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実臨床のスタチン、ロスバスタチンvs.アトルバスタチン

 ストロングスタチンに分類されるロスバスタチンとアトルバスタチンは、実臨床で広く用いられているが、実臨床におけるエビデンスは限られている。そこで、中国・南方医科大学のShiyu Zhou氏らの研究グループは、中国および英国のデータベースを用いて、両薬剤の有効性・安全性を比較した。その結果、ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較して全死亡、主要心血管イベント(MACE)、肝重症有害事象(MALO)のリスクをわずかに低下させることが示唆された。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2024年10月29日号に掲載された。 本研究では、China Renal Data System(CRDS)およびUKバイオバンクのデータベースを用いて、心血管疾患予防を目的としてロスバスタチンまたはアトルバスタチンが処方された成人患者28万5,680例を抽出した。両薬剤の比較にはtarget trial emulationの手法を用い、1対1の割合で傾向スコアマッチングを行った。主要評価項目は全死亡とした。 主な結果は以下のとおり。・6年間の全死亡率(100人年当たり)は、ロスバスタチン群がアトルバスタチン群よりも低かった(CRDS:2.57 vs.2.83、UKバイオバンク:0.66 vs.0.90)。・累積全死亡率の群間差(ロスバスタチン群-アトルバスタチン群)はCRDSでは-1.03%(95%信頼区間[CI]:-1.44~0.46)、UKバイオバンクでは-1.38%(同:-2.50~-0.21)であり、ロスバスタチン群が低かった。・両データベースの対象患者において、ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較して、MACEとMALOのリスクが低かった。・UKバイオバンクの対象患者において、ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較して、2型糖尿病発症リスクが高かった。慢性腎臓病発症リスクや、その他のスタチンに関連する有害作用のリスクは同程度であった。 本研究結果について、著者らは「複数の評価項目において、ロスバスタチンとアトルバスタチンでリスクの差がみられたが、その差は比較的小さく、これらの知見を臨床現場で確信をもって活用するには、さらなる研究が必要である」とまとめた。

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胃がん1次治療のニボルマブ+化学療法、承認後のリアルワールドデータ/日本治療学会

 進行再発胃がん1次治療に対するニボルマブ+化学療法は、CheckMate 649試験およびATTRACTION-4試験の結果に基づき、本邦では2021年11月に承認された。本レジメンの実臨床での有用性を検討する観察試験であるG-KNIGHTが行われ、第62回日本治療学会学術集会(10月24~26日)では、倉敷中央病院の仁科 慎一氏が本試験の2回目の解析結果を発表した。今回の解析は2023年11月までのデータに基づいて実施された。 主な結果は以下のとおり。・2021年11月~2023年6月に1次治療としてニボルマブ+化学療法を受けた切除不能・HER2陰性胃がん患者を対象に、日本全国23施設から539例が登録され、527例が解析対象となった。・追跡期間中央値は10.3ヵ月(SD 6.7~15.0)、年齢中央値は70.3歳(24~87)、65.5%が男性、90.9%がECOG PS 0または1であった。・ニボルマブと併用された化学療法は、SOX(74.6%)、CapeOX(6.8%)、FOLFOX(20.7%)であった。・PD-L1 CPS検査実施率は85.6%(453/529)であり、陽性のうち<1が19.7%、1~5が31.7%、≧5が47.9%であった。・奏効率(ORR)は65.6%(95%信頼区間[CI]:59.9~70.9)、病勢コントロール率(DCR)は93.0%(95%CI:89.5~95.6)であった。・ORRのサブグループ解析では、MSIステータス(MSI-H:88.9%、MSS:65.4%)、腹膜播種(なし:72.9%、あり:53.2%)などで差が見られた。・PD-L1 CPSはORRと関連していた(≧5:72.5%、1~5:61.7%、<1:55.6%)ものの、無増悪生存期間(PFS)とは関連していなかった。・PFS中央値は6.9ヵ月(95%CI:6.2~7.6)、全生存期間(OS)中央値は16.4ヵ月(95% CI:14.1~18.4)であった。・治療関連有害事象(TRAE)は481例(91.3%)で発生し、Grade3以上は213例(40.4%)、そのうち免疫関連有害事象は136例(25.8%)、Grade3以上は41例(7.8%)で認められた。 仁科氏は「追跡期間中央値10.3ヵ月の527例のデータに基づく2回目の中間解析により、実臨床におけるニボルマブ+化学療法の有効性と安全性に関する最新の見識が得られた。有効性、安全性とも既報と大きな相違点はなかった」とまとめた。

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精神科病床数はどのくらい必要なのか〜メタ解析

 チリ・ディエゴポルタレス大学のAdrian P. Mundt氏らは、精神科病床の必要数を推定し、これが時間経過とともにどのように変化したかを調査したうえで、実際の病床数との比較を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2024年9月26日号の報告。 2022年9月13日までに公表された研究を、PubMed、Embase classic、Embase、PsycINFO、PsycIndex、Open Grey、Google Scholar、Global Health EBSCO、Proquest Dissertationsより検索した。対象研究には、精神科入院病床の必要数の推定を検討した研究を含めた。必要推定値、入院期間、推定年を抽出した。必要推定値は、中央値および四分位範囲(IQR)を用いて統合した。また、同じ時間と場所における必要推定値と実際の病床普及率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・98件の推定値を含む65件の研究が特定された。・病床の需要推定値は、2000年まで低下傾向であったが、その後安定していた。・2000年以降の最新研究26件(入院期間未指定病床:15件、短期入院病床:7件、長期入院病床:4件)の推定値データを統合した。・人口10万人当たりの必要推定中央値は、入院期間未指定病床47(IQR:39〜50)、短期入院病床28(IQR:23〜31)、長期入院病床10(IQR:8〜11)であった。・2000年以降の必要推定値と実際の病床普及率の中央値は1.8(IQR:1.3〜2.3)であった。 著者らは「歴史的に、精神科病床の必要推定値は、2000年ごろまで減少していたが、それ以降は安定しており、実際の病床数よりも低値から高値に変化していた。病床数のさらなる削減を推奨している場合、この政策を見直す必要性が示唆された」とまとめている。

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オピオイド使用障害、治療中止リスクが低い薬剤は?/JAMA

 オピオイド使用障害(OUD)に対するオピオイド作動薬治療(OAT)のレジメンに関する国際的なガイドラインでは、競合する治療選択肢の有効性の比較に関するエビデンスが限られているため、依然として意見が分かれているという。カナダ・サイモンフレーザー大学のBohdan Nosyk氏らは、メサドンと比較してブプレノルフィン/ナロキソンは、治療中止のリスクが高く、死亡率は両群で同程度であることを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年10月17日号で報告された。ブリティッシュコロンビア州の後ろ向きコホート研究 研究グループは、OUDの治療におけるブプレノルフィン/ナロキソンとメサドンの有用性を比較評価する目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]などの助成を受けた)。 カナダ・ブリティッシュコロンビア州の9つの健康管理データベースを用いて患者のデータを収集した。年齢18歳以上、オピオイド依存と診断され、2010年1月1日~2020年3月17日にブプレノルフィン/ナロキソンまたはメサドンの新規処方を受けた全患者を対象とした。治療開始時に収監中、妊娠中、がん緩和療法中の患者は除外した。 主要アウトカムは、24ヵ月以内の治療中止(投薬中断日数が、ブプレノルフィン/ナロキソンは6日以上、メサドンは5日以上継続した場合と定義)および全死因死亡とした。initiator解析で24ヵ月治療中止率が高かった 研究期間中にOATの初回投与を受けた新規処方者3万891例(ブプレノルフィン/ナロキソン群39%、男性66%、年齢中央値33歳)をinitiator解析(ベースラインの交絡因子を調整するために傾向スコアと操作変数を用いた)の対象とし、このうち1週目の投与量が最適でなかった患者を除いた2万5,614例をper-protocol解析(ガイドライン推奨用量でのアウトカムを比較するために打ち切り法を用いた)の対象とした。 新規処方者のinitiator解析では、メサドン群に比べ、ブプレノルフィン/ナロキソン群で24ヵ月時の治療中止率が高かった(88.8% vs.81.5%、補正後ハザード比[HR]:1.58[95%信頼区間[CI]:1.53~1.63]、補正後リスク差:10%[95%CI:9~10])。また、per-protocol解析において至適用量で評価した治療中止率の推定値の変化は限定的なものであった(42.1% vs.30.7%、1.67[1.58~1.76]、22%[16~28])。死亡リスクは両群とも低い 投与期間中の24ヵ月時の死亡率に関するper-protocol解析では、新規処方者(ブプレノルフィン/ナロキソン群0.08%[10件]vs.メサドン群0.13%[20件]、補正後HR:0.57[95%CI:0.24~1.35])、および新規・既存処方者(prevalent new user)(0.08%[20件]vs.0.09%[45件]、0.97[0.54~1.73])のいずれにおいても両群とも値が低く、曖昧な結果が示された。 これらの結果は、フェンタニル導入後やさまざまな患者サブグループを通じて、また感度分析でも一貫していた。 著者は、「北米などの地域では、より強力な合成オピオイドの使用が増加し続けていることから、治療中止のリスクを軽減するために、OUD患者の治療のあらゆる側面に関する診療ガイドラインはその再考が求められる」としている。

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GLP-1受容体作動薬、内視鏡検査の誤嚥リスクに影響するか/BMJ

 2型糖尿病患者に上部消化管内視鏡検査を行う際、検査前のSGLT-2阻害薬と比較してGLP-1受容体作動薬の使用では、肺吸引のリスクは上昇しないものの、内視鏡検査中止のリスクが高いことが、米国・ハーバード大学医学大学院のWajd Alkabbani氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年10月22日号に掲載された。米国のコホート研究 研究グループは、2型糖尿病患者の上部消化管内視鏡検査において、検査前のGLP-1受容体作動薬投与は、SGLT-2阻害薬投与に比べ肺吸引や検査中止のリスクを上昇させるかを評価する目的で、コホート研究を行った(ハーバード大学医学大学院薬剤疫学・薬剤経済学科などの助成を受けた)。 米国の2つの商用医療データベースを用いて、2016年1月1日~2023年8月31日に、上部消化管内視鏡検査前の30日以内にGLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬を使用した18歳以上の2型糖尿病患者を特定した。 4万3,354例を解析の対象とした。内視鏡検査前に2万4,817例(平均年齢59.9歳、女性63.6%)がGLP-1受容体作動薬を、1万8,537例(59.8歳、63.7%)がSGLT-2阻害薬を使用していた。サブグループ解析でも全般に肺吸引リスクに差はない 主要アウトカムである内視鏡検査当日または翌日の肺吸引の1,000人当たりの重み付けリスクは、GLP-1受容体作動薬群が4.15、SGLT-2阻害薬群は4.26であり、両群で同程度であった(統合リスク比:0.98、95%信頼区間[CI]:0.73~1.31)。 内視鏡検査に使用した麻酔の種類や肥満度に基づくサブグループ解析でも、両群間に肺吸引リスクの差を認めなかった。また、個々のGLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬の比較でも、全般に肺吸引リスクに差はなく、エキセナチド-リキシセナチドのみリスクが高かった(統合リスク比:2.49、95%CI:1.36~4.59)が、症例数が少なく精度は低かった。BMI値≧30で検査中止リスクが高かった 副次アウトカムである内視鏡検査中止の1,000人当たりの重み付けリスクは、SGLT-2阻害薬群が4.91であったのに対し、GLP-1受容体作動薬群は9.79と増加していた(統合リスク比:1.99、95%CI:1.56~2.53)。 サブグループ解析では、BMI値≧30の患者でGLP-1受容体作動薬群の検査中止リスクが高かった(統合リスク比:2.60、95%CI:1.65~4.06)が、BMI値<30の患者では差を認めなかった(0.99、0.51~1.94)。また、SGLT-2阻害薬群と比較して、セマグルチド皮下注、デュラグルチド、エキセナチド-リキシセナチド、チルゼパチドは検査中止リスクが高かった。 著者は、「これらの知見は、無作為化試験によるエビデンスがない現在、内視鏡検査を必要とする患者に対する検査前のプロトコールの作成に役立つ可能性がある」としている。

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大量飲酒後には不整脈リスクが増加か

 パーティーやクラブで音楽を聞きながらの飲酒は気分を高揚させるものだが、心臓には悪い影響があるかもしれない。ドイツのミュンヘンで大量飲酒をした健康な若者の5%以上に、飲酒後24時間以内に臨床的に重要な不整脈が認められたとする研究結果が報告された。ルートヴィヒ・マクシミリアン大学(LMU)ミュンヘン(ドイツ)のStefan Brunner氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に10月4日掲載された。 論文の筆頭著者であるBrunner氏と上席著者であるLMU大学病院のMoritz Sinner氏は、2015年に、ミュンヘンの有名なオクトーバーフェスト中に調査を行い、飲酒が心拍リズムに与える影響を研究したことがある。ただ、この研究では、心電図(ECG)の単回測定の結果を頼りに結論が導き出されていた。 今回の研究では、携帯型のECGデバイスにより、外出先での飲酒により呼気アルコール濃度(BAC)が1.2g/kg以上になる可能性が高い18歳以上の若者202人の48時間分の心拍リズムが追跡された。ECGデータは、飲酒前(ベースライン;0時間)、飲酒期間(ベースラインから1〜5時間後)、回復期間(同6〜19時間後)、および飲酒期間と回復期間のそれぞれから24時間後に相当する2つのコントロール期間(同25〜29時間後と30〜43時間後)に分けて解析された。なお、研究グループによると、研究参加者は、ECG測定時にはお祭り気分であったものの、得られたデータの質は全体的に高かったという。 ECGデータが不十分だった9人を除外した193人(平均年齢29.9±10.6歳、女性36%)を対象に解析を行った。その結果、心拍数は、ベースライン時で平均89.5±12.6回/分だったのが、飲酒中には最高で平均97.0±16.2回/分にまで上昇していたことが判明した。また、参加者の5.2%(10/193人)で、臨床的に重要な不整脈が検出されたことも明らかになった。これらの不整脈は、主に回復期間に生じていた。 こうした結果を受けてSinner氏は、「アルコールは、心臓の自律的な調整プロセスに深刻な影響を与えるようだ」と話す。一方、Brunner氏は、「われわれの研究は、心臓病学の観点から、アルコールの急激な過剰摂取が健康に与える悪影響を明らかにするものだ」と述べている。ただし、研究グループは、飲酒に関連する不整脈が心臓の健康に及ぼす長期的な悪影響については、さらなる研究で検討する必要があると述べている。

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不十分な情報でも「自分は正しい」と思い込むのはなぜか

 人は、実際には全体像の一部しか把握していないにもかかわらず、決断を下すのに十分な情報を持っていると思い込みがちであることが、新たな研究で明らかになった。米オハイオ州立大学英語学教授のAngus Fletcher氏らによるこの研究結果は、「PLOS ONE」に10月9日掲載された。Fletcher氏は、「本研究により、人は概して、情報に基づいた意思決定をするために、他にも役立つ情報があるかどうかを検討してみようとはしないことが分かった」と述べている。 把握している情報量が実際には不十分であるにもかかわらず十分だと信じてしまう現象を、「情報の十分性の錯覚(illusion of information adequacy)」という。Fletcher氏らは、この概念は、限定的で偏った情報源から情報を得ているに過ぎない場合でも、人がいかに確固とした強い意見を持ち得るのかを説明するのに役立つと述べている。Fletcher氏は、「人に、一見矛盾しないと思われる情報をいくつか与えれば、ほとんどの人は『それは正しいようだ』と言って、それに従うだろう」と述べている。 この研究でFletcher氏らは、1,261人の米国人(男性59%、平均年齢39.8歳)を対象にオンラインで実験を行った。試験参加者は3群に分けられ、それぞれの群が、水不足の問題が生じている架空の学校についての記事を読んだ。ただし、1つ目の群が読んだ記事には、十分な水がある別の学校と合併すべき理由のみが、2つ目の群が読んだ記事には、十分な水がある別の学校とは合併せずに他の解決策を期待すべき理由のみが述べられていた。3つ目の群(対照群)が読んだ記事は、学校の合併に関する議論と、別々にとどまるための議論の両方が述べられた完全な内容の記事だった。 その結果、半分の内容の記事しか読んでいない1つ目と2つ目の群の参加者は、それでも「自分は確固たる決断を下すのに十分な情報を持っている」と信じ、読んだ記事の推奨に従うと答えたことが示された。Fletcher氏は、「本来の情報量の半分しか持っていなかった参加者の方が、全ての情報を持っていた参加者よりも、合併するべきか、別々にとどまるべきかの決断に対する自信が大きかった。彼らは、全ての情報を持っていなかったにもかかわらず、自分たちの決断は正しいと確信していた」と述べている。さらに、半分の情報しか持っていなかった人は、「他のほとんどの人も、自分と同じ決断を下すだろう」と考えていたことも判明した。 しかし、この実験では、一筋の希望の光も見えた。研究グループによると、記事の半分だけを読んでいた人の中には、その後、残りの半分の情報を読んだ人もいた。そうした人の多くが、自分の意見を変えることに抵抗を示さなかったという。ただしFletcher氏は、特に、固定化したイデオロギー的立場に関連する問題に関しては、全ての情報が提供されたとしても、それによってその人が考えを変えるとは限らないと指摘する。なぜなら、このような場合、人は新たな情報を信頼できないものとして切り捨てたり、既存の見解に合致するよう再解釈したりするからだ。 Fletcher氏は、「とはいえ、人間関係での衝突のほとんどはイデオロギーによるものではない。日常生活の中で生じる、ちょっとした誤解が原因だ」と話す。そして、「自分の立場を表明したり決断を下したりする前に、自分がその状況について十分に理解しているかどうかを確認する必要がある」と述べている。同氏はさらに、「この研究で明らかになったように、人には、関連する事実を全て知っていると思い込む思考パターンが備わっている。よって、誰かと意見が合わないときには、まず、相手の視点や立場をもっとよく理解するのに役立つ何かを見落としていないかを考えてみるべきだ。それが『情報の十分性の錯覚』と戦う方法だ」と助言している。

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脳卒中後の治療で最善の血栓溶解薬とは?

 脳梗塞患者に対する血栓溶解薬のテネクテプラーゼ(TNK)の適応外使用は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のアルテプラーゼ(以下、TPA)による治療よりもわずかに効果的である可能性があるとするシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が発表された。TNKによる治療の方が、TPAによる治療よりも、脳梗塞の発症から3カ月後に患者が修正版ランキンスケール(modified Rankin Scale;mRS)で症状がない(0点)か、症状があっても明らかな障害はない(1点)に分類される可能性の高いことが示されたという。アテネ国立カポディストリィアコ大学(ギリシャ)神経学分野教授のGeorgios Tsivgoulis氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に10月16日掲載された。 TNKは、脳梗塞の治療薬としてヨーロッパでは承認されているが、米国では未承認。現時点での欧州脳卒中機構(ESO)の緊急推奨では、非劣性を示したメタアナリシスの結果に基づき、発症から4.5時間未満の脳梗塞に対する治療では、TPAの代わりにTNK0.25mg/kgを使用しても良いとしている。これらのガイドラインの発表以降、さらに4件のランダム化比較試験(RCT)が実施され、追加の知見が得られている。 今回の研究では、現時点で入手可能な11件のRCTの結果を用いてシステマティックレビューとメタアナリシスを実施し、発症後4.5時間以内の脳梗塞の治療におけるTNK0.25mg/kgの有効性と安全性をTPAとの比較で検討した。これらのRCTには、TNKにより治療を受けた患者3,788人と、TPAによる治療を受けた患者3,757人が含まれていた。主要評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「優れた機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜1点)、副次評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「良好な機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜2点;2点=軽度の障害)、障害の軽減(mRSスコアが1点以上減少)、症候性頭蓋内出血、および死亡であった。 その結果、TNKによる治療を受けた群では、TPAによる治療を受けた群と比べて「優れた機能的アウトカム」を達成する可能性が5%高く(リスク比〔RR〕1.05、95%信頼区間〔CI〕1.01〜1.10、P=0.012)、障害が軽減している可能性も高い(共通オッズ比1.10、95%CI 1.01〜1.19、P=0.034)ことが示された。しかし、「良好な機能的アウトカム」を達成する可能性については、両群間で同等であった(RR 1.03、95%CI 0.99〜1.07、P=0.142)。また、症候性頭蓋内出血(同1.12、0.83〜1.53、P=0.456)、および死亡(同0.97、0.82〜1.15、P=0.727)のリスクについても有意差は認められなかった。 Tsivgoulis氏は、「われわれのメタアナリシスからは、TNKとTPAの両薬剤の安全性は同等で、脳卒中後の良好な回復の可能性を高めるが、TNKは、優れた回復をもたらす効果と障害軽減効果においては、TPAよりも優れている可能性の高いことが明らかになった」と述べている。その上で、「この結果は、脳梗塞患者の治療には、TPAよりもTNKを使用するべきだという主張を裏付ける結果だ」と話している。

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心臓以外の大手術前のレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬使用継続は少なくとも予後や合併症に悪影響は与えない(解説:浦信行氏)

 生体の血圧維持には主に交感神経系やRAS系の関与が大きな役割を担う。大手術では麻酔による影響で交感神経系が抑制されるが、その状況でRASを抑制すると血圧維持に支障を来たして重症低血圧を引き起こし、生命予後悪化や臓器障害の原因になりかねない。一方ではRAS阻害薬は降圧作用に加えて心血管系や腎臓を中心とした臓器保護作用を有し、継続したほうが良いとの考えもある。 これまでの各国のガイドラインでも、継続を推奨するものと中止を推奨するものが相半ばし、明確な結論は出ていなかった。最近の比較的大規模の臨床試験でも継続群の合併症が有意に多く、また術中低血圧発症も有意に多かったとの報告を見る一方で、術中低血圧発症は有意に多かったが合併症に差がなかったとの報告も見られる。また、合併症も術中低血圧も有意に多かったが、この両者に有意な関連はなかったとの報告もあり、一定の結論が得られていない。 今回の試験は、継続群と中止群の2群に対して1:1のランダムに割り付けをし、術後28日目までのイベントを比較したところ、持続群で低血圧発症頻度と持続が有意に大きかったがイベント発症に差がなかった。これで一定の結論が得られたと考えるが、わが国の現状では、ほとんどすべてのRAS阻害薬の添付文書には手術前24時間は投与しないことが望ましいと記載され、高血圧治療ガイドライン2019では「RAS阻害薬投与中では周術期の体液量減少に伴い、過度な血圧低下や腎機能障害の発症が懸念される」との記載で、あくまでも術前中止のスタンスである。ちなみに麻酔科医の意見を聞くと、術中低血圧の際の昇圧薬による対応に難渋することは、最近ではほぼなく対応可能であるため、大勢は中止をしていないとのことであった。

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新型コロナによる死者数とその年齢構成

新型コロナウイルス感染症による年間死亡者数と年齢構成(5類感染症移行後)2023年5月~2024年4月の死亡者数(インフルエンザとの比較)死亡者の年齢構成30~40代 0.5%3万2,576人29歳以下 0.2%50代 1.2%60代 3.8%70代約15倍90歳以上15.9%38.6%80代2,244人新型コロナウイルス感染症インフルエンザ39.8%n=3万2,573人(年齢不明の3人除く)厚生労働省「人口動態統計」より2023年5~12月(確定数)、2024年1~4月(概数、2024年10月30日閲覧)のデータを集計Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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まるで暗号解読!米国のカルテの略語や言い回し【臨床留学通信 from Boston】第5回

まるで暗号解読!米国のカルテの略語や言い回しMGHに来て3ヵ月。業務にそろそろ慣れてきましたが、だんだん疲れも出てくるころです。朝5時に起きて、6時半から診察、終わるのはだいたい6時。7~8時になることもあります。そして平日に1度、週末は月に1度のオンコールがあり、それが夜中に呼ばれると、翌日の業務がかなり辛くなります。さて今日のテーマは、気分転換ということで、カルテの略語や難しい言い回し。アメリカでは略語だらけで、何が何だかわからなかったのが6年前でした。円安も少しはマシになり、コロナも落ち着いて、学生や将来渡米を考えている初期、後期研修医の方などが、いわゆるオブザーバーシップのプログラムに参加すると、必ずぶち当たる問題だと思います。日本とは違う略語もたくさんあります。いくつか列挙してみましょう。pt:patient患者。AMA:against medical adviceこちらではよくあることですが、患者さんが医師の言うことを聞かずに帰ってしまうというもの。帰りたい人には説得してみて、だめならサインをしてもらいます。最初はそもそもAMAがわからないし、説明されてもそんなことあるんだと思いました。ちなみに、患者さんが勝手にいなくなることもあり、その際は「That pt eloped」と言います。BRBPR:bright red blood per rectum下血の時に使いますが、略語だと何だかわかりませんよね。BIBA: brought in by ambulance救急搬送。CAT scanCTのことをCAT scanと言うことが多いです。Computed tomographyがCTなのに、なぜCATなのか、猫なのか?と思った記憶があります。c/b:complicated by合併症。2/2:due to、secondary to〜による。「pt underwent PCI c/b cardiac tamponade 2/2 wire perforation」(患者はPCIを受け、ワイヤーの穿孔による心タンポナーデを合併)と書いたりします。DC:dischargedDCはdischarged(退院)です。defibrillator(除細動器)をDCと言うことはないです。VFに対しては「cardiac arrest with x6 shock」といいます。ちなみに、discontinue(中止)もDCと言うのでややこしいです。Fx:fracture骨折。GOC:goals of careケアの目標、とくに緩和ケアなどが介入しDNRなどを決める時の家族会議をいいます。gttsラテン語のgutta=dropとなるため、「heparin drip」などを「heparin gtt」と言います。HCP:health care proxy何か重要な決定を本人の代わりにする人のことを指します。文書によって、本人が選定しサインすることが求められます。KVO:keep venous line open静脈ラインを開けておくという意味です。看護師サイドでよく使われますNGTD:no growth to date「bld cx NGTD」とかいうと、血液培養が今のところ陰性、となります。NKDA:no known drug allergy既知の薬物アレルギーなし。Pass awayお亡くなりになる。Pass out気を失う。夜勤をしていて、日勤者への申し送りに、「he passed out」と言おうとして「he passed away」と間違って言ってしまい、ものすごく驚かれたことがあります。PERRLA:pupils equal round reactive to light and accommodation瞳孔は左右対称で、円形、光に反応し、調節反応が正常である。PSU:polysubsutance useコカインなど麻薬の薬物乱用のことを指します。日本では麻薬を使用している人を見つけたら警察に通報ですが、アメリカでは必要ありません。ちなみに、渡米してから「警察に通報する必要はないの?」と同僚に聞いたら笑われました。SOB:shortness of breath呼吸困難。s/p:status post「CAD s/p PCI」などと、PCIをすでに患者が受けていることを言います。Utox:urine toxicology尿中薬物検査。これをするとどんな薬の乱用者かわかります。医療従事者も新しい仕事に就く前にスクリーニングとして検査することが多いです。こうした略語を使って、たとえば以下のようにサマリーします。77 yo F with PMH of HTN, HLD, DM, PSU, CAD s/p PCI c/b cardiac tamponade 2/2 wire perforation, HFrEF (EF 30%) s/p ICD, BIBA for SOB, found to have ADHF, now s/p IV diuresis, pending GOC with HCP and DC planning.(77歳の女性。既往歴に高血圧、脂質異常症、糖尿病、薬物乱用歴、冠動脈疾患があり、PCIの際にワイヤーの穿孔による心タンポナーデを合併した。HFrEF[左心駆出率30%]で植込み型除細動器を挿入済み。呼吸困難で救急搬送され、急性増悪型心不全と診断された。静注利尿薬の投与後、現在ケアの目標と退院計画についてヘルスケアプロキシーとの相談待ち)Column本連載ボストン編のアイコンになっている州議会の写真です。夜間はライトアップされて、きれいな建物ですね。ボストン観光をする暇があまりないのですが、そろそろしていきたいと思います。画像を拡大する

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抗核抗体検査【日常診療アップグレード】第16回

抗核抗体検査問題21歳女性。2週間前から昼間に37.5℃の発熱がよくある。朝と夕方は平熱である。軽度の食欲低下あり。それ以外は明らかな症状なし。関節痛なし。皮疹なし。全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病の可能性を考えて抗核抗体(ANA)をオーダーした。

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せん妄で認知症リスク5倍~日本の入院患者26万例のデータ

 せん妄は、高齢者、とくに高齢入院患者の意識障害に影響を及ぼすことが多い。近年、せん妄歴と認知症リスク上昇との関連を報告したエビデンスが増加している。しかし、多くの研究は、主に患者数の少ない術後およびICU患者に焦点が当てられており、範囲が限定されているため、適応範囲が広いとはいえない。大阪医科薬科大学の南 博也氏らは、入院患者全体を対象に、せん妄の発生率およびその後の認知症発症リスクを調査した。さらに、入院中のせん妄発現とその後の認知症発症との相関も調査した。Frontiers in Psychiatry誌2024年9月13日号の報告。 大阪医科薬科大学病院の患者26万1,123例を含む10年間の電子カルテデータセットを用いて、レトロスペクティブコホート分析を実施した。主な分析は、2022年10月〜2023年1月に行った。主要アウトカムは、抗認知症薬(ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン)の処方により定義した認知症の発症とした。 主な結果は以下のとおり。・1万781例が適格基準を満たした。・認知症発症までの中央値は、せん妄歴のない患者で972.5日、せん妄歴を有する患者で592.5日であり、明らかに短かった。・せん妄発生後の認知症発症のハザード比は5.29(95%信頼区間:1.35〜20.75)であった。 著者らは「本結果は、入院中のせん妄予防の重要性とせん妄発生患者の認知機能低下に対するモニタリングおよび介入の重要性を強調している」としている。

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レトロウイルス感染症-基礎研究・治療ストラテジーの最前線-/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が京都市で開催され、12日のPresidential Symposiumでは、Retrovirus infection and hematological diseasesに関し5つの講演が行われた。本プログラムでは、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の発がんメカニズムや、ATLの大規模全ゲノム解析の結果など、ATLの新たな治療ストラテジーにつながる研究や、ATLの病態解明に関して世界に先行し治療開発にも大きく貢献してきた日本における、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連疾患の撲滅といった今後の課題、AIDS関連リンパ腫に対する細胞治療や抗体療法の検討、HIVリザーバー細胞を標的としたHIV根治療法など、最新の話題が安永 純一朗氏(熊本大学大学院生命科学研究部 血液・膠原病・感染症内科学)、片岡 圭亮氏(慶應義塾大学医学部 血液内科)、石塚 賢治氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 人間環境学講座 血液・膠原病内科学分野)、岡田 誠治氏(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 造血・腫瘍制御学分野)、白川 康太郎氏(京都大学医学部附属病院 血液内科)より報告された。ATLの発がんメカニズムに関与するHTLV-1 bZIP factor(HBZ)およびTax HTLV-1はATLの原因レトロウイルスであり、細胞間感染で感染を起こす。主にCD4陽性Tリンパ球に感染し、感染細胞クローンを増殖させる。HTLV-1がコードするがん遺伝子にはTaxおよびHBZ遺伝子が含まれ、Taxはプラス鎖にコードされ一過性に発現する。一方、HBZはマイナス鎖にコードされ恒常的に発現する。これらの遺伝子の作用により、感染細胞ががん化すると考えられる。HBZはATL細胞を増殖させ、HBZトランスジェニックマウスではT細胞リンパ腫や炎症が惹起される。また、HBZタンパクをコードするだけでなく、RNAとしての機能など多彩な機能を有している。HBZトランスジェニックマウスではHBZが制御性Tリンパ球(Treg)に関連するFoxp3、CCR4、TIGITなどの分子の発現を誘導、TGF-β/Smad経路を活性化してFoxp3発現を誘導し、この経路の活性化を介し、HTLV-1感染細胞をTreg様に変換し、HTLV-1感染細胞、ATL細胞の免疫形質を決定していると考えられる。 ATL症例の検討では、TGF-β活性化により、HBZタンパク質は転写因子Smad3などを介しATL細胞核内に局在し、がん細胞の増殖が促進される。HBZ核内局在はATL発症において重要であり、TGF-β/Smad経路はATL治療ストラテジーの標的になりうると考えられる。Taxはウイルスの複製やさまざまな経路の活性化因子であり、宿主免疫の主な標的であり、ATL細胞ではほぼ検出されない。ATL細胞株のMT-1はHTLV-1抗原を発現するが、MT-1細胞ではTaxの発現は一過性である。また細胞発現解析では、Tax発現が抗アポトーシス遺伝子の発現増加と関連し、細胞増殖の維持に重要であることが示された。ATL症例では約半数にTaxの転写産物が検出され、Taxの発がんへの関与が考えられる。発がんメカニズムに関与するHBZおよびTax遺伝子の多彩な機能の解析がATLの治療ストラテジーの開発につながると考えられる。ATLの全ゲノム解析―遺伝子異常に基づく病態がより明らかに ATLは、HTLV-1感染症に関連する急速進行性末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:peripheral T-cell lymphoma)であり、ATL発症時に重要な役割を果たす遺伝子異常について、全エクソン解析や低深度全ゲノム解析など網羅的解析が行われてきた。しかし、構造異常やタンパク非コード領域における異常など、ATLのゲノム全体における遺伝子異常の解明は十分ではなかった。 今回実施された、ATL150例を対象とした大規模全ゲノム解析は、腫瘍検体における異常の検出力がこれまでの解析より高い高深度全ゲノム解析(WGS)である。タンパクコード領域および非コード領域における変異、構造異常(SV)、コピー数異常(CNA)を解析した結果、56個のドライバー遺伝子が同定され、56個中CICなど11個の新規ドライバー遺伝子があり、このうちCIC遺伝子はATL患者の33%が機能喪失型の異常を認め、CIC遺伝子の長いアイソフォームに特異的な異常(CIC-L異常)であり、ATLにおいて腫瘍抑制遺伝子として機能していた。さらに、CIC遺伝子とATN1遺伝子異常の間には相互排他性が見られ、CIC-ATXN1複合体はATL発症に重要な役割を果たすと考えられた。また、CIC-LノックアウトマウスではFoxp3陽性T細胞数が増加しており、CIC-LがT細胞の分化・増殖を制御するうえで選択的に作用すると考えられた。 また、ATL新規ドライバー遺伝子RELは、遺伝子後半が欠損する異常をATL患者の13%に認め、遺伝子の構造異常はATL同様、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)でも高頻度に認められた。REL遺伝子の構造異常はREL発現上昇やNF-κB経路の活性化と関連し、腫瘍化を促進すると考えられた。 ATLにおけるタンパク非コード領域、とくにスプライス部位の変異の集積が免疫関連遺伝子を中心に繰り返し認められ、ATLのドライバーと考えられた。今回の解析で得られたドライバー遺伝子異常の情報をクラスタリングし、2つのグループに分子分類した結果、両群の臨床病型や予後が異なることが示された。全ゲノム解析研究はATLの新たな診断および治療薬の開発につながると考えられる。ATL治療の今後 ATLは、aggressive ATL(急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型)とindolent ATL(くすぶり型、予後不良因子を有さない慢性型)に分類され、それぞれ異なる治療戦略が取られる。aggressive ATLの標準治療(SOC)は多剤併用化学療法であり、VCAP-AMP-VECP(ビンクリスチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾロン―ドキソルビシン+ラニムスチン+プレドニゾロン―ビンデシン+エトポシド+カルボプラチン+プレドニゾロン)の導入により、最終的に生存期間中央値(MST)を1年以上に延長することが可能となった。同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)はHTLV-1キャリアの高齢化に伴い、全身状態が良好な70歳未満の患者におけるSOCとして施行される。2012年以降、日本ではモガムリズマブ、レナリドミド、ブレンツキシマブ ベドチン、ツシジノスタット、バレメトスタットの5剤が新規導入され、初発例に対するモガムリズマブおよびブレンツキシマブ ベドチン+抗悪性腫瘍薬の併用や、再発・難治例に対する単剤療法として使用されている。indolent ATLに対しては日本では無治療経過観察であるが、海外では有症候の場合IFN-αとジドブジン(IFN/AZT)の併用が選択される。しかし、いずれもエビデンス不足であり、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は両群の治療効果を確認する第III相試験を進行中であり、結果は2026年に公表予定である。 日本の若年HTLV-1感染者は明らかに減少し、新規に診断されたATL患者は高齢化し、70歳以上と予測される。この動向は2011年から開始された母乳回避を推奨し、母子感染を抑止する全国的なプログラムによりさらに推進されると考えられる。今後は高齢ATL患者に対するより低毒性の治療法の確立と、全国プログラムの推進によるHTLV-1感染、およびATLなどHTLV-1関連疾患の撲滅が課題である。AIDS関連悪性リンパ腫の現状 リンパ腫はAIDSの初期症状であり、AIDS関連悪性リンパ腫はHIV感染により進展し、AIDS指標疾患として中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)および非ホジキンリンパ腫が含まれる。悪性腫瘍は多剤併用療法(cART)導入後もHIV感染者の生命を脅かす合併症であり、リンパ腫はHIV感染者の死因の最たるものである。HIV自体には腫瘍形成性はなく、悪性腫瘍の多くは腫瘍ウイルスの共感染によるものである。 エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)はAIDS関連リンパ腫の最も重要なリスクファクターであり、HIV感染による免疫不全、慢性炎症、加速老化、遺伝的安定性はリンパ腫形成を亢進すると考えられている。AIDS関連リンパ腫ではEBV潜伏感染が一般的に見られ、EBV感染はDLBCL発症と深く関連するが、予後不良な形質芽球性リンパ腫(PBL)、原発性滲出性リンパ腫(PEL)との関連は不明である。バーキットリンパ腫(BL)、およびPBLは最近増加している。BLおよびホジキンリンパ腫(HD)の治療成績と予後はおおむね良好である。 AIDS関連悪性リンパ腫の治療はこれまで抗腫瘍薬と、プロテアーゼインヒビター(PI)のCYP3A4代謝活性阻害による薬物相互作用の問題があった。近年、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)の導入によりCYP3A4阻害が抑えられ、AIDS関連悪性リンパ腫患者の予後は非AIDS患者と同等になっている。 高度免疫不全マウスにヒトPEL細胞を移植したPELマウスモデルでは、PELにアポトーシスが誘導された。AIDS関連リンパ腫に対する細胞療法や抗体療法の効果が期待される。リザーバー細胞を標的としたHIV根治療法 抗レトロウイルス療法(ART)により、HIVは検出不可能なレベルにまで減少できるが、ART中止数週間後に、HIVは潜伏感染細胞(リザーバー)から複製を開始する。HIV根治達成には、HIVリザーバーの体内からの排除が必要である。 HIV根治例は2009年以来、現在まで世界で7例のみである。全例が白血病など悪性腫瘍を発症し、同種造血幹細胞移植(SCT)を受け、数年はARTなしにウイルス血症のない状態を維持した。最初のHIV根治例はCCR5Δ32アレルに関してホモ接合型(homozygous)であるドナーからSCTを受けた症例であり、5例がこのSCTを受けた。 キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法はHIV感染症領域への応用が期待されている。そこで、アルパカを免疫して作製したVHH抗体をもとに、より高効率にHIVに対する中和活性を示す抗HIV-1 Env VHH抗体を開発した。新たなHIV感染症の治療として、CAR-T療法への応用などを試みている。 HIVリザーバー細胞を標的として排除するアプローチとして、latency reversal agents(LRA)によるshock and killが提唱され、HIV根治のためのLRA活性を有するさまざまな薬剤の研究、開発が進められている。HIV潜伏感染細胞モデル(JGL)を用いたCRISPRスクリーニングにより、4つの新規潜伏感染関連遺伝子、PHB2、HSPA9、PAICS、TIMM23が同定され、これら遺伝子のノックアウトによりHIV転写の活性化が誘導され、潜伏感染細胞中にウイルスタンパクの発現が認められた。また、PHB2、HSPA9、TIMM23のノックアウトにより、ミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)が誘導された。Mitophagy activatorのウロリチンA(UA)およびその他のマイトファジー関連化学物質は、潜伏細胞実験モデルにおいてHIV転写を再活性することが示され、in vivoにおけるHIV再活性化の誘導についての臨床試験が検討されている。 ウイルス酵素をターゲットとする最近のART療法ではHIV根治は望めず、ウイルス産生が可能なリザーバー細胞を標的としたHIV根治療法が求められている。 本プログラムでは、ATLやAIDS関連リンパ腫などの病態解明や治療法について最新の話題が報告され、今後の治療ストラテジーの開発につながることが期待される。

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患者数が5年で5倍!心不全診療で取りこぼせない疾患とは/日本心臓病学会

 心アミロイドーシスは、もはや希少疾患ではないのかもしれない―。9月27~29日、仙台で開催された第72回日本心臓病学会学術集会のシンポジウム「心臓アミロイドーシス診療Up to date」において、本疾患の歴史や病理診断、病態~治療に関する現況や最新情報が報告され、これまでの心アミロイドーシスに対する意識を払拭すべき現状が浮き彫りとなった。心不全診療、心アミロイドーシスの除外診断は落とせない 心アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスの一症状で、心臓の間質にアミロイド蛋白が沈着し、形態的・機能的異常をきたす進行性かつ予後不良の疾患である。アントニオ猪木氏が闘った病としても世間を賑わしたが、他方で医学界においても見過ごすことができない疾患として、今、注目を浴びている。というのは、心アミロイドーシスが心不全のなかでも治療方法が確立していないHFpEFの原因疾患の1つであること、診断方法や治療薬の進歩により診断件数が直近5年で約5倍にまで急増していることなどに端を発する。 ほんの10年前までは診断に心内膜心筋生検を要し、遺伝性では肝移植を治療法とするなどの高いハードルがあったが、『2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン』の発刊により、心臓99mTcピロリン酸シンチグラフィ(骨シンチグラフィ)を用いた非侵襲的な病型診断ができるようになり、さらには2019年に入りタファミジス(商品名:ビンダケルCap80mg、ビンマックCap61mg[2022年承認])にATTRアミロイドーシス(遺伝性[ATTRv]および野生型[ATTRwt])が適応追加されたことで状況が一変。現在、国内のATTRアミロイドーシスを基礎とした心不全患者は「5万人に上る」と田原 宣広氏(久留米大学心臓・血管内科循環器病センター 教授)は説明した。診断時に留意する点 心アミロイドーシスは免疫グロブリン性のAL(amyloid light chain)とトランスサイレチン(transthyretin:TTR)を前駆蛋白とするアミロイドが全身諸臓器に沈着するATTR(ATTRvとATTRwt)で98%以上を占め、原因不明の心不全や心肥大、大動脈弁狭窄症、そして強い伝導障害のある患者をみた際に鑑別したい疾患である。 病理医の立場から解説した内木 宏延氏(福井大学分子病理学 教授)は、確定診断を下す際の注意点として、骨シンチグラフィの普及により診断精度が向上したものの、日本では病理診断が必須であることを言及しており、「生検が必要な場合には、アミロイドが蓄積している皮下脂肪深部の細胞を採ることが大切で、その目安は親指の第一関節くらいの深さ」と説明した。 続いて診断時のポイントを解説した久保 亨氏(高知大学医学部老年病・循環器内科 病院准教授)は「心臓外症状に注目してほしい」と強調。病型を推察する際の目安として以下の所見を踏まえて診断を進めていくとともに、「AL、ATTRそれぞれを想定した心臓外症状としてみることが重要」と説明した。<とくにチェックすべき徴候・身体所見>・手根管症候群(とくに両側)・脊柱管狭窄・末梢神経障害・巨舌・自律神経障害・shoulder pain sign・蛋白尿などの腎障害・下血などの消化器症状 このほかに心電図検査や心エコーにてapical sparing(心基部の長軸方向ストレインが低下し、相対的に心尖部では保たれている所見)が認められ、心アミロイドーシス疑いが強まった時点でALかATTRかを判断するが、ALは骨シンチグラフィで偽陽性を示す場合があるため、「予後不良で準緊急対応が必要とされるALの除外は早急に行わなければならない。そこで、われわれはM蛋白の評価と骨シンチグラフィを同時に実施している」とし、「Definite診断(組織生検でのTTR同定が必要[タファミジス使用には必要])が付いていなくても、Probable診断(M蛋白の除外+骨シンチグラフィ陽性)の段階で申請可能であり、2024年度から書式が病型ごとに分かれたため、ATTRのprobable診断が得られれば、組織所見を待たずに遺伝学的検査を実施するほうがスピーディに進められる」と特定疾患申請方法についても説明した。治療薬の現状と将来展望 トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)の治療には、心不全治療とアミロイド沈着に対し疾患修飾薬による治療が必要となる。心不全治療について、南澤 匡俊氏(信州大学循環器内科)は「SGLT2阻害薬によりイベント抑制のみならずeGFRやNT-proBNPの増悪抑制効果1)が得られる」と述べ、心機能予防については「DELIVER試験のように左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)への心保護効果に対する薬物療法の検証が活発になってきている。心アミロイドーシスで心機能低下がない場合でも将来を見据えた予防的治療を行い、心保護を行うことが推奨される」と説明した。 疾患修飾薬については、アミロイドの原因となる血中TTRの90%以上が肝臓で産生されるため、治療標的として(1)siRNA製剤による肝臓でのTTR産生抑制、(2)TTR四量体の安定化、(3)アミロイド沈着に対する除去が挙げられる。現在、ATTRv神経症には(1)と(2)が、ATTR-CMには(2)が保険収載されており、(3)は治験段階である。遠藤 仁氏(慶應義塾大学医学部循環器内科)はATTR-CMの治療介入のタイミングについて「NYHAIII症例へはなるべく早期に安定化薬であるタファミジスを処方したほうがイベント改善効果は得られる。一方、心不全がないATTR-CMであっても早晩に心不全を発症するため、タファミジス投与により予後の改善が期待できる」と説明、さらに高齢ATTR-CM(>80歳)についてのタファミジスの有効性を示した2)。このほか、新たなTTR量体安定化薬acoramidisやsiRNA製剤ブトリシランについての有効性・安全性を紹介し、「ATTR-CMの治療薬として、TTR安定化薬やsiRNA製剤が広く使われていくだろう」と述べ、肝細胞の遺伝子編集、アミロイド線維を除去する抗体医薬NI006などの将来的な治療についても触れた。他科からのコンサルト需要が増加傾向に 近年、整形外科医から心アミロイドーシスを疑う手根管症候群患者の病理診断の依頼件数が増えており、「その数は心筋検査に匹敵するくらい」と内木氏は驚いていた。このように他科にも心アミロイドーシスを疑う視点が浸透しつつある今、循環器医への心アミロイドーシス診療に対するコンサルトが今後ますます増えていくと予想される。

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肝細胞がんにおけるICI療法後の肝移植の転帰は良好

 肝細胞がん患者において、肝移植(LT)前の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の使用は転帰を悪化させないという研究結果が、「Journal of Hepatology」7月10日に掲載された。 中東肝疾患センター(イラン)のMohammad Saeid Rezaee-Zavareh氏らは、ICIの使用がLT後の転帰に及ぼす影響について、個々の患者データを用いたメタ解析で検討した。解析には、適格患者91人のデータが含まれた。 その結果、追跡期間中央値690.0日の間に、同種移植片拒絶反応が24例、肝細胞がん再発が9例、死亡が9例認められた。年齢(10年当たりの調整ハザード比〔aHR〕0.72)およびICIウォッシュアウト期間(1週間当たりのaHR 0.92)において、移植片拒絶反応との関連が認められた。同種移植片拒絶反応の確率が20%以下の患者における、ウォッシュアウト期間の中央値は94日であった。全生存は、同種移植片拒絶反応の有無による違いは認められなかった。肝細胞がんの再発患者は未再発患者よりもICIサイクルの中央値が少なかった(4.0対8.0)。ICI後にミラノ基準を満たした患者の割合は、再発患者の方が未再発患者よりも低かった(16.7%対65.3%)。 上席著者である米シダーズ・サイナイ医療センターのJu Dong Yang氏は、「免疫療法の最終投与から肝移植まで90日間の間隔があれば、臓器拒絶反応のリスクは免疫療法を受けなかった場合と変わらない」と述べている。 なお複数人の著者がバイオ医薬品企業、医療機器企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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敗血症患者の半数は2年以内に死亡する

 救急外来を受診して入院した敗血症患者の50%強が2年以内に死亡していることが、オーフス大学病院(デンマーク)臨床疫学分野のFinn Nielsen氏らによる新たな研究で明らかになった。Nielsen氏は、「敗血症後の死亡リスクを上昇させるいくつかの因子が判明した。当然のことながら、高齢はその1つであり、認知症、心臓病、がん、過去6カ月以内の敗血症による入院歴などもリスク上昇と関連していた」と述べている。この研究結果は、ヨーロッパ救急医学会年次総会(EUSEM 2024、10月13〜16日、デンマーク・コペンハーゲン)で発表された。 この研究でNielsen氏らは、2017年10月から2018年3月の間に感染症の疑いで同大学病院に入院した患者2,110人の転帰を追跡調査した。これらの患者のうち714人が敗血症を発症していた。Nielsen氏は、「われわれの研究は、前向きに収集された患者データに基づく敗血症データベースに依拠したものだ。これまでの研究で頻繁に使用されているレジストリデータとは異なり、このアプローチはエラーを最小限に抑え、敗血症の影響についてより正確で詳細な洞察を可能にする」と説明している。 その結果、中央値で2年後、361人(50.6%)が敗血症を含むあらゆる原因により死亡していた。関連因子を検討したところ、高齢の場合、年齢が1歳上がるごとに死亡リスクが4%上昇することが明らかになった。また、死亡リスクは、がんの既往歴がある場合では2倍以上(121%の増加)、虚血性心疾患がある場合では39%、認知症がある場合では90%、過去6カ月以内に敗血症による入院歴がある場合では48%増加することも示された。 Nielsen氏は、「この知見は、急性期医療に携わる臨床医と研究者の双方に有益だと思われる。敗血症は死亡率の高い重篤な疾患だと認識することが重要だ」と話している。その一方で同氏は、「この研究は単一施設で実施されたため、より大規模な研究が必要だ。敗血症の包括的な疫学的状況を把握するには、本研究と同様の手法を用いた、診療部門、地域、国を越えたより大規模な研究を実施して敗血症関連の転帰について繰り返し検討する必要がある」と述べている。 本研究には関与していない、EUSEMの演題選定委員長であるBarbra Backus氏は学会のニュースリリースの中で、「敗血症は、重篤で死に至る可能性のある疾患だ。敗血症の発症率はいくつかの国で増加しているが、現時点では、敗血症を発症した患者の長期的な転帰に関する信頼できる情報は限られている」と指摘する。その上で同氏は、「この研究は、敗血症患者の死亡リスクを高める可能性がある、警戒すべき特定のリスク因子を明らかにした。臨床医はこの知見を、患者をより注意深く監視し、経過観察するために活用できるはずだ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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禁煙開始が「遅すぎる」ことはない

 喫煙習慣のある高齢者の中には、「今さら禁煙しても意味がない」と考えている人がいるかもしれない。しかし、実際はそんなことはなく、高齢期に入ってから禁煙したとしても、タバコを吸い続けた場合よりも長い寿命を期待できることが明らかになった。例えば75歳で禁煙した場合、喫煙を続けた人よりも1年以上長く生きられる確率が14.2%に上るという。米ミシガン大学のThuy Le氏らが、禁煙によるメリットを禁煙開始時の年齢別に解析した結果であり、詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に6月25日掲載された。 この研究には、米国で行われている国民健康調査やがん予防研究、国勢調査、死亡統計などのデータが用いられた。35~75歳の間のさまざまな時点の喫煙状況で対象者を3種類(喫煙歴なし、喫煙継続、禁煙)に分類し、平均余命を割り出して比較した。その結果、若いうちに禁煙したほうがメリットは大きいものの、高齢になってから禁煙した場合にも、喫煙を続けた人より寿命が延びることが示された。詳細は以下のとおり。 まず、35歳の一般人口の平均余命は45.4年、喫煙歴のない人は47.8年、喫煙者は38.7年、35歳で禁煙した人は46.7年。35歳時点で禁煙することにより、喫煙を続けた場合に比べて平均余命が8.0年延長し、1年長く生きられる確率が52.8%、4年長く生きられる確率が45.4%、6年長く生きられる確率が40.6%、8年長く生きられる確率が36.0%であることが示された。 一方、65歳の一般人口の平均余命は19.5年、喫煙歴のない人は20.9年、喫煙者は15.1年、65歳で禁煙した人は16.8年。65歳時点で禁煙することにより、喫煙を続けた場合に比べて平均余命が1.7年延長し、1年長く生きられる確率が23.4%、4年長く生きられる確率が16.3%、6年長く生きられる確率が12.4%、8年長く生きられる確率が9.3%だった。 また、75歳の一般人口の平均余命は12.3年、喫煙歴のない人は13.4年、喫煙者は9.0年、75歳で禁煙した人は9.7年。75歳時点で禁煙することにより、喫煙を続けた場合に比べて平均余命が0.7年延長し、1年長く生きられる確率が14.2%、4年長く生きられる確率が7.9%、6年長く生きられる確率が5.1%、8年長く生きられる確率が3.1%だった。 論文の筆頭著者であるLe氏は、「過去10年間で、若者の喫煙率は著しく低下した。しかし、高齢者の喫煙率は変化が少ない」と述べるとともに、「われわれが知る限り、禁煙が高齢者にもメリットをもたらすことを立証した研究は過去にない。われわれは、喫煙をやめることがどの年齢でも有益であることを示し、喫煙習慣のある高齢者に禁煙の動機付けとしてほしかった」と研究背景を語っている。 論文の上席著者である同大学のKenneth Warner氏も、「高齢になってから禁煙することで得られるメリットは、絶対値としては低いように思えるかもしれないが、残されている寿命に大きな影響を与える」と述べている。

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飛行機内でインスリンポンプに軽微な影響が生じる可能性

 インスリンポンプを装着して飛行機に乗ると、上昇中と降下中に、血糖値にわずかな変化が生じる可能性のあることが報告された。ただし、その影響は医学的な問題を引き起こすほどのものとは考えにくいという。英サリー大学のKa Siu Fan氏らによる研究の結果であり、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表された。 インスリンポンプは、インスリンを連続的に自動投与する機器で、主に1型糖尿病の治療に用いられている。急激な気圧の変動が生じた場合、機器の内部に気泡が発生し、インスリン注入速度に微妙な影響を及ぼす可能性がある。Fan氏らはその影響を、飛行中の機内の気圧変化を模したチャンバー(密閉された部屋)を用いて検討した。 3種類、計26台のインスリンポンプをチャンバー内に入れ、まず20分かけて高度8,000フィート(約2,440m)に相当する550mmHgまで減圧。その後、30分間は巡航状態としてそのまま維持し、続いて20分かけて海面高度の気圧に近い750mmHgまで加圧した。この間、インスリン注入速度は1時間当たり0.6単位に設定した。データを解析した結果、20分間の減圧(飛行機では上昇に相当)中に、インスリンは設定した用量より平均0.60単位過剰に注入されていた。一方、加圧(降下)中には、設定した用量より平均0.51単位不足していた。 Fan氏は、「飛行機が上昇中は気圧の低下により、ポンプ内部に気泡が発生してカートリッジから設定よりも多いインスリンが注入されるため、インスリン注入量がわずかに増加することがあり得る。反対に飛行機が降下中は気圧の上昇により気泡が消失して、インスリンがポンプ内部に吸い戻されるため、インスリン注入量がわずかではあるが減少することがあり得る。インスリンポンプを使用している人は、飛行機内の気圧の変化がインスリン注入量に影響を及ぼす潜在的な可能性のあることを知っておいた方が良いだろう」と述べている。 同氏らは、今回の研究で示された影響の程度は、健康上の問題を引き起こすほどではなかったとしている。しかし、より高い高度へ短時間で上昇するようなことが起きた場合、機内の急激な減圧によって深刻な問題が発生する可能性はゼロではないという。具体的には、インスリンが過剰に注入されて血糖値が大きく低下し、低血糖が生じるリスクが想定されるとしている。ただしそのような事態に対しては、消化吸収の速い糖質を摂取するという一般的な方法で対処可能だ。 Fan氏によると、「飛行中の気圧変化によるインスリン注入量の変化が血糖値に及ぼす影響は、個々の患者のインスリン感受性、血糖管理状態、搭乗前に食べた食事によってそれぞれ異なる」とのことだ。また、「血糖値への意図しない影響を防ぐために、インスリンポンプを使用している患者は、離陸前にポンプを一時的に外しておき、巡航高度に達したら、気泡の有無の確認および除去をした上で再装着すると良い」としている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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糖尿病、脳卒中合併高血圧でも積極的降圧が有効―とはいうが、COVID-19ロックダウン下の中国で大規模臨床試験を強行したことに驚き(解説:桑島巌氏)

 糖尿病や脳卒中既往を有する高血圧患者では、収縮期血圧の降圧目標値を140mmHg以下とするよりも120mmHg以下としたほうが心血管合併症の予防効果が有意に大きい、という中国で実施された大規模臨床試験の結果である。本試験の結果は、2015年に発表された米国のSPRINT試験に規模や目的などが似たプロトコールであり、結果としての積極的降圧群が心血管死を有意に抑制した点でも類似している。 大きな違いは、SPRINTでは糖尿病症例や脳卒中既往例を除外しているのに対し、本試験ではこれらの疾患を合併した症例でも積極的降圧が有用であるとの結論を導いている点である。しかし注目すべきは、本試験では腎機能がeGFR 45mL/分/1.73m2以下の腎機能低下例を対象から除外している点である。すなわち、糖尿病性腎症などで腎機能が低下している症例では本試験の結果をそのまま適用することはできない。 また、測定方法もSPRINTでは医療スタッフのいない環境下で自動血圧計による3回の座位血圧測定に基づいてフォローしているのに対して、本研究ではtrained investigatorが自動血圧計にて3回測定している。この点は、白衣現象をどの程度除外しえたかが問題になろう。 積極的降圧にどのような降圧薬が追加使用されたかは本論文から明らかではないが、低ナトリウム血症が多いことから、サイアザイド系あるいはサイアザイド類似降圧利尿薬が使われたと推定できる。さらに、積極的降圧群に失神が有意に多いことは注意が必要である。 そして驚きは、本試験は中国発祥のCOVID-19が中国全土のみならず、全世界に猛威を振るった時期に遂行された点である。すなわち、2019年9月~2020年7月までに登録した症例を3.4年間(中央値)追跡した試験であり、コロナの1例目が中国・武漢で見つかったのが2019年12月であり、それ以後は急速に世界に拡散し、とくに中国ではゼロコロナ政策によって2022年11月まで全国的に徹底したロックダウンを実施したことは記憶に新しい。論文では、ロックダウンは服薬コンプライアンスに影響を与えなかったとさらりと述べているが、にわかには信じがたい。 本試験は試験プロセスに疑問はあるものの、糖尿病、脳卒中既往例でも積極的降圧が心血管死の予防に有効であるとの結論を導いている。しかし、あくまでも1つのエビデンスかもしれないが、Evidence-Based Medicine(EBM)ではない。EBMとはエビデンス、患者の特性、医師の経験を三位一体ですべきものであり、とくに高齢者のような多様性を特徴とする世代には、患者の特性(腎機能、認知機能、ADL)などを考慮した個別的対応が求められる。

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