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第42回 ついに始まるワクチン接種、妊婦は努力義務から除外

<先週の動き>1.ついに始まるワクチン接種、妊婦は努力義務から除外2.集団接種と個別接種を組み合わせたワクチン実施体制を/日医3.睡眠導入剤混入事件の小林化工、116日間の業務停止処分4.見送られていた100万人以上の二次医療圏、地域医療構想が進む5.「病床機能再編支援事業」かかりつけ医の定義を求める声1.ついに始まるワクチン接種、妊婦は努力義務から除外厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が12日に開催され、米・ファイザーと独・ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンを特例承認した。14日の厚労大臣による承認を経て、さっそく17日から国立病院機構など100病院の医師・看護師ら1万人以上への先行接種が実施される。その後は副反応を含めた有害事象の収集を行い、安全対策などを確立した上で、3月中旬からは全国の医療従事者、4月以降は今年度中に65歳以上となる約3,600万人の高齢者などを対象に接種が進められる。ワクチンの対象年齢である16歳以上の国民全員に接種券が送付されるが、厚労省は、妊婦については接種努力義務から除外する方針を明らかにしている。15日から、厚生労働省新型コロナワクチンコールセンターが開設された。接種時期や場所についての質問は、各市町村の相談窓口で対応することとなる。また、ファイザーは医療従事者専用サイトを開設し、情報提供している。▼厚生労働省新型コロナワクチンコールセンター電話番号:0120-761-770(フリーダイヤル)受付時間:9:00~21:00(参考)ファイザー新型コロナウイルスワクチン医療従事者専用サイト<新型コロナ>ワクチン接種努力義務から妊婦は除外 14日正式承認、16歳以上全員に接種券送付へ(東京新聞)新型コロナ ワクチン、きょう正式承認 厚労省、あすから相談窓口を設置(毎日新聞)2.集団接種と個別接種を組み合わせたワクチン実施体制を/日医10日、日本医師会・中川会長と今村副会長が総理官邸を訪れ、意見交換を行った。中川氏は、新型コロナワクチンの接種体制について、「地域の実情に応じ、集団接種と個別接種を組み合わせた柔軟な対応が必要であり、とくに基礎疾患のある高齢者に対しては、かかりつけ医による個別接種が望ましいケースもある」とし、国が主導する大掛かりなワクチン接種事業に全面的に協力する意向を菅総理に伝えた。今後、医師会などを通して各自治体への情報伝達が開始されるが、多くの自治体が準備に追われている状況。接種開始までの手続きの煩雑さについては、河野 太郎ワクチン担当大臣から、「新たに構築する予定の接種管理のためのデータベースについて、バーコードを読み取るのみで情報収集できるといった現場に負担のかからない仕組みとすることを考えている」と説明があった。(参考)菅総理にワクチン接種事業への全面協力を約束(日本医師会)COVID-19ワクチン接種体制の構築へ向けた提言(自民党)3.睡眠導入剤混入事件の小林化工、116日間の業務停止処分経口抗真菌薬イトラコナゾールに睡眠導入剤を混入した小林化工に対して、福井県は116日間の業務停止処分と業務改善命令を9日に通達した。国内の医薬品企業への行政処分としては過去最長となる。本事件では、イトラコナゾールを服用した人の7割近い239例が健康被害を報告しており、2例が死亡している。これまで明らかになっているのは、承認内容と異なった医薬品の製造工程や二重帳簿の作成、品質試験結果の捏造など、長期間にわたる「法令遵守への意識の欠如」だ。小林 広幸社長は、患者対応が一段落したら辞任する意向を示している。今回の事件により、不備が判明した製品の相次ぐ自主回収が行われており、安定供給の確保と信頼性の回復にはかなりの時間がかかるだろう。(参考)小林化工40年前から試験結果を捏造 製品の8割で「二重帳簿」作成(福井新聞)医薬品医療機器法違反業者に対する行政処分について(福井県)水虫治療薬に睡眠導入剤混入 小林化工に116日間の業務停止命令(NHK)4.見送られていた100万人以上の二次医療圏、地域医療構想が進む厚労省医政局は12日に「地域医療構想に関するワーキンググループ」を開催し、これまでは見送られていた、人口100万人以上の二次医療圏の地域医療構想について議論した。人口100万人以上の構想区域は、人口50万人以上100万人未満の構想区域より小さい面積の中に、約2倍の病院が存在する傾向である。よって、従来のアプローチではなく、まず各公立・公的医療機関などにおいて、周辺医療機関の診療実績や医療需要の推移など地域の実情に関する各種データも踏まえつつ、自らが担うべき役割・医療機能など具体的対応方針の妥当性について確認し、地域医療構想調整会議などであらためて議論するよう求めている。(参考)資料 人口100万人以上の構想区域に係る分析について(厚労省)人口100万人以上区域の病院再編、厚労省新たな関与せず 地域医療構想WG、「診療実績が少ない」は指定済み(CBnewsマネジメント)5.「病床機能再編支援事業」かかりつけ医の定義を求める声厚労省は、8日に社会保障審議会・医療部会を開催し、医療法の改正案(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案)などについて議論した。質・安全が確保された医療を持続可能な形で患者に提供するために、医師の働き方改革だけでなく、地域医療構想の実現に向けた医療機関の取り組みを支援するべく、2020年度から開始された「病床機能再編支援事業」について、今年度以降も国が全額を負担して継続される。一部の医療機関に外来患者が集中し、さまざまな課題が生じていることについては、外来医療機能の明確化・連携の推進を進め、患者の流れをより円滑にすることで、外来患者の待ち時間短縮や勤務医の外来負担の軽減、医師の働き方改革につなげる方針が打ち出された。これに対し、あらためて「かかりつけ医」の定義付けを行うべきという意見も出た。(参考)資料 良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について(厚労省)外来機能連携へ、「かかりつけ医」の定義化求める意見 社保審・医療部会(CBnewsマネジメント)

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カインとアベル(前編)【なんで嫉妬をするの?】

今回のキーワード志向性嫉妬性的嫉妬自己愛性パーソナリティ情緒不安定性パーソナリティ承認仲間意識(同調)皆さんは、友達が自分よりも先に出世したり結婚することでもやもやしたことはありませんか? 恋人やパートナーが浮気するんじゃないかと焼き餅をやいたことはありませんか? これらは、嫉妬ですよね。私たちは、なぜ嫉妬をするのでしょうか? この答えを探るために、今回は、テレビドラマ「カインとアベル」を取り上げます。このドラマを通して、嫉妬の心理やリスクを精神医学的に掘り下げてみましょう。嫉妬とは?主人公は、兄の隆一と弟の優。2人とも父親が社長である大企業に勤務しています。隆一は、子どもの頃から成績優秀で、父親の期待を背負い、副社長にまで出世しています。一方、優は、子どもの頃から父親に隆一と比べられ、ダメ出しばかりされてきた一社員です。優は、当初、自分に面倒見が良い隆一に、うらやましさを超えて、憧れを抱いていました。ところが、ストーリーが進むにつれて、隆一が資金繰りの失敗を取りつくろって行き詰まる一方、優は自分らしさを発揮して活躍するようになり、2人の立場が逆転していきます。さらに、優は、隆一の婚約者である同僚の梓に心を寄せるようになります。こうして、隆一は、優への嫉妬に狂っていくのでした。このように、自分が持っているもの(持つべきもの)を相手に取られることへの葛藤(不安)が、嫉妬です。さらに、自分の地位が取られる場合は志向性嫉妬、自分のパートナーが取られる場合は性的嫉妬と分類されます。ちなみに、「嫉妬」という漢字は、2つの女へんが使われており、女性ならではのニュアンスがありますが、実際には、男女問わず、嫉妬はあります。女へんが用いられている理由としては、男性よりも女性のほうが、すぐに感情に出してしまい目立つためでしょう。また、志向性嫉妬については、男性ならではの印象があります。しかし、スクールカーストやママカーストが歴然としてあることから、やはり女性も志向性嫉妬があると言えます。一方で、性的嫉妬については、女性ならではの印象があります。しかし、パートナーの居場所をいちいち確認したり外で働くことを制限するモラルハラスメントやストーカー行為が歴然としてあることから、やはり男性も性的嫉妬があると言えます。なお、厳密には、自分が持っているもの(持つべきもの)を相手に取られる前は「嫉妬」、取られた後は「妬(ねた)み」と言うことが多いようです。この記事では、分かりやすさを優先して、「嫉妬」=「妬み」として、ざっくり説明します。また、自分が持っていないもの(持つべきもの)を相手がもともと持っていることへの葛藤(不安)は、羨(うらや)み(羨望)です。日常的に「妬み」は、この「羨み」と混同して使われることも多いです。ただし、「妬み(嫉妬)」はもともと相手が持っていないものを奪いにくることが前提であるのに対して、「羨み」はもともと相手が持っていることが前提であるため、嫌悪感の強さとしては、羨み<妬み(嫉妬)であると言えます。さらに、「妬み(嫉妬)」は、「羨み」と語源が同じ「恨み」に発展することもよくあります。ちなみに、自分が持っていないもの(持つべきもの)を相手が持っていることへの好感は、憧(あこが)れ(憧憬)です。同じ心理であっても、「羨み」は嫌悪感であるのに対して、「憧れ」は好感であるという違いがあります。まとめると、日常的には、羨み=妬み(嫉妬)=恨みとして使われますが、嫌悪感の強さは、憧れ<羨み<妬み(嫉妬)<恨みであると言えます。なんで嫉妬するの?それでは、なぜ嫉妬をするのでしょうか? ここから、嫉妬のリスクを大きく個人因子と環境因子の2つに分けてみましょう。(1)個人因子個人因子としては、主に3つ挙げられます。1つ目は、自信(自己効力感)があり過ぎることです。自信とは、「自分はできる」と感じることです。隆一は、もともと優秀で完璧主義で、これまで人生のすべてがうまく行っており、ほとんど挫折を知りませんでした。そして、幼少期からすべての点において優に勝っていました。逆に言えば、勝ってばかりでは、負けること(失敗)に慣れておらず、実は負けること(失敗)に不安(嫉妬)を感じやすくなっていると言えます。だからこそ、隆一は、資金繰りの失敗を社長である父親や優に打ち明けられず、一人で抱え込み、姿をくらますのでした。ちなみに、この心理は、自己愛性パーソナリティにつながります。この特徴は、嫉妬を含む逆境にとても脆いです。逆に、優のようにもともと自信がない場合は、嫉妬よりも嫌悪感が少ないうらやましさや、むしろ好感である憧れを持つでしょう。2つ目は、自尊心(自己肯定感)が不安定であることです。自尊心とは、「自分は(うまく行かなくても)大丈夫」と感じることです。隆一は、父親の期待(承認)を一身に背負い、周りから認められて、成長しました。逆に言えば、それは、認められないことに慣れておらず、実は代わりに誰かが認められること(=自分が認められないこと)に不安(嫉妬)を感じやすくなっていると言えます。隆一の母親は、幼少期に病死しており、愛情としてあったのは、父親の条件付きのものだけでした。ちなみに、この心理は、情緒不安定性パーソナリティにつながります。この特徴は、嫉妬にとても敏感になります。3つ目は、仲間意識(同調)が強過ぎることです。仲間意識とは、「自分と相手は同じ」と感じることです。隆一は、優が兄弟であることから、これまで優がうまく行かなくなった時に毎回面倒を見ていました。隆一は優から見れば明らかに違いますが、隆一として優は自分と同じ兄弟であるという意識が強くありました。ただし、同じであることを意識し過ぎることは、少しの変化(違い)に対して不安を感じやすくなると言えます。自信のなかった優が少しずつ前向きになっていくたびに、隆一は毎回敏感に反応していました。挙げ句の果てに、社長の父親と取締役になった優が2人きりで話していることに堪えられなくなり、社長室と取締役室などに盗聴器を仕掛けるのです。なお、承認の心理の詳細については、関連記事1をご覧ください。 (2)環境因子環境因子としては、主に3つ挙げられます。1つ目は、相手との違いが少ないことです(均一性)。隆一にとって、優は男兄弟、つまり同性で近親者です。2つ目は、相手がいつまでも変わらないことです(固定性)。優とは一緒に生まれ育ってきました。そして、同じ会社に勤め、同居しています。3つ目は、相手と距離がとれないことです(閉鎖性)。2人は同じ会社の副社長と一社員であり、上司と部下の関係です。このように、個人的、時間的、そして空間的に「近い」関係であればあるほど、自分の地位やパートナーを取られるなど、自分の立場を脅かすリスクがあるため、不安(嫉妬)を感じやすくなると言えます。もともと2人は8歳の年齢差であること、隆一の出来が良かったのに対して優は出来が悪かったため、隆一は、優を無意識に見下し、安心していました。ところが、優が力をつけるにつれて、隆一は穏やかではいられなくなっていたのでした。このように、「近い」関係という点で、兄弟関係(同胞関係)だけでなく、親友関係や夫婦関係においても、実は嫉妬(とくに志向性嫉妬)はよく見られます。逆に言えば、社長である父親は年齢や立場が「遠い」親子関係であるため、隆一が父親に憧れることはあっても、嫉妬することはないでしょう。ちなみに、嫉妬を引き起こす環境因子は、いじめとよく似ています。いじめの心理の詳細については、関連記事2をご覧ください。 ■参考図書1)病的嫉妬の臨床研究:高橋俊彦、岩崎学術出版社、20062)嫉妬をとめられない人:片田珠美、小学館新書、2015■関連記事ザ・サークル【「いいね!」を欲しがりすぎると?(承認中毒)】告白【いじめ(同調)】

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脳腱黄色腫症〔CTX:CerebrotendinousXanthomatosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義脳腱黄色腫症は、CYP27A1遺伝子変異を原因とする常染色体劣性の遺伝性代謝疾患である。■ 疫学「脳腱黄色腫症の実態把握と診療ガイドライン作成に関する研究班」が実施した全国調査では、2012年9月~2015年8月の3年間に日本全国で40例の脳腱黄色腫症患者の存在が確認された1)。また、これまでにわが国から約60例の本症患者の報告がある。一方、ExAC(The Exome Aggregation Consortium)のゲノムデータベースを用いた検討による本症の頻度は、東アジア人で64,267~64,712人に1人と推測されており、わが国の潜在的な患者数は1,000人以上である可能性がある。■ 病因脳腱黄色腫症の原因遺伝子であるCYP27A1は、27-水酸化酵素をコードしており、本症の患者では遺伝子変異により本酵素活性が著しく低下している。27-水酸化酵素は、肝臓における一次胆汁酸の合成に必須の酵素であり、酵素欠損によりケノデオキシコール酸などの胆汁酸の合成障害を来す(図1)。また、ケノデオキシコール酸によるコレステロール分解へのネガティブフィードバックが消失するため、コレスタノール・胆汁アルコールの産生が助長される(図1)。上昇したコレスタノールが脳、脊髄、腱、水晶体、血管などの全身臓器に沈着し、さまざまな臓器障害を惹起する。下痢や胆汁うっ滞は、ケノデオキシコール酸の欠乏や胆汁アルコールの上昇などの機序によると推測される。図1 脳腱黄色腫症の病態画像を拡大する■ 症状・分類脳腱黄色腫症の臨床症状は、腱黄色腫、新生児期の黄疸・胆汁うっ滞、小児期発症の慢性下痢、若年性白内障、若年性冠動脈疾患、骨粗鬆症といった全身症状と、精神発達遅滞・認知症、精神症状、錐体路徴候、小脳性運動失調、てんかん、末梢神経障害、錐体外路症状といった神経症状に大別される。臨床病型は、多彩な臨床症状を呈する古典型、痙性対麻痺を主徴とする脊髄型、神経症状を認めない非神経型、新生児胆汁うっ滞型に分類される(表1)。古典型は、小児期に精神発達遅滞/退行、てんかん、歩行障害、慢性の下痢、白内障などで発症することが多い。腱黄色腫(図2)は20歳代に生じることが多くアキレス腱に好発するが、黄色腫を認めない例もまれではない。表1 脳腱黄色腫症の病型画像を拡大する図2 脳腱黄色腫患者のアキレス腱黄色腫画像を拡大する(A)肉眼所見 (B)単純X線所見 (C)MRI所見 T1強調像(文献3の図1A-Cを転載)■ 予後未治療のまま経過すると進行性の神経症状により、高度の日常生活動作障害を呈する。2 診断 (検査・鑑別診断を含む)腱黄色腫、進行性の神経症状または精神発達遅滞、若年発症の白内障・下痢・冠動脈疾患・骨粗鬆症、新生児~乳児期の遷延性黄疸・胆汁うっ滞など本症を疑う症状を認めた場合、血清コレスタノールの測定を行う。血清コレスタノールは外注検査が可能であるが保険収載はされていない。血清コレスタノールが上昇しており、他疾患が否定されればProbable、さらにCYP27A1遺伝子の変異が証明されればDefiniteの診断となる。遺伝子検査は、脳腱黄色腫症の実態把握と診療ガイドライン作成に関する研究班のホームページから申し込みが可能である。2018年に改訂された本症の新しい診断基準1,2)を表2に示す。表2 脳腱黄色腫症の診断基準画像を拡大する3 治療治療の基本は、著減しているケノデオキシコール酸の補充(保険適用外)である。ケノデオキシコール酸投与により胆汁酸合成経路の律速酵素であるコレステロール7α-水酸化酵素へのネガティブフィードバック(図1)が正常化し、血清コレスタノールの上昇などの生化学的検査異常が改善する。また、その結果として組織へのコレスタノールの蓄積が抑制される。早期治療により臨床症状の改善も期待できる。ケノデオキシコール酸の投与量は成人例では750mg/日、小児例では15mg/kg/日が推奨されている2)。HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン製剤、保険適用外)も血清コレスタノールの低下作用を有するが、臨床的な有用性のエビデンスは十分に蓄積されていない。LDLアフェレシス(保険適用外)も血清コレスタノールを低下させることが可能であるが、約2週間で治療前値に戻ってしまうことからケノデオキシコール酸やスタチン製剤による治療効果が不十分な例に実施を検討する。4 今後の展望現在わが国で、脳腱黄色腫症に対するケノデオキシコール酸の治験が進行中であり、近い将来保険適用になる可能性がある。わが国で実施した全国調査の結果では、本症の発症から診断までに平均で16.5±13.5年を要しており、特に小児期の未診断例が多いことが明らかになっている1)。現状では、診断の遅れにより重篤な神経系の後遺症を残している患者が多いが、発症早期に治療介入することで本症患者の予後が改善すると期待される。5 主たる診療科脳神経内科、小児神経科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報脳腱黄色腫症の実態把握と診療ガイドライン作成に関する研究班(医療従事者向けのまとまった情報)原発性高脂血症に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 脳腱黄色腫症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Sekijima Y, et al. J Hum Genet.2018;63:271-280.2)脳腱黄色腫症の実態把握と診療ガイドライン作成に関する研究班、原発性高脂血症に関する調査研究班編. 脳腱黄色腫症診療ガイドライン 2018. 2018.3)Yoshinaga T, et al. Intern Med.2014;53:2725-2729.公開履歴初回2021年2月15日

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ジフテリア、破傷風、百日咳【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第7回

今回はジフテリア、破傷風、百日咳がテーマである。現在この3疾患のいずれかをカバーしうる国産ワクチンは、破傷風トキソイド、二種混合(DT:ジフテリア/破傷風混合トキソイド)、三種混合(DPT:ジフテリア/百日咳/破傷風混合)、四種混合(DPT-IPV:ジフテリア/百日咳/破傷風/不活化ポリオ)ワクチンの計4種類がある。DPT-IPVワクチンは乳幼児期(0~1歳)に計4回、DTワクチンは学童期(11~12歳)に1回、定期接種で使用されているが、その他のDPTワクチンと破傷風トキソイドは、制度として定められた接種時期はなく、主にキャッチアップワクチンとして使用されている。諸外国と比較し、わが国の現行の小児定期接種スケジュールの問題点は何だろうか。また、破傷風トキソイドおよびDPTワクチンのキャッチアップとして、接種タイミングをどう考えればよいかについては、意外に知られていない。そこで本稿では、それぞれの疾患とワクチンに触れながら、上記ポイントについて述べる。ワクチンで予防できる疾患 ~ジフテリア・百日咳・破傷風の概要~まず、ジフテリア・百日咳・破傷風、3疾患を比較して外観する。ジフテリア、百日咳、破傷風の疾患頻度は、百日咳>破傷風>>>ジフテリアの順で多く、百日咳は年間1万5,000例以上(うち入院264例、死亡は1例:2019年1))、破傷風は年間数十~100例前後2)(うち死亡は10例前後3))である。百日咳、破傷風ともに、追加接種を行わなければ、乳幼児期の予防接種の効果が減弱するため、小児や成人での感染が問題となっている。これら2疾患の追加接種については今回のメインテーマであり、次項で述べる。ジフテリアの感染事例は国内では20年以上発生していない4)。しかし、諸外国では、感染が流行している地域があるため、海外渡航時または渡航者からの輸入感染に備えるべく、ワクチンにより免疫を獲得しておくことが重要である。以下、各疾患について概説する(詳細は成書を参照)。1)ジフテリアとはジフテリアはジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)による感染症で、主に上気道粘膜に感染する4)。鼻ジフテリア、咽頭ジフテリア、喉頭ジフテリアなどの病型があり、その他眼瞼結膜、中耳、陰部、皮膚などに感染することもある。わが国では1945年に約8万6 千人(うち約10%が死亡)の届出患者がいたが、ワクチン接種の普及と共に患者数は減少し、1991~2000 年の10年間では21人(うち死亡が2人)にまで激減。2類感染症・全数報告届出疾患であるが、1999年の1例(死亡例)を最後に届出はみられていない。わが国では流行がみられないジフテリアであるが、ロシアでは政権崩壊の煽りをうけて、1990年代にワクチン供給が不足した。それに伴い、住民の免疫低下から、12万5,000人の患者が発生し、4,000人以上が死亡して、欧州を巻き込むなど国際的問題となった事例がある。予後に関わる合併症としては心筋炎があり、無治療の場合の致命率は5~10%と高い。諸外国では散発的に発生していることから、ルーチンワクチンとして接種を推奨することが大切である。2)百日咳百日咳は百日咳菌による急性気道感染症で、長期にわたり続く咳が特徴である。特に新生児や乳児が罹患すると、無呼吸発作などを来たし致死的となることから、乳児の周囲の人がワクチンを接種することにより、乳児に感染させないことが大切である。また、意外に知られていないのが、百日咳の感染経路は飛沫感染だが、基本再生産数※は16-21と非常に高く、空気感染する麻疹とほぼ同等の強い感染力を持つ(麻疹の基本再生産数:12-18)。特に成人の感染者は症状が軽いため、本人が気付かないうちに、乳幼児の感染源となりうる。※基本再生産数集団にいるすべての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、1人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表す。つまり、数が多い方が感染力がより強いということになる百日咳は2018年1月から全数報告指定疾患となり、診断した場合は全例届出が必要となった5)。2018~2019年の届出症例数はそれぞれ年間11,190例1)、15,974例6)であった。5~15歳が全体の6割強と多く、成人の中では30~40代が最も多かった(図参照)。乳幼児期の予防接種の効果は最終接種から4~12年で低下することがわかっており、追加接種プログラムがないわが国の課題となっている。図 届け出ガイドラインの診断基準を満たした百日咳患者症例の年齢分布画像を拡大する百日咳はアジスロマイシンにて治療が可能であるが、しばしばその他ウイルス性上気道炎やマイコプラズマなどとの鑑別が困難なことから、診断されていないケースも多いことが推測される。診断するための検査方法としてLAMP法が2016年に保険収載されたため、後鼻腔(咽頭)ぬぐい液にて診療所でも検査・診断がしやすくなっている。後述する百日咳ワクチンの国内での追加接種の必要性を検討するためにも、疫学調査が重要となるため、積極的に検査・診断したい疾患といえる。3)破傷風破傷風は破傷風菌が産生する神経毒素により強直性痙攣を引き起こし、最悪の場合、呼吸筋麻痺を来たし致死的となる7)。破傷風の治療薬として抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)とペニシリンがあるが、診断早期に投与する必要があり、しばしば早期診断が難しいことから、予防することが大切である。破傷風は芽胞の状態で土壌内に潜み、外傷や土いじりなどを契機に傷口から侵入する。侵入部位が特定されていない破傷風の症例も多く、軽微な創傷部位からも感染しうる。また、破傷風菌の芽胞は土壌内に広く分布するため、接触を避けることは日常生活上ほぼ不可能である。これらのことから、ワクチン接種以外の方法で完全に破傷風感染から予防するのは難しいことがわかる。破傷風は小児期に複数回の破傷風含有(二種/三種/四種混合)ワクチンを接種していても、追加接種を行わなければ、最終接種から10年ほどで抗体価は低下する。わが国では破傷風ワクチンの追加接種プログラムがなく、任意接種となっていることから免疫を持たない成人が多数いる。そのため、破傷風感染事例の95%以上が小児期に破傷風含有ワクチンの定期接種制度が存在しなかった40歳以上の成人である。ワクチンの概要と接種スケジュール破傷風トキソイド、および二種/三種/四種混合ワクチンいずれのワクチンも安全で、ワクチン特異的な副反応はない。三種/四種混合ワクチンは、他のワクチンに比し副反応として発熱を呈することがやや多いが、2~3日の経過観察で自然に解熱する。ここでは、特に重要性の高い、破傷風トキソイドおよび三種混合ワクチンの追加接種について述べる。1)破傷風トキソイド(表1)罹患すれば効果的な治療薬がなく致死的な疾患のため、先進国であるわが国においてもすべての人が接種推奨対象者である。1967年以前に出生した人は、小児期に破傷風を含むワクチンが定期接種化されていなかった年代のため、まずは破傷風トキソイドを3回接種することにより基礎免疫を付け(0、1、6ヵ月後)、その後10年毎の追加接種(ブースト)を推奨する。1968年以降の生まれの人は、小児期に基礎免疫が終了しているため、最終接種から10年毎のブースト(追加接種)を推奨する。特に、「土」などに接触する機会の多い農作業者や工事現場の従事者、不衛生な環境に曝露しやすい被災地域での支援や災害などの際も、破傷風トキソイドの追加接種の重要性は高い。破傷風トキソイドを含むワクチンの中でも、11~12歳に定期接種とされているDTワクチンの接種率は、7~8割と定期接種ワクチンの中でも低い。破傷風の9割以上は成人発症だが、このDTワクチンを接種しなかった高校生が破傷風を発症した事例も報告されており8)、定期接種をしっかり完了させることも非常に重要である。外傷時は、傷の深さや汚染度によって、破傷風トキソイドに加え、免疫グロブリン投与の必要性を検討する9)。表1 破傷風トキソイド ワクチンの概要画像を拡大する(こどもとおとなのワクチンサイト.破傷風トキソイドの表より引用)2)百日咳含有ワクチン(三種/四種混合ワクチン)現在、小児の定期接種で使用されている百日咳含有ワクチンといえば四種混合(DPT-IPV)ワクチンであるが、2012年11月以前は三種混合(DPT)ワクチンと不活化ポリオワクチン(2012年8月までは経口ポリオワクチン)が用いられていた。現在は、三種混合ワクチンとしてトリビック(商品名)が流通しており、後述する百日咳の追加接種として、わが国で用いることができる唯一の国産ワクチンである。しかし、定期接種として使用される四種混合ワクチンとは違い、制度として接種プログラムに組み込まれていないため、三種混合ワクチンの使い所は、あまり知られていない。なお、海外にはTdap(ティーダップ)という成人用の三種混合ワクチンが広く使用されているが、わが国でも2016年2月にトリビックの添付文書が改定され、成人への接種が可能となっている。では、トリビックはどういう状況で推奨すべきだろうか。百日咳含有ワクチンは、わが国では生後3ヵ月以降にしか接種できず、複数回の接種が必要な不活化ワクチンである。そのため、免疫が付けられない新生児や乳児をケアする母親やその家族など、乳児の周りの人がワクチン接種をすることで乳児を守る“コクーン(繭)戦略”という概念が最も重要とされているワクチンの1つである。わが国では、0~1歳時に定期接種として四種混合ワクチンを4回定期接種するが、それ以降、百日咳含有ワクチンを接種する機会は、制度としては存在しない。一方、多くの諸外国では4歳以降で百日咳含有ワクチンの追加接種を行っている(表2)。その理由は、百日咳の抗体は最終接種から4~12年で低下し、再度感染しうる状態まで免疫が低下することがわかっているからである。実際にわが国でも先述の百日咳感染者の報告で、5~15歳の感染者の8割以上は、乳幼児期に4回の百日咳含有ワクチン接種していたにも関わらず、百日咳に罹患している1,6)。つまり、わが国も諸外国にならい、学童期の追加接種を行うことで、この年代の感染者を減らすことが期待できる。さらに、欧米などでは妊婦に対する百日咳含有ワクチンの接種も推奨している。実際、妊婦(妊娠後期)に対し百日咳含有ワクチンを接種することで、乳児の百日咳感染数が減少したという研究報告もある10)。乳児をケアする母親およびその同居家族は、年代に関わらず、百日咳含有ワクチンの追加接種を行うことで、乳児を百日咳から守ることが望ましい。表2 諸外国における百日咳ワクチンの接種スケジュール 接種時期と回数画像を拡大する日常診療で役立つ接種のポイント(例:ワクチンの説明方法や接種時の工夫)破傷風トキソイド軽微な傷を契機に、土壌中に存在する芽胞がいつ侵入してくるかわからないこと、また有効な治療法がないことからも、全年齢に免疫を付けておくことが推奨される。1967年以前に生まれた人は、3回接種(0、1ヵ月以降、6ヵ月以降)の基礎免疫を行い、その後は、1968年以降に生まれた人と同様、10年ごとの追加接種を推奨する。特に土などに接触する機会や外傷を負うリスクの高い人(農作業者、工事現場、被災地支援など)には積極的に推奨したい。三種混合ワクチン(トリビック)前述の通り、百日咳については追加接種がなければ3~4回の最終接種後、4~12年で抗体は低下し、百日咳に感染しうる状態となる。感染すると致命的となりうる乳児をケアする可能性のある家族(同居家族も含む)への追加接種を推奨する。また、2018~2019年の発生報告で最も感染者の多いことがわかっている学童期への追加接種も積極的に行うことが大切である。具体的には、下記3つの推奨タイミングがある(いずれも任意接種としての扱い)。(注:トリビックの添付文書に記載のある適応年齢は、11~12歳および成人である。つまり(1)は添付文書外使用となることに注意する)(1)5~6歳(年長):MR 2期を接種するタイミングに合わせて、トリビックの接種を推奨する(抗体価が最も低下する9歳11)の前に接種が可能なこと、2019年までの感染者報告では5~15歳が全体の8割を占めることから、接種タイミングとして理にかなっている)(2)11~12歳:DTワクチンの定期接種に相当する年代であり、DTワクチンの代わりにトリビック(三種混合ワクチン)の接種を推奨する。(3)成人:特にこれから妊娠予定や乳児をケアする家族、妊娠可能年齢の女性など(妊婦に対しての接種は、わが国の添付文書上、有益性投与となっている)今後の課題・展望今後、わが国でも諸外国のように、百日咳含有ワクチン(トリビック)の学童期に対する追加接種が定期接種化されることが望まれる。さらに、欧米のように、妊婦に接種推奨が可能な整備がされると、より早期乳児を百日咳から守ることに繋がる可能性がある。また、成人のキャッチアップワクチンとして、破傷風トキソイドを広く推奨できるよう、プライマリケア医および一般市民に対する啓発を続けることが重要と考える。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)こどもとおとなのワクチンサイト予防接種啓発ツール 厚生労働省百日咳ワクチン接種推奨ポスター 日本小児科学会1)全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学-2019年疫学週第1週~52週-[2020年1月8日現在](国立感染症研究所)2)発生動向調査年別報告数一覧(その1:全数把握)[2013年2月16日現在報告数](国立感染症研究所)3)破傷風 2008年末現在(IASR.2009;30;p.65-66.)4)ジフテリアとは[2020年10月27日 改訂](国立感染症研究所)5)感染症法に基づく医師届出ガイドライン(初版)百日咳 [平成30年4月25日](国立感染症研究所)6)全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学-2018年疫学週第1週~52週-[2019年1月7日現在](国立感染症研究所)7)破傷風とは[2021年1月12日 改訂](国立感染症研究所)8)2期のDTが未接種であった10代の破傷風発症事例(IASR.2018;39:p.27.)9)外傷後の破傷風予防のための破傷風トキソイドワクチンおよび抗破傷風ヒト免疫グロブリン投与と破傷風の治療(IASR.2002;23:p.4-5.)10)海外の百日せき含有ワクチンの予防接種スケジュールと百日咳対策(IASR.2017;38:p.37-38.)11)年齢/年齢群別の百日咳抗体保有状況.2018年~2018年度感染症流行予測調査より(国立感染症研究所)講師紹介

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事例020 フェリチン定量検査の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説本事例では、「D007 26 フェリチン定量検査」が、 B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)として査定となりました。査定理由には、縦覧点検とあり、連絡文には「疑いで連月のフェリチン定量の請求は保険診療上過剰となります。御留意下さい」と記載がありました。審査機関では、コンピュータによる縦覧点検にて連月実施にチェックをかけているようです。確認したところ、前月にも来院歴があり、フェリチン定量検査が実施されていました。フェリチン定量検査の留意事項には算定制限の記述は見当たりません。医師に尋ねると「多くの場合は、診断と治療中止の判断時に必須であり、経過が安定している場合にはあまり必要がない」と、連絡文を示唆される内容を話されました。とはいえ、必要があって行われた検査です。算定要件に違反していない限り、自主査定することはありません。医師には、疑い病名にてフェリチン定量を連月に実施した場合には、査定対象となることを伝えました。また、レセプトチェックシステムによるアラートも活用して、医学的に必要性を認めて実施された場合には、あらかじめに検査値を含めて医学的必要性を連絡いただき、レセプトにコメントとして反映をさせています。ただし、審査機関では総合的に判断されるため、査定となることも多くあるので注意が必要です。

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新型コロナワクチンで再注目、必須抗菌薬の国内生産体制をどう維持するか

 2019年、抗菌薬のセファゾリンが原薬の異物混入等の理由から一時製造中止となり、供給不足が医療現場に大きな混乱をもたらした。これにより、原薬供給が海外の特定国とメーカーに集中している現状では、いったん不測の事態が生じれば医療現場に必須の薬剤が供給不能になる、という問題点が明らかになった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においても、流行初期のマスク不足やワクチン確保の局面において、医薬品の国内生産の重要性が改めて注目されている。 厚生労働省はセファゾリン供給不足の事態を受け、「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」を立ち上げ、1)供給不安の予防、2)供給不安への早期対応、3)実際に供給不安に陥ったときの対応という側面から、対応策を検討してきた。 2021年1月、AMRアライアンス・ジャパン「抗菌薬の安定供給に向けたフォーラム」 が行われ、関係者会議の座長を務める清田 浩氏が「抗菌薬の安定供給について」と題した発表を行った。冒頭に清田氏は「公衆衛生は国防である」と訴え、国として一定のコストを割いたうえで取り組んでいくべき問題だと強調した。そして、2020年のあいだに関係者会議が議論し、まとめた活動として、安定確保にとくに配慮を要する「キードラッグ」の選定と国内生産への援助・備蓄についての提言、キードラッグの薬価維持、不採算抗菌薬の薬価引き上げ要望を紹介した。 続いて、厚生労働省の林 俊宏氏が関係者会議の提言を受けた政府側の具体的な取り組み予定を紹介。1)供給不安の予防として、製造工程の把握、製造の複数ソース化、薬価上の処理(不採算品目の薬価引き上げと基礎的医薬品の薬価維持)、2)供給不安への早期対応として、薬品安定供給に関するチェックリスト作成とメーカー各社による自己評価、供給不安事案の報告態勢の整備、3)供給不安に陥ったときの対応として、増産・出荷調整、迅速な承認審査、安定確保スキームの整備を行っていくことを紹介した。

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オシメルチニブの肺がんアジュバント、化学療法歴の有無にかかわらずDFS延長/アストラゼネカ

 アストラゼネカ社は、2021年2月8日、第III相ADAURA試験の探索的解析の良好な結果から、オシメルチニブ、(商品名:タグリッソ)が、EGFR遺伝子変異陽性(EGFRm)非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、術後補助化学療法歴の有無、また疾患のステージにかかわらず、無病生存期間(DFS)を延長することが示されたと発表した。これは、昨年発表された術後補助療法におけるオシメルチニブの主要評価項目であるDFSの顕著な延長という結果をさらに支持するものとしている。同試験の結果は、国際肺学会(IASLC)が主催する2020年世界肺学会(WCLC)(2021年1月開催)で発表された。 全症例を対象としたこの探索的解析において、オシメルチニブによる術後補助療法は、術後補助化学療法歴のある患者では再発または死亡リスクを84%減少させ(HR:0.16、95%CI:0.10〜0.26)、術後補助化学療法歴のない患者では77%減少させた(HR:0.23、95%CI:0.13〜0.40)。なおDFSの延長の有用性は各ステージで同程度であった。 さらに、ADAURA試験で実施された患者報告アウトカムに関する探索的事後解析では、オシメルチニブの投与を受けた患者の生活の質は維持されており、オシメルチニブ投与群とプラセボ投与群とでは身体的または精神的健康度に関して臨床的に意義のある差はなかったことが示された。 オシメルチニブの安全性と忍容性はこれまでの試験と一致しており、治験担当医師評価によるGrade3以上の有害事象発生率は、オシメルチニブ投与群で20%、プラセボ投与群で13%であった。

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ニボルマブの尿路上皮がんアジュバント、DFS改善(CheckMate-274)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年2月8日、第III相CheckMate-274試験の結果を発表。本試験において、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、切除後の高リスク筋層浸潤性尿路上皮がんの全無作為化患者およびPD-L1 1%以上の患者のサブグループを対象に、術後補助療法として、有意に無病生存期間(DFS)を改善し、本試験の2つの主要評価項目の両方を達成した。 CheckMate-274試験は、筋層浸潤性尿路上皮がんの術後補助段階において免疫療法薬を評価した初めての肯定的な結果を示した第III相試験。全無作為化患者における無病生存期間中央値は、プラセボ群の10.9カ月に対し、ニボルマブ群で21.0カ月で、再発リスクを30%低減した(ハザード比[HR]0.70、98.31% 信頼区間[CI]:0.54〜0.89、p<0.001)。PD-L1 1%以上の患者におけるDFS中央値はニボルマブ群未達、プラセボ群10.8カ月であった(HR:0.53、98.87% CI:0.34〜0.84、p<0.001)。これらのデータは、バーチャルで開催される米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウムにおいて、発表された。 全無作為化患者における非尿路上皮無再発生存期間(NUTRFS)中央値は、ニボルマブ群で24.6カ月、プラセボ群で13.7カ月であった。(HR 0.72、95% CI:0.58 - 0.89)。PD-L1 1%以上の患者におけるNUTRFS中央値は、ニボルマブ群で未達、プラセボ群で10.9カ月であった(HR 0.54、95% CI:0.38 - 0.77)。 ニボルマブの安全性プロファイルは、これまでに固形がんの試験で報告されたものと一貫していた。治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、ニボルマブ群で77.5%、プラセボ群で55.5%であり、Grade3~4のTRAEの発現率は、それぞれ17.9%および7.2%であった。

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日本人高齢者における新たな認知症診断予測因子~コホート研究

 高齢者の認知症を予防することは、公衆衛生上の重要な課題である。認知症の予測因子を早期に発見し、是正することは重要であるが、定期的に収集された医療データに基づく認知症の予測因子は、すべて明らかになっているわけではない。京都大学の中奥 由里子氏らは、定期的に収集したレセプトデータを用いて、認知症診断の潜在的な予測因子を調査した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2021年1月13日号の報告。 新潟県の75歳以上の高齢者を対象に、2012年(ベースライン)と2016年(フォローアップ)のレセプトデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。年齢、性別、診断、処方箋などのベースライン特性に関するデータを収集し、その後の新規認知症診断の潜在的な予測因子との関係を調査するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に、認知症と診断されていなかった高齢者22万6,738人をフォローアップした。・認知症と診断された高齢者は、2万6,092人であった。・交絡因子で調整した後、その後の認知症診断と有意な関連が認められた因子は、以下のとおりであった。 ●脳血管疾患(オッズ比[OR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.11~1.18) ●うつ病(OR:1.38、95%CI:1.31~1.44) ●抗精神病薬の使用(OR:1.40、95%CI:1.31~1.49) ●催眠鎮静薬の使用(OR:1.17、95%CI:1.11~1.24) 著者らは「定期的に収集したレセプトデータを分析したところ、うつ病、抗精神病薬の使用、催眠鎮静薬の使用、脳血管疾患などの精神神経症状が、新規認知症診断の予測因子であることが明らかとなった」としている。

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アジスロマイシン、COVID-19入院患者への効果は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、アジスロマイシンによる治療は生存期間および臨床転帰(侵襲的人工呼吸器装着または死亡)を改善しなかったことが、無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果、明らかとなった。英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏ら「RECOVERY試験」共同研究グループが報告した。アジスロマイシンは免疫調節作用を有していることから、COVID-19に対する治療として提案されてきたが、これまでの無作為化試験では、COVID-19の治療におけるマクロライド系抗菌薬の臨床的有益性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「COVID-19入院患者に対するアジスロマイシンの使用は、明らかに抗菌薬の適応である患者に制限されるべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年2月2日号掲載の報告。通常治療単独群とアジスロマイシン併用群で28日死亡率などを比較 RECOVERY(Randomised Evaluation of COVID-19 Therapy)試験は、英国の病院176施設で進行中の無作為化非盲検対照アダプティブプラットフォーム比較試験である。研究グループは、適格基準を満たし同意が得られたCOVID-19入院患者を、通常治療群または通常治療+アジスロマイシン(500mg 1日1回経口/静脈投与)群(以下、アジスロマイシン群)のいずれかに、ウェブシステムを用いて2対1の割合で無作為に割り付けた。投与は、10日間または退院まで(あるいはRECOVERY試験の他の治療群に割り付けられるまで)行われた。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無作為化から28日間の全死因死亡率であった。なお、患者と各病院の医療スタッフは治療の割り付けに関して盲検化されていないが、本試験に関わる他のすべての関係者は、臨床転帰に関するデータについて盲検化された。28日死亡率、生存退院までの期間、28日以内の生存退院率に有意差なし 2020年4月7日~11月27日に、RECOVERY試験の登録患者1万6,442例中、9,433例(57%)が適格基準を満たし、7,763例がアジスロマイシン群および通常治療群に無作為に割り付けられた(それぞれ2,582例および5,181例)。患者の平均(±SD)年齢は65.3±15.7歳で、約3分の1(2,944例、38%)が女性であった。 全体で無作為化から28日以内に、アジスロマイシン群で561例(22%)、通常治療群で1,162例(22%)が死亡した(率比:0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.07、p=0.50)。生存退院までの期間中央値は、アジスロマイシン群10日(IQR:5~>28)、通常治療群11日(IQR:5~>28)で、28日以内の生存退院率はアジスロマイシン群69%(1,788/2,582例)、通常治療群68%(3,525/5,181例)で(率比:1.04、95%CI:0.98~1.10、p=0.19)、いずれも両群間で有意差は確認されなかった。 ベースラインで侵襲的人工呼吸管理を受けていない患者で、侵襲的人工呼吸管理または死亡に至った割合も有意差はなかった(リスク比:0.95、95%CI:0.87~1.03、p=0.24)。 なお、著者は、本無作為化試験は非盲検試験であり、ウイルス量や炎症の程度、非マクロライド系抗菌薬の使用などに関する情報、ならびに放射線学的または生理学的な転帰に関する情報が不明であることを研究の限界として挙げている。

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中高年の心血管死亡率、景気動向との関連は?/JAMA

 米国の中高年層において、郡レベルの経済的繁栄の相対的増加と、心血管死亡率のわずかだが相対的減少とは有意に関連していることが示された。米国・ペンシルベニア大学のSameed Ahmed M. Khatana氏らが、2010~17年の死亡率に関する後ろ向き研究で明らかにした。米国における非高齢成人の心血管死亡率は、過去10年間でその低下が停滞しており、一部の集団では増加している。この背景には所得格差の拡大があると考えられているが、心血管死亡率と景気動向が関連するかどうかはこれまで不明であった。JAMA誌2021年2月2日号掲載の報告。米国約3,000郡の経済的繁栄と心血管死亡率の変化との関連を解析 研究グループは、米国の3,123郡における経済的繁栄の7つの指標の変化と、40~64歳の居住者における郡レベルの心血管死亡率との関連を、後ろ向きに解析した。 経済的繁栄の変化は、米国国勢調査局のAmerican Community Survey 5-Year EstimateおよびBusiness Patternsデータセットから抽出した7つの経済活動の指標から成るDistressed Communities Indexに基づき、ベースライン期間を2007~11年、追跡調査期間を2012~16年として2期間の絶対変化を算出。各指標の絶対変化のスケール(0~100)で郡をランク付けし、これらランクの平均を算出して各郡の経済的繁栄の変化を決定した。平均ランクが高いほど、繁栄度の増大が大きい、または繁栄度の減少が小さいことを示す(範囲:5~92、平均±SD:50±14)。 主要評価項目は、年齢調整心血管死亡率の平均年間変化率(APC)で、一般化線形混合効果モデルを用いて経済的繁栄の変化とAPCの変化との関連を推定した。経済的繁栄の変化が最低三分位の郡は、心血管死亡率に変化なし 対象とした郡における2010年の40~64歳の居住者は1億266万852人(女性51%)で、このうち、2010~17年に97万9,228人の心血管死亡が報告されていた。 経済的繁栄の変化が最低三分位の郡では、2010~17年の年齢調整心血管死亡率に有意な変化は確認されなかった(10万人当たりの死亡[平均±SD]:114.1±47.9~116.1±52.7、APC:0.2%[95%信頼区間[CI]:-0.3~0.7])。一方、経済的繁栄の変化が中間三分位(10万人当たりの死亡:104.7±38.8~101.9±41.5、APC:-0.4%[95%CI:-0.8~-0.1])および最高三分位(10万人当たりの死亡:100.0±37.9~95.1±39.1、APC:-0.5%[95%CI:-0.9~-0.1])の郡では死亡が有意に減少した。 ベースラインの経済的繁栄と人口統計学的および医療関連変数を調整すると、経済的繁栄の変化の平均ランク10ポイント上昇は、40~64歳の年間心血管死亡率の0.4%(95%CI:0.2~0.6)低下と有意に関連していた。

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新型コロナ予防、マスク二重着用の有効性は?/CDC

 不織布マスク(サージカルマスク)の上から布マスクを着用することで密着度が高まり、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の予防により効果的である可能性が実験で示された。米国疾病予防管理センター(CDC)が2021年2月10日に発表した。 不織布マスクや布マスクはN95マスクと比較すると密着性が低く、マスクの端、とくに左右両端から空気が漏れる可能性 がある。そこでCDCではシミュレーション実験により、不織布マスクの効果を改善するための2つの方法を評価した。1つは上から布マスクを重ねることで、もう1つはひもに結び目、タックを作る(余分な素材を顔の近くに折込んで平らにする)ことによる密着度の向上である。咳をした場合の状況をシミュレーションし、発生者と曝露者の各組合せが評価された。 シミュレーションには、エラストマー製ヘッドフォーム(発生者と曝露者)が使用され、発生者側のマウスピースから発生されたエアロゾル(<10μm [SARS-CoV-2の感染に最も重要であると考えられるサイズ])に対する効果が評価された。各手法について、15分間×3回の実験が行われた。 結び目等のない不織布マスクだけを着用した場合、シミュレートされた咳からの粒子の42.0%を遮断し(標準偏差[SD]:6.70)、布製マスクだけでは44.3%を遮断した(SD:14.0)のに対し、不織布マスクの上に布製マスクを重ねた場合(二重マスク)は92.5%を遮断した(SD:1.9)。 また、発生者が二重マスクをした場合、不織布マスクに結び目等を作り密着度を高めた場合に、マスクをしていない曝露者の累積曝露量は両者がマスクをしていない場合と比較してそれぞれ82.2%(SD:0.16)および62.9%(SD:0.08)削減された。 逆に発生者がマスクをしておらず、曝露者が二重マスクをした場合、不織布マスクに結び目等を作り密着度を高めた場合には、曝露者の累積曝露量はそれぞれ83.0%(SD:0.15)および64.5%(SD:0.03)削減された。 発生者と曝露者の両者が、二重マスクをした場合、不織布マスクに結び目等を作りマスクの密着度を高めた場合には、曝露者の累積曝露量はそれぞれ96.4%(SD:0.02)および95.9%(SD:0.02)削減された。 CDCでは今回の結果について、実験室レベルの検討であること等の限界に触れたうえで、マスク自体の性能にかかわらず、その密着性を高めることで効率が上昇する可能性があるとしている。布の上に布、不織布マスクの上に不織布マスク、または布の上に不織布マスクなど、マスクの他の組み合わせについては検討されていないことについても指摘している。 また、小さな子どもや髭のある男性などには一般化できない可能性もあり、一部の着用者では呼吸を妨げたり、周辺視野を妨害したりする可能性があるため、注意が必要であるとしている。

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COVID-19パンデミック下の肺がん診療ステートメント:日本肺学会【肺がんインタビュー】 第58回

第58回 COVID-19パンデミック下の肺がん診療ステートメント:日本肺学会出演:千葉大学医学部付属病院 腫瘍内科 滝口 裕一氏日本肺学会は肺がん診療を担う医療者に向けてCOVID-19パンデミックにおける肺がんの診療指針を示す「COVID-19パンデミックにおける肺診療:Expert Opinion」を作成。作成委員長である滝口裕一氏に同ステートメントの目的、内容、活用方法について聞いた。参考日本肺学会「COVID-19パンデミックにおける肺診療:Expert Opinion」

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映える学会パワポの作り方! 【Dr.倉原の“俺の本棚”】第39回

【第39回】映える学会パワポの作り方! 「ビジーなスライドで申し訳ありません」と断りを入れながら、学会会場の後ろの観衆にまったく読めないほどビジーなスライドを提示しているレジデントの皆さんに朗報! この本を読めば、あらら、あなたのパワーポイントスライドがスッキリ!『レジデントのためのスライドのポイント―伝えるためのプレゼンスキル』梶原 浩太郎/著. 東京図書. 2020年学会などのパワポのスライドを作る際、令和の時代、さすがに明朝体で作り上げるレジデントはいないと思いますが、文字の大きさや背景の色など、最低限必要な礼儀というものがありまして。この本は、そういうパワポのノウハウに加え、話し方などのテクニックまで、レジデントが一度は当たるであろう硬い壁が氷解する本に仕上がっています。「自分のパソコンではちゃんと表示されていたのに、本番で文字がなんかズレてるぅ!!」現象、学会発表あるあるですよね。フォントにこだわりすぎて、自分のパソコンでしか表示できない有料フォントにしたせいで、本番では細~い明朝体で表示される醜態。ああッ!思い出したくない!(なにがあった)スライドを作るのが上手な人は大概、発表も洗練されていて上手です。私は学会発表のとき、基本的にポインターを使わない派なんですが、使うにしても、猫が飛びつくほど動かさない。大事です。一点集中、“全集中”のポインターですな! 私は臨床医を15年もやってきて、今では若手医師に「へいへいkansasiiのiが1つ少ないYO!」なんて茶々を入れるくらいの存在になってしまいましたが、今度どこかから講演を依頼されたら、この本を読み込んで、素敵でナイスなスライドを作ってやろうと思います。聞くところによると、某先生はパワポすら作らずに1時間くらい話せるらしいです。そこまで行ってしまうと、もはや “無刀”の領域ですので、凡人にはマネできないですが。『レジデントのためのスライドのポイント―伝えるためのプレゼンスキル』梶原 浩太郎 /著出版社名東京図書定価本体2,800円+税サイズA5判刊行年2020年

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ASCO- GI 2021 会員レポート

レポーター紹介2021年1月15日~17日にかけてASCO-GI2021が行われた。例年、サンフランシスコで行われているシンポジウムであったが、今年は新型コロナウイルスの影響でvirtual開催となった。総論的にはPractice changingな発表はなかったものの、ASCO2020やESMO2020で発表された重要データのfollow upがなされ、evidenceがさらに補強されたように感じた。食道がん2020年は食道がんにとってpractice changingなデータが発表された年であった。1つはStage II/IIIに対する術前治療としてのCisplatin+5-FU (CF)+radiation、その後のadjuvantとしてのnivolumabの有効性を証明したCheckMate-577試験である。ASCO-GI 2021 においては、nivolumabによるadjuvantがQoLの低下を招かないことが示された(abstract#167)。Stage II/III食道がんに対する術前治療として欧米ではCF+radiationによる術前化学放射線治療が標準的であるのに対し、本邦においてはCFが標準治療である。しかし奏効率は40%と術前補助化学療法としては物足りない数字であり、すでに先鋭的な施設ではdocetaxelを加えた3剤療法であるDCFを、いわばcommunity standardとして用いている現状がある。Stage II/III食道がんに対する術前治療として果たしてDCFはCFよりも優れた治療なのか、またCF+radiationはどうなのか?という食道がんを診ている医療関係者が持つclinical questionに結論を出すべく行われてきたのが「JCOG 1109(NExT)試験」である。主要評価項目の解析は2023年に予定されているが、今回のASCO-GIでは安全性部分だけが先んじて報告された(abstract#162)。2012年12月~2018年7月に、601例が無作為化された(CF/DCF/CF-RT;199/202/200)。対象患者589例のうち、546例が手術を受けた(185/183/178)。CF-RTを受けた患者のリンパ節摘出数の中央値は、CFを受けた患者よりも有意に低く(49 vs.58、 p<0.0001)、DCFを受けた患者におけるgrade2の周術期合併症の発生率は、CFを受けた患者よりも低いという結果であった(44.8% vs.56.2%、p=0.036)。DCFおよびCF-RTを受けた患者の再手術および院内死亡の発生率はCFを受けた患者と差がなかったものの、CF-RTを受けた患者におけるグレード2の乳糜胸の発生率は、CFを受けた患者よりも高いという結果であった(5.1% vs.1.1%、p=0.032)。上述のようにstage II/III食道がんに対する術前治療として、本邦でstandardと言い切れないCF-RTを行ってnivolumabを投与するCheckMate-577をただちに日常診療に外挿すべきか、はたまたDCFを使用して良いものか、大変に混沌とした状況であり、JCOG1109試験で決着がつくことを期待したい。昨年発表されたもう一つの最重要な試験として、切除不能進行再発食道がんの1次治療としてFPに対するpembrolizumabの上乗せ効果を証明したKEYNOTE-590試験がある。今回のASCO-GIでCF+pembrolizumab群がCF群と比較して差がなかったというQoLデータが報告された(abstract#168)が、前述のabstract#167同様にpembrolizumabによる治療効果や毒性はQoLの違いには反映されなかったという結果であった。本邦における1日も早い1st lineでの承認が待たれる。現在2次治療として使用可能なnivolumabについてはATTRACTION-03試験(abstract#204)や前相試験であるATTRACTION-01試験(abstract#207)のそれぞれ3年、5年のfollow up dataが報告され、過去に報告された胃がん同様に奏効例で長期生存が得られることが示された。またATTRACTION-01試験における5年の無増悪生存割合が6.8%という驚くべき数字が報告され、いわゆるtail plateauが実証された形となった。このラインに対する注目される新たな治療開発としては2次治療におけるcamrelizumab(抗PD-1抗体)/apatinib(VEGFR-2を含むmulti kinase inhibitor)phase II試験を取り上げたい(abstract#215)。1次治療に不応となった食道扁平上皮がん46例に対して主要評価項目をORRとして治験治療が行われた。評価対象となった30例のORRは43.3%、median PFSは 4.07ヵ月(95%CI、3.75-NA)、3、6、9ヵ月時点での生存割合は82.2%、67.6%、61.5%であった。ICI+αが現在のトレンドであるが、1st lineからICIが使用可能な状況となる今後の開発の行方に注目が集まる。胃がん今年のASCO-GIの目玉の一つが、FGFR2bに対する抗体であるbemarituzumabの有効性を探索したphaseII試験(FIGHT)である(abstract#160)。学会前にすでにpositive resultとのプレスリリースがなされておりその結果に注目が集まっていた。FIGHT試験では、FGFR2b陽性の切除不能な局所進行性転移性胃もしくは胃食道接合部がん155例を、bemarituzumab+mFOLFOX6とplacebo+mFOLFOX6に無作為に割り付けた。主要評価項目はPFSであった。結果、bemarituzumab群はplacebo群と比較して、PFSを有意に延長することが示された(9.5ヵ月[ 95%CI:7.3~12.9] vs.7.4ヵ月[95% CI:5.8~8.4]、HR:0.68[95% CI:0.44~1.04、p=0.0727])。副次的評価項目であるORRは47% vs.37%であった。またOSについてはNR (95% CI:13.8~NR)vs. 12.9ヵ月(95% CI:9.1~15.0)であり、 p=0.0268、HR0.58 (95%CI:0.35-0.95)とbemarituzumab群で統計学的に有意に良好であったことは、過去の胃がんのphaseII試験を振り返ってみても特筆すべきである。またFGFR2bの免疫染色での強さ(IHC intensity)とbemarituzumabの治療効果が相関することも示された。注意すべき有害事象としては角膜障害と胃炎が報告された。以上のように期待の持てる結果であるが、ICIが1st lineの標準治療となる今後の開発をどうするか。さらには胃がんにおいてphaseIIで有望であった薬剤の多くがphaseIIIで成功できなかった過去がある。FGFR2bによる患者選択のassayとしてIHCが良さそうに見える結果ではあるが個人的には同じくligandを有する受容体型チロシンキナーゼであるMETに対する開発を思い出してしまう。今後の動向に注目したい。胃がんにとっても2020年は重要なデータ報告が相次いだ1年であった。特に1st lineからのICI使用を決定づけるCheckMate-648試験の結果は重要であり、胃がんに対するICI治療開発は多剤との併用にて加熱していくであろう。こういう状況下、nivolumab単剤での大規模なバイオマーカー探索を行ったJACCRO GC-08(DELIVER)試験の価値は日に日に大きくなっている。今回、本試験の目玉であるmicrobiomeに関するデータの一部が公表された(abstract#161)。training cohortおよびvalidation cohortにでは、それぞれ200例中188例、301例中257例で大規模なメタゲノム解析および臨床データが利用可能であった。nivolumab治療を行いnon-PDであった症例ではPDであった症例と比較して、より多様なmicrobiomeが観察された。今回の解析ではKEGG pathwayにて上皮細胞の細菌浸潤がnivolumabの臨床転帰(初回評価でのPD)と関連していることが示され(training cohort[p=0.057]、validation cohort[p=0.014])、探索的解析により、両コホートにおいて、OdoribacterおよびVeillonellaがNivoに対する腫瘍反応と関連していることが示された。本試験では血液検体の採取も行われており、胃がんに対するnivolumabのバイオマーカーが今後の解析でより詳細に解明されることが期待される。ICIの開発は化学療法との併用から、分子標的薬や他のICI製剤などへの併用へと興味が移っている。LEAP005試験はpembrolizumabとmulti-tyrosine kinase inhibitorであるlenvatinibとの併用を複数のがん種コホートで検討したphase II試験である。胃がんコホートでは少なくとも2種類の前治療歴を有する症例が適格であった。ORRを主要評価項目としてlenvatinib 20mg 1日1回投与とpembrolizumab 200mg Q3W投与を、最大35サイクル(約2年間)投与するスケジュールで行われた。31例が登録され1例のCRを含む奏効例は3例でありORRは10%(95%CI:2~26)でDCRは48%(95%CI:30~67)であった。PFS中央値は2.5ヵ月(95%CI:1.8~4.2)。OS中央値は5.9ヵ月(95%CI:2.6~8.7)であった。28例(90%)に治療関連AEが発生し、そのうち13例(42%)にグレード3~5のAEが発生した。このpembrolizumab-lenvatinibの併用はLEAP試験として胃がんを含めさまざまながん種で展開されていく予定である。今年のASCO-GI2021で最も個人的に物議を醸しているのがstage III胃がんに対する術後補助化学療法としてのdocetaxel+S-1(DS) vs.S-1を検証したJACCRO-GC07試験のupdate報告である(abstract#159)。本試験は中間解析にてdocetaxel+S-1がS-1に対する優越性が証明できたため有効中止となっていた(Yoshida K et al. J Clin Oncol. 2019;37:1296-1304.)。その結果、DSはstage III胃がんに対する標準治療と位置付けられている。今回は試験計画通り最終登録後3年経過した時点でのRFS(relapse free survival)の解析を行ったものである。Stage III全体での解析では3年RFSにおいてDS群の67.7%がS-1群の57.4%を有意に上回った(HR:0.715、95%CI:0.587~0.871、p=0.0008)。3y年OSにおいてもDS群が77.7%、S-1群が71.2%(HR:0.742、95%CI:0.596~0.925、p=0.0076)であった。興味深いのはここからである。Stage IIIA, IIIB, IIICの3年RFSでサブグループ解析を行ったところ、Stage IIIAおよびIIICは全体集団を反映し有意にDSが勝る結果であり無再発生存曲線も一貫して開いていたが、Stage IIIBではDS群とS-1群では3年時点のRFSでこそわずかにDSが高く見えるが(66.14% vs. 61.61%)、見た目の生存曲線がほぼ重なるという現象がみられ(HR:0.881、95%CI:0.629~1.234、p=0.46)、さらにOSでは逆転したかのように見える (3年RFS:73.09% vs.77.23%、HR:0.988、95%CI:0.68~1.434、p=0.95)。サブグループ解析であり、これがDSの優越性を否定するものではないが、現時点でこの現象に対する合理的な説明はなされておらず、さらなる研究が必要である。大腸がん抗VEGF抗体や抗EGFR抗体の登場により、飛躍的に生存期間が延長した大腸がんであるが、これら薬剤の登場から10年が経過し、大きく治療体系が変わるほどの治療法の登場はないものの後方ラインの充実によって少しずつ生存期間を伸ばしてきた。こうした中、2020年大腸がんで発表されたpractice changingなデータといえばKEYNOTE-177であろう(Andre T, et al. N Engl J Med. 2020;383:2207-2218.)。未治療のMSI-H大腸がんに対するpembrolizumabが標準的な化学療法よりも有意にPFSを延長しQoLを維持することが報告され、本邦でも承認を待っている状況である。今年のASCOでは追加解析としてPFS2(無作為化から次の治療ラインでの進行または死因のいずれかに該当するまでの時間)のデータが報告された(abstract#6)。32.4ヵ月(24.0~48.3ヵ月)の追跡期間にてPFS2はpembrolizumabのほうが長い傾向にあることが示された(中央値未到達 vs.23.5ヵ月[HR 0.63;95%CI:0.45~0.88])。本試験は化学療法群のIIT症例のうち59%が後治療としてICIを受けている(crossover)が、ICIを1st lineで使用することの意義が改めて示された。MSI-Hに対するICI治療として注目されるのが、nivolumabと抗CTLA-4抗体ipilimumabの併用療法である。非ランダム化マルチコホートphaseII試験であるCheckMate142の1st line cohortにおいて、nivolumab(3mg/kg)Q2W+low dose ipilimumab(1mg/kg)Q6Wというスケジュールでの高い治療効果(ORR 69%、24ヵ月PFS 74%、24ヵ月OS 79%)が報告されてきた。今回そのupdateとしてさまざまなサブグループでの治療成績が報告された(abstract#58)。KEYNOTE-177試験のサブグループ解析においてpembrolizumabはKRAS mutation、PS-1を苦手とする結果であったが、nivolumab+low dose ipilimumabではそのような傾向は見られなかった。どういった対象で最もこの併用療法のbenefitがあるのかが明らかになれば、今後のICI単剤もしくは併用の使い分けにおいて重要である。胃がんの項でも触れたLEAP005試験の大腸がんコホートのデータも報告された(abstract#94)。2次治療に不応となったMSS大腸がん32例がpembrolizumab-lenvatinibによる治療を受けた(年齢中央値56歳[範囲36~77歳]、男性81%、3L 91%)。初回投与からデータカットオフ(2020年4月10日)までの追跡中央値は10.6ヵ月(範囲5.9~13.1)。主要評価項目であるORRは22%(95%CI:9~40)、DCRは47%(95%CI:29~65)であった。中央値で見るとPFS、OSは2.3ヵ月(95%CI:2.0~5.2)、7.5ヵ月(95%CI:3.9~NR)であったがDuration of responseは中央値未到達であり、いったん奏効すればその効果は長期持続する傾向がうかがえた。これまであまり有望なICI治療がなかったMSS大腸がんであるが、すでにICIが承認されているLEAP005胃がんコホートと比較しても期待の持てるデータに思えた。以上、数ある今年の発表の中から、小生の独断と偏見で選んだ注目演題をレポートした。2020年ASCOやESMOでも感じたが、virtual meetingは日本にいながらにしてon timeで情報が得られるメリットがある一方で、日常診療と並行して参加しなければならないというデメリットがある。こうしたvirtual meetingがnew normalなのかもしれないが、旧人類的な小生は従来のように海外に長期出張して参加するという、日常とは空間的、時間的に隔離された条件で新しい情報に没頭するという環境を懐かしく思うし、そもそも学会とはそういうものであるべきだと考えている。ワクチン摂取によって集団免疫が獲得され、コロナが収束し、皆さんとrealにお会いして自由にdiscussionできるようになる日が1日でも早く来ることを願ってやまない。それまで元気でいましょうね!

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第44回 新型コロナ治療薬アビガンの承認に立ちはだかる日本特有のバイアス

新型コロナウイルス感染症に対する最初のワクチン承認は2月12日に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(薬食審)医薬品第二部会で審議されることが決まり、ここでの承認は確実とみられている。ところが同じ厚労省薬食審医薬品第二部会は昨年12月21日の審議で富士フイルム富山化学が有する抗インフルエンザ薬ファビピラビル(商品名:アビガン)の新型コロナに対する適応拡大について承認を見送った。実はこの一件、今でもネットでは話題となっており、一部には「富士フイルム富山化学が厚労省の天下りを受け入れないから、嫌がらせをされた」などという見当違いな陰謀論まで展開されている。また、そこまでひどくはないものの、中には医療従事者が必ずしも科学的とは言えない見地から、今回の承認先送りを批判しているケースも見受けられる。承認先送りにはなんの矛盾もないそもそもアビガンの適応拡大に関する承認先送りに関しては、厚労省から記者向けに「薬食審で単盲検試験という設定が結果に与えた影響について議論され、現時点で得られたデータから有効性を明確に判断することは困難との結論になった」旨が説明されている。加えて承認不可ではなく、富士フイルム側が中国、ロシア以外での製造販売ライセンスを供与しているインドの製薬大手ドクター・レディーズ・ラボラトリーズがアメリカやクウェートで実施しているプラセボ対照の二重盲検試験の結果を待って判断する方針を示している。ただ、この直後に富士フイルム側が単盲検試験という設定について、一部の報道機関の取材に「審査機関に提示して合意を得たもの」とコメントしたことが、「お役所の手続きに従ったのになぜ?」というあらぬ憶測を呼んだとみられる。ちなみにここで言う審査機関とは、製薬企業が新薬の製造承認を申請した際に提出したデータの1次的審査をする厚労省所管の独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」のことである。PMDAは製薬企業が新薬候補の動物実験やヒトでの臨床試験を行う際の法令への適合や科学的妥当性などを助言する事前相談業務も行っているのは周知のこと。今回のような緊急性の高い医薬品では、製薬企業はほぼ確実にPMDAに事前相談するはずであり、富士フイルム側の「合意を得たもの」というコメントも事前相談でのことを指すと思われる。ただ、これまで分かっている断片的な情報から判断したとしても、事前相談でPMDAが単盲検試験での臨床試験実施に同意していたことと、今回の承認先送りは何ら矛盾しない。まず、事前相談に当たって富士フイルム側は国内外も含めた臨床試験計画の全貌、つまり国内で単盲検試験、アメリカ、クウェートで二重盲検試験を実施することはPMDAに説明していたはずである。そう考えると、国内の単盲検試験はあくまで海外で二重盲検試験を行うという「保険」がついてのPMDAの「同意」であったことは想像に難くない。そもそも多くの医療従事者がご存じのように、歴史的に日本は新薬候補の臨床試験環境が良好とは言えない。たとえば、アメリカは医療保険が民間保険中心で一部には無保険者もいるため、臨床試験参加で治療機会を得ようとする人もいる。この結果、臨床試験実施の最大の難関である患者確保が従来から比較的容易である。しかし、国民皆保険制度の中で、有病者は安価に最善の治療を行われるのが当たり前の日本では、従来から実質無治療のプラセボ投与の可能性がある二重盲検試験は容易に実行できなかったのが実状だ。そして今回の新型コロナは致死率2%とはいえ死ぬ感染症。昨年来、タレントの志村 けんさんや岡江 久美子さんがこの感染症で命を落としたニュースに多くの人が接している。臨床試験環境が良くないベースの上に、死ぬかもしれない感染症という明確なイメージが流布されている中で、無治療に当たってしまうかもしれないプラセボ対照の二重盲検試験では感染者は参加をかなり尻込みしてしまうはずである。一方で中等症から数時間で一気に重症化することがある新型コロナの特性を考えると、二重盲検試験では医師もが試験参加に躊躇する可能性もある。これは臨床試験参加中の患者で急速な重症化が起きた場合、医師は最短で最適な対処法を模索しなければならず、急変する患者を目の前に関係各方面に連絡を取り、対象患者の試験脱落とキーブレイクを要請する手間暇が必要になるからだ。さらに生活習慣病などと違って、いつどこで患者が発生するかわからない感染症では、臨床試験の実施そのもののハードルがもともと高い。さらに世界的に見ると感染者が少ないという日本の現状は公衆衛生上好ましいことだが、この感染症に対する臨床試験環境としては好ましくないという皮肉な現実もある。いずれにせよ緊急性も踏まえ、日本で円滑な臨床試験を実施するためには単盲検試験という設定は致し方なかったと考えるのが順当だ。こうしたことなどを考えると、富士フイルム富山化学もPMDAも日本国内では単盲検試験という、とりあえず走り出しやすいスキームで先行し、そこで極めて良好な結果が得られた場合はその段階で、そうでなかった場合は二重盲検試験の結果を待って薬食審が適切に判断してくれるだろうという腹積もりがあったと思われる。臨床試験での気になるバイアスさてそこで行われた臨床試験だが、新型コロナウイルスのPCR検査で陽性となり、重篤ではないが胸部画像での肺病変(いわゆる肺炎)や37.5℃以上の発熱がある20~74歳までの入院患者156人が対象となった。患者全員に標準的な肺炎治療を行いながら2群に分け、一方にアビガン、もう一方にプラセボをそれぞれ追加投与した。主要評価項目は「症状(体温、酸素飽和度、胸部画像所見)の軽快かつPCR検査で陰性化するまでの期間」、副次評価項目は「有害事象」と「7段階スケールによる患者状態推移」である。主要評価項目はより具体的には▽体温の改善(37.4℃以下)▽酸素飽和度の改善(96%以上)▽胸部画像所見が最悪の状態から改善、の3条件が満たされた症例で1回目のPCR検査を実施し、そこからさらに48時間後に2回目のPCR検査を実施して2回とも陰性だった患者だけを選び出し、アビガンあるいはプラセボの投与開始から1回目のPCR検査陰性までの期間を比較するというものだ。この結果は論文では公表されていないが、富士フイルム側が公表したプレスリリースでは主要評価項目はアビガン投与群で11.9日、プラセボ投与群では14.7日となり、調整後ハザード比(HR)は1.593 (95%信頼区間[CI]:1.024~2.479、p=0.0136) となり、アビガン投与群で有意に症状を改善する可能性が示された。きわめておおざっぱな言い方をすれば、アビガン群で症状改善までの期間が3日弱短縮したわけだが、単盲検試験である前提で気になるのがPCR検査前の3条件のうちの「胸部画像所見判定」である。論文未発表のため画像判定の際、画像診断の評価を主目的とする臨床試験のように評価者2人以上での判定を突き合わせているかは定かではない。ただ、この感染症に対する労力、緊急性、医療現場のマンパワーの現状などを考えると、シンプルな主治医判定になっている可能性が十分考えられる。となると、わずか3日弱の差にこの「バイアス」が含まれているという非常に微妙な結果になる。この結果を前提に、催奇形性という重大な副作用の可能性が指摘されていることも加味すると、薬食審の委員が承認に慎重になってしまうのは不自然ではなく、むしろ当然とさえいえるだろう。承認を海外試験に託して良いものかそして薬食審で承認先送りにした際に結果を待つとされていた二重盲検試験のうち、クウェートでの試験結果の一部を1月27日、ドクター・レディーズ・ラボラトリーズがニュースリリースで公表している。試験は中等症から重症で入院中の新型コロナ患者353人を対象に症状改善までの時間を評価したが、アビガンを投与されたグループとプラセボを投与されたグループでは統計学的有意差が認められなかったとのこと。ただ、参加患者をよりリスクの低い(おそらく中等症)患者181人のみに絞って解析すると、アビガンを投与されたグループではプラセボを投与されたグループに比べて退院までの期間が3日短縮したという。もっとも一般的にエンドポイントの設定で「退院」はバイアスが入る余地があるソフトエンドポイントに分類されるため、これまた何とも微妙な結果となっている。残るはアメリカでの二重盲検試験だが、同試験が軽症から中等症者を対象に症状改善や入院・ICU入りリスクの軽減を評価する目的で行っているというと聞くと、正直ややため息が出てしまう。何でもかんでも難癖をつけるつもりはないのだが、新型コロナの軽症者はほぼ無治療でも回復するのが常識と言われている中で、この設定が妥当と言えるのか、そしてはたまたこの設定で劇的な効果は示せるのか、との疑念がわいてくる。いずれにせよ、何とも悩ましい「メード・イン・ジャパン・メディスン」なのである。

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双極性障害とうつ病を鑑別するための感情調節神経回路の調査

 双極性障害(BD)患者の最大40%は、最初にうつ病と診断されており、情緒不安定は両疾患で共通して認められる。しかし、認知的再評価による感情調節の違いが、BDとうつ病を鑑別するのに役立つかは、よくわかっていない。オーストラリア・シドニー大学のSabina Rai氏らは、寛解期BD患者とうつ病患者の感情調節について、調査を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年12月25日号の報告。 年齢、性別、うつ病重症度をマッチさせた寛解期BD患者38例、寛解期うつ病患者33例、健康対照者37例を対象に、fMRIスキャン中の感情調節認知再評価タスクを調査した。対象者には、画像の再評価(Think条件)、ネガティブな画像を受動的に見る(Watch条件)、ニュートラルな画像を受動的に見る(Neutral条件)のいずれかを行い、その影響を評価した。感情調節に特有の神経回路における再評価(Think条件vs.Watch条件)および反応性評価(Watch条件vs.Neutral条件)についてグループ間での違いを調査するため、放射化分析、結合性解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・グループとは無関係に、Watch条件では、Think条件およびNeutral条件と比較し、最もネガティブに評価した。また、Neutral条件と比較し、Think条件では、よりネガティブな評価であった。・とくに、BD患者では、うつ病患者と比較し、再評価における前帯状皮質膝下部(sgACC)活性の低下が認められたが、反応性評価においては、sgACC活性がより大きかった。・うつ病患者では、BD患者と比較し、反応性評価において右扁桃体の活性がより大きかった。・タスク関連の連結性は、グループ間で差は認められなかった。 著者らは「寛解期BD患者およびうつ病患者は、感情的な情報を処理および調整するうえで、異なる脳領域と関与していることが示唆された。これらの違いは、両疾患を鑑別し、BDの根底にある病態生理への新たな洞察を検討するうえで役立つ可能性がある」としている。

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男性乳がんにおける内分泌療法の第II相無作為化試験/JAMA Oncol

 ホルモン受容体(HR)陽性の男性乳がん患者において、標準的内分泌療法によるエストラジオール値の変化は不明である。今回、ドイツ・Kliniken Essen-MitteのMattea Reinisch氏らが第II相無作為化試験で調べたところ、アロマターゼ阻害薬(AI)またはタモキシフェンにゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)を併用した群では、エストラジオール値が持続的に低下することが示された。JAMA Oncology誌オンライン版2021年2月4日号に掲載。 本研究の対象は、ドイツ国内のブレストユニット24施設から2012年10月~2017年5月に組み入れられたHR陽性乳がんの男性患者56例で、タモキシフェン単独、タモキシフェン+GnRHa、AI+GnRHaの3群に無作為に割り付けた。主要評価項目はベースラインから3ヵ月後のエストラジオール値の変化、副次評価項目は6ヵ月後のエストラジオール値の変化と、他の内分泌パラメータ、有害事象、性機能、生活の質の3ヵ月および6ヵ月後の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・男性患者(年齢中央値:61.5歳、範囲:37~83歳)56例中52例が治療を開始し、3例(各群1例)が早期に治療中止した。50例が主要評価項目について評価可能であった。・3ヵ月後のエストラジオール値の中央値は、タモキシフェン群では67%増加(+17.0 ng/L)、タモキシフェン+GnRHa群では85%減少(-23.0ng/L)、AI+GnRHa群では 72%減少(-18.5ng/L)がみられた(p<0.001)。・6ヵ月後のエストラジオール値の中央値は、タモキシフェン群では41%増加(+12 ng/L)、タモキシフェン+GnRHa群では61%減少(-19.5ng/L)、AI+GnRHa群では64%減少(-17.0ng/L)がみられた(p<0.001)。

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スタチンの「不必要な」無作為化試験、中国で2千件超/BMJ

 中国で、冠動脈疾患に対するスタチン使用が臨床ガイドラインで強く推奨され始めた翌年以降に、スタチンの効果を検証するとして実施された不必要な(redundant)無作為化比較試験は2,000件超で、これら試験の被験者で対照群に割り付けられ、スタチンを服用しなかった被験者で発生した主要有害心イベント(MACE)は3,000例以上で、うち死亡が約600例だった。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のYuanxi Jia氏らが、2019年までに発表された冠動脈疾患に対するスタチンの無作為化比較試験を再調査し、明らかにした。不必要な臨床試験は資源を浪費し、とくにプラセボ対照試験の設定では、効果的な治療が受けられない患者に害を及ぼす可能性がある。科学出版物の最大の生産国となっている中国本土での臨床試験については、その必要性が深刻な課題になっていることが懸念されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「患者を保護するため不必要な臨床試験を改める早急な改革が必要だ」とまとめている。BMJ誌2021年2月2日号掲載の報告。ガイドライン推奨後2008年以降の試験について検証 研究グループは、中国本土で冠動脈疾患患者を対象に行われたスタチンを評価する不必要な臨床試験を特定し、それらの試験でスタチン治療が行われなかった患者が経験した過剰なMACE発生件数を推定するため断面調査を行った。 2019年12月までの文献データベースを検索し、中国本土で冠動脈疾患の患者を対象に行った、スタチンとプラセボまたは無治療を比較した2,577件の無作為化試験について分析を行った。被験者総数は25万810例で、冠動脈疾患の種別は問わなかった。 「不必要な臨床試験」の定義は、スタチン使用が臨床ガイドラインで強く推奨され始めた翌年2008年以降に、臨床試験が継続中または開始された試験とした。 主要アウトカムは、不必要な臨床試験の被験者で対照群に割り付けられ、スタチン治療を受けられなかったことにより発生した過剰なMACEの発生数、すなわちスタチンを服用していれば回避可能だった過剰なMACEの発生数だった。 また、スタチンの効果の統計的有意性が示された時点を確認するため、累積メタ解析も実施した。回避可能だったMACEは3,470例、死亡は559例 2008~19年に発表された「不必要な臨床試験」は2,045件で、対照群の被験者総数は10万1,486例、スタチン非投与は2万4,638人年だった。 報告された過剰なMACEは、3,470例(95%信頼区間[CI]:3,230~3,619)だった。 内訳をみると、死亡559例(95%CI:506~612)、心筋梗塞の新規発症または再発973例(897~1,052)、脳卒中161例(132~190)、血行再建術83例(58~105)、心不全398例(352~448)、狭心症の再発または悪化1,197例(1,110~1,282)、およびその他のMACEが99例(69~129)だった。

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