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パルスフィールドアブレーションは心房細動治療のゲームチェンジャーになりうるか(解説:高月誠司氏)

 日本では2024年に、新しい不整脈に対するアブレーション法として3種類のパルスフィールドアブレーションが導入される。ADVENT試験は、心房細動に対して従来の高周波カテーテルアブレーションとパルスフィールドアブレーションを比較した初めてのランダム化比較試験で、ほぼ同等の治療成績であった。 組織に500~1,000V/cmの高電圧のパルスを与えると、細胞には小さな穴が瞬間的に多数形成され、閾値以上のエネルギーでパルスを与えると細胞が壊死する。この閾値は組織ごとに異なり、心筋細胞は周囲の食道や神経組織よりも閾値が低く、選択的なアブレーションが可能で、合併症が少なくなることが期待されている。また、肺静脈隔離のdurabilityが高い、つまり遠隔期の肺静脈の再伝導が少ないことが報告されており、心房細動アブレーションのゲームチェンジャーとして大いに期待されている。ただし、心房粗動の治療として、右房の三尖弁輪下大静脈間の解剖学的峡部でパルスをかけると、その心外膜側の右冠動脈で冠動脈スパズムが誘発されることも知られている。静注のニトログリセリンの前投与はこれを予防しうるということだが、冠攣縮性狭心症が多い本邦では冠動脈スパズムに対して十分な注意が必要であろう。

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タイガース優勝!【Dr. 中島の 新・徒然草】(505)

五百五の段 タイガース優勝!先日のこと。たまたま乗ったタクシーの運転手さんに「明日は御堂筋でタイガースの優勝パレードですね」と話しかけられました。「阪神が優勝したんでしたか」と返事をしたら運転手さんはびっくり仰天。「お客さん、もしかして野球に興味ないとか?」と尋ねられました。もちろん私も野球は大好きです。でも、小学生の頃の『巨人の星』で止まっているんですよ。星 飛雄馬とか、花形 満とか。そんなことを呟いたら「それって架空の人物でしょ!」と運転手さん。話が通じたということは、私と同年代だったのかもしれません。『巨人の星』といえば、王 貞治や長嶋 茂雄が現役で活躍していた頃ですね。当時は在阪4球団といって、阪神タイガースのほかに大阪には阪急ブレーブス、近鉄バファローズ、南海ホークスがありました。もちろん今も昔もタイガースの人気が圧倒的なのは言うまでもありません。以下、関西でのタイガース人気を表すエピソードを、年代順にいくつか紹介します。私が高校生の時、ちょうど掛布 雅之が活躍し始めた頃で、クラス全体が受験勉強そっちのけで熱狂していた。医学部を卒業した頃、南海ファンの先生と近鉄ファンの先生が医局でいがみ合っていたけれど、ほかの誰も興味を持っていなかった。1985年にタイガースが優勝した時には道頓堀川に飛び込む人が続出し、ケンタッキーフライドチキンの店頭に置かれていたカーネル・サンダースの像まで投げ込まれた。数年前、裁判所に行った時に、何気なく隣に座っていた弁護士さんのパソコンの画面を見たら、背景がタイガースだった。外来の患者さんでタイガースの成績と症状が連動している人がいる。例年、春先はいいけれど、夏頃から失速する。この患者さん、タイガースが優勝したので冬になった今も調子がいいことでしょう。近日中に外来受診の予定なので尋ねてみます。今年は阪神タイガースとオリックス・バファローズの地元対決でした。ニュースで見ると、午前中はバファローズが大阪の御堂筋、タイガースが神戸の三宮でパレード。午後は両チーム入れ替わってのパレードで、大変な盛り上がりだったようです。それにしても、贔屓のチームにここまで入れ込むことができるファンというのも羨ましい気がします。タイガースの勝ち負けに体調が左右されるというのも頷けますね。最後に1句御堂筋 銀杏の並木と タイガース

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AHAでJ-PCI registry解析結果を発表、セマグルチドも話題に【臨床留学通信 from NY】第54回

第54回:AHAでJ-PCI registry解析結果を発表、セマグルチドも話題に秋の学会シーズンということで、前回はTCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)についてでしたが、今回はフィラデルフィアで11月11~13日に開催されたAHA(American Heart Association)です。AHAは米国心臓病協会の学会で、ACC(American College of Cardiology)と2大循環器学会となります。TCTからわずか3週間後の開催です。カテーテル治療系の目玉となるトライアルは、多くがTCTで発表される傾向があります。一方、AHAはカテーテル治療も取り上げられるものの、どちらかというと予防医学などに重点を置いている傾向があります。今回のAHAでは、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の「J-PCI registry」というNational registryにおいて、透析患者に対する橈骨動脈アプローチに関して研究計画書を提出して採用されたことから、統計解析の結果をポスターセッションで発表しました1)。そしてほぼ同時に、European Heart Journal誌の姉妹誌であるEHJ Open誌に掲載されました2)。一般的にカテーテル治療は橈骨動脈から施行したほうが、大腿動脈より施行するよりリスクが低いとされます。しかし、シャントを有する透析患者は、出血リスクが高いにもかかわらず、橈骨動脈閉塞の危険性があることから、大腿動脈から施行することが通例です。それに関して、私が日本にいたときから、透析患者であっても橈骨からできないかというパイロット研究をしていました3)。症例は100人に満たない人数ですが、一般病院で倫理委員会を通し、腎臓内科の先生とも共同し、橈骨動脈が閉塞しているかどうかもきちんと調べて論文化したテーマです。これをNational registryを使って研究させていただいたのは貴重な経験でした。次のステップとして、米国のNational registryである「NCDR CathPCI registry」というデータベースが公募しているので、今回のEHJ Open誌のデータを示して挑戦したいと思います。ニューヨークからフィラデルフィアまでは近いこともあり、前もって購入すれば往復40ドルの電車賃だけで世界的な学会に参加できます。今回は週末のみの滞在で、日本人の方々とお話をしていたら学会が終わってしまったという印象です。ただその中でも、セマグルチドの肥満症に対する心血管イベント抑制効果を検討した「SELECT 試験」が最も話題になりました。日本でも11月22日に薬価収載され、はたして日本で適応となる人はどれくらいでしょうか。ここ肥満大国アメリカで本薬が適応となるのは人口の約5%に相当するとされ、製薬会社の争奪戦となっているようです。しかし、保険の縛りが強く、なかなか患者さんの手に入らないとも言われており、医療格差が広がる一方ではないかという危惧もあります。参考1)Kuno T, et al. Abstract 13387: Transradial Intervention in Dialysis Patients Undergoing Percutaneous Coronary Intervention: A Japanese Nationwide Registry Study. Circulation. 2023;148:A13387.2)Kuno T, et al. Transradial Intervention in Dialysis Patients Undergoing Percutaneous Coronary Intervention: A Japanese Nationwide Registry Study. Eur Heart J Open. 2023 Nov 14.3)Kuno T, et al. A Transradial Approach of Cardiac Catheterization for Patients on Dialysis. J Invasive Cardiol. 2018;30:212-217.Column私が指導している初期研修医、後期研修医相当(米国1年目)の先生方が、TCT やAHAで海外学会デビューされ、頼もしい限りです。私は学会発表が卒後6年目以降、海外学会は7年目以降、そして12年目にようやく渡米したこともあり、キャリアの早い段階で臨床留学を達成、またそれに挑戦している若手の刺激を受けて、まだまだ頑張らなければと思う日々です。【後輩の先生方の研究】Kiyohara Y, et al. J Am Coll Cardiol. 2023;82:B135–B136.Kiyohara Y, et al. J Am Coll Cardiol. 2023;82:B74.Watanabe A, et al. Circulation. 2023;148:A13383.Watanabe A, et al. J Med Virol. 2023;95:e28961.Shimoda T, et al. Circulation. 2023;148:A14832.

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第73回 大正製薬が過去最大のMBO!

大正製薬がマネジメントバイアウト(MBO)Unsplashより使用大正製薬ホールディングス(HD)が、11月24日、経営陣による自社株買収(マネジメントバイアウト:MBO)を実施し、株式を非上場化すると発表しました。売上高3,000億円以上の企業でMBOであり(表)、業界で大きな話題となっています。画像を拡大する表. 売上高の高い製薬会社(筆者作成)大正製薬はもともと上場企業で、株式を公開しています。なので、極端な話、モノ言う株主が大量のお金で株式を買い占めると、経営陣の意向とは異なり、買収されてしまうリスクを孕んでいます。じゃあ最初から上場しなければいいじゃんというほど、企業経営というのは甘くなく、やはり上場して資金を集めることが必要な業種は多いです。経営母体が大きくなり、財務基盤も安定してきたことから、機動性を重視して上場を取りやめる場合、経営陣が株式を完全に買い集めて上場廃止にすることがあります。これをMBOと言います。MBOのメリットは、経営陣の意向が迅速に反映されやすいということと、敵対的な買収のリスクがなくなるということです。ネット通販へ大正製薬HDは、傘下に収める製薬会社が栄養ドリンクの「リポビタンD」や風邪薬「パブロン」などのOTCを生産しています。こうした大衆薬がやや低迷気味であり、また小売業全体としてネット通販へ軸足を移しつつあることから、大衆薬も同様で、大正製薬HDは今後海外展開も見据えて買収を進めていくようです。買収総額は7,000億円を超えるとされており、私の知る限り、日本企業のMBOでは最高額になるのではないかと予想しています。

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がん遺伝子パネル検査のアノテーションにAIを活用開始

 聖マリアンナ医科大学は、2023年11月13日、同学附属大学病院でのがん遺伝子パネル検査において、ゲノムデータの解析(アノテーション)にAIでデータ解析を行うことができる「MH Guide」を活用する取り組みを開始した。 MH Guideは、ドイツ・Molecular Health社が開発したAIシステムで、遺伝子パネル検査から得られるデータを解釈し、エビデンスに基づいた治療方針決定を支援する解析ソフトウェアである。このソフトウェアは、分子データから臨床的に重要な遺伝子異常を自動的に同定し、患者の分子プロファイルに基づく治療選択肢と、関連する可能性のある進行中の臨床試験を検出することができる。 同学ゲノム医療推進センターでは、欧州ではすでに臨床実装済みのMH Guideが、日本のがんゲノム医療でも使用可能かを検証する臨床試験を開始した(UMIN000052151)。

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アルコール依存症やニコチン依存症と死亡リスク

 一般集団を対象とした、アルコール依存症とニコチン依存症の併発とその後の死亡リスクとの関連についての知見は、不十分である。ドイツ・グライフスヴァルト大学のUlrich John氏らは、死亡率の予測における、過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間との潜在的な関連性を分析した。その結果から、過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間は、死亡するまでの期間に累積的な影響を及ぼす可能性が示唆された。European Addiction Research誌オンライン版2023年10月26日号の報告。 対象サンプルは、18~64歳のドイツ北部在住の一般集団よりランダムに抽出した。1996~97年における過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間を、Munich-Composite International Diagnostic Interviewを用いて評価した。すべての原因による死亡率に関するデータは、2017~18年に収集し、分析には、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間は相互に関連しており、死亡までの期間の予測因子であることが示唆された。・アルコール依存症歴のある人の29.59%は、現在ニコチン依存症であった。・アルコール依存症歴があり、現在起床してから30分以内に最初の喫煙を行う人は、アルコール消費量の少ない非喫煙者と比較し、早期死亡のハザード比が5.28(95%信頼区間[CI]:3.33~8.38)であった。 結果を踏まえ、著者らは「死亡リスクを低減させるためには、依存症からの寛解支援に加え、非依存者に対しても高リスクの飲酒や喫煙をやめるように支援することが、有益である」としている。

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大腸がんの新しい非侵襲的検査、便潜血より良好な検出感度/JAMA

 マルチターゲット便中RNA(mt-sRNA)検査(ColoSense)は、大腸がんおよび進行腺腫の検出感度が高く、従来の免疫便潜血検査(FIT)と比較し感度を有意に改善することが認められた。また、大腸内視鏡検査で病変が認められない特異度は、既存の非侵襲的な分子スクリーニング検査と同等であった。米国・ワシントン大学のErica K. Barnell氏らが、医療機器クラスIIIとしての承認申請を行うために、平均的リスクの45歳以上を対象に実施された盲検化第III相試験「CRC-PREVENT試験」の結果を報告した。JAMA誌2023年11月14日号掲載の報告。分散型臨床試験により約1.4万人を登録、8,920例を解析 研究グループは、オンラインのソーシャルメディアを用いて参加者の募集活動を行い、2021年6月~2022年6月の間に、米国の49州において分散型ナースコールセンターを介し、平均的な大腸がんのリスクがある45歳以上の計1万4,263例を登録した。 登録された参加者には便検体採取キットを提供し、便検体採取後72時間以内に採取キットを中央検査施設に送付してもらい、その後、地域の内視鏡センターで大腸内視鏡検査を受けてもらった(内視鏡医は盲検下で検査を実施)。 便検体は、従来FIT、便中の8種類のRNA転写物濃度、および自己報告の喫煙状況を組み込んだmt-sRNA検査を行い、結果(陽性または陰性)を判定した。 主要アウトカムは、大腸がんおよび進行腺腫の検出に対するmt-sRNA検査の感度、および大腸内視鏡検査で病変が認められない場合の特異度とした。 登録された1万4,263例のうち、mt-sRNA検査および大腸内視鏡検査をいずれも完遂し、適格であった8,920例が解析対象となった。mt-sRNA検査の大腸がん検出感度は94.4%、特異度は87.9% 8,920例(平均年齢55歳[年齢範囲:45~90]、女性60%、アジア系4%、黒人11%、ヒスパニック系7%)のうち、36例(0.40%)に大腸がん、606例(6.8%)に進行腺腫が認められた。 mt-sRNA検査の大腸がん検出感度は94.4%(95%信頼区間[CI]:81~99)、進行腺腫検出感度は45.9%(95%CI:42~50)、大腸内視鏡検査で病変が認められない場合の特異度は87.9%(95%CI:87~89)であった。 mt-sRNA検査はFITと比較し、大腸がん(94.4% vs.77.8%、McNemarのp=0.01)および進行腺腫(45.9% vs.28.9%、McNemarのp<0.001)の感度が有意に高かった。

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「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」発表/日本肥満学会

 肥満症治療薬セマグルチド(商品名:ウゴービ皮下注)が、2023年11月22日に薬価収載された。すでに発売されている同一成分の2型糖尿病治療薬(商品名:オゼンピック皮下注)は、自費診療などによる適応外の使用が行われ、さまざまな問題を引き起こしている。こうした事態に鑑み、日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏[千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学教授])は「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」を11月27日に同学会のホームページで公開した(策定は11月25日)。 ステートメントでは、「肥満と肥満症は異なる概念であり、肥満は疾患ではないため、この存在のみでは本剤の適応とはならない」と適応外での使用に対し注意を喚起しており、適応としての「肥満症」、使用時に確認すべき注意点について以下のように整理している。【適応症について】1)肥満症について 肥満とは脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した結果BMI25kg/m2以上を示す状態である。肥満と肥満症は異なる概念であり、肥満は疾患ではないため、この存在のみでは本剤の適応とはならない。 本剤の適応症である肥満症は「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする疾患」と定義されている(肥満症診療ガイドライン2022)。具体的には、肥満(BMI25kg/m2以上)に加え、減量によりその予防や病態改善が期待できる「肥満症の診断基準に必須の11の健康障害*(脂質異常症、高血圧など)」のいずれかを伴うものを肥満症と診断し、治療の対象とする。*11の健康障害(1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、(2)脂質異常症、(3)高血圧、(4)高尿酸血症・痛風、(5)冠動脈疾患、(6)脳梗塞・一過性脳虚血発作、(7)非アルコール性脂肪性肝疾患、(8)月経異常・女性不妊、(9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、(10)運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)、(11)肥満関連腎臓病2)本剤の適応となる肥満症について 本剤は肥満症と診断され、かつ、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、以下のいずれかに該当する場合に限り適応となる。 BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する場合か、BMIが35kg/m2以上の場合である。すなわち、肥満症の中でもBMIが35kg/m2以上である場合は高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有する場合、27kg/m2以上35kg/m2未満である場合は、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかに加えて、耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、脂質異常症、高血圧など11の健康障害のうちのいずれか1つを含め、計2つ以上の健康障害を有する場合、保険適用となる。3)使用時に確認すべき注意点(1)本剤の使用に際しては、患者が肥満症と診断され、かつ2)の適応基準を満たすことを確認した上で適応を考慮すること。(2)肥満症治療の基本である食事療法(肥満症治療食の強化を含む)、運動療法、行動療法をあらかじめ行っても、十分な効果が得られない場合で、薬物治療の対象として適切と判断された場合にのみ考慮すること。(3)内分泌性肥満、遺伝性肥満、視床下部性肥満、薬剤性肥満などの症候性(二次性)肥満の疑いがある患者においては、原因精査と原疾患の治療を優先させること。 このほか、糖尿病治療中の患者における使用の注意点や、メンタルヘルスの変化を含む注意を払うべき副作用などが記載されている。

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1週間の低ナトリウム食、降圧薬と同程度の降圧効果/JAMA

 50~75歳の中高年において、低ナトリウム(Na)食(1日のNaが計約500mg)の1週間摂取は高Na食の1週間摂取と比較して血圧を有意に低下させ、その低下は高血圧症の有無や降圧薬の使用とは関係ないことが示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのDeepak K. Gupta氏らによる「CARDIA-SSBP試験」の結果で明らかになった。推奨Na摂取量については、食事によるNa摂取に対する血圧反応の個人差が一部で議論されている。また、降圧薬服用者における食事によるNa摂取の血圧への影響は、これまで十分に研究されていなかった。JAMA誌オンライン版2023年11月11日号掲載の報告。クロスオーバー法により高Na食と低Na食を1週間摂取 研究グループは2021年4月~2023年2月に、CARDIA研究の参加者に加え、2022年からはシカゴとバーミングハムの2都市においてCARDIA研究の参加者以外の地域住民を登録した。CARDIA研究は、心血管疾患の発症に影響を及ぼす若年成人期の因子の同定を目的とし、1985~86年にシカゴ、バーミングハム、ミネアポリス、オークランドで当時18~30歳の地域住民を登録した前向き観察コホート研究で、現在も追跡調査を継続している。 CARDIA-SSBP試験の主な適格基準は、50~75歳、登録時の収縮期血圧(SBP)90~160mmHgまたは拡張期血圧50~100mmHgであった。高Na食または低Na食が禁忌の場合は除外した。CARDIA-SSBP試験の対象者を高Na食→低Na食の順で摂取する群または低Na食→高Na食の順で摂取する群に割り付け、各食事を1週間ずつ摂取してもらった。高Na食は通常食に1日約2,200mgのNaを追加したもの、低Na食は1日のNaが計約500mgとした。 主要アウトカムは、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)による各食事週間終了時のSBP/拡張期血圧平均値、平均動脈圧、および脈圧であった。第1週終了時のSBP平均値、低Na食摂取群で8mmHg有意に低下 228例が無作為に割り付けられ、このうち213例が高Na食および低Na食の摂取を完了した。213例の年齢中央値は61歳、65%が女性、64%が黒人であった。 通常食、高Na食、低Na食を摂取時のSBP血圧中央値はそれぞれ125mmHg、126mmHg、119mmHgであった。 高Na食摂取時と低Na食摂取時の平均動脈圧の個人内変化量は、中央値4mmHg(四分位範囲:0~8mmHg、p<0.001)であり、サブグループ(ベースラインの血圧、降圧薬服用の有無など)で差はなかった。高Na食摂取中と比較し低Na食摂取中に平均動脈圧が低下した参加者は73.4%であった。 高Na食摂取時より低Na食摂取時に低下する平均動脈圧は5mmHg以上という一般的な閾値を用いた場合、参加者の46%が“食塩感受性あり”に分類された。 第1週終了時のSBP平均値は、高Na食摂取群に比べ低Na食摂取群で8mmHg(95%信頼区間[CI]:4~11mmHg、p<0.001)有意に低く、年齢、性別、人種、高血圧の有無、ベースラインの血圧、糖尿病の有無、BMI値別のサブグループでもほぼ同様の結果であった。 有害事象はいずれも軽度で、高Na食摂取時および低Na食摂取時のそれぞれで21例(9.9%)および17例(8.0%)が報告された。 これらの結果を踏まえて著者は、「本試験では、低Na食の降圧効果は、よく使われる第1選択の降圧薬に匹敵するものだった」と述べている。

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プール熱(咽頭結膜熱)ってどんな病気?

プール熱(咽頭結膜熱)ってどんな病気?• アデノウイルスというウイルスへの感染が原因となり、プールで感染が広がるケースがあることから「プール熱」と呼ばれます• 発熱(38~39度)、のどの痛み、結膜炎(目の充血・目やになど)といった症状が多く、リンパ節の腫れ、下痢や吐き気、頭痛、せきなどがみられることもあります• 症状は多くが1~2週間でおさまります• 小児を中心に主に夏に流行しますが、最近の傾向として冬にも流行がみられます治療法は?他の人にうつさないようにするには?•特別な治療法はなく、症状に合わせた対症療法が行われます•アルコール消毒は効きにくいため、石けんと流水でこまめな手洗いをしましょう•高熱が続く、ぐったりしている、吐き気や頭痛の強いとき、せきが激しいときは早めに医療機関に相談しましょう•むやみに目や口に触れたり、こすったりしないようにしましょう•タオルの共用はしないようにしましょう•症状がなくなった後も約1ヵ月は尿・便からウイルスが排泄されるので、排泄後の念入りな手洗い、排せつ物の処理に注意しましょう•目の症状が強い場合は、眼科を受診しましょう出典:東京都保険医療局「咽頭結膜熱(プール熱)が流行しています!」厚生労働省「咽頭結膜熱について」Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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卒業試験に失敗、そしてこれから起きること(解説:岡村毅氏)

 アルツハイマー型認知症の病態の「本丸」、すなわちアミロイドをターゲットにした薬剤が世に出始め、新たな時代が始まりつつある。すでにエーザイと 米国・Biogen によるアデュカヌマブそしてレカネマブ、米国・Eli Lilly and Companyのdonanemabにおいて科学的効果が確認され、市場に出てくる。 レカネマブのスタディ名はClarity AD(明快AD)、そしてdonanemabのスタディ名はTRAILBLAZER(開拓者)であった。アルツハイマー型認知症を明らかにしたい、新世界を開拓したいという研究者の夢が詰まったスタディ名である。 一方で、今回のロシュ・ダイアグノスティックスのgantenerumabは残念ながら有意な結果を得られなかった。市場に出る前の卒業試験に落ちたわけである。奇しくもこのスタディ名はGRADUATEであった…。 とはいえ、2010年代は失敗の連続だったわけで、今後すべて成功するというわけではない。挑戦に失敗は付きものである。 さて、これから臨床現場では何が起きるのだろうか? アルツハイマー型認知症は、根本治療薬はない、あるのは症状の出方を和らげる薬だけだ、という時代が長く続いた。しかしこれからは、アミロイドに作用する薬がある時代だ。ドネペジル(アリセプト)の時のような、内科の先生がとにかく処方しまくったようなバブルが起きるのだろうか。とはいえ、月に1回点滴しないといけない、重大な副作用もあるので脳神経内科のある総合病院でなければ無理だ、といった情報も正しく報道されている。夢の薬ができた、という熱狂はないように思える。 私の周りでも、「多くの高齢者が外来に殺到する。大変だ」という意見もあれば、「いや人々は意外に冷静だ。そんなことはなかろう」という意見もある。 また、この薬の恩恵を受けられない人が受診し、診断はされるが処方の対象ではないという事態も起きるだろう。たとえば、すでに重度認知症の人や、アルツハイマー型認知症ではない他の認知症の人が、家族の誤解と共に受診してしまうような事態だ。何かに困って受診するわけであり、「あなたは薬の対象ではないので、もう来なくてもいいです」というわけにもいかないだろうから、認知症疾患医療センターのPSWやMSWが忙しくなってしまうかもしれない。

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頑張りすぎる若手医師に贈る言葉、ホドホドでよし、完璧を目指すな!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第66回

「ボキボキボキボキ!」「ボキボキボキボキ!」救急室に不気味な音が響きわたります。患者の歯が粉砕される音です。ベッド上にいる患者が激しい呻き声を上げたかと思うと、激しく歯を食いしばります。自分自身の噛む力で歯が何本も折れているようです。そして、眼球を上転させ白目をむいた状態で意識を失いました。幅広いQRS波の頻脈を示していたハートモニターが、心室細動(VF)波形に変化したことはすぐに認識できました。対応に当たっていた救急部の医師が、カウンターショックを施行します。除細動に成功し、自己心拍が復帰し、そして血圧も回復しました。意識を取り戻した患者は、自分で口を開け、粉々に砕けた歯のカケラを吐き出しています。残っている歯はほとんどありません。これは、私が初期研修医時代に経験した症例です。意識回復後の心電図モニターの波形は洞調律ですが、デルタ波が確認できます。皆さんは何が起きたのかわかりますか? WPW症候群の方は、正常の伝導路に加えて、ケント束という別の回路が心房と心室の間に存在します。ケント束という副伝導路を持っている証拠が心電図でのデルタ波です。WPW症候群の患者が心房細動を併発すると、心房での不規則な興奮が副伝導路を介して高頻度に心室に伝わります。このためRR間隔が不規則で、心室頻拍のように幅広いQRS波が続く心電図波形となります。この状態を、偽性心室頻拍と日本では呼称しています。この偽性心室頻拍はとても不安定で心室細動に移行しやすいのです。この患者の病態をサマライズすれば、背景にWPW症候群を持つ患者が、心房細動に陥り偽性心室頻拍の状態で来院し、心電図モニターを装着して救急室のベッドに横になった途端に心室細動になったのです。致死的不整脈発作の教育的実例としてではなく、噛みしめる力によって自分の歯を粉砕することが可能であるという事実が、不気味なボキボキという音とともに私の脳裏に焼き付けられました。人間が力いっぱい歯を食いしばった時の噛む力は約70kgで、日常的に食事を取る時は、男性で60kg、女性で40kgぐらいといわれます。咀嚼するために咬合力を発揮する筋肉は閉口筋群と呼ばれ、咬筋・側頭筋・および内側翼突筋などから構成されます。耳の前の頬骨から下顎角に向けて配置されるベルト状の形状の咬筋は、全身の筋肉の中でも単位断面積当たりの収縮力が最も強い筋肉とされます。筋力の生理的限界と心理的限界筋線維に電気的な刺激を与え、強制的にすべての筋線維を収縮させたときの最大筋力を、「筋力の生理的限界」と呼びます。紹介した実例からもわかるように、咬筋は歯をボキボキと何本もへし折る収縮力を持っています。しかし、固い食べ物を噛み切ろうと頑張ったからといって、歯がボキボキと折れることはありません。脳が中枢制御装置としてリミッターを作動させ、発揮される筋力が制限されているからです。実はもっと力が出せるのに、知らず知らずのうちに自分で制限をかけているのです。心理的なリミッターによって制限された筋力の限界のことを、「筋力の心理的限界」と呼びます。「火事場の馬鹿力」という言葉を耳にしたことがあると思います。非常事態に陥った時に、人間はそれまで出したことのないような力を発揮することができるというものです。しかし、いつでもどこでも「火事場の馬鹿力」のような力を発揮することはできません。危機的な状況に遭遇すると、心理的なリミッターが外れて、生理的限界に近い爆発的な力を発揮することができるのです。スポーツ選手がトレーニングを行う目的は、ボディビルダーの身体のように筋肉量を増やすためだけではありません。人間は普段、すべての筋線維を動員させておらず、一部の筋線維は使われていない状態になっています。トレーニングにより、神経系の働きを改善し、これまで使えていなかった筋線維を使えるようにすると、より大きな力を発揮できるようになるのです。自分の筋力の心理的な限界値を、筋肉を電気刺激ですべて収縮させたときの生理的な限界値に近づけるためにトレーニングを行うのです。一流のアスリートは、筋肉がそこまで大きくなっていなくても、大きな筋力を発揮できるようになっています。重量挙げや陸上競技の砲丸投げなど、最大パワーが重要な種目において、選手は本番の瞬間に大声で叫びます。これを「シャウト効果」といい、大きな声を出すことで中枢による抑制を減らすことが可能となるのです。叫ぶことによって脳の興奮が高まり、その瞬間に使いきれていなかった筋肉を動かすために必要な部分が覚醒し、通常以上の力が発揮できるのです。スポーツ選手が叫んでいるのは、相手を威圧するためだけではないのです。筋力にリミッターをかけるのは、人間が自身の身体を守り、合理的に生き延びていくために必要な仕組みだからです。常に生理的限界の最大筋力を出すことが可能となってしまうと、腱や靭帯、筋肉が強く引き伸ばされすぎて、損傷を起こしてしまうのです。高齢の方や運動不足の人が、いきなり生理的限界に挑戦することはもちろん避けるべきです。「シャウト効果」を期待して、叫びながら踏ん張ったりすれば、血圧の急上昇を起こします。これによって重大な心血管疾患が惹起される可能性があります。何事にも「ホドホド」が大切なのです。一生懸命頑張り過ぎてしまう人ほど、ホドホドを意識してリミッターによる制御が必要なのは筋力だけではありません。精神力においてもリミッターは重要です。一生懸命頑張れるのは良いことですが、「なんでも一生懸命」、「ものすごく頑張らないと」と思いがちな人ほど危険です。リミッターの制御なしに頑張ることは、まるでマラソンを短距離走のごとくガムシャラに走るのに似ています。とにかく頑張った結果、ある日突然燃え尽きたかのように気力や意欲を失ってしまいます。この「燃え尽き症候群」は、医学部の学生時代に成績優秀であった者が、医師となり初期研修医や専門医研修の専攻医となった時期に陥りやすい状態です。頑張るときは頑張って、頑張らなくてもいいときは頑張らない。責任感が強く全力で頑張ってしまう若手医師に、「ホドホド」という素晴らしい言葉を知ってもらいたいです。自分のペースで頑張ることが大切なのです。無我夢中で頑張っている時は、やり甲斐を感じ、無理をしている自覚がないこともあります。早めに方向転換する機会を失うと、悪化させ病院を無断欠勤したり、人との関わりを絶ってしまったり、社会適応すらできなくなる事例もあります。「目標は高く持とう!」と学生時代に教えられ、期待に応え達成してきた優秀な人ほど、妥協することが下手くそです。高過ぎる目標は挫折しやすいのです。若手医師が燃え尽きる前に、「ホドホド」を修得するためのアドバイスをさせていただきます。猫と暮らすことです。猫は、「頑張る」とは無縁です。ほとんどの時間を寝て過ごし、寝ることに疲れた時にだけ起きます。食事をするか、気が向けば人間に遊んでくれと甘えます。そして再び眠ります。猫は、誰かの助けを求めることの天才です。空っぽになった猫用の食器の前で、「ニャー」といえば食事が供されます。箪笥やカーテンレールの上に思わず登ってしまい、降りることができなくなると、「ニャー」といえば飼い主という下僕が救出します。頑張り過ぎている若手の医師は、燃え尽きてしまう前に猫さまを迎え入れて、「ホドホド」の頑張りで自分の人生を楽しく、苦しくないものにしましょう。頑張りが不足して「喝」を注入する必要がある若手よりも、頑張りにリミッターが必要な若手医師の存在が気掛かりです。1人で全部を背負いこんではいけません。

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第189回 エクソソーム療法で死亡事故?日本再生医療学会が規制を求める中、真偽不明の“噂”が拡散し再生医療業界混乱中

生成AIを活用して作った 「ブラック・ジャック」の新作が発表こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週(11月23日)発売の週刊少年チャンピオンに、「ブラック・ジャック」の新作が発表されました。手塚治虫の漫画、「ブラック・ジャック」については、1ヵ月前、本連載の「第185回 六本木で開催中の『ブラック・ジャック展』で考えた、“黒い医者”たちと医療・医師の普遍性」でも取り上げました。この時、OpenAIの「GPT-4」やStability AIの「Stable Diffusion」などの生成AIを活用して「ブラック・ジャック」の新作を制作する試みが進行中だと書いたのですが、その新作がいよいよ発表されたのです。ということで、週刊少年チャンピオンを買おうと近所の書店に出掛けたのですが、どこにもありません。近所のコンビニも数軒覗いたのですが、やはり在庫がありません。書店もコンビニも、少年誌で置いてあったのは少年ジャンプと少年マガジンばかり。発行部数・流通量が少ない雑誌はこうまで手に入りにくいものかと驚いた次第です。ちなみに漫画雑誌の新刊はアマゾンでは冊子版は流通しておらず、電子版(Kindle)でしか読めないようです。半ば諦めていたところ、たまたま出先のコンビニに飲み物を買いに入ったところ、1冊だけ週刊少年チャンピオンが残っており、なんとか現物を入手することができました。「ブラック・ジャック」掲載を見越して発行部数や流通量にもAIを活用してほしかった…、と思いました。手塚 治虫氏の長男、手塚 眞氏が中心となった「TEZUKA2023プロジェクト」による「ブラック・ジャック」の新作、「機械の心臓-Heartbeat Mark II」(33ページの読み切り)ですが、大学のAI研究者や有名映画監督も入った大プロジェクトの割に、作品はこの程度かと少々肩透かしをくらった、というのが正直な感想です。AIといえども、やはり“神様”には勝てないのだな、と思った次第です。エクソソーム療法、「将来的には何らかの規制下に置かれることが望ましい」と日本再生医療学会が提言さて、今回は、一部で話題となっている「エクソソーム療法」について書いてみたいと思います。11月10日の厚生労働省の再生医療等評価部会で、日本再生医療学会はエクソソーム療法が美容クリニックなどの自由診療で広がっている現状を踏まえ、「将来的には何らかの規制下に置かれることが望ましい」と提言しました。「エクソソーム療法で死亡例が出ている」といった情報も一部に流れているようです。この情報はデマの可能性もあり、業界は混乱に陥っています。美容やアンチエイジングを目的に他家細胞由来の細胞培養上清液やエクソソームを自由診療で投与エクソソームは、直径100nm程度の細胞外小胞(EVs:Extracellular Vesicles)と呼ばれるものの1種です。EVsは細胞が分泌する物質で、組織の再生を促す成長因子や細胞間の情報伝達物質を含んだエクソソームなどからなっており、医療分野での活用が期待されています。国内でも、美容やアンチエイジングを目的に、他家細胞由来の細胞培養上清液や、上清液から抽出したとされるエクソソームを自由診療で投与する医療機関が増えています。これらを通称「エクソソーム療法」と呼んでいます。もっとも、有効性や安全性が確認され、治療法として承認されているものはまだありません。インターネットで「エクソソーム療法」を検索すると、数多くの自由診療クリニックがヒットします。それらのクリニックでは、エクソソームを含んだ幹細胞由来の細胞培養上清液やエクソソームについて、皮膚の再生、創傷治癒の促進、老化防止、疲労回復、ED(勃起不全)改善などに効果ありと、まるで万能の不老薬のように宣伝しています。再生医療等安全性確保法の対象外のため提供計画の提出、副作用などの報告の義務なし11月10日の厚生労働省の再生医療評価部会で、日本再生医療学会の岡野 栄之理事長(慶應義塾大学医学部 生理学教室 教授)は、「再生医療という名目で、多くのクリニック等で自由診療として行われている現状や、感染症のリスク等を鑑み、製造過程等を含めて、将来的には何らかの規制下に置かれることが望ましい」と主張しました。同学会は、2023年10月27日、「再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直しに関する提言」を行い、エクソソームを含むEVsを再生医療新法の対象とするよう提言していますが、それを改めて再生医療評価部会の場ででも訴えたわけです。背景には、老化防止をうたう美容クリニックなどにおいて自由診療によるエクソソーム療法が急拡大していることがあります。現状、日本では細胞培養上清液やエクソソームは細胞断片であり、細胞には当たらないと整理されており、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)の対象外となっています。同法が施行されたのは2014年、主に自由診療でがん免疫療法(自家の免疫細胞を培養し投与)を行っていた医療機関における安全性確保のためでした。この時はEVsによる治療自体がまだ認知されておらず、規制対象にはなりませんでした。そのため、現在、細胞培養上清液やエクソソームを医療機関で投与する際、同法で定められた認定再生医療等委員会の審査や再生医療等提供計画の提出、副作用の報告といった煩雑な手続きは課せられません。これがエクソソーム療法の急拡大につながっているわけです。「交差汚染管理が不十分な場合などに敗血症等重篤な事故を引き起こす可能性がある」しかし、EVsは、「主に細胞から調製されるという点において細胞加工物と類似のリスクを有しており、交差汚染管理が不十分な場合などに敗血症等重篤な事故を引き起こす可能性がある」(再生医療等評価部会・岡野氏資料より)ことから、日本再生医療学会は「科学的根拠に基づき、グローバルスタンダードに則ったEVs治療の開発を進めるために、産学官の協力が必要である。EVsの定義、効能、品質管理に基づいた安心、安全なEVsの治療応用のガイドライン作成は急務であり、その為に、何らかの班研究あるいはワーキング・グループ等を構築し、問題点の精査が必要」と提言したわけです。再生医療抗加齢学会が「幹細胞培養上清液を使用した治療に関し、患者が死亡するという事象が発生したという情報に接しております」と公表ところで、日本再生医療学会がエクソソーム療法の規制の必要性を求める2週間ほど前、「エクソソーム投与後に死亡」との情報が一部に流れ、関係者が色めき立ちました。情報の出どころは再生医療抗加齢学会。10月11日、同学会の森下 竜一理事長(大阪大学大学院 医学系研究科臨床遺伝子治療学寄付講座 教授)が、同学会のウェブサイトで「幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について」というタイトルで声明を出したのです。声明は、「当学会では、幹細胞培養上清液を使用した治療に関し、患者が死亡するという事象が発生したという情報に接しております」として、「幹細胞培養上清液及びエクソソームの静脈投与につきましては、医療水準として未確立の療法であり、その有効性・安全性について、エビデンスに基づく十分な検討をお願いいたします」と注意喚起をしました。前述したように、エクソソーム療法は再生医療等安全性確保法の対象外のため、仮に死亡事例が発生しても医療機関は同法に則って報告する義務はありません。ということは、そうした事例を国が把握することもできません。ということで、関連学会が注意喚起することはそれなりに意味のあることです。11月9日付のリスファクスも再生医療抗加齢学会の死亡事案の声明を受け、「エクソソーム創薬、死亡事案で規制急務」というニュースを掲載しています。ただ、その記事では、「学会は本紙に『事案』は会員外の施設と回答し、詳細や施設名は開示していない」としています。「死亡例」は本当にあったのか?噂になった医療機関、学会、厚労省も否定学会が「死亡するという事象が発生したという情報に接しております」と公表したにもかかわらず、どこの施設での事象かわからないという状況は、再生医療やエクソソーム療法に携わる関係者に少なからぬ混乱を巻き起こしているようです。「死亡はデマではないか?」という声も聞こえてきます。11月15日付の日経バイオテクは「『エクソソームの投与後に死亡』の噂を追う」と記事を掲載しています。同記事は、「同学会(再生医療抗加齢学会)によれば、学会の会員や会員企業は死亡事例に関係しておらず、外部から寄せられた情報だと言います。噂で名前が挙がっている自由診療の医療機関や、自由診療でエクソソームの投与を手掛ける医師などにも当たってみましたが、『そうした事例は無い』『全く知らない』と否定されました。(中略)。さらに、日本再生医療学会も、本誌に対して『死亡事故があったとは考えていない』とコメント。厚生労働省の関係者も『正直、分からないというのが本音だ。情報の出所が把握できていない』と話していました」と書き、取材時点で死亡事例の情報は確認できなかったとしています。学会同士の対立説、関連企業に対する牽制説も仮に「死亡」がガセ情報だとしたら、一体背後で何が起こっているのでしょうか。真偽のほどはわかりませんが、日本再生医療学会の関係者と再生医療抗加齢学会の関係者の対立説や、幹細胞培養上清液やエクソソームを製造する企業(学会幹部が株を保有している企業もあると聞きます)への牽制説も流れているようです。エクソソーム療法の規制や注意喚起が必要だ、という点は理解できます。しかし、仮にも学会という組織が情報の裏も取らないで「死亡するという事象が発生したという情報に接しております」と公表することは、無責任過ぎるのではないでしょうか。無用な混乱は、再生医療に携わる医療機関や企業の信頼性にも影響します。再生医療抗加齢学会は早急に「死亡情報」の“エビデンス”を開示するべきです。もし虚偽情報だったなら、早急に訂正を出すべきではないでしょうか。

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ベンゾジアゼピン使用と認知症リスク~メタ解析包括レビュー

 高齢化社会に伴い、認知症の患者数は増加しており、認知症が主な死因の1つとなっている。しかし、ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関係については、一貫した結果が得られておらず、エビデンスの最新レビューが必要とされる。台湾・中国文化大学のChieh-Chen Wu氏らは、メタ解析の包括的レビューを実施し、ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関連についての入手可能なエビデンスを要約した後、その信頼性を評価した。Journal of Personalized Medicine誌2023年10月12日号の報告。 ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関係を調査した観察研究のメタ解析をシステマティックに評価した。各メタ解析について、全体的なエフェクトサイズ、不均一性、バイアスリスク、論文の公表年を収集し、事前に指定した基準に基づきエビデンスの格付けを行った。各研究の方法論的な品質の評価には、システマティックレビューを評価するための測定ツールAMSTARを用いた。 主な結果は以下のとおり。・30研究を含む5件のメタ解析を分析に含めた。・ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関連についてのエフェクトサイズは、1.38~1.78であった。しかし、この関連性を裏付けるエビデンスは弱く、含まれた研究の方法論的質は低かった。 著者らは「ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関連性を示唆するエビデンスは限られており、因果関係を明らかにするためには、さらなる研究が必要である」としたうえで「医師は、適応症に準じたベンゾジアゼピン使用を行わなければならない」とまとめている。

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がん患者の死亡リスクを低減させるビタミンD濃度は?

 ビタミンDサプリメント(2,000IU/日)の連日服用により、がん種に関係なくがん死亡率が減少したことが報告されている1)。今回、中国・北京大学のYu Bai氏らががん患者におけるビタミンD濃度と全死因死亡およびがん特異的死亡との関連を調査した結果、一定値以上のビタミンD濃度まで高くなるとそれらのリスクが大幅に減少することが明らかになった。Nutrition and Cancer誌オンライン版2023年11月18日号掲載の報告。 研究グループは、2007~18年の米国疾病予防管理センター(CDC)の国民健康栄養調査から入手した成人のがん患者2,463例のデータを解析し、2019年12月31日までの国民死亡記録と関連付けた。人口統計学的特徴、生活様式、食事因子、血清25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)値の検査期間、がん種について多変量調整を行った。参考:わが国におけるビタミンD不足・欠乏の判定指針:血清25(OH)D値≧75nmol/L(≧30ng/mL)が充足、50~<75nmol/L(20~<30ng/mL)が不足、<50nmo/L(<20ng/mL)が欠乏。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値70ヵ月で567例が死亡し、そのうち194例はがんによる死亡であった。・血清25(OH)D値が75nmol/Lまで高くなると、全死因死亡およびがん特異的死亡のリスクが有意に低減した。・血清25(OH)D値の四分位を比較したところ、第4四分位群と比べて第3四分位群(79.3~99.2nmol/L)の全死因死亡率の調整後ハザード比は0.59(95%信頼区間:0.42~0.84、傾向のp<0.001)、がん特異的死亡率は0.48(0.29~0.79、傾向のp=0.037)であった。 これらの結果より、研究グループは「血清25(OH)D値75nmol/Lは、がん患者の死亡率を減少させるための介入目標であると考えられる。血清25(OH)D値を範囲内に維持することは、全死因死亡およびがん特異的死亡の減少に有益である」とまとめた。

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適度な飲酒量は存在する?

 適量の飲酒の健康への影響についてはまだよくわかっていない。今回、肥満および2型糖尿病に対する飲酒の用量依存的影響についてバイアスを減らして評価するために、カナダ・トロント大学のTianyuan Lu氏らがメンデルランダム化法を用いて検討した。その結果、観察研究での関連とは異なり、適度な飲酒に肥満や2型糖尿病の予防効果はない可能性が示された。さらに、大量の飲酒は肥満度を増加させるだけでなく、2型糖尿病リスクを増加させる可能性があることが示唆された。The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌2023年12月号に掲載。 メンデルランダム化法は、観察研究における交絡や逆因果によるバイアスを軽減し、飲酒の潜在的な因果的役割を評価するのに役立つ。本研究では、UK Biobankに登録されたヨーロッパ系血統の40万8,540人について、最初に自己申告による飲酒頻度と10項目の身体測定値、肥満、2型糖尿病との関連を検証した。その後、全集団と飲酒頻度で層別化した集団でメンデルランダム化法を用いて解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・週14杯以上の飲酒者において、遺伝学的に予測される飲酒頻度が週1杯増加すると、脂肪量は0.36kg(SD:0.03kg)増加し、肥満のオッズは1.08倍(95%信頼区間[CI]:1.06~1.10)、2型糖尿病のオッズは1.10倍(95%CI:1.06~1.13)と増加した。これらの関連は男性よりも女性で強かった。・週7杯以下の飲酒者において、遺伝学的に予測される飲酒頻度の増加と健康アウトカムの改善に関連を支持するエビデンスは示されなかった。

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原発性胆汁性胆管炎の2次治療、elafibranorが有効か/NEJM

 標準治療で十分な効果が得られなかった原発性胆汁性胆管炎の治療において、経口投与のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、δの二重作動薬であるelafibranorはプラセボと比較して、生化学的治療反応が有意に優れ、ALP値の正常化の割合も高いことが、米国・Liver Institute NorthwestのKris V. Kowdley氏らが実施したELATIVE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年11月13日号に掲載された。14ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 ELATIVE試験は、14ヵ国82施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年9月~2022年6月の期間に患者を登録した(フランスのGENFITおよびIpsenの助成を受けた)。 年齢18~75歳、原発性胆汁性胆管炎と診断され、標準治療のウルソデオキシコール酸の効果が不十分または許容できない副作用を認めた患者を、elafibranor(80mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、52週の時点での生化学的治療反応(ALP値が正常範囲上限の1.67倍未満で、ベースラインから15%以上減少し、総ビリルビン値が正常であることと定義)とした。 161例を登録し、elafibranor群に108例、プラセボ群に53例を割り付けた。ベースライン時に66例(elafibranor群44例、プラセボ22群)に中等度~重度のそう痒を認めた。平均(±SD)年齢は57.1±8.7歳で、96%が女性であり、平均ALP値は321.9±150.9U/Lであった。有害事象は消化器症状の頻度が高い 52週時に生化学的治療反応を達成した患者は、プラセボ群が53例中2例(4%)であったのに対し、elafibranor群は108例中55例(51%)と有意に優れた(群間差:47%ポイント、95%信頼区間[CI]:32~57、p<0.001)。 52週時にALP値が正常化した患者は、プラセボ群では1例もなかったのと比較して、elafibranor群では15%と有意に良好であった(群間差:15%ポイント、95%CI:6~23、p=0.002)。 また、ALP値のベースラインから52週目までの最小二乗平均変化量は、elafibranor群が-117.0U/L(95%CI:-134.4~-99.6)、プラセボ群は-5.3U/L(-30.4~19.7)だった(群間差:-111.7U/L、95%CI:-142.0~-81.3)。 中等度~重度のそう痒を有していた患者における最悪のかゆみの数値評価尺度(WI-NRS、0[かゆみなし]~10[考えうる最悪のかゆみ]点)スコアの52週目までの最小二乗平均変化量は、elafibranor群が-1.93点、プラセボ群は-1.15点であり、両群間に有意な差はみられなかった(群間差:-0.78点、95%CI:-1.99~0.42、p=0.20)。 また、ベースラインで中等度~重度のそう痒を認めた患者におけるPBC-40 QOL質問票のかゆみドメインの52週目までの最小二乗平均変化量(群間差:-2.3、95%CI:-4.0~-0.7)、および5-Dかゆみ尺度の52週目までの変化量(群間差:-3.0、95%CI:-5.5~-0.5)は、いずれもプラセボ群に比べelafibranor群で良好だった。 試験期間中に発現した有害事象(elafibranor群96%、プラセボ群91%)、試験薬関連の有害事象(39%、40%)、重度の有害事象(11%、11%)、重篤な有害事象(10%、13%)、試験薬の投与中止の原因となった有害事象(10%、9%)の割合は、両群で同程度であった。また、10%以上で発現した有害事象やelafibranor群で頻度の高かった有害事象は、主に消化器症状(腹痛[11%、6%]、下痢[11%、9%]、悪心[11%、6%]、嘔吐[11%、2%])であった。elafibranor群で致死的な有害事象を2例(1.9%)に認めた。 著者は、「生化学的反応の改善効果は、他のPPAR標的治療薬の報告と一致している。また、ALP値の正常化は無移植生存率の改善と関連することが示されており、同値の正常化の割合はelafibranor群で有意に良好であった」とし、「本試験の結果により、elafibranorは原発性胆汁性胆管炎患者に対し有効で、新たな2次治療薬となる可能性が示された」と指摘している。現在、非盲検下に延長・確認第III相試験が進行中で、本薬の長期的な安全性および臨床アウトカムへの影響に関する追加データの評価を行っているという。

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石灰化大動脈弁狭窄症に、非侵襲的超音波療法は可能か/Lancet

 石灰化大動脈弁狭窄症は、一般に外科的または経カテーテル的な大動脈弁置換術(AVR)による治療が行われているが、重度の合併症や限られた余命のために適応とならない患者が多く、代替治療として非侵襲的治療法の可能性が示唆されている。フランス・パリ・シテ大学のEmmanuel Messas氏らは、大動脈弁の弁尖を修復する超音波パルスを照射する革新的な技術である非侵襲的超音波療法(NIUT)の評価を行い、安全かつ実行可能であることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年11月13日号で報告された。欧州3施設の前向きコホート研究の6ヵ月データ 研究グループは、経胸壁的にNIUTを行う装置(Valvosoft device、Cardiawave製)の安全性と、石灰化した弁組織を軟化させることによる弁機能の改善効果を評価する目的で、前向き単群コホート研究を行った(Cardiawaveの助成を受けた)。 3ヵ国(フランス、オランダ、セルビア)の3つの施設で、新型コロナウイルス感染症の流行による中断を挟んだ2019年3月13日~2022年5月8日の期間に、高リスクの40例を登録した。 対象は、重度の症候性大動脈弁狭窄症(二尖弁を含む)を有し、外科的大動脈弁置換術(SAVR)および経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVR)の適応とならない成人患者であった。 主要エンドポイントは、30日以内の治療に関連した死亡および弁機能の改善とした。今回は6ヵ月後のデータの解析結果を報告した。 対象となった40例(平均年齢83.5[SD 8.4]歳、女性50%)のSociety of Thoracic Surgeons(STS)の平均スコアは5.6(SD 4.4)%であり、重度の合併症(冠動脈疾患45%、頸動脈疾患28%、うっ血性心不全30%、慢性腎臓病40%、不整脈55%)を伴っていた。2例で二尖弁を認めた。30日以内の治療関連死亡はない、弁機能も有意に改善 30日以内の治療に関連した死亡は発現しなかった。3例で、それぞれ1週間後、3.5ヵ月後、5.5ヵ月後に、Valvosoftを用いて追加のNIUTを施行したが、これらの患者は6ヵ月後の時点でも生存していた。また、生命を脅かすイベントおよび脳血管イベントの報告はなかった。 6ヵ月(180日)時点での全生存率は72.5%(95%信頼区間[CI]:56.0~83.7)であった。1例の死亡が188日目に追加で報告された。ミニメンタルステート検査(MMSE)で認知機能障害を検出した患者はいなかった(平均MMSEスコア:ベースライン24.2点、退院時24.5点、30日時26.0点)。188日目に、1例で非ST上昇型心筋梗塞を認めた。 弁機能の改善は6ヵ月間を通じて確認され、平均大動脈弁口面積(AVA)はベースラインの0.58(SD 0.19)cm2から追跡時には0.64(SD 0.21)cm2へと10%増加し(p=0.0088)、平均圧較差は41.9(SD 20.1)mmHgから38.8(17.2)mmHgへと7%低下した(p=0.024)。 6ヵ月時に、NYHA心機能分類クラスが25例中17例(68%)で改善し、7例(28%)で安定化していた。また、これらの患者ではカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)スコアが48.5(SD 22.6)点から64.5(SD 21.0)点へと33%改善した(有意差なし)。 1例で重篤な治療関連有害事象を認めた。この患者は97歳で、不快感を和らげるためにモルヒネ(1mg)を静脈内投与したところ、徐呼吸の結果として末梢酸素飽和度(SpO2)が一過性に89%に低下した(処置により迅速に回復し、6ヵ月の時点で生存)。非重篤な有害事象として、痛み、治療中の不快感、一過性の不整脈などがみられた。 著者は、「今回の初期結果は有望であり、より大規模の臨床試験で確認する必要がある」とし、「このNIUTの方法は、さらに最適化を進める必要があり、より多くの患者で安全性を確認した後、たとえば(1)中等度または無症候性の石灰化大動脈弁狭窄症でSAVRまたはTAVRを延期するため、(2)重度に石灰化した弁に対するTAVRの前処置として、評価される可能性がある」と指摘している。

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第一三共のXBB.1.5対応mRNAコロナワクチン、一変承認取得

 第一三共は11月28日付のプレスリリースにて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するオミクロン株XBB.1.5対応1価mRNAワクチン「ダイチロナ筋注」(DS-5670)について、追加免疫における製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。本ワクチンが特例臨時接種に使用されるワクチンとして位置付けられ次第、厚生労働省との供給合意に基づき、国産初のmRNAワクチンとして供給を開始し、2023年度中に140万回分を供給する予定。 厚労省が11月27日に公表した資料(一変承認前の情報)によると、本ワクチンは、既SARS-CoV-2ワクチンの初回免疫完了者(12歳以上)に対する、「追加免疫」として使用することができる。季節性インフルエンザワクチンの取扱いと同様に、冷蔵(2~8℃)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待される。外箱開封後は遮光して保存し、有効期間は7ヵ月となっている。 ダイチロナ筋注は、同社が開発した新規核酸送達技術を活用し、新型コロナウイルススパイク蛋白質の受容体結合領域(RBD)を標的としたCOVID-19に対するmRNAワクチンだ。本ワクチンの研究開発および生産体制整備は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「ワクチン開発推進事業」および厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」の支援を受けて実施している。

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