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従来療法に劣らぬ効果が報告された新・抗HIV療法

HIV感染症の治療は、抗HIV薬の多剤併用療法(HAART)の導入により劇的な進歩を遂げた。しかし、初回の抗HIV療法に失敗した感染者に対して、いかにウイルスを抑制し、その効果を長期間持続させていくかはいまだに大きな課題となっている。そのような中で開発された新規プロテアーゼ阻害薬(PI)のdarunavir(DRV:日本では申請中)について、 7月7日付のLancet誌に興味深い報告が発表された。ブラジル・サンパウロのCentro de Referência e Treinamento DST/AIDSのMadruga氏らが行った第III相無作為臨床試験「TITAN」の結果、darunavirとリトナビルの配合剤(DRV/r)が、現在繁用されているPI配合剤のロピナビル・リトナビル配合剤(LPV/r)に劣らぬ抗ウイルス効果を示すことが明らかにされたのだ。48週投与で抗HIV療法経験者の77%に抗ウイルス効果Madruga氏らは、これまでLPV/rが安全性と抗ウイルス効果の両面から、抗HIV療法経験者に対する治療法として最も有望視されてきたことから、 DRV/rをLPV/rと比較することとした。対象は、すでに抗HIV療法を経験しているが、ロピナビルの使用経験はない18歳以上のHIV感染者(血中HIV RNA量>1,000コピー/mL)とし、これらをDRV/r群(298例)とLPV/r群(297例)に無作為化して、48週間のウイルス抑制効果を検討した。その結果、 治療48週後にウイルス抑制効果(血中HIV RNA量<400コピー/mLの達成)が認められたのは、DRV/r群が77%、LPV /r群が68%で、9%の差が見られた(per-protocol 解析)。DRV/r群でいずれも小さかった変異発現率またPI耐性につながる変異の発現率は、DRV/r群が21%、LPV/r群が36%。核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)耐性関連の変異発現率は、DRV/r群14%、LPV/r群27%と、いずれもDRV/r群のほうが小さかった。安全性に関する結果は、両群同等だった。以上よりMadruga氏らは、ロピナビル未使用の抗HIV療法経験者に対し、DRV/rはLPV/rに劣らぬ抗ウイルス効果を示したとして、DRV/rをこれらのHIV感染者にする治療選択肢として考慮すべきだと結論づけている。

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メタ解析で明らかになったHIV/AIDSにおける発リスク

HIV治療の進歩により、HIV感染後の生命予後は以前に比べだいぶ長くなった。そこで近年、関心の高まりを見せているのが、「発リスク」などHIVの長期感染に伴う合併症の問題だ。元来、免疫低下が直接関係するとしてHIV感染者やAIDS患者で指摘されてきたのは、カポジ肉腫、非ホジキン性リンパ腫、子宮の3種のみだが、臓器移植後の免疫低下患者では、広範囲の種の発症増加が報告されている。 このような中、7月7日付Lancet誌で報告されたオーストラリアにあるニュー・サウス・ウェールズ大学のGrulich氏らの研究では、HIV/AIDSを対象にしたコホート試験と、臓器移植のレシピアントを対象にしたコホート試験とをメタ解析した結果、臓器移植レシピアント群だけでなくHIV/AIDS群においても、免疫低下が主因と考えられる多種の感染症由来の発症リスクが増大していることが明らかにされた。HIV/AIDS群でも20種類のが増加、多くの主因は免疫低下同研究では、これまでに報告されている文献の中から、HIV/AIDSを対象にしたコホート研究7件(合計444,172例)と、臓器移植のレシピアントを対象にしたコホート研究5件(合計31,977例)を抽出し、ともに免疫低下を有する双方の集団において、種や発状況に関するメタ解析を行った。その結果、HIV/AIDS群においても臓器移植レシピアント群においても、検討した28種類の種のうち20種類の発症率が、対照群より有意に高いことが明らかになった。HIV感染症の長期合併症として危惧される感染症関連の各種これら発症増加の見られたのほとんどは、epstein-Barrウイルス(EBV)が関連するホジキン性リンパ腫や非ホジキン性リンパ腫、ヒト・ヘルペスウイルスが関連するカポジ肉腫、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが関連する肝、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)が関係する胃など、何らかの感染症が関与すると考えられるだったという。以上のように、HIV/AIDS群と臓器移植レシピアント群という異なる免疫低下集団において同様の発パターンが見られたことから、Grulich氏らは「これらの増加の主要リスクファクターは、『免疫低下』だと考えられる」と考察しており、HIV感染症の長期的合併症として今後、感染症関連のの重要性が増大していくだろうと喚起している。

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飛行中の旅客機内でも急性高山病は起きる?

 急性高山病は気圧の低い高地を旅行した際、順応性が弱い一部の人に出現する。この「気圧の低い高地」の条件は飛行中の旅客機でも生じるが、乗客に高山病が出現するかどうかは明らかではない。 ボーイング・メディカル社のJ. Michael Muhm氏らは、飛行中の旅客機と同様の環境を用意し、不快感がどのようなメカニズムで、どの程度の頻度で現れるのかを調査した。NEJM誌7月5日号掲載の報告から。飛行機の気圧低下が急性高山病に及ぼす影響を判定する模擬飛行試験 Muhm氏らは、海抜650、4,000、6,000、7,000、8,000フィート(各198、1,219、1,829、2,134、2,438m)相当における飛行中の旅客機と同様の気圧低下が動脈血酸素飽和度、急性高山病、不快の発生に及ぼす影響を判定するため、成人ボランティアを対象に、20時間の模擬飛行試験を実施した。測定には自覚症状質問表(Environmental Symptoms Questionnaire IV)への回答が用いられ、前向き単盲検対照低圧室研究として実施された。飛行機の気圧低下で急性高山病は全体で7.4%出現 飛行中の旅客機と同様の気圧低下が急性高山病の出現に及ぼす影響を調べた試験で、参加者502人の平均酸素飽和度が8,000フィートの最高高度で最大4.4パーセンテージ・ポイント(95%信頼区間:3.9~4.9)が低下した。 急性高山病は全体で7.4%出現したが、今回研究対象となった高度間での頻度に有意差は見られなかったという。 不快の訴えは、高度が増し酸素飽和度が低下するとともに増加し、7,000~8,000フィートの場合で一番多く、その差異は3~9時間の曝露後に明らかになった。年齢的には若い人よりも60歳以上の人が、また女性よりも男性のほうが、不快を訴えるケースが少なかった。 重篤な有害事象は4例で、その1つは今回の研究での曝露との関連の可能性が指摘された。それ以外の15例のうち9例は今回の研究での曝露との関連が認められた。 以上から、地上7,000~8,000フィートという環境への飛行機の上昇は、酸素飽和度を約4パーセンテージ・ポイント低下させること、この高度では低酸素血症による急性高山病とまではならないものの、順応性が弱い人では3~9時間後に不快を訴える頻度が増すことが明らかになったと報告している。

34004.

意外にも着床前遺伝子検査は高齢女性の体外受精成功率を低下

体外受精(IVF)を受けた母体年齢の高い女性の妊娠率は、強い期待にもかかわらず低いという現実がある。一方で、流産の可能性が極めて高い異数性を対象に行われる卵割段階の胚への着床前遺伝子検査が、これら女性のIVFの成功率を高める可能性が示唆されている。 オランダ・アムステルダム大学生殖医療センターのSebastiaan Mastenbroek氏らのグループは、着床前遺伝子検査を行ったIVF群と行わなかったIVF群の妊娠率等の比較調査を行い、その可能性について検証した。NEJM誌7月5日号掲載(7月4日オンライン版で初公開)の報告から。35~41歳のIVF希望者対象に無作為化二重盲検試験研究グループは、35~41歳の女性を対象に、着床前遺伝子検査実施群と実施しない対照群それぞれで3サイクルのIVFを実施比較する多施設共同無作為化二重盲検対照試験を行った。主要評価項目は、着床後12週の時点で妊娠が継続しているかであり、副次評価項目は、生化学的妊娠、臨床妊娠、流産と生児出生。検証は、女性408例(全836サイクルのIVFを受けた)が、着床前遺伝子検査実施群206例(434サイクル)と、実施しない対照群202例(402サイクル)にランダムに割り付けられ行われた。妊娠継続率、生児出生率とも有意に低下着床後12週での妊娠継続率は、着床前遺伝子検査実施群は52例(25%)で、対照群の74例(37%)より有意に低かった(率比0.69、95%信頼区間0.51-0.93)。生児出生率も着床前遺伝子検査実施群が有意に低かった[実施群49例(24%)、対照群71例(35%)、率比0.68、95%信頼区間0.50-0.92]。これらから、着床前遺伝子検査は母体年齢の高い女性のIVF後の妊娠継続率と生児出生率を高めるものではなく、逆に有意に低下させていると結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

34005.

毎日少量のチョコレート摂取で血圧が低下

ココアを含む食品の日常的な摂取が、心血管系の死亡率低下に寄与することは観察研究で明らかにされている。またココアの高用量摂取が、2週間ほどの短期介入でも血管内皮機能を高め、ココア・ポリフェノールの作用で血圧を低下させることが示唆されてもいる。しかし習慣的なココア摂取が血圧に及ぼす臨床的効果とそのメカニズムは不明だ。そこで、ドイツ・ケルン大学のDirk Taubert氏らは、ポリフェノールの豊富なチョコレートを低用量摂取した場合の、血圧変化について判定した。JAMA誌7月4日号に掲載。ポリフェノール含有・非含有チョコレート摂取を無作為盲検治験は2005年1月から2006年12月にかけてドイツのプライマリ・ケア・クリニックで行われた。高血圧前症または第I期高血圧症で、付随的な危険因子を持たず薬物投与も受けていない56歳から73歳までの44例(女性24例、男性20例)を対象に、無作為盲検並行群方式で実施。対象者には18週間、30mgのポリフェノールを含んだ糖分・脂肪分の少ないダークチョコレートを毎日6.3g(30kcal)、もしくはポリフェノールを含まないホワイトチョコレートを無作為に割り当て摂取させた。主要評価項目は18週後の血圧値の変化。第2評価項目は、血管拡張作用のあるS-ニトロソグルタチオンと、酸化ストレスマーカー8-isoprostaneの血漿中濃度変化とココア・ポリフェノールのバイオアベイラビリティ(生物学的利用性)とした。高血圧有病率は86%から68%まで減少18週間で、ダークチョコレート摂取群の収縮期血圧が平均2.9(1.6)mmHg、拡張期血圧も1.9(1.0)mmHg下がり(P<0.001)、体重、血漿中の脂質、ブドウ糖、8-isoprostaneのレベルに変化はなかった(P<0.001)。高血圧有病率は86%から68%まで減少した。また、血圧低下とともにS-ニトロソグルタチオンが持続的に増加し[0.23(0.12)nmol/L(P<0.001)]、血漿中でのココア・フェノール出現に結びついていた。一方、ホワイトチョコレートの摂取群では血圧、血漿中マーカーとも変化は見られなかった。標本数は小さいが、至適血圧より高値である以外は健常な人が、食事の際にポリフェノールが豊富に含まれるチョコレートを少量摂取すると、体重増加などを伴わずに血圧が効果的に低下するとともに、S-ニトロソグルタチオン形成も改善されたと報告した。(朝田哲明:医療ライター)

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内リンパ嚢腫瘍の聴覚障害発生メカニズム

内リンパ嚢腫瘍(ELSTs)はフォン・ヒッペル‐リンダウ病(網膜小脳血管腫症:VHL)と関連しており、不可逆性の感音難聴(SNHL)や前庭障害の原因になると言われている。しかしその基本的なメカニズムは依然として不明であり、治療の最適なタイミングもわかっていない。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のJohn A. Butman氏らのグループは ELSTs と関連する聴覚前庭障害の発生メカニズムを明らかにするため、1990年5月から2006年12月にかけてNIHでVHL患者とELSTs患者を対象に、前向き連続評価を実施。判明した発生メカニズムについて、JAMA誌7月4日号に報告された。VHL患者の87%で不可逆性感音難聴を確認この研究では聴覚前庭機能障害の基礎的なメカニズムを明らかにするため、臨床所見と言語病理学的データに、連続磁気共鳴画像法とCT画像法による調査データが関連づけられた。その結果、VHLで継続治療中の患者35例の38耳(3例の両側性を含む)でELSTs が確認された。7耳(18%)で迷路骨包の腫瘍浸潤で大きな腫瘍を伴っており(P=0.01)、SNHLが確認された(100%)。残りの31耳(82%)では迷路骨包浸潤が確認できなかったが、31耳のうち27耳(87%)で、急激に(14耳; 52%)、あるいは徐々に(13耳; 48%)SNHLが発現していた。残りの4耳は正常聴力だった。迷路骨包浸潤に関連しない小腫瘍からも病的難聴は起こる急激にSNHLが発現した14耳のうち11耳(79%;P<0.001)では内迷路出血があったが、徐々にSNHLが現れたおよび正常聴力だった17耳では内迷路出血は見られなかった。また腫瘍サイズとSNHL(P=0.23)および前庭障害(P=0.83)には関連性が見られなかった。Butman氏らは、ELSTsと関連のあるSNHLや前庭障害は、腫瘍に関連した内迷路出血による場合は急激に起き臨床所見も見いだされるが、内リンパ水腫症による場合もあり知らないうちに起きている場合もあると結論。これら発生メカニズムからすると、迷路骨包浸潤と関係しない小さな腫瘍でもSNHLは起こり得ると警告した。(朝田哲明:医療ライター)

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英国の電子カルテ普及など国民医療保健サービスIT化の課題

2002年以降、英国の国民医療保健サービス(NHS)は、電子カルテの普及を基盤とする大規模なIT化推進プログラムに取り組んでいる。NHSのIT化は現在どこまで進行しているのか。2003年以来、同IT化プログラムの推進状況とその成果について調査を続けているロンドン・Imperial 大学のJ. Hendy氏らは、急性期病院トラストの管理職がIT化プログラムの導入に関してどのような危惧を抱いているかについての最新調査結果を、BMJ誌5月17日付オンライン版(本誌では6月30日号)に報告した。その中で迅速なプログラム開発と、現場への情報提供の必要性を指摘している。現場は患者の安全性を危惧同研究では、規模や立地条件などタイプの異なる4件の急性期病院トラストを選択し、最高責任者、IT部門、財務部門のマネージャー、医学部長や看護部長など、各トラストの管理職が、 NHSのIT化プログラム導入についてどのような危惧を抱いているかを、面談調査した。2004年9~12月に1回目の調査を実施したのち、約18ヵ月を経た2006年1~4月に、2回目の調査を実施している。その結果、2004年当時に比べ、2006年の調査では、同IT化プログラムの目的に賛同するトラスト職員は増えていた。しかし一方で、多くの現場責任者が、以前の調査では聞かれなかった新たな危惧を抱いていることもわかった。2004年当時にプログラム導入の歯止めとなっていたのは、財政的理由や、同プログラムに即した患者管理システムの整備遅延、IT化プログラムの実施団体である「Connecting for Health」と現場責任者とのコミュニケーション不足などだったが、 2006年の調査では、これらの問題に加え、プログラムに対する不安感から導入を危惧する現場責任者の多いことが明らかになった。彼らは、新しいITシステムへの切り替えが依然遅れていること、NHS全体でのシステム統一ができていないことなどから、患者の安全性を危険に曝すリスクが高いと感じており、また限られた予算内で他の懸案に優先してIT化に乗り出すための援助を必要としていた。具体的な実施スケジュールの設定と、暫定的ITシステムの購入が必要以上の結果を踏まえて、Hendy氏らは「今回面談した職員はITの近代化に好意的であったが、今後、システム整備が進まなければ、急速に支持されなくなるだろう」と結論づけている。現場の責任者は、明確な実施スケジュールや長期的目標、経済的利点についての情報を求めているとし、「プログラムの提供者であるConnecting for Health は、個々のトラストに対して具体的な実施スケジュールを設定し、システム開発の遅延対策として暫定的なITシステム購入の必要性があることを進言していく責任がある」と提言している。このようなNHSの経験は、今後、医療システムの大規模なIT化を目指す他国にとっても参考になるだろうとの見解だ。

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「出来高制」の医療報酬制度は医師のモチベーション低下につながらない

近年、臨床現場における医療の質の向上を図るために、医師や看護師などの医療提供者に対し、「出来高制」の報酬制度を取り入れるなど、報酬面での動機付け(Financial Incentives)を利用することに関心が高まっている。しかし一方で、このような報酬制度の採用による悪影響はないのだろうか。マンチェスター大学のR. McDonald氏らは、初期医療を行う英国の一般診療所において、このような報酬制度の導入が、医師や看護師の提供する医療の質とともに、診療の自主性、内面的なモチベーションにどのような影響を及ぼすかを検討した結果、「医師の内面的なモチベーションに悪影響は見られなかった」と報告した。BMJ誌5月17日付オンライン版、本誌6月30日号より。QOF導入が自主性やモチベーションに与える影響を検討McDonald氏らは、英国の2件の一般診療所において、臨床医12名、看護師9名、診療アシスタント4名、事務スタッフ4名を対象に検討を行った。報酬面の動機付けは、英国の一般臨床医に対する報酬体系のひとつであるQuality and Outcome Framework(QOF)を用いて行った。QOFとは、10の疾病グループごとに標準的な目標を設定し、目標を達成すれば成果報酬が支払われるというシステムだ。同検討では、QOFを導入したのち5ヵ月間の、診療現場での仕事ぶりや態度を観察・評価するとともに、個々との面談アンケートを実施し、QOF導入による影響を検討した。看護師は変化に対する危惧とともに、責任を与えられることへの喜びを指摘その結果、QOF導入後は医療の質に対するデータ収集への関心が高まり、医師も看護師も、一般的にQOFは、質の高い医療を提供するのに役立つと感じていることがわかった。医師に比べ看護師は、QOF導入後に生じる変化を危惧するケースが多かったが、同時に、特定の領域で責任を与えられたことを喜んでいた。これに対し医師の多くは、質的目標が、自身の診療の自主性に影響するとは考えていなかった。このような結果からMcDonald氏らは、「医療の質の向上を目指した出来高性の報酬制度を採用しても、一般臨床医の内面的なモチベーションに悪影響はないと思われる」と結論づけた。ただし、医師に比べ看護師では、導入に伴う変化を危惧する声が多く聞かれたとしている。

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HPVワクチンの子宮頸予防効果を確認、PATRICIA studyの中間解析から

子宮頸の主要な原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)感染が注目を集め、その対策としてHPVワクチンの予防投与への期待が高まっている。子宮頸の発症率が高いアフリカ、南アジア、南米の途上国における普及が急がれる一方で、先進国では女児への予防投与によって若者の性道徳が乱れるのではないかとの懸念の声が上がるなど、一般市民レベルの議論もさかんだ。 発性を有するHPVは15のタイプが確認されており、そのうちHPV16およびHPV18が子宮頸の70%以上に関連することが国際的な調査で示されている。フィンランド・ヘルシンキ大学産婦人科のPaavonen氏らは、子宮頸の予防法としてのHPV16/18 L1ウイルス様粒子ワクチン投与の有用性を評価するための国際的な無作為化第III相試験(PATRICIA study)を実施しており、6月30日付Lancet誌上でその中間解析の結果を報告した。途上国を含む14ヵ国が参加する大規模臨床試験2004年5月~2005年6月の間に、途上国を含む14ヵ国において15~25歳の若年女性18,525名が、HPV16/18ワクチン群(9,258名)あるいは対照群(A型肝炎ワクチン、9,267名)に無作為に割り付けられた。これらの対象には、すでに軽度の細胞学的異常でワクチン投与を受けているものや、HPV16、HPV18以外の発性HPVに感染(多くの症例が複数種のウイルスに感染)しているものが含まれた。子宮頸部の細胞診および生検を行い、PCR法にて14の発性HPVタイプの有無を評価した。子宮頸の予防の指標は、HPV16あるいはHPV18を伴うgrade 2~3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2+)に対する抑制効果とした。今回の中間解析は、病変部にHPV16あるいはHPV18が確認されたCIN2+の患者が23例に達した時点で開始した。平均フォローアップ期間は14.8ヵ月であった。HPV16/18ワクチンはCIN2+の発症を有意に抑制23例のCIN2+のうち、2例はHPV16/18ワクチン群であったが、21例は対照群であった。複数のHPV タイプに感染していた症例は14例であり、2例がHPV16/18ワクチン群、12例が対照群であった。これらのデータを解析したところ、CIN2+に対するHPV16/18ワクチンの有効性は90.4%(97.9%信頼区間:53.4-99.3、p<0.0001)であった。安全性については、両群間に臨床的に意味のある差は認めなかった。Paavonen氏は、「HPV16/18ワクチンを用いた補助療法は、HPV16あるいはHPV18感染によるCIN2+の発症に対して有意な予防効果を示したことから、子宮頸の予防法として有用と考えられる」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

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自家細胞注入法は女性の腹圧性尿失禁の標準的治療法となるか

尿失禁のうち、急迫性尿失禁は排尿筋の過活動によって起き、腹圧性尿失禁は尿道括約筋複合体の機能障害を原因とする。女性の尿失禁の8割近くが腹圧性あるいは混合性であることから、尿道括約筋複合体(尿道、横紋筋性括約筋)を治療ターゲットとしたアプローチは有望と考えられている。 前臨床試験では、自家筋芽細胞の経尿道的注入により横紋筋性括約筋の再生が促進され、線維芽細胞は尿道粘膜下層の再建に有効なことが示されている。オーストリア・インスブルック医科大学泌尿器科のStrasser氏らは、腹圧性尿失禁に対する経尿道的超音波ガイド下自家筋芽細胞/線維芽細胞注入法と従来の内視鏡的コラーゲン注入法の有効性と認容性を比較する無作為化試験を実施、その結果を6月30日付Lancet誌上で報告した。尿失禁スコア、横紋筋性括約筋の収縮性などを従来法と比較2002~04年の間に、腹圧性尿失禁の女性患者63例が登録された。42例が経尿道的超音波ガイド下自家筋芽細胞/線維芽細胞注入法(自家細胞注入群)に、21例が内視鏡的コラーゲン注入法(従来法群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、24時間排尿日誌、24時間パッドテスト、患者質問票に基づく尿失禁スコア(0~6点)および横紋筋性括約筋の収縮性、尿道と横紋筋性括約筋の厚さとした。自家細胞注入群で尿失禁スコアが著明に改善フォローアップ期間12ヵ月の時点で尿失禁が完全に解消された症例は、自家細胞注入群が38例(90%)であったのに対し、従来法群は2例(10%)にすぎなかった。尿失禁スコア(中央値)は、ベースラインの6点から自家細胞注入群は0点へと著明な改善を示したのに対し、従来法群は6点のままであり、有意な差が認められた(p<0.0001)。横紋筋性括約筋の平均厚は、ベースラインの2.13mm(全症例の平均)から自家細胞注入群が3.38mmへと増加したのに対し、従来法群は2.32mmにとどまった(p<0.0001)。また、横紋筋性括約筋の収縮性はベースラインの0.58mmから自家細胞注入群は1.56mmへ増加したが、従来法群は0.67mmにすぎず、有意差が見られた(p<0.0001)。治療後の尿道厚の変化は両群で同等であった。フォローアップ期間3年の時点においても、自家細胞注入法による重篤な有害事象や瘢痕の報告はなく、術後の有効性に変化は見られないという。Strasser氏は、「自家細胞の経尿道的注入法を尿失禁の標準的治療法として確立するには、多くの症例を対象とした長期にわたるプロスペクティブな多施設共同比較試験を実施する必要がある」としている。(菅野 守:医学ライター)

34011.

妊婦のSSRI使用と先天異常リスク増加に関連性は見られなかった

6月中旬に厚労省から「若年成人で自殺行動リスクが高くなる恐れがある」と注意喚起が促されたパキシル(塩酸パロキセチン水和物)を含む、うつ病治療薬として最も頻繁に使用されるSSRIの妊婦服用リスクに関する報告が、NEJM誌6月28日号に寄せられた。先天異常9,622例の母親に電話インタビュー妊娠可能な年齢にある女性の大うつ病の有病率はピーク時で10~25%に達するが、SSRIの妊婦服用に関する安全性情報は乏しい。カナダ、バンクーバーにあるBritish Columbia大学のSura Alwan氏らは、妊婦のSSRIをめぐって懸念が示されている先天異常、特に先天性心欠損との関連性について調査を行った。研究対象はNational Birth Defects Prevention Study(全米先天異常予防研究:NBDPS)から、重い先天異常を有する乳児9,622例のデータを使用。症例児は8つの州で奇形児サーベイランスシステムを通じて確認された1997年から2002年の間の誕生児。対照群として同じ地区からランダムに4,092例が選択された。各母親に電話で妊娠前後の服薬を含む危険因子に曝された可能性に関してインタビューを行い、SSRI治療[プロザック(フルオキセチン)、 ゾロフト(セルトラリン)、パキシル(塩酸パロキセチン水和物)]が受胎前1ヵ月から受胎3ヵ月後の間に行われていた場合をSSRI曝露と定義した。先天異常の分類は26のカテゴリーとサブカテゴリーで行った。先天性心欠損ほか大半の先天異常との関連性に有意差見られず結果は、無脳症[214例、曝露9例、補正オッズ比2.4(95%信頼区間1.1-5.1)]、頭蓋骨癒合症[432例、曝露24例、補正オッズ比2.5(95%信頼区間1.5-4.0)]、臍ヘルニア[181例、曝露11例、補正オッズ比2.8(95%信頼区間1.3-5.7)]の3種類で関連性が見られたが、先天性心欠損ほか大半の先天異常については有意な関連性は見られなかった。また、前記3種類についても絶対危険度は低く、Alwan氏らは「これらについてはさらなる研究で確認をする必要がある」と提言した。なおNEJM同日号で、Carol Louik氏らによる同様のSlone Epidemiology Center先天異常研究を対照とした研究報告が寄せられている。合わせて参照するとより興味深いだろう。(武藤まき:医療ライター)

34012.

99%の外科医が研修中に針刺し事故を経験

研修中の外科医が針刺し事故を被るリスクは高く、事故の報告を適切に行うことが、早めの予防処置あるいは治療開始に重要なステップとなる。米国ジョンズ・ホプキンズ大学のMartin A. Makary氏らは、その実態調査を行った。NEJM誌6月28日号からの報告。アンケート回答率は95%調査は17の医療センターで研修中の外科医に、これまでに被った針刺し事故について、回答用紙を郵送で返送してもらう方法で行われた。調査内容は、最新の事故が被雇用者保健サービス(employee health service)に報告されていたかどうか、およびハイリスク患者(すなわちHIV・B型肝炎・C型肝炎ウイルスの感染既往歴がある、あるいは注射薬使用のいずれか1つに該当する)に関与したかどうかについて。また、事故原因と周囲の状況についても調べられた。回答率は95%だった。卒後年数が増すほど事故件数が増加回答者699人のうち582人(83%)が針刺し事故を被っていた。また平均事故件数が、卒後1年目では1.5件、2年目では3.7件、3年目では4.1件、5年目では7.7件と、卒後年数(PGY)が増すほど増える傾向にあることが明らかとなった。研修期間の最終年までに研修医の99%が事故を被り、そのうち53%はハイリスク患者に関与するものだった。半数以上が未報告一方、報告状況については、最新の578件中297件(51%)が被雇用者保健サービスに報告されていなかった。その理由として最も多かったのが「時間がない」(42%)。未報告の事故について本人以外で誰が知っているかについては、最も多かったのは指導医(51%)、最も少なかったのは配偶者や恋人などの身内(13%)だった。以上の結果を踏まえMakary氏らは、「針刺し事故は研修中の外科医の間でごく普通のことで、報告されていないことが多い。予防・報告ストラテジーを改善することが、外科医療提供者の職業安全を向上するために必要である」とした。(武藤まき:医療ライター)

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肥満児への体重管理プログラム介入の成果

米国では小児肥満が「蔓延」している状況にあり、2型糖尿病を含む共存症の原因となっている。肥満児の大半は肥満したまま成人になるため、若年で重篤な代謝性疾患を来すことも懸念される。この重大な健康問題に対処するため効果的な小児科学的介入が欠かせなくなっている。 エール大学医学部臨床研究センターのMary Savoye氏らは、肥満児に対する体重管理プログラムの介入を集中的に行った結果、体重、BMI、体脂肪、HOMA-IRなどで改善効果が得られたとする発表を行った。JAMA誌6月27日号からの報告。 体重管理プログラムと臨床的カウンセリングを無作為割り付けMary Savoye氏らは、体重管理プログラム(Bright Bodies)介入が肥満児の体脂肪蓄積と代謝性疾患に及ぼす影響を、対照群と比較しながら無作為化臨床試験を行った。参加者の募集と追跡調査はコネチカット州ニューヘーヴン市にあるエール小児肥満クリニックが担当、運動プログラムには日本製のダンスゲームが使われた。対象は、8歳から16歳までの様々な人種から、年齢・性別でBMI値が 95パーセンタイル値以上の者が選ばれ、体重管理群と対照群に割り付けられた。トータルで135例(60%)が6ヵ月間、119例(53%)が12ヵ月間の介入・追跡調査を受けた。介入は、体重管理群(n=105)は運動、栄養改善と行動変容を目的とした家族ぐるみの集中的なプログラムを、対照群(n=69)は従来型の臨床的体重管理カウンセリングを受けた。最初の6ヵ月は隔週で、その後は隔月に実施された。12ヵ月継続で体成分、インスリン抵抗性など改善の有効性を確認体重管理群と対照群の体重、BMI、体脂肪、HOMA-IRの変化を12ヵ月時点で測定した結果は次の通りで(平均値、[95%信頼区間])、Savoye氏らは、「Bright Bodies体重管理プログラムを12ヵ月継続した肥満児で、体成分やインスリン抵抗性の改善効果が得られた」と報告した。・体重(+0.3kg[-1.4~2.0]対+7.7kg[5.3~10.0])・BMI(-1.7[-2.3~-1.1]対+1.6[0.8~2.3])・体脂肪(-3.7kg[5.4~-2.1]対+5.5kg[3.2~7.8])・HOMA-IR(-1.52[-1.93~-1.01]対+0.90[-0.07~2.05])(朝田哲明:医療ライター)

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30年間にわたる超早産児の脳性麻痺出現率の変化

超早産児においては極めて高率で脳性麻痺(CP)が見られることは報告されてきたが、公表されているCP有病率は、出生年代が異なるさまざまな臨床現場からの報告で、その点での比較に限界が指摘されていた。カナダ・アルバータ大学のCharlene M. T. Robertson氏らは、30年間にわたる超早産児のCP有病率の変化を、域内人口動態および在胎月齢に着目して評価を試みた。JAMA誌6月27日号に掲載。域内人口動態に基づく前向き縦断アウトカム研究を実施カナダ・アルバータ州北部では、1974年から2003年までの30年間に、在胎齢20~27週で出生時体重500~1249gの超早産児2,318例の生産があった。そのうち1,437例(62%)は2歳までに死亡、23例(1%)は追跡不能、858例(37%)が神経発達面での集学的評価を受けている。そこで、域内人口動態をベースとしたCP有病率を主要評価項目とし、CP有病率の経年変化の評価を、スプライン平滑化ロジスティック回帰分析で行った。生存率上昇とCP有病率の関連性に疑問を提示生存2歳児858例のうち122例(14.2%)がCPで、診断は3歳あるいはそれ以上の年齢になってから確定されていた。在胎月齢20~25週グループでは、2年生存率は4%から31%まで向上した(P<0.001)が、生産1000対CP有病率は1974-1976年から1992-1994年にかけては0から110まで単調に増加し(P<0.001)、その後2001-2003年に22に減少(P<0.001)していた。一方、在胎月齢26~27週グループの2年生存率は23%から75-80%の間で増加し(P<0.001)、CP有病率も1992-1994年まで15~155まで単調に増加(P<0.001)、その後2001-2003年には16に減少した(P<0.001)。2001-2003年に生まれた全生存例のCP有病率は生産1000対19であった。直近の10年間における在胎月齢20~27週、出生時体重500~1249gの超早産児におけるCP有病率は、確実な減少傾向を示しており、また死亡率も1992-1994年をピークに安定もしくは減少に転じていた。これらからRobertson氏らは、低体重児の生存率上昇とCP有病率を結びつけた従来の報告には限界があり、NICUにおける積極的な治療の功罪を踏まえた新生児学の進展など重要なファクターを見落としている可能性があると注意を促している。(朝田哲明:医療ライター)

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意思決定支援で、第2子を経膣分娩で出産する女性増加

帝王切開は一般的な分娩法として施行機会が増加している。英国では、1980年の9%から2001年には21%に増え、最近では23%と報告されている。米国やオーストラリアも同様の傾向にある。しかし、帝王切開の頻度の上昇に従って、母子ともに分娩時の合併症が増加しているとの報告があり、医療コスト面での問題もあることから、第2子を経膣分娩で出産する「帝王切開分娩後の経膣分娩(VBAC)」の見直しが進められている。 第1子を帝王切開で出産し、第2子を妊娠中の女性は、計画的経膣分娩と選択的反復帝王切開のいずれかの選択を迫られるが、このような意思決定に関して葛藤状態にある妊婦に対する最適な意思決定アプローチは明確でない。ブリストル大学地域医療学科のAlan A. Montgomery氏らは、第2子を妊娠中の女性において、コンピュータを用いた2つの意思決定支援法と従来のケアが、意思決定に関する葛藤と分娩法の選択に及ぼす効果を評価する無作為化試験を実施した。BMJ誌5月31日付オンライン版、6月23日付本誌掲載の報告から。 妊婦の意思決定に関する葛藤への支援と分娩法の選択を評価対象は、子宮下部帝王切開にて第1子を出産し第2子を妊娠中の女性で、37週以降の出産が見込まれるものとした。2004年5月~2006年8月の間に、英国南西部およびスコットランドの4施設に742名の妊婦が登録された。これらの妊婦を以下の3つの群に無作為に割り付けた。(1)通常ケア群:産科医および助産師による標準的なケアを受ける。(2)情報プログラム群:計画的経膣分娩、選択的帝王切開、緊急帝王切開に関して、予想される母子の臨床的アウトカムの説明を受ける。(3)意思決定分析群:予想される臨床的アウトカム情報とともに、妊婦自身が効用評価を行い、それ基づいて分娩法が推奨される。(2)(3)の妊婦は簡単な説明ののちコンピュータを用いたインターベンションを受けた。意思決定に関する葛藤は、decisional conflict scale(DCS)で測定した。葛藤や不安が軽減、経膣分娩による出産が増加意思決定に関する葛藤は、通常ケア群に比べ情報プログラム群および意思決定分析群において有意に軽減されていた。経膣分娩による出産の割合は、通常ケア群に比し意思決定分析群で多かった。意思決定支援法は、第1子を帝王切開で分娩した妊婦が第2子の分娩法を決める際の支援として有用であった。Montgomery氏は、「コンピュータによる意思決定支援法は、妊婦の意思決定に関する葛藤や不安を軽減し、分娩の知識を増加させる。この介入法により、経膣分娩で出産する女性が実質的に増加する可能性がある」としている。なお、日本も同じ背景をかかえており、経膣分娩をふやす努力が払われているが、設備および人材のそろった施設を要するなどの課題をかかえている。折しも、産科医不足の状況が、この問題にも影響を及ぼしていることは想像にかたくない。(菅野 守:医学ライター)

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どうすれば、貧困層も地域健康保険のベネフィットを平等に享受できるか

途上国では、貧困層は病気になってもケアを受けようとしない傾向がある。医療費負担によりさらなる貧困に陥るからだ。一方、地域社会的な健康保険は、途上国における医療への近接性の改善や財政保護の手段として語られることが多い。しかし、現在の一般的な地域保健のスキームでは、会員が少ない、最貧層が除外されている、ベネフィットの活用における不平等などにより、資源の平等な再配分には限界がある。 では、最貧層が地域健康保険のベネフィットを獲得できるようにするためにはどうすればよいか。ロンドン衛生学熱帯医学校・医療経済学/財政計画科のM. Kent Ranson氏らは、スキームを改善する新たな介入戦略について検討した。BMJ誌5月25日付オンライン版、6月23日付本誌掲載の報告から。 SEWA会員を対象に、地域健康保険受給の公正化を目的に介入女性自営者協会(SEWA、http://www.sewa.org/)は、インド西部のグジャラート州を基盤とするインフォーマル部門(小規模な労働集約的作業所)に従事する貧困女性労働者の組合組織で、現在50万人以上の会員をかかえる。1992年から、会員向けに健康保険を含む家族保険を発行している。Ranson氏らは、保険申請の公正化を目的に2つの介入法と標準的スキームを比較するプロスペクティブなクラスタ無作為化対照比較試験を実施した。2003年に、16地区のSEWA会員を(1)アフターサービス+サポート管理、(2)退院時払い戻し、(3)(1)+(2)、(4)標準的スキームの4つの群に割り付け、2年間のフォローアップを実施した。全体の保険受給率は改善したが、介入による効果は認めなかった2003~2005年の間に、SEWA保険会員の平均的な社会経済状況が有意に改善しており(グジャラート州在住者との比較)、平均受給率も有意に改善した(p<0.001)。しかし、介入群と標準的スキーム群の間には有意な差は見られなかった。また、同一地区の会員と比較して、受給者の社会経済状況に対する介入の系統的な効果は認められなかった。Ranson氏は、「各地区の貧困層が地域健康保険のベネフィットをより多く享受できるようにするには、これらの介入法では不十分であった」と結論した上で、「介入の結果として受給の申し込みが増加したことから、地域健康保険の認知度および信頼度は強化されたと考えられる」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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高血圧患者の拡張障害に対するRA系抑制の有用性確認できず:VALIDD試験

高血圧患者では拡張障害の結果、心不全発症に至るケースが多いと考えられている。そこでLancet誌6月23日号に掲載されたVALIDD試験では、レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を含まない降圧薬とRA系抑制薬の間で、高血圧患者の拡張障害改善作用が比較されたが、有意差はなかった。試験期間は38週間本試験の対象は、左室駆出率50%超にもかかわらず心不全が認められた本態性高血圧患者384例。試験開始時の血圧はおおむね144/86mmHgだった。RA系阻害薬とアルドステロン拮抗薬を服用していた患者は服用を停止した上、バルサルタン320mg/日追加群(186例)とプラセボ追加群(198例)に無作為化された。血圧が135/80mmHg未満に達しない場合、RA系抑制薬・アルドステロン拮抗薬以外の降圧薬を自由に追加できた。拡張能改善作用に有意差なし二重盲検法にて38週間追跡した結果、1次評価項目である「拡張弛緩速度」はバルサルタン追加群で0.60cm/秒試験開始時に比べ有意(p

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進行パーキンソン病の遺伝子治療、世界的に注目を集める試験で一定の成果が

掲載誌の発行前からその成果が伝えられ、発表後は日本でも一般紙などがさかんに報じている注目の研究。 パーキンソン病では黒質のドパミン作動性ニューロンの消失によって基底核回路に変化が起き、視床下核への抑制性のγ-アミノ酪酸(GABA)作動性インプットの低下などをきたす。そのため、運動開始困難、筋硬直、振戦を特徴とする運動障害が起きる。ドパミン作動性神経伝達薬の有効性は確立されているが、進行パーキンソン病ではジスキネジアやmotor fluctuationなど許容しえない薬剤関連合併症が多くみられる。 アメリカNYにあるコーネル大学Weill 医学部脳神経外科のMichael G. Kaplitt氏らは、運動回路内に正常な脳活性を再確立すれば、パーキンソン病の運動障害は回復するとの仮説のもと、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いてGABAの産生を促進するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)遺伝子を視床下核ニューロンへ直接導入する遺伝子治療を試みた。Lancet誌6月23日号の報告。高、中、低用量のAAV-GADを視床下核の片側に手術的に注入Kaplitt氏らは、パーキンソン病12例(男性11例、女性1例、平均年齢58.2歳)を対象に、GAD遺伝子を移入したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-GAD)を視床下核の片側(対側半身の運動機能に対応)に手術的に注入し、その安全性および認容性を検討するオープンラベル試験を実施した。症例選択基準は、Hoehn and Yahr stage 3以上で、少なくとも5年以上の病歴があり、薬剤効果非発現時にmotor fluctuationがみられる70歳以下の症例とした。AAV-GADを低、中、高用量投与する3群に分け、それぞれに4例ずつを登録した。臨床評価は、ベースライン(併用薬の効果発現時、非発現時)、術後1、3、6、12ヵ月後に行い、日常生活動作(ADL)の評価にはUnified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)を用い、神経心理学的検査、PET検査を施行した。治療関連有害事象は認めず、3ヵ月後に運動能が有意に改善、1年後も持続全登録例が手術を受け、脱落例やフォローアップ不能例はなかった。治療に関連した有害事象は認めなかった。遺伝子治療3ヵ月後には、視床化核のAAV-GAD注入側とは対側半身の運動関連UPDRSスコアが有意に改善し(併用薬効果非発現時:p=0.0015、同発現時:p=0.01)、その効果は12ヵ月後も持続していた。PET検査では、治療側に限定的な視床部代謝の減少が確認され、臨床的運動スコアと補足運動野の脳代謝に相関が認められた。以上の結果により、Kaplitt氏は「進行パーキンソン病において、視床下核のAAV-GAD遺伝子治療は安全で良好な認容性を示し、成人脳に対するin vivo遺伝子治療は種々の神経変性疾患に対し安全に施行可能なことが示唆された」と結論した。なお、現在、日本で進められている遺伝子治療(自治医大神経内科・中野今治氏)では、hAADC遺伝子を組み込んだAAV-2ベクターを線条体に注入するとともにL-DOPAを経口投与する方法が採用されている。(菅野 守:医学ライター)

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くすぶり型多発性骨髄腫について3つのリスク層化モデルが報告

これまで、進行や転帰の因子が明らかにされていなかった「くすぶり型多発性骨髄腫」について、新たな知見が報告された。同疾患は形質細胞の増殖異常疾患で自覚症状に乏しく、症候性多発性骨髄腫やアミロイドーシスへの進行リスクが高いとされてきたが、その進行リスクの度合いと診断基準の指標である骨髄形質細胞の割合および血清Mタンパク量との関連が見出され、予後の異なる3つのリスク層化モデルが作成できたことを、Robert A. Kyle氏らメイヨークリニックの研究グループが報告した。詳細はNEJM誌6月21日号に掲載された。276例の全経過を追跡調査この研究は、骨髄腫の国際的な研究グループIMWG(International Myeloma Working Group)が策定した、くすぶり型多発性骨髄腫の診断基準を満たした患者の診療記録を検討したもの。対象は、メイヨークリニックで1970~1995年の26年間に多発性骨髄腫と診断された3,549例のうち、くすぶり型の診断指標である骨髄形質細胞≧10%あるいは血清Mタンパク量≧3g/dLを満たす276例(8%)。診断時の年齢中央値64歳(範囲:26~90歳)、40歳以下8例、男女比62%対38%。診断指標に基づき3つのグループ(下記参照)を作り、骨髄穿刺液と生検検体の調査、および死亡に至る疾患の全過程の経過が調べられた。・グループ1(骨髄形質細胞≧10%、血清Mタンパク量≧3g/dL)・グループ2(≧10%、<3g/dL)・グループ3(<10%、≧3g/dL)骨髄形質細胞割合と血清Mタンパク量が予後に関係追跡調査は累積2131人-年行われ(範囲:0~29、中央値6.1)、そのうち163例(59%)が、症候性多発性骨髄腫(57%)またはアミロイドーシス(2%)を発症していた。疾患の全体的な進行の危険度は、最初の5年が10%/年、次の5年が3%/年、最後の10年が1%/年。進行の累積確率は、5年時51%、10年時66%、15年時73%だった。進行に関与する重大なリスク因子は、血清Mタンパクの量とタイプ、尿中L鎖の存在、骨髄形質細胞の割合、免疫グロブリンの減少にあることが明らかとなった。そして、くすぶり型から症候性への疾患進行リスクの度合いは、グループ1(106例)の進行の累計確率が15年時87%、進行までの時間は2年(中央値)、グループ2(142例)は70%、8年、グループ3(27例)は39%、19年だった。(武藤まき:医療ライター)

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小児期発症の多発性硬化症は緩徐に進行

小児期発症の多発性硬化症(MS)は、成人期発症型よりもゆるやかに進行することが、Christel Renoux氏らKIDMUSの研究グループによって報告された。KIDMUSは、ヨーロッパの多発性硬化症データベース「EDMUS」(European Database for Multiple Sclerosis)の研究プロジェクトの1つ。一般に20~40歳の若年成人期に発症するとされているMSの、16歳以下で発症した患者(0.4~10.5%)の経過や予後を明らかにすることを目的とする。今回研究グループはEDMUSのデータベースを活用し、成人期発症型と比較しての解析を行った。詳細はNEJM誌6月21日号に掲載。EDMUS登録の小児394例と成人1,775例を比較本研究は、EDMUSネットワークに参加しているフランスとベルギーの13の施設の神経科の患者データから、1976年から2001年の間に登録された患者で、16歳以下で発症した患者394例、16歳以後の発症1,775例を対象に、それぞれの初期の臨床像や発症日、再発、二次進行型への転換、不可逆的障害への転帰について調査された。不可逆的障害の判定は、Kurtzkeの機能障害評価尺度を使用。同尺度は1~10段階で、数値が高いほど障害の度合いが高いことを示す。このうち、スコア4(歩行能力に制限はあるが介助なしあるいは休まずに500m以上歩ける)、スコア6(片側から支えてもらっても休まずに100m以上歩けない)、スコア7(壁や家具など身体の支えながら休まずに10m以上歩けない)が用いられた。小児と成人の経過差は10年以上小児期発症MS患者の二次進行型への転換時期は、発症から推定28年、41歳時だった。障害転帰への時期は、スコア4へは発症から20.0年、34.6歳時、スコア6へは28.9年、42.2歳時、スコア7へは37.0年、50.5歳時(いずれも中央値)。また、女性患者の比率が成人型発症MSと比べると高く(男女比1.8対2.8)、初期に再発寛解を繰り返す割合が98%と高いこと(成人期発症型は84%)、二次進行型もしくは不可逆的障害への転換・転帰へ至る期間が成人期発症型より10年以上長くかかっていた。そして転換・転帰時の年齢は両者間で約10歳の開きがあることが明らかとなった(すべての比較でP<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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