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オメガ3脂肪酸は皮膚がん予防に有用?

 オメガ3多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)には皮膚悪性腫瘍に対する予防的効果は、現状ではエビデンスに乏しいものであることを、オーストラリア・Albany Health CampusのSophie E Noel氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。ラボデータでは、n-3 PUFAは皮膚悪性腫瘍に対して予防的効果があることを示唆されているが、ヒトを対象とした大規模レビューは行われていなかった。International Journal of Cancer誌オンライン版2013年11月21日号の掲載報告。 本検討は、n-3 PUFA摂取と皮膚がん発生率との関連を明らかにすることを目的とし、2013年3月までに発表された無作為化対照試験と観察試験をレビューの対象とした。 n-3 PUFA経口摂取と、基底細胞がん(BCC)、扁平上皮がん(SCC)、メラノーマ(悪性黒色腫)(またはこれらの複合)の発生率との関連について検討していた5試験(2件はケースコントロール試験、3件はコホート試験)が特定され、ランダム効果メタ解析に組み込まれた。 さらに6試験について、非摂取性n-3 PUFA曝露(組織分析など)と皮膚がんリスクのバイオマーカー(p53など)について検討しており、質的解析に組み込んだ。 主な結果は以下のとおり。・n-3 PUFA摂取とBCCの関連は認められなかった(プールオッズ比[OR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.86~1.28)。・高値のn-3 PUFA摂取と悪性黒色種とは、逆相関の関連がみられたが、1試験のみの推定値であった(OR:0.52、95%CI:0.34~0.78)。SCCとの関連は有意ではなかった(プールOR:0.86、0.59~1.23)。・以上のように、入手できたエビデンスは示唆的ではあったが、現状では、n-3 PUFAに皮膚悪性腫瘍に対する予防的効果があるとの仮説を支持するには不十分であった。

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第21回 処方ミスは誰の責任?主治医か薬剤師か、はたまた双方か!?

■今回のテーマのポイント1.呼吸器疾患で一番訴訟が多い疾患は肺がんであり、争点としては、健診における見落としおよび診断の遅れが多い2.薬剤師は、自らの責任において用法・用量などを含めた処方せんの内容について問題がないか確認をしなければならない(薬剤師法24条)3.医師の書いた処方箋が誤っていた場合、それを修正させなかった薬剤師も誤投与に対し責任を負う事件の概要60歳男性(X)。平成17年3月、頸部リンパ節腫脹精査目的にてA病院に入院しました。検査の結果、右中下葉間を原発とする肺腺がん(T2N3M1(膵、リンパ節転移):StageIV)と診断されました。4月13日より、Xに対し、化学療法が開始されたものの、徐々にXの全身状態は悪化していき、8月末には脳転移も認められるようになりました。10月よりXの主治医はW医師および3年目の医師(後期研修医)Yに変更となりました。Xの全身状態は悪く、10月11日には、発熱、胸部CT上両肺野にびまん性のスリガラス状陰影が認められました。Y医師は、抗がん剤(ビノレルビン)による薬剤性肺障害を疑い、ステロイドパルス療法を開始しましたが、改善しませんでした。β‐Dグルカンが79.6pg/mLと上昇していたことから、Y医師は、ニューモシスチスカリニ肺炎を疑い、18日よりST合剤(商品名:バクトラミン)を開始しました。治療によりβ‐Dグルカンは低下し、胸部CT上もスリガラス状陰影の改善が認められたものの、バクトラミン®によると考えられる嘔気・嘔吐が増悪したため、28日の回診時に呼吸器科部長Z医師よりY医師に対し、ペンタミジンイセチオン(商品名:ベナンバックス)に変更するよう指示がなされました。Y医師は、W医師に対し、ベナンバックス®の投与量を尋ねたところ、「書いてある通りでよい」旨指示されたため、医薬品集をみてベナンバックス®の投与量を決めることとしました。なお、W医師は、午後外勤であったため、上記やり取りの後、Y医師が実際に処方するのを確認せずに病院を離れました。ところが、Y医師は、ベナンバックス®の投与量(4mg/kg/日)を決定する際に、誤って医薬品集のバクトラミン®(15~20mg/kg/日)の項をみて計算してしまったため、結果として、5倍量の注射オーダーがなされてしまいました。A病院では、薬剤の処方にオーダリングシステムが導入されていたものの、過量投与への警告機能は薬剤の1回量について設定されているのみで、投与回数や1日量については設定がされていませんでした。そのために、本件のベナンバックス®の処方に対して警告が発せられなかったこともあり、調剤した薬剤師および調剤監査に当たった薬剤師は過量投与に気づきませんでした。その結果、Xは、収縮期血圧が70mmHgまで低下し、意識状態の悪化、奇異性呼吸が認められるようになり、11月10日、Xは、低血糖による遷延性中枢神経障害、肝不全、腎不全により死亡してしまいました。これに対し、Xの遺族は、病院だけでなく、主治医であった後期研修医YおよびWならびに呼吸器センター部長Z、さらに調剤した薬剤師および監査した薬剤師2名の計6名の医師・薬剤師に対し、約1億800万円の損害賠償請求を行いました。事件の判決●主治医の後期研修医Yの責任:有責「被告Y医師は、臨床経験3年目の後期研修医であったけれども、医師法16条の2の定める2年間の義務的な臨床研修は修了しており、また、後期研修医といえども、当然、医師資格を有しており、行える医療行為の範囲に法律上制限はなく、しかも、前記のとおり、被告Y医師の過失は、医師としての経験の蓄積や専門性等と直接関係のない人間の行動における初歩的な注意義務の範疇に属するものである」●主治医W医師の責任:無責「ベナンバックスへの薬剤変更が決定された10月28日、被告W医師は、外勤のため、被告病院を離れなければならないという事情があり、被告Y医師から、投与量について相談をされた際に、書いてあるとおりでよいと、概括的ながら、添付文書や医薬品集に記載されている投与量で投与する旨の指示は出している。そして、被告W医師としては、特別の事情がない限り、被告Y医師が、医薬品集などで投与量を確認し、その記載の量で投与するであろうことを期待することは、むしろ当然であるといえる。すなわち、本件事故は、被告Y医師が、医薬品集の左右の頁を見間違えて処方指示をしたという初歩的な間違いに起因するものであるが、このような過誤は通常想定し難いものであって、被告W医師において、このような過誤まで予想して、被告Y医師に対し、あらかじめ、具体的な投与量についてまで、指示をすべき注意義務があったとは直ちには認められないというべきである」●呼吸器センター部長Z医師の責任:無責「被告Z医師は、Xの主治医や担当医ではなく、呼吸器センター内科部長として、週に2回の回診の際、チャートラウンドにおいて、各患者の様子について担当医師らから報告を受け治療方針等を議論し、前期研修医を同行し、患者の回診をするなどしていた。本件でも、Xの診療を直接に担当していたわけではなく、チャートラウンドなどを通して、主治医や担当医の報告を受けて、治療方針を議論するなど、各医師への一般的な指導監督、教育などの役割を担っていたといえる。被告Z医師は、10月28日のチャートラウンドにおいて、被告Y医師からXの容態について報告を受け、薬剤をベナンバックスに変更することを指示している。その際、ベナンバックスの投与量や投与回数、副作用への注意などについては、特に被告Y医師に対して具体的な指示をしていない。しかし、被告Z医師の前示のとおりの役割や関与の在り方から見ても、10月28日当時で約95名にのぼる被告病院呼吸器センター内科の入院患者一人一人について、極めて限られた時間で行われるチャートラウンド等の場において、使用薬剤やその投与量の具体的な指示までを行うべき注意義務を一般的に認めることは難しいといわざるを得ない」●薬剤師3名の責任:有責「薬剤師法24条は、「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と定めている。これは、医薬品の専門家である薬剤師に、医師の処方意図を把握し、疑義がある場合に、医師に照会する義務を負わせたものであると解される。そして、薬剤師の薬学上の知識、技術、経験等の専門性からすれば、かかる疑義照会義務は、薬剤の名称、薬剤の分量、用法・用量等について、網羅的に記載され、特定されているかといった形式的な点のみならず、その用法・用量が適正か否か、相互作用の確認等の実質的な内容にも及ぶものであり、原則として、これら処方せんの内容についても確認し、疑義がある場合には、処方せんを交付した医師等に問合せて照会する注意義務を含むものというべきである。・・・(中略)・・・薬剤師はその専門性から、原則として、用法・用量等を含む処方せんの内容について確認し、疑義がある場合は、処方医に照会する注意義務を負っているといえるところ、特に、ベナンバックスは普段調剤しないような不慣れな医薬品であり、劇薬指定もされ、重大な副作用を生じ得る医薬品であること、処方せんの内容が、本来の投与量をわずかに超えたというものではなく、5倍もの用量であったことなどを考慮すれば、被告薬剤師としては、医薬品集やベナンバックスの添付文書などで用法・用量を確認するなどして、処方せんの内容について確認し、本来の投与量の5倍もの用量を投与することについて、処方医である被告Y医師に対し、疑義を照会すべき義務があったというべきである」(*判決文中、下線は筆者による加筆)(東京地判平成23年2月10日判タ1344号90頁)ポイント解説1)呼吸器疾患の訴訟の現状今回は、呼吸器疾患です。呼吸器疾患で最も訴訟となっているのは肺がんです(表1)。やはり、どの診療科においても、重篤な疾患が訴訟となりやすくなっています。肺がんの訴訟は、原告勝訴率が52.9%とやや高い一方で、認容額はそれなり(平均3,200万円)というのが特徴です(表2)。これは、肺がんが、がんの中では5年生存率が比較的低い(予後が不良)ことが原因であると考えられます。すなわち、訴訟においては、不法行為責任が認められた後に、当該生じた損害を金銭に換算し、損害額を決定するのですが、肺がんのように5年生存率が低い疾患の場合、損害額の多くを占める逸失利益があまり認められなくなるのです。逸失利益とは、「もし医療過誤がなかった場合、どれくらい収入を得ることができたか」ですので、まったく同じ態様(たとえば術後管理の瑕疵)の過失であったとしても、生命予後が比較的良好な胃がんの患者(ここ10年間の検索可能判決によると平均6,520万円)と肺がんの患者では、認められる逸失利益に大きな違いが出てくることとなるのです。肺がんの訴訟において、最も多く争われるのが第17回でご紹介した健診による見落としなどであり、その次に多いのが診断の遅れと手技ミスです(表2)。また、表2をみていて気づくかもしれませんが、福島大野病院事件医師逮捕があった平成18年の前後で原告勝訴率が66.7%(平成18年以前)から37.5%(平成18年以降)と大きく落ち込んでいる点です。これは、医療崩壊に司法が加担したことに対する反省なのか、医療訴訟ブームによる濫訴が原因なのか、負け筋は示談されてしまい判決までいかないことが原因なのかなど、さまざまな理由によると考えられますが、結果として、医療訴訟全体において原告勝訴率が低下しており、肺がんにおいても同様のトレンドに沿った形(平成18年以前 40%前後、平成18年以降 25%前後)となっているのです。2)処方ミスは誰の責任?今回紹介した事例は、肺がん訴訟の典型事例ではありませんが、チーム医療を考えるにあたり非常によいテーマとなる事例といえます。本件では、病院だけでなく、医師、薬剤師を含めた多数の個人までもが被告とされました。その結果、各専門職および専門職内における役割の責任につき、裁判所がどのように考えているかをみることができる興味深い事例といえます。チーム医療とはいえ、病院スタッフはそれぞれ専門領域を持つプロフェッションです。国家資格もあり、法律上業務独占が認められています。したがって、チーム医療とはいっても、それぞれの専門領域については、各専門家が責任を負うこととなり、原則として他の職種が連帯責任を負うことはありません。これを法律的にいうと「信頼の原則」といいます。「信頼の原則」とは、「行為者は、第三者が適切な行動に出ることを信頼することが不相当な事情がない場合には、それを前提として適切な行為をすれば足り、その信頼が裏切られた結果として損害が生じたとしても、過失責任を問われることはない」という原則で、いちいち他の者がミスをしていないか確認しなければならないとなると円滑な社会活動を行うことが困難となることから、社会通念上相当な範囲については、他人を信頼して行動しても構わないという考えで、この原則は、医療従事者間においても適用されます。それでは、本事例のような処方箋の書き間違えは、誰の責任となるのでしょうか。医師法、薬剤師法上、医薬分業が定められています。すなわち、「医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない」(医師法22条)とされ、これを受けて、「薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない」(薬剤師法23条1項)とされています。そして、薬のプロである薬剤師は、「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない」(薬剤師法24条)とされており、患者に投与される薬は原則として、薬剤師が防波堤として、最終的なチェックをすることとなっています。したがって、法が予定する薬の処方に関する安全は、薬剤師に大きく頼っているといえます。本判決においても、処方ミスを水際で食い止めることが薬剤師に課せられた法的義務であることから、薬剤師は医師の処方箋が正しい内容であると信頼することは許されず、自らの責任において用法・用量などを含む処方せんの内容について確認しなければならないとされたのです。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京地判平成23年2月10日判タ1344号90頁

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虚血性僧帽弁逆流症、僧帽弁形成術vs.置換術のアウトカムは同等/NEJM

 虚血性僧帽弁逆流症に対し、僧帽弁形成術と置換術では、12ヵ月の左室収縮終末期容積係数(LVESVI)は同等であることが示された。死亡率も有意差はなかったが、中等度~重度の僧帽弁逆流症の再発率については、形成術群が置換術群より有意に高率だった。米国・ペンシルベニア大学のMichael A. Acker氏らが、251例の患者について行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。虚血性僧帽弁逆流症は、死亡リスクが高く、ガイドラインでは手術が推奨されているが、形成術か置換術かを支持するエビデンスは限定的であった。NEJM誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。僧帽弁形成術と置換術をそれぞれ実施、12ヵ月後のLVESVIを比較 Acker氏らは、重症虚血性僧帽弁逆流症の患者251例を無作為に2群に分け、一方には僧帽弁形成術を、もう一方には僧帽弁置換術を行い、その有効性と安全性を比較した。主要アウトカムは、12ヵ月後のLVESVIだった。 被験者の平均年齢は、68~69歳、男性は61~62%だった。LVESVI値、死亡率、主要有害心・脳血管イベント発生率ともに両群で同等 結果、12ヵ月後、僧帽弁形成術群の生存患者の平均LVESVI値は54.6(標準偏差:25.0)mL/m2であり、僧帽弁置換術群は60.7(同:31.5)mL/m2と、ベースライン時からの平均変化量はそれぞれ-6.6mL/m2と-6.8mL/m2だった。 死亡率は、形成術群が14.3%、置換術群が17.6%と、両群で有意差はなかった(形成術群の置換術群に対するハザード比:0.79、95%信頼区間:0.42~1.47、log-rank検定p=0.45)。また、死亡について補正を行った後のLVESVI値も、両群で有意差はなかった(Zスコア=1.33、p=0.18)。 一方、12ヵ月後の中等度~重度の僧帽弁逆流症の再発率は、形成術群32.6%に対し、置換術群では2.3%と有意に低かった(p<0.001)。 その他、12ヵ月後の主要有害心・脳血管イベントや、身体機能状態、生活の質についても、両群で有意差はなかった。

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シミュレーションによるコミュニケーション訓練、実臨床では改善効果なし/JAMA

 シミュレーション・ベースのコミュニケーション技能訓練は、内科研修医やナース・プラクティショナーの終末期ケアのコミュニケーションやケアの質を改善しないことが、米国・ワシントン大学のJ Randall Curtis氏らの検討で示された。終末期ケアに関するコミュニケーションは臨床技能の中心に位置づけられる。シミュレーションに基づく訓練により技能獲得が改善されることが示されているが、患者報告によるアウトカムへの影響は、これまで明らかにされていなかった。JAMA誌2013年12月4日号掲載の報告。コミュニケーション技能研修の効果を無作為化試験で評価 研究グループは、内科研修医およびナース・プラクティショナーに対するコミュニケーション技能に関する介入が、患者や家族の報告によるアウトカムに及ぼす影響の評価を目的とする無作為化試験を実施した。 2007~2013年までに、ワシントン大学およびサウスカロライナ医科大学の内科研修医391人、ナース・プラクティショナー81人が、8つの研修会からなるシミュレーション・ベースのコミュニケーション技能に関する介入を受ける群(介入群、232人)または通常の教育を受ける群(対照群、240人)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、患者の報告によるコミュニケーションの質(QOC)であった。QOCは17項目(0~10点、0=不良、10=完全)の平均値とした。副次評価項目は、患者の報告による終末期ケアの質(QEOLC:26項目、0~10点)、うつ症状(8項目から成る健康調査票[PHQ-8]、0~24点、得点が高いほど不良)、家族の報告によるQOC、QEOLCとした。うつスコアはむしろ上昇 介入群の211人(平均年齢30.5歳、女性57%)、対照群の234人(30.3歳、58%)が解析の対象となった。1,866人の患者(回答率44%)および936人の家族(同68%)が評価を行った。 介入により、QOCおよびQEOLCに有意な変化はみられなかった。すなわち、介入後の平均QOCは6.5点(95%信頼区間[CI]:6.2~6.8)、平均QEOLCは8.3点(同:8.1~8.4)であったのに対し、対照群はそれぞれ6.3点(同:6.2~6.5)、8.3点(同:8.1~8.5)であった。 補正後の比較では、両群間に患者報告によるQOC(p=0.15)および家族報告によるQOC(p=0.81)のいずれにおいても有意な差は認めなかった。また、QEOLCについても、患者報告(p=0.34)および家族報告(p=0.88)のいずれもが両群間で同等であった。 介入群では、うつスコアが対照群よりも有意に上昇した(10.0 vs 8.8点、補正後モデルを用いた介入効果:2.2、p=0.006)。 著者は、「シミュレーション・ベースのコミュニケーション技能訓練は、内科研修医やナース・プラクティショナーの終末期ケアのコミュニケーションや、ケアの質を改善せず、わずかながら患者のうつ症状を増悪させた」とまとめ、「これらの知見により、シミュレーションによる訓練から実際の患者ケアへの技能の移行や、コミュニケーション技能評価の妥当性に疑問が生じる」と指摘している。

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レベチラセタムの神経活性阻害、新たな機序が判明:熊本機能病院

 抗てんかん薬レベチラセタム(LEV)はユニークな作用機序を有するが、その機序は完全には解明されていない。熊本機能病院の脇田 真仁氏らは、LEVの作用機序を詳細に解明するため、ラットを用いてLEVが海馬苔状線維-CA3ニューロンのグルタミン作動性伝達に及ぼす影響を検討した。その結果、LEVはZn2+誘発性のGABA A を介したシナプス前抑制の阻害を解除し、グルタミン酸を介した興奮性シナプス伝達を低下させることを示した。Journal of Pharmacology Experimental Therapeutics誌オンライン版2013年11月20日号の掲載報告。 研究グループは、ラットから単離した神経シナプスボタンを材料とし、海馬苔状線維-CA3ニューロンのグルタミン作動性伝達に及ぼすLEVの作用を検討した。活動電位誘発性の興奮性シナプス後電流(eEPSCs)を、従来の全細胞記録によるパッチクランプ法を用い、電位固定による電流記録(ボルテージクランプ)により波形を記録した。 主な結果は以下のとおり。・抗てんかん薬フェニトインは、電位依存性Na+およびCa2+チャネル電流を阻害し、濃度依存的にグルタミン作動性eEPSCs を減少させた。・一方LEVは、eEPSCsおよび電位依存性Na+およびCa2+チャネル電流に影響を及ぼさなかった。・神経終末部のGABA A 受容体の活性化は、神経伝達物質の1つであるムッシモールによるeEPSCs阻害の結果、苔状線維終末部を脱分極させた。・eEPSCsおよび電位依存性Na+およびCa2+チャネル電流に影響を及ぼさない低濃度Zn2+は、ムッシモールに誘発されるシナプス前抑制を低下させた。・LEVを1μM濃度のムッシモールおよび1μM濃度のZn2+に持続的に曝露すると、Zn2+のeEPSCsに対する修飾を回復させた。・LEVのZn2+誘発性のシナプス前GABA A 受容体阻害に対する拮抗的作用は、Zn2+キレート、Ca-EDTAおよびRhodozin-3においても観察された。・以上のことから、LEVはZn2+誘発性のGABA A を介したシナプス前抑制の阻害を解除し、グルタミン酸を介した興奮性シナプス伝達を低下させることが明らかとなった。これは、LEVが神経活性を阻害する新たなメカニズムを示唆する知見である。■関連記事難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証小児外傷後てんかんの予防にレベチラセタムは有用抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

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Mother(前編)【過剰適応】

過剰適応皆さんは、職場で「なんであの人はがんばりすぎるの?」または「なんで自分はがんばりすぎるの?」と不思議に思ったことはありませんか?特に医療現場では献身的にがんばることが美徳でもあります。しかし、燃え尽きて、体や心を壊し、けっきょく休職してしまう人、退職してしまう人、最悪のケースとして自殺してしまう人もいます。がんばりすぎる理由は、まず、その人のもともとのこだわりや完璧主義などの性格によるものであると考えられます。それでは、なぜそのような性格になったのでしょうか?もちろん、それはもともとその人の持っている遺伝的な特性(個体因子)であるということは言えます。しかし、それと同じかそれ以上に考えられることは、そんな性格になってしまった、またはそうならざるをえなかった生い立ちや家族関係(環境因子)です。今回は、2010年に放映されたドラマ「Mother」を通して、このがんばりすぎること(過剰適応)の源となる家族関係、特に母性と愛着について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。あらすじ主人公の奈緒は、30歳代半ばまで恋人も作らず、北海道の大学でひたすら渡り鳥の研究に励んでいました。そんな折に、研究室が閉鎖され、仕方なく一時的に地域の小学校に勤めます。そこで1年生の担任教師を任され、怜南に出会うのです。そして、怜南が虐待されていることを知ります。最初は見て見ぬふりの奈緒でしたが、怜南が虐待されて死にそうになっているところを助けたことで、全てをなげうって怜南を守ることを決意し、怜南を「誘拐」します。そして、継美と名付け、渡り鳥のように逃避行をするのです。虐待―表1奈緒は怜南に出会った当初、怜南の体にいくつものあざがあることに気付きます。さらに、同僚の教師より、度々倒れることや体の成長が遅れていることから、栄養が足りていないことが心配され、虐待の可能性が指摘されます。そして、虐待の生々しい状況が描かれます。表1 虐待のタイプ怜南の場合身体的虐待体のあざ眼帯を巻く心理的虐待ペットのハムスターが知らない間に母親の恋人に殺されてしまう「汚い」と罵(ののし)られるゴミ袋に閉じ込められて、ゴミ置き場に放置されるネグレクト適切な食事が与えられない性的虐待母親の恋人に化粧やコスプレをさせられ、性的対象として弄ばれる虐待を受ける怜南はどんな子?このような虐待を受ける怜南は、どんな子でしょうか?怜南は、他の子と違い、クラスの中で浮いた存在です。しかし、まだ小学1年生なのに、大人に対してはとても「良い子」なのです。その特徴を3つのポイントで挙げてみましょう。(1)観察力1つ目は、怜南はよく見ており、よく気が付くことです(観察力)。慣れない教職のストレスによる奈緒の円形脱毛に奈緒よりも誰よりも早く気付き、帽子をプレゼントします。後に、うっかりさん(奈緒の実母)に出会った時も、うっかりさんが外し忘れたクリーニングのタグをすぐに見つけます。(2)過剰適応2つ目は、周りの気持ちを見透かし、物分りが良すぎることです(過剰適応)。怜南は、母親に自分の大切な本を勝手に捨てられても、「いらない」と言います。ペットのハムスターが天国に行ったと言われたら、すぐにそれを受け入れ、何事もなかったようにしています。母親の恋人にゴミ袋に閉じ込められても、「かくれんぼしてたら、出られなくなっちゃって」と母親に笑顔を浮かべます。そして、奈緒には、「(ママのこと)大好き。決まってるでしょ」「ホッとした?」と母親をかばいます。その後に、奈緒と逃げていて行き場を失った時には、「置いてって」「先生、我慢しなくていいよ」と申し出ています。また、奈緒の東京の実家で、育ての親や兄弟に事態がばれて揉めている時は、奈緒に「お母さんになってくれたのありがとう」「お母さんずっと大好き」と置き手紙を残し、一人で北海道に帰ろうとします。奈緒が「あの子はウソでしか本当のことが言えないの」と言います。怒ったり、弱音を吐いたり、甘えたりすることが決してないのです。(3)演技性3つ目は、相手の懐にすぐに入り、気に入られること、取り入ることに長けています(演技性)。どんな人でも、初対面で好印象を与え、すでに大人と渡り合っているのです。怜南が奈緒に「先生って面白いね」「怒った?」「私のこと嫌いなのかな?」と言い、奈緒と距離を縮めるシーンが分かりやすいです。この時、怜南は、自分と同じように生きることに満たされていない奈緒に、親しみを感じていたのでした。怜南はなぜ「良い子」なのか?このように、怜南は、よく気が利き、物分りが良く、すぐに好かれる「良い子」なのです。これは、たまたま怜南がこういう性格だったのでしょうか?違います。怜南は、「良い子」になってしまう必然的な理由があったのです。それが、虐待です。奈緒の同僚の教師が「頼れる者が親しかいないからです」と説明しています。怜南の母親の回想シーンで明かされたのは、虐待が始まった当初、怜南が必死になって母親の顔色をうかがっていることです。怜南の母親は、早くに夫に先立たれ、一人で仕事と育児を両立させ、心に余裕がありません。一生懸命にやっているのに、育児は思い通りには行かず、その欲求不満の矛先が、弱くて幼い怜南に向けられてしまったのです(「育児ノイローゼ」)。例えば、不機嫌な母親に怜南が「ママ、がんばって」と励ますと、母親は、「うるさい!」と突き飛ばします。しかし、その後すぐに、びっくりした顔の怜南を見てやりすぎたと思い、「ぎゅっとしよ」と言い、抱きかかえます。人は完璧ではないので、どんな家庭でも、時に親は子どもにそのような対応をしてしまうことがあるでしょう。しかし、これがずっと続いていたらどうでしょうか?母親は本来、どんな時も子どもにとって安心感や安全感が得られる「安全基地」であるはずです(無条件の愛情)。しかし、母親がこのように情緒不安定だと、今は機嫌の良い母親なのか機嫌の悪い母親なのかと子どもは混乱します。抱き付いた方が良いのか、それとも逃げた方が良いのかという二重の気持ちに縛られてしまいます(ダブルバインド)。また、怜南が母親に海に連れて行ってもらい、楽しく遊んでいる時のことです。怜南が貝殻遊びに夢中になっている隙に、母親は耐えられなくなって、突然、置き去りにします。しかし、怜南は、いつのまにか母親に追い着き、肩で息をしています。怜南は、すでに見捨てられるということを察知していて(見捨てられ不安)、母親の顔や様子に敏感なのでした(観察力)。そして、興味深いのが、その直後に「ランラ、ランラ、ランラン♪~」と母親の後ろで鼻歌を歌うことです。怜南は鼻歌を歌うくらい楽しい気分だったのでしょうか?違います。この母親に見捨てられまい、気に入られようとして、必死に取り繕い(演技性)、取り入っているのでした(過剰適応)。このような過酷な環境の中で生き残るために見出されたのが、この「良い子」という心理です。これは、常に母親の顔色や言動を伺っている中で際立って発達してしまった能力です。ちょうど視覚障害者の聴覚が敏感になるように、虐待という環境に適応するための能力を過剰に発達させてしまったのです(代償性過剰発達)。一方、怜南のクラスメートたちは、普通の家庭で育っているため、このような発達は起きず、無邪気なままです。怜南が思春期を迎えたら?―機能不全家族で育った人―グラフ実際に、子どもが怜南のような「良い子」になりやすいのは、虐待の他に、厳しすぎるしつけやスパルタ教育などの家庭環境です。親としては手塩にかけているつもりなのですが、子どもとしてはまるで物やペットのように支配されています。そこから、親の期待に応えていれば愛されるという心理が生まれます。これは、逆に言えば、自分の思いが親の期待に背いてしまえば愛されなくなるという恐怖に怯えるようになります(条件付きの愛情)。これでは、虐待と同じように、子どもに安心感や安全感が得られません。さらには、父親の愛人問題や嫁姑問題などにより、複雑な家族の人間関係の中で育つ状況です(機能不全家族)。信頼したい親の悪口を吹き込まれることで、親を信じる方がいいのか、信じない方がいいのかというジレンマが起こりやすくなります(ダブルバインド)。これも、子どもに安心感や安全感が得られません。それでは、そんな子が、例えば怜南が、このままの家庭環境で思春期を迎えたらどうなるでしょうか?かつて、このような機能不全家族で育った人は、「アダルトチルドレン」と呼ばれてきました。一般的には、10歳以降の思春期になると、自分が自分であるというアイデンティティ(自己)が出来上がります。この時、自分で自分の行動を決めるようになり、親の言うことを聞かなくなります。これが一般的に言われる反抗期です。この時以降、一般的な家庭環境で育った子は、親とほどほどの心理的距離を取ります。そして、学校社会、地域社会、そして職場社会で、ほどほどの能動性とほどほどの適応性を発揮していきます。しかし、もともと「良い子」の場合は、この能動性と適応性が両極端になり、以下の4つの特徴的なタイプになっていきます。(1)ヒーロータイプ1つ目は、そのまま「良い子」でい続ける過剰適応的で能動的なタイプ、ヒーローです。物分りの良いしっかり者から、さらには親だけでなく誰の期待にも応えようとするがんばり屋になります。しかし、そこには、純粋にがんばりたいというポジティブな感情よりも、がんばらなければ誰にも受け入れてもらえなくなるという恐怖に怯えるネガティブな感情が支配しています。だから、完璧癖(強迫性パーソナリティ)を持ってしまい、助けを求めずに抱え込んでいきます。また、頼られることで安心感が得られることが高じて、依存されることに依存するようになりがちです(共依存)。さらには、極端な正義感に駆られて暴走する場合もあります。これがまさに最初の疑問「なんでがんばりすぎるの?」の答えです。そもそも怯えからがんばっているので、満たされることはなく、延々とがんばってしまい、燃え尽きてしまいやすくなります。表2 ヒーロータイプの二面性マイナス面プラス面完璧癖燃え尽き抱え込みしっかり者頑張り屋(2)ピエロタイプ2つ目は、「良い子」の見せかけ(演技性)の要素が全面に出るような過剰適応的で受動的なタイプ、ピエロです。親だけでなく、誰からも好かれようと、わざとドジをしたりボケたりして笑ってもらうのを待つピエロ、マスコット、ムードメーカーのような存在です。しかし、そこには、人を楽しくさせたいというポジティブな感情よりも、好かれなくなり誰にも相手にされなくなる恐怖に怯えるネガティブな感情が支配しています。だから、一見ノリは良いのですが、過剰に演じて、ノリが媚びになってしまい、疲れ切ってしまいます。また、表面的なので、中身がなく薄っぺらくなりがちです(演技性パーソナリティ)。表3 ピエロタイプの二面性マイナス面プラス面媚びる薄っぺらいムードメーカーノリが良い(3)スケープゴート3つ目は、「良い子」でいることがばかばかしくなり、その反動で「悪い子」になるという不適応的で能動的なタイプ、スケープゴートです。「良い子」をやめたからと言って、「普通の子」のようにほどほどに反抗しません。今までの恨みつらみを込めて過激に反抗します。こうして、非行に走るリスクが高まっていきます(素行障害、反社会性パーソナリティ)。極端になってしまう理由は、自分だけが不遇な生い立ちで惨めな思いをしていることに気付き、不信感や不公平感を高めるからです。そして、自分が傷付くことや損をすることに敏感になってしまうからです。さらには、その怒りの矛先が社会に向いてしまうのです。これは、まるで家族のトラブルや葛藤を本人がスケープゴート(生贄)として結果的に背負ってしまています。しかし、同時に、この心理は、反骨精神やハングリー精神、さらには現状に甘んじることがない高い問題意識として、新しい発想や価値観をもたらす強いエネルギー源にもなりえます。表4 スケープゴートタイプの二面性マイナス面プラス面非行反社会性反骨精神ハングリー精神高い問題意識(4)ロスト・チャイルド最後は、「良い子」でいることをあきらめ、ひっそりと孤独になる不適応的で受動的なタイプ、ロスト・チャイルドです。「自分は大切にされていない」(自己否定)、「人を信じられない」(人間不信)の心理が根っこにあります。主人公の奈緒は、まさにこのタイプです。親だけでなく、誰からも愛されることをあきらめ、人となるべくかかわらず、ひっそりと暮らします(回避性パーソナリティ)。奈緒は渡り鳥の研究という自分の好きなことを見つけ、自立してマイペースに生きていました。しかし、自立できていない場合は、引きこもりや病気に逃げ込むリスクが高まります(疾病逃避)。例えば、親のコントロールから逃れられず、唯一コントロールできるのが自分の体重であると思い込み、食事を極度に制限して拒食症(摂食障害)に陥ってしまう場合もあります。また、リストカットなどによって自分を痛み付け(自己破壊的行動)、周りを振り向かせようとします(操作性)。拒食もリストカットも、治ればもう周りが振り向いてくれないと思い込んでいるため、なかなか状況はよくなりません(回復恐怖)。さらに、特に女性は売春によって自分を安売りし(性的逸脱行動)、刹那的な生き方をしてしまいます。表5 ロスト・チャイルドタイプの二面性マイナス面プラス面孤独引きこもり、疾病逃避操作性マイペース

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乳がん手術のインフォームドコンセント

・腫瘍最終判決平成15年3月14日 東京地方裁判所 判決概要乳がんの疑いでがんセンターを受診した48歳女性。生検目的で約2cmの腫瘤を摘出したところ、異型を伴う乳頭部腺腫と診断された。病理医からは、「明らかに悪性とは言い切れないが異型を伴う病変であり、断端陽性のため完全に取り切ることが望ましい」というアドバイスがあったので、単純乳房切除術を施行した。ところが、切らなくてもよい乳房を切除されたということで、医事紛争に発展した。詳細な経過患者情報48歳の既婚女性、ご主人が内科医経過昭和61年6月12日左鼻出血が続き、近医で上顎洞がんの疑いと診断された。6月20日夫(内科医)の紹介でがんセンターを受診し、がんではなく上顎洞炎であると診断され手術を免れた(その後がんセンター専門医の診断能力を強く信頼するようになる)。平成4年4月20日右乳頭から黄色分泌物、乳頭部の変形、しこりに気付く。4月23日近医を受診して、乳がんの疑いがあるといわれた。5月6日がんセンター受診。右乳頭部上方に1.8×1.2cmの腫瘤、右乳頭部より黄色分泌物を認め、乳管内がん(乳頭腫)の疑いで細胞診検査を施行したが、がんは陰性であった。5月13日マンモグラフィー:乳がんまたは乳頭腫乳腺超音波検査:乳管内乳頭腫5月25日右乳頭の真上を水平に約28mm切開して腫瘤を摘出。病理診断:「組織学的には著しい乳頭状増殖を示す異型的な乳管上皮の増加からなる。それらの中には筋上皮細胞を伴い二層性構造を示す部もあるが、そのような所見が不明瞭な部もある。そのような部では個々の乳管上皮細胞の異型性は一段と強くなっており、やや大型の核を有す。ただし核質は微細であり、核小体も小型のものが多い。病変自体の硬い変化もある。かなり異型性の強い病変であるが、その発生部位も考慮に入れると乳頭部腺腫がもっとも考えられる。断端に病変が露出し、明らかに悪性とは言い切れないが異型を伴う病変であり、完全に取り切ることが望ましい」との所見から、「右乳房の異型を伴った乳頭部腺腫」と診断。6月5日患者への説明:悪性とは言い切れないが異型を伴う病変であり、切除断端が陽性であること、病名は異型を伴う乳頭部腺腫であること、経過観察をした場合相当数の浸潤性がんが認められること、小範囲の部分切除を行ったとしても乳頭・乳輪を大きく損傷し、病変の再遺残の可能性があることから、単純乳房切除術が望ましいと説明した(しかし診療録には説明の記載なし)。患者:「がんではないのだから悪いところだけを部分的に取ればよいのではないですか」医師:「部分的に取ると跡が噴火口のようになり、そのような中途半端な手術はできない」として単純乳房切除術を勧めた。6月11日手術目的で入院。6月12日夫である内科医が、病理診断が悪性であるかどうかの確認を求めたところ、「悪性と考えてよい」、「完全に取り切れば治癒するが残しておけば命にかかわる」と答えた。手術の立会を申し入れたが担当医師は拒否。6月22日病状については境界領域という説明を受けただけで、その具体的内容は理解できなかったこと、同室の患者が術後苦しそうにしているのをみたことから不安になり、手術の延期を申し出た。医師:「構いませんよ。こちらは何も損はしませんからね。そちらが損をするだけですからね」看護師:「手術の予定が決まっていたのだから医師が立腹するのもやむを得ないですよ」といわれ、そのまま帰宅した。6月26日外来を受診して病状の確認とその後の指示を求めたが、同医師は答えず、内科医である夫を連れてくるよう指示した。6月29日内科医の夫がナースセンターの前で面談したが、「2~3ヵ月先に予約を入れておいてください」とだけ述べてそのまま立ち去ったので、担当医師の応対および病状などについて詳しい説明をしない態度に不信を抱き、患者に転院を勧めた。7月3日なおも不安になった患者は再度診察を希望。患者:「境界領域の意味を教えてください。2~3ヵ月後の予約で手遅れになりませんか」医師:「あんたのはたちが悪い。再発するとがんになって危険ですよ。飛ぶかもしれませんよ」などと述べ、病状や予後について詳しい説明はしなかった。患者は自身の病気がいつ転移するかもわからないものであり、早急に手術を受けなければ手遅れになると考えて、がんセンターで手術を受けることを決意し、入院を予約した。7月17日再入院。7月23日担当医師は病室を訪れ、「一応形式ですから」と告げて、「手術名:右乳房切除術」「このたび上記の手術を受けるにあたり、その内容、予後などについて担当の医師から詳細な説明を受け、了解しましたので、その実施に同意いたします」と記載された手術同意書をベッドの上に置いて立ち去る。患者は手術の詳細な説明は受けていなかったものの、手術前に詳細な説明があるはずで命にかかわることは医師に任せるしかないと考えて、承諾書に署名捺印した。7月27日手術当日、切除部分および切除後の傷の大きさがよくわからなかったので病室を訪れた担当医師に質問したが、無言のまま両手で20~30cm位の幅を示しただけで退室した。当日、単純乳房切除術を施行。病理所見:「乳頭部腺腫の遺残を認めず、乳腺組織にはアクポリン腺、盲端腺増生症および導管内乳頭腫症といった病変が散見される」との所見から「線維性のう胞性疾患」と診断。7月29日ドレーンを抜去。8月3日退院。8月12日全抜糸施行。患者と夫の内科医に、病理検査の結果遺残はないこと、今回の治療は終了したこと、残存した左乳房について年に1回か半年に1回検査すればよいことを説明した。患者は手術後、精神的に落ち込む日が続き、手術創の突っ張り感、乳房を喪失したことにより左右の均衡が取れない不快感、物を背負ったりシートベルトを着用した際の痛みを感じるようになった。また、温泉などの公衆浴場に入ったり、病院で上半身の診察や検査を受けることがためらわれるようになり、薄い服を着る際には容姿を整えるための下着およびパッドを入れなければならなくなった。10月27日乳がんの患者団体「あけぼの会」から乳がんに関する知識を得て、乳房再建手術を考えるようになり別病院を受診。がんセンターからの入院証明書(診断書)や病変の標本を取り寄せることによって、ますますがんセンターに不信感をいだき、提訴を決意した。当事者の主張単純乳房切除術は過大な措置であったか患者側(原告)の主張乳頭部腺腫は前がん状態ではない良性腫瘍であり、がん化の報告はきわめて少なく、がんとの関連性はないとされ、切除後の再発、転移の報告もみられない。そのため身体に対する侵襲は必要最小限度にとどめるべき基本的な注意義務があったのに、必要もない侵襲の大きな単純乳房切除術を採用したのは明らかな過失である。病院側(被告)の主張一般に乳頭部腺腫とは、乳頭内または乳輪直下乳管内に生ずる乳頭状ないし充実性の腺腫であり、良性の場合と、がんと断定できないが異型(悪性と良性との境界領域)に属する場合がある。本件では生検の結果、異型性が強く悪性に近い病変で切除断端に露出し取り残しの可能性があったため、病変部などの切除が必要不可欠であった。そして、摘出生検後は、病変の遺残の程度は推定できず、適切な切除範囲を設定することは不可能であるから、乳頭・乳輪を含む広範囲切除である単純乳房切除術によらざるを得なかった。説明義務違反があったかどうか患者側(原告)の主張担当医師は手術の前後にはっきりとした診断名、「境界領域」の意味、病気の内容、治療方法についての内容、危険性、治療を回避した場合の予後などについて一切説明しなかったのみならず、「再発したらがんになる、飛ぶ」などの誤った説明をし、患者の自己決定権が侵害されたことは明らかである。病院側(被告)の主張担当医師は患者と内科医の夫に対し、手術前に検査結果や正確な病名、手術方法などについて十分に説明し、患者の選択、同意を得たうえで単純乳房切除術を施行した。このような十分な説明がありながらも、1回目の入院で手術を取りやめ、ほかの病院あての紹介状の発行を依頼、受領し、積極的にセカンドオピニオンを求めて行動していることや、2回目の入院から手術までの10日間、複数の看護師に対し自分の意思によって手術を受ける決断をしたという意向を複数回表明していることからみても、担当医師の説明に過失はない。裁判所の判断単純乳房切除術は過大な措置であったか乳頭部腺腫は、一般に前がん状態ではない良性腫瘍とされているので、病変部ががん化する可能性は高かったとはいえないが、乳頭部腺腫とがんとの因果関係についてはいまだ不明な点が多く、病変部ががん化する可能性をまったく否定することはできない。そして、患者の腫瘤は乳頭、乳輪の近くに存在し、しかも生検後病変部が断端に露出していたため、乳管内に造影剤を注入することは困難で遺残腫瘍がどの範囲で広がっているかを特定することは不可能であった。そのため、残存腫瘍ががん化する可能性を必ずしも否定できないこと、遺残腫瘍の広がりの範囲を特定できないことから、がん化の危険を避けるために残存腫瘍を完全に除去する方法として、単純乳房切除術を実施したことに過失はない。説明義務違反があったかどうか単純乳房切除術は、女性を象徴する乳房を切除することにより身体的障害を来すばかりか、外観上の変ぼうによる精神面・心理面への著しい影響ももたらし、患者自身の生き方や人生の根幹に関係する生活の質にもかかわるものであるから、手術の緊急性がない限り、手術を受けるか否かについて熟慮し判断する機会を与える義務がある。患者にとっては、「がんではないのに単純乳房切除術が必要である」という医師の診断は理解困難なものであった。さらに、生検において摘出した部位を中心に部分切除にとどめることも不相当な処置とはいえず、腫瘍の一部を残す危険と一部でも乳房を残す利益とを比較衡量し、単純乳房切除術を受けるか部分切除にとどめるか、患者に選択させる余地があった。しかし担当医師は、「悪性と良性の境界領域」という程度の説明に終始し、部分切除の可能性を断定的に否定したうえで、「そちらが損をするだけですからね」「再発するとがんになりますよ」「飛ぶかもしれませんよ」などと危険性をことさらに強調し、不安をあおるような発言をした。そのためただちに単純乳房切除術を受けなければ生命にかかわると思い込み、病状や治療方針について理解し熟慮したいという希望を断念し、納得しないまま単純乳房切除術を受けた。このような対応は、単純乳房切除術を受けるか否かを熟慮し選択する機会を一切与えず、結果的に医師の診断を受け入れるよう心理的な強制を与えたもので、診療契約上の説明義務違反が認められる。原告側2,413万円の請求に対し、120万円の判決考察先生方は「ドクターハラスメント(通称ドクハラ)」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。最近では、新聞でも取り上げられていますし、ドクハラの書籍(ドクターハラスメント 許せない!患者を傷つける医師のひと言)までもが、書店に並ぶようになりました。普段の患者さんとの対話で、こちらはそれほどきつい言葉とは思っていなくても、受け取る患者の方は筆舌に尽くしがたいダメージととらえるケースがあるようです。今回の症例をふりかえると、乳がん疑いで生検を行った48歳の女性の病理診断で、異型を伴う乳頭部腺腫が疑われ、切除断端に病巣が露出していたので完全切除を目指し、単純乳房切除術を施行しました。裁判では、このような治療方針自体は過失でないと認定しましたが、問題は術前術後のインフォームドコンセントにありました。つまり、患者との信頼関係が破綻した状態で手術となってしまい、間違ったことはしなかったけれども、説明義務違反という物差しを当てられて敗訴した、というケースではないかと思います。多くの先生方にも経験があると思いますが、真摯な態度で患者を診察し、自らがこれまでに培ってきた最大限の知識を提供したうえで、その時点で考えられる最良の治療を提案したにもかかわらず、患者の同意が得られないということもあり得ると思います。そのような場合、どのような対応をとりますでしょうか。まあしょうがないか、そのような考え方もあるので仕方がないなあ、と割り切ることができればよいのですが、つい、自らが提案した治療方針が受け入れられないと、不用意な発言をしたくなる気持ちも十分に理解できると思います。今回の症例では、手術予定まで組んだ乳がん疑いの患者が、手術を土壇場でキャンセルし、以下のような発言をしてしまいました。「そちらが損をするだけですからね」「再発するとがんになりますよ」「飛ぶかもしれませんよ」あとから振り返ると、このような言葉はなるべくするべきではなかったと判断できると思います。しかし、きわめて多忙な診療場面で、入院予約、検査のアレンジ、手術室の手配など、患者のためを思って効率的にこなしてきたのに、最後の最後で患者から手術を拒否されてしまうと、このような発言をしたくなる気持ちも十分に理解できます。そのことは看護師にもよく伝わっていて、「手術の予定が決まっていたのだから医師が立腹するのもやむを得ないですよ」という援護射撃とも思える発言がありました。しかし、こうして不毛な医事紛争へ発展してしまうと、ちょっとした一言を巡って膨大な時間が忙殺される結果となってしまいます。ましてや、間違った医療行為はしていないのに、インフォームドコンセントも自分としては十分と考えていたにもかかわらず、「説明義務違反」などといわれるのは到底納得できないのではないでしょうか。本件でも結局のところは、「言った言わない」という次元の争いごとになってしまい、そのような細かいことまで診療録に記載しなかった医師側が、何らかの形で賠償責任を負うという結末を迎えました。このような医事紛争を避けるためには、不用意な発言はなるべく避けるとともに、患者に説明した内容はできるだけ診療録に残すようにするといった配慮が望まれると思います。・腫瘍

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05)「運動はいつするの? 今でしょう!」2013年の流行語も登場【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者夏は暑いし、冬は寒いのでなかなか外へ歩きにいけませんし、運動ができません。医師確かに。外で歩くのは気候に左右されるから大変ですよね。患者そうなんですよ。医師それなら、いい方法がありますよ。患者それは、何ですか?(興味津々)医師家の中で、身体を動かしたらいいんですよ。患者なるほど。どんなことをしたらいいですか?医師朝なら、テレビ体操がお勧めですね。患者それなら、みたことがあります。医師そして、運動は「いつやるか」、ということが大切です。患者もちろん、「今でしょ」医師そうです。テレビをみながら、いま(居間)でお願いします。患者ハハハ、頑張ってやってみます。●ポイントダジャレも交えながらの説明で、患者さんの理解度が深まります

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エキスパートに聞く!「喘息治療の最新事情(成人編)」Q&A Part1

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。成人気管支喘息について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。高齢者にも吸入が十分可能な薬剤について教えてください。まず、ドライパウダー製剤とエアロゾル製剤の違いについてよくご理解いただき、各製剤を使い分けていただく必要があります。ただし、いずれの製剤でも十分な吸入指導は必須です。とくに高齢者の場合、一度説明をしても理解していないケースや忘れてしまうケースもあるので、繰り返しの吸入指導がきわめて重要です。ドライパウダー製剤ではある程度の吸気流量が必要ですので、吸気筋力が低下した高齢者にはエアロゾル製剤が有用です。ただ、エアロゾル製剤は速い速度で噴射される薬剤をゆっくり吸入する必要があり、手技に若干難しさがあります。うまく吸入できない高齢者では、スペーサーを併用していただければと思います。また、高齢者では認知症で吸入剤がうまく使えない、あるいは関節リウマチなどでエアロゾルが押せない方もいます。そのような場合には、介助者や家族にも吸入指導を行い、患者さんの吸気に合わせてエアロゾル製剤を口に吹き込むことで治療効果が得られます。最初から吸入ステロイド薬(ICS)/長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤で治療すべき患者さんと、吸入ステロイド薬のみでよい患者さんの判別方法について教えてください。呼吸機能検査が可能な場合、気流閉塞(閉塞性障害)が強くみられる患者さんには吸入ステロイド薬単剤よりも配合剤が適しているかもしれません。また、自覚症状が強い(とくに夜間眠れないような症状が続いている)患者さんにも、配合剤のほうがよいかと思います。しかしながら、吸入ステロイド薬単剤でもよくなる患者さんも多くおられますので、高価な配合剤の乱用は避けていただきたいと思います。難治性喘息に対する“奥の手”について教えてください。吸入ステロイド薬や配合剤を投与しても効果が乏しい、または悪化するような場合、製剤を変えることで改善することがしばしばあります。そのため、難治性喘息と思われるケースでは複数の薬剤を試していただき、それでも効果が不十分な場合には、ロイコトリエン受容体拮抗薬や徐放性テオフィリン製剤を併用してください。また、粒子径の大きいドライパウダー製剤で効果が不十分な場合には、粒子径の小さいエアロゾル製剤を上乗せすると、奏効することも少なくありません(ただし保険の査定にはご注意ください)。また、咳が強い難治性喘息の患者さんに対しては、トロンボキサン合成酵素阻害薬やトロンボキサンA2受容体拮抗薬が奏効することがあるので検討するとよいでしょう。さらに、近年は胃食道逆流症(GERD)の合併例が増加しており、そのような症例ではGERD治療薬を上乗せすることで、咳が改善することもしばしばあります。とはいえ、吸入手技を徹底するだけで症状がよくなることもありますので、基本に立ち返り、あらためて吸入指導を行っていただくことも重要だといえます。

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診療報酬改定の逆風に負けない 科学的経営で「強い病院」に変革せよ!

病院向け医療教育動画サービス「CareNeTV hospital」発売記念病院マネジメントエグゼクティブセミナー病院経営への大きな影響が予想される2014年診療報酬改定。これまでのやり方で病院は生き残っていくことができるでしょうか。本セミナーでは、病院経営トップを対象に、DPC分析やBSC(バランスト・スコアカード)を活用し科学的アプローチで経営戦略を立案・実行する方法論、それを具現化するためのノウハウ、さらに改定後の病院経営の指針を、各分野の第一人者がレクチャーします。このセミナーが、貴院の科学的な病院経営スタイル確立への第一歩となることをお約束します。開催概要開催日:2014年2月1日(土)13時30分~17時15分(13時開場)開催場所:ベルサール飯田橋ファースト[住所] 東京都文京区後楽2-6-1住友不動産飯田橋ファーストタワーB1地図:http://www.bellesalle.co.jp/bs_iidabashifirst/access.html[電話] 03-5805-3231[交通] JR線 飯田橋駅 東口徒歩5分/大江戸線 飯田橋駅 C3出口徒歩4分/有楽町線・南北線 飯田橋駅 B1出口徒歩5分/東西線 飯田橋駅 A3出口徒歩6分/丸ノ内線 後楽園駅 2番出口徒歩8分※飯田橋駅には、「ベルサール飯田橋駅前」という施設があります。お間違えないようご注意ください定員:130名(先着順)対象:病院経営幹部(院長、事務長など)参加費:10,000円(当日会場にてお支払いください)主催:株式会社ケアネット協力:産業医科大学公衆衛生学教室申込方法:申込は締め切りました※受講料は当日会場にてお支払いくださいプログラム【講座1】13時30分~14時30分(60分)講師:松田晋哉氏(産業医科大学 公衆衛生教室学 教授) 「勘と度胸の」経営から「データに基づく」科学的経営へ病院を「勘と度胸」で経営できる時代は終わりを告げました。これからの生き残りに必要なのは、一般企業では常識になっているデータに基づく科学的な経営手法です。「財務」「顧客」「内部業務プロセス」「イノベーションと学習」の4つの視点から戦略に適合した個別の実施項目/数値目標/評価指標を設定し、PDCAサイクルを回していくバランスト・スコアカード(BSC)。DPCデータの正しい分析とその経営改善への活用方法。これらを融合させた、新時代の科学的病院経営手法を概説します。【講座2】14時30分~15時15分(45分)講師:遠山峰輝氏(株式会社メディカルクリエイト 代表取締役社長)改善策はこう導き出す― 事例とともに学ぶ課題解決手法 ―自院の経営状態をデータで把握し、科学的な手法で経営改善につなげていく―。口で言うのは簡単ですが、それを実践して具体的な成果を上げるまでには様々なハードルがあるのは言うまでもありません。早くから科学的な病院経営の分析と改善策立案、実行の必要性を提唱し、実際に数多くの病院の経営改善に取り組んできた医療経営コンサルタントの立場から、課題解決型の科学的経営を確立するための具体的ノウハウの一端を開陳します。【休憩】15時15分~15時30分(15分)【講座3】15時30分~16時15分(45分)講師:鐘江康一郎氏(聖路加国際病院 経営企画室/QIセンター マネジャー)「経営企画室」は何をやって、どんな成果を上げるのか?どんなに有能な病院長でも、科学的な病院経営スタイルを独りの力で確立するのは困難です。経営トップの意思決定を組織としてサポートするのが「経営企画室」。事実、最先端の病院では、経営企画室を設け、MBAや一般産業界で経営企画を行ってきたエキスパートを登用し、実績を上げています。病院における「経営企画室」とはどのようなものなのか。その実際の役割と機能を、聖路加国際病院における具体例を引きながら解説します。【講座4】16時15分~17時15分(60分)講師:西澤寛俊氏(公益社団法人全日本病院協会 会長)「2014年度診療報酬改定」後の経営の舵取り科学的な病院経営がこれからの時代には必須ですが、保険医療機関である以上、同時に、厚生労働省の政策のトレンド、診療報酬改定のポイントも当然押さえておかなければなりません。特に、次期改定は消費税引き上げ対応を伴う病院にとって厳しい内容になると予想されています。2014改定後、病院経営者は何を見据え、どの方向に経営の舵を切ればよいのか?厚労行政、診療報酬に精通する中小病院経営者のリーダーとして、明日の病院経営に直結する指針を語ります。 【個人情報の取り扱いについて】株式会社ケアネットは、お客様の個人情報をJIS規格(JISQ15001:2006「個人情報保護マネジメントシステム要求事項」)に準拠して適切に取扱い、保護いたします。ご記入いただきましたお客様の個人情報は、本セミナーの実施目的(申込受付、確認の連絡など)以外には使用いたしません。ただし、弊社からのお知らせやアンケートのご協力をメールまたはDMでお送りすることがあります。予めご了承ください。 【ご注意】セミナーの内容に一部変更が生じる場合があります。予めご了承ください。 【問合せ先】株式会社ケアネット 病院マネジメントエグゼクティブセミナー事務局 担当:戸田(トダ) 〒102-0074 東京都千代田区九段南1-5-6 りそな九段ビルTel:03-5214-5750 受付時間10時~18時(土日祝日、冬期休業期間12/28~1/5を除く)Fax:03-6867-0354e-mail:hospital-manage@carenet.co.jp

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TAVR後の院内死亡率5.5%、脳卒中2.0%/JAMA

 経カテーテル大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve replacement:TAVR)を受けた米国患者のデバイス植込み成功率は92%であり、全院内死亡率は5.5%、脳卒中の発生は2.0%であったことなどが、Edwards Sapien XTデバイスの市販後調査報告として発表された。TAVRは2011年に米国食品医薬品局(FDA)によって、重症の症候性大動脈弁狭窄症で手術不能の患者に対する治療法として承認され、2012年には高リスクだが手術可能な症例にも適応となり施術が行われている。JAMA誌2013年11月20日号掲載の報告より。デバイス承認後の全米224病院・7,710例のアウトカムを分析 調査は、全米レジストリ(Society of Thoracic Surgeons/American College of Cardiology Transcatheter Valve Therapy:STS/ACC TVT)の登録患者を対象に行われた。STS/ACC TVTはメディケアでカバーするための条件を満たすために開始されたもので、アウトカムの評価や他試験や国際的なレジストリとの比較も容易にするものである。今回の検討は、2011年11月~2013年5月の間に224病院から登録されたすべてのTAVR症例7,710例の結果を入手して分析が行われた。 主要アウトカムは、TAVR後のすべての院内死亡と脳卒中であった。2次解析には、手術による合併症と臨床症状や手術部位などのアウトカムを含んだ。入院期間中央値6日間、63%が自宅に退院 TAVRを受けた7,710例のうち、手術不能例は1,559例(20%)で、残り6,151例(80%)は高リスクだが手術可能な症例であった。年齢中央値は84歳(範囲:78~88歳)、3,783例(49%)が女性であり、死亡リスク予測のSTS中央値は7%(範囲:5~11%)だった。 ベースライン時に、2,176例(75%)が症状の現状について「まったく満足していない」(45%)か「ほとんど満足していない」(30%)と回答していた。2,198例(72%)が、5m歩行時間が6秒以上(歩行速度が遅い)であった。 バスキュラーアクセスのアプローチ法として最も多かったのは、経大腿アプローチ(64%)で、次いで経心尖アプローチ(29%)、その他代替アプローチ(7%)であった。 デバイス植込み成功例は7,069例(92%、95%信頼区間[CI]:91~92%)、院内死亡率は5.5%(95%CI:5.0~6.1%)だった。その他の重大合併症は、脳卒中(2.0%、95%CI:1.7~2.4%)、透析が必要な腎不全(1.9%、同:1.6~2.2%)、重大血管損傷(6.4%:同:5.8~6.9%)だった。 入院期間中央値は6日間(範囲:4~10日間)で、4,613例(63%)が自宅に退院した。 30日アウトカムは、代表的な114施設・3,133例(40.6%)で評価された(フォローアップ報告の80%以上を占めていた)。同患者における死亡率は7.6%(95%CI:6.7~8.6%)だった(非心血管系原因52%)。脳卒中の発生は2.8%(同:2.3~3.5%)、透析新規導入は2.5%(同:2.0~3.1%)、再介入率は0.5%(同:0.3~0.8%)だった。

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経口フルオロキノロンは網膜剥離リスクを増大するのか?/JAMA

 経口フルオロキノロン系抗菌薬の服用は、網膜剥離のリスクを増大しないことが、大規模コホート試験で示された。デンマーク・Statens Serum InstitutのBjorn Pasternak氏らが住民ベースの約516万人を対象にしたコホート試験の結果、明らかにした。近年、眼科疾患患者を対象とした研究において、経口フルオロキノロン服用と網膜剥離との強い関連が報告されていた。JAMA誌2013年11月27日号掲載の報告より。経口フルオロキノロン、過去180日以内の服用について網膜剥離リスクを比較 研究グループは、デンマークで1997~2011年にかけて、約516万人の住民ベースコホート試験を行い、そのデータを用いて経口フルオロキノロン服用と網膜剥離の外科治療(強膜内陥術、硝子体切除術、気体網膜復位術)との関連を分析した。 同コホートのうち、経口フルオロキノロン服用が確認されたのは、74万8,792例だった。そのうち66万572例(88%)はシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンほか)を服用していた。一方、非服用は552万446例で、対照群とした。 分析において、服用について、現在服用中(治療開始1~10日前に服用)、最近服用(同11~30日前)、服用後(同31~60日前)、過去に服用(同61~180日前)の4つのカテゴリーに分類した。網膜剥離発症リスク、経口フルオロキノロンの服用時期にかかわらず増大せず 網膜剥離が確認されたのは566件で、うち465件(82%)は裂孔原性網膜剥離だった。そのうち、フルオロキノロン服用者(時期を問わず)は72件、非服用者は494件だった。 網膜剥離の粗発生率(10万人年当たり)は、経口フルオロキノロンの現在服用中群が25.3件、最近服用群が18.9件、服用後群が26.8件、過去に服用群が24.8件であった。一方、非服用群は19.0件だった。 経口フルオロキノロン服用者は、非服用者に比べ、網膜剥離の発症リスクの有意な増大は認められなかった。非服用者に対する同発症の補正後リスク比は、現在服用中群が1.29(95%信頼区間:0.53~3.13)、最近服用群が0.97(同:0.46~2.05)、服用後群が1.37(同:0.80~2.35)、過去に服用群が1.27(同:0.93~1.75)だった。 現在服用中群の絶対リスク差は、100万件治療エピソード当たりの網膜剥離症例数で補正後、推定で1.5(同:-2.4~11.1)だった。 著者は、「先のカナダの研究報告とは対照的に、一般デンマーク人をベースとした今回のコホート試験において、経口フルオロキノロン服用は、網膜剥離のリスク増大と関連していなかった」とまとめた。ただし本試験には検出力に限界があり、現在服用中との関連における相対的リスクが3倍以上のものをルールアウトできるだけであり、あらゆる絶対リスク差は限定的なものであったと述べている。

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感染性胃腸炎患者の嘔吐物や便の処理のための新キット登場

 キョーリン メディカルサプライ㈱(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 金井 覚)は、杏林製薬㈱(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 宮下三朝)と共同で、嘔吐物などの汚物処理に使用する新製品として、昨年7月に発売した環境除菌・洗浄剤「ルビスタ」を応用した「ルビスタ嘔吐物処理キット」を2013年12月初旬に発売する。  感染性胃腸炎に罹患した患者の嘔吐物や便には、ノロウイルスやロタウイルスなどの原因ウイルスが非常に多く含まれており、それらが生活環境に撒き散らされた場合において、適切な処理(除去・除菌等)を迅速に行わなければ二次感染を引き起こし、感染が拡大する危険性がある。そのため、簡便かつ確実な嘔吐物・汚物の処理ができる汚物処理用のキット製品が望まれていた。  本製品は、環境除菌・洗浄剤「ルビスタ」(海外販売名:デュポン社「DuPontTM RelyOn® Virkon®」)を感染性微生物の除菌・洗浄用に使用しており、 ・嘔吐物処理に必要な器材がすべてキットに梱包されている ・吸水ポリマーシートで嘔吐物を覆うことにより、汚染拡大を防止できる などの特徴を有している。詳しくはこちら

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上部早期胃がんに対する最適な術式を検討:日本での多施設後ろ向き研究

 上部早期胃がん治療における手術にはさまざまな術式がある。大阪大学消化器外科の益澤 徹氏(現大阪警察病院)らは、上部早期胃がん203例における記録から、胃全摘術後Roux-en-Y型食道空腸吻合術(TG-RY)、噴門側胃切除術後食道胃吻合術(PG-EG)、噴門側胃切除術後空腸間置術(PG-JI)の3つの術式を比較し、最適な術式を検討した。World Journal of Surgery誌オンライン版2013年12月6日号に掲載。 著者らは、13医療機関から上部早期胃がん203例の医療記録を収集し、臨床的特徴や周術期および長期アウトカムについて、TG-RY、PG-EG、PG-JIの3群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・TG-RYは122例、PG-EGは49例、PG-JIは32例で施行された。・腫瘍は、PG-EG群とPG-JI群よりもTG-RY群で大きかった。・未分化型腺がんは、PG-EG群よりもTG-RY群で多い傾向がみられた。・手術時間は、PG-JI群とTG-RY群よりPG-EG群で短かった。・入院期間や術後早期の合併症は3群間で差がなかった。・胃切除に関連する症状は、つかえ感と胸やけはPG-EG群で多い傾向があり、一方、ダンピング症候群と下痢はTG-RY群で多かった。・術後の体重減少は3群間で差はなかったが、血清アルブミンおよびヘモグロビンは、TG-RY群で低い傾向があった。 これらの結果から、著者らは「長期生存が期待される上部早期胃がんでは、TG-RYよりもPG-EGやPG-JIを施行すべき」と結論している。

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首や腰の痛みと精神的苦痛は相互に関連する

 頚部や腰部の疼痛と精神的苦痛との相互作用に関する理解は、公衆衛生の観点から重要である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のKari Paanalahti氏らは、大規模な地域住民を対象とした前向きコホート研究を行い、脊椎痛および精神的苦痛の併存は、女性に多く、男女いずれにおいても回復が不良で、脊椎痛と精神的苦痛は双方向の関連性があることを確認した。Spine Journal誌オンライン版2013年11月18日号の掲載報告。 本検討は、無作為に抽出したストックホルム在住の一般住民1万9,774人(18~84歳)を対象とし、調査開始時(2002年)および追跡調査時(2007年)に、郵送にてアンケート調査を行った。 脊椎痛は、modified Nordic Pain Questionnaireを、精神的苦痛は、精神健康調査票(GHQ-12)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・調査開始時における脊椎痛と精神的苦痛の併存率は、女性11%、男性4%であった(リスク比[RR]:2.4、95%信頼区間[CI]:2.1~2.7)。 ・脊椎痛のみの有病率は女性20%、男性14%、精神的苦痛のみの有病率はそれぞれ15%、12%で、いずれも女性で高率であった。・追跡調査時における回復率は、脊椎痛と精神的苦痛が併存していた場合が(女性26%、男性27%)、脊椎痛のみ(女性41%、男性44%)や、精神的苦痛のみ(女性49%、男性52%)と比較して低かった。・調査開始時に脊椎痛のみを有していた人のうち、追跡調査時に精神的苦痛も有していたのは女性24%、男性17%であった。・調査開始時に精神的苦痛のみを有していた人のうち、追跡調査時に脊椎痛も有していたのは女性24%、男性20%であった。・脊椎痛は精神的苦痛の決定因子(オッズ比[OR]:2.6、95%CI:2.3~2.9)、精神的苦痛は脊椎痛の決定因子(OR:2.0、95%CI:1.8~2.2)であることが認められた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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抗精神病薬治療は予後にどのような影響を及ぼすのか

 抗精神病薬治療中の患者では、いくつかの心血管リスク因子(糖尿病、肥満、喫煙、脂質異常症)を有する割合が高く、脳卒中の有病率が有意に高いことなどが明らかにされた。これには、服用する抗精神病薬が定型あるいは非定型かによる違いはみられなかったという。スペイン・Institut Catala de la SalutのX Mundet-Tuduri氏らがバルセロナで行った断面調査の結果、報告した。Revista de Neurologia誌2013年12月号の掲載報告。 研究グループは、プライマリ・ケアでの長期の抗精神病薬治療における心血管リスク因子(CVRF)および血管イベントについて明らかにするため断面調査を行い、抗精神病薬の治療を受けている患者と受けていない患者とを比較した。対象は、2008~2010年にバルセロナのプライマリ・ヘルスケアセンターを受診した患者。身体測定、臨床検査値、CVRFを評価し、また被験者を成人/ 高齢者、服用している抗精神病薬(定型/ 非定型)でそれぞれ層別化し評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、抗精神病薬を処方されていた1万4,087例(治療群)と、受けていなかった1万3,724例(処方を受けていた患者と同一の年齢・性別:非治療群)の合計2万7,811例であった。・治療群の患者のうち、非定型薬を処方されていたのは63.4%であり、リスペリドンの処方が最も多かった。・治療群は、肥満(16.9% vs. 11.9%)、喫煙(22.2% vs. 11.1%)、糖尿病(16% vs. 11.9%)、脂質異常症(32.8% vs. 25.8%)の有病率が非治療群よりも有意に高かった(p<0.001)。・また、治療群では脳卒中の有病率が、成人患者群(オッズ比[OR]:2.33)、高齢者群(同:1.64)のいずれにおいても、非治療群より有意に高かった。冠動脈性心疾患(CHD)の有病率は、両群で同程度であった(OR:0.97)。・治療群の患者において、抗精神病薬の定型または非定型の違いによる差はみられなかった。関連医療ニュース 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大 非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学 統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査

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遺伝子型に基づく初期投与量決定の試み(ワルファリン以外)/NEJM

 抗凝固療法の遺伝子ガイド投薬アルゴリズムの有効性と安全性に関して、アセノクマロール(国内未承認)、フェンプロクモン(同)について検討した無作為化試験の結果、治療開始後12週間の国際標準比(INR)治療域の時間割合は改善されなかったことが明らかにされた。オランダ・ユトレヒト大学のTalitha I. Verhoef氏らが報告した。抗凝固療法ではワルファリンの使用頻度が最も高いが、国によってはアセノクマロールまたはフェンプロクモンが、心房細動患者の脳卒中予防や静脈血栓塞栓症の治療または予防に用いられている。また観察研究において、遺伝子ガイド投薬が両剤投与の有効性および安全性を高める可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2013年11月19日号掲載の報告より。アセノクマロールとフェンプロクモンについて検討 研究グループは、2つの単盲検無作為化試験を行い、遺伝子ガイド投薬アルゴリズムと臨床的変数のみの投薬アルゴリズムを比較した。心房細動もしくは静脈血栓塞栓症を有する患者でアセノクマロールあるいはフェンプロクモンによる治療開始について、遺伝子ガイド群は、CYP2C9とVKORC1の遺伝子型を参照した投薬アルゴリズムが適用された。 主要アウトカムは、治療開始後12週間の、INR目標治療域2.0~3.0の時間割合とした。 登録例が少数であったため、2試験は統合して分析が行われた。主要アウトカムの評価は、10週以上フォローアップを受けた患者を対象に行われた。12週間のINR治療域時間割合、臨床的変数ガイド群と有意差みられず 登録患者数は548例(遺伝子ガイド群273例、対照群275例)であり、10週以上フォローアップを受けた被験者は、遺伝子ガイド群239例、対照群245例であった。 結果、INR治療域であった時間割合は、遺伝子ガイド群61.6%、対照群60.2%で有意差はみられなかった(p=0.52)。 副次アウトカムも大部分は両群間に有意差はなかったが、治療開始後4週間の治療域時間割合について、遺伝子ガイド群が有意に高いことがみられた。この有意差は、アセノクマロール、フェンプロクモンの複合解析で有意であった(遺伝子ガイド群52.8% vs. 対照群47.5%、p=0.02)。 出血または血栓塞栓症イベントの発生は、両群で有意差はみられなかった。重大出血事例は1例で対照群での発生であった。血栓塞栓症イベントは、遺伝子ガイド群5例、対照群4例の発生であった。

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院外心停止搬送中の低体温治療、転帰改善せず/JAMA

 心室細動(VF)有無を問わない病院搬送中の心停止蘇生後患者への低体温治療施行の有効性について、病院到着までに深部体温を低下し34℃に到達するまでの時間を短縮したが、生存または神経学的アウトカムは改善しなかったことが示された。米国・ワシントン大学のFrancis Kim氏らが、1,359例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。心停止後の脳外傷は後遺症や死亡と関連し覚醒しない患者も多い。低体温治療は脳機能回復に有望な治療とされ、現在、VFあり蘇生後の昏睡状態の患者に対する入院ベースの導入は推奨されているが、プレホスピタルでの最適な導入のタイミングは不確かであった。JAMA誌オンライン版2013年11月17日号掲載の報告より。VFあり・なし1,359例を、低体温治療を行う介入群と標準的ケアの対照群に無作為化 研究グループは、プレホスピタルでの低体温治療が、VF有無それぞれの患者で蘇生後のアウトカムを改善するかどうかを検討する無作為化試験を行った。ワシントン州キング郡で2007年12月15日~2012年12月7日に、院外心停止が起き救急隊員による蘇生術を受けた成人1,359例(VFあり583例、VFなし776例)が無作為化を受けた。 低体温治療を受けるよう割り付けられた介入群には、標準的ケアと自己心拍再開後できるだけ速やかに2~4℃の標準生理食塩水の静脈内投与を行った。介入群には、VFあり群は292例(対照群291例)、VFなし群は396例(対照群380例)が割り付けられた。なお、それら割り付けとは関係なく、ほぼ全員が搬送先の病院で低体温治療を受けた。 患者は2013年5月1日までフォローアップを受けた。主要アウトカムは、退院時の生存率および神経学的状態であった。退院時の生存率、神経学的状態の改善について有意差みられず 結果、介入群は平均深部体温が病院到着時までに、VFあり群(1.20℃低下、95%信頼区間[CI]:-1.33~-1.07℃)、VFなし群(1.30℃低下、-1.40~-1.20℃)ともに低下した。また、対照群と比較して約1時間、体温34℃以下に到達する時間を短縮した。 しかし、退院時の生存率は介入群と対照群で同等であった。VFあり群では、介入群62.7%(95%CI:57.0~68.0%)、対照群64.3%(同:58.6~69.5%)であり(p=0.69)、VFなし群ではそれぞれ19.2%(同:15.6~23.4%)、16.3%(同:12.9~20.4%)であった(p=0.30)。 また、介入は、退院時の神経学的状態(完全回復あるいは軽度機能障害)の改善と関連していなかった。改善した人の割合は、VFあり群では、介入群57.5%(95%CI:51.8~63.1%)、対照群61.9%(同:56.2~67.2%)であり(p=0.69)、VFなし群では、介入群14.4%(同:11.3~18.2%)、対照群13.4%(同:10.4~17.2%)であった(p=0.30)。 全体として、介入群は対照群よりも再度心停止となった割合が有意に高く(26%対21%、p=0.008)、また入院後12時間までの利尿薬の使用率および初回X線での肺水腫の有病率が高かった。それらは入院後24時間以内に回復していた。 以上の結果を踏まえて著者は、「低体温療法は心停止後の脳機能回復に有望な治療戦略ではあるが、今回の結果は、臨床アウトカムを改善するためにプレホスピタルでの低体温療法をルーチンに行うことを支持しないものであった」と結論している。

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