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未治療HIV-1感染患者に対するrilpivirine、エファビレンツに非劣性、安全性良好(1):THRIVE試験

未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、米国・Community Research Initiative of New England(ボストン)のCalvin J Cohen氏らによる、全被験者がヌクレオシド系またはヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンも同時に受けていることを前提に行われた「THRIVE」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。NRTIレジメンを受けた患者をrilpivirine群もしくはエファビレンツ群に無作為化THRIVE試験は、96週にわたる第3相無作為化二重盲検二重ダミー非劣性試験で、21ヵ国98医療施設から被験者を募って行われた。被験者は、18歳以上成人で抗レトロウイルス治療を受けたことがなく、スクリーニングで血漿ウイルス量5,000コピー/mL以上、NRTIに対するウイルス感度を有する患者とし、コンピュータシステムを使って1対1の割合で、rilpivirine群(25mgを1日1回)とエファビレンツ群(600mgを1日1回)に無作為化された。また全患者が、治験参加医師の選択により、いずれかのNRTIレジメン[テノホビル ジソプロキシルフマル酸(商品名:ビリアード)+エムトリシタビン(同:エムトリバ)、ジドブジン(同:レトロビル)+ラミブジン(同:エピビル)、アバカビル(同:ザイアジェン)+ラミブジン]を受けた。主要アウトカムは、全患者が治験薬を1回以上投与され反応が確認(ウイルス量<50コピー/mL、ウイルス学的失敗がintention-to-treat解析で確認)された48週時点の非劣性(ロジスティック回帰分析のマージン12%)とした。48週時点の有効性、rilpivirine群86%、エファビレンツ群82%2008年5月から947例がスクリーニングを受け、主要アウトカム検証のためにデータを打ち切った2010年1月までに340例が登録された。結果、1回以上投与での反応(ウイルス量<50コピー/mL)が認められたのはrilpivirine群86%(291/340例)、エファビレンツ群82%(276/338例)であり、両群差3.5%(95%信頼区間:1.7~8.8)でrilpivirine群の非劣性(p<0.0001)が認められた。基線から48週までのCD4細胞数増大は、両群でほぼ同等であった(rilpivirine群:189個/μL、エファビレンツ群:171個/μL、p=0.09)。一方、ウイルス学的失敗率はrilpivirine群7%、エファビレンツ群5%であった。投与中止となった有害事象の発生は、rilpivirine群4%、エファビレンツ群7%であった。治療関連のグレード2~4の有害事象は、rilpivirine群のほうが少なかった(rilpivirine群16%、エファビレンツ群31%、p<0.0001)。特に、発疹とめまいが少なかった(いずれもp<0.0001)。また、血漿脂質の増大が、エファビレンツ群に比べrilpivirine群のほうが有意に低かった(p<0.0001)。Cohen氏は、「ウイルス学的失敗はわずかに多かったが、rilpivirineはエファビレンツに比し、良好な安全性、有効性については非劣性であることが示され、未治療のHIV-1感染患者に対する新たな治療の選択肢と成り得るであろう」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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未治療HIV-1感染患者に対するrilpivirine、エファビレンツに非劣性、安全性良好(2):ECHO試験

未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、フランス・Paris Diderot大学Saint-Louis病院感染症部門のJean-Michel Molina氏らによる、全被験者がヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンのテノホビル ジソプロキシルフマル酸(商品名:ビリアード)+エムトリシタビン(同:エムトリバ)も同時に受けていることを前提に行われた「ECHO」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。テノホビル +エムトリシタビン投与を受けた患者をrilpivirine群もしくはエファビレンツ群に無作為化ECHO試験は、96週にわたる第3相無作為化二重盲検二重ダミー実薬対照試験で、21ヵ国112医療施設から被験者を募って行われた。被験者は、18歳以上成人で抗レトロウイルス治療を受けたことがなく、スクリーニングで血漿ウイルス量5,000コピー/mL以上、全治験薬に対するウイルス感度を有する患者とし、コンピュータシステムを使って1対1の割合で、rilpivirine群(25mgを1日1回)とエファビレンツ群(600mgを1日1回)に無作為化された。また全患者に、テノホビル ジソプロキシルフマル酸+エムトリシタビンが投与された。主要アウトカムは、全患者が治験薬を1回以上投与され反応が確認(ウイルス量<50コピー/mL、ウイルス学的失敗がintention-to-treat解析で確認)された48週時点の非劣性(ロジスティック回帰分析のマージン12%)とした。48週時点の有効性の非劣性確認2008年4月から2011年1月までに948例がスクリーニングを受け、690例が登録、intention-to-treat解析された。結果、1回以上投与での反応(ウイルス量<50コピー/mL)が認められたのはrilpivirine群83%(287/346例)、エファビレンツ群83%(285/344例)であり、ロジスティック回帰分析モデルでの推定両群差は、rilpivirine群が-0.4%(95%信頼区間:-5.9~5.2)で非劣性(マージン:12%)が確認された。一方、ウイルス学的失敗率はrilpivirine群13%、エファビレンツ群6%であった。投与中止となった有害事象の発生は、rilpivirine群2%、エファビレンツ群8%であった。治療関連のグレード2~4の有害事象は、rilpivirine群のほうが少なかった(rilpivirine群16%、エファビレンツ群31%、p<0.0001)。エファビレンツ群では、発疹、めまい、異常な夢やナイトメアの頻度が高かった。また、血漿脂質の増大が、エファビレンツ群に比べrilpivirine群のほうが有意に低かった。Molina氏は、「rilpivirineはエファビレンツに比し、有効性について非劣性であることが示された。ウイルス学的失敗は高かったが、安全性と忍容性プロフィールはより良好であることが示された」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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早期限局性前立腺がん、放射線療法+短期ADTが全生存率上昇、死因別死亡率低下

 早期の限局性前立腺がんに対する、放射線療法+4ヵ月の短期アンドロゲン遮断療法(ADT)の併用療法について、有意な死亡率(死因別)の低下および全生存率の上昇が認められたことが明らかにされた。米国・Radiological Associates of SacramentoのChristopher U. Jones氏らが、米国とカナダの212施設から被験者約2,000例を募り行った無作為化試験の結果による。これまで同併用療法の効果については明らかにされていなかった。NEJM誌2011年7月14日号掲載報告より。1,979例を、放射線療法単独群と4ヵ月ADT併用群に無作為化 被験者は、1994年10月~2001年4月の間に212施設から集められた、ステージT1b、T1c、T2a、T2bでPSA値20ng/mL以下の前立腺がん患者1,979例であった。被験者は無作為に、放射線療法単独群(992例)と、放射線療法2ヵ月間実施後に4ヵ月間の短期ADTを行う群(987例)に割り付けられ、中央値9.1年間追跡された。 主要エンドポイントは全生存率とし、副次エンドポイントには死因別死亡率、遠隔転移、生化学的治療の失敗(PSA値が上昇)、2年時点の再生検の陽性所見率などが含まれた。ベネフィットは低リスク群では有意ではなく、主として中間リスク群に 結果、10年全生存率は、放射線療法単独群57%に対し、併用群は62%であった(単独群の死亡ハザード比:1.17、P=0.03)。死因別死亡率は、単独群8%に対し、併用群は4%であった(単独群のハザード比:1.87、P=0.001)。 また併用群では、生化学的失敗(P<0.001)、遠隔転移(P=0.04)、2年時点の再生検陽性所見率(P<0.001)について有意な改善が認められた。 放射線照射による毒性は、急性(照射開始後90日まで)、遅発性とも、両群で同程度であった。またグレード3以上の毒性発現率は5%未満であった。 なお、低リスク(単独群:334例、併用群:351例)、中間リスク(同:544例、524例)、高リスク(同:114例、112例)別にみた事後解析の結果、全生存率の上昇と死因別死亡の低下は、主に中間リスク群で認められ(P=0.03、P<0.01)、低リスク群では有意ではなかった(P=0.60、P=0.42)。(武藤まき:医療ライター)

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喘息患者への気管支拡張薬vs. プラセボvs. 無治療

喘息患者を対象とした前向き実験的試験で報告されるプラセボ効果の客観的および主観的効果結果への影響について、気管支拡張薬とプラセボ(2種類)と無治療とを比較して検討した二重盲検クロスオーバーパイロット試験の結果、客観的なFEV1を指標とした結果ではプラセボ群に改善は認められなかったが、主観的な患者評価では気管支拡張薬とプラセボに有意差は認められなかったことが報告された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院/ハーバードメディカルスクールのMichael E. Wechsler氏らが米国国立補完代替医療センターから助成を受け行った試験報告で、NEJM誌2011年7月14日号で発表された。4つの介入群の客観的指標および主観的評価の変化を比較Wechsler氏らによるパイロット試験は、積極的介入としてアルブテロール吸入(サルブタモール、商品名:サルタノールインへラー、アイロミールエアゾール)と、プラセボ吸入、シャム鍼治療、無治療の4つの介入後の急性変化について比較された。被験者は、79人がスクリーニングを受け、そのうち症状が中等度で適格基準を満たした46例で、連続する4回の受診(3~7日間隔)で4つの介入を無作為に1回ずつ受けた。この介入を1ブロックとして、合計3ブロックの介入(被験者の受診回数は合計12回)が実施された。12回の受診時には毎回、客観的反応の測定として、介入後に各20分の2時間にわたるスパイロメトリーが行われFEV1最大値を測定。また主観的反応の測定として、症状の改善認知度をスコア0~10のビジュアルスケールを用いて回答してもらうとともに、受けた介入が実際の治療と思うかプラセボと思うかも回答してもらった。客観的評価の差は有意、しかし主観的評価の有意差は気管支拡張薬 vs.プラセボに認められず試験を完了したのは39例であった。結果、FEV1が、アルブテロール吸入群では20%増加したのに対し、他の3つの介入群はそれぞれ約7%の増加であった(P<0.001)。しかし、患者評価の結果では気管支拡張薬とプラセボ間に有意差は認められなかった。改善したと回答した患者は、アルブテロール吸入群は50%、プラセボ吸入群は45%、シャム鍼治療群は46%であった。ただし、3群とも無治療群(21%)よりは改善したと回答した人が有意に多かった(P<0.001)。結果を踏まえてWechsler氏は、「プラセボ効果は、臨床的に意味があり、積極的な薬物療法の効果についてライバルとなり得る。臨床管理および調査デザインの視点から、患者評価は信頼できないものであるが、客観的評価を確認するために臨床試験の基本項目とするのであれば、治療をしなかった患者群の評価も基本項目に入れるべきであろう」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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がん検診に影響与える家族歴は30~50歳で変化が大きい、医師は5~10年ごとに問診を

がん検診の開始年齢や方法などに影響を与える家族歴は、30~50歳の間で変化が大きいことが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のArgyrios Ziogas氏らが、米国民ベースのがんレジストリ「Cancer Genetics Network」(CGN)を基に、約2万7,000人の登録被験者とその家族について行った追跡試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月13日号で発表した。がんレジストリ登録2万6,933人とその家族データを調査研究グループは、米国内14ヵ所の教育研究医療機関を通じて、1999~2009年間にCGNに登録された2万6,933人と、その家族54万578人について調査を行った。調査は、被験者が生誕時からCGN登録時点(調査開始)まで(後ろ向き調査)と、登録~最終追跡期間まで(前向き調査)について行われ、臨床的に意味のある家族歴を有した人の割合や変化が調べられた。前向き追跡期間の中央値は8年(範囲:0~11)だった。がんの種類ごとの被験者数は、後ろ向き調査が、大腸がん9,861人、乳がん2,547人、前立腺がん1,817人。前向き調査はそれぞれ、1,533人、617人、163人だった。家族歴に基づくハイリスク・スクリーニング適用者、大腸がんは30歳時2.1%が50歳時は7.1%結果、後ろ向き調査で、がん家族歴がありハイリスクの人向けのスクリーニングが適切であるとされた人の割合は、大腸がんについては30歳時家族歴で2.1%(95%信頼区間:1.8~2.4)、50歳時家族歴で7.1%(同:6.5~7.6)だった。乳がんは、同7.2%(同:6.1~8.4)と11.4%(同:10.0~12.8)、前立腺がんは、同0.9%(同:0.5~1.4)と2.0%(同:1.4~2.7)だった。一方、前向き調査で、家族歴をベースに新たにハイリスク・スクリーニングが必要とされたのは、100人・20年追跡あたり大腸がんが2人、乳がんが6人、前立腺がんが8人であった。後ろ向き調査と前向き調査の、がん家族歴の変化の割合は大腸がんと乳がんでは同等であった。研究グループはこれら結果を受けて、「家族歴は成人期早期から意味を持ち始めることが見いだされた。この時期に総合的な家族歴を聴取しておく必要がある。また、30~50歳の変化が大きく、医師は家族歴に関する問診を5~10年ごとに実施することが望ましい」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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米国ナーシングホーム入所者の褥瘡リスク、減少傾向にあるものの人種間格差続く

米国ナーシングホーム入所者の褥瘡罹患率は、2003年から2008年にかけて減少傾向にあるものの、白人入所者よりも黒人入所者で高率の状態が続いていることが明らかになった。米国・アイオア大学一般総合内科のYue Li氏らが、米国内の約1万2,500ヵ所のナーシングホームと、その入所者約250万人について観察研究を行った結果によるもので、JAMA誌2011年7月13日号で発表した。ステージ2以上の褥瘡罹患率、黒人が白人より約5ポイント高率研究グループは、2003~2008年にかけて、米国内1万2,4730ヵ所のナーシングホームに入所する、白人入所者210万人と黒人入所者34万6,808人を対象に、ステージ2~4の褥瘡罹患率について調査を行った。人種間格差が施設間や施設内でないか、罹患率の割合が調べられた。結果、2003年時点の補正前褥瘡罹患率は白人入所者では11.4%(95%信頼区間:11.3~11.5)だったのに対し、黒人入所者では16.8%(同:16.6~17.0)と高率だった。また2008年時点では、白人入所者は9.6%(同:9.5~9.7)だったのに対し、黒人入所者では14.6%(同:14.4~14.8)で、全体的には減っていたが黒人入所者の割合は依然として高かった。2003年の補正前同率の人種間格差は5.4ポイント、2008年は同5.0ポイントだった(傾向に関するp>0.05)。黒人入所者比率の高い施設で、人種を問わず褥瘡リスクが高い黒人入所者比率が35%以上の施設についてみたところ、2008年のステージ2~4の黒人入所者の補正前褥瘡罹患率は15.5%(95%信頼区間:15.2~15.8)であり、この値は、黒人入所者比率が5%未満の施設の同11.8%(同:10.9~12.7)に比べ高く、補正後オッズ比は1.59(同:1.52~1.67)だった。また黒人入所者比率35%以上の施設では、白人入居者の補正前褥瘡罹患率も12.1%(同:11.8~12.4)と、黒人入所者比率5%未満施設の同8.8%(同:8.7~8.9)と比べて高く、補正後オッズ比は、1.33(同:1.26~1.40)だった。研究グループは、褥瘡罹患率の人種間格差の原因の一部は施設にあるようだ、としている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬 インダカテロール(商品名:オンブレス)

2011年7月、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬「インダカテロールマレイン酸塩」(商品名:オンブレス®、以下「インダカテロール」)の製造販売が承認された。COPDの現状と課題COPDは「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、たばこの煙などの有害物質を長期間にわたり吸入することで発症する、肺の炎症性疾患である。COPDは呼吸機能が加速的に低下する疾患で、主な症状は、咳、痰や体動時の呼吸困難などで、進行すると死に至ることもある。わが国のCOPD患者数は500万人を超えるといわれているが、国内の医療機関でCOPDと診断された患者は約17万にとどまることが報告されている。喫煙率が高く、喫煙開始年齢が若年化しているわが国では、今後さらに患者数が増えることが予想されている。即効性と持続性を兼ね備えたCOPD治療薬COPDを根治する薬物はいまだ登場しておらず、現在の薬物治療は気管支拡張薬が中心となる。長期間作用性β2刺激薬のカテゴリーに属するインダカテロールは、専用の吸入器「ブリーズヘラー®」を用いて吸入する吸入型の気管支拡張薬である。1日1回の吸入で、呼吸機能改善効果は24時間持続し1),2)、さらに、その気管支拡張効果は吸入5分後に発現する3),4)。このように、インダカテロールは1日1回という吸入回数や持続時間の長さなどの利便性、持続性に加え、従来の吸入型長時間作用性気管支拡張薬にはみられない即効性を兼ね備えた、新しいタイプのCOPD治療薬である。インダカテロールの効果と安全性インダカテロールは国際共同第Ⅲ相試験において、1日1回の吸入により、プラセボ群と比べて呼吸機能、呼吸困難の症状、QOLの有意な改善が認められた5)。また、有害事象の発現率も低く、その安全性も確認されている5)。さらに、1日1回投与の長時間作用性抗コリン薬であるチオトロピウムと比較した海外臨床試験(無作為化、非盲検)では、呼吸機能の改善(トラフFEV1)については同等以上の効果を、QOLについては有意な改善を示した1)。また、同じ長時間作用性吸入β2刺激薬で、1日2回投与のサルメテロールとの比較においても、呼吸機能の有意な改善、息切れやQOLの改善などの優れた有効性が認められた2)。まとめインダカテロールは新しいタイプの長時間作用性吸入β2刺激薬であり、既存のCOPD治療薬に比べても、呼吸機能改善効果は同等以上であることが認められている。また、利便性、持続性、即効性という特徴は、患者のQOL改善にも大きく寄与すると思われ、今後、COPD治療の新しい選択肢となることが期待される。

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非選択的NSAID、選択的COX-2阻害薬が、心房細動/粗動リスクを増大

 非選択的NSAIDの使用によって心房細動/粗動のリスクが増大することが、デンマーク・Aarhus大学病院のMorten Schmidt氏らの検討で示され、BMJ誌2011年7月9日号(オンライン版2011年7月4日号)で報告された。NSAIDは世界で最も広範に使用されている薬剤の1つであり、新世代の選択的COX-2阻害薬は消化管毒性を改善したNSAIDとして開発された。一方、心房細動は一般診療で最も高頻度にみられる持続性の心調律障害だが、NSAIDは腎臓への有害作用を介して心房細動のリスクを増大させる可能性が示唆されている。NSAIDの使用や心房細動の発生率は加齢とともに増加するため、その関連性は特に高齢者の治療で大きな関心事となっているという。デンマーク北部における10年間の地域住民ベースの症例対照研究 研究グループは、非選択的NSAID(イブプロフェン、ナプロキセンなど)および選択的COX-2阻害薬(ジクロフェナク、エトドラク、セレコキシブなど)の心房細動/粗動リスクへの影響を検討するために、データベースを用いた地域住民ベースの症例対照研究を行った。 デンマーク北部地域(人口170万人)において、1999~2008年までに新規に心房細動/粗動の診断を受けた入院および外来患者3万2,602人と、年齢および性別をマッチさせリスク集団サンプリング(risk-set sampling)で抽出した対照群32万5,918人を比較した。 受診時のNSAID使用者を「現使用者」、以前に使用歴のある者は「使用経験者」とし、前者はさらに「新規使用者(診断日前60日以内に初処方)」と「長期使用者(診断日前60日以前に初処方)」に分けた。条件付きロジスティック回帰モデルで算出したオッズ比から罹患率比(incidence rate ratio)を推算した。新規使用者でリスクが40~70%増大 非選択的NSAIDあるいは選択的COX-2阻害薬のいずれかの現使用者は、症例群が2,925人(9%)、対照群は2万1,871人(7%)であった。 非使用者(対照群)との比較における非選択的NSAID現使用者の心房細動/粗動の罹患率比は1.33(95%信頼区間:1.26~1.41)であり、選択的COX-2阻害薬の現使用者の罹患率比は1.50(同:1.42~1.59)であった。年齢、性別、心房細動/粗動のリスク因子で調整すると、非選択的NSAID現使用者の心房細動/粗動の罹患率比は1.17(同:1.10~1.24)、選択的COX-2阻害薬の罹患率比は1.27(同:1.20~1.34)にまで低下した。 新規使用者の調整罹患率比は、非選択的NSAIDが1.46(95%信頼区間:1.33~1.62)、選択的COX-2阻害薬が1.71(同:1.56~1.88)であった。個々のNSAIDの罹患率比に差はみられなかった。 著者は、「非選択的NSAIDの使用によって心房細動/粗動のリスクが増大していた。特に新規使用者では40~70%もの増大が確認された」と結論し、「NSAIDを処方する際に考慮すべき心血管リスクに、心房細動/粗動を加える必要があることを示すエビデンスが得られた」と指摘している。

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高血圧の薬物療法開始前にABPMを:診察室血圧、家庭血圧より治療ターゲットが適切に

診察室血圧と家庭血圧は、いずれも高血圧の診断に推奨される単体検査としての十分な精度を有していないことが、英国・バーミンガム大学プライマリ・ケア臨床サイエンスのJ Hodgkinson氏らによるシステマティックレビューの結果、報告された。各測定を24時間自由行動下血圧測定(ABPM)と比較した結果による。従来、高血圧の治療導入は診察室血圧を診断ベースとしガイドラインでもその値が参照基準として採用されているが、ABPMのほうがより正確に真の平均血圧を推定でき、心血管アウトカムや末端器官傷害との相関性も良好であることが示されている。また、家庭血圧のほうが診察室血圧よりも末端器官傷害との相関性が良好であることも明らかになっており、Hodgkinson氏らは、診察室血圧、家庭血圧の精度をABPMと照らし合わせて検証することは重要かつ必要なこととしてレビューを行った。BMJ誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月24日号)掲載報告より。診察室血圧、家庭血圧の精度を対ABPMで検証した試験をメタ解析Hodgkinson氏らは、階層的サマリーROCモデルによるシステマティックレビューでのメタ解析を行った。血圧測定機器の検証エビデンスなど方法論の質的評価が行われた。データソースとしたのは、Medline(1966年~)、Embase(1980~)、システマティックレビューのコクラン・データベース、DARE、Medion、ARIF、TRIPで、2010年5月アップ分までを対象。試験適格基準は、全年齢の成人を対象に高血圧診断について、家庭血圧と診察室血圧あるいはいずれかを用いた場合と、ABPMを用いた場合とを比較し、診断閾値の定義していたものとした。結果、20試験が適格基準を満たした。ただし試験間には著しい差異が、年齢(平均年齢<33歳~60歳まで変動)、性(男性割合16~69%)、集団サイズ(16~2,370例)、設定(プライマリ・ケアか専門家集団)に関してあり、全試験にいくつかの方法論的弱さがあった。診察室血圧、家庭血圧ともに診断感度、特異度が不十分20試験は、さまざまな閾値を高血圧診断に用いており、診察室血圧とABPMとの直接比較が可能だったのは7試験(平均年齢47.1歳、女性57%)、家庭血圧とABPMについては3試験(同52.5歳、55%)であった。135/85mmHgが閾値のABPM群との比較で、診察室血圧140/90mmHg超を診断基準とした場合の平均感度は74.6%、特異度は74.6%。家庭血圧135/85mmHg超を診断基準とした場合の平均感度は85.7%、特異度62.4%であった。Hodgkinson氏は、「診察室血圧、家庭血圧ともに感度、特異度が不十分で、単一診断検査としては推奨されない」と結論。その上で「ABPMを参照基準とした場合、診察室血圧、家庭血圧に基づく治療決定は相当な過剰診断に結びつく可能性がある」と述べ、「生涯にわたる薬物治療開始前にABPMを行うことは、特に診断閾値に関しての治療ターゲットをより適切なものへと導くことになるであろう」とまとめている。

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2型糖尿病に対する診断直後からの強化食事療法が血糖値を改善:Early ACTID試験

 2型糖尿病患者に対する診断直後からの強化食事療法は、通常治療に比べ血糖値や体重減少、インスリン抵抗性を改善し、糖尿病治療薬の使用量を低減するが、これに運動療法を追加しても新たなベネフィットは得られないことが、イギリス・ブリストル大学のR C Andrews氏らが行ったEarly ACTID試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版6月25日号)で報告された。血圧の改善効果は得られなかった。2型糖尿病の管理では、診断直後からライフスタイルの変容を導入すれば予後が改善する可能性があるが、介入の有無で予後の比較を行った大規模試験はないという。強化食事療法、強化食事/運動療法の血糖値、血圧への影響を評価 Early ACTID(Activity in Diabetes)試験の研究グループは、イギリス南西部地域において、新規2型糖尿病患者に対する診断直後の食事療法と身体活動による介入が、血圧や血糖値に及ぼす影響を評価する無作為化対照比較試験を実施した。 5~8ヵ月前に新規に診断された2型糖尿病患者(30~80歳)が、次の3つの群に2対5対5の割合で無作為に割り付けられた。・通常治療群(対照群):無作為割り付け時に食事指導と運動の奨励を行い、6ヵ月および12ヵ月後にフォローアップ。・強化食事療法群:5~10%の体重減少を目標とし、食事療法士による無作為割り付け時、3、6、9、12ヵ月後の食事指導、看護師による計9回(6週ごと)の食事療法の評価、指導と目標設定。・強化食事/運動療法群:同様の強化食事療法に歩数計を用いた身体活動プログラム(30分以上の早歩きを週5日以上)を併用。 主要評価項目は、6ヵ月後のHbA1c値および血圧の改善とした。平均HbA1c値が有意に改善、血圧は3群で同等 2005年12月~2008年9月までに593例が登録され、通常治療群に99例(平均年齢59.5歳、男性63%)、強化食事療法群に248例(同:60.1歳、64%)、強化食事/運動療法群には246例(同:60.0歳、66%)が割り付けられ、予後の評価が可能であったのは6ヵ月後が587例(99%)、12ヵ月後は579例(98%)であった。 対照群の平均HbA1c値は、ベースラインの6.72%(SD 1.02)に対し6ヵ月後は6.86%(SD 1.02)とむしろ悪化したが、強化食事療法群は6.64%(SD 0.93)から6.57%(SD 1.06)へ(調整後の対照群との群間差:-0.28%、95%信頼区間:-0.46~-0.10、p=0.0049)、強化食事/運動療法群は6.69%(SD 0.99)から6.60%(SD 1.00)へ(同:-0.33%、-0.51~-0.14、p=0.0009)と有意に改善した。これらの差は、糖尿病治療薬の使用量が減少したにもかかわらず12ヵ月後も持続していた。 体重やインスリン抵抗性についても、介入群で同様の改善効果がみられたが、血圧は3群ともに大きな変化は認めず同等であった。 著者は、「診断直後からの強化食事療法は血糖値を改善するが、これに運動療法を追加しても新たなベネフィットは得られなかった」と結論し、「強化食事療法による介入は食事療法士の支援の下で看護師によって行われるため、地域住民ベースの糖尿病管理サービスに組み込むことも可能であろう」と指摘している。

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2型糖尿病に対する早期強化療法により心血管イベントがわずかに低下傾向に:ADDITION-Europe試験

2型糖尿病に対する早期の多元的な強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡が有意ではないがわずかに減少することが、イギリス・代謝科学研究所のSimon J Griffin氏らが行ったADDITION-Europe試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月25日号)で報告された。2型糖尿病では、複数の心血管リスク因子に対する多元的な強化療法によって死亡率が半減する可能性が指摘されているが、血圧、脂質、血糖などの個々のリスク因子の治療を診断直後から開始した場合の有効性は不明だという。3ヵ国の343プライマリ・ケア施設が参加したクラスター無作為化試験ADDITION-Europe(Anglo-Danish-Dutch Study of Intensive Treatment In People with Screen Detected Diabetes in Primary Care)試験は、2型糖尿病に対する診断後早期の多元的治療が心血管リスクに及ぼす効果を検討する並行群間クラスター無作為化試験である。2001年4月~2006年12月までに、デンマーク、オランダ、イギリスの343のプライマリ・ケア施設が、ルーチンの糖尿病治療を行う群あるいは早期に多元的強化療法を施行する群に無作為に割り付けられた。患者は、スクリーニング検査で2型糖尿病と診断された40~69歳(オランダのみ50~69歳)の地域住民であった。多元的強化療法群は、既存の糖尿病治療に加え、プライマリ・ケア医や看護師による教育プログラム(治療ターゲット、アルゴリズム、ライフスタイルに関する助言など)への参加をうながし、Steno-2試験などで使用された段階的レジメンに基づくガイドラインに準拠した薬物療法や、健康なライフスタイル実践の指導が行われた。全施設で同じアプローチが使用されたが、薬剤の選択などの最終決定は担当医と患者が行った。ルーチン治療群ではプライマリ・ケア医が患者に検査結果を伝え、標準的な糖尿病治療が施行された。主要評価項目は、初発心血管イベント(5年以内の心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、血行再建術、非外傷性四肢切断)の複合エンドポイントとした。心血管リスク因子がわずかに有意に改善、心血管イベントは有意差はないがわずかに低下ルーチン治療群に176施設(1,379例、診断時平均年齢60.2歳、男性57.3%)が、多元的強化療法群には167施設(1,678例、60.3歳、58.5%)が割り付けられ、主要評価項目の解析は3,055例(99.9%)で可能であった。全体の平均フォローアップ期間は5.3年(SD 1.6)。心血管リスク因子[HbA1c、総コレステロール、LDLコレステロール、収縮期血圧、拡張期血圧]は、強化療法群でわずかではあるが有意に改善された。初発心血管イベントの発生率は、ルーチン治療群が8.5%(15.9/1,000人・年)、強化療法群は7.2%(13.5/1,000人・年)であり(ハザード比:0.83、95%信頼区間:0.65~1.05、p=0.12)、評価項目の個々のコンポーネントも強化療法群で良好な傾向がみられたが、有意差は認めなかった(心血管死:1.6% vs. 1.5%、非致死的心筋梗塞:2.3% vs. 1.7%、非致死的脳卒中:1.4% vs. 1.3%、血行再建術:3.2% vs. 2.6%、非外傷性四肢切断:0% vs. 0%)。全体の死亡率はルーチン治療群が6.7%、強化療法群は6.2%であった(ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.69~1.21)。著者は、「2型糖尿病に対する早期の多元的強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡がわずかに減少したが有意差はなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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イソニアジドの結核一次予防的投与、未発症、未感染を改善せず:南アフリカHIV曝露児対象試験

結核治療薬イソニアジド(商品名:イスコチンなど)の乳児への一次予防的投与について、南アフリカで行われた試験の結果、結核の未発症や未感染を改善しなかったことが報告された。試験対象児は、結核感染リスクの高いHIV感染児あるいは周産期にHIVに曝露された乳児で、いずれも生後30日までにBCGワクチンは摂取されていた。サハラ以南では結核が蔓延しており、特にHIV感染成人が多い地域での感染率の高さが問題となっており、イソニアジドによる結核予防戦略が提唱されているという。南アフリカ共和国・ヴィトヴァーテルスラント大学のShabir A. Madhi氏らは、イソニアジドは感染者からの感染が明らかな患児での治療効果は示されているが、サハラ以南のような結核感染リスクが高い環境下にいる乳児を対象とした試験は行われていないとして、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。NEJM誌2011年7月7日号掲載報告より。イソニアジド群、プラセボ群に無作為化し96週投与、その後108週までの転帰を比較試験は、南アフリカ共和国3施設とボツワナ共和国1施設から、生後91~120日で、30日までにBCGワクチン接種を受けていた、HIV感染児548例とHIV非感染児804例を登録して行われた。被験児は無作為に、イソニアジド群(10~20mg/kg体重/日)か同用量のプラセボ群に割り付けられ、96週間投与を受けた。その後108週までの間の、HIV感染児については結核発症と死亡について、HIV非感染児については潜在性結核感染症、結核発症、死亡を主要転帰として検討された。なお、HIV感染児には試験中、抗レトロウイルス治療が行われた(98.9%に実行)。HIV感染児にとって結核は、抗レトロウイルス治療環境が整っても負荷が大きい疾病結果、HIV感染児群、HIV非感染児群ともに主要転帰についてイソニアジド群とプラセボ群とで有意差は認められず、HIV感染児群での結核発症と死亡の発生は、イソニアジド群52例(19.0%)、プラセボ群53例(19.3%)だった(P=0.93)。この結果は、抗レトロウイルス治療開始時期、結核の母子感染歴で補正後も同様であった(P=0.85)。HIV非感染児群では、潜在性結核感染症・結核発症・死亡の複合発生率が、イソニアジド群(39例、10%)と、プラセボ群(45例、11%)で有意差がなかった(P=0.44)。結核罹患率は、HIV感染児群は121例/1,000児・年(95%信頼区間:95~153)、一方HIV非感染児群では41例/1,000児・年(95%信頼区間:31~52)であった。安全性に関して、グレード3以上の臨床毒性あるいはラボ毒性は、イソニアジド群とプラセボ群とで有意差は認められなかった。Madhi氏は、「イソニアジドの一次予防としての投与が、BCGワクチンを受けたHIV感染児の結核未発病生存を、また同HIV非感染児の結核非感染生存を改善しなかった。HIV感染児にとって結核の疾病負荷は、抗レトロウイルス治療を受けられる環境が整っても高いままだった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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急性心不全へのnesiritideの有効性と安全性

急性心不全へのnesiritideについて、死亡や再入院の増減との関連は認められなかったが、標準治療への上乗せ効果についても呼吸困難への効果は小さく有意差は認められないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ASCEND-HF」の結果、報告された。米国・デューク大学メディカルセンターのC.M. O’Connor氏らがNEJM誌2011年7月7日号で発表した。組み換え型B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)製剤nesiritideは、急性心不全患者の呼吸困難を早期に緩和する治療薬として2001年に米国で承認されたが、その後の小規模無作為化試験データのプール解析で、プラセボとの比較で腎機能悪化が1.5倍、早期死亡が1.8倍に上ることが示され、独立委員会からnesiritideの有効性と安全性に関する大規模臨床試験の実施が勧告されていた。6時間時点と24時間時点の呼吸困難の変化の2つを主要エンドポイントにASCEND-HF(Acute Study of Clinical Effectiveness of Nesiritide in decompensated Heart Failure)試験は2007年5月~2010年8月にかけて、欧米、環太平洋アジアの398施設から急性心不全で入院した7,141例が登録され、標準治療(利尿薬、モルヒネ、他の血管拡張薬など)に加えてnesiritideあるいはプラセボを投与される群に無作為化され追跡された。nesiritideは、治験参加医師の裁量で任意の2μg/kgの静脈内ボーラス投与後、0.010μg/kg/分の持続点滴を24時間以上、最長7日間(168時間)投与された。主要エンドポイントは2つで、6時間時点と24時間時点の呼吸困難の変化であり、患者自身による7段階のリッカート尺度評価を用いて測定評価した。また、30日以内の心不全による再入院と全死因死亡を複合エンドポイントとし、安全性のエンドポイントについては、30日以内の全死因死亡、腎透析を要した腎機能悪化(推定糸球体濾過量低下が>25%)などが含まれた。無作為化後に治療を受けたintention-to-treat解析対象は7,007例(98%、nesiritide群:3,496例、プラセボ群:3,511例)だった。幅広く急性心不全患者へルーチン使用することは推奨できないと結論結果、呼吸困難の改善について「著しく」と「中程度に」を合わせた報告が、6時間時点でnesiritide群44.5% vs. プラセボ群42.1%(P=0.03)、24時間時点では同68.2% vs. 66.1%(P=0.007)と、いずれの時点でも、nesiritide群での報告が多かったが事前規定の有意差(両評価がP≦0.005かどちらかのP≦0.0025)には達していなかった。30日以内の心不全による再入院と全死因死亡は、nesiritide群9.4%、プラセボ群10.1%で、nesiritide群の絶対差は-0.7ポイント(95%信頼区間:-2.1~0.7、P=0.31)だった。また、30日時点の死亡率(nesiritide群:3.6% vs. プラセボ群:4.0%、絶対差:-0.4、95%信頼区間:-1.3~0.5)、腎機能悪化率(同31.4% vs. 29.5%、オッズ比:1.09、95%信頼区間:0.98~1.21、P=0.11)は有意差が認められなかった。しかし、低血圧症(中央値80mmHg)について、nesiritide群での有意な増大が認められた(26.6%対15.3%、P<0.001)。Connor氏は、「nesiritideの他療法と組み合わせての使用は、死亡率、再入院の増減とは関連しないが、呼吸困難に対する効果は小さく、有意な効果は認められなかった。また、腎機能悪化との関連も認められなかったが、低血圧症の増加との関連が認められた」と結論。結果を踏まえて「nesiritideを、急性心不全の患者に幅広くルーチン使用することは推奨できない」と提言している。(武藤まき:医療ライター)

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米国農村部の拠点病院、医療設備劣り、心筋梗塞やうっ血性心不全などの死亡リスク増大

米国農村部の病院は、それ以外の病院に比べ医療設備が劣り、急性心筋梗塞やうっ血性心不全などの死亡率も高いことが明らかにされた。米国・ハーバード大学公衆衛生校のKaren E. Joynt氏らが、全米約4,700の病院について調査した結果による。農村部の病院は、その地域の医療を担う、クリティカル・アクセス・ホスピタル(CAH)として重要視されているものの、その医療の質や患者のアウトカムについては、あまり知られていないという。JAMA誌2011年7月6日号掲載報告より。農村部病院、ICU設置は30%、電子カルテ整備は6.5%研究グループは、米国4,738の病院について調査を行った。高齢者向け公的医療保険メディケア出来高払いプランの加入者で、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、肺炎の診断を受け2008~2009年に退院した人について、後ろ向きに、その治療過程やアウトカムを追跡した。主要アウトカムは、病院の集中治療室(ICU)など設備の有無、医療ケアの過程の質、30日死亡率などだった。その結果、ICUを設置していたのは、非CAHでは3,470病院中2581病院(74.4%)だったのに対し、CAHでは1,268病院中380病院(30.0%)と、有意に低率だった(p<0.001)。心臓カテーテル実施設備を備えていたのは、非CAHでは1,654病院(47.7%)だったのに対しCAHでは6病院(0.5%)、基本的な電子カルテを整備していたのは、それぞれ445病院(13.9%)と80病院(6.5%)で、いずれもCAHのほうが非CAHよりも低率だった(いずれもp<0.001)。農村部病院の30日死亡リスク、急性心筋梗塞は1.7倍、うっ血性心不全は1.28倍急性心筋梗塞(CAH:1万703人、非CAH:46万9,695人)、うっ血性心不全(CAH:5万2,927人、非CAH:95万8,790人)、肺炎(CAH:8万6,359人、非CAH:77万3,227人)について、米国の病院の質に関する提携プログラム(Hospital Quality Alliance:HQA)の治療過程に関する指標との一致率を比較したところ、急性心筋梗塞についてはCAHが97.8%に対し非CAHが91.0%、うっ血性心不全はそれぞれ93.5%と80.6%、肺炎は93.7%と89.3%で、いずれもCAH群のパフォーマンスが有意に低率だった(いずれもp<0.001)。また30日死亡率について、急性心筋梗塞では非CAHが16.2%に対しCAHが23.5%(補正後オッズ比:1.70)、うっ血性心不全はそれぞれ10.9%と13.4%(同:1.28)、肺炎は12.1%と14.1%(同:1.20)と、いずれもCAH群で有意に高率だった(いずれもp

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非喫煙、1日30分以上の運動など、健康的な生活習慣が多い女性ほど心臓突然死リスク低下

女性における非喫煙、1日30分以上の運動、BMI<25といった健康的な生活習慣について、実行項目が多い人ほど心臓突然死リスクが低下することが、大規模前向きコホート試験の結果、示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院不整脈予防センターのStephanie E. Chiuve氏らが、8万人超の女性看護師を対象とするNurses’ Health Studyのデータを分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月6日号で発表した。非喫煙、BMI、運動、地中海式ダイエット、いずれも心臓突然死の独立リスク低減因子研究グループは、Nurses’ Health Studyの被験者に対し、1984年6月から生活習慣に関する調査を行い、2010年6月までの26年間追跡し、心臓突然死リスクとの関連を調べた。健康的な低リスク生活習慣の定義は、非喫煙、BMI<25、1日30分以上の運動、地中海式ダイエット(野菜、果物、ナッツ、豆、全粒穀物、魚、適度なアルコール)スコア上位40%の4点とし、十分な回答が得られた8万1,722人について、結果を分析した。被験者の試験開始時点の平均年齢は50~51歳だった。結果、追跡期間中の心臓突然死は321人で、発症時の平均年齢は72(標準偏差:8)歳だった。また定義した低リスク生活習慣の4点いずれもが、心臓突然死の独立リスク低減因子であることが認められた。心臓突然死リスク、低リスク生活習慣実行1点で0.54倍に、4点では0.08倍に低リスク生活習慣にまったく該当しない人の心臓突然死の絶対リスクは22人/10万人・年、同習慣1点の人は17人/10万人・年、同習慣2点では18人/10万人・年、同習慣3点では13人10万人・年、同習慣4点すべてを行う人は16人/10万人・年だった。低リスク生活習慣にまったく該当しない人に対する、同習慣を1点行う人の、心臓突然死発症に関する多変量相対リスクは0.54(95%信頼区間:0.34~0.86)とおよそ半分近くに減少し、また、同習慣2点の人では0.41(同:0.25~0.65)、同習慣3点では0.33(同:0.20~0.54)と準じ低下し、同習慣4点の人では0.08(同:0.03~0.23)と大幅に低下が認められた。低リスク生活習慣の死亡に対する寄与を試算した結果、被験者全員が4点すべてを行っていた場合は心臓突然死の81%が予防可能だったと試算され、冠動脈心疾患が未診断の人では79%が予防可能と試算された。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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持続型赤血球造血刺激因子製剤エポエチン ベータ ペゴル(商品名:ミルセラ)

 エポエチン ベータ(遺伝子組換え)(商品名:エポジン)に1分子の直鎖メトキシポリエチレングリコール(PEG)を結合させた、長時間持続型の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)である「エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)」(商品名:ミルセラ)が、2011年4月「腎性貧血」を適応として承認された。赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療の課題 腎性貧血は、腎機能障害によるエリスロポエチン産生能低下による貧血である。わが国ではその治療にESAが使用されるようになってから既に20年を越え、透析患者のみならず透析治療導入前の保存期慢性腎不全患者においても、ESAは腎性貧血治療薬として広く普及している。現在、透析患者約30万人のうち、約8割がESAによる貧血治療を受けていると考えられている。 従来のESAは血中半減期が短く、頻繁に投与する必要がある。透析患者では、通常、週3回透析がありESAもその際に投与できるため、通院回数が増えることはないが、保存期や腹膜透析の場合、通常、月に1回もしくは2ヵ月に1回の通院となるため、その間隔では従来のESAでは十分な効果が得られない。十分な効果を得るには、ESA投与だけのための通院が必要となることから、通院頻度が月1回という患者でも治療可能な、血中半減期の長いESAが求められていた。4週間に1回の投与で目標ヘモグロビン濃度を達成 今回承認されたエポエチンベータペゴルは長時間持続型のESAであり、既存のESAより長い血中半減期を有する。そのため、維持用量として、皮下または静脈内投与のいずれにおいても4週間に1回という少ない投与頻度で、確実かつ安定した効果が得られる。また本剤の投与により、腎性貧血治療のガイドライン1)の目標ヘモグロビン値を達成することが確認されている。これらの特徴から、通院が月1回という保存期や腹膜透析の患者に、とくにニーズが高いと予想される。 なお、皮下投与だけではなく静脈内投与においても、4週間に1回の投与が可能であることも特徴の1つである。 安全性については、既存のESAと異なる副作用は確認されていない。なお、本剤は2007年欧州での承認以降、すでに100ヵ国以上で発売されている。透析患者におけるリスク低減 一方、透析患者にとっては、通院の負担という面では従来のESAでも問題はないものの、注射という医療行為によるリスクの低減につながる。きわめて稀とはいえ、薬剤や用量の取り違えや感染のリスクはゼロではなく、できる限りリスクを軽減することが求められるが、従来のESAから本剤に変更することで、月に13回の注射が1回に減り、リスクは13分の1となる。 さらに、医療従事者における業務負担の軽減、薬剤の保管スペースの削減など、本剤のメリットは大きいと言えよう。個々の患者に適したESA治療が可能に ミルセラの登場により、患者の状態に合わせた腎性貧血治療の選択肢が増えると考えられる。今後は、保存期や透析期の病期の違い、貧血の程度や患者の状態により、それぞれの特徴を考慮し、個々の患者に合った適切なESA治療が可能になると考えられる。

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足痛を有する高齢者への多面的足治療が転倒リスクを低減

 足痛のある高齢者に対する足装具、靴の助言、自宅での足運動プログラム、転倒予防教育用の小冊子などから成る介入が転倒率を有意に低下させることが、オーストラリアLa Trobe大学のMartin J Spink氏らの検討で示された。高齢者の転倒は重大な公衆衛生学的な問題であり、毎年65歳以上の3人に1人が転倒を経験しているという。高齢者の転倒の原因として、視力障害、筋力低下、反応時間の遅延などが挙げられるが、最近、プライマリ・ケアでの診療機会も多い足の障害との関連が確認されている。足の障害に加え、不適切な履き物も身体バランスや歩行を損ない、転倒のリスクを増大させるという。BMJ誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月16日号)掲載の報告。多面的な足治療の転倒予防効果を評価 研究グループは、日常動作に支障を生じる足痛のある高齢者の転倒予防における多面的な足治療の有効性を検討するために、並行群間無作為化対照比較試験を実施した。 2008年7月~2009年9月までに、足痛があり転倒リスクが増大している高齢者305人[平均年齢73.9歳(SD 5.9)、女性211人、男性94人]が登録され、多面的足治療を受ける群(153人、介入群)あるいは通常の足治療を受ける群(152人、対照群)に無作為化に割り付けられた。 介入群には、足装具、靴の助言、靴の補助金、自宅での足運動プログラム、転倒予防教育用の小冊子、通常の足治療を行い、対照群には通常の足治療のみを施行した。治療期間は両群とも12ヵ月であった。 ベースラインから12ヵ月後までの転倒者率、複数回転倒者率(2回以上転倒した者の割合)、転倒率(転倒の発生率)、転倒によるけがの発生率を算出した。介入群で転倒率が36%有意に低下 試験期間中に264件(介入群103件、対照群161件)の転倒が発生した。12ヵ月の治療を完遂したのは296人で、介入群が147人(96%)、対照群は149人(98%)であった。介入のアドヒアランスは良好で、週3回の運動を75%以上実行した者は52%、装具をほぼ常時装着していたと報告した者は55%に達した。 12ヵ月後までの転倒率は、介入群が対照群よりも36%有意に低下した(発生率比:0.64、95%信頼区間:0.45~0.91、p=0.01)。転倒者率(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.66~1.08、p=0.19)および複数回転倒者率(同:0.63、0.38~1.04、p=0.07)は両群間に差を認めなかった。 骨折が介入群で1人、対照群では7人に発生した(相対リスク:95%信頼区間:0.02~1.15、p=0.07)。介入群では、対照群に比べ足関節の強度(足関節外反)、可動域(足関節背屈および内反/外反)、身体バランス(素足時の床上での身体動揺および靴を履いた状態での最大バランス範囲)が有意に改善された。 著者は、「多面的足治療による介入は、足痛のある高齢者の転倒率を有意に低下させた」と結論し、「介入の個々のコンポーネントは安価で施行法も相対的に簡便であり、ルーチンの足診療や集学的な転倒予防クリニックへの導入の可能性が示唆される」と指摘している。

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QFractureScoresの高い骨折リスク予測能を確認

イギリスで開発された骨折リスクの予測スコア法であるQFractureScores(http://www.qfracture.org/)は、骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10年リスクを予測するツールとして有用なことが、イギリス・オックスフォード大学のGary S Collins氏らが行った外的妥当性の検証試験で確認された。国際的ガイドラインは、骨折リスクが高く、介入によってベネフィットがもたらされる可能性がある患者を同定するために、10年絶対リスクに基づいて高リスク例を絞り込むアプローチを提唱している。QFractureScoresは、イギリスの大規模な患者コホートの解析に基づいて開発された骨折リスクの予測モデルであり、内的妥当性の検証結果は2009年に報告されている。BMJ誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月22日号)掲載の報告。外的妥当性を検証する前向きコホート試験研究グループは、QFractureScoresの骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の予測能を評価するために、その外的妥当性を検証するプロスペクティブなコホート試験を行った。1994年6月27日~2008年6月30日までに、イギリスの364のプライマリ・ケア施設からThe Health Improvement Network(THIN)のデータベースに登録された224万4,636人(30~85歳、1,278万4,326人年)のうち、2万5,208人が骨粗鬆症性骨折(大腿骨近位部、橈骨遠位部、椎骨)を、1万2,188人が大腿骨近位部骨折を発症した。良好な予測能を示すデータが得られたQFractureScoresの独立した外的妥当性の検証結果は、この予測モデルの骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折に関する良好な予測能を示した。すなわち、大腿骨近位部骨折のリスクスコアの受信者動作特性(ROC)曲線下面積は女性が0.89、男性は0.86であった。また、骨粗鬆症性骨折のリスクスコアのROC曲線下面積は女性0.82、男性0.74であった。QFractureScoresのモデル・キャリブレーションも良好で、男女とも、骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10段階のリスクのすべてで予測リスクと実際のリスクがほぼ一致しており、判別可能な過大予測や過小予測は認めなかった。同様に、年齢層別の骨折リスクも全年齢層で予測リスクと実際のリスクがほぼ一致した。著者は、「QFractureScoresはイギリス人の骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10年リスクを予測するツールとして有用である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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低リスク肺塞栓症の低分子量ヘパリンによる外来治療は入院治療に劣らない

低リスクの急性肺塞栓症に対する低分子量ヘパリンを用いた外来治療は、入院治療に劣らない有効性と安全性を有することが、スイス・ベルン大学病院のDrahomir Aujesky氏らの検討で示された。欧米では、症候性の深部静脈血栓症の治療では低分子量ヘパリンによる外来治療が通常治療とされる。肺塞栓症の診療ガイドラインでは、血行動態が安定した患者には外来治療が推奨されているが、現行の症候性肺塞栓症の治療の多くは入院患者を想定したものだという。Lancet誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載の報告。外来治療の非劣性を評価する非盲検無作為化試験本研究は、4ヵ国(スイス、フランス、ベルギー、アメリカ)の19の救急診療施設の参加のもと、肺塞栓症の入院治療に対する外来治療の非劣性を評価する目的で実施された非盲検無作為化試験である。症状のみられる急性肺塞栓症で、死亡リスクが低い患者(肺塞栓症重症度インデックスでリスクがclass IあるはII)が、外来治療(看護師の指導でエノキサパリン1mg/kg×2回/日を自身で皮下投与し、24時間以内に退院)を行う群あるいは外来治療と同じレジメンを入院で施行する群に無作為に割り付けられた。外来治療群のうち自己注射が不可能な患者には、介護者あるいは訪問看護師が投与した。両群とも、経口抗凝固薬とビタミンK拮抗薬を早期に導入し、90日間以上継続することが推奨された。主要評価項目は、90日以内の症候性静脈血栓塞栓症の再発、14日あるいは90日以内の大出血などの安全性のアウトカムおよび90日死亡率とした。非劣性の定義は両群のイベント発生率の差が4%未満の場合とした。患者にも好評、在院期間の短縮に2007年2月~2010年6月までに344例が登録され、外来治療群に172例が、入院治療群にも172例が割り付けられた。評価可能例は、それぞれ171例、168例であった。外来治療群の171例のうち90日以内の静脈血栓塞栓症再発例は1例(0.6%)のみ、入院治療群では再発例はなく、非劣性の判定基準を満たした[95%上限信頼限界(UCL):2.7%、p=0.011]。90日死亡例は両群とも1例(それぞれ0.6%、95%UCL:2.1%、p=0.005)のみで、14日以内の大出血は外来治療群が2例(1.2%)、入院治療群では認めなかった(95%UCL:3.6%、p=0.031)。90日までに外来治療群の3例(1.8%)が大出血をきたしたが、入院治療群では認めなかった(95%UCL:4.5%、p=0.086)。平均在院期間は、外来治療群が0.5日(SD 1.0)、入院治療群は3.9日(SD 3.1)であった。著者は、「低リスク例の場合、肺塞栓症の入院治療を外来治療で用いても安全かつ有効と考えられる」と結論し、「患者にも好評で、在院期間の短縮につながるだろう」としている。(菅野守:医学ライター)

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携帯電話メールへの禁煙支援メッセージ自動送信は禁煙の継続に有効

携帯電話メールへの禁煙支援メッセージの自動送信による禁煙支援プログラムは6ヵ月後の禁煙継続率を有意に改善することが、イギリス・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のCaroline Free氏らが実施したtxt2stop試験で示された。タバコは予防可能な死亡の主要原因であり、喫煙が原因の死亡は毎年、世界で500万人以上に上ると推算されている。イギリスでは喫煙者の3分の2が禁煙の意思を表明しており、禁煙支援の効果的な介入法の確立が急務とされる。携帯電話のメッセージ送信機能を利用した禁煙支援は、短期的には自己申告による禁煙を増加させることが示されている。Lancet誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月30日号)掲載の報告。禁煙支援メッセージと行動変容支援から成るプログラムの禁煙継続効果を評価txt2stop試験の研究グループは、携帯電話のメール機能による禁煙支援メッセージの自動送信が禁煙の継続に及ぼす効果を評価する単盲検無作為化試験を実施した。2007年10月15日~2009年6月1日までに、16歳以上の禁煙の意思のある喫煙者で、携帯電話の所持者が登録され、禁煙の動機付けを促すメッセージと行動変容の支援から成る禁煙支援プログラム(txt2stop)を受ける群、あるいは禁煙とは無関係のメッセージを受信する群(対照群)に無作為に割り付けられた。アウトカムの評価を行う者には介入割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、自己申告による禁煙の継続とし、6ヵ月の時点で生化学的検査(ニコチンの代謝産物であるコチニンの唾液中濃度を測定)による確認が行われた。6ヵ月禁煙継続率:txt2stop群10.7%、対照群4.9%適格基準を満たした1万1,914人のうち5,800人が無作為化の対象となり、介入群に2,915人が、対照群には2,885人が割り付けられた。重複して無作為化された8人を除く、それぞれ2,911人、2,881人が解析の対象となった。主要評価項目の評価は5,524人(95%)で可能であった。6ヵ月の時点で生化学的検査によって禁煙の継続が確認されたのは、txt2stop群が10.7%と、対照群の4.9%に比べ2倍以上に達していた(相対リスク:2.20、95%信頼区間:1.80~2.68、p<0.0001)。フォローアップができなかった者を喫煙者とした場合の禁煙継続率は、txt2stop群が9%(268/2,911人)、対照群は4%(124/2,881人)で(相対リスク:2.14、95%信頼区間:1.74~2.63、p<0.0001)、これらの集団を除外した場合はそれぞれ10%(268/2,735人)、4%(124/2,789人)であり(相対リスク:2.20、95%信頼区間:1.79~2.71、p<0.0001)、双方ともにtxt2stop群で有意に良好な結果が得られた。事前に規定されたいずれのサブグループの解析でも不均一性は認められず、年齢35歳以上/35歳未満、ファガストローム・ニコチン依存度指数≦5/>5、無作為化割り付け時の禁煙製品・サービスの使用の有無にかかわらず、txt2stopは有効であった。著者は、「txt2stop禁煙支援プログラムは6ヵ月後の禁煙継続率を有意に改善したことから、禁煙サービスに加えることを考慮すべき」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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