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片頭痛は、10〜24歳のAYA世代の心身的健康に重大な影響を及ぼす疾患である。中国・北京中医薬大学のYanPi Li氏らは、1990〜2021年のAYA世代における片頭痛の発症率、有病率、障害調整生存年(DALY)の世界的傾向を評価し、予防および政策の指針となるエビデンスを提供するため、本研究を実施した。Frontiers in Neurology誌2025年9月1日号の報告。 過去30年間(1990〜2021年)の204の国と地域におけるAYA世代の片頭痛負担を性別、年齢、社会人口統計指数(SDI)、地域、年別に層別化した世界疾病負担(GBD)2021研究より、データを取得した。本評価では、発症率、有病率、DALYの分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・過去30年間で、AYA世代における片頭痛の世界的負担は、絶対症例数で著しく増加していた。・発症率は23.50%、有病率は24.82%、DALYは24.94%の増加が認められた。・これらが増加しているにもかかわらず、全体の罹患率および年齢調整罹患率(ASR)は、比較的安定しており、人口増加と高齢化が主要な要因であることが示唆された。・女性および高SDI地域では、負担が一貫して高かった。しかし、増加率は男性のほうが高く、男女間の格差は徐々に縮小していた。・年齢別では、10~14歳の罹患率が最も高く(45.9%)、次いで20~24歳の有病率(39.8%)、DALY負担(39.9%)が高かった。・21地域のうち、年齢調整発生率(ASIR)は西ヨーロッパ(人口10万人当たり2,272.50人)、年齢調整有病率(ASPR:人口10万人当たり2万7,542.29人)および年齢調整DALY率(ASDR:人口10万人当たり1,011.78人)は中南米の熱帯地域が最も高かった。・国別では、ベルギーのASIR(人口10万人当たり2,758.02人)が最も高く、ブラジルではASPR(人口10万人当たり2万7,592.69人)およびASDR(人口10万人当たり1,013.43人)が最も高かった。・2035年までの予測では、ASIR、ASPR、ASDRはさらに上昇すると予測された。 著者らは「世界の片頭痛負担は急増しており、SDIの高い地域で片頭痛の負担が大きい一方、SDIの低い地域では過小診断の可能性が示唆された。10~14歳の若年層、とくに女性で発症率が高い要因として、ホルモンや社会的要因の影響が考えられる。今後、ASRの低下が予測されるものの、症例数自体は増加傾向にあり、医療アクセス、性別に応じた対策、学校主導プログラムなどの精密な介入が求められる。片頭痛ケアと予防への公平なアクセスを促進するとともに、大気汚染、長時間のスクリーンタイム、慢性的ストレス、学業のプレッシャーなど、新たなリスク要因に関する研究を推進するためにも、世界規模での緊急の取り組みが必要とされる」と結論付けている。