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【速報!AHA2012】待機的ステント留置例におけるVerify-Nowによる血小板活性測定の有用性、認められず:ARCTIC

 近年、ex vivoの血小板活性簡易測定キット(VerifyNow)が開発された。これにより、クロピドグレル不応例などに対するより効果的な抗血小板療法の実現が期待されたが、2つの無作為化試験(GARVITAS、TRIGGER-PCI)では、薬物溶出ステント(DES)留置後にVerifyNowを用いて抗血小板療法を調節・変更しても、有用性は従来のクロピドグレル療法と差がなかった。  同様に、3日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて報告された無作為化試験ARCTICにおいても、VerifyNowを用いた抗血小板薬の用量調節は予後改善に結びつかなかった。ピティエ・サルペトリエール病院(フランス)のGilles Montalescot氏が報告した。    ARCTOC試験の対象は、DES留置が予定されている2,440例(ST上昇型心筋梗塞は除外)。アスピリン・クロピドグレル併用のうえ、VerifyNowで血小板活性をモニタする群とモニタなしの通常治療群に無作為化された。  「モニタ」群では、まずDES留置前にVeryfyNowにて血小板活性を評価し、 血小板活性(アスピリン、クロピドグレルそれぞれに対する残存血小板反応性)が高い場合、アスピリンは再ローディングか静注、クロピドグレルは再ローディングかプラスグレルへの切り替えとした。DES留置2週間~1か月後には再び血小板活性を測定し、血小板活性が高い場合、アスピリンは増量、クロピドグレルは75mg/日まで増量されていればプラスグレルへ変更することとした。ただし、チエノピリジン服用例で残存血小板活性が10%未満の場合は、クロピドグレル減量、あるいはプラスグレルからクロピドグレルへの変更を行った。 その結果、「モニター」群では血小板活性抑制の改善が見られた。すなわち、DES留置前、アスピリン服用例の7.6%、クロピドグレル服用例の35%において、血小板活性抑制は不十分だったが、DES留置2週間〜1か月後に残存血小板反応を認めた割合は、アスピリン群の3.9%、クロピドグレル群の15.6%だった。  ところが、このような血小板活性の抑制にもかかわらず、「モニタ」群の予後改善は認められなかった。すなわち、一次評価項目である「死亡、心筋梗塞、緊急血行再建術、ステント血栓症、入院を要する脳梗塞」の1年間発生リスクに、両群間で有意差はなかった。むしろ、「モニタ群」において増加傾向が認められた(ハザード比:1.13、95%信頼区間:0.98~1.29)。この「モニタ」群における増加傾向は、上記イベントのいずれにおいても観察された。また、「モニタ」群で有意に一次評価項目が減少していたサブグループもなかった。  一方、安全性に関しては、有意差はないものの「大出血」、「小出血」とも「モニター」群で減少傾向を認めた。  以上よりMontalescot氏は、「これらの結果より、ステント留置例におけるルーチンな血小板活性測定は支持できない」と結論した。  指定討論者であるミシガン大学(米国)のEric R Beats氏は、無作為化試験GRAVITAS、TRIGGER-PCIだけでなく、レジストリ研究(ADEPT-DES、MADONNA、RECLOSE2-ACS)においても、血小板活性測定を用いた抗血小板療法調節は予後を改善していない点に言及。血小板反応は介入対象となる「リスク」ではなく、何らかの「リスクのマーカー」である可能性があると述べた。取材協力:宇津貴史(医学レポーター)「他の演題はこちら」

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早産に対する分娩遅延効果が最も優れる子宮収縮抑制薬とは?

 早産への対処において、子宮収縮抑制薬としてのプロスタグランジン阻害薬とカルシウム拮抗薬は、他の薬剤に比べ分娩遅延効果が高く、新生児と母親の双方の予後を改善することが、米国・インディアナ大学医学部のDavid M Haas氏らの検討で示された。早産のリスクのある妊婦では、子宮収縮抑制薬を使用して分娩を遅らせることで、出生前に副腎皮質ステロイドの投与が可能となり、新生児の予後が改善される。子宮収縮抑制薬には多くの薬剤があり、標準的な1次治療薬は確立されていない。少数の薬剤を比較した試験は多いが、使用頻度の高い薬剤をすべて評価する包括的な研究は行われていないという。BMJ誌2012年10月20日号(オンライン版2012年10月9日号)掲載の報告。分娩の遅延に最も有効な薬剤をネットワーク・メタ解析で評価 研究グループは、分娩の遅延において最も有効な子宮収縮抑制薬を明らかにする目的で、系統的なレビューとネットワーク・メタ解析を実施した。 文献の検索には、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Medline In-Process、Embase、CINAHLを用いた。対象は、2012年2月17日までに発表された早産のリスクのある妊婦に対する子宮収縮抑制薬投与に関する無作為化対照比較試験の論文とした。 複数のレビュアーが、試験デザイン、患者背景、症例数、アウトカム(新生児、妊婦)のデータの抽出に当たった。ネットワーク・メタ解析にはランダム効果モデルを用い、薬剤のクラス効果(class effect)も考慮した。また、2度の感度分析を行って、バイアスのリスクの低い試験および早産リスクの高い女性(多胎妊娠や破水)を除外した試験に絞り込んだ。産科領域でネットワーク・メタ解析を用いた初めての試験 子宮収縮抑制薬の無作為化対照比較試験に関する95編の論文がレビューの対象となった。 プラセボとの比較において、分娩を48時間遅延させる効果が最も高かったのはプロスタグランジン阻害薬[オッズ比(OR):5.39、95%信頼区間(CI):2.14~12.34]であった。次いで、硫酸マグネシウム(同:2.76、1.58~4.94)、カルシウム拮抗薬(同:2.71、1.17~5.91)、β刺激薬(同:2.41、1.27~4.55)、オキシトシン受容体遮断薬であるアトシバン(同:2.02、1.10~3.80)の順だった。 新生児呼吸窮迫症候群の低減作用をプラセボと比較したところ、子宮収縮抑制薬の有効性に関してクラス効果は認めなかった。薬剤の変更を要する副作用の発現は、プラセボに比べβ刺激薬(OR:22.68、95%CI:7.51~73.67)が最も高頻度で、次いで硫酸マグネシウム(同:8.15、2.47~27.70)、カルシウム拮抗薬(3.80、1.02~16.92)の順であった。 子宮収縮抑制薬としてのプロスタグランジン阻害薬とカルシウム拮抗薬は、分娩48時間遅延効果、新生児呼吸窮迫症候群、新生児死亡率、妊婦に対する副作用(全原因)において、最も有効な上位3剤の中に位置づけられた。 著者は、「両薬剤は分娩遅延効果が最も高く、新生児と母親双方の予後を改善した」とまとめ、「われわれの知るかぎり、本研究は産科領域で最初のネットワーク・メタ解析を用いた試験であり、異質性が高い治療選択肢を使用した産科的介入にもこの方法論を適用可能なことが示された」と考察している。

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臨床試験で示されるvery large effects、その特色は?

 大半の医療行為がもたらす影響はささやかなものであるが、臨床試験では有効性または有害事象に関して、ときに非常に大きな影響(very large effects)をもたらす可能性が示される。ブラジル・German Hospital Oswaldo CruzのTiago V. Pereira氏らは、そのようなlarge effectsが示される試験頻度と特色を評価した。その結果、large effectsが示されるのは小規模試験がほとんどで、追試験をするとその効果サイズは概して小さくなっていた。Pereira氏は「よく確認されたlarge effectsというのはまれであり、多くは非致死的アウトカムに関したものであった」とまとめた。JAMA誌2012年10月24・31日号掲載より。very large effects(オッズ比≧5)の有意差(p<0.05)について評価Cochrane Database of Systematic Reviews(CDSR)2010年issue 7から、すべての介入比較の二者択一アウトカムを示したフォレストプロットを抽出した。初回試験、その後の試験(最初ではない試験)で、名目上の統計的なvery large effects[オッズ比(OR)が≧5]の有意差(p<0.05)が一致するのか、また有意差を示さない試験がどれくらいあるのかなどを調べた。評価を徹底するため、初回、その後、有意差を示さなかった各試験群から無作為に250トピックを抽出して検証も行った。very large effectsを示した試験の、治療の種類とアウトカムを評価し、very large effectsが他の同テーマの試験でどの程度みられるのか、またメタ解析でのeffectsと比べてどの程度なのかを調べた。p<0.001でエビデンスに懸念のない死亡率に関するvery large effectsな介入は1つ8万5,002例のフォレストプロットを抽出(3,082レビューから)し解析した。有意なvery large effectsを示したのは、初回公表試験で8,239例(9.7%)であり、初回以降公表試験では5,158例(6.1%)であった。7万1,605例(84.2%)はvery large effectsを示さなかった。名目上のvery large effectsの有意差は、概してイベント発生中央値が少数の小規模試験でみられた(初回公表試験18件、その後の試験15件)。very large effectsを示したトピックは、死亡率について言及したトピックがその他のトピックよりも少ない傾向がみられた(初回試験3.6%、その後の試験3.2%、有意なvery large effectsを示さなかった試験では11.6%)。一方で、ラボ定義の有効性に言及したものは多い傾向がみられた(同10%、10.8%、3.2%)。初回試験のvery large effectsと、その後の試験のvery large effectsは同程度ではない傾向がみられた。またその他の試験を組み込んだメタ解析では、very large effectsは初回試験のものは90%に、その後試験のものは98%に縮小した。オッズ比中央値でみると、前者は11.88から4.20に、後者は10.02から2.60に減少した。選択トピック500のうち46(初回とその後の試験の9.2%)がvery large effectsを有し、メタ解析でも有意差がp<0.001を維持したが、いずれも死亡率関連のアウトカムには関与しなかった。全CDSRで、死亡率に関するvery large effectsをp<0.001を伴い、エビデンスの質に対する重大な懸念がなかったものは1つの介入(新生児の重症呼吸不全に対する体外酸素加法)のみであった。

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NMDA拮抗薬メマンチンによる再発低血糖症の拮抗ホルモン減弱のメカニズム

 アルツハイマー型認知症治療薬メマンチンはNMDA受容体拮抗作用を有する。このNMDA受容体は内分泌系にも影響を及ぼすと言われている。ドイツ リューベック大学のKlement氏らは、メマンチンと低血糖の関連を検討した。Diabetes Obes Metab誌オンライン版2012年10月16日号の報告。再発低血糖症は、低血糖症状とホルモンの拮抗反応(counterregulatory responses)の減弱へと結び付く。この現象は糖尿病患者の治療では重大な問題を引き起こすが、その神経内分泌系メカニズムは不明である。著者らは、動物実験の所見に基づき、拮抗反応の減弱は、シナプスの長期増強(LTP)あるいはうつ病における基本的適応学習プロセスを意味するものであるとの仮説を立て、検証試験を行った。 仮定が正しければ、拮抗反応の減弱はNMDA受容体の阻害によって防止されるはずだとした。健常成人16例を2群に分け、4週間介入。一方の群には、NMDA拮抗薬メマンチンを5日間(15mg/日)投与し、もう一方にはプラセボを投与した。服薬3日後、被験者は4日目および5日目に1回ずつ低血糖クランプ検査を受けた。低血糖の自覚症状に加えて拮抗ホルモン(コルチゾール、ACTH、エピネフリン、ノルエピネフリン、GH、グルカゴン)の血中濃度を評価し、また短期記憶のインジケーターとして単語リスト記憶力を評価した。主な結果は以下のとおり。・NMDA受容体阻害薬メマンチンにより、内分泌系の減弱および再発低血糖症の拮抗反応は阻止されなかった。・全ホルモンと同様に神経低血糖症の拮抗反応および自律神経症状評価は、低血糖症の初回時と比較して3回目のほうがより強い減弱を示した(p<0.05)。・メマンチンによるNMDA受容体拮抗は、記憶機能を障害したが、すべての神経内分泌系の拮抗減弱の尺度に変化はみられなかった(p>0.17)。・結果は、仮説(再発低血糖症に対する適応が、長期増強またはうつ病に関与しているNMDA受容体を介した伝達形成プロセスに依存しているとの見方)を支持しなかった。関連医療ニュース ・検証!向精神薬とワルファリンの相互作用 ・【11月の特集】糖尿病 ・【学会レポート】2012日本臨床精神神経薬理学会・日本精神神経薬理学会合同年会

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重度骨折では術前血管造影を行うべき

 Gustilo IIIC外傷については、その定義のコンセンサスが求められており、また重度開放脛骨骨折のアウトカムに関する血行障害の影響について調査されている。英国 Frenchay HospitalのChummun S氏らは、約3,300人の形成および整形外科医から患者データを集め、血行障害とアウトカムとの関連について評価を行った。その結果、血行障害は肢機能に影響を与える独立した因子であることが示される一方で、医師の半数近くが血管損傷は無関係だと考えていることなどが明らかになった。著者は、「形成-整形外科医師間のコミュニケーション改善のために現行の分類法を修正すべきである。また、重度開放脛骨骨折の軟部組織再建の前には術前血管造影を活用することを提言する」と結論している。Plast Reconstr Surg誌オンライン版2012年10月16日号の掲載報告。 3,351人のさまざまな立場の形成および整形外科医に質問票を送付し、各自のGustilo IIIC外傷に対する解釈を調べた。一方で、Frenchay Hospitalの整形-形成外科治療センター(orthoplastic centre)で2006~2010年に行われた、軟部組織再建を伴う重度開放脛骨骨折治療の記録を検証した。 主な結果は以下のとおり。・形成外科医476人、整形外科医2,875人とコンタクトをとり、753人(22.5%)から回答を得た。・46.2%が、IIIC損傷は非血管性のものだと考えていた。続いて24.2%が、1または2枝の血管損傷だと考えていた。あらゆる血管損傷を意味すると考えていたのは6.9%であり、残りの22.7%は定義に関し未回答であった。・検証された患者データは、68例(男性50例、女性18例、平均年齢42.7歳)であった。・また、50例について標準血管造影が行われており、18例に血管損傷があった。・ATAが42%、PTAが37%、27%が腓骨動脈に血管損傷があった。・平均追跡期間11.2ヵ月の平均Ennekingスコアは、非血管損傷患者は29.8、血管損傷患者は24.4であった(p=0.004)。

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レベチラセタム、部分てんかん患者に対する1年間の使用結果レビュー:聖隷浜松病院

 本邦で2010年9月に承認された新規抗てんかん薬レベチラセタムについて、聖隷浜松病院の山添氏らが臨床での有効性と安全性を評価した結果、「部分てんかんに対して忍容性が良好であり、補助的療法として有効であった」ことを報告した。Brain Nerve 誌オンライン版2012年10月号の報告。 レベチラセタム(LEV)の日本発売以降の約1年間(2010年10月~2011年8月)の聖隷浜松病院のデータベースを用いて、有効性と安全性について後ろ向きに検討した。16歳以上の患者132例のデータのうち、部分てんかん112例、全般てんかん19例についてレビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・部分てんかん患者のうち53.6%が、治療前と比べててんかん発作頻度が50%以上減少した。そのうち28.6%は、治療期間中、てんかん発作が消失した。・有害事象は、患者の27.3%で報告された。10.6%でLEV投与が中止となった。・最も頻度の高かった有害事象は、傾眠(14.1%)であり、興奮または攻撃性(6.1%)、抑うつ(4.5%)であった。しかし、大半の有害事象は軽度~中等度であった。・80%以上の患者が治療を継続した。・LEV治療開始後の有害事象の頻度と中止の割合は、開始用量(1,000mg/日以下)とは関連していなかった。■関連記事抗てんかん薬の処方、小児神経科医はどう使っている?小児におけるレベチラセタム静注の有効性と安全性を確認【学会レポート】2012日本臨床精神神経薬理学会・日本精神神経薬理学会合同年会抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

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有名病院の収益構造を考える。さらに収益を生む方法は何か?

10月13日(土)東京女子医科大学・河田町キャンパスにおいて山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)主催による「山本雄士ゼミ」の第6回が開催された。今回は、ケーススタディとして「クリーブランド・クリニック」を取り上げ、アメリカ有数の大病院における経営マネジメントのディスカッションを行った。山本雄士ゼミは、ハーバード・ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した山本氏をファシリテーターに迎え、ケーススタディを題材に医療の問題点や今後の取組みをディスカッションによって学んでいく毎月1回開催のゼミである。自分の立ち位置はどこにあるのか?後期の第1回目となる今回は、初めて出席するゼミ生も多く、山本氏よりゼミの目的や理念が説明された。はじめに日本の医療や医療制度について経済的視点から解説を述べた後に、「このゼミは、これからの医療の問題解決のために自分の知っていること、知らないことを知るためのゼミ。まず自分の立ち位置と自分のいる世界(医療業界)のルールを知ることが大事。また、このゼミはリスク・フリーの場(発言に責任を問われない)であり、このゼミでディスカッションができなければ、今後、物事を変えられない。物怖じせずに、このゼミの場を楽しんでほしい。発言をしないのは損!」とゼミへの心構えを説明し、ケースに入った。あなたがCEOなら病院の体力増強をどう行う?クリーブランド・クリニック(以下CLC)は、クリーブランド(オハイオ州)に本拠地を置き、常勤医師1,800人、看護師9,000人、売上高48億ドル(営業利益 約3億5,000万ドル:約7%)を誇る医療機関。全米の病院ランキングでも常に上位に位置する病院で、診療科は心疾患、小児科等11科があり、外来と入院患者を同じ場所で診る診療ユニット制度などユニークな取り組みを行うほか、病院のIT化にも力を入れ、電子カルテの導入や患者自身が自分カルテを見ることができる「マイチャート」等のサービス提供を行っている。また、海外連携も盛んでトロント(カナダ)、アブダビ(アラブ首長国連邦)、ウィーン(オーストリア)でも医療サービスを提供している。はじめに山本氏から「CLCが医療の質をさらに向上させるためにとれる戦略は何か?」という問いかけに、「診療ユニット制度の拡大」や「組織編成」などがゼミ生より提案された。次に「CLCの患者へのアクセス向上の方法とは?」という問いかけに対して「在宅への進出」や「病診連携、病病連携の充実」、「マーケティングの実施」、「病院に学びの場等の付加機能の設置」など多くの提案が行われた。次に「CLCは人気病院であるのに、患者の囲い込みができていない。その理由は?」という問いかけに対し、「家庭医の段階で治療が終わっている」や「患者の地域的、経済的理由」、「患者の意識の低さ」などの意見が出た。これらに対する解決策を山本氏が問うと「企業と連携し、社員の健康維持目的で機会損失を失くす」や「予防のコストと疾患治療のコストを比較させ、前者が有利だと患者啓発を行う」などの提案がゼミ生よりあげられた。CLCの強さを分析すると次に山本氏より「CLCの強さは何か?」と問題提起がされた。これに対してゼミ生からは、医師の業績評価がチーム評価(360度評価)である同じ意識、目的、理念をもった仕事へのやりがい臨床の専門性を伸ばせる環境複数診療科での診療CLCブランドが確立している優秀なスタッフの存在実用的なITサービスやシステムが確立している情報公開が徹底されている患者が診療情報にアクセスしやすい等が、ケースの内容に基づいて列挙された。次に「これらを実現している要素についての分析では?」との問いかけに、「トップのリーダーシップ」や「PDCAがしっかりしている」、「スタッフが定着している」、「病院理念の共有化」、「(医学部があるので)人を育てる気風」などが挙げられた。続いて病院をナンバーワンにさせる方法は何があるかとの質問に、ゼミ生から「病院のプラットフォーム化を達成し、患者数を増やす、囲い込む」(臨床数が増えれば比例して質も向上する)というものや「不採算な出先病院からの撤退で合理化を目指す」などの提案が行われた。最後に山本氏がまとめとして、「アメリカのビジネス界では、ルールの変更が散見される。これは重要なことで、自分でルールの変更ができる、ルールを決めることができる人がビジネスの世界では勝利する。このことは覚えておいてください」と結び、今回のゼミを終了した。

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ステント血栓症、ゾタロリムスとシロリムスの溶出ステントで同等:PROTECT試験

 留置術後3年の時点におけるステント血栓症の発生状況は、ゾタロリムス溶出ステントとシロリムス溶出ステントで有意な差はないことが、スイス・ジュネーブ大学のEdoardo Camenzind氏らが行ったPROTECT試験で示された。複雑な冠動脈病変を含む広範な患者集団において薬剤溶出ステント(DES)の導入が急速に進んでいるが、近年、再狭窄の発生がより少ないDESによる医療コストの抑制効果に対する関心が高まっている。これまでに実施された両ステントの比較試験では、ステント血栓症の評価は行われていなかったという。Lancet誌2012年10月20日号(オンライン版2012年8月27日号)掲載の報告。3年後のステント血栓症の発生を比較 PROTECT(Patient Related OuTcomes with Endeavor versus Cypher stenting Trial)試験は、広範な患者集団と多彩な病変を対象に、異なる細胞増殖抑制薬を用いた2種類のステント・デバイス[エンデバー・ゾタロリムス溶出ステント(E-ZES)、サイファー・シロリムス溶出ステント(C-SES)]の長期的な安全性における優越性の評価を目的とする多施設共同非盲検無作為化対照比較試験。 2007年5月21日~2008年12月22日までに、36ヵ国から8,791例が登録された。自己冠動脈に対し待機的または緊急処置を施行された18歳以上の症例を適格例とした。これらの患者が、E-ZESまたはC-SESを留置する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。2剤併用抗血小板療法として、アスピリンとクロピドグレルあるいは他のチエノピリジン誘導体が投与された。 主要評価項目は、留置から3年の時点におけるステント血栓症(疑い例を含む)の発現とし、intention-to-treat解析を行った。治療割り付け情報は患者と担当医にも知らされた。3年ステント血栓症発生率:1.4 vs 1.8% 8,791例のうち8,709例が適格と判定され、E-ZES群に4,357例(平均年齢62.3、男性77%、糖尿病27%、高血圧65%、脂質異常症62%、心筋梗塞の既往20%、脳卒中の既往3%)が、C-SES群には4,352例(62.1歳、76%、28%、63%、63%、21%、3%)が割り付けられた。 3年後のステント血栓症の発生率は、E-ZES群が1.4%、C-SES群は1.8%であり、両群間に有意な差は認めなかった[ハザード比(HR):0.81、95%信頼区間(CI):0.58~1.14、p=0.22]。 2剤併用抗血小板療法は、退院時には8,402例(96%)が受けており、1年後の施行率は88%(7,456例)、2年後は37%(3,041例)、3年後は30%(2,364例)だった。 著者は、「疑い例を含めた3年後のステント血栓症の発生について、ゾタロリムス溶出ステントがシロリムス溶出ステントよりも優れるとのエビデンスは得られなかった」と結論し、「時間分析では、両群間のステント血栓症発生の差が経時的に顕在化する傾向がみられるため、ステント血栓症の臨床的関連性を明らかにするには長期的なフォローアップを要する」と指摘している。

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ロタウイルス遺伝子型の頻出、G3P[8]型が約6割

 ロタウイルスは、世界的にみても乳幼児における重度の下痢の最も主要な原因であるが、2009~2011年にタイ国で最も猛威をふるったロタウイルスの遺伝子型はG3P[8]型であり、約6割を占めていたことが明らかになった。タイ・Chulalongkorn UniversityのMaiklang O氏らの報告による(Southeast Asian J Trop Med Public Health誌2012年7月号)。なお、関連報告(2007~2009年動向調査)によると、前2年間のG3P[8]型の出現頻度は0.6%であり、最も頻出していたロタウイルス遺伝子型はG1P[8]型で約5割だったことが報告されている。 2009年6月~2011年5月の間の、タイの小児におけるロタウイルスA群の出現率と季節分布について調査した。同期間中に、急性胃腸炎または下痢症状で入院した乳幼児からサンプルを収集した。 主な結果は以下のとおり。・収集した562サンプルのうち、ロタウイルスA群の検出率(RT-PCR法による)は250例(44.5%)であった。・最も出現率が高かった遺伝子型は、G3P[8](60.4%)であった。次いでG1P[8](39.2%)、G2P[4](0.4%)であった。・関連報告の2007年7月~2009年5月の動向では、A群の検出率(RT-PCR法による)は557サンプル中158例(28.4%)であった。遺伝子型の出現率は、G1P[8](49.4%)が最も高率であり、G9P[8](22.2%)、G2P[4](20.2%)、G3P[8](0.6%)と続いていた。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・新生児における牛乳アレルギーの臨床的特徴 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

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なぜ?第二世代抗精神病薬投与による“強迫症状”発現機序

 大部分の統合失調症患者は、第二世代抗精神病薬(SGA)による治療中に強迫症状が発現する。近年の研究により、このような二次的な強迫症状の遺伝的危険因子として、グルタミン酸エステル搬送体遺伝子(SLC1A1)が関連することが示唆されている。Schirmbeck氏らは欧州での試験により、この結果を検証した。Psychiatr Genet誌2012年10月号の報告。 対象は、SGAで治療中の統合失調症患者103例。SGAによる二次的な強迫症状に関連すると考えられるSLC1A1の3つの単一塩基多型(rs2228622、rs3780412、rs3780413)について調べた。単一マーカーとハプロタイプの解析には、ロジスティック回帰分析が用いられた(年齢、性別、薬剤の種類を共変量として調整)。主な結果は以下のとおり。・クロザピンなどの著しい抗セロトニン作動性SGAによる治療を受けた患者では、強迫症状を合併することがより多かった(p

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(32)〕 心臓手術における抗線溶薬アプロチニンは安全性に懸念が残る:メタ解析

心臓手術では人工心肺離脱後の止血が重要である。止血剤としては従来からトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)やイプシロンアミノカプロン酸が使用されている。アプロチニンも以前は頻用されていたが、安全性の理由から2008年以降、市場供給が停止されていた。しかし最近、ヨーロッパとカナダで再上市されている。 心臓手術におけるアプロチニンの使用について、カナダ・オタワ病院のBrian Hutton氏らは無作為化試験106件と観察研究11件(4万3,270例)を解析の対象としたシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。 無作為化試験の解析の結果、トラネキサム酸はアプロチニンと比較して、死亡リスクは低かった(オッズ比:0.64)。観察データを組み込んだ場合も、アプロチニンの死亡率は、トラネキサム酸(対アプロニチンとの比較によるオッズ比:0.71)、イプシロンアミノカプロン酸(対アプロニチンとの比較によるオッズ比:0.60)より増加した。また、腎不全あるいは腎機能障害リスクも、すべての比較群と比べて増加していた。 本解析結果からアプロチニンの安全性には懸念が残り、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸がより安全で効果的な選択肢である可能性が高いと考えられる[エビデンスレベルA]。

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日本臨床精神神経薬理学会

2012年10月18日~20日に開催された、第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会 合同年会。「Collaboraiton loops between bedside⇔bench-精神神経科領域の薬物治療個別化を目指して-」をテーマとし、臨床および基礎の精神神経薬理学分野のトピックスが提供され、活発な議論が交わされました。ケアネットでは、その中でも話題のトピックスを厳選してお届けします。レポートを随時更新しますので、ぜひご期待下さい。コンテンツ

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抗精神病薬と副作用―肥満、糖代謝異常、インスリン分泌に与える影響

統合失調症患者では一般と比べて平均寿命が15年短いことが報告されている。その死亡原因として最も多いのは自殺であるが、その他、統合失調症患者では陰性症状や不規則な生活習慣のために、肥満や脂質代謝異常などを有する割合が高く、それに起因した心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の合併率が高いことが知られている。さらに、抗精神病薬の副作用として脂質代謝異常や肥満を来すこともあり、欧米の研究から、抗精神病薬服用中の統合失調症患者ではメタボリックシンドローム(MetS)の合併率が高いことも報告されている(Newcomer JW. Am J Manag Care. 2007; 13: S170-177)。第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会の「抗精神病薬と代謝異常」のセッションのなかから、統合失調症患者の入院が体重や糖代謝に及ぼす影響、抗精神病薬がインスリン分泌に及ぼす影響、統合失調症患者におけるBMIやウエスト径とGIP遺伝子多型の関連を検討した報告を紹介する。統合失調症患者の精神科病棟入院により肥満や糖脂質代謝が改善されたわが国における横断研究によると、入院加療中の統合失調症患者のMetS有病率は15.8%と健常者と同程度であるが、外来患者ではMetSの有病率は48.1%と高いことが報告されている(Sugawara N, et al. Ann Gen Psychiatry. 2011;10:21)。さらに、わが国では欧米に比べて精神科病床数が多く、慢性期のみならず急性期でも平均在院日数が長期に及ぶという精神科医療の特徴がある。そこで三上剛明氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)らは、精神科病棟入院により、統合失調症患者の体重や糖脂質代謝に関する検査値がどのように変化するのか検討を行った。研究の対象は、2008年1月~2011年8月に急性期治療のため、新潟大学医歯学総合病院精神科に2週間以上入院した統合失調症患者160例のうち、入院時のBody Mass Index(BMI)が25kg/m2以上の53例である。これらの患者のカルテから、身長、体重、空腹時血糖、総コレステロール、中性脂肪、HDLおよびLDLなどの血液生化学検査値を抽出し、入院時と退院時の値を比較した。患者背景は、平均年齢が34.0±8.4歳、男性が27例、平均BMIが28.7±3.2kg/m2、平均在院日数が114.4±90.0日、34例が措置入院であった。BMIの値は、退院時では26.9±3.3 kg/m2となり、入院時に比べ有意(p<0.001)に減少した。BMIの変化量と入院日数には負の相関が認められた(r=0.597、p<0.001)。空腹時血糖値も入院時99.9±27.3mg/dLから退院時89.1±14.2mg/dLと有意に(p=0.039)減少した。その他、HDL(52.5±14.9mg/dLから45.4±10.4mg/dL、p=0.003)、LDL(121.6±27.4mg/dLから107.9±25.7mg/dL、p=0.027)の値も有意に減少した。肥満(BMI≧30 kg/m2)の患者は入院時の16例から退院時には10例に、過体重(25kg/m2≦BMI<30kg/m2)の患者は37例から26例に減少し、一方、標準体重の患者は入院時0例から退院時には17例に増加した。これら肥満、過体重、標準体重の患者の割合の変化は有意(p<0.001)であった。総コレステロールおよびトリグリセライドの値には有意な変化はみられなかった。これらの結果より、外来で過体重や肥満を呈していた統合失調症患者は、精神科病棟へ入院することによって体重やBMI、空腹時血糖値が改善することが示された。入院で肥満や過体重が改善に向かう理由として、三上氏は、①入院により適切なカロリーとバランスのよい食事が提供されること、②入院により清涼飲料水や間食が制限されること、③精神状態の安定に伴い過食が減ることなどを挙げた。また三上氏は、外来の統合失調症患者の治療では、精神症状の治療だけでなく、積極的な栄養指導や生活習慣の改善が必要であると指摘した。さらに、わが国の医療独特の精神疾患における長期入院は、統合失調症患者の身体的健康を守るという観点からは評価されるべきであり、近年、わが国でも脱施設化が進み、統合失調症の治療は外来治療が主体となるため、外来での患者の健康管理がより重要であるとのコメントを述べた。抗精神病薬治療がインスリン分泌に与える影響統合失調症患者で、とくに第2世代抗精神病薬と糖代謝異常との関連を指摘した報告は多く、Perez-Iglesias氏らは未治療の患者を対象として、抗精神病薬治療開始から1年で糖脂質代謝パラメータが有意に悪化することを報告している(Perez-Iglesias R, et al. Schizophr Res. 2009;107:115-121)。さらに、抗精神病薬で治療されている患者のおよそ10.1%が治療開始後わずか6週間で、糖尿病(WHO基準)を発症することも報告されている(Saddichha S, et al. Acta Psychiatr Scand. 2008; 117: 342-347)。米国糖尿病学会では空腹時血糖異常(IFG:空腹時血糖100~125mg/dL)を前糖尿病段階とし、MetSの診断基準にも採用している。また、75g経口糖負荷試験(OGTT)後の2時間血糖値140~199mg/dLを耐糖能異常(IGT)として、心血管死亡のリスクとも相関する病態として重要視している。また、抗精神病薬服用中の統合失調症患者で空腹時血糖が正常域にあっても、75gOGTT後の2時間血糖値を測定すると、16.2%がIGTであり、3.5%が糖尿病であったとの報告もある(Ono S, et al.投稿中)。須貝拓朗氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)らは、抗精神病薬を服用中の統合失調症患者に75gOGTTを実施し、血糖値および血中インスリン値の変化を健常者と比較検討した。研究方法は、新潟大学医歯学総合病院とその関連病院に入院中の統合失調症群(159例)と健常者(対照群、90例)に75gOGTTを実施した。統合失調症群では8週間以上同一の抗精神病薬単剤を服用し、少なくとも3週間は用量の変更がなかった。75gOGTTは空腹時および治療薬服用前に行い、血糖値および血中インスリン値の変化を対照群と比較した。また、IFGおよびIGTの患者を除外した集団においても同様の検討を行った。統合失調症群と対照群の患者背景は、平均年齢(34.6±9.2歳 vs. 32.8±7.1歳)、性別(男性の割合54.1% vs. 62.2%)、糖尿病の家族歴(31.4% vs. 28.9%)などに両群で差はなく、ウエスト径(82.2±11.1cm vs. 77.7±9.4cm)、総コレステロール(180.8±36.8mg/dL vs. 200.8±30.1mg/dL)、HDL(51.5±12.7mg/dL vs. 67.5±17.2mg/dL)に差が認められた。75gOGTT後120分までの血糖値と血中インスリン値の推移を比較したところ、血糖値はOGTT後1時間より統合失調症群の患者の方が有意(p=0.006)に高値を推移した。血中インスリン値でも同様にOGTT後30分より統合失調症群が有意(p<0.001)に高値となった。IFGおよびIGTを除外して検討を行っても同様の結果が保たれた。本研究の結果は、オランザピン服用群、リスペリドン服用群、および健常者群で糖負荷試験後の血糖値と血中インスリン値の推移を比較した研究(Yasui-Furukori N, et al. J Clin Psychiatry. 2009; 70: 95-100)における、オランザピンおよびリスペリドン服用群で、血糖値と血中インスリン値が健常群と比べ高値を推移したという結果とも一致していた。以上の結果から、須貝氏は「統合失調症に対する抗精神病薬治療は、インスリン抵抗性につながるインスリン分泌反応に影響している可能性が示唆された」と述べた。また、膵β細胞機能には人種差があり、抗精神病薬が耐糖能異常に及ぼす影響については、今後、同一個体を用い、プロスペクティブに検討する必要があると述べた。抗精神病薬服用中の統合失調症患者におけるBMI、ウエスト周囲径とGIP遺伝子多型との関連統合失調症の治療に用いる非定型抗精神病薬は体重増加や糖代謝異常を来し、とくにオランザピンやクロザピンはそのリスクが高いことが知られている。また、最近の大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)により、糖尿病や肥満と関連した遺伝子が同定され、福井直樹氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)らはこれらの遺伝子のなかからglucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)遺伝子多型に注目し、抗精神病薬誘発性の糖代謝異常や体重増加との関連について検討している。GIPは消化管ホルモンのひとつで、食物刺激により小腸より分泌され、膵β細胞のGIP受容体(GIPR)を介して血糖依存性にインスリン分泌を促進するほか、脂肪細胞の受容体にも作用し体重増加をもたらすとされている。福井氏らは、オランザピンを服用している統合失調症患者でGIP遺伝子多型があると、糖負荷試験後の血中インスリン値が有意に高くなること(Ono S, et al. Pharmacogenomics J. 2011 July 12 [Epub ahead of print])や、BMIの増加率が大きいことを報告している。こうした背景に基づいて、今回福井氏らは、抗精神病薬服用中の統合失調症患者群と健常者群において、BMIやウエスト径、糖代謝関連因子と、GIP遺伝子のプロモーター領域に位置する-1920G/A多型との関連について検討を行った。抗精神病薬で治療中の統合失調症患者147例と健常者152例を対象とし、GIP遺伝子-1920G/Aの多型を同定し、Gアリルを有するGG+GA群とAアリルを有するAA群の2群に分け、BMIやウエスト径、空腹時血糖値、HbA1c、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)を比較検討した。統合失調症患者群では、102例が単剤を服用しており、主な薬剤はオランザピン(52例)、リスペリドン(41例)、ペロスピロン(16例)、クエチアピン(11例)、アリピプラゾール(10例)であった。統合失調症群においてGG+GA群とAA群を比較したところ、AA群ではBMI(24.2±4.2 vs. 22.2±3.7、p=0.004)およびウエスト径(85.0±12.0 vs. 80.2±10.7、p=0.012)が有意に大きかったが、健常者群では2群間でBMIやウエスト径に有意差はみられなかった。ウエスト径は統合失調症のAA群で最も大きく、次いで統合失調症群のGG+GA群、健常者群であった。福井氏はこれらの結果から、「抗精神病薬を服用中の統合失調症患者において、GIP遺伝子-1920G/A多型のうち、AA遺伝子型を有する患者ではGアリルを有する患者に比べて体重増加を来しやすいことが示唆された」と結論を述べた。健常者ではこのような関連は認められず、肥満という表現型でみた場合、GIP遺伝子多型と抗精神病薬の内服または統合失調症の罹患との間に交互作用がある可能性を指摘した。関連リンク

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抗うつ効果の予測と最適な薬剤選択

うつ病治療において抗うつ薬は不可欠であるが、治療開始後1ヵ月以内に副作用や薬剤が効かないなどの理由で、うつ薬の服用を中断し自殺のリスクが高まることが報告されている。抗うつ薬治療を成功させるには、抗うつ効果の予測のみならず、副作用の予測も重要である。第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会の「抗うつ効果の予測と最適な薬剤選択」と題したシンポジウムでは、治療効果の予測因子や副作用を予測する方法に関する最新の研究成果が紹介された。早期反応と副作用認識の観点からみた抗うつ薬の効果反応予測渡邊衡一郎氏(杏林大学医学部精神神経科学)は抗うつ薬の効果の予測として、薬剤への早期反応と副作用認識に着目した研究を紹介した。初期治療に反応しなかった大うつ病患者を対象とした米国のSTAR*D研究において、2,874例のシタロプラム服用患者を14週間追跡した結果から、これらの患者の症状が2週間で大きく改善し、早期に中核症状の改善が認められた患者では予後が良好であることが示された。そこで渡邊氏は、大うつ病患者(132例)を対象として、適切は用量の抗うつ薬(セルトラリン)を2週間投与し、MADRS改善度が20%以上の早期反応者にはセルトラリン内服を継続し、一方、MADRS改善度が20%未満の患者(早期非反応者)に対して、セルトラリンを継続する群とパロキセチンに変更する群にランダムに割り付けた研究を行った。その結果、治療薬変更群の方は継続群に比べて8週時の寛解とMADRS改善度が有意(p=0.007およびp=0.003)に高いことが示された。この結果に基づき、鈴木氏は「早期に反応しない患者では、次の治療に変更した方は予後が良好であり、早期に治療に反応するか否かはアウトカムの予測に役立つ」と述べた。次いで渡邊氏は、副作用認識に着目した効果予測の研究について紹介した。医師と患者の副作用に対する認識には差があり、医師よりも患者で約4倍も治療に関連した副作用だとみなすことが多いという研究結果がある。渡邊氏らは、治療歴のない大うつ病の初診患者493例を対象としプロスペクティブなコホート調査を行った(Kikuchi T, et al. J affect Disord 2011; 135: 347-353)。初診時と2回目の受診時に、副作用の可能性があるイベントや症状悪化について、これを副作用とみなすかどうか調査を行い、患者が薬剤によらないと評価している場合を「副作用を過小評価する群」とし、また患者が薬剤によると評価した場合を「副作用を過小評価しない群」として早期反応との関係を調べた。どちらの群もベースラインの簡易抑うつ症状尺度(QIDS)は13.8および13.2と差はなかったが、「副作用を過小評価する群」では約9.6日後の評価はQIDS 12.0(早期改善率11.1%)に対して、「副作用を過小評価しない群」ではQIDS 9.5(早期改善率27.1%)であった。また、過小評価している副作用の数とQIDS改善率の間には負の相関があった(r= -0.30、p<0.001)。これらの結果から渡邊氏は、「新たに生じた副作用を過小評価する人々は治りにくい可能性があり、有害事象に対して自己関連付けをしてしまう人ではうつが治りにくく、QOLも悪い」と述べた。抗うつ薬の早期反応予測は簡単な方法で可能になると思われるが、それには症状や副作用の評価尺度の確立が不可欠となる。抗精神病薬の副作用予測鈴木雄太郎氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)は遺伝子多型情報に基づいた副作用予測の試みについて解説した。精神疾患の遺伝子研究は疾患関連遺伝子や臨床効果の予測に関するものが多く、副作用予測の観点から遺伝子多型を探索した研究は少ない。しかし、副作用はその生物学的発症機序が推定でき、その程度を定量的に数値化できるために少量のサンプルで解析できるという利点がある。その一方で、副作用はさまざまな表現型をとるため、その表現型に関する幅広く詳細な理解が必要となる。鈴木氏は、近年注目されている抗精神病薬と心電図上のQT延長の副作用予測について、“Deep phenotyping”(Tracy RP. Curr Opin Lipidol. 2008; 19: 151-157)というシステム生物学の技法を用いた研究成果を紹介した。QT延長は、心室性不整脈やTorsades de Pointes(TdP)のリスクを増大させ、心臓突然死を引き起こす。近年、抗精神病薬や抗うつ薬の使用と心臓突然死や不整脈との関連が調べられ、抗うつ薬が心臓突然死と関連することが報告されている(Weeke P, et al. Clin Pharmacol Ther. 2012; 92:72-79)。これら心臓突然死を惹起させる原因として、抗うつ薬にQT延長リスクがあるのか検討が行われた結果、ノルトリプチリンやアミトリプチリン、クロミプラミンなどの三環系抗うつ薬にはQT延長作用があることが明らかになった。SSRIではシタロプラムやエスシタロプラムで症例報告がみられ、シタロプラムのスウェーデンにおける市販後調査ではTdP発症の10%がQT延長と関連していたという。エスシタロプラムではQT延長のある患者への投与は禁忌とされ、エスシタロプラムの開発過程においては、5~10msのわずかなQTの変化を代替マーカーとしてTdP発症を予測するThorough QT試験が行われたことを鈴木氏は紹介した。鈴木氏はさらに、ゲノムワイド関連解析(GWAS)で同定されたQT延長に関連した遺伝子が抗精神病薬服用中の統合失調症患者のQT間隔に及ぼす影響を検討した、自身のグループの研究を紹介した。QT延長関連遺伝子の一塩基多型(SNP)は、欧米で実施された5つのコホート研究の15,842例を対象にGWASを行って同定された候補遺伝子のなかから、日本人でマイナーアレル頻度の高い8つのSNPについて解析を行った。対象患者109例(女性52例、男性57例)のうち、87例が単剤で治療され、薬剤の内訳はオランザピン46例、リスペリドン32例、クエチアピン14例、レボメプロマジン12例、アリピプラゾール8例などであった。8つのSNPにおいて24時間平均QTcF、夜間平均QTcF、最大QTcFに及ぼす遺伝子型、年齢、性別、抗精神病薬の用量など各変数の影響を重回帰分析で解析したところ、QT延長の副作用と相関するSNPが同定された。以上の講演をまとめて、鈴木氏は、今後副作用に焦点をあてたpharmacogenetics研究が盛んになることが期待され、「一つの副作用でも多彩な表現型をとるため、Deep phenotypingを行うことで大量解析をせずに予測因子を同定できる可能性がある」と語った。その他、三原一雄氏(琉球大学大学院医学研究科精神病態医学)は、循環気質や発揚気質、抑うつ気質、焦燥気質、不安気質などの気質が治療に対する反応や予後に及ぼす影響に関する治験を紹介した。加藤正樹氏(関西医科大学精神神経学)は、個別化医療を目指した遺伝子や生物学的マーカーの検索の最前線を紹介した。関連リンク

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精神科薬物治療の身体リスクを考える

司会染矢俊幸氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)森隆夫氏(日本精神科病院協会 愛精会あいせい紀年病院)演者鈴木雄太郎氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)菅原典夫氏(弘前大学大学院神経精神医学講座)須貝拓朗氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)稲村雪子氏(新潟医療福祉大学健康栄養学科)松田公子氏(静和会浅井病院薬剤部)古郡規雄氏(弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座) 2011年より、日本臨床精神神経薬理学会と日本精神科病院協会との合同プロジェクト「精神科薬物治療の身体リスクを考える―統合失調症患者さんの命と健康を守るために」が開始され、日本における統合失調症患者の肥満やメタボリックシンドローム(MetS)の実態、患者や医療者の意識を調査する研究が行われている。第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会のシンポジウム「精神科薬物治療の身体リスクを考える」において、本プロジェクトの意義や調査結果、今後の介入試験などについて紹介された。人種差や精神科医療の違い、第2世代薬の臨床導入の差を考慮した調査が必要鈴木雄太郎氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)はまず、抗精神病薬による糖脂質代謝関連の副作用について、これまでの知見をまとめ、本プロジェクトの意義を紹介した。一般人口の平均寿命76歳と比較して、統合失調症患者では61歳と15年も寿命が短く、その死亡原因は自殺(10%)のほか、虚血性心疾患が50~75%を占める(Hennekens CH, et al. Am Heart J. 2005; 150: 1115-1121)。また、ハロペリドールやチオリダジンなどの定型抗精神病薬服用により心臓突然死のリスクは1.99倍に、クロザピンやオランザピン、クエチアピンをはじめとする非定型抗精神病薬服用では2.26倍に高まることが報告されている(Ray WA, et al. N Engl J Med. 2009; 360: 225-235)。その理由として、とくにオランザピンやクエチアピン、リスペリドンなどの第2世代薬は体重増加をもたらし(Casey DE, et al. Am J Med. 2005; 118 Suppl 2: 15S-22S)、肥満やMetSの合併が心血管疾患による死亡リスクを上昇させている可能性がある。一方、Body Mass Index(BMI)と死亡リスクの関係は、欧米ではBMIが25以上ではBMIの増加とともに死亡リスクも上昇するが、日本や韓国、中国などのアジア諸国ではBMI 27.6の時に死亡リスクが最低となるU字型を呈する。また、日本人の膵β細胞機能は欧米人に比べて脆弱であり、糖尿病患者のBMIも日本人では欧米人よりも低い。こうした人種差を考慮した日本人患者の詳細なデータはまだない。鈴木氏は日本の精神科医療の特徴にも言及した。日本では統合失調症や妄想性障害患者の入院の平均在院日数が543.4日と、欧米に比べてはるかに長期にわたる。こうした精神科病棟入院患者と外来患者との身体リスクの比較も重要な課題である。さらに、日本と欧米の抗精神病薬の使い方にも差がある。日本では欧米に比べて単剤治療よりも多剤併用が多く、多剤併用が身体リスクに及ぼす影響の検証が必要である。また、日本では第2世代薬の臨床導入が遅れ、今後これらの薬剤の副作用が身体リスクや死亡リスクに及ぼす影響を検証することが課題となっている。そこで、統合失調症の日本人患者の身体リスクに関する詳細なデータを得て、これらの課題に回答を得ることを目的に本プロジェクトが開始された。患者の身体リスクに対して精神科医はどう認識しているのか抗精神病薬の身体リスクに及ぼす影響について、診療にあたる精神科医はどのように認識し治療しているのか、菅原典夫氏(弘前大学大学院神経精神医学講座)は、2012年3月~5月に実施した「統合失調症患者の抗精神病薬治療と身体リスクに関するモニタリング調査」の結果を報告した。本調査は、日本精神科病院協会の会員病院に勤務する精神科医師を対象とした無記名式のアンケート調査である。有効回答数は2,583名(男性2,039名、女性544名)であり、平均年齢48.8歳、平均病院勤続年数10.0年、平均精神科経験年数19.2年であった。どのくらいの医師が抗精神病薬のMetSリスクに不安を感じているのかを問う、「血糖値上昇リスクのある薬剤の処方に不安があるか」との質問に85.2%が「不安がある」と答えた。「不安がない」という14.8%の医師にその理由を尋ねたところ(複数回答可)、「体重管理や栄養指導を行っているから」が52.8%、「血糖値の異常を来した例を経験していない」が21.5%、「定期的なモニタリングを実施しているから」が13.1%などの回答であった。体重測定の実態を調べるため「どのような患者で体重を測定しているのか」との質問に対して、「血糖値上昇や体重増加リスクのある薬剤を服用している患者」が25.3%、「すべての患者」が24.4%、「定期的ではなく、気がついたときだけ測定している」が21.0%、「BMIの大きい患者」が16.8%、「糖尿病の合併や家族歴のある高リスクの患者」11.1%、「全く体重測定をしていない」は1.3%であった。体重測定をしている医師にその頻度を尋ねたところ、入院では月1回(76.3%)が最も多く、週1回(17.8%)、半年に1回(5.2%)、年に1回(0.7%)であった。外来では受診毎(29.1%)、最低3ヵ月に1回(24.6%)、最低半年に1回(24.4%)、最低年に1回(21.9%)の順であった。体重以外で定期的にモニタリングしている検査について調べたところ、空腹時血糖値77.9%、血清脂質70.0%、血圧61.5%、食生活(食事内容、食欲)58.2%、HbA1c 56.5%、清涼飲料水などの多飲40.5%、心電図37.6%、ウエスト径4.5%などであった。これらのモニタリングの頻度の根拠を聞いたところ、「自分自身の経験に基づいて」が47.6%、「とくに根拠はなく、何となく決めている」が18.9%、「ガイドラインを参考にして」が14.5%、「専門医の意見を参考として」が10.1%、「とくに決まりはない」が8.9%であった。「これらの体重測定や血液生化学検査のモニタリングは、身体リスクを減少させるために適切な頻度だと思うか」との質問に対しては、「適切だと思うが、あまり自信がない」が最も多く54.2%、「適切がどうか分からない」が25.2%、「適切であり、十分だと考える」が20.6%であった。患者へのインフォームド・コンセントの状況を調べるために、「血糖値上昇リスクのある薬剤を処方する際にそれについて説明を行いますか」との質問には、「口頭にて質問を行っている」が69.7%、「高リスクの患者には説明している」が24.1%、「説明していない」が4.9%、「書面にて説明している」が1.2%の回答だった。菅原氏はこれらの結果をまとめて、「血糖値上昇リスクのある抗精神病薬の処方に関して80%以上の医師が不安を認識している実態が浮かびあがった」と述べた。不安がないと回答した医師の過半数は、体重管理や栄養指導またはモニタリングを行っているからとしているが、多くの医師がそれらのモニタリング頻度について自信がないと回答しており、日本の医療実態に即した管理方法について検討する必要があると指摘した。外来の統合失調症患者が抱える身体リスクの現状須貝拓朗氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)は、外来通院中の統合失調症患者を対象として、患者の意識と身体リスクの実態を調べるために行った無記名式アンケート調査の結果を報告した。日本精神科病院協会加盟の523施設より8,310件の回答が得られた。平均年齢は46.8±14.7歳であり、服用中の抗精神病薬は単剤が50.0%、2剤が25.4%、3剤以上が8.2%であった。主要な薬剤は、リスペリドン(2,455名)、オランザピン(1,515名)、アリピプラゾール(919名)、クエチアピン(739名)、ブロナンセリン(504名)、ペロスピロン(403名)、パリペリドン(273名)、そして定型抗精神病薬(2,907名)であった。MetS関連パラメータの分布状況は、BMI 25以上が48.0%、ウエスト径85cm以上(男性)が68.0%、中性脂肪150mg/dL以上が32.9%、HDLコレステロール40mg/dL未満が22.3%、LDLコレステロール140mg/dL以上が37.2%、収縮期血圧130mmHg以上が44.1%、拡張期血圧85mmHg以上が29.1%、空腹時血糖値110mg/dL以上が44.8%であった。これらの検査値を日本のMetS診断基準にあてはめると24.9%がMetSとなった。また、アジア人向けのNCEP-ATP III基準では29.8%がMetSと診断された。単剤と多剤併用でMetSの有病率を比較したところ差はみられなかった。薬剤毎のMetSの有病率においても有意な差はなかった。BMI毎のMetSの有病率の比較では、標準体重(18.5≦BMI<25.0)でもJASSO基準では9.7%、NCEP-ATP III基準では15.5%がMetSであった。アンケートによる患者意識調査では、43.7%の患者が「最近1年間で体重が増えたと思う」と回答した。現在通院している病院での体重測定の頻度は、受診毎が24.2%、3ヵ月に1回が16.0%、半年に1回が5.7%、1年に1回が8.9%、体重測定をしたことがないのは31.1%であった。血液検査の頻度は、受診毎が6.3%、3ヵ月に1回が23.6%、半年に1回が21.3%、1年に1回が21.4%、血液検査をしたことがないのは14.5%であった。「メタボ」という言葉を知っていると答えた患者は68.0%、BMIを知っていたのは20.7%であった。また、定期的な血液検査を希望すると答えた患者は55.5%、定期的に体重測定を希望するとした患者は57.3%であった。以上のアンケート調査の結果から、須貝氏は「日本人の外来通院統合失調症患者におけるMetS有病率は一般人口よりは高いが、これまでの欧米の疫学研究の結果に比べて低い値であった。単剤・併用療法、または薬剤によるMetSの有病率には差はなかった」と述べた。また、患者の意識調査から6割近い患者が定期的な体重測定や血液検査を希望していることを指摘した。今後は精神科病棟入院患者についても同様なアンケート調査を実施し、外来患者の結果と比較する予定である。栄養士と薬剤師の立場からみた統合失調症患者の健康問題稲村雪子氏(新潟医療福祉大学健康栄養学科)は栄養士の立場より、退院後および外来通院の統合失調症患者の食生活の実態調査を行い、「間食」が肥満をもたらす大きな要因であることを明らかにし、肥満防止には間食に焦点をあてた教育が必要であると述べた。また、稲村氏は2010年7月~12月に全国の統合失調症の入院患者15,171名を対象として、低体重(BMI<18.5)、標準体重(18.5≦BMI<25)、肥満(BMI≧25)の分布を調べる大規模調査を行った。その結果、各BMIの分布状況は、それぞれ20.2%、58.2%、21.6%であった。先行する研究と比べて、肥満の割合が低く、低体重が多いという結果であったと報告した。松田公子氏(静和会浅井病院薬剤部)は、抗精神病薬の薬理学的作用機序の違いによる副作用プロファイルの差について紹介し、体重増加や耐糖能異常からMetSをひき起こすのはH1受容体遮断が関与しているものと思われる。また松田氏は、こうした副作用に対してチーム医療で対応し、精神疾患に対して糖尿病療養指導士が介入することによりHbA1cの低下に効果があったことを紹介した。その他、精神科慢性期病棟における抗精神病薬の減量や単剤化への取り組みなどについても紹介した。統合失調症患者のMetSをいかに予防するか古郡規雄氏(弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座)は、抗精神病薬治療の身体リスクに関する合同プロジェクト委員会にて取り組む介入試験について紹介した。本試験は、統合失調症患者のMetS予防に関する研究であり、来年4月頃より開始を予定している。BMI≧25以上の外来統合失調症患者を対象として、①無介入群(現状維持)、②低介入群(体重測定)、③高介入群(食事・運動療法)の3群にランダム化割り付けを行い、1年間追跡するものである。主要評価項目はMetS有病率および体重の変化であり、副次評価項目は血圧、血糖値、血清脂質の改善などである。日本の医療に則した介入を評価するうえで、その結果が期待される。関連リンク

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双極スペクトラムの現況:診断と治療

ここ数年来、双極スペクトラムという言葉が広まっているが、一方で過剰診断などの問題も指摘されている。第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会では、双極スペクトラムの現況についてその最前線をレビューするシンポジウムが寺尾岳氏(大分大学医学部精神神経医学講座)の司会で開催された。双極スペクトラムの概念と診断井上猛氏(北海道大学大学院医学研究科精神医学分野)は双極スペクトラムの概念とその診断についてレビューを行った。単極性うつ病と双極性障害を区別するようになったのは、1980年のDMS-III以降である。しかし、①大うつ病エピソードを有する患者の約10%が双極性障害であること、②双極性障害の約2/3が大うつ病エピソードで発症すること、③双極性障害と大うつ病におけるうつ病症状はほぼ同じであり、症状から見分けることが困難であるなどの理由から、単極性うつ病と双極性障害の鑑別は難しい。GoodwinとGhaemiが2000年に提唱した感情スペクトラムは、大うつ病エピソードと双極Ⅰ型障害を両極に据えた概念であり、反復性うつ病と双極Ⅱ型障害の間の一群を「双極スペクトラム障害」としてカテゴリー化し、「従来の診断基準を満たす明確な躁病/軽躁病エピソードは認めないがbipolarityを有する気分障害」と定義した。さらに2007年に、GoodwinとJamisonは大うつ病と双極性障害の間のスペクトラムと、感情障害と気質の間の重症度スペクトラムの二次元で成り立っているとの概念を示した。双極スペクトラム障害(BSD)の診断に関しては、2001年にGhaemiらが診断基準を示している(Ghaemi SN, et al. J Psychiatr Pract. 2001; 7: 287-297)。それに対しKiejnaらが2006年に、単極性大うつ病とBSDでみられる症状について、BSDでオッズ比が高いものを検証した。2000年~2007年に北海道大学病院精神神経科を外来受診した気分障害患者について、最長7年まで経過を観察し最終診断を調査した。その結果、単極性うつ病の5.5%は双極性障害に、4.9%はBSDに変更となり、BSDの25%は双極性障害に変更となり、75%はBSDのままであった。井上氏は、BSDの一部は潜在性双極性障害であり、一部は単極性うつ病と双極性障害の中間型ではないかとの見解を示した。混合性うつ病(Benazzi F. Lancet. 2007; 369: 935-945)は、双極性障害に多く、また双極性障害の家族歴をもつ者が多い。双極性障害に移行する大うつ病でも多くみられ、抗うつ薬で躁転や悪化しやすいという特徴がある。気質の評価ではTEMPS-A気質評価質問紙が用いられているが、質問項目が110項目に及ぶため、井上氏らはTEMPS-Aの質問項目を39にしぼった短縮版を作成した。この短縮版について、北海道大学病院を初診したうつ病患者で気分障害に分類された患者を対象としてプロスペクティブな検証を行っている。井上氏は最後に講演をまとめて、双極スペクトラムの臨床的意義として、大うつ病の診断の際には常に双極性障害を疑い、閾値下の軽躁や躁症状について積極的に問診し診断すること。また、診断の際には、双極性障害の家族歴や反復性、若年発症、抗うつ薬による躁転やリチウムへの反応性、および難治性が手掛かりとなることを述べた。今後の研究の展望として、大うつ病と双極性障害の中間型あるいは移行型に対する診断と治療に対する研究の推進、双極性障害における気質の病因的意義や気質の要因を探ること、治療への応用などを挙げた。双極スペクトラムの生物学的基盤気質には生物学的基盤が存在し、双極性障害を誘発することが示唆されているが、循環気質や発揚気質について検討した報告は少ない。帆秋伸彦氏(大分大学医学部精神神経医学講座)らは、発揚気質と光照射との関連について検討を行った。まず、56名の健常者を対象としてアクチグラムを用いて光曝露量を測定し、気質との関連を検討したところ、高揚気質のスコアが高いほど光曝露量が多く、睡眠時間の変動が大きく、中枢セロトニン機能が低くなることが示された(Hoaki N, et al. Psychopharmacology(Berl). 2011; 213: 633-638)。一方、循環気質の健常者では光曝露量は少なく、光を浴びないと気分変動が大きくなる可能性が示唆された(Araki Y, et al. J Affect Disord. 2012; 136: 740-742)。すなわち、発揚気質者では光をよく浴びていることが示されたが、光を浴びていると発揚気質が増強されるのか、あるいは発揚気質者が光を求める向日性を有するのかは明らかではなかった。そこで帆秋氏らは、照度と気質に注目した北海道大学との共同研究で、緯度の異なる大分県と北海道の大学生を対象とし、年齢や性別をマッチさせて気象条件や日照時間の差を考慮した検討を行った。その結果、重回帰分析にて発揚気質のみが大分県と北海道の差を有意に反映し、日照時間が長く光を多く浴びることで発揚気質が増強される可能性が示唆された(Kohno K, et al. J Affect Disord. 2012 Jul 27. [Epub ahead of print])。さらに、発揚気質者では光を好み向日性があるのか検討するために、「発揚気質者では明暗の弁別閾が異なり暗さをよく感じるために光を求める」との仮説をたて、fMRI(functional MRI)で明暗課題の実験を行った。この実験は、健常者35名を対象とし、明るさを11段階に分けたスライドをランダムに提示し、明るいと感じるか(明課題)、逆に暗いと感じるか(暗課題)ボタンを押して答えさせるものである。その結果、発揚気質者と他の者では明暗の弁別閾に有意差はなく、本仮説は否定された。次いで帆秋氏らは嗜好性に着目し、「発揚気質者では明るさを好み暗さを嫌う」との仮説をたて、同様に明るさを11段階に分けたスライドを提示して、好課題と嫌課題の実験を行った。その結果、非発揚気質者では暗いスライドに好きと回答する割合が高く、発揚気質者では暗いスライドに嫌いと回答する割合が高くなり、嗜好性の差とする本仮説は指示された。また、fMRIの解析から発揚気質者では明るさの嗜好性に関連する脳の左楔前部の賦活が他の者より有意に大きいことが明らかにされた(Hoakiら投稿中)。以上の結果から、光を浴びることで発揚気質が増強され、また発揚気質者では明るさを好み暗さを嫌うためにより多くの光を浴びることが示唆された。さらに、発揚気質と左楔前部の賦活の関連が示された。左楔前部は双極性障害の認知課題でその活動性の低下が報告されており、今回の結果は発揚気質と双極性障害との関連を示すものでもあると帆秋氏は述べた。これまでTCI(Temperament and Character Inventory)で分類された気質とPET脳画像との関連についてはいくつかの報告があるが、TEMPS-Aの気質とPET画像との報告はまだない。帆秋氏らは33名の健常者(男性19名、女性14名、平均年齢31.0±8.7歳)を対象として、高照度光照射装置による光照射群と光照射を行わない対照群に無作為に割り付け、5日間の光照射の後にFDG-PET撮像を行い、気質と光照射が脳機能に及ぼす影響を検討した。対象者の気質は、抑うつ気質9名、循環気質10名、発揚気質15名、焦燥気質10名、不安気質2名(重複あり)であった。その結果、男性の照射・焦燥気質群と男性の照射・非焦燥気質群において糖代謝の高い脳部位が認められ、気質が光照射と関連して脳機能に影響する可能性が示された(Kohnoら投稿中)。帆秋氏は最後に、双極性障害から双極スペクトラム、単極性うつ病まで、診断では連続しているのにその治療が異なることに対して、「変曲点」が存在するのではないかという仮説を紹介して講演を終えた。関連リンク

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精神疾患の治療開発-今、見逃せない新たな取り組み

「精神疾患の治療開発」のスタディ・グループでは、従来のパラダイムにとらわれず新しい発想で効果的な精神疾患の治療開発を目指している。第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会にて、橋本恵理氏(札幌医科大学医学部神経精神医学講座)の司会のもと、4名が新しい精神疾患の治療の取り組みについて紹介した。PAK阻害薬によるグルタミン酸シグナルの阻害林(高木)朗子氏(東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター構造生理学部門)は、グルタミン酸シグナルの阻害によるシナプス保護の観点から新薬開発の可能性を紹介した。大脳皮質の70%のシナプスが樹状突起棘(スパイン)であり、そのほとんどがグルタミン酸作動性シナプスである。死後脳の剖検から、統合失調症患者では背外側前頭前野や聴覚野、海馬台ではスパイン密度が減少しており、また多くの統合失調症関連遺伝子がグルタミン酸作動性シナプスに局在していることが報告されている。記憶や認知、適応をもたらす細胞基盤はシナプスの可塑性であり、シナプスの機能はその形態と著しく相関しているため、形態(サイズ)から機能を評価することができる。林氏らはDISC1遺伝子をノックアウトすることによりスパインサイズが減少し、NMDA受容体によるRac1/PAK1シグナル伝達経路が過剰に活性化されることを明らかにした(Hayashi-Takagi A, et al. Nat Neurosci. 2010; 13: 327-332)。次いで林氏らは、PAK阻害薬のスパインに対する効果を検討したところ、PAK阻害薬はDISCノックダウンによるスパイン消滅を予防し、スパインサイズを回復することが示された(Hayashi-Takagi A投稿中)。さらに、PAK阻害薬の他の機能に及ぼす影響についても検討を進めている。また、統合失調症患者では発症前後で前頭野皮質が強い収縮を示し(Sun D, et al. Schizophr Res. 2009; 108: 85-92)、疾患の進行過程でグルタミン酸レベルが低下することが知られている(Theberge J, et al. Br J Psychiatry. 2007;191:325-334)。林氏は最後に、マウスで脳のスパインの形態変化を顕微鏡下で直接観察するというin vivoスパインイメージングの動物モデルの開発について紹介した。精神疾患の炎症モデルからみたミノサイクリンの治療への応用統合失調症患者では炎症性サイトカインの亢進が認められ、神経炎症機序が関与していることが指摘されている(Meyer U. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2011 Nov 15, Epub)。また、中枢神経系の炎症の機序にはミクログリアが深く関わり、発症から5年以内の統合失調症患者ではミクログリア活性化が認められる(van Berckel BN, Biol Psychiatry. 2008;64:820-822)。橋本謙二氏(千葉大学社会精神保健教育研究センター病態解析研究部門)は、第二世代抗生物質製剤であるミノサイクリンが、ミクログリアの活性化を強力に抑制することに着目し、統合失調症治療への応用について紹介した。統合失調症のマウスモデルでミノサイクリンの効果を検討したところ、ジソシルピンにより惹起されるプレパルスインヒビション(PPI)の障害や、フェンサイクリジンによる統合失調症様の認知機能障害を抑制することが示された。さらに橋本氏は、ミノサイクリンが脳神経にアミロイドβ蛋白を蓄積させるγセクレターゼの活性をコントロールする5-リポキシゲナーゼを阻害し、アルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性にも言及した(Hashimoto K. Ann Neurol. 2011; 69: 739)。カルボニルストレスの代謝制御による統合失調症の治療酸化ストレスが加わるとカルボニル化合物であるメチルグリオキサール(MG)が生成し、このMGを消去するために、グリオキシラーゼ(GLO)解毒回路が働く。この解毒回路にもれたMGはメイラード反応によって終末糖化産物(AGEs)となる。AGEsはビタミンB6(カルボニル・スカベンジャー)により補足されて分解される。AGEsが体内に蓄積する状態をカルボニルストレスといい、動脈硬化の進展や糖尿病合併症との関連で着目されていたが、糸川昌成氏(東京都医学総合研究所精神行動医学研究分野)らは、この病態を標的とした統合失調症の新しい治療の可能性を紹介した。糸川氏らは、統合失調症患者で解毒酵素のGOL1にフレームシフト変異を発見し、その患者ではAGEsの蓄積と、それに伴うビタミンB6の枯渇が認められたことから、統合失調症患者のなかで、AGEs蓄積と関連した「カルボニルストレス性統合失調症」の存在を明らかにした(Arai M, et al. Arch Gen Psychiatry. 2010; 67: 589-597)。AGEsの蓄積は統合失調症のリスクを25倍上昇させ、ビタミンB6欠乏は10倍リスクを上昇させることが示されている。さらに、AGEs蓄積は統合失調症の重症度とも相関していた。そこで糸川氏らは、治療により症状が改善した統合失調症患者ではAGEsも低下すると推測して検討したところ、外来患者では入院患者に比べてAGEsが有意に低く、AGEsの低下が退院につながることがわかった。さらに糸川氏らは、ビタミンB6欠乏のあるカルボニルストレス性統合失調症患者にビタミンB6を補充することにより症状の改善が得られないか検討を重ねている。ビタミンB6はピリドキサミン、ピリドキサール、ピリドキシンの3種類の化学物質の混合体であり、このうちAGEs解毒作用を有するのはピリドキサミンのみである。糸川氏らはまず、健常者24名を対象に第I相試験を行ったところ、ピリドキサミン1,800mg/日の投与量で有効血中濃度に達し、有害事象は認めなかった。この成績に基づいて、統合失調症患者を対象とした医師主導第II相試験が進行中である。GLO1遺伝子にフレームシフトをもつ患者では発症前からAGEsが高い可能性があり、糸川氏らはそのような患者には発症前からピリドキサミンを投与してAGEs蓄積を抑制するという、統合失調症の発症予防を視野にいれた治療法も検討中である。神経幹細胞移植を用いた再生医療的アプローチの可能性鵜飼渉氏(札幌医科大学医学部神経精神医学講座)は、治療抵抗性または難治性の統合失調症やうつ病、胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)などの治療として、神経幹細胞を経静脈的に投与する再生医療的な取り組みを紹介した。実験方法は、妊娠期のマウスにPoly(I:C)(TLR3リガンド)を投与して生まれた統合失調症のモデルマウスを用い、生後1ヶ月時に神経幹細胞を経静脈的に投与し、6ヵ月時にその行動の評価および脳の剖検を行った。その結果、神経幹細胞移植群では、新奇オブジェクトの探索時間を有意に延長し、記憶学習や認知機能の障害が抑制された。また、社会性の評価において神経幹細胞移植群では能動的な社会的行動の減少が抑制されることも示された。一方、FASDモデルラットでは神経幹細胞移植により、強制水泳試験における無動時間の延長を抑制して、うつ状態の改善にも効果がみられた。札幌医科大学ではすでに、12名(男性9名、女性3名)の脳梗塞患者を対象として自己骨髄間葉系幹細胞を静脈内投与する治療が試みられており、移植をきっかけに脳卒中スコアが改善し回復スピードが加速することや、MRIで脳梗塞病変の縮小が確認されている(Honmou O, et al. Brain. 2011; 134: 1790-1807)。鵜飼氏らは、治療抵抗性難治性うつ病患者を対象とした本治療法の精神疾患への臨床応用を検討している。神経幹細胞移植のメカニズムとして、短期的にはサイトカインを介した神経栄養因子増強作用や抗炎症作用、血管新生作用が考えられ、また長期的には神経新生の増加がもたらされるとしている。鵜飼氏らは、細胞電気生理学的解析やシナプス機能・構造学的解析、オプトジェネティクス解析など最先端の手法を用いて、神経幹細胞移植の効果について解析を進めている。関連リンク

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新生児における牛乳アレルギーの臨床的特徴

 牛乳アレルギー(CMA)を疑う食物関連症状の臨床的所見は、早産児であることや消化器外科手術のような根本的要因に影響を受けると報告された。昭和大学の宮沢氏らによる報告。 CMAは新生児における消化器症状の原因の一つである。これまで、早期乳児期におけるIgEを介したアレルギー反応とCMAとの関連は示唆されているものの、臨床的所見と発症機序は確立していなかった。Allergol Int誌オンライン版 2012年10月25日号掲載報告。 本試験は先行研究のフォローアップとして実施された。53施設の新生児集中治療室に第2弾のアンケートが送られ、患者背景、発症年齢、臨床的所見や臨床検査の結果が回収された。主な結果は以下のとおり。・出生体重中央値は2,614g、妊娠期間中央値は36.9週であった。・症例のうち、40%で生後6日以内に症状が生じ、90%で消化器症状が生じた。主な消化器症状は、嘔吐、血便、腹部膨満であった。・特異的IgE試験、リンパ球刺激試験、および糞便中好酸球検査は、それぞれ、88%、23%、55%で実施された。その結果、陽性率はそれぞれ30%、84%、75%であった。・食物経口負荷試験(OFC)は確定診断のために26%で実施された。・新生児でCMAを疑う食物関連症状の臨床所見は、一般的な即時型食物アレルギーとは異なり、早産児であることや消化器外科手術のような根本的要因に影響を受けた。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

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乾癬患者の2型糖尿病リスク、有病率1.59倍、罹患率1.27倍

 乾癬は2型糖尿病リスクと関連しており、重症患者で最もそのリスクが強い可能性があることが明らかにされた。米国カリフォルニア大学デービス校Health SystemのArmstrong氏らが、システマティックレビューによるメタ解析の結果、報告した。Archives of dermatologyオンライン版2012年10月15日号の掲載報告。 乾癬を有する患者と有さない患者との、2型糖尿病の有病率および罹患率について比較した。 MEDLINE、EMBASE、CochraneDatabaseをデータソースに、1980年1月1日~2012年1月1日の間に英語で公表された観察試験(コホート研究、ケースコントロール試験、断面研究)で、乾癬患者と個人対照群の糖尿病有病率または罹患率を比較した試験を適格とした。データ抽出は2人の独立した研究者が行い、エビデンスの質は6点スケールで評価した。 主な結果は以下のとおり。・142試験が適格であり、27試験をメタ解析に組み込んだ。そのうち5試験は、乾癬患者の糖尿病罹患率を評価したものであった。これらは別途解析した。・有病率を評価していた試験を解析した結果、乾癬患者の糖尿病有病率は1.59倍高かった[オッズ比(OR):1.59、95%CI:1.38~1.83)]。・プール解析の結果、軽度の乾癬患者の糖尿病有病率は1.53倍(OR:1.53、95%CI:1.16~2.04)、重症の乾癬患者では1.97倍(同:1.97、1.48~2.62)高かった。・メタ回帰分析の結果、カルテで検討した試験(OR:1.52、95%CI:1.31~1.77)あるいは患者自身が糖尿病を報告した試験(同:2.79、1.42~5.48)と、支払請求データで検討した試験(同:1.46、1.01~2.09)との比較において、試験間で関連性の強さに有意な差はみられなかった(p=0.10)。・一方、罹患率を評価した試験を解析した結果、乾癬の糖尿病発症の相対リスクは1.27倍(95%CI:1.16~1.40)であった。

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