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食事由来の脂肪酸の摂取状況、国によって大きなばらつき/BMJ

 食事は、不良な健康状態の、修正可能な単一の主要因である。食事に含まれる特定の脂肪酸には健康に有益あるいは有害な作用があり、食事に起因する疾患には複合的な関連性があることが知られているが、食事由来の主要な脂肪酸/油脂の消費に関する全国的なデータを公表している国はほとんどないという。米国ハーバード公衆衛生大学院のRenata Micha氏らは、今回、大規模な調査を行い、食事由来の脂肪酸/油脂の世界的な摂取状況には、国によってきわめて大きな多様性があることを明らかにした。BMJ誌2014年4月15日号掲載の報告。約163万人のデータを国別、年齢別に解析 本試験は、1990年と2010年における食事由来の脂肪酸/油脂の世界的な摂取状況を定量的に検討することを目的に、2010 Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors(GBD)研究の一環としてNutrition and Chronic Diseases Expert Group(NutriCoDE)によって実施された。 世界の食事関連調査の文献を同定し、健康に影響を及ぼす主要な食事由来脂肪酸(飽和、ω-6、魚介由来ω-3、植物由来ω-3、トランス)とコレステロールに関するデータを抽出し、国別、年齢別、性別の評価を行った。 成人を対象とした266の調査(221[83%]件が全国代表的調査)に参加した163万69人(世界187ヵ国中113ヵ国、世界人口の82%に相当)のデータを使用し、解析には多段階階層ベイズモデルを用いた。全般に推奨値の達成度は不十分だが、必須脂肪酸の摂取量は増加傾向に 2010年の世界における、飽和脂肪酸の1日総エネルギー摂取量に占める割合(%E)の平均値は9.4%Eであり、ガイドラインなどで推奨される適正摂取量(<10%E)を満たしていたが、187ヵ国間で2.3~27.5%Eと大きなばらつき(最大が最小の12.2倍)がみられ、<10%Eの推奨値を満たしたのは75ヵ国(世界全体の61.8%に相当)であった。 ω-6多価不飽和脂肪酸の摂取率の世界的な平均値は5.9%Eで、推奨値(≧12%E)の半分に過ぎず、国別で1.2~12.5%Eと広範囲(10.5倍)にわたり、≧12%Eを満たしたのは187ヵ国中1国(ブルガリア、0.1%)のみであった。また、≧5%Eを満たした国も94ヵ国(52.4%)に過ぎなかった。 トランス脂肪酸の平均摂取率は1.4%Eと、推奨値(<0.5%E)を超えており、国別範囲は0.2~6.5%E(28.1倍)で、<0.5%Eを満たしたのは12ヵ国(0.6%)のみであった。 一方、食事由来コレステロールの世界的な1日平均摂取量は228mg/日で、国別間で97~440mg/日と差があり(4.5倍)、推奨値(<300/mg/日)を満たしたのは155ヵ国(87.6%)であった。日本(347mg/日)は推奨値を上回っており、パラグアイと並び世界で7番目に摂取が過剰な国であった。 魚介由来ω-3多価不飽和脂肪酸の平均摂取量は163mg/日、国別の範囲は5~3,886mg/日(840倍)で、推奨値(≧250mg/日)を満たしたのは45ヵ国(18.9%)であった。日本は718mg/日で世界8位であり、冠動脈疾患リスクとの関連の解析では994.6mg/日で世界3位であった。 植物由来ω-3多価不飽和脂肪酸は1,371mg/日、2~5,542mg/日(2,731倍)で、52ヵ国(43.9%)が推奨値(≧0.5%Eまたは食事2,000kcal/日当たり1,100mg以上)を満たしていた。 全般に、トランス脂肪酸の摂取量は若年層で多く、食事由来コレステロールや魚介由来ω-3多価不飽和脂肪酸は高齢層で多い傾向がみられた。また、摂取量に性差は認められなかった。 1990年と2010年とでは、飽和脂肪酸や食事由来コレステロール、トランス脂肪酸の摂取量に大きな変化はなかったが、ω-6多価不飽和脂肪酸や魚介由来、植物由来のω-3多価不飽和脂肪酸の摂取量は20年間で増加していた。 著者は、「食事に含まれる脂肪酸/油脂の摂取状況は、国によってきわめて大きな差があることが明らかとなった」とまとめ、「これらの新たなデータは、国際保健の改善に向けた施策や優先度を検討する際に有用な情報となるだろう」と指摘している。

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電気けいれん療法での麻酔薬使用、残された課題は?

 うつ病は主たる精神疾患で世界中の何百万人もが罹患しており、WHOでは障害の主要な一因としている。重度のうつ病において電気けいれん療法(ECT)は確立された治療であるが、不快感とECTに誘発される強直間代けいれんという有害な副作用を最小限に抑えるため、静脈麻酔が使用される。しかし、麻酔薬の種類によるうつ症状軽減効果や有害作用への影響は明らかになっていない。中国・重慶大学附属病院のPeng Lihua氏らは、うつ病に対するECTにあたって使用される静注麻酔薬について、うつ症状軽減効果や有害作用への影響を比較検討するためレビューを行った。Cochrane Database Systematix Reviewsオンライン版2014年4月11日号の掲載報告。  研究グループは、ECT施行中の成人うつ病患者において、静注催眠・鎮静薬の相違が抗うつ効果、回復および発作期間に及ぼす影響を評価することを目的としたレビューを行った。Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(2012年の12号分)、MEDLINE via Ovid SP、およびEMBASE via Ovid SP(いずれも1966~2012年12月31日まで)を用いて検索した。関連記事は手作業で検索し、言語を制限することなく適用した。検索対象は、ECTに対して種類の異なる催眠・鎮静薬の有効性を評価している無作為化比較試験(RCTs)およびクロスオーバー試験とし、プラセボまたは吸入麻酔薬を使用している試験・研究および麻酔薬を使用していない試験は除外した。 2名のレビュワーが試験の質を独立して評価し、データを抽出した。可能な場合はデータを蓄積し、Cochrane Review Manager statistical package(RevMan)を用いて、リスク比(RR)と平均差(MD)をそれぞれ95%信頼区間(CI)と共にコンピュータで算出した。 主な結果は以下のとおり。・1994~2012年に報告された18件のRCT(599例)がレビューの対象となった。・大半がバイアスリスクの高い試験であった。・6種類の静脈麻酔薬を比較検討した結果を解析したほか、プロポフォールとメトヘキシタール(国内未承認)を比較した4件の試験、プロポフォールとチオペンタールを比較した3件の試験を併合して解析を行った。・プロポフォールとメトヘキシタールの比較において、うつスコアの軽減に差はみられなかった(エビデンスの質:低)。ただし分析に含んだ4件の試験では、うつスコアの差を検出するデザインとされていなかった。・プロポフォール群はメトヘキシタール群と比較して、脳波(EEG)の発作持続時間ならびに運動発作の期間が短かった(エビデンスの質:低)。・プロポフォールとチオペンタールの比較において、EEG発作期間に差はみられなかった(エビデンスの質:低)。・チオペンタール麻酔後の被験者は、プロポフォールに比べて回復までの時間(命令に従う)が長かった(エビデンスの質:低)。・その他の麻酔薬の比較に関しては、1件の試験または不十分なデータしかなかった。・検討対象とした試験において有害事象に関する報告は不十分であったが、麻酔薬に関連する死亡の報告はなかった。・今回、多くの試験でバイアスリスクが高く、エビデンスの質は概して低かったほか、臨床的に明らかなうつスコアの差を検出するようデザインされていなかった。著者は、「麻酔薬は有害事象プロファイル、すなわち発作の出現と発作期間に及ぼす影響に基づいて選択されるべきである」と指摘している。・十分に長期の発作を導き出すのが困難だとすれば、メトヘキシタールはプロポフォールに比べ優れている可能性があった(エビデンスの質:低)。・もし麻酔からの回復がゆっくりであれば、プロポフォールはチオペンタールに比べ命令に応じるまでの時間(回復までの時間)がより早い可能性があった(エビデンスの質:低)。・エトミデード(国内未承認)による副腎抑制は、いずれの試験でも臨床的な懸念事項として示されていなかった。・静脈催眠・鎮静薬の最適な用量はいまだ不明であった。有害事象を最小限に抑えつつ、うつスコアを最大限に改善する静注麻酔薬を明らかにするため、より大規模の十分にデザインされた無作為化試験が求められる。関連医療ニュース うつ病治療に対する、電気けいれん療法 vs 磁気けいれん療法 ECTが適応となる統合失調症患者は? 治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ

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心臓カテーテル検査によって脳血管障害を来し死亡したケース

循環器最終判決判例タイムズ 824号183-197頁概要胸痛の精査目的で心臓カテーテル検査が行われた61歳男性。検査中に250を超える血圧上昇、意識障害がみられたため、ニトログリセリン、ニフェジピン(商品名:アダラート)などを投与しながら検査を続行した。検査後も意識障害が継続したが頭部CTでは出血なし。脳梗塞を念頭においた治療を行ったが、検査翌日に痙攣重積となり、気管切開、人工呼吸器管理となった。検査後9日目でようやく意識清明となり、検査後2週間で一般病室へ転室したが、その直後に消化管出血を合併。輸血をはじめとするさまざまな処置が講じられたものの、やがて播種性血管内凝固症候群、多臓器不全を併発し、検査から19日後に死亡した。詳細な経過患者情報高血圧、肥満、長期の飲酒歴、喫煙歴、高脂血症、軽度腎障害を指摘されていた61歳男性経過1983年1月12日胸がモヤモヤし少し苦しい感じが出現。1月18日胸が重苦しく圧迫感あり、近医を受診して狭心症と診断され、ニトログリセリンを処方された。1月26日某大学病院を受診、胸痛の訴えがあり狭心症が疑われた。初診時血圧200/92、心電図は正常。2月2日血圧160/105、心電図では左室肥大。3月初診から1ヵ月以上経過しても胸痛が治まらないので心臓カテーテル検査を勧めたが、患者の都合により延期された。9月胸痛の訴えあり。10月同様に胸痛の訴えあり。1983年5月25日左手親指の痺れ、麻痺が出現、運動は正常で感覚のみの麻痺。7月8日脳梗塞を疑って頭部CTスキャン施行、中等度の脳萎縮があるものの、明らかな異常なし。1985年9月血圧190/100、心電図上左軸偏位あり。1986年7月健康診断の結果、肥満(肥満度26%)、心電図上の左軸偏位、心肥大、動脈硬化症などを指摘され、「要精査」と判断された。冠状動脈の狭窄を疑う所見がみられたので、担当医師は心臓カテーテル検査を勧めた。9月17日心臓カテーテル検査目的で某大学病院に入院。9月18日12:30検査前投薬としてヒドロキシジン(同:アタラックス-P)50mg経口投与。検査開始前の血圧158/90、脈拍71。13:30血圧154/96。右肘よりカテーテルを挿入。13:48右心系カテーテル検査開始(肺動脈楔入圧、右肺動脈圧)。13:51心拍出量測定。13:57右心系カテーテル検査終了。この間とくに訴えなく異常なし。14:07左心系カテーテル検査開始、血圧169/9114:13左心室圧測定後間もなく血圧が200以上に上昇。14:21血圧232/117、胸の苦しさ、顔色口唇色が不良となる。ニトログリセリン1錠舌下。14:27血圧181/111と低下したので検査を再開。14:28左冠状動脈造影施行(結果は左冠状動脈に狭窄なし)、血圧は150-170で推移。左冠状動脈造影直後に約5.1秒間の心停止。咳をさせたところ脈は戻ったが、徐脈(45)、傾眠傾向がみられたので硫酸アトロピン0.5mg静注。血圧171/10214:36左心室撮影。血圧17514:40左心室のカテーテルを再び大動脈まで戻したところ、再度血圧上昇。14:45血圧253/130、アダラート®10mg舌下。14:50血圧234/12314:56血圧220程度まで低下したので、右冠状動脈造影再開。14:59血圧183/105。右冠状動脈造影終了(25~50%の狭窄病変あり)、直後に約1.8秒の心停止出現。15:01検査終了後の血管修復中に血圧230/117、ニトログリセリン4錠舌下。15:04カテーテル抜去、血圧224/11715:30検査室退室。血圧150/100、脈拍77、呼びかけに対し返答はするものの、すぐに眠り込む状態。15:40病室に帰室、血圧144/100、うとうとしていて声かけにも今ひとつ返答が得られない傾眠状態が継続。19:00呼名反応やうなずきはあるがすぐに閉眼してしまう状態。検査から3時間半後になってはじめて脳圧亢進による意識障害の可能性を考慮し、脳圧降下薬、ステロイド薬の投与開始。9月19日08:00左上肢屈曲位、傾眠傾向が継続したため頭部CT施行、脳出血は否定された。ところが検査後から意識レベルの低下(呼名反応消失)、左上肢の筋緊張が強くなり、左への共同偏視、左バビンスキー反射陽性がみられた。15:00神経内科医が往診し、脳塞栓がもっとも疑われるとのコメントあり。9月20日全身性の痙攣発作が頻発、意識レベルは昏睡状態となる。気管切開を施行し、人工呼吸器管理。痙攣重積状態に対しチオペンタールナトリウム(同:ラボナール)の持続静注開始。9月24日痙攣発作は消失し、意識レベルやや改善。9月27日ほぼ意識清明な状態にまで回復したが、腎機能の悪化傾向あり。9月30日人工呼吸器より離脱。10月3日09:30状態が改善したためICUから一般病室へ転室となる。13:00顔面紅潮、意識レベルの低下、大量の消化管出血が出現。10月4日上部消化管内視鏡検査施行、明らかな出血源は指摘できず、散在性出血がみられたためAGML(急性胃粘膜病変)と診断された。ところが、その後肝機能、腎機能の悪化、慢性膵炎の急性増悪、腎不全などとともに、血小板数の低下、フィブリノーゲンの著明な減少などからDICと診断。10月8日15:53全身状態の急激な悪化により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.心臓カテーテル検査の適応検査前に狭心症に罹患していたとしても軽度なものであり、心臓カテーテル検査を行う医学的必要性はなかった。また、検査の3年前から脳梗塞の疑いがもたれていたにもかかわらず、脳梗塞の症状がある患者にとってはきわめて危険な心臓カテーテル検査を行った2.異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失250を越える異常な血圧の上昇を来した時点で、事故の発生を未然に防止するために検査を中止すべき注意義務があったのに、検査を強行した3.神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査終了時点で意識障害があり、脳塞栓が疑われる状況であったのに、神経内科専門医の診察を依頼したのは検査後24時間も経過してからであり、適切な処置が遅れた4.死因医学的に必要のない検査を行ったうえに、検査中の脳梗塞発症に気付かず検査を続行し、検査後もただちに専門医の診察を依頼しなかったことが原因で、最終的には胃出血によるDICおよび多臓器不全により死亡に至ったものである病院側(被告)の主張1.心臓カテーテル検査の適応患者には胸痛のほか、高血圧、肥満、長期の飲酒歴、喫煙歴、高脂血症、軽度腎障害などの冠状動脈狭窄を疑わせる所見が揃っており、冠状動脈を精査し、手術なり薬剤投与なりを開始することが治療上不可欠であった。脳梗塞については、検査の3年前に施行した頭部CTスキャンで異常はなく、自覚症状としてみられた左手親指、人差し指の感覚障害は末梢神経または神経根障害と考えられ、改めて脳梗塞を疑うべき症状は認められなかった2.異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失心臓カテーテル検査中に最高血圧が230-250になるのは臨床上起こり得ることであり、血圧上昇時には必要に応じて降圧薬を投与し、経過を観察しながら検査を継続するものである。そして、200以上の血圧上昇がもつ意味は患者によって個体差があり、普段の血圧が170-190くらいであった本件の場合には検査時のストレスによって血圧が200以上になっても特別に異常な反応ではない3.神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査後に意識レベルが低下し、四肢硬直がおきたため脳梗塞、脳幹部循環障害などの可能性を考え、治療を開始するとともに神経内科などに相談しながら、最良の治療を行った4.死因死因は脳病変に基づくものではなく、意識障害が回復した後の消化管出血によるDIC、および多臓器不全に伴った心不全である。この消化管出血にはステロイド薬の使用、ストレスなどが関与したものであるが、抗潰瘍薬の投与などできるだけ予防策は講じていたのであるから、やむを得ないものであった裁判所の判断1. 心臓カテーテル検査の適応患者には検査前から高血圧、肥満、長期の喫煙歴、軽度の腎障害など、虚血性心疾患の危険因子のうちいくつかが明らかに存在し、さらに心電図で左室肥大および左軸偏位が認められ、胸痛という自覚症状もあったので、狭心症を疑って心臓カテーテル検査を行ったことに誤りはない。さらに急性期の脳梗塞患者、発症直後の脳卒中患者には冠状動脈造影を行ってはならないとされているが、本件の場合には検査前に急性期の脳梗塞が疑われるような症状はないので、心臓カテーテル検査を差し控えなければならないとはいえない。2. 異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失250を越える異常な血圧の上昇がみられた時点で、検査のストレスによる血圧上昇だけでは説明できない急激な血圧の上昇であることに気付き、脳出血を主とする脳血管障害発生の可能性を考え、検査を中止するべきであった。さらに検査で用いた76%ウログラフィン®(滲透圧の高い造影剤)のため、脳梗塞によって生じた脳浮腫をさらに増強させる結果になった。3. 神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査終了後は、ただちに専門の神経内科医に相談するなどして合併症の治療を開始するべきであったのに、担当医らが脳血管障害の可能性に気付いたのは、検査終了から3時間半後であり、その間適切な治療を開始するのが遅れた。4. 死因脳梗塞が発症したにもかかわらず、検査を続行したことによって脳浮腫が助長され、意識障害が悪化した。さらに検査終了後もただちに適切な処置が行われなかったことが、胃からの大量出血を惹起し死亡にまで至らしめた大きな原因の一つになっている。原告側合計8,276万円の請求に対し4,528万円の判決考察心臓カテーテル検査に伴う死亡率は、1970年代までは多くの施設で1%を越えていましたが、技術の進歩とヘパリン使用の普及により、現在は0.1~0.3%の低水準に落ち着いています。また、心臓カテーテル検査に伴う脳血管障害の合併についても、0.1~0.2%の低水準であり、「組織だった抗凝固処置」によって大部分の脳血管系の事故が防止できるという考え方が主流になっています。カテーテル検査中に脳塞栓を生じる機序としては、(1)カテーテルによって動脈硬化を起こした血管に形成された壁在血栓が剥離されて飛ばされ、脳の血管に流れた結果脳梗塞を生じる(2)カテーテルの周囲に形成された血栓またはカテーテルのなかに形成された血栓が飛ばされ、脳の血管に移行して脳梗塞を生じる(3)粥状硬化、動脈硬化を起こした血管の粥腫(アテローム)がカテーテルによって剥離されて飛ばされ、脳の血管に流された結果脳梗塞を生じるの3つが想定されています。これに対する処置としては、(1)十分なヘパリン投与を行った患者においても、カテーテルのフラッシュは十分注意しかつ的確に行うこと(2)ガイドワイヤーは使用する前に十分に拭い、血液を付着させないこと(3)ガイドワイヤーを入れたままのカテーテル操作は、1回あたり2分以内にとどめること(2分経過後はガイドワイヤーを必ず抜き出して拭い、再度ガイドワイヤーを用いる時はカテーテルをフラッシュする)(4)リスクの高い患者では不必要にカテーテルやガイドワイヤーを頸動脈や椎骨脳底動脈に進めないなどが教科書的には重要とされていますが、現在心臓カテーテル検査を担当されている先生方にとってはもはや常識的なことではないかと思います。つまり本件では、心臓カテーテル検査中に発症した脳血管障害というまれな合併症に対し、どのように対処するべきであったのか、という点が最大のポイントでした。裁判所の判断では、心臓カテーテル検査中に「血圧が250以上に上昇した時点ですぐに検査を中止せよ」ということでしたが、循環器内科医にとってすぐさまこのような判断をすることは実際的ではないと思います。ここで問題となるのが、(1)コントロールはこれでよかったか(2)障害の可能性を念頭に置いていたかという2点にまとめられると思います。この当時の状況を推測すると、大学病院の循環器内科に入院して治療が行われていましたので、1日に数件の心臓カテーテル検査が予定され、全例を何とか(無事かつ迅速に)こなすことに主眼がおかれていたと思います。そして、検査中にみられた高血圧に対しては、とりあえずニトログリセリン、アダラート®などを適宜使用するのがいわば常識であり、通常のケースであれば何とか検査を終了することができたと思います。にもかかわらず、本件では降圧薬使用後も250を越える高血圧が持続していました。この次の判断として、血圧は高いながらも一見神経症状はなく大丈夫そうなので検査を続行してしまうか、それとも(少々面倒ではありますが)ニトログリセリン(同:ミリスロール)などの降圧薬を持続静注することによって血圧を厳重にコントロールするか、ということになると思います。結果的には前者を選択したために、裁判所からは「異常高血圧を認めた時点で検査中止するのが正しい」と判断されました。日常の心臓カテーテル検査では、時に200を超える血圧上昇をみることがありますが、ほとんどのケースでは無事に検査を終了できると思います。さらに、心臓カテーテル検査中に脳梗塞へ至るのは1,000例ないし500例に1例という頻度ですから、当時の状況からして、急いで微量注入器を準備して降圧薬の持続静注をするとか、血圧が安定するまでしばらく様子をみるなどといった判断はなかなか付きにくいのではないかと思います。しかし、本件のように心臓カテーテル検査中に脳血管障害が発症しますと、あとからどのような抗弁をしようとも、「異常高血圧に対して適切な処置をせず検査を強行するのはけしからん」とされてしまいますので、たとえ時間がかかって面倒に思っても、厳重な血圧管理をしなければあとで後悔することになると思います。次に問題となるのが、心臓カテーテル検査中に生じた「少々ボーっとしている」という軽度の意識障害をどのくらい重要視できたかという点です。後方視的にみれば、誰がみてもこの時の意識障害が脳梗塞に関連したものであったことがわかりますが、当時の担当医は「検査前投薬の影響が残っていて少しボーっとしているのであろう」と考えたため、脳梗塞発症を認識したのは検査から3時間半も経過したあとでした。前述したように、心臓カテーテル検査で脳梗塞を合併するのは1,000例ないし500例に1例という頻度ですから、ある意味では滅多に遭遇することのないリスクともいえます。しかし、日常的にこなしている(安全と思いがちな)検査であっても、どこにジョーカーが潜んでいるのか予測はまったくつかないため、本件のような事例があることを常に認識することによって早めの処置が可能になると思います。本件でも脳梗塞発症の可能性をいち早く念頭においていれば、たとえ最悪の結果に至ってしまっても医事紛争にまでは発展しなかった可能性が十分に考えられると思います。判決文全体を通読してみて、今回この事例を担当された先生方は真摯に医療の取り組まれているという印象が強く、けっして怠慢であるとか、レベルが低いなどという次元の問題ではありません。それだけに、このような医事紛争へ発展してしまうのは大変残念なことですので、少しでも侵襲を伴う医療行為には「最悪の事態」を想定しながら臨むべきではないかと思います。循環器

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統合失調症の陰性症状改善へ、グリシン再取り込み阻害

 統合失調症において、陰性症状の重症度は長期障害の主要な予測因子である。一方、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体を介したシグナル欠乏は、統合失調症のとりわけ陰性症状に関連する多くの徴候や症状の背景要因であると推察されている。グリシンは、NMDA受容体のコアゴニストとして働くことから、Daniel Umbricht氏らは、NMDA受容体を介したシグナル伝達を増強するうえで、グリシントランスポータータイプ1の阻害は、グリシン再取り込み阻害によりシナプス間隙のグリシン濃度を上昇させるため有効な戦略であると仮定した。そして著者らは、陰性症状が優勢な統合失調症患者を対象とし、グリシン再取り込み阻害薬であるビトペルチン(RG1678)の有効性と安全性を検討した。JAMA誌オンライン版2014年4月2日号の掲載報告。 著者らは、抗精神病薬服用中で安定状態にある陰性症状が優勢な統合失調症における、同薬の有効性と安全性を明らかにする検討を行った。試験は、世界66の地域において、陰性症状が優勢な統合失調症患者323例を対象とした、無作為化二重盲検プラセボ対照第II相概念実証試験。ビトペルチン(10、30または60mg/日)またはプラセボを標準的な抗精神病治療に追加し、8週間投与した。アウトカムは、ベースラインからの陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)陰性症状スコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・per-protocol集団において、ビトペルチン10-mg/日の8週投与(陰性症状スコアの平均値[SE]減少率:-25%[2%]、p = 0.049)および30-mg/日の8週投与(同:-25%[2%]、p =0 .03)は陰性症状を有意に軽減し、10-mg/日群はプラセボ群と比較して有意に高い有効率と機能改善傾向を示した(同:-19%[2%])。・intent-to-treat集団では、傾向を認めた結果は有意に達した。・ビトペルチンは、グリシントランスポータータイプ1に低~中等度レベルで結合すると推察され、これが、患者における最適な有効性を導くものと推察された。またこの結果は前臨床試験の結果とも一致した。・以上により、ビトペルチンを介したグリシン再取り込み阻害は、統合失調症の陰性症状に対する新しい治療オプションとなる可能性が示唆された。関連医療ニュース 統合失調症の陰性症状に対し、抗うつ薬の有用性は示されるのか 統合失調症の陰性症状軽減へ新たな選択肢となりうるか セロトニン3受容体、統合失調症の陰性症状改善に期待:藤田保健衛生大学

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非小細胞肺がん治療の新規EGFR-TKI「ジオトリフ」薬価収載

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社の肺がん治療薬ジオトリフ(一般名:アファチニブマレイン酸塩)が、2014年4月17日薬価収載された。適応症は、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん。同社は、同日「ジオトリフ発売記者説明会」を開催。和歌山県立医科大学 山本 信之氏、国立がん研究センター中央病院 山崎 直也氏、神奈川県立循環器呼吸器病センター 加藤 晃史氏が、同薬剤の有効性および有害事象について紹介した。 山本氏は、ジオトリフの薬剤特性および臨床試験の結果について紹介。同薬剤は、EGFRのみならずHER2、HER3、HER4といったすべてのErbBファミリーの受容体を持続的かつ選択的に阻害することで、従来阻害できなかったヘテロ二量体によるシグナル伝達も複合的に阻害する。また、共有結合により不可逆的に結合することで、シグナル伝達をより効果的に阻害できる可能性がある。国際共同第III相臨床試験であるLUX-Lung3試験では、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんにおいて、化学療法(CDDP+PEM)と比較し有意に無増悪生存期間(PFS)を延長している。とくに日本人のサブグループのPFS中央値は13.8ヵ月と良好である。山本氏は、近年著しい改善を示すPFSをさらに延長させる可能性があると述べた。 次に、山崎氏は、同薬剤の有害事象である皮膚障害について紹介。従来のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(以下EGFR-TKI)共通の有害事象として皮膚障害があり、ジオトリフも同様に皮膚障害が発生する。なかでも、同薬剤に特徴的なのは、他のEGFR-TKIと比較して爪囲炎など爪の異常の発生頻度が高い印象があることだと述べた。山崎氏はまた、皮膚障害の発生頻度と治療効果が相関することに触れ、皮膚障害の悪化により治療を断念することのないよう、予防と適切な治療により重症化を防ぐことが肝要であると述べた。 最後に、加藤氏は、同薬剤の有害事象である下痢・間質性肺疾患のマネジメントについて紹介。同薬剤による下痢は、グレード3以上の重症例も少なくない。しかしながら、下痢が原因の投与中止例はなく、早期に適切な対応を行うことで、コントロール可能であると述べた。一方、間質性肺疾患は、同薬剤の投与中止理由の最も多い有害事象である。とはいえ、日本人における発生頻度は3%程度と、他のEGFR-TKIと比較し高いとはいえないようである。加藤氏はまた、間質性肺疾患についても、症状チェック、リスク因子の鑑別などで早期発見、早期治療が重要であると述べた。ジオトリフの薬価は以下のとおり。ジオトリフ錠20mg1錠:5,840.70円、30mg1錠:8,547.40円、40mg1錠:11,198.50円 、50mg1錠:12,760.00円

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PETが植物状態における意識回復の予測に有用/Lancet

 脳18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)PET検査は、無反応覚醒症候群(unresponsive wakefulness syndrome、植物状態)患者のベッドサイドの臨床検査として補完的に使用可能であり、意識回復の長期的な予測に有用であることが、ベルギー・リエージュ大学病院のJohan Stender氏らの検討で示された。無反応覚醒症候群や最小意識状態(minimally conscious state)は、ベッドサイド診療で誤診されることが多いという。PETや機能的MRI(fMRI)などの神経画像検査は、理論上は無反応覚醒症候群と最小意識状態の鑑別が可能であり、予後予測に有用である可能性があるが、診断能の臨床的な妥当性は確立されていない。Lancet誌オンライン版2014年4月16日号掲載の報告。意識検出と回復予測における有用性を妥当性試験で検証 研究グループは、安静時の18F-FDG PETおよび精神活動時のfMRIによる神経画像検査はベッドサイドにおける意識の検出に補完的に使用でき、回復の予測が可能であるとの仮説を検証するために臨床的な妥当性試験を実施した。 対象は、2008年1月~2012年6月までに、リエージュ大学病院で外傷性または非外傷性の原因による無反応覚醒症候群、閉じ込め症候群(locked-in syndrome)あるいは最小意識状態と診断された患者であった。 改訂版意識状態評価スケール(CRS-R)による標準化された臨床評価を繰り返し行い、脳18F-FDG PETおよび精神活動時fMRIによる神経画像検査を実施した。CRS-Rによる診断を対照として2つの画像検査法の診断精度を算出し、12ヵ月後に拡張版グラスゴー・アウトカム・スケールを用いて転帰の評価を行った。感度:93 vs. 45%、CRS-Rとの一致度:85 vs. 63%、予後予測率:74 vs. 56% 本試験には126例が登録された。無反応覚醒症候群が41例、閉じ込め症候群が4例、最小意識状態は81例であった。このうち外傷性が48例、非外傷性が78例であり、慢性期が110例、亜急性期は16例であった。 18F-FDG PET検査は93%という高い感度で最小意識状態を同定し、CRS-Rの行動スコアとの一致度も85%と高い値を示した。一方、active fMRI検査の最小意識状態の診断感度は45%、行動スコアとの一致度は63%であり、18F-FDG PET検査よりも低かった。 18F-FDG PETは102例中75例(74%)の転帰を正確に予測したが、fMRIは65例中36例(56%)であった。42例の行動的に無反応な患者(CRS-Rで無反応と診断)のうち13例(32%)が、少なくとも一方の検査法で脳の活動性が「(最小)意識あり」(意識に関連する活動性はあるが、完全な意識状態に比べれば低下している)と判定され、このうち9例(69%)が実際に意識を回復した。 著者は、「脳18F-FDG PET検査は無反応覚醒症候群患者のベッドサイドの臨床検査に補完的に使用でき、長期的な回復予測に有用である。active fMRI検査も鑑別診断に有用だが精度が低いと考えられる」とまとめ、「CRS-Rに18F-FDG PETを補完的に組み合わせる評価法は、反応はないが意識のある患者の簡便で信頼性の高い診断プログラムとなる」としている。

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既治療のC型肝炎に対するレディパスビル+ソホスブビル治療の有効性/NEJM

 インターフェロンベースの治療では持続的なウイルス消失(sustained virological response:SVR)が得られなかったC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型1型感染患者に対し、レディパスビル+ソホスブビル配合薬の1日1回1錠投与による治療が有効であることが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのNezam Afdhal氏らが実施したION-2試験で示された。これら2つの薬剤は直接作用型抗ウイルス薬で、ソホスブビルは核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬、レディパスビルはNS5A阻害薬である。米国のガイドラインでは、既治療の1型感染患者に対しソホスブビル+NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬シメプレビル(±リバビリン)の併用療法が推奨されているが、これは第II相試験の限られたデータに基づくものだという。NEJM誌2014年4月17日号(オンライン版2014年4月11日号)掲載の報告。4つのレジメンを無作為化試験で評価 ION-2試験は、既治療のHCV遺伝型1型感染患者に対するレディパスビル+ソホスブビル治療(LDV-SOF)の有用性を評価する非盲検無作為化第III相試験。ペグインターフェロン+リバビリン(RBV)(±NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬)による治療でSVRが得られなかった1型(1a、1b)感染患者を対象とした。 参加者は、LDV-SOF(LDV 90mg/SOF 400mg配合薬、1日1回1錠、12週)、LDV-SOF+RBV(12週)、LDV-SOF(24週)、LDV-SOF+RBV(24週)の4つの治療群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は治療終了後12週時のSVR率とした。SVRは、血清HCV RNA量<25IU/mLと定義した。12週時SVR達成の427例は24週時もこれを維持 本試験には、2013年1月3日~2月26日までに米国の64施設から440例が登録された。LDV-SOF 12群に109例、LDV-SOF+RBV 12群に111例、LDV-SOF 24群に109例、LDV-SOF+RBV 24群には111例が割り付けられた。 各群の年齢中央値は55~57歳、男性が61~68%、白人が77~85%、平均BMIは28~29であった。全体の79%が1a型であり、20%に肝硬変が見られた。前治療でNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬の投与を受けていたのは52%であった。 12週時のSVR率はいずれの治療群も高値を示し、LDV-SOF 12群が94%、LDV-SOF+RBV 12群は96%、LDV-SOF 24群は99%、LDV-SOF+RBV 24群も99%に達しており、歴史的対照との間に有意な差を認めた(いずれもp<0.001)。12週時にSVRを達成した427例全例が、24週時にもSVRを維持していた。 治療終了後にウイルス学的再燃と判定された患者は440例中11例(2%)で、LDV-SOF 12群が7例(6%)、LDV-SOF+RBV 12群が4例(4%)であった。このうち10例は治療終了後4週までに再燃し、12週以降に再燃した例はなかった。 多変量解析で検出されたベースライン時の予後予測因子は肝硬変の有無のみで、全体のSVR率は非肝硬変例が98%、肝硬変例は92%だった。 各群の有害事象の発現頻度は67~90%で、ほとんどが軽度~中等度であった。有害事象に起因する治療中止例は認めなかった。高頻度に見られた有害事象は疲労感(21~45%)、頭痛(23~32%)、悪心(6~23%)であった。 著者は、「本試験で達成されたSVR率は、これまでに報告された1型感染患者を対象とした試験の中で最も高いものの1つである」としている。

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スクールバッグは重く感じる ―10代の腰痛

 ティーンエイジャーの腰痛は、重たいスクールバッグの持ち運びが発症の原因といわれてきたが、重さの感覚には多くの要因が影響を与えている。今回、スイス・HFR社のThierry Nicolet氏らの研究において、重さの知覚には主観が有意に影響を与えることが明らかとなった。著者は、「重さの知覚に対するバックパックの重量の力学的な役割がよくわかるまで、通学時の重量制限に関する任意の勧告は慎重に見守るべきである」とまとめている。European Spine Journal誌2014年4月号(オンライン版2014年2月7日号)の掲載報告。 研究グループは、健康的なティーンエイジャーの重さに対する感覚に、腰痛とバッグの種類がどのように影響するかを評価した。 対象は、地域のスポーツクラブの会員の中から募集した健康男性ティーンエイジャー80人(平均年齢13.9±2.1歳)で、トレーニング中に腰痛の既往歴についてアンケート調査を行うとともに、異なる2つの重さ(総重量は約3kgと5kg)のおもりが入った3種類のバッグ(典型的なスクールバッグ、有名ブランドのロゴ入りスポーツバッグ、普通のバッグ)の重さを推定してもらった。 主な結果は以下のとおり。・参加者の26.2%が、重度の腰痛(医師の診察を必要とする、および/または通常のスポーツ活動に支障を来す)を有していた。・腰痛の症状の大半は実験の3ヵ月以前に発生していた。・参加者は、スクールバッグおよび普通のバッグに比べ、スポーツバッグの重さを有意に低く評価していた(p<0.05)。・腰痛の既往歴を有する参加者は、有していない参加者に比べ、5kgのバッグの重さをより重めに評価していた。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第7回

第7回:末梢閉塞性動脈疾患:疑わしければABIを、治療は薬だけでなく運動も 欧米では末梢閉塞性動脈疾患 PAD(peripheral arterial disease)と閉塞性動脈硬化症 ASO(arteriosclerosis obliterans)とはほぼ同義とされますが、日本ではPAD=ASO+閉塞性血栓血管炎TAO(Thromboangiitis obliterans)として区別されてきました。その理由は、江戸時代以降1970年代頃まで日本では、TAOが慢性閉塞性動脈疾患の中心を占めていたためです。最近は高齢社会や食生活を含めた生活様式の変化を背景に、TAOが減少しASOが急増して、慢性動脈閉塞症の95%以上を占めるようになり、日本でもPADという表現をASOとほぼ同義に用いることが多くなりました。ASOは無症候性を含め50~80万人/1.3億(3/1000~5/1000)の患者数と推測され、決して少なくありません1)。 PADとは何か、アウトカムは何か、プライマリ・ケアではどのような状況で疑うか、疑ったとき何をするのか、診断後のケアとしてどのような方法があるかを知ることでケアの幅が広がるかもしれません。 以下、本文 American Family Physician 2013年9月1日号2)よりPAD(末梢閉塞性動脈疾患)1.概要PAD(末梢閉塞性動脈疾患)は大動脈弓以遠の狭小化に至る、動脈硬化性疾患である。重度の全身性動脈硬化を反映し、心血管リスク推定時には冠血管疾患と同等に考えるべき疾患である。間欠性跛行(最もよくある症状で、全患者の10%)・四肢虚血・心血管イベント、それによる死亡を引き起こす。2.診断PADリスクは糖尿病・喫煙のほかに、高血圧・脂質異常症・腎不全がある。複数のリスクまたは間欠性跛行がある患者で、病歴と身体所見は診断に有用である。間欠性跛行は脊柱管狭窄症、末梢神経障害、筋骨格疾患、外傷、深部静脈血栓症と鑑別しなければならない。PADの身体所見には皮膚冷感、四肢遠位脈拍触知不良、腸骨/大腿/膝窩動脈雑音聴取、毛細血管再充満時間の延長、非治癒性創傷、光沢のある皮膚、罹患部の無毛、挙上時の四肢蒼白がある。プライマリ・ケアでの診断においてABI(足関節上腕血圧比) は安価で性能のいい検査(感度 90%、特異度 98%)である。ABIで0.9以下の場合(正常範囲 1.0~1.4)、末梢閉塞性動脈疾患を疑う。MRIやCT血管造影検査は手術を検討するときに検討される。ルーチンのスクリーニングが心血管イベントや全死亡を減らすエビデンスがないことから、USPSTF(米国予防医療サービス専門作業部会)はI statement(エビデンスが欠如している、質が悪い、矛盾するエビデンスがある等の理由で、予防方法のメリットと害のバランスを決めるにはエビデンスが不足していると結論づけられる)にとどめている。しかし、ある高リスクの患者群には有用である可能性がある。米国糖尿病協会は50歳以上のすべての糖尿病患者と50歳未満の高リスク患者がスクリーニングされるべきとしている。3.治療治療は運動と薬物療法である。運動療法は、監督下の運動で歩行距離と時間を延ばす(ほとんどの研究で下肢の体操もしくはトレッドミル歩行で30分を2~3回/週)。薬物療法ではスタチンをLDL 100未満として投与すべき(CHD-equivalent)である。症候性のときには抗血小板薬は心筋梗塞や脳卒中や血管死を減らすため、アスピリンやクロピドレル等の処方が推奨される。ACEIに関してはラミプリルが機能障害治療において有用かもしれないが、咳嗽等で使用できないときに他のACEIへの切り替えでも有用かは、さらなる研究が必要である。外科コンサルトは、運動や薬物療法でも生活を制限するような間欠性跛行が改善しないときに行う。重篤な四肢虚血があるときは緊急コンサルテーションが必要である。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本循環器学会ほか.末梢閉塞性動脈疾患治療ガイドライン 2) Duane R, et al. Am Fam Physician. 2013;88:306-310.

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STAP会見と名言【Dr. 中島の 新・徒然草】(014)

十四の段 STAP会見と名言このところ世間を騒がせているSTAP細胞ですが、ついに理化学研究所の笹井芳樹先生が記者会見をしました。この会見に対するメディアの評価はさまざまですが、私にとってはいろいろと勉強になりました。記者会見の質疑応答で感心したことの1つは実験ノートについてです。笹井先生は、自分の研究室に入ってくる若い研究者には、「ノートをつくるときには、今の自分ではなくて、3年後の自分に向かって書くようにしなさい」と指導しているそうです。これ、すごい名言ですよね!研究者にとっての実験ノートは臨床医にとってのカルテのようなものだと思いますが、私もよく「カルテ記載は、3ヵ月後の自分が読んで理解できるようにキチンと書こうね」と自戒を込めて研修医たちに言っています。つまり、カルテを書いた瞬間はロジックも根拠も明白だと思っていても、数ヵ月後にその記載を読み返したときには意味不明としか思えないことがよくあるからです。書いた自分が理解できなければ、他の人が読んでわかるはずもありません。ということで、私も未来の自分が読んでわかるよう、ひたすら理解しやすいカルテ記載を心掛けておるところです。

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10年ぶりの改訂 「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」のポイントは?

 2014年4月17日(木)、東京都千代田区で、日本骨代謝学会により10年ぶりの改訂となる「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」に関するプレスセミナーが開催された。 はじめに、日本骨代謝学会の理事長である田中 良哉氏(産業医科大学医学部第1内科学講座)が、2004年度版の課題として、骨密度測定とレントゲンが必要であったため、その遵守率が20%程度にとどまっていたことを挙げた。そのうえで、今回の改訂について、骨密度測定やレントゲンを行わない場合でも、ある程度の骨折リスクを評価できるようになった点が大きな特徴である、とした。『ステロイド性骨粗鬆症について、なぜ管理が必要か』 次に、近畿大学医学部奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏が講演した。冒頭で、宗圓氏により、ステロイド性骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症のなかでも頻度が高く、骨折リスクがきわめて高い疾患であるとことが述べられた。 骨は常に「吸収」と「形成」が繰り返されている。閉経後骨粗鬆症においては、骨吸収と骨形成が同時に促進する高代謝回転という状態にあるが、ステロイド性骨粗鬆症では、骨を形成する速さよりも骨が吸収される速さが上回っている状態であるため、原発性骨粗鬆症よりも悪影響が大きいという。 ステロイド性骨粗鬆症は、(1)若年、(2)骨密度が高い、(3)既存の骨折がない、(4)男性のようなケースであっても骨折リスクが高まる点に注意が必要である。 ステロイドによる骨折リスクはその投与量に依存的に増加する。プレドニゾロン換算で1日7.5mg以上投与すると、椎体骨折率は5倍を超えるとされているが、1日投与量が2.5mg未満であっても、椎体骨折のリスクは1.55倍になるという1)。このことから、ステロイド投与量に安全域はなく、ステロイドを投与する際には低用量でも骨粗鬆化を念頭に置く必要があるとした。 さらに、ステロイド性骨粗鬆症では、その進行の速さも特徴である。実際、ステロイドの投与初期から骨折リスクが上がり、投与後3~6ヵ月でピークに達すると報告されている2)。投与中止により骨密度は回復するが、骨折リスクは数年間、回復しないことも指摘されている。このようなことから、ステロイドの投与と同時に骨粗鬆症の治療に介入する必要があるといえる。 骨折、とくに大腿骨近位部骨折や椎体骨折は死亡率が高いため、ステロイド投与例においては骨折を起こさないよう、確実に骨折を予防できる手を打つことが何より重要である、と述べた。『2014年版ガイドライン改訂のポイント』 次いで、東海大学医学部 内科学系リウマチ内科学の鈴木 康夫氏により、本ガイドラインの変遷や改訂に至った背景、改訂ポイントなどが公表された。 今回の改訂は、海外ではなく、あくまでわが国のステロイド性骨粗鬆症のコホート解析により独自の骨折危険因子を抽出し、その結果をもとに薬物療法開始の基準判定に初めてスコア法を導入している点が特徴だという。さらに、このスコア法は、種々の基礎疾患、低用量から高用量のステロイド治療、1次予防と2次予防のいずれの場合でも対応できる点がポイントである。 とくに、「既存骨折あり」、「年齢65歳以上」、「ステロイド投与量7.5mg/日以上」、「腰椎骨密度70%未満」である場合、これらは単一でも高い危険因子であるため、どれか1つでも満たされる場合を治療開始の目安とする。低骨密度以外の因子がある場合は、骨密度測定値がなくても治療開始の判断ができる。さらに、複数の危険因子のスコアの合計で評価することにより、単一因子では評価できない複合的なリスクも評価できるようになっている。 薬物療法の推奨は、国内で骨粗鬆症治療薬として承認されている薬剤の中から、骨密度減少と骨折抑制の効果があり、かつ1次予防と2次予防の両方において有効性が確認されている薬剤が優先されている。具体的には、アレンドロネートおよびリセドロネートが推奨度Aで第1選択薬として推奨されており、これらが使用できないときの代替薬として、イバンドロネート、アルファカルシドール、カルシトリオール、遺伝子組み換えテリパラチドが推奨度Bで推奨されている。 セミナーの最後に、田中氏は「ステロイド骨粗鬆症は医師が自らの手で処方したステロイドで骨粗鬆症が起こる可能性がある。だからこそ、処方した医師がしっかりと管理と治療をする必要がある」と述べ、「さまざまな診療科の、より多くの医師にこのガイドラインを活用してほしい」と締めくくった。 なお、本ガイドラインの和文概略版は近日、日本骨代謝学会のホームページで公開される予定である。1) Van Staa TP, et al. J Bone Miner Res. 2000; 15: 993-1000. 2) Cohen D, et al. J Steroid Biochem Mol Biol. 2004; 88: 337-349.

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大腸がんスクリーニング、遠位大腸がん死亡リスクを減少/BMJ

 S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査による大腸がんスクリーニング検査は、いずれも遠位大腸がんによる死亡リスクを大幅に減少することが、ドイツ・がん研究センターのHermann Brenner氏らが行ったメタ解析で確認された。また、大腸内視鏡検査については、近位大腸がんの死亡リスク減少効果があることも明らかになった。  両検査の大腸がん発生リスク低下との関連は、1992年以降に観察研究では報告されていた。またS状結腸鏡検査によるスクリーニングが、全体および遠位大腸がんの発生および死亡リスクの低下と関連することは、2009年以降、4件の無作為化試験が報告されていた。しかし、両検査を比較しての付加的価値については、無作為化試験が少なく、不明であった。BMJ誌オンライン版2014年4月9日号掲載の報告より。S状結腸鏡検査、遠位大腸がん死亡率は46%減少 研究グループは、S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査による大腸がんスクリーニングに関する試験結果について、PubMedとEmbase、Web of Scienceを活用して検索し、メタ解析を行った。 S状結腸鏡検査による大腸がんスクリーニングについては、4件の無作為化試験と10件の観察試験について分析した。その結果、遠位大腸がんについては一貫してスクリーニングによる罹患率と死亡率の減少がみられた。割り付けした群ごとの分析(intention-to-screen解析)では、遠位大腸がん罹患率減少率は31%(95%信頼区間:26~37)で、同死亡率減少率は46%(同:33~57)だった。無作為化試験について、試験の実施計画に合った対象集団についての分析(per protocol解析)では、それぞれの減少率は64%(同:50~74)と66%(同:38~81)だった。大腸内視鏡検査、大腸がん死亡率は68%減少 大腸内視鏡検査による大腸がんスクリーニングについては、6件の観察試験について分析を行った。その結果、遠位大腸がんについて、罹患率と死亡率のさらに大幅な減少が認められた。そのうえ、近位大腸がんによる死亡率についても減少がみられた。大腸がん罹患率と死亡率は、大腸内視鏡検査によってそれぞれ69%(同:23~88)、68%(同:57~77)減少した。 観察試験について比較したところ、近位大腸がんによる死亡リスクは、大腸内視鏡検査による大腸がんスクリーニングのほうが、S状結腸鏡検査に比べ減少効果があることがわかった。 これらの結果を踏まえて著者は、「今回得られた付加的価値について、高コスト、不快感、合併症率、必要許容量、またコンプライアンスの違い(可能な限り)といった観点でさらに調べる必要がある」とまとめている。

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トリクロサン被覆縫合糸、術後感染症リスクを減少せず/Lancet

 正中開腹術の縫合に、トリクロサンで被覆した縫合糸を使っても、被覆していない縫合糸を使った場合と比べて、術後30日以内の術部感染症の発症リスクは減少しないことが判明した。ドイツ・ハイデルベルク大学のMarkus K. Diener氏らが、約1,200例を対象に行った無作為化比較試験「PROUD」の結果、報告した。術後手術部位感染症は、最も頻繁な開腹手術後の合併症の1つである。トリクロサン被覆縫合糸は、その発生を抑制することを目的に開発されたものだった。Lancet誌オンライン版2014年4月4日号掲載の報告より。術後30日以内の手術部位感染発生率を比較 Diener氏らは、ドイツ国内24ヵ所の病院を通じ、2010年4月~2012年10月にかけて選択的腹部正中開腹術を行った18歳以上の患者、合わせて1,185例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはトリクロサンで被覆した縫合糸を、もう一方には被覆していない縫合糸を用い、腹部筋膜の閉鎖を行った。 主要エンドポイントは、米国疾病予防管理センター(CDC)の適格基準に則った、術後30日以内の表層性または深層性の手術部位感染症の発生率だった。なお、患者と外科医、アウトカム評価者は、試験割り付けについてマスキングされていた。感染症発生率、重度有害事象発生率ともに両群で同等 結果、術後30日以内に手術部位感染を発生したのは、被覆縫合糸群の14.8%(587例中87例)に対し、非被覆縫合糸群16.1%(598例中96例)と、両群で有意差はなかった(オッズ比:0.91、95%信頼区間:0.66~1.25、p=0.64)。 また、重度有害事象発生率についても、それぞれ25.0%、22.9%と両群で同等だった(p=0.39)。 結果を受けて著者は「手術部位感染症を減らすために、革新的で、多様な戦略を、さらなる研究により開発し評価していく必要がある」とまとめている。

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重症アトピー性皮膚炎にステロイド外用剤ウェットラップ療法は有効な選択肢

 重症アトピー性皮膚炎(AD)に対して、少なくとも4週間にわたる、ステロイド外用剤を塗布後にラップで覆う「ウェットラップ療法(WWT)」は有効な治療選択肢であることが明らかにされた。オランダ・エラスムス大学医療センターのSherief R. Janmohamed氏らが、前向き無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。WWTは、小児の重症ADに対する有効な治療となることが支持され、しばしばADの緊急処置として用いられるようになっていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年3月31日号の掲載報告。 研究グループは、ステロイド外用剤WWT(治療期間4週間で塗布量を徐々に減量)について評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。被験者は、6ヵ月齢~10歳までの小児で、重症AD(SCORADスコア40±5以上)であった。 被験者をステロイド外用剤WWT群(1:3モメタゾンフランカルボン酸0.1%軟膏、顔面については1:19モメタゾンフランカルボン酸0.1%軟膏)、または皮膚軟化薬WWT群(ワセリン20%入りクリーム)に無作為に割り付けて評価した。 主要アウトカムは、SCORADの改善。副次アウトカムは、Patient-Oriented Eczema Measure評価やQOL指数などであった。 主な結果は以下のとおり。・ステロイド外用剤WWT群は、皮膚軟化薬WWT群よりも急速かつより有効であった。・最善の結果は、6~9歳群と0~3歳群で得られた。・SCORADで評価した有効性についての差は、すべての測定ポイントで有意差が認められた。・また、QOL指数も同様であった。・本検討は比較数が少なく限定的である。

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てんかんの原因遺伝子発見により臨床にどのような変化が起こったか

 オーストラリア・メルボルン大学のIngrid E. Scheffer氏は、てんかん遺伝学が臨床にもたらした影響に関するレビューを行った。てんかん遺伝学は、てんかんの原因遺伝子が発見されて以降の19年間で変革をもたらしてきた。その結果、実際に多くの患者が診断可能となり、共存症や予後、遺伝カウンセリングに対する医療者の理解を深めるなど、臨床診療に変化がもたらされたという。Neuropediatrics誌2014年4月号(オンライン版2014年3月10日号)の掲載報告。 Scheffer氏は、てんかん遺伝子の発見に関連した臨床分子アプローチ概要について検証した。概要には、家族研究や、より最新の多重遺伝子パネルを用いた次世代シーケンスやwhole exome sequencingなどを含んだ。 主な結果は以下のとおり。・最近の研究は、てんかん遺伝学が臨床にどのような変化をもたらしたかを報告していた。・とくに注目されている遺伝子は、DEPDC5であった。・同遺伝子は、非病変性焦点性てんかんに関する初の遺伝子で、小家族での特発性焦点性てんかん患者の発病に関与している可能性があった。対照的に、常染色体優性焦点性てんかんを有する大家族ではまれであった。・DEPDC5は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の陰性レギュレーターで、DEPDC5突然変異を有する一部の患者は、結節性硬化症で示唆された二重衝撃仮説(two hit hypothesis)と類似した、皮質の形成異常を有する可能性があった。・てんかん遺伝学の臨床レベルの最も大きな影響は、てんかん性脳症患者に対するもので、多くの新たな突然変異の原因遺伝子が発見されるに至っていた。・以上のように、てんかん遺伝学は多くの患者の診断を可能とし、医療者が共存症や予後、遺伝カウンセリングについて理解することに寄与しており、臨床に変化をもたらしていることが示された。・遺伝子の発見は、治療選択に影響を与える可能性があるという点で重大であった。・分子レベルでの新たな洞察は、新たな治療法の開発に結びつく可能性がある。また、非病変性てんかんと、皮質形成異常に関連したてんかんとを遺伝学的にまとめることにもなる可能性があった。関連医療ニュース てんかん患者の精神疾患有病率は健常人の8倍 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定

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PADの治療戦略と エビデンス

末梢動脈疾患(PAD)とは、動脈硬化が下肢にあらわれたもので、全身的な動脈硬化の一部分症であることが示唆されています。そのため、PADの治療は、症状だけでなく、動脈硬化の改善や、予後を左右する心血管イベントの抑制を目指して行うことが重要です。本コンテンツでは、その点を踏まえたPADの治療戦略について、動画で詳しく解説します。

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