サイト内検索|page:548

検索結果 合計:35155件 表示位置:10941 - 10960

10941.

HPVワクチン接種者へのスクリーニング、陽性者にはコルポスコピーを/BMJ

 子宮頸がんの予防では、ヒトパピローマウイルス(HPV)の1次スクリーニングは細胞診よりも有効性が高いとされる。オーストラリア・シドニー大学のMegan A. Smith氏らは、これまでに十分な検討が行われていないHPVワクチン接種を受けた女性における子宮頸がんの1次スクリーニング検査の効果を評価し、コルポスコピー検査導入の決定に際しては、基本となるがんのリスクを考慮する必要があり、これに基づいてHPVスクリーニング検査を行えば、その結果がHPV16/18陽性の女性では、細胞診の結果にかかわらず、過去に繰り返しスクリーニング検査を受けている女性であっても、コルポスコピー検査で前がん病変やがんが発見される可能性が高いことを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年3月30日号に掲載された。オーストラリア350万女性の観察研究 研究グループは、オーストラリアのHPVワクチン接種済みの女性において、子宮頸がんの1次スクリーニング検査プログラムの開始から2年間の実態を調査する目的で、観察研究を行った(筆頭著者らはオーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]から給与支援を受けた)。 対象は、2017年12月1日~2019年12月31日の期間にHPVの1次スクリーニング検査を受けた女性であった。 1次スクリーニング検査でHPV16またはHPV18が陽性であった場合、液状処理細胞診でのhigh grade、low grade、陰性、不十分の集団に、HPV16/18以外の高リスクHPV型陽性者では液状処理細胞診でhigh gradeの集団に、コルポスコピー検査が行われた。 また、HPV16/18以外の高リスクHPV型陽性者には、液状処理細胞診によるトリアージが行われ、中等度リスク(low grade、陰性)の集団には、12ヵ月間のフォローアップHPV検査が推奨され、期間中に高リスクHPV型(HPV16/18およびHPV16/18以外)が陽性となった時点でコルポスコピー検査が導入された。 主要アウトカムは、初回HPVスクリーニング検査で陽性となり、コルポスコピー検査を受けた女性の割合と、子宮頸部上皮内新生物(CIN)Grade3以上、同Grade2以上およびがんの検出の短期的なリスクとされた。 スクリーニング検査の対象となった25~69歳の女性642万8,677例のうち350万7,281例(54.6%)が、2019年末までに初回HPVスクリーニング検査を受けた。がん検出率:HPV16/18陽性者0.98%、細胞診陰性でも0.32% 定期的にスクリーニング検査を受けた25~69歳の女性304万5,844例では、HPV16/18陽性率は2.0%、HPV16/18以外のHPV型陽性率は6.6%であり、ワクチン接種率が高い25~34歳の女性(76万8,362例)では、それぞれ2.2%および13.3%であった。 コルポスコピー検査を受けた女性の割合は3.5%で、12ヵ月間の再HPV検査を終了していない女性を考慮すると、6.2%に増加すると推定された。 子宮頸がんは、ベースライン時にHPV16/18陽性の女性の0.98%(456/4万6,330例)で検出された。このうち細胞診でhigh gradeの女性は子宮頸がんの検出率が4.4%(330/7,583例)とリスクが最も高く、陰性の女性でも0.32%(89/2万8,003例)と相対的に高いリスクを示し、これはlow gradeの0.26%(26/9,821例)と同程度であった。 ベースラインと12ヵ月後の双方においてHPV16/18以外のHPV型が陽性で、細胞診が陰性またはlow gradeの中等度リスクの女性(2万19例)は、重篤な病態のリスクが低かった(CIN Grade3以上:3.4%、がん:0.02%)が、このスクリーニングアルゴリズムでは、コルポスコピー検査を受けた62.0%に当たると推定された。 著者は、「これらの結果は、HPV16/18陽性の女性は子宮頸がんのリスクが高い(0.98%)ため、細胞診の結果にかかわらず、コルポスコピー検査を考慮する必要があることを示唆する」とし、「HPV16/18以外のHPV型が陽性で、細胞診が陰性またはlow gradeの女性では重篤な病態のリスクが低かったが、コルポスコピー検査を受けた女性の多くを占めていたことから、HPV検査を1回ではなく2回繰り返すことで安全に管理できる可能性がある」としている。

10942.

米国の肺がんアジュバント実施率53% ガイドライン準拠に改善の余地(ALCHEMIST)/JAMA Oncol

 米国の早期非小細胞肺がん(NSCLC)ではガイドラインに沿った標準治療をどの程度行っているのか。全米の後ろ向きコホート試験の結果、実施割合には改善の余地があることが明らかになった。 米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは、リンパ節郭清を含めた外科的切除と術後補助化学療法を適切な患者に行うことが早期NSCLCの標準治療となっている。しかし、以前から多くの患者が、そのような治療を受けていないとされる。 そこでNCCNガイドラインに準拠した手術と補助化学療法がどの程度行われているかを、全米の補助療法の大規模スクリーニング試験ALCHEMIST(Adjuvant Lung Cancer Enrichment Maker Identification and Screening Trial)で確認した。 この試験では、リンパ節郭清を含めた外科的切除と術後補助化学療法を標準治療をする、4cm以上の原発腫瘍および/またはリンパ節転移を有するStage IB〜IIIA(AJCC7版)NSCLC患者が登録されている。 主な結果は以下のとおり。・2014年8月18日〜19年4月1日に登録された患者は2,833例であった。・そのうち外科切除を受けた患者は95%、2,699例であった。・適切と見なされるリンパ節郭清を受けた患者は53%に留まった。・術後補助療法を受けた患者についても57%に留まった。・4サイクルのプラチナベースの術後補助療法を受けた患者は44%、シスプラチンベースの術後補助療法を受けた患者は34%であった。・これらの結果は、人種や民族間で変わらなかった。 筆者は「この結果は術後補助療法試験の解釈に影響する。早期NSCLCに対する標準治療の使用を最適化するための努力が必要であることを示唆している」と述べている。

10943.

こういうランダム化比較試験は仕方ない?(解説:後藤信哉氏)

 日本ではランダム化比較試験の多くが薬剤の臨床開発の一環としての治験として行われている。治験でないランダム化比較試験には薬を売るためのseeding trial(種まき試験)が多い。企業の利益と臨床試験が直結するため、規制当局による厳格な規制がなければ資本は何をするかわからない。 経済利益と直結する臨床試験と異なり、本研究は新型コロナウイルスという脅威にさらされた人類の治療法探索の一環として施行された研究である。新型コロナウイルス感染は血栓症のリスクを増やす。血栓イベント予防効果のある抗血小板薬は感染症の予後を改善するかもしれないとの仮説が検証された。 筆者は知らなかったが、世界には肺炎の予後改善を目指したREMAP-CAP試験という各種薬剤の効果を検証する継続的なランダム化比較試験の基盤があるらしい。本研究では新型コロナウイルス肺炎にてICU入院あるいは機械的補助循環・呼吸を要した重症例1,557例を対象とした。試験のendpointは登録後21日以内の機械的補助循環・呼吸を外れた日数とした。日数-1は死亡、日数22は無事退院となる。ランダム化はオープンラベルでアスピリン・P2Y12阻害薬使用ないし不使用である。 重篤な出血は増えるようだが、生存できる可能性は抗血小板薬を使ったほうがよい方向に見えるが統計学的に差異はなかった。1,400例以上集めても差がなかったことが示された。論文の著者はREMAP-CAP Writing Committee for the REMAP-CAP Investigatorsで個人ではない。人類のために能力のあるものが臨床試験にて医療のシステム的改善にチャレンジするとのランダム化比較試験のお手本のような例だと筆者は思う。

10944.

下がり続ける薬剤師国家試験の合格率【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第87回

3月末に薬剤師国家試験の合格発表がありました。最近の合格率はどのくらいなのでしょうか? 厚生労働省は3月24日、2021年度薬剤師国家試験の結果を発表し、合格基準が相対評価に変わった2015年度以降、合格率で過去最低を更新したことを明らかにした。1万4,124人の受験者に対し、合格者は9,607人で、合格率は前回2020年度から▲0.64ポイントの68.02%だった。合格率は年々、低下している傾向にある(中略)合格者のうち6年制新卒者は7,386人で、合格率は前回からの▲0.31ポイントの85.24%。6年制既卒者は2,126人で、▲0.54ポイントの40.75%だった。(2022年3月25日付 RISFAX(一部改変))ここ最近の薬剤師国家試験の合格率は70%くらいを推移しています。新卒者は約85%ですので多少ホッとしましたが、全体で約68%というのはやっぱり低いなという感想です。とくに私立大学では50%以下の大学が10校以上あり、厳しい結果となっています。最近では、厚生労働省や文部科学省が、薬剤師のあり方や教育を検討するための検討会を開催するなど、薬学部の教育カリキュラムにメスが入るのはもはややむなしという状況なのかもしれません。薬局の現場では、合格者は毎年大勢いるのになかなか新人薬剤師が入ってこないなぁ、とぼやいている人もいるかもしれません。合格者9,607人のうち約60%が薬局に勤めると仮定すると、新人薬局薬剤師は6,000人弱という計算になります。一見多そうに見えますが、日本の薬局数は約6万軒ですので、単純計算で10店舗に1人しかいません。新人を獲得することがいかに難しいことなのかがよくわかります。そんな希少な新人薬剤師さんで今このコラムを読んでくれている方もいるかもしれません。今後はさらに新しい通知や施策にも対応していくことが必要になるでしょう。そのために、おおまかでいいので「薬剤師数は33万人」「薬局数は6万軒」という現時点の数字を覚えておくと何かのときに考えるヒントになるかもしれません。数字は人や仕事を助けてくれることがあります。新人薬剤師は実務で覚えることが多くて大変だと思いますが、ご縁があって就職できたわけですので、ぜひ薬剤師業務を楽しみ、各所で新しい風を吹かせてくださいね。

10945.

カムラティ・エンゲルマン病〔CED:Camurati-Engelmann Disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義カムラティ・エンゲルマン病は、進行性骨幹異形成症(progressive diaphyseal dysplasia)とも記載される常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる骨系統疾患である。本症は、1920年Cockayneによって初めて記載され、1922年Camuratiにより遺伝性であることが示唆された。1929年Engelmannにより、筋力低下と著明な骨幹異形成症を示す一例が報告され、本症の名前の由来となっている。現在では、過剰な膜内骨化による骨皮質の肥厚と長管骨骨幹部の紡錘形肥大、近位筋の筋力低下、四肢痛を特徴とする疾患としてカムラティ・エンゲルマン病(Camurati-Engelmann病:CED)の表記が広く用いられている。現在までに150例を超える症例報告がある。家系内解析では、表現型に大きな幅があることが知られている。■ 疫学筆者らが、2014年に行ったアンケート調査(国内医療機関[計2,531施設]に送付し、1,470施設から回答を得ることができた)では、16症例が報告された。このうち、13症例が新規だと考えられた。アンケートから推定された新規患者は30症例程度であり、既知の患者と合わせて60名程度のCED患者がいると考えられる。このアンケートでの患者の定義は、発症年齢は大半が幼児期であるが、その症状は幼児期と青年成人期で異なり、幼児期は、筋力低下、易疲労性を主徴とし、青年成人期は、骨幹の疼痛、めまい、難聴を主徴とするものを対象にし、2診断の項目で示すX線画像所見もしくは検査所見を持つものとしている。■ 病因筆者らは、このCEDの3世代にわたる大家系(21名)を見出し、その臨床表現型についての検討を行った。罹患者、非罹患者をX線学的に同定し、家系内連鎖解析を行った。これにより、疾患遺伝子が19番染色体長腕に位置するTGFB1遺伝子であることを突き止めた。しかしながら、この遺伝子にみられる変化は、TGFB1の構造遺伝子部分ではなく、関連蛋白(Latency associated protein:LAP)に存在する。当初の解析では、LAPドメインを不安定化する変異がTGFB1の遊離を促進することで成熟型TGFB1を増加させるものであると考えられていた。その後のシグナルペプチドでの変異やヒンジ以外の部分の変異での解析から、必ずしも成熟型TGFB1の増加必須なのではなく、情報伝達系として亢進する変異であれば、カムラティ・エンゲルマン病の表現型をとることが明らかになっている。■ 症状3主徴は、四肢の骨痛、筋力低下、易疲労感である。これらの3主徴の出現時期には、年齢依存性があることに注意が必要である。1)幼児期この時期の症状は、筋肉痛、筋力低下、歩行異常であり、骨痛を訴えることは少ない。2)思春期思春期前後から、運動後の骨痛や骨の自発痛が始まる。痛みの出現部位は、病変部である長幹骨の骨幹であることが多い。3主徴が整うのは思春期以後であることが多い。3主徴が整うころの体型としては、手足が長く筋肉の付きの悪い痩せ型であることが多く「マルファン様」と記載されることが多い。性別を問わず、思春期が遅れることも比較的よくみられる症状である。妊孕性に異常はみられない。3)成人期成人期以後は、上記の症状に加えて、頭蓋底の骨肥厚、骨硬化による症状が加わっていく。これには、神経孔の狭窄による神経麻痺などがあり、骨肥厚、骨硬化の進行により生じると考えられている。同様の病態生理から顔面神経マヒ、頭痛、うっ血乳頭、めまい、耳鳴、感音性難聴などの症状が生じうる。理由は不明であるが、女性患者の場合、妊娠によって四肢の疼痛が劇的に改善することが知られている。■ 予後妊孕性に問題はなく、生命予後が悪いという報告もない。しかしながら、頑固な耳鳴や日常生活に支障を来すほどの骨の自発痛は、患者を不安に陥れ精神的な不安定さを生じ、予期しない不幸な転帰をむかえることがあるので精神状態のフォローが重要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)疾患の診断には、上記の症状に加えて、X線画像所見が依然として最も価値があると考えられる。2014年の全国調査では、頭蓋骨側面、四肢長管骨X線画像所見もしくは骨シンチグラム画像所見で診断基準を設定して集計した。1)X線画像所見長幹骨骨幹の骨皮質の左右対称性の骨硬化像(*X線画像所見における頭蓋底の骨硬化像の有無は問わない)2)検査所見骨シンチグラムでの長幹骨骨幹の骨皮質の左右対称性とりこみ3)判定上記2項目のうち1項目を満たすもの図1 典型例頭蓋底の硬化像、頭蓋骨のびまん性の肥厚、長幹骨骨幹を中心とした硬化像。画像を拡大する図2 軽症例頭蓋底の硬化性変化はほとんどみられない。右尺骨近位部大腿骨遠位部の骨硬化、下腿の骨変化。画像を拡大する図3 典型例での99mTc-HMDP骨シンチグラフィー頭蓋底と長幹骨骨幹に左右対称的な取り込みを認める。画像を拡大する図1に典型例、図2に軽症例、図3には骨シンチグラフィーの所見を示す。X線画像所見では、軽症例で内骨膜中心の膜性骨化を示し、骨全体の変形は少ない。重症になるにつれ頭蓋底の骨硬化が進行し、外骨膜性の骨化が加わり骨の変形を来すのが観察できる。古典的には、赤沈の亢進、ALPの上昇の記載があるが、鑑別に用いることが可能なほどの診断的な意味はないと思われる。筆者らが経験した大家系においても、ALP、骨ALP、オステオカルシン、尿中デオキシピリジノリンなど汎用性の高い骨関連マーカーは、病気の存在、病勢と一致しない。また、この疾患の原因遺伝子であるTGFB1の血中濃度も病勢を反映するものではない。現在では、保険診療外ではあるがTGFB1遺伝子解析が可能となっており、機能亢進型の変異を検出することができれば診断を確定できるものと考えられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現在までの報告からは、ステロイドの有効性を指摘するものが多い。プレドニンとして平均0.6mg/kg/日から開始し漸減する方法が一般的である。筆者らは、初期の投与期間を限定して、低容量で長期間服用する方法をとっている。しかしながら、投与方法については、一定の見解が得られていない。疼痛に対する効果はみられるものの、一過性であり周期的に繰り返し投与が必要である。最近、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のステロイド治療で使用されるDeflazacortでの治療経験が報告されるようになっており、経過が注目される1999年ビスフォスファネート製剤の有効性が報告されたが、筆者らの症例では効果はなく、2005年には第1世代、第2世代ビスフォスファネート製剤の否定的な追試が発表された。最近、第3世代のビスフォスファネートであるゾレドロンでの治療経験の報告がみられるようになっており経過を注視する必要がある。また、原因遺伝子がTGFB1の機能亢進にあることから、マルファン症候群と同じくロサルタンの応用が報告されるようになった。低血圧を惹起しない小児領域での実用的な量は、0.6~1.4mg/kg/日とされている。これまでの報告では、病態が完成していない思春期前の小児での成績がよく、成人後では改善が認められないとするものが多い。4 今後の展望現在、本疾患は、小児慢性特定疾病ではあるものの、指定難病には指定されていない。また、治療については、新規開発薬剤の適応拡大などが必要である。そのためにも難病政策として小児慢性特定疾病指定と指定難病指定の一元化が望まれるところである。5 主たる診療科整形外科、小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター カムラティ・エンゲルマン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2022年4月12日

10946.

手術イラストを活用した院内向けレクチャーの一例【誰も教えてくれない手術記録 】第13回

第13回 手術イラストを活用した院内向けレクチャーの一例こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。連載が始まって早くも1年がたちました! 連載を見て手術イラストを描き始めてくださった先生方も、この1年間で相当上達したのではないでしょうか? 自身のイラストのレベルアップが、手術の上達やカンファレンスでの反応で実感できるとすごくうれしいですよね。手術イラストを描き続けていると、日々のオペレコ作成にとどまらず、さまざまな場面で活用できることに気付きます。そんな気付きを与えてくれた1つのきっかけは、「先生のイラストをいつも予習に使っています!」と手術室看護師さんから言われたことでした。手術イラストは、外科医だけでなく幅広い職種への外科教育にも大いに役立つかもしれません。今回は、学生・研修医・メディカルスタッフへの手術イラストを活用した外科教育について、実例を交えて紹介します。(1)病棟看護師へのミニレクチャー画像を拡大する画像を拡大する昨年、病棟看護師の皆さんに向けて、一般的な外科手術についてのミニレクチャーを行いました。病棟看護師さんの中には、「普段から消化器外科の患者さんを担当しているけど、手術は見たことがないし内容もよくわからない」という方もいらっしゃいます。実際の手術動画を見てもらいながら、イラスト資料を使って手術の手順や起こりうる合併症を解説しました。「動画だけだとよくわからないところも、イラストと照らし合わせて理解がかなり深まりました」と大変好評だったようです。(2)学生・研修医の手術の予習画像を拡大する僕がまだ学生のころ、情けないことに予習する余裕がないまま手術に参加してしまい、内容がまったく理解できず、無駄に終わることが多々ありました。そんな僕も今は学生・研修医の指導に多少関わる立場になり、「せっかく手術に入るのだから、少しでも理解を深めてもらおう」と、予習のためのイラスト資料を渡すようにしています。資料では手術のキーポイントや覚えるべき解剖構造を強調し、簡潔にまとめてあります。予習のおかげか、「この血管の名前はわかる?」など、手術中に解剖に関する質問をしてもほとんどの皆さんが答えてくれます。「飽きずに手術に参加できました!」と、こちらもうれしい感想をいただきました。外科に興味のある学生や研修医には、さらなるステップアップとして、参加した手術のイラストを実際に描いてもらうこともあります。資料や教科書のイラストのトレースでも十分勉強になると思いますが、中には自分でオリジナルの手術イラストを描き上げてしまう人もいて驚かされることもしばしばです。ひとりの外科医が積み上げてきた貴重な手術経験を、自身の手でわかりやすくイラスト化する。そしてそれを共有することで、医療者全体の理解を深める。外科医自身がイラストを描くべき理由の1つとも言えそうですね!今後も、外科医の皆さんがイラストを描きたくなるようなトピックを紹介していきたいと思います。次回もお楽しみに!

10947.

英語で「治療方針が一致している」は?【1分★医療英語】第23回

第23回 英語で「治療方針が一致している」は?Do you have a minute to discuss our mutual patients?(お互いに関わる患者たちについて話し合う時間はありますか?)Yes, let’s talk to make sure that we are on the same page.(はい、同じ方針であることを確認するために話しましょう)《例文1》Everyone should be on the same page before we move on.(先に進む前に、皆が共通認識を持っておく必要があります)《例文2》Am I on the same page with you?(私は、あなたと考えが一致していますか?)《例文3》Let’s run the list to be on the same page.(方針を統一するために、[患者の]リストを順番に確認しましょう)《解説》今回覚えていただきたいのは、この“We are on the same page.”(われわれは同じ方針で考えている)という表現です。“be on the same page”というのは、本の「同じページを見ている」という表現に由来しています。「友人と、同じ本の同じページを見ながら話をしている」というシーンを想像してみてください。本の同じページを見て話をしているのであれば、同じ物事について考えている=同じ方向を見ている、といえそうです。反対に、違うページを見ていれば、きっと自分とは異なることを考えるでしょう。このことから派生して、“be on the same page”は「共通認識を持っている」「同じ方針で考えている」という意味になります。今回の会話例は、主治医とコンサルタントが「治療方針にずれがないか」「同じ見解で考えているか」を確認するために話し合おうという場面です。別の表現としては、“think in a similar way”“have the same understanding”というような言い方もできますが、“be on the same page”をさらりと使えれば、より「こなれた英語」になるでしょう。医療者として、現場のコミュニケーションを円滑に進めるために大切な表現ですので、ぜひ身に付けてください。きっと、英語表現の新たな1ページが開けると思います。講師紹介

10948.

第107回 自宅療養COVID-19患者へのまめな自動通知でパルスオキシメーターいらず?

ペンシルベニア大学が実施した無作為化試験の結果によると、自宅療養する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者にまめに通知して病状を把握して必要に応じて看護師等が事に当たる遠隔医療体制が整っていればパルスオキシメーターのような新手の装置の導入なしで入院や死亡を十分に防ぐことができるようです1,2)。2020年3月に同大学医学部(Penn Medicine)は自宅療養COVID-19患者を遠隔通信で見守る仕組みを開始しました。COVID Watchという名称のその取り組みでは呼吸困難の有無と体調はどうかを尋ねる文章通知が2週間のあいだ1日に2回自動配信されます。もし患者の呼吸がより困難になっているようであれば24時間対応チームの担当者から連絡があり3)、救急科(ED)に患者をすぐさま届けるか、遠隔での急診を手配するか、自宅での引き続きの様子見が指示されます。そのようにして入院が必要な悪化患者を容易に見つけ出し、あとは家で安全に過ごしてもらうCOVID Watchには開始以来のべ2万8,500人超の患者が参加しており、その効果は死亡率の低下となって現れています。COVID Watchで世話した患者3,448人とそうでない4,337人を比較したところ、30日間の死亡者数は前者ではわずか3人、後者では12人であり、COVID Watchは死亡率の実に68%低下と関連しました4,5)。COVID Watchでは悪化の兆しを患者の呼吸困難の自覚を頼りに読み取りますが、COVID-19患者が知らぬ間に被る低酸素状態をパルスオキシメーターで測定した酸素飽和度を頼りに把握して悪化を察知するのはさらに良さそうと考える向きもあります1)。COVID-19患者は呼吸困難などの発症に先立って血中酸素レベル低下を呈するとの報告があり、パルスオキシメーターでその低酸素を感知すれば入院が必要な患者をより早期に発見して急を要する治療をより素早く施して患者転帰を更に改善できるかもしれません。一見理にかなうパルスオキシメーターの使用はどうも抗いがたい説得力があるらしく、自宅療養COVID-19患者の遠隔体調把握の取り組みの多くでその使用が取り入れられています。しかしパルスオキシメーターの効果のほどの裏付けは乏しく、無作為化試験での検討はこれまでありませんでした。そこでペンシルバニア大学の研究者は2020年11月29日から去年2021年2月5日に募ったCOVID-19患者2,000人超をいつも通りのCOVID Watch手順のみの群かそれに加えてパルスオキシメーターも使ってもらう群に割り振って入院や死亡の予防効果を比較する無作為化試験を実施しました。その結果、余分な支出をしてパルスオキシメーターを使うひと手間の価値は残念ながら認められませんでした。試験参加から30日間を入院なしで生きながらえた日数平均の比較が試験の主な目的で、パルスオキシメーター使用群でのその日数はいつも通りのCOVID Watch手順群の29.5日とほぼ同じ29.4日であり、有意差はありませんでした。不安の程度も有意差はなく、パルスオキシメーターのおかげで患者はより安心して過ごせたというわけでもありませんでした。試験は体調の遠隔把握の取り組みに上乗せしてパルスオキシメーターを使った場合を検討したものであるという点を踏まえてその結果を解釈する必要があります。COVID Watchのような遠隔での世話を患者が受けられないのであれば自宅でのパルスオキシメーター使用は妥当な手段の一つとなり得るかもしれません。試験主導医師の一人Krisda Chaiyachati氏は次のように言っています2)。「自動配信の通知を利用する原始的な手段で遠隔対応すれば値が張る装置をあえて使わずとも十分に事足りるようです。自動通知を利用すればより少ない看護師の手配で多数のCOVID-19患者の世話が可能であり、そのような仕組みはCOVID-19に限らず他の病気の患者にも役立てられそうです」。他の病気にはたとえば高血圧、糖尿病、心不全などの慢性疾患が含まれます3)。参考1)Lee KC,et al. N Engl J Med. 2022 Apr 6. [Epub ahead of print]2)Pulse oximeters did not change outcomes for patients in COVID-19 monitoring program / Eurekalert3)Remote Monitoring of Patients with Covid-19: Design, implementation, and outcomes of the first 3,000 patients in COVID Watch. NEJM Catalyst. July 21, 20204)Delgado MK, et al.. Ann Intern Med. 2022 Feb;175:179-190. 5)Automated texting system saved lives weekly during first COVID surge / Eurekalert

10949.

MET exon14スキッピング肺がんにおけるsavolitinibの有望な結果/ELCC2022

 MET阻害薬savolitinibの非盲検第II相試験の結果が、欧州肺学会議(ELCC2022)で発表された。savolitinibは中国のMET exon14スキッピング変異を有する肺肉腫様がん(PSC)と非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し有望な成績を示した。 PSC(25例)とNSCLC(45例)全体の全生存期間(OS)中央値は12.5ヵ月という成績であった(追跡期間中央値28.4)。18ヵ月OS率は42%、24ヵ月OS率は31%である。 既治療患者(42例)の未治療患者(28例)のサブグループ解析では、OS中央値はそれぞれ19.4ヵ月と10.9ヵ月、18ヵ月OS率は50%と30%であった。疾患別にみると、PSCとNSCLCのOS中央値はそれぞれ10.6ヵ月と17.3ヵ月、18ヵ月OS率は30%と49%であった。また脳転移例(15例)のOS中央値は17.7ヵ月、18ヵ月OS率は50%という結果であった。 有害事象の発生率は、サブグループ間で一貫していた。Grade3以上の治療関連有害事象は46%の患者で報告され、最も多い項目は末梢浮腫(9%)、AST上昇(13%)、ALT上昇(10%)であった。 発表者のスイス・ジュネーブ大学病院のAlfredo Addeo氏は、「データは有望ではあるが、従来のMET阻害薬と同等であり画期的とはいえない。PSCの場合、比較的若い患者集団であることが多く、依然として患者の生存率の改善に役立つ新しい治療法が必要である」と述べている。

10950.

抗精神病薬使用中の患者に対する心電図モニタリングの実践

 急性期および慢性期の精神症状の管理における抗精神病薬の使用は、不整脈による死亡率の増加と関連しているとされるが、心電図(ECG)モニタリングのタイミングや頻度に関するコンセンサスは十分に得られていない。米国・Zucker School of MedicineのLiron Sinvani氏らは、抗精神病薬を使用している成人患者(とくに入院患者)に対するECGモニタリングの現在の実施状況に関して調査を行った。Journal of Psychiatric Practice誌2022年3月3日号の報告。 2010~15年に8施設の医療機関で、入院中に抗精神病薬で治療された成人患者を対象に、マルチサイト・レトロスペクティブ・チャートレビューを実施した。主要アウトカムは、抗精神病薬使用後のECG実施とした。 主な結果は以下のとおり。・調査期間中に抗精神病薬で治療された入院患者数は2万6,353例(平均年齢:61.4歳、女性の割合:50.1%、白人の割合:64.8%)であった。・平均併存疾患スコアは1.4、入院期間の中央値は8.3日であった。・対象患者のうち、入院中にECGを実施した患者は60.6%(1万5,977例)、抗精神病薬使用後にECGを実施した患者は41.2%であった(1万865例)。・ECGのフォローアップを実施した患者の入院期間(中央値:11.3日)は、実施しなかった患者の入院期間(中央値:7.0日)と比較し長かった。・ECGのフォローアップ実施率が高かった患者の特徴は以下のとおりであった。 ●心不全の既往歴(オッズ比[OR]:1.17、95%信頼区間[CI]:1.06~1.30、p=0.002) ●抗精神病薬の多剤併用(OR:1.3、95%CI:1.24~1.36、p<0.001) ●その他のQT間隔延長リスクを有する薬剤の使用(OR:1.09、95%CI:1.07~1.1、p<0.001) ●リスペリドンの使用(OR:1.12、95%CI:1.004~1.25、p=0.04) ●QTcの延長(10ms増加当たりのOR:1.02、95%CI:1.01~1.04、p=0.003)・入院前に抗精神病薬を使用していた患者では、ECGのフォローアップを実施する可能性が低かった(OR:0.93、95%CI:0.87~0.997、p=0.04)。 著者らは「本研究では、抗精神病薬を使用している入院患者に対するECGモニタリングは、十分に行われていない可能性が示唆された。急性期治療環境におけるECGモニタリングにより、最もベネフィットが示される患者を特定するためには、さらなる研究が求められる」としている。

10951.

リブレ(血糖測定器)の保険適用拡大で糖尿病学会が見解/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2017年に発表した「間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM):FreeStyle リブレ(以下「リブレ」と略す)に関する見解」の内容を改訂し、4月1日に第4版を公表した。 今回の改訂は、「2022年4月より、リブレの使用に関する保険請求上の「C150-7」の対象者が『入院中の患者以外の患者であって、インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っているもの』に拡大されたことを踏まえ、現在の医療環境に合わせた」と趣旨を示している。同時に「リブレは、糖尿病の日常の自己管理に有用であるが、必要時には血糖自己測定(SMBG)を行って血糖値を確認する必要がある。本品が有効かつ安全に用いられるよう、適正な使用方法について示す」としている。リブレ(血糖測定器)保険適用拡大の主な内容や改訂点【1.リブレを使用することが考慮される患者像】〔継続使用が考慮される患者像〕(1)インスリン療法でも血糖変動が大きい患者(2)生活が不規則で血糖が不安定な患者(3)スポーツや肉体作業など活動量が多く血糖が動揺しやすい患者(4)低血糖対策の必要度が高い患者、など〔短期的または間歇的に使用する患者像〕(1)インスリンを新規に開始する患者(2)治療内容の変更(薬剤の追加・変更、薬剤用量の増減など)を行う患者(3)食事や運動などが血糖変動に及ぼす影響を理解させて生活習慣改善に向けて教育的指導を行いたい患者(4)手術や歯科処置などで短期間に血糖を改善すべき患者(5)シックデイの場合、など【2.SMBGとの併用】 SMBGとの併用について、「リブレは糖尿病の日常の自己管理に用いることができる機器であるが、必要に応じてSMBGを行って血糖値を確認しなければならない」としている。 また、SMBGを行う場合として、添付文書に記載されている通り、(1)グルコース値が急速(1分間に2mg/dL以上)に変化している場合(2)センサーにより得られた低血糖または低血糖の可能性について確認する場合(3)リブレの測定結果と一致しない症状がある場合、または測定値の正確性に疑問がある場合 などが挙げられている。【3.保険適用】 2022年4月より、「C150-7」の対象者が「入院中の患者以外の患者であって、インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っているもの」に拡大されたことで、インスリン注射を行っているすべての患者に適用される。【4.安全性と有効性の担保】 実際の使用では、「機器自体の特性、データ乖離などの解釈、SMBGが必要な状況の指導、食事・運動療法・薬物治療へのフィードバック、など糖尿病治療の専門的な知識が必要である」と明記。また、「リブレはSMBGと相補的に使用することにより糖尿病患者の血糖管理を向上させる有用なツールであり、日本糖尿病学会はリブレの安全かつ有効な利用を今後も推進する」としている。【5.結果の評価方法について】 結果の評価方法について、とくに「 time in range(TIR)の目標値が、国外のCGMデータに基づいて設定されており、日本人糖尿病患者における適切な目標値とは異なっている可能性がある。今後、日本人におけるCGMデータを用いて、適切な目標値を検証していくことが重要」としている。

10952.

子宮頸がん撲滅に向けて:HPVワクチン接種の意義とは

 2022年3月29日、MSD株式会社は子宮頸がん予防に関するメディアセミナーを開催した。 今回のセミナーでは、「子宮頸がん予防の重要性ついて」を近藤 一成氏が、「ワクチン接種を検討する方へ伝えるべきポイント」について勝田 友博氏が説明した。若年女性で多い子宮頸がん 主要先進7ヵ国、G7の中で日本は子宮頸がん罹患率が最も高く、年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、約3,000人が死亡している。2019年の1年間であれば、死亡者のうち571人が25~49歳と若年の女性であった。つまり、子宮頸がん予防の遅れが課題となっている。 「子宮頸がんは人生を変えてしまう疾患である」。子宮頸がんが原因で離婚することになった患者、幼い子供がいながら余命宣告をされた患者など多くの患者を診てきた近藤氏は、子宮頸がんをそう評価する。子宮頸がん撲滅のために 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)感染によるものであり、HPVは性交経験のある女性のうち約80%が感染しているとされ、誰にでも起こりえるといえる。実際に、HPVに感染していない子宮頸がんはほとんどないといわれている。 子宮頸がんはHPVに感染した後、軽度異形成から中等度、高度異形成、そして上皮内がんへと進行する。がん検診で早期発見できるのは、高度異形成以上であるため、検診率が80%台になっても罹患率の減少は35%程度しか見込めないと近藤氏は指摘する。さらに、細胞診の感度は53~78%であり、一定の割合で偽陰性が生じることや、最近増加傾向にある子宮頚部腺がんは検出が難しい。そのため、子宮頸がんの予防戦略としては1次予防でHPVワクチン、検診は2次予防である、と近藤氏は訴えた。 実際にHPVワクチンの接種率向上によって、スコットランドでは子宮頸がんやその前段階である異形成が減少したと報告されており、スウェーデンやイングランドにおいても同様の報告がなされている。 「このままでは子宮頸がんは日本の風土病になってしまう」、諸外国の状況と日本の現状を比べて近藤氏はそう語った。HPVワクチンの積極的勧奨が再開された今、早期のHPVワクチン接種が望まれる、と述べて近藤氏は講演を終えた。正確な情報をもとに判断する 続いて、「ワクチン接種を検討する方に伝えたい留意点」と題して勝田 友博氏が講演を行った。 HPVワクチンと聞くと真っ先に思い浮かぶのが、接種後の痛みや手足の動かしにくさ、不随意運動などの身体機能症状である。これらの身体機能症状がHPVワクチンによるものなのではないか、という点を気にしてHPVワクチンを接種しない選択をした方も多くいることが想像できる。 しかし、HPVワクチンと多様な身体機能症状の関連について調査した名古屋Studyでは、月経量の異常だけが接種群において非接種群よりも頻度が増加していた。また、『青少年における疼痛または運動障害を中心とする多様な症状の受領状況に関する全国疫学調査』によると、HPVワクチンの接種歴がなくても接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈するものが一定数存在することが報告されている。 HPVワクチンに関する情報が溢れている昨今、その中から正確な情報をもとに接種希望者には判断をしてもらう必要がある。とくに医療従事者は正確で透明性の高い情報をわかりやすく提供し、判断の助けをする必要がある、と勝田氏は語った。今後のHPVワクチン接種体制 現在、日本国内で2000年度以降に生まれた女性におけるHPVワクチン接種率がかなり低い状況にある。そのため、キャッチアップ接種の必要性があるとされており、対象は1997~2005年生まれの女性となる。 HPVワクチンは接種年齢が遅れるとワクチンの効果が低下するため、接種機会を得たら速やかに接種することを勝田氏は推奨している。 ワクチン接種の重要性も接種する本人、または保護者に伝わらないと意味がない。将来「知らなかった」で後悔しないよう、ワクチン接種するかどうかを、本人や保護者に正確な情報をもとに判断してもらうためにも、国や医療従事者が正確かつ透明性の高い情報をわかりやすく提供することが重要だ、と勝田氏は述べ、講演を締めくくった。

10953.

バリシチニブ、円形脱毛症の毛髪再生に有効か/NEJM

 円形脱毛症は、頭髪、眉毛、睫毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患であるが、治療法は限定的である。米国・イェール大学医学大学院のBrett King氏らは、重症円形脱毛症の治療におけるヤヌスキナーゼ(JAK)1とJAK2の阻害薬バリシチニブの有用性を検討し、本薬はプラセボと比較して、36週時に臨床的に意義のある毛髪再生を達成した患者の割合が高く、安全性も劣らないことを「BRAVE-AA試験」で示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年3月26日号で報告された。10ヵ国169施設の2つのプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む10ヵ国169施設が参加した2つの二重盲検プラセボ対照無作為化試験(BRAVE-AA1試験、BRAVE-AA2試験)である(Incyteのライセンスの下でEli Lillyの助成を受けた)。 この試験では、BRAVE-AA1試験の第III相部分(参加者登録期間:2019年3月~2020年6月)とBRAVE-AA2試験(同:2019年7月~2020年5月)のデータが用いられた。 対象は、年齢18~60歳の男性と18~70歳の女性で、Severity of Alopecia Tool(SALT)のスコア(0[頭髪の脱毛なし]~100[頭髪の完全脱毛]点)が50点以上の患者であった。 被験者は、バリシチニブ4mg、同2mg、プラセボを、1日1回、経口投与する群に、3対2対2の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、36週の時点におけるSALTスコア20点以下(意義のある治療アウトカム)の達成であった。より長期の試験が必要 1,200例が解析に含まれた。内訳は、BRAVE-AA1試験が654例(バリシチニブ4mg群281例、同2mg群184例、プラセボ群189例)、BRAVE-AA2試験は546例(234例、156例、156例)であった。 円形脱毛症の平均(±SD)罹患期間は、BRAVE-AA1試験が3.6±3.9年、BRAVE-AA2試験は4.3±4.9年だった。全体の53.2%が超重症(SALTスコア95~100点)の円形脱毛症で、90.6%が少なくとも1回の円形脱毛症の治療歴を有していた。また、主要および副次アウトカムのデータには、約10~15%の欠測が認められたため、多重代入法による解析が行われた。 36週時のSALT 20点以下の達成割合は、BRAVE-AA1試験ではバリシチニブ4mg群が38.8%、同2mg群が22.8%、プラセボ群は6.2%で、BRAVE-AA2試験では、それぞれ35.9%、19.4%、3.3%であった。 BRAVE-AA1試験では、バリシチニブ4mg群とプラセボ群の差は32.6ポイント(95%信頼区間[CI]:25.6~39.5)、バリシチニブ2mg群とプラセボ群の差は16.6ポイント(9.5~23.8)であり(プラセボ群との比較で2つの用量ともp<0.001)、BRAVE-AA2試験では、それぞれ32.6ポイント(25.6~39.6)および16.1ポイント(9.1~23.2)であった(プラセボ群との比較で2つの用量ともp<0.001)。 10項目の主な副次アウトカムは、全般的にバリシチニブ4mg群ではプラセボ群よりも良好であった(BRAVE-AA1試験は10項目すべて、BRAVE-AA2試験は7項目で有意差あり)が、同2mg群ではとくにBRAVE-AA2試験でプラセボ群との差がない項目が多かった(BRAVE-AA1試験は8項目、BRAVE-AA2試験は1項目で有意差あり)。 治療期間中に発現または悪化した有害事象は、BRAVE-AA1試験ではバリシチニブ4mg群59.6%、同2mg群50.8%、プラセボ群51.3%に認められ、BRAVE-AA2試験ではそれぞれ66.1%、68.4%、63.0%でみられた。重篤な有害事象は、BRAVE-AA1試験でバリシチニブ4mg群2.1%、同2mg群2.2%、プラセボ群1.6%、BRAVE-AA2試験ではそれぞれ3.4%、2.6%、1.9%で発現した。死亡例はなかった。 プラセボ群に比べバリシチニブ群で頻度の高い有害事象として、ざ瘡(BRAVE-AA1試験:バリシチニブ4mg群5.7%、同2mg群5.5%、プラセボ群0.5%、BRAVE-AA2試験:4.7%、5.8%、1.9%)、クレアチンキナーゼ値上昇(5.7%、1.6%、1.6% / 3.0%、0%、1.3%)、LDLコレステロール値≧130mg/dL(27.7%、20.5%、14.4% / 30.3%、24.8%、17.7%)、HDLコレステロール値≧60mg/dL(41.7%、42.3%、13.5% / 43.0%、35.6%、13.3%)が認められた。 著者は、「円形脱毛症に対するバリシチニブの安全性と有効性を確立するには、より長期の試験が必要である。本試験は、有害事象の長期的な観察が求められたため継続試験が進行中であり、最長で200週まで盲検下に継続する予定である」としている。

10954.

Apple Watchで不整脈を早期発見するAIモデル開発~慶大/日本循環器学会

 Apple Watchなどのスマートウォッチは、無意識のうちに心拍数や活動量などのさまざまなヘルスケアデータを計測し、蓄積し続けることができる。2020年にはApple Watchの2つのアプリケーション「不規則な心拍の通知」と「心電図アプリケーション」が家庭用医療機器として厚生労働省の承認を受け、医療分野での活用が期待されている。 慶應義塾大学病院・慶應義塾大学医学部は、Apple Watchで心電図を記録する最適なタイミングを予測するための機械学習アルゴリズム構築を目的として、研究用iPhoneアプリケーションを構築し、Apple Watchが記録したヘルスケアデータを収集した。その分析結果について、木村 雄弘氏(慶應義塾大学医学部循環器内科専任講師)が、第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11日~13日)で発表した。 2017~18年に米国・スタンフォード大学が実施した大規模調査Apple Heart Studyでは、Apple Watchの一般ユーザー約42万人を対象に不整脈のモニタリングをした結果、対象者の0.52%(2,161例)がApple Watchアプリケーションによる不規則な心拍の通知を受けた。通知を受けた対象者に、ECGパッチを使って追跡調査をしたところ、心房細動が153例(34%)に認められた。 木村氏の研究チームはこの結果を受けて、さらに効率よく心房細動を検出するためには、心電図を記録するタイミングが重要であると考えた。本研究Apple Watch Heart Study(AWHS)は、Apple Watchで効率的に異常な心電図を記録し早期発見につなげる最適なタイミングを、個別化して予測する機械学習アルゴリズムを構築することを目的とした。心房細動のリスク因子や、Apple Watchが記録するヘルスケアデータ、睡眠不足、過度な飲酒、ストレスなどの主観的なアンケート回答を収集し、心房細動の発作との相関関係を分析した。 学会で発表されたのは、AWHS慶應義塾版で、慶應義塾大学病院に通院する100例の心房細動患者を対象に、2週間ホルター心電図の結果を教師データとして、携帯型心電計、Apple Watchから得られたデータを検証したものである。対象者は、平均年齢:63.9±12.4歳、平均CHADS2スコア:0.9±1、平均CHA2DS2-VAScスコア:1.7±1.5、平均BMI値:24.2±3.3kg/m2、平均左房径:40.8±7.9mm、平均BNP:98.7±117.7pg/mLであった。 まず、Apple Watchの不規則な心拍の通知は、1日2回と有症状時に記録した携帯心電計と同等の特性を持っており、無症状の心房細動の検知に有用であることが示された。 また、Apple Watchが記録したデータについて、心房細動発作に関する因子を解析した。結果は以下のとおり。・Apple Watchが計測した心拍数は、発作時が平均76.36回/分、非発作時は61.05回/分(p

10955.

第96回 COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター

<先週の動き>1.COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター2.感染拡大を懸念し、新型コロナウイルス感染症対策分科会が緊急メッセージ3.医師大量退職の大津市民病院、理事長に次いで院長も辞任4.2021年の救命救急センター評価、S評価は96ヵ所/厚労省5.ヤングケアラー実態調査で小学6年生の15人に1人が家族の世話6.精神病院での身体拘束後の死亡事件、遺族と病院が和解1.COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター国立研究開発法人 国立国際医療研究センターは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例データベース研究「COVID-19 REGISTRY JAPAN(COVIREGI-JP)」に登録されたデータ等を活用したダッシュボードを公開した。COVID-19と診断され、日本国内の医療機関に入院した患者を対象として、以下の情報が登録されている。(1)基本情報(年齢、性別、出生国、人種、感染に関する疫学的情報、基礎疾患、内服歴・治療歴など)(2)入院や治療に関する情報(症状、入院期間、治療方法、血液・画像検査の結果など)(3)感染症に関する情報(COVID-19の検査結果、その他病原体検査結果など)(4)その他(妊婦:妊娠期間、妊娠中の異常、妊娠転帰/小児:出生歴、ワクチン接種の有無など)本研究は、国際感染症センターと全国700余りの医療機関が共同で6万3,000例以上の症例を登録し、わが国で最大級のCOVID-19入院患者データを蓄積するレジストリとなっている。今後も研究を推進させるため、引き続きデータ登録や研究への参画を呼びかけている。ダッシュボードでは、重症患者の推移、年齢男女構成、症状、併存疾患、薬物治療、呼吸補助治療、喫煙状況などを一覧することができる。2022年4月11日時点のダッシュボード画面画像を拡大する(参考)コロナ入院患者の症状推移や治療状況などまとめたサイト公開(NHK)COVIREGI-JPダッシュボード公開について~COVID-19・レジストリ登録データを見える化しました~(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター)2.感染拡大を懸念し、新型コロナウイルス感染症対策分科会が緊急メッセージ政府は8日、新型コロナウイルス感染症対策分科会を開催した。今後の急激な感染拡大を防止して、社会経済活動を継続するための緊急メッセージを発信し、国民へ可能な限り早めの3回目接種などを呼び掛けた。まん延防止等重点措置の解除後、わが国でも海外と同様に、陽性者でオミクロン株BA.2が占める割合が増加し、感染再拡大の兆候が見られているため、適切なマスク着用など基本的感染対策の徹底が求められる。また、医療機関や自治体に対しては、高齢者施設で感染が疑われる人が出た場合、早期の医療介入や施設での感染対策のために手厚い支援をするよう求めている。(参考)高齢者対策重点に 感染急拡大で医療逼迫も 分科会(産経新聞)急拡大防止“追加接種やマスク着用を”分科会が緊急メッセージ(NHK)第7波対策、分科会で議論 社会経済活動の制限に賛否(日経新聞)3.医師大量退職の大津市民病院、理事長に次いで院長も辞任京都大学から派遣されている外科・消化器外科・乳腺外科などの医師19人の相次ぐ退職見込みが報道されている滋賀・大津市民病院は、若林 直樹院長が一連の責任をとる形で辞任することを明らかにした。後任の院長には、京都府立医大出身の日野 明彦氏(現・済生会滋賀県病院 院長補佐)が4月18日に就任する。なお、院長を辞任した若林氏は副理事長として、引き続き病院運営や診療に携わり新院長をサポートしていくとされる。一方、後任の理事長はまだ決まっておらず、大津市長が人選を急いでいる。(参考)大津市民病院 院長辞任発表“多くの医師退職問題で責任とる”(NHK)院長辞任→院長代行に 大津市民病院(読売新聞)大津市民病院の院長が辞任「責任を痛感」 医師大量退職問題、副理事長は継続(京都新聞)4.2021年の救命救急センター評価、S評価は96ヵ所/厚労省厚生労働省が、2021年「救命救急センターの充実段階評価の評価結果」を公表した。全国298ヵ所の救命救急センターが対象に行われた本調査は、1999年度から救命救急センター全体のレベルアップを図ることを目的として実施されており、最もランクの高い「S」評価を得たのは、東北大学病院、福島県立医科大学附属病院、筑波大学附属病院、自治医科大学附属病院、埼玉医科大学総合医療センター、手稲渓仁会病院、東京都立墨東病院、亀田総合病院、慈泉会相澤病院など96ヵ所。評価としては「A」が196ヵ所で最も多く、「B」は5ヵ所、「C」は1ヵ所となっている。評価の結果は、救命救急センター運営事業費の補助額と診療報酬に反映される。たとえば診療報酬では、「S」評価であれば救命救急入院料に救急体制充実加算1(1,500点)、「A」なら同加算2(1,000点)、「B」なら同加算3(500点)がそれぞれ上乗せされる。(参考)2021年の救命救急センターの評価、S:96か所、A:196か所、B:5か所、C:1か所に―厚労省(Gem Med)21年の充実段階評価「S」、救命センター96カ所「C」は1カ所、厚労省(CB news)5.ヤングケアラー実態調査で小学6年生の15人に1人が家族の世話厚労省は今年1月、介護など家族の世話をしている子供や若者(ヤングケアラー)の実態調査を行った。その結果、小学6年生の15人に1人、大学3年生では16人に1人が実際に家族の介護などをしていることが明らかとなった。平日1日あたり7時間以上を費やすと回答したヤングケアラーは7.1%であり、割合は家事や幼い兄弟姉妹の世話が多く、学業や健康面への影響が心配だ。(参考)“ヤングケアラー”国が初調査 小学生15人に1人「家族を世話」(NHK)ヤングケアラー、小6の15人に1人 1日7時間費やす例も 厚労省調査(日経新聞)小学生の15人に1人はヤングケアラー 長時間ケアが学校生活に影響(朝日新聞)6.精神病院での身体拘束後の死亡事件、遺族と病院が和解東京都足立区の精神科病院で、患者(当時54歳)が死亡したのは違法な身体拘束によるものとして、遺族が病院側に約6,200万円の損害賠償を求めた訴訟があり、東京高裁(足立 哲裁判長)で4月7日に和解が成立した。被告となった病院は、再発防止に努めるとともに、解決のため和解金を支払うこととなったが、金額は明らかにされていない。東京地裁の判決によると、双極性障害と診断されていた患者が2016年1月、足立区内の精神科病院を受診し、夫の同意下で入院したが、医療者側の指示に従わないため、医師の指示によって両腕・胴の拘束を開始した。7日後に解除されたが、直後に容体が急変し、肺塞栓症にて亡くなった。(参考)身体拘束後死亡、遺族と病院和解 東京高裁(日経新聞)身体拘束後に死亡、精神科病院側と遺族が和解 「一層の配慮」を約束(朝日新聞)

10956.

血友病の遺伝子治療、EUでは発売間近だが日本は出遅れた(解説:長尾梓氏)

 単一遺伝子欠損で発症する血友病は遺伝子治療の有望なターゲットで、唯一のcureを目指せる治療として有望視され、現時点で少なくとも血友病AとBを合わせて14社が開発に乗り出している。遺伝子のサイズが小さくアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに搭載しやすい血友病Bが先行して開発され、8年間の耐久性を示した製品もある(scAAV2/8-LP1-hFIXco, sponsor; St. Jude Children’s research Hospital/UCL)。サイズの大きい血友病A遺伝子治療は少し出遅れたが、その中ではBioMarin社の遺伝子治療(roctavian[valoctocogene roxaparvovec])が最も先行している。ロイター通信によると、BioMarin社のroctavianは2019年に3年間の第I/II相データと第III相データの中間解析に基づいてFDAおよびEMAに承認申請したものの、第I/II相データでは2年目に治療効果が低下傾向にあり、第III相のデータをさらに2年分追加することが要求された。つまり、FDAもEMAもdurabilityに懸念を示したわけである。 遺伝子治療の懸念はほかにも多数ある。AAV抗体を保有している患者への投与の可否、ベクターのdose(多ければ多いほど発現は増えるが、副作用も増える)。そのほか、AAVが肝臓指向性に改編されているため投与後の肝機能異常がほぼ必発で、免疫抑制薬を必要とする場合はその用量、タイミングそして副作用の問題。第VIII因子発現にも個人差が大きく(variability)、発現しなかった場合の再投与の可否、過剰発現の場合の抗凝固薬の要否等の問題である。 さて、今回のNEJM誌はそのBioMarin社の重症血友病Aに対するAAVを用いた遺伝子治療の多施設共同単群非盲検第III相試験「GENEr8-1試験」の結果である。抗AAV5抗体を保有していない18歳以上の重症血友病A患者134例にvaloctocogene roxaparvovec(6×1013vg/kg)を単回注入、51週以上の追跡調査を完了した。 49~52週時の第VIII因子活性は平均41.9 IU/dL増加した(95%信頼区間[CI]:34.1~49.7、p<0.001、変化量中央値:22.9 IU/dL、四分位範囲:10.9~61.3)。132例のうち17例から104週までのデータが得られ(つまり2年以上)、104週での第VIII因子活性は平均24.4±29.2%、中央値14.7%(四分位範囲6.4~28.6)と個人差は大きいもののまずまずの結果であった。 132例のうち270-902試験のデータが6ヵ月以上ある112例においては、投与後4週目以降の第VIII因子製剤の年間使用量がベースラインから98.6%減少し、年間の治療した出血回数もベースラインから83.8%減少した(p<0.001)。 134例全例に有害事象が認められ、22例(16.4%)で重篤な有害事象が報告された。ALT増加は134例中115例(85.8%)に認められ、免疫抑制薬により治療された。そのほかの主な有害事象は、頭痛(38.1%)、悪心(37.3%)、AST増加(35.1%)であった。第VIII因子インヒビターや血栓症の発現は認められなかった。 今回のNEJM誌のデータをもってBioMarin社はFDAに再申請すると報じられている。一方、EMAはすでに再申請を受け入れており、EMAの医薬品委員会(CHMP)と先端医療委員会(CAT)の2つの機関で審査が行われ、2022年6月までに決定される予定とのこと。承認されれば、roctavianは血友病Aに対して欧州で承認された最初の遺伝子治療薬となる。 ただ、残念ながらroctavianは昆虫細胞系の産生システムを採用しているため、日本の法下では扱いが難しく、臨床試験も困難な状況で日本での発売の見通しはまったく立っていない。ひとつ、朗報としては、同AAVベクターをHEK293で発現させてマウスでの耐久性を比較し同等であったと2021年の米国血液学会で発表されている。

10957.

「急ぎ」のお宝承継をゲットできる医師は…?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第38回

第38回 「急ぎ」のお宝承継をゲットできる医師は…?漫画・イラスト:かたぎりもとこ前回の仲介業者が考える「お宝物件」の記事では、「伸び代が大きい」「リスクを最小化できる」という観点を紹介しました。今回はまた少し違った観点の「お宝物件」の探し方を紹介します。それは、一言で説明すれば「急ぎの案件」です。「売り主が急いで承継相手を探している」という案件には、大きく分けて下記のケースがあります。(1)院長が体調不良などの事情から、急いで買い手を探す(2)分院展開をする法人で管理医師が退職し、次が見つからずに急いで買い手を探す(1)院長が体調不良などの事情から、急いで買い手を探す院長が急病、ときには急逝された、という状況で相談を頂くケースは非常に多くあります。このような場合、家族や親族が主体となって医業承継を検討しますが、早く買い手を見つけなければ閉院となり患者や従業員に大きな影響が出てしまう、といった事情から大急ぎで後継者探しをしているのです。2021年に弊社が受けたご相談全体のうち、このパターンが2割程度を占めていました。急ぎであることに加え、医業や経営に詳しくない家族・親族の意向として「譲渡額はさほどこだわらなくてよいので、患者や従業員の引き継ぎをしてほしい」というケースが多く、相場の半額以下で成約することも多くあります。(2)分院展開をする法人で管理医師が退職し、次が見つからずに急いで買い手を探す3月末や12月末まで、といったように年や期の変わり目に多い相談です。医師が転職する時期で最も多いのが4月で、この時期に多くの医師が新しい環境へ移りますが、その中には分院長を務めていた管理医師もいます。分院長が辞める場合、雇用していた医療法人は次の管理医師候補を探しますが、医師は圧倒的な売り手市場で、新たな管理医師を3ヵ月や半年の期間で探すことは大変です。ここで管理医師候補を探すことができず、「分院を切り離し、開業したい医師へ譲渡したい」というケースが出てくるのです。こうした背景から、「急ぎ」を理由としたお宝物件が発生するのですが、買い手候補の医師の多くはこれらの話を受けることができません。それは「医局に所属しており、退局や引き継ぎに1年はかかる」という方が大半だからです。一方、数は少ないながら、開業を決意し、医局を辞めてフリーランスの立場になって承継案件を真剣に探す方もいます。「お宝物件」は、こうした覚悟と準備のできた方が承継するケースがほとんどなのです。

10958.

第48回 単回帰式の求め方は?【統計のそこが知りたい!】

第48回 単回帰式の求め方は?相関図における散布点に直線的な傾向がみられるとき、直線を当てはめれば(直線を引けば)、y軸の項目とx軸の項目の関係が明確になります。直線を当てはめることを「関係式の当てはめ」と言います。そして関係式を求める統計的手法を「単回帰分析」、あるいは「直線回帰分析」と言います。単回帰分析によって求められる直線の関数式(y=ax+b)を「単回帰式」と言います。そして、単回帰式y=ax+bは次の公式で求められることがわかっています。●計算式y=ax+bの傾きaとy軸切片b※Sxy、Sxxは第47回で示した積和と偏差平方和具体的に下表の男子学生の体幹部の周囲径(cm)と体脂肪率(%)の相関図に単回帰分析によって求めた直線を描いた例で説明します。この直線単回帰式を求めてみましょう。図 直線の当てはめ第47回の手順を用いると下表のように数値が求められます。画像を拡大するこれより y=ax+bのaとbは下記のように求められます。 b=74-1.76×17=44.08よって、直線単回帰式は「y=1.76x+44.08」となります。■相関関係における「強さ」と「大きさ」とは単相関係数をr 、単回帰式をy=ax+bとします。rは「強さ」、aは「大きさ」を把握する指標です。では、体幹部の周囲径と体脂肪率の関係における「強さ」と「大きさ」とは何でしょうか。単相関係数rは、「体脂肪率が増えれば、体幹部の周囲径が太くなる傾向があるか」、すなわち「体脂肪率は体幹部の周囲径に影響を及ぼしているか」を把握するツールです。rは傾向(影響)の程度を数値にしたもので、体幹部の周囲径に対する体脂肪率の「強さ」を示します。単回帰式の係数aは、「体脂肪率が△%増えれば、体幹部の周囲径は〇cm太るのか」、すなわち「体幹部の周囲径に対する体脂肪率の影響はどの程度であるか」を把握するツールです。aはその影響を数値にしたもので、体幹部の周囲径に対する体脂肪率の「大きさ」を示すものです。では、下表のように先程の事例の女子学生について調べた結果を比べて、それぞれの体脂肪率の体幹部の周囲直径に対する「強さ」と「大きさ」をみてみましょう。画像を拡大する下表および下図の通り、体脂肪率の体幹部の周囲径に対する「強さ」は、男子学生は0.81、女子学生は0.99で、男子学生のほうが女子学生よりも強さの度合いが弱いということがわかります。また、体脂肪率の体幹部の周囲径に対する「大きさ」は、男子学生1.76cm、女子学生1.21cmで男子学生のほうが女子学生よりも大きさの度合いが大きいということがわかります。つまり、「単相関係数rの数値が大きい(強い)からといって、体脂肪率の増加に対する体幹部の周囲径の太り具合も大きくなる」ということではないのです。●男子学生●女子学生■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第14回 Cox比例ハザードモデルってどんなモデル?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問8 Cox比例ハザードモデルとは?(その1)質問8(続き) Cox比例ハザードモデルとは?(その2)

10959.

事例047 アセトアミノフェンの力価誤りで査定【斬らレセプト シーズン2】

解説咳と微熱の訴えで来院され、急性上気道炎と診断された患者に処方されたアセトアミノフェン37.5gが不適当であるとD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。原因を探るまでもなく、会計担当者の力価処方に関連するうっかりミスであろうと考えました。ところが、異なるところにヒヤリが潜んでいたという事例です。診療録に記載された医師の処方を確認すると、「7,500mg/日 1日3回 毎食後」と記載がありました。医師に尋ねると、「1日力価1,500mgが限度、20%散ならば全量7.5gだから、そのつもりで7,500mgと書いた」とのことでした。薬剤部では記載誤りではなく総量の表現と捉えて処方されていました。そして、会計担当者は、「散剤なので7,500mg÷20÷10=37.5g」と計算し、そのまま入力してしまっていたのです。医師には、このような計算誤りがあったことを伝え、医療費計算の誤りを防ぐために、力価での処方は“mg”、総量での場合は“g”と記入していただくようにお願いをしました。また、会計担当者には、“mg”であっても、量が多いのではないかと感じた場合には、必ず医師か薬剤部に問い合わせるように伝え、レセプトシステムには、上限を登録して再発防止といたしました。

10960.

年代別身体活動の目安【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q10

年代別身体活動の目安Q10高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)では高血圧予防としての運動習慣について、「健康づくりのための身体活動基準2013」の推奨内容が明記された。18~64歳、65歳以上それぞれにおける、推奨される運動強度と時間は?

検索結果 合計:35155件 表示位置:10941 - 10960