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心理的安全性の確保【Dr. 中島の 新・徒然草】(501)

五百一の段 心理的安全性の確保こないだ2023年が始まったと思ったら、もう11月です。年を取るとともに時間の過ぎるのが速くなりました。そろそろ年賀状の準備を始めなくてはなりません。さて、広島で行われた国立病院総合医学会では、医療安全のシンポジウムで「医療従事者の心理的安全性を確保するための工夫」というタイトルで話をしました。これは座長からの「医療安全+心理的安全性」というテーマで発表してほしいというリクエストに応えたものです。私にとっての最大の医療安全は「大過なく脳外科手術を終える」ということに尽きます。その一方で、心理的安全性という言葉には馴染がなかったので自分なりに調べました。以下、医療安全と心理的安全性について学会で述べた事を説明しましょう。脳神経外科手術における優先順位というのは、1: 麻痺や意識障害などの後遺症を出さない2: 動脈瘤クリップや腫瘍摘出などの目的を達する3: 速い手術ということになるかと思います。手術は「山頂にある宝物を持って帰る」というミッションにたとえることができます。宝物を目指す途中で遭難するのは論外、まずは無事に帰って来ることが最も大切です。とはいえ、やはり帰った時に宝物を持っていなかったらガッカリすることでしょう。もちろんサッと行ってサッと無事に帰り、目的も達成するに越したことはありません。つまり「遭難せずに宝物をスムーズに持って帰るミッション」という意味で「後遺症を出さずに目的を達する速い手術」が望まれるわけです。が、遭難しないことが最優先なので、時には勇気ある撤退も必要になることでしょう。で、これらを達成するために私がやっていることは、1: 他人様のアドバイスに耳を傾けること2: 多くの人の協力を得ることです。実例を挙げましょう。私が顕微鏡手術をしていると手術室に置かれた巨大モニターを見ている人たちから、「中央じゃなくて、左側の血管に吻合したほうがいいんじゃないですか」とか「今の針糸は内膜を捉えていないのでは?」とか、結構、言われ放題。わざわざ声に出すくらいですから、いちいちもっともな意見で、大いに参考にしています。「六十にして耳順う」とはよく言ったもの。また、先日の巨大腫瘍の摘出なんかは、被膜の剥離と腫瘍摘出で疲労困憊。途中でほかの術者に代わってもらいました。その術者も出血の多さに4時間ほどで戦意喪失。さらに別の術者に代わってもらい、ようやく全摘できました。何人掛かりでやろうが、何時間掛かろうが、結果が良ければそれで良しです。このように遠慮なくアドバイスしたり交代したりすることができる、というのが心理的安全性というものだろうと思います。心理的安全性というのは、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授が1990年代に言い出した概念だそうです。彼女は「率直に議論しても人間関係が壊れないチーム」を心理的安全性の高い組織だと言います。最近になって心理的安全性という言葉が流行り出したのは、ピョートル・フェリクス・グジバチさんの影響かもしれません。彼は、あのGoogleでの研究「プロジェクト・アリストテレス」で心理的安全性の高いチームが生産性も高かったということを見出しました。グジバチさんはポーランド生まれですが、千葉大学にいたことがあるそうで、日本語もペラペラです。YouTubeでグジバチさんがしゃべっているのを見ると、「心理的安全性の高い組織には残酷な率直さがある」と発言していました。彼は、例として「チャック開いてますよ」という指摘を挙げています。確かにこのようなことを言われるのは恥ずかしいですが、指摘されなかったら大変なことになってしまいます。もっとも私なんかは関西人なので、もし「チャックが開いてるよ」と言われたら、「風に当てて冷やしていたんや」と返してしまうかもしれません。ともあれ、こういった率直なコミュニケーションはいろいろな場面で大切だと思います。さらに私が心掛けているのは、手術室での麻酔科医とのコミュニケーションです。かなり出血していると思えば「体感で500mLは出ています。必要なら遠慮なく輸血してください」と言うことにしています。大量出血している時なんかは出血量のカウントが追いついておらず、麻酔科医が事態を把握できていないことがあるので、早めに声を掛けておくべきですね。また、長時間になってしまった手術では、麻酔科医に「もう先が見えてきました」とか「もう少し止血したら閉頭にかかります」とか、そういう声掛けをしておくと全体にスムーズに進行するものと思います。ということで、学会では私を含めて3人の演者によるシンポジウム形式のセッションでしたが、皆が心の中で感じていたことだったのか、思いがけず質疑応答も盛り上がりました。もちろん心理的安全性の高い組織といっても、「なあなあ」に陥ってしまってはなりません。やはり、高く明確な目標を掲げて皆で頑張る、ということが大切ですね。ということで最後に1句霜月や チャックが開き 冷えすぎだ

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検索型AIを活用する【医療者のためのAI活用術】第8回

ChatGPTは情報検索に向いていないこれまでの連載で、ChatGPTの活用について説明してきました。ChatGPTは文章の書き換えや英文校正などに向いていますが、無料版のChatGPTは情報検索には向いていません。これは、ChatGPTが学習したデータは2021年までの情報であり、また生成された回答には引用元がついていないため、情報の真偽が確認できないためです。有料版を利用していれば、プラグインやBingのブラウザを利用して検索することも可能ですが、ChatGPT以外にも情報検索に特化した無料で利用可能なAIツールがあるため、そちらを利用することをお勧めします。今回は、ChatGPT以外に、情報検索で使える無料のツールを2つ紹介します。(1)Perplexity AIPerplexity AIは2022年12月に発表されたサービスです。ChatGPTは事前に学習した内容から回答を考える「対話型AI」であるのに対し、Perplexity AIはインターネット上から情報を得る「検索型AI」といえます。Perplexity AIの特徴は以下のとおりです。基本的な機能は無料で利用可能(有料版も存在する)ログイン不要多言語に対応(日本語よりも英語の方が精度は高い)検索範囲の指定(WikipediaやYouTube、論文など)出典元が表示される使い方はシンプルで、Perplexity AIのウェブサイトにアクセスし、検索したい内容を文章で入力します(図1)。この時に、Focusのボタンをクリックすると、どの情報源を検索するか選ぶことができ、医療情報を検索したい時には「Academic」をクリックすると、論文から引用してくれます。検索ボタンをクリックすると、検索した情報が1段落程度の文章にまとめられて表示され、どの文献から引用したかも示されます(図2)。調べる際は日本語でも入力可能ですが、英語のほうが精度が高いため、英語で検索した後に回答を日本語に翻訳する方が良いかもしれません。欠点としては、検索した内容が必ずしも網羅的ではなく、引用の仕方も不正確な場合がある点です。自分の専門分野について検索すると、情報の妥当さは75点ぐらいの印象です。使い方としては、自分が詳しくない分野の検索の入り口として使用し、細かい内容はそれぞれの論文を読んだり、他の検索ツールを使ったりして補うのが良いと思います。(図1)論文の情報から医療情報を検索する方法画像を拡大する(図2)検索結果画像を拡大する(2)Elicitもう1つ、論文の検索に特化した無料のAIツールに「Elicit」があります。こちらも使い方は簡単で、ウェブサイトにアクセスし、調べたい内容を入力するだけです(図3)。すると、論文を検索し、論文の抄録から関連する内容を抽出して表示してくれます(図4)。Perplexity AIと違う点は、回答がひとまとまりの段落で表示されるのではなく、それぞれの論文から関連する要素を抽出した文章が個別に表示される点で、これにより一つひとつの論文をより吟味したり、取捨選択したりしやすくなります。また、ランダム化比較試験やメタ解析など、論文の種類を指定して検索することができます。さらに、表示順もカスタマイズできるのが優れている点で、たとえば、「Citation(引用回数)」を選択すると、他の論文に引用された回数が多い論文が優先的に表示されるため、その領域の鍵となる論文を簡単に見つけることができます。Perplexity AIよりも、1歩踏み込んだ詳しい内容の検索をするのに向いているといえます。(図3)調べたい内容を入力するだけで検索可能画像を拡大する(図4)検索結果と検索のカスタマイズ方法画像を拡大する

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第69回 ほとんどの成人が日本脳炎ワクチン未接種者の地域は?

静岡県で日本脳炎Unsplashより使用静岡県の医療機関に2ヵ月間入院している高齢者の抗体検査によって、この患者さんが日本脳炎ウイルスに感染していることが先日判明し、話題となりました。今年7月には、熊本県において、15頭のブタのうち1頭で日本脳炎ウイルスに直近に感染していたことを示す抗体が検出され、日本脳炎注意報が発令されています。日本脳炎ウイルスは、ヒトからヒトには感染しませんが、ウイルスに感染したブタを吸血したコガタアカイエカに刺されることで感染します。感染した場合に0.1~1%が急性脳炎を発症するやっかいなウイルス感染症です。ほとんどが無症状なのですが、発症した場合の死亡率が20~40%と高く、生存したとしても多くは後遺症を残してしまいます。日本脳炎ワクチンの予防接種は小児の定期接種に位置付けられているので、現在は取りこぼしがほとんどなく接種できています。日本脳炎ワクチンの接種時期は、基本的に3歳になってからと認識されていることが多いですが、ワクチンの接種そのものは生後6ヵ月から可能です。日本小児科学会では、日本脳炎の流行地域に渡航・滞在、最近日本脳炎の患者が発生した地域に居住、ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域(茨城県、千葉県、静岡県、山梨県、三重県、鳥取県、愛媛県、高知県、大分県、福岡県、佐賀県、長崎県など)に居住している子供について、生後6ヵ月からの接種を推奨しています1)。日本人における日本脳炎抗体の保有状況は、2022年のデータによると40代から急速にダウンしていることがわかると思います(図1)。小児も6ヵ月時点での接種はほとんどなく、基本的に3歳以降の接種のままになっていることがわかります。画像を拡大する図1.感染症流行予測調査グラフ(国立感染症研究所)2)北海道の定期接種は2016年から北海道では、媒介するコガタアカイエカが生息していなかったことから、日本脳炎ワクチンの定期接種は過去行われていませんでした。法定接種の対象になったのは2016年のことです。ゆえに、北海道民の成人のほとんどが日本脳炎ワクチン未接種者と考えられます。大学時代、北海道出身の友人がいたのですが、日本脳炎ワクチンを接種していないということで、慌てて接種していたのを覚えています。北海道に住んでいる人皆がそのまま北海道に住み続けるわけではありませんし、北海道の平均気温もどんどん上昇しています(図2)。なので、どの地域であっても、気温が上昇し続けている日本に住んでいる限り、日本脳炎ワクチンを接種しておいたほうがよいと考えられます。画像を拡大する図2.北海道の気温のこれまでの変化(札幌管区気象台)3)副反応を心配する声もあるかと思いますが、感染・発症したときの健康インパクトが大き過ぎるので、相対的にワクチンの重要性は増すということです。参考文献・参考サイト1)日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について.2)感染症流行予測調査グラフ(国立感染症研究所)3)北海道の気温のこれまでの変化(札幌管区気象台)

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ADHDと自閉スペクトラム症のWAIS-IVまたはWISC-Vによる認知プロファイル~メタ解析

 これまでの研究によると、神経発達の状態は、ウェクスラー式知能検査(最新版はWAIS-IV、WISC-V)における特有の認知プロファイルと関連している可能性がある。しかし、自閉スペクトラム症または注意欠如多動症(ADHD)患者の認知プロファイルをどの程度反映できているかは、はっきりしていなかった。英国・ニューカッスル大学のAlexander C. Wilson氏は、同検査による自閉スペクトラム症とADHDの認知プロファイルの評価を調査する目的でメタ解析を実施した。その結果、WAIS-IVまたはWISC-Vの成績パターンは、診断目的で使用するには感度および特異度が不十分であるものの、自閉スペクトラム症では、言語的および非言語的推論の相対的な強さと処理速度の低さの認知プロファイルと関連していることが示唆された。一方、ADHDでは、WAIS-IVまたはWISC-Vにおける特定の認知プロファイルとの関連性は低かった。Archives of Clinical Neuropsychology誌オンライン版2023年9月29日号の報告。ADHD患者のWAIS-IVまたはWISC-Vの結果は年齢で予想されるレベル 2022年10月までに公表された研究をPsycInfo、Embase、Medlineより検索した。自閉スペクトラム症またはADHDと診断された小児または成人を対象に、WAIS-IVまたはWISC-Vを用いて認知パフォーマンスを評価した研究を検索対象に含めた。検査のスコアはメタ解析を用いて集計した。自閉スペクトラム症とADHDのWAIS-IVまたはWISC-Vを用いた認知プロファイルの評価を調査した主な結果は以下のとおり。・18件のデータソースより報告された、ニューロダイバーシティ(神経多様性)1,800例超のスコアを分析した。・自閉スペクトラム症の小児および成人は、言語的および非言語的推論において典型的な範囲内のパフォーマンスを発揮していたが、処理速度スコアは平均より約1 SD低く、作業記憶スコアはわずかに低かった。これは、自閉スペクトラム症における「spiky」の認知プロファイルの根拠と考えられる。・ADHDの小児および成人のWAIS-IVまたはWISC-Vにおけるパフォーマンス結果は、ほとんどが年齢で予想されるレベルであったが、作業記憶スコアはわずかに低かった。 結果を踏まえて著者は、「自閉スペクトラム症では、自身の長所や困難を特定しサポートするための認知評価が、とくに有益である可能性がある」としている。

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転移乳がんのエリブリン2投2休、後治療のPFSを有意に延長/日本治療学会

 転移を有する乳がん患者にエリブリンを標準スケジュールである21日周期(21日ごとに1・8日目に投与:2投1休)で投与する場合と比較して、28日周期(28日ごとに1・8日目に投与:2投2休)の投与は後治療の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)は有意差はなかったものの延長傾向にあったことを、市立四日市病院の水野 豊氏が第61回日本治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。 エリブリンは腫瘍免疫微小環境の改善効果により、後治療の良好な効果が推測されている。しかし、血液毒性などの有害事象のため標準の21日周期では治療の中断・中止を余儀なくされることがある。これまでエリブリンを1・15日目に投与する28日周期の投与スケジュールにおけるPFSはすでに報告されているが、異なる投与スケジュールが後治療の効果に与える影響を調べた研究はなかった。そこで水野氏らは、エリブリンの異なる治療スケジュールと後治療のPFSの関連を評価するために研究を実施した。 エリブリン治療はまず標準スケジュールである21日周期の1・8日目投与で開始し、2サイクル目の1日目に好中球数が1,500mm3以上であれば標準スケジュールを継続し(2投1休群)、1,500mm3未満であった場合は28日周期の1・8日目投与に変更してその後も28日周期を継続した(2投2休群)。3サイクル目以降も同様に1日目の好中球数が1,500mm3以上かどうかでスケジュールを検討した。 対象は、転移を有する乳がん患者81例(うちde novo StageIVが23例[28%])で、年齢中央値は67歳(範囲:39~90歳)であった。主な転移部位は骨(48%)、肝臓(40%)、所属リンパ節(38%)、肺(32%)。ER/PgR陽性が63%、トリプルネガティブが37%。前治療の化学療法歴なしが31%、1ラインが44%、2ライン以上が25%であった。 主な結果は以下のとおり。<エリブリン治療>・奏効率は9%、病勢コントロール率は30%、臨床的有用率は56%であった。・全体のPFS中央値は6.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.5~8.6)であった。治療スケジュール別のPFS中央値は、2投1休群(49例)が6.1ヵ月(95%CI:3.4~8.4)、2投2休群(32例)が8.6ヵ月(95%CI:5.1~13.0)で有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.149)。・全体のOS中央値は20.6ヵ月(95%CI:14.6~27.1)であった。2投1休群は17.1ヵ月(95%CI:10.2~21.1)、2投2休群は27.1ヵ月(95%CI:14.6~30.9)で、PFSと同様に有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.0833)。<後治療>・後治療を行ったのは47例で、多かったレジメンはパクリタキセル+ベバシズマブ(32%)、AC/EC療法(19%)、カペシタビン±シクロホスファミド(13%)、S-1(11%)、内分泌療法(11%)などであった。・全体のPFS中央値は4.9ヵ月(95%CI:3.0~8.1)であった。2投1休群は3.3ヵ月(95%CI:2.8~5.6)であった一方、2投2休群では10.4ヵ月(95%CI:2.1~14.5)で有意に改善した(p=0.0195)。・OS中央値は2投1休群17.1ヵ月(95%CI:10.9~21.1)、2投2休群28.5ヵ月(95%CI:14.6~53.5)で延長傾向にあった(p=0.0965)。 これらの結果より、水野氏は「エリブリンの標準とは異なる2投2休の投与スケジュールはPFSおよびOSを延長させ、さらに後治療にも好影響をもたらす」とまとめるとともに、質疑応答で「十分に血球を回復させるために2週間休薬することが重要だと考える。好中球数が減少していたとしてもしっかりと回復させる期間が得られ、それによって後治療に好影響をもたらすのではないか」と見解を述べた。

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BA.2.86「ピロラ」感染3週間後の抗体応答が大幅に増強/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株であるオミクロン株BA.2.86(通称:ピロラ)は、2023年8月初頭にデンマークで初めて報告され、スウェーデンでは8月7日に初めて検出された。本症例(インデックスケース)は、慢性疾患のない免疫不全の女性であった。本症例の血清および鼻腔粘膜の抗体応答について、2023年2月に得られた検体と、BA.2.86感染から3週間後に得られた検体を用いて比較したところ、BA.2.86感染後ではIgA値およびIgG値の上昇が認められ、感染前より抗体応答が大幅に増強されることが示唆された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOscar Bladh氏らによる、NEJM誌2023年10月26日号CORRESPONDENCEに掲載の報告。 スウェーデンの医療従事者2,149人を対象としたCovid-19 Immunity(COMMUNITY)コホート研究内のスクリーニングプログラムにおいて、8月7日にBA.2.86感染の最初の症例が確認された。本症例は、慢性疾患のない免疫不全の女性で、SARS-CoV-2感染歴があり、BA.2.86感染の診断前にBNT162b2ワクチン(ファイザー製)を4回接種していた。症状は鼻漏、悪寒、発熱があり、症状期間は3日間であった。これらの症状は前年のSARS-CoV-2感染時よりも軽かった。 主な結果は以下のとおり。・2023年2月の検体採取時に得られた詳細な免疫データから、被験者はBA.2.86感染前では、COMMUNITYコホートと同程度の血清IgG値および鼻腔粘膜IgA値を有していたことが認められた。・BA.2.86感染から3週間後に得られた血清および粘膜検体を用いて、2023年2月に得られた検体と抗体応答について比較したところ、血清中のヌクレオカプシドIgG力価は36倍上昇していた。・野生株およびBA.5スパイクタンパク質に対する血清IgG結合は、2023年2月に得られた検体と比較して、BA.2.86感染後の検体では1.1倍および1.5倍だった。・一方、野生株およびBA.5スパイクタンパク質に対する粘膜IgA結合は、2023年2月に得られた検体と比較して、BA.2.86感染後の検体では3.6倍および3.4倍であり、血清IgGより強く誘導されていた。 本研究により、BA.2.86感染により抗体応答が大幅に増強されるという結果が得られた。著者らは、ワクチン接種を受けた免疫不全者や過去に感染したことのある正常な抗体レベルの人がBA.2.86に感染する可能性があることを裏付けており、BA.2.86が世界的な感染者急増を引き起こす可能性があることを指摘している。また、本研究では2月に検体を採取してから8月にBA.2.86感染と診断されるまでに6ヵ月が経過していたため、9月に抗体価が上昇する以前に抗体価が減少し、感染後の上昇率が過小評価されている可能性もあるという。

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インフルエンザワクチン接種率、コロナ前後でどう変化した?

 コロナ禍を経て、インフルエンザワクチン接種に対する意識はどう変化しただろうか。米国・ブリガム・ヤング大学のTy J. Skyles氏らによる研究の詳細が、Journal of Community Health誌オンライン版2023年9月11日号に報告された。インフルエンザワクチン接種率は12.4%から30.5%に増加 本研究では、同大学に通う440人の学生にアンケートを実施し、2007年のデータと比較した。アンケートでは、インフルエンザワクチン接種に対する意識の実態および過去16年間の変化の要因を調査した。また、回答者には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経験やCOVID-19によるワクチン接種への意識の変化についても質問した。 インフルエンザワクチン接種に対する意識の実態を調査した主な結果は以下のとおり。・大学生のインフルエンザワクチン接種率は、2007年の12.4%から2023年には30.5%に増加したことがわかった。・ワクチン未接種者の意識について、2007年と比較し、費用が28%、ワクチン接種によるインフルエンザ罹患への恐れが20%、副作用への恐れが17%、情報不足が15%、それぞれ低下した。・インフルエンザワクチン接種を避ける大きな要因としては、時間、利便性、ワクチン接種によるリスクが挙げられた。・医療提供者や保護者から受けるインフルエンザワクチン接種奨励の効果は薄れてきている。・COVID-19の流行はワクチンに対する考え方に変化をもたらし、ワクチン疲れが大きな要因となっている。・支持政党がインフルエンザワクチン接種の予測因子となり、保守派ほどワクチン接種をしない傾向があった。・個人の安全から公共の安全へと、関心が変化したことも認められた。

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心筋症を伴うATTRアミロイドーシス、パチシランが機能的能力を維持/NEJM

 心筋症を伴うトランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTR心アミロイドーシス)患者において、パチシランは12ヵ月時の機能的能力を維持する。米国・コロンビア大学アービング医療センターのMathew S. Maurer氏らが21ヵ国69施設で実施中の国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「APOLLO-B試験」の結果を報告した。ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチンがアミロイド線維として心臓、神経、消化管、筋骨格組織に沈着することによって引き起こされる疾患で、心臓への沈着により心筋症が進行する。パチシランは、RNA干渉により肝臓におけるトランスサイレチンの産生を抑制し、遺伝性ATTRアミロイドーシス(トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)患者における臨床試験において、ATTR心アミロイドーシスに対する有効性が示唆されていた。NEJM誌2023年10月26日号掲載の報告。18~85歳のATTR心アミロイドーシス患者360例が対象 研究グループは、心エコーによる拡張末期の心室中隔厚が12mmを超え心不全の既往のある18~85歳のATTR心アミロイドーシス患者を、パチシラン(0.3mg/kg、最大30mg)群またはプラセボ群に、ベースラインでのタファミジスの使用の有無、遺伝子型(変異型ATTR vs.野生型ATTR)、NYHA心機能分類クラス(IまたはII vs.III)および年齢(75歳未満vs.75歳以上)で層別化し、1対1の割合で無作為に割り付け、3週に1回12ヵ月間投与した。 主要エンドポイントは、12ヵ月時における6分間歩行距離のベースラインからの変化量、副次エンドポイントは、(1)カンザスシティ心筋症質問票の全体サマリースコア(KCCQ-OS、スコア範囲:0~100点、点数が高いほど健康状態とQOLが良好)のベースラインから12ヵ月時までの変化、(2)12ヵ月間における全死因死亡、心血管イベントおよび6分間歩行距離の変化の複合、(3)12ヵ月間の全死因死亡、あらゆる入院、心不全による緊急受診の複合とし、階層的手順を用いて検証した。 2019年10月~2021年5月に、計360例が登録されパチシラン群(181例)およびプラセボ群(179例)に無作為に割り付けられた。ベースラインから1年時までの6分間歩行距離の低下はパチシラン群で有意に少ない 12ヵ月時におけるベースラインからの6分間歩行距離の変化量は、パチシラン群-8.15m(95%信頼区間[CI]:-16.42~1.50)、プラセボ群-21.35m(-34.05~-7.52)で、群間差(Hodges-Lehmann推定差中央値)は14.69m(95%CI:0.69~28.69、p=0.02)であり、パチシラン群がプラセボ群より有意に小さかった。 12ヵ月時のKCCQ-OSスコアは、パチシラン群ではベースラインから増加し、プラセボ群では減少した(最小二乗平均差:3.7ポイント、95%CI:0.2~7.2、p=0.04)。全死因死亡、心血管イベントおよび6分間歩行距離の変化の複合は、両群で有意差は認められなかった。 有害事象は、パチシラン群91%(165/181例)、プラセボ群94%(168/178例)に発現した。パチシラン群での発現率が5%以上でプラセボ群より3%以上発現率が高かった有害事象は、注入に伴う反応、関節痛および筋痙縮であった。

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アミカシン吸入、人工呼吸器関連肺炎発症を抑制/NEJM

 少なくとも3日間侵襲的人工呼吸管理を受けている患者において、アミカシン1日1回3日間吸入投与はプラセボと比較し、28日間の人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症を有意に減少したことが、フランス・トゥール大学のStephan Ehrmann氏らCRICS-TRIGGERSEP F-CRIN Research Networksが実施した多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照優越性試験「AMIKINHAL試験」において示された。予防的な抗菌薬吸入投与がVAPの発症を減少させるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2023年10月25日号掲載の報告。侵襲的人工呼吸管理が72時間以上96時間未満の患者を無作為化 研究グループは、フランスの19施設のICUにおいて、侵襲的人工呼吸管理を72時間以上受けている成人患者をアミカシン(標準体重1kg当たり20mg)群またはプラセボ(同量の0.9%塩化ナトリウム)群に1対1の割合に無作為に割り付け、1日1回3日間吸入投与した。 侵襲的人工呼吸管理を96時間行った患者、VAPが疑われるか確認された患者、腎代替療法を受けていない重症急性腎障害患者、慢性腎臓病(糸球体濾過量<30mL/分)患者、気管切開チューブを留置している患者、24時間以内に抜管が予定されている患者、アミノグリコシド系薬の全身投与を受けている患者は除外した。 主要アウトカムは、無作為化後28日間のVAP発症(肺検体の定量的細菌培養で陽性、および次の所見のうち少なくとも2つを満たすと定義・盲検下中央判定:白血球増多、白血球減少、発熱、胸部X線撮影で新たな浸潤影を伴う化膿性分泌物)で、安全性についても評価した。28日時までのVAP発症は、プラセボ群よりアミカシン群で少ない 2017年7月3日~2021年3月9日に、計850例が無作為化され、同意撤回の3例を除く847例(アミカシン群417例、プラセボ群430例)がITT解析対象集団となった。アミカシン群では337例(81%)、プラセボ群では355例(82%)が1日1回計3回の投与を完了した。 28日間のVAP発症は、アミカシン群62例(15%)、プラセボ群95例(22%)に認められ、VAP発症までの境界内平均生存期間(RMST)の群間差は1.5日(95%信頼区間[CI]:0.6~2.5、p=0.004)、侵襲的人工呼吸管理1,000日当たりのVAP初回エピソード発生頻度はアミカシン群16、プラセボ群23(発生率比:0.68、95%CI:0.49~0.94)であった。 感染に関連した人工呼吸器関連合併症は、アミカシン群74例(18%)、プラセボ群111例(26%)に発生した(ハザード比:0.66、95%CI:0.50~0.89)。 試験に関連した重篤な副作用は、アミカシン群で7例(1.7%)、プラセボ群で4例(0.9%)に認められた。

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既治療の進行NSCLC、Dato-DXdがPFS改善(TROPION-Lung01)/ESMO2023

 TROP2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)のdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、複数のがん種において臨床試験が実施されており、有用性が検討されている。その1つに、前治療歴のある進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相比較試験TROPION-Lung01試験があり、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)において、米国・カリフォルニア大学のAaron Lisberg氏が第1回中間解析の結果を報告した。本試験において、Dato-DXdは2次治療の標準治療の1つとされるドセタキセルと比較して、有意に無増悪生存期間(PFS)を改善した。試験デザイン:国際共同第III相無作為化非盲検比較試験対象:前治療歴のあるStageIIIB、IIIC、IV(AJCC第8版に基づく)のNSCLC患者604例(actionable遺伝子変異の有無は問わない)試験群:Dato-DXd(6mg/kg)を3週ごと(Dato-DXd群:299例)対照群:ドセタキセル(75mg/m2)を3週ごと(ドセタキセル群:305例)評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくPFS、全生存期間(OS)[副次評価項目]BICRに基づく奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は64歳(範囲:24~88)で、43.1%(260/604例)が2ライン以上の前治療を受けていた。actionable遺伝子変異を有する患者の割合は17%(101/604例)で、多くがEGFR遺伝子変異であった(14%[84/604例])。・治療期間中央値は、Dato-DXd群4.2ヵ月(範囲:0.7~18.3)、ドセタキセル群2.8ヵ月(範囲:0.7~18.9)であった。・BICRに基づくPFS中央値は、Dato-DXd群4.4ヵ月、ドセタキセル群3.7ヵ月であり、Dato-DXd群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.62~0.91、p=0.004)。12ヵ月PFS率はそれぞれ30.1%、17.8%であった。・PFSに関するサブグループ解析において、扁平上皮がん(HR:1.38)を除いてDato-DXd群が良好な傾向にあった。・非扁平上皮がん(Non-Sq)のサブグループにおけるPFS中央値は、Dato-DXd群5.6ヵ月、ドセタキセル群3.7ヵ月であった(HR:0.63、95%CI:0.51~0.78)。・BICRに基づくORRは、Dato-DXd群26.4%、ドセタキセル群12.8%であり、DOR中央値はそれぞれ7.1ヵ月、5.6ヵ月であった。・OSのデータは未成熟であったが、OS中央値はDato-DXd群12.4ヵ月、ドセタキセル群11.0ヵ月であり、Dato-DXd群が良好な傾向にあった(HR:0.90、95%CI:0.72~1.13)。・Dato-DXd群の主な治療関連有害事象は、口内炎(47%)、悪心(37%)であった。・治療に関連すると判定されたGrade3以上の間質性肺疾患は、Dato-DXd群3.4%、ドセタキセル群1.4%に認められた(Grade5はそれぞれ7例、1例)。 本結果について、Lisberg氏は「前治療歴のある進行・転移NSCLC患者において、Dato-DXdはドセタキセルと比較してPFSを有意に改善した。ただし、PFSの改善は主にNon-Sqの患者でみられた。Grade3以上のTRAEの発現は少なく、新たな安全性シグナルは確認されなかった。しかし、Grade3以上の間質性肺疾患がみられたため、注意深く観察する必要があることが示された。以上から、Dato-DXdは前治療歴のあるNon-Sq NSCLC患者に対する、新たな治療選択肢になる可能性があると考えている」とまとめた。

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心筋梗塞における完全血行再建はいつ行うべきか?(解説:上田恭敬氏)

 血行動態が安定しているST上昇型急性心筋梗塞症例において、非責任病変に対するPCIを急性期に同時に行う群(immediate群)が、19〜45日後にstaged PCIとして行う群(staged群)と比べて非劣性であることを検証する、無作為化非劣性試験(MULTISTARS AMI)の結果が報告された。主要エンドポイントは、1年の時点での、死亡・心筋梗塞・脳卒中・予定外の血行再建・心不全入院の複合エンドポイントである。 対象患者はimmediate群418症例とstaged群422症例に割り付けられた。主要エンドポイントの発生頻度は、immediate群で8.5%、staged群で16.3%であり、非劣性のみならず優位性の検定においてもp<0.001と有意であった。心筋梗塞(2.0%対5.3%)、予定外の血行再建(4.1%対9.3%)がstaged群で多くなっている。また、死亡、脳卒中、心不全入院については、群間で差はなさそうである。 本試験の結果から判断すると、血行動態が安定しているST上昇型急性心筋梗塞症例においては、非責任病変に対しても責任病変と同時に急性期にPCIを行うimmediate PCIは、staged PCIに劣らないことが証明されただけでなく、心筋梗塞の発生や予定外の血行再建を予防できる効果がありそうだ。 もちろん、どんな臨床試験についても言えることであるが、試験で設定された条件の範囲内に当てはまる結果である。「血行動態が安定しているST上昇型急性心筋梗塞症例」以外は対象外である。ほかにも、左冠動脈主幹部症例やCTO症例、CABG既往症例が本試験から除外されている。また、「死亡・心筋梗塞・脳卒中・予定外の血行再建・心不全入院の複合エンドポイント」によって評価した結果なので、それ以外のイベントが多いか少ないかは考慮されていない。難易度の高いPCIとなる場合や造影剤量が多くなる場合、患者さんの背部痛のために長時間の手技が困難な場合には、割り付けに反してstaged PCI群へcross-overさせているようであり、この点は実臨床に合った内容である。著者らは他のimmediate PCI のメリットとして、合計の造影剤量や被ばく線量の減少、入院期間の短縮、動脈穿刺回数の減少を指摘している。しかし、immediate PCIの多くは夜間や時間外に行われるため、staged PCIとは異なる医療スタッフや条件下で行われることになる施設もあるだろう。そのような背景の違いも考慮して、本試験の結果を実臨床に適用する必要がある。

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破傷風の予防【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第8回

今回は、破傷風の予防についてです。外傷患者さんを診たとき、「傷が汚いから破傷風トキソイドを打とう」という発言をよく聞くことがありますが、「“汚い”とは何をもって“汚い”と言うのか?」と聞かれるとすぐに答えるのは難しいのではないでしょうか。前回紹介した毎日犬にかまれているおじいさんの症例をベースに、破傷風予防の必要性を考えていきましょう。<症例>72歳男性主訴飼い犬にかまれた高血圧、糖尿病で定期通院中。受診2時間前に飼い犬のマルチーズに手をかまれた。自宅にあった消毒液で消毒し、包帯を巻いた状態で定期受診。診察が終わったときに自分から「今日手をかまれて血が出て大変だったんだよ」と言い、犬咬傷が判明。既往歴糖尿病、高血圧アレルギー歴なしバイタル特記事項なし右前腕2ヵ所に1cm程度の創あり。発赤なし。破傷風の予防接種の有無を聞くと、「そのようなものは知らない」と答える。さて、この患者さんは破傷風トキソイドを打つ必要があると考えますか? 私は迷うことなく「Yes」だと思います。しかし、もし犬にかまれたのではなく、「自宅内で転倒して額に1cmの挫創を負った」「屋外で転倒して肘に擦過創ができた」であればYes/Noが分かれるかもしれません。もしくはこの患者さんが14歳だったとしたらどうでしょうか? 今回は日本の国立感染症研究所とアメリカのCenters for disease Control and Preventionの情報を基に解説します1,2)。治療に入る前に破傷風に関して復習しましょう。破傷風は、Clostridium tetani(破傷風菌)が産生する神経毒素による神経疾患です。破傷風菌は偏性嫌気性グラム陽性有芽胞桿菌で土壌などの環境に広く分布しており、ある程度どのような場所でも傷を負えば感染のリスクがあります。日本では年間100例程度が発症しており、そのうち9例程度が死亡する非常に重篤な疾患です2)。私も数例診ましたが、痙攣のコントロールに難渋するなど非常に治療が難しく、たとえ助かったとしても重篤な合併症を残してしまう危険な疾患と考えています。しかし、ワクチン接種により基礎免疫を獲得することで、ほぼゼロに近い確率まで破傷風の発症を防ぐことできます。ガイドラインでは「基本的には破傷風に対する基礎免疫を持っている状態」が望ましいとされ、「傷がきれいであったとしても、基礎免疫がないもしくはブースターが必要な場合は破傷風トキソイドの投与が推奨」されています。では症例に戻って系統立ててみていきましょう。(1)基礎免疫はあるかまず破傷風に対する基礎免疫があるかを確認しましょう。初回投与から決められた期間に2回破傷風トキソイドを投与することにより基礎免疫を獲得し、最終接種から10年ごとに再投与することで基礎免疫が維持されます。日本では1968年から百日せき・ジフテリア・破傷風の3種混合ワクチン(DPT)の定期接種が始まりましたが、全国一律で開始されたわけではないようです。国立感染症研究所の情報によると、1973年以前の出生の人では抗体保有率が低いものの、1973年より後の出生の人では基礎免疫を獲得していると考えられます。今回の患者さんは定期接種がなかった時代に出生しているため、基礎免疫がないと判断します。次いで患者さんが、破傷風トキソイドを打ったことがあるかどうかを確認しましょう。外傷を契機に破傷風トキソイドを打ったことがある人がいますが、「受傷したときに1回しか打っていない」「記憶があやふや」という人も多く、その場合も基礎免疫がないと考えます。この患者さんにトキソイドについて尋ねたところ「何それ?」と回答されたので基礎免疫はないと判断しました。(2)傷の「きれい」「汚い」破傷風を起こす可能性が高い創=汚い、破傷風を起こす可能性が低い創=きれい、と表現されることが多く、これをもって破傷風トキソイドを打つかどうか判断している医師もいると思います。しかしながら、表1のとおりガイドライン上は「汚い」「きれい」で変わるのは基礎免疫がない患者で抗破傷風免疫グロブリンを打つかどうかです。ここを注意してください。表1 破傷風トキソイド・抗破傷風免疫グロブリン(TIG)の投与基準画像を拡大するでは、きれい/汚いはどう区別するのでしょうか? これは私もかなり探してみたのですが、書籍や文献によってまちまちです。CDCでは「汚い」に関しては「土壌、汚物、糞便、または唾液(動物や人間のかみ傷など)で汚染された傷を“汚い”と判断する必要がある。また、刺し傷または貫通傷を汚染されたものとみなし、破傷風のリスクが高い傷と判断する。壊死組織(壊死性、壊疽性の傷)、凍傷、挫傷、脱臼骨折、火傷を含む傷は、破傷風菌の増殖に適しておりリスクが高い」とされています。Colombet氏らは自身の論文で「明確に破傷風リスクが低い/高い傷を定義するのは困難」と述べていて、傷の状態や性状だけで判断は難しいと思います3)。よって基礎免疫がない外傷患者に対して破傷風トキソイドの投与は必須として、抗破傷風免疫グロブリンを投与するかどうかは医師の判断になります。症例に戻りましょう。破傷風トキソイドは投与して、抗破傷風免疫グロブリンを投与するかどうかの判断が必要になります。この傷はガイドラインに沿えば、きれいな傷とはならないので抗破傷風免疫グロブリンの適応となります。私はこの傷であれば、手元に抗破傷風免疫グロブリンがあれば投与を検討しますが、すぐ投与するためにあえて高次機能病院に受診させることはありません。私が必ず抗破傷風免疫グロブリンを投与するのは、開放骨折やデグロービング損傷など重症度が高い傷で破傷風のリスクが高いと判断したときです。この患者さんは、破傷風トキソイドを投与し、基礎免疫を獲得するために1ヵ月後と半年後に予防接種を受けてもらうことにしました。今回は、破傷風の予防に関してお話ししました。救急外来では破傷風トキソイドが適切に投与されていないとの報告もあり、実際に私も「傷がきれい」という理由で破傷風トキソイドを打たれなかった症例を経験することがあります4)。そのようなこともあり破傷風の予防には思い入れがありますので、参考になれば幸いです。破傷風の豆知識(1)破傷風トキソイドと抗破傷風免疫グロブリンは受傷後いつまでに打てばよい?UpToDateの「Wound management and tetanus prophylaxis」を参考にすると5)、「なるべく早く」が答えです。ただし、その場で投与できなかったとしても破傷風の発症は受傷から3~21日後ですので、可能であれば3日以内、最長で21日まで破傷風トキソイドと抗破傷風免疫グロブリンを破傷風感染予防目的に投与することは推奨されると記載されています。ただし、破傷風トキソイドに関しては基礎免疫を獲得していることが望ましいので、21日を過ぎて、もともと基礎免疫がない患者、もしくは基礎免疫があっても最終接種からの年数と傷の状態からブースト接種が必要な場合は破傷風トキソイドの投与を勧めるべきと考えます。つまり気が付いたときにはいつでも破傷風トキソイド投与を勧める必要があります。何らかの傷を負ったときの破傷風トキソイドは傷からの破傷風予防として保険適用です。(2)基礎免疫があれば破傷風のリスクが高い傷に抗破傷風免疫グロブリンを打たなくてもよい?表1を見てもらいたいのですが、基礎免疫がある人は抗破傷風免疫グロブリンの適応になりません。では1973年より後に生まれた人はたとえ破傷風のリスクが高い傷でも抗破傷風免疫グロブリンを打たなくてよいのでしょうか? 私は必要と考えています。なぜなら本当に基礎免疫があるかどうか確認できないことが多いからです。赤ちゃんのときのワクチン接種に関しては母子手帳に記載がありますが、患者は持ち歩いておらず、本人に聞いてもわからないことがほとんどです。そのため、私は基礎免疫があると確証が持てない場合で破傷風のリスクが高い傷の場合は抗破傷風免疫グロブリンを投与しています。将来的に、ワクチン接種歴がマイナンバーで管理されてすぐに接種歴がわかるようになれば、ほとんどの症例で抗破傷風免疫グロブリンの投与はしなくなるのかなと思います。1)CDC:Tetanus2)国立感染症研究所:破傷風とは3)Colombet I, et al. Clin Diagn Lab Immunol. 2005;12:1057-1062. 4)Liu Y, et al. Hum Vaccin Immunother. 2020;16:349-357.5)UpToDate:Wound management and tetanus prophylaxis

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第185回 六本木で開催中の「ブラック・ジャック展」で考えた、“黒い医者”たちと医療・医師の普遍性

三重大病院臨床麻酔部事件、執行猶予4年の一審判決を控訴審判決が支持、被告側の控訴を棄却こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。2020年9月の事件発覚以降、本連載でも度々取り上げてきた三重大病院臨床麻酔部の汚職事件(「第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決、賄賂は「オノアクト使用の見返りだった」ほか)において、第三者供賄と詐欺の罪に問われた同部元教授(57)の控訴審判決が10月23日、名古屋高裁でありました。同高裁は懲役2年6ヵ月、執行猶予4年とした一審の津地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却しました。中日新聞等の報道によれば、判決理由について杉山 慎治裁判長は、薬剤発注を巡る汚職事件について元教授が製薬会社の担当者から頻繁に報告を受け、処方量を増やすよう部下に指示するなど「大学への寄付と処方とが密接に関連付けられていた」と指摘、被告側の「製薬会社から大量に処方するよう依頼された事実はない」との無罪主張を退けたとのことです。オノアクトを実際には使っていないにもかかわらず、使用したように電子カルテのシステムに入力し、診療報酬を不正請求していた事件(一連の汚職事件は、この奇妙な不正請求事件の発覚が発端でした。「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」参照)についても被告側は無罪を訴えていましたが、「詐欺の故意があった」とされました。被告側は上告するかをこれから検討するとのことです。なお、診療報酬の不正請求事件に関与し、詐欺などの罪で懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決を受けた三重大病院の元准教授(元教授の部下)については、10月12日、厚労省東海北陸厚生局が健康保険法に基づき、保険医登録を取り消す行政処分を出しています。刑が確定したことを踏まえての行政処分です。中日新聞等の報道によれば、東海北陸厚生局は「原則とし5年間は保険医の再登録をしない」とのことです。事件発覚から3年以上経っても罪が確定していない元教授ですが、確定すれば元准教授のように、保険医取り消し等の行政処分が待っています。医師はほかの仕事に比べて高収入で、皆から羨まれる特権的な職業ですが、一方で、罪を犯せばそれらが一瞬にしてふいになってしまう危うさもあります。とくに、国公立の医療機関でのお金に関する犯罪は致命的です。皆さんも気をつけて下さい。「ブラック・ジャック」連載50周年を記念した展覧会ということで、今回は、お金に執着する悪い医者、“黒い医者”たちが多数登場する手塚 治虫の医療漫画「ブラック・ジャック」について書いてみたいと思います。この週末、東京・六本木(東京シティビュー、六本木ヒルズ森タワー52階)で開催されている「手塚治虫 ブラック・ジャック展」に行ってきました。「ブラック・ジャック」連載50周年を記念したというこの展覧会では、“漫画の神様”手塚 治虫の一連の作品の中での「ブラック・ジャック」の位置付けや、誕生の背景を学ぶことができます。そして、さまざまなテーマごとに展示された200以上のエピソードから、手塚 治虫自身の医療や医学に対する考えや思想も知ることができます。もっとも、そうした“ブラック・ジャック学”よりも、展示された500点を超える原画の迫力こそが、この展覧会の肝だと言えるでしょう(第1話を含め、何話かは原画でエピソード全体を読むことができます)。まるで昨日描いたかのようなペンの筆致や、消し忘れたネームの鉛筆の跡などから、“神様”の漫画に対する情熱を実感できます。「手塚時代は終わった」報道直後から連載開始「ブラック・ジャック」の連載が開始したのは、今からちょうど50年前、「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)1973年11月19日号でした。展覧会では原画展示の直前のブースに1973年11月6日付の読売新聞の記事が大きなパネルで展示してありました。「『虫プロ』ついに倒産 鉄腕アトム、劇画に敗れる」という見出しの記事は、手塚アニメの制作を行っていた虫プロの倒産を報じています。背景には「巨人の星」や「ゴルゴ13」といった劇画ブームの到来があるとして、記事は「今度の相次ぐ倒産劇で手塚時代に終止符を打った」と書いています(同年8月には版権管理や出版を担当していた虫プロ商事も倒産しています)。「ブラック・ジャック」の連載は、その約1週間後に発売された「週刊少年チャンピオン」から始まったのです。自分の会社の倒産どこ吹く風、手塚時代の再到来を信じて取り組んだのが、大阪大学医学部卒業という自らのキャリア、専門性をフルに生かした医療漫画だったわけです。その後、「ブラック・ジャック」の人気は徐々に高まり、手塚 治虫は復活します。1970~80年代に「ブラック・ジャック」を読み、外科医を志した人も少なくないのではないでしょうか。「ドカベン」、「ブラック・ジャック」、「がきデカ」、「マカロニほうれん荘」…、「週刊少年チャンピオン」の黄金時代私自身は「ブラック・ジャック」の熱心なファンではありませんでしたが、1970年代の「週刊少年チャンピオン」は結構読んでいました。「ブラック・ジャック」連載開始時には水島 新司の「ドカベン」が連載中でしたし、1974年からは山上 たつひこの「がきデカ」が、1977年からは鴨川 つばめの「マカロニほうれん荘」が掲載されていたからです。当時「週刊少年チャンピオン」は「週刊少年ジャンプ」よりも発行部数が多く、一説には200万部以上だったとも言われています。私は、ギャグ漫画では飛ぶ鳥落とす勢いだった「がきデカ」と「マカロニほうれん荘」(5年ほど前に、東京・中野で鴨川 つばめの原画展が開かれました)を腹を抱えて読んでから、お口直しに「ブラック・ジャック」か「750ライダー」(石井 いさみ)を読む、という流れだったのですが、今回、原画の展示を見ながら、いくつかのエピソードについては読んだ記憶が蘇ってきました。医療倫理や医師の生態などのテーマではストーリーがまったく古びていない「手塚治虫 ブラック・ジャック展」の展示では、「医療 現代性」「医療倫理」「昭和時代」「手塚治虫のマンガ表現」など9つのテーマ別に原画が展示されています。「ブラック・ジャック」で描かれる50年前の医療技術は少々古臭く、荒唐無稽な手術、治療法も多いのですが、医療倫理や医師の生態などのテーマになると、ストーリーの内容がまったく古びていないのには驚きます。その点は、山崎 豊子の小説「白い巨塔」や、それを映画化した山本 薩夫監督の同名映画(「第181回 大学病院への“甘さ”感じる文科省『今後の医学教育の在り方に関する検討会』中間取りまとめ、“暴走”する大学病院への歯止めは?」参照)とも共通するかもしれません。たとえば、安楽死を請け負うドクター・キリコは、ブラック・ジャックに計6回も登場する有名キャラクターですが、「ふたりの黒い医者」というタイトルのエピソードでは、安楽死を巡って2人がそれぞれの考えをぶつけ合います。ちなみに京都で起きたALS患者嘱託殺人事件の被告の1人は、SNSに「ドクター・キリコになりたい」と投稿していたそうです。「六等星」や「ホスピタル」などのエピソードでは、大病院における権力争いや、大学医学部の序列が描かれます。手塚 治虫も呆れていたと思われる医療界の普遍的な姿です。また一方で、「U-18は知っていた」では、最先端の病院で診療や手術を行うコンピューター医師が登場します。今でいうところのAIドクターです。そのAIドクターが入院患者を人質に取るところから始まるこのエピソード、50年近く前に発表されたにもかかわらず、今から10年、20年先の医療現場を描いているようで少々怖くなります。生成AIを活用して「ブラック・ジャック」の新作を制作そう言えば、今年6月、OpenAIの「GPT-4」やStability AIの「Stable Diffusion」などの生成AIを活用して「ブラック・ジャック」の新作を制作しよう、という試みが発表されています。AIはブラック・ジャックを主人公にどのようなストーリーを作るのでしょうか。近々「週刊少年チャンピオン」で発表される予定という新作が楽しみです。「手塚治虫 ブラック・ジャック展」は、東京・六本木で11月6日まで開かれています。混雑していることも多く、インターネットで時間指定のチケットを購入することをお勧めします。また、ブラック・ジャックをこれから読んでみようという方には、書籍の『あなたが選ぶブラック・ジャックBest 40』(手塚 治虫、秋田書店)が最適です。読者投票で選ばれたベスト40のエピソードからベスト20作品を読むことができます。

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日本人2型糖尿病でのチルゼパチドの効果、GLP-1RAと比較/横浜市立大

 横浜市立大学 循環器・腎臓・高血圧内科学教室の塚本 俊一郎氏らの研究グループは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、新規GLP-1RAであるセマグルチドやGLP-1/GIPデュアルアゴニストであるチルゼパチドについて、従来の薬剤との比較や用量毎の治療効果の違いをネットワークメタ解析手法で解析した。その結果、チルゼパチドは比較した薬剤の中で最も体重減少とHbA1cの低下効果が高く、目標HbA1c(7%未満)の達成はチルゼパチドとセマグルチドで同等だった。Diabetes, Obesity and Metabolism誌2023年10月12日号の報告。日本人2型糖尿病患者3,875例を解析 研究方法として2023年7月までのPubMed、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Libraryを系統的に検索。日本人の2型糖尿病患者においてGLP-1RAまたはGIP/GLP-1RAを比較した無作為化対照試験(RCT)を選択した。HbA1c値および体重減少における有効性に焦点を当て、間接的に治療法を比較するためにネットワークメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・合計18のRCT、3,875例の日本人2型糖尿病患者が解析対象となった。・チルゼパチド15mgは、セマグルチド1.0mg皮下投与およびセマグルチド14mg経口投与と比較して、HbA1c値および体重を最も有意に減少させた。 HbA1c:平均差(95%信頼区間[CI])-0.52(-0.96~-0.08)および-1.23(-1.64~-0.81) 体重:平均差(95%CI)-5.07(-8.28~-1.86)および-6.84(-8.97~-4.71)・セマグルチド皮下投与は、経口投与と比較してHbA1cの優れた低下を示した。・皮下セマグルチド、経口セマグルチドともにデュラグルチド、リラグルチド、リキシセナチドなどの従来のGLP-1RAよりも有効だった。

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進行/転移TN乳がん1次治療でのDato-DXd+デュルバルマブ、11.7ヵ月時点で奏効率79%(BEGONIA)/ESMO2023

 進行/転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療として、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)と抗PD-L1抗体デュルバルマブの併用を検討するBEGONIA試験のArm7では、追跡期間中央値7.2ヵ月で74%の奏効率(ORR)が得られている。今回、追跡期間中央値11.7ヵ月の解析でORRが79%であったことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。 BEGONIA試験は、進行/転移TNBCの1次治療として、デュルバルマブと他の薬剤との併用による新たな治療を検討するために、2つのPartで構成された第Ib/II相試験である。・対象:StageIVに対する治療歴のない切除不能な進行/転移TN乳がん・方法:Dato-DXd 6mg/kg+デュルバルマブ1,120mg(3週ごと、静脈内投与)を病勢進行もしくは許容できない毒性発現まで投与・評価項目:[主要評価項目]安全性、忍容性[副次評価項目]ORR、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間 主な結果は以下のとおり。・2023年2月2日のデータカットオフ時点で、Dato-DXd+デュルバルマブの治療を受けた62例中29例(47%)が治療継続中で、追跡期間中央値は11.7ヵ月(範囲:2~20ヵ月)であった。ベースライン時の年齢中央値は53歳、60%に内臓転移があり、PD-L1低値が87%であった。・ORRは79%(95%信頼区間[CI]:66.8~88.3)で、完全奏効6例、部分奏効43例だった。抗腫瘍効果はPD-L1レベルにかかわらず認められた。・DOR中央値は15.5ヵ月(95%CI:9.92~NC)、PFS中央値は13.8ヵ月(同:11.0~NC)であった。・最も多くみられた有害事象(AE)は消化管系で概してGradeは低かった。・Dato-DXd減量の原因となるAEは口内炎(65%)が最も多かった。・治療関連間質性肺疾患/肺炎が3例(5%)に発現した(Grade2が2例、Grade1が1例)。・下痢(13%)、好中球減少症(5%)の発現率は低かった。 Schmid氏は「進行/転移TNBCの1次治療におけるDato-DXdとデュルバルマブの併用は、追跡期間中央値11.7ヵ月時点で、PD-L1発現にかかわらず引き続き強固で持続的な奏効を示した。新たな安全性シグナルはみられず、管理可能な安全性プロファイルを示した」と結論した。現在、PD-L1高値集団を対象としたArm8(Dato-DXd+デュルバルマブ)の登録を行っている。

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100歳超にみられる血液検査の特徴/スウェーデン・AMORISコホート研究

 100歳を超える長寿者(センテナリアン)とそうでない人の違いはどこにあるのだろうか。スウェーデン・カロリンスカ研究所の村田 峻輔氏らの研究グループは、AMORISコホート参加者のバイオマーカー情報を最長35年間追跡調査し、その結果を報告した。センテナリアンは、総コレステロールと鉄の値が高く、グルコース、クレアチニン、尿酸などの値が低いことが判明した。Geroscience誌2023年9月19日号に掲載。センテナリアンの多くが65歳以降も良好なバイオマーカーの値を維持 本研究では、1985~1996年に測定された血液ベースのバイオマーカーに関する情報を持つスウェーデン・AMORISコホートの登録データを最長35年間追跡調査した。代謝、炎症、肝臓、腎臓、貧血、栄養状態のバイオマーカーについて、記述統計、ロジスティック回帰、クラスター分析を用いて検討。 主な結果は以下のとおり。・1,224人(84.6%が女性)が100歳の誕生日まで生存。・総コレステロールと鉄の値が高く、グルコース、クレアチニン、尿酸、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、乳酸脱水素酵素、総鉄結合能の値が低いことが、100歳を迎えることと関連していた。・センテナリアンは、全体的にかなり均質なバイオマーカープロファイルを示した。・センテナリアンは、100歳以前に死亡した人と比較し、65歳以降で一般的なバイオマーカーにおいて、より良好な値を示していた。

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排尿の悩み、恥ずかしがらずに受診できる未来を目指して/ファイザー

 2023年10月19日、ファイザーは、「20年ぶりの疫学調査でわかった、過活動膀胱の最新実態と治療のこれから」と題したメディアセミナーを開催した。 過活動膀胱(OAB)は尿意切迫感を必須の症状とする症状症候群で、現在、1,000万人程度の患者がいると推計されている。その中でも、尿失禁は医師に相談しにくいことから、とくに女性では受診への抵抗感が強いとの報告もあり、症状があっても受診に至らないことや、患者と医師の間で診断や治療への認識に大きな差があることなどがOABの課題とされる。本セミナーでは、約20年ぶりに実施された下部尿路症状の疫学調査の結果について、日本大学医学部 泌尿器科学系 泌尿器科学分野 主任教授の高橋 悟氏が解説した。また、Ubie(ユビー)の代表取締役を務める阿部 吉倫氏が、OABの受診率向上におけるデジタルツールの可能性について語った。OAB診断時の検査は主に尿検査と超音波検査 OABは、尿意切迫感を必須症状とし、通常は頻尿や夜間頻尿を伴う症状症候群である。診断は尿意切迫感などの症状に基づくが、その際は過活動膀胱症状質問票が有用とされる。また、尿検査で血尿や膿尿、細菌感染の有無を確認するほか、超音波検査により残尿や膀胱の状態、がんや結石の有無を確認する。診断時の検査に対して怖いイメージを持ってしまっている患者もいるが、通常は痛みも伴わず負担が軽い検査で済むことが多い。OAB患者の受診率の低さが以前からの課題 本邦では2002年に下部尿路症状に関する初めての疫学調査が実施され、OABの有病率などが報告された。当時の調査では、全国の住民台帳から抽出した40歳以上の男女1万96人を対象とし、そのうち4,570人(男性60%)を解析対象とした。解析対象の平均年齢は60.6歳で、範囲は40~100歳であった。また、OABの定義は「排尿回数が1日8回以上かつ尿意切迫感が週1回以上ある場合」とされた。 2002年の調査の結果では、40歳以上の男女でOABに該当する人は全体で12.4%とされ、加齢に伴いその割合は高くなった。また、40歳以上でOAB症状を有する人は、全国で約1,000万人と推計された。一方で、OAB患者のうち医療機関を受診していたのは22.7%にとどまり、とくに女性では7.7%と受診率が低いことが明らかとなった(男性の受診率は36.4%)。この結果について高橋氏は、「女性は男性と比べて泌尿器科への受診に抵抗感を持ってしまっている」と語った。20年前からの課題は依然として存在 2002年の調査以降、本邦では長らく、下部尿路症状に関する疫学調査は行われてこなかった。しかし、日本排尿機能学会の前身である神経因性膀胱研究会が発足されてから50年の節目となる2023年において、インターネット上での約20年ぶりの現状調査が実施された。本調査では、20~99歳の合計6,000人(男女:各3,000人)が対象とされ、2002年の調査では対象でなかった20代と30代が追加された。また今回の調査におけるOABの定義は、「『尿意切迫感が週1回以上』に加えて、『昼間排尿回数が8回以上/夜間排尿回数が1回以上/切迫性尿失禁あり』のいずれかを満たす場合」とされた。 その結果、全体のOABの有症率は11.7%で、2002年の調査と同様に40歳以上に絞ると有症率は13.6%であった。また、夜間排尿回数や尿意切迫感、切迫性尿失禁などの有症状率は加齢と共に増加していた。一方で、OAB患者の受診率は男性で20.6%、女性で10.0%であり、2002年の調査と比較して大きな改善はみられなかった。高橋氏は「OABや下部尿路症状の診断に、侵襲的なものや恥ずかしさを伴う検査はなく、気軽に相談してほしい。そして、OABは医師に相談することで治療が可能な疾患であることを知ってほしい」と語った。患者体験の変化によりOAB患者の受診を促す 続いて阿部氏が、患者の受診率が低いOABの現状に対し、医療AIをどのように役立てることができるかについて語った。OABの課題には、「患者が自身の症状を病気と認知しておらず、加齢などが原因と思い込み、治るものと思っていない」「恥ずかしさにより受診をためらう人が多い」という2点があるという。 それを踏まえて阿部氏は、Ubie社の開発したAIを使った症状検索エンジン「ユビー」を活用した、適切な医療へのアクセス支援に向けた取り組みについて解説した。「ユビー」では、患者が自身の症状を入力することで、関連した参考病名を知ることができるほか、適切な診療科および近隣の医療機関を確認することもできる。 阿部氏によると、患者が症状と病気をひも付けて疾患の認知度を高めると、自身の疾患に対する納得度が醸成され、受診への不安を取り除くことができるという。実際にOAB患者に対して行ったアンケート調査では、「ユビー」に症状を入力して病気の可能性を感じたことや参考病名を見たことが患者の受診意欲の向上に寄与したとされ、OAB有症率が高い60代以上でも「ユビー」を利用して受診意欲が高まったという結果が明らかになったという。最後に阿部氏は、「泌尿器患者とかかりつけ医、専門病院、製薬企業をつなげたエコシステムを構築することで、誰もが適切な医療に出合える世界を目指したい」と語った。

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滑膜炎を伴う手指変形性関節症、MTXは有効か/Lancet

 滑膜炎を伴う手指変形性関節症の治療において、メトトレキサート20mgの6ヵ月間の投与により、中等度ではあるが臨床的に意義を持つ可能性のある疼痛軽減効果を認めたことが、オーストラリア・モナシュ大学のYuanyuan Wang氏らが実施したMETHODS試験で示された。これにより、メトトレキサートは炎症を伴う手指変形性関節症の管理に有用との仮説が証明されたことになるという。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年10月12日号で報告された。オーストラリア4市の無作為化プラセボ対照試験 METHODS試験は、オーストラリアの4市(メルボルン、ホバート、アデレード、パース)の施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2017年11月~2021年11月に患者の登録を行った(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成を受けた)。 年齢40~75歳、手指変形性関節症(1つ以上の関節がKellgren-Lawrence分類のGrade2以上)と診断され、MRIでGrade1以上の滑膜炎を認めた患者を、メトトレキサート20mgまたはプラセボを週1回6ヵ月間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、ITT集団における6ヵ月の時点での疼痛軽減(100mm視覚的アナログスケール[VAS]で評価)であった。 97例を登録し、メトトレキサート群に50例、プラセボ群に47例を割り付けた。全体の平均年齢は61.4(SD 6.7)歳で、68例(70%)が女性であった。ベースラインの患者背景因子は、平均BMI値がメトトレキサート群で高かった点(29.7[SD 5.0]vs.27.9[5.0])を除き、全般に両群間でバランスが取れていた。AUSCANの疼痛およびこわばりも有意に改善 主要アウトカムのデータは、メトトレキサート群の84%、プラセボ群の85%から得た。6ヵ月時のVASによる疼痛の平均変化量は、プラセボ群が-7.7mm(SD 25.3)であったのに対し、メトトレキサート群は-15.2mm(SD 24.0)と有意に改善し(補正後平均群間差:-9.9mm、95%信頼区間[CI]:-19.3~-0.6、p=0.037)、効果量(標準化平均群間差)は0.45(95%CI:0.03~0.87)であった。 6ヵ月時のオーストラリア・カナダ手指変形性関節症指数(AUSCAN)の疼痛(補正後平均群間差:-47.0、95%CI:-91.5~-2.5、p=0.038)およびこわばり(-11.4、-20.8~-2.0、p=0.018)の平均値の改善はメトトレキサート群で有意に優れたが、AUSCANの機能(-52.7、-127.3~21.9、p=0.17)、手指変形性関節症機能指数(FIHOA)(-0.9、-3.4~1.7、p=0.50)、健康評価質問票(HAQ)(-0.0、-0.2~0.2、p=0.89)、ミシガン手指転帰質問票(MHQ)(5.5、-0.3~11.3、p=0.065)、握力(2.6、-0.8~6.1、p=0.13)には、両群間に有意な差を認めなかった。 VASによる疼痛の平均変化量の両群間の差は、4週の時点では臨床的に意義のあるものではなかった。また、AUSCANの疼痛およびこわばりは、3ヵ月時にはメトトレキサート群で改善度が高かったが、臨床的な意義は認めなかった。 有害事象は、メトトレキサート群の31例(62%)、プラセボ群の28例(60%)で発現した。重篤な有害事象はそれぞれ3例(6%)および1例(2%)で認められ、治療関連と判定されたものはなかったが投与の一時的な中断を招き、メトトレキサート群の1例(上腕骨骨折で手術)は試験から脱落した。試験薬関連の可能性があると判定された有害事象は、メトトレキサート群で39件、プラセボ群で49件発生し、それぞれ5例および4例が投与中止に至った。 著者は、「メトトレキサート20mgの週1回投与の効果が、6ヵ月以降も持続するか否か、また手指変形性関節症と滑膜炎を有する患者の構造的アウトカムを長期にわたって改善するか否かを確認するために、さらなる試験を行う必要がある」としている。

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EGFR exon20挿入変異にamivantamab+化学療法(PAPILLON)/ESMO2023

 EGFR exon20挿入変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、EGFR・MET二重特異性抗体amivantamabと化学療法の併用を評価する国際無作為化比較第III相試験PAPILLONの結果を、フランス・キューリー研究所のNicolas Girard氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。 未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCの治療成績は芳しくなく、全生存期間(OS)中央値は16〜24ヵ月である。同バリアントは、従来のEGFR-TKIに対する感受性がなく、免疫チェックポイント阻害薬もベネフィットを示せていない。・対象:未治療のEGFR exon20挿入変異陽性NSCLC・試験群:amivantamab+化学療法(amivantamab群、153例)・対照群:化学療法(化学療法群、155例)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、OS、PFS2、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は14.9ヵ月であった。・BICR評価のPFS中央値はamivantamab群11.4ヵ月、化学療法群6.7ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.395、95%信頼区間[CI]:0.30~0.53、p<0.0001)。12ヵ月PFSはそれぞれ48%と13%、18ヵ月PFSはそれぞれ31%と3%であった。・すべてのPFSサブグループにおいて、amivantamab群が良好であった。・BICR評価のORRはamivantamab群73%、化学療法群47%であった(オッズ比[OR]:3.0、95%CI:1.8〜4.8、p<0.0001)。・DOR中央値はamivantamab群9.7ヵ月、化学療法群4.4ヵ月であった。・PFS2中央値はamivantamab群未到達、化学療法群17.2ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(HR:0.493、95%CI:0.32〜0.76、p=0.001)。・OS中央値は未到達であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。・OS中央値はamivantamab群未到達、化学療法群24.4ヵ月であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。 Girard氏は、この試験の結果から、EGFR exon20挿入変異NSCLCに対するamivantamab+化学療法の1次治療は新たな標準治療であることを示した、と述べた。

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