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HER2変異陽性NSCLCの1次治療、sevabertinibの奏効率71%(SOHO-01)/ESMO2025

 HER2遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、sevabertinibは奏効率(ORR)71%と有望な治療成績を示した。また、既治療の集団でも有望な治療成績が示された。Xiuning Le⽒(米国・テキサス⼤学MDアンダーソンがんセンター)が、国際共同第I/II相試験「SOHO-01試験」の第II相の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。なお、本結果は、NEJM誌オンライン2025年10月17日号に同時掲載された1)。 現在開発が進んでいるHER2チロシンキナーゼ阻害薬の違いとして、ゾンゲルチニブは野生型EGFRを阻害せずHER2を選択的に阻害するのに対し、sevabertinibはEGFRとHER2の両者に対する阻害活性を有し(野生型EGFRに対する活性は弱い)、多様なHER2変異体に対しても阻害活性を示すことが挙げられる。また、ゾンゲルチニブが共有結合による不可逆的な阻害様式であるのに対し、sevabertinibは可逆的な阻害様式を有する。 本試験は第I相と第II相で構成され、第I相の結果から20mgを1日2回の用量が選択された。今回は、用量拡大・継続パートの3つのコホートの結果が報告された。対象のコホートは、既治療かつHER2標的薬未治療(コホートD、81例)、HER標的薬既治療(コホートE、55例)、未治療(コホートF、73例)であった。用量拡大・継続パートの主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)によるORR、副次評価項目は奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性などであった。データカットオフ日は2025年6月27日であった。 主な結果は以下のとおり。・各コホートの有効性に関する結果は以下のとおりであった(いずれもBICR評価)。【コホートD(既治療かつHER2標的薬未治療)】 ORR 64%(CR 2%) 病勢コントロール率(DCR) 81% 脳転移例のORR 61%(11/18例) DOR 9.2ヵ月 1年DOR率42% PFS中央値8.3ヵ月 1年PFS率44%【コホートDのチロシンキナーゼドメインの変異陽性非扁平上皮NSCLC(70例)】 ORR 71%(CR 3%) PFS中央値9.6ヵ月【コホートE(HER標的薬既治療)】 ORR 38%(CR 5%) DCR 71% 脳転移例のORR 27%(4/15例) DOR 8.5ヵ月 1年DOR率29% PFS中央値5.5ヵ月 1年PFS率28%【コホートF(未治療)】 ORR 71%(CR 4%) DCR 89% 脳転移例のORR 78%(7/9例) DOR 11.0ヵ月 PFS中央値未到達 1年PFS率55%・Grade3以上の有害事象は、コホートD、E、Fでそれぞれ36%、31%、21%に発現した。・主な有害事象(コホートD、E、Fを統合)は、下痢(87%)、発疹(49%)、爪囲炎(26%)などであった。・間質性肺疾患/肺臓炎の発現はなかった。 本結果について、Le氏は「HER2遺伝子変異陽性のNSCLC患者に対し、sevabertinibは既治療および未治療のいずれの集団においても、頑健かつ持続的な奏効を示した。この結果は、sevabertinibがHER2遺伝子変異陽性NSCLCに対する新たな分子標的治療薬となり得ることを支持するものである」とまとめた。なお、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性のNSCLCに対する1次治療におけるsevabertinibの有用性を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「SOHO-02試験」が進行中である。

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心血管疾患の発症前にはほぼ常に警告サインあり

 冠動脈疾患(CHD)や心不全(HF)、脳卒中などの心血管疾患(CVD)の発症前には、少なくとも1つの警告サインが現れているようだ。CVDの発症前には、以前よりCVDの主なリスク因子とされている高血圧、脂質異常症、高血糖、および喫煙の4つの因子のうちの少なくとも1つが99%以上の確率で存在していることが、新たな研究で示された。米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のPhilip Greenland氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に9月29日掲載された。 研究グループは、この結果は、CVDは予兆なく発症することが多いという一般的な考え方を否定するものだとしている。Greenland氏は、「この研究は、CVDの発症前に1つ以上の最適ではないリスク因子にさらされる確率がほぼ100%であることを、極めて強い説得力をもって示している」と述べている。同氏は、「今後は、治療が容易ではなく因果関係もない他の要因を追求するのではなく、これらの修正可能なリスク因子をコントロールする方法を見つけることに、これまで以上に力を入れるべきだ」と同大学のニュースリリースの中で付け加えている。 この研究では、韓国国民健康保険サービス(KNHIS)コホート(934万1,100人、ベースライン時に20歳以上、追跡期間2009〜2022年)と、米国のアテローム性動脈硬化症(MESA)の多民族研究コホート(6,803人、ベースライン時に45〜84歳、追跡期間2000〜2019年)のデータが解析された。Greenland氏らは、追跡期間中にCHD、HF、または脳卒中を発症した人を特定し、発症前に高血圧、脂質異常症、高血糖、および喫煙の4つのリスク因子が最適ではないレベルだった割合を調べた。最適ではないレベルとは、1)収縮期血圧が120mmHg以上または拡張期血圧が80mmHg以上、あるいは降圧薬の使用、2)総コレステロールが200mg/dL以上または脂質低下薬の使用、3)空腹時血糖が100mg/dL以上または糖尿病の診断または血糖降下薬の使用、4)過去または現在の喫煙、である。 その結果、発症前に最適ではないレベルのリスク因子を1つ以上持っていた割合は、CHDではKNHISコホートで99.7%、MESAコホートで99.6%、HFではそれぞれ99.4%と99.5%、脳卒中では99.3%と99.5%と、いずれも極めて高率であることが判明した。この傾向は、年齢や性別に関係なく認められた。60歳未満の女性でのHFや脳卒中ではわずかに低かったが、それでも95%を超えていた。 Greenland氏らは、「心筋梗塞やCHDは先行する主要なリスク因子がない状態で発症するという説がますます一般的になりつつあるが、われわれの研究結果は総じて、この主張に疑問を投げかけるものだ」と結論付けている。同氏らはさらに、「特に血圧、コレステロール、喫煙などのリスク因子は、臨床診断閾値以下であっても、CVDリスクに対して継続的で用量依存的かつ累積的な影響を及ぼす」と指摘している。

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ビタミンD欠乏症が10年間で有意に減少、骨折リスク低減に期待

 骨や筋肉の健康を守るうえで欠かせない栄養素、ビタミンD。その不足は骨粗鬆症や骨折リスクの増大と関わることが知られている。今回、日本の大規模調査で、一般住民におけるビタミンD欠乏の割合がこの10年で有意に減少したことが明らかになった。血中ビタミンD濃度も上昇しており、将来的に骨粗鬆症や骨折の発症リスク低減につながる可能性があるという。研究は東京大学医学部附属病院22世紀医療センターロコモ予防学講座の吉村典子氏らによるもので、詳細は8月27日付で「Archives of Osteoporosis」に掲載された。 ビタミンDは骨密度の維持に不可欠だが、世界的に血中25(OH)D濃度の低値が報告されており、世界的にビタミンD欠乏は広くみられ、とくに南アジア・中東で顕著である。さらに閉経後女性では欠乏率が高く、東アジアでも90%に達するとの報告がある。日本においても閉経後女性のビタミンD不足は深刻である。国内で実施されている「Research on Osteoarthritis/Osteoporosis against Disability(ROAD研究)」は、運動器疾患の予防を目的とした地域住民コホート研究である。2005~2007年調査では、ビタミンD不足・欠乏が9割以上と高頻度に認められ、その傾向は男性よりも女性で顕著であった。その後も同一地域で追跡調査が継続されており、本研究では調査開始から10年後のデータを用いて、ビタミンD欠乏の10年間の推移を明らかにすることを目的とした。 ROAD研究のベースライン調査は2005~2007年に実施され、東京都板橋区(都市部)、和歌山県日高川町(山間部)、和歌山県太地町(沿岸部)の3地域から参加者を募った。都市部の参加者についてはベースライン時に骨密度測定が行われていなかったため除外し、本研究の解析対象は山間部および沿岸部の参加者1,690名とした。血液サンプルは1,683名(男性595名、女性1,088名)から採取され、血中25DおよびインタクトPTH(副甲状腺ホルモン)濃度を測定した。参加者は面接形式の質問票に回答し、骨密度測定とX線検査も受けた。第4回調査は2015~2016年に実施され、1,906名(男性637名、女性1,269名)が参加した。全参加者はベースライン調査と同一の評価を受けた。ビタミンD欠乏および不足は、それぞれ血中25D濃度が20ng/mL未満、20ng/mL以上30ng/mL未満と定義された。 平均血中25D濃度は、ベースラインで23.3ng/mL、第4回調査では25.1ng/mLとなり、有意な上昇が認められた(P<0.001)。ビタミンD不足および欠乏の有病率は、ベースラインでそれぞれ52.9%と29.5%であったのに対し、第4回調査では54.8%と21.6%となり、ビタミンD欠乏が有意に減少していた(P<0.001)。この傾向は男女ともに一貫して認められた。 骨密度に関しては、腰椎(L2-4)および大腿骨頸部のいずれも、第4回調査の方がベースライン調査より有意に高値を示した(腰椎P<0.001、大腿骨頸部P<0.05)。また第4回調査では、男女とも腰椎(L2-4)の骨粗鬆症有病率がベースラインより有意に低下していた(P<0.01)。 本研究について著者らは、「10年間隔の地域住民調査においてビタミンD欠乏症の有病率が有意に減少した。この好ましい傾向は、今後の骨粗鬆症および骨折発症率の低下に寄与する可能性がある」と述べている。 一方で、30~50代の女性では依然としてビタミンD欠乏症の割合が高く、この世代が今後閉経期を迎えて骨粗鬆症リスクの高い年齢層に入ってきた際には、将来的に骨粗鬆症の増加につながる可能性があると警鐘を鳴らしている。著者らは、この点を公衆衛生上の重要な課題として指摘した。

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低用量アスピリンが再発予防効果を認める大腸がんのタイプが明らかになった(解説:上村 直実氏)

 観察研究やコホート研究の結果からアスピリンや非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAID)が大腸がんの発生や再発のリスクを低下することがよく知られているが、プラセボとの無作為化比較試験(RCT)による厳密な研究デザインによるエビデンスは少なく、さらに、どのような大腸腫瘍に対して有効なのか無効なのかは判明していないのが現状であった。 これらの課題を克服するため、今回、細胞の成長や増殖などさまざまな細胞機能の調節に重要な役割を果たす酵素であるPI3K(Phosphoinositide 3-kinase)をコードするPI3K遺伝子の変異が陽性の大腸がん切除後症例を対象として施行されたプラセボ対照RCTの結果、低用量アスピリン(LDA)(160mg/日)の内服により手術後の再発率が有意に低下することが2025年のNEJM誌に報告された。すなわち、LDAがPI3K遺伝子変異を有する大腸がんに対する再発予防効果を有することがRCTにより明確になったのである。 アスピリンは、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)・プロスタグランジンE2(PGE2)経路を阻害することが知られているが、PI3Kシグナル経路はその下流に位置して腫瘍形成に働く可能性が謳われているが、PI3K遺伝子変異は大腸がんの約40%に認められている。従来の報告からLDAの抗大腸腫瘍効果はPI3K遺伝子変異を有するものやリンチ症候群および家族性大腸腺腫症(FAP)などの遺伝性大腸腫瘍に限定されている可能性が指摘されていたが、手術後の切除組織を用いた遺伝子解析によりLDAの抑制効果を認める適応病変が明確になった点で重要な研究成果と思われる。 30年前からLDAによる大腸腫瘍の抑制効果に関する報告が散見されていたが、日本においてもFAP患者に対するLDA(100mg/日)によりポリープの発生や再発を抑制することが、京都府立医科大学の石川 秀樹特任教授らにより2021年のLancet Gastroenterology & Hepatology誌に報告されている。この研究は、全大腸切除が標準治療とされているFAP患者に対する画期的な予防的薬物療法を提供する可能性を秘めているために、今後の研究結果が注目されている。さらに、異時性あるいは同時性の大腸多発がんや子宮内膜がんの若年発症を特徴として、小腸、胃、腎盂尿管、胆管、膵臓、皮膚および脳腫瘍など多臓器にがんが発症するリンチ症候群におけるLDA服用の長期的な有効性のデータも報告されている。 このように遺伝子変異を伴う大腸がんに対するLDAの予防効果が明確になってきたことから、近い将来、循環器や脳神経領域の臨床現場において頻繁に使用されているLDAが、大腸がんをはじめとするがんの予防効果を有する薬剤である可能性に熟知して患者に対応することが必要となる。 一方、わが国においても大規模データベースを利用した臨床疫学研究が盛んに行われるようになっており、冠動脈疾患や脳血管障害の再発予防に対してLDAを内服している患者における大腸がんの有病率や再発率に関する詳細な疫学調査が期待される。なお、大腸がん以外にも胃がん、食道腺がん、肺がんなどもアスピリンによる抑制効果が報告されており、今後も安価ながん予防策としてのLDAのリスク・ベネフィットに関する詳細な研究も期待される。

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第266回 インフルエンザ前週比1.4倍増で全国急拡大、マイコプラズマ肺炎も増加/厚労省

<先週の動き> 1.インフルエンザ前週比1.4倍増で全国急拡大、マイコプラズマ肺炎も増加/厚労省 2.高市新政権、医療機関や介護施設に支援を、報酬改定待たず措置へ/政府 3.医師臨床研修マッチング、大学病院の人気は過去最低、都市集中続く/厚労省 4.出産費用の地域差24万円 妊婦支援と医療機関維持の両立課題に/厚労省 5.高額療養費制度、70歳以上の3割負担拡大や外来特例見直しが俎上に/厚労省 6.希少がんで死去した大学生のSNS投稿が原動力に、「追悼寄付」が医療研究を支援/がん研ほか 1.インフルエンザ前週比1.4倍増で全国急拡大、マイコプラズマ肺炎も増加/厚労省全国で例年に比べて1ヵ月以上早く、インフルエンザの感染が急速に拡大しており、これに加えてマイコプラズマ肺炎も患者数を増やしていることから、医療機関と地域社会は複合的な感染症の流行に直面し、警戒を強めている。厚生労働省が発表したデータによると、10月19日までの1週間におけるインフルエンザ患者数は全国で1万2,576人に達し、前週比でおよそ1.4倍に急増した。定点医療機関当たりの報告数は3.26人と増加し、37都道府県で増加が確認されている。とくに、沖縄県(15.04人)が突出しているほか、首都圏では千葉県(6.99人)、埼玉県(6.23人)、神奈川県(5.62人)、東京都(5.59人)といった大都市圏で高い水準で感染が拡大している。東京都では、10月19日までの1週間に、休校や学級閉鎖などの措置をとった施設が71施設にのぼり、これは去年の同じ時期の6倍以上に急増した。また、愛知県(定点当たり1.44人)や滋賀県(同1.38人)では、昨年より約1ヵ月早い流行期入りが発表され、全国的な早期かつ大規模な流行が懸念されている。さらに、子供に多いマイコプラズマ肺炎も患者数が増加している。10月12日までの1週間で定点医療機関当たり1.53人と5週連続で増加しており、秋田県(8.25人)、群馬県(4.22人)などで報告が目立っている。専門家は、過去の流行状況を踏まえ、これからさらに患者が増え、大きな流行になる可能性が高いと分析している。とくに、ぜんそく発作の経験がある患者は、症状の再発に注意が必要となる。新潟県では、インフルエンザに加えてマイコプラズマ肺炎の感染者が2週連続で増加しており、複数の感染症が同時流行する「トリプル流行」の懸念が現実のものとなっている。医療現場では、小児に対し注射の痛みがなく接種回数が少ない鼻腔スプレー型インフルエンザワクチンの接種希望者が増えるなど、予防策への関心が高まっている。厚労省や各自治体は、手洗いやマスク着用などの基本的な感染対策の徹底、およびインフルエンザワクチンの早めの接種を強く呼びかけている。 参考 1) インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移(厚労省) 2) インフルエンザ患者数 前週比1.4倍増 37都道府県で増加(NHK) 3) マイコプラズマ肺炎 患者増加 “大きな流行の可能性 対策を”(同) 4) 都内のインフル定点報告5.59人、前週比17.2%増 臨時休業の学校など計244カ所(CB news) 2.高市新政権、医療機関や介護施設に支援を、報酬改定待たず措置へ/政府高市 早苗首相は10月24日の所信表明演説で、経営難に陥る医療機関や介護施設を対象に、診療報酬・介護報酬の改定を待たずに補助金を措置する方針を表明した。物価高や人件費上昇への対応を急ぎ、経営改善と職員処遇の改善効果を「前倒し」する狙い。年内に経済対策を策定し、補正予算案を今国会に提出する考えを示した。高市首相は、国民が安心して医療・介護サービスを受けられる体制を維持するためには「待ったなしの支援が必要」と強調。報酬改定にも物価高や賃上げ分を適切に反映させると述べた。また、給付と負担の見直しに向け、超党派の「国民会議」を新設し、税と社会保障の一体改革を進めるとした。現役世代の保険料負担を抑えるため、OTC類似薬の保険給付見直しや応能負担の徹底を検討する。一方、厚生労働大臣に就任した上野 賢一郎氏は、医療・介護現場の経営や処遇改善策を経済対策・補正予算に盛り込む方針を示した。物価高騰で医療機関の6割超が赤字に陥る中、日本医師会も早期の補正成立を要望している。上野氏は「創薬力の強化」「薬価の安定供給」を課題に挙げ、ドラッグロス解消や製薬産業の競争力強化を推進するとした。新政権は自民党と日本維新の会の連立により発足。現役世代の社会保険料率引き下げや、病院・介護施設の経営改善を柱とする社会保障改革を掲げる。高齢者の外来特例や高額療養費制度の見直しも議論が進む見通しで、持続可能な制度と公平な負担の両立が今後の焦点となる。 参考 1) 新政権の社会保障改革 現役世代の負担軽減はどうなる(NHK) 2) 高市首相、医療経営支援「補助金を措置」所信表明 介護施設も 報酬改定待たずに(CB news) 3) 新厚労相の上野氏「処遇改善や経営改善支援のための施策を経済対策や補正予算に盛り込む」(日経メディカル) 4) 高市首相、診療報酬・介護報酬に「物価高を反映」 所信表明 補助金支給で「効果を前倒し」(Joint) 5) 高市内閣発足 「病院、介護経営を好転へ」 社会保障改革で協議体(福祉新聞) 3.医師臨床研修マッチング、大学病院の人気は過去最低、都市集中続く/厚労省2025年度の医師臨床研修マッチング最終結果が10月23日に公表され、内定者数は8,910人(前年度比152人減)、内定率は92.3%だった。募集定員は1万527人、希望登録者は9,651人。大学病院本院の充足率100%は81大学中12大学にとどまり、前年度から7大学減少した。フルマッチとなったのは京都大、京都府立医科大、順天堂大、北里大、関西医科大など都市部中心で、地方大学では充足率が3割未満の大学もあり、弘前大はマッチ者ゼロだった。全体では市中病院志向が続き、大学病院に進む医学生の割合は35.2%と過去最低を更新。第1希望でマッチした割合も60.6%に減少し、2016年度から約20ポイント低下した。背景には、働き方改革を受けた労働環境や給与・QOLを重視する傾向の強まりがある。一方、厚労省は医師偏在対策として新設した「広域連携型プログラム」を導入し、医師多数県と少数県をまたぐ研修を促進。東京大、京都府立医科大などで定員を満たす成果もみられた。人気集中が続く都市部と地方の格差は依然大きく、研修医の分布と質の均衡が今後の課題となる。 参考 1) 令和7年度の医師臨床研修マッチング結果をお知らせします(厚労省) 2) 2025年度 研修プログラム別マッチング結果[2025/10/23現在](JRMP) 3) 医師臨床研修マッチング内定者152人減 25年度は計8,910人(CB news) 4) 市中病院にマッチした医学生は64.8% マッチング最終結果、大学病院のフルマッチは12施設(日経メディカル) 5) あの病院はなぜ人気? 臨床研修マッチング2025(同) 4.出産費用の地域差24万円 妊婦支援と医療機関維持の両立課題に/厚労省厚生労働省は10月23日、社会保障審議会の医療保険部会を開き、出産費用の上昇や地域格差を踏まえ、出産費用の無償化と周産期医療の集約化を柱とする制度改革の検討を開始した。厚労省側は、2026年度を目途に正常分娩費用の自己負担をなくす方向で、今冬に給付体系の骨格をまとめる方針を示した。2024年度の平均出産費用は51万9,805円で、出産育児一時金(50万円)を上回る。東京と熊本では約24万円の地域差があり、物価高騰や人件費上昇を背景に、費用は年々増加傾向にある。無償化には妊婦の負担軽減への期待が高まる一方、分娩を担う一次施設や地方の産科医院の経営悪化を懸念する声も強い。日本産婦人科医会の石渡 勇会長は「地域の一次施設を守る観点で制度設計を」と訴え、日本医師会の城守 国斗常任理事も「診療所の崩壊は産科医療の瓦解につながる」と慎重な議論を求めた。厚労省は、施設の経営実態に十分配慮しつつ、標準的出産費用の「見える化」と「標準化」を進める。一方、出産を取り扱う医療機関は減少しており、周産期医療体制の維持が困難な地域が増えている。このため厚労省は「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」を10月23日に開き、ハイリスク妊婦以外も含めた周産期医療の集約化を検討し、遠方で出産する妊婦の交通費や宿泊費への支援、宿泊施設や家族支援の整備、島しょ部での夜間搬送体制強化などを論点に掲げた。出産費用の上昇、地域格差、分娩施設の減少という3重の課題に対し、妊婦支援と医療機関支援を両立させる制度設計が求められている。 参考 1) 医療保険制度における出産に対する支援の強化について(厚労省) 2) 小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(同) 3) 周産期医療の集約化で妊婦への支援を検討 移動に伴う交通費・宿泊費など含め 厚労省(CB news) 4) 出産への給付体系、今冬に骨格取りまとめ 厚労省(同) 5) 平均出産費用、1.3万円増加 都道府県間で24万円の差-厚労省(時事通信) 6) 24年度出産費用、平均52万円 上昇続き家計の負担増(共同通信) 5.高額療養費制度、70歳以上の3割負担拡大や外来特例見直しが俎上に/厚労省厚生労働省は10月23日、医療保険部会を開き、70歳以上の窓口負担や高額療養費制度の見直しに関する議論を本格的に開始した。少子高齢化による医療費増大と現役世代の保険料負担の偏りを踏まえ、「年齢ではなく支払い能力に応じた公平な負担(応能負担)」を制度の柱に据える。部会では、「(1)医療費増大への対応、(2)年齢を問わない応能負担、(3)セーフティネットとしての高額療養費制度のあり方」の3点を中心に、年内に方向性をまとめる方針が示された。具体的には、70歳以上で3割負担となる現役並み所得の範囲拡大、75歳以上の外来特例の見直し、所得区分の細分化などが論点となる。高齢者ほど医療費が高い一方で、自己負担は低く抑えられており、世代間・世代内の公平性確保を求める意見が相次いだ。一方で、低所得者や長期療養患者への配慮を求める声も強く、超高額薬のコストを患者に転嫁すべきでないとの懸念も示された。高額療養費は年間約3兆円規模で、財政抑制や現役世代の負担軽減効果が焦点となる。制度改正は自民・維新連立政権の「応能負担強化」方針に合致しており、持続可能性と医療アクセス維持の両立が医療界の注目点となっている。 参考 1) 第5回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(厚労省) 2) 高齢者の医療費負担、「3割」対象者拡大へ議論本格化…年内に方向性まとめる方針(読売新聞) 3) 支払い能力に応じた医療費負担を 70歳以上見直しで厚労省部会(共同通信) 4) 高齢者の医療費窓口負担、3割の対象拡大も含め議論へ(朝日新聞) 5) 高齢者医療の負担の議論開始、医療保険部会 現役世代の負担減求める意見相次ぐ(CB news) 6) がん患者の家計を医療費が圧迫、厚労省が事例示す 高額療養費利用しても「その他支出」の半分超(同) 7) 高額療養費は「長期療養患者、高額医薬品使用患者」で大きな恩恵受けるが、低所得者は現行制度下でも「重い負担」-高額療養費専門委員会(Gem Med) 6.希少がんで死去した大学生のSNS投稿が原動力に、「追悼寄付」が医療研究を支援/がん研ほか「グエー死んだンゴ」というわずか8文字の投稿が、若くしてがんのため亡くなった北海道大学の元学生、中山 奏琉氏(22歳)の「最期のユーモア」としてX(旧ツイッター)上で大きな波紋を広げ、がん研究機関への「追悼寄付」のムーブメントを巻き起こしている。中山氏は、新規患者が年間20人ほどの希少がん「類上皮肉腫」に罹患し、闘病。亡くなる直前に予約投稿したとみられるこのメッセージは3億回以上閲覧され、これをみた面識のない多くのネットユーザーが「香典代わりに」と、がん研究会や国立がん研究センターへ寄付を始めた。がん研究会では、投稿から5日間で1,431件、数百万円の寄付が集中し、これは平常時の半年分以上に相当する。寄付には「Xのポストを見て」「香典代わりに」といったメッセージが多数添えられ、国立がん研究センターでも寄付件数が急増し、受付番号からは1万件近い寄付があったと推定されている。この現象について専門家は、故人を偲ぶ「追悼寄付」の1つの形であり、ネット文化の中で共感を覚えた人々が感動を「寄付」という具体的な行動で示したものと分析している。中山氏の父親は、息子が治療の手立てが一切ない病気と闘った経験から、「息子のような人が減るよう、治療が難しい病気の研究が進めば」と、支援の輪の広がりを心から歓迎し、感謝を述べている。SNS上の「最期のメッセージ」が、医療研究の新たな支援の形を生み出し、希少がんを含む難病研究への社会の関心を高める契機となっている。 参考 1) 両親も知らなかった「死んだンゴ」 がんで死去した津別の元北大生・中山さん最期の日々 がん研究機関への寄付急増(北海道新聞) 2) 「グエー死んだンゴ」8文字からの寄付の輪 遺族「がん研究進めば」(朝日新聞) 3) 「グエー死んだンゴ」「香典代わりに」 がん患者最期の投稿きっかけ、研究拠点に寄付殺到(産経新聞) 4) 「グエー」、臨終のユーモアがネット揺さぶる 死の間際に投稿予約?がん研究機関に「香典」続々(時事通信)

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事例34 死亡診断加算(往診料)の返戻【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では、「死亡診断加算(往診料)について、死亡した場合は、転帰欄に『死亡』の字句を記載してください」と返戻になりました。診療報酬明細書の記載要領には、「治癒した場合には『治ゆ』の字句を,死亡した場合には『死亡』の字句を、中止または転医の場合には『中止』の字句をそれぞれ○で囲む(コンピュータ作成の場合はそれぞれを印字する)」とあります。診療継続以外は、該当する傷病名の右横に転帰を記載しなければならないのです。事例では、死亡診断加算が算定されているにもかかわらず空欄であったことを理由に、診療の継続中なのか、単に転帰の記載が漏れているのかを問い合わせるための返戻となったものです。今回は、転帰欄に「死亡」と記載して再請求を行い、その後の返戻査定はありません。なお、この事例からはみえにくいのですが、夜間に患家から連絡があり翌朝に死亡確認を行った場合の死亡日は前日となり医療保険は失効しますが、医療保険の請求は可能です(疑義解釈資料の送付について[その1]平成28年3月31日)。このような単純な内容でレセプトが返戻や査定をされないように、再発防止対策としてレセプトチェックシステムには、死亡を算定契機とする報酬が算定された場合には、転帰の入力チェックがかかるように改修を行っています。

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英語で「排尿時痛」、患者さんはどう訴える?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第37回

医学用語紹介:排尿時痛 dysuria今回は「排尿時痛」について説明します。医療現場ではdysuriaという専門用語が使われますが、患者さんとの会話ではどのような一般的な英語表現を使えばよいでしょうか?講師紹介

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尿路感染症の尿検査、抗菌薬処方前に必要?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第14回

Q14 尿路感染症の尿検査、抗菌薬処方前に必要?泌尿器科以外の医師です。尿路感染症の診断において、抗菌薬を出す前に尿検査をするべきでしょうか? 他科の医師でも可能な検査はありますでしょうか?

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高用量MTX療法中のST合剤継続を発見し、重篤な副作用を予防【うまくいく!処方提案プラクティス】第69回

 今回は、病棟研修での処方提案の一例を紹介します。Tリンパ芽球性リンパ腫に対する高用量メトトレキサート(MTX)療法中に、ニューモシスチス肺炎予防目的のスルファメトキサゾール・トリメトプリム錠が継続投与されていることに気付き、能動的に処方調整を提案しました。がん化学療法では、支持療法として開始された薬剤が治療変更時にも継続され、重大な薬物相互作用を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。患者情報36歳、女性(入院)基礎疾患Tリンパ芽球性リンパ腫治療経過:Hyper-CVAD療法※継続中(3コース目)※Hyper-CVAD療法:悪性リンパ腫に対する強力な多剤併用化学療法主な使用薬剤:シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾンビンクリスチン投与による末梢神経障害のモニタリング中MA療法※として高用量MTXを投与(地固め療法)※MA療法:MTX+シタラビン薬学的管理開始時の処方内容:1.ランソプラゾール錠15mg 1錠 分1 朝食後2.スルファメトキサゾール・トリメトプリム錠 1錠 分1 朝食後3.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後(調節)4.ピコスルファート内用液(レスキュー) 適宜自己調節他科受診・併用薬特記事項なし本症例のポイント介入2日前にMA療法として高用量MTX療法が開始されました。介入当日(MTX投与Day3)、前回のHyper-CVAD療法による末梢神経障害の評価および排便コントロール状況の確認のため病室を訪問しました。薬歴確認中に、高用量MTX投与中にもかかわらず、ニューモシスチス肺炎予防目的のスルファメトキサゾール・トリメトプリム錠(ST合剤) 1錠/日が継続投与されていることを発見しました。MTXとST合剤はともに葉酸代謝拮抗作用を有し、併用により相加的に作用が増強します。スルファメトキサゾール・トリメトプリム錠添付文書1)およびMTX添付文書2)において両剤の併用は「併用注意」とされ、以下のリスクが記載されています。(1)MTXの作用が増強スルファメトキサゾール・トリメトプリムとMTXは共に葉酸代謝阻害作用を有するため、MTXの作用を増強し、汎血球減少を引き起こす可能性があります。(2)骨髄抑制などの重篤な副作用リスク高用量MTX療法は、投与72時間のMTX血中濃度が1×10-7モル濃度未満になるまでロイコボリン救援療法※が必要となります。この期間中のST合剤併用は葉酸代謝阻害を相加的に増強し、骨髄抑制、肝・腎障害、粘膜障害などの重篤な副作用を引き起こすリスクが高まります。※ロイコボリン救援療法:MTXの葉酸代謝拮抗作用を中和し、正常細胞を保護する目的で投与本症例では、スルファメトキサゾール・トリメトプリム錠はニューモシスチス肺炎予防の投与量(1錠/日)でしたが、MTX投与後48時間(Day3)であり、MTXの血中濃度が依然として高値を維持している可能性がありました。この時点のST合剤継続は、たとえ予防用量であっても相互作用により骨髄抑制などを引き起こす可能性があると考えました。医師への提案と経過MTX投与Day3の時点で、主治医に以下の内容について病棟カンファレンスにて情報提供を行いました。【現状報告】高用量MTX療法Day3の時点でスルファメトキサゾール・トリメトプリム錠が継続投与されている。MTX血中濃度が依然高値を維持している可能性がある。【懸念事項】MTXとST合剤の併用により葉酸代謝拮抗作用が相加的に増強する。骨髄抑制、肝・腎障害、粘膜障害のリスクが増大する。高用量MTX療法に対するロイコボリン救援療法が増量・延長するなどの影響がある。【提案内容】1.スルファメトキサゾール・トリメトプリム錠を休薬する。2.MTX血中濃度が安全域まで低下したことを確認してから再開を検討する(Day5で判断)。主治医よりスルファメトキサゾール・トリメトプリム錠の休薬指示を受け、翌日より休薬しました。MTX血中濃度を適切にモニタリングしながら、ロイコボリン救援療法は計画どおり実施されました。Day4(MTX投与72時間後)にMTX血中濃度が0.1μmol/L未満であることを確認後、Day5(MTX投与96時間後)からスルファメトキサゾール・トリメトプリム錠によるニューモシスチス肺炎予防を再開しました。その後、重篤な骨髄抑制、肝・腎機能障害、粘膜障害の発現はなく経過し、安全に高用量MTX療法を完遂することができました。予防的スルファメトキサゾール・トリメトプリムはMTX曝露増加につながる可能性があるものの、骨髄抑制、急性腎障害(AKI)、肝毒性の発生率には影響しないという報告3)もあるため、今後の症例介入で生かしていきたいと考えています。参考文献1)バクトラミン配合錠添付文書(相互作用の項)2)メトトレキサート点滴静注液添付文書(併用禁忌・併用注意の項)3)Xu Q, et al. Ann Hematol. 2025;104:457-465.

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monarchE試験のOS結果が発表/ESMO2025

 HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がん患者を対象に、術後内分泌療法(ET)へのアベマシクリブ追加の有用性を検討したmonarchE試験の全生存期間(OS)の解析の結果、アベマシクリブ+ET併用療法は、ET単剤療法と比べて死亡リスクを15.8%低減させたことを、Royal Marsden NHS Foundation TrustのStephen R. Johnston氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。 monarchE試験は、HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がん患者5,637例を、2年間の術後療法としてアベマシクリブ+ET群とET単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相多施設共同無作為化非盲検試験。これまでの解析では、アベマシクリブ追加による無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)の5年時のベネフィットが報告されている。今回は、主要副次評価項目であるOSのほか、更新されたiDFSとDRFSの結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2025年7月15日で、追跡期間中央値は6.3年であった。・OSイベントは、アベマシクリブ+ET群301例、ET単独群360例に発生した。アベマシクリブ併用によって死亡リスクが15.8%低減し、事前に規定されていた有意水準を満たした(ハザード比[HR]:0.842、95%信頼区間[CI]:0.722~0.981、p=0.0273)。7年OS率は、アベマシクリブ+ET群86.8%、ET単独群85.0%であった。・転移の発生率は、アベマシクリブ+ET群6.4%、ET単独群9.4%であった。・iDFSのベネフィットは7年時点でも持続していた(HR:0.734、95%CI:0.657~0.820、p<0.0001)。7年iDFS率は、アベマシクリブ+ET群77.4%、ET単独群70.9%であった。・DRFSのベネフィットも持続していた(HR:0.746、95%CI:0.662~0.840、p<0.0001)。7年DRFS率は、アベマシクリブ+ET群80.0%、ET単独群74.9%であった。・OS、iDFS、DRFSの改善は、すべてのサブグループで一貫して認められた。・新たな安全性上の懸念や遅延毒性は認められなかった。

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寛解後の抗精神病薬減量は認知機能改善に寄与するか

 寛解した精神疾患患者では、再発リスクを増加させることなく、抗精神病薬を減量することが可能である。しかし、抗精神病薬の漸減が認知機能改善につながるかどうかは、これまでよくわかっていなかった。国立台湾大学のChun-I Liu氏らは、抗精神病薬の漸減を行った患者と固定用量のまま維持した患者における認知機能の変化を比較した。Psychological Medicine誌2025年8月27日号の報告。 安定期統合失調症関連精神病患者を対象に、2年間のプロスペクティブ研究を実施した。抗精神病薬の漸減群または維持群に分類した。認知機能は、ベースライン時、1年後、2年後にWAIS-III成人認知機能検査中国語版を用いて評価した。抗精神病薬の減量率と認知機能改善との関係の評価には、スピアマンの相関係数を用いた。また、アリピプラゾール使用群と非使用群にける認知機能も比較した。 主な結果は以下のとおり。・漸減群は、総合知能指数(IQ)、とくにワーキングメモリー、情報および算数のサブテストスコアにおいて有意な改善を示したが、再発率には両群間で有意差は認められなかった。・減量率と総合IQ(72例、r=0.242、p=0.041)、ワーキングメモリー指数(72例、r=0.284、p=0.016)、算数のサブテスト(72例、r=0.295、p=0.012)の改善との間に、統計的に有意な用量反応相関が認められた。・アリピプラゾール使用群と非使用群との間で、認知機能の変化に差は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬の減量は、いくつかの認知機能領域における患者パフォーマンスを改善する可能性がある。本知見は、寛解した精神疾患患者における抗精神病薬の漸減のリスクとベネフィットの比を評価する際、考慮する価値がある」と結論付けている。

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胃がん初のFGFR2b阻害薬、長期追跡では治療効果が減弱(FORTITUDE-101)/ESMO2025

 FGFR2b過剰発現は、胃がんにおいて比較的高頻度にみられ、新たな薬剤標的として注目されている。bemarituzumab(BEMA)はFGFR2bを標的とする初の抗体薬であり、今年6月に開発元のプレスリリースで、胃がんに対して全生存期間(OS)を有意に延長したとの発表があり、詳細なデータが待たれていた。しかし、長期追跡ではその効果が減弱する傾向が認められたという。10月17~21日に行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)Presidential Symposiumにおいて、韓国・延世大学校医科大学のSun Young Rha氏が、第III相FORTITUDE-101試験の結果を報告した。・試験デザイン:第III相国際共同ランダム化二重盲検試験・対象:切除不能または転移のあるFGFR2b過剰発現(IHC 2+/3+の10%以上)、未治療、非HER2陽性の胃または胃食道接合部がん(G/GEJC)患者・試験群:BEMA (15mg/kgを2週ごと、1サイクル目の8日目に7.5mg/kg追加)+mFOLFOX6(BEMA群)、FGFR2b過剰発現159例・安全性解析275例・対照群:プラセボ群、FGFR2b過剰発現165例・安全性解析267例・評価項目:[主要評価項目]FGFR2b過剰発現例におけるOS[副次評価項目]FGFR2b過剰発現例における無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・データカットオフ:2024年12月9日 主な結果は以下のとおり。・登録547例のうち、主要解析集団はBEMA群159例、プラセボ群165例であった。2024年12月9日時点の中間解析(追跡期間中央値11.8ヵ月)では、BEMA群で有意なOSの延長が認められた(中央値17.9ヵ月vs.12.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.43~0.86、p=0.005)。PFSも有意に改善し(8.6ヵ月vs.6.7ヵ月、HR:0.71、p=0.019)、ORRも上昇傾向を示した。・一方、2025年6月20日時点のフォローアップ解析(追跡期間中央値19.4ヵ月)では、OS中央値14.5ヵ月vs.13.2ヵ月、HR:0.82(95%CI:0.62~1.08)と有意差は失われ、治療効果の減弱が確認された。・安全性解析では、BEMA群ではGrade3以上の治療関連有害事象が60.0%に発生し、プラセボ群の18.4%を大きく上回った。好中球減少などは両群に共通していたが、BEMA群は角膜障害などの眼毒性が特徴的で、治療継続のために眼科的モニタリングが行われた。 研究者らは「現在、FORTITUDE-102試験(BEMA+mFOLFOX6+ニボルマブ群とmFOLFOX6+ニボルマブ群を比較)が進行中であり、BEMAの最適な適応集団や長期有効性がさらに明らかにされる見通しである」とした。 ディスカッサントのYelena Y. Janjigian氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)は「FORTITUDE-101試験は2年OS率に有意差がなく、実臨床を変えるものではなかった。現在進行中のFORTITUDE-102試験はさらに大規模集団に対して最適化された有害事象管理を行い、対照群にPD-1阻害薬+化学療法を設定していることから、BEMAのより明確な評価が行えるだろう。FGFR2bADCや二重抗体薬の開発につなげることが将来的な戦略となるだろう」とした。

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ALK陽性NSCLCへの術後アレクチニブ、4年OS率98.4%(ALINA)/ESMO2025

 ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の完全切除達成患者を対象に、術後アレクチニブの有用性を検討した国際共同第III相試験「ALINA試験」の主解析において、アレクチニブはプラチナ製剤を含む化学療法と比較して、無病生存期間(DFS)を改善したことが報告されている(ハザード比[HR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.13~0.43)1)。ただし、とくに全生存期間(OS)に関するデータは未成熟(主解析時点のイベントは6例)であり、より長期の追跡結果が望まれていた。そこで、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)において、Rafal Dziadziuszko氏(ポーランド・グダニスク大学)が、本試験の約4年追跡時点の結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB(4cm以上)/II/IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者で完全切除を達成した患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回)を2年間もしくは再発まで 130例(日本人15例)・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビンを3週ごと4サイクルもしくは再発まで 127例(日本人20例)・評価項目:[主要評価項目]DFS(StageII/IIIA集団→ITT集団の順に階層的に解析)[その他の評価項目]中枢神経系再発または死亡までの期間(CNS-DFS)、OS、安全性など 今回発表された主な結果は以下のとおり。・UICC/AJCC第7版に基づくStageIB/II/IIIAの割合は、アレクチニブ群11%/36%/53%、化学療法群9%/35%/55%で、UICC/AJCC第8版に基づくStageIB/IIA/IIB/IIIA/IIIBの割合は、それぞれ5%/8%/31%/51%/5%、4%/3%/35%/54%/5%であった。・UICC/AJCC第7版に基づくStageII/IIIA集団におけるDFS中央値は、アレクチニブ群未到達、化学療法群41.4ヵ月であった(HR:0.36、95%CI:0.23~0.56)。4年DFS率はそれぞれ74.5%、46.3%であった。・ITT集団におけるDFS中央値は、アレクチニブ群未到達、化学療法群41.4ヵ月であった(HR:0.35、95%CI:0.23~0.54)。4年DFS率はそれぞれ75.5%、47.0%であった。・DFSのサブグループ解析において、いずれのサブグループにおいてもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。・ITT集団における4年CNS-DFS率は、アレクチニブ群90.4%、化学療法群76.1%であった(HR:0.37、95%CI:0.19~0.74)。・ITT集団における4年OS率は、アレクチニブ群98.4%、化学療法群92.4%であった(HR:0.40、95%CI:0.12~1.32)。

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冠動脈バイパス術後の新規AF発症、術後30日以後はリスク低い?/JAMA

 ドイツ・LMU University HospitalのFlorian E. M. Herrmann氏らは、同病院およびイエナ大学病院の心臓外科センターで研究者主導の前向き観察研究を実施し、植込み型心臓モニター(ICM)による1年間のモニタリングの結果、冠動脈バイパス術(CABG)後1年以内の新規心房細動(AF)の累積発生率は既報より高かったものの、術後30日以降はAF負担がきわめて低いことを明らかにした。CABG後のAF新規発生率や負担は不明であるが、米国のガイドラインでは非無作為化臨床試験に基づきCABG後新たにAFを発症した患者に対し60日間の経口抗凝固療法がクラス2a(中程度の強さ)で推奨されている。著者は「術後30日以降のきわめて低いAF負担は、現行ガイドラインの推奨に疑問を呈するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年10月9日号掲載の報告。AF既往歴のない初回単独CABG施行患者198例を登録 研究グループは、初回単独CABGで、3枝冠動脈疾患または左主幹病変に対し2本以上のバイパスグラフトを施行する、AFならびにその他の不整脈の既往がない術前左室駆出率が35%以上の成人(18歳超)を対象に、術中(皮膚閉鎖後)にICMを埋設し、持続モニタリングを開始した。 主要アウトカムは、持続モニタリングで検出されたCABG後1年以内の新規AF累積発生率。副次アウトカムは、1年間におけるAF累積持続時間、AF負担(AF累積持続時間/総モニタリング時間)、臨床アウトカムなどであった。 2019年11月~2023年11月に1,217例がスクリーニングされ、適格患者198例(男性173例[87.4%]、女性25例[12.6%]、平均年齢66歳[SD 9])が登録された。術後1ヵ月以降はAF負担中央値0、累積持続時間0分 198例中1例はモニタリング開始前に死亡し、197例(99.5%)で遠隔データ収集が開始され、192例(97.0%)が1年間の持続モニタリングを完了した。 198例中95例がCABG後1年以内に新規AFを発症し、累積発生率は48%(95%信頼区間:41~55)であった。 一方、副次アウトカムである1年間のAF負担中央値は0.07%(四分位範囲:0.02~0.23)、AF累積持続時間は370分であった。AF負担中央値は、術後1~7日目で3.65%(0.95~9.09)、8~30日目0.04%(0~1.21)、31~365日目0%(0~0.0003)であり、AF累積持続時間はそれぞれ368分、13分、0分であった。 退院後、3例で24時間を超えるAF発作が認められた。

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世界の疾病負担とリスク因子、1990~2023年の状況/Lancet

 2010年以降、感染性・母子新生児・栄養関連(CMNN)疾患および多くの環境・行動リスク因子による疾病負担は大きく減少した一方で、人口の増加と高齢化が進む中で、代謝リスク因子および非感染性疾患(NCD)に起因する障害調整生存年数(DALY)は著しく増加していることが、米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Disease and Injury and Risk Factor Collaboratorsの解析で示された。Lancet誌2025年10月18日号掲載の報告。375の疾病・傷害、88のリスク因子について解析 研究グループは、死亡登録、各種調査、疾病登録および公表された科学論文を含む31万以上のデータソースを用い、375の疾病・傷害についてDALY、障害生存年数(YLD)、損失生存年数(YLL)を推定するとともに、88の修正可能なリスク因子が関与する疾病負担を算出した。疾病・傷害負担の推定に12万超のデータソースが、リスク因子推定に約5万9,000のデータソースが使用され、データ解析にはベイズメタ回帰モデリングツールのDisMod-MR 2.1や、新規ツールのDisMod-AT、時空間ガウス過程回帰モデル(ST-GPR)、比較リスク評価フレームワークなど、確立された方法が用いられた。 GBD 2023における疾病・傷害、リスク因子の推計値は、年齢(新生児早期から95歳以上までの25の年齢層)、性別(男性、女性、複合)、年次(1990~2023年までの各年)、および地域(204の国・地域を21の地域および7つのGBD super-regionに分類、加えて20ヵ国については660の地方自治体レベル)別に算出した。疾病・傷害ならびにリスク因子はそれぞれ4段階に分類した。NCDの負担は増加、虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病が主因 世界全体で総DALYは、2010年の26億4,000万(95%不確実性区間[UI]:24億6,000万~28億6,000万)から2023年は28億(95%UI:25億7,000万~30億8,000万)と6.1%(95%UI:4.0~8.1)増加した。一方で、人口増加と高齢化を鑑みた年齢標準化DALY率は12.6%(95%UI:11.0~14.1)減少しており、長期的に大きく健康状態が改善していることが明らかになった。 世界全体のDALYにおけるNCDの寄与は、2010年の14億5,000万(95%UI:13億1,000万~16億1,000万)から2023年には18億(95%UI:16億3,000万~20億3,000万)に増加したが、年齢標準化DALY率は4.1%(95%UI:1.9~6.3)減少した。DALYに基づく2023年の主要なレベル3のNCDは、虚血性心疾患(1億9,300万DALY)、脳卒中(1億5,700万DALY)、糖尿病(9,020万DALY)であった。2010年以降に年齢標準化DALY率が最も増加したのは、不安障害(62.8%)、うつ病性障害(26.3%)、糖尿病(14.9%)であった。 一方、CMNN疾患では顕著な健康改善がみられ、DALYは2010年の8億7,400万から2023年には6億8,100万に減少し、年齢標準化DALY率は25.8%減少した。COVID-19パンデミック期間中、CMNN疾患によるDALYは増加したが、2023年までにパンデミック前の水準に戻った。2010年から2023年にかけてのCMNN疾患の年齢標準化DALY率の減少は、主に下痢性疾患(49.1%)、HIV/AIDS(42.9%)、結核(42.2%)の減少によるものであった。新生児疾患および下気道感染症は、2023年においても依然として世界的にレベル3のCMNN疾患の主因であったが、いずれも2010年からそれぞれ16.5%および24.8%顕著な減少を示した。同期間における傷害関連の年齢標準化DALY率は15.6%減少した。主なリスク因子は代謝リスク、2010~23年で30.7%増加 NCD、CMNN疾患、傷害による疾病負担の差異は、年齢、性別、時期、地域を問わず変わらなかった。 リスク分析の結果、2023年の世界全体のDALY約28億のうち、約50%(12億7,000万、95%UI:11億8,000万~13億8,000万)がGBDで分析された88のリスク因子が主因であった。DALYに最も大きく影響したレベル3のリスク因子は、収縮期血圧(SBP)高値、粒子状物質汚染、空腹時血糖(FPG)高値、喫煙、低出生体重・早産の5つで、このうちSBP高値は総DALYの8.4%(95%UI:6.9~10.0)を占めた。 レベル1の3つのGBDリスク因子カテゴリー(行動、代謝、環境・職業)のうち、2010~23年に代謝リスクのみ30.7%増加したが、代謝リスクに起因する年齢標準化DALY率は同期間に6.7%(95%UI:2.0~11.0)減少した。 レベル3の25の主なリスク因子のうち3つを除くすべてで、2010~23年に年齢標準化DALY率が低下した。たとえば、不衛生な衛生環境で54.4%(95%UI:38.7~65.3)、不衛生な水源で50.5%(33.3~63.1)、手洗い施設未整備で45.2%(25.6~72.0)、小児発育不全で44.9%(37.3~53.5)、いずれも減少した。 2010~23年に代謝リスクに起因する年齢標準化負担の減少が小さかったのは、高BMI負担率が世界的に大きく10.5%(95%UI:0.1~20.9)増加したこと、顕著ではないがFPG高値が6.2%(-2.7~15.6)増加したことが主因であった。

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ctDNA陽性のMIBC患者、術後アテゾリズマブ投与でDFS・OS改善(IMvigor011)/ESMO2025

 術後に1年間連続的に実施した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検査で陽性と判定された筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者において、術後療法としてのアテゾリズマブ投与はプラセボと比較して無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を有意に改善した。英国・Barts Cancer InstituteのThomas Powles氏が、第III相IMvigor011試験の主要解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。なお、本結果はNEJM誌オンライン版2025年10月20日号に同時掲載された。・対象:ctDNA陽性(術後1年まで6週ごとにctDNA検査・12週ごとに画像検査を実施)のMIBC患者[膀胱全摘除術後6~24週以内、(y)pT2-4aN0M0または(y)pT0-4aN+M0、画像上の病変なし、ECOG PS 0~2、術前化学療法歴は許容]・試験群(アテゾリズマブ群):アテゾリズマブ(1,680mg、4週ごと、最大1年まで) 167例・対照群:プラセボ 83例※ctDNA陰性患者は経過観察のみ実施 357例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師評価によるDFS[重要な副次評価項目]OS・無作為化からの観察期間中央値16.1ヵ月(データカットオフ:2025年6月15日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は年齢中央値がアテゾリズマブ群69歳vs.対照群67歳、PD-L1発現状態:IC 0/1(<5%)が64.7%vs.63.9%、術前化学療法歴ありが47.9%vs.39.8%、初回のctDNA検査で陽性となった症例が59.3%vs.59.0%であった。・ベースライン特性をctDNA陰性例と比較すると、陽性例では≦T2が少なく(アテゾリズマブ群27.5%vs.対照群28.9%vs.ctDNA陰性例46.8%)、リンパ節転移陽性例が多い(57.5%vs.57.8%vs.20.2%)傾向がみられた。・ctDNA陽性例における治験責任医師評価によるDFS中央値は、対照群(4.8ヵ月、95%信頼区間[CI]:4.1~8.3)と比較し、アテゾリズマブ群(9.9ヵ月、95%CI:7.2~12.7)で統計学的有意に改善した(ハザード比[HR]:0.64、95%CI:0.47~0.87、p=0.0047)。12ヵ月DFS率はアテゾリズマブ群44.7%vs.対照群30.0%、24ヵ月DFS率は28.0%vs.12.1%であった。・ctDNA陽性例におけるOS中央値は、対照群(21.1ヵ月、95%CI:14.7~NE)と比較し、アテゾリズマブ群(32.8ヵ月、95%CI:27.7~NE)で統計学的有意に改善した(HR:0.59、95%CI:0.39~0.90、p=0.0131)。12ヵ月OS率はアテゾリズマブ群85.1%vs.対照群70.0%、24ヵ月OS率は62.8%vs.46.9%であった。・ctDNA陽性となったタイミングによるサブグループ解析の結果、初回検査および以降の検査いずれの場合も、アテゾリズマブ群におけるDFSおよびOSのベネフィットが確認された。・ctDNAクリアランス(初回検査でctDNA陽性となった症例のうち、3サイクル目の第1日あるいは5サイクル目の第1日にctDNA陰性となった症例)の割合は、アテゾリズマブ群25.1%vs.対照群14.5%であった。・膀胱全摘除術後の観察期間中央値21.8ヵ月における、ctDNA陰性例の12ヵ月DFS率は95.4%、24ヵ月DFS率は88.4%であり、12ヵ月OS率は100%、24ヵ月OS率は97.1%であった。・観察期間中に再発した患者は、アテゾリズマブ群63.5%vs.対照群78.3%で、51.5%vs.54.2%の患者が次治療を受けていた。治療法は化学療法36.5%vs.31.3%、免疫療法15.6%vs.31.3%、抗体薬物複合体19.2%vs.19.3%などであった。・Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)はアテゾリズマブ群7.3%vs.対照群3.6%で発現し、TRAEによる死亡はアテゾリズマブ群で3例(1.8%)で発生した。アテゾリズマブ治療に関する新たな安全性上の懸念は認められていない。 Powles氏は今回の結果を受けて、連続的なctDNA検査により術後アテゾリズマブ療法によるベネフィットが得られる患者を特定でき、また、持続的にctDNA陰性を示した患者における不要な治療を避けることができるとしている。

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アナフィラキシーへのアドレナリン点鼻投与の効果、エピペンと同等以上

 新たなエビデンスレビューによると、命に関わる重度のアレルギー反応を起こした人は、アドレナリンを主成分とするエピペンを太ももに刺すよりも点鼻スプレーを使った方が良いかもしれない。この研究では、液体または粉末のアドレナリンのスプレーによる鼻腔内投与は、注射による投与と同等か、場合によってはそれ以上の効果のあることが示されたという。英ロイヤル・ダービー病院のDanielle Furness氏らによるこの研究結果は、欧州救急医学会議(EUSEM 2025、9月28日〜10月1日、オーストリア・ウィーン)で発表された。 Furness氏は、「このレビューから、液体または乾燥粉末のアドレナリンの鼻腔内投与の効果はエピペンと同等であり、場合によってはエピペンよりも早く血流に到達する可能性のあることが分かった。現在のアナフィラキシーの治療薬はエピペンだが、この点鼻スプレーはエピペンと同等の効果を持つ、針を使わない適切な代替治療法となる可能性がある」とEUSEMのニュースリリースの中で述べている。 ナッツや虫刺されなどに強いアレルギーを持つ人は、アナフィラキシーショックを起こす可能性がある。アナフィラキシーショックが生じると、呼吸困難や血圧低下、意識障害が生じ、ただちにアドレナリンを投与しない限り命を失う可能性がある。米食品医薬品局(FDA)は2024年8月、アレルギー反応の緊急治療薬として初の点鼻スプレー薬「ネフィー点鼻液」を承認した。ネフィーはARSファーマ社によって製造されており、体重66ポンド(約30kg)以上の成人および小児に使用できる。 Furness氏らは、イスラエル、カナダ、タイ、米国、日本で実施された5件の研究のデータを分析してアドレナリンの注射による投与と点鼻投与を比較した。その結果、アドレナリンが血流に入るまでにかかる時間は点鼻投与で最大2.5〜20分であったのに対し、注射による投与では9〜45分であることが示された。また、点鼻投与による血中のアドレナリン濃度は、注射による投与と同等かそれ以上であることも判明した。どちらの投与法を用いた場合も、投与後の心拍数と血圧は同等であった。Furness氏はさらに、点鼻薬の保存期間は2年と注射薬(12〜18カ月)よりも長く、持ち運びも容易であると指摘している。 Furness氏は、「点鼻スプレーも、使い方や投与のタイミングについての明確な指示が必要なことに変わりはないが、特に注射針に恐怖を感じる人にとっては、病院外の公共の場でのアドレナリン投与がタイムリーに行われるようになることから、入院率を低下させられる可能性がある」と述べている。 Furness氏はさらに、「実臨床で、点鼻スプレーの安全性と有効性を裏付ける強力なエビデンスが得られれば、国のアナフィラキシーガイドラインに組み込まれる可能性があると考えている」と話し、「導入当初は、綿密かつ厳格なモニタリングを行い、期待通りの効果が得られなかった症例があれば医師に報告するよう促し、患者の安全を確保し、治療への信頼を維持する必要がある」と付け加えている。 本研究には関与していない、SRH Zentralklinikum Suhl(ドイツ)の救急科長であるFelix Lorang氏は、アドレナリンの点鼻スプレーが注射薬の非常に有用な代替品になることに同意している。同氏は、「針恐怖症や、常に持ち歩ける手軽さといった理由から、針を使うことに抵抗を感じる患者もいる。私の経験では、親戚や友人に針を使うことさえ、相手を傷つけたり怪我をさせたりするのではないかと恐れて躊躇する人も多い」と話し、「点鼻スプレーなら、このような障壁を克服できるだろう。さらなる研究で安全性と有効性が確認されれば、患者にとって有用な代替手段となるだけでなく、医療従事者が使用できる追加ツールにもなるだろう」との展望を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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第285回 コロナワクチンがICI治療のOSを有意に延長

INDEXええええ!ESMO2025のProffered Paper session新型コロナmRNAワクチンへの新たな期待ええええ!ここ半月以上、自民党の総裁選とそれに伴う政局のドタバタに振り回されてしまい、何とも言えないもどかしさを感じている。本来ならばコロナ禍の影響を受けて、今やオンラインでも視聴可能になった欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)にプレス登録して聴講するはずだったが、その機会も逃してしまった。とはいえ、悔しいのでここ数日、時間を見つけては同学会の抄録を眺めていたが、その中で個人的に「ええええ!」と思う発表を見つけた。演題のタイトルは「SARS-CoV-2 mRNA vaccines sensitize tumors to immune checkpoint blockade」。端的に結論を言えば、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン接種が免疫チェックポイント阻害薬による抗腫瘍効果を高める可能性の研究1)だ。抄録ベースだが、この研究内容を取り上げてみたい。ESMO2025のProffered Paper session発表者は米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのAdam J. Grippin氏である。mRNA関連創薬は、もともとはがんをターゲットとした治療ワクチンの開発を主軸としていて、米国・モデルナ社もこの路線でのパイプラインが形成され、たまたまコロナ禍が起きたことで、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンという形で日の目を見たことはよく知られている。Grippin氏らは、mRNAがんワクチンの研究から、同ワクチンが炎症性サイトカインへの刺激を通じて免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果の増強が得られることをヒントに、「もしかしたらがんに非特異的なmRNAワクチンでも同様の効果が得られるのではないか」と考えたらしい。そこで同センターで2017年1月~2022年9月までに生検で確定診断を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)、2019年1月~2022年12月までに治療を受けた悪性黒色腫の臨床データを抽出し、カプランマイヤー曲線、傾向スコアマッチング、およびCox比例ハザード回帰モデルを利用して全生存期間(OS)を評価したとのこと。ちなみに抄録レベルでは症例数は未記載だが、MDアンダーソンがんセンターのレベルでいい加減な臨床研究の可能性は低い。実際、抄録では研究にあたって同センターの倫理審査委員会の承認を受けていることが記載されている。その結果によると、免疫チェックポイント阻害薬による治療開始から100日以内の新型コロナmRNAワクチン接種有無で比較したOS中央値は、NSCLCで非接種群が20.6ヵ月、接種群が37.3ヵ月。3年OS率は非接種群が30.6%、接種群が55.8%だった。調整ハザード比[HR]は0.51(95%信頼区間[CI]:0.37~0.71、p<0.0001)であり、有意差が認められた。また、悪性黒色腫ではOS中央値は非接種群が26.67ヵ月、接種群が未到達。3年OS率は非接種群が44.1%、接種群が67.5%。調整HRは0.34(95%CI:0.17~0.69、p=0.0029)でこちらも有意なOS延長が認められたという。新型コロナmRNAワクチンへの新たな期待研究は明らかに後ろ向きではあるが、NSCLCでOS中央値が10ヵ月も違うことに個人的には正直驚きを隠せない。しかも、抄録によると、NSCLCではPD-L1検査(TPS)で低発現(TPS<1%)の症例でも新型コロナmRNAワクチン接種によるOSの延長効果が認められたとある。また、動物モデルでは、新型コロナmRNAワクチン接種によりI型インターフェロンの急増が誘発され、複数のがん抗原を標的とするCD8陽性T細胞のプライミングとがん細胞のPD-L1発現を上方制御することがわかった。さらに複数の動物がんモデルでも新型コロナmRNAワクチンと免疫チェックポイント阻害薬の併用で、免疫チェックポイント阻害薬の効果増強を確認したという。いずれにせよこの研究結果を見る限り、がんに特異的ではない新型コロナmRNAワクチンががん特異的抗原の発現を促すということになる。現在、モデルナは日本国内でもNSCLCと悪性黒色腫の個別化がん治療ワクチンの臨床試験中だが、今回の研究で示された可能性が前向き試験でも確認されれば、結構安上がり(あくまで個別化がん治療ワクチンや昨今発売された各種がんの治療薬との比較だが)ながん治療になるのではないか。個人的にはそこそこ以上に期待してしまうのだが。1)Grippin AJ, et al. Nature. 2025 Oct 22. [Epub ahead of print]

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映画に学ぶ研究デザイン、主題と副題の構造から見た臨床試験【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第89回

映画は素晴らしい猛暑の夏もようやく勢いを失い、夜風に秋の気配を感じる季節となりました。静かな秋の夜長に私が好んで親しむのは映画です。映画の中で繰り広げられる人間模様・友情・恋愛・信頼・裏切り。これらは、登場人物の選択と行動を通じて、観る者に多くの示唆を与えてくれます。困難に直面した人々がいかに受け止め、いかに行動するか。その姿は、現実の私たちにとっても小さな指針となり得ます。映画は、単なる娯楽を超えて「人生の教科書」ともいえる存在です。映画の主題と副題映画を少し異なる視点で眺めると、そこには常に「主題」と「副題」があることに気付かされます。観客を惹きつける主題の背後で、静かに流れるもう一つの物語、それが作品に深みと余韻をもたらします。たとえば『ローマの休日』(1953年、監督:ウィリアム・ワイラー)。ヨーロッパの小国の王女とアメリカ人新聞記者の身分違いの恋を描いた名作です。「真実の口」や「スペイン広場のジェラート」など、印象的な場面の数々を通して、オードリー・ヘップバーンの魅力が存分に発揮されます。主題はロマンチックな恋愛劇ですが、その背後に「自由行動による精神的成長」という副題が潜みます。終盤の記者会見で、王女が「この街の思い出をいつまでも懐かしむことでしょう」と堂々と答える場面には、依存的だった少女が自立した女性へと成長する姿が象徴的に描かれています。次に『カサブランカ』(1942年、監督:マイケル・カーティス)。親ドイツ政権下のフランス領モロッコを舞台に、かつて愛し合った男女の再会を描いた作品です。「As Time Goes By」の旋律、「君の瞳に乾杯」の台詞、いずれも映画史に残る名場面です。主題は愛の再燃ですが、副題は「愛よりも義を選ぶ人間の尊厳と祖国への思い」です。酒場でドイツ軍士官が国歌を歌う中、「ラ・マルセイエーズを」と告げ、皆がフランス国歌を合唱する場面は、個人の愛と信念、そして自由への希求が交錯する名シーンです。さらに『国宝』(2025年邦画、原作:吉田 修一、監督:李 相日)。任侠の家に生まれながら、歌舞伎の道に生涯を賭けた男の半生を描きます。主演の吉沢 亮と横浜 流星が、血のにじむような努力で芸の世界を体現しています。ここでの副題は「血」です。それは遺伝や家系といった文字通りの“血”であり、逃れられぬ宿命の象徴でもあります。芸の美しさと血の呪縛、この二重性が作品全体を貫いています。主解析とサブ解析やや熱を帯びて3本の映画を紹介してしまいましたが、興味深いのは、この「主題と副題」の構造が、実は医学研究にも通じるという点です。臨床研究における「主解析(primary analysis)」は、映画の主題に相当します。「新薬Aは標準治療Bと比較して心血管イベントを減少させるか」といった主要仮説を、事前に定めた統計計画に基づき厳密に検証する中核部分です。一方で、「高齢者ではどうか」「女性ではどうか」「糖尿病合併の有無で異なるか」といった問いを掘り下げるのが「サブ解析(sub-analysis)」であり、これはまさに“もう一つの物語”を探る試みといえます。サブ解析の鍵は“prespecified”ただし、この副題的なサブ解析には慎重な姿勢が求められます。映画では脚本家の自由な発想が許されますが、科学研究では「後付けの脚本」は厳禁です。解析後に思い付いたサブ解析を「発見」として提示するのは、統計的な偶然を物語化する行為に等しいからです。100回試行すれば5回は偶然「有意」となる、その確率の罠に陥ってはなりません。「たまたま有意だった結果」を、あたかも当初から想定していたかのように語り出す研究者が現れたなら、査読者はすぐに見抜きます。価値あるサブ解析とは、研究計画書(プロトコル)に明示され、事前に意図された問いを持つものであり、それを示す形容が “prespecified” です。一方、事後的(post-hoc)なサブ解析の報告は、探索的研究として明示することが求められます。これは結果を見て新たな仮説を生成する段階であり、検証的研究とは明確に区別すべき性質のものです。近年の大規模臨床試験では、主解析と並行して事前登録されたサブ解析の重要性が増しています。たとえ主解析が有意でなくとも、「特定のサブグループで有効性が示された」ことが、その後の臨床実践を変える契機となる場合もあります。副次的な知見は主解析の理解を補い、現場への応用可能性を広げる意味を持ちます。これは、映画において脇役の一言や背景描写が、主題の理解を一層深めるのに似ています。もっとも、サブ解析が独り歩きして主解析を覆い隠してしまえば、研究の重心は失われます。主解析が映画の「結末」であるなら、サブ解析は「その余韻」といえるでしょう。余韻が強すぎれば結末はぼやけます。論文においても、主解析の明確な結論を中心に据え、サブ解析は補完的な位置付けとして提示することが重要です。研究者は映画監督映画において副題が主題を支え、作品に奥行きを与えるように、臨床研究におけるサブ解析も主解析を補い、データに立体感をもたらします。両者に共通する真理は、「副題は脚本の途中で思い付いてはいけない」ということです。副題は最初から物語の構造の一部として設計されているとき、初めてその輝きを放ちます。ローマの王女の成長も、『カサブランカ』の義も、そして臨床研究のサブ解析も――いずれも主題を支える副題として存在します。そう考えると、研究計画書とはまさに脚本であり、研究者とは科学という舞台を演出する映画監督なのかもしれません。

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