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第172回 long COVIDと関連する遺伝子領域を同定

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)と関連する6番染色体の遺伝子領域が見つかりました。16ヵ国での24試験のlong COVID患者6千人超(6,450人)とそうでない約110万人(1,09万3,995人)が全ゲノム関連解析(GWAS)で検討され、ほぼどの組織でも発現することが知られる転写因子FOXP4の遺伝子領域rs9367106地点の塩基がシトシン(rs9367106-C)の人のlong COVIDの発現率はそうでない人に比べて1.6倍高いことが示されました1,2)。rs9367106地点とlong COVIDの関連はFOXP4遺伝子発現の変化を介するらしく、遺伝子発現データベースGTExを解析したところrs9367106-Cの代理役rs12660421-Aと肺や脳の視床下部のFOXP4遺伝子発現亢進の関連が認められました。先立つ研究でFOXP4とCOVID-19重症度の関連が示されています。今回の研究でも同様の結果が得られており、COVID-19重症度がlong COVID発生におそらく一枚かむことがさらに裏付けられました。ただし、FOXP4遺伝子座とlong COVIDの結び付きはより強く、重症度だけで説明がつくものではなく、重症度とは独立したFOXP4とlong COVIDの関連がどうやら存在するようです。long COVIDの快復のほどは?世界の少なくとも6,500万人がlong COVIDを患っており、その数は日々増えています3)。頭痛、疲労、脳のもやもやなどの症状を特徴としますが、long COVIDの定義はいまだに議論されています。上述したような遺伝子解析の成果が出始めてはいるもののlong COVIDの生理学的な仕組みもこれから調べていく必要があります。しかしわかってきたこともあります。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界に広まり始めてから3年以上が過ぎ、long COVID患者のどれほどが快方に向かうかの目安となる試験結果2つがこの5月に報告されています。5月25日にJAMA誌に掲載された報告では米国の成人約1万人が調べられ、感染から6ヵ月時点でlong COVIDだった人の3人に1人が9ヵ月時点ではlong COVIDを脱していました4)。その約1週間後の5月31日にBMJ誌に掲載された別の報告はワクチン普及前にSARS-CoV-2感染した成人約千人の追跡結果です。それら感染者のうち5人に1人を超える22.9%は感染から6ヵ月経っても不調が続いていましたが、1年後のその割合は5人に1人に満たない18.5%に低下しました5)。2年後の不調患者の割合は17.2%であり、1年後とあまり変わりませんでした。すなわち感染から1年経つと不調の解消は頭打ちとなるようです。感染から1年後までは快方がより期待できるものの1年を過ぎるといよいよ慢性病態に陥るとBMJ報告の著者は言っています6)。参考1)Genome-wide Association Study of Long COVID. July 01 2023. medRxiv.2)Gene linked to long COVID found in analysis of thousands of patients / Nature3)Davis HE, et al. Nat Rev Microbiol. 2023;21:133-146.4)Thaweethai T, et al. JAMA. 2023;329:1934-1946.5)Ballouz T, et al. BMJ. 2023;381:e074425.6)Long COVID: answers emerge on how many people get better / Nature

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男性機能の維持にも、テストステロン増加に最適な運動/日本抗加齢医学会

 いくつになっても男性機能を維持させたい、死亡リスクを減らしたい、というのは多くの男性の願いではないだろうか―。「老若男女の抗加齢 from womb to tomb」をテーマに掲げ、第23回日本抗加齢医学会総会が6月9~11日に開催された。そのシンポジウムにて前田 清司氏(早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授)が『有酸素運動とテストステロン』と題し、肥満者のテストステロン増加につながる方法、男性機能を維持するのに適した運動について紹介した。肥満者のテストステロン増加に運動が影響、男性機能には… 近年、国内の死因別死亡数では心血管疾患や脳血管疾患が上位を占めているが、肥満者(BMI≧25)が増加することでこの死因が押し上げられることが示唆されている1)。そのため、肥満者を減らせば心・脳血管疾患も減少傾向に転じる可能性がある。 そこで、前田氏はこの課題解決としてテストステロン濃度に着目。ある研究2)によると肥満者ではテストステロン濃度が低下し、またある研究3)ではテストステロンは血管機能(動脈スティフネスや中心血圧)に保護的に作用することが報告されている。加えて、テストステロン増加がさまざまな疾患リスク減少に寄与する4)ことも報告されている。以上の報告から同氏らは、肥満者ではテストステロン値が低下し、その結果、心血管リスクが上昇していると仮説を立て、肥満者において、食事・運動介入による心血管やテストステロン濃度への影響を調査した。 本研究ではまず、肥満者を対象に生活習慣の改善介入(食事と運動の併用介入)を3ヵ月間実施した。有酸素性運動は3回/週(1回あたり90分、内訳:ストレッチ10~15分、有酸素性運動40~60分、整理運動20~30分)行った。食事法には四群点数法を導入し、1食あたり560kcal程度、1日1,680kcal程度の摂取とし、1回/週の週間食事指導、食事記録に基づいた個別指導が行われた。続いて、肥満者を運動群(n=49)、食事群(n=28)、併用群(n=56)の3群に割付け、食習慣と運動習慣のどちらがよりテストステロン値に影響を与えるかを調査した。なお、併用群ではいずれもの介入がなされた。さらに、運動能力の男性機能やテストステロンへの影響を調べるために筋力(握力)と持久力(最大酸素摂取量)の関係性についても解析した。 主な結果は以下のとおり。・食事と運動の併用介入による減量後に、動脈スティフネスと中心血圧はともに低下した。また、介入後のテストステロン濃度の増加が大きいほど脈波伝播速度で評価した動脈スティフネスの低下は大きく、中心血圧の低下も大きかった。・運動群、食事群、併用群のそれぞれの効果を検討した際の体重変化は、運動群で2kg、食事群で8kg、併用群で12kgの減量がみられ、併用群が最も効果的であった。ただし、単独介入を比較すると、食事群のほうが運動群より効果が高かった(-9.8% vs.-2.5%、p<0.01)。・食事群と運動群でテストステロン濃度の増加率をみると、それぞれ3.8%、17.8%の増加(p<0.05)で、テストステロンの増加には運動療法が重要であった。・運動強度は、高強度の身体活動量(早歩きや軽いジョギング)の増加とテストステロンの増加に有意な関係性がみられた。・持久力および筋力が高いと勃起機能が高く、有酸素性運動はAMSスコア(男性更年期症状の自己評価による点数)を改善することから、有酸素性運動かつ筋力トレーニングが男性機能に有用であった。 以上の結果より、同氏は「体重減少だけをみると食事介入が影響するが、テストステロン濃度の増加には有酸素性運動が、とくに少し強度が高めの早歩きや軽いジョギングなどの運動が有用であることが示唆された。また、男性機能の維持には筋力、持久力を高く保つことが重要で、とくに軽いジョギングや自体重での筋力トレーニングなどの運動療法の実施が重要」と発表した。

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イノツズマブ+ブリナツモマブ併用mini-Hyper-CVD療法で再発ALLの生存率改善

 mini-Hyper-CVD療法とイノツズマブの併用は、再発難治性急性リンパ性白血病(ALL)患者において有効性を示し、ブリナツモマブ追加後はさらに生存率が向上したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHagop Kantarjian氏らによる研究で明らかになった。Journal of Hematology & Oncology誌2023年5月2日号の報告。 成人ALL治療は近年、大きくその様相が変化している。B細胞上のCD19抗原を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体ブリナツモマブやCD22を標的とした抗体薬物複合体のイノツズマブ オゾガマイシンや各種CAR-T細胞療法など、新しい治療法選択肢が登場したためである。 再発難治性ALLに対するブリナツモマブとイノツズマブ単剤の有効性は、すでに確認されているとおりである。今回は、イノツズマブを用いた低用量のmini-Hyper-CVD療法に、ブリナツモマブを追加することで、化学療法による負担を減らすことができないかを検討した。新しいレジメンの有効性と安全性 Ph陰性、CD22陽性の再発難治性B細胞性ALL(B-ALL)患者を対象に試験が行われた。最初の4サイクルは低用量のmini-Hyper-CVD療法とイノツズマブが併用された。その後、ブリナツモマブを追加してさらに4サイクルの治療が行われたが、その際にイノツズマブは減量・分割投与された。 本試験の主要評価項目は全奏効率と全生存期間(OS)であった。 最終的に110例の患者がイノツズマブとブリナツモマブの併用療法を受け、108例(98%)の患者が前治療として化学療法を受けていた。 主な結果は以下のとおり。・91例(83%)が奏効を示し、完全奏効は69例(63%)であった。・75例(82%)の患者で測定可能残存病変が陰性であった。・追跡期間中央値48ヵ月、推定3年OS率は40%(95%信頼区間[CI]:30~49%)であった。・より詳細に解析した結果、mini-Hyper-CVD療法とイノツズマブ併用患者の推定3年OS率は34%(95%CI:23~45%)、ブリナツモマブ追加群の推定3年OS率は52%(95%CI:36~66%)であった。・治療の忍容性は良好で、ほとんどの副作用はGrade1/2であった。・早期死亡(4週間以内の死亡)は7例(6%)、CRで死亡した患者は9例で、感染症2例、心筋梗塞1例、気管支肺出血1例、肝移植片対宿主病1例、死因不明4例であった。・ブリナツモマブ関連の有害事象により中断した例はあったが、減量して再開するなどの処置が行われ、ブリナツモマブを中止した患者はいなかった。新しい治療選択肢として この結果から、抗体療法を単剤で行うのではなく、"トータル化学免疫療法レジメン"という形で、あらゆる有効な治療法の組み合わせを検討することの重要性が示された。同時に、イノツズマブ+ブリナツモマブ併用mini-Hyper-CVD療法の有効性と安全性が確認され、ブリナツモマブの追加により転帰がさらに改善する可能性が示唆された。今後、大規模な多施設共同試験を実施し、成人再発難治ALLにおける新しい標準治療として確立していくことが期待される。

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コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連

 これまで、コーヒー摂取と身体状態や死亡リスクとの関連性に関するエビデンスは蓄積されているが、精神疾患との関連性を評価した報告は限られていた。中国・杭州師範大学のJiahao Min氏らは、コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連を調査し、さらにコーヒーの種類や添加物による影響を検討した。その結果、コーヒーを1日当たり2~3杯摂取することは、メンタルヘルス改善のための健康的なライフスタイルの一環として、重要である可能性が示唆された。Psychiatry Research誌8月号の報告。コーヒーとうつ病および不安症との間にはJ字型の関連性 英国バイオバンクのデータを用いて、2006~10年のベースラインタッチスクリーンアンケートに回答した参加者14万6,566人のデータを分析した。フォローアップ期間中、2016年にこころとからだの質問票(PHQ-9)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)を用いて、うつ病および不安症の発症を確認した。コーヒーのサブタイプは、インスタントコーヒー、ひいたコーヒー、カフェインレスコーヒーとし、添加物にはミルク、砂糖、人工甘味料を含めた。関連性の評価には、多変数調整ロジスティック回帰モデルおよび制限付き3次スプラインを用いた。 コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・コーヒーを摂取していた参加者は約80.7%、多くは1日当たり2~3杯(41.2%)摂取していた。・コーヒー摂取とうつ病および不安症との間には、いずれもJ字型の関連性が認められた。・精神疾患の発症リスクが最も低かったコーヒー摂取量は、1日当たり約2~3杯であった。・ひいたコーヒー、ミルク入りコーヒー、無糖コーヒーを1日当たり2~3杯飲んでいた参加者も、同様の結果であった。

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肝線維化やNASH消失にpegozaferminが有効か/NEJM

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療において、線維芽細胞増殖因子(FGF21)アナログpegozaferminはプラセボと比較して、NASHの悪化を伴わない肝線維化の改善効果が優れ、肝線維化の悪化を伴わないNASH消失の達成割合も良好であることが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRohit Loomba氏らが実施した「ENLIVEN試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年6月24日号に掲載された。米国の無作為化プラセボ対照第IIb相試験 ENLIVEN試験は、米国の61施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIb相試験であり、2021年9月~2022年8月の期間に患者の登録が行われた(米国・89bioの助成を受けた)。 年齢が21~75歳、肝生検でNASHと確定され、肝線維化ステージF2またはF3(中等度または重度)の患者が、pegozafermin 15mg(毎週1回)、同30mg(毎週1回)、同44mg(2週ごとに1回)、2種のプラセボ(毎週1回または2週ごとに1回)を皮下投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは2つで、24週時点のNASHの悪化を伴わない肝線維化の改善(ステージ0~4のスケール[ステージが高いほど重症度が高い]で、1ステージ以上の低下)と、24週時点の肝線維化の悪化を伴わないNASHの消失であった。第III相試験での開発の続行を支持する結果 222例が無作為化され(pegozafermin15mg群21例、同30mg群73例、同44mg群57例、プラセボ群71例)、うち219例が投与を受けた。全体の平均(±SD)年齢は55.6±10.4歳、87例(39%)が男性、208例(94%)が白人で、平均体重は102.2±20.9kg、平均BMI値は36.6±5.9で、147例(66%)が2型糖尿病だった。 24週時にNASHの悪化を伴わずに肝線維化が少なくとも1ステージ改善した患者の割合は、プラセボ群が7%であったのに対し、15mg群は22%(プラセボ群との差:14ポイント、95%信頼区間[CI]:-9~38)と有意な差は認められなかったが、30mg群は26%(19ポイント、5~32、p=0.009)、44mg群は27%(20ポイント、5~35、p=0.008)で、プラセボ群に比べ2つの用量とも有意に優れた。 また、24週時に肝線維化の悪化を伴わないNASH消失を達成した患者の割合は、プラセボ群が2%であったのに対し、15mg群は37%(プラセボ群との差:35ポイント、95%CI:10~59)、30mg群は23%(21ポイント、9~33)、44mg群は26%(24ポイント、10~37)で、プラセボ群に比して3つの用量とも良好だった。 pegozafermin群で最も頻度の高い有害事象は、吐き気(15mg群19%、30mg群32%、44mg群19%)と下痢(24%、19%、14%)であった。重篤な有害事象は、プラセボ群4%、15mg群5%、30mg群4%、44mg群11%で発現し、44mg群の1例(急性膵炎)が担当医によって治療関連と判定された。 著者は、「2週間に1回の投与が可能であれば、患者の利便性と治療へのアドヒアランスが向上する可能性がある。本試験の結果は、より大規模で長期の第III相試験におけるpegozaferminの開発の続行を支持するものであり、用量選択の指針として有益な情報となるであろう」としている。

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GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutideの有効性・安全性/Lancet

 2型糖尿病患者の治療において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴンの3つの受容体の作動活性を有する新規単一ペプチドretatrutideは、プラセボと比較して、血糖コントロールについて有意かつ臨床的に意義のある改善を示すとともに、頑健な体重減少をもたらし、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬とほぼ同様であることが、米国・Velocity Clinical Research at Medical CityのJulio Rosenstock氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月26日号で報告された。米国の無作為化プラセボ/実薬対照第II相試験 本研究は、米国の42施設が参加した二重盲検無作為化ダブルダミー・プラセボ/実薬対照第II相試験であり、2021年5月~2022年6月の期間に患者のスクリーニングと無作為化が行われた(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢18~75歳、HbA1c値7.0~10.5%(53.0~91.3mmol/mol)、BMI値25~50の2型糖尿病患者が、スクリーニング前の少なくとも3ヵ月間、食事療法と運動療法のみの治療、または安定用量のメトホルミン(≧1,000mg、1日1回)による治療を受けた後、次の8つの群(いずれも週1回皮下投与)に、2対2対2対1対1対1対1対2の割合で無作為に割り付けられた。 (1)プラセボ、(2)デュラグルチド1.5mg、(3)retatrutide 0.5mg、(4)同4mg(開始用量2mg)、(5)同4mg(漸増せず)、(6)同8mg(開始用量2mg)、(7)同8mg(開始用量4mg)、(8)同12mg(開始用量2mg)。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点までのHbA1cの変化であり、副次エンドポイントには、36週時点までのHbA1cおよび体重の変化が含まれた。 281例が登録され、プラセボ群に45例、デュラグルチド1.5mg群に46例、retatrutide 0.5mg群に47例、同4mg漸増群に23例、同4mg群に24例、同8mg緩徐漸増群に26例、同8mg急速漸増群に24例、同12mg漸増群に46例が割り付けられた。全体の平均年齢は56.2(SD 9.7)歳、女性が156例(56%)で、平均糖尿病罹患期間は8.1(SD 7.0)年、白人が235例(84%)であり、平均HbA1cは8.3%(SD 1.1)、平均BMI値は35.0(SD 6.3)、平均体重は98.2kg(SD 21.1)であった。脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させる効果も 24週時におけるHbA1cのベースラインからの最小二乗平均変化は、プラセボ群が-0.01%(SE 0.21)、デュラグルチド1.5mg群が-1.41%(0.12)であったのに対し、retatrutide 0.5mg群は-0.43%(0.20)、4mg漸増群は-1.39%(0.14)、4mg群は-1.30%(0.22)、8mg緩徐漸増群は-1.99%(0.15)、8mg急速漸増群は-1.88%(0.21)、12mg漸増群は-2.02%(0.11)であった。 retatrutideによるHbA1cの低下は、プラセボ群と比較して0.5mg群を除く5つの群で有意に大きく(いずれもp<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較では8mg緩徐漸増群(p=0.0019)と12mg漸増群(p=0.0002)で有意に大きかった。36週時にも、これらと一致した知見が得られた。 また、体重は36週の時点でretatrutideの用量依存性に減少し、減少率は0.5mg群3.19%(SE 0.61)、4mg漸増群7.92%(1.28)、4mg群10.37%(1.56)、8mg緩徐漸増群16.81%(1.59)、8mg急速漸増群16.34%(1.65)、12mg漸増群16.94%(1.30)であった。プラセボ群の体重減少率は3.00%(0.86)、デュラグルチド1.5mg群は2.02%(0.72)だった。 体重減少は、プラセボ群と比較してretatrutideの用量が4mg以上の群ではいずれも有意に大きく(4mg漸増群:p=0.0017、これ以外のすべての群:p<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較でも4mg以上の群で有意に大きかった(いずれもp<0.0001)。 軽度~中等度の消化器系の有害事象(吐き気、下痢、嘔吐、便秘など)が、retatrutide群の35%(67/190例、0.5mg群の13%[6/47例]から8mg急速漸増群の50%[12/24例]までの範囲)、プラセボ群の13%(6/45例)、デュラグルチド1.5mg群の35%(16/46例)で発現した。試験期間中に重篤な低血糖の報告はなく、死亡例もなかった。 著者は、「同時に、retatrutideは脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させ、心代謝系のアウトカムを全般的に改善した」とし、「これら第II相試験の知見は、2型糖尿病および他の肥満関連合併症を有する肥満患者を対象とする第III相試験において、retatrutideの有効性と安全性をさらに検討することを支持するものである」と指摘している。

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医療裁判にも影響か?肝機能の指標がALT>30に

 肝機能検査として血液検査で汎用されるALT値。今後、これが30を超えていたら、プライマリ・ケア医やかかりつけ医による肝疾患リスクの確認が必要となる―。6月に開催された第59回日本肝臓学会総会にて、ALT>30を指標とする『奈良宣言』が公表された。これは、かかりつけ医と消化器内科医が適切なタイミングで診療連携することで患者の肝疾患の早期発見・早期治療につなげることを目的に、さまざまなエビデンスに基づいて設定された。記者会見では吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授/日本肝臓学会理事)らが本宣言の背景や目的を説明しており、今回ケアネットでは日本肝臓学会理事で本宣言での特別広報委員を務める江口 有一郎氏(江口病院 ロコメディカル総合研究所 所長)に独自取材を行った。「ALT>30」の根拠と利点 ALTの新たな指標設定の理由は、以下のとおりである。(1)シンプルで健診や一般診療で汎用されている項目(2)英文も含めて基準値に関する文献が多数存在する(3)わが国の特定保健診査(特定健診)および人間ドック学会の基準値はALT30以下(4)特定健診や人間ドック学会の基準値は日本消化器病学会肝機能研究班の意見書に基づいて決定 今回、なぜこのような基準値を設けたのか、プライマリ・ケア医としても第一線で活躍する江口氏によると「これまでは“肝炎ウイルス検査を受けましょう”とか“肝臓は沈黙の臓器”というように文脈で注意喚起を行っていた。しかし、それでは捉え方に個人差が生じてしまうため、行動経済学の観点を盛り込み、参照点※を明確にするために、一般の方でも聞き覚えのある検査指標であるALTに注目して基準を設けた」と説明した。一般市民の方は「ALT>30でかかりつけ医を受診しましょう」と言われても、基準値範囲内であり自覚症状もなければ、健康指導を受けるだけと思ってしまいがちである。しかし、「明確な基準がなかったことから亡くなった方が多くいるのは事実であり、B型・C型肝炎の患者会や原告団の方々もこの宣言に賛成の意を示され、これ以上肝臓で苦しむ人を増やしたくないとおっしゃっている」と話した。※参照点(Reference Point):プロスペクト理論における利得と損失の判断を分ける基準点学会が宣言した指標、裁判にも影響か また同氏によると、宣言後に本指標を無視してしまうと、注意義務違反が生じる場合もあるという。「肝硬変や肝臓がんは年数を経て病態が進行していく疾患なので、ある患者がこの宣言以降に人間ドックでALTが35だったとしましょう。しかし、医師は基準値内だからと次の行動を起こさず、翌年にその患者が肝硬変になって“医師に検査を進めてもらえなかった”と医療裁判を起こしたらどうだろうか」と例示し、「ある弁護士からは医師側が敗訴する可能性が十分ありうるといった見解を受けたため、医療安全の観点からも医療者に周知していく必要がある」と医師側のリスクを指摘した。同氏によるとこの宣言の指標が浸透するには1~2年はかかるそうだが、その間に医師一人ひとりが新たな指標を意識し、注意しておく必要がありそうだ。 なお、今回の宣言は『日本における主要な臨床検査項目の共用検査範囲』(日本臨床検査標準協議会)では基準値内の症例も対象となるが、健康成人の約15%でALT>30を満たすとの報告があることから、この宣言がプライマリ・ケア医やかかりつけ医の診療に影響を与えうるとも学会は見解を示している。さらに、厚生労働省が作成した令和6年度版の『標準的な健診・保健指導 プログラム』での健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値(別紙5)において、保健指導判定値(ALT≧31、AST≧31)として記されている点は、本指標の明確な根拠である。 現在、YouTubeにて「奈良宣言2023 over30 せんとくん」が公開されており、視聴回数は38万回を突破している(7/14時点)。このようなSNSを活用した市民啓発にも力を入れている同氏は「国内では日本糖尿病学会や日本動脈硬化学会などが疾患予防啓発の一環として、熊本宣言や大阪宣言を行っている。肝臓学会も50年もの歴史のなかでこのようなステートメントを提言したのは初の試みであり、大きなことと言える。ぜひ、慢性肝臓病(Chronic Liver Disease:CLD)予防のために患者さんの検査値をチェックし、ほかの検査値と複合的に診断・鑑別、そして専門医への紹介を行ってもらいたい」とし、「日本肝臓学会では奈良宣言特設サイトを設け、一般市民や患者向けの説明リーフレットなどの患者啓発ツールを自由にダウンロードして使えるよう用意しているので、ぜひ活用してほしい」と締めくくった。

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統合失調症治療の専門家、早期の長時間作用型注射剤使用を支持

 統合失調症は、精神症状、陰性症状、認知機能低下などを来す慢性疾患である。統合失調症患者は、一般的にアドヒアランスが不良であり、これに伴う再発によりアウトカム不良に至る可能性がある。抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、治療アドヒアランスを改善し、再発・再入院リスクを低下させることが期待される。初発や発症初期の統合失調症患者にLAIを使用することで、その後のベネフィットが得られる可能性があるものの、歴史的にLAIの使用は慢性期患者を中心に行われてきた。スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学のCelso Arango氏らは、初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスを報告した。その結果、疾患の重症度、再発回数、社会的支援の有無にかかわらず、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療が支持された。しかし、この結果は臨床医の認識とギャップがあるため、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療に関するエビデンスを作成していくことが求められる。BMC Psychiatry誌2023年6月21日号の報告。 初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスは、3段階のデルファイ法プロセス(第1段階:紙面調査、1:1面談、第2~3段階:電子メール調査)を用いて収集した。文献レビューおよび専門家5人からなる運営委員会の意見に基づき、患者集団、有害事象マネジメント、機能回復に関するステートメントを作成した。専門家の意見が次の段階に進むかどうか、および合意レベルのコンセンサスが得られるかを分析ルールに従い判断した。中心傾向(最頻値、平均値)および変動性(四分位範囲)の測定値が報告され、パネリストがグループ全体の反応を参照し、以前の反応を評価することに役立てた。 主な結果は以下のとおり。・デルファイ法のパネリストは、フランス、イタリア、米国、ドイツ、スペイン、デンマーク、英国の7ヵ国でLAIによる統合失調症の治療経験を有する精神科医17人であった。・パネリストに対し3つのカテゴリ(患者集団、薬剤の投与量・マネジメント・有害事象、機能回復の領域および評価)に関する73のステートメントが提示された。・55のステートメントにおいて、コンセンサスとみなされる80%以上の合意が得られた。・合意度が低い(40~79%)または非常に低い(39%以下)項目は、初発および発症初期の統合失調症患者における投与開始時期、有効性の喪失時のマネジメント、ブレークスルーエピソードのマネジメントであり、現在のエビデンスギャップを反映していた。・初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAIのベネフィットが強調されており、再発、再入院、機能不全のリスク軽減に関するコンセンサスが得られた。・LAI使用に対しては、これらのベネフィットだけでなく、症状寛解を超えた長期的な機能回復との関連性が支持された。

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第168回 コロナワクチン接種に悩む友人の“例え”が衝撃的だった話

先週、沖縄での新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)について触れたが、この秋からのワクチン接種に関して厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は6月16日、オミクロン株XBB.1系統に対応した新しい1価ワクチンを使用する方針を了承。これに応じて7月7日、ファイザー、モデルナの両社はオミクロン株XBB.1.5系統対応の1価ワクチンの承認事項一部変更(通称・一変)を申請した。さすがに抗原タンパク質の設計変更が容易なメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンだと、こうも迅速に対応が可能なのだと個人的には改めて驚いている。もちろん一変なので改めて臨床試験を行う必要はないが、前述の6月16日の分科会ではモデルナが実施した予備的臨床試験の結果も報告されている。この予備的臨床試験は18歳以上ですでにワクチンを4回接種済み、かつBA.4/5用の追加接種から3ヵ月以上を経た101人を2群に分け、5回目の追加接種としてXBB.1.5系統対応1価ワクチンとBA.4/5+XBB.1.5系統対応の2価ワクチンを接種して比較したもの。それによると、接種後の中和抗体価の変化は、XBB.1.5系統に対しては1価ワクチンで16.6倍、2価ワクチンで11.6倍、XBB.1.16系統に対しては1価ワクチンで10.2倍、2価ワクチンで9.3倍、いずれも上昇したとの結果だ。過去のオミクロン株BA.1対応あるいはBA.4/5対応の時の中和抗体価上昇に関する臨床試験の際も、やはりこれらに対応した1価と武漢株を含む2価のワクチンでは1価ワクチンのほうが中和抗体価の上昇がより高いことが確認されている。しかし、念のためと称して2価ワクチンが採用されたことを考えれば、今回はこの経験が生かされていると言えるかもしれない。さて問題はここからだ。もはや新型コロナワクチンに関しては、感染予防、発症予防、重症化予防でも一定の有効性が認められることに医学的にほぼ異論はないと考えるのが一般的である。一部にそうではない意見があることはもちろん承知しているが、誤解を恐れずに言えばそれはノイズである。しかし、すでに多くの国民が「コロナ禍」、そして相次ぐ「ワクチンの追加接種」に疲弊しているのは確かだろう。実際、今春の接種が開始された直後から知人・友人から「まだワクチンを接種したほうが良いの?」と相談を受けることが増えた。これに対して、私はまずはかかりつけ医がいるかどうかを確認し、「いる」と答えた人には「先生は何と言っている?」と聞き返している。偶然にもそうしたケースはいずれも「先生は『接種したほうが良いよ』と言っているよ」との答えが返ってきたので、「俺もそう思うよ」と言うと、だいたい話は終わる。これに対して「いない」と答えてくる人はやや対応が面倒になる。この際には私はまず「データ上は有効性が明らかなので、できるだけ接種したほうが良いと思うよ」と答える。ただ、これで終わることはまずない。一番多い反応は「なんか打つたびに熱が出るし、しんどいよ」というもの。まあ、気持ちはわからないわけではない。だが、私はそうは答えない。というのも、過去4回の接種で私は自覚できる副反応らしきものを経験していないからだ。そこでとりあえずは「俺は次回も打つよ」とだけ答えている。これに対する反応は実にまちまちだ。列挙するとこんな感じだ。「ふーん」「うーん、もう一度考えてみるか」「まあ、タダのうちは打っとくか」「本当に物好きだよね」「出ました。ワクチン男」「お前、今にワクチンで死ぬんじゃない?」最後の3つは大きなお世話と言いたいところだ。そのような中で1人だけ興味深いことを口にした友人がいた。彼はワクチン接種後の死亡事例の中で、ワクチン接種との因果関係が否定できないとして国の健康被害救済制度の認定を受けた事例があることを挙げて、とことん食い下がってきた。私はどの医薬品、ワクチンでも副作用・副反応はゼロにならないこと、その中でごく少数とは言え、極めて不幸な結果になってしまう事例は完全には避けられないことなどを話した。まあ、定型のやり取りと言えばそれまでかもしれない。約1時間の電話でのやり取り後に妙な沈黙となった。正直、私自身かなり疲れてしまって、それ以上何かを言う気にもなれなかった。その沈黙を破ったのは友人のほうだった。「まあ、俺の父親の件みたいなものか」一瞬、混乱した。彼の父親は今から10年以上前に交通事故で亡くなっている。新型コロナワクチンとは何も関係ない。「え、何が?」と私が問うと彼は次のように答えた。「いやさ、父親が交通事故で死んだのは知ってるよね。もちろん父親をはねた運転手に対する恨みは今でもあるよ。でもさ、父親が交通事故で死んだからって自動車を世の中から廃止しろとは言わないよ。ワクチンもそんなものかなと。さっきからワクチンの有効性についてはコンセンサスがあるって言ってたじゃん。確かに報道で医師がこのワクチンのことについて言及する時も多くは打ったほうが良いと言うよね。それはそうなんだろう。ただ、どうしてもごく少数の不幸な事例は出てしまう。かといってこのワクチン接種を止めろと言うならば、それは俺が自動車を全廃しろと言うくらいナンセンスかもね、ということよ」何気ない会話かもしれないが、私は彼のこの発言にかなり圧倒されてしまった。言葉を仕事にしながら、自分はこうした表現は思いつかなかったからだ。結局、彼はひとしきりそう言うと「まあ、もう一度じっくり考えてみるわ」と言って電話を切った。さて国は、そして報道は、このもはやコロナ禍は終わったかのような空気が漂う中で、この秋から始まる予定のXBB系統の新ワクチンの接種を推進するためにどのような言葉を選択していくのだろう。報道の片隅に身を置く立場として、この友人の言葉を私自身はこの1週間反芻している。参考(1)厚生労働省:第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料

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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 1

今回のキーワード社会脳フリーライダー(反社会性パーソナリティ)社会的影響(同調)スリーパー効果信憑性(証拠)出どころ(情報源)ファクトチェックポスト真実前回は、噂好きの心理を掘り下げました。それにしても、そもそもなぜ私たちは噂好きなのでしょうか? 今回は、さらに噂好きの心理の起源に迫ります。これを踏まえて、私たちはフェイクニュースをはじめ、情報にこれからどう向き合っていけば良いかというメディアリテラシーについて、一緒に考えてみましょう。なんで噂好きの心理は生まれたの?前編で、噂好きの心理とは、びっくりしたい(新奇性)、信じたいものだけを信じる(確証バイアス)、同じ考えでつながりたい(同類性)という3つの要素があることを説明しました。それでは、そもそもなぜ噂好きの心理は生まれたのでしょうか? その起源を人類の心の進化の歴史からひもといてみましょう。約700万年前に人類が誕生し、約300万年前に父親が母子と同居して家族が誕生し、やがてその血縁が集まって部族が誕生しました(社会脳)。この詳細については、関連記事5をご覧ください。この当時から、人類は助け合い(協力)をして生存と生殖の適応度を高めるようになったわけですが、同時に協力して得た貴重な食料をこっそりかすめ取ったり、部族内の誰かのセックスパートナーを勝手に寝取ったり誘惑したりすることで、生存と生殖の適応度を高める種(フリーライダー)も現れたでしょう。なぜなら、進化の本来の姿は競争だからです。なお、フリーライダー(ただ乗り遺伝子)とはもともと、みんながお金を支払って乗り物に乗っているのに、自分だけただで乗ろうとする人(遺伝素因)のことを指します。この詳細については、反社会性パーソナリティの起源として、関連記事6の後半をご覧ください。そんななか、そのようなフリーライダーの裏切りを部族内で伝え合うことができれば、その人を部族から排除して、集団の協力関係が保たれます。排除されるとわかっていれば、裏切りの抑止にもなります。これが、噂の起源です。もっと言えば、噂はニュースの起源とも言えます。つまり、もともとニュースとは、現代のように一人ひとりが世の中の見識をただ広げて教養人になるためのさっぱりした個人的な興味関心ではなく、まずフリーライダーをあぶり出して集団の秩序を維持するためのじめじめした社会的な装置(機能)であることがわかります。だからこそ、現代の私たちは良い噂よりも悪い噂に敏感です。他人についてはもちろんですが、自分についての噂ならなおさらです。私たちのおしゃべりの大半は、共通に知っている人の噂話です。当たり前すぎて、逆に気にも止めなかったでしょう。そのマインドで、国内の事件報道や有名人を取り上げたワイドショーをつい見てみてしまうのです。また、噂は、単にその時の部族内だけでなく、語り継ぎや言い伝えによって、世代を超えた伝説や神話に形を変えていったのでしょう。それらは、共有すべき規範意識が込められることで、共同体への帰属意識(集団同一性)を高めます。これが、モラルの起源です。さらに、世代を超えて続く噂は、共通の生きる知識や知恵としても、集団の適応度を高めたでしょう。これが、文化の起源です。そして、その子孫が現在の私たちです。だからこそ、私たちは、映画、ドラマ、小説などのストーリーを好むのです。なんで噂の信憑性や出どころには疎いの?残念ながら、人類は、噂自体には敏感なのですが、噂の信憑性(証拠)や出どころ(情報源)まで敏感になるようには進化しませんでした。なぜでしょうか?その訳は、原始の時代の部族社会は、閉ざされていて、約100~150人までのお互いによく知っていて信頼関係がある人たちしかいなかったからです。そのため、いちいち毎回噂の信憑性や出どころについて疑う必要がなかったからです。もしも、嘘の噂を流す人がいれば、「狼少年」(これも寓話という形の噂)のようにすぐにばれてしまいます。そして、要注意人物(フリーライダー)として部族のメンバー全員からレッテルを貼られたり排除されたりして、嘘の噂をまた流すことができなくなるだけだったからです。実際の心理実験(アッシュの同調行動実験)では、まず被験者に「同じ長さの線はどれか」という質問をします。この場合の正答率はほぼ100%でした。次に、8人グループで同じ質問をして1人ずつ答えさせるわけですが、実は被験者は1人だけで、残りの7人は被験者ではなく、前もって間違った答えを同じように言うように指示されたサクラにすり替えます。すると、被験者の75%はその7人の間違った答えに同調したのでした3)。このことから、人は周りの意見に影響を受けやすいことがわかります。これは、前編でも触れましたが、社会的影響(同調)と呼ばれています。私たちは、周りの多くの人が同じ噂話をしていると、その信憑性はさておき、その噂を信じ込んでしまいやすいということです。別の心理実験では、「開発された新薬をすぐに使用できるようにすべきだ」という論説を、1つのグループに専門の学術誌(信頼性が高い情報源)の記事として読ませ、もう1つのグループには大衆雑誌(信頼性の低い情報源)の記事として読ませました。そして、その記事に納得するかの度合いを調べたところ、直後は当然ながら前者が高かったのに、1ヵ月後には差がみられなくなったという結果が出ました4)。つまり、読んだ内容は覚えていても、その出どころは忘れてしまっているのです。これは、スリーパー効果と呼ばれています。私たちは、信頼性の低い情報源でも、目に触れれば、潜伏工作員(スリーパー)が暗躍するように、知らず知らずのうちにすり込まれていくということです。皆さんも、人から聞いた話をいつの間にか自分の話として話している状況を、誰かから指摘されたり、逆に誰かに指摘した経験があるでしょう。次のページへ >>

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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 2

これから情報にどう向き合っていけばいいの?噂好きの心理の起源は、人類が原始の時代に集団の適応度を高めるために、フリーライダーをあぶり出すことであったことがわかりました。そして、噂(情報)の信憑性と出どころに鈍感なのは、原始の時代の社会は閉ざされていて嘘の噂を流すのが難しいことから、そもそもその信憑性や出どころを疑う必要がなかったからでした。これを踏まえて、私たちはフェイクニュースをはじめ、情報にどう向き合っていけば良いでしょうか? ここから、その注意点(メディアリテラシー)を主に2つ挙げてみましょう。(1)信憑性(証拠)樹は上司に「『青虫うどんの真相?』って、真相が記事の中身に書かれていないのに、完全な釣りタイトルです。語尾に?をつければ許されるってものじゃありません」と怒りをぶつけていました。自分の記事のタイトルが、上司の指示で書き換えられていたのでした。これは、タイトルの情報に根拠がない状態です。1つ目の注意点は、その情報は確かなのか、つまり信憑性(証拠)です。断定するわりに根拠が書かれていなかったり、専門家の経験則、歴史上の偉人の名言の引用、ことわざだけを根拠としている情報は、信頼性が低いと言わざるを得ないでしょう。(2)出どころ(情報源)樹は上司や同僚たちに「うち(イーストポスト)の記事が広がらない理由の1つに、こんな声があります。『イーカゲンポストの記事なんで信じない』」と言い、公式アカウントへの返信を見せます。そして、「これまでのツケです」と続けます。釣りタイトルばかり書いていたため、信頼されなくなっていたのでした。2つ目の注意点は、その情報は誰が伝えているのか、つまり出どころ(情報源)です。匿名であったり、まさに「イーカゲン」な(ファクトの乏しい)情報を伝えるような組織は、信頼性が低い情報源であると評価する必要があります。先ほどにも触れたように、「狼少年」を検知する心を発動させる必要があります。たとえば、そのような記事サイトには「この記事を表示しない」というブロック機能を利用することができます。もちろん、ファクトチェックがAIで自動化されることも望まれます。サブタイトル「あるいはどこか遠くの戦争の話」とは?インスタントうどん青虫混入事件は、難民問題の是非にまで発展してしまい、本質から「遠ざかって」いきます。そして、選挙戦で有権者同士の暴動を引き起こします。これが、「どこか遠くの戦争」の意味でしょう。SNSの進歩によって、私たちはよりつながって団結するのではなく、逆に分断されていくという皮肉が込められているようです。情報とは、原始の時代ではフリーライダーをあぶり出して部族をより団結させる装置であったはずなのに、現代では逆にフリーライダーに利用され社会を分断させる武器になってしまいました。情報伝達は単なる機能にすぎませんが、それが使われる社会構造が代わってしまったことを私たちは今よく理解する必要があります。原始の時代の私たちの心のデフォルトは、真偽不明なものであっても、それを集団で信じることでした。その最たるものが、「神がいる」という教えです。よくよく考えると、誰も神を見た人がおらず、まったく根拠がなく、その存在を証明できません。合理的に考えれば、これほどおかしな情報はありません。それでも、世界中で多くの人に広く受け入れられているのは、実は、宗教もまた社会(集団)をまとめるための文化的な装置(機能)だからでしょう。なお、この宗教の起源の詳細については、関連記事7をご覧ください。キャッチフレーズ「全てが真実になり、全てが真実でない時代だ」の意味とは?進化心理学的に考えれば、情報伝達の一番の機能とは、本来社会をうまくまとめることであり、真実を追究することそのものではないことがわかります。この点で、「破壊的な噂」(フェイクニュース)が世界を動かすようになった現代において、もはや「これからの真実」(ポスト真実)とは、事実がどうだったかという客観性ではなく、その事実をどう感じたかという主観性に重きが置かれるようになっていくという指摘には納得がいきます。これが、「全てが真実になり、全てが真実でない時代だ」というキャッチフレーズの意味でしょう。樹は編集長の上司を説得しようと、「おまえらネットメディアだって金儲けのためにやってるんだろって言われても、伝えることを伝えるのが私たちの義務です。どんな媒体だろうとそれが記者の務めです」「嘘がまかり通る社会を(編集長の)娘さんに残したいですか?」と訴えます。このセリフは、今この瞬間に自分が得するかという個人的な視点ではなく、これから先の未来に自分たちの子供が幸せになれるかという社会的な視点が込められています。このドラマを通して、世界が分断されるのではなく、再び団結できるような「建設的な噂」(メディアリテラシー)を私たち一人ひとりが分かち合う必要性に気付かされます。3)社会心理学P34:山岸俊男(監)、新星出版社、20114)人はなぜだまされるのかP114:石川幹人、講談社、2011<< 前のページへ■関連記事映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 1万引き家族(前編)【親が万引きするなら子供もするの?(犯罪心理)】Part 3ミスト(前編)【信じ込む心(宗教)】

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7月14日 内臓脂肪の日【今日は何の日?】

【7月14日 内臓脂肪の日】〔由来〕「内臓脂肪」の頭文字「な(7)い(1)し(4)」と読む語呂合わせから、内臓脂肪の蓄積が将来の健康リスクに繋がることへの啓発と健やかに過ごし、自分の健康を見つめ直す機会とすることを目的に株式会社ファンケルが制定。関連コンテンツ抗肥満薬「アライ」がダイレクトOTCとして薬局で購入可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】「つい食べてしまう」という患者さん【糖尿病外来NGワード】内臓脂肪指数は大腸がん発症の予測因子~日本人コホート全粒粉穀物がもたらす身体への効果/日本糖尿病学会2型DM発症リスク、肥満でなくても腹囲が影響/BMJ

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7月17日 理学療法の日【今日は何の日?】

【7月17日 理学療法の日】〔由来〕昭和40年に理学療法士について定めた法律「理学療法士及び作業療法士法」が公布され、翌41年に第1回理学療法士国家試験が実施された。この試験に合格した110名の理学療法士によって結成されたのが「日本理学療法士協会」。この日を記念して同協会が制定し、この日の前後に全国で理学療法に関係する医療、介護のイベントが開催されている。関連コンテンツ終末期でも「リハビリ」が大切な理由【非専門医のための緩和ケアTips】日常生活でできる運動はあるの?【患者説明用スライド】今さら聞けない心リハ首・腰痛、姿勢療法は医療費増大/JAMA末梢動脈疾患の在宅での歩行運動導入、歩行距離を改善/JAMA

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ASCO2023 レポート 血液腫瘍

レポーター紹介はじめにASCO2023の年次総会(6月2日~6日)は、ようやくCOVID-19が感染症法上の5類扱いとなったことで海外への渡航もしやすくなり、米国シカゴで現地参加された日本人の先生方もおられたと思います。今年も現地参加に加えWEBでの参加(視聴)も可能であり、私は昨年と同様に、現地まで行かずに通常の病院業務をしながら、業務の合間や終了後に時差も気にせず、オンデマンドで注目演題を聴講したり発表スライドを閲覧したりしました。それらの演題の中から、今年も10の演題を選んで、発表内容をレポートしたいと思います。以下に、悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連4演題、多発性骨髄腫関連3演題、白血病/MDS関連3演題を紹介します。悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連SWOG S1826, a randomized study of nivolumab(N)-AVD versus brentuximab vedotin(BV)-AVD in advanced stage (AS) classic Hodgkin lymphoma (HL). (Abstract #LBA4)本臨床試験は、プレナリーセッションで発表された注目演題である。昨年のASCO2022にて、進展期の未治療ホジキンリンパ腫に対し、それまでの標準治療であったABVD療法と、ブレンツキシマブ ベドチンとブレオマイシンを置き換えたA-AVD療法を比較したECHELON-1試験の6年のフォローアップの結果が示され、全生存率でもA-AVDがABVDよりも優れていたという結果が発表された。今回の試験では、進展期の未治療ホジキンリンパ腫に対し、抗PD-1抗体薬ニボルマブとAVDを併用したN-AVDと、新たな標準治療となったA-AVDを比較した試験の中間解析結果が報告された。N-AVD(496例)、A-AVD(498例)に割り付けられた。本試験では、ECHELON-1試験には組み入れられなかった12~17歳の未成年患者が約4分の1含まれていた。主要評価項目のPFS(1年時点)は、94%と86%でHRは0.48と有意にN-AVDが優れていた。また、副作用として、G-CSFの1次予防の実施がA-AVDではほぼ全例、N-AVDでは約半数だったことで、好中球減少はN-AVDで多く認められたが、感染症の発症率はほぼ同等であった。末梢性神経障害はA-AVDで多く認められた一方、ニボルマブによる免疫関連の副作用(IrAE)は、ほとんど問題なかった。今後、フォローアップを継続し、晩期の副作用の発現や再発後の治療選択なども見ていく必要がある。Results of a phase 3 study of IVO vs IO for previously untreated older patients (pts) with chronic lymphocytic leukemia (CLL) and impact of COVID-19 (Alliance). (Abstract #7500)未治療高齢CLL患者に対し、イブルチニブ(I)とオビヌツズマブ(O)併用後のI治療継続(IO)と、IOにベネトクラクス(V)を12ヵ月間併用し、MRD陰性の場合は治療を終了し、MRDが残存する場合はI治療を継続する(IVO)治療を比較する第III相試験の中間解析結果が報告された。465例(IO群:232例、IVO群233例)がエントリーされ、18ヵ月時点でのPFSは、IO群87%、IVO群85%で差を認めなかった。14サイクル終了時点でのCR率とMRD陰性率は、IO群で31.3%と33.3%、IVO群で68.5%と86.8%であり、IVO群で高かった。18ヵ月時点でのIVO群のMRD陰性例と陽性例のPFSには差がみられなかった。有害事象としては、両群ともCOVID-19による死亡例が最も多く(IVO群>IO群)、COVID-19の流行により、臨床試験の結果は大きな影響を受けることとなった。今後、長期のフォローアップにより、MRD陰性例(治療中止例)のPFSのデータが出た時点で、Vの併用の意義が明らかになると考える。A phase 2 trial of CHOP with anti-CCR4 antibody mogamulizumab for elderly patients with CCR4-positive adult T-cell leukemia/lymphoma. (Abstract #7504)日本からの発表。同種移植の適応とならない高齢アグレッシブCCR4陽性ATL患者に対するモガムリズマブ(Moga)とCHOP-14の併用療法(Moga-CHOP-14)の第II相試験の結果である。アグレッシブATLは難治性の疾患であり、同種移植の適応とならない患者の生命予後はきわめて不良である。寛解導入療法のCHOP療法は、奏効率も低く、生命予後の改善も乏しい。50例のATL患者(年齢中央値74歳)にMoga-CHOP-14×6サイクル+Moga×2サイクルが実施された。1年PFSが36.2%、ORRが91.7%(CRが64.6%)、1年OSが66.0%であった。主な有害事象は、血球減少とFN(G3以上64.6%)、皮疹(G3以上20.8%)であった。Moga-CHOP-14療法は、高齢ATL患者に対する治療オプションとして有用と考えられる。Epcoritamab + R2 regimen and responses in high-risk follicular lymphoma, regardless of POD24 status. (Abstract #7506) 再発・難治の濾胞性リンパ腫(FL)に対し、CD20×CD3の二重特異性抗体薬epcoritamab(Epco)とリツキシマブ・レナリドミド(R2)を併用した治療の第II相試験(Epcoの投与スケジュールが異なる2群)の統合解析結果が報告された。2つの試験の対象となった111例が解析された。患者の年齢中央値は65歳で、CS III/IVが22%/60%であり、FLIPIの3〜5が58%であった。57%は前治療のライン数が1であり、POD24は38%が該当した。全奏効率は98%、完全代謝奏効(CMR)は87%であった。POD24に該当するハイリスク患者においてもそれぞれの奏効率は98%/75%と、治療効果は良好であった。有害事象は、CRSと好中球減少をそれぞれ48%で認めたが、CRSは46%がGrade1〜2であり、Grade3は2%であった。また、有害事象によって治療中止となった例はなかった。現在、第III相試験(EPCORE FL-1試験、EPCORE NHL-2試験)が行われている。多発性骨髄腫関連Carfilzomib, lenalidomide, and dexamethasone (KRd) versus elotuzumab and KRd in transplant-eligible patients with newly diagnosed multiple myeloma: Post-induction response and MRD results from an open-label randomized phase 3 study. (Abstract #8000)未治療の多発性骨髄腫(MM)患者に対するKRd療法とエロツズマブ(E)を併用したE-KRd療法の第III相比較試験(DSMM XVII試験)が行われた。試験デザインは6サイクルの寛解導入後、1回の自家移植(CRが得られない場合あるいはハイリスク染色体異常の場合は2回)を実施し、4サイクルの地固め実施後、レナリドミド(R)あるいはエロツズマブ+レナリドミド(ER)の維持療法を行うこととなっている。579例がランダム化された。寛解導入後の効果について、主要評価項目の1つでもあるVGPR以上でMRD陰性例の割合は、KRd/E-KRdで、35.4/49.8%であり、Eの併用効果を認めた。Grade3以上の有害事象もE併用により、66.3%から75.3%に増えているが、感染症による死亡例はそれぞれ0.3/1.2%で差はなく、COVID-19例も4.4/3.2%で差を認めなかった。未治療MMに対し、Eの併用の有用性が初めて示された試験である。First results from the RedirecTT-1 study with teclistamab (tec) + talquetamab (tal) simultaneously targeting BCMA and GPRC5D in patients (pts) with relapsed/refractory multiple myeloma (RRMM). (Abstract #8002)トリプルクラス抵抗性のMM患者の生命予後は、きわめて不良であり、それらの患者に二重特異性抗体薬が高い有効性を示すことが報告され、欧米では承認されている。標的分子が異なるそれらの治療薬を併用することで、さらなる治療効果の増強が期待される。本発表では、BCMA×CD3の二重特異性抗体薬のteclistamab(Tec)とGPRC5D×CD3の二重特異性抗体薬のtalquetamab(Tal)の併用治療の第Ib相試験(RedirecTT-1試験)の結果が報告された。93例の再発・難治MM患者(前治療のライン数:4、33.3%がハイリスクの染色体異常を有し、79.6%がトリプルクラスレフラクトリー、37.6%が髄外腫瘤を有していた)が参加している。本試験は用量設定試験であり、用量は4段階あるが、有効性は全奏効率が86.6%、CR以上が40.2%であり、第II相の推奨用量(Tec:3.0mg/kg+Tal:0.8mg/kg Q2W)では、全奏効率が96.3%、CR以上が40.7%と、優れた治療成績が示された。また、CRSや骨髄抑制などの有害事象は単剤治療とほぼ変わりなかった。今後のさらなる開発が期待される。Talquetamab (tal) + daratumumab (dara) in patients (pts) with relapsed/refractory multiple myeloma (RRMM): Updated TRIMM-2 results. (Abstract #8003)再発・難治MM患者に対するGPRC5D×CD3の二重特異性抗体薬のtalquetamab(Tal)とダラツムマブ(Dara)を併用した試験(TRIMM-2試験)のアップデート成績が報告された。65例(前治療のライン数:5、トリプルクラス抵抗性:60%、抗CD38抗体薬抵抗性:78%、二重特異性抗体薬抵抗性:23%、BCMA標的治療歴:54%)が参加した。追跡期間中央値16ヵ月時点の成績は、全奏効率81%(VGPR以上:70%、CR以上:50%)であり、奏効が得られた症例の80.9%で、12ヵ月時点で奏効が持続しており、PFSの中央値は19.4ヵ月、1年PFS率は70%、1年OS率は92%であった。有害事象は既知のものであり、CRSも78%で認められたが、すべてGrade1〜2であった。TalとDaraの併用は、トリプルクラス抵抗性(とくに抗CD38抗体薬抵抗性)のMMに対し、新たな治療オプションとして注目される。白血病/MDS関連Efficacy and safety results from the COMMANDS trial: A phase 3 study evaluating lus patercept vs epoetin alfa in erythropoiesis-stimulating agent (ESA)-naive transfusion dependent (TD) patients (pts) with lower-risk myelodysplastic syndromes (LR-MDS). (Abstract #7003)赤血球輸血依存のLow-リスクMDS患者に対するluspatercept(Lus)とエリスロポエチン製剤(ESA)との第III相比較試験の中間解析結果が報告された。対象となった患者は、IPSS-RでのLow-リスクであり、環状鉄芽球の有無は問わず、血清Epo値が500U/L未満であり、ESAの投与歴がない輸血依存(4~12単位の輸血を8週間以上継続している)状態の患者であった。Lusは3週に1回の皮下注、ESAは週1回の皮下注にて投与され、24週以上継続した。Lusは178例、ESAは176例の患者が割り付けられた。主要評価項目である開始24週以内における12週以上の輸血非依存の達成率(Hb 1.5g/dL以上上昇を伴う)は、Lusで58.5%、ESAで31.2%であった。治療薬関連の副作用は、Lusで30.3%、ESAで17.6%に認められ、副作用による中止はLusで4.5%、ESAで2.3%であった。また、AMLへの進行は、それぞれ2.2%と2.8%であった。Lusは、輸血依存のLow-リスクMDSに対し、貧血の改善効果がESAよりも優れていることが示された。A first-in-human study of CD123 NK cell engager SAR443579 in relapsed or refractory acute myeloid leukemia, B-cell acute lymphoblastic leukemia, or high-risk myelodysplasia. (Abstract #7005)CD123(IL-3レセプターのα鎖)を発現している細胞とNK細胞を結び付けるSAR443579(SAR)の再発・難治AML、およびCD123陽性HighリスクMDS、B-ALL患者に対する第I/II相試験の結果が発表された。SARは、週2回と週1回の静脈内投与で2週間投与され(10~3,000μg/kg/dose)、その後、週1回(100~3,000μg/kg)の投与スケジュールとなり、寛解導入期は3ヵ月、その後、維持療法期には約28日ごとの投与となる。23例の患者(全員AMLの診断)が登録され、最高用量の3,000μg/kgまで用量制限毒性は認められなかった。有害事象で最も多かったのはIRR(13例)であり、CRSは1例(Grade1)のみに認められた。有効性は、3例でCR/CRiが得られており、その3例は1,000μg/kgの投与量であった(1,000μg/kgでは8例中3例がCR/CRi:37.5%)。新たなNK細胞エンゲージャー治療薬の今後の開発の進展が期待される。Chemotherapy-free treatment with inotuzumab ozogamicin and blinatumomab for older adults with newly diagnosed, Ph-negative, CD22-positive, B-cell acute lymphoblastic leukemia: Alliance A041703. (Abstract #7006)未治療Ph陽性のALLに対し、TKIとブリナツモマブ(Blina)を併用したケモフリーレジメンの有用性が示されているが、本研究では、未治療Ph陰性、CD22陽性のB-ALLの同種移植の適応とならない高齢患者に対し、イノツズマブ オゾガマイシン(Ino)とBlinaの併用によるケモフリーレジメンが試験されている。Inoを1~2サイクル投与し、その後、Blinaで地固めを行う。33例(年齢中央値:71歳)が試験に参加し、最良治療効果のCRcは96%、1年EFS率が75%、1年OS率が84%であった。主な有害事象は骨髄抑制(Grade3以上の好中球減少:87.9%、血小板減少:72.7%)で、FNは21.2%にみられ、有害事象での死亡例は2例(脳症と呼吸不全)のみにみられた。通常の化学療法と比較し、とくに寛解期での死亡例が少なく、移植非適応のPh陰性ALL患者には、安全性の高い治療法である。おわりに以上、ASCO2023で発表された血液腫瘍領域の演題の中から10演題を紹介しました。ASCO2021、ASCO2022でも10演題を紹介しましたが、今年も昨年、一昨年と同様、どの演題も今後の治療を変えていくような結果であるように思いました。来年以降も現地開催に加えてWEB開催を継続してもらえるならば、ASCO2024にオンライン参加をしたいと考えています(1年前にも書きましたが、もう少しWEBでの参加費を安くしてほしい、円安が続く今日この頃[笑])。

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ワインは心血管に良い影響?22試験のメタ解析

 アルコール摂取と心血管イベントにはJ字型、U字型の関連があるという報告もあり、多量のアルコール摂取は心血管に悪影響を及ぼす一方、少量であれば心血管に良い影響を及ぼす可能性が指摘されているが、結果は一貫していない1-3)。また、ワインの摂取が心血管の健康に及ぼす効果についても、意見が分かれている。そこで、スペイン・Universidad de Castilla-La ManchaのMaribel Luceron-Lucas-Torres氏らは、ワインの摂取量と心血管イベントとの関連について、システマティックレビューおよび22試験のメタ解析を実施した。その結果、ワインの摂取は、心血管イベントのリスク低下と関連していた。また、年齢や性別、追跡期間、喫煙の有無はこの関連に影響を及ぼさなかった。Nutrients誌2023年6月17日号の報告。 Pubmed、Scopus、Web of Scienceを用いて、2023年3月26日までに登録されたワインの摂取量と冠動脈疾患(CVD)、冠動脈性心疾患(CHD)、心血管死との関連を検討した研究を検索した。その結果25試験が抽出され、22試験についてDerSimonian and Laird Random Effects Modelを用いてメタ解析を実施した。また、ワインの摂取量と心血管イベント(CVD、CHD、心血管死)との関連に影響を及ぼす因子を検討した。異質性はτ2値を用いて評価した(0.04未満:小さい、0.04~0.14:中等度、0.14~0.40:大きい)。 主な結果は以下のとおり。・ワイン摂取はCHD、CVD、心血管死のリスクをいずれも有意に低下させた。リスク比(95%信頼区間)およびτ2値は以下のとおり。 -CHD:0.76(0.69~0.84)、0.0185 -CVD:0.83(0.70~0.98)、0.0226 -心血管死:0.73(0.59~0.90)、0.0510・試験参加者の平均年齢、性別(女性の割合)、追跡期間、喫煙の有無はワイン摂取とCHD、CVD、心血管死との関連に影響を及ぼさなかった。・メタ解析を実施した研究のバイアスリスクはいずれの研究も良好であった。出版バイアスについては、CVDに関する研究において認められたが(p=0.003)、CHD、心血管死に関する研究では認められなかった(それぞれp=0.162、0.762)。 著者らは、「年齢、薬物、病態の影響によりアルコールに対する感受性が高い患者では、ワインの摂取量を増やすことが有害となる可能性があるため注意が必要である」と指摘しつつも、「システマティックレビューおよびメタ解析によって、ワイン摂取はCVD、CHD、心血管死のリスクを低下させることが示された。今後、ワインの種類によってこれらの効果を区別する研究が必要である」とまとめた。

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高齢者の片頭痛患者に対する抗CGRP抗体の安全性・有効性

 抗CGRPモノクローナル抗体は、片頭痛治療において顕著な有効性および忍容性が認められているが、高齢者に対する使用データについては、臨床試験では暗黙の年齢制限があり、リアルワールドのエビデンスも限られていることから、十分であるとは言えない。スペイン・バルセロナ大学のAlbert Munoz-Vendrell氏らは、65歳以上の片頭痛患者を対象に抗CGRPモノクローナル抗体であるエレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブの安全性および有効を評価するため、検討を行った。その結果、リアルワールドにおける65歳以上の片頭痛患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、安全かつ効果的な治療法であることを報告した。The Journal of Headache and Pain誌2023年6月2日号の報告。 本研究は、スペインの頭痛治療施設18施設からプロスペクティブにデータを収集し、レトロスペクティブに分析を実施した観察研究である。対象は、抗CGRPモノクローナル抗体による治療を開始した65歳以上の片頭痛患者。主要エンドポイントは、治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛に数の減少および副作用の発生とした。副次的エンドポイントは、頭痛の軽減、治療3ヵ月および6ヵ月後の薬剤投与頻度、治療反応率、患者報告による転帰の変化、治療中止理由とした。サブ分析として、1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少と副作用発現率を薬剤間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は162例(年齢中央値:68歳、範囲:65~87歳、女性の割合:74.1%)であり、脂質異常症(42%)、高血圧症(40.3%)、糖尿病(8%)、心血管虚血性疾患(6.2%)などの既往歴が認められた。・治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛の数の減少は、10.1±7.3日であった。・副作用が認められた患者の割合は25.3%、いずれも軽症で、血圧上昇は2例のみであった。・患者報告では、頭痛および薬剤の投与頻度の有意な減少が報告され、転帰の改善が認められた。・1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少率別の患者割合は、以下のとおりであった。 ●1ヵ月当たりの片頭痛日数30%以上減少:68% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数50%以上減少:57% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数75%以上減少:33% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数100%減少:9%・治療6ヵ月後の治療継続率は、72.8%であった。・片頭痛日数の減少は、各薬剤同様であったが、フレマネズマブの副作用発現率は低かった(7.7%)。

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肥満2型DMでのチルゼパチド、体重減少にも有効/Lancet

 過体重または肥満の2型糖尿病患者において、チルゼパチド10mgおよび15mgの週1回72週間皮下投与は、体重管理を目的とした他のインクレチン関連薬と同様の安全性プロファイルを示し、臨床的に意義のある大幅な体重減少をもたらしたことが示された。米国・アラバマ大学バーミンガム校のW Timothy Garvey氏らが、7ヵ国の77施設で実施された第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SURMOUNT-2試験」の結果を報告した。肥満2型糖尿病患者の健康状態を改善するためには、体重減少が不可欠である。チルゼパチドは持続性のGIP/GLP-1受容体作動薬で、非2型糖尿病の肥満患者を対象としたSURMOUNT-1試験では、72週間のチルゼパチドによる治療で体重が最大20.9%減少することが認められていた。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。BMI 27以上の2型DM患者で、チルゼパチド10mgまたは15mgをプラセボと比較 研究グループは、BMI値27以上、HbA1c 7~10%の2型糖尿病成人患者(18歳以上)を、チルゼパチド10mg群、15mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、週1回72週間皮下投与した(週1回2.5mgから投与を開始し、4週ごとに2.5mgずつ増量)。スクリーニング前3ヵ月以内に体重が5kg以上変化した患者、肥満に対する外科的治療を受けたことがあるまたは予定されている患者、抗肥満薬、DPP-4阻害薬、経口GLP-1受容体作動薬または2型糖尿病の注射薬を投与されていた患者は除外した。すべての試験参加患者、研究者およびスポンサーは治療割り付けをマスクされた。 主要エンドポイントは2つで、ベースラインから72週までの体重変化率および72週時点のベースラインからの体重減少が5%以上を達成した患者の割合とした。治療レジメンの推定は、治療の中止または抗高血糖レスキュー治療開始を問わず有効性を評価した。 有効性と安全性のエンドポイントの解析評価は、無作為化されたすべての患者のデータを用いて行われた。72週間で体重減少最大14.7%、5%以上体重減少の達成率は79~83% 2021年3月29日~2023年4月10日に1,514例が適格性の評価を受け、938例が無作為化された(チルゼパチド10mg群312例、15mg群311例、プラセボ群315例)。患者背景は、平均年齢54.2±10.6歳、女性476例(51%)、白人710例(76%)、ヒスパニック系/ラテン系561例(60%)であった。また、ベースラインの平均体重は100.7±21.1kg、BMIは36.1±6.6、HbA1cは8.02±0.89%であった。 72週時の体重のベースラインからの最小二乗平均変化率はチルゼパチド10mg群-12.8%(標準誤差[SE]0.6)、15mg群-14.7%(0.5)、プラセボ群-3.2%(0.5)であり、プラセボとの群間差はチルゼパチド10mg群-9.6ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.1~-8.1)、15mg群-11.6ポイント(95%CI:-13.0~-10.1)であった(いずれもp<0.0001)。また、72週時の5%以上体重減少達成率は、プラセボ群32%に対し、チルゼパチド10mg群79%、15mg群83%であり、チルゼパチド群で高かった(いずれもp<0.0001)。 チルゼパチドの主な有害事象は、悪心、嘔吐、下痢などの胃腸障害で、多くが軽度~中等度であり、治療中止に至った有害事象はほとんどなかった(<5%)。重篤な有害事象は、全体で68例(7%)が報告された。チルゼパチド10mg群で死亡が2例確認されたが、治験責任医師によりチルゼパチドとの関連はないと判断された。

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2型DMでのorforglipron、HbA1c低下に最適な用量-第II相/Lancet

 新規の経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬orforglipronは、12mg以上の用量でプラセボまたはデュラグルチドと比較しHbA1cおよび体重の有意な減少を示し、有害事象のプロファイルは同様の開発段階にある他のGLP-1受容体作動薬と類似していた。米国・Velocity Clinical ResearchのJuan P. Frias氏らが、米国、ハンガリー、ポーランド、スロバキアの45施設で実施された26週間の第II相多施設共同無作為化二重盲検用量反応試験の結果を報告した。orforglipronは2型糖尿病および肥満症の治療薬として開発中で、今回の結果を踏まえて著者は、「orforglipronは、2型糖尿病患者にとって少ない負担で治療目標を達成することが期待でき、GLP-1受容体作動薬の注射剤や経口セマグルチドに代わる治療薬となる可能性がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。BMI値23以上の2型DM、orforglipron各用量vs.プラセボvs.デュラグルチド 研究グループは、18歳以上の2型糖尿病患者で、HbA1c 7.0~10.5%、BMI値23以上、無作為化前3ヵ月間体重が安定している(増減が5%以下)患者を、プラセボ群、デュラグルチド(1.5mg週1回皮下投与)群、orforglipron 3mg、12mg、24mg、36mg(グループ1)、36mg(グループ2)、45mg(グループ1)、45mg(グループ2)(1日1回投与)各群に、5対5対5対5対5対3対3対3対3の割合で無作為に割り付けた。36mgと45mgのコホートは、それぞれグループ1と2で異なる用量漸増レジメンが検討された。試験参加者は、試験薬、デュラグルチド、プラセボについてマスクされた。 主要有効性アウトカムは、orforglipron各用量群vs.プラセボ群の26週時におけるベースラインからのHbA1cの平均変化とした。副次アウトカムは、orforglipron各用量群vs.デュラグルチド群の26週時におけるベースラインからのHbA1cの平均変化とした。また、ベースラインからの体重の変化なども評価した。 有効性の解析対象集団は、無作為化され少なくとも1回治験薬の投与を受けた全患者で、投与中止またはレスキュー治療開始後のデータは除外した。安全性は、少なくとも1回の治験薬投与を受けた全患者を対象に評価した。orforglipron群のHbA1c、全用量でプラセボより、12mg以上でデュラグルチドより低下 2021年9月15日~2022年9月30日に569例がスクリーニングを受け、383例が無作為化された。352例(92%)が試験を完遂し、303例(79%)が26週間の治療を完遂した。ベースラインの患者背景は、平均値がそれぞれ年齢58.9歳、HbA1c 8.1%、BMI値35.2で、男性226例(59%)、女性157例(41%)であった。 26週時のHbA1cの平均変化は、orforglipron群-1.2%(3mg群)~-2.1%(45mg群)、プラセボ群-0.4%、デュラグルチド群-1.1%であった。orforglipronの全用量群で、HbA1c低下に関してプラセボ群に対する優越性が認められた(群間差:-0.8~-1.7%、全用量群のp<0.0001)。また、orforglipronの12mg以上の用量群ではHbA1c低下に関して、デュラグルチド群に対する優越性が認められた。 26週時の体重の平均変化は、orforglipronで-3.7kg(3mg群)~-10.1kg(45mg群)、プラセボ群-2.2kg、デュラグルチド群-3.9kgであった。 治療下の有害事象の発現率は、orforglipron群61.8%~88.9%、プラセボ群61.8%、デュラグルチド群56.0%で、多くは軽度から中等度の胃腸障害であった(orforglipron群44.1%~70.4%、プラセボ群18.2%、デュラグルチド群34.0%)。orforglipron群で3例、デュラグルチド群で1例に臨床的に明らかな低血糖(<54mg/dL)が発現したが、重症低血糖は報告されなかった。死亡は、プラセボ群で1例報告されたが、試験とは関連がなかった。

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