サイト内検索|page:1538

検索結果 合計:33593件 表示位置:30741 - 30760

30741.

SRI抵抗性の慢性PTSD退役軍人に対するリスペリドンの有効性

セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)抵抗性の、兵役に伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)が慢性的な退役軍人に対し、第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)リスペリドン(商品名:リスパダールほか)を投与しても、全般的症状やうつ症状などに改善は認められなかったことが報告された。米国・コネチカット州退役軍人ヘルスケアシステムのJohn H. Krystal氏らが、SRI抵抗性PTSDの300人弱の退役軍人について無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2011年8月3日号で発表した。米国FDAがPTSD治療薬として認可しているのはSRIのみだが、SRIの有効性は女性よりも男性で、また急性PTSDよりも慢性PTSDでそれぞれ劣ることが知られ、退役軍人に対する臨床ではSRI抵抗性には第二世代抗精神病薬が一般に用いられるようになっているという。本試験は、その有効性をプラセボと比較検証した初の大規模試験。247人を2群に分け6ヵ月追跡、全般的症状やうつ症状などを評価研究グループは、2007年2月~2010年2月にかけて、23ヵ所の退役軍人向け外来診療センターで試験を行った。スクリーニングの結果、2種以上のSRI服用後もPTSD症状が持続する296人のうち、247人について試験を行った。被験者を無作為に二群に分け、一方の群にはリスペリドン(1mgを就寝前1錠、1週間ごとに1錠増やし、1日3錠まで投与量増加、4週間目以降は4錠まで追加可)を、もう一方にはプラセボを投与し、6ヵ月間追跡した。主要アウトカムは、PTSD臨床診断スケール(Clinician-Administered PTSD Scale;CAPS)や、モントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、ハミルトン不安評価尺度(HAMA)、臨床全般印象度(CGI)、退役軍人向けランド36項目健康に関する調査票(SF-36V)だった。リスペリドン群に症状全般、うつ症状、不安症状、QOLの改善なしその結果、試験開始後24週間の時点で、CAPSスコアの変化は、プラセボ群が-12.5(95%信頼区間:-15.7~-9.4)に対し、リスペリドン群は-16.3(同:-19.7~-12.9)と、両群で有意差はなかった(t=1.6、p=0.11)。混合モデル分析でも、治療開始後のいずれの時点でも、両群でCAPSスコアに有意差はなかった(p=0.12)。うつ症状についても、リスペリドン群でプラセボ群に比べ有意な改善はみられず、MADRSの両群の平均値格差は1.19(p=0.11)だった。不安症状でも、HAMAや患者によるCGI、観察者によるCGIのいずれも、両群の平均値格差に有意差はなかった(それぞれ、p=0.09、p=0.14、p=0.04)。生活の質(QOL)についても、SF-36Vの結果で両群に有意差はなかった(p=0.79)。一方で有害事象については、自己申告による体重増がプラセボ群2.3%に対しリスペリドン群15.3%、疲労感がプラセボ群0.0%に対しリスペリドン群13.7%、唾液分泌過多がプラセボ群0.8%に対しリスペリドン群9.9%と、いずれもリスペリドン群で高率に認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30742.

性暴力を受けた女性、精神的・身体的障害の発症リスク増大

親密なパートナーなどからによる性暴力を経験した人は、精神的障害や身体的障害の発症リスクが増大することが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学精神医学校のSusan Rees氏らが、オーストラリア在住の女性4,500人弱を対象にした横断研究の結果を分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年8月3日号で発表した。回答者の27%が、性暴力を経験研究グループは、2007年時点でオーストラリア国内に居住する16~85歳の女性を対象に行われた「Australian National Mental Health and Well-being Survey」に回答した、4,451人の結果を分析した。調査の回答率は65%だった。調査では、親密なパートナーによる暴力、強姦、その他の性的暴行、ストーキングの4種の性暴力経験の有無と、不安障害、気分障害、薬物使用障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症との関係について分析を行った。その結果、いずれかの性暴力を1つでも受けたことがあると答えたのは、回答者の27.4%にあたる1,218人だった。性暴力経験女性の精神的障害発症リスクは7倍、身体的障害発症リスクは4倍なかでも、4種のうち3種以上の性暴力を経験した139人は、不安障害の発症率が77.3%(オッズ比:10.06、95%信頼区間:5.85~17.30)、気分障害が52.5%(オッズ比:3.59、同:2.31~5.60)、薬物使用障害が47.1%(オッズ比:5.61、同:3.46~9.10)、PTSDが56.2%(オッズ比:15.90、同:8.32~30.20)にみられた。また同139人の、いずれかの精神障害の発症率は89.4%(オッズ比:11.00、同:5.46~22.17)、自殺企図が34.7%(オッズ比:14.80、同:6.89~31.60)だった。性暴力を経験した人はそうでない人に比べ、精神的障害の発症リスクは7.14倍、身体的障害の発症リスクは4.00倍だった。特に重度の精神的障害の発症リスクは4.60倍に、また3種以上の精神的障害を有するリスクは7.79倍であることが認められた。その他にも、生活の質の低下(2.96倍)、障害を伴う日の増大(3.14倍)など格差が認められ、全体的障害発症リスクは2.73倍だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30743.

強化血糖降下療法は2型糖尿病の全死因死亡、心血管死を改善しない

2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法は、全死因死亡および心血管死を改善せず、そのベネフィットは限定的であることが、フランス・クロード・ベルナール・リヨン第1大学のRemy Boussageon氏らの検討で明らかとなった。強化血糖降下療法は、2型糖尿病の治療や長期的な心血管合併症、腎機能障害、視覚機能障害の予防を目的に広く行われているが、臨床的な有用性は必ずしも明確ではないという。BMJ誌7月30日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載の報告。死亡リスクに及ぼす効果のメタ解析研究グループは、2型糖尿病に対する強化血糖降下療法に関連する全死因死亡および心血管死のリスクを評価するために、無作為化対照比較試験のメタ解析を行った。データベースを用い、18歳以上の2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法が、心血管イベントおよび細小血管合併症に及ぼす効果を評価した無作為化対照比較試験を抽出した。主要評価項目は全死因死亡および心血管死とし、副次的評価項目は重篤な低血糖および大血管/細小血管イベントとした。強化血糖降下療法と標準治療のリスク比およびその99%信頼区間(CI)を算出した。2つの治療法がアウトカムに及ぼす効果は固定効果モデルを用いて評価し、臨床試験の質はJadadスコアで評価した。死亡リスクは改善されず、重篤な低血糖が2倍以上に13試験に登録された3万4,533例が解析の対象となった。そのうち強化血糖降下療法群が1万8,315例、標準治療群は1万6,218例であった。全死因死亡のリスク比は1.04(99%CI:0.91~1.19)、心血管死のリスク比は1.11(同:0.86~1.43)であり、強化血糖降下療法群は標準治療群に比べ有意な効果は示さず、むしろ死亡リスクが高い傾向がみられた。非致死的心筋梗塞のリスク比は0.85(99%CI:0.74~0.96、p<0.001)、微量アルブミン尿のリスク比は0.90(同:0.85~0.96、p<0.001)と、いずれも強化血糖降下療法群で有意な改善効果が認められたが、重篤な低血糖のリスク比は2.33(同:21.62~3.36、p<0.001)であり、強化血糖降下療法群で有意に2倍以上リスクが高かった。質の高い試験(Jadadスコア>3)に限定した解析では、強化血糖降下療法によるリスク低減効果はまったく認めず、うっ血性心不全のリスクは有意に47%増加していた(リスク比:1.47、99%CI:1.19~1.83、p<0.001)。著者は、「このメタ解析の結果により、全体として、全死因死亡や心血管死に関する強化血糖降下療法のベネフィットは限定的であることが示された」と結論し、「大血管障害や細小血管障害の予防における強化血糖降下療法のベネフィット-リスク比は依然として不明である。強化血糖降下療法のベネフィットは重篤な低血糖によって相殺される可能性がある。2型糖尿病の最良の治療アプローチを確立するには、さらなる二重盲検無作為化対照比較試験が必要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

30744.

頭痛発症後6時間以内の多断面CT検査、クモ膜下出血を高感度に検出

第3世代の多断面CT検査は、頭痛発症後6時間以内に施行すれば100%の感度でクモ膜下出血を同定可能なことが、カナダ・オタワ大学救急医療部のJeffrey J Perry氏らの検討で示された。突発性の激しい頭痛は、初発時に神経学的な異常がみられない場合でもクモ膜下出血が疑われる。従来から、CT検査で異常がなくてもクモ膜下出血を除外するために腰椎穿刺が行われるが、逆に、ほとんどの突発性頭痛は良性で自然治癒的(self limiting)であるため詳細な検査は非効率とされ、これが不要な腰椎穿刺の施行につながる場合も多いという。BMJ誌2011年7月30日号(オンライン版2011年7月18日号)掲載の報告。第3世代CTのクモ膜下出血の検出感度を評価する前向きコホート試験研究グループは、クモ膜下出血が疑われる救急医療部受診患者における第3世代CT検査(特に頭痛発症後6時間以内の検査)の感度を評価するプロスペクティブなコホート試験を実施した。試験にはカナダの11の大学付属3次医療教育病院の救急医療部が参加し、2000年1月~2009年12月の期間に行われた。対象は、神経学的に異常がみられず、発症後1時間以内に最高強度に達した急性頭痛の初発患者(15歳以上)で、治療医によりクモ膜下出血を除外するためのCT検査が指示された者とした。CT検査には、第3世代の多断面CT機器(4~320断面/1回転)が用いられた。クモ膜下出血は、CT画像上のクモ膜下腔の血液像、脳脊髄液中のキサントクロミー、脳血管撮影画像上の異常所見を伴い最後に採取された脳脊髄液中に赤血球が存在する場合と定義された。6時間以内の感度、特異度、NPV、PPVは100%登録された3,132例(平均年齢45.1歳、女性60.3%、「人生最悪の頭痛」と答えた患者82.1%)のうち、240例(7.7%)がクモ膜下出血を発症した。CT検査のクモ膜下出血に対する全体の感度は92.9%(95%信頼区間:89.0~95.5%)であり、特異度は100%(同:99.9~100%)、陰性予測値(NPV)は99.4%(同:99.1~99.6%)、陽性予測値(PPV)は100%(同:98.3~100%)であった。頭痛発症後6時間以内にCT検査を施行されたのは953例で、このうちクモ膜下出血を発症した121例全例がCT検査で同定された。感度、特異度、NPV、PPVはいずれも100%であった(95%信頼区間は、それぞれ97.0~100%、99.5~100%、99.5~100%、96.9~100%)。著者は、「第3世代の機器を用いたCT検査は、頭痛発症後6時間以内に施行し、十分な経験を持つ放射線科医が読影を行えば、きわめて高い感度でクモ膜下出血を同定可能である」と結論し、「これらの知見は、CT検査で異常がみられない場合の腰椎穿刺施行の可否に関する臨床的な意志決定に重大な情報をもたらすものと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

30745.

塩分摂取によって血圧が上昇しやすい人と、そうでない人が存在するのはなぜか?―東大 藤田氏らが解明―

 血圧の塩分感受性の違いが生じるのはなぜか? 東京大学大学院医学系研究科の藤田敏郎氏らの研究チームが、腎臓のナトリウム排泄調節に関与する鉱質コルチコイド受容体(MR)の活性化に、細胞内シグナル分子であるRac1が関与していることを、米国の科学雑誌「Journal of Clinical Investigation」に発表した。 本研究について藤田氏を取材した内容より、今回の研究結果の科学的な意義をまとめる。「食塩感受性」の違いが何によって規定されるかは謎であった かつて、わが国には高血圧が多く、脳卒中が多発した理由の一つとして、食塩の過剰摂取が挙げられていた。食塩の摂取量が多くなると血圧が高くなることは、INTERSALT研究などの結果より、24時間蓄尿でみた食塩摂取量の多い集団では血圧が高く、個人の食塩摂取量と血圧の間にも正の相関がみられるなど疫学的な見地からも裏付けられている。しかし、塩分の摂取により、すべての人で一律に血圧が上昇するわけでなく、塩分に対する血圧の反応性には個人差があり、塩分摂取によって血圧上昇が鋭敏な集団が存在する。いわゆる「食塩感受性高血圧」だ。この「食塩感受性」の違いが何によって規定されるかは、最近まで明らかにされていなかった。アルドステロンに依存しない昇圧系が存在 血清アルドステロンの上昇によって、腎臓でナトリウムの再吸収が促進され、血圧が上昇することは古くから知られている。最近では、アルドステロンの受容体であるMRが腎臓以外にも脳、心臓、血管など見出され、腎臓を介する古典的な昇圧作用に加えて、アルドステロンの中枢性・末梢性昇圧作用が指摘されている。 一方、健康な人では塩分を過剰に摂取すると、ネガティブ・フィードバックが働いて血清アルドステロン濃度は低下する。それにもかかわらず、MRが活性化し、その結果、血圧が上昇するというアルドステロンに依存しない昇圧系が存在することが見出された。藤田氏らは、このアルドステロン非依存性の昇圧系に関して、細胞内シグナル分子Rac1に着目し、アルドステロンに依存しないMR活性化メカニズムを解明し、その研究結果を2008年Nature Medicine誌に発表した。食塩感受性高血圧にRac1を介したMRの活性化が関与 今回、明らかにされたのは、次の2点。1.腎Rac1活性の差異が食塩感受性の個体差を来す2.塩分過剰摂取によりRac1を介する経路でMRが病的に活性化され高血圧が引き起こされる 今回、藤田氏らは高食塩食により血圧上昇を来す食塩感受性高血圧ラット(Sラット)と、塩分負荷に対して血圧上昇を来さない塩分抵抗性正常血圧ラット(Rラット)の2種のモデルラットに対し、同量の塩分を負荷し、食塩感受性の差異を説明する分子の探索を試みた。 その結果、血清アルドステロン濃度は、塩分負荷に伴って両モデルラットで同程度抑制されていたにもかかわらず、Sラットでは塩分負荷により腎MR活性上昇し、Rラットでは抑制されていた。 一方、腎Rac1活性は、Sラットでは塩分負荷により上昇したのに対し、Rラットでは低下していることが明らかになった。すなわち、食塩感受性ラットでは塩分摂取によって、血清アルドステロン濃度は抑制されているにもかかわらず、腎Rac1活性が上昇し、腎MR活性も上昇する。逆に、Sラットに対し、Rac1阻害薬を投与し、腎Rac1活性を抑制したところ、MR活性の低下とともに高血圧の顕著な改善が認められた。 以上のことから、藤田氏らは食塩感受性高血圧にRac1を介したMRの活性化が関与していると結論づけている。 食塩感受性の個体差は3つの系が複合的に作用している藤田氏は、食塩感受性は、アルドステロンを介する系、交感神経を介する系、そしてRac1を介する系があるとし、これら3つの系が何らかの割合で寄与していると述べる。 既報の通り、今年4月には、塩分摂取などの環境因子が、腎臓における交感神経活性の亢進が血圧を上昇させるかについて、食塩排泄性遺伝子WNK4遺伝子の転写活性を抑制し、食塩感受性高血圧を発症させることを「Nature Medicine」誌に発表している。 WNK4遺伝子に関わるアセチル化を阻害する「ヒストン修飾薬」、アルドステロン非依存的なRac1-MR系を阻害する「Rac1阻害薬」などの開発において、選択性が高く、副作用を軽減でき最大限の主作用が発揮できる用量の探求が達成できると、これら薬剤の臨床応用が可能となり、我々が新たな血圧調整の手段を入手できる日も遠くはないと藤田氏は述べる。

30746.

1型糖尿病に対するアバタセプト、膵β細胞の機能低下速度を抑制

早期の1型糖尿病患者に対し、関節リウマチ治療薬アバタセプト(商品名:オレンシア)を投与すると、膵β細胞の機能低下の速度が遅くなることが、米国・Joslin糖尿病センター(ボストン市)のTihamer Orban氏らの検討で示された。1型糖尿病の免疫病原性には膵β細胞を標的とするT細胞性の自己免疫反応が関与しており、T細胞の十分な活性化には、抗原提示細胞(APC)表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子上の抗原とT細胞受容体の相互作用に加え、APC上のCD80、CD86とT細胞上のCD28の相互作用という共刺激シグナルが必須である。アバタセプト(CTLA4-免疫グロブリン融合蛋白)は、この共刺激シグナルを遮断してT細胞の活性化を阻害するため、膵β細胞の機能低下を抑制して1型糖尿病の進展を遅延させる可能性があるという。Lancet誌2011年7月30日号(オンライン版2011年6月28日号)掲載の報告。北米で実施されたプラセボ対照無作為化第II相試験研究グル-プは、新規の1型糖尿病患者に対するアバタセプトの有効性を評価する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験を実施した。2008年3月24日~2009年2月23日までに、アメリカとカナダの15施設から、過去100日以内に1型糖尿病と診断された6~45歳の患者が登録された。これらの患者が、アバタセプト(10mg/kg、最大1,000mg)あるいはプラセボを静注する群に2:1の割合で無作為に割り付けられ、第1、14、28日、以降は1ヵ月に1回、約2年にわたり合計27回の治療が行われた。主要評価項目は、膵臓のインスリン分泌能の指標として、フォローアップ2年の時点における混合食負荷試験から2時間の血清Cペプチド値曲線下面積(AUC)の幾何平均(ベースライン値で調整)とした。デ-タの評価が可能であった全患者についてintention-to-treat解析を行った。Cペプチド値AUCが有意に59%改善、機能低下が9.6ヵ月遅延112例が登録され、アバタセプト群に77例、プラセボ群には35例が割り付けられた。2年後の調整済みCペプチド値AUCは、アバタセプト群(73例)が0.378nmol/Lと、プラセボ群(30例)の0.238nmol/Lに比べ有意に59%(95%信頼区間:6.1~112)高い値を示した(p=0.0029)。この両群間の差は試験期間を通じて認められ、アバタセプト群では、Cペプチド値がプラセボ群と同じ程度にまで低下するのに要する期間が9.6ヵ月遅延すると推察されたことから、アバタセプトによりインスリン分泌能の低下が抑制されたと考えられる。注射関連の有害事象の発生率は、アバタセプト群が22%(17/77例、36件)、プラセボ群は17%(6/35例、11件)であり、有意な差は認めなかった。感染症[42%(32/77例) vs. 43%(15/35例)]や好中球減少[9%(7/77例) vs. 14%(5/35例)]の発生率も両群で同等であった。著者は、「アバタセプトは、共刺激シグナルを阻害することで2年にわたり膵β細胞の機能低下の速度を遅くした」とまとめ、「これにより、臨床的に1型糖尿病と診断される時期にはT細胞の活性化が起きていることが示唆される。一方、2年間のアバタセプト投与期間中、6ヵ月以降は膵β細胞機能の低下率がプラセボと同程度に達したことから、T細胞の活性化は経時的に減弱しており、機能低下に対する他の経路の関与が推測される。今後は、アバタセプト中止後の効果の持続を評価するために観察を続ける必要がある」と考察している。(菅野守:医学ライター)

30747.

糖尿病性腎症に対するbardoxolone methyl、52週時点でも腎機能改善確認

糖尿病性腎症の治療薬として新規開発中のbardoxolone methylについて、長期効果と用量反応が検証された第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験の結果、検討されたいずれの用量群でも、主要アウトカムである24週時点の腎機能の有意な改善が認められ、副次アウトカムである52週時点でも有意な改善が持続していたことが報告された。米国・Renal Associates(テキサス州、サンアントニオ)のPablo E. Pergola氏ら治験研究グループが、NEJM誌2011年7月28日号(オンライン版2011年6月24日号)で発表した。bardoxolone methylは、糖尿病性腎症の慢性炎症および酸化ストレスに着目し開発された経口抗酸化炎症調節薬。試験の結果を踏まえ研究グループは「bardoxolone methylは治療薬として有望である可能性が示された」と結論している。227例をプラセボ群と25mg、75mg、150mg各群に無作為化し52週治療bardoxolone methylの長期有効性を検討する第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験は、中等度~重症のCKD(eGFRが20~45mL/分/1.73m2体表面積)を伴う2型糖尿病患者を適格患者として行われた。米国内43施設から集められた573例がスクリーニングを受け、227例が無作為に(1)プラセボ投与群(57例)、(2)bardoxolone methyl 1日1回25mg投与群(57例)、(3)同75mg投与群(57例)、(4)同150mg投与群(56例)に割り付けられ、52週にわたり治療が行われた。4群の基線プロフィールは同等で、平均年齢は67歳、98%がACE阻害薬かARBまたは両方を服薬していた。主要アウトカムは、各治療群の24週時点のeGFRの基線からの変化値で、プラセボ群と比較された。副次アウトカムは、同52週時点の変化値とされた。24週時点で有意な改善、52週時点でも有意な改善持続試験の結果、eGFRの基線からの変化は12週でピーク値を示し、その後、試験期間終了の52週まで比較的安定的に推移していた。24週時点のeGFRの基線からの変化は、bardoxolone methyl各投与群ともプラセボ群との比較で有意な上昇が認められた。eGFR変化の平均値(±SD)は、25mg投与群8.2±1.5mL、75mg投与群11.4±1.5mL、150mg投与群10.4±1.5mLであった(すべての比較のP<0.001)。また、25mg投与群と75mg投与群との変化値の差は有意だったが(P=0.04)、75mg投与群と150mg投与群との差は有意ではなかった(P=0.54)。各投与群のプラセボ群と比較した有意なeGFR上昇は、52週時点でも持続していた[変化値はそれぞれ5.8±1.8mL(P=0.002)、10.5±1.8mL(P<0.001)、9.3±1.9mL(P<0.001)]。bardoxolone methyl各投与群で最も頻度が多かった有害事象は筋痙縮だったが、総じて軽度であり、また用量依存に認められた。その他、よくみられたのが、低マグネシウム血症、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の軽度上昇、胃腸への影響であった。(武藤まき:医療ライター)

30748.

インドでのロタウイルス自然感染防御効果の研究からわかったこと

ロタウイルス自然感染の防御効果について、ロタウイルス感染死者数が世界で最も多いと報告されているインドでコホート研究を行ったインド・キリスト教医科大学のBeryl P. Gladstone氏ら研究グループは、「アジアやアフリカで、ロタウイルスのワクチン効果が、なぜ予想よりも低いかを説明し得るか」について知見を得られたことを、NEJM誌2011年7月28日号で発表した。「インドでは早期感染、再発頻度が高く、ウイルスが多様であり、結果として、その他地域で報告されているよりも防御効果を低くしている」という。ロタウイルスの防御効果については、メキシコの出生コホート研究で、2度の連続自然感染により、その後に感染しても中等度~重度の下痢症状を完全に防御できるという報告が寄せられていた。Gladstone氏らは、その報告を踏まえて、インド(経口ワクチン効果が一般的に期待されるより低い)の出生コホートについて調査を行った。インドの都市部スラム街の小児373例を3年間追跡研究グループが対象としたのは、インド・Velloreの都市部のスラム街で生まれた小児で、出生後3年間、週2回往診して追跡した。追跡調査期間は2002年3月~2003年8月で、当初452例が登録され、追跡が完了したのは373例だった。調査は、便検体を2週間ごとに集め、酵素免疫測定(ELISA)法およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でロタウイルス抗原を同定する検査が行われた。なお、下痢症状が認められる期間は2日ごとに便検体を集め検査が行われた。また、血清検体を6ヵ月ごとに採取し、セロコンバージョンの評価(IgG抗体価4倍上昇またはIgA抗体価3倍上昇と定義)が行われた。全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%結果、インドの都市部スラム街では、概して生まれて間もなくロタウイルスに感染している実態が明らかになった。生後6ヵ月までの感染率は56%だった。再感染率は高く、調査期間中の全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%だった。中等度~重度疾患に対する防御効果は、感染回数が増すごとに高まってはいたが、感染3回後も防御率は79%にとどまっていた。最もよくみられたウイルス株の遺伝子型はG1P[8](15.9%)で、G2P[4](13.6%)、G10P[11](8.7%)、G9P[8](7.2%)、G1P[4](4.4%)、G10P[4](1.7%)、G9P[4](1.5%)、G12P[6](1.1%)、G1P[6](0.6%)と続いた。同一タイプのウイルス株への初回、再感染リスクについて評価した結果、遺伝子型に基づく明らかな防御効果は認められなかった。これら結果を踏まえGladstone氏は最後に、「インドや同等の地域では、ロタウイルスワクチン戦略を見直すべきことを示す結果であった。投与量や回数を増加したり、ワクチン接種を早期に行う(たとえば新生児のうちの接種、あるいは母親への接種など)ことも考慮していく必要があるだろう」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

30749.

早期浸潤性乳がん患者の免疫化学染色法によるSLNまたは骨髄転移検出の意義

早期浸潤性乳がん患者で、センチネルリンパ節(SLN)への転移が認められた人では全生存率は低下しなかったが、骨髄へ微小転移が認められた人は全生存率の低下(補正前ハザード比1.94)が認められたことが明らかにされた。しかし、多変量解析において両部位とも転移検出と生存率とに統計的に有意な関連は認められなかったことも報告された。米国Cedars-Sinai Medical CenterのArmando E. Giuliano氏らが、乳房温存療法とSLN生検を受けた患者5,210人を中央値6.3年間追跡した前向き観察試験の結果で、結論において「両検査の結果は臨床的根拠とならない」とまとめている。JAMA誌2011年7月27日号掲載報告より。中央値6.3年追跡、免疫化学染色法で骨髄およびSLNへの微小転移を検出研究グループは、早期浸潤性乳がん患者の生存率と、SLNおよび骨髄標本への免疫化学染色法によって検出される転移との関連を評価することを目的とした。1999年5月~2003年5月に126ヵ所でAmerican College of Surgeons Oncology GroupのZ0010試験に登録された、早期浸潤性乳がんで乳房温存療法とSLN生検を受けた5,210人について、2010年4月まで中央値6.3年追跡した。被験者のSLN検体と骨髄検体(手術時の骨髄穿刺は当初は任意で、2001年3月以後は全例に実施された)が中央ラボに送られ、免疫化学染色法により微小転移が調べられ、全生存率(主要エンドポイント)や無病生存期間(副次エンドポイント)について検討された。SLN検体について、HE染色法が行われた5,119人(98.3%)のうち腫瘍陰性だったのは3,904人(76.3%)だった。免疫化学染色法を行ったのは3,326人で、そのうち腫瘍陽性は349人(10.5%)だった。一方、骨髄検体の免疫化学染色法が行われたのは3,413人で、そのうち腫瘍陽性は104人(3.0%)だった。追跡期間中、435人が死亡、また376人に再発が認められた。骨髄への微小転移と全生存率との関連、補正前は有意だが補正後は有意差認められず解析の結果、SLN転移の免疫化学染色法のエビデンス(5年生存率:転移検出群95.1%、非検出群95.7%、補正前ハザード比0.90、p=0.64)は、全生存率との有意な関連が認められなかった。多変量解析の結果でも有意な関連は認められなかった(補正後ハザード比:0.88、p=0.70)。一方、骨髄への微小転移は、全生存率の低下との有意な関連が認められたが(死亡に関する補正前ハザード比:1.94、95%信頼区間:1.02~3.67、p=0.04)、多変量解析後は、統計的に有意な関連は認められなかった(同:1.83、p=0.15)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30750.

超低出生体重児の慢性疾患罹患率、14歳時で正常出生体重児の約3倍

超低出生体重児の14歳時の慢性疾患罹患率は、正常出生体重児群と比べて2.8倍にのぼることが明らかにされた。一方で喘息や肥満については、両群に有意な差は認められなかったという。米国・クリーブランドにあるケース・ウェスタン・リザーブ大学のMaureen Hack氏らが、出生時体重1kg未満の超低出生体重児と正常出生体重児の8~14歳の慢性疾患罹患率の変化について行ったコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月27日号で発表した。なお超低出生体重児の、8~14歳の慢性疾患および喘息の罹患率の変化は認められなかったが、肥満の罹患率は増大していたことも報告されている。超低出生体重児の慢性疾患罹患率、8歳から14歳で増加なし同研究グループは、2004~2009年にかけて、超低出生体重児(<1kg)181児と正常体重児115児について追跡試験を行った。被検児は全員、オハイオ州クリーブランドでの1992~1995年生まれだった。主要アウトカムは、8~14歳における、小児慢性疾患特定のための改定版質問票(revised Questionnaire for Identifying Children With Chronic Conditions)に基づく慢性疾患罹患率、および喘息、肥満のそれぞれ罹患率だった。結果、超低出生体重児の慢性疾患罹患率は、8歳時75%、14歳時74%と、有意な変化は認められなかった。正常出生体重児も、8歳時37%、14歳時47%で、その変化に有意差は認められなかった。14歳時で喘息と肥満の罹患率については有意差なし社会人口統計学的要因や性別、人種について補正後、14歳時における慢性疾患罹患率は、正常出生体重児が47%に対し、超低出生体重児が74%と、補正後オッズ比は2.8(95%信頼区間:1.7~4.6)だった。投薬を必要とする喘息の罹患率は、超低出生体重児では8歳時、14歳時ともに23%と変わらなかったが、正常出生体重児ではそれぞれ8%と17%と、有意な増加がみられた(p=0.002)。その結果、14歳時においては投薬を必要とする喘息罹患率について、両群で有意差はなくなっていた(補正後オッズ比:1.5、95%信頼区間:0.8~2.8)。超低出生体重児のBMI平均Zスコア値は、8歳時0.06が14歳時0.38へ(p<0.001)、また肥満率は12%から19%へとそれぞれ増加した(p=0.02)。一方で、正常出生体重児では同期間にいずれの割合も増加しなかった。そのため14歳時点で、超低出生体重児と正常出生体重児では、BMI平均Zスコア値、肥満率とも有意差がなくなっていた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30751.

術前心エコー検査、術後生存改善や入院期間短縮と関連せず

大手術時に懸念される周術期心臓合併症を回避するために、ガイドラインで推奨されている術前心エコー検査について、住民ベースの後ろ向きコホート試験の結果、術後生存や入院期間を改善していないことが明らかにされた。カナダ・St Michael's HospitalのDuminda N Wijeysundera氏らが、40歳以上の中~高リスクの選択的非心臓手術患者を対象に行った試験で報告した。周術期心臓合併症は、選択的非心臓手術例の2%以上で発生、術後死亡の約3分の1を占めると報告されており、術前リスク層別化として心エコーが推奨されている。BMJ誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月30日号)掲載報告より。わずかだが有意に、心エコー検査受診が術後死亡率を上昇試験は、カナダ・オンタリオ市の急性期病院に関する医療データベース(入院料、医師報酬請求、人口動態統計、65歳以上処方などの各データ)を利用して行われた。1999年4月1日~2008年3月31日の間に、中~高リスクの選択的非心臓手術を受けた40歳以上を被験者とし、術前6ヵ月間内に行われた安静時心エコー検査の記録を調べ、術後生存(30日時点と1年時点)、入院期間について評価した。評価に際して術後手術部位感染症例は、心エコー検査との関連が期待できないアウトカムとして除外された。全コホート26万4,823患者のうち、心エコー検査を行っていた人は4万84例(15.1%)だった。心エコー検査を受けたか受けなかったかの違いによる減少差をみるために行った、適合コホート(7万996例)との傾向スコア解析の結果、心エコー検査受診と30日死亡率上昇(相対リスク:1.14、95%信頼区間:1.02~1.27、P=0.02)および1年死亡率上昇(同:1.07、1.01~1.12、P=0.02)との関連が、それぞれわずかだが有意に認められた。入院平均期間延長との関連も有意だった(0.31日、95%信頼区間:0.17~0.44、P<0.001)が、術後手術部位感染症は有意ではなかった(相対リスク:1.03、95%信頼区間:0.98~1.06、P=0.18)。ストレステストおよびリスク因子の有無で、死亡との関連が左右されることが明らかにまたサブグループ解析から、死亡との関連が、ストレステストの有無、心臓合併症のリスク因子の有無で左右されることが明らかにされた。ストレステスト受診者(相対リスク:1.01、0.92~1.11)と、ストレステスト未受診者でも高リスクを有する人(同:1.00、0.87~1.13)では死亡率上昇が認められなかった一方、ストレステスト未受診者で低リスク患者(同:1.44、1.14~1.82)、中間リスク患者(同:1.10、1.02~1.18)では死亡率上昇が認められた。Wijeysundera氏は、「試験の結果、周術期アウトカム改善のための術前心エコー検査の有用性に疑いを投げかけるものとなったが、同時に、リスク階層化の精度を上げるためのさらなる研究、および心室機能障害に通じる周術期心臓合併症を減少させるための有効な介入法開発の必要性を強調するものである」と結論している。

30752.

二次予防としての低用量アスピリンの服用中断は非致死的心筋梗塞を有意に増大

心血管イベント歴のある人は、低用量アスピリンを飲み続けないと、非致死的心筋梗塞のリスクが高まることが明らかにされた。スペイン薬剤疫学研究センターのLuis A Garcia Rodriguez氏らが行った、英国プライマリ・ケアベースの症例対照研究の結果による。BMJ誌2011年7月23日号(オンライン版2011年7月19日号)掲載報告より。英国プライマリ・ケアベースの症例対照研究Rodriguez氏らは、英国医療データベース「The Health Improvement Network(THIN)」を用いたコホート内症例対照研究を行った。2000~2007年に、心血管疾患二次予防として低用量アスピリン(75~300mg/日)を初回処方されていた50~84歳の3万9513例を追跡し、非致死的心筋梗塞または冠動脈心疾患による死亡を主要転帰に評価を行った。また、低用量アスピリン服用中断者と継続者とのイベントリスクについても比較された。平均追跡期間3.2年の間に、非致死的心筋梗塞を発症したのは876例、冠動脈心疾患死亡は346例だった。非致死的心筋梗塞63%増転帰のリスクについて検証した結果、服用を現に継続していた人(1,222例の72%)と比べて直近に中断した人(同9%)は1.43倍(補正後ハザード比:1.43、95%信頼区間:1.12~1.84)と有意な増大が認められた。転帰別では、非致死的心筋梗塞単独では1.63倍(同:1.63、1.23~2.14)で有意な増大が認められたが、冠動脈心疾患死亡単独では1.07倍(同:1.07、0.67~1.69)で、服用中断による死亡リスク増大との関連は有意ではなかった。服用継続者と比べて中断者の超過リスクは、非致死的心筋梗塞が年間1,000患者当たり約4例であった。なお中断の理由として最も多かったのは「非アドヒアランス」で、次いで「安全性への懸念」であった。これらからRodriguez氏は、「プライマリ・ケアでの二次予防管理では中断の影響を考慮すべき」としたうえで、服用のベネフィットの認知不足や有害事象について医師と相談していなかったことから服用中断となったのかなど、中断の理由を明らかにする研究の必要性、さらにまた、継続服用の奨励で非致死的心筋梗塞が減少するのかを検証する研究の必要性に言及している。

30753.

1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alumワクチン療法の可能性

1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alum(水酸化アルミニウム配合グルタミン酸脱炭酸酵素)ワクチン療法について、無作為化二重盲検試験の結果、治療目標としたインスリン分泌の低下を抑制しなかったことが報告された。カナダ・トロント大学小児疾患病院のDiane K Wherrett氏らによる。GADは、1型糖尿病の自己免疫反応の主要なターゲットであり、非肥満性の自己免疫性糖尿病モデルのマウス実験では、糖尿病を予防する可能性が示されていた。Lancet誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月27日号)掲載報告より。診断100日未満3~45歳145例を対象に、接種後1年間のインスリン分泌能を調査試験は、アメリカとカナダ15施設から登録され適格基準を満たした、1型糖尿病との診断が100日未満の3~45歳145例を対象に行われた。被験者は無作為に、GAD-alum 20μgの3回接種群(48例)、同2回接種+alum 1回接種群(49例)、alum 3回接種群(48例)の3つの治療群に割り付けられ、インスリン分泌能が維持されるかを観察した。主要評価項目は、1年時点の血清Cペプチド値(4時間混合食負荷試験の2時間値)の相乗平均曲線下面積(AUC)とし(基線で年齢、性、ペプチド値で補正)、副次評価項目は、HbA1cとインスリン投与量の変化、安全性などを含んだ。接種スケジュールは、基線、4週間後、さらにその8週間後だった。無作為化はコンピュータにて行われ、患者および治験担当者には割り付け情報は知らされなかった。3回接種、2回接種、alum接種の3群間で有意差認められず、免疫療法研究は発展途上結果、1年時点の血清Cペプチド値の2時間AUCは、GAD-alum接種群は0.412nmol/L(95%信頼区間:0.349~0.478)、GAD-alum+alum接種群は0.382nmol/L(95%信頼区間:0.322~0.446)、alum接種群は0.413nmol/L(95%信頼区間:0.351~0.477)で3群間に有意差は認められなかった。同集団平均値比は、GAD-alum接種群vs. alum接種群は0.998(95%信頼区間:0.779~1.22、p=0.98)、GAD-alum+alum接種群vs. alum接種群は0.926(同:0.720~1.13、p=0.50)で、3群間で同等だった。HbA1cとインスリン投与量の変化、有害事象の発生頻度および重症度について、3群間で差は認められなかった。Wherrett氏は、「新規1型糖尿病患者を対象とする4~12週にわたるGAD-alumの2回または3回接種によるワクチン療法により、1年間のインスリン分泌低下を変化することはなかった」と結論。しかし、「免疫療法は非常に望ましく、動物モデルでは有効であったが、ヒトに関してはいまだ発展途上である」として、レビュアーから、投与量・ルート、有効な耐性誘導などさらなる研究が必要だろうとの指摘があったことや、免疫療法の研究を進展させるには免疫調整マーカーの開発が必要であること、また低用量の免疫調整薬投与を含む、GAD療法の併用療法への応用の可能性について言及している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30754.

特発性後腹膜線維症の寛解維持はステロイド療法が第一選択

特発性後腹膜線維症に対する寛解維持療法として、プレドニゾン(ステロイド療法として)とタモキシフェン(免疫療法として)の有効性を比較したオープンラベル無作為化試験の結果、プレドニゾンのほうが再発予防効果においてより有効であることが明らかにされた。イタリア・パルマ大学病院のAugusto Vaglio氏らが行った試験の結果で、「プレドニゾンを、新規の特発性後腹膜線維症患者への第一選択薬と考えるべきであろう」と結論した。特発性後腹膜線維症は、腹部大動脈や腸骨動脈周囲の線維炎症性組織の存在によって特徴づけられ、尿管にも病変が及ぶ場合が多い稀な疾患である。Lancet誌2011年7月23日号(オンライン版2011年7月5日号)掲載報告より。患者40例を無作為化し8ヵ月間治療、その後18ヵ月間追跡し再発率を評価試験は、2000年10月1日~2006年6月30日の間にパルマ大学病院で登録された、新規診断の18~85歳の特発性後腹膜線維症患者40例を対象に行われた。被験者は導入療法としてプレドニゾン1mg/kg/日を1ヵ月間服用し、寛解が得られた36例が、無作為に8ヵ月にわたる、プレドニゾン漸減投与群(当初は0.5mg/kg/日、18例)かタモキシフェン定量投与群(0.5mg/kg/日、18例)に割り付けられ追跡された。追跡期間は、治療終了後もさらに18ヵ月にわたった。無作為化はコンピュータにて行われ、割り付け情報は患者、治験担当者、データ分析研究者には開示された。CT、MRI担当者にはマスキングされた。主要エンドポイントは、治療終了時点(8ヵ月)までの再発率とされ、intention to treat解析にて評価が行われた。再発率は8ヵ月時点、18ヵ月時点ともプレドニゾンのほうが低く33%差治療終了時点までの再発例は、プレドニゾン群は1例(6%)、タモキシフェン群は7例(39%)であった(格差:-33%、95%信頼区間:-58~-8、p=0.0408)。群間の再発率の格差は、さらなる追跡18ヵ月時点でも変わらず認められた。26ヵ月時点の推定累積再発率は、プレドニゾン群は17%、タモキシフェン群50%であった(格差:-33%、95%信頼区間:-62~-3、p=0.0372)。なお、プレドニゾン群のほうがタモキシフェン群よりも一般的にみられた有害事象は、風貌のクッシング様変化(p=0.0116)とグレード2の高コレステロール血症であった(p=0.0408)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30755.

Framinghamリスク分類を有意に改善するのは内頸動脈壁の最大内膜中膜厚のみ

頸動脈壁内膜中膜厚が心血管アウトカムの予測因子として有用かについて、Framinghamリスクスコアと関連させながら詳細に検討(総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚の別に考慮)した結果、総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚ともに心血管アウトカムを予測したが、Framinghamリスクスコアのリスク分類能を改善するには、内頸動脈壁内膜中膜厚のみ有用であることが、米国・タフツ医療センター放射線部門のJoseph F. Polak氏らにより報告された。同氏らは、頸動脈壁内膜中膜厚をFraminghamリスクスコアに加えることで、同リスク分類が改善されるのではないかと言われてきた仮説を検証した結果による。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。Framingham次世代研究2,965例を7.2年間追跡Polak氏らは、Framingham次世代研究(Framingham Offspring Study)コホート2,965例の総頸動脈壁の平均内膜中膜厚と内頸動脈壁の最大内膜中膜厚を測定し、追跡期間7.2年間の心血管疾患アウトカムについて評価した。多変量Cox比例ハザードモデルにて、内膜中膜厚とリスク因子との関連を評価し、Framinghamリスクスコア分類(低、中間、高)を基準として、内膜中膜厚の因子を追加後に8年間の心血管疾患の再分類がどの程度変わるかを評価した。被験者の平均年齢は58(SD 10)歳、基線では心疾患歴がなく、55.3%が女性であった。追跡期間中に報告された被験者初発の心血管イベントは296例であった。総頸動脈壁の平均内膜中膜厚も予測因子だが、Framinghamリスク分類は改善しない発生した心血管イベントは、Framinghamリスクスコアにより予測可能であった。C統計量は0.748(95%信頼区間:0.719~0.776)だった。総頸動脈壁の平均内膜中膜厚を追加後、心血管疾患との関連は有意であったが(1-SD増すごとの補正後ハザード比:1.13、95%信頼区間:1.02~1.24)、C統計量の変化(0.003、95%信頼区間:0.000~0.007)は有意ではなかった。内頸動脈壁の最大内膜中膜厚を追加後は、心血管疾患との関連は有意で(同:1.21、1.13~1.29)、C統計量の変化(0.009、同:0.003~0.016)はわずかだが有意な上昇が認められた。ネット再分類指数は、内頸動脈壁内膜中膜厚追加後は有意に上昇したが(7.6%、P<0.001)、総頸動脈壁内膜中膜厚追加後の上昇は有意ではなかった(0.0%、P=0.99)。内頸動脈壁内膜中膜厚1.5mm超と定義したプラークの存在を追加後のネット再分類指数は7.3%(P=0.01)、C統計量の変化(0.014、同:0.003~0.025)ともわずかだが有意な上昇が認められた。Polak氏は、「総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚ともに心血管アウトカムを予測するが、心血管疾患のリスク分類を有意に改善するのは、内頸動脈壁の最大内膜中膜厚(およびプラークの存在)のみである」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

30756.

中東からの帰還兵に多い呼吸器障害の原因とは

1990年代に配備され最近帰国したイラク、アフガニスタンからの帰還兵では、呼吸器症状の報告が一般的になっているという。米国、英国、オーストラリアで行われた疫学的研究では、他地域配備と比べて中東配備兵での呼吸器障害の発生率増大が報告され、2009年の報告ではイラク内陸部への配備との関連が示されたが、配備中に吸入性傷害を負ったことは明らかになったものの病理学的な検証はなされていない。そこで米国・Meharry医科大学のMatthew S. King氏らは、帰還後に労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例について症例記述研究を行った。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例を評価King氏らが研究対象としたのは、フォート・キャンベル(ケンタッキー)の陸軍病院から運動耐容能評価のため、2004年2月~2009年12月の間に大学病院に紹介されてきた80例の帰還兵であった(配備先:イラクのみ62例、イラクとアフガニスタン17例、アフガニスタンのみ1例)。いずれも配備前は健康であったが、帰還後は呼吸困難のため2マイルランテストの米陸軍基準を達成することができなくなってしまっていた。帰還兵に対し、病歴、曝露歴、身体検査、肺機能検査、CT検査が行われ、非侵襲性評価では症状について説明がつかなかった49例には、さらにバイオプシー検査が行われ、心肺運動負荷検査および肺機能検査データについて、これまで集積されてきた陸軍データ(対照群)との比較が行われた。説明のつかなかった49例はびまん性狭窄性細気管支炎バイオプシー検査が行われたのは49例で、全例に異常が認められ、うち38例は狭窄性細気管支炎であった。残る11例は、その他の診断で呼吸困難の説明がついた。被験者が配備期間中、イラクのモスルで2003年夏に大規模な硫黄鉱山火災があった。その曝露歴は被験者に一般的で、全例には及ばなかったものの、狭窄性細気管支炎と診断された38例では28例に曝露歴が確認された。検査所見については、38例全例が胸部X線所見は正常であったが、胸部CTでは約4分の1に、モザイク状のエアートラッピングまたは小葉中心性結節が確認された。肺機能検査および心肺運動負荷検査の結果は、概して正常範囲内であったが、対照群データよりも劣っていた。King氏は、「説明のつかなかった49例は、バイオプシー検査によりびまん性狭窄性細気管支炎であることが判明した。38例については、おそらく吸入性曝露によるものと思われる」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

30757.

たこつぼ心筋症、心血管MRIで正確に診断が可能

ストレス心筋症(たこつぼ心筋症)について、心血管MRI(CMRI)により正確な診断が可能であることが報告された。またCMRIにより、従前報告されているよりも広範囲に臨床像が認められることが判明し、ストレス心筋症の心室部の無収縮部位について、心尖部や両心室など4つのパターンがあることが示されたという。ドイツ・ライプツィヒ大学心臓センターのIngo Eitel氏らが、米国とヨーロッパのストレス心筋症患者256人について行った前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月20日号で発表した。無収縮部分は4つの部位と判明ストレス心筋症は、ストレスイベントに起因する一過性の急性心不全で、特徴的な左室収縮パターンを有する。その臨床プロフィールはさまざまに描出されてきたが、小規模単一施設をベースとしたもので、大規模多施設データをベースとしたものが不足していた。また、入院時の診断を速やかに行うことについても課題が残されたままだった。そこで研究グループは2005年1月~2010年10月にかけて、米国とヨーロッパ7施設のストレス心筋症患者256人について、症状発症時と1~6ヵ月時点でCMRIを行い、ストレス心筋症の病変部位およびその後の進展について判定できるかどうかを検証した。主要評価項目は、左室機能障害の完治とした。被験者の平均年齢は69歳(標準偏差:12)、うち81%(207人)が閉経後女性、8%(20人)が50歳以下の女性、11%(29人)が男性だった。CMRIから(評価可能239人、93%)、心室部の無収縮について、心尖部(197人、82%)、両心室(81人、34%)、心室中部(40人、17%)、基底部(2人、1%)の4パターンが認められた。CMRIでの診断ポイントは4つまたCMRIによるストレス心筋症の特定については、(1)典型的な左室機能障害の症状、(2)心筋浮腫、(3)重篤な壊死や線維症の欠如、(4)心筋の炎症マーカーの4点を読み取ることによって、正確に診断することが可能だった。なお追跡CMRI群は、左室駆出分画率(平均66%、95%信頼区間:64~68)や炎症マーカーが正常化し、重篤な線維症は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30758.

米国飲食店のカロリー表示、総じて正確

米国レストランで行っている料理のカロリー表示は、実際の測定値とほぼ同等であることが、米国・タフツ大学のLorien E. Urban氏らが行った米国の飲食店42店を対象とする調査で明らかになった。米国人のカロリー摂取の約35%は飲食店の食事からだが、飲食店のカロリー表示の正確性については、これまで明らかになっていなかったという。JAMA誌2011年7月20日号掲載より。表示値と実測値の差、1人前当たり平均10kcal程度研究グループは、2010年1~6月にかけて、米国飲食店チェーンで、マサチューセッツ州、アーカンソー州、インディアナ州にある店の中から、各地域14店、合わせて42店を選び調査を行った。調査対象となった食事品目は269品目だった。結果、全体として、飲食店のカロリー表示は実際の測定値と有意な差はなかった(平均格差:10kcal/1人前、95%信頼区間:-15~34kcal/1人前、p=0.52)。一方で、個々の品目についてみると、カロリー表示とカロリー実測値にはばらつきがあり、50品目(19%)の実測値が表示値よりも1人前当たり100kcal上回っていた。高カロリー食品は実測値が表示値を上回り、低いものは下回る傾向初回測定で1人前当たりのカロリー摂取量が最も高いほうから10%内の17品目のうち、13品目については再測定が可能だった。その結果、初回測定では測定値が表示値を1人前当たり289kcal上回り、再測定では同258kcal上回っていた(表示と実測値の差が0kcal/ポーションに対するP<0.001)。さらに、表示カロリーが低い品目では表示値よりも実測値が高く、表示カロリーが高い品目では実測値が低い傾向が認められた(P<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30759.

心房細動を有する75歳以上高齢者の脳卒中リスクは“高リスク”とするのが妥当

心房細動を有する高齢患者の脳卒中リスクの予測能について、近年開発提唱された7つのリスク層別化シェーマを比較検討した結果、いずれも限界があることが報告された。英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア健康科学部門のF D R Hobbs氏らによる。脳卒中のリスクに対しては、ワルファリンなど抗凝固療法が有効であるとの多くのエビデンスがあるにもかかわらず、高齢者への投与率は低く、投与にあたっては特に70歳以上ではアスピリンと安全面について検討される。一方ガイドラインでは、リスクスコアを使いリスク階層化をした上でのワルファリン投与が推奨されていることから、その予測能について検討した。試験の結果を受けHobbs氏は、「より優れたツールが利用可能となるまでは、75歳以上高齢者はすべて“高リスク”とするのが妥当だろう」と結論している。BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載報告より。プライマリ・ケアベースの被験者を対象に、既存リスクスコアの予測能を検証既存リスク層別化シェーマの成績の比較は、BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation in the Aged)試験の被験者サブグループを対象に行われた。BAFTA試験は、2001~2004年にイギリスとウェールズ260の診療所から集められた心房細動を有する75歳以上の973例を対象に、脳卒中予防としてのワルファリンとアスピリンを比較検討したプライマリ・ケアベースの無作為化対照試験。Hobbs氏らは、BAFTA被験者でワルファリンを投与されていなかった、または一部期間投与されていなかった665例を対象とし、CHADS2、Framingham、NICE guidelines、ACC/AHA/ESC guidelines、ACCP guidelines、Rietbrock modified、CHA2DS2-VAScの各シェーマの脳卒中リスク予測能を調べた。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓の発生。解析対象のうち虚血性脳卒中の発生は54例(8%)、全身塞栓症は4例(0.6%)、一過性脳虚血発作は13例(2%)だった。最も分類できたのは高リスク、予測精度は全体的に同等低・中間・高リスクへの患者の分類は、3つのリスク層別化スコア(改訂CHADS2、NICE、ACC/AHA/ESC)ではほぼ同等であった。分類された割合が最も高かったのは高リスク患者で(65~69%、n=460~457)、一方、中間リスクへの分類が最も残存した。オリジナルCHADS2スコア(うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中既往)は、高リスク患者の分類が最も低かった(27%、n=180)。CHADS2、Rietbrock modified CHADS2、CHA2DS2-VASc(CHA2DS2-VASc血管疾患、65~74歳、性別)は、スコア上限値でリスク増大を示すことに失敗した。C統計量は0.55(オリジナルCHADS2)~0.62(Rietbrock modified CHADS2)で、予測精度は全体的に同等であった。なお、ブートストラップ法により各シェーマの能力に有意差はないことが確認されている。

30760.

インフルエンザ A(H1N1)2009ワクチン接種とギランバレー症候群との関連

インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種とギランバレー症候群発症との関連について、ヨーロッパ5ヵ国を対象とした症例対照研究の結果、発生リスクの増大は認められなかったことが報告された。ただしリスク上限が2.7倍以上も否定できないとしている。オランダ・エラスムス大学病院のJeanne Dieleman氏らが、BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年7月12日号)で発表した。インフルエンザワクチン接種とギランバレー症候群との関連は、1976年のアメリカでブタ由来インフルエンザA(H1N1)亜型A/NJ/76ワクチンで7倍に増大したことが知られる。その後の季節性インフルエンザワクチンではそこまでの増大は認められていないが、今回新たなワクチン接種が始まり、ヨーロッパでは増大に対する懸念が持ち上がっていたという。欧州5ヵ国でのワクチン接種とギランバレー症候群発症との関連を調査多国籍症例対照研究は、デンマーク、フランス、オランダ、スウェーデン、イギリス、約5,000万人を対象に行われた。ギランバレー症候群およびその変異型のミラー・フィッシャー症候群が報告されたのは154例で、そのうち1人以上との対照群とのマッチング(年齢、性、インデックス日付、国)が成立した104例が研究対象となった。症例は、Brighton Collaborationによって分類された。主要評価項目は、ワクチン接種後のギランバレー症候群の推定リスク。症例、ワクチン接種については、研究対象国間でかなりのばらつきが認められ、最も共通して接種されたワクチンは、アジュバンドワクチン(PandemrixとFocetria)だった。関連は認められなかったが、2.7倍以上のリスク上昇の可能性は除外できない解析の結果、5ヵ国すべての補正前プール推定リスクは2.8(95%信頼区間:1.3~6.0)だった。しかし、インフルエンザ様疾患/上気道感染症と季節性インフルエンザで補正後は、インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種によるギランバレー症候群増大との関連は認められなかった(補正後オッズ比:1.0、95%信頼区間:0.3~2.7)。ただし95%信頼区間の示す値から、100万人当たり、ワクチン接種後6週間以内で、ギランバレー症候群1例の回避から最高3例発症までの変動があることが明らかになった。Dieleman氏は、「ギランバレー症候群の発生リスクは、インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種後に増大しない。しかし一方で、リスク上限が2.7倍あるいは100万人接種当たり3例を上回る可能性は除外できない」と結論。「パンデミックワクチンとギランバレー症候群との関連の評価では、共変量としてのインフルエンザ様疾患/上気道感染症と季節性インフルエンザ、そして接種後時間の影響についての説明が重要である」と述べている。

検索結果 合計:33593件 表示位置:30741 - 30760