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心筋血流イメージングを受けた人の約3割が複数放射線検査で累積線量は100mSv超

心筋血流イメージング(MPI)を受けた患者1,000人超について調べたところ、累積的に受けている放射線検査回数の中央値が15回に上ることが明らかになった。そのうち4回は高線量の検査であったという。米国コロンビア大学医療センター循環器部門のAndrew J. Einstein氏らが報告したもので、JAMA誌2010年11月17日号(オンライン版2010年11月15日号)で発表した。MPIは1回の放射線量が最も高い検査である。これまでの調査で、米国民の多くがMPIなど放射線検査を繰り返し受けていることは明らかになっているが、その実態については明らかになっていなかった。放射線検査の中央値は15回、うち4回が高線量研究グループは、2006年1月1日~4月10日の間に、ニューヨークにあるコロンビア大学医療センターでMPIを受けた患者1,097人について、後ろ向きコホート試験を行った。被験者が1988年10月~2008年6月までに同センターで受けた、電離放射線イメージング検査について調査を行った。その結果、被験者の受けた放射線検査回数の中央値は15回(四分位範囲:6~32、平均23.9)だった。そのうち、1年間で3mSv以上といった高線量の検査回数の中央値は4回(同:2~8、平均6.5)であり、MPI検査の回数の中央値は1回(同:1~2、平均1.8)だった。すべての医学的検査を合わせた累積推計100mSvを超える放射線量を受けていたのは、344人(31.4%)に上った。複数回MPIを受けた人の累積推計放射線量は121mSv複数回MPI検査を受けていたのは全体の38.6%にあたる424人で、その累積推計放射線量は121mSv(同:81~189、平均149mSv)だった。また被験者の中でも、男性、白人が、累積推計放射線量の値が多い傾向が認められた。さらに、初回MPI検査を受けた人の80%またはMPI検査を2回以上受けた人の90%が、すでに血管系の疾患の診断を受けていたり、その症状が認められる人だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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会員の皆様方へお知らせ NPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会のご案内

NPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会とは近年、産科、小児科などの医師不足、診療科の偏在化が問題視されていますが、その影で外科崩壊も進んでいます。日本は将来、外科医が激減し、手術を受けられない患者さんがあふれるという事態に陥りかねません。2009年に発足されたNPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会(略称:若手外科系医師を増やす会)は、外科系医師の待遇改善と志望者の増加を目指し、「教育」「広報」「行政対応」の3本柱を軸に日々活動しています。詳細は日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会ホームページへ代表者のご挨拶近年、医師の偏在が社会的問題として取り上げられ、日本学術会議や日本医師会からも声明や要望が出されています。医師・診療科の偏在に対して厚労省は医学部定員の増加などの対応をしていますが、現状を改善するためには十分とは言えません。特に医学生は3K(きつい、汚い、厳しい)の科には進まず、現在では3無し(当直がない、救急がない、がない)の科に進路を進めています。その結果、小児科、産科のみならず外科医の希望者も減少し、同時に政府の医療費削減等は外科医の労働環境を悪化させて、リスクの高い外科を選択しない事に拍車をかけているのです。この状況では何十年先に本邦に於いて、、心臓および移植手術等が受けられなくなる日が来るかもしれません。我々は日本から外科医がいなくなることを憂い、我々の考えに賛同してくださった多くの方の支援を得て、このNPO法人を設立することにしました。そして皆様の共に行動を起こし、この危機を解決し国民の健康に貢献していきたいと願っています。理事長 松本晃 副理事長 北島政樹画像を拡大する画像を拡大する日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会は、ご賛同いただける皆様のご支援をいただくために協力会員を広く募集しています。協力会員募集ページへ外科医の魅力とは?外科系先輩医師からの熱いメッセージを動画で視聴いただけます。動画メッセージのページへ「きみが外科医になる日」 2010年11月19日発売日本の将来のためには外科医が必要だ!日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会著者「きみが外科医になる日」が講談社から発売されました。若い外科医を目指す若者たちに向けた名医からのメッセージ、若手外科医から先輩医師としての外科医のナマの生活を公開、巻頭対談としてソフトバンク王貞治会長と理事北島先生の対談と盛りだくさんな内容です。ご興味のある方はぜひお手にとってみてください。Amazonで購入する© 株式会社 講談社 2010 Printed in Japan <内 容>■第一章「世界の王を支える外科医」医療対談 王貞治×北島政樹(主治医)■第二章明日の手術の担い手たち「今日だけは、私も外科医だ」これが外科医の仕事場だ臨床研修の現場から若手外科医インタビュー■第三章名医からのメッセージ■第四章外科医を取り巻く社会環境■第五章近未来の外科医療低侵襲化への挑戦注目される手術支援ロボット ほか■付 録診療報酬改定表日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会 主な活動内容ほかケアネットは、「NPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」を応援しています

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突然の激しい頭痛で、くも膜下出血を推定するための新たな3つのルール

 突然の激しい頭痛では、臨床的な背景因子を考慮した3つのルールのいずれかを用いれば、くも膜下出血の有無の推定が可能であり、不必要な検査も抑制できることが、カナダ・オタワ大学救急医療部のJeffrey J Perry氏らが行ったコホート研究で示された。突然の激しい頭痛がみられる救急患者では、初発時に神経学的な障害がない場合でもくも膜下出血発症の可能性があり、この可能性を除外するにはCT所見が陰性であっても従来から腰椎穿刺が行われている。また突然の頭痛のほとんどが良性で治療は不要だが、十分な検討が行われていないため不必要な放射線曝露や腰椎穿刺後頭痛が行われているという。BMJ誌2010年11月13日号(オンライン版2010年10月28日号)掲載の報告。くも膜下出血のリスクが高い頭痛患者の臨床的な背景因子を検討 研究グループは、神経学的な障害がみられない頭痛患者のうち、くも膜下出血のリスクが高い患者の臨床的な背景因子を同定する目的で、プロスペクティブなコホート研究を行った。 2000年11月~2005年11月までに、カナダの6つの大学付属の三次救急医療教育病院から、神経学的な障害がみられず、発症後1時間以内に頭痛がピークに達した非外傷性頭痛患者のデータを収集した。くも膜下出血は、(1)頭部CT画像上でくも膜下腔の出血像、(2)脳脊髄液中のキサントクロミー、(3)脳血管撮影における陽性所見とともに脳脊髄液の最終サンプル中に赤血球を認める場合と定義した。3つの決定ルールの感度は100%、特異度は28.4~38.8% 登録された1,999例中130例がくも膜下出血を発症した。平均年齢は43.4(16~93)歳、1,207例(60.4%)が女性で、1,546例(78.5%)が「人生で最悪の頭痛」と訴えた。 13の病歴に関する因子と3つの検査所見に関する因子が、くも膜下出血と有意な相関を示した。再帰分割法を用いてこれらの因子の様々な組み合わせから、以下の3つの臨床的な決定ルールを策定した。・ルール1:40歳以上、項部の痛みあるいは硬直の訴え、意識消失、労作性頭痛・ルール2:救急車による搬送、45歳以上、1回以上の嘔吐、拡張期血圧>100mmHg・ルール3:救急車による搬送、収縮期血圧>160mmHg、項部の痛みあるいは硬直の訴え、年齢45~55歳 これらのルールの感度および陰性予測値はいずれも100%、特異度はルール1が28.4%、ルール2が36.5%、ルール3は38.8%であった。ルールのいずれかを用いれば、頭部CT、腰椎穿刺あるいはこの両方の検査の施行率は現在の82.9%から63.7~73.5%まで抑制されると推定された。 著者は、「発症後1時間以内にピークに達した頭痛では、臨床的な背景因子を考慮した3つのルールのいずれかを用いれば、くも膜下出血の推定は可能であり、不必要な検査も少なくできると考えられる」と結論し、「今後、プロスペクティブな妥当性の確認試験などを行うことで、より高い選択性と正確性で頭痛患者におけるくも膜下出血の有無が推定可能と考えられる」としている。

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ビタミンEは脳卒中を予防するか?:約12万人のメタ解析

ビタミンEの摂取により、虚血性脳卒中のリスクは10%低下するが、出血性脳卒中のリスクはむしろ22%増大することが、米国ブリガム&ウィメンズ病院のMarkus Schurks氏らが行ったメタ解析で明らかにされた。ビタミンEは、観察研究で冠動脈心疾患の予防効果が示唆されているが、無作為化対照比較試験では冠動脈リスクの抑制効果は示されず、サブグループ解析では出血性脳卒中のリスクを増大させる可能性が報告されている。また、メタ解析では高用量のビタミンEが全死因死亡率を増大させる可能性が示され、高い関心を呼んでいるという。BMJ誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月4日号)掲載の報告。2010年1月までに報告された無作為化プラセボ対照試験のメタ解析研究グループは、虚血性脳卒中および出血性脳卒中に対するビタミンEサプリメントの効果を評価するために、2010年1月までに報告された無作為化プラセボ対照試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials)を検索し、論文の文献リストを調査して、ビタミンEの脳卒中に対する効果を検討した追跡期間が1年以上の無作為化プラセボ対照試験を抽出した。選ばれた論文の適格性を2人の研究者が別個に判定し、見解が異なる場合は合議によって解決した。2人の研究者が別個にデータを抽出し、個々の試験のリスク比とその95%信頼区間を算出した。見境のない使用に対しては警告を発すべき9つの試験に参加した11万8,765人(ビタミンE群:5万9,357人、プラセボ群:5万9,408人)が解析の対象となった。7試験には脳卒中全体のデータが含まれ、5試験には出血性脳卒中と虚血性脳卒中に分けたデータが記載されていた。解析の結果、ビタミンEには、全脳卒中のリスクを抑制する効果は認められなかった(相対リスク:0.98、95%信頼区間:0.91~1.05、p=0.53)。対象的だったのは、ビタミンEは虚血性脳卒中のリスクは抑制した(同:0.90、同:0.82~0.99、p=0.02)が、出血性脳卒中のリスクは増大させた(同:1.22、同:1.00~1.48、p=0.045)。試験間の不均一性はほとんど認められず、メタ回帰分析では、盲検化、ビタミンEの用量、罹病状況は不均一性の原因としては同定されなかった。絶対リスクに換算すると、476人がビタミンEを摂取すると1人の虚血性脳卒中が予防され、1,250人が摂取するごとに1人が出血性脳卒中を発症すると推定された。著者は、「今回のメタ解析では、ビタミンEは虚血性脳卒中のリスクを10%低下させ、出血性脳卒中のリスクを22%増大させることが示された。脳卒中全体のリスクのパターンは明確ではなかった」と結論し、「虚血性脳卒中のリスク低下は相対的に小さなものであり、一般的には出血性脳卒中の方が重篤なアウトカムの可能性が高いことを考慮すると、ビタミンEの見境のない広範な使用に対しては警告を発するべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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心筋梗塞既往例に対する強化LDL-C低下療法の有効性と安全性:約1万2,000例の解析

心筋梗塞の既往歴を有する患者に対する高用量スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、通常用量に比べLDL-Cを低下させ、重篤な血管イベントも抑制することが、Study of the Effectiveness of Additional Reductions in Cholesterol and Homocysteine (SEARCH)共同研究グループが行った無作為化試験で示された。スタチン療法の大規模な無作為化対照比較試験では、LDL-C値が平均未満の患者でもLDL-C低下療法による閉塞性血管イベントのリスク低下がみられ、リスクの低下度はLDL-C低下の程度と相関することが示されている。この知見から、LDL-C低下療法をより強化すれば、さらに大きなベネフィットがもたらされることが示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載の報告。心筋梗塞既往例約1万2,000例で、スタチン高用量群と通常用量群を比較SEARCH共同研究グループは、心血管リスクが高い患者における強化スタチン療法の有効性と安全性の確立を目的に、二重盲検無作為化試験を実施した。対象は、心筋梗塞の既往歴のある18~80歳の患者1万2,064例で、スタチン療法を受けているか、その適応が明らかである症例であった。すでにスタチン療法を受けている場合は総コレステロール値が少なくとも3.5mmol/Lとなるように、受けていない場合は4.5mmol/Lとなるよう治療が行われた。患者は、シンバスタチン(商品名:リポバスなど)80mg/日あるいは20mg/日を投与する群に無作為に割り付けられ、フォローアップ期間が終了するまで2、4、8、12ヵ月後、その後は6ヵ月ごとに検査が行われた。主要評価項目は、重篤な血管イベント(冠動脈死、心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建術)とし、intention-to-treat解析を行った。ミオパチーが増加したものの、安全に施行可能高用量(80mg/日)群に6,031例が、通常用量(20mg/日)群には6,033例が割り付けられた。平均フォローアップ期間6.7(SD 1.5)年の間に、通常用量群に比べ高用量群でLDL-C値が平均0.35(SE 0.01)mmol/L低下した。重篤な血管イベントの発現率は、高用量群が24.5%(1,477/6,031例)、通常用量群は25.7%(1,553/6,033例)と、高用量群で6%低下したが有意な差は認めなかった(リスク比:0.94、95%信頼区間:0.88~1.01、p=0.10)。出血性脳卒中(高用量群 vs, 通常用量群:0.4% vs. 0.4%)、血管死(9.4% vs. 9.5%)、非血管死(6.6% vs. 6.6%)の発現率には明らかな差を認めなかった。ミオパチーは、通常用量群では2例(0.03%)にみられたのに対し、高用量群では53例(0.9%)で発現した。著者は、「通常用量群に比べ高用量群でLDL-Cが0.35mmol/L低下し、重篤な血管イベントが6%抑制されたが、これは既報の知見と一致する。ミオパチーが増加したものの、強化LDL-C低下療法は他の薬物療法と安全に併用可能と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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強化LDL-C低下療法の心血管イベント抑制効果:約17万例のメタ解析

スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は安全に施行可能で、1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下で重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制することが、Cholesterol Treatment Trialists’(CTT)共同研究グループによるメタ解析で明らかとなった。標準的スタチン療法によるLDL-C低下療法は、広範な心血管疾患において閉塞性血管イベントのリスクを低減することが示されている。また、観察研究ではコレステロール値が低いほど冠動脈疾患のリスクが低下することも示されており、LDL-Cをさらに低下させることで、より大きなリスクの低下が得られる可能性が示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版11月9日号)掲載の報告。26試験を対象に強化スタチン療法の平均リスク低下率を評価CTT共同研究グループは、スタチンを用いた強化LDL-C低下療法の安全性および有効性を評価する目的で、26の無作為化試験に参加した約17万例の個々のデータに基づくメタ解析を行った。解析の対象は、参加者1,000例以上、治療期間2年以上の無作為化試験で、高用量と低用量の強化スタチン群を比較した試験(5試験、3万9,612例、フォローアップ期間中央値5.1年)および標準的スタチン群と対照群とを比較した試験(21試験、12万9,526例、フォローアップ期間中央値4.8年)であった。それぞれのタイプの試験群ごとに、1年後における平均リスク低下率とともにLDL-Cの1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下による平均リスク低下率を算出した。LDL-Cの閾値はなく、低下させるほど予後が良好な可能性2種類の用量の強化スタチン療法の比較試験では、1年後のLDL-C値は、高用量群が低用量群に比べ0.51mmol/L低下していた。低用量強化スタチン群に比べ、高用量強化スタチン群では重篤な血管イベントのリスクが15%低下し、有意な差が認められた(95%信頼区間:11~18%、p<0.0001)。なかでも、冠動脈死/非致死的心筋梗塞のリスクが13%(同:7~19%、p<0.0001)、冠動脈血行再建術のリスクは19%(同:15~24%、p<0.0001)、虚血性脳卒中リスクは16%(同:5~26%、p=0.005)低下した。2種類の用量の強化スタチン療法の比較試験におけるLDL-C 1.0mmol/L低下によるリスク低下は、標準的スタチンと対照の比較試験の場合と同等であった。二つのタイプの試験を合わせると、LDL-C 1.0mmol/L低下による重篤な血管イベントの低下率はあらゆるタイプの症例で類似しており、低用量強化スタチン群や対照群よりも高用量強化スタチン群や標準的スタチン群で有意に低下していた[発生率比(RR):0.78、95%信頼区間:0.76~0.80、p<0.0001]。全26試験を合わせると、低用量強化スタチン群や対照群に比べ高用量強化スタチン群や標準的スタチン群で、LDL-C 1.0mmol/L低下による全死因死亡率が10%低下し(RR:0.90、95%信頼区間:0.87~0.93、p<0.0001)、特に冠動脈心疾患死(同:0.80、99%信頼区間:0.74~0.87、p<0.0001)や他の心臓に起因する死亡(同:0.89、同:0.81~0.98、p=0.002)の有意な低下の影響が大きく、脳卒中死(同:0.96、95%信頼区間:0.84~1.09、p=0.5)や他の血管に起因する死亡(同:0.98、99%信頼区間0.81~1.18、p=0.8)の影響は認めなかった。LDL-C低値の場合でも、高用量強化スタチン群や標準的スタチン群と低用量強化スタチン群や対照群の間で、がんや他の非血管系の原因による死亡(RR:0.97、95%信頼区間:0.92~1.03、p=0.3)、発がん率(同:1.00、同:0.96~1.04、p=0.9)には有意な差は認められなかった。著者は、「スタチンによる強化LDL-C低下療法は安全に施行可能で、心臓発作、血行再建術、虚血性脳卒中の発生率のさらなる低減効果をもたらし、1.0mmol/L低下による重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制する」と結論し、「LDL-Cの閾値のエビデンスはないが、2~3mmol/Lを低下させることで約40~50%のリスク低下が得られる可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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免疫性血小板減少症へのromiplostim治療、治療失敗および摘脾を低下

免疫性血小板減少症に対する治療薬として米国で上市されているromiplostimの、標準治療との比較による、有効性と安全性に関する52週の非盲検無作為化試験の結果が、NEJM誌2010年11月11日号で発表された。試験・報告は米国マサチューセッツ総合病院のDavid J. Kuter氏らによる。romiplostimは、血小板産生に関与するトロンボポエチン受容体に結合し作用を発揮する。これまでの試験で、有害事象がほとんどなく、成人患者に対する持続的投与で最大5年間、血小板増加作用があることが認められていた。標準治療との比較で52週追跡免疫性血小板減少症の米国における標準治療は、副腎皮質ステロイド、免疫グロブリン、抗D免疫グロブリンをファーストラインとし、アザチオプリン(商品名:イムランなど)、リツキシマブ(同:リツキサン)などの薬物療法、摘脾をセカンドラインとする。成人患者の多くがセカンドラインを要し、摘脾となった患者の3分の2は5年間は付加的治療を必要としないが、一方で感染症や血栓症などの周術期・術後合併症で死亡する例も少なくない。また、併存症により摘脾が禁忌の患者もいる。そこでKuter氏らは、romiplostimのこれまでの知見から、romiplostim投与が、摘脾の回避や実施延期を望む患者、摘脾禁忌の患者にとって、長期にわたる効果をもたらす治療となり得るのか検討を行った。試験は、2006年12月~2007年9月に北米、ヨーロッパ、オーストラリアの85施設で登録された、摘脾を受けていない免疫性血小板減少症成人患者234例を対象とし、標準治療を受ける群(77例)か、週1回romiplostim皮下注を受ける群(157例)に割り付け、52週にわたって追跡した。被験者は、一つ以上の免疫性血小板減少症治療を受けており、試験前血小板数50×10(9)/L未満、平均年齢57歳だった。主要エンドポイントは、治療失敗および摘脾となった割合。副次エンドポイントは、血小板反応[定期受診時に50×10(9)/L超]、安全性アウトカム、QOLなどだった。標準治療とのオッズ比、治療失敗0.31、摘脾割合0.17結果、romiplostim治療群の血小板反応は、標準治療群の2.3倍を示し(95%信頼区間:2.0~2.6、P<0.001)、治療失敗率はromiplostim治療群11%(18/157)、標準治療群30%(23/77)で、romiplostim治療群が有意に低かった(オッズ比:0.31、95%信頼区間:0.15~0.61、P<0.001)。摘脾の実行頻度も、各群9%(14/157)、36%(28/77)で、romiplostim治療群が有意に低かった(オッズ比:0.17、95%信頼区間:0.08~0.35、P<0.001)。また、romiplostim治療群は、出血イベントの発生率も低く、輸血量も少なく、QOLが大きく改善されていた。重度有害事象の発生は、romiplostim治療群23%(35/154)、標準治療群37%(28/75)だった。Kuter氏は、「romiplostim治療は標準治療よりも、血小板反応を高め、治療失敗や摘脾の割合を低下し、出血や輸血も減少させ、QOLを高めることが認められた」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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冠動脈疾患に対するクロピドグレルのオメプラゾール投与の有無による効果

抗血小板療法としてアスピリン+クロピドグレル(商品名:プラビックス)を受けている患者への、プロトンポンプ阻害薬(PPI)であるオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾンほか)投与は、上部消化管出血を減らすことが明らかにされた。米国ボストン退役軍人ヘルスケアシステムのDeepak L. Bhatt氏らCOGENT研究グループによる。抗血小板療法を受けている患者の消化管合併症は重大な問題となっている。PPIがそのようなリスクを減じるのではないかとされていたが、これまで無作為化試験は行われていなかった。またクロピドグレルを用いた抗血小板併用療法を受けている患者へのPPI投与については、クロピドグレルの効果を減弱するのではないかとの懸念もあり、本試験ではその点の検討も行われた。NEJM誌2010年11月11日号(オンライン版2010年10月6日号)掲載より。抗血小板薬2剤併用療法が適応となる患者にPPIもしくはプラセボを投与し追跡COGENT(Clopidogrel and the Optimization of Gastrointestinal Events Trial)研究は、国際無作為化二重盲検ダブルダミープラセボ対照試験として、2008年1月に15ヵ国393施設で登録が開始された。抗血小板薬2剤併用療法が適応となる患者を、クロピドグレル+アスピリンに加えて、オメプラゾールを投与する群と、プラセボを投与する群に無作為に割り付け追跡した。消化器症状に関する主要エンドポイントは、出血(顕性・不顕性含む)、症候性十二指腸潰瘍、びらん、閉塞、穿孔の複合とした。心血管系に関するエンドポイントは、心血管系の原因により死亡、非致死的心筋梗塞、血行再建、脳卒中の複合とした。試験は、被験者登録5,000人を目指して開始されたが、スポンサーによる資金調達が不可能となり早期に終了された。結果、3,873例が無作為化され、3,761例が解析された。クロピドグレルの効果は減弱しない?被験者のうち、消化管イベントを発症したのは51例だった。180日時点での発症率は、オメプラゾール投与群は1.1%、プラセボ投与群は2.9%で、オメプラゾールのハザード比は0.34(95%信頼区間:0.18~0.63、P<0.001)だった。上部消化管出血の発症も、オメプラゾール群の方が低下し、ハザード比は0.13(同:0.03~0.56、P=0.001)だった。心血管イベントは109例で発生した。オメプラゾール群は4.9%、プラセボ群は5.7%で、ハザード比0.99(同:0.68~1.44、P=0.96)、サブグループのハイリスク群でも有意な不均一性は認められなかった。重大な有害事象発生率について両群間に有意な差異は認められなかった。ただし、オメプラゾール群で、下痢のリスク増加が認められた。試験の結果を受け研究グループは、アスピリンとクロピドグレル投与を受けている患者への予防的なPPI投与は、上部消化管出血の割合を減じると結論。またクロピドグレルとオメプラゾールに心血管系の相互作用は認められなかったが、「しかし、PPI使用で心血管イベントに臨床的に意義ある差異が生じることをルールアウトする結論には至らなかった」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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プライマリ・ケアで、高血圧の検出率が高い地域は冠動脈疾患死亡率が低い

プライマリ・ケアで高血圧の検出率が高い地域では、冠動脈疾患(CHD)死亡率が低いことが、英国Leicester大学保健科学部門のLouis S. Levene氏らの調査で明らかになった。英国内各地域でプライマリ・ケアを担う152ヵ所のプライマリ・ケア・トラスト(PCT)を対象に住民ベースの調査を行い明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表された。英国では2000年に、「2010年までに75歳未満のCHD死亡率を5分の2に引き下げる」との目標を立て、すでに実現したのだが、PCT間のCHD死亡率に格差があるという。調査は、格差の要因を見つけることを目的に行われた。CHD死と、各トラストの集団特性、医療サービス特性との関連を分析研究グループは、英国内152のPCT(2008年時点の登録患者数:5,430万人)について、2006~2008年のCHDの年齢調整死亡率と、各PCTの集団特性(貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合)や提供する医療サービス特性(プライマリ・ケアサービス提供量、高血圧検出率、P4Pデータ)との関連について、階層的回帰分析を行った。CHDの年齢調整死亡率は、ヨーロッパ基準人口10万当たり2006年が97.9人(95%信頼区間:94.9~100.9)、2007年が93.5人(同:90.4~96.5)、2008年が88.4人(同:85.7~91.1)だった。年間の減少率は、10万人当たり約5人だった。貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合と正の相関、高血圧検出率と負の相関調査期間3年間を通じて、集団特性のうち、貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合の4項目が、CHD死亡率と正の相関が認められた。一方で、医療サービス特性のうち、高血圧検出率が、同死亡率と負の相関が認められた(各年の補正後決定係数は、2006年がr2=0.66、2007年がr2=0.68、2008年がr2=0.67)。なお、人口10万人当たりのプライマリ・ケア医数やスタッフの労働時間など、その他の医療サービス特性とCHD死亡率には、有意な相関は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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10代でBMIが30以上の肥満者、30代早期までに重度肥満になるリスクは16倍

青年期に肥満の人は、そうでなかった人に比べ、成人期早期に重度肥満になるリスクが16倍に増大するという。米国ノースカロライナ大学のNatalie S. The氏らが、9,000人弱について約13年間追跡したコホート試験の結果明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表した。米国で肥満の罹患率は増加傾向にあるが、青年期の肥満と成人期の重度肥満の関連について、経年調査はほとんど行われておらず、重度肥満への回避やリスクを減らすための効果的な介入が限られているという。青年期の肥満はBMIが30以上、成人期の重度肥満は同40以上として追跡研究グループは、「US National Longitudinal Study of Adolescent Health」のデータから、1996年に12~21歳だった8,834人について、2007~2009年まで追跡した。青年期肥満の定義は、年齢が20歳未満、BMIが30以上もしくは性別のBMI年齢成長曲線で95パーセンタイル以上とした。成人期重度肥満の定義は、年齢が20歳以上、BMIが40以上とした。両定義はさらに、人種や年齢などによって補正が行われた。青年期に肥満だった女性は半数以上が、男性は3分の1以上が、成人期で重度肥満に1996年に、青年期で重度肥満だった人は79例(1.0%:95%信頼区間:0.7~1.4)で、そのうち60例(70.5%:同:57.2~83.9)は成人期になっても重度肥満だった。一方、2009年までに成人期重度肥満になっていたのは、703人(7.9%、95%信頼区間:7.4~8.5)だった。青年期に肥満だった人で、成人期に重度肥満になった人の割合は、男性が37.1%(同:30.6~43.6)、女性が51.3%(同:44.8~57.8)で、最も高率だったのは黒人女性の52.4%だった。多変量離散ハザードモデル分析の結果、青年期に肥満だった人は、そうでない人に比べ、成人期に重度肥満になるリスクは、16.0倍(同:12.4~20.5)に増大した。一方で、青年期に肥満ではなかった人で、成人期に重度肥満になった人の割合は、性別や人種にかかわらず5%未満だった。研究グループは、「本集団において、青年期の肥満は、成人期の重度肥満のリスク増大と有意に関連していた。またリスク増大は、性、人種による関連も認められた」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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大腸がん予防には5つの推奨生活習慣を遵守すること

運動、腹囲、喫煙、飲酒、食生活という5つの生活習慣に関する推奨勧告を遵守すると、大腸がんリスクを相当に減らせる可能性があることが、デンマークがん協会がん疫学研究所のHelene Kirkegaard氏らにより報告された。デンマークの中高年約5万5千人を対象とした前向きコホート試験の結果によるもので、約10年間で大腸がんになった678人のうち、5つの生活習慣を遵守すれば予防できたと思われた人は23%を占めていたという。BMJ誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月26日号)掲載より。50~64歳のデンマーク人男女5万5,487人を追跡調査試験は、推奨値の評価が簡易な5つの生活習慣指標達成と大腸がん発生との関連、およびそれらの生活習慣を遵守しないことが大腸がん発生に及ぼす影響の度合いについて調査をすることを目的に行われた。対象は、デンマークのコペンハーゲンおよびオーフスの住民で、1993~1997年時点で50~64歳、がん診断歴のなかった男女5万5,487人だった。主要評価項目は、生活習慣指標5つのうちの達成数と大腸がんリスクとの関連とした。生活習慣指標は、運動(前年の週当たりの平均身体活動時間で余暇〈スポーツ、サイクリング、ウォーキング〉と職業の身体活動度を聴取)、腹囲(基線で専門家が測定)、喫煙(有無を聴取)、飲酒(1週間の酒量)、食生活(1日の果物、野菜、赤身加工肉、食物繊維、エネルギーの摂取量)で、Cox回帰モデルを用いて評価が行われた。5つ遵守していたら23%が大腸がんを予防できた可能性追跡期間中央値9.9年の間に、大腸がんとの診断を受けた人は、男女合わせて678人だった。潜在的交絡因子で補正後、5つの指標のうち獲得指標数が1つ増えるごとに、大腸がんリスクが低下する相関が認められた(発生率比:0.89、95%信頼区間:0.82~0.96)。大腸がんになった人の中で、遵守できる指標を1つ増やすことができ1~4つの指標を遵守していたら大腸がんにならなかった可能性がある人は、13%(同:4~22)だった。5つすべてを遵守していたら、23%(同:9~37)が大腸がんを予防できた可能性があった。なお結果の傾向は結腸、直腸と部位別にみても同等だったが、統計学的に結腸が有意だった。試験結果を受けKirkegaard氏らは、「簡易な生活習慣指標が、公衆衛生では有用となる」とまとめている。

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便潜血検査による大腸がん検診継続受診の効果とは?

英国政府から、国民医療保険サービス(NHS)に便潜血検査による大腸がん検診を導入することの意義を検証するよう依頼を受けたダンディー大学外科部門のR J C Steele氏らは、初回検診(prevalence screening)と継続検診(incidence screening)の受診率および効果について検証した。検診で用いられる便潜血検査では、1回目と2回目以降では陽性率、陽性適中率が低下するが、一方で、検診を定期的に繰り返し受けることの効果については明らかになっていなかった。BMJ誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月27日号)掲載より。勧告し続けることが受診者増につながるSteele氏らは、スコットランドの東部と北東部の2地域で50~69歳住民を対象に、便潜血検査を用いた隔年実施の大腸がん検診の結果について、2000年3月~2007年5月に行われた3回実施分について検証した。主要評価項目は、受診率、陽性率(再検査および内視鏡検査が必要と判断された人の割合)、陽性適中率、検出したがんのステージとした。3回合計の検診実施件数は、51万990例だった。そのうち初回検診は24万8,998例(48.7%)、継続検診1回目は16万3,483例(32.0%)、同2回目は9万8,509例(19.3%)だった。また、初回検診を第1回実施時に受けた人は53%、第2回実施時は15%、第3回実施時は12%だった。第1回実施時に受診勧告を受けた人の初回受診率は、3回実施の間に55%から63%へと上昇した。第1回実施時に受診勧告を受けた人の継続受診率は1回目54%、2回目46%だった。また第2回実施時に受診勧告を受けた人の継続受診率は86%だった。初回検診での見逃しも継続検診で初回検診での陽性率は1.9%だった。内視鏡検査を受診した人は87%だった。また、継続検診1回目の人の同率はそれぞれ1.7%と90%、2回目の人の同率は1.1%と94.5%だった。便潜血試験結果で陽性だった人のがん陽性適中率は、初回検診では11.0%、継続検診1回目では6.5%、同2回目では7.5%だった。また腺腫陽性適中率は、同35.5%、29.4%、26.7%だった。がんステージⅠだった割合は、初回検診では46.5%だったが、継続検診1回目は41%、同2回目は35%と低下した。これら結果を踏まえ著者は、「未受診者への受診勧告を繰り返すことは、初回検診および継続検診の受診者数の増加につながっていた。がん・腺腫の陽性適中率は、初回検診と継続検診1回目とでは低下したが、継続検診1回目と2回目では低下していない。がんステージが初回検診と継続検診で悪化していたのは、初回検診で見逃しがあったことを示すものだろうが、ステージ分類は良好である」と述べ、「これら結果は、未受診者への受診勧告をし続けること、および受診者への継続検診を勧告し続ける政策の正当性を証明するものである」と結論している。

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院外心停止、胸骨圧迫のみの心肺蘇生法の有効性がメタ解析で示された

成人の院外心停止例に対する処置では、その場に居合わせた者への救急医療係員による指導は、胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた標準的な心肺蘇生法(CPR)よりも、胸骨圧迫のみによるCPRに焦点を絞るべきであることが、オーストリア・ウイーン医科大学のMichael Hupfl氏らによるメタ解析で示された。これまでの検討でも、標準的なCPRよりも胸骨圧迫のみを行うCPRの方が、予後が良好な可能性が指摘されているが、有意な予後改善効果を示すエビデンスは確立されていないという。Lancet誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月15日号)掲載の報告。無作為化試験および観察試験の2つのメタ解析研究グループは、胸骨圧迫のみのCPRが院外心停止例の予後を改善することを検証するためのメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase)を検索し、1985年1月~2010年8月までに報告された成人の院外心停止例を対象に、胸骨圧迫のみのCPRと標準的CPRを比較した試験を抽出した。一次的メタ解析では、居合わせた者が救急医療係員の指導を受けながらいずれかのCPRを施行する群に無作為に割り付けられた患者を対象とした試験の検討を行い、ニ次的メタ解析では、胸骨圧迫のみのCPRを施行されたコホートに関する観察試験について検討した。解析対象の試験はすべて、生存データを有するものとした。主要評価項目は退院時の生存とし、試験間の不均一性を排除するために両メタ解析ともに固定効果モデルを用いた。退院時生存率、絶対値で2.4%改善一次的メタ解析において、3つの無作為化試験のデータのプール解析を行ったところ、胸骨圧迫のみのCPR群の退院時生存率は14%(211/1,500例)と、標準的CPR群の12%(178/1,531例)に比べ有意に改善されていた(リスク比:1.22、95%信頼区間:1.01~1.46、p=0.040)。生存率上昇の絶対値は2.4%(95%信頼区間:0.1~4.9)、1例の生存に要する処置例数(NNT)は41例(95%信頼区間:20~1,250)であった。ニ次的メタ解析では7つの観察試験が対象となったが、退院時生存率は胸骨圧迫のみのCPR群が8%(223/2,731例)、標準的CPR群も8%(863/11,152例)と同等であった(リスク比:0.96、95%信頼区間:0.83~1.11、p=0.54)。著者は、「成人の院外心停止例に対しては、その場に居合わせた者への救急医療係員による指導は、胸骨圧迫のみによるCPRに焦点を絞るべき」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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薬物よりも勝るアルコールの有害事象…英国での多軸分析の結果

アルコール、タバコ、ヘロインなどの薬物乱用がもたらす有害な作用を、使用者自身と使用者以外に及ぼす害の判定基準で評価したところ、総合的にアルコールが最も有害で、特に使用者以外への有害度が著明に高いことが、イギリスImperial College London神経精神薬理学のDavid J Nutt氏らによる研究で明らかとなった。薬物乱用に起因する有害作用の適正な評価は、健康、規制、社会的ケアに関する施策の立案者に有益な情報をもたらすが、薬物の有害作用は多岐にわたるためこの作業は容易でない。そこで、薬物固有の身体的な有害作用から社会に及ぼす害や医療コストまでを、複数の判定基準で評価するアプローチが積極的に進められているという。Lancet誌2010年11月6日号(オンライン版2010年11月1日号)掲載の報告。20の薬物を16の判定基準でスコア化研究グループは、多基準決定分析(MCDA)モデルを用いてイギリスにおける薬物の有害作用の現況を広範に調査した。2名の招請された専門家を含む薬物に関する独立科学評議会のメンバーが対話形式の1日ワークショップを開催し、20の薬物を16の判定基準でスコア化した。16の基準のうち、9つは薬物の使用者自身に対する害、7つは使用者以外に及ぶ害に関するものであった。有害度の高さは100点を満点とし、判定基準は相対的重要性が示されるよう重み付けされた。対象となった薬物は、アルコール、タバコ、ヘロイン、コカイン、クラックコカイン、メタンフェタミン、アンフェタミン、ケタミン、メタドン、メフェドロン、GHB(ガンマヒドロキシ酪酸)、ブプレノルフィン、ブタン、ベンゾジアゼピン系薬剤、アナボリックステロイド、エクスタシー(MDMA)、LSD、チャット(アラビアチャノキ)、大麻、マッシュルーム。低スコアの薬物が無害であることを意味しない使用者自身に対する有害作用が最も大きかった薬物はクラックコカイン(37点)であり、次いでヘロイン(34点)、メタンフェタミン(32点)の順であった。使用者以外に対する有害作用はアルコール(46点)が最も大きく、次いでヘロイン(21点)、クラックコカイン(17点)であった。使用者自身への害と使用者以外への害を合わせると、最も有害な薬物はアルコール(72点)であり、ヘロイン(55点)とクラックコカイン(54点)がこれに続いた。著者は、「これらの知見は、現在の薬物分類法がその有害作用のエビデンスとはほとんど関連しないことを示したイギリスとオランダの研究や、アルコールの有害作用をターゲットとした公衆衛生戦略は妥当かつ必須とした報告を支持するものである」と結論し、「低スコアの薬物が無害であることを意味しないことに留意すべきで、特定の状況下ではすべての薬物が有害たり得る」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞星状細胞腫に、エベロリムスが治療選択肢の可能性

結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞星状細胞腫の治療として、哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)阻害薬であるエベロリムス(商品名:免疫抑制薬としてサーティカン、抗悪性腫瘍薬としてアフィニトール)の経口投与療法が、標準療法である手術療法(脳神経外科的切除)に代わる治療選択肢となり得ることが示唆された。米国シンシナティ小児医療センターのDarcy A. Krueger氏らによる、前向きオープンラベル試験による。上衣下巨細胞星状細胞腫の手術療法では、周術期のリスクを伴うこと、また深部腫瘍の切除が困難で再発の要因ともなることから、有効な治療法が模索されている。NEJM誌2010年11月4日号掲載の報告より。投与6ヵ月後、細胞腫量が有意に減少研究グループは、上衣下巨細胞星状細胞腫の継続的増殖がみられる3歳以上の患児28例を対象に、トラフ濃度5~15ng/mL達成を目指して、体表面積1平方メートルにつき3.0mgのエベロリムスを経口投与し追跡した。有効性の主要エンドポイントは、細胞腫量の、ベースラインと6ヵ月後との変化とした。独立した中央レビューによる評価の結果、エベロリムス療法群の原発性上衣下巨細胞星状細胞腫量について、臨床的に有意な減少が認められた(ベースライン対6ヵ月後のP

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教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

1951年東京都生まれ。76年北里大学医学部卒業。81年同大皮膚科助手、84年同大皮膚科講師兼医局長。91年横浜労災病院皮膚科部長。2007年より現職。日本皮膚科学会専門医・代議員、日本アレルギー学会専門医・指導医・代議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員他。皮膚科医に求められるもの人と話すことが好きな私は、本当は神経内科医になりたかったのですが、師匠である教授との出会いがきっかけで皮膚科医を選択しました。教授が「向井君、この患者さんはγ-GTP100だよ」と、手や皮膚の状態を見ただけで内臓のことまで言い当てたのです。皮膚科医としての知識を元に視診で内臓までを診てしまう。私はそこに魅力を感じたのです。皮膚疾患は目に見える症状がほとんどのため、そこから発生する患者さんの精神的ストレスは深刻な問題となっています。したがって、皮膚科医には患者さんのメンタルをケアすることも重要な治療の一つなのです。その点からみても、話好きな私にはとてもよい選択だったと考えています。「皮膚科は死なないからいいよね」と言われることがありますが、決してそうではありません。病としての生き死にではなく、病状による精神的苦痛で自殺してしまうケースもあります。だからこそ、精神面でのサポートも考慮しつつケアしてあげるという心構えで、皮膚疾患を治していくことが常に求められているのです。たかが皮膚病ではなく、それに伴う精神的苦痛は個々によりレベルが違うもので測り知れません。今後も私はそこを踏まえた上での最善の治療を、皮膚科医として追求していきたいと考えています。患者さんと医師の信頼関係を構築する間違った情報を鵜呑みにしてステロイドへの偏見を持ち、薬を処方通りに使わなかったり、誤った民間療法に頼ったり、医師との信頼関係を築けないまま治療にも専念できない患者さんもいます。その結果、かえって症状を悪化させているケースも少なくありません。東邦大学ではアトピー性皮膚炎の思い切った治療として、入院をすすめています。これは、仕事などで忙しくて毎日のスキンケアがままならず、症状が悪化して不眠状態になっている状態をクールダウンさせる意味もあります。皮膚炎が起こる原因の中には生活習慣や住環境も関わりますから、その点でも改善指導できますし、日常のストレスからの解放も期待できます。その上で、すべての治療をこちらに任せてもらい、ディスカッションしながら薬の塗り方、包帯の巻き方等まで、こまごまと指導できる利点があります。そうすれば患者さんは退院した後も、症状が悪化した場合には自分で処置することができるようになる。つまり、治療をしながら生活全般の教育指導もできるのが入院の利点です。将来的には、栄養士による食事指導も加えたいと考えています。ステロイドへの偏見をなくしたいステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。では、実際にアトピー性皮膚炎の入院患者さんに多量のステロイドを使用した場合、安全塗布量を超えると副腎機能に影響を与えるのかどうか、私は入院時と退院時の血液や尿を採取して調べました。驚いたことに、入院時のコルチゾール値は平均3.7μg/dLと正常値より明らかに低く、0.1μg/dL以下と極めて強く副腎機能が抑制されている患者さんは半数以上でした。つまり、入院を要するほどの患者さんは、ステロイド治療をする前に皮膚状態の悪化で、すでに副腎機能が強く抑制されていたのです。入院を要しない軽症例では抑制がかかっていないことから、副腎機能の抑制は重症度に起因するという新事実をみつけました。さらに、入院中大量のステロイドを使用したにもかかわらず、退院時のコルチゾール値は11.5μg/dLと正常化していました。入院中に皮膚状態を改善するために使用したステロイドの量は、臨床効果とともに漸減し薬効ランクも落としています。この治療法によって副腎機能に及ぼす副作用は認められず、安全性の高いものといえる結果となりました。同時に測定したACTH値も同様で、退院時には正常値に回復していました。入院での治療は皮膚症状を劇的に改善させるだけでなく、抑制されていた副腎・下垂体機能を大幅に正常化するという画期的なデータでした。しかし、なぜ副腎機能が抑制されてしまうのかはまだ不明で、これからの研究課題です。ホルモンが分泌されない原因のファクターとしては、ストレスや睡眠障害などが挙げられています。確かに来院した患者さんから「眠れなくて、体がだるくて、成績が落ちたり、仕事上でのミスが多くなったりして上司から怒られる。でも、睡眠薬を使うと寝坊してしまう」との意見が大半でした。ところが、入院することによってまず不眠が解消され、リラックスした精神状態になり、熟睡できた喜びを口にした患者さんが7割から8割を占めたのです。これによってインペアード・パフォーマンスも大きく改善されました。尋常性乾癬における最新治療乾癬に関しては劇的な治療薬ができました。これまで患者さんは、お風呂から出て、時間をかけて全身に薬を塗って、包帯を巻いて……という作業を毎日繰り返していました。患者さんの負担はかなり重いものでした。それが、TNF-α阻害薬が出てきたお陰で、今では注射1本で済んでしまう。患者さんのQOLは飛躍的に向上しました。これは大変画期的なことだと思います。私が東邦大学に来る前の病院で、5、6回入退院を繰り返している、30代の関節症性乾癬の男性がいました。それまで、できうる限りの治療を行ったのにもかかわらず、結局車椅子の生活を余儀なくされた患者さんです。TNF-α阻害薬が治験できるとなった時に、真っ先にその彼に声をかけました。しかし、彼には「これまで先生の言うことはすべて聞いてきたが、結局治らなかった。訳のわからない治療法で、もっと悪くなるかもしれない」と断られてしまいました。それでも私は1時間以上かけて説得しました。やっと彼を治せるかもしれない治療薬が出てきたからです。今、彼は杖で歩けるまで回復しています。少し前までは治せなかった難病も、今では治せてしまう。医学の進歩にはいつも驚かされます。ただし、このTNF-α阻害薬ですが、高い臨床効果の一方、免疫を抑えることにより副作用として細菌性肺炎や肺結核など重篤な感染症の発現が危惧されています。日本皮膚科学会では"TNF-α阻害薬の使用指針および安全対策マニュアル"を作成し、本薬の使用に際して、(1)乾癬の診断・治療や合併症対策に精通した皮膚科専門医が行うこと (2)副作用発現に留意して、定期的な検査および重篤な合併症に対して迅速な対応すなわち呼吸器内科や放射線医と密接な連携で対処すること、の2点を挙げていますので注意が必要です。私ども東邦大学大橋病院皮膚科はTNF-α阻害薬使用施設として正式に認定され、すでに2例の患者さんに治療を開始しております。病気の原因究明こそ臨床の醍醐味外来で若手医師に指導する時は「なぜこういう現象が起きたのか?」を自分の頭でよく考えさせるようにしています。単に病状や治療についての説明をするのではなく、なぜこの患者さんはこうなったのか、その"なぜ"を考えさせるようにしています。ありふれた皮膚病は、生活習慣に起因していることが多いのです。だからこそ患者さんのライフスタイルを知り、なぜそうなったのか? 原因となっているものは何か? を見極めないことには治療もできません。たとえば、道を歩いているだけなのに、急にアナフィラキシーショックを起こして倒れた人がいました。朝食にパンを食べて、その後に運動をする。満員電車の中でどっと汗をかいたらアナフィラキシーショックを起こして倒れた。ご飯ならば発作は起こらないのに、パンだとなぜだかショックを起こす。また、就寝時にアナフィラキシーショックを起こす例がありました。なぜか納豆を食べた日に限り、発作を起こしていました。いずれの方も発作を2、3回繰り返し、そのつど救急搬送されるのですが、病名どころか何が原因かさえわからない。前者は小麦アレルギーでした。小麦を食べて運動をする、抗炎症薬のアスピリンを服用する、飲酒、疲労、ストレスといったファクターが加わるとアナフィラキシーショックを起こす。また後者は、まだ10例ほどしか発見されていませんが、納豆アレルギーでした。納豆を食べて30分や1時間で症状が出れば誰でも納豆アレルギーとわかりますが、食べてから10何時間か経って就寝時に出てくるので、何が原因なのかわからなかった。実は納豆のネバネバ成分がアレルゲンをコーティングしているため、腸管からの吸収が遅れ、すぐには症状が出なかったのです。このような患者さんが今まで原因がわからず病院を転々としてきて、それを自分が究明できた時の喜びは大きいですね。臨床の面白さや醍醐味はそこにあると思います。また、最近の技術的進歩も著しいものがあります。これまで皮膚科領域で治療に難渋していた疾患が、上述した生物学的製剤のような画期的な薬剤の登場で治療できてしまう。虚血性壊死を起こした状態でも、皮膚や筋肉に注射して血管を新生する遺伝子治療もそろそろ世に出てくる。たとえば、糖尿病で足先がすでに壊死を起こしている場合、まず内科で糖尿病のコントロールを行い、皮膚科で外用療法をし、最終的には整形外科や形成外科で切断するのが主流となっていたのが、この遺伝子治療により血管を再生することによって指先を切断しなくても済むようなるというものです。これまで、難病といわれてきたものが、最新の治療によって難病ではなくなる時代に変わってきています。これからの皮膚科学は、ますます面白くなってくると思います。質問と回答を公開中!

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教授 向井秀樹先生の答え

アトピー性皮膚炎30年間悩まされています。昨年近医にてネオーラル処方され、症状改善し漸減中止しました。が、症状悪化しネオーラル再開(一回50mg一日2回)しました。この量でないと有効でないようで…飲み続けてもいいのでしょうか?皮膚の良い状態がこんなに楽なのもかと思い知り、ステロイドだろうが免疫抑制剤だろうが(副作用が多少あっても)なんでも使いたい!という思いです。 シクロスポリンは使用ガイドラインが出来ており、体重当たり3mg換算とされています。効果があれば12週間を1クールにして、最低2週間以上の休薬とあります。スタンダードな治療法として有用だと思います。但し、極めて重症度の高い方には中止が出来ない、再度内服するという方も少なくありません。さらに高価なお薬のため経済的にも再燃時のショックは大きいのは理解できます。文章からは十分に理解しているとは言えないかも知れませんが、ダラダラと服用しているより、2クール目&3クール目と繰り返すうちに症状が安定する場合も経験します。焦らず頑張って下さい。そして併用している外用剤ですが、内服していると痒くないからといって使用していない、使用量が大幅に減っていないことはありませんか? こんな高級品を使っているのです、今こそ徹底的に改善して寛解状態を得て元を取るぞ!という覚悟で頑張って下さい。そして、悪化時の原因を考え悪化要因の対処法などの工夫、アドバイスを貰うなどの積極性を出すこと!綺麗な肌を取り戻して下さい!発汗異常について手汗がひどく悩んでいる方がいます。来年4月から社会人になりますが事務関係で書類を触るのに用紙がくしゃくしゃになってしまい、仕事に支障がでてしまうのではないかと・・手術以外になにか方法がありませんか?漢方 刑芥蓮ぎょう湯を服用して様子を見ています。程度は個人差がありますが、お悩みのことと推察いたします。大学時代の友人がひどい汗かきで、いつもタオル持参で授業内容を記載していました。現在会って話をすると昔より良くなっているそうですが完治はしていないとのことです。一般的に自律神経を安定させる内服薬を飲み続け、汗を抑える塩化アルミニウム溶液を外用します。漢方薬を試されているようですが、防己黄耆湯や補中益気湯はお飲みになりましたでしょうか?漢方薬は一般的にすぐに効果がでる訳ではありません、最低1~2ヶ月間は内服してみて下さい。手術に関しては現在しない方向です。脇の下の交感神経を切断するは一時流行りました。確かに手の効果はありますが、背中や胸などが代償性に発汗するようになり患者さんの生活の質が低下するので行わない方が良いようと思います。専門に手術する施設が増えましたが、医療問題にまで発展し陰が薄くなりました。発汗を専門とする施設は少ないですが、東京医科歯科大学皮膚科には専門外来があります。塩化アルミニウム溶液を器械で皮膚に導入するイオントフォレーシス法を行っており、それなりの有用性を報告しています。機会があれば受診してみて下さい。まずは、一般初診を受診して専門外来にまわしてくれるそうです。研究分野について東邦大学大橋病院での研究分野について教えてください。どのような研究をされているのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、「研究について」のページを見ても、「爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討」しかなかったので、もう少し情報を頂きたく思います。(後期研修先を探している研修医です)大橋皮膚科はアトピー性皮膚炎の治療を専門にしております。1~2週間の入院療法は、短期間で急速&確実に改善する方法を言えます。しかし、入院期間に多量に使用する極めて強いステロイド外用剤の副腎機能に関する影響に関して、明らかな文献は見当たりません。そこで、入院前後の血中コルチゾール値を測定してみました。その結果は予想に反して、重症例では入院前のステロイド外用量と関係がなく血中コルチゾール値は大幅に低下。この変化は不可逆性で退院時には上昇して正常値に戻るという結果が得られました。そこで次に、血中ACTHや1日尿中コルチゾール値を測定しました。両者とも同様の推移を呈することより、皮疹の重症度に相関して不可逆性の副腎機能抑制状態が生じていることを昨年11月の日本皮膚科学会誌に報告いたしました。これから入院する患者さんにもその結果をお話して、入院で使用するステロイドの安全性を強調する共に検査し確認を取る旨を了承して頂いております。なお、このデータは昨年の第26回日本臨床皮膚科学会で金賞そして学内の柴田奨学助成金をめでたく選考授賞&授与することが出来ました。次に、この入院期間の前後で治療効果を判定できる"短期的な治療マーカー検査"を検討し、昨年日本アレルギー学会で発表しました。皮膚の改善やかゆみの程度で患者さんは退院を希望されます。明らかな検査データを示し改善度を示すことは疾患の理解を更に深めると思います。大橋皮膚科で行っている入院療法の有用性を評価するために、患者さんを対象にしたアンケート調査を行いこの2月に行なわれる東京支部学術大会で発表します。今年度からは重症例に多くみられる睡眠障害に関して研究を始めます。激しい痒みに伴うものと基礎にある心因反応に伴うものに大別できます。そこで、入院前後の睡眠障害を詳細に分析しその違いを見つけ、後者の人に関しては早期に入眠剤や心療内科的アプローチを検討します。さらに、外来患者にも行い重症度の違い、罹患率など調査していく予定です。ホームページにある"爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討"は、日本真菌学会および国際学会で報告したので掲載したものです。動物モデルを使って、爪に感染後の経過を臨床面と爪の病理組織像を同時に立体的に観察した興味あるデータです。近く真菌専門の英文誌に掲載されますので、機会があればご一読下さい。この他に、帯状疱疹後の神経痛に関する薬剤間の比較、各種皮膚良性腫瘍におけるダーモスコープ所見の検討、炭酸ガスレーザーを用いた難治性皮膚疾患の治療の試みなどいろいろと考えて行っています。化粧品会社や製薬会社の研究所とも連携して研究し、その成果を順次発表しております。大橋皮膚科では目の前にいる患者さんの疾患をみて、その病態を考えどのようなアプローチをすべきか、解明のための臨床研究を積極的に行っています。珍しい疾患の解明ばかりでなく、ありふれた疾患の新しい考え方や治療法なども発信できればと思っています。やる気のある方は大歓迎です、是非とも来て下さい。アトピー性皮膚炎、診断のコツ研修中なので基本的な質問ですみません。アトピー性皮膚炎の診断について、治療ガイドラインの診断基準を見ながら勉強しているのですが、確信を持って診断を下すことができません。診断間違ってステロイドを処方すると悪化する症例もあるので、少し怖くなっています。今は当然ながら自分一人で診察をして診断を下すわけではないのですが、皮膚科を目指しているので、どうにかしたいです。診断のコツや、先生がどのように勉強されてきたか?などアドバイスいただけると幸いです。難しい問題だと思います。でも専門とする私でも治療&診断ガイドラインは講演のときに使う程度で診療の際に見ることはありません。患者さんを見れば検査をしなくとも100%診断が付きます。皮膚科の醍醐味とはそういうもので、見たことがある、本で読んだ、学会で聞いたなどで診断が出来るのです。要するに、長年たくさんの患者さんを見ることで感じ覚えていくのだと思います。とくにアトピーの難しさは年齢によって皮膚症状の好発部位や臨床像も変化します。時期ごとに出やすい部位、臨床像を整理して覚え、鑑別疾患を挙げその違いを頭の中で除外していく必要性があります。アトピー素因の有無は必要です、そして皮膚所見が有用で湿疹病変と分かってもかぶれもありますし,自家感作性皮膚炎や皮脂減少性皮膚炎もあります。年齢や部位などが役立ちます。血清IgEや各種アレルゲン特異抗体価も診断に有用です。症例をたくさん見て、いろいろな鑑別疾患を整理して頭の中に入れることが重要です。疑問があれば上級医を呼んで,診断の決め手や考え方を教えてもらうのも良いと思います。重症のアトピーとして治療していたら皮膚リンフォーマという事例もあります、皮膚生検も時として有用です。よく見てよく考え疾患の特性を理解して下さい。患者さんを診て、患者さんから教えられる、学ぶものです。民間療法との戦いについて皮膚の疾患、特にアトピーなどは民間療法が多くて困っています。全てを否定するわけではないですが、処方した薬を使わなくなったり、通院しなくなったりするので(大体症状が悪化して戻ってきますが…)かなり厄介です。先生も当然同じような状況かと思います。先生のこれまでのご経験から「このように民間療法と戦っている!」「こんな説明をすると有効だ!」というものがあれば是非ご伝授いただきたく思っております。宜しくお願いします。日本皮膚科学会の努力もあり民間療法は20年前に比べるとかなり淘汰された感はあります。随分日常診療でその対策と説明に苦労させられて来ましたし、重症で入院を要する患者さんの半数以上が民間療法経験者でした。皮膚科医以外の医師や医療関係者が行っている場合が多いようです。患者自身が現在の治療法に不満を抱いているのは事実だと思います。頭ごなしに否定することなく、ゆっくり時間を掛けて話をする・聞くことを心掛けています。どうしてもしたいと言ってくるものに関しては、現在の治療を中止せず併用することや部分使用を認めています。専門家の私が冷静に判断してその効果を認めるなら、継続すべきだし、効果が見えない場合にこだわって皮膚が悪化することは避けたいと話します。ただ、使用しているステロイド剤の副作用を強調して中止を強要し高額な治療費を請求するものは絶対的に反対します。ステロイド治療に不満や不安が強い人が多いので、ステロイドの使用法や安全性を十分説明する必要はあると思います。いずれにせよ、本人は悩んでの事ですから、頭ごなしに叱らない、救済方法を残すやり方で指導しております。 電子付加治療は効きますか?患者より、アトピー性疾患治療として電子付加治療というものがあると聞きました。私も調べてみたのですが、日本アトピー治療学会という聞きなれない学会が推奨しているようです。一見理にかなっているようには見えるのですが、実際のところ如何なものでしょうか?もし電子付加治療について何かご存知でしたらご教示お願いします。残念ながら実態は良く分かりません。私の外来では慢性かつ難治性の重症例が多く受診されますが、受診前の治療法としても電子付加治療は初耳です。アトピー性皮膚炎の治療&診断ガイドラインにも電子付加治療などは記載されていません。日本アトピー治療学会と実にもっともそうなネーミングですが、所属会員がどれほどいるのか?我々のような皮膚科専門医、アレルギー専門医や指導医がいるのか疑問です。これでは質問のお返事とはなりません。丁度インフルエンザAに罹患して自宅待機の身ですので、ホームページをしっかりと拝見しました。基本的におかしいのがアトピーの原因を酸化アレルゲンとして一つに括っていることだと思います。この論理はアトピー性皮膚炎診療&治療ガイドラインをご一読されればすぐ分かります。どこにも記載されている言葉ではありません。アトピーの発生機序は、最近北大皮膚科が皮膚の角層に日本特有のフィラグリン遺伝子多型を30%の症例に発見以来、バリア機能の破綻が発症の第一要因とされました。これに伴い、環境にいるダニやハウスダストが経皮的に侵入してアレルギー炎症が生じるのです。但し乳児は卵など食事の関与が強い時期ですし、年齢的&季節的にアレルゲンや増悪因子は変化します。また最近ではフィラグリン遺伝子多型がなく血清IgE値が正常&主に金属アレルギー関与が示唆される内因性という概念も出ていますし、現代人が抱える心理的なストレスも大きな要因の一つです。またいくつかの要因が複雑に絡み合い病態を複雑にしています。酸化が皮膚の老化以外に種々の炎症を起こすことは知られています。同じ論理で四国の方では活性酸素の除去を目的とした外用剤や内服を行っています。理論は同じで酸素の毒を取り除くというもので、当初大した効果はありませんでした。そこでステロイドを外用剤に混ぜるようになりました。アトピーの機序はすでにお話したように実に複雑で、単に酸素の毒を抑えられても寛解できるか疑問です。理論とシェーマと治療前後の臨床写真だけで基礎的な実験データがありません。ところで、以前中国で何にもよく効く漢方薬がネット上で評判になり日本のアトピー患者も購入者が続発しました。とにかくステロイド張りのすごい臨床効果なのです。そこで成分を調査したところ、何と最強のステロイドが入っていたのです。われわれ専門家でも滅多に使用しない最強のステロイド入りとは驚きです。本当に良い薬は正式に承認され薬価が付きます、新薬の欲しい薬品会社がほっとくわけはありません。入院療法の期間アトピー性皮膚炎に対する治療として「入院療法」が紹介されていましたが、入院期間はどの程度必要なのでしょうか?全国で少数ですが入院療法を当科のように展開しているところはあります。ばらばらで決まり残念ながらありません。治療ガイドラインをみても、マニュアル通りの治療で効果のない場合は入院とありますが期間に関する記載はありません。以前私のいた横浜労災病院では徹底的に良くなるまで入院させました。全国から多数の患者さんが来られたので皮膚症状や検査所見の改善、試験外泊で悪化症状のなしを目安にしたところ平均26.5日という入院期間でした。入院後のアンケート結果をみると、退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は93.3%で極めて高く、不変や悪化例はいません。また、調査時の皮膚症状に関しても88.1%と高率に症状が改善維持できていることが判明しました。一方で10%の患者さんが入院期間の長さを指摘、33.3%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。確かに仕事を持つ社会人が1ヶ月近く休むということは問題ですし、家庭を任された主婦そして通学、受験や試験などの問題を抱えた学生にとって長すぎます。そこで、東邦大学に来てからは2週間を原則に致しました。1週間で徹底的に皮膚症状を抑え、残りの1週間で安定化を図る。退院後しばらく頑張ればコントロールできると考えたからです。その結果は2月の東京支部学術大会で発表します。退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は92%で極めて高く、調査時の皮膚症状に関しても76%の方が改善維持できていました。一方で9%の患者さんが入院期間の長さを指摘、43%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。重症度や対象患者の遠距離度が異なるかも知れませんが、平均年齢は30歳代と同様でした。やはり2週間でも患者さんにとって長すぎるのかもしれません。そこで次の裏付けデータをもとに1週間に減らしています。そのデータとは、質問3でお答えした入院前後で血中のコルチゾール値を測定した結果を参考にしました。重症度と血中コルチゾール値が相関するなら、入院時に正常値以下まで低下したものが何日入院すると正常値に戻るのか?入院期間と血中のコルチゾール値の推移で計算すると4.8日という値が出ました。そこで、約1週間の入院期間で一過性の副腎機能低下状態は改善できると判断しました。現在、極めて治しにくい重症度の極めて高い皮膚症状を有する例を除き、1週間の入院を基本として初診患者に説明しております。TNF-α阻害薬について乾癬の患者さんがTNF-α阻害薬での治療に興味をもっております。乾癬であれば全て有効なのでしょうか?また、感染症の発現が危惧されると聞きましたが、大橋病院さんではどのような体制で望んでいるのでしょうか?差し支えなければ、これまでの成績も含めて教えていただけると大変参考になります。この治療はどこの施設でも自由に行える訳ではありません。副作用として重要な感染症に対して、診療体制のとれる呼吸器内科医や放射線医の常勤が必要で、皮膚科学会に正式に申請してTNF-α阻害薬使用施設として認定される必要があります。TNF-α阻害薬は2種類あり、多少適応疾患が異なります。詳細は大橋病院皮膚科のホームページを参考にして頂くと役立ちます。本剤の副作用の最も多いのが感染症です。潜在的に持っている、感染しやすいものを発症させます。日本は結核が多く、治験段階で最も危惧されたところです。ところが、しっかりとした体制が奏功したのか肺結核はおらず、細菌性肺炎が見られています。致死的な副作用は今のところありません。勿論、私どもの症例も毎回診察していますが副作用はありません。対象は、重症、難治性&治療抵抗性の乾癬および関節症性乾癬の患者さんです。罹患部位が全身で外用剤のみでコントロール不良な症例、ネオーラルやチガソンの内服でも不安定ないしその薬剤の副作用で中止した例、関節症状のコントロール不良例、さらにステロイド外用剤による局所の副作用が生じている例などです。今後あちこちの施設から有用性のデータが報告されると思いますが、有用率90%は全国の諸施設で行った治験結果の驚異的な数字です。私の経験でとくに驚いたのが、関節症性乾癬の患者さん達です。その効果は患者さんのQOL向上に素晴らしいものです。但し、最大の難点が支払い額の高さです。高額療養費制度を用いて医療費が還付されますが、それでも負担金は極めて高く、投与前に概算を示し了解を得ないと継続した治療が受けられなくなります。また、今後判明してくると思いますが予後が問題です。投与中は良いのですが、中止できるのか再燃しやすいのか、検討課題だと思います。また新薬も開発中で楽しみです。ステロイドの安全塗布量、参考文献先生の記事を拝見して「ステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。」ということを初めて知りました。大変びっくりしています。ステロイドの安全塗布量について他に参考になる文献等がありましたらご教示お願いします。本においてステロイド(ス)外用剤は1953年から登場し、現在までに30種類以上の外用剤が開発。薬効の強さから上位からI~V群の5つに分類され使用されています。幅広い皮膚疾患に有効で、従来まで治療法のなかった疾病の治療薬として大いに役立ったことは事実です。全身皮膚が障害し多量の外用を必要とする症例の中で、Cushing様症状、骨粗しょう症や小児の発育遅延など極めて少ない確率ですが起こることが判明。多量にス外用剤を使用例が突然中止すると、皮疹悪化以外に発熱、悪寒、悪心、嘔吐などの全身症状を呈するものを離脱反応、これは一種の副腎クリーゼの状態です。質問5でお答えした民間療法が横行した時期に、ス外用剤を中止してこの反応を起こしQOLが大幅に悪化、私どもの病院に入院した症例を数多く経験しました。外用を再開し症状を改善させました。全身的な副作用を知るには、主に視床下部-下垂体-副腎皮質機能がどの程度抑制されるのかをチェックします。日常で処方される外用量、成人で10~30g/週程度では抑制は起こりません。この全身的な副作用に関しては1960~1970年代に精力的に研究されたのですが、それ以降はほとんど行われていません。薬効ランクⅢ群(リンデロン)を成人入院に1日30g、幼小児に1日13gと大量塗布した結果。1.副腎皮疹機能は一過性に生じるが、中止後1~2日で回復。2.症例によっては継続中でも抑制が回復。その理由は、皮膚が改善して経皮吸収率が低下する。3.密封療法を行うと経皮吸収率が高まり、臨床効果も上がるが抑制は顕著となる。4.小児では成人より抑制は起こりやすいので強い薬効ランクのものは控える。また、外用方法として1日5~10gで開始し、症状に合わせて漸減し3ヶ月間使用しても、一過性&可逆性の抑制は生じても不可逆性の抑制は生じないとされています。私どもの入院を要する重症例では1日12gも投与しましたが、抑制例は2例と少なくしかも正常範囲内で何ら身体的にも問題は起きませんでした。それどころが、正常値以下に抑制された症例の多くが逆に正常に復したという事実は大きな驚きでした。十分な診察もせず漫然と使い続けるのではなく、メリとハリの要領で使用量や部位別に上手に使うことが大切です。最近外来で勧めているのがプロアクティブ治療です。適切な薬剤で十分量の使用で寛解状態を作り、その後すぐに休薬するのではなく、週2回は外用することで再燃効果を大幅に減少することが出来ます。何も全身同時に開始することはありません。顔からでも、腕からでも良くなった場所はスタートO.K !眼に見えない副作用に怯えることなく、上手に使うことが重要なのです。尋常性ざ瘡(にきび)の食事療法について最近、20~30代の女性の患者様から肌に関するちょっとした質問を受けます。医者なので、ある程度はアドバイスしてあげたいのですが、尋常性ざ瘡の方の食事に気をつけることや最近の新しい治療の動向を、他科医師として知っておくべき事はありますでしょうか?御教示よろしくお願いします。一般的によく言われていることですが、甘いものや脂っこいものは避けるべきです。スナック菓子も同様です。ただ、肌に良くないからといって全部やめようと話しても難しいと思います。食べる回数や量を減らすことが大切です。また女性には生理があります。ホルモンバランスの変化する生理前に悪化する例が多く、イライラする精神的なストレス以外にヤケ食いや飲酒など食生活が悪化要因の場合があります。ディフェリンと言う新しいにきび用の外用薬が発売されています。効果は従来品のアクアチムクリームやダラシンゲルより期待出来ます。但し、皮膚のカサツキがでる場合がありますので注意して下さい。基本的なこととして、入浴時の洗顔が大切です。オイリー肌用の石鹸で十分に洗うこと、とくにベタツク&症状の強い部位は2度洗いを勧めます。入浴後、ご自身の肌にあった化粧水を塗るとかさつきは予防できますが、べたつくクリームやローションは毛穴をつぶしてしまうので禁止です。難治性の症例には、このほかピーリングが行なわれています。毛穴が詰まって角質の溜まった白ニキビや炎症の強い赤ニキビに有効です。自費診療になりますが、皮膚科専門医で行なっている施設は少なくありません。総括いろいろとご質問を頂き感謝しております。話すのは自信が多少あるのですが、文章では相手の理解度が伝わりません。また質問があれば聞いて下さい。実は私が大橋病院ホームページ委員会の責任者なのですが、機械音痴と雑用が多く皮膚科ホームページの更新が遅れ気味なのです。時間があるときに更新いたしますので、時々見て下さい。研修希望者に:どんどん大橋皮膚科を見学に来て下さい。大橋病院は歴史的な作りで驚くかもしれませんが、アットホームな環境で仲良く頑張っています。教える体制はしっかりしています。何をしたいのかをはっきり明示してそれが努力に値する仕事なら全面的にサポートします。ただ、まず皮膚科医としての基本を覚えなければいけません。皮膚科は奥が深く、自己完結型の科と言えます。ある程度オールラウンドの皮膚科医を目指し、その上で疑問、難問の解決を同時進行で行うと臨床が100倍楽しくなります。教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

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アルツハイマー病へのDHA投与、認知能力低下の減速効果なし

軽度~中等度のアルツハイマー病患者に対し、ドコサヘキサエン酸(DHA)サプリメントを投与しても、認知能力の低下を減速する効果はないという。脳の萎縮率の低減についても効果はなかった。米国オレゴン健康科学大学神経内科部門のJoseph F. Quinn氏らが、アルツハイマー病の患者400人超について行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月3日号で発表した。これまでの疫学試験では、DHA摂取がアルツハイマー病罹患率の減少と関連することが示唆されており、動物実験では実証されていた。18ヵ月追跡し、ADAS-cog、CDR-SBスコアの変化を比較研究グループは、2007年11月~2009年5月にかけて、米国51ヵ所の医療機関で、Mini Mental State Examination(MMSE)スコアが14~26の、軽度~中等度のアルツハイマー病患者について試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはDHAサプリメント2g/日を、もう一方にはプラセボを投与した。追跡期間は18ヵ月だった。主要評価項目は、アルツハイマー病評価スケールの認知機能指標(Alzheimer’s Disease Assessment Scale:ADAS-cog)の変化と、臨床的認知症尺度の下位尺度(Clinical Dementia Rating sum of boxes:CDR-SB)の合計スコアの変化だった。またサブグループ分析として、被験者102人に対しMRIを行い、脳萎縮を測定した。ADAS-cog、CDR-SBスコア、MRIによる脳萎縮率も両群で同等被験者のうち試験を終了したのは295人、うちDHA群は171人、プラセボ群は124人だった。ADAS-cogスコアの変化は、DHA群で平均増加幅7.98(95%信頼区間:6.51~9.45)ポイントに対し、プラセボ群で同8.27(同:6.72~9.82)ポイントと、両群に有意差はなかった(p=0.41)。CDR-SBスコアも、平均増加幅がDHA群で2.87(同:2.44~3.30)ポイントに対し、プラセボ群では同2.93(同:2.44~3.42)ポイントと、有意差はなかった(p=0.68)。また、脳萎縮についても、DHA群(53人)が24.7cm3(年率1.32%)減少したのに対し、プラセボ群(49人)では同24.0cm3(年率1.29%)で、有意差は認められなかった(p=0.79)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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患者医療情報システムを活用した入院中転倒予防教育キット、転倒リスクを有意に減少

 患者医療情報システムを活用し、患者のリスクに見合った転倒予防教育キットを提供することで、入院中の転倒リスクが有意に減少することが報告された。米国ボストンを拠点とする病院経営共同体Partners HealthCare SystemのPatricia C. Dykes氏らが、1万人超の入院患者を対象に行った、多施設共同無作為化対照試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月3日号で発表した。入院中には、環境の変化や疾患・治療の影響などで、転倒リスクが増大することは知られている。一方で、医療情報技術を用いた転倒予防キットは、これが初めてのものだという。患者個別のポスターやパンフレット、ケアに関わる人への注意事項などを提供 研究グループは、2009年1月1日~6月30日にかけて、都市部4ヵ所の病院に入院した、1万264人を無作為に2群に分け、一方には医療情報システムを活用した転倒予防キット(fall prevention tool kit;FPTK)の提供を、もう一方には通常行われる転倒予防教育を行った。 FPTKでは、まず看護師による患者の転倒リスク評価を行い、それに基づきFPTKソフトウェアで、患者の転倒リスクに合わせた予防プログラムを作成する。その内容としては、ベッドサイドに貼るポスター、患者向けパンフレット、ケアプランや、その患者のケアに関わる主な担当者に対する患者個別の注意事項などが提供される仕組みとなっている。転倒率は1,000患者・日当たり約1人減、65歳以上では2人減 試験期間は6ヵ月、延べ入院日数は4万8,250患者・日だった。その間、転倒患者数は対照群が87人に対し、FPTK群では67人と、有意に少なかった(p=0.02)。 院内の入院部門特性で補正を行った後の転倒率は、対照群が4.18/1,000患者・日(95%信頼区間:3.45~5.06)だったのに対し、FPTK群では3.15/1,000患者・日(同:2.54~3.90)と、有意に低率だった(p=0.04)。 FPTKは特に65歳以上の患者に対して効果が高く、対照群とFPTK群との補正後、転倒率の差異は2.08/1000患者・日(同:0.61~3.56)だった(p=0.003)。 なお、転倒による怪我のリスクに関しては、両群で有意差はみられなかった。

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入院、転倒外傷は、虚弱高齢者をさらに弱らせる

高齢者のうち、特に虚弱であったり、内科疾患や外傷(いわゆるイベント)が、新規障害の発生や既存障害の悪化を大きく増大する可能性があることが、エール大学医学部内科部門のThomas M Gill氏らによる長期追跡試験の結果、報告された。これまで、イベントの障害度移行への影響については明らかになっていなかった。JAMA誌2010年11月3日号掲載より。10年にわたり、障害度間、死亡への移行状況を追跡研究グループは、1998年3月~2008年12月の間に、コネチカット州ニューヘブンに住む、70歳以上の754人を対象に前向きコホート研究を行った。被験者は基線で、4つの基本的なADL(入浴、着替え、歩行、移動動作)に障害を有していなかった。被験者は、イベント(内科疾患が外傷により入院または活動性の制限に至ったもの)の影響を確認するため、10年以上の間毎月、電話インタビューにより身体障害の評価が行われた。また、身体的な虚弱(10m往復歩行テストで10秒超かかると定義)は、18ヵ月ごとに108ヵ月間にわたって評価が行われた。主要評価項目は、毎月評価した、非身体障害、軽度身体障害、重度身体障害の各障害度間の移行状況と、各障害度から死亡への移行状況とした。入院、活動性の制限が、障害度の悪化に強く関連移行としてあり得る9つのパターンのうち8つと、入院との間に強い関連があることが認められた。入院により非身体障害から重度身体障害への移行は168倍増大することが認められた(多変量ハザード比:168、95%信頼区間:118~239)。一方で、軽度から非身体障害への移行は0.41倍と低かった(同:0.41、0.30~0.54)。活動性の制限も関連は強く、非身体障害から軽度身体障害へは2.59倍、重度身体障害へは8.03倍、移行を増大した。軽度から重度への移行は1.45倍で、軽度あるいは重度からの回復については関連が認められなかった。全9つの移行パターンについて、身体的虚弱があると、イベント関連を増大した。たとえば、入院後1ヵ月以内の非身体障害から軽度身体障害への移行の絶対リスクは、虚弱がある人は34.9%だったのに対し、虚弱でない人は4.9%だった。また、移行理由として考えられるパターンの中でも入院、転倒外傷が、新たな障害を引き起こしたり悪化している障害を進展させる可能性が最も高かった。(武藤まき:医療ライター)

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