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特定健診の「2cm2kg減」は適切? 3万人の代謝指標との関連を検討

 日本の特定健診・特定保健指導では、生活習慣改善の目安として「腹囲2cm・体重2kgの減少(2cm2kg)」が推奨されている。しかし、この目標達成が実際に代謝指標の改善と結びついているか検討した研究は乏しい。そこで、笠原 健矢氏(京都府立医科大学)らの研究グループは、健診コホートデータを用いて2cm2kg目標の妥当性を検討した。その結果、2cm2kg達成は、血糖、血圧、脂質、肝機能といった代謝指標の改善と有意に関連し、実務上の目安としておおむね妥当であることが示唆された。本研究結果は、Obesity誌オンライン版2026年4月4日に掲載された。 研究グループは、2020年にパナソニック社の健康診断を受けた40歳以上のうち、特定保健指導の対象基準に該当する3万240人を解析対象として観察研究を実施した。ベースラインを2020年の健康診断時、評価時点を1年後とし「腹囲が2cm以上減少し、かつ体重が2kg以上減少すること」を「2cm2kg達成」と定義した。2cm2kg達成群と未達成群における代謝指標(血糖、HbA1c、収縮期血圧、拡張期血圧、TG、HDL-C、LDL-C、AST、ALT、γ-GTP)の変化量を比較した。さらに、腹囲・体重の減少量に応じた用量反応関係や、代謝改善を予測する最適カットオフ値についても検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象者のうち、男性の割合は89.6%であった。ベースライン時の平均年齢は52.1歳、平均BMIは27.1kg/m2、平均腹囲は93.3cm。・2cm2kg達成群は5,243人、未達成群は2万4,997人であった。なお、達成群における実際の平均変化量は腹囲-5.19cm、体重-4.93kgであり「2cm2kg」より大きく減少していた。・2cm2kg達成群は未達成群と比較して、以下の代謝指標について1年後の変化量が有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。達成群の代謝指標の変化量は以下のとおり。 血糖:-3.77mg/dL HbA1c:-0.15% 収縮期血圧:-4.71mmHg 拡張期血圧:-3.42mmHg TG:-40.14mg/dL HDL-C:+3.19mg/dL LDL-C:-7.62mg/dL AST:-6.54U/L ALT:-13.98U/L γ-GTP:-18.81U/L・腹囲および体重について、1cm1kg、2cm2kg、3cm3kgと減少量が大きくなるにつれて、各代謝指標の改善幅が大きくなるという用量反応関係が認められた。血糖変化はそれぞれ-2.85mg/dL、-3.77mg/dL、-5.26mg/dLであった。・腹囲・体重の減少量が大きいほど、血糖、血圧、TG、HDL-Cの改善達成のオッズも上昇した。体重が3kg超減少した集団では、ほぼ不変の集団と比較して血糖改善(オッズ比[OR]:1.91、95%CI:1.70~2.16)、血圧改善(同:2.24、2.00~2.51)、TG改善(同:2.75、2.46~3.07)、HDL-C改善(同:2.62、2.11~3.25)のオッズが高かった。・ROC解析の結果、代謝改善を予測する最適なカットオフ値はおおむね腹囲-2.1~-0.7cm、体重-1.7~-0.8kgに収まり、2cm2kgという目標設定を支持する結果であった。ただし、AUCは0.58~0.63であり、予測能としては高くなかった。 本研究結果について著者らは、日本の特定健診・特定保健指導における2cm2kgという目標は代謝改善と関連しており、日本の保健指導において2cm2kgの目標を設定することの妥当性を支持するものであったと結論付けた。一方で、本研究は単一企業の就労者コホートを対象とした観察研究であり男性が占める割合が多いこと、保健指導の因果を示したものではないこと、2cm2kg達成群の実際の減少量が目標値より大きかったことなどの限界も指摘している。

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薬剤耐性菌の防御システムを乗り越える「ファージ」の仕組みを解明/JIHS

 薬剤耐性菌は世界的に深刻な脅威となっている。対策の1つとして注目されているのが、細菌に感染して溶菌させるウイルス(バクテリオファージ、以下ファージ)だ。国立健康危機管理研究機構(JIHS)/国立感染症研究所の千原 康太郎氏、氣駕 恒太朗氏らは、ファージが細菌の防御システムを回避して原因菌を破壊する仕組みを明らかにした。その詳細をJIHS開催の記者ブリーフィングで紹介している。薬剤耐性菌対策に期待されるファージ療法 薬剤耐性菌による感染症は全世界で急速に増加している。2025~50年における薬剤耐性菌を直接原因とする累積死者数は3,900万人以上、関連死者数は1億6,900万人以上に上ると推定される1)。 ファージは細菌に対して高い特異性を持って感染し、内部で増殖することで溶菌する。ファージ療法の研究は抗菌薬以外の新たな治療として進んでいる。欧州の多施設後ろ向き観察研究では、標準治療抵抗性の感染症100例に対して、臨床的改善77%、除菌率61%という成績が報告されている2)。 一方で、細菌は多様な防御システムでファージの感染を強力に阻止する。ファージはピンポイントで細菌を狙う。そのため、有効なファージを選ぶには、さまざまな原因菌の防御機構をファージがどのように突破するかを分子レベルで理解することが不可欠である。細菌の防御システムを乗り越えるファージの機能 同研究チームは大腸菌T6ファージに注目し、細菌の防御機能の回避メカニズムを調査した。実験ではファージの防御システムであるSeptuを有する大腸菌に感染できるT6ファージの株を分離してゲノムを解析している※。※Septuが存在しているため通常ファージは感染できないが、その中から感染したファージを抽出して解析。 SeptuはチロシンtRNA(tRNA-Tyr)を切断してファージの増殖を妨げる。解析の結果、Septuを回避するT6ファージはtRNA-Tyrを含む遺伝子領域が増幅していることが明らかになった。言い換えれば、防御機能で減少したtRNA-Tyrを補うことで、ファージ感染を成立させていることになる。 ファージが細菌の防御機能を突破するためには、DNA切断酵素SegBが重要であることも明らかになった。SegBは前出のSeptu以外の防御システム(OLD、ToxIN)に対しても、それぞれに対応した関連遺伝子領域を増幅させる。すなわち、SegBはそれぞれの防御システムに対応し、乗り越えているのだ。 防御システムの回避機構が明らかになったことで、細菌とファージのマッチングが実現しやすくなっていくであろう。この研究は「抗菌薬の使用削減、薬剤耐性菌の克服につながる成果」と氣駕氏は結んだ。 この研究結果はNature Communications誌2026年4月20日号(オンライン版)に掲載されている。

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新規診断の多発性骨髄腫患者と医師のコミュニケーションの実態~国内アンケート調査

 多発性骨髄腫の治療選択肢が拡大する中、協働意思決定(SDM)の重要性が増しており、医師と患者のコミュニケーションが重要となる。今回、近畿大学奈良病院の花本 均氏らが実臨床における医師と患者のコミュニケーションの実態についてアンケート調査した結果、治療開始時および病状安定時において、医師と患者の認識に顕著な乖離があることが示された。eJHaem誌2026年4月26日号に掲載。 本研究は、造血幹細胞移植を受けていない新規に診断された多発性骨髄腫患者220例と、多発性骨髄腫を診療する血液専門医120人を対象とした観察調査研究(2024年9〜11月実施)である。患者は自己記入式の34項目の調査票(オンラインまたは紙媒体)に回答し、血液専門医は、自己記入式の18項目の調査票にオンラインで回答した。治療開始時および病状安定時における、患者と医師間のコミュニケーションの状況、患者の治療に対する期待、価値観、感情、知識、治療に関する意思決定の希望に関する情報をまとめた。 主な結果は以下のとおり。・医師側は、治療開始時に82.5%、病状安定時に65.0%が治療選択肢を提示または説明したと回答した一方、患者側で提示または説明を受けたと回答したのは、治療開始時で45.9%、病状安定時で50.3%であった。・治療開始時および病状安定時において、治療の希望を確認されたと回答した患者は、それぞれ23.6%および25.2%と、希望を尋ねたと回答した医師(それぞれ67.5%と50.8%)より低かった。・患者の感情は治療開始時のネガティブなものから病状安定時にはポジティブへと変化し、疾患や治療に関する知識が向上した。また、治療に対する期待も変化した。・患者の44.5%が意思決定への参加を希望していたが、実際に治療開始時に参加していたのは21.8%であった。 本結果から、著者らは「医師と患者の間でコミュニケーションに対する認識の乖離が確認された。医師は患者の期待や感情、知識が治療開始から病状安定期にかけて変化することを理解し、各時期で治療選択肢や計画についてより効果的にコミュニケーションを取る必要がある」としている。

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女性の単純性尿路感染症、nitrofurantoinが有効/Lancet

 女性の単純性尿路感染症(UTI)に対する治療は、nitrofurantoinが最も有効であり、次いでpivmecillinam、ホスホマイシン2回投与の順で、ホスホマイシン単回投与が最も有効性が低いことが、スペイン・Institute for Primary Health Care Research Jordi Gol i GurinaのCarl Llor氏らが同国のプライマリケア34施設で実施したプラグマティックな第IV相無作為化非盲検臨床試験「SCOUT試験」の結果で示された。ほとんどのガイドラインでは、単純性UTIに対しnitrofurantoin、ホスホマイシン、場合によってはpivmecillinamの投与が推奨されているが、これらの直接比較が求められていた。著者は、「単純性UTIに対する第1選択薬としてのホスホマイシンの役割は再評価されるべきである」とまとめている。Lancet誌2026年4月25日号掲載の報告。UTIに対する4つの治療法の有効性と安全性を比較 研究グループは、UTI特有の症状(排尿痛、尿意切迫感、頻尿、恥骨上部痛)を少なくとも1つ有し、かつ他の原因(性感染症や外陰膣炎を示唆する症状)がなく、尿試験紙法で亜硝酸塩または白血球エステラーゼのいずれかが陽性の18歳以上の女性を、ホスホマイシン3gの単回投与群、ホスホマイシン3gの2回投与群、nitrofurantoin(100mgを1日3回5日間)群、またはpivmecillinam(400mgを1日3回3日間)群のいずれかに、1対1対1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムは、7日時点の臨床的治癒(すべての感染症状の消失と定義)を示した患者の割合であった。有効性はnitrofurantoinが最も高く、ホスホマイシン単回投与が最も低い 2022年4月4日~2024年11月14日に804例がスクリーニングを受け、このうち768例が無作為化された(ホスホマイシン単回投与群191例、ホスホマイシン2回投与群194例、nitrofurantoin群190例、pivmecillinam群193例)。被験者の年齢中央値は48歳(四分位範囲:34~63)で、人種および民族に関するデータは収集されなかった。 主要アウトカムのデータ欠測例を除く720例が主要解析の対象集団となった。 臨床的治癒率が最も低かったのはホスホマイシン単回投与群(109/185例[59%])、最も高かったのはnitrofurantoin群(128/172例[74%])で、群間差は15.5%(95%信頼区間[CI]:5.9~25.1、p=0.0168)であった。 次いで、pivmecillinam群(127/182例[70%]、ホスホマイシン単回投与群との差:10.9%、95%CI:1.1~20.6、p=0.2352)、ホスホマイシン2回投与群(122/181例[67%]、8.5%、-1.4~18.3、p=0.6935)の順であった。 有害事象は、ホスホマイシン単回投与群で191例中38例(19.9%、95%CI:14.9~26.1)、ホスホマイシン2回投与群で194例中51例(26.3%、20.6~32.9)、nitrofurantoin群で190例中51例(26.8%、21.0~33.6)、pivmecillinam群で193例中41例(21.2%、16.1~27.5)に発現した。ほとんどの有害事象は軽度で、主な事象は消化器系の症状であった。重篤な有害事象は4例に認められ、そのうちpivmecillinam群の腎盂腎炎1例が治験薬と関連ありと判定された。

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重症CKDでも降圧療法で心血管イベント抑制/Lancet

 英国・オックスフォード大学のGuyu Zeng氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)はメタ解析を実施し、心血管リスク低減の観点からは、慢性腎臓病(CKD)患者における降圧治療の相対的効果は、非CKD患者における効果と同等であり、CKDの病期、血圧閾値、蛋白尿の有無にかかわらず一貫した有効性が認められることを示した。ただし、糖尿病合併CKD患者ではこの相対的効果が弱まるため、これらの高リスクサブグループに適合する治療戦略が必要であるという。また、CKDにおける主要な降圧薬のクラス特異的な効果は、CKDの病期や蛋白尿の有無にかかわらず、一般集団で観察される効果と同様であることも示された。CKD患者、とくに進行期の患者について、心血管リスク管理に関するエビデンスは依然として不足していた。Lancet誌2026年4月25日号掲載の報告。RCT46件・約28万5,000例をメタ解析 研究グループは、第3期BPLTTCにおいて血圧降下療法群と対照群に割り付けた無作為化試験の被験者個人データを用いて、1段階法によるメタ解析を実施した。 適格とした無作為化試験は、言語や発表時期を問わず、各群1,000人年以上の追跡期間があり、ベースラインの血圧値およびクレアチニン測定値、ならびにイベント発生までの期間の結果があるものとした。無作為化手順が不明確、心不全または急性期医療に限定されたものは除外した。心不全既往患者や、クレアチニン値が極端な患者は除外した。年齢は問わなかった。 主要アウトカムは主要心血管イベント(致死的または非致死的脳卒中、虚血性心疾患、心不全による入院もしくは死亡の複合で定義)とし、相対的治療効果は層別Cox比例ハザードモデルで推定した。治療効果の異質性は、事前に定義されたCKDの状態、CKDステージ(1~5)、糖尿病、蛋白尿、およびベースライン血圧で分類したサブグループ間で評価した。また、5つの主要な降圧薬クラスにおいて、サブグループ間で治療効果が異なるかどうかを層別ネットワークメタ解析で評価した。 52件の無作為化試験(36万3,684例)のうち、適格基準を満たした46件・28万5,124例が解析に組み込まれた。女性11万6,145例(40.7%)、男性16万8,979例(59.3%)、ベースラインにおけるCKD患者は5万9,185例(20.7%)、2型糖尿病患者は8万6,067例(30.2%)であった。収縮期血圧5mmHg低下で、主要心血管イベントリスクが約10%低下 追跡期間中央値4.4年(四分位範囲:3.2~5.1)において、収縮期血圧の5mmHg低下により、主要心血管イベントのリスクは、CKD患者(ハザード比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.87~0.94)および非CKD患者(HR:0.90、95%CI:0.88~0.93)の両方において、低下が認められた(相互作用のp>0.99)。さらに、観察された相対リスク低下は、ステージ4~5を含むすべてのCKDステージで一貫していた(相互作用のp>0.99)。 同様の治療効果の観察は、蛋白尿の有無別や、120/70mmHg未満群を含む各血圧区分においても認められた。しかしながら、CKD患者における相対的治療効果は、糖尿病合併例(HR:0.96、95%CI:0.90~1.02)で非合併例(HR:0.88、95%CI:0.84~0.93)と比較して著しく減弱していた(相互作用のp=0.044)。 各薬剤クラス内の層別解析では、心血管リスクに対する降圧薬とプラセボのクラス固有効果は、調査したサブグループ全体で変わらないことが示された。

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双極症I型に対する抗精神病薬治療成績、LAI vs. 経口薬

 イスラエル・テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズのSigal Kaplan氏らは、米国の双極症I型患者を対象に、長時間作用型注射剤(LAI)と経口抗精神病薬(OA)治療における再入院率と薬剤使用パターンを比較した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2026年3月2日号の報告。 Premier Hospital データベース(2020年10月~2023年9月)を用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、双極症I型で入院した18歳以上の成人患者。退院時に使用していた抗精神病薬(OA群、LAI群、第2世代LAI群)別にグループ分けを行った。LAI群および第2世代LAI群の患者を、OA群の患者と1:4で傾向スコアマッチングした。30、60、90日以内の再入院率および双極症I型関連および全原因のリスクを評価した。再入院時の薬剤継続と薬剤変更についても分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者9万8,088例のうち、OA群が78.1%、LAI群が2.4%であった。・双極症I型関連の再入院率は、LAI群のほうがOA群よりも30日(3.9%vs.5.0%、p=0.033)および60日(5.9%vs.7.2%、p=0.030)において共に低かった。・第2世代LAI群では、30日後(3.6%vs.5.4%、p=0.010)、60日後(5.2%vs.7.5%、p=0.008)、90日後(6.8%vs.9.1%、p=0.015)の再入院率が低下した。・30~90日以内の初回再入院リスクは、LAI群(ハザード比[HR]:0.784~0.856)および第2世代LAI群(HR:0.653~0.742)ではOA群と比較し、低下していた。 著者らは「LAI、とくに第2世代LAIは、OAと比較し、双極症I型患者の再入院率を低下させることが示された。服薬アドヒアランスの向上と再入院率の低下を実現するために、LAIのより広範な使用が支持される」と結論付けている。

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ストレスや悲しみはがんリスクと関連しない

 長年にわたり、強い心理的ストレスや悲しみ、あるいはネガティブな性格はがんを引き起こし得ることが、ウェルネス分野や医療現場で広く信じられてきた。しかし、大規模な国際研究により、個人の精神状態はがんの発症とほとんど関係がない可能性が示された。フローニンゲン大学医療センター(オランダ)のLonneke van Tuijl氏らによるこの研究は、「Cancer」に3月23日掲載された。 この研究では、複数コホートを統合した大規模データベースであるPsychosocial Factors and Cancer Incidence(PSY-CA)コンソーシアムを用いて、心理社会的要因とがん(乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がん、喫煙関連がん、アルコール関連がん)の発症との関連が検討された。対象は、ベースライン時に少なくとも1つの心理社会的要因が測定されていた42万1,799人。検討された要因は、知覚された社会的支援(perceived social support;PSS)、喪失体験、パートナーの有無(既婚、離婚、独身など)、神経症傾向、全般的な精神的苦痛であった。 その結果、対象とした心理社会的要因と全がん、乳がん、前立腺がん、大腸がん、アルコール関連がんとの間に有意な関連は示されなかった。一方、最近の喪失体験、PSS低値、およびパートナーがいないこと(独身や離婚者など)は、肺がんリスクのわずかな上昇と関連していた。しかし、関連因子を調整すると、知覚されたPSS低値とパートナーがいないことについては関連が弱まる、または消失した。一方で、パートナーがいないことと喫煙関連のがんとの関連は、因子の調整後も認められた。神経症傾向および全般的な精神的苦痛は、いずれのがんとも関連を示さなかった。 研究グループは、ストレスそのものが細胞をがん化させるわけではないが、ストレスに対する対処行動は影響し得ると結論付けている。例えば、困難な状況にある人は、喫煙や飲酒、不健康な食生活に陥りやすく、これらが実際のがんリスクの主要因であると考えられる。Van Tuijl氏は、「さらに、観察された小さな影響の多くは、不健康な行動によって説明されることが多い」と述べている。 メンタルヘルスを良好に保つことは、生活の質(QOL)や疾病からの回復において重要であるが、本研究は、それががん発症の主要な要因ではないことを示した。Van Tuijl氏は、「PSY-CAコンソーシアムはここ数年、メンタルヘルス不調やその他の心理社会的ストレスががん発症リスクを高めるという広く信じられている考えを検証してきた。本研究の結果は、この広く信じられている考えを明確に支持するものではなかった」とニュースリリースでコメントしている。 研究グループはさらに、この結果は、がん患者が自身の病気を過去のストレスに結び付けて罪悪感や自責の念を抱くことを防ぐ一助となる可能性があると指摘している。

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白内障治療の将来を読む――全国と地方の眼科医供給格差

 白内障は加齢に伴って多くの人にみられ、日本では高齢化の進展とともに手術の需要増加が見込まれている。一方で、地域によって医療資源には偏りがあることも課題となっている。今回、NDBオープンデータや人口推計などを用いた研究で、都道府県ごとの白内障手術の将来需要と眼科医の供給を予測した結果、特に地方で需給バランスが悪化し、医療アクセスの地域格差が拡大する可能性が示された。研究は、国際医療福祉大学の山口浩史氏、アルアリアシーらるび氏、藤田烈氏によるもので、詳細は3月3日付の「BMJ Open Ophthalmology」に掲載された。 白内障手術は近年増加傾向にあり、日本では過去数十年で手術件数が大きく伸びている一方、眼科医の増加はそれに比べて緩やかにとどまっている。また、眼科医の地域偏在も指摘されており、都市部と地方の格差は拡大している。こうした中、需要と供給を同一の枠組みで定量的に評価した研究は限られている。そこで本研究では、地域ごとの人口動態や医療資源の違いを踏まえ、日本における白内障手術の将来需要と眼科医の供給を予測し、需給バランスを評価することを目的とした。 本研究では、厚生労働省のNDBオープンデータ(2014~2022年度)を用い、診療報酬請求件数から年齢別・性別の白内障手術実施率を算出した。NDBは全国民を対象とした医療保険データであり、日本の医療実態を広く反映している。白内障手術の件数は、水晶体再建術(眼内レンズを挿入する手術)の請求件数から算出した。この手術実施率を、総務省の人口推計および国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計に適用し、回帰モデルを用いて2030年、2040年、2050年における手術需要を推計した。一方、眼科医の将来供給については、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」を基に、線形回帰モデルを用いて予測した。さらに、都道府県ごとに手術需要を眼科医数で割った需給比を算出した。この指標は、眼科医1人あたりが担う手術件数を示すもので、値が高いほど医師不足の程度が大きいことを意味する。将来の需給バランスの変化は、2022年を基準として評価した。 白内障手術の需要は今後大きく増加すると推計された。手術件数は、2030年に約193万件、2040年に約237万件、2050年には約286万件に達する見込みで、2050年には2022年と比べて約1.7倍に増加する可能性が示された。特に70代および80歳以上の高齢者で顕著な増加が予測され、手術の大半(約7割以上)はこれら高齢層に集中していた。なお、手術件数は一貫して女性で男性を上回っていた。 一方、眼科医数は多くの都道府県で緩やかな増加が見込まれるものの、一部の地域では減少する可能性が示された。 その結果、白内障手術の需要を眼科医数で割った需給比は全国的に上昇すると推計された。人口減少が進む地域でも需要の増加が見込まれる中、とりわけ地方での上昇幅が大きく、都市部との地域差が今後さらに拡大する可能性が示唆された。さらに、一部地域では需給比が2倍以上に達する可能性も示された。 著者らは、公的統計データを用いて都道府県別の白内障手術需要と眼科医供給を推計した結果、手術需要は今後も増加し、特に70代および80歳以上に集中する一方、眼科医数は一部地域で減少する可能性があると報告している。これに伴い需給比は全国的に上昇し、とりわけ地方での増加が大きく、都市部との格差が拡大する可能性があると指摘している。さらに、受診の遅れや待機期間の長期化を防ぐ対策の必要性とともに、より細かな地域単位での需給評価の重要性を挙げている。 なお、本研究は公的データに基づく推計であり、実際の手術需要や供給能力を十分に反映しない可能性がある。また、都道府県単位の解析のため地域内差や患者移動を考慮できず、将来予測には一定の不確実性がある。

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糖尿病患者の心血管リスク軽減のための先手必勝手段:PCSK9阻害薬による早期介入?(解説:島田俊夫氏)

1. セールスポイント:2次予防から「高リスク1次予防」へのパラダイムシフト 本研究の最大のセールスポイントは、これまで主に「心筋梗塞や脳卒中の既往がある患者(2次予防)」に限定されていたPCSK9阻害薬の有効性を、「イベント未発症でリスクが高い糖尿病患者(1次予防)」において初めて証明した点にある。・劇的な脂質改善:エボロクマブ投与により、LDLコレステロール(LDL-C)値をプラセボ群の111mg/dLに対し、エボロクマブ投与群では52mg/dLまで大幅に低下させた。・確かなイベント抑制効果:主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中)のリスクを31%減少(ハザード比:0.69)させた。・早期および持続の効果:治療開始1年後から効果が顕著になり、その後もリスク低下が持続することが確認された。2. 臨床的価値:糖尿病治療における「未充足のニーズ」への応答 臨床現場において、周知のごとく糖尿病患者は動脈硬化のリスクは高く、イベントを起こすまではスタチン単剤などの標準治療にとどまることが多かった。本論文は、以下の価値を示している。・「先手必勝」の正当化:有意な動脈硬化が確認される以前の段階から強力に脂質を低下させることで、将来の重篤なイベントを未然に防げる可能性を示した1)。・ベネフィット:性別、年齢(65歳以上・未満)、ベースラインのLDL-C値によらず、一貫した有効性が確認された2)。・安全性:重篤な有害事象や副作用による投与中止率はプラセボ群と同等であり、長期投与における安全性が再確認された。3. 論文の弱点と限界 非常に強力なデータを示す一方で、以下の点には留意が必要である。・「超高リスク」への限定:対象は糖尿病罹病期間10年以上、インスリン使用など、リスクの高い糖尿病患者に限定されており、すべての糖尿病患者に一律に一般化できるわけではない。・死因分析の解釈:全死因死亡率の減少(ハザード比:0.76)も示唆されたが、統計学的な検定順序の規約により、この結果はあくまで「探索的」な結果として扱うことが妥当である。本研究はサブ解析に基づく結果であり、探索的結果と受け止めることが望ましい。・コスト対効果の課題:PCSK9阻害薬は高価な薬剤であるため、1次予防として広く普及させるには、さらなる経済性評価が求められる(※本論文内では直接的なコストの言及はないが、臨床応用上の一般的課題と理解する)3)。コメント 本論文は、糖尿病患者における心血管疾患予防の新たなスタンダードを示している。「悪くなってからたたく」のではなく、**「悪くなる前に強力に抑え込む」**ことの重要性を科学的に裏付けた、きわめて意義深い研究と言っても過言ではない。しかし、費用対効果については依然として問題が残っていることも事実である。サイレントキラーとしての糖尿病に関しては、大きな成果として素直に受け入れたい結果だと考える。

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麻疹・風疹の違いは?

麻疹・風疹の違いは?麻疹(はしか)風疹(3日はしか)原因ウイルス 麻疹ウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)風疹ウイルス(Togavirus科Rubivirus属)感染経路空気感染、飛沫感染、接触感染感染力が非常に強い飛沫感染感染力が強い潜伏期間10~12日間14~21日間症状発熱(38℃前後、発疹期は39.5℃以上)、上気道炎症状(せき、鼻みず、のどの痛み)、結膜炎症状(結膜充血、目やに、まぶしさ)、消化器症状(下痢、腹痛)、発疹、コプリック斑(口腔内の白色の小斑点)など発熱(約半数)、発疹、リンパ節の腫れが3つの特徴的な症状とされる関節炎が出る場合もある(成人の5~30%)麻疹より症状は軽く、無症状が15~30%注意が必要な合併症肺炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎(麻疹の二大死因は肺炎と脳炎)中耳炎、クループ症候群(喉頭炎、喉頭気管支炎など)、心筋炎など先天性風疹症候群(妊娠20週までの妊婦さんが感染すると、生まれた子が発症して、先天異常など、さまざまな症状があらわれる)血小板減少性紫斑病、急性脳炎分類(1人の感染者が12~17人感染させる)(1人の感染者が5~7人感染させる)5類感染症国立感染症研究所. 風疹とは(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html)国立感染症研究所. 麻疹とは(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html)より作成Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.麻疹・風疹の発生状況(2026年4月30日現在)麻疹(例)(例)3,0003,0002,5002,5002,0002,0001,5001,5001,000風疹2,9412,2981,000744※5000165 18627910 66 28 45265436500126 910年101※12 15 12 9 11 1年※:第17週(2026年4月30日現在)の速報値国立感染症研究所. 感染症発生動向調査(IDWR):2026年4月30日現在(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/diseases/measles/graph/index.html)(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/diseases/rubella/graph/index.html)より作成Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ハンタウイルスとは

ハンタウイルスとは?患者さんからの質問に答える(2026年5月7日時点)出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.ハンタウイルスとは?⚫ ハンタウイルスとは、ブニヤウイルス科のハンタウイルス属の総称。⚫ 南北アメリカ大陸(カナダ、米国、アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ボリビア、ペルー)でさまざまなウイルス種が特定されているが、いずれも特定のげっ歯類を宿主とする。⚫ ハンタウイルス肺症候群(HPS)と腎症候性出血熱(HFRS)を引き起こす。⚫ HFRSの原因ウイルスは1976年に韓国で同定・分離され、HPSは1993年に米国南西部の砂漠地帯で発生し、初報告された。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.感染経路は?⚫ 自然宿主であるネズミの排泄物(糞、尿、唾液)の吸入により感染するが、汚染された巣材や物品を直接触る、汚染された食事を飲食する、感染したネズミに咬まれる/引っかかれるなどで感染する。⚫ 基本的にヒトからヒトへの感染はまれだが、例外的にハンタウイルスの一種のアンデスウイルスによるヒト-ヒト感染事例が報告されている。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.流行地は?⚫ 世界全体では、毎年1万~10万人以上の感染が発生していると推定されている。⚫ 欧州では、ハンタウイルス属プーマラウイルスが流行している北部および中部地域を中心に、毎年数千例が報告されている。⚫ 南米諸国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、パラグアイなど)では、発生率は米国に比べて低いが、ハンタウイルス肺症候群(HPS)による致死率は米国よりも高いとされる。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は?(1)⚫ ハンタウイルスの潜伏期間は1~5週間程度(通常約2週間)とされ、症状は感染後1~8週間で出現するとされる。⚫ ハンタウイルス肺症候群(HPS)の主な初期症状には、倦怠感、発熱、筋肉痛(とくに太もも、腰、背中)があり、頭痛、めまい、悪寒、消化器症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢)などを呈する。⚫ HPSの場合、発症初期から4~10日後に咳、息切れ、肺への体液貯留、ショックなどの症状が急速に進行する可能性がある。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は?(2)⚫ ハンタウイルスによる腎症候性出血熱(HFRS)は通常、感染後1~2週間以内に出現するが、まれに症状出現までに8週間かかる場合もある。⚫ HFRSの主な初期症状は、頭痛、背中や腹部の痛み、発熱、悪寒、吐き気、顔面紅潮、目の炎症や充血、発疹などの出血症状など。⚫ HFRSの重症例は、有熱期、低血圧・急性ショック期(4~10日)、乏尿期(尿量減少、8~13日)、利尿期(尿量増加、20~28日)、回復期に分けられ、内出血、急性腎不全などがみられることがある。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.予後は?⚫ ハンタウイルス肺症候群(HPS)の致死率は40%程度**国内の発生例や輸入例の報告はない⚫ 腎症候性出血熱(HFRS)の致死率は、原因となるウイルスにより異なる**ため、1%未満から最大15%と言われている。**ハンタウイルスの一種であるプーマラウイルス、ハンターンウイルスなども原因となる出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.診断方法、届け出は?⚫ 初期症状が類似する疾患(インフルエンザ、COVID-19、ウイルス性肺炎、レプトスピラ症、デング熱、敗血症)との鑑別が必要になる。⚫ 渡航歴、接触歴、臨床像などから本疾患を疑った場合には、行政検査が依頼される。⚫ 血液、肺組織からウイルスの分離・同定による病原体の検出、PCR法による病原体遺伝子の検出、血清学的検査が行われる。⚫ 感染症法で4類感染症に指定されており、診断した医師はただちに最寄りの保健所に届け出を行う。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.治療方法は?⚫ 対症療法(安静、水分補給、症状に対する治療)が行われる。⚫ 早期の集中治療管理(とくに肺浮腫、低酸素血症、低血圧に対する治療)が重要である。また、HFRSの場合は血液透析が必要になることもある。⚫ 現時点でハンタウイルスに対する特異的な抗ウイルス治療薬やワクチンは存在しない。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.予防・感染対策は?⚫ 流行地域では、げっ歯類との接触を避け、とくにネズミの尿、糞、唾液、巣材への接触を避ける。⚫ ネズミの糞を片付ける際には、清掃前に汚染部分を漂白剤で十分に湿らせ、その後ペーパータオルなどで拭き取り、ごみ袋に入れて廃棄する。乾拭きしたり、掃除機で吸い取ったりすることは避ける。⚫ ネズミが建物に侵入できる開口部を塞いだり、食品を安全に保管するために、容器に蓋をして管理する。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第312回 過熱報道が続くハンタウイルス、その起源はアジアだった!

INDEXハンタウイルス感染が明らかになるまでウイルスの由来主な症状とは過去の論文報告を見ると…ハンタウイルス感染が明らかになるまでここ数日、世間の報道では「ハンタウイルス」の言葉が飛び交っている。オランダのオーシャンワイド・エクスペディションズ社(以下、OE社)が運営するクルーズ船「MVホンディウス号」の乗客から、げっ歯類の排せつ物を通じて感染することが一般的なハンタウイルスに感染したと思われる死亡者が発生したためだ。この件に関する同社ホームページのニュースリリースの第1報は5月3日。その内容は、アフリカ西部の島国カーボベルデ沖に停泊中の同号船内で乗客3名が死亡、別の乗客1名が現在南アフリカ・ヨハネスブルグの病院において集中治療室(ICU)で治療を受けており、さらに乗組員2名が救急治療を必要としているというもの。ちなみにカーボベルデという国名を聞いたことがない人も多いだろうが、アフリカにある旧ポルトガル領の島国だ。人口は約60万人で、独立(1975年)からまだ半世紀しかたっていない。ただ、クーデターが頻発するアフリカ各国の中で数少ない、未遂も含めクーデター経験ゼロで複数政党制を採用している国である。5月4日の第2報で明らかにされたのが以下の事実関係だ。(1)4月11日:乗船中のオランダ人乗客1人が死亡(当時は死因不明)(2)4月24日:英領セントヘレナ島で死亡した乗客のオランダ人の妻が遺体とともに帰国のため下船(3)4月27日:OE社は、セントヘレナ島で下船した死亡乗客の妻も帰国中に体調が悪化し、死亡したとの報告を受けた。また乗船中のイギリス人乗客の容体が悪化し、南アフリカに搬送。後にこの乗客からハンタウイルスの変異株が検出された(4)5月2日:乗船中のドイツ人乗客が死亡(5)イギリス人とオランダ人の乗組員2名が急性呼吸器症状を呈する。1名が軽症、もう1名が重症。5月6日、中央ヨーロッパ時間14:45発表の最新のニュースリリースまでの状況は、船内での医療搬送必要者は前出の乗組員2名を含む3名に増加。乗組員の重症度はともに重症となり、新たな搬送必要者は5月2日に死亡したドイツ人乗客の近親者で無症候だという。すでに乗組員2人はオランダに搬送され、残る1名も現在航空機で搬送中。さらにMVホンディウス号はカーボベルデを離れ、現在はスペイン領カナリア諸島に向かっている。また、スイス政府は6日、同号を下船してスイスに帰国した(上記とは別の)夫婦の夫がハンタウイルスに感染したことを発表している。ウイルスの由来さて、今回のハンタウイルス騒動に関する国内の報道については、私自身はやや過熱しすぎだと感じている。厚生労働省も冷静な対応を呼びかけるポストをX(旧Twitter)に投稿しているほどだ。確かにOE社の5月4日の発表では、この日時点での乗員乗客149人(死者1人を含む)の中に日本人乗客1人が含まれてはいる。ただ、現在船内にいる乗員・乗客には不快に思える表現になってしまうかもしれないが、現状は感染がクルーズ船内に事実上封じ込められているため、各国にとってただちに公衆衛生上の問題に発展することは少ないと考えられる。私個人は「ネズミの排せつ物を介して感染するハンタウイルスというウイルスがあり、国内外でネズミなどの排せつ物などを見かけた場合、あるいはそういう可能性があるとわかった場所は避けましょう」という知識を持っておけばよいぐらいに考えている。さてそのハンタウイルス、医療者の中でも初めて聞いたという人もいるかもしれない。たまたま私は簡単な知識は有していた。以前から繰り返し言及しているが、私の取材領域の1つが国際紛争だからである。というのも、ハンタウイルスが同定されたきっかけは1950年に勃発した朝鮮戦争であり、同戦争は第2次世界大戦後から現在までにアジア圏で起きた最も大規模な戦争であるため、そこそこ以上にその戦史には目を通しているからだ。さらに余談になるが、現在の南北朝鮮の事実上の国境となっている休戦ライン「軍事境界線」上にある双方の共同警備区域「板門店」には南北双方から訪れた経験がある。ハンタウイルス発見のきっかけとなったのは、朝鮮戦争中の1951年春から初夏にかけて、北緯38度線周辺の朝鮮半島中部の激戦地帯で、原因不明の腎性出血熱が多発した件である。とくに患者が集中したのは、現在の韓国北部を流れる漢灘江(ハンタンガン)周辺で、1951~54年の間に発生した患者数は3,000例前後と伝わっている。当時は「韓国出血熱」と呼ばれていたが、韓国・高麗大学校名誉教授の李 鎬汪(イ・ホワン)氏が1976年にウイルスの同定・分離に成功し、発生地帯だった漢灘江にちなんで「ハンターンウイルス」と命名された。李氏の発見は、既往者の血清が漢灘江周辺で捕獲されたセスジネズミの肺組織中の抗原に反応したことに起因しており、ネズミが自然宿主であることも同時にわかっている。この流行が起きた朝鮮戦争当時は、兵士が山岳地帯や野戦陣地・塹壕で長期間活動しており、そこに入り込んだネズミの排せつ物の乾燥粉塵を吸い込んだ結果と現在では考えられている。その後、同類のウイルスの発見が相次ぎ、1987年に国際ウイルス分類委員会(ICTV)によって、これらのウイルス群をまとめる新しい分類として「ハンタウイルス属」が新設された。その後、自然宿主別の分類変更が行われ、現在ハンタウイルスと報道されているものは、小型哺乳類を自然宿主とする「オルトハンタウイルス属」を指している。主な症状とはオルトハンタウイルス属に入るウイルスは、種類として60種類あり、主なものとしては、前出のハンターンウイルスのほかにソウルウイルス、アンデスウイルス、シンノンブレウイルスなどがある。ハンタウイルス感染症はウイルスの種類によって病型に違いがあり、前出の4種類のウイルスに関して言えば、前者2種類が俗にヨーロッパ・アジア型ともいわれる腎症候性出血熱(HFRS)、後者2種類が俗に南北アメリカ型と呼ばれるハンタウイルス肺症候群(HPS)の原因となっている。HFRSの初期症状は発熱、頭痛、軽度の血尿などで重症化すると低血圧や急性腎不全に至る。感染者の約3分の1では出血傾向が認められ、致死率はソウルウイルスでは1%未満といわれ、ハンターンウイルスでは5~15%。一方、HPSの初期症状は発熱や咳、筋肉痛などで、時に嘔吐や下痢も出現する。HPSは急速に呼吸不全につながることも少なくなく、呼吸器症状を呈した人での致死率は約38%。HPSの致死率については4割を超えるとの報告もある。HFRS、HPSとも少なくとも致死率だけはかなり高い。ただ、HFRSの10%を超える致死率報告は、透析技術なども進化していなかった発見当初のデータともいわれ、現状は限りなく最小値の5%前後に近づいているとの指摘もある。過去の論文報告を見ると…冒頭で述べたように、ハンタウイルスの感染はほとんどが宿主のげっ歯類、単純に言えばネズミの排せつ物のエアロゾルを吸い込むことで起こるが、アンデスウイルス(報道では「アンデス型」との用語も使用)に関しては、ヒト-ヒト感染も報告されている。そしてやや困ったことは、南アフリカ保健省は南アフリカに搬送され、ハンタウイルス感染が確認された症例からは、このアンデスウイルスが分離されたと発表している。もっとも、アンデスウイルスでのヒト-ヒト感染は、過去の報告を見ると、▽長時間接触▽同居▽治療・ケア担当▽体液曝露などがあったケースに限られる。また、ざっくりと論文検索すると、過去に報告されたヒト-ヒト感染例の主な発生地域は南米のチリとアルゼンチンであり、直近で公表されたアンデスウイルスでのヒト-ヒト感染のシステマティックレビューで抽出された症例数も30例に満たない1)。こうして見ると、やはり世の中全体として、「ハンタウイルス」と騒ぐほどではないのが実際ではないだろうか? もちろん今現在MVホンディウス号に乗船中の人にとっては気が気でないことは想像に難くない。そしてすでに報じられていることだが、ハンタウイルスをターゲットとした治療薬は存在しない。ただ、1991年に中国で行われたHFRS患者242例を対象としたリバビリン静注の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果では、死亡率や出血症状の有意な減少が認められたと報告されている2)。また、アメリカではHPSに対するリバビリンの無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験が行われたが、こちらは症例集積に時間を要して研究は途中で終了となり、途中までエントリーされた症例での群間比較では、有意差は認められなかったと報告されている3)。これ以外ではハンタウイルスがRNAウイルスということもあり、基礎研究などでは厄介な感染症に対する“何でも屋”的な存在になりつつあるファビピラビルの効果も研究されているようだ。そしてこのウイルスの「ワクチンはない」と報じられているが、実は中国、韓国では独自のワクチンが承認されている。このうちハンタウイルスの第1発見国である韓国で開発された「ハンタバックス」(3回接種)の臨床研究を見ると、急性腎障害(AKI)のステージ3への進展予防(重症化予防効果)が58.1%と算出されたものの、非接種群と比べ有意差がないという結果になっている。この研究は症例数が少ないため、有意差が出なかったと指摘されているが、もし有意差があったとしてもエンドポイントとの兼ね合いから考えれば、効果が限定的ともいえる。また、あくまでHFRSの原因となるハンタウイルスへの効果に過ぎず、HPSの原因となるアンデスウイルスなどへの効果は疑問視され、汎用性は低いと指摘されている。いずれにせよ厄介な感染症であることには変わりないが、今回の事案は冷静に知識を蓄える機会と割り切るのが一番よいかもしれない。参考1)Toledo J, et al. J Infect Dis. 2022;226:1362-1371.2)Huggins JW, et al. J Infect Dis. 1991;164:1119-1127.3)Mertz GJ, et al. Clin Infect Dis. 2004;39:1307-1313.

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アルツハイマー病に対する4つの第2世代抗精神病薬の死亡リスク比較

 第2世代抗精神病薬(SGA)は、安全性に関する懸念が存在するにもかかわらず、アルツハイマー病の行動症状のマネジメントに対し、適応外で使用されることが少なくない。しかし、特定のSGA間における死亡リスクを比較したエビデンスは、依然として限られている。米国・ピッツバーグ大学のChen Jiang氏らは、一般的に使用されるSGAで治療を行ったアルツハイマー病患者におけるすべての原因による死亡率を比較し、因果機械学習を用いて治療効果の異質性を検討した。CNS Drugs誌オンライン版2026年3月28日号の報告。 Truvetaプラットフォームの匿名化された電子カルテデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。新規患者デザインを用いて、アリピプラゾール、リスペリドン、クエチアピン、オランザピンによる治療を開始した新規アルツハイマー病患者を特定した。曝露は、Cox比例ハザードモデルにおいて時間変動共変量としてモデル化し、交絡因子を調整するために傾向スコアマッチングを適用した。因果ツリーとターゲット最大尤度推定法を用いて、治療効果に異質性を示すサブグループを特定した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者1万7,004例において、アリピプラゾールは、オランザピン(調整ハザード比[aHR]:0.667、95%信頼区間[CI]:0.472〜0.941)およびクエチアピン(aHR:0.677、95%CI:0.462〜0.990)と比較し、死亡率が有意に低かった。・クエチアピンは、オランザピン(aHR:0.833、95%CI:0.702〜0.990)およびリスペリドン(aHR:0.830、95%CI:0.705〜0.978)と比較し、死亡率が低かった。・因果ツリー分析により、とくに2型糖尿病治療薬を使用している患者において、臨床的特徴による治療効果の異質性が明らかになった。・サブグループ解析では、アリピプラゾールは、2型糖尿病治療薬使用患者において保護効果を示した(クエチアピンおよびリスペリドンの併用群と比較し、aHR:0.604、p=0.002)。 著者らは「単剤療法を行っているアルツハイマー病患者において、SGAによる死亡リスクには大きな違いが認められた。アリピプラゾールとクエチアピンは、オランザピンとリスペリドンと比較し、死亡率が低いことが示された。治療効果の異質性は、併存する2型糖尿病などの患者特性に基づいた個別処方の必要性を示唆している」と結論付けている。

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HER2変異陽性NSCLCの1次治療、ゾンゲルチニブが奏効率76%・PFS14.4ヵ月を達成(Beamion LUNG-1)/NEJM

 HER2変異陽性の進行・転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、ゾンゲルチニブは迅速かつ持続的な客観的奏効と、無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらし、脳転移に対する有効性も期待できることを、米国・University of Texas M.D. Anderson Cancer CenterのJohn V. Heymach氏らBeamion LUNG-1 Investigatorsが、「Beamion LUNG-1試験」の結果で示した。ゾンゲルチニブは経口投与型の不可逆的チロシンキナーゼ阻害薬で、野生型の上皮成長因子受容体(EGFR)には、ほとんど作用せずにHER2を選択的に阻害するため、関連する毒性作用を最小限に抑えるとされる。研究の成果はNEJM誌2026年4月30日号に掲載された。国際的な第Ia/Ib相多コホート試験 Beamion LUNG-1試験は、オーストラリア、欧州、アジア(日本を含む)、米国の53施設で実施した第Ia/Ib相多コホート試験(Boehringer Ingelheimの助成を受けた)。2023年11月~2025年8月に、進行または転移のあるHER2変異陽性非扁平上皮NSCLC患者を登録した。 本論では、未治療の患者(コホート2)および活動性の脳転移を有する患者(探索的コホート4)の解析結果が報告された。 両コホートとも、コホート1の用量設定解析で決定された投与法(21日を1サイクルとし、ゾンゲルチニブ120mgを1日1回、経口投与、病勢進行・同意の撤回・許容できない毒性作用の発現まで投与を継続)による治療を受けた。 主要評価項目は盲検化された独立中央レビューによる確定された客観的奏効、副次評価項目はPFSなどであった。未治療例の1次治療(コホート2)、確定された客観的奏効は76% コホート2は、原発巣への治療を受けていない患者74例(年齢中央値67歳[四分位範囲[IQR]:35~88]、女性37例[50%])であった。安定した無症候性の脳転移(既治療か否かは問わない)を有する患者も含めた。 データカットオフ日(2025年8月21日)の時点で、確定された客観的奏効が56例(76%、95%信頼区間[CI]:65~84)で得られた。8例(11%)が完全奏効、48例(65%)が部分奏効だった。標的病変の総腫瘍径の、ベースラインからの最大の変化率中央値は-59%(範囲:-4~-100)であった。 また、奏効期間中央値は15.2ヵ月(95%CI:9.8~評価不能[NE])、PFS中央値は14.4ヵ月(11.1~NE)だった。 一方、全Gradeの有害事象は73例(99%)に発現し、このうちGrade3以上は33例(45%)であった。治療関連有害事象は67例(91%)に認め、このうちGrade3以上は14例(19%)だった。活動性脳転移(コホート4)、確定された頭蓋内客観的奏効が47% コホート4は、原発巣への治療の有無にかかわらず、活動性の脳転移(既治療か否かは問わない)を有する患者30例であった。 Response Assessment in Neuro-Oncology Brain Metastases(RANO-BM)の基準に準拠すると、データカットオフ日の時点で、確定された頭蓋内客観的奏効が47%(95%CI:30~64)で達成された。 脳への放射線療法を受けていない23例のうち57%(95%CI:37~74)と、1次治療としてゾンゲルチニブの投与を受けた8例のうち4例の50%(22~79)で、頭蓋内客観的奏効が得られた。 頭蓋内奏効期間中央値は6.9ヵ月(95%CI:2.9~NE)、頭蓋内PFS中央値は8.2ヵ月(4.1~11.3)であった。 コホート4の安全性プロファイルは、試験全体と一致していた。治療関連有害事象は28例(93%)にみられ、このうちGrade3以上は5例(17%)であった。Grade4の治療関連有害事象(ALT値上昇)を1例に認め、Grade5の治療関連有害事象(死亡)の報告はなかった。 著者は、「この経口標的治療薬は、進行性の疾患において、化学療法に代わる有効な1次治療の選択肢となる可能性がある」としている。 また、「脳放射線照射を受けていない活動性脳転移で頭蓋内奏効を示したことは、ゾンゲルチニブの頭蓋内活性を強調する知見といえる」「HER2に基づく治療法が1次治療の領域へと移行するに従って、治療の適切な順序、併用薬、耐性に関する重要な課題が、その重要性をさらに高めている」と指摘している。

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60歳以上の甲状腺機能低下症、レボチロキシン中止は可能か/JAMA

 甲状腺ホルモン製剤であるレボチロキシンは、60歳以上の甲状腺機能低下症では一般に生涯にわたって継続投与されるが、長期の投与が常に必要かは定かでないという。オランダ・ライデン大学医療センターのJanneke Ravensberg氏らは、安定用量のレボチロキシンの投与を1年以上受けていた甲状腺機能低下症の60歳以上の集団では、その約4分の1が、投与中止から1年後も適切な甲状腺機能を維持し、甲状腺関連の生活の質(QOL)にも臨床的に意義のある変化を認めないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月6日号で報告された。オランダのプライマリケアの単群前向きコホート研究 研究グループは、レボチロキシンの投与を受けている甲状腺機能低下症の年齢60歳以上の集団における投与中止の成功率を明らかにする目的で、オランダの58の一般診療施設で非盲検単群前向きコホート研究を実施した(ZonMwの助成を受けた)。2020年1月~2022年7月に被験者の登録を行った。 対象は、少なくとも1年間、安定用量(150μg/日以下)のレボチロキシンの投与を受け、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が10mIU/L未満の60歳以上の地域在住者とした。 レボチロキシンの用量を段階的に減量し、各減量時から少なくとも6週間が経過した後に甲状腺機能検査を行った。 主要アウトカムは、レボチロキシンの投与を中止して1年後に、投与中止を継続しており、かつTSH値が10mIU/L未満で、遊離サイロキシン値が基準値の範囲内にある被験者の割合であった。投与量が少ないほど、中止の成功率が高い 370例を登録した。ベースラインの年齢中央値は70.5歳(四分位範囲[IQR]:65.7~75.7、範囲:60.6~89.0)で、294例(79.5%)が女性であった。平均レボチロキシン投与量は84(SD 31)μg/日であり、TSH値中央値は2.2mIU/L(IQR:1.1~3.5、範囲:0.02~9.69)、平均遊離サイロキシン値は1.21(SD 0.18)ng/dLであった。このうち366例が1年後の最終追跡調査を完了した。 370例中95例(25.7%、95%信頼区間[CI]:21.5~30.4)が、1年後の時点でレボチロキシンの投与中止を継続しており、その時点のTSH値中央値は5.03mIU/L(範囲:1.56~9.40)、平均遊離サイロキシン値は1.01ng/dL(範囲:0.80~1.43)であった。 レボチロキシンの投与中止に成功した95例のうち、46例(48.4%、95%CI:38.6~58.3)の1年後のTSH値は4.8mIU/L未満であった。 また、ベースラインのレボチロキシン投与量が少ないほど、投与中止の成功率が高かった。レボチロキシン50μg/日以下の投与を受けていた88例のうち、56例(63.6%)がこの治療の中止に成功し、75μg/日以下の投与を受けていた176例では、79例(44.9%)が中止の成功に至った。介入に関連した重篤な有害事象はない 甲状腺関連QOLは、ベースラインからその後1年の時点まで、全体として臨床的に意義のある変化を認めなかった。また、レボチロキシン中止の成功例と不成功例に層別化しても、QOLの差が臨床的に意義のある最小変化量(MCID)を超えることはなかった。 平均12.9ヵ月の追跡期間中に、16例に17件の重篤な有害事象(予定外の入院15件、死亡2件)が発現したが、試験介入に関連したものはなかった。 著者は、「60歳以上、とくにレボチロキシン50μg/日以下の投与を受けている患者において、レボチロキシン治療の継続の必要性について評価を行うべきである」としている。

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医療者向けChatGPT登場!米国在住の医師が特別レポート

 多くのAIツールを医療者が使うようになり、医療者の情報検索に特化したOpenEvidenceなどの専門AIツールも急速に普及するなか、4月末に汎用型AIツール・ChatGPTが医療者向けのChatGPT for Cliniciansをリリース。現時点では使用は米国在住の医師に限られるものの、医療AIの「本命」となるのかが注目される。CareNet.comで「タイパ時代のAI英語革命」「医療者のためのAI活用術」などを連載する原田 洸氏(米国・マウントサイナイ医科大学病院)が使用感を特別レポート。ChatGPT for Cliniciansとは何か ChatGPTをはじめとした生成AIを、日常生活や臨床業務の中で活用している医療者は、すでに少なくないのではないでしょうか。そうした中、米国で新たにリリースされたのが、医療者向けに設計された “ChatGPT for Clinicians” です1)。 一言で言えば、医学分野に特化したChatGPTであり、医師をはじめとする医療従事者が臨床疑問を調べることを想定してつくられたツールです。日々の診療で生じる疑問に対し、タイムリーに、かつ信頼できる情報に基づいて回答することを目的としています。現時点では利用対象は米国の医療従事者に限定されていますが(資格認証あり)、私は現在米国の病院で勤務しているため、実際に使用する機会がありました。ここでは、その概要と使用感について共有したいと思います。通常のChatGPTと何が違うのか 通常のChatGPTは、事前学習された膨大な情報や、Web検索で得られた情報をもとに回答を生成します。これは非常に便利な一方で、臨床現場でそのまま使うには注意が必要です。なぜなら、回答の根拠となる情報に誤りが含まれていたり、Web検索で信頼性の低い情報が拾われたりした場合、その内容が回答に反映される可能性があるからです。たとえば、「StageIVの大腸がんの治療は?」と入力した際に、十分なエビデンスのない自費診療を行うクリニックの情報が検索結果として参照されてしまえば、標準治療やガイドラインから大きく外れた回答が生成されるリスクがあります。 この課題に対応しようとしているのが、ChatGPT for Cliniciansです。米国の主要学会のガイドライン、CDC、FDA、査読済み論文など、信頼性の高い医療情報をもとに回答を生成することで、臨床的な正確性を高める設計になっています。実際に使ってみた印象は 使い方は非常にシンプルです。通常のChatGPTと同じ画面上で、「○○の治療は?」「□□の薬は△△の状況では中止すべきか?」といった日常診療で生じる疑問を入力すると、数十秒から1分程度で回答が生成されます。英語で入力すれば英語で、日本語で入力すれば日本語で回答されるため、言語面での使いやすさも通常のChatGPTと大きく変わりません。 実際に使用した印象としては、回答の質は高く、少なくとも私が試した範囲では、明らかなハルシネーション(AIが事実と異なる情報をもっともらしく出力する現象)はほとんど見られませんでした。また、回答には関連する論文やガイドラインへのリンクが示されるため、最終的な確認を自分で行いやすい点も大きな利点です。普段からChatGPTを使い慣れている医療者であれば、ほとんど抵抗なく導入できるツールだと感じました。対抗馬はOpenEvidence もっとも、医療分野に特化した生成AIツール自体がまったく新しいわけではありません。近年、米国では OpenEvidence という医療特化型の生成AIが急速に普及しており、すでにこちらを利用している医療者にとっては、ChatGPT for Cliniciansは大きな目新しさを感じないかもしれません2、3)。OpenEvidenceは、NEJMやJAMAなどの主要医学誌とも提携しており、これらのジャーナルに掲載された論文の図表にプラットフォーム上でアクセスできる点が強みです。また、私が勤務する医療機関では、OpenEvidenceがすでに電子カルテ上で利用可能になっており、臨床現場での活用の幅はますます広がっています4)。なお、OpenEvidenceは日本からも利用可能であるため、日本の医療者にとっては、現時点ではChatGPT for Cliniciansよりも身近な選択肢と言えるでしょう。今後注目したいポイント 現時点では、ChatGPT for Cliniciansが既存の医療特化型AIサービスをすぐに置き換える存在になるとは言い切れないでしょう。しかし、ChatGPTがもともと持っている画像生成、音声会話、動画生成、文書作成などの多様な機能と組み合わされることで、将来的な可能性は大きく広がると考えられます。 今後は、OpenEvidenceとの競争、電子カルテへの統合、日本を含む米国外への展開などが注目されます。生成AIが医療現場に入り込む流れは、もはや一時的なブームではなく、避けては通れない変化になりつつあります。医療者としては、その利点と限界を理解しながら、どのように安全かつ有効に使いこなすかが問われる時代に入っているのだと思います。

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塩分の多い食事で心不全リスクが上昇

 塩分の過剰摂取が高血圧につながり得ることは周知の事実だが、実はそれ以上に危険かもしれない。新たな研究で、心不全(HF)高リスク群におけるナトリウムの過剰摂取は、HFの新規発症と関連することが示された。米ヴァンダービルト大学トランスレーショナル・臨床心血管研究センター(VTRACC)のDeepak Gupta氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Cardiology: Advances(JACC:Advances)」に3月18日掲載された。 この研究では、米国南東部で進行中のSouthern Community Cohort Studyに参加している2万5,306人(年齢中央値54歳、女性63%)を対象に、食事からのナトリウム摂取とHF発症との関連が検討された。対象者には、従来、HFリスクが高いグループとされる黒人(69%)と年収2万5,000ドル(1ドル159円換算で約398万円)未満の低所得者(87%)が多く含まれていたが、研究開始時にHFのある参加者はいなかった。食事からのナトリウム摂取量は検証済みの質問票で評価し、HFの新規診断はメディケアやメディケイドの請求データから把握した。対象者の1日当たりの食事からのナトリウム摂取量は平均4,269±2,502mgであり、米国心臓協会(AHA)や米国政府の指針で推奨されている摂取量(2,300mg/日)を大きく上回っていた。 追跡期間中央値9.8年の間に7,039人(27.8%)がHFを発症した。解析の結果、社会人口統計学的特徴、食事の質、摂取カロリー、運動、脂質異常症などを調整しても、食事からのナトリウム摂取量が1,000mg/日増えるごとにHFリスクが有意に8%上昇することが示された。さらに、高血圧、BMI、睡眠、冠動脈疾患を調整しても結果は同様であった。糖尿病患者でも同様の関連が認められ、食事からのナトリウム摂取量が1,000mg/日増えるごとにHFリスクは8%上昇した。さらに、人口寄与危険割合(PAF)の解析から、ナトリウム摂取量を4,000mg/日以下に低減することで、10年間でHFの6.6%(95%信頼区間3.6~9.6%)を予防できる可能性が示された。 こうした結果を受けてGupta氏らは、「ナトリウム摂取量をわずかに減らすだけでも、この高リスク群におけるHFの負担を大幅に減らせる可能性がある」と述べている。ただし、ナトリウム摂取量を控えるという解決策は一見簡単に思えるものの、多くの人にとっては簡単ではないと研究グループは指摘する。なぜなら、低所得コミュニティでは、新鮮で低ナトリウムの食品を手に入れることが難しく、そうした食品を扱うより良い食料品店への交通手段も限られていることが多いためだ。研究グループは、「高リスクで資源の限られたコミュニティにおいて、食事からのナトリウム摂取量を下げるための多層的な公衆衛生戦略を実施するべきだ」と結論付けている。 米国では、HFが年間42万5,000人以上の死亡に関わっており、事態は深刻だ。さらにHFは、人命への影響だけにとどまらず、経済的な影響も甚大だ。Gupta氏らは、ナトリウム摂取量を減らすことで、年間約20億ドル(約3180億円)の医療費削減が見込まれると推計している。

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週末の大量飲酒で肝線維化リスクが約3倍に

 多くの人は、平日はほとんど飲酒せずに過ごしていれば、土曜日の夜に多少飲み過ぎても問題ないと考えがちである。しかし、普段の飲酒量が控えめであっても、週末などにまとめて大量飲酒すること(一時多量飲酒)は、肝不全につながる危険な瘢痕化である肝線維化のリスクを3倍に高める可能性が、新たな研究で示された。米南カリフォルニア大学ケック医学校のBrian Lee氏らによるこの研究は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に4月2日掲載された。 この研究結果は、「どのくらい飲むか」だけでなく「どのように飲むか」も同様に重要であることを示している。Lee氏は、「この研究は重要な注意喚起である。医師は、飲酒の肝臓へのリスクを評価する際、主に総量に注目して飲み方はあまり気にかけてこなかった」とニュースリリースで述べている。 この研究では、米国国民健康栄養調査(NHANES)の2017~2023年のデータを用いて、一時多量飲酒が脂肪性肝疾患(SLD)のサブカテゴリーに与える影響が検討された。一時多量飲酒は、女性では1日に4杯以上、男性では5杯以上の飲酒が月1回以上あることと定義された。肝臓の線維化は、8kPa(キロパスカル)以上を有意な線維化、12kPa以上を進行した(高度)線維化と見なす。対象は、振動制御型一過性エラストグラフィーのデータがある8,006人であった。 対象者のうち4,571人がSLDを有していた。その大半は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD、3,969人)で、他に、代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)やアルコール関連肝疾患(ALD)も含まれていた。なお、MASLDは肝脂肪蓄積を認め、かつ代謝異常を有する人、MetALDはMASLDに該当し、中等度以上の飲酒を伴う人、ALDはアルコール摂取が主因と考えられる肝障害を有する人とされる。 MASLD群では632人(15.9%)が一時多量飲酒に該当し、解析の結果、一時多量飲酒は肝臓の有意な線維化リスクの上昇と関連し(調整オッズ比1.69、95%信頼区間1.11~2.58)、特に高度線維化のリスクは約3倍に高まることが分かった(調整オッズ比2.76、95%信頼区間1.58~4.80)。MASLD群における有意な線維化の調整済み加重有病率は、一時多量飲酒のある群で23.6%、ない群で15.6%だった。 では、なぜ一時多量飲酒で肝臓の線維化リスクが高まるのだろうか。その理由は、短時間で大量に飲酒すると、肝臓の処理能力が追いつかず、炎症反応が急激に増加し、その結果、瘢痕(線維化)が形成されるためだと研究グループは説明している。 研究グループは、ALDが過去20年で倍増しており、その背景には飲酒習慣の変化や肥満の増加があると指摘している。Lee氏は、「今回の研究は、たまに行う大量飲酒の危険性が、より広く認識される必要があることを示している。普段は節度ある飲酒をしていても、このような飲み方は避けるべきだ」と助言している。 またLee氏らは、MASLDを有し、かつ一時多量飲酒を行う人は、MASLDではなくMetALDに再分類されるべきだと提案している。

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免疫介在性炎症性疾患患者のがんリスク、要因は炎症か

 全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、乾癬などの免疫介在性炎症性疾患(IMID)患者はがんリスクが高いことが知られているが、リスクが高いのはIMID診断後1年間であり、抗炎症薬による治療を開始するとそのリスクは経時的に低下する可能性が、新たな研究で示された。ガッルーラ地域保健局(イタリア)リウマチ科部長のDaniela Marotto氏らによるこの研究は、「Cancers」に3月23日掲載された。Marotto氏は、「初期段階でがんリスクがピークに達するということは、治療よりも慢性炎症そのものががん発症の重要な要因であることを示唆している」と述べている。 Marotto氏らは今回、イタリアで2018年1月1日から12月31日までの間にIMIDと診断された患者5万4,896人および非IMID患者30万1,126人を対象に、IMIDとがん発症との関連を検討した。IMIDは、RAとびまん性結合組織疾患(diffuse diseases of connective tissue;DDCT)を対象とした。DDCTは免疫の異常により全身の結合組織に慢性的な炎症が生じる疾患の総称で、SLEや強皮症、シェーグレン症候群などが代表例である。対象患者は2023年12月31日まで追跡された。 解析の結果、IMID群では非IMID群と比べて、5年間のがんリスクが有意に高かった(調整オッズ比1.32、95%信頼区間1.27~1.38)。しかし、がんリスクは経時的に低下し、オッズ比は診断後1年目で1.83(95%信頼区間1.61~2.08)、2年目で1.53(同1.37~1.69)、3年目で1.40(同1.25~1.56)、4年目で1.37(同1.22~1.53)、5年目で1.20(同1.15~1.30)であった(全てP<0.001)。がん種ごとに検討すると、IMID群では白血病・リンパ腫(調整オッズ比1.98)、肺がん(同1.74)、膀胱がんとメラノーマ(いずれも同1.48)のリスクが高かった。一方、IMIDの種類別に検討すると、DDCT群はRA群と比べてがんリスクが高かった(調整オッズ比はDDCT群1.53、RA群1.20)。 共著者であるシエナ大学(イタリア)医療バイオテクノロジー分野のAntonio Giordano氏は、「今回の結果は、炎症ががんリスクを左右する決定的な要因であるという仮説を支持するものだ」と指摘している。 研究グループは、この知見から、IMID患者に対しては、特に診断後1年以内におけるがん検診の重要性を周知・促進する必要があると強調している。

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