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COPD急性増悪時の酸素療法はタイトレーションによる方が有意に転帰を改善

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪時に行う酸素療法について、標準療法とされている高流酸素療法(8~10 L/分)よりも、動脈血酸素飽和度(SaO2)88~92%達成を目標に鼻プロングで酸素を供給するタイトレーション酸素療法の方が、死亡、高二酸化炭素血症、呼吸性アシドーシスの発生を有意に減少することが実証された。オーストラリア・タスマニア大学メンジース研究所のMichael A Austin氏らによる無作為化試験からの報告で、BMJ誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月18日号)に掲載された。COPDの急性増悪とみなされ搬送された405例の搬送時の処置を比較検討 COPD患者への高流酸素療法は生命予後を悪化するエビデンスが蓄積され、ルーチンに行うことの有害性についての認識は高まっているが、タイトレーション酸素療法の有効性を示すエビデンスが不足しているとして、オーストラリアをはじめ各国で、高流酸素療法が標準ケアであり続けている。開業医や救急サービス、オピニオン・リーダーへの認識変容にも至っていないとして、Austin氏らは、両酸素療法を比較する無作為化試験を実行した。 試験は、タスマニア島ホバート救急サービスの利用者を対象に、集団無作為化群間比較試験にて行われ、被験者は、COPDの急性増悪とみなされ王立ホバート病院に入院搬送される間、救急隊員により治療を受けた405例。そのうち過去5年以内に肺機能検査によりCOPDと診断がついていた人は214例だった。 被験者は、高流酸素療法群(226例)かタイトレーション酸素療法群(179例)に無作為に割り付けられ、主要転帰は、入院前あるいは入院中の死亡率としintention-to-treat解析された。COPD患者の死亡率は78%低下、全患者対象解析でも死亡率58%低下 結果、全患者405例を対象とした場合、またCOPD患者214例のみを対象とした場合の解析でも、死亡リスクはタイトレーション群の方が有意に低かった。 全患者対象解析での死亡率は、タイトレーション群4%(7例)、高流群9%(21例)で、タイトレーション群の方が、死亡率が58%低かった(相対リスク:0.42、95%信頼区間:0.20~0.89、P=0.02)。COPD患者対象解析では、同2%(2例)、9%(11例)で、死亡率は78%低かった(同:0.22、0.05~0.91、P=0.04)。 また、COPD患者でタイトレーションを受けた人は、高流酸素療法を受けた人よりも、呼吸性アシドーシスの発生が有意に少なそうだった[治療間のpH平均差:0.12(SE 0.05)、P=0.01]。また高二酸化炭素血症の発生も有意に少なそうだった[動脈二酸化炭素分圧の平均差:-33.6(SE 16.3)mmHg、P=0.02)。 Austin氏は、「本試験の結果は、息切れ患者やCOPD歴を有する患者もしくは見込まれる患者に対し、搬送時処置として、タイトレーション酸素療法の実施をルーチンとすべきという強いエビデンスを提供するものである」と結論している。

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中国の公的健康保険NCMSは、農村部医療危機を解消したか?

毛沢東主義下の中国農村部の保健医療システムは、集団農業共同体(コミューン)に対し助成金を出すシステムであったが、改革開放へと一転したことで1980年代初頭にコミューンが解散、加えて中央政府の医療財源が都市部に集中されたため、農村部住民6億4,000万人が事実上無保険者となった。数十万あった農村部病院も機能を失い、公的病院は医療価格を上昇させていったことで、農村部医療は私立の郷村医(医療補助員として知られるvillage clinicians)診療所が基盤となった。一方で医療政策は、専門医療や薬剤を処方するほど増益となる仕組みとしたため、結果として医療コストの増大と各家庭に金融リスク(財産譲渡や借金)をもたらすこととなった。そこで中国政府は2003年に農村部医療危機を解消すべく公的健康保険プログラム「NCMS」を導入した。本論は、米国カリフォルニア大学農業資源経済学のKimberly Singer Babiarz氏らによる、NCMSの影響についての調査報告で、BMJ誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月21日号)に掲載された。導入による郷村医診療所と村民への効果を調査NCMS(New Rural Cooperative Medical Scheme)は、導入後5年で農村部住民8億人をカバーするに至った世界最大規模の健康保険。世帯加入で保険料は10~20元/人、地方・中央政府からそれぞれ加入者1人当たり20~40元の助成金が拠出される。管理運営は県(county)レベルで行われ、入院費の一部償還以外は全国各地でカバーされる内容は異なる。県管理人にはカバー内容の施策(ベネフィットパッケージ)提言をすることが推奨されており、大きな地域差を生むこととなったが、2007年までに大半の群が、県立(または地区立)の病院、郷立の医療センター(医師と看護師が常駐し入院医療と複雑な外来診療を担う)、郷村医診療所(プライマリ・ケアと公衆衛生を担う)のそれぞれ外来診療までカバー領域を拡大した。また「医療費貯金」の口座開設(世帯口座)を義務付ける県もあり、預金の大方はプライマリ・ケアを担う郷村医診療所の外来診療に使われ、口座残高は翌年に繰り越す仕組みとなっている。こうした背景を踏まえBabiarz氏らは、2004年と2007年の、NCMSが個人および郷村医診療所にもたらした影響の変化について調査した。調査したのは5省(江蘇、四川、陝西、吉林、河北)、25の地方県の100村、160の郷村医診療所と村民8,339人だった。診療所のサービス利用と総収入は増大したが、純収入は増えていない郷村医診療所は、NCMSによって、週単位の患者受診者が26%増大、月総収入は29%増大していることが認められた。しかし、年間ネット総収入は変わっていなかった。また月総収入に占める薬剤収入の割合も変わっていなかった。一方NCMSに加入している村民は、郷村医診療所の利用が5%増大していたが、概して医療ケアの利用の変化は認められなかった。また、医療費の自己負担持ち出しが19%減少していた。医療ケアを利用するために財産を売ったり借金をすることのリスクも減っていた(24~63%)。こうした変化は、ベネフィットパッケージが最小の県でさえもみられた。Babiarz氏は、「NCMSは地方住民に多少なりとも金融リスクの回避をもたらし、地方の医療システムのゆがみの一部を是正した。しかし、補償のない新たな責務を郷村診療所に移行する計画もあり、診療所の財政状況をむしばんでいくようなら、それら利得は持続可能ではなくなるであろうことを強調しておく。政策立案者が再び関心を持ってプライマリ・ケアを強化すれば、NCMSの効果について、より大きな注目に値する」と結論している。

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健康づくりには、まずは「きれいな空気」から!?

ダイキン工業株式会社は5日、全国の20代~60代の男女1万人を対象に実施した「空気に対する意識変化」をテーマにしたアンケートの結果を発表した。調査の結果、9割以上の人が空気と健康の関係性を認識しており、”健康づくりには「きれいな空気」が欠かせない”という意識を持っていることがわかった。今まで日常生活の中で気にならなかった「空気」と「健康」の関係を、昨年のパンデミック騒動で、多くの人が意識するようになったと考えられる。調査では、「きれいな空気」が、具体的にどのような効果・影響を与えるかを聞いたところ、「健康を促進する」(28.5%)という回答が最も多く、続いて、「病気を予防する」(16.1%)、「気管支・肺によい」(15.7%)と、身体面での“健康”に与える効果・影響が上位3 位を占める結果となった。また「空気」が気になる時を聞いたところ、1 位「風邪・インフルエンザのシーズン」、2 位「近くに喫煙者がいる時」、3 位「交通量の多い道路を通る時」、4 位「花粉のシーズン」という結果になった。いずれも、身の回りの「空気」の変化によって、健康が脅かされるという危機感を感じる時、健康を守るために「空気」を意識する傾向があると考えられる。併せて、「風邪・インフルエンザのシーズン」(18.1%)と「風邪・インフルエンザなどにかかった時」(4.9%)を比較すると、インフルエンザにかかった後よりも、かかる前の“予防段階”に、より敏感になっていることがわかるという。詳細はこちらhttp://www.daikin.co.jp/press/2010/101105/index.html

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かぜ薬購入時のビジネスパーソンと薬剤師のコミュニケーションの実態とは・・・

グラクソ・スミスクライン株式会社のコンタック総合研究所(http://contac.jp /soken/)は4日、本格的なかぜシーズンに向け、薬局やドラッグストアなどでかぜ薬を購入するビジネスパーソンと、購入時に接する薬剤師との店頭コミュニケーションの実態調査の結果を発表した。同調査では、かぜや軽いけがなどの軽度な体調不良は、一般用医薬品(OTC医薬品)を利用して自分で手当てすること(セルフメディケーション)に着目し、ビジネスパーソンのセルフメディケーションの実行率もあわせて調べた。今回の調査結果では、約85%のビジネスパーソンが、軽いかぜであれば病院に行かず市販のかぜ薬で治す『セルフメディケーション』を実行していることがわかった。また、市販のかぜ薬でかぜを治したい、という意思は約98%に上った。その背景には、ビジネスパーソンは気軽に仕事を休めず、医療機関に行く時間がないため、市販のかぜ薬を上手く利用し、自身でケアしようという意欲が高いからだと考えられる。一方、薬剤師に対する調査では、約半数が今よりもお客様から相談されたいと回答していた。そのためには、商品知識を高め、コミュニケーション力をもっと高める必要があることを強く認識していることがわかったという。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2010_07/P1000662.html

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慢性C型肝炎、新規経口抗HCV薬2剤併用による非インターフェロン治療が有望

慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者に対する2つの新規経口抗HCV薬であるRG7128とdanoprevirの併用療法が、非インターフェロン治療として有望なことが、ニュージーランド・オークランド市民病院のEdward J Gane氏らが行った無作為試験(INFORM-1試験)で示された。HCV感染に対する現在の標準的なインターフェロンベースの治療法は、効果および耐用性の両面で限界があるという。RG7128はHCVのNS5B RNAポリメラーゼを阻害し、danoprevirはウイルスの複製に必須な酵素HCV NS3/4Aプロテアーゼの大環状阻害薬だ。Lancet誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月15日号)掲載の報告。7つの治療群とプラセボ群を比較INFORM-1試験の研究グループは、慢性HCV感染患者を対象に、いずれも経口投与が可能な2つの実験的な抗HCV薬(ヌクレオシドポリメラーゼ阻害薬RG7128とNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬danoprevir)の併用療法の安全性、耐用性、抗ウイルス効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化用量漸増試験を実施した。ニュージーランドおよびオーストラリアの6施設から登録されたHCV遺伝子型1型に慢性的に感染した患者が、RG7128(500mgあるいは1,000mg×2回/日)とdanoprevir(100mgあるいは200mgを8時間ごとに3回/日、または600mgあるいは900mg×2回/日)の併用療法、あるいはプラセボを投与され、最長で13日間の治療を受けた。適格例が7つの治療群の1つに登録され、実薬群あるいはプラセボ群のいずれかに無作為に割り付けられた。用量漸増試験は未治療例を対象とし、前治療無反応例を含む標準治療による既治療例は高用量danoprevir群に登録された。担当医、試験センター員、患者には治療割り付け情報は知らされなかったが、薬剤の調整を行う薬剤師、薬物動態サンプルの解析に携わる者、データの要約を作成する統計学者、次の治療群の初回用量決定前のデータをレビューする薬理学者にはマスクされなかった。主要評価項目は、13日間の治療を受けた患者のベースラインから14日目までのHCV RNA濃度の変化とし、治療を完遂した全症例について解析を行った。未治療例、既治療例ともにウイルスRNA濃度が低下、耐用性も良好登録された88例のうち、74例が7つの実薬群に割り付けられ73例が少なくとも1回の投与を受け、プラセボ群の14例もいずれも1回以上の投与を受けた。13日間の併用治療を受けた各群の、ベースラインから14日目までのHCV RNA濃度変化の中央値は、-3.7~-5.2(log10)IU/mLであった。最も高用量を投与された群(RG7128 1,000mg+danoprevir 900mg×2回/日)の、ベースラインから14日目までのHCV RNA濃度変化中央値は、プラセボ群が0.1(log10)IU/mL上昇したのに比べ、実薬群の未治療例では-5.1(log10)IU/mL(四分位数範囲:-5.6~-4.7)、標準治療で無反応であった既治療例では-4.9(log10)IU/mL(同:-5.2~-4.5)まで低下した。RG7128+danoprevir併用療法は良好な耐用性を示し、治療関連の重篤な有害事象は認めず、grade 3/4の検査値異常や有害事象による治療中止もみられなかった。著者は、「このヌクレオシドポリメラーゼ阻害薬とプロテアーゼ阻害薬の併用療法は、慢性HCV感染患者に対する非インターフェロン治療として有望と考えられる」と結論し、「最近、直接作用型抗ウイルス薬の単剤療法の有望な結果が報告されているが、今回の非インターフェロン直接作用型経口抗ウイルス薬の2剤併用療法は、今後のHCV感染の管理における重大な転換点であり、過去20年間で最も大きな治療上の進展を示すものである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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2015年へのカウントダウンに向け、妊婦、子どもの健康関連ODAは改善されたか?

2003~2008年の6年間で、開発途上国への妊婦、新生児、子どもの健康に関する政府開発援助(ODA)の供与額は増加したが、他の健康領域を含む総額も増加したため相対的に優先度には変化がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のCatherine Pitt氏らの調査で明らかとなった。効果的な介入を広範に行ってミレニアム開発目標(MDG)4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)およびMDG5A(2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する)を達成するには十分な資金が必要だが、2015年へのカウントダウンに向けた支援の優先国68ヵ国の多くがODAに依存しているのが現状だという。Lancet誌2010年10月30日号(オンライン版2010年9月17日号)掲載の報告。ニーズが最も高い被援助国に対して供与すべきODAを調査研究グループは、2007年と2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対する援助の流れ、および以前に実施された2003~2006年の予測の達成度を解析した。研究グループが開発したODAの追跡法を用いて、2007年と2008年の経済協力開発機構(OECD)の援助活動の完全データベースを手作業でコード化して解析を行った。援助供与額および推定人口の新たなデータを用いて、2003~2006年のデータを改訂。妊婦および子どもの健康に関するニーズが最も高い被援助国に対して、援助国はどの程度のODA供与の対象とすべきかを解析し、2003~2008年の6年間の傾向を調査した。2007、2008年の妊婦、子どもの健康関連OADの70%以上が優先国へ全開発途上国における妊婦、新生児、子どもの健康関連の活動への支援として、2007年に47億米ドル、2008年には54億米ドルが供与されていた(2008年の不変ドル換算)。これらの総額は2003年から2008年までに105%増加したが、健康関連ODAの総額も同じく105%増加したため相対的には不変であった。2015年へのカウントダウンの優先国は、2007年に34億米ドル、2008年には41億米ドルを受け取っており、これは妊婦、新生児、子どもの健康に対する全供与額のそれぞれ71.6%、75.6%に相当するものだった。妊婦および子どもの死亡率が高い国へのODAは6年間で改善されていたが、この期間を通じて、死亡率がより低く所得が高い国に比べ一人当たりのODAがはるかに低い国もあった。2003~2008年のワクチン予防接種世界同盟(GAVI Alliance)の基金および世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)は、各国機関による中核的基金を上回っており、二国間共同基金も特にイギリスとアメリカによるものが著明に増加していた。著者は、「2003~2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対するODAの増加は歓迎すべきであり、より多くのニーズのある国へのODAの配分も多少改善している。にもかかわらず、これらの供与額の増加は他の健康分野に比べて優先順位が高くなったことを示すわけではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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クロピドグレル治療にCYP2C19遺伝子多型は影響するのか?

 アスピリンにクロピドグレル(商品名:プラビックス)追加投与は、急性冠症候群や心房細動患者における主要な血管性イベントの発生率を減少させるが、最近の報告で、CYP2C19遺伝子多型で機能喪失型を有する患者では、クロピドグレルの抗血小板作用が減弱する可能性が示唆され、FDAから低代謝群について黒枠警告するよう指示がされ、これら患者では高用量投与または他の抗血小板薬を使用することが提案されている。一方で、機能獲得型(*17)を有する患者では血小板反応が増し出血リスクが増大することが明らかになっている。そこでカナダMcMaster大学のGuillaume Pare氏らは、クロピドグレル治療へのCYP2C19遺伝子多型の影響をプラセボ対照試験の結果から検証した。NEJM誌2010年10月28日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載より。3タイプのCYP2C19遺伝子多型の影響を検証Pare氏らは、急性冠症候群または心房細動患者が参加し、プラセボとの比較でクロピドグレルが、有効性の主要転帰とした心血管イベント発生率を減少させた二つの大規模無作為化試験から、被験者の遺伝子多型を規定し検証を行った。規定されたのは、主要なCYP2C19遺伝子多型である三つの一塩基多型(*2、*3、*17)だった。急性冠症候群ではCYP2C19遺伝子多型によらずクロピドグレルの効果は一貫結果、急性冠症候群患者でCYP2C19遺伝子多型が規定された5,059例において、一塩基多型のタイプにかかわらず、心血管イベント発生率は、プラセボ群と比較しクロピドグレル群での有意な減少が認められた(不均一性のP=0.12)。心血管イベント発生率を減少させたクロピドグレルの効果は、機能喪失型(ヘテロ接合体あるいはホモ接合体)を有する患者と、有さない患者とで同等だった。保有患者の心血管イベント発生率は、クロピドグレル群8.0%、プラセボ群11.6%で、クロピドグレル群のハザード比は0.69(95%信頼区間:0.49~0.98)。非保有患者も、同9.5%、13.0%、ハザード比0.72(0.59~0.87)であった。対照的に、機能獲得型を有する患者と有さない患者とでは、保有患者の方がプラセボと比較した場合のクロピドグレルの有益性はより大きいことが示された。保有患者における心血管イベント発生率は、クロピドグレル群7.7%、プラセボ群13.0%、ハザード比0.55(0.42~0.73)であり、非保有患者では、同10.0%、12.2%、ハザード比0.85(0.68~1.05)であった(交互作用のP=0.02)。出血リスクへのクロピドグレルの影響は、遺伝子型のサブグループ間で差異はなかった。一方、心房細動患者でCYP2C19遺伝子多型が規定された1,156例については、急性冠症候群と同様のクロピドグレルの一貫した効果がみられたが、エビデンスを得るには至らなかった。Pare氏は「急性冠症候群または心房細動患者において、CYP2C19遺伝子多型の機能喪失型を保有する患者で有効性、安全性が限定されることはない」と結論。急性冠症候群患者において、機能喪失型を保有していてもクロピドグレルの使用を排除すべきではないと述べた。なお、心房細動患者においてはルールアウトを決定するためにはより大規模な試験が必要だとも提言している。(武藤まき:医療ライター)

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コントロール不良の成人喘息患者へのチオトロピウム追加投与

吸入用ステロイド(グルココルチコイド)単独療法でコントロール不良の成人喘息患者の代替治療に関して、COPD治療薬として開発された長時間作用性抗コリン薬の臭化チオトロピウム水和物(商品名:スピリーバ、日米とも喘息は未適応)の追加投与が、喘息症状および肺機能を改善することが報告された。米国ウェイクフォレスト大学のStephen P. Peters氏らNHLBI喘息臨床研究ネットワークによる。その効果は、すでに改善効果が認められている長時間作用性β2刺激薬(LABA)のサルメテロール(商品名:セレベント)を追加投与した場合と、同等のようだと結論している。NEJM誌2010年10月28日号(オンライン版2010年9月19日号)掲載より。チオトロピウム追加投与を、ステロイド倍量、サルメテロール追加投与とそれぞれ比較Peters氏らは、18歳以上喘息患者210例を対象に、チオトロピウム追加投与(毎朝18μg)、吸入用ステロイド倍量投与(160μg〈2パフ・80μg〉を1日2回)、サルメテロール(50μgを1日2回)追加投与を段階的に受ける二重盲検トリプルダミー交差試験を行った。試験目的は、吸入用ステロイド単独療法へのチオトロピウム追加投与に関する評価を、吸入ステロイド用倍量投与と比較(主要評価項目、優越性を評価)およびサルメテロール追加投与の場合と比較(副次評価項目、非劣性を評価)することだった。ステロイド倍量投与に優越、サルメテロール追加投与に非劣性優越性を検討した吸入用ステロイド倍量投与との比較では、朝の最大呼気流量(PEF)とした主要転帰が、チオトロピウム追加投与の方が優れていることが認められた。PEF平均差は25.8 L/分(P<0.001)だった。また、大半の副次転帰についても優れていた。たとえば、夕方のPEF平均差は35.3 L/分(P<0.001)、喘息コントロール日数の差は0.079(P=0.01)、気管支拡張薬投与前1秒量(FEV1)の差は0.10 L(P=0.004)、1日症状スコアの差は-0.11ポイント(P<0.001)などだった。一方、サルメテロール追加投与との比較では、すべての評価項目で非劣性であることも認められた。なかでも、気管支拡張薬投与前FEV1はチオトロピウム追加投与の方がより大きな増大が認められ、その差は0.11 L(P=0.003)だった。(武藤まき:医療ライター)

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重度敗血症は高齢者の自立を損なう

重度敗血症を発症し、回復した人は、その後中等度から重度の認知障害を発症するリスクが3倍超に増大することが報告された。また同発症後には、新たに現れる身体機能の制約数も増えるという。米国ミシガン大学医学校内科部門のTheodore J. Iwashyna氏らが、敗血症で入院した高齢者約1,200人について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月27日号で発表した。重度敗血症の罹患率は高く、また増加傾向にあるものの、その後の長期的な認知能力や身体機能に与える影響については、これまでほとんど調査されていなかった。重度敗血症後の中~重度認知障害リスク、3.34倍に同氏らは、1998~2006年に50歳以上の米国住民を抽出し行われた全米調査「HRS(Health and Retirement Study)」のうち、認知能力や身体機能などに関する情報の得られた9,223人のデータを元に、前向きコホート試験を行った。HRSコホートのうち、重度敗血症で入院した人は1,194人、入院件数は1,520件だった。そのうち、回復した人は516人(入院時の平均年齢は76.9歳)だった。一方、被験者のうち重度敗血症以外で入院した人は、4,517人だった。重度敗血症で入院した人は、中等度から重度の認知障害の罹患率が、発症前6.1%から発症後16.7%へと、10.6ポイント増加していた。多変量回帰分析の結果、重度敗血症は中等度から重度の認知障害リスクを、3.34倍(95%信頼区間:1.53~7.25)増大することがわかった。敗血症以外の入院では認知障害リスクは増大せず同様に身体機能の制約についても、重度敗血症後に新たな制約が高率にみられた。発症前に制約がみられなかった人において、発症後には新たな制約数が平均1.57(95%信頼区間:0.99~2.15)となっていた。また発症前に軽度から中等度の身体機能の制約がみられた人でも平均1.50(同:0.87~2.12)の新たな制約がみられた。一方で、敗血症以外の理由による入院と、中等度から重度の認知障害発症リスクとには関連がみられなかった(オッズ比:1.15、95%信頼区間:0.80~1.67、重度敗血症との差に関するp=0.01)。退院後に現れた身体機能の制約数は、敗血症による入院の場合に比べ少なく、平均値は発症前に制約がなかった人で0.48(p<0.001)、軽度から中等度の制約があった人で0.43(p=0.001)だった。また、認知能力や身体機能の低下は、最低8年間継続していた。著者は、「高齢者における重度敗血症は、新たな認知障害および身体機能障害を引き起こす独立した因子である。そのもたらす障害の影響は大きく、自立した生活能力を損なうことに結びついているようだ」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ダイエット食の無料提供と週1回のカウンセリング、肥満女性の減量に効果

市販ダイエット食の無料提供と週1回のカウンセリングが、肥満女性の長期減量に効果があることが、無作為化対照試験の結果、明らかにされた。減量を始めて2年後の体重減少が、対照群と比べて4kg以上の差があったという。米国カリフォルニア大学医学校サンディエゴ校のCheryl L. Rock氏らが、約450人の肥満女性を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月27日号(オンライン版2010年10月9日号)で発表した。なおこれまで、市販ダイエット食品の肥満予防効果について、コントロール試験で検証されたことはほとんどなかったという。対面または電話でスタッフによる週一回のコンタクト、市販ダイエット食の無料提供Rock氏らは2007年11月~2010年4月にかけて、18~69歳(平均年齢44歳)で、BMI値が25~40の女性442人を対象に2年間の追跡試験を行った。研究グループは被験者を無作為に3群に分け、そのうち2群には、毎週一回、教育を受けたスタッフによる短時間のコンタクトを、医療センターにおいて対面で、あるいは電話で提供した。また、市販ダイエット食をそれぞれに無料で提供し、加えて、電話や電子メール、ウェブサイトなどを通じたフォローアップも行った。さらに、2年の間に2回のカウンセリングを無料で提供した。残り1群は対照群として、2年間で2回の減量に関する無料カウンセリングを提供し、毎月フォローアップを行ったのみだった。24ヵ月後、対面コンタクト群では7.4kg、電話コンタクト群では6.2kgの減量効果24ヵ月後にデータが得られた被験者数は、407人だった(被験者の92%)。医療センターで毎週対面によるコンタクトをとった群では、試験開始時点と比べ24ヵ月後の体重減少幅は7.4kg(95%信頼区間:6.1~8.7)で、減少率は7.9%(同:6.5~9.3)だった。電話で毎週コンタクトをとった群では、同体重減少幅は6.2kg(同:4.9~7.6)、減少率は6.8%(同:5.2~8.4)だった。一方、対照群の同体重減少幅は2.0kg(同:0.6~3.3)、減少率は2.1%(同:0.7~3.5)と、介入を行ったニつの群に比べ有意に低かった(p

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イギリスの全国規模の電子カルテシステム導入、大幅な遅れの原因とは?

全国規模の電子カルテシステム導入による医療改革の実現には、長期にわたる複雑な反復過程を経る必要があり、システムおよび実現戦略の双方について柔軟性と地域適応性が求められることが、イギリス・エジンバラ大学のAnn Robertson氏らが実施した中間的なデータ解析で判明した。イギリス政府は、2010年中の始動を目指し、国家プログラムとして、168の急性期病院と73の精神保健トラストを通じて中央で統括する標準化された詳細な電子カルテの導入を進めているが、スケジュールが大幅に遅れているという。BMJ誌2010年10月23日号(オンライン版2010年9月2日号)掲載の報告。イギリスの2次医療における電子カルテの導入状況を評価研究グループは、イギリスの2次医療における詳細な電子カルテの実現および導入状況を調査し、その評価を行った。調査の対象は、電子カルテの早期実現に向けて中間的なデータの集積とその解析を完了したイギリス国民医療保健サービス(NHS)の5つの急性期病院と精神保健トラストであった。評価用のデータセットは、半構造的面接、書類と現場記録、観察記録、量的データであった。量的データは、社会技術的コーディングマトリックスを用い、データから浮上した新たなテーマを統合して、テーマ別に解析した。“top-down”でも“bottom-up”でもなく、“middle-out”アプローチを結果、現状として、病院の電子カルテ用アプリケーションは開発途上であり、その実現は当初の想定よりもはるかに遅れていること、概略的な項目から詳細な項目へ移行するよう標準化されたアプローチ(“top-down”アプローチ)には、各地域の活性化の支援に向けて病院トラストが要望する、より多くのバリエーションや地域独自の選択肢を許容するような展開が求められることなどが明らかになった。また、かなりの遅れや欲求不満があるとはいえ、NHSの医師も含め、電子カルテへの支持は強く、現時点で電子カルテの全国的導入を難しくしているのは、政治的、財政的な要因と受け止められていることもうかがえた。面接調査では、2次医療におけるNHSの診療記録サービスの契約を長期にわたり中央で交渉することに起因する様々な悪影響、特にNHSトラスト自身がこれらの契約の当事者ではないために生じる問題点が明らかとなった。これらの問題には、個々の利害関係者間の複雑な意思疎通経路、非現実的な機器配置スケジュール、遅延、国および地方のNHSの優先事項の変更に対し迅速に対応できないアプリケーションなどが含まれる。データの解析からは、以下の点が示唆された。(1)病院用電子カルテを実現し、政府の管理と増大する地方自治を統合するには、“middle-out”アプローチ(“top-down”でも“bottom-up”でもなく、中程から上下両方向へ展開するアプローチ)が支持される、(2)詳細な電子カルテを、地方の保健コミュニティと共有できる範囲にとどめる。著者は、「高い関心を集め、財政投資や支援を受けた早期導入施設の経験から、全国規模の電子カルテ導入による医療改革の実現には、長期にわたる複雑な反復過程を経る必要があり、システムおよび実現戦略の双方について柔軟性と地域適応性が求められることがわかった。個々の事項により適合し、より迅速な対応が可能なアプローチが新たに出現しており、このアプローチはNHSが認識しているニーズとよりよく連携しつつあり、これをさらに推し進めれば、臨床的に有用な電子カルテシステムが実現する可能性が高くなると考えられる」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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自民族密度の高い地域への居住が、イギリスの少数民族の精神障害を軽減

イギリスに住む少数民族においては、自民族密度の高い地域に居住することで、一般的な精神障害が低減し、社会的支援の改善や差別体験の減少がもたらされることが、イギリスKing’s College London精神医学研究所のJayati Das-Munshi氏らの研究で示された。差別の経験は精神的健康に有害な影響を及ぼすのに対し、社会的支援やネットワークは保護的に作用することが示されている。自分と同じ民族の密度が高い地域で生活する人々は人種差別を経験する機会が減少し、このような生活環境は、イギリスに居住する少数民族にとって精神的、身体的な健康リスクの低減につながる可能性があるという。BMJ誌2010年10月23日号(オンライン版2010年10月21日号)掲載の報告。国の調査データを多層的に解析本研究は以下の問題の評価を目的に行われた。(1)同じ民族の人々の居住率が高い地域で生活することが、一般的な精神障害に対し保護的に作用し、差別の経験を低減して社会的支援を改善する、(2)民族密度の保護効果は、人種差別の経験の低減や社会的支援の改善によってもたらされる。イギリスの892地域から無作為に抽出された16~74歳の4,281人(アイルランド系、黒人カリブ系、インド系、パキスタン系、バングラディシュ系、白人イギリス系)を対象に、国の調査データに関して多層ロジスティック回帰モデルを用いた解析を行った。一般的精神障害は構造的面接で評価し、差別や社会的支援、ネットワークは構造的質問票で評価した。民族密度の保護効果は完全には説明できない民族密度が高い地域のほとんどが最貧地区であったが、交絡因子を補正すると、自民族密度が10%増加するごとに、一般的な精神障害のリスクが全少数民族(オッズ比:0.94、95%信頼区間:0.89~0.99、p=0.02)、アイルランド系(同:0.21、0.06~0.74、p=0.01)、バングラディシュ系(同:0.75、0.62~0.91、p=0.005)において有意に低減するとのエビデンスが得られた。いくつかの人種では、自民族密度が高い地域に住むことで差別体験の報告が減少し、社会的支援やネットワークが改善されたが、これらの因子が民族密度の保護効果をもたらすことはなかった。著者は、「イギリスに住む少数民族では、自民族密度の高い地域への居住による一般的精神障害に対する保護効果が確認された。自民族密度が高い地域で生活する人々は、社会的支援が改善され、人種差別体験が減少する可能性が示唆されるが、これらの関連性によって密度効果が完全に説明できるわけではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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世界初、ビタミンE浸漬浸透人工股関節ライナー第二世代が日本発売

バイオメット・ジャパン株式会社は1日、ビタミンE浸漬(しんせき)/浸透(しんとう)によって、高強度を保ったまま、抗酸化性、低摩耗を獲得した第二世代ハイリークロスリンクポリエチレン(以下HXLPE)採用の人工股関節ライナー「E1 HIP リングロックライナー」を、同日より日本に導入すると発表した。この製品は、世界初のビタミンEを含んだ人工股関節ライナーであり、摩耗を抑制する材料として期待されているという。E1 Antioxidant Infused Technology(ビタミンE浸漬/浸透技術)とは、1990年代後半から開発されたHXLPEを新しい世代=第二世代として進化させ、確立したもので、以下のような特徴がある。 ・HXLPE 人工股関節ライナーを、ビタミンE液に浸漬。・インプラント内の酸化反応分子(フリーラジカル)が酸素と結合する前にビタミンEと結合させ、酸化を防止、ポリエチレンの劣化を予防。・人工股関節に求められる「機械的強度」「耐摩耗性」「抗酸化性」に加え、「持続的抗酸化性」を獲得。・従来15年~20年と言われてきた人工股関節の耐用年数を、向上させる技術として注目される。同社では、第二世代HXLPE採用において、ビタミンEの安全性はもとより、強度テスト、耐摩耗性テスト、抗酸化性テストなど様々なテストにおいて、第一世代HXLPEよりも良好な結果を獲得していることを確認したため、今回、日本市場に導入したとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.biomet.co.jp/information/2010/11/post_1.html

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「法研 六訂版 家庭医学大全科」CD-ROM版を新発売

ロゴヴィスタ株式会社は1日、パソコン用電子辞典「LogoVista電子辞典シリーズ」の新作として、Windows版および、Macintosh版『法研 六訂版 家庭医学大全科』を、2010年11月26日より発売することを発表した。パソコンショップ、カメラ系量販店、大手書店、ダウンロードサイトなどで販売するとのこと。たとえば家で急病人が出たとき、どう対処すればよいのか。同製品は、2,600を超える病気やケガについて600名以上の医療専門家が執筆した最新の家庭医学事典となっている。総項目数は5,000を超え、その圧倒的な情報量で病気やケガのことがわかりやすく解説されている。また、EBMを反映した正しい治療法について、家庭向けではあるものの質的にも高い水準を保ちながら、理解しやすいよう図表を多用するなどの工夫がされており、病名や病状、部位や年齢など、あらゆる角度から検索できるつくりになっている。詳細はプレスリリースへhttp://www.logovista.co.jp/LVERP/information/news/2010-1101-daizenka6.html

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冠動脈心疾患のリスク評価におけるSNPに基づく遺伝的リスクスコアの有用性

冠動脈心疾患に関連する13の一塩基多型(SNP)に基づく遺伝的リスクスコアを用いれば、初回冠動脈心疾患の発症リスクが約70%増大しているヨーロッパ系人種の20%を同定可能なことが、フィンランド・ヘルシンキ大学のSamuli Ripatti氏らが行った症例対照研究とプロスペクティブ・コホート研究の結果から明らかとなった。冠動脈心疾患の原因は複雑であり、ライフスタイルや遺伝的因子の影響が大きく、早発性の冠動脈心疾患の家族歴は独立のリスク因子である。症例対照研究のデザインを用いた全ゲノム関連試験では、冠動脈心疾患、心筋梗塞あるいはこの双方と関連する13の遺伝子領域のSNPが同定されている。Lancet誌2010年10月23日号掲載の報告。13のSNPと冠動脈心疾患の関連を評価研究グループは、プロスペクティブなコホート研究によって、SNPと冠動脈心疾患の関連の外的妥当性を確立し、より正確にリスクを予測するための症例対照研究を実施した。最近発見された13のSNPと冠動脈心疾患の関連について検討するために、フィンランドとスウェーデンにおいて症例対照研究(冠動脈心疾患患者3,829例および非冠動脈心疾患の対照4万8,897人)およびプロスペクティブなコホート研究(心血管疾患のない3万725人)を行った。13のSNPを多座遺伝的リスクスコア(multilocus genetic risk score)でモデル化し、Cox比例ハザードモデルを用いて遺伝的リスクスコアと冠動脈心疾患発症の関連を推定した。症例対照研究では、ロジスティック回帰モデルを用いて個々のSNPと遺伝的リスクスコアの五分位数の関連について解析した。遺伝的リスクスコアと初回冠動脈心疾患の発症が相関コホート研究では、フォローアップ期間中央値10.7年の間に1,264人が初回冠動脈心疾患を発症した。遺伝的リスクスコアは初回冠動脈心疾患の発症と相関を示した。遺伝的リスクスコアの五分位数が最低の群と比較すると、最高の群は従来のリスクスコアで補正したモデルにおける冠動脈心疾患のリスクが1.66倍に上昇していた(95%信頼区間:1.35~2.04、線形傾向に対するp=0.00000000073)。家族歴で補正しても、これらの推定値に変化はなかった。遺伝的リスクスコアは従来のリスク因子や家族歴で補正してもC indexを改善せず(p=0.19)、net reclassification improvementにも影響を及ぼさなかった(2.2%、p=0.18)。しかし、integrated discrimination indexに対してはわずかな影響が確認された(0.004、p=0.0006)。症例対照研究とプロスペクティブ・コホート研究の結果は類似していた。著者は、「冠動脈心疾患に関連する13のSNPに基づく遺伝的リスクスコアを用いれば、初回冠動脈心疾患の発症リスクが約70%増大しているヨーロッパ系人種の20%を同定可能である。これら13のSNPの臨床使用の可能性については明らかではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ADHDの遺伝学的なエビデンスが全ゲノム解析で示された

注意欠陥・多動性障害(ADHD)では巨大なコピー数多型(copy number variant:CNV)が増加していることを示す遺伝学的なエビデンスが、イギリス・カーディフ大学のNigel M Williams氏らによる全ゲノム解析によってもたらされた。ADHDは高い遺伝性を示すが、特異的な感受性遺伝子は同定されていないため、疾患ではなく主に社会的構成概念であるとする主張も消えていない。ADHDに類似の神経発達障害では、CNVとして知られる巨大で希少な染色体の欠失や複製の関連がすでに確認されているという。Lancet誌2010年10月23日号(オンライン版2010年9月30日号)掲載の報告。ADHD患児410例と対照1,156人の全ゲノム解析を実施研究グループは、ADHDの発症におけるCNVの影響を評価し、同定されたCNVがすでに自閉症や統合失調症で同定されている遺伝子座に及ぼす影響について検討した。ADHD患児410例および1958 British Birth Cohortから人種をマッチさせて抽出した対照1,156人について全ゲノム解析を行った。地域の小児精神病および小児科外来クリニックから、5~17歳の白人イギリス人家系の子どもで、ADHDあるいは多動性障害の診断基準を満たすが、統合失調症や自閉症ではない患児が登録された。ADHD群および対照群の一塩基多型(SNP)の遺伝子型を二つのアレイを用いて決定した。CNV解析は二つのアレイに共通のSNPに限定し、高品質のデータを持つサンプルだけを対象とした。ADHD群のCNVはcomparative genomic hybridization(CGH)法で確定した。全ゲノムにおける巨大で(>500kb)、希少な(集団当たりの頻度<1%)CNVの負荷は、サンプルごとのCNV数の平均値に従って評価し、有意性の評価はpermutation法で行った。同定された全CNVおよび自閉症や統合失調症との関連が確認されている20の遺伝子座の確定された領域において、特異的な関連性の検査を行った。得られた結果につき、アイスランド人のAHDH患児825例および対照3万5,243人で検証した。ADHDは単なる社会的構成概念ではないすべての解析用のデータが得られたのは、ADHD群366例および対照群1,047人であった。巨大で希少なCNVは、ADHD群で57が、対照群では78が同定され、その頻度はADHD群が対照群よりも有意に多かった(0.156 vs. 0.075、p=0.000089)。このCNVの増加は、特に知能障害がみられる患児で大きかった(0.424、p=0.000002)が、このような障害がない場合でも有意差が認められた(0.125、p=0.0077)。ADHD群では、すでに統合失調症で同定されている染色体16p13.11の過剰な複製がみられ(複数の検査で補正後のp=0.0008)、アイスランド人のサンプルでも同様の知見が得られた(p=0.031)。ADHD群で同定されたCNVは、自閉症および統合失調症の双方で報告されている遺伝子座で有意に増強されていた(それぞれp=0.0095、p=0.010)。著者は、「本研究により、ADHDでは巨大なCNVが増加していることを示す遺伝学的なエビデンスがもたらされた。これは、ADHDが単なる社会的構成概念ではないことを示唆する」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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第2回 減塩 2010 (2) 1日6gの減塩をあきらめない

前回に引き続き、第33回日本高血圧学会総会からの演題から減塩を中心にレポートする。患者の食塩摂取量を簡便に把握する方法とともに、減塩の具体的な方策についてもまだ手探り状態といえる。本総会においても画期的な試みの成果が発表された。「減塩食はまずい」からの脱却 ―第33回日本高血圧学会総会 メディカル・コメディカル合同シンポジウムより―今回の総会においても、医師自らが率先して減塩することを意図し、昨年の総会に引き続き、ランチョンセミナーで「減塩・ヘルシー弁当」が提供された。今回は福岡女子大学 早渕仁美氏らが食品加工業者10社と連携し、減塩素材を利用することで食塩量を2gに抑えた減塩弁当である。1日目のランチョンセミナーで、減塩弁当(食塩相当量:1.06g)と、それと見た目が同じ対照弁当(食塩相当量:1.73g)が、減塩弁当がどちらかは告げられずに提供され、「どちらが減塩と思うか」など参加者にアンケートの記入を依頼した。翌日のシンポジウムにおいて早渕氏よりアンケート結果(n=776)が発表された。その結果、62.1%の回答者が正答したが、自信をもって回答したのは正答回答者の51.0%であった。正答回答者において減塩弁当を対照弁当より好むと回答した割合が多く、「減塩食=まずい」というイメージ払拭の第一歩となった。早渕氏は今回の結果を踏まえ、減塩調味料や減塩加工食品を用いることで、無理なく美味しい減塩料理をつくることが可能であると述べた。日本人はしょうゆと漬物から3割の塩分をとっている ―同シンポジウムより―結核予防会の奥田奈賀子氏は、国際共同研究INTERMAPのデータを用いて日本人の食塩摂取量の寄与割合が大きい食品を検討した。その結果、高塩分加工食品36.9%(漬物10.9%、塩干物8.1%、みそ汁7.1%ほか)、高塩分調味料27.1%(しょうゆ17.2%、塩8.6%ほか)の摂取が食塩摂取全体の6割程度を占めた。高塩分摂取者の特徴としては、日本食の高塩分加工食品の摂取が多く、米飯や野菜を煮物やおひたしで食べる量が多いなど、和食中心の食事傾向が認められた。一方、低塩分摂取者では、パン、乳・乳製品などの洋風の食材の摂取が多かった。奥田氏は高塩分加工食品の摂取を控えるとともに、ご飯に合う洋風のおかずを勧めることも減塩指導に有効であると考えを示した。地域のレストランを巻き込んで美味しく減塩 ―同シンポジウムより―日下医院の日下美穂氏は2008年より広島県呉市での減塩食普及に向けての地域ぐるみの取り組みついて講演した。日下氏は、呉市内のレストランで美味しさにこだわった減塩低カロリー食を各店1点以上メニューに入れてもらうという「こだわりのヘルシーグルメダイエットレストラン」という企画を立ち上げ、活動している。企画への参加基準として食塩2~3g、カロリー400~600kcalなどを設け、栄養士が基準を満たしているかを計算・評価する仕組みをとっている。また、民間のタウン情報誌、インターネットで参加店を検索できるなど市民、患者への広報にも力を入れている。日下医院に通院している生活習慣病患者388例に意識調査をした結果、84%が「以前に比べ、塩分を控えるようになった」と回答し、328例の高血圧患者の平均血圧、目標達成率は、企画開始前に比べ、有意に改善したことも発表した。日下氏はこの企画を継続させる上で大切な事は料理人のモチベーションを保つことであり、参加店に何度も足を運ぶ努力も必要であることも述べた。現在、広島市をはじめとする広島県下の地域でも実施中であり、興味を示す他の都道府県も現れ始めているという。減塩モニタによる食塩排泄量の自己測定と減塩教室は減塩に効果的 ―同ポスター発表より―西九州大学の安武健一郎氏は、健常者に対する2回にわたる減塩教室と食塩排泄量の自己測定が、高塩分食品の摂取頻度を低下させ、食塩排泄量の最大値と変動幅を低下させることを発表した。健常者50名に対し、ベースライン時に2週間にわたって減塩モニタによる食塩排泄量の自己測定と、高塩分食品(漬物、汁物、干物、塩蔵品、麺類、外食)の摂取頻度チェックを依頼した。また、2、4ヵ月後に管理栄養士による減塩教室を実施し、減塩教室の翌日から2週間自己測定と高塩分食品の摂取頻度チェックを依頼した。その結果、2ヵ月目で外食、4ヵ月目で漬物、汁物の摂取頻度が有意に減少し、4ヵ月目の食塩排泄量の最大値、変動幅が有意に減少した。排泄量の平均値に有意な減少は認められなかったが、55歳以上の群では4ヵ月には有意に減少した。各地で食品加工企業や地域飲食店を巻き込んだ減塩への取り組みが少しずつ行われてきているが、医師個人で取り組める減塩指導の方法や支援ツールを作成するなど具体的な方策を確立していく必要がある。最後に減塩への取り組むベネフィットの大きさについて米国のシミュレーション結果があるので紹介したい。3g/日の減塩効果は年間10%の冠動脈疾患の発症が抑制できる ― NEJM誌 2010年2月18日号より―それでは減塩への取り組みがもたらすベネフィットはどれくらいか?米国では1日3gの減塩がもたらす心血管イベント、全死因死亡、医療費への影響をシミュレーションモデルにより予測している。これによると、たとえ1日1gの減塩を2010年から10年かかってでも達成できさえすれば、すべての高血圧患者への降圧薬治療よりも費用対効果が大きいことを予測した。減塩量がわずかであっても、心血管イベントの発症および医療費を抑制することが期待できそうだ。この1年の間に、減塩のベネフィットを支持するエビデンスが得られ、減塩の重要性がより一層高まってきている。それを日常臨床においてどう実行するか。今、簡便な食塩摂取量の把握と、効果的な減塩指導法が求められている。第3回は、「微量アルブミン尿」に関してレポートする。(ケアネット 藤原 健次)

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抗凝固療法のマネジメント、自己測定管理 vs 外来管理

ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)抗凝固療法の効果を臨床で十分に享受するためのマネジメント方法について、有望な戦略と示唆されていた自宅で測定できる携帯型指穿刺装置を使った自己測定管理が、外来で行う質の高い静脈血漿検査による測定管理にまさらなかったことが報告された。全米28の退役軍人病院から約2,900人が参加した、Durham退役軍人病院のDavid B. Matchar氏らによる前向き無作為化非盲検試験「THINRS」からの報告で、NEJM誌2010年10月21日号で掲載された。これまで報告されていたほど、初発の脳卒中・大出血・死亡までの期間について、毎週行う自己測定管理が毎月の外来管理と比べ長くはなかったという。2,922例を無作為化し、初発重大イベントまでの期間を評価自己測定管理は、外来管理よりも測定頻度や患者の治療参加を高めることができ、臨床転帰が改善される可能性があるとされる。そこでTHINRS(The Home International Normalized Ratio Study)では、2003年8月~2008年5月に、人工心臓弁置換または心房細動発症のためワルファリン投与を受けており、POCT(Point of Care Testing)のINR測定機器を使う能力があった2,922例を、自宅での自己測定管理群と外来での質の高い測定管理群に無作為化し追跡した。主要エンドポイントは、初発重大イベント(脳卒中、大出血エピソード、死亡)までの期間。被験者は2.0~4.75年、合計8,730人・年が追跡された。自己測定管理群、重大イベントリスク低下の優越性なし、ただし……結果、自己測定管理群の初発重大イベントまでの期間は、外来測定管理群と比べて有意に長くはなかった(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.75~1.04、P=0.14)。両群の臨床転帰の発生率は、自己測定管理群で軽度の出血エピソードが多かったことを除けば、同程度だった。ただ自己測定管理群は、追跡期間中のINRの目標値範囲内達成について、わずかだが有意な改善点として示された(両群間の絶対差:3.8ポイント、P

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妊婦へのDHAサプリメント、産後うつや子どもの発達に効果みられず

妊婦に対し、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含むサプリメントを投与しても、産後うつ病の改善や、子どもの認知・言語能力の発達には効果がみられないことが明らかにされた。オーストラリアWomen’s and Children’s Health Research InstituteのMaria Makrides氏らが、約2,400人の妊婦を対象に行った、無作為化二重盲検試験「DHA to Optimize Mother Infant Outcome」(DOMInO)の結果によるもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表されている。産後6ヵ月までの母親のうつ状態と、生後18ヵ月の子どもの発育状態を評価研究グループは、2005年10月31日~2008年1月11日にかけて、オーストラリア国内5ヵ所の医療機関で、単体児妊娠21週未満の妊婦2,399人について試験を開始した。また、生まれた子ども726人についても、2009年12月16日まで追跡した。被験者妊婦は無作為に2群に分けられ、一方にはDHA 800mg/日を含む魚油サプリメントを、もう一方にはDHAを含まない野菜油カプセルを投与した。産後6週目と6ヵ月後に、エジンバラ産後うつ病評価スケール(EPDS)で、うつ状態を評価。生まれた子どもについては、ベイレイ乳幼児発達スケール(Bayley Scales of Infant and Toddler Development)で、生後18ヵ月に認知・言語能力を評価した。登録された妊婦は、96.7%が試験を完了した。産後のうつ病リスクや子どもの認知・言語能力スケールに、両群で有意差なし結果、産後6ヵ月にEPDSスコアが12超だった人の割合は、DHA群9.67%、対照群11.19%で、両群に有意差はみられなかった(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.70~1.02、p=0.09)。子どもの認知能力スケール総合スコアについても、両群間の補正後平均値格差は、0.01(95%信頼区間:-1.36~1.37、p=0.99)と有意差がなかった。言語能力スケール総合スコアの両群間の補正後平均値格差も、-1.42(同:-3.07~0.22、p=0.09)で有意差がなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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閉経後女性へのホルモン補充療法、乳がん死亡リスクも増加の傾向

閉経後女性への、エストロゲン+プロゲスチンのホルモン補充療法は、侵襲性乳がんやリンパ節転移陽性のリスクが増加すること、乳がんによる死亡のリスクも同併用療法とともに増加する傾向にあることが報告された。米国UCLAメディカルセンターのRowan T. Chlebowski氏らが、約1万7,000人の女性をおよそ11年追跡した「Women’s Health Initiative」(WHI)から明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表した。すでに発表された追跡期間約8年のWHIの結果で、エストロゲン+プロゲスチン投与により乳がんリスクが増加することは明らかになっていたが、乳がん死亡率については未報告だった。閉経後女性1万6,608人を平均11年追跡WHIは、米国内40ヵ所の医療機関を通じ、50~79歳の閉経後の女性で子宮摘出術を受けていない1万6,608人を対象に試験が行われた。被験者は無作為に2群に分けられ、一方には結合型ウマエストロゲン0.625mg/日+酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mg/日の合剤(Prempro)を投与し、もう一方の群にはプラセボが投与された。追跡は、当初2005年3月31日まで予定されていたが、それ以降、当初被験者の83%にあたる生存者1万2,788人について、2009年8月14日まで追跡した。追跡期間の平均値は、11.0年(標準偏差:2.7年)だった。プラセボ群に対し乳がん死亡1.96倍、乳がん発症後総死亡率1.57倍その結果、侵襲性の乳がんを発症したのは、プラセボ群では293人(年率0.34%)だったのに対し、エストロゲン+プロゲスチン群では385人(年率0.42%)と、1.25倍だった(95%信頼区間:1.07~1.46、p=0.004)。両群の乳がんは、組織学的所見、グレードについての差はみられなかったものの、リンパ節転移陽性となったのは、プラセボ群では43人(16.2%)だったのに対し、エストロゲン+プロゲスチン群では81人(23.7%)と、1.78倍に上った(95%信頼区間:1.23~2.58、p=0.03)。また乳がんによる死亡も、プラセボ群が12人(年率0.01%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が25人(年率0.03%)と、1.96倍だった(同:1.00~4.04、p=0.049)。さらに乳がん発症後の総死亡率も、プラセボ群が31人(年率0.03%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が51人(年率0.05%)と、1.57倍だった(同:1.01~2.48、p=0.045)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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