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肥満者は肝硬変リスクが高い

肥満は、肝硬変の発生率を増すようだ。英国オックスフォード大学がん疫学部門のBette Liu氏らが、英国中年女性を対象に行った前向き試験「Million Women Study」からの結果で、致死性肝硬変のうち約17%は、肥満に由来するもので、アルコール由来の約42%に匹敵するものだという。BMJ誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月11日号)掲載より。平均56歳の女性123万を6.2年追跡「Million Women Study」は、1996~2001年に英国とスコットランドの公的医療機関であるNHS乳がんスクリーニングセンターで参加者を集め、その入院や死亡情報をルーチンに集約している情報センターの記録を追跡調査し行われた。参加者は計123万662人で、平均年齢(募集登録時点)は56歳、平均6.2年追跡された。主要評価項目は、肝硬変による初回入院または死亡の相対リスクおよび絶対リスク。年齢、試験への募集期間、アルコール消費量、喫煙、社会経済学的状態、身体活動で補正が行われた。肥満で飲酒習慣のある女性は特に注意追跡期間中、肝硬変による初回入院または死亡は1,811例だった。BMIが22.5超の女性は、その値が増すほど肝硬変の発生率が高まった。BMIが5単位増すごとに補正後肝硬変リスクは28%増大(相対リスク:1.28、P

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肥満と飲酒は相乗的に肝疾患リスクを増大する

アルコール消費量とBMIは、相乗的に肝疾患リスクを増大するようだ。英国グラスゴー大学地域医療部門公衆衛生・ヘルス政策のCarole L Hart氏らが1万人近いスコットランド人男性が参加した2つの前向きコホート試験データを解析し、報告した。BMJ誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月11日号)掲載より。平均47歳スコットランド人男性1万弱を29年追跡解析が行われたのは、男性9,559例(平均年齢47.3±9.55歳)が参加した「Midspan」と呼ばれる2つの前向きコホート試験。1つ目の「Main」試験は、1965~1968年にスコットランド中心地帯の職場、タイリー島および本島の住民が参加し行われた(参加者年齢:14~92歳)。2つ目は「Collaborative」試験で、1970~1973年にグラスゴー、クライドバンク、グランジマウスにある27の職場から参加者が集められ行われた(同:21~75歳)。両試験参加者は2007年12月31日まで、平均29年(範囲:0.13~42年)追跡された。参加者は、BMI値(25未満:やせ/標準体重、25~<30:過体重、≧30:肥満)と、アルコール消費量(非飲酒、1~14、≧15単位/週;1単位はビール1/2本)で、9グループに振り分けられ、肝疾患罹患率、死亡率について検討された。BMIとアルコール消費量とも数値が高い人ほどリスク増主因が肝疾患だった死亡は80例(0.8%)、原因を問わない肝疾患死亡は146例(1.5%)だった。「Collaborative」試験では、196例(3.3%)が、肝疾患による死亡、入院またはがんだった。BMI(P=0.001)とアルコール消費量(P

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准教授 平山陽示先生「全人的医療への入り口」

平山先生は循環器内科医を20年経験後、総合診療科の道に入る。医師が自分の専門領域しか診察しない今の医療体制を変化させるべく、総合的に診察して患者さんのメンタル面を含む治療アプローチを実践。東京医科大学病院における「総合診療科」の設立に尽力し現在活躍中である。プライマリ・ケアの重要性から総合診療へ大学病院での初期研修は、通常各診療科目をラウンドしますが、それだけではプライマリ・ケアの習得は困難です。専門診療科のラウンドでは入院患者ばかりを診察、外来患者を診察することがほとんどありません。大部分の患者さんは既に診断がついています。しかし、多くの患者さんは「疾患名」ではなく「主訴」で病院の外来を訪れます。そこでは患者さんの訴えから病気を診断していく重要なプロセスがあります。「症候論」といってもいいし、「診断学」「診断推論」と言っても構いませんが、この初期の段階では幅広い知識と技術が必要です。そして、この研修にはプライマリ・ケアを扱う部門が必要となります。例えば、循環器内科をラウンドすれば心筋梗塞の入院患者さんを診察。しかし、この患者さんが病院を訪れたのは「胸が痛かった」からであり、実際にはこの「胸痛」という症候から正しく診断しなければならないわけです。「胸痛」を主訴とする患者は心臓が原因であれば循環器科、肺が原因でならば呼吸器科、肋骨骨折ならば整形外科、帯状疱疹ならば皮膚科、心因性の胸痛ならば精神科に紹介することもあるわけです。循環器医は心臓由来の胸痛ではないと診断するだけではなく、その患者の胸痛の原因がなんであるのかを推論、院内でたらい回しをせずに適切な診療科に橋渡しするべきです。だからこそ専門治療のスぺシャリストを目指ししている医師にもプライマリ・ケアの知識が必要なのです。幅広いジェネラリストの上にスペシャリストが立つのです。ジェネラリストとしての地固めをしないと良いスペシャリストにはなれません。以前は、プライマリ・ケアを学ぶ場はあまりありませんでした。アクセスのよい都心にある東京医科大学は市民病院的な役割も果たしており、紹介状の有無に限らず、単なる風邪や下痢で来院する患者さんも比較的多く、プライマリ・ケアを学ぶ環境が揃っていました。それも総合診療科が育った要因です。また、この領域では全国的に有名な大滝純司教授をお迎えすることが出来たのも幸運でした。なぜ総合診療なのか東京医科大学病院総合診療科設立のきっかけは新医師臨床研修制度の始まりでした。新制度の目的がプライマリ・ケアの習得であるので、当院では初期研修医に総合診療科のラウンドが義務付けられています。最近では後期研修で総合診療科を希望する人が増えてきており、総合診療科が役に立つ診療科目であることを研修医たちが認知し始めているのを実感しています。総合診療科は、文字どおり総合的に患者さんを診る診療科であり、患者さんが訴えている症状を読み取り、身体所見や検査所見を加味して推論した診断で次なる専門診療科への道筋をつけるチーム医療と同時に、専門医の手を煩わせることもない一般的な疾患(Common disease)は総合診療科で治療をしています。また、総合診療では専門診療科との連携を図りながら、プライマリ・ケアを通して診療のの基礎を固めることができます。ですから、総合診療科の役割のひとつは、研修医に病気を診るのではなく患者さんを診るという態度を身に付けさせることでもあるのです。例えば、MUS(Medically unexplained symptom:医学的に説明できない症状)を訴えてくる患者さんにはメンタルな要因も多いわけですが、そのときに身体疾患がみつからなくとも"症状"まで否定することなく、その症状を現す意味について、患者さんの社会的環境要因も考えるぐらいのことが医師の頭の中にないといけません。いわゆる「全人的医療」、つまり病気を診るのではなく患者さんを診ることの教育が必要なのです。診療科目が細分化されすぎて専門的な知識のみで症状を追うのではなく、幅広いプライマリ・ケアの知識を持った上での診察が求められています。東京医科大学病院の研修医にこの意識を持たせることも総合診療科の重要な役割です。総合診療科という立場への理解不足総合診療科として専門診療科の医師と連携がうまくとれているかと言えば、必ずしもそうではありません。それは臓器専門医にプライマリ・ケアが十分に理解されてないからだと思います。総合診療科は初期診療の担い手ですが、決してスーパーマンではないので、専門診療科で診ないと言った患者さんを何でも引き受けることが出来るわけではありません。極端な例を挙げれば、原発不明がんの患者さんは、いくつかの臓器にがんが見つかっても原発巣が同定されないと、どの診療科も主治医になろうとはせず院内でたらい回しにされてしまう危険があります。だからといってプライマリ・ケアの総合診療科がこのような患者を受け持つことは適切ではありません。現に専門診療科からの患者さんの押し付けで疲弊している総合診療科も多々あるように聞いています。また、総合診療の場合、各診療科目との連携が重要となるのでコミュニケーション能力は極めて重要です。しかし、連携を図るのが容易でない時があります。その場合相手の診療科に患者さんを押し付けるのではなく「一緒に診てほしい」「相談に乗ってほしい」とお願いする心がけを指導しています。連携をとる苦労はどこにでもあると思いますが、難しいですね。総合医の果たす役割今の医療体制では、患者さんが自ら診療科を探すことが多いため、自ら選んだ診療科では病気が分からず帰宅するケースがあります。その意味では総合診療科は医療の玄関口として、その先に専門性の高い医師に依頼して先端治療へ導くなど役割は大きいです。また、プライマリ・ケアを通して診療の基本を研修医に教えるのも総合医であり総合診療科の役割です。現在では、総合的に診療ができるジェネラリストが求められています。総合診療科を目指すドクターがもう少し多くならなくては、今の医療体制の変革には限界があると思います。英国では家庭医制度が確立されており、患者がいきなり総合病院や大学病院に行くことはまずありません。家庭医に診てもらってから専門医へ紹介され診療を受けます。そのため家庭医になるためのプログラムが確立しています。我々の総合診療科でも家庭医養成プログラムを用意しており、何人かの後期研修医がそのプログラムに則って研修しています。家庭医はメンタル面を含めた総合的な診察をします。家族全員を診るため、大人は内科、子どもは小児科などの振り分けを行わず、家族に同じ症状があれば家庭内での原因も探ります。家族全体を診ていくという姿は医療の理想のひとつの型でもあります。もし、そういう家庭医を大学病院でも育てていくとしたら総合診療科がなくてはできないと思います。総合医認定制度がスタート総合診療科がしっかりとプライマリ・ケアを実践するには、専門医に委ねるべき患者を臓器別専門科がしっかり請け負ってくれることが大切です。総合診療と専門診療がうまく連携できていれば、より少ない専門医でも病院は機能するはずですし、それが本来の病院の姿だと私は思っています。厚生労働省も総合医を推進、「総合医認定制度」を視野に入れて検討しているようです。日本プライマリ・ケア学会、日本総合診療医学会、日本家庭医療学会の3学会は、今春にひとつにまとまって総合医(家庭や総合診療医)の育成プログラムと認定に向けてすでに準備が進んでいます。この認定制度により、首都圏はもとより地域医療も大きく変化、そして患者さん側の医療に対する意識も変化していくでしょうね。多くの総合医(ジェネラリスト)が活躍すれば患者さんは単なる風邪や下痢などの一般的な疾患で大病院を受診することも少なくなり、医療費削減にもつながります。私は東京医科大学病院において、総合診療科の第一線で活動してきました。現在取材も多く、注目を浴びている診療科目です。ぜひ、総合医(ジェネラリスト)を目指す人が多くなることを期待します。質問と回答を公開中!

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准教授 平山陽示先生の答え

紹介の仕方について診断がつかない患者を紹介する時に、受け入れる側としてはどの様な紹介のされ方が好ましいでしょうか?診断がつかないので、当然、検査結果に異常見られないケースが多いです。その様な場合に、どんな情報を付与すれば良いのか悩んでおります。診断がつかない患者の場合、病歴・身体所見・検査所見から、再度、鑑別疾患を挙げることから考えることになると思います。その際には稀な疾患も考慮しなければなりません。我々の診療科では、悩む症例を夕方のミーティングでプレゼンテーションして、皆で鑑別疾患を考え、追加検査について話し合ったりします。ですから、紹介して下さった先生が、たとえ陰性所見であっても、その検査が陰性であったのでこの疾患は考えにくいとか、あるいはどのような身体所見がなかったからこの疾患が否定的であったとかが判ると役に立ちます。大学病院を怖がる患者とのコミュニケーションについて田舎でクリニックをしております。高齢者ばかりの土地なので大学病院を紹介するというだけで大騒ぎ。ましてや、ここでは診断がつかないので総合診療科を紹介するとなると、あたかも死の宣告を受けたかのように萎縮してしまいます。先生の記事を拝見すると、患者さんとのコミュニケーションについても研究されているとのことなので、何か良いアドバイスがありましたら教えて頂きたく思います。この場合、大学病院に紹介して精査をしたほうが良いと考えるのが医師の解釈モデルであり、その際は何かしらの鑑別疾患が念頭にあるのでしょう。一方、精査の必要はないと考えるのが患者さんの解釈モデルです。患者さんは大した病気だと考えていないのかもしれないし、あるいは悪い病気と考えていて、大学病院の検査で苦しい思いをするよりも静かに家で最期を迎えたいと考えているのかもしれません。いろいろな解釈モデルがあり得ます。医療面接が患者の解釈モデルと医師の解釈モデルを付け合せる場であることからすれば、患者は何を心配しているのか、その症状の原因を何だと考えているのか、そのためにどんな検査を希望しているのかという情報を患者さんから得ることが大切と考えています。そして患者さんの解釈モデルと医師の解釈モデルが異なるときには、患者さんが心配している病気だとすると、どこがどう合わないのかを説明してあげることが重要です。忙しい外来でそのように対処する時間はないかもしれませんが、医師が患者さんとの医療面接において、少なくともこの解釈モデルを意識して接していることは重要なことのひとつです。大学病院と聞くだけで"怖い"と思ってしまう理由が判れば、それについての話し合いも出来ると思います。大学病院に行かせる行かせないの議論をしていると不毛に終わることも多く、患者さんからすると「あの医者は私の話を聴いてくれない」などとなってしまいます。医師の思ったとおりに患者が行動してくれないときこそ、患者さんの解釈モデルは何であるのかを確認することが大切です。糖尿病初期患者の扱いについて東医大さんの総合診療科では、糖尿病初期患者の扱いをどうされているのか教えて下さい。実は当院にも総合診療を担当する科と糖尿を扱う科があるのですが、専門医に初期患者まで担当させるとバンクしてしまうのが実情です。現在は食事療法が中心の初期患者は総合診療担当医と栄養士レベルで対応しています。しかし患者さんの中には通院する科が糖尿でないことに不安を持つ方も少なくありません。キャパを超えたら東医大のような大きい病院を紹介するべきなのでしょうか。お知恵を頂ければ幸いです。現在、当科では糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の初期患者については出来るだけ近医を紹介するように努めていますが、どうしても本院に通院希望の患者さんだけ専門医に回しています。当科で抱えることは原則しておりません。大学病院の場合は軽症患者であっても、ある研究や治験が進行していることがあるので、必ずしも専門医が嫌がるわけではないようです。それよりも当科において、慢性疾患を抱えないために、後期研修医たちが慢性疾患患者と長期間にわたって関係していく経験を積ませることができないのが悩みとなっています。その意味では、将来的に当科のスペースと人的資源が大きくなれば、貴院のように初期患者や軽症患者を抱えるほうが教育的には良いと考えています。一方、通院患者さんの中に糖尿病専門医でないと不安だという場合は、やはり専門医に紹介するしかないと思います。ただ、そういう軽症患者さんの場合は、専門医に紹介する基準をあらかじめ示しておくと安心される方がおられます。例えば、HbA1cが6.5を超えたら臓器障害の進行がより進むので、そのときは専門医に回ってもらいますとか、何かしらの糖尿病合併症が認められたら専門外来に行ってもらいますというような基準です。MUSの患者さんの対応 どうすれば安心するのか?記事の中にMUSの患者さんが多いことに触れていましたが、当院でも同じことが言えます。明らかに疾患ではない方もいらっしゃいますが、このような場合、どうやって安心させてあげれば良いのか暗中模索状態です。何か対応のポイントがあれば御教授下さい。非常に難しい内容の事柄です。Up To Dateには一応MUSのアプローチについての記載がありますが、日本と欧米で異なるかもしれません。私は、日本におけるMUSの一番の問題は、患者さんが「病気がないと症状はない」と固く信じていることにあると考えています。ですから、身体疾患が否定されたときに患者さんは、「このような症状があるのに病気がないわけはない」と考えてしまうわけです。そして医師もそのように考えてしまうと、患者への説明が不誠実になってしまい、医師患者関係がぎくしゃくしてしまいまいます。現実には明確な疾患が認められなくても症状が出現することは良くあるわけで、昔から症状を利用した表現もあるくらいです。大きな悩みを抱えたときに「頭が痛い」「胃が痛い」「目が回る」とか、借金をして「首が回らない」とか、悲しい話で「胸が痛む」などです。呑めない話(承諾できない話)を提示されて「物を飲み込むときにつかえる」ことも良くあります。もちろん疾患が100%ないと断言できることも難しいので、私が注意していることは、(1)決して症状を否定しない(共感を示す)、(2)疾患がなくても症状がでることは良くあることを説明する(データがあれば示す;何割は原因不明など)、(3)現時点では疾患が見つかっていないが、疾患は時間が経過してから発見されることがあるので、症状があまりにも改善しないか、悪化するときには再診するよう促すなどです。心身相関についてはまだまだわからないことが多く、もっともっと研究が進めばよいと思っています。他大学病院との違いは?大学病院の総合診療科が縮小・廃止傾向と聞きました。東京医科大学病院さんでは、上手く運営されているようですが、縮小・廃止になる大学病院とどのような違いがあるのでしょうか。また、順調に運営するために注力している取組等があれば教えて頂きたいと思います。宜しくお願いします。大学病院大学病院は全国的に見るとまだまだ敷居が高いようですが、東京医科大学病院は近隣に他の大学病院や大病院が散在しているのと、地下鉄の駅とほぼ直結しているなどの利便性も影響してか、大学病院としては非常に多くの患者さんが気軽に受診されるようです。紹介状がなく、受診科が明らかでない患者さんと、臓器別専門科の依頼患者さんを診察しているのですが、1日60名ほどの患者さんが総合診療科を受診しています。このように患者数に恵まれているのに加えて、臨床研修医が毎年40名以上採用できていること、病院執行部が支えてくれており、私が卒後臨床研修センターの副センター長を兼任したり、研修プログラム責任者を務めていたりして、卒後臨床研修センターとの極めて密度の濃い連携が保たれていることなども理由として挙げられると思います。卒後臨床研修センターが主催して指導医のための教育ワークショップや後期研修医のための教育ワークショップを開催したり、研修医を対象としたセミナーや手技研修をしたりして、総合診療科が指導医育成や研修医教育をしっかりと行うことで、他科から総合診療科の存在価値が認められつつあることもあるかと思います。また、ほとんどの大学病院の総合診療科は病院の1診療部門にしか過ぎず、大学の講座との関係は薄いことが多く立場が弱いのではないでしょうか。その点、当科の大滝教授が医学教育講座の主任教授に就任したことも大きな要素であると思います。標榜科目せっかくの専門医も患者さんに向けて案内が出来ないと理解が進まない部分があると思います。そのためには標榜科目に総合診療科が入るなども必要かと思いますが、その点はいかがでしょうか。医学の進歩に伴い、診療科が細分化された今、おっしゃるように総合診療科が正式な標榜科目に入る必要があると私も考えます。厚労省とプライマリ・ケア関連学会と医師会との協議が進めば、将来的にはその方向で進むのではないでしょうか。ただし、現時点では総合診療科と言っても、内科系の総合診療のみで、外傷を扱っていない当院のような場合から、外傷はもちろん、簡単な手術まで行う総合診療科もあります。また、救急と一緒になって三次救急まで扱う総合診療科まであるなど、プライマリ・ケアの守備範囲が定まっていないため、もう少し時間が掛かるかもしれません。紹介患者の疾患他院から紹介されてくる患者さんですが、結果的にどんな疾患が多いのでしょうか?我々開業医が、どの様な疾患を見落としがちなのかが気になっています。大学病院の総合診療科という性質上、他院からの紹介患者さんに限れば、やはり不明熱などの発熱精査の患者が最も多いですが、それ以外は多岐にわたります。開業医が見落としがちな疾患が特にあるとは思えませんが、一般的に、発熱の患者に関して言えば、安易に抗生物質を使用されるために、感染性心内膜炎をはじめとした菌血症患者の菌の同定が遅れることがあります。過去の医学部の授業は症候学や診断学に乏しく、我々は診断方法を実践の中で習得してきました。最近では学生や研修医たちには症状と身体所見の段階で出来る限り多くの鑑別疾患を挙げさせ、それらを鑑別するためにはどのような身体所見を取ればいいのか、どの検査を出すべきなのかを考えさせるようにしています。近年、このような診断推論の本も増えてきましたので、一読してみてください。外科系から総合医への道について現在医学部に通っている者です。親が病院を経営しておりますので将来的には継ぐ予定です。病院は200床弱の病院です。自分としては外科系に興味を持っていますが、病院の実情を見ると総合診療医になる必要を感じております。先生は元々循環器内科医を20年経験して総合診療医の道に進まれたとのことですが、外科系を専門とする医師が総合医になるケースもあるでしょうか?進路相談になって申し訳ありませんが、お教え下さい。もちろん外科系の専門医が総合診療医に進むこともめずらしくはありません。当科にも外科系に進まれたあとの医師がいます。また、当院では外傷を扱ってはいませんが、本来、プライマリ・ケアの守備範囲には小外科も含まれるはずですし、虫垂炎やヘルニアなどの手術を行っている総合診療科もあります。現在、東京医科大学病院では、生涯教育センター部門を設置し、大学を辞める前に総合診療科などで研修できる体制作りに着手しています。たとえ呼吸器外科医であったとしても、開業するとなれば、ほぼ内科中心でしょうから、総合診療科でしばらく研修すれば役立ちます。現在の初期研修は2年間でプライマリ・ケアの習得をするわけですから、君たちの時代は外科に進んだ後に総合診療医になるのは今までよりも楽になると思います。ですから安心して2年間の初期研修後に外科系に進んでください。総合診療科を希望する理由本文中に「後期研修で総合診療科を希望する人が増えてきており」とありましたが、その方々は開業医を目指すドクターでしょうか?私も総合診療医をもっと増やさないと、地域医療が持たないと考えている方です。しかし、今総合診療医を目指す研修医は、果たして「総合診療医」として大学病院や地方の総合病院で活躍することを目指しているのか?または単に「開業や継承」するために総合診療医のスキルが必要と考えているだけなのか?疑問に思っております。私の立場では、総合診療科で後期研修を行うドクターの本音を伺う術がないので是非お聞きしたいと考えております。現在、当科に入ってくる後期研修医の目指している医師像は多彩です。家庭医を目指す者、病院勤務医(ホスピタリスト)を目指す者、大学で医学教育・研究を目指す者、海外での医療協力を目指す者などです。皆、ジェネラリストであることには変わりありませんが、目標が異なるため、彼らの研修プログラムはそれぞれ異なります。特に家庭医を目指す者は家庭医療学会専門医のプログラムに則っているため、地域での研修が長くなっており、大学病院内で働く期間が短い傾向があります。海外協力を目指していた者は我々の後期を終えた後に長崎大学の熱帯医学研究所に進み、年内には海外に派遣されるそうです。また、ある後期研修医は女性外来を担当する医師になるため、当科で内科認定医を取得し、次に産婦人科専門医を取得すべく他施設ですが、産婦人科の後期研修医になっています。また、親の開業を継ぐことを目標としている後期研修医も、臓器専門医になることをきらって当科に来たのですが、内視鏡やエコーを習い、小児科もしっかりと学びたいと言っています。実際、米国では内科―小児科コースがあるそうです。最近、当院の小児科から後期研修医の中で、小児科専門医を取得後に総合診療科で研修したい者がいるとの相談も受けており、今後は総合診療科と小児科の連携が強まりそうです。いずれにしろ、今までの大学病院の医局・講座制では彼らの要求は満たされず、総合診療科の存在意義があると思っています。専門医とのコミュニケーションについて専門医とのコミュニケーションについて工夫されているようですが、取組方についてもう少し具体的にご教授願えないでしょうか。実は、私もその点について大変苦労しており、特に目上のドクターには何も言えない状況です。同僚の中にも専門医とのコミュニケーションの難しさから総合診療科を離れていくドクターが出てきております。何かしらアドバイス頂けたら幸いです。これが一番難しいですね。この問題を抱えていない総合診療科は皆無ではないでしょうか?当科でも、医局員から他科とのコミュニケーションに関する文句はよく聞きます。正直言って妙案があるわけではありません。とにかく当科からの基本的姿勢は「押し付け」ではなく専門医に「お願い」しているということです。我々は専門医が診るべき疾患だと考えていても、専門医側がcommon diseaseだと考えて「これぐらいは総合診療科で診ろ」という態度を取ると当科で診ざるを得なくなります。しかし、総合診療科がすべての専門医を抱えているわけではありませんので、患者さんが重症化したときに困るわけです。従って、私たちは疾患が明らかとなったにも関わらず、臓器別診療科が引き取らないときは、必ずミット(併科または兼科のこと)になって一緒に診てもらいます。そうすると治療がうまく行かないときには取ってくれることが多いです。彼らが併診すらしないときは、不本意ですが、併診しない診療科のトップと話し合わなければなりません。私も数回そのような話し合いをしたことがありますが、そのときは必ず臓器別診療科に転科となります。だいたい患者さんは「何科」に入院したのではなく、「何病院」に入院するのですから、専門医が診てくれなくて困るのは患者さんであり、それは医療安全の観点からも問題だということを理解してもらうようにしています。病院執行部と安全管理室は総合診療科に好意的であることが多いので、そのあたりをうまく利用してもいいと思います(ちなみに私は安全管理室の副室長でもあります)。しかし、我々が何でも押し付けるのではなく、出来る限り診るという姿勢がないと彼らの反感を買うばかりとなってしまうので注意が必要です。准教授 平山陽示先生「全人的医療への入り口」

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准教授 小早川信一郎先生「白内障手術の光と影」

日本眼科学会眼科専門医。医学を志す中で、自分の専門分野を持ちたいと眼科を志望。微生物・免疫学を米国で研究。現在、東邦大学医療センター大森病院にて眼科・白内障及び感染症の分野を担当している。直径3cmの天体観測白内障手術は高齢化社会の進行により、症例数が年々増加傾向にあります。白内障手術は、安全簡単なイメージが定着しつつありますが、決して100%安全な手術ではありません。医療従事者としても術前術後の患者さんケアは必須であり、手術適応の決定から術後フォローまでが手術治療であると考えています。術後フォローは、患者さん個々の症状に左右され、また患者さん一人ひとりの病気に対する意識も違うので、対応も異なります。高齢化社会の進行に伴い、以前と比較して、手術を受ける患者さんの年齢層が上がってきています。そういった患者さんでは、全身の免疫機能が落ちていることも考えられ、術後感染症など合併症の増加が予測されます。白内障手術は安全簡単なイメージが先行していますが、現場では決してそのような意識はありません。眼球の内部には痛覚が乏しいとされています。圧迫感は感じても、痛さを感じない場合が多くあります。たとえば、白内障の術後感染症が起きた場合、痛みを感じない症例が半分程度存在します。もちろん、患者さんからの見えないという情報があれば心強いですが、発症初期など自覚に乏しい場合、感染症の進行予測を診察や検査で得る情報のみで判断する場合もあります。眼球は直径3cm、それを顕微鏡で診察しているわけです。眼球は小宇宙であると、たとえられる場合がありますが、毎日我々眼科医は天体観測をしているのかもしれません。医師の満足と患者の満足にギャップ眼科手術はその殆どが局所麻酔で行われます。そのため医師間あるいは看護師との会話、看護師の動きなどが手術を受けている患者さんにも知られてしまうこととなります。手術指導の場合は、特に神経を使います。術後、医師の満足と患者の満足にギャップが生じる時があります。医師は患者さんが本当のところ、どう見えているかがわかりません。見えているはずと判断しても見えていなかったり、その逆であったりと、視点の違いを常に感じています。患者さんの中には、手術をすれば若い時の視力や見え方が取り戻せると考える人もいらっしゃいますので、術前の説明に注意が必要なケースもあります。ただ10年前と比較しますと、白内障手術の際に埋め込む代用水晶体、一般的に眼内レンズと呼ばれていますが、眼内レンズはかなりの技術革新がなされました。もちろん手術技術も進歩しました。当センターでは、遠近両用眼内レンズの使用における先進医療の認可を受けていますが、こういった新しい眼内レンズの登場は、これまでよりも確実に患者さんの満足度を高めていると思われます。白内障手術の光 -ここまで直せる白内障手術-白内障の手術は、この5年ほどで使用できるレンズの種類が多くなりました。1、遠近両用眼内レンズ'08年4月より全国で開始、当センターでも手術が可能です。'10年1月当センターでは先進医療認定を受けたため費用は36万円程度となっています。現在我が国で使用できる遠近両用眼内レンズは3種類で、屈折型1種類、回析型2種類となります。ただし、一番注意して頂きたいことは、全ての患者さんに適応があるわけではないということです。先程の話ではないですが、遠近両用眼内レンズを用いても老視が始まる前、若い頃の視覚、見え方に戻るわけではないのです。どちらかといえば、遠方と近方二つの異なる距離にピントが合うレンズとイメージして頂いた方がよいと思います。中間距離ではピントが合う場合も合わない場合もあります。遠近両用眼内レンズの挿入は、基本的に通常の手術と変わりませんが、より丁寧な手術操作が必要となります。次に、患者さんの選択に関してですが、角膜乱視が1D以上ある人は適応になりませんし、白内障以外の眼の病気がある人はもちろん適応になりません。当センターでは、まだ症例数がそれほど多くないですが、比較的術後成績の良い、回析型のレンズを中心に手術を行っています。2、乱視矯正用眼内レンズ'09年夏頃より乱視度数が加わったレンズが使用可能となりました。乱視が一定以上ある眼とそうでない眼との実際の見え方については、未知の部分もありますが、少なくとも乱視が少ない眼の方が見え方の質は高いはずです。現在、乱視矯正用眼内レンズでは矯正度数が3種類(1.0D, 1.5D, 2.0D)用意されています。すなわち、2.0D以上の乱視は残ることになりますが、このことからも眼鏡のようにきっちりと乱視を矯正するというよりは、乱視を減らすことに重点が置かれています。これまでの乱視矯正は、主に角膜切開術が行われてきました。しかし、術後の戻り(再び乱視となる)や再現性(定量性)が低いなどの理由で広く行われるまでには到りませんでした。我々も昨年末よりこのレンズを用いておりますが、同程度の乱視が残った症例と比較すると明らかに裸眼視力の向上が得られており、患者さんからの評判も上々です。手術は、乱視軸の決定などの操作が加わるため、従来と比較すると、やや煩雑ではありますが、そのために手術時間が何倍にも伸びるということはありません。3、難症例対策、特殊な眼内レンズ労働災害などによる穿(せん)孔性眼外傷により、角膜のみならず虹彩や水晶体まで広範囲に障害をうけた症例に対し、昨年、虹彩付きの眼内レンズを用いた手術を行いました。虹彩付き眼内レンズはヨーロッパを中心に用いられていますが、残念なことに我が国では医療材料として認められていません。こういったレンズは、個人輸入により我々術者の裁量のもとに使用せざるを得ないのです。眼科のみならずどこの科においても共通の問題点とは思いますが、こういった数の多くない症例に対し、欧米で普及しつつある治療法が、我が国においては保険制度の縛りによりスムーズに行えないという現実があります。難しい問題とは思いますが、今後少しでも改善されればと思います。白内障手術の影 -手術に潜む落とし穴-現代の白内障手術は、技術的にほぼ完成の域に達したといわれています。しかし、まだ解決されていない問題点は存在します。一つは「術後感染症」です。外科的処置に術後感染症は一定頻度で必ず起こります。眼科手術の術後感染症は、外科などと異なり、感染による全身への影響は少ないですが、視機能の喪失に直結します。当医療センターにおける12年間の白内障術後感染症の症例を見ると約1/3の症例が最終視力0.1以下でした。0.1は社会的な失明ラインとされていますので、この成績からも決して予後の良い疾患ではないことがわかります。現在、術後感染症の頻度は約0,05%とされており、年間100万眼行われている白内障手術では、1年に500眼この術後感染症が発生し、そのおおよそ3分の1、160眼に社会的失明が起こっていると予測されます。もちろん、両眼同時に感染症を起こすということはほとんどありませんので、160人の患者さんが全く生活できなくなるというわけではないのですが、手術前に多少なりとも見えていた眼が手術により見えなくなる、というのは大変恐ろしいことです。白内障手術といえども100%安全ではない、ということを是非知っていただきたいと思います。次に強調したいことは、「短時間で終了する手術は優れた手術ではない」ということです。白内障の手術は眼科専門医全ての医師が経験しています。指導者のもとで行われる経験の少ない術者の手術でも平均20~30分程度で終了し、術後の仕上がりも熟練者と大差ありません。もちろん熟練者であれば、難症例でなければ約10分程度で終了する場合が多いのですが、この約10-20分程度の差による違いは術翌日になればほとんどないのが現状です。一部の眼科医が4~5分で手術が終了するとマスコミを用いて宣伝していますが、とても違和感を覚えます。実際に4-5分で終了する術者を知っていますが、その先生方は決して自ら手術が人よりも早いことを宣伝しません。つまり、手術時間が早いことと優れた手術であることは一致するものでなく、自分の術式を追求した結果がその時間となっているだけであって、時間の早いことに白内障手術の価値を置いているわけではないからです。手術時間が早いことのメリットは、患者さん側よりも医療側にあると考えます。なぜなら、1日当たりに執刀できる症例数が増え、それに伴い手術による収入が増えるからです。私たちにとって理想の白内障の手術とは、短時間で終わる手術ではなく、丁寧な手術、眼に対する侵襲や合併症の少ない手術です。それは、結果的に患者さんの利益になると考えています。眼科医という選択眼科医という道は、何か手に職をつけたい、手術も面白そうだ、と考えたからです。父が眼科を開業していたことも大きかったですね。ただ、いざ始めてみると専門性がとても高く自分には向いていたかなと思います。眼科の検査はその殆どを外来で行っていますので、診療していく中で疑問に思ったことを自分自身で確かめることができます。専門的に活躍したい方には向いていると思います。私が医師になってから最初の10年は、白内障手術が劇的に変化した10年でした。技術革新も目覚ましいものがあり、1年たつともう古いといったことがしょっちゅうありました。自分自身はその変動を外野席から眺めていただけにすぎないのですが、その場所にいたこと、雰囲気を味わえたことはとても幸運だったと思います。人間が外界から得る情報の約8割は視覚、眼からといわれています。先日、認知症の患者さんの白内障手術を全身麻酔で行いました。術後、認知症が治ったとは思えないのですが、行動は術前とあきらかに変化していました。そんな姿を拝見すると、この仕事にやりがいを感じますね。質問と回答を公開中!

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准教授 小早川信一郎先生の答え

アトピー性白内障手術時の注意点まだまだ駆け出しの眼科医なので、初歩的な質問で失礼します。アドピー性白内障手術の場合、網膜剥離を併発している可能性も念頭に入れて手術を行うことを指導されました。このような場合、小早川先生が特に意識していることや注意していること等がありましたら教えて頂きたく存じます。(1)術前に眼底が全く観察できない程度に白内障が進行していた場合、術前の超音波検査はもちろんですが、術中に網膜剥離の有無を直接観察することになると思います。私は術中に発見したことはありませんが、術後すぐに(1週間以内)剥離を起こされたことが出張中にありました。(2)手術においては、極力大きめのCCC(5.5-6ミリ程度)を狙います。レンズ選択は以前、PMMAでしたが、今はアクリルを入れています。1P、3Pは問いません。(3)若い方が当然多いので縫合します。私はすべての症例で基本的に上方強角膜切開、輪部後方からトンネルを1.5ミリ程度作成していますので、縫合は容易です。結膜は縫合したりしなかったりですが、終了時にうまく元に戻らなければ縫合します。(4)術前ムンテラはRDの話もします。(5)硝子体脱出は極力避けてください。脱出したらたぶん剥がれます。(6)予想外に炎症が強い時があります。そういう時はステロイドを点滴します(リンデロン4ミリ相当を2-3日間)。基本、入院して頂いています。眼内炎を疑うほどの炎症は経験ありません。加齢黄斑変性の研究動向加齢黄斑変性の治療方法についての最近の動向など、御存知でしたら教えて下さい。滲出型の場合は、第一選択ルセンティス、第二選択マクジェンを月一で3回投与し、経過を見て追加、維持療法が基本ではないでしょうか。蛍光眼底造影(必要ならICG造影)は必須と思います。OCTは治療効果判定に有用ですが、なくても視力やアムスラーチャートなどで大体把握できます。ドライタイプにアバスチンを試しましたが、効果はありませんでした。ドライタイプの方には、希望があればルセンティスをやっていますが、効果がない場合がほとんどなので、その時点でムンテラして止めています。レーザーは最近やっていません。レーザーはアーケード内ですと、暗点が出たり自覚的な見え方の質の低下を経験しています。硝子体手術は出血がなければしません。高齢者に手術を勧めるべきか在宅をやっている開業医です。白内障と思われる高齢者の方を見かけますが、90歳や100歳になる高齢者の方の場合、ご家族の心配もあり、白内障の手術を勧めるべきかどうか、よく悩みます。その辺の考え方を教えていただければと思います。3年ほど前までは、85歳以上の方の時は手術については積極的に勧めませんでした。もちろん過熟白内障の時はします。緑内障になるからです。最近は85歳以上の元気な方が増えてきて、本人の希望があり、家族も希望していればします。ただし、ムンテラとして、破嚢や核落下のリスクが上がること、感染リスクも高いこと、は必ず言います。それほど黄ばみの強くない核白内障であれば、たぶん勧めませんし、家族がやってくれと言っても最初は乗り気でない姿勢をみせます。90歳代は経験ありますが、100歳の方は手術の経験がありません。チン小体脆弱、前部硝子体膜剥離がある、は予測して手術に入ります。中には60-70代と変わらない方もいますが、弱い方がやはり多いと思います。また、きちんと手術が終了しても、0.7程度にとどまる方が多く、1.0はあまりいない印象です。レンズを選ぶ眼内レンズの種類が増えるにつれ治療後にピントが合わずに再手術をすることになる例が出ております。大森病院さんでは、レンズを選ぶ際の注意点、できれば個人の感覚に頼るのものではなく、科としてのガイドラインの様なものがあれば教えて頂きたいと思います。(1)-3.0D以上の近視がある方を除いて、基本的には-0.5から0Dを狙っています。乱視が強い場合、最近はトーリックです。以前は乱視の分を考慮して、少しプラス気味に球面を狙ったりして、等価球面ができるだけ-0.5から0程度になるようにしています。(2)中等度から高度近視の方の場合、コンタクトをしていて老眼鏡を使用という方は(1)と同じく狙います。(3)中等度から高度近視の方で術前眼鏡使用の場合、患者さんとお話をして、-2.5から3程度に等価球面がいくように選択します。必ずピントが合う距離が今よりも遠くなることをお話します。(4)(2)や(3)のような近視の方はメガネの必要性をお話しています。(5)一般の患者さんに多焦点の話はしていますが、自費で36万円ということを話すとその時点であきらめる方が多いです。ただ、考えてくると言った方の場合、一度手術の予約のみ取って、日を変えて多焦点IOLのお話を再度しています。乱視適応は原則1D以内です。80歳以上の方には積極的に勧めていません。(6)トーリックは、乱視が強いのでそれも少し治るようなIOLを入れますとだけ言い、過剰な期待は抱かせないようにしています。適応は積極的にしており、1D以上角膜乱視があればトーリックです。術後感染症差し支えなければ、眼科手術の術後感染症を防ぐために行っている貴院ならではの取組、工夫をご教授下さい。(1)術前に結膜嚢培養(2)(1)で腸球菌、MRSAが出たら告知して術前に抗菌薬点眼処方(3)全例、極力、術3日前からの抗菌薬点眼(クラビッド)(4)皮膚消毒したあと1分間放置(5)穴あきドレープをかけて洗眼したあともう一度露出した皮膚を消毒。(6)30秒間放置して、テガタームなどを皮膚に貼り付け、開瞼器をかける術後は極力(主治医が診察できない場合もあるので)、当日より眼帯を外して抗菌薬点眼を開始する。こんな感じです。糖尿病専門医との連携について眼科をやっている者です。糖尿病専門医との連携で気をつけているポイントがあれば教えて下さい。どこも同じ状況だとは思いますが、糖尿病白内障や糖尿病網膜症の患者さんが増えてきたため血糖コントロールなど、糖尿病専門医と連携をとる機会が増えてきました。宜しくお願いします。白内障は急ぎませんが、網膜症の場合、特に硝子体手術が必要な程度まで進行している場合は連携が必要と思います。急ぎでオペの時は、コントロールしながら、というスタイルとなります。どのぐらい急ぎなのか、をはっきり伝え、手術までの時間にレーザーは1週間に2回程度、同じ眼でもかけています。血糖コントロールを高めに、とか低めにとかそのような指示はしません。こちらの状況をはっきり伝えるのみです。コントロールは程ほどで手術に入るか、コントロール後手術なのかは一度話し合いを持たれた方がよいとおもいます。白内障手術前に行うリスク説明時に、何か工夫をされていることあればお教え下さい。実は最近、テレビや雑誌の影響なのか、「白内障手術は気軽で簡単!」「術後は、メガネなしで若い頃の視力が手に入る(レーシックと勘違いしているのでしょうか?)」とのイメージを持つ患者さんが増えてきたと感じます。このような場合、手術前にいくらリスクを説明しても、この先入観が邪魔しリスク内容を安易に捉えられてしまっているように感じます。実際、昔と比べて、術後に「こんなはずでは!」とのクレームが多くなったと感じます。小早川先生が術前のリスク説明時に何か工夫されていることがあれば是非教えて下さい。過度な期待は抱かせない、ということに留意はしています。ただし、眼内炎や核落下について必要以上にムンテラすることは避けています。手術ですからやってみるまでは分からない、という話もします。術者の技量、土地柄も影響していると思います。また特別な症例、水晶体揺れている、90歳以上、mature、ぶどう膜炎、などは自分でムンテラしています。通常の症例は主治医にお願いしています(白内障は入院ですので主治医が付きますので)。CCCのコツを伝授下さい先生も書いておられるように、手術時は局所麻酔で行うことが多く、こちらの動きが患者さんに伝わってしまいます。特に、CCCが上手く行かなかった時には大変焦ってしまい、「絶対患者さんが不安に思っているな。」と感じることがあります。上級医から、学会時に小早川先生からCCCでトラぶった時の対処方法を教えて頂いたと聞きました。もし宜しければそれを伝授願えないでしょうか。宜しくお願いします。(1)道具にこだわる セッシの積極的使用、いろいろなセッシを試してみる、針にこだわらない、(2)顕微鏡にこだわる ツァイスの一番新しいモデル、ルメラは見えます。視野の中心で見ることも忘れない(3)ビスコにこだわる ヒーロンVをすすめています。(4)染色 僕自身はめったにしませんが、見えなければ積極的に染めてもらっています。第一に前嚢が見えているかの確認です。次にヒーロンVを使用して確実に前房深度を保ちます。道具を厳選し、確実に前嚢を把持することに努めます。後は豚眼の練習通り、進めていきます。もし流れたらですが、下方で流れたら観音開きになるように逆回しでつなげるか、針を細かく動かしてカンオープナーにするか、を考えます。手前で流れたら、余分な前嚢を切除した後、前房虚脱に注意してオペを進めます。切開創の構築についてもセッシ使用の場合など考慮すべきでしょう。基本的には流さないように万全の準備をしてオペに臨み、流れたら、成書のごとく対処していくという指導をしています。糖尿病患者を診て頂く場合の注意点内科医です。糖尿病患者を眼科の先生に受診させる場合、どのような点に注意すべきでしょうか。また、東邦大学で内科・眼科の連携の際には、網膜症の分類をどのように使い分けていらっしゃいますか。白内障に関する質問でなくて恐縮ですが、よろしくお願いいたします。(1)血糖値、A1Cあたりがあれば十分と思います。通院歴がまじめ、ふまじめといった情報はさらにありがたいと思います。(2)網膜症は福田分類を使っています。AとBで大別し、レーザー治療は済でもう枯れてきた網膜症である、といった情報は内科に提供しています。逆に手術を急ぐべき、といったときはその旨明記します。コントロールについては原則お任せしています。海外留学について先生の記事、興味深く読ませて頂きました。現在初期研修中ですが、私も是非先生の様に研究発表もできる眼科医を目指したいと思っております。先生のプロフィールにも海外留学されたとありますが、やはり、基礎を習得するためには海外留学が必要なのでしょうか?症例の質問ではなくて恐縮ですが、実際に眼科の第一線で活躍されていて論文や発表も数多く出されている先生に伺う機会がないので教えて頂ければと願っています。また、大森病院のホームページには「積極的に海外留学も行えるようにしています。」とありましたが、具体的にどの様な支援をされていて、どの程度の方々が支援を受けているのでしょうか?色々と質問して申し訳ありませんがよろしくお願いします。海外留学で一番学んだことは問題解決能力でした。自分で解決する、その選択肢を多く持ったことです。基礎を習得するのは国内でも十分と思います。私は、知り合いの先生がいる微生物の教室で、実験をさせて頂いておりました。その後、眼内炎がやりたくなって、留学いたしました。日本でも実験はできますが、教室の垣根や動物センターの規約など、面倒くさいことが多いです。その点、システムがすでに出来上がったラボではそういった根回しにあまり力を入れなくて済みますので楽と思います。自分のやりたい研究ができる環境がアメリカだったとそのように考えてます。研究には臨床のような研修プログラムがなく、やりたい人間ができるようになればよい、というスタンスが多いと思います。もし、本気で考えていらっしゃるなら大学院という選択がよいと思います。眼内レンズの解析、微量検体の測定など、実験系を組むと費用がかかるものは企業のものも積極的に使用しています。SRL等、結構やってくれますし、仲良くなると研究員の方とお話しできることもあります。眼内レンズの解析は、旧メニコンにお願いすることも多いです。最近では電顕写真を外にお願いしたりもしています。わたくしたちの医局では、例えば大阪大学のように常に誰かがどこかに留学している状況ではないですから、留学希望者が順番待ちしているといったことはありません。研究が好きな人間や大学院生を中心に海外学会に連れて行って、雰囲気を味合わせ、少しやる気がある人に対しては、僕がもといたラボに連れて行って、ボスと話をさせたりします。で、行きたいとの希望が出れば、医局長に話をして人事面で考慮をしていくという状況です。僕は微生物でしたので、感染症のテーマでよいという人間を連れて出ています。東邦大学には給費留学制度(留学中助教の給料が保証)がありますので、教授とも話をしながら進めます。僕がもといたラボに行った人間はうちの医局からはまだいませんが、来年あたりに一人出せるかもしれない状況に来ています。海外留学は医局の責任者と十分に話し合い、穏便に行ける環境を作り、経済的な問題を解決してからが一番と思います。教室によっては定期的に人を出すシステムが作られているところもあるでしょうが、我々はまだまだです。なかなか、帝大クラスのようなシステムには到達できません。准教授 小早川信一郎先生「白内障手術の光と影」

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症候性頸動脈狭窄、ステント留置術は時期尚早?:ICSS試験

手術適応の症候性の頸動脈狭窄に対する第一選択治療は、現時点では頸動脈内膜切除術(CEA)とすべきことが、英国University College London神経学研究所のMartin M Brown氏らが進めている無作為化試験(ICSS試験、http://www.cavatas.com/)の中間解析で示された。CAVATAS試験では血管内治療(ステント使用/非使用の血管形成術)が有用な可能性が示唆されたが、CEAの主要な合併症(脳神経傷害、重度血腫)は回避しうるものの術後30日以内の脳卒中/死亡の発生率はいずれの治療でも高かった。また、SPACE試験ではCEAに対する頸動脈ステント留置術(CAS)の非劣性が示せず、EVA-3S試験では周術期の脳卒中/死亡の発生率がCASよりもCEAで有意に低かったため、いずれの試験も早期中止となっている。Lancet誌2010年3月20日号(オンライン版2010年2月26日号)掲載の報告。安全性に関する中間解析ICSS(International Carotid Stenting Study)試験の研究グループは、CASとCEAの有用性を比較する国際的な多施設共同無作為化対照比較試験を進めており、今回の中間解析では安全性に関する結果を報告した。症候性の頸動脈狭窄の患者が、CASあるいはCEAを施行する群に無作為に割り付けられた。治療割り付け情報は患者、研究者ともにマスクされず、患者のフォローアップは治療に直接には関与しなかった医師が独立に行った。主要評価項目は術後3年間における致死的あるいは廃疾性の脳卒中(disabling stroke)の発生率であり、現時点では解析結果は出ていない。安全性に関する中間解析の主要評価項目は、術後120日間における脳卒中、死亡、治療関連心筋梗塞の発生率であった。安全性の主要評価項目、CAS群8.5%、CEA群5.2%で有意差あり2001年5月~2008年10月までに、ヨーロッパ、オセアニア、カナダの50施設から1,713例が登録され、CAS群に855例が、CEA群には858例が割り付けられた。割り付け直後に試験を中止した3例(CAS群:2例、CEA群:1例)はintention-to-treat解析には含めなかった。無作為割り付け後120日までの死亡および廃疾性脳卒中の発生率は、CAS群が4.0%(34例)、CEA群は27例(3.2%)であり、両群間に有意な差はなかった(ハザード比:1.28、95%信頼区間:0.77~2.11)。120日までの脳卒中、死亡、治療関連心筋梗塞の発生率は、CAS群が8.5%(72例)、CEA群は5.2%(44例)であり、CAS群で有意に高かった(ハザード比:1.69、95%信頼区間:1.16~2.45、p=0.006)。脳卒中はCAS群65例、CEA群35例(ハザード比:1.92、95%信頼区間:1.27~2.89)、全死亡はそれぞれ19例、7例(ハザード比:2.76、95%信頼区間:1.16~6.56)にみられ、いずれもCAS群で有意に多かった。治療関連心筋梗塞は、CAS群で3例にみられすべて死亡したのに対し、CEA群で認めた4例はいずれも非致死的であった。脳神経麻痺は、CAS群では1例のみであったが、CEA群では45例に認めた。血腫の頻度も、それぞれ31例、50例と、CAS群で有意に少なかった(p=0.0197)。これらの結果により、著者は「頸動脈内膜切除術との比較における頸動脈ステント留置術の有用性を確立するには、長期のフォローアップを完遂する必要がある」とし、「それまでは、手術適応の症候性頸動脈狭窄患者に対する治療としては頸動脈内膜切除術を選択すべきである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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注射薬物使用者におけるHIV対策の普及率は世界的に極めて低い

注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの世界的な普及率は極めて低いことが、オーストラリアNew South Wales大学薬物・アルコール研究センターのBradley M Mathers氏らによる系統的なレビューで明らかとなった。2007年現在の全世界の注射薬物使用者数は1,100~2,120万人にのぼり、そのうち80~660万人がHIVに感染したと推定される。これまで、注射薬物使用者におけるHIV対策の実態調査は行われていたが、普及状況の量的な検討はなされていなかったという。Lancet誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月1日号)掲載の報告。注射薬物使用者におけるNSPs、OST、ARTの普及率を算出研究グループは、注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの普及状況について系統的なレビューを実施した。2004年以降に発行された審査論文(Medline、BioMed Central)、インターネット、灰色文献(grey-literature)のデータベースを系統的に検索した。国連機関や各国の専門家に当たってデータの提供依頼や照合を行った。各国のデータは、注射薬物使用者に対する主要な介入[注射針および注射器プログラム(NSPs)、オピオイド補充療法(OST)、その他の薬物治療、HIV検査と診察、抗レトロウイルス療法(ART)、コンドームプログラム]の規定の範囲内で取得した。注射薬物使用者集団の規模の予測値に基づいて、NSPs、OST、ARTの普及率を算出した。普及率には地域、国レベルで大きな差、世界的には極めて低い2009年までに、NSPsが82ヵ国で、OSTが70ヵ国で実施され、両方の介入が導入されたのは66ヵ国であった。地域および国レベルの普及率には実質的な差が認められた。注射針と注射器の配布は、オーストラリアが注射薬物使用者1人当たり年間に202と圧倒的に高かったのに対し、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国は0.3、中東および北アフリカは0.5と低く、最低はサハラ以南のアフリカの0.1であった。注射薬物使用者100人当たりのOSTの施行数は、中央アジア、ラテンアメリカ、サハラ以南のアフリカの1以下から、西ヨーロッパの61までの差が認められた。HIV陽性の注射薬物使用者100人当たりのART施行数は、チリ、ケニア、パキスタン、ロシア、ウズベキスタンが1以下であり、6つのヨーロッパ諸国は100以上であった。世界全体では、注射薬物使用者1人当たりの月間の注射針と注射器の配布数は2(範囲1~4)、100人当たりのOSTは8(範囲6~12)であり、HIV陽性者100人当たりのART施行数は4(2~18)であった。著者は、「注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの世界的な普及率は極めて低い」とし、「この高リスクの集団に対し、早急にこれらのサービスの拡充を図る必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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小児喘息、低用量吸入ステロイド療法でコントロール不良の場合の次なる選択肢は?

低用量吸入ステロイド療法(ICS)を受けていても、多くの子どもでコントロール不良の喘息が起きる。米国ウィスコンシン大学医学公衆衛生校Robert F. Lemanske氏らは、コントロール不良が起きた場合の次なる治療法に関して模索する試験「BADGER(Best Add-on Therapy Giving Effective Responses)」を実施した。これまでステップアップ療法に関するエビデンスはない。検討されたのは、「ICS増量」「LABA追加」「LTRA追加」の3つのステップアップ療法で、基線特性によって次なる選択肢としてどれが最適かが評価された。NEJM誌2010年3月18日号(オンライン版2010年3月3日号)掲載より。3つのステップアップ療法に対する反応差を検証試験は、fluticasone 100μgを1日2回投与ではコントロール不良だった、6~17歳児182例。対象児は、3つの盲検化されたステップアップ療法、すなわち「ICS増量」(fluticasone 250μgを1日2回)、「LABA追加」(fluticasone 100μg+長期作用型β作動薬50 μgを1日2回)、「LTRA追加」(fluticasone 100μgを1日2回+ロイコトリエン受容体遮断薬5mg/日もしくは10mg/日)を、無作為にオーダーされた順番で16週間ずつ計48週間受けた。使用された薬剤商品名はそれぞれ、fluticasoneは「Flovent Diskus」、長期作用型β作動薬は「Advair Diskus」、ロイコトリエン受容体遮断薬は「Singulair」である。評価は、複合転帰[増悪、コントロールできた日数、1秒量(FEV1)]を指標に、それぞれのステップアップ療法間の反応差が25%以上となるかどうかが判定された。「LABA追加」への反応が最も良さそうだったが……反応差が確認されたのは、165例の患児のうち161例(P<0.001)だった。反応が最も良かったのは「LABA追加」で、「LTRA追加」と比べて相対確率は1.6倍(P=0.004)、「ICS増量」とでは同1.7倍(P=0.002)だった。また「LABA追加」への反応は、無作為化前の喘息コントロールスコア(基線でのコントロール良好)が高い患児ほど、反応が良さそうだった。人種別の特性としては、白人の子の「LABA追加」への反応が最も良さそうだったこと、黒人の子の「LTRA追加」への反応が最も悪そうだったことが挙げられている。しかし結論としてLemanske氏は、「「LABA追加」への反応が他の2療法よりも有意に高いようだったが、他の2療法の方が最良の反応だった患児も多かった。したがって、定期的モニタリングを欠かさず、患児に応じた最適なステップアップ療法を選択していく必要があることが強調されたと言える」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

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街中へのAED普及、救命率を向上:日本

日本全国に普及したAED、その効果は? 京都大学保健管理センターの北村哲久氏らは、消防庁のデータを基にした前向き観察研究の結果、素人の手を借りるという公共の場(街中)へのAED普及施策の導入後、院外心停止患者への早期の電気ショック実施が増え、神経障害が最小の1ヵ月生存者の増大に結びついていることが明らかになったと報告した。AED普及効果の検証が行われたのは世界初。NEJM誌2010年3月18日号掲載より。街中でのAED実施、1.2%から6.2%へ増大日本では2004年7月から、一般市民によるAED使用が認められている。本観察研究は、2005年1月1日~2007年12月31日の間に、院外心停止を起こし救急蘇生措置を受けた日本全国の患者を対象に行われた。評価が行われたのは、院外心停止後の生存に及ぼしたAED普及の影響について。主要評価項目は、最小の神経障害を有する1ヵ月生存者の割合とした。試験期間中、院外心停止を起こした成人は全国で31万2,319例だった。そのうち1万2,631例は、「心室細動、心原性、居合わせた人によって発見」された例で、うち素人である一般市民による街中に設置されたAEDでの蘇生処置を受けていたのは、462例(3.7%)だった。また街中でのAED実施割合は、AED設置の増加とともに、1.2%から6.2%へと増していた(傾向P

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ステージⅢ大腸がん、75歳以上高齢者への術後補助化学療法実施率は5割程度

外科的切除術を受けたステージⅢ大腸がん患者で、75歳以上の高齢者のうち、術後補助化学療法を受けている割合は5割と、75歳未満の約9割に比べ、有意に低率であることが明らかになった。75歳以上患者への術後補助化学療法のレジメンは、毒性の弱いものが使用される傾向が強く、有害事象の発生率も低かった。米国RAND CorporationのKatherine L. Kahn氏らが、約700人の外科的切除術を受けたステージⅢ大腸がん患者について行った観察研究の結果、報告したもので、JAMA誌2010年3月17日号で発表した。オキサリプラチンを含むレジメン、75歳以上は14%のみ同研究グループは、2003~2005年にかけて、外科的切除術を受けたステージⅢ大腸がん、合わせて675人について調査を行った。その結果、75歳以上の人で術後補助化学療法を受けていたのは、202人中101人(50%)と、75歳未満の87%に比べ、有意に低率だった(実施率の差:37%、95%信頼区間:30~45%)。術後補助化学療法を受けた人のうち、レジメンにオキサリプラチン(商品名:エルプラット)を含んでいたのは、75歳以上では14人(14%)と、75歳未満の178人(44%)に比べ、有意に低率だった(実施率の差:30%、同:21~38%)。治療開始後150日時点での中止は65歳以上が4割術後補助化学療法の継続についてみてみると、治療開始後150日時点で治療を中止していたのは、65歳未満が25%に対し、65歳以上では40%に上った。有害事象については、患者全体の162人(24%)に、最低1回の遅延性臨床的有害事象が認められた。術後補助化学療法を受けている人の同発生率は28%と、受けていない人の13%に比べ、2倍超だった。術後補助化学療法を受けている人のうち、遅延性臨床的有害事象の補正後発生数1人当たり平均は、18~54歳が0.35、55~64歳が0.52、65~74歳が0.45だったのに対し、75歳以上は0.28と、低い傾向がみられた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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米国がんセンターの約8割以上で緩和ケアプログラムを提供

米国のがんセンターの約8割以上で、緩和ケアプログラムを設置・提供していることが、米国テキサス大学緩和ケア・リハビリ部門のDavid Hui氏らが行った、全米約140ヵ所のがんセンターに対する調査で明らかになった。なかでも、米国国立がんセンター(National Cancer Institute:NCI)認定のがんセンターでは、緩和ケアプログラムの設置率は98%に上っているという。JAMA誌2010年3月17日号掲載より。緩和ケア専門医はNCI認定センター92%、非指定は74%に同研究グループは、2009年6~10月にかけて、全米71ヵ所のNCI認定がんセンターと、無作為に抽出した全米71ヵ所のNCI非認定がんセンターに対し、調査を行った。調査票は、センター管理職や緩和ケア臨床プログラムの責任者に対し送付され、回収率はそれぞれ71%と82%だった。その結果、緩和ケアプログラムを設置していたのは、認定センター51ヵ所中50(98%)に対し、非認定センターでは50ヵ所中39(78%)だった(p=0.002)。また最低1人以上の緩和ケア専門の医師がいたのは、認定センターが92%、非認定センターは74%(p=0.04)、入院患者向け緩和ケア・コンサルテーション・チームを設置していたのは、それぞれ92%と56%(p

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MitraClipシステムが僧帽弁閉鎖不全治療の有用な選択肢となる可能性を証明

米国アボット社は14日、第59回米国心臓病学会(ACC)で発表されたEVEREST II(Endovascular Valve Edge-to-Edge REpair Study)試験において、治験機器MitraClipシステムが、安全性および有効性の主要エンドポイントにおける主要評価項目を満たしたと発表した。日本法人のアボット・ジャパンが翻訳し、19日に報告した。このことは、低侵襲のMitraClipシステムを用いた治療法が、僧帽弁閉鎖不全症(MR)の有用な治療選択肢となる可能性を示唆しているという。MitraClipシステムは1年経過観察時において重度のMR患者の心機能、QOL、日常生活等を向上させ、心臓疾患の症状を低減するなど有意に臨床有用性を示したとのこと。EVEREST II試験は、僧帽弁形成術に使用する低侵襲形成デバイスと外科的僧帽弁形成術を比較した初の無作為臨床試験。MitraClipシステムは、カテーテルをベースにしたデバイスで、大腿部(大腿静脈)の血管から心臓へ挿入する。MitraClipデバイスは、僧帽弁(心臓弁の4つの内の1つ)の弁尖を留めることで重度のMR症状を改善する。MRは、最も一般的な心臓弁不全で、心臓収縮時に僧帽弁の弁尖が完全に閉じず血液が左心房へ逆流する疾患で、十分な血液を身体に送り出すために、代わりに左心室(血液を送り出す主要な心室)が拡大し、増量した血液を身体に送り出そうとする。米国と欧州では、僧帽弁閉鎖不全症を伴う患者は800万人おり、現在の治療法としては、患者のMRの重篤度やリスク要因に応じて投薬または外科的心臓手術が挙げられる。重度のMRの場合、時間経過にともなって悪化し、心機能の衰え、不整脈、心不全、発作、心臓発作や死亡にいたることがあるという。 詳細はプレスリリースへhttp://www.abbott.co.jp/press/2010/100319_2.asp

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アボット、生体吸収性スキャフォールド(BVS)に関するABSORB試験について良好な成績を発表

米国アボット社は15日(米国現地時間)、ABSORB試験の第二相試験に登録された101名に関する経過観察30日時点の成績を報告した。日本法人が翻訳し、19日に発表した。ABSORB試験は前向き、非無作為(オープンラベル)二相試験であり、オーストラリア、ベルギー、デンマーク、フランス、オランダ、ニュージーランド、ポーランド、スイスより131名の患者が登録された。この試験の主要エンドポイントは安全性を評価することで、MACE発生率、治療部における血栓症発生率をそれぞれ30日、6、9、12、18、24ヵ月経過観察時点で評価し、別途年1回のフォローアップが5年間実施された。また、ステント留置術など一過性の事例を含んだ生体吸収性スキャフォールドのパフォーマンスも評価されるとのこと。 その他の主要エンドポイントは、血管造影法による画像評価や血管内超音波法(IVUS)、光コヒーレンス トモグラフィー(OCT)やその他の最先端技術による侵襲・非侵襲的な画像診断方法などが含まれ、それぞれ6、12、18、24ヵ月経過観察時点で評価した。 欧州においてアボットの生体吸収性スキャフォールド(BVS)により治療を受けた患者は30日経過観察時点において、血栓症および血行再建術(虚血性疾患に伴う標的病変再血行建術)の発生は認められず、主要心血管イベント発生率も非常に低い(MACE 発生率は2.0%)という結果であった。この結果は、アボットが現在までにBVS技術評価のために実施したABSORB試験の第一相試験で30名の患者の3年経過観察時点の長期的な優れたデータに次ぐものとなるとのこと。なお、第二相試験から得られたデータは、米国ジョージア州アトランタにて開催された第59回米国心臓病学会(ACC)で発表されている。 詳細はプレスリリースへhttp://www.abbott.co.jp/press/2010/100319.asp

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学歴差による死亡格差が年々広がっている、原因は?

平等・非平等主義社会を問わず欧米各国で、受けた教育レベルの違いによる死亡率の差が拡大しているとの報告がされている。平等主義を掲げる福祉国家モデルとされるノルウェーではどうなのか。格差の現状と、これまでの調査ではほとんど行われていない長期動向調査が、ノルウェー国立衛生研究所疫学部門のBjorn Heine Strand氏らにより行われた。1960~2000年にかけての同国中高年を対象とした原因別死亡率を追跡する前向き研究で、学歴差による死亡率の差、またその差をもたらしている主な原因について調査が行われた。BMJ誌2010年3月13日号(オンライン版2010年2月23日号)掲載より。40年間でどの学歴群も死亡率は低下したが……研究グループは、1960年、1970年、1980年、1990年時点で45~64歳だった4コホートを、それぞれ10年間にわたって追跡した。追跡期間中、死亡者数は35万9,547例、3,290万4,589人・年分のデータが得られた。主要評価項目は、「全死因死亡」「肺・気管・気管支がんに起因する死亡」「その他のがん」「心血管疾患」「自殺」「外因」「慢性下気道疾患」「その他の原因による死亡」とした。受けた教育のレベル(低・中・高学歴)の違いによる死亡率の差を、絶対指数・相対指数で求め検討した。結果、死亡率は1960~2000年にかけて、いずれの学歴群でも低下していた。また同40年間で、成人に占める低学歴群の人は激減していた。しかし、低学歴群の死亡率は相変わらず他の学歴群よりも高く、また同期間で高学歴群の死亡率がより低下したため、学歴の違いによる死亡率の差は広がっていた。絶対指数でみた低学歴群の死亡率と高学歴群の死亡率差(傾斜指数)は、40年間で男性は2倍に(105%増)、女性は3分の1の増加(32%増)していた。相対指数でみると、死亡率差は、男性は1.33から2.24(P=0.01)に、女性は1.52から2.19(P=0.05)へと広がっていた。男性は心血管系と呼吸器系、女性は呼吸器系が格差の要因男性における格差拡大は、主に「心血管疾患」「肺がん」「慢性下気道疾患」が原因だった。女性の格差拡大の原因は、主に「肺がん」「慢性下気道疾患」にあった。また女性では男性と異なり、心血管系に起因する死亡率の格差は縮まっていた。一方で、喫煙が関連していると思われる慢性下気道疾患が格差拡大に寄与していた。研究グループは、「平等主義を掲げる福祉国家ノルウェーだが、学歴差による死亡格差は、1960年~2000年の40年間で大幅に拡大していた」と結論。「我々の調査は、次の主張に対するエビデンスを示したと言える。すなわち、平等主義を掲げた社会政策だけでは死亡格差をなくすことはできないこと、教育レベルの違いによると思われる生活習慣の違いが問題であるということだ」と報告をまとめている。

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高齢施設入所者への肺炎球菌ワクチン接種を国策とすべき:三重大/BMJ

 三重大学大学院・呼吸器内科の丸山貴也氏ら同大研究グループは、これまで明らかにされていなかった、施設入所者に対する肺炎球菌ワクチン(23価肺炎球菌多糖体ワクチン)の有効性について、前向き無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、ワクチン接種が入所者の肺炎発症および死亡率の低下をもたらし有効性が確認されたことを報告した。BMJ誌2010年3月13日号(オンライン版2010年3月8日号)掲載より。発生率、プラセボ群が有意に高い 研究グループは、三重県内の高齢者施設(9病院および23の病院関連施設)から1,006名の被験者を登録し、前向き無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。 被験者は、2006年3月~2007年1月の間に登録され、ワクチン接種群(Pneumovax 0.5mL:502例)とプラセボ群に無作為化され、2009年3月末まで観察が行われた。 主要エンドポイントは、全原因肺炎および肺炎球菌性肺炎の発生率。副次エンドポイントは、肺炎球菌性肺炎、全原因肺炎、その他原因による死亡とした。 結果、肺炎発症が確認されたのは、ワクチン接種群63例(12.5%)、プラセボ群104例(20.6%)だった。 肺炎球菌性肺炎と診断されたのは、ワクチン接種群14例(2.8%)、プラセボ群37例(7.3%)だった(P

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期待が高まる核酸医薬品の現状と将来の展望は?

株式会社シード・プランニングは19日、世界における核酸医薬品の開発状況と将来展望について調査を実施し、その結果を発表した。今回の調査では核酸医薬品開発について、世界における研究開発の状況とDDS技術の開発状況の2つの視点で調査を実施。特に本研究分野で先行している欧米企業の研究動向や臨床試験の状況を中心に国内企業の動向などをも調べている。結果によると、酸医薬品の対象疾患領域はがんを中心に循環器や眼、自己免疫・炎症、感染症、脳神経など多岐にわたっていて、抗体医薬と異なり、多くの製薬企業に研究開発・販売の機会があることがわかった。 核酸医薬品の開発段階については、最近はsiRNAの開発に注目が集まっているが、実際には第2世代のRNA修飾技術の登場によりアンチセンスの臨床開発が最も進んでいて、数年の内に複数の核酸医薬品が上市されることは間違いないと思われるとのこと。現在、臨床試験が進められている核酸医薬品の7割強は新規市場が期待できる(1)既存薬がない、もしくは(2)既存薬との併用として開発が進められている。これらの開発品が上市されれば、医薬品市場の拡大につながるものと期待されるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.seedplanning.co.jp/press/2010/2010031902.html

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【お知らせ】セミナー「iPhone in Medicine:診療現場にiPhoneを」

来る4月10日(土)、アップルストア銀座店において、iPhoneの医療における活用事例を紹介するセミナー「iPhone in Medicine:診療現場にiPhoneを」が開催されます。革新的な研修医教育プラットフォーム「Resi-Share Pyramid」、救急現場での遠隔医療画像参照ソリューション「ProRad DIVA」、電子カルテを利用した訪問医療の新しいコミュニケーションスタイル「WINE CORK」など、iPhoneを使った最新の医療関連サービスを、実際にiPhoneを活用しているドクターがご紹介します。 ※セミナーにおいて、ケアネットから革新的な研修医教育プラットフォーム「Resi-Share Pyramid」を紹介させていただきます。「Resi-Share Pyramid」については下記をご覧ください。●「Resi-Share Pyramid」概略(PDF)http://www.carenet.com/news/carenet/pdf/resishare.pdf 【日時】4/10(土)9:00-13:00 【開催場所】アップルストア銀座店 〒104-0061東京都中央区銀座3-5-12 【題目】iPhone in Medicine:診療現場にiPhoneを 【司会・進行】神戸大学大学院医学研究科内科学講座特命講師 杉本真樹 先生 【当日スケジュール】8:45 開場9:00-9:20  医療従事者から見たiPhone・海外事例紹介        神戸大学医学部 杉本真樹先生9:20-10:00  Resi-Share Pyramid(研修医・看護師教育・復帰支援)        株式会社ケアネット医療コンテンツ部長 姜琪鎬氏        医療法人社団 淀さんせん会 金井病院理事長 金井伸行先生10:00-10:40 Pro Rad DiVa:遠隔読影        株式会社 トライフォー代表取締役社長 広瀬勝己氏        慈恵医大脳神経外科助教 高尾洋之先生10:40-11:00 休憩・質疑応答11:00-11:40 WINE Cork:地域医療、訪問・在宅医療        キワム電脳工務店、医師 高橋究 先生        医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック院長 遠矢純一郎先生11:40-   質疑応答 【問い合わせ先】 アップルストア銀座店http://www.apple.com/jp/retail/ginza/ 

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「オンコロジードリームチーム・キックオフ・フォーラム」開催

3月21日「オンコロジードリームチーム・キックオフ・フォーラム」がオンコロジー教育推進プロジェクト、日本対がん協会、キャンサーネットジャパン共催で開催された。当日は、患者さん・家族、医療者、学生などが参加し会場は満席となった。基調講演では、M.D.アンダーソンがんセンター腫瘍内科・教授であり自らもがん体験者である上野直人氏はじめ、医師及び患者の代表が、それぞれのテーマで講演した。患者中心の医療が叫ばれるが、実際はオンコロジーチームに患者・家族が入ることはないのが現状である。本当の意味で患者中心の医療の実現のためには、患者さんが自らの想いを伝え、医療者もそれを汲むよう努力することが必要である。そのためには、各自ががん医療に関する想い・夢を発信し共有することが重要であるとの意見が述べられた。パネルディスカッションでは、「私の夢から私たちの夢へ」と題し、東京大学医学部 緩和ケア診療部 岩瀬哲氏、埼玉医科大学国際医療センター 腫瘍内科 佐治重衡氏、作家でありがん体験者の岸本葉子氏、がん体験者でありキャンサー・ソリューションズ株式会社代表の桜井なおみ氏と上野直人氏による議論が行われた。最後に、ドリームメイキング・セッションとして会場の参加者全員ががん医療に関する夢をパネルに書き出し会は終了した。この上野氏のインタビュー及びフォーラムの詳細は、ケアネット・ドットコムで4月下旬に紹介の予定。 ●オンコロジードリームチーム ホームページhttp://www.oncology-dreamteam.org/(ケアネット 細田雅之)

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