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難聴と認知症【外来で役立つ!認知症Topics】第1回

「高音性難聴」で片付けられない高齢者の難聴高齢になるほど難聴の人が増え、コミュニケーション上の支障になるのは、診療科を問わずに見られる現象かと思われる。当事者の中には自分が難聴だと医者に悟られるのは格好悪いと見えて、ちょっと過剰なうなずきや合いの手を入れる人もいる。だからわれわれ医療者が、この人はわかっているだろうと誤解することもある。難聴といえば、カクテルパーティー効果と呼ばれる心理学現象もある。これはカクテルパーティーのように騒々しい場所でも自分に関することが話されていると、なぜかそれが聞こえてしまうという音の聴き取り上の注意選択に関わる神経心理的な現象である。こうした要因もあるだけに、高齢者の難聴とは、単に高音性難聴だと片付けられるものではない。実際、高齢者難聴を専門とする耳鼻科医の友人は、「ご都合性難聴」という言葉を教えてくれた。これを難聴者の付き添いの方に伝えると、まさに「言い得て妙」という反応をされる。難聴にはどのデバイスが有効か?筆者の場合、診察室における難聴者とのコミュニケーションは長年にわたる課題であった。補聴器の使用を勧めるのはもちろん、集音器の提案、そして最近では今風の小型拡声器を使った話し掛けも行ってきた。いずれも「帯に短し、たすきに長し」である。まず補聴器、集音器に共通するのは、これらを着けているのを見られるのはカッコ悪いという思いのようだ。補聴器は高性能な超小型コンピューターであるだけに、数十万円と高価であり、充電しても長時間持たない。また小型・軽量で紛失しやすいのだが、コロナ禍ではマスクのひもが引っ掛かり、それがさらに助長される。集音器は数万円とぐっと廉価ながら、補聴器とは異なり、苦手な音域対応に特化した機器ではない。どんな音でも拾うので、使用者は「音が大きく響いて頭が割れそうだ」と苦情を述べる。拡声器は、雑駁な機器ではあるが、最近では懐中電灯サイズもあり、値段も1万円以下のものもあって、とりあえず医療者は使いやすい。ところで難聴の患者に付き添う家族介護者が、ほぼ共通して訴えることがある。「聞こえないから耳元で、大声で話すのに、本人はなんで怒っているんだと逆ギレする」というものである。実際、リクルートメント現象と呼ばれる現象で、高齢者では小さい音は聞こえにくく、大きい音はうるさく感じることが知られている。さらに脳科学的には、大声は感情の座である扁桃体を刺激して、怒りの感情を誘発することが報告されている1)。難聴が認知症の最大の危険因子さて、わが国の認知症対策の基本は、「認知症施策推進大綱」に示される予防と共生である。予防の実効性については疑問もあるが、長年にわたって運動の習慣が予防の一押しとされてきた。反対に、認知症の促進因子について、2017年Lancet誌が、危険因子全体で認知症発症の37%を説明できるとした2) 。その中でも、中年期からの難聴が最大のリスクファクターであると報告している。これが認知症の発症に関わる難聴がデビューする報告になった。ところで、なぜ難聴は危険因子なのか?という素朴な疑問を生じる。耳鼻科の専門誌などによれば、いくつかの可能性が示されている。筆者はその中でも次の2つが重要ではないかと考えている。まず難聴によって音刺激が欠乏して1次聴覚野と海馬の形態変化をもたらす。それにより認知予備能が減って認知症の準備状態を作るという「廃用説」である。次に難聴者においては、本来記憶などの認知機能に費やすべき知的エネルギーを、聴覚理解に回す必要がある。したがって、認知機能への注力が手薄になるので認知症の素地を作るという。筆者流に言えば、「エネルギー保存の法則」的な説明である。また臨床の場では、難聴は認知症の危険因子である以上に、認知症の悪化促進因子でないかと思うことがよくある。調べてみた限りでは、難聴はMCIを悪化させるという報告はあったが3)、悪化を促進するとした報告は見つけられなかった。こうした治療法として誰しもが考えるのは、補聴器をしっかり使うことだろう。実際、これを使った介入研究で有効性も報告されている。しかし筆者は、上記のような理由から、とくに認知症の人ではそう容易ではないと思う。当院の患者さん家族によれば、そこそこ成功していると思うのは、小型拡声器の使用である。最低限のメッセージは伝えられると聞く。また2階にいる家族を呼ぶのにも重宝していると笑わせる娘さん介護者もある。終わりに、マスク時代で実践が難しくなったが、東大病院耳鼻咽喉科の加我 君孝名誉教授に教わった診察室での会話法がある。まず相手に「私の口元を見ながら私の話を聞きなさい」と述べる。そして自分はできるだけ明瞭に発音する。これにより読唇術の心得などない人でも、何割か聞き取り能力がアップすることを経験してきた。参考1)Simon D, et al. Soc Cogn Affect Neurosci. 2017;12:409–416.2)Livingston G, et al. Lancet. 2017;390:2673-2734.3)Bucholc M, et al. Alzheimers Dement (N Y). 2022;8:e12248.

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第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決、賄賂は「オノアクト使用の見返りだった」

岸田首相G7広島サミットを意識?今春にもコロナは5類にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連載もまもなく3年を迎え150回近くとなりますが、その半分以上は新型コロウイルス感染症に対する国の対応について書いてきたのではないかと思います。そのコロナ対応も、いよいよ大きな転換期を迎えます。岸田 文雄首相が1月20日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を、今春から5類に変更する方針を示し、23日から専門家らによる感染症部会で本格的な議論が開始されたためです。昨年11月、感染症法等を改正し、都道府県は地域医療支援病院や特定機能病院などとあらかじめ協定を結び、病床確保や発熱外来といった医療の提供を義務付けることになったばかりですが、5類にすればそうした義務付けから外れることになります。これまでコロナを診てこなかった医療機関も、通常の風邪と同じように診療、入院させるようになると期待されていますが、本当にそうなるでしょうか。コロナ禍の中での多くの医療機関の消極的な対応を見てきた経験から言うと、はなはだ疑問です。あわせて気になったのは、1月19日に日本医師会の松本 吉郎会長が岸田総理と面会し、政府が新型コロナの感染症法上の見直しを行った場合でも、公費負担などを継続するよう要望したことです。報道等によれば松本会長は「患者さんに負担が掛からないように、それから医療機関の感染対応にもできる限り支援を継続していただきたいということをお話しした」と語ったそうです。5類に移行すれば医療費などの公費負担の法的根拠がなくなるのは当然です。なのに「公費負担は続けろ」とは、意味がわかりません。普通の風邪ならば、医療機関を受診したい人や重症化リスクが高い高齢者などは受診し、そうでない人は自力で治す(もともとほとんどの風邪は医療機関を受診しなくても治ります)というのが筋です。公費負担を続けるということは、受診不要と思われる軽症患者まで掘り起こすことになりそうです。医療機関の経営にはプラスでしょうが、結局、無駄な医療費の増加を招くだけではないでしょうか。松本会長の要請に岸田首相は「しっかりと検討したい」と応じたそうです。5月開催予定のG7広島サミットで海外首脳を迎える前に、5類にして屋内のマスク着用も不要にしておきたい、という少々自分勝手な考えもあるのではないでしょうか。未だ、マスク着用がルール化されている先進国は日本くらいだからです(エリザベス女王の国葬の時、日本の天皇陛下のマスク着用が話題となりました)。複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授に判決さて今回は、この連載でも何度(今回で7回目)も取り上げてきた三重大病院臨床麻酔部の汚職事件を取り上げます(「第133回 三重大病院臨床麻酔部事件、元教授に懲役4年の求刑、大学は新教授で再スタート」ほか)。薬剤の積極的な使用や医療機器の納入に便宜を図る見返りに現金を受け取ったなどとして、第三者供賄と詐欺の罪に問われた、三重大学医学部附属病院の臨床麻酔部元教授(56歳)の判決公判が1月19日に津地方裁判所であり、柴田 誠裁判長は懲役2年6ヵ月・執行猶予4年と、元教授が代表理事を務める一般社団法人に追徴金200万円(求刑懲役4年、追徴金200万円)とする有罪判決を言い渡しました。ちょうど新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい始めた2020年9月に発覚したこの事件、複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授の判決が出たことで、被告全員の公判が一通り終了したことになります。一連の事件では7人の有罪が既に確定この事件で被告人である元教授は、小野薬品工業が製造・販売する薬剤「ランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)」を積極的に使う見返りに大学の口座に寄付金200万円を振り込ませたほか、日本光電からも200万円を提供させたとして、第三者供賄罪に問われていました。また、小野薬品のオノアクトを投与したように装い診療報酬を詐取(約80万円)したとする詐欺罪でも起訴されていました。元教授の公判は、他の被告の公判がすべて終わった2022年4月から始まりました。ちなみに、一連の事件では、診療報酬詐取事件で共犯とされた同部の元准教授、医療機器納入を巡る汚職事件で共犯とされた元講師、そして小野薬品の社員2人、日本光電の元社員3人の計7人の有罪が既に確定しています。公電磁的記録不正作出、公電磁的記録供用と詐欺の罪に問われた元准教授には懲役2年6ヵ月・執行猶予4年、第三者供賄罪に問われた元講師には懲役1年・執行猶予3年の判決が下されています。一方、贈賄罪に問われた小野薬品の社員2人には懲役8ヵ月・執行猶予3年、同じく贈賄罪に問われた日本光電の元社員1人には懲役1年・執行猶予3年、元社員2人には懲役10ヵ月・執行猶予3年の判決が下されています。最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わり2022年4月から始まり、計14回、6ヵ月にも及ぶ審理を経て、10月に結審した今回の公判、最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わりでした。小野薬品を巡る第三者供賄罪について元教授は、「オノアクトの効能に着目して積極的に使用していく方針を採用した」などと主張していました。また、詐欺罪についても無罪を主張し、寄付金の対価性(いわゆる見返り)が認定されるかどうかが争点となっていました。一方で元教授は、日本光電に200万円を振り込ませたとする第三者供賄罪は認めていました。報道等によれば、元教授は公判で「職務権限を利用して対価をもらったことは恥ずかしい」と語るとともに、お金の使い道を「麻酔科医を集めるため。ほとんどを飲食代に充てた」と説明したとのことです。元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量急増各紙報道等によれば、同日の判決で津地裁はオノアクトの積極使用と寄付の関連を認め、対価性があったとしています。具体的には、元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量が急増したこと、小野薬品の当時のMRの証言から元教授が「寄付金が必要だ頼むよ」「最初に世話になったところは忘れないよ」などと供述したこと、MRが作成した週報に「講演会活動を通じ三重大で『OA(オノアクト)をもっと出すための相談』が行えた。そのもっとを今後具体化していく段階に今後していこう」と記載していたことなどを指摘、「200万円の寄附とオノアクトの処方が密接に関連付けられていた」として寄付金の対価性があったと判断しました。「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きい」以上を踏まえ、柴田裁判長は判決理由で「寄附金を獲得するためになりふり構わず処方量の増大に突き進んだことは異常というほかなく、職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるを得ない」と指摘。さらに、「使用されずに廃棄される医薬品が大量に生じる歪みを発生させ、診療報酬の搾取につながった」と非難したとのことです。ただ、量刑については「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるをえないが、前科のない被告人をただちに刑務所に収容するのは重きに過ぎる」などとして懲役2年6ヵ月・執行猶予4年の有罪判決としたとのことです。判決に対し、元教授の弁護士は「判決は不当で、控訴するかどうかは被告人と相談したい」と述べたとのことです。一方、三重大学病院の池田 智明病院長は「有罪判決が下されたことを真摯に受け止めます。今後も信頼回復に向け、全力を尽くします」とのコメントを出しています。新たなスタートを切った三重大麻酔科さて、元教授の逮捕によって、三重大病院の麻酔科は混乱に陥り、地域医療にも多大な影響を及ぼしました。さらに製薬会社が大学などに提供している奨学寄付金の是非についても議論が沸き起こり、奨学寄付金を廃止する動きも広まっているようです。その意味で、元教授は法律では罪に問われない部分でも、さまざまな“罪”を犯していたと言えるでしょう。三重大の麻酔科については、2022年4月には新教授が就任、手術での麻酔を行う「臨床麻酔部」を廃止し、痛みを取り除く治療などを行う「麻酔科」に統合するという組織改編も行われました。また、麻酔の専門医を育成する研修プログラムも2023年度からスタートするとのことです。元教授が控訴すれば、裁判は続くことになりますが、少なくとも三重大病院麻酔科の再スタートは喜ばしいことです。幾多の“黒歴史”から決別し、地域の麻酔科医療を牽引する存在になることを願います。

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オミクロン株の感染爆発のファクターを解明/日本大学ほか

 わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第8波の主な感染原因であるオミクロン株。この変異株について、今井 健一氏(日本大学歯学部感染症免疫学講座 教授)らの研究グループは、オミクロン株感染者の唾液中には、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)が、従来株やデルタ株よりも高比率に含まれていることを世界で初めて発見し、JAMA Network Open誌2023年1月9日号に報告した。 細胞に付随しているウイルスと比較すると、セルフリーウイルスはとても小さく軽いため、唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うことができる。オミクロン株では、このセルフリーウイルスの唾液への排出量がデルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加したことが、エアロゾル感染によるCOVID-19の爆発的拡大につながったものと考えられるという。セルフリーウイルスがオミクロン株では従来株の17.8倍 新型コロナウイルスは、口腔内の上皮や唾液腺の細胞に感染し増殖するため、唾液中には多くのウイルスが含まれている。そのため、会話、せき・くしゃみのたびに放出される飛沫や微細なエアロゾルによって伝播され感染が広がる。オミクロン株は、従来株やデルタ株などと異なり、飛沫感染に加えてエアロゾル・空気感染によって伝播するため、現在の爆発的な感染拡大につながったと考えられているが、その仕組みは良くわかっていなかった。今回の研究はこの仕組みを明らかにすることを目的とした。 研究グループでは、新型コロナウイルスは、従来株→デルタ株→オミクロン株とウイルスが変異するのに伴い、唾液中に排出されるウイルスの量自体が多くなっていると推測。また、エアロゾル感染が成立するためには、ウイルスが飛沫に含まれて拡散する状態よりも遠くに飛散し、かつ飛沫よりも長時間室内に漂うエアロゾルに含まれて拡散する状態が必要とも考慮した。 そこで、従来株、デルタ株、およびオミクロン株の感染者から採取した唾液を、全唾液と遠心分離で細胞成分を除いた上澄み液とに分け、それぞれに含まれるウイルス量を定量した。 主な結果は以下のとおり。・従来株では、全唾液1mL中に約123万個(中央値、以下同じ)のウイルスが存在していることがわかった。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約18万個で、全唾液中のウイルスに占めるセルフリーウイルスの割合は約5.9%だった。・デルタ株では、全唾液1mL中に約1,860万個と従来株に比べて15倍ものウイルスが存在していた。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約117万個で、全唾液中に占める割合は約4.8%で従来株と類似した値だった。・オミクロン株では、全唾液1mL中にデルタ株の半分強、約952万個のウイルスが存在していた。一方で、セルフリーウイルスは1mL中に約321万個が存在し、デルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加していた。全唾液中に占める割合は約21.3%で、従来株やデルタ株と比較して約4倍もセルフリーウイルスの割合が増加していた。 以上から、唾液中のセルフリーウイルスの量が多ければ、新たな宿主に到達した際に新型コロナウイルスの受容体であるACE2への結合がしやすく、感染効率も自然と高まる。さらに、セルフリーウイルスは細胞付随ウイルスよりも3倍近い速さで新たな未感染の細胞に感染するため、セルフリーウイルスが唾液中に多く含まれることは感染爆発の主要な原因となり得ると考えられた。 同研究グループは、「今回の研究から大規模クラスターが多発している現状を説明し得るものと考えられ、また、感染予防策として換気の必要性と密閉空間でのマスク着用励行の根拠ともなる」と考察している。さらに本研究は、「『エアロゾル・空気感染におけるセルフリーウイルスの重要性を初めて提唱した』という点で重要であり、今後、インフルエンザや麻疹、水痘などの他のウイルス感染症への適応や未知のウイルス感染症が発生した際、そして、ウイルス変異が生じるたびにそのウイルスの性状を知り、感染対策を立てる基本概念として適用される」と展望を述べている。

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日本におけるレビー小体型認知症患者・介護者の治療ニーズ

 レビー小体型認知症(DLB)に対する治療戦略を考えるうえで、患者の治療ニーズを把握することは不可欠である。近畿大学の橋本 衛氏らは、DLB患者とその介護者における治療ニーズおよびこれらの治療ニーズを主治医がどの程度理解しているかを調査するため、横断的観察研究を実施した。その結果、DLB患者およびその介護者の治療ニーズのばらつきは大きく、主治医は専門知識を有しているにもかかわらず、DLBのさまざまな臨床症状のために、患者やその介護者にとって最優先の治療ニーズを理解することが困難であることが明らかとなった。著者らは、主治医には自律神経症状や睡眠関連障害により注意を払った治療が求められるとしている。Alzheimer's Research & Therapy誌2022年12月15日号の報告。 DLB患者、その介護者および主治医を対象にアンケート調査を実施した。DLBで頻度が高く臨床的に重要な52の症状を、7つの症状ドメイン(認知機能障害、パーキンソニズム、睡眠関連障害、摂食行動関連問題、睡眠障害および摂食障害以外の精神症状、自律神経症状、感覚障害)に分類した。患者および介護者の治療ニーズは、「最も苦慮している症状」と定義し、各回答を集計した。患者および介護者の治療ニーズに対する主治医の理解度を評価するため、各回答に対する「患者と主治医」および「介護者と主治医」の一致率を症状ドメインごとに算出した。 主な結果は以下のとおり。・調査対象は、患者および介護者263組、主治医38人。・患者の平均年齢は79.3歳、ミニメンタルステート検査(MMSE)の平均総スコアは20.9であった。・最も苦慮している症状として、患者は35症状、介護者は38症状を選択した。・患者の治療ニーズとして最も選択されていた症状は記憶障害であり、次いで便秘、運動緩慢が選択された。・介護者においても、最も苦慮している症状として選択された症状は記憶障害であり、次いで幻覚が選択された。・患者または介護者が最も苦慮する症状ドメインにおける主治医との一致率は、「患者と主治医」で46.9%、「介護者と主治医」で50.8%であり、約半分程度しか一致していなかった。・ロジスティック回帰分析では、自律神経症状や睡眠関連障害が最も苦慮する症状ドメインとして選択された場合、「患者と主治医」と「介護者と主治医」の治療ニーズの一致率はより低かった。

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KRAS G12C陽性肺がんの大規模な臨床ゲノムプロファイル:LC-SCRUM-Asia研究より/Lung Cancer

 ターゲット治療薬の開発で、肺がん領域でも注目されているKRAS G12C変異。2022年末、アジア人KRAS G12C陽性非小細胞肺がん(NSCLC)のリアルワールド解析が発表された。 KRAS G12Cは、白色人種のNSCLCでは約14%に発現するとの報告があるが、アジア人ではどの程度なのか。また、同集団に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性が報告されているが、アジア人患者でも効果は示されるのか。さらに、G12C以外の臨床ゲノム特性はどのようなものか。国立がん研究センター東病院・名古屋大学の田宮 裕太郎氏らは、肺がんの大規模前向きゲノムスクリーニングプロジェクト(LC-SCRUM-Asia)のデータベースに基づき、KRAS G12C NSCLCの臨床ゲノム特性とICIの治療成績を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2015年3月〜2021年3月にLC-SCRUM-Asiaに登録されたNSCLC1万23例のうち、KRAS変異は14%(1,258例)に認められた。・KRAS変異の内訳は、G12Cが4.0%(376例)、G12Dが3.1%(289例)、G12Vは2.7%(251例)であった。・KRAS G12C陽性は、非G12C変異患者に比べ、男性および喫煙者の割合が高く(男性、喫煙者とも:p<0.001)、腫瘍変異負荷(TMB)が高い症例、PD-L1≧50%の症例が多かった(TMB:p<0.001、PD-L1:p=0.08)。・KRAS G12C陽性患者の全生存期間中央値は24.6ヵ月で、他の変異サブタイプとの差はなかった(G12V:18.2ヵ月、p=0.23、G12D:20.6ヵ月、p=0.65、その他のKRAS変異:18.3ヵ月、p=0.20)。・ICI治療による無増悪生存期間中央値は、KRAS G12Cでは3.4ヵ月で、G12V陽性の4.2ヵ月(p=0.90)と同様だったが、G12Dの2.0ヵ月(p=0.02)と、その他のKRAS変異の2.5ヵ月(p=0.02)に比べ、有意に長かった。 アジア人のNSCLCにおけるKRAS G12Cの頻度は、白人に比べて低かった。また、KRAS G12C NSCLCでは、高TMBやPD-L1高値など、免疫原性が亢進しており、ICIの感受性が高い可能性が示されている。■関連記事2022年の肺がん薬物療法の進歩を振り返る!【Oncology主要トピックス2022 肺がん編】【肺がんインタビュー】 第90回ソトラシブ、KRAS G12C変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長(CodeBreaK-200)/ESMO2022KRAS G12C変異陽性NSCLCへのadagrasib、臨床的有効性示す/NEJMDr.光冨の肺がんキーワード解説「KRAS」【肺がんインタビュー】 第71回

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持続性AF、PVI+左房後壁乖離術で不整脈の再発率は改善せず/JAMA

 持続性心房細動(AF)患者に対する初回カテーテルアブレーションでは、肺静脈隔離術(PVI)に左房後壁隔離術(PWI)を追加しても、PVI単独と比較して12ヵ月の時点での心房性不整脈の再発回避の割合は改善されず、複数回の手技後の再発回避にも差はないことが、オーストラリア・アルフレッド病院のPeter M. Kistler氏らが実施した「CAPLA試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月10日号に掲載された。PWI追加の意義を評価する3ヵ国の無作為化臨床試験 CAPLA試験は、3ヵ国(オーストラリア、カナダ、英国)の11施設が参加した医師主導の無作為化臨床試験であり、2018年7月~2021年3月の期間に患者の登録が行われた(メルボルン大学Baker Department of Cardiometabolic Healthの助成を受けた)。 年齢18歳以上、症候性の持続性AFで、初回カテーテルアブレーションを受ける患者が、PVI+PWIを行う群またはPVI単独群に無作為に割り付けられた。PVIでは、左右の肺静脈の周囲を広範に焼灼し、PVI+PWIでは、これに天蓋部(roof ablation line)と底部(floor ablation line)の焼灼が追加された。 主要アウトカムは、1回のアブレーション施行から12ヵ月の時点において、抗不整脈薬非使用下で30秒以上の心房性不整脈が記録されないこととされた。心房細動負担にも差はない 338例(年齢中央値65.6歳[四分位範囲[IQR]:13.1]、男性76.9%)が登録され、330例(97.6%)が試験を完遂した。PVI+PWI群に170例、PVI単独群に168例が割り付けられた。 12ヵ月の時点で、抗不整脈薬非使用下での心房性不整脈再発の回避が達成されたのは、PVI+PWI群が89例(52.4%)、PVI単独群は90例(53.6%)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:-1.2%、ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.73~1.36、p=0.98)。 複数回のアブレーション後の、抗不整脈薬使用の有無を問わない心房性不整脈再発の回避(PVI+PWI群58.2% vs.PVI単独群60.1%、HR:1.10、95%CI:0.79~1.55、p=0.57)、複数回のアブレーション後の、抗不整脈薬使用の有無を問わない症候性AFの回避(68.2% vs.72.0%、HR:1.20、95%CI:0.80~1.78、p=0.36)、心房細動負担(AF burden、1年の追跡期間中における心房細動累積時間の割合)(0%[IQR:0~2.3]vs.0%[0~2.8]、p=0.47)にも、両群間に有意な差はなかった。 一方、平均手技時間(142分[SD 69]vs.121分[57]、p<0.001)とアブレーション時間(34分[SD 21]vs.28分[12]、p<0.001)は、PVI単独群で短かった。 合併症は、PVI+PWI群が6件、PVI単独群は4件発現した。手技関連死はなく、脳血管イベントや食道瘻の報告もなかった。 著者は、「PVIにPWIを追加することで、治療時間と焼灼時間が延長されるが、合併症の発生率は増加しないことが示された。この研究では、初回心房細動カテーテルアブレーションにPWIを経験的に導入する方法は支持されなかったが、PVI+PWIで利益が得られる可能性のあるサブグループを特定するために、さらなる研究が求められる」としている。

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対側乳がんリスク、生殖細胞変異で違いは?/JCO

 乳がん女性における対側乳がんリスクは年間0.5%と推定され、生殖細胞変異の有無、人種/民族、診断時年齢、閉経状態が大きく影響する。今回、米国・Mayo ClinicのSiddhartha Yadav氏らが、ATM、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2の生殖細胞系列病的変異を有する女性における対側乳がんリスクを推定したところ、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2の変異を有する女性でリスクがかなり高いことがわかった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年1月9日号に掲載。 本研究は、浸潤性乳がんに対して同側手術を実施したCARRIERS試験において、前向きに追跡調査した1万5,104例を対象とした。各遺伝子の病的変異のある女性の対側乳がんリスクについて、死亡の競合リスクを考慮し患者および腫瘍の特性を調整した多変量比例ハザード回帰分析により病的変異のない女性と比較した。 主な結果は以下のとおり。・乳がん生殖細胞系列BRCA1、BRCA2、CHEK2変異を有する女性は対側乳がんリスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:1.9以上)が、ER陰性乳がんではPALB2変異のある女性のみリスクが高かった(HR:2.9)。・ATM変異を有する女性では、対側乳がんリスクが有意に高くはなかった。・閉経前女性における10年累積対側乳がん発症率は、BRCA1変異を有する女性で33.4%、BRCA2変異を有する女性で27.2%、CHEK2変異を有する女性で13.2%だった。ER陰性乳がんに限るとPALB2変異を有する女性で35.5%と推定された。・閉経後女性における10年累積対側乳がん発症率は、BRCA1変異を有する女性で11.5%、BRCA2変異を有する女性で9.4%、CHEK2変異を有する女性で4.3%であった。

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インパクトの高い投稿原稿を選別するのは至難の業(解説:折笠秀樹氏)

 医学雑誌編集者の目利きを調べた論文です。雑誌社にとって、掲載された論文が多く引用されるのは1つの目標です。被引用回数が増えれば、雑誌のインパクトファクターが上がるためです。そこで、編集者の資質の1つとして、将来多く引用されるような重要論文を選別する目利きが大切になります。 BMJ誌の編集者10名が調査対象になり、505件の投稿原稿に目を通し、被引用回数を予測し、平均以下(10回未満)、平均(10~17回)、上等(18回以上)にて評価を下しました。実際の被引用回数については、WOS(Web of Science)を使って調べたのです。結論として、BMJ編集者は被引用回数をうまく予測していなかったことがわかりました。半分以上の編集者が正しく予測できた投稿原稿というのは、わずか32%にすぎなかったのです。予想外れのほうがむしろ多かったのです。せめてもの慰めとして、BMJで採択した論文のほうが却下した論文(その他の雑誌が採択)より、被引用回数が高かったことです(BMJ―被引用回数中央値12回、その他の雑誌―7回)。 もっと引用される論文を出版したいのなら、新たな編集長は今の編集者たちを解雇し、別の編集者を雇用すべきなのでしょう。しかし、そのような編集者は実際にはいないというのが現実のようです。なかなか目が利く編集者は見当たらないということなのでしょう。雑誌によっては、なるだけ当該雑誌の論文を引用してほしいと、編集者から依頼が来ることもあります。そうすれば、その雑誌のインパクトファクターが上がるからです。それが実態だとすると、高インパクトファクターの雑誌が重要論文を多く載せているとは限らなくなります。こういったことも予測が外れた原因の1つかもしれませんが、研究費採択の場面でもそうであるように、なかなか将来性を予測するのは至難の業であることに違いありません。

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073)切開しない排膿で後悔したこと【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第73回 切開しない排膿で後悔したことゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科でよくある排膿処置、炎症性粉瘤など。。。局所麻酔をし、皮膚を切開してから行うことがほとんどですが、なかには麻酔や処置を拒否される患者さんもおられます。そうでなくても、すでに自壊しており、開口部から膿が出ている、というパターンも。今回の患者さんはその両方で、麻酔と切開は絶対にイヤ、とのことでしたが、かるく押せば自壊部から膿が出ている状態だったので、かんたんに圧排して、排膿することにしました。処置台に寝ていただき、無理のない範囲で軽く押すだけのつもりでしたが・・・。狭い出口から飛びだす内容物。水鉄砲をご想像いただければわかるかと思います。本当に、よく飛んだ・・・!麻酔や切開の際に、膿を浴びてしまうことはたまにありますが、メガネや前髪にまでばっちり飛び散り、その後の私のテンションが、だだ下がりだったことは言うまでもありません(遠い目)。今後、排膿処置するときは、「しっかり切開して出口を確保してからにしよう」と心に誓ったのでした。他愛もない失敗談、失礼いたしました!それでは、また〜!

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厚労省の「解熱鎮痛薬等110番」は供給不足の解決にはならない!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第104回

 昨年末、厚生労働省に「医療用解熱鎮痛薬等110番」という相談窓口が設置されました。解熱鎮痛薬などを入手できない医療機関や薬局のために設置された供給相談窓口ですが、開始1ヵ月ですでに混乱が生じているようです。厚生労働省が12月14日に開設した医療用薬の「供給相談窓口」(医療用解熱鎮痛薬等110番)に対し、約3週間で薬局や医療機関から500件もの相談が寄せられていることがわかった。(中略)一方、厚労省への相談件数が伸びるほど、卸側の負担は増大していくかたちとなり「お上からの重圧感が強いので対応せざるを得ないが、その後の対応や価格に関するトラブルも出てきている」(広域卸関係者)という。(2023年1月5日 RISFAX)この相談窓口の対象は、発熱外来や新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている医療機関やこれらの医療機関の処方せんを受け付けている薬局で、かつ下記をすべて満たす必要があります。解熱鎮痛薬、鎮咳薬、トラネキサム酸の在庫が少ない平時に取引のある卸売業者に連絡しても入手が困難である業務に支障を来たすとともに患者に迷惑を掛けてしまう恐れがある全国的に医薬品の供給が不足しているのは言わずもがなの状態で、何も困っていません!と言える薬局は少ないのではないでしょうか。本来であればありがたい話のはずなのですが、この窓口は厚生労働省の中に設置されているため、相談を受け付けても医薬品を製造して出荷することも、納入を早めることもできません。厚生労働省が医薬品調達に窮している薬局などの訴えを聞き、卸売業者へ納入調整を依頼するというものです。調整依頼と言っていますが、厚生労働省から連絡があった卸売業者は、その相談元の薬局などに医薬品を納入せざるを得ない状態になるのではないかと思います。卸売業者も在庫が限られていて精一杯の調整をしている中、厚生労働省がそこにプレッシャーをかけて優先順位を繰り上げるというのは、本質的にはなんの解決にもなっていないのでは…と思うのは私だけではないはずです。医薬品の供給量が減っている一方で、解熱鎮痛薬や咳止め薬などの需要が高まっていることが原因なのに、なぜこのような窓口の設置が解決につながると思ったのかは不思議です。現場としては、どこか別のところにしわ寄せがいく納入調整ではなく、本質的な供給不足の解決や不適切処方に対する対応がとられることを期待したいと思います。

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英語で「順調にいっていますよ」は?【1分★医療英語】第64回

第64回 英語で「順調にいっていますよ」は?You are moving in the right direction.(順調にいっていますよ)That’s good to know.(それは良かったです)《例文1》Your father is doing well. He is moving in the right direction.(お父さんは元気ですよ。順調にいっています)《例文2》His course was complicated by aspiration pneumonia, but overall, he is moving in the right direction.(経過中に誤嚥性肺炎が起こりましたが、全体としては、彼は快方に向かっています)《解説》“move in the right direction”は直訳すると「正しい方向に動く」ですが、医療現場で病状を表す時に使うと「順調にいっている」「快方に向かっている」という意味を表します。患者さんや家族に対するポジティブな声掛けにもなるため、臨床現場でよく使われる言い回しです。なお、“direction”の発音は米国英語では「ディレクション」、英国英語では「ダイレクション」となります。また、“right”にも“direction”にも「R」が含まれるため、「L」の発音と混同しないように注意が必要です。講師紹介

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第147回 ヒトが親となる年齢は27歳~父は母より8歳ほど高齢

子に新たに生じた変異への親の年齢の影響を頼りに過去25万年前まで遡って推定したところ、ヒトが親となる年齢、すなわち子を持つ年齢の平均は約27歳(26.9歳)でした1,2)。男女別で見たところ、男性が子持ちになる年齢、すなわち父になる平均年齢は約31歳(30.7歳)で、女性が母になる平均年齢およそ23歳(23.2歳)に比べて8歳ほど遅いことが示されました。ヒトが何歳で子供を持って来たかを実際の記録なしで知ろうとすることは厄介ですが、ここ数年の遺伝配列解析技術の進歩や遺伝情報の大量の蓄積のおかげでそのヒントとなるDNAの印を見つけ出すことが可能になっています。とはいえこれまでの研究で遡れたのはせいぜい4万年前まででした。米国のインディアナ大学の進化遺伝学者Richard Wang氏らはヒトの各家系のDNA変異の発端を頼りにさらに遡って子持ちとなる年齢の推移を推定することを試みました。子のDNA配列には親の体細胞にはない25~75の新生突然変異(de novo変異)があります。それらのde novo変異はどちらかの親の生殖細胞か受精後の初期胚発生のときに生じたものです。ネコ、クマ、サルなどの哺乳類とヒトの変異の相違や相似を調べる研究の最中に年齢に応じた変異のパターンがあることにWang氏らは気付き、母親や父親の年齢に応じた子のde novo変異特徴の発見に至ります2)。その発見に基づいてWang氏らはde novo変異の発生時期を割り出して子持ちになる年齢を過去25万年前まで遡って推定し、男女の区別なしでの子持ちになる年齢の平均は26.9歳、父になる年齢は30.7歳、母になる年齢の平均は23.2歳との結果を得ました。推移に変動はありますし、最近5千年にその差は縮まっていて母になる平均年齢はより遅く26.4歳となっているものの、男性は女性に比べて一貫してより高齢になって子持ちになっていました。父になる年齢が女性より高齢であるのは、生物学的に男性は齢をより重ねてからでも子を授かれるゆえ子を持つのが遅れがちになることによると一般的には説明しうるとWang氏は言っています3)。ただしそれだけではないかもしれず、社会的な要因、たとえば父になる前に地位を築いておくことを強いる家父長社会の圧力などが父になる年齢を押し上げることに寄与しているかもしれません3,4)Wang氏らの研究での変異要因の補正は不十分であり、環境などからの種々の要因の変異が親の年齢に不均一に影響して結果を歪めているかもしれないと指摘する専門家もおり5)、親になる年齢の解析が今回で片が付いたというわけではなさそうです。Wang氏らは世界の2,500人のゲノムを使ってヒトが親になる年齢の推移を予測しましたが3)、今後の研究でさらに多くの人の情報を使って推定精度を高めていく必要があります。参考1)Wang RJ, et al. Sci Adv. 2023;9:eabm7047. 2)Study reveals average age at conception for men versus women over past 250,000 years / Eurekalert3)Dads older than mums since dawn of humanity, study suggests / Nature4)DNA evidence that dads have always tended to be older than mums / Nature5)Timing and causes of the evolution of the germline mutation spectrum in humans. bioRxiv

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コロナワクチンの免疫応答、年齢による違い/京大iPS細胞研究所

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの個人差・年齢差を検討したところ、65歳以上の高齢者ではワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅い一方、収束は早いという特徴があることを、京都大学iPS細胞研究所の城 憲秀氏らによる共同研究グループが明らかにした。Nature Aging誌 2023年1月12日掲載の報告。 一般に加齢とともに免疫機能が低下することはよく知られているが、T細胞が生体内で刺激を受けた際の応答が加齢によってどのように、またどの程度変化するかは不明であった。そこで研究グループは、ワクチン接種後のT細胞応答や抗体産生、副反応との関連を調査した。 対象は、ファイザー製のSARS-CoV-2mRNAワクチン(BNT162b2)を2回接種した65歳以上の高齢者109人(年齢中央値71歳[範囲:65~81歳]、男性56人)と、65歳未満の成人107人(年齢中央値43歳[同:23~63歳]、男性43人)の計216人であった。血液の採取は、ワクチン接種前、1回目接種から約2週間後、2回目接種から約2週間後、1回目接種の約3ヵ月後の計4回行った。 主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメインに対するIgG抗体価は、両群ともにワクチン2回接種後に大幅な上昇が見られた。しかし、抗体価のピークの中央値は、成人群で27,200AU mL-1、高齢者群で18,200AU mL-1であり、高齢者群では約40%低かった。・ワクチン特異的ヘルパーT細胞は、両群ともに1回目の接種で大きく増加し、2回目の接種後も同程度を保ち、3ヵ月後に減少した。高齢者群では1回目接種後の増加が成人群よりも少なかったが、2回目接種後に同程度となり、3ヵ月後には再び成人群よりも少なくなった。・2回目接種後の局所的な副反応(接種部位の疼痛)は、高齢者群と成人群で同程度であったが、全身性の副反応(発熱、倦怠感、頭痛)は成人群で有意に多かった。ただし、高齢者群では、解熱鎮痛薬を服用している割合が高かった。・年齢にかかわらず、2回目接種後に38℃以上の発熱があった人では、1回目接種後のT細胞応答と2回目接種後のIgG抗体価が高かった。・ワクチン特異的Th1細胞における、T細胞活性化を抑制するPD-1の発現量は、両群ともに2回目接種後にピークを迎えたが、高齢者群では成人群と比べて有意に多かった。また、PD-1の発現量が多い高齢者では、キラーT細胞の誘導が低い傾向にあり、免疫反応にブレーキがかかりやすくなっている可能性が示唆された。 研究グループは、これらの結果から「高齢者群では、T細胞応答の立ち上がりが遅く、収束が早いことが明らかになった。本研究は、高い有効性を持つワクチンの開発と、高齢者に適したワクチン接種スケジュールの立案に役立つ可能性がある」とまとめた。

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統合失調症の脳の老化~ENIGMAコンソーシアム

 統合失調症は、生涯にわたる認知機能低下、加齢に伴う慢性疾患や早期死亡のリスク増加と関連している。英国・バース大学のConstantinos Constantinides氏らは、成人統合失調症患者における重度の脳の老化に関するエビデンスを調査し、ENIGMA Schizophrenia Working Groupによるプロスペクティブメタ解析研究にてそれらと臨床的特徴との関連を評価した。その結果、統合失調症患者における重度の構造的な脳の老化が示唆された。著者らは、統合失調症における脳の老化や介入による影響の臨床的意義に関するさらなる評価には、統合失調症とさまざまな精神的および身体的アウトカムの縦断的研究が役立つであろうと述べている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年12月9日号の報告。 脳の予測年齢は、皮質厚および皮質面積の68の測定値、7つの皮質下体積、側脳室体積、総頭蓋内容積に基づく独立データにより導出されたモデルを用いて推定した。すべてのデータはT1強調MRI脳画像を用いて収集した。健康な脳の老化との違いは、脳の予測年齢と実年齢の差(脳予測年齢差、brain-predicted age difference:brain-PAD)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、26件のコホート研究のデータより抽出された統合失調症患者2,803例(平均年齢:34.2歳、年齢範囲:18~72歳、男性の割合:67%)および健康対照者2,598例(平均年齢:33.8歳、年齢範囲:18~73歳、男性の割合:55%)。・年齢、性別、部位で調整した後、統合失調症患者は健康対照者と比較し、brain-PADが平均3.55年(95%信頼区間:2.91~4.19、I2=57.53%)高かった(Cohen's d=0.48)。・統合失調症患者において、brain-PADと特定の臨床的特徴(発症年齢、罹病期間、症状重症度、抗精神病薬の使用状況と用量)との関連は認められなかった。

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中国・高血圧の診断と治療、農村と都市での乖離が存続/BMJ

 中国では、高血圧の有病率は2010年以降にわずかに減少しているが、治療およびコントロールの割合は依然として低い状態にとどまり、農村部と都市部の乖離も存続していることが、中国・疾病管理予防センターのMei Zhang氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年1月11日号で報告された。2004~18年の6回の調査データを解析 研究グループは、中国における高血圧の有病率と疾病管理の最近の傾向を評価する目的で、6回の全国調査データの解析を行った(中国国家重点研究開発計画の助成を受けた)。 解析には、China Chronic Disease and Risk Factor Surveillance(CCDRFS)の2004~18年のデータが用いられた。対象は、成人(年齢18~69歳)の地域住民64万2,523人で、6回の調査人数の内訳は2004年が3万501人、2007年が4万7,353人、2010年が9万491人、2013年が15万6,836人、2015年が16万2,293人、2018年が15万5,049人であった。 高血圧は、血圧≧140/90mmHgまたは降圧薬の服用と定義された。 主要アウトカムは、高血圧の有病率、高血圧を自覚している人々、高血圧治療を受けている人々、血圧が<140/90mmHgにコントロールされている人々の割合であった。9割近くが血圧コントロール不良 中国の年齢18~69歳の成人における高血圧の標準化有病率は、2004年の20.8%(95%信頼区間[CI]:19.0~22.5)から、2010年には29.6%(27.8~31.3)へと上昇したが、その後は低下して2018年には24.7%(23.2~26.1)となった。 2010~18年の、高血圧の年間有病率低下は、女性が男性の2倍以上で大きかった(女性:-0.83ポイント[95%CI:-1.13~-0.52]vs.男性:-0.40ポイント[-0.73~-0.07])。 2004年以降、高血圧の病識率、受療率、コントロール達成率にはわずかな改善がみられたが、2018年の時点で依然として低い状態で、それぞれ38.3%(95%CI:36.3~40.4)、34.6%(32.6~36.7)、12.0%(10.6~13.4%)であった。 2018年に、年齢18~69歳の成人のうち2億7,400万人(95%CI:2億3,800万~3億1,100万)が高血圧を有しており、このうち2億4,000万人(95%CI:2億1,500万~2億6,400万)がコントロール不良と推定された。 すべての調査で、女性は高学歴者に比べ低学歴者で高血圧の有病率が高かったが、男性では学歴の高低による一定の傾向はみられなかった。また、高血圧の診断とコントロールは、都市部に比べ農村部でより改善されていたが、都市部と農村部には依然として高血圧コントロールに関する乖離(農村部で不良)が存続していた。 著者は、「これらの知見は、プライマリケアの強化を通じて、高血圧の発見と治療法の改善を進める必要があり、とくに農村部での強化の必要性を強調するものである」と指摘している。

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第131回 新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府岸田総理は、感染症法で現在「2類相当」として取り扱っている新型コロナウイルスについて重症化率が2022年夏時点で60歳未満が0.01%、80歳以上でも1.86%と季節性インフルエンザ並みになったとして、麻疹や風疹と同じ「5類」扱いとする方針を固めた。今後は、一般の医療機関でも新型コロナウイルスの患者の受け入れは可能としている。厚生労働省では、ワクチンの公費負担での接種対象を高齢者とするほか屋内でのマスク着用のあり方など、今後の方針について検討を開始している。来週には、専門家からなる厚生科学審議会で今後の方針について議論を行う。(参考)新型コロナ 今春「5類」移行検討 公費負担など本格議論へ(NHK)コロナ「5類」移行、5月の連休前後案も…ワクチン公費負担は高齢者ら限定検討 (読売新聞)コロナ、今春にも「5類」に 首相指示、公費負担縮小へ マスク着用「見直す」(日経新聞)2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重三重大学附属病院の臨床麻酔部において、薬の処方の見返りに、奨学寄付金を受け取ったことで、第三者供賄罪と詐欺罪に問われた元教授の被告に対して、1月19日津地方裁判所は、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決によれば、2018年3月に、被告に対して小野薬品工業の薬剤「オノアクト」を大量に発注するように依頼された見返りに、被告が代表を務める一般社団法人に現金200万円を振り込ませた疑い。さらに、2019年から2020年には、手術患者60人あまりに対して、この薬剤を使用したように装って、未投薬にもかかわらず、約82万円の診療報酬を詐取した。被告は、この他に元講師と共謀して日本光電工業(東京都)の医療機器納入で便宜供与の見返りに、一般社団法人の口座に寄付金名目で200万円を振り込ませていた。(参考)三重大病院元教授に有罪判決 薬剤納入で供賄と詐欺罪 地裁判決(毎日新聞)病院汚職200万円は「賄賂」 地裁判決 三重大元教授有罪(読売新聞)三重大病院汚職事件 元教授に執行猶予付き有罪判決(NHK)3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省厚生労働省は1月19日に「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」を開催し、昨年「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」からの提言を踏まえて定められた、がん診療連携拠点病院等の整備指針に基づき、2023年4月から「がん診療連携病院」を新たに指定することとした。全国の都道府県がん診療連携拠点病院は一般型49施設、特例型2施設、地域がん診療連携拠点病院は一般型325施設などが指定される見込み。検討会の意見を踏ませて、加藤厚労大臣が指定の手続きを行い、本年4月1日から新たながん診療拠点として指定される。なお、一部の病院では指定要件を充足していないため指定を見送ることも検討されたが、充足の見込みがたっておらず「空白医療圏」となってしまうため指定となった病院もみられた。(参考)都道府県がん拠点病院51施設、地域がん拠点病院350施設など、本年(2023年)4月1日から新指定-がん拠点病院指定検討会(Gem Med)第22回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会(厚労省)がん診療連携拠点病院の指定要件(同)4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省厚生労働省は、1月16日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、オンライン資格確認などシステムについて討議を行った。今年4月に施行される保険医療機関・薬局のオンライン資格確認導入の義務化について、令和4年度末時点で「現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局」については、やむを得ない事情があるとして、期限付きの経過措置を設けられたが、猶予期間の延長について、保険者らからは延長を懸念する声が上がった。医療機関・薬局でのオンライン資格確認システムの導入は、顔認証付きカードリーダー申込数は、義務化対象施設では97.7%と高いものの、準備完了は義務化対象施設でも52.6%と伸び悩みがみられていることが明らかになった。国としては、来年秋には、現行の健康保険証がマイナンバーカードに1本化されることもあり、令和5年3月末までのさらなる導入の加速化を図りたいとしている。(参考)第162回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)マイナカード、進まぬ活用 医療、免許どうなるか(産経新聞)オンライン資格確認、電子処方箋など医療DXの推進には国民の理解が不可欠、十分かつ丁寧な広報に力を入れよ-社保審・医療保険部会(Gem Med)オンライン資格確認の導入猶予、延長をけん制 社保審・部会で複数委員(CB news)5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に東京工業大学と東京医科歯科大学が2024年に統合されるのを受けて、大学側は新たな大学の名称を「東京科学大学(英語表記:Institute of Science Tokyo)」とすることを1月19日に発表した。両大学は新大学の目指す姿として、「両大学の尖った研究をさらに推進」、「部局などを超えて連携協働し『コンバージェンス・サイエンス』を展開」、「総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材の輩出」、「イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化」を謳っており、できる限り早期の統合を目指して、今月中に大学設置・学校法人審議会へ提出することを決定している。(参考)新大学名称を「東京科学大学(仮称)」として 大学設置・学校法人審議会への提出を決定(東京医科歯科大学)東工大・医科歯科大、統合後の新名称「東京科学大学」に(日経新聞)東京科学大「皆が覚えられる名に」「親しみが大事」…「工業」「医科」使用も見送り(読売新聞)「東京科学大学」正式発表、略称は「科学大」…英語「Institute of Science Tokyo」(同)6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターは、近年、サイバー攻撃の脅威の高まりを受けて、被害を受けた組織が攻撃の内容や被害情報について外部に共有するためのガイダンス案を作成し、現在パブリックコメントを募集している。日本病院会の相澤会長は、1月17日の定例記者会見で、サイバーセキュリティに関する責任の範囲について統一基準を明確化するとともに費用負担について国側に求める方針を明らかにした。今後、日本病院会はサイバー攻撃に対する対応について、厚生労働省に対して提言をまとめたいとしている。なお、パブリックコメントは1月30日が締切となっている。(参考)「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス(案)」に関する意見募集について(内閣府)サイバー攻撃被害「枠組み超えた情報連携が必要」内閣官房がガイダンス案公表、フローやFAQも(CB news)サイバーセキュリティ対策における医療機関・ベンダー等の間の責任分解、現場に委ねず、国が「統一方針」示すべき?日病・相澤会長(Gem Med)

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事例016 両膝単純(対称部位)撮影の算定不備【斬らレセプト シーズン3】

解説複数の医療機関にて事例の算定不備を見出しました。対称部位のエックス線診断に係る取り扱いです。エックス線診断の一般的事項(8)には、「対称部位の撮影。耳・肘・膝等の対称器官又は対称部位の健側を患側の対象として撮影する場合における撮影料、診断料については、同一部位の同時撮影を行った場合と同じ扱いとする」[筆者注:エックス線診断料通則3、同一の部位につき(中略)同一の方法により撮影した場合は一連の撮影とする]とあります。一側に疾患があって疾患の無い健側との画像比較を行う場合の規定です。本来、疾患の無い健側の撮影は不必要ですので算定できません。医学的に比較対象を行う場合には一連として認めるという規定です。逆読みすると、両側に疾患があればそれぞれに算定できると解釈されます。算定者は傷病名に「両…」とあったため、病名が1つであるから規定によって一連としなければならないと考えて算定していました。対称部位に「両」とある場合は左右に疾患があることを示します。「両」ならびに「左右」とあれば、対象部位の左右に疾病があることを表し、それぞれに点数が算定できることを伝えて適正算定に向けた対策としました。

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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