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エパデールが末梢動脈疾患患者の冠動脈イベントを抑制する ―JELIS試験のサブ解析結果より

持田製薬株式会社は5日、高脂血症、閉塞性動脈硬化症治療剤「エパデール」(一般名:イコサペント酸エチル、EPA)の高脂血症患者を対象とした大規模臨床試験「JELIS」において、エパデールが末梢動脈疾患を有する患者の冠動脈イベントを有意に抑制するとの結果が得られたと発表した。解析結果は日本循環器学会の機関誌『Circulation Journal』7月号に掲載されるとのこと。JELISのコントロール群(エパデール非投与群)について末梢動脈疾患の有無による冠動脈イベントの発症率を調べた結果、末梢動脈疾患を有していないグループでは7.2人/千人・年、試験登録時に末梢動脈疾患を合併しているグループでは38.6人/千人・年、また試験期間に末梢動脈疾患を新たに発症したグループでは55.2人/千人・年であった。末梢動脈疾患を合併しているグループの冠動脈イベント発症リスクは、末梢動脈疾患を有していないグループに比べて1.97倍高く、また新たに末梢動脈疾患を発症したグループでは2.88倍高いことが示されたという。また、末梢動脈疾患を有していたグループ(合併+新規発症)をエパデール投与群と非投与群とに分けて解析した結果、冠動脈イベント発症はエパデール投与群では17.3人/千人・年、エパデール非投与群では42.9人/千人・年となり、エパデール投与により冠動脈イベントの発症が56%有意に抑制されることもわかったという。詳細はプレスリリースへhttp://www.mochida.co.jp/news/2010/0705.html

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糖尿病の血管疾患リスクはどの程度? 70万人のメタ解析

糖尿病の存在は、肥満、脂質異常、高血圧など従来のリスク因子とは別個に、血管疾患リスクを約2倍に高めることが、Emerging Risk Factors Collaborationが実施した102もの試験のメタ解析で明らかとなった。糖尿病は冠動脈心疾患や脳卒中のリスク因子として確立されているが、年齢、性別、従来のリスク因子の有無などでリスクの程度はどれくらい変化するのか、致死的心筋梗塞と非致死的心筋梗塞、虚血性脳卒中と出血性脳卒中とでは糖尿病の影響はどの程度は異なるのかという問題は未解決のままだ。さらに、非糖尿病患者における血糖異常の意義についても同様の問題が残されているという。Lancet誌2010年6月26日号掲載の報告。糖尿病の血管疾患リスクを定量的に評価するメタ解析研究グループは、血管疾患リスクに及ぼす糖尿病の影響を定量的に評価することを目的に102のプロスペクティブ試験のメタ解析を行った。Emerging Risk Factors Collaborationが実施した試験から血管疾患の既往のない患者を抽出し、個々の患者の糖尿病、空腹時血糖値およびその他のリスク因子の記録について解析した。個々の試験を年齢、性別、喫煙状況、収縮期血圧、BMIで補正して回帰分析を行い、これらのデータを統合して血管疾患に対するハザード比(HR)を算出した。糖尿病の血管疾患に対するHRは1.73~2.27、空腹時血糖値の関連はわずか102のプロスペクティブ試験から抽出された69万8,782人(5万2,765人が非致死的あるいは致死的血管疾患を発症、849万人・年)が解析の対象となった。糖尿病の冠動脈心疾患に対する補正HRは2.00(95%信頼区間:1.83~2.19)、虚血性脳卒中に対する補正HRは2.27(同:1.95~2.65)、出血性脳卒中は1.56(1.19~2.05)、分類不能の脳卒中は1.84(同:1.59~2.13)、その他の血管死の合計が1.73(同:1.51~1.98)であった。脂質、炎症、腎機能のマーカーでさらに補正しても、HRに明確な変化は認めなかった。冠動脈心疾患に対するHRは男性よりも女性で高く、70歳以上よりも40~59歳で、非致死的疾患よりも致死的疾患で高かった。成人の糖尿病有病率を10%とすると、血管疾患の11%が糖尿病関連と推算された。空腹時血糖値は血管リスクと直線的な関連はなく、3.90mmol/Lと5.59mmol/Lで有意な差はみられなかった。空腹時血糖値3.90~5.59mmol/Lの場合と比較して、空腹時血糖値≦3.90mmol/Lの場合の冠動脈心疾患に対するHRは1.07(95%信頼区間:0.97~1.18)、5.60~6.09mmol/Lの冠動脈心疾患に対するHRは1.11(同:1.04~1.18)、6.10~6.99mmol/Lでは1.17(同:1.08~1.26)であった。糖尿病歴のない集団では、従来のリスク因子のほかに、空腹時血糖値や空腹時血糖異常に関する情報を付加しても、血管疾患の検出基準が改善されることはなかった。著者は、「糖尿病は、他の従来のリスク因子とは別個に、広範な血管疾患のリスクを約2倍に上昇させる。非糖尿病集団では、空腹時血糖値の血管疾患リスクとの関連はわずかであった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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新規SGLT2阻害薬dapagliflozin、血糖コントロールが不良な2型糖尿病に有効

メトホルミンだけでは十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者に対し、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)の選択的阻害薬であるdapagliflozinを追加投与すると、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が有意に改善することが、英国Aston大学のClifford J Bailey氏らが行った無作為化試験で示された。高血糖の是正や糖毒性の発現予防は2型糖尿病の管理における重要な目標とされる。dapagliflozinは、SGLT2を選択的に阻害することで、インスリン非依存性に腎臓でのグルコースの再吸収を抑制するという。Lancet誌2010年6月26日号掲載の報告。dapagliflozinの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照第III相試験研究グループは、メトホルミンだけでは血糖コントロールが不十分な患者においてdapagliflozinの有効性と安全性を評価する多施設共同二重盲検プラセボ対照第III相試験を実施した。メトホルミン≧1,500mg/日で十分な血糖コントロールが達成されない2型糖尿病患者546例が、3つの用量のdapagliflozin(2.5mg群:137例、5mg群:137例、10mg群:135例)あるいはプラセボ群(137例)に無作為に割り付けられた(いずれも1日1回経口投与)。メトホルミンは、試験開始前と同一の用量を継続投与した。主要評価項目は、24週におけるHbA1cのベースラインからの変化とした。二重盲検下で1回以上の投薬を受け、ベースラインとその後に少なくとも1回の検査を受けた全症例が解析の対象となった。用量依存性にHbA1cが有意に低下、ウエスト周囲長の短縮を伴う体重減少効果も主要評価項目の解析は、534例(dapagliflozin 2.5mg群:135例、5mg群:133例、10mg群:132例、プラセボ群:134例)で行われた。24週の時点で、プラセボ群の平均HbA1cが0.30%低下したのに対し、dapagliflozin 2.5mg群は0.67%(p=0.0002)、5mg群は0.70%(p<0.0001)、10mg群は0.84%(p<0.0001)と用量依存性に低下しており、いずれも有意差を認めた。dapagliflozin群では治療早期から体重減少を認め、この効果は治療期間を通じて持続した。24週には、プラセボ群の体重が平均0.9kg低下したのに対し、2.5mg群が2.2kg、5mg群が3.0kg、10mg群は2.9kg減少した(いずれも、p<0.0001)。ウエスト周囲長も、プラセボ群が平均1.3cm短縮したのに対し、2.5mg群が1.7cm、5mg群が2.7cm、10mg群は2.5cm減少していた。低血糖症状の発現率は、dapagliflozin群が2~4%、プラセボ群は3%と同等であった。性器感染を示唆する徴候、症状などの報告は、プラセボ群の5%(7例)に比べ、dapagliflozin 2.5mg群が8%(11例)、5mg群が13%(18例)、10mg群は9%(12例)と頻度が高い傾向がみられた。重篤な有害事象は17例(dapagliflozinの各用量群が4例ずつ、プラセボ群が5例)に認められた。著者は、「メトホルミン単剤では血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者の治療において、メトホルミンへのdapagliflozin追加療法は新たな選択肢となる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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静脈瘤出血の中等度以上肝硬変、早期TIPSが治療失敗と死亡率を低下

急性静脈瘤出血で入院した治療失敗の可能性が高いChild-Pugh分類C(重度)、B(中等度)の肝硬変患者に対し、経頸静脈性肝内門脈大循環短絡術(TIPS)を早期に行うことで、治療の失敗または死亡率を有意に低下することが明らかになった。スペイン・バルセロナ大学病院のJuan Carlos Garcia-Pagan氏ら研究グループによる報告で、NEJM誌2010年6月24日号に掲載された。early-TIPS群と薬物療法-EBL群に無作為化し追跡研究グループは、急性静脈瘤出血の肝硬変患者で血管作用薬+内視鏡治療を受けた63例を、入院後24時間以内に2群に無作為化した。一方は、ポリテトラフルオロエチレン被膜ステントを用いた処置を、無作為化後72時間以内に行う群(early-TIPS群、32例)、もう一方は、血管作用薬を投与しながら3~5日後にプロプラノロール(商品名:インデラル)またはナドロール(同:ナディック)投与と、長期内視鏡的結紮術(EBL)を施行し、レスキュー療法が必要な時にTIPSを行う群(薬物療法-EBL群、31例)に割り付け追跡された。主要エンドポイントは、割り付け1年以内の急性出血コントロール失敗または臨床的に有意な静脈瘤の再出血予防の失敗からなる複合アウトカムとした。治療失敗の未発生、薬物療法-EBL群50%に対しearly-TIPS群97%追跡期間中央値16ヵ月の間に、再出血または出血コントロールの失敗は、薬物療法-EBL群では14例起きていたが、early-TIPS群は1例だった(P=0.001)。1年間主要エンドポイントが起きない確率は、薬物療法-EBL群は50%だったが、early-TIPS群は97%だった(P

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EGFR変異の進行性肺がん、ゲフィチニブのファーストラインで無増悪生存期間が倍に

EGFR遺伝子変異を有した非小細胞肺がんに対し、分子標的治療薬ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)による治療は、従来の抗がん剤治療と比べ、再増悪までの期間が約2倍に改善することが明らかにされた。東北大学はじめ日本国内50施設が参加した北東日本研究機構(North East Japan Study Group:NEJSG)による報告で、NEJM誌2010年6月24日号で発表された。抗がん剤未治療患者230例を、ゲフィチニブ群と標準抗がん剤治療に無作為化し追跡北東日本研究機構は、EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんに対しゲフィチニブが有効であるとの先行研究を受けて、EGFR遺伝子突然変異型を検出する高感度法を開発した。本試験では、その手法で事前特定した患者に対し、ファーストラインとしての、標準抗がん剤治療とゲフィチニブ治療を比較することを目的に行われた。被験者は、転移性非小細胞肺がんを有した抗がん剤未治療の230例。ゲフィチニブ投与群とカルボプラチン(商品名:パラプラチン)+パクリタキセル(同:タキソール)投与群(標準治療)に無作為化し追跡した。主要エンドポイントは、無増悪生存期間とした。副次エンドポイントは、総生存率、奏効率と毒性作用とした。増悪までの期間、奏効率がゲフィチニブ群で有意に、毒性も許容範囲内予定中間解析(最初の200例)の結果、増悪までの期間が、標準療法よりもゲフィチニブ投与群で、有意に延長していた。ゲフィチニブ群の死亡・疾患進行ハザード比は、0.36だった(P

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血中ホモシステインの低減、主要冠動脈イベントや脳卒中リスク減少につながらず

血中ホモシステインの低減は、主要な血管・冠動脈イベント、脳卒中や非冠動脈血管再生のリスク減少には、結びつかないようだ。がん発症との関連も認められなかったという。これまでの観察研究から、血管疾患を発症した人の血中ホモシステイン値は、そうでない人に比べ、高いことは知られていたが、この点が心血管疾患の原因となるかどうかは不明だった。英国オクスフォード大学のJane M. Armitage氏ら研究グループが、心筋梗塞歴のある1万2,000人超について、二重盲無作為化プラセボ対照試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2010年6月23/30日号で発表した。葉酸2mg+ビタミンB12 1mgを毎日投与研究グループSEARCH(Study of the Effectiveness of Additional Reductions in Cholesterol and Homocysteine)は1998~2008年にかけて、英国の病院を通じ、非致死の心筋梗塞を発症した1万2,064人を対象に試験を行った。同グループは被験者を無作為に二群に分け、一方には葉酸2mgとビタミンB12 1mgを毎日(ビタミン群)、もう一方にはプラセボを投与した。主要評価項目は、初回主血管イベントの発生、主冠動脈イベントの発生(冠動脈死、心筋梗塞、冠動脈血管再生のいずれか)、致死・非致死の脳卒中、非冠動脈血管再生だった。追跡期間の平均値は、6.7年(標準偏差:1.5)だった。イベント発生、死亡率、がん発症率などいずれも両群で有意差なしビタミン群のホモシステイン減少幅の平均値は、3.8μmol/L(28%)だった。追跡期間中の主血管イベント発生は、ビタミン群が6,033人中1,537人(25.5%)、プラセボ群が6,031人中1,493人(24.8%)と、有意差はみられなかった(リスク比:1.04、95%信頼区間:0.97~1.12、p=0.28)。主冠動脈イベントについても、ビタミン群が1,229人(20.4%)に対しプラセボ群が1,185人(19.6%)と、有意差はなかった(リスク比:1.05、同:0.97~1.13)。さらに脳卒中についても、それぞれ269人(4.5%)と265人(4.4%)でリスク比は1.02(同:0.86~1.21)、非冠動脈血管再生もそれぞれ178人(3.0%)と152人(2.5%)でリスク比は1.18(同:0.95~1.46)と、両群で有意差はなかった。さらに、血管疾患が原因の死亡[ビタミン群578人(9.6%)対プラセボ群559人(9.3%)]、非血管疾患が原因の死亡[同405人(6.7%)対392人(6.5%)]、がん発症率[同678人(11.2%)対639人(10.6%)]についても、それぞれ両群で有意差はなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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65歳以上の肥満や50歳からの体重増で、2型糖尿病リスクが大幅増加

65歳以上の肥満や、50歳からの体重増は、糖尿病発症リスクを増加するという。BMI値の最高五分位範囲の群では、最低五分位範囲の群に比べ、糖尿病発症リスクが4倍以上であったことが報告された。米国ワシントン大学公衆衛生校生物統計学部のMary L. Biggs氏らが、65歳以上の4,000人超を対象とした前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年6月23/30日号で発表した。これまで、若者や中年の肥満が2型糖尿病のリスク因子であることは知られていたが、高齢者の肥満と同リスクに関する研究報告はほとんどなかった。肥満について人体測定学と生体インピーダンス法で測定研究グループは1989~2007年にかけて、Cardiovascular Health Studyの被験者で65歳以上の4,193人について、前向きに追跡した。肥満測定は、ベースラインでは人体測定学と生体インピーダンス法を用い、3年後に人体測定学で再測定を行った。主要評価項目とした糖尿病の診断については、糖尿病治療薬の服用や空腹時血中血糖値が126mg/dL以上とした。追跡期間の中央値は12.4年(範囲:0.9~17.8年)だった。その間、糖尿病が確認されたのは、339人だった(7.1/1,000人・年)。糖尿病リスクは、各因子とも最高五分位範囲が最低五分位範囲の約4倍ベースラインのBMI値が、最高五分位範囲の最低五分位範囲に対する、糖尿病発症に関するハザード比は、4.3(95%信頼区間:2.9~6.5)、50歳時点のBMI値については同3.0(同:2.0~4.3)だった。ベースラインの体重が、最高五分位範囲の最低五分位範囲に対する同ハザード比は、4.2(同:2.8~6.4)、体脂肪量は同4.0(同:2.6~6.0)、ウエスト周囲が同4.2(同:2.8~6.2)、ウエスト・ヒップ比が同2.4(同:1.6~3.5)、ウエスト・身長比が同3.8(同:2.6~5.5)だった。ただこれらハザード比の傾向を年齢階層化してみると、75歳以上になるとリスクは、65~74歳と比べておよそ半分であった。また、体重増との関係についてみてみると、本試験登録時の体重について50歳時点から9kg以上増えていた人は、体重の増減が2kg以内の人と比べ、2型糖尿病発症のハザード比が2.8(95%信頼区間:1.9~4.3)、ベースラインから追跡中3回目の測定までに体重が6kg以上増えた人の同ハザード比は2.0(同:1.1~3.7)だった。ベースラインから3回目の測定までに、ウエストが10cm超増えた人の同ハザード比は、ウエスト増減が2cm未満だった人との比較で、1.7(同:1.1~2.8)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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職場、公共スペースの禁煙後、着実に心筋梗塞入院患者が減少

イングランドでは2007年7月1日に、一部例外を除き、職場および公共スペースを全面禁煙とする法律が施行された。同国バース大学公衆衛生校のMichelle Sims氏らは、禁煙法導入による心筋梗塞入院患者に関する短期的な影響について調査を行った結果、「禁煙法は心筋梗塞を減らす」とのエビデンスを肉付けする結果が得られたという。BMJ誌2010年6月19日号(オンライン版2010年6月8日号)掲載より。施行後-2.4%減少、施行1年で1,200件減少に等しいSims氏らは、イングランドの18歳以上で心筋梗塞と診断分類され緊急入院した、2002年7月~2008年9月分のデータ(禁煙法施行前5年分と施行後15ヵ月分)を、ポアソン回帰分析法を用いて解析した。データはルーチンに集められた断続的時系列な統計学的データだった。主要評価項目は、週ごとの入院患者数。信仰や季節的な傾向、母集団サイズを補正後の解析結果、わずかではあるが有意な心筋梗塞入院患者の減少が、禁煙法施行後に認められた(-2.4%、95%信頼区間:-4.06~-0.66、P=0.007)。これは、法施行後1年間で1,200件(再入院を含むと1,600件)の心筋梗塞入院減少に等しかった。男女とも60歳以上で有意な減少、60歳未満は男性のみ有意入院減少が有意だったのは、60歳以上の男性(3.1%、P=0.001)および女性(3.8%、P=0.007)で、60歳未満では、男性は有意だったが(3.5%、P

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乳児への肺炎球菌ワクチン接種の費用対効果:オランダ

 オランダで行われている全乳児への7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV-7)の4回投与の予防接種プログラムについて、費用対効果に関する研究が行われた。オランダ・フローニンゲン大学薬学部のMark H Rozenbaum氏らによるもので、PCV-7の投与回数を減らした場合や、10価(PCV-10)、13価(PCV-13)のワクチンを用いた場合との比較を行った結果、現行のPCV-7の4回投与は、費用効果的ではないことが明らかになったと報告している。BMJ誌2010年6月19日号(オンライン版2010年6月2日号)掲載より。PCV-7、PCV-10、PCV-13投与と非投与とを比較 Rozenbaum氏らは、デシジョンツリー分析モデル(予備研究データにより構築)を用いて、PCV-7、PCV-10、PCV-13の費用対効果をワクチン非投与との比較で検討した。 コホート母集団の被験児は、オランダ生まれの乳児18万人で5歳まで追跡された。PCV-7の4回投与が始まる前の肺炎球菌感染症の発病率と抗原型に関するサーベイランスデータは、2004~2006年分が入手できた。 主要評価項目は、コスト、獲得生存年およびQALYs(生活の質を調整した生存年)、増分費用効果比(incremental cost effectiveness)とした。 ワクチンの効果が5年に及ぶと仮定した条件下で解析した結果、5歳児集団におけるワクチン接種による副次効果(集団感染の抑制)は、推定ネットで認められなかった。PCV-7の4回(3+1)投与で予防できたのは、5歳児で、侵襲性症例は推定71例、非侵襲性症例は同5,778例で、173獲得生存年、277QALYsに相当するものだった。PCV-7の4回投与はコストの割には効果に乏しい PCV-7の増分費用効果比、すなわち1QALYを獲得するのにかかったコストは11万3,891ユーロで、当初、費用対効果があるものとして推計されていた1QALY当たり5万ユーロをかなり上回っていた。 PCV-7の3回(2+1)投与の場合は、8万2,975ユーロに減っていた。 また、PCV-10、PCV-13接種の場合は、仮定条件により異なるが、3万1,250~5万2,947ユーロの範囲だった。 Rozenbaum氏は、「現行のPCV-7の4回投与は、費用効果的ではない。ワクチン非接種者による感染者増加が、ワクチン接種者による集団への副次効果を減じ、ワクチン接種の予防ベネフィットを相殺しているためと思われる。その点、PCV-10、PCV-13接種の方が利点がありそうである。PCV-7についてはワクチンの接種回数を減らすこと、および値段の引き下げでプログラム全体のコストが減らすことができれば、増分費用効果比を寛容できる範囲に減らすことは可能である」と結論している。

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自閉症児に対する親によるコミュニケーション介入は症状を改善するか?

コアな自閉症の患児に対して、通常の治療に加え親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入を行っても、症状の改善はわずかしか得られないことが、イギリス・マンチェスター大学精神科のJonathan Green氏らが行った無作為化試験で示された。自閉症は、その中核をなす患者のおよそ0.4%、広範な自閉症スペクトラムに属する患者の約1%が重篤で高度に遺伝性の神経発達障害をきたすと推察され、社会的な相互関係や意思疎通、行動の障害が、小児から成人への発達に多大な影響を及ぼすため、家族や社会に大きな経済的な負担が生じることになる。小規模な試験では、社会的コミュニケーションへの早期介入が自閉症児の治療に有効なことが示唆されているという。Lancet誌2010年6月19日号(オンライン版2010年5月21日号)掲載の報告。PACTによる介入群と非介入群を比較する無作為化試験研究グループは、中核的な自閉症の患児を対象に社会的コミュニケーションへの早期介入の有効性について検討する大規模な無作為化試験を実施した。イギリスの三つの専門施設(ロンドン、マンチェスター、ニューカッスル)に2歳~4歳11ヵ月の自閉症児が登録され、親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入(Preschool Autism Communication Trial;PACT)を行う群あるいは通常の治療を行う群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。PACT群の患児には通常の治療も施行された。主要評価項目は、治療13ヵ月後の自閉症症状の重症度[Autism Diagnostic Observation Schedule-Generic(ADOS-G)の社会的コミュニケーションに関するアルゴリズム項目の総スコア(スコアが高いほど重症度が高度)]とし、補足的な副次評価項目として親子間の相互応答、患児の言語能、学校での適応能を測定した。親子間のコミュニケーションには明確なベネフィットが152例が登録され、PACT群に77例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:25例)、通常治療群には75例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:23例)が割り付けられた。13ヵ月の時点における症状の重症度の改善効果は、施設、性別、社会経済的状況、年齢、言語能、非言語能で補正後のADOS-Gスコアが、PACT群で3.9点低下し、通常治療群では2.9点低下しており、両群とも症状の改善効果が認められた。各群間の効果量(effect size)は-0.24(95%信頼区間:-0.59~0.11)であり、PACTによる介入の症状改善効果は小さいと推察された。親の子どもへの同期的応答(効果量:1.22、95%信頼区間:0.85~1.59)、子どもからの親への応答(同:0.41、同:0.08~0.74)、親子の配慮の共有(同:0.33、同:-0.02~0.68)にはPACTによる改善効果が認められた。言語能や学校での適応能に対するPACTによる改善効果は小さかった。これらの知見に基づき、著者は「自閉症児の症状の低減を目的に、通常治療にPACTを併用するアプローチは推奨されない。その一方で、親子間の社会的コミュニケーションには明確なベネフィットが認められた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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高尿酸血症治療薬アロプリノール、慢性安定狭心症患者の運動能を改善

痛風・高尿酸血症の治療薬として用いられているアロプリノール(商品名:ザイロリックなど)の高用量投与により、慢性安定狭心症患者の運動能が有意に改善することが、イギリスDundee大学Ninewells病院のAwsan Noman氏らが行った無作為化試験で明らかとなった。実験的な研究では、キサンチンオキシダーゼ阻害薬は1回拍出量当たりの心筋酸素消費量を低下させることが示されている。このような作用がヒトでも起きるとすれば、アロプリノールなどこのクラスのキサンチンオキシダーゼ阻害薬が狭心症患者における心筋虚血の新たな治療薬となる可能性があるという。Lancet誌2010年6月19日号(オンライン版2010年6月8日号)掲載の報告。高用量アロプリノールの運動能改善効果を評価する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験研究グループは、高用量アロプリノールによる慢性安定狭心症患者の運動能の延長効果について検討する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー無作為化試験を行った。イギリスの1病院と2診療所に、血管造影にて冠動脈疾患を認め、運動負荷試験で冠動脈の狭窄が確認された18~85歳の慢性安定狭心症患者(2ヵ月以上が経過)65例が登録された。これらの患者が、アロプリノール600mg/日を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられ、6週間の治療ののち治療法のクロスオーバーが行われた。主要評価項目はST低下までの時間とし、副次評価項目は総運動時間および胸痛発現までの時間とした。ST低下までの時間が43秒、総運動時間が58秒、胸痛発現までの時間は38秒有意に延長クロスオーバー前の6週間の治療においては、アロプリノール群に割り付けられた31例のうち28例が、プラセボ群の34例のうち32例が評価可能であった。クロスオーバー後の治療では、60例全例で評価が可能であった。ST低下までの時間の中央値は、アロプリノール群がベースラインの232秒から6週後には298秒にまで延長したのに対し、プラセボ群の延長は249秒までであり、有意な差が認められた(p=0.0002)。両群間の絶対差は43秒(95%信頼区間:31~58秒)であった。総運動時間の中央値は、アロプリノール群がベースラインの301秒から393秒にまで延長したのに対し、プラセボ群の延長は307秒までであり、有意な差を認めた(p=0.0003)。両群間の絶対差は58秒であった(95%信頼区間:45~77秒)。胸痛発現までの時間の中央値は、アロプリノール群が234秒から304秒へ、プラセボ群は272秒まで延長し、やはり有意な差が確認された(p=0.001)。両群間の絶対差は38秒であった(95%信頼区間:17~55秒)。治療に関連した有害事象は両群ともにみられなかった。著者は、「アロプリノールは、狭心症患者の運動能の改善薬として有用であり、安価で耐用性にも優れ高い安全性を有する可能性が示唆された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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検索経験者の4割がネット検索をきっかけに病院へ!

アイシェアが20代から40代の男女504名の回答を集計した「ネット医療情報検索に関する意識調査」によると、インターネットで自分の体の気になる症状を検索したことが「ある」人は62.1%(313名)。男性の55.4%に対し、女性は69.8%と7割にのぼったという。年代別では、20代(59.7%)に比べ、30代(64.1%)・40代(62.2%)が高めの結果となった。そこで、検索経験者に自分の体の気になる症状を検索したことがきっかけで、実際に病院の診察を受けたことがあるか尋ねたところ、「ある」とした人は39.6%だった。ここでも検索経験者の比率と同様に、男性(33.6%)より女性(45.1%)が高ポイントとなっている。さらに、自分の体に気になる症状がある時、病院の診察前にインターネットでその症状を検索することがあるか聞いたところ、「必ず検索する」は16.0%、「症状によっては検索する」は77.0%で、『検索する』人は合計93.0%と圧倒的多数を占めた。性別・年代別に見ても9割前後が診察前にあらかじめ症状を下調べしていることが浮き彫りとなった。●詳細はプレスリリースへhttp://release.center.jp/2010/06/2801.html

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初発の慢性骨髄性白血病に対するニロチニブ vs. イマチニブ

慢性骨髄性白血病の分子標的治療薬イマチニブ(商品名:グリベック)は、白血病細胞の原因となるBCR-ABL蛋白を阻害し作用を発揮する。ニロチニブ(商品名:タシグナ)は、イマチニブよりも強力かつ選択的にBCR-ABLを阻害するとして、イマチニブ抵抗性あるいは不耐容の慢性期および移行期のCML患者に対する治療に有用とされている。イタリア・トリノ大学のGiuseppe Saglio氏らの治験グループ「ENESTnd」は、ニロチニブの第3相試験として、初発の慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+ CML)患者を対象に、イマチニブとの直接比較で有効性と安全性の評価を行った。NEJM誌2010年6月17日号(オンライン版2010年6月5日号)より。分子遺伝学的寛解率はおよそ2倍非盲検多施設共同で実施された第3相試験は、846例のPh+ CML患者を、ニロチニブ1日2回300mg投与群、または同400mg投与群、もしくはイマチニブ1日1回400mg投与群に、 1:1:1の比率で無作為に割り付け行われた。プライマリーエンドポイントは、12ヵ月時点の分子遺伝学的Major寛解(MMR)率とした。試験の結果、投与後12ヵ月時点のMMRは、ニロチニブ群(300mg投与群44%、400mg投与群43%)で、イマチニブ群(22%)のおよそ2倍だった(両群間比較ともP

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母乳を介した乳児へのHIV-1伝播を抑える

世界では毎年、約20万人の乳児が母乳を通してヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に感染し、その半数は治療を受けられずに2歳の誕生日を迎えることなく死亡している。米国ノースカロライナ大学のCharles S. Chasela氏らの研究グループはマラウイで、HIV-1の出産後伝播を抑えるため、授乳期間中の28週に行う母親への3剤抗レトロウイルス・レジメンと、乳児に行うネビラピン(商品名:ビラミューン)予防投与による伝播抑制の有効性について評価を行った。NEJM誌2010年6月17日号より。母親への介入群、子どもへの介入群と、対照群とを比較研究グループは、HIV-1陽性で、CD4+リンパ球数250個/mm3以上の授乳中の母親2,369例とその子どもを、抗レトロウイルス・レジメン群(母親)、ネビラピン群(乳児)、出産後抗レトロウイルス・レジメンを延長しない群(対照群)の3群にランダムに割り付けた。すべての母親と乳児には周産期予防処置として、ネビラピン投与1回と、ジドブジン+ラミブジンの併用投与を1週間行った。評価は、カプラン・マイヤー法を用いて、生後2週でHIV-1陰性だった乳児の28週におけるHIV-1伝播または死亡の累積リスクを推定し、log-rank検定を用いて比較した。HIV-1伝播、早期死亡の危険率が有意に低下試験対象となった2,369例の母子のうち、生後2週で乳児がHIV-1陽性だった割合は5.0%だった。生後2~28週におけるHIV-1伝播の推定リスクは、対照群が5.7%と他の2群より高く、母親投与群は2.9%(P=0.009)、乳児投与群は1.7%(P

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早期肺がんの切除、実施率が低い原因は?

肺がんは米国において、がん死亡の主要な要因である。ステージI、IIの非小細胞肺がんでは、切除術が治癒の信頼性が高い唯一の方法であり、切除しない人の生存期間中央値は1年に満たない。しかし、早期肺がん患者の切除術実施率は低いのが現状で、特に黒人での実施率が低いという。米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校のSamuel Cykert氏らは、修正可能な手術に関する因子を特定し、なぜ黒人で特に実施率が低い理由を明らかにするため、400人超を対象とする前向きコホート試験を行った。JAMA誌2010年6月16日号掲載より。黒人の実施率は白人より11ポイント低率同氏らは、2005年12月~2008年12月にかけて、生検で確定または可能性が高いと判断された新規早期肺がん患者437人のうち、386人を対象に試験を行った。被験者の年齢は26~90歳で、中央値は66歳、また29%が黒人だった。その結果、診断後4ヵ月以内に手術を行ったのは、白人は66%(179/273人)だったのに対し、黒人は55%(62/113人)で、黒人で有意に低率だった(p=0.05)。がんについての医師とのコミュニケーションが悪いほど、切除術の実施率は下がり、コミュニケーション指標25ポイントで5ポイント下がることによる、切除術の実施に関するオッズ比は0.42(95%信頼区間:0.32~0.74)だった。黒人で二つ以上の共存症があると実施率は0.04倍に術後1年後の予後予測が悪いとの患者の認識も、切除術の実施率が低いことと関連(オッズ比:0.27、同:0.14~0.50、絶対リスク差:34%)していた。黒人の切除術実施率は、二つ以上の共存症があった場合13%で、そうでない場合の62%と比べ、大幅に低率だった(オッズ比:0.04、同:0.01~0.25、絶対リスク差:49%)。また、黒人で普段医療ケアを受けられない状態だった人は切除術実施率が42%と、通常医療ケアを受けられた人の57%に比べ、低率だった(オッズ比:0.20、同:0.10~0.43、絶対リスク差:15%)。研究グループは、手術拒否の決定要因として、コミュニケーションや予後に対する患者の認識、高齢であること、黒人であることが独立した因子であることが明らかになったとして、至適手術実施のためにも、これら因子を考慮する必要があると結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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血中ビタミンB6とメチオニン値が高濃度だと、肺がんリスクは大幅減少

血中ビタミンB6とメチオニン値が高濃度だと、低濃度の人に比べ、肺がん発症リスクはおよそ半減するようだ。フランスInternational Agency for Research on CancerのMattias Johansson氏らが行ったケースコントロール試験で明らかになったもので、JAMA誌2010年6月16日号で発表した。これまで、ビタミンBのがん発症予防に関する研究は、主に葉酸塩値の大腸がん発症予防効果について行われ、ハイリスク集団についてその抑制効果を前向きに示すことはできなかったという。肺がん発症の約900人とコントロール群約1,800人を分析同研究グループは、1992~2000年にかけて、10ヵ国51万9,978人を対象に行った前向きコホート試験、European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC)のうち、血液採取データがある38万5,747人について追跡した。結果、2006年までに肺がんを発症した人は899人いた。そのコントロール群として、国や性別、誕生日、血液採取日をマッチングした1,770人を選び、両群の血中の4種のビタミンB(B2、B6、葉酸塩のB9、B12)とメチオニン、ホモシステイン濃度を調べ、肺がん発症率との関連を分析した。ビタミンB6濃度の最高四分位範囲の肺がん発症リスク、最低四分位範囲の0.44倍、メチオニンは同0.52倍喫煙の有無を補正した上で、血中ビタミンB6濃度が最も高い四分位範囲の最も低い同範囲に対する、肺がん発症に関するオッズ比は、0.44(95%信頼区間:0.33~0.60、傾向に関するp

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ただの貧血や血尿ではないかも?―命を脅かす超希少疾患、PNH

6月22日、東京のコンファレンススクエアにおいて、記者説明会「命を脅かす進行性の希少疾患 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)」が開催された(主催:アレクシオン ファーマ)。大阪大学医学部血液・腫瘍内科の西村純一氏は、「PNH原因遺伝子の発見から治療薬『ソリリス(一般名:エクリズマブ)』の登場まで」と題して講演した。貧血やヘモグロビン尿で原因がはっきりせず、確定診断に至っていない場合は、PNHを鑑別診断に入れる必要がありそうだ。西村氏によれば、PNHは希少疾患であり、見過ごされがちであることから、ただの貧血や血尿として扱われている患者が多いとのことである。PNHは、造血幹細胞のPIG-A(Phosphatidyl Inositol Glycan class A)遺伝子に後天的変異が起こり、その幹細胞がクローン性に拡大する造血幹細胞疾患である(※)。正常赤血球においては自己補体による障害をブロックしているCD59やDAF(CD55)などの補体制御因子が、PNH細胞ではPIG-A遺伝子変異により欠損する。その結果、コントロール不能な終末補体複合体の形成が進み、補体による溶血が起こることで多様な症状を呈する。また、再生不良性貧血(AA)や骨髄異形成症候群(MDS)などの骨髄障害患者に多く認められている。生命を脅かし、QOLにも影響を及ぼすPNHには、溶血、血栓症、骨髄不全の3大徴候がある。西村氏は、中でも溶血が生命に関わる腎不全、肺高血圧症、血栓症を引き起こし、また重度の溶血で嚥下障害、疲労、勃起不全などのQOLに関わる症状を訴えることが多いため、PNHの治療方針においては溶血の抑制が重要であると語った。これまでのPNH治療としては、重篤な症例に対する造血幹細胞移植以外、輸血などの対症療法しか選択肢がなかった。PNH治療に光明しかし、PNHがPIG-A遺伝子変異から始まる一連の経路によって発症することが明らかとなったことで、治療薬のターゲットは終末補体複合体の形成阻害となった。補体カスケードの近位にはC3、終末にはC5が関与しており、より他の補体活性に影響の少ない抗C5ヒト化モノクローナル抗体のエクリズマブが開発された。エクリズマブの治療効果が見られるのは溶血症状を有する症例で、PNH患者の3分の1から半分を占める。骨髄不全で溶血がほとんどない場合はベネフィットが少ないが、中には有効な例もある。使い続けることによりQOLの維持や寿命延長も期待される。投薬中止がとりわけ危険ということではないので、スポット的な使用法も今後考えられるとのことである。わが国におけるPNHの患者数は現在400~500人と推定されているが、少なくともその2倍はいるだろうと西村氏は述べている。患者が中心施設に集中する海外とは対照的に、市中病院で1人や2人の患者を診るという状況であるため、医師たちに啓発活動を行い、本来エクリズマブで治療すべき患者を拾い上げていくことが必要であるとした。エクリズマブの有効性・安全性エクリズマブは国内第II相臨床試験(AEGIS試験)において、投与開始1週間でLDH値を有意に減少させ、平均低下率は87%と、主要評価項目である溶血抑制効果が示された。また、エクリズマブ投与前12週の平均輸血単位数が5.2単位であったのが、投与後12週では1.5単位へと有意な減少を示し、輸血を必要とした患者の67%が投与中に輸血不要となった。ヘモグロビン値は投与期間に比例して緩徐に上昇したが、それに関わらず疲労感は投与後2週目で有意なスコア改善が見られ、QOL向上につながると考えられた。他に、慢性腎臓病(CKD)の改善、血栓イベント数の低下が認められた。安全性について、有害事象による試験中止はなく、日本人患者においても忍容性が確認された。副作用の程度は、軽度/中等度が29例中26例、重度1例であり、主な副作用は頭痛、鼻咽頭炎、悪心などであった。なお、エクリズマブによって髄膜炎の発症リスクが上がるため、投与2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種しなくてはならない。PNHの診断PNHの診断には、フローサイトメトリを用いて血球におけるCD59やCD55の発現低下を確認することが有用である。利用可能であれば、赤血球および顆粒球の定量的フローサイトメトリの実施が推奨される。そこでPNHクローンサイズが1%以上であれば、PNHを疑う必要がある。わが国において保険適応となっているのは、PNH診断時の赤血球CD59/CD55ダブル染色のみで、フォローアップには基本的に使えない。現在、診断網の確立を図っている段階とのことである。※PNH発症のメカニズム:PIG-A遺伝子変異の原因は現在明らかにされていない。また、PIG-A遺伝子変異だけではPNH発症に至らないため、2段階目としてのクローン性の増殖に関するメカニズムが解析の途上にある。仮説の一つとして、AA患者の半数以上はPNH細胞を持つ。AAでみられるような免疫機序による骨髄障害があるとき、PNH細胞は前述のCD59やCD55といったGPI(Glycosyl-Phosphatidyl Inositol)アンカー型蛋白が発現していないために自己免疫的な攻撃のターゲットにならない。すなわち増殖・生存に有利な状況となり、この環境下でさらに遺伝子変異が起こる確率が高まり、PNH細胞がより増殖可能となるという機序が考えられている。(ケアネット 板坂 倫子)

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ミドルエイジの女性にとって最もショックな老化症状は「老眼」

チバビジョン株式会社は23日、40~54歳の女性600人に実施した「エイジングケアに関する意識調査」の結果を発表した。同調査は、一般的に身体の変化(エイジングサイン)が現れやすいミドルエイジの女性のエイジングケアに対する意識を広く理解するために実施。調査結果からほとんどの人がいつまでも若々しくありたいと願っていて、エイジング対策をしている人には意識の差があることがわかった。また、様々な老化現象がある中で最もショックな症状は、「老眼」ということもわかったという。調査は、2009年10月にインターネットによるアンケートで行われ、対象は東京都・愛知県・大阪府在住の40~54歳の女性660名(CLユーザー、CLノンユーザー 各300名〔計600名〕、 遠近両用CLユーザー60名)。最もショックな老化現象を聞いたところ、「老眼があらわれたとき」と答えた女性が最も多く(36%)、「肌のしみ、しわ、くすみ」と、「白髪」を抜いてトップになっている。また、全体の約9割(88%)は老眼になるのは仕方のないことだと老眼を受け入れる気持ちをもつ半面、「老眼鏡をできれば使用したくない」と答えた女性が54%いた。その傾向は、エイジングケア意識の高い女性とコンタクトレンズ(以下、CL)ユーザーほど強く出ている。また、エイジングケア意識が高い人は「老眼」であることを周囲に気付かれたくないという意識が強く、遠近両用CLの使用意向も高い結果となったとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.cibavision.jp/press_room/release_page.html?art_id=29

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急性肺損傷や急性呼吸不全症候群への高頻度振動換気法の有効性

急性肺損傷および急性呼吸不全症候群(ARDS)治療として高頻度振動換気法が従来の機械的人工換気法に代わって行われるようになってきているが、高頻度振動換気法が従来法に比べ死亡率を低下させるとのエビデンスは明らかになっていない。大規模試験は進行中だが試験完了にはまだ時間を要することから、カナダ・トロント大学のSachin Sud氏らは、過去に行われた8つの無作為化試験を対象とするメタ解析を行った。BMJ誌2010年6月12日号(オンライン版2010年5月18日号)掲載より。臨床転帰、生理学的転帰、安全性を比較検討Sud氏らは、急性肺損傷と急性呼吸不全症候群(ARDS)の治療について高頻度振動換気法と従来法との臨床的かつ生理学的効果を比較検討する、システマティック・レビューおよびメタ解析を行った。電子データソースを用い、2010年3月までの論文を検索し選定した。試験選択基準は、急性肺損傷あるいはARDSを有する成人または小児を対象に、高頻度振動換気法と従来の機械的人工換気法との比較が検討されていた無作為化試験とした。3人の研究者がそれぞれ個別に、あらかじめ定義されたプロトコルに従い、臨床転帰、生理学的転帰、安全性についてデータを抽出し、ランダム効果モデルを用いて解析を行った。また、選定した全試験研究者から、明確な試験方法を聞き取り、追加データを入手した。死亡率、治療の失敗、有害事象から高頻度振動換気法が優位と分析選定されたのは、8つの無作為化試験(n=419)。そのほとんど(86%)がARDS患者だった。方法論に質的問題はなかった。24時間、48時間、72時間時点での吸入酸素濃度に対する酸素分圧比(PaO2/FiO2)は、高頻度振動換気法を受けている患者の方が16~24%高かった。また同群の方が、平均気道内圧が22~33%まで上昇したが、酸素化指標に有意差は認められなかった(P≦0.01)。高頻度振動換気法群に無作為に割り付けられた患者では、死亡率が有意に低下し(リスク比:0.77、95%信頼区間:0.61~0.98、P=0.03、6試験、365例、死亡160例)、治療の失敗(難治性の低酸素血症、高炭酸血症、緊張低下、気圧性外傷)が治療中断によるものとの関連は低かった(同:0.67、0.46~0.99、P=0.04、5試験、337例、有害事象73例)。その他リスクは両群で同等だった。また、試験間の生理学的転帰にはかなりの不均一性が認められた(I2=21~95%)が、臨床転帰には認められなかった(I2=0%)。また臨床転帰の大半はイベントに基づくものではなかった。これらの結果から研究グループは、高頻度振動換気法は生存率を改善する可能性があり、かつ害悪ももたらさなさそうだと結論づけた。進行中の大規模多施設試験完了にはまだ数年を要する中、本解析データは現時点でARDS患者に対し同術式を用いている、あるいは適用を考えている臨床家に役立つものとなるとまとめている。

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新型インフル・パンデミックの機内伝播リスク、感染者席2列以内で3.5%

2009新型(A/H1N1)インフルエンザ・パンデミックに関して、WHOが非常事態を宣言したのは2009年4月25日だった。同日、ニュージーランドの開業医から、3週間のメキシコ旅行を終え米国ロサンジェルスから6時間前に帰国した高校生グループに、インフルエンザ様症状を認めたことが報告された。フライト中12人が症状を申告、後に9人が新型インフルだったことが特定された。旅客機内での感染伝播リスクは示唆されるが、機内でのインフルエンザ感染拡大が特定された例はこれまで3件しかなく、本件はそのうちの貴重な一つ。この事例を対象に、ニュージーランドのオタゴ大学公衆衛生学部門のMichael G Baker氏らは、旅客機内での感染伝播リスクと、着陸後の乗客に対するスクリーニングおよび追跡調査の効果について調査を行った。BMJ誌2010年6月12日号(オンライン版2010年5月21日号)掲載より。感染者がいた後部座席搭乗者の、到着後3.2日以内の罹患状況を追跡Baker氏らは、乗客に対し行われる健康調査票と、症状を呈した乗客への追跡検査の結果を利用し後ろ向きコホート研究を行った。対象としたのは、ニュージーランド、オークランドの国際空港に、2009年4月25日に到着したボーイング747-400機(定員379名)の後部座席搭乗者(定員128名)で、高校生グループ24人(学生22人、教師2人)と、周辺座席の搭乗者102人(うち74人はニュージーランド居住者、19人は外国人観光者、9人は乗継)のうちインタビュー調査に応じてくれた97人(95%)について検討された。主要評価項目は、到着後3.2日以内に新型インフル罹患が検査確認された搭乗者で、感染感度および特異度、またコンタクト追跡の完遂度およびタイムリーさについても調べられた。せき単独症状の感染感度92.3%と非常に高かった高校生グループでフライト中に症状を訴え、後に新型インフルと検査確定されたのは9人だった。その他の乗客のうち、到着後に新型インフルを発生した人は5人いたが、機内感染拡大例と検査確定されたのは12時間後に症状を発症した1人と、48時間後に症状を発症した1人の計2人だった。この2人は、フライト中以外の感染が考えられなかった。またこの2人の座席は、機内で罹患していたことが検査確定された乗客の座席から2列以内の範囲にあった。同範囲内の乗客は57人いて、感染リスクは3.5%(95%信頼区間:0.6~11.1%)と推計された。なお、後部座席全体での同リスクは1.9%(同:0.3~6.0%)と推計された。感染感度は、「せき」単独症状が非常に高く(症状を訴えなかったのは1例のみ)92.3%だった。その他の発熱、咽頭痛、鼻水などは30%台と低かった。また複数症状でのインフルエンザ様症状定義づけの感度は相対的に低く、米国版を用いた感度は38.5%、ニュージーランド版は米国版よりは高かったが61.5%だった。公衆衛生従事者による追跡精密検査が行われたのは93%だった。到着後72時間以内でコンタクトが取れたのは、52%にすぎなかった。以上からBaker氏は、「現代の商業飛行には、低いながらも確実に新型インフルエンザ・パンデミックの伝播リスクが、感染者の近くに集中し存在する。また曝露搭乗者の追跡調査、スクリーニングは、彼らがいったん空港を立ち去ってしまうと緩徐で困難であることが明らかになった」とまとめている。

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