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院内心停止、心肺蘇生時間1分ごとの患者転帰との関連/BMJ

 米国・ピッツバーグ大学の大久保 雅史氏らは、院内心停止に関する大規模レジストリの後ろ向きコホート研究において、心肺蘇生時間1分ごとの患者アウトカムの時間依存確率を定量化し、生存および良好な神経学的アウトカムの確率は心肺蘇生時間とともに低下し、それぞれ心肺蘇生時間39分および32分時点で1%未満であることを明らかにした。心肺蘇生時間と患者転帰との関連性は、院内心停止患者については十分に調査されていなかった。著者は、「今回の結果は、蘇生チーム、患者、およびその代理人に、最初の自己心拍再開を待っている患者が、さらなる心肺蘇生を受けた場合に、良好なアウトカムが得られる客観的確率を提供するものである」とまとめている。BMJ誌2024年2月7日号掲載の報告。院内心停止し心肺蘇生を受けた成人患者34万8,996例について解析 研究グループは、米国心臓協会(AHA)のGet With The Guidelines-Resuscitation (GWTG-R)レジストリにおいて、2000~21年に参加施設で院内心停止を来した患者で、蘇生処置拒否指示がなく心肺蘇生を受けたすべての成人患者(18歳以上)を特定し、解析した。 主要アウトカムは、退院までの生存および退院時の良好な神経学的アウトカム(脳機能カテゴリー[CPC]スコア1または2と定義、スコアの範囲は1~5、スコアが高いほど障害が重度、5は脳死)とした。 蘇生中止に関するすべての決定が正確であったと仮定し(蘇生が中止されたすべての患者は、たとえ心肺蘇生を長時間継続しても助かることはできなかった)、各時点で最初の自己心拍再開を待っている患者が、その時点を超えてさらに心肺蘇生を受けた場合の、その後退院まで生存する、あるいは良好な神経学的アウトカムが得られる時間依存確率を推定した。 院内心停止により心肺蘇生を受けた成人患者は40万1,697例特定され、このうち除外基準を満たした患者を除く34万8,996例が解析対象となった。さらに、退院時の神経学的アウトカムが不明であった1万5,645例は、同アウトカムの解析から除外した。心肺蘇生時間1分時点で自己心拍再開が得られていない患者の生存確率は22% 34万8,996例中23万3,551例(66.9%)で自己心肺再開が得られ、胸骨圧迫開始から最初の自己心拍再開までの時間の中央値は7分(四分位範囲[IQR]:3~13)であった。7万8,799例(22.6%)が生存退院した。一方、自己心拍再開が得られなかった11万5,445例(33.1%)では、胸骨圧迫開始から蘇生中止までの時間の中央値は20分(IQR:14~30)であった。 退院時の神経学的アウトカムを評価できた33万3,351例のうち、良好な神経学的アウトカムを達成したのは5万2,104例(15.6%)であった。 心肺蘇生時間1分時点で、自己心拍再開未達成患者の生存および良好な神経学的アウトカムの確率は、それぞれ22.0%(7万5,645/34万3,866例)および15.1%(4万9,769/32万8,771例)であった。同確率は心肺蘇生時間が長くなるとともに減少し、心肺蘇生時間39分時点で生存の確率は1%未満、心肺蘇生時間32分時点で良好な神経学的アウトカムの確率は1%未満であった。

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広範囲脳梗塞の血栓除去術、虚血コアの大きさ等で有効性は異なるか?/JAMA

 広範囲脳梗塞患者の治療において、内科的治療のみと比較して血管内血栓除去術の併用は、幅広い虚血コア体積およびペナンブラプロファイルにわたって機能的アウトカムを改善することが示された。米国・ケース・ウエスタン・リザーブ大学のAmrou Sarraj氏らが、非盲検無作為化第III相試験「SELECT2試験」の探索的解析の結果を報告した。急性期脳梗塞で大きな虚血コアを有する患者に対する血管内血栓除去術の有効性が、虚血傷害の程度によって異なるかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年2月7日号掲載の報告。血管内血栓除去術+内科的治療併用群、内科的治療単独群に無作為化 研究グループは、2019年10月~2022年9月に、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、ニュージーランドの31施設で、内頸動脈または中大脳動脈M1セグメントの閉塞による急性期脳梗塞を呈し、非造影CTでASPECTSスコア3~5、またはCT灌流画像あるいはMRI拡散強調画像で虚血コア50mL以上の成人(18~85歳)患者352例を、血管内血栓除去術+内科的治療併用群または内科的治療単独群に、1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、90日時点の機能的アウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア:0[無症状]~6[死亡])で、補正後一般化オッズ比(aGenOR、>1でより良好なアウトカムを表す)で評価した。 探索的解析では、血管内血栓除去術と内科的治療の有用性の比較を、異なる画像モダリティを用いて推定された虚血範囲との関連で検討した。機能的アウトカム、虚血コア体積増に伴い悪化するも併用群のほうが良好 無作為化された患者352例のうち探索的解析対象集団は336例(年齢中央値:67歳、女性:139例[41.4%])で、このうち168例(50%)が血管内血栓除去術併用群に割り付けられ、さらに内科的治療群の2例がクロスオーバーにより血管内血栓除去術を受けた。 ASPECTSスコア3~5と判定された277例において、90日時点の機能的アウトカムは、血管内血栓除去術併用群が内科的治療群より有意に良好であった。内科的治療に対する血栓除去術併用のaGenORは、ASPECTSスコア3の患者で1.71(95%信頼区間[CI]:1.04~2.81)、4の患者で2.01(1.19~3.40)、5の患者で1.85(1.22~2.79)であり、ASPECTSスコアで有意な不均一性はなかった(交互作用のp=0.80)。 CT灌流/MRIによる虚血コア体積別では、aGenORは70mL以上で1.63(95%CI:1.23~2.16)、100mL以上で1.41(0.99~2.02)、150mL以上で1.47(0.84~2.56)であった。 ミスマッチのない患者はほとんど登録されていなかったが、ミスマッチの有無による血管内血栓除去術の治療効果の不均一性は確認されなかった。

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パンデミック中、妊娠合併症と出産の転帰の一部が悪化

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期間中、妊娠合併症と出産の転帰の一部は悪化していたことが判明した。日本の100万件以上の出産データを調査した結果、パンデミックにより妊娠高血圧や胎児発育不全、新生児の状態などに影響が見られたという。獨協医科大学医学部公衆衛生学講座の阿部美子氏らによる研究結果であり、「Scientific Reports」に11月29日掲載された。 パンデミックによる影響については国際的にも多く研究されており、死産の増加や妊産婦のメンタルヘルスの悪化などが報告されてきた。しかし、パンデミックの状況や国・地域の制限レベルなどにより、その影響は異なるだろう。日本でのパンデミックと妊娠や出産の転帰に関しては検討結果が限られており、日本全国レベルでの大規模な研究が必要とされていた。 そこで阿部氏らの研究グループは、日本産科婦人科学会(JSOG)が管理する全国データから、2016~2020年の妊娠・出産のデータを用いて、パンデミックによる影響を評価した。妊娠合併症については、妊娠高血圧と胎児発育不全を調査。出産の転帰は、分娩時の妊娠週数、出生体重、新生児のアプガースコア7点未満の有無(7点未満は新生児仮死の可能性を示唆する)、死産などを調査した。これらに対するパンデミックの影響は、胎児数(単胎妊娠と多胎妊娠)による影響を考慮し、分けて検討された。 解析された妊娠・出産のデータは、パンデミック前(2016~2019年)が95万5,780件、パンデミック中(2020年)が20万1,772件だった。また、この5年間の単胎妊娠は108万4,724件、多胎妊娠は7万2,828件だった。この間、出産年齢が高い人(35歳以上)の割合は徐々に増加し、他の年齢層(20~34歳、19歳以下)の割合は減少していた。 妊娠合併症に関して比較すると、パンデミック前よりもパンデミック中の方が増加していた。関連因子(出産年齢、出産地域、妊娠前のBMI、不妊治療、胎児発育不全)による影響を調整した検討の結果、単胎妊娠では妊娠高血圧が有意に増えており(調整オッズ比1.064、95%信頼区間1.040~1.090)、多胎妊娠では胎児発育不全が有意に増えていた(同1.112、1.036~1.195)。 出産の転帰についても同様に比べると、単胎妊娠では、早産(同0.958、0.941~0.977)と低出生体重(同0.959、0.943~0.976)は有意に減少していた一方で、アプガースコア7点未満の新生児は、生後1分(同1.030、1.004~1.056)と生後5分(同1.043、1.002~1.086)の両方で有意に増加していた。新生児死亡や死産および妊産婦死亡に関しては、有意な影響は見られなかった。また、多胎妊娠では、これらの出産の転帰に対する有意な影響は認められなかった。これらの結果は、各年に含まれた分娩施設の影響を考慮した感度分析でも同様の傾向を示した。 結果を受けて著者らは、2021年以降の傾向が分析できていないことなどに言及した上で、「日本において、パンデミック中に妊娠合併症と分娩の転帰は悪化した」と結論付けている。パンデミック初期、感染者数はまだわずかであったにもかかわらずこのような転帰の悪化を認めたことに対し、著者らは、パンデミック初期から見られた自宅待機などの行動の変化、情報の混乱、社会的恐怖などによる影響を挙げ、「日本のように強制力のない制限であっても、パンデミック時の社会変化が、妊娠の転帰に悪影響を及ぼす可能性を示唆している」と述べている。

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ChatGPTの研修会【Dr. 中島の 新・徒然草】(516)

五百十六の段 ChatGPTの研修会寒い日々が続きますね。健康のために歩かなくては、と思っても外に出る気がしません。なので、もっぱら家の中での散歩。以前にも述べたように、台所↔リビング↔部屋で1周100歩ほどになるので、YouTubeを聴きながら歩いております。さて、先日は医師会で「生成AIの最新情報 及び 働き方改革に向けた活用方法」という研修会があったので出席してきました。第438話でも述べたように、すでにAIは医療現場に入り込んでいます。大阪医療センターでは胸部レントゲンの読影に使っており、皆に重宝されてきました。診断をつけるというよりも、私は「結節影や浸潤影を見逃さない」という形で使っています。今回の医師会の研修会ではもっぱら「ChatGPTをどう活用しているか」という話に終始しました。基調講演が終わると、初期研修医や大学病院助教ら3名がそれぞれの活用法を発表しました。最新の話題だけあって質疑応答が途切れることがありません。今回は講演内容と質疑応答について、私の理解できた範囲で軽く触れたいと思います。有料版であるChatGPT-4は、無料版であるChatGPT-3.5より賢い米国の司法試験を解かせてみると、前者は上位10%で合格点を取りましたが、後者は下位10%で不合格の点数しか取れなかったそうです。講演では、司法試験のほかに20以上の分野の試験での得点の比較がグラフ化されていましたが、3.5と4でほとんど差のないものから大きく差のついたものまでいろいろでした。ちなみにほとんど差のないものはAP Environmental Scienceで、これは環境科学になるのでしょうか。APというのはAdvanced Placementで「上級科目」という意味だそうです。逆に大きく差のついたものはAP Calculus BCで、微積分のようです。われわれに関係ありそうなAP Biologyつまり生物学は中間程度の差でした。ChatGPT-4に「AIのイメージ作って!」と入力すると画像生成もしてくれる発表で紹介されたのは写実的な擬人化されたAIの画像です。続けて「もっとかわいいの!」と入力するとキャラクター的なイラストになり、それも紹介されていました。ChatGPTの出力結果は専門家のほうが正誤の推測をしやすい何を尋ねてもChatGPTは何らかの答えを返してきますが、それが正しいのか否かを質問者が見極めることは困難そのもの。が、自分がまったく知らない分野よりは、ある程度知っている分野のほうが、その回答の整合性から正誤を推測することができます。ということは、まったくの素人がChatGPTを使って知らない分野の知識を得ようとするよりは、専門家が自分のアシスタントみたいな形でChatGPTを使うほうが現実的なのかもしれません。そのほか、いろいろな活用法が紹介されていましたが省略して、次は質疑応答の内容を紹介します。プロンプトと呼ばれる入力を日本語で行った時と英語で行った時に、出てくる結果の精度にどのくらいの違いがあるのか?そもそもChatGPTを開発したOpenAIが米国の会社なので、英語入力のほうが日本語入力より精度が高いのではないかという気がします。しかし、基調講演の講師によると、ほとんど差がないのではないかということでした。日本語入力でも結果が大きく変わらないのであれば、かなり楽に使えます。指導医はChatGPTの使い方をどのように研修医に教えるべきか?論文作成に生成AIを使う場合が要注意で、まったく受け付けないジャーナルから、どこにどのように使ったかを明記すれば使ってよい、というジャーナルまでいろいろあるのだそうです。また投稿論文の査読を頼まれた時に、生成AIにやらせるのはやめておいたほうが無難だとか。まだオープンになっていないデータが、どこにどのように拡散するかはわかりませんから。そのような潜在的な地雷を踏まないような指導が必要だと思います。私見ですが、皆が手探りで使い方の試行錯誤をしているところなので、研修医だろうが指導医だろうが、先行したユーザーが後から使い始めた人に手ほどきするというのが正しいのではないかと思います。というわけで、休日にもかかわらず盛り上がった研修会、出席した甲斐がありました。最後に1句AIを 学んで試す 如月にChatGPTを使ってこの句をイラストにしてみました。条件として、外の風景と人物は和風、室内は洋風としています。なんか不思議な画像が出来てしまいましたが、いかにも生成AIといった画像ですね。

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50年返済の住宅ローンが「アリ」となる条件とは【医師のためのお金の話】第77回

50年返済の住宅ローンが話題です。口火を切ったのは、住信SBIネット銀行が2023年8月から販売を開始した借入期間50年の住宅ローン。これまでも、住宅金融支援機構が民間機関と提携して実施しているフラット50や、一部の地方銀行で取り扱いがありました。しかし、フラット50の対象は長期優良住宅のみで、地方銀行は管轄エリア内の住宅にしか利用できませんでした。ところが、住信SBIネット銀行が取り扱いを始めたため、全国の住宅で借入期間50年の住宅ローンを利用できるようになったのです。折しも、2023年1~6月の東京23区内の新築分譲マンションの平均価格は1億2,962万円でした。ここまで物件価格が高騰してくると、医師といえども手を出しにくいでしょう。都内在住の医師にとって、マイホームは高嶺の花なのか…。毎月の支払い金額が高額過ぎて諦めていた物件であっても、50年返済なら何とか手の届く範囲になりそう。はたして、借入期間50年の住宅ローンは、高騰したマイホームを購入する救世主となるのでしょうか。住信SBIネット銀行の参入で50年住宅ローンの利用が可能に2023年8月4日、住信SBIネット銀行は借入期間50年の住宅ローンの取り扱いを開始しました。住信SBIネット銀行以外にも、全国各地の地方銀行や信用金庫が続々と50年の住宅ローンを投入しています。借入期間が50年に延長された住宅ローンには、従来の期間(35年)と比べていくつかの相違点があります。主なものは、完済時年齢が80歳未満にまで延長、金利は若干高めという点です。それ以外は、従来の住宅ローンと同じと考えてよいでしょう。地方銀行や信用金庫は取り扱い可能なエリアが限られているため、住信SBIネット銀行や住宅金融支援機構のフラット50が便利です。しかし、もし取り扱いエリア内であれば、融通が利きやすい地方銀行や信用金庫も選択肢に入るでしょう。50年の住宅ローンは危険という意見が多い鳴り物入りで登場した借入期間50年の住宅ローンですが、ネット上では否定的な意見が多いです。主な理由は、通常の住宅ローンよりも金利負担が大きいことと、建物の劣化による残債割れのリスクです。残債割れとは、途中でマイホームを売却した際に、売買金額よりも住宅ローンの残債金額のほうが多くなる状態です。50年もすると、建物は相当劣化してしまいます。このため、とくに建物部分の大きいマンションでは、残債割れリスクが顕在化してしまう傾向にあります。この2点以外にも、定年退職後も返済を続けなければいけない可能性があります。医師は一般の人よりも長く働ける可能性が高いです。それでも、70代後半になっても現役並みに働ける人は一握りではないでしょうか。50年の住宅ローンが「アリ」になる条件借入期間50年の住宅ローンはデメリットが大きいため、あまり利用する価値がないと思いがちです。しかし冒頭で述べたように、これほど不動産価格が高騰している状況では、やり方次第で有用なツールになる可能性があります。あくまでも私見ですが、50年の住宅ローンが「アリ」になる条件は、不動産価格が高騰し続ける状況だと思います。1990年代のバブル崩壊のような暴落が発生したとしても、50年という超長期でみると不動産価格は上昇する可能性が高いです。その理由は、不動産価格とはあくまでも現金に対する相対的な価値だからです。これだけ財政赤字が大きいと、日本円に対する信認が50年間も維持できるとは思えません。日本円の価値が落ちると、相対的に不動産価格が上昇するというロジックです。もちろん、日本円の価値が下落するスピードよりも、物件の資産価値が下落するスピードが速いと、残債割れが発生します。このため、借入期間50年の住宅ローンでは、従来の35年ローンよりもシビアに価値の落ちにくい物件を選ぶ必要があります。そして、住宅ローン控除が終了した時点で、返済額軽減型の繰り上げ返済を検討してもよいかもしれません。ここで返済期間短縮型ではなく返済額軽減型を選ぶ理由は、超長期で借り入れているメリットを享受するためです。不動産投資の観点では、50年の住宅ローンとは、日本円とマイホームの価値下落スピードの速さを競う賭けです。私は、超長期では日本円に弱気なので、借入期間が長いほどマイホーム(住宅ローン)の方が有利だと考えています。皆さんの考えはいかがでしょうか?

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第84回 SNSで流行する病「インプレゾンビ」

収益を求めてさまようインプレゾンビ現在SNSには、X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、TikTok、Threadsなどいろいろな種類が登場しています。最近Xで感染症のように流行している現象があります。それが「インプレゾンビ」です。皆さんはXの「インプレッション」というものをご存じでしょうか。要は、自分の投稿をどれくらいの人が見てくれたかを表しているものですが、2023年夏から自分の投稿に表示される広告から収益の一部を受け取れる「クリエイター広告収益化プログラム」が始まりました。つまり、インプレッションの数が多いほど、収益が多くなります。全員が収益化できるわけではなく、条件はいくつかあります。①Xのアカウントで「X Premium(旧Twitter Blue)」に課金する必要があること(1ヵ月最低980円/8米ドル)②フォロワー500人以上③直近3ヶ月のインプレッションが500万以上をクリアしなければいけません。つまり、インプレッションをたくさん稼いで、月980円以上の利益が出なければ、課金した意味がなくなるということです。「インプレゾンビ」というのは、このインプレッションを稼ぐために集まるゴーストアカウントのことです。ミュートやブロックをしても、別の投稿にゾンビのように群がることから、このような名前がついています。有料アカウントのインフルエンサーにリプライを送ることで、まったく内容のない投稿でもインプレッションが集まる仕組みを利用しているわけです。インプレゾンビが問題視されたのは、能登半島地震がきっかけです。「生き埋めになっています、助けてください、拡散希望」という投稿が、大量に投下されたのです。文章をコピーされて複数のアカウントから投稿されました。これもあってか、インプレゾンビは許されないという論調に火がつきました。Bluesky開放イーロン・マスクがこの現象を放置していることや、インプレゾンビ問題を好機とみたのか、これまで招待制だった「Bluesky」というSNSが2月6日に一般ユーザーへ大々的に開放されました。見た目はほとんど旧Twitterと同じですが、これはBlueskyの開発を始めたジャック・ドーシーが、旧Twitterの共同創業者だったからです。Blueskyは1つの企業が独占的に管理するSNSではなく、多数の個人やグループがサーバーを運営する分散型SNSという特徴があります。使い勝手としては、昔のTwitterそのまま、といったところです。現状、Threadsは思うようにアクティブユーザーを獲得できていないように思われます。そのため、現在Xはまだ一強の状態です。Bluesky自体は現時点では、広告もなく収益を生む仕組みもまだありません。その分、企業にとっての旨味が少ないことから、すぐに下火になってしまう可能性もあります。今後、Blueskyがどう食い込んでくるか注目です。

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情報の取捨選択のセンスを身に付ける【国試のトリセツ】第27回

§1 アセスメント情報の取捨選択のセンスを身に付けるQuestion〈109E48〉86歳の男性。なんとなく元気がないと家族から往診の依頼があった。数日前から食欲が低下し、いつもより元気がないと同居の妻から説明を受けた。本人は何ともないと言う。ほぼベッド上の生活で食事摂取は自立しているが、それ以外のADLには介助を必要としている。5年前から脳梗塞後遺症(左片麻痺)、混合型認知症、高血圧症、前立腺肥大症および胆石症で訪問診療を受けている。意識レベルはJCS I-2。体温36.5℃。脈拍112/分、整。血圧110/80mmHg。呼吸数16/分。SpO296%(room air)。眼瞼結膜は貧血様でない。眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部では腸雑音がやや亢進し、右季肋部の触診を行うと右手で払いのけようとする。下腿に浮腫を認めない。正しい判断はどれか。(a)浮腫を認めないので心不全ではない。(b)腹痛の訴えがないので胆嚢炎ではない。(c)SpO2が96%なので呼吸不全ではない。(d)体温が36.5℃なので腎盂腎炎ではない。(e)眼瞼結膜が貧血様でないので消化管出血ではない。

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新型コロナワクチンの国内での有効性評価、VERSUS研究の成果と意義

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの有効性を評価するため、VERSUSグループは国内の13都府県の医療機関24施設で2021年7月から継続的に「VERSUS研究」1)を行っている。本研究は、新型コロナワクチンの国内での有効性を評価し、リアルタイムにそのデータを社会に還元することを目的としている。今後はCOVID-19のみならず、新たな病原体やワクチンを見据えたネットワークを整備・維持していく方針だ。VERSUS研究のこれまでの成果と意義について、2024年1月20日にウェブセミナーが開催された。長崎大学熱帯医学研究所呼吸器ワクチン疫学分野の森本 浩之輔氏と前田 遥氏らが発表した。なお、BA.5流行期のワクチン有効性の結果は、Expert Review of Vaccines誌2024年1~12月号に論文掲載された2)。 VERSUS研究では、COVID-19を疑う症状があり病院を受診した16歳以上の患者、または呼吸器感染症を疑う症状で入院した16歳以上の患者において、新型コロナウイルス検査陽性者を症例群、検査陰性者を対照群とした検査陰性デザイン(test-negative design)を用いた症例対照研究を行い、ワクチン効果(vaccine effectiveness)を推定している。研究におけるアウトカムは、COVID-19の発症予防および入院予防とした。今回の発表では、2021年7月~9月のデルタ株流行期、2022年1月~6月のオミクロン株BA.1/BA.2流行期、2022年7月~11月のオミクロン株BA.5流行期、2022年後半~2023年前半BA.5/BQ.1流行期(オミクロン株対応2価ワクチン開始)、2023年オミクロン株XBB/EG.5.1流行期を通して、ワクチンの未接種者と比較した新型コロナワクチンの有効性が、前田氏によりまとめられた。 主な結果は以下のとおり。・デルタ株流行期では、2回接種により発症予防に対してワクチンの高い有効性が認められた。・オミクロン株BA.1/BA.2流行期では、2回接種による有効性は十分ではなく、3回接種が必要であった。16~64歳において、2回接種から180日以上の人での発症予防に対してワクチンの有効性が33.6%に対し、3回接種から90日以内の人では68.7%だった。65歳以上でも同様の傾向で、2回接種の有効性は31.2%に対し、3回接種では76.5%だった。・オミクロン株BA.5流行期では、ブースター接種(3回目または4回目)により、発症予防におけるワクチンの有効性は上昇したが、時間経過により有効性の低下が認められた。16~59歳において、2回接種から181日以上の人での発症予防に対してワクチンの有効性が26.1%に対し、3回目接種から90日以内の人では58.5%と再度上昇した。60歳以上でも、3回目接種181日以上の人では16.5%まで低下したが、4回目接種から90日以内では44.0%まで上昇した。・BA.5流行期の60歳以上におけるワクチンの入院予防効果について、ブースター接種の高い有効性が認められた。呼吸状態の悪い患者など、重症な患者に限定した解析でも同様に高い有効性が認められた。・BA.5/BQ.1流行期では、オミクロン株対応2価ワクチンは、発症予防に中程度の有効性が認められたが、XBB/EG.5.1流行期以降は効果が十分ではなかった。16~64歳において、BA.5/BQ.1流行期では、接種から90日以内で発症予防における2価ワクチンの有効性は56.1%だったが、XBB/EG.5.1流行期では、接種から90日以内では12.3%だった。・BA.5/BQ.1流行期およびXBB/EG.5.1流行期では、65歳以上でも、発症予防については16~64歳と同様の傾向が認められたが、入院予防ではいずれの期間でも高い有効性が認められた。2価ワクチン接種90日以内の入院予防の有効性は、BA.5/BQ.1流行期で72.6%に対し、XBB/EG.5.1流行期では69.1%だった。・いずれの期間においても、ファイザー製とモデルナ製の両mRNAワクチンで有効性の差はみられなかった。・今後XBB.1.5対応ワクチンの評価も行われる予定。 本セミナーの後半では、横浜市立大学データサイエンス研究科/東京大学大学院薬学系研究科の五十嵐 中氏が、国内でのワクチンの定期接種化に向けた費用対効果の評価を行う際、日本とは医療環境の異なる海外でのデータに依拠するだけでは不十分で、国内でのデータを評価することの重要性を強調した。VERSUS研究によって、国内の有効性データの迅速推計の基盤が整備され、費用対効果やQOL評価に役立つデータの創出に貢献し、さらに、今回築かれた基盤は、今後、他のワクチンの政策決定においても継続的な情報提供が可能になるとまとめた。

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日本のプライマリケアにおけるベンゾジアゼピン適切処方化への取り組み

 日本において、プライマリケアにおける質の向上(QI)に対する取り組みは、まだまだ十分とはいえない。QIにおいて重要な領域の1つとして、ベンゾジアゼピンの適切な処方が挙げられており、高齢化人口の増加が顕著なわが国においてとくに重要である。地域医療振興協会の西村 正大氏らは、日本のプライマリケアクリニックにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZRAs)の処方中止に対する医療提供者へのQIイニシアチブの実現可能性について検討を行った。BMC Primary Care誌2024年1月24日号の報告。 調査対象は、2020~21年にBZRAs処方中止イニシアチブに参加した日本の準公立クリニック11施設および医療提供者13人。クリニック規模に応じて層別化し、参加施設を診療監査のみまたは診療監査とコーチングの実施の2群にランダムに割り付けた。診療監査のため、2つのBZRAs関連指標を参加施設に提示した。QIの活動をサポートするため、毎月コーチングミーティングをWebベースで実施した。9ヵ月間の実施後、半構造化インタビューにより、内容分析を用いてテーマを特定した。特定されたテーマを整理し、実装研究のための統合フレームワーク-CFIR-を用いて、主要な要素を評価した。 主な結果は以下のとおり。・診療監査とコーチングの組み合わせは、診療監査のみの場合よりも価値があると認識されていた。・参加者は、施設外のリソースとしてQIイニシアチブについての知的好奇心を示した。・しかし、小規模クリニックにおいてチームによるQIアプローチを採用することは困難であると認識されており、効果的なQIを達成するためには、指標の選択が重要であることが示唆された。 著者らは「クリニックの規模が潜在的な障壁のなる可能性があるものの、学術的な好奇心を高めることにより、日本のプライマリケアにおけるQIへの取り組みを促進できる可能性が示唆された」とし「長期的なQIの可能性を評価するためには、より多様な指標を用いたさらなる実証試験が必要である」としている。

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「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」開催/厚労省

 2024年3月8日(金)、「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」が会場+オンライン(Zoom ウェビナー)のハイブリット方式で開催される。2024年4月より医師に対する時間外労働の上限規制が適用開始となり、医学生や若手医師に、医師の働き方の実情、医師の働き方改革の内容と趣旨・目的、関係する法令などを周知することが重要となっている。本シンポジウムでは、実際に医学部設置大学において講義を行った医師による講義実例の紹介や、弁護士・大学教員・医学生とのパネルディスカッションが行われ、医師の働き方改革の趣旨などを医学生や若手医師に伝える意義、その効果的な方法について考える。 開催概要は以下のとおり。開催日時:2024年3月8日(金)16:00~18:00開催:ハイブリッド方式(会場+オンライン)会場:KFC Hall&Rooms Room101・102(東京都墨田区横網一丁目6番1号国際ファッションセンタービル)定員:会場100名、オンライン500名(※事前申し込み制)参加費:無料申し込み締切:2024年3月1日(金)■参加申し込みはこちら【プログラム】◎ モデル・コア・カリキュラム改定と教育・研究時間の確保について堀岡 伸彦氏(文部科学省高等教育局医学教育課 企画官)◎ 講義実例木戸 道子氏(日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長)前川 宙貴氏(弁護士法人天満法律事務所 弁護士)◎ パネルディスカッション神村 裕子氏(日本医師会常任理事)木戸 道子氏(同上)河野 恵美子氏(大阪医科薬科大学一般・消化器外科助教)前川 宙貴氏(同上)亀田 義人氏(順天堂大学)種村 文孝氏(京都大学医学教育・国際化推進センター)石橋 蓮氏(順天堂大学医学部学生)松本 彩絵氏(順天堂大学医学部学生)【お問い合わせ先】厚生労働省委託事業事務局 ランゲート株式会社〒604-8141 京都市中京区泉正寺町328西川ビル4階TEL:075-741-7862(平日9:00~17:00)

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小児・思春期の2価コロナワクチン、有効性は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する2価mRNAワクチンについて、小児・思春期(5~17歳)へのSARS-CoV-2感染および症候性COVID-19に対する保護効果が認められることが示された。米国疾病予防管理センター(CDC)のLeora R. Feldstein氏らが、3つの前向きコホート試験に参加した約3,000例のデータを解析し報告した。米国では12歳以上については2022年9月1日から、5~11歳児については同年10月12日から、COVID-19に対する2価mRNAワクチンの接種を推奨しているが、その有効性を示す試験結果は限られていた。著者は、「今回示されたデータは、小児・思春期へのCOVID-19ワクチンの有益性を示すものである。対象となるすべての小児・思春期は、推奨される最新のCOVID-19ワクチン接種状況を維持する必要がある」と述べている。JAMA誌2024年2月6日号掲載の報告。米国計6ヵ所で集めたデータを統合し解析 研究グループは、米国で行った3つの前向きコホート試験(計6ヵ所で実施)の2022年9月4日~2023年1月31日のデータを統合し、5~17歳の小児・思春期におけるCOVID-19に対する2価mRNAワクチンの有効性を推定した。被験者総数は2,959例で、定期的サーベイ(人口統計学的・世帯特性、慢性疾患、COVID-19症状を調査)を行った。サーベイでは、症状の有無にかかわらず自己採取した鼻腔ぬぐい液スワブを毎週提出してもらい、また症状がある場合には追加の同スワブを提出してもらった。 ワクチン接種の状況は定期的サーベイで集め、州の予防接種情報システムや電子カルテで補完した。 採取したスワブを用いてRT-PCR検査でSARS-CoV-2ウイルスの有無を調べ、症状の有無にかかわらず陽性はSARS-CoV-2感染と定義した。検体採取から7日以内に2つ以上のCOVID-19症状がある検査陽性例を、症候性COVID-19と定義した。 COVID-19 2価mRNAワクチン接種者と、非接種者または単価ワクチンのみ接種者について、Cox比例ハザードモデルを用いてSARS-CoV-2感染や症候性COVID-19のハザード比を算出。年齢や性別、人種、民族、健康状態、SARS-CoV-2感染歴、試験地別の流行型の割合、地域ウイルス感染率などで補正を行い評価した。感染率は2価ワクチン群0.84/1,000人日、非2価ワクチン群1.38/1,000人日 被験者2,959例のうち、女子は47.8%、年齢中央値は10.6歳(四分位範囲[IQR]:8.0~13.2)、非ヒスパニック系白人は64.6%だった。COVID-19 2価mRNAワクチンを1回以上接種したのは、25.4%だった。 試験期間中、SARS-CoV-2感染が確認されたのは426例(14.4%)だった。このうち184例(43.2%)が症候性COVID-19を有した。426例の感染者のうち、383例(89.9%)はワクチン未接種または単価ワクチンのみ接種者で(SARS-CoV-2感染率1.38/1,000人日)、43例(10.1%)が2価mRNAワクチン接種者だった(同感染率0.84/1,000人日)。 SARS-CoV-2感染に対する2価mRNAワクチンの有効性は、54.0%(95%信頼区間:36.6~69.1)で、症候性COVID-19に対する同有効性は49.4%(22.2~70.7)だった。 ワクチン接種後の観察期間中央値は、単価ワクチンのみ接種者は276日(IQR:142~350)だったのに対し、2価mRNAワクチン接種者は50日(27~74)であった。

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乳がん検診、異型検出後の罹患リスクは?/BMJ

 乳がん検診で異型を伴う病変が検出された場合、その後の短期間において、マンモグラフィ検査を毎年行うことは有益ではないことが、英国・ウォーリック大学のKaroline Freeman氏らによる検討で示された。悪性か否かが不明の異型を伴う乳房病変が検出された場合、乳がんの長期リスクが3~4倍増加する可能性が示されている。英国、欧州、米国のガイドラインでは、異型部位を吸引式乳房組織生検(VAB)または手術で切除し、画像サーベイランスを行うことが推奨されている。しかし、画像サーベイランスを5年間にわたり毎年行うことについてはエビデンスがなく、期間、頻度、妥当性が議論の的となっていた。なお、今回の結果について著者は、「長期的リスクについてさらなるエビデンスが必要である」と述べている。BMJ誌2024年2月1日号掲載の報告。上皮異型が診断された女性3,238例のその後の乳がん例数・種類を調査 研究グループは、検診での異型検出後の乳がん発症例数と種類について調べるため、英国で3年に1回の検診での検出が予測される例数(女性1,000人当たり11.3例)と比較した。 イングランドのSloane Atypia Projectの前向きコホートを対象とした観察研究を実施した。同コホートには、英国の国民保健サービス(NHS)乳がん検診プログラムで診断された異型が含まれており、English Cancer RegistryおよびMortality and Birth Information Systemとリンクしていることから、その後の乳がんおよび死亡に関する情報を得ることができる。 解析には、2003年4月1日~2018年6月30日に上皮異型と診断された女性3,238例が含まれた。 主要アウトカムは、異型診断後1年、3年、6年後に検出された浸潤性乳がんの例数と種類で、異型の種類、年齢、診断暦年別に解析した。マンモと生検の技術的変化で、異型のリスク特定が可能に? 異型検出は、2010年の119例から、デジタルマンモグラフィ導入後の2015年には502例と4倍に増加していた。 2018年12月までの追跡期間中(異型診断後の1万9,088人年)に、女性141例が乳がんを発症した。異型が検出された女性1,000人当たりの浸潤性乳がんの累積発症率は、異型検出後1年時点で0.95(95%信頼区間[CI]:0.28~2.69)、3年時点で14.2(10.3~19.1)、6年時点で45.0(36.3~55.1)だった。異型検出がより直近の時期だった女性ほど、その後3年以内にがんが検出された割合は低かった。 浸潤性乳がん検出(女性1,000人当たり)は、2013~18年は6.0(95%CI:3.1~10.9)であったのに対し、2003~07年は24.3(13.7~40.1)、2008~12年は24.6(14.9~38.3)だった。浸潤性乳がんのグレード、大きさ、リンパ節転移は、一般の検診集団で検出されたがんと同等(同側および対側がんの例数も同等)だった。 結果を踏まえて著者は、「多くの異型はリスク因子ではあるが、短期的には、手術が必要となる浸潤性乳がんの前兆ではないと思われた」とし、「異型検出がより直近の女性ほど、その後にがんが検出される割合が低かったのは、過剰診断に相当する可能性が高い異型を検出するマンモグラフィや生検の技術的変化と関連していると思われる」と述べている。

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膵臓がんの治療ワクチン、初期段階の臨床試験で有望な結果

 膵臓の腫瘍は、その90%以上に悪性度を高める可能性のあるKRAS遺伝子の変異があるとされるが、この変異を有する膵臓がんに対し、実験段階にある治療ワクチンが有効である可能性が、米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍学准教授のShubham Pant氏らが実施した小規模な臨床試験で示された。現時点では「ELI-002 2P」と呼ばれているこのワクチンは、KRAS変異を有する固形がんを標的にするものだという。ELI-002 2Pを製造するElicio Therapeutics社の資金提供を受けて実施されたこの試験の詳細は、「Nature Medicine」に1月9日掲載された。 膵臓がんは自覚症状がないまま進行し早期発見が難しいことから、「サイレント・キラー」と呼ばれている。米国がん協会(ACS)によると、米国では推定で年間約6万4,000人が膵臓がんと診断され、約5万5,500人がそれによって死亡している。膵臓がんに対するファーストライン治療は手術だが、再発の可能性もある。ELI-002 2Pは、再発を予防するためにデザインされたワクチンで、免疫細胞のT細胞にKRAS変異を認識して破壊するように仕向ける。ELI-002 2Pは、患者ごとに製造することが可能だ。 今回の臨床試験は、KRAS遺伝子の変異がある膵臓がん患者20人と大腸がん患者5人の計25人(平均年齢61.0歳、女性60%)を対象に実施された。患者は、全例が腫瘍を摘出する手術を受けており、このうち7人は手術に加えて放射線治療も受けていた。Pant氏は、「膵臓がんの手術を受け化学療法を終えた患者でも、再発リスクは残る」と同がんセンターのニュースリリースで述べている。試験では、患者をコホート1〜5の5群に分け、ELI-002 2Pワクチン(0.1、0.5、2.5、5.0、10.0mg)を最大10回投与した。 その結果、ワクチンを投与された全患者の84%(21/25人)で期待されていたKRAS変異特異的T細胞反応が確認され、特に、投与量が5.0mgと10.0mgの群での割合は100%に達したことが明らかになった。腫瘍および腫瘍に関連するDNAの存在の指標となるバイオマーカーの低下も84%の患者で認められ、6人(膵臓がん患者と大腸がん患者が3人ずつ)では、バイオマーカークリアランスが確認された。患者全体での無再発生存期間は16.33カ月であったが、T細胞反応の変化量の中央値(ベースラインからの変化量が12.75倍)で二分して検討すると、中央値以上の患者では未達成であったのに対し、中央値未満の患者では4.01カ月であった。 副作用の発生率は、倦怠感が24%(6人)、注射部位反応が16%(4人)、筋肉痛が12%(3人)だったが、治療の中止や死亡に至るような重度の副作用は認められなかった。このことからPant氏は「ELI-002 2Pの安全性プロファイルは良好だった」と述べている。 Pant氏は「まだ初期段階の試験ではあるが、このワクチンによって多くの患者のがんの再発を防ぎ、生存期間を延長できる可能性があるという有望な結果が示された」と話す。同氏は、「膵臓がんは再発すると治癒に導くことが不可能であり、まさにアンメットニーズの存在する領域であるため、これらの結果の全てが素晴らしい」と喜びを表す。 ELI-002 2Pの第2相臨床試験は2024年後半に開始される予定だ。同試験ではさらに多くのKRAS変異を標的とすることになるとPant氏らは話している。

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「肉なし」食生活でコロナリスクが4割低下?

 植物性食品をベースにした食生活は、血圧の低下、血糖コントロールの改善、体重減少など、さまざまな健康上の利点と関連付けられているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患リスクを低減させる可能性もあることが、新たな研究で明らかになった。この研究では、植物性食品をベースにした食生活により、COVID-19罹患リスクが39%低下する可能性が示されたという。Hospital das Clinicas FMUSP(ブラジル)のJulio Cesar Acosta-Navarro氏らによるこの研究結果は、「BMJ Nutrition Prevention and Health」に1月9日掲載された。 この研究では、2022年3月から7月の間にソーシャルネットワークとインターネットで募集した研究参加者を対象に、食生活のパターンがCOVID-19の罹患と重症度などに及ぼす影響を検討した。調査に回答した723人のうち、702人が本研究の対象者とされた。食生活のパターンは、動物性食品と植物性食品の両方を摂取している雑食群(424人)と、植物性の食品をベースとした食事を摂取している菜食群(278人)に分けられた。菜食群は、ヴィーガン、および卵と乳製品は摂取するラクト・オボ・ベジタリアンから成るベジタリアン(191人)と、植物性食品の摂取が基本だが時に動物性食品も摂取するフレキシタリアン(87人)で構成されていた。 全体で330人(47.0%)がCOVID-19の診断を受けたことを報告した。重症度は、224人(31.9%)が軽症、106人(15.1%)が中等症〜重症だった。雑食群では菜食群に比べてCOVID-19の罹患率が有意に高かった(51.6%対39.9%、P=0.005)。COVID-19の重症度についても、雑食群で菜食群に比べて中等症〜重症の人の割合が有意に高かったが(17.7%対11.2%、P=0.005)、症状の持続期間については両群で有意な差は認められなかった(P=0.549)。 多変量ロジスティック回帰モデルによる検討の結果、菜食群では雑食群に比べてCOVID-19罹患リスクが39%低いことが示された。菜食群をベジタリアンとフレキシタリアンに分けて解析しても、罹患リスクは雑食群よりもベジタリアンで39%、フレキシタリアンで38%低かった。重症度に関しては、雑食群と菜食群の間でも、また菜食群をベジタリアンとフレキシタリアンに分けて3群間で検討した場合でも、有意な差は認められなかった。 こうした結果から研究グループは、「植物性食品をベースにした食事は免疫系の機能を高める栄養素を多く含んでおり、それが新型コロナウイルスへの感染を防ぐ要因になっているのかもしれない」との見方を示している。Acosta-Navarro氏は、「これらの知見と他の研究結果を踏まえ、またCOVID-19の発症に影響を与える因子を特定することの重要性に鑑みて、われわれは、植物性の食品をベースにした食事やベジタリアンの食事パターンの実践を推奨する」と話している。 本研究には関与していない、NNEdPro食品・栄養・健康のグローバル研究所のShane McAuliffe氏は、「この研究結果は、新型コロナウイルスへの感染のしやすさに食事が関係している可能性を示唆する既存のエビデンスに新たに加わるものだ」と評価する。一方で同氏は、「ただし、特定の食事パターンがCOVID-19罹患リスクを増加させるかどうかについて確固たる結論を出すには、より厳密で質の高い研究が必要であることに変わりはない」と述べている。

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フィネレノンの効果の多くはアルブミン尿抑制作用が媒介

 非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンによる腎転帰および心血管転帰改善効果の多くは、アルブミン尿抑制作用が媒介した結果であることを示唆するデータが報告された。米インディアナ大学のRajiv Agarwal氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に12月5日掲載された。 フィネレノンは、慢性腎臓病(CKD)患者や2型糖尿病患者のアルブミン尿抑制という他覚所見の改善とともに、心腎イベント発生リスクを低下させ、転帰を改善し得ることが報告されている。ただし、心腎イベント抑制効果に対して、アルブミン尿抑制作用がどの程度関与しているのかは明らかにされていない。Agarwal氏らは、同薬の第3相臨床試験として実施された2件の研究のプールされたデータを用いた媒介分析を行い、この点を検討した。 解析対象研究には、48カ国のCKDまたは2型糖尿病患者1万2,512人が組み込まれ、フィネレノン群とプラセボ群に1対1で割り付けられていた。ベースラインにおいて、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)は中央値514mg/gCrだった。介入から4カ月間でのUACRの対数変換値(log UACR)の低下幅によってアルブミン尿抑制作用を評価し、介入後4年間での心腎イベントリスクに対する影響を定量化した。関連性を解析した心腎イベントは、複合腎関連イベント(血清クレアチニンの倍化、腎不全、腎関連死)、および複合心血管イベント(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全入院、心血管死)とした。 介入後にUACRが30%以上低下した患者は、フィネレノン群3,338人(53.2%)、プラセボ群1,684人(27.0%)だった。UACRを連続変数とする媒介分析の結果、複合腎関連イベント抑制効果の84%、複合心血管イベント抑制効果の37%は、UACRの低下が媒介したと計算された。また、UACR低下幅30%以上/未満で二分して施行した媒介分析では、同順に64%、26%がUACR低下によって媒介されたと計算された。なお、UACRの30%の低下は、末期腎不全リスクを有意に抑制するための一つの目安となることが報告されている。 以上より論文の結論は、「CKDまたは2型糖尿病の患者に対するフィネレノンを用いた早期介入による腎転帰改善効果の多くは、アルブミン尿抑制作用によって媒介されており、心血管転機改善効果に対するアルブミン尿抑制作用の媒介効果は中程度と言える」と総括されている。なお、「この結果を、アルブミン尿抑制作用を有する他の薬剤に外挿することはできない」との留意事項が付け加えられている。 また著者らは、「われわれの研究結果は、CKD患者や2型糖尿病患者に対する治療開始後にUACRをモニタリングすることの重要性を強調している。UACRの変化は早期介入効果のサロゲートマーカーであって、腎臓および心血管に対する将来的なメリットを評価し、長期予後の予測に利用できる可能性がある」とも述べている。 なお、本研究にはフィネレノンの製造元であるバイエル社が資金を提供した。

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2023年12月期 決算説明

2023年度実績及び2024年度予想について   :代表取締役社長 COO 藤井勝博中期計画2025の評価及び今後の方向性について:代表取締役会長 CEO 大野元泰※IRページは こちら からお戻りいただけます※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。※IRページは こちら からお戻りいただけます.banAdGroup{display:none;}

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2月14日 予防接種記念日【今日は何の日?】

【2月14日 予防接種記念日】〔由来〕1790(寛政2)年の今日、秋月藩(福岡県朝倉市)の藩医・緒方春朔が、初めて天然痘の人痘種痘を行い成功させたことから、「予防接種は秋月藩から始まった」キャンペーン推進協議会が制定した。関連コンテンツインフルエンザ【今、知っておきたいワクチンの話】肺炎球菌ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】インフルエンザワクチン(1)鶏卵アレルギー【一目でわかる診療ビフォーアフター】コロナワクチン、2024年度より65歳以上に年1回の定期接種へ/厚労省新型コロナワクチン、午前に打つと効果が高い?

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第199回 脳神経外科の度重なる医療過誤を黙殺してきた京都第一赤十字病院、背後にまたまたあの医大の影(前編)

京都市が京都第一赤十字病院に対して改善を求める行政指導こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は久しぶりに奥多摩に行って来ました。真冬のちょうどこの時期、度々訪れている六ツ石山(1,479m)です。昨年は頂上でも積雪がほとんどなく地球温暖化を嘆いたのですが、今年は、先週月曜日に降った大雪のお陰で、麓から雪がたっぷり残っており、快適な冬山登山を楽しむことができました。今週から一気に暖かくなるそうですが、春が来る前に、もう1回くらい冬型の気圧配置の下、南岸低気圧が通過しないかと期待しています。さて、今回は、患者に対する手術の説明や診療記録の取り扱いが不適切だったとして京都市保健所が京都第一赤十字病院(京都市東山区、池田 栄人院長)に対して改善を求める行政指導を行ったというニュースを取り上げます。患者の死亡例も含む不適切とされた複数の事例は最近のものではなく、3年近く前に起こったものです。なぜ今ごろになって表沙汰になり、京都市が動く事態となったのでしょうか。調べてみると、同病院や日本赤十字社の医療過誤や医療事故を隠蔽しようとする体質が浮かび上がってきました。不適切とされた事例はいずれも同病院の脳神経外科で確認1月19日付の京都新聞、NHK等の報道によれば、患者に対する手術の説明や診療記録の取り扱いが不適切だったとして、京都市(京都市保健所は京都市が設置)が18日までに、京都第一赤十字病院(以下、第一日赤)に対し、改善を求める行政指導をしていたことがわかったとのことです。これらの報道によれば、不適切とされた事例はいずれも同病院の脳神経外科で確認されたものです。2020年に行われた脳腫瘍の手術では、その後、予定外の再手術となった理由について、患者や家族に説明した記録が見つかりませんでした。さらに同年、手術後に死亡した別の患者の死亡診断書には「手術なし」と事実と異なる記載をしていました。また、2021年には、研修医の医療処置を受けた患者が死亡していますが、遺族には処置を施した説明をしていませんでした。こうした事例の中には、病院の医療安全管理委員会に適切に報告されず、事後の検証も十分行われていなかったケースもあるとのことです。以上の3件のほか、2019~21年に手術後などに9人が死亡し、他にも3人の患者で不適切な対応があったとの情報が市には寄せられており、京都市は同病院に対し、3月18日までに再検証した上、改めて報告するよう求めたとのことです。診療録の記載方法、治療法などについての患者への説明方法、患者の遺族に対する診療経過の説明方法などを指導各紙報道から約1週間後の1月24日、第一日赤は同病院のWebサイトに、「京都市保健所による行政指導について」というタイトルのお詫び文を掲載しました1)。それによれば、京都市保健所が同病院に対し指導および再検証を求める通知を行ったのは1月17日でした。指導内容は、診療録の記載方法、治療法などについての患者への説明方法、患者の遺族に対する診療経過の説明方法、死亡診断書の記載方法、医療安全管理委員会の運用方法などに関する指導などで、医療機関としては当然行っているべき基本的な事柄ばかりです。逆に言えば、それらのことがいかに杜撰に行われていたかがうかがい知れます。また、医療安全部門での把握や医療事故対応、管理者報告・院内共有、再発防止等について再検証を求めたのは、再検証し保健所に報告するものが12件、再検証のみ求められたものが49件もありました。「月刊Hanada」が3号連続で第一日赤の医療過誤の実態をスクープ京都市が外部からの情報提供を基に、第一日赤に医療法25条による立ち入り検査に入ったのは昨年10月で、計3回行われました。いったい立ち入り検査のきっかけは何だったのでしょうか。実は、2023年9月26日発売の「月刊Hanada」(飛鳥新社)の11月号に、「告発スクープ!正常脳を切除、禁忌の処置で死亡 医療事故を放置 日本赤十字社の闇」と題する記事が掲載されています。ジャーナリストの長谷川 学氏によるこの記事は、事故当時、第一日赤に在籍していた医師や患者家族等への取材に加え、患者家族が京都地方裁判所を通じて同病院に診療情報の開示請求を行って取得した証拠などを基に執筆されています。同記事には、京都市が「手術の説明や診療記録の取り扱いが不適切だった」と問題視したいくつかの事例について、その詳細が書かれています。脳腫瘍ではない正常脳の一部を摘出、脳圧が高まっている患者では禁忌の腰椎穿刺を研修医が単独で実施同記事によれば、2020年に行われた70代女性に対する脳腫瘍摘出手術では、一度目の手術で執刀医は箇所を間違えて開頭、脳腫瘍ではない正常な脳の一部を摘出していました。しかし医師たちはそのミスを患者、家族には伝えず、「もう一つ怪しいものがある」と再度手術を行い、腫瘍の摘出を行っていました。患者は今も後遺症に悩まされ続けているとのことです。2021年に起きた研修医の医療処置を受けた患者が死亡した事例は、静脈洞血栓症が疑われる20代女性に対し、脳圧が高まっている状態では禁忌とされる腰椎穿刺を行ってしまったというものです。脳圧亢進時は脳ヘルニアを起こす危険性があり禁忌とされていることを知らなかった研修医が、独断かつ単独で腰椎穿刺を行い、患者を死に至らしめていました。しかし、家族には「脳の細胞がやられているので助からない」と伝えられたのみで、腰椎穿刺を行ったことは伏せられていました。院内の安全対策委員会でも事故の調査委員会は設置されなかったとのことです。完全な隠蔽と言えます。「月刊Hanada」は続く12月号で「告発キャンペーン第2弾 京都府立医大の深い闇 正常脳を誤って摘出 第一日赤脳外科部長が謝罪」の記事を、さらに2023年1月号では「告発キャンペーン第3弾 正常脳を引っ掻き回し切除 凄まじい手術ビデオ 第一日赤に立入検査」の記事を掲載しています。同じく長谷川氏による執筆で、1月号に最初の告発記事を掲載してからの第一日赤の動き(正常脳摘出の患者・家族には謝罪するも、腰椎穿刺死亡の家族には報告・謝罪なし)や、その他の腰椎穿刺死亡例の存在、京都市が立ち入り検査に至った経緯、医療事故調査制度の限界などについて報じています。脳神経外科が2つ併存の異常さ、京都府立医大系列の第二脳神経外科で事故多発「月刊Hanada」の一連の記事を読んで驚いたのは、第一日赤で事故が多発していた当時、同病院には脳神経外科が2つあったという事実です(現在は1つ)。第一脳神経外科、第二脳神経外科と名付けられ、それぞれに部長、医局員がおり手術が行われていたとのことです。そして、事故が多発していたのは京都府立医大の脳神経外科からの派遣で構成された第二脳神経外科でした。府立医大系列ではない第一脳神経外科の部長(当時)は、事故が頻発していることに危機感を持ち、同病院の経営陣や日本赤十字社本社、さらには京都府立医大の脳神経外科などに幾度も注意喚起を行い、改善を求めたものの、事態は一向に改善されなかったのだそうです。「月刊Hanada」の記事によれば、今回の京都市の立ち入り検査は、この元部長が、同誌11月号の報道をきっかけとして、10月に市に公益通報を行ったことによるものだそうです。同誌の報道だけでは第一日赤は動こうとせず、京都市に対する公益通報が行われ、立ち入り検査が入って初めて、一部の事故は表沙汰になり、患者にも事実が伝えられたわけです。過誤や事故の原因を究明しようともせず、ただ隠蔽していた第一日赤現行の医療事故調査制度は、すべての医療機関に対して、医療事故で患者が死亡した場合、第三者機関である医療事故調査・支援センターに報告することや、原因を調査することなどを義務付けています。しかし、報告や調査を行うケースに該当するかどうかは医療機関の院長等の判断に任されています。そうした、医師に”甘い”とも言える運用ルールが、過誤や事故の隠蔽につながっていることが最近問題視されています。一連の報道を読むと、過誤や事故の原因を究明しようともせず、ただ隠蔽していた第一日赤の悪質さは度を越しているように感じます。それにしても、一昨年、大津市民病院の医師大量退職事件に関連して京都府立医大のジッツ戦略についてはこの連載でも幾度か取り上げましたが(「第121回 大量退職の市立大津市民病院その後、今まことしやかに噂されるもう一つの“真相”」、ほか)、今回の第一日赤の件でも同大が絡んでいる点が、なかなか興味深いところです(この項続く)。参考1)京都市保健所による行政指導について/京都第一赤十字病院

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日本の大学で医学部長や病院長になる人の特徴は?

 日本の医療機関における重要なリーダーである医学部長と大学病院長について、性別、出身大学、専門領域などの傾向を調べるため、島根大学およびミシガン大学の和足 孝之氏らの研究グループが調査を実施した。その結果、日本の82大学の医学部長と病院長はすべて男性で、日本の医学部を卒業し、博士号を取得していることなどが示された。JAMA Network Open誌2024年1月11日号Research Letterでの報告。 本調査では、2022年6月1日時点で文部科学省に認可されている全国82校の国公私立大学について、医学部長および病院長を特定し、性別、医学部卒業からの年数、出身大学、専門領域、研究分野、博士号の取得歴などについて記述統計による解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・82大学の医学部長82人および病院長82人の計164人はすべて男性で、日本の医学部を卒業していた。・全員が博士号を取得し、そのうち98.8%が基礎医学研究であった。・卒後年数の中央値は38年(IQR 36~40)で、年齢は約63~64歳に相当する。・医学部長および病院長の専門は内科が最も多く(37人[22.6%])、次いで外科(30人[18.3%])、基礎医学(14人[8.5%])、泌尿器科(10人[6.1%])であった。・医学部長では基礎医学・病理学の教員であることが最も多く(22人[26.8%])、病院長では外科の教員であることが最も多かった(51人[62.2%])。・旧帝国大学7校および上位17校と、そのほかの大学を比較すると、医学部長や病院長は、現在の所属校の卒業生であることが多く、かつ旧帝国大学の卒業生であることが多かった。・国公立校と私立校を比較した場合にも、OBや旧帝国大学出身者の割合が高いことが示された。 著者らは本結果について、「日本の大学医学部および大学病院には女性のリーダーが不在であり、リーダーの多様性が欠如していることが明らかになった。これは日本に限ったことではなく、米国では女性の医学部長が11~13%である。本結果は医学学会の会長の年功序列とジェンダーバイアスを示す先行研究と一致している。さらに、社会医学(経営学、公衆衛生学、医学教育、医療の質、患者の安全など)の学位を持つ高位のリーダーが少ないことも反省すべき点である。こうした顕著な傾向は、専門知識や教育法などの社会への普及を制限する可能性があることから、改善に取り組まなければならない」とまとめている。

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