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片頭痛患者のアルコール制限は必要か?

 アルコールは、世界中で広く消費されている飲料である。一方、片頭痛、緊張型頭痛(TTH)、そのほかの一次性頭痛を含む頭痛は、有病率が非常に高い。疫学研究においてアルコール摂取と頭痛の相関関係が示されているが、特定の病態生理学的メカニズムはいまだに解明されていない。ポーランド・ワルシャワ医科大学のAnna Zdunska氏らは、さまざまな頭痛の誘因となるアルコールの問題、頭痛を有する患者のアルコール摂取について報告した論文、アルコールと頭痛の病態生理学的および臨床的側面を扱った論文をレビューした。Nutrients誌2025年11月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・本レビューにおいて、アルコールは片頭痛および非片頭痛性の頭痛のいずれにも影響を及ぼすと結論付けられた。・二次性頭痛に分類されるアルコール誘発頭痛は、拍動性の両側性頭痛で、身体活動によって悪化し、アルコール摂取によって誘発される。・TTHはアルコール摂取によって誘発される可能性があり、TTH患者は片頭痛患者よりもアルコール関連の問題を抱えている。・群発頭痛(CH)はアルコールによって引き起こされることが多いが、驚くべきことに多くのCH患者は発作中であってもアルコールを摂取していた。・アルコールと片頭痛との関係は複雑であり、アルコール飲料に含まれる多くの成分が痛みの誘発に影響を及ぼし、片頭痛発作の原因となる可能性が示唆された。・赤ワインは片頭痛発作の誘因として最も頻繁に挙げられるアルコール飲料の1つであるが、少数のプロスペクティブ研究においては必ずしもこの知見が裏付けられているわけではない。・アルコールの安全な摂取量は存在しないため、できるだけアルコール摂取を避けることが推奨される。

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高用量リファンピシン、結核性髄膜炎の予後を改善するか/NEJM

 結核性髄膜炎患者に対する治療において、リファンピシンの高用量投与は標準用量投与と比較して6ヵ月以内の死亡率を改善せず、有害な作用をもたらす可能性も否定できないことが、ウガンダ・Makerere UniversityのDavid B. Meya氏らHARVEST Trial Teamが実施した「HARVEST試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年12月18・25日号に掲載された。3ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 HARVEST試験は、インドネシア、南アフリカ、ウガンダの9ヵ所の病院で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり(英国医学研究審議会[MRC]などの助成を受けた)、2021年3月~2024年7月に成人(18歳以上)の結核性髄膜炎患者499例(ITT集団)を登録した。 被験者を、標準用量のイソニアジド+リファンピシン(10mg/kg/日)+エタンブトール+ピラジナミド(配合錠)に加え、追加リファンピシン錠(総投与量35mg/kg/日)を連日経口投与する群(高用量群、249例)、またはプラセボを投与する群(標準用量群、250例)のいずれかに無作為に割り付け、8週間投与した。両群とも、9~12ヵ月の治療期間の残りの期間は標準治療を受けた。 主要アウトカムは、無作為化から6ヵ月以内の死亡であった。 ITT集団(499例)の年齢中央値は37歳(四分位範囲[IQR]:28~45)で、222例(44.5%)が女性であった。428例(85.8%)はdefinite/probableの結核性髄膜炎だった。また、306例(61.3%)がMRC疾患重症度分類のグレード2で、304例(60.9%)はHIV感染者であった。ベースラインで348例(69.7%)が抗結核治療(中央値で3日間)を受け、473例(94.8%)がグルココルチコイドを処方されていた。サブグループ、副次アウトカムにも有益性はない 無作為化から6ヵ月以内の死亡(主要アウトカム)は、高用量群で109例(Kaplan-Meier推定値44.6%)、標準用量群で100例(40.7%)に発生し、両群間で有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.89~1.54、p=0.25)。 また、6ヵ月以内に死亡した被験者の死亡までの期間中央値は、高用量群が13日(IQR:4~39)、標準用量群は24日(6~56)だった。 サブグループ解析でも、高用量群で有益な作用を示すエビデンスは認めなかった。高用量群で死亡率が高いサブグループとして、ベースラインで抗レトロウイルス療法(ART)を受けていたHIVの被験者(高用量群42%vs. 標準用量群25%、HR:2.01、95%CI:1.07~3.78)と、脳脊髄液(CSF)中の白血球数が<5/mm3の被験者(59%vs.36%、2.01、1.14~3.54)を認めた。 Kaplan-Meier法による12ヵ月時の死亡率(高用量群47.0%vs.標準用量群43.7%、HR:1.14、95%CI:0.88~1.49)や、24週時の修正Rankinスケールスコア(オッズ比:0.80、95%CI:0.58~1.11)にも両群間で有意差はみられなかった。また、他の副次アウトカム(Liverpool Outcomeスコア、グラスゴー・コーマ・スケールスコアなど)にも、両群間で有意差はなかった。新たな安全性シグナルの発現はない 新たな安全性シグナルは観察されなかった。重篤な有害事象(高用量群33.7%vs.標準用量群40.4%、p=0.12)の頻度は両群で同程度だった。グレード3~5の誤嚥性肺炎(6.4%vs.1.6%、p=0.006)が、高用量群で多く発生した。 グレード3/4の肝イベントのうち、総ビリルビン値の上昇(≧2.6×基準範囲上限[ULN]、9.6%vs.3.6%、p=0.007)が高用量群で高頻度にみられた。グレード3/4の薬剤性肝障害(8.0%vs.4.4%、p=0.09)は高用量群で頻度が高い傾向を認めたが、薬剤性肝障害による死亡は両群とも発生しなかった。 著者は、「高用量リファンピシンによる有益性が得られなかった説明として、次の2点が挙げられる。(1)高用量群では、肝代謝の誘導がより強かったため、グルココルチコイドの曝露量が低かった可能性がある、(2)高用量リファンピシンによるマイコバクテリアのより迅速な殺菌が、理論上は、より強い(有害な)免疫学的反応を引き起こした可能性がある」としている。

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リスクベースvs.年1回の乳がん検診、乳がん発生率や生検率を比較/JAMA

 集団ベースの遺伝子検査を含むリスクに基づく乳がん検診について、StageIIB以上の乳がん発生率が従来の年1回の検診に対し非劣性で、生検率は低減しないものの、個々のリスクに基づく検診の強度、検診法、開始年齢の層別化の安全にもつながることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLaura J. Esserman氏らが実施した「WISDOM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年12月12日号で報告された。米国の実践的無作為化臨床試験 WISDOM試験は、全米50州で行われた実践的な並行群間無作為化臨床試験であり、2016年9月~2023年2月に、40~74歳で、乳がんや非浸潤性乳管がん(DCIS)の既往歴がなく、予防的両側乳房切除術を受けていない女性2万8,372人を登録した(Patient-Centered Outcomes Research Institute[PCORI]などの助成を受けた)。 被験者を、リスクに基づく乳がん検診を受ける群(リスクベース群、1万4,212人)、または年次乳がん検診を受ける群(年次群、1万4,160人)に無作為に割り付けた。すべての研究手順はオンラインのプラットフォーム経由で行った。無作為化を辞退して検診法を自分で選択した女性は観察コホートに登録した。 リスク評価には、9つの疾患感受性遺伝子、多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score:PRS)、Breast Cancer Surveillance Consortium(BCSC)のバージョン2のモデルを用いた。 リスクベース群は、次の4つのリスク別の推奨事項のいずれか1つを受けた。(1)最高リスク(5年リスクが6%以上で、高浸透率の病原性変異を有する):6ヵ月ごとのマンモグラフィまたはMRIによる交互の検査、カウンセリング、(2)高リスク(年齢別リスクの上位2.5パーセンタイル):年1回のマンモグラフィとリスク低減カウンセリング、(3)平均的リスク:2年ごとのマンモグラフィ、(4)低リスク(40~49歳で、5年リスクが1.3%未満):リスクが1.3%以上になるか、50歳に達するまで検診は不要。 主要複合評価項目は、StageIIB以上の乳がんの発生の非劣性と、生検率の低減に関する優越性とした。StageIIB以上の乳がん発生については、両群間の絶対差の両側95%信頼区間(CI)の上限値が10万人年当たり50未満の場合に、リスクベース群は非劣性と見なした。生検率は低減せず 全体の平均年齢は54(SD 9.6)歳で、非ヒスパニック系白人が77%を占めた。リスクベース群の内訳は、最高リスクが2%、高リスクが8%、平均的リスクが63%、低リスクが27%であった。追跡期間中央値は5.1年で、この間に523件の乳がん(浸潤がん408件[78%]、DCIS 115件[22%])が発生した。 StageIIB以上の乳がんは52件(リスクベース群21件、年次群31件)発生し、リスクベース群の年次群に対する非劣性が示された(リスクベース群30.0[95%CI:16.3~43.8]/10万人年vs.年次群48.0[95%CI:30.1~65.5]/10万人年、率差:-18.0[95%CI:-40.2~4.1]/10万人年、非劣性のp<0.001)。 乳房生検率は、リスクベース群で有意な低減を示さなかった(リスクベース群1,029件vs.年次群943件、率差:98.7[95%CI:-17.9~215.3]/10万人年、優越性のp=0.10)。一方、マンモグラフィの施行数はリスクベース群で少なかった(3万2,332件vs.3万4,751件、-3,835.9[-4,516.8~-3,154.9]/10万人年)。観察コホートの89%がリスクベースを選択 副次評価項目であるStageIIA以上の乳がんは、リスクベース群の非劣性の基準(群間差の95%CI上限値<100/10万人年)を満たした(率差:-28.6[95%CI:-64.5~7.3]/10万人年)。浸潤性乳がん、DCISの診断率はいずれも両群間で同程度であった。 リスクベース群におけるがんの発生率、生検、マンモグラフィ、MRIの施行率は、リスクカテゴリーが上昇するに従って増加した。たとえば、浸潤性乳がんの発生率は、10万人/年当たり最高リスクで1,279、高リスクで428、平均的リスクで233、低リスクで169だった。 なお、これらの無作為化コホートとは別に、自分で検診法を決定した観察コホート(1万8,031人)のうち、1万5,980人(89%)がリスクベースの乳がん検診を選択した。 著者は、「リスクに基づく乳がん検診は、女性にとって安全かつ受容可能であり、プレシジョン・メディシン(精密医療)時代に、検診の近代化の機会を提供する」「次のプラットフォームであるWISDOM 2.0では、サブタイプ別の祖先集団に基づくリスク評価のためのPRSと、画像診断によるAIを使ったリスク測定値を活用する取り組みが進行中である」としている。

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親のうつ病の特定の症状は子どもの報酬処理に影響か

 親にうつ病があると、その子どももうつ病を発症しやすいことが知られているが、こうしたリスクは、うつ病のある特定の症状に関連している可能性のあることが、新たな研究で示唆された。物事を楽しめない、あるいは物事に興味を持てないといったタイプの親の症状は、周囲で起きていることに対する子どもの反応の仕方に影響を与え得ることが示されたという。米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校(SUNY-BU)気分障害研究所のBrandon Gibb氏とElana Israel氏によるこの研究の詳細は、「Journal of Experimental Child Psychology」2026年2月号に掲載された。 Gibb氏らによると、子どもの脳が肯定あるいは否定的なフィードバックにどのように反応するかには、親のうつ病が影響を及ぼすことがすでに明らかにされている。その原因に、物事に対する興味や喜びが失われる状態である「アンヘドニア(無快感症)」と呼ばれるうつ病の症状が関わっている可能性があるとGibb氏らは言う。 Gibb氏らは今回の研究で、7〜11歳の子どもとその親217組を対象に実験を行った。この実験は、親のアンヘドニアの症状が、子どもの報酬系における肯定的あるいは否定的なフィードバック処理にどのような影響を与えるのかを明らかにする目的で計画された。 Israel氏は、「この研究は、物事への興味や関心が薄れ、喜びを感じにくくなるというリスク要因がある場合、それが環境からのフィードバックに対する脳の反応の仕方に反映される可能性があるという考え方に基づいている」と説明している。また同氏は、「親に強いアンヘドニアを伴ううつ病があると、その子どもでは反応が弱くなると予想され、その一方で他のうつ病の症状は、理論的にはこの特定の脳反応にはそれほど強く関連しないはずだ」とニュースリリースの中で述べている。 実験では、子どもに2枚の扉を見せ、向こう側に賞金がある扉を当てるよう指示した。正解の扉を選ぶと賞金が得られ、間違えると失う仕組みだった。その結果、親のアンヘドニアの症状のレベルが高いほど、子どもは賞金を獲得した場合でも、逃した場合でも、その反応は鈍くなる傾向が認められた。一方、アンヘドニアを伴わないうつ病の症状レベルが高い親の場合では、子どもの反応が鈍化する傾向は見られなかった。 Israel氏は、「この結果から言えるのは、親のアンヘドニアに特有の何かが子どもの神経反応に影響を与える可能性があるということだ。さらに、うつ病の中核的特徴である興味や喜びの喪失、関心の低下に陥るリスクが高い子どもの特定につながる研究結果でもある」と述べている。 研究チームは、今後の研究課題として、アンヘドニアの症状がある親が治療を受けたり、状態が改善し始めたりした場合に、家族の相互作用がどのように変化するのかを調べることを挙げている。また、同級生からの社会的フィードバックなど他の種類のフィードバックに対する子どもの反応にも親のうつ病による影響があるのかどうかについて検討することが重要であると述べている。 Israel氏は、「前向きな気分や関心、良好な親子関係の強化を目的とした介入について検討している研究者もいる。今回の知見を活かして、そのような介入による効果が得られる可能性が最も高い家族を特定できるかどうかを検証することが重要だ」と述べている。

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パートナーとの親密な関係性は心疾患患者の回復を促す

 心臓は、特にバレンタインデーの時期になると「愛」と結び付けて語られることが多いが、実際、両者の関連は思っている以上に深いかもしれない。新たな研究で、愛するパートナーの支えは、心筋梗塞や心不全などの心疾患による緊急事態を経験した人の回復を大きく改善する可能性のあることが示された。オタワ心臓研究所(カナダ)のHeather Tulloch氏らによるこの研究結果は、「Canadian Journal of Cardiology」に12月15日掲載された。 この結果を踏まえ、研究グループは、心臓リハビリテーションプログラムには、患者の心臓の健康を支える役割を果たしてくれる親密なパートナーを含めるべきだと提言している。Tulloch氏は、「患者の健康行動やメンタルヘルス、さらに心血管アウトカムの改善を促すには、心臓の治療に加え、関係性を育むことが重要だ。それにより、回復中の患者の情緒的・社会的適応が強化され、最終的にはより良い健康行動につながる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 本研究では、心疾患患者1,444人(男性77%)とそのパートナーを対象とした過去の16件のランダム化比較試験を対象に、患者とパートナーの双方が関与するカップルベースの介入が修正可能な心血管リスク因子、心血管疾患アウトカム、メンタルヘルス、および関係性の質に及ぼす影響を評価した。介入では、心臓の健康に良い食事を用意したり、定期的な運動を促したり、処方薬を確実に服用するようにするなど、心疾患患者を支える上でパートナーが果たす重要な役割に焦点が当てられていた。 解析の結果、レビュー対象となった研究の77%において、パートナーが介入に参加し支援することで、患者の健康行動が改善していた。一方、心血管アウトカムについては、血中脂質濃度や医療の利用など一部の指標に改善が認められたものの、結果は一貫していなかった。また、メンタルヘルスに対する効果も結果は一貫していなかった。さらに、関係性の質について評価していた研究は3件のみで、有意な改善は確認されなかった。 Tulloch氏は、「心疾患がきっかけで絆が深まるカップルもいるが、多くの場合、それは2人の関係性にとっても、当事者それぞれにとっても大きな試練になる。われわれは長年、心疾患は患者にだけ起こる問題ではなく、カップルに生じる問題であることを学んできた」と話している。 研究グループは、カップル参加型の心臓リハビリテーションプログラムについて、さらなる研究が必要だと結論付けている。Tulloch氏は、「カップルが心疾患により良く対処し、心身と関係性の双方の健康を高めるために、パートナーを能動的な参加者として含め、患者とそのパートナーの関係性の中で生じている問題に実質的に対処する介入を開発・検証する必要がある」と述べている。

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宅配食で血糖コントロールが改善する

 糖尿病の管理に適した宅配食が、血糖コントロールの改善につながることを示した研究結果が報告された。米アーカンソー大学のEliza Short氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Nutrition Education and Behavior」12月号に掲載された。 この研究では、宅配食を12週間利用した糖尿病患者は、HbA1cが有意に低下した。一方で、食事の質が健康的か否かを表す指標(Healthy Eating Index-2015〔HEI-2015〕)には有意な変化が見られなかった。このことから研究者らは、糖尿病患者が普段、非健康的な食品を選択して食べているとは言えず、むしろ、食品を宅配することによって、健康的な食品を手軽に入手できるようになることが、血糖コントロール状態の違いを生んだのではないかと考えている。 論文の筆頭著者であるShort氏は、「明らかになった結果は、食料不安を抱え、交通アクセスの不便さといった障壁を抱えている人々の糖尿病管理に、目に見える改善をもたらすためには、個々の患者に合わせて調整された食品を自宅に配達するという方法が有効である可能性を示している」と研究成果を総括。また、「多くの2型糖尿病患者にとって、健康的な食品を確実に入手できるということは、単に便利であるということにとどまらず、不可欠なヘルスケアとも言える」と、宅配食の意義を強調している。 この研究には、アーカンソー州内の五つのフードパントリー(食料不安を抱えている人に無償または低価格で食品を提供する支援活動)の利用者の中から、101人の2型糖尿病患者(平均年齢57.1±10.6歳、女性67.3%)が参加した。参加者には12週間にわたって毎週、食品ボックスを宅配。その食品ボックスの中身は、2019年の米国糖尿病学会(ADA)の食事療法ガイドラインに準拠し、でんぷん質の少ない野菜、全粒穀物、タンパク質食品、新鮮な果物などで構成されていた。 また、食品ボックスには、レシピおよび、そのレシピどおりに調理するために必要なその他の食材も含まれていた。さらに、糖尿病自己管理のための教育用資材も同梱されており、それらの資材は英語だけでなく、スペイン語、マーシャル語で書かれていた(同州には北太平洋マーシャル諸島出身者が多い)。研究期間中97%の参加者が、これらの食品と資材を完全に受け取ることができた。 宅配食を開始した時点のHbA1cは平均9.9±2.3%だった。これが宅配開始12週間後には9.1±2.0%となり、共変量を調整後に0.56パーセントポイントの有意な低下が確認された(P=0.01)。HEI-2015は開始時点が59.9±16.9、12週間後が59.5±13.0で有意な変化がなかった(P=0.47)。 研究者らは、「食習慣が発症リスクに関連している疾患の予防・治療にとって、栄養価の高い食品は『薬』とも言える。これからは、このような考え方に基づく領域が成長していくのではないか。本研究結果はその発展に寄与し得ると考えられる」と述べている。また、「今後の研究では、こうしたプログラムの参加者の健康に最も影響を与えるのはどの要素なのか(食品を宅配することか、教育用資材か、あるいはその両方なのか)を明らかにする必要がある」と付け加えている。

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多くの患者はPHQの質問内容を正しく解釈できていない

 診察前に渡される質問票に記入しているとき、意味がよく分からず目がうつろになった経験はないだろうか。それは、あなただけではないようだ。症状に関する質問票に患者が混乱することは珍しくなく、それが身体的疾患や精神疾患の診断や治療の妨げになっている可能性のあることが、新たな研究で示された。米アリゾナ大学ツーソン校心理学分野のZachary Cohen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Psychiatry」に12月17日掲載された。 この研究は、うつ病の重症度評価ツールとして広く用いられているPatient Health Questionnaire(PHQ)に焦点を当てたもの。PHQには、PHQ-2、PHQ-8、PHQ-9など質問項目の数に応じて複数のバージョンがある。しかし、最もよく用いられているPHQ-9でも、質問内容が患者にとって分かりにくい場合があると研究グループは指摘している。この研究では、PHQの質問が症状にどの程度、悩まされたかを尋ねる一方で、回答選択肢は症状の発生頻度に焦点を当てている点に着目し、参加者がこれらの質問と選択肢をどのように理解して反応したかが検討された。 Cohen氏らは、Amazon Mechanical Turk(MTurk)で募集した一般集団503人(平均年齢40.63歳)およびOPTIMA研究の参加者である中等度から重度の抑うつを有する349人(平均年齢33.44歳)を対象に、PHQ-8に回答してもらった。その後、PHQ-8の指示内容をどのように解釈したかを、以下の3つの質問で評価した。まず、「ほぼ毎日眠り過ぎているが、そのことに悩まされていない」という睡眠に関する仮想シナリオを参加者に考えてもらい、その上でPHQ-8の「眠り過ぎ」の質問に回答してもらった。この質問では、「0(全くない)」の回答が「眠り過ぎていることに悩まされていない」を意味する。次に、先の回答は、症状に悩まされた程度に基づいたのか、症状の発生頻度に基づいたのか、それともその両方かを尋ねた。最後に、再びPHQに答える際には2つ目の質問で挙げた3つのうちどれを基準に回答するかと尋ねた。 その結果、仮想シナリオに関してPHQ-8の質問の意図を正しく理解できていた、つまり、症状にどの程度悩まされたかを回答していた人の割合は、MTurk群で54.7%、OPTIMA群では15.5%にとどまっていた。この質問についてCohen氏は、「PHQ-8の指示文を文字通り読めば、この場合は『全くない』と答えるはずだ」と指摘している。また、2つ目の質問について、「症状にどの程度悩まされたか」に基づいて回答したと答えた人の割合は、MTurk群で21.3%、OPTIMA群で11.7%にとどまり、さらに、次回以降も同じ解釈をすると答えた人の割合はそれぞれ22.3%と9.9%であった。 Cohen氏は、「これらの結果は、PHQによる評価は患者が実際に経験していることを正確に反映していないことを示唆している。われわれは多くの場合、患者の抑うつ症状について把握するためにPHQを使う。そうした意味で、『どの程度悩まされていたか』という点は非常に重要だ」と話す。同氏は、「例えば、GLP-1受容体作動薬による減量治療が急増しているが、オゼンピック使用者の食欲低下はうつ症状として数えるべきではない。それが薬を使っている主な理由なのだから」と述べ、「PHQが普及している状況に鑑みると、こうした誤解や理解のずれは、非常に広範な問題につながりかねない」と懸念を示している。 Cohen氏はさらに、「同じ経験をしているのに、人によって正反対の回答をするという状況が望ましいとは考えにくい。それが良い結果をもたらすはずがない。この論文は、実際にそれが起きていること、そしてそれが問題になり得ることを示した」と述べている。その上で同氏は、「今後の研究では、患者にとってより分かりやすくなるよう、質問文の言い回しを変更することに焦点を当てるべきだ」との考えを示している。

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肥満症の治療にアミリン受容体作動薬は登場するか?(解説:小川大輔氏)

 肥満症の治療において最も基本となるものが食事療法と運動療法であるが、これらに取り組んでも効果が不十分な場合は薬物療法が検討される。GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として開発されたが、体重減少効果もあるため近年は肥満症治療薬としても承認されている。GIPやGLP-1以外にも肥満症の新しい治療標的が探索されているが、その1つがアミリン(amylin、別名:IAPP)と呼ばれるホルモンである。 アミリンは、インスリンと共に膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、胃の動きを遅らせて糖の吸収を穏やかにする、あるいはグルカゴン分泌を抑制するなど、血糖値の調節に関わることが知られている。また脳に作用して満腹感を高める作用もあり、食欲抑制に重要な役割を果たしていると考えられている。アミリンの働きを模倣するアミリンアナログが糖尿病や肥満症の治療薬として開発され、米国ではすでにpramlintideが糖尿病の治療薬として承認されているが、作用時間が短く1日3回の注射製剤のため使用は限定的である。 eloralintideは長時間作用の選択的アミリン受容体作動薬で、今回肥満患者を対象とした第II相試験の結果が発表された1)。プラセボ群と比較しeloralintide投与群では48週後の体重の平均変化率が9~20%減少と、有意な体重減少効果を認めた。主な有害事象としては悪心、便秘、下痢などの消化器症状と疲労であった。 肥満症の治療薬としてGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬がすでに使用されており、今後「トリプルアゴニスト」と呼ばれるGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬や、新規の経口GLP-1受容体作動薬が登場する予定である。アミリン受容体作動薬としては2021年にcagrilintideが第II相試験で肥満症に対して有効性が確認され2)、さらに2025年にcagrilintideとGLP-1受容体作動薬セマグルチドの配合薬が肥満・過体重の減量に効果があることが報告された3)。今後eloralintideを含め、アミリン受容体作動薬が肥満症の治療薬として日本で使用できるようになるか、引き続き注目したい。

509.

HPVワクチンは1回接種で十分な有効性がある可能性(解説:前田裕斗氏)

 本研究はコスタリカで12〜16歳の女子2万330人を対象とし、2価および9価HPVワクチンの1回接種が2回接種に対して非劣性かを検証した二重盲検RCTである。5年間の追跡の結果、2価・9価ワクチンいずれにおいても1回接種は2回接種に対して非劣性であり、HPV16/18型に対するワクチン有効率は全群で97%以上であった。この結果は試験開始後0、6ヵ月目の検査両方でHPV陰性であった人のみを新規感染の評価対象とした場合である。試験に組み入れられた女子のうち約13.2%が登録時点ですでに性的活動を開始していたと報告されており、これらの女子を含めた解析でもすべての群で92%以上の有効性を示していた。 日本において本研究結果を適用するためには、当然まず日本人における短期間の有効性について検討が必要である。一方で日本は勧奨接種が中止されていた時期があったこともあり接種率が依然低いことから、1回接種により免疫が十分つく可能性が示唆されたのは大変心強い結果といえるだろう。

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第277回 社会保障と税の一体改革へ「国民会議」月内設置/内閣

<先週の動き> 1.社会保障と税の一体改革へ「国民会議」月内設置/内閣 2.外国人医療費未収が拡大、入国審査と保険加入義務化を検討/政府 3.無資格アートメイクの摘発強化へ、通知で医師関与の重要性明確化/厚労省 4.18歳人口減が直撃、看護師不足が深刻化、医療提供体制の再設計迫られる 5.年末年始の電カル更新トラブル、大学病院で外来会計が長時間停止/神戸大 6.横浜の眼科医院が年末閉院 手術費前払い患者に不安広がる/横浜市 1.社会保障と税の一体改革へ「国民会議」月内設置/内閣高市 早苗首相は1月5日、伊勢神宮参拝後の年頭記者会見で、税と社会保障の一体改革を与野党・有識者で議論する超党派の「国民会議」を1月中に新設する方針を表明した。狙いは、税・社会保険料負担で苦しむ中低所得者の負担軽減と「所得に応じて手取りが増える」仕組み作りで、現金給付と税控除を組み合わせる「給付付き税額控除」の制度設計を主要議題に据える。国会運営では、参議院で与党が過半数に届かない状況を踏まえ、日本維新の会との連立合意を基礎にしつつ、国民民主党など野党にも協力を呼びかける考えを示した。早期の衆議院解散には慎重姿勢で、「物価高対策・経済対策の効果を国民が実感することが重要だ」と述べた。その一方で、立憲民主党は政府主導で議論が進むことを警戒し、「政党と政府で共同運営する枠組み」を求めるなど、テーマ設定や運営を巡って曲折も予想されている。医療現場にとっては、今後の議論が保険料負担の見直し、給付の在り方、歳出改革(医療費適正化を含む)などに波及し得ることが予想されている。診療報酬改定や医療提供体制改革と「別建て」ではなく、財源・負担の議論として並走する可能性があるため、国民会議の論点設定(低所得支援の範囲、財源、社会保険料の扱い)と、通常国会での与野党合意形成の行方が注目される。 参考 1) 高市首相、社会保障改革に向け「国民会議」を月内に新設…伊勢神宮参拝後の年頭記者会見で表明(読売新聞) 2) 立民、政府主導の進展警戒 社保国民会議、曲折予想も(共同通信) 3) 首相、政権運営へ結束要請 自民党の新年仕事始め(中日新聞) 2.外国人医療費未収が拡大、入国審査と保険加入義務化を検討/政府訪日外国人の増加に伴い、わが国の医療機関で外国人患者による医療費未収金が拡大している。厚生労働省の調査では、直近会計年度に外国人患者を受け入れた病院の約3割で未収金が発生し、総額は約13億円に達した。背景には、海外医療保険に加入せずに来日する短期滞在者が多いことや、受診前に医療費総額が提示されないわが国の医療制度への不慣れがあるとされる。政府は対策として、医療費を支払わずに帰国した外国人に対する入国審査の厳格化を進める方針で、現在「20万円以上」としている基準を、将来的に「1万円以上」へ引き下げる検討を行っている。さらに、2028年度導入を目指す電子渡航認証制度(JESTA)において、訪日前の民間医療保険加入を義務付ける案も浮上している。その一方で、国内在住外国人を巡っては「医療や年金で外国人が優遇されている」との言説も広がるが、調査では国民健康保険に占める外国人の医療費割合は1.4%程度にとどまり、加入者比率を下回る。若年層が多く、制度を支える側に回っている実態も指摘されている。政府は内閣官房に「外国人との秩序ある共生社会推進室」を設置し、医療費未払い、保険料未納への対応を強化する方針。医療現場では、概算費用の早期提示や通訳・調整役の配置など、受け入れ体制の整備と制度的対応の両立が課題となっている。 参考 1) 医療費払わない外国人が増 受け入れ病院の3割で未収金 保険入らず訪日、高額で出せず…(産経新聞) 2) 医療保険、渡航前審査に義務付け 外国人政策で政府検討(時事通信) 3) 「外国人優遇」は本当か?データで見る国民健康保険・国民年金の実態(大和総研) 3.無資格アートメイクの摘発強化へ、通知で医師関与の重要性明確化/厚労省アートメイク施術を巡り、厚生労働省は美容所などで無資格者が施術を行っている事例に対し、指導に従わない場合は警察への相談を含め厳正に対応するよう、都道府県など自治体に通知した。色素を付けた針で皮膚に色素を入れ、眉やアイラインなどを描くアートメイクは、名称を問わず医師でなければ行えない医療行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法違反に該当するという従来の解釈を改めて強調した形。アートメイクを巡っては、医療行為であるにもかかわらず、美容師などの無資格者が施術を行い、罰金刑の有罪判決を受けた事例も報告されている。今回の通知では、自治体が立入検査などで無資格施術を確認した場合、まず是正指導を行い、それでも改善がみられない場合や悪質なケースでは、警察に相談することが求められた。民放の報道によると、日本医科大学で美容後遺症外来を担当する朝日 林太郎氏は、「無資格者が施術を行うと、合併症やトラブルが起きた際に誰がどのように対応するのかわからない点が最大の問題だ。患者が路頭に迷わないためにも、医療の枠組みの中で行うことが重要」と指摘している。美容医療分野では、脱毛やHIFU(高密度焦点式超音波)などを含め、医療と美容の境界が曖昧な施術が広がってきた経緯がある。これまでに厚労省は2025年8月15日付の局長通知(医政発0815第21号)では、「医師の指示なしで看護師等が脱毛・アートメイク・HIFUなどを行うことを『違法な例』」として整理している。今回の通知では、アートメイクについて「医療行為である」と明確に線を引き、無資格施術に対する監視と対応を一段と強める姿勢を示したものといえる。参考までに2014〜15年に大阪で彫師が医師免許なしにタトゥーを行い起訴された事件で、最高裁判所(第二小法廷)は2020年9月16日、検察側の上告を棄却したため、タトゥーは「装飾・芸術」を目的とする行為として医療行為には当たらないと判断された一方、アートメイクは「外見の補正・代替」という医療性を帯びる行為であることから「医療行為」と判断されている。医療機関には、医師の関与や指示体制、説明・同意、トラブル時の対応を含めた適正な運用が、今後これまで以上に求められることになりそうだ。 参考 1) 美容所等におけるアートメイク施術について(厚労省) 2) 美容医療に関する取扱いについて(同) 3) 無資格「アートメイク」警察に相談を!厚労省が自治体に通知 美容後遺症外来の医師「医療の枠の中でやること大事」(フジテレビ) 4.18歳人口減が直撃、看護師不足が深刻化、医療提供体制の再設計迫られる18歳人口の急減が、医療人材供給に深刻な影響を及ぼし始めている。総務省の人口推計によると、2026年1月時点の新成人(18歳)は109万人で、統計開始以来2番目の少なさとなった。出生数は2010年代以降に減少が加速し、2024年には70万人を下回っており、若年人口の縮小が続いている。この影響を強く受けているのが看護師養成の現場である。たとえば、埼玉県では看護専門学校44校のうち少なくとも7校が学生募集を停止し、全国では募集停止・予定を含め98課程に上る。定員割れは常態化し、コロナ禍を境に看護師志望者は5年間で約5万5千人減少した。激務の印象が強まったことや、賃金・処遇改善の遅れが敬遠の背景にある。その結果、都市部を含めた病院現場で看護師不足が深刻化し、病床休止やICU稼働制限に追い込まれる事例が相次いでいる。東京都内の基幹病院でも、看護師配置基準を満たせず、救急患者を受け入れられない状況が生じている。賃金面では、看護師の給与は30代以降で他産業に逆転し、診療報酬の制約から上昇余地も乏しい。病棟勤務を離れ、美容医療など自由診療分野へ転職する動きも目立つ。専門家は、「二次医療圏で唯一の看護学校が失われることは地域医療に致命的だ」と警鐘を鳴らし、看護師派遣や機能集約を含めた「地域全体で医療を守る戦略」が不可欠だと指摘する。人口減少社会において、医療提供体制の維持には、痛みを伴う再編議論が避けられない局面に入っている。 参考 1) 「午(うま)年生まれ」と「新成人」の人口-令和8年 新年にちなんで-(総務省) 2) 18歳新成人は109万人 25年に並び2番目の少なさ(中日新聞) 3) 看護師不足で病床休止 学校は閉校 いったい何が…(NHK) 4) 埼玉県内の看護専門学校 本年度以降、7校が学生募集停止 志願者減少で経営難(東京新聞) 5.年末年始の電カル更新トラブル、大学病院で外来会計が長時間停止/神戸大神戸大学医学部附属病院(神戸市中央区)で1月5日午前10時ごろ、院内システム障害が発生し、外来診療後の会計処理が大幅に滞った。電子カルテシステムの更新が原因とみられ、健康保険資格をカードリーダーで確認できないケースが相次いだほか、会計処理が極めて遅延し、少なくとも数百人の患者がロビーに長時間滞留した。同院では年末年始の夜間を利用して電子カルテの更新作業を実施し、軽微な不具合を修正した上で年明けの診療を開始したが、診療開始後に想定外の不具合が顕在化した。とくに会計時の保険資格確認が不能となった影響は大きく、待ち時間が3時間を超えたことから、病院は午後3時ごろ、約300人を対象に「後日精算」という緊急措置を決定した。当日は約2千人の外来患者が来院していたという。病院側はサイバー攻撃の形跡や患者情報の流出は確認されていないと説明しており、6日午後時点でも完全復旧には至っていない。診療報酬請求や資格確認が医療DXに強く依存する中、基幹システム更新時のリスク管理や、障害発生時の業務継続体制(BCP)の重要性が改めて浮き彫りとなった。 参考 1) 神戸大病院でシステム障害、数百人以上がロビーに滞留 電子カルテの更新原因か(神戸新聞) 2) 神戸大病院でシステム障害 電カル更新が原因か 患者らが院内に滞留(CB news) 6.横浜の眼科医院が年末閉院 手術費前払い患者に不安広がる/横浜市横浜市戸塚区の眼科医院「戸塚駅前鈴木眼科」が2025年12月31日、十分な事前説明がないまま突然閉院し、患者の間に混乱が広がっている。医院には簡易な貼り紙が掲示されているだけで、公式な説明会や個別連絡はなく、前払いした診療費や手術費用の返還、カルテの扱い、今後の治療継続を巡って不安の声が相次いでいる。白内障や老眼治療の手術費用として、数十万円から170万円超を前払いしていた患者もおり、代理人弁護士から「返還は困難」とする書面を受け取ったケースもある。理事長の急逝が伝えられているが、閉院に至った経緯や患者対応の方針は明確に示されていない。同院を運営していた医療法人メビアは事業を停止し、事後処理を弁護士に一任した。東京商工リサーチによると、負債総額は約18億円に上り、2024年3月期は売上高約8億円を計上した一方で赤字が続き、5億円超の債務超過に陥っていた。人件費や設備費、家賃といった固定費負担が経営を圧迫していたとみられる。横浜市は現時点で廃業届を受理しておらず、患者に不利益が生じないよう医療法人側に適切な対応を求めるとともに、実態把握を進めている。前払い慣行の是非や、閉院時の説明責任、患者保護の仕組みの脆弱さが改めて問われる事態となっている。 参考 1) 横浜の眼科医院が突然の閉院、診療費の返還は見通せず 患者に困惑広がる(神奈川新聞) 2) メディアにも登場の有名眼科が突然閉院 困惑広がる…174万円前払い患者も(テレビ朝日) 3) 「戸塚駅前鈴木眼科」などを経営していた(医)メビア(神奈川)が弁護士一任(東京商工リサーチ)

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人気領域は「消耗戦」? 資産も名誉も手に入れる「裏道」の探し方【医師のためのお金の話】第100回

先日、所属する大学医局の忘年会に出席しました。卒後30年近くが過ぎ、同期の医師たちの立ち位置はほぼ固まり、皆が歩んできた人生の輪郭がはっきり見える時期になったように感じます。もちろん、まだこれから教授選に挑む者や、開業してさらに規模拡大を狙う者もいます。しかし、多くの同期は「自分が到達しうるキャリアの最高点」にすでにたどり着いている印象を受けました。改めて同期の軌跡を眺めると、学生時代に描いていた未来像とはまったく違う結果になっています。学生時代から優秀だった者は確かに早い時期から頭角を現しますが、30年が経過しても当時の輝きを保ち続けている人は決して多くありません。むしろ、学生時代は目立たなかった人間が、コツコツと実績を積み重ねて、気付けば頂点に立っている光景を目にします。大学同期の現状を見ると、世の中とはつくづくわからないものだと感じさせられます。成功者たちが採ったキャリア戦略は?さて、若い医師の方々にとっては、将来自分がどのようなキャリアパスを描けば良いか気になるところでしょう。医師の中でも、アカデミアを極めたい人もいれば、経済的な成功を重視する人もおり、目指す道は大きく異なります。しかし、名誉や経済的な豊かさで圧倒的に成功している人と、そうではない人の差が極端に表れるのも事実です。ここでは、成功者がどのような戦略を採ってきたのかを改めて考えたいと思います。成功者の定義は難しいですが、ここでは便宜上、社会的な成功を念頭に置いてみます。具体的には、大学教授、大きな病院の病院長、多店舗展開するクリニックの経営者など、同学年の10%程度のポジションに到達した人を「成功者」とします。成功者といっても、彼らは学生時代から突出して優秀だったわけではありません。卒後すぐの時期も、特別目立つ存在ではないことが多かったです。けれども、長い年月の中で「人とは違う道」を選び続けたことで、最終的には成功に至っています。成績優秀者がハマる「頂上決戦」の落とし穴一方、学生時代に成績優秀だった者は卒業後も「優秀」と評価され続け、常に優秀者同士の「頂上決戦」に身を置くことになります。そこへ駒を進めるのは、天性の才能に恵まれた優秀な医師だけです。しかし、ライバルが強力なため、相当な努力をしても大きな差をつけられない状況があちこちで見受けられます。この頂上決戦を勝ち抜くのは容易ではありません。いくら優秀であっても、メジャーな領域で得られるポストや名声は限られているからです。そのため、成績優秀だったほとんどの医師は、日の目を見ることなく、かつて思い描いた未来とは程遠い状況に陥っているケースが珍しくありません。残酷と言ってしまえばそれまでですが、人生を勝ち続けるのは意外なほど難しいと感じてしまいます。このように考えると、人生のキャリアパスにおいても、株式投資の格言「人の行く裏に道あり花の山」が成り立つのかもしれません。少なくとも、現時点で熾烈な競争環境に身を置いて、ガチンコ勝負を繰り返すことだけが、必ずしも得策とは言えないようです。競争を避けるという「生存戦略」このような結果になるのは、考えてみれば当然の帰結と言えるかもしれません。人間の能力には限界があり、個体差もさほど大きくはないからです。そのため、多くの人が殺到する「人気の領域」を目指すのは、必然的に激烈な競争に巻き込まれることを意味します。そこでは、いくら努力を重ねても報われない可能性が高まってしまうのです。ですから、現在脚光を浴びているような領域は、仮に莫大な高収入や名誉が約束されているように見えたとしても、少なくとも今から後発で参入すべきではないと私は考えます。むしろ、人気のない領域、いわゆる「不人気な場所」を目指して、そこで無駄な消耗戦をせずにトップになる。そのほうが、長い人生においては成功する確率が高いのではないでしょうか。実際、私自身も優秀な同期たちと真正面から競争することは早々に放棄して、「医師×投資家」「医師×起業家」という、当時としては非常に珍しいキャリアパスを歩むことになりました。非才の身ながら、それほど努力をしなくても、まずまずの結果を出せています。もちろん、これは単なる偶然の産物かもしれません。しかし「常に誰かに勝ち続けて頂点を目指す」という生き方から、ふと目をそらしてみる。それもまた、賢明な選択と言えるのではないでしょうか。

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事例39 ジャディアンス25mgの査定復活【斬らレセプト シーズン4】

解説事例の疾患に投与していたエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)錠(以下「同錠」)25mgが、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)を適用されて同錠10mgに減額査定になりました。添付文書から査定内容を調べたところ、同錠10mgには「慢性心不全」に適用がありますが、同錠25mgにはその適用がありません。医師に査定内容を報告したところ、「糖尿病確定の数値が出たため、糖尿病治療に増量した」との返答をいただきました。カルテを確認したところ、検査数値が「糖尿病」を示したことが医師の所見とともに記載されていました。査定理由が過剰であったため、「単なる過剰ではなく糖尿病が発現したための増量である」ことを、カルテの写しに検査値を添えて再審査請求を行ったところ復活しました。多くは病名不足を表すA事由(医学的に適応と認められないもの)の査定であれば、再審査請求を断念していたかもしれない事例でした。どのような査定であっても、カルテに簡潔明瞭に正しく記載があれば、それを根拠に再審査請求が可能であることが示唆される復活でした。以降は、査定があると、カルテ内容の写しをもって医師と再審査請求が可能かの協議を積極的に行うことにしています。

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「クリップ一辺倒」の終焉か?最新デバイスが僧帽弁治療を切り拓く【臨床留学通信 from Boston】第19回

「クリップ一辺倒」の終焉か?最新デバイスが僧帽弁治療を切り拓く執筆時点では年末ですが、米国ではクリスマスまでが盛り上がりのピークであり、年末年始は意外なほど静かです。大晦日まで仕事、元日のみ休日ですが、2日からまた仕事という具合です。ちょうど私のフェローシップも半分弱が経過しました。ここで、これまでの手技経験数を振り返ってみたいと思います。現在、フェローは2人体制ですが、以下の症例のうち約7割で私が第1フェロー(primary fellow)として手技を担当しています。また、デバイスが多岐にわたるため、第2フェロー(secondary fellow)としてscrub inすることで理解が深まると考えています。TAVR:169件(うちValve in Valve 22件)TMVR(経カテーテル僧帽弁置換術):3件(Edwards Lifesciences社のSapien valveをMitral valveに植え込む処置で、Valve in Valve、Valve in Ring、Valve in MACなど)MitraClip:52件TriClip:7件(双方僧帽弁・三尖弁逆流に対するクリップ術)Evoque(経皮的三尖弁置換術):4件PFO/ASD閉鎖術:15件Watchman/Amulet device(左心耳閉鎖術):17件私の所属するBeth Israel Deaconess Medical Center(BIDMC)は、米国でも数少ないElectrosurgery(電気手術)を積極的に行う施設です。たとえばTAVR時のValve in Valveで、既存の弁が冠動脈を閉塞するリスクがある場合、冠動脈ワイヤーで弁葉(leaflet)を貫通・切開してリスクを回避する処置も行います。それを僧帽弁のTMVRや、肥大型心筋症(HOCM)に対する心室中隔の切開などにも応用されます。ただしこれらの処置は、現時点での症例数は10件にも満たないため、半年を経過した今も、まだ「自分で完遂できる」とまでは言えません。こうした手技をより簡便にするデバイスの進化も目覚ましいものがあります。TAVRに関してはleaflet modification deviceの「ShortCut」というデバイスが米国では認可されています。この「大きなハサミ」のようなデバイスで切断することも可能です。また、現在治験段階にある僧帽弁置換専用デバイスの「Intrepid」や、2025年12月23日に米国食品医薬品局(FDA)に認可された「SAPIEN M3」などの登場により、これまでクリップ一辺倒だった僧帽弁治療がガラリと変わる可能性があります。近年、リウマチ熱による僧帽弁狭窄症(MS)は激減していますが、一方で僧帽弁輪石灰化(MAC)に伴うMSや逆流症(MR)は増加傾向にあります。MSを合併しているとクリップ術が適応外となるため、このような患者層にはM3のようなデバイスがかなり活躍するでしょう。渡米して8年目になりますが、新しい処置を学び、短期間でこれほど多くの症例を経験できる環境に感謝しています。現時点でシンプルなTAVRであれば確実にできるとして、6月のフェロー修了までに自立できるかが鍵だと考えています。2026年も気を引き締めて頑張っていこうと思います。

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抗コリン薬負荷と認知症リスクの評価に有用な予測ツールを検証

 抗コリン薬の使用は、認知機能低下などの副作用と関連している。英国・リバプール大学のInnocent Gerald Asiimwe氏らは、ベースライン時の抗コリン薬の投与量と認知症リスクとの関連性を調査し、抗コリン薬投与指数(ACMI)の外部検証を行った。Age and Ageing誌2025年10月30日号の報告。 2つの大規模前向きコホートであるUKバイオバンク(UKB、研究期間:2000〜15年、参加者:12万5,260例)および米国All of Us(AoU、研究期間:2000〜22年、参加者:9万2,047例)のデータを分析した。臨床的および遺伝的共変量を調整し、死亡を競合リスクとしてCox比例ハザードモデルを用いて、ACMIで算出されたベースライン時の年間抗コリン薬投与量と認知症リスクとの関連性を評価した。探索的遺伝子解析では、UKBにおけるアセチルコリンシグナル伝達経路遺伝子の候補遺伝子解析とAoUにおける多遺伝子ハザードスコアの開発を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおけるACMIリストに掲載されている88種類の薬剤のいずれかの使用は、認知症リスク上昇(UKBハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.09〜1.21、AoU:1.06、1.04〜1.09)および死亡率上昇(UKB:1.23、1.19〜1.27、AoU:1.16、1.13〜1.19)との関連が認められた。・APOEが認知症リスクに及ぼす遺伝的影響が示唆された(UKB[APOEε4 vs.ε3キャリア]HR:2.05、95%CI:1.86〜2.26、AoU:1.61、1.44〜1.80)。・有意な遺伝子と薬剤間の相互作用は認められなかった。 著者らは「2つの大規模コホートにおいて、ベースライン時のACMIスコアの高さが認知症および死亡リスクの上昇と関連していることから、ACMIの外部検証が成功したといえる。因果関係の推論はできないが、これらの知見は、リスク層別化のための予後予測ツールとして、またより安全な抗コリン薬使用に関する将来の研究に役立つ情報として、ACMIが潜在的に有用であることを裏付けている」としている。

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抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化には反対/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、1月7日に定例の記者会見を開催した。会見では、松本氏の年頭あいさつのほか、抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化に関するパブリックコメントへの意見、赤ひげ大賞の受賞者発表などが行われた。 松本氏は年頭のあいさつとして干支の「午」に触れ、自身が年男であることから「地域医療を守るという強い決意のもと、情熱的でかつエネルギッシュな1年としたい」と語った。また、箱根駅伝の青山学院大学の連覇を例に「選手への指導体制や人材育成、サポートなどが連覇に大切であり、これは医療にもつながる」と述べた。 2025年について参議院選挙や年末の補正予算編成、そして、令和8年度の診療報酬改定について振り返るとともに「OTC類似薬や高額療養費など、未解決の課題についても医療現場の意見が表明できる場に参加していきたい」と語った。 そして、2026年の抱負については、高市 早苗総理大臣が先ごろ表明した「国民会議」の立ち上げについて、さまざまな手段で医師会の意見を主張していくこと、現在最多の会員数17万8,593人を本年さらに更新できるよう、「引き続き努力し、会員数だけではなく、会員全体の力もしっかりと伸ばしていきたい」と抱負を述べた。個人にリスクを負わせるスイッチOTC化には反対 「抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化に関するパブリックコメント」について、常任理事の今村 英仁氏(公益財団法人慈愛会 理事長)が、医師会の考えを説明した。「抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化」について、医師会は反対の意を表明すると述べた。 その理由として以下の6つの項目を挙げた。・インフルエンザは、発熱やせきなどの軽症例にとどまらず、肺炎や脳症などの重篤な合併症を引き起こしうる感染症である。そのために抗インフルエンザ薬は、発症時期や症状の経過、基礎疾患の有無、年齢などを総合的に評価した上で、医師の管理下で適正に使用されるべき医薬品である。・スイッチOTC化により、医師の診断を伴わない患者の自己判断使用が拡大すると、「インフルエンザ以外の疾患に対する誤用」「投与開始時期を誤ることによる効果低下」「受診遅れによる重症化リスクの増大」などのさまざまな事態が懸念される。・抗インフルエンザ薬の不適切使用は、耐性ウイルス出現のリスクを高め、社会全体の感染症対策を脅かす公衆衛生上の課題になる。・高齢者や小児、妊婦、基礎疾患を有する方など、重症化リスクの高い人々に対しては、抗ウイルス薬の使用可否や投与方法を慎重に判断する必要があるが、こうしたリスク評価を個人の自己判断に委ねることで、重症例の増加や救急医療などの医療資源のひっ迫を招きかねない。・インフルエンザ流行期における受診動向や急性呼吸器感染症の感染状況の把握は、医療機関を通じて行われてきたことを踏まえ、スイッチOTC化により医療機関を介さない中途半端な治療が広がれば、流行状況の把握や適切な対策立案が困難となり、わが国全体の感染症対応力を低下させる恐れがある。・医薬品供給問題について、医療用製造ラインの一部をスイッチOTC製造ラインに変更することになれば、医療用抗インフルエンザ薬が必要なときに医療現場に届かないことが懸念される。 おわりに今村氏は、「社会保険料の削減を目的としたOTC類似薬やスイッチOTC化の推進は、必要なときに適切な医療を受けられない国民が増えることが危惧される。日本医師会としては、医師の診断と治療の下で国民の健康と安全を守り、国民皆保険制度を堅持する姿勢で今後も対応する」と述べた。 最後に常任理事の黒瀬 巌氏(医療法人社団慶洋会 理事長)が、第14回「日本医師会 赤ひげ大賞」として、大賞受賞者5人と功労賞受賞者20人の決定を報告し、会見を終えた。

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インターネットは高齢介護者の孤独感の緩和に役立つ

 高齢者における孤独感の問題は、世界的な課題として浮上しつつある。特に、家族などの介護をしている人は、介護という責任重大な仕事の性質上、孤独感がいっそう強まりやすい傾向がある。こうした人の孤独感は、インターネットの使用により緩和され得ることが、新たな研究から明らかになった。インターネットを通じて他者や社会とのつながりを保つことは、高齢介護者の孤独感やそれが健康に及ぼす悪影響の軽減に役立つ可能性が示されたという。米ニューヨーク大学(NYU)ローリー・マイヤーズ看護学部のXiang Qi氏らによるこの研究結果は、「JMIR Aging」に11月27日掲載された。 本研究の背景情報によると、高齢介護者の約15%が孤独を感じており、認知症患者の介護者は、他の介護者に比べて孤独感を経験する可能性が1.62倍高いという。Qi氏は、「介護は、介護対象者を持ち上げたり手伝ったりすることに起因する慢性的なストレスや不安、痛みなどが心身に大きな負担をかける。実際、多くの介護者は、他人のニーズに気を取られ過ぎて、自分の健康をおろそかにしている」と指摘している。 今回の研究では、2019年から2020年にかけて、カリフォルニア州健康面接調査で収集された65歳以上のインフォーマルな介護者3,957人(平均年齢72.46歳、女性58.6%)のデータを用いて、介護の健康への影響やインターネットの使用頻度と孤独感との関連などが検討された。対象者の孤独感は、UCLA孤独感尺度3項目版により評価された。また、介護が介護者の健康に及ぼす影響については、「介護に伴う責任が原因で身体的または精神的な健康問題を抱えていますか?」という質問により評価した。さらに、インターネットの使用頻度は4段階(1日数回未満の使用、1日数回使用、1日何回も使用、ほぼ常に使用)で評価された。 その結果、475人の対象者(12.0%)が、介護により身体的または精神的な健康問題を抱えていることを報告した。解析の結果、介護関連の健康問題を経験した介護者は、経験しなかった介護者と比較して孤独感のレベルが有意に高かった。一方、インターネットの使用頻度が高いほど、孤独感のレベルは低かった。さらに、インターネットの使用は、介護関連の健康への影響と孤独感との関連を有意に緩和することも示された。 研究グループは、「これらの結果は、テクノロジーが若者の間に孤立を生み出しているという広く共有されている認識に反するものだ」と指摘している。Qi氏は、「インターネットを使って友人や家族、他の介護者とつながることは、実際に介護の精神的負担を軽くしてくれる。家から出られないときでも、人々や情報とつながることができる橋のようなものだと考えてほしい」とNYUのニュースリリースの中で述べている。 ただし、この研究では、介護者がオンラインで何をしていたかまでは把握されていなかった。Qi氏は、今後の研究でこの点を調査する予定だと話している。同氏は、「インターネットでの活動内容が重要な可能性がある。例えば、オンラインゲームは介護者がリラックスして過ごすのに役立つかもしれないが、バーチャルサポートグループへの参加や友人とのビデオチャットなど、他者と交流する活動の方が孤独感を軽減する効果が大きいだろう。私の直感では、社会的な交流やサポートを受ける活動は受動的な活動よりも孤独感を軽減する効果が高い。それを裏付ける研究が必要だ」と述べている。 今回の結果を踏まえて研究グループは、高齢の介護者に対し、他の人と連絡を取り合ったり、サポートを見つけたり、新しいスキルを学んだり、健康問題に関する信頼できる情報にアクセスしたりするために役立つツールとしてインターネットを活用することを奨励している。

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HPVワクチン、導入からの17年間で集団レベルでの高い有効性と集団免疫を確認

 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが初めて導入された2006年から17年が経過した2023年までの調査を解析した結果、性交渉の経験がある若年女性においても、1回でも接種していれば、集団レベルでの高い有効性と明確な集団免疫が認められることが、「JAMA Pediatrics」に9月29日掲載された研究で明らかにされた。 米シンシナティ小児病院医療センターのAislinn DeSieghardt氏らは、2006年から2023年までに実施された6回の横断的な調査のデータを用いて、性交渉経験のある13〜26歳の若年女性2,335人(平均年齢18.9歳)を対象に、ワクチンの有効性および集団免疫について評価した。これら6回の調査は、2006〜2007年、2009〜2010年、2013〜2014年、2016〜2017年、2018〜2021年、および2021〜2023年に実施された。16および/または18型の感染を2価ワクチンのタイプの感染、6・11・16・18型のうち1種類以上の感染を4価ワクチンのタイプの感染、6・11・16・18・31・33・45・52・58型の1種類以上の感染を9価ワクチンのタイプの感染とそれぞれ見なし、接種者(1回以上接種)を未接種者と比較することでワクチンの有効性と集団免疫を評価した。各調査回の参加者の背景の違いは、傾向スコアによる逆確率重み付けを用いて調整した。 2,335人の参加者のうち1,195人(51.2%)に性感染症の既往があり、1,843人(78.9%)は、これまで性的パートナーとして経験した男性の数が2人以上だった。2006年から2023年にかけて、ワクチン接種率は371人中0人から402人中330人(82.1%)に増加した。接種者における傾向スコアで調整した各タイプのHPV陽性率は、2価ワクチンでは2006年の27.7%から2023年の0.4%へ、4価ワクチンでは35.4%から2.1%へ、9価ワクチンでは48.6%から11.8%へ、それぞれ減少した。同様に、未接種者における陽性率も、25.8%から7.3%、25.3%から6.1%、42.7%から31.1%にそれぞれ減少した。ロジスティック回帰モデルにより、2価および4価ワクチンのタイプの感染を起こす調整オッズ比(aOR)を推定したところ、全体では0.03(95%信頼区間〔CI〕0.01〜0.07)および0.06(同0.03〜0.10)、接種者では0.01(同<0.01〜0.05)および0.04(同0.02〜0.08)、未接種者では0.23(同0.08〜0.63)および0.19(同0.07〜0.52)と、いずれも有意な低下が見られたが、低下の幅は接種者の方が大きかった。9価のタイプの感染では全体(aOR 0.22、95%CI 0.16〜0.31)および接種者(同0.14、0.09〜0.21)において有意な低下が見られた。 論文の共著者の一人である米アルバート・アインシュタイン医科大学のJessica A. Kahn氏は、「今回の結果から、性交渉経験があり、かつ3回接種を完了していない若年女性においても、HPVワクチンは感染を予防できる力があると思われ、究極的にはこの世界から子宮頸がんを撲滅できるのではないかと考えている」と述べている。 なお、一人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報、2人の著者が関連特許を保有していることを明らかにしている。

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歯のエナメル質を修復・再生するバイオジェルを開発

 歯科治療は近い将来、より楽で痛みの少ないものになるかもしれない。歯を守る硬い表層であるエナメル質を修復・再生できる革新的なジェルの開発に関する研究結果が報告された。エナメル質は、いったん失われると自然には再生しないため、この新素材は、歯の長期的な保護や損傷時の修復方法を大きく変える可能性を秘めている。米国では、歯のエナメル質を強化するミネラルであるフッ化物(フッ素)の経口摂取が議論を呼んでいることから、この研究成果は注目を集めている。英ノッティンガム大学のAbshar Hasan氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に11月4日掲載された。 エナメル質の喪失は、虫歯(う歯)の主要な原因である。歯に付着したプラークや、酸性の食品、糖分・でんぷん質を多く含む食品や飲料が歯に長時間残存したり、長年の咀嚼により歯が摩耗したりすることで、エナメル質は失われる。 Hasan氏らは、人工タンパク質であるエラスチン様リコンビナマー(Elastin-Like Recombinamer;ELR)を基盤とした、調整可能で耐久性の高い超分子マトリックス(ジェル)を開発した。ELRは、歯の発生過程でエナメル質形成初期に不可欠な成分であるアメロジェニンの構造と機能を模倣した人工タンパク質で、カルシウムイオンの存在下で線維状マトリックスを形成し、エナメル質のナノ結晶の成長を促す。また、乾燥によりELR分子の秩序化と線維化が進み、さらにカルシウムイオンとの相互作用によってマトリックスが安定化する。 研究グループは、抜去したヒトの大臼歯32本にこのジェルを塗布して、その効果を検証した。その結果、塗布されたジェルは、歯の構造内の穴や隙間を埋め、周囲のカルシウムイオンやリン酸イオンを引き寄せる強固なマトリックスを形成し、元のエナメル質の結晶構造に沿って結晶を成長させる「エピタキシャル成長」を誘導することが示された。これにより、失われたエナメル質の構造と力学特性が再生されることが確認された。また、再生されたエナメル質は、歯磨きや咀嚼、酸を産生する食品への曝露において、天然の健康なエナメル質と同等の性能を示すことも確認された。 論文の筆頭著者であるHasan氏は、「このジェルを脱灰またはエロージョン(酸蝕症)の生じたエナメル質、あるいは露出した象牙質に塗布すると、結晶が統合され秩序立った形で成長し、健康な天然エナメル質の構造が回復される」とノッティンガム大学のニュースリリースの中で述べている。 研究グループによると、このジェルは、最大で約10μmの薄いエナメル質の欠損層を修復できる。また、虫歯の修復にとどまらず、エナメル質の下にある敏感な層である象牙質にこのジェルを直接塗布してエナメル様の層を形成することも可能であるという。これにより、知覚過敏の軽減や、歯科修復物の耐久性向上が期待されると研究グループは述べている。 論文の上席著者であるノッティンガム大学生体医工学・バイオマテリアル学教授のAlvaro Mata氏は、「臨床医と患者の双方を念頭に設計されたこの技術に、われわれは非常に興奮している。この技術は、安全で簡便かつ迅速に適用でき、スケールアップも可能だ」と述べている。研究グループは、スタートアップ企業Mintech-Bioを立ち上げ、最短で来年にも最初の製品を市場に投入したい考えであることを明らかにしている。

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新しい糖尿病治療薬、高コストも合併症リスクは従来薬と変わらず

 2型糖尿病の治療では、血糖コントロールと合併症予防のために経口薬が用いられる。比較的新しく登場したSGLT2阻害薬は近年広く使われるようになったが、最新の日本の大規模データを用いた研究で、初期治療においてSGLT2阻害薬は従来のビグアナイド系薬剤(メトホルミン塩酸塩やブホルミン塩酸塩)と比べて、心血管イベントや糖尿病合併症の抑制効果に明確な差がないことが示された。一方で、薬剤費は約50%高く、臨床現場での薬剤選択や医療費の観点から重要な知見となる。研究は、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らによるもので、詳細は11月6日付で「PLOS One」に掲載された。 世界では2型糖尿病が急増しており、合併症である心血管・脳血管イベントが死亡と医療費の大部分を占める。このため、初期治療でどの薬を選ぶかは臨床的にも経済的にも重要となる。従来は安価で安全性が高いメトホルミンが第一選択とされてきたが、近年はSGLT2阻害薬が心血管死や心不全、腎機能悪化を減らすことが示され、早期使用が推奨されつつある。ただ、実臨床研究では両者の効果差は一貫せず、日本からのデータは特に乏しい。過去の国内研究では高価な薬剤を初期に用いても合併症は減らず医療費のみ増える可能性が示唆されたが、ビグアナイド系薬剤とSGLT2阻害薬の直接比較は行われていない。そこで本研究は、日本人2型糖尿病患者を対象に、主要心血管イベントを含む長期アウトカムと薬剤の費用差を後ろ向きに検証した。 本研究では、登録者数250万人以上を有する静岡国保データベース(SKDB)の2023年度版データ(2012年4月1日~2021年9月30日)を用いて解析を行った。解析対象は、ビグアナイド系薬剤またはSGLT2阻害薬のいずれかを初期治療として開始した患者とした。開始後12か月間はもう一方の薬を使用せず、他の血糖降下薬の併用は許容した。追跡は治療開始時点から開始し、12か月以内に比較薬を使用した患者は除外された。人口統計、臨床、検査、生活習慣の変数に基づき1対1の傾向スコアマッチングを行った後、Cause-specific Coxモデルを用いてハザード比(HR)を推定した。また、1日あたりの薬剤費も比較した。主要アウトカムは、開始日から脳血管イベント、心血管イベント、または全死亡を含む複合エンドポイントの初発までの期間とした。副次アウトカムは、開始日から糖尿病関連合併症(糖尿病性腎症、腎不全、糖尿病性網膜症、糖尿病性末梢神経障害)の初発までの期間と設定した。 傾向スコアマッチング後のコホートは、ビグアナイド単剤群623名とSGLT2阻害薬群623名で構成され、追跡期間の中央値は2.9年(最長7.2年)であった。追跡期間中に主要アウトカムのイベントを起こしたのは、ビグアナイド単剤群44名(7.1%)、SGLT2阻害薬群35名(5.6%)であり、治療群間で統計的な有意差は認められなかった(log-rank検定、P=0.314)。さらに、Cox比例ハザードモデルによる解析では、ビグアナイド単剤群とSGLT2阻害薬群のHRは0.80(95%信頼区間〔CI〕 0.51~1.24)であり、リスクはほぼ同等であることが示された。 糖尿病合併症は、ビグアナイド単剤群で86名(13.8%)、SGLT2阻害薬群で78名(12.5%)に発症し、こちらも治療群間で有意な差は認められなかった(Gray検定、P=0.343)。HRは0.88(95%CI 0.70~1.13)であり、ほぼ同等のリスクを示した。 1日あたりの薬剤費の中央値を比較したところ、ビグアナイド治療は124.7円、SGLT2阻害薬治療では184.0円であり、ウィルコクソン順位和検定の結果、この差は統計的に有意であることが示された(P<0.001)。 著者らは、「今回得られた知見は、SGLT2阻害薬を初回の血糖降下薬としてルーチンに使用することの臨床的および経済的意義に疑問を投げかける。今回の費用差は個々の患者レベルでは小さく見えるかもしれないが、長期にわたり多くの患者が服用する場合には、総医療費として財政に大きな影響を及ぼす可能性がある」と述べている。

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拡張型心筋症患者に対する早期心リハの有用性、傾向スコアマッチングを用いた全国規模解析

 拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)は、心臓の筋肉が弱まり、心臓が拡張して十分に血液を送り出せなくなる病気で、心不全の主要な原因の一つとされる。このDCM患者に対し、入院早期から心臓リハビリテーション(心リハ)を開始すると、90日死亡率が有意に低下することが、日本の全国入院データベースを用いた研究で明らかになった。解析では、早期に心リハを始めた患者群では早期から心リハを受けなかった群と比べて90日以内の死亡リスクが低く、退院時の日常生活動作(ADL)もやや高値であったという。研究は大阪大学/奈良県立医科大学の安福祐一氏らによるもので、詳細は10月24日付で「Scientific Reports」に掲載された。 DCMは、心筋の収縮低下と左室拡張を特徴とし、一部の患者は慢性心不全や急性増悪を繰り返す進行性心筋疾患である。心リハは、機能回復や再入院予防を目的として行われる運動療法や生活指導などを含んだ包括的な治療プログラムであり、急性心不全患者への早期導入も行われている。しかし、DCM患者に対する早期心リハの有効性を検証した報告は限られており、十分なエビデンスは得られていない。本研究では、日本の全国入院データベースを用い、症候性心不全を呈するDCM患者における早期心リハ開始と90日以内の死亡率との関連について検討した。 本研究では、2010年7月1日から2020年3月31日までのDPCデータベースから、DCMおよび心不全(NYHA心機能分類II~IV度)と診断された患者を解析対象とした。患者は入院後3日以内に心リハを開始したかどうかに基づき、早期心リハ群と遅延または非心リハ群に分類した。主要評価項目は入院後90日以内の死亡率とし、副次評価項目は退院時のADLスコアと在院日数とした。欠測値は多重代入法を用いて統計的に補完し、患者背景や2015年度病床機能報告から取得した入院施設の医療機能の違い等を調整するため1対1の傾向スコアマッチングを行った。 本研究では、早期心リハ群3,130名および遅延または非心リハ群2万7,166名の計3万296名を適格患者と判定した。遅延または非心リハ群のうち7,340名(27%)が入院後3日目以降に心リハを受けていた。1対1の傾向スコアマッチングを行った結果、最終的に各群3,129名(計6,258名)が解析対象となった。 多重代入および傾向スコアマッチングの結果、入院後90日以内の死亡率は遅延または非心リハ群に比べて早期心リハ群で有意に低かった(オッズ比:0.70、95%信頼区間〔CI〕:0.53~0.93、P値=0.01)。また、早期心リハ群では退院時ADLスコアも若干高かった(平均差〔Average Treatment Effect on the Treated;ATT〕:0.43、95%CI:0.08~0.78、P値=0.02)が、在院日数には有意な差は認められなかった(ATT:−2.1日、95%CI:−4.7~0.5日、P値=0.11)。 著者らは、「今回の研究の意義は、これまで世界的にもエビデンスが乏しかったDCM患者に対する早期心リハの短期予後(90日以内の死亡率)に対する効果を明らかにした点にある。今後は、本研究で得られた結果の背景にある生理学的メカニズムや、特に有効であった心リハの具体的なプログラム、個々の患者属性の違いにより生じる心リハの効果の異質性等を解明し、より個別化された効果的な心リハプログラムを開発する必要がある」と述べた。 なお本研究の限界点として、DPCデータベースに含まれる指標の制約により、心エコーや生理学的検査等の交絡因子の調整が制限されたこと、心リハの具体的なプログラムの差異による影響の違いについて検討していないこと、詳細な身体・精神機能や入院中の有害事象に対する早期心リハの影響について検討していないこと等が挙げられる。

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