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早期中絶後のRh検査、免疫グロブリン投与の必要性/JAMA

 妊娠第1期の人工妊娠中絶はRh感作のリスクではなく、妊娠12週より前の人工妊娠中絶後のケアとして、Rh検査および免疫グロブリンの投与は不要であることが、米国・ペンシルベニア州立大学のSarah Horvath氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年9月26日号で報告された。米国の前向きコホート研究 本研究は、妊娠12週0日以前に人工妊娠中絶(薬剤、手術)を受けた女性506例の中絶前後の血液サンプルを用いて、胎児性赤血球(fRBC)が検出されるかを検証する米国の多施設共同前向きコホート研究である(米国・Society of Family Planning Research Fundの助成を受けた)。 主要アウトカムは、妊娠第1期の人工妊娠中絶後に、fRBC数がRh感作の閾値(総赤血球数500万個当たりのfRBC数125個)を超えた女性の割合であった。 506例のうち、319例(63.0%)が薬剤による中絶、187例(37.0%)は手術による中絶を受けていた。平均年齢は27.4(SD 5.5)歳で、313例(61.9%)が黒人、123例(24.3%)は白人だった。中絶後fRBC数と関連するベースラインの背景因子はなかった 506例中3例は、ベースライン時にfRBC数がRh感作閾値を超えて上昇しており、このうち1例(0.2%、95%信頼区間[CI]:0~0.93)は中絶後に上昇していた。これ以外に、人工妊娠中絶後にfRBC数がRh感作閾値を超えて上昇した例はなかった。 fRBC数中央値は、薬剤による中絶では4.0個(最大58個)、手術による中絶では3.0個(最大32個)であり、fRBC数が閾値を超えて上昇した例の割合は、それぞれ0%(95%CI:0~1.4)、0%(0~1.6)であった。 最適化された測定法では、薬剤による中絶と手術による中絶で、中絶後のfRBC数の分布に統計学的な有意差は認めなかった。 ベースラインからのfRBC数の変化量中央値は0個であり、fRBC数の95パーセンタイル値は24個、99パーセンタイル値は35.6個であった。 また、中絶前と後のfRBC数には強い関連性(p<0.001)を認めたが、中絶後のfRBC数と有意な関連を示すベースラインの患者背景因子はなかった。 著者は、「これらの結果は、妊娠第1期の人口妊娠中絶後にRh検査や免疫グロブリン投与は不要であることを示唆している。このエビデンスは、妊娠第1期の人工妊娠中絶後のRh免疫グロブリン投与に関する国際的なガイドラインに、有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

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心房細動の脳卒中予防におけるDOACsの臨床開発試験は恣意的だった?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動になると左房内の血流がうっ滞して血栓ができ、脳塞栓を増やすイメージがある。心房細動の脳卒中が重要とされた根拠は、Framingham試験における長期間の観察例の脳卒中発症における心房細動のインパクトであった。血液がうっ滞して、左房内に血栓ができて、脳塞栓が起こることは演繹的には証明されていない。左房内血栓形成を阻害して脳塞栓を抗凝固薬が予防するのは、イメージにすぎない。 本研究で用いられたエドキサバンを含む経口Xa阻害薬の有効性・安全性を検証する試験では対照群がPT-INR 2-3を標的としたワルファリンであった。1つ以上のリスク因子を有する非弁膜症心房細動の過去の標準治療には、ばらつきがあり、「PT-INR 2-3を標的としたワルファリン」との比較において検証されたDOACの有効性、安全性を実臨床に応用できるか否かに、筆者は疑問があった。ランダム化比較試験による仮説検証は科学的である。科学の基本は再現性である。DOAC開発試験のような大資本を要するランダム化比較試験を繰り返して、過去の試験にて検証された仮説を再現するのは実質的には困難であった。 本研究では心房細動例に対する抗凝固薬の有効性は確立されているとの仮定(というか、少数の大規模ランダム化比較試験にて検証された仮説)のもと、体内に植え込んだデバイスが捉えた、心房細動に似ているかもしれないデバイスが見出した頻拍に対するエドキサバンの効果をプラセボと比較した。心房細動の脳卒中予防の適応取得を目指した試験の有効性エンドポイントは、脳卒中、全身塞栓症であった。本試験では心血管死亡、脳卒中、全身塞栓症が有効性エンドポイントとされた。病態が似ている、としていながらエンドポイントのまったく異なる試験であった。 2,536例を対象とした二重盲検ランダム化比較試験なので、結果にはインパクトがある。心血管死亡、脳卒中、全身塞栓症の発症率はエドキサバン群にて3.2%/人年、 プラセボ群にて4.0%/人年であった。脳卒中は両群にて1.0%/人年なので、心房細動の脳卒中試験と同様、心血管死亡の重要性が示唆された。 心房細動に似た病態と考えた植え込み型デバイスが捉えた心房頻拍ではエドキサバンは有効性エンドポイントを減らさず、安全性エンドポイント発現率を増やした。対照群を「PT-INR 2-3を標的としたワルファリン」にしなければ、DOACの有効性、安全性は示せないのかもしれない。

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鎮咳薬や去痰薬がひっ迫、国が節度ある処方・在庫確保を求める【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第119回

医薬品の流通不安や在庫不足がこんなに長く大変なものになるとは思ってもみませんでした。とくに鎮咳薬や去痰薬の品薄状態は顕著で、もう薬局の努力だけではどうにもならない状態まできています。その流通問題に関して、厚生労働省が9月29日に通知を発出しました。内容としては、鎮咳薬や去痰薬が安定的に供給されるまでの間、以下3点を各所にお願いする内容になっています。1.鎮咳薬(咳止め)・去痰薬については、初期からの長期での処方を控えていただき、医師が必要と判断した患者へ最小日数での処方に努めていただきたいこと。また、その際に残薬の有効活用についても併せて御検討いただきたいこと。2.薬局におかれては、処方された鎮咳薬(咳止め)・去痰薬について、自らの店舗だけでは供給が困難な場合であっても、系列店舗や地域における連携により可能な限り調整をしていただきたいこと。3.鎮咳薬(咳止め)・去痰薬について、必要な患者に広く行き渡るよう、過剰な発注は控えていただき、当面の必要量に見合う量のみの購入をお願いしたいこと。医師や薬剤師などに対して、過剰な処方や在庫確保、発注は控えるようにという通知です。この通知で節度ある処方や在庫確保となり、この混乱が少しでも落ち着けばよいのですが、そんなに甘くもないだろうなとも思います。今回の通知の前提として、「新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの感染症の拡大に伴い鎮咳薬(咳止め)・去痰薬の需要が増加しており、製造販売業者からの限定出荷が生じている」と記されています。また、その具体的な数字も出されていて、「主要な鎮咳薬(咳止め)の供給量については、新型コロナウイルス感染症の流行以前の約85%まで生産量が低下しており、また主要な去痰薬の供給量については、新型コロナウイルス感染症の流行以前と同程度ではあるものの、メーカー在庫が減少している状況」とあります。え? ちょっと待って、と思いませんか? 今回のお願いの前提となっている「生産量がコロナ禍の前より減少している」という点に少し驚きました。需要が増えているから不足しているとばかり思っていましたが、生産量自体が減っているというのはちょっと意外です。今回の医薬品の流通問題は、先発医薬品も後発医薬品も含む薬価制度などの医薬産業の構造の問題である可能性もあります。その場合、今回の通知で節度ある行動がとられたとしてもその生産量は増えないと思われ、薬価の変更や薬価制度の見直しなどの抜本的な対応がとられない限り、残念ながらこの供給不足は解決しないだろうと想像します。また一方で、後発医薬品については、後発品調剤体制加算や後発品使用体制加算などに関する臨時的な取り扱いを延長するという通知「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」が発出されました。実績要件である後発医薬品の使用(調剤)割合を算出する際に算出対象から除外しても差し支えない、とするものです。今回の延長は前回と同様ですが、後発医薬品の供給停止や出荷調整が続いており、代替の後発品の入手が困難な状況となっていることを踏まえたものであるとされています。この後発医薬品の供給停止や出荷調整が始まって2年以上が経過し、この通知の延長は今回で3回目です。10月1日以降に除外対象となる医薬品は、2023年6月1日時点で医政局医薬産業振興・医療情報企画課に供給停止に関する報告があった85成分980品目で、今回示した供給停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品を除外しても差し支えないとしています。また、これまでと同様に、一部の成分の品目のみの除外は認められないこと、1ヵ月ごとに適用できること、加算などの施設基準を直近3ヵ月の新指標の割合の平均を用いる場合は当該3ヵ月にこの取り扱いを行う月と行わない月が混在しても差し支えない、などの注意点がありますので注意が必要です。加算算出方法の臨時的な取り扱いの延長などは助かりますが、やはり一番に望むことは適切な量の医薬品が安定的に流通することです。医薬品の流通問題については各所で議論されていますが、抜本的かつ効果的な対策が早急にとられることを切に願います。

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連載100回記念!執筆陣が選んだ「とっておきのフレーズ」【1分★医療英語】特別回

2021年から連載をスタートした「1分★医療英語」。原則毎週火曜日に公開しており、今月に連載100回を迎えました。100回記念として、執筆陣が選んだ100回の中の「とっておき回」を紹介。ぜひ復習にお役立てください。執筆陣が選んだ「とっておきのフレーズ」 ( )氏

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10月10日 世界精神保健デー【今日は何の日?】

【10月10日 世界メンタルヘルスデー】〔由来〕世界精神保健連盟が、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として1992年に制定。世界保健機関(WHO)も協賛し、国際記念日とされて、「シルバーリボン運動」として全世界でイベントが開催されている。関連コンテンツシネマセラピー ~シネマにみるメンタルヘルス~気分が落ち込むときの症状チェック【患者説明用スライド】モーニングコーヒーでうつ病リスクが低下自閉スペクトラム症と統合失調症の精神症状の比較リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

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第184回 熟睡を促す音刺激で心機能が向上しうる

熟睡を促す音刺激で心機能が向上しうる生きていくのに睡眠は不可欠で、ぐっすりと眠ることは健康を保つのにとりわけ重要です。より深い眠りに落ちていることを示す脳の活動である徐波(slow wave)を音で増やすことで高齢者の記憶を改善しうることが先立つ研究で示されています1)。また、軽度認知障害(MCI)患者の睡眠中にピンクノイズ※というかすかな音を流したところ徐波が増え、44の単語対を覚える記憶検査成績が改善しました2)。※ピンクノイズ:周波数が高いほどよりもの静か(周波数が1オクターブ上がるごとに音圧が3デシベルずつ下がる)という特性がある音(擦れる木の葉、雨、滝、心拍の音など)。そのピンクノイズがどうやら心臓機能の改善効果も有するらしいことがスイスの連邦工科大学やチューリッヒ大学のチームによる新たな試験で示されました3)。試験に参加した健康な男性18人には睡眠研究所で間を置いて3泊してもらい、そのうちの2泊ではピンクノイズを流し、1泊ではそうしませんでした。寝ている間の被験者の脳の活動、血圧、心臓の活動が記録され、深い睡眠に至ったことを示す合図があった時点から10秒間のピンクノイズが10秒間の間を挟んで4時間繰り返しコンピューターから発せられました。その結果、ピンクノイズが発せられている間は徐波が増え、翌朝の心エコー検査で左心室の伸縮機能の向上が示唆されました。今回の試験の被験者は全員男性で、年齢は30~57歳でした。男性に限ったのは女性に比べてより均一だからです。被験者と同年齢層の女性は睡眠に大きな影響を及ぼす月経周期や閉経があり、今回のような取っ掛かりの試験ではせっかくの効果がそれらの影響で検出できない恐れがありました4)。今後の試験では女性を含めた検討が必要なことを研究者は承知しています。睡眠や心血管の調子の明らかな性差が判明しつつあり、そういう性差を考慮した治療の開始が重要視されるようになっています。ピンクノイズやそれに似た脳刺激手段で将来的には心血管疾患の治療を向上させることができるかもしれません。また、心血管分野の治療のみならず運動選手にとっても意義があると研究者は考えています。ピンクノイズのような徐波睡眠の亢進手技で心機能を改善し、きつい練習や競技の後の回復を早めてより好調にできる可能性があります。研究者らはさらに先を見据えており、ピンクノイズよりもっと強力な刺激で心血管系を上向かせる手段も目指しています。今回の試験の筆頭著者であるStephanie Huwiler氏は試験を指揮したCaroline Lustenberger氏らとともに睡眠刺激の事業EARDREAMを立ち上げています。上述したとおり徐波睡眠を底上げすることは認知機能障害患者の記憶改善効果があるかもしれず、EARDREAMはアルツハイマー病患者の早期診断や睡眠不調を回復させる睡眠亢進手段に取り組んでいます5)。また、アルツハイマー病のみならず今回の成果の臨床応用に向けた開発も目指しています4)。参考1)Papalambros NA, et al. Front Hum Neurosci. 2017;11:109.2)Papalambros NA, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2019;6:1191-1201.3)Huwiler S, et al. Eur Heart J. 2023 Oct 05. [Epub ahead of print]4)Increased deep sleep benefits your heart / ETH Zurich5)Startups developing tailored sleep interventions for Alzheimer disease, aquafarming using mycellium technology, regeneration through protein engineering, a vital patient data stream, and revolutionizing open source each win CHF 10,000 / Venture Kick

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臨床実習のスケジューリングで困っています【医学生お悩み相談ラヂオ】第12回

動画解説第12回は、医学部5年生の女性からのお悩み。臨床実習のスケジュールが見えにくく、時間を有効活用できずに困っているとのこと。民谷先生はこのお悩みに対して、指導する先生方にも事情があり、ただ不平不満を述べることは生産的ではないと説きます。そのうえで提案する解決とは?

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2cm以下の乳がん、センチネルリンパ節生検を省略可能か/JAMA Oncology

 センチネルリンパ節生検(SLNB)は早期乳がんの腋窩リンパ節転移を調べる標準的な方法だが、リンパ節検査のための腋窩手術は治療が目的ではないため、その必要性が問われる場合もある。今回、超音波検査でリンパ節転移の疑いのない腫瘍径2cm以下の乳がん患者における無作為化試験(SOUND試験)で、腋窩手術を受けなかった群の5年遠隔無病生存(DDFS)率がSLNBを受けた群に対して非劣性を示したことを、イタリア・Istituto di Ricovero e Cura a Carattere ScientificoのOreste Davide Gentilini氏らが報告した。JAMA Oncology誌オンライン版2023年9月21日号に掲載。センチネルリンパ節生検群の5年遠隔無病生存率は97.7%で非劣性 本試験は、イタリア、スイス、スペイン、チリで実施された前向き第III相無作為化非劣性試験である。2012年2月6日~2017年6月30日に、腫瘍径2cm以下かつ超音波検査で腋窩リンパ節転移の疑いのない1,463例の女性を登録し、センチネルリンパ節生検を受ける群(SLNB群)と腋窩手術を受けない群(腋窩手術なし群)に1対1に無作為に割り付けた。ITT解析対象は1,405例、主要評価項目は5年DDFS率であった。 超音波検査でリンパ節転移の疑いのない腫瘍径2cm以下の乳がん患者におけるセンチネルリンパ節生検の必要性を評価した主な結果は以下のとおり。・ITT解析に組み入れられた1,405例(年齢中央値:60歳)を、SLNB群708例、腋窩手術なし群697例に無作為化した。・腫瘍径の中央値は1.1cm(四分位範囲:0.8~1.5)で、1,234例(87.8%)がエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性であった。SLNB群では、97例(13.7%)が腋窩リンパ節転移陽性であった。・5年DDFS率は、SLNB群で97.7%、腋窩手術なし群で98.0%であった(log-rank p=0.67、ハザード比:0.84、90%信頼区間:0.45~1.54、非劣性のp=0.02)。・SLNB群では局所再発12例(1.7%)、遠隔転移13例(1.8%)、死亡21例(3.0%)、腋窩手術なし群では局所再発11例(1.6%)、遠隔転移14例(2.0%)、死亡18例(2.6%)だった。 著者らは「これらの結果は、腫瘍が小さく、超音波検査で腋窩リンパ節転移のない乳がん患者は、病理学的情報の欠如が術後治療計画に影響を及ぼさない限り、安全に腋窩手術を免れられることを示唆する」としている。

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コロナ罹患後症状の患者、ワクチン接種で症状軽減か?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種は、COVID-19の重篤化を予防する。しかし、コロナ罹患後症状を有する患者に対するコロナワクチン接種が罹患後症状や免疫応答、ウイルスの残存に及ぼす影響は不明である。そこで、カナダ・Montreal Clinical Research InstituteのMaryam Nayyerabadi氏らの研究グループは、コロナ罹患後症状を有する患者を対象にコロナワクチンの効果を検討し、コロナワクチンは炎症性サイトカイン/ケモカインを減少させ、コロナ罹患後症状を軽減したことを明らかにした。本研究結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月15日号に掲載された。ワクチン接種はコロナ後遺症を軽減させる可能性 研究グループは、コロナ罹患後症状(世界保健機関[WHO]の定義※に基づく)を有する患者83例を対象とした前向きコホート研究を実施した。対象患者のコロナワクチン接種前後の罹患後症状数、罹患後症状を有する臓器数、心理的幸福度(WHO-5精神健康状態表[WHO-5]に基づく)を評価した。また、全身性炎症のバイオマーカーや血漿中のサイトカイン/ケモカイン量、血漿中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原量、SARS-CoV-2由来のタンパク質に対する抗体量なども評価した。本記事では、組み入れ時にコロナワクチン未接種であった39例を対象に、ワクチン接種前後に評価した縦断的解析の結果を示す。※新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないもの。 コロナ罹患後症状を有する患者を対象にワクチンの効果を検討した主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種前後のコロナ罹患後症状数(平均値±標準偏差[SD])は、ワクチン接種前が6.56±3.1であったのに対し、ワクチン接種後は3.92±4.02であり、有意に減少した(p<0.001)。また、罹患後症状を有する臓器数(平均値±SD)はワクチン接種前が3.19±1.04であったのに対し、ワクチン接種後は1.89±1.12であり、こちらも有意に減少した(p<0.001)。・WHO-5スコア(平均値±SD)は、ワクチン接種前が42.67±22.76であったのに対し、ワクチン接種後は56.15±22.83であり、心理的幸福度が有意に改善した(p<0.001)。・コロナワクチン接種後において、16種類のサイトカイン/ケモカイン量がワクチン接種前と比較して有意に減少した。・ワクチン接種前において、血漿中からSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質とヌクレオカプシド(N)タンパク質がそれぞれ17.9%(7/39例)、38.5%(15/39例)に検出されたが、ワクチン接種前後において、血漿中濃度に有意な変化はみられなかった。・ワクチン接種前において、Sタンパク質、Nタンパク質、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対するIgG抗体およびIgM抗体が検出された。ワクチン接種後において、Nタンパク質に対する血中のIgG抗体、IgM抗体の濃度が有意に減少したが、Sタンパク質、RBDに対する血中のIgG抗体の濃度は有意に増加した。 本研究結果について、著者らは「コロナ罹患後症状を有する患者は、コロナ罹患後症状に関連する炎症反応が亢進していることが示され、コロナワクチン接種は炎症反応を低下させることによってコロナ罹患後症状を軽減させる可能性が示された。また、コロナ罹患後症状を有する患者には、ワクチン接種とは関係なくウイルス産物が検出される患者が存在し、炎症の持続に関与している可能性がある」とまとめた。

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重度の精神疾患に対する入院リハビリテーションの有用性

 精神疾患や気分障害は、重度の機能障害、早期死亡リスク、社会的および経済的負担と関連している。イタリア・"G. D'Annunzio" UniversityのStefania Chiappini氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者と気分障害患者を対象に、イタリアの精神科入院施設で実施された心理社会的、心理的、リハビリテーション的な介入の有効性を評価した。その結果、重度の精神疾患患者に対する入院リハビリテーション介入は、効果的かつ有用である可能性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年8月30日号の報告。 本件は、イタリア・ローマの精神科病院であるVilla Maria Piaにおいて、2022年に実施されたレトロスペクティブ観察研究である。ICD-9-CMで統合失調症スペクトラム障害および気分障害と診断された患者を対象に、入院時と治療終了時に簡易精神症状評価尺度(BPRS)および機能の全体的評価尺度(GAF)を用いて評価を行った。介入には、学術的チームが関与して行われ、個人および集団による介入を分析に含めた。群間の連続変数の比較は、独立サンプルによるt検定を用い、変数間の相関はスピアマン相関係数を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象患者数は141例(平均年齢:51.3±12.4歳、男性患者:73例、女性患者:68例)であった。・心理社会的介入およびリハビリテーション介入に積極的に参加した患者は85例(60.3%)であり、参加していない患者と比較し、退院時に機能や症状の改善が認められた(delta GAFは、心理社会的介入に参加した参加者において有意に高かった。t=-2.095、p=0.038)。・介入回数/入院日数を指標とし分析すると、心理社会的介入の頻度は、活動に参加したサンプルにおける患者の機能の改善と正の相関が認められた(r=0.272、p=0.012)。とくに、心理療法(r=0.202、p=0.017)と集団サポート(r=0.188、p=0.025)において、顕著であった。・統合失調症スペクトラム障害(37例)と気分障害(48例)をそれぞれ評価すると、GAFの改善と心理社会的介入との正の相関は、統合失調症スペクトラム障害のみで認められた。・BPRSに関しては、全体または疾患別において、これらの相関が認められなかった。 著者らは「重度の精神疾患患者に対する入院リハビリテーション介入の長期的なQOL、社会機能への効果を明らかにするためには、さらなる調査が求められる」としている。

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抗コリン負荷の増大が、心血管イベントのリスクと関連/BMJ

 急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者においては、抗コリン薬による抗コリン作用の総負荷(抗コリン負荷)が、最近増加した集団で急性心血管イベントのリスクが高く、負荷の増加の程度が大きいほどリスクがより高いことが、台湾・国立成功大学のWei-Ching Huang氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年9月27日号に掲載された。心血管イベントで入院した高齢患者の症例-症例-時間-対照研究 本研究は、台湾の全国的な健康保険研究データベースを用いた症例-症例-時間-対照研究(case-case-time-control[CCTC]study)であり、2011~18年に急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者31万7,446例を対象とした(台湾・国家科学技術委員会などの助成を受けた)。 CCTCは、適応症による交絡および潜在的なprotopathic bias(因果の逆転)の克服を目指した研究デザインであり、2つの自己対照分析(症例クロスオーバー分析と、将来の症例からなる対照クロスオーバー分析)で構成される。急性心血管イベントには、心筋梗塞、脳卒中、不整脈、伝導障害、心血管死を含めた。 主要アウトカムは、抗コリン負荷(Anticholinergic Cognitive Burden Scaleによる個々の薬剤の抗コリン作用スコアの合計)とし、3つの段階(0点[抗コリン作用なし]、1[軽度抗コリン作用]~2点[高度抗コリン作用]、3点[高度抗コリン作用]以上)に分類した。 ハザード期(心血管イベント発生前の-1~-30日)の抗コリン負荷のレベルを、レファレンス期(-61~-180日)から無作為に選択した30日間(-61~-90日、-91~-120日、-121~-150日、-151~-180日の4つから1つを選択)と比較し、急性心血管イベントと抗コリン負荷の最近の増加との関連を評価した。感度分析でも主解析と同様の結果 クロスオーバー分析には24万8,579例を含めた。イベント発生の時点(指標日)での平均年齢は78.4(SD 0.01)歳、53.4%が男性だった。最も頻度の高い併存疾患は、高血圧症(62.2%)、糖尿病(32.3%)、脂質異常症(24.0%)であった。抗コリン作用を有する薬剤として最も多く処方されていたのは、抗ヒスタミン薬(68.9%)、胃腸鎮痙薬(40.9%)、利尿薬(33.8%)であった。 ハザード期とレファレンス期で抗コリン負荷のレベルが異なっていた患者では、レファレンス期よりもハザード期で、負荷レベルが高い患者が多かった。たとえば、抗コリン負荷がハザード期は1~2点、レファレンス期は0点の患者は1万7,603例であったのに対し、ハザード期は0点、レファレンス期は1~2点の患者は8,507例だった。 現状の抗コリン負荷が1~2点の場合の0点の場合と比較した(1~2点vs.0点)心血管イベント発生のオッズ比(OR)は、症例クロスオーバー分析では1.86(95%信頼区間[CI]:1.83~1.90)、対照クロスオーバー分析では1.35(95%CI:1.33~1.38)であり、CCTCのORは1.38(1.34~1.42)だった。 同様に、3点vs.0点のCCTCのORは2.03(95%CI:1.98~2.09)、3点vs.1~2点のCCTCのORは1.48(1.44~1.52)であり、現状の抗コリン負荷が大きいほど心血管イベントのリスクが高い傾向を認めた。 感度分析として、抗コリン負荷カテゴリーのカットオフ値の再定義をしたり、抗コリン負荷の測定に別のスケールを使用した評価を行ったが、一貫して主解析と同様の結果が得られた。 著者は、「これらの知見は、観察研究の結果を解釈する際には、protopathic biasを考慮する必要があることを強調するものである」としている。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー、高用量rAAV9遺伝子療法後の死亡/NEJM

 米国・イェール大学のAngela Lek氏らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の27歳の男性患者において、dSaCas9(Cas9ヌクレアーゼ活性を不活化した“死んだ[dead]”黄色ブドウ球菌Cas9)-VP64融合を含有する組み換えアデノ随伴ウイルス血清型9(rAAV9)による治療を行った。投与後、患者は軽度の心機能障害と心嚢液貯留を発症し、遺伝子導入治療後6日目に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と心停止を来し、その2日後に死亡した。研究の詳細は、NEJM誌2023年9月28日号で「短報」として報告された。5歳時に診断、18歳で自立歩行能力を失う 患者は5歳時にDMDと診断され、21年間にわたりdeflazacort 1.1mg/kg/日の投与を受けてきた。18歳時に自立歩行能力を失った。腕の機能が進行性に低下し、心肺機能障害が徐々に増強した。 2022年10月4日、患者はCRISPR-transactivator治療薬(CK8e.dSaCas9.VP64.U6.sgRNA)を含有するrAAV9ベクターの投与を受けた。その時点で、除脂肪筋肉量の割合が45%と低く、拘束性換気障害および軽度の左室収縮機能障害を伴う重度の全身性筋力低下を呈していた。その後、左室駆出率(LVEF)は維持されていたが、肺機能は経時的に低下した。治療を行わなければDMDの筋症状の悪化が予測され、代替療法がないことから、遺伝子治療の候補と判断した。自然免疫反応がARDSを引き起こした 導入遺伝子は、custom CRISPR-transactivator療法として皮質型ジストロフィンをアップレギュレートするように設計された。使用したrAAV9の用量は、体重1kg当たり1×1014ベクターゲノムと、高用量であった。予防的免疫療法として、リツキシマブ、グルココルチコイド、シロリムスの投与を行った。 ベクター投与後1日目に、患者は心室性期外収縮を発症し、引き続き血小板数が減少傾向を示し、BNPとN末端proBNPの値が上昇した。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の上昇は、DMD患者に見られるように、クレアチンキナーゼ値の増加と比例した。γ-グルタミルトランスフェラーゼ値は正常だった。 3~4日目には、呼吸性アシドーシスを伴う無症候性高炭酸ガス血症が発現した。5日目には、心機能が悪化し、LVEFは45~50%に低下した。トロポニンI値が上昇し、心エコー図検査でタンポナーデの生理的特徴を示す心嚢液貯留が認められたため、患者は心筋心膜炎と推定された。6日目には、急性呼吸困難を呈し、胸部X線所見でARDSと左室収縮機能不全(LVEF:45~50%)を認めた。 この間、緩和的な治療として、グルココルチコイドの増量、エクリズマブ(抗C5モノクローナル抗体)、トシリズマブ(抗IL-6受容体モノクローナル抗体)、anakinra(IL-1受容体拮抗薬)の投与を行った。 患者は6日目に心肺停止となり、体外式膜型人工肺による治療を受けたが、2日後の遺伝子治療から8日目に、多臓器不全と重篤な低酸素性虚血性神経障害により死亡した。死後の検査では、重度のびまん性肺胞障害が認められた。肝臓における導入遺伝子の発現はわずかであり、臓器におけるAAV9抗体やエフェクターT細胞反応性は認めなかった。 著者は、「これらの所見は、高用量のrAAV9遺伝子治療を受けた進行性DMD患者において、自然免疫反応がARDSを引き起こしたことを示している」としている。この研究は、米国・Cure Rare Diseaseの助成を受けて行われた。

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高血圧に対するアルドステロン合成酵素阻害薬Lorundrostatの効果(解説:石川讓治氏)

 アルドステロンが高血圧性臓器障害に影響を与えていると考えられており、いくつかのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が、現在、臨床で使用可能である。lorundrostatはアルドステロン合成阻害をする降圧薬として開発されている。本研究において、2剤以上の降圧薬を用いても目標血圧レベルに達していない高血圧患者に対して、アルドステロン合成阻害薬lorundrostatを投与し、その投与量、投与回数による降圧度および安全性を比較している。研究1では血漿レニン活性が低い患者、研究2では高い患者を選択して投与し、いずれの投与方法においてもlorundrostatはプラセボと比較して有意に血圧を低下させ、高カリウム血症は6例に認められたのみであった。 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は治療抵抗性高血圧に使用されることが多く、治療抵抗性高血圧は、サイアザイド系利尿薬を含む3剤以上の降圧薬でも目標血圧に達しない高血圧と定義されている。本研究の対象には、3剤以上の降圧薬の内服者も含まれているが、サイアザイド系利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の内服者の割合に各群間でばらつきが認められた。今後は、lorundrostatにおける(1)治療抵抗性高血圧に対する効果、(2)ACEIやARBに対する相加効果、(3)サイアザイド系利尿薬との降圧効果の比較、(4)ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬との比較など、今後、われわれが実臨床で使用していくためのデータの積み重ねが必要であると思われた。

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大手術後の炎症を阻害すると...(解説:後藤信哉氏)

 コルヒチンは歴史の長い抗炎症薬である。LoDoCo(Low Dose Colchicine)試験にて冠動脈疾患の二次予防効果が証明されて、循環器内科領域に注目されることになった。多くの循環器疾患に炎症が関与する。各種のがん治療などの非心臓疾患の手術時の心房細動の発症予防効果の有無が本研究にて検証された。非心臓性手術後の心房細動と心筋梗塞の発症例では炎症マーカーの高値が報告されている。そこで、本研究では強力な抗炎症薬であるコルヒチンに、非心臓の大手術時の心房細動および心筋障害発症予防効果の有無がランダム化比較試験により検証された。 非心臓の大手術症例へのコルヒチンの使用は、一見とっぴに見える。しかし、術中・術後の心房細動、心筋障害が炎症により引き起こされているのであれば、抗炎症薬を用いたランダム化比較試験実施には意味がある。3,209例を対象としたランダム化比較試験の結果は信頼できる。コルヒチンの抗炎症効果が発現されていることは、コルヒチン群の感染と敗血症の増加により確認されている。コルヒチンの副作用である消化管障害もコルヒチン群で増えている。 臨床試験の実施については英国・オックスフォード大学、米国・ハーバード大学、デューク大学が長けているが、カナダ・マクマスター大学も引けを取らない。ランダム化比較試験による臨床的仮説の検証研究では、日本はとても追い付けない。個別最適化医療の理論化と実践では是非、先行したいものだ。

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第66回 カットオフ値とは?【統計のそこが知りたい!】

第66回 カットオフ値とは?カットオフ値(Cutoff value)とは、定量データを区切るために用いる基準の値のことです。医療分野に絞っていえば、ある検査の陽性、陰性を分ける値のことで、「病態識別値」とも呼ばれています。検査結果によって、特定の疾患に罹患した患者と罹患していない患者を分ける境界値のことです。いくつかの事例で解説します。(1)肥満を判定するBMIのカットオフ値は30以上である。(2)大腸がんをスクリーニングする便潜血検査のカットオフ値は、約120ng/mLである。(3)日本動脈硬化学会では、LDLコレステロール値が140mg/dL以上である場合、HDLコレステロール値が40mg/dL未満である場合に脂質異常症を疑うこととしている。たとえば、(1)の肥満は健康に重大な悪影響を及ぼします。肥満指数(BMI)は体重(kg)を身長(m)の2乗で割って算出され、測定・計算が簡単で、肥満・痩せの指標として広く使われており、その水準が健康リスクや死亡率と深く関係していることが海外の多くの研究で報告されています。WHOでは国際的な基準(カットオフ値)として、BMIは25以上を過体重、30以上を肥満としています。BMI(kg/m2)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)■真陽性、偽陽性、偽陰性、真陰性とは過体重であるかのカットオフ値は25ですが、ある生活習慣病をスクリーニングするBMIのカットオフ値は25とは限りません。そこで、ある生活習慣病のBMIのカットオフ値を算出するために、病院に来院した患者20人にこの検査をしました。表1~3にその結果をまとめます。画像を拡大する表1:BMIの検査結果およびある生活習慣病の疾病の有無(陽性、陰性)を調べたデータです。表2:表1のデータを陽性・陰性別にBMIを降順で並べ替えました。表3:表2のデータについて、陽性・陰性別BMI数値別に患者人数を集計したものです。このデータにおけるカットオフ値を求めることが課題ですが、とりあえず、カットオフ値を27とします。そこで表4にBMI27以上、27未満別の陽性・陰性別の患者人数を集計しました。表4 カットオフ値27以上とした場合の陽性・陰性別の人数表4の4つのセルの値は、表5に示す名前が付けられています。表5 真陽性、偽陽性、偽陰性、真陰性の定義真陽性(A)実際に疾患がある人が陽性と判断されること偽陽性(B)実際には疾患がない人が陽性と判断されること偽陰性(C)実際に疾患がある人が陰性と判断されること真陰性(D)実際には疾患がない人が陰性と判断されること■感度、特異度とは理想的なカットオフ値とは、検査陽性者(BMI検査で陽性と判定された患者)は皆疾患(疾病有無で陽性の患者)があり、検査陰性者は皆疾患がないと判定できる検査です。しかし、現実的にはどのようなカットオフ値を設定しても、疾患があるが陰性と判定(偽陰性)、疾患がないが陽性と判定(偽陽性)される患者が出現します。したがって、適正なカットオフ値は、偽陰性および偽陽性と判定される患者が少なくなるように定められる検査です。裏返せば真陽性および真陰性と判定される患者が多くなるカットオフ値が適正だということです。先ほどの表4における真陽性は3人、真陰性は13人です。真陽性が多いかの判断は、「疾患がある患者のうち検査陽性者がどれほどいるかの割合(真陽性者÷疾病有無陽性者)」で調べることができます。求められた値を「感度」と言います。表5の単語名を使って感度を求める式を示します。表4について感度を求めると、3÷(3+3)=0.5(50%)です。真陰性が多いかの判断は、「疾患がない患者のうち検査陰性者がどれほどいるかの割合(真陰性者÷疾病有無陰性者)」で調べることができます。求められた値を「特異度」と言います。表5の単語名を使って特異度を求める式を示します。表4について特異度を求めると、13÷(13+1)=0.929(92.9%)です。感度、特異度の両方が大きければ、設定したカットオフ値は良いといえます。このケースでは、特異度(92.9%)は大きいですが、感度(50%)は大きいといえません。そのため27以上に設定したカットオフ値は適正とはいえません。カットオフ値を26以上として、表3のデータについて、陽性・陰性別の患者人数を表6に集計しました。表6 カットオフ値を26以上とした場合の陽性・陰性別人数表6について感度と特異度を求めます。感度、特異度の両方が大きいので、設定したカットオフ値26以上は適正といえそうです。カットオフ値27以上と26以上について検討しましたが、その他のカットオフ値すべてについて感度、特異度を求め、どのカットオフ値が適正かを調べなければなりません。表7にその結果を示します。表7 感度、特異度感度、特異度どちらも高いのはBMI26以上で、この生活習慣病の疾病の有無を判定するBMIのカットオフ値は26以上であるといえます。カットオフ値を算出するための方法として、今まで述べてきた「感度・特異度最小値法」以外にも別の方法があります。次回はカットオフ値を算出するための他の方法を紹介します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問18 ロジスティック回帰分析とは?質問21 ロジスティック回帰分析の説明変数の選び方は?質問22 ロジスティック回帰分析の事例特別編 カットオフ値とROC解析

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事例033 ミグシス錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、片頭痛を訴える患者に処方したロメリジン(商品名:ミグシス)錠(以下「ミグシス」)がD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。傷病名も用量も添付文書に記載された範囲内であり、再度、添付文書をみてみました。投薬禁忌に、「頭蓋内出血又はその疑いのある患者」とあります。病名には1年前の開始日にて「脳出血」が記載されています。その他のコメントなどの記載はありません。したがって、投与禁忌病名が存在するため算定要件に合致しないとして、コンピュータ審査により査定となったものと推測できます。医師にこの旨を伝えて尋ねると、「レセプトチェックシステムで指摘はあったが、脳出血再発の兆候はなく開始日も1年前であり特段の治療も行われていない、そのままで良いものとして提出に回した」と返答を頂きました。現在治療中の保険診療に対して直接に係わらない病名は、無用の査定を招くために速やかに転記して整理をいただくか、「脳出血再発の兆候が無いためミグシス錠を投与」などと医学的に必要としたコメントを頂けるようにお願いしました。このように、医学上では適切であっても保険診療では不適切とされる事例は、多々あります。こうした査定を防ぐためには、レセプトチェックシステムにて明らかに保険診療の範囲を超えると指摘があった場合には、必ず修正もしくはコメントをいただけるように重ねて医師にお願いしました。

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モデルナのインフル・コロナ混合ワクチン、第I/II相で良好な結果

 米国・Moderna社は10月4日付のプレスリリースにて、同社で開発中のインフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する混合ワクチン「mRNA-1083」が、第I/II相臨床試験において良好な中間結果が得られたことを発表した。同ワクチンは、インフルエンザおよびCOVID-19に対して強い免疫原性を示し、反応原性および安全性プロファイルは、すでに認可されている単独ワクチンと比較して許容範囲内であった。本結果を受けて、mRNA-1083は第III相試験に進むことを決定した。 第I/II相臨床試験「NCT05827926試験」は観察者盲検無作為化試験で、混合ワクチンmRNA-1083と、50~64歳への標準用量のインフルエンザワクチン(Fluarix)、および65~79歳への強化インフルエンザワクチン(Fluzone HD)とを比較し、安全性と免疫原性を評価した。また両年齢層において、mRNA-1083と、2価の追加接種用COVID-19ワクチン(Spikevax)とも比較して評価した。 主な結果は以下のとおり。・mRNA-1083は、4価インフルエンザワクチンと同等以上の赤血球凝集抑制抗体価が認められた。50~64歳へのmRNA-1083はFluarixと比較して、インフルエンザウイルスA型およびB型の全4株について、幾何平均力価(GMT)比が1.0以上だった。65~79歳へのmRNA-1083もFluzone HDと比較して、GMT比が1.0以上だった。・mRNA-1083は、Spikevax 2価ワクチンと同等のSARS-CoV-2中和抗体価が認められた。Spikevaxに対するmRNA-1083のGMT比は、50~64歳で0.9以上、65~79歳で1.0以上だった。・mRNA-1083投与後に報告された局所および全身性の副反応は、COVID-19単独ワクチン投与群と同程度だった。副反応の大部分は重症度がGrade1/2であった。・Grade3の局所/全身反応は、50歳以上の参加者の4%未満で報告された。・mRNA-1083については、単独ワクチンと比較して安全性に関する新たな懸念は確認されなかった。 同社は、2023年にmRNA-1083の第III相試験を開始する予定であり、2025年に本混合ワクチンの承認を目標としている。

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実臨床における片頭痛予防に対する抗CGRP抗体の有用性~メタ解析

 片頭痛は、中等度~高度な頭痛エピソードを特徴とする神経疾患である。カルシトニン遺伝子に特異的なモノクローナル抗体由来の新規薬剤の開発により、従来治療で効果不十分であった片頭痛患者にとって、新たな治療選択肢がもたらされた。ブラジル・パラナ連邦大学のVinicius L. Ferreira氏らは、片頭痛予防に対する抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド抗体(抗CGRP抗体)の実臨床での効果を評価するため、観察コホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、片頭痛予防に対する抗CGRP抗体の使用に関する実臨床を反映した観察研究のメタ解析の結果は、これまでのランダム化比較試験で報告された結果と同様であり、抗CGRP抗体の有効性が確認された。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2023年9月4日号の報告。 論文検索には、観察研究用の電子データベースを用いた。抗CGRP抗体(エレヌマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブ、eptinezumabなど)を使用している成人片頭痛患者を対象に有効性アウトカム(1ヵ月当たりの平均片頭痛/頭痛日数の減少、片頭痛/頭痛日数が50%以上減少した患者の割合)が報告された研究を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニング後、データ抽出、定性的および定量的分析を行うため、47研究をメタ解析に含めた。・片頭痛に関して、1ヵ月当たりの平均片頭痛日数が50%以上減少した患者は54%(95%信頼区間[CI]:49~59)、1ヵ月当たりの平均片頭痛日数の減少は約7.7日(95%CI:8.4~7.0)であった。・頭痛に関して、1ヵ月当たりの平均頭痛日数が50%以上減少した患者は57%(95%CI:48~64)、1ヵ月当たりの平均頭痛日数の減少は約8.8日(95%CI:10.1~7.5)であった。・使用薬剤や片頭痛タイプを考慮したサブグループ解析は、これまでの結果と同様であった。

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アントラサイクリン系薬剤による心機能障害をアトルバスタチンは抑制したがプラセボとの差はわずかであった(解説:原田和昌氏)

 近年、Onco-cardiologyが注目されており、がん化学療法に伴う心毒性を抑制できる薬剤の探索が行われている。動物実験や小規模なランダム化比較試験では、アントラサイクリン系薬剤による左室駆出率(LVEF)低下に対する、アトルバスタチンの抑制作用が報告されていたが、乳がんを中心としたPREVENT試験では効果を示せなかった(ドキソルビシン換算の中央値、240mg/m2)。 リンパ腫患者においてアトルバスタチン(40mg/日)の投与はプラセボと比較して、アントラサイクリン系薬剤に関連する心機能障害を有意に抑制し、心不全の発生には有意な差がないことが、二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験であるSTOP-CA試験で示された(同、300mg/m2)。主要評価項目はLVEFが化学療法前後で絶対値において10%以上低下し、12ヵ月後に55%未満となった患者の割合で、プラセボ群22%対アトルバスタチン群9%であった(p=0.002)。しかし、群全体としてのEF低下幅はスタチン群4.1%で、プラセボ群5.4%との差は1.3%のみであった(p=0.029)。 がん化学療法の心毒性に対する抑制効果のメタ解析では、スピロノラクトン、エナラプリルが最も有効で、スタチン、β遮断薬がこれに続いた。また、アントラサイクリン系薬剤もしくはトラスツズマブ治療を受けた患者のコホート研究では、ACE阻害薬、β遮断薬の治療にて全死亡が少なかった。さらに、アントラサイクリン系薬剤治療に関するメタ解析では、β遮断薬によって心不全の発症が有意に低下した。 スタチンによる心保護作用についてはさまざまな機序が推定されており、その意味で本試験の結果は納得のいくものである。そもそも、最近のメタ解析によるとスタチンにはHFrEF患者の入院の抑制作用も示されている。しかし、EF低下幅の差1.3%で有意差を出すことができたのは、ひとえに試験デザインの秀逸さによるものと考えられる。

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