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教授 川合眞一先生「関節リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした生物学的製剤」

1977年慶應義塾大学医学部卒業。79年同大学内科リウマチ研究室。87年東京都立大塚病院リウマチ膠原病科医長。91年聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター講師。94年同助教授。99年同教授。2004年、東邦大学医学部付属大森病院膠原病科教授、09年同副医学部長。日本リウマチ学会理事、日本臨床薬理学会評議員前理事長、日本炎症・再生医学会理事、他。日進月歩の関節リウマチ研究関節リウマチは、滑膜が異常に増殖してパンヌスと呼ばれる塊ができます。パンヌスには、リンパ球T細胞やB細胞、マクロファージなどたくさんの細胞が集まって、炎症の元になる物質を作り出すという病態はわかっています。この炎症の元の代表的なものが、TNF-αを中心とした炎症性サイトカインです。この炎症性サイトカインを抑えることが、関節リウマチの治療に有効であり、ここ10年間で効果の高い治療薬が使えるようになり、早期に発見できれば格段に症状を抑えることができるようになりました。リウマチは中世から関節疾患として認識されています。長い歴史を持つ病気ですから、長期にわたり多くの学者によって研究されているにもかかわらず、いまだにその原因は解明されていません。診断基準にしても、これまでは1987年にアメリカで発表された分類基準でした。それが昨年、23年ぶりに米国リウマチ学会と欧州リウマチ連盟が共同で新しい診断基準を提唱しました。これによって、早期診断が可能となり、速やかに治療できるようになりました。この診断基準の一番のポイントは、早期から関節リウマチと診断してもよいところにあるのですが、他の膠原病ではないと否定しなければならないことが大前提です。そこで専門医の知識が必要となります。全身性エリテマトーデスにしても、強皮症にしても関節炎は主要な症状として現れますが、それ以外の疾患の特徴によって鑑別することが可能になります。特に初期症状は、関節リウマチとよく似ていることもあり、簡単に診断してしまい実はSLEであったとわかった場合、本来の疾患の治療が手遅れになり、結果的に、腎臓が悪くなったり肺が悪くなったりして臓器病変を引き起こしてしまう可能性があります。生物学的製剤によって改善された患者さんのQOLメトトレキサートと生物学的製剤の併用によって飛躍的に治療は進歩しましたが、関節リウマチ全体でみると、3割の人には効きません。また、効果があった7割の中でも、その効果はまちまちで、劇的に効いて完治に近い状態の人もいれば、現状維持にとどまっている人など結果に幅があります。もちろん、今まで大きな効果を得る治療法がなかったのですから、それに比べれば改善されましたが、今までが悪すぎたからともいえる結果なのです。それでも、患者さんのQOLは飛躍的に改善されています。数十年前は、関節リウマチに罹患することによって、職業を持つ若い女性が痛みによって仕事ができなくなり、既婚者であれば主婦としての仕事がままならなくなり場合によっては離婚につながることもありました。しかし、今は仕事上何の制約もなく働くことができ、結婚し出産して一般的な生活をおくれる人が増えました。QOLの視点から考えると、やはり画期的な治療ができているといえるのではないかと思います。ただ、薬価が高いという問題は残っています。メトトレキサートの場合は、妊娠を考えたら計画的に投薬をストップしなくてはいけませんが、生物学的製剤、一部の抗リウマチ薬や免疫抑制剤については妊婦への処方もリスクが高くないとの報告もあります。ただし、まだデータが不十分なので、現状では妊娠したら薬は中断しています。もしも妊娠中に痛みがひどくなった場合はステロイドホルモンを使い、出産後、抗リウマチ薬に戻します。このように、妊娠を恐れることなく治療できるようになったのは女性の患者さんにとって朗報だと思います。関節リウマチの場合、人によっては妊娠すると一時的に痛みが治まることがあるのですが、分娩後には症状が悪化することがあるので、元の治療に戻すことが必要です。関節リウマチの治療薬は、ここ数十年で飛躍的に進歩していて、種類も多くそれぞれの特徴も複雑になってきているので、専門医でなければ適切な治療は難しいと思います。だからこそ疑わしいと思ったら専門医に相談してほしいのです。滑膜組織の炎症機序を探る関節リウマチは滑膜細胞が増殖することが問題で、その増殖した滑膜細胞から様々な炎症関連物質が分泌され、炎症の悪循環を作ります。糖代謝の領域ではよいとされるアディポネクチンという脂肪細胞が分泌するサイトカインを使ってみたら、炎症を悪化させてしまいました。これは東邦大学の我々のグループが見つけた結果なのですが、当大学の発表から少し遅れてドイツからも報告されました。アディポネクチンは一方では糖代謝をよくする動脈硬化についてはよいファクターであるのに、局所では炎症を悪化させるという二面性があり、これらの詳細な機序を明らかにするのが現在の研究テーマの一つです。早期発見で3ヵ月以内に抗リウマチ薬を投与リウマチと診断されたら3ヵ月を待たず、すぐに抗リウマチ薬を使うのは大原則となっています。これは大切なポイントで難しいところもあります。元は抗がん薬として使われていたメトトレキサートが週1日少量をリウマチの患者さんに使うと、症状が改善されるということがわかり、アメリカでは1988年、日本では1999年にリウマチの治療薬として認められました。さらに2000年代になって生物学的製剤ができ、リウマチ治療においてパラダイムシフトをもたらしたのです。関節リウマチによる変形は、炎症が続いて初めて変形していくわけで、炎症の初期段階で発見してそれを抑えることができれば、高い率で制することができます。しかし、中にはどうしても抑えることができない患者さんのケースもありますので、さらなる薬の研究、開発が待たれるところです。現在でも治療に難渋している率は2割から3割なのですが、7割から8割の患者さんは薬の進歩や治療でコントロールできています。関節リウマチは長期にわたる病気なので、すでに関節破壊が始まってしまった患者さんに関しては進行させない。早期に発見された患者さんの現状維持はもちろん、それ以上進行させない。すでに進行してしまっていても、関節破壊を起こさせないことが重要です。関節が痛くなったその時が発症と考えていいのですが、ただの痛みか関節リウマチなのかわからない期間はあります。痛みを重視するよりは、関節が腫れ始めて慢性的(数週間)に続いたら疑うべきです。以前は多関節に症状があることが基準となっていましたが、今は一関節でも慢性的な関節腫脹がみられ、リウマトイド因子が陽性であったり、抗CCPが陽性であるなどの検査値の異常を考慮した上で、関節リウマチと診断されるようになりました。昔よりもより早期に診断して、治療介入する方向になっています。ですが、患者さん自身がいつから腫れ始めたのかよくわかっていない場合もあります。とにかく関節が慢性的に腫脹していたら、専門医に診てもらうことをお勧めします。専門医ではなく整骨院で治療を始めて、痛みが治まらないので総合病院へ行ったが関節リウマチとは診断されず、治療が遅れてしまったというケースは、少なくありません。リウマトイド因子が陽性でないからリウマチじゃない、といわれることも多いのです。実は、このリウマトイド因子は関節リウマチ患者の7から8割しか陽性反応がでません。陰性反応だったあとの2から3割の人はリウマトイド因子は陰性なのに関節リウマチなのです。つまり、検査の数字だけに頼っていては、正確な判断は難しいといわざるを得ません。坑CCP抗体は関節リウマチには出ますが、全身性エリテマトーデスには出ないという特異性は確かにありますが、この検査ですら2から3割の人は陰性です。つまり、検査数値の結果が100%ではないことを念頭におかなければならないのです。医学生のみなさんへ関節リウマチは未知の病気ですので、やらなければいけない研究課題は山積しています。東邦医大大森病院では医師2名にスタッフ1名でのスタートでしたが、現在は12名に増えました。免疫疾患、慢性疾患なので、一般には循環器、消化器のような急変する病気ではありませんが、慢性的な病気の患者さんを長期にわたって管理して、病気をコントロールしていくというのは、医者の醍醐味でもあり使命でもあると思います。そのためには知識がなければ管理できませんし、世界の文献を調べて研究し自分なりに解釈して治療を行うというステップが必要なのです。それとともに、病気の原因を究明するための基礎研究もでき、臨床研究もできる。患者さんにも協力していただいて研究していくのは、今後のリウマチ治療研究において意味のあることです。学生にとっては治療も研究も両方を体験できる科であると思います。東邦大学はそこに力を注いでいます。私が当大学に来たのもそこが一番の理由で、臨床に携わりながら研究をし、多くの学生に教えていきたいと考えたからです。そして、立派なリウマチ専門医を育てたいと希望しています。私の教育方針としては、実際に患者さんを診てもらうようにしています。たとえば強皮症の場合、写真では見たことがあるかもしれませんが、実際に診て触ったことがなければ正確な鑑別診断はできません。臨床の所見をとることが、目で見て触ってというクラシカルな行為が、関節リウマチの診断に最も重要なことなのです。これは臨床の現場で教えないとなかなか伝わりません。研修の段階で一番重視している教育の一つです。また、鑑別診断では、総合的な視点が重要です。膠原病は様々な症状を引き起こします。関節だけでなく、心臓も肺も悪くなって皮膚病変もあった場合、科学技術や検査結果にのみ頼るのではなく"診る""触る"などの最も初歩的でクラシカルな診断力が必要とされます。診察所見を大事にする。これが臨床医の本流だと考えています。質問と回答を公開中!

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教授 川合眞一先生の答え

関節リウマチの診断基準現場では忠実に7項目のうち4項目以上の診断基準を満たせば診断されているのでしょうか?だとしたら3項目、2項目が陽性の患者にはどのように対応しておられるのでしょう?たとえばリウマトイド因子のみが高値の患者が診断されないとしたら、本来の早期発見の意味から解離してはいきませんか?Webでも紹介させていただいたように、関節リウマチ(RA)のお馴染の7項目の1987年の分類基準は、23年ぶりに改訂されました[Arthritis Rheum. 2010;62:2569-81、「今日の治療薬2011」(南江堂)の抗リウマチ薬の解説部分(p.298)に私が紹介しています]。その新分類基準の目的は、より早期の患者をRAと診断しようとするものですが、それでもご指摘のように点数が足りずにRAに分類できないということはあり得ます。しかし、ご理解いただきたいのは、これらは分類基準であって診断基準ではないことです。即ち、臨床研究を前提として一定の所見を持つ患者群を選び出すのが分類基準の本来の目的ですので、ある専門家が分類基準に当てはまらない例をRAと診断することを否定するものでは決してありません。ということで、実際にはかなり稀なことではありますが、私も分類基準を満足しない例をRAと診断することもございます。分類基準を満たさない患者にRA治療を行うか行わないかは患者によって異なりますが、一方でRAと診断しても治療を要さない例もある訳で、診断と治療とは別の問題です。なお、ご指摘のようなリウマトイド因子(RF)のみが高力価陽性という所見だけでしたら、私はRAと診断することはありません。RFは元々特異性が低い検査ですので、関節症状が全くなければ、むしろ他の自己免疫疾患や肝疾患などを考えた方が良いかもしれません。もちろん、健常者でもRF陽性の患者は将来的にRAなどの自己免疫疾患を発症する確率は若干高いという報告はありますので、他疾患も否定できるようなら、将来RAなどを発症する可能性はRF陰性の方よりは若干高いというご説明だけはしています。避難所での関節痛対処(関節リウマチの見分け方)について避難所を回っています。避難所では高齢者は座りっぱなしなので、関節痛を起こしています。単なる関節痛の方が多いとは思いますが、念のため、関節リウマチも念頭にいれて疑ってかかりたいです。自分で調べればよい話ですが、少し余裕がありません。なんかしらのチェックリストがあるとありがたいです。ご教示宜しくお願いします。高齢者に最も多い関節疾患は変形性関節症ですが、もちろん関節症状を訴える患者に関節リウマチ(RA)が含まれているかもしれません。しかしそういった場合には、通常、既にRAと診断された方が多いと思いますので、患者の訴え(既往歴)を聞くのが最も良い方法と思います。避難所で初発例に遭遇する可能性もないとは言えませんが、その場合は極めて早期の発症例ですので、診断はしばしば困難なことがあります。その場合は、チェックリストというよりは、前のご質問にお応えしたようにRA分類基準などを参考に診断することになります。前述しましたように「今日の治療薬2011」(南江堂)のp.298に紹介しております。薬がない関節リウマチ患者の応急対応について現在、薬剤を取り寄せてはいますが、薬が不足しています。薬がないからあきらめろとは言えません。薬がくるまでの間にできることはあるのでしょうか?私はリウマチ専門外です。アドバイスいただけると幸いです。関節症状が非常に強いときには原則として関節局所の安静を取る必要があります。ただし、あまり長く(数日間でも)極端な安静が続きますと筋力が低下し、動きが悪くなります。当然、長期的には関節可動域が減少してしまいます。そのため、痛い中でも若干は動かして関節可動域を保つことが必要ですが、その場合は「翌日痛みが増すようなら動かし過ぎ」という判断が宜しいように思います。なお、最近のRA治療は抗リウマチ薬が中心ではありますが、適切な効果・副作用モニタリングができる環境がなければ、投与はし難い薬です。薬がなければ仕方がないですが、ステロイドやNSAIDが手に入るようになりましたら、低用量のステロイド(プレドニゾロンでなるべく5 mg/日以下が望ましい)やNSAID(消化管潰瘍の既往がある方や高齢者ではプロトンポンプ阻害薬などを併用)で当面の痛みのコントロールをする方が安全かもしれません。もちろん、その後十分な環境が整えば、抗リウマチ薬を併用してステロイドとNSAIDは減量・中止を目指すことになります。皮膚科との連携私は大学病院で皮膚科医をしています。皮膚科でも膠原病の患者さんを診察することが多いです。膠原病は全身症状を合併することが多いため、治療はほぼ膠原病内科医にお任せしているのが現状です。皮膚科医として治療に参画できないのが非常にジレンマで、膠原病内科を勉強するために国内留学も考えたぐらいでした。膠原病内科医が皮膚科医に求める要素を教えてください。同じ疾患を違う専門家が診るのは非常に大事で、内科医の視点と皮膚科医の視点とは違うことがあります。例えば、臓器障害があるような例ではご指摘のように治療は内科が担当するかもしれませんが、皮膚科医の視点は内科医にとって非常に参考になりますので、病理所見も含めた皮膚所見のプロの視点を内科医にご教示いただければと存じます。もちろん、皮膚科の先生の内科での研修は膠原病内科の立場からは大歓迎です。併用についてメトトレキサート 使用時のステロイド NSAIDの併用について教えてください。メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ(RA)の基本的な治療薬ですので、ステロイドやNSAIDと併用される可能性は高いと思います。まず、ステロイドとは直接の薬物相互作用は知られていませんが、共に免疫抑制作用がありますので、両者の併用は単独よりは感染症が増加する可能性が考えられます。ただ、実際には大きな問題は生じません。一方、NSAIDとMTXの併用は、特にMTXの高用量を使用する治療では相互作用が指摘されています。NSAIDは腎血流量を減少させますので、両者の併用によりMTXの腎排泄が遅れ、血中濃度が高くなって骨髄抑制などの副作用を合併しやすくなるからです。ただ、RAにおけるMTX療法は週1-2日だけ、しかも少量投与です。その用法・用量範囲内では、仮にNSAID常用量を連日投与したとしても、明らかなMTXの副作用増加はみられないとされています。そうではありますが、NSAIDは既にRA治療に必須の治療薬ではなく、症状の緩和にのみ使われる対症療法薬という概念になっています。仮にMTXで十分な効果が得られた場合、最初に減量・中止すべきはNSAIDであると考えて治療に当たるべきと思います。若年性関節リウマチと成長痛との見分け方について町医者をやっている者です。専門は内科医ですが、小さな町なので幅広い症状をみています。特に中学生ですが、「成長痛」を訴えてくることが多々あります。昨年、少し様子がおかしい子がいたので、県立病院のリウマチ専門医を紹介して診てもらったところ、若年性関節リウマチと診断されました。それ以来、関節痛を訴えてくる中学生には、念のため、朝のこわばりはないか?聞くようにはしていますが、他に診察時に気をつけてみておいた方が良いことはありますでしょうか?ご教示お願いします。若年性関節リウマチ(JRA)は、最近ではより広い概念である若年性特発性関節炎(JIA)と呼ばれるようになりました。JIAは臨床所見でいくつかの群に分類され、治療法や予後などが異なっています。成長痛などと異なる診察時の特徴は、やはり明らかな関節腫脹が数週間持続することでしょう。中には発熱などの全身症状の強く出る患児もいます。血液検査をすれば、赤沈値や血清CRP濃度の増加などの全身性炎症所見がみられます。それらの所見からJIAが疑われたら、早い時期に先生がされたようにご専門の小児科医に紹介されるのが宜しいかと存じます。なお、リウマトイド因子は陰性であることが多いのですが、陽性の患児もいますので、JIAか否かの診断には役立ちません。関節リウマチの治療とリハビリについて関節リウマチの治療とリハビリについて教えてください。症状によって個人差はあるかと思いますが、一般的に「週に何回くらい診察があるのか?」「週に何回くらいリハビリを行うのか?」を知りたいと思っております。基本的な質問で恐縮ですが、最近田舎でクリニックを始めたばかりなので……。患者に聞かれて困っています。(ずっと大学にいました。一歩外に出ると専門外は何も分からないことに今更気づきました。。お恥ずかしい限りです。)メトトレキサート(MTX)などの抗リウマチ薬を開始する場合は、私はまず2~4週毎の受診を患者に勧めます。もちろん、次の診察日前に何か副作用が疑われる症状を自覚したら、必ず予約外でも受診するようにも説明しています。その後症状が安定し、治療薬も変える必要がなくなったら、症状や薬によって若干違いますが1~3か月毎に診察しています。来院時には必ず採血や検尿で副作用や効果をモニタリングすることが重要で、我々の病院では診察前の採血および検尿結果をチェックしながら診察し、診察所見と検査結果に問題ないようなら治療を継続するようにしています。クリニックなどで当日の検査結果が得られない場合は診察のみで方針を決定するしかありませんが、その場合でも検査会社から例えば翌日検査結果が送られてきたら、なるべく早く内容をチェックし、好中球減少や肝機能障害などを調べる必要があります。心配な結果があれば患者に電話などで連絡し、臨時の受診をお勧めするなどの対策を取った方が安全です。リハビリについては決まった方法はありません。一般には自宅でのリウマチ体操をお勧めしていますが、Webなどで参照できますのでご確認ください。ここでは、公益財団法人日本リウマチ財団のホームページ (http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/taisou/taisou.html) を紹介いたします。もちろん専用のリハビリ施設をお持ちでリハビリ指導を積極的にされている施設もあり、そこでは症状に応じて週1~5回の外来指導が行われていることが多いと思います。さらに、入院でリハビリ治療を積極的に行っている病院もございます。 早期リウマチのMMP-3抗CCP抗体、CARF高値でMMP-3正常の早期リウマチではまだ関節滑膜の変化が少ない時期と考えてよろしいでしょうか。血液検査値だけでは関節滑膜の状態を判断することはできません。まずは、早期でも変化があることがあるのでレントゲン検査で骨・軟骨変化を診るのが基本と思います。さらに最近では超音波、ときにMRIなどで形態的な変化を診ることにより、総合して滑膜や骨・軟骨の変化を診断すべきと思います。早期リウマチの治療若い女性(22歳)、朝のこわばり(これは1時間以上)、両手指の第2,3PIPに痛みあります。検査は抗CCP抗体陽性、MMP-3やCRPは軽度上昇。最初に行う治療を教えてください。まず関節症状が痛みだけではなく腫れがあるかどうかを診察で確認します。ご質問には罹病期間の記載がありませんが、症状が1週間以内でしたら、私ならNSAIDを投与して経過をみます。明らかな腫れが2週間以上続いているようでしたら、重症度にもよりますが、サラゾスルファピリジン(SASP)を試みることもあります。関節腫脹や疼痛がかなり強いようでしたら最初からメトトレキサート(MTX)を始めることもありますが、妊娠を希望されている方には使えませんので、特に22歳という若い患者ではその点は十分に聞く必要があります。なお、MTXの胎児毒性は妊娠前に3か月の休薬をすることで回避できると言われています。仮に、MTX治療を開始後に患者が妊娠を希望されたら、MTXを中止してもその後3か月は避妊するように指導します。総括RA治療薬は最近の進歩が著しいので、治療に困ったらなるべく早く専門医に相談された方が良いように思います。また、RAと鑑別すべき類縁疾患は少なくありません。その意味では、診断に迷う患者についても、早い時期に専門医に相談されることをお勧めします。教授 川合眞一先生「関節リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした生物学的製剤」

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院外心肺停止のバイスタンダー心肺蘇生、人工呼吸併用の従来法で良好なアウトカム

 その場に居合わせた者(バイスタンダー)が行う人工呼吸+胸骨圧迫による心肺蘇生(CPR)は、胸骨圧迫単独によるCPRに比べて良好なアウトカムをもたらすことが、奈良県立医科大学健康政策医学講座の小川俊夫氏らが行った観察試験で示された。バイスタンダーによる救急救命処置としては、現在、胸骨圧迫単独によるCPRが唯一の方法として普及しているが、院外心肺停止患者では従来のマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸と胸骨圧迫を併用するCPRとの効果の差は明確でないという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月27日号)掲載の報告。約4万例を対象とした日本の全国的な観察試験  研究グループは、院外心肺停止患者に対する胸骨圧迫単独によるCPRと、従来のマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸+胸骨圧迫によるCPRの有用性を比較する日本全国規模の地域住民ベースの観察試験を実施した。2005年1月~2007年12月までに院外で倒れ、適格基準を満たした患者10万1,781例のうち、バイスタンダーCPRが施行されなかった患者(5万6,851例)などを除く4万35例が解析の対象となった。胸骨圧迫単独群に2万707例が、人工呼吸+胸骨圧迫群には1万9,328例が割り付けられ、救急車で病院に搬送された。 主要評価項目は、より良好なアウトカムの関連因子としての1ヵ月生存率および良好な神経機能(正常な脳機能あるいは中等度の脳機能障害)を保持した1ヵ月生存率であった。1ヵ月生存率:8.7%vs. 10.3%、神経機能保持1ヵ月生存率:4.6%vs. 5.6% 人工呼吸+胸骨圧迫群は胸骨圧迫単独群に比べ、1ヵ月生存率(8.7%vs. 10.3%、調整オッズ比:1.17、95%信頼区間:1.06~1.29、p=0.002)および良好な神経機能を保持した1ヵ月生存率(4.6%vs. 5.6%、同:1.17、同:1.01~1.35、p=0.037)がいずれも有意に優れていた。 両群ともに、良好な神経機能を保持した1ヵ月生存率は高齢になるほど低下し、CPR開始の遅れが10分までの間は時間の経過とともに低下した。心停止の原因が心臓以外の場合、人工呼吸+胸骨圧迫群における良好な神経機能を保持した1ヵ月生存率は、より若年の患者で有意に大きく(p=0.025)、CPR開始時間が遅くなるほど有意に上昇(p=0.015)した。心停止の原因が心臓の患者では、両群間でCPR開始時間によるベネフィットの差は認めなかった(p=0.369)。 著者は、「従来の人工呼吸+胸骨圧迫によるCPRは、院外心肺停止のうち、心臓以外の原因で心停止を来した若年患者およびCPR開始が遅れた患者において、胸骨圧迫単独によるCPRに比べて良好なアウトカムをもたらした」と結論している。

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心房細動患者のリスク層別化にはCHA2DS2-VAScスコアの方が優れる

心房細動患者のリスク層別化に、CHA2DS2-VAScスコアがCHADS2スコアよりも優れることが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院循環器部門のJonas Bjerring Olesen氏らが、デンマーク国内登録心房細動患者データをベースにコホート研究を行った結果による。CHADS2スコアは脳卒中リスクの層別化に最もよく用いられてきたが、その限界も指摘され、2006年以降のACC・AHA・ESC各ガイドラインでは、その他リスク因子を加味することが示され、その後エビデンスが蓄積しCHA2DS2-VAScスコアとして示されるようになっていたという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月31日号)掲載の報告より。7万3,538例を対象に、CHADS2とCHA2DS2-VAScの血栓塞栓症の予測能を評価研究グループは、CHADS2スコアのリスク因子(うっ血性心不全、高血圧、≧75歳、糖尿病、脳卒中既往)と、CHA2DS2-VAScスコアのリスク因子(CHADS2因子に加えて、血管系疾患、65~74歳、性別、また75歳以上で脳卒中既往の場合はリスクの重みづけを倍加する)を評価し、いずれが血栓塞栓症の予測能に優れるシェーマかを検証することを目的とした。対象とした被験者は、1997~2006年にデンマーク国内データベースに登録された、ビタミンK拮抗薬を服用していなかった心房細動患者で、非弁膜症性心房細動患者12万1,280例のうち、適格であった7万3,538例(60.6%)を対象に検証を行った。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓症であった。10年追跡時点のC統計量、CHADS2スコア0.812、CHA2DS2-VAScスコア0.888低リスク群(スコア0)における1年追跡時点での血栓塞栓症発生率は100人・年当たり、CHADS2では1.67(95%信頼区間:1.47~1.89)であったのに対し、CHA2DS2-VAScでは0.78(同:0.58~1.04)であった。中等度リスク群(スコア1)においては、同CHADS2スコアでは4.75(95%信頼区間:4.45~5.07)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアでは2.01(同:1.70~2.36)だった。これら発生率について示されたパターンは5年、10年追跡時点でも同様の結果が示された。また高リスク群はいずれのスコアも同じように、低・中等度リスク群よりも著しく高率な血栓塞栓症の発生を示した。血栓塞栓症の発生率は、スコアを構成しているリスク因子に依り、また両スコアとも血栓塞栓症イベントの既往に関連するリスクは過小に評価することが認められたという。低・中・高の各リスク群に層別化された患者の10年追跡時点でのC統計量は、CHADS2スコアが0.812(95%信頼区間:0.796~0.827)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアは0.888(同:0.875~0.900)であった。

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「iNPH診療による介護費用削減の研究」結果発表

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーは8日、洛和会音羽病院正常圧水頭症センター所長 石川正恒氏と共同で『特発性正常圧水頭症(iNPH)』(以下、iNPH)診療における介護保険の削減額を試算したところ、対象患者100名の介護保険の利用額が支給限度額であった場合、削減額は1億4,762万円となり、有病率で試算すると5年間で約4,576億円削減の可能性を見込めることがわかったと報告した。iNPHは、頭蓋内に過剰に髄液がたまり、脳が圧迫を受けて歩行障害・認知症・尿失禁など様々な症状が出る病気だが、手術で改善する疾患として近年注目を浴びている。また、高齢者認知症の5%~10%がiNPHに関与し、少なくとも31万人が罹患の可能性があるとされている(同社、2009年8 月の「iNPH有病率に関する分析調査」による)。同社では、iNPH疾患の早期診断と治療が、患者や介護者の方々のQOL(Quality of Life)と負担軽減になるばかりでなく、経済的にも大きく寄与すると考え、今回の調査を実施したという。今回の調査は、前方視的多施設共同研究(SINPHONI:Study of Idiopathic Normal-Pressure Hydrocephalus On Neurological Improvement)の対象患者100名について、治療による介護度の改善によって5年間で介護保険費用をいくら削減することが可能かを試算したもの。iNPH診療後のモディファイド・ランキン・スケール(mRS)と要介護度区分を相関させ、iNPH診療における改善度による介護保険削減額を算出した結果、対象患者が介護保険支給限度額を利用した場合に治療費用を含めても5年間でおよそ4,576億2,200万円の削減が可能と推測することができたとのこと。また、介護保険の認定率が16%、受給率が82.3%、利用率が48%として、現時点で実質約300億円規模の介護保険の削減が可能であると予測するという。詳細はこちらへhttp://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/2011/0208/index.html

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漢方の活用法をわかりやすく!「漢方体験.com」がオープン

イスクラ産業株式会社は15日、漢方を利用した人の漢方体験レビューが閲覧できるサイト「漢方体験.com(かんぽうたいけんドットコム)」(http://www.kanpo-taiken.com)のベータ版をオープンしたと発表した。漢方体験.comでは、新商品レビューなどを紹介する一般的な商品レビューサイトとは異なり、「冷え」「生理の悩み」など、8つのカテゴリー別に検索し、体験をユーザーの皆様同士で共有できる。 たとえば「冷えの症状」と言っても、その原因は、体質、生活習慣、そして季節や気候など、様々な要因が影響している場合も多く、個々に合った薬や生活面の改善点も様々である。同サイト上では、そういった十人十色な漢方体験をユーザーから投稿してもらい、今まで漢方になじみのない人にも、漢方についての情報や、漢方を活用した体のケア方法などの情報収集に役立ててもらえるサイトを目指すとのこと。さらに、実際に薬局・薬店でカウンセリングを希望する人のための店舗検索や、初めての人にもイメージがわきやすい動画付き店舗情報の他、同社のマスコット「ニーハオ・シンシン」がつぶやくツイッターとも連動し、よりリアルタイムな情報も発信している。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://prtimes.jp/data/corp/2886/fc3ace52e5ad0c7b4acee9ad511358c6.pdf

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CRP濃度は、スタチンの血管ベネフィットに影響しない:HPS試験サブ解析

ベースラインのC反応性蛋白(CRP)濃度はシンバスタチン(商品名:リポバスなど)治療の血管ベネフィットに影響を及ぼさないことが、Heart Protection Study(HPS)の研究グループが行ったサブグループ解析で示された。CRP濃度に基づく炎症状態はスタチン治療の血管保護効果に影響を及ぼすことが示唆されている。特に、CRP濃度が高い患者はスタチンのベネフィットがより高く、CRPとLDLコレステロール値がいずれも低値の場合は、スタチンは無効との見解もあるという。Lancet誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月28日号)掲載の報告。約2万人をCRP濃度で6群に分類HPS試験は、血管イベントの発生リスクが高い患者に対するスタチン治療の有用性を評価するプラセボ対照無作為化試験。今回、研究グループは、スタチン治療の効果はベースラインのCRP濃度によって異なるとの仮説を検証するサブグループ解析を行った。1994~1997年までにイギリスの69施設から冠動脈疾患、冠動脈以外の血管の閉塞性疾患、糖尿病、降圧薬治療の既往歴のある40~80歳の2万536人が登録され、平均5年間シンバスタチン40mg/日を投与する群(1万269例)あるいはプラセボ群(1万267例)に無作為に割り付けられた。患者は、ベースラインのCRP濃度によって6つの群(<1.25、1.25~1.99、2.00~2.99、3.00~4.99、5.00~7.99、≧8.00mg/L)に分類された。主要評価項目は、重篤な血管イベント(冠動脈死、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合エンドポイント)であった。CRP濃度が最低のグループでもスタチン群が有意に良好無作為割り付け後の重篤な血管イベントの発生率は、シンバスタチン群が19.8%(2,033例)と、プラセボ群の25.2%(2,585例)に比べ相対的に24%(95%信頼区間:19~28)低下した。ベースラインのCRP濃度に比例して複合エンドポイントおよび個々の構成因子の低下率が変化するとのエビデンスは得られなかった(傾向検定:p=0.41)。ベースラインのCRP濃度が<1.25mg/Lの患者においても、重篤な血管イベントはシンバスタチン群[14.1%(239例)]がプラセボ群[19.4%(329例)]よりも有意に29%(99%信頼区間:12~43、p<0.0001)低下した。ベースラインのLDLコレステロール値とCRP濃度の高低の組み合わせで定義された4つのサブグループ間で、相対リスク低下率の不均一性に有意な差を認めなかった(p=0.72)。特に、低LDLコレステロール値/低CRP濃度のグループでは、シンバスタチン群[15.6%(295例)]がプラセボ群[20.9%(400例)]に比べ有意に27%(99%信頼区間:11~40、p<0.0001)低下した。著者は、「この大規模無作為化試験のエビデンスは、ベースラインのCRP濃度がスタチン治療による血管ベネフィットに実質的な影響を及ぼすとの仮説を支持しない」と結論し、「この知見は他のスタチンにも広範に一般化可能と推察される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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変異型クロイツフェルト・ヤコブ病診断、有望な血液検査法を開発

 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の診断のための血液検査法が、イギリス・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン神経学研究所のJulie Ann Edgeworth氏らによって開発され、今回、その有用性が確認された。vCJDは牛海綿状脳症様プリオンの曝露に起因する致死的な神経変性疾患で、プリオン感染後は長期の臨床的に無症状な潜伏期間がある。無症候性のプリオン感染者数は把握されておらず、輸血、血液製剤、臓器や組織の移植片、汚染された医療機器を介する他者への感染リスクが懸念されている。Lancet誌2011年2月5日号(オンライン版2011年2月3日号)掲載の報告。正常対照100人を含む190人の血液サンプルを分析 研究グループは、vCJDプリオン感染を検出する血液検査法を開発し、その感度および特異度を確認するための検討を行った。 190人の血液サンプル(vCJD 21例、散発性CJD 27例、他の神経疾患42例、正常対照100人)のパネルを用いて、内因性vCJDの検出の感度および特異度を分析した。 血液サンプルは盲検化されて個々に番号が付され、2回ずつの検査が行われた。2回の検査ともに反応がみられたサンプルのみを陽性とした。感度:71.4%、特異度:100% 10(−10)に希釈された内因性vCJDプリオン感染脳の化学発光シグナルの平均値が1.3×10(5)[SD 1.1×10(4)]であったのに対し、10(−6)希釈正常脳は9.9×10(4)[SD 4.5×10(3)]であり、両者は明確に識別が可能であった(p<0.0001)。 15サンプルが陽性と判定された。そのすべてがvCJD例のサンプルであり、本検査法の感度は71.4%(95%信頼区間:47.8~88.7)、特異度は100%(同:97.8~100)であった。 著者は、「本法は、症状のみられる患者のvCJD診断における血液検査のプロトタイプであり、無症候性のvCJDプリオン感染の大規模なスクリーニング法の開発につながる可能性がある」と結論している。

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乳がん患者のセンチネルリンパ節における潜在性転移の有無と臨床転帰との関連

潜在性リンパ節転移が、乳がん患者の再発あるいは生存期間の重要な予後因子であることは、後ろ向き研究や観察研究で示唆されているが、これまで、センチネルリンパ節における潜在性転移と臨床転帰の関連について、前向きに検討した無作為化試験のデータはなかった。米国バーモント医科大学のDonald L. Weaver氏らは、5,611例の乳がん女性を、センチネルリンパ節生検+腋窩郭清群と、センチネルリンパ節生検単独群に無作為に割り付け全生存率などに関する両群の同等性を検証した試験「NSABP試験B-32」のコホート解析を行い、潜在性転移の臨床的重要性について評価を行った。NEJM誌2011年2月3日号(オンライン版2011年1月19日号)掲載より。センチネルリンパ節生検陰性例の潜在性転移例は15.9%試験では、各群に割り付けられた被験者のうち、初回検査で病理学的にセンチネルリンパ節陰性と判定された被験者3,989例(71.1%)は、センチネルリンパ節のパラフィン包埋組織ブロックを中央に集約し、組織ブロックのより深部の潜在性転移の有無についての追加的評価が行われた。組織ブロックが入手できたのは3,887 例。組織上の十分に距離を置いた2ヵ所で、サイトケラチンのルーチン染色と免疫組織化学染色の両方が行われた。これら追加的評価の所見は、治療を担当する医師には知らされなかった。そのため臨床的治療の決定に追加的評価の結果は用いられていない。なお本試験では、後ろ向き試験における重大な限界要因である最大径2mm超のマクロ転移例について、初回検査時にすべて検出されるようになっていた。解析の結果、生検で陰性と判定された両群計3,887例のうち、潜在性転移は15.9%(95%信頼区間:14.7~17.1)で検出された。Log-rank検定の結果、潜在性転移が検出された患者と検出されなかった患者との間で、全生存期間(P=0.03)、無病生存期間(P=0.02)、無遠隔転移期間(P=0.04)のいずれにおいても有意差が示された。補正ハザード比は、死亡1.40(95%信頼区間:1.05~1.86)、全転帰イベント1.31(同:1.07~1.60)、遠隔転移1.30(同:1.02~1.66)だった。 陰性例への追加的評価による、転移検出例と非検出例との5年全生存率の差はわずか一方で、Kaplan-Meier推定値で算出した5年全生存率は、潜在性転移が検出された患者は94.6%、検出されなかった患者は95.8%だった。研究グループは、「潜在性転移は、センチネルリンパ節陰性患者の独立予後因子ではある。しかしながら5年時点の転帰の差は1.2ポイントとわずかだった。センチネルリンパ節生検陰性の乳がん患者に対する、免疫組織化学的分析などの追加的評価は臨床的ベネフィットが示されなかった」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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4価HPVワクチンは男性にも有効

 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に対するHPVワクチン接種は、男性に対しても有効で、外性器病変の予防に有効であることが示された。米国H. Lee Moffittがんセンター研究所のAnna R. Giuliano氏らが16~26歳の男性を対象に、女性において持続感染や生殖器疾患に有効な4価ワクチンの有効性を検討した試験の結果による。少年および男性の生殖器HPV感染の割合は女性と同等だが、免疫応答に性差があり、自然感染では男性の方が抗体の力価は低い(HPV血清陽性:女性17.9%、男性7.9%)という。NEJM誌2011年2月3日号掲載より。18ヵ国・16~26歳男性4,065例を対象に無作為プラセボ対照二重盲検試験 Giuliano氏らは、少年および男性における、4価ワクチン(HPV 6型、11型、16型、18型に対して活性)の安全性と、外性器病変と肛門性器HPV感染の予防における有効性について、無作為プラセボ対照二重盲検試験を行った。試験には18ヵ国から、16~26歳の健康な4,065例が登録された。 主要有効性評価項目は、4価HPVワクチンが、HPV 6、11、16、18に関連する外性器病変の発生率低下を示すこととされた。有効性解析は、per-protocol集団(ワクチン接種を3回受けており登録時に関連HPVに非感染)と、intention-to-treat集団(ワクチンもしくはプラセボ接種を受けており、登録時のHPV感染状態は不問)を対象に行われた。intention-to-treat解析における外性器病変への有効率は60.2% intention-to-treat集団における外性器病変の発生率は、ワクチン群36例に対し、プラセボ群は89例で、ワクチン有効率は60.2%(95%信頼区間:40.8~73.8)だった。HPV 6、11、16、18に関連する外性器病変に対する有効率は65.5%(同:45.8~78.6)だった。 per-protocol集団においては、HPV 6、11、16、18に関連する外性器病変に対する有効率は90.4%(同:69.2~98.1)だった。 安全性に関しては、注射部位疼痛が、ワクチン接種群の方がプラセボ群に比べて有意に高頻度に認められた(57%対51%、P<0.001)。

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米国の営利ホスピス、低ケアニーズの患者の割合が高く、利用期間はより長期

米国のホスピス利用者について、営利ホスピスと非営利ホスピスとを比較したところ、営利ホスピスでは、ケアニーズのスキルが低い患者の割合が高く、また利用期間がより長期であることが明らかになった。米国ハーバード大学医学部付属ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター総合医療・プライマリ・ケア部門のMelissa W. Wachterman氏らが、約4,700人のホスピス利用者について調べ明らかにした。調査は、米国の公的高齢者向け医療保険メディケアが、ホスピスに対して定額日払い制の償還をしており、その“特別手当”が集中的ケアの必要がより少ない患者を選んだり、より長期の利用を生み出している可能性を調べるため、また営利、非営利ホスピスにより“特別手当”に関して違いがみられるかを調べるために行われた。JAMA誌2011年2月2日号で発表された。営利ホスピス145ヵ所、非営利ホスピス524ヵ所の利用終了者を調査研究グループは、2007年の全米のホスピスに関する調査「National Home and Hospice Care Survey」の結果を元に、ホスピスを利用し、そのサービスを終了した4,705人について調査を行った。主要評価項目は、利用者の診断名、営利・非営利種別にみたサービス提供の場所(自宅、ナーシングホーム、病院、ホスピス、その他)、利用期間、ホスピスの看護師などによる1日当たりの訪問回数とした。分析の対象となった営利ホスピスは145ヵ所で利用者数は1,087人、非営利ホスピスは524ヵ所で利用者数は3,618人だった。がん患者の割合は営利が34%、非営利が48%利用者の診断名についてみると、がんの診断を受けていたのは、非営利ホスピスが48.4%(95%信頼区間:45.0~51.8)だったのに対し、営利ホスピスは34.1%(同:29.9~38.6)と低率だった(補正後p

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米国高齢リウマチ患者、DMARDs服用率は63%

米国の公的高齢者向け医療保険メディケアのマネジドケア・プラン加入者で、抗リウマチ薬DMARDsを服用しているのは、リウマチの診断を受けた人の63%であることが明らかにされた。服用率は、性別や人種、社会経済的状況、加入する保険プランによって異なることも明らかにされた。これまでに発表されたDMARDs服用率に関するデータは、社会経済状況が低い層や、単一の保険プラン加入者のみに関するもので、服用率は30~52%程度と報告されていた。米国スタンフォード大学のGabriela Schmajuk氏らは、リウマチ患者全体の実態を把握すべく、2005年に導入され、米国医療保険プランのほとんどが加入し、治療やサービスの質評価の指標として活用する「Healthcare Effectiveness Data and Information Set(HEDIS)」のデータを用いて分析を行い、JAMA誌2011年2月2日号で発表した。DMARDs服用率は年々増加の傾向、85歳以上は65~69歳より30ポイント低い研究グループは、65歳以上のメディケア・マネジドケアプラン加入者で、2005~2008年に関節リウマチの診断を2回以上受けた、9万3,143人について調査を行った。被験者の平均年齢は74歳で、うち75%が女性、82%が白人だった。DMARDs服用率は、2005年の59%から、2008年には67%に増加していた(傾向p<0.001)。全体(2005~2008年)では、DMARDs服用率は63%だった。服用率は年齢により差がみられ、高齢になるほど服用率は減少した。85歳以上では、65~69歳の人に比べ、補正後-30ポイント(95%信頼区間:-29~-32)だった(p<0.001)。男性は3ポイント、低所得者は6ポイント低いまた、男性は女性よりも服用率が-3ポイント(同:-5~-2、p<0.001)、黒人は白人よりも-4ポイント(同:-6~-2、p<0.001)、低所得者は非低所得者よりも-6ポイント(同:-8~-5、p<0.001)、郵便番号を基準にした社会経済状況(5段階に分類)が低層の人は高層の人よりも-4ポイント(同:-6~2、p<0.001)、また加入保険プランが営利の入は非営利の人よりも-4ポイント(同:-7~0、p<0.001)それぞれ低かった。地理的傾向では、太平洋沿岸地域と比べて大西洋中部沿岸地域が-7ポイント(同:-13~-2、p<0.001)、大西洋南部沿岸地域が-11ポイント(同:-20~-3、p<0.001)と低かった。被験者が加入する保険プラン(245プラン)別に分析した結果では、服用率が16~87%と大きなばらつきが認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ビタミンDサプリメントは健常小児の骨密度を改善するか?

ビタミンDサプリメントは、ビタミンDが正常レベルの小児、青少年の骨密度にベネフィットをもたらさないが、欠乏している場合は一定の改善効果が得られることが、オーストラリア・タスマニア大学のTania Winzenberg氏らが行ったメタ解析で明らかとなった。ビタミンDの欠乏はごく一般的にみられる状態だが、小児における潜在的なビタミンD欠乏は骨に悪影響を及ぼす可能性があるという。これまでの小児や青少年を対象としたビタミンDサプリメントの無作為化対照比較試験では、相反する結果が報告されている。BMJ誌2011年1月29日号(オンライン版2011年1月25日号)掲載の報告。ビタミンDサプリメントのプラセボ対照無作為化試験のメタ解析研究グループは、小児、青少年の骨密度に及ぼすビタミンDサプリメントの効果を検討し、用量などの因子による効果の変動について評価する系統的レビューとメタ解析を行った。Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embase などのデータベース(最終アップデート2009年8月)や主要専門誌に掲載された学会抄録を検索し、生後1ヵ月から20歳未満までの健常小児、青少年を対象に、ビタミンDサプリメントを3ヵ月以上投与して骨密度のアウトカムを評価したプラセボ対照無作為化試験を抽出した。2名の研究者が別個に試験の質やデータの評価を行った。両群の前腕、股関節、腰椎の骨密度および全身骨塩量のベースラインからの変化率の標準化平均差を算出し、性別、思春期ステージ、ビタミンDの用量、ベースラインの血清ビタミンD濃度に関するサブグループ解析を行った。コンプライアンスや割り付けの隠蔵も、異質性の原因となる可能性がある因子として考慮された。ビタミンD欠乏者には一定の効果抽出された1,653試験の中から選択基準を満たした6試験がメタ解析の対象となった(プラセボ群343例、ビタミンD群541例)。全身骨塩量、股関節・前腕の骨密度に対するビタミンDの有意な効果はみられなかった。腰椎の骨密度に対しては、わずかに有効な傾向が認められた(標準化平均差:0.15、95%信頼区間:−0.01~0.31、p=0.07)。血清ビタミンD濃度別の比較では、高値例と低値例で効果は同等であったが、全身骨塩量については低値例で効果が大きい傾向がみられた(差の検定:p=0.09)。血清ビタミンD濃度低値例では、全身骨塩量と腰椎骨密度に対するビタミンDの有意でおおよそ同等な効果を認めた(ビタミンD群におけるベースラインからの変化率:全身骨塩量2.6%、腰椎骨密度1.7%)。著者は、「ビタミンDサプリメントは、ビタミンDが正常レベルの小児、青少年の骨密度にベネフィットをもたらす傾向は認めなかった」と結論し、「事前に計画されたベースラインの血清ビタミンD濃度によるサブグループ解析では、ビタミンDが欠乏した小児、青少年において、サプリメントは特に腰椎骨密度と全身骨塩量に対する臨床的な改善効果を示したが、これについてはさらなる検証が求められる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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脂質モニタリングによる服薬不履行の検出

コレステロール値のモニタリングは、プラバスタチン(商品名:メバロチンなど)治療における完全服薬不履行(complete non-adherence)の検出にある程度は有効だが、部分的服薬不履行(partial non-adherence)の検出能は劣ることが、オーストラリア・シドニー大学のKaty J L Bell氏らの検討で示された。脂質低下薬の服薬遵守(adherence)には患者間にばらつきがみられる。ガイドラインでは、コレステロール値をモニターすることで服薬不履行を評価するよう勧告しているが、脂質モニタリングによる服薬不履行の検出能は不明だという。BMJ誌2011年1月29日号(オンライン版2011年1月21日号)掲載の報告。LIPID試験のデータを用いた解析研究グループは、脂質低下薬治療の服薬不履行の検出におけるコレステロール値モニタリングの正確度(accuracy)を評価するために、服薬不履行に関する三つの評価項目(治療中止、プラセボ群への割り付け、処方薬の服薬率80%未満)を用いて、LIPID(long term intervention with pravastatin in ischaemic disease)試験のコレステロール値に関する2回目の解析を行った。オーストラリアとニュージーランドで実施されたLIPID試験は、冠動脈心疾患の既往歴を有し、総コレステロール値が4.0~7.0mmol/L(≒154.8~270.9mg/dL)の9,014人を対象にプラバスタチン40mg/日とプラセボの有用性を比較する無作為化試験。今回の解析の主要評価項目は、コレステロール値のモニタリングによる服薬不履行検出の感度、特異度、受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)、検査後確率であった。あくまで補助データとして考慮すべきコレステロール値のモニタリングにより、完全服薬不履行がある程度は検出可能であった。治療開始1年の時点で、完全服薬不履行者の50%(1,957/3,937人)、服薬遵守者の6%(253/3,944人)においてLDLコレステロール値が上昇しており、中等度の正確度が得られた(AUC:0.89)。一方、部分的服薬不履行の検出能は低かった。治療1年後にLDLコレステロール値の上昇がみられたのは、部分的服薬不履行者の16%(34/213人)、服薬遵守者では4%(155/3,585人)にすぎず、正確度は劣っていた(AUC:0.65)。服薬不履行の典型的な検査前確率が低(25%)~高(75%)の範囲であったのに対し、脂質測定後の検査後確率については不確定性が持続することが示された。すなわち、LDLコレステロール値に変化がみられない場合、完全服薬不履行者の検査後確率は67~95%で、部分的服薬不履行者では48~89%であった。LDLコレステロール値が1.0mmol/L(≒38.7mg/dL)低下した場合は、完全服薬不履行者の検査後確率は7~40%、部分的服薬不履行者では21~71%であった。著者は、「LDLコレステロール値(あるいは総コレステロール値)のモニタリングは、プラバスタチン治療における完全服薬不履行あるいは服薬中止の検出に中等度の有効性を示したが、部分的服薬不履行の検出能は劣っていた」と結論し、「モニタリングの結果は、患者の服薬遵守状況を慎重に検討する際の補助データとしてのみ考慮すべきであろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ダイエットは自己啓発化の兆し?ダイエットに成功した減量値は、-4.8kg!?

サッポロ飲料株式会社は1月31日、20歳~49歳の男女1030名(男性:412名、女性:618名)を対象に実施した「ダイエットに関するアンケート」の結果を発表した。その結果、女性の7割が、ふくよかな人に対して言う「ぽっちゃり」という言葉を悪口であると認識していることがわかった。「ぽっちゃり」は、もともと「ふっくらとしていて愛らしいさま」(出典:デジタル大辞泉)を表現したほめ言葉だが、現代の女性は、「ぽっちゃり」であることに否定的なイメージを持っているようだという。また、女性・男性ともに、ダイエットできないと他のことも成功できないと考えていることがわかり、ダイエットの実践には、“自己啓発”的な側面がみられた。ダイエットの成功要因として、食事・間食の制限や継続した運動など自己を管理することで重要であると多くの人が認識しており、ダイエットが成功できないのは自己管理能力の欠如であると考えているようだという。つまり、自己管理できないのであれば、他のことに挑戦したとしても成功できないと考えているようだ。これらの結果から現代女性の多くが、やせて・細く見られたいという思いが大きいことがわかるとともに、ダイエットという一つの行動が、自身の能力を計る上で、とても重要なことであると考えていることがわかったという。さらに、女性でダイエットに成功(減量に成功した後も、リバウンドせず体重をキープ)した人の減量値は、平均で4.8kgだということもわかったとのこと。詳細はこちらへhttp://www.sapporo-inryo.jp/news_release/0000020032/index.html

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動脈硬化と心筋梗塞を促進する新たな遺伝子座を同定

冠動脈硬化発生の促進因子としてADAMTS7遺伝子座が、また冠動脈硬化存在下における心筋梗塞発症の促進因子としてABO遺伝子座が新たに同定された。アメリカ・ペンシルベニア大学循環器研究所のMuredach P Reilly氏らの検討による。冠動脈疾患(CAD)や心筋梗塞の遺伝子的構造が解明されれば、リスク予測の改善や治療法の開発によって大きなベネフィットが得られる可能性がある。最近のゲノムワイド関連解析(GWAS)では、これらの疾患に関連する新たな遺伝子座が同定されているが、遺伝的素因に関連するものは少ないという。Lancet誌2011年1月29日号(オンライン版2011年1月15日号)掲載の報告。二つのゲノムワイド関連解析で評価研究グループは、遺伝的因子と冠動脈硬化の発生、および冠動脈硬化の存在下における心筋梗塞の発症との関連を評価する二つのGWASを実施した。PennCathおよびMedStarに登録されたヨーロッパ系人種の患者を対象に、冠動脈造影上のCAD患者を同定した。遺伝子情報は、ヒトゲノムの遺伝子マーカー検査で遺伝子型が判明している患者から収集した。遺伝子マーカーと遺伝子型の関連を検出し、感受性遺伝子マップを作成した。CADの発症と関連する遺伝子座を同定するために、CAD患者1万2,393例と非CADの対照群7,383例について比較した。心筋梗塞を促進する遺伝子座の同定には、CADで心筋梗塞を発症した患者5,783例とCADで非心筋梗塞の患者3,644例を比較した。リスク評価の個別化や治療法の開発に役立つ可能性もCAD患者と非CAD患者の比較では、CADと有意な関連を示す新たな遺伝子座としてADAMTS7遺伝子が同定された。心筋梗塞を併発したCAD患者と非心筋梗塞CAD患者の比較では、ABO遺伝子座が心筋梗塞関連遺伝子として新たに同定された。ABO遺伝子と心筋梗塞の関連は、ABO式血液型O型の遺伝子型をコードするglycotransferase-deficient enzymeに起因していたが、この酵素は以前、心筋梗塞に対し保護的に作用することが示唆されていた。著者は、「特定の遺伝的素因が、冠動脈硬化の発生や、冠動脈硬化からの心筋梗塞の発症を促進していることが示唆された」と結論し、「これらの新規遺伝子座は、CADのリスク評価の個別化や新たな治療法の開発に役立つ可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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トロンボポエチン受容体作動薬eltrombopag、特発性血小板減少性紫斑病に有用

eltrombopagは、慢性免疫性血小板減少(特発性血小板減少性紫斑病:ITP)の管理に有用であり、特に脾臓摘出などの治療に反応しなかった患者にベネフィットをもたらす可能性があることが、中国・香港中文大学のGregory Cheng氏らによる検討で明らかとなった。ITPでは、抗血小板抗体によって血小板の破壊が増進されるとともに巨核球からの血小板の放出が抑制されるため、軽度~重度の出血をきたす。eltrombopagは経口投与が可能な小分子の非ペプチド性トロンボポエチン受容体作動薬で、ITPのほかC型肝炎やがんの化学療法に伴う血小板減少の治療に使用されている。Lancet誌2011年1月29日号(オンライン版2010年8月24日号)掲載の報告。6ヵ月治療のプラセボ対照無作為化第III相試験研究グループは、ITPに対するeltrombopagとプラセボの効果、安全性を評価する二重盲検無作為化第III相試験を実施した。対象は、6ヵ月間以上の治療を受け、ベースラインの血小板数が<30,000/μLの成人ITP患者。これらの患者が、各国の標準治療+eltrombopag 50mg/日を投与する群あるいは標準治療+プラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、6ヵ月間の治療が行われた。患者、医師、データの評価者には治療割り付け情報は知らされなかった。用量は治療への反応としての血小板数の変動に基づいて調節した。治療への反応(血小板数:5万~40万/μLと定義)は、最初の6週間は毎週1回、その後は少なくとも4週に1回評価した。主要評価項目は、上記の定義による治療への反応とし、intention-to-treat解析を行った。血小板数が増加、レスキュー治療や重度出血は減少2006年11月22日~2007年7月31日までに23ヵ国75施設から197例が登録され、eltrombopag群に135例が、プラセボ群には62例が割り付けられた。治療期間中に1回以上の治療への反応が確認された患者は、eltrombopag群が79%(106例)、プラセボ群は28%(17例)であり、オッズ比は8.2(95%信頼区間:3.59~18.73)と有意な差が認められた(p<0.0001)。併用された標準治療の減量が可能となったのは、eltrombopag群の59%(37例)に対しプラセボ群は32%(10例)であり、有意差がみられた(p=0.016)。治療期間中にレスキュー治療(用量の増量、新たな治療の追加、血小板輸血、脾臓摘出)を要した患者は、eltrombopag群が18%(24例)と、プラセボ群の40%(25例)に比べ有意に良好であった(p=0.001)。血栓塞栓イベントは、eltrombopag群の2%(3例)にみられたが、プラセボ群では認められなかった。ALT値の軽度上昇がeltrombopag群の7%(9例)、プラセボ群の3%(2例)に、総ビリルビン値の上昇がeltrombopag群の4%(5例)に認められた(プラセボ群は0%)。重度出血イベントは、eltrombopag群が<1%(1例)であったのに対し、プラセボ群は7%(4例)で発生した。著者は、「eltrombopagはITPの管理に有用であり、特に脾臓摘出などの治療に反応しなかった患者にベネフィットをもたらす可能性がある」と結論した上で、「これらのベネフィットを選択する場合は、eltrombopag治療に伴う潜在的なリスクとのバランスを十分に考慮して決めるべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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血液透析後のヘパリンロック、3回のうち1回はrt-PAを

血液透析患者の透析終了後に行われるいわゆるヘパリンロックについて、週3回のうち1回は、遺伝子組み換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)に代えて行う方が、ブラッドアクセスとして使用する中心静脈カテーテルの故障(機能不全)や菌血症のリスクを有意に減少することが明らかになった。カナダ・カルガリー大学のBrenda R. Hemmelgarn氏ら「PreCLOT」研究グループが、多施設共同無作為化盲検比較試験を行い明らかにしたもので、NEJM誌2011年1月27日号で発表された。これまで、ヘパリンロックなど各種カテーテルロック療法の効果については明らかにされていなかった。ヘパリンロックのみ群と、3回のうち1回はrt-PAロックを行う群に割り付け追跡PreCLOT(Prevention of Dialysis Catheter Lumen Occlusion with rt-PA versus Heparin)研究グループは、カナダの11ヵ所から、長期にわたって週3回の血液透析を受けている被験者225例を、被験者がブラッドアクセスを新規のものとした際に、週3回ともヘパリンロック(5000 U/mL)を行う群(ヘパリン群115例)と、週3回のうち2回目はrt-PAロック(各カテーテル内腔に 1 mg)を行う(1、3回目はヘパリン)群(rt-PA群110例)とに、無作為に割り付け追跡した。主要アウトカムはカテーテルの機能不全発生、副次アウトカムはカテーテル関連の菌血症発生とした。治療追跡期間は6ヵ月間。治療割り付けの情報については、患者、試験、試験スタッフともに知らされなかった。ヘパリンのみだと、カテーテル機能不全発生はほぼ2倍、菌血症発生はほぼ3倍高い結果、カテーテルの故障発生は、ヘパリン群は34.8%(40/115例)であったのに対し、rt-PA群は20.0%(22/110例)であり、rt-PAを週1回用いた場合に比べてヘパリンのみだった場合のリスクはほぼ2倍高かった(ハザード比:1.91、95%信頼区間:1.13~3.22、P=0.02)。カテーテル関連の菌血症発生は、ヘパリン群は13.0%(15/115例)であったのに対し、rt-PA群は4.5%(5/110例)であった。これは、それぞれ1.37例/1,000患者・日、0.40例/1,000患者・日の発生に相当する(P=0.02)。全原因菌血症発生リスクは、ヘパリン群の方がrt-PA群に比べほぼ3倍高かった(ハザード比:3.30、95%信頼区間:1.18~9.22、P=0.02)。出血を含む有害事象リスクは、両群で同等だった。(武藤まき:医療ライター)

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AEDの付加価値は設置場所と関連している

米国で院外心停止後最初に記録される心室細動や無脈性心室頻拍が、30年前は約70%であったが現在は23%と劇的に減少しているという。ジョンズ・ホプキンス大学のMyron L. Weisfeldt氏らは、「無作為化試験により、公共の場へのAED普及が院外停止後生存を向上させているという結果、一方で家庭へのAED設置はメリットが立証されないことを鑑みると、心室細動や無脈性心室頻拍が院外停止後最初の心拍である可能性が示唆される。このことは公衆衛生施策において非常に重要なことで、AEDのような蘇生術戦略の付加価値は、設置場所と関連している可能性を示唆する」として、心停止発生場所、不整脈のタイプと、生存割合との関連について評価を行った。NEJM誌2011年1月27日号掲載より。自宅または公共の場での、院外心停止発生例を評価Weisfeldt氏らは2005~2007年にかけて、米国7地域とカナダ3地域で院外心停止の前向きコホート試験を行った。評価は、自宅での心停止発生と公共の場での心停止発生における、心室細動または無脈性心室頻拍の頻度、生存退院率について比較検討して行われた。評価された院外心停止は1万2,930例であった。うち公共の場での発生例が2,042例、自宅発生例が9,564例であった。生存退院率、同じ「素人・AED利用目撃例」でも「自宅」に比べて「公共の場」は2.49倍高い自宅発生例の心室細動または無脈性心室頻拍の発生率は、救急医療サービス(EMS)隊員の目撃例は25%、通りすがりの素人の目撃例は35%、AEDを利用した素人の目撃例は36%だった。公共の場での発生例についての同率は、それぞれ、38%、60%、79%であった。EMS隊員、素人、AED利用の素人それぞれが、公共の場で、心停止後最初の心室細動または無脈性心室頻拍を目撃した割合は自宅での目撃に比べて、EMS隊員は1.63倍(95%信頼区間:1.13~2.35、P=0.009)、素人は2.28倍(同:1.96~2.66、P<0.001)、AED利用の素人は4.48倍(同:2.23~8.97、P<0.001)であった(すべて補正後オッズ比)。生存退院率は、いずれの目撃例でも自宅よりも公共の場での発生例で高かった。最も高かったのは、公共の場・AED利用の素人による目撃例で34%であった。一方、同じAED利用の素人による目撃例でも自宅発生例では12%だった(補正後オッズ比:2.49、95%信頼区間:1.03~5.99、P=0.04)。Weisfeldt氏は、「EMS隊員あるいは素人が院外心停止を目撃していたかどうかにかかわらず、また素人がAEDを利用したかどうかにかかわらず、心停止後最初の心室細動または無脈性心室頻拍の発生は、自宅よりも公共の場の方が非常に高かった」と述べ、「簡単で効果的なAEDのような蘇生術戦略の価値は、場所によってより高めることができる」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

31000.

急性虚血性脳卒中の死亡率、脳卒中治療センターの方が一般病院より低率

急性虚血性脳卒中患者の死亡率は、脳卒中治療センターの指定を受けた病院の方が、一般病院よりわずかではあるが低率であること、また、センターの方が血栓溶解療法の施行頻度が高いことが米国で行われた調査の結果、明らかになった。米国Duke Clinical Research InstituteのYing Xian氏らが、ニューヨーク州で急性虚血性脳卒中の治療を受けた3万人超について調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月26日号で発表した。米国では、2000年にBrain Attack Coalition(BAC)が脳卒中治療センターの設置を勧告し、現在ではその数は全米約5,000ヵ所の急性期病院のうち約700ヵ所に上るという。しかし、これまでに脳卒中治療センターの脳卒中患者のアウトカムへの影響についてはほとんど調査がされていなかった。急性虚血性脳卒中3万人超の30日死亡率を比較Xian氏らは2005~2006年にかけて、急性虚血性脳卒中を発症し、脳卒中治療センター指定を受けた病院またはそれ以外の病院で治療を受けた、合わせて3万947人について、2007年まで1年間追跡し、その死亡率を比較した。主要アウトカムは、30日死亡率だった。また同氏らは、消化管出血や急性心筋梗塞で入院した患者、それぞれ3万9,409人と4万24人についても、脳卒中治療センターとそれ以外の病院でのアウトカムを比較した。患者の医療機関への選択バイアスや交絡因子については、自宅から脳卒中治療センターへの距離といずれかの病院への距離の差を操作変数として用いて補正を行った。脳卒中治療センターの30日死亡率、一般病院より2.5%ポイント低率被験者のうち、脳卒中治療センターで治療を受けた人は、49.4%にあたる1万5,297人だった。脳卒中治療センターで治療を受けた患者の30日・全死因死亡率は10.1%と、それ以外の病院で治療を受けた患者の同死亡率12.5%より、有意に低率だった(補正後格差:-2.5%、95%信頼区間:-3.6~-1.4、p<0.001)。1日、7日、1年死亡率についても、いずれも脳卒中治療センターで有意に低率だった。また血栓溶解療法の実施率は、脳卒中治療センターが4.8%と、一般病院の1.7%に比べ有意に高率だった(補正後格差:2.2、同:1.6~2.8、p<0.001)。両群での死亡率の格差(30日・全死因死亡率)は、消化管出血や急性心筋梗塞では認められなかった。消化管出血についての死亡率はセンター5.0%、一般病院5.8%、補正後格差0.3(95%信頼区間:-0.5~1.0、p=0.50)、急性心筋梗塞は、10.5%対12.7%、補正後格差0.1(同:-0.9~1.1、p=0.83)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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