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telisotuzumab vedotinが先駆的医薬品の対象に/アッヴィ

 2023年3月7日、アッヴィは非小細胞肺がん治療薬として同社が開発中の抗体薬物複合体(ADC)telisotuzumab vedotinが、厚生労働省より「先駆的医薬品指定制度」の対象品目に指定されたと発表した。  telisotuzumab vedotinは、がん細胞表面で発現する、細胞表面受容体c-Metを特異的標的とするADCである。c-Metの過剰発現は予後不良だが、その標的治療法は現時点で確立されていない。

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動脈硬化は睡眠が不規則な人ほど発症する可能性が高かった

 睡眠不足や不規則な睡眠というのは心血管疾患や2型糖尿病などの発症に関連しているが、アテローム性動脈硬化との関連性についてはあまり知られていない。そこで、米国・ヴァンダービルト大学のKelsie M. Full氏らは睡眠時間や就寝タイミングとアテローム性動脈硬化との関連性を調査し、45歳以上の場合に睡眠不足や不規則な睡眠であるとアテローム性動脈硬化の発症リスクを高めることを示唆した。Journal of the American Heart Association誌2023年2月21日号掲載の報告。動脈硬化と睡眠時間や睡眠の規則性との関連性を横断的に調査 本研究はコミュニティベースの多民族研究(MESA:Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)で、睡眠時間や睡眠の規則性について、アクティグラフィ※(活動量測定検査)を7日間手首に装着した記録を評価し、無症候性のアテローム性動脈硬化との関連性を横断的に調査した。※腕時計型の加速度センサーで、腕や足首に装着することで活動/休止リズムサイクルを記録するもの。睡眠/覚醒アルゴリズムを記録できる。 本研究では、2010~13年に記録された2,032例(平均年齢±標準偏差[SD]:68.6±9.2歳[範囲:45~84歳]、女性:53.6%)のデータを用いた。評価項目に用いたマーカーは、冠動脈カルシウム、頸動脈プラークの有無、頸動脈内膜-中膜の厚さ、および足首-上腕指数であった。睡眠の規則性は睡眠時間と就寝タイミングで、個々の7日分のSDを定量化した。解析には相対リスク回帰モデルを使用し、有病率と95%信頼区間[CI]を計算した。なお、解析モデルは人口統計、心血管疾患の危険因子、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、睡眠時間、中途覚醒など、睡眠特性に合わせ客観的に評価・調整した。 動脈硬化と睡眠時間や睡眠の規則性との関連性を横断的に調査した主な結果は以下のとおり。・全体として、7日間を通してさまざまな睡眠を取った(たとえば、ある夜は睡眠時間が短く、ある夜は睡眠時間が長かった)参加者は、毎晩ほぼ同じ睡眠時間だった参加者よりも、アテローム性動脈硬化を発症する可能性が高かった。・参加者の約38%では睡眠時間が90分以上変化し、18%では120分以上も変化していた。・睡眠が不規則な人の特徴は、白人以外の人種では「現喫煙者の可能性が高い」「平均年収が低い」「勤務がシフト制もしくは無職の可能性が高い」「BMIが高い」傾向であった。・調整後、より規則的な睡眠時間(SD≦60分)の参加者と比較したところ、睡眠時間の不規則性が大きい(SD>120分)参加者は、冠動脈カルシウム負荷が高く(SD>300、有病率:1.33、95%[CI]:1.03~1.71) 、足首上腕指数が異常値であった(SD<0.9、有病率:1.75、95%[CI]:1.03~2.95)。・より規則的な就寝タイミングの参加者(SD≦30分)と比較したところ、就寝時間が不規則な参加者(SD>90分)は、冠動脈のカルシウム負荷が高い可能性が強かった (有病率:1.39、95%[CI]:1.07~1.82)。・関連性は、心血管疾患の危険因子、平均睡眠時間、閉塞性睡眠時無呼吸、中途覚醒を調整後も持続した。・睡眠の不規則性、とくに睡眠時間の長さのばらつきは、アテローム性動脈硬化のいくつかの無症候性マーカーと関連していた。

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慢性期統合失調症患者の認知機能に対する抗精神病薬、抗コリン薬の影響

 精神疾患の治療には、さまざまな向精神薬が用いられるが、その多くは抗コリン作用を有しており、認知機能を低下させる可能性がある。フランス・Lebanese American UniversityのChadia Haddad氏らは、抗コリン作動性負荷と抗精神病薬の用量に焦点を当て、神経心理学的障害や症状の治療に用いられる薬剤と統合失調症患者の認知機能との関連を評価した。その結果、慢性期統合失調症患者の認知機能は、薬物療法や抗コリン作動性負荷の影響を受ける可能性があることを報告した。BMC Psychiatry誌2023年1月24日号の報告。 2019年7月~2020年3月、Psychiatric Hospital of the Cross-Lebanonで統合失調症と診断された120例の入院患者を対象に、横断的研究を実施した。抗コリン作動性負荷の算出にはAnticholinergic Drug Scale(ADS)を用いた。クロルプロマジン等価換算量はアンドレアセン法を用いて算出し、抗精神病薬の相対用量を評価した。客観的な認知機能の評価には、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・クロルプロマジン等価換算量の低下と有意に関連していた因子は次のとおりであった。 ●BACS総スコアが高い(r=-0.33、p<0.001) ●言語性記憶スコアが高い(r=-0.26、p=0.004) ●ワーキングメモリスコアが高い(r=-0.20、p=0.03) ●運動機能スコアが高い(r=-0.36、p<0.001) ●注意と情報処理速度スコアが高い(r=-0.27、p=0.003)・認知機能の低下と有意に関連していた因子は次のとおりであった。 ●ADSが高い(標準化β[Sβ]=-0.22、p=0.028) ●クロルプロマジン等価換算量が高い(Sβ=-0.30、p=0.001) ●気分安定薬の使用(Sβ=-0.24、p=0.004)・慢性期統合失調症患者の認知機能に対し、薬物療法および抗コリン作動性負荷が影響を及ぼしている可能性が示唆された。・統合失調症患者の認知機能におけるコリン作動性神経伝達および一般的な神経化学的メカニズムを解明するためには、さらなる研究が求められる。

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SLEへのバリシチニブ、SLE-BRAVE-II試験での有効性は?/Lancet

 全身性エリテマトーデス(SLE)の治療において、選択的ヤヌスキナーゼ(JAK)1/2阻害薬バリシチニブはプラセボと比較して、疾患活動性を改善せず、グルココルチコイド漸減の達成や初回の重度フレア発現までの時間の延長をもたらさないことが、米国・ジョンズホプキンズ大学のMichelle Petri氏らが実施した「SLE-BRAVE-II試験」で示された。Lancet誌オンライン版2023年2月24日号掲載の報告。15ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 SLE-BRAVE-II試験は、日本を含む15ヵ国162施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年8月~2020年8月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、スクリーニングの少なくとも24週前に臨床的にSLEと診断された患者が、標準治療に加え、バリシチニブ4mg、同2mg、プラセボを1日1回、52週間、経口投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、52週の時点における、プラセボ群と比較したバリシチニブ4mg群のSLE Responder Index 4(SRI-4)レスポンダーの割合とされた。安全性プロファイルは既知のものと一致 775例が登録され、バリシチニブ4mg群に258例、同2mg群に261例、プラセボ群に256例が割り付けられた。全体の94%が女性で、ベースラインの平均年齢は42.8(SD 12.9)歳であり、平均SLE罹患期間は8.72(SD 7.9)年だった。 52週時のSRI-4レスポンダーの割合は、バリシチニブ4mg群が47%(121/258例)、同2mg群が46%(120/261例)、プラセボ群は46%(116/256例)であった。プラセボ群と比較したバリシチニブ4mg群のSRI-4レスポンダーの割合のオッズ比(OR)は1.07(95%信頼区間[CI]:0.75~1.53)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:1.5、95%CI:-7.1~10.2、p=0.71)。また、プラセボ群と比較したバリシチニブ2mg群のORは1.05(95%CI:0.73~1.50)であった(群間差:0.8、95%CI:-7.9~9.4、p=0.79)。 24週時のSRI-4レスポンダーの割合やグルココルチコイド漸減の達成、初回の重度フレア発現までの時間の延長などの主要な副次エンドポイントでも、プラセボ群に比べてバリシチニブの2つの用量群で改善はみられなかった。 少なくとも1件の有害事象が発現した患者の割合は、バリシチニブ4mg群が78%(200例)、同2mg群が76%(199例)、プラセボ群は77%(198例)であり、多くは軽度または中等度であった。重篤な有害事象は、それぞれ11%(29例)、13%(35例)、9%(22例)で認められた。SLE患者におけるバリシチニブの安全性プロファイルは、既知のものと一致しており、新たな安全性シグナルは観察されなかった。 著者は、「第II相試験および第III相SLE-BRAVE-I試験で示されたバリシチニブの有効性は、本試験では再現されなかったことから、SLEにおける本薬の有効性のエビデンスについては結論が出ていない。事後解析により、本試験の失敗の原因が解明され、今後の臨床試験のデザインに有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

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腎結石再発予防にヒドロクロロチアジドは有効か?/NEJM

 再発リスクの高い腎結石患者において、ヒドロクロロチアジド(1日1回12.5mg、25mg、50mgいずれかの用量)の投与を受けた患者とプラセボの投与を受けた患者との間で、再発率に実質的な違いはみられないことが、スイス・ベルン大学のNasser A. Dhayat氏らの検討で示された。腎結石は、腎臓に影響する最もよくみられる疾患で再発のリスクが高いという特徴がある。腎結石再発にはサイアザイド系利尿薬が広く使用されているが、プラセボと比較した有効性に関するデータは限られており、用量反応データも限定的であった。NEJM誌2023年3月2日号掲載の報告。プラセボ対照無作為化試験で、ヒドロクロロチアジドの用量反応効果を評価 研究グループは、腎結石再発予防に関するヒドロクロロチアジドの用量範囲の評価を目的に、二重盲検無作為化プラセボ対照試験「NOSTONE試験」を行った。再発性カルシウム含有腎結石患者を、ヒドロクロロチアジドを12.5mg、25mgまたは50mgのいずれかの用量で1日1回投与する群とプラセボを1日1回投与する群に無作為に割り付け追跡調査した。 試験の主要目的は、主要エンドポイント(腎結石の症状を有する再発または放射線学的再発)への用量反応効果を調べることであった。放射線学的再発は、画像診断で新たな結石を認めた場合またはベースラインの画像診断で観察された結石の増大と定義した。安全性も評価された。最大用量50mg群でも対プラセボ率比0.92 患者416例が無作為化を受け、中央値2.9年間追跡された。 主要エンドポイントの発生は、プラセボ群60/102例(59%)、ヒドロクロロチアジド12.5mg群62/105例(59%)で、対プラセボ率比は1.33(95%信頼区間[CI]:0.92~1.93)、同25mg群61/108例(56%)、率比1.24(95%CI:0.86~1.79)、同50mg群49/101例(49%)、率比0.92(0.63~1.36)であった。 ヒドロクロロチアジドの用量と、主要エンドポイントのイベント発生との間に関連は認められなかった(p=0.66)。 プラセボの投与を受けた患者よりもヒドロクロロチアジドの投与を受けた患者で、低カリウム血症、痛風、新規発症の糖尿病、皮膚アレルギー、ベースライン値の150%を超える血漿クレアチニン値の報告がより多かった。

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「QOL」という言葉にある医師と患者のギャップ

 3月16日(木)に、「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」シンポジウムがオンラインで開催される。シンポジウムに先立って、本プロジェクトの主任研究員である井出 博生氏と山田 恵子氏が、成果の一端を2週にわたって報告する。第2回は山田氏が、「QOL」という言葉を例に医師と患者の間にある認識のギャップについて解説する。 QOL(Quality of life)。医師のみなさんは、普段から当たり前に使っている言葉の一つだと思います。しかし、真に意味するところは、患者さんに正しく伝わっているでしょうか。 医療情報をわかりやすく発信するプロジェクトでは、AMED研究開発ネットワーク事業(令和3年度主任研究者:井出 博生 東京大学未来ビジョン研究センター特任准教授、令和4年度 主任研究者:山田 恵子 埼玉県立大学保健医療福祉学部准教授)として、2022年3月「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」をWebサイトで公開するなど、医師や研究者が研究成果を世の中に正確に発信していくための研究・支援を行っています。 今回は、その研究のなかで明らかになったQOLという用語に対する一般の人と医療者の受け取り方のギャップについてお話ししたいと思います。 QOLは主に「生活の質」と訳されます。しかし、「人生の質」や「生命の質」とも訳されるように、使われる分野や個人によって意味の捉え方が大きく異なります。 世界保健機関(WHO)では、QOLを「個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準または関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と定義しています。と言われても、何だかわかりにくいですよね。そこで先の手引きでは、「病気や加齢あるいは治療により、それまでは当たり前にできていた、その人らしい生活ができなくなってしまったときに、その人がこれでいいと満足できるような生活の状態のこと」と解説しました。 しかし、研究班でもこの解説が絶対的に正しいものだとは考えていませんでした。 そこで、この解説の妥当性をより掘り下げるために、令和4年度に、手引きを利用した医療関係者対象のワークショップで話し合ってもらいました。 すると、医師から「QOLは患者さんの主観を客観的な指標として点数化する尺度である。医療者がその結果を、治療などに生かせるのがポイントである」という意見が出ました。医師の間でも日常生活では「診療科によって違う医師のQOL」などと「満足度」の意味合いを強く含んで使うこともあると思いますが、医療や医学研究という文脈の中では、QOLは「本来測りにくい患者さんの主観を、可視化して診療に役立てる」ために使うというニュアンスで考えている方が多いようです。 一方、一般の人はどう認識しているのでしょうか。認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの一般の人を対象としたイベントで聞き取りをしてみました。 そのなかでこんなコメントが聞かれました。 「高齢の家族が手術を受けるかどうかを決めるとき、医師とのやり取りの中でたくさん出てきた。ただ、医師によって使い方が違うように感じた」 「QOLという言葉はあまりなじみがない。『元の生活に戻れるように』といった言い換えがされているのではないか」 「そもそも3文字の略英語が多く、混乱する。途中で何のことを指しているのかよくわからなくなる」 医療者の感覚で言うと、「QOLを考えて治療選択をする」と言うとき、必ずしも患者さんが「元の生活に戻れる」ということを意味していません。しかし、患者さんが自分で満足できる生活の質を具体的に思い浮かべようとすると、イメージできるのが「元の生活になる」、というのは容易に想像ができます。 医療者はできるだけ患者さんの主観を大切にしようとしてQOLという言葉を使って説明します。一方、患者さんは自分の想像できる範囲でQOLを思い浮かべます。しかし、お互いの考えるQOLが異なるために、「あれ? 言っていたことが違う……元の生活に戻るために手術したのに……」「あんなに一生懸命説明したのに理解してもらえない」という誤解が生じているのではないでしょうか。 このように、お互いまったく悪気はなく、自分にできる範囲で真摯に治療に向き合っているのに、用語に対する認識の違いで、不幸なすれ違いが起こっているケースは少なからずありそうです。 そのような問題意識から、研究班では、医学系研究で誤解を招きやすい言葉を新聞記事やTVニュースのコーパス(データベース化した言語資料)を活用した自然言語処理などを用いて解析しています。そのうえで、アンケート、ワークショップ、イベントでの意見交換などを行い、言葉の捉え方のズレを解消する工夫や言い換えの提案を手引きや動画、パンフレットにまとめています。 3月16日(火)にはオンラインシンポジウムを開催、3月中には「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」の改訂版をリリースする予定です。医学系研究をよりわかりやすく発信するために活用いただければ幸いです。(埼玉県立大学保健医療福祉学部准教授 山田 恵子) ※この記事は「医療情報をわかりやすく発信するプロジェクト」の趣旨に賛同する、m3.com、日経メディカル Online、CareNet.comの3つの医療・医学メディア共同で同時掲載しています。

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2022年11月以降の中国・北京における新型コロナウイルス流行株の特徴(解説:寺田教彦氏)

 本研究は2022年1月から12月までに収集された新型コロナウイルスサンプルについて、次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析結果を報告している。本研究結果からは、2022年11月14日以降の中国・北京における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時の主流はBA.5.2とBF.7で、新規亜種は検出されなかったことが報告された(「北京では22年11月以降、新たな変異株は認められず/Lancet」、原著論文Pan Y, et al. Lancet. 2023;401:664-672.)。 本研究の研究期間である2022年11月以降に中国では新型コロナウイルス感染者が増加していたが、同年12月7日以降のゼロコロナ政策終了により拍車がかかり、新型コロナウイルス感染者は急増していたと考えられている。そのため、感染者が激増した中国から「懸念される変異株」が出現し、各国へ流入する恐れがあり、日本や欧米では中国からの渡航者に対し水際対策を強化していた。 本研究の結果のとおり、2022年12月における中国・北京でのCOVID-19流行では新規の変異株出現はなかったと考えられ、現在は各国の水際対策は緩和されている。これは本研究のような中国からの報告に加えて、中国から各国への渡航者で検出された新型コロナウイルスの株の解析からも矛盾がないことが確認されていることがあるだろう。たとえば、2022年12月後期の本邦への渡航者検疫で確認されたCOVID-19患者のうち、中国からの渡航者で検出された株もBF.7やBA.5.2がほとんどであった(厚生労働省.「新型コロナウイルス感染症(変異株)の患者等の発生について(検疫)」2023年(令和5年)1月5日.https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30137.html, (参照2023-03-03).)。 今回検出されたBA.5.2系統とBF.7系統はともに、BA.5系統を起源としており、BA.5系統は2022年2月に南アフリカ共和国で検出されて以降、世界的に検出数が増加し、本邦でも同年6月以降はBA.2系統からBA.5系統への置き換わりが進んでいた。7月以降の第7波はBA.5系統のBA.5.2が流行の主体となっており、第8波も初期の流行の主体はBA.5系統だったが10月以降はBQ.1系統やBA.2.75系統の占める割合が上昇傾向となっていた(国立感染症研究所「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株について(第25報)」. https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/11794-sars-cov-2-25.html, (参照2023-02-27).)。 同時期の世界に目を向けると、BA.2系統やBA.5系統を起源とする亜系統も検出されていたが、BQ.1系統、XBB系統など特徴的なスパイクタンパク質の変異が起こり、ワクチン接種や感染免疫による中和抗体から逃避しやすくなる亜系統、感染力がさらに高まったと予測される亜系統も報告されるようになり、とくに北米ではXBB.1.5系統のように既存の流行株に比して感染者数増加の優位性がみられる亜系統が報告されていた(Uriu K, et al. Lancet Infect Dis. 2023;23:280-281.)。 ところで、2022年12月ごろ、特定の流行株が世界的に優勢とはなっていなかったとはいえ、感染者が増加していた株はBQ.1系統やBA.2.75系統などが考えられ、同時期にBF.7系統やBA.5.2系統が流行していた国は多くはなさそうである(World Health Organization. “Weekly epidemiological update on COVID-19 - 15 February 2023”. https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---15-february-2023, (参照2023-02-27).)中国において、これらの株が流行した理由について考えると、1つは、中国のゼロコロナ政策により、中国国外で流行していたBQ.1系統などの株が国内へ流入することを防いでいたことがあるだろう。本文中でも、中国国内感染と海外からの輸入株に違いがあることは指摘されており、輸入株ではBQ.1系統、BA.5.2系統そしてXBB.1系統の順番で検出されたことを報告している。中国のゼロコロナ政策により、他国からより感染力の高いBQ.1系統やXBB.1系統が流入していなかったことが、BF.7系統やBA.5.2系統が主流株になった一因ではないだろうか。 もうひとつは、各国で接種したワクチンの差異もあるかもしれない。本邦や欧米ではmRNAワクチンの接種が行われたが、これらのワクチンは、1価、2価にかかわらずBA5.2系統やBF.7系統に対しては中和抗体が増加することが知られており、XBB.1.系統などよりもBA.5.2系統やBF.7系統では感染予防効果や重症化予防効果が期待できると考えられる(Miller J, et al. N Engl J Med. 2023;388:662-664.)。中国で接種されたワクチンのBA.5.2系統やBF.7系統に対する効果が公表されている資料からは調査できなかったが、場合によっては接種したワクチンの差異が流行株の選択の一因になったのかもしれない。 さて、2022年12月までの中国の新型コロナウイルス流行においては、新規の流行株の出現はなかったと考えられるが、中国は多数の人口を抱えている国家である。本研究では、2022年12月のCOVID-19流行時にBQ.1系統やXBB系統などの感染免疫による中和抗体からの逃避や感染者数増加の優位性が示唆された亜系統の検出が乏しいことを考えると、これらの株の流入によっては、COVID-19の流行を再度起こす可能性が懸念される。 翻って本邦の流行を考えると、2023年3月時点では第8波が落ち着きつつあるが、本邦でもXBB.1.5株などの流行がなかった。今後は、これらの株が第9波を引き起こす懸念があり、引き続き、COVID-19に対する持続可能な感染対策を模索する必要があるだろう。

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第150回 薬価収載了承も中医協で苦言、紆余曲折なゾコーバ

中央社会保険医療協議会(中医協)総会は3月8日、国産初の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬として緊急承認されたエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)の薬価収載を了承した。ゾコーバ錠の規格は125mgのみで、その薬価は1錠あたり7,407.40円。この薬の用法に従えば5日間の服用となり、患者1人当たりの薬剤費総額は5万1,851.80円。思わずため息が出る。もちろんこの薬価決定は、きちんとした公的ルールが適用されての結果である。中医協での議論を踏まえ、同薬では同じ効果を持つ類似薬の1日薬価に合わせる「類似薬効比較方式I」が採用されている。この場合の「類似薬」とは「(1)効能及び効果」「(2)薬理作用」「(3)組成及び化学構造式」「(4)投与形態、剤形区分、剤形及び用法」の4点を指す。今回、類似薬として指定されたのは疾患類似性がある新型コロナ治療薬のモルヌピラビル(同:ラゲブリオ)と投与対象類似性があるインフルエンザ治療薬のバロキサビル マルボキシル(同:ゾフルーザ)である。この2つの薬剤の1治療あたりの薬価の平均値から算出された。効能が違う同じ塩野義製薬のインフルエンザ治療薬を類似薬に含めたことにいぶかる向きもあるようだが、むしろこの薬を類似薬に入れたことは薬価を押し下げる要因になっているため、それは陰謀論の範疇である。だが、医療従事者も含め多くの人が高いと感じているのが現実ではないだろうか。まず、そもそも今の段階で判明している効果は、オミクロン株に特徴的な症状の短縮期間が約1日であり、劇的な効果があるとは言い難い。また、オミクロン株の登場以降、新型コロナは誰もがかかる可能性が十分にあるという意味では季節性インフルエンザとかなり類似している(病態などは季節性インフルエンザと同等とは言えないと個人的には考えている)。この季節性インフルエンザに対する経口治療薬として汎用され、エンシトレルビルと同じく5日間投与、かつ治癒までの期間を約1日短縮するという効果もやや似ているオセルタミビル(同:タミフル ほか)の発売当時の薬価は1カプセル396.30円(1治療単価3,963円)に過ぎなかった。もちろんエンシトレルビルはオセルタミビルと比べれば分子量が大きく、合成の難易度もやや高いとみられるし、形式上は重症化因子やワクチン接種歴の有無を問わない汎用性があるものの、催奇形性などの問題から現実の臨床現場での投与対象はかなり限定的とみられることなど、考慮すべき要因はある。しかし、やっぱり高価過ぎるという印象は拭えない。さて、そのエンシトレルビルが、既存の新型コロナ治療薬と比べて有望視されているのが新型コロナ罹患後症状(Long COVID、後遺症)に対する効果だ。これは緊急承認時からそれを示唆するデータがあることを塩野義製薬側が明らかにしていたが、2月下旬に第30回レトロウイルス・日和見感染症会議(CROI)で発表された結果を同社が公表した。これはエンシトレルビルの第III相パートの登録患者に対し、3ヵ月、6ヵ月後にフォローアップのアンケートを実施したもの。それによると全体ではプラセボ投与群に比べ、エンシトレルビル群(125mg投与、以下同様)ではlong COVIDとして新型コロナに特徴的な14症状のいずれが長期持続した患者割合が25%低下、罹患後に起こる神経症状(課題解決力の低下、集中力・思考力の低下、短期または長期の物忘れ、不眠)が発現した患者割合が26%低下したという。後者については統計学的有意差が認められた。一方で投与開始時の14症状スコアが中央値以上(9点以上、各症状で軽度が1点、中等度が2点、重度が3点でスコアリング)の患者集団では、同様にプラセボ群に比べてエンシトレルビル群では、14症状のいずれかの長期持続を認めた患者割合が45%、罹患後に起こる神経症状が発現した患者割合が33%、いずれも有意に低下したとのこと。もっともあくまで探索的解析であり、かつアンケート回答者は当初の試験登録者の50~60%とのこと。現時点ではあくまで参考値と言わざるを得ない。実はこの件は中医協総会で支払側委員である日本労働組合総連合会(連合)の「患者本位の医療を確立する連絡会」委員である間宮 清氏に「保険適用直前のタイミングでこのニュースを流すのはモラルとしていかがなものか」という趣旨の苦言を呈されている。正直、私もlong COVIDの第一報を聞いた際は、似たような印象を持っていた。企業側としては学会で発表されたデータをニュースリリースとして発表したいであろうし、それ自体が何か法に触れるわけでもない。しかしながら、現時点でも発症後の打つ手がまだまだ限られる新型コロナでは、こうした探索的な事後解析であっても臨床医の処方を誘引するファクターになりうる可能性がある。CROIの開催時期を考えれば、この時期の発表にならざるを得ないのは百も承知なのではあるが…。とはいえ、まさか中医協の場でも同様の指摘があるとは思っていなかった。本連載で私自身がこの薬について取り上げたものは、率直に言ってほとんどがネガティブな内容である。といっても別にこの薬にも塩野義製薬にも個人的に遺恨はない。だが、なぜかこの薬に関しては正面切って解釈しようとすると「?」が付くことが多いのが実際である。

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肺がんCGPパネルで結びついた新たな治療【肺がんインタビュー】 第94回

第94回 肺がんCGPパネルで結びついた新たな治療肺がんにおける包括的遺伝子プロファイリング(CGP)パネル検査は、見落とされたドライバー変異や遺伝子異常を同定し、治療手段が尽きた症例と新たな治療を結びつける。Thoracic Cancer誌で発表された実例を筆頭著者である大阪国際がんセンターの國政 啓氏が解説する。参考Kunimasa K, et al. Thorac Cancer.2022;13:2970-2977.

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自宅でのお看取り、医師に必要な心構えは?【非専門医のための緩和ケアTips】第47回

第47回 自宅でのお看取り、医師に必要な心構えは?プライマリ・ケアの立場で在宅緩和ケアをしていると必ず遭遇するのが、自宅でのお看取りです。ご家族にとってはもちろん、在宅緩和ケアを支えてきた関係者にとっても重要な瞬間です。今日はご自宅での死亡確認について考えてみましょう。今日の質問私のクリニックでも訪問診療の患者さんが増え、まれに在宅看取りに対応するようになりました。病院での死亡確認は何度も経験してきましたが、ご自宅は雰囲気が違って慣れません。何か工夫すべきことはあるでしょうか?在宅でのお看取り、確かに病院と勝手が違う部分がありますよね。私も初めての在宅お看取りの経験を、今でも思い出します。お看取りに関する「病院と在宅の違い」を少し考えてみましょう。在宅でのお看取りは、訪問看護師から電話で「呼吸停止の連絡」が入ってご自宅に向かう、といったケースが多いでしょう。向かった先では、ご家族と訪問看護師が一緒に患者さんの様子を見守っています。このような場面で私が心掛けているのは、「医師がお看取りの主役にならない」ことです。在宅看取りの経験から感じるのは、自宅で過ごせるよう、ご本人はもちろん、家族も一緒に取り組んできた、ということです。さらに、訪問看護師や介護士、ケアマネジャーといった方々の濃密な支援にも支えられたことでしょう。そうした意味で、お看取りの主役は家族であり、ケアスタッフです。医師としてきちんと死亡確認はするものの、控えめに立ち振る舞うよう心掛けています。いろいろお声掛けしたい気持ちを抑え、「看護師さんがお体をきれいにするなど、最後のケアをしてくれますからね」とご家族に言って、死亡診断書を記載してさっと立ち去ります。在宅のお看取りに関して、印象深い話があります。私が在宅緩和ケアの初心者だったころに訪問看護師から聞いた話です。彼女は「お看取りした後のエンゼルケアって、あれは“処置”ではなく“ケア”なんですよね。一緒に頑張ってご自宅で過ごしてきた患者さんに対し、最後にさせてもらうケアなんです」と言っていました。この話を聞いて、在宅看取りはこういった想いを基盤としたケアに支えられて実現しているのだと感じました。それ以来、在宅療養を支える他職種が取り組んでいることや、そこにまつわる想いに関心を持つようになりました。亡くなる瞬間を多職種で支える、というのは病院でも在宅でも共通する部分です。ただ、在宅緩和ケアのほうが、より各職種が独立してケアを提供する場面が多いでしょう。お看取りの時にも、そんな各職種の役割や想いを意識しながら、その場で医師として求められる役割に応えていくことが大切なのだと思います。今回のTips今回のTips在宅でのお看取り、ご家族や他職種の想いを尊重し、医師は脇役に徹しましょう。

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ドキュメンタリー「WHOLE」(前編)【なんで自分の足を切り落としたいの!?(身体完全性違和)】Part 1

今回のキーワード幻肢身体認識ネットワークラバーハンド錯覚気付き亢進身体失認自己認識みなさんは、健康な自分の足を切り落としたいという人がいたら、どう思いますか? 「きっと重い精神障害に違いない」と思いませんか? ところが、実際に足を切断したあとは何の精神的な問題もなく満足して暮らしているとしたらどうでしょうか? そんな彼らは、身体完全性違和と診断されます。簡単に言うと、体が健全(完全)であることに違和感があるという状態です。今回は、ドキュメンタリー「WHOLE」を取り上げ、この謎に迫ります。なお、このドキュメンタリーは、海外のサイトでレンタルまたは購入して、オンラインでみることができます。どんな特徴があるの?このドキュメンタリーには、切断を希望する人や実際に切断した人が紹介されています。彼らの発言から、身体完全性違和の特徴を主に3つ挙げてみましょう。(1)体の一部分に違和感がある彼らは口を揃えて、「片足が自分の体につながっていない」「自分のものではない」「異物だ」と言っています。しかも、「その境目が膝から何cm上まで」とはっきり言います。切断したある男性は、子供の頃から片足に違和感を持っており、当時から彼の日記にはその悩みが書かれ、描いた自画像も片足がありませんでした。別の男性は、切断してはいませんが、片足を膝で折り曲げて固定し、松葉杖を使って生活しています。そして、「この方が自然だよ」と言っていました。1つ目の特徴は、体の一部分(ほとんど左足)に違和感があることです。(2)命の危険を冒してでもその体の一部分をなくしたいと思う病院に行っても健康な足を切断してくれる外科医がいないため、彼らは切断してもらうためにあらゆる方法を考えます。ある男性は、大量のドライアイスで違和感のある足を半日凍らせて、凍傷になったことでやっと外科医に切断してもらえました。しかも、なんとかして温存を試みようとする救急医に「切断手術をしてくれなければ同じことを繰り返す」と宣言して、温存を断念するよう説得したのでした。【当時の新聞記事】また、別の男性は、自分の足をショットガンで打ち抜いたあと、暴発事故を装い、切断手術をしてもらったのでした。2つ目の特徴は、命の危険を冒してでもその体の一部分をなくしたいと思っていることです。(3)その体の一部分がなくなったら満足する彼らは全員、その片足を切断してもらったあとは「本来の自分になった」と言い、義肢や松葉杖の生活を穏やかに送ります。「異物」と思う自分の足を切断して、実際に異物である義肢を取り付けるのは奇妙にも思えます。しかし、その片足が「異物」であったというだけで、そのほかに精神的な問題はありません。たとえば、「片足が異物である」という訴えが妄想や強迫観念である場合、たとえ切断したとしても別の妄想や強迫観念が出てきて、訴えは続くでしょう。また、同情を病的に求めるミュンヒハウゼン症候群の場合、切断したら片足であることで同情を得ようとアピールし続けるでしょう。なお、この詳細については、関連記事1をご覧ください。3つ目の特徴は、その体の一部分がなくなったら満足していることです。なお、身体完全性違和は、もともと身体完全同一性障害と呼ばれていましたが、これまでICD(WHOによる国際疾病分類)やDSM(米国精神医学会による精神疾患の分類と診断の手引)には掲載されていませんでした。しかし、ICD-11(第11版)への改訂に伴い、この診断名として新しく新設されたため、今後さらに注目されていくことが予測されます。その診断ガイドライン1)を以下に示します。次のページへ >>

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ドキュメンタリー「WHOLE」(前編)【なんで自分の足を切り落としたいの!?(身体完全性違和)】Part 2

関連する症状は?身体完全性違和の特徴は、体の一部分(ほとんど左足)に違和感がある、命の危険を冒してでもそれをなくしたいと思う、それがなくなったら満足することであるとわかりました。また、ドキュメンタリーに登場する人たちが全員男性であったため、男性に起こりやすい可能性も考えられます。ただし、これまでほとんど知られてこなかった「病気」であり、発症頻度はとても低いと思われます。それでは、この原因は何でしょうか? この謎を解き明かすために、身体完全性違和と関連する症状(状態)を5つ挙げてみましょう。(1)感覚麻痺1つ目は、感覚麻痺です。これは、手足の感覚がしびれたり鈍くなることです。感覚中枢(頭頂葉の体性感覚野)または末梢神経などが障害されることで起こります。また、心理的なストレスや暗示(催眠)による感覚中枢の一時的な機能低下(ローカルスリープ)によって起こることもあります。これは、変換症(転換性障害)と呼ばれています。感覚麻痺と身体完全性違和は、感覚異常がある点では同じですが、感覚麻痺はその体の一部分をなくしたいとまでは思わない点で違います。なお、ローカルスリープの詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)幻肢2つ目は、幻肢です。これは、存在しない手足が存在しているように感じることです。さらに、存在しない手足の痛みを感じるなら、幻肢痛と呼ばれます。事故や糖尿病性壊疽などによる四肢切断や先天性四肢欠損などによって、もともと末梢神経が障害されている(存在しない)場合、多くはただ手足の感覚がないだけです。しかし、「ないはずのものがある」と感じるということは、実は体の存在を認識する脳の機能(ボディイメージ)が備わっていることが考えられます。そして、幻肢ではこの機能が誤作動を起こしていることが考えられます。実際に、この「体の地図」(ボディイメージ)と実際の体の感覚や動きを統合する脳内のネットワークがあることがわかっています。この記事では、これを「身体認識ネットワーク」と名付けます。幻肢と身体完全性違和は、感覚異常がある点では同じですが、幻肢が「ないはずのものがある」と感じるのに対して、身体完全性違和は「あるはずのものがない(いらない)」と感じる点で違います。(3)ラバーハンド錯覚3つ目は、ラバーハンド錯覚です。これは、次のような実験で判明しています。まず、ゴム製の手(ラバーハンド)を被験者の手のように目の前で見えるようにして、自分の手は横に置いて衝立で見えなくします。そして、ゴム製の手と自分の手の両方が絵筆でなでられることで、被験者にゴム製の手が自分の手であると認識させます。すると、その後にゴム製の手だけをなでても、被験者は自分の手がなでられていると実際に感じて(錯覚して)しまうのです。このメカニズムは、幻肢と同じように身体認識ネットワークの誤作動が考えられています。なお、ラバーハンド錯覚の実験の詳細については、動画をご覧ください。(4)気付き亢進4つ目は、気付き亢進です。これは、体の触れ方や歩き方などの手足の身体感覚が研ぎ澄まされている(注意が向きすぎている)ことです。「身体過剰認識」とも言い換えられ、身体認識ネットワークの機能亢進が考えられます。これは、統合失調症の初期症状で見られます。なお、このメカニズムは、心理療法のマインドフルネスにも通じます。この詳細については、関連記事3をご覧ください。(5)身体失認5つ目は、身体失認です。これは、体の一部分が自分のものと認識できなくなることです。感覚中枢の障害に加えて、身体認識ネットワークの機能低下が考えられます。たとえば、片側の大脳半球(主に右半球)が機能低下することで反対側(左側)の手足の運動麻痺や感覚麻痺が起きる場合、さらにその部位を自分の体の一部分と認識できなくなることです。麻痺している部分自体を認識できないので、麻痺していないと言い張ることもあります。これは、病態失認と呼ばれています。身体失認が軽度の場合、その部位の手足の身体感覚に注意が向かなくなり(無視するようになり)、その半側でぶつかったり転びやすくなります。これは、半側空間無視と呼ばれています。身体失認と身体完全性違和は、「自分のものではない」と訴える点では同じですが、身体失認がその体の部分を認識できないのに対して、身体完全性違和は認識できている点で違います。ちなみに、視覚中枢(後頭葉)と一緒に身体認識ネットワークの機能低下が起きれば、目が見えないのに目が見えると言い張ります(皮質盲)。また、聴覚中枢(側頭葉)と一緒に起きれば、聞こえないのに聞こえると言い張ります(皮質聾)。これらも身体失認であり、病態失認です。原因は何なの?関連する症状との違いを踏まえて、身体完全性違和の原因は何でしょうか? その答えは、先ほどの身体認識ネットワークのみの機能低下であることが考えられます。感覚中枢も末梢神経も正常であるため、身体感覚はあるのに身体認識ができず、結果的にその体の一部分を「自分のものではない」(異物)として認識してしまうのです。もしも先ほどの身体失認の場合であれば、身体感覚もなく身体認識もできず、「自分のものではない」(何もない)と認識してしまいます。実際の画像検査の研究では、身体完全性違和の人の脳内の右上頭頂小葉は、健常の人よりも厚みがなく働き方が違っていることが確認されています2)。そこは、身体認識ネットワークの1つと考えられています。身体認識ネットワークがもともと右脳にあるからこそ、ドキュメンタリーで登場する人たちが違和感を訴える体の部分のほとんどが、右脳が支配する反対側の左側なのでしょう。また、だからこそ、身体失認も体の部分の左側が多いのでしょう。また、身体完全性違和の人の違和感のある体の部分への皮膚コンダクタンス反応(SCR)は、違和感のない体の部分の2~3倍の反応があったことが確認されています2)。だからこそ、その部分をわざわざ切り落としたいと思うのでしょう。ちなみに、もしも身体認識ネットワークの機能低下が体の一部分ではなく、全身で起きたらどうなるでしょうか? 軽度の場合は、「自分の体が自分のものではないように感じる」という離人感(離人症の一症状)が出てくるでしょう。重度の場合は、「自分の体が死んでいる(存在しない)」と思い込むコタール症候群(うつ病の虚無妄想)が出てくるでしょう。なお、身体完全性違和は体の部分についての身体認識に異常がありますが、「自分のものではない」体の部分を自分が持っているという自己認識には異常はありません。もしも自己認識も機能低下している場合は、自分のこととして認識できなくなるので、切断を希望しなくなるでしょう。この自己認識の中枢は右前頭葉であることがわかっており、身体認識ネットワークと同じ右脳であることはとても興味深いです。おそらく、左脳が言語の優位半球であるため、脳の側性化としてそのバランスをとって、右脳は認識の優位半球となったことが考えられます。ただし、あくまで右脳が優位に働いているだけで、左脳も「劣位」ながら働いているでしょう。また、これはあくまで世の中に右利きの人が多いからです。左利きの人の場合は逆になるでしょう。実際に、身体完全性違和によって切断を希望する体の部分が右足や両足である人も少ないながらいます。なお、残念ながら、彼らの利き手がどちらかまでは報告されていません。自己認識の詳細については、関連記事4をご覧ください。また、先ほど紹介した気付き亢進については、この症状により切断を希望する人がいる可能性は考えられます。ただし、その大本の原因が統合失調症であるため、やがて自己認識も障害され(亢進して)、さらに幻覚や妄想などの症状も出てきて、切断するという単純な解決を求められなくなります。なお、統合失調症の自殺者の中には、この気付き亢進がきっかけになっている人がいる可能性は考えられます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドキュメンタリー「WHOLE」(前編)【なんで自分の足を切り落としたいの!?(身体完全性違和)】Part 3

そもそも何で身体認識は「ある」の?身体完全性違和の原因は、身体認識ネットワークのみの機能低下であることがわかりました。それでは、そもそもなぜ身体認識は「ある」のでしょうか? ここから、その起源を進化の歴史から探ってみましょう。今から約7億年前に原生動物が誕生してから、ほかの生物を捕まえて食べるようになりました。このとき、最も近くにいる「生物」は自分自身の体です。そこで、間違って自分の体を食べないように、自分の体とそれ以外を区別するようになったのでしょう。また、約3億年前に両生類が誕生してから、威嚇や求愛のために陸で音を鳴らすようになりました。このとき、最も聞こえてしまう音は自分自身が出す音です。そこで、自分が出す音とそれ以外の音を区別するようになったのでしょう。こうして、自分自身の体や発する音を認識する機能(身体認識ネットワーク)が進化したと考えられます。これが、身体認識の起源です。たとえば、コオロギは、自分の鳴き声が聞こえていないことがわかっています。その訳は、自分の鳴き声を認識する随伴発射介在ニューロン(身体認識ネットワーク)によって、鳴き声を出す時は聴覚中枢の反応(発火)が抑制されるからです2)。このニューロンは線虫からサルまで幅広く確認されています。また、私たち人間は、自分自身をくすぐってもこそばゆくないです。その訳も、このニューロンによって、感覚中枢の反応が抑制されるからです。ちなみに、タコは自分の足を食べることが知られていますが、その原因としてウイルス説が有力です。そのメカニズムは、ウイルスによって身体認識ネットワークが働かなくなったと考えることができます。一説によると、タコの知性はとても高く、鏡で自分を認識できるなど自己認識があるようです。自己認識ができるからこそ、身体認識ネットワークが働かなくなると自分の体に違和感を持ってしまい、自分の足を異物として食べてしまうのかもしれません。この点で、タコは身体完全性違和の動物バージョンと言えそうです。逆に言えば、ほかの動物の多くは、自己認識ができないため、身体完全性違和になることがなく、自分の体を食べることはないと言えるでしょう。なお、身体認識のあとに進化した自己認識(自己意識)、世界認識(概念化)などの意識の起源については、関連記事5をご覧ください。 1)精神医学(3)「ICD-11のチェックポイント」P285「身体苦痛または体験症群」:山田和男、医学書院、20192)私はすでに死んでいる ゆがんだを生み出す脳P100、P104、P142:アニル・アナンサスワーミー、紀伊國屋書店、2018「足を切り落としたい…」自ら障害者になることを望む人々の実態:美馬達哉、現代ビジネス、2018<< 前のページへ■関連記事映画「二つの真実、三つの嘘」(前編)【なんで病気になりたがるの? 実はよくある訳は?(同情中毒)】Part 1スプリット【なぜ記憶がないの?なぜ別人格がいるの?どうすれば良いの?(解離性障害)】「ZOOM」「RE-ZOOM」【どうキレキレに冴え渡る?(マインドフルネス)】Part 1インサイド・ヘッド(続編・その2)【意識はどうやって生まれるの?】Part 2インサイド・ヘッド(続編・その3)【意識はなんで「ある」の? だから自分がやったと思うんだ!】Part 1

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SNS依存が大学生の学業成績に及ぼす影響

 依存症では、身体的または心理的な極度の渇望および没頭を生じるが、近年、若者世代においてソーシャルメディア依存症が問題となっている。エチオピア・Mettu UniversityのAman Dule氏らは、SNSサービスの1つであるFacebookに対する依存状態と大学生の学業成績との相関関係を評価した。その結果、若者のFacebook依存度は高く、このことは学業成績低下だけでなく、精神的ウェルビーイングや自尊心の低下などとも関連していることを報告した。著者らは、学生におけるSNS依存による悪影響を減少させるためにも、大学などの教育機関は、安全な使用促進につながるしっかりとした方針を整備すべきであろうとしている。PLOS ONE誌2023年2月6日号の報告。 2021年12月1日~30日、システマティックランダムサンプリングを用いて募集した大学生422人を対象に、横断的研究を実施した。Facebookに対する依存度はBergen Facebook Addiction Scale(BFAS)、自尊心はRosenberg自尊感情尺度(RSES)、不安抑うつ症状は病院不安抑うつ尺度(HADS)、学習習慣はStudy Habit Questionnaire(SHQ)を用いて評価した。データ分析には、SPSS version 23.0を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象者の平均年齢は23.62±1.79歳、男性の割合は51.6%であった。・対象者の大半にFacebook依存が認められ、Facebook依存と学業成績の低下および不安、抑うつ症状などとの正の相関が認められた。

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肺がん減少の一方で乳がん・前立腺がんは増加/全米がん統計

 米国がん協会は、毎年米国における新たながんの罹患数と死亡数を推定して発表している。2023年の最新データがCA Cancer Journal for Clinicians誌2023年1/2月号に掲載された。発表されたデータによると、2023年に米国で新たにがんと診断される人は195万8,310人、がんによる死亡者は60万9,820人と予測されている。死亡者数が最も多いがん種は、男性は肺がん、前立腺がん、大腸がんの順で、女性は肺がん、乳がん、大腸がんの順であった。 がん罹患率は、がんリスクに関連する行動パターンと、がんスクリーニング検査の使用などの医療行為の変化の両方を反映する。たとえば、1990年代初頭の前立腺がんの罹患率(人口10万人当たり)の急増は、それ以前に検査を受けていなかった男性の間で前立腺特異抗原(PSA)検査が急速に広まった結果、無症候性前立腺がんの検出が急増したことを反映している。その後、高齢男性に対するPSA検査が推奨されなくなったことから罹患数は20年間減少を続けていたが、2014~19年には再度増加に転じ、2023年には9万9,000人の新規罹患者が予測されている。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種推進によって20代前半の女性の子宮頸がん発症率は2012年から2019年にかけて65%低下した。 全体としては、女性に比べて男性のほうが罹患率の傾向は良好だった。2015から2019年にかけての女性の肺がん罹患率の減少は男性の2分の1のペース(年1.1%対2.6%)であり、乳がんや子宮体がんの罹患率は増加を続けている。肝臓がんやメラノーマの罹患率は50歳以上の男性では安定、若年男性では減少した。結果として、性差は徐々に縮小し、がん全体の男女の罹患率比は1992年の1.59(95%信頼区間[CI]:1.57~1.61)から2019年には1.14(95%CI:1.14~1.15)まで低下した。ただし、この比率は年齢によって大きく異なり、20~49歳では女性が男性よりも約80%高い一方で、75歳以上では男性が約50%高かった。 2020年からはCOVID-19感染流行があったにもかかわらず、また他の主要な死因とは対照的に、がん死亡率は2000年代には年1.5%、2015~20年には年2%と減少を続け、1991~2020年までに33%減少し、推定380万人の死亡が回避された。この進歩は喫煙の減少、乳がん・大腸がん・前立腺がん検査の普及、そして治療の進歩を反映したもので、とくに白血病、メラノーマ、腎臓がんの死亡率が急速に減少(2016~20年には年約2%)したことや、肺がんの死亡率減少が加速したことに表れている。すべてのがんを合わせた5年相対生存率は、1970年代半ばに診断された49%から2012~18年に診断された68%に増加した。しかし、死亡率における人種格差が最も大きい乳がん、前立腺がん、子宮体がんの罹患率上昇により、今後の減少の進展は弱まる可能性があるという。

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3月13日以降のマスク、濃厚接触者は7日間着用を推奨/厚労省

 厚生労働省は2023年3月7日、自治体・医療機関向けの事務連絡「B.1.1.529系統(オミクロン株)が主流である間の当該株の特徴を踏まえた感染者の発生場所毎の濃厚接触者の特定及び行動制限並びに積極的疫学調査の実施について」を一部改正した。2023年2月10日に発表された「マスク着用の考え方の見直し等について」に基づき、2023年3月13日よりマスクの着用は、個人の判断を基本とすることとなるが、濃厚接触者については7日間のマスク着用が推奨されることとなった。 改正後の記載は以下のとおり。 令和5年3月13日以降は、「マスク着用の考え方の見直し等について」令和5年2月10日新型コロナウイルス感染症対策本部決定に基づき、マスクの着用については個人の判断を基本とすることとなりますが、7日間が経過するまでは、感染対策として、引き続きマスクの着用が推奨されます。また、引き続き、事業所等における保健所等による積極的疫学調査及び濃厚接触者の特定・行動制限は求めない点に変わりはありません。令和5年3月7日付けの改正は、マスク着用の考え方が見直される令和5年3月13日より適用します。 また、濃厚接触者の特定について、マスクを着用していないことだけで一律に濃厚接触者と特定するのではなく、周辺の環境や接触の状況など、個々の状況から感染性を総合的に判断してほしいと記載された。 改正後の記載は以下のとおり(事業所などで感染者が発生した場合の例を示す)。 濃厚接触者の特定は、「手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者」が要件の一つとなっているが、マスクを着用していないことのみをもって一律に濃厚接触者と特定するのではなく、引き続き、周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断いただくものであり、事業所等で感染者との接触を判断する上でも、同様に取り扱われたい。

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レムデシビル、コロナ入院患者の死亡リスクを低減/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズ(日本)は3月6日付のプレスリリースにて、入院後2日以内の抗ウイルス薬レムデシビル(商品名:ベクルリー)投与により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院患者において、重症度にかかわらず死亡率および再入院率が低下したことを示すデータが、50万人超のリアルワールド試験から得られたことを発表した。死亡率の低下は、免疫不全者の集団においても認められた。米国本社が2月21日に英語で発表したものの邦訳版。本結果は2月19~22日に米国・シアトルで開催された第30回レトロウイルス・日和見感染症会議(Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections)にて発表された。 プレスリリースによると、U.S. Premier Healthcareデータベースに登録された臨床診療情報を基に、米国の病院800施設以上における成人のCOVID-19入院患者50万人超のデータが解析された。 主な結果は以下のとおり。・全体解析では、COVID-19入院患者の14日目および28日目の死亡率を検証した。入院後2日以内にレムデシビルを投与された患者群と、投与されなかった対照群を比較したところ、すべての酸素レベルにおいて、投与群の死亡率が有意に低かった。・ベースライン時に酸素療法使用の記録がない患者では、レムデシビル投与により、28日目の死亡リスクが19%(p<0.001)低下した。・低流量酸素療法を受けている患者では、28日目の死亡リスクが21%(p<0.001)低下し、高流量酸素療法を受けている患者では12%(p<0.001)低下した。・ベースライン時に侵襲的機械換気(IMV)/ECMOを必要とする患者では、28日目の死亡リスクが26%(p<0.001)低下した。・これらの結果は、オミクロン株を含む全変異株の流行期を通じて、すべてのレベルの酸素療法を受けている患者において認められた。・免疫不全者においても、レムデシビルの投与による死亡率の低下が認められた。28日目の死亡率は、入院後2日以内にレムデシビルを投与された場合、非投与群と比較して、すべての変異株の期間において、死亡リスクが25%(デルタ株以前35%、デルタ株期21%、オミクロン株期16%)有意に低下した。・レムデシビルを投与されたCOVID-19入院患者が30日以内に同じ病院に再入院する確率も27%有意に低下した。・in vitro解析によると、レムデシビルは、XBB、BQ.1.1、BA.2.75、BA.4/BA.5を含むオミクロン株亜種に対しても、抗ウイルス活性を保持していた。 今回の解析で認められたレムデシビルの死亡率低下に関する有効性は、2021年に同社が発表した約10万人のCOVID-19入院患者のリアルワールド解析において得られた生存率改善のエビデンスと一貫性を示している。

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治療抵抗性高血圧、超音波腎デナベーションが有用性示す/JAMA

 治療抵抗性高血圧に対する超音波腎デナベーションは、シャムとの比較において降圧薬なしで2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧(SBP)を低下させ、重大な有害事象は認められなかったことが、フランス・Universite Paris CiteのMichel Azizi氏らが実施した多施設共同無作為化シャム対照臨床試験「RADIANCE II試験」の結果、示された。超音波腎デナベーションは、2件のシャム対照試験(RADIANCE-HTN SOLOおよびTRIO試験)において、軽度~中等度の高血圧および治療抵抗性高血圧患者の血圧を低下させることが認められていた。JAMA誌2023年2月28日号掲載の報告。2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧を評価 研究グループは2019年1月14日~2022年3月25日の間に、米国の37施設および欧州の24施設において、異なるクラスの降圧薬最大2種類を服用しても、血圧コントロールが不良(診察室座位収縮期血圧[SBP]/拡張期血圧[DBP]が140/90mmHg以上、ただし180/120mmHg未満)で、心血管および脳血管イベントの既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が40mL/分/1.73m2以上の18~75歳の高血圧患者のうち、4週間の休薬期間後に日中自由行動下SBP/DBPが135/85mmHg以上および170/105mmHg未満で、適切な腎動脈解剖を有する患者を対象とした。 被験者を超音波腎デナベーション群またはシャム(腎血管造影)群に2対1の割合で無作為に割り付け追跡調査した(患者および評価者盲検)。なお、事前に規定された血圧基準を超え臨床症状を伴わない限り、2ヵ月後の評価まで降圧薬を使用しないこととした。 主要有効性アウトカムは、ITT解析による2ヵ月時点における日中自由行動下SBPの平均変化量であった。主要安全性アウトカムは、30日時点の死亡、腎不全、主要な塞栓性・血管性・心血管・脳血管・高血圧イベントの複合アウトカム、および6ヵ月時点の70%以上の腎動脈狭窄症とした。副次アウトカムは、2ヵ月時点の24時間自由行動下SBP、家庭SBP、診察室SBP、全DBPの平均変化量であった。2ヵ月後収縮期血圧の低下は、-7.9mmHg vs.-1.8mmHg 1,038例が登録され、このうち無作為化のためのすべての基準を満たした224例が超音波腎デナベーション群(150例)およびシャム群(74例)に無作為化された。平均(±SD)年齢55±9.3歳、女性が28.6%、黒人またはアフリカ系アメリカ人が16.1%であった。 日中自由行動下SBPの低下(平均±SD)は、超音波腎デナベーション群が-7.9±11.6mmHgであり、シャム群の-1.8±9.5mmHgと比較して有意に大きく(ベースライン補正後の群間差:-6.3mmHg、95%信頼区間[CI]:-9.3~-3.2mmHg、p<0.001)、24時間概日周期を通して超音波腎デナベーションの効果は安定していた。 副次アウトカムの血圧関連7項目のうち6項目が、シャム群と比較し超音波腎デナベーション群で有意に改善した。両群とも、重大な有害事象は報告されなかった。 なお、著者は、追跡調査期間が限られていたこと、心血管リスクが低い患者を対象としたこと、個々の患者における降圧効果の予測は困難であることなどを研究の限界として挙げている。

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SLEへのバリシチニブ、第III相SLE-BRAVE-I試験の結果/Lancet

 オーストラリア・モナシュ大学のEric F. Morand氏らは、活動性全身性エリテマトーデス(SLE)患者を対象としたバリシチニブの無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SLE-BRAVE-I試験」の結果、主要エンドポイントは達成されたものの、主要な副次エンドポイントは達成されなかったことを報告した。ヤヌスキナーゼ(JAK)1/JAK2の選択的阻害薬であるバリシチニブは、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎および円形脱毛症の治療薬として承認されている。SLE患者を対象にした24週間の第II相試験では、バリシチニブ4mgはプラセボと比較して、SLEの疾患活動性を有意に改善することが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年2月24日号掲載の報告。SLE患者760例をバリシチニブ4mg群、2mg群、プラセボ群に無作為化 SLE-BRAVE-I試験は、アジア、欧州、北米、中米、南米の18ヵ国182施設で実施された。 研究グループは、スクリーニングの24週間以上前にSLEと診断され、標準治療を行うも疾患活動性が認められる18歳以上の患者を、バリシチニブ4mg群、バリシチニブ2mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、標準治療との併用で52週間1日1回投与した。グルココルチコイドの漸減が推奨されたが、プロトコールで必須ではなかった。 主要エンドポイントは、52週時のSLE Responder Index-4(SRI-4)レスポンダーの割合で、ベースラインの疾患活動性、コルチコステロイド量、地域および治療群をモデルに組み込んだロジスティック回帰分析により、バリシチニブ4mg群とプラセボ群を比較した。 有効性解析対象集団は修正intention-to-treat(ITT)集団(無作為化され少なくとも1回治験薬の投与を受けたすべての患者)、安全性解析対象集団は無作為化され少なくとも1回治験薬を投与され、ベースライン後の最初の診察時に追跡調査不能の理由で試験を中止しなかったすべての患者とした。 760例が無作為に割り付けられ、修正ITT集団はバリシチニブ4mg群252例、バリシチニブ2mg群255例、プラセボ群253例であった。52週時のSRI-4レスポンダー率はバリシチニブ4mg群57%、プラセボ群46% 52週時のSRI-4レスポンダー率は、バリシチニブ4mg群57%(142/252例)、プラセボ群46%(116/253例)であり、オッズ比(OR)1.57(95%信頼区間[CI]:1.09~2.27)、群間差10.8(95%CI:2.0~19.6)で有意差が認められた(p=0.016)。バリシチニブ2mg群は50%(126/255例)で、プラセボ群との有意差はなかった(OR:1.14[95%CI:0.79~1.65]、群間差:3.9[95%CI:-4.9~12.6]、p=0.47)。 初回の重度SLE flareが発現するまでの時間やグルココルチコイド漸減など主要副次エンドポイントに関しては、バリシチニブ群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して有意差は認められなかった。 重篤な有害事象は、バリシチニブ4mg群で26例(10%)、バリシチニブ2mg群で24例(9%)、プラセボ群で18例(7%)に発現した。SLE患者におけるバリシチニブの安全性プロファイルは、既知の安全性プロファイルと一致していた。

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軽症から中等症のCOVID-19外来患者において、フルボキサミンはプラセボと比較して症状改善までの期間を短縮せず(解説:寺田教彦氏)

 本研究では、軽症から中等症のCOVID-19外来患者で、フルボキサミンが症状改善までの期間を短縮するか評価が行われたが、プラセボと比較して症状改善までの期間を短縮しなかったことが示された1)。 フルボキサミンは、うつ病や強迫性障害などの精神疾患に使用される選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、比較的安価な薬剤である。COVID-19流行初期において、このフルボキサミンは、サイトカインの産生を制御するσ-1受容体のアゴニストとして機能することから、臨床転帰の改善効果を期待して臨床試験が行われた。初期の臨床試験では有効性を示した報告2)もあり、ブラジルで行われたプラセボ対照無作為化適応プラットフォーム試験(TOGETHER試験)でも有効性が示されていた3)。そして、これらの研究に基づいたsystematic review4)やCochrane COVID-19 Study Register5)では、フルボキサミンは28日の全死因死亡率をわずかに低下させる可能性や、軽症COVID-19の外来および入院患者の死亡リスクを低下させる可能性があると評されていた。 しかし、フルボキサミンの有効性を否定する報告6)や、新型コロナウイルスワクチンの開発に伴いワクチン接種の有無で治療薬の有効性が変化する可能性も考えられ、現時点でフルボキサミンの有効性がない可能性も考えられた。そのため、新型コロナウイルスワクチンの接種率が7割程度あり、流行株がデルタ株からオミクロン株の時期の米国において、フルボキサミンの有効性が再度検証され、結果は前述の通りであった1)。 これまでの経緯や今回の研究結果を踏まえ、私は、日本ではフルボキサミンを臨床的に使用する必要性はないと考える。 過去の研究と今回の研究を比較すると、初期に有効性を示した臨床研究2)では、試験の参加者が少なかったことや、経過観察期間が短かったために正確な結論が得られなかった可能性が懸念される。また、ブラジルで実施されたTOGETHER試験は重症の定義に「6時間以上の救急医療を要する患者」を含めており、フルボキサミンが真に重症化予防効果があったかの疑問が残る。 今回、検証された理由の1つである、新型コロナの流行株や国民の新型コロナウイルスワクチン接種率の観点からも、本邦では今回の研究参加者の背景が近いと考えられる。フルボキサミンの有用性を示せなかった理由に、薬剤の投与量が指摘されることもあるが7)、現在はCOVID-19の病態の解明も進み、ワクチンの効果や新型コロナウイルスの変異により、かつてよりも死亡率や重症化率はかなり低下している状況である。そのうえ、重症化リスクのある患者に対する有効な抗ウイルス薬も開発され、使用方法も確立している。これだけCOVID-19治療法が確立した現在の日本においては、いくら安価であるとはいえ、COVID-19に対する効果が不確定なフルボキサミンを使用するメリットはないだろう。 さて、欧米や本邦では、COVID-19の治療ガイドライン8)や薬剤使用方法の手引き9)が整備されており、われわれ医療従事者はこれらのエビデンスに容易にアクセスできるようになった。しかし、インターネットのホームページをみると、本原稿執筆時でも、フルボキサミンが有効だったことを報告した当初の論文のみを載せてフルボキサミンの販売をしている通販サイトが散見される。COVID-19診療を振り返ってみると、イベルメクチンなどのようにCOVID-19への治療が期待されたがために、本来投与が必要な患者さんの手に薬剤が回らないことが懸念された薬剤もあった。新興感染症の病態や有効な治療薬が不明確なときには、有効と考えられる薬剤の投与を通して、エビデンスを生み出す必要があるが、病態や治療方法が確立すれば、適切な治療を行うように努めるべきであろう。 また、治療の有効性が否定された薬剤はその結果を受け止め、本来医学的に必要とされる患者さんに同薬剤が行き渡るようにするべきであろう。医薬品が一般人でも入手しやすくなった現代では、非医療従事者にも適切な情報が届くように、インターネットを含めてFact-Checkを行ってゆく必要があると考える。【引用文献】1)フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA2)Lenze EJ, et al. JAMA. 2020;324:2292-2300.3)Reis G, et al. Lancet Glob Health. 2022;10:e42-e51.4)Lee TC, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e226269.5)Nyirenda JL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2022;9:CD015391.6)Bramante CT, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.7)Boulware DR, et al. Lancet Glob Health. 2022;10:e329.8)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)Treatment Guidelines9)COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 15.1 版(2023年2月14日)

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