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わが国のEGFR陽性NSCLCに対するゲフィチニブのアジュバント治療の結果(IMPACT)/ASCO2021

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の完全切除後の術後療法としてのゲフィチニブの有用性を検討した国内臨床試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、吹田徳洲会病院の多田弘人氏から報告された。 このIMPACT試験は日本のWJOGにより実施されたオープンラベルの無作為化比較第III相試験である。・対象:EGFR変異(del19またはL858R)を有する Stage II~IIIの完全切除後のNSCLC患者(T790M変異陽性症例は除外。年齢は75歳未満)・試験群:ゲフィチニブ(250mg/日)を2年間投与(Gef群)・対照群:シスプラチン(80mg/m2をday1)+ビノレルビン(25mg/m2をday1,8)を3週ごとに4サイクル投与(CV群)・評価項目:[主要評価項目]独立中央判定による無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性、再発様式など有効性は6ヵ月ごとに、脳転移や骨転移の有無は12ヵ月ごとに評価 主な結果は以下のとおり。・2011年9月~2015年12月に234例が無作為化割り付けされ、232例がITT集団として解析された。・両群間に患者背景の差は見られなかった。女性が約60%、年齢中央値は64歳、非喫煙者も約60%、Stage IIAが約30%、IIIAが約60%であった。・Gef群(2年間)の治療完遂率は61.2%、CV群は77.6%であった。CV群に治療関連死が3例報告された。・観察期間中央値70.1ヵ月時点での、DFS中央値はGef群35.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:30.0~47.7)、CV群25.0ヵ月(95%CI:17.7~41.8)、ハザード比[HR]:0.92、p=0.63であった。2年時DFS率はGef群63.7%、CV群52.3%、5年時DFS率はGef群31.8%、CV群34.1%であった。DFSに関するサブグループ解析でも、両群間に有意な差を持つ因子はなかった。・OS中央値は両群とも未到達で、5年OS率はGef群78.0%、CV群74.6%で、HRは1.03、p=0.89であった。OSに関するサブグループ解析では、70歳以上と70歳未満での比較において、有意に70歳以上の症例でGef群が有効であった。(70歳以上のHRは0.314、70歳未満は1.438、p=0.018)・有害事象については、両群ともに新たな事象は認められず、Grade3以上の好中球減少や発熱性好中球減少がCV群で多く、Grade3以上の肝機能障害や皮膚障害はGef群で多く報告された。また、薬剤に起因する間質性肺炎の報告は両群ともに無かった。・再発部位は、局所再発については両群で差はなかったが、脳転移は、Gef群で26件、CV群で14件であった。(p=0.07)・再発後の治療では両群ともTKIの投与が大半を占めたが(Gef群67%、CV群93%)、オシメルチニブの投与は少なかった(Gef群14%、CV群2%)。 最後に多田氏は「今回の試験では予後の優越性は検証できなかったが、アジュバント治療としてのゲフィチニブは、シスプラチン+ビノレルビン投与が不適などの特定な患者層には有用であるかもしれない。」と結んだ。

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コントロール不良2型DM、CGMでHbA1c改善/JAMA

 食前インスリン療法は行わず、基礎インスリン療法でコントロール不良な2型糖尿病の成人患者の血糖測定法として、持続血糖モニタリング(CGM)は通常の血糖測定器(BGM)によるモニタリングと比較して、8ヵ月後の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が統計学的に有意に低下することが、米国・International Diabetes Center, Park Nicollet Internal MedicineのThomas Martens氏らが実施した「MOBILE試験」で示された。JAMA誌2021年6月8日号掲載の報告。米国のプライマリケア施設の無作為化臨床試験 本研究は、プライマリケア施設で基礎インスリン療法を受けている2型糖尿病成人患者におけるCGMの有効性の評価を目的とする無作為化臨床試験であり、米国の15施設が参加し、2018年7月~2019年10月の期間に患者登録が行われた(米国・Dexcomの助成による)。 対象は、年齢30歳以上、2型糖尿病でプライマリケア医の治療を受け、持効型または中間型基礎インスリンを1日1~2回投与され、食前インスリン療法は行っていない患者であり、非インスリン血糖降下薬の投与の有無は問われなかった。 被験者は、CGM(Dexcom G6 CGMシステム)またはBGMでのモニタリングを行う群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。CGM群は、間質液中のグルコース濃度を5分ごとに測定し、必要に応じてBGMでのモニタリングが行われた。BGM群は、空腹時および食後に、1日1~3回、血糖値が測定された。 主要アウトカムは、8ヵ月後の平均HbA1c値とした。目標範囲内時間の割合が高く、血糖値>250mg/dLの時間の割合は低い 175例(平均[SD]年齢57[9]歳、女性88例[50%]、平均HbA1c値9.1%[0.9])が登録され、CGM群に116例、BGM群に59例が割り付けられた。このうち165例(94%)が試験を完了した。 平均HbA1c値は、CGM群がベースラインの9.1%から8ヵ月後には8.0%へ、BGM群は9.0%から8.4%へと低下し、CGM群で有意な改善効果が認められた(補正後群間差:-0.4%、95%信頼区間[CI]:-0.8~-0.1、p=0.02)。 CGM群はBGM群に比べ、血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)の時間の割合(59% vs.43%、補正後群間差:15%、95%CI:8~23、p<0.001)、血糖値>250mg/dLの時間の割合(11% vs.27%、-16%、-21~-11、p<0.001)、ベースライン値で補正された8ヵ月後の血糖値(179mg/dL vs.206mg/dL、-26mg/dL、-41~-12、p<0.001)が、いずれも有意に良好であった(割合と血糖値は平均値)。 重篤な低血糖は、CGM群で1例(1%)、BGM群で1例(2%)に発現した。糖尿病性ケトアシドーシスは、CGM群で1例(1%)にみられた。 著者は、「本試験はプライマリケア施設で患者の募集が行われ、内分泌専門医は関与していないが、糖尿病専門医がプライマリケア医に助言を行っており、これは現在の標準的な診療形態ではないため、得られた知見の一般化可能性には限界がある」としている。

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1日1,600人にコロナワクチン接種、その秘訣とは?/高砂市医師会インタビュー

 全国的に集団接種が実施されているが、多くは被接種者が各ブースを周る形式である。だが、兵庫県高砂市では、接種~経過観察までの被接種者の移動をなくし、接種者が巡回する接種者移動型を採用した。なぜ、同市はこの『接種者移動型』システムを思いつき、ワクチンの供給開始(同市へのワクチン供給は4月中旬)とともに集団接種を始めることが出来たのかー。それには、早期より行政からの相談があり、同市医師会主導のもとでシステム構築したことに秘訣があったようだ。今回、医師会長の増田 章吾氏(増田内科医院)に実際の動線や関係者の内訳、そしてどのようにアイデアをまとめたのかインタビューした。日頃の行政との連携が実を結んだ 高砂市は兵庫県南部播磨平野の東部に位置し、東に加古川が流れ、南に瀬戸内播磨灘を臨む。総人口は8万9,452人。そのうち65歳以上が2万6,266人と人口の3割を高齢者が占める“超高齢社会”のため、優先被接種者が多い自治体である。 そこで、同医師会がワクチン接種の協議を始めたのは昨年末のこと。まずは医師会の理事会メンバー内で話し合い、年明けには医師会内でワクチン検討委員会を発足。内科、小児科などワクチン対応の知識に長けた医師らを軸に、集団接種会場の設営に向けた動きが始まった。増田氏は「医師会の会員数は現在114名。そのうち約95%の会員がこの集団接種に貢献してくれている」と説明。実際にこの接種会場では医師4~6名体制が敷かれており多くの医師会メンバーの協力が必要不可欠であったが、参加できない医師はなんらかの理由を抱えているため参加の強要はしていないという。この参加率について、「これはコロナ禍のワクチン接種を災害と同等に捉えるように周知した結果」だと話した。 兵庫県といえば26年前の阪神淡路大震災の被災地であり、日頃の災害に対する意識の高さが影響しているのかもしれない。今回の初動の早さについて同氏は「実は、災害対策については足踏み状態が続いている。しかし、今回の件は日頃からの行政との連携が取れていたからこそ。そして、理事会など小規模な会議を頻繁に開催していたこと、それぞれが意思を持って協力し合い物事を進めたことが今回の設営のスピードに大きく影響した」と強調した。集団接種で対応に慣れたら個別接種へ 接種会場では、監督責任のある医師、ミキシング・接種者の看護師、ミキシング・予診確認者の保健師、そしてミキシング・相談対応者の薬剤師らが各役割を担うが、多くの者は平日に通常業務を行っているため、現在も集団接種は土日のみ実施している。また、個別接種を先行せず集団接種を優先した理由として、「初めてのワクチンに医師1人で対応するのはリスクや負担が大き過ぎる。集団接種で経験を重ねれば個別接種でも対応がイメージできる」と説明した。さらに、「予約の混乱を避けるために年齢を区切って対応しており、現時点で80歳以上への1回目の接種を終了した。現在は75~79歳、65~74歳の接種を順次進めている」と話した。発案~準備期間はおよそ3ヵ月、各人が努力惜しまず 話し合いが進み、実際に準備に着手したのは2月頃。会場設営に関しては医師会では進めることができないため、「もちろん行政主導でお願いした。ただし、デモンストレーションを行った際には協力してくれた市民、市職員、医療者らもその場で問題点を数十項目ほど挙げるなど、改善するための意見は遠慮なく発言した。日頃から協力関係であったからこそ、準備でもお互いの主導権を尊重しながら進められた」と振り返った。 また、接種会場には医師だけではなく看護師や薬剤師の協力も欠かせない。一般的には医師会と行政がバラバラに依頼状を送ることも多いが、今回は連名で看護師や薬剤師会宛に協力依頼をかけたことで「必要な人員の確保も滞りなく済ませることができた」とも話した。<高砂市の設営状況・対応医療者数>◆実施方法:接種者移動型(接種~経過観察まで被接種者は着席し、接種者が移動する方式)◆1日あたりの接種人数:約800~1,600名・実施日:土日のみ(通常業務を行う医師が輪番制で行うため)・実施場所:総合体育館・最大収容人数:144名(72名×2エリア)・医師:4~6名・保健師:8名(6名:予診票確認・相談、2名:ミキシングなど) ・看護師:12名(6名:接種者[1群に各1名×6群]、4名:6群の見回り[2名×2エリア]、2名:ミキシングなど)・薬剤師:2名(ミキシング、相談)・事務職:12名(1群に各2名配備、接種看護師と共に2エリアを受け持つ)・救急救命士:3名(緊急配備)・救急車:1台(緊急配備、高砂市民病院へ搬送)◆その他、市民病院で1日あたりの接種人数:約600~1,200名 6月初めより各医療機関での個別接種も開始意外と重要、パーテーションは顔が見える高さに 接種時の工夫点については、「会場を設営した当初、個人保護などの観点でパーテーションは顔も隠れるほど高いものを使用していた。ところが、実際に使用してみると、被接種者の様子がまったくわからず、何かが起こっていても察知することが難しいことが判明した。そこで、行政を通じて業者に顔が見えるくらいの高さのパーテーションの準備をお願いし、現在はそれを使用している。われわれの設営会場では12人の被接種者を1群として、それを3~4名体制のもとで接種・見回りを行っているが、パーテーションの設えを変更したことで、被接種者の状態把握が容易になった」と語った。ワクチン接種で苦戦した点、実際の救急搬送例は意外にも… 80歳以上の高齢者の場合、約2割は会場で車椅子を利用したが、独歩可能な方が入り口や出口で転倒してしまった例があった。「アナフィラキシーなど万が一のために救急隊と救急車を常に配備しているが、それで出動した例は現時点ではない。しかし、転倒により頭部に擦り傷を負い、救急隊が対応を行った例が2件あった」と話した。 最後に、問題になっている余剰ワクチンについて伺うと、「ワクチンが廃棄されないようワクチン接種に協力いただいている保健師、看護師、薬剤師など、被接種者に接する機会の多い医療者を優先に対応を進めている」と語った。 今回の取材を通じて、医師会館と市の保健センターが隣接している土地柄、ワクチン接種での相談は直ぐに対応でき、行政と連携が図れるだけではなく、双方が協力関係を築く意識を持ち合わせている点が高砂市の強みであることもわかった。―――――――――――――――――――増田 章吾(ますた しょうご)氏兵庫県高砂市医師会会長・増田内科医院院長昭和58年神戸大学卒。同年神戸大学医学部附属病院第二内科入局し、兵庫県立成人病センター、加古川市民病院に勤務。平成8年に増田内科医院を開業。平成14年高砂市医師会理事、平成26年同市医師会副会長を経て平成28年より現職。―――――――――――――――――――

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世界初、がん疼痛に使える経皮吸収型NSAIDs「ジクトルテープ75mg」【下平博士のDIノート】第76回

世界初、がん疼痛に使える経皮吸収型NSAIDs「ジクトルテープ75mg」今回は、持続性がん疼痛治療薬「ジクロフェナクナトリウム経皮吸収型製剤(商品名:ジクトルテープ75mg、製造販売元:久光製薬)」を紹介します。本剤は、がん疼痛に適応を有する世界初の経皮吸収型NSAIDs製剤であり、簡便かつ効率的に疼痛をコントロールすることが期待されています。<効能・効果>本剤は、各種がんにおける鎮痛の適応で、2021年3月23日に承認され、5月21日に発売されました。<用法・用量>通常、成人に対し、1日1回2枚(ジクロフェナクナトリウムとして150mg)を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部または大腿部に貼付し、1日(約24時間)ごとに貼り替えます。なお、症状や状態により1日3枚(ジクロフェナクナトリウムとして225mg)まで増量可能です。本剤使用時はほかの全身作用を期待する消炎鎮痛薬との併用は可能な限り避け、やむを得ず併用する場合は必要最小限の使用にとどめ、患者の状態に十分注意する必要があります。<安全性>国内臨床試験において、臨床検査値異常を含む主な副作用として、適用部位そう痒感(5%以上)、適用部位紅斑、上腹部痛、AST上昇、ALT上昇、クレアチニン上昇(1~5%未満)などが報告されています。重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、出血性ショックまたは穿孔を伴う消化管潰瘍、消化管の狭窄・閉塞、再生不良性貧血、溶血性貧血、無顆粒球症、血小板減少症、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、紅皮症(剥脱性皮膚炎)、急性腎障害(間質性腎炎、腎乳頭壊死など)、ネフローゼ症候群、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、重篤な肝機能障害、急性脳症、横紋筋融解症、脳血管障害が設定されています(いずれも頻度不明)。<患者さんへの指導例>1.1日1回、通常2枚を、胸、おなか、上腕、背中、腰、太もものいずれかの部位に貼って使用します。症状によって枚数が増えることもありますが、医師から指示された枚数を守り、一度に3枚を超えないように使用してください。2.創傷面または湿疹・皮膚炎などが見られる部位および放射線照射部位への貼付は避けてください。皮膚への刺激を減らすために、貼り替える際は、前回とは異なる部位を選択してください。3.この薬は1枚ずつ包装されています。貼る直前まで開封しないでください。途中で薬がはがれ落ちた場合は、ただちに新しいものを貼り、次の貼り替え予定時間には、再度新しいものに貼り替えてください。4.使用中に眠気、めまいが生じたり、かすみがかったように見えたりする場合は、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事しないでください。貼った部位に赤みや痒みが出るなどつらいことがありましたら、早めにご相談ください。5.自己判断によるほかの消炎鎮痛薬との併用は避けてください。市販の風邪薬などを使用する場合は事前に相談してください。6.過去に風邪薬や消炎鎮痛薬を使用して喘息のような症状が現れたことがある方や、妊婦または妊娠している可能性のある女性は使用できません。<Shimo's eyes>本剤は、世界初のNSAIDsの経皮吸収型持続性がん疼痛治療薬です。同成分を含む局所作用型製剤ジクロフェナクナトリウムテープ(商品名:ボルタレン)とは異なり、全身投与型の製剤です。有効成分が全身の血中に移行するため、禁忌はジクロフェナク経口薬とほぼ同じように設定されています。NSAIDsなどの非オピオイド鎮痛薬は、「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)」において、軽度のがん疼痛に対する導入薬として推奨されています。中等度~高度のがん疼痛で、オピオイド鎮痛薬では十分な鎮痛効果が得られない、または有害事象のためオピオイド鎮痛薬を増量できない場合などでは、非オピオイド鎮痛薬とオピオイド鎮痛薬の併用が推奨されています。本剤は、1日1回の貼り替えで持続的な効果が期待できるため、患者・介護者の双方にとって利便性が高いと考えられます。3枚貼付時のジクロフェナクの全身曝露量が、同成分の徐放性カプセル剤(商品名:ナボールSRカプセル37.5)と同程度ですが、血中濃度が定常状態に達するまで7日ほどかかるため、効果判定のタイミングに注意が必要です。参考1)PMDA 添付文書 ジクトルテープ75mg

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慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第3回

第3回 慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?―Key Point―皮膚に炎症がある場合は皮膚疾患である可能性が高い82歳男性。2ヵ月前から出現した痒みを訴えて来院されました。薬の副作用を疑い内服薬をすべて中止しましたが、改善がありません。抗ヒスタミン薬を中止すると痒みがひどくなります。一部の皮膚に紅斑を認めますが、皮疹のない部位もひどく痒いようです。手が届かない背中以外の場所には皮膚をかきむしった跡がありました。皮膚生検により菌状息肉腫(皮膚リンパ腫)と診断されました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。シャーロックホームズのような鋭い推理ができればカッコいいですよね。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!【慢性掻痒を起こす疾患】(皮膚に炎症あり)アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染(皮膚に炎症なし)胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】慢性掻痒の原因を見極める、診断へのアプローチ■鑑別診断その1皮膚に目立った炎症があるアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染家族や施設内に同様の掻痒患者がいる場合には疥癬を疑う。皮疹の部位が非常に重要である。陰部、指の間、腋窩、大腿、前腕は疥癬の好発部位である。皮膚に問題がない場合でも、慢性的にかきむしると苔癬化、結節性そう痒、表皮剥脱、色素沈着が起きることがある。■鑑別診断その2正常に近い皮膚なら全身性疾患によるそう痒を考え、以下を考慮する胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤薬剤が慢性掻痒の原因となることがあるかゆみを起こす薬剤:降圧薬(カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、サイアザイド)、NSAIDs、抗菌薬、抗凝固薬、SSRI、麻薬上記の鑑別疾患時に必要な検査と問診検査:CBC+白血球分画、クレアチニン、肝機能、甲状腺機能、血沈、HIV抗体、胸部レントゲン写真問診:薬剤歴■鑑別診断その3慢性的なひっかき傷がある時は、以下の疾患を想起すること心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)背部錯感覚症は背中(Th2~Th6領域)に、brachioradial pruritusは前腕部に激烈なかゆみを起こす。原因は不明。【STEP3】治療や対策を検討する薬が原因の可能性であれば中止する。以下3点を日常生活の注意事項として指導する。1)軽くてゆったりした服を身に着ける2)高齢者の乾皮症(皮脂欠乏症)は非常に多い。皮膚を傷つけるので、ナイロンタオルを使ってゴシゴシと体を洗うことを止める3)熱い風呂やシャワーは痒みを引き起こすので避ける入浴後は3分以内に皮膚軟化剤(ワセリン、ヒルドイド、ケラチナミン、亜鉛華軟膏)や保湿剤を塗る。皮膚の防御機能を高め、乾皮症やアトピー性皮膚炎に有効である。アトピー性皮膚炎にはステロイド薬と皮膚軟化剤の併用が有効である。副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、ステロイド紫斑)に注意する。Wet pajama療法はひどい皮膚のかゆみに有効である。皮膚軟化剤または弱ステロイド軟膏を体に塗布した後に、水に浸して絞った濡れたパジャマを着て、その上に乾いたパジャマを着用して寝る。ステロイドが皮膚から過剰に吸収される可能性があるので1週間以上は行わない。夜間のかゆみには、抗ヒスタミン作用があるミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)が有効ガバペンチン(同:ガバペン)、プレガバリン(同:リリカ)は神経因性のそう痒に有効である。少量のガバペンチンは透析後の痒みに効果がある。<参考文献・資料>1)Yosipovitch G, et al. N Engl J Med. 2013;368:1625-1634.2)Moses S, et al. Am Fam Physician. 2003;68:1135-1142.

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第64回 COVID-19のmRNAワクチン接種後の心筋炎~主に若い男性の2回目接種後に発生

米国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチン2回目接種後の心筋炎/心膜炎が16~24歳の若者に想定より多く認められており、その検討を含む米国疾病予防管理センター(CDC)専門家会議が今週18日に急遽開催されます。その開催を報じた先週10日の米国小児科学会(AAP)ニュース1)によると30歳以下の若者のPfizer/BioNTechかModernaのCOVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎/心膜炎は有害事象記録VAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System)に475例報告されており、それらのうち転帰がわかっている285人中270人は退院し、ほとんど(およそ81%)は完全に回復しています。15人は依然として入院していて3人は集中治療室(ICU)にいます。2回目接種後の16~17歳の心筋炎/心膜炎の報告数は79例で、その数は想定数2~19例を上回っています。18~24歳での報告数は196例で、やはり想定数8~83例を上回っていました。500万人超がPfizer/BioNTechのワクチン接種済みのイスラエルでは去年2020年12月から2021年5月に心筋炎の報告が275例あり2)、それらのうち148例はワクチン接種のころに生じたものであり、米国と同様に多くは2回目の接種後で、主に16~19歳の若い男性に認められました。イスラエルはワクチンと心筋炎の関連を調査中ですが、2回目のワクチン接種と16~30歳の若い男性の心筋炎発症は関連するかもしれないと現時点では判断されています。CDCによると幸い経過はおおむね良好なようで、mRNAワクチン接種後に心筋炎/心膜炎を呈して手当を受けた患者のほとんどは薬の投与や休息で良くなっており、速やかに回復しています3)。心筋炎/心膜炎の同定の主な手がかりは胸痛です。Pfizer/BioNTechワクチン接種後に心筋炎や心筋心膜炎を生じた14~19歳の男児7人の詳細を記したPediatrics誌の報告4)によると全員が2回目接種後4日以内の胸痛により受診しました。また、5人は発熱があり、他に息切れ、疲労感、両腕の痛み、吐き気、嘔吐、頭痛、食欲不振、脱力感が1人以上に認められました5)。7人とも多臓器炎症症候群(MIS-C)ではなく、2~6日間の入院で全員回復しました。7人のうち6人は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)治療を受け、それらの3人の治療はNSAIDだけで済みました。4人は免疫グロブリン静注とコルチコステロイドで治療されました。MIS-Cではない一過性のCOVID-19ワクチン接種後心筋炎に静注免疫グロブリンやコルチコステロイドをきまって投与すべきかどうかは定かではありません。ワクチン接種後7日以内に胸痛、息切れ、動悸が認められたら受診することをCDCは要請しています3)。医療従事者は小児や若い成人がそれらの症状を呈して来院したら心筋炎/心膜炎を疑い、まずは心電図、トロポニン、C反応性タンパク質(CRP)や赤血球沈降速度などの炎症マーカーの検査を試みる必要があります。それらが正常ならおそらく心筋炎/心膜炎ではないでしょう6)。心筋炎はCOVID-19に伴って生じうることも知られています。たとえば大学の感染運動選手1,597人を調べた最近の報告では心臓MRIを含む検査で2.3%に心筋炎が認められています7,8)。参考1)CDC confirms 226 cases of myocarditis after COVID-19 vaccination in people 30 and under/AAP2)Surveillance of Myocarditis (Inflammation of the Heart Muscle) Cases Between December 2020 and May 2021 (Including) / Israel Ministry of Health3)Myocarditis and Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination/CDC4)Marshall M,et al,. Pediatrics. 2021 Jun 4:e2021052478.5)Report details 7 cases of myocarditis after COVID-19 vaccination/AAP6)Clinical Considerations: Myocarditis and Pericarditis after Receipt of mRNA COVID-19 Vaccines Among Adolescents and Young Adults/CDC7)Daniels CJ, et al,JAMA Cardiol. 2021 May 27. [Epub ahead of print]8)Study: Cardiac MRI Effective in Detecting Asymptomatic, Symptomatic Myocarditis in Athletes / Ohio State University

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子供への新型コロナワクチン、接種を進めるべき9つの理由

 2021年6月1日、日本におけるCOVID-19ワクチンの接種対象が、16歳から12歳に引き下げられた。海外での子供を対象とした治験のデータ等を踏まえたものだ。Pediatrics誌2021年6月号には、子供へのワクチン接種を進めるべきとする提言が掲載されている。 この中で、成人へのワクチン接種が進むことでCOVID-19の感染流行は抑えられるものの、ワクチン忌避者や抗体価の低下によって、COVID-19を根絶することは難しいとし、今後も散発的な発生や時折の大流行という形で存続する可能性がある、とした。それを踏まえ、子供の臨床試験でワクチンの有用性が明らかになれば、子供たちへのワクチン接種を義務付けることが重要だとし、その根拠として下記を挙げている。1)子供の感染は多くの場合で無症候か軽症だが、まれに小児多系統炎症性症候群(MIS-C)や肺疾患のかたちで重症化する。2)子供が感染してウイルスを排泄することで、親や教師、他の子供に感染する可能性がある。3)子供の感染は無症候のことが多く、他の予防策では十分ではない。4)変異株によって長期的に免疫が低下したとしても、感染や再接種への対応を早めることができる。5)高い接種率と集団免疫獲得のためには、子供へのワクチン接種が必要である。6)英国で発生したような変異株は、子供への感染力がより強い。7)子供の予防接種プログラムは、国際的に感染症減少に大きな成果を上げた実績がある。8)子供の予防接種にあたって、十分に整備された国際的なインフラがある。9)教師への予防接種に続いて子供への予防接種を行うことで、学校の開校を加速させ、子供たちの活動を正常化させることができる。 米国小児科学会は、2020年12月までに200万例を超える小児感染者が発生したと報告しており、22の州に住む子供達の有病率を調べたところ、10万人あたり17.2人の入院率が明らかになり、カナダでは臨床症状が確認された例の1.9%を占め、うち約7%が集中治療を受けた。5歳未満の子供でも重症化することがあり、12~17歳では重症化する割合が高いことが報告されている。さらに、川崎病に類似したMIS-Cは学童期の子どもに最も多く発生し、平均年齢は8歳だった。 著者らは、上記の点に加え、妊婦や高齢者への感染防止の観点からもワクチンの子供への有用性が確認され次第、子供への接種を義務化し、継続的に大規模な予防接種キャンペーンを行うべきだとしている。

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MET exon14陽性NSCLC、カプマチニブの未治療コホート中間解析 (GEOMETRY- mono1)/ASCO2021

 MET exon14スキッピング変異陽性(MET ex14)の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するMET阻害薬カプマチニブの第II相GEOMETRY-mono1について、1次治療のコホート7の中間解析も含めた更新結果がASOC2021で発表された。・対象:MET変異陽性(MET ex14またはMET増幅)NSCLC患者(下記コホートに割り付け)。対象はカプマチニブ400mgx2/日を投与された。・コホート4:既治療(2/3ライン)、カプマチニブ空腹時投与・コホート5b:未治療、空腹時投与・コホート6:既治療(2ライン)、空腹時投与の制限なし・コホート7:未治療、空腹時投与の制限なし・評価項目[主要評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)による全奏効率(ORR)[副次評価項目]治験担当医評価の奏効期間(DoR)、治験担当医評価のORR、BICRおよび治験担当医評価の病勢制御率(DCR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・METex14のNSCLC160例が解析された。・コホート7のORRは65.6%で、同じく未治療のコホートである5bの報告と同等であった。・コホート7のPFSデータは未成熟だが、中央値は10.8ヵ月であった。・OS中央値は、コホート5bで20.8ヵ月、コホート4では13.6ヵ月であった。・全Gradeの有害事象(AE)発現率は98.4%、G3/4は68.6%。投与中止に至ったAEは16.1%に発現。新たな安全性プロファイルの報告はなし。・頻度の高い項目(20%以上)は、末梢浮腫(54.2%)、悪心(45.0%)、嘔吐(28.2%)、血中クレアチニン値上昇(26.5%)、呼吸困難(23.3%)、疲労(22.3%)であった。

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急性期統合失調症におけるルラシドンの有効性と安全性

 千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、日本および世界各国における急性期統合失調症に対するルラシドンの有効性を評価するため、検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年4月23日号の報告。 18~74歳の統合失調症患者483例を対象に、ルラシドン40mg/日(ルラシドン群)またはプラセボ群にランダムに割り付けた。有効性の主要エンドポイントは、6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化とし、副次的エンドポイントは、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの変化とした。安全性のエンドポイントには、有害事象、検査値、心電図のパラメータを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者には、日本人が107例含まれた。・ベースラインから6週間後のPANSS合計スコアの平均変化量は、ルラシドン群で-19.3、プラセボ群で-12.7であった(治療による差:p<0.001、エフェクトサイズ:0.41)。・ベースラインから6週間後のCGI-Sスコアの変化量は、ルラシドン群で-1.0、プラセボ群で-0.7であった(治療による差:p<0.001、エフェクトサイズ:0.41)。・6週間でのすべての原因による中止率は、ルラシドン群で19.4%、プラセボ群で25.4%であった。有害事象による中止率は、ルラシドン群で5.7%、プラセボ群で6.4%であった。・ルラシドン群の2%以上で認められ、その発生率がプラセボ群の2倍以上であった主な有害事象は、アカシジア(4.0%)、めまい(2.8%)、傾眠(2.8%)、腹部不快感(2.0%)、疲労感(2.0%)であった。・体重および代謝パラメータに有意な変化は認められなかった。 著者らは「日本人を含む急性期統合失調症患者に対するルラシドン40mg 1日1回による治療は、有効性が確認され、一般的に安全かつ忍容性が良好な治療法である」としている。

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CLL/SLL初回治療、イブルチニブ+ベネトクラクスは高リスク群でも高い有用性/ASCO2021

 慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)に対する1次治療として、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブとBCL-2阻害薬ベネトクラクスの併用療法の有用性をみた国際多施設共同第II相試験CAPTIVATEの追加解析結果について、イタリア・ビタ・サルート・サンラファエル大学のPaolo Ghia氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 CAPTIVATE試験は、被験者を微小残存病変(MRD)コホートと治療期間を固定したFixed-duration(FD)コホートに分けて実施。MRDコホートの分析結果は2020年の米国血液学会(ASH)で既に報告されており、イブルチニブを3サイクル投与後、12サイクルのイブルチニブ(Ib)+ベネトクラクス(V)を投与したところ、3分の2以上が検出不能なMRD(uMRD)となり、さらにIb+V投与後にMRDの状態に基づいた無作為化治療を実施したところ、30ヵ月後の無増悪生存(PFS)率が95%以上と高い奏効を示した。 今回はFDコホートの分析結果が発表された。・対象:70歳以下で治療歴のない、ECOG PS 0~2のCLL/SLL患者・介入:Ib(420mg/日)を3サイクル投与後、Ib(同量)+V(最初の5週間で20mgから400mg/日まで増量)を12サイクル投与・評価項目:[主要評価項目]17p欠失のない患者における完全奏効(CR)および血球数が未回復な完全奏効(CRi)率[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間、uMRD率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、腫瘍崩壊症候群(TLS)リスク低減、安全性 主な結果は以下のとおり。・159例(年齢中央値60歳)が登録され、Ibによる導入治療を完了して併用療法を開始したのは153例、12サイクルのIb+V療法を完了したのは147例(92%)、観察期間中央値は27.9(0.8~33.2)ヵ月だった。・高リスク要因は、IGHV(免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子)変異なしが56%、17p欠失/TP53変異が17%、17p欠失が13%、11q欠失が18%、複雑核型が19%だった。またリンパ節のサイズが5cm以上の患者は30%だった。・17p欠失なし(136例)におけるCR/CRi率は56%(95%信頼区間:48~64)、全患者では55%(48~63)となり、事前に設定された最小値37%を有意に超え(p

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術前化療後に残存病変を有するTN乳がん、術後カペシタビンvs.プラチナ(ECOG-ACRIN EA1131)/ASCO2021

 術前療法施行後にも残存腫瘍を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する、術後の追加療法としてのプラチナ製剤とカペシタビンとの比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・ECOG-ACRINグループのIngrid A. Mayer氏から発表された。 術前療法後に残存腫瘍を有するTNBC患者に対するカペシタビン追加投与の有用性は、すでに日韓共同のCREATE-X試験によって示唆されている。本試験は対象患者層が異なるプラチナ製剤とカペシタビンとの第III相の無作為化比較試験である。・対象:初診時にStage II/IIIのTNBCで、タキサン±アントラサイクリンの術前治療を受け、手術後の評価で1cm以上の残存腫瘍がある症例(リンパ節転移は問わず)遺伝子検査キットPAM50にてBasalタイプとNon-Basalタイプを判定・試験群:カルボプラチン(AUC 6)またはシスプラチン(75mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与(Pt群)・対照群:カペシタビン(1,000mg/m2)を2週投与1週休薬を1サイクルとして6サイクル投与(Cape群)・評価項目:[主要評価項目]Basalタイプにおける無浸潤疾患生存期間(iDFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、無再発生存期間(RFS)、Basalタイプの割合、Non-BasalタイプのiDFS 主な結果は以下のとおり。・試験の統計学的設計は、初めに非劣性を検証し、それがクリアされれば優越性も検証するデザインであった。・2021年1月に5回目の中間解析が実施され、Pt群のCape群に対するハザード比[HR]は1.09(95%信頼区間[CI]:0.62~1.90)であり、Pt群の非劣性または優越性がクリアされる可能性は低く、有害事象も多かったことから、2021年3月に安全性データモニタリング委員会が試験中止を勧告した。・Basalタイプの症例は308例(78%)、Non-Basalタイプが86例登録された。・患者背景は、タキサン+アントラサイクリンの投与が約85%、放射線治療ありが約75%、リンパ節転移なしがほぼ半数であった。・Basalタイプの3年時のiDFS率は、Pt群42%、Cape群49%、HRは1.06(95%CI:0.62~1.90)であった。・同様にBasalタイプの3年時のOS率は、Pt群58%、Cape群66%、HR 1.13(95%CI:0.71~1.79)であり、3年時のRFS率は、Pt群46%、Cape群49%、HRは0.99(95%CI:0.67~1.45)であった。・主な有害事象は貧血、白血球減少がPt群で多く、下痢や手足症候群がCape群で多かった。・Pt群では、プロトコール治療を完遂できたのは82.2%、Cape群78.7%であり、用量変更があったのはPt群52.4%、Cape群73.2%であった。 最後に演者は「今回の結果から、術前療法後に残存腫瘍を有する症例に、プラチナ製剤の術後投与の出番はないが、引き続きカペシタビンの役割は重要であることが確認された」と述べた。

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高リスク尿路上皮がんの術後補助療法、ニボルマブが有効/NEJM

 根治手術を受けた高リスクの筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法において、ニボルマブはプラセボと比較して、6ヵ月後の無病生存率が統計学的に有意に高く、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現率≧1%の患者集団でも無病生存(DFS)率が優れることが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDean F. Bajorin氏らが実施した「CheckMate 274試験」で示された。NEJM誌2021年6月3日号掲載の報告。29ヵ国156施設の国際的な無作為化第III相試験 研究グループは、高リスク筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法におけるニボルマブの有用性を評価する目的で、二重盲検無作為化対照比較第III相試験を行った(Bristol Myers Squibb、Ono Pharmaceuticalの助成による)。2016年4月~2020年1月の期間に、日本を含む29ヵ国156施設で参加者の無作為化が行われた。 対象は、根治手術を受けた再発リスクの高い尿路上皮がん(膀胱、尿管、腎盂を原発とする)で、全身状態(ECOG PS)が0または1の患者であり、シスプラチンベースの術前補助化学療法の有無は問われなかった。被験者は、術後補助療法としてニボルマブ(240mg、静脈内投与)またはプラセボを2週ごとに投与する群に1対1の割合で割り付けられた。投与期間は最長1年間であった。 主要エンドポイントは、intention-to-treat(ITT)集団およびPD-L1発現率≧1%の集団におけるDFS期間(無作為化の日から、初回再発[尿路・尿路外の局所再発または遠隔再発]までの期間、あるいは死亡)であった。尿路外の無再発生存期間を副次エンドポイントとした。尿路外再発は、骨盤内の軟部組織の再発または大動脈分岐部下の骨盤内リンパ節に関連する再発とした。DFS期間が約2倍に延長、治療関連の肺臓炎死が2例 本試験には709例が登録され、ニボルマブ群に353例(平均年齢65.3歳[範囲30~92]、男性75.1%)、プラセボ群に356例(65.9歳[42~88]、77.2%)が割り付けられた。PD-L1発現率≧1%の患者は、ニボルマブ群が140例(39.7%)、プラセボ群は142例(39.9%)であり、術前補助化学療法を受けていた患者はそれぞれ153例(43.3%)および155例(43.5%)であった。 ITT集団における無病生存期間は、ニボルマブ群が20.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.5~27.6)、プラセボ群は10.8ヵ月(8.3~13.9)であった。6ヵ月時の無病生存率は、ニボルマブ群が74.9%と、プラセボ群の60.3%に比べ有意に高率であった(再発または死亡のハザード比[HR]:0.70、98.22%CI:0.55~0.90、p<0.001)。また、PD-L1発現率≧1%の集団の6ヵ月無病生存率は、ニボルマブ群が74.5%であり、プラセボ群の55.7%に比し有意に良好だった(HR:0.55、98.72%CI:0.35~0.85、p<0.001)。 ITT集団における尿路外の無再発生存期間中央値は、ニボルマブ群が22.9ヵ月(95%CI:19.2~33.4)、プラセボ群は13.7ヵ月(8.4~20.3)であった。6ヵ月時の尿路外無再発生存率は、ニボルマブ群が77.0%、プラセボ群は62.7%であった(尿路外の再発または死亡のHR:0.72、0.59~0.89)。また、PD-L1発現率≧1%の集団の6ヵ月時の尿路外の無再発生存率は、ニボルマブ群が75.3%、プラセボ群は56.7%だった(HR:0.55、95%CI:0.39~0.79)。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ニボルマブ群が17.9%、プラセボ群は7.2%で発現した。ニボルマブ群で最も頻度の高い有害事象は、そう痒(23.1%)、疲労(17.4%)、下痢(16.8%)であり、Grade3以上ではリパーゼ上昇(5.1%)、アミラーゼ上昇(3.7%)、下痢(0.9%)、大腸炎(0.9%)、肺臓炎(0.9%)の頻度が高かった。治療関連の肺臓炎による死亡が、ニボルマブ群で2例認められた。 著者は、「無再発生存期間のサブグループ解析では、膀胱がん患者は腎盂がんや尿管がん患者よりも、また術前補助化学療法を受けた患者は受けていない患者よりも効果量が大きかったが、試験デザインを考慮すれば、これらは仮説生成的な知見と考えるべきである」としている。

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第58回 ワクチン接種50回/日以上の病院に日額10万円交付/厚労省

<先週の動き>1.ワクチン接種50回/日以上の病院に日額10万円交付/厚労省2.オンライン診療、初診でも条件付きで抗がん剤など処方可能に3.骨太方針2021原案、コロナ対策を最優先に4つの原動力を推進4.医学部「地域枠」定員増の延長など、医師確保を目指す知事の会が提言5.全国推計2万人、医療的ケア児の支援法が今秋にも施行へ1.ワクチン接種50回/日以上の病院に日額10万円交付/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスワクチン接種を担う医療機関への支援策として、個別接種を1日50回以上実施した病院に対して1日当たり10万円の交付を行うことを明らかにした。さらに、人員体制を整えた上で、1週間のうち1日でも条件を満たした週が7月末までに4週間を超えた病院に対しては、医師1人につき7,550円/時、看護師ら1人当たり2,760円/時を上乗せで補助する。また、診療所に対しては、7月末までに(1)1週間で100回以上の接種を4週以上実施した場合2,000円/回、(2)1週間で150回以上の接種を4週以上実施した場合3,000円/回を交付する。なお、いずれの要件も満たさない週に限り、診療所が1日当たり50回以上接種すれば、1日につき10万円を定額で交付する。(参考)資料「新型コロナワクチンをめぐる主な課題と対応・支援策(個別接種を行う医療機関の皆さまへ)」について(厚労省)1日50回超の接種、病院に1日当たり10万円交付 診療所にも手厚く支援、厚労省(CBnewsマネジメント)2.オンライン診療、初診でも条件付きで抗がん剤など処方可能に厚労省は、新型コロナウイルス感染により自宅療養している患者などについては、オンライン診療の初診でも、診療報酬における薬剤管理指導料「1」の対象となる薬剤(抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、抗不整脈薬、抗てんかん薬など)の処方を、条件付きで認めることを通知した。初診でそれらの薬剤を処方するには、対面診療が原則である。ただし、自宅療養中などを理由に対面診療を実施できない場合には、看護師が患者の側に同席した上で、医師が処方の必要性を判断し、対面診療を含めて必要なフォローアップを行うことを前提に、当該薬剤のうち緊急的に必要な薬剤の処方を実施できることとなった。(参考)資料「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関するQ&A」の改定について(日本病院会)オンライン診療 抗がん剤など 初診から条件付きで処方 厚労省(NHK)3.骨太方針2021原案、コロナ対策を最優先に4つの原動力を推進9日に開催された内閣府の経済財政諮問会議では、経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)の原案がまとめられた。今回の方針は、新型コロナ対策に最優先で取り組みつつ、1.グリーン社会の実現、2.官民挙げたデジタル化の加速、3.日本全体を元気にする活力ある地方創り~新たな地方創生の展開と分散型国づくり~、4.少子化の克服・子供を産み育てやすい社会の実現と、4つの課題に重点的な投資を行うことが発表された。社会保障制度改革については、(1)感染症を機に進める新たな仕組みの構築、(2)団塊の世代の後期高齢者入りを見据えた基盤強化・全世代型社会保障改革が示され、今回のコロナウイルス対応の検証や、救急医療・高度医療の確保の観点を踏まえ、病院の連携強化や機能強化・集約化の促進を通じて、将来の医療需要に沿った病床機能の分化・連携により地域医療構想を推進する。(参考)経済財政運営と改革の基本方針 2021(仮称)(原案)(内閣府)「医療資源の散財」が課題、地域医療構想の推進、診療報酬の包括化等で「病院の集約化」進めよ―骨太方針2021・原案(GemMed)4.医学部「地域枠」定員増の延長など、医師確保を目指す知事の会が提言医師不足に悩む岩手県、新潟県など12県の知事で組織する「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」は、9日にWeb会議を開き、医師の養成体制強化のために、医学部の教育体制充実に対する財政支援や大学医学部の入学定員のうち「地域枠」の臨時定員増の延長などを国に求める提言を決議した。今後、国や厚労省に対して、さらなる実効性のある医師不足・偏在対策の働きかけを行なっていくだろう。(参考)医学部定員増、延長を 医師不足の12県知事会提言(茨城新聞)医学教育充実へ財政支援など提言 知事の会が決議(日経新聞)5.全国推計2万人、医療的ケア児の支援法が今秋にも施行へ医療的ケア児に対して、国や自治体による支援を義務づける「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が11日に参議院本会議にて全会一致で可決、成立した。全国に人工呼吸器など医療的な援助が必要な医療的ケア児は2万人いると推計されるが、医療的ケア児が適切な支援を受けられるように、学校や保育所に喀痰吸引が可能な看護師や保育士を配置することなどを自治体や国に対して求める。今年の9月から施行される見通し。(参考)「医療的ケア児」支援する法律が成立 秋にも施行へ(NHK)「医療的ケア児支援法」が可決 全国医療的ケア児者支援協議会が提言活動を行ってきた医療的ケア児支援が自治体の責務に(認定NPO法人フローレンス)

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早めに動かないと売れ残る!「ヤバい診療所」のパターン2つ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第19回

第19回 早めに動かないと売れ残る!「ヤバい診療所」のパターン2つ漫画・イラスト:かたぎりもとこ高齢の開業医にとって、医業承継はいわゆる「終活」を連想させる取り組みでもあり、なかなか前向きに取り組めない方も多いかもしれません。しかし、だからこそ、きちんと早期に準備をしたうえで、有利な条件で承継できるタイミングを選ぶことが重要なのです。とくに下記のようなケースは、患者数を維持できているフェーズでの承継が望ましいでしょう。(1)土地建物を自己所有、かつ土地が広く建物が大きい(2)少子高齢化・過疎化が全国平均よりも早く進むエリアに位置する(1)土地建物を自己所有、かつ土地が広く建物が大きい患者数が多く、売り上げが立つからこそ、広い診療所を維持・運営することが見合うわけです。しかし、承継案件でよくあるのが、以前は有床診療所だったのが、医師の高齢化と共に規模を縮小し、現在は無床(外来のみ)で、3階建ての建物のうち1階部分しか使っていない、といったケースです。買い手が建物全部を活用する開業プランを持っていればよいですが、最初からそうした大掛かりな開業プランを持つ方はまれです。無床診療所を開業しようと考える医師から見れば、活用できていないスペースが大きいほど余計な固定費がかかることになり、案件自体がマイナスイメージとなって承継が成立する確率が大きく下がってしまうのです。(2)少子高齢化・過疎化が全国平均よりも早く進むエリアに位置する将来的に患者数が増えることが見込めないエリアでは承継成立の確率が下がる、ということは理解しやすいでしょう。診療所経営における「集患対策」の手法は限られます。一般企業であれば広告を打つなどさまざまなマーケティング手法が使えますが、診療所経営では規制が多く、診療報酬制度のために価格競争にも限界があります。よって「どのエリアで開業するか」という点が最も重要になるのです。こうした前提に立つと、患者数が他エリアよりも早く減少する可能性があり、かつ、すでに患者が少ない診療所を承継するのは買い手にとって非合理な判断になるのです。上記のような不利な条件で開業されている方は、自分の体力・気力を見ながら承継を検討し始めるのではなく、早くから準備を進め、経営権を先に譲渡したうえで譲渡後も非常勤として勤務する、といった手段を取ることで、医業承継成立の確率を上げつつ、体力や希望に沿った働き方ができるでしょう。

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インサイド・ヘッド(続編・その3)【意識はなんで「ある」の? だから自分がやったと思うんだ!】Part 1

今回のキーワード社会脳向社会的行動反社会的行動決定論自由意志両立論なんで意識は「ある」の?脳の正体とは、舞台装置、モニター装置、解釈装置であることが分かりました。そして、これらの3つの装置によって生まれる私たちの意識は、現実の世界をそのまま認識し、自分が自分であり、そして自分の考えと行動は自分が決めている(自由意志はある)と思い込まされていることが分かりました。例えるなら、意識は、観客でありながら、バーチャルリアリティ(舞台装置)によって主役にお膳立てされ、ワイプ画面(モニター装置)によって主役を実感し、解説者(解釈装置)によって主役になりきって裏方(脳)の手柄を横取りしていると言えます。それでは、そもそもなぜこの意識は「ある」のでしょうか? ここから、意識の起源を3つの段階に分けて、その答えに進化心理学的に迫ってみましょう。そして、発達心理学的に補足してみましょう。 (1)舞台装置のみの原始的な意識今から10数億年前に太古の原始生物が誕生してから、臭いで獲物を察知したら、近づくように進化しました。5億年前に魚類が誕生してから、天敵の気配を察知したら逃げるように進化しました。この段階では、獲物や天敵がいるかどうかを感じる原始的なレベルの舞台装置です。さらに、2億年前に哺乳類が誕生してから、記憶の学習をするように進化しました。そして、手続き記憶とエピソード記憶が生まれました。こうして、舞台装置がレベルアップしていきました。1つ目の意識の段階は、舞台装置のみの原始的な意識です。この段階では、外界の刺激に対して、本能や習性(記憶の学習)で反射的に生きているだけです。自分と周りの区別はなく、ましてや自分とは何かという意識もありません。舞台装置によって、自分と世界が一体化した舞台の中にいるだけです。(2)モニター装置が加わった俯瞰的な意識2,000万年前に類人猿が誕生してから、群れをつくり、その競い合いの中で、相手の次の行動を察知(予測)するように進化しました(ミラーニューロン)。約700万年前に人類が誕生してから、約300万年前に部族をつくり、競い合いに加えて助け合いの中で、周りとうまくやっていく能力が進化しました(社会脳)。この能力は、相手の意図を察知する(読む)ことです(心の理論)。そして、相手の心(意識)の視点に立つだけでなく、自分から離れて自分自身を見る視点に立つことでもあります(自己覚知)。さらに、自分は、相手を見ていると同時に相手から見られているという2つの視点に立つことでもあります(メタ認知)。こうして、同時並行的にものごとを頭の中に留めるワーキングメモリーが生まれました。そして、モニター装置がレベルアップしていきました。2つ目の意識の段階は、モニター装置が加わった俯瞰的な意識です。この段階では、自分と周りは区別され、世界をより認識できるようになります。ただし、その多くが「今」に限定されます。つまり、今その瞬間の俯瞰的な意識があるだけで、過去を振り返ったり、未来に思いを馳せるという意識はまだありません。モニター装置によって、「今」の自分と世界を俯瞰しています。発達心理学的に言えば、この段階は2歳からになります。発達心理の実験において、生後10ヵ月から、相手の意図を察知することが指摘されています。そして、2歳前後から、鏡の中の自分が分かるようになります。ちなみに、鏡の中の自分が分かる動物は、まさに類人猿をはじめとする社会性のある動物であることが分かっています。(3)解釈装置も加わった観念的な意識20万年前に現生人類が誕生してから、言葉を話すように進化しました。そして、言葉によるエピソード記憶の積み重ねにより、意味記憶が生まれ、10万年前には貝の首飾りを信頼の証にするなどシンボルを使うようになりました(概念化)。そして、過去、現在、未来という時間の概念も分かるようになりました。こうして、解釈装置がレベルアップしていきました。3つ目の意識の段階は、解釈装置も加わった観念的な意識です。この段階では、世界の認識は、今だけでなく、連続的な時間軸の中で行われます。つまり、自分と相手(社会)を時間的一貫性があると観念的に考える意識が出てきます。解釈装置によって、自分と世界はどうつながりがあるかを解釈しています。発達心理学的に言えば、この段階は4歳からになります。4歳から時間の概念が分かるようになります。そして、10歳には、周りからどう見られているか、自分や集団のアイデンティティを意識するようになります。これは、同時に、いじめなどの同調の心理(解釈の共有)や非行(アイデンティティ危機)が始まることでもあり、11歳のライリーに重なります。なお、記憶のメカニズムの詳細については、関連記事1をご覧ください。 次のページへ >>

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インサイド・ヘッド(続編・その3)【意識はなんで「ある」の? だから自分がやったと思うんだ!】Part 2

なんで私たちは自由意志があると思ってしまうの?意識の起源は、舞台装置のみの原始的な意識、モニター装置が加わった俯瞰的な意識、そして解釈装置も加わった観念的な意識の3段階からなることが分かりました。そして、意識が「ある」のは、生存と生殖だけでなく、社会的関係にも必要だからであるということも分かりました。ここで、私たちに自由意志があると思ってしまう(思い込まされている)原因が見えてきます。それは、先ほどご紹介した、社会的関係によって進化した社会脳です。社会脳とは、社会的関係を維持するために必要な脳の働きであると説明しました。つまり、自由意志とは、その能力が実際にあるのではなく、この社会脳によってその能力があると思う(思い込まされている)「概念」です。つまり、自由意志があると思うこと(自由意志があるという概念)は、相互作用する社会的関係を維持する進化の歴史で適応的であったということです。これは、実際に心理実験で確かめられています。この実験では、被験者を2つのグループに分けます。1つのグループには、決定論を説いた文章(自由意志の否定)を読んでもらいます。もう1つのグループには、人生を前向きに展望する文章(自由意志の肯定)を読んでもらいます。そして、コンピュータによるテストを受けます。この時、ズルができるように意図的な細工をします。すると、自由意志の否定グループは、肯定グループよりズルする人が有意に多かったのでした。ここから、自由意志への不信感が「真面目に努力しても無駄」「ズルをしてもよい」という心理に影響を与えたと結論付けられました。つまり、自由意志は、あるかどうかの能力の問題ではなく、あると思うかどうかの信念(解釈装置による解釈)の問題であったということです。そして、その信念を持つように影響を受けることで(その能力があると思うことで)、私たちの人生は、より向社会的なものになっていくということです。たとえば、犯罪の責任として懲罰があることで、犯罪(反社会的行動)が抑止されます。また、認知行動療法やマインドフルネスなどのセラピーを自分で取り組むことで(取り組むという相互作用の影響を受けることで)、ストレス対策(向社会的行動)が促されるというわけです。結局、自由意志はないの?あるの?そもそも自由とは、不自由さ(制約するもの)があるからこそ生まれる相対的な概念です。自由意志の自由とは、どんな制約からの自由かを整理する必要があります。脳の働きから自由か不自由かと考えたとき、脳の働きは完全なアルゴリズム(決定論)によって成り立っています。この点で、私たちに自由意志はないです。一方、社会的関係の中で責任を伴う選択肢を選ぶ制約から自由か不自由かと考えたとき、その相互作用の中で向社会的な行動から反社会的な行動まで無数の選択肢を選ぶことができます。この点で、私たちに自由意志はあります。つまり、不自由さ(制約)の対象が違うということです。自由意志の二重解釈です。これは、決定論と自由意志を両立させる両立論と呼ばれています。たとえば、ライリーは、イカリという小人(脳のアルゴリズム)の暴走でママの財布からクレジットカードを盗みました。この解釈では、ライリーに自由意志はないです。しかし、ライリーは、あとでママに打ち明けて、ママからたしなめられることで、次から盗んだりしないように向社会的になっていくという相互作用が起きています。この解釈では、ライリーに自由意志はあります。“Inside out”(原題)とは?タイトルの「インサイドヘッド」とは、まさに「頭の中」という意味です。ただし、これは日本語のタイトルです。もともとのタイトルは、”Inside out”、つまり「裏返し」「ひっくり返している」という意味です。このタイトルに込められた制作者の裏メッセ-ジとは、「実は主役は心(意識)ではなく脳だよ」とまさに視点をひっくり返すことでした。それでも、私たちは、その脳をより良く理解することで、脳は、主役の座を奪う黒幕であると忌まわしく思うのではなく、より良く生きる実感を味わわせてくれる陰の立役者であるとありがたく思うことができるのではないでしょうか? そして、意識は実は観客であるという視点を持つことで、より俯瞰して自分自身を見ることができるのではないでしょうか? 1)意識はいつ生まれるのか:マルチェッロ・マッスィミーニ、ジュリオ・トノーニ、亜紀書房、20152)あなたの知らない脳:デイヴィッド・イーグルマン、早川書房、20163)<わたし>はどこにあるのか:マイケル・S・ガザニガ、紀伊國屋書店、20144)うぬぼれる脳 「鏡の中の顔」と自己認識:ジュリアン・ポール・キーナン、NHKブックス、20065)意識と自己:アントニオ・ダマシオ、講談社学術文庫、2018<< 前のページへ■関連記事ペコロスの母に会いに行く【認知症】

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第38回 変動係数とは?【統計のそこが知りたい!】

第38回 変動係数とは?「変動係数」はバラツキを表す指標の1つです。通常、私たちが使うバラツキを表す指標は「標準偏差」「分散」がほとんどです。「データをみるうえで変動係数がないと困る」という場面が少ないからかもしれません。しかし、変動係数はとても便利な統計の道具の1つです。変動係数を知るといろいろなことがわかります。今回は、変動係数について解説します。■変動係数(Coefficient of variation)標準偏差を平均で割った値を「変動係数」といいます。変動係数は単位のない数値で、相対的なバラツキを表しています。男性と女性の身長などの平均値が異なる集団、身長(cm)と体重(kg)などのデータ単位の異なる集団のバラツキを比較する場合に用いられます。■変動係数の計算式ある健診センターで、デジタル身長体重計を新しく導入することにしました。実際に検診で使用する前に何人かの職員で身長と体重を測定してみたところ、下表のデータが得られました。身長と体重それぞれの変動係数を求めてみましょう。身長、体重をそれぞれ前述の計算式にあてはめて計算します。身長の変動係数:96÷160=0.6体重の変動係数:55÷50=1.1となります。標準偏差の値が大きいからバラツキも大きいと勘違いしないようにすることが大事です。身長(cm)と体重(kg)のように単位が異なる標準偏差を、そのまま数値の大小でバラツキの大きい小さいを判断することはできません。■変動係数に関する留意点上記の例でもわかるように「変動係数には単位がありません!」。これは重要な特徴です。単位が異なるデータはもちろんですが、単位が同じだとしても平均値が異なるデータの標準偏差では、比較すると意味がありません。そのようなときが変動係数の出番です。単位がなければ、どのようなスケール、どのような単位であっても比較可能になります。「変動係数がいくつ以上あればバラツキが大きい」という統計学的基準はありませんが、1以上は「大きい」、0.5以上1未満は「やや大きい」といえます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問3 標準偏差と標準誤差の違いは何か?質問6 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その1)質問6(続き) 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その2)

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ウェアラブルデバイスを活用し、間質性肺疾患の発症を予測/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2021年6月4日、化学放射線療法後にデュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)による治療を受けたStage IIIの切除不能な非小細胞肺がん患者を対象に、間質性肺疾患(ILD)の発症を予測するモデル構築に向けた探索的試験(以下、iDETECT study)を、6月より開始する。 iDETECT studyの目的は、ウェアラブルデバイス等を用いて収集したデータを基に初期症状のILDを早期に検出することにより、将来的にILDが重症化する前に適切な医療サービスを受けることができる環境の創出。 Stage IIIの非小細胞肺がんでは、治療機会を最大限に維持し、根治を目指すことが重要である。一方、化学放射線治療後にデュルバルマブを投与した日本人患者では、ILDが有害事象で最多を占めている。ウェアラブルデバイス等のデータを臨床情報と組み合わせることで、ILD早期発見・発症予測ができるかを検討していくという。iDETECT study試験概要・試験目的:デュルバルマブを投与している切除不能なステージIIIの非小細胞肺がん患者の、将来的なGrade2以上のILD発症や疾患の進行状態を、機械学習により予測することが可能であるかを検証する・検証データ:患者の臨床データおよび患者がウエアラブル機器と携帯アプリから回収した血中酸素飽和度、呼吸、脈拍数、咳データ・試験対象:日本でイミフィンジを投与している切除不能なステージIIIの非小細胞肺がん患者150例・試験期間:2021年6月~2022年12月・使用デジタル機器・技術:株式会社クォンタムオペレーションによるウェアラブルデバイス(血中酸素飽和度、呼吸、脈拍数を測定)および、ResApp Health社による咳の回数を測定できる携帯アプリ・AIモデル開発(ILD発症予測モデル開発):エムスリー株式会社

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アトピー検査キットをコロナ重症化判定に適応追加/塩野義

 塩野義製薬は6月7日、アトピー性皮膚炎の重症度を診断する検査キット「HISCL TARC試薬」について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性患者の重症化予測の補助を使用目的とする適応追加の承認を同日付で取得したと発表した。COVID-19の発症初期から重症化リスクを判別することで、リスクに応じた最適な措置につなげ、医療体制の逼迫や医療崩壊を回避する一助となることが期待される。現在、保険適用を申請中。 「HISCL TARC試薬」は、2014年にシスメックスと共同開発したTARC1)を測定する検査キットで、すでにアトピー性皮膚炎の重症度評価の補助を目的とした体外診断用医薬品として使用されている。国立国際医療研究センターによる臨床研究では、COVID-19重症化患者においては、発症初期から血清中のTARC値が低いことが確認されており、1回の測定で患者の重症化を早期に予測できる分子マーカーとしてTARCの有用性が示されているという。 1) 71 個のアミノ酸で構成されるタンパク質で、Th2細胞を炎症部位に遊走させるケモカイン群の1 つ。 COVID-19の重症化予測マーカーとしては、2021年2月に保険適用を受けたシスメックス社の「HISCL IFN-λ3試薬」があり、主に入院患者に対して重症化の兆候を早期に把握することを目的に使用されている。塩野義製薬は、今回の適応追加承認により、COVID-19発症初期から重症化リスクを判別することで、リスクの高い患者を入院管理、リスクの低い患者を宿泊療養や自宅療養とするなど個別に最適な措置につなげていくことが期待されるとコメントしている。

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BRCA変異陽性HER2-早期乳がんへの術前talazoparib、単剤でpCR45.8%(NEOTALA)/ASCO2021

 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異を有するHER2陰性早期乳がんに対する術前のtalazoparib単剤投与が、良好なpCR率を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJennifer Keating Litton氏が、第II相NEOTALA試験の早期解析結果を発表した。 本試験は、非無作為化、単群の多施設共同非盲検試験。gBRCA変異を有するHER2陰性早期乳がんに対する術前補助療法としてのtalazoparibの有効性と安全性の評価を目的に実施された。・対象:gBRCA変異を有するHER2陰性早期進行乳がん患者 61例・試験群:talazoparib(1mg/日、中等度腎機能障害がある場合0.75mg/日)を24週経口投与・評価コホート:[評価対象集団]治療開始時に処方されたtalazoparibについて80%以上の投与を受け、乳房手術と病理学的完全奏効(pCR)評価を受けた患者およびpCR評価前に進行した患者[安全性およびITT解析集団]1回以上のtalazoparib投与を受けた全患者・評価項目:[主要評価項目]独立中央委員会(ICR)評価による評価対象集団におけるpCR。本試験における有効性は事後確率としてのpCR>45%とされた。[副次評価項目]ICR評価によるITT集団におけるpCR、両集団における残存腫瘍量(RCB)、治験担当医評価(INV)による両集団におけるpCR、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)、安全性など※評価は術後に行われ、治験担当医選択による術後抗がん剤治療は可能とされた。 主な結果は以下のとおり。・talazoparibによる治療を受けた61例のうち、48例が評価対象集団の条件を満たした。・ITT集団のベースライン特性は、平均年齢44.6歳、閉経前/後が59.0%/41.0%、BRCA1/BRCA2変異陽性が78.7%/21.3%、TNBCが100%、StageI/II/IIIが32.8%/44.3%/22.9%。また、扁平上皮がん1例を除き、他はすべて腺がんであった。・ITT集団における平均治療期間は23.3週間で、90.2%の患者がtalazoparibによる治療を20週以上受けていた。平均相対的治療強度(RDI)は84.5%であった。・ICR評価によるpCRは、評価対象集団で45.8%/ITT集団で49.2%。・INV評価によるpCRは、評価対象集団で45.8%/ITT集団で47.5%。・ICR評価によるRCBは、0:評価対象集団45.8%/ITT集団49.2%、I:0%/1.6%、II:31.3%/27.9%、III:0%/0%、その他:22.9%/21.3%。・治療中に発生した有害事象は、患者の95.1%で報告された(Grade1:36.1%、Grade2:14.8%、Grade3:42.6%、Grade4:1.6%)。・多くみられたのは疲労(Grade1:55.7%、Grade2:19.7%、Grade3:1.6%)、吐き気(Grade1:50.8%、Grade2:11.5%、Grade3:1.6%)、脱毛症(Grade1:54.1%、Grade2:3.3%)、貧血(Grade1:6.6%、Grade2:1.6%、Grade3:39.3%)。死亡例は報告されていない。 Litton氏は、術前talazoparib単剤療法は有効であり、アントラサイクリン+タキサンベースの併用化学療法で観察された値に匹敵するpCR率を示し、一般的に忍容性は良好で、新たな安全性シグナルは確認されていないと結論づけている。

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