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きちんと診察したのに、後日見逃しを疑われてしまった【もったいない患者対応】第5回

きちんと診察したのに、後日見逃しを疑われてしまった登場人物<今回の症例>20代男性自転車で走行中に自己転倒両下肢に複数の擦過傷、右膝に3cm程度の裂創あり、来院<負傷したときの状況を聞き出します>どんなふうに転びましたか?前を走っていた車が急に曲がったので慌ててブレーキをかけたんですが、その拍子に転んで溝にはまってしまって…。そんなにスピードは出ていなかったので大したことはないと思います。そうでしたか。右膝の怪我は縫わないといけませんが、それ以外の傷は、洗って軟膏を塗るだけで大丈夫そうですよ。膝だけですか、よかったです。(全身を診察しながら)他に痛いところはありませんか?ありません。大丈夫です。~3日後~昨日出張中にどうしても右手が痛くなって近くのクリニックに行ったら、骨折していました。先生、見逃したんですか?全身診察してくれましたよね?骨折ですか!?いや、痛いところはないとおっしゃっていたので…。ちゃんと診てくださいよ。クリニックの先生にも「なんで最初に診た先生がこの骨折を処置していないんだ」って言われましたよ!【POINT】唐廻先生は、外傷患者に対してきちんと全身診察をして「他に痛いところはないか」と聞いていました。「大したことはない」「他に痛いところはない」と言われ、唐廻先生も半ば油断していたようです。ところが、別の病院で骨折を指摘され、患者さんから不信感を抱かれてしまいました。初診時の対応のどこに問題があったのでしょうか?とっさの事故では、正確な情報が得づらい外傷患者に対する問診では受傷機転の確認が最も大切です。しかし、交通外傷などはとくにそうですが、患者さん本人の受傷時の記憶があいまいなことはよくあります。頭部打撲による逆行性健忘がありうる、という意味ではありません。単に“とっさのことで、どんな姿勢で転んだか、どこを打撲したか、が自分でもよくわからない”という意味です。つまり、患者さんの受傷機転に関する報告からは得られない情報があるかもしれない、ということに注意が必要なのです。本人から受傷したとの訴えがなかった部位に、後から外傷が判明することもあります。初診時に全身を診察し、こうした隠れた外傷を見抜くことができればベストですが、本人の訴えがまったくなく、かつ体表面に所見が乏しいときはそう簡単ではありません。後から悪化するケースがあることを伝えようそこで、患者さんには「突然のことで、どこを怪我したか自分でもわからないのが普通です。後から思いもよらぬ場所が痛くなってくるかもしれません。そのときは再度受診してください」と、あらかじめきちんと伝えておくことが肝要です。場合によっては「最初はなんともなかったのに、翌日になって腕が痛くなって検査したら骨折が見つかったケースもありますからね」と、具体例を提示してみるのもいいでしょう。こうした説明があるだけで、後から検査をして別の外傷が見つかっても「初診医が見逃した」と考える可能性は低くなります。重度の外傷が潜んでいることも外傷診療では“distracting pain”という概念があります。直訳すると“気をそらすような痛み”です。痛みの大きな部位に気を取られ、痛みは軽いものの、本来は治療を優先すべき重度の外傷を見逃してしまうことを意味します。今回のケースとは少し異なりますが、患者さんの痛みの訴えだけに頼りすぎると重要な情報を見逃す危険性があるため、注意が必要です。これでワンランクアップ!どんなふうに転びましたか?前を走っていた車が急に曲がったので慌ててブレーキをかけたんですが、その拍子に転んで溝にはまってしまって…。そんなにスピードは出ていなかったので大したことはないと思います。そうでしたか。でも、突然のことでどこをどんなふうに怪我したか、ご自身でもあまりよくわからないですよね。後から思いもよらぬ場所が痛くなってくるかもしれません※1ので、そのときは再度受診してくださいね。場合によっては、数日後に初めて骨折がわかる、なんてこともあるんです※2。※1:今後起こり得る可能性を伝える。※2:具体例をあげると、より理解してもらいやすい。そういうこともあるんですね。いまのところ大丈夫そうですが、気をつけておきます。

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第212回 三つ子の騒音百まで

三つ子の騒音百までヒトも動物もまったく静かに過ごせることなどなく、自然やヒトの営みで生じるありとあらゆる音と共にあります。催し物の喧騒、工事、交通騒音などでますます騒々しくなる世界の音環境は心配の種の1つです。どうやら騒音の害は生まれる前から始まるらしく、オーストラリアのチームが同国の固有の鳥であるキンカチョウ(zebra finch)を使って調べたところ、孵化前(すなわち卵のとき)と孵化後を交通騒音と共に過ごすこととその後の生涯に及ぶ健康の害との関連が示されました1-3)。キンカチョウは孵化してから巣立つまでしばらく親の世話を必要とする晩成鳥の一種で、交通騒音がほとんどないオーストラリアの砂漠地帯に生息します4)。同国のディーキン大学の生態学者Mylene Mariette氏とそのチームは許可を得て構内の鳥小屋で飼うキンカチョウの卵を夜間のみ拝借して、キンカチョウの鳴き声(以下、鳴き声)か交通騒音または静寂(silence)の中で過ごさせ、朝には親鳥がいる巣に戻しました。交通騒音か鳴き声で夜間を過ごした卵の雛は、羽化後4~13日目に卵のときと同様に夜間のみ拝借してそれら2つの音環境のいずれかの中で過ごさせ、朝に親のもとに戻しました。騒音の影響は早くも孵化前に生じるらしく、夜間を騒音と共に過ごした卵の孵化率は鳴き声と共に過ごした卵を下回りました。夜間を静寂の中で過ごした卵の孵化率はそれらの中間に位置していました。騒音は生まれた雛の経過にも影響し、発達の遅れと関連しました。卵のときと孵化後のどちらも交通騒音と共に過ごしたキンカチョウの孵化後12日時点での体重は、卵のときと孵化後のどちらも鳴き声と共に過ごしたキンカチョウを有意に下回りました。また、成鳥になってからの生殖への影響もあり、交通騒音と共に過ごしたキンカチョウは産み育てた仔の数が鳴き声と共に過ごしたキンカチョウの4割ほどでしかありませんでした。体内の生理的変化も観察され、卵や雛のときの交通騒音は染色体末端部のテロメア短縮と関連しました。テロメア短縮は細胞損傷を反映します。今回の研究で示唆されたような騒音の健康への害はヒトにも当てはまるかもしれません。騒々しい保育器や新生児棟での騒音が赤ちゃんに害を及ぼしている恐れがあります。妊婦やその赤ちゃんが病院で音に煩わされず過ごせるようにとくに配慮するに越したことはないようです4)。また、妊婦や赤ちゃんに限らず世間一般に蔓延する騒音をどこまでどう減らすかを見出すことにも今回の研究成果はやがて役立つでしょう2)。参考1)Meillere A, et al. Science. 2024;384:475-480.2)Traffic noise causes lifelong harm to baby birds / Science3)Noise pollution can harm birds even before they hatch / ScienceNews4)Slabbekoorn H. Science. 2024;384:380-382.

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コロナ禍以降、自宅での脳卒中・心血管死が急増/日本内科学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期において、自宅や介護施設での脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患による死亡が増加し、2023年末時点でも循環器疾患による死亡のトレンドが減少していないことが、白十字会白十字病院 脳血管内科の入江 克実氏らの研究グループによる解析で明らかになった。本研究は、4月12~14日に開催された第121回日本内科学会総会・講演会の一般演題プレナリーセッションにて、入江氏が発表した。 入江氏によると、国内での総死亡数の推移データにおいて、2023年末時点でもCOVID-19流行前と比べて超過死亡は増加しているという。COVID-19の5類移行後はピークアウトしつつあるが、2023年では12万人ほどの超過死亡が見込まれ、その主な死因としてCOVID-19や循環器疾患の増加が認められる。しかし、2017~22年度のDPC対象病院における循環器疾患死亡数の推移データによると、死亡数が大きく増加している傾向は認められない。そのため本研究では、同時期の病院外での循環器疾患による死亡の推移を検討した。 本研究では、政府統計e-Stat人口動態統計を用い、死亡場所別に2013~22年の総死亡数と循環器疾患死亡数を抽出した。死亡場所は、病院/診療所、介護施設/老人ホーム、自宅に分類した。主な疾患ごとにCOVID-19拡大前(2013~19年)の死亡数から回帰直線を求め、2020年以降の推計値を算出し、実測値との差分を超過死亡とした。都道府県別にも同様の抽出を行い、COVID-19前後で自宅死亡数とその増減率を比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・総死亡の死亡場所について、2013~19年までは病院/診療所、介護施設/老人ホーム、自宅のいずれも±3%内で、死亡数の推移に大きな変化はみられない。しかし、コロナ拡大後、病院外では死亡数が増加し続け、2022年の超過死亡率は、自宅では35%、介護施設/老人ホームでは23%に増加していた。一方、病院/診療所では、2020~21年に-5%まで一過性の減少を示したが、2022年には元のトレンドに戻った。・脳梗塞による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±6%内だが、COVID-19拡大後の2022年の超過死亡率は、自宅ではとくに顕著に48%に増加し、介護施設では13%、病院では7%に増加していた。・脳出血による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±5%内だが、2022年の超過死亡率は、自宅では13%、介護施設では17%に増加していた。一方、病院では2020~21年では-5%まで減少し、2022年では-2%であった。・心筋梗塞による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±3%内だが、2022年の超過死亡率は、病院で16%まで増加し、他の疾患とは異なる傾向が認められた。介護施設では23%、自宅では12%と病院外の死亡も増加している。・心不全による死亡では、2013~19年ではいずれの場所でも±7%内だが、2022年の超過死亡率は、自宅では33%、介護施設では12%に増加していた。病院では2020~21年に一過性の減少を示し、2022年には元のトレンドに戻った。・都道府県別にみた脳卒中による自宅死亡数では、COVID-19前後の変化に地域差が見られ、とくに大阪府(30%増)と群馬県(30%増)での自宅死亡率が増加していた。・都道府県別にみた心疾患による自宅死亡数では、とくに福岡県(61%増)と神奈川県(38%増)での自宅死亡率が増加していた。 入江氏は本結果について、「コロナ流行期における循環器疾患による病院外死亡数の増加は、サージキャパシティの不足によるものなのか、病院との連携による在宅看取りが進んでいるためなのか、地域ごとに医療逼迫の振り返りをする必要がある。なお、本研究は2022年までのデータを示しているが、2023年11月までのデータから推計しても、死亡率はいまだに高いと予想されている。コロナに関連するフレイルへの対応に加えて、脳梗塞に対しては頭打ちとなっているDOAC処方への対策、心筋梗塞に対してはPCI介入の遅れについての検証など、コロナ禍での診療抑制の影響が残っていないか再検討が望ましい」と述べた。

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PD-L1高発現NSCLCに対するネシツムマブ+ペムブロリズマブの可能性(K-TAIL-202)/AACR2024

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は進行非小細胞肺がん(NSCLC)の標準治療となっている。KEYNOTE-024試験でみられるように、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブはPD-L1発現≧50%の進行NSCLCにおいてPFS(無増悪生存期間)とOS(全生存期間)を有意に延長している1,2)。しかし、PD-L1陽性であってもICIが奏効しない症例は依然として存在する。 EGFRの発現はPD-L1のグリコシル化を介しPD-L1の発現を安定化させ、PD-1とPD-L1の結合を強化することが報告されており3)、抗EGFR抗体ネシツムマブと抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用療法は新しい治療コンセプトとして期待されている。K-TAIL-202試験はPD-L1高発現NSCLCの初回治療として、ネシツムマブとペムブロリズマブの併用を評価した第II相試験。昭和大学の堀池 篤氏が米国がん研究協会年次総会(AACR2024)で結果を発表した。・対象:未治療のPD-L1発現≧50%の進行NSCLC(EGFR、ALK変異なし)・介入:ネシツムマブ+ペムブロリズマブ 3週ごと2年間または35サイクル(n=50)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]PFS、OSORR期待値の設定はKEYNOTE-024試験のORR44.8%1)を10ポイント上回る54.8%とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は14.2ヵ月であった。・患者の年齢中央値は72歳、男性が76%、現・過去喫煙者が88%、腺がんが60%であった。・ORRは76.0%で、病勢コントロール率は86.0%(CR2%、PR74%、SD10%)であった。・58%の患者が50%以上の標的病変縮小を示した。・PFS中央値は15.7ヵ月、OS中央値は未到達であった。・ネシツムマブによる試験治療下における有害事象(TEAE)発現は全Gradeで98%、Grade≧3は40%で、頻度の高いTEAEは、ざ瘡様皮疹、低マグネシウム血症などであった。・治療中止に至ったTEAEは26%、死亡に至ったTEAEは2%(1例)に発現した。・Grade3の間質性肺疾患が10%(5例)で発現したが、ステロイド治療により改善した。 今回のK-TAIL-202試験結果から、PD-L1高発現進行NSCLC初回治療におけるネシツムマブとペムブロリズマブ併用の可能性が示唆される。

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家族内での治療抵抗性うつ病の発生率

 抗うつ薬に対する治療反応と治療抵抗性うつ病のフェノタイプは、遺伝的根拠があると考えられる。治療抵抗性うつ病のフェノタイプと他の精神疾患との遺伝的感受性は、これまでの遺伝的研究でも確立されているが、これらの結果を裏付ける集団ベースのコホート研究は、これまでなかった。台湾・台北栄民総医院のChih-Ming Cheng氏らは、治療抵抗性うつ病の感受性および家族内での治療抵抗性うつ病と他の精神疾患との感受性を推定するため、台湾全国コホート研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年4月3日号の報告。 2003~17年の台湾全人口(2,655万4,001人)を対象に、台湾国民健康保険データベースのデータを評価した。データ分析は、2021年8月~2023年4月に実施した。治療抵抗性うつ病は、現在のエピソードが3種類以上の抗うつ薬治療を経験し、それぞれ適切な用量および治療期間で行われていた場合と定義し、レセプトデータに基づき特定した。次に、治療抵抗性うつ病患者の1親等の特定を行った(3万4,467人)。対照群として、治療抵抗性うつ病患者を1親等に持たない人を1:4で指定し、誕生年、性別、親族関係を収集した。主要アウトカムは、治療抵抗性うつ病リスク、他の精神疾患リスク、さまざまな原因による死亡リスクとし、調整済み相対リスク(aRR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、修正ポアソン回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・本研究の参加者は、17万2,335人(男性:8万8,330人、女性:8万4,005人、フォローアップ開始時の平均年齢:22.9±18.1歳)であった。・治療抵抗性うつ病患者の1親等は、対照群と比較し、収入が低く、身体的併存疾患が多く、自殺死亡率が高く、治療抵抗性うつ病発症リスクが高く(aRR:9.16、95%CI:7.21~11.63)、他の精神疾患発症リスクが高かった。・治療抵抗性うつ病患者の1親等の各精神疾患別のaRRは、以下のとおりであった。【統合失調症】aRR:2.36、95%CI:2.10~2.65【双極性障害】aRR:3.74、95%CI:3.39~4.13【うつ病】aRR:3.65、95%CI:3.44~3.87【注意欠如多動症】aRR:2.38、95%CI:2.20~2.58【自閉スペクトラム症】aRR:2.26、95%CI:1.86~2.74【不安症】aRR:2.71、95%CI:2.59~2.84【強迫症】aRR:3.14、95%CI:2.70~3.66・感度分析とサブグループ解析により、アウトカムのロバストが検証された。 著者らは、「治療抵抗性うつ病の家族歴を有する患者は、自殺死亡リスクが高く、抗うつ薬治療に耐性傾向を示している。したがって抗うつ薬単独療法に固執せず、より集中的な治療を早期に検討される可能性がある」としている。

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不安定プラーク、至適薬物療法+予防的PCI追加で予後改善/Lancet

 冠動脈に血流を阻害しない不安定プラークを有する患者において、予防的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の追加は至適薬物療法のみと比較し、高リスクの不安定プラークに起因する主要有害心血管イベントが減少したことを、韓国・蔚山大学のSeung-Jung Park氏らが、韓国、日本、台湾およびニュージーランドの計15施設で実施した医師主導の無作為化非盲検比較試験「PREVENT試験」の結果を報告した。著者は、「PREVENT試験は不安定プラークに対する局所治療の効果を示した最初の大規模臨床試験であり、今回の知見はPCIの適応を、血流を阻害しない高リスクの不安定プラークに拡大することを支持するものである」とまとめている。急性冠症候群や心臓死は不安定プラークの破裂および血栓症によって引き起こされることが多く、その多くは冠血流を阻害しない。不安定プラークに対するPCIによる予防的治療の安全性と心臓有害事象の減少に対する有効性は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年4月8日号掲載の報告。狭窄率>50%、FFR>0.80の不安定プラークを有する患者が対象 研究グループは、心臓カテーテル検査を受けた18歳以上の安定冠動脈疾患または急性冠症候群の患者のうち、造影上の狭窄率>50%、冠血流予備量比(FFR)>0.80の病変を有し不安定プラークが確認された患者を対象とした。Webシステム(置換ブロック法、ブロックサイズ4または6)により糖尿病の有無および非標的血管への同時PCIの有無で層別化し、PCI+至適薬物療法群(PCI併用群)または至適薬物療法単独群(薬物療法群)に1対1の割合で無作為に割り付け、最後の登録患者が無作為化後2年に達するまで毎年追跡調査を行った。 不安定プラークは、(1)最小内腔面積<4.0mm2、(2)プラーク負荷>70%(血管内超音波検査)、(3)脂質に富むプラーク(近赤外分光法、4mm以内の最大脂質コア負荷指数が>315)、(4)TCFA(thin-cap fibroatheroma)(高周波血管内超音波検査または光干渉断層法)の4つの特徴のうち2つ以上を満たすプラークと定義された。 主要アウトカムは、2年間の心臓死・標的血管の心筋梗塞・虚血による標的血管血行再建術・不安定狭心症または進行性狭心症による入院の複合とした。ITT集団で評価し、初発までの期間はKaplan-Meier法で算出し、log-rank検定で比較した。PCI併用群で薬物療法群より2年複合イベントが有意に減少 2015年9月23日~2021年9月29日に、5,627例がスクリーニングされ、適格基準を満たした1,606例がPCI併用群(803例)または薬物療法群(803例)に無作為化された。1,177例(73%)が男性、429例(27%)が女性で、1,556例(97%)が2年間の追跡を完了した(PCI併用群780例、薬物療法群776例)。 主要アウトカムの2年複合イベントは、PCI併用群で3例(0.4%)、薬物療法群で27例(3.4%)に発生し、絶対群間差は-3.0%(95%信頼区間[CI]:-4.4~-1.8、p=0.0003)であった。予防的PCIの効果は、主要アウトカムの各要素において一貫していた。 重篤な臨床的有害事象は、PCI併用群と薬物療法群で差はなかった。2年以内の死亡は4例(0.5%)vs.10例(1.3%)であり(絶対群間差:-0.8%、95%CI:-1.7~0.2)、心筋梗塞は9例(1.1%)vs.13例(1.7%)であった(-0.5%、95%CI:-1.7~0.6)。

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難治性狭心症、冠静脈洞へのデバイス留置で症状改善/Lancet

 冠静脈洞狭窄デバイス(coronary-sinus reducer:CSR)は、狭心症患者の心筋血流を改善しなかったが、狭心症エピソード数を減少した。英国・Imperial College Healthcare NHS TrustのMichael J. Foley氏らが、英国の6施設で実施した医師主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ORBITA-COSMIC試験」の結果を報告した。CSRは、心筋血流を改善することにより、安定冠動脈疾患患者の狭心症を軽減することが示唆されていた。著者は、「今回の結果は、CSRが安定冠動脈疾患患者に対するさらなる抗狭心症治療の選択肢となりうるエビデンスを提供するものである」としている。Lancet誌2024年4月20日号掲載の報告。処置後6ヵ月間追跡、心筋血流と狭心症エピソード数を比較 研究グループは、抗狭心症治療(薬物療法、経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス術など)のさらなる選択肢がない、18歳以上の狭心症、心外膜冠動脈疾患、虚血を有する患者を登録し、心臓MRによる定量的な心筋灌流マッピング(アデノシン負荷時および安静時)、症状およびQOLに関する質問(シアトル狭心症質問票、EQ-5D-5Lなど)、トレッドミル運動負荷試験を行った。その後、2週間の症状評価期にスマートフォンの専用アプリ(ORBITA-app)を用いた症状報告を完遂した患者を、CSR群と対照群に1対1の割合に無作為に割り付け追跡評価した。 二重盲検下で、CSR群ではCSR(商品名:Neovasc Reducer、Shockwave Medical)の植込み術を行い、対照群では患者に少なくとも15分間(CSRの植込みに要するおおよその時間)心臓カテーテルの検査台の上で鎮静状態を保持させた。処置後は、6ヵ月間の二重盲検下追跡調査期に、ORBITA-appで患者に日々の症状を報告してもらった。 主要アウトカムは、登録時にアデノシン負荷灌流心臓MRスキャンで虚血と判定されたセグメントにおける心筋血流、症状の主要アウトカムは1日の狭心症エピソード数とし、ITT解析を行った。CSR群で狭心症エピソード数が減少 2021年5月26日~2023年6月28日に447例がスクリーニングされ、61例が登録された。このうち51例(男性44例[86%]、女性7例[14%])がCSR群(25例)およびプラセボ群(26例)に無作為化され、CSR群の1例(無作為化手順の途中でデバイス塞栓事象が発現し適切な管理のため盲検を解除)を除く50例がITT解析に組み入れられた。 登録時の虚血セグメントは、画像化された800セグメント中454セグメント(57%)で、虚血セグメントにおける負荷心筋血流量の中央値は1.08mL/分/g(四分位範囲[IQR]:0.77~1.41)であった。 虚血セグメントにおいて、対照群と比較しCSR群で心筋血流量の改善は示されなかった(群間差:0.06mL/分/g、95%信用区間[CrI]:-0.09~0.20]、有益性の確率:78.8%)。一方、報告された1日の狭心症エピソード数は、対照群と比較してCSR群で減少した(オッズ比:1.40、95%CrI:1.08~1.83、有益性の確率:99.4%)。 安全性については、CSR群でデバイス塞栓イベントが2件発生し、両群とも急性冠症候群イベントおよび死亡の発生は報告されなかった。

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若さを感じたければ良い睡眠を

 良好な睡眠を取った朝は若々しい気分となる半面、質が低い睡眠から目覚めた朝は、何歳も歳を取ったように感じてしまうことが明らかになった。ストックホルム大学(スウェーデン)のLeonie Balter氏とJohn Axelsson氏の研究によるもので、詳細は「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に3月27日掲載された。論文の筆頭著者であるBalter氏は、「驚くことに、覚醒の感覚が最も強い状態と眠気が最も強い状態とでは、自分の年齢に対する評価に10年もの差が生じる」と話している。 Balter氏らの研究は二つのパートから成り、一つ目は横断研究として実施された。18~70歳の429人(女性66%)を対象に、自分の実際の年齢と主観的な年齢、睡眠時間、および眠気の程度〔カロリンスカ眠気尺度(KSS)〕を把握した。その結果、過去30日間で睡眠不足だった日が1日多いごとに、主観的な年齢が平均0.23年(約3カ月)高くなるという関連が認められた。睡眠不足の日数がゼロだった人は、主観的年齢が実際の年齢よりも5.81歳若かった。 KSSは、覚醒の感覚が最も強い状態を1点、眠気が最も強い状態を9点とする評価尺度だが、この点数が1点高いごとに主観的年齢が1.22歳高くなるという関連も見つかった。睡眠不足の日数と主観的年齢の関連はKSSスコアで調整後にも有意であったことから、睡眠不足は眠気を介する経路とは別の経路でも主観的年齢を高めるように働くと考えられた。なお、研究者らによると、これまでの研究で、実際の年齢よりも若いと感じている人は健康寿命が長いことが示されているという。 これらの結果を基に行われた二つ目の研究は、クロスオーバー研究として実施された。参加者は18~46歳の186人(女性55%)で、2晩連続で睡眠時間を1日4時間に制限する条件と、やはり2晩連続で睡眠時間を1日9時間とする条件を設定。睡眠時間4時間では9時間に比べて、主観的年齢が4.44歳高齢となることが示された。また、KSSスコアは3.4点高くなっていた。KSSスコアと主観的年齢との関連は一つ目の研究の結果と同様に、1点高いごとに1.23歳高くなるという関連があった。ただし、二つ目の研究では、睡眠時間と主観的年齢との関係が、KSSスコアで調整後には非有意となった。 二つの研究から、KSSスコアが1から9になると主観的年齢が10歳高くなることが示された。これらの研究結果を基に著者らは、「睡眠不足であることと眠気を感じることが主観的年齢に大きな影響を及ぼすようだ。年齢を重ねても若さを感じたいのなら、おそらく、睡眠を確保することが重要と言えるだろう」と述べている。またBalter氏は、「若々しい気持ちを維持するには、良好な睡眠を取ることが重要。それによって、より活動的なライフスタイルとなり、健康を増進するための行動につながる可能性がある。活動的になろうとする動機付けには、まず、自分の若さを感じることが大切だ」と付け加えている。

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膵体積とOGTTで1型糖尿病への進行を予測可能

 糖尿病関連自己抗体陽性の状態から1型糖尿病への進行を、MRIで評価した膵体積と経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)による糖代謝関連指標とによって予測できることが分かった。米テキサス大学オースティン校のJohn Virostko氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に12月27日掲載された。  これまでの研究で、1型糖尿病患者は膵体積が小さいことが明らかになっている。しかし、1型糖尿病発症前段階において、膵体積が小さいことが病態進行の予測因子であるか否かは不明。これを背景としてVirostko氏らは、1型糖尿病進行予防に関する国際共同研究(TrialNet)参加者を対象とする検討を行った。この国際共同研究には、1型糖尿病患者の血縁者で、糖尿病関連自己抗体を有するハイリスク者が参加している。進行ステージは、自己抗体が出現した状態の「ステージ1」、血糖異常が生じ始めた状態の「ステージ2」、および臨床的に1型糖尿病と診断される「ステージ3」という3段階に分類される。 今の検討の解析対象は、複数の自己抗体が陽性の65人。ステージ3への進行予測因子として、MRIで計測した膵体積を体重で除した値(pancreas volume index;PVI)、および、OGTTによる血糖値とC-ペプチドから算出するIndex60とDPTRS(diabetes prevention trial-type 1 risk score)という指標を設定。それら単独、または組み合わせた場合の予測能を評価した。 65人中11人が観察期間中にステージ3へ進行した。進行群と非進行群を比較すると、性別の分布、人種、BMI、MRI施行回数に有意差はなく、観察期間中央値は前者が18カ月、後者が7カ月で群間差は非有意であり(P=0.14)、平均年齢も同順に15.0±8.42歳、21.2±11.9歳で有意水準未満だった(P=0.054)。保有する自己抗体数は、前者が4.27±0.9、後者が2.72±1.5で前者の方が有意に多かった(P<0.001)。 一方、PVI、Index60、DPTRSという3種類の進行予測因子は全て、ベースライン時点において有意な群間差が認められた。このうちPVIに関しては、ベースライン時点で0.88mL/kgをカットオフ値として二分した場合に、ステージ3への進行に有意なリスク差が観察された(P=0.013)。なお、PVIはIndex60(R2=0.005、P=0.63)やDPTRS(R2=0.01、P=0.48)とは有意な関連がなかった。それに対してOGTTに基づき算出されるIndex60とDPTRSは、正相関していた(R2=0.60、P<0.0001)。 ステージ3への進行の予測能(AUC)は、PVIが0.76、Index60は0.79、DPTRSも0.79であり、PVIとDPTRSを組み合わせると0.91まで上昇した。これらの結果から、PVIとOGTTに基づく糖代謝関連指標は、ステージ3への進行のリスク評価に関して、それぞれ異なる要素を反映していると見られ、よってそれらを組み合わせることでより優れた予測能が得られると考えられた。著者らは、「膵臓の画像所見は、1型糖尿病の予防を目的とした臨床試験において評価すべき、新たな指標となり得るのではないか」と述べている。

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免疫療法+個別化ワクチン、肝細胞がんの新治療法として有望

 標準的な免疫療法にオーダーメイドの抗腫瘍ワクチン(以下、個別化がんワクチン)を追加することで、肝細胞がんが縮小する患者の割合が、免疫療法のみを受けた場合の約2倍になることが、新たな研究で示された。米ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターの副所長であるElizabeth Jaffee氏らによるこの研究結果は、米国がん学会年次総会(AACR 2024、4月5〜10日、米サンディエゴ)で発表されるとともに、「Nature Medicine」に4月7日掲載された。研究グループは、肝細胞がんの診断後、5年間生存する患者の割合は10人に1人未満であるため、このワクチンは患者の生存の延長に役立つ可能性があると話している。 Jaffee氏らはこの研究に肝細胞がん患者36人を登録し、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)のペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)による通常の免疫療法に加え、個別化がんワクチンを投与して、その効果を調べた。個別化がんワクチンは、まず、生検で得た患者のがん細胞を分析し、コンピューターアルゴリズムにより変異が生じている遺伝子のうち、免疫系が認識できるタンパク質〔がん細胞で起こる遺伝子変異により新たに生じたがん抗原(ネオアンチゲン)〕を産生している遺伝子を特定した。この情報を基に、最大で40個のネオアンチゲンをコードするDNAを含む個別化がんワクチン(GNOS-PV02)を作成した。ワクチンが投与された患者では、免疫系がこれらのネオアンチゲンを認識し、それらを産生するがん細胞を攻撃するのを助ける。 個別化がんワクチンと抗PD-1抗体の組み合わせは、腫瘍に大きな打撃を与える。抗PD-1抗体は、腫瘍内で疲れ果て、がん細胞を破壊できなくなった免疫細胞のT細胞を再活性化する。このワクチンはまた、特定の変異タンパク質を標的とするT細胞を新たに呼び寄せて、この効果を補強する。 実際、抗PD-1抗体とともにこの個別化ワクチンを投与された患者の3分の1近く(30.6%)でがん細胞の縮小が認められた。この割合は、免疫療法のみを受けた場合の2倍に当たるという。さらに、8.3%の患者では、治療後の検査でがん細胞が見つからない完全奏効を達成した。 Jaffee氏は、「われわれは、開発中の個別化がんワクチンを使った治療で成果が得られて興奮している。この個別化がんワクチンは、治療の難しいがんに対する次世代の治療法として有望だ」と語っている。 一方、ジョンズ・ホプキンス大学医学部腫瘍学分野のMark Yarchoan氏は、「この研究は、個別化がんワクチンが抗PD-1抗体に対する臨床反応を高めることができるというエビデンスを提供するものだ」と話す。同氏は、「この知見を確認するためには、より大規模なランダム化比較試験が必要だ。それでも、今回の結果が非常に胸躍るものであることに変わりはない」と述べている。

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手掌と足底の皮疹の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第2回

画像を拡大するTake home message発熱と皮疹の鑑別診断は多岐にわたるが、手掌(palms)と足底(soles)の皮疹の有無で鑑別診断をある程度絞り込むことができる可能性がある。手掌と足底の皮疹の鑑別疾患は「MR. SMITH」で覚えよう。発熱と皮疹の鑑別疾患は感染性・非感染性と多岐にわたります。手掌と足底に皮疹を来した場合、鑑別診断をある程度絞り込むことができる可能性があります。それでは、一体どのような鑑別疾患が挙げられるのでしょうか。ここでは、なかでも感染性に焦点を当てて解説していきます。語呂合わせとして「MR. SMITH」と覚えると、手掌と足底の皮疹の感染性の鑑別疾患を網羅的に挙げることができます。MMeningococcemia (Neisseria meningitidis) 髄膜炎菌による菌血症RRickettsia リケッチア感染症(日本紅斑熱など)S(Secondary) Syphilis 二期梅毒MMeasles, Mpox 麻疹、M痘IInfective endocarditis 感染性心内膜炎TToxic shock syndrome, Travelers (Dengue/Chikungunya/Zika) トキシックショック症候群、デング熱、チクングニヤ熱、ジカ熱などの蚊媒介感染症HHand-Foot-Mouth syndrome (Coxsackievirus), HIV, HSV (erythema multiforme) 手足口病、急性HIV感染や単純ヘルペス感染による多形滲出性紅斑皆さんも積極的に、手掌と足底に皮疹を呈していないかどうかを確認してみましょう。1)Hughes KL, et al. Am Fam Physician. 2018;97:815-817.2)Giorgiutti S, et al. N Engl J Med. 2019;381:1762.3)McKinnon HD Jr, et al. Am Fam Physician. 2000;62:804-816.4)Staples JE, et al. Clin Infect Dis. 2009;49:942-948.5)Saguil A, et al. Am Fam Physician. 2023;108:78-83.6)Volpicelli FM, et al. N Engl J Med. 2023;389:1033-1039.7)Long B, et al. Am J Emerg Med. 2023;65:172-178.8)He A, et al. Am J Clin Dermatol. 2017;18:231-236.

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日常診療に活かす 診療ガイドラインUP-TO-DATE 2024-2025

一瞬の迷いを確信へ ~これが日本の標準的治療~2010年の発行以来、多くの医療従事者に活用されている本書が2年ぶりに改訂しました。今版では日常診療で遭遇頻度の高い疾患を中心に19領域175疾患を取り上げ、各領域の第一人者が当該疾患に関連する複数の診療ガイドラインを精選し、そのポイントについて臨床知を加味して解説しています。本書は、(1)必要な情報をすぐに取り出せる紙面構成、(2)専門家の処方例を一目で把握、(3)標準的治療を最短距離でキャッチできます。巻頭企画では“社会健康医学”をテーマに専門家にご解説いただき、巻末付録では「おさえておきたい!希少疾患のガイドライン」を掲載し、ガイドラインの最新情報が入手できるようにまとめています。ぜひ診療ガイドラインを活かした質の高い医療の提供にお役立てください。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する日常診療に活かす 診療ガイドラインUP-TO-DATE 2024-2025定価13,200円(税込)判型A5判変型頁数1,120頁発行2024年2月監修門脇 孝、小室 一成、宮地 良樹ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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BPSDが死亡リスクに及ぼす影響~日本人コホート研究

 認知症の行動・心理症状(BPSD)は、認知症の初期段階から頻繁にみられる症状であり、軽度認知障害(MCI)でも出現することが少なくない。しかし、BPSDが予後にどのような影響を及ぼすかは不明である。国立長寿医療研究センターの野口 泰司氏らは、認知障害を有する人におけるBPSDと死亡率との関連を踏査した。Journal of epidemiology誌オンライン版2024年3月23日号の報告。 2010~18年に国立長寿医療研究センターを受診した、初回外来患者を登録したメモリークリニックベースのコホート研究であるNCGG-STTORIES試験に参加した、MCIまたは認知症と診断された男性1,065例(平均年齢:77.1歳)および女性1,681例(同:78.6歳)を対象に、縦断的研究を実施した。死亡関連の情報は、参加者または近親者から返送された郵送調査より収集し、最長8年間フォローアップ調査を行った。BPSDは、ベースライン時にDementia Behavior Disturbance Scale(DBD)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に死亡した患者は、男性で229例(28.1%)、女性で254例(15.1%)であった。・Cox比例ハザード回帰分析では、DBDスコアが高いほど、男性で死亡リスク増加との有意な関連が認められたが(最適四分位スコア群と比較した最高四分位スコア群のハザード比:1.59、95%信頼区間[CI]:1.11~2.29)、女性では認められなかった(同:1.06、95%CI:0.66~1.70)。・DBDの項目のうち死亡リスクの高さと関連していた項目は、日常生活に対する興味の欠如、日中の過度な眠気、治療拒否であった。 著者らは、「認知機能低下が認められる男性において、BPSDと予後不良との潜在的な関連性が示唆された」としている。

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夜間の屋外照明は脳卒中リスクを高める?

 大都市の明るい光は人々の心をワクワクさせるかもしれないが、脳卒中リスクを高める可能性もあることが、浙江大学(中国)医学部のJian-Bing Wang氏らによる研究で示された。この研究結果は、「Stroke」3月25日号に掲載された。Wang氏らは、夜を明るく照らす屋外の人工光(以下、夜間の人工光)が脳の血流に影響を与えて脳卒中が起こりやすくなるようだとの見方を示している。研究の背景情報によると、人工光の過剰な使用によって、世界人口の5分の4が光害環境で暮らさざるを得ない状況に置かれているという。 Wang氏らは、中国の東海岸の主要な港湾都市で工業都市でもある寧波(人口約820万人)に住む2万8,302人の成人(平均年齢61.51±11.02歳)のデータを分析し、夜間の人工光への曝露と脳血管疾患との関連を検討した。脳血管疾患には、動脈に血栓が詰まって脳への血流が阻害されることで生じる脳卒中〔虚血性脳卒中(脳梗塞)〕や脳の動脈の出血による脳卒中(出血性脳卒中)がある。夜間の人工光への曝露量と大気汚染を、光害をマッピングした衛星画像を用いて評価し、それぞれ4群に分類した。 2015年から2021年までの6年間の追跡期間中に1,278件の脳血管疾患(虚血性脳卒中777件、出血性脳卒中133件)が発生していた。解析の結果、夜間の人工光の曝露量が最も多い群では最も少ない群に比べて、脳血管疾患のリスクが43%高いことが示された。また、大気中の粒子状物質(燃料の燃焼、粉塵、煙など)であるPM2.5やPM10、自動車や発電所などから排出される窒素酸化物の曝露量が最も多い群では最も低い群に比べて脳血管疾患のリスクがそれぞれ41%、50%、31%高いことも判明した。 これらの研究結果に基づきWang氏は、「潜在的に有害な影響から身を守るため、特に都市部に住んでいる人に、夜間の人工光への曝露量を減らすことを考慮するよう助言したい」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースの中で述べている。 Wang氏らの説明によれば、夜間に持続的に明るい光にさらされると睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が抑制される。また、夜間の人工光によって質の高い睡眠が妨げられることで、脳卒中リスクが高まる可能性が考えられるという。同氏は、「大気汚染だけでなく、光害などの環境要因による疾病負担を軽減するため、より効果的な政策と予防戦略を立てる必要がある。このことは特に、人口密度が高く大気汚染レベルの高い地域に住む人にとって重要だ」と指摘している。

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加糖飲料とフルーツジュースは男子の2型糖尿病リスクを高める

 幼少期から10代前半にかけて、加糖飲料や果汁100%ジュースを多く摂取していた男子は、思春期後期に成長した時点でインスリン抵抗性が亢進し、2型糖尿病の発症リスクが高い状態にあることを示すデータが報告された。米ハーバード大学医学大学院のSoren Harnois-Leblanc氏らの研究によるもので、米国心臓協会(AHA)の生活習慣科学セッション(EPI-Lifestyle 2024、3月18~21日、シカゴ)で発表された。 この研究は、1999年から米国マサチューセッツ州東部で実施されている、母親とその子どもを対象とする長期コホート研究(Project Viva)のデータを用いて行われた。Project Vivaの研究期間中に出産した妊婦は2,128人で、子どもが幼児期(年齢中央値3.1歳)、小児期(同7.6歳)、および思春期前期(同12.9歳)という三つの時点で、母親に対して食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた子どもの食習慣の調査を実施。この調査に回答し、かつ糖尿病の家族歴のない子どもは972人で、そのうち思春期後期(年齢中央値17.4歳)に血液検査を受けていた455人(女子240人)を解析対象とした。 FFQから、加糖飲料、果汁100%ジュース、および、果物(ジュースではなく果実そのもの)の摂取量が把握され、それぞれ3回の調査の平均値を算出。それらの値と思春期後期の空腹時血糖値、HbA1c、インスリン抵抗性(HOMA-IR)との関連が検討された。この関連の解析に際しては、子どもの年齢、BMI(Zスコア)、生活習慣、食事の質、母親のBMI、社会経済的地位などの影響を調整した。 解析の結果、男子の場合、幼少期から思春期前期に加糖飲料を毎日約8オンス(約237mL)摂取していた場合に、思春期後期のインスリン抵抗性が34%高いことが分かった。インスリン抵抗性は、筋肉や肝臓などの細胞が、血液からブドウ糖を取り込みにくくなっていることを意味し、インスリン抵抗性の高い状態は2型糖尿病の発症リスクが高い。実際、この研究では、幼少期から思春期前期にかけて加糖飲料を毎日約8オンス摂取していた男子は、思春期後期の空腹時血糖値が5.6mg/dL高値であり、HbA1cは0.12%高かった。一方、女子では顕著なリスク上昇が見られなかった。 幼少期から思春期前期にかけて果汁100%ジュースを1日に1回摂取することは、男子では思春期後期のHbA1cが0.07%高いことと関連があったが、女子では0.02%というわずかな上昇にとどまっていた。なお、果物の摂取量に関しては、男子・女子ともに、2型糖尿病リスクに明らかな影響を及ぼしていないことが示された。 本研究には関与していない、米国心臓協会(AHA)の栄養委員会のメンバーであるPenny Kris-Etherton氏は、「2型糖尿病の発症リスクを示す複数の指標が、これほど若い時期から上昇していることは驚くべきことだ。これまでにも、加糖飲料の摂取を制限して、代わりに多くの栄養素を豊富に含んでいる果物を丸ごと摂取することが推奨されてきているが、報告された研究結果はその推奨の内容を支持するものである」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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近くにあるAEDが心停止者に使われることはまれ

 この数年で、心停止者の命を救うための自動体外式除細動器(AED)を公共施設に設置する動きが大きく広がっているが、残念ながら、実際にAEDが使用される機会は少ないようだ。米ミズーリ大学カンザスシティ校のMirza Khan氏らによる研究で、病院の外の環境で起こった心停止(院外心停止)約1,800件のうち、AEDが使用されたのは13件のみであったことが示された。この研究結果は、米国心臓病学会(ACC 24、4月6〜8日、米アトランタ)で発表予定。 院外心停止症例の多くで近くにAEDが設置されていたが、バイスタンダー(心停止者の近くに居合わせた人)がそれに気付かなかった可能性がある。Khan氏は、「公共の場でのAEDの普及は、人々が適切なタイミングと方法でそれらを使用できるようにするためには重要だ。ただし、使用可能なAEDが近くにあることを人々が知る必要がある。適切な場所にAEDを設置するだけでは不十分なのだ」と指摘する。 米疾病対策センター(CDC)によると、家庭や公共の場では毎年35万6,000件以上の心停止が発生しているが、その生存率は約10%に過ぎない。AEDは胸部に装着する小型の高性能装置で、心停止者の心臓のリズムを素早く分析し、必要に応じて救命の可能性のある電気ショックを与える。AEDは、訓練を受けていない人でも簡単に使用できるように設計されており、多くの州で空港、ショッピングモール、学校、スポーツジムなどの公共の場に設置することが法律で義務付けられている。 今回の研究は、AEDが実際にどの程度活用されているのかを調べたもの。Khan氏らは、米国の登録データを用いて2019年から2022年の間にカンザスシティの家庭内または公共の場で発生した1,799件の心停止症例のデータを分析した。また、カンザスシティのAEDの設置場所を示した地図のデータベースに基づき、最寄りのAEDまで歩いた場合にかかる時間を算出した。 心停止症例の大部分(85%)は家庭内で発生しており、そのうちの42%でバイスタンダーによる心肺蘇生法(CPR)が施されていた。ただ、これらの症例の4分の1近くでは、患者の自宅から徒歩4分以内にAEDが設置されていたが、AEDが使用されたケースはなかった。 一方、公共の場で発生した心停止症例では、約42%でバイスタンダーがCPRを施していたが、AEDが使用されたのは約7%だった。また、公共の場で発生した症例の半数近くでは、徒歩4分以内の場所にAEDが設置されていた。バイスタンダーがCPRを行い、かつ心停止が起こった場所から徒歩4分以内の場所にAEDが設置されているという「最善のシナリオ」のケースでも、AEDが使われたのは、わずか4例中1例程度だったという。 幸いなことに、多くの地方自治体がAEDにアクセスできる場所について市民の認知度を高める取り組みを進めている。Khan氏は、「各地の地方自治体や組織の熱意を目の当たりにして心強く感じてきた。彼らは、われわれが期待するAEDの設置数と実際の利用率との間のギャップを縮めるための取り組みを次の段階に進めるため、今回の研究を役立てることに極めて意欲的だ」と言う。 ACCによると、人々が心停止の兆候について知識を得て理解することは極めて重要だ。具体的な兆候としては、突然倒れて意識を失う、叫んだり揺さぶったりしても反応しない、息を切らしている、あるいは呼吸していない、脈が触知できないなどが挙げられる。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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1日30分座位時間を減らすと高齢者の血圧が低下

 高齢者に対し、座って過ごす時間を減らすためのシンプルな介入を6カ月間実施したところ、1日当たりの座位時間を30分以上減らすことに成功し、収縮期血圧も低下したとする研究結果が報告された。米カイザーパーマネンテ・ワシントン・ヘルスリサーチ研究所のDori Rosenberg氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月27日掲載された。 今回の研究の背景情報によると、高齢者は通常、起きている時間の65〜80%を座位で過ごしている。このような座位中心の生活は、心疾患や糖尿病を招きかねない。 Rosenberg氏らは今回、60〜89歳でBMIが30〜50の成人283人(試験開始時の平均年齢68.8歳、女性65.7%)を対象にランダム化比較試験を実施し、座位時間を減らし、血圧を改善することを目的にした介入の効果を検討した。対象者は、6カ月にわたってI-STANDと呼ばれる介入を受ける群(140人、介入群)と、そうした介入を受けない対照群(143人)にランダムに割り付けられた。I-STANDは座位行動を減らすために励ましや個別の目標設定を提供するもので、介入群に割り当てられた人は、健康的な生活に関する10回のコーチングセッションを受けたほか、ワークブックやスタンディングデスク、活動量計を提供された。また、試験開始時とその3カ月後には活動量計のデータに関するフィードバックも受けた。一方、対照群も健康的な生活に関するコーチングセッションを10回受けたが、その内容に立位や活動量を増やすことは含まれていなかった。 試験開始時には、147人(51.9%)が高血圧の診断を受けており、97人(69.3%)が1種類以上の降圧薬を服用していた。介入群での1日当たりの座位時間は、試験開始から3カ月後には平均31.44分、6カ月後には31.85分減少していた。また、介入群では6カ月後に収縮期血圧も平均3.48mmHg低下していた。 Rosenberg氏は、「これらの結果は非常に期待の持てるものだ。なぜなら、特に慢性的な痛みや身体能力の低下など、さまざまな制限を抱えて生活している可能性が高い高齢者にとって、座位時間を減らすことは身体活動を増やすよりも容易な変化だからだ」と話している。 研究グループは、今回の研究で得た知見をさらに進展させる可能性のあるいくつかのフォローアップ研究を検討しており、特に、この介入法を簡略化しても同様の効果が見込めるのかどうかに高い関心を抱いている。Rosenberg氏は、「どの要素が最も影響力があるのかは不明だ。座位時間を減らすために、スタンディングデスクや活動量計、10回のコーチングセッションの全てが必要なのか。それとも、そうした要素が一つか二つあれば間に合うのか。こうしたことを明らかにすることは、リソースの限られた医療現場でこの介入法を効果的に導入するための方法を検討する際に役立つだろう」と話している。研究グループはさらに、こうした介入が高齢者の転倒リスクや脳の健康に与える影響について調査することにも関心を示している。

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人間の脳は世代を追うごとに大きくなっている

 人間の脳は、世代を重ねるごとに大きくなっていることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、脳のサイズが大きくなることで脳の予備能が高まり、それが認知症の発症リスクの低下に寄与している可能性があると考察している。米カリフォルニア大学デービス校アルツハイマー病研究センター所長のCharles DeCarli氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に3月25日掲載された。 この研究では、1925年から1968年の間に出生したフラミンガム心臓研究参加者3,226人(女性53%)の脳MRIのデータを用いて、出生年代により頭蓋骨および脳の容積に差が認められるのか否かを検討した。これらの参加者の中に認知症患者や脳卒中の既往歴のある人は含まれていなかった。参加者の脳MRIは、1999年3月18日から2019年11月15日の間に実施され、実施時の対象者の平均年齢は57.4歳(範囲45〜74歳)だった。 その結果、脳のサイズは年代を追うごとに徐々に大きくなっていることが明らかになった。例えば、1930年代生まれの人に比べて1970年代生まれの人では、頭蓋内容積が6.6%(1,234mL対1,321mL)、白質の体積が7.7%(441.9mL対476.3mL)、海馬の体積が5.7%(6.51mL対6.89mL)、脳表面積が14.9%(1,933cm2対2,222cm2)大きかった。 こうした結果を受けてDeCarli氏は、「生まれた年代は、脳の大きさと長期的な脳の健康に影響を与えるようだ」と話している。 研究グループは、これらの結果は米国でのアルツハイマー病発症の傾向と一致する可能性があるとの見方を示している。現在、米国のアルツハイマー病患者の数は約700万人に上り、その数は2040年までに1120万人を超えると予想されている。一方で、全人口に占めるアルツハイマー病患者の割合は減少傾向にあり、認知症の発症率は、1970年代から10年ごとに約20%減少していることが過去の研究で示されている。こうしたことを踏まえて研究グループは、「アルツハイマー病の発症率が低下している理由の一つには、脳のサイズが大きくなっていることが関係しているのかもしれない」との見方を示している。 DeCarli氏は、「今回の研究で観察されたような、より大きな脳の構造は、脳の発達および脳の健康状態の向上を反映している可能性がある。脳のサイズが大きいということは、脳の予備能が大きいということであり、アルツハイマー病やそれに関連する認知症のような加齢に伴う脳疾患の晩年における影響を緩和する可能性があるからだ」と話している。

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