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脳卒中後の上肢麻痺、“慢性期”でも回復の希望―リハビリの効果を底上げする神経刺激デバイス(解説:森本悟氏)-1399

 脳卒中診療は、近年血栓溶解療法や血栓回収療法、あるいは急性期・回復期リハビリテーションの発達により、機能予後の改善は着実にみられている。しかしながら、それでもなお、麻痺等の後遺障害が残存、数ヵ月以上を経て症状が固定し、いわゆる慢性期というそれ以上回復の望みにくいステージへと移行していく。 無論治療法がないわけではなく、脳卒中治療ガイドライン2015(追補2019対応)において、脳卒中後の上肢機能障害に対するリハビリテーションは、慢性期であっても麻痺の程度に応じて、麻痺側上肢の強制使用や、特定の動作の反復を伴った訓練、あるいは電気刺激の使用が、(上肢機能障害に対して)行うよう勧められている。さらに、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電流刺激(tDCS)、robotic therapy(装着型サイボーグHAL(R)など)といった、新たな併用療法も登場し、患者の選択や安全面に配慮したうえで、上肢機能障害に対する治療選択肢として一部考慮しても良いことになっている。 このように、麻痺症状が固定した慢性期であっても、リハビリテーション治療の有用性というのは複数の根拠をもって示されている。 今回、過去の知見を踏まえ1,2)、スコットランドのグラスゴー大学らのグループから、108人の患者を対象として、迷走神経刺激デバイスを体内に埋め込み、リハビリテーション時に同時に神経刺激を行うことで、中等症から重症の障害を受けた上肢機能の改善幅が、リハビリテーション単独より有意に大きくなり、有害事象に関しても許容できるものであったと報告された。 治療の作用メカニズムとしては、迷走神経刺激を介したヘテロなシナプス伝達修飾(ノルアドレナリン作動性、コリン作動性、およびセロトニン作動性システムの活性化)により、リハビリテーション中という反復する短時間刺激でも、運動ニューロンの長期的なシナプス変化を促進する可能性が想定されている。 リハビリテーションがさまざまな原因による運動機能後遺障害に対して最も重要な選択肢であることは言うまでもないが、脳卒中や脊髄損傷等の外傷後障害に対する、新薬、デバイス、細胞治療についても、臨床試験や評価を行ううえで「リハビリテーション」+「新たな治療法」という枠組みが一般的となっている。 本治験結果は、その中でも対象としては最も治療が困難な「慢性期(当該治験では発症から9ヶ月〜10年の患者)」に対する「臨床的に意義のあるレベル(FMA-UEスコアのベースラインからの変化が6ポイント以上)」で改善効果を示したという点で、期待の持てるものであろう。6週間の施設内治療で改善がみられ、以降90日まで在宅でリハビリ+神経刺激療法を継続したところ、その効果は維持されていた。 ただし、本試験は90日までを評価対象としており、長期の機能改善持続効果、あるいは治療を中断した後の効果が不明なこと、さらには長期の反復する迷走神経刺激による有害事象については懸念材料である。 総括すれば、虚血性脳卒中による上肢運動麻痺に対する、最もハードルの高い慢性期治療に対して、在宅でも実施可能という簡便さと高いアドヒアランスを兼ね備えた、「リハビリテーション」+「埋め込み式神経刺激療法」という新たな治療選択肢のエビデンスが加わったといえる。今後さらに長期の使用成績が得られ、本邦でも心臓ペースメーカーや脳深部刺激療法といった広く使用されている体内埋め込み式デバイスと同様に、開発が進むことが期待される。

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第60回 コロナワクチン接種を優先すべき意外な職種とは?

海外に比べて接種率が低いと言われる新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン接種率だが、6月1日時点で医療従事者等と高齢者の1回目接種完了者合計は931万4,956回。現在のワクチン接種対象年齢から計算しても総対象者はほぼ1億2,000万人となるので、国民全体で見れば、接種率はまだ1割にも達していないことになる。政治主導で決まった1日100万回接種という目標に対して、現状(6月1日)で52万回強。政府は今月中に職域接種や大学での接種なども開始して目標達成を目指すとみられる。今回の接種で優先順位が最も高かった「医療従事者等」の接種回数は6月1日時点で1回目が465万3,566回、2回目が313万9,628回に達した。この括りでの優先接種対象者は約480万人と推定されているため、1回目接種の完了者はすでに9割超に達している。そして、約3,600万人と推計される高齢者のうち1回目接種が完了したのは620万人強で、ようやく6人に1人という計算だ。ところが、ここにきて国や地方自治体が設置した大規模接種会場では、すでに予約の空きも目立つことが報じられている。その典型が防衛省の運営する大手町の大規模接種センターで、東京都民の高齢者向けに用意した予約枠に空きが目立ったことから、周辺3県の高齢者の受付を前倒しした。こうした現象はほかの地域でも起きている。「仙台会場は予約に空き 大規模接種、1000人以上余裕ある日も」(河北新報)「大規模接種の予約「4割空き」 愛知で準備急ピッチ」(朝日新聞)「大阪市の大規模接種会場、予約埋まらず 利便性低い?」(日本経済新聞)大規模接種会場の予約に空きが出やすい主な理由は、会場のアクセスがあまり良くない、あるいはミスマッチな場所(大手町は現役世代にとってはアクセスが良いが、自宅を中心に生活している高齢者にとっては必ずしもアクセスが良いとは言えない)ためと言われる。ところがこうした予約の空きが報じられるたびに、市区町村の集団接種やかかりつけ医接種の予約者の一部がより早い接種に期待をかけて大規模接種会場に予約を入れ、結果的に二重予約になる問題が指摘されている。そして自治体側ではその予約取り消しに職員がさらに四苦八苦し、さらに一部の個別接種医療機関では逆にワクチン予約の空きが出て埋まらないという何とも酷な状況が起きている。すでに余剰ワクチンの扱いについては、前回、国も最終的には誰に接種しても問題なしという趣旨の通知を出したことを紹介している。ただ、各自治体とも接種券がまだ発行されていない住民や他の自治体の住民を接種対象とすると、後の事務作業が煩雑になることが予想されるためか、余剰ワクチン接種の対象者にも細かく優先順位を付けたりしているところが少なくない。たとえば、ネットメディアの「BUSINESS INSIDER」が記事公開している東京23区の余剰ワクチン対応もかなりまちまちだ。概して言えば、優先接種対象の高齢者で代わりを探す、高齢者の付き添い者、高齢者施設職員、小中学校教職員などが「次点」対象者となっている。ただ、私個人は医療従事者等の接種完了が見えてきたからこそ、高齢者以外の新たな優先接種の対象を設定すべきではないかと考えている。ちなみに最優先だった「医療従事者等」については、リンク先を見れば分かる通り、単純に医師や看護師だけでなく、広く新型コロナ患者に接する人が対象になっている。では、誰を新たな優先接種の対象とするべきかというと、それは「新型コロナ対応に欠かせない人」である。「『新型コロナ患者に接する人』と何が違うのか?」という人もいるかもしれない。だが、患者には接しなくとも対応に必要な人たちはいるはずである。私は次のニュースを見た時にまさにそう思ったのである。「札幌市コールセンターでクラスター 受付時間変更に」(テレビ朝日)札幌市が大手企業へ業務委託したワクチン接種予約のコールセンターでクラスターが発生したというもの。このニュースに対して一部では「民間に丸投げするからこうなる」との指摘もあるようだが、それは筋違いである。そもそも自治体側はマンパワーが不足しているから委託をせざるを得ないケースがほとんどだ。ちなみにこのケースは関係者によると、コールセンター内でのフェイスシールドやマスクの着用が徹底されていなかったことがクラスター発生の原因だったらしいが、そもそもこれらの人たちが1回でもワクチン接種を行っていれば、発生が避けられた可能性は十分にある。「たかだかコールセンター?」という人もいるかもしれないが、これからワクチン接種回数をより増やしていくためには、こうした人たちが安全に業務できる環境を整備することは重要である。また、実は各自治体などが設けている発熱相談コールセンターの担当者も実は優先接種対象者ではない。あるコールセンターで勤務し、医療従事者の国家資格も持つ人は「よく周囲から『あなたは優先接種対象なんだよね?』と聞かれますが、現時点で1回もワクチン接種をしていないと話すと、すごく驚かれます」と明かす。これ以外にもワクチンや医薬品を輸送する運送関係者や医薬品卸関係者も対象とはなっていない。新型インフルエンザ等対策特措法では国民生活や経済安定に資する業者として「特定接種」という対象を設け、これに医薬品卸関係者も入っているのだが、あくまで患者との接触の有無を前提に今回の優先接種対象からは外れている。また、自治体でワクチン接種などの関連業務に従事する公務員も自治体によってかなりワクチン接種状況が異なると言われている。有効なワクチンが登場してきたとはいえ、今も一旦感染すれば決定的な治療薬もないのが新型コロナの現状だ。しかも、こうした関連業務の従事者から感染者が報告されれば、二次感染に対する警戒レベルは高くせねばならず、当然ながら濃厚接触者追跡などもより厳格になる。そうすれば当然のことながらその業務がマヒする可能性が高まる。いずれにせよ、これらの人たちは大規模接種会場や個別接種医療機関の近隣の小中学校教職員よりも優先度が高い人であるはず。国や各自治体にはより現実的な対応を望みたいところだ。

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あのエクササイズゲームの治療効果は?

 任天堂のエクササイズゲーム『リングフィット アドベンチャー(RFA)』は、慢性腰痛患者における痛みの自己効力感を高め、痛みを軽減する可能性があることが、千葉大学のTakashi Sato氏らによって報告された。著者らは「痛みの自己効力感の改善を目的にした治療プロトコールの開発が望まれる」としている。本研究は、Games for Health Journal誌オンライン版2021年4月22日号に掲載された。 近年、エクササイズの治療効果に関する研究が増加しているが、慢性腰痛症に対するこれらのタイプの介入に関する研究は多くない。したがって本研究では、エクササイズゲーム RFAが慢性腰痛患者に有用であると仮定し、前向き無作為化縦断研究を実施した。 40例の慢性腰痛患者を、経口薬単独群(男性12例および女性8例、平均年齢55.6歳)、経口薬に加えてRFAエクササイズを週1回40分行う経口薬+RFA併用群(男性9例および女性11例、平均年齢49.3歳)にランダムに割り付け、8週間にわたる治療の前後における、痛みと心理的スコア(痛みの自己効力感、痛みの破局的思考および運動恐怖症)を分析した。 主な結果は以下のとおり。・経口薬+RFA併用群において、8週間後の腰痛、臀部の痛みおよび痛みの自己効力感が有意に改善された。・下肢のしびれ、痛みの破局的思考および運動恐怖症といった心理的スコアに有意な改善はみられなかった。・経口薬単独群では、8週間後の治療効果に変化は認められなかった。

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FGFR阻害薬ペミガチニブが胆道がん治療薬として発売/インサイト

 インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパンは、2021年6月1日、選択的FGFR阻害薬ペミガチニブ(製品名:ペマジール)の販売を開始したと発表した。ペミガチニブは経口のFGFR阻害薬 ペミガチニブは経口のFGFRのチロシンキナーゼ阻害薬であり、がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がんの治療薬として、2021年3月23日に国内製造販売承認を取得している。 製品概要・販売名: ペマジール錠4.5mg・一般名: ペミガチニブ・効能・効果: がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道・用法・用量: 通常、成人には、ペミガチニブとして1日1回13.5mgを14日間経口投与した後、 7日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態によ り適宜減量する。・製造販売元: インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社

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視神経脊髄炎治療薬イネビリズマブ発売/田辺三菱製薬

 田辺三菱製薬株式会社は、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)[視神経脊髄炎を含む]の再発予防」を適応症として2021年3月23日に製造販売承認を取得した、ヒト化抗CD19モノクローナル抗体イネビリズマブ(商品名:ユプリズナ点滴静注100mg)が2021年5月19日に薬価収載されたことを受け、6月1日に販売を開始した。イネビリズマブは半年に1回の長い間隔の治療薬 NMOSDは、日本での有病率が10万人あたり2~4人と低く、重度の再発を繰り返し致命的となり得る中枢神経系の自己免疫疾患。身体の免疫システムが、健康な細胞(一般的には視神経、脊髄および脳)を攻撃し、再発や重篤な傷害をもたらす。その結果、眼の痛みや失明、重度の筋力低下、麻痺、しびれ、腸や膀胱の機能低下および呼吸不全を引き起こす。これらは再発を繰り返し、1回の再発で失明や車椅子生活に至ることもある。病態には、主に抗アクアポリン4(AQP4)抗体が関与し、NMOSD患者の約73~90%で抗AQP4抗体が検出されるとされる。 今回発売されたイネビリズマブは、抗体を産生する形質芽細胞や形質細胞を含むB細胞に発現するCD19というタンパク質に結合し、CD19陽性B細胞を循環血液中から速やかに除去することで、NMOSDの再発を予防する。NMOSD患者を対象とした日本を含むグローバル臨床試験において、イネビリズマブ投与により、主要評価項目である再発抑制効果が確認された。また、イネビリズマブ投与間隔が半年に1回という利便性から同社では「患者の生活様式に合わせた治療を可能とし、再発予防期のNMOSD患者に新たな治療選択肢が提供できる」と期待を膨らませている。イネビリズマブはすでに米国では2020年6月11日にNMOSDの適応で承認されている。イネビリズマブの製品概要製品名:ユプリズナ点滴静注 100mg一般名:イネビリズマブ(遺伝子組換え)効能・効果:視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防用法・用量:通常、成人には、イネビリズマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを初回、2週後に点滴静注し、その後、初回投与から6ヵ月後に、以降6ヵ月に1回の間隔で点滴静注する薬価:100mg 10mL 1瓶 349万5,304円製造販売承認日:2021年3月23日薬価基準収載日:2021年5月19日発売日:2021年6月1日製造販売元:田辺三菱製薬株式会社

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心筋炎と心筋梗塞を簡便に鑑別できる新規miRNAを同定/NEJM

 心筋炎のマウスおよびヒトにおいて同定された新規マイクロRNA(miRNA)のヒト相同体(hsa-miR-Chr8:96)は、心筋炎患者と心筋梗塞患者の区別に利用できる可能性があることを、スペイン・国立心臓血管研究センターのRafael Blanco-Dominguez氏らが明らかにした。心筋炎は、冠動脈閉塞を伴わない心筋梗塞(MINOCA)と初期診断を受けた患者の最終診断となることが多く、心筋梗塞の基準を満たす患者の約10~20%にみられる。急性心筋炎の診断は通常、心内膜心筋生検または心臓MRIのいずれかが必要であるが、前者は侵襲的であり、後者はすべての施設で利用できるわけではない。そのため、新たな診断法が求められていた。NEJM誌2021年5月27日号掲載の報告。心筋炎または心筋梗塞モデルマウスのT細胞を解析 研究グループは、心筋炎に特異的なmiRNAを同定するため、マウスに実験的自己免疫性心筋炎または心筋梗塞を誘発した後、CD4陽性T細胞およびTh17細胞を分離してmiRNAマイクロアレイ解析と定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)解析を実施した。また、コクサッキーウイルスにより心筋炎を誘発したマウスから採取した検体でも、qPCRを実施した。 さらに、このmiRNAのヒト相同体を同定し、急性心筋炎患者の血漿における発現を、各種対照群での発現と比較した。心筋炎患者で確認され心筋梗塞患者では検出されないmiRNAを確認 炎症性サイトカインであるインターロイキン-17を産生するTヘルパー(Th17)細胞が、心筋炎の急性期における心筋損傷の特徴であることを確認した。Th17細胞により合成されるmiRNAのmmu-miR-721が、急性自己免疫性心筋炎またはウイルス性心筋炎のマウスの血漿中に存在することが確認されたが、急性心筋梗塞のマウスの血漿からは検出されなかった。 このmmu-miR-721のヒト相同体をクローニングし、hsa-miR-Chr8:96と名付けた。hsa-miR-Chr8:96は、心筋炎患者の独立した4つの患者コホートで特定された。血漿中hsa-miR-Chr8:96の検出による急性心筋炎と急性心筋梗塞の鑑別に関するROC曲線下面積は0.927であった(95%信頼区間[CI]:0.879~0.975)。年齢、性別、駆出率、血清トロポニン値で補正したモデルでも、このmiRNAの診断的価値が認められた。 なお著者は、このmiRNAは拡張型心筋症などの他の心疾患では評価されておらず、hsa-miR-Chr8:96の発現には大きなばらつきがみられたことなどから、「hsa-miR-Chr8:96が心筋炎の診断検査に適しているかを判断するには、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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低出生体重児、出生直後からのカンガルーケアで生存率改善/NEJM

 出生時体重が1.0~1.799kgの低出生体重児において、出生直後からカンガルーケアを受けた新生児は、従来ケアで状態が安定した後にカンガルーケアを開始した新生児と比較し、28日死亡率が低下した。72時間死亡率も、出生直後からカンガルーケアを受けた新生児のほうが、有意差は認められなかったものの良好であった。WHO Immediate KMC Study Groupが、アフリカとインドの5施設で実施した無作為化試験の結果を報告した。カンガルーケアは、母親または他のケア提供者が新生児を胸の上で抱き皮膚と皮膚を接触させるなどの新生児ケアの一種で、従来、低出生体重児(2.0kg未満)において状態安定後にカンガルーケアを受けた新生児は受けなかった新生児と比べ死亡率が低下することが示されていた。しかし、低出生体重児の死亡の大多数は、状態安定前に生じている。低出生体重児において出生後すぐにカンガルーケアを開始した場合の安全性と有効性は、これまで不明であった。NEJM誌2021年5月27日号掲載の報告。アフリカとインドの5施設で、3,211例の新生児と母親を対象に無作為化試験 研究グループは、ガーナ、インド、マラウイ、ナイジェリア、タンザニアの病院5施設において、出生時体重が1.0~1.799kgの低出生体重児を、出生直後にカンガルーケアを開始する群(介入群)と、状態が安定するまで保育器やラジアントウォーマーで従来ケアを受けた後にカンガルーケアを開始する群(対照群)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、新生児期(生後28日間)および出生後72時間以内の死亡であった。 計3,211例の新生児と母親が、介入群(1,609例)または対照群(1,602例)に無作為に割り付けられた。出生直後からカンガルーケア開始で、新生児期死亡も生後72時間死亡も減少 新生児集中治療室における1日の皮膚接触時間中央値は、介入群16.9時間(四分位範囲[IQR]:13.0~19.7)、対照群1.5時間(0.3~3.3)であった。 生後28日間の死亡は、介入群191例(12.0%)、対照群249例(15.7%)であり、介入群で有意に死亡リスクが低下した(死亡の相対リスク:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.89、p=0.001)。出生後72時間以内の死亡は、介入群74例(4.6%)、対照群92例(5.8%)であった(死亡の相対リスク:0.77、95%CI:0.58~1.04、p=0.09)。 出生直後からカンガルーケアを受けた低出生体重児群で死亡率の低下が認められたため、データ安全性モニタリング委員会の勧告により試験は早期中止となった。

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がん通院中患者の新型コロナ抗体量は低値、投与薬剤によって差も/国がん

 国立がん研究センターとシスメックスは、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけて500人のがん患者と1,190人の健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査した。 その結果、新型コロナウイルスの罹患歴のない対象では、がん患者、健常人共に抗体保有率は低く、両群で差がないことがわかった。一方、抗体の量は、健常人と比較し、がん患者で低いことが明らかになった。これは年齢、性別、合併症の有無、喫煙歴といった因子で調整しても有意な差を認めた。 さらに、がん治療が抗体量に与える影響を検証したところ、細胞障害性抗がん剤を受けている患者では抗体量が低く、免疫チェックポイント阻害薬を受けている患者では高いことが明らかになった。同研究結果から、がんの合併、ならびにがん薬物療法が抗体量に影響を与える可能性が示唆された。 本調査結果は、JAMA Oncology誌2021年5月28日号(オンライン版)に掲載された。

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コロナワクチン接種の最新版手引き、対象拡大やモデルナが追記/厚労省

 厚生労働省は6月1日付で、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する医療機関向け手引き(3.0版)」を公開した。今回の改版では、ファイザー社のワクチン接種対象者が「16歳以上」から「12歳以上」へ変更となったことや、や、5月21日に特例承認されたモデルナ社のコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」についての記載などが追記された。 本改版の改訂内容は以下のとおり。・ファイザー社のワクチンのドライアイスを用いた保管方法について削除・ファイザー社のワクチンが2~8℃で1ヵ月保管可能になったことに伴う改訂・ファイザー社のワクチンの対象者が12歳以上の者になったことに伴う改訂・接種単価、超低温冷凍庫の適正使用、武田/モデルナ社のワクチン、基礎疾患を有する者の確認方法、電話や情報通信機器を用いた診療の活用、意思確認を行うことが難しい場合の対応、保冷バッグの取扱い、在宅療養患者等に係る対応、副反応疑い報告についての追記・接種順位、新型コロナワクチンの各社情報、予診票の様式の更新 手引き(3.0版)のほか、最新の臨時接種実施要領や予診票などは、厚生労働省のホームページに掲載されている。

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統合失調症患者における末梢炎症レベルの再定義~FACE-SZコホート研究

 統合失調症の予後には、末梢炎症が関連しているといわれている。高感度C反応性蛋白(hs-CRP)は、日常的に最も使用されている炎症性バイオマーカーである。しかし、末梢炎症の有無を区分するための合意に基づくカットオフ値は、これまで明確に定義されていなかった。フランス・エクス=マルセイユ大学のG. Fond氏らは、hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、1mg/L未満の患者と比較し、治療転帰が不良であるかを検討した。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年4月29日号の報告。 対象は、2010~18年にフランス国内の専門学術センター10施設が参加したFACE-SZコホート研究より抽出したhs-CRP 3mg/L未満の統合失調症患者。炎症の潜在的な原因、社会人口統計、疾患の特徴、現在の疾患重症度、機能、QOLを、FACE-SZ標準化プロトコールに従って収集した。 主な結果は以下のとおり。・580例が抽出され、そのうち226例に軽度の炎症(hs-CRP 1~3mg/L)が認められた。・炎症の潜在的な原因として、過体重と歯科治療の欠如が特定された。・これらの因子で調整した後、炎症の認められた患者は、検出値(hs-CRP 1mg/L)未満の患者と比較し、より重度の精神症状、抑うつ症状、攻撃性、機能障害を有していた。・喫煙や身体活動レベルとの関連は認められなかった。 著者らは「hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、炎症関連障害のリスクがあると考える必要がある。末梢炎症の原因をコントロールするうえで、減量や積極的な歯科治療の実施が、有用な戦略である可能性が示唆された。カットオフ値hs-CRP 1mg/L超は、統合失調症患者の末梢炎症の検出において、信頼できるマーカーであると考えられる」としている。

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厳格な降圧により心血管イベント抑制、しかし腎機能低下例は多い〜SPRINT追跡最終報告(解説:桑島巖氏)-1397

 収縮期血圧120mmHg未満の厳格な降圧が140mmHg未満の緩和降圧に比べて心血管イベントを有意に抑制するという結果を示した2015年発表のSPRINT試験は、世界のガイドラインに大きな影響を与えた。本論文はランダム化解除後、約8ヵ月延長された後のイベントを解析した追跡解析である。 主要エンドポイント(心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死)の発生は、厳格治療群1.77%/年対緩和治療群2.40%/年(HR:0.75)、全死亡は各々1.06%/年対1.41%/年でいずれも厳格降圧群で有意に少なく、2015年のオリジナル発表と同じ結果であった。 急性腎障害の発生に関しては、厳格降圧群が緩和降圧群に比べて有意に多いことはオリジナル論文ですでに明らかになっていたが、可逆性であると解釈されていた。しかし今回の追跡では、eGFRが30%以上低下した腎機能低下例が厳格降圧群148例(1.39%/年)、緩和降圧群41例(0.38%/年)でHR 3.67と大幅に増えていることは注目すべきである。腎透析や腎移植にまで至った例は両群ともいなかったようであるが、実臨床にあたっては厳格降圧による心血管イベント抑制を目指す一方で、腎機能に配慮しながら慎重な個別的降圧治療が必要であることを示している。

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子供の眼に刺さったものランキング【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第188回

子供の眼に刺さったものランキングpixabayより使用もう救急現場からは遠のいてしまいましたが、研修医のとき眼外傷ほどこわいものはありませんでした。研修病院は、高速道路のインターチェンジの真横にあったので、たまに交通事故外傷が搬送されて来るんですが、私が人生で最初にみた高エネルギー外傷は、右腕がグニャグニャになったトラックの運転手でした。その人が「思ったほど痛くないッス」と私に話しかけてくれたのですが、その眼球に割れたミラーがブスっと刺さっていて、いまだに夢に出てきます……(ちなみに彼は元気に退院しました)。さて今日紹介するのは、子供の眼外傷に関する論文です。Guo Y, et al.Characteristics of paediatric patients hospitalised for eye trauma in 2007-2015 and factors related to their visual outcomesEye (Lond) . 2020 Jun 9. doi: 10.1038/s41433-020-1002-1.上海の単施設において、2007年1月~2015年12月の間に、眼外傷の治療を受けた16歳未満の子供の入院患者の診療録が収集されました。年齢、性別、外傷の種類、原因、合併症、入退院時の視力について調べました。合計2,211人の患児、合計2,231眼が登録されました。73.7%が男児で、61.2%が0〜6歳の子供でした。機械的な眼外傷は75.3%に見られ、なんと穿通性の損傷が59.8%に見られました。眼外傷の原因となったものは、はさみ(16.3%)、爆竹(8%)、鉛筆(4.9%)という結果でした。爆竹がランクインされるあたり、中国らしいなと思いますが、2倍以上の大差をつけて1位がはさみというのが怖いですね……。鉛筆もそうですが、そのままダイレクトに眼球に刺さるのを想像するだけでちょっと体が震えてしまいます。虹彩脱出、網膜剥離、眼内炎を起こしたケースでは、視力障害の予後不良と有意に関連していました。とにかく、はさみや鉛筆など、子供が触りそうなものには注意が必要です。今は「子供用」のはさみがあるので、日本では眼外傷は少ないと思いますが、鉛筆やペンなどの尖ったものは持たせないよう注意する必要があります。

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ゲームで英語学習、その後【Dr. 中島の 新・徒然草】(377)

三百七十七の段 ゲームで英語学習、その後大阪のコロナも、ようやく収束の兆しを見せています。新規感染者数の7日間平均は5月11日の851人から1週間ごとに641人、374人と減っていき、ついに6月1日には235人となりました。とはいえ、まだまだ油断禁物、気を引き締めなくてはなりません。さて、2021年4月8日の本欄で「ゲームで英語学習」という提案をしましたが、その後を報告させていただきます。まず、「ゲームで英語学習」で提案した内容を簡単に述べますと、英語版のゲームを夢中になってやりながら、知らないうちに英語が上達するという虫のいい話はないものか、というものでした。それから約2ヵ月して「これは結構いいんじゃないか?」と思うゲームに出会ったので、そのことをお話しさせていただきます。そのゲームの名前は、「ホームスケイプ」と「ガーデンスケイプ」です。名前が似ていることから想像できるように、この2つは姉妹ゲームです。主人公のオースチンが「ホームスケイプ」では実家の住み心地を改善し、「ガーデンスケイプ」では庭を整備していくわけです。前者ではオースチンが古くなった本棚とかソファを新しいものに取り換え、階段やフローリングの修理をして両親のために快適な家を実現しようと奮闘します。プレーヤーは、次々に出てくるミニゲーム(マッチ3ゲームなど)をクリアしてポイントを貯め、オースチンが家具を購入したり家を直したりするのを支援するわけです。実際に、このゲームを英語版(言語設定を英語にするだけ!)でやってみると、両親とオースチンとのやりとりなどが英語で表示されるので、英語圏の人たちの一般的な日常会話がよくわかります。とはいえ、やはり馴染みのない単語が頻繁に出てきます。たとえばbanister。これは階段の手すりのことで、オースチンが母親に「ママ、階段は修理したけど、手すりはまだできていないから使わないでね」と言う場面などに出てきます。同じように「ガーデンスケイプ」ではrakeという単語が出てくるのですが、これは落ち葉をかき集める熊手のことです。banisterもrakeも易しい単語なのに、受験英語では出てこないのが難しいところ。でもゲームでは何度も出てくるので記憶に残ります。この2つのゲームをスマホにダウンロードしてやってみると結構面白く、2~3時間があっという間に過ぎてしまいます。これにハマってしまうと危険なので、やめられなくなる前に削除しました。実際にやってみて感じたことですが、やはり「ゲームを通じて英語を学ぶ」というのと「英語版のゲームをする」というのは、少し違っているように感じました。前者は挑戦する部分が英語にあり、後者はあくまでもゲームにあります。なので、「ホームスケイプ」や「ガーデンスケイプ」を英語学習者向けに改造するとすれば、ミニゲームの難易度を下げる(現行版ではミニゲームで消耗する)英語表示の時間を少し長めにする(現行版では読み終える前に表示が消える)音声と英語表示を自由に選べるようにする(リスニング、リーディングをそれぞれに鍛える)が、目的にピッタリかと思います。誰か作ってくれませんかね。それにしても、家の修理や庭の整備にこんなに夢中になるとは、自分でも想像していませんでした。中毒性のあるゲームと英語に興味のある読者は、ちょっと覗いてみてはいかがでしょうか?最後に1句オースチン 家も庭も 手伝うぞ!

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第24回 高齢糖尿病患者のサルコペニア、介入タイミングと方法は?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第24回 高齢糖尿病患者のサルコペニア、介入タイミングと方法は?Q1 評価法と介入の判断、目標設定の考え方について教えてください2019年にアジアのワーキンググループにおいて、サルコペニアの診断基準の変更がありました1)。これによると、一般の診療所におけるサルコペニアの簡単なスクリーニングと評価法が示されています。すなわち、下腿周囲長が短いもの、SARC-Fと呼ばれる簡単な10点満点の質問で4点以上のもの、あるいはその両者をあわせたSARC-Calfと呼ばれるスコアが高値のものは評価の対象となります。評価としては握力または5回椅子立ち上がりテストを行い、前者では男性<28kg、女性<18kg、後者では12秒以上かかるものはサルコペニアの可能性ありとして介入をはじめてよいとされています。本来サルコペニアの確定診断には筋量測定が必要ですが、これにはDXA法やバイオインピーダンス法といった特殊な装置が必要であり一般診療所では行いにくいこと、さらに身体機能として示されてきた歩行速度も実地では実施が困難であるため、より簡便な握力と椅子立ち上がりで評価できるようになりました。なお、近年筋量より筋力のほうが予後をよく反映するとする報告がみられています。これらの指標(下腿周囲長、握力、椅子立ち上がり)の維持・向上を目標とするわけですが、筋量の増加は効果が認めにくい一方で、筋力や身体機能の改善はその後の機能予後の改善やフレイルの予防に重要です。さらに、トレーニングの内容にもよりますが、握力よりも下肢筋力や下肢運動機能のほうが効果が出やすいようです2)。したがって、クリニックにおいては、椅子立ち上がりテストを定期的に行って、時間の短縮を確認することが治療効果の評価に有効ではないかと思います。改善が認められたら努力を賞賛し、さらに0.5~1秒短い目標時間を設定する、とすればモチベーションも維持できるのではないかと思います。Q2 食事療法・タンパク質量の設定について、具体的な考え方は?日本人の食事摂取基準(2020年版)では、フレイルおよびサルコペニアの発症予防を目的とした場合、65 歳以上では少なくとも1.0g/kg体重/日以上のタンパク質を摂取することを推奨していますので3)、1日およそ60g以上, 1食当たり20g以上となります。低栄養が疑われるものではさらに多くの摂取が推奨されます。魚、鶏ささみ肉、牛赤身肉など油脂が少ない肉は100g当たり約20gのタンパク質を含みますが、バラ肉などの油脂が多い肉や加工肉では含量が少なくなるため注意が必要です(表)。画像を拡大するタンパク質を十分摂取するには、まず3食食べ欠食しないこと、それぞれにタンパク質を含む主菜をとることが重要です。主食を増やさず油脂の多い肉を避けるよう指導すれば体重はさほど増加しないと考えられますし、多少の増加は許容しています。肉がとりにくい人は、大豆製品や乳製品を利用しますが、20gのタンパク質を豆腐からとるには300g(1丁)が必要であり、やはり肉、魚の摂取を勧めたいところです。また単品料理よりもグラタン、クリームシチュー、ピカタなどにすることで乳製品や卵のタンパク質を追加したり、みそ汁に豆腐や油揚げを入れるなどの工夫も有効ですが、脂質や塩分の増加には注意します。麺類をとる時などは、卵、ツナ缶、納豆などをトッピングしたり、冷奴など一品追加するようにします。ビタミンDもタンパク質合成に重要ですが、きのこ類の他、イワシ、サンマ、サケなどの魚類に豊富に含まれるため、魚を1日1食とるように勧めます。腎機能低下例にもタンパク質摂取を勧めるべきかには議論があります。慢性腎臓病(CKD)ではタンパク制限が末期腎不全への進行を防止するとするエビデンスがある一方、サルコペニアを合併した高齢者では死亡リスクが高いが高齢CKDではタンパク制限が死亡率上昇につながることも報告されています。したがって、2019年に日本腎臓学会が公表した「サルコペニア・フレイルを合併した 保存期 CKD の食事療法の提言」では、末期腎不全への進行予防を重視するか、死亡リスクを重視するかで摂取量を柔軟に設定することとしています5)。すなわち死亡リスクが高いと考えられる例、サルコペニアが重度と考えられる例ではタンパク質の摂取制限を緩めることを考えますが、それでもCKD4-5期ではタンパク0.8g/kg体重/日を上限とするとしています。Q3 運動療法・筋肉量を増やすための指導法についてサルコペニアの予防・治療にはレジスタンス運動を含む運動が重要です。強度については、高齢者においては、低強度であっても反復して行うことによって筋力や筋量の向上が期待できるという報告があります6)。実際に高齢者が定期的にジム通いして高強度の運動を継続することは難しく、自宅で自重や簡単な器具(ゴムチューブ)などを用いた運動が適当であり、継続もしやすいと考えられます。たとえば中腰のスクワットや座位でのももあげ、つまさきあげ、かかとあげだけなどでも効果が期待できます。そのうえで、本人が「楽」と感じるレベルから「ややきつい」レベルにあげていくとよいでしょう。歩行などの有酸素運動やバランス運動、柔軟性運動を組み合わせた多要素の運動も勧められますが(図)、バランス運動の施行時には転倒に注意が必要です。また当然ながら十分なタンパク質摂取をあわせて指導することが重要です。画像を拡大する運動には継続も必要ですが、意欲を保つのは容易ではありません。運動を開始、継続してもらうには具体的な目標を設定することと、毎日記録をつけてもらうことが大切です。歩数計をもたせて目標を設定し記録してもらいます。また、たとえばいくつかの運動の画を書いた簡単なカードを作成して渡し(Webにもいろいろヒントがあります)、行ったらマルをつけて提出してもらいます。それに対し必ずコメントをし(がんばりました、もう一息など)新しい記録紙を渡して、少し高い目標を患者さんと一緒に設定します。昔ラジオ体操のカードにはんこを押してもらった、あの感覚です。どうしても意欲が乏しいときは、場合によってはご家族も巻き込んで一緒に運動するようお願いしています。また、前述のようにたびたび椅子立ち上がりや握力などの検査を行い、結果をフィードバックして効果を実感してもらうことがモチベーション維持に大切であると考えます。Q4 サルコペニア傾向ないしやせ型の高齢糖尿病患者さんにSGLT2阻害薬を使ってよいでしょうか?最近日本人2型糖尿病患者へのSGLT2阻害薬の投与の体組成への影響の違いを検討した研究の65~74歳のサブ解析において、SGLT2阻害薬はメトホルミンと比較して筋量や筋力の低下をきたさなかったと報告されましたが7)、BMI≧22、平均BMI 27とやや肥満で筋量や筋力も保たれているものを対象としており、75歳以上の患者ややせた患者の筋量や筋力への影響は明らかではありません。日本糖尿病学会が策定・公表している「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」でも、75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳でサルコペニアなどの老年症候群のある場合の投与は注意して慎重に行う、とされており8)、やはりこれらの患者ではなるべく使用を避け、使用する場合はタンパク質摂取と運動が十分に行われていることを確認することが重要です。さらに定期的に体重、筋力や運動機能をフォローし、明らかな低下がみられた時には中止を検討すべきと考えられます。1)Chen LK, et al, J Am Med Dir Assoc 2020 ;21: 300-307.2)Makizako H et al, J. Clin. Med. 2020, 9, 1386.3)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版) 」4)文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂) 」5)日本腎臓学会「サルコペニア・フレイルを合併した 保存期 CKD の食事療法の提言」6)山田実. 日老医誌 2019;56:217-226.7)Koshizaka M, et al, Diabetes Ther 2021; 12: 183-196.8)日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」2020

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患者さんと短時間でも深く話が聞ける「深掘りワード」とは?【非専門医のための緩和ケアTips】第4回

第4回 患者さんと短時間でも深く話が聞ける「深掘りワード」とは?前回に続き「時間がないから、緩和ケアができない」問題について一緒に考えていきましょう。今回は診療上の工夫を深掘りしていきます。今日の質問患者さんと「医学的なこと以外」の話をする意味って何なのでしょうか? それに、病状以外のことを聞くきっかけもありません…。前回のメッセージは「医学的な情報提供をコンパクトにして、生まれた時間で物語的(ナラティブ)なやりとりをしてみよう!」というものでした。でも、そこまでしてやる意味って何なのでしょうか? 雑談をすることが緩和ケアなの?と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。まあ、何を緩和ケアと呼ぶかというと、いろいろな意見があると思うのですが、私はこうしたナラティブなやりとりをすることが非常に重要なアプローチだと考えています。緩和ケアの非常に重要な分野として「意思決定の支援」があります。多くの人は、人生のどこかで病を得て、自身の生活に向き合いながら、さまざまな決断を迫られます。効果が乏しくなってきた抗がん剤治療を続けるか通院から訪問診療に切り替えるか最後の時期に入院するか自宅にいるか…診療所の外来においても、このような相談を受けることがあるでしょう。これらの正解のない選択に対して、ご本人の意向や価値観に沿った意思決定を一緒にサポートすることが緩和ケアの非常に重要な部分になります。緩和ケアというと「(主に終末期のがん患者さんの)痛みを軽減する」といった、身体症状への介入部分が注目されることが多いのですが、実際のところ、症状緩和はそれ自体が目的というよりは、人生の最終段階の意思決定といった大切な局面において、患者さんが自分の人生と向き合うための「手段」という側面も大きいのです。そのような場面で支援する医療者としては、患者さん自身について、病気のこと以外も知っておきたいですよね。私自身は病院で入院した患者さんを中心に緩和ケアを実践していますが、「いつも見てくれている先生」をとても頼りにしている患者さんがとても多いことを実感します。長年のお付き合いのある診療所の先生だからこそ、リラックスして話せることもあるはずですし、それぞれの立場の医師が連携して緩和ケアに当たれるといいと感じます。患者さん側も「忙しいのに悪いかな」「病気とは関係ないのに」と考え、医師と医学的なこと以外を話すことに対して、ハードルが高く感じる方も多いようです。患者さんとナラティブなやりとりをしたいときは、ちょっとした工夫をしてみるといいでしょう。たとえば、私はよくこんな言葉掛けをしています。――外来に来た付き添いが必要な高齢の患者さん。いつも娘さんが付き添っているようです。私「いつも付き添ってくださるのは娘さんですか? 助かりますね」こんなふうに声掛けしてみると、患者さんからは「そうなんです。いつもよくしてくれて」「少し前に妻が死んだので、心配してくれてね…」といった家族の話に広がったりします。話が広がらずに「そうです」の一言で終わってしまってもいいのです。この一言で「私はあなたについて、病気以外のことも気に掛けていますよ」というメッセージが伝わります。私のよく使っている「ナラティブ深掘りワード」をもっと挙げてみると、大変な病気の中、頑張って来られましたね元気の秘訣は何ですか?そういえば、以前はどんなお仕事をされていたんでしたっけ?こうした言葉を、違和感のないタイミングで相手の状況を見ながら、使うようにしています。皆さんもぜひ、自分のコミュニケーションスタイルに合った「ナラティブ深掘りワード」を考え、使ってみてください。今回のTips今回のTips患者さんとの話を広げる「ナラティブ深掘りワード」を持とう!

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第60回 立法措置のないコロナワクチン「打ち手」拡大に保団連が疑義

政府は新型コロナワクチン接種を加速するため、不足している「打ち手」を救急救命士や臨床検査技師にまで広げようとしている。医師や看護師以外の職種で最初に候補に挙がった歯科医師に対し、厚生労働省が4月26日付で事務連絡を発出、歯科医師による新型コロナワクチン接種について法的な整理を示した。これに対し、全国の医師・歯科医師10万7,000人で構成する全国保険医団体連合会(保団連)は5月21日、宇佐美 宏副会長(歯科代表)名で、「歯科医師による新型コロナワクチン接種は法律により適法性を確保して実施すべき」との声明を発表、問題点を指摘した。行き当たりばったりの職種拡大方針に疑問歯科医師法第1条は歯科医師の任務を「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」と規定している。声明では「新型コロナウイルス感染症が国民の生命と健康を脅かす中で、その対策に参画することは歯科医師の職業的使命である。必要に応じ、安全性を確保してワクチン接種に協力することは、歯科医師としてやぶさかではない」と、打ち手としての役割には前向きな姿勢を示した。一方、打ち手不足問題については「新型コロナワクチン接種のための体制確保は、ワクチンの開発・供給を巡る動向の中で十分に想定しえた課題である」と指摘。「厚労省が、円滑に対応できるようあらかじめ法律による対応に動かず、人材の逼迫が起こってから緊急避難的に解釈による対応をとったことには問題がある」と、行き当たりばったりの職種拡大方針に疑問を呈した。厚労省は事務連絡で、ワクチン接種のための筋肉内注射は医行為に該当し、医師法第17条に違反するとした上で、以下の3点の条件を示している。(1)歯科医師の協力なしにはワクチン接種が実施できない(2)歯科医師に筋肉内注射の経験があるか必要な研修を受けている(3)被接種者の同意がある。この3条件を満たす場合、「公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、医師法第17条との関係では違法性が阻却され得るものと考えられる」とした。そして集団接種会場に限り、医師の監督下で歯科医師によるワクチン接種の筋肉内注射を可能とした。これは、歯科医師によるPCR検査の検体採取についての法的整理と同じ手法だ。声明では「新型コロナワクチンについては、接種後一定頻度でのアナフィラキシーの発生や、死亡事例も報告されている。PCR検査の検体採取以上に深刻なリスクを伴うことは明らかであり、同じ医行為であっても検討には一層の慎重さが求められる。それにもかかわらず、PCR検査の検体採取と同様に、行政解釈により歯科医師の実施を可能とすることは不適切である」と、行政解釈による対応を批判した。国は解釈と条件を示すだけ、責任は現場任せ…その上で、「本来的に、国会審議を通じて必要性と安全性について広く合意し、立法により適法性を確保した上で実施されるべきものである」と提案。「医師法の定めを超えて歯科医師の協力が必要と判断するのであれば、責任を現場任せにして解釈と条件だけを示すのではなく、法律を根拠に実施できる条件を整えることが行政の責任である」と、現場視点からの問題点を示した。様々な職種の協力を得て新型コロナワクチンの接種が進んでも、今後も新たなウイルスの感染拡大が起こる可能性がある。声明では「これからも起こり得る緊急事態への対応も視野に、協力に当たる歯科医師の法律上の位置付けを明確にするよう、厚労省の責任ある対応を求める」と結んでいるが、ほかの職種に関しても同様の措置が必要だろう。医療人の善意に頼るだけでなく、安心して対応できる体制づくりが必要だ。

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日本においてアルツハイマー病の重症度が介護費用などに及ぼす影響

 アルツハイマー病は、社会的費用を増加させ、患者のADLやQOLを低下させる。東京大学の芦澤 匠氏らは、日本の高齢者施設におけるアルツハイマー病の重症度がADL、QOL、介護費用にどのような影響を及ぼすかについて、検討を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌2021年号の報告。 対象は、47の高齢者施設に入所しているアルツハイマー病患者3,461例。患者のADL、QOL、アルツハイマー病の重症度は、それぞれBarthel Index(BI)、EuroQoL-5D-5L(EQ-5D-5L)、ミニメンタルステート検査(MMSE)を用いて評価した。年間介護費用は、患者のレセプトデータを用いて推定した。対象患者は、MMSEスコアに従って、軽度(MMSE:21~30)、中等度(MMSE:11~20)、高度(MMSE:0~10)の3群に分類した。3群間の違いは、Jonckheere-Terpstraテストを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・401例が抗アルツハイマー病薬を使用しており、そのうち287例が調査票に回答を行った(年齢:86.1±6.4歳、女性の割合:76.7%)。287例の重症度別内訳は、以下のとおりであった。 ●軽度:53例(年齢:84.0±6.9歳、女性の割合:71.7%) ●中等度:118例(年齢:86.6±5.9歳、女性の割合:76.3%) ●高度:116例(年齢:86.6±6.5歳、女性の割合:79.3%)・各群のBIスコア、EQ-5D-5Lスコア、介護費用の平均値は、以下のとおりであった。 ●軽度:53例(BI:83.6、EQ-5D-5L:0.801、介護費用:211万1千円) ●中等度:118例(BI:65.1、EQ-5D-5L:0.662、介護費用:247万円) ●高度:116例(BI:32.8、EQ-5D-5L:0.436、介護費用:280万9千円)・アルツハイマー病が重症化すると、BIスコアおよびEQ-5D-5Lスコアが有意に低下し、年間介護費用の有意な増加が認められた。 著者らは「アルツハイマー病の重症度は、ADL、QOL、介護費用などさまざまな影響を及ぼすことが示唆された」としている。

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パロノセトロン、小児への用法・用量追加承認/大鵬

 大鵬薬品工業とヘルシン・ヘルスケアは、5-HT3受容体拮抗型制吐薬パロノセトロン(製品名:アロキシ)について、2021年5月27日、厚生労働省より小児に対する用法・用量の追加承認を取得した。  今回の追加承認は、主に、生後28日以上18歳以下の小児患者を対象に国内で実施した第III相試験の結果に基づいたもの。主要評価項目である1コースにおける高度又は中等度催吐性抗がん剤投与開始0~120時間後の嘔吐完全抑制(嘔吐性事象なし、制吐処置なし)率は58.6%。95%信頼区間は44.9~71.4%で、事前に設定した95%信頼区間の下限閾値30%を上回ったことから、本剤の小児患者における臨床的有用性が検証された。本剤の安全性について新たに大きな問題となるものはみられなかった。  同剤は、2004年1月から大鵬薬品工業が国内での臨床開発・販売権を取得し、2010年1月に「アロキシ静注 0.75mg」、2012年8月に「アロキシ点滴静注バッグ 0.75mg」の製造販売承認を取得、販売している。同剤は、成人患者に対するがん化学療法剤投与後の悪心、嘔吐の予防に係る効能・効果では80以上の国・地域で、小児患者に対するがん化学療法剤投与後の悪心、嘔吐の予防に係る効能・効果では60以上の国・地域で承認されている。 ・用法及び用量(下線部が今回承認内容) 通常、パロノセトロンとして0.75mgを1日1回静注又は点滴静注する。ただし、18歳以下の患者には、通常、パロノセトロンとして20μg/kgを1日1回静注又は点滴静注することとし、投与量の上限は1.5mgとする。

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