サイト内検索|page:61

検索結果 合計:35619件 表示位置:1201 - 1220

1201.

monarchE試験のOS結果が発表/ESMO2025

 HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がん患者を対象に、術後内分泌療法(ET)へのアベマシクリブ追加の有用性を検討したmonarchE試験の全生存期間(OS)の解析の結果、アベマシクリブ+ET併用療法は、ET単剤療法と比べて死亡リスクを15.8%低減させたことを、Royal Marsden NHS Foundation TrustのStephen R. Johnston氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。 monarchE試験は、HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がん患者5,637例を、2年間の術後療法としてアベマシクリブ+ET群とET単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相多施設共同無作為化非盲検試験。これまでの解析では、アベマシクリブ追加による無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)の5年時のベネフィットが報告されている。今回は、主要副次評価項目であるOSのほか、更新されたiDFSとDRFSの結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2025年7月15日で、追跡期間中央値は6.3年であった。・OSイベントは、アベマシクリブ+ET群301例、ET単独群360例に発生した。アベマシクリブ併用によって死亡リスクが15.8%低減し、事前に規定されていた有意水準を満たした(ハザード比[HR]:0.842、95%信頼区間[CI]:0.722~0.981、p=0.0273)。7年OS率は、アベマシクリブ+ET群86.8%、ET単独群85.0%であった。・転移の発生率は、アベマシクリブ+ET群6.4%、ET単独群9.4%であった。・iDFSのベネフィットは7年時点でも持続していた(HR:0.734、95%CI:0.657~0.820、p<0.0001)。7年iDFS率は、アベマシクリブ+ET群77.4%、ET単独群70.9%であった。・DRFSのベネフィットも持続していた(HR:0.746、95%CI:0.662~0.840、p<0.0001)。7年DRFS率は、アベマシクリブ+ET群80.0%、ET単独群74.9%であった。・OS、iDFS、DRFSの改善は、すべてのサブグループで一貫して認められた。・新たな安全性上の懸念や遅延毒性は認められなかった。

1202.

寛解後の抗精神病薬減量は認知機能改善に寄与するか

 寛解した精神疾患患者では、再発リスクを増加させることなく、抗精神病薬を減量することが可能である。しかし、抗精神病薬の漸減が認知機能改善につながるかどうかは、これまでよくわかっていなかった。国立台湾大学のChun-I Liu氏らは、抗精神病薬の漸減を行った患者と固定用量のまま維持した患者における認知機能の変化を比較した。Psychological Medicine誌2025年8月27日号の報告。 安定期統合失調症関連精神病患者を対象に、2年間のプロスペクティブ研究を実施した。抗精神病薬の漸減群または維持群に分類した。認知機能は、ベースライン時、1年後、2年後にWAIS-III成人認知機能検査中国語版を用いて評価した。抗精神病薬の減量率と認知機能改善との関係の評価には、スピアマンの相関係数を用いた。また、アリピプラゾール使用群と非使用群にける認知機能も比較した。 主な結果は以下のとおり。・漸減群は、総合知能指数(IQ)、とくにワーキングメモリー、情報および算数のサブテストスコアにおいて有意な改善を示したが、再発率には両群間で有意差は認められなかった。・減量率と総合IQ(72例、r=0.242、p=0.041)、ワーキングメモリー指数(72例、r=0.284、p=0.016)、算数のサブテスト(72例、r=0.295、p=0.012)の改善との間に、統計的に有意な用量反応相関が認められた。・アリピプラゾール使用群と非使用群との間で、認知機能の変化に差は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬の減量は、いくつかの認知機能領域における患者パフォーマンスを改善する可能性がある。本知見は、寛解した精神疾患患者における抗精神病薬の漸減のリスクとベネフィットの比を評価する際、考慮する価値がある」と結論付けている。

1203.

胃がん初のFGFR2b阻害薬、長期追跡では治療効果が減弱(FORTITUDE-101)/ESMO2025

 FGFR2b過剰発現は、胃がんにおいて比較的高頻度にみられ、新たな薬剤標的として注目されている。bemarituzumab(BEMA)はFGFR2bを標的とする初の抗体薬であり、今年6月に開発元のプレスリリースで、胃がんに対して全生存期間(OS)を有意に延長したとの発表があり、詳細なデータが待たれていた。しかし、長期追跡ではその効果が減弱する傾向が認められたという。10月17~21日に行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)Presidential Symposiumにおいて、韓国・延世大学校医科大学のSun Young Rha氏が、第III相FORTITUDE-101試験の結果を報告した。・試験デザイン:第III相国際共同ランダム化二重盲検試験・対象:切除不能または転移のあるFGFR2b過剰発現(IHC 2+/3+の10%以上)、未治療、非HER2陽性の胃または胃食道接合部がん(G/GEJC)患者・試験群:BEMA (15mg/kgを2週ごと、1サイクル目の8日目に7.5mg/kg追加)+mFOLFOX6(BEMA群)、FGFR2b過剰発現159例・安全性解析275例・対照群:プラセボ群、FGFR2b過剰発現165例・安全性解析267例・評価項目:[主要評価項目]FGFR2b過剰発現例におけるOS[副次評価項目]FGFR2b過剰発現例における無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・データカットオフ:2024年12月9日 主な結果は以下のとおり。・登録547例のうち、主要解析集団はBEMA群159例、プラセボ群165例であった。2024年12月9日時点の中間解析(追跡期間中央値11.8ヵ月)では、BEMA群で有意なOSの延長が認められた(中央値17.9ヵ月vs.12.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.43~0.86、p=0.005)。PFSも有意に改善し(8.6ヵ月vs.6.7ヵ月、HR:0.71、p=0.019)、ORRも上昇傾向を示した。・一方、2025年6月20日時点のフォローアップ解析(追跡期間中央値19.4ヵ月)では、OS中央値14.5ヵ月vs.13.2ヵ月、HR:0.82(95%CI:0.62~1.08)と有意差は失われ、治療効果の減弱が確認された。・安全性解析では、BEMA群ではGrade3以上の治療関連有害事象が60.0%に発生し、プラセボ群の18.4%を大きく上回った。好中球減少などは両群に共通していたが、BEMA群は角膜障害などの眼毒性が特徴的で、治療継続のために眼科的モニタリングが行われた。 研究者らは「現在、FORTITUDE-102試験(BEMA+mFOLFOX6+ニボルマブ群とmFOLFOX6+ニボルマブ群を比較)が進行中であり、BEMAの最適な適応集団や長期有効性がさらに明らかにされる見通しである」とした。 ディスカッサントのYelena Y. Janjigian氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)は「FORTITUDE-101試験は2年OS率に有意差がなく、実臨床を変えるものではなかった。現在進行中のFORTITUDE-102試験はさらに大規模集団に対して最適化された有害事象管理を行い、対照群にPD-1阻害薬+化学療法を設定していることから、BEMAのより明確な評価が行えるだろう。FGFR2bADCや二重抗体薬の開発につなげることが将来的な戦略となるだろう」とした。

1204.

ALK陽性NSCLCへの術後アレクチニブ、4年OS率98.4%(ALINA)/ESMO2025

 ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の完全切除達成患者を対象に、術後アレクチニブの有用性を検討した国際共同第III相試験「ALINA試験」の主解析において、アレクチニブはプラチナ製剤を含む化学療法と比較して、無病生存期間(DFS)を改善したことが報告されている(ハザード比[HR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.13~0.43)1)。ただし、とくに全生存期間(OS)に関するデータは未成熟(主解析時点のイベントは6例)であり、より長期の追跡結果が望まれていた。そこで、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)において、Rafal Dziadziuszko氏(ポーランド・グダニスク大学)が、本試験の約4年追跡時点の結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB(4cm以上)/II/IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者で完全切除を達成した患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回)を2年間もしくは再発まで 130例(日本人15例)・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビンを3週ごと4サイクルもしくは再発まで 127例(日本人20例)・評価項目:[主要評価項目]DFS(StageII/IIIA集団→ITT集団の順に階層的に解析)[その他の評価項目]中枢神経系再発または死亡までの期間(CNS-DFS)、OS、安全性など 今回発表された主な結果は以下のとおり。・UICC/AJCC第7版に基づくStageIB/II/IIIAの割合は、アレクチニブ群11%/36%/53%、化学療法群9%/35%/55%で、UICC/AJCC第8版に基づくStageIB/IIA/IIB/IIIA/IIIBの割合は、それぞれ5%/8%/31%/51%/5%、4%/3%/35%/54%/5%であった。・UICC/AJCC第7版に基づくStageII/IIIA集団におけるDFS中央値は、アレクチニブ群未到達、化学療法群41.4ヵ月であった(HR:0.36、95%CI:0.23~0.56)。4年DFS率はそれぞれ74.5%、46.3%であった。・ITT集団におけるDFS中央値は、アレクチニブ群未到達、化学療法群41.4ヵ月であった(HR:0.35、95%CI:0.23~0.54)。4年DFS率はそれぞれ75.5%、47.0%であった。・DFSのサブグループ解析において、いずれのサブグループにおいてもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。・ITT集団における4年CNS-DFS率は、アレクチニブ群90.4%、化学療法群76.1%であった(HR:0.37、95%CI:0.19~0.74)。・ITT集団における4年OS率は、アレクチニブ群98.4%、化学療法群92.4%であった(HR:0.40、95%CI:0.12~1.32)。

1205.

冠動脈バイパス術後の新規AF発症、術後30日以後はリスク低い?/JAMA

 ドイツ・LMU University HospitalのFlorian E. M. Herrmann氏らは、同病院およびイエナ大学病院の心臓外科センターで研究者主導の前向き観察研究を実施し、植込み型心臓モニター(ICM)による1年間のモニタリングの結果、冠動脈バイパス術(CABG)後1年以内の新規心房細動(AF)の累積発生率は既報より高かったものの、術後30日以降はAF負担がきわめて低いことを明らかにした。CABG後のAF新規発生率や負担は不明であるが、米国のガイドラインでは非無作為化臨床試験に基づきCABG後新たにAFを発症した患者に対し60日間の経口抗凝固療法がクラス2a(中程度の強さ)で推奨されている。著者は「術後30日以降のきわめて低いAF負担は、現行ガイドラインの推奨に疑問を呈するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年10月9日号掲載の報告。AF既往歴のない初回単独CABG施行患者198例を登録 研究グループは、初回単独CABGで、3枝冠動脈疾患または左主幹病変に対し2本以上のバイパスグラフトを施行する、AFならびにその他の不整脈の既往がない術前左室駆出率が35%以上の成人(18歳超)を対象に、術中(皮膚閉鎖後)にICMを埋設し、持続モニタリングを開始した。 主要アウトカムは、持続モニタリングで検出されたCABG後1年以内の新規AF累積発生率。副次アウトカムは、1年間におけるAF累積持続時間、AF負担(AF累積持続時間/総モニタリング時間)、臨床アウトカムなどであった。 2019年11月~2023年11月に1,217例がスクリーニングされ、適格患者198例(男性173例[87.4%]、女性25例[12.6%]、平均年齢66歳[SD 9])が登録された。術後1ヵ月以降はAF負担中央値0、累積持続時間0分 198例中1例はモニタリング開始前に死亡し、197例(99.5%)で遠隔データ収集が開始され、192例(97.0%)が1年間の持続モニタリングを完了した。 198例中95例がCABG後1年以内に新規AFを発症し、累積発生率は48%(95%信頼区間:41~55)であった。 一方、副次アウトカムである1年間のAF負担中央値は0.07%(四分位範囲:0.02~0.23)、AF累積持続時間は370分であった。AF負担中央値は、術後1~7日目で3.65%(0.95~9.09)、8~30日目0.04%(0~1.21)、31~365日目0%(0~0.0003)であり、AF累積持続時間はそれぞれ368分、13分、0分であった。 退院後、3例で24時間を超えるAF発作が認められた。

1206.

世界の疾病負担とリスク因子、1990~2023年の状況/Lancet

 2010年以降、感染性・母子新生児・栄養関連(CMNN)疾患および多くの環境・行動リスク因子による疾病負担は大きく減少した一方で、人口の増加と高齢化が進む中で、代謝リスク因子および非感染性疾患(NCD)に起因する障害調整生存年数(DALY)は著しく増加していることが、米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Disease and Injury and Risk Factor Collaboratorsの解析で示された。Lancet誌2025年10月18日号掲載の報告。375の疾病・傷害、88のリスク因子について解析 研究グループは、死亡登録、各種調査、疾病登録および公表された科学論文を含む31万以上のデータソースを用い、375の疾病・傷害についてDALY、障害生存年数(YLD)、損失生存年数(YLL)を推定するとともに、88の修正可能なリスク因子が関与する疾病負担を算出した。疾病・傷害負担の推定に12万超のデータソースが、リスク因子推定に約5万9,000のデータソースが使用され、データ解析にはベイズメタ回帰モデリングツールのDisMod-MR 2.1や、新規ツールのDisMod-AT、時空間ガウス過程回帰モデル(ST-GPR)、比較リスク評価フレームワークなど、確立された方法が用いられた。 GBD 2023における疾病・傷害、リスク因子の推計値は、年齢(新生児早期から95歳以上までの25の年齢層)、性別(男性、女性、複合)、年次(1990~2023年までの各年)、および地域(204の国・地域を21の地域および7つのGBD super-regionに分類、加えて20ヵ国については660の地方自治体レベル)別に算出した。疾病・傷害ならびにリスク因子はそれぞれ4段階に分類した。NCDの負担は増加、虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病が主因 世界全体で総DALYは、2010年の26億4,000万(95%不確実性区間[UI]:24億6,000万~28億6,000万)から2023年は28億(95%UI:25億7,000万~30億8,000万)と6.1%(95%UI:4.0~8.1)増加した。一方で、人口増加と高齢化を鑑みた年齢標準化DALY率は12.6%(95%UI:11.0~14.1)減少しており、長期的に大きく健康状態が改善していることが明らかになった。 世界全体のDALYにおけるNCDの寄与は、2010年の14億5,000万(95%UI:13億1,000万~16億1,000万)から2023年には18億(95%UI:16億3,000万~20億3,000万)に増加したが、年齢標準化DALY率は4.1%(95%UI:1.9~6.3)減少した。DALYに基づく2023年の主要なレベル3のNCDは、虚血性心疾患(1億9,300万DALY)、脳卒中(1億5,700万DALY)、糖尿病(9,020万DALY)であった。2010年以降に年齢標準化DALY率が最も増加したのは、不安障害(62.8%)、うつ病性障害(26.3%)、糖尿病(14.9%)であった。 一方、CMNN疾患では顕著な健康改善がみられ、DALYは2010年の8億7,400万から2023年には6億8,100万に減少し、年齢標準化DALY率は25.8%減少した。COVID-19パンデミック期間中、CMNN疾患によるDALYは増加したが、2023年までにパンデミック前の水準に戻った。2010年から2023年にかけてのCMNN疾患の年齢標準化DALY率の減少は、主に下痢性疾患(49.1%)、HIV/AIDS(42.9%)、結核(42.2%)の減少によるものであった。新生児疾患および下気道感染症は、2023年においても依然として世界的にレベル3のCMNN疾患の主因であったが、いずれも2010年からそれぞれ16.5%および24.8%顕著な減少を示した。同期間における傷害関連の年齢標準化DALY率は15.6%減少した。主なリスク因子は代謝リスク、2010~23年で30.7%増加 NCD、CMNN疾患、傷害による疾病負担の差異は、年齢、性別、時期、地域を問わず変わらなかった。 リスク分析の結果、2023年の世界全体のDALY約28億のうち、約50%(12億7,000万、95%UI:11億8,000万~13億8,000万)がGBDで分析された88のリスク因子が主因であった。DALYに最も大きく影響したレベル3のリスク因子は、収縮期血圧(SBP)高値、粒子状物質汚染、空腹時血糖(FPG)高値、喫煙、低出生体重・早産の5つで、このうちSBP高値は総DALYの8.4%(95%UI:6.9~10.0)を占めた。 レベル1の3つのGBDリスク因子カテゴリー(行動、代謝、環境・職業)のうち、2010~23年に代謝リスクのみ30.7%増加したが、代謝リスクに起因する年齢標準化DALY率は同期間に6.7%(95%UI:2.0~11.0)減少した。 レベル3の25の主なリスク因子のうち3つを除くすべてで、2010~23年に年齢標準化DALY率が低下した。たとえば、不衛生な衛生環境で54.4%(95%UI:38.7~65.3)、不衛生な水源で50.5%(33.3~63.1)、手洗い施設未整備で45.2%(25.6~72.0)、小児発育不全で44.9%(37.3~53.5)、いずれも減少した。 2010~23年に代謝リスクに起因する年齢標準化負担の減少が小さかったのは、高BMI負担率が世界的に大きく10.5%(95%UI:0.1~20.9)増加したこと、顕著ではないがFPG高値が6.2%(-2.7~15.6)増加したことが主因であった。

1207.

ctDNA陽性のMIBC患者、術後アテゾリズマブ投与でDFS・OS改善(IMvigor011)/ESMO2025

 術後に1年間連続的に実施した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検査で陽性と判定された筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者において、術後療法としてのアテゾリズマブ投与はプラセボと比較して無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を有意に改善した。英国・Barts Cancer InstituteのThomas Powles氏が、第III相IMvigor011試験の主要解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。なお、本結果はNEJM誌オンライン版2025年10月20日号に同時掲載された。・対象:ctDNA陽性(術後1年まで6週ごとにctDNA検査・12週ごとに画像検査を実施)のMIBC患者[膀胱全摘除術後6~24週以内、(y)pT2-4aN0M0または(y)pT0-4aN+M0、画像上の病変なし、ECOG PS 0~2、術前化学療法歴は許容]・試験群(アテゾリズマブ群):アテゾリズマブ(1,680mg、4週ごと、最大1年まで) 167例・対照群:プラセボ 83例※ctDNA陰性患者は経過観察のみ実施 357例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師評価によるDFS[重要な副次評価項目]OS・無作為化からの観察期間中央値16.1ヵ月(データカットオフ:2025年6月15日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は年齢中央値がアテゾリズマブ群69歳vs.対照群67歳、PD-L1発現状態:IC 0/1(<5%)が64.7%vs.63.9%、術前化学療法歴ありが47.9%vs.39.8%、初回のctDNA検査で陽性となった症例が59.3%vs.59.0%であった。・ベースライン特性をctDNA陰性例と比較すると、陽性例では≦T2が少なく(アテゾリズマブ群27.5%vs.対照群28.9%vs.ctDNA陰性例46.8%)、リンパ節転移陽性例が多い(57.5%vs.57.8%vs.20.2%)傾向がみられた。・ctDNA陽性例における治験責任医師評価によるDFS中央値は、対照群(4.8ヵ月、95%信頼区間[CI]:4.1~8.3)と比較し、アテゾリズマブ群(9.9ヵ月、95%CI:7.2~12.7)で統計学的有意に改善した(ハザード比[HR]:0.64、95%CI:0.47~0.87、p=0.0047)。12ヵ月DFS率はアテゾリズマブ群44.7%vs.対照群30.0%、24ヵ月DFS率は28.0%vs.12.1%であった。・ctDNA陽性例におけるOS中央値は、対照群(21.1ヵ月、95%CI:14.7~NE)と比較し、アテゾリズマブ群(32.8ヵ月、95%CI:27.7~NE)で統計学的有意に改善した(HR:0.59、95%CI:0.39~0.90、p=0.0131)。12ヵ月OS率はアテゾリズマブ群85.1%vs.対照群70.0%、24ヵ月OS率は62.8%vs.46.9%であった。・ctDNA陽性となったタイミングによるサブグループ解析の結果、初回検査および以降の検査いずれの場合も、アテゾリズマブ群におけるDFSおよびOSのベネフィットが確認された。・ctDNAクリアランス(初回検査でctDNA陽性となった症例のうち、3サイクル目の第1日あるいは5サイクル目の第1日にctDNA陰性となった症例)の割合は、アテゾリズマブ群25.1%vs.対照群14.5%であった。・膀胱全摘除術後の観察期間中央値21.8ヵ月における、ctDNA陰性例の12ヵ月DFS率は95.4%、24ヵ月DFS率は88.4%であり、12ヵ月OS率は100%、24ヵ月OS率は97.1%であった。・観察期間中に再発した患者は、アテゾリズマブ群63.5%vs.対照群78.3%で、51.5%vs.54.2%の患者が次治療を受けていた。治療法は化学療法36.5%vs.31.3%、免疫療法15.6%vs.31.3%、抗体薬物複合体19.2%vs.19.3%などであった。・Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)はアテゾリズマブ群7.3%vs.対照群3.6%で発現し、TRAEによる死亡はアテゾリズマブ群で3例(1.8%)で発生した。アテゾリズマブ治療に関する新たな安全性上の懸念は認められていない。 Powles氏は今回の結果を受けて、連続的なctDNA検査により術後アテゾリズマブ療法によるベネフィットが得られる患者を特定でき、また、持続的にctDNA陰性を示した患者における不要な治療を避けることができるとしている。

1208.

アナフィラキシーへのアドレナリン点鼻投与の効果、エピペンと同等以上

 新たなエビデンスレビューによると、命に関わる重度のアレルギー反応を起こした人は、アドレナリンを主成分とするエピペンを太ももに刺すよりも点鼻スプレーを使った方が良いかもしれない。この研究では、液体または粉末のアドレナリンのスプレーによる鼻腔内投与は、注射による投与と同等か、場合によってはそれ以上の効果のあることが示されたという。英ロイヤル・ダービー病院のDanielle Furness氏らによるこの研究結果は、欧州救急医学会議(EUSEM 2025、9月28日〜10月1日、オーストリア・ウィーン)で発表された。 Furness氏は、「このレビューから、液体または乾燥粉末のアドレナリンの鼻腔内投与の効果はエピペンと同等であり、場合によってはエピペンよりも早く血流に到達する可能性のあることが分かった。現在のアナフィラキシーの治療薬はエピペンだが、この点鼻スプレーはエピペンと同等の効果を持つ、針を使わない適切な代替治療法となる可能性がある」とEUSEMのニュースリリースの中で述べている。 ナッツや虫刺されなどに強いアレルギーを持つ人は、アナフィラキシーショックを起こす可能性がある。アナフィラキシーショックが生じると、呼吸困難や血圧低下、意識障害が生じ、ただちにアドレナリンを投与しない限り命を失う可能性がある。米食品医薬品局(FDA)は2024年8月、アレルギー反応の緊急治療薬として初の点鼻スプレー薬「ネフィー点鼻液」を承認した。ネフィーはARSファーマ社によって製造されており、体重66ポンド(約30kg)以上の成人および小児に使用できる。 Furness氏らは、イスラエル、カナダ、タイ、米国、日本で実施された5件の研究のデータを分析してアドレナリンの注射による投与と点鼻投与を比較した。その結果、アドレナリンが血流に入るまでにかかる時間は点鼻投与で最大2.5〜20分であったのに対し、注射による投与では9〜45分であることが示された。また、点鼻投与による血中のアドレナリン濃度は、注射による投与と同等かそれ以上であることも判明した。どちらの投与法を用いた場合も、投与後の心拍数と血圧は同等であった。Furness氏はさらに、点鼻薬の保存期間は2年と注射薬(12〜18カ月)よりも長く、持ち運びも容易であると指摘している。 Furness氏は、「点鼻スプレーも、使い方や投与のタイミングについての明確な指示が必要なことに変わりはないが、特に注射針に恐怖を感じる人にとっては、病院外の公共の場でのアドレナリン投与がタイムリーに行われるようになることから、入院率を低下させられる可能性がある」と述べている。 Furness氏はさらに、「実臨床で、点鼻スプレーの安全性と有効性を裏付ける強力なエビデンスが得られれば、国のアナフィラキシーガイドラインに組み込まれる可能性があると考えている」と話し、「導入当初は、綿密かつ厳格なモニタリングを行い、期待通りの効果が得られなかった症例があれば医師に報告するよう促し、患者の安全を確保し、治療への信頼を維持する必要がある」と付け加えている。 本研究には関与していない、SRH Zentralklinikum Suhl(ドイツ)の救急科長であるFelix Lorang氏は、アドレナリンの点鼻スプレーが注射薬の非常に有用な代替品になることに同意している。同氏は、「針恐怖症や、常に持ち歩ける手軽さといった理由から、針を使うことに抵抗を感じる患者もいる。私の経験では、親戚や友人に針を使うことさえ、相手を傷つけたり怪我をさせたりするのではないかと恐れて躊躇する人も多い」と話し、「点鼻スプレーなら、このような障壁を克服できるだろう。さらなる研究で安全性と有効性が確認されれば、患者にとって有用な代替手段となるだけでなく、医療従事者が使用できる追加ツールにもなるだろう」との展望を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

1209.

第285回 コロナワクチンがICI治療のOSを有意に延長

INDEXええええ!ESMO2025のProffered Paper session新型コロナmRNAワクチンへの新たな期待ええええ!ここ半月以上、自民党の総裁選とそれに伴う政局のドタバタに振り回されてしまい、何とも言えないもどかしさを感じている。本来ならばコロナ禍の影響を受けて、今やオンラインでも視聴可能になった欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)にプレス登録して聴講するはずだったが、その機会も逃してしまった。とはいえ、悔しいのでここ数日、時間を見つけては同学会の抄録を眺めていたが、その中で個人的に「ええええ!」と思う発表を見つけた。演題のタイトルは「SARS-CoV-2 mRNA vaccines sensitize tumors to immune checkpoint blockade」。端的に結論を言えば、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン接種が免疫チェックポイント阻害薬による抗腫瘍効果を高める可能性の研究1)だ。抄録ベースだが、この研究内容を取り上げてみたい。ESMO2025のProffered Paper session発表者は米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのAdam J. Grippin氏である。mRNA関連創薬は、もともとはがんをターゲットとした治療ワクチンの開発を主軸としていて、米国・モデルナ社もこの路線でのパイプラインが形成され、たまたまコロナ禍が起きたことで、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンという形で日の目を見たことはよく知られている。Grippin氏らは、mRNAがんワクチンの研究から、同ワクチンが炎症性サイトカインへの刺激を通じて免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果の増強が得られることをヒントに、「もしかしたらがんに非特異的なmRNAワクチンでも同様の効果が得られるのではないか」と考えたらしい。そこで同センターで2017年1月~2022年9月までに生検で確定診断を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)、2019年1月~2022年12月までに治療を受けた悪性黒色腫の臨床データを抽出し、カプランマイヤー曲線、傾向スコアマッチング、およびCox比例ハザード回帰モデルを利用して全生存期間(OS)を評価したとのこと。ちなみに抄録レベルでは症例数は未記載だが、MDアンダーソンがんセンターのレベルでいい加減な臨床研究の可能性は低い。実際、抄録では研究にあたって同センターの倫理審査委員会の承認を受けていることが記載されている。その結果によると、免疫チェックポイント阻害薬による治療開始から100日以内の新型コロナmRNAワクチン接種有無で比較したOS中央値は、NSCLCで非接種群が20.6ヵ月、接種群が37.3ヵ月。3年OS率は非接種群が30.6%、接種群が55.8%だった。調整ハザード比[HR]は0.51(95%信頼区間[CI]:0.37~0.71、p<0.0001)であり、有意差が認められた。また、悪性黒色腫ではOS中央値は非接種群が26.67ヵ月、接種群が未到達。3年OS率は非接種群が44.1%、接種群が67.5%。調整HRは0.34(95%CI:0.17~0.69、p=0.0029)でこちらも有意なOS延長が認められたという。新型コロナmRNAワクチンへの新たな期待研究は明らかに後ろ向きではあるが、NSCLCでOS中央値が10ヵ月も違うことに個人的には正直驚きを隠せない。しかも、抄録によると、NSCLCではPD-L1検査(TPS)で低発現(TPS<1%)の症例でも新型コロナmRNAワクチン接種によるOSの延長効果が認められたとある。また、動物モデルでは、新型コロナmRNAワクチン接種によりI型インターフェロンの急増が誘発され、複数のがん抗原を標的とするCD8陽性T細胞のプライミングとがん細胞のPD-L1発現を上方制御することがわかった。さらに複数の動物がんモデルでも新型コロナmRNAワクチンと免疫チェックポイント阻害薬の併用で、免疫チェックポイント阻害薬の効果増強を確認したという。いずれにせよこの研究結果を見る限り、がんに特異的ではない新型コロナmRNAワクチンががん特異的抗原の発現を促すということになる。現在、モデルナは日本国内でもNSCLCと悪性黒色腫の個別化がん治療ワクチンの臨床試験中だが、今回の研究で示された可能性が前向き試験でも確認されれば、結構安上がり(あくまで個別化がん治療ワクチンや昨今発売された各種がんの治療薬との比較だが)ながん治療になるのではないか。個人的にはそこそこ以上に期待してしまうのだが。1)Grippin AJ, et al. Nature. 2025 Oct 22. [Epub ahead of print]

1210.

映画に学ぶ研究デザイン、主題と副題の構造から見た臨床試験【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第89回

映画は素晴らしい猛暑の夏もようやく勢いを失い、夜風に秋の気配を感じる季節となりました。静かな秋の夜長に私が好んで親しむのは映画です。映画の中で繰り広げられる人間模様・友情・恋愛・信頼・裏切り。これらは、登場人物の選択と行動を通じて、観る者に多くの示唆を与えてくれます。困難に直面した人々がいかに受け止め、いかに行動するか。その姿は、現実の私たちにとっても小さな指針となり得ます。映画は、単なる娯楽を超えて「人生の教科書」ともいえる存在です。映画の主題と副題映画を少し異なる視点で眺めると、そこには常に「主題」と「副題」があることに気付かされます。観客を惹きつける主題の背後で、静かに流れるもう一つの物語、それが作品に深みと余韻をもたらします。たとえば『ローマの休日』(1953年、監督:ウィリアム・ワイラー)。ヨーロッパの小国の王女とアメリカ人新聞記者の身分違いの恋を描いた名作です。「真実の口」や「スペイン広場のジェラート」など、印象的な場面の数々を通して、オードリー・ヘップバーンの魅力が存分に発揮されます。主題はロマンチックな恋愛劇ですが、その背後に「自由行動による精神的成長」という副題が潜みます。終盤の記者会見で、王女が「この街の思い出をいつまでも懐かしむことでしょう」と堂々と答える場面には、依存的だった少女が自立した女性へと成長する姿が象徴的に描かれています。次に『カサブランカ』(1942年、監督:マイケル・カーティス)。親ドイツ政権下のフランス領モロッコを舞台に、かつて愛し合った男女の再会を描いた作品です。「As Time Goes By」の旋律、「君の瞳に乾杯」の台詞、いずれも映画史に残る名場面です。主題は愛の再燃ですが、副題は「愛よりも義を選ぶ人間の尊厳と祖国への思い」です。酒場でドイツ軍士官が国歌を歌う中、「ラ・マルセイエーズを」と告げ、皆がフランス国歌を合唱する場面は、個人の愛と信念、そして自由への希求が交錯する名シーンです。さらに『国宝』(2025年邦画、原作:吉田 修一、監督:李 相日)。任侠の家に生まれながら、歌舞伎の道に生涯を賭けた男の半生を描きます。主演の吉沢 亮と横浜 流星が、血のにじむような努力で芸の世界を体現しています。ここでの副題は「血」です。それは遺伝や家系といった文字通りの“血”であり、逃れられぬ宿命の象徴でもあります。芸の美しさと血の呪縛、この二重性が作品全体を貫いています。主解析とサブ解析やや熱を帯びて3本の映画を紹介してしまいましたが、興味深いのは、この「主題と副題」の構造が、実は医学研究にも通じるという点です。臨床研究における「主解析(primary analysis)」は、映画の主題に相当します。「新薬Aは標準治療Bと比較して心血管イベントを減少させるか」といった主要仮説を、事前に定めた統計計画に基づき厳密に検証する中核部分です。一方で、「高齢者ではどうか」「女性ではどうか」「糖尿病合併の有無で異なるか」といった問いを掘り下げるのが「サブ解析(sub-analysis)」であり、これはまさに“もう一つの物語”を探る試みといえます。サブ解析の鍵は“prespecified”ただし、この副題的なサブ解析には慎重な姿勢が求められます。映画では脚本家の自由な発想が許されますが、科学研究では「後付けの脚本」は厳禁です。解析後に思い付いたサブ解析を「発見」として提示するのは、統計的な偶然を物語化する行為に等しいからです。100回試行すれば5回は偶然「有意」となる、その確率の罠に陥ってはなりません。「たまたま有意だった結果」を、あたかも当初から想定していたかのように語り出す研究者が現れたなら、査読者はすぐに見抜きます。価値あるサブ解析とは、研究計画書(プロトコル)に明示され、事前に意図された問いを持つものであり、それを示す形容が “prespecified” です。一方、事後的(post-hoc)なサブ解析の報告は、探索的研究として明示することが求められます。これは結果を見て新たな仮説を生成する段階であり、検証的研究とは明確に区別すべき性質のものです。近年の大規模臨床試験では、主解析と並行して事前登録されたサブ解析の重要性が増しています。たとえ主解析が有意でなくとも、「特定のサブグループで有効性が示された」ことが、その後の臨床実践を変える契機となる場合もあります。副次的な知見は主解析の理解を補い、現場への応用可能性を広げる意味を持ちます。これは、映画において脇役の一言や背景描写が、主題の理解を一層深めるのに似ています。もっとも、サブ解析が独り歩きして主解析を覆い隠してしまえば、研究の重心は失われます。主解析が映画の「結末」であるなら、サブ解析は「その余韻」といえるでしょう。余韻が強すぎれば結末はぼやけます。論文においても、主解析の明確な結論を中心に据え、サブ解析は補完的な位置付けとして提示することが重要です。研究者は映画監督映画において副題が主題を支え、作品に奥行きを与えるように、臨床研究におけるサブ解析も主解析を補い、データに立体感をもたらします。両者に共通する真理は、「副題は脚本の途中で思い付いてはいけない」ということです。副題は最初から物語の構造の一部として設計されているとき、初めてその輝きを放ちます。ローマの王女の成長も、『カサブランカ』の義も、そして臨床研究のサブ解析も――いずれも主題を支える副題として存在します。そう考えると、研究計画書とはまさに脚本であり、研究者とは科学という舞台を演出する映画監督なのかもしれません。

1211.

リンパ節腫脹の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第36回

画像を拡大するTake home messageリンパ節腫脹の原因は「MIAMI」という語呂合わせを活用して5つのカテゴリーに分けて整理しよう。リンパ節腫脹は、内科、外科、小児科、皮膚科など、さまざまな診療科で遭遇する重要なサインです。感染症など一過性で自然軽快するものも多い一方で、悪性疾患や自己免疫疾患、薬剤性、肉芽腫性疾患などが隠れている場合もあります。鑑別診断の挙げ方は多くありますが、網羅的に大まかにカテゴリー化する方法として、「MIAMI」(Malignancies・Infections・Autoimmune・Miscellaneous・Iatrogenic)という語呂合わせが提唱されています。今回は、この5つのカテゴリーに沿って、一緒に整理してみましょう。M:Malignancies(悪性腫瘍)悪性疾患によるリンパ節腫脹は、持続性・進行性・無痛性のことが多く、とくに高齢者や全身症状(発熱、体重減少、寝汗)を伴う場合には常に念頭に置く必要があります。代表的な疾患としては、悪性リンパ腫、白血病、転移性がん、カポジ肉腫、皮膚原発の腫瘍などが挙げられます。固定性で硬く、弾力のない腫脹がみられた場合は、早期の精査が推奨されます。I:Infections(感染症)感染症は最も頻度の高い原因です。細菌性では、皮膚粘膜感染(黄色ブドウ球菌、溶連菌)、猫ひっかき病(Bartonella)、結核、梅毒、ブルセラ症、野兎病などがあり、これらは病歴聴取と局所所見が診断の手掛かりとなります。ウイルス性では、EBウイルス、サイトメガロウイルス、HIV、風疹、アデノウイルス、肝炎ウイルスなどが含まれ、とくに伝染性単核球症では頸部リンパ節腫脹が目立ちます。まれですが、真菌、寄生虫、スピロヘータなども原因となることがあり、ヒストプラズマ症、クリプトコッカス症、リケッチア症、トキソプラズマ症、ライム病などが鑑別に挙がります。A:Autoimmune(自己免疫疾患)関節リウマチ(RA)やSLE(全身性エリテマトーデス)、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、成人スティル病などの自己免疫疾患もリンパ節腫脹を来すことがあります。これらは多くの場合、他の全身症状や検査所見(関節炎、発疹、異常免疫グロブリンなど)と合わせて判断する必要があります。とくに全身性疾患の初期症状としてリンパ節腫脹が出現することもあるため、見逃さないよう注意が必要です。M:Miscellaneous(その他)まれではあるものの、Castleman病(血管濾胞性リンパ節過形成)や組織球症、川崎病、菊池病(壊死性リンパ節炎)、木村病、サルコイドーシスなども鑑別に含まれます。これらは一見すると感染症や自己免疫疾患と似た臨床像を呈することがあるため、病理診断や経過観察を要することがあります。I:Iatrogenic(医原性)薬剤による反応性リンパ節腫脹や血清病様反応なども存在します。とくに抗てんかん薬、抗菌薬、ワクチン、免疫チェックポイント阻害薬などが関与することが知られており、最近の薬剤歴の確認が不可欠です。また、ワクチン接種後の一時的なリンパ節腫脹(とくに腋窩)は、画像上の偽陽性を招くこともあるため注意が必要です。リンパ節腫脹は多彩な疾患のサインであり、その背景を見極めるためには、構造的かつ網羅的なアプローチが求められます。「MIAMI」というフレームワークを活用することで、見逃してはならない悪性疾患や慢性疾患の早期発見につながります。必要な検査や専門科紹介のタイミングを逃さないようにしましょう。1)Gaddey HL, et al. Am Fam Physician. 2016;94:896-903.

1212.

脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕

近年の知見を反映し52項目を改訂!2022年1月から2023年12月までの2年間に発表された論文のうち「レベル1のエビデンス」「レベル3以下だったエビデンスがレベル2となっていて、かつ、とくに重要と考えられるもの」を採用する方針で、該当する項目(140項目中52項目)を改訂しました。主な改訂点「改訂のポイント」を新設担当班長・副班長がまとめた「改訂のポイント」を各章の冒頭に新設しました。前版から改訂した箇所や改訂の経緯などについて把握する際に、ぜひご活用ください。近年の知見をタイムリーに・広範囲に反映各疾患の治療選択肢として登場したGLP-1受容体作動薬や抗アミロイド抗体治療薬に対する知見、諸々の背景を持つ患者さんへのDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)や抗血小板薬による治療の知見、日進月歩ともいえるMT(経動脈的血行再建療法)の臨床研究成果など、近年の知見を反映した改訂を行いました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕定価8,800円(税込)判型A4判頁数352頁発行2025年8月編集日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会ご購入はこちらご購入はこちら

1213.

焦りがちな10月、メジャーの苦手は今つぶそう。【研修医ケンスケのM6カレンダー】第7回

焦りがちな10月、メジャーの苦手は今つぶそう。さて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。10月と11月は愛知県を一旦離れて関東にいます。埼玉県和光市にある国立保健医療科学院を拠点に公衆衛生について幅広く学ぶ研修に参加しています。研修期間中は国内では厚生労働省をはじめ、国立感染症研究所や千葉県庁も、国外ではジュネーブにあるWHO本部やマニラでのフィールドワークも予定されています。長くなりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。当時を懐かしみながら、あの時の自分へ何を話しかけるのか、皆さんの6年生としての1年間が少しでも良い思い出になる、そんなお力添えができるように頑張って参りますので、ぜひ応援のほどよろしくお願い申し上げます。10月にやること: 自分の“焦り”の正体を知る(浅草の名店、舟和の芋ようかん。美味しいですよね)今年度もいよいよ後半戦に差し掛かりました。マッチングでは中間発表、卒業試験だと1回目が終わった方、控えている方、国家試験対策では模擬試験を1〜2個受けた方が多いかと思います。現状に対する想いはさまざまですよね。これまでの連載では科目別の勉強法やマッチング対策、模擬試験の活用方法について触れてきました。今月は多くの人が直面しているトピックを取り上げます。“どこから手をつける?”の迷いを断つ方法8月にも模擬試験の活用法についてお伝えしましたが、最近「どこから手をつけていいかわからない」という声をよく耳にします。そんなときは、まず模試で間違えた問題や、自信がなかった問いを中心に復習していくことをオススメします。とくにメジャー科目(内科、外科、小児科、産婦人科など)は、国試でも卒試でも得点源になる大切な分野です。今のうちにしっかりと土台を固めておくことで、直前期にマイナーや必修でバタつかずに済みます。結局のところ、合否を左右するのは「いかにメジャーを落とさないか」なんです。焦らず、でも着実に、自分の苦手を減らしていきましょう。どこでよりも、パッションを!(同じく浅草の雷門手前にある老舗、三定の天麩羅はごま油の香り豊か)さて、次はマッチングに関してです。1次募集の結果が今月末にはわかります。私自身は1次で決まりましたが、当時は「もし2次・3次にまわったら…」という不安でいっぱいでした。まずは1次募集で研修先が決まった方、誠におめでとうございます。第一志望で合格した方も、そうでない方も、これまで忙しいなかで見学や小論文・面接対策を行ってきた賜物です。ぜひ決まった研修先へ行くことができるように、卒業試験・国家試験を確実に突破しましょう!一方で、1次募集ではご縁がなかった方。悔しさ、不安、焦り、すべてに寄り添いたいです。1次募集でご縁がなかったからといって、皆さんが「だめ」なわけではありません。その年のメンバー同士の相性や、男女比なども少なからず採用に影響しています。人材としては優秀だけど、研修カリキュラムが合わなさそう、というお互いのための話も考慮されます。「どこで研修するか」よりも「その場所でどう頑張るか」の方がずっと大切だと感じています。もちろん、研修先選びが重要であることは間違いありませんが、それ以上に、選んだ環境の中で自分がどう学び、どう行動するかが研修医生活を左右します。実際、「評判がいいから」と選んだ病院が自分には合わなかったという話や、「人間関係がしんどくて、期待していた2年間がつらいものになった」というケースもあります。研修先にも選ぶ側の目線があって、「合う人」を探しています。だからこそ、結果に一喜一憂しすぎず、引きずらないことが大事です。むしろ、これからできることはたくさんあります。2次ならどこを受けるか、3次ではどう動くか、今のうちから情報収集をして、狙いを定めておきましょう。少し視点を変えて、「自分にとって良い研修とは何か?」を考える時間にするのも、前向きなステップになるはずです。最後に(福岡の鰻も好きですが、東京の鰻も違った旨味で好きです)いかがだったでしょうか。マッチング、試験においても不安になりがちな10月ですが、目の前のやるべきことを淡々とこなすまでです。大丈夫です、これまでの毎日も、これからの毎日も少しずつでいいので、自分のペースで進んでいきましょう。

1214.

父親の厳しい子育てが子供のメンタルヘルスに影響

 青年期における厳しい子育ては、抑うつ症状のリスクを高める可能性がある。しかし、その影響には個人差があり、リスクを増悪または軽減させる要因を明らかにする必要がある。睡眠の問題は、対処能力を低下させるだけでなく、厳しい子育てを増幅させる可能性もある。米国・ニューメキシコ大学のRyan J. Kelly氏らは、青年期の睡眠を調整因子として、青年期の厳しい子育てとその後の抑うつ症状の関係を調査した。Sleep Health誌オンライン版2025年9月17日号の報告。 9年間にわたる5wave(子供の年齢が16、17、18、23、25歳)研究を実施した。16歳で研究に参加した家族は245組(女性の割合:52%、白人/ヨーロッパ系米国人:67%、黒人/アフリカ系米国人:33%)、5waveすべてに参加した家族は132組であった。母親と父親は、16〜18歳までに子供に行った厳しい子育て(言葉による虐待および身体的な虐待)の頻度について報告した。16〜18歳までの子供の睡眠時間および睡眠の質(睡眠維持効率、長時間覚醒エピソード)の測定には、アクティグラフィーを用いた。抑うつ症状は、5waveのすべてで自己申告により評価した。 主な結果は以下のとおり。・自己回帰効果をコントロールした後、構造方程式モデルを用いて、青年期における父親の厳しい子育てと成人初期の抑うつ症状との関連を悪化させる因子は、青年期における睡眠時間の短縮、睡眠維持効率の低下、長時間覚醒エピソードの増加であることが明らかとなった。【青年期における睡眠時間の短縮】β=-0.16、p<0.03【睡眠維持効率の低下】β=-0.30、p<0.001【長時間覚醒エピソードの増加】β=0.24、p=0.004・母親の厳しい子育ては、青年期の睡眠状況に関わらず、リスク変化に影響しなかった。 著者らは「青年期における父親の厳しい子育てと睡眠障害との相互作用は、成人初期の抑うつ症状を予測する可能性が示された。これらの結果は、父親の厳しい子育てを受けた子供のメンタルヘルスを改善するうえで、睡眠を考慮することの重要性を示唆している」と結論付けている。

1215.

寝たきり原因第1位「脳卒中」、最新治療アクセス改善と患者支援の最前線/日本脳卒中学会・日本脳卒中医療ケア従事者連合・日本脳卒中協会

 日本脳卒中学会、日本脳卒中医療ケア従事者連合、日本脳卒中協会の主催による「脳卒中メディアフォーラム」が10月15日に開催された。杏林大学医学部脳卒中医学 教授の平野 照之氏が司会を務めた。「脳卒中・循環器病対策基本法」および「脳卒中と循環器病克服5か年計画」に基づき、(1)脳卒中医療体制の整備、(2)地域多職種連携、(3)患者・家族支援と社会への啓発活動という3つの柱に沿って、各団体の理事長から最新の取り組みが報告された。1. 医療体制の整備:地域格差を埋める「遠隔医療」が鍵 最初に、日本脳卒中学会 理事長の藤本 茂氏(自治医科大学内科学講座神経内科学部門 教授)が「脳卒中・循環器病対策基本法と脳卒中と循環器病克服5か年計画に基づく脳卒中医療の整備」をテーマに発表した。 超高齢社会を迎えた日本において、脳卒中は死因の第4位、そして重度の要介護(要介護レベル4・5)に至る原因の第1位を占めている。年間で医療費約1.8兆円、介護費約1.9兆円が費やされており、社会全体で取り組むべき喫緊の課題となっている。 脳梗塞の超急性期治療は、時間との戦いとなる。発症から数時間以内に行われる血栓溶解薬(rt-PA)の投与や、カテーテルで血栓を回収する機械的血栓回収療法は、後遺症を大きく左右する。rt-PA静注療法を24時間365日提供できる体制を整えたのが「一次脳卒中センター(PSC:Primary Stroke Center)」であり、さらに高度な血栓回収療法まで常時対応可能なのが「PSCコア施設」である。 藤本氏の報告によると、これらの認定施設は全国に広がり、救急車で60分以内にPSCへ到達できる人口の割合は99%に達した。しかし、より高度な治療が可能なPSCコア施設へ30分以内に到達できる割合は82.8%に留まり、依然として地域による医療格差が存在する。とくに地方や僻地・離島では治療の機会を逃すケースが少なくない。 この課題の解決策として注目されているのが、遠隔医療(テレストローク)だ。専門医がいない地域の病院(スポーク施設)にいる患者を、専門医がいる中核病院(ハブ施設)から情報通信機器を通じて診断・支援する仕組みである。これにより、rt-PA投与の判断・実施や、血栓回収療法のための適応判断が迅速に行えるようになる。 令和6年度の診療報酬改定でもこの遠隔連携が評価されるようになり、超急性期脳卒中加算の見直しが行われ、脳血栓回収療法連携加算(5,000点)が新設された。今後、専門医がいない地域でも再灌流療法を受けられる体制の全国的な整備が加速すると期待される。学会は、現在15.8%にとどまる再灌流療法の施行率を、まずは20%以上に引き上げることを目標に掲げている。 また、急性期医療と並行して、患者・家族への支援体制の充実も図られている。その中核を担うのが、PSCコア施設などに設置されている「脳卒中相談窓口」だ。ここでは、多職種の専門スタッフが、急性期から退院後の生活までを見据え、リハビリテーションや介護、社会福祉サービスに関する情報提供や相談支援をワンストップで行う。活動の標準化のため『脳卒中相談窓口マニュアル』も作成された1)。相談件数は年々倍増しており、患者や家族の不安に寄り添う重要な拠点として全国的に活発化している。2. 地域多職種連携:「総合支援センター」をハブに、切れ目のない支援を 続いて、日本脳卒中医療ケア従事者連合 理事長の宮本 享氏(京都大学医学部附属病院特任病院教授 脳卒中療養支援センター長・もやもや病支援センター長)が、「脳卒中・心臓病等総合支援センターをハブとした地域多職種連携」をテーマに発表した。 脳卒中患者の支援は、急性期病院を退院して終わりではない。むしろ、その後の回復期、生活期におけるリハビリや再発予防、社会復帰支援こそが重要となる。宮本氏は、これを実現するためには、医師、看護師、理学療法士、医療ソーシャルワーカー(MSW)など、多様な専門職が組織的に連携する必要があると強調した。 その司令塔となるのが、各都道府県に設置が進む「脳卒中・心臓病等総合支援センター」だ。宮本氏は、同センターが脳卒中と心臓病という2つの循環器疾患を対象とすることを説明しつつ、とくに急性期後の回復期・生活期においては、両者で必要とされる医療システムが大きく異なるため、それぞれに特化した支援体制の構築が重要であると述べた。このセンターの役割は、個々の患者を直接支援するだけでなく、地域のハブとして、どの医療機関にかかっても標準化された質の高い情報提供や相談支援が受けられる体制を構築することにある。 先進的な事例として紹介された京都府では、総合支援センターが中心となり、以下のような多職種・地域連携のネットワークを構築している。・きょうとサンナイ会:「ならない(予防)・手遅れにならない(急性期治療)・まけない(リハビリ)」をコンセプトにした患者・家族向けの情報発信の場。府内の各病院がそれぞれの「サンナイ会」を持つことで、標準化された情報をニューズレターなどの形で広範な患者・家族に届けるネットワークを形成している。・脳卒中相談窓口連携会議:府内49の急性期・回復期病院のMSWが定期的に情報交換。患者が抱える共通の課題(例:「装具難民」問題、嚥下リハビリ外来の情報不足など)を共有し、地域全体の資源マップを作成・共有することで、どの病院でも同じ情報を提供できる体制を整えている。・かかりつけ医・薬局との連携:京都府医師会や薬剤師会と協力し、「脳卒中生活期かかりつけ医・かかりつけ薬局」の登録制度を開始。かかりつけ医やかかりつけ薬局が患者に最も身近な相談窓口となり、患者が退院後も地域で安心して療養を続けられるよう整備している。 しかし、この重要な役割を担う総合支援センターの運営は、都道府県の予算に大きく依存している。専従職員の雇用や諸活動費など事業継続に必要な年間1,000万円以上の予算が確保できているのは13都道県のみという厳しい現実も報告された。持続可能な支援体制の構築には、行政による安定した財政支援が不可欠だという。3. 啓発と患者支援:当事者の「声」を社会に届ける 最後に、日本脳卒中協会 理事長 峰松 一夫氏(医誠会国際総合病院 病院長)が「脳卒中に関する啓発・患者支援活動」について発表した。 日本脳卒中協会は、市民への啓発と、患者・家族に寄り添う支援活動の両輪で脳卒中対策に取り組んでいる。啓発活動の柱は、毎年10月の「脳卒中月間」だ。今年の標語「過信より 受診で防ぐ 脳卒中」を掲げ、全国でキャンペーンを展開する2)。10月29日の「世界脳卒中デー」には、東京都庁舎をはじめ全国50以上のランドマークを脳卒中のシンボルカラーであるインディゴブルーにライトアップし、市民の関心を呼び掛ける3)。 続いて峰松氏は、脳卒中の主要な後遺症の一つである「失語症」への社会的な理解の必要性について語った。失語症は、話す・聞く・読む・書くことが困難になる症状で、その多くが脳卒中に起因する。しかし、その存在や当事者が直面する困難(契約や法的手続きでの不利益など)は十分に知られておらず、「脳卒中・循環器病対策基本法」に対策が盛り込まれたものの具体的な支援はまだ始まっていない。協会は、まずこの症状への認知度を高めることが急務であると訴えた。 患者支援では、当事者の「孤立」を防ぎ、「声」を社会に届けるための取り組みが進んでいる。脳卒中サロンは、患者や家族が互いの経験を語り合い、支え合うピアサポートの場。会員の高齢化で患者会が減少する中、急性期病院と回復期病院が連携してサロンを立ち上げるモデル事業を全国5県で展開。そのノウハウをまとめた『脳卒中サロン 設立・運営マニュアル』をウェブで公開し、全国への普及を目指している4)。 続いて、自らも脳卒中経験者である日本脳卒中協会副理事長 川勝 弘之氏が、脳卒中スピーカーズバンクの活動について語った5)。この活動は、脳卒中経験者自身が「語り部」となり、自らの体験を学校や職場で伝える活動だ。2025年現在、30人のメンバーにより構成されている。内閣府の調査では、国民の95.7%が脳卒中を「怖い」と感じる一方で、若年層の半数以上が生活習慣を「改善するつもりはない」と回答している。専門家による難しい話ではなく、「当事者のリアルな言葉」こそが、人々の行動変容を促す力を持つ。しかし、メンバーの意欲は高まるものの、市民公開講座などの講演の機会はまだまだ少なく、活動の認知度向上が課題であるという。 フォーラムの最後には、今後も3団体が連携し、脳卒中という大きな課題に対し、医療の進歩だけでは不十分であり、地域社会全体で患者を支え、予防意識を高めていくという強いメッセージが示された。

1216.

結腸がん術後ctDNAによるde-escalation、リスク低減も非劣性は示されず(DYNAMIC-III)/ESMO2025

 術後のctDNA検査の結果をその後の治療選択に役立てる、という臨床試験が複数のがん種で進行している。DYNAMIC-IIIは結腸がん患者を対象に、術後のctDNA検査結果に基づいて、術後化学療法の強度変更を検討した試験である。今年6月の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)ではctDNA陽性の治療強化例の解析結果が発表され、治療強化は無再発生存期間(RFS)を改善しないことが示された。10月17~21日に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、Peter MacCallum Cancer Centre(オーストラリア・メルボルン)のJeanne Tie氏がctDNA陰性のde-escalation(治療減弱)の解析結果を発表した。ctDNA陽性例と合わせた本試験の結果は、Nature Medicine誌オンライン版2025年10月20日号に同時掲載された。・試験デザイン:多施設共同ランダム化第II/III相試験・対象:切除可能、StageIII結腸がん患者。術後5~6週でctDNA検査を受け、試験群と対照群に1:1の割合で割り付け・試験群:de-escalation群(6ヵ月のフルオロピリミジン[FP]単剤療法→経過観察または3ヵ月のFP単剤に変更、3ヵ月のオキサリプラチン+FP併用療法→3~6ヵ月のFP単剤に変更、6ヵ月の併用療法→3ヵ月の併用療法または6ヵ月のFP単剤に変更、から選択)353例・対照群:標準治療群(ctDNA検査の結果は非表示、医師選択による治療)349例・評価項目:[主要評価項目]3年RFS(片側97.5%信頼区間の下限が-7.5%を超えない場合、非劣性と判断)[副次評価項目]治療関連入院、ctDNA陰性化など 主な結果は以下のとおり。・参加者968例のうち、702例(72.5%)がctDNA陰性だった。353例がde-escalation群、349例が標準治療群に割り付けられた。追跡期間中央値47ヵ月中、90.4%(319/353例)がde-escalationを受けた。・de-escalation群は、標準治療群と比較してオキサリプラチンベースの化学療法の実施率が低く(34.8%対88.6%、p<0.001)、Grade3以上の有害事象(6.2%対10.6%、p=0.037)および治療関連入院(8.5%対13.2%、p=0.048)も少なかった。しかし、3年RFSはわずかに低下し、de-escalationの非劣性は示されなかった(3年RFS:85.3%対88.1%、差:-2.8%)。・サブグループ解析では、低リスク群(T1~3N1)においては、de-escalationが非劣性となる可能性が示唆された(3年RFS:91.0%対93.2%、差:-2.2%)。 Tie氏は「術後ctDNA陰性例の3年RFSは87%と高く、再発リスクは低かった。ctDNAによるde-escalationは対象者の9割で実行可能で、オキサリプラチン曝露量と有害事象を低減した。標準治療と比較した非劣性は示せなかったものの、低リスク例においては標準治療に近い結果が得られる可能性が示された。今後は個々の患者によるリスク・ベネフィットをさらに議論する必要があるだろう」とした。

1217.

免疫療法の対象とならない進行TN乳がん1次治療、Dato-DXdがPFSとOSを延長(TROPION-Breast02)/ESMO2025

 免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)が化学療法に比べ有意に全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を延長したことが第III相TROPION-Breast02試験で示された。シンガポール・National Cancer Center SingaporeのRebecca Dent氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。・試験デザイン:国際共同ランダム化非盲検第III相試験・対象:免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない未治療の局所再発切除不能/転移TNBC・試験群:Dato-DXd(3週ごと6mg/kg点滴静注)323例・対照群:治験責任医師選択化学療法(ICC)(nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチンから選択)321例・評価項目:[主要評価項目]OS、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2025年8月25日)の追跡期間中央値は27.5ヵ月で、PFSイベントが63%に、OSイベントは54%で発生していた。被験者の再発までの期間(DFI)別の割合は、de novoが34%、0~12ヵ月が21%(0~6ヵ月は15%)、12ヵ月超が約45%であった。・BICRによるPFS中央値は、Dato-DXd群が10.8ヵ月とICC群(5.6ヵ月)より有意に延長した(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.47~0.69、p<0.0001)。この傾向は、臨床的に重要なサブグループで一貫していた。・OS中央値は、Dato-DXd群が23.7ヵ月でICC群18.7ヵ月より5ヵ月延長し、有意に延長した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、p=0.0291)。この傾向はほとんどのサブグループで一貫していた。・BICR評価によるORRは、Dato-DXd群が62.5%とICC群(29.3%)の2倍以上、完全奏効率(CR)は3倍以上であった。この傾向はすべてのサブグループで一貫していた。・DOR中央値は、Dato-DXd群12.3ヵ月、ICC群7.1ヵ月であった。・治療期間中央値は、Dato-DXd群(8.5ヵ月)がICC群(4.1ヵ月)の2倍以上だったが、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は両群で同程度であり、中止率はICC群より低かった。Dato-DXd群の主なTRAEはドライアイ、口内炎、悪心であった。 Rebecca Dent氏は「本試験の結果は、免疫療法の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるTNBC患者における新たな1次治療の標準治療としてDato-DXdを支持する」と結論した。

1218.

下剤のルビプロストン、重大な副作用にアナフィラキシー追加/厚労省

 2025年10月22日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、下剤のルビプロストン(商品名:アミティーザカプセル)や帯状疱疹ワクチン(同:シングリックス筋注用)において、「重大な副作用」が追加された。 ルビプロストンについては、国内のアナフィラキシー関連症例12例を評価したところ、本剤との因果関係が否定できない症例を5例(死亡0例)認めたため、使用上の注意を改訂することが適切と判断され、「重大な副作用」の項にアナフィラキシーが追記された。 また、乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(チャイニーズハムスター卵巣細胞由来)では、ギラン・バレー症候群5例のうち因果関係が否定できない症例を1例認めたため、「重大な副作用」の項にギラン・バレー症候群が追記された。 そのほか、閉経期女性のホルモン補充療法(HRT)に用いられる15品目に対し、「臨床使用に基づく情報」の項に卵胞ホルモン製剤単剤使用における乳がんに関する注意喚起としてHRTと乳の危険性が追加された。

1219.

腹部大手術時の周術期血圧管理、個別化vs.通常/JAMA

 腹部大手術を受ける術後合併症リスクが高い患者において、術前夜間平均動脈圧(MAP)に基づく個別周術期血圧管理は、MAP目標値65mmHg以上とする通常血圧管理と比較して、術後7日以内の急性腎障害、急性心筋障害、非致死的心停止または死亡の複合アウトカムを減少させなかった。ドイツ・University Medical Center Hamburg-EppendorfのBernd Saugel氏らIMPROVE-multi Trial Groupが、同国15の大学病院で実施した無作為化単盲検試験「IMPROVE-multi試験」の結果を報告した。手術中の低血圧は臓器損傷と関連しているが、手術中の血圧管理が臨床アウトカムを改善可能かについては不明であった。JAMA誌オンライン版2025年10月12日号掲載の報告。術後7日以内の複合アウトカムを評価 研究グループは、2023年2月26日~2024年4月25日に、全身麻酔下にて90分以上の手術時間が予定される腹部大手術を受ける45歳以上の患者で、少なくとも1つの高リスク基準を満たす患者を登録し、個別血圧管理群と通常血圧管理群に1対1の割合で無作為に割り付けた(最終追跡調査日2024年7月25日)。 全例、24時間血圧モニターを用いて術前血圧を1晩にわたり30分間隔で測定し、深夜0時~午前6時に測定されたMAPに基づき、各患者の術前夜間MAPを算出した。 個別血圧管理群では、全身麻酔導入開始時から術後2時間まで、術前夜間MAP値以上の保持を目標とした。術前夜間MAPが65mmHg未満の患者では65mmHg以上、110mmHg超の患者では110mmHg以上を周術期MAPの目標値とした。一方、通常血圧管理群では、目標MAPを65mmHg以上とした。 主要アウトカムは、術後7日以内の急性腎障害、急性心筋障害、非致死的心停止または死亡の複合アウトカムの発生率、副次アウトカムは、術後3~7日における主要アウトカムの構成項目の各発生率、術後7日以内の感染性合併症、術後30日および90日以内の腎代替療法、心筋梗塞、非致死的心停止または死亡の複合アウトカムなど、22項目であった。複合アウトカムの発生に有意差なし 7,621例がスクリーニングを受け、1,272例が登録された。このうち1,142例が無作為化され(各群571例)、手術中止または同意撤回の8例を除く1,134例が主要アウトカムおよび副次アウトカムの解析対象集団となった(年齢中央値66歳[四分位範囲:59~73]、女性34.1%)。 主要複合アウトカムは、個別血圧管理群で33.5%(190/567例)、通常血圧管理群で30.5%(173/567例)に発現した(相対リスク:1.10、95%信頼区間:0.93~1.30、p=0.31)。 副次アウトカムについては、22項目のいずれも有意差は認められなかった。術後7日以内の感染性合併症は、個別血圧管理群15.9%、通常血圧管理群17.1%(p=0.63)であり、術後90日以内の腎代替療法、心筋梗塞、非致死的心停止または死亡の複合アウトカムはそれぞれ5.7%と3.5%(p=0.12)であった。

1220.

SGLT2阻害薬、自己免疫性リウマチ性疾患のリスクは?/BMJ

 韓国の大規模な2型糖尿病成人コホートにおいて、SGLT2阻害薬はスルホニル尿素(SU)薬と比較し自己免疫性リウマチ性疾患のリスクを11%低下させることが、韓国・成均館大学校のBin Hong氏らによる後ろ向きコホート研究の結果で示された。SGLT2阻害薬は、その潜在的な免疫調節能により自己免疫疾患への転用候補の1つと考えられているが、自己免疫病態に関与する発症経路における重要な細胞や分子に対する阻害作用が臨床的に意味を有するかどうかは依然として不明であった。著者は、「今回の結果は、SGLT2阻害薬が自己免疫疾患のリスク低減に寄与する可能性を示唆しているが、潜在的な有益性は、既知の有害事象や忍容性に関する懸念と慎重に比較検討する必要があり、他の集団や状況における再現性の検証、ならびに自己免疫性リウマチ性疾患患者を対象とした研究が求められる」と述べている。BMJ誌2025年10月15日号掲載の報告。2型糖尿病成人約200万例を対象に解析 研究グループは、韓国の人口の98%をカバーする国民健康保険サービスのデータベース(2012~22年)を用い、2014年9月1日(韓国におけるSGLT2阻害薬の保険適用開始日)~2022年12月31日にSGLT2阻害薬またはSU薬を新規に投与された2型糖尿病成人(18歳以上)について解析した。 主要アウトカムは、自己免疫性リウマチ性疾患で、ICD-10診断コードおよび韓国の希少難治性疾患登録(RIDR)プログラムへの登録を用いて特定した。副次アウトカムは、炎症性関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎の複合)および結合組織疾患であった。また、残余交絡を評価するため、陽性対照アウトカムとして性器感染症、陰性対照アウトカムとして帯状疱疹を用いた。 傾向スコアに基づく正規化逆確率重み付けを用いて交絡因子を調整し、加重イベント数、発生率、10万人年当たりの発生率差とその95%信頼区間(CI)を算出するとともに、Cox比例ハザード回帰モデルを用いてハザード比(HR)とその95%CIを推定した。 自己免疫性リウマチ性疾患の診断歴がなくベースラインで研究対象薬剤を使用していないSGLT2阻害薬新規使用者55万2,065例、およびSU薬新規使用者148万92例が特定された。傾向スコア重み付け後、SGLT2阻害薬開始群103万88例(平均年齢58.5歳、男性59.9%)とSU薬開始群100万2,069例(平均年齢58.5歳、男性60.1%)が解析対象となった。SGLT2阻害薬群はSU薬群と比較しリスクが11%低下 追跡期間中央値は、SGLT2阻害薬開始群9.1ヵ月(四分位範囲:3.8~25.2)、SU薬開始群7.8ヵ月(3.1~23.5)であった 新たに自己免疫性リウマチ性疾患と診断された患者は、SGLT2阻害薬開始群で790例、SU薬開始群で840例確認された。加重発生率はそれぞれ51.90/10万人年と58.41/10万人年であり、率差は-6.50/10万人年(95%CI:-11.86~-1.14)、HRは0.89(95%CI:0.81~0.98)であった。 SGLT2阻害薬に関連する自己免疫性リウマチ性疾患のリスク低下は、年齢、性別、SGLT2阻害薬の種類、ベースラインの心血管疾患、およびBMIで層別化したサブグループ間でおおむね一貫していた。 副次アウトカムについては、炎症性関節炎のHRが0.86(95%CI:0.77~0.97)、結合組織疾患のHRは0.95(95%CI:0.79~1.14)であった。 対照アウトカムに関しては、性器感染症のHRは2.78(95%CI:2.72~2.83)、帯状疱疹のHRは1.03(95%CI:1.01~1.05)であった。

検索結果 合計:35619件 表示位置:1201 - 1220