サイト内検索|page:3

検索結果 合計:36478件 表示位置:41 - 60

41.

EGFR-TKI後のNSCLC、ivonescimabがOSを改善/JAMA

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、現在、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が標準治療であるが、獲得耐性は避けられず、EGFR-TKIの投与中に病勢が進行した患者は、耐性のメカニズムが不均一か不明であるため治療選択肢が限られている。中国・中山大学がんセンターのWenfeng Fang氏らHARMONi-A Study Investigatorsは「HARMONi-A試験」において、EGFR-TKI療法後のEGFR変異陽性NSCLC患者では、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)と血管内皮増殖因子(VEGF)の二重特異性抗体であるivonescimabと化学療法の併用は、化学療法単独と比較して、許容範囲内の安全性プロファイルを保持しつつ、全生存期間(OS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらすことを示した。本研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年6月17日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照比較第III相試験 HARMONi-A試験は、中国の55施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較第III相試験(Akeso Biopharmaの助成を受けた)。 2022年1月25日~11月2日に、局所進行または転移のある非扁平上皮NSCLCでEGFR変異陽性と確認され、(1)第1または第2世代EGFR-TKI治療後にEGFR T790M変異陰性が確認された患者、または(2)第3世代EGFR-TKIを1次または2次治療として受けた患者を登録した。 被験者322例(年齢中央値59.4歳、女性51.6%)を、3週を1サイクルとし、1日目にivonescimab 20mg/kgを静脈内投与する群(161例)またはプラセボ群(161例)に無作為に割り付けた。全例に、ペメトレキセド+カルボプラチンによる化学療法を行った。これを4サイクル施行後、それぞれivonescimab+ペメトレキセドまたはプラセボ+ペメトレキセドによる維持療法を行った。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、すでに中間解析の結果(ハザード比[HR]:0.46、p<0.001、中央値の群間差:2.3ヵ月)が報告されている。今回は、中間解析時から25ヵ月の追跡期間を経た時点での主な副次評価項目であるOSのデータが公表された。OS中央値はivonescimab群16.8ヵ月、プラセボ群14.1ヵ月 ベースラインにおいて、ivonescimab群の35例(21.7%)とプラセボ群の37例(23.0%)が脳転移を有していた。それぞれ139例(86.3%)と137例(85.1%)に、第3世代EGFR-TKIによる治療歴があった。追跡期間中央値は32.5ヵ月だった。 OS中央値は、プラセボ群14.1ヵ月に対し、ivonescimab群は16.8ヵ月と2.7ヵ月有意に長かった(層別HR:0.74、95%信頼区間[CI]:0.58~0.95、p=0.02)。 24ヵ月時のOS率は、ivonescimab群35.3%、プラセボ群28.8%であり、30ヵ月OS率は、それぞれ29.1%および18.4%であった。 また、ベースラインの脳転移の有無を問わず、ivonescimab群で生存に関する明確な有益性を認めた(脳転移ありHR:0.61[95%CI:0.37~1.03]、脳転移なしHR:0.77[95%CI:0.58~1.03])。安全性プロファイルは中間解析とほぼ一致 ivonescimab+化学療法の安全性プロファイルは、中間解析の結果や、化学療法、PD-1阻害薬、VEGF阻害薬の既知の毒性作用とほぼ一致していた。治療期間中に発生したGrade3以上の有害事象(67.1%vs.54.7%)およびGrade3以上の治療関連有害事象(59.6%vs.44.7%)は、プラセボ群よりivonescimab群で頻度が高かった。 治療期間中に発生した有害事象による治療中止は、ivonescimab群で11.8%、プラセボ群で8.1%に認められた。また、免疫関連有害事象はivonescimab群で多かった(29.2%vs.8.1%)が、免疫関連有害事象による治療中止はまれであり、両群間で同率だった(各1.2%)。 著者は、「ivonescimabによるOS中央値の改善は2.7ヵ月とわずかではあるが、2つの群の生存曲線はとくに後期の時点で大きく乖離し、30ヵ月時のOS率には10.7%ポイントの差を認めた」「これらの所見は、PD-1とVEGFの二重阻害と化学療法の併用が有効な治療戦略であることを立証するとともに、本研究の対象となった患者群において、ivonescimabと化学療法の併用が新たな治療選択肢となりうることを示すものである」としている。

42.

症状モニタリングアプリが進行がん患者のQOL維持に有効

 緩和ケアを受けている進行がん患者の症状への対処や健康関連QOLの維持に、スマートフォンのアプリによる症状モニタリングが役立つ可能性があることが、新たな研究で示された。香港大学(中国)臨床腫瘍学准教授のWendy Wing-lok Chan氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026、5月29日~6月2日、米シカゴ)で発表されるとともに、「JAMA Network Open」に6月1日掲載された。 今回の研究では、さらなる全身性抗がん治療を受けないことを決めた進行固形がん患者1,214人(年齢中央値78歳、男性50.8%)を対象に、症状モニタリングアプリを活用した緩和ケアの有効性をランダム化比較試験で検討した。対象患者は、アプリによる症状モニタリングと通常ケアを受ける群(アプリ介入群、590人)と通常ケアのみを受ける群(通常ケア群、624人)にランダムに割り付けられた。このアプリでは、患者が毎週、身体的および精神的な症状についての簡単な質問票に回答する。症状への対処法が自動的に提示され、重度の症状が報告された際には、看護師によるフォローアップが行われる仕組みとなっている。 その結果、主要評価項目である健康関連QOLについては、18週時点でアプリ介入群の方が通常ケア群より良好に維持されていた。健康関連QOLの評価指標であるEQ-5D-5L効用値は、アプリ介入群ではほぼ維持されていた一方(ベースライン時:0.49→18週時点:0.52)、通常ケア群では低下していた(0.50→0.38)。また、患者が自身の健康状態を0~100で評価するEQ-5D視覚的アナログ尺度(VAS)スコアも、アプリ介入群では上昇していたのに対し(63.16→65.72)、通常ケア群では低下しており(63.87→59.69)、いずれの指標においても、群間差は統計学的に有意であった。 副次評価項目である自己効力感についても、アプリ介入群では維持された一方、通常ケア群では低下しており、群間差は有意であった。一方、ECOG PS(米国東海岸がん臨床試験グループのパフォーマンスステータス)による評価で全身状態の悪化が認められたのは、アプリ介入群で12.0%、通常ケア群で17.4%、救急外来受診率はそれぞれ20.2%、25.6%で、いずれもアプリ介入群の方が少なかったが、統計学的な有意差は認められなかった。入院については、予定外の入院発生率(アプリ介入群17.2%対通常ケア群28.5%)と入院日数(3.4日対7.3日)のいずれもアプリ介入群の方が有意に少なかった。 論文の筆頭著者であるChan氏は、「このランダム化比較試験により、デジタルプラットフォームを用いた症状の積極的なモニタリングと、看護師による迅速なフォローアップを組み合わせることで、健康関連QOLの維持や予定外入院の減少につながることが示された」と述べている。 この研究には関与していない米ウィスコンシン大学の胸部腫瘍内科医であり、緩和ケア部門責任者を務めるToby Christopher Campbell氏は、「がん患者は痛み、倦怠感、睡眠障害などの症状にしばしば苦しんでいるが、その多くを打ち明けることなく抱え込んでいる。患者が症状を報告でき、支援を受けられるようになると、気分が改善し、より良い転帰につながる可能性がある」と述べた。 さらにCampbell氏はニュースリリースで、「本試験は、質の高い症状報告と適切な介入によって、患者の症状や健康関連QOLを改善できることを示すエビデンスをさらに強化するものだ。ただし、試験では症状モニタリングにモバイルアプリを用いているため、患者にはアプリを操作し、提示された指示を実行できるだけのデジタルリテラシーが求められる」と指摘している。

43.

幼少期の逆境体験が多いほど肥満リスク上昇、支える大人が保護因子の可能性

 幼少期の逆境体験が多いほど、小児期の肥満リスクが高いという関連が報告された。米ロサンゼルス小児病院のVictoria Goldman氏、米ジョージア大学のShana Adise氏らの研究の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に12月4日掲載され、2月17日にジョージア大学からリリースが発行された。 この研究では、幼少期に経験した虐待や両親の離婚、貧困、ネグレクト、いじめなどの逆境的小児期体験(adverse childhood experiences;ACEs)が多いほど、BMIが有意に高いという関連性が示された。ただし、子どもの周囲に支えとなる大人が存在していれば、この関連性が薄れる可能性があるという。論文の筆頭著者であるGoldman氏は、「支えとなる存在は必ずしも家族である必要はない。教師やコーチ、あるいはほかの誰であれ、少なくとも1人の支えとなる大人がそばにいるだけで、子どもの成長に非常に大きな影響を与える可能性がある」と、大学発のリリースの中で語っている。 Goldman氏らは、米国で行われている小児の成長・発達に関する研究(Adolescent Brain and Cognitive Development〔ABCD〕Study:ABCD研究)のデータを用いて、ACEとBMIの関連を横断的に解析した。解析対象者数は5,435人で、女子が48.5%、平均月齢143.1±7.6月(約12歳)であり、過体重または肥満(BMIが85パーセンタイル以上)が34.4%だった。4人に3人(74.6%)が少なくとも1つのACEを経験しており、体験したACEの種類の数を意味するACEスコアは、平均1.8±1.7だった。なお、先行研究では、ラテン系やヒスパニック系の子どもではACEの多いことが報告されているが、本研究でも同様の傾向が認められた。ラテン系やヒスパニック系の子ども(全体の21.0%)のACEスコアは2.1±1.7であり、その他の子ども(79.0%)のスコア(1.7±1.7)より有意に高かった(P<0.01)。 BMIに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、保護者の教育歴など)を調整後、体験したACEが2種類増えるごとにBMIが約0.5高くなるという関連が認められた。より詳しくは、ACEスコアが1標準偏差に当たる1.7ポイント高くなるごとに、BMIが0.43(95%信頼区間0.30~0.57)増加した(P<0.001)。ただし、ラテン系やヒスパニック系の子どもの中で、「日常生活において、思いやりのある大人がそばに1人はいる」と答えた子どもたちは、たとえACEスコアが高くても、BMIが比較的低い傾向が観察された。この傾向は、解析対象全体では認められなかった。 研究者らは一連の結果を、「子どもたちのACEをスクリーニングして、必要なケアとサポートを提供する必要性が示された」と総括している。また論文の上席著者であるAdise氏も、「幼少期に体験したことに関連する健康課題を抱えたまま、子どもが成長していくことを、われわれは望んでいない。臨床でのスクリーニングは、それを防ぐための貴重な機会である」と強調。さらに、「子どもの支えとなる大人がそばにいるか否かという違いが、逆境体験のある子どもの健康に大きな影響を及ぼし得る」と付け加えている。

44.

脊髄刺激療法で脳卒中後の上肢機能改善を確認

 脊髄への電気刺激により、脳卒中患者の上肢(腕や手)の機能が改善する可能性があるようだ。重度の運動障害を有する脳卒中患者7人を対象としたパイロット試験で、4週間にわたる脊髄刺激療法(spinal cord stimulation;SCS)により、上肢の筋力が平均32%向上し、痙縮も軽減したことが示された。痙縮とは、脳卒中や脊髄損傷後の後遺症であり、自分の意思とは無関係に筋肉が収縮して関節が固くなる運動障害である。米ピッツバーグ大学脊髄刺激研究室長のMarco Capogrosso氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」6月4日号に掲載された。 脳卒中は、米国成人における上肢の麻痺の主な原因であり、毎年、約40万人が腕や手の持続的な筋力低下に悩まされている。多くの患者は上肢の機能回復を切実に求めているが、標準的なリハビリテーションで有意な改善が得られることはまれである。 この研究では、7人の慢性期脳卒中患者を対象に、頸部硬膜外SCSの実現可能性、有効性、安全性を検討した。頸部硬膜外SCSは、頸髄を覆う硬膜の外側にある空間(硬膜外腔)に電極を埋め込み、神経回路に電気刺激を与えることで神経活動を調節する治療法である。対象患者はいずれも、上肢のFugl-Meyer Assessment(FMA)スコア(最大66点)が15〜35点で、重度の運動障害を有していた。Capogrosso氏らは、頸髄の片側の硬膜外腔に2本の電極を留置し、4週間にわたりSCSを実施した。 その結果、電気刺激中は、障害の重症度にかかわりなく筋力が平均32%向上し、FMAスコアには平均5.6点の改善が認められた。重篤な有害事象は発生しなかった。また、皮質脊髄路が残存していた3人では、手や指の運動機能の改善も認められた。 さらに、試験期間中に実施された運動訓練は平均8.6時間で、そのうちSCSを併用したのは5.5時間だった。それにもかかわらず、試験終了時のFMAスコアは試験開始時から平均6.6点改善し、全ての患者で痙縮の改善も認められた。ただし、持続的な改善効果は刺激の継続に依存しており、刺激中止の4週間後には試験終了時(4週時)と比べて改善効果が減弱していた。 Capogrosso氏は、「頸部硬膜外SCSは、主に補助的な治療技術として機能し、刺激中には運動機能の改善が得られる。脊髄を刺激することで、脳と脊髄の間に残存している神経回路を即時に、より効率的に働かせることができ、その結果として運動機能の改善が可能になる」と述べている。 研究チームは現在、長期間のSCSの効果を評価するため、規模を拡大した臨床試験の参加者を募集している。Capogrosso氏は、「本研究結果は、初期の実現可能性評価が完了したことを示すとともに、実臨床への応用に向けた重要な一歩となるものだ。われわれは、最終的には診療施設内だけでなく日常生活の中でも利用できる技術の開発を目指している。今回の結果により、SCSが脳卒中患者が最も必要とする場面で上肢を使えるよう支援する実用的な埋め込み型治療法となり得るという確信が得られた」と語っている。

46.

新規作用機序の蕁麻疹経口薬「ラプシド錠25mg」【最新!DI情報】第66回

新規作用機序の蕁麻疹経口薬「ラプシド錠25mg」今回は、慢性蕁麻疹治療薬「レミブルチニブ(商品名:ラプシド錠25mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)」を紹介します。本剤は慢性蕁麻疹の新規経口薬であり、既存治療で効果不十分な慢性蕁麻疹患者にとってより利便性の高い治療選択肢となると期待されています。<効能・効果>特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)の適応で、2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはレミブルチニブとして1回25mgを1日2回経口投与します。<安全性>副作用として、上気道感染、点状出血(いずれも1~5%未満)、紫斑、挫傷、斑状出血、鼻出血、歯肉出血(いずれも1%未満)、結膜出血(頻度不明)があります。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、蕁麻疹の症状を誘発する原因が特定されない蕁麻疹に用いられる治療薬です。ブルトン型チロシンキナーゼを阻害することで、蕁麻疹の症状を引き起こす物質や炎症を起こす物質の放出を抑えて症状を緩和します。 2.抗ヒスタミン薬の増量など適切な治療を行っても、日常生活に支障を来すほどの症状を繰り返して継続的に認められる場合に追加で使用します。 3.妊娠する可能性がある人は、この薬を使用している間および最後に使用してから1週間は、適切な避妊をしてください。 4.この薬を使用している間は生ワクチン(麻しん、おたふくかぜ、風しん、水痘など)の接種はできません。 <ここがポイント!> 慢性特発性蕁麻疹(CSU)は、明確な原因や誘因が特定できない蕁麻疹が6週間以上持続する疾患です。蕁麻疹による紅斑やそう痒、膨疹などの症状は、肥満細胞からヒスタミンなどの炎症性ケミカルメディエーターが放出されることによって引き起こされます。蕁麻疹の治療には、原因や悪化因子の除去・回避が重要となりますが、これらが不明なCSUでは薬物療法が治療の中心となります。薬物療法では、主に第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬が用いられますが、一部の患者では症状が残存することがあります。第2世代抗ヒスタミン薬で効果不十分な場合には、生物学的製剤であるオマリズマブやデュピルマブが治療の選択肢となります。しかしながら、これらの薬剤はいずれも皮下投与製剤であり、自己注射や通院に伴う身体的・心理的負担が生じる場合があります。レミブルチニブは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)に対して高い選択性を示すBTK阻害薬です。本剤はIgEまたはIgG自己抗体によりFcイプシロン受容体Iの架橋が誘発されて生じるシグナル伝達を阻害することで、肥満細胞および好塩基球からのヒスタミンなどの炎症性メディエーターの放出を抑制します。本剤は1日2回服用の経口薬であるため、既存の生物学的製剤で必要となる自己注射や定期的な通院に伴う負担はなく、患者にとってより利便性の高い治療選択肢となり得ます。第2世代抗ヒスタミン薬で効果不十分な18歳以上のCSU患者を対象とした国際共同第III相試験(A2301試験、REMIX-1試験)において、主要評価項目である投与12週後の週間蕁麻疹活動性スコア(UAS7)のベースラインからの変化量は、本剤群で-20.02±0.716、プラセボ群で-13.79±0.980でした。本剤群とプラセボ群の群間差は-6.22(95%信頼区間:-8.45~-4.00)であり、本剤群はプラセボ群と比較して蕁麻疹症状(そう痒および膨疹)を統計学的に有意に低減しました(反復測定混合モデル、調整済みp<0.001)。

47.

急性腹症の初期診療はPOCUSから…5分で命を守る6つのアプローチ【おなかが痛い!そのときどうする?】第5回

急性腹症の初期診療はPOCUSから…5分で命を守る6つのアプローチ※この連載は動画・スライド制作等にAIを使っています。理解度確認テスト(動画を見終わったらトライしてください)

49.

第326回 GLP-1放出を促す食品添加物を欧州が許可

GLP-1などの食欲/摂食抑制ホルモンの放出を促す食品添加物を欧州連合(EU)が承認しました1-3)。食べても安全と判断されて承認されたのは、英国の研究チームが考案した食物繊維の類いのイヌリン-プロピオン酸エステル(IPE)です。EUの新規食品一覧(list of novel food)に加わり、販売できるようになりました。IPEは大腸の細菌の発酵作用で生じる短鎖脂肪酸(SCFA)のプロピオン酸と主に果糖でできた天然ポリマーのイヌリンのエステル結合で作られます。イヌリンは多くの植物に含まれ、サプリメントとして広く使用されてもいます。食物繊維を多くとることは体重が増えにくいことと関連します。食物繊維の多くは小腸では消化されず、大腸の細菌がそれらを発酵してSCFAを生み出します。SCFAは遊離脂肪酸受容体(FFAR)を活性化し、大腸のL細胞からのGLP-1ともう1つの食欲抑制ホルモンであるペプチドYY(PYY)の放出を促します。加えて、SCFAは脂肪細胞からのレプチン放出も後押しします。レプチンもGLP-1やPYYと同様に食欲抑制を担います。マウスでの検討でSCFAの1つのプロピオン酸が多いことと体脂肪量が少ないことの関連が示されています4)。プロピオン酸は細菌代謝/発酵の最終産物でほかのSCFAに変わってしまうことがなく、FFARのエネルギー消費促進や抗肥満作用に関わるFFAR受容体の1つのGPR41にSCFAの中で最も親和性が高いことがマウスでの検討で示されています5)。実際、プロピオン酸の投与はマウスのエネルギー消費を促進しました。ゆえに大腸のプロピオン酸を増やすことは食欲制御手段となりそうですが、単にプロピオン酸を摂取しただけではその効果は得られそうにありません。というのもSCFAは大腸のL細胞に届く前に小腸にやすやすと吸収されてしまうからです。そこで考案されたのがプロピオン酸と食物繊維のイヌリンを繋いだIPEです。IPEのプロピオン酸の大部分は大腸の細菌がイヌリン部分を発酵することで放出されます。その仕組みによりプロピオン酸を大腸に限って供給できるというわけです。40~65歳の過体重の60例の無作為化試験でIPEの目当ての効果が示されています。1日当たり10gのIPE摂取が血中のGLP-1やPYYを増やし、少食にし、体重増加を抑えました6)。ベースラインに比べて5%以上の体重増加は6ヵ月のIPE投与では一例もいませんでしたが(0/25例)、ただのイヌリン投与では2割弱の17%(4/24例)にみられました。より若い20~40歳の過体重の270例が参加した別の無作為化試験では、IPE摂取とただのイヌリン摂取の1年間の体重増加にあいにく有意差はありませんでしたが、IPE群では除脂肪体重が若干増えていました7)。中高齢者と若者の効果の違いは新たに取り組むべき課題であり、除脂肪体重を増やす効果はさらなる検討の価値があるだろうと臨床試験を担った英国のグラスゴー大学のDouglas Morrison氏は言っています8)。今のところIPEの製造は試行段階で1度に作れるのは数百kgほどです。研究チームが立ち上げたSatisfed社がIPEの開発を手掛けており2,9)、企業と提携して数千トン単位でIPEが製造できるようにすることを目指しています。Morrison氏とその同僚のImperial College LondonのGary Frost氏は、IPE入りのスムージー、シリアル、パンなどの食品の発売に向けて企業に話を持ちかけています。IPE入りの食品が間違いなく向こう1年以内にEUの市場にお目見えするだろうとMorrison氏は言っています3)。 参考 1) Commission Implementing Regulation (EU) 2026/1219 of 9 June 2026 authorising the placing on the market of inulin-propionate ester as a novel food and amending Implementing Regulation (EU) 2017/2470 / European Union 2) Special food additive that helps prevent weight gain is approved / University of Glasgow 3) A type of fibre that stimulates GLP-1 release approved for use in food / NewScientist 4) Ridaura VR, et al. Science. 2013;341:1241214. 5) Kimura I, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2011;108:8030-8035. 6) Chambers ES, et al. Gut. 2015;64:1744-1754. 7) Pugh JE, et al. EClinicalMedicine. 2024;76:102844. 8) New study questions effectiveness of novel ingredient for preventing weight gain / Imperial College London 9) Imperial opens for business with investors from across the UK and Europe

50.

プラチナ抵抗性卵巣がんに対するrelacorilant+nab-パクリタキセル、タキサン既治療例でも良好な結果(ROSELLA試験)/ASCO2026

 プラチナ抵抗性再発卵巣がん(Platinum-Resistant Ovarian Cancer、以下PROC )に対するグルココルチコイド受容体拮抗薬relacorilantとnab-パクリタキセルの併用は、全集団およびタキサン既治療群において生存ベネフィットを示した。relacorilantの第III相試験であるROSELLA試験についてLucy Gilbert氏(カナダ・McGill University)が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。 コルチゾールがグルココルチコイド受容体(GR)を介して伝えるシグナルは、腫瘍細胞の化学療法に対する感受性を低下させることが明らかとなっている1)。グルココルチコイド受容体拮抗薬であるrelacorilantは、がん細胞の化学療法への感受性を回復させる作用が期待されている。同試験では、PROC患者を対象に、標準治療の1つであり、事前の支持療法にステロイドを必要としないnab-パクリタキセルへのrelacorilantの上乗せ効果が検証された。・試験デザイン:国際共同第III相試験・対象:PROC患者(プラチナ最終投与から6ヵ月以内に進行)・試験群:nab-パクリタキセル 80mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目)+relacorilant 150mg(nab-パクリタキセル投与の前日・当日・翌日[サイクル1の前日投与はなし]) 188例・対照群:nab-パクリタキセル 100mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目) 193例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]治験担当医によるPFS、奏効率、奏効期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・前治療ライン数3の患者が4割超、2以上の患者は9割を超えていた。・relacorilant+nab-パクリタキセル群は、BICR判定によるPFS、OS共に有意な改善を示した(PFSのハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.54~0.91、p=0.0076、OSのHR:0.65、95%CI:0.51~0.83、p=0.0004)。・OSのサブグループ解析において、タキサン既治療群では、relacorilant+nab-パクリタキセル群が対照群よりも良好な傾向を示した。タキサン既治療全集団のOSのHRは0.65(95%CI:0.51~0.83)、タキサンなし期間6ヵ月以下集団では0.6(同:0.31~1.15)、タキサンなし期間6ヵ月超集団では0.66(同:0.51~0.86)であった。・relacorilant+nab-パクリタキセル群の新たな安全性プロファイルは確認されなかった。同群で発現頻度の高い有害事象は好中球減少、貧血、倦怠感、悪心など化学療法由来のものが中心であった。 Gilbert氏は、今回の結果から、予後不良なPROC患者にとって、relacorilantはバイオマーカーによる患者選択を必要としない新たな治療選択肢となり得ると結論づけた。

51.

トマトに認知機能改善効果は期待できるのか?

 トマトは、血液脳関門を通過して抗酸化作用と抗炎症作用を発揮するカロテノイドであるリコピンの主要な供給源である。しかし、健康成人におけるトマト摂取が認知機能に及ぼす影響は、依然として不明であった。スペイン・バルセロナ大学のRicardo Lopez-Solis氏らは、濃縮トマトペーストが認知機能に及ぼす影響を評価し、脳由来神経栄養因子(BDNF)や脳機能結合などの潜在的なメカニズムを検討した。Antioxidants誌2026年5月19日号の報告。 40~55歳の健康成人47人を対象に、ランダム化2期クロスオーバー試験を実施した。対象者は、3ヵ月間の濃縮トマトペースト(体重1kg当たり0.5g/日)摂取と3ヵ月間のリコピン制限食摂取を、1ヵ月間のウォッシュアウト期間を挟んでランダムな順序で実施するよう割り付けられた。認知機能は、検証済みの神経心理学的検査(d2-R、顔・名前連想記憶検査、修正ウィスコンシンカード分類テスト)用いて評価した。加えて、血漿リコピンおよびBDNF濃度、安静時機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による評価も行われた。 主な結果は以下のとおり。・42人が研究を完了した。・トマト摂取は、選択的注意(集中力:+7.2ポイント、処理速度:+8.3ポイント)および連想記憶(顔・名前照合:+0.8ポイント)を改善した。・血漿BDNF濃度は、トマト摂取によりボーダーラインの増加を示した(平均差:15.2ng/mL)。・安静時fMRIでは、脳ネットワークの変化(前頭頭頂ネットワークおよび聴覚ネットワークの接続性の低下)が認められた。これは、対照期間における背側注意ネットワークの接続性の低下とは対照的であった。 著者らは「これらの結果は、トマト摂取が健康な中年成人の認知機能をサポートし、脳の接続性を調節する可能性を示唆するものである」としている。

52.

既治療の再発・難治性多発性骨髄腫、mezigdomide追加が有効/Lancet

 主に抗CD38抗体薬やレナリドミドによる治療に抵抗性を示す多発性骨髄腫において、セレブロンE3リガーゼ調節薬であるmezigdomideとカルフィルゾミブ+デキサメタゾンの併用(MeziKd)は、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)と比較して無増悪生存期間(PFS)の有意な延長をもたらし、感染症を含むGrade3または4の有害事象の頻度が高いものの管理可能であることが、ギリシャ・アテネ大学のMeletios A. Dimopoulos氏らが実施した「SUCCESSOR-2試験」の中間解析で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年6月14日号に掲載された。26ヵ国の無作為化対照比較第III相試験 SUCCESSOR-2試験は、日本を含む26ヵ国160施設で実施した非盲検無作為化対照比較第III相試験(Bristol Myers Squibbの助成を受けた)。 2023年2月~2025年11月に、測定可能な多発性骨髄腫を有し、少なくとも1つの治療レジメン(抗CD38抗体薬およびレナリドミドを含む)による前治療歴があり、その治療で最小奏効(minimal response)以上を達成し、直近の治療中または治療後に病勢の進行が確認された成人患者を登録した。 被験者479例(年齢中央値68歳[四分位範囲[IQR]:61~75]、女性227例[47%]、アジア人147例[31%])を、MeziKdを受ける群(288例)またはKdのみを受ける群(191例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、PFSとし、独立審査委員会が評価した。PFSが2倍以上に、全奏効も良好 ベースラインで479例中120例(25%)が75歳以上で、診断後の経過期間中央値は4.5年(IQR:2.5~7.3)であった。411例(86%)が抗CD38抗体薬抵抗性、363例(76%)がレナリドミド抵抗性で、前治療ライン数中央値は2(IQR:2~4、範囲:1~9)であり、127例(27%)が前治療ライン数4以上であった。 追跡期間中央値10.6ヵ月の時点で、PFS中央値は、Kd群8.3ヵ月に対し、MeziKd群は18.0ヵ月と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.36~0.63、p<0.0001)。 また、完全奏効以上は、MeziKd群77例(27%)、Kd群17例(9%)(群間差:18%、95%CI:11~24)、非常によい部分奏効以上は、それぞれ173例(60%)および59例(31%)(群間差:29%、95%CI:20~37)であり、全奏効(部分奏効以上)は、231例(80%)および102例(53%)(群間差:27%、95%CI:18~35)で達成された。 今回の中間解析時において、死亡はMeziKd群の22%(62/288例)、Kd群の27%(51/191例)で報告された(HR:0.79、95%CI:0.54~1.15)。Grade3、4の好中球減少、感染症が多い Grade3または4の有害事象は、MeziKd群で241例(84%)、Kd群で105例(56%)に認められ、好中球減少(176例[61%]、17例[9%])および感染症(98例[34%]、29例[16%])の頻度が高かった。Grade3または4の好中球減少は、アジア(81%[71/88例])に比べ米国(44%[12/27例])および欧州(46%[50/109例])で頻度が低かった。これらの多くは、標準治療および支持療法で管理可能であった。 重篤な有害事象は、MeziKd群で188例(65%)、Kd群で63例(34%)に発現し、肺炎(44例[15%]、12例[6%])の頻度が高かった。また、Grade5の治療関連有害事象は、それぞれ8例(3%)および1例(1%)で報告された(群間差:2%、95%CI:-1~5)。死亡は、MeziKd群で62例(22%)、Kd群で51例(27%)に認められ、その主な原因は病勢の進行であった。 著者は、「経口mezigdomideと静注カルフィルゾミブ+経口または静注デキサメタゾンの併用療法は、地域医療を含む多様な医療現場で広く導入が可能な外来治療の選択肢となる」「これらの知見は、この3剤併用療法が再発・難治性多発性骨髄腫に対する強力で導入しやすい新たな標準治療となることを示すものである」としている。

53.

GLP-1受容体作動薬、肥満関連がんの進行を抑制か

 新たな研究により、GLP-1受容体作動薬が一部の肥満関連がんの転移進行リスクを抑制する可能性が示された。GLP-1受容体作動薬はもともと糖尿病治療薬として開発されたが、現在は肥満症や心血管疾患の治療にも広く用いられている。米Taussig Cancer InstituteのMark David Orland氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026、5月29~6月2日、米シカゴ)で発表された。 米フォックス・チェイスがんセンターで支持療法腫瘍学・緩和ケアプログラム責任者を務めるMarcin Chwistek氏は、「GLP-1受容体作動薬は、これまでも単なる血糖降下薬ではなかった。その抗炎症作用および免疫調節作用から、以前より幅広い作用を持つことが示唆されている」と述べている。 今回の研究でOrland氏らは、TriNetXの国際的なリアルワールドデータネットワークを用いて、ステージ1~3のがんの診断を受け、診断後にGLP-1受容体作動薬による治療を開始した1万225人の健康データを解析した。対象としたがんは、乳がん、前立腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、大腸がん、肝細胞がん、腎細胞がん、膵臓がんの7種類とした。これらの患者と社会人口統計学的特徴やBMI、血糖関連因子などを一致させた、診断後にDPP-4阻害薬による治療を開始した患者を対照とし、ステージ4(転移がん)への進行リスクを比較した。 その結果、GLP-1受容体作動薬群では7種類中6種類のがんで転移がんへの進行リスクの低下が認められ、うち4種類(NSCLC、乳がん、大腸がん、肝細胞がん)での低下は統計学的に有意であった。進行リスクは、NSCLCで50%、乳がんで43%、大腸がんで31%、肝細胞がんで38%の低下であった。GLP-1受容体作動薬群において、新たな安全性シグナルや有害事象の増加は認められなかった。さらに、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の遺伝子データを解析して、GLP-1受容体の発現と全生存期間との関連を検討した。その結果、腫瘍でのGLP-1受容体の発現が高い患者では、死亡リスクが33%低いことが示された。がん種ごとに検討すると、特に乳がんでのリスク低下は45%と顕著であった。 Orland氏らは、これらの結果は、GLP-1受容体作動薬の抗炎症作用および免疫調節作用により説明される可能性があるとしている。また、本研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではないとして慎重な解釈を求める一方で、「将来、臨床試験を実施する上で十分な根拠となる有望な結果だ」との見方も示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

54.

テゼペルマブで重症喘息患者のステロイド減量が可能に

 最近承認された喘息治療薬テゼペルマブ(商品名テゼスパイア)により、喘息コントロールを維持しながら経口ステロイドの使用量を減らせる可能性が、臨床試験で示された。テゼペルマブ群では、喘息コントロールを維持しつつ日常的なステロイド使用量をより大きく減らせるオッズがプラセボ群の約3倍であったという。米National Jewish HealthにあるCohen Family Asthma Institute所長であるMichael Wechsler氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Respiratory Medicine」6月号に掲載された。Wechsler氏は、「長期的な経口コルチコステロイドの使用は、糖尿病、骨粗鬆症、心血管疾患などの健康被害をもたらす可能性があり、生活の質(QOL)にも重大な影響を与え得る」と述べている。 米食品医薬品局(FDA)は2021年に、重症喘息の維持療法としてテゼペルマブを承認した。喘息患者は本剤を月1回自己注射する。テゼペルマブは、炎症誘発性サイトカインの一種である胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)を阻害することにより喘息発作を抑制する。 今回の第3相臨床試験は、12カ国、63施設で、18〜80歳の重症喘息患者122人を対象に実施された。対象者は、テゼペルマブ210mgを4週間ごとに28週間投与する群(83人)とプラセボを投与する群(39人)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、喘息コントロールを維持したまま、28週時点における経口ステロイド使用量のベースラインからの変化量であった。 最終的に、90人(74%)が治療を完了した。その結果、28週時点で、テゼペルマブ群では69%の患者がステロイドの使用量を半分以上減量できたのに対し、プラセボ群では44%にとどまっていた。また、ステロイドを90〜100%減量できたのは、テゼペルマブ群では36%(30人)、プラセボ群では21%(8人)であった。さらに解析の結果、喘息コントロールを維持しながら経口ステロイド使用量をより大きく減量できるオッズは、テゼペルマブ群でプラセボ群の約3倍(オッズ比2.93)であることが示された。 Wechsler氏は、「これらの知見は、テゼペルマブで治療された重症喘息患者が、喘息コントロールを維持しながら経口ステロイドへの依存を大幅に減らせる可能性を示す点で重要である」とニュースリリースで述べている。 ただし、本試験は登録の遅れにより予定していた参加者数(207例)に達せず、早期終了したと研究グループは説明している。その上で、「しかしながら、本試験は高い質で実施されており、ランダムに割り付けられた参加者のほぼ4分の3が試験を完了している。早期終了は、参加者の試験未完了の最も一般的な理由であった」と論文の中で述べている。 なお、本試験の資金は、テゼペルマブの開発・販売元であるアストラゼネカ社およびアムジェン社が提供した。

55.

子どものうそ、大半は将来の問題行動につながらず

 「犬が宿題を食べてしまった」「妹が先に始めた」「携帯電話の充電が切れていた」−−。子どもがつくこんなうそに、大人はいら立ちを覚えがちだ。しかし、子どもが時々うそをつくのはよくあることであり、大半は成人後の深刻な問題につながらないことが新たな研究で示された。一方で、うそをつく行動が持続したり、年齢とともに頻度が増加したりする子どもは、6歳時の攻撃性や12歳時の衝動性が高い傾向が見られ、若年成人期に反社会性パーソナリティ症の診断や犯罪歴との関連が認められたという。マギル大学(カナダ)教育・カウンセリング心理学教授のVictoria Talwar氏らによるこの研究結果は、「Development and Psychopathology」に5月27日掲載された。 Talwar氏は、「子どもが皆、同じような発達パターンでうそをつくわけではない。今回の研究では、大半の子どもが、経時的に見るとうそをつく頻度が低いままで推移するか、あるいは減少していた。ほとんどの子どもにとって、うそは問題行動ではない」とニュースリリースで述べている。 この研究では、長期追跡研究(Quebec Longitudinal Study of Kindergarten Children;QLSKC)の参加者であり、1986~1987年と1987~1988年にカナダ・ケベック州で幼稚園に通っていた3,017人の子どもが対象とされた。QLSKCでは、保護者と教師が、子どものうそをつく行動やその他の行動について、6歳から19歳まで継続的に報告していた。研究グループはそのデータを用いて、年齢が上がるにつれうそをつく頻度がどのように推移したか(うその軌跡)に基づき潜在的な軌跡クラスを抽出し、それぞれの軌跡と、攻撃性などの特性との関連を解析した。さらに、22歳時点で反社会性パーソナリティ症の診断の有無を評価するとともに、25歳までの犯罪歴を調査し、これらと軌跡クラスとの関連を検討した。 保護者と教師の評価を別々に分析した結果、いずれも3つの潜在的な軌跡クラスが認められた。教師による評価に基づく潜在的な軌跡クラスは、初期からうそをつく頻度が低いまま推移する「低頻度群」(73%)、初期の頻度が低頻度群より高く、その後も増加する「増加群」(22%)、初期には頻度が最も高いが、その後減少する「減少群」(5%)であった。これらの軌跡クラスと関連する要因について検討した結果、6歳時の攻撃性や12歳時の衝動性が高い子どもは、増加群または減少群に属しやすいことが示された。また、低頻度群は他の2群と比べて19歳時の攻撃性が有意に低く、25歳までの犯罪歴も少なかった。一方、増加群は低頻度群に比べて反社会性パーソナリティ症のリスクが高かったが、増加群と減少群との間に有意差は認められなかった。 保護者の評価では、全期間を通じて時々うそをつくレベルで推移する「時々うそをつく群」(58%)、6歳時からうそをつく頻度が低く、19歳までにはほとんどうそをつかなくなる「低頻度群」(30%)、6歳時には中程度の頻度でうそをつき、その後頻度が高くなるが急激に低下し、19歳までにほぼうそをつかなくなる「増加後に減少する群」(12%)の3つの軌跡クラスが認められた。これらの軌跡クラスと関連する要因について検討した結果、6歳時の攻撃性や12歳時の衝動性が高い子どもは低頻度群以外の群に属しやすく、特に時々うそをつく群では、19歳時の攻撃性や25歳までの犯罪歴、反社会性パーソナリティ症の基準該当数も他の2群より有意に多かった。 Talwar氏は、「この研究は、正常な発達過程と、早期の支援が有益となり得るパターンを区別して理解する第一歩となる。また、うそに対するスティグマ(偏見)を軽減するとともに、将来的な悪影響を防ぐための予防策の改善にも役立つ」と説明している。その上で、「長期間にわたってうそをつき続けたり、うその頻度が増加したりする場合、とりわけ攻撃性や衝動性を伴う場合には、単に罰を与えるのではなく、早期の支援や介入が必要であることを示すサインかもしれない」と付け加えている。

56.

尿検査で自閉症をスクリーニングできる可能性

 簡単な尿検査によって、自閉症スペクトラム症(ASD)の可能性が高い子どもを早期にスクリーニングできる可能性があることが、新たな研究で示された。研究グループは、「ASD児の腸内細菌叢に認められる特徴が、ASD児と定型発達児の識別に役立つ可能性がある」と述べている。米アリゾナ州立大学(ASU)Biodesign Center for Health Through Microbiomes工学教授James Adams氏らによるこの研究の詳細は、「Molecular Psychiatry」に5月26日掲載された。 過去の多くの研究において、一部のASD児では、p-クレゾール硫酸やインドキシル硫酸といった微生物由来代謝物(MDM)の尿中濃度が異常に高いことが確認されている。Adams氏らは、これらのMDMが脳腸相関を介して神経発達に影響を及ぼす可能性があり、また特徴的な腸内細菌叢のバランスの乱れ(ディスバイオシス)が多くのASD児に認められるのではないかという仮説を立てた。 この仮説を検証するために、今回の研究では、まず2~11歳のASD児52人と定型発達児47人(対照群)を対象に、尿中のMDM濃度を半定量的に解析した。その結果、90%のASD児において、少なくとも1種類のMDMの濃度が対照群で測定された最高値を上回っており、中には100~1,000倍もの高値を示すものも確認された。平均すると、ASD児では対照群の最高値を上回るMDMが3.3種類認められた。高値を示した代謝物には、フェニルアラニンやトリプトファンの代謝に関連する化合物が含まれていた。また、酵母や真菌の腸内活動と関連する化合物も確認された。 次に研究グループは、半定量解析で評価した17種類のMDMを用いて、対照群での最高値を上回るMDMが1種類でも存在する場合にASDスクリーニング陽性と判定する尿中スクリーニングシステム(MDM system)を構築した。その結果、ASD識別の感度が90%、特異度が100%であった。さらに、定量解析に基づく評価でも同様の傾向が確認され、感度78%、特異度100%であった。論文の筆頭著者であるASU Biodesign Center for Health Through MicrobiomesのChristina Flynn氏は、「この検査によって、ASDと診断されるリスクが高い子どもを特定できる可能性がある。また、すでに診断を受けた子どもについても、その子に合った治療方針を考えることで、より良い人生を送る支援につなげることができるだろう」とニュースリリースの中で述べている。 現在のASDの検査は子どもの行動観察に基づき行われるため、家族が子どもの診断結果を知るまで長期間を要する場合が多い。しかし、できるだけ早期に診断されることで、保護者はより早く適切な支援を開始できると研究グループは指摘する。 自身もASD児の親であるFlynn氏は、「この疾患に対するスティグマや恥の意識が少しでも軽減されることを願っている。診断をためらうのは、親が『自分は親として不十分だ』と感じたり、周囲から批判されていると感じたりすることが原因である場合もある。だが、実際はそうではない。尿検査でASDをスクリーニングできる可能性が示されたということは、ASDが生物学的な基盤を持つ状態であることを示唆している。このことによって、治療を受けることや早期に治療を開始することに対する親のためらいがなくなることを願っている」と話している。 ただし、研究グループは、この尿検査の有効性を確認するため、さらなる研究が必要であるとの見解を示している。

57.

低侵襲治療で変形性膝関節症の痛みが軽減

 膝動脈塞栓術(GAE)と呼ばれる低侵襲性の治療によって膝関節周囲の異常血管への血流を減少させ、膝の痛みを緩和できる可能性が新たな研究で示された。約200人の変形性膝関節症(OA)患者を対象にGAEを実施したところ、膝の痛みの軽減と機能の改善が認められたという。シャリテ大学病院(ドイツ)インターベンショナルラジオロジー部門のFlorian Fleckenstein氏らによるこの研究の詳細は、「Radiology」に6月16日掲載された。 Fleckenstein氏はニュースリリースの中で、「今回の研究の対象となった集団において、痛みの大幅な軽減が認められた。また、スポーツや余暇活動、日常生活動作のいずれの機能についても著しい改善が認められた。何よりも重要なのは、患者の生活の質(QOL)が大きく向上したことだ」と話している。 OAでは、関節周囲に異常な血管が増殖して血流が増加し、炎症や痛みを助長する。GAEはこのような異常な血管にゼラチン製の球状塞栓粒子(マイクロスフィア塞栓粒子)を注入する治療法である。研究グループによると、注入するマイクロスフィアは、異常血流を遮断するのに必要な時間だけ機能し、その後は生体内で分解される。血流パターンが是正されると、膝の神経から送られる痛みのシグナルも軽減される。Fleckenstein氏は、「炎症と痛みの両方を軽減する再吸収性のマイクロスフィアを用いたGAEは、OAの進行を遅らせ、疾患経過を変えることのできる初の治療法となる可能性がある」と述べている。 今回の研究には、理学療法、抗炎症薬、関節内注射のいずれの治療を受けても十分な効果が得られなかったOA患者194人(年齢中央値69歳、女性114人)が登録された。対象者のBMI中央値は28をわずかに上回る過体重に相当する値だった。参加者が受けたGAEによる治療回数は合計239回で、79%(194人中154人)が12カ月時点の追跡評価を受けた。 医師らが参加者を追跡したところ、NRS(Numerical Rating Scale)で評価した痛みのスコア(0~10点)の中央値は、試験開始時の7点から12カ月時点には3点にまで低下した。また、KOOS(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score)の各下位尺度では、55~80%の参加者が臨床的に意味のある最小変化量(MCID)を上回る改善を達成し、膝の症状や機能、QOLの改善が認められた。 Fleckenstein氏は、「この結果から、この治療法の安全性と有効性について確かな自信を持って述べることができるようになった。治療に適した患者を選べば、侵襲性の低い治療を1回受けるだけで長期的な症状の緩和が得られる可能性がある。これは、関節内注射と人工関節置換術の間を埋める、意義のある新たな選択肢となるだろう」と述べている。

58.

SCORPIO-PEP試験:エンシトレルビルはCOVID-19家族内発症を予防できるか(解説:小金丸 博氏)

 NEJM誌2026年5月14日・21日合併号に掲載されたSCORPIO-PEP試験は、エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)をCOVID-19患者の同居家族に対して曝露後予防に用いた第III相試験である。主要評価項目である「症候性COVID-19発症」は、エンシトレルビル群2.9%、プラセボ群9.0%で、リスク比0.33と有意な抑制効果を示した。絶対リスク減少は約6%であり、NNT(治療必要数)は17と計算される。家庭内感染という高曝露環境を考慮すると、かなり良好な成績といえる。 本試験の強みは、二重盲検ランダム化比較試験であること、多国籍試験であること、さらにオミクロン株流行期に実施された点にある。参加者の大多数が既感染あるいはワクチン接種由来の抗体を保有しており、現在の実臨床に近い集団で有効性が示された意義は大きい。また、有害事象発現率はプラセボ群と同等であり、安全性に関しても大きな問題を認めなかった。 一方で、臨床実装に向けては慎重な解釈も必要である。本試験のエンドポイントは「感染予防」ではなく「症候性COVID-19発症予防」であり、無症候感染自体は一定数認められている。つまり、ウイルス伝播抑制効果を直接証明した試験ではない。また、観察期間は10日間が中心であり、long COVIDの抑制や入院予防への寄与は評価されていない。 さらに重要なのは、ベースラインのイベント発生率が比較的低い点である。プラセボ群でも発症率は9%にとどまり、オミクロン株流行期以降の免疫保有集団においては、家庭内曝露があっても発症する者は限られる。このため、接触者全員への一律予防投与は費用対効果に乏しい可能性がある。真に恩恵を受けるのは、高齢者、免疫不全者、重症化リスクを持つ家族を抱える世帯などに限られるかもしれない。 耐性変異の問題も未解決である。論文中では明確な耐性伝播は確認されなかったが、3CLプロテアーゼ阻害薬は理論上耐性化リスクを抱える。とくに軽症例や予防投与への広範な使用は、選択圧を高める可能性がある。COVID-19が季節性感染症化しつつある現状では、抗ウイルス薬をどこまで「予防」に用いるべきかという抗菌薬適正使用に近い視点が必要になる。 本試験は「COVID-19家庭内曝露後の予防」という新しい戦略の有効性を示した点で画期的である。ただし、その適応は接触者への一律投与ではなく、高リスク接触者へのターゲット使用として考えるべきであり、長期アウトカム、耐性化、費用対効果を含めた今後の検討が不可欠である。

59.

症候性リウマチ性心疾患でジゴキシンの追加は心不全の新規発症・悪化を減らす(解説:原田和昌氏)

 リウマチ性心疾患(RHD)は中低所得国の若年層における罹患および死亡の重要な原因であり、世界で4,000万人以上が罹患し、年120万件の心不全と約32万人の死亡を引き起こす。中低所得国で左室駆出率(EF)が保たれた心不全の25%を占め、死亡の大部分は心不全に関連する。RHD患者の心不全は主に僧帽弁狭窄症であり、心拍数の増加や心房細動の発症にて左心房圧と肺静脈圧が上昇し症状が悪化する。有症状患者のすべてが手術や介入治療の対象とはならず多くは薬物療法を受けているが、RHDの心不全に対する薬物療法は評価されていない。インドのKarthikeyan氏らは国内12施設で行われた二重盲検RCTであるDig-RHD試験にて、若年の症候性RHD患者で経口ジゴキシンは全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクを軽減することを示した。 心エコーでRHDと確定され、ジゴキシンの投与を受けているか、心不全、心房細動または心房粗動を有する患者1,769例を登録し、ジゴキシン(0.125~0.25mg)を1日1回経口投与する群(885例)またはプラセボ群(884例)に無作為に割り付けた。主要複合アウトカムは全死因死亡または心不全の新規発症・悪化であった。平均年齢46歳、72%が女性、70%が心房細動または心房粗動を有し、90%がNYHA心機能分類II~IV度、85%が中等度から重度の僧帽弁狭窄症を有していた。平均EFは58%、34%がジゴキシンの投与を受けており、約35%が経皮的僧帽弁形成術ないしは弁置換術を受けていた。 主要複合アウトカムはプラセボ群の35.5%に対し、ジゴキシン群は31.4%と有意に少なかった。心不全の新規発症・悪化はジゴキシン群で有意に低かった(HR:0.82)。中低所得国でみられるように、心不全の悪化のほとんどが入院を要せず、利尿薬の増量で治療された。全死因死亡に有意な差を認めなかった。心不全関連死または心不全の新規発症・悪化の複合はジゴキシン群で有意に良好であった(HR:0.82)。心不全関連死または心不全による入院の複合、心不全関連死、突然死に差はなかった。 β遮断薬、MRAを含む利尿薬、抗凝固薬などの治療を受けている症候性RHD患者において、ジゴキシン追加は全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムを低減した。これは心不全の新規発症・悪化の減少によってもたらされた。すでにジゴキシンを服用していた患者や心房細動を有していた患者で、ジゴキシンの有益性が大きかった。ジゴキシンが原因と疑われる毒性の発現は少なかったが、患者が若く、併存疾患が少なく、腎機能が良好であったからかもしれない。中低所得国の若年層のRHDにおいて少量のジゴキシンは安価であることもあり、非常に有用かもしれない。 DIG試験でジゴキシンは心不全入院を減らす一方、全死亡を減らさなかった。これまでジゴキシンはカルシウム過負荷を来し、心拍数抑制はむしろ安静時に強いこともあり生命予後を改善しないと考えられてきた。しかし、最近JAMA誌に掲載された、「HFrEF/HFmrEF患者に関するジギタリス配糖体のメタ解析(DIG試験を含む)」では、標準的心不全治療を行ってもなお心不全悪化リスクが残る患者において、低用量のジギタリス配糖体が心不全悪化・入院を減らしたという。年齢、基礎疾患、EF、基礎治療薬も異なる群ではあるが、(安価な)ジゴキシンを心不全悪化イベントを減らす補助薬として見直すべき時なのかもしれない。

検索結果 合計:36478件 表示位置:41 - 60