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マイナ保険証への対応、他の医院はどうしてる?/1,000人アンケート

 2022年10月から、マイナンバーカードを健康保険証として利用するシステム「マイナ保険証」が本格導入され、2024年を目処に現行の保険証を廃止するという方針も打ち出された。ケアネットでは10月17日、診療所を経営、勤務する会員医師1,000人を対象に、マイナ保険証への対応についてのアンケートを行った。 「自身はマイナンバーカード取得と保険証機能への連携をしているか」を聞いた設問では、「取得・連携済み」が32.5%、「取得済みでこれから連携予定」が26.2%と合わせて約6割を占めた一方で、「マイナンバーカード自体を未取得」と答えた人も3割近くいた。マイナンバーカードの交付枚数は約6,301万枚、取得率は50.1%(10月18日時点)となっており、今回の医師の取得率はそれよりは高いものの、まだまだ全員に普及したとは言えない状況だ。 「経営・勤務している診療所はマイナ保険証への対応(カードリーダーの設置)をしたか」との設問への回答は、「対応済み」が20%、「準備中」が35%と合計して半数を超えたが、「様子見・迷っている」が25%、「対応予定なし」が17.5%と、4割以上の回答者の診療所でまだリーダーが設置されていない状況が明らかになった。 「設置した」または「していない」理由を聞いた設問(複数回答)では、「設置済み・準備中」の回答者では「政府からの要請だから」が最も多く、続いて「診療所経営に影響が出そうだから(保険医登録取り消しなど)」「機器設置に対する補助金があったから」といった選択肢が続いた。一方、「未設置」の回答者からは、「制度や対応方法がわからないから」が最も多く、「機器の設置・維持費用がかかるから」「設置の手間がかかるから」といった金銭面や手間を理由とする声が続いた。 マイナ保険証や電子処方箋についての意見を聞いた自由回答では、肯定的な意見としては、「日本はデジタル対応が遅れているが、この機会に取り戻してほしい」(60代、内科)、「時代の流れ。抵抗する方がおかしい」(50代、糖尿病科)など、診療・処方データの集約によって、医療の効率化や医療費削減、新たなビジネス創出につなげるべき、という声が多かった。 一方で、懐疑・反対の意見としては、「高齢者にとって対応が難しい」(50代、小児科/他多数)」、「個人情報漏洩が心配」(40代、内科/他多数)といった、制度からこぼれ落ちる可能性のある患者への配慮を求める声や、セキュリティ面の不安を挙げる声が複数の回答者から挙がった。また、「完全に反対ではないが、急ぎ過ぎ。拙速だ」という意見も多く、政府の急な舵切りに戸惑う様子が見える。さらに、「そもそも制度がわからない」「よく知らない」という回答も多く寄せられており、マイナ保険証対応の最前線に置かれる診療所の医師であっても、制度への関心や理解が深まらない状況が浮き彫りとなった。アンケートの詳細は以下のページで公開中。義務化!?どうするマイナ保険証への対応/会員医師1,000人アンケート

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センチネルリンパ節転移乳がん、ALNDとRNIの必要性についての検討/日本治療学会

 センチネルリンパ節転移陽性乳がんにおいて、腋窩リンパ節郭清(ALND)や領域リンパ節照射(RNI)がどのような症例で必要となるのかについては議論がある。Sentinel Node Navigation Surgery研究会では、センチネルリンパ節転移陽性例において、センチネルリンパ節生検(SNB)単独群とSNB後の腋窩リンパ節郭清(ALND)群を比較する多施設共同前向きコホート研究を実施。井本 滋氏(杏林大学)が、第60回日本治療学会学術集会(10月20~22日)で結果を報告した。 本研究では、cT1-3N0-1M0の女性乳がん患者を対象とし、組織学的または分子生物学的診断で1~3個のセンチネルリンパ節微小転移またはマクロ転移陽性が確認された場合に、医師の裁量でSNB単独またはALNDの追加を決定した。SNB前後の化学療法は可とし、両側および遊離腫瘍細胞(ITC)の症例は除外された。 主要評価項目はSNB群における5年局所再発率、副次評価項目は5年全生存率(OS)。SNB群とALND群を比較するために、傾向スコアマッチング(PSM)が行われた。 主な結果は以下のとおり。・2013~16年に国内27施設から888例が登録された。871例の適格例のうち、SNB群が308例、ALND群が563例だった。・臨床病理学的背景について、センチネルリンパ節マッピングは色素が約9割/アイソトープが約7割、OSNAが2~6%程度使われており、浸潤性乳管がん(IDC)が約9割、術前/術後化学療法はALND群でやや多い傾向がみられた。内分泌療法が両群で約8割と比較的多く実施されていた。・観察期間中央値6.3年でのSNB群における5年局所再発率は2.7%(95%信頼区間[CI]:1.4~5.4%)、5年OSは97.6%(95%CI:94.9~98.8%)だった。・初回治療、転移巣のサイズ、臨床病期、手術の種類、リンパ節転移数について両群間で差がみられ、これらの因子について調整してPSMが行われた。・PSMの結果、SNB群とALND群で209例ずつがマッチングされた。そのうち343例(82%)が初回治療として手術を受けていた。温存術が225例(54%)、全切除が193例(46%)で施行されていた。・センチネルリンパ節転移の数は1個が366例(88%)を占め、2個が48例(11%)、3個が4例(1%)だった。マクロ転移と微小転移はそれぞれ271例(65%)と147例(35%)で診断された。・376例(90%)がLuminalタイプで、領域リンパ節照射(RNI)はSNB群42例(20%)、ALND群13例(6%)で施行されていた。・5年局所再発率はSNB群で2.1%(95%CI:0.8~5.3%)、ALND群で2.0%(95%CI:0.8~5.5%)だった。・5年局所再発率はALNDあり/ALNDなしおよびRNIあり/RNIなしで差はみられなかった。 井本氏は本結果より、センチネルリンパ節1個転移症例での腋窩治療はSNBのみで問題がないであろうとまとめた。

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6ヵ月~5歳児へのモデルナワクチン、第II/III相中間解析/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNA-1273ワクチン(モデルナ製)25μgの2回接種は、生後6ヵ月~5歳の小児において安全であり、免疫原性は18~25歳の若年成人に対して非劣性であることが認められた。米国・エモリー大学医学部のEvan J. Anderson氏らが、6ヵ月~12歳未満の小児を対象に実施している第II/III相試験「KidCOVE試験」の6ヵ月~5歳児のコホートにおける中間解析結果を報告した。同試験の6~12歳未満のコホートにおける中間解析結果は、すでに報告されている。NEJM誌オンライン版2022年10月19日号掲載の報告。25μgの2回接種の有効性を18~25歳群と比較 KidCOVE試験では、米国の79施設およびカナダの8施設において、生後6~23ヵ月、2~5歳、6~12歳未満の3つの年齢コホートに分け参加者を登録し、パート1として非盲検用量漸増試験、パート2で評価者盲検無作為化プラセボ対照試験が実施された。 まずパート1において、2~5歳児224例にmRNA-1273ワクチン25μg(75例)または50μg(149例)、生後6~23ヵ月児150例には全例に25μgを28日間隔で2回接種した。その結果を受けて、パート2における接種用量は、両年齢コホートとも25μgが選択された。 パート2では、2~5歳児4,048例および6~23ヵ月児2,355例を、それぞれmRNA-1273ワクチン群(それぞれ3,040例、1,762例)またはプラセボ群(1,008例、593例)に3対1の割合で無作為に割り付け、25μgを28日間隔で2回接種した。 主要評価項目は、ワクチンの安全性と反応原性、ならびに第III相COVE試験(18歳以上、100μg×2回接種)における18~25歳の若年成人コホートと比較した免疫原性の非劣性の検証、副次評価項目はCOVID-19および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2感染)の発生率であった。推定有効率、6~23ヵ月児50.6%、2~5歳児36.8% パート2における2回目接種後の追跡期間中央値は、2~5歳児コホートで71日、6~23ヵ月児コホートで68日であった。 有害事象の大部分は一過性のGrade1または2であり、新たな安全性の懸念は特定されなかった。データカットオフ日までに死亡、心筋炎・心膜炎・小児多系統炎症性症候群の発生はなかった。 57日時点の中和抗体幾何平均値は、2~5歳児コホートで1,410(95%信頼区間[CI]:1,272~1,563)、6~23ヵ月児コホートで1,781(1,616~1,962)であり、第III相COVE試験の若年成人コホート1,391(1,263~1,531)に対する非劣性を達成した。 COVID-19(米国疾病予防管理センターの定義)の発生は、2~5歳児コホートでワクチン群4.6%(119/2,594例)、プラセボ群7.1%(61/858例)、6~23ヵ月児コホートでそれぞれ3.4%(51/1,511例)、6.6%(34/513例)に認められ、ワクチンの推定有効率は2~5歳児コホートで36.8%(95%CI:12.5~54.0)、生後6~23ヵ月児コホートで50.6%(21.4~68.6)であった。

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侵襲的冠動脈造影とCT、MACEリスクに性差はあるか/BMJ

 侵襲的冠動脈造影(ICA)のために紹介された、安定胸痛を有する閉塞性冠動脈疾患(CAD)の検査前確率が中程度の患者において、初期画像診断に用いるCTはICAと比較して、有害心血管イベントのリスクは同等であることがすでに報告されているが、その有効性に男性と女性で差はないことが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のKlaus F. Kofoed氏ら「DISCHARGE試験」グループが報告した。CTは、CADの検査前確率が低~中程度の患者において、閉塞性CADを除外することが可能であるが、男性より女性で精度が低くなる可能性があり、CADの診断および臨床管理において、CTとICAの臨床転帰に関する有効性の男女差はこれまで不明であった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。無作為化試験で主要評価項目MACE発生を比較 DISCHARGE試験は、欧州16ヵ国の26施設で実施された医師主導、実用的、評価者盲検、無作為化比較試験である。研究グループは、安定胸痛を有し、閉塞性CADの検査前確率が中程度(10~60%)で、ICAの目的で紹介された30歳以上の患者を、性別および施設で層別化してCT群とICA群に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 男女別のサブグループ解析は事前に規定され、主要評価項目は主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)、重要な副次評価項目は拡張MACE(MACE、一過性脳虚血発作、主要な手技関連合併症の複合)および主要な手技関連合併症であった。MACEリスクに男女差なし、CT群の男性で拡張MACE、女性で合併症が少ない 2015年10月3日~2019年4月12日の間に計3,667例(女性2,052例、男性1,615例)が無作為化され、検査を受けた3,561例(女性2,002例、男性1,559例)が修正intention-to-treat解析対象集団となった。 追跡調査期間中央値3.5年において、女性98.9%(2,002例中1,979例)、男性99.0%(1,559例中1,544例)が追跡調査を完了した。 MACE(p=0.29)、拡張MACE(p=0.45)、および主要な手技関連合併症(p=0.11)に関して、女性と男性で統計学的有意差は確認されなかった。また、女性と男性のいずれにおいても、MACEの発生率にCT群とICA群で差はなかった。 一方男性では、拡張MACEの発生率がCT群においてICA群より少なかった(22例[2.8%]vs.41例[5.3%]、ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.31~0.87)。女性では、主要な手技関連合併症のリスクがCT群においてICA群より低かった(3例[0.3%]vs.21例[2.1%]、HR:0.14、95%CI:0.04~0.46)。

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コソッと勉強、サラッとプレゼン【Dr. 中島の 新・徒然草】(449)

四百四十九の段 コソッと勉強、サラッとプレゼン寒いですね。大阪にも冬が来たみたい。かと思ったら異常な暑さの日もたまにあったりします。さて、コロナ第7波も収まってきました。総合診療科では、ついにカンファレンスを再開!といっても、研修医のプレゼンにツッコミを入れる場と化してしまっています。研修医「紹介元の医療機関からはDWI……ビーエスとかいう画像が一緒に来ていまして」上級医「なんじゃ、そりゃ?」研修医「MRIの撮像法なんですが、PETに代わるものらしいです」そう研修医が言った途端、あちこちから質問が殺到!上級医「PETに代わる? それ無茶苦茶ええがな」上級医「ウチにはPETがないし」上級医「原発不明のがん探しに使えるんか?」誰もが思うことは一緒。上級医「ほんで、この症例ではどうなんや、結果は!」研修医「今、放射線科のほうで読影してもらっているところでして」上級医「何をぬるいこと言うとるんや。カンファレンスで出さんかい」上級医たちの心は見事に一致しています。研修医「読影にはちょっと時間が掛かるらしくて」上級医「そんなもん、先生が放射線科に行って直談判したら済む話やろ」研修医「僕なんかを相手にしてくれますかね?」上級医「放射線科のレジデントになろうと考えています、と言うたら最優先にしてくれるぞ」研修医「いや、僕は内科に行くつもりなんですけど」上級医「放射線科を“考えている”と言っといたらエエんや。ウソはついてへんからな」そうこうしているうちに、誰かがスマホで調べました。上級医「これ、ドゥイブスって呼ぶみたい」正式には Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background Suppression の頭文字をとってDWIBS、つまりドゥイブスと呼ぶのだそうです。上級医「がんの種類によって得意不得意があるのか」上級医「PETに勝ったり負けたり、ええ勝負しとるぞ」画期的なモダリティを知った皆が興奮しています。上級医「こういう新しい検査があったら、コソッと勉強しとけよ」研修医「はい」上級医「どのがんが得意で、どれが不得意か、とか」研修医「……」上級医「ウチでもできるんか、とか」研修医「……」上級医「カンファレンスで原理を聞かれたら、さりげなく答えろ。そしたらカッコええぞ」研修医「そ、そうですね」話がどんどんそれていきます。上級医「コソッと勉強して皆の前でサラッと答える、というのを先生の美学にしろ。そういう邪悪な動機のほうが勉強の駆動力になるんや」もう無茶苦茶です。でも「邪悪な駆動力」というのは真実かもしれません。きっと読者の皆様にも心当たりがあることと思います。ということで久々のカンファレンスが盛り上がったというお話でした。やっぱり若者がいると活気付きますね。最後に1句冬の夜 コソ勉やって 差をつける

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ESMO2022 レポート 肺がん

レポーター紹介ESMO2022は2022年9月9日~13日まで現地(フランス、パリ)とオンラインのハイブリッドで開催されました。胸部疾患に関して注目をされていた重要な演題について取り上げてみたいと思います。Osimertinib as adjuvant therapy in patients (pts) with resected EGFR-mutated (EGFRm) stage IB-IIIA non-small cell lung cancer (NSCLC): Updated results from ADAURA(LBA47)国立がんセンター東病院坪井先生のご発表でした。日本でも、2022年8月に本試験の結果に基づいてオシメルチニブ(タグリッソ)はII~III期のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助化学療法の適応を受けました。しかし、DFSに関して公表されたデータは2020年の論文(N Engl J Med 2020;383:1711-1723.)公表後初とのことで注目を集めました。イベントにおいて50%の成熟度に到達したことに伴う結果公表です。フォローアップ期間の中央値はオシメルチニブ群で44.2ヵ月(range 0~67、n=233)、プラセボ群で19.6ヵ月 (range 0~70、n=237)でした。主要評価項目であった、II期/IIIA期を対象としたDFS(Disease free survival, 無病生存期間)中央値はオシメルチニブ群65.8ヵ月(95%CI:54.4~算出不能) vs.プラセボ群21.9ヵ月(95%CI:16.6~27.5),(hazard ratio[HR]:0.23、95% CI:0.18~0.30)でした。DFS、OSのデータを見ると、フォローアップ期間が延びても術後補助化学療法としてのオシメルチニブの有用性はより手堅いデータになっていると感じます。「再発してからオシメルチニブ」では何故追いつかないのか?一つの仮説として、再発時にオシメルチニブ群では「遠隔」転移が少なく、その後の治療も組み立てやすかったのではないかと予想します。さらにイベントが集積されてからOSベネフィットについても議論されるでしょうが、再発予防としては十分に魅力的なデータと感じました。今後、より早期の症例におけるデータ創出などが予定されています。PD-L1 expression and outcomes of pembrolizumab and placebo in completely resected stage IB-IIIA NSCLC: Subgroup analysis of PEARLS/KEYNOTE-091(930MO)周術期のデータをもう一つ。WCLC2022でも取り上げられていましたが、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)を用いた術後補助化学療法の有用性を検討する試験です。PD-L1の発現ごとに詳細なデータが公表されました。既に承認を得ているアテゾリズマブ(テセントリク)ではIMpower010の中でPDL1発現によって治療効果が異なる傾向が示されていましたが、ペムブロリズマブは少し様子が異なるようです。以下の表を見てみましょう。すでに報告されている通り、KEYNOTE-091試験の全体の結果として、ペムブロリズマブはプラセボに比較して無病生存期間を有意に延長しています。主要評価項目の一つである(co-primary end point)TPS>0におけるDFSにおいてはプラセボと比較し統計学的には有用性が証明されませんでした。殺細胞性抗がん剤使用の有無など背景の違いに応じて、化学療法の今後、術後補助化学療法においてもPD-L1の発現をどの抗体で調べるのか、そしてその結果に応じてどう使い分けるのか議論がしばらく続きそうです。今のデータでは、PDL1高発現であれば○○、という使い分けではなく、ドライバーなしの症例では“化学療法使用にフィットするかどうか”が鍵になるような気がします。Sotorasib versus docetaxel for previously treated non-small cell lung cancer with KRAS G12C mutation: CodeBreaK 200 phase III study(LBA10)KRAS G12C阻害剤のソトラシブ(ルマケラス)は、治療歴のあるNSCLC患者に対するドセタキセル治療と比較して、12ヵ月時点での無増悪生存率を2倍にし、進行または死亡のリスクを34%低減しました。追跡期間の中央値は17.7ヵ月で、12ヵ月のPFS率は、ドセタキセル10.1%に対して、ソトラシブは24.8%でした。無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ソトラシブで 5.6ヵ月(95%CI:4.3~7.8)、ドセタキセルで4.5ヵ月(95%CI:3.0~5.7) でした (HR:0.66、95%CI:0.51~0.86、p=0.002)。化学療法と比較して、KRAS G12C 阻害薬によるグレード3以上の治療関連有害作用(TRAE)はソトラシブ群で少ない傾向にありました(33.1% vs.40.4%)。クロスオーバーもあり、OSデータは参考ながらソトラシブ群10.6ヵ月(95%CI,:8.9~14.0)ドセタセル群11.3ヵ月(95% CI:9.0~14.9)(HR:1.01、95%CI:0.77~1.33、p=0.53)でした。日本でもKRAS G12C変異をもつ既治療NSCLに対して承認を得ています。今後ソトラシブの高い忍容性から単剤での使用だけでなく、さまざまな薬剤との併用試験が行われており、結果が待たれます。Mechanism of Action and an Actionable Inflammatory Axis for Air Pollution Induced Non-Small Cell Lung Cancer: Towards Molecular Cancer Prevention.(LBA1)薬剤開発ではなく、予防の話題がLBAで取り上げられておりました。本発表は、TRACERx(NCT01888601)、The PEACE(NCT03004755)、Biomarkers and Dysplastic Respiratory Epithelium (NCT00900419)の3つの研究を統合したもので、40万人以上の症例が解析の対象となりました。大気汚染と肺がんの発症にはいくつかのエビデンスがあると報告されていますが、非喫煙者における肺がんの発症と大気汚染の関連について分子生物学的な解析は十分ではありませんでした。まず研究者らは2.5μmの粒子状物質 (PM2.5 )への暴露が増加すると、肺がんの発症が増加することを突き止めました。次に、247例の肺組織のディープシークエンスを行うことにより、正常肺にもそれぞれ15%と53%の頻度でEGFRとKRASドライバーの突然変異を発見しました。しかし、これらの変異は加齢などに伴って存在するものであり、がん化への影響は少ないようでした。しかし、PM2.5への暴露を受けた細胞はその後がん化が促進され、その機序としてインターロイキン(IL)-1βの関与が予想されました。今回得られた知見は、非喫煙者において正常細胞のEGFR変異などを検知し、IL-1βなどを標的とする治療で予防が可能になるかもしれない、という期待を持たせてくれる内容ですが、まだまだ未知のことも多く、検討の余地があります。低線量CTを用いた早期発見の取り組みと並行し、大気汚染による非喫煙者のがんを予防、治療が出来る時代が来るのかもしれません。Durvalumab (D) ± tremelimumab (T) + chemotherapy (CT) in 1L metastatic (m) NSCLC: Overall survival (OS) update from POSEIDON after median follow-up (mFU) of approximately 4 years (y).(LBA59)POSEIDON試験からのOSの最新の探索的解析によると、1次治療におけるtremelimumabとデュルバルマブおよび化学療法の併用療法は、転移を伴うNSCLC患者にOS延長のベネフィットがあったことが報告されました。長期フォローアップ(中央値46.5ヵ月[範囲0.0~56.5])の結果に基づく報告です。3剤併用療法では、OS中央値が14.0ヵ月(95%CI:11.7~16.1)、化学療法単独では11.7カ月(95%CI:10.5~13.1)となり、死亡リスクを25%低減しました(HR:0.75、95%CI:0.63~0.88)。36ヵ月OS率は、それぞれ25%対13.6%でした。併存する変異状態別のOS は、トレメリムマブとデュルバルマブおよび化学療法による治療が継続的に有利でした。STK11変異を有する患者では、3剤併用により死亡リスクが 38% (HR:0.62、95% CI:0.34~1.12) 減少し、OSの中央値は15.0ヵ月(95%CI:8.2~23.8)でした。化学療法単独で10.7ヵ月(95%CI:6.0~14.9)。3年後のOS率は、それぞれ25.8%対4.5%でした。同様に、KEAP1変異を有する患者では、トリプレット療法により死亡リスクが57%減少し (HR:0.43、95%CI:0.16~1.25)、OS中央値が 13.7ヵ月(95% CI:7.2~26.5)、化学療法単独では8.7ヵ月(95%CI:5.1~評価不能)でした。最後に、KRAS変異を有する患者は、トレメリムマブ+デュルバルマブおよび化学療法により、死亡リスクが45% 減少し(HR:0.55、95%CI:0.36~0.85)、OS中央値は25.7ヵ月(95%CI:9.9~36.7)に対し、化学療法単独では10.4ヵ月(95%CI:7.5~13.6)でした。WCLCでも、3剤併用療法は特に遺伝子変異を有す症例においてベネフィットが大きい可能性を指摘されていました。checkmate9LAやCheckmate227など、抗PDL1抗体+化学療法に抗CTLA4抗体を上乗せすべき対象をどのように目の前で選択するのか?遺伝子検査の結果がその一つの答えになるように思います。問題は、現在の日本では1次治療の前に保険診療でこれらの遺伝子を測定出来ないことでしょう。エビデンスの積み重ねで、免疫チェックポイント阻害薬の使い分けにも遺伝子検査が有用、となる時期が遠くないと感じています。

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オピオイドの嘔気、制吐薬は必須?【非専門医のための緩和ケアTips】第38回

第38回 オピオイドの嘔気、制吐薬は必須?オピオイドの副作用といえば「便秘」と「嘔気」ですね。内服を開始した当初は眠気が強い方もいます。今回は副作用のうち、嘔気について考えていきましょう。今日の質問高齢の肺がん患者さんが通院していて、骨転移の痛みに対して医療用麻薬を使用しています。医療用麻薬は1ヵ月前から内服を始め、痛みは和らいでいるようです。制吐薬を飲み続けているのですが、いつまで続ければいいのでしょうか?「オピオイドを内服開始する時には、必ず制吐薬を処方しましょう!」これは私が緩和ケアの仕事を始めた10年以上前によく言われていたことです。医療用麻薬という名前だけで不安を感じる方がいるのに、飲んでみたら痛みは和らいだけど吐き気がする…。こんなことがあると、「もうこんな怖い薬は飲みたくないです」と言われてしまいます。また吐き気ってつらいのですよね。そういった意味でも、制吐薬は重要な併用薬として見なされていました。しかし近年、この「オピオイド開始の際に予防的に制吐薬を内服する」というプラクティスは見直されつつあります。その背景には、高齢患者が増え、制吐薬による副作用への懸念が高まったことがあります。制吐薬の多くが抗ドパミン作用を持ち、代表的な副作用は錐体外路症状です。錐体外路症状としてはアカシジア(静座不能症)などが有名です。一方、オピオイド服用に伴う嘔気は、便秘と異なり、すべての患者さんに生じるわけではありません。またオピオイドの投与開始後1~2週間で軽減することも知られています。このような嘔気に対し、錐体外路症状の懸念のある制吐薬を全員に投与するのか? という議論が生じてきたのです。今回の質問のように、医師が気付いて「もうこの制吐薬はやめてもいいのでは?」と考えられればよいのですが、気付くと何ヵ月も不要と思われる制吐薬を内服し続けていたといったケースも見聞きします。今回の質問のケースでも、嘔気がないのであれば制吐薬は中止して問題ありません。医療用麻薬を処方する際、すべての患者さんにルーチンで制吐薬を処方するのではなく、「個別に必要性を判断すること」「長期投与にならないように注意すること」が重要になっているのです。では、どんな患者さんには制吐薬を処方すべきなのでしょうか。私のやり方としては、医療用麻薬に対する心配が強いこうした方には「吐き気が出てもクスリが手元にあると安心ですよね」と言葉を添えて処方するケースが多いです。嘔気が生じやすい病態腸閉塞を繰り返している患者さんなどは、「最初の1週間だけ内服しましょう」といって制吐薬を処方することがあります。一方、入院患者さんの場合は、嘔気が出ても迅速に対応できるので、制吐薬の処方は控えるケースが多くなります。「個別性に配慮した緩和ケア」としては、各医師の腕の見せどころかもしれません。皆さんはどうされているでしょうか?今回のTips今回のTipsオピオイドと併用する制吐薬の処方は、適応を考えて個別に判断しましょう。

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第17回 COVID-19による出血性ショック脳症症候群で女児が死亡、いまだ低い小児ワクチン接種率

出血性ショック脳症症候群で亡くなった女児10月14~15日に鹿児島県で開催された日本神経感染症学会で、自治医科大学附属病院小児科の若江 惠三氏が発表した症例報告が衝撃的でした。吐血を繰り返しながら脳症で亡くなった8歳の女児のCOVID-19の報告です。子供に多い予後不良の脳症として、出血性ショック脳症症候群(Hemorrhagic shock and encephalopathy syndrome)が挙げられます。COVID-19に特異的な病態ではありませんが、ウイルス感染症などによって免疫応答が過剰になり、サイトカインストーム、播種性血管内凝固(DIC)、ショック、意識障害など、あっという間に多臓器不全に至る致死的な病態です。とはいえ、急性脳症の中でも極めてまれなタイプで、国内で発症する事例は、年間10例あるかないかのようです。出血性ショック脳症症候群はライ症候群との鑑別が重要になりますが、どちらかといえばライ症候群の好発年齢よりも若く、乳幼児に多いとされています。早期に、血性下痢、吐血、DICなどを生じる点が、ライ症候群と異なります。予後は極めて不良で、生存しても重度の神経学的後遺症を残すとされています1)。成人でもこのような事例はちらほら報告されており2)、脳症とウイルス感染症は、まれながら切っても切れない関係にあるようです。日本神経感染症学会の報告について報道したニュース番組では、親御さんのコメントを発表しています。「ワクチンを接種させなかったことを悔やんでいます。子供のワクチン接種を呼びかけてほしい」と悲痛な思いが紹介されていました。世界的に低い小児のワクチン接種率新型コロナワクチンは努力義務に位置付けられながらも、小児では接種率は低いまま推移しています。10月24日公表時点で、12~19歳の2回接種率は74.9%ですが、5~11歳の2回接種率はわずか19.1%です3)。8割の子供が打っていないということを意味しています。地域差もかなり大きく、私の住んでいる大阪に至っては接種率1桁%です4)(うちの子供は接種しましたが…)。海外においても小児のワクチン接種率は低く、アメリカでは多くの州が接種率30%未満です。小児の新型コロナワクチンについては、「軽症が多いのに、そもそも接種させる必要があるのか」という意見がマジョリティのようです。各種学会5)が提言しているように、「メリット(発症予防や重症化予防など)がデメリット(副反応など)を更に大きく上回る」というのがその理由なのですが、これがうまく国民に啓発できていない現状があります。■初回(1回目・2回目)接種に関するエビデンス6)発症予防効果は中等度の有効性、入院予防効果は接種後2ヵ月間で約80%の有効性が報告されている。米国の大規模データベースによる解析で、安全性に関する懸念はないと報告され、日本での副反応疑い報告の状況からも、ワクチンの接種体制に影響を与えるほどの重大な懸念はないとされている。■3回目接種に関するエビデンス6)時間の経過とともに低下した感染予防効果が3回目接種により回復することが、近接した年齢層(12~15歳)で確認され、日本において薬事承認されている。3回目接種による局所および全身反応について、その頻度は、2回目接種と比較して有意な差がなかったことが海外で報告され、日本の薬事審査でも、そのほとんどが軽症または中等症であり大きな懸念はないとされている。インフルエンザの流行や第8波など、これからいろいろな不安因子が待ち受けています。小児ワクチン施策については、明確にリスクコミュニケーションがうまくいっていないので、後で振り返っていただきたいと思います。参考文献・参考サイト1)Pollack CV Jr, et al. Hemorrhagic shock and encephalopathy syndrome. Ann Emerg Med. 1991 Dec;20(12):1366-1370.2)Gnvir M, et al. Encephalopathy in the Setting of COVID-19: A Case Report. Curr Health Sci J. 2021 Apr-Jun; 47(2): 322-326.3)首相官邸 新型コロナワクチンについて 年齢階級別接種実績4)大阪府 ワクチン接種状況等について5)日本小児科学会 「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」に関するQ&A6)厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A「なぜ小児(5~11歳)の接種に「努力義務」が適用されるようになったのですか。」

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小児アトピー性皮膚炎と神経発達に関連はあるか?

 2歳以前にアトピー性皮膚炎(AD)を発症した子供は、6歳時の発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが報告された。Allergology International誌オンライン版2022年9月1日号掲載の報告。 小児におけるADと認知機能障害との関連を報告した研究はほとんどない。韓国・翰林大学校のJu Hee Kim氏らは、小児におけるADと神経発達障害との関連を評価した。 2008~12年に韓国で生まれた239万5,966例の小児を分析した。すべてのデータは、韓国国民健康保険制度のデータベースより用いられた。ADは、生後24ヵ月までに5つ以上の診断を受けたものと定義した。アウトカムは、6歳時の韓国乳幼児発達スクリーニングテストの粗大運動能力、微細運動能力、認知、言語、社会性、セルフケア領域における神経発達障害の疑いであった。陽性対照アウトカムは、注意欠陥多動性障害(ADHD)とした。喘息とアレルギー性鼻炎を調整した順序ロジスティック回帰を用いて関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象小児のうち、8万9,452例が対照群に、3万557例がAD群に割り付けられ、加重データでは、AD群は対照群に比べ、総スコア(加重調整オッズ比:1.10、95%信頼区間:1.05~1.16)、粗大運動能力(1.14、1.04~1.25)、微細運動能力(1.15、1.06~1.25)で神経発達障害の疑いリスクが高いことが明らかにされた。・ADにステロイドを使用した群や入院した群では、神経発達障害の疑いリスクの上昇が認められた。また、AD群ではADHDと同様に精神遅滞、心理的発達障害、行動・情緒障害との有意な関連性が認められた。 ただし、単一時点(6歳時)の結果だけでは全体的な発達の成果を判断することは困難であること、個々の子供の発達速度はまちまちであり、発達遅滞が疑われる子供であっても、最終的には正常な発達を示すことが多いことなどを、研究グループは述べている。 著者らは「この研究により、2歳以前にADを発症した子供は、6歳時の発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが示された。さらに、ADのある子供は、ADHD、精神遅滞、心理的発達障害、行動・情緒障害などの神経発達障害のリスクが高いことがわかった。これらの関連性の基礎となるメカニズムは依然として不明であるため、さらなる研究が必要である」と結んでいる。

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日本人女性における妊娠中のペットとの暮らしと産後1年までの精神症状~JECS研究

 これまで、ペットとの暮らしとメンタルヘルスとの関連についてさまざまな集団で調査されてきたが、精神症状に対する脆弱性が高まる出産前後の女性を対象とした研究は、あまり行われていなかった。富山大学の松村 健太氏らは、出産前後の女性におけるペットとの暮らしとメンタルヘルスとの関連について、調査を行った。その結果、周産期および産後の母親のメンタルヘルスに対し犬との暮らしは予防的に働き、猫との暮らしはリスク因子になることが示唆された。Social Science & Medicine誌2022年9月号の報告。 日本で進行中の全国的な出生コホート研究であるJECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に参加した母親8万814人を対象に、妊娠第2/3期におけるペットとの暮らし(なし、犬のみ、猫のみ、犬猫両方)に関する情報を収集した。メンタルヘルスの状態は、出産前後の異なる2ポイントにおいてエジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)およびケスラー心理的苦痛尺度(K6)により評価した。ペットと暮らしていない場合を基準とし、ペットと暮らしている母親のメンタルヘルスに対する調整オッズ比(aOR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、一般線形モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・犬との暮らしは、出産1ヵ月後、6ヵ月後の抑うつ症状リスクの低下、12ヵ月後の心理的苦痛の低下との関連が認められた。 ●出産1ヵ月後の抑うつ症状(aOR:0.97、95%CI:0.95~0.98) ●出産6ヵ月後の抑うつ症状(aOR:0.98、95%CI:0.96~0.99) ●出産12ヵ月後の心理的苦痛(aOR:0.96、95%CI:0.92~0.999)・猫との暮らしは、出産6ヵ月後の抑うつ症状リスクの上昇、妊娠第2/3期の心理的苦痛の増加との関連が認められた。 ●出産6ヵ月後の抑うつ症状(aOR:1.04、95%CI:1.02~1.06) ●妊娠第2/3期の心理的苦痛(aOR:1.07、95%CI:1.02~1.12)・犬猫両方と暮らしている場合は、妊娠第2/3期の心理的苦痛の増加が認められたが(aOR:1.12、95%CI:1.03~1.21)、対照群とほぼ同等であった。

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ブースター接種後もコロナ重症化リスクが高い人は? /Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの2回接種のみと比較して、初回ブースター接種により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院/死亡(重症COVID-19)のリスクは低下するが、高齢者、複数の疾患あるいは特定の基礎疾患を有する人は、初回ブースター接種完了後でも、重症COVID-19のリスクは高いという。英国・セント・アンドルーズ大学のUtkarsh Agrawal氏らが、前向きコホート研究の結果を報告した。著者は、「重症化リスクが高い人々には、新規最適化されたワクチンによる2回目のブースター接種を優先的に行うとともに、COVID-19治療薬を用いるべきである」としている。Lancet誌2022年10月15日号掲載の報告。英国の約3千万人のデータを解析 研究グループは、イングランド、北アイルランド、スコットランドおよびウェールズでそれぞれTrusted Research Environment(TRE)に保存されている医療データセットを用い、前向きコホート研究を実施した。これらのデータセットには、個人の臨床的・人口統計学的特性、ワクチン接種の有無と種類、RT-PCR検査によるSARS-CoV-2感染歴、重症COVID-19に関する情報が含まれている。コホートは、2020年12月8日~2022年2月28日の間に、BNT162b2(ファイザー製)またはChAdOx1 nCoV-19(アストラゼネカ製)ワクチンのみの2回接種を完了、あるいはその後BNT162b2またはmRNA-1273(モデルナ製)ワクチンのブースター接種を受けた、18歳以上の成人で構成された。 主要評価項目は、2回目接種またはブースター接種14日以上経過後の重症COVID-19(COVID-19関連入院またはCOVID-19関連死)とした。年齢、性別、社会経済的貧困状態、居住地、BMI、SARS-CoV-2感染歴等で調整されたポアソン回帰モデルを用い、人口統計学的および臨床的因子と重症COVID-19との関連について、ワクチン接種後の時間に関して調整した率比(aRR)および95%信頼区間(CI)を算出。4つの各TREで解析を行った後、固定効果メタ解析を用いて推定値をプールし評価した。 2020年12月8日~2022年2月28日の間に、1,620万8,600人が2回接種を完了し、さらに1,383万6,390人がブースター接種を受けた。これらのうち、SARS-CoV-2オミクロン株(B.1.1.529)が優勢であった2021年12月20日~2022年2月28日の期間に発生した重症COVID-19に限定して解析した。ブースター接種後も高齢者、併存疾患5つ以上、免疫抑制状態、慢性腎臓病は高リスク 重症COVID-19は2回接種群で5万9,510例(0.4%、1,000人年当たり8.8件)、ブースター接種群で2万6,100例(0.2%、7.6件)に認められ、ブースター接種により重症COVID-19のリスクは減少した。 高齢者(80歳以上vs.18~49歳のaRR:3.60[95%CI:3.45~3.75])、併存疾患数が多い人(併存疾患5つ以上vs.なしのaRR:9.51[95%CI:9.07~9.97])、男性(男性vs.女性のaRR:1.23[95%CI:1.20~1.26])で重症COVID-19のリスクが増加した。また、特定の基礎疾患を有する人も重症COVID-19のリスクが高く、とくに免疫抑制剤の投与を受けている人(ありvs.なしのaRR:5.80[95%CI:5.53~6.09])、慢性腎臓病(ステージ5 vs.なしのaRR:3.71[95%CI:2.90~4.74])で高リスクであった。 一方、SARS-CoV-2感染歴は重症COVID-19のリスク低下と関連していた(ブースター接種の9ヵ月以上前の感染vs.感染歴なしのaRR:0.41[95%CI:0.29~0.58])。

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妊娠高血圧症候群、出生児は全死因死亡リスクが26%高い/BMJ

 妊娠高血圧症候群(HDP)、とくに子癇および重症妊娠高血圧腎症の母親から生まれた児は、最長41年間(中央値19.4年)の追跡期間における全死亡、ならびに消化器疾患、周産期に起因する疾患、内分泌・栄養・代謝疾患および心血管疾患による原因別死亡のリスクが高いことが、中国・復旦大学のChen Huang氏らによるデンマークの国民健康登録を用いたコホート研究の結果、示された。HDPは、母体および胎児の発病や死亡の主な原因の1つであるが、母親のHDPが児の出生から青年期以降の長期にわたる死亡に及ぼす影響については明らかになっていなかった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。1978~2018年の出生児を対象に解析 研究グループは、デンマークの出生登録(Danish Medical Birth Register)、患者登録(Danish National Patient Register)、死亡登録(Danish Register of Causes of Death)のデータを用い、コホート研究を実施した。 対象は1978~2018年にデンマークで出生した児で、出生日から死亡日、移住日、または2018年12月31日のいずれか早い日まで追跡した。 主要評価項目は死亡登録で確認された全死因死亡、副次評価項目は特定の死因による死亡である。Cox回帰分析を用い、児の性別、単胎出産、経産回数、児の誕生年、母親の年齢、妊娠中の喫煙、居住地、出身国、妊娠前の教育、出産時の所得、妊娠前のBMI、糖尿病歴(有、無)、児の出生前の親の心血管疾患歴などの共変量で調整し、母親のHDPへの曝露と死亡との関連について解析するとともに、その関連が妊娠高血圧腎症の診断時期や重症度、母親の糖尿病歴、母親の教育によって異なるかどうかについても検討した。HDPの母親から生まれた児は全死因死亡リスクが26%高い 解析対象児は243万7,718例で、このうち母親がHDPであったのは10万2,095例(4.2%)で、内訳は6万7,683例が妊娠高血圧腎症、679例が子癇、3万3,733例が高血圧であった。 最長41年間(中央値19.4年、四分位範囲:9.7~28.7)の追跡期間において、母親が妊娠高血圧腎症であった児781例(10万人年当たり58.94)、子癇であった児17例(133.73)、高血圧であった児223例(44.38)、HDPではなかった児1万9,119例(41.99)が死亡した。 全死因死亡の累積発生率は、母親がHDPであった児(2.06%、95%信頼区間[CI]:1.82~2.34)がHDPではなかった児(1.69%、1.65~1.73)より高く、群間差は0.37%(95%CI:0.11~0.64)で、母親のHDPの人口寄与割合は1.09%(95%CI:0.77~1.41)と推定された。全死因死亡リスクは母親がHDPであった児で26%高く(ハザード比[HR]:1.26、95%CI:1.18~1.34)、母親が妊娠高血圧腎症、子癇、高血圧でHRはそれぞれ1.29(95%CI:1.20~1.38)、2.88(1.79~4.63)、および1.12(0.98~1.28)であった。 母親がHDPであった児の原因別死亡のリスクは、消化器疾患(HR:2.09、95%CI:1.27~3.43)および周産期に起因する疾患(2.04、1.81~2.30)で2倍以上に達し、次いで内分泌・栄養・代謝疾患(1.56、1.08~2.27)、心疾患(1.52、1.08~2.13)でそれぞれ56%、52%増加した。 また、全死因死亡のリスク増加は、早期発症かつ重症の妊娠高血圧腎症(HR:6.06、95%CI:5.35~6.86)、HDPと糖尿病歴(1.57、1.16~2.14)、HDPと教育レベルの低さ(1.49、1.34~1.66)を有する母親の児でより顕著であった。

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論文検索で困惑…医療略語が複数存在する疾患【知って得する!?医療略語】第22回

第22回 論文検索で困惑…医療略語が複数存在する疾患ITPの和訳がよく分かりません。教えてください。ITPには現在「特発性血小板減少性紫斑病」「免疫性血小板減少性紫斑病」「免疫性血小板減少症」の3つの和訳が存在するようです。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】    ITP【日本語/英字】特発性血小板減少性紫斑病/idiopathic thrombocytopenic purpura免疫性血小板減少性紫斑病/immune thrombocytopenic purpura免疫性血小板減少症/immune thrombocytopenia【分野】    血液【診療科】   血液内科・小児科【関連】    ―実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。筆者が学生の頃、血小板減少疾患であるITPは、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura)と覚えました。しかし、近年ITPが「免疫性血小板減少性紫斑病:immune thrombocytopenic purpura」と訳されているのを見かけるようになりました。医師国家試験関連の参考書を参照しても、ITPは「免疫性血小板減少性紫斑病」で記載されています。ITPの和訳は変更されたのでしょうか。調べてみると、成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019改訂版1)が存在します。また難病情報センターの登録難病の病名2)も特発性血小板減少性紫斑病となっています。一方、小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン2022年版というものも存在し、小児慢性特定疾病情報センターのサイトを見ると、免疫性血小板減少性紫斑病が告示病名3)となっています。また同サイトによれば、ITPは血小板減少があっても必ずしも紫斑を伴わないため「紫斑病」は除き、免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia: ITP)と表記するとの記載があります。しかし、それぞれの資料で疾患概要を調べてみると、特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症は、同一の疾患です。ちなみに厚生労働省保険局が運営する傷病名マスター4)には、「特発性血小板減少性紫斑病」は存在しますが、「免疫性血小板減少性紫斑病」は登録されていません。ITPと同じように、同一疾患(病態)に複数の病名が存在して困惑するのが血球貪食症候群(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HPS)、血球貪食性リンパ組織球症 (hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)です5)。医学的知見の集積で、より適切な病名に変更されていくことに異義はありません。しかし、同一の疾患や病態に複数の病名が併存することは、少なからず混乱を生じます。まず、それぞれの病名で一見すると別疾患のように誤解を生じます。また、学会発表や論文作成をする時にどちらの用語を用いれば良いか迷いますし、症例集積などの臨床研究や文献検索においても支障を来すと考えられます。昨今注目される医療データ活用の観点でも、同一疾患に複数の病名が存在することは、医療データの活用を阻害しかねません。この問題は日本に医療用語の整備、統一病名変更を告知する組織がないことが原因だと思います。学会の垣根を越えて、用語の統一が図られることを切に願います。1)成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド 2019改訂版2)難病情報センター:特発性血小板減少性紫斑病(指定難病63)3)小児慢性特定疾病情報センター:免疫性血小板減少性紫斑病4)厚生労働省保険局:診療報酬情報提供サービス5)熊倉 俊一. 血栓止血誌. 2008;19:210-215.

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紹介状、多くの医師が最もイライラしている事は…【紹介状の傾向と対策】第2回

<あるある傾向>手書きで読めない紹介状英字略語が多くて読めない紹介状<対策>紹介状はできるだけパソコンで作成略語の多用は避ける多忙な臨床業務の中で紹介状(診療情報提供書)の作成は負担が大きい業務の1つです。しかし、紹介状に不備があると、依頼先(紹介先)の医師やスタッフに迷惑をかけるだけではなく、患者の不利益やトラブルにつながりかねません。このため、できる限り依頼先が困らない紹介状の作成を心がけたいものです。紹介状は依頼先の施設の種類や紹介目的によって記載内容に若干の違いがありますが、どの紹介状にも同じように留意したい点もあります。以下に紹介状全般に共通する留意点を列挙します。【紹介状全般に共通する留意点】(1)相手の読みやすさが基本(2)冒頭に紹介する目的を明示する(3)プロブレムと既往歴は漏れなく記載(4)入院経過は過不足なく、かつ簡潔に記載(5)診断根拠・診断経緯は適宜詳述(6)処方薬は継続の要否、中止の可否を明記(7)検査データ、画像データもきちんと引き継ぐ今回は上記のうち(1)の「相手の読みやすさが基本」について解説します。開業医の3割は手書きしている!?ケアネットが2021年12月に実施した紹介状についてのアンケートでは、勤務医の不満の第1位は「手書きで読めない紹介状」でした。電子カルテの普及に伴い、手書きの紹介状は減少傾向にありますが、現状は今でも手書きの紹介状に遭遇する機会は多々あります。手書きで記載された紹介状はどうしても文字に個人の癖が出てしまい、その文字を第三者が読めないこともあります。結果、手書きの紹介状で病名や処方情報など重要度の高い情報が読めない時に、読み手は強烈なストレスを感じます。この文字の意味は何だろうと類推しているだけで時間をロスします。また、紹介状を記載する立場でも、パソコンで記載したほうが手書きの紹介状作成より修正が容易です。施設によっては電子カルテが未導入であるために対応が難しいかもしれませんが、パソコンで記載された紹介状が互いのストレス軽減につながることを考えると、パソコンやワープロで代用することが望まれます。さらに、読みやすさの観点でもう1つ留意したいのは、英字略語や英語表記の多用です。自身が当たり前に使用している略語も、紹介先では馴染みのない略語の場合もあります。普及率の高い略語以外は使用せず、日本語表記とするのが親切です。また、紹介状を読むのは医師だけではなく、看護師などの医療者や病診連携室をはじめとする事務系職員のこともあります。自身が記載した紹介状が多職種に読まれる可能性があることも踏まえ、普及率の低い英字略語は避けたほうがいいでしょう。紹介状は正確な情報を伝えることが出来てはじめて、その役割を果たします。その観点からも、常に相手を思いやり、読み手がストレスなく情報収集できるよう配慮して、より「読みやすい紹介状」の作成を目指しましょう。

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10月26日 弾性ストッキングの日【今日は何の日?】

【10月26日 弾性ストッキングの日】〔由来〕1848年10月26日にウィリアム・ブラウン氏が「弾性ストッキング」の特許をイギリスで取得したことにちなみ、「日本静脈学会 弾性ストッキング・コンダクター養成委員会」が弾性ストッキングを広く一般にPRするために制定。関連コンテンツ浮腫の見分け方、発症形式と部位を押さえよう!【Dr.山中の攻める!問診3step】「災害としてのCOVID-19と血栓症Webセミナー」ホームページで公開中/日本静脈学会浮腫による蜂窩織炎の再発予防、圧迫療法は有効か/NEJM新・夜間頻尿診療ガイドラインで何が変わるか/日本排尿機能学会静脈瘤治療、5年後のQOLと費用対効果を比較/NEJM

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第132回 健康保険証のマイナンバーカードへの一体化が正式決定、「懸念」発言続く日医は「医療情報プラットフォーム」が怖い?

現行の健康保険証を2024年秋に廃止こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末の土曜日、日本シリーズの第1戦を神宮球場で観戦してきました。今年は投手層が厚いオリックス・バッファローズが優位だろうと踏んでいたのですが、初戦は東京ヤクルトスワローズの老練、小川 泰弘投手がオリックスの山本 由伸投手に投げ勝つ展開。終盤では村上 宗隆選手のホームランも飛び出して、ヤクルトの強さを印象付ける試合となりました。第2戦も、オリックス優位の展開で進むも、土壇場でヤクルトが追い付き結局12回引き分けに。今年の日本シリーズも最後までもつれそうな予感がします。それにしても連日4〜5時間もかかっている試合時間は、観る側も疲弊します。野球ファンを減らさないためにも、試合時間はいろいろな意味で要検討項目だと感じました。さて、今回は再びマイナンバーカード保険証について書いてみたいと思います。政府は10月13日、現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」に切り替える方針を正式に発表しました。ほぼほぼ既定路線だったスケジュールとカード取得の“義務化”が正式決定したわけですが、その直後から、カードの手続きができない高齢者はどうする、情報漏えいは大丈夫か、保険証読み取り装置(カードリーダー)が間に合わない……、など医療界のみならず各方面から“反対”や“懸念”の声が沸き起こっています。日頃DX、DXと喧伝するマスコミですら、マイナ保険証に否定的な報道をするところも出てくる始末です。マイナカード申請枚数は全国民の56.2%岸田 文雄総理大臣は13日、河野 太郎デジタル大臣や加藤 勝信厚生労働大臣、寺田 稔総務大臣とマイナンバーカードについて協議。その後、河野デジタル大臣が記者会見を開き「デジタル社会を新しく作っていくための、マイナンバーカードはいわばパスポートのような役割を果たす」と述べ、2024年の秋に現在使われている健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一体化した形に切り替えると発表しました。廃止の時期が来てもマイナンバーカードを取得していない人などに対しては、取得の働きかけを進めていくと同時に、何らかの対応を検討するとしました。マイナンバーカードについて政府は、来年3月末までにほぼすべての国民に行き渡ることを目標としています。ただ、10月11日時点の申請枚数は、全国民の56.2%に留まっており、普及率を一層高めていく方針とのことです。河野デジタル大臣の記者会見の後、加藤厚労大臣も会見を開き、「システム改修などの対応に必要な予算は経済対策に盛り込んでいく。岸田総理大臣からは国民や医療関係者から理解が得られるよう丁寧に取り組んでいく必要があると指示があった。医療関係者や関係省庁などと連携して取り組みを進めていきたい」と述べました。切り替えまでにマイナンバーカードを取得できなかった人への対応については、「保険料を納めている方々は保険診療を受ける当然の権利を持っている。いろいろな事情で手元にカードを持っていない人が必要な保険診療を受ける際に、どういう手続きをしていくのか、今後しっかりと検討していく」と述べたとのことです。医療関係団体が全面協力する姿勢を示していたことは“とても不思議”マイナンバーカード保険証については、本連載でも、「第124回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(前編)未対応は最悪保険医取り消しも」と、「第125回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(後編)かかりつけ医制度の議論を目くらましにDX推進?」で詳しく書きました。連載では、厚生労働省と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)が合同で開催した「オンライン資格確認等システムに関するWEB説明会」の内容を紹介し、マイナ保険証のシステムは将来的に、レセプト・特定健診等情報の共有に加えて、予防接種、電子処方箋情報、電子カルテ等の医療情報についても共有・交換できるようになり、「全国医療情報プラットフォーム」の構築につながる、と書きました。このプラットフォームが稼働すれば、患者の受療行動や、医療機関で提供された治療や投薬の情報が丸裸になります。そうなると、それらのデータを基に、究極的に効率化された(ムダを省いた)医療提供の仕組みが国によってデザインされ、医療機関にも求められるようになるでしょう。さらには、重複受診、重複投与、ムダな薬剤投与、的外れの治療などが他医にもバレてしまいます。そう考えると、日本医師会など、医療関係団体が概ね協力する姿勢を示していることが“とても不思議”であると書きました。日本医師会はこれまで、かかりつけ医制度やリフィル処方など、効率的な医療提供体制構築や医療費削減に資するような政策には頑なに反対してきたからです。というわけで、125回では、「かかりつけ医制度の議論などを目くらましにして、医療DXの推進を一気に進めようとしているとしたら、岸田首相や財務省もなかなかの策士と言える」、「加藤厚労相は、親日医の姿勢を見せつつ、マイナ保険証を突破口として医療DXを強力に推進するために岸田首相から医療界に送り込まれた“刺客”という見方もできるかもしれない」と、少々うがった見方をしたのですが、流石に日本医師会もここに来て、「これはまずいかも」と気がついたのか、10月13日前後から、マイナ保険証を牽制するような発言が目立って来ました。日本医師会の松本吉郎会長が「懸念」発言各紙報道等によれば、日本医師会の松本 吉郎会長は、「保険証廃止、マイナ保険証に一本化」が正式決定する前日、10月12日に開かれた定例会見で、「健康保険証の廃止を決定するのであれば、まずは国民に理解をしていただく、その時点(2024年秋)で、マイナンバーカードを取得していない人がいるのであれば、その対応が、非常に大きな問題だ。医療現場でも、負荷がかかったり、混乱が生じたりする可能性もある。それを含めて、しっかりと手当てをして頂きたい」などと発言しました。さらに1週間後の10月19日の定例記者会見で松本会長は、「反対はしていないが、カードがまだあまり普及していない状況を考えると、2年後の原則廃止は可能かどうか、非常に懸念をしている。保険証の廃止によって、医療機関に適切な時期に適切な状態で受診できないことがもし起こるとすると、国民は非常に困る。医療現場の混乱も招く」と話し、政府による国民への説明や、関係者との議論の必要性を訴えたとのことです。また、オンライン資格確認が療養担当規則で2023年度から原則義務化されることについても、各地域の医療機関や医師会から様々な懸念が寄せられているとして、「原則義務化の例外対象の再検討を厚労省に求めている」とも話しました。「全国医療情報プラットフォーム」の“恐ろしさ”8月に開かれた厚労省と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)が合同で開催した「オンライン資格確認等システムに関するWEB説明会」説明会では、三師会の担当理事たちは「早く導入しましょう。役立ちます」と訴えていました。なのにこの腰砕け振りはなんでしょう。国が構築しようとしている「全国医療情報プラットフォーム」の“恐ろしさ”が今になってやっとわかってきたということでしょうか。ちなみに、「マイナ保険証に一本化」が正式決定する前日の12日、政府は首相官邸で医療分野のデジタル化の推進をめざす「医療DX推進本部」(本部長・岸田首相)の初会合を開いています。「全国医療情報プラットフォーム」の創設、電子カルテの表記を統一して正確な情報共有につなげる「電子カルテ情報の標準化」、診療報酬の算定にかかる計算様式を共通化する「診療報酬改定DX」の3つを重点項目と定め、これらを省庁横断で進めるよう岸田首相は関係閣僚に指示したとのことです。2023年春にも具体的な工程表がまとまる予定です。ここで一気に進めないと医療・介護の効率化は永遠に進まない世の中こぞってDX、DXと言う割に、まったく進んでいない日本のDX。そんな中で行政面ではマイナンバーカードの普及の遅れが、DX推進を妨げていると指摘されてきました。カードを義務化し、保険証をマイナ保険証に一本化する背景には、マイナンバーカードをとにかく普及させたいという国の思惑があります。実は、今年6月に示した経済財政運営の指針「骨太の方針」には、「保険証の原則廃止を目指す」と書かれていました。例年「骨太の方針」には大胆な改革案が書かれるのが常ですが、そこに書かれていた「原則」の文字を敢えてなくし、期限を2024年秋と明示、事実上のカード義務化を決定した点に政府の本気度が見て取れます。医療界も含め、反対派は多いですが、流石にここで一気に進めないと、日本のDX、そして医療・介護の本当の効率化は永遠に進まない予感もします。マイナ保険証のカードリーダーなどインフラ整備の問題や、現行の保険証の取り扱い、高齢者にどうマイナンバーカードを取得させマイナ保険証に移行させるか、高齢医師の医療機関がマイナ保険証に対応できるか、など課題は多いと思いますが、新しい制度には、課題があるのが当たり前です。岸田首相がまたまた世の中の声を聞き過ぎて、マイナ保険証の普及・定着が腰砕けにならないことを願うばかりです。

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毎日の抗原検査vs.自主隔離、感染を広げないのは?

 迅速抗原検査キットを使用した毎日の陰性確認は、新型コロナウイルス感染症拡大を最小限に抑えるため、自主隔離の代替手段となりうるのか? 英国・健康安全保障局のNicola K. Love氏らは、COVID-19接触者追跡システムで特定された成人接触者を対象とした無作為化非劣性比較試験を実施。Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2022年10月10日号に結果を報告した。 英国では本試験期間中(2021年4~7月)、COVID-19感染者と接触した人には10日間の自主隔離が求められていた。接触者追跡システムで特定された成人接触者のうち同意が得られた参加者は、自主隔離群(1日目のPCR検査、10日間の隔離)または毎日の抗原検査(DCT)群(1日目および最終日のPCR検査、7日間連続のラテラルフローデバイス[LFD]による抗原検査、LFDで陰性の場合は24時間隔離免除)に無作為に割り付けられた。 参加者は前向きに追跡調査され、試験期間中にPCR検査で陽性となった参加者と、彼らとの接触から生じた3次感染者(つまり2次接触者の中の感染者)について、定期的に収集したNHS Test and Traceの接触追跡データから各介入による効果を検証した。 主要評価項目は、各グループにおいて2次接触者が3次感染者となる割合である発病率とされた。発病率はHuber-White標準誤差を使用し、ベルヌーイ回帰モデルにより算出され、家庭での曝露、ワクチン接種、および在宅勤務の状況によって調整された。 主な結果は以下のとおり。・2021年4月29日~7月28日に、5万4,923人の適格者が登録され、最終的な解析には自主隔離群2万3,500人(47.4%)、DCT群2万6,123人(52.6%)が含まれた。・全体で4,694人の参加者がPCR検査でSARS-CoV-2陽性であり(2次感染者)、自主隔離群で2,364人(10.1%)、DCT群で2,330人(8.9%)だった。・2次接触者における調整後発病率(3次感染者)は、自主隔離群7.5%、DCT群6.3%(差は-1.2%[95%信頼区間:-2.3~-0.2])で、あらかじめ設定された非劣性マージンの1.9%より有意に低かった。 著者らは、抗原検査を7日間毎日実施し陰性の場合は24時間隔離を免除するこの方法は、10日間の自主隔離に劣っていないと考えられるとし、自主隔離による悪影響を最小限に抑えながら、感染拡大のリスクを軽減できることが示されたとまとめている。

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円板状エリテマトーデスから重症SLE進行へのリスク因子は?

 フランス・ソルボンヌ大学のLisa Fredeau氏らは、円板状エリテマトーデス(DLE)が重症の全身性エリテマトーデス(SLE)へと進行するリスク因子を特定する、初となる検討を行った。164例を対象としたレジストリベースの後ろ向きコホート研究の結果、円板状エリテマトーデス診断時年齢が25歳未満、phototype V-VI、抗核抗体(ANA)抗体価≧1:320が、重症SLE発症のリスク因子であることを明らかにした。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2022年9月22日号掲載の報告。円板状エリテマトーデス患者で重症SLE発症30例と非発症134例について解析 研究グループは、孤立性円板状エリテマトーデスを有する患者または軽度の生物学的異常を有するSLE関連患者について、重症SLE(入院と特定の治療が必要と定義)への進行のリスク因子を特定し、予測スコアを生成するため、レジストリベースのコホート研究を行った。 文献から特定、および関連変数を特定するために後退的選択法によって選出されたリスク因子を用いて多変量解析を実施。ポイント数はオッズ比に比例して重み付けがされた。 円板状エリテマトーデスが重症の全身性エリテマトーデスへと進行するリスク因子を検討した主な結果は以下のとおり。・解析には、重症SLEを発症した円板状エリテマトーデス患者30例と、非発症患者134例を包含した。・多変量解析では、12の選択変数のうち、円板状エリテマトーデス診断時年齢が25歳未満(オッズ比[OR]:2.8、95%信頼区間[CI]1.1~7.0、1ポイント)、phototype V-VI(OR:2.7、95%CI:1.1~7.0、1ポイント)、ANA抗体価≧1:320(OR:15、95%CI:3.3~67.3、5ポイント)が、スコア生成変数として選択された。・ベースラインでスコア0であった円板状エリテマトーデス患者54例のうち、SLEへ進行した患者はいなかったが、スコア6以上の患者は約40%の重症リスク因子と関連していた。

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統合失調症や双極性障害患者における強迫症状の有症率

 強迫症状(OCS)は、精神疾患患者において高頻度でみられる症状であるにもかかわらず、認識および治療が不十分である。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDeborah Ahn Robins氏らは、統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害の患者におけるOCSおよび強迫症(OCD)の有病率を推定し、OCSの要因となる臨床的特徴を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、OCSおよびOCDは、精神疾患患者で頻繁に認められており、より重篤な精神医学的な臨床的特徴と関連している可能性が示唆された。また、著者らは、自動化された情報抽出ツールを用いることで、精神疾患に合併するOCS/OCDの認識や治療を改善できる可能性があることを報告した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年9月28日号の報告。 データは、South London and Maudsley NHS Foundation Trust Biomedical Research Centreのレジストリデータより収集した。対象は、2007~15年に統合失調症(ICD F20.x)、統合失調感情障害(ICD F25.x)、双極性障害(ICD F31.x)と診断された患者。OCSおよびOCDは、構造化データおよびフリーテキストより自然言語処理ソフトウェアを用いて特定した。臨床的特徴は、Health of the Nation Outcome Scalesを用いて収集した。臨床的特徴とOCS/OCDとの関連の分析には、交絡因子を考慮したロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、2万2,551例。・OCSが認められた患者は5,179例(24.0%)であり、OCDを合併していた患者は2,574例(11.9%)であった。・OCS/OCDは、以下の症状増加との関連が認められた。 ●攻撃性(OR:1.18、95%CI:1.10~1.26) ●認知機能障害(OR:1.21、95%CI:1.13~1.30) ●幻覚・妄想(OR:1.11、95%CI:1.04~1.20) ●身体的問題(OR:1.17、95%CI:1.09~1.26)

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内視鏡での大腸がん検診、がんリスクを減らせるか/NEJM

 大腸がんのスクリーニングとして大腸内視鏡検査を勧められた集団は、スクリーニングを受けなかった集団と比較して、10年後の大腸がんによる死亡リスクには大きな差はなかったが、大腸がんの発症リスクが18%低下したことが、ノルウェー・オスロ大学のMichael Bretthauer氏らが実施した「NordICC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年10月9日号で報告された。4ヵ国の実践的な無作為化試験 NordICC試験は、大腸内視鏡によるスクリーニング検査が大腸がんのリスクを改善するかの検証を目的とする実践的な多施設共同無作為化試験であり、2009年6月~2014年6月の期間に、4ヵ国(ポーランド、ノルウェー、スウェーデン、オランダ)で参加者が募集された(ノルウェー研究評議会[RCN]などの助成を受けた)。この報告では、オランダを除く3ヵ国のデータの解析結果が示された。 対象は、4ヵ国の1つに居住する年齢55~64歳の健康な男女で、過去に大腸がんの診断およびスクリーニング検査を受けたことがない集団であった。被験者は、大腸内視鏡によるスクリーニング検査の勧奨を受ける群(勧奨群)、または勧奨およびスクリーニングを受けない群(通常治療群)に、1対2の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは大腸がんおよび大腸がんによる死亡のリスクとされ、副次エンドポイントは全死因死亡であった。1人の大腸がん予防の勧奨必要数は455人 8万4,585人(年齢中央値59歳、男性50.1%)が解析に含まれた。勧奨群に2万8,220人、通常治療群に5万6,365人が割り付けられた。勧奨群のうち実際にスクリーニングを受けたのは1万1,843人(42.0%)であった。追跡期間中央値は10.0年。 ポリープ切除後の大出血が15例(0.13%)で発現した。大腸内視鏡後30日以内に、腸管穿孔およびスクリーニング関連死はみられなかった。 大腸がんと診断されたのは、勧奨群が259人、通常治療群は622人であった。intention-to-screen解析では、10年の時点での大腸がんのリスクは、勧奨群が0.98%、通常治療群は1.20%であり、勧奨群で18%のリスク低下が認められた(率比:0.82、95%信頼区間[CI]:0.70~0.93)。 また、1人の大腸がんの予防に要するスクリーニングの勧奨必要数(number needed to invite)は455人(95%CI:270~1,429)だった。 10年時までの大腸がんによる死亡リスクは、勧奨群が0.28%(72人)、通常治療群は0.31%(157人)であった(リスク比:0.90、95%CI:0.64~1.16)。全死因死亡のリスクは、それぞれ11.03%および11.04%だった(リスク比:0.99、95%CI:0.96~1.04)。 著者は、「今回の結果は、大腸がんの予防のための大腸内視鏡によるスクリーニングの有効性を定量的に示すものであり、これにより、意思決定を行う者はがんのスクリーニングや保健サービスのための医療資源の優先順位を適切に決めることが可能になると考えられる」とし、「大腸内視鏡によるスクリーニングの効果を完全に把握するには、より長期の追跡調査が必要だろう」と指摘している。

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