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〔CLEAR! ジャーナル四天王(41)〕 固形がんに対する新しい治療薬の夜明けとなるか?

乳がんに対する抗体治療であるトラスツズマブの登場は大きな衝撃であった(Slamon DJ et al. N Engl J Med. 2001; 344: 783-792.)。トラスツズマブの開発を最初として、固形がんに対する分子標的薬の開発が加速した。トラスツズマブの第三相試験の発表から10年、T-DM1が登場した。T-DM1は、HER2抗体であるトラスツズマブにemtansineという微小管に採用する化学療法剤をリンカーでくっつけた薬剤である。 抗体薬に抗がん剤(殺細胞薬)を接合した薬剤はAntibody-Drug Conjugate(ADC)と呼ばれる新しい製剤である。従来の抗がん剤は殺細胞効果が強いため、がん細胞も正常細胞も同様に死滅させてしまい、副作用が強いことが問題であった。ADCは、抗体ががん細胞に結合した後で殺細胞効果が発揮されるため、より副作用が軽減され、効果が高まると期待されている。実は20年以上も昔から「ミサイル療法」などと言って開発の期待がされていた製剤であるが、トラスツズマブの成功によりやっと実現されたと言える。血液腫瘍では、既にゲムツズマブオゾガマイシン(商品名:マイロターグ)という薬剤が開発されているが、T-DM1は固形がんで有効性が証明された初めての薬剤ということになる。 この試験は、前治療として、トラスツズマブの既往のある進行乳がん患者に対して、現在の標準治療であるラパチニブ+カペシタビン療法(内服薬)とT-DM1(静注)とを比較したものである。 プライマリーエンドポイントは、当初は、無増悪生存期間(PFS)のみであったのが、途中で全生存期間(OS)も評価できるようにして、サンプルサイズを再計算し、目標症例数を580名から、980名に増やしている。これは、最近の抗がん剤開発で“PFSのみ延長させ、OSには影響を与えない”といった、解釈が困難な第三相試験の結果の発表が相次いでなされたことの影響が少なからずあったものと考えられる。 OSの結果は、2回目の中間解析で、有効中止の基準ラインであるP=0.0037を下回った(P

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出血リスクが増加しても服用すべきか?

 ケアネットでは、11月3~7日に開催されたAHA(米国心臓協会)学術集会での注目演題を速報した。その一つとして、ダビガトランの長期投与が脳梗塞リスクと出血リスクに及ぼす効果について報じたが、この発表に対する後藤 信哉氏(東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授)のコメントを得たため合わせて掲載する。後藤 信哉氏(東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授)のコメント RE-LY試験に限らず、薬剤の認可承認のための第三相試験において、新薬群の投与期間を延長して「長期投与」の経験を積むことはしばしば行なわれる。 もともとの出発点が「治験」であるため、投与期間を延長しても厳密な登録基準と除外基準を満たした特殊な症例の経験であることには変わりがない。 本邦ではダビガトランの認可承認後、既に数万例の症例に処方されていることを考えると、観察期間を延長して第三相試験時と血栓イベントリスク・出血イベントリスクともに試験期間内と差異がないことを示しても、臨床家にはインパクトは少ない。 RE-LY試験に登録された症例はCHADS2スコア2前後の、リスクが高いとは言えない心房細動症例である。脳卒中の既往があるわけでもない。本人が困っていない状態において、予防介入として年間3%以上に重篤な出血イベントリスクを負わせることは果たして医療介入として妥当と言えるのか?筆者には疑問である。 本試験の結果をみて、この試験にて確認された年間3%以上の重篤な出血イベント発症リスクの説明を受けても、服用したい患者がいるか否かも筆者には疑問である。

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eGFR低値、高アルブミン尿の年齢別にみた転帰への影響:205万人メタ解析/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)の測定マーカーである推定糸球体濾過量(eGFR)とアルブミン尿の、年齢階層別にみた予後との関連について調べた結果、eGFR低値と高アルブミン尿は、年齢を問わず死亡および末期腎不全(ESRD)と独立した関連がみられることが、ノルウェー科学技術大学のStein I. Hallan氏らCKD-PC(CKDの予後に関する多施設共同研究)が約205万人の個人データをメタ解析した結果、報告した。ただしeGFR低値のリスクは高齢であるほど弱まるなど、高齢者では両値との関連について、絶対リスクは高いが相対リスクは低いことが示されたという。CKDは高齢の患者に多くみられるが、eGFR低値と高アルブミン尿のリスクについて、全年齢にわたるのかについては議論の的となっていた。JAMA誌2012年12月12日号掲載より。相対リスクと絶対リスクを解析 研究グループは、臨床的リスクがあるeGFRとアルブミン尿について、年齢階層別の影響(相互作用)の違いがあるのかを、相対リスクと絶対リスクを調べて評価した。アジア、オーストラリア地域、ヨーロッパ、南北アメリカ地域から、33コホート(一般集団または血管系疾患のハイリスク集団)および13コホート(CKD集団)の計205万1,244人の参加者データについて、個人レベルのメタ解析を行った。データは1972~2011年の間、平均追跡期間5.8年(範囲、0~31年間)にわたるものであった。 主要評価項目は、eGFRと蛋白尿各値の、死亡およびESRDのハザード比(HR)(性、人種、心血管疾患、糖尿病、収縮期血圧、コレステロール値、BMI、喫煙の有無について補正)とした。絶対リスクは、HRと平均罹患率から推計した全年齢層で、死亡およびESRDリスクと関連 結果、全年齢層で、死亡(11万2,325例)およびESRD(8,411例)のリスクは、eGFR低値とアルブミン尿高値で高かった。 一般・ハイリスク集団では、死亡に関するeGFR低値の相対リスクは、加齢に伴い減少することが認められた。たとえば、eGFR値45mL/分/1.73m2 対 80mL/分/1.73m2の補正後HRは年齢階層別に、18~54歳群3.50(95%CI:2.55~4.81)、55~64歳群2.21(同:2.02~2.41)、65~74歳群1.59(同:1.42~1.77)、75歳以上群1.35(同:1.23~1.48)であった(年齢相互作用のp<0.05)。 一方で、同年齢階層別にみた絶対リスク(1,000人・年当たり過剰死亡)は、それぞれ9.0(同:6.0~12.8)、12.2(同:10.3~14.3)、13.3(同:9.0~18.6)、27.2(同:13.5~45.5)で、高齢であるほど高かった。 高アルブミン尿に関しては、絶対リスクは高齢であるほど高かったが、相対リスクについては、年齢とともに低下をする確証は得られなかった。アルブミン/クレアチニン比300mg/g対10mg/gの1,000人・年当たり超過死亡は、それぞれ7.5(同:4.3~11.9)、12.2(同:7.9~17.6)、22.7(同:15.3~31.6)、34.3(同:19.5~52.4)であった。 CKD集団では、死亡に関する補正後相対リスクの、加齢に伴う減少はみられなかった。 全集団では、ESRDに関するeGFR低値、高アルブミン尿の、相対リスクと絶対リスクは、全年齢層でほとんど差はあまりなかった。

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EPA/DHAはADHD様行動を改善する可能性あり?

 ノルウェー・オスロ大学のKine S Dervola氏らが行ったラット試験の結果、ADHDに対し、ω3(n-3系)多価不飽和脂肪酸(PUFA)のサプリメントを投与することにより、挙動や神経伝達物質代謝について、性特異的な変化をもたらすことが示された。先行研究において、n-3系PUFAサプリメントがADHD様行動を減じる可能性が示唆されていた。Behavioral and Brain Functions誌オンライン版2012年12月10日号の掲載報告。 本研究の目的は、ADHD動物モデルにおけるn-3系PUFA投与の影響を調べることであった。高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、n-3系PUFA(EPAとDHA)強化飼料(n-6系 対 n-3系の割合1:2.7)を妊娠期間中、およびその産児に死亡するまで投与し続けた。SHRコントロール群とWistar Kyoto(WKY)ラットのコントロール群には、対照飼料(n-6系 対 n-3系の割合7:1)が与えられた。産児は生後25~50日の間、強化-依存的な注意力、衝動性、多動性および自発運動について検査を受けた。その後、55~60日時点で処分し、モノアミン、アミノ酸神経伝達物質に関して、高速液体クロマトグラフィーにて解析した。 主な結果は以下のとおり。・n-3系PUFA給餌により、オスのSHRでは強化-依存的な注意力の改善が認められたが、メスではみられなかった。・同一ラットでの新線条体の解析において、オスのSHRでは、ドパミンとセロトニン代謝率の有意な上昇が示されたが、メスのSHRでは、セロトニン分解代謝が上昇したことを除き、変化はみられなかった。・対照的に、オスとメスの両方のSHRで示されたのが、非強化の自発運動の低下と、グリシン値およびグルタミン代謝の性非依存的変化であった。・n-3系PUFAはADHDラットモデルにおいて、強化刺激行動において性特異的な変化をもたらし、非強化関連行動において性非依存的な変化をもたらすことが示された。それらは、シナプス前部線条体モノアミンとアミノ酸伝達シグナルとそれぞれ関連があった。・以上のことから、n-3系PUFAの摂取は、ADHD様行動(男性では強化誘発メカニズム、男女ともでは強化無反応メカニズム)をある程度改善する可能性が示された。関連医療ニュース ・うつ病予防に「脂肪酸」摂取が有効? ・統合失調症患者の脳組織喪失に関わる脂肪酸、薬剤間でも違いが ・抗てんかん薬の処方、小児神経科医はどう使っている?

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百日咳ワクチン対策の「コクーン戦略」は限界がある?

 オーストラリア・シドニー大学のK.E. Wiley氏らは、小児ワクチン戦略の「コクーン(繭)戦略」に関して、生後6ヵ月未満の年少の乳児における百日咳の感染源を調べ、接種対象者についてエビデンス情報のレビューを行った。コクーン戦略は、ワクチンが疾患等により接種できない小児の代わりに、近親者に接種を行い繭に包まれた状態として感染を防御するというものである。著者は、百日咳の重症罹患率が最も高い年少の乳児について、感染源を明確にすることは、近親者の誰にワクチン接種を行うのが有効であるかを決定する最も重要かつ唯一の因子であるとして本検討を行った。Vaccine誌オンライン版2012年11月29日号の掲載報告。 研究グループは、高所得国の生後6ヵ月未満の乳児に焦点をあて、百日咳の感染源の特定と、それら報告データおよび要約の質について評価した。対象報告は、MEDLINEとEMBASEのオンラインデータベース、および関連文献リストから研究報告を検索して解析に組み込んだ。 研究の質はSTROBE(Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology)ステートメントに基づき標準化された基準で評価し、最も質の高い報告データを用いて、感染源別に百日咳症例の推定割合をプールして評価した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たし解析に組み込まれたのは、9件の研究報告であった。7件は入院した6ヵ月未満児の接触者についてのデータを含んでいた。症例の定義と接触確認の方法には、ばらつきがあった。・感染源として最も多く同定されたのは家族で、母親が39%(95%CI:33~45)、父親が16%(同:12~21)、祖父母5%(同:2~10)であった。・兄弟姉妹は16~43%、非家族接触者は4~22%と、ばらつきがあった。・また、症例のうち32~52%は、感染源が特定できなかった。・無症候性の百日咳感染が、評価をした近親者のうち8~13%で認められた。・以上の結果は、より幼い乳児の重症疾患予防について、母親への百日咳ワクチン接種が最も効果が高い可能性があることを示し、次いで父親、補助的に祖父母に行うことが効果的であること示すものであった。・兄弟姉妹に関しては重要性にばらつきがあった。最近のデータではワクチン接種を受けた子どもの漸減免疫を考慮しており、さらなる検証が必要である。・非家族感染源についてもかなり文書化されており、これは乳児の重症疾患予防のためのコクーン戦略の潜在的な限界を強調するものであった。

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最も多い皮膚科医への患者のクレームは「がっかり」

 皮膚科部門に関するクレーム調査の結果、病院の中では皮膚科部門への訴えの割合は低いが、クレーム自体は増加しており、その背景には患者の要求および権利意識の高まりがあると、ポルトガル・Hospital Santo Antonio dos CapuchosのJoana Cabete氏らが報告した。研究グループは本調査を行った前提として、「患者満足度は医療の質を測るのに一般的に用いられるインジケーターであるが、一方で患者は、医療サービスを改善するにあたって重要かつ有効なエージェントであると認知されている。ポルトガルでは苦情や訴訟の解析を通じ、国民保健システム利用者の懸念やニーズを明らかにしながら発展してきた」と述べ、病院の皮膚科外来部門での苦情を解析し、患者はなぜクレームをつけるのかについて調べた。Acta Medica Portugusea誌2012年9月号(オンライン版2012年11月12日号)の掲載報告。 調査は、2000~2010年に登録された皮膚科部門に照会のあったすべての苦情を解析して行われた。 主な結果は以下のとおり。・11年間で記録された皮膚科部門関連の苦情は106件(0.4‰)であった。同期間を通じて増加の傾向が認められた。・苦情を申し出た患者の多くは、女性(60.4%)であった。・苦情は「管理部門または組織」に対するものが、「ヘルスケア専門家」に対するよりも、より多く認められた(58.5%対41.5%)。・前者に対する苦情は主に、その機関の「規定とルール」に言及したもので、次いで「管理の手法」に関連したクレームが続いた。・「ヘルスケア専門家」群に関する記録における不満はすべて、医師と医療行為に向けられたものであった。・「期待を裏切られがっかりした」が、医師に向けられた最も頻度の高いクレームカテゴリーであり、次いで「(患者に対する)態度」が続いた。・皮膚科部門の苦情の割合は、国立病院の平均に対して比較的低いままであった。・クレームを付ける患者数の増加は、より高い要求と権利を熟知(あるいは欠如)していることによると考えられた。・以上の結果は、最近よく言われる組織改善の重要性を際立たせ、医師-患者の関係性を強調するものであった。健康教育が、これからの医療への期待値と医療資源をよりうまくマネジメントしていく可能性がある。

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難治性慢性腰痛患者への高頻度SCS、6ヵ月時点で74%が改善を報告

 難治性の慢性腰痛患者に対して、高頻度の脊髄電気刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)は、70%以上で腰痛および下肢痛の軽減を有意かつ持続的にもたらすことが報告された。とくに感覚異常がなく達成され、患者は身体障害や睡眠に関する有意な改善も認められた。Van Buyten JP氏らによるProspective Multicenter European Clinical Studyの報告で、「全体的として、高頻度SCSシステムの良好な安全性と有効性が確認された」と結論している。Neuromodulation誌オンライン版2012年11月30日の掲載報告。 前向きオープンラベル多施設共同欧州臨床試験は、SCSシステムの有効性と安全性を定量化することを目的とした。SCSは、慢性で難治性の腰痛、下肢痛の治療として、高頻度(最高10kHz)波形で、感覚異常をもたらさないように行われた。 評価は、最長6ヵ月間の患者の疼痛評価、身体障害、睡眠障害、満足度、合併症の割合について行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は83例であった。試験期間終了後、88%(72/82例)がVASスコアについて有意な改善を報告し、高頻度SCSシステムの永続的な埋め込み術を受けた。・腰痛VASスコアは、平均8.4から、6ヵ月時点で2.7まで低下した(p<0.001)。・下肢痛VASスコアは、平均5.4から、6ヵ月時点で1.4まで低下した(p<0.001)。・被験者の74%は、6ヵ月時点で腰痛の50%以上軽減を報告した。・Oswestry障害スコアと睡眠スコアも有意に改善し、疼痛緩和のための薬物使用も減少した。・有害事象は、従来SCS療法を受けた患者でみられ、リードの遊走、創傷部感染、埋め込み部位周辺の痛みなどであった。

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経済的繁栄により、地域保健の隔差が拡大/BMJ

 1990年代後半からのイングランドの経済的繁栄により、英国における健康の地域間隔差はむしろ拡大し、現在の経済不況によって問題はさらに悪化する可能性があることが、英国・リバプール大学のBen Barr氏らの調査で示された。1998~2007年までの10年間にわたるイングランドの経済的な繁栄は英国全体の平均寿命の延長をもたらしたが、すべての地域が豊かさを共有したわけではない。この不均一な経済発展の状況が健康隔差に及ぼした影響は明らかではなく、自治体への財政的インセンティブをその実績に基づいて決める方法の、地域保健の改善における意義も不明だという。BMJ誌2012年12月8日号(オンライン版2012年12月4日号)記載の報告。経済的繁栄と平均寿命延長の関連を生態学的研究で検討 研究グループは、1999~2008年の英国の不均一な経済発展と、地方自治体間の平均寿命延長の隔差との関連を調査する縦断的な生態学的研究を実施した。 英国の324の地方自治体をベースラインの経済状況で分類した。1998~2007年の経済的繁栄と平均寿命の関連を検証するために多変量回帰分析を行った。 健康隔差は、1998年に最も経済状況が悪かった地域(Spearheadグループ)と英国の全自治体の平均値を比較することで評価した。経済状況が不良な自治体ほど、平均寿命の改善率が低い 経済状況の改善が最も大きかった自治体で、平均寿命がより延長していた。失業率が1%低下するごとに、平均寿命が男性で2.2ヵ月[95%信頼区間(CI):0.5~3.8]、女性では1.7ヵ月(同:0.4~3.1)延長した。 平均世帯収入の1,000ポンドの増加ごとに、平均寿命が男性で1.4ヵ月[95%CI:0.3~2.5]、女性では1.1ヵ月[同:0.2~1.9]延長した。1998年に経済状況が不良だった自治体ほど、平均寿命の改善率が低かった。 これらの知見に基づき、「特定の自治体で平均寿命の延長幅が大きかった理由は、地域の失業率の低下と平均収入の増加でかなりの程度説明が可能」と、著者は指摘する。また、Spearheadグループと英国の全自治体の健康隔差は経済的繁栄期に拡大していたが、これは経済状況がより不良な地域で失業率低下の速度が遅かったことが原因と考えられるという。 それゆえ、現在、英国を含む欧州が直面している経済状況の悪化にともない、平均寿命の延長幅は小さくなり、健康の地域間隔差はより迅速に拡大する可能性が示唆される。著者は、「平均寿命の延長については、自治体の実績に基づいてリソースを配分すれば、それを必要とする経済的に恵まれない地域ではなく、より裕福な地域が恩恵を得る可能性があり、隔差の問題は悪化するものと考えられる」と考察している。

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漢方薬の服用経験者は7年前より2倍以上に増えている

 クラシエ薬品が21日、全国の20代~60代の男女560人を対象に実施した「漢方薬」に関する意識調査の結果を発表した。調査は2012年12月6~7日、インターネット上で行われた。 漢方薬を「飲んだことがある」と回答した人は75.0%を占め、同社が7年前に行なった調査の33%という結果よりも、服用経験者が2倍以上に増えていることが明らかになった。男女別でみても、それぞれ70%を越えており(男性 75.3%、女性 74.5%)、男女を問わず漢方薬が浸透していることがわかった。 また、漢方薬を服用したきっかけは、「医師から処方された」と回答した人が35.0%と最も多く、「自分で調べて服用した」30.0%、「薬局ですすめられた」24.5%と続いた。年代別に大きな差はみられなかったという。 同社は、「日本漢方生薬製剤協会の調査(2011年11月)によると、漢方薬を処方している医師は全体の89.0%という結果があるなか、患者や消費者の意識の変化もあり、実際に服用した経験から漢方薬のイメージが変化したことなどがわかる調査結果となった」と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.kracie.co.jp/release/10067356_3833.html

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直近10年で視覚障害が21%増加、長期糖尿病患者29%増大が関連の可能性/JAMA

 直近10年間で米国では、20歳以上の成人の非屈折性視覚障害者が21%増加しており、原因として同時期に有意な有病率の上昇がみられた糖尿病がリスク因子として関連している可能性を、米国・ジョンズホプキンス大学のFang Ko氏らが報告した。米国では直近10年間で糖尿病や糖尿病性網膜症のような眼の後遺症を伴う慢性疾患の増加が報告されていた。Ko氏らは、糖尿病は視覚障害と強く関連することから、より若い世代で非屈折性視覚障害が増えているのではないかと仮説を立てて検証試験を行った。JAMA誌2012年12月12日号より。非屈折性視覚障害保有率と全身性リスク因子を1999-2002年と2005-2008年で比較 研究グループは、非屈折性視覚障害保有率を推定し、人口統計学的因子と、糖尿病との診断を含む全身性リスク因子と関連を明らかにすることを目的とし、米国全国健康・栄養調査(NHANES)の入院外患者のデータ(代表サンプルとして1999-2002年9,471例と、2005-2008年1万480例の20歳以上の成人に関する質問表、臨床検査および診察の記録)を用いて検証した。 非屈折性視覚障害は、自動屈折計にて20/40未満(日本の単位で0.5未満)の視力の者とした。主要評価項目は非屈折性視覚障害とした。糖尿病歴10年以上の人が29%増加、白人では133%増加 結果、20歳以上成人で非屈折性視覚障害加重保有率は、1999-2002年の1.4%から2005-2008年の1.7%に21%増加し(p=0.03)、20~39歳の白人(ヒスパニック系除く)では0.5%から0.7%と40%増加していた(p=0.008)。 多変量解析において、統計的に有意なリスク因子は、1999~2002年では、年齢[年間オッズ比(OR):1.07、95%信頼区間(CI):1.05~1.09)、貧困(同:2.18、1.31~3.64)、無保険(同:1.85、1.16~2.95)、糖尿病歴10年以上(同:1.93、1.15~3.25)であった。2005-2008年は、年齢(同:1.05、1.04~1.07)、貧困(同;2.23、1.55~3.22)、高校未満の教育レベル(同:2.11、1.54~2.90)、糖尿病歴10年以上(同:2.67、1.64~4.37)であった。 診断から10年以上の糖尿病患者は、全年齢総計で2.8%から3.6%へと29%増加していた(p=0.02)。20~39歳の白人(ヒスパニック系除く)では0.3%から0.7%へと133%増加していた(p<0.001)。

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オキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者の症状を改善

 統合失調症患者に対して、オキシトシンを投与することで症状改善につながるとの先行研究がある。しかし、それらは短期間の研究にとどまっており、統合失調症患者に対するオキシトシン投与について、3週間超のエビデンスは存在しなかった。イラン・テヘラン医科大学Roozbeh精神病院のAmirhossein Modabbernia氏らは、リスペリドンによる治療を受けている統合失調症患者にオキシトシン鼻腔内スプレーを8週間併用し、有効性と忍容性についてプラセボと比較検討した。その結果、オキシトシン鼻腔内投与により統合失調症患者の症状、なかでも陽性症状が著明に改善されることを報告した。CNS Drugs誌オンライン版2012年12月12日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症患者におけるオキシトシン鼻腔内スプレーの有効性と忍容性を評価することを目的とした、8週間にわたる無作為化二重盲検プラセボ対照試験。DSM-IV-TRにて統合失調症と診断され、リスペリドン固定用量(5または6mg/日)の治療を少なくとも1ヵ月以上受けている患者40例(18~50歳男女)を対象とし、オキシトシン群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。オキシトシン鼻腔内スプレーは、最初の1週間は20 IU(5スプレー)を1日2回投与し、以降は40 IU(10スプレー)を1日2回、7週間投与した。ベースライン時、2、4、6、8週後に、陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale:PANSS)により評価を行った。主要アウトカムは、治療終了時におけるPANSSスコアの2群間の差とした。主な結果は以下のとおり。・全患者がベースライン後1回以上の評価を受け、37例(オキシトシン群19例、プラセボ群18例)が試験を完了した。・反復測定分散分析によると、PANSS総スコア[F(2.291,87.065) = 22.124、p<0.001]および陽性スコア[F(1.285,48.825) = 11.655、p = 0.001]、陰性スコア[F(2.754,104.649) = 11.818、 p < 0.001]、総合精神病理[F(1.627,61.839) = 4.022、 p = 0.03]サブスケールについて、相互作用による有意な効果がみられた。・8週後までに、オキシトシン群はプラセボ群に比べ、PANSSサブスケールの陽性症状について著明かつ有意な改善を示した(Cohen's d=1.2、スコアの減少20%vs. 4%、p<0.001)。・オキシトシン群はプラセボ群に比べ、PANSSサブスケールの陰性症状(Cohen's d=1.4、スコアの減少7%vs. 2%、p<0.001)、総合精神病理(Cohen's d=0.8、スコアの減少8%vs. 2%、p=0.021)においても統計学的に有意な改善を示したが、臨床的にはその差が実感されなかった。・オキシトシン群はプラセボ群に比べ、PANSSの総スコア(Cohen's d=1.9、スコアの減少11%vs. 2%、p<0.001)において有意な改善を示した。・有害事象の発現状況は、2群間で同程度であった。・以上のことから、リスペリドン併用下のオキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者のとくに陽性症状を、忍容性を保ちつつ有効に改善することが示された。・本パイロット試験で得られた興味深い知見は、より大規模な母集団を用いて再現する必要がある。関連医療ニュース ・統合失調症治療にニコチン作動薬が有効である理由とは? ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か? ・統合失調症の遂行機能改善に有望!グルタミン酸を介した「L-カルノシン」

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レベチラセタムは末梢性の鎮痛・抗浮腫作用を示す

 セルビア・ベオグラード大学のRadica M. Stepanovic-Petrovic氏らは、ラット炎症性疼痛モデルを用いて、レベチラセタムの末梢局所における鎮痛・抗浮腫作用とその作用機序について検討した。その結果、レベチラセタムはオピオイド受容体、アドレナリン受容体、アデノシン受容体、5-HT受容体を介して末梢性の鎮痛作用を示すことが明らかになった。Anesthesia & Analgesia誌2012年12月号(オンライン版2012年11月9日号)の掲載報告。 本研究は、ラット炎症性疼痛モデルにおいて、レベチラセタムの炎症局所における鎮痛・抗浮腫作用ならびにその作用機序を検討することを目的とした。ラット足底(paw)皮下にカラゲナンを注射して炎症性浮腫を惹起させ、レベチラセタム(200~1,000nmol/paw)および各種受容体アンタゴニストの鎮痛作用を足圧痛法により評価した。さらに、レベチラセタムの浮腫に及ぼす影響を体積変動測定法により測定した。検討した各種受容体アンタゴニストは以下。オピオイド受容体アンタゴニスト:ナロキソン(75~300nmol/paw)、CTAP(1~5nmol/paw)アドレナリン受容体アンタゴニスト:ヨヒンビン(130~520nmol/paw)、BRL 44408(50~200nmol/paw)、MK-912(5~20nmol/paw)アデノシン受容体アンタゴニスト:カフェイン(500~1,500nmol/paw)、DPCPX(3~30nmol/paw)5-HT受容体アンタゴニスト:メチセルギド(10~100nmol/paw)、GR 127935(50~200nmol/paw)GABA受容体アンタゴニスト:ビククリン(400nmol/paw) 主な結果は以下のとおり。・レベチラセタムは、用量依存的かつ有意な疼痛閾値の低下、足浮腫抑制作用を示した。・レベチラセタム(1,000nmol/paw)の鎮痛作用は、GABA受容体アンタゴニストのビククリンで抑制されなかった。一方で、オピオイド受容体アンタゴニスト、アドレナリン受容体アンタゴニスト、アデノシン受容体アンタゴニスト、5-HT受容体アンタゴニストにより有意に抑制された。・ラットの対側後足にレベチラセタム、各種受容体アンタゴニストを投与した場合に効果が観察されなかったことから、これらの作用は末梢性であると考えられた。・以上のことから、レベチラセタムは末梢局所で鎮痛ならびに抗浮腫作用を示し、その作用はオピオイド受容体、アドレナリン受容体、アデノシン受容体、5-HT受容体を介したものであることが示唆された。レベチラセタムは、全身性の副作用および薬物相互作用の出現を低く抑え、炎症性疼痛を改善させうる。■関連記事とくにうつ病患者は要注意?慢性疼痛時のオピオイド使用レベチラセタム、部分てんかん患者に対する1年間の使用結果レビュー疼痛治療「プラセボでも一定の効果が」臨床試験に課題も抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(40)〕 RA系抑制薬同士の併用はメリットなく、むしろ有害

レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬としては、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)および直接的レニン阻害薬(アリスキレン)があるが、これまでONTARGET試験などで、ACE阻害薬とARBの併用は、ACE阻害薬単独に比べて心血管合併症予防効果が認められず、むしろ有害事象が増加するのみという結果が示されている。今回の結果も、RA系抑制薬同士の併用はメリットがなく、有害であることを明瞭に示した点で意義のある試験である。 このトライアルを企画した意図としては、本試験のプロトコールどおり、すでにACE阻害薬あるいはARBを服用している高血圧または高リスク症例に対して、アリスキレンを上乗せすることで、さらなるメリットが得られる可能性を期待していたと思われる。しかし、本試験の結果は直接的レニン阻害薬の存在意義そのものが危うくなる結果であり、期待は大きく崩れた。 対象例のうち、より高リスクの症例では、より多くの降圧薬に加えて抗血小板薬やスタチン薬が処方されている。しかも、対象症例の試験開始時点の収縮期血圧140mmHg以上は40.8%、拡張期血圧85mmHg以上は12.2%にすぎないということは、血圧管理もかなりなされていることになる。さらに、アリスキレン追加群の血圧下降度について、プラセボ群と比べて群間差が収縮期血圧1.3mmHg/拡張期血圧0.6mmHgということから、追加によってもさらなる降圧が見込めるわけではないことも示した。 むしろRA系同士の併用は、高カリウム血症という危険な有害事象を招く可能性があることを教えてくれた貴重なトライアルである。 やはり降圧薬併用の基本は、降圧機序の異なる薬剤同士を少量ずつ組み合わせことである。 今後、この試験の結果はガイドラインでもきちんと活かされ、かつ保険上でも併用禁忌として記載され広く臨床医に周知されるべきである。

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関節疾患にみる慢性疼痛

関節痛の概要・特徴痛みを呈する関節で最も多いのが膝関節、次いで肩こりを含めた肩関節が多い。股関節では骨形成不全などがあると痛みが発症するが、膝関節や肩関節に比べて頻度は低い。また、肩関節、手関節および肘関節の痛みの訴えはそれ以上に少なく、治療上も問題になることは多くない。関節痛の原因としては変形性関節症が最も多く、次に痛風、偽痛風、関節リウマチなどの炎症性関節炎、そして感染性関節炎となる。関節痛の多くは、慢性的なケースが多く、継続して痛みがあるか亜急性的に痛みが悪化する患者さんが多い。関節痛のリスク因子には、下肢(股関節、膝関節、足関節)のアライメントの異常(関節の歪み)や肥満、筋力低下がある。日本人にはO脚が多いため、膝の内側が摩耗しやすく、体重増や筋力低下により摩耗が進むと関節痛がさらに悪化するというのはその典型といえる。関節痛の原因関節痛についても、痛みの原因を明らかにし、その原因に対処していくことが必要である。変形性関節症の場合、過労時や荷重時の痛みが多く、安静時痛がない。ちなみに、安静時痛のある場合は、関節リウマチや痛風などの炎症性関節炎や細菌感染などの化膿性関節炎などのこともあるので注意が必要である。炎症性関節炎の場合、痛みの原因となる内科疾患を明らかにする必要がある。痛風であれば熱感や発赤が認められるが関節液の濁りは少なく、採血でCRPおよび尿酸値の高値が認められる。偽通風であれば関節液からピロリン酸が検出される。炎症性関節炎では、感染性関節炎と鑑別しにくい場合もある。化膿性関節炎では、熱感、発赤が非常に強く、白血球は10万レベルになる。一方、炎症性関節炎であれば上がっても白血球は数千から1万程度である。また、化膿性関節炎の関節液では白色の膿が確認されるが、炎症性関節炎の関節液は少し濁っている程度である。炎症性、感染性が除外された場合、単純X線所見と併せて変形性関節症と診断することになる。また、胆嚢疾患や心疾患などの内科疾患が原因で肩関節が痛む関連痛が報告されているが、整形外科に来院する場合もあるので注意が必要である。変形性関節症の特徴的X線所見骨棘形成関節裂隙の狭小化軟骨下骨の硬化関節裂隙の消失関節痛の治療変形性関節症はセルフリミティングな疾患であり、ある程度までしか進行せず自然治癒力が期待できるため治療の緊急性は少ない。NSAIDsで効果を期待できるため、治療初期の2週間ほどはNSAIDsを処方して様子をみて、運動療法を行う。長期にわたり鎮痛効果が必要な場合は、NSAIDsの長期服用による腎障害や胃潰瘍の発現を考慮し、弱オピオイド鎮痛薬の併用あるいは切り替えを検討する。また、変形性関節症ではX線の所見と痛みの程度は必ずしも一致せず、進行した例でも薬物療法や運動療法が有効な場合がある。関節破壊が進展し十分な保存療法を行っても症状の改善が得られず、患者さんの希望するレベルの生活に障害がある場合などは手術の適応を検討する。炎症性関節炎の場合、原因となる内科疾患、関節リウマチであればその治療を、痛風であれば尿酸値を下げるなど、その疾患の治療を行う。感染性疾患は治療に緊急性を要する場合が多い。たとえば化膿性関節炎では、関節破壊が進行し、さらに敗血症で死亡する危険があるため緊急手術を要する。運動療法の積極導入ある程度痛みが軽減したら、運動療法、筋力トレーニング、関節可動域改善のトレーニングを行う。痛みがあると、その部位の筋力が低下していることが多く、運動療法で筋力を回復するだけでも随分痛みが改善することが多い。変性疾患で軟骨が摩耗している変形性膝関節症であれば、むしろ運動療法することでが機能が回復するとされている1)。「痛み=安静」という意識を変え、症状改善のためには、少し痛みが残っていても動くことを勧めるのも治療選択肢であろう。代表的な運動療法としては、肩関節周囲のコッドマン体操や滑車体操、膝関節の大腿四頭筋訓練、股関節の股関節周囲筋筋力体操などがある。いずれの場合も運動療法を導入する際は、管理下の運動療法といって、PTや整形外科医の指導・監視下で行うことが基本であり、その際には、整形外科医との連携を図っていただくべきであろう。高齢者の肩の腱板断裂関節痛とは異なるが整形外科では高齢者の肩の腱板断裂という疾患が近年多くみられるため紹介する。この疾患は、急に肩が動かなくなり、夜も寝られない程の肩の痛みを訴える。しかしながら、単純X線検査では診断がつきにくく、内科からの紹介も多い。検査としてはドロップアームサインがある。腕を上げてバンザイはできるが、肩の腱板が切れているため腕をおろしてゆくと保持できず途中でドロップする。つまり、棚の上の物が取れなくなるが、腕をおろした状態では問題がないため字は書ける。治療として、NSAIDsで痛みをある程度軽減してから、手術療法が必要なければ運動療法により肩の可動域を保持する。症例ごとに最適の疼痛診療を目指す整形外科領域の疼痛の診療にはさまざまなピットフォールがあるが、どんな場合でも痛みの原因を明らかにし、それぞれの症例に適した診療が必要となる。また、疼痛患者さんはどの診療科を受診するかわからず、他診療科からの紹介も多い。整形外科と他診療科が連携して、患者さんの痛みをうまくコントロールしていくことが、超高齢化社会に入っていくこれからの医療には重要なのではないだろうか。参考文献1)岩谷 力 (監修)ほか 変形性膝関節症の保存的治療ガイドブック;メジカルレビュー社2006年

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「潰瘍性大腸炎の治療における医師と患者の意識比較」について

11月29日(木)、「潰瘍性大腸炎の治療における医師と患者の意識比較」をテーマに、丸ビルコンファレンススクエア(東京・千代田区)においてメディアセミナーが開催された(主催:キョーリン製薬ホールディングス株式会社)。今回のテーマは、患者数が増加を続ける「潰瘍性大腸炎」。この診療の第一線で活躍する渡辺守氏(東京医科歯科大学大学院消化器病態学消化器内科 教授)を迎え、その疫学、最新の診療、「医師と患者の意識の差」調査結果を述べるとともに、後半では患者との対談を行った。増加する「潰瘍性大腸炎」の現状講演では、渡辺氏が「潰瘍性大腸炎」について、症状として下痢や血便、腹痛があること、20~30歳代の若年で好発すること、再燃と寛解を繰り返し、ADLを著しく下げること、厚生労働省難治性疾患であり、推定患者数も14万人を超えることなどが説明された。次に、渡辺氏が行った医師と患者の治療への意識調査の結果について、次のように報告した。●対象医師=354名(同疾患患者を5名以上診療している消化器内科、外科、大腸肛門科の医師)患者=206名(定期的に受診し、薬物療法を受けている同疾患の患者)●目的患者、医師の意識比較を行うことで患者満足度が高い対応やコミュニケーションを導く●方法インターネットでのアンケート●結果(主に差異が大きい点について)「最初に診断された時の『潰瘍性大腸炎』に関する説明は?」では、医師は「治りにくい慢性疾患」と説明しているのに対し、患者は「難病ではあるが、治りにくいとは思っていない」と回答。「医師からの病気や治療について、十分な説明があったかどうか」では、医師が認識しているよりも、患者は十分な説明を受けていると実感しており、医師が思う以上に理解度が高いことがわかった。「医師に対する不満や不安」では、医師は対応の不十分さを強く認識する傾向がある半面、患者の6割以上は不満や不安をもっていないことがわかった。「(患者は)医師に伝えたいことをどの程度伝えられているか」では、医師は「伝えることができている」と考えているのが半数以下であるのに対し、患者は7割以上が「伝えることができている」と認識していることがわかった。「潰瘍性大腸炎治療における患者満足度(10点満点で評価)」について、医師が考えている(6.4点)よりも患者(6.9点)は現状の治療・診療行為に満足していることがうかがえた。「(治療薬である)5-ASA製剤の服薬状況」については、多くの医師が患者は処方された通り服用していないと考えているのに対し、患者の7割は処方された通りに服用していることがわかった。「5-ASA製剤を処方どおりに服薬しない理由」については、医師が症状軽快による患者の自主的な中断と考えているのに対し、患者は単純な飲み忘れと回答。以上、アンケートでわかった医師と患者の意識のギャップを比べると、医師が思うほど患者は悲観的ではなく、疾患をよく理解しており、服薬コンプライアンスも守られていることが示唆された。治療へのモチベーションが上がる言葉とは次に、渡辺氏が診療をしている患者との対談となり、医師と患者の意識の違いについてテーマに沿った内容の話合いが行われた。最初に患者の治療経過について説明が行われ、血便が端緒となり一般内科での診療後に専門医に紹介。そこで行われたステロイドの頻回使用でひどく治療が難渋したことが話された。「診断されて病名の告知がされた時の心境について」尋ねたところ、「悩んだ時期もあり、なかなか受け入れられなかったが、よくなる病気といわれて気持ちが軽くなった」と答えた。さらに「治療に関して」尋ねたところ、現在は薬の継続服用の徹底指導を受けているとのことで、ステロイドからメサラジンへ移行したとのことであった。診療で一番印象に残った言葉について尋ねると「『よくなる病気』という言葉で、治療へのモチベーションが上がった」と答えた。続いて診療でのコミュニケーションについての話題となり、渡辺氏が「治療で大変なことは何ですか」と尋ねたところ、「肉体的に精神的にも治療成果が出てこないとつらい」との回答だった。薬の服用に関して、「1日2回ではどうか」と尋ねたところ、「現在服用に支障はないので、3回でも2回でも変わりはない」との回答。また、「日常生活について」聞いたところ、「食生活もその他のことも今まで通りできている。とくに食事制限もない」とのことであった。「医師とのコミュニケーションで大事なこと」については、「医師の指導を守ること。特に服薬に関しては厳守した方がよい」と回答を述べた。最後に渡辺氏より、「患者は医師を信用して、服薬コンプライアンスを守るようにして欲しい。自己流で治療をしないこと、自分で判断して服薬の中断などをしないことが大切。中断した場合は医師にきちんと伝えるようにしていただきたい」と述べ、セミナーを終えた。

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新規PCSK9阻害薬、LDL-C値を用量依存性に抑制:LAPLACE-TIMI 57試験/Lancet

 新規のコレステロール低下薬であるAMG 145は、高コレステロール血症患者のLDLコレステロール(LDL-C)値を用量依存性に低下させることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のRobert P Giugliano氏らが実施したLAPLACE-TIMI 57試験で示された。心血管疾患の1次および2次予防のいずれにおいても、LDL-Cはリスク因子として確立されている。前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)は、LDL受容体に結合してその分解を促進し、LDL-C値を上昇させる。AMG 145はPCSK9に対し高親和性に結合するヒトモノクローナル抗体で、第I相試験ではプラセボに比し1回投与後1週間で最大64%、週1回反復投与で最大81%のLDL-C値低下効果が示されている。Lancet誌2012年12月8日号(オンライン版2012年11月6日号)掲載の報告。スタチン服用患者における有用性をプラセボ対照無作為化第II相試験で評価 LAPLACE-TIMI 57試験は、スタチン服用中の高コレステロール血症患者に対するAMG 145の有用性を評価するプラセボ対照無作為化第II相用量決定試験。 対象は、年齢18~80歳、LDL-C値>2.2mmol/L(≒85.1mg/dL)でスタチンを継続的に服用している患者とした(エゼチミブ服用中の患者も含む)。これらの患者が、AMG 145 を2週ごとに70mg、105mg、140mgまたはプラセボを皮下注射する群、および4週ごとに280mg、350mg、420mgまたはプラセボを皮下注射する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、ベースラインから治療12週までのLDL-C値の変化率とした。鼻咽頭炎、咳嗽、悪心の頻度が高かったが、Grade 3以上は認めず 2011年7月18日~12月22日までに、5ヵ国(米国、カナダ、デンマーク、ハンガリー、チェコ)78施設から631例(年齢中央値62.0歳、女性51%、BMI中央値29.0kg/m2、エゼチミブ服用率9%)が登録され、AMG 145を2週ごとに70mg投与する群に79例、105mg投与群に79例、140mg投与群に78例、プラセボ群には78例が、4週ごとに280mg投与する群に79例、350mg投与群に79例、420mg投与群に80例、プラセボ群には79例が割り付けられた。 治療12週の時点で、2週投与法、4週投与法ともにLDL-C値が用量依存性に有意に低下した。すなわち、2週投与法では70mg投与群で41.8%[95%信頼区間(CI):-47.2~-36.5、p<0.0001]、105mg投与群で60.2%(同:-65.6~-54.9、p<0.0001)、140mg投与群で66.1%(同:-71.5 ~-60.7、p<0.0001)低下した。また、4週投与法では280mg投与群で41.8%(同:-47.6~-36.1、p<0.0001)、350mg投与群で50.0%(同:-55.7~-44.3、p<0.0001)、420mg投与群で50.3%(同:-56.0~-44.6、p<0.0001)低下した。 有害事象の発現頻度はAMG 145群が58%(277/474例)、プラセボ群は46%(71/155例)で、AMG 145群で頻度が高かったのは鼻咽頭炎(10%、プラセボ群は7%)、咳嗽(3%、同:2%)、悪心(3%、同:0.6%)であったが、両群間に有意な差はなかった。治療関連有害事象の頻度はAMG 145群が8%(39/474例)、プラセボ群は7%(11/155例)で、重篤なもの(Grade 3)や生命を脅かすもの(Grade 4)は両群ともに認めなかった。 著者は、「PCSK9の阻害は脂質管理の新たなモデルとなる可能性がある」と結論づけ、「今回の結果は、心血管疾患リスクの高い患者における長期的な臨床効果と安全性を評価する第III相試験の実施を正当化するもの」と指摘する。

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中等度~重度のにきび、家族歴、BMI、食生活が影響?

 イタリアのAnna Di Landro氏らGISED Acne Study Groupは、にきびの原因には、遺伝的要因と環境的要因が関与している可能性があるとして、思春期および若年成人を対象に、それら要因と中等度~重度にきびリスクとの関係について調べた。その結果、家族歴とBMI、食事内容が中等度~重度にきびのリスクに影響を与えている可能性が示されたと報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌2012年12月号の掲載報告。 GISED(Gruppo Italiano Studi Epidemiologici in Dermatologia)は、中等度~重度のにきびの新規診断症例に関して、家族歴、個人の習慣、食事性因子、月経歴の影響を評価するため、イタリアの皮膚科外来診療所で症例対照研究を行った。 症例は、中等度~重度のにきびと新規診断された患者205例で、対照被験者は、にきび以外で受診した、にきびがない(あるいは、あっても軽症の)患者358例であった。 主な結果は以下のとおり。・中等度~重度のにきびは、一等親血縁者でのにきび既往歴と強い関連が認められた(オッズ比:3.41、95%CI:2.31~5.05)。・リスクは、BMIが低い人では低下し、女性よりも男性で顕著な影響が認められた。・喫煙による関連は、みられなかった。・牛乳を週に3ポーション以上消費する人では、消費量が多いほどリスクが上昇した(オッズ比:1.78、95%CI:1.22~2.59)。・その関連は、全乳よりもスキムミルクでより特徴的であった。・魚の消費は、保護作用と関連していた(オッズ比:0.68、95%CI:0.47~0.99)。・月経変数と、にきびリスクとの関連はみられなかった。・本試験は、皮膚科学的対照被験者の選択において、また対照群の軽症患者の組み込みで一部オーバーマッチングの可能性があった。・以上の結果から、家族歴、BMI、食生活は、中等度~重度にきびのリスクに影響する可能性があった。環境および食事要因による影響について、さらに調査を行う必要がある。

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小児急性胃腸炎動向からみえたノロウイルスワクチン開発の鍵

 長崎大学大学院のHoa Tran TN氏らは、小児(18歳以下)の急性散発性胃腸炎におけるノロウイルス遺伝子型分布を明らかにするため、2000年以降の発表論文のシステマティックレビューを行った。その結果、直近10年でGII.4、GII.3が大勢を占めるようになっており、その背景には世界的なGII.4変異型の出現があること、またノロウイルスはロタウイルス感染胃腸炎の減少と相反する形で小児急性胃腸炎での重要度を増している傾向が認められることなどを報告した。著者は、有効なノロウイルスワクチン開発には、GII.4、GII.3株に対する獲得免疫の提供が欠かせないとまとめている。Journal of Clinical Virology誌オンライン版2012年12月4日号の掲載報告。 ノロウイルスは世界的な流行性または散発性急性胃腸炎の原因である。研究グループは、過去20年間、感度の高い分子診断技術の開発がノロウイルス分子疫学の解明に革命をもたらしたものの、ノロウイルス株タイプと散発性胃腸炎との関連については十分に解明されていないとして、ノロウイルスの疫学的解析を行った。 2000年以降に行われた試験報告についてシステマティックレビューを行い、散発性急性胃腸炎の小児(18歳以下)におけるノロウイルス遺伝子型の分布状況を明らかにした。 主な結果は以下のとおり。・遺伝子グループでみるとGIIの占める割合が最も高く、すべての散発的な感染症のうち96%を占めていた。・遺伝子型でみるとGII.4の分布が最も優勢で、カプシド遺伝子型では70%を、ポリメラーゼ遺伝子型では60%を占めていた。次いで、GII.3(カプシド遺伝子型で16%)、GII.b(ポリメラーゼ遺伝子型で14%)であった。・最も頻度の高い組換え型ORF1.ORF2インター遺伝子型は、GII.3カプシド遺伝子型との結合によるGII.b、GII.12およびGII.4ポリメラーゼ遺伝子型で、同定されたすべての遺伝子型の19%を占めていた。・ここ10年間は、GII.4の突然変異の分布が勝っていた。現在までにGII.4/2002、GII.4/2004、GII.4/2006b、GII.4/2008、GII.4/2006bと続いてきている。・直近10年間の小児の散発性急性胃腸炎では、遺伝子型GII.4、GII.3の分布が優勢であった。その動きは、GII.4変異型ノロウイルスの世界的な出現で最も顕著であった。・小児予防接種プログラムの導入に伴ってロタウイルス疾患負荷が減少するに従い、相対的にノロウイルスが小児急性胃腸炎の原因における重要度を増している可能性がうかがえた。・有効なノロウイルスワクチン開発には、カプシド遺伝子型GII.4、GII.3株に対する獲得免疫提供が必要である。

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