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児童生徒のサングラス・カラーレンズの使用に関する見解/日本眼科学会ほか

 児童生徒の学校生活におけるサングラス・カラーレンズなどの使用について、日本眼科学会、日本眼科医会、日本弱視斜視学会、日本小児眼科学会、日本近視学会、日本視能訓練士協会が共同で見解を発表した。 近年の紫外線対策への関心の高まりを受け、学校での着用を巡る議論が増えているが、今回の発表では「一律の常用は推奨せず、個々の特性や疾患に応じた個別配慮を求める」という方針が示されている。主要なポイントを以下に整理する。通常の眼鏡レンズにもUVカット機能がある 紫外線防御効果はレンズの色や濃さではなく、レンズに備わったUVカット性能によって決まる。視力矯正のための透明レンズでもUVカット機能を備えたものが多く、紫外線を十分にカットできる。紫外線対策の基本は環境の工夫 子供の紫外線対策は、つばのある帽子の着用や日陰の利用、活動時間などの環境の工夫が基本となる。医療として遮光眼鏡やカラーレンズ眼鏡が必要な子供 眼疾患による羞明(まぶしさ)、術後の管理、片頭痛、感覚過敏などの理由により、医師の判断の下で遮光眼鏡やカラーレンズ眼鏡を使用している子供がいる。これらは、まぶしさ、見えにくさや病気の誘発の原因となる光の一部を抑えるための医療的配慮であり、学校生活や社会生活において適切な理解と配慮が望まれる。学校生活での日常的な着用について 健康な目の子供に対して、薄い色を含むカラーレンズの使用を学校生活全般で日常的に推奨する十分な科学的根拠はない。学校生活では、学習活動や実験、体育活動、登下校時の安全確認など、色や明暗、コントラストを正確に認識することが求められる場面が多い。近視対策には屋外活動が大切 屋外活動は、近視の発症や進行を抑えるために有効であると報告されている。帽子の着用や日陰の利用、UVカット機能のある眼鏡やサングラスによる紫外線対策を行っても、近視予防に必要な光環境を保つことは可能。適切な紫外線対策を行いながら、積極的に屋外で活動する時間を確保することが大切である。 同見解は子供のサングラスやカラーレンズ眼鏡の使用を一律に制限するものではなく、子供の目の健康を守るためには、一人ひとりの目の状態や生活環境、活動内容に応じた適切な対応が大切であるとしている。

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結核治療へのデジタル服薬支援の導入、治療成功率・脱落率を改善/BMJ

 薬剤感受性結核患者の治療において、多面的双方向性のデジタル服薬支援ツール「結核治療支援ツール(TB-TST)」は治療成功率および脱落率を改善させ、とくに若年層や女性でその効果が大きく、資源の限られた環境下での結核治療の服薬順守支援における実現可能性と有効性が示された。アルゼンチン・Instituto de Efectividad Clinica y SanitariaのFernando Rubinstein氏らが、ブエノスアイレスにある公立基幹病院4施設において実施したプラグマティックな無作為化比較試験の結果を報告した。著者は、「今後の研究では、アプリの利用状況、新型コロナウイルス感染症の流行などの状況的要因、費用対効果、および結核以外の慢性疾患の管理における本ツールの活用について評価すべきである」とまとめている。BMJ誌2026年8月6日号掲載の報告。モバイルアプリを用いた服薬支援+標準治療vs.標準治療で治療成功率を比較 研究グループは、初発薬剤感受性結核と診断されている、または薬剤感受性不明の結核に対する治療を開始している16歳以上の患者で、スマートフォンを定期的に利用でき、かつ独力または支援を受けてスマートフォンを操作できる患者を、標準治療群(対照群)または標準治療+TB-TST群(介入群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 TB-TSTは、スペイン語対応の患者用モバイルアプリと医療チームメンバー用のダッシュボードで構成され、毎日の服薬順守状況の報告、双方向コミュニケーション、教育リソース、および服薬順守確認のためのイソニアジドの尿中代謝物を検出する自宅尿検査を統合した新しいデジタル服薬支援ツールで、患者、医療従事者、バイオエンジニアおよび結核専門家により開発された。 介入の性質上、患者および支援者は割り付けに関して盲検化されていないが、医師は患者から知らされない限り盲検下にあり、追跡調査および解析を行う研究スタッフも盲検を維持した。 主要評価項目は治療成功(WHOの定義による治癒または治療完了)、副次評価項目は追跡調査からの脱落(2ヵ月以上連続する治療中断)であった。治療成功率は82%vs.74% 2020年11月~2023年7月に1,017例がスクリーニングを受け、適格基準を満たした555例が登録および無作為化された(対照群278例、介入群277例)。 患者背景は、280例(50%)が女性で、平均年齢33歳(SD 13)、年齢中央値30歳(範囲:17~85)であった。 登録後に薬剤耐性結核が判明あるいは入院などプロトコールから逸脱した30例を除外した525例(登録患者の94.6%)が解析対象となった。 ITT解析の結果、治療成功率は介入群82%(208/255例)、対照群74%(201/270例)で介入群が高かった(リスク群間差:7.1%[95%信頼区間[CI]:0.1~14.1]、粗リスク比:1.10[95%CI:1.00~1.20]、p=0.05)。 追跡調査からの脱落率は、介入群で低かった(それぞれ17%、24%、リスク比:0.70、95%CI:0.50~0.98、p=0.04)。 探索的なサブグループ解析の結果、女性および35歳未満の患者で良好な結果がみられた。

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非分節型白斑、ウパダシチニブの有効性・安全性を確認/Lancet

 12歳以上の非分節型白斑患者において、ウパダシチニブ15mgの1日1回経口投与によりプラセボと比較し、顔面および全身の臨床的に意味のある色素再沈着が認められ、新たな安全性に関する懸念は確認されなかった。フランス・コート・ダジュール大学のThierry Passeron氏らが、アジア、欧州、北米および南米の18ヵ国138施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Viti-Up試験」の48週時の主要解析結果を報告した。非分節型白斑は、皮膚の色素脱失を引き起こす自己免疫疾患で、全身療法として承認されたものはなく、新たな治療選択肢が求められていた。Lancet誌2026年8月15日号掲載の報告。主要評価項目は48週時のT-VASI 50達成率およびF-VASI 75達成率 Viti-Up試験は、Viti-Up-1およびViti-Up-2で構成される。いずれの試験も、対象は、顔面および体幹に非分節型白斑を認め、Facial Vitiligo Area Scoring Index(F-VASI)が0.5以上、Total Vitiligo Area Scoring Index(T-VASI)が5以上50未満の12歳以上の患者とした。T-VASIが5以上10未満の場合は、1種類以上の副腎皮質ステロイド外用薬および/または1種類以上のカルシニューリン阻害外用薬による治療に失敗した、または活動性白斑の兆候が認められた患者を対象とした。 研究グループは、適格患者をウパダシチニブ群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、15mgを1日1回経口投与した。 両試験の主要評価項目は、48週時のT-VASI 50達成率(T-VASIのベースラインからの50%以上低下を達成した患者の割合)、およびF-VASI 75達成率(F-VASIのベースラインからの75%以上低下を達成した患者の割合)であった。 安全性は、無作為化され48週間の二重盲検期間中に1回以上試験薬を投与されたすべての患者を対象に評価した。両試験とも2つの主要評価項目を達成 2023年12月19日~2024年10月14日に、スクリーニングされた750例のうち614例が登録され、Viti-Up-1試験で308例(ウパダシチニブ群206例vs.プラセボ群102例、女性156例[51%]、男性152例[49%])、Viti-Up-2試験で306例(ウパダシチニブ群205例vs.プラセボ群101例、女性151例[49%]、男性155例[51%])が無作為化された。 48週時のT-VASI 50達成率は、ウパダシチニブ群がプラセボ群より有意に高値であった(Viti-Up-1試験:19%vs.6%、Viti-Up-2試験:21%vs.6%、いずれもp<0.001)。また、48週時のF-VASI 75達成率も、ウパダシチニブ群がプラセボ群より有意に高値であった(Viti-Up-1試験:25%vs.6%、Viti-Up-2試験:23%vs.7%、いずれもp<0.001)。 安全性については、両試験とも、主要心血管有害事象、静脈血栓塞栓症、消化管穿孔、活動性結核、リンパ腫、非黒色腫皮膚がん、帯状疱疹以外の日和見感染症の報告はなく、ウパダシチニブ群の安全性プロファイルは既報と一致していた。

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ドンペリドン、葛根湯などに重大な副作用追加/厚労省

 2026年8月25日、厚生労働省は添付文書の改訂指示を発出し、ドンペリドンおよびメトクロプラミド、葛根湯、一部の免疫チェックポイント阻害薬などにおいて「重大な副作用」が追記された。ドンペリドン、メトクロプラミドに「重篤な不整脈」 ドンペリドン(商品名:ナウゼリン錠ほか)、メトクロプラミド(同:プリンペラン錠ほか)および塩酸メトクロプラミド(同:プリンペラン注射液)に対し、国内外の疫学調査において致死性不整脈および心突然死のリスク増加が示唆されたことから、「重大な副作用」に「重篤な不整脈」が追加された。また、「重要な基本的注意」には「心室頻拍、心室細動等の重篤な不整脈があらわれることがあるため、必要最小限の使用にとどめ、長期にわたり漫然と投与しないこと、関連する症状が認められた場合には速やかに受診するよう患者を指導すること、心電図検査等を行うこと」が追加された。葛根湯に「多形紅斑」 医療用の葛根湯において、「重大な副作用」の項に「多形紅斑」が追加された。多形紅斑症例を評価した結果、本剤との因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。国内では6例が集積し、このうち4例は医薬品と事象との因果関係が否定できない症例で、死亡例はなかった。 なお、一般用医薬品の葛根湯含有製剤では、「相談すること」の項に追加され、葛根湯エキスにジリュウエキスまたはビタミン類を配合した製剤や一般用漢方製剤についても同様の改訂がなされた。抗PD-L1/抗CTLA-4抗体薬に「ぶどう膜炎」 「重大な副作用」の項に「ぶどう膜炎」が追加された。また、「重要な基本的注意」にぶどう膜炎があらわれることがある旨を追記し、眼の異常の有無を定期的に確認すること、眼の異常が認められた場合には速やかに医療機関を受診するよう患者を指導することとした。<対象医薬品>・アベルマブ(同:バベンチオ)・アテゾリズマブ(同:テセントリク)・デュルバルマブ(同:イミフィンジ)・トレメリムマブ(同:イジュド)抗PD-1/抗PD-L1/抗CTLA-4抗体薬*に「血球貪食性リンパ組織球症」 国内症例を評価した結果、抗PD-1/抗PD-L1/抗CTLA-4抗体薬との因果関係が否定できない症例が集積したことから、「重大な副作用」に「血球貪食性リンパ組織球症」が追加された。*:ニボルマブ、ぺムブロリズマブ、アテゾリズマブ、セミプリマブを除く<対象医薬品>・チスレリズマブ(同:テビムブラ)・レチファンリマブ(同:ジニイズ)・アベルマブ(同:バベンチオ)・デュルバルマブ(同:イミフィンジ)・イピリムマブ(同:ヤーボイ)・トレメリムマブ(同:イジュド) さらに、イピリムマブとニボルマブ(オプジーボ)では、上記以外の重大な副作用として、「重度の食道炎」が追加されている。免疫反応に起因すると考えられる重度の食道炎があらわれるためで、異常が認められた場合には副腎皮質ホルモン剤の投与などの適切な処置を行う旨が追記された。 このほか、複数の医薬品で「使用上の注意」が改訂されている。◯アパルタミド「重大な副作用」に無顆粒球症、好中球減少症、白血球減少症を追加し、投与中は定期的に血液検査を実施するなど十分に観察することとした。◯オランザピン(経口剤)抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐に対して使用する場合には、糖尿病またはその既往がある患者への投与について禁忌が解除され、「警告」が新設された。血糖値の頻回なモニタリングや、必要最小限の投与量・投与期間とすることなどを記載した。◯アセトアミノフェンおよびアセトアミノフェン含有製剤重篤な腎障害、肝障害、敗血症、栄養障害などによるピログルタミン酸蓄積の素因がある患者について、アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスが発現するおそれを「特定の背景を有する患者に関する注意」に追記。対象にはアセトアミノフェン単剤のほか、複数の配合剤が含まれる。◯タラポルフィンナトリウム「重大な副作用」に食道狭窄、食道穿孔を追加。化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残再発食道がんに対する治療におけるレーザー光照射後の注意事項が改訂された。 このほか抗HIV薬において、併用禁忌に関する記載が改訂された。

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仕事関連のストレスが中高年の睡眠問題と関連

 仕事関連のストレスが、中高年の働く人々の睡眠の質やウェルビーイングと関連している可能性が、新たな研究で示された。50~66歳の就労者を対象とした小規模な調査から、睡眠障害と診断されたことがないにもかかわらず、対象者の多くが持続的な睡眠問題を抱えていることが明らかになった。英エディンバラ大学デジタルヘルス・データサイエンス教授のAthanasios Tsanas氏らによるこの研究の詳細は、7月28日付で「Scientific Reports」に掲載された。 さらに懸念すべきことに、ほぼ10人中9人の研究参加者が、1年間の研究期間中に少なくとも1回、臨床的に問題となる睡眠状態の基準を満たしていた。論文の筆頭著者であるTsanas氏は、「睡眠障害と診断されたことのない集団で、これほど多くの睡眠問題が見つかったことには本当に驚いた」とニュースリリースの中で述べている。 この研究では、50~66歳の就労者45人を対象に1年間の追跡調査を実施した。参加者には、仕事のストレスや精神的ウェルビーイング、睡眠の質などを評価する自記式質問票に定期的に回答してもらった。また、腕時計型のウェアラブルデバイスを装着してもらい、睡眠や身体活動を測定した。最終的に1,901件の質問票への回答と、5,258日分のウェアラブルデバイスのデータを収集した。 収集されたデータを分析した結果、多くの参加者は1晩当たり平均7~8時間の睡眠時間を確保していたものの、睡眠の中断や乱れなどの睡眠の質に関わる問題を抱えていたことが明らかになった。研究グループは、「十分に休めていないと感じている」と報告した人が多かった理由は、睡眠不足ではなく睡眠の中断や乱れにある可能性が高いとの見方を示している。また、こうした睡眠問題は、就寝時刻が極端に遅いことや週末の睡眠パターンが平日と大きく異なるといった睡眠習慣よりも、ワークライフバランスや職場で憂うつやイライラを感じることなど、仕事関連のストレスと関連していることが示された。このことから、仕事関連のストレスが睡眠問題やウェルビーイング低下に関わる重要な要因である可能性があると研究グループは指摘している。 これらの結果についてTsanas氏は、「今回の解析によって、こうした睡眠やウェルビーイングの問題の多くが仕事に関連していること、全般的なウェルビーイングはワークライフバランスを維持できるかどうかに大きく左右されることが浮き彫りになった」と説明している。 共同研究者であるエディンバラ大学ビジネススクールのBelinda Steffan氏は、「これまでの研究から、睡眠が仕事に影響を及ぼし、また仕事が睡眠に影響を及ぼすことは分かっていた。しかし、今回のような診断を受けたことのない一般の人々において、これほど多くの人々が睡眠に問題を抱えていたことは驚きだった」とニュースリリースの中で述べている。 さらにSteffan氏は「今回の研究は、睡眠が職場における健康とウェルビーイング上の重要な課題であることを明確に示している。企業や雇用主は、仕事に関連した睡眠の問題が従業員に与える影響を考慮する必要がある。今回の研究では50歳以上の就労者を対象としたが、その重要性はあらゆる年齢層に当てはまる」と述べている。

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便潜血検査免疫法キットの郵送により、人種/民族を問わず大腸がんスクリーニング受診率が上昇

 便潜血検査免疫法(FIT)キットの郵送により、人種/民族を問わず大腸がん(CRC)スクリーニング受診率を有意に上昇させることができるという研究結果が、「Annals of Family Medicine」5/6月号に掲載された。 米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のAnisha P. Ganguly氏らは、人種/民族別に、CRCスクリーニング介入の効果を比較した。この介入は、スクリーニング対象患者へのFITキットの郵送と、FITの結果が陽性であった患者に対する患者ナビゲーションで構成された。解析対象は、米国連邦認定保健センターで診療を受けていた患者3,734人であった。 その結果、介入群と通常ケア群のCRCスクリーニング受診率の調整リスク差(RD)は18.3パーセントポイントであった。調整RDは、ヒスパニック系患者で16.7パーセントポイント、非ヒスパニック系黒人患者で13.9パーセントポイント、非ヒスパニック系白人患者で20.7パーセントポイントであり、有意差は認められなかった。 Ganguly氏は、「今回の解析により、大腸がんスクリーニング検査キットの郵送は、多様な集団のスクリーニング受診率を向上させ得ることが示された。これは重要なことである。われわれは、スクリーニングにおけるこうした革新的な取り組みによって、最もアクセスが難しい集団のアウトカムを改善し、大腸がんの格差是正を進めたいと考えているからだ」と述べている。

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【GET!ザ・トレンド】難治性てんかん診療の最前線(後編)

開頭のジレンマを打開する新たなアプローチ血管内にカテーテルやガイドワイヤーを通す技術は1950年代から脳神経外科の日常診療で行われており、その先端から脳波を記録するアイデアは昔からありました。しかし、安定した記録などの技術的課題からなかなか実現には至っていませんでした。近年、技術が進化し、筑波大学の松丸氏らのグループが開発した「EP-01(未承認品)」という脳血管内電極の医師主導治験は患者登録まで完了しました。この治験は難治性てんかんの術前検査の一環として、頸静脈から頭蓋内の静脈洞に電極を留置して脳波を記録できるかを確認するために実施されました。世界でも血管内ステント電極を用いたブレイン・マシン・インタフェース(BMI)の研究が発表されるなど、多くの人が脳血管内電極の可能性に注目しています。血管内に機器を入れる点では侵襲的ですが、頭蓋骨に穴を開ける開頭や穿頭の手技と比較すれば、はるかに低侵襲といえます。患者の負担が大幅に軽減されることが期待されています。図 脳血管内電極EP-01(未承認品)画像を拡大する検査や専門施設への紹介をためらわせる「壁」を下げる「脳の血管からのアプローチ(脳血管内電極)」という新しい技術が実際の診療に導入されれば、臨床現場や患者の未来はどう変わるのでしょうか? 非常に明確なのは、検査や専門施設への紹介をためらわせる「壁」が劇的に下がるということです。難治性てんかんの手術を検討する際、片側に明確な異常があり焦点がはっきりしているケースでは、頭蓋内電極検査をスキップして手術に進めます。しかし、両側から異常脳波が出ているケースやMRIで異常が見つからないケースなど、どうしても頭蓋内に電極を入れて精査すべき患者も多くいます。もし血管からのアプローチによって検査の侵襲が低くなれば、開頭への恐怖感やリスクを避けてきた患者にとって、これは間違いなく大きなメリットになります。そして重要なのは、その恩恵が患者や家族だけでなく、「主治医である医師」にも及ぶという点です。てんかんは患者数が多く、主治医が専門医とは限らないのが実情です。非専門医が、大きな身体的負担を強いる検査を勧めることには葛藤が伴います。しかし、負担の少ない脳血管内電極が普及すれば、主治医が外科治療を行う専門施設へ患者を紹介する際の「心理的なバリア」も大きく下がるはずです。実用化に向けた課題この脳血管内電極が今すぐすべての患者に使えるわけではなく、実用化に向けてクリアすべき課題も存在します。治験段階では、1本のガイドワイヤーの先に電極が1個だけついたものを、片側に最大3本(両側で最大6本)留置して検査を行いました。具体的には、海綿静脈洞や横静脈洞といった頭蓋内の静脈です。前述の医師主導治験の主な対象患者は「側頭葉てんかんの患者」でした。側頭葉てんかんの場合、脳の奥深くの内側構造が焦点になっていることが多いため、海綿静脈洞に置いた電極でそこをピンポイントでチェックするのが主目的でした。そのため、現在の留置方法や電極数では、側頭葉以外のさまざまな脳領域まで細かく同定することは残念ながらまだできません。したがって、今後の大きな課題の1つ目は、記録できる電極数を増やし「空間解像度」を少しでも高めていくことです。より多くのポイントから同時に細かく脳波を記録できるようになれば、この技術の意義はさらに高まります。 2つ目は、大脳皮質の静脈など「より脳に近い細い静脈へのアプローチ」です。事前の動物実験や慎重な臨床研究が不可欠ですが、皮質静脈の枝を遡り、多様な焦点に対して多点に留置できるようになれば、診断能力の飛躍的な向上を意味します。BMIと「治療可能な認知症」へのブレークスルー脳血管内電極という技術が確立された暁には、てんかん治療の枠を越え、他の医療分野にも大きなブレークスルーをもたらすと考えられており、非常に楽しみな領域です。まず1つ目の可能性は、BMIやBCIへの応用です。すでに注目を集めていますが、脳血管内電極は脳の活動を記録するだけでなく、将来的には脳へ刺激を送ることも可能になるでしょう。脳とコンピュータをつなぐきわめて負担の少ないインターフェースとして、大きなポテンシャルを秘めています。そして2つ目が、最近注目を集めている「てんかんと認知症(アルツハイマー病)の関わり」における活用です。昔からアルツハイマー病はてんかんの合併率が高いと言われてきました。数年前、「卵円孔電極」という特殊なテクニックを使ってアルツハイマー病患者の脳波を調べたところ、通常の頭皮脳波では検出できない「てんかん性の異常波や発作活動」が検出されたという興味深い報告がありました。これは、認知症と診断されている人の中に、側頭葉てんかんが原因で認知機能を落としている患者が一部いるということです。そうした患者は、適切な抗発作薬を使用することで認知機能が改善する、つまり「治療可能な認知症」である可能性を示しています。こうした患者を見つけ出して治療につなぐことができれば大きな希望となりますが、そのためだけに「開頭や穿頭して電極を入れるか? 」と問われれば、身体的負担が大きすぎます。そのときに大きな威力を発揮するのが脳血管内電極です。頭蓋骨を開けず、血管からアプローチして深部の異常波をキャッチできるこの技術なら、認知症の患者に対してもより安全に検査を行えるようになるはずです。臨床医の皆さまへ てんかんの診断や治療は日々進歩しており、検査や治療へ進むためのハードルは着実に下がりつつあります。数十年前は「開頭切除」しかなかった外科治療も、現在ではより身体的負担の少ない低侵襲な電気刺激療法など、多様な選択肢が広がっています。日々お忙しい中で専門外の知識をアップデートし続けることは容易ではないかもしれませんが、医療は絶えず進歩しています。この記事をきっかけに最新治療に関心を持っていただき、患者が新たな治療へと踏み出す「最初のハードル」を共に下げていただければと切に願っております。また現在、日本からの新しい医療技術の発信が減少し、円安などの経済的要因も相まって、海外の最新技術を国内に導入することさえ困難になりつつある危機的な現状があります。だからこそ、日本独自の技術をしっかりと開発し、世界へ発信していくことがこれまでに増して重要です。今回ご紹介した日本初の画期的なアプローチである「脳血管内電極」が実用化されれば、てんかん診療、ひいては世界の医療を大きく変える可能性を秘めています。次世代の希望となるこの新たな挑戦を、ぜひ温かい目で見守っていただければ幸いです。>>前編に戻る

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第330回 夏の「霞が関」人事で気になったこと(後編) 医療界でも有名だったあの財務官僚、高市首相に嫌われ東京税関長に転出

財務事務次官には社会保障政策に精通した宇波弘貴氏こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週半ばから週末にかけて、山仲間4人と北海道に登山に行ってきました。登ったのは道東の斜里岳と雌阿寒岳(噴火警戒レベル2[火口周辺規制]のため7合目まで)ですが、昨年からのヒグマ被害報道の影響か、どちらも山中では数パーティーにしか会わず、とても静かな山行を楽しめました。驚いたのは、かつては大人気で夏は満員が常識だった雌阿寒岳登山口のオンネトー湖畔にある国設野営場がガラ空きだったことです。テントを張っていたのは、われわれのほかは1パーティーのみ。おかげで、他人を気にせず、盛大に焚き火をしながら夜遅くまでお酒を楽しむことができました。“ヒグマさまさま”と言えますが、ほかの山岳関係の観光地も例年より人出が少ない印象で心配になりました。ちなみに、我々はクマスプレーを地元のアウトドア店でレンタルして山に入ったのですが、幸いヒグマに遭遇することはありませんでした。さて、前回に引き続き、恒例の夏の「霞が関」人事について書いてみたいと思います。今回は財務省の気になった人事についてです。財務省は8月7日付で幹部人事を発令しました。トップの事務次官には、医療関係者もよく知る宇波 弘貴主計局長(1989年大蔵省)が起用されました。宇波氏は主計局を中心にキャリアを重ねるとともに、厚労省への出向経験もあります。直近の主計局長時代を含め、診療報酬改定を7回経験しており、8月8日付の日本経済新聞は宇波氏を紹介する記事で「『どの厚労省の官僚よりも数は多い』との自負がある」と書いています。2012年に関連法案が成立した「社会保障と税の一体改革」では企画段階から携わり、与野党合意に尽力したとされ、社会保障政策に精通した人物として知られています。宇波氏は本連載でも幾度か登場しています。2021年10月掲載の「第80回『首相≒財務省』vs.『厚労省≒日本医師会』の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」では、「医療関係者を驚かせた官僚人事がありました。財務省で長らく厚労予算をみてきた宇波 弘貴氏(前・財務省主計局次長)が首相秘書官になったのです。今回の首相秘書官人事では財務省から2人を起用した一方、厚労省からはとっていません。宇波氏は、医療費を含む社会保障関係費の増大に主計局主計官(厚生労働第一担当)の頃から警鐘を鳴らし、病床の再編による効率化の必要性を強く訴えてきた人物です。地域医療構想についても『うまくいかない場合は、より強い方策を取るべき』と語ったこともありました」と書きました。つまり、財務省の財政制度等審議会が毎年春、秋にまとめる「建議」などにおいて、日本医師会が嫌がるようなさまざまな改革案の提案を主導してきたのが宇波氏というわけです。もっとも、岸田政権時代とは違い高市政権は、消費税減税を決めるなど、財務省が最重要視してきた財政規律の維持に抗う政策を強力に推し進めようとしています。そのため、宇波氏の財務次官就任に驚く声もあったようです。前出の日本経済新聞の記事は「政権内に財務省を遠ざけようとの気配もある。市場をつなぎとめる重責を背負う」と宇波氏にエールを送っています。官僚たちを震撼させた主計局次長から東京税関長への転出人事事務次官がすんなり決まった一方で、すべての官庁の官僚たちを震撼させる人事もありました。日本経済新聞が書いた「政権内に財務省を遠ざけようとの気配」の影響をもろに被ったとされるのが、医療関係者がよく知るもう一人の財務官僚、一松 旬(ひとつまつ・じゅん)氏(1995年大蔵省)の人事です。一松氏は8月7日付の人事で主計局次長から東京税関長に転出することになりました。8月6日付の朝日新聞は、「エース級の財務官僚が異例転出へ 官邸幹部『協力的でなかったから』」と題する記事を配信、主計局次長が東京税関長に転出する人事について、「エース級の財務官僚がこのポストに就くのは異例。消費減税などで意見が対立した高市政権の強い意向があったとされ、官邸幹部は人事について『(一松氏は)政権にあまり協力的でなかったから』と語った」と書いています。同記事によれば、「(一松氏は)昨年10月から主計局次長として、政権肝いりの給付付き税額控除の実務を取り仕切ってきた。今後、制度設計が具体化するにあたり、留任が有力視されていた。(中略)一松氏は強い財政再建論者で、政治家に直言することで知られている。官邸幹部は『(一松氏は)初めての挫折を味わっているんじゃないか』と『左遷』含みの人事であることを認めた」とのことです。「財務省の主要幹部が官邸からその動きに目をつけられる中でも、一松氏は減税反対の持論を曲げなかった」一松氏の人事について8月13日付のデイリー新潮も、「財務省のエース“左遷”の裏で…財務官僚の動きを封じ込めた官邸の『徹底した情報管理』」と題する記事を発信、その背景をより詳しく報じています。同記事は、「一松氏は『近い将来の有力な事務次官候補』とされてきたが、高市早苗首相が設置した社会保障国民会議で消費税減税に反対する同氏の立ち回りが首相官邸に問題視され、実質的な左遷人事となった」と書くとともに、その具体的な“立ち回り”については次のように報じています。「政権内で問題となったのは、社会保障国民会議における議論の進め方だった。同会議は与野党議員が出席する実務者会議と有識者会議に分かれるが、実務者会議に呼ばれた経済団体や農業団体などは次々と減税に反対する考えを表明した。首相サイドからは『なぜ減税に賛成する人を呼ばないのか』と事務局に何度も問い合わせがあったという。この事務局を取り仕切っていたのが、主計局次長で社会保障担当の一松氏だった。(中略)(一松氏は)少子高齢化で社会保障費が増大する状況には強い危機感を持ち、社会保障の財源となる消費税の減税には徹底して反対していた。高市政権の誕生に伴い、新川浩嗣事務次官や宇波弘貴主計局長ら財務省の主要幹部が官邸からその動きに目をつけられる中でも、一松氏は減税反対の持論を曲げなかったという。このため、国民会議でも減税に反対する団体ばかりが呼ばれるなど、高市首相や首相周辺からは『政権に敵対する官僚』と反感を買ったようだ」。高市首相のお膝元・奈良県で地域別診療報酬の導入を検討一松氏は東大法学部を卒業して大蔵省に1995年入省、今回事務次官に就任した宇波氏と同様、主計局畑を進み、厚労省への出向経験を持つなど、社会保障政策に精通した官僚として知られています。岸田政権下では、2023年7月、宇波氏の後任として首相秘書官にも就いています。本連載でも、2024年4月掲載の「第209回 これぞ財務省の執念? 財政審・財政制度分科会で財務省が地域別単価導入を再び提言、医師過剰地域での開業制限も」で書いた、診療報酬の地域別単価導入のスキームを考えた官僚として登場しています。同記事では、「地域別の単価導入については、もはや財務省の“執念”と言ってもよさそうです。財務省が最初に地域別の診療報酬を公の場で提言したのは今から6年前、2018年4月の財政制度等審議会・財政制度分科会でした。この時財務省は医療政策における都道府県の権限が強化されつつある流れを受け、『地域別診療報酬を柔軟に活用するための枠組みを国として整備すべきだ。活用を検討する都道府県も現れている』としました。この時『活用を検討している』とされたのは奈良県で、そのスキームを考えたのが当時、財務省から出向し奈良県副知事を務めていた一松 旬氏、現在の首相秘書官です」と書きました。奈良県は高市首相の出身県であり、奈良県における後援会組織「高市早苗議員を内閣総理大臣にする奈良の会」の会長を務めているのは、奈良県医師会会長の安東 範明氏です。一松氏は副知事時代、日本医師会が反対する地域別診療報酬を奈良県で導入しようとし、奈良県医師会(安東氏)とも軋轢があったと想像できます。そうした経緯から、高市首相と一松氏との関係も当時からあまり良好ではなかったのかもしれません。一松氏もよもや高市氏が総理大臣になるとは思ってもいなかったでしょう。一松氏が就いた東京税関長は「上がりポスト」で、これから事務次官をうかがう幹部が就く役職ではないとされています。政府や自民党、はてまた日本医師会に敢然と立ち向かう官僚の“退場”に一抹の寂しさを感じる夏の終わりです。

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認知症のない期間、高血圧・糖尿病・喫煙の3因子で13年短縮

 高血圧、糖尿病、喫煙といった血管リスク因子は認知症や早期死亡に関連することが知られているが、これらが重複した際、認知症を発症せずに過ごせる期間(認知症のない生存期間)がどれほど短縮するのかは明らかでなかった。中国・清華大学のJiaqi Hu氏らの研究グループは、米国の大規模な動脈硬化リスクコミュニティ研究の解析から、中年期における血管リスク因子の蓄積が認知症のない生存期間を最大12.6年短縮させることを明らかにした。Neurology Open Access誌2026年9月号に掲載。 本研究では、米国4地域で実施された「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究」の参加者のうち、55歳時点で認知症がない1万2,409例(平均年齢56.2歳、女性56.0%)を対象に前向きコホート研究を行った。ベースライン時(1990~92年)における3つの主要な血管リスク因子(糖尿病、高血圧、現喫煙)の保有数(0~3個)を評価し、2022年まで継続的に追跡調査した。追跡期間中央値26.3年における認知症発症および認知症のない死亡について、競合リスクを考慮した制限付き平均生存期間(RMST)解析を用いて、55歳から95歳までの期間における「認知症のない生存期間」を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に3,008例が認知症を発症し、5,238例が認知症を発症せずに死亡した。・血管リスク因子が0個の群と比較して、3個の群では認知症の発症リスクが2.69倍(ハザード比[HR]:2.69、95%信頼区間[CI]:1.94~3.73)、認知症のない死亡リスクが5.61倍(HR:5.61、95%CI:4.67~6.74)と有意に上昇した。・55歳から95歳までの認知症のない生存期間は、血管リスク因子が0個の群で平均30.1年(95%CI:29.9~30.4)であったのに対し、1個で26.3年、2個で21.0年、3個の群では17.5年(95%CI:16.3~18.7)とリスク因子の増加に伴い段階的に短縮した(最大12.6年の短縮)。・認知症のない生存期間には性別や人種による差も観察され、リスク因子3個の群では女性(18.1年)が男性(16.6年)より長く、白人(19.6年)に比べて黒人(16.0年)で短かった。 著者らは、中年期の血管リスク管理によって認知症のない生存期間を最大12.6年延ばせる可能性があると指摘している。血管リスクが認知症発症と早期死亡の双方に及ぼす影響を「年数」という指標で提示することは、心血管と脳の健康を共に維持する予防戦略において、患者の動機付けに役立つアプローチになると結論付けている。

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果物や野菜でうつ病リスクはどのくらい低下するのか?

 抑うつ症状は、世界的に障害の主な原因となっており、修正可能な生活習慣要因を特定することは公衆衛生上の優先課題である。イラン・テヘラン医科大学のNazanin Zamanian氏らは、果物および野菜の摂取と抑うつ症状の発症リスクとの関連を検討したプロスペクティブコホート研究を対象に、システマティック・レビューおよび用量反応メタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2026年7月21日号の報告。 2025年11月までに公表された研究をPubMed、Web of Science、Scopus、Embase、Google Scholarより検索した。研究の特性、食事調査方法、アウトカム、効果推定値、共変量に関するデータを、2人のレビュアーが独立して抽出した。統合相対リスク(RR)の算出には変量効果モデルを用い、線形および非線形の用量反応関係を評価した。異質性の評価にはI2統計量、エビデンスの確実性の評価にはGRADEアプローチを用いた。 主な結果は以下のとおり。・合計38万5,449人の参加者および2万6,592件の抑うつ症例を含む13のコホート研究を解析対象とした。・果物と野菜の合計摂取量が最も多い群は、最も少ない群と比較し、抑うつ症状リスクが37%低いことが示された(RR:0.63、95%信頼区間[CI]:0.50〜0.80)。・摂取量が1日当たり200g増加するごとに、抑うつ症状リスクが16%低下した(RR:0.84、95%CI:0.74〜0.94)。・個別の解析では、抑うつ症状リスクは、果物の摂取で16%、野菜の摂取で12%低下することが示された。また、野菜については非線形の用量反応関係が認められた。 著者らは「これらの知見は、果物や野菜の摂取量が多いほど抑うつ症状リスクが低いことを示唆しており、メンタルヘルスの予防策におけるアプローチとして食事戦略が有効である可能性を裏付けている。ただし、対象となった研究はいずれも観察研究であるため、認められた関連には残存交絡が部分的に関与している可能性があり、結果の解釈には慎重を期す必要がある」と結論付けている。

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TP53変異を伴うEGFR陽性NSCLC、オシメルチニブ+化学療法が有効(TOP)/JAMA

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に有望な治療法として併用療法が注目されているが、最も大きな恩恵を受ける可能性が高い患者の特定が未解決の臨床的課題とされる。中国・Guangdong Provincial Clinical Research Center for CancerのTing Zhou氏らは、TP53遺伝子変異を伴うEGFR遺伝子変異陽性進行NSCLC患者の1次治療では、オシメルチニブと化学療法の併用療法はオシメルチニブ単独と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の頻度が高いものの新たな安全性シグナルは認められないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年8月10日号に掲載された。中国の無作為化第III相試験 本研究は、中国の17施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2021年3月~2024年7月に、年齢18歳以上、EGFR遺伝子の感受性変異(Ex19delまたはL858R変異)とともにTP53遺伝子変異を有する未治療のStageIVまたは再発の非扁平上皮NSCLC患者を登録した(AstraZenecaの助成を受けた)。 被験者294例(年齢中央値57歳[範囲:26~79]、女性159例[54.1%])を、オシメルチニブ+化学療法(ペメトレキセド-カルボプラチン療法を4サイクル[1サイクル3週間])を施行後に維持療法としてオシメルチニブ+ペメトレキセドの投与を受ける群(146例)、またはオシメルチニブのみの投与を受ける群(148例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、試験担当医師判定によるPFSであった。副次評価項目は、全生存期間(OS)、奏効期間、安全性およびQOLなどであった。PFSは34.0ヵ月vs.15.6ヵ月、奏効期間は約2倍に ベースラインにおいて全体の48.6%が脳転移を有していた。データカットオフ日(2025年11月11日)の時点で、追跡期間中央値は化学療法併用群が25.1ヵ月、オシメルチニブ単独群は26.1ヵ月だった。 PFS中央値は、化学療法併用群34.0ヵ月、オシメルチニブ単独群15.6ヵ月であった(群間差:18.4ヵ月[95%信頼区間[CI]:9.9~22.3]、ハザード比[HR]:0.44[95%CI:0.32~0.60]、p<0.001)。 化学療法併用群におけるPFSの有益性は、脳転移を有する患者やL858R変異を有する患者を含む事前に規定されたサブグループ全体で一貫して認められた。 OSのデータは十分でなかった(データ成熟度30.6%)が、化学療法併用群で有益性が高い傾向がみられた(OS中央値:化学療法併用群48.4ヵ月[95%CI:42.7~評価不能]vs.オシメルチニブ単独群36.5ヵ月[95%CI:28.1~評価不能]、HR:0.57[95%CI:0.38~0.88])。 奏効率は、化学療法併用群が82.9%(すべて部分奏効)、オシメルチニブ単独群は71.6%(同)であった。また、奏効期間中央値は、化学療法併用群がオシメルチニブ単独群の約2倍だった(32.7ヵ月vs.15.3ヵ月)。病勢コントロール率は両群で同程度だった(91.8%vs.84.5%)。Grade3以上のTRAEは併用群で高い、新たな安全性シグナルはなし Grade3以上のTRAEの発生率は化学療法併用群で高かった(62.4%vs.14.9%)。なかでも、好中球数減少(38.3%vs.4.1%)、白血球数減少(24.1%vs.0%)、血小板数減少(23.4%vs.0%)、貧血(9.2%vs.0.7%)の頻度が高かった。 重篤なTRAEの頻度も化学療法併用群で高かった(10.6%vs.1.4%)。化学療法併用群の1例が、肺出血に至った治療関連の重度の血小板減少で死亡した。また、とくに注目すべき有害事象として、間質性肺疾患または肺臓炎が化学療法併用群の7例(5.0%)、オシメルチニブ単独群の10例(6.8%)に、心不全がそれぞれ3例(2.1%)、1例(0.7%)に発現した。 化学療法併用群では、TRAEによる試験薬の中断が58例(41.1%)、減量が28例(19.9%)、中止が37例(26.2%)で発生し、オシメルチニブの中断は44例(31.2%)、減量は1例(0.7%)、中止は4例(2.8%)でみられた。オシメルチニブ単独群では、それぞれ13例(8.8%)、0%、2例(1.4%)であった。また、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 著者は、「これらの知見は、EGFR変異を有する進行NSCLCに対する、分子リスクに基づく併用療法による個別化治療戦略を支持する重要なエビデンスをもたらす」としている。

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デュルバルマブ、高リスク筋層非浸潤性膀胱がんの適応追加/AZ

アストラゼネカは2026年8月24日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について、カルメット・ゲラン菌(BCG)との併用で「高リスク筋層非浸潤性膀胱がん」の適応に関する製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表した。高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対する免疫療法併用レジメンの承認は、国内初となる。本承認は、3年以内にBCG膀胱内注入療法を受けていない高リスク筋層非浸潤性膀胱がん患者を対象とした国際共同第III相試験「POTOMAC試験」の結果に基づくもの。本試験では、対象患者をBCG導入・維持療法+デュルバルマブ群、BCG導入療法+デュルバルマブ群、BCG導入・維持療法群の3群に1:1:1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は試験担当医師評価による無病生存期間(DFS)とし、BCG導入・維持療法+デュルバルマブ群とBCG導入・維持療法群を比較した。追跡期間中央値60.7ヵ月時点において、DFS中央値はBCG導入・維持療法群とBCG導入・維持療法+デュルバルマブ群のいずれも未到達であったが、BCG導入・維持療法+デュルバルマブ群で有意な改善がみられた(ハザード比:0.68、95%信頼区間:0.50~0.93、p=0.0154)。デュルバルマブ+BCG導入・維持療法の安全性・忍容性は、各薬剤の既知の安全性プロファイルと一貫しており、5年を超える追跡期間において新たな安全性シグナルは認められなかった。また、デュルバルマブの追加によってBCG導入・維持療法の完了が妨げられることはなく、患者報告アウトカムに基づくQOLへの臨床的に意味のある影響も認められなかった。電子化された添付文書の本承認に関連する「効能又は効果」「効能又は効果に関連する注意」「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」の改訂箇所の記載は、以下のとおり(下線部が追記または変更箇所)。4.効能又は効果○切除不能な局所進行の非小細胞肺における根治的化学放射線療法後の維持療法○切除不能な進行・再発の非小細胞肺○非小細胞肺における術前・術後補助療法○進展型小細胞肺○限局型小細胞肺における根治的化学放射線療法後の維持療法○切除不能な肝細胞○治癒切除不能な胆道○進行・再発の子宮体○膀胱における術前・術後補助療法○高リスク筋層非浸潤性膀胱○胃における術前・術後補助療法5.効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)〈高リスク筋層非浸潤性膀胱〉5.14 臨床試験に組み入れられた患者の高リスクの定義等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。5.15 国内外の最新の診療ガイドライン等を参考に、膀胱全摘除術が可能な場合には、本剤を含む併用療法の必要性について慎重に判断すること。6.用法及び用量(一部抜粋)〈高リスク筋層非浸潤性膀胱〉カルメット・ゲラン菌(BCG)との併用において、通常、成人にはデュルバルマブ(遺伝子組換え)として、1回1,500mgを4週間間隔で13回まで、60分間以上かけて点滴静注する。ただし、体重30kg以下の場合の1回投与量は20mg/kg(体重)とする。7.用法及び用量に関連する注意(一部抜粋)〈高リスク筋層非浸潤性膀胱〉7.9 BCGとの併用に際しては、乾燥BCG膀胱内用(日本株)80mgを導入療法として週1回、6週間膀胱内注入した後、維持療法として、導入療法の初回投与後3、6、12、18、及び24ヵ月時点で週1回、3週間膀胱内注入すること。BCGの薬剤の調製及び投与方法についてはBCGの添付文書を参照すること。なお、BCGの用量及び回数は患者の状態により適宜減量し、また、投与間隔も必要に応じ延長できることとする。

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ビレーズトリ14.4、気管支喘息の適応で承認/AZ

アストラゼネカは2026年8月24日、ビレーズトリ14.4エアロスフィア56吸入/120吸入(一般名:ブデソニド[BUD]/グリコピロニウム臭化物[GLY]/ホルモテロールフマル酸塩[FOR]160/14.4/4.8μg)について、成人および12歳以上の小児における気管支喘息の治療薬として、製造販売承認を取得したと発表した。同剤は、吸入ステロイド薬、長時間作用性吸入抗コリン薬、長時間作用性β2刺激薬の3剤を単一吸入器に配合した固定用量配合剤である。本承認は、コントロール不良の喘息患者を対象とした国際共同第III相試験「KALOS試験」および「LOGOS試験」の結果に基づくもの。KALOS試験とLOGOS試験は、同一デザインで実施された試験で、4,311例が組み入れられた。日本の施設も参加したKALOS試験において、BUD/GLY/FOR 160/14.4/4.8μg群はBUD/FOR(MDI製剤)群と比較し、主要評価項目である投与12~24週時のトラフ1秒量(FEV1)のベースラインからの変化量が有意に42mL改善した(95%信頼区間[CI]:10~74、p=0.011)。また、主要な副次評価項目である12~24週のFEV1 AUC0-3のベースラインからの変化量についても、有意に65mL改善した(95%CI:30~101、p<0.001)。KALOS試験における有害事象の発現割合は、BUD/GLY/FOR 160/14.4/4.8μg群51.5%(306/594例)、同160/7.2/4.8μg群58.8%(201/342例)、BUD/FOR(MDI製剤)群51.2%(310/606例)、BUD/FOR(pMDI製剤)群57.5%(346/602例)であり、各治療群間で同程度だった。両試験において、BUD/GLY/FOR 160/14.4/4.8μgに関する安全性または忍容性に関する新たなシグナルは認められなかった。なお、現在ビレーズトリは「ビレーズトリエアロスフィア」として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の適応で販売されている。今回の「ビレーズトリ14.4エアロスフィア」の製造販売承認に伴い、「ビレーズトリエアロスフィア」は「ビレーズトリ7.2エアロスフィア」へ販売名を変更し、流通開始後に「ビレーズトリエアロスフィア」は販売を終了する予定としている。

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食道がんに腫瘍溶解ウイルス「テロメライシン」発売――岡山大学発の研究を実用化

 富士フイルム富山化学は8月21日、腫瘍溶解ウイルス製剤「テロメライシン注」(一般名:スラタデノツレブ)を発売した。根治切除および化学放射線療法の適応とならない食道がんが対象。2026年6月8日に製造販売承認を取得し、8月13日に薬価収載された。製造販売元はオンコリスバイオファーマ、販売元は富士フイルム富山化学で、国産の腫瘍溶解ウイルスを用いた新たな治療選択肢となる。 テロメライシンは、ヒトアデノウイルス5型を遺伝子改変し、腫瘍細胞で選択的に増殖するよう設計した製剤。がん細胞内でウイルスが増殖して細胞を破壊することで、抗腫瘍効果を発揮する。岡山大学学術研究院医歯薬学域 消化器外科学分野の藤原 俊義教授、黒田 新士准教授らが中心となって開発してきた。同剤には放射線により生じたDNA損傷の修復を阻害する作用もあり、放射線治療との強い併用効果が基礎研究で示されている。 臨床開発は2006年、米国食品医薬品局(FDA)の承認のもと実施された米国第I相試験から始まった。その後、2013年から岡山大学で、手術や抗がん薬治療などの標準治療が困難な食道がん患者を対象にテロメライシンと放射線治療を併用する臨床研究を実施。2017年からは岡山大学と国立がん研究センター東病院で、岡山大学発ベンチャーのオンコリスバイオファーマが第I相企業治験を行った。 2019年に「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定され、2020年から、岡山大学病院を含む全国17施設の食道がんハイボリュームセンターで第II相企業治験を実施。岡山大学によると、高い臨床的完全寛解率が得られ、藤原氏は承認申請時に「約半分の患者」で局所の食道がんが消失したとしている。 オンコリスバイオファーマは2025年12月に製造販売承認を申請し、約半年後に承認を取得。「条件及び期限付承認」ではなく通常承認となった。富士フイルム富山化学は販売提携契約に基づき、販売・流通と医療関係者への情報提供を担う。長年にわたるアカデミア発の創薬シーズが実用化に至った形で、根治切除や化学放射線療法が困難な食道がんに対する新たな治療選択肢として注目される。【製品概要】販売名:テロメライシン注一般名:スラタデノツレブ効能、効果又は性能:根治切除及び化学放射線療法の適応とならない食道承認日:2026年6月8日薬価収載日:2026年8月13日発売日:2026年8月21日薬価:1瓶 310万2,489円製造販売元:オンコリスバイオファーマ販売元:富士フイルム富山化学

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乳児の言語学習、アイコンタクトが重要な手がかりに

 子どもの言語学習では、話しかける際に目を合わせること(アイコンタクト)が重要である――新たな研究で、このような可能性が示唆された。アイコンタクトは、話し手と乳児の脳活動の同期に関与し、乳児はアイコンタクトを手がかりに重要な情報を選択していることが、英ケンブリッジ大学のVictoria Leong氏らによる研究で明らかになった。この研究の詳細は、7月22日付で「Nature Communications」に掲載された。Leong氏は、「親は、アイコンタクトや子どもの名前を呼ぶことなどの社会的な手がかりを使う必要性を意識しなければならない。こうした手がかりは、単に子どもの注意を向けさせるだけではなく、学習プロセスそのものを活性化させるからだ」と述べている。 Leong氏らの過去の研究では、乳児と大人がアイコンタクトを取ると、双方の脳活動の同期が見られることが示されていた。しかし、こうした社会的手がかりが、乳児の学習において情報選択の「ゲート」として機能する神経メカニズムについては、明らかになっていなかった。 そこで研究グループは、シンガポールと英国で平均月齢9.4ヵ月の乳児47人を対象に実験を行い、アイコンタクトの有無で学習のしやすさや話者との脳活動パターンの同期が変わるかを調べた。実験では、順応フェーズとして、成人の話者が、3種類の異なる人工言語を話す動画を乳児に見せた。人工言語は、それぞれ12種類の音節から構成され、3つの音節からなる4種類の単語(例:「pe-tu-do」)が含まれていた。研究グループは、これらの人工言語を、1)話者の視線が見える、2)視線が不明瞭、3)視線が見えない、の3条件で提示した。なお、この動画を録画する際に、話者の脳波も測定された。 次の検証フェーズでは、人工言語を構成する「単語」と、単語の境界をまたいで音節を組み合わせた「非単語」を乳児に提示し、単語と非単語への注視時間の差から学習効果を評価した。研究グループは、乳児が人工言語の規則を学習していれば、既知の単語よりも未知の「非単語」を長く見ると予想した。 乳児の人工言語学習の程度が高いほど、話者と乳児の脳活動の同期(神経カップリング)が強く、その同期の程度は乳児の人工言語の学習成績を予測する上で、乳児自身の脳活動よりも有用であることが示された。ただし、そのような強い神経カップリングが見られたのは、乳児が話者の視線を完全に見ることができる条件に限られていた。Leong氏は、「乳児には3種類の言語を聞かせたが、実際に学習した言語は選択的であった。乳児は、単なる受動的な情報吸収者ではない。3種類の言語をすべて聞いたが、学習したのは話者の目を見ることができた条件下で提示された言語だけだった」と述べている。 また、脳活動の同期の程度は、学習を予測する上では、実験中に乳児が示した個々の脳活動よりも重要であった。論文の共著者であるケンブリッジ大学心理学科のKaili Clackson氏は、「乳児がスクリーンを注意深く見つめているように見えても、アイコンタクトがなければ、学習すべき情報として選択されにくかった。脳活動の同期は、情報が選択的に取り込まれていることを示している」とニュースリリースで述べている。この現象は、ケンブリッジとシンガポールの両方で確認されており、特定の文化に固有のものではなく、文化を超えて共通する特徴である可能性が示唆された。 ただし、注意を向ける必要性を伝える社会的な手がかりは、アイコンタクトだけではない。笑顔を見せること、指差し、乳児の名前を呼ぶことなども、その役割を果たし得ると研究グループは述べている。このような手がかりは、子どもと大人のアイコンタクトがあまり重視されない、あるいは好ましくないとされる文化では、言語発達においてより重要な役割を果たす可能性があるという。Clackson氏は、「こうした手がかりは非常に強力だ。新しい情報を伝える前にこのような手がかりを取り入れることで、『これは大事なことだから、しっかり聞いてね』というメッセージを乳児に伝えることができる」と述べている。

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BRCA遺伝子変異陽性女性の乳がんリスク、家族歴で大きく変化

 乳がんの遺伝的リスクは、がんリスクを高める遺伝子変異の有無に加え、家族歴によっても変化するようだ。BRCA1またはBRCA2遺伝子変異の検査で変異陽性だった女性のうち、乳がんの家族歴がない女性での80歳までの乳がん発症リスクは6割弱であるが、家族歴を有する場合には同リスクが8割超にまで上昇することが、7月30日付で「JAMA Network Open」に掲載された研究で報告された。 論文の筆頭著者である米シダーズ・サイナイ医療センターのFahima Dossa氏は、「遺伝学的検査を受ける女性の大半では、BRCA1/2遺伝子の変異が見つからない。しかし、こうした女性の多くは、本人のがん既往歴または濃厚な家族歴を理由に検査を勧められている。これらの女性における将来の乳がん発症リスクについては、これまで十分に研究されていなかった。今回の研究は、BRCA1/2遺伝子検査を受ける全ての女性のリスクをより正確に評価し、適切な助言につなげるためのデータを初めて算出したものである」と述べている。 BRCA1/BRCA2遺伝子変異は、がんにつながる可能性のあるDNA損傷を修復する体の機能を妨げる。これらの遺伝子変異を有する女性での生涯の乳がん発症リスクは30〜70%に達するとされている。研究グループによると、BRCA1/2遺伝子検査は、特定のがんの既往歴や家族歴を有する女性、BRCA1/2遺伝子変異が確認されている血縁者がいる女性、またはアシュケナージ系ユダヤ人の祖先を持つ女性に推奨されている。 本研究は、カナダ・オンタリオ州で実施されたコホート研究「What Comes Next Cohort Study」の一環として行われた。Dossa氏らは、2007~2016年に同州でBRCA1/2遺伝子検査を受けた女性と一般女性を1対5の比率でマッチングし、2024年9月まで追跡した。得られたデータを基に、BRCA1/2遺伝子検査の結果や家族歴に応じて、乳がんと卵巣がんの80歳までの累積発症リスクを推定した。乳がんの解析では、BRCA1/2遺伝子検査を受けた女性6,966人(年齢中央値49歳)、一般女性3万4,830人、卵巣がんの解析では、それぞれ1万3,276人(年齢中央値51歳)、6万6,380人を対象とした。 その結果、80歳までの乳がんの累積発症率は、BRCA1遺伝子変異陽性者で62.1%、BRCA2遺伝子変異陽性者で66.1%、一般女性で12.0%と推定された。同様に、卵巣がんの推定累積発症率は、それぞれ56.0%、29.3%、1.5%であった。BRCA1/2遺伝子検査で意義不明変異(VUS)が認められた女性と、結果が陰性だった女性でも、80歳までの乳がん累積発症率はそれぞれ31.2%、26.3%であり、一般女性より高かった。一方、卵巣がんリスクの上昇は確認されなかった。 BRCA1/2遺伝子検査で病的変異または病的である可能性が高い変異を有し、家族歴が判明していた1,248人を対象に解析したところ、80歳までの乳がんの累積発症率は、家族歴がない女性で55.8%だったのに対し、第一度近親者に乳がん患者が2人以上いる女性では86.3%に上昇した。また、病的変異陽性者のうち卵巣がんの家族歴が判明していた1,628人を対象とした解析で推定された卵巣がんの累積発症率は、第一度近親者に卵巣がん患者が1人以上いる女性では64.2%、いない女性では38.2%であった。血縁者に既知のBRCA1/2遺伝子変異があるが、自身は変異陰性だった女性での乳がん発症リスクは、一般女性と同程度だった。 Dossa氏は、「今回の研究は、患者が遺伝子検査の結果について医師と話し合うことの重要性を改めて示すものだ。こうした話し合いに役立つデータを、われわれはようやく得ることができた」との認識を示している。その上で同氏は、「今回の結果に基づき、医師は、50代または60代でBRCA1/2遺伝子変異陽性であっても乳がんの家族歴がない患者には、より頻繁なマンモグラフィー検査や乳房MRI検査を推奨する一方、若年で血縁者に複数の乳がん症例が存在するBRCA1/2遺伝子変異陽性患者には、予防的乳房切除術を選択肢として提示する可能性がある」と述べている。

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経口グレリン受容体作動薬AC01のHFrEFに対する安全性と忍容性が示された(解説:原田和昌氏)

 グレリンは1999年寒川らによって発見された胃から産生されるペプチドホルモンで、下垂体に働いて成長ホルモン分泌を促進し、視床下部に働いて食欲を増進させる。HFrEF患者に静脈内投与するとLVEFと最高酸素摂取量が増加し、心不全症状が改善し、除脂肪体重が増加する。AC01(AnaCardio社)は新規の経口カルシウム感受性増強薬でグレリン受容体作動薬でもある。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のLund氏らはGOAL-HF1試験で、HFrEF患者へのAC01の28日間の投与は安全で良好な忍容性を示し、重篤な有害事象や明らかな心電図異常は認められなかったと報告した。 GOAL-HF1試験は欧州4ヵ国の14施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験である。6ヵ月以上持続するHFrEF(NYHA分類IIまたはIII度)、LVEF≦40%、安静時平均心拍数55~90拍/分で、ガイドラインに基づく最大耐用量の薬物療法を受け、経静脈植込み型除細動器を装着している患者を登録した。58例(中央値66.0歳、女性5例)を第Ib相試験(32例)と第IIa相試験(26例)に無作為に割り付けた。第Ib相試験では、AC01の4つの用量コホート(0.1、0.3、1.0、3.0mg)に6例ずつ、プラセボ群に2例ずつを無作為に割り付け、AC01を1日2回、7日間経口投与した。第IIa相試験では、AC01の1.0mg群に9例、3.0mg群に8例、プラセボ群に9例を無作為に割り付け、1日2回、28日間経口投与した。主要アウトカムは安全性および忍容性とした。ベースラインのLVEFは平均31.4%、NT-proBNPの中央値は557pg/mLであった。 AC01関連の重篤な有害事象はみられなかった。AC01関連有害事象は第Ib相試験で12件、第IIa相試験で18件認められた。第Ib相試験において、プラセボ群の1例に治療関連の重篤な有害事象が1件(高感度心筋トロポニンIの上昇)発生した。AC01を投与された41例のうち33例(80%)、プラセボを投与された17例のうち12例(71%)で、軽度または中等度の試験薬投与中に発現した有害事象が報告された。早期の脱落や死亡に至った有害事象はなかった。最も頻度の高い有害事象は、低血圧、非持続性心室性頻拍、呼吸困難、高血糖、めまい、頭痛であった。心電図では明らかな異常は認められず、症候性低血圧の報告はなく、高感度心筋トロポニンIやNT-proBNPに対するAC01の明らかな影響もみられなかった。試験期間中の死亡例はなかった。著者らはHFrEF患者におけるファンタスティック4に続く治療薬の候補として、より大規模で十分な検出力を持つ試験に進む基礎となる結果であると結論付けた。 HFrEFはファンタスティック4などの効果的な治療にもかかわらず、ついには進行した心不全へと移行し、ガイドラインに基づく治療への反応や耐性が低下する。心機能と生活の質が悪化し、心不全入院、死亡リスクが増加する。したがって、進行したHFrEFや心筋梗塞、心臓手術後の心原性ショック患者などには収縮力や心拍出量を高める薬剤が必要となる場合がある。これらは一般的に細胞質のCa2+濃度を増加させて収縮力や心拍出量を高めるものが多いが、頻脈、不整脈、虚血などの副作用と関連し、低血圧、死亡率を増加させる可能性がある。ミオシン活性化薬は収縮期駆出時間を増加させるが、心筋虚血を誘発し心筋トロポニンIの増加を引き起こす可能性がある。カルシウム感受性増強薬には、ピモベンダン、levosimendan、omecamtiv mecarbilがあるが、ピモベンダンもlevosimendanも純粋なカルシウム感受性増強薬とは言えず、ピモベンダンはPDE阻害活性を示し、levosimendanは2つの追加の分子標的を持つ。omecamtiv mecarbilだけが純粋な強心作用を持つと考えられている。他方、グレリンに関する3つの研究は、HFrEF患者において頻脈、不整脈、虚血、低血圧に伴うことなく、心拍出量、駆出率、1回拍出量、運動能力、筋肉萎縮を改善する可能性を示唆した。これらの1つでは、心筋トロポニンIのリン酸化が低下し、カルシウム感受性と負荷に依存しない心筋細胞の収縮力を高める新しいメカニズムを示した。AC01は心筋トロポニンIのリン酸化を減少させ、カルシウム感受性と収縮力を高める経口グレリン受容体作動薬であり、HFrEFの新しい治療薬の有力な候補の1つと言えよう。

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NSAIDs使用中の血圧上昇【日常診療アップグレード】第63回

NSAIDs使用中の血圧上昇問題43歳女性。2週間前、腰痛を主訴に初診外来を受診した。その際、血圧の上昇が判明した。本日は経過観察のための再診で来院した。現在、腰痛に対してロキソプロフェンを毎日服用している。既往歴は花粉症のみであり、症状に応じてフェキソフェナジン塩酸塩を内服している。身体診察では、2回の血圧測定の平均値は139/84mmHg、脈拍数は52回/分であり、その他のバイタルサインは正常である。身長156cm、体重64kg、BMIは26である。明らかな苦痛は見られない。その他の診察所見は正常である。アムロジピンの投与を開始した。

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