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定位放射線、5個以上の脳転移で症状負担・日常生活機能を改善/JAMA

 米国・ダナファーバーがん研究所のAyal A. Aizer氏らは、5~20個の脳転移を有するがん患者において、定位放射線照射(stereotactic radiation:STR)が海馬回避全脳照射(hippocampal-avoidance whole brain radiation:HA-WBR)と比較して、生活の質の重要な要件である症状負担と日常生活機能への支障を有意に改善することを示した。がん患者では脳転移が高頻度にみられるが、血液脳関門が薬剤の通過を阻害するため一般に放射線治療が行われる。脳転移が4個以下の患者では腫瘍に限定して集中照射するSTRが標準とされるが、5個以上の場合の標準治療は確立されていない。もう1つの選択肢である全脳照射は、認知機能障害を来すリスクがあるが、記憶に重要な海馬領域への照射を控えたHA-WBRが開発されていた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年2月19日号に掲載された。2つの照射法を直接比較する米国の第III相試験 本研究は、米国の4施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年4月~2024年5月に、生検で確認された固形がんで、5~15個(2018年10月に一般化可能性を重視して5~20個に変更)の脳転移を有し、脳への放射線照射を受けたことがない患者を対象とした(Varianの助成を受けた)。 被験者を、STR(1日照射[定位手術的照射、標準線量20Gy]または5日間の分割照射[定位放射線治療、標準線量30Gy])を受ける群(98例)、またはHA-WBR(線量30Gy、10日間の分割照射、メマンチンを併用)を受ける群(98例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、MD Anderson症状評価表-脳腫瘍版(MDASI-BT)(0~10点[高スコアほど重症度が高く支障が大きい]、スコアの変化の範囲:-10~10点、-10点が最良)を用いた、患者報告による症状の重症度と日常生活への支障のスコアの、ベースラインから6ヵ月後までの変化の加重平均値。臨床的に意義のある変化量は0.98と定義した。主要アウトカムが有意に改善、生存期間は同程度 196例(平均年齢61歳、女性129例[66%])が登録された。ベースラインの全体の脳転移数中央値は14個(四分位範囲:11~18)で、49例(25%)が脳神経外科的切除術を受けた経験があった。83例(42%)が6ヵ月間の評価を完了した。 主要アウトカムについては、ベースラインから、6ヵ月間の追跡期間のベースライン後評価までの加重複合MDASI-BTスコアが、HA-WBR群で2.29点から3.03点へと悪化(平均変化量0.74点)したのに対し、STR群では2.69点から2.37点へと改善(同-0.32点)し、両群間に臨床的に意義のある有意な差を認めた(平均群間差:-1.06点、95%信頼区間:-1.54~-0.58、p<0.001)。 STR群で80例、HA-WBR群で85例が死亡し、生存期間中央値はそれぞれ8.3ヵ月および8.5ヵ月であった(p=0.30)。神経学的死亡は、STR群で19例(19%)、HA-WBR群で18例(18%)に発生し、年間累積発生率は9.4%および8.5%であった(p=0.35)。 新規脳転移の発生率はSTR群で有意に高く(年間累積発生率:45.4%vs.24.2%、p=0.003)、局所再発率はSTR群で有意に低かった(3.2%vs.39.5%、p<0.001)。頭蓋内病変の進展率には差がない(46.4%vs.39.4%、p=0.15)が、画像上の放射線脳壊死の発生率はSTR群で高かった(14.8%vs.1.1%、p=0.001)。また、12ヵ月時の認知機能はSTR群で有意に良好だった(p=0.004)。Grade3~5の有害事象に差はない 最も頻度の高い放射線照射関連有害事象は、STR群ではGrade1~3の疲労(27例[28%])、頭痛(15例[15%])、悪心(13例[13%])であり、HA-WBR群ではGrade1~3の疲労(43例[44%])、食欲不振(22例[22%])、頭痛(13例[13%])であった。Grade3~5の有害事象の発生率は両群で同程度だった(12例[12%]vs.13例[13%])。 著者は、「これまで4個以下の転移に限定されていたSTRの適応が、5~20個の多発性脳転移でも標準的な選択肢となりうることが裏付けられた」「この結果は、患者のwell-beingを優先する精密技術へのパラダイムシフトを強く主張するもの」としている。 また、「これらの知見は、頻回のMRIベースの監視とSTRを組み合わせれば、全脳照射を単に遅延させるだけでなく回避も可能と示唆するが、確認のための検討が必要である」と指摘している。

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35歳以上の双極症発症患者、その特徴は?

 双極症は、若年成人期に発症することの多い精神疾患であるが、いくつかの研究では、高齢期でも発症することが報告されている。しかし、高齢期における双極症の発症率を明らかにし、遅発性と早発性の臨床的特徴を比較した研究は、これまでほとんどなかった。スイス・ローザンヌ大学のBenjamin Lavigne氏らは、35歳以上における双極症の発症率とその特徴を調査し、さらに遅発性と早発性の臨床的特徴を比較するため、本研究を実施した。International Journal of Bipolar Disorders誌2026年1月12日号の報告。 本研究の目的は、次の3つとした。(1)35歳以上の集団を対象としたプロスペクティブ研究において、双極症の発症率を評価する、(2)双極症患者の臨床的特徴を明らかにする、(3)ベースライン時に双極症を発症していた例と社会人口学的および臨床的特徴を比較する。人口ベースコホート研究に参加した3,709例(初回精神医学的評価時点の年齢:35~75歳、平均年齢:51.4歳、女性の割合:54.1%)を対象に、精神医学的評価を2回以上行った。ベースライン時に双極症と診断されなかった例における双極症発症率を評価するため、平均11.3年間のフォローアップ調査を実施した。精神疾患の診断基準は、DSM-IVに基づき、半構造化遺伝学的診断面接を用いて抽出した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、双極症を発症していたのは94例であり、フォローアップ期間中に5例が双極症を発症した(10万人年当たり12.2例に相当する)。・フォローアップ期間中に双極症を発症した例は、初回精神医学的評価時に双極症を発症していた例と比較し、初回エピソード発生時の年齢が著しく高かった(各々、49.8歳vs.29.0歳)。・フォローアップ期間中に双極症を発症した例は、ベースライン時に双極症を発症していた例と比較し、混合症状を伴う初回エピソードの頻度が高く(p=0.003)、初回エピソードの持続期間が短く(p=0.005)、既存または併発する違法薬物使用障害の有病率が高かった(p=0.039)。 著者らは「本研究の結果は、中年成人における双極症の発症が遅いことを支持する一方で、この遅発例の初回症状は非典型的であり、混合症状エピソードの割合が高く、薬物使用障害との併存率が高いことが示唆された。臨床的観点から見ると、私たちのデータは、とくに薬物乱用があり気分エピソードの早期認識が遅れる可能性がある中年成人においても、双極症の最初の症状に対する徹底的なスクリーニングの必要性を示唆している」とまとめている。

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入れたてのお茶には多くの健康サポート効果がある可能性

 緑茶を毎日摂取する習慣のある人は、気付かないうちに健康増進効果を得ている可能性のあることが報告された。中国農業科学院茶葉研究所のMingchuan Yang氏らの研究によるもので、詳細は「Beverage Plant Research」2025年発行号に掲載された。これまでの研究報告を総括した分析の結果、お茶、特に緑茶が肥満や糖尿病、心臓病、および一部のがんのリスクを抑制することが示唆されたという。さらに、脳の機能を保護したり高齢者の筋肉の減少を遅らせたり、炎症を抑制する作用もあると考えられるとのことだ。 お茶はカメリア・シネンシスという植物の葉(ハーブティーについてはミントやカモミールなど他の植物)から作られ、古くは何世紀にもわたって薬として用いられていた。やがて日常的な飲料として、お茶が摂取されるようになった。お茶にはポリフェノールと呼ばれる植物化合物、特にカテキンが豊富に含まれており、これらがお茶の健康効果の根底にあると考えられている。 Yang氏らは、お茶の健康効果を検討したこれまでの研究報告のレビューを実施。実験室内での研究とヒトを対象とした臨床研究の双方からのエビデンスを総括した。全体として、緑茶についての研究が最も豊富であり、一方で紅茶やウーロン茶、白茶(主に中国を中心に流通しているお茶)については、研究報告数が限られていた。 緑茶に関しては、心臓の健康に良い影響を与えるとする研究結果が多数報告されていた。例えば血圧降下作用やコレステロール改善作用の報告があり、また実際に大規模な疫学研究からも、習慣的にお茶を摂取している人は心血管疾患の罹患率が低く、あらゆる原因による早期死亡のリスクが低いことが示唆されていた。さらに、体重管理や糖尿病にも効果がある可能性が指摘されていた。それらの研究では、緑茶カテキンが肥満者の減量をサポートし、代謝を改善するという機序も示されていた。 お茶が、健康的な老化をサポートする可能性も見いだされた。例えば、習慣的にお茶を飲んでいる高齢者は認知機能の低下速度が緩やかで、アルツハイマー病に関連するバイオマーカーの異常が少ない傾向のあることが報告されていた。また、お茶に含まれる一部の成分には加齢による筋肉量の減少を抑える働きがあり、高齢者の筋力と運動能力を維持・向上させる可能性も示唆されていた。 このように、茶葉を使い自分で入れたお茶にはさまざまな効果を期待できる。一方、ボトル入りのお茶やタピオカティーなどには、注意すべき点も見つかった。それらには、お茶本来の効能を打ち消してしまいかねない添加糖や人工甘味料、防腐剤が含まれていることが多いと、研究者らは指摘している。さらに、お茶には微量の農薬や重金属、マイクロプラスチックが含まれている可能性についても懸念を表明している。もっとも、一般的な摂取量であれば、これらの汚染物質が健康上の大きなリスクとなるとは考えられていない。とはいえ、毎日大量かつ長年にわたってお茶を飲む場合は影響が生じる可能性も、完全には否定できないようだ。 このほかに、鉄分やカルシウムの吸収をお茶が抑制してしまうこともあるため、ベジタリアンやそれらの栄養素が不足している人では、この点に留意すべきと研究者らは付け加えている。

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歯や口の困りごとがうつ病と関係?日本人成人1.5万人を追跡調査

 メンタルヘルス対策は精神症状そのものに焦点が当てられてきた一方で、日常生活に身近な身体的要因との関連は十分に検討されてこなかった。そうした中、日本人成人約1万5,000人を1年間追跡した縦断研究により、歯や口の困りごとによって口腔関連QoL(OHRQoL)が低い人ほど、その後にうつ病が発症しやすいことが示された。研究は、岡山大学学術研究院医療開発領域の竹内倫子氏、学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野の江國大輔氏、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大氏らによるもので、詳細は1月4日付で「Journal of Clinical Medicine」に掲載された。 うつ病は世界的に大きな疾病負担をもたらす精神疾患であり、その発症には年齢、社会的孤立、慢性疾患、生活習慣、QoLなど多様な要因が関与する。近年、歯の欠損や口腔痛、歯周病、OHRQoLとうつ病との関連も報告されているが、多くは横断研究にとどまり、因果関係は明らかでない。本研究は、うつ病のない成人を対象に、口腔の健康状態およびOHRQoLがその後のうつ病の発症と関連するかを縦断的に検討することを目的とした。 本研究では、2022年および2023年に実施された「Japan COVID-19 and Society Internet Survey(JACSIS調査)」のデータを用いて解析を行った。ベースライン時点でうつ病の自己申告がない20歳以上の参加者1万5,068人を解析対象とした。うつ病は、2回の調査間における自己申告に基づいて判定した。OHRQoLは、Oral Health Impact Profile(OHIP)の短縮版である日本語版OHIP-14を用いて評価した。口腔の健康状態については、歯の喪失、歯周病、口腔痛、過去1年間の歯科受診の状況により評価を行った。これらの要因とうつ病発症との関連について、社会人口学的要因および行動要因を調整したロジスティック回帰分析を用い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 追跡調査の結果、1年後に218人(1.45%)が「うつ病がある」と回答した。「うつ病がある」と回答した群と、「うつ病がない」と回答した群の背景因子を単変量で比較したところ、歯科受診状況やOHRQoL(OHIP-14)、年齢、性別、社会経済状況、生活習慣に加え、孤独感、社会的孤立、生活満足度、睡眠薬・抗不安薬の使用など、多くの心理社会的要因に差が認められた。 次にこれらの因子を独立変数、うつ病発症を従属変数として二項ロジスティック回帰分析を行った。その結果、OHRQoLが低いほど、うつ病を発症するリスクが有意に高いことが示された(OR 1.02、95%CI 1.00~1.04、P=0.039)。このほか、年齢が若いこと(OR 0.97、95%CI 0.96~0.99、P<0.001)、趣味や文化活動への参加(あり:OR 2.22、95%CI 1.50~3.30、P<0.001)、睡眠薬または抗不安薬の常用(現在使用:OR 3.51、95%CI 2.27~5.44、P<0.001)、孤独感の増大(OR 1.22、95%CI 1.14~1.30、P<0.001)、生活満足度の低さ(OR 0.90、95%CI 0.84~0.97、P=0.005)、および自己評価による健康状態の不良(OR 2.92、95%CI 1.81~4.72、P<0.001)も、うつ病の発症と関連していた。 さらに構造方程式モデリングによる解析では、OHRQoLの低下が、その後のうつ病の発症と関連する過程において、孤独感や社会的孤立、生活満足度、主観的健康感といった心理社会的要因が重要な媒介役を果たしていることが示された。OHRQoLは、これらの要因を介した間接的な影響に加え、うつ病発症への直接的な影響も認められた。 著者らは、「うつ病を自己申告していなかった人を追跡した結果、口腔関連QoLが低い人ほど、その後にうつ病が発症しやすいことが示された。この関連は、年齢や生活習慣などの要因を考慮した後も認められ、さらに孤独感や社会的つながり、生活満足度といった心理社会的要因が、その関係の一部を仲介している可能性がある」と述べている。 なお、本研究は自己申告に基づくオンライン調査であり、未評価の交絡因子や追跡期間の短さといった制約があるため、うつ病の評価とOHRQoLとの関連については因果的解釈に注意が必要であるとしている。

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全国データで見えた舌がんの実像

 舌がんは、舌に発生する口腔がんの一つで、進行すると発話や嚥下に大きな影響を及ぼす。日本では舌がんの全国的な動向は十分に把握されてこなかったが、今回、全国レセプトデータを用いた解析により、舌がんが女性の特定年齢層で増加している可能性が示された。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室の辻川敬裕氏らによるもので、詳細は1月18日付で「Cancer Medicine」に掲載された。 舌がんの罹患率は世界的に増加しており、特に若年層や女性での増加が懸念されている。しかし日本では、舌がんは口腔・咽頭がんとして一括して統計化されており、全国的な実態は十分に把握されていない。国民皆保険制度のもと、95%以上の保険請求を網羅するレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)は、全国疫学研究に適したデータ基盤である。舌切除術が全病期で標準治療であることから、本研究では手術コード(医科K415および歯科J018)に基づき舌がん手術を新規症例の代替指標として用い、全国的な舌がん罹患の年次推移および年齢・性別別の特徴を明らかにすることを目的とした。 本研究では、医科(2014~2022年)および歯科(2016~2022年)のレセプトデータを用い、全体ならびに年齢階級別の男女比を算出した。さらに、人口10万人年あたりの手術率について、性別および年齢階級別に人口学的ピークの解析を行った。年次推移については、手術件数を線形回帰モデルで、手術率をポアソン回帰モデルで解析し、年次リスク比(RR)を推定した。なお、RR>1.0は人口10万人年あたりの手術率が年々増加していること、RR<1.0は減少していることを示す。 2016~2022年の医科・歯科レセプトデータを用いた解析では、年間平均4,470.7件の手術が実施されていた(手術率:3.4件/10万人年)。男女比は全体で1.6:1であり、男性がやや優勢であることが示された。年齢階層別の男女比は、40歳未満ではほぼ1:1であったのに対し、60~70歳代では2.0:1となり男性優位の傾向が顕著に認められた。 手術率は、男性では75~79歳でピーク(12.0件/10万人年)を示し、女性では75~84歳でピーク(5.9件/10万人年)を示した。年齢調整後の手術件数(医科)は2014年から2022年にかけて有意に増加していた。 さらに年齢調整した手術率は、女性全体(RR=1.020、P<0.0001)および全体集団(RR=1.010、P=0.0006)で有意な増加を示した。年齢階級別の解析では、女性の40~44歳(RR=1.083、P=0.0001)および60~64歳(RR=1.055、P=0.0005)で有意な増加が認められた。 本研究の結果から、特定の年齢層(中高年)の女性で、舌がんが増えている可能性が浮かび上がった。著者らは、「本研究で示された中高年女性での舌がん手術率の増加傾向は、今後、喫煙や飲酒などの修正可能なリスク因子に関する啓発を含め、女性を意識した予防・早期対応の重要性を示唆する結果といえる」と述べている。 なお、本研究の限界として、レセプトデータを用いた解析であり、再手術や疾患分類の誤差、病期や生活習慣など患者背景を考慮できていない点を挙げている。また歯科レセプトの観察期間が短く、結果の解釈には注意を要するとしている。

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身体活動や座位時間の小さな変化による死亡に対する効果を検討(解説:名郷 直樹 氏)-2088

 中等度から激しい強度の運動を5分、10分増やし、座位での活動を30分、60分減らしたときの死亡に対する効果を、活動度の低い下位20%の集団(ハイリスクアプローチ)と、活動度の高い上位20%を除いた80%の集団(ポピュレーションアプローチ)で、米国、スウェーデン、ノルウェー、英国のコホート研究のメタ分析により検討した論文である。またこのメタ分析は、各研究の結果を統合するのではなく、個々のデータを統合し解析している点で、メタ分析というより1つの巨大なコホート研究という側面がある。 結果は、追加された英国のコホートとそれを除く7つのコホートで別々に解析されている。後者では、中等度から強度の強い活動を1日5分増やすと、死亡リスクがハイリスクアプローチで6%(95%信頼区間:4.3~7.4)、ポピュレーションアプローチで10%(6.3~13.4)低下し、10分の増加ではそれぞれ8.8%、14.9%低下している。また座位での活動を1日30分減らすと、死亡リスクがハイリスクアプローチで3%(2.0~4.1)、ポピュレーションアプローチで7.3%(4.8~9.6)低下、60分の減少ではそれぞれ5.5%、12.6%低下と報告されている。追加された英国のコホートでも、効果量は小さいものの同様な結果である。 ここで示されたのは、活動度の低い20%を対象にしたハイリスクアプローチと活動度の高い20%を除く80%を対象にしたポピュレーションアプローチの比較であるが、少数のハイリスクアプローチよりも多数を対象にしたポピュレーションアプローチのほうが全体としては大きな効果を持つということである。これはポピュレーションアプローチにハイリスク者が含まれているので当然の結果ではあるが、「1日5分でも10分でも中等度から強度の運動をやってみましょう」とか、「座位の時間を1日30分でも1時間でもいいから減らしましょう」という介入をするなら、わざわざハイリスク者を同定せず、リスクが高くない人も含めて行うほうが効率的だということでもある。さらにこの研究ではすでに中等度から強度の強い活動を十分行っている集団を除いているが、一定以上の強度の活動が死亡リスクを高めるのでなければ除外の必要はなく、全住民を対象に介入するのが最も多くの死亡リスクを下げることになる。 絶対的な効果量で見た場合、ハイリスクアプローチよりポピュレーションアプローチのほうが大きな効果をもたらすということは、あまり意識されていない場合が多いのではないだろうか。血圧を測るまでもなく、1日1gの減塩を、コレステロールの値にかかわらず、週に2~3回はバターをマーガリンに、獣の肉食を魚にというアプローチも、同様に大きな効果をもたらすということである。 またこうした観察研究で問題になるのは、不健康のために活動度が落ち、座位時間が長くなっているという因果の逆転であるが、この研究では追跡開始後2年の死亡を除くことで対処している。ただ、個々の疾患治療が進歩し、この2年が因果の逆転の問題を解消するに十分な期間かどうかは怪しいかもしれない。観察研究における他の交絡因子のコントロールが不十分になる可能性とともに、ここにも効果の過大評価の可能性があることは知っておいたほうがよいだろう。

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腹部を刺されて、妊娠した女性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第301回

腹部を刺されて、妊娠した女性皆さま、今回は「事実は小説よりも奇なり」を地で行く、衝撃的な症例をご紹介します。Verkuyl DA. Oral conception. Impregnation via the proximal gastrointestinal tract in a patient with an aplastic distal vagina. Case report. Br J Obstet Gynaecol. 1988 Sep;95(9):933-934.患者は15歳の少女です。ある日、元恋人と新しい恋人とのトラブルに巻き込まれ、ナイフによる喧嘩で上腹部を刺されて緊急搬送されました。いや、なかなか波乱万丈な15歳ですね…。背景はさておき、開腹手術の結果、胃に2ヵ所の穿孔が見つかりました。幸い胃は空に近く、腹腔内に目立った胃内容の漏出は認められませんでした。穿孔部を二層で修復し、術後経過は良好で10日目に退院となりました。しかし、物語はここで終わりません。受傷から正確に278日後、彼女は急激な腹痛で再来院します。診察の結果、なんと正期産の妊娠が判明し、緊急帝王切開で2,800gの男児が出生しました。ここで医師たちをさらに驚愕させたのは、外陰部から腟口が確認できず、遠位腟が欠損していたという解剖学的所見でした。「腟がないのに、なぜ妊娠できたのか」。謎の手掛かりは、受傷直前の彼女の行動にありました。彼女は刺される直前、新しい恋人に口腔性交を行っていたのです。ふむ。それがトラブルの引き金になったのかもしれませんね。ここからの著者の推測は、論理としては筋が通っている一方で、あくまで推論にとどまります。すなわち、口腔内に入った精子が嚥下されて胃内に存在していたタイミングで刺傷が起き、胃穿孔を介して精子が腹腔内へ到達し、卵管采から生殖器へ入り込んで受精に至った可能性がある、という考察です。精子は低pH環境では長く生存しにくいものの、唾液のpHが高い環境や絶食状態で胃酸分泌が強くない環境では、しばらく生存する可能性があります。直接証明された経路ではありませんが、外傷と生殖の生理が偶然に重なったときに起こりうる「極端にまれな例外」を示す症例報告となっています。

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第303回 診療報酬改定プラス分は相殺?イラン情勢が及ぼす病院の電気代を試算

INDEXイラン情勢が日本に及ぼす影響ホルムズ海峡封鎖による電力価格への影響診療報酬改定「プラス分」は相殺?イラン情勢が日本に及ぼす影響いやはや、厄介な事態になったと思っている。米国とイスラエルによるイラン攻撃のことである。私は出張先で夕刻、一報に接した。米国のトランプ大統領は攻撃開始翌日の2026年3月1日、「戦闘は約4週間続く可能性がある」と述べたが、わずか1日後の2日にホワイトハウスで行った演説では「当初は4〜5週間と見込んでいたが、必要ならはるかに長く続ける能力がある」と“軌道修正”した。開戦当初はイランの核開発の断念とともに体制転換を示唆し、同国の最高指導者であるアリー・ハメネイ師を空爆で殺害までしたものの、最近ではイラン海軍や弾道ミサイル能力の破壊を公言するなど、その目的・目標も揺れ動いている。朝令暮改はもはやトランプ大統領の十八番だが、そもそも国土面積が日本の4倍以上の世界第17位、国軍・約60万人に加えもう1つの軍事組織であるイスラム革命防衛隊・約12万人を有するイランは、米国・イスラエルと比べれば軍事力は劣るが、それはあくまでスペック上でのこと。米国・イスラエル両国とも全兵力をイランに割けるわけではないので、体制転換が少しでも念頭にあるならば長期化は避けられない。そうなると日本での日常生活はもちろん、医療にも影響を及ぼすことは必至といえる。ホルムズ海峡封鎖による電力価格への影響実際、イランのイスラム革命防衛隊が世界のLNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)の約2割が通過するホルムズ海峡の封鎖を宣言。さらに、カタールにあるLNG生産施設がイランのドローン攻撃を受けて生産を一時停止し、アジア向けのLNG価格は約40%上昇したと報じられた。一番影響が及びそうなのは、エネルギー関連である光熱水費、とくにどの医療機関でもなくてはならない電気の料金である。なんとなく電気料金の伝票を眺めている人も少なくないと思うので、あらためて解説すると、日本の電気料金の構造は、基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再生可能エネルギー発電促進賦課金の4つの合計となっている。このうち、「燃料費調整額」は電力会社の発電燃料として使われるLNG、石炭、原油の輸入価格の変動を電気料金に反映させる制度として1996年に導入された。要は短期的な世界のエネルギー需要に基づく価格が、これを通じて料金にも反映される仕組みである。この燃料費調整額の計算プロセスは、直近3ヵ月の燃料輸入価格の平均値として計算する。具体的には各電力会社で発電燃料として使用されるLNG、石炭、原油の割合は違うため、各電力会社が定めた各燃料の係数をかけて平均燃料価格を算出する。そして各電力会社には、料金認可時に決められた基準燃料価格があり、計算した平均燃料価格との差額を基準係数と呼ばれる数字で割って1kWhあたりの燃料費調整額が決定する。もっとも輸入統計の確定までのタイムラグがあるため、直近の燃料費の高騰が実際の電気料金に反映されるのは約3〜5ヵ月遅れとなる。細かな計算式は省くが、LNGが発電燃料の35%、電気料金の40%が燃料費という仮定を置くと、LNG価格だけが10%上昇した場合、計算上の電気料金は約1.4%上昇するといわれている。もっともLNG価格が上がると、石炭価格の連動上昇や電力市場価格上昇、電力会社の調達コスト増などがあり、実際の電気料金上昇率は2〜4%になるのが一般的。これを前提にすると、前出のLNG価格40%上昇の場合、電気料金の支払額は8〜16%上昇する計算になる。診療報酬改定「プラス分」は相殺?これが医療機関の電気料金にどう跳ね返ってくるかだ。ここでウクライナ紛争勃発後の2022年10月に茨城県保険医協会が行った物価高騰に関するアンケート結果の中で、代表例として病院の回答(37施設)を取り上げてみる。ここでは2021年と2022年の8月請求分を比較しているが、回答施設の平均病床数や契約電力会社、料金プランが不明のため、37病院の平均電力使用量が約16万kWhをベースに試算をしてみたい。病院での電気契約は多くが業務用の高圧電気である。ここで東京電力を例にとる。同社の高圧電気プランは、燃料費調整と市場価格調整の両方を行う「ベーシックプラン」と、市場価格の変動を受けずに燃料費調整のみを適用する「市場調整ゼロプラン」がある。最新の燃料費調整額を適用すると約16万kWhの電気料金はベーシックプランで約414万円、市場調整ゼロプランで約441万円。電気料金が8〜16%上昇するならば、月当たりの電気料金は前者で約33〜66万円、後者で35〜70万円、それぞれ上昇することになる。さて、先ほどの茨城県保険医協会の回答病院の平均病床数はわからないものの、一般的に保険医協会に加盟する病院は100〜200床の病院が多い。また、その病床稼働率は70〜80%が最も多いとされる。仮に200床で病床稼働率を中央値の75%とすると、稼働病床は150床。先日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会は、2026年度報酬改定において、入院時生活療養(I)・(II)のうち、光熱水費用の1日当たりの金額を60円引き上げると答申した。仮にそうだとしたら26年春以降は光熱水費分が月当たり27万円引き上がることになるが、LNG価格が40%上昇した場合は完全に足が出る計算である。LNG価格の上昇率が30%でもほぼ赤字、20%でようやくトントンか赤字である。しかも、この先の価格上昇は不透明だ。(表)LNG価格高騰による電気料金上昇と診療報酬改定の影響(試算)画像を拡大するまた、この情勢下では原油価格も上昇するため、当然ながら病院で使用されるディスポーザブル資材なども価格上昇が予想される。そう考えると、せっかく26年改定で手当てされた物価高騰分の診療報酬引き上げも水の泡になってしまうかもしれない。

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男性の性機能障害、3つのリスク因子とは/順大

 不妊治療開始前の新婚または結婚予定男性の約5人に1人が性機能障害を有することが、日本の単施設研究で明らかになった。順天堂大学医学部附属浦安病院の谷口 歩氏らによる研究成果は、Reproductive Medicine and Biology誌2026年1月号に掲載された。 本研究は、新婚男性または結婚予定男性の性機能の現状を把握することを目的とした横断研究であり、2014年10月~2018年6月に順天堂大学医学部附属浦安病院および関連クリニックで各種不妊検査を受けた男性719例を対象とした。患者を直接面接し、患者自身が障害を感じているか否かの自己申告に基づく二分法判定により、勃起障害(ED)、射精障害、性欲減退、または複数の症状を有する者を性機能障害とした。年齢、性的状況、精液所見、喫煙状況、血液検査などの患者特性を評価し、性機能障害群と性機能正常群間で各種因子を比較して、単変量解析および多変量解析により性機能障害のリスク因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・対象となった719例は、平均年齢35.5±6.5歳、平均BMI 22.8±3.0kg/m2であった。113例(15.7%)が喫煙者であった。・719例中139例(19.3%)に性機能障害が認められ、内訳はEDが88例(12.2%)、射精障害が66例(9.1%)、性欲減退が35例(4.9%)であった(重複あり)。・性機能障害群では、単変量解析では年齢、アルブミン値、肝酵素、トリグリセライド、血糖値、精液量に有意差が観察されたが、多変量解析の結果、年齢、BMI、うつ症状を評価するベック抑うつ質問票スコアが、性機能障害の独立したリスク因子として特定された。 研究者らは「本研究により、高齢、肥満、うつ症状を呈する男性は、不妊治療開始前に性機能障害を経験する可能性が高いことが示された。新婚男性の約5人に1人という高い頻度で性機能障害が認められたことは、妊娠を希望するカップルにとって重要な知見である。これらの結果は、不妊治療開始前に、男性の性機能評価とリスク因子の把握が重要であることを示唆している。今後は、これらのリスク因子に対する早期介入や予防的アプローチの検討が、男性の生殖機能向上と治療成功率の改善につながる可能性がある」としている。

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大腸がん術後の運動プログラム、初のガイドライン推奨に/ESMO

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)は、2026年1月27日付で、術後の局所進行大腸がん患者に対し、術後の「構造化された身体的運動プログラム」を臨床的介入として正式に推奨するガイドライン更新を発表した。従来から、がん患者の生存改善に運動が寄与するとの報告はあったものの、明確なエビデンスを基に治療ガイドラインにおける正式な推奨となったのは初めて。 今回のガイドライン更新の根拠となったのは、カナダの治験グループが実施したCHALLENGE試験。StageIIIおよび高リスクStageII大腸がんに対する構造化された運動プログラムが無病生存期間(DFS)を有意に改善し、全生存期間(OS)の有意な延長をもたらすことを示した。この結果は2025年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2025)で発表されると同時にNEJM誌に掲載され1)、話題を集めた。CHALLENGE試験の概要と結果・対象:StageIIIおよび高リスクStageII大腸がん患者、切除術を受け、その後2~6ヵ月に補助化学療法を完了:889例・介入:構造化運動プログラム+行動支援を3年vs.標準的健康教育のみに1:1の割合で無作為に割り付け。運動介入は週当たり約150分の中等度~高強度運動量(目安として10MET・時間/週程度)を目標としたプログラム。・主要評価項目:DFS、OS・追跡期間中央値7.9年において、運動プログラム群はDFSの改善を示し(5年DFS率:80%対74%)、OSも運動プログラム群で有意に改善した(HR:0.63[95%信頼区間:0.43~0.94])。・介入中は筋骨格系の軽微な副作用は観察されたが、重度イベントはまれであった。これらの結果は、運動が単なる健康教育ではなく、構造化された介入として腫瘍学的な利益をもたらす可能性を示した。 CHALLENGE試験を受けた今回のESMOガイドラインExpress Updateにおける新たな推奨は以下のとおり。推奨事項・StageIII/高リスクStageIIの大腸がんを切除した患者には、構造化された運動プログラムによる生存率の延長を示唆する入手可能なエビデンスについて知らせるべきである。・医療従事者は、対象患者に構造化された運動プログラムへの参加資格を明確に伝え、必要なインフラとサポート内容を明確に説明する必要がある。また、医療従事者は、患者の病歴、希望、態度、そして運動プログラムの実施における潜在的な課題(アドヒアランスや経済的負担など)についても評価する必要がある。・運動の強度と実行可能性について話し合い、共同で意思決定を行った後、対象となる患者には構造化された運動プログラムへの参加が推奨される。・行動支援および運動プログラムの実施能力とインフラの構築、ならびに患者に対する必要な支援と指導のために、協調的な保健システム投資が推奨される。・局所性大腸がんを切除した患者には、運動(週10MET・時間)、禁煙、過度のアルコール摂取の回避、野菜、果物、ベリー類を豊富に含む健康的な食事(胃腸機能に適応したもの)の採用など、健康的なライフスタイルの維持を奨励する必要がある。 今回のESMOガイドライン更新は、運動が薬物治療と同様に、術後管理の重要な柱となる可能性を示している。とくに再発抑制や生存改善という臨床転帰の改善がエビデンスとして認められたことは、日本を含む臨床現場で注目される変化だろう。一方、運動プログラムの実装法や医療体制への統合、患者の長期的な遵守支援などにおける課題も多い。また、個々の患者に適した運動形式や強度の調整、合併症を持つ患者への安全なプログラム設計などの面でも、さらなる試験によるデータを蓄積する必要がありそうだ。

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慢性片頭痛に対する抗CGRP抗体とCGRP受容体拮抗薬併用療法の有用性は?

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)をターゲットとした単独療法を受けている患者は、片頭痛症状への治療反応が遅延する場合がある。また、このような治療を受けている患者は、妥当な期間内に片頭痛症状の軽減がみられないこともある。一部の臨床医は、相乗効果を高めることを目的として、CGRP分子および受容体を標的とする低分子拮抗薬(SMA)とリガンドモノクローナル抗体(L-mAb)の併用療法を選択している。米国・ハワイ大学のHo Hyun Lee氏らは、相乗効果のあるSMAとL-mAbの併用療法を受けている患者におけるCGRP併用療法の安全性と有効性を、CGRP単独療法と比較するため、実臨床におけるレトロスペクティブレビューを実施した。Pain Physician誌2026年1月号の報告。 本研究は、米国の神経内科ケアセンター1施設におけるレトロスペクティブマッチングコホート研究として実施した。2018年5月〜2024年2月にCGRP阻害薬(L-mAb[フレマネズマブ、ガルカネズマブ、eptinezumab]、SMA[ubrogepant、リメゲパント、アトゲパント]、またはL-mAbとSMAの併用)による治療を受けた18歳以上の慢性片頭痛患者90例を対象に分析を行った。本研究では、L-mAbとSMAの併用療法を受けた27例の患者と、L-mAb単独療法またはSMA単独療法を受けた63例の患者を、年齢と性別でマッチングさせ、比較した。変数は、現在の年齢、診断時年齢、性別、ボツリヌス毒素Aの使用、頭痛の頻度、持続時間、重症度、治療前および治療後3ヵ月の関連症状とした。両治療群において有害事象が記録された。すべての仮説検定は両側検定で実施し、p値<0.05で有意と判断した。 主な結果は以下のとおり。・CGRP単独療法では頭痛の重症度が10%減少したのに対し、CGRP併用療法では20%減少した(p=0.039)。・CGRP併用療法を受けた患者では、頭痛日数が平均4日の減少(最大14日減少)が認められた。一方、CGRP単独療法を受けた患者では、頭痛日数の変化が認められなかったが、この結果に統計的に有意な差は認められなかった(p=0.112)。・その他の片頭痛関連症状については、両群間で有意な差は認められなかった。・CGRP単独療法群およびCGRP併用療法群における有害事象は軽度であり、重篤な有害事象や治療中止は報告されなかった。 著者らは、本研究の限界として、サンプルサイズが比較的小さいこと、研究デザインがレトロスペクティブであること、新規CGRP薬が使用されていないこと、交絡因子をコントロールできないこと、患者間で少数のCGRP阻害薬が主に使用されていることなどが挙げられるとしながらも「CGRP併用療法は、有意な有害事象を引き起こすことなく、頭痛の重症度を軽減することで、片頭痛の症状コントロールを強化する可能性がある」としている。しかし「これらの知見は、より大規模なサンプルサイズを用いたランダム化プラセボ対照臨床試験によって確認する必要がある」としている。

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第23回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2026

 日本臨床腫瘍学会は、2026年2月28日にプレスセミナーを開催し、3月26~28日に横浜で開催される第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)の注目演題などを紹介した。 今回のテーマは「Medical Oncologists for Cancer Patients」。これは、2025年9月19日に「がん薬物療法」領域が日本専門医機構によりサブスペシャルティ領域として正式に承認されたことを受けて、もう一度学会としてどのようにメディカルオンコロジスト(腫瘍内科医)を育成すべきかを考えるという意図が込められている。なお、がん薬物療法専門医は2025年4月1日時点で1,825人が認定されている。 今年の演題数は計1,482題で過去最多となる。本学会はアジアにおける国際学会に近づけることを目指しており、約半数の738題は海外からで、インドネシア、インド、中国、フィリピン、台湾、ベトナムなど多くの国から寄せられている。プレジデンシャルセッション・全19演題Presidential Session 1「血液」3月26日(木)08:30~10:301)MOSUNETUZUMAB PLUS POLATUZUMAB VEDOTIN IS SUPERIOR TO R-GEMOX IN PATIENTS WITH R/R LBCL: THE PHASE III SUNMO TRIAL2)EFFICACY OF RITUXIMAB-BENDAMUSTINE +/- ACALABRUTINIB IN PATIENTS WITH MANTLE CELL LYMPHOMA: THE PHASE 3 ECHO TRIAL3)EPCORE FL-1:再発・難治性濾胞性リンパ腫に対するエプコリタマブ+リツキシマブ・レナリドミド(R2)併用療法の第III相非盲検試験4)Improved long-term tolerability with asciminib (ASC) vs IS-TKIs in newly diagnosed CML-CP: ASC4FIRST week 96 analysisPresidential Session 2「消化器/肝」3月26日(木)14:00~16:001)胃/食道胃接合部に対するデュルバルマブとFLOT化学療法の術前術後補助療法(MATTERHORN)2)SKYSCRAPER-07:根治的化学放射線療法後の切除不能食道扁平上皮におけるアテゾリズマブ±チラゴルマブの第III相試験の日本部分集団解析結果3)Precemtabart tocentecan (Precem-TcT, M9140): Results from PROCEADE-CRC-01 and post-hoc analysis in Japanese patients4)TALENTACE:肝細胞患者を対象としたTACE及びアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用による第III相試験Presidential Session 3「呼吸器」3月27日(金)9:50~11:501)EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺における一次治療オシメルチニブ ± プラチナ製剤-ペメトレキセド併用療法の全生存期間:FLAURA2日本コホート2)MARIPOSA試験(未治療EGFR変異陽性非小細胞肺がんアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法vsオシメルチニブ)全生存期間アジア人解析3)EGFR変異陽性進行非小細胞肺に対するラゼルチニブ併用療法におけるアミバンタマブの皮下投与と静脈注射の比較:PALOMA-3日本人サブセット解析4)進展型小細胞肺がんを対象としたイフィナタマブ デルクステカン(I-DXd)の第II相試験(IDeate-Lung01試験):日本人サブグループ解析結果の報告Presidential Session 4「乳」3月28日(土)8:20~10:201)ESR1遺伝子変異が出現した進行乳におけるカミゼストラントによる一次治療:SERENA-6試験の日本人サブグループ解析2)Pooled safety analysis of sacituzumab govitecan in metastatic breast cancer (mBC), including patients in NA/EU and Asia3)Sacituzumab govitecan + pembrolizumab vs chemo + pembrolizumab in untreated PD-L1+ advanced TNBC: ASCENT-04/KEYNOTE-D194)術前療法後に浸潤性残存病変を有する再発高リスクHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXdとT-DM1を比較したDESTINY-Breast05の中間解析Presidential Session 5「TR/第I相試験」3月28日(土)10:30~12:001)WGSに基づく個別化ctDNAパネルによるMRDの検出: MONSTAR-SCREEN-3プロジェクトにおける乳コホート2)固形がんにおけるチロシンキナーゼ阻害薬の有効性と標的遺伝子mRNA発現の関連:SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-23)DAREON-7: phase I study of obrixtamig plus chemotherapy in patients with DLL3-positive neuroendocrine carcinomas注目の演題会長企画シンポジウム9 がん患者が求める専門医とは3月28日(土)10:30~12:00 腫瘍内科医にはエビデンスを重視した医療だけでなく、対話を重視した医療も求められている。本シンポジウムでは、「がん患者が求める専門医とは」をテーマに、現在のがん治療が抱える問題について、3つのテーマで患者会側および専門医側が講演する。総合討論では、「がん患者が求める専門医」と「専門医の認識」についてすり合わせ、ディスカッションを深める。会長企画シンポジウム4 希少がんや希少フラクションの医薬品開発~戦略・デザイン・金・ゴール~3月26日(木)16:05~17:35 希少がん・希少フラクションなどを含む患者数の少ない集団では、開発や戦略の困難さ・事業計画の予見可能性・市場性の観点などさまざまなハードルがある。今後の運用や方向性を策定することで、バランスのとれた希少疾病指定医薬品の開発を促進し、医薬品開発力・科学性・先進性においてどのように世界をリードしていけるのかを議論する。委員会企画5 希少がんに対するエビデンスのある抗悪性腫瘍薬の供給問題3月27日(金)10:20~11:50 希少がんであっても、エビデンスの高い標準治療を滞りなくがん患者に届けるにはどうしたらよいのかを、アカデミア、製薬メーカー、がん患者、厚生労働省の立場より議論し、今後に必要なアクションについて考える。

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4価HPVワクチン、浸潤性子宮頸がんリスクを長期抑制/BMJ

 4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種により浸潤性子宮頸がんリスクは有意に低下し、その予防効果は長期追跡期間を通じて持続しており減衰の兆候は認められなかった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のShiqiang Wu氏らが、同国の全国的な登録データを用いて最長18年間追跡したコホート研究の結果を報告した。本研究では、出生コホート別の評価において、最も若い学校ベースコホート(1999~2001年生まれ)が最も年長の機会的コホート(1985~88年生まれ)と比べて発生率が低かったことも示された。2006年に4価HPVワクチンが導入されているが、HPVワクチン接種後の浸潤性子宮頸がんの長期リスクに関するデータは依然として限られており、HPVワクチン効果の持続性を評価するための長期追跡研究が求められていた。BMJ誌2026年2月25日号掲載の報告。スウェーデンの全国的な登録データを用いたコホート研究、最長18年間追跡 研究グループは、スウェーデンの全国的な登録データを用い、HPVワクチンと浸潤性子宮頸がんリスクとの関連を評価するコホート研究を行った。 対象は、1985~2001年生まれで2006~23年にスウェーデンに居住し、追跡調査開始時にHPVワクチン接種歴がなくかつ浸潤性子宮頸がんの既往がない女性であった。 2006年1月1日または10歳の誕生日のいずれか遅い時点から、2023年12月31日までまたは浸潤性子宮頸がんの診断、死亡、国外移住、追跡不能、2価/9価HPVワクチン接種のいずれか早い時点まで追跡した(最長38歳時まで追跡。17歳未満でワクチン接種を受けた女性は最長34歳時まで追跡)。 主要アウトカムは、HPVワクチン接種者と非接種者の浸潤性子宮頸がんの罹患率比(IRR)。追跡期間中の浸潤性子宮頸がんの初回診断で評価し、IRRは、年齢、暦年、社会人口学的要因、および病歴を補正したポアソン回帰モデルを用いて推定した。また、ワクチン接種後の期間別コホート、接種後3年ごとで区分したコホート(1~3、4~6年群など)、接種時の年齢別コホート、出生コホート(1985~88年生まれ[機会的コホート]、1989~92年生まれ[補助金対象コホート]、1993~98年生まれ[キャッチアップコホート]、1999~2001年生まれ[学校ベースコホート])分類による解析も行った。17歳未満でのワクチン接種、未接種と比較しIRRは一貫して低値 解析対象は92万6,362例、追跡期間中央値は18年(四分位範囲:15.8~18.0)で、追跡期間中に4価HPVワクチンを少なくとも1回接種した女性(ワクチン接種群)は36万5,502例(39.5%)、このうち74.2%は17歳未満で接種を開始し、76.5%が全3回の接種を完了した。 浸潤性子宮頸がんは930例確認され、うち97例はワクチン接種群、833例は未接種群で、ワクチン接種群の未接種群に対する補正後IRRは0.44(95%信頼区間[CI]:0.35~0.55)であった。 接種年齢別評価では、17歳未満集団では補正後IRRは0.21(95%CI:0.13~0.32)で、ワクチン接種後13~15年間予防効果の持続が認められた(IRR:0.23、95%CI:0.11~0.46)。 一方、17歳以降の集団では、補正後IRRは全体で0.63(95%CI:0.49~0.81)、ワクチン接種後7~9年で0.77(0.52~1.15)、10~12年で0.54(0.33~0.86)、13~15年で0.23(0.08~0.60)と、ワクチン接種後10年以降で罹患の減少が有意であった。 出生コホート別では、機会的コホートと比較し、学校ベースコホートで、共変量補正後の子宮頸がんリスクが72%(95%CI:11~91)低下した(IRR:0.28、95%CI:0.09~0.89)。

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冠動脈疾患の画像診断、放射線被曝量に世界的格差/JAMA

 近年、冠動脈疾患(CAD)の画像検査は世界中で著しく増加しているが、画像検査による患者被曝線量には大きなばらつきがあることが明らかとなった。米国・コロンビア大学アービング医療センターのAndrew J. Einstein氏らINCAPS 4 Investigators Groupが、世界101ヵ国の742施設が参加して行われた横断研究「IAEA Noninvasive Cardiology Protocols Study(INCAPS)4」の解析結果を報告した。著者は、「今回の結果は、世界的に放射線量低減のための研修、標準化されたプロトコール、そして最新機器の導入がきわめて重要であることを示している。これは、とくに低・中所得国の患者ならびに冠動脈CT血管造影(CCTA)を受ける患者に影響を与えるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年2月25日号掲載の報告。2023年10~12月の1週間にデータを収集 研究グループは、2023年10月15日~12月10日のいずれか1週間において、参加施設で実施された冠動脈疾患画像検査(SPECTまたはPET心臓核医学検査、冠動脈石灰化スコア[CACS]評価のための心臓CT、またはCCTA)の情報を分析した。収集した情報は、各検査の実施件数、患者背景、撮像プロトコール、放射線関連パラメータであった。 主要アウトカムは、患者への放射線量(実効線量)、およびガイドライン推奨値である実効線量中央値が9mSv以下の施設の割合。 101ヵ国の742施設から1万9,302例のデータ(核医学検査1万1,061例[SPECT:1万295例、PET:726例]、CT検査8,241例[CCTA:6,939例、CACS:6,631例])が報告された。患者の実効線量中央値が最も高いのはCCTA、施設間でもばらつき大 1万9,302例の患者背景は、女性が8,515例(44%)、年齢中央値63歳(四分位範囲[IQR]:54~71)であった。 患者の実効線量は検査によって大きく異なり、中央値(IQR)でCACSが1.2(0.7~2.2)mSv、PETが2.0(1.6~2.4)mSv、SPECTが6.5(3.9~8.6)mSv、CCTAが7.4(3.5~15.5)mSvであった。施設別の実効線量中央値にもばらつきが認められた。 患者の実効線量中央値9mSv以下の施設は、核医学検査実施施設で81%(355施設)、CCTAで56%(216施設)であり、核医学検査実施施設が有意に多かった(p<0.001)。また、実効線量中央値9mSv以下の患者は、核医学検査を受けた患者がCCTAを受けた患者より有意に多かった(79%vs.56%、p<0.001) 同一検査における線量(中央値[IQR])は地域間で有意差が認められ、西ヨーロッパが最も低く(核医学心臓検査で4.8[2.3~7.3]mSv、CCTAで4.6[2.4~9.8]mSv)、核医学心臓検査は中南米(7.8[5.3~9.7]mSv)、CCTAはアフリカ(25.2[14.7~35.3]mSv)で最も高かった(いずれもp<0.001)。 回帰モデルでは、国の所得水準と線量の間に逆相関の関係が認められた。患者線量は、低・中所得国において高所得国より核医学検査が20%(95%信頼区間[CI]:3.6~38.4)、CCTAが最大96%(95%CI:41.7~170.8)高かった(いずれもp<0.001)。ただし、所得水準や地域間で顕著なばらつきが認められている。

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腎機能はアルツハイマー病血液バイオマーカーに影響するが認知症リスクとは関連しない

 アルツハイマー病(AD)関連の血液バイオマーカー(BBM)は脳病理を反映するだけでなく、腎機能低下によって変動することが知られている。ただし、その変動がクリアランスの低下によるものなのか、脳病理の変化を意味するものなのかは明らかにされていない。また、認知症リスクと腎機能との関連については矛盾するエビデンスが存在する。これらを背景に、カロリンスカ研究所(スウェーデン)およびストックホルム大学(同)のFrancesca Gasparini氏らは、同国で進行中の60歳以上の一般住民を対象とする加齢と介護に関する縦断研究(SNAC-K)のデータを用いた検討を実施。結果の詳細が「Neurology」に12月3日掲載された。 SNAC-K参加者のうちベースラインで認知症がなくデータ欠落のない2,279人(年齢中央値72歳〔四分位範囲61~81〕、女性62%)を解析対象とした。このうち24%が腎機能障害(血清クレアチニンに基づくeGFRが60mL/分/1.73m2未満)を有していた。 腎機能障害の有無で二分し各群のBBMの中央値を多変量分位点回帰分析で比較すると、全てに有意差が認められ、いずれも腎機能障害を有する群が高値(Aβ42/40は低値)だった。3次スプライン解析からは、eGFRとBBMのzスコアとの間に非線形の関連が示され、特に神経フィラメント軽鎖(NfL)はeGFRと強く関連していた。例えばeGFRが30mL/分/1.73m2のとき、NfLのzスコアに1標準偏差近くの差が認められた(β=0.88〔95%信頼区間0.80~0.95〕)。またNfLほど顕著ではないものの、eGFRが30mL/分/1.73m2に低下している場合、p-tau181(β=0.22〔同0.09~0.35〕)、p-tau217(β=0.20〔0.10~0.31〕)、t-tau(β=0.24〔0.05~0.42〕)、GFAP(β=0.10〔0.03~0.16〕)にも有意差が観察された。 この集団を最長16年(平均8.3±4.3年)追跡したところ、362人が新たに認知症を発症していた。100人年当りの認知症発症率は、腎機能障害のない群が1.46(1.28~1.67)、腎機能障害を有する群が3.72(3.16~4.39)と後者が高かったが、交絡因子(年齢、性別、BMI、教育歴、心臓脳血管疾患、APOEε4など)を調整後、有意なリスク差は認められなかった(ハザード比〔HR〕0.93〔0.72~1.21〕)。各BBMと認知症発症リスクの関連を腎機能障害の有無で層別化した検討では、NfLについては腎機能障害群において、より強い関連が認められた(腎機能障害のない群ではNfL低値に対して高値でHR1.84〔1.34~2.53〕、腎機能障害を有する群ではHR3.85〔1.87~7.95〕、交互作用P=0.064)。 Gasparini氏は、「腎機能の低下が認知症発症リスクを高めるという関連は見られなかったが、AD関連のBBMが高い人では腎機能障害が認知症の発症を促進する可能性が示された」と述べている。

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変形性関節症患者のQOLに重要なのは握力よりも日常生活動作

 握力は従来、筋力の指標とされているが、変形性関節症(OA)患者においては、握力よりも、椅子から立ち上がれるかなどの日常生活動作の方が生活の質(QOL)に大きく影響することが示された。シャルジャ大学(アラブ首長国連邦)のAsima Karim氏らによるこの研究の詳細は、「European Journal of Applied Physiology」に12月6日掲載された。Karim氏は、「この結果は非常に印象的だった。OA患者は握力が弱く、QOLも全体的に低いが、QOL低下の実態を示していたのは、握力ではなく日常生活動作だったのだ」と述べている。 この研究では、SHARE(Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe)第8波の調査データを用いて、握力および身体能力と、コントロール感、自立度、自己実現、喜びの4領域から成る評価ツールであるCASP-12で測定した心理社会的QOLとの関連が検討された。対象者は、ヨーロッパの28カ国からSHAREに参加した50歳以上のOA患者7,591人(OA群)、およびOAではない参加者3万923人(非OA群)であった。 その結果、OA群は非OA群と比較して、握力とCASP-12スコアのいずれも有意に低かった(P<0.05)。また、両群とも握力が高いほどCASP-12スコアも高いという正の関連が認められたが、その関連は強いものではなく、非OA群の方がわずかに強かった。一方、身体機能との関連については、運動課題(歩行、椅子からの立ち上がり、階段の昇降など)が困難で疲労感が強いほどCASP-12スコアは低下するという負の関連が認められ、QOLが低いことの最も明確なサインは、簡単な日常生活動作がうまくできないことであることが示唆された。 Karim氏は、「この研究結果のメッセージは明確だ。OA患者においては、握力よりも、自信とエネルギーを持って世界を動き回れるかどうかがQOLを形作るということだ」と述べている。 さらに、本研究では、持続的な疲労感が患者の健康において重要であるにもかかわらず見落とされがちな要因であることも明らかになった。この結果を踏まえて研究グループは、「臨床医は、痛みの緩和だけでなくエネルギー管理も優先すべきだ。動く気力が出ないと、患者の自信や自立性は急速に低下し、QOLも全体的に低下する」と述べている。 共著者の1人である同大学のRizwan Qaisar氏は、「治療の目標を症状の管理にとどめるべきではない。高齢のOA患者のQOLを向上させたいのなら、薬だけでなく、移動能力、エネルギー、機能的自立に注目する必要がある」と述べている。

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怒鳴ってしまって大失敗!【Dr. 中島の 新・徒然草】(621)

六百二十一の段 怒鳴ってしまって大失敗!ようやく確定申告が終わったと思ったら花粉の季節。ティッシュの箱をキーボードの横に置き、鼻をかみながら外来をしています。さて、今回のお話は60代の男性患者さんについてです。10年ほど前に交通事故で頭部を打撲しながらも職場復帰し、見事に定年まで勤め上げました。定年後は障害者雇用で働いています。が、頭部外傷のせいで高次脳機能障害が残っており、時々ボロが出てしまうのが困ったところ。今回の外来では冒頭からその話でした。 患者 「先生、大変なことが起こったんですよ」 椅子に座る間もなく話が始まります。 患者 「今は役所で働いているんですけどね、主任さんと大喧嘩してしまったんです」 いつも早い目に出勤して段取りをするのだけど、その日は何かパソコンを打っていても違和感があったそうです。で、「おかしいな」と思って主任さん(女性)のところに行くと、彼女から「急ぐ書類があったので、私が先にやらせてもらいました」と。ついカッとなって「なんでひとこと言ってくれへんかったのですか!」と怒鳴ってしまったそうです。すると主任さんも反論して大きな声で言い合いになったのだとか。 患者 「後で課長さんに呼ばれてですね、『市民の前で何をやっているんですか』と注意されてしまって」 中島 「ちょっとまずかったですね、それは」 患者 「年度末に契約更改があるんですけど、『これはちょっと考えないといけませんね』と言われたんですよ」 中島 「こちらが先に怒鳴ってしまったんですよね」 患者 「でも、私は障害者雇用ですよ。そのくらい理解してくれてもいいじゃないですか」 中島 「それ、ちょっと難しいでしょう」 障害者雇用だからといって、何でも許されるわけではありません。仕事が遅いことに対しては周囲の理解を期待できるかもしれませんが、いきなり怒鳴ったりしたら相手もびっくり仰天です。 患者 「今年が2回目の契約更改だったんですけど、駄目かもしれないと思って先にハロワに行ってきました」 ハロワでは何と別の役所関係の書類選考が通って、面接試験にまで漕ぎつけたとのこと。 患者 「かなりたくさん採用するみたいなんで、受かるかもしれない、と期待しているんです」 中島 「うまく就職できたらですね、とにかく感情的にならないようにしてください」 患者 「そいつが難しいんですよ。これまで何とか自分を抑えてきたんやけどな」 中島 「まさかライオンに向かって怒鳴ったりしないでしょ」 患者 「そんなん怖いですやん」 中島 「お孫さんに向かって怒鳴ったりしないですよね」 患者 「嫌われたら困りますがな」 中島 「それなら少しは理性が残っているんだから、怒らないように頑張りましょうよ」 患者 「わかりました」 この人、毎回、同じパターンで失敗しています。 中島 「主任さんには謝ったんですか?」 患者 「あれ以来、話をしてくれないんです」 中島 「そりゃそうでしょうね。だったら手紙を書いたらどうですか?」 患者 「手紙ですか」 中島 「きっと手紙だったら読んでくれるでしょう。契約更改してもらおうとか、許してもらおうとか、そういう邪念は無しですよ」 患者 「人として謝るってことですね。わかりました、そうします」 ということでこの患者さん。診察に来たときには暗い顔でしたが、最後は明るい表情で帰って行きました。後でChatGPTに聞いてみると、頭部外傷による高次脳機能障害の人は感情を抑えるブレーキが完全に壊れているわけではない、とのことです。確かに感情のブレーキが壊れていたら、ライオンに対しても怒鳴ってしまうでしょうけど、そこまで極端なことはありません。単に感情を抑えるブレーキの発動が遅くて利きが悪いというだけなのだそうです。しかもこのブレーキ、疲れたりするとますます利かなくなるのだとか。まずは何事も余裕を持って取り組むのが大切なのですが、それに加えて感情のブレーキが利くようになるための薬をいくつか提案されました。場合によってはこういった薬を試してみるのも良いかもしれません。うまくいったら、改めて本欄で報告させていただきたいと思います。最後に1句 花粉舞い 鼻水たらせ 怒鳴るより

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アルコール性肝硬変による腹水、次にするべきは?【腕試し!内科専門医バーチャル模試】

アルコール性肝硬変による腹水、次にするべきは?56歳の男性。3年前にアルコール性肝硬変と診断された。現在まで飲酒は継続しており、肝機能は徐々に悪化している。2週間前の外来受診時に腹水増加がみられ、フロセミド20mg/日を40mg/日に、スピロノラクトン25mg/日は50mg/日に増量した。発熱や腹痛はないが腹部膨隆は改善がなく、腹部エコーで大量の腹水貯留を認める。総ビリルビン3.5mg/dL、Alb 3.0g/dL、PT% 68%、電解質異常および腎障害はない。

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