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心停止後昏睡、抗けいれん治療併用で転帰改善は?/NEJM

 心停止後昏睡患者において、律動的および周期的な脳波活動を48時間以上抑制する抗けいれん治療を標準治療に併用しても、標準治療のみと比較して3ヵ月後の神経学的アウトカム不良の割合に有意差は認められないことが、オランダ・トゥウェンテ大学のBarry J. Ruijter氏らが実施した医師主導型無作為化非盲検(評価者盲検)臨床試験「TELSTAR試験」の結果、示された。心停止後昏睡患者において、律動的および周期性の脳波パターンを治療することにより転帰が改善するかどうかは明らかになっていなかった。NEJM誌2022年2月24日号掲載の報告。律動的/周期的な脳波活動を認める心停止後昏睡患者を対象に 研究グループは、心停止後昏睡状態で律動的および周期的な脳波活動が認められた18歳以上の患者を、標準治療のみ(対照群)と、標準治療に加えて抗けいれん治療によりこの脳波活動を48時間以上抑制する段階的戦略を併用する群(抗けいれん治療群)に、1対1の割合で無作為に割り付け検討した。両群とも、標準治療には体温管理療法が含まれた。抗けいれん治療は、てんかん重積状態の治療に関する国際ガイドラインに基づいて行った。 主要評価項目は、3ヵ月後の脳機能カテゴリー(CPC)スケールのスコアに基づく神経学的アウトカムとし、アウトカム良好(CPCスコア:障害なし、軽度障害、中等度障害)またはアウトカム不良(CPCスコア:高度障害、昏睡、死亡)に分類した。副次評価項目は、死亡率、集中治療室(ICU)在室期間、および人工呼吸管理期間であった。3ヵ月後の神経学的アウトカム不良は90% vs.92%、死亡率は80% vs.82% 2014年5月1日~2021年1月24日の間に、172例が登録され、88例が抗けいれん治療群、84例が対照群に無作為化された。心停止後、中央値で35時間後に律動的/周期的な脳波活動が検出され、データが得られた157例中98例(62%)にミオクローヌスが認められた。 48時間連続して律動的/周期的な脳波活動が完全に抑制された患者の割合は、抗けいれん治療群56%(49/88例)、対照群2%(2/83例)であった。 3ヵ月後の神経学的アウトカム不良の患者の割合は、抗けいれん治療群90%(79/88例)、対照群92%(77/84例)(群間差:2%、95%CI:-7~11、p=0.68)、3ヵ月死亡率はそれぞれ80%および82%であった。 ICU在室期間および人工呼吸管理期間の平均値は、抗けいれん治療群が対照群よりわずかに長かった。

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KRAS G12C変異陽性肺がんの新しい治療選択肢、ソトラシブ/日本臨床腫瘍学会

 2022年、KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する2次治療の新たな選択肢として承認されたソトラシブについて、日本臨床腫瘍学会メディカルセミナーにて、愛知県がんセンターの藤原 豊氏が解説した。 肺がん、とくに肺腺がんには多くの遺伝子変異がある。今回ソトラシブが適応となるKRAS G12C変異は日本における扁平上皮非小細胞肺がんの4.1%程度であり、男性、喫煙者に多いことがわかっている。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する従来の初回標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん剤の併用である。しかし、KRAS変異陽性の場合、陰性に比べて細胞障害性抗がん剤の効果が乏しく、とくに2次治療での効果は限定的であり、新しい治療選択肢が望まれていた。KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験成績 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験、CodeBreaK100試験の概要は以下の通り。・対象:KRAS G12C変異陽性進行非小細胞肺がんで抗PD-1/PD-L1免疫治療および/またはプラチナ製剤を含む化学治療の前治療歴があり(前治療数は3つ以下)、RECIST1.1に基づく測定可能病変を有し、ESOG PS 0、1・方法:ソトラシブ960mgを1日1回経口投与(増悪、治療不耐性、同意撤回などまで投与を継続)・評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、奏効までの期間(TTR)、安全性 患者背景は男女同等、アジアからは19名が参加している。前治療で化学療法、免疫療法を受けていた割合はどちらも9割を超えていた。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験主な結果は以下の通り。・主要評価項目であるORRは37.1%(95%信頼区間:28.6~46.2)であり、副次評価項目のDCRは80.6%(95%信頼区間:72.6~87.2)であった。DORの中央値は11.1ヵ月(95%信頼区間:6.9~NE)。・安全性については、全Gradeの副作用が69.8%、Grade3が19.8%、Grade4が0.8%であった。多く見られた副作用は下痢、悪心、ALT・AST増加などであった。KRAS G12C変異陽性肺がんの2次治療はどう変わるか 肺がん診療ガイドラインでは2021年の段階で、すでにソトラシブがKRAS G12C変異陽性に2次治療以降でソトラシブ単剤療法を推奨すると記載されている。 藤原氏は今後の治療戦略について、「1次治療開始時にKRAS G12C遺伝子変異検査を実施し、結果を把握しておけば、2次治療が必要になった場合にすぐにソトラシブを使えると考えている。初回の検査でKRAS G12C変異を確認しておくことが重要」と述べた。

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硬化性萎縮性苔癬〔LSA:lichen sclerosus et atrophicus〕

1 疾患概要■ 概念・定義外陰部に好発する難治性炎症性疾患である。男性の陰茎部に生じるbalanitis xerotica obliterans、女性の外陰部にみられるkraurosis vulvaeやhypoplastic dystrophyと呼ばれる疾患も本症と同義である。■ 疫学性差は男女比が1:9と、圧倒的に女性の罹患者が多い。初経前と閉経後の2つの年齢層に発症のピークがある。男性例は30~50歳の壮年層に発症頻度が高い。■ 病因不明であるが、Borrelia burgdorferi感染の関与が示唆されたことはあるが、菌体が同定された報告は無く、現在では否定的と考えられている。■ 症状女性外陰部の病変は、象牙色調の浸潤を触れる硬化性または萎縮性の紅色局面が主体で、びらん、水疱、紫斑、出血を伴うことがある(図1)。図1 女性外陰部の硬化性苔癬大陰唇から膣口にびらん、苔癬化、脱色素斑が混在する。劇痒と形容される強い瘙痒感や、灼熱感を訴えることが多い。約3割で肛門周囲にも病変がみられ、外陰部から肛門周囲にかけて「8の字型」と称される連続病変を呈することがある(図2)。図2 外陰部から肛囲までの8の字病変肛門部では萎縮した白色調の病変が広がり、さまざまな程度で色素脱失や色素沈着が混在することが多い。同部の皮膚粘膜境界部に生じた場合には、尿道口や腟口部の狭窄を来たしうる。経過中に瘢痕を生じやすく、進展すると癒着による小陰唇の消失や陰核包皮の癒着・閉鎖、陰核の埋没などを来す。通常は腟や子宮頸部などの粘膜部位は侵さないが、辺縁の皮膚病変からびらん、亀裂、腟口部の狭窄が進展した場合には、自発痛や排尿痛、性交痛を生じることがある。その一方、高齢者では無症状の場合もあり、健診で初めて指摘されることもある。男性例は、成人では包皮、冠状溝、亀頭部、小児では通常包皮に生じる。女性例に比べて瘙痒が主症状になることは少なく、陰茎や肛囲の病変はまれである。高度の包茎や癒着による尿道口の狭小化のため、排尿異常を生じることがある。■ 分類性差を問わず、ほとんどが外陰部のみに限局する。外陰部以外の病変が併存することや、外陰部外のみの症例もあるが、諸外国と比べてわが国では極めてまれである。■ 予後長期の罹患に伴って上皮系悪性腫瘍(ほとんどが有棘細胞がん)が本症の5~11%で出現し、最も予後に影響する。また、溶血性貧血、白斑、自己免疫性水疱症のような自己免疫疾患や臓器特異的な自己抗体が検出される症例が、おのおの全体の2割と4割に合併することが知られており、予後に関わるものもある。中でも甲状腺疾患が12%、次いで白斑が6%と多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 諸検査1)皮膚生検と病理組織学的所見病理組織学的に不全角化を伴う過角化、毛孔性角栓を伴う様々な厚さの表皮肥厚や液状変性を認め、完成期には萎縮して表皮突起が平坦化する。直下の真皮浅層では、毛細血管拡張やリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤に加え、膠原線維が均一化した無構造物「硝子様均質化(ヒアリン化, hyalinization)」が特徴的である(図3)。生検組織の蛍光抗体直接法では、免疫グロブリンや補体の沈着は通常認めない。図3 外陰部硬化性苔癬の病理組織像過角化、表皮突起の不規則化と消失、真皮上層の毛細血管拡張とヒアリン化、リンパ球浸潤を特徴とする。2)血液学的所見一般血液・生化学検査は正常であることが多く、本疾患の診断や病勢把握に有益な保険適応内のバイオマーカーは存在しない。上述のように、10~30%に自己免疫異常(抗甲状腺抗体、抗BP180抗体など)を認めることがある。■ 鑑別疾患外陰部カンジダ症を含む股部白癬、扁平苔癬、乳房外パジェット病、粘膜類天疱瘡、限局性強皮症(モルフェア)、白斑、円板状ループスエリテマトーデスなどを鑑別する必要がある。■ 合併症進行すると尿道狭窄や性交障害など、排尿や外陰部の機能障害を来すことがある。女性外陰部の硬化性苔癬では7~11%、また表皮が肥厚した病変では約30%に有棘細胞がんが出現するとの報告がある(図4)。図4 有棘細胞がんを合併した女性外陰部の硬化性苔癬右大陰唇から小陰唇の病変部内に隆起性の腫瘤を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療目標ほとんどの症例が難治であり、各種治療に難渋することが多い。長期にわたって症状のコントロールが不良な症例では局所発の頻度が高まるため、通常の治療に抵抗する場合は、まず症状の緩和とその維持を目指す。■ 治療内容1)初期治療局所へのステロイド外用剤が第1選択である。外陰部は他の部位と比べて薬の吸収率が良いものの(42倍 vs. 0.14~13倍:前腕内側の吸収率を1とした場合)、治療効果を優先して、欧米やわが国のガイドラインでは強めのステロイド外用剤の使用が推奨されている。掻爬行為によって症状が悪化するため、抗ヒスタミン薬などを併用して瘙痒のコントロールを行うこともある。2)治療後期症状が軽快したのちも無治療ではなく、保湿剤による外陰部の保護を継続することで、再燃やそのピークが抑えられる場合が多い。3)治療抵抗例保険適応外ではあるが、ステロイド外用に加えてタクロリムス含有軟膏の併用や、局所への光線療法が奏効する場合もある。男性の場合、既存の包茎が症状の遷延化を招くことが多いため、症状に応じて専門科への紹介を考慮する。4)合併症への治療硬化性苔癬における外科的治療は、悪性腫瘍合併例の病変部切除や尿道口狭窄例の尿道拡張術や尿道再建手術などに限って行う。4 今後の展望■ 治療外用療法が基本となるため、ステロイド以外の抗炎症作用ならびに免疫抑制効果をもつ外用剤が期待されている。上述したタクロリムス外用や活性型ビタミンD3外用剤、局所紫外線療法の奏効例が報告されている(本邦保険適用外)。全身療法ではシクロスポリンやバリシチニブ(JAK阻害薬)の内服が奏効した報告がある。■ 診断本症の確定診断には皮膚生検による病理組織所見の確認が必須であるが、女性の罹患者が多く、病変部がプライベートパーツであることから、生検が困難な症例も少なくない。患者血清中の細胞外基質extracellular matrix protein 1(ECM1)に対するIgG抗体を用いた血清診断が、非侵襲的かつ経過中の病勢の把握に有用バイオマーカーになる可能性が指摘されている。いまだ本抗体の病的意義は不明であり、今後の検討が待たれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚科学会 硬化性萎縮性苔癬 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン(医療従事者向けのまとまった情報)1)長谷川 稔ほか. 日皮会誌. 2016;126:2251-2257.2)強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン作成委員会.全身性強皮症・限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン 2017. 金原出版;2017.3)Lewis FM, et al. Br J Dermatol. 2018;178:839-853.4)Kirtschig G, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017;31:e81-e83.5)Oyama N, et al. Lancet. 2003;362:118-123.公開履歴初回2022年3月2日

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医療マンガ大賞2021「膵臓がんの母」受賞者描き下ろし作品(フクラアカリガエル氏)

医療マンガ大賞2021「膵臓がんの母」受賞者描き下ろし作品(フクラアカリガエル氏)ケアネット部門受賞者・フクラアカリガエル氏からのコメント大切な家族の“命に関わる決断”とは、当事者にしかわからない葛藤や苦悩があることと思います。今回、SNS医療のカタチの先生方が選んだ、膵臓がんを患う母と息子との最期の時間が書かれた原作エピソードを読ませていただき、私自身が同じ状況に置かれたらきちんと向き合えるのか、と考えるきっかけになりました。しかし、漫画を描き終えた今も納得のいく答えは出ていません。この作品は、がん患者さんご本人だけでなく、支えているご家族の心も穏やかでありますようにという気持ちを込めて描きました。最後までご覧いただきありがとうございました。

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第98回 まだまだ終わらない乳腺外科医わいせつ裁判、最高裁が高裁判決を破棄し差し戻し

欧米諸国で感染防止対策を緩める動き続々こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。気温も上がり、急に春めいて来ました。ヨーロッパでは大変なことが起こっていますが、新型コロナウイルス自体は欧米諸国を中心に収束に向かい始めたようです。2月22日付の日本経済新聞によれば、英国のジョンソン首相は21日、人口の大半を占めるイングランドで感染者の隔離を不要とし、法的な規制を全廃するという新型コロナウイルスとの共生策を発表したとのことです。具体的には、2月24日に感染者の隔離の法的な義務がなくなりました。定期的な接触者の追跡を終了するほか、感染者と接触した場合でも7日連続の検査や隔離をする必要もなくなりました。ヨーロッパ各国では規制撤廃の動きが相次いでおり、例えばスウェーデンでは2月9日から国内での規制がほぼ全廃されているとのことです。同じく2月24日付の日本経済新聞は米国の状況も伝えています。2月22日の新規感染者数は1月中旬のピーク時の10分の1になっており、ワクチンの追加接種やマスク着用の義務づけを取り下げるなど、地方政府で感染防止対策を緩める動きが加速していると報じています。さらに2月27日付の朝日新聞は「米疾病対策センター(CDC)は25日、新型コロナ対策のマスク着用の指針を大幅に緩和した」と報じています。CDCは各地域での感染状況を3段階で評価しており、そのうち低レベル、中間レベルにおいて屋内でのマスク着用が求められなくなったとのことです。対象は米国人口の約7割に上るそうです。翻って日本では、病床使用率の高止まりを背景に、一部都府県でまん延防止等重点措置のさらなる延長が検討されています。思い切った緩和、解除に向かえない理由は多々あると思いますが、3回目ワクチン接種の遅れが一つの大きな原因であることは確かでしょう。塩野義製薬に国産の経口抗ウイルス薬の製造販売承認申請を急がせ、条件付き早期承認制度で承認しようというのも、ワクチン接種の遅れのミスを少しでも挽回したい岸田政権のポーズにしか見えません。ポスト・コロナを見据えてのスピード感や決断力の鈍さは、菅政権から岸田政権に代わってもそうは変わっていないな、と感じる今日このごろです。さて、今回は「第82回 わいせつ裁判で逆転有罪の医師、来年上告審弁論へ。性犯罪厳罰化の中、対応模索の医師・医療機関」でも取り上げた、準強制わいせつ罪で逮捕・起訴され、一審無罪、二審有罪となった男性医師に対する上告審判決公判を取り上げます。2月18日、同公判が最高裁第二小法廷で開かれ、懲役2年を命じた二審・東京高裁判決を破棄し、同高裁に差し戻す判決が出ました。有罪判決の二審では「術後せん妄」と「DNA鑑定」が主な争点この事件の経緯は第82回で詳しく書きましたが、簡単におさらいしておきます。事件は2016年5月に起きました。乳腺外科が専門の男性医師(46)は、働いていた東京都足立区の医療法人財団健和会・柳原病院で、女性の右胸から乳腺腫瘍を摘出する手術を実施。術後に、病室で女性にわいせつな行為をしたとして起訴されました。男性は同年8月に逮捕、105日間勾留されました。起訴事実は、手術後で抗拒不能状態にあり、ベッドに横たわる女性患者に対して、診察の一環と誤信させ、着衣をめくり左乳房を露出させた上で、その左乳首を舐めるなどのわいせつ行為をした、というものです。公判では全身麻酔手術を終えた女性の被害証言の信用性、女性の術後せん妄の有無および程度、女性の体の付着物から被告のDNA型が検出されたとする鑑定結果の信用性が争われました。2019年2月20日の一審・東京地裁判決は、被害を受けたと証言する女性が「(麻酔の影響で)性的幻想を体験していた可能性がある」と指摘。付着物の鑑定結果については「会話時の唾液の飛沫や触診で付着した可能性が排斥できない」として無罪(求刑懲役3年)と結論づけました。これに対し、2020年7月13日の二審・東京高裁判決は真逆の判決となりました。二審では「術後せん妄」が主な争点となり、弁護側、検察側双方が推薦する精神科医2人が証言。結果、高裁判決は女性の証言について、「具体的かつ詳細であり、特に、わいせつ被害を受けて不快感、屈辱感を感じる一方で、医師が患者に対してそのようなことをするはずがないとも思って、気持ちが揺れ動く様子を極めて生々しく述べている。上司に送ったLINEのメッセージの内容とも符合する。A(被害者)の証言は、本件犯行の直接証拠として強い証明力を有する」と判断。付着物を巡る一審の判断についても、手術室での位置関係などの実験結果などから不合理だったとして、一審判決を破棄し、「被害者の精神的、肉体的苦痛は大きい」として逆転有罪、懲役2年を言い渡しました。この2審判決の逆転判決は、医療関係者に大きな衝撃を与え、日本医師会、日本医学会は「控訴審判決は学術的にも問題が多い」と強く非難しました。男性医師は上告、最高裁は2022年1月21日に上告審弁論を開き、2月18日の判決に至りました。最高裁、二審の「せん妄および幻覚があった」ことを否定した判断に疑義今回の判決では、問題となった「被害女性のせん妄および幻覚の有無」について、「検察側専門家の見解は医学的に一般的なものでないことが相当程度うかがわれるにもかかわらず、その見解に基づいて、せん妄に伴う幻覚を体験した可能性を否定した原判決の判断は、そのような可能性があり得るものとした第一審判決の判断の不合理性を適切に指摘しているものとは言えない」とし、二審の「せん妄に伴う幻覚を体験した可能性を否定」した判断に疑義を呈しました。さらに「DNA鑑定の妥当性」については、「高裁において検察官、弁護人から取り調べ請求があったにもかかわらず、高裁は全て却下し、取り調べを行わなかったため、疑問点が解消し尽くされておらず、検査結果の信頼性にはなお不明確な部分が残っていると言わざるを得ない」としました。その上で、「A(患者)の証言の信用性判断において重要となる本件定量検査の結果の信頼性については、これを肯定する方向に働く事情も存在するものの、なお未だ明確でない部分があり、それにもかかわらず、この点について審理を尽くすことなく、Aの証言に本件アミラーゼ鑑定及び本件定量検査の結果等の証拠を総合すれば被告人が公訴事実のとおりのわいせつ行為をしたと認められるとした原判決には、審理不尽の違法があり、この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するというべきである」とし、東京高裁判決の破棄と差し戻しを裁判官4人全員一致で決定したのです(判決全文は裁判所ウェブサイトで公開されています1))。「一審無罪判決を是認し、検察官の控訴を棄却すべきであった」と弁護団最高裁判決を受け、男性医師の弁護団は2月18日に会見を開きました。弁護士ドットコムニュース等の報道によれば、主任弁護人の高野 隆氏は「最低限、冤罪が確定することを防げた。このことは素直に弁護団一同喜びたい」としつつ、破棄・差し戻しについて「ありえないと考えていた。あまりに微視的で抽象的な議論しかできないようなところを審理させようとしている。なぜこうなったのか理解できない」と疑問を呈したとのことです。この日、弁護団は声明も発表しました。その中で弁護団は「今日の判決は、東京高裁判決の逆転有罪の最大の根拠となった医師(注:検察側証人)の証言が信頼できないことを明確に指摘した。さらに高裁判決が有罪の根拠にしたDNA定量検査の検査結果の信頼性が不十分であることも指摘している。そうであるならば、検察官が有罪の立証に失敗したことはすでに明白であるから、最高裁は一審無罪判決を是認し、検察官の控訴を棄却すべきであった」と主張しています。なお、診療のため出廷できなかった男性医師について高野氏は、「電話で話したところでは、意気消沈している様子ではなく、無罪に向けてさらに裁判を戦うという意欲は十分にある。ご自身は前向きにとらえ、冤罪を晴らすための前進であるという理解をしている」と話したとのことです。DNA抽出液等を警視庁科学捜査研究所はすでに廃棄裁判の舞台は再び東京高裁に戻ることになります。二審における「せん妄に伴う幻覚を体験した可能性を否定」した判断は最高裁でほぼ覆ったわけで、男性医師の無罪がさらに近づいた、とは言えるでしょう。とはいえ、最高裁が「審理が尽くされていない」と指摘したDNA鑑定については、先行き不透明です。DNA抽出液自体や鑑定に用いた基礎データなどを警視庁科学捜査研究所はすでに廃棄してしまっているからです。最高裁が「無罪」判決ではなく「破棄・差し戻し」にせざるを得なかったのは、「DNA鑑定の妥当性」を判断する材料がなかったためと考えられますが、そもそも鑑定に使った試料等がないのでは、再審に向けて証拠を揃えようにもできません。事件が起きてまもなく6年、長期化の様相も呈してきました。差し戻し審が今後どのような展開をたどるのか、注視していきたいと思います。参考1)裁判例結果詳細

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スピロノラクトン、がんリスクはある?

 スピロノラクトンの使用とがんリスクに関連はあるのか。米国・マイアミ大学ミラー医学部のKanthi Bommareddy氏らは、メタ解析(452万8,332例のデータを包含)で関連を調べ、がんリスク増大との関連は認められず、前立腺がんについてはリスク低下との関連が認められたことを示した。著者は、「しかしながら、エビデンスの確実性は低く、若年者や、にきびあるいは多毛症を有するなど、多様な集団を対象としたさらなる検討が必要である」と述べている。 スピロノラクトンは、もともとは心不全、高血圧症、浮腫の治療薬として承認されたが、にきび、化膿性汗腺炎、男性型脱毛症、多毛症の治療に適応外使用されるのが一般的となっており、米国FDAから腫瘍発生に関連する公式の警告が発せられている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年2月9日号掲載の報告。 研究グループは、スピロノラクトンによる治療を受けた患者において、がんの発症、とくに乳がんと前立腺がんの発症をプールし、解析した。 発刊から2021年6月11日までのPubMed、Cochrane Library、Embase、Web of Scienceを検索。選択試験の適格条件は、スピロノラクトンを投与された18歳以上の男女におけるがん発生について報告した、英語で書かれた論文とした。 筆者である2人のレビュアーがそれぞれ試験の選択とデータ抽出を行い、Newcastle-Ottawa Scaleを用いてバイアスリスクを評価。包含試験はランダム効果メタ解析法を用いて統合し、がん発生(乳がんと前立腺がんにフォーカス)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・7試験が適格基準を満たした。サンプルサイズは1万8,035例~230万例にわたり、被験者は総計452万8,332例で、平均年齢62.6~72.0歳。性別による層別化のない試験では、女性が17.2~54.4%を占めていた。・全試験ともバイアスリスクは低いとみなされた。・スピロノラクトンの使用と乳がんリスクに、統計学的に有意な関連性はみられなかった(リスク比[RR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.86~1.22、エビデンスの確実性:とても低い)。・スピロノラクトンの使用と前立腺がんリスク低下に、関連性がみられた(RR:0.79、95%CI:0.68~0.90、エビデンスの確実性:とても低い)。・スピロノラクトンの使用と卵巣がんリスクに、統計学的に有意な関連性はみられなかった(RR:1.52、95%CI:0.84~2.20、エビデンスの確実性:とても低い)。・また、膀胱がん(RR:0.89、95%CI:0.71~1.07、エビデンスの確実性:とても低い)、腎臓がん(0.96、0.85~1.07、エビデンスの確実性:低い)、胃がん(1.02、0.80~1.24、エビデンスの確実性:低い)、食道がん(1.09、0.91~1.27、エビデンスの確実性:低い)についても、統計学的に有意な関連性はみられなかった。

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食道扁平上皮がん、術前の3剤併用化学療法でOS延長(JCOG1109)/日本臨床腫瘍学会

 切除可能局所進行食道がんの術前療法は、日本では5-FU+シスプラチン(CF療法)が標準療法だが、欧米においては化学放射線療法が標準となっている。日本と海外は術式や組織型が異なるため、海外の臨床試験の結果をそのまま受け入れるのは難しいと考えられていたが、CF療法にドセタキセルを加えたDCF療法が頭頸部がんなどで有望な効果を示しており、食道がん術前治療でも有望な成績が報告されている。JCOG1109試験が食道扁平上皮がんの術前DCF療法の有用性を世界で初めて示唆 これを受け、切除可能な局所進行扁平上皮食道がん患者を対象に、術前療法としてCF療法、DCF療法、CF療法+放射線療法(CF-RT)の3群を比較したJCOG1109試験が行われ、その結果を第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で加藤 健氏(国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科)が発表した。[JCOG1109試験]・対象:治療歴のない切除可能局所進行食道がん患者(PS0~1)・試験群:以下の3群に1対1対1の割合で無作為に割り付けCF群:シスプラチン+5-FU(3週ごと2コース)DCF群:ドセタキセル+シスプラチン+5-FU(3週ごと3コース)CF-RT群:シスプラチン+5-FU+放射線(4週毎2コース)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率、安全性など 切除可能局所進行扁平上皮食道がんの術前療法としてCF療法、DCF療法、CF療法+放射線療法を比較したJCOG1109試験の主な結果は以下のとおり。・2012年12月~2018年7月に日本の44施設から601例が登録され、CF群:199例、DCF群:202例、CF+RT群:200例に無作為に割り付けられた。・3年生存割合は、CF群62.6%(95%信頼区間:55.5~68.9%)に対しDCF群72.1%(95%信頼区:65.4~77.8%)と10%近く高く、ハザード比0.68(95%信頼区間:0.50~0.92、p=0.006)とDCF群の優越性が示された。また、CF+RT群の3年生存割合は68%(61.3~74.3%)で、CF群との比較においてハザード比0.84(0.63~1.12、p=0.12)と、CF+RT群の優越性は示されなかった。・有害事象については、Grade3以上の発熱性好中球減少がDCF群で16.3%とやや多かったが、支持療法を適切に行うことで対応可能な範囲だった。また周術期合併症発生割合については明らかな違いは見られなかった。 加藤氏はJCOG1109試験の結果は「1月に開催された米国臨床腫瘍学会消化器シンポジウム(ASCO-GI)で発表され、今後の食道扁平上皮がんに対する術前DCF療法の有用性を世界で初めて示した試験となった。今後同対象に対する新たな標準治療になると考えられる」とした。さらに免疫チェックポイント阻害薬を術前DCF療法に併用する研究(JCOG1804E)が進行中だという。

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認知症の精神症状に対する薬理学的治療~メタ解析

 認知症では精神症状が頻繁に認められ、疾患アウトカムの不良や実質的な機能障害を引き起こす可能性がある。どの治療薬を用いるべきかを議論するためには、薬物療法の直接的または間接的な比較が必要とされるが、これまで十分に行われていなかった。中国・復旦大学のYu-Yuan Huang氏らは、認知症患者に対する薬理学的治療の有効性および忍容性アウトカムを調査するため、システマティックレビューおよびペアワイズネットワークメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌2022年3月号の報告。 2020年8月末までに報告された研究を、MEDLINE、Cochrane Library、EMBASE、PubMedより検索した。米国FDAより最終承認されているコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)、メマンチン、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬を含む試験を検索した。すべての薬剤について対プラセボの比較効果をランク付けするため、SUCRA(surface under the cumulative ranking)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・34試験より、15種の薬物療法にランダムに割り付けられた1万415例を分析対象とした。・ネットワークメタ解析において、プラセボよりも大きなベネフィットが認められ、忍容性が良好であった薬剤は以下の3剤であった。【ドネペジル】標準平均差(SMD):-0.30、95%信頼区間(CI):-0.50~-0.12、SUCRA:0.85【メマンチン】SMD:-0.20、95%CI:-0.34~-0.07、SUCRA:0.68【アリピプラゾール】SMD:-0.17、95%CI:-0.32~-0.02、SUCRA:0.62・リスペリドン(SMD:-0.16、95%CI:-0.28~-0.05、SUCRA:0.60)は、プラセボと比較し、より効果的ではあったが、忍容性が低かった(オッズ比[OR]:1.50、95%CI:1.06~2.26)。・ドネペジル、メマンチン、ハロペリドール、アリピプラゾール、リスペリドンは、クエチアピンと比較し、より効果的であった(SMDの範囲:-0.36~-0.22)。・ドネペジル、メマンチン、ミルタザピンは、セルトラリンと比較し、より効果的であった(SMDの範囲:-0.47~-0.36)。・結果の多くは、低~非常に低いと評価された。 著者らは「本結果は、メタ解析の限界と大多数の研究における方法論的質の低さから、慎重に解釈すべきである」としながらも「認知症の精神症状に対しては、いくつかの効果的な治療選択肢が利用可能であるが、中でもドネペジル、メマンチン、アリピプラゾールは、薬理学的治療が必要な場合に検討すべき適切な選択肢であると考えられる」としている。

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親密な男性パートナーによる暴力、15~49歳女性の27%が経験/Lancet

 持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット5.2では、「人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力の排除」がうたわれている。世界保健機関(WHO)のLynnmarie Sardinha氏らは、今回、この目標の達成状況を評価するために、366件の研究のデータを解析し、2018年時点で、年齢15~49歳の女性の4人に1人以上(27%)が、生涯において親密な男性パートナーからの身体的または性的、あるいはその両方の暴力を経験し、7人に1人(13%)は調査の過去1年以内に暴力を受けたと推定されると明らかにした。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年2月16日号で報告された。2000~18年の161の国と地域の研究を解析 研究チームは、SDGsのターゲット5.2の達成に向けた各国政府の取り組みの進捗状況を監視する目的で、親密な男性パートナーによる女性への暴力の世界的な発生状況を調査した(英国・国際開発省[DFID、現在は外務・英連邦・開発省に統合]などの助成を受けた)。 解析には、「WHOの女性に対する暴力に関する国際的データベース(WHO Global Database on Prevalence of Violence Against Women)」のデータが用いられた。これらのデータは、主に、文献データベース(MEDLINE、Global Health、Embase、Social Policy、Web of Science)の検索で得られた論文の系統的レビューと、各国の統計データなどのウェブサイトを包括的に調査することで収集された。 対象には、2000~18年に実施され、国または地方政府のレベルを代表しており、年齢15歳以上の女性を対象とし、親密なパートナーによる身体的または性的、あるいはその両方の暴力に関して行為に基づく評価を行っている研究が含まれた。 161の国と地域の366件の研究が解析の対象となった。これは、世界の親密なパートナーを持つ年齢15歳以上の女性の90%を代表するものであった。生涯における親密なパートナーからの暴力を含む研究は307件、過去1年以内の親密なパートナーからの暴力を含む研究は332件であり、調査に回答した女性の数はそれぞれ176万7,802人および176万3,989人だった。過去1年以内の暴力も、若年女性で高頻度 2018年の時点で、現在または以前に親密な男性パートナーまたは夫がいる(いた)年齢15~49歳の女性の27%(不確定区間[UI]:23~31)が、生涯においてパートナーからの身体的または性的、あるいはその両方の暴力を受け、13%(10~16)は調査時から過去1年以内に暴力を経験していた。年齢15歳以上の全女性では、生涯の暴力を26%(22~30)、過去1年以内の暴力を10%(8~12)が経験していた。日本では、それぞれ20%(10~38)および4%(1~10)であり、いずれも世界平均を下回っていた。 このような暴力は女性が若いころから始まり、15歳以降に少なくとも1回の暴力を受けた経験のある女性は、15~19歳が24%、20~24歳は26%と、ほぼ4人に1人の割合であった。暴力を受けた経験のある女性の割合が最も高かったのは、30~34歳と35~39歳(いずれも28%)であり、その後は徐々に低下して65歳以上では23%であった。 過去1年以内に暴力を受けた女性の割合も若い年代で高く、15~19歳が16%、20~24歳も16%であった。この割合は、50歳以降は実質的に低下し、60~64歳で5%、65歳以上は4%だった。 また、親密なパートナーからの暴力の経験の頻度には地域差が認められた。2018年時点の年齢15~49歳の女性のうち、生涯においてパートナーからの身体的または性的、あるいはその両方の暴力を受けた女性の割合が最も高かった地域はオセアニア(49%)で、次いでサハラ以南のアフリカの中部地域(44%)、アンデス山脈系の南米諸国(38%)、サハラ以南のアフリカの東部地域(38%)の順であった。暴力を受けた女性の割合が最も低かった地域は、中央ヨーロッパ(16%)、中央アジア(18%)、西ヨーロッパ(20%)であったが、それでも高率だった。 年齢15~49歳の女性に対する過去1年以内の暴力の割合は、全般に高所得地域で低く、オーストララシアが3%、西ヨーロッパが4%、中央ヨーロッパが5%、南米の南部諸国が5%、北米は6%であった。高所得地域と中・低所得地域における暴力の頻度の差は、生涯に比べて過去1年以内の暴力のほうが大きく、中・低所得地域では過去1年以内の暴力の頻度が高かった。 過去1年以内に暴力の発生が最も少なかった(最高で4%まで)30ヵ国のうち、24ヵ国は高所得国であった。また、この30ヵ国中23ヵ国はヨーロッパの国であり、日本は残りの7ヵ国に含まれた。 著者は、「これらの知見は、女性に対する親密な男性パートナーによる暴力は世界的な公衆衛生上の懸念事項であり、世界中の数100万人の女性とその子供たちの人生に悪影響を及ぼすことを裏付けるものである」とし、「暴力低減の進展は遅く、各国はSDGsの目標を達成するための行程に乗れていない。これらの確固たるエビデンスは、親密なパートナーからの暴力は予防可能であり、多層的で複数の領域にわたる予防介入を実施し、親密なパートナーからの暴力に対する保健対策などを強化するには、目標を絞った投資が必要であることを示すものだ」と指摘している。

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Stage I 非小細胞肺がん 再発高リスク群では補助化学療法が有効/Ann Thorac Surg

 わが国の肺診療ガイドラインでは2cmを超えるStage IA/BおよびIIA(TNM病期分類8版)の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するテガフール・ウラシルの術後補助療法は推奨または提案、という位置づけである。 広島大学の津谷康大氏らによる、再発高リスクのStage I(TNM8版)完全切除NSCLCに対する補助化学療法の有効性を評価した試験結果がThe Annals of Thoracic Surgery誌に発表された。 同試験では、肺葉切除術を受けたStage I NSCLC1,278例のデータを前向きに収集し、分析した。再発リスク因子は、無再発生存率(RFS)のCox比例ハザードモデルを基に規定し、補助化学療法実施患者と非実施患者の生存率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・RFSリスク因子としては、年齢70歳超、浸潤径2cm超、リンパ管侵襲、血管侵襲、臓側胸膜浸潤が同定された。・高リスク群(641例)においては、5年RFS(補助化学療法実施群81.4%対非実施群73.8%)、5年OS(補助化学療法実施群92.7%対非実施群73.8%)、とRFS、OSともに補助化学療法実施群で有意に長かった(5年RFS p=0.023、5年OS p<0.0001)。・低リスク群(637例)においては、補助化学療法実施群と非実施群の5年RFSは差はなかった(補助化学療法実施群98.1%対非実施群95.7%、p=0.30)。 補助化学療法は、病理学的T1c/T2a、リンパ節/血管侵襲など、高再発リスクを有するStage I NSCLC患者において、生存を改善する可能性が示唆される。

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オミクロン株、既感染者における再感染予防効果は?/NEJM

 SARS-CoV-2の既感染は、これまでアルファ株、ベータ株、デルタ株に対し、高い再感染予防効果を示すことがわかっているが、オミクロン株は従来株よりも免疫を回避することも明らかになっている。既感染による予防の有効性を変異株別に推定した研究が、NEJM誌オンライン版2022年2月9日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 カタールで行われたこのケースコントロール研究は、全国のSARS-CoV-2データベースからCOVID-19の検査結果、ワクチン接種、臨床感染データ、関連する人口動態に関するデータを抽出した。このデータベースにはこれまでカタールで行われた全PCR検査結果、ワクチン接種、入院および死亡例が含まれた。 再感染予防効果は、既感染者の未感染者と比較した時の感染感受性の減少率と定義した。ワクチン接種有無の調整を含む1次分析と、ワクチン接種者を除外した1次分析を行った。 研究サンプル全体の年齢中央値は31~35歳、既感染から新たなPCR検査までの中央値はアルファ株279(四分位範囲[IQR]:194〜313)日、ベータ株285(213〜314)日、デルタ株254(159〜376)日、オミクロン株314(268〜487)日であった。 再感染予防における既感染の有効性は、ワクチン接種の有無の調整後でアルファ株90.2(95%信頼区間[CI]:60.0~97.6)%、ベータ株85.7(75.8~91.7)%、デルタ株92.0(87.9~94.7)%、オミクロン株56.0(50.6~60.9)%と推定された。 再感染した既感染患者のうち、重症へ進行したのはアルファ株1例、ベータ株2例、デルタ株0例、オミクロン株2例だった。再感染が重篤に進行または死亡した例はなかった。既感染の重症化防止の有効性は、アルファ株69.4(-143.6~96.2)%、ベータ株88.0(50.7~97.1)%、デルタ株100(43.3~100)%、オミクロン株87.8(47.5~97.1)%と推測された。 全体として、既感染のアルファ、ベータ、デルタ株への再感染防止効果は強固であり(約90%)、これは以前の推定を裏付ける所見であった。オミクロン株ではこの効果は落ちたものの、既感染による重症化予防効果は変異株に関係なく強固であった。

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抗ウイルス薬+ブースターで重症化を防ぐ経口COVID-19治療薬「パキロビッドパック」【下平博士のDIノート】第93回

抗ウイルス薬+ブースターで重症化を防ぐ経口COVID-19治療薬「パキロビッドパック」今回は、抗ウイルス薬「ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、SARS-CoV-2陽性で重症化リスクを有する軽症~中等症Iの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、臨床的回復までの期間を短縮し、重症化や入院・死亡を予防することが期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2022年2月10日に特例承認されました。なお、重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していません。<用法・用量>通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回300mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与します。中等度の腎機能障害患者(30mL/min≦eGFR<60mL/min)の場合には、ニルマトレルビルとして1回150mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与します。重度の腎機能障害患者(eGFR<30mL/min)への投与は推奨されていません。なお、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに本剤の投与を開始することが望ましく、臨床試験において症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていません。<安全性>国際共同第II/III相試験の中間解析時点で認められた副作用は672例中49例(7.3%)で、主なものは味覚不全25例(3.7%)、下痢13例(1.9%)、高血圧(頻度不明)などでした。なお、重大な副作用として中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、肝機能障害(いずれも頻度不明)が設定されています。 <患者さんへの指導例>1.この薬は、新型コロナウイルスの増殖に必要な酵素を阻害する抗ウイルス薬と、この抗ウイルス薬の分解を抑えて血中濃度を維持する薬の2種類がセットになっています。2.食事の有無にかかわらず、朝と夕の1日2回、12時間ごとに服用してください。症状が改善しても指示どおりに5日分を飲み切ってください。3.飲み合わせに注意が必要な薬剤が多数ありますので、服用している薬剤や健康食品、サプリメント、嗜好品をすべて報告してください。4.服薬開始後、疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振などの症状のほか、異常が現れた場合はすぐに相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、COVID-19に対する抗ウイルス薬として特例承認されました。経口薬としては、2021年12月に特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル)に続く2剤目の薬剤となります。セットとなっている2剤のうち、ニルマトレルビルは新型コロナウイルスの増殖に関わるメインプロテアーゼの作用を阻害して抗ウイルス効果を発揮し、リトナビルは抗HIV薬としても用いられている強力なCYP3A阻害薬であり、ニルマトレルビルの濃度を上げるブースター薬として働きます。主な治療対象は、モルヌピラビルと同様に、重症化リスクの高い軽症~中等症Iの患者ですが、本剤は12歳以上(体重40kg以上の場合)から服用できます。ほかに軽症患者を対象とした薬剤としては、中和抗体製剤カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ注射液セット)と、ソトロビマブ(同:ゼビュディ点滴静注液)の2剤が承認されています。また、適応外ではありますが、2022年1月よりレムデシビル(同:ベクルリー点滴静注用)も限定された条件下で使用可能です。わが国も参加している国際共同第II/III相EPIC-HR試験の結果において、症状発現から3日以内に本剤の投与を受けた患者では入院・死亡リスクが89%減少し、5日以内に投与を受けた患者では88%減少しました。なお、各変異株に対する臨床試験の有効性データは現時点では得られていませんが、in vitroにおいてはオミクロン株ほか懸念すべき変異株に対する抗ウイルス効果が認められています。用法は、1日2回5日間の経口投与です。シート1枚が1日分となっており、1回にニルマトレルビル錠を2錠およびリトナビル錠を1錠服用します。なお、重度の腎機能障害患者には禁忌となっており、中等度の腎機能障害患者はニルマトレルビル錠を1回1錠に減量して服用します。この場合は薬剤の交付前に朝および夕の服用分それぞれからニルマトレルビル錠1錠を取り除き、取り除いた箇所に専用のシールを貼り付けてから交付します。不要な錠剤を取り除いたことを必ず患者さんに伝えてください。リトナビルはCYP3Aを強く阻害し、またニルマトレルビルおよびリトナビルはCYP3Aの基質となっています。そのため、併用に注意すべき薬剤が多数あり、併用禁忌薬としてはフレカイニド、アミオダロン、ピモジド、ピロキシカム、アゼルニジピン、リバーロキサバン、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、トリアゾラム、ボリコナゾールなど38成分とセイヨウオトギリソウが挙げられています。ほかにも注意すべき薬剤はあると考えられていて、国立国際医療研究センター病院が国内外の資料を基に作成した「パキロビッドパックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」を公開しています。本剤を使用する医療機関は、ファイザーが開設する「パキロビッドパック登録センター」に登録して配分依頼を行います。処方に際しては患者の同意書が必要であり、院外処方に際しては、対応薬局に処方箋とともに記入済みの「投与前チェックシート」を提出する必要があります。処方箋を応需した薬局薬剤師は、とくに併用薬に注意すべきであり、服薬中のすべての薬剤を確認しなければなりません。また、腎機能に応じて適切な投与量になっているかどうかのチェックも行いましょう。参考1)PMDA 添付文書 パキロビッドパック2)ファイザー 新型コロナウイルス『治療薬』医療従事者専用サイト パキロビッドパック

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不安に感じる心毒性とは?ー読者アンケートの結果から【見落とさない!がんの心毒性】第9回

本連載では、がん治療時におさえておくべき心毒性・心血管リスクとその対策について、4名のエキスパートを迎え、2021年4月より第1回~第8回まで総説編として現在のがん治療における心毒性トピックを解説してきました。近年の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など新しいがん治療薬が開発される中で、心血管系合併症(心毒性)に対して診療を行う腫瘍循環器学は、今後ますます注目される領域です。今年の春より実際の心毒性症例に基づく症例問題を掲載する予定ですが、その前に、肺がん、乳がん、消化器がん、造血器腫瘍、放射線の治療に携わるCareNet.com会員医師(計1,051名)を対象に行った『心毒性に対するアンケート』(実施期間:2021年8〜9月)の結果をご紹介しながら、実臨床で苦慮されている点をあぶり出していきたいと思います。(表1)CareNet.comにて行ったアンケートの結果画像を拡大する(表2)上記を基に向井氏が作成画像を拡大するがん治療における心毒性は心不全、虚血性心疾患、高血圧症、不整脈、血栓塞栓症に分類されますが、実臨床で腫瘍医の先生方がお困りの疾患はやはり、第一位は心不全、第二位は血栓塞栓症でした。実際に腫瘍循環器外来に院内から紹介される疾患も同様の結果ではないでしょうか。心不全については、第2回アントラサイクリン心筋症(筆者:大倉 裕二氏)、第3回HER2阻害薬の心毒性(筆者:志賀 太郎氏)がそれぞれの心筋症の特徴やその対応の詳細な解説をしています。今、上記の表の結果を踏まえ、少し振り返ってみましょう。アントラサイクリン心筋症ではやはり、「3回予防できる」という言葉が強く印象に残りました。現在さらに新しいがん治療において心不全を呈する可能性の高い治療も増加しており、腫瘍循環器領域において治療に関する新たなエビデンスが確立することが期待されていますさらに、第二位の血栓塞栓症は、第8回がんと血栓症(草場 仁志氏)で解説しました。がん関連血栓症はがんの増殖・転移と深い関係があり、がん診療の各ステージにおいて最も頻度が高く、常に頭に置く必要のある代表的な心毒性です。過去の研究から胃がんと膵臓がんは血栓塞栓症の高リスク因子と報告されているが、アンケートの結果から、実地診療でも消化器領域と肝胆膵領域で血栓塞栓症への関心が高いことがうかがわれました。2018年にがん関連血栓症の中で、静脈血栓塞栓症に対して直接経口抗凝固薬のエビデンスが確立され、抗凝固療法は大きく変化しています。その一方で、動脈血栓塞栓症に対するエビデンスは未だ不足しており治療に関しても未だ不明な点が少なくありません。(図1)は、外来化学療法中の死亡原因を示しています。第一位はがんの進展によるものですが、第二位はがん関連血栓塞栓症でした。そして、抗凝固療法における出血の合併症など腫瘍循環器医が対応すべき多くの問題が残っています。(図1)画像を拡大する1)Khorana AA, et al. J Thromb Heamost. 2007;5:632-634.講師紹介

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ブタの心臓をヒトへ移植【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第11回

2022年1月10日、アメリカのメリーランド大学で、ブタの心臓を人間に移植する手術が行われました。一般のニュースでも取り上げられるほどでしたので、目にした方も多いかと思われます。【参考】遺伝子操作したブタの心臓を男性に移植、世界初 アメリカ(BBCニュース/JAPAN)また、昨年の10月にニューヨークではブタの腎臓移植が行われたところでした。その際に腎移植を受けた患者は脳死状態であったことを考慮すると、今回の心移植はいきなり5段くらい階段を飛ばした感があります。(ちなみにこの腎移植を執刀したロバート・モンゴメリー医師は心移植を受けておられるのだそうです)ドナー不足の解消になるか!?今回のブタの心移植は「世界初の〜」との文面が踊っておりましたが、実はこれまでもブタだけでなく、チンパンジーやヒツジなどの心臓を移植してきた歴史があります。1997年には「インドでブタの心臓を移植した医師が逮捕された」、なんてニュースもありました。何が「世界初」だったかと言うと、「遺伝子操作を行なったブタの心臓を用いた」ことです。通常のブタにはαGal抗原が発現しており、ヒトは抗αGal抗体を持っているために超急性拒絶反応が引き起こされることは1990年代よりわかっていました。そこで、このαGal抗原が発現しないノックアウトブタが作られるようになって、いよいよブタの臓器の使用がようやく現実的になってきたと言うことです。世界中でドナーが不足していることはどの臓器でも同じなのですが、特に心臓は1つしかない臓器ですので、ドナー不足問題が特に大きい臓器です。補助心臓を初めとした治療もどんどん発展してきていますが、依然心臓移植に匹敵するまでには届いていません。倫理的な問題や長期成績の評価など、まだまだ課題は山積みではある状態ですが、このブタの臓器移植、深刻なドナー不足の解決となるでしょうか?続報が待たれます。

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英語で「うまくいくよう祈りましょう」は?【1分★医療英語】第17回

第17回 英語で「うまくいくよう祈りましょう」は?I’m worried that something bad will happen to my husband.(夫に何か悪いことが起こるのではないかと心配です)He is a strong man. Let’s keep our fingers crossed.(彼は強い人です。うまくいくよう祈りましょう)《例文1》Let’s keep our fingers crossed and hope for a good outcome.(良いアウトカムが出るように祈りましょう)《例文2》I’m keeping my fingers crossed that the treatment will go well.(治療がうまくいくよう願っています)《解説》“Fingers crossed”は、直訳すれば「指を交差させる」という意味です。“Let’s keep our fingers crossed”も、直訳すれば「私たちの指を交差させ続けましょう」となりますが、これではよく意味がわかりませんね。「指(人差し指と中指)を交差させる」という仕草は、日本ではあまりなじみのないものですが、西洋文化では十字架を象徴するもので、「悪運から守る」という意味を持ちます。“Keep one’s fingers crossed”という表現は、それがそのままイディオムとして定着したもので、「うまくいくように祈る」という意味になります。医療現場では、手術前や大切な治療の前に、医師や家族から患者への声掛けとしてよく使われるフレーズです。また、日常生活やメールの中などでもよく用いられる表現で、大切な試験や大仕事を控えている相手に対して「うまくいきますように」という気持ちを込めて使われます。他の表現としては、“Wish one luck”や“hope for the best”などとも言い換えることができますので、併せて覚えておきましょう。講師紹介

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第101回 COVID-19入院患者の新たな糖尿病はたいてい一過性らしい

米国のマサチューセッツ総合病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者およそ2千人(1,902人)の電子カルテ情報を遡って調べたレトロスペクティブ試験結果によると、その入院時に新たに診断された糖尿病(NDDM;newly diagnosed diabetes mellitus)はたいてい一過性らしく、退院後間もなくおよそ正常な血糖値に多くの場合回復するようです1,2)。1,902人のうち約3人に1人(594人)に糖尿病が認められ、それらのうち77人(全被験者1,902人の4%、糖尿病患者594人の13%)の糖尿病は入院前には認められなかったもの、すなわちNDDMでした。NDDMのそれら77人のうち入院中に死亡した10人と消息が絶えた3人を除く64人のその後を調べたところ約1年時点(中央値323日)で半分に近い26人(41%)の血糖値は糖尿病の水準未満(正常か前糖尿病レベル)に落ち着いていました。追跡された64人のうち39%(25/64人)はインスリン投与頼りで退院しましたが約1年後のインスリン投与患者は僅か5人(7.8%)に減っていました。それに8割方のHbA1cは7%以下になっていました(HbA1c測定患者41人中33人)。NDDMの77人の半数近い33人(43%)は入院前の記録で前糖尿病が見つかっており、そのような前糖尿病患者の高血糖は比較的軽度でした。一方、入院前に医療と縁遠かったNDDM患者はより重度の高血糖を呈しました。それら所見によると、COVID-19入院患者の新たな糖尿病は新たに発症したものか単に新たに把握されたものか多くの場合不明瞭かもしれず、新たに発症した糖尿病というより新たに診断に至った糖尿病と捉えるほうがより適切なようです。実際今回の研究ではそう位置づけられています。NDDMに至った経緯はどうあれNDDM患者は入院前からの糖尿病患者に比べてC反応性タンパク質(CRP)等の炎症マーカーの値が高く、集中治療室(ICU)をより必要としました。それらに加えてNDDM患者の血糖値は退院後に改善していることも踏まえるとNDDMの後ろ盾はどうやら炎症反応であり、インスリンを分泌するβ細胞の破壊ではなくインスリンに細胞が反応し難くなるインスリン抵抗性がCOVID-19入院に伴うNDDMの主因らしきことを物語っています。ただし、インスリン不足を意味する糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が糖尿病を新たに生じた患者と以前からの糖尿病患者の両方で多いことが複数の試験で示されており、インスリン抵抗性のみならず急なインスリン欠乏もまたNDDMの片棒を担いでいるかもしれません。今回の報告でのDKA発現率はNDDM患者では6.5%、以前からの糖尿病患者では11%であり、著者によると同等(comparable)でした。今回の報告はCOVID-19入院時のNDDMを長く追跡した研究のさきがけの一つであり、更なる試験で検証が必要です。また、COVID-19で急な高血糖が生じる仕組みを掘り下げていかねばなりません。参考1)Cromer SJ,et al. J Diabetes Complications. 2022 Feb 4:108145. [Epub ahead of print]2)Newly diagnosed diabetes in patients with COVID-19 may simply be a transitory form of the blood sugar disorder / Eurekalert

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HR+HER2-転移・再発乳がん、ベバシズマブ+パクリタキセル導入療法後に内分泌療法+カペシタビン維持療法の戦略で長期のOSを確認/日本臨床腫瘍学会

 ホルモン受容体陽性(HR+)HER2 陰性(HER2-)転移・再発乳がんに対するベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後の維持療法の有効性を検討した国内多施設無作為化第II相試験(KBCSG-TR1214)において、内分泌療法+カペシタビン併用維持療法が内分泌療法単独に比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことがすでに報告されている。今回、この治療戦略の全生存期間(OS)への影響を評価するために、本試験を事後解析した結果について、大阪大学の吉波 哲大氏が第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。[KBCSG-TR1214試験]・対象:HR+HER2-の遠隔転移があるか手術適応とならない再発乳がん(PS 0または1)で、転移・再発がんへの化学療法歴が1レジメン以下の患者・方法:導入化学療法としてベバシズマブ+パクリタキセルを4~6サイクル実施し、病勢進行を認めなかった90例を、維持療法として内分泌療法+カペシタビン(EC群)または内分泌療法(E群)に無作為に割り付けた。維持療法で病勢進行した場合は、ベバシズマブ+パクリタキセル再導入療法を実施した。・評価項目:[主要評価項目]維持療法のPFS[副次評価項目]無作為化からのTime to failure of strategy(TFS)、導入療法からの全生存期間(OS)、再導入療法からのPFSなど 事前に計画された解析には無作為化に至らなかった26例は含まれておらず、今回は、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法を開始した116例(E群46例、EC群44例、非無作為化26例)のデータを解析した。 主な結果は以下のとおり。・116例全例におけるOS中央値は34.5ヵ月(95%CI:28.0~43.2)だった。・主に病勢進行のため無作為化されなかった26例におけるOS中央値は15.7ヵ月(95%CI:7.75~30.8)で、E群34.9ヵ月(同:23.3~NA)、EC群43.8ヵ月(同:33.7~NA)より短い傾向があった。・本治療を1次治療で受けた102例のOS中央値は36.0ヵ月(95%CI:29.2~46.2)、2次治療で受けた14例では25.7ヵ月(同:17.6~37.5)だった。 本解析から、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後に維持療法を実施する治療戦略により、導入化学療法での病勢進行例を含めても長期のOSが達成されることが示された。

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リキッドバイオプシーによる術後再発リスク評価(COSMOS-CRC-01)/日本臨床腫瘍学会

 2021年に国内で初めて、リキッドバイオプシーを用いた固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリングが保険承認された。現在、リキッドバイオプシーを用いた血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を解析し術後の微小残存腫瘍(MRD)を検出することで術後の再発リスクを評価するというCOSMOS試験が進行中だ。 MRD測定は造血器腫瘍分野における予後予測に広く使われており、固形がんにおける予後予測にも使えるのではないかと検討されていた。COSMOS試験は国立がん研究センターを中心としたがん臨床研究の基盤であるSCRUM-Japanのプロジェクトの1つであり、大腸がん、胃がん、膵がん、肝臓がん、メラノーマ患者を対象としている。 2022年2月に行われた第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)では中村 能章氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科)が大腸がん患者を対象としたCOSMOS-CRC-01試験の中間解析結果を発表した。[COSMOS-CRC-01試験]・対象:切除可能なステージ0~IIIの大腸がん患者・術前、術後28日、3ヵ月ごと術後1年、6ヵ月ごと術後2~5年間測定・Guardant Reveal(未承認)を用いてゲノム異常とエピゲノム異常を同時解析 主な結果は以下のとおり。・2020年1月~2021年4月に501例が登録され、そのうちステージIIまたはIIIの根治切除を受けた93例を解析した(追跡期間中央値:15.6ヵ月)。年齢中央値70(34~88)歳、61%が男性、ステージIIとIIIがほぼ同数であった。・術前ctDNA解析が成功した89例のうち、11例(12%)にゲノム異常、11例(12%)にエピゲノム異常、53例(60%)に両方の異常が認められ、計75例(84%)がctDNA陽性と判定された。・術後28日時点のctDNA解析は93例全例で成功し、2例(2%)にゲノム異常、14例(15%)にエピゲノム異常、7例(8%)に両方の異常が認められ、計23例(25%)でctDNA陽性となった。・ゲノム解析においては、APC、BRAF、CTNNB1、KRAS、PIK3CA、TP53といった大腸がんにおいて重要な遺伝子変異が認められ、これら遺伝子変異の腫瘍分画(血中に遊離しているセルフリーDNA全体におけるctDNAの割合)の最低値は0.03%、またエピゲノム異常の腫瘍分画の最低値は0.006%だった。・今回のデータカットオフ日(2021年11月30日)時点で、93例中12例に再発が認められ、うち6例(50%)では術後28日時点でctDNAが陽性だった。また再発した12例のうち、術後2回以上の血液解析が行われた11例では、うち10例(91%)が術後いずれかの時点でctDNAが陽性だった。・術後ctDNAが陽性となった時点から再発までの期間の平均値は6.6ヵ月だった。・術後28日時点でのctDNA陰性例の1年無病生存期間(DFS)が93%だったのに対し、陽性例は同83%だった。 中村氏は「今回の結果は、血液のゲノム・エピゲノム解析が、補完的に術後MRDを検出することを示した。追跡期間が短く、対象者も少ないために今回の結果は限定的であるが、組織採取を必要としないリキッド検査の利点は大きく、6ヵ月前という早い時期に再発を予測でき、リスクの高低によって術後の化学療法を変更できる可能性もある。今後のさらなる追跡によって本検査の有用性を明らかにしたい」としている。

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薬物療法中の双極性障害患者における運転パフォーマンス

 双極性障害治療で用いられる薬物は、患者の認知機能に影響を及ぼす可能性がある。双極性障害患者は、寛解状態でも神経認知機能障害が認められる場合が少なくない。名古屋大学の山口 亞希子氏らは、薬物治療中の安定期双極性障害外来患者の日常機能、とくに運転パフォーマンスについての検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年1月17日号の報告。 対象は、実臨床で薬物療法中の双極性障害外来患者58例および性別、年齢がマッチした健康対照者80例。ドライビングシミュレーターを用いて3つの運転タスク(道路追跡、車両フォロー、急ブレーキ)および3つの認知機能タスク(Continuous Performance Test、Wisconsin Card Sorting Test、Trail-Making Test)で評価した。症状評価には、ヤング躁病評価尺度、構造化ハミルトンうつ病評価尺度、BDI-IIベック抑うつ質問票、自記式社会適応度評価尺度、スタンフォード眠気尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者の道路追跡、車両フォローの運転パフォーマンスは、人口統計学的因子で調整した後、健康対照者と比較し、有意な低下が認められた。これらのパフォーマンスは、一般的に重なり合っていた。・双極性障害患者の広範な神経認知機能は、健康対照者と比較し、有意に低かった。車両フォローの運転パフォーマンスと注意力の持続との負の相関のみが認められた。・多くの患者は単剤療法ではなく、併用療法がおこなわれていたが、運転パフォーマンスとの関連は認められなかった。 著者らは「薬物療法中の安定期双極性障害患者は、健康対照者と比較し、運転パフォーマンスが損なわれていることが示唆されたが、運転パフォーマンスの重なり合う部分は、双極性障害患者の運転パフォーマンスが常に悪い状態であることを示しているわけではない。双極性障害患者の運転適性を判断するうえで、注意力は有用な臨床的特徴であると考えられる」としている。

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