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混合診療で人工膝関節全置換術の予後は変わるのか?

 シンガポールには、日本と似たような国民に公的医療の提供を保障する、強制加入と補助金で運営する国民皆保険制度がある。一方で、公立病院であっても、外科医の選択や個室など保険対象外のオプションを選択することも可能となっている。シンガポール総合病院のHamid Rahmatullah Bin Abd Razak氏らは、これまで同制度に関連した検討がなかった、人工膝関節全置換術(TKA)の予後に対する医療費補助の影響についてレトロスペクティブに検討した。Orthopedics誌2013年6月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、従来法のTKAの予後について、医療費補助の利用者と非利用者とを比較することであった。 対象は2006~2010年にTKAを受けた369例で、医療費補助利用者群(274例)と非利用者群(95例)に分けて、術後6ヵ月および2年後の関節可動域、膝関節学会スコア(knee society score:KSS)より膝関節スコアおよび機能スコア、オックスフォード膝スコアおよびSF-36スコアについて比較した。 主な結果は以下のとおり。・6ヵ月後および2年後の関節可動域およびその他の評価項目は、KSS機能スコアを除き医療費補助利用者群と非利用者群で有意差は認められなかった。・KSS機能スコアは6ヵ月後および2年後共、利用者群より非利用者群が有意に高かった(p=0.019)。・以上から、KSS機能スコアを除けば従来法TKAを医療費補助の下で受けた患者の予後は良好であり、非利用者よりも状態が悪いということはなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる

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患者主導のインスリン用量調節はQOL,患者満足度も良好

グラルギンを用いたRCT・ATLASサブ解析[MT Pro 2013年6月25日記事を転載]ロンドン大学のNick Freemantle氏らは,持効型インスリン製剤インスリングラルギン(以下,グラルギン)の用量調節に関するランダム化比較試験(RCT)ATLASの結果から,患者主導のインスリン投与量調節が,健康関連QOL(HRQOL)と患者満足度を低下させずに実施可能であることを,第73回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA 2013;6月21~25日,シカゴ)で発表した。同試験はアジア人2型糖尿病患者を対象にしたもので,主解析である患者主導の投与量調節の有効性と安全性についても,同学会で報告されている。患者主導,医師主導ともに開始前に比べ患者満足度が高まるATLASはアジア人2型糖尿病患者552例を対象に,グラルギンの用量調節を患者主導群と医師主導群で比較したもので,主解析では,患者主導の調節でも医師主導と同様にHbA1cを良好に改善し,重症低血糖を増加させないことが示された。Freemantle氏らが発表したのは,HRQOLと患者満足度の観点からのサブ解析である。患者満足度は,糖尿病治療満足度質問票(DTSQ)のstatus version(DTSQs:範囲0~36)およびchange version(DTSQc:範囲-18~18)により評価した。その結果,24週後のDTSQs合計値の最小二乗平均は,両群とも治療開始時と比べ有意に上昇した(図1)。DTSQcに関しても同様の上昇が認められた(最小二乗平均の変化は患者主導群12.92,医師主導群13.19;いずれもP<0.001 vs. 治療開始時)。これらの結果は,治療開始時と比べ両群とも治療満足度が高まったことを示している。健康関連QOLの評価には国による差異,日本は総じて良好一方,HRQOLは,EuroQol(EQ-5D)※で評価された。治療開始時の健康状態は,インスリン導入が必要にもかかわらず総じて良好で,EQ-5Dスコアは両群とも治療開始時と24週後で有意差が認められなかった(最小二乗平均の変化は患者主導群0.021,医師主導群0.018)。これらのことから,インスリン導入は臨床的に重要なHRQOL低下を来さないことが示唆された。また,両群間でも差はなかった。興味深いのは,EQ-5Dスコアに,インスリンの用量調節法ではなく国による差異が認められたことである。治療開始時の値はロシア(平均0.73)で最も低く,日本(平均0.94)で最も高かった。24週後,ロシアとインド,パキスタンでは,両用量調節法間で差が認められたが,いずれも有意ではなかった。一方,日本と中国では,両用量調節法のEQ-5Dスコアは同等であった(図2)。24週後も最も高いのは日本であった(患者主導群平均0.95,医師主導群平均0.97)。Freemantle氏らは「今回の知見は,多様な文化的背景を有するアジアの国々で,HRQOLや治療満足度を損なうことなく,患者主導による基礎インスリン投与量調節が実施可能であることを示している」と指摘した。(ADA 2013取材班)※現在の健康状態を移動,身の回りの管理,普段の活動,痛み・不快感,不安・ふさぎ込みの5項目で評価(範囲-0.594~1.00)この記事に対するご意見・お問い合わせは,mtpro-info@medical-tribune.co.jpまでお願いします。関連リンク

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持効型インスリンの用量調節,アジア人でも“患者主導”が有用

ADA 2013でATLASの結果発表[MT Pro 2013年6月24日記事を転載]米コロラド大学のSatish Garg氏は,持効型インスリン製剤インスリングラルギン(以下,グラルギン)の用量調節に関するランダム化比較試験(RCT)ATLASの結果について,1次評価項目であるHbA1cの変化を中心に,第73回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA 2013;6月21~25日,シカゴ)で発表。患者主導のインスリン用量調節法が,アジアの2型糖尿病患者でも血糖値改善に有用であることを示した。アジア・太平洋地域の6カ国で500例以上をランダム化世界の糖尿病人口の60%を占めるアジアの患者には若齢者が多く,長期の合併症リスクを有している。患者主導によるグラルギン用量調節が,目標血糖値の達成・維持に効果的であることはAT.LANTUS試験(Diabetes Care 2005; 28: 1282-1288)で示されているが,同試験は,対象がインスリン初回治療患者ではなく,アジアでの患者登録が少なかった。そこで,今回のATLASでは,一定用量の経口血糖降下薬2剤を使用しても血糖コントロールが目標(HbA1c 7.0%以上11%以下※)に達しない,インスリン未使用で40~75歳の2型糖尿病患者552例を日本,中国,インド,パキスタン,フィリピン,ロシアの6カ国で登録し,グラルギン新規導入時の用量調整を医師主導で行う群(277例)と,医師による厳格な管理の下に患者主導で行う群(275例)にランダム化し,有効性と安全性を評価した。患者主導の用量調節で安全かつ効果的に血糖コントロール達成HbA1cの最小二乗平均は,両群とも12週後には治療前と比べ有意(P<0.001)に低下し,24週後もその効果は維持され,患者主導群では-1.40%,医師主導群では-1.25%であった。両群間のHbA1c平均変化の差は0.15%(95%CI -0.29~-0.00,P=0.04)で,1次評価項目である患者主導による用量調節法の非劣性が示されただけでなく,むしろ患者主導群で有意に良好であった。24週後の平均HbA1cとHbA1c 7.0%未満達成率も両群で同等であった(患者主導群が7.32%と32.0%,医師主導群が7.49%と26.0%)。24週後のグラルギン1日平均投与量は,患者主導群で有意に多かった(図1)。重篤な有害事象はわずかで,夜間低血糖と症候性低血糖の発生率は患者主導群で有意に高かったが,重症低血糖の発生率は両群間で同等であった(図2)。今回の結果から,Garg氏らは「アジアの2型糖尿病患者も,適切な指導を受ければ,欧米の患者と同様に効果的かつ安全に持効型インスリンの用量調節を行えることが示された」と結論付けている。(ADA 2013取材班)※MT Proでは2013年4月からHbA1cのNGSP値単独表記を実施していますこの記事に対するご意見・お問い合わせは,mtpro-info@medical-tribune.co.jpまでお願いします。関連リンク

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予防的なマクロライド系抗菌薬の投与はCOPD増悪を抑制するのか?

 マクロライド系抗菌薬の予防的投与はCOPD増悪を抑制する有効なアプローチであることがマイアミ大学のElie Donath氏らにより報告された。Respiratory Medicine誌オンライン版2013年6月11日号の掲載報告。 マクロライド系抗菌薬は抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用など、さまざまな特性を有しており、COPDの増悪抑制に対して独特な利点を有している。近年、マクロライド系抗菌薬の予防的投与がCOPD増悪のリスクを低減させるかに関する研究が注目を集めているが、これら最近の知見が先行研究の知見にどの程度当てはまるかについてはほとんどわかっていない。 本研究の目的は、呼吸器関連のメタアナリシスから、COPD増悪の抑制に対するマクロライド系抗菌薬の予防的投与がコンセンサスのとれるものかを評価することである。 EMBASE、コクラン、Medlineのデータベースから関連のあるランダム化比較試験を検索し、6件のランダム化試験を同定した。プライマリエンドポイントはCOPDの増悪発生率であり、セカンダリーエンドポイントは全死亡、入院率、有害事象、少なくとも1回以上のCOPD増悪を経験する可能性であった。 主な結果は以下のとおり。・プラセボと比較してマクロライド系抗生物質を投与した群では、COPD増悪の相対リスクが37%減少していた(RR:0.63、95%信頼区間[CI]: 0.45~0.87、p=0.005)。・入院の相対リスクは21%減少していた(RR: 0.79、95%信頼区間[CI]: 0.69~0.90、p=0.01)。・少なくとも1回以上の増悪を起こす相対リスクは68%減少していた(RR :0.34、95%信頼区間[CI]: 0.21~0.54、p=0.001)。・マクロライド系抗生物質を投与した群では、全死亡の減少傾向や有害事象の増加傾向が認められたが、統計学的な有意差はみられなかった。 なお、今回の研究において、有害事象報告に一貫性が欠けていた点やメタアナリシス間で臨床的、統計学的に不均一性があった点についても著者は言及している。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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新規抗精神病薬は患者にどう評価されているか?

 ナダ・ハンバーリバー病院(トロント)のA. George Awad氏らは、新規抗精神病薬が統合失調症の患者報告アウトカムに及ぼす影響について31件の論文を基にレビューを行った。その結果、大半の新規抗精神病薬について患者報告アウトカムにおける好影響が認められたものの、それらは傾向にすぎなかったことから、患者の主観的評価による結果を統一化されたコア(unifying core)として確立していく必要性を示唆した。CNS Drugsオンライン版2013年6月12日号の掲載報告。 本稿の意義について、著者は次のように述べている。すなわち「この20年間、患者の自己報告を考慮に入れた疾患マネジメントへの関心が高まっている。その背景には、過去数十年にわたる、消費者運動の高まりがある。こうしたなか、よりよい治療とアウトカム改善への明確な期待が伴う臨床現場での意思決定に際し、患者、介護者、および家族が、医師とより有意義な情報共有を図るべきという機運が高まっている。つまり、患者は医療サービスの消費者であり、ケアに対する満足度と同様、患者の意見や健康に対する感じ方をより把握すべきという認識である。新規抗精神病薬の開発と試験の過程における患者報告アウトカム(PRO)に対し、米国食品医薬品局(FDA)は、その他の規制当局と同様の関心を示すようになっており、このこともまた勢いを与える要素となっている。精神状態のマネジメントにおける意思決定の過程で患者を巻き込むことは、治療への積極的参加を促して“回復”の間口を広げることは明らかであり、統合失調症の治療成功が症状の改善だけでなく、機能の改善も含むというメッセージともなる。さらに、最近は個別治療が注目されており、これもまた患者を中心に据えた考え方が背景にある」という。 新規抗精神病薬のQOLに及ぼす影響が報告された2004年以降、ジプラシドン(国内未承認)、アリピプラゾール、パリペリドン、アセナピン(国内未承認)、イロペリドン(国内未承認)およびルラシドン(国内未承認)などの、より新しい多くの抗精神病薬が導入された。そこでAwad AG氏らは、2004~2012年までに発表され、新規抗精神病薬がPROsにおける特定のドメイン、たとえば主観的忍容性、QOL、薬剤嗜好性、満足度、社会機能などを扱った文献の中から31件を選択し、レビューを行った。 概要は以下のとおり。・適用可能なデータの大半は、ジプラシドン、アリピプラゾールおよびパリペリドンに関するものであった。・新規抗精神病薬のPROsへの良好な影響が非常に多くの試験で示されたが、いずれも傾向にすぎなかった。これは、試験デザインと方法論の限界が多く存在していたことによる。・より厳格な試験が待たれる領域として、さまざまな主観的アウトカムの中に統一化されたコア(unifying core)が存在する可能性、また一人の主観的アウトカムとほかの人の主観的アウトカムから概括的に結論を導き出せるような傾向は特筆すべきである。・主観的忍容性が良好な患者は、一般に満足度が高い傾向にあり、薬剤嗜好性が強い。・このような統一化されたコアの特定は、適切な指標の開発のみならず、新規抗精神病薬の開発過程への情報提供と指南の一助となりうる。関連医療ニュース この25年間で統合失調症患者の治療や生活環境はどう変わったのか? 精神疾患患者は、何を知りたがっているのか 10年先を見据えた抗精神病薬選択のポイント

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陽性検出率は69%、爪真菌症のための迅速・正確な診断法MS-ELISAを開発

 ドイツ・シャリテ・ベルリン医科大学のF. Pankewitz氏らは、目標遺伝子とDNA抽出法を至適化し、迅速にT.rubrum(紅色白癬菌)爪真菌症を特定できる新たな診断法を開発した。爪真菌症の有病率は過去10年間で、着実に増加したという。爪真菌症では最初の正確な診断が治療の成功および費用対効果に重要だが、現状の診断法は、迅速なものではなく、感度、特異度も低いとして、著者らは新たなPCR酵素結合免疫吸着検査法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)を開発した。The British Journal of Dermatology誌2013年6月号の掲載報告。 Pankewitz氏らが開発したのは、マイクロサテライトベースのPCR-ELISA(MS-ELISA)で、爪真菌症で最も多いT.rubrumを検出するためのものであった。 本研究では検出について、MS-ELISAと顕微鏡、先行発表されているトポイソメラーゼPCR-ELISA(TI-ELISA)法(MS-ELISAとは異なる方法で抽出した鋳型DNAが用いられている)、および培養法と比較した。 主な結果は以下のとおり。・本試験で用いられたサンプルは、患者217人から集められた爪および皮膚標本434件であった。・陽性サンプルの検出件数はMS-ELISAが最も高く69%であった。次いで直接顕微鏡56%、TI-ELISA法は44%であり、培養法は30%であった。・同一のDNA抽出法を120件の標本に適用した場合、MS-ELISAの感度はTI-ELISAと比べて2倍高いことが証明された。

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ガリレオ【システム化、共感性】 

ドラマ「ガリレオ」みなさんは、「なんであの人は気遣いができないの?」と思ったことはありませんか?特に、医療の現場では気遣いが求められる状況が多くあります。気遣いがうまくできていないスタッフを、どう考えたらよいのでしょうか?そして、どうしたらよいのでしょうか?これらの疑問を、今回、2007年と今年に放送されたドラマ「ガリレオ」の主人公をモデルに、みなさんといっしょに考えていきたいと思います。システム化―パターンを見つける能力主人公の湯川先生は、大学の准教授で、世間から天才物理学者と呼ばれています。彼の口癖は「実におもしろい」「実に興味深い」「さっぱり分からない」で、好奇心の赴くままに突き進みます。そんな彼を衝き動かしている信念は、「全ての事象には必ず理由がある」です。これは、「~すれば・・・になる」という原因と結果のパターン(因果関係)を探り出そうとする衝動でもあります。このような心の働きは、システム化と呼ばれています。知的レベルによって、同じ動きを好む傾向(常同症、こだわり)から、法則や普遍性を見いだす能力(論理的思考)までと幅広くあります。そして、話し方はとても理屈っぽくなります。共感性―気遣いする能力その一方、湯川先生は言動があまりにも風変わりで、彼の同期や研究室の学生たちから「変人ガリレオ」と呼ばれています。彼は、初対面でいきなり女性で新人の内海刑事の顔を覗き込み、まるで実験対象を見るような目つきで「知らない顔だ」とつぶやきます。人としての配慮のかけらもなく、大変に失礼です。その後も湯川先生は、毎回、内海刑事を振り回し、何度も怒らせています。そんな内海刑事は、喜怒哀楽の表情が豊かです。そして、事件当事者に感情移入しやすいです。対照的に、湯川先生はいつも無表情で無感情です。事件に協力しますが、犯行の実証性(=システム化)だけに興味があり、犯人の特定や犯人の動機には一切興味を持ちません。さらに、彼は子ども嫌いです。実際に、子どもと見つめ合ってじんましんが出るというシーンもありました。子ども嫌いの理由は、「子どもは非論理的だ」からです。そして、彼は「(非論理的であるため)人間の感情に興味はない」と断言します。確かに、人、特に子どもの感情は、微妙に揺れ動くため、法則通りにならず、簡単に予測できません。しかし、わたしたちは、その時その時の微妙な顔の表情や声のトーンから、自然に相手の気持ちを察しています。同情して、場合によってはもらい泣きをすることもあります。このように、表情やしぐさから直感的に相手の気持ちになれる心の働きは、共感性と呼ばれています。共感性は気遣いをする1つの能力とも言えます。ちょうど、先ほどのシステム化の能力や、その他の語学力(言語能力)、運動能力、絵画の能力、音楽の能力などと同じです。そして、共感性にも、高い人や低い人の個人差があることが分かります。湯川先生は共感性がとても低いようです。社会性―人とうまくやっていく能力湯川先生は、「学者は世の中の役に立ちなさい」という高圧的な女性の岸谷刑事の「説教」に対して、「僕は僕の興味の惹くものに対してのみ興味を持つ」と言い放ちます。このこだわりも、彼のシステム化の心の働きから来ています。「世の中の役に立つ」「人のために何かする」などのつながりの心理や、人とうまくやっていく能力は、社会性と呼ばれます。人が集団で生きていくためにとても必要な心の働きであり能力です。この能力は、主にシステム化の能力と共感性の能力から成り立ちます。共感性の低い湯川先生は、この社会性がとても危ういのです。しかし、彼は社会性が保たれています。その大きな理由を、2つあげてみましょう。(1)高いシステム化―低い共感性をカバーする1つ目は、高いシステム化の能力で、低い共感性をカバーしていることです。よくよく彼の言動を追うと、最低限の共感的な接し方を実践しているのです。例えば、内海刑事の「悲惨」な身の上話に同情する態度を示したり、彼女が落ち込んでいる時は、気遣いの言葉も投げかけます。事件の犯人やその動機には興味がないと言いつつも、犯人の心理をよく理解しています。厳密には、共感性は、狭い意味での共感性(=感情的要素)とシステム化の心の働きも借りた広い意味での共感性(=感情的要素+認知的要素)があります。湯川先生の共感的な接し方は、感情というよりは理屈(認知、システム化)で考えてやっていると言えます(マインドリーディング)。彼は、共感性をシステム化の心の働きでカバーしていたのです。(2)共感性のある周り―理解とサポート2つ目は、共感性のある周りの理解とサポートです。湯川先生は、栗林助手を始めとする周りの理解者に恵まれています。だからこそ彼には居場所があり、研究も思う存分にできるのです。また、彼に捜査協力をお願いする刑事たちは、彼が食い付く「ありえない」というキーワードを出して、興味を持たせようとしています。こうして、湯川先生は、物理学の研究だけでなく、警察の捜査協力までしています。彼は、自分の興味で突き進んでいる割に、結果的に、世の中の役に立ち、社会性は保たれているのです。反社会性―人を傷付けても何とも思わない湯川先生と同業のある若き研究者が登場します。なんと彼は、自分の実験のために密かに殺人を繰り返していたのです。彼は、実験のために、人を殺めても何とも思いません。とても共感性が低いことが分かります。湯川先生は、犯行のトリック解明に挑み、この若き研究者と対決します。湯川先生もこの若き研究者も、システム化が高く共感性が乏しい点では似ているのですが、決定的に違うことがあります。それは、モラルです。若き研究者が湯川先生にあきれるシーンがあります。「湯川先生がモラルに縛られるなんてがっかりですね」と。この若き研究者には、モラルが全くないのでした。モラルとは、共感性を下地にしていますが(個体因子)、その上にはやはり子どもの頃から教わる「みんなと仲良くする」「ルールを守る」という価値観から生まれるものです(環境因子)。この価値観が育まれていないと、人とうまくやっていく気がない心理から、人を傷付けても何とも思わない心理へと暴走していきます(反社会性パーソナリティ障害、サイコパス)。湯川先生は、最低限のマナーや彼なりのモラル(倫理観)を、システム化の心の働きによってよく理解し、実践しています。コミュニケーションのコツ―表1もし湯川先生が、あなたの職場で仕事をするとしたら何が起きるでしょうか?どうしたらよいでしょうか?彼のようにシステム化が高く共感性が低い人は、実際に私たちの職場にもいます。私たちは、湯川先生のキャラクターをじっくり見ることで、この気遣いがうまくできていない人へのコミュニケーションのコツを導き出すことができます。それは、大きく3つあります。(1)客観化―問題点を具体的に目に見える形にする1つ目は、問題点を具体的に目に見える形に示すことです(客観化)。共感性がお互いに高ければ、そんなに言葉にしなくても、「空気」を読んで分かり合えます。ところが、共感性が低い人には、何が問題なのかをなるべく具体的な言葉にして細かく指摘することが必要です。例えば、あなたが湯川先生に「患者さんには丁寧に接するように」と指導したとしても、「丁寧」の中身が伝わりにくいのです。この場合は、「あの時、あの場所で、あの患者に対して、あのように接したのは、こういう理由でだめです」「次からはこういう時は、こうしましょう」と言います。さらに、文字や絵・イラストにして渡すのも効果的です。仰々しいように見えるかもしれませんが、目に見える形にすること(視覚化)は、システム化の心の働きを大いに刺激します。ドラマでも、湯川先生は、閃いた時は、数式を書き出し、目に見える形にしています。視覚に訴えるのが大事なのです。(2)構造化―枠組みを作る2つ目は、枠組みを作ることです(構造化)。これは、すでに湯川先生がある程度実践していることでした。共感性の低さから、暗黙の了解や常識に気付きにくいので、システム化の心の働きを借りて、問題が起こる前にあらかじめ細かい具体的な指示を出し、パターン認識やパターン学習をさせることです。例えば、あなたが湯川先生に指示することの1つとして、目の前で患者さんが泣き出した時は、不思議がって顔を覗き込むのではなく、そっとハンカチやティッシュを渡し、見守るという行動のパターンです。これらのパターンをたくさん蓄積し、引き出しを持っていれば、ある程度のコミュニケーションはスムーズに行うことができるようになります。(3)限界設定―限界を示す3つ目は、限界を示すことです(限界設定)。湯川先生なら、高いシステム化の能力で、共感性をカバーしつつ、病棟業務を行うことができるでしょう。しかし、私たちの身近にいる気遣いができない人は、彼ほどシステム化の能力が高くないかもしれません。また、わがまま、思い上がり、ひねくれなどの性格(パーソナリティ)の問題が重なっている場合もありえます。その場合は、やるべきこと(到達目標)をはっきりさせて(客観化)、試験的な期間(1年以内)を経て、それでもうまく行かない場合はその職場には向いていないことを、本人も職場の上司も納得する形に持っていくことです。また、周りのサポートも大事ですが、どこまで助けるかの線引きもあらかじめ決めておくことです(限界設定)。もちろん、その人を職場が抱え込むことを皆が良しとするなら、それは職場組織の1つのあり方(企業文化)です。しかし、情にほだされたり、とにかく何とかしなければという義務感からの上司の個人的な抱え込みは、本人も上司もお互いを不幸にしてしまうと言えます。例客観化何が問題なのかをなるべく具体的な言葉にして細かく指摘する文字や絵・イラストにして渡す構造化パターン認識やパターン学習をさせる行動パターンの蓄積をさせる構造化試験的な期間の期限を設けるどこまで助けるかの線引きもあらかじめ決めておくジョブマッチング―何に向いている?―表2それでは、気遣いがうまくいかない人、つまりシステム化が高くて共感性が低い人に向いている職種は、具体的に何があるのでしょうか?一般職については、まさに、湯川先生が携わっている研究職(専門職)です。研究は、システム化が発揮できて、共感性はあまり求められません。また、私たちが携わっている医療職については、システム化も共感性も両方必要ですが、科によってそのバランスは変わってきます。このように、その人その人の向き不向き(適性)を見極めていく必要があります(ジョブマッチング)。システム化が強い共感性が高いモデル湯川先生男性に多い内海刑事、栗林助手女性に多い特徴こだわり(職人気質)対物的気回し(商人気質)対人的例一般職専門職(研究者、学者)、製造業、事務職サービス業(営業、接客、窓口)医療職急性疾患、救命救急、手術室慢性疾患、精神疾患、リハビリテーション性差―原始の時代は?男性はシステム化が高く共感性が低い傾向があり、女性はシステム化が低く共感性が高い傾向にあります。もちろん、男性でも共感的な人はいますし、女性でもシステム化的な人はいます。これはあくまで傾向です。この性差はなぜあるのでしょうか?答えは、進化心理学的に考えることができます。それは、原始の時代から男女で性役割がはっきりしていたことです。(1)男性―システム化―自閉症スペクトラム男性は、狩猟のための追跡や自然環境を通してパターンを見つけ出し、より多くの獲物を捕まえ、住まいを居心地良くするシステム化の能力が進化していきました。そこから、外界を支配したいという闘争的で攻撃的な心理も進化したようです。その分、共感性は女性ほど進化しませんでした。さらに、システム化が高く共感性が低いこの遺伝子が、日常生活で支障を来たすほどに際立って発現する場合があります。それが、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)です。最近の研究では、胎児期の男性ホルモン(テストステロン)の過剰分泌が、原因として指摘されています。湯川先生は、大学准教授として、社会生活をむしろ華麗に送っています。医療機関にかかるような障害のレベルには至っていませんが、「障害」が付かない「自閉症スペクトラム」に入っている可能性は高いです。(2)女性―共感性―共依存、情緒不安定一方、女性は家にいて、子育てや近所付き合いなどを通して、人間関係をスムーズにする共感性の能力が進化しました。そこから、母性、感受性も進化したようです。その分、システム化は男性ほど進化しませんでした。さらに、システム化が低く共感性が高いこの遺伝子が、日常生活で支障を来たすほどに際立って発現する場合があります。特に、幼少期の家族関係が不安定であったなど、偏った生い立ちによる刺激(環境因子)が加わった場合です。女の子の方が男の子よりも、人間関係の不安定さにより敏感なため、より研ぎ澄まされていきます。それが共依存や情緒不安定などの性格(パーソナリティ)の問題です。共感とは、相手の気持ちになることですが、そこからすぐに相手の言うことに揺さ振られ感化されてしまったり(同調、感応)、感情的に流されやすくなったり(依存)、自分のことのように一生懸命になって心理的な距離が保てなくなったりするなど(共依存)、抱え込みや巻き込みの問題をはらんでいます。また、感受性の豊かさは、裏を返せば、情緒の不安定さでもあります(情緒不安定)。よって、高すぎる共感性も、システム化である程度カバーする必要があります。例えば、「これ以上はやりすぎ」「これ以上は近付きすぎ」という限界設定です。「水を得た魚」―その「水」とは?もちろん、みなさんは、システム化も共感性も両方とも高ければ良いと思うでしょう。しかし、どうやら人間の脳はそう簡単に欲張ることをさせてくれないようです。それは、人間の頭がい骨の大きさによって、脳の容量の限界がすでに決まっているからです。そして、そのために人間の能力自体にもトータルでは限界があるからです。人間の個性は様々です。まれに勉強もスポーツも両方とも際立って優れている人もいますが、たいていはどちらかが得意でどちらかが苦手なものです。これと同じように、システム化が高い人は共感性が低く(マインド・ブラインド)、共感性が高い人はシステム化が低いようです(システム・ブラインド)。能力を足したら一定なわけですから、あとは一方が高ければもう一方が低くなるという理屈です(ゼロサム説)。ドラマに登場する栗林助手は、共感性が高いためかシステム化はさっぱりのようで、研究者としてのうだつが上がらないようです。システム化と共感性のバランスがとれている人は、管理職などの集団のリーダーに向いているでしょう。部下たちの心を読みつつ(=共感性)、こうあるべきというビジョン(=システム化)を示し、帳尻を合わせるバランス感覚が必要だからです。そして、まれにシステム化と共感性が両方とも高い人がいます。そのような人は人の話をよく聞きそして話がうまいので、きっとカリスマ性のあるリーダーになるでしょう。大事なのは、本人が自分の良さ(適性)、つまりシステム化や共感性の能力がどれくらいあるのかを知り、自分の能力をなるべく発揮できる職種、つまり「水を得た魚」のその「水」を見つけることです。そして、周りはその見極めや方向付けをしてあげることであると言えるのではないでしょうか。1)サイモン・バロン=コーエン:共感する女脳、システム化する男脳、NHK出版、20052)北村英哉・大坪康介:進化と感情から解き明かす社会心理学、有斐閣アルマ、2012

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柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会

東京大学高齢社会総合研究機構が開発した研修教材に基づき、松戸市医師会の主催で2012年12月1-2日に開催された、『在宅医療推進のための地域における多職種研修会』の模様をお届けします。柏市で従事する多職種の医療職の方が一同に会し、在宅医療総論、地域資源の活用、診療報酬・制度などの在宅医療導入時に気になる点から、認知症・がん緩和ケアにおける診療やIPW連携など、より地域に密着した、実践的な、ワークショップ主体のプログラムです。対象者は、開業医、病院医師、歯科医師、薬剤師、訪問看護師、病院看護師、介護支援専門員、病院ソーシャルワーカー等です。2日目 番組一覧 【全9回】番組8 挨拶番組9 在宅医療の導入番組10 認知症の基本的理解とマネジメント番組11 事例検討:認知症患者のBPSDへの対応と意思決定支援(前半)番組12 事例検討:認知症患者のBPSDへの対応と意思決定支援(後半)番組13 在宅ケアにおいて何故IPW(専門職連携協働)が必要なのか?番組14 在宅医が知っておくべき報酬や制度番組15 グループ討論:在宅医療を推進する上での課題とその解決策番組16 目標設定:在宅医療の実践に向けて1日目 番組一覧 【全7回】番組1 開会挨拶/趣旨説明/来賓挨拶番組2 在宅医療が果たすべき役割番組3 在宅療養を支える医療・介護資源番組4 グループ作業:医療介護資源マップの作成番組5 がんの症状緩和に必要な知識番組6 事例検討:がんの症状緩和と多職種による在宅療養支援(前半)番組7 事例検討:がんの症状緩和と多職種による在宅療養支援(後半)講師

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