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新年度スタート!4月中にやるべきたった1つのこと【研修医ケンスケのM6カレンダー】第1回

新年度スタート!4月中にやるべきたった1つのことさて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1 回お届けする新企画です。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、みなさんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。この原稿を書いているただいまは2025年4月22日で、住んでいる愛知県ではすっかり葉桜になった空に、もう夏の風を感じるそんな夜です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。今回は記念すべき本連載1本目!緊張しております(汗)3日坊主の私にとって「連載 !? 」というのが初めてお話をいただいた時にまず感じたことですが、いよいよスタートするなと身が引き締まる思いです。当時を懐かしみながら、あの時の自分へ何を話しかけるのか?みなさんの6年生としての1年間が少しでも良い思い出になる、そんなお力添えができるように頑張って参りますので、ぜひ応援のほどよろしくお願い申し上げます。愛知県で働く、九州男児!さてさて、今回は1本目早速スタートしていきたいのですが、まずはお前誰だよ、という方が多いかと思うので、簡単に自己紹介をさせていただきます。(研修医1年目の7月の写真。どこか初々しい)私、杉田研介と申します。現在は愛知県内で初期臨床研修医として働いています。私自身は生まれも育ちも九州で、大学も九州だったのですが、初期臨床研修ではご縁があって本州・愛知県へ出て参りました。大学内では学年代表を務め、学外では医学生のイベントにいろいろ顔を出したり、医療系ITでインターンをしていたり、そんな感じで過ごしていました。ちなみに受験したのは第118回医師国家試験です。将来は総合診療や救急といったプライマリケアの第一線で働く臨床医を志していますが、元々メディアにも興味があるので、今回のようにブログなりラジオなりで情報に携わるお仕事もできたらなと考えています。文章の口調がどこかラジオっぽいのは学生の頃に自分で番組を企画した、そんな名残です。走り出す準備、まずは1度勉強会をさあ、ようやく本編スタートなのですが、今月は4月。ついに最終学年、6年生。「医師国家試験が現実味を帯びてきた…」と感じている人も多いのではないでしょうか。かく言う私も、新学期前日の夕食で友人から「もう受験生だよね」と言われて、ため息とともに背筋が伸びたのを覚えています。しかし、「まだ」4月。「正直、どこか本気に感じない、なれない」という人もいると思います。焦らなくても大丈夫。4月は“走り出す準備”を整える時期です。4月にぜひ準備してほしいなと思うことはいろいろありますが、原稿のボリュームとも相談して1つだけ挙げろ、と言われたら「勉強会を実施する」コレです。次月以降でより詰めた話はするとして、国家試験対策(卒業試験も同様に。何ならより重要かも)で何から手をつけ始めるか、と問われたら「まずは今月中に1回でもいいから、誰かと一緒に勉強会してみて」そう回答します。読者のみなさまにおかれましてはすでにいつもの4人でやってます、という方もいらっしゃるかもしれませんが、勉強会といっても、勉強会でただ集まるだけでは終わってほしくないので、ぜひ耳を傾けてみてください。勉強会を実施する、その意義は次の3つあると考えています。自分の学習状況に責任を持つ誰かと会って話す、心の健康を保つアウトプットの絶好の機会になる1つひとつ考察しましょう。(5年生の時から勉強会を共にした4人でイタリアへ卒業旅行へ)自分の学習状況に責任を持つ1つ目の「自分の学習状況に責任を持つ」という言葉の背景には、人間は1人では脆い、という私なりの持論が投影されています。冒頭で、三日坊主の私です、と述べましたが、「継続することが大得意!」という方がよっぽど珍しいのかなと思っています。過去の試験対策でも「今度こそは講義があったその日から」と決心するも気付けば数日前、下手すれば前日の夜、なんて経験をされた方もいらっしゃいますよね。ところが2月頭に予定されている医師国家試験の試験範囲は実に膨大で、ちょっとやそっとの付け焼き刃では太刀打ちできませんし、運よく合格したとしても、控える臨床研修での不安が募るだけです。長期計画が難しいことは十二分にわかりますし、仮に長期計画を作ったとしても計画は変更する、そんなことを考えていたら計画を立てることすら面倒に感じて何も進まない、、、そんな負のループにはハマってほしくありません。勉強会という、誰かと会って強制的に自分の学習状況を客観視することができる状況を作ってしまうのは得策です。誰かと会って話す、心の健康を保つ2つ目は「誰かと会って話す、心の健康を保つ」です。医師国家試験は大学受験と違って競争試験ではないですが、試験は試験。特に大学生になって遊び方にも多様性がある中で勉強をし続ける、そんな難しさがあるのでは、なんて思ったりもします。医学を学ぶこと自体は楽しいことですが、試験勉強となると滅入ることだって珍しくありません。1人で勉強すること自体は欠かせませんが、1人だけで駆け抜けることは個人的にはオススメしません。勉強会なので勉強の話がメインになることはそうなのですが、誰かと会って話す機会とは、社会を成す人間にとって自然な時間だと思います。また時期が近づいたら触れようと思いますが、医師国家試験も最終的にはメンタルゲームなところがあります。アウトプットの絶好の機会になるさて最後は「アウトプットの絶好の機会になる」です。誰かと会って話す勉強会では、インプットを同時に行うよりも、勉強会メンバーの誰かにとってアウトプットの場となるように運営することがコツです。アウトプットの方法として定番なのは一般問題のように、一問一答形式での口頭試問です。これまでの定期試験でもよく実施してきたのではないでしょうか。もちろん、一問一答形式はアウトプットには欠かせないのですが、ぜひ6年生のみなさんには項目ごとに学習を深掘りしてほしいです。例えば脳梗塞に対する臨床問題を数題取り組むとして、勉強会メンバーのうち、Aさんは疫学・リスク因子、それらをカバーする公衆衛生、Bさんは臨床像・診断、Cさんは治療・予後について、といったように一口に脳梗塞といっても様々な側面から問題について考察してほしいです。医師国家試験ではある年は臨床問題の問題文中の設定が、その疾患の疾患らしさ、として翌年には一般問題として問われる。そのまた逆も然り、なんてことがよくあります。ここで重要なのが、多角的に疾患や問題に向き合ってきたか、ということです。複数人で問題に取り組むことで、自分1人で勉強してて気づくことがなかった視点からさらに学習が深まります。(笑い合い、時に議論し合ったあの時間も、今となっては良い思い出です)今月のまとめいかがだったでしょうか。記念すべき1回目、4月まず何から手をつける?として勉強会のすゝめを説いてきました。勉強会が1回でもできればまずはOK、そこから定期的に集まる機会に繋げる、繋げた勉強会は絶好のアウトプットの時間にする。これがポイントです。これまで勉強会の機会がなかった方にとってはハードルが高く感じるかと思いますが、一度腰を上げてみましょう。誰かがいますから。学内で難しければ学外に目を向けてみれば、そのサポートをするサービスは近年よく整ってきていますよ。さあ、ということで今月は一旦ここまで。導入や自己紹介があったので、具体的な学習方法まで言及できませんでしたが、次月以降で紹介して参りますので、ぜひお楽しみに!

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2年間のフレマネズマブ治療の有効性および継続性〜国内単一施設観察研究

 フレマネズマブの12週間に1回675mgを皮下投与した場合の長期的なアドヒアランスや有効性に関するリアルワールドデータは、依然として不足している。静岡赤十字病院の吉田 昌平氏らは、反復性片頭痛(EM)および慢性片頭痛(CM)に対する2年にわたるフレマネズマブ675mgの有効性およびアドヒアランスを評価し、治療中止理由の分析を行った。The Journal of Headache and Pain誌2025年3月11日号の報告。 対象は、静岡赤十字病院の頭痛センターに通院している患者のうち、2021年11月〜2022年6月にフレマネズマブの12週間に1回675mgを皮下投与する治療を行った15歳以上の患者。頭痛の頻度および重症度は、頭痛日誌を用いて記録した。観察期間は、治療開始後24ヵ月間までとした。治療中止理由は、フォローアップ時のカルテ記録より収集した。 主な結果は以下のとおり。・登録患者数は28例。内訳は、CM患者15例、EM患者13例。・CM患者のうち1例は、初回投与後に治療を中止したため除外した。・評価対象患者27例のうち、フレマネズマブ675mg治療が有効であった患者の割合は、70.4%(19例)であった。・観察期間終了までフレマネズマブ675mg治療を継続した患者の割合は44.4%(12例)。・2年間フレマネズマブ治療を継続した患者のうち、毎月頭痛カレンダーを更新していた患者は7例(CM患者:2例、EM患者:5例)。・ベースラインからの1ヵ月当たりの片頭痛日数の平均変化は、3ヵ月で−2.2、12ヵ月で−1.8、2年で−1.6±3.0であった。・25.9%(7例)の患者は、継続的な改善が認められたため、治療中止が可能であった。・効果不十分で治療中止に至った患者の割合は22.2%(6例)。・注射部位反応のため治療を中止した患者は1例(3.7%)のみ。・1例(3.7%)は、妊娠のため治療を中止した。・治療反応が不十分であった患者のうち3例は、フレマネズマブからエレヌマブに切り替えを行った。その後1例は、エレヌマブの効果が減弱し、フレマネズマブ4週間に1回225mg皮下投与に変更された。・2例は、ガルカネズマブへ切り替えられた。・すべての切り替え患者は、その効果により切り替えた薬剤で治療が継続された。・1例は、フォローアップ調査から脱落した。 著者らは「フレマネズマブ12週間に1回675mg皮下投与は、長期にわたり頭痛の頻度を効果的に減少させ、大幅な回復が認められた患者では、治療中止が容易になる可能性が示された」と結論付けている。

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サブタイプ別転移乳がん患者の脳転移発生率、HER2低発現の影響は

 約1万8千例を含む大規模な転移乳がん患者コホートを対象に、サブタイプおよび治療ライン別の脳転移の有病率と累積発生率、またHER2低発現が脳転移発生率に及ぼす影響を評価した結果、すべてのサブタイプで治療ラインが進むごとに発生率が上昇し、HER2低発現は従来のサブタイプ分類における発生率に影響を及ぼさないことが示唆された。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のSarah L Sammons氏らによるJournal of the National Cancer Institute誌オンライン版2025年3月31日号への報告。 本研究では、電子カルテに基づく全国規模の匿名化データベースが用いられた。主要評価項目は脳転移の初回診断とし、HER2低発現を含む転移乳がんのサブタイプおよび治療ライン別に、脳転移の有病率および発生率を推定した。全身治療開始時に脳転移を有さなかった患者における脳転移リスクは、累積発症率関数を用いて推定した。すべてのp値は両側検定に基づき、p≦0.05を統計学的有意とした。 主な結果は以下のとおり。・1万8,075例の転移乳がん患者のうち、1,102例(6.1%)は初回治療開始時点ですでに1つ以上の脳転移を有していた。・残る1万6,973例における脳転移の累積発生率(60ヵ月時点)は、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性で10%、HR+/HER2陽性で23%、HR陰性/HER2陽性で34%、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)で22%であった。・HR+/HER2陰性およびTNBCサブタイプにおけるHER2低発現の、脳転移発生率への影響はみられなかった。・すべての乳がんサブタイプにおいて、治療ラインが進むごとに脳転移の有病率は上昇していた。

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症状のない亜鉛欠乏症に注意、亜鉛欠乏症の診療指針改訂

 「亜鉛欠乏症の診療指針2024」が2025年1月に発行された。今回の改訂は7年ぶりで、きわめて重要な8つの改訂点が診療指針の冒頭に明記され、要旨を読めば最低限の理解がカバーできる構成になっている。だが、本指針内容を日常診療へ落とし込む際に注意したいポイントがある。そこで今回、本指針の作成委員長を務めた脇野 修氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部 腎臓内科分野 教授)に、亜鉛欠乏症の現状や診断・治療を行う際の注意点などについて話を聞いた。<2018年度版からの改訂点>・診断基準と検査について、アルカリフォスファターゼ低値を削除・採血タイミングについて言及・薬物治療について、亜鉛製剤の記述が追加・小児科、内科疾患に関する臨床的意義について、近年のエビデンスに基づき大幅改訂・摂取推奨量は、日本人の食事摂取基準2025年版を引用・国内での発生頻度について追記・リスクファクターとなる疾患について、メタアナリシスで証明されたもののみ記載・亜鉛過剰症について、耐用上限量を記載し、血清膵酵素の上昇に関する記載を削除症状がない潜在性亜鉛欠乏への診断・治療 国内の亜鉛欠乏潜在患者は全人口の10~30%と予想され、亜鉛不足が心筋梗塞の発症、COVID-19の発症/死亡、子癇症、骨粗鬆症、味覚異常のリスクファクターであることが疫学研究から明らかになっている。そのため、近年では症状を有する患者への治療のみならず、症状が顕在化していない患者の診断も喫緊の課題となっている。 亜鉛の血清/血漿基準値は80~130μg/dLで、亜鉛欠乏症と診断するには、亜鉛欠乏(60μg/dL未満)、潜在性亜鉛欠乏(60~80μg/dL未満)の評価と共に、臨床症状・所見の有無、原因となる他疾患が否定されることが必要である。同氏は「亜鉛欠乏症状(皮膚炎、口内炎、脱毛症、褥瘡、食欲低下、発育障害、性腺機能不全、易感染性、味覚異常、貧血、不妊症)がない場合には亜鉛投与の適応にはならない点は注意が必要。一方、症状がある場合には積極的に投与してほしい」と強調した。しかし、実際には症状がみられない亜鉛欠乏症への亜鉛投与の価値が証明されつつあるため、「慢性肝疾患、糖尿病、炎症性腸疾患、腎不全のようにしばしば血清亜鉛低値を認める患者(潜在性亜鉛欠乏も含む)では、亜鉛投与により基礎疾患の所見・症状が改善することがあるため、“亜鉛欠乏症状が認められていなくても、亜鉛補充を考慮してもよい”と治療指針の項に示した」とし、「食欲が低下している、貧血、感染の疑いが見られた場合、原疾患の治療に難渋している場合にも低亜鉛の可能性があることから、亜鉛測定を検討してほしい」と説明した。 現在、亜鉛製剤には2024年3月に発売されたヒスチジン亜鉛(商品名:ジンタス錠)、酢酸亜鉛、ポラプレジンク(商品名:プロマックD錠ほか)があるが、低亜鉛血症で保険適用になっているものは、ヒスチジン亜鉛と酢酸亜鉛のみである。「ヒスチジン亜鉛は良好なコンプライアンスが期待でき、酢酸亜鉛よりも消化器症状が少ない特徴を持っている」と説明した。採血は1~2ヵ月を目処に、銅も考慮を 今回の改訂では、採血タイミングも盛り込まれた。これについて「現状、実臨床で血中濃度の評価が正しくされていないため、1~2ヵ月ごとに亜鉛を、数ヵ月に1回は銅を測定して薬剤継続可否の判断を行ってほしい。また、貧血症状を有している患者ではすでに鉄や銅を測定しているが、それでも改善しない場合には亜鉛測定に踏み込んでもらいたい」と述べた。亜鉛投与による有害事象の観点からも、「銅欠乏や鉄欠乏性貧血をきたすことがあるので、ルーチンで測定する必要はないが、数ヵ月に1回は血清亜鉛とともに、血算、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、フェリチン、血清銅を測定してほしい。亜鉛投与が適応となる患者であっても、投与数ヵ月のなかで症状の変化がみられない場合には、臨床症状が亜鉛欠乏によるものではないと判断し、亜鉛投与を中止する」といった判断が必要なことも強調した。極端な健康志向の食事療法は亜鉛不足のリスク 健康を意識した食事として、心血管疾患や糖尿病、認知症などに予防効果があるとされる地中海食やDASH食を想像するだろう。ところが、これらの食事療法で推奨される玄米や全粒粉、大豆などの植物由来製品には、亜鉛とキレートを形成するフィチン酸が多く含まれるため、亜鉛の吸収を阻害してしまうという。一方、亜鉛含有量が高い食材として牛赤身肉が推奨されるが、赤身肉の摂取はがん発症リスク、腎臓病などに悪影響を及ぼすことも報告されている。これらを踏まえて、同氏は「バランスのよい食事を心がけることが重要。実際にベジタリアンやヴィーガンでの亜鉛欠乏症が報告されている。そして、亜鉛は生体のなかでも筋肉に60%ほど分布していることを考慮すると、海産物(牡蠣、ホタテ、魚、海藻類)の摂取を意識するのが望ましい。その点で和食や地中海食はよいかもしれない」とコメントした。 最後に同氏は、「亜鉛は300種以上もの酵素や機能タンパクの活性中心に存在し、その意義が詳細に明らかにされている必須微量元素である。1961年に亜鉛欠乏症が報告されて以来、研究にも長い歴史を有しているが、その一方で“未完の大器”のような可能性を秘めている。7年ぶりの改訂では疫学研究や観察研究ではなく、さまざまな介入研究の結果を反映させることができたが、今後の課題として、糖尿病や腎不全、肝障害の発症抑制、慢性疾患に対する抗炎症作用としての亜鉛の効果(抗酸化酵素、増殖等)などに関する研究結果を発信していきたい」と締めくくった。 亜鉛などの微量元素は人間に内在する病的な因子として、決して忘れてはいけない存在である。なお、微量元素の恒常性の観点から、加齢や炎症疾患において近年注目されているセレンについても、「セレン欠乏症の診療指針2024」が同時に発刊されているので、合わせて一読されたい。

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米国出生率、中絶禁止導入州で上昇/JAMA

 米国において中絶禁止法を導入した州の出生率は、導入しなかった場合に予想される出生率より高く、とくに人種的マイノリティ、低学歴(大学卒業ではない)、低所得、未婚、若年、南部の州においてその差が大きかった。同国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のSuzanne O. Bell氏らが、出生証明書と国勢調査データを解析し報告した。このような超過出生は、社会サービスが最も脆弱で、母子の健康と福祉に関するアウトカムが最も不良な州で認められ、著者は、「既存の格差がさらに深刻化し、すでに逼迫している資源にさらなる負担をかける可能性がある」と指摘している。JAMA誌2025年4月15日号掲載の報告。中絶禁止法を導入した州の出生率を分析 研究グループは、2012~23年の全米50州およびコロンビア特別区(ワシントン)の出生証明書ならびに国勢調査データを用い、完全な中絶禁止または妊娠6週目以降の中絶禁止を法的に導入している米国14州*における、15~44歳(生殖可能年齢)の女性の出生率(1,000人当たりの出生数)の平均変化と絶対変化について、全体および州別、ならびに州内と州間で、年齢、人種・民族、婚姻状況、教育、保険加入別に、ベイズパネルデータモデルを用いて推定した。*:アラバマ、アーカンソー、ジョージア、アイダホ、ケンタッキー、ルイジアナ、ミシシッピ、ミズーリ、オクラホマ、サウスダコタ、テキサス、テネシー、ウェストバージニア、ウィスコンシン(アイダホ、ミズーリ、サウスダコタ、ウィスコンシン以外の州を南部とする)中絶禁止法導入後の出生率は、導入しなかった場合の予測値より高い 中絶禁止法を導入している14州全体では、生殖可能年齢の女性1,000人当たりの出生数が、期待値より1.01人(95%信用区間[CrI]:0.45~1.64)増加と推定され(予測値59.54に対し観測値60.55)、増加率は1.70%(95%CrI:0.75~2.78)、超過出生数2万2,180人に相当することが示された。 この結果は、州およびサブグループによってばらつきがみられ、期待値を上回る増加は、とくに南部の州、ならびに人種的マイノリティ(約2.0%)、未婚者(1.79%)、35歳未満(約2.0%)、メディケイド受給者(2.41%)、大学卒業未満(高校卒業2.36%、大学の学位なし1.58%)で顕著であった。 中絶禁止と出生率の州レベルでの関連性のばらつきの大部分は、各州における人種・民族、教育の違いに基づくものであることが示された。 著者は研究の限界として、出生率に影響を与える同時要因を考慮することが困難であること、限定的な個人レベルのデータがまだ入手できず、解析では2023年の暫定的な出生数集計データを使用したこと、出生時の妊娠週数に関する情報は集計データでは入手できないため、受胎コホートに基づく解析が不可能であったことなどを挙げている。

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再発を伴わない二次性進行型多発性硬化症、tolebrutinibが障害進行リスク抑制/NEJM

 再発を伴わない二次性進行型多発性硬化症(SPMS)患者において、tolebrutinibによる治療はプラセボと比較し障害進行のリスクが低いことを、米国・クリーブランドクリニックのRobert J. Fox氏らHERCULES Trial Groupが、第III相二重盲検プラセボ対照試験「HERCULES試験」の結果で報告した。多発性硬化症(MS)では、経過中に徐々に神経学的症状の進行が生じることがあり、これは障害蓄積(disability accrual)と呼ばれている。現在のMSに対する疾患修飾療法は、再発とは関係のない障害蓄積に対する効果は限られており、その原因の一部は中枢神経系内での慢性、治療抵抗性の神経炎症にあると考えられている。tolebrutinibは、中枢移行性の高い経口ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬で、末梢および中枢神経系の両方の骨髄細胞(ミクログリアを含む)とB細胞を標的としている。これまで、再発を伴わないSPMSに対して承認された治療法はなかった。NEJM誌オンライン版2025年4月8日号掲載の報告。6ヵ月以上持続する障害進行をtolebrutinibとプラセボで比較 研究グループは、過去24ヵ月間に臨床的な再発がなく、過去12ヵ月間に神経学的症状進行の所見がみられ、総合障害度評価尺度(EDSS)(範囲:0~10.0、スコアが高いほど障害度合いが大きい)が3.0~6.5の18~60歳の再発を伴わないSPMS患者を、tolebrutinib群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、1日1回60mgを経口投与した。 主要エンドポイントは、6ヵ月以上持続する障害進行(EDSSスコアがベースラインから1.0以上増加[ベースラインスコアが5.0以下の場合]または0.5以上増加[ベースラインスコアが5.0超の場合]と定義)で、ITT解析を行った。tolebrutinib群で障害進行のリスクが低い 2020年10月23日~2023年1月12日に、計1,131例が無作為化された(tolebrutinib群754例、プラセボ群377例)。 追跡期間中央値133週間において、6ヵ月以上持続する障害進行が確認された患者の割合は、tolebrutinib群で22.6%、プラセボ群で30.7%であり、tolebrutinib群で有意に低かった(ハザード比:0.69、95%信頼区間:0.55~0.88、p=0.003)。 重篤な有害事象は、tolebrutinib群で15.0%、プラセボ群で10.4%に発現した。主なものは、tolebrutinib群ではCOVID-19肺炎、多発性硬化症の再発、COVID-19、肺炎、プラセボ群では肺炎と尿路性敗血症であった。死亡率は両群で同程度であった。 また、tolebrutinib群で4.0%、プラセボ群で1.6%の患者で、ALT値の正常範囲上限の3倍を超える上昇が認められた。

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tenecteplase、脳梗塞治療でアルテプラーゼと同等の効果

 急性期脳梗塞の治療薬として2月28日、米食品医薬品局(FDA)により承認された血栓溶解薬のTNKase(一般名テネクテプラーゼ〔tenecteplase〕)の有効性と安全性は、米国の大多数の病院で使用されている血栓溶解薬のアルテプラーゼと同等であるとする研究結果が報告された。テネクテプラーゼには、アルテプラーゼと比べて投与に要する時間が格段に短いというメリットもある。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのJustin Rousseau氏らによる本研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月12日掲載された。 Rousseau氏らの説明によると、米国では毎年約80万人が脳卒中を発症し、その原因のほとんどは血栓が脳への血流を遮断することで生じる脳梗塞だという。アルテプラーゼは、1996年にFDAにより承認された血栓溶解薬であるが、投与に時間がかかるという欠点がある。同薬剤の投与プロセスは、最初に投与量の10%程度を1〜2分で急速投与し、その後、1時間かけて点滴で投与するというものであり、治療の中断や遅延を引き起こす可能性があると研究グループは指摘する。 これに対し、テネクテプラーゼはわずか数秒の注射で投与される。テネクテプラーゼは、血栓による心筋梗塞の治療薬としてすでに市場に出回っているが、急性期脳梗塞に対しては適応外で使用されていた。 今回の研究でRousseau氏らは、2020年7月1日から2022年6月30日の間に急性期脳梗塞に対する治療としてテネクテプラーゼを投与された9,465人(平均年齢69.6歳、女性47.6%)とアルテプラーゼを投与された7万85人(平均年齢68.5歳、女性48.6%)を対象に、有効性と安全性を比較した。有効性の主要評価項目は、退院時の機能的自立性(修正ランキンスケール〔mRS〕スコア0~2点)、副次評価項目は、退院時に障害がないこと(mRSスコア0~1点)、自宅退院、退院時の自立歩行であった。安全性の評価項目は、治療後36時間以内の症候性頭蓋内出血(sICH)、院内死亡、ホスピスへの退院、および院内死亡とホスピスへの退院の複合とされた。 その結果、対象者全体では、有効性と安全性の評価項目についてテネクテプラーゼ群とアルテプラーゼ群の間に有意な差は見られないことが明らかになった。一方、血管内血栓回収療法(EVT)適応があったが血栓溶解療法のみを受けた患者の間では、アルテプラーゼ群と比べてテネクテプラーゼ群で、自宅退院のオッズが有意に高く(調整オッズ比1.26、95%信頼区間1.03〜1.53)、院内死亡(同0.63、0.47〜0.85)、および院内死亡とホスピスへの退院の複合(同0.78、0.62〜0.97)のオッズは有意に低かった。 研究グループは、テネクテプラーゼとアルテプラーゼの有効性と安全性は同等であるが、投与の容易なテネクテプラーゼを使用することでEVTをより迅速に受けられるようになるなど、急性期脳梗塞の治療の柔軟性が高まる可能性があると見ている。 Rousseau氏は、「急性期脳梗塞の治療では、『時は脳なり』と言われる。効果的な治療が遅れるほど死滅する脳細胞が増え、予後が悪くなるからだ。本研究結果は、テネクテプラーゼがアルテプラーゼによる従来の治療法に代わる安全で効果的な治療法であり、場合によっては患者の回復を早める可能性があることを示唆している」とサウスウェスタン医療センターのニュースリリースの中で述べている。

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遺伝性アルツハイマーへのgantenerumab、発症リスク低下に有効か

 最先端のアルツハイマー病治療薬が、実際にその進行を防ぐ可能性のあることが、小規模な研究で示された。脳内でアミロイドβ(Aβ)が過剰に産生される遺伝的変異を持ち、将来、アルツハイマー病を発症することがほぼ確実とされる試験参加者に、脳からAβを除去する抗Aβ IgG1モノクローナル抗体のガンテネルマブ(gantenerumab)を投与したところ、投与期間が最も長かった参加者ではアルツハイマー病の発症リスクが50%低下したことが示されたという。米ワシントン大学医学部のRandall Bateman氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Neurology」4月号に掲載された。 ガンテネルマブは元々、同じく抗Aβ抗体薬のソラネズマブ(solanezumab)とともに、2012年に開始された臨床試験(The Knight Family DIAN-TU-001、以下、DIAN-TU)において、優性遺伝性アルツハイマー病(DIAD)の発症予防や進行遅延に対する効果が検討されていた。対象は、DIAD発症予測年齢の15年前から10年後の間にある、無症状または認知機能の軽微な低下が認められるDIAD変異キャリアだった。 2020年の試験終了時点では、ガンテネルマブの認知機能低下に対する抑制効果については十分なエビデンスが得られなかったものの、Aβレベルの低下が確認されたことから、DIAN-TU試験参加者を対象に、オープンラベル継続投与試験(OLE試験)が実施されることになった。しかし2022年11月、ロシュ/ジェネンテック社は、ガンテネルマブに関する別の臨床試験において期待されていた結果が得られなかったことを理由に同薬の開発中止を決定した。これを受け、当初3年間の予定で開始されたOLE試験も、予定より早い2023年半ばに打ち切られた。OLE試験では、試験参加者は平均2.6年にわたる治療を受けた。 本研究結果は、このOLE試験の解析結果である。OLE試験には、2020年6月3日から2021年4月22日の間に18施設から73人が登録され、全員がガンテネルマブによる治療を受けた。試験の途中で13人が有害事象や疾患の進行により離脱し、47人(64%)が試験終了に伴い治療を中止した。最終的に、3年間の治療を完了したのは13人だった。 中間解析からは、ガンテネルマブによる治療期間が最も長かった22人では、認知症の重症度を評価する臨床認知症評価尺度の合計点(CDR-SB)の低下リスクが約50%低下する可能性のあることが示唆された(ハザード比0.53、95%信頼区間0.27〜1.03)。この結果は、アルツハイマー病の症状が現れる前にガンテネルマブにより脳からAβを除去することで、発症を遅らせられる可能性があることを意味する。しかし、DIAN-TUまたはOLE試験のどちらかでのみガンテネルマブによる治療を受けた53人では、認知機能低下に対するガンテネルマブの抑制効果は確認されなかった(同0.79、0.47〜1.32)。 Bateman氏は、「これはアルツハイマー病の遺伝リスクがある人の発症を予防できる可能性を示す最初の臨床的エビデンスとなり得る、大いに期待を持てる結果だ。近い将来、何百万人もの人々のアルツハイマー病の発症を遅らせることが可能になるかもしれない」と話している。また、米アルツハイマー病協会の最高科学責任者であるMaria Carrillo氏も、「これらの興味深い予備的研究の結果は、Aβレベルを下げることがアルツハイマー病の予防に果たす潜在的な役割を非常に明確に示唆している」とワシントン大学のニュースリリースの中で述べている。 ただし、抗Aβ抗体薬は高価であり、副作用のリスクも伴う。この小規模試験での脳浮腫の発生率は30%と、最初の臨床試験での発生率(19%)と比べて1.3倍に増加していた。

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低ホスファターゼ症の新たな歯科症状が明らかに―全国歯科調査

 子どもの歯は6歳前後で永久歯へと生え変わる。もしそれより早く乳歯が抜け落ちたとしたら、そこに別の病気が隠れているかもしれない。 低ホスファターゼ症(HPP)は、無治療では死に至ることもある遺伝性の骨系統疾患であり、乳歯の早期脱落といった歯科的問題を伴うことが多い。この度、日本人におけるHPPの歯科的所見の調査を目的とした全国調査が行われ、この疾患に関する新たな歯科所見が認められたという。本調査は大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学講座の大川玲奈氏、仲野和彦氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月25日掲載された。 HPPは大きく、成人型・歯限局型などの軽症型、周産期重症型・乳児型などの重症型に分けられる。2015年に全身治療法が国内で承認されて以来、重症型HPPでも生命予後が改善されたが、歯が生えそろうまでの生存が困難であったことから、歯科症状に関しては分かっていないことが多い。大川氏らは、2013年、2018年にHPPの全国調査を実施している。3回目となる今回は、歯の早期脱落に対する不正咬合治療の必要性という観点からHPP患者の歯列と咬合に焦点を当てた全国歯科調査を実施することとした。 全国調査は、歯科を有する総合病院609施設に対して実施された。過去5年間にわたるHPP症例の診療の有無に関するアンケートを送付し、「有」と答えた施設に対して、その症例の歯科症状に関するアンケートを送付、回答してもらった。最終的に、アンケートにより得られた62名に、大阪大学歯学部附属病院の41名を加えた、103名のHPP症例を解析対象とした。 解析に含めた103名のうち47名が歯限局型(軽症型)、55名が非歯限局型(重症型)、1名の分類が不明だった。4歳未満での乳歯の早期脱落は全体で75名(73.5%)が報告され、内訳は歯限局型43名(43/47名、91.5%)、非歯限局型32名(32/55名、58.2%)だった。乳歯の早期脱落は、歯限局型で有意に発生しており(P<0.001)、最も多く脱落した部位は「下顎乳中切歯」だった。歯の形成不全は非歯限局型の40%で認められ、歯限局型(8.5%)と比較し有意に高い割合で発生していた(P<0.001)。 不正咬合は非歯限局型が歯限局型よりも多く、最も多く見られた種類は叢生(そうせい)だった。また、非歯限局型で多かった歯科症状として、口腔習癖(指しゃぶり、舌の突き出し)、摂食嚥下障害(噛まずに飲み込む、飲み物で食べ物を流し込む)が認められた。 著者らは本研究について、「HPPの重症度は様々であり、特に重症型のHPPでは歯の形成不全、不正咬合、口腔習癖、摂食嚥下障害が多く認められた。口腔習癖や摂食嚥下障害に関しては、乳切歯の脱落が原因の可能性もあり、患者には義歯の使用だけでなく、口腔機能の評価や機能訓練が推奨されることを示唆している。HPP患者には、疾患の重症度に応じた集学的治療法の確立が必要なのではないか」と述べた。 本研究の限界については、アンケートに回答しなかった施設にHPP症例が含まれていた可能性があること、アンケートで得られた回答の信頼性などを挙げている。

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第35回 尿管結石をどう見抜き、どう診るか【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)尿管結石らしさを的確に見積もれるようになろう!2)ベッドサイドで診断をつけよう!3)血管病変は常に意識することは忘れないようにしよう!【症例】52歳男性。高血圧、脂肪肝で近医のクリニックに受診している。朝方左側腹部の痛みがあり、目が覚めてしまった。その後、痛みが改善せず救急外来を独歩受診した。待合室で1度嘔吐あり。●受診時のバイタルサイン意識清明血圧152/96mmHg脈拍96回/分(整)呼吸20回/分SpO299%(RA)体温36.4℃瞳孔3/3mm+/+尿管結石はいつ疑うかみなさんは、どんなときに尿管結石を疑いますか?たとえば、中年男性が「身の置き所のない」側腹部痛を訴えていたら、まず疑うでしょう。私自身は経験がありませんが、友人の何人かが本症にかかったことがあり、詳しく話を聞いてみると、みんな口を揃えて「あれは死ぬほど痛い!」と言っていました。救急外来では、尿管結石の症例によく遭遇しますが、本当に患者さんつらそうですよね。冷や汗をかきながら腰に手を当て、何とか楽な姿勢を探そうとするけれども、結局みつからない…そんな様子が典型的です。以前紹介したSTONE score(表1)にもあるように、嘔気や嘔吐、血尿、そして数時間以内に症状がピークに達することが尿管結石らしさを示す特徴です1)。表1 STONE score画像を拡大するただしその際、「尿管結石らしい症状」を示す、見逃してはならない他の疾患も同時に鑑別する必要があります(参考リンク:第19回 侮ってはいけない尿路結石)2)。鑑別すべき疾患については図にまとめましたが、とくに血管病変には注意が必要であることは、ぜひ意識しておきたいポイントです。図 尿管結石の鑑別診断尿検査は施行するかみなさんは、尿管結石を疑った際に尿検査を提出するでしょうか。尿管結石における尿潜血の感度・特異度は、それぞれ84%・48%とされており3)、尿検査のみで診断を確定できる「絶対的な指標」とは言えません。全国の医師を対象にしたあるアンケート調査によると、8,549人の医師の回答者のうち、82%の医師が「尿管結石を疑った際に尿検査を提出する」と回答しています4)。ただし、この設問では「尿管結石を疑った際に尿検査を提出しますか?」とだけ問われており、具体的な臨床状況の設定がなかったため、結果の解釈には注意が必要です。それでも、多くの医師が尿管結石を疑った際に尿検査を施行していることがうかがえます。尿検査は簡便で、かつ迅速に結果が得られるため、診断の補助として行われることが多いでしょう。ただし、重要なのは検査結果そのものよりも、検査前確率(pre-test probability)です。また、尿検査よりも優先して実施すべき、より有用な検査も存在します。腹痛診療における検査腹痛を訴える患者に対して実施すべき検査は何でしょうか。救急外来ではCT検査が多くオーダーされているのが実状ですが、これは決して悪いことではありません。ただし、超音波検査(US)が可能な環境であれば、まずはUSを行うべきでしょう。ベッドサイドで簡便に施行でき、被曝のリスクもありません。2025年に発表された『急性腹症ガイドライン2025第2版』でも、「急性腹症の画像診断で最初に行うべき形態学的検査は何か?」という問いに対して、「非侵襲性、簡便性、機器の普及度などの観点から、スクリーニング目的での超音波検査が第1選択であり、とくに妊婦や小児において推奨される」と記載されています5)。また、急性腹症に対して造影CT検査の適応を判断する上でも、まずUSを実施し、具体的な疾患を想起できるかどうかを評価することが重要です。目的意識なくCT検査を施行しても、その結果を適切に解釈することは困難です。造影剤アナフィラキシーは、以前に問題がなかった造影剤でも起こり得るため、無用な造影剤の使用は避けるべきです。検査は常に明確な目的を持って選択する必要があります。CHOKAI scoreの勧めSTONE scoreよりもお勧めしたいのが、日本発のscoreである「CHOKAI score」です(表2)6)。これはUS所見を含む7項目から構成されており、実臨床に即した評価が可能です。なかでも注目すべきは、US所見に重みが置かれている点であり、その点数配分からもその重要性がうかがえます。表2 CHOKAI score精度の高さも報告されており、実際の診療での有用性は高いと考えられます。ぜひ積極的に活用していただきたいscoreです。水腎症の有無を確認しつつ、大動脈の評価も併せて行えば、血管病変の見逃しも防げて万全でしょう。早期に尿管結石と判断できれば、除痛も迅速に行えるはずです。 1) Moore CL, et al. BMJ. 2014;348:g2191. 2) 坂本壮. 第19回 侮ってはいけない尿路結石【救急診療の基礎知識】 3) Luchs JS, et al. Urology. 2002;59:839-842. 4) 坂本壮. 臨床何でもコントラバシー. 日経メディカル. 2024. 5) 急性腹症診療ガイドライン2025 改訂出版委員会 編集. 急性腹症ガイドライン 2025 第2版. 医学書院.2025. 6) Fukuhara H, et al. Am J Emerg Med. 2017;35:1859-1866.

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学会という名の同窓会【Dr. 中島の 新・徒然草】(577)

五百七十七の段 学会という名の同窓会ゴールデンウィークが近づいてまいりました。まとまった休みが取れるのはありがたいのですが、その前後はかえって忙しくなってしまいます。さて、春の学会シーズン。学会というのは、単に最新知見を得る場というだけでなく、旧知の仲間たちと再会する機会でもあります。長く医療の世界に身を置いていると、あちこちで顔なじみが増えていくもので、そんな人たちと立ち話をするのも学会の楽しみの一つといえるでしょう。先日の学会でも、昔話に花が咲きました。ある40代の先生。休憩時間に私に尋ねてきました。「先生は、週2回の外来以外の日は何をしているんですか?」私が「オンライン英会話とかしてるよ」と答えると、彼は驚いたように「ええ、自己研鑽ですか?」と返してきました。中島「いやいや、研鑽とか、そんな立派なもんじゃなくて。昔から英語が苦手で悔しい思いもたくさんしてきたから、少しでも取り戻したいと思って……」そう正直に話しました。「先生もどう?」と誘うと、「考えておきます」とのこと。ちなみに、オンライン英会話の講師はフィリピン人の先生ですが、彼女らと話すと世界が広がった気になります。最近の殺人事件の話をすると「日本でも人が殺されたりするのか!」と驚かれました。「他の国に比べたら数が少ないだけで、日本でも殺人事件はありますよ」と答えておきましたが、きっと彼女らの見聞も広がったことでしょう。また別の50代の先生は、こう切り出してきました。「今度、○○病院に部長で行くんですけど、何かアドバイスをください」私は「おめでとう。症例を増やそうと思ったら、週に半日でもいいから近くの医療機関で外来をするといいよ」と伝えました。「そうすれば、自分がそこに行っていない日でも、脳外科の症例が来たら紹介してくれるからね」とも。すると彼は「なるほど、それは確かに理にかなってますね」と感心していました。私はさらに続けました。中島「あとね、若手にも他の病院の外来に行かせるといいよ。症例も増えるし、アルバイトに理解ある上司だと思われて一石二鳥よ!」彼は笑いながら「先生、策士ですね」と返してきました。「とはいえ、症例が少ない時は若手の論文指導ということになるんだけど、実はそいつが難しい。結局、部長先生が9割くらい書くつもりで指導しないと、なかなか形にはならんぞ」と話すと、「それが現実ですよね」と苦笑いされました。さらにもう一人、60代の旧友から声をかけられました。「中島、今はどないしとるんや」「定年後の生活をエンジョイしとるで」と私が答えると、彼は「俺なんか、定年後も別の病院で働いとるぞ」とのこと。「すごいなあ。でも、男の健康寿命って、たしか73歳くらいやったよな。倒れるまで働くつもりか?」と聞くと、「ホンマか! それは考えなあかんなあ」と、少し真剣な表情。この先生には「やりたいことがあったら今のうちにやっとけよ」とアドバイスしておきました。こういった立ち話のような短いやり取りでも、それぞれの生き方が垣間見えるのが、学会という場の面白さです。医師としての立場は違いますが、同じ時代を歩んできた仲間たちとの会話は、肩の力が抜けていて心地よいものですね。最後に1句花が咲く 春の学会 立ち話

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第8回 「スマホ習慣」が脳を救う?意外な研究結果

スマートフォンやパソコン、インターネットといった技術の普及に伴い、「生涯を通じたテクノロジーの利用が脳の機能を低下させるのではないか?」という「デジタル認知症仮説」と呼ばれる仮説が提唱されてきました。テクノロジーに依存することで、頭を使わなくなり、認知症リスクが高まるのではないかということが懸念されてきたのです。テクノロジー利用が認知症リスク低下と関連しかし、そんな懸念を覆すかもしれない研究結果が最近になり報告され、CNNなどのニュースでも報じられました1)。テキサス州2大学の研究チームがメタ分析という手法を用いて、テクノロジー利用と認知症リスクの関連について解析を行なった結果がNature Human Behavior誌に発表されたのです2)。この研究の中で、これまでに行われた研究57件(合計41万1,430人)のデータをレビューしたところ、スマホやパソコンなどのテクノロジー利用者は非利用者に比べ、認知障害(軽度認知障害や認知症の診断、認知機能テストにおける低スコア)のリスクが平均42%低いことと関連することが明らかになったのです。なお、対象とされた研究には、平均6年間観察した追跡研究20件が含まれ、参加者の平均年齢は68歳でした。また、教育水準や収入、さまざまなライフスタイルなどを調整してもこの関連は認められており、これらの違いによる結果ではないことが確認されています。すべての「スマホ利用」に当てはまるわけではないただし、この研究にも当然限界はあります。その1つは、この研究で、テクノロジーをどのような形で利用していたかの詳細が加味されていないことです。このため、研究結果がなんでもかんでもテクノロジー利用と認知機能との関連を保証するものではないといえます。当然、この結果は「無目的にスマホの画面をスクロールし続けること」を推奨するものではまったくありません。他の研究結果とも統合して考えると、テクノロジー利用がもし脳にプラスに働くとすれば、それは情報検索や文章作成、コミュニケーションなどの「能動的な活動」が認知予備力(cognitive reserve)を高める可能性が指摘できます。この「認知予備力」とは、脳が持つ情報処理や問題解決能力の「蓄え」のようなものです。知的な活動を通じて、この予備力を高めておくと、年を重ねてその「蓄え」を費やさなければならなくなっても脳の機能を維持しやすくなります。逆に、この予備力が十分にない場合には、蓄えがないため衰えのみが進んでしまい、将来的に認知症のリスクが高まる可能性があるということです。また、この研究の中ではソーシャルメディア単独の影響も見ていますが、その影響は研究間で一貫しませんでした。このため、一括りにスマホを使うといっても、ソーシャルメディアではうまくいかないのかもしれません。また、対象世代は「使い方を学ぶ努力」を必要とした世代であり、生まれた時からデジタル環境に囲まれた若年世代への研究結果の適用ができるかどうかはまた別問題です。目的を持った「適度な」デジタル活用を実用面に落とし込むと、高齢者自身がデバイス操作を学ぶ過程そのものが脳への刺激となる可能性もあります。仮に、すでに軽度認知障害がある人でも、トレーニングを通じて技術利用は十分可能であるといわれています。もしかすると、認知症予防や治療に役立つツールにもなりうるのかもしれません。いずれにせよ、「目的を持った適度なテクノロジー利用」が、おそらく最も有益なのでしょう。一方で、画面を見続けることで生じる目や首の疲労を感じるほど「過度に」使用する場合にはその有益性は失われ、むしろ損失のほうが大きくなることも懸念されます。結論として、適切なサポートのもとで高齢者がデジタルテクノロジーを日常生活に取り入れることは、認知機能低下に保護的に働く可能性があります。少なくとも、「デジタル認知症仮説」は、過度な利用がなければあまり心配する必要はないのかもしれません。しかし、どのようなものをどのような形で取り入れると真に効果が出るのかについては、今後も研究を続けていく必要があります。また、過度の利用による弊害についても、同時に評価を行っていく必要があるでしょう。 1) Rogers K. Technology use may be associated with a lower risk for dementia, study finds. CNN. April 14, 2025. 2) Benge JF, Scullin MK. A meta-analysis of technology use and cognitive aging. Nat Hum Behav. 2025 Apr 14. [Epub ahead of print]

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フェリチン値から必要のない鉄剤を見極めて中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第66回

 鉄欠乏性貧血の治療において、「いつまで鉄剤を続けるべきか」「どのような投与方法が最適か」というのは薬剤師による処方提案の重要なポイントです。今回の症例では、高齢患者さんの鉄剤服用の必要性を血液検査データから見極め、さらに適切な投与スケジュールについて最新の英国ガイドラインを参考に提案しました。とくに注目すべきは、鉄剤投与後のヘプシジン上昇が次の鉄吸収を阻害するメカニズムに基づいた「1日1回投与」や「隔日投与」の有効性です。新しい知見では、従来の「分2投与」から「隔日投与」へ変更することで、患者さんの服薬負担を減らしながらも同等かそれ以上の治療効果が期待できることが示されています。貧血が改善し、フェリチン値が十分な状態であれば、鉄剤の中止も視野に入れることができます。患者情報95歳、女性(外来患者)ADL自立、要介護1、デイサービスなど利用なし身長:145cm、体重:40kg基礎疾患高血圧、鉄欠乏性貧血、低カリウム血症服薬管理通院時は娘と来局、自己管理可能処方内容1.アムロジピンOD錠2.5mg 1錠 分1 朝食後2.エチゾラム0.5mg 1錠 分1 就寝前3.クエン酸第一鉄錠50mg 2錠 分2 朝夕食後4.アスパラカリウム錠 1錠 分1 朝食後処方提案までの経過この患者さんは、鉄欠乏性貧血に対してクエン酸第一鉄を服用中でしたが、「薬の粒が大きく服薬が困難」との相談があり、評価を実施しました。お薬手帳から少なくとも半年以上の鉄剤服用が確認できましたが、客観的な血液検査値による貧血状態は不明でした。検査データを確認したところ、以下の結果が得られました。<介入当初の採血結果>ヘモグロビン:12.8mg/dL(正常範囲内)平均赤血球容積:97.5(正常範囲内)フェリチン:203.5ng/mL(十分量の鉄貯蔵を示す)血清鉄:71μg/mL(正常範囲内)総鉄結合能:277(正常範囲内)これらの検査結果から、患者さんの鉄欠乏性貧血は改善し、貯蔵鉄も十分蓄積されていることが明らかになりました。なお、消化器症状(嘔気や便秘悪化)などの鉄剤による副作用はありませんでした。鉄剤の服用方法について調査したところ、英国消化器学会のガイドラインでは、分2投与より分1投与が推奨され、隔日投与も許容されていることも確認しました1)。鉄投与後にヘプシジンが上昇し、約24時間鉄吸収が低下するため、1日1回投与や隔日投与のほうが吸収効率が高いという新たな知見に基づく推奨です。処方提案とその後の経過服薬情報提供書を用いて、医師に以下の内容を提案しました。1.検査結果に基づく客観的評価フェリチン値が203.5ng/mLと鉄貯蔵が十分であるヘモグロビン値も12.8mg/dLと正常範囲内である2.服薬アドヒアランスの問題粒子径が大きく服用困難である患者の服薬負担軽減の必要性がある3.提案内容鉄欠乏性貧血の改善が認められるため、鉄剤の服用を中止または隔日投与に変更することで、服薬回数を減らして負担を軽減医師の診察で、提案内容と検査結果を踏まえ、フェリチン値も充足していることから鉄剤の服用継続の必要性がないと判断され、処方中止となりました。その後、患者さんからは動悸や息切れ、倦怠感などの貧血症状は報告されず、経過は良好です。服薬回数減少とともに服薬負担が軽減され、QOL向上に繋がりました。1)Snook J, et al. Gut. 2021;70:2030-2051.

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アリピプラゾールによるドパミン受容体シグナル伝達調整が抗うつ効果に及ぼす影響

 即効性抗うつ薬であるケタミンは、解離作用を含む好ましくない精神異常作用を有する。現在、抗うつ効果を維持しながら、これらの副作用を抑制する効果的な戦略は存在しない。京都大学のDaiki Nakatsuka氏らは、マウスとヒトにおけるケタミンの精神異常作用と抗うつ作用に対するドパミンD2/D3受容体拮抗薬とパーシャルアゴニストの影響を調査した。Translational Psychiatry誌2025年3月8日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・パーシャルアゴニストであるアリピプラゾールにより、精神異常作用を減弱し、強制水泳試験においてケタミンの抗うつ作用の維持、増強が認められた。・一方、拮抗薬であるracloprideは、マウスにおいていずれの作用も抑制した。・Brain-wide Fos mappingおよびそのネットワーク解析では、腹側被蓋野がアリピプラゾールおよびracloprideの作用を区分するうえで重要な領域であることが示唆された。・慢性ストレスモデルでは、腹側被蓋野へのraclopride局所注入により、ケタミンの抗うつ作用が抑制され、ドパミン作動性ニューロンの活性が認められた。これは、腹側被蓋野の活性化がケタミンの抗うつ作用を抑制することを示唆している。・より拮抗薬に近い(Emaxが低い)パーシャルアゴニストであるブレクスピプラゾールやracloprideの全身投与は、ケタミンと併用した場合に、モデルマウスの腹側被蓋野のドパミン作動性ニューロンを活性化し、ケタミンの抗うつ作用を抑制したが、アリピプラゾールでは、抗うつ作用の抑制が認められなかった。・これらの結果と一致し、うつ病患者9例を対象とした単群二重盲検臨床試験において、アリピプラゾール12mg併用により、ケタミンの抗うつ作用を維持したうえで、解離症状を抑制することが報告された。 著者らは「これらの知見を総合すると、アリピプラゾールによるドパミン受容体シグナル伝達の微調整により、ケタミンの抗うつ作用を維持しながら、ケタミン誘発解離症状を選択的に抑制することが示唆された。これは、治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾールとケタミンの併用療法が有用である可能性を示している」とまとめている。

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高齢糖尿病患者へのインスリン イコデク使用Recommendation公開/糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])は、4月18日に「高齢者における週1回持効型溶解インスリン製剤使用についてのRecommendation」(高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会作成)を公開した。 週1回持効型インスリン製剤インスリン イコデク(商品名:アウィクリ注)は、注射回数を減少させ、持続的なインスリン作用をもたらすことから、ADLや認知機能の低下により自己注射が困難な高齢患者に血糖管理が可能になると期待される。 その一方で、週1回投与という特徴から、投与調節の柔軟性には制限があり、一部の患者では低血糖が重篤化する懸念がある。 学会では使用に際し、高齢者における使用に際してはカテゴリー分類を行った上で「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」に基づき目標値を設定すること、さらに高齢者では低血糖の症状が乏しく重症低血糖を来しやすいことから『高齢者糖尿病治療ガイド』『インスリン イコデク投与ガイド』などを参考に、下記の5つの事項に留意するように示している。【高齢糖尿病患者への使用でのRecommendation】(1)適切な治療目標を設定する ADLや認知機能が低下した高齢者においては、高血糖緊急症や低血糖を避けることが優先的な目標となる。低血糖になった場合、遷延することが予想されるため、HbA1c値の治療目標は厳格すぎないよう柔軟に設定する。(2)適切なタイミングで血糖モニタリングを実施する 安全性の確保のため何らかの血糖測定が必要である。家族や介護者への教育を徹底し、低血糖時の対応や投与スケジュールの管理を習得してもらう。投与量が安定するまでの期間や、シックデイなど血糖の変動が予想される場合には持続血糖測定(CGM)や遠隔血糖モニタリングも検討する。投与後2~4日目の食前血糖値が最も下がりやすいことから、この日の血糖測定は用量調整の参考になる。(3)訪問看護や介護環境では慎重に計画する 週1回~数回の訪問看護などに依存する患者では、血糖変動を把握する機会が限られるため、慎重な投与計画が必要である。訪問看護師や介護者との連携を強化し、緊急時の対応手段を準備する。(4)感染症、術前の血糖管理など 適宜(超)速効型インスリンを併用する。連日投与のBasalインスリンに変更する場合、最後にイコデクを打ってから1~2週間の間で、朝食前血糖が180mg/dLを超えた時点でイコデクの1/7量を開始する。(5)低血糖予防の注意事項と対応 低血糖時の対応方法に習熟してもらう(必要に応じグルカゴン投与も含む)。予定外の運動をした後は低血糖に注意する。低血糖症状が1度おさまっても再発や遷延の可能性がある。食事量や質にむらがある高齢者では慎重に適応を検討する。持効型インスリンからの切り替え投与時のみ1.5倍に増量することが推奨されているが、この場合は2回目以降も増量を続けないよう注意する。高齢者においては1.5倍の初回投与を必ずしも行わない、という選択肢も考慮される。

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PPI投与量とC. difficile感染症リスクの関係~用量反応メタ解析

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)使用者は非使用者と比べClostridioides difficile感染症(CDI)リスクが上昇することが報告されているが、これまでのメタ解析では、用量反応的な関係についての検討は行われていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMatilda Finke氏らによる用量反応メタ解析の結果、PPI投与量とCDIリスクとの関連は、正の相関を示すことが明らかになった。Journal of Infection誌オンライン版4月14日号掲載の報告。 本研究では、PubMed、Embase、Web of Science、およびCochrane Libraryを用いて、PPIとCDIに関する縦断研究を検索した。収集されたデータは、1日当たりのPPI投与量(DDD:defined daily doses)およびPPI治療期間に基づく2つの2段階ランダム効果用量反応メタ解析にそれぞれ組み入れられた。PPI非使用者と比較した補正相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)が推定された。 主な結果は以下のとおり。・全体で15件の観察コホート研究および症例対照研究が対象となり、投与量(DDD)に基づくメタ解析に7件(n=48万3,821)、治療期間に基づくメタ解析に7件(n=51万6,441)が組み入れられた。・バイアスリスクは中程度と評価された。・プールされた用量反応推定値は線形傾向を示し、DDD10mg増加当たりのRRは1.05(95%CI:0.89~1.23)、PPIによる治療1日増加当たりのRRは1.02(95%CI:1.00~1.05)であった。・両解析において残存異質性が認められたが(I2=91.4%/DDD、I2=99.4%/治療期間)、その要因の特定には限界があった。 著者らは、リスク上昇に関与する基礎的なメカニズムやCDIリスクが増加するPPI投与量の閾値については明らかになっていないとし、PPIとCDIの用量反応関係に関する、より多くのデータを基にした研究が必要としている。

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個々のCDK4/6阻害薬、適した患者像は?(PALMARES-2)

 HR+/HER2-の進行乳がんに対するCDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用療法は、内分泌療法単独よりも無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)を有意に延長したことが報告されている。3剤のCDK4/6阻害薬はそれぞれ薬理作用や安全性が異なるが、有効性を直接比較した大規模な試験は実施されていないため、特定の状況においてどのCDK4/6阻害薬がより効果的であるかは臨床的に重要な課題である。そこで、イタリア・IRCCS財団国立がん研究所のLeonardo Provenzano氏らは、パルボシクリブ、アベマシクリブ、ribociclibを内分泌療法と併用した場合の有効性を比較する多施設共同観察研究「PALMARES-2試験」を実施した。 対象は、2016年1月~2023年9月にイタリアのがんセンター18施設で治療を開始したHR+/HER2-の進行乳がん患者であった。本研究は観察研究であるため、CDK4/6阻害薬および内分泌療法は担当医が選択して処方した。主要評価項目はリアルワールドにおけるPFS(rwPFS)であった。多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、個々のCDK4/6阻害薬とrwPFSの関連性を解析した(データカットオフ:2024年1月31日)。 主な結果は以下のとおり。・1,982例の患者が本試験に組み入れられた。パルボシクリブが投与されたのは789例(39.8%)、アベマシクリブは457例(23.1%)、ribociclibは736例(37.1%)であった。年齢中央値は63歳、内分泌療法抵抗性が33%、閉経前が18%、de novo StageIVが29%であった。・全体におけるrwPFS中央値は34.1ヵ月であった。アベマシクリブとribociclibは、パルボシクリブと比較してrwPFSが良好であった。調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)は下記のとおり。 -アベマシクリブvs.パルボシクリブのaHR:0.76(95%CI:0.63~0.92)、p=0.004 -ribociclib vs.パルボシクリブのaHR:0.83(95%CI:0.73~0.95)、p=0.007 -アベマシクリブvs.ribociclibのaHR:0.91(95%CI:0.73~1.14)、p=0.425・アベマシクリブは、パルボシクリブよりも、内分泌療法感受性、内分泌療法抵抗性、Luminal B-like(PgR<1%および/またはKi67>20%と定義)、閉経前、ECOG PS不良、de novo StageIVの患者においてrwPFSが良好であった。・アベマシクリブは、ribociclibよりも、de novo StageIVの患者においてrwPFSが良好であった。・ribociclibは、パルボシクリブよりも、内分泌療法抵抗性、Luminal B-like、閉経前、de novo StageIV、肝転移の患者においてrwPFSが良好であったが、高齢患者においてはパルボシクリブよりも不良であった。・骨転移のみを有する患者においては、3剤ともに同等の有効性を示した。

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間質性肺炎合併肺がん、薬物療法のポイント~ステートメント改訂/日本呼吸器学会

 2017年10月に初版が発行された『間質性肺炎合併肺に関するステートメント』について、2025年4月に改訂第2版が発行された。肺がんの薬物療法は、数多くの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、抗体薬物複合体(ADC)が登場するなど、目覚ましい進歩を遂げている。そのなかで、間質性肺炎(IP)を合併する肺がんの治療では、IPの急性増悪が問題となる。そこで、近年はIP合併肺がんに関する研究も実施され、エビデンスが蓄積されつつある。これらのエビデンスを含めて、本ステートメントの薬物療法のポイントについて、池田 慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が第65回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。NSCLCへの細胞傷害性抗がん薬 細胞傷害性抗がん薬によるIP合併非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療の中心は、カルボプラチンに(nab-)パクリタキセルまたはS-1を併用するレジメンである。これは、本邦で実施された複数の前向き研究や後ろ向き研究の多数例の報告に基づき、比較的安全に投与可能と判断されることによるものである。一方で2次治療以降の検討は少なく、標準治療は確立していない。これについて、池田氏は「後ろ向きの報告から、S-1が比較的安全に投与可能と判断され、用いられているのではないか」と述べた。 IP合併肺がん患者への細胞傷害性抗がん薬の使用について、『特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)』では投与を提案しているが(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:C[低])、「一部の患者には合理的な選択肢でない可能性がある」ことも記載されている。そのため、池田氏は急性増悪のリスク評価が重要であると述べる。リスク評価については、後ろ向き研究においてHRCTでの線維化範囲の広さ、UIP(通常型間質性肺炎)パターン、%FVC(努力肺活量の予測値に対する実測値の割合)低値、%DLco≦50%などが急性増悪のリスク因子として挙げられている。また、ILD-NSCLC-GAPスコア/modified GAPスコア、Glasgow Prognostic Scaleが急性増悪のリスク評価に有用である可能性も報告されている。ただし、確立されたリスク評価方法は存在せず、本ステートメントでは「治療前に急性増悪発症リスクを評価する方法は複数提案されているが確立していない」としている。SCLCへの細胞傷害性抗がん薬 IP合併小細胞肺がん(SCLC)について、本ステートメントの作成にあたり検索に含まれた介入研究は、国内の17例を対象としたカルボプラチン+エトポシドのパイロット試験のみである。本試験では、急性増悪の発現割合は5.9%と比較的低かったことが報告されている。また「びまん性肺疾患に関する調査研究」班(びまん班)の調査では、急性増悪の発現割合がカルボプラチン+エトポシドで3.7%、シスプラチン+エトポシドで11.0%であったことも報告されている。以上から、本ステートメントでは「プラチナ製剤とエトポシド併用療法がIP合併症例においても標準的治療とするコンセンサスが得られている」としている。分子標的薬 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のゲフィチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブは、既存肺のIPが肺臓炎発現のリスク因子となることが報告されている。これらのことから、『特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)』では、IP合併肺がんに対して分子標的薬を投与しないことを推奨または提案するとされている。ただし、池田氏は「実際のところ、EGFR-TKI以外の分子標的薬については、既存肺のIPと肺臓炎リスクの関連は十分に検討されていない」と指摘する。近年では、KRAS、BRAF、METなどを標的とする分子標的薬が登場しており、これらの分子の遺伝子異常を有する患者には喫煙者が多いことから、肺気腫や間質性肺炎の合併が多い可能性も考えられる。そこで、びまん班が「間質性肺炎合併非小細胞肺におけるドライバー遺伝子変異/転座検索の実態と分子標的治療薬の安全性・有効性に関する多施設共同後方視的研究」を実施しており、すでに1,250例を超える症例が集積されているとのことである。池田氏は「かなり興味深い結果になっていることが期待され、近いうちに学会でデータを示し、IP合併肺がん患者でもドライバー遺伝子変異を調べることの意義を共有したい」と述べた。抗線維化薬 特発性肺線維症(IPF)合併NSCLC患者を対象に、カルボプラチン+nab-パクリタキセルへのニンテダニブの上乗せ効果を検討した国内第III相無作為化比較試験「J SONIC試験」では、主要評価項目であるIPF無増悪生存期間(PFS)の優越性は示せなかったものの、非扁平上皮がんに限定するとPFSとOSの延長傾向がみられた。また、IPF合併SCLC患者を対象とした国内第II相試験「NEXT SHIP試験」では、カルボプラチン+エトポシドにニンテダニブを上乗せすることで、間質性肺炎の急性増悪の発現割合を3.0%に抑制したことが報告されている。以上から、ニンテダニブはIP合併の非扁平上皮NSCLC、SCLCにおいて抗線維化作用と抗腫瘍作用の双方を期待でき、1次治療の選択肢の1つになる可能性がある。ADC、モノクローナル抗体 HER2を標的とするADCのトラスツズマブ デルクステカンは肺臓炎の発現が多く、胃がんの市販後調査では既存肺のIPが肺臓炎リスク因子となることが報告されている。そのため、本ステートメントではIP合併肺がんでの使用に際して注意が必要であることが記載されている。ICI ICIは、予後不良なIP合併進行肺がん患者に長期生存をもたらしうる現状で唯一の治療選択肢である。しかし、複数の観察研究において、既存肺に間質性肺疾患を有する場合は免疫関連有害事象(irAE)としての肺臓炎の発現割合が高いことが報告されている。そのため、IP合併肺がん患者へICIを投与する場合は肺臓炎リスクの低い患者の絞り込みが重要となる。 そこで、本邦では複数の介入研究が実施されている。HAVクライテリア(蜂巣肺なし、自己抗体なし、%VC[肺活量の予測値に対する実測値の割合]≧80%)を満たす軽症のIPを合併した肺がん患者に対してICIを投与することで、肺臓炎の発現が抑制されることが示唆されている。一方、HAVクライテリアより緩い基準(蜂巣肺を許容、%FVC≧70%など)で実施した試験では、Grade3以上の肺臓炎が23.5%に認められている。これらの結果を受け、本ステートメントでは「既存肺に蜂巣肺を有すると判断された症例に関しては、とくに肺臓炎のリスクが高いものとして慎重な姿勢で臨むべきである」ことが記載されている。また、これらの結果について、池田氏は「軽症のIPであれば比較的安全な可能性があるが、蜂巣肺を有している場合は、現状の介入研究のデータをみると肺臓炎リスクが高い可能性が示唆されている。ただし、有効性に関する良好なデータも示されており、細胞傷害性抗がん薬では長期生存が見込めない予後不良な集団であることも考慮すると、現状ではICIはIP合併肺がんに対して長期生存をもたらしうる唯一の選択肢であるため、リスクベネフィットを患者に共有し、一緒に考えながら治療を選択していく必要がある」と述べた。

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再発性多発性硬化症の再発抑制、tolebrutinib vs.teriflunomide/NEJM

 再発性多発性硬化症の患者において、tolebrutinibは年間再発率の低下に関してteriflunomideに対して優越性は示されなかった。カナダ・トロント大学のJiwon Oh氏らTolebrutinib Phase 3 GEMINI 1 and 2 Trial Groupが、2つの第III相二重盲検ダブルダミーイベント主導型試験「GEMINI 1試験」と「GEMINI 2試験」の結果を報告した。tolebrutinibは中枢移行性の高い経口ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬で、末梢性炎症および疾患関連のミクログリアおよびB細胞を含む中枢神経系の持続的な免疫活性を調節する。再発性多発性硬化症の治療における有効性および安全性の、さらなるデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2025年4月8日号掲載の報告。GEMINI 1試験、GEMINI 2試験で、年間再発率を評価 GEMINI 1試験は24ヵ国162施設で、GEMINI 2試験は25ヵ国155施設で参加者のスクリーニングを行った。McDonald診断基準2017により再発性多発性硬化症と診断され、総合障害度評価尺度(EDSS)スコア(範囲:0~10、高スコアほど障害進行を示す)が5.5以下、再発が過去1年以内に1回以上、過去2年以内に2回以上あったか、過去1年以内にT1強調MRIで検出されたガドリニウム増強脳病変が1つ以上あった18~55歳の患者を適格とした。 適格患者は、tolebrutinib 60mgを1日1回、食事とともに経口投与する群、またはteriflunomide 14mgを1日1回、食事とともに経口投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。各参加者には1日2錠が投与され、うち1錠は外見がtolebrutinibまたはteriflunomideと同一のプラセボが投与された。 主要エンドポイントは年間再発率であった。重要な副次エンドポイントは6ヵ月以上持続する障害進行で、2試験全体におけるtime-to-event解析で評価した。年間再発率の率比、GEMINI 1試験1.06(p=0.67)、GEMINI 2試験1.00(p=0.98) 2020年6月25日~2022年8月8日に、GEMINI 1試験では974例(tolebrutinib群486例、teriflunomide群488例)が無作為化され、GEMINI 2試験では899例(447例と452例)が無作為化された。 試験を完了したのは、GEMINI 1試験のtolebrutinib群84.2%、teriflunomide群85.0%、GEMINI 2試験はそれぞれ85.9%、83.6%で、追跡期間中央値は139週間であった。 両試験・両治療群の被験者特性は類似しており、GEMINI 1試験では、平均年齢はtolebrutinib群36.8±9.0歳、teriflunomide群36.6±9.4歳、女性被験者割合はそれぞれ68.7%と66.6%、EDSSスコアは両群ともに2.4±1.2、診断後期間は4.8±6.2年と4.6±6.0年などであった。 tolebrutinib群とteriflunomide群の年間再発率は、GEMINI 1試験では0.13と0.12(率比:1.06、95%信頼区間[CI]:0.81~1.39、p=0.67)、GEMINI 2試験では0.11と0.11(1.00、0.75~1.32、p=0.98)であった。 6ヵ月以上持続する障害進行を有した被験者の割合(2試験のプール解析)は、tolebrutinib群8.3%、teriflunomide群11.3%であった(ハザード比:0.71、95%CI:0.53~0.95、事前規定の階層的検証計画により正式な仮説検証は行われず、信頼区間の幅は多重検定に関して補正されていない)。 有害事象が発現した被験者割合は両治療群で類似していたが、軽度の出血が、tolebrutinib群のほうがteriflunomide群よりも高率であった(点状出血4.5%vs.0.3%、過多月経2.6%vs.1.0%)。

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