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65歳男性・労作時呼吸困難と乾性咳嗽、画像からの診断は?【腕試し!内科専門医バーチャル模試】

65歳男性・労作時呼吸困難と乾性咳嗽、画像からの診断は?【問題1】65歳の男性。喫煙者で1年前から労作時呼吸困難と乾性咳嗽が出現し、徐々に増悪したため受診した。鳥の飼育歴やダウンジャケット・羽毛布団の使用歴はなく、自宅も清潔でカビが生えている部屋はない。粉塵曝露歴もない。SpO2は97%(室内気)で、両側肺底部でfine cracklesを聴取する。関節痛や皮疹は認めない。血液検査でKL-6の上昇、胸部X線(図1)と、胸部CT(図2)を示す。画像を拡大する【問題2】

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第59回 新たな変異コロナウイルス「セミ」について私たちが知っておくべきこと

パンデミックから数年が経過し、私たちの生活はすっかり日常を取り戻しました。いわゆる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のニュースを目にする機会もすっかり減ったと感じている方が多いのではないでしょうか。しかし、ウイルスは私たちの見えないところで今も静かに進化を続けています。そんな中、現在、新しい変異ウイルスが注目を集めています。その名は「BA.3.2」。そして、このウイルスに付けられたニックネームは「Cicada(シカダ)」、日本語で「セミ」です。なぜ、「セミ」という名前が付けられたのでしょうか? そして、このウイルスに対して私たちはどう向き合うべきなのでしょうか。JAMAの記事をもとに解説します1)。なぜ「セミ」?異例の長き沈黙を破った変異ウイルスコロナの変異ウイルスの多くは、現れては消えるまでのサイクルが非常に短く、通常は数週間から数ヵ月しか流行しません。かつて猛威を振るったオミクロンのBA.1も、数ヵ月で別の変異ウイルスに置き換わりました。しかし、今回の「セミ(BA.3.2)」は、これまでの常識とはまったく異なる変わり種のウイルスです。実はこのウイルス、最初に発見されたのは1年半以上も前の2024年11月、南アフリカでのことでした。その後、モザンビークやヨーロッパなどで散発的・局地的に見つかり、こちらアメリカで最初の感染者が確認されたのは2025年6月のことです。長らく目立った動きを見せなかったこのウイルスですが、2025年12月に世界保健機関(WHO)の「監視下の変異ウイルス(Variant Under Monitoring)」に指定され、2026年に入り、アメリカ各地の排水調査などから検出が報告されるようになりました。何年も土の中でじっと身を潜め、ある時期が来ると一斉に地上へ姿を現す「周期ゼミ」。この変異ウイルスが長期間の沈黙の後に急増した奇妙な振る舞いが、まさに「セミ」に似ていることから、このユニークなニックネームが付けられたのです。免疫を逃れる力と、感染しやすさの「トレードオフ」新しい変異ウイルスと聞くと、「また強い感染の波が来るのでは?」「重症化しやすいのでは?」と不安になるかもしれません。確かにこの「セミ」は、現在のワクチン抗原(例:JN.1など)と比べて、スパイクタンパク質の遺伝子配列に70〜75程度の置換・欠失などの変化があると報告されています。こうした変化のため、これまでの感染やワクチンで得られた抗体による中和が低下しうる(免疫回避の可能性がある)と考えられ、監視が続けられています。しかし、ここで紹介したい興味深い生物学的な現象があります。それは「適応度のトレードオフ」と呼ばれるものです。コロナウイルスが人間の細胞に感染するためには、細胞の表面にある「ACE2」という受け皿にくっつく必要があります。BA.3.2は免疫の監視を潜り抜けるように変異を多く持っているため、スパイクタンパクの構造が大きく変わってしまい、逆にACE2への結合のしやすさや細胞への侵入のしやすさについては、大きく落ちている可能性があると指摘されています。このように、ウイルスの進化では「免疫回避」と「感染のしやすさ」の間で「トレードオフ」が生じることがあるというわけです。少なくとも現時点では、WHOの初期評価などで、この変異ウイルスが重症化や入院、死亡のリスクを明確に増加させるという一貫したデータは見られない、とされています。また、ワクチンについては、抗体による中和が低下し得る一方で、重症化に対する防御は一定程度維持されることが期待されています。したがって、必要以上に恐れる必要はないでしょう。子供たちの間で感染が広がりやすい?ただし、研究者が注視している点の一つとして、BA.3.2の検出が子供に多く見られることが挙げられます。なぜ子供に多いのかについては、現在も専門家の間で議論が続いています。大人のように過去の感染経験がなく、ワクチン接種の回数が多くないため、免疫を持たない子供たちが単に感染しやすいだけだという意見もあれば、ウイルスが持つ特定の変異が子供への感染を有利にしているのではないかと疑う専門家もいます。これについては、今後のさらなるデータの収集が待たれるところです。いずれにせよ、とくに小さなお子さんがいるご家庭では、日頃からお子さんの体調変化に気を配っていただくことが大切です。ウイルスとの共存は続く今回登場した「セミ」ことBA.3.2について、現時点で直ちに大規模な医療逼迫を引き起こすような懸念はされていません。もしかすると、先のトレードオフが実際にあり、感染が広がりにくいかもしれないという楽観的な見方ができる可能性もあります。しかし、流行の度合いや重症度については引き続き監視が必要で、排水調査やゲノム解析などのデータが今後さらに蓄積されていく見込みです。いずれにせよ、コロナウイルスは、決して消え去ったわけではありません。私たちの社会が日常を取り戻した今も、ウイルスは(実際にそのような意思があるわけではありませんが)環境に適応しようと試行錯誤を続けています。過度な不安を抱く必要はありませんが、ウイルスがまだ身近に存在しているという事実は心の片隅に留めておいたほうがいいでしょう。1)Rubin R. What to Know About Cicada, or BA.3.2, the Latest SARS-CoV-2 Variant Under Monitoring. JAMA. 2026 Apr 17. [Epub ahead of print]

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医師でリスクの低いがんは?~日本人の職業とがんリスクの大規模研究

 日本の労働者における職業とがん種別発症リスクの関連を全国規模で調査した、東海大学の深井 航太氏らによる大規模症例対照研究の結果、肉体労働や運輸関連の職業でがんリスクが高いなど、職業による違いがみられ、とくに男性で顕著であることがわかった。一方、医師などの専門職では肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんのリスクが低いことが示された。Journal of Occupational and Environmental Medicine誌オンライン版2026年4月14日号に掲載。 本研究は、労働者健康安全機構の有する病職歴データベース(ICOD-R、2005〜23年度)を活用した多施設共同、病院ベース症例対照研究である。14万6,994例のがん症例と、年齢・性別・入院年をマッチングした27万8,244例の対照群を対象に分析した。喫煙、飲酒、肥満、シフトワークなどの生活習慣・背景因子を調整したうえで、一般事務従事者を基準とした職業別の調整オッズ比を算出した。 主な結果は以下のとおり。<男性>・がん全体では、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、教師などの専門職およびホワイトカラーの職業においてリスクが低い一方で、肉体労働、サービス業、輸送関連の職業ではリスクが高い職業が多かった。・肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんは、医師などの専門職でリスクが低かったが、販売、飲食物調理、接客サービス、自動車運転、建設、土木、金属製品、運搬の職業では、肺がん、大腸がん、肝がんのリスクが高かった。・木製品製造従事者は胆道がんリスクが高かった。・建築家、土木技術者、測量士、音楽家、化学製品製造従事者は膀胱がんリスクが高かった。・前立腺がんは多くの職種で一般事務職よりもリスクが低かったが、これは潜在的な発症率の差というより、受診行動やPSA検査を含む検診受診率における職業間の差異を反映している可能性がある。<女性>・がん全体では、職業分類による差は男性ほど顕著ではないが、特定の部位で関連が認められた。・電気機械組立従事者は、肺がん、胆道がん、胃がんのリスクが有意に高かった。・胃がんは、事務機器操作、商品販売、家庭生活支援サービス、衣服・宝石製品製造の従事者の間でリスクが高かった。・大腸がんは、教師、芸術家、デザイナー、写真家や、映像操作、販売類似職業、家庭支援サービス、介護サービス、農業の従事者でリスクが低かった。・乳がんは、保健師、助産師、看護師、その他の医療従事者、介護サービス従事者が、一般事務職と比較して有意にリスクが低かった。

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造血細胞移植におけるEmergency/日本造血・免疫細胞療法学会

 造血細胞移植は、急性白血病や悪性リンパ腫などに対して根治を目指しうる治療法である。一方で、移植前処置や強力な免疫抑制療法、長期にわたる好中球減少状態などを背景に、早急な対応を講じなければ不可逆的な臓器障害を来し、致命的となりうる重篤な病態(Emergency)が急速に進行することもある。そのため移植医療の現場では、数日単位で生命予後が左右されるEmergencyに備える姿勢が不可欠であり、事態への即応力が強く求められることになる。 2026年2月27日~3月1日に開催された第48回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「造血細胞移植におけるEmergency」をテーマとした教育講演が行われた。造血細胞移植特有の緊急病態に焦点を当て、実臨床で遭遇した症例と文献的エビデンスを基に、見逃してはならない重篤合併症と初期対応の要点について、田中 喬氏(大阪国際メディカル&サイエンスセンター 大阪けいさつ病院 血液内科)が講演した。シクロホスファミド(Cy)心筋症―死亡リスクの高い劇症型の心合併症 近年、移植後シクロホスファミド(PTCy)は、ヒト白血球抗原(HLA)半合致血縁者間移植にとどまらず、HLA一致血縁者間移植や非血縁者間移植にも応用が広がり、移植片対宿主病(GVHD)予防の新たな標準治療となりつつあるPTCyは優れたGVHD予防効果をもたらす一方で、シクロホスファミド(Cy)心筋症という重篤な合併症のリスクも伴う。大量Cy投与後に発症するCy心筋症は、基本的には可逆的であるが、進行がきわめて速く、重症例では体外式膜型人工肺(ECMO)管理を要し、命に関わることもある。その希少性ゆえに、初めて遭遇した際には診断が遅れ、気付いたときにはすでに重症化しているケースが少なくない。発症率は近年の報告では1~5%前後と頻度こそ高くはないものの、ひとたび発症すれば急速に循環破綻へ至る死亡率の高い致死的合併症である。心不全と診断されてから死亡までの中央値が約3日とされる報告もあり、遭遇すれば重篤となる典型的な移植Emergencyである。 Cy心筋症の病態は完全には解明されていないが、代謝産物による血管内皮障害が起点と考えられている。血管内皮が障害されると血管透過性亢進により心筋の浮腫・壁肥厚が生じ、最終的に心筋障害を来す。ここで重要なことは、Cy心筋症発症初期の主病態が収縮不全ではなく拡張障害であるという点である。心筋の伸展性が浮腫によって低下し、拡張できなくなることで心拍出量が維持できなくなる。 アントラサイクリン心筋症が累積投与量依存であるのに対し、Cy心筋症は1回投与量と投与スケジュールに依存する用量依存性毒性である。安全な投与量の閾値は明確ではなく、既往のアントラサイクリン投与量や放射線治療歴がリスク因子として挙げられるものの、確立した予測因子は存在しない。 発症時期はCyの初回投与から10日以内が多く、症状出現までの中央値は2日(1~6日)、心不全診断までの中央値は4日(3~8日)とする報告がある。心電図ではvoltageの低下やST上昇、T波の陰転化を認めることが多い。胸部X線で心拡大を呈するが、これを容量過多と誤認してはならない。ただちに心エコーを施行し、著明な心筋壁肥厚と心嚢水貯留の有無を確認することが重要である。 特徴的なのは、初期には左室駆出率(EF)が保たれている症例が少なくない点である。心不全診断時にEFが50%以上に保たれていても、心筋壁が急速に肥厚し、拡張障害が進行している可能性がある。EFのみに依存した評価は危険である。 バイオマーカーに関して、トロポニンは必ずしも早期に上昇しない。一方、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)やNT-proBNPは比較的早期から上昇する可能性が報告されている。大量Cy投与後の症例では、投与後数日間のBNPモニタリングが早期発見に寄与する可能性がある。 Cy心筋症に対する確立した治療法はなく、一般的な心不全治療を行いながら心機能の回復を待つ。カテコラミン反応性は乏しいことが多く、循環動態が急速に悪化する場合には、早期からECMOや補助循環装置の導入を検討する必要がある。また、診断した時点で循環器内科や集中治療部門へ速やかにコンサルトする体制整備が不可欠となる。なお、ECMOが自施設で実施できない場合は、対応可能な施設への転院を躊躇してはならない。重症類洞閉塞症候群(SOS)―増悪因子となる腹部コンパートメント症候群(ACS) 重症類洞閉塞症候群(SOS)は、移植後早期に発症する重篤な肝合併症である。体重増加、腹水貯留、右季肋部痛、血小板減少などを呈し、重症例では多臓器不全へ進展する。 重症SOSの増悪因子として、腹部コンパートメント症候群(ACS)が注目される。腹腔内圧の上昇により静脈還流が障害され、腎機能低下や呼吸不全を来す。腹腔内圧は膀胱内圧で代用可能であり、簡便に測定できる。一般に腹腔内圧が20mmHgを超え、かつ臓器障害を伴う場合にACSと定義されるが、それ未満でも臓器障害を呈することがある。 病態の中心は腹腔内圧上昇による静脈うっ血であり、とくに腎静脈圧迫による腎不全が重要である。腹水ドレナージにより腹腔内圧を低下させることで、尿量や酸素化、門脈血流が改善する症例がある。腹部膨隆が目立つ重症SOSでは、膀胱内圧測定を積極的に行い、減圧治療を検討すべきである。重症消化管GVHD―評価すべき粘膜障害の程度と範囲 GVHDの中でも消化管病変は高頻度に認められるが、重症下部消化管GVHDは依然として予後不良である。従来は下痢量で重症度が評価されてきたが、下痢は炎症の結果にすぎない。本質的には粘膜障害の程度と範囲を評価すべきである。 多くの症例において病変は回盲部から始まり、口側および肛門側へ拡大する。重症例では炎症が小腸全体に及び、粘膜脱落を呈する。カプセル内視鏡による小腸粘膜の直接評価から、全周性の粘膜脱落(グレード4)や炎症が空腸まで及ぶ病変はきわめて予後不良であることが示されている。100日以内の非再発死亡率が約6割に達するとの報告もある。このような症例では、ステロイドを中心とした抗炎症療法のみでは不十分な可能性が高い。間葉系幹細胞(MSC)は免疫調整作用に加え、粘膜修復促進作用が期待されている。さらに、腸管粘膜維持に関与するGLP-2アナログなど、組織再生を意識した治療戦略も検討されている。炎症抑制と組織修復を両輪としたアプローチが今後の鍵となる。難治性感染症―想定外の病原体を疑う 造血細胞移植患者では、通常はまれな病原体による感染症が致命的経過をたどることがある。 Stenotrophomonas maltophiliaはグラム陰性桿菌であり、カルバペネムやグリコペプチドではカバーできない。移植患者では一定の頻度で菌血症を来し、肺出血を合併すると救命はきわめて困難である。持続する発熱性好中球減少症では、レボフロキサシンなど有効な抗菌薬による治療を検討する必要がある。 移植後のムーコル症も、致死率の高い真菌感染症である。βDグルカンは陰性のことが多く、確定診断には生検による組織診断が必須である。重症GVHDや長期ステロイド使用例で、原因不明の疼痛を伴う皮疹や急速進行性肺陰影を認めた場合はムーコル症を疑い、生検を積極的に行い、検査結果を待たずに有効な抗真菌薬による治療を開始すべきである。敗血症対応―基本を徹底する 敗血症では、乳酸値測定、血液培養採取、広域抗菌薬投与、必要に応じた急速輸液負荷や昇圧薬投与が基本となる。近年ガイドラインは若干修正されているが、移植患者では迅速な広域抗菌薬投与の重要性は変わらない。初期対応の遅れは予後に直結する。結語―「Emergencyを知って行動に移すこと」が重要 造血細胞移植におけるEmergencyは頻度こそ高くないものの、ひとたび発症すれば急速に悪化し、生命予後を左右する。Cy心筋症、重症SOS、重症消化管GVHD、難治性感染症、敗血症など、いずれも早期診断と迅速な初期対応が救命の鍵となる。「まれでも致命的となりうる病態を疑う」という姿勢を常に持っておく必要がある。とくにCy心筋症は診断後わずか数日で致命的経過をたどりうることを念頭に、心拡大を容量過多と安易に判断せず、速やかに心エコー評価と専門科連携を行うことが重要であり、BNPなどの指標も早期把握の一助となる。 重症SOSでは、腹腔内圧上昇に伴うACSが臓器不全を増悪させることがあり、膀胱内圧測定や適切な減圧介入を行う必要がある。厳密な定義上はACSに該当しない数値であっても、臓器障害を伴う場合には腹腔ドレナージを行うことで劇的に改善する可能性がある。 重症消化管GVHDは、下痢量ではなく、粘膜障害の程度と範囲を見ることが重要となる。カプセル内視鏡を用いた小腸評価では、全周性の粘膜脱落例や炎症が空腸まで及ぶ症例がきわめて予後不良であることから、抗炎症治療のみならず粘膜修復という視点で治療介入を行いたい。 感染症領域では、Stenotrophomonas maltophilia菌血症やムーコル症といった、頻度は高くないが致死率の高い病態があり、常に疑う姿勢が重要となる。敗血症対応は基本を徹底し、疑った場合は、乳酸値測定、血液培養採取、広域抗菌薬投与、急速輸液、昇圧薬投与を1時間以内に実施するいわゆる1時間バンドルの実施が求められ、常に迅速な対応を心掛けたい。 田中氏は講演を通じて、「移植医には腫瘍制御にとどまらず、全身状態を総合的に評価する集中治療的視点が必要である」と強調していた。さらに、「Emergencyについてよく知り、それを即座に想起し行動に移せる能力こそが、患者さんの命を守る最大の武器である」と一貫して述べていた。

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早期発症統合失調症に対するブレクスピプラゾールの有効性~第III相試験事後解析

 米国・Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らは、早期発症統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性を評価するため、第III相試験の事後解析の結果を報告した。Psychiatry Research誌2026年6月号の報告。 統合失調症患者を対象とした4件の6週間ランダム化二重盲検プラセボ対照試験のデータを統合した。18~65歳の成人を対象とした試験が3件(NCT01396421、NCT01393613、NCT01810380)、13~17歳の青年を対象とした試験が1件(NCT03198078)であった。早期発症の基準は、年齢が13~35歳、罹病期間が5年以内とした。ブレクスピプラゾール2~4mg/日投与群(ブレクスピプラゾール群)またはプラセボ投与群(プラセボ群)にランダムに割り付けられた患者データを統合した。有効性の評価は、主に陽性・陰性症状評価尺度(PANSS:すべての試験の主要エンドポイント)を用いた。機能の変化は、成人では個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)、青年ではChild Global Assessment Scale(CGAS)を用いて測定した。また、安全性も評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は476例(ブレクスピプラゾール群:289例、プラセボ群:187例)。・ベースラインから6週目までのPANSS総スコア(最小二乗平均差[LSMean]:-3.6、95%信頼区間[CI]:-7.0~-0.1、p=0.04、Cohen's d:0.19)およびPSP/CGAS複合機能スコア(LSMean:2.3、95%CI:0.1~4.5、p=0.04、Cohen's d:0.19)の変化は、ブレクスピプラゾール群のほうがプラセボ群よりも大きかった。・治療中に発現した有害事象(TEAE)の発現率は、ブレクスピプラゾール群で50.7%、プラセボ群で46.3%であった。・ブレクスピプラゾール群で最も多くみられたTEAEは、不眠(ブレクスピプラゾール群:9.2%、プラセボ群:9.5%)およびアカシジア(ブレクスピプラゾール群:6.5%、プラセボ群:2.1%)であった。 著者らは「本解析により、統合失調症の初期段階の患者におけるブレクスピプラゾールの有効性が示され、統合失調症に対するブレクスピプラゾールのエビデンスが拡充された。また、ブレクスピプラゾールの安全性プロファイルは、これまでの臨床試験の結果と一致していた」としている。

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グラム陰性菌の菌血症、迅速抗菌薬感受性試験は臨床的に有効か/JAMA

 グラム陰性桿菌による血流感染症患者において、迅速抗菌薬感受性試験(AST)の追加は標準ASTと比較し、「desirability of outcome ranking(望ましい順位のアウトカム):DOOR」による評価では優越性は認められなかったことが、米国・Vanderbilt University Medical Center大学のRitu Banerjee氏らが行った「FAST試験」の結果で示された。血液培養時の陽性血液培養ボトルを用いて直接、感受性の表現型を評価する迅速ASTについて、その結果に基づき抗菌薬治療を行うことで臨床アウトカムを改善するかどうか、臨床的意義は不明であった。著者は、DOORでは差がなかったものの副次アウトカムや事前に規定した探索的アウトカムでは差がみられたことから、「今回の知見は、他の有効性および安全性のアウトカムと併せれば、迅速ASTの使用に関して役立つ可能性がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年4月18日号掲載の報告。主要アウトカムは、より望ましいアウトカムが得られる確率 FAST試験は、多剤耐性グラム陰性菌の有病率が高い4ヵ国の7施設(ギリシャ2、インド1、イスラエル3、スペイン1)で実施された無作為化非盲検優越性試験。 対象は、血液培養でグラム陰性桿菌が検出され、かつ血液培養の結果通知時点で入院中の患者で、年齢は問わなかった。ただし、直近7日以内のグラム陰性桿菌検出、血液培養結果通知時点で死亡、血液培養グラム染色でグラム陽性桿菌・グラム陽性球菌・グラム陰性球菌・酵母菌・真菌・複数の形態のグラム陰性桿菌を認めた患者などは除外した。 研究グループは、血液培養判定から16時間以内に対象患者を迅速AST群または標準AST群に無作為に割り付け、迅速AST群では各施設の標準ASTに加えVITEK REVEAL(bioMerieux製)を用いて迅速ASTを行った。 両群とも、全例、各施設の抗菌薬適正使用プログラムによる評価を受け、臨床チームで治療変更や抗菌薬の選択、用法および用量などを決定した。 主要アウトカムは、無作為化後30日時点のDOORであった。DOORは「有害イベントなしで生存」、「1つ以上の有害イベントを伴う生存」、「死亡」の3段階で順位付けし、有害イベントは入院継続または退院後30日以内の再入院、臨床効果なし、望ましくない事象(腎不全、多剤耐性菌の院内感染など)と定義した。迅速AST群で標準AST群より良好なDOORが得られる確率の95%信頼区間の下限が50%を超えた場合に、標準AST群に対する優越性が認められることとした。 副次アウトカムは、30日死亡、30日までの入院期間、集中治療室入室、院内感染、3日以内の有効な抗菌薬治療開始までの時間、3日以内の抗菌薬の増量または減量などであった。カルバペネム耐性菌感染症患者で、有効な抗菌薬治療開始までの時間が早まる 2023年12月~2025年5月に899例が無作為化され、このうち850例が解析対象集団となった(迅速AST群413例、標準AST群437例)。年齢中央値72歳、女性が43%であった。 迅速AST群で標準AST群より良好なDOORが得られる確率は48.8%(95%CI:45.3~52.4)であり、優越性は示されなかった。 有効な抗菌薬治療開始までの時間の中央値は両群で差はなく、抗菌薬の増量または減量までの時間の中央値は迅速AST群(22時間)が標準AST群(36時間)より14時間(95%信頼区間[CI]:6~22)短かった。その他の副次アウトカムは両群で差は認められなかった。 事前に規定されたサブグループ解析では、カルバペネム耐性菌感染症患者集団において有効な抗菌薬治療開始までの時間の中央値は迅速AST群で9.5時間、標準AST群で28時間であった(群間差:-18時間、95%CI:-42~6)。

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脳内出血既往患者、低用量3剤配合降圧薬の追加で再発減少/NEJM

 脳内出血患者において、標準治療に加え3種類の低用量降圧薬の配合錠を1日1回投与することにより、プラセボと比較し脳卒中の再発および主要心血管イベントの発生が減少したことを、オーストラリア・George Institute for Global HealthのCraig S. Anderson氏らTrident Research Groupが「TRIDENT試験」の結果で報告した。降圧は脳卒中を予防する、唯一の立証済み治療法である。標準的な降圧治療への低用量3剤配合降圧薬の追加が、標準治療単独より血圧をさらに低下させ、脳卒中再発リスクを低減できるかどうかは明らかにされていなかった。NEJM誌2026年4月23日号掲載の報告。テルミサルタン20mg+アムロジピン2.5mg+インダパミド1.25mgの配合錠 TRIDENT試験は、12ヵ国(オーストラリア、ブラジル、ジョージア、マレーシア、オランダ、ナイジェリア、シンガポール、スリランカ、スイス、台湾、英国、ベトナム)の61施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験。 対象は、非外傷性の脳内出血の既往歴があり、ベースラインの収縮期血圧が130~160mmHgで臨床的に安定(必要に応じて降圧治療中)の18歳以上の患者とした。 研究グループは、導入期として全例に低用量降圧薬の3剤配合錠(テルミサルタン20mg+アムロジピン2.5mg+インダパミド1.25mg)を1日1回2週間投与し、導入期終了後に同意が得られた適格患者を3剤配合錠(継続)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは脳卒中の初回再発、副次アウトカムは無作為化後6ヵ月時点の血圧コントロール(収縮期血圧130mmHg未満と定義)、主要心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中または心血管死の複合)、心血管死、および安全性であった。脳卒中の再発は、3剤配合錠群4.6%vs.プラセボ群7.4% 2017年9月28日~2024年11月30日に、スクリーニングを受け適格性を評価された2,206例が導入期に参加し、導入期終了後に1,670例が無作為化された(3剤配合錠群833例、プラセボ群837例)。1,670例の平均(±標準偏差)年齢は57.8±11.4歳、563例(33.7%)が女性、1,213例(72.6%)がアジア系で、1,114例(66.7%)がスリランカ在住であった。 追跡期間中央値2.5年(四分位範囲:1.6~4.4)時点で、追跡期間中の平均収縮期血圧は3剤配合錠群127mmHg、プラセボ群138mmHgであり、平均拡張期血圧はそれぞれ82mmHg、86mmHgであった。 脳卒中再発は、3剤配合錠群38例(4.6%)、プラセボ群62例(7.4%)に発生し、ハザード比(HR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.41~0.92、p=0.02)であった。脳内出血再発は3剤配合錠群15例(1.8%)、プラセボ群37例(4.4%)であった(HR:0.40、95%CI:0.22~0.73)。 主要心血管イベントの発生割合は、3剤配合錠群がプラセボ群より有意に低かった(6.6%vs.9.8%、p=0.04)。 重篤な有害事象は、3剤配合錠群で193例(23.2%)、プラセボ群で218例(26.0%)に認められた。投与中止に至った有害事象の発現率はそれぞれ13.6%、6.0%であり、主な事象は血清クレアチニン値の20%以上の上昇であった。

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スマートフォンの問題的使用、若年者の摂食障害関連症状と関連か

 多くの若者にとって、スマートフォンはもはや体の一部ともいえる存在だ。今回、スマートフォンの問題的使用(problematic smartphone use:PSU)や長時間のスクリーンタイムが、体型不満や感情的過食などの摂食障害関連症状と関連している可能性があることが、主に若年者を対象とした研究のシステマティックレビューで示唆された。英キングス・カレッジ・ロンドン精神医学・心理学・神経科学研究所のBen Carter氏らによるもので、詳細は「JMIR Mental Health」に3月9日掲載された。 近年、スマートフォンの使用パターン(PSUや長時間のスクリーンタイムなど)が食行動にも影響を及ぼし、摂食障害に関連する症状に関与する可能性が示唆されているが、その関係性の詳細は十分に明らかになっていない。このような背景から、Carter氏らはPSUと摂食障害症状や体型不満、感情的摂食などの摂食障害関連アウトカムとの関連を検討することを目的とした。 研究チームは、PRISMAガイドラインに基づくシステマティックレビューを行い、PubMed、Embase、Web of Scienceの3つのデータベースを用いて、2011年1月以降に発表されたPSUと摂食障害症状に関する研究を検索した。事前に設定した基準を満たした研究は35件で、参加者は計5万2,584人、平均年齢は17.0歳だった。ほとんどが一般集団を対象とした横断研究だった。研究の質を評価したところ、28件(78%)が良質と判定された。 これらの研究の多くで、PSUと摂食障害症状との間に正の関連が報告されており、この傾向は年齢層や国が異なっても概ね一致していた。この関連には、感情調整の困難や不安、抑うつなどが関与している可能性のあることが示唆された。 また、PSUは食物依存、体型不満、制御できない摂食、感情的過食などの摂食障害関連アウトカムとも関連していた。さらに、スマートフォンのスクリーンタイムが長いほど、摂食障害症状が強い傾向もみられた。 著者らは、「本レビューでは、PSUが摂食障害症状や体型不満、感情的過食、食物依存などと関連することが示された。感情調整の困難や不安、抑うつがこの関連に関与する可能性も示唆された。一方、研究の多くは横断研究で因果関係は不明であり、今後は縦断研究や介入研究により、PSUと摂食障害症状の関係や予防・介入の有効性を検証する必要がある」と述べている。 なお、本研究の限界として、PSUや摂食障害症状の評価が自己申告に依存していること、また対象研究の多くが一般集団を対象としており臨床集団への一般化に限界があることを挙げている。

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超加工食品の摂取量が心臓発作や脳卒中、死亡リスクなどと関連

 工業的に多くの加工が加えられている「超加工食品」と呼ばれる食品の摂取量が、心筋梗塞や脳卒中、およびそれらによる死亡のリスクと関連していることが報告された。超加工食品を1日に平均9回分摂取する人は1回分摂取する人に比べて、7割近くハイリスクだという。米テキサス大学ヒューストン健康科学センターのAmier Haidar氏らの研究によるもので、詳細は「JACC Advances」に3月17日掲載された。 超加工食品は、未加工の食品から工業的に抽出された物質を用いて製造される。飽和脂肪酸やでんぷん、添加糖などを多用して味が整えられ、さらに見た目をよくするための加工が施され、保存性を高めるといった目的で多くの添加物も使用されている。例としては、個別包装された焼き菓子、砂糖入りのシリアル、そのまま食べられるか、温めるだけで食べられる食品、ハムやソーセージなどの加工肉などが挙げられる。これら超加工食品の摂取量が多い食生活は不健康な食生活になりやすいと考えられ、健康リスクを高める可能性がある。Haidar氏らはこの点について、米国で行われた動脈硬化に関する疫学研究(MESA)のデータを用いて検討した。 MESAの参加者は、明らかな心血管疾患のない45~84歳の米国成人。データ欠落のない6,531人(女性52.6%)を研究参加時の食事調査で把握された超加工食品の摂取量に基づき5群に分けると、最低五分位群は1日の超加工食品摂取量が1.1回分であったのに対して、最高五分位群は9.3回分摂取していた。 8万3,870人年の追跡で、710件の心血管イベント(非致死性心筋梗塞、冠動脈疾患死、脳卒中、脳卒中死、蘇生された心停止)の発生が確認された。心血管イベントリスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、教育歴、収入、喫煙・運動習慣、摂取エネルギー量、血圧、血清脂質、糖尿病の既往など)を調整後、超加工食品摂取量の最低五分位群に比べて最高五分位群のイベントリスクは67%高いことが分かった(ハザード比〔HR〕1.668〔95%信頼区間1.196~2.325〕)。また、1日に超加工食品を1回分多く摂取するごとに、リスクが5%上昇するという関連も認められた(HR1.052〔同1.010~1.094〕)。 この結果についてHaidar氏は、「超加工食品は手軽に食べられ、便利な食品として利用されることが多い。しかしわれわれの研究結果は、適切な範囲の摂取にとどめるべきであることを示唆している」と語っている。また同氏は重要なポイントとして、「今回の研究では心血管イベントのリスクを左右する多くの因子を考慮に入れた。例えば、摂取エネルギー量や食事全体の質、肥満、高血圧、糖尿病などだ。それらの影響を考慮したにもかかわらず、超加工食品の摂取量の多さとイベントリスクとの関連の強さはほとんど変わらなかった」と付け加えている。 なお、本研究のみでは、超加工食品が心血管イベントリスクを高める理由を特定することはできない。ただし先行研究からは、超加工食品は高カロリーで、糖や塩、脂肪が多く含まれていることが示されている。研究者らは、超加工食品のこのような特徴が、体重増加、炎症、体脂肪の蓄積につながる可能性があると述べている。

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妊婦・授乳婦・透析患者の尿路感染症、何を処方する?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第26回

Q26-1 妊婦・授乳婦の尿路感染症、何を処方する?妊婦、授乳中の方の尿路感染症で、使いやすい処方を教えてください。Q26-2 透析患者の尿路感染症、抗菌薬の選択は?ほとんど自尿がない透析患者では、尿路感染症への抗菌薬は何を選択すればよいでしょうか?

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第313回 救急患者争奪戦が激化の予感(後編)「地域最多救急病院」の判断は「病床機能報告のデータ等」に基づいて確認、「自院の救急搬送件数の8割以上の実績を有する他の医療機関」には搬送件数の照会必要

ホルムズ海峡封鎖は農業、医療に多大な影響こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は久しぶりに、茨城県の桜川市真壁町で有機農業をやっている大学の先輩のところに、農作業の支援に行ってきました。作業は春の定番、キュウリ、トマト栽培用の支柱立てとネット張りです。思えば、20年以上、この作業の手伝いをやってきているのですが、いまだにネット張りはうまくいったためしがなく、ナイロンのネットが展開時にぐちゃぐちゃになってしまいます。農作業は向かないなと実感させられる瞬間です。夜はワラビとフキを入れた猪鍋(実は豚肉)に筍ごはんという春のご馳走でした。先輩は料理を作りながら、「戦争で窒素などの化学肥料の供給危機が報道されているが、うちは有機なので幸いその影響はない。ただ、ナフサ不足でナイロンなどの化学繊維の価格が上がることで、農業用資材のコストは相当上昇するだろう」と浮かない顔でした。ホルムズ海峡封鎖の影響で、石油由来のナフサが高騰、注射器、手袋、カテーテル、透析用器具などの医療用資材が供給不足・価格高騰に陥っていますが、私たちの口に入るさまざまな食べ物(野菜や魚類など)への影響もこれから徐々に出始めるでしょう。戦争は本当に厄介ですね。人口20万人以下の医療圏で複数の急性期病院がある地域では激しい救急患者争奪戦の可能性さて、前回に引き続き、2026年度診療報酬改定で新設された2区分の急性期病院一般入院基本料(急性期病院A:看護配置7対1病棟で1日1,930点、同B:看護配置10対1病棟で1日1,643点)について書いてみたいと思います。前回詳しく書いたように、「急性期病院A一般入院料(以下、急性期病院A)」は、高度な救急・手術実績を持つ病院向けで、主に都市部における「急性期拠点機能」を想定しているようです。一方、「急性期病院B一般入院料(以下、急性期病院B)」は、主に人口減少地域などで急性期医療を担う病院を対象としていると考えられます。施設基準等からも明らかなように救急搬送件数が取得のカギであり、いずれも多数の救急患者が必要なため、病床過剰地域では病院間で救急患者の争奪戦が勃発しそうです。とくに「急性期病院B」の要件には、「人口20万人未満地域で二次医療圏内の搬送件数最大かつ1,000件以上」があり、搬送件数最大の1病院のみが対象となります。そのため、人口20万人以下の医療圏で複数の急性期病院がある地域では、激しい救急患者争奪戦が起こる可能性があります。では実際に、今ある各地の急性期病院はどんな動きを見せ始めているのでしょうか。日赤グループは90病院中45病院、徳洲会グループは31病院中24病院が「急性期病院A」メディファクスは、4月6日付で日本赤十字社のグループ病院、4月10日付で徳洲会グループの取得見込みを報じています。同紙によれば、「日本赤十字社は、グループ90病院のうち45病院が急性期病院A一般入院料の施設基準を満たすと見込んでいる」と報じています。また、「急性期病院Bは17病院の届け出を見込んでいる。内訳は、急性期一般入院料1からの届け出が11病院、入院料2からが4病院、入院料4からが2病院」としています。このほかに「急性期病院A」の基準を満たしているものの併設が認められない地域包括ケア病棟を持つ病院が5施設あるとのことで、同紙の取材に医療事業推進本部の渡部 洋一本部長は「現在の地域ニーズに基づき確保している地ケア病棟だが、今後も引き続き必要とするのかどうか、地域の中で判断すべき課題と受け止めている」と話したとのことです。一方、徳洲会グループ(3月末時点89病院)については、現在、「急性期一般入院料1を算定する31病院のうち、24病院が『急性期病院A一般入院料』を、6病院が『急性期病院B一般入院料』を届け出る見通し」と報じています。そして、「急性期Aを目指す24病院のうち10病院は、300床以上を有するグループの中心的な施設で、残り14病院は200~300床の規模となる」とのことです。なお、「急性期病院A」は「救急搬送件数:年2,000件以上」に加え、「全身麻酔手術件数:年1,200件以上」が要件となっており、これについて徳洲会グループの岸良 洋一部長(大阪本部医事部)は「とくに全麻手術件数は病床数に影響を受ける。200床未満で基準を満たすのは厳しい」との見方を示しています。全身麻酔手術件数を満たせず「急性期病院B」を選択する病院も各地の急性期病院の今後の動きについては、日経ヘルスケア4月号も特集記事「徹底分析!2026年度診療報酬改定」で詳細に報じています。同記事では、医療法人徳洲会・岸和田徳洲会病院(大阪府岸和田市、400床)、社会医療法人愛仁会の千船病院(大阪市西淀川区、308床)、高槻病院(大阪府高槻市、477床)、明石医療センター(兵庫県明石市、392床)、社会医療法人仁医会・牧田総合病院(東京都大田区、290床)などが、「急性期病院A」を届け出る予定とのことで、いずれもかなりの増収が見込まれるとしています。「急性期病院B」については、「届け出る医療機関の状況は多岐にわたりそうだ」として、社会医療法人水光会・宗像水光会総合病院(福岡県福津市、300床)や、医療法人永生会・南多摩病院(東京都八王子市、170床)、医療法人董仙会・恵寿総合病院(石川県七尾市、386床)のケースなどを紹介しています。宗像水光会総合病院は現状ある地域包括医療病棟を急性期病棟に転換する考えを示し、南多摩病院はその病床規模から「急性期病院A」の要件「全身麻酔手術件数:年1,200件以上」を満たせず「急性期病院B」を選択するとのことです。恵寿総合病院も看護配置7対1などを満たせず「急性期病院B」の選択になるとしています。 「地域最多救急病院」の判断について「直近の病床機能報告のデータ等に基づき確認」と厚労省が疑義解釈発出こうして医療メディアの報道を見てくると、「急性期病院A」は都市部で概ね250床以上の中規模・大規模病院で、救急や手術に積極的な「急性期拠点機能」を担う病院が選択することになるようです。一方、「急性期病院B」は200床に満たない病院も含め、都市部で「高齢者救急・地域急性期機能」に対応したり、地方で「急性期拠点機能」を展開したりする病院が選択することになるようです。もっとも、「急性期病院B」は地域包括ケア病棟との併存は可能ですが、地域包括医療病棟と併存させることはできないことから、ケアミックスの手法については近隣の医療機関も含めての体制再構築が求められることになります。ちなみに、厚生労働省保険局医療課は4月21日付で「急性期病院B一般入院料」、「急性期総合体制加算」で求める「地域最多救急病院」として届け出る場合の疑義解釈を発出しています。それによれば、「自院が所属する二次医療圏に所在する医療機関のうち、救急搬送件数が最多(地域最多救急病院)であることをどのように判断するか」との問い対し、「直近の病床機能報告のデータ等に基づき、当該医療機関が所属する二次医療圏において救急搬送件数が最多であることを確認した上で、届出を行うこと。この際、当該二次医療圏において、自院の救急搬送件数の概ね8割以上の実績を有する他の医療機関が存在する場合、又は新設、再編若しくは統合等により自院を上回る救急搬送件数となる可能性のある医療機関が存在する場合には、必要に応じて、当該医療機関に対し前年度の救急搬送件数を照会する等により確認を行うこと」としています。つまり、病床機能報告のデータ等で確認し、ライバル医療機関がある場合は、そこの搬送件数も確認しろ、ということのようです。救急患者争奪戦は単なる患者獲得に加えて、ある意味「情報戦」の側面も持つことになるかもしれません。

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日本の初期研修医における重大インシデント、男女で差

 過去の研究で、女性医師のほうがガイドラインやエビデンスに基づいた診療を行うことで患者の予後が良好なことが示唆されている。今回、東京科学大学の片桐 碧海氏らが、初期研修環境の改善を目的に国内の初期研修医約6,000人の横断的データを解析し、初期研修医の性別と患者安全インシデントの関連における業務量と心理的負担の関与について検討した。その結果、女性研修医は男性研修医に比べ、重大なインシデントを起こすリスクが低いことが示された。Journal of Patient Safety誌2026年5月号に掲載。 本研究は、2022年度の基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)のデータを用いた横断的研究である。対象は、卒後1年目および2年目の研修医計6,063人。匿名アンケートにより、過去12ヵ月間に自らの医療過誤によって生じた重大な患者安全インシデント(死亡または重篤な有害事象)の有無を調査した。マルチレベル混合効果ロジスティック回帰分析により、病院間の差異を調整し、さらに労働時間、当直頻度、燃え尽き症候群、同僚からの妨害行為などの労働条件についても検討した。 主な結果は以下のとおり。・同僚からの妨害行為を媒介変数として考慮した場合、女性研修医では重大な患者安全インシデントが発生するリスクが低かった(オッズ比[OR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.59~0.85)。・週労働時間とインシデントリスクの関連には、男女で異なる傾向が見られた。男性ではU字型の関連を示し、週45時間未満(OR:2.07、95%CI:1.39~3.09)および週80時間以上(OR:1.35、95%CI:1.05~1.74)の両方でリスクが高かった。女性では用量反応的な関連を示し、とくに週80時間以上の長時間労働でリスクが顕著に高まった(OR:2.10、95%CI:1.43~3.09)。・燃え尽き症候群や当直頻度については、医師の性別との有意な相互作用はみられなかった。 著者らは、勤務時間の短縮は、重大な患者安全インシデント防止という点で、女性研修医にとって有益である可能性を指摘している。

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統合失調症に対する漢方薬と抗精神病薬の併用がMetSに及ぼす影響

 統合失調症患者における抗精神病薬と併用した中長期の漢方薬の使用が、メタボリックシンドローム(MetS)に及ぼす影響を評価し、これらの患者におけるMetSの有病率および関連する影響因子を明らかにするため、中国・Fujian Psychiatric CenterのJing-Shuang Zhang氏らは、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Frontiers in Pharmacology誌2026年3月17日号の報告。 2022~24年に統合失調症と診断され精神科病院に入院中の患者897例(平均年齢:47.68±14.67歳)を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象患者は18歳以上、服薬順守が良好で、入院期間が6ヵ月以上の患者とした。入院中の漢方薬使用状況に基づき、対象患者を漢方薬使用群と非使用群に分け、両群のアウトカム、とくにMetSの発症についてレトロスペクティブにフォローアップ調査を行った。単変量解析を用いて潜在的な交絡因子をスクリーニングした後、多変量ロジスティック回帰分析を行い、交絡因子の影響を調整した。最後に、曝露因子が研究結果に及ぼす影響を評価し、オッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・漢方薬使用群は897例中163例(18.17%)であった。また、MetSを発症した患者は247例(27.53%)であった。・漢方薬使用群におけるMetSの有病率は17.18%であったのに対し、非使用群では29.84%であった。・漢方薬使用群では、非使用群と比較し、中心性肥満(29.5% vs.39.8%)および高血糖(13.50% vs.21.8%)の有病率が低かった。・二項ロジスティック回帰分析の結果、MetSの発症と独立して関連していた因子は、学歴、漢方薬、クエチアピン、クロザピン、リスペリドン、アリピプラゾールの使用、BMIであった。・学歴の低い患者(9年以下)と比較し、学歴が高い患者(12年超)では、MetS発症リスクが低かった(OR:0.45、95%信頼区間[CI]:0.25~0.81、p<0.01)。・非使用群と比較し、中長期(6ヵ月以上)の漢方薬使用はMetS発症リスクを低下させることが示された(OR:0.50、95%CI:0.30~0.83、p<0.01)。・リスペリドン(OR:0.54、95%CI:0.36~0.83、p<0.01)およびアリピプラゾール(OR:0.39、95%CI:0.21~0.72、p<0.01)を使用している患者は、ほかの抗精神病薬を使用している患者と比較し、MetSの発症リスクが比較的低かった。・薬剤の種類により、MetS発症率の程度は異なっていた。・BMIが高いほど、MetS発症リスクが増加するという正の相関が認められた(OR:1.39、95%CI:1.32~1.46、p<0.001)。・クエチアピンまたはクロザピンを使用していない患者と比較し、クエチアピン(OR:1.86、95%CI:1.11~3.13、p<0.05)またはクロザピン(OR:1.74、95%CI:1.14~2.68、p<0.05)を使用している患者では、MetSの発症リスクが増加した。 著者らは「入院中の統合失調症患者では、一般的にMetSの発症が認められた。クエチアピン、クロザピンの使用およびBMIの増加は、MetSの有意なリスク因子であることが示唆された。一方、漢方薬、アリピプラゾール、リスペリドンの使用および高学歴は、MetSの発症に対する保護因子であった」とし「統合失調症患者においてMetSの発見と予防は不可欠である。長期的な漢方治療はMetSの発症率を低下させ、慢性期統合失調症患者にとってより良い治療選択肢と方向性に寄与する可能性がある」とまとめている。

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イヌリンにより変形性膝関節症の痛みが軽減か

 腸内環境を整えることで関節炎の痛みが和らぐかもしれない──そんな研究結果が報告された。変形性膝関節症(OA)患者を対象としたランダム化比較試験で、難消化性食品成分であるプレバイオティクスの摂取が痛みの軽減に寄与する可能性が示された。英ノッティンガム大学NIHRノッティンガム生物医学研究センターのAfroditi Kouraki氏らによるこの研究は、「Nutrients」に2月24日掲載された。 研究グループは、腸の健康を改善することがOAの新しい治療法になる可能性があると考えている。Kouraki氏は、「この研究は、朝食やヨーグルトにサプリメント(以下、サプリ)を加えるだけで、痛みが和らぎ、身体機能も改善される可能性があるという、わくわくするような可能性を示した」とニュースリリースで述べている。 腸内には何兆もの細菌が生息し、健康に幅広く影響を与えることが知られている。今回の研究では、チコリの根や菊芋などに含まれる天然食物繊維であるイヌリンに着目し、イヌリンのサプリと理学療法士の指導下で実施される運動プログラム(physiotherapy-supported exercise;PSE)が、OAの痛みにどのような影響を及ぼすのかを評価した。対象とされたOA患者117人(平均年齢67.5±9.4歳、女性58.1%)は、6週間にわたって、1)イヌリンのサプリ(20g/日)を摂取する群、2)イヌリン摂取とPSEを受ける群、3)PSEのみを受ける群、4)プラセボ(マルトデキストリン10g/日)を摂取する群の4群に、ランダムに割り付けられた。 その結果、イヌリンと理学療法は、いずれも単独で膝の痛みを軽減する効果のあることが明らかになった。Numerical Rating Scale(NRS)で評価した痛みは、プラセボ群と比較して、イヌリン群で−1.11ポイント(95%信頼区間−2.18〜−0.04、P=0.045)、PSE群で−1.55ポイント(同−2.52〜−0.58、P=0.002)改善した。また、イヌリン群では握力と、痛みに対する感受性(圧痛閾値、時間的荷重〔同じ強さの刺激を短時間で繰り返し受けると、痛みが次第に強く感じられる現象〕)に改善が見られた一方で、PSE群では、30秒立ち上がりテスト(30-CST)とTimed Up and Go(TUG)に改善が認められた。さらに、介入離脱率は、イヌリン群で3.6%だったのに対し、PSE群では21%だった。研究グループは、毎日のサプリ摂取は、定期的な運動よりも継続しやすい可能性があると指摘している。 このほか、イヌリン摂取群では、腸から分泌されるホルモンであるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の血中濃度の上昇と腸で産生される脂肪酸である酪酸レベルの上昇も確認された。GLP-1は、痛みの調節や筋肉の健康に関与しており、新しい肥満症治療薬でも標的とされている。一方、酪酸は全身の炎症や痛みの経路に影響を与えると考えられている。論文の上席著者であるNIHRノッティンガム生物医学研究センターAna Valdes氏は、「GLP-1と握力の関係は特に興味深く、腸-筋肉-痛みの相互作用が関連している可能性を示しており、今後、さらに調査する価値がある」と述べている。 本研究には関与していない、Arthritis UKで研究部長を務めるLucy Donaldson氏は、「研究者らは腸内細菌が痛みの感じ方にどのように関与するかを探り始めている。この予備的な研究は、食事と理学療法が異なるメカニズムで関節炎の症状を改善できる可能性を示しており、とても興味深い。バランスの取れた食事、食物繊維の摂取、定期的な運動が大切であることは分かっているが、それらがどのように作用して痛みを軽減するのかを理解するための研究をサポートできることをうれしく思う」とコメントしている。

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聴覚ビート刺激を組み合わせた音楽は不安軽減に有効

 短時間だけ音楽を聴くことが不安の軽減に役立つ可能性が、新たな臨床試験で明らかになった。試験では、脳活動に影響を与えることを目的とした音のパターンである聴覚ビート刺激(ABS)を組み合わせた音楽を24分間聴くことが、不安症状の軽減に最も効果的であることが示されたという。トロント・メトロポリタン大学(カナダ)心理学教授のFrank Russo氏らによるこの臨床試験の詳細は、「PLOS Mental Health」に1月21日掲載された。 この臨床試験では、先行研究で確認された、音楽にABSを組み合わせた(音楽+ABS)介入による追加の不安軽減効果が再現されるか、また、音楽+ABSの効果が最大となる聴取時間がどの程度かが検討された。対象は、中等度の不安を抱える成人144人(19〜73歳、平均年齢37.6歳)で、全参加者が、不安症状を管理するための薬剤を使用していた。 参加者は、1)ピンクノイズを24分間聴く群(対照群)、2)音楽+ABSを12分間聴く群、3)音楽+ABSを24分間聴く群、4)音楽+ABSを36分間聴く群のいずれかに割り付けられ、介入の前後に不安と気分の評価を受けた。なお、ピンクノイズは広い周波数帯域にわたる「ザー」という連続音で、リラックス効果があるとされている。主評価項目は状態不安の変化とし、STICSA(State-Trait Inventory for Cognitive and Somatic Anxiety)を用いて評価した。また、副次評価項目は感情(ポジティブ感情およびネガティブ感情)の変化とし、PANAS(Positive and Negative Affect Scale)を用いて評価した。 その結果、24分間の音楽+ABS介入は、ピンクノイズ介入と比較して、認知的不安および身体的不安を有意に低減し、先行研究の結果が再現された。感情については、ポジティブ感情は先行研究の結果と一致せず、いずれの介入でも低下が認められ、群間差も認められなかった。一方、ネガティブ感情は音楽+ABS介入により有意に低減し、先行研究とは異なる結果が示された。さらに、音楽の聴取時間に着目すると、不安はいずれの条件でも有意に低減し、特に24分の音楽+ABS介入の低減効果が最大であることが示された。ネガティブ感情については、36分の音楽+ABS介入で最大の低減効果が認められ、聴取時間の増加に伴う用量反応関係が示唆された。ポジティブ感情には、そのような傾向は認められなかった。 Russo氏は、「今回の臨床試験では用量反応関係が認められ、24分間の音楽+ABSが最適な長さであると考えられた。この長さは、不安レベルの意味のある改善をもたらすには十分でありながら、まとまった時間の確保を強いるものではない」とニュースリリースで付け加えている。 研究グループによると、不安を抱えている人は世界で数百万人に上るとされる。不安に対する一般的な治療法は薬物治療や心理療法だが、これらには時間や費用がかかり、副作用を伴うこともある。一方、音楽を用いたツールは、人々の症状の管理を助けるシンプルで低コストの方法となり得ると研究グループは述べている。

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若年成人期の過敏性腸症候群のリスク因子を特定

 16歳時に過敏性腸症候群(IBS)を有することは、24歳時にIBSを有することを予測する最も強いリスク因子であり、16歳時にIBSであった人の33.6%は24歳時でも診断基準を満たすとする研究結果が、「Gastroenterology」に1月30日掲載された。 ヨーテボリ大学(スウェーデン)サールグレンスカアカデミーのJessica Sjölund氏らは、1990年代半ばに出生した4,089人を若年成人期まで追跡したスウェーデンのBAMSE出生コホートのデータを用い、24歳時のIBSの有無に関連する思春期のリスク因子、および16歳から24歳にかけてのIBSの持続に関連する因子を検討した。曝露因子の大半は16歳時に評価されていた。 対象者2,539人のデータを解析した結果、24歳時のIBS有病率は10.0%であり、女性であること、知覚ストレスの高値、アトピー性皮膚炎、片頭痛またはうつ病の既往、健康関連QOLの低値がIBSと関連していた。16歳時のIBSは、24歳時のIBSに対する最も強いリスク因子であった。また、機能性腹痛、自己評価による心理的苦痛および全般的な健康状態不良、食物過敏、短い睡眠時間も、成人期のIBSのオッズ上昇と関連していた。16歳時にIBSであった人のうち33.6%が、24歳時においてもIBSの診断基準を満たしていた。IBSの持続と強く関連していた因子は親のIBS症状であり、それ以外の因子は統計学的に有意ではなかった。 Sjölund氏は、「思春期のIBSは固定した状態ではないことが示された」と述べている。 なお、複数の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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抗菌薬が腸内環境を変える期間は想像以上に長い

 抗菌薬は、危険な感染症を治療する重要な薬として知られている。しかし、新たな研究で、抗菌薬はこれまで考えられていた以上に長期間にわたり身体に影響を残す可能性が示された。約1万5,000人の成人を対象とした研究で、特定の抗菌薬が腸内マイクロバイオームに対して、最長で約8年にわたり影響を及ぼすことが明らかになった。ウプサラ大学(スウェーデン)のGabriel Baldanzi氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に3月11日掲載された。 この研究では、スウェーデンの3つの大規模コホート研究のデータを統合して、8年間の抗菌薬の使用歴と腸内マイクロバイオームとの関連を検討した。対象者に処方された抗菌薬は、スウェーデン処方薬レジストリを用いて把握した。対象者の総計は1万4,979人で、過去8年間で1回以上の抗菌薬使用歴があった割合は69.7〜73.7%であった。参加者から便サンプルを採取し、さらに生活習慣や食事に関する詳細なアンケートにも回答してもらった。 他の使用薬剤や腸内マイクロバイオームに影響を与える既知の因子を調整した多変量解析の結果、腸内マイクロバイオームの多様性の低下と最も強く関連していたのは抗菌薬の使用後1年未満であったが、1〜4年前および4〜8年前の使用でも関連は有意であった。抗菌薬の種類別に見ると、クリンダマイシン、フルオロキノロン系、フルクロキサシリンは、腸内マイクロバイオームの組成への影響が大きく、菌種の存在量との関連の大部分を占めていた。これらの抗菌薬の4〜8年前の使用は、解析対象菌種の10〜15%で存在量の変化と関連していた。一方、ペニシリンV、広域ペニシリン、ニトロフラントインは、数種類の菌種の変化とのみ関連していた。4〜8年前の1コースの抗菌薬の使用でも、未使用と比較すると、腸内マイクロバイオームの組成の変化と関連していた。 論文の筆頭著者であるウプサラ大学のGabriel Baldanzi氏は、「4〜8年前の抗菌薬の使用が、現在の腸内マイクロバイオームの組成と関連していることが分かった。特定の抗菌薬は、1コースの治療でもその痕跡が残る」と述べている。 腸内マイクロバイオームのバランスは、人の健康にとって極めて重要である。過去の研究でも、抗菌薬の使用量が多いほど、2型糖尿病、心疾患、肥満、重篤な消化管感染症、さらには大腸がんのリスクが高まることが報告されている。こうした長期的な腸内環境の変化が、その一因ではないかと考えられている。 研究を率いたウプサラ大学分子疫学分野のTove Fall氏は、「今回の結果は、同等の効果を持つ抗菌薬が2種類ある場合には、腸内マイクロバイオームへの影響がより小さい方を選択するなど、今後の処方指針に役立つ可能性がある」と述べている。 ただし研究グループは、医師に処方された薬の服用を自己判断で中止すべきではないと強調し、「重要なのは、本当に必要な場合に適切な抗菌薬を選択し、長期的に体内の生態系を守ることだ」としている。

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がんサバイバーの運動習慣、死亡だけでなく要介護化リスクとも関連

 がん医療の進歩により、がんサバイバーは増加しているが、その後の生活機能や自立の維持は重要な課題となっている。今回、日本の大規模データを用いた研究で、がんサバイバーにおける日常的な身体活動が、死亡だけでなく新規の要介護認定リスクとも関連する可能性が示された。研究は、国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部の中塚清将氏、国立長寿医療研究センター老年社会科学研究部の小野玲氏、九州大学大学院医学研究院の福田治久氏らによるもので、詳細は2月16日付で「BMJ Open」に掲載された。 がんサバイバーに対する身体活動は、死亡や再発リスクの低下、QOL改善と関連することが報告され、ガイドラインでも推奨されている。しかし、複数のがん種を対象に、1年以上の習慣的身体活動と長期的な機能的アウトカムとの関連を大規模データで検討した研究は限られている。特に、要介護化のような社会的・制度的指標を用いた検討は十分ではない。そこで本研究は、日本の介護保険(LTCI)データを活用し、がんサバイバーにおける1年間の習慣的身体活動が死亡および要介護認定に与える影響を検証することを目的とした。 本研究は、日本の13自治体が参加する大規模データベース「Longevity Improvement & Fair Evidence study(LIFE Study)」に登録された2014年4月から2022年3月までのレセプトおよび健診データを用いた後ろ向きコホート研究である。健康診断を受けた47万1,511人のうち、健診受診までの1年間にがんの診断があるなどの条件を満たした3万9,435人のがんサバイバーを解析対象とした。各参加者は最大約5年間追跡された。主要評価項目は、新規の要介護認定または全死亡の複合アウトカムとした。要介護認定は、自治体の担当職員が心身の状態を調査し、コンピュータ判定と専門職チームの審査を経て決定される制度上の指標で、日常生活動作(ADL)の低下を示す。全死亡はレセプトデータに基づいて把握した。身体活動は健診の項目より、「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」と「日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施」の、「はい・いいえ」の回答から運動とウォーキングの有無を把握した。解析では、年齢や生活習慣などの要因を調整した生存時間解析を行い、身体活動と死亡および要介護認定との関連を検討した。さらに、年齢層別や主要ながん種別の解析も実施した。 身体活動は「運動とウォーキングの両方を行っている群」1万3,536人(34.3%)、「運動またはウォーキングのいずれかを行っている群」1万1,609人(29.4%)、「身体活動なし群」1万4,290人(36.2%)の3群に分類された。 65~74歳のがんサバイバーでは、「身体活動なし群」は「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べ、全死亡または新規の要介護認定リスクが有意に高かった(調整後ハザード比〔HR〕1.72、95%信頼区間〔CI〕1.52~1.94)。 75歳以上でも同様の傾向がみられ、「運動またはウォーキングのみ」の群(HR 1.51、95%CI 1.29~1.85)および「身体活動なし群」(HR 1.66、95%CI 1.43~1.92)は、いずれも「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べ、全死亡または要介護認定リスクが高かった。 全死亡および要介護認定を個別に解析した補足解析でも、「身体活動なし群」は「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べてリスク上昇が認められた。全死亡のHRは1.87(95%CI 1.65~2.12)、要介護認定のHRは1.33(95%CI 1.14~1.54)であった。 さらに、身体活動の影響はがん種によって異なる可能性が示された。 著者らは、がんサバイバーにおける日常的な身体活動が死亡および要介護認定の予防につながる可能性を示したと結論づけた。とくに高齢者で効果が大きい可能性があり、日常生活での継続的な身体活動の重要性を強調している。 本研究の限界として、治療状況が一様でない可能性や、身体活動を自己申告で評価している点、認知・心理状態など未測定因子の影響などを挙げている。

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配偶者死別後の健康に男女差、男性で死亡・認知症リスク上昇

 配偶者との死別は人生で最もつらい出来事の一つだが、その影響は男女で異なるのだろうか。今回、日本の高齢者を対象とした大規模研究により、配偶者死別後の影響には明確な男女差があり、男性では死亡や認知症リスクの上昇など不良転帰が目立つ一方、女性では時間の経過とともに幸福感や生活満足度が高まる傾向が示された。研究は、千葉大学予防医学センター社会予防医学部門の河口謙二郎氏らによるもので、詳細は2月12日付の「Journal of Affective Disorders」に掲載された。 配偶者の死別は高齢者にとって強いストレスを伴い、うつ症状や不安、死亡リスクの上昇など多様な健康影響が報告されている。特に高齢化が進む日本では死別を経験する人が多い。一方、従来研究はうつ症状や死亡など限られたアウトカムに偏っており、健康の多面的側面を十分に評価していないほか、影響の持続期間や男女差についても知見は限定的である。本研究は、配偶者死別と健康・ウェルビーイングの関連を多面的かつ縦断的に検討し、男女差および時間経過による変化を明らかにすることを目的とした。 本研究は、日本老年学的評価研究(JAGES)の2013年、2016年、2019年の3時点データを用いた縦断研究で、要介護認定を受けていない65歳以上の自立した高齢者約2万6,000人(調査ベース)と約3万4,000人(介護保険データベース)を対象に解析した。2013年時点で既婚であった参加者について、配偶者の死別の有無と時期に基づき、死別なし、2015~2016年に死別、2013~2015年に死別の3群に分類した。解析では、身体・認知機能、メンタルヘルス、主観的幸福感、社会的ウェルビーイングなど7領域にわたる計37項目を対象に、配偶者死別との関連を検討した。死亡や認知症、要介護状態については公的介護保険(LTCI)データと連結して評価し、最大約6年間の影響を追跡した。統計解析にはロジスティック回帰分析、修正ポアソン回帰分析、重回帰分析を使い分け、多重比較に対してボンフェローニ補正を行った。 解析の結果、対象約2万6,000人のうち、解析開始時(2016年)に配偶者を亡くしていたのは1,076人だった。配偶者の死別による影響には男女差が認められ、男性では死亡リスク(3~4年後に約1.9倍)や認知症リスク(4~6年後に約2.3倍)、要介護状態に至るリスクの上昇と関連していた。一方、女性でも認知症や要介護状態との関連は一部でみられたものの、男性に比べて弱く、死亡リスクの上昇は認められなかった。 また、死別後1年以内に、男性では抑うつ症状や絶望感の増加、幸福感の低下がみられたが、これらの影響は時間の経過とともに弱まる傾向があった。これに対し女性では、抑うつ症状の増加は認められず、その後、幸福感や生活満足度、生きがいの上昇がみられた。 社会的ウェルビーイングでは、男女ともに社会参加の増加がみられ、友人との交流や趣味・運動などへの参加が活発化した。一方で、社会的支援の低下は男性のみに認められた。さらに、生活習慣の変化として、男性では飲酒量の増加、女性では健診受診の増加がみられた一方、座位時間の増加も確認された。 本研究により、配偶者の死別が高齢者の健康や生活に及ぼす影響には、男女差と時間経過による違いがあることが示された。男性では身体・認知機能の悪化や社会的支援の低下が目立つ一方、女性ではその後の幸福感向上など適応的変化がみられた。著者らは、こうした結果は死別後の影響が一様ではないことを示すものだとし、「高齢化が進む社会においては、男女の特性に応じた支援体制の構築が重要」と指摘している。 なお、本研究にはいくつかの限界があり、対象が高齢日本人に限られることや、サンプルの偏り、測定方法の制約などから、結果を一般化する際には注意が必要である。

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