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外傷の処置(8)水いぼの治療【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q98

外傷の処置(8)水いぼの治療Q98初夏の徐々に暑さが厳しくなるころ、4歳女児を連れた両親が山奥の診療所に皮疹を主訴に来院した。女児の腹部から背部にかけて、光沢のある丘疹が散見され、そう痒感が強いと言う。かいていたら、どんどん広がってきたとのことだった。皮疹の形状、病歴からは水いぼ(伝染性軟属腫)のようだ。治療はどうしようか。

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事例038 C101 在宅自己注射指導管理料の導入期加算の算定漏れ【斬らレセプト シーズン3】

解説持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ皮下注2.5mgアテオス)の院内新規採用があったので、「C101 在宅自己注射指導管理料」(以下「同管理料」)の注3の処方変更時の導入初期加算(以下「同加算」)に漏れがないかを調べてみました。同加算の算定漏れを複数件みつけて返戻再請求を行いました。また、同様事例が他院でもありました。原因は次のとおりでした。同管理料注3には「処方内容に変更があった場合に、当該指導を行った日の属する月から起算して1月を限度として、1回限り」とあります。留意事項において「処方内容の変更とは、別表第9に掲げる注射薬に変更があった場合」と定義されています。この「注射薬の変更」の判断を、「日本標準商品分類番号」や「薬効分類名」ですると誤解されており算定漏れにつながっていました。「注射薬に変更があった場合」とは、「一般的名称に変更があった場合」であると2014年に疑義解釈が発出されています。2020年度の診療報酬改定にて「一般名」から「注射薬」に文言修正されましたが、この「一般的名称」で判断することには変わりありません。したがって、別表第9に示された分類の中で、「一般的名称」が異なる薬剤に変更した場合は、同加算が算定できます。なお、過去1年以内に使用したことのある一般的名称に変更した場合には、算定できません。薬剤変更暦が確認できる台帳や履歴表示の仕組みがないと誤算定につながりますので留意が必要です。算定漏れ防止対策として、同加算は「一般的名称」で判断することを院内連絡し、処方システムには前回処方と異なる場合に「同加算が算定可能」とアラート表示されるように改修をしました。

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肥満手術で造血器腫瘍リスクが長期にわたって低下

 肥満が2型糖尿病や心血管疾患などの重篤な合併症と関連することは知られているが、肥満が悪性腫瘍の危険因子であることも明らかになってきた。肥満患者へ肥満手術を行うことでがんの発症リスクが低下するとされるが、新たな研究により、肥満手術が造血器腫瘍のリスクを低下させることが示された。スウェーデン・ヨーテボリ大学のKajsa Sjoholm氏らによる本研究の結果は、Lancet Healthy Longevity誌2023年10月号に掲載された。 本試験では、前向き対照Swedish Obese Subjects研究で、肥満手術を受けた人と通常の治療を受けた人の全死亡率を比較した。参加者はスウェーデン全土で募集され、組み入れ基準は年齢37~60歳、検査前または検査時のBMIが男性34、女性38以上であった。主なアウトカムは造血器腫瘍の発生率と死亡率で、悪性リンパ腫、骨髄腫、骨髄増殖性新生物、急性および慢性白血病を含む造血器腫瘍のイベントは、Swedish Cancer Registryから収集した。 主な結果は以下のとおり。・1987年9月1日~2001年1月31日に計4,047例の肥満症患者(肥満手術群:2,007例、標準治療群:2,040例)が登録された。女性が多く(71%)、肥満手術群は胃バイパス術(266例)、胃バンディング術(376例)、垂直胃形成術(1,365例)を受け、標準治療群はプライマリ・ヘルスケア・センターで肥満に対する標準治療を受けたが、生活習慣への高度なアドバイスや専門的治療は受けなかった。・追跡期間中央値は肥満手術群24.4年、標準治療群22.7年であった。肥満手術群は2年後の追跡調査で体重が平均28.5kg減少し、10年後は20.8kg、15年後は21.2kg減少していた。標準治療群の体重変化は小さく、増減とも平均3kgを超えなかった。・造血器腫瘍と診断されたのは肥満手術群34例、標準治療群51例(ハザード比[HR]:0.60、95%信頼区間[CI]:0.39~0.92、p=0.020)、うち死亡例は肥満手術群3例、標準治療群13例であった(HR:0.22、95%CI:0.06~0.76、p=0.017)。・肥満手術は悪性リンパ腫の発生率低下とも関連していた(HR:0.45、95%CI:0.23~0.88、p=0.020)。・男女間で治療効果に有意差が認められ、女性では肥満手術は造血器腫瘍の発生率低下と関連したが(HR:0.44、95%CI:0.26~0.74、p=0.002)、男性では関連しなかった(HR:1.35、95%CI:0.58~3.17、p=0.489)(交互作用のp=0.031)。 研究者らは、「肥満手術は、とくに女性において、造血器腫瘍の発生率減少と関連していた。がん予防の分野で働く医療提供者および政策立案者は、肥満の人々に対する1次予防として肥満手術を考慮すべきである」としている。

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脳小血管病発症前のメトホルミン服用、予後を改善/新潟大

 糖尿病治療で多用されているメトホルミンに神経保護作用がある可能性が示唆されている。この可能性に関し、新潟大学脳研究所脳神経内科学分野の秋山 夏葵氏らの研究グループは、国立循環器病研究センターと共同で研究を行った。その結果、メトホルミンによる脳小血管病に対する神経保護効果が明らかとなった。Journal of the Neurological Sciences誌2024年1月号掲載の報告。メトホルミンは血液中の炎症を抑制する 秋山氏らは、2病院において脳卒中発症前に何らかの経口糖尿病治療薬を服用していた血管内治療適応のない虚血性脳卒中の2型糖尿病患者160例の臨床情報、画像データを収集、解析を行った。神経学的重症度の低下は、入院時のNational Institutes of Health Stroke Scaleスコア3以下、良好な機能的転帰は退院時のmodified Rankin Scaleスコア=0~2と定義した。虚血性脳卒中のサブタイプごとに、神経学的重症度と機能的転帰に対するメトホルミンの効果を、複数の交絡因子を調整したロジスティック回帰分析で解析した。 主な結果は以下のとおり。・脳梗塞発症前のメトホルミン治療が、とくに細い血管が障害される脳梗塞(脳小血管病)のタイプの患者において、神経症状の重症度軽減と退院時の症状改善に関係していた。・メトホルミンを内服している患者とそうでない患者を比較すると血液中の炎症を反映する指標(好中球/リンパ球比や炎症性サイトカインIL-6値)が、メトホルミンを内服している患者のほうが低く、炎症が抑えられていた。・脳卒中のサブタイプにおいて、メトホルミンの使用は、小血管病変(SVD)を有する患者においてのみ、神経学的重症度(p=0.037)と機能的転帰(p=0.041)の両方に影響を与えた。 本研究において、メトホルミンはSVD患者の予後改善に有用だった。秋山氏は「脳梗塞発症前の具体的なメトホルミンの投与量や投与期間を検討することが、実際の治療のためには必要。メトホルミンの投与期間と投与量に関する前向き検証研究が今後の課題」と展望を語っている。

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統合失調症外来患者におけるアリピプラゾール月1回製剤治療のフォローアップ結果

 統合失調症治療における重要な目標は、症状、心理社会的機能、ウェルビーイングなどのさまざまな問題を寛解状態に導くことである。米国・ザッカーヒルサイド病院のChristoph U. Correll氏らは、ドイツの75施設で実施されたアリピプラゾール月1回製剤を用いた6ヵ月間の非介入研究に登録された安定期統合失調症の外来患者を対象に、臨床アウトカムデータの事後分析を実施した。Schizophrenia(Heidelberg、Germany)誌2023年11月8日号の報告。 主要アウトカムは次の3つ。(1)症状寛解(横断的Andreasenらの基準:BPRSにおける陽性・陰性主要症状が軽度以下)、(2)機能的寛解(GAFスコア70超)、(3)24週目のウェルビーイングの寛解(WHO-5スコア13以上)。登録患者242例中、完全なデータを有する194例(80.2%)を分析した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者194例は、平均年齢43.9±15.3歳、男性の割合51.5%、平均罹病期間14.0±12.0年であった。・症状寛解達成患者は61.3%、ウェルビーイングの寛解達成患者は76.8%であったが、6ヵ月時点で心理社会的機能寛解達成患者は24.7%であった。・寛解率は、男女ともに同様であり、罹病期間の階層別でも同様であったが、平均罹病期間が長い患者ほど寛解率は低かった。・BPRSとGAFの改善の相関は弱かった。BPRSの抑うつ症状とGAFスコアとの相関が最も低かったが、BPRS下位尺度および抑うつ症状とウェルビーイングとの相関は高かった。 著者らは「アリピプラゾール月1回製剤による治療は、症状やウェルビーイングの寛解につながるが、機能的寛解を達成するためには、心理社会療法や雇用支援、教育などの追加介入が必要になる可能性が示唆された」としている。

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PDE5阻害薬、子供を増やす可能性/BMJ

 勃起不全の薬物治療の標的として確立しているホスホジエステラーゼ5(PDE5)の阻害は、遺伝学的に服用した男性の子供の数を増加させる可能性があることが、英国・ブリストル大学のBenjamin Woolf氏らの検討で示された。PDE5阻害薬は勃起不全の治療としてよく用いられているが、男性患者の生殖能力、性行動、主観的なウェルビーイングに及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2023年12月12日クリスマス特集号「ANNUAL LEAVE」掲載の報告。メンデル無作為化研究によりPDE5阻害の遺伝学的な影響を評価 研究グループは、PDE5阻害(代替バイオマーカーとして拡張期血圧の低下を使用)と、男性の生殖能力、性的行動、自己報告によるウェルビーイングとの関連を評価する目的で、シス-メンデル無作為化研究を行った。 解析には、International Consortium for Blood PressureおよびUK Biobankから得られた遺伝的関連についての要約データを用いた。 International Consortium for Blood PressureとUK Biobankに参加した77のコホート、欧州系の合計75万7,601例について、拡張期血圧のゲノムワイド関連メタ解析を行い、PDE5阻害の指標となる遺伝子の一塩基多型を同定した。次いで、UK Biobankから得られた男性21万1,840例のデータを使用し、遺伝学的に推定されるPDE5阻害と、男性の子供の数、性的パートナーの数、性交渉の経験がない確率、および自己報告によるウェルビーイングとの関連を評価した。PDE5阻害は、男性がより多くの子をもうけることと関連 PDE5を代用阻害する5つの遺伝子変異が同定された。 シルデナフィル100mgの拡張期血圧低下作用(5.5mmHg)に換算すると、PDE5の遺伝子代用阻害は、男性参加者の子供の数が平均0.28人(95%信頼区間:0.16~0.39、偽発見率補正p<0.001)多いことと関連していた。この関連は女性参加者では確認されなかった。 PDE5の遺伝子代用阻害と、男性におけるその他の評価項目(性的パートナーの数、性交渉の経験がない確率、自己報告によるウェルビーイング)との関連は、いずれも確認されなかった。 著者は結果を踏まえて、「PDE5の遺伝子代用阻害と子供の数の増加との関連が女性参加者ではみられなかったことは、潜在的に根底にあるメカニズムとして、持続的で強力な勃起傾向が増すことを裏付けている。だからといって、有害な副作用を引き起こす可能性もあるPDE5阻害薬のむやみな使用を促進するべきではなく、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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食塊による食道完全閉塞、コーラで改善するか/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのE G Tiebie氏らは、多施設共同無作為化非盲検比較試験において、コーラの摂取は食塊による完全な食道閉塞の改善率を高めないことを報告した。食塊による完全な食道閉塞に対しては、現在、侵襲的で高額な医療費を伴う緊急内視鏡治療が望ましいとされ、ガイドラインでは内視鏡の施行が遅れないとの前提で内視鏡前の内科的治療が認められている。一方で、コホート研究や症例シリーズで、コーラの摂取により59~100%の患者で食塊による食道閉塞が改善したことが報告されていた。BMJ誌2023年12月11日クリスマス特集号「FOOD AND DRINK」掲載の報告。介入(コーラ摂取)群vs.対照(自然通過)群の無作為化試験で評価 研究グループは、2019年12月22日~2022年6月16日に、オランダの2次および3次救急病院5施設において、食塊による完全な食道閉塞(食物摂食後に突然唾液を飲み込めなくなることと定義)で受診した18歳以上の成人51例を、介入群と対照群に1対1の割合に無作為に割り付けた。骨を含む肉を食べた患者、および米国麻酔学会(ASA)による全身状態分類がIV以上の患者は除外した。 介入群(28例)にはコーラを1分間隔で25mL、最大合計200mLまで摂取するように指示し、対照群(23例)では自然通過を待った。いずれも、閉塞が完全に消失しなかった場合、現行ガイドラインに従い、完全閉塞の場合は6時間以内、部分閉塞の場合は24時間以内に内視鏡による食塊の除去を実施し、症状が完全に消失した場合は待機的な診断内視鏡検査を行った。 主要アウトカムは、患者報告の食塊による食道閉塞の改善(完全通過と一部通過の合計)、および完全通過。副次アウトカムは介入に関連した有害事象とした。食道閉塞の改善率は両群で同じ 食塊による食道閉塞の改善は、介入群で61%(17/28例)、対照群で61%(14/23)に認められ、食塊による食道閉塞の改善にコーラは有意な効果を示さなかった(オッズ比[OR]:1.00[95%信頼区間[CI]:0.33~3.1]、相対リスク低下:0.0[95%CI:-0.55~0.36]、p>0.99)。 介入群では完全通過を報告した患者の割合が高かったが、有意差はなかった(介入群43%[12/28例]vs.対照群35%[8/23例]、OR:1.4[95%CI:0.45~4.4]、相対リスク低下:-0.23[95%CI:-1.5~0.39]、p=0.58)。 重篤な有害事象は報告されなかったが、介入群の6例(21%)でコーラ摂取後の一時的な不快感を認めた。 著者は、盲検化されなかったこと、症例数が非常に少ないことなどを研究の限界として挙げたうえで、「介入群では有害事象がなく、治療後に消失した症状もあることから、第1選択の治療法としてコーラを考慮するかもしれないが、内視鏡的治療の選択肢は用意しておくべきである」とまとめている。

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患者と家族のための情報サイト「教えて、胆道がん」を開設/AZ

 アストラゼネカは2023年12月11日付のプレスリリースにて、胆道がんの治療に役立つ情報を提供するウェブサイト「教えて、胆道がん」(以下、同サイト)を12月8日にオープンしたことを発表した。認知度が低い胆道がんと患者の悩み 胆道がんは、年間約2万3,000例が罹患しているとされる。その5年生存率は膵がんの次に低く、治療選択肢も長年限られていた1)。同社が2023年2月に実施した「胆道がん患者調査」では、胆道がんと診断される前から胆道または胆道がんについて知っていた患者は2割程度にとどまり、約半数は「まったく知らなかった(名前も聞いたことがなかった)」と回答した。また、がんと診断された後に生活が大きく変化する中で、治療法やその後の経過での体の変化などを医療者に相談できているケースは半数に満たず、医療者との、または職場でのコミュニケーションに関して、悩みなどを患者自身が抱えている場合が多いことも明らかになった。胆道がんの基礎知識から日常生活の悩みや困り事まで役立つ情報を幅広く提供 現況を受け同社は、これまでよく知られていなかった胆道がんについて、罹患した患者が疾患や治療の理解をはじめ、治療や暮らしなど、さまざまな悩みに立ち向かう際に役立つ情報サイトを開設した。 この「教えて、胆道がん」では、胆道がんと診断された患者や家族が抱える疑問・悩みを4つのカテゴリ「胆道がんとは?」「治療」「コミュニケーション」「日常生活」に分け、胆道の基礎知識から、治療中に日常生活を送りやすくするヒントまで、Q&A形式で掲載している。回答は、多くの胆道がん患者と接してきた胆道がん専門医、がん相談支援センターで胆道がんをはじめ多くのがん患者の相談に向き合っている看護師により、それぞれの目線で作成されている。 同サイトを監修した神奈川県立がんセンター総長の古瀬 純司氏は、次のように述べている。「胆道がんは一般の方に十分に知られている病気とはいえず、胆道がんと診断されたことで、患者さんやご家族にとって不安が大きいものと思います。最適な治療を受け、安心して生活していただくには、正確な情報を得ることが大切です。まずは、本サイトにより病気の理解を深めていただければ幸いです。胆道がんでも一人ひとりの病状は異なります。ぜひ、本サイトをご覧いただき、専門の医療者にもっと詳しい情報や治療方針をご相談いただければと思います」。 同社は、「患者さんを第一に考える」を企業バリューの1つとして、患者を中心とした治療支援などの推進に取り組み、新たな治療の提供だけでなく、治療環境の整備、情報提供環境の整備などの活動にも注力している、と述べ、同サイトを通じて「1人でも多くの胆道がん患者とその家族の支援に貢献できるよう、これからもわかりやすい確かな情報発信に努めていく」としている。

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第191回 診療報酬改定の原則が崩壊、日医は岸田政権のもくろみ一蹴ならず

「やっぱり一寸先は闇だったか」2024年度トリプル改定の改定率を見て、そのような思いを強くした。今回の改定率は12月15~16日に診療報酬本体0.88%、薬価がマイナス0.96%で診療報酬全体としては差し引きマイナス0.08%、介護報酬がプラス1.59%、障害者福祉サービス報酬がプラス1.12%と決定した。このうち診療報酬本体の改定率を日本医師会(日医)の勝ちと見るか、負けと見るかはどこに視点を置くかによって変わってくるだろう。保険料負担の引き上げなどによる国民負担増への懸念から診療報酬本体のマイナス改定を主張していた財務省vs.日医という極めてシンプルな視点で見るならば、日医の勝ちである。が、私の雑感ではイーブン、やや負けである。まず、今回は本体0.88%のうち、賃上げ分が0.61%、食費分が0.06%であり、正味の引き上げ幅は0.21%。前会長の中川 俊男氏時代の前回2022年度の改定率は、診療報酬本体プラス0.43%。うち0.2%が不妊治療の保険適用、0.2%が看護師などの賃上げ分で正味が0.03%。実質的にはほぼゼロ改定と言っても過言ではない結果で、中川氏は2期目の会長選出馬を断念するに至った。これとの比較では、現日医会長・松本 吉郎氏のメンツは明らかに保たれた。しかし、中川氏の前に4期8年会長を務めた横倉 義武氏時代の最後の改定である2020年度改定がプラス0.55%で、ここには救急病院の勤務医の働き方改革分が0.08%含まれ、正味が0.47%。横倉氏時代で正味改定率が最低だったのはこの時で、今回の引き上げ幅はその半分以下だ。加えて今回は介護報酬との同時改定時に堅持されてきた、ある“原則”が崩れた。この原則とは日医のメンツを立てるため、介護報酬の改定率が診療報酬本体の改定率を超えることはないというもの。だが、今回は介護報酬がプラス1.59%で、診療報酬本体の改定率を大きく上回った。ちなみに2006年度の同時改定時は診療報酬本体がマイナス1.36%、介護報酬がマイナス0.5%で、下げ幅は診療報酬本体のほうが大きかったため、“原則”から外れたと言う人もいるかもしれない。ただ、この時は2000年に施行された介護保険法で定めた施行5年後の見直しに伴い、同法が2005年度に改正され、同年度に介護報酬も改定率マイナス1.9%と引き下げられた。この分も加えると、2006年度からの介護報酬改定率はマイナス2.4%となるため、おおむね前述の“原則”の範疇内と言える。しかも、今回の介護報酬では改定率の外枠で、処遇改善加算の一本化による賃上げ効果や光熱水費の基準費用額の増額による介護施設の増収効果としてプラス0.45%相当の改定が見込まれるため、この分を含むと介護報酬はプラス2.04%相当の改定となる。過去の本連載で触れたように日医は賃上げ分や物価高騰対策分を外枠で実現することを目指してきたが、それは叶わなかった。これらを総合すれば、今回の改定率は見かけ以上に日医の敗北要素が多い。さて、なぜこうなったのか? ここからはあくまで推測である。この推測の柱となるのが診療報酬本体、介護報酬ともにプラス改定分の6割超を賃上げ分が占めている点である。ここで岸田 文雄首相の就任時に掲げた政策を思い起こしてみるとよい。岸田首相が自民党総裁選から就任直後まで掲げた政策のキーワードは「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」。その筆頭に挙げた政策が賃上げ実現で、とくに看護・介護・保育関係者の賃上げを明言した。つまり今回の改定で岸田首相は自身の政策の「1丁目1番地」を堅持したのである。首相の我を通したとも言える。そうした事例は過去にもある。2002~06年度までの3回の診療報酬本体の改定率がゼロ改定かマイナス改定という異例の事態だったことだ。このうち2002年度は診療報酬史上初のマイナス改定。また、前述した見かけ上、診療報酬本体改定率が介護報酬改定率を下回ったのも2006年度。この時期に共通する要素はたった1つ。過去にも触れたが、時の首相があの小泉 純一郎氏だったことだ。これも繰り返しになるが、診療報酬改定の過程を読み解ける法則はほとんどないというのがこれまでの私の実感である。ただ、その中でも数少ない法則があるとするならば、(1)診療報酬・介護報酬の同時改定時に介護報酬の改定率が診療報酬本体の改定率を上回らない(2)最終的に首相本人の決断が最優先の2つだった。今でもこの2つはほぼ堅持されていると思ってはいるが、より丁寧にするならば、(3)として「(2)が強ければ、(1)の法則が崩される可能性がある」が加わる。もっとも(2)でも実質的に(3)の意味は含んでいることになるが、より平たく表現するならば(3)が必要になると考えている。さて当の岸田首相は小泉氏と比べると、明らかに大人しく、発する言葉に力強さもない。時にそのことが優柔不断と映ることもある。しかし、注意深く見ると、「増税メガネ」と揶揄される官僚泣かせ、さらには国民泣かせの「こども未来戦略方針」や「防衛増税」を決定している。昨今の政局では完全実現には至らなかったが、自民党内最弱派閥の長だったにもかかわらず、最大派閥の旧安倍派を要職から一掃するなど、ある意味で空気を読まない大胆なことを実行する。そして今回の政局によるさらなる支持率低下の中でも、このトリプル改定で“初志貫徹”した。その意味では「岸田 文雄とは静かなる『小泉 純一郎』」とも言えるのかもしれない。

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心肺蘇生を希望されたとき【非専門医のための緩和ケアTips】第66回

第66回 心肺蘇生を希望されたとき終末期の患者さんをケアするうえで、よく話題に出るのが「心肺蘇生」です。原疾患の進行に伴う終末期の状況では、多くの場合で心肺蘇生のデメリットのほうが大きくなるため、「実施しない」という判断が妥当になります。ただ、そうした場合でも、ご家族が希望することがあります。そのようなときには、どのように対応すればよいでしょうか?今回の質問先日在宅で、もうすぐお看取りになりそうな患者さんの家族から、「遠方の家族が間に合うよう、心臓マッサージをしてください」と言われました。びっくりしたのですが、そのような対応は病院であっても難しい、と説明してなんとか納得してもらいました。このような際には、どのように対応すればよいのでしょうか?病状が徐々に悪化し、それが時間をかけて共有される場合には、心肺蘇生を希望するご家族は少ないように思います。一方、経過が早かった場合や比較的若年の患者さんの場合には、心肺蘇生の希望が出るという経験を私もしています。また、ドラマなどの影響で、「最期は心臓マッサージをするもの」とイメージしている方もいます。ここからは、「医学的に適応のない状況で、家族が心肺蘇生を希望している」という状況を想定してお話しします。まず、こういった問題でしばしばあるのが、医療者側から「心臓マッサージをしますか? しませんか?」と聞くケースです。患者や家族に提供する医療内容に対する希望を尋ねることは大切ですが、そもそも医師として心肺蘇生が有効な状況でないと判断しているのであれば、この質問は適切ではありません。なぜなら、有効でない治療だと判断しているものを、まるで有効な治療であるかのように誤解を与えるからです。そして、家族にとっては大切な方の重要な最期の場面に、非常に大きな責任を背負わせてしまう構図になります。「心臓マッサージをしてほしい」と話されるご家族に対して、私がどのように話しているかを紹介します。まずは、その言葉の背景にある想いをしっかり聞きます。そうすると、多くのケースで「家族のつらい気持ち」や、「本人にしてあげたいケアの内容」などが出てきます。たとえば、今回のご質問のご家族だと、「最期は家族が皆で一緒に過ごしてあげたい」といった気持ちを感じます。それ自体は当然の気持ちと共感できるものです。気持ちを聞いた後は、「お話を伺うと、そのように希望されるのも当然だと感じます」と、家族の想い受け止めたことを伝えます。そして、「ただ、病状を考えると、心臓マッサージで回復することは難しいと思います」と、自分の見解を率直に伝えます。そして、それで終わりではなく、「『最後は一緒にいてあげたい』というお気持ちは、本当に大切なものだと思います。私たちからみて、そろそろだなと思ったら、早めにご家族に共有して、できるだけ一緒に過ごせるように工夫します」といった、心肺蘇生の希望の背景にある気持ちに応えるような話をします。いかがでしたでしょうか? 皆さまの工夫も、ぜひ教えてください。今回のTips今回のTips心肺蘇生をする・しないだけでなく、背景にある「想い」を探ってみよう。

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非専門医も知っておきたいアトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療では、他の疾患と同様に出口戦略が重要です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです。そこまで到達できないときでも、できる限り軽い状態を維持することを目指していきます。「塗っているときはいいけれど、塗らないとすぐに出てくる」のは良いとはいえません。治療方法の3本柱は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の検索と対策」です。本稿では、最近の薬物療法を中心に解説いたします。なお、本文中の薬価は2023年12月現在の薬価です。インデックス

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アトピー性皮膚炎の治療総論

アトピー性皮膚炎の治療戦略アトピー性皮膚炎の治療では「寛解」という目標が重要です。それは「症状がない、もしくは症状があっても軽微で、かつ日常生活に支障がない状態」つまり「寛解」を目指すことが大切です。寛解が達成できると、患者さんのQOL(生活の質)などは大きく改善されますので、その目標をしっかり医師と患者さんの二人三脚で達成していきたいものです。寛解維持に向けて多くの患者さんは、外用薬を塗ったら良くなるけど、やめたらすぐ再燃する、ということを外来で話されます。「寛解、再燃」のスパイラルに陥ってしまうと、「やはり良くならない」「治療しても意味がない」と思われてしまい、治療を中断してしまう患者さんがいます。よく知られているように「よくなった」と感じた時点でも、皮膚の奥ではまだ炎症がくすぶっていることが多いのです。患者さんが自己判断で外用薬塗布の頻度を減らしてしまうと、皮膚症状が再燃してしまいがちです。そうならないためにも、私は、アトピー性皮膚炎の中等症~重症の患者さんに対しては、プロアクティブ療法と同時にかゆみの物質を血液で検査する「TARC検査」(保険適応あり)を希望される方に施行しています。これはアトピー性皮膚炎の症状に応じて増減することが知られていますので、TARCが正常範囲内にあることが寛解に向けた1つの数字での「見える化」となるかもしれません。治療方法の3本柱は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の検索と対策」です。1)外用薬ステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストの外用薬を用います。外用薬はFTU(finger tip unit)を考えて使用します。やさしく、すりこまないように塗るのが大切です。私はステロイド外用薬を使わなくても良い状態まで改善させることを治療目標の1つにしています。2)経口薬抗ヒスタミン薬をかゆみ止めとして使うことが多いです。経口JAK阻害薬であるバリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになりました。多くの治療薬が登場して、重症な方にも治療が届きやすくなりました。時にシクロスポリンを用いることもありますが、長期間の使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。3)注射薬(生物学的製剤)デュピルマブやネモリズマブ、トラロキヌマブなどが使用できます。これらの治療薬でかゆみや皮膚症状はかなりコントロールしやすくなりました。デュピルマブは、2021年のガイドラインで維持療法(寛解を維持するための治療)としても推奨されるようになりました。4)光線療法私はナローバンドUVB照射装置やエキシマランプを用いて光線療法を行っています。かゆみの強い部分にとくに効果を発揮してくれます。ステロイドなど外用薬の使用量を減らすことにも役立ちます。5)スキンケア皮膚のバリア機能および保湿因子を回復させることがスキンケアの大切な目的です。私は、スキンケアを重視しています。とくに出生直後から保湿外用剤によるスキンケアを行うことは、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げることも知られています1)。アトピー性皮膚炎の治療を実践していく上で、スキンケアはどの状態のアトピー性皮膚炎であっても大切です。1)Horimukai K. et al. J Allergy Clin Immunol. 2014;134:824-830.プロアクティブ療法とはアトピー性皮膚炎の治療では、炎症を抑える治療で寛解となった後、外観上ほとんど異常がないように見えても潜在的な炎症が皮膚の奥で残っている状態がしばらく続いています。ここで治療をいったん止めてしまう患者さんが多いのですが、この状態で治療を中止してしまうと、すぐに炎症が再燃してしまいます。プロアクティブ療法とは、皮膚炎が軽快した後もステロイド外用薬などの使用を中止せず、しばらくの間お薬を継続する方法です。それにより、皮膚炎やかゆみの改善状態を長期間維持することができ、再発・再燃の頻度や重症化が減ることが期待できます。プロアクティブとは「先を見越した」「予防的な」という意味で捉えられています。反対に、「かゆいときに塗る、かゆくなくなったら薬を止める」というのが「リアクティブ療法」です。軽症のアトピー性皮膚炎では、リアクティブ療法でも十分なこともあります。『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021』においても、プロアクティブ療法は「湿疹病変の寛解維持に有用かつ比較的安全性の高い治療法である」と記載され、推奨度1、エビデンスレベルAと高く推奨されています。プロアクティブ療法のやり方第1段階として、一番大切なことは「寛解導入」すなわち皮膚をツルツルの状態にしてしまうことです。そこではステロイド外用薬を1日2回、きっちりFTUを守って塗っていくことが大切です。光線療法をやる、デュピルマブの注射やJAK阻害薬の内服も重要です。ゴールはかゆみが止まることではなく、寛解することですから、しっかりツルツルの状態を作るまで頑張っていきます。寛解導入のためにはバックグラウンドとして保湿外用薬やスキンケアの継続を行ってくことも大切です。1)プロアクティブ療法を行う上で大切なことプロアクティブ療法はかゆみのあったところ、皮膚が荒れていたところにもステロイド外用薬をはじめとしたお薬を塗ることが大切です。長い期間ステロイドを塗ることへの不安もあると思いますが、20週間実施しても目立った副作用はなかったことも示されています。今はステロイド以外の治療薬もたくさんありますから、副作用が気になった場合は治りにくいところに光線療法を足す、デルゴシチニブやジファミラストなどの薬剤にスイッチするなどの対応が可能になります。2)プロアクティブ療法は患者さんには面倒くさい皮膚症状が寛解していると、お薬を塗るのは面倒くさいと患者さんは思います。ただ、プロアクティブ療法の目的は寛解を維持することですから、皮膚が荒れていたところにも塗っていくことは、再発防止のためには大切です。なお、アトピー性皮膚炎ガイドラインにはこのようにも記載されています。「外来での外用療法が主体となるアトピー性皮膚炎では、患者やその家族は治療の主体である」たしかに、プロアクティブ療法は面倒くさいですし、早く「塗らなくてもいい状態」になりたいはずの患者さんが頑張って毎日塗ることには、とても根気がいるはずですので医療従事者が、その頑張りを少しでも後押しできたらと思います。〔プロアクティブ療法FAQ〕プロアクティブ療法のメリットは?ステロイドの使用量をなるべく少なくして寛解を維持すること。プロアクティブ療法をやっていても痒い場合の対処は?まだ寛解に至っていない状況です。まず寛解導入をやり直しましょう。プロアクティブ療法を行っているとき、保湿も行ったほうが良いか?毎日行ってください!プロアクティブ療法では、いつまでステロイドを使う必要があるか?実は明確な答えがないのです。寛解導入が成功したあと、ステロイドを徐々にタクロリムスやデルゴシチニブなどの抗炎症外用薬にシフトしていき、結果としてステロイドを卒業していく、つまり「卒ステ」というのが目標になると思います。ずっと落ち着いていたのに、急にかゆくなってきた場合の対処は?再び寛解導入を目指してステロイド外用薬をしっかり塗る、光線療法を行う、などの治療を行います。かゆくなくなっても乾燥している部位への対処は?皮膚炎が治りきっていないところも多い可能性があります。しっかり治ると皮膚がツルツルとした柔らかい質感になってきます。ステロイドを終わらせることができましたが、治療薬はいつまで塗ったら良いか?しっかり治った状態をどう維持するか、明確な答えはありません。タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストは長期に外用することに伴う副作用は知られていません。寛解がしっかり維持されていれば、少しずつお薬を塗る間隔をあけながら保湿のみに移行していくのをお勧めします。佐伯秀久ほか. 日皮会誌. 2021:131;2691-2777.

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アトピー性皮膚炎の診療で役立つTIPS

口唇の乾燥アトピー性皮膚炎の患者さんで「唇が乾燥する」という訴えは多いです。それは口唇炎の症状なのですが、リップなどを長い期間使っても治らない患者さんも多数います。なぜなら「唇が乾燥する」状態の患者さんは、唇をなめるクセがあることが多いからです。子供の患者さんに多いのですが、唇やその周りをずっとなめ回すことを繰り返していると、周囲が輪を描くように赤くなります。これを「舌なめずり皮膚炎」と言います。これが長期間続くと口の周囲に色素沈着を来すこともあります。口唇のシミ唇が長い期間荒れている方は、点々とシミができてきます。“labial melanotic macules”や「口唇メラノーシス」と言われたりします。アジア人に多いとされています1)。アトピー性皮膚炎の発症時期が早い患者さんに多い傾向があり、アトピー性皮膚炎があっても、IgEが高い患者さんに唇の色素沈着が多い傾向があります2)。口唇トラブルへの治療の仕方〔口唇炎の治療〕口唇炎に関してはステロイド外用剤を中心に治療していきます。ワセリンを中心とした保湿も有効です。乾燥した感覚がある間は改善するまでステロイド外用剤を使ってみてください。しっかり治った良い状態をワセリンや患者さんに合ったリップでキープすることも大切です。〔口唇のシミの治し方〕口唇の色素沈着にはQスイッチルビーレーザーを使用します。痛み止めのクリームを塗り、レーザーを患部に照射します。治療の所要時間は数分で、1回の治療で終了することが多いです。1)Aljasser MI, et al. J Dermatol. 2019;23:86-89.2)Kang IH, et al. Int J Dermatol. 2018;57:817-821.

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外用薬【アトピー性皮膚炎の治療】

外用薬ではステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストを用います。外用薬はFTU(finger tip unit)を考えて使用します。やさしく、すりこまないように塗ることが大切です。私はステロイド外用薬を使わなくても良い状態まで改善させることを、治療目標の1つにしていますが、ステロイドを完全に止めてしまうのではなく、継続して治療することで再燃を防ぐことに心がけています。デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)デルゴシチニブは、2020年6月24日から使用できる外用薬であり、プロトピック(タクロリムス)以来約20年ぶりの新発売です。ヤヌスキナーゼ阻害薬という、新しいメカニズムの外用薬で、発売から1年が経過し、小児用の0.25%製剤が発売されました。デルゴシチニブは、さまざまな種類のJAKを抑える働きがあります。その効果として、IL-4/13を代表とするサイトカインを抑えることや皮膚バリア機能を回復させることに役立つという基礎研究データがあります1)。デルゴシチニブの安全性について、副作用は比較的少なく、長期投与による皮膚萎縮、多毛などといったステロイドの弱点はまだありません。適用部位の刺激感はまれにありますが、使えなくなるほどのヒリヒリ感は経験しません。また、第III相臨床試験でも副作用発現頻度は、19.6%(69/352例)であり、主な副作用として適用部位毛包炎3.1%(11/352例)、適用部位ざ瘡2.8%(10/352例)、適用部位刺激感2.6%(9/352例)などが報告されています。デルゴシチニブの用法・用量通常、成人には、1日2回、適量を患部に塗布する。なお、1回当たりの塗布量は5gまで、体表面積の30%までとする。そのほか、生後6ヵ月以上のアトピー性皮膚炎の小児にも適応がとれ、小児には2021年6月21日に発売された0.25%製剤の使用が望ましいとされています。ただし、妊婦、授乳婦への使用は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること」と注意も記載されています。デルゴシチニブの薬価0.25%:1g 139.70円0.5%:1g 144.9円〔ワンポイント〕効果の強さに関してはストロングクラス、すなわちベタメタゾンやタクロリムスと同等程度と位置付けられ、症状がかなり強く、急速に寛解導入したい場合には向いていないことがあります。一方、デルゴシチニブの副作用は比較的少なく、長期投与によるものがないため、プロアクティブ療法などでの使用に向いています。また、光線療法、シクロスポリン、デュピルマブとの併用が可能で、ステロイド外用薬の副作用があるときには、光線療法と併用することでステロイド外用薬の減薬に期待できます。1)Wataru Amano W, et al. J Allergy Clin Immunol. 2015;136:667-677.2)コレクチム軟膏 電子添文(2023年1月改訂(第6版))ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏)ジファミラストは、2022年6月1日に発売されたホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の新しい外用薬です。PDE4阻害薬は、細胞の中の細胞内のサイクリックAMP(cAMP)濃度を回復させる薬で、cAMP濃度が回復することで免疫細胞の活性化が抑えられます。また、ジファミラストの第III相臨床試験結果について、投与開始後4週間でInvestigator’s Global Assessment(IGA)が0または1かつベースラインから2点以上減少を達成した患者さんの割合は、38.46%とプラセボ(12.64%)に比べて有意に高く1)、小児では0.3%製剤で44.6%、1%製剤で47.1%といずれもプラセボ(18.1%)に比べて有意に高い効果を得ていました2)。病勢の指標であるeczema area andseverity index(EASI)が50%減少した指標であるEASI50は、4週間の投与で58.24%とプラセボ(25.82%)に比べ、有意に高くなりました。同様にEASI75は42.86%(プラセボ13.19%)、EASI90は24.73%(プラセボ5.49%)でした。4週後の平均EASI改善率は−49.1%(プラセボ−10.5%)でした1)。ジファミラストの安全性としては、色素沈着障害(1.1%)、毛包炎、そう痒症、膿痂疹、ざ瘡、接触皮膚炎が記載されています3)が、明らかに多い副作用は認められませんでした1,2)。ジファミラストの用法・用量15歳以降は1%製剤を使用します。14歳以下は0.3%か1%製剤を使用します。通常、成人には1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。小児は0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。また、症状に応じて、1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布することができます3)。ジファミラストの薬価0.3%:1g 142.00円1%:1g 152.10円〔ワンポイント〕使用感について患者さんからの評価は良く、塗った際の刺激感を訴えられることはありませんでした。効果に関しても総じて好印象でした。1)Saeki H, et al. J Am Acad Dermatol. 2022;86:607-614.2)Saeki H, et al. Br J Dermatol. 2022;186:40-49.3)モイゼルト軟膏 電子添文(2023年6月改訂(第3版))

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経口薬【アトピー性皮膚炎の治療】

経口JAK阻害薬では、ウパダシチニブ、バリシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになり、重症の患者さんにも治療が届きやすくなりました。時にシクロスポリンを用いることもありますが、長期間の使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)ウパダシチニブはJAK1を阻害する薬剤です。通常は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用しますが、患者さんの状態によっては7.5mgへの減量が可能です。アトピー性皮膚炎に限って倍量の30mgを処方することができます。ウパダシチニブの薬価7.5mg:2594.6円/錠15mg:5089.2円/錠30mg:7351.8円/錠バリシチニブ(商品名:オルミエント)バリシチニブはJAK1/JAK2を阻害する薬剤で、皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎と円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合限定)に適応があります。用量は4mgを1日1回経口投与する。状態に応じ適宜減量となっています。相互作用がありますので、プロベネシドを内服している患者さんは減量が望ましいとされています。バリシチニブの薬価2mg:2705.9円/錠4mg:5274.9円/錠アブロシチニブ(商品名:サイバインコ)アブロシチニブはウパダシチニブと同じくJAK1を阻害する薬剤です。50mg、100mg、200mgの3剤形があり、通常用量の100mgから増やしたり減らしたりできます。状況に応じて柔軟な処方ができるのは利点です。適応はアトピー性皮膚炎のみになります。アブロシチニブの薬価50mg:2587.4円/錠100mg:5044円/錠200mg:7566.1円/錠〔アトピー性皮膚炎でのJAK阻害薬処方の注意点〕診療ガイドラインでは、次のように定められています。JAK阻害薬の内服は、「事前に十分な外用薬などの治療を行っていても難治であった方」が対象となります。今まで何もやっていない方であれば6ヵ月程度はガイドラインに沿った外用薬による治療を行い、それでも改善しない場合に使用します。投与の要否にあたっては、以下に該当する患者であることを確認する必要があります。(1)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを参考に、アトピー性皮膚炎の確定診断がなされている。(2)抗炎症外用薬による治療では十分な効果が得られず、一定以上の疾患活動性を有する、または、ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所性副作用もしくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難で、一定以上の疾患活動性を有する成人アトピー性皮膚炎患者である。a)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインで、重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6ヵ月以上行っている。b)以下のいずれにも該当する状態。IGAスコア3以上EASIスコア16以上、または顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する(目安として頭頸部のEASIスコアが2.4以上)体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上同時に、投与できる施設も決められております。次に掲げる医師要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設です。ア)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。イ)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に6年以上の臨床経験を有していること。うち、3年以上は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること。また、日本皮膚科学会でも届出制度を作っています。乾癬の生物学的製剤のように承認制度は設けていませんが、薬剤の特性上、下記の要件を満たした上で届出した上で、使用することになっています。1)皮膚科専門医が常勤していること2)乾癬生物学的製剤安全対策講習会の受講履歴があること3)薬剤の導入および維持において近隣の施設に必要な検査をお願いできること

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注射薬【アトピー性皮膚炎の治療】

デュピルマブ(商品名:デュピクセント)デュピルマブは、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体の治療薬で、2018年から使用できるようになったアトピー性皮膚炎の治療薬です。2週間に1回注射をします。生物学的製剤であり、生体が作る抗体タンパクを人工的に作成しアトピーを悪化させる活性物質にピンポイントで作用させることを目的としています。デュピルマブの対象患者ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などの抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者。デュピルマブの注射の種類注射器型のシリンジと自己注射に向いているペンの2種類。デュピルマブの特徴アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみに大きく関わる蛋白であるインターロイキン4(IL-4)、IL-13の働きを抑えます。具体的には、IL-4受容体α(IL-4Rα)をブロックする薬です。ブロックすることでアトピー性皮膚炎のかゆみ、皮膚炎症状が改善します。また、IL-4、13はフィラグリンという皮膚のバリア機能を保つための重要な蛋白を作りにくくさせることが知られており、これを抑制することで皮膚バリア機能の回復も期待できます。デュピルマブの用法・用量15歳以上の成人の初回投与は600mg(2本)です。以後、2週間おきに300mg(1本)ずつ注射します。初診時は問診と診察で適応があるかどうかの確認を行います。なお、初診時にデュピルマブの投与はできません。2023年9月25日より生後6ヵ月以上の小児に適応が追加されました。また、2023年12月18日より200mgシリンジが発売されました。小児では体重ごとに用法が変わります。具体的には5kg以上15kg 未満:1回 200mgを4週間隔、15kg以上30kg未満:1回 300mgを4週間隔、30kg以上60kg未満:初回に400mg、その後は1回 200mgを2週間隔、60kg以上:初回に600mg、その後は1回 300mgを2週間隔(成人と同様の用法、用量)で投与します。デュピルマブの薬価300mgシリンジ:5万8,593円300mgペン:5万8,775円200mg シリンジ:4万3,320円〔ワンポイント〕高額療養費制度の勧め:薬剤費が高額なため、高額療養費制度を利用されることを強くお勧めします。収入や年齢により適応となる場合やそうでない場合があります。自己注射をする場合、最大6本の注射薬を処方することができ、一部の方には高額療養費制度を用いて医療費の負担軽減が可能です。デュピクセント皮下注 電子添文(2023年9月改訂(第6版))ネモリズマブ(商品名:ミチーガ)ネモリズマブは、ヒト化抗ヒトIL-31受容体A(IL-31RA)モノクローナル抗体です。IL-31は、かゆみに重要な役割を果たすサイトカインで、主にTh2細胞から作られます。ネモリズマブは、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみを改善する新しい発想の治療薬です。IL-31とアトピー性皮膚炎、そしてかゆみIL-31は、Th2細胞から産生され、アトピー性皮膚炎の皮膚病変部では、過剰に産生されていることが知られています1)。また、血清中のIL-31の濃度はアトピー性皮膚炎患者では上昇しており、病勢と相関していることが知られています2)。IL-31は神経線維が成長することを促進し、かゆみを増強する働きもあります3)。IL-31の受容体は神経線維や表皮角化細胞に分布しています。また、IL-31はバリア低下にも働くことが知られています4)。そして、この受容体は、感覚情報の中継点として機能する脊髄後根神経節に多く発現しており、かゆみを脳に伝えることにも深く関わっています5)。つまり、IL-31はかゆみに関係する神経を刺激して脳にそのかゆみを伝え、そして神経の成長を助けてかゆみを起こしやすくする働きがあります。この受容体は、IL-31RAとオンコスタチンM受容体(OSMR)が合わさってできており、ネモリズマブはそのうちIL-31RAに結合して働きを抑えます。ネモリズマブの効果第III相臨床試験の結果6)より、かゆみに関しては、1週目より有意な差がみられています。速やかなかゆみの改善という点を期待したいところです。ネモリズマブの副作用電子添文7)によると、アトピー性皮膚炎(18.5%)、皮膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、二次感染など)(18.8%)が頻度の多い副作用です。ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症が3.4%に認められ、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹など)などの重篤な過敏症が0.3%報告されています。使用上の注意ネモリズマブはかゆみを治療する薬剤であり、かゆみが改善した場合も含め、投与中はアトピー性皮膚炎に対して外用薬をはじめとした必要な治療を継続することが必要です。ネモリズマブはIgGという種類の抗体製剤ですので、胎盤や乳汁に移行することがあります。そのため、妊娠中や授乳中の投与は禁忌ではありませんが、治療上の有益性が投与の危険性を上回ると判断された場合にのみ使用することになっています。ネモリズマブの適応13歳以上のアトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)となっています。ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などの抗炎症外用剤および抗ヒスタミン剤などの抗アレルギー剤による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者さんが対象です。ネモリズマブの用法・用量ネモリズマブとして60mgを4週に1回皮下注射で投与します。在宅自己注射も可能です。ネモリズマブの薬価60mgシリンジ:11万7,181円1)Guttman-Yassky E, et al: J. Allergy Clin. 2019;143:155-172.2)Ezzat M H M, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2011;25:334-339.3)Feld M, et al. J Allergy Clin Immunol. 2016;138:500-508.4)Cornelissen C, et al. J Allergy Clin Immunol. 2012;129:426-433.5)Furue M, et.al. Allergy. 2018;73:29-36.6)Kabashima K, et al. N Engl J Med. 2020;383:141-150.7)ミチーガ皮下注 電子添文(2023年11月改訂(第3版))トラロキヌマブ(商品名:アドトラーザ)トラロキヌマブは、IL-13を選択的に阻害するヒト免疫グロブリンIgG4モノクローナル抗体であり、IL-13がその受容体に結合するのをブロックします。IL-13はアトピー性皮膚炎の病変ができ、慢性化していくのに重要な働きをしますので、IL-13をブロックするのは合理的と考えられます。2022年12月に製造販売承認を取得、2023年3月に薬価基準に収載されました。2023年9月26日、アドトラーザ皮下注150mgシリンジが発売されました。IL-13の働きアトピー性皮膚炎の病変が持続するために重要な働きをするのが、Th2細胞というリンパ球です。Th2細胞は、IL-13やIL-4を産生することで皮膚のバリア機能低下、抗菌ペプチドの産生低下、IL-31というかゆみに関連するサイトカインの産生などを起こしてアトピー性皮膚炎の特徴的な病変を作ります。IL-13はIL-4と似た働きをしていますが、アトピー性皮膚炎の病態が作られる上で、IL-4よりIL-13のほうがより中心的な働きをしていることが知られています。また、線維化に関しても重要な役割を果たすことが解明され、アトピー性皮膚炎の慢性病変では苔癬化という皮膚がゴワついた感じになる病変ができますが、それにもIL-13の働きが重要であることが判明しています。トラロキヌマブの効果ステロイド外用剤併用下で、16週間トラロキヌマブを投与することで皮膚炎の重症度指標であるEASIが75%減少した患者割合であるEASI75は56.0%でした。これに対し外用薬だけの患者は35.7%でした。トラロキヌマブの適応従来の治療(ステロイド外用剤など)で十分な効果が得られない15歳以上のアトピー性皮膚炎患者トラロキヌマブの用法・用量トラロキヌマブはシリンジ製剤で、初回4本、その後2週間隔で2本を皮下注射します。現段階では在宅自己注射はできません。トラロキヌマブの薬価150mgシリンジ:2万9,295円アドトラーザ皮下注 電子添文(2023年9月改訂(第2版))

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乳がん検診を科学する

あなたの乳がん検診は正しいですか?死亡率減少を目指した乳がん検診を行うために必要な知識を網羅した1冊。まず、がん検診そのものを学び、乳がん検診の統計データ・国際的な研究を紐解く。そして、さまざまなバイアス、利益、不利益について考え、日本における導入の歴史を知ることで理解を深める。高濃度乳房、ブレスト・アウェアネス、リスク層別化、HBOC等の話題のキーワードも詳細し、最後に医療者がよく聞かれる質問と模範回答をQ&A形式で示した。あなたは正しく回答できますか?画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    乳がん検診を科学する定価3,850円(税込)判型A5判頁数200頁(図数:4枚・カラー図数:61枚)発行2023年11月著者角田 博子、島田 友幸、高橋 宏和、竹井 淳子電子版でご購入の場合はこちら

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治療抵抗性うつ病患者の自殺リスクに対する衝動性の影響~FACE-DR研究

 自殺は重大な問題である。うつ病患者ではとくに自殺発生率が高いことから、うつ病は自殺関連リスク因子の1つとされている。重度のうつ病患者における自殺企図は、衝動性や制御不能などの症状と関連していると考えられる。しかし、治療抵抗性うつ病における衝動性と自殺リスクとの関連を具体的に調査したデータは、ほとんどない。フランス・トゥールーズ大学病院のJuliette Salles氏らは、治療抵抗性うつ病患者の自殺リスクに対する衝動性の影響を再検討するため、本研究を実施した。その結果、治療抵抗性うつ病患者における衝動性は、自尊心、抑うつ症状、不安への間接的な影響と関連し、自殺リスクに影響を及ぼしている可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年11月20日号の報告。 プロスペクティブコホートとして患者を募集した。自殺リスクの評価には精神疾患構造化面接法、衝動性の評価にはBarratt Impulsiveness Scaleバージョン10を用いた。うつ病の症状重症度、不安症状、小児期虐待の評価には、それぞれモントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、状態-特性不安尺度(STAI)、Childhood Trauma Questionnaireを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、治療抵抗性うつ病患者220例。・衝動性スコアは、自尊心、婚姻状況、職業上の地位、不安との相関が認められたが、自殺リスクとの直接的な関連は認められなかった。・衝動性は、自尊心(係数:-0.24、p=0.043)および抑うつ症状重症度(係数:0、p=0.045)と関連していた。・自殺リスクは、抑うつ症状重症度(係数:0.38、p<0.001)および自尊心(係数:-0.34、p=0.01)との相関が認められた。・これらの相関を考慮すると、衝動性が自殺リスクに及ぼす影響は、抑うつ症状重症との観点からみられる自尊心により媒介される可能性があると仮説が立てられた。最終的に、共変数として重要な影響を来す自尊心や不安を伴う抑うつ症状に影響を与えることで、自殺リスクに間接的に影響を及ぼす衝動性に関連する媒介モデルを発見した。

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猫を飼うと統合失調症などの精神疾患になるのは本当か

 猫の飼育は、統合失調症関連障害および精神病症状様体験(PLE)のリスク修飾因子であるといわれている。この可能性についてオーストラリア・クイーンズランド大学脳研究所のJohn J McGrath氏らの研究グループは、猫の飼育と統合失調症関連の転帰との関係を報告した文献の系統的レビューおよびメタ解析を行った。その結果、猫の飼育(猫への曝露)は広義の統合失調症関連障害のリスク増加との関連を支持するものであった。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2023年12月2日号の報告。猫の飼育と統合失調症関連障害の発症オッズの上昇との関係 方法として、Medline、Embase、CINAHL、Web of Science、および灰色文献のうち1980年1月1日~2023年5月30日の出版物について、地域や言語に関係なく検索。追加論文の検索では後方引用検索法を用いた。研究対象は、猫の飼育と統合失調症関連の転帰に関するオリジナルデータを報告している研究。広義の定義(猫の所有、猫の咬傷、猫との接触)に基づく推定値を、共変量調整の有無にかかわらずメタ解析し、ランダム効果モデルを用いて比較可能な推定値をプールし、バイアスリスク、異質性、研究の質を評価した。 猫の飼育と統合失調症関連障害のリスクとの関連を評価した主な結果は以下のとおり。・1,915件の研究を同定し、そのうち106件をフルテキスト・レビューに選択。最終的に17件の研究を組み入れた。・広義の猫の飼育と統合失調症関連障害の発症オッズの上昇との間に関連が認められた。・調整前のプールされたオッズ比(OR)は2.35(95%信頼区間[CI]:1.38~4.01)であり、調整後のプールされた推定値は2.24(95%CI:1.61~3.12)だった。・PLEアウトカムの推定値は、測定範囲が広いため集計できなかった。 これらの結果からMcGrath氏は「猫への曝露と広義の統合失調症関連障害のリスク増加との関連を支持するものだったが、転帰としてのPLEに関する知見はさまざまだった」と結論付けている。

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