に差は認められなかった。・それぞれの抗精神病薬において、プラセボと比較し、発生頻度の高かった有害事象は以下のとおりであった。 ●LUR:アカシジア、体重増加、プロラクチン上昇 ●OLZ:傾眠、7%以上の体重増加、体重増加、血中総コレステロール値上昇、血中LDLコレステロール値上昇、血中トリグリセライド値上昇 ●QUE-XR:錐体外路症状、アカシジア、傾眠、口渇、便秘、7%以上の体重増加、体重増加、血中総コレステロール値上昇、血中LDLコレステロール値上昇、血中トリグリセライド値上昇 著者らは「双極性うつ病に対する第2世代抗精神病薬による治療の有効性は、3剤ともに同程度であるものの、安全性プロファイルに違いがあることが示唆された」としている。

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食道がん、食道胃接合部がんに対するニボルマブの術後補助療法(CheckMate-577)/ESMO2020

 米国・ベイラー大学のRonan J. Kelly氏は、術前補助化学放射線療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られなかった切除可能な食道がん・食道胃接合部(GEJ)がんの切除後の術後補助療法でニボルマブ投与とプラセボ投与を比較した無作為化二重盲検第III相臨床試験であるCheckMate-577試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2020 Virual Congress 2020)で発表。ニボルマブによる術後補助療法は、プラセボと比較して統計学的に有意な無病生存期間(DFS)の延長を認めたと報告した。・対象:術前補助化学放射線療法でpCRが得られなかったStageII~III食道、GEJがん(PS 0~1)794例。・試験薬群:ニボルマブ240mg 2週間ごとに16週間投与後480mg 4週間ごと投与(ニボルマブ群、532例)・対照群:プラセボ(プラセボ群、262例)・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、1年OS率、2年OS率、3年OS率 主な結果は以下のとおり。・DFS中央値は、ニボルマブ群が22.4ヵ月、プラセボ群が11.0ヵ月で、ニボルマブ群で有意な延長を認めた(HR:0.69、96.4%CI:0.56~0.86、p=0.0003)。・全Gradeでの治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、ニボルマブ群が71%、プラセボ群が46%であった。Grade3/4のTRAEにおよる治療中止はニボルマブ群が13%、プラセボ群が6%であった。・ニボルマブ群での主な免疫関連有害事象は内分泌関連や消化器症状で、Grade3/4のものはいずれも発現率が1%未満だった。・EQ-5D-3LによるQOL評価でニボルマブ群はプラセボ群とほぼ同程度だった。 Kelly氏は今回の結果を受けて「対象となった患者集団の治療としては過去数年で初めての前進であり、ニボルマブによる術後補助療法は新たな標準治療として確立される可能性がある」と強調した。

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アテゾリズマブ単剤、NSCLC1次治療でOS延長(IMpower110)/NEJM

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、アテゾリズマブ単剤はプラチナ製剤ベースの化学療法と比較して、組織型を問わず、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現量が多い患者の全生存(OS)期間を延長させることが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S. Herbst氏らが行った「IMpower110試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。PD-L1発現NSCLCで転移のある患者の1次治療において、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブはプラチナベースの化学療法と比較して、有効性と安全性が優れるか否かは明らかにされていなかった。PD-L1発現量が多い集団のOS中間解析 研究グループは、EGFRとALKが野生型で転移のあるPD-L1陽性NSCLCにおけるアテゾリズマブの有用性を評価する国際非盲検無作為化第III相試験を実施した(F. Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。今回は、PD-L1発現量が多い患者におけるOSの中間解析の結果が報告された。 対象は、年齢18歳以上、化学療法歴がなく、SP142による免疫組織化学法でPD-L1の発現が腫瘍細胞の1%以上または腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上に認められ、転移のある非扁平上皮または扁平上皮NSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0または1の患者であった。 被験者は、アテゾリズマブ(1,200mg、静脈内投与)またはプラチナ製剤ベースの化学療法(4または6サイクル)を3週ごとに投与する群に1対1の割合で割り付けられた。 主要評価項目はOS期間とした。OSの評価は、EGFR変異やALK転座がない野生型の腫瘍を有する患者のintention-to-treat集団において、PD-L1の発現量別に階層的に行った。また、EGFRとALKが野生型の腫瘍を持つ集団の血液中の腫瘍遺伝子変異量に基づくサブグループで、OS期間と無増悪生存(PFS)期間を前向きに評価した。OS期間が7.1ヵ月、PFS期間が3.1ヵ月延長 2015年7月~2018年2月の期間に、日本を含む19ヵ国144施設で、無作為割り付けが行われた。572例が登録され、アテゾリズマブ群に285例、化学療法群には287例が割り付けられた。 EGFRとALKが野生型の腫瘍で、PD-L1発現量が最も多かったサブグループ(205例)では、フォローアップ期間中央値15.7ヵ月の時点におけるOS期間中央値は、アテゾリズマブ群が化学療法群よりも7.1ヵ月長かった(20.2ヵ月vs.13.1ヵ月、ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.40~0.89、p=0.01)。1年OS率は、アテゾリズマブ群が64.9%、化学療法群は50.6%だった。 EGFRとALKが野生型の腫瘍で、PD-L1発現量が最も多かったサブグループでは、PFS期間もアテゾリズマブ群で良好であった(8.1ヵ月vs.5.0ヵ月、層別HR:0.63、95%CI:0.45~0.88)。この集団における担当医判定による奏効率は、アテゾリズマブ群が38.3%、化学療法群は28.6%であり、このうちデータカットオフ日に、それぞれ68.3%および35.7%で奏効が持続していた。 血液中の腫瘍遺伝子変異量が多いサブグループ(PD-L1発現量は問わない)では、OS期間中央値はアテゾリズマブ群で良好な傾向が認められ(13.9ヵ月 vs.8.5ヵ月、非層別HR:0.75、95%CI:0.41~1.35)、PFS期間中央値はアテゾリズマブ群で優れた(6.8ヵ月vs.4.4ヵ月、0.55、0.33~0.92)。 有害事象は、アテゾリズマブ群が90.2%、化学療法群は94.7%で発現し、Grade3/4の有害事象はそれぞれ30.1%および52.5%で認められた。重篤な有害事象の発現率は、それぞれ28.3%および28.5%で、Grade5の有害事象が11例(3.8%)および11例(4.2%)にみられた。免疫関連有害事象は、それぞれ40.2%および16.7%で発現し、Grade3/4は6.6%および1.5%であった。 著者は、「アテゾリズマブ単剤の安全性プロファイルは、以前の研究で観察されたものと一致していた。転移のあるNSCLC患者におけるがん免疫療法への治療応答性を検出するバイオマーカーとしての腫瘍遺伝子変異量(血液、組織)の役割は不明である」としている。

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進行乳がんにおける内分泌療法+BVへの切り替え、患者報告アウトカムの結果(JBCRG-M04)/ESMO2020

 進行・再発乳がんに対する標準的化学療法は、病勢進行まで同レジメンを継続することだが、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)や倦怠感などの用量依存的な影響が問題になる場合がある。今回、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法のパクリタキセル(wPTX)+ベバシズマブ(BV)療法から、内分泌療法(ET)+BVの維持療法に切り替えた場合の患者報告アウトカム(PRO)について、化学療法継続と比較したところ、身体的健康状態(PWB)と倦怠感を有意に改善し、重度のCIPNを防いだことが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が報告した。 本試験は、わが国における多施設共同非盲検無作為化比較第II相試験のJBCRG-M04(BOOSTER)試験。主要評価項目である無作為化から治療戦略遂行不能までの期間(time to failure of strategy:TFS)については、wPTX+BV群8.87ヵ月、ET+BV群16.82ヵ月で有意に延長した(ハザード比:0.51、95%信頼区間:0.34~0.75、p<0.001)ことを、2019年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で同氏が報告している。・対象:ER陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法としてwPTX+BV療法を4~6サイクル施行後、SD以上の効果が認められた患者・介入群:wPTXを休薬しET+BVに置き換え、規定イベント後にwPTX+BVを再導入する群(ET+BV群)・対照群:wPTX+BV継続治療群(wPTX+BV群)・評価項目[主要評価項目]TFS[副次評価項目]全生存期間、無増悪生存期間、安全性、PROなど※PROの評価は、無作為化時および無作為化後2ヵ月、4ヵ月、1年、2年に、FACT-B、EQ-5D、患者用末梢神経障害質問票(PNQ)、HADS、cancer fatigue scale(CFS)を使用 主な結果は以下のとおり。・1次化学療法が奏効した125例について、wPTX+BV群63例、ET+BV群62例に割り付けた。 ・mixed-effect models for repeated measures(MMRM)を用いた解析では、FACT-Bのtrial outcome indexに有意差が認められ(p=0.004)、PWBの平均変化は2ヵ月後(p=0.015)および4ヵ月後(p=0.028)に、ET+BV群がPTX+BV群より有意に優れていた。・CIPNについては、1年後における重度の運動神経障害の割合がET+BV群でwPTX+BV群よりも低かった(5.1% vs. 26.1%、p=0.017)。・CFSでも有意差が認められ(p=0.048)、そのうち精神的倦怠感のスコアの平均変化は、2ヵ月後(p=0.006)および4ヵ月後(p=0.010)でET+BV群がwPTX+BV群より有意に優れていた。 佐治氏は、「化学療法継続で蓄積毒性が懸念される症例において、ET+BVの維持療法は健康関連QOLの点で1つの選択肢となるだろう」と結論した。

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メタボ健診の保健指導に心血管リスク低減効果なし~見直しが必要(解説:桑島巖氏)-1295

オリジナルニュースメタボ健診による特定保健指導に心血管リスク軽減効果なし(2020/10/13掲載) 特定健康診査とその結果に基づく特定保健指導は2008年(平成20年)から始まった全国規模の保健事業で、一般的にはメタボ健診と呼ばれているものである。メタボ健診では腹囲とBMIを測定するほか、血圧、HbA1c、LDLコレステロール値などを測定して、その結果により医師や保健師による指導を行うというシステムである。 そもそもの発端は、1989年に米国のKaplanによって提唱された概念で、上半身肥満・糖代謝異常・高中性脂肪血症・高血圧の4つが重なると心筋梗塞に罹患しやすいことから、「死の四重奏(Deadly Quartet)」と呼ばれていたものである。日本でいうメタボリック(メタボ)では、それらの上流に内臓脂肪蓄積を置いているのが、米国の死の四重奏と異なり、わが国では内臓脂肪症候群と呼ぶ場合もある。そこで日本の特定健康診査では腹囲を測定することに重点を置いているのが特徴であり、医療機関では腹部CTも測定するところもある。 しかし、そもそも米国の肥満と日本人の肥満はレベルが違い過ぎて、日本人への腹囲に重点を置く健康審査に、疑問を呈する声は少なくなかった。デンマークで約1万2,000人を対象として、健診を受けた群と受けなかった群を10数年間追跡した研究では、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の発生や死亡率に両群で差がないという結果が発表された。 今回、京都大学の福間教授らによって行われた約7万5,000人を対象とした追跡調査の結果では、保健指導を受けた群では体重、BMIは1年後わずかに減少したものの3、4年後には元に戻っていた。さらに血圧、糖尿病、抗コレステロール血症に関しては、1年後も、3、4年後も改善効果は認められないという結果であった。 効果が乏しかった理由の1つとして、保健指導の対象となっていても実際に指導を受けた人は16%にすぎないことが関係している可能性もあるが、実際に受けた人だけを対象として解析を行ってもやはり心血管リスク低減効果はみられなかったという。保健指導を受けるべき人が受けていないという現実も重要である。 この制度には年間160億円の費用がかかっており、費用に見合った健康に関する有益性が見いだせないからには、その制度そのものの見直しが必要であると研究主任の福間教授は述べている。

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第26回 新型コロナ入院、対象を高齢、基礎疾患のある患者らに限定

<先週の動き>1.新型コロナ入院、対象を高齢、基礎疾患のある患者らに限定2.財政制度等審議会、高齢者の患者負担など見直しを急ぐ3.新公立病院改革ガイドライン発表延期、ただし進捗の点検・評価は必要4.安倍政権の未来投資会議を廃止、新たに成長戦略会議が発足5.健康食品会社が嘘の体験談で薬機法違反、広告会社・広告主ともに摘発1.新型コロナ入院、対象を高齢、基礎疾患のある患者らに限定菅内閣は10月9日に、新型コロナウイルス感染者のうち、入院対象者を原則65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人らに絞る法令改正について閣議決定を行った。今回の改正では、感染症法が定める「指定感染症」の位置付けに変更はなかった。これまでは新型コロナの感染者全員が入院対象だったが、インフルエンザ流行を前に医療機関の負担を減らし、重症者治療に重点を置くための施策。24日に施行となる。(参考)新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令(案)等について(概要)(厚生労働省健康局結核感染症課)2.財政制度等審議会、高齢者の患者負担など見直しを急ぐ8日に開催された財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会において、今後の医療や子育てに関して議論を行った。この中でわが国の社会保障の現状について、OECD加盟国と比較して、受益(給付)と負担のバランスが不均衡の「中福祉、低負担」の状況が指摘された。2022年度以降、団塊世代が75歳を超えると、社会保障関係費が急増することが予想できる。これを念頭に、社会保障制度の持続可能性を確保するための改革が急務とされ、現在の年齢が上がるほど患者負担割合が低く、保険給付範囲が広がる構造を含め、患者負担のあり方を見直していく必要があるとした。今後、11月のまとめる建議に向けてさらに議論を行うが、患者負担の増加については国民の関心も高く、医療機関や医師会などとの調整が必要になる見込み。(参考)財政制度等審議会財政制度分科会(令和2年10月8日開催)資料:社会保障について(1)(総論、医療、子ども・子育て、雇用)(財務省)3.新公立病院改革ガイドライン発表延期、ただし進捗の点検・評価は必要総務省は、5日に通知「新公立病院改革ガイドラインの取扱いについて」を各都道府県や指定都市などに向けて発出した。本年の7月までに示すとされていた新ガイドラインは発表を延期するが、今年度は「公立病院改革ガイドライン」の最終年度であることから、新改革プランの進捗状況について点検・評価を求める内容となっている。また、不採算地区の公立病院への財政措置については、地域医療構想の推進に向け、過疎地など経営条件の厳しい地域において、二次救急や災害時などの拠点となる中核的な公立病院の機能を維持する目的で、新たに特別交付税措置を講ずるなどの見直しを行うこととなった。今後の新型コロナ拡大に伴う景気・財政悪化を考えると、リスト外の病院に対してもより一層の健全な病院経営を求められることとなり、地方自治体や医療従事者への影響は避けられない。(参考)新公立病院改革ガイドラインの取扱いについて(通知)(総務省自治財政局準公営企業室長)4.安倍政権の未来投資会議を廃止、新たに成長戦略会議が発足安倍政権が2016年に内閣府に設置し、医療・介護を含むさまざまな分野について検討を重ねてきた未来投資会議が廃止され、菅政権では新たに成長戦略会議として立ち上げることを、9日の閣議後に西村 康稔経済再生担当相が明らかにした。未来投資会議が担っていた機能は縮小される。議長に加藤官房長官、副議長に西村経済再生相と梶山経済産業相がそれぞれ就任し、今後は、経済財政諮問会議が国の経済財政政策をリードし、それに沿った形で成長戦略会議が具体化を検討することとなる。(参考)未来投資会議を廃止 「成長戦略会議」に衣替え―政府(時事ドットコム)5.健康食品会社が嘘の体験談で薬機法違反、広告会社・広告主ともに摘発大阪府警は、嘘の体験談を用いて健康食品の効果をうたった広告・販売を行ったとして、広告会社と広告主の健康食品販売会社「ステラ漢方」を7月に摘発した。今年の3月上旬まで開設されていた商品サイトには「医者が絶句するほどの脂肪肝だった私が1ヵ月で正常値まで下げた『最強健康法』とは?」といった目を引く内容のほか、肝機能の数値改善など効能効果の表記がされていた。商品は健康食品会社ホームページのリンクから購入できる仕組み。なお、同社は2014年にも根拠のない宣伝をしたとして、消費者庁から景品表示法の規定に基づく措置命令を受けている。今後、悪質な広告についてはさらに規制強化が進むだろう。(参考)記事広告が薬機法違反…大阪府警、広告代理店ら6人を逮捕(通販通信)脂肪肝が1ヵ月で……。嘘の体験談で宣伝、広告主を摘発(日本経済新聞)

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薬機法の定めるオンライン服薬指導と「0410対応」は似て非なるもの【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第21回

本年9月1日から、改正薬機法の一部が施行されました。今回施行されたものの中で、薬剤師業務に影響が大きいと考えられるのは、患者の継続的な薬学管理が義務付けられたことと、オンライン服薬指導が解禁になったことかと思います。このうちオンライン服薬指導については、新型コロナウイルスのために示された「0410対応1)」によって、すでに電話などによる服薬指導が行われているため、施行となっても大きなインパクトはなかったかもしれません。しかし、この「0410対応」は、あくまで「時限的・特例的」な取り扱いであり、原則として3ヵ月ごとに見直されることとなっており、恒久的なものではありません。麻薬・向精神薬は初診時の処方不可、要件を満たさない場合の処方上限など再周知2020年8月6日に開催された厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では、当面の間「0410対応」を継続する方針となったようですが、不適切な事例も指摘されました。このような事例を踏まえ、「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」(事務連絡 令和2年9月4日 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)が発出されています。1.初診からの電話や情報通信機器を用いた診療に伴う処方箋により調剤を行う薬局における留意事項初診から電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医療機関に関して、4月10日付け事務連絡1.(1)に記載している以下の要件を遵守しない処方が見られたことから、薬局においても、これまでの来局の記録等から判断して疑義がある場合には、処方した医師に以下の要件を遵守しているかどうか確認すること。(1)麻薬及び向精神薬を処方してはならないこと(2)診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は7日間を上限とすること(3)診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(いわゆる「ハイリスク薬」)の処方をしてはならないこと※「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」より一部抜粋これを受けて、日本薬剤師会からも「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)2)」(日薬業発 第274号 令和2年9月7日)が発出されています。「0410対応」では、医療機関に対し初診から電話などを用いた診断や処方が認められていますが、この場合、麻薬・向精神薬は処方してはならないことや、状況によって日数の制限が設けられています。薬局では、これらの要件を必ずしも把握できるものではありませんが、疑義がある場合には医師への確認など、適切な運用に資する対応が求められています。日薬も「混同せずに運用する」よう求めている「0410対応」もオンライン服薬指導も、必要性だけでなく安全性も考慮してルールが定められています。単に電話やオンラインでの服薬指導が可能となったということではなく、正しいルールを確認しておく必要があります。今回紹介したこれらの通知も踏まえて、いま一度「0410対応」についての運用を確認するとよいでしょう。また、厚労省の事務連絡においても、薬機法改正による9月1日施行のオンライン服薬指導について言及があるとともに、日本薬剤師会の通知では、時限的・特例的な「0410対応」と薬機法に基づくオンライン服薬指導は異なることを指摘したうえで、混同せずに運用することも求めています。「0410対応」が進んでいるため、オンライン服薬指導も簡易にできるような印象を持ちますが、薬機法上のオンライン服薬指導にはさまざまな要件が設けられており、適法に運用するためにはより注意が必要です。これらの違いも意識し、内容を確認すべきでしょう。参考資料1)「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いについて」(事務連絡 令和2年4月10日厚生労働省医政局医事課 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)2)「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」(日薬業発 第274号 令和2年9月7日)

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売買契約が決まったのに、スタッフの大量退職で大ピンチ!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第2回

第2回 売買契約が決まったのに、スタッフの大量退職で大ピンチ!漫画・イラスト:かたぎりもとこ診療所の買い手にとって、一番の価値はすでに通っている「患者さんを引き継げる」ということです。加えて、現在のスタッフを引き継げることも大きな魅力といえます。というのも、患者さんは、(売り手である)現院長やそこで働く顔なじみのスタッフへの信頼や安心感から通院しているのであり、スタッフを引き継ぐことは患者さんの離反防止にもつながるからです。また、スタッフも現院長や同僚、現在の雇用環境に満足しているからこそ働いているのです。医業承継が決まり、新院長に交代する話は、基本的に買い手との最終契約が締結されてからスタッフへ開示することが鉄則です。ここで一定の割合で発生するのが「そんな話は聞いていない! 院長が交代するなら辞めます!」と言ってスタッフが大量に離職してしまうケースです。スタッフを引き継ぎたいと考えている買い手にとって、これは大きな痛手です。実際、スタッフの離職が原因となって買い手に辞退されるケースもあるのです。では、このようなケースはどうしたら防ぐことができるでしょうか? 私たちは以下のようにアドバイスをしています。それは「最終契約を締結した後に、新院長になる方に引き継ぎ先の診療所にて数ヵ月の間アルバイトをしてもらい、スタッフとの関係性を築いたうえで情報を開示する」というものです。これでスタッフの不安を払拭し、院内での人間関係もできたタイミングでスムーズに開業することができます。設備や医療機器と違って、スタッフや患者さんは人間です。その気持ちに配慮しながら、上手にコミュニケーションをとることが開業の成功につながります。スタッフへの告知時期や方法は仲介会社などのアドバイスを受けて決定するとよいでしょう。

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第30回 3群以上の比較はどのような場合でも多重比較法?【統計のそこが知りたい!】

第30回 3群以上の比較はどのような場合でも多重比較法?第26回から第29回では、3群以上の仮説検定の方法について学んできました。それでは、どのような場合でも3群以上の場合は、多重比較法を用いるのでしょうか?今回は、ANOVAと2群比較の使い分けを解説します。■ANOVAと2群比較を使う場面3群以上の比較の場合、「ANOVA」で有意差があったとしても、「どこに差があるかはわからない」、したがって次に何らかの多重比較法で「どこに差があるかを評価する」という手順でした。では、ANOVAと2群比較の使い分けはどのようにしたらよいのでしょうか。たとえば、以下の2つの場合ではどうでしょう。(1)ANOVA:全群で差がないことを明らかにしたいとき(2)多重比較法:どこかで差があることを明らかにしたいとき具体的な事例で考えてみましょう。東京都、愛知県、大阪府の3地域の12歳児の平均身長の違いを比較します。この事例では通常、とくに都道府県別に差があることを積極的に明らかにしたいわけではありません。そのようなときは、念のためANOVAで差がないことを検証します。12歳児の平均身長(男女別)(平成25年度学校保健調査結果)では、プラセボと新薬、標準治療の3つの治療法での違いを比較したい場合はどうでしょう。3群以上の多重比較なので、ANOVAで有意差を出すのでしょうか。しかし、有意差があったとして、「プラセボ」「新薬」「標準治療」の3つの治療法のどこかに差があることしかわからないのでANOVAを行うこと自体にあまり意味がありません。つまり、最初から、「プラセボvs.新薬」、「プラセボvs.標準治療」、「新薬vs.標準治療」の2群比較を3つ実施すればいいのです。このように3つの効果の違いを積極的に明らかにしたい場合は、2群のt検定を3回行えばよく、面倒な多重比較法を行う必要はないということです。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第26回 2群比較ではなく、3群以上の仮説検定とは?「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション9 t値による仮説検定セクション12 t検定の種類と選び方

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METexon14スキッピング変異陽性NSCLCに対するテポチニブの有効性/NEJM

 非小細胞肺がん(NSCLC)では、3~4%の患者に発がんドライバー変異であるMET遺伝子exon14スキッピング変異が認められるという。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのPaul K. Paik氏らはMETexon14スキッピング変異が確認された進行NSCLC患者における非盲検第II相試験において、MET阻害薬であるテポチニブにより、約半数の患者で部分奏効が得られ、主なGrade3以上の副作用は末梢浮腫であったことを明らかにした。NEJM誌2020年9月3日号掲載の報告。 研究グループは、METexon14スキッピング変異が確認された進行または転移があるNSCLC患者を対象に、テポチニブ500mg/日投与した。 主要評価項目は、9ヵ月間以上追跡調査した患者における独立評価委員会(IRC)判定による奏効率(ORR)とした。 主な結果は以下のとおり。・2020年1月1日時点で、テポチニブ投与例は計152例、9ヵ月以上追跡された患者は99例であった。・血液検体または腫瘍組織検体で変異陽性が確認された全体集団(99例)において、IRC判定による奏効率は46%、奏効期間中央値は11.1ヵ月であった。・奏効率は、血液検体陽性群(66例)で48%、腫瘍組織検体陽性群(60例)で50%であった。・両検体でいずれも変異陽性であった患者は27例であった。・治験担当医判定による奏効率は56%であり、前治療にかかわらず同程度の結果が得られた。・Grade3以上の副作用(治験担当医がテポチニブに関連していると判断した有害事象)は28%の患者で報告され、主なものは末梢浮腫(7%)であった。・テポチニブの永続的な投与中止に至った有害事象は11%に認められた。・ベースラインおよび治療中に血液検体を採取した患者において、循環遊離DNAで測定される分子学的奏効率は67%であった。

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COVID-19は素早く見つけて包囲し対処/日本感染症学会

 第94回日本感染症学会総会・学術講演会(会長:館田 一博氏[東邦大学医学部 教授])が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下、8月19日~21日の期日でインターネット配信との併用で東京にて開催された。 今回のテーマは、「感染症学の新時代を切り拓く-“探求する心”を誇りとして-」。学術集会では、特別講演に大隅 良典氏(東京工業大学)、満屋 裕明氏(国立国際医療研究センター)などの講演のほか、招請講演として学会の国際化がさらに前進することを期待し欧米の著名な感染症、ワクチンの専門家が講演者に迎えられた。基調・教育講演でも学際的な交流の活性化を目的にさまざまな臨床領域の講師が登壇した。 本稿では、尾身 茂氏(独立行政法人地域医療機能推進機構 理事長)の基調講演の概要をお届けする。 尾身氏は、現在政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のメンバーとして、わが国のCOVID-19対策の政策立案の一翼を担っており、講演では「withコロナの時代に私達がどう考え、どう行動すればよいか」をテーマに、第一波後の社会、生活の変遷と今後の展望について語った。感染拡大の要因は「3密、大声の会話、不十分な対策」 はじめに、「3月末~4月の爆発的感染拡大および医療崩壊を辛くも回避できたのは、緊急事態宣言前後の市民の協力、医療関係者および保健所関係者の多大な努力の成果」と述べ、これまでの総括を語った。 緊急事態宣言解除後の感染拡大の主な原因は、「東京の接待を伴う飲食店の利用者などから家庭、病院、職場などで広がったと考えられ、その共通する要因として『3密』、『大声の会話』、『不十分な感染対策』が指摘され、これらは3月の流行時にわかっていたことであり、あらためて確認された」と説明した。感染対策は「後の先(ごのせん)」で抑える 次にこれまでの経過でわかったことを振り返り、「クラスターが発生しても早急に対応できた場合は早く収束できること」、「マスクの着用など対策をすれば街歩きなどでの感染リスクは極めて低いと考えられること(ただしゼロではない)」、「高齢者やとくに基礎疾患のある人は感染すると重症化しやすいこと」、「治療の手順が確立されつつあること」の4点を挙げた。 そして、尾身氏は「COVID-19に対する不安にどう対処するか」という課題に対し、私案としつつ「COVID-19の感染リスクをゼロにすることが難しい以上、先述の感染リスクを避ける行動をした上で、もしクラスターがみつかっても、それを怖がるのではなく、『クラスターが制御できること=安心』と考える意識改革が必要」と提言した。また、感染者への「差別」についても触れ、「社会的に排除すれば、かえって感染症の実態を見え難くさせ、対策を後手に回らせてしまう可能性がある」と警鐘を鳴らした。そこで、COVID-19の拡大に先手を打つには、感染者を排除するのではなく、「感染が起こった事例を教訓として、その教訓を広く社会で共有し、次の感染に備えるということが求められる」と述べた。また、尾身氏は、剣道用語の「後の先」という言葉を使い、感染対策としては「相手をコントロールして、動かせて、抑えることが重要」と強調した。すなわち、常時緊張を強いられる100%の予防やリスクゼロの社会を目指すのではなく、「起こった事例から学び、次の発生やクラスターを抑えるような気構えや仕組みを社会で共有することで、安心感を醸成することができる」と説明した。国は医療機関、保健機関へ支援の充実を 緊急事態宣言発出前後、宣言解除から現在まで医療機関および保健所の負荷が、感染対策上の重要課題と尾身氏は指摘するとともに、今後も全国的に収束と新たなクラスター発生を繰り返すと予想を示した。 また、最後に私案として国へのお願いとして、(1)迅速な医療機関、保健所への効率的かつ効果的な人的、財政的支援(2)接待をともなう業種・地域に対して、都道府県などと協力し、検査体制を含めサポートする仕組みの早急な確立の2点を示し、講演を終えた。

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アンチエイジングのためのHealthy Statement作成が始動/日本抗加齢医学会

 近年、EBM普及推進事業Mindsの掲げるガイドライン作成マニュアルが普及したこともあり、各学会でガイドラインの改訂が活発化している。さまざまな専門分野の医師が集結する抗加齢医学においても同様であるが、病気を防ぐための未病段階の研究が多いこの分野において、ガイドライン作成は非常にハードルが高い。Healthy Statement-ガイドライン作成の第一歩 そこで、日本抗加齢医学会は第20回総会を迎える節目の今年、ワーキング・グループを設立し、今後のガイドライン作成、臨床への活用を目的にコンセンサス・レポートとしてHealthy Statement(以下、ステートメント)の作成を始めた。ステートメントの現況は、9月25日(金)~27日(日)に開催された第20回日本抗加齢医学会の会長特別プログラム1「Healthy Agingのための学会ステートメント(ガイドライン)作成に向けて」にて報告された。 ステートメントは健康寿命の延伸に関して科学的なエビデンスが蓄積されつつある4つの分野(食事、運動、サプリメント、性ホルモン)が検討されており、今回、新村 健氏(兵庫医科大学内科学総合診療科)、宮本 健史氏(熊本大学整形外科学講座)、阿部 康ニ氏(岡山大学脳神経内科学)、堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学/日本抗加齢医学会理事長)らが、各部門の作成状況を発表した。各分野、抗加齢に特化したデータ抽出進む 『食事・カロリー制限とアンチエイジング』について講演した新村氏は、「抗加齢医学の領域において、食事療法・カロリー制限に関するエビデンスは十分と言えず、ガイドライン・診療の手引きを作成するだけの材料が揃っていないのが現状」とし、「食事療法の選択としては日本人での実行性と重要性を重視し、健常者または重篤な疾患を持たない者を対象者に想定している」と述べた。さらに今後の方針として「1つの食事療法に対して、複数のアウトカムから評価し、アンチエイジング医学の多様性を意識する」と話した。 『運動・エクササイズとアンチエイジング』については宮本氏がコメント。「運動介入と高齢者の骨密度、認知症や寿命延伸に関するデータをまとめ、CQを作成した。とくに運動介入は高齢者の骨密度の軽度の増加、認知症予防に強く推奨される。また要介護化の予防に中等度、寿命・健康寿命の延伸には弱く推奨される」など話した。 『サプリメント・機能性表示WGからの報告』について阿部氏が講演。「本ワーキング・グループは感覚器、歯科、循環器、消化器/免疫、皮膚科、脳神経の6領域において活動を行っている。サプリメントは分類上では機能性表示食品に該当するが、医薬品のように観察研究や介入研究が多くデータが豊富に揃っていた。評価文、根拠文献、評価上の要点、エビデンスグレードの各案が出揃い、完成近い品目もある」と解説した。このほか、アルツハイマー病治療において、アミロイドβの根本治療が全滅している現在、サプリメント活用のメリットにも言及した。 『テストステロン(男性ホルモン)』については堀江氏が既存のエビデンスとして、テストステロン低値の人の早逝、内蔵脂肪との関連、そのほか低テストステロンが惹起する身体機能の低下や合併症について説明。「テストステロンはメタボリックシンドローム、耐糖能異常、うつ病、フレイルなどの疾患との関連において十分なエビデンスが存在する。これらのデータを踏まえ、テストステロンは未病のための明日の健康指標になる。さらには、社会参画や運動量など人生のハツラツ度に影響するホルモンであることから、今日の健康指標にもつながる」とし、「今後、性ホルモン分野としてエストロゲン、テストステロンの両方について報告していく」と締めくくった。抗加齢医学の目標、ステートメント完成は2021年を目処 講演後、大会長の南野氏は「抗加齢医学は集団も然り、研究疾患もヘテロである。このヘテロジェナイティを認識したうえで、足りないエビデンスをわれわれで補うことが最終目標である」と述べた。これに堀江氏は「われわれは疾患ではなく、疾患に至る前段階を捉えて研究を行っている。診療ガイドラインの疾患アウトカムと異なるエビデンスが必要であり、それゆえ研究対象も従来の研究とは異なる。たとえば、高齢者の認知機能ではなく40歳くらいの若年者の機能探索がその1つである」と補足し、今後の抗加齢医学会の進むべき道について強調した。Healthy Statementは来年6月頃までにまとめられ、2021年の本学術集会にて発表される予定である。 なお、本講演は10月8日(木)~21日(水)の期間限定でケアネットYouTubeにて配信している。

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COVID-19パンデミックによる米国うつ病有病率

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックと感染症防止のための政策は、抑うつ症状に対する未知の影響を伴い、全米に拡大した。米国・ボストン大学のCatherine K. Ettman氏らは、米国成人におけるCOVID-19パンデミックによるの抑うつ症状の有症率とリスク因子を推定するため、検討を行った。JAMA Network Open誌2020年9月1日号の報告。 本研究は、18歳以上の米国成人を対象とした2つの人口ベースの調査を用いた、米国国民生活調査として実施した。COVID-19と生活ストレスによるメンタルヘルスやウェルビーイングへの影響に関する研究より、COVID-19パンデミック期間の推定値を算出した。調査期間は、2020年3月31日~4月13日とした。COVID-19パンデミック前の推定値は、2017~18年に実施した国民健康栄養調査のデータより抽出した。データの分析は、2020年4月15日~20日に実施した。COVID-19パンデミックおよびそれを軽減するための政策に関連するアウトカムへの影響を調査した。主要アウトカムは、抑うつ症状(こころとからだの質問票[PHQ-9]カットオフ値10以上)とした。抑うつ症状の重症度分類は、なし(スコア:0~4)、軽度(スコア:5~9)、中等度(スコア:10~14)、中等度から重度(スコア:15~19)、重度(スコア:20以上)とした。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19パンデミック中に調査を完了した参加者は1,470人(完了率:64.3%)であった。データが不十分な参加者のデータは削除し、最終的に1,441人のデータを分析した(18~39歳:619人[43.0%]、男性:723人[50.2%]、非ヒスパニック系白人:933人[64.7%])。・パンデミック前のデータとして、5,065人分のデータが使用された(18~39歳:1,704人[37.8%]、女性:2,588人[51.4%]、非ヒスパニック系白人:1,790人[62.9%])。・抑うつ症状の有病率は、いずれの重症度においてもCOVID-19パンデミック中のほうがパンデミック前よりも高かった。 ●軽度:24.6%(95%CI:21.8~27.7) vs.16.2%(95%CI:15.1~17.4) ●中等度:14.8%(95%CI:12.6~17.4) vs.5.7%(95%CI:4.8~6.9) ●中等度から重度:7.9%(95%CI:6.3~9.8) vs.2.1%(95%CI:1.6~2.8) ●重度:5.1%(95%CI:3.8~6.9) vs.0.7%(95%CI:0.5~0.9)・COVID-19パンデミック中に、抑うつ症状リスクの高さと関連していた因子は以下のとおりであった。 ●収入の少なさ(オッズ比:2.37、95%CI:1.26~4.43) ●収入と支出の差額が5,000ドル未満(オッズ比:1.52、95%CI:1.02~2.26) ●ストレス要因の多さ(オッズ比:3.05、95%CI:1.95~4.77) 著者らは「米国におけるCOVID-19パンデミック中の抑うつ症状有病率は、パンデミック前と比較し、3倍以上高いことが示唆された。社会的資源や経済的資源が少なく、失業などのストレス要因が、抑うつ症状の発症に影響を及ぼしている。COVID-19パンデミック後においては、今後精神疾患の発症が増加する可能性があり、とくに高リスク集団では、注意が必要である」としている。

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メタボ健診の特定保健指導に心血管リスク低減効果なし

 京都大学の福間 真悟氏らの疫学研究により、わが国の特定健康診査(メタボ健診)を受けた勤労世代の男性において、特定保健指導によって体重は1年後にわずかに減少したが、血圧、HbA1c、LDLコレステロールなどの心血管リスク因子改善が認められなかったという結果が発表された。著者らは「特定健康診査の費用が高額(年間約160億円)であることを考慮し、そのシステムを再評価する必要がある」としている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2020年10月5日号掲載の報告。特定保健指導を受けた人に血圧などの心血管リスクの軽減効果なし 著者らは、2013年に健診後、1年以上追跡できた40~74歳の男性約7万4,693人を1~4年間追跡した。腹囲85cm以上、高血圧、糖尿病などの心血管リスク因子を1つ以上有している人では、特定保健指導を受けることが必要とされていた。統計方法は、回帰不連続デザイン(regression discontinuity design:RDD)で実施された。RDDとは、ある連続変数(ここでは腹囲)の値が特定の値より高いか低いかで介入群(ここでは特定保健指導)に割り付けることにより、介入の効果を推定する方法である。本研究では、腹囲85cm以上か否かで分け、特定保健指導の効果におけるその後の腹囲、体重、BMIへの影響のほか、血圧、血糖値(HbA1c)やLDLコレステロールへの影響についても検討した。特定保健指導の内容は、トレーニングを受けた指導員による運動・食事の指導で、必要に応じて医療機関受診などの指導を受けることになっていた。なお、介入群と非介入群についてintention-to-treat解析を行ったが、実際に指導を受けた人は介入群の15.9%にすぎず、指導を受けた人についてtreatment-on-the treated(ToT)解析により検討した。 メタボ検診後の特定保健指導の効果を検証した主な結果は以下のとおり。・対象者の平均年齢は52.1歳、ベースラインでの平均腹囲は86.3cm(腹囲が閾値の-6~0cmの群では82.2cm、0~6cmの群では87.7cm)であった。・腹囲が閾値(85cm)より大きく特定保健指導を受ける群において、腹囲は1年後に-0.34 cm(p=0.02)、体重-0.29kg(p=0.005)、BMIは-0.10(p=0.008)とわずかではあるが減少した。しかし3、4年後には、有意差は消失し効果がみられなかった。・心血管リスクに関して、収縮期血圧、拡張期血圧、HbA1c、LDLコレステロールのいずれも1~4年間で改善が認められなかった。・実際に特定保健指導を受けた人のみで検討したToT解析では、1年後に体重は-1.56kg(p=0.02)、BMIは-0.61(p=0.01)と、いずれもわずかな減少がみられたが、血圧などの心血管リスクの軽減はみられなかった。専門家はこう見る:CLEAR!ジャーナル四天王メタボ健診の保健指導に心血管リスク低減効果なし~見直しが必要(解説:桑島 巖 氏)-1296 コメンテーター :桑島 巖( くわじま いわお ) 氏東京都健康長寿医療センター顧問J-CLEAR理事長

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