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ホルムズ海峡封鎖は農業、医療に多大な影響こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は久しぶりに、茨城県の桜川市真壁町で有機農業をやっている大学の先輩のところに、農作業の支援に行ってきました。作業は春の定番、キュウリ、トマト栽培用の支柱立てとネット張りです。思えば、20年以上、この作業の手伝いをやってきているのですが、いまだにネット張りはうまくいったためしがなく、ナイロンのネットが展開時にぐちゃぐちゃになってしまいます。農作業は向かないなと実感させられる瞬間です。夜はワラビとフキを入れた猪鍋(実は豚肉)に筍ごはんという春のご馳走でした。先輩は料理を作りながら、「戦争で窒素などの化学肥料の供給危機が報道されているが、うちは有機なので幸いその影響はない。ただ、ナフサ不足でナイロンなどの化学繊維の価格が上がることで、農業用資材のコストは相当上昇するだろう」と浮かない顔でした。ホルムズ海峡封鎖の影響で、石油由来のナフサが高騰、注射器、手袋、カテーテル、透析用器具などの医療用資材が供給不足・価格高騰に陥っていますが、私たちの口に入るさまざまな食べ物(野菜や魚類など)への影響もこれから徐々に出始めるでしょう。戦争は本当に厄介ですね。人口20万人以下の医療圏で複数の急性期病院がある地域では激しい救急患者争奪戦の可能性さて、前回に引き続き、2026年度診療報酬改定で新設された2区分の急性期病院一般入院基本料(急性期病院A:看護配置7対1病棟で1日1,930点、同B:看護配置10対1病棟で1日1,643点)について書いてみたいと思います。前回詳しく書いたように、「急性期病院A一般入院料(以下、急性期病院A)」は、高度な救急・手術実績を持つ病院向けで、主に都市部における「急性期拠点機能」を想定しているようです。一方、「急性期病院B一般入院料(以下、急性期病院B)」は、主に人口減少地域などで急性期医療を担う病院を対象としていると考えられます。施設基準等からも明らかなように救急搬送件数が取得のカギであり、いずれも多数の救急患者が必要なため、病床過剰地域では病院間で救急患者の争奪戦が勃発しそうです。とくに「急性期病院B」の要件には、「人口20万人未満地域で二次医療圏内の搬送件数最大かつ1,000件以上」があり、搬送件数最大の1病院のみが対象となります。そのため、人口20万人以下の医療圏で複数の急性期病院がある地域では、激しい救急患者争奪戦が起こる可能性があります。では実際に、今ある各地の急性期病院はどんな動きを見せ始めているのでしょうか。日赤グループは90病院中45病院、徳洲会グループは31病院中24病院が「急性期病院A」メディファクスは、4月6日付で日本赤十字社のグループ病院、4月10日付で徳洲会グループの取得見込みを報じています。同紙によれば、「日本赤十字社は、グループ90病院のうち45病院が急性期病院A一般入院料の施設基準を満たすと見込んでいる」と報じています。また、「急性期病院Bは17病院の届け出を見込んでいる。内訳は、急性期一般入院料1からの届け出が11病院、入院料2からが4病院、入院料4からが2病院」としています。このほかに「急性期病院A」の基準を満たしているものの併設が認められない地域包括ケア病棟を持つ病院が5施設あるとのことで、同紙の取材に医療事業推進本部の渡部 洋一本部長は「現在の地域ニーズに基づき確保している地ケア病棟だが、今後も引き続き必要とするのかどうか、地域の中で判断すべき課題と受け止めている」と話したとのことです。一方、徳洲会グループ(3月末時点89病院)については、現在、「急性期一般入院料1を算定する31病院のうち、24病院が『急性期病院A一般入院料』を、6病院が『急性期病院B一般入院料』を届け出る見通し」と報じています。そして、「急性期Aを目指す24病院のうち10病院は、300床以上を有するグループの中心的な施設で、残り14病院は200~300床の規模となる」とのことです。なお、「急性期病院A」は「救急搬送件数:年2,000件以上」に加え、「全身麻酔手術件数:年1,200件以上」が要件となっており、これについて徳洲会グループの岸良 洋一部長(大阪本部医事部)は「とくに全麻手術件数は病床数に影響を受ける。200床未満で基準を満たすのは厳しい」との見方を示しています。全身麻酔手術件数を満たせず「急性期病院B」を選択する病院も各地の急性期病院の今後の動きについては、日経ヘルスケア4月号も特集記事「徹底分析!2026年度診療報酬改定」で詳細に報じています。同記事では、医療法人徳洲会・岸和田徳洲会病院(大阪府岸和田市、400床)、社会医療法人愛仁会の千船病院(大阪市西淀川区、308床)、高槻病院(大阪府高槻市、477床)、明石医療センター(兵庫県明石市、392床)、社会医療法人仁医会・牧田総合病院(東京都大田区、290床)などが、「急性期病院A」を届け出る予定とのことで、いずれもかなりの増収が見込まれるとしています。「急性期病院B」については、「届け出る医療機関の状況は多岐にわたりそうだ」として、社会医療法人水光会・宗像水光会総合病院(福岡県福津市、300床)や、医療法人永生会・南多摩病院(東京都八王子市、170床)、医療法人董仙会・恵寿総合病院(石川県七尾市、386床)のケースなどを紹介しています。宗像水光会総合病院は現状ある地域包括医療病棟を急性期病棟に転換する考えを示し、南多摩病院はその病床規模から「急性期病院A」の要件「全身麻酔手術件数:年1,200件以上」を満たせず「急性期病院B」を選択するとのことです。恵寿総合病院も看護配置7対1などを満たせず「急性期病院B」の選択になるとしています。 「地域最多救急病院」の判断について「直近の病床機能報告のデータ等に基づき確認」と厚労省が疑義解釈発出こうして医療メディアの報道を見てくると、「急性期病院A」は都市部で概ね250床以上の中規模・大規模病院で、救急や手術に積極的な「急性期拠点機能」を担う病院が選択することになるようです。一方、「急性期病院B」は200床に満たない病院も含め、都市部で「高齢者救急・地域急性期機能」に対応したり、地方で「急性期拠点機能」を展開したりする病院が選択することになるようです。もっとも、「急性期病院B」は地域包括ケア病棟との併存は可能ですが、地域包括医療病棟と併存させることはできないことから、ケアミックスの手法については近隣の医療機関も含めての体制再構築が求められることになります。ちなみに、厚生労働省保険局医療課は4月21日付で「急性期病院B一般入院料」、「急性期総合体制加算」で求める「地域最多救急病院」として届け出る場合の疑義解釈を発出しています。それによれば、「自院が所属する二次医療圏に所在する医療機関のうち、救急搬送件数が最多(地域最多救急病院)であることをどのように判断するか」との問い対し、「直近の病床機能報告のデータ等に基づき、当該医療機関が所属する二次医療圏において救急搬送件数が最多であることを確認した上で、届出を行うこと。この際、当該二次医療圏において、自院の救急搬送件数の概ね8割以上の実績を有する他の医療機関が存在する場合、又は新設、再編若しくは統合等により自院を上回る救急搬送件数となる可能性のある医療機関が存在する場合には、必要に応じて、当該医療機関に対し前年度の救急搬送件数を照会する等により確認を行うこと」としています。つまり、病床機能報告のデータ等で確認し、ライバル医療機関がある場合は、そこの搬送件数も確認しろ、ということのようです。救急患者争奪戦は単なる患者獲得に加えて、ある意味「情報戦」の側面も持つことになるかもしれません。